【語れ】『逆襲のエヴァンゲリオン』スレ【笑え】

このエントリーをはてなブックマークに追加
110名無しが氏んでも代わりはいるもの
45ページ 〜 46ページ

[解説]
「綾波と話しをしていないシンジ」
 中一のケンスケやトウジにとって、転向してきた綾波は、大人の匂いがする、実に
魅力的な存在だったに違いない。二人とも(特にトウジは)綾波に憧れていたのは
間違いないだろう。ただし、今は、ミサトがいるために興味はミサトのほうにいって
しまっている。(レイにとって、ミサトはライバルだったりするのだ。)
 ケンスケは、シンジと綾波がうまくいっていないことを、鋭く見抜く。
 ここでもチャンスなのだが綾波よりもヒカリの方がお気に入りのようだ。

「テレビニュース」
 ケンスケは、公式発表がニセの情報であることを知っている。そして、人間も
外側と内側とは違うのだということを知っているのだ。
 正確な情報と分析能力がなければ、この時代生き抜いてゆけないことも知っているのだ。

「パパのデータ」
 ケンスケのパパが、いくらネルフの高官だからといってケンスケに情報が「ただ漏れ」
というのは解せない。やはり、ハッキングしているのを承知で、わざと情報を流していると
見るべきだろう。
 ネルフ諜報部とミサト、そしてケンスケの情報戦はEVAの隠れた見所だ。

「壱中はネルフの敷地内に有る?」
第六話で、エヴァは壱中のすぐ側から出てくる。これは壱中が、ネルフの守るべき
対象であることを、暗示させる。エヴァのパイロットがここにいることがバレて
しまったので、ここも敵の攻撃対象になってしまったのだ。自衛隊による壱中皆殺し
という事態もありうるということなのだ。
 「戦場だからね」
 またネルフが口封じを行うことだって十分考えられるのだ。
 「ネルフならやりかねない」
 どちらにしても、壱中でパイロットになれなかった者は、死ぬ運命にあるのかも知れない。
111名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/01(月) 01:53:42 ID:???
家族
 ケンスケもトウジも、ミサトが自分たちに本当の姿を見せないことを知りつつ、
自分たちの本当の姿をミサトには見せないようにする。それがミサトに対するつき合い方だと
いうことを知っているのだ。お子様なシンジやヒカリはそのことに気がつかないので、
「バッカみたい」とか、拒否反応してしまうのだ。
 しかし、なぜミサトがネルフの作戦部長なのか知らないし、お子様で敵ではないと思っていた
シンジが、ミサトの寝像のことまで知っているとわかってショックを受けたりする。
 本当のミサトは誰も知らないのだ。三人はまだミサトがシンジにさらけ出している姿こそ、
まやかしであることには気づいていないのだった。

「持つべきものは友達」
 ケンスケにとってシンジは物質的な欲求を満たしてくれる存在でしかないようだ。

「セカンドインパクト前のビンテージ物」
 ケンスケにとっては価値があるが、米海軍がセカンドインパクトで壊滅的な打撃を受けた
ことがうかがえる。おそらく使用していなかった老朽船を直して使っているのだろう。現在も予算を
もらえずきゅうきゅうとしているのが、その事実を物語っている。
 しかし、米軍のプライドと人員の多さが米国のエヴァ建造への参加を遅らせた原因
になったのは皮肉というべきか。

カメラ
 オーバー・ザ・レインボーで米軍はケンスケのことをよく知っていたようだ。これは
ケンスケの天才ハッカーとしていろいろ悪さをしていたのがげんいんではないだろうか。
しかし米軍はケンスケの才能を認め、利用できると見ているようだ。ケンスケがカメラを
回していても怒られないのはそのためか? 本当なら、即、撃たれている? 少なくとも
カメラは没収だろう。米軍はその後ケンスケからフィルムを買ったりケンスケに米軍の
情報を故意に流したりしたのではないだろうか。米軍の参号機、四号機のパイロットを餌にすれば、
ケンスケはすぐに食いつくような気がする。
112名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/01(月) 02:05:12 ID:???
47ページ 〜 48ページ

「彼女の寝相直ってる?」
 第八話で、加持のミサトん対する思いがけない発言に驚く三人だが、その内容は
三者三様である。アスカは加持、トウジはミサトであるのに対し、ケンスケはやはり
シンジとミサトの関係が気になるところだろう。
 「碇シンジ侮り難し」といったところか。
 アスカに一目惚れのケンスケとトウジだったが、アスカは加持に首ったけのようだった。
しかしそのおっさんが、先に逃げてしまったのを見逃すはずもない。「チャーンス」

「俺たちはもう会うことはないだろう」
そうなれば、アスカを知っているのは三人だけということになる。チャンスはあるということ
だったはずだが、同級生になってしまってライバルが増えるやらmこれからどうなることやら。
アスカがもてるのを嫉妬しながらアスカの写真をさばいている二人組。つまり、興味大あり
ってことじゃないの? そのうえ肝心のHな写真は一枚もないということはトウジが買い占めて
いることかな、やっぱり。そのうえ二人の間ではアスカには先に手を出さないという紳士協定が
結ばれていたようだ。だからシンジは「ウラギリモン」になるのかな。

オキナワ
ケンスケにとって人気者のシンジは邪魔な存在でもあるようだ。シンジがいなければオキナワも
快適というところなのだろうか?
113名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/01(月) 02:06:09 ID:???
48ページ

ミサトの昇進記念パ−ティ
 ケンスケはミサトの昇進記念パーティを企画する。しかしついでに、トウジとアスカの仲を
取り持ってやろうと考えていたのだ。
 一方、トウジは転校してきたシンジ、アスカ、レイを歓迎するパーティと考えていたようだ。
ミサトがトウジにありがとうと言ったのはそのことを指している。それを謙遜してその功を
ケンスケに譲るトウジをヒカリは「やさしい人❤」と思うのだった。(本当は自分の目当てが
アスカだということを悟られたくないため)
 アスカはトウジ(本当はシンジ)に片思いしているヒカリのためにパーティに呼んだのだが、
そのことでアスカに接近することができないトウジは「なんで委員長がここにおるんや」と
ついにドタバタの喧嘩になってしまうのだった。

 〔注〕 このシーンはヒカリがトウジのことを本当に好きになる大切な場面なのです。
114名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/01(月) 02:12:41 ID:???
48ページ 〜 49ページ

 「エヴァのパイロットになりたいんだよ」
 ケンスケはシンジに頼み事をするが、相変わらずシンジは他人の気持ちを思いやる事が
できない。自分がミサトさんから何も聞かされてない事ばかり気にして、ケンスケの要求に
応えようとはしない。それだけでなくシンジはケンスケを無視しているかのようだった。
ケンスケは当然おもしろくない。それは親友のとる態度ではないように思えた。

 碇シンジははじめて出会った時から何ら変わってはいないようだった。もっとも、ケンスケも
トウジがシンジろ親友になったのでつき合っているという感じだったし、エヴァに興味があったので、
つき合うことにメリットがあったのだ。今はそのどちらでもない。シンジとケンスケは
親友という間柄ではなかったのかもしれない。

 ケンスケは気を取り直して四放棄の話題に移すがシンジはこれも知らないという。
悪いこと聞いちゃったなあ、と思いつつ「これはビッグチャァーンスだ」と内心ほくそ笑む。

 「こんな大事な話が伝わっていないということは、ミサトさんとシンジの関係も相変わらず
ぎくしゃくしたままだということに間違いない。シンジはネルフの人と満足なコミュニケーション
を取ることができないので、情報をもらえないのだ」

 「これは自分をネルフに売り込む絶好のチャンスだ。逃す手はない」
 「自分をエヴァのパイロット参号機のパイロットにして下さい!」
115名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/01(月) 02:18:43 ID:???
49ページ

[解説]
「なぜいまさら……」
 ケンスケは自分は普通の弱い人間だということを思い知らされていた。ケンスケは
自分の夢や希望をシンジとエヴァンゲリオンに重ね合わせてシンジにそのことを
押しつけていた。それだけにシンジの逃げはケンスケに対する不信、裏切りというふうに
思えてしまった。ケンスケとシンジの信頼関係は、もはや修正することはできないようだった。
イヤ初めからそんなものはなかったのかもしれない。

空の教室その二
 エヴァに憧れていたケンスケだが、その戦闘により再び教室に空席が目立つようになる。
「今や学校どころじゃないんだな」
 ここにきてケンスケのエヴァに対する不信と失望が見て取れる。そして憧れの世界から
抜け出て、目の前の現実を見なければならないことに気づき始める。
 この街で戦いをしてはいけないということが、そしてい分の目の前にはヒカリがいるということ。
ヒカリもまた、トウジやシンジから目の前のケンスケに目が行くようになってきたようだ。
116名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/01(月) 02:24:40 ID:???
50ページ

現実は夢の終わり――ケンスケとヒカリ

 エヴァのパイロットになりたかったケンスケにとって、米国での四号機の事故は
大きな痛手だった。これがなければ米国でのエヴァ起動に米国とコネがあるケンスケ
が選ばれた可能性が高かったからだ。しかし日本ネルフは、参号機のパイロットに
トウジを選んでしまう。ケンスケは一人だけおいてけぼりを喰らってしまう。しかも
今ではケンスケをかばってきたトウジも、ケンスケのそばにはいなくなってしまったのだ。
ケンスケ波一人で生きていかなければならない。ケンスケはいま自分の置かれている現実を
見なければならない。エヴァという夢を捨て、現実を生きていかなくてはならない。
ミサトも零もアスカもシンジもトウジも、今は自分のそばにはいないのだ。ケンスケは
自分がゆくべき道を見さだめたのだった。そして自分にはヒカリが必要なのだということが
わかった。これからはヒカリと二人で生きていけるさ。……現実は夢の終わり。
117名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/01(月) 23:37:25 ID:???
50ページ 〜 52ページ

「せめて人間らしく」――綾波レイ

 この本ではレイ1は、第壱話〜第六話までとしています。
 これは、今までの解説を覆す大発見なのです。
 レイの正体はアダムであり、不死であるレイは一度も死んでいないのです。レイが
「たぶん三人目」といったのは碇シンジに対してであり、それも確かなことではないのです。
(一人かもしれないし、四人かもしれないのです。)そしてその違いは植えつけられた
記憶によるものの差なのです。

 レイ1は、明らかにゲンドウそのものであり、レイ本人も自分をゲンドウの代理人だと
認識しています。

 そして綾波レイは、シンジの父親を演じていくのです。
 碇シンジは、綾波レイを通じて知らぬうちに、父ゲンドウのメッセージを受け取っていきます。
 そして綾波レイは人間なのです。
 レイは自分が人間であるために、彼女なりの努力をしているのです。
 レイは自分とみんなのつながりを、絆と言います。
 しかし周囲の人間はレイを人間として扱いません。決戦兵器として選ばれた彼女を人間として
扱う者はここネルフにはいないのです。
 ただ一人、碇司令をのぞいては。

 「ここにいてもいいの?」
 碇司令が、自分の事を愛していないとわかった時、綾波レイはどんな顔をすれば
よいのだろう?
 綾波レイのイバ所はどこにあるというのだろう。

 「せめて人間らしく」
 人間らしいって、どういうことなんだろう?
118名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/01(月) 23:47:52 ID:???
52ページ 〜53ページ

レイとゲンドウ

 綾波レイは、碇ゲンドウと長年苦労を共にしてきたせいか、ゲンドウの思考を
写したような性格をしている。レイとゲンドウはまさに、一心同体というべき関係に
あった。レイは、科学者としてはゲンドウと同格であり、E計画の推進者である。
人造人間エヴァンゲリオンの研究には多大な貢献をしていると自負し、そのことを
誇りに思っている。それに対しゲンドウは、

 「レイ、エヴァは私一人の力でできたものではない。エヴァの素体と基礎理論は、
われわれの偉大な祖先が残してくれたものだ。赤木ナオコ博士のMAGI理論や
冬月教授の生物学の知識も欠かすことはできない。国連はネルフに対して莫大な資金を
提供してくれているし、大勢のネルフスタッフにわれわれは支えられているのだ。
だからエヴァの開発スタッフであることを、決して他人に自慢してはいけない」

 と諭していた。そんなゲンドウをレイは尊敬していた。またゲンドウに、

 「レイ、私はレイのおかげで部下を愛すること、部下を信頼することの大切さを
知ることあgできた。だから葛城一尉や赤木博士の命令は、私の意思だと思って
従ってほしい」

 ともいわれていた。

 レイがこの世で信用できるのは、碇司令ただ一人だけだった。葛城一尉や赤木博士は
苦手だったが、二人を否定することは碇司令を否定するのと同義だということを
レイはよく理解していたし、碇司令の意志がネルフのすみずみにまで行き届いて、
みんながレイのためにいろいろとしてくれているのも知っていた。
119名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/01(月) 23:50:08 ID:???
53ページ 〜54ページ

 レイは、みんなとの絆を大切にしなければならないと自分に言い聞かせている。
なぜならそれは、みんなの碇司令に対する「愛」にほかならないからだ。レイは、
碇司令になり代わってエヴァのパイロットを務めることを嬉しく思っていた。
その座にみんなとの強い絆があった。現在の綾波レイを型どるものすべてが、
そこに集約されているようだった。

 その座は、レイの魂の座だった。そしてその魂は、碇ゲンドウによって導かれ、
創られたものだった。その座は、レイとゲンドウの二つの魂を連結し、連動するものだった。

 レイは、その座を手離したくなかった。
 レイは、碇司令との絆が永遠に続くことを願っていた。
120名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 00:00:01 ID:???
54ページ 〜 55ページ

レイのゼロ号機起動実験

レイは、零号機による初の起動実験に失敗する。その原因は、レイの精神的な
乱れだと考えられる。一体、レイのなかに何が発生したのか。

 レイが零号機の中で見たビジョン――それは楽しそうに微笑む碇司令と妻のユイ、
そして息子のシンジの姿だった。そこには、自分よりも碇司令にもっともっと
近い人の存在があり、それを見たレイは困惑する。そしてレイは、自分の内に
とてつもなく暗く凶暴なものがいることを感じる。
 じれは私自身なの? それとも零号機?
 「なぜ、私は創られたのか。私はなんのために存在するのか。私は、何者なのだ。
私を創った人たちを、私は許さない」
 さまざまな疑惑と不審がレイの脳裡を駆けめぐる。レイは零号機を大破させてしまい、
自らも重傷を負う。病室のベッドのなかでレイは不安に駆られる。
 「大切な零号機を、自分のミスで壊してしまった……。零号機はもう、動かないかも
しれない。私はもう、みんなから信用されなくなるかもしれない。エヴァのパイロットの座は
他のだれかに代わられるかもしれない。碇司令に捨てられるかもしれない……」
 いろいろな不安が錯綜するが、「けがをしてしまった自分には今、どうすることもできない」。
 そんなみじめなレイの耳に、悪い知らせが入ってくる。本当にエヴァの新しいパイロットが
選出されたのだ。新しいパイロットサードチルドレン、碇シンジ、碇司令の息子。
 「負けたくない。負けるわけにはいかない」
 がしかし、サードチルドレンが碇司令の息子であるという事実は、レイの上に
重くのしかかる。レイにとってサードチルドレンに負けることは、碇司令の愛情を
失うことと同義なのだ。

 そして、ついに使徒出現。エヴァンゲリオン初の実戦の時は迫っていた。
121名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 00:12:40 ID:???
55ページ 〜 56ページ

レイの本音

 サードチルドレン・碇シンジは初の搭乗を拒否する。
 「レイ、予備が使えなくなった。もう一度だ」
 「はい」
 レイは嬉しかった。またエヴァに乗せてもらえる。碇司令は、レイに再びチャンスを
与えてくれたのだ。碇司令はサードチルドレンを、あくまで予備として扱っている。
正規のパイロットは、ファーストの私であると認めているのだ。怪我はしているが、
今日来たばかりの少年に負けるはずがない。長い間ずっと、碇司令と苦労を共に
してきたのだから。

 しかし少年は、白く痛々しい包帯姿のレイを見て、初号機の搭乗を承諾する。
レイは、自分が役立たずだと思わされているようで口惜しかった。

 「ついさっきまで、乗らないといってたくせに……」

 本来、エヴァのテストパイロットは、碇司令の息子のシンジが務めるべきでは
なかったのか。それをシンジが碇司令の元から逃げ出したがために、その役目が
レイに回ってきたのではないか。面倒なことは他人に押しつけておいて、都合が
よければ乗るというのか。そんな人間不信が、レイの胸中に渦巻く。

 少年(碇シンジ)は、初号機の起動に成功する。そして、使徒の脅威は去る。が、
レイは自分が少年に助けられたとは思っていなかった。

 「なんてへたくそな操縦なの! 初号機壊しちゃったじゃないの。それに
民間人にも怪我人が大勢出たわ。私だったらもっとうまくやっていたわよ」
122名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 00:20:30 ID:???
56ページ 〜57ページ

 翌日、碇司令がレイを見舞った。
 「レイ、体の具合はどうか
 「……………」
 「そのままでいいから、私のいうことを聞いてほしい。レイ、物事には順序というもの
があるのだ、初号機が起動に成功したのも、使徒に勝てたのも、そしてパイロットが無事に
生還できたのも、すべてファーストチルドレンのレイやセカンドチルドレン、それに
ネルフのスタッフが長い年月をかけて研究しm実験を重ねた結果なのだ、私は、このことを
決して忘れたりはしない。レイはいままで、本当よくやってくれた」

 思えば、碇司令と共にこの数年間、プロトタイプの実験をしてきたレイの役割は、
神経接続方式による「イージーオペレーションの確立」、パイロットの安全を確保するための
「システムの開発」であった。兵器としての機能を優先しつつ、これらの内容を達成するのは
困難をきわめた。死と隣合せの実験は、どこまで苦痛に耐えられるか、どこまでやれば
死んでしまうのかを確認するための作業の連続だった。普通の少年がエヴァの操縦を
簡単にこなせたのも、その積み重ねがあったからなのだ。

 碇司令は、その労をねぎらってくれているのだ。レイは、碇司令のやさしさを感じ、
こみ上げてくるものがあった。自分は幸せ者なんだと思った。レイは、碇司令に
どこまでも追いて行こうと、改めて思った。碇司令が再び口を開いた。
123名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 00:39:24 ID:???
57ページ 〜 58ページ

 「レイ、改めて頼みがある。サードチルドレンは、パイロットとしてはまだ未熟だ。
先輩として、どうか面倒を見てやってほしい。それにシンジは私の息子だということで
甘えもあるようだ。私はネルフの司令官として、シンジを息子として扱うわけにはいかぬ。
必要があれば私に代わって、シンジを叱ってやってほしい、よろしく頼むよ、レイ」

 学校に復帰したレイは、シンジとクラスメイトになるが、レイは自分からシンジに声を
かけようとしない。レイがシンジと先に仲よくなってしまうと、シンジは他の友だちを
つくることができなくなる恐れがあるからだ。レイは、自分たちが外の世界からの来訪者
であるということを理解していた。
 そんな状況にありながらシンジは、自分がエヴァのパイロットであることを、授業中に
吹聴してしまう。当然、授業は滅茶苦茶になる。レイには、とても信じられないことだった。

 「エヴァのことは、最高機密のはずよ! ネルフのみんなに迷惑がかかるじゃないの!
あなたは、他人にほめられたくてエヴァに乗っているの」

 エヴァの敵は使徒だけとは限らない。学校がテロの対象にならないという保証はどこにも
ないのだ。前の戦闘ではクラスメイトにも被害が出て、その多くが学校を去っている。それに……
EVAには本当はレイが乗るはずだった。
124名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 00:41:31 ID:???
58ページ

 碇シンジは、鈴原トウジに殴られる。恐らくは、親友の相田ケンスケがトウジにたきつけたのに
違いない。クラス一の軍事マニアであるケンスケにとって、本物のパイロットの存在は
厄介で邪魔なのだ。非常招集がかかっていたので、止めようと思えば止められたのだが、
レイは窓からその様子を黙って見ていた。

 レイには、トウジがシンジを殴らなければならない理由があることがわかっていた。
トウジが手を出さなければ、シンジはクラスのだれとも友だちになれないだろう。
ヒカリに叱られることで、無用な争いが起きるかもしれない。そうなると、クラスが
バラバラの分裂状態になってしまう。トウジはそれを心配しているのだ。

 クラスのリーダー格であるトウジが手を下せば、他の者は納得するだろう。トウジは、
あえて暴力をふるうことで、責任は自分一人で背負い込むつもりなのだ。殴るほうも辛いのだ。
 レイは鈴原トウジのなかに、碇司令とは異なる男のやさしさを感じていた。
レイはシンジを叱らないですんだことを、どんなふうにされに伝えればよいのかわからなかった。
 「非常招集。先、行くから」といい残して、その場を去っただけだった。
125名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 00:54:45 ID:???
58ページ 〜 59ページ

 その日の朝、シンジは突然にレイを訪ねてきた。サードチルドレンの少年は、
碇司令のメガネを勝手にかけていた。そのメガネは、レイと碇司令をつなぐ
絆の証だった。碇司令がレイを護ってくれた魂の象徴だった。少年にはそのメガネ
がふさわしくないように見えた。こんな少年に、大事なメガネを取られてはならない。
取り返さなければいけない。偶然、重なり合う二人。
 「どいてくれる!」
 「なに!?」
 「どうしたの。用があったら早くいいなさいよ」
 レイにとって、この少年は謎だらけだった。突然、目の前に現れたり、突然いなくなったり……。
この少年は自分の行動が相手に何を与えるのか、その自覚がないようだった。まるで意思が伝達できない
゛使徒゛のように厄介な存在だった。そればかりか、少年は父である碇司令と敵対する者
のようにさえ思えた。

 「碇司令に信頼されているのは、私だけなのよ。碇司令は私が守るわ」

 レイは、碇司令の意思を自分にいい聞かせるように、メガネをケースにしまい込んだ。
そして、「今日の起動実験はなんとしても成功させなければ……」と胸に叩き込んだ。
 シンジは、「赤木博士に頼まれてきた」といっているが、赤木博士はそういう事を
忘れるような人ではない。恐らくは、赤木博士は少年に気を遣って、ここに行くように
仕向けたのだろう。自分の意思で行動できない少年を、レイは情けないと思って軽蔑さえしていた。

 「それとも赤木博士は、少年と自分が一緒になることを望んでいるというの?
碇司令と自分を引き離そうとしているの? わざわざ起動実験の日に寄こすとは、
赤木はじゃ背は実験の失敗を願っているとでもいうの?」
126名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 01:09:45 ID:???
59ページ 〜 60ページ

零号機の再起動実験

 少年はレイに向って、無神経な言葉を投げかけた。
 「今度はうまくいくといいね」

 まるで他人事のように、それは自分の成功を自慢し、レイを見下す態度ではないか。
 「綾波は怖くないの、零号機に乗るのが……前回の実験で大ケガをしたって聞いたから、
平気なのかなと思って」
 どうしてこの少年は、自分にそんな事が言えるのか。私が恐がって、またヘマをやるとでも
思っているの。私がそんなに信用できないの。私の能力をそれぐらいにしか評価していないの。
碇司令は決して、そんな言葉は口に出したりしない。
 「あなたは碇司令のコドモでしょ子供でしょ。信じられないの、お父さんの仕事が……」
 少年は、碇司令の仕事を拒否する。碇司令の仕事は、ネルフスタッフのみんなの仕事でもある。
そしてレイの仕事でもあるのだ。レイたちが長い歳月をかけてやってきた研究の成果なのだ。
少年の言葉は、レイの存在そのものを否定するに等しかった。

 レイは、少年をひっぱたいた。
 でも、レイは本当は不安だった。今日の再起動実験を失敗したら、エヴァのパイロットから
はずされるかもしれない。ネルフのみんなとの絆が断ち切れてしまい、碇司令に捨てられるかもしれない。
レイにはいまの自分が、壊れて捨てられたこのメガネのように思えた。碇司令のやさしい言葉
さえいまのレイには遠くに感じられた。レイは、碇司令が守ろうとしたものがなんだったのかを
考えていた。
127名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 01:10:41 ID:???
60ページ

 「これより、零号機の再起動実験を行う」
 碇司令の言葉には、もういままでのやさしさはない。冷厳な氷のような言葉に思えた。それまでの
レイに対するやさしい言葉は、厳しい現実のためにあったのだ。レイは、碇司令があの事故のあと、
メガネを変えたことの意味を理解していた。それまでのやさしいメガネは捨て、厳しいメガネに
変えた碇司令の決意を、レイはだれよりもよく理解していた。

 レイは、自分の分身であるそのメガネに目視を走らせ、「やさしさにすがてはいけない。
強く生きなければ」と、自分にいい聞かせていた。
 零号機の再起動実験は成功する。
 「再起動は成功した。戻れ」
 レイは極度の緊張感から解放され、安堵の表情を見せる。
 「これでまた、みんなと仕事ができる……」
128名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 01:22:31 ID:???
61ページ 〜 62ページ

 第5使徒ラミエルの加粒子砲により初号機は大破し、少年の心に大きなキズを負わせる。
そして今度は少年は、レイに向かって甘ったれた言葉を吐く。
 「ボクはいやだ。綾波はまだアレに乗って恐い目に遭ったことがないから……僕はもう、あんな思いしたくない」
 「じゃ寝てたら。初号機にはあたしが乗るわ」
 「……!?」
 「あなたはまた、逃げ出すのね。乗らないのなら、作戦が終了したらネルフから出て行けば……
あなたには失望したわ。もう、二度と顔を見せないでね」
 「サヨナラ」
 少年の言葉には、レイに対して 「初号機に乗って死ね」 というに等しい意味が込められているのだった。
それでもレイの決意波変わらなかった。もし少年が目覚めなければ、レイは一人で出撃するつもりだった。
もとより死ぬ覚悟はできていた。それにこれまで何度も危険な目には直面してきたではないか。
レイは、自らの手で碇司令の気持ちに応えたいと思った。

 「少年がそのまま目覚めなければよかったのに……」
 作戦会議で、レイは防御を命じられる。
 「なぜ砲手をやらせてくれないの。私にだってできるのに」
 レイは不満だった。が、赤木博士の説明で納得するしかない。
 「わかりました。私は“初号機≠守ればいいのね」
 少年は防御のほうが危険だということに気づいていないようだった。
 「これで死ぬかもしれないね」
 レイの怒りは頂点を通り越していた。
 「どうしてそんなことをいうの。私の役割は初号機を守ることなのよ! 私のことが、
そんなに信じられないの?」
 「あなたは死なないわ、私が守るもの」
 レイは自分の生きざまを、少年に見せてやらなければならないと思っていた。
129名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 01:30:42 ID:???
62ページ

レイの決断

 レイは自問自答する。
 自分はなぜ、エヴァに乗るのだろう。
 ネルフのみんなとの絆を守らなければならない。
 そのためには、この作戦を成功させなければならない。
 少年からファーストパイロットの座を取り戻さなければならない。
 しかしこの無謀な作戦は、すべてをこの少年に託している。少年が射撃をミスすれば、
零号機は死の危機にさらされてしまう。その反対に成功すれば、少年は自分だけを
自慢するだろう。増長するだろう。そしてレイは、自分の立場を失ってしまう。
 レイは、それまで培ってきたすべてのものを少年に奪われてしまっていた。
碇司令の信頼さえも、レイは失ってしまった。

 「私はほかに(奪われるものは)何もないもの!」

 レイは現在の自分が、少年に運命をもてあそばれる操り人形のように思えた。
こんな運命を断ち切るためには、少年に自分の死にぎわを見せつけることしか
残されていない。

 「時間よ、行きましょ」
 「じゃ、さよなら」
130名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 01:35:57 ID:???
63ページ

 ミサトの判断ミスから、、少年は射撃をミスする。
 迫りくる使徒の加粒子砲。
 盾がもう保たない。
 融けてゆく零号機。
 沸騰するLCL……。
 「負けてたまるか」
 うすれゆく意識の中で、レイは気丈な姿勢を取り続けていた。
 「綾波、大丈夫か、綾波……」
 その声で、レイは気がつく。レイには意識喪失直前の記憶がなかった。
 「私は、起動実験を失敗したの?」
 レイの目の前にいる少年は泣いていた。
 「なに、泣いているの?」
 レイは、少年がだれなのかわからないでいた。
 「こんなとき、どんな顔をすればいいのか、わからないの」
 「笑えば、いいと思うよ」
 涙で濡れた少年の顔は、だれかに似ていた。そうだ、レイはこの少年のことを知っていた。
 碇シンジ……。
131名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 01:48:50 ID:???
64ページ

 レイはあのとき、碇司令が守ろうとしたものが何だったのかを理解した。碇司令が
守ろうとしたのは、この少年、シンジだったのだ。碇司令はレイを犠牲にして、
傷つけてしまったことを後悔していたのだ。
 「自分は卑怯で、億秒で、ずるくて……」
 「それで、碇司令はシンジを呼び寄せたのね」
 レイはそれまで碇司令と敵対し憎みあっていたはずのシンジが、実は碇司令に
よく似ていたことにとまどっていた。
 「そしてたぶん、碇司令もこの少年と同じで、いつか私のことを捨てるのかもしれない」
 もうシンジと争うことなど無用なのだった。
 「初めから私はこの少年の替わりだったの、やさしくしてくれたのは、もういらないということだったの」
 「こんな時、碇司令ならどうするのだろう?」
 レイは碇司令から大事なことを教わっていた。それは 「まごころ」 だた。
 不器用なレイが生きてゆくためにはまごころが必要だった。
 まごころ、それは最初に人間が最初に通じ合わせた心のふれあい。
 人間が決して忘れてはならない大切な心。
 そして進化に行きづまった人類が忘れてしまった大切なモノ。
 「碇司令は私の中にいるから」
 「今はそれでいいの」
 「これからは、新しい二人目の綾波レイとして生きてゆこう」
 「そして自らに与えられた運命を受け入れてゆこう」
 レイは、そう決心したのだった。
 そしてレイもあの時の碇司令のように、少年に優しく微笑んであげれば良いのだと
きづいた。「今はそれしかできないから」
 「もう失ったモノは戻ってこないから」

 〔注〕
 碇シンジが射撃をミスったことを、笑ってごまかそうとしたのだとレイが気づいたのは、
後になってからのことだった。これは後にレイとシンジの関係が破綻することの伏線になっている。
 レイの行動や発言には、ゲンドウとは違う「男の強さ」が感じられる。この時、すでに
レイの中には、トウジに対する思いが強くあることをうかがわせている。