前スレ見ると過去スレミスったとあるけど、どこがミスってるのかわからない・・・
訂正おながいします
投下途中で容量オーバーになっちゃったよ、アホだ
明日改めて投下します・・・
そうか容量オーバーがあったのか。なんで余裕あんのに立ててんだ?と思ったw
1乙!
スレ立て&投下乙!
転校生テンポいいねぇ
前スレ784の続き
「さてと。嘘つきじゃないことを証明してもらいましょうか、シンジ?」
アスカは右手に持った缶をぐいっと僕に向かって突き出した。
ちょっとまずいよ、アスカ……と言いかけて僕は口をつぐんだ。ここで怖気づくような態度を取ったら馬鹿にされるだろう。
別にこんなことで馬鹿さにされても構わないけど……いや、やっぱり面白くない。
僕はアスカから缶を受け取ると、プルタブを引いて、一口飲んだ。予想以上に苦い。僕は顔をしかめるのを必死に我慢しなければならなかった。
大人は何でこんなものを嬉々として口にするのだろう?
「我慢してなくていいのよ。日本のじゃなくてドイツから持ってきたビールだからね。シンジ君には厳しいかな〜?」
アスカがにやにや笑う。なまじ顔が良いだけに見てると腹が立ってくる。
「何でもないさ」
僕は残りを一気に流し込んだ。
「おー。やるわね」
アスカがぱちぱちと拍手をする。
僕は手の甲で口元を拭った。
「アスカも、飲むんだろ?」
「あったりまえでしょ!」
アスカは言い放つと、一気に飲み干した。
「ぷはー! やっぱりビールはドイツにかぎるわね!」
僕は唖然として見るしかなかった。何という飲みっぷりだ。
「いつも飲んでるの? ひょっとして」
「当たり前じゃん」
アスカはつんと顎を反らせて、自慢げに言った。
「そんなに飲むと、お腹が出てビールっ腹になるよ」
「……ならないわよ、バカ」
続けて何か言おうとして口を開きかけると、突然、頭がくらくらしはじめた。
「あ、あれ?」
「あーれー? どうしたのかなー、シンジ君? 酔っぱらっちゃたかなー?」
「そんなわけ、ないよ……」
部屋が斜めに傾いだように見える。僕は倒れないように右手を床につかなければならなかった。
「やっぱり酔ってるじゃない」
「酔ってないよ」と、僕はムキになって言った。
「酔ってないなら酔わせてやる!」
アスカはそう叫んで、僕の頭を両手で挟んでカクテルでも作るようにぶんぶん振り回しはじめた。
「や、やめろよ!」
僕はアスカの手を掴むと振りほどいた。加減を調節できずに、力を込め過ぎてしまう。バランスを崩して、アスカだけでなく僕も一緒に倒れこんだ。
「わっ」
「きゃあっ!」
慌ててアスカを起こそうとしたけど、焦ったせいで――いや、やはり酔っているせいなのか、アスカの頭の脇に両手をついて、正面から向き合う形になってしまった。
「ご、ごめん、アス――」
すぐに謝ってどくつもりだった。アスカと視線が合うまでは本当にそうするつもりだったのだ。だけど、アスカの目を見た瞬間に、僕の謝罪の言葉は途切れてしまった。
そのまま僕とアスカは、黙りこくったまま、見つめ合った。
僕はアスカが何か皮肉を言うか、怒るか、怒鳴るかすると思っていた。一番可能性が高いのは、僕の顔を引っぱたくとか。
しかし何も言わずに僕の目を見つめたままだ。滅多に見ないくらい、真剣な顔をしていた。
髪の毛が一房、斜めになって顔にかかっている。紅い唇の隙間から、白い歯が少し見えていた。
時間が止まった。止まっていないのは僕の心臓だけで――いや、止まるどころか鼓動は速くなっている。
こ――。
これはまずくないだろうか。
早くどかなければ。
しかし、僕の思いとはうらはらに、どういうわけかアスカの顔が僕の顔に近づいてくる。
いや、違う。僕が自分の顔をアスカの顔に近づけているんだ。
何てことをしているんだ、僕は。まずい。非常にまずい。アスカに殺されてしまう。
……本当にまずいのだろうか? なぜアスカは何も言わず、身動きすらしないのだろうか?
一秒一秒がとんでもなく長く感じられた。
アスカが目を閉じた。
そのまま僕は……。
ノックの音がした。
僕たちは何かの日本代表になれるようなスピードで身体を起こして元の位置に戻った。
「あら、アスカちゃんも来てたの」
にこやかに微笑みながら母さんがドアを開けて入ってきた。まだ帰ってくる時間じゃないのに。
「な、ななな何? 母さん」
「こっ、ここここんにちわ。おばさん」
アスカは、そこに物凄く貴重なものがあって、ちょっとでも目を離すと盗まれてしまうというように自分の膝のあたりを見つめていた。
「今日はちょっとね……」
母さんはそこまで言いかけて、テーブルの上のビールの缶に気がついた。
僕も気がついた。
アスカも気がついた。
「あ」と、僕は言った。
「あ」と、アスカも言った。
「二人とも、そこに正座しなさい」
母さんは、にこやかな顔のまま言った。
14’.
「アスカはテスト、どうだった?」と、ヒカリが言った。今日は部活もないということで、ヒカリと一緒に帰るところ。
「良くはなかったわね。まぁ、赤点じゃなきゃどうでもいいんだけど」
私は答案用紙をカバンに乱暴に突っ込んだ。
「そっか、アスカは向こうで大学出てたんだよね。すごいなぁ」
「大学出て何をするかが問題なのよ。単に出ただけじゃ意味ないでしょ」
「えらいなぁ、アスカ。そんなこと考えてるんだ」
「まぁね……あっ!」
「何? どうしたの?」
校門のところに立っているのは……あの男、冬月校長だ。どうやら生徒に帰りの挨拶をしているらしい。
客観的に見れば感心なコトなのかも知れないけど、私にとっては災難だった。
「え……と、忘れ物しちゃった。先に行ってて。スタバで待っててね」
「うん、分かった」
私はヒカリに手を振ると、全速力で校舎の裏に向かった。そこには資材の仮置き場で、資材を足場にして壁を乗り越えられるのだ。
普通の人ならのたのたとよじ登るんだろうだけど、運動神経抜群の私は当然そんなみっともないマネはしない。
ちょっとジャンプして道に人がいないことを確認すると、壁のてっぺんに手をついて勢いをつけ、華麗に飛び越えて着地した。
「10点満点!」と、私は胸を張って宣言した。
「なかなかのお転婆娘ぶりだね、惣流君」
全身が凍りついた。私はゆっくりと振り返った。
校長が三メートルほど離れたところに立っていた。
路地に植えてある木が影になって、上半身が見えなかった。強烈に照りつける夏の日差しのせいで、その影が濃い。
私の背を流れる汗は、暑さのためだけではなかった。
――いつの間に!? 校門からここまで走ってきても間に合わない距離のはず。いや、それよりも、路上には誰もいないことを確認したばかりなのに。
「さっきは校門のところにいたのに……」
そう言ってすぐに後悔した。マズイ。私が校長を避けているのが分かってしまう。
「惣流君は、体調のほうは大丈夫かね。日本の暑さはまた外国とは違うと聞いているが」
校長は私の言葉が耳に届かなかったように訊ねた。
「問題ないです。何でそんなこと訊くんですか?」
「転校してきて間もない生徒を気遣うのは、校長としての当然の義務だろう」
なーーにが当然の義務よ。白々しい。あんたが怪しい男だってのはバレバレなんですからね。
「精神身体ともにいたって健康、元気百倍の絶好調です。他に何もなければこれで失礼します!」
「いや、待ちたまえ。今日は惣流君にプレゼントを渡そうと思ってね」
そう言うと、校長は一歩前に出た。木の影から抜け出して、無表情の顔が露になった。この暑さなのに、汗一つかいていない。
「プレゼント!?」
この男の言うことはいちいち意外すぎる。プレゼント、ですって?
「海外からの転入にもかかわらず、頑張っているご褒美だよ」
そんなのいりません、と言うヒマもなかった。
「大したものではないがね。映画の券だ」
そう言うと、冬月校長は映画の券を二枚、懐から取り出した。
「映画の券!?」
「なに、実は関係者からタダで貰ったのだ。いらないと断ったのだがね、余ってるらしい。押し付けられてしまったよ」
「……何で、二枚なんですか?」と、私は思わず訊いていた。一緒に行こうと言い出すのだろうか? いや、絶対そうに決まってる。このヘンタイめ。
しかし、校長の返事は予想と違った。
「友達と行ったらいい」
「友達と?」
「そう。碇君ではどうかな」
「シンジと!?」
私はさっきから校長のセリフを馬鹿みたいに繰り返してることに気がついた。この男があんまり奇妙なコトを言うからだ。
「何であいつなんかと……」
「おや。仲は良いのではないのかね」
「だっれが!」
「しかし、仲が良くなければ家に行って勉強などしないだろう」
私は言葉に詰まった。
「それは……あいつが……その……都合がいいからで……、ってちょっと待った! 何でそんなこと知ってるんですか!?」
「眼鏡の子が言っていたぞ。何という名前だったかな」
メガネ……? ……相田だ! あんの野郎、ペラペラと余計なコトを……。あとで見てなさいよ。
反論のために口を開きかけ、思い直した。これでは相手のペースのままだ。とにかく何でもいいから、こちらから攻撃しなくてはならない。
「本当は私とシンジを映画を見に行かせたいのが目的じゃないんですか?」
自分でも何を言ってるかよく分からないけど、とにかく相手のペースにさせてはダメ。
校長は答えずに、顔を逸らせて路地の植木を凝視した。
「君は、この学校に来てから何か妙だと思ったことはないかね?」
「先生が一番妙です」
校長は笑わなかったし、怒りもしなかった。石像のような無表情な顔で木を見つめていた。
「そうだ。私もそうだな。でも、それだけではないだろう?」
何を言ってるの、この男は。妙なことなんて……。
しかし、私は考えざるを得なかった。
加持先生を見たときになぜか泣いたこと。髪留めを触られて発作的に怒りが湧いてきたこと。渚カヲルもおかしなヤツだ。
確かにおかしなことが色々とあった。
「それで、映画が何か関係あるんですか?」
「あるかも知れないし、ないかも知れないな」
「あのー、本当にいい加減に……」
「受け取りたまえ」
私の言葉を無視して校長が差し出したチケットを、私は反射的に受け取っていた。
「考えさせられるタイプの、いい映画だよ」
そう言うと、私の手に映画の券を残したまま、校長は立ち去った。アスファルトから立ち上る蒸気で、後姿がゆらゆらと揺らめいて見えた。
私は手元の券に視線を移した。
映画のタイトルは"セカンド・インパクト"。
リアルタイム乙!
きたな!GJだぜ
続き期待街!!
やべー!!!
単なるLASじゃねー!
これはもう単なるEVA-SSとしても全く問題ないな!
何を言っているかは分からないが、何が言いたいかは分かる
陰謀の悪感
これは期待せざるを得ない
GJ
つか
>>1テンプレ忘れてない?
LASを投下しましょう。甘LAS、シリアスLAS、イタモノLASなどジャンルは問いません。
また、LARSやハーレム物の中で描かれるLASなどもOKですが主軸はLASで。他カプが主軸なら該当スレへ。
エロ分が多ければエロパロ板へ投下で、当板は全年齢対象です 。
原作にどれだけ直球な表現があったからといってもエロ分が多いとスレ削除を食らいます。
あなたがLASと思えば、それはLASなのです。
ってやつ
1と転校生と22乙
保守
保守
期待してるよ\(*⌒∇⌒*)/
たかが五日位で保守なんかいらねえだろ
いやいや
期待してるよとの応援×プレッシャーメッセだろ
お前はバカか
まあ保守はおかしいけどな。普通に、期待とでも書けばいいのに
まあ保守なんて書いても書かなくても良くね?
とゆーことでほす
街
職人さん待ち
保守
職人さん待ち
>>14 15.
僕が宿題をしているかたわらで、アスカは"グラン・ヴァカンス"という小説を読んでいる。辞書を引いたり、たまに僕に読み方を訊いたりしてくるから、
これも日本語の勉強の一環だと言えなくもないけど、第三者から見れば「ごろごろしている」という表現がぴったりだろう。
僕の家で読書する必要はあるのだろうか? まぁ、別に迷惑じゃないからいいんだけれど。
「ねぇ」
アスカは本を床に置き、テーブルにべったりと横顔をつけると、僕を見上げた。僕は心の中を読まれたように感じて、どきりとした。
また(あるいは「またまた」か、「またまたまた」か)嫌な予感がする。この前僕が母さんにこっぴどく叱られたのを見てたんだから、
おかしな事は提案しないだろうと思うものの、アスカのことだから何をするか分からない。
「何?」と、僕はおそるおそる言った。
「えーっと……」
しかしアスカはもじもじしているような感じで、なかなか用件を切り出さない。
……アスカらしくないな。僕は黙ってアスカが口を開くのを待っていた。こういう時に余計なことを言うと、余計な目に遭うというのがもう分かっている。
アスカは僕の反対の方向を向いて、そのまま、「ねぇ、明日ヒマ?」
「え……まぁ、予定は特にないけど」
僕の返事を聞くと、アスカはぱっと身体を起こして、「じゃ、映画見に行こ」と言った。
「映画……僕と?」
「バカ? あんたに言ってんだから、そうに決まってるじゃん。セカンドインパクトっていうの。ジャンルはパニック・アドベンチャーになるのかしら」
「へえ。アスカ、そういうの好きなんだ」
「そうよ。悪い?」
「いや、別に悪くはないけど……」
一般的に言って、女の子が好きな映画は恋愛モノだと思うけど、アスカがその手の映画を好んで見るとは思えない。……いや、そんなことないのかな。
「もうチケット買ってあるから」
アスカはそう言うと、映画の券を二枚取り出して、ひらひらと鯉のぼりのように泳がせてみせた。
僕は驚いて言った。「用意がいいね」
「そうよ。悪い?」
アスカはまた同じことを言った。目が光っている。あまりこの台詞が出るようだと機嫌が悪くなる予兆だ。いや、もうなっているかも知れない。
僕は慌てて「全然悪くないよ」と否定した。実際、悪くなんてないのだ。
「まぁ、その、この前、アレであんたに迷惑かけたことは否めない事実っていうか……。その代わりって感じ?」
「何だ。別に気にしなくていいのに」
この前のアレとはビールを飲んで母さんに怒られたことだ。もちろん僕がアスカに飲ませたことにしておいた。
母さんもまさかアスカが持ってきたとは思わなかったらしく、僕の言うことを素直に信じてくれた。
出かける時間を決めると、アスカは「じゃ、明日ね」と言って部屋を出て行った。
しばらくして一階に降りようと立ち上がったときに、アスカが本を忘れていったことに気がついた。
アスカの家に行こうかと迷ったけど、止めておく。あとでアスカに言っておけばいいか。
□
アスカは待ち合わせの時間――待ち合わせと言ってもアスカが僕の家の玄関を叩くだけ、だけど――に十五分しか遅れなかった。彼女の場合、これは時間通りと言っていい。
アスカの服装を見て、僕は首を傾げた。ワインレッドのワンピース。どこかで見たことがある。と言ってもアスカが着ていたところを見たということではない。この服自体を見たことがあるような……。
僕の視線に気がついたアスカが、ワンピースの端をつまんでお姫様のように持ち上げてみせる。
「どう?」
率直な感想を口にする。「うん。とても似合ってると思うよ」
「ふん。ま、あんたが選んだ服なんだからそのセリフは当たり前なんだけどね」
僕は、唇を「あ」の形にした。どこかで見た覚えがあるはずだ。一緒に買いに行って僕が選んだのだから。
アスカが僕の表情を見て、呆れた顔をした。
「あんた、もしかして気がつかなかったの? まさかそんなコトないわよね? いくらあんたみたいなニワトリ並みの記憶力の持ち主でも、自分が選んだ服ぐらい覚えてるわよね?」
「い、いや、その……」僕はおろおろとうろたえながら言い訳を探して、結局「ごめん……」と謝った。
アスカはため息をついて、「鈍すぎる……」と呟いた。
「ほ、ほら、時間だから、早く行かないと……」
もちろんそんなセリフではごまかすことは出来なかった。アスカは冷たい目で僕を見ている。何てことだ、最悪のスタートになってしまった。
繁華街に入ってちょっと歩いたところで、僕は立ち止まった。
「な、なによ」
アスカがつんのめった。
「あれ」と、僕は指差した。その必要もないのに声をひそめてしまう。
十五メートルほど先で、加持先生と葛城先生が腕を組んで、ウィンドウショッピングをしている。加持先生があまり芳しくない顔をしているところを見ると、何かねだられているのかも知れない。
突然、アスカが僕の腕に彼女の腕を絡ませてきた。アスカの胸が腕に当たってどぎまぎする。
「ちょっと、まずくない……かな」
「はぁ? 何でよ」
アスカが若干剣呑な調子で言う。
「いや、だって……その……」
このままだと見つかってしまう。しかし、まさかどこかに隠れようとも言えない。――とはいえ、道路を渡って反対側をいくとか、見つからずに済む方法はある。
「ほら、早く行こ」
アスカが僕の腕を引っ張るようにして進む。
僕はなるべくこっそりと歩いていったけど、もちろん、先生たちに気づかれてしまった。
「あら、シンちゃん」
「お、碇に惣流じゃないか。けしからんな。不純異性交遊か?」
「あんた、そのセリフ古すぎるわよ」葛城先生が呆れた顔で言った。
加持先生の明らかに助かったという表情と、葛城先生の獲物を仕留めそこなったという表情から判断すると、やはり加持先生は困難な立場にあったに違いない。
「不純異性交遊なんて、そんな……」
僕が弁解しようとすると、アスカが割り込んできた。
「先生たちのほうこそ、不純異性交遊なんじゃないですか?」
「はは、いいかい。大人の付き合いなんてものはみんな不純なんだよ。ま、俺たちは大人だからな。どういう付き合いをしたって構わないのさ」
「バカなこと言ってんじゃないわよ」葛城先生がため息をついた。「だいたい今日はあんたの採点を手伝ってあげた"報酬"を受け取るために来てるんですからね。交遊とは違います」
「言い方もいろいろあるもんだな」加持先生が呟いた。
「何ですって?」
「何でもないさ。ま、俺たちと違って碇はちゃんとしたデートみたいだな」
僕が口を開いと、またアスカに先を越された。
「えーっ、違いますよ〜! 映画のチケットをタダで貰って、ヒカリが用事があるっていうから仕方なくシンジを誘っただけなんですよ」
え……。そうなの? 僕は思わずアスカを見る。
加持先生が近寄ってきて僕の肩に腕をまわすと、耳に口を寄せて囁いた。
「まぁまぁ碇。女の子の気持ちを考えてやれ。おおっぴらにデートなんて言われると恥ずかしいのさ」
「いや、別に僕は……」
「それより君たちは中学生なんだから、最後までいっちゃダメだぞ」
「最後まで? どういうことですか?」
僕はきょとんとした。
先生は咳払いすると、とても口には出せないようなことを言った。
僕は驚きのあまり飛び上がりそうになった。実際に飛び上がったのもかも知れない。
「しっ! しししししませんよそんなこと!」
「顔が真っ赤だぞ。キスまでにしておけ。あとはもう何年かたってからな」
「中学生に何言ってるんですか! だいたい僕と彼女との関係はそんなんじゃなくて」
「まぁ、いいからいいから。この俺だって高校のときだからな」
「やめて下さいよ……。こんなこと話してるとアスカに知られたらタダじゃ済みませんよ」
「おっと、それはどういう意味かな?」
「半殺しにされるという意味ですよ! いや、半じゃなくて全かも……」
「ほー。そうかな。俺には君たち二人はなかなかいい感じにうつるがな」
「違いますよ。僕なんかと釣り合わないし……」
「男同士、何こそこそ喋ってるの? シンちゃんとアスカのお邪魔しちゃ悪いし、もう行きましょ」
葛城先生が手を腰に当てて言った。
「おお、そうか。それじゃあな」加持先生は人差し指と中指を揃えて振った。「もしものときはちゃんとつけるんだぞ! って、いてて! おい、葛城! 痛いだろう!」
「中学生相手にバカ言ってんじゃあないわよ! あんたはホントにもう……」
加持先生は、葛城先生に耳をつかまれ、引きずられるように去っていった。
僕は首をひねった。「ちゃんとつけるって、どういう意味だろ?」
アスカは咳払いをして、「知らなくていいの。あんたにはまだ早いから」
「何で赤くなってるの? アスカ」
「うるさいっ」
先生二人と別れたあと、映画館に入った。上映時間までもう間もない。
劇場は、二人分の席を見つけるのに多少苦労する程度の、つまりはそこそこの入りだった。公開から一週間以上経ってるからこんなものなのだろう。
西暦2000年(なぜ2000年という微妙に過去のことなんだろう?)、大質量の隕石が南極に落下、氷が溶けて海面が上昇、地軸が変化するなど、地球規模での大惨事になる。
その混乱の中、離ればなれになった主人公とヒロインは再会できるのか、そして生き残れるのか……というのがストーリーらしい。
いまどきの映画にもれず、CGをたっぷり使った大迫力の特撮場面に圧倒される。
何よりも主人公が十四歳の少年少女というのが感情移入できるところだった。僕たちと同じ歳ということもあり、何となく自分と重ね合わせてしまう。
おまけに性格のほうも大人しい少年と勝ち気な少女という設定だった。
アスカはともかく、僕は映画の主人公みたいに格好よくはないけど……。
ちらりと横を見ると、アスカはあまり真剣に見ていないように思えた。ポップコーンをばりばりと噛み砕くように食べている。
まったく、自分から誘ったんじゃないか。僕は少し呆れた。
……場面は主人公の両親との別れのシーンになっている。自分たちを犠牲にして、主人公を生かそうというのだ。
父さんと母さんも、同じ状況になったら同じことをするだろう、と僕は思った。そう思うと仮想の世界の事とは思えなくなり、これは映画だと自分に言い聞かせる。
そんなことを考えてるうちに場面はクライマックスに差し掛かっていた。
研究所に閉じ込められたヒロインを主人公が助けに行く。研究所の崩壊まで時間がない。
ありがちとはいえ、手に汗握るシーンだ。
と、ここでまたしても僕は考えざるを得ない。僕もこの映画の主人公と同じことが出来るだろうか。つまり、ヒロインを守ることが。
もちろんこんな映画みたいな派手な出来事が僕の人生に起きるわけがないけど、もし僕だったら……守れそうにないな。いや、そんなこと言っちゃダメだ。我ながら情けない。
そうだ。今度こそ僕はアスカを守るんだ、と僕は決意した。
――スクリーンには感覚が麻痺するような爆発炎上シーンが写っている。間一髪のところで主人公はヒロインを助けることができた。
……僕はふっと我に帰る。
今の思考で何かおかしいところがあった気がする。どこだろう? 一瞬疑問が湧いたものの、生まれたと同じ速度でその疑問は消え去っていった。
エンディング間近で、そんなことを考えている暇はなかった。
映画は、脱出用のポッドで無事に脱出できた二人が、どこかの島に流れ着いて終わりだった。
夕日のせいで、海がまるで血のように真っ赤に染まって不気味だ。砂浜の白さで赤が不自然なほど目立っている。
ハッピーエンド……なのだろうか? 微妙な感じがする。助かったからいいんだろうけど……。
続きがあるような感じで、この後の二人の運命が気になる。
それ以上に、何か……。何か、見覚えがあるような気がしてならない。
どこで見たんだろう?
見覚えがある? いや――。
「シンジ!」
僕は思わず声を出しそうになったくらい、驚いてしまった。
「ちょっと、何驚いてんの? 終わったわよ」
アスカは僕が驚いたことに驚いた様子で、「もう行くわよ」と言った。周囲の客のほとんどが立ち上がって帰る途中だった。
そうだね、と僕はぼんやりと答えた。
おっつ!
乙
乙華麗
おっ2
おおおおおおおおおお
おもしれー
ど・ど・ど
どうなることやら・・・
続きめっちゃきになるぅ
街
町
面白い
おっつ〜
アスカ様の誕生日だってのに投下のひとつもないんかーい(ノД`)
つーことで俺が即興の拙作を投下!
朝遅く起きて、朝シャン、朝食、ゴミ出しを済ませてしまうと、アスカがするべ
きことは何も無くなった。部屋着のままでソファに座り、まんじりとしている。
考えてみれば、アスカはもういい歳の筈なのだが、彼女は定職にも就いていない。
活動的な少女時代が反発して、十八歳から正味七年間のあいだ、ずっとニート生
活を続けている。
もし暇が売れたら大富豪になれるのではないかと思うほど、ただ有り余る暇……。
読書や映画、音楽観賞などの娯楽にもとっくの昔に飽いてしまったし、今から定
職に就くのも億劫で仕方がない。たしかに頭の聡明さは、アスカ自身よく解って
いる。七年の空白があるとはいえ、その経歴にも目を見張るものがあるし、美貌
と笑顔、ハキハキとしたもの言いは、面接でも好印象であろう。
ただやりたいことがない……となれば、今のアスカにとって仕事に就くというこ
とは、まったく意味がないのと同じだ。資産は一生遊んで暮らせるほどあるし、
国連からの年金も、月に遣いきれないほど手元に入ってくる。第一、目的もない
人間が事を成せるほど世の中は簡単ではない。
ソファに座って二ヶ月前のファッション雑誌をパラパラと当てもなく捲っていた
アスカは、ふと何かを思い出したかのように立ち上がるとトイレに用足しに足を
向けた。
スッキリして戻ってくると、廊下に貼ってある一年のカレンダーが眼についた。
ふと今日は何日だったかとアスカは気になり、日付まで忘れるほど緩みきってい
るのかとなかば自分に呆れながら携帯で何日かを確かめてみる。
寝室で携帯を見るアスカ。たいしておかしいところはなかったが、急に口が開い
たかと思うと眉間に手をやり、かぶりを振ってうなだれた。
「あたし、バカだ……。」
思えば、これが彼女の初めて自らが愚かだと口にした初めてかも知れない。
日付は確かに示していた――十二月四日――今日がアスカの誕生日であると。
呆然と虚脱したアスカは、ふらふらとリビングに舞い戻ったかと思えば、豪奢な
ソファにしどけなく寝そべった。
ふかふかとしたこのソファはアスカのこだわりの具現のような代物で、わざわざ
母国ドイツの一流メーカーから素材、スプリング、寸法まで吟味に吟味を重ねて
オーダーメイドした一級品なのだ。そのソファの上のアスカは、感性を奮い起た
せるような一枚の絵画にも見える。
そのアスカはテーブルのリモコンを手にして、魂が抜けたように、テレビのチャ
ンネルを回していく。昼前のどうでもいいワイドショー、国営放送の子ども向け
番組、前世紀の時代劇の再放送……。
『余の顔を見忘れ……。』
時代劇の主役が決め台詞を言ったときだった。インターフォンが鳴り、アスカは
頭をもたげた。しばらくそのまま考えていたが、出るのも面倒だ。そう考えてソ
ファに横になる。ちょうど時代劇は殺陣のシーンだ。主役の正体が解って斬りか
かるってまずいんじゃない? と思いながら、アスカはインターフォンを無視す
る。
ピンポン! ピンポン!
しかし諦めずに連打されるインターフォン。その回数が十回くらいに達したあと
、アスカは流石に耐えかねて悪態を吐きながらついにソファから立ち上がった。
「なんなのよ!」
勧誘だったらどうしてやろう! と考えを巡らせながら、アスカは玄関へ向かう。
「うるさいわねェ!」
そう言ってドアを開けたアスカの目の前に立っていたのは、買い物の紙袋を二つ、
山のように抱えている碇シンジだった。
「あ……久しぶり。」とシンジは言った。口許を歪めさせてクシャリと微笑んだ。
「……ッ!!」
アスカはその姿を見て、とっさに口を効く事ができなかった。調理師免許を取り、
第二東京でコックをしている筈のシンジが、なぜ箱根くんだりの田舎にいるのだ
ろう?
「ごめん……ちょっと失礼するね?」と言って、シンジはアスカの横をすり抜け
て部屋の中へズンズンと足を進める。と、その後ろに見える華奢な影。それに気
付くアスカは、指を指して声を張り上げた。
「ちょっと! なんでレイまでェ!」
レイはいつもと変わらぬ無表情を浮かべて白いワンピースを身に纏い、両手に大
きく膨らんだスーパーのビニル袋を提げていた。
「わたしはあなたの親友……。」
そう呟くと、レイのポーカーフェイスの頬がポッと朱に染まった。
「親友の誕生日は祝ってあげなきゃいけない……それが絆だから……。」
そうか、この二人はあたしの誕生日を祝に来てくれたんだ。とアスカは思い至っ
た。
「そ、それにしたって……。」嬉しさに頬の熱くなるのを感じる。「急に来るな
んて……。」
「わからない。わたし三人目だから。」
「誤魔化すなッ!」
アスカは足を踏み鳴らした。
「ダメ……アイスが溶けちゃう……。アイスは冷たくて甘いもの……。」
トタトタ。まさにそんな擬音がぴったりな歩き方で部屋の奥へ進むレイ。ちょっ
とぉ、と追い縋るアスカの眼に入ったのは、アスカの部屋の台所でパーティの準
備を始めているシンジだった。
「あ、ごめんね、ちょっと借りてるよ。」
「い、いくら昔同居してたからって勝手にッ!」
抗議するアスカだったが、細くひんやりとしたなにかが手に絡み付く。
「ダメ……。」
レイがアスカの手を絡み取りながら言った。
「お酒、それはとても美味しいの。パーティの邪魔はさせないわ……。」
絶対アルコール目当てだわ、コイツ!
だが抵抗も虚しく、結局アスカは部屋から連れ出されてしまう。
「頑張るからね、アスカぁ!」
台所からシンジの声が聞こえ、アスカは諦めた。まあいいか……。
宴もたけなわ……。あのあと三時ごろに飾り付けや料理が終わり、レイがシンジ
の選んだ服――もちろんブランド店で真っ赤になりながら――をアスカに着せ、
四時ごろからお客が来訪。洞木、葛城、鈴原に相田、ネルフの尉官三人組、など
など。広くも狭くもないアスカの部屋に集まったお祝い客。同窓会も兼ねた――
実は八十パーセントくらい同窓会である――サプライズパーティだ!
アスカはソファに座らされ、他のみんなは六時から入ったお酒とツマミをたらふ
く食べて九時ごろにはすっかり出来上がり。
「だいたいぃ〜! なんであ〜んたは作戦部に来てくんないのよ〜!」
「ちょっとミサトぉ!」
三十路を越えていい歳になった葛城がだらぁとアスカにしだれかかって愚痴を溢
す溢す。
「だいたいその歳でニートなんてさぁ〜! わたしだって同じ歳の頃はもっとし
っかりしてたってのにぃ! ちょっちどころじゃなくかな〜りヤヴァいわよぉ、
このままじゃ寂しい老後がぁ〜!」
「余計な御世話よッ!」
アスカが葛城を押し返すと、彼女はあぁ〜んと言いながら隣の日向に標的を変え
る。
「わたしが好きだなんて変わり者よねぇ〜。」
「え!? 知ってたんですか!?」
一息吐いたアスカに、シンジが焼ハイのグラスを差し出した。
「焼ハイで良かった?」
「ああ、シンジ。できれば今度からビールで。」
ふふっとシンジは微笑んだ。
「いいよ。お姫様。」
「ぶー、シンジのクセにナマ言ってんじゃないわよぉ!」
よく見てみると、アスカの頬も赤い。
ホロ酔い気分だ。それに、シンジの頬の赤い。料理中に、少しアルコールを口に
したのだ。職場とは違い、気楽に料理をしていた。
ひさしぶりに杯を交しあう二人。
時間は十二時を回っている。
リビングはビールの空き缶や空き壜、わずかな食べ残しの料理や皿が雑然と残さ
れ、アスカとシンジだけが寄り添うようにソファでくったりとしている。
みんなはもう帰っている。酔い潰れたレイはマヤが肩を貸して部屋を辞して、他のみんなも続々と帰宅。シ
ンジは片付けのために――といっても葛城とレイの思い遣りでもあったが――残
っている。
「シンジ……。」
淡い恋心。成長したシンジ。彼が今目の前にいる。長いようで短い間、一緒に戦
い、ときには憎みあった。そして裏返しの愛情が、少し大人になったアスカの心
に住み着いている。
最初はこの歳で誕生日パーティなんて……とも思った。しかしかつての仲間たち。
アスカは、ソファの反対側で肘掛けにもたれたシンジに、四んばいになって近付
いた。
「……ぅん……アス……カ?」
今、ここには誰もいない。アスカとシンジだけが、酔い潰れ、自分の思いに忠実
になっている。
ギュッとアスカはシンジに抱きついた。チュッと首筋にキスをする。そして……
二人は……。
八ヶ月。長いようで短い日々。アスカは部屋のリビングでソファに座っていた。
微かな本の捲られる音。
アスカのお腹は大きく膨らんでいた。そこには小さく弱々しい命が宿っていた。
ドアが開くエアの音。
ただいま。二百三十回目の言葉が、アスカの心に暖かい温もりを拡げる。
彼女は、優しく微笑んで遠慮がちにお腹を触るシンジを見て、自分の生きる意味
を見い出した。エヴァなんかと比べ物にならない力を持つ、ひとつの命……。
終わり
63 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/05(金) 00:01:43 ID:DrfrkAFk
めっさ感動した!!
キモっ…
妊娠オチとか何処の恋空だよwww
お前まともな恋愛した事ないだろ?
もしかしてその小説のシンジがお前かw
せいぜい妄想の中で愛しいアスカたんが産んだ子供を可愛がって下さいね
ちょっとオチが飛んだけど、ほのぼのしてみんな仲良くて良かったよ
GJ
ここはLASスレなのでLAOの職人さんは巣にお帰り下さい。
>>66 アタシに還りなさい(・∀・)
中出ししてもいいわよ(・∀・)
冷たいね…ミサトさん。
↓以下ミサト×シンジのLOVE^2小説投下スレ
70 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/12/10(水) 08:30:43 ID:blmiC0cW
保守しましょう
fossil&街
>>42の続き
□
僕は映画館を出たあともぼーっとしていた。映画の主人公とヒロインのその後が気になって仕方がなかった。
もちろん映画のことなんだから、その後も何もないのは分かってる。だけど……。
「……ジ!」
あれからあの二人はどうなったのだろうか。
幸せに、なれただろうか。
なって欲しい。僕は痛切に思った。あの二人には、絶対に幸せになって欲しい。
だって、そうじゃなきゃ……
「シ・ン・ジ!」
「わっ」僕は驚きのあまり、飛び上がりそうになった。「大きい声出さないでよ、アスカ」
「大きい声出さないで、じゃないわよ」アスカは呆れたような顔で、「ずいぶんぼーっとしてたけど?」
「ご、ごめん……」
「ったく。この私とデート中にぼけっとしてるなんて、犯罪と同じよ?」
「デート……」
アスカが顔を赤らめた。「他人から見たら、デートに見えるってこと。実際は違うんだからね」
アスカもこれをデートだと思ってくれてるのかな。アスカの考えてることはよく分からない。
「あのさ、ボウリングしない?」
アスカが取り繕うように、建物を指差した。複合娯楽施設で、ゲームセンターやビリヤード場、カラオケルームなどが入っているビルだ。
いいよ、と僕は答えた。
「スットライーク!」
アスカの元気で伸びやかな声が場内に響く。これで5連続ストライクだ。
パカンパカンとストライクを取りまくり、周囲の目も集めまくっている。アスカの運動神経がここまでいいとは……。
勝負しようか?なんて言わなくて良かった。相手になるどころの話じゃない。
最終的に、僕のスコア110に対し、彼女は267。
しかしアスカはスコアに納得いかず、もう2ゲームやり、292を出してようやく満足したようだった。
290超えたスコアなんて初めて見た。
「お腹空いた」と、アスカが眉をヘの字に曲げて言った。
僕は時計を見た。6時を回っている。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか?」
「……あんたバカ? こういうときは外で食事するに決まってるでしょ」と、腰に手をあてて呆れたようにアスカが言った。
「そ、そっか。ごめん」
僕は頭をかいた。トウジやケンスケと遊んでるのと違って、勝手が分からなくて困ってしまう。
「さ、早く行きましょ」
アスカが僕の背中をばちんと叩いた。
ということで、ファミリーレストランに入ることにした。
アスカにはもっと高級な店がふさわしいんだろうけど、中学生にはファミレスしか選択肢がない。というか、僕が思いつかない。
アスカは別に文句も無さそうなので、僕はほっとした。
店内はそれなりに混んでいたものの、座れない程ではない。
僕はハンバーグ定食を、アスカは野菜サラダとトマトのラザニアを注文した。
「またハンバーグ定食? ハンバーグ頼む男って、子供っぽいのが多いらしいわよ」
アスカがにやにや笑って言う。
僕はむっとした。「そんなことないよ」
「あるわよ。あんたがそのいい証拠よ」
「ないよ! 全国のハンバーグファンに失礼だよ」
「全国のハンバーグファンって……。ほとんど子供じゃん」
「大人だってファンは多いよ!」
と、馬鹿なやり取りをしているうちに食事がきた。話題は自然に映画の話に変わっていった。
「映画、どう思った?」
「うん。面白かったよ。よくあるタイプのパニックものかも知れないけど。南極の氷河が溶けて崩壊するところなんか、迫力あったし」
「何かヘンなところ、なかった?」
「変なところ?」
僕はハンバーグにナイフを入れながら、むしろ質問が変だなと思った。普通はそんなこと訊かないような気がする。
「そう言えば、何で2000年なんだろうね。今年は2015年なんだから、そのあたりの年でいいのに」
「そうねぇ。続編があるんじゃないの?」
「続編?」
「サードインパクトとか」
「えー、何か安直だなあ」
「頭に浮かんだだけよ。本気で考えたワケじゃないんだから」
アスカは若干ムキになって言った。
「そう言えば、最後だけど……。あれから二人はどうなったのかな……。幸せになれるといいね」
アスカは手を止めて、真面目な顔で言った。「そうね。私もそう思う」
「まぁ、映画だしね。そんなこと考えてもしょうがないけど。……それと、あのラスト、どっかで見たことあるような気がするんだ」
「それはあれじゃない? ドーン・オブ・ザ・デッドじゃない? 最後は船で逃げるのよ」
「逃げる?」
「そ。ゾンビ映画だから」
「ゾ、ゾンビ……。でもハッピーエンドなんだよね?」
「ゾンビに食われておしまいって感じ」
僕は無言で食べかけのハンバーグを見下ろした。
「まぁ、ショーン・オブ・ザ・デッドのほうが面白いけどね」
「それは何映画なの?」
「ゾンビものに決まってるでしょ。会話の流れを考えなさいよ」
「何でまたゾンビなんだよ! ゾンビ映画なんて嫌だよ!」
「何よ、男のくせに! この怖がり!」
「そういう問題じゃないよ! 何でゾンビ映画の話になってるんだよ!」
「何の話だっけ? ラストが後味の悪い映画の話だっけ?」
「違うよ。え、と……何だっけ? 忘れちゃったじゃないか」
アスカはそっぽを向いた。「忘れるようなあんたの記憶力が悪いのよ」
それから何かを思い出したような顔をした。「あ、デザート頼まなきゃ! ったく、あんたのせいで忘れるところだったじゃないの」
外へ出ると、まだ熱気が残っていた。
アスカが手で顔をあおぐ。
「あっついわね〜。もう夏本番って感じ。日本の夏は蒸し暑くてイヤ!」
そう。来週から夏休みがはじまるんだ。楽しい夏休みになればいいな、と僕は思った。
この時の僕には考えもつかなかった。
今年が、僕の――いや、僕たちの最後の夏休みになるなんてことは。
15’.
校長から映画のチケットを貰ったために、考え込むハメになった。
やっぱりヒカリと行こうか。校長の言うことなんか聞く義務はないし、そのつもりもない。
だけど……よくよく考えると、そう、シンジに家庭教師の礼を言ってなかった。いや、ま、別に礼なんか言う必要はないけど、
礼儀知らず、恩知らずと思われるのもシャクに障る。
「何考えてるの、アスカ。さっきから難しい顔して」
ヒカリがストローから口を離して言った。
「うーん……。ちょっとね」
よし、決めた。なんだか校長の意図にまんまとハマってる気がするものの、シンジを誘って映画を見に行くことにしよう。
私はアイスコーヒーを一息に飲み干した。
今日はこれからヒカリと一緒に遊びに行く予定。ジャージの仲の相談でものってあげようか。あれのどこがいいのか、私にはまったく分からないけど……。
□
派手な炎がスクリーンに踊っている。
確かによく出来ている。実写と見紛うようなCG合成の映像、全身に響く効果音。脚本もありがちだけど、基本はおさえてる感じで無理がない。
とはいうものの、よくあるタイプの自然災害パニックもので、校長が言ったような「考えさせれれるタイプ」の映画じゃない。
探り探り見ているせいか、おかしなところを発見した。
隕石の落下が災害の原因と言いながら、その場面がない。確かに映画の中でニュース番組のアナウンサーはその旨を言っているし、規定事実のようだ。
しかし、そのシーン自体がない。
これはおかしい。今の技術なら――いや、今じゃなくて、ひと昔でも、その程度は楽々と作れるはず。それなのに何でないのだろう? いい見せ場になるのに。
論理的に導かれる答えは一つ。
それは、隕石の落下というのは、ウソだから。
さすがに自分の思考に苦笑する。バカげている。ウソも何も、これはただの映画。伏線ではないみたいだから、おそらくは予算の関係なのだろう。
映画はクライマックスに差し掛かっていた。
ハリウッド映画にお馴染みの大爆発。ホント、アメリカ人はこれが好きね……。最後は爆発でしめくくるというルールでもあるのかしら。
そして、主人公男女は無事に脱出し、島に流れ着いてやや唐突にエンド。
おかしい、と私はまた思った。
これで終わりのワケがない。続きがあるはず。
スタッフロールが終わり、明かりがついて、シンジに話しかけられたときも、私は続きがあるはずと思いこんでいた。
「アスカ?」
はっと顔を上げた。シンジが困ったような顔で私を覗き込んでいる。
私は物思いにふけるときのクセで親指を噛んでいた。
「ずいぶん考え事してたね」
私はとっさに言い返そうとして、考え直した。
「まぁ、ね」
――考えさせられる映画だよ。
校長の言葉が脳裏に蘇った。それは事実だった。普通とは違う意味でだけど。
映画を見た後、ファミレスでご飯を食べることになった。
シンジはハンバーグ定食を、私は野菜サラダとシーフードのドリアを注文する。
ハンバーグを食べるところを見てると、どこか子供っぽい。ま、もともと子供っぽいけど。
「何?」と、シンジが私の視線を感じて言った。
私が、ハンバーグを食べる男は子供っぽいという意味のことを言うと、シンジはムキになって反論してきた。そうやってムキになって反論するのが子供っぽい証拠よ、と私は言った。
シンジが何か言いかけて、笑い出した。私もおかしくなって笑う。
悪くない気分だった。
映画の話になり、私はシンジに隕石のシーンがなかったことに気がついたか訊いた。
「ああ、そういえばそうだね。何でだろう……。そのシーンをつくる予算がなかったからかな?」
シンジが首を傾げる。そのしぐさに反応したように、私の口から言葉が勝手に飛び出していた。
「ま、隕石が落下したなんて政府のウソだから、ってのが理由なんだけどね」
私は目を丸くして口を押さえていた。
シンジは呆気に取られた顔をして、「あれ? そんな設定、映画にあったっけ?」と言った。
「いや、その……。そうなんじゃないかな、って思っただけよ」
私はドリアをつついた。何でこんなことを言ったんだろう。口が勝手に動いて喋ったみたい。
「それよりさ」シンジはプレートを凝視して、呟くように言った。「あの二人、幸せになれたよね」
「え?」私は意表をつかれた。「うん。」
「そうだよ……。絶対幸せになったよね。そうじゃなきゃおかしいよ」
「シンジ……。」
私はシンジの勢いに驚いた。うっすらと涙まで浮かべている。何でそんなに感情移入しているのだろう? たかが映画のことなのに。
たかが映画。
――たかが、映画?
そのとき私は悟った。
これは単なる映画じゃない。何か私に関係のあることなのだ。
一連のおかしな出来事がいったい何なのか、絶対突き止めてやる。
決意すると、すっきりする。
「どうしたの、アスカ。何か良いことでもあった?」
シンジが嬉しそうに微笑んだ。
「これから良いことになるのよ。ってか、何であんたが嬉しそうなのよ」
「良いことがあったんなら、良かったなと思って」
「は……」
ヘンなヤツ。私はシンジの顔を見たくなくて、ちょっとの間、うつむいてペーパーナプキンを指先でいじくっていた。
「ん、そうだ。あんたにも協力してもらうかも」
「え、何? 何のこと?」
「まだ秘密!」と、私は言った。
外に出ると、蒸し暑い空気に包まれた。
といってもそれほど汗はかかないし、不快な感じもしない。ちょっと不思議な気候だ。ま、不愉快じゃなければそれでいいんだけど。
「そろそろ帰ろうか。暗くなったし」と、シンジが言った。
そうね、と私は答えた。
私たちは薄闇の中を歩きはじめる。
乙!待ってたよ!!
>今年が、僕の――いや、僕たちの最後の夏休みになるなんてことは。
おいおいおいおいおい!
おとなのハンバーグファンに謝れ!wwww
GJ!でした (*´∀`)
乙だが、作者がボウリングをよく知らないことが分かったw
’無しと’付きでアスカが食べてるメニューが違うってことは
単純にシンジサイドとアスカサイドではないってことなのかな?
ktkrwktkわひゃ〜
じーじぇい!
乙です!
乙!!
wktkしてます
88 :
いぬかみさま:2008/12/30(火) 21:05:32 ID:???
ほほぉ 好評価だな
だが、しょせん貴様なんぞもりたけ以下だ
ウィ
アスカ様が好きなのは皆一緒です!
わざわざ荒らさないでください!
90 :
まさみかぬい:2008/12/30(火) 22:21:57 ID:???
ハッ!そうか……すまん。アスカを愛する気持ちは……みな同じなのだな……。
とんだ茶番だなw
これ見るとLAS=LAOなのがもろわかりだな( ´,_ゝ`)プッ
いぬって糞コテ知ってる?
確証バイアスって知ってる?
呼んだか?
お前だったか…
テス
保守><
(^з^)-☆ほChu!!
保守(≧∀≦*)
ほ
保守
102 :
凉宮ハルヒ@みやむー:2009/02/01(日) 05:00:20 ID:M9Dgz/sP
ultra special保守AGE!
103 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/01(日) 05:04:25 ID:M9Dgz/sP
今週中に投下するんで待ってて
待つのは馴れた
劇場版で待たされ、虹で待たされ
wktk
>>79 16.
夏休みに入り、僕は中学生が夏休みにしてるようなことをしている。つまり、プールに行ったり、本を読んだり、宿題をしたり、ゲームをしたり、
トウジやケンスケとそこら辺をぶらぶらしたり……といったようなことだ。
去年と違うのは、アスカがいることだった。彼女の存在が、今年の夏休みを今までと違うものにしている。楽しくて、ちょっぴり騒々しい夏に。
……という感じで過ごしていた八月の上旬。
僕は重大な決意を秘めてアスカにあることを話そうとしていた。
第3新東京市の夏の最大の行事、花火大会にアスカを誘おうと思う。
振り返ってみれば、アスカに誘われてばっかりなのだ。男としてこれはどうなのかと思う。男として……なんて言えるガラじゃないのは分かってるけど、それでもやっぱり内心忸怩たる思いがある。
今、アスカは僕の部屋でアイスを食べ、寝そべりながら漫画を読んでいる。
鼻歌を歌って、機嫌は良さそうだ。もっともアスカの機嫌は見た目と一致するとは限らないんだけど。
断られたらどうしよう。
いや……そんなことを考えちゃダメだ。
やっぱり明日にしようか。時間はまだあるんだし。
ダメだダメだ。もし断られたって大したことはないさ。
というより、断られることを前提にしよう。
僕は意を決してアスカに話かける。
「アスカ、その……」
「何よ」
アスカが顔を上げて僕を見る。気のせいか、突然機嫌が悪くなったようにも見える。
「その……来週、花火大会があるんだけど……良かったら一緒に見に行かない? ……なんて。いや、嫌だったらいいんだけど」
「いいわよ」
一瞬の間も置かず、アスカは即答した。
「そ、そう」
背筋を汗が一滴流れるのを感じた。良かった。安堵のため息をつかないように努力する。
「いいっていうか、あんたも誘うつもりだったの」
「え……?」
あんたも?
「ヒカリに誘われてるのよ。ちょうどいいわ、一緒に行きましょ」
「え……」
「ジャージとかメガネも一緒だって」
「……」
「どうしたの?」
アスカが振り返って僕の顔を見た。
僕は、何でもないよ、と答えた。
よく考えれば去年、トウジたちと一緒に行ったのだから、今年もそうしておかしいことはない。僕が一人合点したというか舞い上がったというか……。
ふと違和感を感じる。
去年、一緒に行った――。
あれ? 本当に一緒に行ったのかな。去年のことが全然思い出せない。
まさか、そんな。何でだろう? ちょっとした記憶喪失みたいな感じで、焦ってしまう。
アスカが不思議そうな顔をする。
「何やってんの? そう、あのナルシストも来るってさ」
「ナル……カヲル君?」
そういえば、カヲル君と結構話すようになった。同じ楽団だし、話す機会も多いのだ。
出会ったときは変なことばかり言って、おかしなヤツだと思ったけど――まぁ、今でもちょっとおかしなヤツだとは思うけど――少しずつ話すようになると、気が合うことが分かった。
落ち着いた雰囲気があって、一緒にいると自分も落ち着くような感じがある。
まぁ……いいか。きっとみんなで見ても楽しいに決まってる。残念な気持ちもあるけど……。
去年のことはすぐに思い出せるだろう。きっと、緊張して忘れただけだ。
□
一週間後――。
僕はアスカの家の玄関のチャイムを鳴らしていた。今日が花火大会の日なのだ。
インターフォンから「すぐ行くから待ってて」と叫ぶアスカの声が聞こえてくる。アスカのすぐ……は十五分くらいかな、と覚悟した途端、ドアが開いて浴衣姿のアスカが飛び出してきた。
「本当にすぐ、だったね」
僕は少し感心して言った。
「はぁ? そう言ったでしょ」と、アスカがふんと鼻を鳴らして答える。
「それより、どう?」
アスカは自慢げに言うとくるりと回転してみせた。白の浴衣に黄色の帯。浴衣に描かれたアヤメが鮮やかだ。うなじは浴衣とはまた違った白さを誇っている。
僕は言葉に詰まった。似合ってるよ、素敵だよ、とかでは平凡過ぎる。かと言って何かいい褒め言葉が出てくるわけでもなく……。
考えているうちにアスカが腰に手をあてて、呆れたように、
「っとに愚図ね、あんたは。こういうときは似合ってるよとでも言っときゃいいのよ」
「……ごめん」
と、なかなかのスタートをきったのだった。
僕とアスカは集合場所のバス停向かって歩き出した。無料のシャトルバスに乗り、芦ノ湖北岸にある自然公園まで行くのだ。
花火だけじゃなく、ライブや大道芸といった演し物あるし、屋台もたくさん出てる。
バス停に着くと、バスに乗る人たちが数十人ほど集まっていた。
「アスカ、こっちこっち!」
声のするほうを向くと、委員長が手を振っている。すでにみんなそろっていた。
「ごめーん、待った?」と、アスカがからからと下駄の音を響かせながら委員長に駆け寄る。
委員長はにっこり笑った。委員長も浴衣で、彼女らしい清楚さがある。
「ううん。今、来たばかりだから」
「遅いぞ、碇」ケンスケがにやりと笑って言った。「惣流の着替えでも手伝ってたんじゃないか?」
「ちっ、ちがっ」
「やぁ、シンジ君」カヲル君が微笑んで割り込んできた。「ここの花火大会ははじめてだから、楽しみだよ。何か特徴があるのかな?」
カヲル君のアシストに助けられた。
「うん。水上花火っていうのがあって、それが凄く綺麗なんだ」
「それは楽しみだね」
ケンスケがアスカに頭をはたかれている。
「ほな、いこか。バス、もう出るで」
トウジの言葉をきっかけに、僕たちはバスに乗り込んだ。
バスの中で僕は気になっていたことを切り出した。
「あのさ、去年も花火大会に一緒に行ったよね?」
「なんや、碇? 去年の話も忘れてもうたのか?」
「い、いいや、その……度忘れしちゃって」
「その若さで痴呆症やないやろな。タチの悪い高校生に絡まれて、走って逃げたやないか」
「絡まれたっていうか、トウジのほうから喧嘩売ったようなもんだろ、あれは」と、ケンスケが呆れたように言う。
「う、うるさいわ! しょうがないやろ」
トウジはバツが悪そうに頭を掻いた。
「今年はあんなことしたらダメだよ、鈴原!」
委員長がたしなめるように言った。
「わかっとるがな」
「そうだったね。思い出したよ」
何となく思い出してきた。……そうだ、トウジがカツアゲしようとしてた高校生を制止しようとして……いや、委員長をからかったんだっけかな……とにかく思い出した。
そうだ。去年のことなんだから忘れるはずがない。うん。忘れるはずがないんだ。
肩の荷が降りた気持ちで、安心して背もたれに背中を預けた。
バスから降りると、公園はもうかなりの人でごった返していた。
「ぎょうさんおるなぁ。こないな人、どこにおったんやろ」
「ま、東京市からだけじゃないからね。来てるのは」
広場ではピエロが玉乗りをしながらお手玉をしている。子供が回りに集まってぽかんと口を開けて見物していた。
「まだ時間あるわね。お腹空かない?」
言うなりアスカはぱっと屋台に駆け寄り、お好み焼きを買った。
僕たちもつられてそれぞれ好きなものを買った。
アスカは食べ終わると焼きイカを買い、それも食べ終わると今度は焼きリンゴに手を伸ばす。
「うーん、おいしい」と、上機嫌で食べている。
ずいぶんとまぁ旺盛な食欲だ……。
女の子の関心事は体型の改善、もしくは維持にあると思ってたけど、アスカは意外に気にしないタイプなんだろうか。
委員長も目を丸くしている。
「アスカって結構食べるのね」
「大丈夫かいな。外人は太いやすいんやろ」と、トウジが綿アメを舐めながら言った。
「うるさい。私は絶対に太らないのよ!」
どこに根拠があるのか分からないけど、アスカは自信たっぷりだ。まぁ、確かにアスカが太ってる姿なんて想像できないけど、絶対はないんじゃないだろうか……。
「おい! あれやろうぜ、碇」
ケンスケが嬉々と指を差した先は、射的だった。
僕は射的の景品を見て、ふと違和感を感じた。一つ一つチェックしていって、違和感の正体が分かった。
景品の一つが、あのフィギュアだったのだ。アスカがゲームセンターでゲットした、禍々しい形状のフィギュア。色はあの時と違って紫と黄緑の組み合わせだけど、形状は似てる。
「ね、シンジ! あれ獲ってよ!」
アスカが指差した先は――当然というべきか、そのフィギュアだった。
心臓の鼓動が一つ、大きく鳴った気がした。
いやだ。あれは獲りたくない。そもそも、あれにはかかわりたくない。
たかが人形一つに大げさな表現だけど、それが僕の本心だった。
しかし、アスカの機嫌を損ねたくもない。
よし。決めた。
僕は慎重に狙いを定めた。――フィギュアの隣の景品に。
この角度だったら間違いなく当たらない。アスカにヘタクソと言われるだろうけど、構うもんか。
ゆっくりと引き金を引いた。
ぱすん、というやや情けない音とともに玉は飛んで、見事に当たった。
フィギュアに。
「やるじゃん!」
アスカが歓声を上げる。
僕は呆然と立ちつくした。何てことだ、ついてない。
的屋のおじさんが、「ぼっちゃん、上手いねぇ」と言いながら景品をビニール袋に入れてくれた。
「あ。アスカ、これ……」
「やっぱいい。あんたにあげるわ」
アスカは突然興味を無くしたようだった。
何だよ、アスカが欲しいって言うから獲ったのに……と思わず言いかけてしまった。能動的に獲ったわけじゃないのに。
「ええ? でも、僕は……」
「いいからいいから、持ってなさいよ」
アスカに押し付けられる形で、僕のものになってしまった。
「トウジ、いる? ケンスケは?」
「いや、いらないよ。部屋にでも飾っておけば」
「わしもいらん」
「カヲル君……もいらないよね」
「それはね、シンジ君」と、カヲル君は微笑んで言った。「君が持っているべきものさ」
確かに僕が当てたのだから、そうなのだろう。
しょうがない。目にしたくないから、飾る気には到底ならない。とはいっても捨てるわけにもいかない。アスカに「どうしたの?」と訊かれでもしたら困る。押入れにでもしまっておこう。
「花火の時間じゃない? そろそろ場所取りしないと……」
委員長が腕時計を見て言った。
公園に移動して、芝生の上にビニールシートを敷く。
全国的に有名な花火大会というわけじゃないから、人が多いといっても場所取りが困難なほどではない。遅れ気味にいもかかわらず、まぁまぁいい場所が取れた。
準備が出来たと同時に、花火の開始を告げる二尺玉が空に上がった。
さあっ……と刷毛で刷いたように空が光り輝く。
それから遅れて、どん! と、腹に響くような音が鳴る。
歓声が上がった。
数千発の花火が、出番を待っていたかのように次々と勢いよく打ち上げられていく。
芦ノ湖の湖面に花火が映りこみ、この世のものとは思えないほど幻想的だ。
熟れた果実が地面に落ちるように、花火が湖面に咲いていった。
文字や絵の形を浮かび上がらせる枠仕掛け、連続して打ち上げるスターマインやナイアガラ……技巧の限りを尽くした仕掛け花火が、惜しげもなく披露される。
次は水中花火だ。
火のついた花火玉を専用の船から水中に投げ込んでいく。
扇形の花が湖面に次々と咲いていった。
花火の音と光、大勢の人の笑い声やさんざめきに囲まれて、雲を踏んでいるような、どこかふわふわした気分になってくる。
みんな楽しそうで、この世に不幸があるなんて信じられないくらいだった。
アスカと二人で来たいと思ったけど、こうやってみんなで来て良かった。
横のアスカを見る。
花火が夜空に咲く一発ごとに、赤や青や紫や緑……さまざまな花火の色が、アスカの白い顔に反射して輝く。
ふと気づくと、アスカが涙ぐんでいるように見えた。もっとも単に明かりの具合でそう見えるだけかも知れなかった。いや、きっとそうだろう。涙を浮かべる理由なんてないからだ。
「アスカ……」
僕は声をかけようとしたけど、息が詰まって後に言葉を続けることができなかった。
そう。
この時間は、どんな宝石よりも貴重で、大切なものだ。
僕は胸の辺りに掌を当て、ぎゅっと握り締めた。
僕は、この一瞬一瞬がどんなに大切か分かる。
僕には分かるんだ。
そして――僕の思い込みかも知れないけど――アスカもそのことが分かっている。
こうやってみんなで笑いながら花火を見る、何でもないような、この時間の大切さが。
最後に特大の三尺玉が夜空を焦がして、花火大会は終わった。
僕たちは口々に花火の素晴らしさを語り合い、その場からしばらく動こうとしなかった。
帰りのバスに乗るのには結構な時間がかかったけど、誰もそれを苦にしてる様子はなかった。
キテタ━━(゚∀゚)━━!
GJですよGJ
ちょっと切ない感じですな
>>112 続き
□
他のみんながバスを降りて、僕とアスカが最後になった。
僕たちはずっと無言だった。何か喋らなくてはと焦ったり、相手の考えてることが気になるような沈黙ではなくて、気持ちが通じ合ってるゆえの無言。
もちろんそう思ってるのは僕だけかも知れないけれど、アスカも同じ気持ちだと根拠もなく確信していた。
バスが止まり、僕たちも降りる。
このまま帰ってしまうのは何となく名残惜しい気がした。
アスカが大きく伸びをする。
「ね。公園に寄ってこ」
「あ……うん」
一瞬、ドキリとした。アスカも同じことを考えていたのだろうか。まさか。
公園といっても、土地が余ったからついでに作りました――程度の、ブランコや鉄棒、滑り台といったお決まりの遊具が備え付けてある、こじんまりとしたものだ。
アスカはブランコに乗ると、勢いよく漕ぎ出した。鎖がぎしぎしいう音が聞こえてくる。思わず心配してしまうようなスピードだった。
僕はベンチに座り、若干心配しつつアスカを見ていると、大声で、
「浴衣だからそうやって見ててもパンツは見えないわよ!」
「な……何馬鹿なこと言ってるんだよ」
「図星でしょ。顔真っ赤にしちゃってさ」
分かるわけないだろ。こっちを見てないクセに。
「シンジ」
「何?」
「このまま手を放したら、空まで飛んでいったら面白いのにね」
アスカの顔が見えないので、彼女がどんなつもりで言ったのか分からなかった。
何と答えようか考えてるうちに、アスカはブランコから唐突に飛び降りると、僕の隣に座った。
軽く上気した顔が艶かしい。
「花火、綺麗だったわね」
「うん。でも、アスカのほうがもっと綺麗だよ」
「は……?」
アスカが目を丸くした。アスカのこんなに驚いた表情を見るのははじめてだった。もっとも驚いたのは僕も同じだった。
「い、いやっ。その」
な……何を言ってるんだ、僕は。勝手に口が動いてしまった。全身が熱くなる。
「……ごめん。変なこと言って」
「何? 謝るってことはそう思ってないってこと?」
アスカはそう言うと軽く僕を睨みつけた。
「いや、そうじゃないけど……」
「けど……?」
「アスカのほうが綺麗だ。それと……」
「それと?」
僕とアスカは見つめあった。いつもだったら視線を逸らせて誤魔化すところだ。
だけど今、アスカの目から視線を逸らせたら後悔するだろう、と思った。
僕とアスカの間の空気が、手で触れられそうなくらい固くなった気がした。
「その……僕は……」
「……何?」
気のせいか、アスカの声がかすれてるように聞こえる。
「アスカのことが、好きだ」
世界は、心臓の鼓動と呼吸の音と、アスカの姿だけになった。
僕は両手をアスカの肩に置いた。本当は自分の口に当てたかった。心臓が口から飛び出すのではないかと思ったからだ。
アスカが目を閉じた。
その瞬間、僕の頭は真っ白になった。
そして僕は――
唇をアスカの唇に重ねた。
一秒に満たない時間だったかも知れないし、二秒、あるいは三秒以上そうしていたのかも知れない。はっきりしているのは、僕には永遠に等しい時間続いた――ということだった。
いつの間にか僕は身体を離していた。
息苦しくて、少しでも押されたら倒れてしまいそうだった。
アスカが目を開いた。少しの間、無言で見つめ合う。
何て言ったらいいか分からないし、これからどうなるのかも分からなかった。例えば次の瞬間、アスカに顔面を張り飛ばされるとか。
アスカの口から出た言葉に僕は意表を衝かれた。
「あんたもちっとは勇気出せるじゃない」
「え……」
「また明日」
アスカはそう言うとついと近寄って素早くキスをし、立ち上がると身を翻して駆け出した。
僕は彼女の後姿をぼーっと見つめていた。たぶん僕は、この瞬間、地球上で一番ぼーっとしてた男だったろうと思う。
キィ……という音の方に僕は顔を向けた。ブランコが風に揺られて音を立てたのだ。
今ならアスカが言ったように、空に飛んでいける気がした。
「ただいま」
僕の帰りの挨拶をすると、母さんと顔を合わせないように洗面所に向かった。
「シンジ、ご飯は?」
「いいよ。色々食べたから。お風呂に入る」
「そう? じゃあ、ゆっくりね」
僕は湯船につかりながら生返事をする。自然と大きなため息が出た。
今日は最高の日だった。人生で、という大げさな言い方をしてもいい。
それなのに。
それなのに――。
なぜ、僕は泣いているのだろう。
嬉しくて泣いてる訳じゃない。さすがの僕も好きな女の子とキスできたからって泣きはしない。
胸を抉られたような気分だった。僕は嗚咽を漏らさないように強く唇を噛みしめた。
なぜだろう。
悲しいことなんか、何一つないというのに。
この時の僕はただ戸惑うばかりで、分からなかった。突如幻のようにあらわれた涙の理由が。
だけど、僕は心のどこかで分かっていたんだと思う。
この平凡だけど幸せな日常は、長くは続かないことを。
これは、終わりのはじまりだということを。
またキテタ━━(゚∀゚)━━!
GJ
復活ktkr
待ってたよ〜(´・ω・`)
どわわ・・
もう胸が張り裂けそう・・
しかしGJ
あんたこの星の希望やで!
初めて来たが、レベル高いな
相変わらずイイね!続きが気になる
>>117 16'.
家に帰ると、私はママと顔を合わせないようにこっそりとドアを開け、忍び足で廊下を歩き――
ちょうどリビングから出てきたママと鉢合わせした。
ママが首を傾げる。
「あら、アスカ。ただいまって言った?」
「ちゃんと言ったわよ。聞こえなかった?」と、私はウソを言う。
「花火大会はどうだった?」
「うん。まぁまぁじゃない? こんな田舎町にしては」
ママはくすっと笑った。
「どうしたの、アスカ。下向いて。シンジ君とキスでもした?」
「し、してないわよっ! ヘンなこと言わないでよ!」
「あら、ごめんなさい。冗談のつもりだったんだけど」
私はママの横をすり抜けて二階に上がる。
「ご飯は?」
「いらないっ」
私は背中を追ってきたママの声に、大声で返事をした。
部屋に入ると、ベッドにうつ伏せになって枕に顔を埋めた。
私はしばらくそのままでいた。
それから仰向けになると、枕を天井めがけて投げ、落ちて来たそれをキャッチして思い切り抱きしめた。
「あのバカ」と、呟いた。
interlude.
……男は強化ガラス越しにその部屋を見つめている。
ふと、ガラスに映る自分の顔に視線がいった。抗老化施術を受けていない、歳相応の顔。
政府はかつてはあれほどやっきになって規制していた長命化操作を、今は逆に――半ば強制的にと言えるほど――勧めている。
政府関係の仕事をしている立場上、男も受けなければならないのだが、無視していた。
自然のままがいいと思っているからだ。
なのに、今自分のやっていることは何か。男は皮肉を感じずにはいられなかった。
視線を下げると、同じくガラスに映りこんだクラシカルな本物の白衣が目に入る。
流体金属とナノチップを織り込んだ特殊合成繊維の「服」に白衣のプログラムをダウンロードすれば事足りるのだが、男は昔ながらの服が好みだった。
肌触りが違うのだ。高い金額を出しても惜しくない。
この時代にも男と同じ趣向の人間は大勢いる。
いや、いたと言うべきか……。
男は自分の名前を耳にして、振り返った。男の部下が来ていた。
「今日で一週間ですね」と、部下が言った。歳は五つ下だが、見た目は三十ほど若い。施術を受けているからだ。
「ああ……」
返事ともつかない返答をすると、男は一旦は部下に向けた目を、再び部屋に向けた。
四方をガラスに囲まれたその小部屋は、二十畳ほどの長方形の形をしており、中央に三体のケースが均等の間隔を置いて配置されていた。
ケースはカマボコ状で、大人でもかなりの余裕をもって入れる程度の大きさがある。
何本かのケーブルがケースに接続され、ケーブルを辿ると部屋の隅に設置してある機械に行き着く。
部屋の中は、人間にとって最も快適な温度、湿度、気圧を保っている。
深度およそ1000m――。
計画に反対する者の、妨害はおろか、声すら届かない場所。
ここは、この計画に相応しい静寂を保っていた。それこそ永遠を感じさせるほどに。
男は人工網膜に映るデータを機械的にチェックする。
異常はない。
もっとも異常があれば自動的に知らせる仕組みになっているのだから、自分でチェックすることは無意味である。癖になっているのだ。
「われわれに出来るのは」と、立ち込めた沈黙を破り、部下が肩をすくめておどけるように言った。「紅茶を用意しておくことぐらいですか」
「……本物の紅茶をな」
男はそう言うと、かすかに笑った。
その機会があればいいが――とは言わなかった。
17.
「……ンジ! ……れるわよ!」
僕を呼ぶ母さんの声が響く。うるさいな、と僕は思った。目覚ましが鳴ってないんだから、まだ起きる時間じゃない。
いや、待てよ。さっき目覚まし時計が鳴った気がするな。
すると、止めたのは僕? って、僕に決まってるか。でも、止めた記憶は全然ないんだけどな……。
――ぼんやり考えていると、階段を駆け上がってくる騒々しい音が聞こえてきた。
「この、バカシンジ! 遅れるでしょうがっ!」
布団がめくられて、僕の頭は一気に覚める。柳眉を逆立てたアスカの顔が視界に入ってくる。
「アスカ……」
「アスカ、じゃない! 早く起き……」
アスカの言葉は途中で途切れ、悲鳴に変わった。
「ったくもう、信じらんない。乙女の前で朝から――」
「しょうがないだろ、男ってのはそういうもんなんだよ。単純な生理現象!」
僕の言い訳を聞いてアスカが大げさに顔をしかめた。
「あんた、ひょっとして私の夢でも見てたんじゃないの? カンベンしてよね」
「そんな訳ないだろ。自惚れもたいがいにしろよな」
大慌てで朝食を食べて、同じく大慌てで家を飛び出してきたところだ。
「誰が自惚れてんのよ。私がいなかったら完璧に遅刻してるところよ」
僕の横を歩いている女の子は惣流・アスカ・ラングレー。僕の幼馴染だ。
色々と僕におせっかいをやいてくるから、ケンスケから「世話焼き女房がいていいな」なんてからかわれているけど、とんでもない。
そのことでいつもからかわれて、恥ずかしい思いをしているのだ。
「だいたいあんたは感謝が足りないのよ。感謝の気持ち、分かる? 私が居なかったらなーんにもできないんだから」
「全然違うね。アスカが余計なことをしてるだけだよ」
アスカが顔を真っ赤にした。
「はぁっ!? 何言ってんのよ! 遊園地で迷子になって泣きベソかいてるあんたをお母さんのところへ連れて行ってあげたのは誰よ?」
「そ、それは僕が五才のときの話じゃないか!」
「いーえ、それだけじゃないわ。年上の子にいじめられてたのを助けたのは」
「それは四才のとき! そんな昔のことを言われても困るよ」
僕はアスカに反論するのに夢中で、右の角から来た人に気がつかず、見事にぶつかってしまった。
僕のほうはよろけただけだったけど、相手は尻もちをついてしまっていた。僕は慌てて「す、すいません! 大丈夫ですか?」と声をかけ、手を貸そうと屈みこんで――息を呑んだ。
ぶつかった相手は第3新東京市立中学校の制服を着た女の子で……。
「あ、あの……」
僕は中途半端に伸ばした手をどうしようかと考えた。女の子は僕の手を無視して立ち上がると制服の汚れを払い、さっさと歩き出していたからだ。
こちらを一瞥もしない。まるで何もなかったようだった。
「ちょっと! あんた、シンジが謝ってんだから何か言ったらどうなのよ!」
アスカが怒鳴りはじめた。
「わーっ、アスカ、いいって! 僕が悪かったんだから」
アスカは今にも掴みかからんばかりの勢いだったので、僕は急いで制止する。まったく瞬間湯沸かし器みたいな気性なんだから。
「何よ! ちょっとばかり可愛いからって甘い顔しちゃってさ」
今度は僕に噛み付いてくる。
「違うよ!」
否定する間に、女の子は先に行ってしまっていた。
「それにしても、あんな子……うちの学校にいたっけ? 学年が違っても目立つはずだけどなぁ」
「うーん、はじめて見たわね。気になるの?」
「別に、ならないよ」
本当は気になっている。といってもアスカの言う意味ではなく。どこかで見たような気がするのだ。それもかなり近くで。
喉の奥につかえているようで、気持ち悪い。
女の子の「正体」はものの三十分もしないうちに分かった。
「あーっ!?」
アスカが指を差して大声を出す。僕も唖然として「彼女」を凝視した。
今朝、僕がぶつかった彼女が黒板の前に立っていた。
葛城先生がにっこり微笑んで、「それじゃ転校生を紹介するわよ!」と言った。
何てことだ、見覚えがないのは当然だ。転校生なのだから。
先生が頭を掻いた。
「んー、私が言うより自己紹介してもらったほうがいいか。んじゃ、お願い」
転校生は口を開いた。
「私の名前は です。よろしく」
え? 名前のところだけが聞き取れない。何て言ったんだろう。
先生に訊くのも何なので、僕は隣の席の生徒に尋ねようと口を開きかけた。
……と、突然、ジリリリリ! と耳をつんざくような電子音が響く。
何だ!?
僕はすぐさま周りを見回したけど、驚くことに誰も気づいている様子がない。
そんな馬鹿な。何で誰も気にしないんだ? こんなうるさいのに。
改めて隣の席の生徒に声をかけようとした。
しかし、声が出ない。
くそ、何だ!?
ジリリリリ、という音はどんどん大きくなっていく。
うるさい、どうなってるんだ
誰かこの音を止め
誰か
僕は喉に手をやって、必死の思いで叫んだ。
「!」
そしてその瞬間、僕はベッドから跳ね起きていたのだった。
□
「ちょっと! いくら新学期がはじまるからってそんな辛気臭い顔しないでよね。小学生じゃないんだからさ。こっちまで陰気になるじゃないの」
アスカが鞄をぶんぶん振り回しながら言った。どっちが小学生なんだか……。
「いや、違うんだよ。ちょっと変な夢を見ちゃって」
「ヘンな夢って?」
僕を口を開きかけて、途中でやめた。正直に言ったりしたらおかしな目で見られてしまう。だいたいアスカ以外の女の子の夢を見たなんて言えないよ。
――いや、アスカの夢を見てもそんなことは言えないけど。
「何なのよ」と、アスカが急かす。
「え、と、その……。そう、変な男に追いかけられる夢だった」
「あんた、ひょっとしたらソッチの気があるんじゃないの?」
「な、何でだよ」
「どーもあのナルシストと怪しい関係のような気がするんだけど」
「そんなわけないだろ!」
アスカと僕の関係は別段変わりはしなかった。アスカは、花火の日のあの出来事は最初から無かったかのように普通に僕に接している。
それで残念な気持ちもあるし、ホッとしてる部分もある。
アスカには変わって欲しくない。今のままでいて欲しい。
「どーだか」
ふん、とアスカは鼻で笑うと、鞄で僕の背中を撲りつけた。僕は思わず前につんのめる。
「急がないと遅刻するわよ!」
アスカはけらけら笑うと走り出した。
前言撤回。やっぱり少しは変わって欲しい……。
教室は夏休み明けということで、かなりざわついている。
久しぶりということもあるけど、もう一つの原因は黒板にあった。
背の高さ、成績、人間関係もろもろを熟慮して作った――と先生は言ってるけど、思い付きで8割決めているというのが定評だった――席替えの表が貼ってあるのだ。
アスカは表をろくに見ないで「あ、席替えね」と言った。
「よく分かったね」
僕はアスカの勘に少し驚いた。
「なに言ってんのよ、あんたが言ったんじゃない」
あれ? そうだったっけ? 忘れっぽくなってるのかな……。
それはともかく、表を見てみると、僕が思ったとおり、委員長とトウジは隣同士になっていた。またケンスケに何か言われるぞ――と他人事ながら思ってると、アスカが指を差して「あ」と言った。
視線をアスカの指先に向けると、僕はアスカの隣の席になっていた。
うーん、ケンスケに冷やかされるのは僕かも知れない。
「みんな、ひっさしぶり! まさか茶髪にしてきたコはいないわよね?」
葛城先生が勢いよく入ってきて、ぐるりと教室を見回した。
「あー、いないか」
残念そうに呟き、後ろに回した手にはバリカンのようなものが……。
「はいはい、静かにする! えーと、席替えに対する苦情は受け付けないからね。
そ・れ・か・ら、と。またまた転校生なのよねぇ。美男美女ばっかりで先生嬉しいわ。それじゃあ入って!」
教室のドアが開いてその生徒は――。
ショートカットの髪型、赤い虹彩、白い肌。口紅を塗っているのかと思わせ、しかし決して口紅では出せない紅を含む唇。
精巧にできた日本人形のような女の子だった。
アスカやカヲル君の時と違って教室が静かなのは、彼女が身にまとう深い森のような雰囲気のせいだと思う。
「綾波レイです。よろしく」
転校生は、自分の名前が粗大ごみであるかのように、無造作に言った。
僕は勝手に開きたがる口を押さえつけるのに必死だった。こんなことがあるのだろうか。
今日僕の夢に出てきた転校生と、今黒板の前に立っている転校生が一緒だなんて。
こういうのを何て言うんだっけ?
そう、予知夢だ。
僕は予知夢を見たのだろうか?
呆然としてる間に転校生は案内された席に着いていた。
教室は海の底のように静かになっていた。
□
その日、視聴覚室へ移動しているときだった。
トウジが僕の隣に来て、「碇、気になるんか?」と言った。
「な、何が?」
そう答えたものの、トウジの言いたいことは分かっている。
「転校生や」トウジは声をひそめると、僕のわき腹を肘でつついた。「惣流にバレるで! そないに見てると」
「そんなんじゃないよ」
僕は周囲を見回して、慌てて言った。
「そんなんじゃないのはどっちや。転校生のほうか? それとも惣流?」
「どっちも、だよ……。ただ、ちょっと変わった子だな、と思ってさ」
まさか夢の話を持ち出すわけにはいかない。と言っても「ちょっと変わった子」という感想は、別に嘘というわけでもない。実際変わった子だと思うし。
「確かになぁ」と、トウジは多少は納得した顔をした。「雰囲気が中学生じゃないっちゅうか、何かタダモノじゃない感じがするわ」
「ふっ。いいねえ、君たちは。女の子の話で盛り上がれてさ」
割り込んできたのはケンスケだった。
「あ〜あ。俺なんか寂しいよ、ホントに」と言いながら、わざとらしく横目で僕たちを見る。
トウジが少しひるみながら「何のことか分からんわ」とごにょごにょ言って誤魔化した。
僕はこちらに火の粉が降りかかる前に視聴覚室に入ってしまおうと急いで――驚いて飛び上がりそうになった。
横から来ていた彼女――綾波レイとぶつかりそうになったのだ。思わず夢のことを思い出していた。
「あ。ど、どうぞお先に」
僕は一歩後ろに下がって言った。
彼女の存在にまったく気がつかなった。僕がぼーっとしてたのもあるかも知れないけど、気配を感じられなかったのが原因だと思う。
「ありがとう」と、転校生が呟くように言い、視聴覚室に入っていった。その場の空気が少し下がった気がした。
あれ?
僕はあることが気になって、トウジ、ケンスケの顔を順番に見たあと、ケンスケにたずねた。
「彼女、ありがとうの後に何か言わなかった? 小声で何か言ったような気がしたんだけど」
「ああ、言ったよ。聞こえなかった?」
「うん。何て言ったの?」
ケンスケは眼鏡を外し、埃がついてないかチェックしながら言った。
「"ありがとう、サードチルドレン"」
133 :
蕨生:2009/02/17(火) 20:02:13 ID:Gt6F33Io
ここってエロ投下おkっすか?
>>133 エロはエロパロ板のスレへヨロ
ローカルルール破るとスレスト削除される
なわけない
>>135 実際そう言う事があったんでエロは誘導って話が出てるんだよ
いつ、どこで、誰が?
昔は結構エロ寛容だったけどなあ
昔ってそれこそいつ?
かなり前から誘導はされてる
乙!
続きが気になる〜
140 :
蕨生:2009/02/18(水) 18:53:39 ID:V+XrJjyq
ダンケ!エロパロ行ってくる!
>>137 あの事件を知らないのか
エロスレがキチ○イにより削除依頼に大量依頼され、「エロゲーのようにならない程度にしてください」と削除人に言われて消し飛びますた
いくらか再建しましたが開店休業のような状態
◆シンジストの発言◆
506 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/20(金) 22:01:52 ID:???
>>502 レイとアスカはヲタの為のキャラ
カヲルは腐女子の為のキャラ
こんなの一般認識じゃん
516 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/20(金) 22:11:03 ID:???
>>509 >>506じゃないが実際そういうイメージだと思うぞ
売る方だって、どこが出すにしろ明らかにそのつもりで出してるし、一部の勝手なイメージではなかろ
520 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/20(金) 22:14:27 ID:???
>>516 だよな
レイアスはキモヲタに受けただけだしカヲルは腐受けしただけ
525 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/02/20(金) 22:22:04 ID:???
>>506は叩きでもなんでもないでしょ
気を遣いすぎ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/eva/1232813378/506-
トウケツうざ
「キスよ、キス。した事ないでしょ?」
夕飯の片付けも済んで、あとは寝るだけ。
そんな平和なひとときにぼんやりと音楽を聴きながら雑誌を眺めていた僕は、
唐突すぎるアスカの提案にただ混乱するばかりだった。
「…う、うん」
「じゃあ、しよう」
彼女が何か話し掛けてきた時点で、嫌な予感はした。
きっとデザートか何か買ってこいとかそんな事だろうと思った。
でも、聞こえないふりなんかしたら間違いなくローキックが飛んでくるんだ。
だから慌ててイヤホンを外したら、いきなり『キスしよう』だなんて。
「どうして?!」
「退屈だからよ」
「退屈だからって、…そんな」
「お母さんの命日に女の子とキスするのイヤ? 天国から見てるかもしれないからって」
ニヤリと笑いながら彼女は言う。
からかわれるのはいい加減慣れたけど、母さんをダシにされて僕は頭に血が上った。
「別に」
「それとも、怖い?」
なおも挑発的な物言いにヒートアップする僕。
「怖かないよ! キスくらい」
「歯、磨いてるわよね」
「うん」
後悔する間もなくアスカが立ちあがって距離を詰めて来る。冗談だよね?
「じゃ、いくわよ」
目の前数センチまで迫って来た彼女の顔。さっきまでとは違う意味で頭に血が上ってきた。
思わず目を閉じちゃったけど、それきり何も起こらない。
不審に思って目を開けると、その前にはアスカの真っ青な瞳。
「鼻息がこそばゆいから、息しないで」
言うが早いか、彼女は素早く僕の鼻を摘むと柔らかな唇を押し付けて来た。
キスだ。 今、僕はアスカとキスしてる。
映画やドラマでしかそれを知らない僕にとって、これはもちろんファーストキスだ。
その相手が(性格はともかく)可愛い外国人の女の子なんていうのはラッキーかも知れない。
でも、退屈しのぎでしかも鼻を摘まれてたんじゃロマンチックな気分にはなれないよ。
いい加減息も苦しくなってきた頃、僕の頭にとんでもない悪戯が思い浮かんだ。
(腰に手を廻してみようかな)
酸素が足りない所為だろうか。
絶対に怒り狂った彼女に暴力を振るわれるのは明らかなのに、魅力的な考えに思える。
鼻を摘み返すのはすぐ気付かれそうだし、舌なんて入れたら噛み切られそうだしね。
あと、体と体の隙間を無くすと膝蹴りが出しにくいって訓練のとき教わった。
まぁ蹴られる様なことしないのが一番なんだけど。
!!
手が触れた瞬間、アスカの身体がビクッって震えた。
そして鼻を摘んでいた手が離れる。ああ、ビンタかな? グーパンチじゃありませんように!
僕は息を吸いながら顎を引き、審判の時を待った。
膝蹴り対策のために廻した腕に思わず力がこもる。あ、これって……
逆効果だよコレ! 抱き締めちゃってるよ!
動揺する僕はさらに追い詰められることになった。
顎を引いた為に一旦離れた唇に、アスカの唇が再び触れたからだ。
僕が手を廻してるのは腰だけで上半身は自由だから、これは彼女の意思だ。
その上さっきまでと違って、顔がゆっくり左右に振れながら深く口付けられてる。
あ、あ、あ、あ、
映画のラブシーンそのままのキスに呆然とする僕。
相手の腰に廻した腕も解けて、プランと身体の横に垂れてしまった。
すると、アスカは片手を僕の背中に廻して、もう片方の手で僕の手首を握り彼女の背中に導いた。
その間も情熱的なキスはやむ事がない。
(これって抱き締めろっていう事?)
呆然と考えていたら、彼女が上唇に噛み付いてきた。痛い!
慌てて僕がギュッと抱き締めると、アスカは軽く鼻を鳴らして頬擦りをする。
そして耳元で囁いた。
「…責任、取りなさいよ」
これはGJ
>逆効果だよコレ! 抱き締めちゃってるよ!
わろたw
激乙です
こ、この続きはどうなるの?
原作もこうだったら。
遅れをとってしまった!!
超乙
街
ほす
うずうず
捕手
式波って何よ
Corwin氏の点火シリーズってもう読めない?
最近LASにはまって探してるんだけど見つからない
>>160 おすLASスレの新しい方のDBからアーカイブのリンクあったよ
>>161 ありがとう!
ますますLASが好きになりそうだ
点火か…続き読みたいなぁ
点火見れなかった…
あれ?点火繋がんないね
落ちLASの拙作を参照のこと
3
クリスマスの夜
アスカの生家
アスカと再会した次の日、その日はたまたまクリスマスだった。僕は綾波とクリ
スマスの挨拶を交し、酒の代わりに昼休みにコーヒーとパイ菓子を部下達と口に
した。少し残ってしまったが、それは綾波が全部平らげるだろう。綾波は、意外
なことに、甘いものをよく食べる。
6時に仕事を終えると、一度部屋に戻ったあとに僕は綾波の部屋に向かった。ア
スカのことを相談するためだった。
「セカンドチルドレンに会った?」
振り向き様に、驚くように綾波は言った。アスカの呼び方は変わらないが、そこ
に親愛の情が篭っているのがわかる。僕にはわからない、女の子同士の繋がりが
あったんだろうと、度々思う。
「有り得ないわ。」
綾波はかぶりを振る。
「そう、かな……。」
「葛城一佐は言っていた……。」
ミサトさんは昇任して一佐になっていた。
「セカンドチルドレンは死んだって。碇くんもよく知ってる筈よ。葛城一佐は、
決してそんな嘘を吐く人じゃない。」
「それは……分かるよ。綾波の時だって、ミサトさんは一生懸命になってくれて
いたし……。
でも、誤報だったって可能性もあるじゃないか。何かの理由でアスカが日本に帰
ってこれなかったって事も……。」
それは予想と言うより、僕個人の希望的観測だった。しかし僕は今、確信を持っ
て言える。アスカは生きていて、僕は彼女を求めている。
「マギが間違いを犯すとは思えない。」
それは僕にだって分かる。マギの正確さは、リツコさんから講習を受けたから、
多分日向さんや青葉さんくらいには理解しているつもりだ。
「じゃあ支部の誰かが偽装した可能性は? それだったら……。」
「それも有り得ないわ。」と綾波は僕の言葉を遮った。
「この支部には日向三佐がいたから、偽装なんて出来るはずがない。」と綾波は
言った。
「偽装など日向三佐が許すわけがない、見逃すわけがない。何よりそこまでする
必要性が無いわ。」
「でも……。」
綾波の言いたいことは十分分かった。
だけど実際に、僕にそうだと言っても僕は納得出来ない。
「僕は会って、話したんだよ。手も握って一緒に酒を呑んだんだ。」
「……“兄さん"。」
綾波は本気の時に言う呼び方で、僕を呼び、溜め息を吐いた。
「帰国したら、お医者に行った方がいいわ。」と綾波は頭を振りながら言った。
綾波と話したあと、僕は一旦部屋に戻り、ノートパソコンからメールをチェック
する。
すると、いくつかクリスマスメールを受信していた。ミサトさんやマヤさん、そ
して冬月副司令やリツコさんからだった。
僕はメールに一通り目を通し、それからみんなに返事を送信してから、コートを
羽織って宿舎を出た。
◆
僕が昨日と同じ酒場でウイスキーを飲んでいると、アスカが昨日と同じようにフ
ラリと店に入ってきて、僕の隣に座った。
外では厚く雪が積もり、ここにくる途中に通った広場の噴水も、固く氷を張って
水も止まっていた。
アスカはコートを脱ぎ、入り口で軽く雪を払ってから席に座った。
「メリークリスマス。」とアスカが言った。
「うん、メリークリスマス。」と僕も返す。
アスカは昨日と同じカクテルを一杯飲んだ。
「クリスマスの挨拶したの、ホント久し振りだわ。」とアスカは言った。
「僕もだよ。」
僕は軽い夕食に注文した仔牛のカツレツをフォークに刺して口に運んだ。
空には白い雲が立ち込めていたが、月明かりすらないこの暗黒の地上からはそこ
に雲があることさえ、見通すことはできなかった。
僕達はウィスキーやカクテルを何杯か酌み交して他愛もない話をした。
アスカの職場や友達の話や、ミサトさんやリツコさん達の話だ。
アスカはなんでもないような話を真剣に聞き、時折クスクスと笑った。
僕がこれまで見たことの無いような、上品な笑い方だった。
それから何杯か杯を重ねた後で少し気分が悪くなったので、アスカと店を出た。
「私の、家にくる?」と唐突にアスカが言った。
僕はアスカを見た。
酔っているからか、仄かに頬に赤みがさしていた。
「え?」
「だから、私の家に来て、休まない? 少し遠いけれど……。」
「いいの?」
「いいから、言ってるの。」
僕は頷いた。
◆
アスカ曰く、その家ほどひなびた生家はない、というそうだ。
その家は市街から少し郊外にあったが、決してそんなに遠くはなかった。
庭は広く、庭の真ん中には大きな広葉樹が立っていて、敷地の角には、木で作ら
れた納屋がぽつんと気の弱い番犬のように立っていた。
アスカの生家は二階建てだった。二階は精々二部屋分の広さしかなく、唯一の窓
にはクリーム色のカーテンが引かれていた。
リビングには煉瓦造りの花壇があり、アスカが新聞紙で火をおこすと、コークス
が勢い良く内部燃焼して部屋をほんのりと暖かくした。
アスカはこんな、素晴らしい家に生まれたのだ。
僕はリビングでまんじりとせず部屋の中を見ていた。
棚にはサルらしき縫いぐるみや、古い写真がいくつも並べられていた。
僕は何気無く、セカンドインパクト前に普及していたCDやレコードが並ぶ棚に近
付いた。
手にとって見てみると、プラスチックケースやジャッケットは勿論、CDにも長年
に渡って酷使された痕跡が刻まれていた。
随分聴き込んだのだろう。
そうしていると、セーターと長ズボンに着替えたアスカが、髪をポニーテイルに
まとめて戻ってきた。
手にはお盆を持ち、二つのカップと紅茶ポットが乗っていた。
「紅茶、飲むでしょ?」
そう言うと、アスカはポットを傾け、ティカップに紅茶を注いだ。
豊潤な薫りが立つ。
「上手だね。」と僕は誉めた。素直な感想からだった。
「あんたが煎れたほうが良い薫りよ。」とアスカは返した。僕は少し赤くなった。
照れたのは何年振りだろう。
紅茶は凄く豊かな薫りと微かな苦味があり、美味しかった。とてもあのアスカが
煎れたとは思えなかった。もちろん、そんなことは思っても言わない。
と、そこでアスカが怪訝そうにして僕の顔を覗き込んでいることに気付く。
僕は心底驚いて声を上げた。思わずティカップを落としかける。
「な、なにさッ!」と僕が声を上げると、アスカは心外だと言いたげに言った。
「なによ。あんたがボーッとしてるから、気になったんじゃない。それに、こん
な綺麗な女の子に対して悲鳴上げるなんてさ。」
そしてアスカは僕の首に手を回して肩を引き寄せる。
「ちょっと……。」
こんなに密着されると少し困る。なにしろ僕はそれほどスレちゃいないんだから。
「いーじゃない。」
ふふふッとアスカは暖かそうに笑った。そんなアスカを見て僕は、まあいいかな
と思う。
「ねえ、今日は泊まってくんでしょう?」
僕は腕時計を見る。九時三十分。もう宿舎が消灯している時間だ。
「それじゃあ、いいかな?」
「どうぞどうぞ。」とアスカは少しふざけたように言った。「ついでになにかつ
まむ? と言っても大したもんはないけど。」
「ん、じゃあ頼むよ。」
そして僕は紅茶を置き、アスカはキッチンへツマミを作りにいった。
そして僕とアスカは体を重ねた。
◆
僕は月明かりの中で眼を覚ました。体を起こすと裸だったことに気付く。
横を見ると、これも裸のアスカが安らかに眠っていた。
髪を撫でてみる。柔らかい。
部屋には、今僕らが寝ているベッドと辞書と洋書があるデスク、そして洋服箪笥
がある。そして監獄にあるような小さな窓は結露し、床はフサフサとしたカーペ
ットで覆われていた。壁の色は、小さなブルーの模様が入ったクリーム色の壁紙
で統一され、今の穏やかなアスカの雰囲気とマッチしていた。
僕は手探りでパンツを暗い中から探しだして足を通し、部屋を出た。
ベッドから抜け出す時に時計を見ると、四時だった。
リビングの大きな窓から外を見てみる。空は白み、庭は新雪で真っ白で、足跡が
少し凹んで雪が積もっていた。
ふと寒さを感じ、僕は昨日にアスカがしていたように、暖炉に火をくべた。ジワ
ジワとコークスはくすぶり、やがて真っ赤になって熱を発し、暖炉の煉瓦壁にオ
レンジ色の光が映る。
僕はなんとなしに棚に飾られた写真立てを手にとった。写真の中では金色の髪を
した女性が、小さな赤ん坊を抱いていた。その写真は、どうやらこの家の前で撮
影されたもののようで、大きな向日葵が写りこんでいた。
背後で物音がした。
振り向くと、部屋着を着直してカーディガンを羽織ったアスカが、リビングと寝
室の境に立っていた。
「それ、ママよ。私の。綺麗でしょ。」
そう言いながらアスカは乱れ髪をポニーテイルにまとめながら、キッチンの方へ
歩いていく。
「朝ご飯はお任せで良いわよね。」
僕は拍子抜けした。
アスカが軽く、お母さんの事を流すなんて。信じられないことだ。
僕はキッチンの入り口に立ちながら朝ご飯を作っているアスカの後ろ姿を眺めて
いた。彼女は無駄がなく効率的に体を動かし、短縮された料理行程をソツなくこ
なしていた。小回りの効く小さなナイフで食材を刻み、トーストをセッティング
し、スープを作った。少しでも手空きが出来ると、洗い物を片付けた。僕はそれ
を、信じられない心持ちで見ていた。
「手伝う?」と僕が声を掛けると、アスカは首だけ傾げてこちらを見た。
「いいわよ、もう何年もやってるし。速さじゃあんたには負けないわ。」
アスカが俎板と火元の間を行き来する短い間に、彼女のポニーテイルにまとめら
れた髪が揺れ、その名の通り、尻尾のようにみえた。アスカが羽織ったカーディ
ガンはベージュの毛糸編みで、胸元に猿のワッペンがあしらってあった。
背後から眺めるアスカの体は、数年前よりもふくよかで、大人びていた。そんな
ことは昨日の内に解っていた事なのに、改めて新鮮に感じる。
「ま、期待しないで待ってなさいよ。」
アスカの料理はあの頃からは想像がつかないほど立派なものだった。主食のパン
に、じゃが芋とベーコンの炒めもの――名前は解らない――、オニオン風味の具
だくさん野菜スープ――しかし、これの名も知らない――。料理が出来たのは五
時過ぎで、朝食を取るにしては少し早めだったけれど、この後ネルフ支部の宿舎
に戻らなければならないから、適当と言えば適当だ。
そして、アスカの料理はどれも丁度よい味付けだった。
「おいしいよ。僕が作るよりもずっと。」と僕は本当に正直な感想を述べた。
「ふん、そんなおだてたってなんも出ないわよ。」とアスカは言った。
食事を平らげ、アスカと並んで食器を洗ってから、僕はみだしなみを整え、スー
ツとコートを着てアスカの家を出た。歩いて街まで行き、そこからまた歩いて支
部に帰った。街まで20分、街から支部まで30分かかった。
宿舎の僕の部屋では、うんざりしたような様子の綾波が、苛立ちながら待ってい
た。
「またお酒?」
僕はこれまで何度も、お酒をかっくらった挙句に外泊していたから、綾波が怒る
ことは、当然といえば当然である。
「ごめんよ。」と僕は素直に謝った。こんなときは謝るのが一番だ。
「ごめんですむ話じゃ無いわ。」と綾波は呆れたように言った。
「……あなたは一応重要人物なのだから、気を付けてもらわないと困るわ。」
「うん、解ってるよ。」
「……これからは、気を付けてちょうだい。」
なんだかこうしていると、僕と綾波が夫婦になったような気がした。
注意事項
当方、執筆経験不足により心理描写などヘタクソ
シンジがシンジ、アスカがアスカに見えるように努力はした。努力は
生暖かい目でヨロ
次か次の次くらいには終わるかな
乙!こっち引っ越したのね
乙かれです
続き待ってました!
178 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/04/07(火) 05:24:27 ID:6LZXl8bP
見てるよ
179 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/04/08(水) 01:05:51 ID:VV/oqhyA
乙
保守!
待ち
4
焼く。
帰国の日時は明後日だった。
その日、僕は決意を固めた。
なんとしてもアスカを連れ帰りたい! 僕の心にあったのは、ただそれだけだっ
た。陰謀の可能性も、アスカが生きている理由も、なにもかもが意味を持たない。
ただ僕の前にはアスカしかいなかった。
アスカは頭がいい。あの紅い海から帰ったあと、ただでさえ聡明であるのに、気
遣いまでも覚えたのだから、なんの理由も無しに僕に嘘をつくなんてことは有り
得ないからだ。
僕はこれからアスカを説得しにゆくことについて、綾波にも相談していない。す
べての事実を知っている筈の日向さんにも、何も聞いていない。恐らく、日向さ
んが未だに何も――助言すらも――言ってこないのはそれなりの理由があるから
なのだろう。あるいは僕の事を試しているのかもしれなかった。
その日で、数日に渡った査察の全行程はほぼ終わっており、明日にベルリンの空
港を立つという当初からの予定はなんら問題なくこなせるだろう。
時間は無い。
◆
僕はその日――朝帰りした次の日――に、大詰めだった仕事を放り出して、支部
を昼間の内に抜け出し、アスカの勤め先へ向かった。
彼女との睦言の合間に出た住所を目指すと、確かにその店はあった。その雑貨店
はアパートメントのような建物の一階に陣取り、傍らには、そちらがメインであ
るかのように、ビルの上への階段が併設されていた。
僕は腕時計を見た。綾波が僕の誕生日にくれた、アナログ式の電波時計だ。それ
は、十四時四十分となっていた。
まだずいぶんと時間が余っていたので、僕は向かいの喫茶店でその店を観察する。
ちょうど道側の席が空いていて、大きなウィンドウ越しに、アスカの長い髪が見
通せた。
彼女は、客がいないときは本を読むか、ノートに何かを書き込んで勉強らしきも
のをしていた。
どうやら、その店はあまり繁盛しているとは言えないように見える。
時間が進むに連れ、僕は緊張した時の癖である、掌を握ったり広げたりする仕草
をしていた。
会ってどう話せばいいんだろうと僕は思った。
でもいまさら引き返す訳にはいかない。
僕は、初めてアスカと体を重ねたのだし、もう生きていると解った以上、離れる
わけには行かなかった。
アスカの側に居たいという感情だけが、僕をつき動かしていた。
――過去の僕ならば、とっくに諦めていただろう――
コーヒーを五杯飲み、アスカの仕事風景を見ている内に、あたりはすっかり夕暮
れの中にいた。
そのうち、雑貨店の中にひとりの初老の男性が入っていった。その男性は、アス
カと何事かを話したあと、店の扉に閉店の札を掛けた。
きっと雑貨店のオーナーかなにかなんだ、と僕は予想した。
アスカは店のエプロンを外し、店の奥に入っていった。
そしてしばらくすると、コートに身を包み、帰宅姿で奥から出てきた。
僕はそれを見て、カウンターでコーヒー三杯と昼食のピッツァの代金を払い、外
に出た。
雑貨店の前で待っていると、アスカが少し驚いた顔をして出てきた。
雑貨店の前で待っていると、アスカが少し驚いた顔をして出てきた。
「何してるのよ。」とアスカは言った。
「アスカを、待ってたんだよ。」と僕は答えた。
「ふぅん……。」
「ちょっと話があるんだ。」
「まあいいわ。じゃあ店にする? それとも私の家?」
納得していないようではあったが、アスカはそう僕に訊いた。
僕は少し考えたあと、言った。
「アスカの家でいいかな?」
「ふぅん……ま、それがいいわね。」とアスカは言って、雪の道を歩き出した。
◆
僕をリビングに通らせたアスカは、紅茶を煎れて出してくれた。
僕は手を付けなかった。
「で? 話ってなに?」とアスカは言った。
「うん……。」と僕は頷く。「これからの事なんだ。」
アスカはおしだまり、紅茶のカップをテーブルに置いた。
「なんでアスカがあんなことまでして、僕と離れたのか、死んだと嘘を吐いたの
か……。」
「吐きたくて吐いたワケじゃないわ。」とアスカは反論した。
「本当に悪いけど……どうしようもなかったのよ。」
「じゃあ、なんなのさ。」
「今から話すわ。」
そしてアスカは話し始めた。
「初めはあんたを脅かすつもりだった。」
「『つもりだった』?」
「そう、つもりだったのよ。」
アスカは続けた。
アスカは続けた。
「ちょっとした冗談だった。ドイツから、後でシンジに手紙でも出すつもりだっ
た。『私は今ドイツに居るのよ? 驚いた?』ってね。でも出せなかった。この
家を見付けたからよ。私は、ママが生まれ育ったこの家を見付けたの。私が帰国
したのは、元々は冗談プラス、ドイツに残してきた諸々のがらくたを片付けるの
が目的だった。だから日向二尉――今は三佐だっけ?」
僕は頷いた。
「そう、日向三佐にも来てもらったのよ。こんなに長い間、引き留めるつもりは
なかったケド。」
申し訳なさそうに、アスカは目を伏せた。
「それで、アスカはこの家にとどまった。」
「そう。」
アスカは頷いた。
「でも……解らないよ……。なんで死んだなんて言ったんだよ。僕はドイツだっ
てなんだって、君のところに行くのに……。」
「それよ。」と短く言うアスカ。
「あんたは私のとこに来るでしょうね。でもそれは出来なかった。私は、あんた
に来て欲しくなかった。何故だかわかる? それは、シンジが来たら、私の中の
ママの居場所が無くなっちゃうと思ったからよ。ねぇ? シンジの事は、一番好
きよ。でも、ママは違う。特別だったのよ。だから、私は死んだ事にした。あん
たが、日本から離れる事が出来るようになっても、ここに来ないように。シンジ
と会ったら、ママがどうでも良くなって、心地よさに飲み込まれて、日本に行っ
てしまう。あんたはドイツ語出来なかったし、日本にはあんたの『家族』がいた
から……。出来る訳ないじゃない。でしょ?」
僕は頷くしかなかった。だって、それ以外になにが出来ると言うんだろう。綾波、
父さん、ミサトさん……。
僕も、母さんがいない。アスカもお母さんがいない。だから、気持を分かち合え
るのだ。
もし母さんの生きていた証が見付かって、もしそれが動かせないものなら、僕は
そこに行くだろう。価値を無くされたり、それ以上に価値があるものがあったら、
それを僕も退けただろう。そしてアスカが『家族』を持っていたら……。
アスカにはそうすべき理由があったのだ。
「でも……。」とアスカは言った。「もう会っちゃった。……どうすりゃいいっ
てのよ。私はさ……。」
「僕は……。」
僕はその為に、ここに来たんだ。
「僕はアスカと暮らしたい。例えアスカのお母さんのいた証があっても、僕は一
緒にいたい。死ぬまで、ずっとだ。」
僕は謝らなかった。アスカは穏やかに笑う。
「ありがと……。」
('A`)オワラネ
次完結だな、よす頑張ろ
おお続き来てたのね!いつもGJです
うーむ、今までにないラストだな。すごくいいぞ。
透明感がありますな
195 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/07(木) 21:22:28 ID:pxzB7tjh
ほす
196 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/12(火) 20:50:38 ID:VLqrLF+0
198 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/14(木) 04:34:05 ID:PS7Of8KK
ジの字が足りないってか?wwww
こりゃ一本・・・って取られないよっ!!!!
199 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/05/17(日) 01:02:36 ID:5A1DuUxZ
エウ゛ァ初心者より質問
“LAS”とはなんですか? なんかアスカが絡んでそうですが。
レイ・アスカ・シンジの略?(レイは“R”ではない?)
惣流・アスカ・ラングレーの略ならばSARだし…。
糞スレあげんなキモい
もう前投下で完結にした方が良い気がする('A`)
ずっと自然だし
でも投下
◆
アスカは庭の納屋に案内してくれた。
「ここがママの遊び場だったのよ。」
アスカは、手にもっていた小さな鍵で南京錠を開錠した。
床に板が張られた納屋の中には、背表紙が変色した古い専門書や勉強机などの家
具、服やスカート、玩具などが雑多に散らかっていた。だが棚、服、全てにいた
るまで、埃ひとつ落ちていなかった。
「これは、みんなママの物みたい。」
アスカは、勉強机の上に乗っていた熊のぬいぐるみを手に取り、愛しそうに撫で
た。
「この家を見付けた時、住んでたのはママの従姉妹だったの。でも、どうしても
この家が欲しかった私は、相場以上のお金を出して買い取ろうとした。けど、そ
の従姉妹の人はタダ同然で譲ってくれた。『キョウコは本当に幸せよ?』と言っ
てね。ホントにいい人だったわよ、その人は。」
そう言って、アスカは一枚の写真を見せてくれた。ブラウン色の髪をした妙齢の
女性が写っていた。
そう言って、アスカは一枚の写真を見せてくれた。ブラウン色の髪をした妙齢の
女性が写っていた。
「その上、この納屋やママの写真までとっておいてくれたのよ。信じられる?
このちっぽけな納屋をよ?」
僕は頭を振った。
「信じられない。10年以上前だし。」
アスカは頷き、写真を僕から受けとると、元の立掛けてあった棚に戻した。
そして、アスカは一転して真剣な眼差しに変わり、言った。
「あんたは“アタシ”を連れて帰りたいのね?」
「僕はここだっていいよ。」
「連れて帰りたいのね?」
僕は頷いた。
「アスカと一緒に居たい。例えどんな試練があっても。」
アスカは口許を緩めた。
「ねぇシンジ? ここにはね、ママが居るの。」
そう言ってアスカは納屋の柱を撫でた。そこには西暦の下二桁と、横線が何本も
入っていた。
「ここにも。」
アスカは洋服を手にとる。
「ここにも。」
アスカは机の棚に飾ってある、弐号機の雛形を見る。
「ここにも。」
アスカは机に積まれたノートを繰った。
「この納屋にはママが詰まってるのよ。」
そう言って、アスカは僕の30センチ先まで歩み寄り、僕の瞳を真っ直ぐと見た。
アスカより、僕の方が背が高いから見下ろす形になったけれど、僕は真摯にアス
カのブルーの瞳を見つめかえした。
「でも、もう意味無い。」
◆
「黙って見ててね。」
そう言って母屋の方へ行ったアスカは、僕のライターと新聞紙とガソリンのポリ
タンクを手に戻ってきた。
「な、何をしようっていうのさ?」
「まあ見てなさいって。」と得意気に言うと、アスカはポリタンクを持ち上げ、ガソリンを納屋に振り撒い
た。そしてライターで新聞紙に火を付け、ガソリンで濡れた納屋に火を放った。
「アスカ……。」と僕がようやく声を上げた時には、ガソリンで濡れた場所から
炎が勢い良く燃え広がり、そしてゆっくりと納屋を焼いていった。やがて納屋は
すっかりと炎に包まれ、周りの地面に積もった雪は丸く溶けて土の地面を晒した。
煙火が月明かりに照らされ、目を凝らすと青みがかった暗夜の空に一筋の煙が立
ち上るのが見えた。それは天空へ昇るにつれて少しずつ見えなくなっていった。
「そんな……。」と僕は言った。「焼いて、いいの?」
僕は火炎の中に消えた納屋の前で立ち尽くすアスカに訊いた。アスカは頷き、目
元を拭った。
「もう意味無いもん……。」
僕は彼女の肩に、まったく力を入れずに手を置いた。その肩は、徐々に小刻に揺
れはじめた。
「ごめんね……。」
それがきっかけだった。アスカは振り向き、炎の赤い光に金色の髪を映しながら、
僕の胸にしがみついた。そして何度も何度も声を上げて謝った。
僕が、気にすることはないよ、と言ってもアスカはやめる事が出来なかった。ま
るで泣くことをやめることを忘れたようになきじゃくり、謝る事をやめることを
忘れたように謝り続けた。
何度もアスカは母を呼び、僕の名を叫んだ。その声は天空に立ち上るその煙のよ
うに漆黒の暗闇に吸い込まれていった。
僕は彼女の髪を撫で、幼いころに忘れた涙をようやく思い出し、過去を捨てたこ
とを讃えるように――好きだ、好きだ、好きだ――と言い続けた。
「辛かったんだよね……。」
僕は責めない。
僕は君だから。
君は僕だから。
「約束するよ……。」
その自信の欠けた言葉に、アスカは期待と不安が満ちた眼差しを僕に投げ掛けた。
「何年か……何十年か……。それは解らないけど……約束は出来ないけど……。
僕はきっと君に想い出をあげる。君のお母さんが君に遺した想い出よりも暖かい
想い出を……僕は努力して、頑張って……。これまでこんなに頑張った事が無い
くらい……。だけど、きっと君にあげる。」
しかし、僕の告白に、アスカは、頭を振った。
「……なんで……。」
アスカは真摯で真っ直ぐで、一点の曇りもない眼差しで僕を見た。蒼い瞳の中に
僕がいた。
「私だけじゃ物足りないわ……。」とアスカは言った。「シンジも一緒。」
「……僕、も?」
「そう……。私だけじゃ駄目よ。シンジも、想い出を作って……。シンジのお母
さんにも負けない想い出を、私もあんたにあげるから……。」
僕は顔を赤くした。顔が上気した。こんな気分になったのは久し振りだ。
「二人で作っていくの……?」
「……そうよ。」
◆
僕たちは、夜の闇が白むまで体を寄せあっていた。
「綾波に言わないといけないね。」と僕は言った。「父さんや、ミサトさんや、
みんなにも……。」
「うん。」
僕は納屋を見た。納屋は黒い炭となり所々焼け落ちた柱を露にしていた。立ち上
った煙は白いものに変わり、青みが強くなった空に映えていた。
真っ白な雪の上を、僕たちは肩を寄せあって歩いていった。
終
与太話オワタ('A`)
なんか他に書きたいやw
つか、書きながら「母親の思い出」って何だよって思った
苦しい思い出云々って感じにすりゃよかったかな……orz
いやGJです!シンジに泣きつくアスカが切ない…
今度はシンジ誕生日なんか期待してますw
ぐじょーぶ!新作楽しみにしてます
オマイラ、寛大だな
完結してもらえるだけで感謝
213 :
パッチン:2009/06/06(土) 20:10:16 ID:???
『あいたい気持ち』
シンとした部屋の中、周りが微かに見える程度の明かりが浮かんでいる。
見慣れすぎた天井を見上げる僕は、自分が今どんな形なのかもよくわからない。
窓のない部屋には1日3回食事が運ばれ、それが僕の時計になっている。
・・・寿命が尽きて死ぬまでのカウントだ。
この部屋に入って3年ほどになる。
僕は僕自身の意思でここに来て、ここで暮らしている。
何故なら僕はここでしか生きれないから・・・誰もいないここでしか。
・・・『もしもし、碇シンジさん?』
「・・・はい」
部屋に取り付けられたスピーカーが僕に話しかけた。
一週間に一回ほどのペースで、このスピーカーは僕を呼びつける。
理由はいつも同じだ。
『惣流アスカラングレーさんが面会に参りました』
「・・・寝てるって言って下さい」
『少々お待ち下さい』
ぷつっ・・・
『伝えます「起きてんでしょバカシンジ、さっさと来なさい」…とのことです』
「・・・体調が良くないから無理です」
『少々お待ち下さい』
ぷつっ・・・
『伝えます「アンタたまには違う言い訳考えなさいよ。早く出ないと、この場所弐号機で踏み潰すわよ」…とのことです』
「・・・行きます」
214 :
パッチン:2009/06/06(土) 20:13:30 ID:???
・
・
「おっ、きたきた!相変わらず汚い格好してるわねぇバカシンジ」
面会部屋の明かりは眩しくて僕は軽く目を細める。
刑事ドラマに出てくるようなこの部屋は、一枚のガラスで真っ二つに隔てられている。
そしてガラス越しに見えるのは今の僕にとって唯一の『会う他人』アスカだ。
「・・・・・」
僕は無言のまま席につき、早くこの時間が過ぎるのを待つ。
「ほほぉ〜相変わらず無視する姿勢を変えないわね!」
「・・・・・別に」
「声ちっちゃーい!!ただでさえ邪魔なガラスで聞こえにくいんだからハッキリ喋んなさいよ!!」
ビリビリと間にある強化ガラスを揺らすアスカの怒声。
「ったく!今日が何の日かわかってんの?アンタは」
「・・・・・」
僕は首を横にふる。
「あ!アンタ部屋にカレンダー付けろって言ったのに、してないんでしょさては!」
「・・・・・ごめん」
「はぁっ、本当にこのバカだけはどうしょうもないバカなんだから…」
1人文句をブツブツ言いながら、アスカは持ってきていた紙袋から紙製の箱を取り出した。
「じゃ〜ん、今日はアンタの誕生日だからケーキ買ってきたわよ!」
「・・・・・うん」
「ふふ〜ん、有名店の一番人気なんだから♪」
アスカがガサガサと包みを開け、出てきたのは綺麗にデコレーションされたショートケーキ。
215 :
パッチン:2009/06/06(土) 20:14:55 ID:???
「きゃはっ、美味しそうね♪」
「・・・・・そうだね」
「うふふ、食べたいでしょ?」
「・・・・・」
「どうしよっかなぁ〜これ1個しかないのよね。
まあ、そこから出たら食べさせてあげてもいいんだけど♪」
「・・・・・アスカ食べていいよ全部」
「むっ・・・。本当にいいの!?全部食べちゃうわよ!!」
言いながらアスカは、イチゴの隣に乗ったクリームを指ですくってペロンと舐めとる。
「きゃー!美味しい美味しい美味しい♪
・・・こんな美味しいの食べれなくっていいの!?」
「・・・・・」
「ずっとそこから出ないつもり!?」
「・・・・・」
「なによバカ!!バカシンジ!!」
「・・・・・」
顔を真っ赤にしたアスカは手に持ったケーキにかぶりつきながら、僕をキッと睨みつける。
「アスカもう帰りなよ…僕なんかかまわないでさ」
「・・・アンタが出るまで帰らない」
「僕はずっと出ないよ。僕が生きられるのはこの中だけなんだから…」
「いい加減にしなさいよ!!それはアンタが自分で勝手に決め付けて…」
ビギィッ!!
アスカが声を荒げた瞬間、2人の間にある強化ガラスに大きな亀裂が走る。
…いや、僕が走らせた。
216 :
パッチン:2009/06/06(土) 20:17:05 ID:???
「シンジ…」
「ほら、早く帰ってよ。こんな化け物と関わったりして、どうなってもしらないよ」
「…呆れたわ。アンタどこまでもバカよ!!」
「・・・ごめん」
その後もひとしきり僕へ罵声を浴びせたアスカは、ケーキを1人で食べきり、更に面会時間ギリギリまで延々と僕に罵声を浴びせた。
・
・
・
アスカが帰った後、面会室から出た僕は無言のまま自分の部屋にむかう。
その間の廊下でも人とすれ違うことはなく、いつも通りに僕は目的地に辿り着いた。
そしていつもの暗い部屋で、僕はいつものようにベッドに座り込む。
じっと時間が過ぎるのを待つ。
出来れば何も考えたくない、脳みそなんかいらない。
僕もいらない。必要じゃない。
そんなことがボンヤリと頭を駆け巡る時間。
いつもと同じ、何も変わらない時間だ。
ただ、唯一のイレギュラーがあった。
しばらくして運ばれた夕飯に、いつもとは違う物が添えられていたこと。
それは『誕生日おめでとう。ばぁかシンジ』と書かれたカードと先程のショートケーキだった。
久しぶりに食べたケーキはただただ甘く、食べ終えた僕はいつもより早めに眠りの世界に墜ちた。
217 :
パッチン:2009/06/06(土) 20:18:40 ID:???
・
・
「気持ちわるい…」
赤い海のほとり。
馬乗りになった僕にアスカがつぶやいた一言。
僕はゆっくりと首にかけた手を引く。
「あ…すか…」
「・・・・・けほっ、いつまでそうしてんのよ」
少しむせこんだアスカは苦しそうに顔を歪ませる。
ハッとなり、その場から跳ねるように立ち上がる僕。そのまま砂浜の上で何歩か後退る。
ざばっ…
瞬間、赤い海から聞こえる音。
そこには波にうちあげられた『誰か』の姿。
「ひっ…!」
ざばっ…ざばっざばっ…
小さく息を飲んだ僕の目に飛び込むのは続々と現れる『誰か』の姿。
「あ…あ…あ…!」
「なによコレ・・・シンジ!?」
アスカの呼ぶ声が微かに聞こえたが、僕は振り払うように走った。
いや…逃げ出した。
218 :
パッチン:2009/06/06(土) 20:20:30 ID:???
「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」
誰かが怖かった。他人が怖かった。
だから逃げたんだ。
どこまで走ったかわからないぐらい走って、心臓が信じられないほどのスピードで鳴る。
苦しい…。
「はぁ…!はぁ…!はぁ…!…うぁっ!!」
何度も転びそうになりながら走った。
そして結局転ぶ。
周りにはビルが建ち並んでいる。誰もいないスクランブル交差点のど真ん中だった。
「はぁ…!はぁ…!・・・うぅぅ」
止まった瞬間から汗が吹き出して、ブルブルと全身が震える。
どんなに逃げても、怖くて怖くてたまらなくって、僕は地面で縮こまる。
「うあ…うあ…ああああああああああああああああ!!!!」
ィィンッ!!
叫んだ瞬間、音にならない音が響き、僕の周りの景色が…変わった。
顔を上げた僕は、一瞬何が起こったかわからなかった。
けど、周りに並んでいたビルの一部であろうコンクリートが遠くにとんでいく様子が小さく見えた時、何となくわかったんだ。
周辺の建物が全て紙屑のように吹き飛ばされた。
僕が叫んだ瞬間、周りの物全てが僕によって消された。
そして僕は一気に見通しのよくなった都会の真ん中で、呆然とするしかなかった。
219 :
パッチン:2009/06/06(土) 20:23:05 ID:???
・
・
「やだな…最近この夢ばかり見てる」
目が覚めた僕は暗い部屋の中、体を起こして布団の上で膝を抱える。
さっき見た夢は、夢だけど現実の話。
3年ほど前の確かな現実だ。
サードインパクトが起きた日、赤い海から戻った僕の体には『いらない力』が宿ったらしい。
膝を抱えていた両手を前にかざし、軽く心で念じる。
ーィンッ!
すると僕の目の前に現れる六角形の心の壁。
そう、あの時周りのビル群を吹き飛ばした力は、僕が発した強力な『ATフィールド』
そしてそれは、僕の体に宿ったいらない力の正体でもあった。
あの後、動けなくなっていた僕はネルフ職員の人に保護され、ネルフの施設で検査を受けた。
色々な科学者の人が、とっかえひっかえに僕を調べたけどもATフィールドについての明確な結論は出なかった。
でも僕は…あの時感情が爆発して、暴発するように現れた巨大なATフィールドが怖くてたまらなかった。
僕が誰かを傷つけることにも繋がるそれが怖くてたまらなかったんだ。
誰かを傷つけるのは嫌だ。
でも僕はいつか誰かを憎んでしまう。
だからきっと僕はいつか誰かを殺してしまいそうで…
だから…誰にも会うことがとてつもなく怖くなる。
220 :
パッチン:2009/06/06(土) 20:26:12 ID:???
嫌な気分を流したくて、僕はシャワー室にむかう。
この部屋は過去に命令違反をした時入った、ネルフ内の拘留所を少し改装した場所でシャワー室は設置されている。
体を綺麗にするこの時間は嫌いじゃない。
「命の洗濯か…」
ミサトさんは還ってこれたのかな。
結局僕が知ってる帰還者はアスカしかいない。
・・・アスカはよく来てくれる。
僕がこの部屋に入って2年ほどの時、急にひょっこり面会に来た。
『久しぶりねバカシンジ。色々あったけど、そんなのも踏まえて来てやったわよ』
よく意味のわからないセリフと共に現れたアスカは、それからは周1ペースでここに足を運でくる。ノリはいつも軽めだ。
最も僕を憎んいた人間だったアスカが、僕の前で昔の頃のように振る舞ったのがあまりに意外だった。
もちろん何故かという理由なんてきかないし、誰が赤い海から還ってきたかもきけない。
いつもアスカに一方的に喋ってもらうばかりだ。
「ふぅ…」
タオルで体を拭いながらシャワー室から出た僕は、着なれたジャージに袖を通して、いつものようにベッドのよこになる。
ああもういっそ自殺してしまおうか…。
何千回考えたその言葉は、結局言葉の域を越えずに終わっている。
今日も明日も僕は…何事もなく生きていく…。
221 :
パッチン:2009/06/06(土) 20:27:20 ID:???
久しぶりに書きまして、続きます。
シンジ君の大切な日に暗い話でごめんなさいw
いえいえGJ
続き期待してまっせ。
おお、パッチン氏こっちに来てたか。いつも乙
乙かれです。
続き超期待しております。
GJ!
アスカの内面も気になる
投下キテタ!乙乙
なんで2chのLAS作家は、大した分量でもないのに、間を開けるの?
ストーリーを最後まで考えてないの?
住人の反応見て、方向性を変えるの?
>227
作家さんそれぞれ色んな理由があると
思いますが、パッチンさんはきちんと書いて
くれます。続き期待してます。
>>227 投下自体が面倒臭くなって……という不届き者も居るよ
俺の事だが
230 :
パッチン:2009/06/13(土) 23:02:46 ID:???
『もしもし、碇シンジさん?』
「・・・はい」
『惣流アスカラングレーさんが面会に参りました』
「・・・寝てるって言って下さい」
『少々お待ち下さい』
ぷつっ・・・
『伝えます「だから起きてんでしょバカシンジ、さっさと来なさい」…とのことです』
「・・・体調が良くないから無理です」
『少々お待ち下さい』
ぷつっ・・・
『伝えます「アンタたまには違う言い訳考えなさいよ。早く出ないと、この場所バズーカで…』
「・・・もういいです、行きます」
・
・
・
「あのさ、結婚すんのよねアタシ…」
面会室にやって来た僕を待っていたアスカは、いつもとは違う俯き加減な姿勢で、そう話を切り出した。
「結婚…?」
「うん、結婚するの。悪い?」
キョトンとする僕にむかってアスカは更に続ける。
「アンタには言ってなかったけどさぁ、前からずっと同棲してる奴がいてね。
もうそろそろ一緒になろうかな〜って…」
確かに僕は面会室の外のアスカのことなんて、これっぽっちも知らなかった。
「同棲なんかしてたんだ…」
「まあね、けっこう前からよ。初めてアンタの面会に来た日より、ずっと前から」
僕の中にいた今までのアスカが別人に変化していく気がした。
231 :
パッチン:2009/06/13(土) 23:03:57 ID:???
「いつ…?」
「一週間後に式あげるわ。ホテルとかじゃなくて教会であげんのよ」
少し笑みをこぼしてそう言ったアスカは一枚の手紙を鞄から取り出す。
「これに式あげる場所書いてあるわ。職員の人に渡すよう言っとくから後で読んでよ」
「・・・僕行かないよ?」
「はぁ…。わかってるわよ、ただ万が一来たくなった時のため」
先日割ったガラス越しに見えるアスカは、いつものような押しがなく、どこか落ち着いた感じに見える。
「でさぁ、アタシもうここに来れなくなると思うのよ」
「・・・・・」
「シンジの所に行こうとすると、『あんな奴になんか会うな』っていつも言われて喧嘩になんのよ」
「・・・相手の人って僕のこと知ってるの?」
「んーまあね。で、結婚もするし喧嘩のタネになるようなことアタシもしたくないしさ…」
俯き加減で申し訳なさそうに喋るアスカ。
僕のことなんか気にしなくてもいいのに。
「最初はね、アンタがここから出るまで粘ってやろうって決めてたんだけど、アンタも頑固だし。
何よりアタシがアタシの幸せ見つけて、その幸せを逃がしたくなくってね♪」
232 :
パッチン:2009/06/13(土) 23:06:02 ID:???
はにかんで言ったアスカはとても満足そうな表情を浮かべる。
「うん、それでいいと思う。僕のことなんか心配しないでいいから」
「ふふ、おあいにく様。もうアンタの顔なんか思い出したりしないから!」
小さく舌を出したアスカは席を立ち、帰り支度を始める。
「・・・相手の人って誰なの?」
「来たら教えたげるわ」
「その人のこと…好き?」
「世界で二番目かしらね」
「一番は加持さん…?」
「さぁ?誰かしら」
支度を終えたアスカは背をむけて、部屋の扉に手をかける。
『これで最後…』そう思った瞬間、僕は無意識のうちに声を上げていた。
「あ、アスカ…!」
「…なに?」
「・・・あ…。幸せに…ね?」
「・・・・・ばか」
とっさに呼びかけた僕にアスカは、そう言い残し部屋から出ていった。
一人取り残された僕はその扉をボーっと見つめている。
・・・もう二度と会うこともないんだろうか。
さよなら。幸せにねアスカ。
その後、なんだかグルグルと締め付けられるような胸を押さえ、僕はフラフラと部屋に戻っていった。
・
・
233 :
パッチン:2009/06/13(土) 23:07:42 ID:???
「はぁ…」
夕食と共に届けられた手紙を指で弄びながら、小さくため息。
急に聞いたアスカが誰かと結婚するということ。
そしてアスカがもう僕と会わないと言ったこと。
色々な気持ちが駆け巡るけど、この気持ちはどういう名前で呼ぶものなんだろう。
とにかく、ただただキモチワルイ。
「ふぅ…」
ベッドに仰向けに寝転び、再び小さくため息。
アスカは誰と結婚するんだろう?僕のことを知ってる人で、僕のことを嫌ってる…。
・・・思い当たるふしなんて山ほどある。
だってみんな僕のことなんか嫌いなはずだ。
結局トウジには謝れなかったし、ケンスケとは喧嘩別れしたようなもの。
カヲル君は…手の感触が未だに覚えている。ごめんよカヲル君…。
気付くと僕は泣いていた。
何年かぶりの涙だった。
色んなことで頭が破裂しそうだ。
もうアスカに会えないと思うと…
アスカが誰かと結ばれると思うと…
僕が今まで傷つけた人達のことを思い出すと…
そんな思いで胸が締め付けられるたびに、目の前の『勝手に現れたATフィールド』が、より生き生きと僕を照らす。
この心の壁は、僕を何から守ろうとしているのだろう。
234 :
パッチン:2009/06/13(土) 23:09:36 ID:???
「でも・・・本当は僕が一番望んだことなんだよね」
ポツリとそう呟く。
もともと僕は誰にも会わない人生を送るためにこの部屋に入って、
アスカがここに来るようになったことは僕にとって完全にイレギュラーなことだ。
いつも僕なんかのせいでアスカに迷惑かけていた。
でもそんなアスカがもう会いにこなくなる。
僕なんかに気を使わないと言ってくれた。
しかもアスカは結婚して幸せになる。
・・・全て素晴らしいことなのに、再び思い返せば更に胸が痛いのは何でだろう。
ふと僕はもう一度手紙に目を移す。
・・・行けばこの気持ちの正体がわかるのかな…。
この部屋を出て、招待された結婚式に出向くことが頭をよぎる。
・・・誰かに会うのは怖いけど。遠くから見るだけなら大丈夫かな…
何より今までわざわざ来てくれたアスカに出来ることといえばこれくらいしかない。
「・・・うん、行こう。これを最後に」
でもどうやって教会まで行こう。車も電車も使えな…!
思った瞬間、目の前でぼんやり揺れていたATフィールドが僕を包んで…
「うわっ…!」
そのまま僕はフワリと宙に浮いてしまった。
「・・・・・はぁ…。空まで飛べちゃうなんて…本当に化け物だね」
235 :
パッチン:2009/06/13(土) 23:13:07 ID:???
今回ここまでです
>>227 すいません書くの遅いんです。1日1レス分を目安にやってますw
前回投下分も誕生日ギリギリに書き上げたんで、書きためも出来なくて…(言い訳ばっかり)
破の公開までには終わると思います
乙かれです。
この先の展開マジで楽しみにしております。
>235
乙乙
アホはスルーでOKよ