1 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:
赤が俺の視界を埋め尽くす。
無数のように見える魂がそこで蠢いている。
その蠢きの中に、俺は居た。
少しずつ、赤に溶かされて行きながら。
彼女は言った。
「ここは気持ち良い?」
俺は言った。
「気持ち良いけど、気持ち悪い。俺が、俺じゃなくなっていくんだ」
そう言うと彼女は少し微笑んだ。
2 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/04(日) 16:01:28 ID:RR2sFSqg
サードインパクト。
あの恐ろしい大災厄から十年が経ち、世界は大体は復旧した。少なくとも日本は
復旧したと言えるだろう。
水も電気も通信網も完全に使えているし、経済だって元の水準は少し下回るが、
戻ってきている。
それに加え、サードインパクト以前は常夏の国であったが、サードインパクトの影
響で(TVでは地軸がどうのこうのと言っていた)四季も戻ってきた。
十年経った今では、未だに嘆き悲しむ人は殆ど居ない。
逆に、大災厄のショックからか、前を向いて生きる人間の方が多いように感じる。
実際、自殺者がぐん、と減った。殺人事件もそうだ。
それでも、俺はあのことが良かったことだなんて思えないけれど。
良いことだったなんて言う人間もちらほら居るみたいだけど、そいつらは全員脳み
そが少し小さいんだと俺は思う。
実の所、俺はあの災厄が何だったか良く分からない。
一瞬の出来事だった。
急に、人が消えた。
一人二人ではない、数え切れないほどの数の人間が、だ。
あちこちで事故は起こり、街は地獄絵図となった。
無人の車が建物に突っ込んだり、ヘリコプターが落ちてきたり。
勿論、そうなれば火災だって起こる。
何処かの都市は、丸々焼け落ちたそうだ。
そんな中、俺は家で昼飯を食っていた。
外で聞こえる悲鳴にビックリして、リビングの窓を見ると、何か巨大な物体が
突っ込んできた。
後から聞いた話では、それはダンプだったらしい。
俺は運良く、それに巻き込まれなかったから良かったが、母さんはその巨大な
物体に引き込まれ、ぐちゃぐちゃになっていった。
呆然とその無人のダンプと母さんの死体の破片の傍で暫く座り込んでいると、
なんだか良く分からない人達が俺を保護してくれた。
その人たちは、ネルフです、大丈夫ですか!?だとか言っていた。
何度か明るくなったり暗くなったりしていたから、きっと何日か経っていたんだろう。
何故そんなに曖昧なのかと言うと、ここら辺のことは、ショックで余り覚えていないからだ。
そんな大パニックになると、強盗事件だとか、暴行事件が多発するように思われるが、
何故かそういう事件は少なかった。
それどころか、お互いを尊重しあって物資を自ら分け合っていたようだ。
老人や女性、子供や怪我人を安全な場所へ住民自ら避難させ、大丈夫だとか、助けは
直ぐに来るだとか、お互いに励ましあっていたらしい。俺はとっとと保護されていたので
そういう体験はしていないが。
とにかく、あの災厄自体もだが、それが引き起こしたこと全てが不思議な事だらけだった。
人々が抱えていた勘違いが全て解けた、とかいう変な事も起こっていたみたいだ。
その後、人々を率先して保護したネルフの会見によると、あれは「ゼーレ」とかいう
カルト集団が引き起こした儀式によるものだと発表された。
人と人との壁が無くされ、一度一つに溶けてしまった。その後、ネルフ所有のエヴァ
パイロット、サードチルドレンがエヴァのなんたら機関を使いそれを元に戻したらしい。
しかし、中には戻ってこれなかった人も居て、それがあの時消えた人々なのだそうだ。
なんとも胡散臭い話だ。
勿論俺はその時、「なんだその胡散臭い話は、嘘に決まってるだろ!」と思った。
周りの人間も同じように思ったらしく、保護施設に備え付けられた大型テレビにゴミやらを
投げつけていた。
しかし、マスコミはそれに追求しなかった。
復旧されたインターネットでは色々と憶測が飛び交っていたが、それ自体胡散臭い話ばかりだった。
元々が「人が消える」だなんて胡散臭い事なんだから、当たり前といえば当たり前だが。
そして、しばらく経ってから事態を進展させる事件が発表された。
赤い海から人が出てきた、という事件である。
ネルフはその事を公開したくなかったみたいで、世界中の人々から情報を求められ暴動寸前
までいったから仕方なく公開した、みたいな感じだった。
その赤い海はあの沈没した立ち入り厳禁の第三新東京市にあって、戻ってこれなかった人々
がその中には居るらしい。
で、溶けていた人が帰ってきた、と。そういう事だ。
人々が溶け込んだ海から人が帰って来たんだ、ネルフの言ってたことは正しいんだ!というよ
うなことは勿論これだけでは言えない。
ネルフがこっちに一方的に情報を与えるだけなんだから、その中に嘘なんて幾らでも混ぜられる。
でも、何故か。これも不思議なことだ。
俺にはテレビの画面に映ったその赤い海に見覚えがあって、そして、懐かしい、と感じたんだ。
他の人達も同じだったみたいで、「おい、あの赤い海!俺知ってるぞ!!」というような内容の
声が施設のそこら中で響いた。
施設内の人間は全員心当たりがあったらしい。
街中の人間も皆そうだった。
しばらく経ってから、違う街に行った施設内の友達が俺に連絡をくれたんだが、その街でも同じ
ように、住民全てが赤い海を知っていたらしい。
そうして、世界中の人間があの赤い海を知っていることがテレビを通して分かった。
また、人々は皆あの赤い海に懐かしさを感じていることも。
その後ネルフはまた会見を開き、「貴方達があの赤い海を知っている、懐かしさを感じている、
その事が何よりの事実だ」とか訳の分からないことをネルフのトップっぽい白髪の老人が言った。
それだけでは世間は納得する訳が無いので、色々と補足で研究者っぽい女の人が情報を
与えてくれて、とにかく「良く分からないけどサードインパクトはゼーレというカルト集団が引き
起こしたこと」だということが世間に認知された。
それでも胡散臭がる人間は沢山いるけれど。俺もその一人だ。
赤い海。人類全てが共有する事柄。
……しかし、俺はそこに一つ足らないものがある。
赤い海と一緒に見えた、青い髪の女の子だ。
その女の子が見えたのは、施設内では俺だけだったらしい。
何故俺だけなのか、ということは分かっている。
あの中で俺だけが、第3新東京市立第壱中学校に通っていたからだ。
そう、会ったことがあるんだ。それどころか話を交わしたことだってある。
あの髪が青くて、眼がウサギみたいに赤くて、超無口な可愛い女の子。
二年A組の、綾波レイと。
そして、俺は夢を追い求めるため仕事をやめた。
愛ゆえに愛を捨てた男というキャッチフレーズがあるが、俺の場合夢ゆえに仕事を捨てた男とでも呼んで欲しい。
ともかく西へ行こう。西には何かがある、俺の直感がそう言っていた。
8 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/04(日) 16:13:03 ID:RR2sFSqg
レイたん可愛いよレイたん
気持ち悪い。誰かがそう言っていた。
記憶の片隅に残ったその台詞は、浴槽の隅にこびりつくカビのように俺の心を侵食していく。
ちくしょう。温くなったビールを喉に流し込み、俺は小さく呟いた。酔うことであの記憶を忘れられるのならどんなに楽だろう。
一体俺はどうすればいい?
記憶の中の彼女に謝ればいいのか?
それとも記憶も命も捨てれば楽になれるのか?
わからない。俺はプルタブから落ち掛けた最後の一滴を舌で舐めとると、胸に巣食う感情を押し退けるように壁に空き缶を投げ捨てた。
よくできた話だと思うけど主人公誰?ケンスケ?
ぬ
ワッフルワッフル
13 :
1 ◆Ho/TaQ2R8c :2009/01/04(日) 16:36:04 ID:RR2sFSqg
四季が戻っても、夏はそのまま。クソ暑い。
ミーンミーン、という蝉の鳴き声が耳を貫き、汗がだらだらと吹き出て不快感を纏わり付かせる。
二十一歳の夏。俺はフリーター。無職。
サードインパクト補助金を使い何とか入った大学を中退し、ブラブラと日々を当て所なく暮している。
ダメ男もいい所だ。
これでは母親ミンチというトラウマを乗り越えた意味が無い。
コンビニの朝一〜八時という意味の分からないバイトを終え、眠気を湛えて今にも落ちそうな目蓋を
一生懸命引き上げながら、家への道をダラダラと歩いた。
十分ほど歩くと、そこはもう俺の家だ。
クソボロい木造アパート。家賃は格安。
大家が撒く水を華麗に交わしながら爽やかに挨拶をし、立て付けの悪い階段をギシギシと音を鳴らしながら上る。
ああ、しんどい。ああ、つらい。ああ、先が見えない。
何故大学を辞めたんだろう俺は。独りでも良かったじゃないか。だって卒業さえすれば大体は安泰だったのに。
後悔が俺の心に重りを付けて、深海へと沈みこませていく。
ゆっくりとダルそうに鞄の中から鍵を出し、扉のノブへ差し込み回す。
扉を開けえると、ああ、俺は夢の中にいるんだな、と気付いた。
>>7と
>>9は俺とは違う方です。
>>10 LROですから、オリジナルキャラクターです。
まあオナニーですね、分かります分かります。
愛が欲しい。私はずっとそう思っていた。
雪の降る夜、赤い服に白い髭のお爺さんが靴下一杯の愛情を私に…そんな夢物語でも構わない。
白い息を吐き出し、私は窓の外に視線を向ける。
今朝の天気予報では今晩は雪になると言ってはいたが、窓枠いっぱいに広がる青空を見る限り、その可能性も低そうだ。
手を伸ばし、ベッドの上に放り投げてあった携帯を手に取る。着信も無ければメールもは無い。
待ち受けに設定したアニメチックなウサギ相手に頬を膨らましてみるが、相変わらず人参をかじっているだけで反応は無いのは当たり前。
そんな自分が虚しくなり何気なく送信メールBOXを開いたところでふと指先が止まった。
そういえば以前友達が、自分からお誘いする女の子ははしたないと言っていた気がする。
女の子は誘われてナンボ、自分の安売りは将来の壁になっても糧にはならないとか何とか。
少し考えてみよう。携帯を畳み、私は身体をクッションに預ける。
誤爆、スマソ
女の子が畳の上に座布団を引き正座をしてウーロン茶を啜っている。俺のコップで。
あまりの訳の分からない展開に俺の脳味噌はフリーズした。
取りあえず夢から覚めようと自分の頭をガンガン殴るが一向に覚める気配が無い。
しかも、だ。しかもその女の子は俺が一方的にかは分からないが、知っている女の子だった。
青い髪、ウザギみたいに赤い眼、透き通るように白い肌。そしてあの中学の制服。
あの、綾波レイが、茶を啜ってる。
はあ?
おいおい、早く夢覚めろよ。なんでこんなに殴ってんのに覚めないの? 馬鹿なの? 死ぬの?
あ、段々と視界が白くなってきた。もう直ぐ覚めるんじゃないか?
殴るスピードを高めさらにガンガンガンガン頭を殴っていると、綾波レイらしき女の子がこちらを見た。
「……何をしているの?」
俺は何故だか無性に恥ずかしくなり、殴る手を止めた。
「え、あ、これ夢?」
間抜けに手を微妙に上げながら、問いかけた。
「……?」
綾波レイらしき女の子が可愛らしく首を傾げる。
……え?まさか、夢じゃない……の?
戸惑う頭とまったくの予想外の出来事にバクンバクンいっている心臓を宥めながら、俺は靴を脱ぎ、部屋
の中へ足を踏み入れた。
そして、恐る恐るその綾波レイらしき女の子の傍へ行き、また問いかける。
「あ、あのさ」
「何」
赤い瞳が俺を捕らえる。
さらに俺の心臓の鼓動は早くなり、只でさえかきまくっている汗をさらに噴出させた。
「えっと、あの、その……綾波、レイ?」
ス、とその小ぶりで可愛らしい顔を失礼だとは思いながらも指差す。
「そう」
綾波レイらしき女の子がこく、と頷く。どうやら本当に綾波レイらしい……。
「……な、なんで俺の部屋にいんの? ていうか……」
なんで、あの時の姿のままなんだ?
その言葉を続けようとするけど、何故か言ってはならないような気がして、飲み込んだ。
「分からない、気が付いたら此処に」
「そ、そうか……なんで茶飲んでんだ?」
「……喉が渇いていたから。暑いし……いけなかった?」
「い、いや、別に……」
沈黙。……気まずい。何故俺がこんな思いをしなくてはならないんだ。
取りあえず、だ。俺はもう死ぬほど眠い。さっき自分の頭をガンガン殴ってしんどいし、なによりビックリ
し過ぎて疲れ過ぎた。
だから、寝る。クーラーを付けて、寝る。
「……取りあえず、俺寝るわ」
棚の上に置いているクーラーのリモコンで、ピ、とクーラーのリモコンを入れる。
涼しい風が火照った身体に気持ちいい。
「そう……」
布団とタオルケットと枕を襖を開け出す。
ボフ、と布団を下ろし、枕も置き、タオルケットに包まって寝転んだ。
「……綾波、どうすんの?」
ウーロン茶を持ったまま、こちらをジ、と見てくる。
ドキリ、とした。
今度はビックリしたとかじゃなくて……。
「……ここに居ても、良い?」
寂しそうに、綾波はそう言った。
声色はさっきと変わらない。その赤い瞳の奥に、悲しそうな色が見えた。
良く、分からないけれど、俺はこいつを独りにさせたらダメだ、と思った。
まったく、訳が分からん。
訳の分からないシフトを入れられ、必死こいてバイトをして、やっと帰ってきたら同じ中学に行ってたエヴァパイロット
だったヤツが茶を飲んでいて。しかもこいつが俺の前……じゃないな、周辺から消えてから十年もたってんのに姿は
あの時のままで。
もしかして、幽霊か……? ここの家賃が安いのはそういう理由か、なんて薄ら寒い考えも頭に浮かんだんが、その
寂しそうな眼を見ると、まあいいかなんて思ってしまって。
「……居たいんだったら、別にいいよ」
と思わず言ってしまった。
……そりゃ、中学ん時ベタ惚れしてたやつが急に現れてこんなこと言われたら、仕方がないだろう。
綾波は俺の言葉を聞いて、安心したように
「そう……」
と微笑みながら言った。
それを見て俺は恥ずかしくなって綾波の方から身体ごと顔を背けた。
書くの早いなぁ
これって今即興で書いてんの?
おつおつ
続きが気になるぞ
>>20 ある程度書き溜めてた。
>>21 あざっす^^
すまん、書き溜めてんのここまでなんだ。
次の纏まりは今書いてるからちょっと時間かかる。
LROなんてバッシング受けまくると思ってたら受けなくて安心した。
綾波をシンジともカヲルともくっつけたくなかったから、「じゃあオリキャラで!」
とか勢いで書いたからオワリが見えん\(^o^)/
でも頑張って完結させるよ、気になってくれてる人いるみたいだし!うれしすうれしす。
>>22 書き溜めかぁ
俺も触発されて少し書いてみたものの、二時間ちょいPCの前に座って800文字しか書けなかったから凄いなと思ってさ(LROネタではないが)
まあ頑張ってくれよ
>>1 君の勇気ある行動ッ!
僕は敬意を表すッ!
そして君とレイさんの明るい未来へこれを持って行け!
LUCK (幸運)
&
PLUCK (勇気)
ルリヲじゃあないか
俺は中学の制服を着ながら、道を歩いていた。
見覚えがあるその道は、多分中学の時の通学路。
辺りは夕焼けの淡い赤に包まれ、カラスがカアカアと鳴いている。
学校から、あの、若くて明るい母さんが待つ家へ帰っている。
角を曲がると、思わず立ち止まってしまった。
綾波レイが、ボーと突っ立っている。夕焼け空を見上げながら。
そいつは顔を上へ向けたまま俺の方を見て、興味なさ気にまた視線を空へ戻した。
む、とする。失礼なヤツだ。
「……何見てんの? 空?」
そんな失礼なヤツに喋りかけたのは何故だろう。
綾波ははまた上を向いたまま視線をこちらへ向ける。
「うん」
「……楽しい?」
「……割と」
夕焼けの赤に縁取られた綾波の顔は、無表情だったけど、なんだか優しかった。
その顔が水面に映したようにぼやける。
そこで、ああ、夢かと気付いた。今度は正解っぽいな。
目の前にプレッシャーを感じ、す、と目蓋を開けると、そこには血のように真っ赤な何かがあった。
ひい、なんか動いてる!!
「うっぎゃあああああああああ!! 」
吃驚して悲鳴を上げながら勢い良く起き上がろうとするとゴツン、と何かにぶつかり頭をまた枕に叩き戻された。
「いてえ!!」
何だよまったく、と横を見ると、デコを押さえて悶絶する何かが居た。
何だこいつは……と怪訝に思っていると、そろそろ覚醒してきた頭が答えを導き出した。
あ、綾波か。そういや、何故かまっっっったく分からんが俺の部屋に居てたんだっけ。しかも十年前のままの姿で。
ぽむ、と手を叩き、今度こそ起き上がり悶絶している綾波に駆け寄る。
「ごめんごめん……大丈夫か?」
「……痛い」
綾波が顔を上げる。ちょっと泣きそう。赤くなっているデコをさすってやる。
「すまん」
「……別にいい」
綾波のデコをさすってやりながら窓を見ると、夢の中とは違う、突き抜けるような夏の青空が見える。
夢って昔の記憶も見るんだな〜と関心していると、さすっていた手を掴まれた。
「……もういい」
視線を綾波に戻すと、なんか恥ずかしがっていた。こいつこんなキャラだったっけ?
今何時だろう、と時計を見ると、二時。
それに気付くと急に腹が減っていることを自覚して、食欲が顔を覗かせる。
あー昼飯作ろ、と立ち上がりキッチンに向かう。
「どこにいくの」
「キッチン、飯作る。綾波いる?」
「……うん」
「はい、了解。あ、そこに畳んでる机出しといてー」
壁に立てかけている古臭くて小さい折りたたみ式の机を指差す。
「……了解」
さて、と。ガスの元栓を緩めコンロに火を付けて、洗った後そのまま置いてあったフライパンにぺぺーと適当に油を回す。
ぱっぱっぱ、と男らしく具材、調味料、全てを適当に目分量で突っ込み、ばばばばばばーと炒める。
ほいほいほいほいほい、と、はい、完成。うわー人に出すのに適当過ぎんだろこれ。性格出てるな。
味見をする。うわー、ぼちぼち。ぼちぼち過ぎる。
まあいいだろ、とフライパンから食器へ移し、スプーンを突っ込んで持っていく。
所要時間五分。
「ほい」
綾波が用意していた机の上にぽん、と置く。
「……ありがとう」
「お前って、喋る前に大抵三点リーダ付けるよな……」
「?」
「いや、なんでもない。ほれ、食えよ」
「……頂きます」
そう言って俺も頂きますを忘れずちゃんと言い、がつがつと漢チャーハンを貪る。
綾波の方を見ると、食いながらぺいぺいぺい、と適当に切ったソーセージを発掘して端っこに寄せていた。
なんという失礼さ。
「……ソーセージ、ダメなの?」
「お肉が食べられない」
「……そ、そうか。勿体無いからそれこっちよこせ」
相変わらず変なヤツだな、こいつ。
ぺいぺいぺいと綾波が発掘したソーセージを俺の器へ移す。
「ありがとう……」
「いいよ、さっきのデコぶつけたお返しな」
その後は無言で二人でチャーハンを貪った。いや、貪ってたのは俺だけか。
やたらとソーセージが多くてちょっとえずいた。
「ごちそうさん」
「ご馳走様でした」
「あ、タバコいい?」
「うん」
適当に物を放りまくっているスペースからタバコとライターとを取り出し、一服した。
ゆらゆらと煙が天井へ昇っていく。
「……それ、美味しい?」
「いや、別に」
「じゃあ何故吸っているの?」
「あー、子供の時ってなんか大人に憧れるだろ?で、そん時手出しちゃって。止められなくなって二十四の
今まで吸い続けちゃってるわけです」
「……そう」
「綾波は吸ったらダメだぞ」
「うん」
「いいこだな」
「うん」
壁と喋っているみたいだ……。
「俺寝てる間何してたの?」
「寝ていた」
「え? どこで?」
綾波が俺が寝ていた布団を指差す。
「げほっげほん!!」
タバコの煙が変な所に入って咽た。
こ、こいつ……。
「……人が寝てる所に勝手に入ってきたらダメです」
「了解」
あー、することが、ない。
タバコの吸殻で山盛りになった灰皿にフィルターまで殆ど吸いきったタバコを突っ込んで寝転がる。
三年、三年掛かった。あのトラウマをある程度乗り越えるのと、教育機関が復帰するまでに。
十八で高校入学。施設から真面目に三年間通って、二十で卒業。
そんで大学入って……独りぼっち。
高校でも少なかった友達が、遂にゼロに。
真冬の空気のように冷め切った日常を二年耐えて、で、ドロップアウト。中途退学。
今思えば、あの施設内で過ごした六年間が一番俺の人生で輝いていたと思う。最初の三年は何度もトラウマに
襲われて発狂することもあったが、少ないけれど友達も居た。俺が発狂した時のモノマネとかで笑いあったりもしてた。
俺の寂しい高校生活を話してやると大笑いしてくれる友達も居た。
バンドなんかもしていた。孤児's、とか笑えないバンド名だった。結構人気はあったようななかったような。五曲入りの
CDを自分らで一枚出して、そんで……リーダーのギターボーカルのヤツが引っ越して解散。
あいつら、今何してんのかな。
「あれ、弾いているの?」
綾波が今でも大事にしている、ギタースタンドに立てかけている俺のベースを指差した。
「あー……弾いてるよ」
俺のパートはベースだった。ギターはなんか糸がいっぱいだし、ドラムはなんか太鼓がいっぱい付いてるし、ベースが
一番簡単そうだったから。
最初はあいつらに話を合わせて、まあやってみるか、程度の気持ちだった。弦のことを糸と言うほどだ。だけど、これが嵌った。
俺の青春はこいつと共にあったといっても過言ではない。
練習は毎日五時間。延々とメトロノームの規則正しく鳴るリズムに、必死に音を合わせていた。延々とCDから好きなバンドが
生み出すリズムとメロディーに、必死に音を合わせていた。
バンド練習は週に一回。土曜日に十時から十二時、スタジオを借りて練習。備え付けのエアコンを暴れすぎてぶっ壊したこともあった。
……楽しかったな、あの頃は。
「聴く?」
今でも練習はサボっていない。毎日五時間は流石に出来ていないけれど。
綾波がこくり、と頷く。
折角だから、孤児'sの曲を弾いてやろうと、立ち上がりCDラックから孤児's初音源にして最終音源の「打倒ネルフ!」を取り出す。
「あ、これ俺が昔やってたバンドで出したCD」
打倒ネルフ!とデカデカと黒い背景に白い文字で書かれたパッケージを見せる。
「ネルフが嫌いなの?」
「いや、別に。馬鹿だったんだよ」
「そう……」
パッケージから、何もプリントされていないCDを出して、コンポに突っ込む。
一先ず停止ボタンを押して、ギタースタンドからベースを奪い取る。
ストラップを肩にかけて、チューナーにシールドを挿してチューニングして……。よし、完了。チューナーからシールドを
引き抜きアンプへ挿した。
音はドンシャリ。低音を上げて高音を上げて、中音は下げて。ボンボン、とプレシジョンベースの太い音が鳴る。
CDの再生ボタンを押す。しばらくして、打倒ネルフ!と、皆で叫んだ声がスピーカーから鳴った。
ドラムのオープンハイハットで鳴らしたカウントが鳴る。曲が始まる。馬鹿で、うるさい、パンクロック。俺達があの頃の全てを
詰め込んだパンクロック。
今とは違う。虹のような数々の色で彩られた日々。
世の中の不満を、うるさい音と共に吐き出していたあのライブハウス。発狂しながら、笑いあったあの保護施設。
皆でタバコを吸って、背伸びをして、この先に何があるんだろうと希望とタバコの煙を胸に詰め込んで。
泣いたり、笑ったり、憎んだり、許したり、恋をしたり、何かを失くしたり、何かを掴んだり。
俺はあの日常を愛していた。サードインパクトでボロボロになっても、笑い合うあの日常を愛していた。
傷だらけの心を、皆で埋めていたあの日常を。虹色に煌くあの日常を。
俺は泣いていた。完全に泣いていた。
過去に戻りたいと泣いていた。泣きながら弾いていた。
綾波は無言で俺の鳴らすベースの低音を聴いている。
綾波は無言で俺の流す涙を見ている。
俺は曲を弾き終わった後も、ずっと泣いていた。
二十四歳の大人になったはずの俺は、子供のように泣いていた。
乙!
いいねぇ〜
504 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/01/04(日) 10:11:37 ID:???
そもそも北野武を例に挙げてるけど、あの夏やソナチネはまだ見てないが、
キタノブルーは安いカメラやレンズで取れるようなもんなのか?
街中や風景を普通に撮ってればいつでも出せるようなもんなのか?
違うだろ。
その映像美を出すための機材だとか背景の小道具、エキストラの費用も必要じゃん。
あと、撮影にちょうど良い天気とか空模様も。
いつもそういう天気に恵まれるわけでもなし、天気待ちで俳優やスタッフを待たせてる間の
費用とか考えた事ある?
うぽっ (うp乙)
神待ち
盛り上がってほしいね
保守
スレ主やーい
ホシュ
ほす
俺、アヤナミストだけど、リアルでこの人嫁にしたら、アスカやミサトさん並みに大変だよ。
エヴァ主要キャラで嫁対象なら、ヒカリちゃんと思う。
か、女シンジ。
ほしゅ
>>44 だったらレイちゃんは俺がもらっといてやるから安心して一生独身でいろ
エヴァ板良スレ保守党
そうだ… その感情こそが…
ほしゅ
LRO人とアヤナミストの違いが分からない
アヤナミストはレイさん好きな人たち
LRO人はレイさんは俺の嫁な人ら(汗)
レイさんとともにあれ
実際綾波さんが嫁だったら死んでもいい
死んだら意味ないだろ(汗)
生き続けなければならぬ!(汗)
最近本当に綾波さんが好きなのが分からなくなってきた
情欲、憐憫、自己満足の錯覚かもしれない
もういいや
ひとつだけいえるならば、
レイさんとの出会いは君の人生にとって
マイナスではなかったはずだ(汗)
俺は確実にマイナスだった
大切な受験期間に知ってしまってね、それはもう…
他のことが考えられないくらいだったのよ
もうレイには責任とってもらうしかない
ttp://nagamochi.info/src/up14309.jpg 最近はこんなのみても嫌ではなくなりました
むしろ…こんなのも好むようになってしまいました
所詮俺が求めてたのは肉だけだったのかと、
ならば結局、誰でもよかったのではないかと今更気づいたわけです
道理でレイが見向きもしれくれないわけです
でも俺はまだレイにサヨナラしたくないようです
諦めが悪いんです
>>57 我も似たようなものだったが、
まぁ受験は人並みに受けた(汗)
レイさんのために奮い起こす気力もあるものだ(汗)
>>58 愛情と性欲はベツモノだ(汗)
>ならば結局〜
それに気付かぬものよりも数段、高みに居られると思いますぞ(汗)
60 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/06/06(土) 22:57:54 ID:4ANwIcmm
保守
もしリリス様が一妻多夫を望まれるならば
──いかがするか?
∞´ 私はオールオッケー