投下する作品のジャンルを問いません。
短編、長編、LRSにLAS、パロ、シリアスなんでもどうぞ。※エロは板的にNG
ただし、書き始めた以上は責任を持って完結を目指しましょう。
でないと、読み手の人がイーッてなります。
スレ違いと指摘する人がスレ違い。
趣味の違う作品は華麗にスルー。
このスレで叩く理由はあり得ません。
ただし、ここはエヴァ板なので他の作品とのコラボは非推奨。
乗せても良いけど、理解されずに誰もレスを付けないかも。
前スレ
★エヴァ小説を投下するスレ(ノンジャンル)★
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/eva/1211668489/
立てたぞ
案内出来なかった・・・orz
>>2 乙
スレ立ての目安容量決める方が良いかもね
普段janeで見てるから容量気付かねえ…
450〜480kでいいんじゃないかね?
職人このスレに気付くかなあ
6 :
戌:2008/07/11(金) 22:08:36 ID:M2eSORva
どんな作品でも大歓迎という原則だけは譲れないぜ!!
コラボは非推奨……か。コラボも大歓迎と書いてもらいたいところだが、まぁ、許してやろう。
ただし、他作品とからめたからといって、叩き出すやつがいれば
徹底的にこのスレを荒らす。いいな?
俺(元祖スレ主)は他作品とのクロスを待っている。ただしここはエヴァ板だ。
エヴァの世界観を尊重してくるよ。
>>5 自分はLive2chだから容量見れるんだが
気付いた時には既に500kだったよ
結構1回の投下量多いスレだから450k辺りで準備した方が良いかも
後過疎った時は980辺りで立てるとかかな?
8 :
戌:2008/07/11(金) 22:22:19 ID:M2eSORva
「読み手の人がイーッてなります」の表現が好かんな
次スレでは表現を変更するという方向で異議はないか?
450k超えたら気付いた人が報告で、500k近辺で次スレかな。
過疎ってたら980踏んだ人でいいとおも
そうだね
450kを目安にしよう
うむ、450kか。それでいいだろう。
重ねて言うが、誰かクロスを書いてくれ!
このスレを立てたそもそもの理由はクロスが読みたかったからなんだ!
頼む!
何とのクロス?
テンプレ追加
ageるヤツと荒らしは徹底して無視&スルーで
sage進行推奨
14 :
戌:2008/07/11(金) 23:01:22 ID:???
>>12 できれば有名どころがいいな。なおかつエヴァと絡めて不自然にならない作品だと◎。
マイナーなものでもさりげなく説明を入れて読者を置いてきぼりにしないように配慮してくれればいいんだけど。
投稿者以外はコテは非推奨 ※荒らしとみなしておk
17 :
前スレ6:2008/07/12(土) 01:36:11 ID:???
続き持ってきたんだが、こっちに書けばいいのか?
それともまだ早い?
正直俺、こういうの初めてなんでよく分からんのだよ。
ていうか、容量上限来たのって、もしかして俺が詰め込んだせい?
いや、でも、連投規制対策には詰め込み必須だしなぁ…。
あ、
>>1はスレ立て乙!
>>17 投下してくれえええええええええええええええ!!!!!!!!!!!
頼む!!!続きを!!!
ここでいいんだよ
今投下していいんだ
ここはそのためのスレだ
20 :
逆行104:2008/07/12(土) 02:11:44 ID:???
「あら? シンちゃん、箸、止まってるわよ。
今日の食事、口に合わなかった」
「あ、いえ。そんなことないです。…ほら」
ぼーっとしていたシンジはミサトの言葉に慌てておかずを口に運び、
モゴモゴと咀嚼してみせる。
そんな二人に、呆れた声を出したのがもう一人の同居人だ。
「そんな台詞、よく口から出てくるわね、ミサト。
これ全部、シンジが作った物じゃない」
「あ、あはは。冗談よ冗談。……っていうか、
シンちゃんのツッコミ待ちのつもりだったんだけど」
その言葉に、女性二人の視線がシンジに集中した。
「…う?」
シンジの頬を、汗が伝う。
アスカはそんなシンジを胡乱な物でも見るような目で眺め、
「それだけこいつが重傷、ってことね」
そう言ってから髪をかきあげると、
「ま、アタシみたいな美少女と急に一緒に暮らすことになったんだから、
無理もないけど」
そう、臆面もなく言い放った。
「…そんなんじゃ、ないよ」
対して、シンジは弱気に反論するしかないが……。
実際には、アスカの言う通りだった。
アスカと同居するという現実が、まだ受け止め切れていない。
(だって、前の世界ではユニゾン訓練の後からだったのに、いきなり、こんな……。
同年代の女の子と同居するなんていうのが、そもそも無茶なのに……)
しかし、シンジの戸惑いなんて女性陣二人にとっては些細な問題らしい。
シンジがもう何の反応も見せないと見て取ると、二人で会話を始めた。
21 :
逆行105:2008/07/12(土) 02:13:21 ID:???
「あ、そうだ。アスカ、何かおっきな家具とかで必要な物があったら早めに言っといてね。
こっちで手配して、業者に直接頼んじゃうから。今何か必要な物、ある?」
「そうねぇ。やっぱり収納は少ないわよね。
特に洋服入れられるようなヤツなんか絶望的よ。
一体、これまでどーやって暮らしてたのか、って感じ。
これじゃ、荷解きも出来ないわよ」
「おっけー、了解! ……あ、カタログ見る?
シンちゃんの時に持ってきたのが、確か部屋のどっかにまだあると思うけど」
「いいわよ。ミサトのセンスで適当に選んじゃって」
「あら、いいの? 本当に適当に選んじゃうけど」
「だって、あの部屋からカタログなんて見つけるよりは、
砂漠で米粒見つける方が簡単じゃない」
「……いくらなんでもそんなに散らかっちゃいないわよ」
楽しそうな会話の影で、シンジはもそもそと無言で食事を続ける。
……少し侘しかった。
しかし二人はあいかわらずで、
「そうだ、新しいベッドも必要よね」
「ベッド? ああ、元からあるの使ってるから、別に要らないわよ」
「だってそれ、シンちゃんが使ってたヤツよ。いいの?」
「……いくら配達が早くても頼んだその日に来るワケじゃないでしょ。
元々日本で暮らしてたミサトには分かんないかもしれないけど、
一日だって床で寝るのはアタシにはキツイのよ」
「ふぅん。だからシンジ君の使ってた物でも、ないよりはマシ?」
「…そうよ」
そこで急に、ミサトは今まで見向きもしていなかったシンジの方を向くと、
「だってさ、シンちゃん。よかったわね」
「な、何がよかったなんですか?! 変なところで僕に振らないでくださいよ」
そんなことを言って、シンジを大いに慌てさせた。
22 :
逆行106:2008/07/12(土) 02:14:29 ID:???
「ご、ごちそうさまっ!」
そこから逃げるように、シンジは席を立つ。
食器を下げると、そのまま洗い物に移行した。
手は自動的に洗い物を続けながら、
シンジは先ほどのことを思い返す。
(きっとミサトさん、気を遣ってくれたんだろうけど……。
けど、もうちょっと別の気の利かせ方だってあるだろうにさ…)
そんな折、
「残りの食器、持ってきたわよ」
アスカの投げやりな声とともに、後ろから食器が差し出された。
突然のアスカの接近に、少しだけ、体を緊張させながら、
「あ、すぐ洗っちゃうから、そこに置いといて」
と、シンジは言ったのだが、そこからさらに手がにゅっと伸びてきて、
「ほら、スポンジ貸しなさいよ」
シンジの手から、スポンジを奪い取ろうとする。
「い、いいよ。今日の当番は、僕なんだから」
「一から十までやられちゃうと、居候気分で何か落ち着かないのよ。
いいから貸しなさいよ、ほら」
しかしシンジは、それでも譲らなかった。
「こういうの、やりたい気分なんだ。
だから、アスカは座っててよ。…ね?」
そこまで言うと、アスカの手はすっと抜けていき、
「……そう。なら、いいわよ。
もう、頼まれたって手伝ったりしてやんないからね!」
ドタドタと、アスカが遠ざかっていく気配。
それを確認して、シンジは、
「はぁー」
と大きくため息をついた。
23 :
逆行107:2008/07/12(土) 02:15:42 ID:???
戻ってきたアスカの不機嫌なオーラを見て取ったミサトは、
既に読み終わっていた雑誌に再び視線を落とした。
「うわ。この車、無駄にかっこいいわねぇ。
……愛車には、したくないけど」
などとわざとらしくこぼして、熱中している演技までしてみせる。
その涙ぐましい演技が功を奏したのか、
アスカはミサトを通りすぎ、ミサトはほっと息をついた。
それからアスカはテレビの前にどっかりと座り込んで、
ガチャガチャとリモコンを操作してチャンネルをランダムに変え続け、
「……どれも、つまんない。なんで日本の番組って、
こうくだらないのばっかりなのかしら」
と決めつけて、リモコンを放り投げてしまった。
……無音。
空気はよどみ、ミサトは必死に雑誌のページをめくる。
しかし、
「ねぇミサト。アイツ、怒ってんのかしらね?」
アスカの問いかけに、無視を決め込むワケにはいかなくなった。
「…あいつって、シンジ君?」
今気づいた、というように、返事をする。
そんなミサトの様子を、特に気にした様子もないままに、
「いきなり自分の生活空間に踏み込まれたワケでしょ。
そういうの、嫌がりそうじゃない」
アスカはテレビの真っ黒な画面を見ながら、そんなことを言った。
「んー。どうかしら。ただ戸惑ってるだけに見えるけど?」
ミサトがそう返しても、アスカから明瞭な答えはない。
ただ気のない声で、「かもねぇー」などと、
独り言のような言葉がこぼれるだけだった。
その様子に、ミサトは雑誌を膝に置いて、
アスカにきちんと顔を向けた。
24 :
逆行108:2008/07/12(土) 02:16:54 ID:???
「シンジ君のコト、気になるの?」
軽い口調で、ただし、
そこにからかうような響きが混じらないように気をつけて、
少しストレートに尋ねてみる。
アスカは、テレビを見つめたまま横に首を振った。
「気になってるワケじゃないわよ。ただ…」
「ただ?」
「……ただ、気に入られたいだけ」
「へ?」
思わず出たミサトの間抜けな声に、
アスカは自分が話しすぎたと感じたようだった。
「なんでもないわよ! アタシもう寝るから。おやすみ!」
唐突に立ち上がると、部屋の方に歩いていってしまう。
「ちょ、ちょっと、アスカ…?!」
ミサトはそれを引き止めようとするが、
「……ミサト。ずっと言おうと思ってたけど、
その雑誌、上下逆さまよ」
「え、ウソッ!」
慌てて膝の上に落いた雑誌を確かめるミサトに、
「バッカみたい…」
と、それだけを言い捨てて、
アスカは自分の部屋に入って、
扉を閉めてしまった。
25 :
逆行109:2008/07/12(土) 02:18:15 ID:???
閉じきってしまったアスカの部屋を見つめ、
「まずったわねぇ…」
もちろん上下逆になどなっていなかった雑誌を八つ当たり気味に弾いて、
ミサトはそう呟いた。
(……完璧に、見透かされてたわね。
あの子、シンジ君と違って目端が利くの忘れてた)
やはりぞんざいに、雑誌を横に放り捨てる。
(…ったく、セコイ真似はするもんじゃないわ。
一日目だからあんまり波風立たせたくなかったってのが理由だけど、
完っ全に裏目だわね。
信頼関係の構築、いきなり初日から失敗、かぁ)
そうやってミサトが頭を抱えていたその時、
洗い物を終えたシンジが戻ってきた。
ミサトの様子の変化に気づくこともなく、
「あれ、ミサトさん。…アスカは?」
シンジの問いに、ミサトは先ほど閉まった部屋を指差した。
「自分の部屋。引きこもっちゃったわよ」
「そ、そうなんだ」
それを聞いて、シンジはほっとしたような、残念そうな表情を見せる。
そして、
「あの、み、ミサトさん…」
いかにもオドオドとした様子で、
「アスカ、その、怒ってなかった?」
どこかの誰かと同じようなことを訊いてくる。
「あんたたちって……」
その言葉にミサトは、今日一日の疲れをまとめて吐き出すような、
大きな大きなため息をついたのだった。
26 :
逆行110:2008/07/12(土) 02:20:12 ID:???
夜。シンジはアスカの部屋の前に立って、そのドアをノックした。
「……アスカ。やっぱり、話を聞きたいんだ」
返答はない。
「アスカ? 聞こえてる? 返事、してよ…」
今度はもう少し強く叩いてみる。
だが、それでも中からは物音一つしない。
シンジは少し躊躇したが、
「アスカ。……入るよ?」
そう宣言してから、三秒間待って、
「だ、ダメだって言わなかったんだから、本当に入るからね」
往生際悪くそんな風に弁解しながら、ゆっくり、部屋の中に入っていく。
アスカの部屋は真っ暗だった。
「……アスカ? いる?」
小声で呼びかけながら、ベッドに近づいていく。
「アスカ、本当に寝てるの?」
やはり、返事はない。
薄暗がりに目が慣れてくると、かつて自分が使っていたベッドの上、
壁に身を寄せるようにしてアスカが寝ているのが見えた。
「……寝ちゃってる、のか。
綾波のこととか、きちんと話をしたいと思ったのにな」
闇の中、じっと、その寝姿を見つめる。
アスカの顔はシンジと反対側に向けられていて、その表情はさやかには見えない。
その事実はなぜか、アスカがシンジを拒絶しているように感じられた。
27 :
逆行111:2008/07/12(土) 02:24:36 ID:???
「アスカ…」
アスカの拒絶を意識した途端、体が自然に動いていく。
無意識に、シンジはアスカに近づいていた。
「アス、カ…」
そのまま、どんどんと、どんどんと近づいて、近づいていって、
アスカの規則正しい寝息が耳に届くほどになった時、
「ア、スカ…。僕、は……君、を…」
それが唯一自然なことで、そうするのが当たり前であるというかのように、
淀みのない動きで、シンジは両手をアスカの首元に伸ばして……。
「……あ」
――その手がアスカの肌に触れる直前、我に返った。
一歩、二歩と後ずさる。
自分の手を信じられない物でも見るように、見つめて、
「……一体、何をやってるんだ、僕は」
そのまま自分の体に封じ込めるみたいに、両腕を抱えた。
――それでも、アスカは目覚めない。何の反応も見せない。
「アスカ、僕は……」
シンジの葛藤を他所に、穏やかな寝息を連続させるアスカを見つめ、
「……僕は君のこと、好きになりたいよ」
シンジはそっと、部屋を後にした。
28 :
逆行112:2008/07/12(土) 02:26:01 ID:???
呟かれた声も、閉ざされていく闇の中に、置き去りにされて、
光も音も、全てがなくなった後。
真正の暗闇の中で、アスカの体がわずかに身じろぐ。
壁に密着しそうなほど片側に寄ったアスカの体は窮屈そうで、
反対側には充分なスペースがあるのに、
それでもアスカは頑なにそちらに行こうとはしない。
まるでベッドの中心に何かの境界線があるみたいに、
半分だけのスペースで寝て、半分だけ布団をかけて、半分だけ枕を使う。
……そんな中で、規則正しかった寝息は止まり、
再びアスカが身じろぐ。
そして、
「バカ、シンジ…」
呟かれた声は、閉ざされた闇の中、誰にも届くことなく、消えた。
29 :
6:2008/07/12(土) 02:28:27 ID:???
以上。だってもう眠いので。
いちいち前スレとか入れるの面倒なので、
ハンドル名は引き続き6という事でお願いします。
気が向いたら明日辺りまた来るかも。
乙!GJ!続きをまた待ってるぜ!
31 :
6:2008/07/12(土) 13:56:21 ID:???
昨日の今日だが……
32 :
逆行113:2008/07/12(土) 13:57:21 ID:???
「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく!」
シンジの記憶より一日遅れで果たされたアスカの転校は、
やはり前回と同じように全校に波紋を呼び、アスカは一躍時の人となった。
そんなケンスケの言うところの「猫も杓子もアスカ、アスカ」状態の中、
一人だけ、全くのマイペースを貫いている人間がいた。
――それはもちろん、綾波レイのことだ。
アスカがレイのことをずっと気にしていたらしい、と、
加持から聞いて知っているシンジは不思議に思ったのだが、
アスカの方もまた、レイに積極的に関わっていこうとしなかった。
NERVでも今のアスカは弐号機の調整にかかりきりなせいか、
まだきちんと顔合わせはしていないようだった。
……そしてまた、シンジとアスカの関係も同じような物だ。
いつまで経っても二人の間はぎこちなく、
特に学校ではアスカに気安く話しかけられない。
周りの人間の反応もそうだが、
シンジはアスカに『避けられている』と感じていた。
目的地が同じことは多いのに、
一緒に登校したり、下校したりということもない。
実際、今日も二人ともNERVで実験の予定があるはずなのに、
シンジに何も言わせるヒマも与えず、アスカはヒカリと連れ立って、
さっさと教室を出て行ってしまった。
「……僕も、行こうか」
シンジもその後ろ姿をただ見送るだけで、
積極的に追いかけるほどの勇気はない。
そして、そうなれば必然的に……。
33 :
逆行114:2008/07/12(土) 13:58:14 ID:???
「あ、綾波。綾波も、今から…?」
「…ええ」
そのやりとりをあいさつの代わりにして、
二人は並んで歩き出す。
しばらく、無言の行進が続いて、
「最近、よくわたしに話しかけてくるのね」
先に口を開いたのは、レイだった。
「そう、かな? 意識はしてないけど」
むしろ、今までが少なすぎたのではないか、とシンジは思う。
(でも、少なかったのが普通になるにも、理由がいるかもしれない)
そんな考えに、シンジが思い至った時、
「どうして?」
レイが、言葉を重ねてきた。
「え、と。意識してないから、どうしてって、言われても…」
「セカンドが、こわい?」
意外にも核心を突く言葉に、シンジは少し息を詰まらせて、
「……うん。それは、少しある。というか、怖いよ。アスカと話すのは。
アスカとは、ちょっと、色々、あって…。
だけど、少なくとも意識してレイに、……逃げてる、ワケじゃないから」
「なら、どうして話しかけてくるの?」
それがどうしても理解出来ないというように、レイが尋ねる。
「それは……」
シンジはまた少し、言葉に詰まる。
でも、それこそ意識していなかっただけで、
考えれば理由はすぐに知れた。
34 :
逆行115:2008/07/12(土) 13:58:55 ID:???
「きっと、綾波が話しやすいからだと思う」
シンジの返答に、レイは驚きに目を見開き、
会話を始めてから初めてシンジを正面から見た。
「…どうして?」
シンジは、また少し考えて、
「たぶん、きちんと話を聞いてくれるからじゃないかな。
返事は、ちょっとそっけないけどね」
そう言って『ははっ』と笑った。
レイは、なぜかその顔を直視出来ないというように、目を逸らす。
そして吐き捨てるようにぼそっと、
「買いかぶりだわ、それは」
心持ち早口で、そう漏らす。
「そうかな。そんなことは、ないと思うけど…」
否定される理由が分からなくて、
シンジは不思議そうに眉をたわめた。
そんなシンジから、やはり視線を逸らしたままで、
「わたし、もう行かなきゃいけないから。…それじゃ」
レイはそう言うと、シンジの前から足早に離れていく。
小さくなっていくレイを見送って、シンジは首を傾げた。
「もしかして、怒らせちゃったかな…」
答えなど出るはずもなく、しばらくしてシンジもまた、
レイの歩いていった道をゆっくりとたどっていく。
――そのやりとりを、後ろにいたアスカに目撃されていたと知ったのは、
次の日、学校に行ってからだった。
35 :
逆行116:2008/07/12(土) 13:59:43 ID:???
「アンタ、やっぱりファーストと仲いいんじゃない」
「……え?」
昼休み。アスカはわざわざシンジの席まで来て、
そんなことを言ってきた。
学校ではアスカに避けられていると思っているシンジにとって、
それは戸惑うような出来事だったのだが、
「昨日、一緒に歩いているとこ、見たわよ」
「あ、あぁ…。確かに、昨日は途中まで、綾波と一緒に…」
まるで当てつけるみたいにシンジの言葉をさえぎって、
「まーったく、うらやましいわぁ。
アタシとはまだ一言も口を利いてくれないファースト様と、
あんなに親しそうに…」
「そっか! アスカ、僕に綾波を紹介してほしかったんだ」
アスカが口にした台詞を聞いて、シンジはようやく得心した。
レイのところに全然あいさつに行かないな、と思っていたが、
それはシンジが綾波を紹介するのを待っていたからだったようだ。
(アスカも、綾波は苦手だったんだな。
言ってくれたら、すぐにでも紹介したのに。
……でも、それが言えないからアスカなのかも)
「な、ちょっと、アンタね…!」
やはり素直になれず、口ごもるアスカにシンジは笑いかけ、
「うん。もちろんいいよ。今、この時間なら、綾波は…」
そう続けようとしたのだが、
「アンタって奴は、一体どこまでズレてりゃ気が済むのよ!
いいわ! ファーストには自分で会いに行くから!」
アスカにまくしたてられて、逆に口をつぐむことになった。
経緯はとにかく、アスカはとうとうレイと対面する覚悟を決めたようだった。
キタ━━━━ヽ(^∀^ )ノ━━━━!!!!
37 :
逆行117:2008/07/12(土) 14:07:07 ID:???
「アタシ、アスカ。惣流・アスカ・ラングレー。エヴァ弐号機のパイロット。
仲良くしましょ!」
たくさんの物見遊山の観衆を引き連れて、
衆人環視の中放たれたアスカの自己紹介の言葉は、
シンジの記憶にある前の世界の時と、まるっきり同じだった。
「どうして?」
そして、レイの反応も。
とりあえず今はこのまま、何事もなく終わってくれればいい。
シンジはそう祈るように考えていたのに……。
「その方が都合がいいからよ。色々とね」
「…そう。でも、ムリだと思うわ」
そのレイの一言で、二人の間に不穏な空気が広がる。
「どうしてよ!?」
アスカが叫び、そして、
「わたし、あなたのこと、好きになれそうにないもの」
「なっ…」「えっ?」
レイが放ったその言葉は、アスカだけでなく、
後ろで様子をうかがっていたシンジまでも驚かせた。
「だって、あなたは――――」
レイが何かを言い、しかし今度は遠くにいたシンジの耳には届かなかった。
たぶん、レイの一番近くにいたアスカにしか聞き取れなかっただろう。
しかし、その言葉がアスカにおよぼした影響は強烈だった。
「アンタ、今なんて言った?」
シンジには、制止するヒマどころか、声をあげる間もなかった。
一瞬でレイまでの距離を詰めたアスカは、
レイの胸倉をつかんでその顔をにらみつけていた。
あ、あれ?ここまで?連投規制?
39 :
逆行118:2008/07/12(土) 14:24:06 ID:???
一方で、そんな状態にあってもレイの態度は崩れない。
「あなたのこと、好きになれそうにないと言ったわ」
冷静に、手にした本を横に置いて、じっと正面からアスカの顔を見つめ返した。
だが、アスカにはその態度すらも気に食わない。
両手にさらに力を込め、吼えたてる。
「そっちじゃない! その後よ! その後、何か言ったでしょ!?」
「そのあと? ……さあ、記憶にないわ」
「ウソ! 確かに言ったわ! さっきの言葉、もう一度言ってみなさいよ!」
「知らない。わたしはそれからなにも言ってない」
その言葉と変わらぬ態度が、アスカに何かの一線を越えさせた。
「アンタ、しらばっくれるのも、いい加減に…!」
カッとなったアスカが、右手を大きく振り上げて、
「や、やめてよ、アスカ!」
振りかぶったアスカの右手に、シンジがしがみつく。
しかし、それは完全に逆効果だった。
「アンタは、そうやっていつもコイツの…!」
アスカの中から最後の理性が吹き飛ぶ。
「放しなさいよっ! 放してっ!」
その全ての怒りは、本来の相手ではなく、自分を止めようとする少年に向かい、
ドザッ!
思わず顔をそむけたくなるような嫌な音がして、シンジは地面に倒れ込んだ。
――場の空気が凍る。
転校生が見せた意外な凶暴性と、おふざけのレベルを超えたシンジの倒れる生々しい音に、
緊張感をはらんだような空気が漂った。
「……ぁ」
アスカが思わず声を漏らす。
40 :
逆行119:2008/07/12(土) 14:28:08 ID:???
その場にいた人間は誰一人、口を開くことも出来ず、
皆、ただ呆然とアスカとレイとシンジ、三人の当事者たちを眺めていた。
だが、それは一時的な物で、何かちょっとしたきっかけさえあれば、
停滞し抑圧された感情がアスカへの不満や不信となって、
一気に押し寄せていくのは明らかだった。
緊張に耐え切れなくなった誰かが、今にもその口火を切ろうとして、
――しかし、それより早く、
「も、もう。痛いよアスカ。アスカってほーんと、馬鹿力なんだから…」
意外なほどに軽やかな足取りで、シンジが起き上がる。
それを見て、今まで遠巻きに様子をうかがっていたトウジが近づいてくる。
「…い、碇。お前、ホンマに大丈夫なんか?」
恐る恐る尋ねてくるトウジに、シンジは笑いかけると、
「うん。アスカってこう見えてすごく乱暴だからね。
訓練の時とかで、これくらいのことはしょっちゅうなんだよ」
「ひえぇ! 美人の相方やるのも楽やないなぁ。
ワイにはとてもマネできんわ……」
トウジのおどけた言葉に周りからも笑いが起こり、場の空気が弛緩していく。
それを感じ取って、内心ほっと胸をなでおろしたシンジが、
うつむいてしまっているアスカに何か声をかけようとした時、
「碇くん。保健室に行きましょう」
いつのまにか傍らにいたレイに、その腕をとられた。
「あ、綾波…? で、でも……」
突然のレイの行動に狼狽するシンジに、レイは顔を寄せて、
「彼女は興奮しているわ。時間をおいたほうがいい」
ささやかれた言葉と、呆然として、
いまだに事態の把握が出来ていないように見えるアスカを一瞥して、
「う、うん…」
シンジはうなずいた。
41 :
逆行120:2008/07/12(土) 14:32:19 ID:???
どこか不完全燃焼気味な群集をかき分けて、
シンジとレイは校内へと向かっていく。
それによって、集まっていた人垣もまた、
しらけたように少しずつバラけて散っていく。
――だが、それでもその場に残る人間もいた。
その内の一人だった相田ケンスケは、
やはりその場に立ち尽くしたままのアスカに寄っていった。
その目に強い敵意を宿して、口を開く。
「惣流、碇に感謝した方がいいんじゃないか?
あのままじゃ、オマエ、本当に悪者になってたぜ?」
その言葉は敵愾心に満ちた物であっても、決して理屈に合わない言葉ではなく、
だが、
「あんなの……。アタシが頼んだワケじゃないわよ…」
アスカはそれを突っぱねた。
メガネに隠れたケンスケの表情が、険悪さを増す。
「ふぅん。惣流はやっぱりそうなんだな。
さぞいい気分だろうね。そういう風に、
何でも自分を中心に世界が回ってるって考えるのはさ。
だけど、そういう生き方が…」
「そこまでや」
肩をつかまれたケンスケが、いきり立って背後のトウジに勢いよく向き直る。
「止めるなよ、トウジ。あいつ、シンジに助けられたくせに…!」
しかし、トウジは首を振った。
「一番それを分かっとるんは、まちがいなく惣流や。
……プライド高そうやからな。色々フクザツなんやろ」
ケンスケはもう一度、トウジの顔を苛立たしげににらみつけ、
「わかったよ…!」
メガネの奥に色々な感情を押し込めると、
トウジと二人、連れ立ってその場を後にした。
42 :
逆行121:2008/07/12(土) 14:33:44 ID:???
――シンジのケガは、実際に大したことはなかった。
擦過傷がいくつかと、何箇所かの軽い打撲。
保険医からそれを聞き、治療を任せると、レイはすぐに立ち上がった。
「それじゃ、碇くん。わたしはもう行くから」
そう言って、保健室を出ようとする。その、背中に、
「あ、ありがとう、綾波…」
シンジはそう声をかける。
だが、その感謝の言葉に、レイはしかし、
「…ごめんなさい」
なぜか謝罪の言葉を残し、廊下に消えていった。
廊下に出ると、レイは教室とは逆方向に数歩、歩いて止まり、
「彼のケガ。大したことないそうよ」
誰もいない廊下に向かって、そう言った。
いや、無人、ではなかった。
バツの悪そうな顔をして、柱の影からアスカが出てくる。
「な、なんで…」
「そのために、ここにいたのでしょう?」
まるで温かみのないレイの言葉に、アスカはひるみながら、
「な、なんでアタシに、そんなこと教えるのよ」
精一杯の虚勢を込めて、そう問い質す。すると、
「わからないの?」
「…え?」
「教えたのだから、帰って、と言っているの」
それだけ言うと、今度こそ、レイは教室に向かって歩き始める。
アスカのことは、もう振り返りもしない。
ただ、階段を登り、アスカの姿が見えなくなってから、
「……イヤな感じ。これは、なに?」
レイは一人、胸を押さえた。
43 :
逆行122:2008/07/12(土) 14:39:14 ID:???
昼休みの終了間際。
治療を終え、教室に戻ろうとしたシンジの前にも、
待ち伏せていた人影が現われた。
「そろそろ来るころじゃないかと思ったんだ。
まだ休み時間が終わるまで、五分くらいなら時間はある。
ちょっと歩こうぜ?」
「……うん」
シンジはその人影、相田ケンスケについて、歩いていく。
「さっきの、見てたよ。碇、ほんとにあいつが大切なんだな」
「……うん」
やはり、素直に。とりつくろうことなく、うなずく。
「オレだって、他人のことをあんまりとやかく言いたくはないんだ。
……だけど碇。やっぱりあいつは普通じゃない」
「アスカには、何か秘密があるの?
一体ケンスケは、何を知ってるんだよ…!?」
かみついてくるシンジに、ケンスケも足を止めた。
シンジを振り向き、とつとつと話し始める。
「オレ、見たんだよ。オーバー・ザ・レインボウで使徒が襲ってきた後、
オレは甲板に出て色々見学してたら、その時ちょうど惣流がやってきて…」
「やってきて? それで、どうしたのさ?」
ケンスケはしばらく躊躇うように沈黙した後、
「あいつ、いきなりとんでもないことを始めたんだ。
そこにあった重そうな瓦礫を持ち上げて…」
そうしてケンスケは話を始める。
レイにあれだけ言われても、結局その場を離れられなかったアスカが、
物陰で話を聞いているのも気づかずに。
――そしてアスカも、思い出す。
『その時』のことを。
44 :
逆行123:2008/07/12(土) 14:42:27 ID:???
――オーバー・ザ・レインボウでの第六使徒との戦いの後、
「ちょっと一人で風に当たりたいから」
と断って、アスカは一人で甲板に出ていた。
もちろんシンジやミサトに、
「絶対ついてこないでよ!」
と釘を刺すことも忘れない。
実際に後ろを振り返って、誰もいないことを確認しておく。
そこで改めてきょろきょろと辺りを見回し、使徒との戦闘で出来た、
剥離した甲板の一部、つまりは大きな瓦礫、を持ち上げて、
「これが頭になんて当たったら、きっと余裕で死ねるわね」
そう呟いて不敵に笑ってから、それを思いっきり上に放り投げた。
それは与えられた運動エネルギーを消費しつつアスカの頭上へと飛んでいき、
やがて全ての力を使い果たして、まっすぐに落下する。
――バン、という音がして、しばらく。
瓦礫はアスカから二メートルほど横に落ちた。
「……なんでよ!」
アスカが壁に向かって拳を振り抜く。
ドン!
しかし、アスカの拳は、壁まであと一センチという所で止まっていた。
拳を落として、歯を食いしばる。
「くそ、くそ、くそ、くそ、くそぉっ!」
噛み締めた歯の間から、呪詛の言葉が漏れた。
45 :
逆行124:2008/07/12(土) 14:45:16 ID:???
――あなたが消えたら、碇くんが哀しむもの。
それが、あの世界でアスカが最後に聞いた言葉だった。
「助けられたっていうの? アタシが、あの、ファーストに…!」
あの、赤い海の中で、アスカは一度、死を、自分の存在の消滅を覚悟した。
シンジに似せられた何かよく分からない物に囲まれ、
心をズタズタにされ、自己の存在の消滅を願わされた。
――その時だ。
ファースト、綾波レイがやってきたのは。
レイはアスカにまとわりつく影を吹き散らし、
消えかけていたアスカの元までやってきて、……アスカと同化した。
自分と他人の境界がなくなって、お互いの心と体が溶け合って混ざり合う、
あの不快な感触は、いまだに忘れようとしても忘れられない。
「……っく」
その時の感覚を思い出して、アスカは思わずぐっと自分の拳を握り、
……しかし今はもう、自分の中に異物が入り込んでいるような違和感はない。
かつてレイだったモノは、完全にアスカの中に吸収されていた。
それは、アスカの意志がレイのそれに打ち勝った、と考えることも出来る。
だがアスカには、どうしてもそうは思えなかった。
――きっとそれすらも、レイの意志。
「アタシのこと、嫌いなはずなのに。シンジに会わせないように、
一度は争いもしたっていうのに」
だがレイは、自分の身を投げ打ってまで、アスカを救うことを選んだ。
アスカには、そう思えてならない。
レイにとって、アスカがいない方がきっと、都合がいいはずなのに…。
「それでも、アタシを助けるの? シンジのためだからって、
自分を犠牲にしてまで…! アンタはどうして、そこまで自分を殺せるのよ!
そんなに、そんなことが出来るくらい、アイツのこと…」
言葉は、最後まで口に出来ない。
はっきりと口に出してしまえば、敗北感に、膝が折れてしまいそうで…。
46 :
逆行125:2008/07/12(土) 14:50:42 ID:???
アスカが死に物狂いでシンジの元へ進もうとしたのは、
そこにシンジと、自分自身の幸福を求めていたから。
……つまりは、それだって自分のため。
アスカにはどうしても、レイのような選択は出来ない。
出来る気がしない。
そして、レイのその献身の結果が、またアスカを戸惑わせる。
あれから、アスカに吸収される形で、レイとの同化が終わって、
「その結果が、この、ワケ分かんない世界で…」
気がつくと、アスカはドイツに『戻って』いた。
ただ単に、ドイツという国に戻っただけではなく、
まだ人がいなくなる前の、過去のNERVドイツ支部に、
文字通り『戻って』きていたのだ。
それもまるで、計ったように来日の直前というタイミング、つまり、
――アスカにとって、全てが始まる前に。
「これが、アンタの意志なの、ファースト? アタシを過去に飛ばして、
あの結末を変えろって、そう言いたかったの、アンタは…?」
どういう理屈が働いたのかは分からない。
時間移動なんてナンセンスだと思っていたし、
今でも完全に信じているとは言いがたい。
だが、レイが自分の全存在を懸けて、アスカを過去に送ったのだとしたら、
「嫌なのよ、こういうのは…! 自分の命が、自分の物じゃないみたいで…」
アスカには、それを受け止めるだけの覚悟がまだ、なかった。
47 :
6:2008/07/12(土) 14:51:47 ID:???
以上。
今出せるのは全部投下したんで、次は少し先になるはず。
乙です!乙!そしてGJ!!!!
急かしたくはないけど早く続き読みたいw
感心するよほんと!たいしたもんだ
ヽ(´ー`)ノ
49 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/12(土) 16:07:17 ID:X3VdLQYA
6の人GJ!
ときに、ここって他スレで書いたSSの続きって公表してもいいのかいな?
消滅したスレに書いた奴なんだが
続きが書けるなら前の分も含めて載せてみたい
カマンカマン!
載せればいいと思うよ
前スレのテンプレ書いたやつに
「それはここ最近クロスを暖めていた俺への差別ですか、そうですか」
とカキコしたのに512KBを超えました、とまたも退けものみたくされたぞw
とりあえずテンプレを考えた奴は新宿西口に来るよう
クロスいらね
やりたきゃ他板でやれ
以上
53 :
49:2008/07/12(土) 19:09:05 ID:???
ほいじゃ、まず他スレ既出分のみ・・・
54 :
49:2008/07/12(土) 19:20:16 ID:???
やあみんな、俺だ。
グレゴール・ザムザは、ある朝なにか気掛かりな夢から眼をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な毒虫に変わっているのを発見した。
俺はある朝、千代大海が連続優勝して横綱になり、幕内の相撲取りがみんなソリの入った髪形になる(なぜか幕下以下はそのままだった)という実に厭な夢から目を覚ますと
唐突に自分が知らない部屋にいることに気がついた。
まあ驚いたね。体型つーか顔かたちも変わってるし。もうブルワーカーの使用前と使用後もびっくりの大変身だ。
まあ一週間くらいは完全に混乱してたと思う。長すぎ?
くだくだしい説明は省く。
要するにFanFictionではよくある話で、エヴァによく似た世界の中にトリップしてしまったのだ。
まあ、俺がそう信じ込んでいるだけで、実は単に長い夢を見ているだけかも知れん。
この際どっちでも構わんけどな。似たようなもんだし。
普通はこれでシンジになってたり、ゲンドウになってたり、と登場人物の誰かに生まれ変わってるもんなのだが
(そういや中には男なのに何故かアスカになってたりするのもあった気がする。実にうらやましい)
残念ながら俺はオリキャラというかモブというか、聞いたこともないキャラになっていた。
役どころ?は主役どものクラスの同級生。冴えない顔立ちの男子で、どうやら一人称は「僕」。
ついでに言うと成績はどの教科も良くないし友達もあまり居なかったようだ。
もっとも人付き合いが良くないのとアパートに一人暮らしってのは、今から思い返すと好都合だった。
俺の態度がおかしいのを疑問に思った奴もいたらしいが、今ではそれも忘れ去られて淡々と過ごしている。
毎日暑いのと、年中真夏のこのご時世に部屋にクーラーがないことを除けばまあまあ快適な生活だ。
55 :
49:2008/07/12(土) 19:20:46 ID:???
いま、窓をでっかく開け放った教室の中では、ご存知根府川先生がいつもの昔話を始めている。
教え方は丁寧なんだが、昔話を始めるとエンドレステープ状態だ。
半ばあきれて入道雲の立ってる空に視線を移そうとして、窓際の赤い髪留め女に目を止める。
これが綾波レイとは未だに思えないんだが……
どういうわけか、この世界では綾波レイと惣流アスカラングレーの姿が逆転している。
取り敢えずこの間レイそっくりの「惣流」が転校してきたから、姿が入れ替わってるのは間違いない。
これで性格も入れ替わってたら楽しいんだが、そっちは多分そのまんまだ。
あ、多分、ってのはモブキャラの悲しさってやつな。直接お近づきになったわけじゃーないので、細かい性格までは知らないの。
そうそう、あとは碇シンジ。これも凄い。何が凄いってあれですよ。外見がしとしとぴっちゃんタブリスさま。
これが見た目、性格ともにアニメのままの黒ジャージ男やミリヲタのジャンと楽しげに会話したりとか。
一番頭を抱えたくなったのは数日前の昼飯時。
蒼みがかった銀髪の「惣流」さんが渚っぽい「碇」にバカシンジーって言って、言われた方があの<s>ホモっぽい</s>謎めいた微笑……じゃなくてあからさまなお愛想笑いでごめんとか言ってたのさ。
どうも「碇」は何かの勘違いで「惣流」の分の弁当を作ってなかったらしい。
仕方なく黙って「碇」自身の弁当を「惣流」に回して、自分は購買にパン買いに行こうとしたらしい。いい奴だねぇ。
ただそこまでは良かったんだが、そこを当人に見咎められてバレたと。
照れ隠しにバカシンジと言うアスカに、半ば反射的にごめんと言うシンジ。
いかにも関係が良好な時期の二人の会話と言えばそうなんだが、見た目が見た目。こっちはもうイメージ狂いまくりもいいとこだ。
思わず俺は席を立って言ってやったね。
「あの、手じゃなくて…良かったら佐祐理のお弁当、食べさせてあげて…」
違う違う。そうではない。
「碇くん、良かったら学食で食べない? チケット余ってるんだ」
嬉しそうに、少し遠慮がちに「いいの?」って聞いてくる彼の顔を見て、俺は言わなきゃ良かったと心底思った。
56 :
49:2008/07/12(土) 19:21:29 ID:???
んでまあ、それ以上二人の会話を見続けることに耐えられなくなって「碇」を連れ出した俺だが。
まあ素直に着いてきてくれたのはいい。
「惣流」が何も言わなかったのもまぁよしとしよう
(非常に危険な視線を背中に感じたような気もするが、さすがに大丈夫だろう。俺は男だし)。
だが。
その顔で感謝の微笑を浮かべるのは勘弁して欲しかった。
使徒だ。第拾七使徒さんが目の前で、俺に感謝してんだ。ヤオイでガチホモかとうかは分からないが。
相席の都合で向かい合わせになったもんだから、こっちから誘い出した手前無視するわけにもいかん。適当なことを言ったり、向こうの話に合わせたりする。
しかし、その顔。アップ。ほほえみ。
碇シンジという名前はついてるが、どうみても 初号機の手の中にいたときの彼 です。本当にありがとうございました。
……グチャ。…
あの首チョンパシーンが頭の中で点いたり消えたりし始めた頃、漸く「碇」はメシを終えた。特に飯を食うのが遅いわけじゃなくて、それ以外のことで口を動かしていたからだ。
どういうわけか知らないが、俺に気を使ってもらったのが嬉しかったらしい。
性格がアニメのシンジのままなら、恐縮していることの反動だったのかもしれない。いずれにしても彼にしては口数が多かった。
俺の方はと言えば、話をしているようでいてやはりメシを喰うという行動に逃げていた。最後は間が持たずにコップの水を何杯も空にしていた。
何度も見るんじゃなかった。カヲルと言えば首チョンパなんて嫌な刷り込みされちまったよ。もう遅いけどな。
57 :
49:2008/07/12(土) 19:22:26 ID:???
トレイを返しに行く間、「碇」はまた謝ってきた。
「ごめんね、奢らせちゃって」
いやそれはどうでもいいんだ。実にどうでもいいんだ。
「今度お弁当作ってお返しするから」
やめてくれ。マジで。それにお前男の子だろ!
フラグ立ったギャルゲの家庭的な女の子キャラみたいな台詞吐くな!
「や、やっぱり駄目かな……」
だから、やめろって!その斜め45度の寂しそうな視線は!
俺にそっちの気はNEEEEEEEE!!!!!!!!!!!!!!!
どうにかココロの絶叫を抑え込んで丁重に申し出をお断りし、ついでに「作ってやるなら綾波さんにね」と言ってやった。
「綾波に……?」
「うん。彼女いつも買い食いだし、割に仲いいみたいじゃん、碇くんとは」
碇は盛大に赤くなった。
その顔を見るとまた違和感とか思い出したくないシーンがぶり返しそうだったので、俺はそっちを見ないようにして続けた。
「まあ3人分ってのも大変だろうけど、同僚の健康に気ぃ使うのも悪いことじゃないと思うな」
碇は一拍置いてから返事をした。
「うん……そうだね」
ちらっと視線を向けると、碇は意外にも複雑な顔をしていた。てっきり完熟トマト状態で返事が遅れたのかと思ってたのに。
「ありがとう」
まあいいや。取り敢えずそのお愛想っぽいほほえみはやめろ。な。
58 :
49:2008/07/12(土) 19:23:07 ID:???
さて、その続きだ。
教室に戻った俺を待ち構えていたのはレイ……じゃなかった惣流の紅いアイビーム。
あいつがサイボーグじゃなくて良かった。目にレーザーとか仕込まれてたら確実に死んでたぞ俺。
しかしなんで俺が殺人視線の餌食にならなきゃいかんのだ?
「自分が弁当取った形になったからなあ。悪者にされたと思ったんじゃないの」
そうか、くそっ、その発想はなかったぞ。
ていうか完全に逆恨みじゃねーか。既に碇は購買に行くって言ってたんだし。
「そう、何の滞りもなく事が進んでしまったため、彼女は『お弁当半分こしよ♪』とか言い出す機会まで奪われてしまったわけだ」
なんてこった。まあ、そういう会話されてたら結局違和感に耐え切れなくなってたと思うが。
「いちゃつきたい心理もあったんじゃないかなあ」
それなら家の中で鼻抓みキスなりジェリコの壁なり首締めなり好き勝手にやらかせばいいじゃねーか。
それともガッコの中まで夫婦ごっこするほど、この世界の二人はベタベタなのか?
今までは気付かなかったが。
「ところで、僕にプレッシャー掛け捲ってる君はどういうおつもり?相田君」
「俺は客観的な視点から彼女の心理を推測しているだけだよ」
「席が前後だからって後ろからナレーション流されるとすげえ怖いんですけど」
「生憎授業中で、勝手に席を立つわけには行かないんでね」
くそっ。こいつ、いい奴だと思ってたら裏ではこんな陰湿な台詞を吐いてたのか。ミリヲタなんて大嫌いだ。
俺もそうだけど。
取り敢えず放課後まで、時折飛んでくるアイビームに寿命が縮まる思いをしながら耐え抜いた。
チャイムが鳴ったら一目散に飛び出そうと思っていたのだが
「こら!掃除当番でしょ!」
そばかす乙女に呆気なく制止されてしまった。しかも、よく見りゃ銀髪赤目のおねえさんが既にモップをお持ちになっている。
なんだか急に頭痛が痛いんで早く帰りたいんですけど。
「早く終わらせれば早く帰れるわ」
ARBEIT MACHT FREIですね。わかります。門の上に掲げられてる幻覚が見えるくらい。
59 :
49:2008/07/12(土) 19:23:38 ID:???
あの性格だからまともに掃除なんかしないんだろうと思ってたが、惣流は案外熱心にモップをかけてた。
そばかす乙女のいいんちょと仲が良いだけのことはある。
与えられた仕事はきっちりこなすタイプか。そういうところは外見そのまんまだわな。
俺も途中で脱走する気もなく、机運んで黒板を拭いた。
どうせ帰ってもすることはないしな。
惣流さえ掃除に集中していてくれれば、特段の問題はないのだ。ついでに完全に忘れてくれると実に有難かったんだが。
淡々とルーチンワークは進み、お掃除終わりの放送が鳴って掃除の時間は終わりになった。
今度こそいち早く教室を出ようと努力した俺だったが、やはり所詮はモブキャラ。主役級キャラの敵ではなかった。
名前を呼ばれて振り返ると、廊下の壁に青白っぽい女の子が既に先着していた。
「お昼のとき、シンジに奢ってくれたんでしょ」
「え? あ、あー、あれか。たまたまチケット余ってたから」
いつ?いつあんた廊下に出たの?と言いたいのをこらえつつ、無難な回答をしてみた。
「そうなんだ」
「うん」
ええ、余ってたのは嘘じゃないです。俺の体の人は学食派だったらしいが、中の俺は自炊派なんで。
しかし学園エヴァとは違って、中身が怒りを湛えてるっぽい惣流さんだけに迫力あるね。
と思ってたら。
「ありがと」
いきなり満面の笑み。ちょっとばかり面食らった。
そして不覚にも物凄く可愛いと思ってしまった。この表情は見慣れないだけに反則気味に効果がある。
効果を知って作った表情と分かっていても、可愛いものは可愛いのだ。
「今度からは忘れないようにさせるから」
……少しだけ笑顔に凄みが加わったような気がした。ひょっとすると気温が3℃くらい下がったかもしれない。
俺は適当に返事をして退散するしかなかった。
60 :
49:2008/07/12(土) 19:24:11 ID:???
まぁそんな訳で、考えてみればその昼飯時と放課後の一件が主役級キャラふたりとの邂逅だったわけだが
ワクワクというよりビクビクって感じで味気なく過ぎてしまった。
サインの一つも貰っとけば良かったかな。暫くは余裕があるだろうからいつでも構わないか。
どうせなら寄せ書きがいいよなぁとか思いつつ入道雲を眺めていると根府川先生の授業が終わった。
引き続いてのホームルームは修学旅行の話で盛り上がっている。
班分け話が盛り上がるのはクラス仲のいい証拠なんだろう。結局好きな人同士ってことになりそうだが。
俺の人は元々存在感のない奴だったらしく、こういうときもほとんどお声が掛らない。ぼんやりしてればいいというのは非常に便利で楽ちんだ。
存在感がないといえば窓際のアスカじゃなくて綾波も負けず劣らずらしい。
たまに惣流が声を掛けたり碇と短い会話をしてる程度で、他には全く寄り付く人がいない。
もっとも、アスカの顔とはいっても無表情なのはレイそのままなんで、そういう状態でも「浮いてる」わけじゃない。
改めて見ると髪の毛も明るい茶色とはいえごく普通の色だし、目立たない大人しい子にしか見えないんだよなあ。
アスカがなんでも1位になろうと過剰に努力したのって、案外、ただ普通にしてると普通すぎて埋没しちゃうからなのかもな。
ちなみに碇が女の子に黄色い声掛けられたり、惣流の下駄箱にラブレターが溢れるのはアニメどおりだが、どうも容姿が変わってるせいか、若干極端になってるようだ。
メシに誘った翌日に惣流ファンとおぼしき男と碇ファンと思しき女の子の両方からカミソリの刃を送られたのには参った。さすが、一旦壊滅した世界とともに育ってきた子供はすることが派手だね。いやはや。
まあ、こいつらは綾波と逆だから仕方がない。アニメ色の髪の毛、赤っぽい目に目立つ髪型だもんなあ。
しかしそれで俺がとばっちりを食うのは納得しきれないものがある。
61 :
49:2008/07/12(土) 19:24:52 ID:???
班分けその他は順調に進んでいったが、ふと視線を向けると碇が複雑そうな表情で惣流を見ている。
あ、そういやこいつら旅行行けないんだっけ。
浅間山の火口に使徒捕獲に行くんだもんな。
惣流がいいんちょと楽しそうに話してる(…まあ慣れたからいいとしておこう)のが哀れといえば哀れだ。
俺がゲンドウさんとかミサトさんになっていれば格別の配慮もしてやれるんだが、なにぶん脇役ですらないのだ。許せ。わはははは。
もっとも彼等にとって悪いことばかりじゃない。はずだ。
あの話でアスカはシンジのことを再評価したんだろうし、シンジは温泉で熱膨張だし。
なによりもD型装備……じゃなかったプールサイドで温泉でおっぱい独り占めですよ。
うらやましいッたらありャしない。きいッ。
しかしまあ。
碇や惣流はそれぞれお土産に困らないだろうが、綾波は何ももらえなさそうだな。
いいんちょ辺りが気を利かせてお菓子か何かを渡して終わりか。
哀れだなあ。本人はそんなことを感じないとは思うが。
そんなわけで、ホームルーム中も相変わらず関心なさそうに文庫本を読んでいる綾波の後姿を眺めつつ、
俺はアスカの顔をした目立たない女の子にシーサーのぬいぐるみでも買ってきてやろうかと思っているところなのである。
(既出分終わり)
62 :
49:2008/07/12(土) 19:40:47 ID:???
既出分より後はまた来週。
あまりにあまりな内容に皆さんドン引き
何というか、以前投下してたスレって何てスレなのかは気になるよね。うん
65 :
49:2008/07/13(日) 00:00:33 ID:???
>>63 そうかね。まあ問題があるって話ならやめとくわ。
>>64 「もしもレイとアスカの外見が逆だったら」
時期は1年位前か。
当時も続きは書けば書けそうだったんだが
もうスレタイと関係なくなってくのが目に見えてたから既出分のみで終わりにした。
確かに関係なくなりそうだw
つかそれならもうちょっと二人の容姿が逆って点に重点を置くべきだと思うけど。
なんか色々違い過ぎてわけわかんなかったw
まあ、自由に投下していいスレなんだから作品が気に入らなければスルーで
文句は付けないようにしようぜ
当然ながら投下してもレスが付かないと萎える。
だからこそ、よくよく考えて書いた方が良い。
例えば、クロスはスレ条件としてダメじゃ無いんだけど、ここはエヴァ板。
だからハルヒが嫌いな奴が遊びに来てるかもしれない、ていうことかと。
「眠ることがこんなに疲れるなんて思わなかったなぁ…」
今、シンジの周りは、早くも循環されずに表れ始めた血の匂いとさび色のLCLで満たされていた。
たった今まで眠っていたというのに心底疲れきった様子を見せると、浪漫な動きでコンソールを操作し
プラグ内のスクリーンに辺りの景色を映させる。
そこには少しも建設的でも、生産的でもないただ真っ白なだけの光景が映し出されるが
大して落胆もせず、無駄であることを悟ったかのようにスクリーンを閉じる。
「レーダーもソナーも帰ってこない…。空間が広すぎるんだ」
ふと、思いついたかのようにスーツの手の甲に表示された数字に目をやる。
「生命維持モードに切り替えてからもう12時間。僕の命もあと4〜5時間か…」
一人でそうぼやくと、眠くもないが無理やり寝ることに決めた。
今、シンジは第16使徒の内部とも言えるディラックの海にただ一人取り残されていたのだった。
プツッ、カーンカーンカーンカーンカーン−−
何かが切り替わる音がすると、あのけたたましくもどこか遠い感じのする電車の踏み切りの音が聞こえてきた。
というか、僕は今電車に乗って腰かけてるところだ。車内には夕日が差し込んでくる。
…おかしい。姿はないのに誰かいる気がする。
明らかに異常なシチュエーションにも拘らず僕は声をかけてみた。
「誰?」
−碇シンジ
…?やはりおかしい気がする
「それは僕だ」
−僕は君だよ。人は自分の中にもう一人の自分を持っている。自分というのは常に二人で出来ている物さ。
「二人?」
−そう。実際に見られる自分と、それを見つめている自分だよ。碇シンジという自分だって何人もいるんだ。
君の心の中の碇シンジ、葛城ミサトの中の碇シンジ、惣流アスカの中の碇シンジ、綾波レイの中の碇シンジ、
碇ゲンドウの中の碇シンジ。みんなそれぞれ違う碇シンジだけど、どれもほんとの碇シンジさ。
ベラベラとしゃべっていることは訳分かんないけど、意味は理解できた。
まるで、最初から自分の中にその意味が存在したかのように。
−君は他人の中の自分が怖いんだよ。
いつの間にか正面に座っているほんの小さな子供は、少しおいて続ける。
−君は他人が怖いんだろう。
「違う!僕はみんなの事、大好きさ!!」
こいつは分かった風な口聞いて何も知らないんだ!
怒りのあまり立ち上がった僕の周りでいつの間にか集まったらしいみんなが見てる。
そして各々が口を利き始めた。
「あんたバカァ!?」
アスカが罵る
「誰があんたなんかと!」
ミサトが睨む
「嫌い」
レイが告げる
「お前なんか大っ嫌いじゃ!」
トウジが叫ぶ
「じゃ、そーゆーことで」
ケンスケがあきれる
「あなたの事好きになれないわ」
リツコが言う
「嫌いだな。君の事」
マコトが言う
「嫌いです。あなたの事」
マヤが言う
「でも僕はみんな、みんな大好きだよ!」
それでも必死に訴えかけ、叫び続けるシンジに小さな子が問う。
「僕は?」
振り返ってみれば、「小さな僕」がすねたような顔をして聞いている。
答えは決まってる。
一転、しかめ面をして僕はこう言った。
「嫌いだよ。お前なんて」
そういった途端、そこには父さんがいて、僕を見下ろして何か言った。
「帰れ!」
…え?
「お前なんか嫌いだ!」「大っ嫌い!」「嫌い」「どっか行っちまえ!」「嫌いだから!」「バカ!」
皆はど派手になにか崩れ去り、なだれ込んだような勢いで勝手なことばかり叫んでる。
…みんな、みんな勝手だ。エゴイストめ!畜生!
「僕を嫌いな奴なんて、みんな死んじゃえ!!」
とうとう呪詛の言葉を吐いたシンジの足元の「小さな僕」が言った。
−じゃあ、死ねば?
…?…!!!!
「あああぁぁああぁぁぁああ!!!」
プチッ
プラグ内にまで響き渡るすさまじい爆音の後、真っ黒の壁から半日ぶりの光が溢れこんできて
人影が、ミサトさんが飛び込んできた。
朦朧とする意識の中、冷え切った僕はミサトさんに力強く抱きしめられる。
それは心地良いはずだったけど、そんなことより僕は言わなきゃならないことがあった。
が、…あ、とか、…が、としか声が出ない。仕様がないが、完全に体がまいってしまっていた。
今言わなければ、もう同じ言葉を言う事はできなくなる気がしたが、それはどうやら無理らしかった。
「僕」はもう何も覚えてさえいないけど、「もう一人の僕」ならきっと知ってるだろうな。
−エヴァに乗ることしかできない僕が皆を嫌ってどこに行き着くのかを。
正直宣言してから投下すべきだったと思ってる
スマン
12使徒じゃないの?と思いつつもGJ
あれ?相撲板かと思ったらエヴァ板かここ?
>>74 絶望した!自分のアホさ加減に絶望した!
完全に話数と間違えてたw
とりあえず吊ってくる
良スレだな。これは戌に感謝しなきゃいけないな。
大体あの基地が立てたとは限らんのだよ。なんの証拠もない
このスレは一読者のおいらが立てたので前スレ立てたのが誰であろうと現行スレは無関係どす
便宜上2となってるだけで純粋に作品を楽しむスレとなっております
( ´・ω・`)_且~~ イカガ?
( ・∀・)っ旦~<いただきます
_, ._
( ゚ Д゚) イタダキマス
( つ旦O
と_)_)
_, ._
( ゚ ◎゚) ズズ…
( ゙ノ ヾ
と_)_)
_, ._
( ゚ Д゚) …………
( つ旦O
と_)_)
_, ._
( ゚ Д゚) ガシャ
( つ O. __
と_)_) (__()、;.o:。
゚*・:.。
_ _ ξ
(´ `ヽ、 __
⊂,_と( )⊃ (__()、;.o:。
゚*・:.。
>>69 浪漫な動きでコンソールを操作し
↑
浪漫な動きってどんな動きなのか禿げしく気になるんだがw
旅立つ〜男の胸に〜は〜浪漫の〜かけらがほしい〜のさ〜
浪漫:ロマンチシズム
自分が一番吹いたw暗い雰囲気なだけにw
次からは絶対調べてから書きますw
ホントボロだらけだなぁ
というか皆気づいてたなら教えてくれw
顔真っ赤すぎるw
ラ・ラ・ラ、真っ赤な〜
スカ〜フ〜
>>85 学生服で飲み込まれたはずなのに
プラグスーツが浮いてるものの2次小説だ
気にすんなw
みなさんどのくらい書き終えてから投下してますか?
完全に完成してからですか?
人それぞれだろう
分けて書いて連載したほうがモチベーション保てるヤツもいるだろうし、完全に書いてからドッと投下したほうが性に合うヤツもいるだろう
ちなみに私は完成してから暇を使って投下しとる
全ては作家次第だ
>>88 頭ん中で大ざっぱに完成させる。
ちょいちょい投下して好評ならテキストに落としていく。
レスが着かなければ投下はおろかテキストも作らない。
こんな感じです。
>>88 連載の場合頭の中で軸となる部分の起承転結だけ完成させる
プロットは軸に肉付けする形でストックしたネタを話の流れに合わせて引っ張り出す
話の流れのキリのいい所迄書いたら投下
短編の場合は電波が降りたら一気にテキストに落として投下
但し、自分の場合はプロットは全部絵コンテやネームやイラストに近い形だから
プロット作成作業はネタになるコマの継接ぎに近いかも知れん
テキスト化は映像を文章化する様な感覚だったりする
あんまり参考にならんで済まぬ
さすがにこのスレの人の話は濃いな
93 :
88:2008/07/17(木) 23:06:16 ID:???
>>89 >>90 >>91 ありがとうございます
もう10レスくらい書き終わったんですが
ラストにいたる過程がまだ決まっていません
もう少し練ってから投下することにします
俺様もそろそろ投下してやろうか?
いい加減駄作ばかりで飽きてきただろう
いい加減死ねよコイツ。良スレばっかり荒らしやがって
死ぬか荒らしやめるかどっちかにしろ
偽者の俺乙 偽者に騙される低脳君も乙
ごめんなあ俺荒らしてばっかで〜
でも職人さんがチヤホヤされてんの見ると羨ましくてさ〜
ここも元は俺が立てたのに邪魔者にするしさ〜
今まで色んなスレで嫉妬して荒らして来たのさ
たとえスルーされても毎日の様に張り付いてな
偽者よ。この苦労がお前に解るか?
まあ俺は才能無いからな。それは認めよう
だからつい嫉妬しちゃうのさ♪
もりたけよ。見ているか?
そうだ。あのスレが始まりだったんだ
俺はあのスレに投下していた古参だったのに……後から来た奴が皆のGJを持って行ったんだ
皆俺の神作品には見向きもしなかった。
俺はそれ以来嫉妬に狂ってしまった
全ての荒らしに苦痛に満ちた死を
103 :
戌 ◆Tp.LvYDjb6 :2008/07/18(金) 23:44:03 ID:Me7KA1bt
意外と食いつきわりーナー
つまーんなーいの
あぼーんしてるから見えなかった
ってことはまたあの糞が来てたのか
今度は自分の偽者が現われたという設定で散々暴れていったよ
はいはいヌルーしましょう。ヌルー
投下待ってます
そだね
期待しながら待ち〜
あぼーんするというのは神の啓示を無視するのと同じ罪深い行為だ
させてなるものか
109 :
ブルドッグ:2008/07/19(土) 10:47:59 ID:???
あぼーんしてみろよ?
アハハハw
110 :
チワワ:2008/07/19(土) 11:16:29 ID:???
愚民共め。恐れ入ったか
チワワめ。貴様は偽者だ。我を辱めんとする貴様の行為、万死に値する。
「啓示」
余がこのスレを荒らすのは以下のときである。以下に当てはまらないときは決して荒らさない。
・余をないがしろにしたり、余を貶めたとき
・スレタイ、及びテンプレを勝手に変更したとき
・クロス小説を認めようとしない風潮が現れたとき
余には文才というものが一切無い
だからこうして荒らすしかないんだ。分かってくれたまえ
勝手に荒らしてろバーカ
お前がちまちまと何かしたところで何の意味もないんだよ
112も偽だ。Meの名をかたる大悪党め。
Meには余りある文才があるぜ!
一人で騒がしい奴だな。はいはいあぼ〜んあぼ〜ん
潰すの?このスレ。ねぇねぇ潰すの?
ならそういってよ。今、書いてるやつ丸めて捨てちゃうし。
一部の人がやってる事だから気にしないで。すぐ沈静化するから
一部っつーか一人かもな
等価真知子
120 :
前スレ35:2008/07/23(水) 23:02:07 ID:???
続き作って見ましたので投下してみます。
って、前スレ落ちてるし、覚えてる人いないかも...
ざく、ざく、ざく、ざく……
あれから何日、何ヶ月が経ったかな。
畑仕事に従事するシンジと私。
今では大きなワゴン車でやってきて、現場に泊まり込むことも少なくない。
どちらかというと、シンジの方が頑張ってくれている。
畑に作物ごとのプラカードまで立てて、水場の整備まで見よう見まねでやっている。
車の運転もだいぶ上手くなってきた。え、私?
だってしょうがないじゃない。
「シンジ、その……あのね。そろそろ私、始まりそう。」
「ああ……そうだね。うん、ゆっくりしてきて。」
「ごめんね。」
「いや、仕方ないよアスカ。」
「シンジの方こそ、体調とか気をつけて。体がおかしいと思ったらすぐに言ってね。」
「うん、ありがとうアスカ。」
女性につきもののアレである。
もう「子供なんかいらない」なんて言ったりしないけど、自分が女性であることが悔やまれる。
シンジと私、性別が逆だったらよかったのに。
シンジの方はどうだろう。
男の子って、いつでも女の子のことを考えてるって聞いたことがある。
目の前に可愛い子がいたら理性のタガが外れかねない、とか。
自分の思考まで本能に操られる訳ね。
種族保存のためとはいえ、犯罪者に落ちないように社会で働く男は大変。
シンジは、やっぱり自分で処理しているのかな。
それぞれ、自分自身のメンテナンスが出来るように。
寝るとき以外は努めて一緒に過ごす。
私達はお互い相手が全てなのだ。
互いの自制心は相手が居ればこそ。
さもなくば、あっという間に怠惰な生活へと落ちてしまう。
食事とか、普段すごす時はいつでも一緒。
今日も古いアニメや映画を見ながら晩餐の乾パンをポリポリ。
つましい食事だけど、計算して必要なカロリーや栄養素は摂取している。
最低でも一日1400カロリー必要で、肉体労働に従事するから400カロリーほど上乗せ。
「食パン二枚にスパゲッティに……私達より十分豪勢じゃないの、ヤマト定食。」
「そうだね……」
「それを飽きただなんて、宇宙戦士の名が泣くってもんよ。ね、シンジ。」
「あはは……」
気のないようなシンジの返事。
自分を押さえているようでもなく、すっかり低いテンションが身に付いてしまったようだ。
私がちょいと突っかかっても軽く受け流す。たまには喧嘩ぐらいしてもいいと思うけど……
まあ、私もそこまで刺激したくない。
触れず離れず、という関係が成立している。
「もう寝るの?」
「うん……明日、早めに行かなくちゃ。」
「そう。それじゃ、お休みなさい。」
「お休み。」
ぱたん、とドアが閉まる乾いた音。
シンジは、来ない。
来ないっていう意味、判るよね?
まあ本気で来られても困る。子供が出来ちゃったら、やっぱり大変。
でもそうね。お休みのキスぐらいの習慣が出来たって……いや。
アイツ、根本的に私のことは好きじゃないのかな。女の子として……
「ね、アンタはどう思うのよ。」
相も変わらず、「ファーストの目」と対峙する私。
もはや、鏡に映る紅い目をした自分が他人に見えて仕方がない。
まるで寂しさを紛らわすように、一日の報告とか悩み相談までコイツにしている私。
シンジという相手がいるのにね。
「そうね。シンジがああだから私は寂しいのかもね。
子供、先に作っちゃうべきなのかな。自分の手で生活を安定させるまでは、と思っていたけど……
でもそれだと、私はシンジが相手として不足だと思ってるのかな。
シンジが、あんな状態だから。」
何も答えない「ファーストの目」、
その寡黙っぷりが、以前のファーストを彷彿とさせる。
「フン……なんか言いなさいよ、アンタ。
私ばかりシンジの相手ができてうらやましい?
たまには、包帯を逆に付けてあげましょっか?
きっと……」
そうだ。
シンジは必ず、魅了されるに違いない。
この、ファーストの紅い目に。
そう、「私」ではなく。
「そう、アンタの奇跡の大復活ね。
どうして?何故?ってシンジは不思議がるだろうけど、それが落ち着けばアイツはこの目に惚れる。
間違いなく、この紅い目に恋をする。
そして、アイツは私とセックスをするの。このアンタの目を見ながら、アイツはイクの。
うれしいでしょ?アンタ。そうなったらうれしいでしょ……」
だんだんと、ファーストの目に怒りが込み上げてくる。
そうだ、怒れ。
もっと怒りなさいよ。
「そして、アンタのことだからね。生まれてくる子供は紅い目と、ついでに髪の毛も蒼かったりして。
それがアンタが私に仕掛けた呪いなのよ。ちゃーんと、私には判って……」
……言ってしまった。
口に出すまいと胸に秘めていた、私の恐れ、不安、疑念。
子供を作りたくない、本当の理由。
そして、目の前には先のとがったハサミ。
「畜生!こんな目玉、くりぬいてやるッ!」
……
「なーんてね、アハハ。」
と、いったん握りしめたハサミをカラリと放り出す。
まさか、本当にそんなことする訳ないでしょ。
と、笑っては見たものの……私、本気でやろうとしてた。
いや、ほんのちょっとだけ。
ゾクリ、と震えが体中に込み上げてきた。
何、この感覚。
これが自分の中に芽生える狂気って奴?
あー、やだやだ。
さっさとこの目、隠してしまおう。
そうね、あっさりシンジに見せちゃおうか。
もう数ヶ月もこの目に悩まされてるもんね。いい加減、本気で変になりそうだ。
そうすりゃ私も案外ひらきなおって……え?
「アスカ!どうしたのアスカ!」
シンジ!?
しまった。さっきの叫び声、シンジに聞かれちゃったのね。
もう寝たと思ってたのに。私、そんな大きな声を出してたのかしら。
どんどんどんどんどんどんっ!
ガチャッガチャガチャッ!
「ねぇアスカ!お願いだからここを開けてッ!アスカッ!」
激しいノック、返事もしてないのに鍵のかかったノブをひねる音、そして叫び声。
この生活に入って、こんな激しいシンジは初めて。
どうしよう、このままだとシンジがおかしくなってしまう。
でも、まだ右目を隠してないし。
さっきは見せようとも考えたけど、やっぱりダメ。心の準備が出来てない。
「ねぇアスカ!アスカ!アスカ!アスカ!」
仕方ない。
がちゃり……と、ドアを開けた。
手でしっかりとファーストの右目を隠して。
「……アスカ。」
不安、恐れ、そんな感情をない交ぜにしたシンジの顔。
私はすぐさま、シンジを抱きしめた。
交差する私達の顔。これなら、シンジに目を見られる恐れはない。
「ゴメンね、シンジ。びっくりさせちゃったね。」
「アスカ、その、目は……」
「前にも言った通りよ。この目だけは、アンタに見せられない。」
「でも、アスカ……」
「お願い、私のこの目を見ようとは思わないで。シンジ、お願いだから。」
しばらく、抱き合いながら沈黙。
シンジの早い鼓動が伝わってくる。
が、徐々にそれが収まりつつある。
そして、ゴクリと喉が鳴る音。
再び、しっかりと右目をふさぎながら体を離した。
シンジはうつむいて目を伏せる。そして、ゆっくりと私に背を向けた。
私の目を見まいとする意思表示
「わかったよ、アスカ。ごめんね、その……取り乱して。」
まるで、そういうシンジの背中が私達の間に立ちはだかる大きな壁のように見える。
私は今度は、シンジを背中から抱きしめる。
「ごめんね、ホントに……その、シンジ……」
まずい。このままでは、まずい。
本当に私達はダメになってしまう。
やっぱり、まだこの目は見せられない。でも……
「シンジ、今夜は一緒に寝ようよ。」
私の最大の譲歩。いや、取引とかそういうことじゃないの。
私のシンジに対する精一杯の気持ち。
今まで刺激すまいと思っていたシンジの体を、遠慮するなと言うようにギュッと抱きしめる。
でも。
「アスカ、その……やっぱり、まだ……」
と、私の手に自分の右手を添えるシンジ。
離せ、という合図。
そしてシンジは判っていた。
これまで、二人の関係を進展させまいとしていた、私の考えを。
自立した生活を確立するまで……今まで、あえて口に出したこと無かったけど。
「判った。シンジ、ごめんね。」
「ううん……僕こそ……」
そして、私が抱きしめていた腕を開くと、シンジは背を向けたまま自分の部屋に帰っていく。
「おやすみ、アスカ。」
「おやすみ。」
私はシンジが触れた右手をなでながら、おやすみの挨拶を交わした。
そういえば、シンジから私に触れたのはこれが初めてかも。
アハハ、なんだかな。
デレデレじゃないのよ、私。
情けない。私ともあろう者が……なんてね。
「え!?」
うっかり声に出してしまいそうになり、慌てて口を塞いで飲み込んだ。
なんで今まで気がつかなかったのだろう。
それとも、最近になって変化したのかしら。
この腕。この右腕。
間違いない。これは私の右手じゃない。
指の長さが、左と違う。
(う、うう……)
私はクラクラし始める頭を抱えて、倒れ込むように自分の部屋へと駆け込んだ。
まさか、最後には完全にファーストに支配されてしまうの?私の体は……
初めに謝ります携帯なので区切ります
小説と言うより詩ですね…
EOEその後
全てが赤に染まった
二人だけの世界
今は一人だけ
君は僕に別れを告げて旅だった
君の最後の言葉
キモチワルイ…
僕は去る君を只眺めるだけ
まだ成長出来てない弱い僕
130 :
前スレ35:2008/07/23(水) 23:11:30 ID:???
とりあえず、これだけー
>>129 続き
波の音だけしか残されていない今
僕は思う…
いつか
いつかきっと
強くなって君に逢いに行くよ
今はまだ僕は歩けないから
いつかきっと
自分の足で立って
去って行った君を見付に
その時は君に拒絶されないように
強く抱きしめたいから
上を向いて
居ない君が見える空の星に
僕は願いをかけた
終わりました
非難はかなり覚悟の上で書きました。
かなり意味不な内容ですみません
>>132 いや、意味は判るよ。
でも文章の組み立て方というか、なんかこう...
どうすりゃ良いの、と聞かれると困る。俺は上手くないし。
しかし、みんなEOEA好きだねw
GJ!
レイはキャラ壊さないと話創りにくいからじゃない?
アスカはよっぽどじゃないかぎりこういうアスカもあり、で許容されるし
後AEOEは割と話を自由に作りやすいけど、本編中は改編が難しいからだと思われ
SSまとめサイトを作ってくれる心優しき勇者はいませんか?
なぜかこのスレには大長編が多いので、あると相当助かるんですが……
個人的には前スレのログもあるしなあ
作者がまとめサイトを望んでればじゃないか
前スレの6氏と35氏の二人ね
それにしても読み応えあるのを投下してくれるのでうれしいね
他の人はどう思う?
実質LASスレになってるよなー
だったらLASスレまとめに頼むのも一つの手だが
他のカプの投下を考えたら別にまとめある方が良いのかも
誰かがまとめてくれることについちゃ異論は無いし、ありがたい。
まとめ方についてはまとめ人の自由。
不満が有れば自分でやればいいしw
あえて言うなら、
LASだからどうする、なんてことをすると、
油断してたらLASに見せかけて実は?
などというトリッキーな作品が出てくるかもw
ジャンル分けはしないほうが楽かもよ。
ジャンル気にしすぎたらこのスレの意味無いからな
まとめサイトがあると職人のモチベが上がりそう
143 :
6:2008/07/25(金) 01:58:42 ID:???
俺としては今の所まとめサイトについて意見は特にないかな。
スレ住人の好きにしてくれればいいんじゃないかと。
ただ、俺の作品だって本当にLASとは限らない、とか言ってみたりして。
俺の末路閃稿によるとラストはカヲル君との同棲エンドだし。
時間が微妙だが、ちょっと投下。
144 :
逆行126:2008/07/25(金) 01:59:13 ID:???
――シンジには、ケンスケの話はどこか要領を得ないように思えた。
(アスカが甲板の上で自分を傷つけるようなことをしたり、
いきなり壁を殴ったり、色々と情緒不安定だったのは分かったけど)
しかし、それがシンジの聞きたかったことではないと、
シンジは本能的に悟っていた。
(だってそれは、ケンスケがアスカを人間じゃない、
なんて言う理由にはならない。
まだ僕は、ケンスケから全部を聞かされたワケじゃないんだ)
一体ケンスケが何を考えているか、それは分からなくても、
(僕は僕のやれることをしよう。
とりあえず、綾波とアスカの仲を取り持たなくちゃ…)
シンジはそう決めて、そのために動き出したのだが、
(……なんか、どっちもつかまらないんだよな)
アスカが気まずそうに視線を逸らすのはともかく、
あの一件以来、レイが妙に余所余所しい気がするのだ。
その心境の変化は、シンジには察することはおろか、
想像することも出来ない。
それでも、ほとんど同じ生活圏で、
ほとんど同じ生活パターンで暮らしているのだ。
どうしたって、会話する機会は出てくる。
シンジは結局、NERVに向かう道の途中でその機会を得た。
しかし、
「綾波!」
と声をかけても、レイは振り返らない。
仕方なく、シンジはレイに駆け寄って、至近距離から声をかけた。
145 :
逆行127:2008/07/25(金) 02:00:32 ID:???
「どうしたんだよ、綾波」
「……なにが?」
いつもと同じ、そっけない返事。
だが、シンジはその返答がいつもよりずいぶんと遅れていることに気づいていた。
「気のせいだったら、ごめん。
……最近、綾波が僕を避けてるような気がするんだ。
もし、僕が何か、綾波を怒らせるようなことをしてしまったんなら…」
「気のせいだわ」
シンジの言葉を一言で切り捨てて、シンジから離れて歩いていこうとする。
そのレイに歩調を合わせながら、シンジは尋ねる。
「その言葉、信じてもいいの?」
「…………」
レイは無言だった。
しかし、それが答えでもある。
「それは、やっぱりあの時アスカと言い合いになったことと関係があるの?」
「…………」
また、無言。
だがやはりシンジは、それを肯定と捉えた。
言葉を継ぐ。
「お節介だと思うけど、綾波とアスカがケンカしているのが心配なんだ。
そりゃ、綾波はあんまり気にしてないかもしれないけど、でも…」
そんなシンジの言葉をさえぎって、
「そんなに、セカンドが大切?」
レイの言葉が、シンジを射抜いた。
146 :
逆行128:2008/07/25(金) 02:03:55 ID:???
「い、いきなり何を言うんだよ…」
その言葉に込められた意外な敵意か、振り向いたその瞳の光の鋭さか、
とにかくシンジはレイからの圧力を感じ、思わず目を逸らした。
しかしレイは、それすら許さなかった。
『こっちを見て』とは言わない。
ただ無言で、シンジの瞳を直視し続ける。
瞬きもしないそんな目でずっと見詰められて、
シンジが耐え切れるはずなかった。
ふてくされた子供のように渋々と、しかし怖々と、視線を戻す。
それを見届けて、レイの唇が厳かに動く。
「セカンドとわたしが、ケンカするのがイヤなんでしょ?」
「そ、それは……そんなの、当たり前じゃないか」
シンジの狼狽を、しかしレイは気にも留めない。
ただ、淡々と、淡々と言葉をつむぐ。
「セカンドがわたしに暴力をふるうのを見たくないんでしょ?」
「だ、だから、そんなのは…」
当たり前だ、と口にすることも出来なかった。
それより前に放たれたレイの次の言葉が、その口を縫い止める。
「そうなれば、あなたは彼女に腹を立てるから。
セカンドのことを、好きでいられなくなるかもしれないから。
……それを、あなたはおそれているのよ」
「違う!」
シンジは思わず叫んでいた。
「いいえ、ちがわないわ」
「違うよ!」
もう一度叫んで、シンジはレイに詰め寄っていく。
147 :
逆行129:2008/07/25(金) 02:05:59 ID:???
「何で、何でそういうこと言うんだよ!」
常になく、シンジに芽生えているのは、
その体を動かしているのは、強い怒りだった。
しかし、その怒りに突き動かされるまま、声を荒げても、
「わたしがそう、思っているから」
レイの口調は変わらない。
変わらず淡々と、シンジの理解を突き放して、
「そんなはずないじゃないか! 僕は、綾波を心配して…」
「そうなの? わたしにはわからないわ。
わたしは、あなたじゃないもの」
だがその言葉、態度に、シンジはレイの意図を感じる。
レイがシンジを遠ざけようとしていると、分かってしまう。
自分でも正体の分からない苛立ちと憤りが、募る。
「ズルイよ、綾波は…!」
その正体不明の感情が、そんな言葉を生み出した。
「ずるい? わたしが? ……どうして?」
レイのトゲのある無関心さが、シンジの心をささくれ立たせる。
「だってそうじゃないか! そうやって、
人に心配されるのを嫌がって、壁を作って…」
加速した怒りに、シンジの口調も熱くなって、だが、
「……それの、なにがいけないの?」
あまりにも平然とした返しに、シンジは固まってしまう。
(それは…、その言葉だけは、口にしちゃ、いけないのに…!)
思いは、明確な言葉にはならない。
突き進もうという意志だけが、前に出て、
「約束したじゃないか! あの時、二人で一緒に…」
レイの手を、つかもうとする。そして、
――パシン、と。
シンジの手が、振り払われた。
148 :
逆行130:2008/07/25(金) 02:07:33 ID:???
なすすべもなく、じっと払われた手を見つめるシンジを、
レイは無表情で見つめる。
「あや…なみ…?」
こんなのは、何かの間違いだろ、というみたいに、
すがるように問いかける視線にも、レイは眉一つ動かさない。
そして、レイは、
「今、あなたは…」
それでもやはり変わらぬトーンで、
冷淡とも、酷薄とも感じる口調で、
「わたしにうらぎられた、と思った?」
容赦のない言葉を吐き出す。
「綾波、僕は…」
だがレイは、最後までシンジの言葉を聞かない。
どうせそこから続く言葉など存在しないのだ。
聞く意味なんてなかった。
だから平然と、言葉を続ける。
「わたしのことも、好きでいられなくなると思った?」
「僕は、僕は…!」
「なら、それでいいんだと思うわ」
それが、最後の拒絶だった。
レイはそれきり立ち尽くすシンジに一瞥もくれることはなく、
静かにその場を立ち去った。
その背中が遠くなっていくのを目の当たりにしても、
シンジには叫ぶことも、その場に崩れ落ちることも出来ない。
ただ、うつむいて、
「僕、は……」
続きのない言葉を、ずっと独り、呟いていた。
149 :
逆行131:2008/07/25(金) 02:10:50 ID:???
NERVに向かっていたはずのシンジは、今、全く場所を歩いていた。
これからNERVに行って、レイの顔を見る勇気が、シンジにはなかった。
かといって、学校に戻る訳でも、家に帰る訳でもない。
むしろ出来るだけ知らない方へ、知らない方へと、シンジは進んでいく。
今はどうしても、自分を知っている人間と会いたくなかった。
――シンジだって、自分に護衛と監視がついているのは知っている。
今ごろ、NERVにいるミサトかリツコ辺りに、
連絡がいっているかもしれない、とは思う。だが、
(どうでもいいんだ、そんなこと)
無目的に、街を歩く。
他人ばかりの街が、今は少し心地いい。
何も考えず、この街の背景の一つに溶け込みたかった。
なのにほとんど無意識に、シンジの目は右手の小指を見つめていた。
ぐっと、唇をかみしめる。
(……約束なんて、役に立たない)
所詮そんな物は、きっかけにしかならない。
(約束なんて物が役に立つのは、お互いにそれを認めてる時だけだ。
どちらかが、それを嫌がったら…)
小指を握り潰すように、ぎゅう、と拳を握り締める。
「……なん、で」
唇からそんな声が漏れて、レイに手を払われた時の鮮烈な衝撃が、
シンジの胸によみがえる。
(……前の世界では、うまくいっていたんだ。
二人目の綾波とは、何の問題もなく、付き合っていけた)
前の世界を思い出す。
短い間に過ぎていった、レイとの思い出を。
(なのに、綾波が、変わってしまったから。
前の綾波とは、違ってしまっていたから、だから…)
しかし、
(違う、そうじゃない。そうじゃないんだ)
150 :
逆行132:2008/07/25(金) 02:13:52 ID:???
(もしあの時、綾波が自爆なんてしないで、ずっと生きていたら。
きっと、今と同じようなことが起こってたんだ)
だってそんな、何かがずっと、うまくいくはずなんてないから……。
喜びという物は、つらいこととつらいことの間にだけ、ある物だから。
だからいつか、絶対、つらいことに塗り潰される。
(……なのに)
シンジは、自分の右手を見る。
――ちっぽけで、無力な手。
(どうして僕は、人と触れ合えるなんて思ったんだろう。
そもそもどうして、人と触れ合おうなんて思ったんだろう)
ぎゅっと、目を閉じた。
(無理だったんだ、僕には最初から。
僕に、そんな資格はないんだ。そんな権利はないんだ。
……もう傷つきたく、ないんだ)
自覚した途端、体から、すぅっと力が抜けていく。
気負ったり悩んだりしていたことが、バカみたいに思えた。
(……もう、やめよう。
いつものように、笑っていればいいんだ。
笑って、みんなの望むことだけ、してればいいんだ)
シンジは足を止める。
きびすを返し、NERV本部へと向かう。
(綾波とは、距離を取ろう。
僕が話しかけていかなければ、きっと向こうだって、
何も言ってはこない。
それが、一番いい。
一番、居心地がいいから)
考えながら、シンジは足を速める。
――なぜか右手の小指が、じりじりとうずいた。
151 :
逆行133:2008/07/25(金) 02:16:22 ID:???
「うーん…」
モニターの前で、ミサトがうなり声みたいな音を出した。
「どうしたの? そんなに難しい顔をして」
リツコに聞かれ、ミサトの困り顔がモニターのシンジに向けられた。
「シンジ君の様子がちょっちねぇ…。
指示は素直に聞くんだけど、反応が妙に機械的っていうか。
最近、いい感じにくだけてきたと思ってたんだけど…」
「あら、そう? でも、そんなに心配することはないんじゃない?
シンクロ率はむしろ、順調に上がっているわよ。
……それより今日、調子を崩しているのは」
リツコは体を前に乗り出して、零号機へのスピーカーをオンにする。
「レイ、集中が乱れてるわよ」
「すみません」
素直な謝罪は、しかしそれ以上の言葉を封じていた。
思わず嘆息するリツコに代わり、ミサトがマイクに向かう。
「レイ、今日は調子悪い? もし、何かあるのなら…」
「なにも問題ありません」
取りつく島もなかった。
ミサトはリツコと顔を見合わせ、軽く頭をかいて、
「……そう。でも、あなたの不調は、あなただけの問題じゃないのよ。
エヴァが負ければ、人類が滅ぶわ。……それだけは忘れないで」
「はい」
その返答にも、態度の変化は見られない。が、
「そんなの当たり前、か。……ダメね。
こんなことしか言えない自分が、ほんと嫌になるわ」
「仕方ないわ。大人には、立場という物があるもの」
興味を失ったように手元の書類に戻るリツコを横目にして、
「そうね。……でも、それを盾にするようになったら、本当におしまいだわ」
ミサトはひっそりと、強く唇をかみしめた。
152 :
6:2008/07/25(金) 02:19:28 ID:???
以上。というか、規制を考えるとここで切るしかない感じ。
最近ちょっとへこむ事が多くてこういうのに没頭する余裕がなかったんだが、
たぶんこの綾波編くらいは一週間以内に完結すると思う。
また、近々。
乙です
なんか暗い方向へ行ってるなあ
続き待ってるよー!
6さんGJ!
毎回展開がおもしろくて良いと思います
155 :
6:2008/07/26(土) 01:25:59 ID:???
前回の終わりが微妙だったので、少しだけ追加
156 :
逆行134:2008/07/26(土) 01:27:24 ID:???
「待ちなさいよ!」
本部を出たところで、シンジは後ろから呼び止められた。
振り向く。
「……あぁ、アスカか。めずらしいね、
アスカの方から僕に話しかけてくるなんて」
シンジには似合わない、流暢で、よどみのない口調だった。
だが、アスカにそれを深く考えられるほどの余裕はない。
「…っ! どうでもいいでしょ、そんなことは!
今までは用がなかったから話してなかっただけよ。
それより…!」
取り繕うように大声を出して、それからギッとシンジをにらみつけ、
「アンタ、ファーストと何かあったワケ?」
そんな言葉を投げかけられても、シンジに変化はなかった。
少なくとも、表面上は……。
「別に、何もないよ」
「ウソよ! 前はあんな、気持ち悪いくらいベタベタしてたじゃない!
なのに今は、目を合わせようともしない」
「誤解だよ。もともと、綾波とはそんなに親しいワケじゃないから」
その言葉に、アスカは目を見開いた。
「親しいワケじゃないって、アンタねぇ…!
とぼけるんでも、もう少しまともなこと言いなさいよ。
あんなに二人で…」
普段なら、シンジを押し切ってしまえるような、強い口調。
だが、
「綾波とは同じエヴァのパイロットで、
だから一緒にいることが多いだけだよ。
アスカだって訓練で綾波とはよく一緒にいるけど、
それほど仲がいいワケじゃないだろ?」
「それは、そう、だけど」
思わぬ反撃にあって、逆にアスカが言葉に詰まってしまう。
157 :
逆行135:2008/07/26(土) 01:29:02 ID:???
この時点になってようやく、
アスカはシンジの様子がいつもと違うのに気づいた。
だが、振り上げた矛は止められない。
「とにかく! アンタたちがピリピリしてるとアタシが居心地悪いのよ!」
感情のままに言葉をぶつけられても、シンジは少しも動じることなく、
「それが本当なら、確かに申し訳ないとは思うけど。
……でもやっぱり、アスカには関係のないことだから」
そう言って、その場を立ち去ろうとする。
それに慌てたアスカが口にした、
「ちょっと、逃げるつもり?!」
という言葉に、シンジの顔が初めて歪んだ。
痛みをこらえるような表情を、しかし背中で隠して、
「そういうんじゃないよ。でも、僕はもう帰るから…」
そのまま歩いて行こうとして、
「分かったわ。アンタ、ファーストとケンカして、
いじけてるんでしょ」
しかし、アスカは足を速めてシンジについてきた。
元々、二人の目的地は一緒だ。
同行を断る理由もない。
「そんなんじゃないって言ってるだろ」
シンジはそれをわずらわしいと思いつつ、そう否定を重ねるしかない。
「ふぅん。でも、どうかしらねぇ?
あの優等生が、めずらしく怒られてたみたいじゃない。
それって、アンタと…」
「うるさいな! もういいだろ!
何でいちいち、人のことそんなにかぎまわるんだよ!」
とうとう、シンジが爆発した。
今まで蓄積した苛立ち全てを吐き出すように、アスカを怒鳴りつける。
158 :
逆行136:2008/07/26(土) 01:30:31 ID:???
シンジの激しい言葉に、アスカは一瞬だけ鼻白むが、
「そ、それは……!
あ、アンタがウジウジしてて、見ていられないからじゃない!」
すぐに持ち直し、怒鳴り返した。
そこでシンジがアスカに怒鳴り返せば、いつも通りだっただろう。
だが、
「……お願いだから、ほっといてよ」
「え…?」
予想外の言葉に、アスカの動きが止まる。
「アスカが僕のこと気に入らないっていうんだったら、謝るよ。
僕のことが嫌いだっていうなら、もう必要以上に近づいたりしないから」
怒るでもなく、怯えるでもなく、シンジは疲れた声でそう告げる。
「僕はもう、アスカに迷惑かけないから。
だからその代わり、関係ないアスカに、色々言われたりとか…」
しかしそれ以上、シンジは言葉を続けられなかった。
ぐっと首元をつかまれ、強い力で顔を引き寄せられる。
「この! アンタ、寝ぼけてんじゃないわよ!?
アンタがアタシのこと、アスカって呼ぶって決めた時から、
もう、無関係だなんてこと…!」
その至近距離で、それでもシンジはアスカから目を逸らした。
そして、
「…ごめん。だったら、もう、呼ばないから」
口から漏れた決定的な言葉に、はっきりとアスカの表情が変わった。
159 :
逆行137:2008/07/26(土) 01:32:28 ID:???
「……アンタ。それ、本気で言ってんの?」
さっきまでとは打って変わった、静かな、
落ち着いているとさえ錯覚してしまうような口調で、アスカが問う。
対して、シンジは決してアスカと目を合わさないままで、
「…うん。僕が無神経だったんだよ。もう二度と呼ばない。だから…」
バキン!
容赦のない音がシンジの頬で弾け、シンジは体勢を立て直すことも出来ず、
そのまま地面にしりもちをついた。
そのシンジの前に、握り拳を怒らせた影が立ちはだかる。
「ふざっけんじゃないわよ!
アンタは、アンタはアタシが、どんな気持ちで…!
どんな…っ!」
しかしそこで突然に声を詰まらせ、アスカは額の辺りを手で押さえて、
不自然に顔を逸らした。
「アスカ…?」
殴られた時より呆然としたシンジの目が、
アスカの手からこぼれる雫を捉えた。
「アス、カ…? もしか、して…」
押さえた手から、こぼれ落ちていった物は……。
「違うわよ!
こんなことで、泣いたりするはずないでしょ!
ぜったい、泣いてなんかないわよ!」
叫んで、アスカはシンジに背中を向けて、
「……先、家帰るから」
そう残して、歩き去っていった。
160 :
逆行138:2008/07/26(土) 01:34:02 ID:???
アスカの姿が見えなくなって、
今さらながら、アスカに殴られた頬が熱を持ってくる。
焼けるようなその感触を頬と手のひら、両方で感じながら、
シンジはおかしそうに笑った。
「なんだ。どっちにしろ、結局、殴られるんじゃないか。
だったら……」
だったら、どうだと言うんだろうか。
そんなことにすら、答えを出せないまま、
「……アスカ。謝りたいな」
押さえられた手の隙間から、涙と一緒にのぞいたアスカの顔を思い出し、
素直にそう思った。
――でも、出来ない。
もう一度アスカに踏み込んでいく選択肢なんて、
今のシンジには最初からなかった。
「アスカからは、絶対に逃げないって誓ったのに…」
追いかけようという気力は、全くわいてこない。
今だって必死に考えているのは、アスカとの和解の方法ではなく、
アスカと会うのを少しでも遅らせる方法だけ。
「……やっぱり、約束なんて役に立たないや」
自嘲気味に笑って、シンジは立ち上がる。
そうして、
「お金。持って来てて、よかったな。
これなら夕食まで、なんとでも時間を潰せそうだ」
今日はぎりぎりまで、街でねばることを決めた。
161 :
逆行139:2008/07/26(土) 01:35:26 ID:???
ミサト、アスカ、シンジ。
三人がそろった食卓はしかし、いつもにも増して、
ぎくしゃくした雰囲気だった。
食事を終えたミサトは、その原因の大元がシンジにあると見当をつけ、
「あのね、シンちゃん。レイやアスカと何があったか知らないけど、あんまり…」
と話を始めようとするが、
「やめてください。今はそういう正論、聞きたくないんです」
すっと、シンジは意図的にミサトから目をそらして、
「そりゃ、ミサトさんは立派ですよ。
でも、僕はそんな風には生きられませんから」
「…! あんたねぇっ!」
一番癇にさわる態度を取られ、思わず振り上げられるミサトの手を、
「ミサト!!」
大声をあげて制止したのは、アスカだった。
「……ほっときなさいよ、そんなの」
だがその口から出てくるのは、
もちろんシンジをかばう言葉などではない。
「放課後からずっと、いじけてんのよ、そいつ。
構ってほしくてやってるだけなんだから、相手するだけ無駄よ」
「あ、アスカ…。だけどねぇ…!」
そうしてミサトの注意がアスカに向けられて、
「おやすみなさい」
その隙に、シンジは自分の部屋へと入っていく。
「シンジ君っ!」
ミサトが叫ぶが、それでシンジが止まるはずもなく、
シンジを飲み込んだ扉は、無情にも音を立てて閉じられた。
「なんなのよ、もぉ…!」
扉の前で、ミサトが苛立った声を出して、
――アスカはその様子を、ひどく冷めた目で見つめていた。
162 :
逆行140:2008/07/26(土) 01:37:18 ID:???
「シンジ、いるわね。開けるわよ」
簡潔に、それだけを宣言して、シンジの部屋の扉が開かれる。
アスカの姿が扉の間からのぞく前に、シンジは何とか音楽を止め、
扉に背を向けて眠ったフリをすることが出来た。
「シンジ。アンタに話があるの」
アスカがそう言っても、シンジは微動だにしない。
閉じこもるように体を丸めて、寝たフリを続ける。
まるでこの前、シンジがアスカの部屋を訪れたのと真逆の構図。
だがその状況を、アスカは気にしなかった。
「シンジ。そのままでいいから、聞いて」
そう、前置きして、
「昼間のことは、アタシが悪かったわ。
たぶん、アンタの言い分の方が正しいと思う。
勝手なこと言ったと思ってる」
吐き出されたその言葉に、シンジはまた少し、身を縮める。
自分の言い分が認められてうれしいはずなのに、なぜか、胸の塞ぐ思いがした。
「…………」
「…………」
沈黙が続いた。
戸口に立つアスカの存在は、今のシンジにとって、ただ苦痛だった。
シンジはひたすら、アスカが一刻も早くその場を立ち去ってくれることを祈った。
その期待に反するように、アスカはすぅっと息を吸い、
「でも今度、アタシのこと名前で呼ばなかったら、またぶっとばすから」
「…!」
予想してなかった言葉に、刹那、シンジの息が止まる。
そこにアスカは、たたみかけるように、
「勝手でも何でも、このままなんて、絶対に許さないから。だから、だから…」
部屋に差し込む影が、少しうつむいて、
「……早く元気になんなさいよね、バカ」
その言葉を残して、扉が閉められた。
163 :
逆行141:2008/07/26(土) 01:38:26 ID:???
扉が閉められて、部屋が暗闇に閉ざされて、しばらく。
横たわるシンジの耳に、小さな嗚咽が聞こえてきていた。
聞きたくないと耳を塞いでも、その音は止まらず、
執拗にシンジを責めたてる。
シンジはさらに強く耳を押さえ、
そして、ようやく、気づいた。
――泣いているのは、シンジだった。
気づいたことで嗚咽はさらに大きくなって、
シンジを悩ます。
そっと、体を転がし、扉を見つめる。
その向こうからはかすかに明かりが漏れていて、もしかすると、
その奥にはアスカが待っているのかもしれなかった。
シンジは一瞬、立ち上がりかけ、
「だけどアスカ、怖いんだ。
人と触れ合うのが、怖いんだよ…」
結局果たせず、そのままそこで布団をかぶる。
――布団の中、押し殺した嗚咽は一晩中やむことがなかった。
164 :
6:2008/07/26(土) 01:39:03 ID:???
以上
シンジ情けねえぞ!
と思わず言ってしまうほど引き込まれる(笑)
いやあ、お世辞じゃなくうまいなあ!
6と35の二大連載を掲載してるスレだな(笑)
GJ!! 毎度毎度おつかれさん
他の人も投下できるならぜひ投下してくれ
私の気持ち…貴方に届いて居る筈なのに…
貴方の気持ち…私に届いて居る筈なのに…
私と貴方は交わる事が出来ないで居る。現世では、交わるには、想いの糸が複雑に絡まり過ぎたから…
貴方の中に居る、あの娘への想い、と、私の中に居る、あの娘への嫉妬…
そして、今は居ないあの娘の貴方への想いが解るから
来世で結ばれるように願いをかけ私と貴方は此処に居る
『 曽根崎で…』
そこは遊女とデッチの男が結ばれる事が叶わないと行き着いた地…
私は遊女じゃないし、あの人はデッチじゃないけど
結ばれないと言う事は同じ…だから、私は、この地に貴方と共に訪れた。来世に想いと願いをかけて…
そして、私たちは此処に寄り添うように眠る…
今度、巡り会う事が出来たなら、『Children』で無く、男と女として…そして、私と貴方が結ばれる事を夢見て、信じながら…
曽根崎天神に眠る過去と、今の物言わぬ二組の亡きがらを夜の静けさが優しく包む
何気に投下してみましたm(_ _)m
曽根崎心中物語を題材にしてみました。(近松門左衛門に呪われそうな劣悪さだけど…)
敢えて名前をかかなったのは、ヒロインを読者に当て嵌めて貰おうと画策した結果です( ̄▽ ̄;)
ぐだぐだですが読んで頂けたら嬉しくおもいます
GJ&age
>>61 鈍亀かもしれないけど49氏GJ!
続き読んでみたいです
6氏と35氏の文章、好みすぎる。このスレ大好き
171 :
前スレ35:2008/07/27(日) 20:32:29 ID:???
続きー
「なんだか涼しいね。」
「うん……」
今日もジープで農地へと向かいながら、
そんなお天気話をぽつりぽつりとシンジと交わす。
大して盛り上がらない二人の会話。盛り上げようとする気もない。
だって必要ないんだもの。会話という物がね。
やることは決まっているし、伝え合う情報もない。
でも、悪くはない。寂しくはない。
二人でこうして側にいることが、百万の会話に勝る。
さらに、互いの体の温かさを感じられるなら……
と、右手を伸ばそうとして、ためらった。
私じゃない右腕。今更、包帯を巻いて隠したりしないけど、
やはり自分の腕では無いことが気になり、なんだかそれでシンジに触れたくはない。
シンジは私の右側に座っている。左手で触れるならシンジの右に回り込むしかない。
でもわざわざそうまでして……
なんだかな。何、くだらないことを悩んでるのかしら。私ともあろうものが。
そう思い返して顔を上げれば、見えてくる私達の農場の山。
草木一本、何も生えていない山。
セカンドインパクトの折、微生物に至るまで全ての生命体が例外なく消失したと聞く。
やはりサードインパクトもそうだったのだろうか。あの時のことは何も判らない。
もはや、新たな生命が生まれ出でることなど無いのだろうか。
「……あれ?」
「ん、どうしたのシンジ。」
「緑色……僕たちの畑だよ、あれ。」
「ごめん、まだよく見えない……ああ。」
私の不安はすぐに解消された。植えた作物が育ち始めたのだ。
しかし……
シンジは少し笑顔を浮かべる。
「よかった。この調子で上手く育つと良いね、アスカ。」
「いや……どうかしら。」
「え?」
「空を見て。羊雲じゃない?あれ。
ここに、第三新東京市に秋が来ようとしているのよ。」
「……ええ!?」
シンジが驚くのも無理はない。
常夏の日本で育ったシンジには恐らく未知の季節の襲来だ。
間違いない。この気温の下がり方、もはや夏の物ではない。
「じ、じゃあ、僕たちの畑は……」
「最悪、全滅ね。」
「……え!」
「でしょ?野山が枯れる時期に植えた物など、育つ筈がないわ。」
驚いたシンジはギィッと車を止めて、ドライにそう言った私の顔をまじまじと見つめる。
ああ……そうね。頑張っていたシンジにはキツイ言い方だったかもね。
「仕方ないわよ。少し様子を見て帰ろう、シンジ。」
「……」
「初心者の私達なんだし、こういう失敗ぐらい繰り返して当然よ。勉強したと思って、諦めよう。」
一応、慰めてるつもり。頑張ってたもんね、シンジ。
何かを育てるのは良いことだ、と誰かから聞いてたのが励みだったらしい。。
「えー!?加持さんがスイカを?」
「そうなんだ。みんなには内緒って言ってたけど……」
「あはは、それでスイカを育てたいって言ってたのね。」
そんな会話を交わしたのは何時だったか。
加持さん、か……前の恋人の話を今の彼氏としているようで、なんだか微妙な気分だ。
「シンジ、ずいぶん髪が伸びちゃったね。」
「うん、まあ……このまま伸ばすのも面白いかな……と。」
「よし、アタシが切ったげる。」
「え?いや、いいよ。」
「いーから、ここに座んなさい!
そんなふうに伸ばされちゃ、アンタが誰かさんに見えてくるから!」
実際、加持さんっぽさを身につけたかったのかな?シンジは。
そうして私の気を引きたいのかな。
私、露骨に加持さん、加持さんって言ってたし。
それとも、単なるシンジのあこがれかな。
「ほら!アタシも上手いもんでしょ。」
「うん……あはは、すっかり元通りになっちゃったな、僕。」
元通り。
つまり、もとの脆弱な心のシンジに?
そういう意味にも取れるわね。
几帳面なお利口さんが髪を伸ばしてたのは、やっぱり変身願望、か。
「ご不満?アンタはそれでいいよ。」
「え……?」
「アンタはそのままで良いっていったの。」
「そ、そう……ありがと。」
少しはにかんで、頬を染めるシンジ。
私は髪型のことを言ったつもりだったけど、シンジは人格まで認めて貰えたと喜んでるみたい。
いや、シンジが軟弱でも私は構わない。
昔の私ならいざしらず、今の私ならそんな彼を許容できる。
つまり、私が変わりつつある。それは何故?
思わず、右目に手を添える。
結局、この目に帰結する自分の思い。
この目のお陰で私がシンジを、などと思いたくない。
軽く手が触れただけでドギマギしている自分が許せない。
あのファーストなら好きそうね。こういう恋愛がさ。
以前の私なら、こうしてシンジと暮らすことなど出来ただろうか。
もともと、私はシンジのことが好きだったのだろうか。
それじゃ私の今の感情、それはファーストからの借り物なの?
私は素直に認める。
私はシンジが好き。今の私はね。
でもそれが、私自身の気持ちでは無いとしたら?
それが無性に許せない。
ファースト、アンタが私に取り憑くよりもずっと以前から、エヴァに乗っていた頃からシンジを……
と、私が考えているのは今の自分だから?
まるで自分で自分の体を持ち上げるような、自己評価の堂々巡り。
思わず、鏡の前に座ろうとする私。
気持ちの整理をつけるために……いいえ。
もう、アンタの目は見ないわよ。
もう、この包帯を解いてあげない。
「また、行くの?」
「うん、やっぱり、畑の様子が気になるし。」
「そう。私も一緒に……」
「いいよ。長い時間はかけないから。」
「うん……ちょっと待って。そんな薄着じゃダメよ。アンタ、秋とか冬を知らないでしょ?
ジャンパーとか車に積んで行きなさい。」
「ああ、ありがとうアスカ。」
「夕方になっても戻らないときは迎えに行くからね。」
「うん……行ってきます。」
今、ここにいるのは私。
こうしてシンジと互いに気遣いながら一緒に暮らせるのは私。
シンジと居られるのはアンタじゃない。
アンタは包帯の裏から指をくわえて見てなさい……あら?
シンジ、もう戻ってきたの?
「アスカ、雪だ。もの凄い雪が降ってる。」
「ええ!?」
私がシェルターの外に出てみると、既に一面は銀世界……
などという綺麗な風景なんてもんじゃない。
すさまじい吹雪が、あたり一帯をおそっている。
「……」
呆然と、吹雪の中で立ちつくす二人。
おかしい。ついこの間まで秋だと思ってたのに。
「氷河期……」
ぼそり、と私がそういうとシンジは驚いて振り返る。
「ひょ……そ、そんな、それじゃ自給自足なんて到底……」
「判らないわよ。とにかく、今がどういう気候なのか。
あのサードインパクトからどう変わったのか、そこからじっくり調べる必要があるわね。」
といったって、今の私達に調べられることはごくわずか。
セカンドインパクトで日本の気候が変わったのは地軸の歪み。
再びそれが発生したのなら、吹雪の到来が説明できる。
でも、そうでないとしたら……
「その時は、ひっそりとこのシェルターで老後を迎えるしかないわね。」
「そんな……」
「まあ、そうなるとは限らないわよ。最大で一年以内には間違いなく結論が出るわ。
その時、シェルターから外に出られるならね。」
シンジはがっくりと肩を落とす。
自給自足を目指そう、と言い出したのは私だけど、私以上にシンジは頑張ってくれていた。
このシェルターへの突破口を開いてくれた時のように。
私はそっとシンジの肩を抱きしめる。
「仕方ないわよ。大自然が相手じゃ、私達には太刀打ちできない。でしょ?」
「……うん。」
「開き直ってのんびりしようよ、シンジ。」
いや、ダメだ。
本当は、そんなことをしちゃいけない。
嵐が過ぎるの待ちながら、
シェルターというゆりかごの中で寝過ごしたその後で、
本当に私達が力強く生きていけるのかどうか。
得体の知れないモヤモヤとした不安が私を襲う。
アクティブが信条のこの私、
どうしようもない自然の驚異が相手だとしても、どうしようもない、などと言いたくない。
「シンジ、もうシェルターに入ろうよ。風邪なんか引いたら大変。
たまにはさ、乾パンに水とかじゃなくて暖かい物を……」
だから何を言ってるのよ、アスカ!
そんなヌルイ台詞、私らしくも無い!
「……ッ!」
「え、あの……アスカ?」
「え?あ、あの……ああ……」
「もの凄い顔をしてたよ。どうしたの、アスカ。」
そうよ。何を取り乱しているの、アスカ。
見てよ、この景色。どうしようもないじゃない。
天災相手に何をしようというのよ、アスカ?
「……」
ほら、シンジが心配してるよ?落ち着いて、アスカ。
「さあ、中に入ろうよ。アスカ?」
「う、うん……ゴメンね。」
逆にシンジになだめられて、ふわっと胸の中が軽くなる。
そっと肩を抱かれて、沸き立っていた苛立ちが砂の山のように崩れて落ちる。
でも、何かが抵抗している。
心の奥で、何かが。
「シンジ、ゴメンね。今日のお昼は何を……」
違う。
これは私じゃない。
こんなの、私なんかじゃない。
- 続く -
180 :
前スレ35:2008/07/27(日) 20:42:10 ID:???
続くー
これもまた続きが気になる!www
GJ!乙です!
ここの職人はいったい何者なんだwww
GJ!!
先が全然読めないw
夏場なので怪談物です
相変わらず蒸し暑い夜の話し
「ねぇ〜…シンジ何か涼しくなる事無い?」
事の始まりは、アスカの何気ない一言からだった。そして、これが恐怖の始まりだった…
「なら、怪談なんてどうだろう?」
と、シンジが答えた。
「階段?そんな話しして本当に涼しくなんの?」
アスカは『怪談』と『階段』を勘違いしているらしく、頭の上に?を着けて、白けた顔をしていた。
(アスカのヤツ階段と怪談を勘違いしてるな…)内心呆れながらも
「怪談だよ。幽霊とか怖い話しをして涼もうって事だよ」
と、アスカに怪談の意味をそれとなく教えたのだった
「怖い話しねぇ〜…うん♪面白そうじゃない↑さっそくやりましょ♪」
と、アスカはノリノリで答えたのだった。するとシンジは部屋の電気を消して、一本の蝋燭に火を点けて雰囲気を造ってから
184 :
183:2008/07/30(水) 01:42:57 ID:???
続き
「じゃ…まずは、僕からするね。この話しはSecond-Impactよりもっと以前で江戸時代の話しなんだけどね…」
シンジは自分の中で知っている怪談話しをし始めた…
「それは…今日みたいに蒸して、蒸して暑い夜だったらしく、寝苦しくて中々眠れなかったらしいんだ…男が夜中に喉が渇いたらしく瓶の中の水を飲もうと覗いたら、瓶の中は空だったんだ。それで、仕方なく井戸の水を汲もうとしたらしぃんだ…。
そして、汲み上げた水を桶に移そうとした時に、汲み上げた水が妙に鉄の臭いがしたそうなんだ…そして、水の色も透明から段々と赤くなりだしたんだ。何でだと思う?」
と、シンジは一旦話しを区切りアスカに尋ねてみたのだった
「水の色が血に変化していったとか言うんじゃないでしょうねぇ〜?」
と、半ば適当に答えたのだが
「正解♪で、続きを言うとね…」
と、シンジはアスカの適当な解答が正解だと言うと話しを続け出した。
今日はここまで( ̄▽ ̄;)
続きは明日の夜にでも書きます。何分携帯からなんで細切れになりますが、温かく見守って下さいm(_ _)m
では×2└|∵|┐≡ダッシュ
なんちゅーところでw
<階段?そんな話しして本当に涼しくなんの?
これアスカ絶対「怪談」知ってるだろww
187 :
183:2008/07/30(水) 23:51:45 ID:???
184
続き
「それから、汲み上げた水の色が段々と赤くなっていって、とうとう血みたいな鮮やかな赤になったんだ。
しかも、血独特の鉄腐さは酷くなって、その上、何故か有る筈の無い髪の毛が大量に浮かび上がって来たんだ。
男は直ぐに汲み上げた水…今は血の方が正しいかな?まぁ、それを捨てようとするんだけど体が硬直して動けないらしくカタカタと震えながら様子を見るしかできなかったらしんだ…
だけど、桶の水の変化はそれだけでは留まらずに鉄の臭いの中に何かが腐った臭いが混じりだしたんだ…男は恐怖の余りに気絶しそうになった時に…誰かが背中を『トントン』と叩いたんだ…
それと同時に男は振り返る事が出来たんだ。
だけど、男は振り返った後に激しく後悔したんだよ。何故か解る?」
また、シンジは話しを区切り、アスカに話しを振ったのだっあ
188 :
183:2008/07/31(木) 06:18:04 ID:???
187続き
「えっ?何で、そいつ後悔したの?」
アスカは男が何故後悔したのか解らなかったから逆にシンジに聞き返したのだった。
「それはね…何となくなんだけど、心の中で絶対に振り向いてはいけないと思っていたのに、顔が勝手に動いたらしく、
それで、振り向いた時に男は『死ぬ』と直感し、それで振り向いた事に後悔したらしいんだ。」
と、シンジは言ったのだった。
「ふぅ〜ん…で、続きはどうなったの?」
アスカは続きが気になって仕方ないらしく、シンジに話しの催促をした。
そして、シンジは続きを語りだした。
「それで、男が振り向いた先に居た物は、首の無い女だったんだ。
男は怖さの余り、その場にへたり込みたかったんだけど相変わらず体はうごかなかったんだ…
そして、男の頭の中に直接声が聞こえて『私の…首を…返して…』と、男は視線を血に変化した水に送ると、血の中に腐敗しまくった女の顔らしき物が入って居たんだ…」
昨日は書いてる途中で睡魔に襲われて寝てしまいましたm(_ _)m
かなり、おかしな部分があると思います。続きはまた後で書きますm(_ _)m
では×└|∵|┐≡ダッシュ逃げ
190 :
前スレ35:2008/08/02(土) 00:08:21 ID:???
eo解除されたー
続きー
「ふう……ふう……はあ……」
シンジがマラソンから帰ってきた。
シェルター内の狭い通路を繋いでコースを造り、毎朝5qを走りきる。
あれ以来、この街に冬将軍が到来してからのシンジの日課だ。
そして訓練室に行き、腹筋とか懸垂とかのメニューをこなす。
そろそろ終わるかな。しょうがない、タオルを持って行ってやるか。
「お疲れ様。よく続くわね。」
「あはは、こういうことでもしないと退屈だし。」
私がシンジにやれと指示した訳じゃない。
シンジの自発的活動だ。
毎朝、決まった時間にちゃんと起きるし、
トレーニングの後はきっちりと生活のための仕事をこなす。
「アスカ、朝ご飯の準備をするから待っててね。今、シャワーを浴びてくる。」
「うん……」
私?
お察しの通り、何もしない怠惰な生活が続いている。
今ではもう、食事の用意や掃除洗濯までシンジに甘えきり。
アクティブが信条とか、自分ながらよく言ったものだ。
そんなものぐさな私になったのも、ファーストの目のせいかって?
逆よ。いや、その通りかもね。こいつを見たくないの。考えたくない。
だから何もしない。したくもない。
できれば、そう。
シンジの顔、見たくない。
「アスカ。後で体温と血圧、計っておくね。」
「え?あ、そう……」
「なんか自動で血液検査とか出来るものがあるみたい。後で僕、試してみるよ。」
「うん……」
「上手く出来たらアスカもやっておくといいよ。それから……」
シンジ、お願い。
あまり私に話しかけないで。
シンジと一緒に居たい偽物の私と、そうでない本来の私の心……
あれ?本当は私はシンジが嫌いなの?
違う。そういう訳じゃない。
シンジを慕う私の心。これが私自身ではなく、ファーストのものだとしたら?
私の心がファーストに支配され、シンジに触れるその手がやはりファーストの右腕だとしたら?
そうね。まるで今の私は、アスカの記憶を誰かから植え付けられたものであり、
本来の自分自身が消し去られたような、そんな感じ。
本来のアスカは既に抹消されて、今のは私はアスカの姿と記憶を持つ綾波レイ……
嫌だ。絶対に嫌だ。
そんなこと、絶対に許せない。
もし、こうしてシンジと一緒に過ごしているのが私でない……いや、違う。
私は私よ。私こそが惣流アスカ・ラングレー、その人じゃないの。
いや、でもね。仮によ?
あの時。そう、エヴァシリーズと戦った折りに、既に本物の私は死んで……
「アスカ?」
「……え?あ、シンジ、何?」
「うん……あのね。もうすぐ、クリスマスだよね?
たまには、普通の料理を食べようよ。ね?」
「……そうね。」
「ドイツ料理ってどんなの?僕、作って見るよ。」
「……」
「えーと、材料がそろうかなぁ。どんな料理が知らないけど……」
「私も知らない。ずっとNERVに育てられたから。」
「あ、そう……えーっと……」
(アッハッハ!ドイツ料理なんてね、ソーセージとジャガイモとか適当に食べるだけなんだから!
ほら、以前に作ったカレーの方がよっぽど美味しいわよ。それじゃ、また作ろうか!)
そう、答えてあげたかった。
でも、何かが許せなかった。
あの時。そう、シンジとカレーを作った私が既に私じゃないとしたら?
……ああ、もう嫌だ。
私、ずっとそんなことを考えてる。
「止めておきましょう、シンジ。」
「え?」
「私達は蓄えを食いつぶしてるのよ。自重しなくちゃ。」
「……そうだね。」
そして私は何も言わずに立ち上がり、自室にこもる。
最近、ずっとこのパターンだ。
それを嫌だという訳じゃない。
自分の部屋の扉に鍵をかけたあと、どれだけホッとすることか。
そしてベットに潜り込み、何もしないでその日を過ごす。
もう鏡に向かうこともない。
シャワーを浴びる時も包帯を巻き直すときも、絶対にこの目を開かない。
しっかりと眼帯を当てて、その上から山ほどの包帯で頭全体を覆い隠してしまっている。
もう頭をすっぽりと覆い隠すくらいに……え?この髪の毛……
「いやああああッ!!」
ばたんっ!ばたばたばたばた!
うっかり出してしまった悲鳴を聞きつけて、シンジがこちらに走ってくる。
もうだめだ。あのファーストの浸食がここまで来てしまったのだ。
私の赤毛の中に、間違いなくファーストの青い……あら?
これって、単なる白髪?
どんどんどんどんどんどんっ!
「どうしたの、アスカ!ねえ、ここを開けてよ!ねえッ!」
ったくもう……うるさいなあ。
聞き耳たててるんじゃないわよ、バカシンジ。
「シンジ、ゴメン。その……変な夢を見ただけ。慌てないで。」
「あ、あの、アスカ、その……ホントに?怪我とか……」
「してないわよ。判ったら、あっちに行ってて。」
「アスカ……」
ドアの磨りガラスに映るシンジの影。
行けと言ったにも関わらず動こうとしない。
もうほっといてよ。
「アスカ……もう今月に入って5度目だよ?」
「……」
「一度、話をしようよアスカ。」
「話?ないわよ。話すことなんか。」
「でもさ……」
あー、もういい。ほっとこう。
シンジがそうしたいというなら、ずっとドアの外で吠えてればいいわ。
とんとん……しつこく、シンジはノックする。
「ねえ、アスカ。今は僕たちだけしか居ないんだよ?僕たちだけなんだよ?仲裁してくれる人も居ない……」
「……」
「お願いだよ、アスカ。話をしようよ。」
「……」
とんとん……
とんとん……
「アスカ……」
「……」
「アスカ、その目がそんなに」
シンジ……アンタ、この私を怒らせるつもり!?
ガンッ!
と、思わずドアに蹴りを入れて怒鳴り散らした。もう、我慢できない!
「アタシの言ったこと忘れたの!いい加減にしなさいよ!」
「アスカ、その目がどんな状態なのか判らないけど、どうなっていようと」
「アンタに私の気持ちが判るわけないでしょ!この目についてあれほど触れるなって言ったじゃないッ!」
「だから、僕は見るつもりはないよ。アスカが見せたくないなら、僕は見ない。
でも僕は、その目のためにアスカがダメになるんじゃないかと心配なんだよ。」
「アタシの何がダメだって言うのよ!言ってみなさいよ!ダメで何が悪いの?
そうよ、あれが良くてこれが悪いとか、今更そんな善悪なんて、なんの意味も無いじゃないの!」
「アスカ、前に言ってたじゃないか。自分達の力で生きていけないなら意味が無いって。
生きていくことは善悪の問題じゃないよ。それにさ。」
「何よ!?」
「最初の時より、ずっと包帯が増えてるじゃないか。ほとんど顔も見えないくらいに。」
「それが何よ。あー、そうね。最後に残った女が醜いから、それでアンタは必死な訳ね。
どうせこの場にファーストが居たら、そっちに飛びついていくくせに!」
「……アスカ、綾波のことは別に関係ないじゃないか。」
「アンタの口からその名前を言わないで!なんで、ファーストのことなんか言い出すのよ!」
「アスカ、言ってることがメチャクチャだよ!落ち着いてよ!」
「なら、メチャクチャなアタシのことなんかほっといてよ、もう!」
「アスカ……」
「シンジ、ならいいわよ。ドアを開けてあげる。
そのかわりね。ズボンとパンツを脱いで待ってるのよ。いい?
そしたら、私も服を全部ぬいであげるから、私を見ながら自分でしなさい。」
「アスカ……なんてことを……」
「私、覚えてるのよ。あの時、起きてたのよ、シンジ。
あの時と同じ事をするだけじゃないの。それが今更、恥ずかしいって?」
「……」
「そしたら、アンタとセックスしてあげなくもないわ。どう?それで、満足?」
「……」
そして、ドアからシンジの影が消えた。
……何よ。
悪いのはシンジよ?シンジが悪いの。
私に説教がましいことを言う、シンジがみんな悪いのよ。
それで、ちょっと言われたぐらいで逃げちゃってさ。
あれだけ言われて怒らないの?どこまで軟弱なのかしら。
どうせなら、ドアを踏み破って私をレイプするぐらいの気合いでかかってきなさいよ。
そうよ、あれだけ言われて……そうよ。男があそこまで言われて……
大抵の男なら、あんな恥ずかしいことを……
そこまで言われちゃもう引き返せないくらいの、秘密を明かされたというのにシンジは……
私……私は……
私はシンジに取り返しの付かないことを……?
(う、うぐ……ううううううっ……)
シンジ?
なに、今のうめき声。
いや、演技じゃない。ただ事じゃない。
何があったの?何が起こってるの?
(うう……ああああ……あああああああッ!)
シンジ!?
- 続く -
199 :
前スレ35:2008/08/02(土) 00:18:18 ID:???
続くー
いやぁぁ、こんなとこできらないでwww
気になるよぉぉぉ
今回解除迄短かったよなー
お試し使わなかったのか?
しかしミイラっぽいアスカすげー、GJ
GJGJGJ!続きが気になりまくリング!
203 :
前スレ35:2008/08/02(土) 21:59:53 ID:???
続きー
※ 注意 ※
以降、10レス以内に痛グロ出血表現があり、読むと鬱になったりします。
そういうの駄目な人、どうかスルーして頂けますように...
何かあったんだ!
シンジの身に、何かあったんだ!
ガチャン!
「シンジ!どうしたの!シンジ!」
私はドアを開けて飛び出して、シンジの声が聞こえた方に走り出し……
シンジ!?
「う、うう……あああああっ……」
「シンジちょっとやだ、アンタ、アンタ……アンタ、なんてことするのよッ!!」
「あ、あああ、あすか、あ……」
私が見た物。
それは、左目に深々とナイフが突き刺さったシンジの顔。
「や、やだ、シンジ、何でこんなことをするのよ、何で、
いい?抜くわよ?抜くからジッとしてて、お願い、ジッと、」
「う、うう、ああああ……ああああああああああッ」
ナイフを抜いた左目から、噴水のように吹き出す鮮血……いやだ、抜いちゃいけなかったの!?
そんな、抜かなきゃしょうがないじゃない!
お願い止まって!止まって、お願い!
「シンジ、あ、アンタの服……ッ!」
ビリビリッ!
「ほら、これで押さえて!何をしてるの、しっかり押さえて!
やだ、目の血止めなんかどうすればいいの!ねえ、どうすればいいのよ!わかんないッ!!
ねえ、シンジ!しっかり自分で押さえててよ!アタシが薬とか取ってくるから!」
「う……う……あ……」
嫌だ、シンジの声が途切れ途切れになってくる!
私は夢中で走り出す、救急箱、救急箱は何処!?
シンジ、アンタは取り返しの付かないことをしたのよ?
医者も居ない病院も無い、ここは私達二人だけ、
そんな世界で体を損なうことになったら、
「あ、あ、あった!シンジ、今行くから!お願い、死なないで!死なないで!死なないで!」
中途半端に蓋が開いてて、
バラバラと中身をまき散らす救急箱、
そんなのをほっといて、残った薬を抱えて走り出し、
いや、ダメよアスカ!落とした薬が無くてシンジが死んだらどうするのよ!
「シンジ頑張って!ほら、薬を持ってきたよ!いい、かけるわよ?」
「あ……」
「しみるの?仕方ないでしょ!大怪我なのよ?」
「……」
「どうなの!まだ痛む?ほら、しみるでしょ?しみるとか痛いとか悲鳴あげなさいよッ!」
「……」
「シンジ!シンジ!?ねぇ、声を出して!お願い!声を出して!」
ビリビリビリ!
足りない!私の服まで使っても足りない!血が止まらない!
お願い!どうすればいいの!?
「イヤだ、血、止まって!ねえ!シンジ!シンジ!死なないで、死んだら承知しないわよ!
死んだら、死んだら、死んだらアタシは、ゴメン!シンジ死なないで!アタシ、謝るから!何でもするから!
誰か助けて!お願い!シンジを助けて!お願い!お願い!お願いだからシンジを助けて!!」
『ねえ、アスカ。今は僕たちだけしか居ないんだよ?』
「……そうよ、アスカ。アンタだけなのよ?アスカ、シンジを助けられるのは私だけ、私だけなのよ?
このままシンジを死なせていいの?もう、私にはシンジしか居ないのよ?
私が何も出来ずにシンジを見殺しにしてしまったら、私は、」
……見殺しぃ?はぁ????
アハハハハハハッ!何を言ってるのよ、私は!
シンジの言う『僕たちだけしか居ない』って意味、判ってる?
言ってみなさい!シンジを殺したのは誰?シンジをここまで追いつめたのは誰なのよ!
「い、い、イヤッ!私は何を言うつもりなの!?
止めて!言わないで!それだけは言わないで!お願いだから言わないで!」
シンジを殺したのは他の誰でもない、私自身じゃないの!!
「いやああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!」
……
血は、止まった。
最後には自分の目の包帯をといて、シンジの頭に無茶苦茶に巻き付けていた。
辺りは、血の海と化していた。
その中で、半裸で抱き合うシンジと私。
血が止まったのは、もう全て流れ尽くしてしまったから?
そう、そうね、でも、大丈夫、大丈夫よ、シンジ。
「ねえ、シンジ……起きてる……?
ねえ、シンジ……私、夢を見たのよ……丁度、こんな夢……
水しぶきを上げながら……二人で裸で抱き合ってた……夢……バラ色の夢……
そうか……あれはアンタの血だったのね……
ねえシンジ……ほら、起きて……あの夢の続きをしようよ……ほら、起きてシンジ……」
目の前に、シンジの左目に刺さっていたナイフが転がっていた。
「出血が酷いから起きれない?……しょうがないわねぇ……
ウフフ……大丈夫よ……アタシの分があるから……ね……?
ほら……分けてあげる……私の……」
私は、ナイフを自分の首筋に押し当て、そして、
(ぴちゃん……)
ん?
(ぴちゃん……)
「やっと、お出ましって訳ね?今更、何よ。」
見上げると、そこにファーストが立っていた。
おぼろげで、その姿がハッキリと見えてこない。ぼんやりと切れ切れに見えるファーストの幻。
「アンタのせいよ。悪いのは全てアンタよ。何よ、何しに来たのよ。」
(……)
「せっかく出てきたんだから何か言いなさいよ。全部アンタが悪いのよ……ねえっ!」
(ごめんなさい)
ふわっと、まるで暗がりに光る蛍のような、そんな声が辺りに漂う。
「そうよ、謝りなさい。もう、アンタに出来ることはそれだけよ。
もう一度、謝りなさい。そして消えなさい。二度と私の前に姿を見せないで!」
(ごめんなさい。でも、そんなことを言わないで。)
「はぁ??」
(消えろだなんて言わないで。謝るから……)
「アンタ、何を言ってるのよ。アンタらしくも……」
(お願い、ママ。謝るから……)
え!?
「ちょっと、ファースト……今、なんて……」
違う。ファーストの姿、幻だから見えにくいんじゃない。
無いんだ。ファーストの体が欠けている。
右腕と、そしてファーストの両眼が。
「あ、ああ、ああ……」
そして、私は意識を失った。
全てを悟った、その後に。
……
「シンジ!?」
目が覚めて、辺りをキョロキョロと見渡す。
シンジが居ない。
昨日の出来事、いや、あれは昨日の出来事だったんだろうか。
やはり夢では無かった。私は血塗れの部屋で眠っていた。
思わず、自分の目に手を当てる。
手を添えた右目に、ほどいた筈の包帯がしっかりと巻き付けられていた。
この巻き方、そうだ。シンジと浜辺で気がついた時の、あの巻き方だ。
誰がしたのだろう……答えは一つだ。
私は立ち上がり、フラフラとシンジの姿を求めてさまよった。
何処に行ったの、シンジ。
まさか、ファーストが連れて行っちゃったの?
でも、その考えに憤りを感じない。
なんだか、すっかり心が洗い流されたかのよう。
もうこの目と、そして右腕に苛立つこともない。
ん、微かな物音。
シンジね?
その音の方に向かうと、そこにシンジが立っていた。
私がシャツを引き裂いてしまったために、ほとんど裸の姿だった。
私もそうだ。身につけているのは下着だけ。
シンジは洗面台に向かっていた。
鏡に映るシンジの顔は、思った通りだ。
「シンジ……」
シンジが振り返る。
左目を包帯で隠した、その姿で。
「シンジ、その目……」
「あ、うん、これね……」
「大丈夫なの?その目……ねえ、手当を……」
「大丈夫だよ、その……」
シンジは少し笑って、こう言った。
「ごめんね。僕、男だしさ。見せたくない。」
何それ。
以前、私が言った台詞じゃないの。
「うふ……ふふふ……」
「あはは……はは……あはははは……」
二人で笑った。
バカみたいに笑い転げた。
そのまま抱き合い、床に崩れ落ちて、息が出来なくなるほど笑い続けた。
そう、やっとあの夢の続きが始まるのだ。
- 続く -
続くー次が最終回ぃー
※ 注意 ※
こっから前の10レス以内に痛グロ出血表現があり、読むと鬱になったりします。
そういうの駄目な人、どうかスルーして頂けますように...
GJ
次で終わっちゃうのか(´・ω・`)
続きが気になるが…そうか終わっちゃうんだ…
とにかくGJ!
GJGJGJ!!!
216 :
前スレ35:2008/08/03(日) 17:16:44 ID:???
続きー
それから、数ヶ月。
長い長い冬が明けて、第三新東京市に春が訪れた。
まさに溢れんばかり命が咲き乱れる、見事な春が到来した。
この街に、この国に春がやってきたのは何年ぶりのことだろう。
私達の不安、氷河期の到来は無かったのだ。
あるいは、サードインパクトの傷跡を突貫工事で癒すため、ごく短期間の氷河期だったのかも知れない。
まさに、あの吹雪は癒やしの風に他ならなかった。
私はシンジに促されて、数ヶ月ぶりに日の光を浴びた。
シェルターの原子炉が生み出す電灯の灯りばかり浴びていた私には、
輝かしい春の日差しの中で、身動きできないほどの目眩に襲われた。
そして、シンジが待ち遠しそうに私の顔をのぞき込む。私が驚嘆するのを待っているのだ。
そして、目が次第になれてきて世界の有様を見た時、シンジにとって期待通りの悲鳴を上げた。
瓦礫と化した第三新東京市では、盛大な花々のセレモニーが繰り広げられていたのだ。
すみれ、たんぽぽ、スズラン、れんげ、チューリップ、そしてこれでもかと言うほどの桜、桜、桜……
もう知ってる花も知らない花も、私が一番と誇らしげな顔で咲き乱れていた。
瓦礫の山にも、ビルの廃屋にも、岩という岩、地面の至る所に草木が萌え、
花々が織りなすクラクラするほどの春の息吹が溢れかえっていた。
それこそ正にこの街に、この星にサードインパクトで溶けてしまった生命達が戻ってきたことの証明だった。
「シンジ……ああ……シンジ……」
私はただ、シンジの名を唱えるばかり。
そんな私を得意げな顔で手を引いていく。まるで自分の手柄のように。
あはは、いいわよ!これ全てアンタのお陰だって、私が声高らかに宣言してあげるから!
私達が以前に畑を耕していた山に向かって、ジープなど使わずにゆっくりと歩いていく。
そして、最初に見た花々など序の口であったことに気が付いた。
山はとてつもない変化を遂げていた。
サードインパクトの被害を受けて丸裸となってしまった山々には、
樹齢100年にも1000年にも見える木々で埋め尽くされ、
妖精が住んでいると信じて疑わないほどの見事な森林と化していた。
そして最後にたどり着いた場所。
私達が耕した小さな畑。何故かそこだけは大自然の浸食を受けていなかった。
巨大な木々に守られて、私達が作ったそのままの姿で残されていた。
「ほら、アスカ。また、作物が芽を出している。」
「ほんと……ほんとね、シンジ……よかった……よかったね……」
そう言って涙ぐむ私を後ろからシンジは抱きしめる。
そっと、お腹の新しい命を愛でながら。
そして、更に数年後……え?
冬が明けるまでどうしていたか?
聞いてなかったのかな。今まで説明した通りなんだけど。
深い深い雪の下で、ゆっくりと春が訪れるのを待ちながら、
新しい命をじっくりじっくり育んで、そして花開いた、というわけ。
とすれば、第三新東京の花盛りもシンジのお陰と言えなくもないでしょ?
っていうかさ。こっぱずかしくて言えないのよ!
二人きりだからこそ出来ることばかりして乳繰り合ってたんだから!
はい、更に数年後。
さらさらさら……
風に波立つ稲穂の海。
私はいつも、暇さえあればその光景を眺めていた。
朝日を浴びて、昼間の強い日差しを浴びて、夕日に紅く染められる小麦の大海原を。
「アスカ、また泣いてるの?」
「うん、ゴメンね。夕日が沈む頃が一番泣けて来ちゃう。」
もう音楽も映画も何もいらない。
この風景さえあれば、私は他に何もいらない。
これこそ正に最高の音楽、最高の映像。
そこに私達にとって、最高のヒロインが登場する……
「ファースト、待って!危ないからパパと一緒に居なさい!」
「平気!」
私達の「ファースト」、一人娘のユイは自慢の青い髪を風になびかせて、
元気に稲穂を左手で触れながら駆け抜けていく。
右腕は、なかった。それだけではない。両目とも見えないのだ。
私達の娘は、眼球を持たないまま生まれてきたのだ。
なぜなら、娘は私にそれらを捧げてしまったのだから。
そんな体で生まれてしまったけれど、可愛い可愛い私達の一人娘なのだ。
「アスカ、あの子なら大丈夫だよ。僕達以上に物事は見えている。」
「そうね。本当にそうみたいね。」
「でもさ、そのう……あの子をファーストって呼ぶのは……」
「いいの。私がそう呼びたいの。だって、出会ってからずっとそう呼んでたのよ?私は。」
……ん?なに、複雑な顔してるの?大丈夫、今ならファーストに感謝してるぐらいなんだから。」
私に右目をくれた。右腕も貰った。そして、シンジにも。
物を貰ったから感謝してるだけ?
自己犠牲に感動して?
いや、違う。うーん、なんて言えばいいんだろう。
あの時、シンジと傷つけ合ったのは通過儀礼で、それを促したのが紛れもなくファーストで、
それこそが人類を補完するための本当の道に至る……
「なに難しい顔をしてるの?ママ。」
いつの間にか、小さなファーストは私の膝元にやってきていた。
「ゴメンね。ちょっと悩んでたの。今日の晩ご飯はどうしようって。」
「ん、それじゃーね、うーんとね、うーんとね……」
「そうだ。たまにはシェルターの食べ物、持ってこようか。お肉なんて食べた事なんてないでしょ?」
「えー?私、嫌いだって言ったじゃない!動物の体なんか、食べたくない。」
「そうねえ、パパの作った作物しか食べたことないもんね……
ん?ねえ、ファースト。いつ、それを言ったんだっけ?」
「んーとね、判んない。」
「フフ、そっか。それじゃ、今からご飯つくるからいらっしゃい。ファーストも今日から手伝うのよ?」
「はぁーい!」
そうだったわね。それで三人とミサトも一緒にラーメン食べたんだもんね。
そんなことを思い出しながら、ファーストの頭をそっと撫でてやる。ファースト自慢の青い髪を。
そう言えばエヴァに乗っていた頃、私を名前で呼んだことがなかったな。
うーん、うっかり「ママ」と呼んじゃったらマズイから?なんてね。
「ねえ、ママ。」
「なあに?」
「パパとママ。いつまで、その包帯してるの?やっぱり、怪我が直らない?」
「ああ、そうねえ……」
私はシンジと顔を見合わせた。
ずっと気にしてほどけなかった頭の包帯。
今までほどく気になれなかった。
裸でシンジと愛し合う時も、どんな時でも。
互いに知っていながら、ずっと守り通してきたお互いの秘密。
傷つけることを恐れていたのではなく、互いの秘密にそっと手を添えて守りあってきたのだ。
この包帯こそが、まるで二人のエンゲージリングであるかのように。
でももうそんな証明は不要だろう。
私達の証明なら目の前に居るではないか。
せっかく貰ったファーストの右目。
それでファーストの姿を見ないでどうするのか。
「そうね、シンジ?」
「……うん。」
そして、私達はゆっくりと互いの包帯をほどき始めた。
- 完 -
222 :
前スレ35:2008/08/03(日) 17:23:47 ID:???
終わりー
っていうか、アスカが本編で包帯巻いてたのは左目なんすよね……
なんかもう色々おかしいけど今更修正も効かないし、
でもしょうがないので突っ切ってしまいました。
すんまへん、失礼しましたー
35氏GJ!お疲れさんでした!今から読むぞー
GJ
お疲れ様でした
35さんGJ
締めまでおいしく頂きました
お疲れさまでした!
226 :
183:2008/08/05(火) 00:46:59 ID:???
ひっそりと188続き
少し(?)グロくなります…
シンジは続きを語り出した。
男は腐敗しまくった女の顔に視線を移しながら
「く・首って、コ・コ…コレの事かな?返すから成仏して下さい…ナンマンダブ…ナンマンダブ」と言ってたんだけど…
「コノ、『クビ』ハ…イラナイ」
「オマエノ…『クビ』ヲカワリニモラウ…」と言って、男にしがみついて来たんだ…それで、男は怖さに耐え切れなくて気を失ったんだ。
男が目を覚ました時には朝になってて、不意にさっきまでの事が夢なんじゃないか?って思ったらしいんだ
227 :
183:2008/08/06(水) 00:25:17 ID:???
ひっそり225続き
シンジ編終わる予定です。
まだ、男は自分の身に起きた変化に気付かなかったんだ。
それで、男は取り敢えず自分の家に戻ったんだけど…そこには、見知らぬ女が居て男は
「ここは、俺の家だぞ!!勝手に入ってんじゃねぇー!」と威嚇したらしいんだ。
一方、女は叫ぶ男に一瞥くれて
「今は貴方の家じゃありませんよ。それに…その汚らわしい身体をどうにかして下さいな」と、微笑んだ。
男は益々激昂し「言うに事かいて、汚らわ…『ズルッ…』」
全てを言う前に首がもげた…男は初めて自分の身体の異変に気付いたんだ。
首が取れた事もだけど、身体が腐っていた事に…
女は、そんな男を微笑みながら見ていた。
そして、男は女が昨日の化け物だと気付いたんだ。
そして、女はと言うと男のもげた首身から上を潰し、体を持ち外の井戸にほうり込んだんだ…それからは、その井戸からは男の声が聞こえて来るらしいんだ…「俺の首を返して」とね…
228 :
183:2008/08/06(水) 00:40:51 ID:???
「僕の話しどうだった?」
と、シンジはアスカに怪談の感想を聞いた
「はんっ!シンジにしては上出来だけど、全然怖くないわよ。それに…」
と、アスカは強気で言ったのだけど、途中で良いよどんだ。
「それに、どうしたんだよ?」
シンジはアスカにその後が気になって聞き返したのだった。
アスカは
「あんた。後ろにだれか居るわよ…」
と言ってシンジの後ろを指さしていた。
怪談話をしていただけにシンジは心の中で
(僕を驚かせようとしてるんだな…)
と、思っていた。
それでも、シンジは後ろを振り向いて見た。
そこに居たのは………………………
白いワンピース姿に何故か大皿をもった綾波が居た。
さっきしてたのが怪談話だっただけに、綾波の急な登場はシンジを失禁寸前にまで追い込んだ。
つづく…
229 :
6:2008/08/06(水) 01:49:29 ID:???
あっちの最終回終わってしばらく経ったみたいだし、
そろそろ俺も投下していいかな?
というか、余韻に浸ってる奴がいたら悪いな。
俺の方じゃアスカ、半分ギャグ担当だから……
230 :
逆行142:2008/08/06(水) 01:50:43 ID:???
結局昨夜、一睡も出来なかったシンジは朝早くに起き出し、
せめて腫れて熱くなったまぶたを冷やそうと洗面所に向かった。
しかしそこで、
「……ぁ」
「…………」
ばったりと、アスカと鉢合わせしてしまった。
狼狽するシンジとは対照的に、目が合っても、アスカは何も言わない。
ただ不機嫌そうな目で、じろりとシンジをねめつける。
「あ、あの、その……」
そこで、シンジはなけなしの勇気を振り絞り、
「お、おはよう。その、…………アスカ」
はっきりと、そう口にした。
しかし、アスカはそれでも無言。じっと、シンジをにらみ続ける。
それで焦ったのはシンジだ。決死の覚悟で口を開き、
「あ、アスカ。あの、き、昨日は、悪かったと思ってるんだ。
ぜ、全部、アスカの言う通りで、ミサトさんに怒ってもらおうって、
昨夜はわざとあんなこと言ったりして、ずっと、独りでいじけてて……」
どもりながら、懸命に、自分の気持ちを伝えようとするが、
――ドン!
アスカは思わずシンジが「ひっ」という声を漏らすほどの勢いで足を踏み鳴らし、
最っ高に不機嫌な顔で、こう言い放った。
「もぉおおおおう! ほんっとに気の利かない奴ね!
アタシはトイレに行きたいの!
そんなとこ立たれたら、中、入れないじゃないのよ!」
「え? ……わっ! ごめん!」
そこでようやく、シンジは自分がトイレの前に立っていたのに気づいて、
慌てて横にどいた。
それを見て、アスカはふんっと鼻を鳴らして、
わざと乱暴に肩をぶつけながらシンジを押しのける。
231 :
逆行143:2008/08/06(水) 01:52:09 ID:???
そして、トイレの前に立つと、ぎろり、と振り返って、
「何? アンタ、ずっとそこに立っとくつもり?
アンタにそんなトコいられると、すっっごく気になるんだけど」
何も考えられずにその場に立ち尽くしていたシンジを追い立てる。
「あ、わわ、ご、ごめん…!」
シンジはまた謝って、いそいでトイレから距離を取る。
アスカはそんなシンジの様子を目をすがめて見届けて、
「バッカみたい」
と冷たく言い放った。
「ご、ごめん…」
さらに首をうなだれさせるシンジを無視してアスカは言葉を続ける。
「アンタはね。どうせバカなのよ。どこまで行ってもバカシンジ。
……だからたまには、他人を頼りなさいよ」
が、その口から発せられた思わぬ言葉に、シンジはびっくりして顔をあげた。
「…え?」
それを照れくさく思うみたいに、アスカは不自然に斜め上を向いて、
「あいかわらず、察しの悪い奴ね! ……だ・か・ら!
相談されれば、ちょっとした手助けくらいはやってやってもいい、
って言ってんのよ!」
そんなアスカからの最大の歩み寄りに、しかしシンジは素直にはうなずけない。
「でも、そんな、悪いよ。アスカには、関係ないのに……」
「関係ないぃ…?!」
眼光鋭くシンジを貫く視線の圧力に、シンジは鼻白み、
「…う。だって、その、僕が、やらなきゃいけないことだし」
アスカに「はあぁ」と特大のため息をつかせる。
「そんなの、当たり前でしょ。そんな過保護な真似、こっちから願い下げよ。
そうじゃなくって、アンタの話聞いてやったり、落ち込んだアンタに発破かけたり、
アンタが自分で動くチャンスを作ってあげたり、って話。
それとも、そんなの手助けにならないとでも言うつもり?」
「そ、そんなことないよ!」
232 :
逆行144:2008/08/06(水) 01:54:23 ID:???
シンジの言葉に、ようやくアスカは少し満足そうな表情を浮かべ、
「そ。とにかく、ま、そういうこと」
とムリヤリ話を締めくくった。
『これで話は終わり』という態度で腕組みしながら、でも、
どこかシンジの反応を待っているような、アスカはそんな状態で…。
それを察して、シンジは慌てて口を開く。
「う、うん。でも、アスカ…」
「何よ! これ以上うだうだ言うんだったら…」
そうじゃなくて、とシンジは首を振り、アスカの背後を指差して、
「その、トイレ。今、ペンペンが入っていったみたいだけど、いいの?」
「………え?」
バタン。…ガチャ。
背後から、トイレのドアが閉まる音と、カギのかけられる音。
アスカは弾かれたように振り返り、
「ぺ、ペンペン!? って、ちょ、ちょっとアンタ!
鳥類の分際で何いっちょ前に人間様のトイレ使ってんのよ!
こ、こら! カギ開けなさい! 開けなさいってのに、こらぁ!!」
さっきまでの真面目な顔はどこにいったのか。
ペンギン相手に本気で怒鳴り散らすアスカの目が、少しずつ据わっていく。
そこに危険の匂いをかぎとったシンジは、
「あの、それじゃぁ、僕は、もう行くから…」
一応小声でそう断って、抜き足差し足でその場を離れ始める。
「いーい、ペンペン。冗談とかじゃなく、アタシは限界なの!
感情的にも、その、…せ、生理的にも、ね。だから……、
って、聞いてんの、アンタ! ……く、そうだシンジ!
アンタも黙ってないで、何か…っていない?!
逃げたわね! 後で覚えてなさいよ!」
聞こえてきた言葉に、シンジはびくりと肩をすくませながら、
「とにかく早くしてよ! 漏れちゃうでしょぉ!!」
アスカのいつもと変わらぬ賑やかな様子に、わずかに頬を緩めたのだった。
233 :
逆行145:2008/08/06(水) 01:55:38 ID:???
しばらくして、アスカが居間に戻って来た。
「あ、おかえり。
よかったぁ。その様子だと、無事に…」
言いかけたシンジに、ゴン、と無言で拳骨をお見舞いすると、
頭を抱えて倒れ伏したシンジの前に仁王立ちして、
アスカは言った。
「……で?」
ストレートかつ、端的に。
「で?、って、何が?」
だが、それで伝わるシンジではない。
能天気に首をかしげ、疑問符を浮かべる。
それに、かぶせるようにして、
「アンタ、ファーストと仲直りしたいんでしょ?」
「え…?」
アスカはやはり、直球なことを言って、
「そ、その、それは……」
シンジの言葉を詰まらせる。
――こうしてアスカとは普通に話せるようになっても、
シンジは別に立ち直ったワケでも、開き直ったワケでもなく、
いまだ、レイに歩み寄る自信も勇気もないのだ。
口ごもるシンジに、焦れたように、
「いいわ! だったらアタシが協力してやるわよ」
「えっ? アスカ、が…?」
アスカがそう宣言して、シンジを驚かせる。
シンジの驚き様に、『じゃあさっきアンタとしてた話はなんだったのよ!』
という思いが一瞬、アスカの表情に出るが、懸命に制御して、
「どうせアンタだけじゃ、色々考えるだけで動けやしないんでしょ。
ファーストと二人きりになるまでは、アタシがサポートしてやるから、
――アンタはその時、何を言うかだけ考えときなさい」
まるで決定事項のように、そう告げる。
234 :
逆行146:2008/08/06(水) 01:57:05 ID:???
「ちょ、ちょっと待ってよ、アスカ!
いきなり、そんなこと言われたって、心の準備が…」
シンジは当然、狼狽するが、
対照的にアスカはいつも以上に落ち着いていた。
「だから、それを今しときなさいって言ってるのよ」
静かな口調で、シンジをたしなめるように、
「うまく行くかどうかなんて、正直アタシにだって分からないけど、
せめて、後悔だけはないようにしてもらうわ。
そうじゃなきゃ、わざわざアタシが骨を折る意味がないもの」
言葉の中身とは裏腹に、アスカの口調はどこか気遣わしげで、
それが逆にアスカの本気をシンジに思い知らせた。
……逃げ道を塞ぐアスカの言葉が、シンジの心の声をえぐり出す。
「そんな、待って、無理だ、無理だよ…。
分からないんだ。綾波に会って、何を言えばいいか。
自分がどうしたいのかも、分からないんだよ…!」
半ば叫ぶように訴えるシンジを、しかしアスカは冷たく見下ろした。
「ほんと、バカね。分からないから、考えるんでしょ。
考えることからも逃げてちゃ、答えなんて見つかるはずないわよ」
その言葉に、シンジはうつむくしかない。
「分かってる。それは、分かってるよ。だけど、僕には……」
そうして、うなだれるシンジに、
「でもアンタは、アタシの名前、ちゃんと呼べたじゃない」
「え…?」
意外なほど暖かい声が降り注ぎ、シンジは目を見開いてアスカを見上げる。
アスカはそんなシンジの肩をつかんで、
「ほら、しゃんとする!」
「あ、アスカ…?」
シンジを半ば無理矢理立ち上がらせ、視線を合わせるように、
その目を覗き込んだ。
235 :
逆行147:2008/08/06(水) 01:58:00 ID:???
「いいからもう一度、徹底的にやってみなさいよ。
精一杯やって、それでもうまくいかなかったら……」
「うまく、いかなかったら?」
シンジのオウム返しの言葉に、アスカはにやりと笑顔を作り、
「その時は、アタシがあの澄ました顔に一発ガツンとやってやるから」
「そ、それは…」
強張っていたシンジの顔が固まった。
「そもそもアタシ、ファーストのこと、キライだし。
……そうよ! アタシがあんな奴のために何かするなんて、
本当はすっごくイヤなんだからね!
ただ、アンタにはこの前の借りがあるから…」
勝手に盛り上がるアスカを、シンジは呆然と眺め、
やがて、そのまま力なくその場に座り込んだ。
「……アスカは、勝手だよ。
僕の都合なんて、全然考えてくれない」
「それは…っ! ……ううん。分かってるわよ。
一方的なこと言ってるって言うのは。でも、それでもアタシは…」
唇を噛み締めるアスカに、シンジは初めて自分から目を合わせ、
「……だけど、ありがとう」
そう告げたシンジの顔には、笑顔が浮かんでいた。
それはほとんど苦笑としか言えないような苦い笑いで、
だけどそれでも、それは確かに笑顔には違いなかった。
「どこまで出来るか分からないけど、やれるだけやってみようと思う。
……アスカのこと、頼りにしておくから」
一瞬、なぜかぽかんとシンジを見ていたアスカだったが、
すぐに我に返る。そして、
「当っ然! このアスカ様に任せておきなさいよ!」
いつもの不敵な笑顔で、そうシンジに答えたのだった。
――それから、
236 :
逆行148:2008/08/06(水) 01:59:19 ID:???
「――ねぇファースト。アンタに大事な話があるのよ。
だから、次の休み時間にでも、屋上に…」
「イヤ」
……即答だった。
翌日の学校。シンジが見守る中、レイに近寄っていったアスカは、
数秒も経たずに撃墜されていた。
(あ、アスカぁ…!)
後ろで見守るシンジの声なき声にプライドを刺激されたのか、
それは分からないが、当然この程度で引き下がるアスカではない。
「あ、アンタね! 用事が何か聞いてから…」
いきりたって、何か言おうとするが、
「碇くんにたのまれたの?」
機先を制した質問に、思わず、
「ちがっ…! シンジは関係な…」
と言ってしまい、
「そう。関係ないのね」
「…ぅう!」
致命的な言質を取られてしまう。
シンジであれば、この時点で勝負は決していただろう。
だが、アスカは食い下がった。
「か、関係ないっていうのはそういう意味じゃないわよ!
つまり、話があるのはシンジなんだけど、
シンジに頼まれたワケじゃなくて、」
「そうね。彼、そんなことする人じゃないもの」
「ッ――!!」
アスカの話の途中に入れられた横槍の言葉に、
挑発と知りつつアスカはぎりっと歯ぎしりする。
そして、今にも怒りを爆発させてしまいそうに見えたが、
(アスカ! 頼むから抑えて…!)
必死で念を送るシンジの期待に応え、アスカは何とか思い留まった。
237 :
逆行149:2008/08/06(水) 02:00:09 ID:???
呼吸を整えて、アスカはもう一度、
レイに向き直る。
「……とにかく。
シンジがアンタと話をしたがってんのよ。
だから…」
そして、またしてもレイは、
アスカが最後まで言い終える前に、
「そう。なら、碇くんに伝えて」
その言葉をさえぎり、アスカの言葉を封じると、
明らかに、その視線の向ける先をシンジへと変えて、
「――迷惑だ、って」
掛け値なしの拒絶の言葉を、吐いた。
238 :
逆行150:2008/08/06(水) 02:04:44 ID:???
「……悪かったわよ」
失敗したくせに、なぜかふてくされたような口調で、アスカはそう言って、
「あ、あのさ。任せておいて、って言ってたけど。
もしかして、綾波を呼び出す方法、特別に考えてたワケじゃなくて…」
「うっさいわね! 悪かったって言ってんじゃない!
……大体ねぇ、相手はたかがクラスメイトよ!
そんなの呼び出すのに、特別な作戦なんてフツー考えないでしょ!」
おずおずと尋ねたシンジに、無策だったことをバラし、あっさりと逆ギレした。
「でも、それで失敗してるんじゃないか…」
それでもさすがに収まりがつかないのか、さらに文句を言うシンジに、
「あーあーあー! 聞こえない。聞こえないわ」
と大人気のない対応をしてみせてから、一瞬、
何か考えるような表情になって、
「でも、脈はあると見たわ」
そんな言葉を言い放った。
「どこがさ!? 思いっきり嫌がられてたじゃないか!」
しかしその言葉はシンジには妄言としか思えない。
シンジは思い切り叫び声を上げるが、
「そこよ。アイツがあんな感情剥き出しにするなんて、
そうそうあることじゃないわ。
それだけアンタを意識してるってことじゃない」
アスカはあっさりとそれを受け流し、自説を展開する。
だが、それをシンジが簡単に信用出来るはずもない。
「それって……それだけ、僕と話すのが嫌だったんじゃないかな…」
思わず口から出た弱気なシンジの言葉に、
「まあ、そうとも言うわね」
あっさり首肯するアスカ。
「そうとも言う、って……」
もはやシンジには言葉もない。
239 :
逆行151:2008/08/06(水) 02:06:55 ID:???
「しかし、困ったわね。
ファーストだってもうアタシを警戒してるだろうし、次は…」
「……ごめん。もう、いいよ」
何かを言いかけるアスカから、微妙に視線を外しながら、
「このままムリヤリ話をしたとしても、きっといい結果にはならないよ。
もしかすると、時間が解決してくれるかもしれないし、今日はこのまま…」
「ダメよ!」
口にされたシンジの弱気な提案は、アスカの怒声に一蹴された。
「いーい? これはもうアンタだけの問題じゃないのよ。
アンタが頼んで、アタシが引き受けた。
一度受けた以上、これはアタシが取りかかった作戦、ミッションよ。
失敗は絶対に許されないの!」
「そんなぁ、メチャクチャだよ…」
ワケの分からない理屈を並べられた上、いつのまにかシンジが頼んだことになっている。
シンジとしてはたまったものではないが、おまけに、
「もう色々考えるのも面倒ね。……シンジ。アンタ、行ってきなさい」
今までの議論全てを覆すようなことを口にされ、さすがに抗議の声をあげる。
「え、ええっ? さ、最初と言ってることが…」
「ほらほら。次の休み時間でいいから、ファーストに話しかけて来なさいよ」
「だ、だからそれが出来ないから…」
「うるさい! そもそもアンタの問題でアタシが頭悩ますってのが間違ってるのよ。
だから、アンタが行きなさい。……ほら、もう休み時間も終わるわ。
分かったら、さっさと席に戻りなさいよ」
最後まで横暴なアスカは、問答無用でシンジを追い払う。
――だが、ぶつぶつと言いながらシンジの背中が遠ざかると、アスカの表情も変わった。
能天気にも見えたその顔には物憂げな色が深まり、鋭さを増したその視線はシンジを離れ、
もう一人のチルドレン、綾波レイの元へと向けられる。
その目に捉えるのは、頑なにこちらを、シンジのいる方を向こうとしない、その姿。
「ふん。まるでハリネズミみたいにツンツンしちゃってさ。
……一体何を怖がってんのかしら、あの能面」
240 :
6:2008/08/06(水) 02:08:11 ID:???
以上。
続きはまた明日にでも。
GJ!いいね!
先の展開が楽しみ(笑)
242 :
129:2008/08/06(水) 22:03:17 ID:???
ずっと前に書いたヤツのアスカVer投下します。
苦しいい…アタシが目覚めて初めて感じたのがコレだった…。
ぼやける視界の先には『アイツ』が馬乗りになってアタシの首を締めてる姿だった。
アタシは『アイツ』と居るなら死んだ方がマシだと思ったけど、最後くらいは優しくしてやろうと思ったから『アイツ』の頬を優しく撫でてあげた。
でも、『アイツ』は何を勘違いしたのか突如、泣き出した。
『アイツ』の眼から流れる『涙』は、頬を伝い、アタシの顔に落ちて来た。
アタシは『アイツ』の『涙』が生暖かくて、病室での『アイツ』の行為を思い出させる。
だから、アタシは『アイツ』に向けて一言
「キモチワルイ…」
これが、今のアタシの『アイツ』への評価であり全てだった。
しばらくして、アタシは立ち上がり歩き出した。理由は『アイツ』と居るのが苦痛だったから
243 :
129:2008/08/06(水) 22:30:05 ID:???
242続き
『アイツ』は、その場に座ったまま動こうとはしなかった。
アタシは背中に視線を感じたけど、振り返りもせずに只、歩いていた。
そこで、アタシは気付いた事があった。
人の気配がまったくしない事だった…
歩く事に疲れたアタシは、偶然あった戦自のジープを見つけた。
アタシは中を覗き込むと鍵はかかったままだった。
すかさずアタシはジープに乗り込み鍵を回し、エンジンを掛てみる。
『キュルルル…バルン…バルルル』
エンジンが掛かった。
アタシは運転する前にウザったらしい包帯を解いた。物凄く傷だらけだと思って居たけど傷一つ残っていなかった。
最後に頭のも解いて…窓から投げ捨てた。
まず、アタシが向かった先はデパートだった。プラグスーツのままなのは気持ち悪いからだった。
目的の場所を見付けたは良いが…電気が通って無ければ入る事が出来ない…
ダメ元で、自動ドアの前に立ってみる、『ゴファ〜』と音を立てて開いたので電気は通っている事は確認出来た。
アタシは中に入り衣服と食料を物色しながら辺りを見回してみた。
相変わらず人の気配はしない…その代わりに様々な服や鞄、靴などが転がっていた。そして、その周りにはオレンジ色の液体が散らばっていた。
とにかく、考えるのを後にして、アタシは荷物をジープに乗せてデパートを後にした
244 :
6:2008/08/07(木) 00:42:11 ID:???
上の終わってなかったら悪いけど、ちょっと投下させてもらうぞ?
では、この辺りからは多少ギアを上げて……
245 :
逆行152:2008/08/07(木) 00:43:29 ID:???
次の授業が終わり、休み時間。
シンジが次の授業の教科書を用意していると、
「でっ…!」
顔面に、消しゴムの欠片が飛んでくる。
涙目になって飛んできた方向を見ると、しかめ面をしているアスカが、
手の動きでレイの方を指して、「行け!」と命令していた。
(無視、するワケにも、……いかないよなぁ)
仕方なく、シンジは席を立ち、まだ自分の席にいる綾波の隣までやってくる。
それだけで、心臓がばくばくと高鳴り、足ががくがくと震える。
だがそれをどうにか押さえつけ、口を開く。
「あ、綾波ぃ!」
……見事に裏返った声が出た。
それでも頑としてこちらを見ようとしないレイに向かって、
シンジはとにかく話を切り出した。
「あ、綾波に、は、話があるんだ」
今度は少し、きちんとした声。
だが、
「そう。でも、わたしには話すことはないから」
レイはそう言って、立ち上がってしまう。
カバンを手に取って、そのまま教室を出て行こうとする。
「ちょ、ちょっと待ってよ。どこか行くなら、僕も一緒に…」
シンジは何とか食い下がろうとするが、
「……お手洗い。いっしょにくるの?」
「え? あ…」
口ごもる。
まさか、一緒に行くと言えるはずもなく、
「あ、あの、ごめ…」
狼狽するシンジをあいかわらずの冷たい視線で一瞥し、
レイはスタスタと教室を出て行った。
246 :
逆行153:2008/08/07(木) 00:45:00 ID:???
今日はやけにトイレ絡みの失敗が多いなぁ、とシンジが落ち込んでいると、
更なる不幸の元が向こうから歩いてきた。
肩を落としているシンジにあてつけるつもりはないだろうが、
こっちは肩を怒らせ、ドスドスと大股に歩いてくる。
「あ、アスカ、その…」
とりあえず何か弁解しないと、と思い、シンジは何か言いかけるが、
「バカ! 何で行かせちゃったのよ!」
その言葉を最後まで待たず、アスカはシンジを怒鳴りつけた。
「え? でも、トイレだって……。
まさか、ついていくワケにはいかないし」
アスカは「キィー!」とか何とか、いささか前時代的な感のある奇声を発し、
「なぁんでアンタはそんなに間が抜けてんのよ!
トイレ行くのに、カバン持ってくはずないでしょ!」
「あ、そういえば……」
そんなことは、全く考えていなかった。
「逃げたのよ。たぶん行き先は、NERV本部か自宅か…」
「えぇ…? で、でも、綾波に限って……」
シンジの口から情けない声が出る。
レイに嘘をつかれるなんて、シンジの想像の埒外だった。
しかし、そんな甘い希望を打ち砕くように、アスカは断言する。
「アンタがファーストのことをどう思ってるかは知らないけどね。
ファーストが歩いていったのは、少なくともトイレとは逆方向だったわよ」
「そ、そんなぁ……」
こんな状況で、アスカが嘘を言うとも思えない。
レイに逃げられたことや、アスカの言葉云々よりまず、
シンジはレイに嘘をつかれたことに落ち込んだ。
(そんなに、そこまでするほど、僕と話したくないの? ……綾波)
その時、消沈したシンジとシンクロするような声が、
「アンタ、そんなに…」
目の前から聞こえた気がして、シンジは顔をあげた。
247 :
逆行154:2008/08/07(木) 00:47:04 ID:???
ハッと口元を押さえるアスカを見上げて、シンジは眉をたわめる。
さっきの言葉は、アスカが言ったのだろうか。
「ねぇ、アス…」
確かめようと、シンジが何か疑問の声を発する前に、
「だからまぁ、そんなに気を落とすことでもないんじゃない、って言ったのよ」
アスカとしてはめずらしく、どこか優しげな口調で、そう先回りして答えた。
「え? で、でも……」
「アンタの言う通り、お互いに距離を取った方がいい時期ってのはあるわ。
冷静に見てみると、今がその時なのかもしれないわね」
百八十度方針を変えたアスカに、シンジは目をぱちくりとさせる。
もちろんそれは、シンジにとっては都合のいい言葉で、でも…、
「…でも、アスカは、いいの? 作戦は絶対失敗出来ない、とか言ってたのに…」
様子をうかがうように、上目遣いに尋ねてくるシンジに、
アスカは薄く笑って返した。
「ファーストのこと、これからも時々なら相談に乗ってやるわよ。
ま、長期戦、ってことね。そうしたら、作戦失敗ってことにはならないでしょ」
あいかわらず、シンジには分からない理屈だったが、
言葉から、アスカの労わりが心に染みてくる気がした。
「それとも、何? 今から追いかける? アタシはそれでもいいわよ」
アスカの言葉に、シンジは首を振る。
今のシンジに、とてもそんな気力は残ってなかった。
「でしょ。……さぁってと、今日くらいなら、アタシも付き合ってやってもいいわよ」
「付き合う、って何に?」
きょとんとするシンジに、アスカはあっけからんと。
「そりゃもちろん、シンジがファーストに振られた残念会よ」
「ふ、振ら……ってまだ振られてないよ!
というより、だからそんなんじゃないってば!」
シンジは真っ赤になって叫ぶが、そんなものはまるで取り合わず、
「はいはーい。お大事にぃ…」
シンジを慌てさせるだけ慌てさせ、アスカは勝手に遠ざかっていく。
248 :
逆行155:2008/08/07(木) 00:51:22 ID:???
そんなアスカを、シンジは怒りにも似た面持ちで眺め、
(……でも、きっとアスカなりに僕を励まそうとしてくれたんだよな。
一応お礼、言っておいた方がいいのかな?)
それだってうまく持続させられず、一言だけでも声をかけようと、
アスカの背を追いかける。
すぐにアスカに追いついて、何か声をかけようとした、その時に、
「……分かってる、自分でも。優しいフリして、つけこんで、遠ざけようとしてる。
アタシは、卑怯だわ。でも、仕方ないじゃない。だって…」
小さくそんな言葉が聞こえた気がして、シンジはかけようとした言葉を留めた。
しかし、黙っているのも気が咎め、
「あ、あの、アスカ? 今、何か言った?」
やはり声をかけると、アスカが一瞬、全身を強張らすようにして動きを止める。
が、すぐに振り向くと、シンジと目を合わせ、穏やかすぎるほど穏やかな顔で、
ゆっくりと左右に首を振った。
「ううん。何も言ってないわよ。……シンジこそ、何か聞こえたの?」
あまりにも穏やかで、ひどく優しいアスカの顔に、不自然なものを感じながら、
「う、うん。でも、気のせいだったのかもしれないや。
僕も、ちゃんと聞いてたワケじゃないから」
シンジもそれに、笑顔で答える。決してそこに、踏み込まない。
――そうするだけの勇気と覚悟は、レイの言葉に吹き散らされて戻ってこない。
「…そう。なら、いいけど」
二人の間を流れる空気は、不自然に穏やかなまま。
「それで何か、用事なの? 何か言い忘れてたことがあったなら、アタシも…」
「あ、い、いいんだよ。ただ、色々ありがとう、って言おうと思っただけで」
その言葉を聞いて、なぜか驚いたような、傷ついたような顔をするアスカを、
なぜかこれ以上、見てはいけない気がして、
「そ、それだけだから、それじゃ…!」
シンジは慌てて背を向け、その場を離れる。
まるで目に見えない何かに、追い立てられてでもいるように……。
249 :
逆行156:2008/08/07(木) 00:52:38 ID:???
アスカから離れ、シンジは何の気なしに窓際へと進んでいく。
だから、そこから窓の外を見ようと思いついたのはほんの偶然で、
強いて言うならちょっとした未練だった。
レイが教室を出て行った時間から考えると、
彼女はとっくに学校の敷地の外にまで出ているだろうし、
あのレイが嘘をついてまで校舎を出たのだから、
わざわざ教室から見えるような場所を通るはずなんてない。
そう、思ってはいたのだが、
「―――ッ!」
休み時間の、誰もいないはずのその場所には、はっきりと一人の少女の姿があった。
そこに見えたのは、紛れもなく蒼い髪の……
「綾波っ!」
考えるより先に、口が動いていた。
シンジの叫びと同時に、レイは身をひるがえす。
逃げ出すように、走り去っていく。
(僕に、気づいた? いや、今、見つけたというより、むしろ…)
シンジが窓から下を見た瞬間、
そこに立っていたレイと、目が合った気がした。
つまり、
(――綾波は、僕を見ていた?)
そう考えるのが、自然な気がした。
250 :
逆行157:2008/08/07(木) 00:53:22 ID:???
「あや、なみ…!」
知らぬ間にぐっと食いしばった口から、その名が漏れる。
理由も分からず、心臓が早鐘を打つ。
なぜかじっとしていられず、シンジは自分を押さえ込むように、
あるいは駆け抜ける悪寒をこらえるように、体の前で腕を交差させる。
無意識の内に、自分の制服の袖を、跡が出来るほどに強く、握り締める。
(なんで、こんな……。
関係ない、関わりたくない、って、
綾波のことは放っておこう、って、
そう、思ってたはずなのに……)
自問する。
その、答えは……
(……綾波が、僕を見てたから?)
いや、それだけじゃない。
この熱さの源泉は、そこじゃない。
(だったら、僕は…)
遠目に一瞬だけ見えた、レイの姿が、
その表情が、シンジの脳裏によみがえる。
(……あぁ、そうか)
そして突然、シンジは理解した。
もちろんそんなもの、目の錯覚かもしれないし、
シンジの願望が作用して、そう見えただけかもしれないし、
あるいはもっと単純に、ただの気のせいだったのかもしれない。
それでも、シンジは思ったのだ。
――こちらを見ていたその赤い瞳が、ひどく寂しそうだ、と。
そしてそれだけで、シンジの腹は決まった。
251 :
逆行158:2008/08/07(木) 00:54:18 ID:???
考えていたのは、たぶんほんの数秒にも満たない間。
シンジの異変に気づいたトウジが近づいてきて、
「センセ、どない…」
そう言いかけた時には、シンジはもう動き始めていた。
「ごめんトウジ! 今日は早退するから…!」
自分の席に駆け寄って、一瞬、考えてから、
「これ、頼むよっ!」
自分のカバンをトウジに放り投げる。
受け取ったトウジは目を白黒させて、
「ちょ、待たんかいシンジ! こんなもん、どないせえって…」
しかしもうシンジは聞いていない。走り始めている。
止まれない。止まるヒマはない。
「……ごめんっ!」
最後にせめてそれだけ言って、教室を飛び出していった。
残されたのは、カバンを手に呆然とするトウジに、
状況を悟ってメガネを光らすケンスケに、
突然のシンジの行動に、事情も分からず騒然となるクラスメイトに、
それを抑えようと、必死で声を張り上げるヒカリ、
そして、そして――
252 :
逆行159:2008/08/07(木) 00:55:34 ID:???
「……ごめんっ!」
叫びながら走るシンジは一瞬、アスカの目の前をかすめ、
しかしそれにも気づかないまま、教室を飛び出していく。
――アスカはそれをじっと、瞬きもしないまま、じっと見ていた。
自分の目の前を通り過ぎていくシンジを見送って、
シンジの巻き起こした風と怒号もまた、アスカの前を通り過ぎて、
それからようやく、アスカはぼそりと呟く。
「……何よ、バッカじゃないの。
怖いとか、分からないとか、さんざん言ってたくせに……。
いざとなったら、アタシのこと、気づきもしないで」
そうしてアスカは、本当の愚か者が誰なのか、自分に染み込ませるように、
「……バカ。ホントバカね、アスカ」
ゆっくりと、自嘲に満ちた表情を作り、その顔を決して誰にも見られないよう、
深く深く顔を伏せた。
そんなアスカを、嘲笑うみたいに、
「お、ナニナニ? 愛の逃避行?」「碇くーん! しっかりね!」
「碇ぃ! 綾波は左行ったぞ!」「なんや分からんけど、きばりやセンセぇ!」
窓際で沸き起こる、無責任な喧騒に背を向ける。
今窓に近寄れば、アスカはつい外を覗き込んで、シンジの姿を探してしまう気がした。
だから、代わりに、かすれた声でシンジを励ます。
「行きなさいよ、シンジ。答えなんて、最初から出てたのよ。
それがアンタの、本当にやりたかったことなんだから…」
言いながら、そう心の底から思いながら、けれどアスカは、
窓に、シンジに背を向けて、決してその姿を直視しようとしない。
だってそんなもの、認められるはずがない。
「――これじゃまるで、道化じゃないの、アタシは…!」
だが、そんなアスカの呟きなど、届くはずもなく、
一途にひた走る背中は見る間に、迷いなく遠ざかっていく。
……ただ一人の少女の、姿だけを求めて。
253 :
6:2008/08/07(木) 00:56:44 ID:???
以上。なぜか煽りだけは最終回レベルかも。
いや、特にどうということもない場面なんだが。
次、綾波編のラストはもう一度推敲してから落とすつもり。
アスカが健気だのう(>_<)
ケンスケが目撃したのがなんだったのかとか色々今までの伏線が気になる(笑)
次回も待ってるで〜♪
255 :
242:2008/08/07(木) 17:55:34 ID:???
シンジVer
赤い海のほとりで目を覚ました僕が見た物は…
僕を最後まで拒絶した『あの娘』だった。
僕は『あの娘』に跨がり首を絞めた…
多分…あの時の僕は普通じゃなかった。
拒絶されて当たり前の筈なのに、それが堪らなく嫌だった…だから、僕は『あの娘』の首を絞めた。
首を絞められて息を吹き返したのかはわからないけど、『あの娘』は僕の頬を撫でた…ただ撫でられただけなのに『あの娘』の首を絞めてる手に力が入らなかった。
そして、僕の眼から頬を伝い熱い物が流れていく…
僕は泣いていた。
そして、『あの娘』は言った
『気持ち悪い…』と
256 :
242:2008/08/07(木) 18:17:55 ID:???
255続き
『あの娘』が去ってどれくらい経ったのだろう…
去り行く姿をただ眺めていた。
今はもう、砂と赤い海と『あの娘』の足跡しか残って居なかった。
暫く座り込んで海を眺めていると背後から第九を口ずさむ歌声が聞こえて来た。 しかも、僕の知ってる声…『カヲル君』の声だった。
歌声はだんだん近付いて来て、僕の真後ろで止まった。
「こんな所に座り込んでどうしたんだい?シンジ君」
僕はカヲル君の声に驚いて後ろを振り返った…
「おどろかせたかい?」
僕の顔を見つめながらいつもの笑顔で話してる
僕は思わず
「これは夢なのかな?」
と、言ってしまった。
「夢…かも知れないね」
僕は正直夢でも構わないと思った。
カヲル君に逢えたから…
「沢山、傷付いたみたいだね?でも、今の君は好意に価しないよ…」
「好きじゃないって事さ…」
カヲル君は寂しそうな瞳を向けてそういった。
僕の瞳から、また熱いのが溢れてきた
「なんでなの?」
としか言えない僕に
「僕がシンジ君の事を好きになれなくなったのは、今しなきゃいけない事をしないからだよ」
と答えてくれた…なおも僕はカヲル君に尋ねた
「僕は何をしなきゃいけないの?」
………と
257 :
242:2008/08/08(金) 20:50:43 ID:???
ひっそりと更新してますが。
書きたい物が出来たので違う物ですが投下します。
時代は終戦まじかの、もうひとつのシンジとアスカの物語です。
8/9中には投下し終える予定です
赤色の空が大地を覆う…
それは、夕焼けの色ではなく、物の焼ける色…人や建物が焼けている。
その中で青年、碇慎司は空を眺めながらある事を決意していた
(僕が…否、俺の大事な人を奪って行ったあの鬼畜共に鉄槌を…)
そして、青年は空の鬼神となった。
零戦に乗る慎司は向かう米軍機をことごとく打ち落として行った。
日本軍からは『撃墜王』の栄光を…
米軍からは『Little-Devil』のあだ名を着けられていた。
だが、碇慎司にとってはどうでもよかったのだが…
それから暫く経ち、戦況は芳しくなくなって行き、日本軍の戦闘機には片道の燃料しか載せなくなっていた。
いわゆる『神風特攻隊』の誕生だった。
『撃墜王』の異名を持つ碇慎司にとって例外なく『神風特攻隊』に選ばれた
慎司は飛び立つ前日に自分が搭乗する機の前に居た。
「明日には散る命か…だが、俺には後悔は無い。有るのは憎しみのみ…」
手に握られた蒼銀の髪の束を握り締め青年、碇慎司19歳の夜は過ぎていく…
やがて、朝が来て全員集まった。
片道切符片手に飛び立つ小隊が次々に搭乗していく。
そして、碇慎司も乗り込んだ。
空を飛ぶ零戦の群…ただ一機だけ高度が下がって行く…整備不良で高度が保てなかったのだ。
その機体は、碇慎司の乗る機体だった。
仕方なく近くの島に不時着する事にした…。
とりあえず降りて辺りを確認してみるが、無人島らしく人の気配を感じられなかった…。
自分の機に戻り何処が悪いか調べて見る事にした…その時
「そこのジャップ!手をあげろっ!!」
慎司の背中に銃口を押し付けて声をあらげた
声は男の物では無かった。
「女か…悪いが俺はまだ命をくれてやる訳にはいかない」
慎司は冷静に手をあげ、振り返りながら言った。
振り向いた先には、赤みがかった金髪を携えて蒼い瞳を持つ女が居た。
そして、それは慎司の憎む外人だった。
「外人にしては日本語がうまいな。」
すこし慎司は少しビックリしたが、静かに言った
「黙れっ!それに、誰が振り向けと言った!!」
女は慎司の態度に益々ムカついたのか怒声を強めた
>>259 女は、男に名前を聞いたが
「名をきくなら、まず自分から名乗るのが礼儀だろ?これだから外人は礼儀を知らないから困るな…」
慎司は呆れながら言った。
「アタシの名は惣流・アスカ・ラングレーよ!名乗ったからには貴様も名乗れ!」
アスカは高圧的な態度を崩す事無く答えた。
慎司はヤレヤレといった感じで
「俺の名前は、碇慎司だ。所で背中の物騒なのをどけてくれないか?」
ついでに背中に押し付けられてる銃をどけるように促した。
「銃をどけた隙に逃げようってんだろ?お前の考えなどお見通しだ!」
と言いながら、さらに強く銃口を押し付ける。
「少なくとも今は、逃げたりはしないさ…それに、腹減っから飯を調達したいのだが…」
と、うなだれながら慎司は言った。
「…ご飯…」
と言うと同時にアスカの腹の虫が盛大に鳴った。
慎司は笑いを必死に堪え
「くくく…豪快な腹の音だな…君は飯作れないのか?」
少し小ばかにしながら言った。
「馬鹿にすんじゃないわよ!」
顔を真っ赤にしてアスカが怒鳴り散らす。
そして、腹の虫も大音量で鳴った
「あはははは!君の腹は正直だな…俺が作ってやるから銃を降ろしてくれ」
とうとう笑いを堪えられずに大爆笑する慎司を見て、アスカはゆっくり銃を降ろした。
そうとう腹が空いてたようだった。
>>260 >>259 暫く島を散策しながら食べれる物を捜し散策していた。
ある程度食料を調達した慎司は手早く調理を開始する。
次第に食べ物の良い匂いがしてきた。
それに合わせてアスカの腹の虫が盛大に鳴った。
慎司は笑いながら手持ちのナイフで木を彫り簡易式の器を二人分作って盛りつけた。
「飯、出来たぞ。早く食べよう」
慎司がアスカにご飯が出来たのを伝えて食べ始めた…
アスカは物凄い勢いで食べ物を口に運んでいく…
その姿を見ながら慎司は
(俺の思った外人は血も涙も無い鬼畜だと思ってたが…腹もすけば食べもするんだな)
無意識にだが慎司の抱く外人像を変えていた。
やがて食事が終わりアスカは散策時に見付けた小川に向かって行った。
体を洗うために…
もちろん、慎司を縄で縛ってからだったのだが
>>261 >>260 >>259 アスカは体を洗い終えると慎司の居る場所に戻って行った。
慎司はアスカが戻って来ると、縄を解いて欲しいと頼むが聞いてはくれなかった…
そして、何日か過ぎていき仲が良くなったのか慎司は縄で縛られる事はなくなっていた…
そして、慎司はアスカという人間がわかるきっかけとも言える事が起きた…
その日の夜、慎司は、すすり泣く声で眼が覚めた。
アスカが焚火の前でうずくまり泣いていたのだった。
慎司はアスカの横に座り
「どうかしたのか?」
と、尋ねた…
アスカは
「起こしてしまって悪かったな…」
と、初めて謝った。
慎司はその時なにも言わなかったが、アスカは慎司に聞いた
「貴様は…いや…慎司はLittle-Devilを知ってるか?」
と…
慎司は向こうに、そう呼ばれていた事は知っていたが
「名前だけはな…」
と答えた。
それを聞いてアスカは語り出した。
>>262 >>261 >>260 >>259 「慎司は知ってると思うけど、アタシは名前の通り、日本人の血が少し混じってるの…
そのせいで、よく虐められた…
でも、アタシをよくかばってくれたジョージってのが居たの…いつしかアタシはジョージに惹かれていったわ。
そして、アタシ達は将来を約束したの…でも……ジョージは軍人であった為に日本へ向かったのよ。
でも…ジョージは日本から帰って来る事は無かったわ…あのLittle-Devilに落とされたのよ…ジョージの戦死の報告を聞いてアタシは眼の前が暗くなったわ…
それから、アタシは復習する事を誓ったわ…
必ず奴を…アタシの手で殺してやると…ね。
そして、アタシは女を捨てて米軍に入ったの…」
アスカの話しを慎司は黙って聞いていた。
そして、慎司は語る
「御免…アスカ…本当は、俺はソイツの事を詳しく知ってるんだ…」
と…
アスカは俯いたまま答えないが視線だけを慎司に向けていた
慎司は、おもむろに胸ポケットから蒼銀の髪の束を取り出し語り始めた
乙
続き待ち
>>263 >>262 >>261 >>260 >>259 「そいつには両親と呼べる人は居なかったんだ…
だけど、そいつには妹がいたらしい…
そいつは両親が居なくても、妹が居たからそれなりに幸せだったんだ。
だけど、戦争は激しさを増し、そいつの所も被害は大きかったんだ…
そして、そいつは徴兵され、妹は被害の少ない田舎へ疎開する事になったんだ…
妹を乗せた列車は田舎へ行く途中で……アメリカの爆撃に逢って木っ端みじんになったそうだ…
後に…そいつの所に届けられたのは妹の遺髪と小さな骨壷だけだったらしい…
そいつは泣きに泣いてそうだ…一生分…涙が枯れるまで…
そして…そいつは空を睨み誓ったらしい…俺は鬼畜共に復讐してやるんだ…とね」
そこまで喋ると慎司は焚火の炎をただ見つめていた…
それまで沈黙を保って居たアスカだったが、慎司が持っている蒼銀の髪の束に視線を移して
「もしかして、そいつって…」
「そう…俺なんだ…」
そして、沈黙が支配していたが慎司が最初に沈黙を破った
>>265 >>263 >>262 >>261 >>260 >>259 「俺が妹を殺されて復讐心に駆られて、この手にかけた人達にも…家族や愛する人が居たのに…アスカに言われるまで木がつかなったなんて…
最低だな…俺って」
慎司の独白を聴きながら、アスカは
(慎司の顔は影になって見えないし、涙を流していないが泣いていたんだと思う…)
と、心の中で思いながら
「初めから、あんたがLittle-Devilだって知ってたら躊躇わず引き金を引いていたわよ…」
と、言った。
慎司はそんなアスカに視線を移し
「なら、今…俺を撃てば良い。俺はもう…『パーン!!』」
慎司が全てを言う前にアスカの渾身の平手が慎司の頬を叩いた…
「馬鹿言ってんじゃないわよ!!そんな事を今、言われて出来るわけないじゃない…だから、二度とアタシの前でそんな事を言わないで…」
いつの間にかアスカの瞳が潤み、涙がこぼれそうになっていた。
「ゴメン…」
慎司は泣きそうなアスカを抱きしめながら謝った
>>266 >>265 >>263 >>262 >>261 >>260 >>259 暫く二人は無言のまま抱き合った。
そして、泣き止んだアスカがそっと慎司から離れた。
それでも、お互いにそれ以上語ろうとはしなかった…
それからまた暫く経って…
空から戦闘機の羽音が聞こえて来た…
どちらの軍機かわからなかったので、お互いに茂みに隠れて様子を伺っていた。
実は、ほんの昨日までお互いに隠れてモールス信号で助けを呼んでいたのだった…
助けに来たのはアメリカ軍だった。アスカは慎司に小声で動かないように注意しながら茂みから出て行った。
戦闘機はアスカの近くに着陸した。
中から出て来た人にアスカは困惑していた…
そこに居たのは、見間違う訳がない最愛の人、ジョージだったからだ
ドイツって同盟国だよな
>>267 >>266 >>265 >>263 >>262 >>261 >>260 >>259 アスカの瞳が潤み駆け足でジョージの元へ駆けていき彼の胸に飛び付いていった
ジョージは、そんなアスカを抱きしめている。
慎司はそんな様子を見ながら少し胸が痛んだけど…その場を動こうとはしなかった…
アスカはジョージの胸の中で泣いていたが…ふと、疑問に思った事を聞いた。
「ジョージが戦死したって聞いたから…アタシ…てっきり…」
それ以上は言葉にならなかった。
すると、ジョージは
「俺が死ぬ訳無いだろ?それに、その方が都合が良かったからな」
と言ってニヤリとほくそ笑んだ。
アスカは見た事の無いジョージの顔に戸惑いを隠せないながらも
「都合?…って、どんな都合なの?」
と、ジョージに聞いた…
その答えはアスカにとって衝撃以外の何物でも無かった…
「あぁ…アメリカ人もどきの糞ジャップ勘違い馬鹿がうざいから死んだ事にしたのさ」
あまりの衝撃的な言葉にアスカは呆然とするしかなかった…
だが、ジョージの暴言はそれだけでは留まらなかった…
アスカは設定上アメリカ国籍なのでアメリカ人って事にしています。
説明不足ですみませんm(_ _)mペコリ
では、続きます
>>269 >>267 >>266 >>265 >>263 >>262 >>261 >>260 >>259 「助けを求める信号たどって来たら、お前だったんだからな。とんだ、むだ足だったな。でも、そのまま帰るのもアレだから一発やらせろよ!」
その言葉にアスカは完全に固まってしまっていた…自分が信じてた人にここまで言われて固まる他には無いだろう…
そして、ジョージはアスカの服を剥ごうとした時の事だった…
ジョージの首筋に鈍く輝くナイフがあてがわれていた…
慎司が背後から襲っていたのだった
「せっかくの恋人同士の再会を邪魔したく無かったんだけど…内容があまりに酷いんで、ついね」
冷めた声に冷たい殺気を乗せて慎司はジョージに言った。
「赤い彗星」と畏れられる赤いメッサー・シュミットで
「ナチスの科学は世界一イイイィィィッ!!!」と叫ぶアスカ
そして「哀しいけどこれって戦争なのよね」とフラグが立つシンジ
こうですか、わかりません(>_<)
ジョージは首筋にあてがわれたナイフと慎司の殺気を前に冷や汗を流していた…
そして…慎司は続け様に
「さっきアスカに言ったのは本気じゃないよね?本気だとしたら、本当にLittle-Devilに殺られるよ…」
Little-Devilの名前は、ますますジョージを震え上がらせた…
そして、ジョージは
「じ・じ…冗談ですよ…彼女を前にして少し悪ふざけしたかっただけなんですよ…」
冗談の一言に慎司はますます怒りをあらわにしていく
「冗談…か…なら、俺も冗談でこの短刀を滑らせて喉元掻き切ってあげようか?」
さらに殺気の度合いが強まり冷たさが増して行く
もはや、ジョージには死ぬ以外の選択肢は残されていないように思えた。
そんな時アスカが気持ちを立て直して
「慎司…こんな奴の為に手を汚さなくて良いよ…それに、これはアタシの問題なんだから」
と、言ってアスカは銃の柄の部分で思いっきりジョージの水月を殴打した。
>>273 水月のを殴打されたジョージは、その場で嘔吐し呼吸が上手く出来ずにのたうち回っていた…
すかさずアスカは少し前まで慎司をふん縛って居た縄でジョージを縛った。
慎司はその手際のよさに少々関心していた。
そして、アスカは関心してる慎司を前に「さっさと増援が来る前に逃げるわよ!」
と、慎司にハッパをかけた…
「逃げるにしても何処にだよ」
と言う慎司に対して、
「とにかく逃げないと仲間が来たら、いくらアンタでもあっさり殺されるわよ!」
と、言いながらアスカはジョージが乗っていた戦闘機に乗り込もうとしたが
慎司が不意に
「それに燃料積んでるか?」
と聞いた。
アスカは中を見渡し燃料を見付けて慎司に
「あったけど、何に使うのさ?」
聞いた。
慎司は
「俺のに使うのさ。俺のは整備不良じゃなくて、単に燃料が無かっただけみたいだからさ」
と言って隠した零戦を指さして言った
>>274>>273 燃料を補給した慎司は零戦で大空へ飛び出した。
慎司は一路、長崎を目指した。
理由はあそこなら、『なんとかなるかも知れない』と言う理由だったからだ。
そんな時アスカが
「ちょっと、狭いからなんとかしなさいよ!!」
と、愚痴をこぼして居たとか、いなかったとか…
慎司はやっとの思いで長崎に到着できた。
日にちは『1945年8月8日』だった。
多分次で終わります。
最後にエピローグで、あれから70年後の世界を書いて終わりますm(_ _)m
氷り漬けになっていた慎司が生き返ってヤンキー学校の教師になるんですね、わかります
続きまだー?
長崎に着いた慎司は少し戸惑って居た。
何故なら、此処が自分達が居た場所よりかなり綺麗だったから…
慎司の居た所は空襲で殆どが瓦礫か焼け野原となって居たからだ。
それに比べて、此処はあまり爆撃された跡が無かった
それが、同じ日本なのにこうも違うのか…と慎司は思ったからだった。
一先ず、慎司とアスカは宿を捜す事にした。
四六時中歩き廻って一軒の宿屋に泊まる事が出来た。
アスカと慎司は同じ部屋で明日からどうするかを話して居た。
慎司が
「明日、アスカに着いて来て欲しい場所があるんだ。」
少し真剣な慎司の顔にアスカは
「うん。」
と、だけ答えて慎司から視線を逸らし心持ち頬が紅かったのは、さっき温泉に入ったからだろうか…
そして、慎司とアスカは明日に備えて眠る事にした。
翌朝『1945年8月9日運命の日』がやって来た。
その日は、慎司の言っていた『行きたい場所』に行く事にした。
その場に着いた時にアタシはビックリしていた…日本に、こんな場所が有るなんて…
慎司とアスカが来た場所は『大浦天主堂』だった。
時間は『10時40分』だった。
この時、慎司とアスカは空を見上げて異変に気が付いていた。
米軍のB-29が空を飛んでいたからだ…
だが、警報が発令されていなかったから、二人は偵察機だと思っていた。
おもむろに、慎司がアスカを抱きしめた時に悲劇は起きた…
『11時02分−原爆投下−』
アスカと慎司は長崎の街と一緒に光りとなって消えた…一つの影を残して…
それを見て居たマリア像だけが二人の為に涙をながしていた
終わり
マリア様がみて…いや、なんでもないです…
エピローグ:
長崎に原爆が落とされてから70年の月日が流れた『2015年8月9日』
少年と少女が長崎に来ていた。
少年の名前は『碇シンジ』
少女の名前は『惣流・アスカ・ラングレー』
少年と少女は原爆の悲劇を勉強しにきていたが
少年は自分に似た『日本兵』の姿を見て
少女は自分に似た『アメリカ兵』の姿を見ていた。
そして二人は、その『二人』に誘われるように歩いて居た。
二人が辿り着いた場所は
『大浦天主堂』の『マリア像』前だった。
そして『鐘』は鳴る。原爆の被害にあった者達に鎮魂の意味を込めて…
その音を聴きながらシンジ…今は、慎司は、アスカを抱きしめる。
あの時言えなかった言葉と共に…
「俺は、アスカの事を愛してる…だから、二人で一緒に」
慎司が語る。
「はい…アタシも慎司の事を愛します。だから、二人で一緒に」
アスカが答える。
『鐘』の音が鳴り止むと同時に二人は淡い光りに包まれる…
それを見つめる、シンジとアスカは二人して涙がこぼれていた。
二人は願った「あの人達に永遠の安らぎと永遠の愛を…」
そして、今ある平和を守ろうと…
その時の『マリア像』は優しく微笑んでいたように見えた。
終わり
何とか睡魔に負けず書き切りました…
後は寝るだけ…どうしても、今日中に書きたかった物です…。
はっきり言って勉強不足と力量不足です…(´Д`)
それでは、ここまでお目汚し駄文に付き合って下さいましてありがとうございました。
m(_ _)mペコリ
乙、よかったよ
乙
自分は駆け出し軍ヲタなので
いろいろ突っ込みたいところが多くて
まともな感想は書けんのだ、乙だけで許せw
乙
2015年でちょうど70年になるのか…
286 :
6:2008/08/10(日) 01:48:10 ID:???
>>254 前に「次の話で色々な謎が明らかに!」、とか書いた気がするが、
実は諸々の伏線の意味がはっきり分かるのはもう少し後だったり……。
ただケンスケの見た物はアスカの回想をよく読めば分かるように書いたはずだし、
他も一応ヒントっぽいものは所々落としてない訳でもないので、
その辺り予想でもしながらのんびり気長に付き合ってもらえればなぁ、と思う。
287 :
逆行160:2008/08/10(日) 01:50:00 ID:???
校舎を飛び出して、途中クラスメイトの声援を受け、シンジは走り続けた。
自分の頑なだった気持ちや、傷つきたくないという思い、
そんな物が、錯覚かもしれないレイの視線一つで砕けてしまったのが、
なぜかひどく愉快だった。
もはや後先は考えない。
勢いだけでもいい。たとえ今日のことをいつか後悔するとしても、
その後悔すら受け入れてやろうと、そういう気持ちだった。
(綾波は……)
学校の外に出て、シンジは反射的に辺りを見渡す。
確かケンスケの声が、左に曲がったと教えてくれたが、
そこから綾波の目的地を逆算して……と、そんな風に考えていたのに、
「――っ!?」
探していた人は、そこにいた。
「あ、綾波っ?!」
シンジから、十メートルも離れていない場所で、
カバンを両手に、所在なさげに立っていて、
「いかり、くん…?」
魂を抜かれたような顔で、シンジがこの場にいるのが信じられない、
というように、目を見開いている。
だが、それも束の間、
「あ、あの、綾波…っ!」
シンジが話を切り出そうとしたのを察知すると、
くるり、踵を返し、奥へと消える。
だが、シンジも逃がさない。今度ばかりは逃がすつもりはない。
レイの後を追って、角を曲がる。
追いすがって、至近距離、レイまで三メートル。
「――っ?」
振り返ったレイが言葉にならない驚きの声をあげる。
288 :
逆行161:2008/08/10(日) 01:52:01 ID:???
レイの顔には、シンジがほとんど見たことがないような、
驚愕と狼狽が浮かんでいるようにも見えて、
シンジはとうとう、レイをつかまえたと思った。
だが、レイのそこから先の決断は、シンジの予想を越えて迅速だった。
いささかの逡巡もなく、手にしたカバンを放り捨てる。
宙を舞ったカバンが近くの植え込みに落ちるのも、最後まで確認せずに、
「………っ」
カバンという制約が消えて一層身軽になったレイは、
さっきまでとは違う、本気の速度で走り出した。
「ま、待ってよ!」
などという声には、耳も貸さない。
「……くっ!」
だが今回ばかりは、シンジも弱音は吐かない。
そんなことで、足を止めたり、引き下がったりはしない。
――当然、追いかける。
そして、振り返ったレイは、それを確認して、
「……」
全速力だと思っていたレイの速度が、さらにあがる。
「綾波! 僕は話がしたいんだよ! 綾波!」
シンジはレイの背中に向かって、もう一度制止の言葉を投げかけるが、
レイはほんの時折、後ろを振り返ること以外に余計なことは一切しない。
ひるがえるスカートも気にせずに、ひたすらに走る。
(……説得は、無理? なら、追いついてつかまえるしか!)
それを見て、シンジは口をつぐみ、あらためて地を蹴る足に力を込める。
今度こそ、たぶんお互いに全力。こんな速度で長く走れるはずもないが、
こんな街でもし一度姿を見失えば、もう一度見つけるのは難しいだろう。
つかまったら終わりなレイだけでなく、シンジにとっても後がない。
……だからこその、全力。
そうして、シンジとレイの本気の追いかけっこが始まる。
289 :
逆行162:2008/08/10(日) 01:53:25 ID:???
さすがに男子であるシンジが、レイより走るのが遅い、
などとは思わないし、思いたくない。だが、
(……速い!)
シンジとレイの距離は、縮まるどころか広がる一方だった。
――普通、グラウンドと同じようには、街の中は走れない。
それは、地形の凹凸や、車道や人が障害物になるだけでなく、
状況や周りからの視線が意識を散漫にさせ、集中を阻害するからだ。
――だが、レイは違った。
他人の目がある市街地を走ることに対して、一切遠慮や照れがない。
人の視線などというものを、全く問題にしていなかった。
時々すれ違う人に接触しそうになり、罵声を浴びせられても、
何の反応も返さない。謝罪はもちろん、視線を返すことすらしない。
それは彼らを無視しているのではなくて、きっと本当に、意識の端にも上っていないのだ。
……想像するだけで、鳥肌が立つほどの一途さ、ひたむきさ。
今、たぶんレイの頭の中には、逃げることしか、ない。
何が彼女をそこまで駆り立てるのか、そもそもどうしてシンジから逃げるのか分からない。
分からないが、
(……追いかける!)
シンジを動かす想いだって、そう軽いものではなかった。
今だけは、衝突を避ける生き方を捨て、目を丸くする通行人を無視して、
シンジはとにかくレイを追った。
だが、意識してねじ伏せるのと、端から問題にしていないのでは、
やはり速度に差が出てくる。
最初、レイがカバンを捨てた時は三メートルほどにまで詰められていた距離が、
今はもう、十メートル以上開いてしまっている。そして、
「!? すみませっ…!」
ドン、と道を歩いていたサラリーマン風の男にぶつかってよろけ、
次にシンジが視線を戻した時には、
「いない…?」
綾波の姿は、シンジの視界から消えていた。
290 :
逆行163:2008/08/10(日) 01:55:20 ID:???
しかし、パニックになりかけたのは一瞬。
「綾波だってスーパーマンじゃないんだ。
ただ、僕が見てない間に角を曲がっただけ。
だから…」
すぐに起き上がり、レイが消えた曲がり角まで走る。
……ここまではいい。
問題は、
「右か、左か、どっちだ?」
左右を見渡す。
どちらにも、レイの姿はない。
――考える。
ここで間違えたら、レイを追うのは絶望的になる。
だから、ゆっくり冷静に。
シンジにはもう、自分がどこにいるかなんて分からない。
レイだってきっと、目的地を定めて逃げていたワケじゃないはず。
なら、道を決めたのは、この道がどこにつながっているか、ではない。
焦る心をなだめながら、もう一度、観察する。
右の道は長く、一本道だ。
途中でビルの中にでも入らない限り、遮蔽物がない。
いくらなんでも、この短時間でレイがこの道を最後まで駆け抜けたとは思えない。
だったら、
「……左だ!」
シンジは左の、途中に横道のある短い道を選ぶ。
レイはこっちに向かって走って、途中でどこかの路地に入った。
そうとしか考えられない。
シンジは迷いを振り捨てて左の道に足を踏み出した。
……だが。
走り抜けたその先、そのどこにもレイの姿はなかった。
――シンジが選んだ道は、完全に不正解だった。
291 :
逆行164:2008/08/10(日) 01:57:39 ID:???
シンジが左の道を選んで、駆け出した直後。
ほんの数秒前、シンジが走り抜けたその道に、レイがひょい、と顔を出す。
――正解は、右の道でも、左の道でもなかった。
シンジが人にぶつかってバランスを崩し、レイを見失ったちょうどその時、
レイは最後まで道を進まず、狭い脇道に入り込んでいた。
……目だけで左右を見渡し、シンジの姿がないのを確認すると、
レイはさっと路地から身を抜け出して、元来た方向へと駆け出す。
悲鳴をあげる体を無視して、学校への道を戻るように、いくつかの角を曲がり、
……レイは不意に、立ち止まった。
「わたしは、なにをしているの…?」
強く、胸を押さえる。
頭が冷静さを取り戻すと共に、限界を越えた体がふらりと傾ぐ。
それは軽い貧血の症状で、今さらそんなもの、騒ぎ立てるつもりもないが……、
よろめいたその先、ガラスに映った自分の姿に、つい目を向けてしまう。
「……滑稽ね、わたし」
痩せこけてみすぼらしい体に、味気なく無表情な顔が載っていて、
なのにその目だけは赤く、炯々と光っているのだ。
全身で世界を拒絶して、全身で生きることを投げ出しているようでいて、
その目だけが全てを裏切っている。
その瞳は、まるで追い詰められて怯えているようにも、
狂おしく何かを求めているようにも見えた。
「……なぜ、そんな目をするの?」
鏡越しの自分に問いかける。
しかし問いかけの言葉は、ただ自分に返って反響し、
――だが、わからない。わからないのだ、自分でも。
自分を肯定して欲しいくせに、自分が認められるのが怖くて、
人形を演じるしかないと決めたくせに、その務めすら放り出して、
こうして無様に逃げ回っている。
292 :
逆行165:2008/08/10(日) 01:59:26 ID:???
――しかし、なればこそ、
いつまでもここで呆けている訳にはいかなかった。
「く、ぅ……」
ふらつく体を立て直す。乱れた呼吸を整えて、
狂ったビートを刻む心臓の音をなんとかなだめる。
理由の分からない胸の疼きには気づかないフリをして、
綾波レイは再び歩き出す。
無言で来た道を戻り、一つの植え込みの前で足を止めた。
そこに一つの影を認め、何のためらいもなくその植え込みの中に、
自らの左腕を差し込む。
「……っつ」
腕をつつく枝や葉に、ほんのわずかだけ苦痛の色を見せて、
しかしその間も腕は遅延なく動作する。
まもなく、レイは茂みに放置されていた自分のカバンを取り出した。
目的の物を手に入れ、立ち去ろうとしたその時に、
「つ、つかまえた…」
後ろから、聞こえるはずのない声。
だがしかし、今、レイの右手をつかむ、この手の主は……
「碇、くん…?」
振り向いたその先に、確かに彼はいた。
碇シンジが困ったようにはにかみながら、そこに立っていた。
293 :
逆行166:2008/08/10(日) 02:44:56 ID:???
だが、レイの顔を彩る一瞬の驚きが過ぎ去ると、
レイはすぐにシンジがこの場にいる理由を察したようだった。
「……そう。まちぶせていたのね、ここで」
その言葉に、シンジはうなずく。
「うん。ここにいれば、綾波はきっと戻ってくると思ったから」
レイを見失ったと気づいたシンジは、すぐに決断した。
路上の標識や地図を頼りに、すぐに学校まで戻り、
そこからレイがカバンを投げ捨てた場所までやってきた。
……正確には、そこでカバンを取ろうとしているレイを見つけただけで、
待ち伏せていたのではなかったのだが、細かい訂正はしない。
それよりも、今は、
「話を、聞いてほしいんだ」
レイの右手をつかんだ手に、わずかに力を込める。
「……わたしは、聞くつもりはないわ」
振り払おうと揺すられる手にすがるように、
シンジはレイの右手にもう一方の手も重ねる。
「僕には、あるんだ」
シンジはそう言いながら、強い想いを乗せて、レイの瞳を見据えた。
その突然の行動にレイは一瞬、戸惑ったように目を逸らし、
だが次の瞬間には倍加した鋭さでシンジを射すくめる。
「…はなして」
冷たく戻った口から、そんな言葉が漏れる。
「は、放さないよ」
どうしようもなく気圧されながら、シンジは必死に首を振る。
「…どうして?」
「ど、どうして、って…」
あまりに当たり前の質問に、わずかにどもってから、
「は、放したら、綾波はまた、逃げるじゃないか」
やはり当たり前の答えを返した。
294 :
逆行167:2008/08/10(日) 02:46:18 ID:???
だが、シンジの言葉に、レイは首を振った。
「にげないわ」
「……本当に?」
シンジの質問に、
「ええ」
今度はうなずく。
こちらを直視してくる瞳に、揺らぎがないことを確かめて、
「……分かった。なら…」
ついにシンジがぱっと腕を放し…た途端、レイが駆け出した。
「えぇ? あっ、待っ……!?」
驚きが、すぐに言葉にならない。
それでも反射的に伸ばされるシンジの腕を、すり抜けていき、
「――っ!?」
だがその直後、レイは足をもつれさせ、転倒した。
「綾波っ!!」
シンジが悲鳴のような声をあげ、駆け寄る。
レイは地面に手をついていて、どうやら頭を打ったりはしていないようだが、
すぐには立ち上がれないようだった。
「だ、大丈夫?」
そんな気遣わしげなシンジの言葉を、こんな時でもレイは、拒絶しながら、
「問題、ないわ…」
一人で何とか、立ち上がろうとする。だが、
「問題ない、って…」
そんなはずはなかった。
シンジはレイの手を、半ばひったくるようにしてつかみとる。
「手、血が出てるじゃないか! 早く、手当てしないと…」
「…あ」
途端、レイが小さく声をあげ、数瞬遅れて、シンジも気づく。
握ったその手に、しかし、この時ばかりは気づかなかったフリをした。
295 :
逆行168:2008/08/10(日) 02:47:48 ID:???
シンジは、レイの手をつかんだまま、
けれど、レイと目を合わすことはしないままで、
「ごめん、今、これくらいしかないけど…」
血のにじんだレイの手のひらに、数枚のティッシュを押し当てる。
「べつに、かまわないわ。本部に行けば、医務室があるから…」
レイもまた、シンジから視線を逸らし、それでも手を放せとは言わない。
どこか冷たくなりきれない声で、弁明のための言葉を紡ぐ。
「…………」
レイは、自分の手を必死で押さえる、シンジの手の動きを眺めながら、
「……どうして?」
自然と生まれ出た疑問を、そのまま口にしていた。
「どうして、わたしに近づこうとするの?」
――気がつくと、レイはまっすぐ、シンジを見ていた。
敵意も拒絶も、それどころか一切の意図が削げ落ちた、無垢そのものの瞳で。
それを目にして、シンジは悟る。……ここが、分岐点だと。
ここを逃せば、これ以上レイの心がシンジに近づくことはない、と。
そして、それを知って、シンジが口にしたのは、
「……分からないよ、そんなの」
ひどく、いい加減な答え。
だがそれは、シンジの本心だった。
「わから、ない…?」
きょとん、とした顔で、
「そう、なの…?」
歳相応の、いや、それ以上に幼い表情で、レイは聞き返す。
あらためて聞き返され、シンジはどこか落ち着かない風に口をとがらせた。
「そうだよ。……だって、しょうがないじゃないか。
理由なんて分からなくたって、そうしたいものは、そうしたいんだから」
その答えはもしかすると、レイにとって、想像もしていなかったもので、
「……そう。…そう、なの」
自分の中に沈み込むように、レイは何度もうなずいた。
296 :
逆行169:2008/08/10(日) 02:49:28 ID:???
「綾波…?」
不思議な綾波の反応に、シンジは心配そうに眉をたわめた。
とっくに血の止まっているレイの手をつかむ自らの手に、わずか、力を込める。
しかしレイは、そのことにすら、気づいた様子もなく、
「でも、わたしは……、わたしは、わからないのがこわいわ」
おそらく誰にも打ち明けたことのない気持ちを、
ぽつりぽつりと語り出す。
「碇くんといると、わからなくなる。
自分の中に、知らない自分がいるのに気づくの」
それは確かに、今までに見たことのない彼女の姿で、
「胸の中にある空っぽが、あんなにイヤだったはずなのに…。
今は、変わるのがこわい。
……空っぽじゃなくなるのが、こわい」
そっと握った手から、レイの震えが伝わってくる。
それはまるで、レイ自身の心の震え、そのもののようで、
どんな言葉より雄弁に、レイの怯えを伝えていて、
「……ごめん、綾波」
それでもシンジは、そう言うことしか出来なかった。
その言葉は、ゆっくりと時間をかけてレイに染み渡り、
やがて彼女は、
「……そう、ね」
安堵と諦観の混じった響きで、握られていた手を、離す。
レイの手が、逃げていく。
自分の手の届かない所へ、すり抜けていく。
それを、何よりも肌で感じながら、シンジは……
297 :
逆行170:2008/08/10(日) 02:52:30 ID:???
……シンジは、離れようとするレイの手に、ぎゅっと力を込めた。
引き止めるように、逃がさないように、……しっかりとつかまえる。
そして、驚きに見開かれた瞳に、シンジはもう一度、言った。
「……ごめん、綾波。
でも、僕はそれでも、この手を放したくないよ。
放したく、ないんだ」
その言葉、宣言に、今度こそレイは驚きに硬直する。
そうして、息を詰めて見つめるシンジの前、
レイはその視線の重みに耐えかねたように目を伏せて、
囁くほどの小さな声で、目も合わせないまま、
「わたしも…」
――それでもその手が、きゅっとシンジの手を握り返してくる。
そのささやかな感触が照れくさく、くすぐったくて、
「……うん」
なぜか突然胸が詰まって、シンジにはそれしか言えなくなる。
……だが、それで充分だった。
互いの手のひらの、確かな感触。
そのわずかな接触面から、二人の体温が溶け合っていく。
――もはや、言葉は必要ない。
どちらから、ということもなく、自然と二人の視線が交差し、そして、
「ヒューヒュー! お熱いねぇ、お二人さん!」
そんな二人をはやし立てる野次馬の声に、二人は同時に我に返った。
すぐにここが街の往来だということを思い出す。
概して他人に無関心な人間の多い都市部だということもあり、
さすがにシンジたちの周りに人が集まっているなどということはなかったが、
通り過ぎる人たちがみな、自分たちの方を好奇の眼差しで眺めているのが見えた。
いい!乙!wktk!
299 :
逆行171:2008/08/10(日) 02:59:16 ID:???
シンジの顔が、たちまちの内に赤く染まる。
「わ、う、うわわわわわ?! ち、違うんだ綾波!
僕は、その、そんなつもりじゃなくて…」
弾かれるようにレイから身をもぎ離す。
そして自分がまだ、レイと手をつないだままだということを思い出し、
「ご、ごめっ…」
急いで手を離そうとして、
「え? あ、綾波?」
一層強く自分の手を握ってくる、レイの存在に気づいた。
わたわたと慌てるシンジとは対照的に、
「来て。…こっち」
レイは機敏に立ち回って、シンジの手を引いていく。
――そして、そのまま手を引かれ、シンジが連れて来られたのは、
「あ、ここ……」
レイの自宅だった。
あいかわらず郵便受けに色々な物が満載にされた無骨な扉。
それを空いている方の左手で無造作に開け放つと、
「…入って」
戸惑うシンジを、レイは招き入れる。
「う、うん…」
その言葉に導かれて家に足を踏み入れるものの、
やはり気後れして玄関で立ち止まってしまう。
「……なにをしているの?」
純粋な疑問の言葉。
だが、この状況ではそれは催促と同じだった。
「お、お邪魔します」
やはり抗い切れず、シンジは奥へと進む。
300 :
逆行172:2008/08/10(日) 03:08:52 ID:???
――殺風景を通り越して、殺伐とした部屋の光景は、以前来た時と同じだった。
「そうだ。すりむいた手、ちゃんと手当てしないと…」
病院に似た雰囲気に触発され、レイの怪我を思い出したシンジはそう提案するが、
「……このままでいいわ」
レイは首を振る。
「で、でも…」
食い下がろうとするシンジに、レイはもう一度首を振り、
「わたしは、」
そこで、つないだ手に、少し力を込めて、
「このほうがいい」
告げられた言葉の意味を正しく読み取って、シンジの顔が赤く染まる。
「後で本部に行ったら、ちゃんと見てもらわなきゃダメだよ」
「ええ」
それでも一応そう釘を刺して、引き下がる。
シンジが納得したのを確認して、
「待ってて。お茶、いれてくるから」
レイはシンジを残して台所に向かおうとして、
「……ぁ」
つながれた、二人の手を見る。
「…………」
お茶を淹れるためには、もちろん手を放さなくてはいけない。
当たり前のことだった。
黙ってしまったレイを見かね、シンジが先に切り出す。
「やっぱり、お茶はいいよ。
綾波も一緒にここで、ゆっくりしよう?」
「……碇くんが、それでいいなら」
「うん。……僕も、その方がいい、かな」
シンジは恥ずかしそうにはにかみながら、先ほどのレイとほとんど同じ台詞を吐いた。
――結ばれた二人の手が、さっきより少し、強くなる。
301 :
6:2008/08/10(日) 03:10:53 ID:???
以上。というか全然終わってないが、続きは明日にしてもらっていいか?
wktkしてた人には特に申し訳ないが、手直ししたい場所を見つけたのに眠くてうまく書けそうにないんだ。
明日、シンジとレイのバカップルぶりといじわるばあさんのいじわるっぷりを絶対見せるから、
……スマンね。
乙
思わず野次馬にキレそうになったw
氏ね
303 :
6:2008/08/10(日) 23:43:10 ID:???
ではちゃちゃっと投下
304 :
逆行173:2008/08/10(日) 23:43:51 ID:???
――通常、平日におけるエヴァの実験開始時刻は、
シンジたちの学校が終わる時間に合わせて設定されている。
だから、学校の途中で抜け出してきていたシンジたちには、
その時間まではもう少し余裕があった。
レイの部屋には椅子が一脚しかないため、
二人はベッドによりかかるように並んで座り、時を過ごす。
「…………」
「…………」
会話は、ほとんどない。隣にいても、お互いを見ることすら稀で、
ただ時折、シンジが左手に力を込めると、レイが右手で握り返し、
レイが右手でシンジの左手をつつくと、シンジがやり返して、
などといった、あまりにもささやかなやりとりがあるだけだった。
それでも、この状況への罪悪感に駆られたのか、
不意にシンジが口を開いた。
「……みんな、今ごろまだ勉強してるのかな?」
「……そうね」
二人、前を向いたまま、ぽつり、ぽつりと会話する。
「何だか、悪い気がするね。僕たち二人だけ、勉強、さぼって…」
「……だったら、今からもどる?」
その言葉は辛辣なようでいて、イタズラっぽい響きを伴っていて、
シンジだってすぐに、レイが本気で言っているのではないと分かった。
だからシンジも、冗談で返してみる。
「そう、だね。……が、学校でも綾波と席が隣なら、考えた、かも」
「…そうしたら、ずっと手をつないでいられる?」
「う、うん」
「………ばかね、碇くん」
たどたどしく、手探りで、会話を進める。
お互いに、慣れないことをしているという自覚はあって、
でもそんな距離感を共有しながらこんなことを言い合える関係を、
二人共楽しんでいた。酔っていた、と言ってもいい。
305 :
逆行174:2008/08/10(日) 23:45:15 ID:???
ただ、一つ、学校のことで本気の懸念があるとしたら、
「アスカ、怒ってるかなぁ…」
ということ。
半ば強制されたとはいえ、レイとの仲直りを頼んでいたのに、
勝手に飛び出してきてしまってよかっただろうか。
いや、仲直りのために飛び出したのだから問題ない気はするのだが、
不思議となんとなく、気が咎めるのだった。
だが、まるでアスカに気持ちを飛ばすシンジをいさめるように、
「……その話、今はしないで」
レイが、不機嫌そうに言い放った。
だが、半ば以上フリとはいえ、レイがそんな風に機嫌を損ねてみせるのも、
普通では考えられないことで、
「そういえば、アスカとはケンカ中だったね。…ごめん」
シンジはそう口では謝りながら、愉快な気持ちが込み上げるのを抑えられない。
今までずっと前を見ていたレイが、初めてシンジの方を向いて、
「……そういうの、感じわるいわ」
とこぼすのを聞いて、とうとう耐えられなくなった。
「あはははっ!」
笑い出す。
それを見て、レイはしばらくあっけに取られていたが、
「ふ、…ふふふっ」
シンジにつられるように、笑い始める。
それは努力して笑っているのが分かるようなぎこちない笑いで、
だがそんなこと、気にならなかった。
二人共、苦労して楽しんでいる人を演じているようで、
傍から見れば不自然で滑稽にすら見えたとしても、
楽しんでいる気持ちは本物だった。
――まるでママゴトのような二人の時間が過ぎていく。
306 :
逆行175:2008/08/10(日) 23:46:02 ID:???
笑いの発作が収まって、同時に場を支配する奇妙な緊張感が影をひそめる。
急速に弛緩する空気の中、シンジは強い眠気を覚えていた。
(そういえば昨夜、全然寝てなかったから…)
まぶたが重くなる。どうしても意識を、保っていられなくなって、
「……ぁ」
気がつくとシンジは、レイの肩に、頭をくっつけていた。
「あ、ご、ごめん…!」
シンジは慌てて、体を戻すが、
「……………ぅ、んん」
しばらくするとまた、レイにもたれかかっていた。
「ご、ごめん…!」
シンジはまたすぐ、体を離すが……、さすがに今度は、ごまかしきれない。
「…碇くん?」
気遣わしげな、レイの瞳。
至近距離で見つめるその綺麗な顔立ちに、勝手に顔面が赤くなるのを感じながら、
「ご、ごめん。気分が悪いとか、そういうんじゃないんだ。
ただ、実は昨夜、ほとんど眠れなくて…」
そう、告白する。
「…そう」
レイはうなずき、そして空いている方の手で、自分の後ろを指し示した。
「時間、まだあるわ。……ベッド、使ってもいいから」
「そ、そんなワケにはいかないよ…!」
さすがに遠慮する。いや、遠慮とかいったものだけじゃなく、
レイが普段使っているベッドに寝るなんてことは、シンジの理解の範疇を越えていた。
「……なら」
つながれた手が、ぐいっと意外なほど強い力で引かれる。
疲れていて無防備だったシンジは、為す術もなく体勢を崩し、
「――あ、や…なみ?」
何がどうなったものか、その頭をレイの太ももの上に預けていた。
307 :
逆行176:2008/08/10(日) 23:46:50 ID:???
そして、自分の状況を悟るや否や、
「う、うわ! あ、あの、これは、わざとじゃなくて…」
慌てて起き上がろうとするが、
「あばれないで」
レイの手に額を押さえられ、動きを封じられる。
「この部屋、代わりになるもの、ほかにないから」
代わり、というのは、ベッドの代わりということだろうか。
「だ、だからって…」
「それにこうしていれば、手を離してもだいじょうぶだから」
大丈夫、などと言われても逆効果だった。
その言葉に、レイと触れ合っていることが、一層意識させられる。
「だ、ダメだよ、やっぱり…!」
もう一度起き上がろうとするのに、額を押さえる力は意外に強く、
起き上がれない。
シンジは実力行使をあきらめ、
「あのさ、綾波。寝るんだったら、僕は別に床…」
「話していては、ねむれないわ」
「だ、だから…」
とにかく必死で反駁しようとして、
「だまって」
……黙った。
「力をぬいて」
妙な迫力に押され、言われるがまま、力を抜く。
「目、とじて…」
ぴとり、と目の上に指が置かれる。光が完全にさえぎられた。
「あ、綾波? その…」
「だいじょうぶ。時間になったらおこすから」
このままではいけないと、起きなくちゃ、説得しなくちゃ、と思うのに、
レイの温もりが疲れた体に染み入ってきて、レイの声が、心地よく耳を震わす。
そしてそのまま、シンジは……
308 :
逆行177:2008/08/10(日) 23:48:41 ID:???
……レイの膝の上で、シンジはそのまま、
小さな寝息を漏らしていた。
「…つかれていたのね」
言いながら、レイはほとんど無意識の内に、
シンジの髪をなでる。
そんな自分に、驚きながら、
「……そう。これもまた、はじめての気持ちね。
今まで感じたことのない……」
そして、今度は意識的に、もう一度シンジの髪をなでる。
それは先ほどと比べて、幾分かぎこちなく、
しかしそれ以上に、価値のある行為で……。
「碇くん。あなたはわたしを、どこにつれていくの?」
ささやいた言葉に答える声はない。
しかし、レイにはそれさえも満足で、もう一度、
さっきよりは手慣れた所作で、シンジの髪を触る。
……それは、特に反応を期待した行為ではなかったのに、
刺激を受け、眠り込んだシンジの口が、小さく動く。
「――かあ、さん」
と。
レイは、その言葉に一瞬だけ複雑そうな表情を浮かべ、
「おやすみなさい、碇くん」
だがすぐに穏やかな顔になって、そう呟いた。
309 :
逆行178:2008/08/10(日) 23:53:24 ID:???
『やっぱり疲れてたのかしら。シンジ君、完っ璧に寝ちゃったわねぇ』
『ええ。それも、良く知りもしない女の部屋の、おまけに膝の上でね。
……全く、よくもまあ眠れるものだと思うわ』
『あ、あー。ま、それはともかく、これでレイとは和解、ってことでいいのかしらね。
あの子に限っては、ちょーっち何考えてるか全然よく分からないっていうか…』
『ミサト。どうでもいいけど日本語、破綻しているわよ』
『うるさいわねぇ。言葉なんて意味が伝わればいいでしょ、べつに。
それよりこの状況、あんたはどう思うのよ?』
『どう思う、って何がかしら? 別に、見たままじゃないの?』
『そりゃ、他の子が相手だったらあたしもそう思うけど……。
あの子、複雑そうっていうか、理解出来ないところあるじゃない?』
『そう? 優しくしてくれる男に簡単になびく、とても単純な女だと思うけど?』
『……あんた。言葉にトゲがあるっていうか、なんか私怨入ってない?
中学生の小娘相手にその態度は正直どうかって思うわよ』
『あら、人の評価なんて、元を辿れば好きか嫌いか。綺麗に修飾したって根底は変わらないわ』
『リツコ先生らしからぬ暴論ねぇ。
嫌いだけど能力は認めてるとか、色々あるでしょうが…』
『認めているっていう表現自体が、既に嫌悪の中の好意を認めていると思うのだけどね。
まあ、その話はもういいわ。レイが何を考えているか、という話だったかしら?』
『そ、そうよ。それよそれ。あの子、いかにも怪しいじゃない。
シンちゃんへの態度に裏があるとは思えないけど、一体何を隠してんだか…』
『まあ、何かあるのは確かね。
でも、レイに関しては魂の変質という事で説明出来るかもしれないわ』
『魂の変質? 何よそれ。あんた、この期におよんでもまだあたしに隠しごとしてるワケ?』
『……そんな大した事じゃないわよ。
人一人に対して、対応する魂は基本的に一つだけ。知ってるでしょ?』
『当たり前よ。他ならぬあたしたちがそれを証明してるじゃない。それで?』
『別の体に入ったとしても、魂はそれを継承する。でも前の体で魂が変質していたとしたら…』
『新しい体も、その影響を受ける…? 待って、じゃあつまり、
あんたは記憶が残っているって言いたいの? この子に』
310 :
逆行179:2008/08/10(日) 23:54:43 ID:???
『体の記憶ではなく、魂の記憶だけどね。
とはいえ、所詮仮説よ。真実かどうかは分からないわ』
『……もうしばらく、様子を見るしかない、ってコト?』
『ええ。結局はそこに落ち着く事になるわね』
『……はぁ。こうして懸案事項だけが増えていく、って寸法ね』
『不満? でも、それが…』
『あたしたちの存在意義だ、って言うんでしょ。もう耳タコよぉ』
『まだ、一度しか言っていないわよ…』
『…う、そうだった?
ま、まぁあたしだって、そんなにワガママを言うつもりはないのよ。
シンジ君の安全と幸福のために動く。
それが、あたしたちのやるべきことなんでしょ』
『ええ、そうよ。……少なくともシンジ君の幸福が、
私たちのそれに重なっている限りは、ね』
『この、ひねくれもん』
『ふふ。……さて、あなたとのお喋りも楽しいけれど、
このくらいで切り上げなくちゃね。
ミサト、そろそろシンジ君を起こした方がいいわよ』
311 :
逆行180:2008/08/10(日) 23:56:42 ID:???
『え? もうそんな時間?』
『ええ、もうそんな時間よ。
今、本部にいる『私』の時計が狂っているのでなければ、だけど。
……時間になったら起こすって言ってたのに、
やっぱりあの子、意外と使えないわね』
『だから、大人気ないコメントは控えなさいってば……』
『あら、私は本当の事を言ったまでだけど』
『だっから、あんたのそういうところが…』
『はいはい。愚痴はまた後で。……とにかく、私はもう行くわ』
『行くわ、って。一緒にシンジ君起こしてけばいいでしょ。
どうせ、他にやることなんて……』
『あら、それはいつの話? 人の歩みは日進月歩。
今は私にだって他にやるべき仕事があるわ。
仕事内容は……そうね。
さしずめ、閃きという名の技術供与、という所かしら』
『ちょ、あんた、それって……』
『それに、これ以上ここにいると不愉快な映像を見せられそうな予感がするもの。
だから退散させてもらうわ。じゃ、シンジ君の監視、お願いね』
『あ、無視するんじゃないわよ、話はまだ…!
……もう、しょうがないわねぇ。
シンちゃん! シンジ君! 起きて! ほら!』
312 :
逆行181:2008/08/10(日) 23:58:41 ID:???
「ん? ミサト、さん?」
どうしてだか、ミサトの声を聞いたような気がして、シンジは目を覚ます。
そうして目を開けて、シンジの視界に入ってきたもの。
それは見知らぬ天井と、そして、
「綾、波…?」
ベッドに寄りかかるようにして眠る、レイの姿だった。
(綾波、寝てる時は、こんな顔してるんだな…)
ただあどけない、というのとも少し違う、
起きている時の険の強さや全方位へ向けた無関心さが抜け落ち、
どこかおっとりした、見ているとほっとするような顔をしていた。
「……ん」
シンジの声に反応したのか、レイが少し身じろぎをする。
すると当然、シンジが頭を乗せているレイの太ももだって揺れて、
「わ、うわわ…!」
その揺れと、その拍子に感じたレイの体のリアルな質感に驚いて、ずり落ちて、
ガゴン!
聞くだけで痛みを感じるような凄惨な音を立てて、床に頭をぶつける。
「い、いったぁ…」
痛みに、転げ回る。
「碇、くん…?」
その騒ぎで、起こしてしまったようだった。
レイは目をこすりながら体を起こし、すぐにハッとする。
「碇くん、時間…!」
レイの言葉に、シンジも時間を確かめた。
「あ、うん。そうだね。そろそろ、行かなくちゃ」
その言葉にレイはうなずいて、やはり自分が起こすと言っていた手前、
責任を感じているのだろう。めずらしく少し眉を寄せ、険しい顔で、
「……ごめんなさい」
少し沈んだような声で、謝った。
313 :
逆行182:2008/08/11(月) 00:00:54 ID:???
「いいよ。僕が先に寝ちゃったんだし、こうして起きられたんだから。
でも、めずらしいよね。綾波が、こんな…」
言いかけて、困ったような綾波の顔に、言葉を止める。
「わたしも…」
しかし、違った。困っているのではなかった。
そうではなくて、まるで共通の秘密を、打ち明けるみたいに、
「わたしも昨夜、ねむれなかったから」
少しだけ照れたように、レイがそう告げる。
「そ、そうなんだ…」
そして照れは伝染する。
レイの顔を、もうまともに見られない。
眠る前の、あの濃密な空気の中では出来ていた色々なことが、
今のシンジにはもう、出来なくなっていた。
それでも、それを認めるのは嫌で、
「じゃ、じゃあ、一緒に行こうか」
言いながら、レイに向かって手を伸ばす。
勇気を出せば、今からだって自然に手をつなげるような気がした。
だが、
「……ぁ」
シンジがレイの手に触れた途端、レイはびっくりしたように手を引いた。
それを見て、シンジもあきらめる。同時に、後悔もした。
「ごめん。嫌だった…?」
しかし、その言葉には、レイはかぶりを振って、
「イヤ、じゃないわ。でも…」
その時の、顔を反対側に向けていたレイの表情は、当然シンジには見えない。
だが、賭けてもいいとシンジは思った。
「はずかしい…から」
そう口にした瞬間のレイの頬が、羞恥で赤く染まっていたことを。
314 :
逆行183:2008/08/11(月) 00:03:29 ID:???
「――わたし、やっぱり先に出るわ」
あっというまに身支度を整えたレイにそう告げられて、
「…え?」
シンジは間の抜けた声を出した。
「実験スケジュール。今日、碇くん最後だから、
もうすこしゆっくりしていられるはず」
ぶっきらぼうな口調とは裏腹に、
シンジはその言葉の中にレイの優しさを感じて、
「う、うん…」
と思わずうなずいていた。
しかし、ふと思いついて尋ねる。
「そういえば、綾波ってこういう実験の時、一番に入ることが多いよね。
それなのに、僕たちより長く本部にいるみたいだし…」
「……それは、わたしだけが協力している実験もあるから。
それに、今は実験に模擬体も使っているから…」
「あ、そうか」
ヤシマ作戦で大破した零号機はまだ修復されていない。
その間、レイのシンクロテストや訓練をするのに、リツコがずいぶん骨を折っていると、
シンジも以前、ミサトから聞いた覚えがあった。
「それじゃ…」
シンジがそんなことを考えている間に、レイはもう玄関の辺りまで出ていってしまっていて、
――だがその時、シンジはとんでもないことに気づいた。
「ま、待って! カギ、僕持ってないよ…!」
それは、それなりに大変なことのように思えたのだが、
「しなくていいわ。いつも、してないから」
あっさりと答え、レイは全く頓着しない。
「で、でも…」
尚も渋るシンジに、
「なら、持っていて」
ひょい、とレイは何かを投げ寄越す。
315 :
逆行184:2008/08/11(月) 00:06:25 ID:???
投げ渡されたのは、もちろんカギで、
「これ、もしかしてここのスペアキー?」
シンジの質問というより確認の言葉に、
しかしレイは首を振って、平然と、
「いいえ。カギは、それひとつしかないわ」
などと言う。
「それじゃ…」
…ぜんぜんダメじゃないか、そう、シンジは思うのに、
「持っていて」
「で、でもさ…」
「碇くんに、持っていてほしいの」
なんて言われてしまえば、受け取るより他ない。
そうして、今度こそ、
「わたし、行くわ。……碇くん。また、あとで」
扉に手をかけるレイに、
「あ、うん。……行ってらっしゃい」
そんな言葉をかける。
そのあいさつに、レイはしばし、目を見開いて、
「……いってきます」
そう律儀に返してから、外へと踏み出していく。
そして、扉が閉まる直前、
「ありがとう。……碇くんに会えて、よかった」
シンジはレイの微笑みを見た、気がした。
316 :
6:2008/08/11(月) 00:13:11 ID:???
以上。最後の台詞は綾波死亡フラグ……ではないので、あしからず。
ここまで読ませといてなんだけど、この綾波編は色々失敗だったかも。
まあ次はアスカの話、というか本筋なんでストーリーが進むはず。
こっからテンポアップして早く完結させたいなぁ…。
GJ!!!アスカも気になるがこれはこれでいい(笑)
乙
脂肪フラグすぎてワロタw
>>279 大浦天主堂は原爆の被害なかったよ。
浦上天主堂の間違いでは?
age
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今ちょっとずつ書き溜めてるのがあるんだが
ここに投下してみてもいいのかな
どうぞ!
324 :
322:2008/08/16(土) 01:35:09 ID:???
じゃあ投下しちゃいますよ
とりあえずレス番の322をコテにして投下します
トリは他の職人さんもつけてないし、今のところ必要ないでしょう
そこは紅に染まった世界だった。
少年はそこに立っているのか、浮遊しているのか、よくわからない不思議な感覚で
そこにいた。
その深紅は、まるで血の赤。動脈血というよりは、静脈血の血の赤だ。
そしてここは、まったくの無音。なにも聞こえなかった。
-----そうか。
少年は理解している。何故この世界が黒ずんだ色をしているのか。
漆黒の闇が混ざり合っているからだ。その闇の正体まではわからなかったが。
-----また、来る。
その闇から生まれ出る、純白の光。本来ならば、このような世界においては
それは歓迎すべきものなのであろうが、それがそういう類のものではないということは
少年はすでに知っていた。
-----怖い…!
それは天使のような翼をもった、白い異形の群れだった。
その異形の厭らしい笑みは、まるで生贄を見つけ、心が踊っているかのように見えた。
その群れと自分との距離が縮まってくるにつれ
それまではいっさい聞こえてこなかった音が、だんだんと聞こえてくるのを、少年は感じた。
歓喜の声と、翼の羽ばたく音だった。
-----逃げなきゃ。
それはわかっている。それはわかっているのだ。だが、体が命令を実行してくれない。
脳髄からは確実に、逃げろという命令は下っている筈なのであるが
それでも体は動いてはくれなかった。
-----あれ…なんだ?これ?
その次の瞬間、何故か少年は体が融解していくような感覚を覚えた。
人口進化研究所(ゲヒルン)内に設けられた、職員宿舎の一室。
狭い、畳の簡素な部屋。シンジはそこにいた。
「う…ん、朝か。…まだ眠いや」
シンジは枕元に置かれていた時計を手に取った。いつもの起床時間に比べ、一時間ほど早い。
二度寝しようかとも思ったが、どうせ後一時間、中途半端に寝るほうが後が辛いだろう。
目も冴えてしまっている。それならばと、シンジは布団からゆっくりと這い出た。
カーテンの隙間から漏れる朝の日差しがきつく、今日は暑い日になることが予想できた。
寝起きの目に、光が刺さるように沁みる。
「眩しいなぁ…もう」
とりあえずこうしていても仕方がない。シンジは立ち上がると、カーテンに手をかけた。
そしてさっと左右に広げる。窓越しに青空が広がっていた。
「あれ…」
見下ろすと、そこには花壇がある。この宿舎の、シンジのいる部屋のある側からよく見える場所だ。
そこで一人の少女が花に水をやっていた。
(早起きしたのは僕だけじゃなかったんだな)
シンジは簡単に身支度を終え、部屋から出た。
「おはよう、リツコさん」
シンジは彼女に声をかけた。
花に水をやっていた彼女はジョウロの口を上げると
振り返り、挨拶を返した。
「あらシンジ君、おはよう」
彼女は、シンジがここに来てから知り合った、同い年の少女だ。
「今日は早いのね?」
「リツコさんもね」
「なんか目が覚めちゃってね」
リツコはそう言うと、再び花壇へと向き直り、花を見下ろした。
「だからこの子達に、今日は早めの水をあげていたところ」
シンジも同じく花を見る。
「早めの朝ごはん?みたいなものかな?」
「ちょっと違うんじゃないかしら?」
リツコはシンジの物言いが可笑しかったのか、クスクスと笑った。
「植物の栄養の摂取の仕方と、動物の栄養の摂取の仕方とではその根本でメカニズムが…」
「いや、そういう話はいいから……そういえば、お母さんは?」
リツコはここで、母親とともに暮らしている。とはいっても、一つ一つの部屋が狭いため
隣同士の部屋で別々に住んでいるのだが。
「母さん?」
リツコは宿舎の一室の窓を見上げた。そこが彼女の母親の部屋だ。
「徹夜明けだったから、多分昼まで寝てるんじゃないかしら?」
リツコにつられて、シンジも同じく窓を見上げた。
窓に反射する東日に、一瞬顔を顰めたシンジは、ここに来た日のことを思い出していた。
その日も今日のように、雲の無いよく晴れた日だった。
それは三週間前の事だ。
「第三新東京市か…」
駅から出たシンジは、辺りを見回した。
将来新首都になる計画都市、それがここ、第三新東京市だ。
建設がまだ完了してはいないため、それほど賑わっているわけではないのだが
それでも人は結構いるようだ。
シンジがここへとやってきたのは、人に呼ばれたためだった。
両親を早くに亡くし、それからは親戚の家で世話になっていたのだが
両親の古くからの知り合いである、冬月という人物に呼ばれたのだ。
シンジは写真でだけだが、冬月という人物を知っていた。
その冬月がシンジを駅まで迎えに来ることになっていたのだが
見渡してみたところ、どこにも見当たらない。
「まだ来てないのかな?…ん?」
一人の女性と目が合った。
おそらく母親がまだ生きていたならば、これぐらいの年齢だろうと思われる彼女は
柔らかく微笑むとシンジに近寄ってきた。
「碇シンジ君ね?」
「え、そうですけど…?」
「私は赤木ナオコ。冬月先生の代理できたの」
どうやら冬月は来られなくなってしまったようだ。
「あ、はい、その、よろしくお願いします」
ナオコは若干困ったように笑った。
「そんなに畏まらなくてもいいのよ?初対面じゃないんだし…って、流石に憶えてないか」
どうやら前に会ったことがあるようだ。だが、シンジはナオコに覚えがない。
「…すみません」
「仕方がないわよ。まだ小さかったし、ユイさんがご存命だったころだし…」
そこまで言って、ナオコはしまったと心の中で舌打をした。
ユイというのは、彼の母の名なのだが、思春期という年代の彼に
親の死について、軽々しく発言していいものではないのではないか、と。
「…ごめんなさい」
今度はシンジが困ったように笑った。
「いいんですよ、そんな…母さんなんて、顔も覚えてないんだし」
このまま空気が重くなっていくのは好ましくない。ナオコは話題を変えることにした。
「冬月先生はちょっと仕事の関係で、急用ができちゃったから来られなくなっちゃってね」
「そうだったんですか。忙しいんですね、冬月先生」
「ええ。…でもちょっと意外ね」
「何がです?」
「シンジ君も、冬月『先生』って呼んでるのが」
「父さんがそう呼んでいたんで」
シンジは父親の事ならば覚えている。母親が死んだのはまだ物心つく前だったのだが
父親が死んだのは五年ほど前のことだ。
「なるほど、その影響ね」
ナオコはそういえばと時計を見た。
「シンジ君、そろそろ行きましょうか?」
「そうですね」
駐車場へと向かうナオコ。シンジは彼女の後ろに続いた。
「ごめんなさいね、急かしちゃったみたいで。私もこの後ちょっと用があるから」
「いいんですよそんな」
窓越しに街路樹が流れていくのを、シンジはぼんやりと眺めている。
「どうシンジ君、第三新東京市は?」
シンジがあまり自分から話しかけてこないので、ナオコは質問した。
沈黙が続くのは何か気まずい気がするからなのだが、それにしてもこのあまりにも
可もなく不可もなくな、内容の無い話題に、もっとほかに何か言い様があるのではないか
ともナオコは思ったのだが、いかんせんまだ距離のとり方がつかめていない相手である。
ナオコにはシンジと同い年の娘がいるのだが、そのような相手に情けないように思える。
その娘との距離のとり方も、分からずに苦労している、という事実もまた
彼女の内に存在していたりするわけだが…。
「新しい施設とか、そういうのはありますけど…普通に古いのとかもありますね」
シンジはナオコの方へ振り返りながら答えた。
シンジの言う通り、町の様子を眺めていると、電柱や公衆電話など
旧態依然としたものが存在している一方、旧東京都や、第二新東京市にあるものよりも
新しく、大きいビル郡等も、また同時に存在している。
「旧東京の復興が本格的に動き始めたのはつい最近だし、第二は応急で作られたからね」
「ここが新しい首都になるんですよね?」
「ええ、そうよ。これから先、どんどん人も増えていくでしょうね」
シンジは再び、窓の外を眺めた。
「…人が多いのって、あんまり好きじゃないんですよね」
面倒くさそうにシンジは言った。
「そう…。まぁでも、それならよかったかもしれないわね」
シンジは不思議そうな顔で、ナオコへと再び振り返った。
これから人が増えると言っていたのに、何故それならよかったとなるのか。
「これから行く場所、市街地から離れているから。静かでいい所よ」
車は山道へと入っていった。
「シンジ君、どうかした?」
「え、あ、なんでもないよ」
リツコの声に、シンジは現在へと戻ってきた。
「ここに来たときのこと、ちょっと思い出してただけ」
「ふーん、そっか」
リツコは宿舎のほうに向け、歩き出した。
「ジョウロ片付けてくるわ…あぁ、そうだ」
そういうと、リツコはシンジへと振り返った。
「朝、もう食べた?まだなら一緒にどう?」
332 :
322:2008/08/16(土) 01:47:38 ID:???
とりあえずこんな感じです
遅筆ですけどマターリいきますよヽ(´ー`)ノ
乙
設定がまだ謎で見えないとこで切られた(笑)
続き待ちしてるよ〜
334 :
前スレ35:2008/08/16(土) 23:27:41 ID:???
えーと、お疲れ様ですー
EOEAという題名つけて投下してましたが、
あれはアスカサイドで、今度は同じ話のシンジサイドを作ってみました。
ただ、同じ話の繰り返しだったりするのと、アスカの目の左右とか色とか間違いを正しておきたくて、
ここに投下するんじゃなくて、まとめて以下に置くことにしました。
http://www36.atwiki.jp/one_threefive/ シンジサイドも完結させてありますので、安心してご一読ください。
また、なんか思いついたらスレ保守に貢献したいと思います。それではー
乙!ありがとう!
すげー労力だな
乙乙
研究所内にある食堂。そこにシンジとリツコの姿があった。
職員用宿舎は、寝泊りするぐらいにしか使えない。
電気も水道も通っているが、生活を営むというには、何分狭い。
ここの食堂にはキッチンもあるし、大きめの冷蔵庫もある。
他にも、シャワー室、ランドリー施設も、研究所内には完備されている。
自動販売機コーナーもある。
宿舎など、単に寝るだけのスペースだったとしても、問題は無い。
プライバシーというのもあるのだろうが、そもそもここで働いている職員は
それほど多くはいない。別に気になるものでもなかった。
今にしても、食堂にいるのはシンジとリツコだけだ。
「はい」
リツコはシンジにコーヒーを渡した。
「ありがとう」
「豆を変えてみたんだけどね」
リツコはなかなかコーヒーにこだわりがあるようだ。
「…うーん」
シンジにはまだ、コーヒーの違いは分からないようだったが。
「砂糖とミルクを入れなかったら、わかりやすいわよ?」
リツコは、ブラックのままのコーヒーを一口飲んだ。
「酸味がさわやかね…」
「そ、そうなのかな」
シンジはまだ、コーヒーをブラックで飲めそうにない。
甘党なわけではないのだが、まだ14歳だ。別に珍しくもなんともない。
「香りもいいわね。でもコクは…まぁでもこんな物なのかしら?」
というかむしろ、リツコのほうが珍しいのでは…。
「あぁ、そうだわ」
リツコは壁にかけられたカレンダーを見た。
「シンジ君、私と同じ学校に通うんだっけ」
シンジは今度から、リツコの通う市立第壱中学校に通うことになっている。
「こっちに来てから三週間、やっとね。まぁいろいろとあったから」
「いろいろといっても、ほとんど寝てただけだし、実感ないや」
実は、シンジはここへと来てからというもの、何かの実験に付き合わされていた。
そもそも、実験に協力してほしいとのことで、ここへと呼ばれたのだ。
実験といっても、電極みたいなものをつけられて、ただ寝ているだけだったり
周りの研究員達はせかせか働いてはいるが、シンジには退屈なものだったのだが。
「僕のデータなんて何に使うんだろうね?」
どうやら、両親が生前に携わっていた事と、何か関係があるようだということは
ナオコや、他の者たち口ぶりから、何となく分かっていたわけなのだが。
実験中何度か、両親の名を話しているのを、聞いたことがある。
「お父さんが何してたかなんて、何にも聞いてなかったからなぁ」
「どんな人だったの?」
実は、リツコには生まれたときから父親がいない。
そのため父親とはどのような存在なのか、彼女には良く分からなかった。
「何にも話さない人。何をやってて、どんなこと考えているのかさっぱり」
シンジにとっては、いたとしても、何だか理解しがたい存在であったようだ。
「まぁ、お母さんの事が本当に好きだったっていうのは、わかってるんだ」
「そうなんだ?写真とか飾ってあったの?」
「いや全然。全部捨てたんだってさ」
「…え?」
この答えは、リツコは予想できなかった。
「すべては心の中だ、今はそれでいい…とか言ってたよ」
話を聞けば聞くほどに、よく分からなくなってくる。
「…ロジックじゃないのね」
「何分かった風なこと言っているのよ?」
食堂の入り口のところから声がした。見ればそこにはナオコが立っていた。
「あ、ナオコさんおはようございます」
「ええ、シンジ君おはよう」
確か徹夜明けで、まだ寝てそれほどたっていないはずなのだが…。
「母さん、もう起きて大丈夫なの?」
ナオコはガシガシと頭をかきながら、不機嫌そうに中に入ってきた。
「大丈夫じゃないわよ。でも呼び出されたんだから仕方ないでしょ」
そう言うと彼女は、リツコの隣の席に座った。
こんな朝早くから呼び出しとは、一体何事だろうか。
「何かあったの?」
「あった、らしい」
リツコのその質問に対するナオコの回答は、なんだか酷く曖昧なものだった。
「電話で叩き起こされてね。なんか数字が合わないとかで」
「え、じゃあこんな所にいて大丈夫なんですか?」
シンジの疑問ももっともだ。
そもそも何故、徹夜やら早朝やらと、研究が慌しい状態なのかというと
予定よりもかなり遅れているからだった。
期日までにデータをまとめて、国連に提出しなければならないことになっている。
「ええ、いても大丈夫。私が行く前に解決したんだって。
単にデータの入力ミスだったんですって。…そんな事でいちいち起こさないでよ」
ナオコはうんざりといった様子だ。
「だいたいそこの数字が合わなかったら、一番最初にどこをチェックするのか
わかる筈でしょ…。そりゃあ、皆疲れているのはわかるけど…」
「母さん、朝っぱらから愚痴はやめてもらえないかしら…?」
確かに、そんなことをリツコが聞かされても、どうしようもない。
「まだ眠いんなら、部屋に戻ってまた寝たらいいじゃない」
「…変なところで起こされたから、妙に目が冴えちゃってるのよ」
結局その後、ナオコは昼前から夕方まで寝ることになるのだが…。
その日、リツコは学校から帰宅すると、研究所の中へと入っていった。
いつものことだ。ほとんどここが自宅なようなものだった。
どうせ宿舎など、寝るときにしか利用しない。
「あ、冬月先生、お疲れ様です」
リツコが研究所の食堂へやってくると、ここの所長である冬月が休憩していた。
「やぁリツコ君、おかえり」
リツコも周りの者達の影響か、冬月を先生付けで呼んでいた。
「研究、進んでますか?」
「…うーん」
どうやら進んでいないらしい。
「どんな研究なんですか?母さん、あまり話してくれなくて」
「そうだな…まぁその前に、座ったらどうかね?」
リツコは冬月の正面の席に腰をかけた。
「あるモノを調べていてね。それがブラックボックスの塊のようなもので…」
「ということは、扱い方自体は分かってるんですね?」
「…ほう」
リツコのその言葉に、冬月はそう言葉を漏らした。流石だと、感心したようだった。
「どうかしましたか?ブラックボックスという言葉の定義なら
常識的に、普通に知っているレベルの話だと…思うのですけど?」
「ふーむ、そうかね?」
ブラックボックスとは、分かりやすく説明すれば、別に未知なる物でもなんでもなく
内部の動作原理や構造を理解していなくても、外部から見た機能や使い方を知っていれば
得られる結果を十分に利用する事のできる装置や機構のことだ。
これくらいの事ならば、別に知っていても不思議なことではないのだが
14歳という年齢を考慮すれば、なるほど、知識があると思える。
「ブラックボックスは、その決まった使い方をすれば、その結果を得ることができる。
間違った使い方をしてはならない。どういった理屈でそうなるのか分からないのだから
それ以外の使い方をしてはならない。どんな結果になるか予想できないからね」
「ですがそれは、間違った使い方をしなければ問題無い、ということにはなりません」
冬月は頷いた。
「その通りだよ。その考え方では規定外のことが起きてしまったとき
どう対処しなければならないか、それが分からなくなってしまうからね?
たとえば…そうだな、それだ」
冬月は、隅に置かれている電子レンジを指差した。
「あれの隙間に異物を入れてはならない」
「まぁ、電子機器の説明書には、たいてい書いてあることですよね」
「そうだな。でだ、わざわざ異物など入れるだろうか?
アクシデントで入ってしまうものなのではないのかね?
自分で入れなければ問題無い、ということではないんだよ」
そうなのだ。ブラックボックスとはそういうものなのだ。
規定から少しでも外れてしまえば、そこでもうどうしたらいいものか
さっぱり分からなくなってしまう。
トラブルとは、そうしなければいいとは思っていても、起きてしまうものなのだ。
電気製品に異物が混入したとして、そこでどうするか?
開けるのか?分解するのか?だがそれも禁止事項であるはずだ。
昔の機械なら、詳しいものならば構造は理解できるだろうが
新しい機械は、チップが並んでいて、何が何だかわからない。
開けて異物を取り出したとして、なのに機能に障害が出たとなれば、どうしようもない。
「今研究しているものは、その辺にある電気製品ではないんだ」
「危険なものなんですか?」
冬月は黙った。リツコは冬月の言葉を待っている。
暫しの沈黙。破ったのは二人のうちのどちらでもなかった。
「ええ、危険よ」
食堂の入り口、そこにナオコが立っていた。
(今朝と同じね)
何かのパターンなのか、リツコにはそれが少し可笑しかった。
「…何笑ってるの?」
「なんでもないわ」
「それと、冬月先生?」
ナオコは今朝のだるそうな動きとは違い、ツカツカとハイヒールを鳴らしながら
足早に冬月へと近づいてきた。
344 :
322:2008/08/17(日) 07:27:16 ID:???
地味です。動きがありません。
本編基準でいうと、まだ第壱話にも至ってないという…。
コミケにあったの?
乙です
続き待ち
>>343の続き
「ああナオコ君、お目覚めかね?」
「ええ、おはようございます」
「もう夕方も過ぎたのだが、おはよう。どうかしたかな」
ナオコはため息混じりに言った
「研究のこと、リツコにはあまり詳しく説明しないでくださいと、言いましたよね?」
「詳しい内容は話していないのだが…」
「そうは言っても…」
「ちょっとまって母さん」
リツコは立ち上がり、ナオコを見た。睨み付けるというほどではないのだが
あまり好意的な態度ではなかった。
「何故?機密なのは分かるけど、話せる事は話してくれてもいいじゃない?」
ナオコはリツコの目を、正面から見据える。
「知らなくてもいい事だからよ」
先に目を逸らしたのはリツコだった。
「…そう、分かったわ」
そうはき捨てたリツコは、不機嫌そうに食堂から出て行った。
「……」
ナオコは、リツコの姿が見えなくなっても、しばらく出口を見つめていた。
しばらくその様子を、目を細めながら静観していた冬月が
やれやれといった具合に口を開いた。
「まぁ、私も軽率だったとは思うが、もう少し言い方というものがあるんじゃないかね?」
ナオコは苦笑する。
「わかってはいるんですけど、なかなか思うようにはいかないものですわ」
冬月にはわからなかった。子供がいない彼には、親の心中というのものは。
しかも相手は思春期だ。いくらその心情を想像してみたところで、結局は他人事でしかない。
「やはり心配か」
そしてこういう月並みな言葉しか出てこないのだ。
「…はい」
「まぁとにかく座ったらどうだ。時間は大丈夫だったかね?」
「はい、シンジ君のパーソナルデータは、必要なところは全て取りましたから」
ナオコは冬月の向かいの席に座った。
「それで、どういうことなのかね」
「心配なんですよ、リツコの事が」
リツコは優秀だった。ナオコにしても冬月にしても、彼女を高く評価している。
普通はそれはいい事なのだろう。能力が素晴らしいにこしたことは無い。
しかしナオコには、寧ろそれが不安の材料になってしまっていた。
「あれは危険だからな。興味を持たせたくないわけか」
今研究しているモノの危険性を考慮すれば、それに巻き込みたくはないという思いは
それは当然のものといえる。
「リツコは優秀です。将来もしかしたら、その能力が必要になってくるということも
…かなり可能性が高いと思います」
だからか、ナオコはリツコに研究の事は話してはいなかった。
「しかしな、それならば何もここで、一緒に暮らさなくてもいいのではないか?」
ナオコにとって、痛いところだ。
その通りで、巻き込みたくないのであれば、ここから離れた場所にやればいいだけのこと。
「確かにまだ14歳の娘を、目の届かない所にやるというのは、抵抗があるだろうが」
「ええと、説明に困るんですけど…」
なんと言ったらいいものか、とにかくリツコを側に置いていたいと
漠然ではあるが、ナオコは強く思っていた。
母親だから、の一言では、どうも自分自身ですら納得しかねていた。
深層心理に何かあるのだろうが、生憎ナオコは心理学は専門外であるし
そもそも精神科医だったとしても、自分自身のことを診療することはできない。
「しかしここでは…」
「はい、アレに近すぎます」
あちらをたてればこちらがたたず、という事だろうか。
一緒にいたいが危険に近い。危険に近いが一緒にいたい。
結局はナオコ自身のエゴなのだろうが、それは自分で理解していたとしても
まるで心臓が鎖で雁字搦めにされているような、強迫観念にも似た何かが
ナオコを支配していた。
「一度、ちゃんと話し合った方がいいのではないのかね?」
とは言ったものの今の状態では、それもうまくいかないのだろうと
冬月は内心思っていたのだが、そう言うほかはなかった。
「…はい」
とりあえずこの話は、今はここまでだろう。
「冬月先生…」
ナオコは窓の外に視線をぼんやりと眺る。
「ゲンドウさんと、ユイさん…シンジを君関わらせてしまったこと
悔やんだりはしていないんでしょうか?」
冬月は遠い目をしながら呟くように答えた。
「生まれてくる子供を信じていると、ユイ君は言っていたな…」
「…そう、ですか」
そこは紅に染まった世界だった。
シンジはそこに立っているのか、浮遊しているのか、よくわからない不思議な感覚で
そこにいた。
-----また、ここか。
おそらく、夢の中だろう。
-----やっぱり。
前に見た風景だった。
あの天使のような翼をもった白い異形の群れが、シンジ目掛けて翔けてくる。
いつか見たそれと、同じだ。そうシンジが思った矢先のことだった。
-----…あれ?
次の瞬間総てが消え去り、シンジは真っ黒な空間に放り出されてしまった。
その空間の奥から、眉間にじりじりと刃の切っ先を押し付けられているような
まるで殺気ともいえるような、凄まじい視線が、シンジへと向けられていた。
-----な、なんだ…。
黒い空間の中、四つの小さな光がともった。
シンジを睨み付けるそれは、その視線の主の目だろうか。
-----…誰なの。
だんだんと浮かび上がってきた。
-----ねぇ、誰なの。
真っ赤な人影が。
「シンジ君!!」
「…あ、リツコさん」
シンジは眠っていた。研究所の自動販売機コーナーのベンチで。
食堂からここへとやってきたリツコは、俯いたまま苦しそうにしていたシンジに
声をかけたのだった。
「あ、じゃないわよ。苦しそうだったけど…大丈夫?」
「…そうだった?」
シンジはよく憶えていなかった。確かになにか、夢を見ていたような気がしたのだが。
「そうだったって…シンジ君、泣いてるわよ」
「え…?」
目元にそっと触れてみると、指先が濡れた。涙が流れていた。
「あれ、なんで…」
シンジは困惑している。一体、どんな夢を見ていた?怖い夢?それとも…。
「…実験の影響かしら?」
「え、影響って、どんな?データを取ってただけだよ…?」
そうは言ったものの、リツコは実験に関しては何も知らない。
ただ、シンジのこの状態は、とにかく正常であるとは思えなかった。
単に夢見が悪かっただけなのかもしれないが、先ほどの食堂でのやりとりもある。
「とにかく、ちゃんと横になって休んだほうがいいわ」
シンジをすぐそこにある仮眠室まで連れて行こうと、リツコは彼の手をとる。
この状態のシンジを、宿舎まで歩かせようとは思えなかった。
「立てる?」
「うん」
シンジは答えながらゆっくりと立ち上がった。そして二人はそこを立ち去る。
誰もいなくなったそこでは、ただ無機質に自販機が音を立てていた。
キター(・∀・)
353 :
322:2008/08/20(水) 05:34:17 ID:???
とりあえず第壱話終ました
乙
もう少し続きが読みたかったw
別に批判するつもりはないんだけど、幻想的っていうか抽象的っていうかよくわからない話だったなぁ……
まぁまだ第壱話だし
保守age
ageてなかった
ageない方がいいと思うが
そんなに日にち経ってないし保守る必要がないしな
ヒント:353=358
363 :
前スレ35:2008/08/22(金) 22:56:31 ID:???
eo解除きたー
いや、それだけですw
ネタがないー
ぼくが死んだら
君は泣いてくれますか?
何を言うのよ
私があなたを死なせはしない。
私が守るもの。
370 :
前スレ35:2008/08/23(土) 18:34:45 ID:???
適当に小ネタを書いてみます。つまんなかったら、ごめんなさい。
先行きは無計画です。
371 :
前スレ35:2008/08/23(土) 18:35:50 ID:???
るーるるっるるる、るーるるっるるる、るーるーるーるーるー♪
華やかなでセンスの良いリビングルーム、そのソファーに座りカメラに向かっているのは、
インタビュアーたるNERV技術部部長、赤木リツコ博士である。
――リツコの部屋の時間です。
さて栄えある第一回目のゲストは、葛城ミサト三佐の名参謀と評判の日向マコト二尉にお越し頂きました。
日向君、こんにちは。今日はよろしくお願いします。
「はぁ!?な、なんですか、これ!」
――さて。とりあえず自己紹介がてらに、ご自身の職務についてお話しいただけますか?
「は、はい、えーと……スーパーコンピュータ、MAGIのオペレータで作戦部所属……
まあ、ご紹介いただいた通り、葛城さんの参謀、とよく言われたりしますね。
言い換えれば、単なるパシリです。」
――パシリ、ですか(笑)
「そうですね。上司と部下の関係はいろいろありますが、
基本的には作戦を立てるのは葛城さん、僕やその他大勢がそれを遂行する。それだけです。
ワンマンという訳でもないけれど、僕の提案や助言に耳を貸すことはあまりないですね、葛城さんて。」
――では、お立場としてはいわゆる女房役と。
「あはは、そんな近しい関係では無いと思いますが。
でも、立場としてNERVの使徒せんめ……ゴホンゴホン、えーと……
え?言っちゃって良いんですか?
……あ、はい。使徒殲滅における作戦遂行責任者の一人、としての自負と責任は持っているつもりです。」
372 :
前スレ35:2008/08/23(土) 18:36:38 ID:???
――いわゆる報道規制については考慮なさる必要はありません。どうぞ、ご遠慮なく。
「は、はあ……そうですか。でも、なんだこのインタビュー。いったい何処向けの……」
――では話を変えまして、日向君の恋愛事情について。
「ぶっ!……い、いや、職務が忙しくて、そんな暇は……あはは。」
――お答え辛い、と?
「もう、赤木博士、知ってて……いいじゃないですか。そういうプライベートな話は。」
――なら、話を戻します?その激務に挑む原動力は、やはり葛城三佐に対する思い入れが……
「あーもう、はいはい、そうですよ。仰るとおりです。
葛城三佐に懸想しているからこそ、職務の励みになっていたことは否定しませんし、
それを隠すつもりはありません。実際、葛城三佐にも周囲にも、そうした意思表示をしたこともあります。」
――ならばこそ、葛城三佐の散らかした後のお片付けも、喜んで?
「いや、喜んでやってたつもりは無いですね。時にはグチりたくもなります。いや、グチってました。
この際、はっきり言いますが、好きでやってる訳ではないんです。
ホントのパシリをやらされたことも多々……」
――それが、職場における不満の一つ、と。
「うーん、まあ、そういうところも葛城三佐の愛すべき所、などと大人ぶったことを言うつもりはありません。
嫌いといえば嫌いです。そういう葛城さんのところがね。
いやはや、ガサツというかなんというか……あ、いや、その、ゴホンゴホン……」
373 :
前スレ35:2008/08/23(土) 18:38:10 ID:???
――この際ですから、遠慮なさらず。
「え、えーと、そのう……そりゃまあ、好ましいと思える部分は多々あると思いますよ。
彼女の地位は伊達ではないし、それが彼女に対する第三者的評価の証明である、ともいえます。
なんといいますか……好き嫌いと、愛する、ということは別であると思うんです。
それもまた特定の相手、恋人や夫婦だけでなく、上司と部下や家族の関係にもいえることかと。」
――成る程。そのように言い切れる日向君は、やはり素晴らしい恋女房であったと感じますが。
「はは、そうですね。乱暴な亭主に振り回されて、このザマです。なんてね、あはは……」
――では、最後に。満たされましたか?日向君は。
「え?ああ……そうですね。なんていうか……」
――はい。
「自分の想いは、やっぱりそうだったのかな、と。そうか、やっぱり俺は葛城さんだったんだな、と。
うーん、判ります?なんというか、自分はなんだったんだろう、自分にとっては何が大切だったのか。
それが判ったから、それが葛城さんだったから、よかったなと。それで僕は満たされたのだと、僕は思います。
かりそめであっても、夢が叶った、ということではなく……まあ、あの瞬間は嬉しかったですね。あはは……」
――成る程。答えて頂いてありがとうございました。
「いえ……ありがとうございます、赤木博士。聞いていただいて、本当に嬉しかったです。」
――日向二尉でした。ありがとうございました。では、次のゲストは……え?
ひそひそ……
374 :
前スレ35:2008/08/23(土) 18:38:58 ID:???
「はい?えーと、青葉君は無理っぽい?」
ひそひそ……
(ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!あ、あ、あぁあぁあぁぁぁぁああぁぁああああ……っ!!)
――失礼しました。気を取り直しまして、続いてのゲストは伊吹マヤ二尉です。お疲れ様です。
「……」
――伊吹二尉?
「……」
「マヤ?」
「え、あ、はい、すみませ……」
――では、とりあえず自己紹介を。
「はい、伊吹マヤです……えっと、NERV技術部所属……
センパ……技術部部長直属として職務に就いています。
……就いていました。」
――では、職務について。
「はい、えっと、私は……まあ、言われるがままに、というほど単純ではないんですけど、
目の前の仕事に追われる毎日でした。徹夜作業とか、そういう体力的な厳しさもあるんですけど、
絶対にミスの許されない、やり直しもデバッグ作業も許されない、パーフェクトを求められる……
そうした、プレッシャーに悩まされた日々でした。」
375 :
前スレ35:2008/08/23(土) 18:40:38 ID:???
――でも、やり甲斐もあった?
「セ……赤木部長にも指摘されたこともありますよね?自分は潔癖性である、と。
私という人間が紹介される際は、決まってそれを言われます。
完璧主義者でも無いけれど、自分の果たすべき職務が、自分の欲求に合っていたと思うんです。
そうした几帳面さを心がけるという面で、やり甲斐はあったと思います。」
「マヤ?好きに呼んでいいわよ?」
「え、あ……すみません。」
――では、マヤ。逆にそうした性格もまた、職務上の壁となったことは?
「そうですね……この場で言える話じゃないので多くは語れませんが……
NERVにおける作戦行動、使徒殲滅のためには手段を選ぶ余裕はない。
倫理上、やってはいけないことでもしなければならない。
そうしたことも多々あって、自分の職務に疑問を感じることも、嫌悪感すら感じることも……
こんなこと、言っては悪いのですが。碇総司令を初めとする上層部や、特にセンパイには。」
――いえ、この際だから遠慮なく。
「はい。葛城三佐の言葉でしたか、人一人の命が救えなくて何のための科学なのか、と。
私もそれは実感なんです。広い目で見れば、多くを救うための止むを得ない犠牲かもしれない。
人の姿。それは所詮、自然の荒波になぶられてキズだらけの野獣でしかない。
地上の地獄を生き抜く野獣の真の姿、それは人という名の集合体なのかな、と……」
――成る程。
「でも、やはり私は一個の人間なんです。人間はそれぞれ個別の個体なんです。
だからこそ、今にしか生きれない、自分が可愛い、悲しい生き物なんです。」
376 :
前スレ35:2008/08/23(土) 18:41:53 ID:???
――続けて。
「……その、私達は14歳の子供達に戦わせていました。そうせざるを得ませんでした。
多くのために自らを犠牲にする。それを出来る人は沢山いるでしょう。
でも、多くのために他人を犠牲にするなぞ、簡単には出来ないと思うのです。
しかも、司令にとっては実の息子であるはずなのに、人類をためとはいえ、冷酷に切り捨てるかのように……
それが出来ることが、司令が司令であった理由なのかと考えます。ただ――」
――はい。
「全ての決着が、集団のために無理矢理に犠牲を強いられていたシンジ君。
最後には彼という個人の想いに委ねられたのが、なんといいますか……もの凄く皮肉げな顛末だったな、と。
それ見たことか、などと言うつもりはありませんが。」
――では、最後に。
「はい、えーと、日向さんと同じ質問……ですよね。あの、そのう……えーっと……」
――はい。
「私は……その、人を愛せる人間でよかったな、と思います。
倫理上の問題を気にしたりする、というのは私が慈愛の心を人の向けることが出来る、
ということを示したいわけではなく……
ただ自分の気持ちよさ、心地よさを求めていただけなんです。
それが人を愛するということの、根本原理でしか無いのかも知れない。
日向さんの言われたことと似ていますが……でも、私は誰かを愛していた、ということを。
私は誰かを愛することの出来る人間だったのだと信じたいのです。」
――ありがとう。私も愛してるわよ、マヤ。もちろんそういう意味では無いけど。
377 :
前スレ35:2008/08/23(土) 18:42:38 ID:???
「あ、あの……」
――フフ、それでは伊吹二尉でした。どうも、ありがとうございました。
「は、はい!ありがとうございました!」
――では、来週のゲストは……
378 :
前スレ35:2008/08/23(土) 18:43:56 ID:???
おわりー
それぞれのキャラが語っていることは、どっかで聞いたような台詞を借りてきただけですー
キャライメージが違ってたりしたらごめんなさーい
補完後かよwwwww
ロン毛の若菜にも語らせてあげてよ
はぅ…… どこから補完後だってわかるんだろ?だろ?
普通にわかるだろ?
「ダメか・・・」
制服姿の男の子が受話器を置いた。
受話器は真っ赤に染まり、非常用電話と書かれている。
「しかたない。シェルターに行こう」
道路のわきに車が止まってる。
道の真ん中には制服姿の少女が一人。
瞳の色は赤。
胸元で結ばれたリボンが風に揺れている。
バサバサ。
ビルの屋上に止まっていた鳥が羽を広げた。
制服姿の男の子がそちらのほうを見た。
空へ向かって飛んでいくのが見える。
それを見届け、再び、少女が立っていたほうに視線を戻した。
「消えた・・・」
少女の姿はもうそこには存在しない。
あるのは道の両脇に留められた車と少年だけだ。
電線がかすかに揺れ、キリキリと頭を貫くような甲高い音が聞こえてくる。
音に驚き少年が振り向いた。
肩幅の広い生き物が町を我が物顔で歩いている。
背ははるかに高く、5階建てのビルを二つ縦に並べても足りないぐらいだ。
体の中央部分はどういうわけかわからないがすぼまり、赤いコアがはめ込まれている。
ミサイルが使途に向かって飛んできた。
白い軌道を描き、使途に炸裂する。
そこから遠く離れた、対空砲や戦車が火を噴き、使徒の周りを火の玉が押し包んだ・・・。
かにおもえたが、火の玉の中央部分がひかり、火の玉が消し飛んだ。
ビルや車は少年もろとも跡形もなく吹き飛び、一本の太い線を描いていく。
その太い線は対空砲や戦車にまで到達し、跡形もなく、消し去ってしまった。
「あちゃー」
アスファルトが爆風によって吹き飛ばされ、むき出しになった地面の前に女が一人立っている。
黒の詰襟に黒のサングラス。黒のイヤリング。
どこからどう見てみ、民間人としか思えない。
明らかに場違いなその女性はため息をつきながら、携帯電話を肩から下げているカバンから取り出した。
「例の少年は死亡。予備を使うしかなさそうね」
かばんには少年に見せるはずのパンフレットとお菓子の袋が見え隠れしている。
「その必要はなさそうよ。もう一人の子が近くにいるわ」
「え、なんですって・・・聞いてないわよ」
「読まなかったの」
「ええ、読んだわ。ちゃんと」
受話器越しにため息が聞こえてくる。
受話器から耳を話したサングラスの女性はちゃんとよんでおくべきだったとか何とか言ってる。
「あの〜ミサトさんですか?」
軽やかな声が聞こえてきた。
声がしたほうに振り向くと、少女が一人立っていた。
ぱっちりとした二重瞼に、ブラウンの瞳。
先っぽを軽く跳ねさせ、やや短めに切った髪の毛。
黒が透けて見える薄手のブラウスに、べっこう色のガラス球や白い石みたいなのがぶら下がったネックレス。黒のハーフパンツ。
おおよそ学生らしからぬ格好にどぎまぎしていたミサトだったが、今日は休みなのだろうと見当をつけ、
「ええ、そうよ。特務諜報機関NERV 作戦部長 葛城ミサト。あなたが来るのを待っていたわ。早く乗って」
そそくさと車に乗せ、キーを回そうとした。
使徒の周りを取り囲み、ミサイルなどを打ち込んでいた戦闘機が離れていく。
妙だ。
「伏せて!」
「え・・・」
少女が抗議する間もなく、のしかかった。
それとほぼ同時に光と炎が辺り中に炸裂した。
ミサト達が乗っている車も例外なく、爆風によって吹き飛ばされ、第三芦ノ湖がこの日、新しく誕生した。
あまりに技巧的だと読みにくくなるぞ。
何も文学賞に応募しようってんじゃないんだから。
爆風によって生じたクレーターの外側付近。
そこに一人の女性と少女が立っている。
手は横転した車に添えられ、「せーの」と掛け声をあげ、踏ん張っている。
「もう一息」「はい」
女性は歯を食いしばり、少女は声がかすれそうになりながらも腕に力を込めている。
普通の乗用車の重さはだいたい1トンぐらい。
普通の人間では起こせるはずもない。
ましてや、女性二人では・・・
起こすのは無理だろうと思われたその時、奇跡が起きた。
ドアの部分を下にするような感じで倒れていた車が起き上がったのだ。
「ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ」
車が起き上がる衝撃で生じた砂埃を払いながら、笑みを浮かべている。
「そういえば、名前聞いてなかったわね」
「竜崎ケイです」
「けいちゃんか。よろしくね」
「こちらこそよろしくおねがいします」
自己紹介もそこそこに二人は車に乗り、ミサトはキーをまわした。
エンジンが再びかかり、クレーターの外から舗装道路に向かって走り始めた。
「これが・・・」
ケイと呼ばれる少女は、紫の液体から顔半分を出している紫のロボットを見るなり、口を開けた。
セカンドインパクトが起きたこの世界でこんなものは存在するはずない。
そう言わんばかりの驚きぶりだ。
「人造兵器エヴァンゲリオン。我々人類の切り札よ」
ケイの後ろに立っている女性が言葉をはさんだ。
その女性は白衣を着、眼鏡をかけている。
その女性の隣には黒い襟の服を着込んだ女性―ミサトが立っている。
「切り札・・・これに乗れということですか?」
ここに連れてきたということはそれ以外に考えられない。
「そうだ」
もう一人の男性が歩いてきた。
黒の上着に黒のサングラス。
どこからどう見てもやくざにしか見えない。
ケイと呼ばれる少女は一歩後ろにあとずさり、おびえた目をしている。
そんなケイに見かねたミサトが「何もしないわ。安心して」と耳元で囁きかけた。
ケイの喉もとが動いた。
握りこぶしを作っている。
膝がかすかにだけど震えている。
「死ねということですか?」
声がかすかに上ずり、瞳には涙を浮かべている。
「なにかあった時は助けるわ。エヴァには何十枚の装甲がある。死ぬことはまずないわ」
ミサトは少女と同じ目線になるようにひざまづき、安心させようとしている。
エヴァとはエヴァンゲリオンの略称だ。
「うそつき。助けられるはずない」
ミサトの思いが通じることはなく、甲高い声が部屋中にこだました。
エヴァの周りで作業をしている作業員が白い目を向けた。
「その通りよ。死ぬ恐れもあるわ。でも、あなた以外にこれを果たせる人はいないの」
白衣を着た女性は瞬き一つせず、事実を告げた。
「説得はいい。予備を出せ」
「待ってください。今、怪我をしていて」
あらかじめ待機していたとでもいうのだろうか、部屋の中にストレッチャーが運び込まれた。
台車が転がる音にケイが視線を向けた。
ストレッチャーの上に白いレオタードみたいなものを着た少女が横たわっている。
髪の色は青。瞳の色は遠く離れていてよくわからないが、背丈はほぼ同じぐらい。
肩と右目のところに包帯を巻き、頭はネットでおおわれている。
(ひきょうなやり方。そこまでして乗せたいの!)
唇をかみしめ、眼鏡をかけた男性をにらみつけた。
追い込むやり方が気に入らない。
かといって、拒否するのも気が引ける。
「乗ります!」
こうなったら、破れかぶれだ。
竜崎ケイって誰?
ふーん、オリキャラなのかな?
それに、シンちゃん(?)瞬殺っすかwww
それはともかく、名前欄に何かタイトルでもコテでもいれて欲しいな。
割り込み入っても大丈夫なように。投下に時間がかかってそうだし。
390 :
前スレ35:2008/08/24(日) 00:16:02 ID:???
るーるるっるるる、るーるるっるるる、るーるーるーるーるー♪
――リツコの部屋の時間です。
さて、今週のゲストは若々しいお二人に登場していただきましょう。
ご存じ、三バカトリオの二人として知られる鈴原トウジ君、そして相田ケンスケ君にお越し頂きました。
負傷した鈴原君の付き添いとして車椅子を押しているのはクラスメイトの洞木ヒカリさんです。
それでは皆さん、よろしくお願いします。
「え……あの、リツコはん?どないしはったんや?」
「トウジ、いいから挨拶しろって……よろしくお願いします。」
――では、鈴原君にお尋ねしたいのですが……やはり、お恨みでしょうか?
私や、NERVのことを。
「はあ……えっと、今となっては、しゃーないこってす。
人類、というかみんなを守るために戦った、それも死ぬ覚悟で戦った皆さんを恨めません。
まあ、その……こうして足を無くしたからこそ、それが実感として判ったと……自分でもそう思います。」
――そう言っていただけると恐縮です。
最初の使徒との戦いで巻き添えとなった妹さんのことで、
パイロットの碇シンジ君と喧嘩をした、とのエピソードを伺っていますが。
「はあ、あれは、その……しゃーなかったんです。
今から言うても後付の説明になってしまいますが、殴らなしゃーなかったんです。
例えが悪いですが、自分の叔父貴が撃たれたと。それ撃ったんが自分の親友やと。
自分の親友は撃てん、でも、俺は撃たんとしゃーないやないか、と。
そこには恨みもなんもないんです。判りまっか?
お前が撃ったからワシも撃った。それだけなんです。
まあ、もちろん恨み辛みで勢いづいたってことはホンマのところなんですが。」
391 :
前スレ35:2008/08/24(日) 00:17:26 ID:???
――フフ、成る程。男の世界、という訳ですね(笑)
「いや、そないゆうても、極道とかそういうのに興味がある訳じゃないんです。」
――でも、心中に恨みを持ちながら、エヴァに乗ることに決断して下さった……
「それはまあ、自分でもよう判らんです。やっぱり今になって何をゆうても、ぜんぶ後付ですから。
なんていうか、あん時に考えてたのは……ワシが碇君を殴ったこと。
そしてコックピットの中で、苦しんでた碇君のこと。
リツコはんに誘われてから、ずっとそればっかし考えてました。
なんて言えばいいんか……ああ、これが生きるっちゅうことなんかと。
大仰ですが、生きるためのホンマの苦しみはこれなんやと。
碇君が苦しんどる姿見て、そしていよいよ自分の番が回ってきたんやと。
そんなら、やらなアカンと。
だから、ワシは乗りました。ホンマ、乗った理由はそれだけなんです。」
――成る程。ありがとうございました。
それでは、それに関連して相田ケンスケ君にもお尋ねしましょう。
相田君、なんでも葛城三佐の自宅に赴き、エヴァのパイロットにしてください、と直談判したそうですが。
「はい。お恥ずかしい話ですが、理由というのは兵器に対する憧れの一心で、
最新鋭にして最終兵器、エヴァのパイロットになりたいと思ったんです。」
――ですが、それなりに思うところはあったと思われますが……
相田君は自他共に認めるミリタリーマニアと存じております。
だからこそ、戦いに赴く意味をよくご存じかと。
「まあ、そうですね。ケンスケが言うように、今から何を言っても後付になります。
かといって、心身共に傷つきながら戦っていた碇君を見た上で、決断した訳でもあります。が……」
392 :
前スレ35:2008/08/24(日) 00:18:44 ID:???
――?
「やっぱり憧れていただけなんです。碇君本人にもそう伝えたこともあります。
命懸けの戦いに赴くこと、みんなの盾となって戦うこと、
それらを単に憧れの一心で、自分の夢としていたんです。」
――成る程。
「なんといいますか……先週、伊吹マヤ二尉が仰られてましたよね?
人の姿は、自然の荒波になぶられてキズだらけの野獣でしかない、と。
ならば、僕は野獣の中の内蔵、つまり都会で守られて生きる者でしかなく……
え、なんだよトウジ。」
「何?その先週のマヤさんのって。ええ加減、今のここがどこの……」
「いいから黙ってなよ。本当に鈍いな、トウジは。」
――(笑)
「すみません。だから、軍隊の役割というのは古来から自然と闘い民衆を守ることの筈だったんです。
車やグラビヤアイドルを愛でるように、僕は様々な兵器に興味を抱いていました。
でもそれの大半は対人兵器でしかないんです。最新のイージス艦であってもね。
様々な兵器のバリエーションを見ているだけで楽しめるのですが……軍隊というのはそうであってはならない。
人のために自然と闘う本来の役割に立ち返れば、軍事力というのは無くてはならない……」
「くどい!もうええわっ!いつまでも自分の屁理屈かたっとるから放送時間のうなってしまうやないか!
イインチョのしゃべる分も残したらんかい。ほら……お前もなんか言うとけ。」
――いえ、洞木さんには事前に伺ったのですが、恥ずかしいので勘弁して欲しい、とのことで。
「何をいうとんねん。ええ機会や無いか。お前も言いたいことの一つぐらいあるやろ?」
「トウジ、別に良いだろ?無理にそんな……」
393 :
前スレ35:2008/08/24(日) 00:20:35 ID:???
――はい、それでは本当に時間が迫って参りましたので、この辺で終了させて頂きます。
鈴原トウジ君と、相田ケンスケ君でした。
「ちょ、ちょっと待ってください。さっきの話の続きを……」
「終わりや、ゆうとるがな!潔くせんかい!ほら、出て行かなあかんのやろ?」
「トウジ止めろって!車椅子でこづくなって!」
――さて……実は、ほんの少し時間が残っています。
洞木さん?ちょっと、こちらに。
「いや、あの、私……」
――少しだけです。鈴原君、気付いてないようですね。
この世界なら、失った足も元に戻せると言うことを。
「あ、そうなんですか。でも……」
――ん?
「内緒にしておきます。もう少し、車椅子を押してあげ……たいし……
あと、しばらくはおとなしくしてて欲しいので。」
――ウフフ、それもいいですね。でも、あんまりおとなしくなさそうですが(笑)
「アハハ、そうですね……あ、では……」
――はい、行ってあげてください。洞木ヒカリさんでした。では……
394 :
前スレ35:2008/08/24(日) 00:22:34 ID:???
――それではここで、お便りの紹介をさせて頂きましょう。
>>379さん、ご覧頂きありがとうございました。
補完後と認識されているようですが、あなたの前にはどんな人が現れたのでしょうか?
あなたの心も満たされる事を願ってやみません。
>>380さん、リクエストありがとうございます。
若菜さん、ですか?現在、NERV諜報部の人々も満たされてしまって情報が不足しております。
私も知っていたのでしょうか。何しろ脳を打ち抜かれてから記憶が朦朧としておりまして。
今のままでも面白いので、彼にはもう少し冥界にさまよって頂きましょう。
>>381さん、まだそちらに残っておいでのようですね。
フォローして頂いた
>>382さんそれぞれに、
視聴者プレゼントの綾波レイ1ダースをセットでお送り致しましょう。
無事の補完をお祈りいたします。
では、皆さん。ごきげんよう、さようなら。
395 :
前スレ35:2008/08/24(日) 00:23:26 ID:???
おわりー
くだらない小ネタばっかでごめんー
乙!
そっか若田さんはまだ怯えたままなのか…
397 :
夢小説:2008/08/24(日) 00:46:21 ID:???
>>388 オリジナルの主人公です。
>>389 はい。オリキャラです。
生かすことも考えたのですが、機体が足りなさそうなので死んでもらいました。
398 :
夢小説:2008/08/24(日) 01:48:51 ID:???
「よくいってくれたわ。それじゃあ、レクチャーするからこっちへおいで」
言わせたくせにという言葉を喉もとでの見込み、白衣を着た人について行った。
「あ、そういえば、自己紹介がまだだったわね。私は赤城リツコ。開発部の主任をしているわ。よろしく」
ぺらぺらとよくしゃべる人だ。
事務的に話されるよりはましだが、こういう風に馴れ馴れしくされるのもうるさい。
かといって、無視するのもマナーに反するので軽く自己紹介をした。
「ここが操縦席」
巨大な手が細長い筒のようなものをつかんでいる。
色はグレー。
筒の真ん中部分には入口と呼ばれるものがあり、リツコさんとケイが来た時には既に開いていた。
ふたの部分にはEVA-01と書かれている。
どうやら、機体ごとに専用のものがあるらしい。
そんなことを考えながら乗り込むと、
「さっきは御免なさいね。あの人、ああいうやり方しかできなくて―」
「いいですよ。気にしないでください」
リツコさんの顔はすごく申し訳そうな顔をしていた。
あの人という呼び方は気になったけど、それほど悪い人ではなさそうな気がした。
眼鏡をかけた男性も、ああいう状況だから、ああしたのかもしれない。
そう自分に言い聞かせていると、プラグの閉じる音がした。
(怖い・・・)
プラグ内に差し込んでいた光はなくなり真っ暗になった。
胸がドキドキする。
怖い。
足音がする。
「落ち着いて。すぐに明かりがつくわ」
どこから知らないけど、リツコさんの声が聞こえてくる。
プラグ内部に明かりがともり、プラグの壁がオレンジ色に照らし出された。
激しく何度も息をしているのがわかる。
口元を手でふさぎ、深呼吸した。
「司令、この状況では無理です」
「リツコ、この状況わかってるの。変わりは事実上いないのよ」
399 :
夢小説:2008/08/24(日) 01:50:37 ID:???
リツコさんとミサトさんが口げんかをしている。
「大丈夫です。出してください」
ケイの変わりは事実上いない。
いや、正確に言うといるのだが、負傷している今の状況で使い物になるとは到底思えないし、
死ねばパイロットを失うことになる。
だから、今のケイは出撃するほかないのだ。
―シンクロ率。27%。ハーモニクス正常。暴走の恐れなし。
プラグの壁面を見ると何か模様なものが走っているのが見える。
赤・青・黄色・緑。
(きれい・・・)
思わず見とれていると、機体が動き出した。
いや、正確に言うと期待ではなく、機体を載せているゴンドラだ。
モータが動く音に耳を傾けていると、衝撃が伝わってきて止まった。
―エヴァンゲリオン初号機。リフトオフ!
金属を引っ掻くような音が聞こえ、体が押しつぶされるような感覚がしたと思ったら、急に無くなった。
目の前に肩幅の割腰回りの小さな生き物が立っている。
体の中央には赤い玉のようなものがあり、その上には株がにを白く染め上げ、しっぽのほうを下につるしたようなものがぽつんと置かれていた。
(案外可愛いかも・・・)
そんなことを考えていると、目の前の生き物―リツコさんが言うには使徒という生き物らしいがこっちに向かって走ってきた。
よけようとするが、背中をロックされていて、動かすことができない。
ビルから無数のミサイルが発射され、使徒を足止めしようとするが、そんなことで動きを止めるほど柔ではなかった。
体が動かせない状態のまま、タックルされ、ビルに叩きつけられた。
使徒の顔が見える。
怖い。
逃げなきゃ。
操縦席についているレバーを何度も何度も動かす。
心臓が早鐘を打ってる。
「蹴りでも何でもいいから入れなさい!」
「それじゃあ、伝わらない。蹴りあげることをイメージして」
400 :
夢小説:2008/08/24(日) 01:51:56 ID:???
ミサトさんとリツコさんの声が聞こえてくる。
ミサイルの着弾する音が聞こえてくる。
飛行機のエンジン音が聞こえてくる。
(蹴りを入れなきゃ・・・)
無我夢中でけりを入れる動作をイメージした。
使徒の体が後ろにのけぞった。
「今よ。そのまま突っ込んで」
地面を蹴り、お返しとばかりに突っ込んだ。
ひしゃげた安全装置に使徒の体が突き刺さった。
青い血が太ももと思われる部分から垂れ、アスファルトに一つ、二つと落ちている。
すごく痛そうだ。
「何ぼうっとしてるの!ここは戦場よ」
はっとして、辺りを見回すと、目の前に使徒の手の甲が見えた。
キリキリと頭を締め付けられるような感覚がする。
手からもがれようと手足をじたばたさせるが、使徒の力がものすごく強いのか、なかなか離れない。
そうこうしているうちに目の前が光った。
左目が痛い。
何度も何度も何かが突き刺さる音が聞こえる。
すごく痛い。
眼球を何かで貫かれたような感覚がする。
「ケイ!作戦中止。パイロットの救出を急いで!」
遠くのほうでミサトさんの声が聞こえ、そのまま意識を失った。
オリジン弁当のキャラ?
乙。
地の文がキャラ視点になったりそうじゃなくなったりと混乱してる感じなのが気になるかな。
例えば
>リツコさんとケイが来た時には既に開いていた
ここは「リツコさん」とケイ視点の呼び方しているのに、
「ケイが来た時には」の部分はケイ以外から見た文章になっている気がする。
俺も同じとこが気になった
竜宮レナ「かぁいいよ〜」
>喉元での見込み
こういうひどい誤字もなくしてくれよ 推敲してないだろ
単純な入力ミスに、首をひねりたくなるおかしな表現、
内容的には主人公をオリキャラに置き換えただけの、本編からのトレース作業。
すまんがGJとも乙とも言って上げられない。
411 :
409:2008/08/24(日) 19:54:57 ID:???
>>410 偉そうに叩いてごめん。
内容に関しては先まで読まないと判らないけど、
今時点での素直な感想。
>ケイ!作戦中止。パイロットの救出を急いで!
例えば、ここ。
ミサトがケイに命令しているように見える、
句点が妙にトーンダウンして見えてしまう、
等々……
虱潰しすればキリがないし、どんな作品にもあるかもしれないけど、
読みづらさにまでなってしまってるのがちょっと。
投下する前に、一晩以上は寝かせてからの方がいいよ。
修正したくなるポイントが後から後から結構出てくる。
で、この人の虱潰しはここで終了ね。
あんまり叩くなよ。小学生にしては上手い文章じゃないか。
ケイと聞くと援助交際してそうに思える件
マンギーが書いた奴にそういうのあったね
最近全然執筆してないみたいだけど。
「不滅の悪」の続きが見たいんだがなあ
>>410 >>404やそのリンク先とかを、一回でいいから読んでみるといいよ
書き手の人も読み手の人も、結構楽しめると思う
人称だの視点だのにこだわってるのはまた“ヤツ”か?
才能ないくせに他人の作品批評したがる糞
417 :
夢小説:2008/08/25(月) 02:58:12 ID:???
「エントリープラグ射出できません」
キーボードをたたく音が発令所ないにこだました。
コンソールの前にある巨大なスクリーンに初号機が映し出された。
初号機の背後にはビル。
左目は貫かれ、だらりと垂れさがった両腕一ミリたりとも動こうとしない。
使徒呼ばれる生き物は胸の真ん中に手をかざし、腕の付け根から生えた白いやりみたいなものが前後に動いている。
バスンバスン。
胸部装甲がはがれおち、コアが姿を現した。
「まいったわね」
コアはエヴァンゲリオンの心臓部。
あれが壊されれば、エントリープラグを射出して、助けるどこではなくなってしまう。
「やむおえん。予備を動かす」
黒服に眼鏡をかけた男性―碇司令という人間が駆け出し、オペレータに何やら話しかけている。
コンソールのサブスクリーンに青色の髪の少女が映し出され、「怪我の具合はどうだ。初号機が使えなくなった」と語りかけている。
その顔は沈痛な面持ちをしていて、ケイを脅した時とは大違いだ。
この男も人の子。
予備を連れてきたのはケイをエヴァに乗せるためで、傷ついた予備を動かすつもりははなからなかったらしい。
「アスカはあとどれくらいでつくの」
「あと10分ほどで第三新東京市上空に到着します」
巨大スクリーンの左上のほうに日本地図が映し出された。
EVA-02と書かれた三角形が九州上空からTOKYO-3と書かれた点に移動しているのが見える。
到着まであと少しといったところだ。
「零号機リフトオフ」
左上の日本地図が消えレイの顔が映し出された。
左目には眼帯が当てられ、頭には包帯を巻いてる。
見るからに痛々しいが、エヴァンゲリオンは乗る人間を選ぶ。
乗りこなせる人材が限られている以上、病人でもけが人でも使うしかないのだ。
「レイ。アスカがあと10分でつくわ。それまでできる限り時間を稼いで」
「了解」
418 :
夢小説:2008/08/25(月) 03:00:19 ID:???
レイの声は相変わらず無表情なままだ。
従う気があるのかないのかよくわからないが、本音を言えばおそらく従いたくないのだろう。
無理もない話だ。
けがで療養中なのに引っぱり出されて、戦わせられてるのだから。
「航空部隊、および地上部隊に告ぐ。足止めを最優先とし、零号機への使徒の進行を阻止せよ」
使徒の周りに集結した多数のVTOLの機銃が火を噴いた。
弾が着弾し、腕や顔の部分に波紋が何度となく広がったが、すぐに消えた。
「位相反転消滅。ATフィールドを中和していきます」
ビルが青い血で染まった。
使徒が後ろにのけぞり、VTOLがここぞとばかりに攻撃加える。
使徒の目が光った。
火柱が立つ前に、使徒の顔が割れた。
(これならいける!)
体に穴をあけたまま、使徒が一歩一歩後ずさってる。
背後には使徒の高さぐらいある高層ビル。
もはや逃げ場はない。
零号機が銃を構えている。
銃口はコアのほうに向けられて、いつでも破壊できるぞといわんばかりだ。
零号機の指が引き金を引いた。
薬きょうが辺りに散らばり、銃口が火を噴いた。
使徒のコアにひびが入り、その体は火の玉と化した。
背後にあったビルは当然のことながら無事で済まない。
熱と爆風によってガラスは砕け、コンクリートは吹き飛び、周囲の建物を壊滅状態に追い込んでしまった。
420 :
夢小説:2008/08/25(月) 03:46:26 ID:???
>>419 なんか、ふと「海は青く眠ーリー♪」と続きそうな気がする文句だと思った
>>351からの続き
リツコの通っている中学は、悪い気風があるわけでもなく
また逆に華やかな校風があるわけでもない、特徴のない平凡な学校だった。
リツコの成績を見れば、他のもっとレベルの高い学校に行けたのだが
研究所に近い、ということで、ここに通っていた。とくにリツコは不満を感じていない。
寧ろナオコの方が、成績を見て惜しそうにしていたぐらいだ。
「おはよー、赤木さん」
リツコが教室に入ると、何人かの女子がリツコに手を振り、挨拶した。
リツコはその女子たちの方へと向かう。近づくと、そのうちの一人が話しかけてきた。
「赤木さん、プリントやってきた?」
昨日出された宿題の、数学の予習のことだ。
昨日の段階で、数学教師は今日当てる生徒を指定していた。
それが彼女だった事をリツコは思い出した。
「やってきてあるわよ。見せてほしいの?」
「うん、ごめーん、お願い」
リツコは窓側の自分の席につくと、鞄からプリントを一枚取り出し、彼女に渡した。
「ありがとー」
彼女はそれを受け取ると、自分の席へと戻っていった。
先ほどリツコに手を振っていた女子たちや、他数人もそこに集まる。皆、リツコのプリントを写すのだ。
彼女達は自分では課題をあまりやらないが、人のを写すのは手馴れたもので、作業は早い。
おそらくプリントはすぐ戻ってくるだろう。
彼女達は時折、顔を寄せてひそひそと話している。
「見せてほしいの?だってさ」
「なんか上から目線じゃない?」
「うんうん、まぁ便利なんだけどね」
一応リツコに聞かれないように話しているが、別に聞かれてもいい、とも思っているようだ。
ちらりとリツコを見てはクスクス笑う姿が、気づかれまいとしている様には見えなかった。
「便利便利。超真面目〜、こんな面倒くさいことちゃんとやるなんて」
「それがさ、前に面倒じゃないか聞いてみたんだけどさ」
「何?」
「こんな簡単なの別に面倒じゃないでしょう?だってさ」
「ウゼェ、調子こきすぎ」
そしてまた、笑う。
リツコはとっくに気がついていた。陰口を言われていることに。
頬杖をつき、ぼんやりと窓の外を眺めながら思う。
(…無様ね)
それは彼女達のことか、それともそのような者達とも表面上は付き合う、自分のことか
自身にもよく分からなかった。
(多分、両方ね)
リツコは心の中で自傷気味に笑う。表面上は何の変化もみられなかった。
無視しよう。どうせもう割り切ってしまっていることだ、今更そんなことを考えても仕方がない。
彼女達は馬鹿なのだ。そう思ったところで、別に優越感など微塵も感じなかったのだが。
(まだもうちょっとあるわね)
壁にかけられた時計を見てみると、朝のホームルームが始まる時間はまだ少し先だった。
シンジが職員室へと入っていったのは、その10分ほど前だった。
今日は転校初日であったが、とくに緊張している様子は見られなかった。
「失礼します」
中に入り、一通り室内を見回す。
何人かいる教師達の中に、立ち上がり、シンジに向かって笑顔で手を振っている者が一人いた。
シンジへと歩み寄ってきたその者は、ショートカットヘアーの女教師だった。
「シンジ君、おはよう」
「おはようございます、マヤさん」
彼女がシンジの担任になる。シンジはリツコと同じ教室になるとのことだったので
リツコの担任でもある。一度学校へ資料や教材を取りに来たとき、話したことがあった。
それは第三新東京市へとやってきてから、比較的すぐのことだった。
今日から二週間以上、三週間近く前の話だ。
「いつになったら来てくれるか、心配したんだから」
「すみません、いろいろあったんで…」
マヤは労わるように笑う。
「話は聞いているわ、大変だったんでしょう?」
その話とやらも、真実のことなのか、虚偽のことなのか、機密事項も多いので
それらしい適当なことを聞かされているのだろう、というのは、説明されなくてもシンジでもわかる。
事前に、何か聞かれてどう答えていいか分からないときは、家庭の事情で誤魔化せと
ナオコや冬月に言われていた。変に説明しようとしなくてもいいとも。
シンジ自身、何の研究なのか知らないこともあるし、取り敢えずは言われた通りにしておけばいい。
「ええ、はい」
シンジは少し困ったように笑った。
さて、まだホームルームまでは時間が有るし、学校の説明は事前に済ませてあるので
それまで少し話しでもしようと、マヤはシンジに質問した。
「前の学校はどうだったの?」
資料には目を通してあるので、成績は分かっている。
悪くはないし、どちらかといえば優等生といってもいいかもしれない。
「別に、普通でした」
身も蓋もない言い方だ。そう言うのであれば、確かにそうなのであろうが…。
しかしこれは、マヤが期待した回答とは違う。これでは会話が終わってしまうではないか。
(…あれー?)
質問の仕方がよくなかったのだろうかと、本気で悩むマヤ。
「え、えーと、ほら、楽しかったとかつまらなかったとか」
「いえ、とくには」
終了。
仕方がなかった。楽しかった事、つまらなかった事といっても、何も思いつかなかったのだ。
だからそう言う他なかった。
(どうしよう…)
二人とも同じ事を思った。会話が続かない。気まずい。
「そ、そうね、じゃあ…」
「はい」
そしてマヤは何を思ったのか、こんな質問をしてしまった。
「赤木リツコさんってどんな子?」
「…はい?」
シンジの顔を見れば分かる。何故いきなりそんな質問をしてくるんだ、と思っていることが。
「…あ!い、今の質問無し!!」
そうは言ったものの、時はもうすでに遅かった。
恥ずかしかったからか、マヤは顔を背けて少し俯いてしまった。
マヤは何故か、普段からリツコを気にかけていた。
クラスから浮いている、というのも一つの理由だったが、それだけではないようだった。
それに気がつく前から気になっていた。もしかしたら無意識にそれを感じていただけなのかもしれないが
それにしてもここまで気になるだろうか、と、意識すればするほど気になって仕方がなかった。
その結果が、今のこの咄嗟に出た質問だった。
「あの、リツコさんとは知り合って三週間くらいしか…」
「そ、そうよね、ごめんなさいね」
単純に、付き合いはマヤの方が長い。入学から今までなので、一年以上になる。
マヤは資料に載っていた住所が、リツコのものと同じだったので、彼女に話は聞いていた。
だから、同じところに住んでいるのは、事前に確認していたわけだが、だからといってこの質問は…。
シンジ自身も、それはマヤの方が知っているのではないか、と思っていた。
確かに条件をみれば、シンジの方が近しい存在であるのかもしれないが、いくらなんでも期間が違う。
(変な女と思われたかな)
マヤはシンジの様子を見てみた。不思議そうな顔で、小首をかしげている。
(…かわいい)
「?」
その心の内をシンジに悟られることがなかったのは、マヤにとっては幸いだったかもしれない。
「じ、じゃあ、ちょっと早いけど、そろそろ教室に行こうか」
何やら妙な考えをしてしまったマヤは、誤魔化す様にそう言った。
「さぁさぁ」
「あ、ちょ、ちょっと…」
マヤはシンジの両肩に手をやると、軽く押す。そして二人は職員室の外へと向かった。
それにしても二人は気がついているのだろうか。
いつの間にかお互いを、無意識の内に、苗字ではなく名前で呼び合っていることに。
427 :
322:2008/08/25(月) 05:43:09 ID:???
うーん、書き込んでから修正したい所を見つけてしまった…
乙
だけど名前でお互い呼んでる描写ないよね(笑)
あと別に意地悪く指摘するつもりはないけど
自傷気味じゃなく自嘲気味じゃないのかなって
>>428 >だけど名前でお互い呼んでる描写ないよね(笑)
一応呼び合ってます…けど、一箇所だけ。
何回も名前で呼び合ってたら、あまりにも不自然だったんで。
でも一回だけじゃななぁ…。
>自傷気味じゃなく自嘲気味じゃないのかなって
今書いてるこの話が終わったら、もしかしたら修正、改訂してまとめるかもしれないので
誤字脱字、変換ミス等の指摘はかなりありがたいです。
まとめなかったにしてもありがたいですけど。
430 :
322:2008/08/25(月) 07:05:50 ID:???
↑名前欄忘れてしまった…
しかもこのレスでも誤字あるし…
>>421 くぐったが見つからない・・・
何の歌なんですか(汗
しょっぱなの挨拶が名前で呼んでるわけか
いつのまにかつうか最初からじゃねえかwww
435 :
322:2008/08/25(月) 08:56:55 ID:???
>>432 ええもうなんか最初っからッス
本当は事前に一回学校に来ているってことなんですが
…まぁ、だからそこも、修正したい所の一つというわけです
推敲してるのに('A`)ウボァー
よぉ!呼んだか?
人称だの視点だの言ってるやつは俺じゃねぇよ。
俺は元祖スレ主として暖かくロムり続けることにしたんだよ。
愚民乙。
はいはい、スレが荒れてきましたよっと。
皆で自重しましょうねw
>>431 未来少年コナン
言われてみれば確かに冒頭のナレーションの最後のトコを想起させるw
>>439 おいコラ偽!ふざけんな!やっぱり「#りゅうと」はバレてるか……
櫻井流人、好きなんだけどな
仕方ない、今度はロン毛のあの人の名前を酉にしよう
^^416=433
全てお見通し戌!!
他人のことは平気で叩くくせに、自分が少しでも叩かれると
激昂し、叩いてきた者に同じ言葉を浴びせないと気が済まないコマッタちゃんw
442 :
前スレ35:2008/08/25(月) 22:27:01 ID:???
うむむ、なんか投下しなきゃ。というわけで、なんとなく基本設定を考えてみた。
「隠し事のないエヴァ」
ざっざっざっざっ……
軍靴の鳴り響く中、飛行場のような場所で立っている一人の女性。
四十代前半だろうか、どこにでも居るような主婦のようだ。
「いやだぁ、母さん!死んじゃいやだぁぁっ!」
その彼女に泣きながら訴えている中学生らしき一人の少年。
駆け寄ろうとするが、サングラスをかけた黒服達に羽交い締めにされている。
「タモツ?これはね、私達人類全ての救いのためなのよ?」
だが、泣きじゃくる少年の耳には届かない。
第三新東京市に到着したシンジは、この光景を呆然と見ていた。
彼らの悲壮な有様の背後には、一体のロボット兵器。
母親に一人の男が近づく。
「構わんのかね?今からでも志願の取り下げは可能だ。代わりは幾らでもいる。」
「構いません。タモツもきっと判ってくれるでしょう。私達の未来のために。」
「では。」
そして、男は短銃を母親の頭に突きつけ、
タンッ……!
「!?」
あまりの光景にシンジは絶句する。
今、この瞬間に一人の人間が殺されたのだ。
そしてその母親の亡骸は、科学者のような白衣を着た男達の手でロボット兵器の元へと運ばれていく。
その有様に目を丸くして見ていたシンジだが、その男の正体を見て更に驚愕する。
「……あれは、まさか!」
443 :
前スレ35:2008/08/25(月) 22:28:09 ID:???
その母親を射殺した男、それは紛れもなくシンジの父、碇ゲンドウであった。
「捧げ、筒!放てーッ!」
ダダン!ダダン!ダダン!
そして物悲しい軍隊ラッパの音色に彩られ、粛々と母親の葬儀が取り行われる中、
カツ、カツ、カツ……とシンジの側へとゲンドウは歩み寄る。
「よく来たな、シンジ。」
「父さん、今のはいったい……父さん、父さんは何をしたの?」
「見ての通りだ。人を殺した。私は彼の母親を殺したのだ。」
「何故!?どうして!」
「使徒を倒し、儀式を行うための犠牲なのだ。
アダムのコピーである決戦兵器エヴァンゲリオンを操るにはパイロットの実の母親が必要なのだ。
実の母親がコアとなり、それで初めてエヴァは完成する。
また、犠牲となる者には必ず私自らの手で誘うことにしている。すべての罪は私が背負う。
そして、シンジ。済まない。」
「……ちょっと、待って。父さん、何故あやまるの?まさか」
「あそこに見えるか?お前が乗る……」
「嘘だ……ねえ、嘘だと言ってよ、父さん、お願いだから嘘だと言って!!」
「お前の母さんは自ら……」
「嘘だあああああああああああああッッ!!!!」
怖くなってきたから、もう止めときますw
鬱になりそう。読むんじゃなかったorz
序盤でパイロットの精神が崩壊しそうな話だ
正直…つ、続きが、よ、読みたいかも…しれない
こーゆう話はあまり好きじゃないなぁ
>>426の続き
昼休みの時間。シンジの転校初日は、ここまではとくに何も問題はなかった。
最初こそいろいろと話を聞かれたりしたものの、シンジの受け答えといえば
今朝のマヤに対してのを思い出せば、彼に対する興味などそれほど長続きはしないことは
理解することは容易い。一人、また一人と、シンジの周りから人がいなくなっていた。
いい子だけれど、ただそれだけの、あまり面白くない奴、とでも思われたのだろう。
ただ、時折リツコと親しげ話す姿を見せることで、だんだんと好奇の目で見られ始めていた。
弁当を持ってきていなかったシンジは、購買へ行こうと立ち上がろうとするが
数人の男子に囲まれてしまい、それはできなくなった。
「なあ碇」
一人が話しかけてきた。
「赤木さんとはどういう関係なんだ?」
「…え?別に、知り合いなだけなんだけど、それがどうかした?」
シンジはキョトンとしている。質問の意図がいまいち掴めていないようだ。
「えー?」
他の者達も口を開く。
「本当にただの知り合いか?」
「それにしては仲いいよな」
何が言いたいのか、シンジは理解した。この者達は勘違いしている。
シンジは、できることならば事は避けたい、起こしたくないと考えるタイプだった。
そういえば過去に、誰かに事なかれ主義だと批難されたことがあった。
それを言ったのが一体誰だったのか、記憶には残っていなかったが。
「別に何もないよ…」
だから、この状況はあまり好ましくない。
こういう話があまり得意ではないこともあってか、いい加減煩わしくなってきていた。
購買に行きたい。シンジはそう言いかけたのだが、それは出来なかった。
「…あれ?」
急な頭痛に襲われた。シンジは頭を手で押さえる。
「碇?」
「どうした?」
囲んでいた男子たちは、その様子を不振がる。
「…頭が、痛い」
偏頭痛だろうかと思ったそのとき、それだけではなく、眩暈や耳鳴りまでがシンジを襲った。
「うう…」
普通の状態とは思えない。傍から見てもそれは明らかだった。シンジは蹲ってしまう。
「やばいだろ、これ…保健室行ったほうがいいんじゃないか?」
「碇、保健室どこかわからないだろ、連れてってやるから」
そう言って、一人がシンジの腕を掴んだ。それに支えられ、シンジは立ち上がろうとする。
しかし、シンジは膝から崩れるように倒れてしまった。
鼓動がどんどん早くなるのを感じる。その音が耳に聞こえるような気がした。
「お、おい、大丈夫かよ」
その音にかき消されてか、シンジの意識に、彼のその言葉は届かなかった。
シンジはさらに、体中の血液が沸騰しているような感覚さえする。まるで血管が火傷しそうだ。
「……」
そして、シンジはとうとう気を失ってしまった。周りの者が呼びかけても返事がない。
「…どうすんだよ、先生呼んで来た方がいいんじゃないのか?」
「俺呼んでくる!」
一人の男子が教室を飛び出していった。辺りは騒然となってしまった。
シンジは夢を見ている。
「お父さん、コレ、何?」
「ん、なんだそれは?十字架のネックレス…シンジ、お前のか?」
「わかんない」
「違うのか」
「お父さんのじゃなかったら、お母さんの?」
「…いや、母さんはそういうのは持っていなかったはずだ」
「じゃあ誰の?」
「どこからそれを持ってきたんだ」
「わかんない、最初から持ってたよ」
「最初から?」
「うん、気がついたときには持ってた」
「今までどこにそれを置いていたんだ」
「箱の中」
「…ああ、お前が今よりもっと小さかった頃の、遊び道具が入っているアレにか?」
「うん、そうだよ」
「それは…おかしいな…」
「久しぶりに開けてみたら入ってて、そういえばこんなのあったなーって」
「……そうか」
「うん」
「ならば…」
「?」
「…それはお前の物なのだろう、大事にするといい」
「…うん、わかった」
そして夢は続く。
いつか読んだ詩を、シンジは思い出していた。
『愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません。
それでも なほもながらふことともなったら 喜び過ぎず悲しみ過ぎず、
テムポ正しく、握手しませう』
-----いつ読んだんだっけ…。
『愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません。
それでも なほもながらふことともなったら 喜び過ぎず悲しみ過ぎず、
テムポ正しく、握手しませう』
-----愛するもの?好きな人?大切な人?大事な人?
夢はまだ終わらない。
そこは紅に染まった世界だった。
少年はそこに立っているのか、浮遊しているのか、よくわからない不思議な感覚で
そこにいた。
-----またここか。
何度目かの、この赤い世界。
-----またあれが来るのかな。
あれとは、白い異形達のことだろう。しかし、それはいつまで待ってもやってこなかった。
五分だろうか、三十分だろうか、二時間だろうか…半日だろうか。
時間の感覚が麻痺していて、どれくらいそうしていたかは分からなかったが
どう行動を起こしたらいいものか、というのも分からないし
シンジはそこで、ただただ呆然としていた。
そういえば、前回はまたこことは別の、真っ黒い空間へと放り出されたのではなかったか。
-----…水?
シンジがふと気が付くと、なにやら足元に液体の感触がする。水の中に立っているようだ。
足の裏に地面も感じる。重力がはっきり存在しているということが確認できる。
-----あ…。
それだけではない。今自分が、何かを右手で持っていることに気がついた。
シンジが右手に視線を落とすと、手の中に小さな人形があった。
体の部分は手で隠れてしまっているが、頭部だけは上に出ていた。
それを見たシンジは、硬直したように、また動かなくなった。長い時が過ぎる。
すると突然、シンジはその人形を強く握り締めた。人形が軋む。
首が取れた。首が落ちていった。水に何かが落ちたような音がした。
その瞬間、手の中の人形のが消えた。まるで幻だったかのように。
ただ、シンジの手の中にはまだ感触が残っていて、それがそこに確かにあったと思えた。
それにしてもそれは本当にただの人形だったのか。何故なら、シンジの手は血に塗れていた。
シンジは目を覚ました。ゆっくりと身を起こし、状況を確認してみる。
白いカーテンで囲まれた、ベッドの上だった。倒れた自分は、保健室に運ばれたのだろう。
シンジは再び仰向けになると、天井を見て呟いた。
「知らない天井だ」
夕方、街には学校帰りの生徒たち。その中の一組の男女。リツコとシンジだった。
「びっくりしたわよ」
「うん、そうだろうね」
シンジが倒れたことの話だろう。
「そうだろうねって…」
「大丈夫だよ、ほら」
シンジは普通に歩いている。顔色も悪くないし、異常は感じられない。
「本当に大丈夫なの?」
「本当だってば」
とは言うが、一時は救急車を呼ぼうかという事態にまでなっていたのだ。
その頃シンジは眠っていたので、知らないことだったのだが。
目が覚めてからその事を聞かされたが、何の異常も感じられなかったシンジには
何のことやらよくわからなかった。
確かに倒れたという事実は理解していたが、それすらだ。
「…倒れたのよ?」
「でも…」
シンジがなにか言いかけた、その時だった。誰のものかわからない、声が聞こえたのは。
(シンジ)
誰かが呼んでいる。女の声だ。
「え?」
シンジは振り返った。誰もいない。道行く人の中にも、知り合いはいない
いたとしても、自分の名前を呼び捨てにする者など、誰かいただろうか。
「…シンジ君?どうかした?」
「えっと、誰かに呼ばれた気がしたんだけど…」
リツコはシンジのその様子を、不審そうに見る。
「ねぇ、本当に、大丈夫なの?」
シンジはリツコの質問に答えなかった。今度は何やら、空を見つめている。
「アレ、なんだろう?」
シンジは空を指差した。
「…アレ?」
リツコはシンジの指差す先を見てみる。
「…鳥?」
鳥の群れ、に見えた。しかし何故だろうか、リツコは違和感を感じる。
「鳥じゃないよ、アレは…」
シンジはそう言った。
翼を広げて空を飛んでいるそれが、鳥ではない?鳥以外に何がいる?
しかし、リツコはシンジに反論しなかった。リツコの感じていた違和感はそれだった。
鳥のようなそれは、鳥ではない。そう、リツコも思ったからだ。
「…なんか、人みたいね」
足があるように見える。腕もあるように見える。人の形に見える。
「翼の生えた人って、天使じゃあるまいし…」
次の瞬間、辺りにサイレンが鳴り響いた。
454 :
322:2008/08/26(火) 05:34:25 ID:???
前置きがあんまり長いんで、さっさと済ませよう
なかなか面白くなってきたジャマイカw
乙!
456 :
6:2008/08/27(水) 02:31:58 ID:???
最近いつもなにかしら投下があるからこっちも投下タイミングに迷う。
ただこれ以上引っ張ると完全にストーリー忘れられそうなんで、ここでひとまず。
あ、シンジが綾波と和解したとこからね。
457 :
逆行185:2008/08/27(水) 02:32:56 ID:???
(あー、もう。勘弁してよぉ…)
ミサトのマンションの食卓。ミサトの前には豪勢な食事にいつものビールが並んでいて、
しかし、にも関わらずミサトは心の中で悲鳴をあげていた。
「――それでですねミサトさん。……ミサトさん? 僕の話、聞いてます?」
「ん? あ、うん。もちろん、もちろん聞いてるわよ。続けて続けて」
「そうですか? それでですね、綾波が…」
嬉々として話を再開するシンジに適当に相槌を打ちながら、
(……この話、いったい何回目かしら)
ミサトは内心では深い深いため息をついていた。
――そもそもの間違いは、今日に限って早目に帰宅してしまったことだとミサトは振り返る。
今日は色々な実験があって疲れていたはずなのに、
元気いっぱいのシンジに迎えてもらった時は、
特におかしな気配は感じなかった。
いや、それどころか、『今日は早く帰ってきてよかったなぁ』、
なんてことをのん気に考えていたのだ。
おまけに、夕食はシンジが奮発したらしくいつもより豪勢で、
『やっぱり持つべきものは料理の出来る同居人』、
などと不覚にも喜んでしまっていた。
――だが。
そんな気分は、食事を始めて一分足らずで粉々に砕け散った。
いつもは食事中一番しゃべらないはずのシンジが、怒涛の勢いで話を始めたのだ。
たぶんもう二十分以上、ほぼノンストップで。
それでも、話の内容が別の、もっと無害なものだったらまだ救いようはあった。
シンジにウィットに富んだトークを期待するのは難しいだろうが、
話し下手であってもミサトなら何とか合わせていく自信はある。
だがシンジは、たった一つの話題を無限ループでひたすら聞かせてくるのだ。
それもよりにもよって、この状況では、最悪の話題。
――すなわち、ファーストチルドレン、綾波レイの話を。
458 :
逆行186:2008/08/27(水) 02:36:32 ID:???
シンジの話は感情ばかり先に立ってイマイチ要領を得ないのだが、
これだけ聞かされていれば、どうやら仲違いしていたらしいシンジとレイが、
今日になって仲直りをしたことくらい分かる。
――まあ、それはいい。
ミサトだって、シンジとレイが円滑な人間関係を築ければ、
それはそれで素晴らしいことだと思う。
だが、シンジが「綾波」という言葉を発する度に苛立ちを増す、
隣の劇物をなんとかしてもらいたいのである。
(ほんと、鈍感ってのもここまで来ると罪よねぇ…)
キラキラした目でレイの話をするシンジに仕方なしに目をやりながら、
ミサトは心中でそう独りごちる。
隣には目を向ける気もしない。というか正直、怖いので見たくない。
しかしわざわざ見なくても、隣から断続的に聞こえてくる押し殺した舌打ちの音や、
確か今日三本目になる箸を折る音、手に持った茶碗がみしりと軋む音、
などなどの諸々の効果音が、アスカの今の状況を如実に物語っていた。
どうやら表面上、アスカはまだにこやかな声で受け答え出来ているようだが、
その声は隠しようもないほど所々不自然に震えていて、
耳を澄ませば作り笑顔の頬の端がひきつる音さえ聞こえてくるような気すらした。
一応隠そうとする意志は感じられるが、あまりにあからさまな不機嫌っぷりで、
こんなものを無視出来るのは、逆にもう神か仏くらいのものだろうとミサトは思う。
なのに、
「あれ? どうしたの、アスカ。お茶碗持って震えたりして……。
あ、分かった。おかわり迷ってるんだよね。
いいよ。ご飯、僕がついで……痛っ! な、なんで叩くんだよ!?
あ、そうか、今アスカ、ダイエットしてるんだろ!
だったら最初から……痛っ! なんでまた叩くんだよっ!?」
……このシンジの鈍感ぶりはどうだろうか。
何故神はこんな罪深い生き物を作りたもうたのだろうか。
というかこれ、いいんだろうか、人として……。
――などと、ミサトが思わず考え込みたくなってしまうほどのシンジの態度だった。
リアルタイムキター
460 :
逆行187:2008/08/27(水) 02:40:00 ID:???
しかし一方、心底呆れながらも、そんな二人の様子を冷静に観察しているミサトもいた。
(――それにしても、シンジ君のこの喜び様。
いくらなんでも、少し大げさすぎる気もするわね)
シンジの話を右から左に受け流しながら、その理由を追求する。
(それは、なぜ? 綾波レイのことが好きだから?
……いえ、もっと単純か。
きっと人間関係のトラブルを自分から能動的に動いて解決したのが初めてなんだわ。
初めて自分で手にした心地よい人間関係。
……それならこの浮かれ様も納得がいく、か)
次に、横目でアスカを眺める。
シンジの話におもしろいくらい素直に反応して、苛立っている。
気になるのなら聞かなければいいのに、彼女的にはそうもいかないらしい。
(はぁ。こっちはこっちで、という感じだけど……。
でも、アスカはプライド高いものねぇ。目の前で身近な同世代の男の子が、
ずうぅっっと他の女の話ばっかりしてたらそりゃイライラもするわよ。
……それとも、そればかりとは限らないのかしら)
事ここに至ってもまだ、ミサトはシンジとアスカの関係を量りかねていた。
初対面の時からなにやら普通でない雰囲気があったように思うが、
それが何に起因するものなのか、となると、
そこから考えを進める材料がないのだ。
(最近の印象では、シンジ君が一方的に寄って行って、
それをアスカが拒絶する、って形だったと思うけど……。
それがいざ他人に向かうとなると、
アスカとしては心穏やかではいられない、
といったところかしら?)
ミサトがそんな考察をしていると、何か気配を感じたのか、
アスカが急にミサトをにらみつけてきた。
ミサトはあえて正面から見返して、シンちゃんにも困ったわねぇ、と共犯者の笑み。
――前回はわざとらしくごまかそうとして失敗しているのだ。
ここで同じミスをしたら、それこそ自分の底が知れる。
461 :
逆行188:2008/08/27(水) 02:42:05 ID:???
ミサトの対応に、それ以上の追及は断念したのだろう。
アスカは不機嫌そうにミサトから目をそらし、ぎらつく視線を伏せて隠して、
下を向いたままもそもそと食事を再開した。
そんな健康的とは言いかねるアスカの様子を見て、
(それに、アスカのあたしへの態度も気になるところなのよねぇ。
シンジ君なんかと違って、きちんと取りつくろってはいるけど、
どうもあたしに対してわだかまりがあるというか何というか。
……はぁ、前途多難だわ)
ミサトは今度こそ隠しもせずにため息をついた。
しかし、いつまでもそうしていても事態は解決しない。
まだ話し続けているシンジと苛立ちを募らせているアスカを視界の隅に入れ、
とりあえずミサトも食事を再開した。
(ええい! もうこうなったらさっさと食べ終わって仕事に逃げるに限るわ。
……まあでも、せっかく豪華な食事なんだし、元は取らないとね)
半ばやけっぱちに、だが、そうして開き直ってしまえば、気持ちも上向きになる。
「へぇー! うんうんなるほどぉ、それはすごいわねぇ…!」
相槌の言葉も中身がないだけに軽やかに、言葉と一緒に気持ちも弾む。
そうなると今まで味なんて分からなかった食事が急に色を取り戻し、
「へぇ、レイってかわいいとこあるのねぇ」
(へぇ、これってこんな味するのねぇ。
うんうん、これは意外といけるかも。
今度お祝いごとの時にでも作ってもらおうかしら)
相槌と一緒に舌鼓も打つ。
それにつれて、自然とミサトの顔もほころんでいく。
――しかし、その一方で、
「それでね、アスカ。そこで綾波が言ったんだよ。
『ばかね、碇くん』って。だけど、それなのに全然……」
ミサトと違って、シンジの言葉をうまく聞き流せないらしいアスカは、
「……………………………もういいわ」
ついに限界を迎えようとしていた。
462 :
逆行189:2008/08/27(水) 02:46:23 ID:???
「え? アスカ、何か言った?」
小声だったので聞き取れなかったのだろう。
聞き返したシンジに、しかしアスカは何も言わない。
うつむき、唇を噛み締めて、ただ目を伏せている。
それだけで雄弁に何かを語っているとミサトは思うのだが、
「? ……何でもないならいいけど。
それで、話の続きだけど、綾波が――」
シンジだけは全く気づかずに、能天気に話を続け、
「――だから、もういい、って言ってんのよ!!」
……とうとう、アスカの逆鱗に触れた。
「あ、アスカ…?」
すっかり脳の中がお花畑なシンジにも、アスカのこの怒声は届いた。
驚いた顔のシンジを苦々しげに見据えながら、アスカは続ける。
「これ以上何も言わなくたって、アンタとファーストがバカみたいに仲がよくて、
気持ち悪いくらいラブラブだってのはよっく分かったわよ!!」
「そ、そんな……。ラブラブってほどまでは……」
と言いつつ、満更でもない様子のシンジにアスカの苛立ちはマックスにまで達する。
「ハッ! よく言うわよ!
たっかが手をつないだくらいでそんなのぼせちゃって、バッカみたい!
交際一週間目のカップルだってもっと落ち着いてるわよ!」
そこでアスカの目が、ようやく獲物を見つけた、というように底意地悪く光って、
「大体、あのファーストが本気でシンジに熱をあげるなんて、
どうも信じられないのよね。
あんまりアンタがうっとうしいから調子合わせてるだけなんじゃないの?
そうとも知らずにそんなに舞い上がっちゃうなんて、
アンタもかわいそうな奴ねぇ」
「ちょ、ちょっとアスカ…」
普段のアスカには見られない、どこか粘着質な物言い。
そのあまりにシンジを挑発するような内容に、傍観していたミサトも割って入る。
463 :
逆行190:2008/08/27(水) 02:53:58 ID:???
綾波のことで、シンジは前例がないくらい浮かれて有頂天になっているのだ。
それなのに、よりにもよってそこを前面から否定されれば、
普段温厚なシンジでも、いや、普段おとなしいシンジだからこそ、
どんな反応をされるか分からない。
――しかし、
「綾波は、そんなに器用じゃないよ」
ミサトの予想に反し、シンジの反応は穏やかだった。
「アスカはあの場にいなかったから、そんなこと言うんだよ。
あの時あの場にいて、あの綾波を見てたら、絶対にそんなこと考えないと思う」
確信に満ちた言葉で、むしろアスカを諭しにかかる。
その声は、ミサトが思わず、おや、と目を見開くほど、揺れがなかった。
そして逆に、シンジに揺さぶりをかけたはずのアスカが動揺する。
「な、なによそれ…! 僕はいつだって綾波を信じてます、みたいな顔して……。
今日の学校でだって、アイツに嘘つかれて騙されたばっかじゃない!
……アンタ、本格的にファーストに頭やられてんじゃないの?」
そう言われても、シンジは駄々ッ子の扱いに困ったように、眉をたわめるだけで、
「アスカが色々言うのも分かるけど、……でも、本当のことだから。
そうだ! アスカも綾波と話をしてみるといいよ、そしたら…」
バン!
シンジの声を途切れさせるように音を立てて、アスカがイスから立ち上がる。
「アスカ…?」
突然のアスカの不可解な行動に、シンジが首を傾げ、
「……っ」
それはアスカ本人も意識していなかった動作らしく、
一瞬だけ自身でも戸惑ったような表情を見せ、
……しかし、アスカのプライドの高さが、その困惑を見せ続けることも、
立ち上がったのをなかったことにすることも許さなかった。
「うるっ、さいのよ…!」
苦し紛れの言葉を吐いて、立ち上がったまま後ろを向く。
464 :
逆行191:2008/08/27(水) 03:03:45 ID:???
その時、アスカの真正面に座っていたシンジには見えなかっただろう。
だが、横にいるミサトの視点からは、後ろを向いたアスカが、
剥がれ落ちかけた心のメッキを懸命に塗り直しているのが分かった。
そして、
「つまり、アンタやファーストのために、
アタシがわざわざ労力を使うのはイヤ、ってことよ」
もう一度振り向いたアスカの目からは焦りの色が消え、
抑制され、冷たく燃える苛立ちの炎が戻ってきていた。
「っていうか、アンタと優等生がどうなろうと、べっつに興味もないわ」
そう言って、一度今までの話の流れを断ち切ってから、
「ただアタシが言いたいのはねぇ、そこまでお膳立てしてやったアタシに、
お礼の言葉もないってのはどういうことかしらってコトよ!!」
両手をテーブルに叩きつけ、新しい論理でもってシンジを怒鳴りつけた。
(でかしたっ、アスカ!)
持ち直したアスカに、ミサトは心の中でスタンディング・オベーション。
あらん限りの(心の)声を振り絞って、惜しみのない喝采を送る。
さっきのようなことを言って万が一にでも本気のケンカになってしまったら困るが、
これくらいなら許容範囲だ。
今までの会話の流れを変えてくれるならむしろありがたい。
――これでシンジがたじたじになって謝りモードに突入すれば万万歳。
シンジが言い返して再びアスカとの口ゲンカになるとそれはそれで厄介だが、
どちらにせよまた延々と綾波話を続けられるような状態にはならないだろう。
一番うれしいのは色々うやむやになって、違う話題に移ることだが、果たして…。
――ミサトが期待を込めて見守る中、しばらくぽかんとしていたシンジが我に返り、
口にした言葉は……
465 :
逆行192:2008/08/27(水) 03:06:14 ID:???
「うん、ありがとうアスカ! アスカには、すごく感謝してるんだ!!」
――アスカどころか、ミサトすらも想像していなかった、
どこまでも素直な感謝の言葉だった。
「な、あ、アンタ、ま、待ちなさいよ! あ、アタシはそういうことが…」
狼狽するアスカの両手を、ムリヤリに握り締めて、少し照れたように、
「本当は、一番にアスカにありがとうって言いたかったんだ。
色々と、疑うようなこととか言っちゃってごめん。
綾波とあんなにうまくいったのは、全部アスカのおかげだよ!」
たぶんシンジの生涯において最高レベルのさわやかさの笑顔を浮かべる。
そうしてそんな言葉をかけられて、しかもそんないい笑顔を向けられては、
アスカにこれ以上何か言えるはずもない。
「――は、放しなさいよ!」
アスカはかろうじて身をよじってシンジの手を無理にもぎ離すと、
「明日も早いし、アタシはもう寝るわ! ご飯も、もういらないから!」
そのまま足早に自分の部屋に歩いていってしまう。
「い、いらないって、そんな……」
そしてアスカは、追いすがるシンジを精一杯の気力でにらみつけて、
「うるさい! もう知らないわよ! バカ!!」
逃げ込むように部屋に入るのとほぼ同時、
――バン!
思わず耳を塞ぎたくなるような暴力的な音がして、扉が閉められた。
466 :
逆行193:2008/08/27(水) 03:08:36 ID:???
そこまでの一部始終を特等席から観覧して、ミサトは顔を覆った。
(あちゃぁ……。アスカ、最後ちょっと涙目になってたわね。
いくら怒ってみせても、鈍感という名の凶器には勝てない、か)
そうしてミサトが同情の視線をアスカが消えた部屋のドアに向ける中、
その原因を作った張本人たるシンジは、
「素直にお礼言ってるんだから、胸張ってればいいのに。
アスカも案外、照れ屋ですよね。
……ミサトさん?」
そんなことを言って笑い、あまつさえミサトに同意を求めてくる。
「………………シンちゃん。あたし、時々あなたが恐ろしくなるわ」
「…??」
それだけ言われても最後まで何も理解せず、ただ首を傾げるシンジを見て、
――ミサトはついに堪え切れず、テーブルの上に突っ伏すのだった。
467 :
6:2008/08/27(水) 03:14:44 ID:???
以上。物語本筋前の、小ネタ的導入部……の前半でした。
導入部後半『トイレ編』は、また様子を見て。
鈍感さもさすがにここまでくると人間離れし過ぎだろwwwww
アスカ(;´Д`)カワイソス…
トイレ???
まさかどっかのスレにあったような話(というか描写)にはならんよな…
470 :
前スレ35:2008/08/27(水) 19:22:29 ID:???
この前の小話があまりにアレなので、
ミサト×シンジのほほえましい話を考えてみた。
--
「付き合いだした?ミサトとシンジ君が?」
(あくまでもほんの少しだけ)驚くリツコ。
その彼女に耳打ちしたマヤはウンウンと頷きかける。
「みんなの話を総合すると、どうもそうみたいですよセンパイ。」
「あーあ……子供に手は出さないって言ってた癖に。」
「いえ、できちゃったんじゃなくて、付き合いだしたみたいなんです。」
「は?」
意味がわからない――リツコはそんな顔でタバコを咥え、ライターをカチリ。
ふーっと煙を吐きながら考え、そして問い直す。
「つまり、それは……そう、恋人同士としてのお付き合いとか?」
「なんていうか、なんと言えばいいんだろう……もっと可愛らしい彼氏と彼女、というか。」
「……え?」
そこに助け船が入る。
どうやらマヤと話友達であるらしいオペレーターの女の子達が、リツコを中心に耳を寄せ合う。
「いや、もっともっと可愛い関係よ。ガールフレンドとボーイフレンド。」
「男友達と女友達?」
「いやー、もう少し上でしょ。」
「そうそう、なんていうか……そう、下駄箱にラブレター入れて、OK貰ってすぐって感じ?」
「アハハ、伝説の桜の木の下で告白とか?」
「あの葛城作戦部長が?ありえないわよ。」
そんなふうにさわさわと笑い崩れる彼女達を、リツコは眉をしかめて差し止めて。
「具体例で話してくれない?二人は何をしていたの?」
471 :
前スレ35:2008/08/27(水) 19:23:23 ID:???
で、集計した話はこうである。
その1.シンジが本部から帰宅するとき、決まってそれをミサトが待ち伏せしている。
その2.シンジが学校に登校する際、ミサトは徒歩でそれに付きそっていた。
その3.シンジが食事の買い物をする際、ミサトは徒歩でそれに付きそっていた。
その4.シンジがゴミ出しの時、ミサトはその半分を持って付きそっていた。
そんなふうに事例を並べて、代表者マヤが作戦報告よろしくリツコに説明する。
「以上、様々な葛城作戦部長の行動が目撃され……」
「ちょっとマヤ。同居人なんだから、そのくらい仲が良くてもいいんじゃなくて?」
「いえ、それらの事例をふまえて、更なる情報収集が行われました。」
その5.ミサトに料理を教えろと言われた(アスカ談)
その6.まれに、ミサトがシンジやアスカの弁当を作ることがある(アスカ談)
その7.最近、ミサトの肌の露出が少ない。ロングスカートを履いていた時には吹いた(アスカ談)
その8.近頃、ミサトのビールを飲む本数が減っている(アスカ談)
その9.シンジが家事をしていると、ミサトが手伝いたさそうにソワソワしている(アスカ談)
その10.シンジの休日の予定を、ミサトはやたらと気にしている(アスカ談)
「情報収集担当者のコメント、『気持ち悪い』……以上です。」
マヤがその報告を終えた後、タバコの火が指元まで来ていることに気が付くリツコ。
差し出された灰皿にそれを落として、新たなタバコにカチカチと火を付ける。
「シンジ君の情報は?」
「普段と変わらず……です。あえていうなら健やかな日々を過ごされて……」
「ミサトがお弁当を?ありえないわ。他人が食べれる物を作れる訳が――」
「いえ、出来合いの物を詰めただけで、後で言われなければ判らなかったと……」
「ミサトにしては利口なやり方ね。見栄を張らず確実にシンジ君のためのお弁当を作るため、か。
そして、ビールの本数が減ってる?ありえないわ。本当だとしたら、よほどの変化が……」
472 :
前スレ35:2008/08/27(水) 19:24:25 ID:???
「女が変わると言えば、センパイ、それはただ一つ……」
「……」
またしても、リツコのタバコがほとんど吸われることなく揉み消される。
「まさかそんな……だとしたら最悪ね。」
「え、センパイ何がです?」
「それって付き合ってるんじゃないわ。ミサトの一方的な片想いよ。そんなこと、ありえないわ。」
一同、絶句――
さて。
リツコはマヤ達のように遠巻きで憶測し合うような悠長なことはしない。
疑問があるなら聞けばいい。
リツコは一直線にミサトのもとへと向かう。
(う……)
ミサトを一目見たリツコは、思わずうめき声を上げそうになる。
久しぶりも対面だろう。互いの業務に没頭している時はありがちである。
まあ、彼女がそれほどおかしな格好をしていた訳ではないのだが、
しかしリツコは初めてマヤ達の話が間違いでないことを実感し始める。
(本当に、ミサトともあろう者がまさかとは思っていたけど……)
それはさておき。
「やーねぇ、リツコってばナニ言ってんだか。おほほ。」
まっすぐに問いただしたリツコに対するミサトの返答がこれ。
とりあえず、リツコの知っている普段のミサトに変わりはない。
473 :
前スレ35:2008/08/27(水) 19:25:36 ID:???
「そ?マヤとか若い子達が噂してるから。」
「みんなも好きねぇ、そーいう噂話。」
「ミサト。ああいう少年と恋愛ごっこなんかしたら、そのツケがえらいことになるわよ?」
「シンジ君が私なんか相手にする訳ないじゃなーい。おほほ……」
リツコは「あなたはどうなのよ」と考えながら、笑うミサトの格好を見返した。
以前の私服同然の格好はどこへやら。マメにクリーニングに出してるらしい制服を着込み、
髪は結わえて肩口に垂らし、片側に見せるうなじも輝かしい。
耳にはさわやかな色のピアスを光らせ、顔はしっかりとした薄化粧。
タイトなスカートの長さは膝頭まで。それに見合った身のこなしは実に優雅。
脚を揃えて椅子に座ったその立ち振る舞いに、リツコは「はぁ?」と思わず口に出しそうになる。
(この絵に描いたような女将校ぶりは何?
見た目無視で任務に走り回っていたガサツなミサトは何処に行ったの?
ちょっとつつけば化けの皮が剥がれるような、これはそんな急ごしらえじゃない。
女をこうまでさせるのは、ただ一つ……)
いや待て。落ち着け、リツコ。
14歳と29歳、釣り合いが取れないにも程がある。
シンジ君を自らあずかると名乗ったミサト、今ようやくその義務を果たそうとしている、とも見えないか?
恋する女は美しく輝く。だからといって、それはシンジ相手で無くても良いだろう。
ミサトに新しい恋人が出来た → その影響で性格変化 → 当然、シンジとの接し方も変わる
成る程、そういう考え方なら無理はない、とリツコの推論が形作ろうとしている。
「そうね……でも、ミサト。最近はそんな格好?いえね、最近会わなかったから。」
「いやー最近のお偉方の目付きがやらしくってさ、おほほ。」
「ふーん……」
474 :
前スレ35:2008/08/27(水) 19:26:33 ID:???
どうやら、間違いはなさそうである。
相手は上司や高官の素敵なおじ様。
そういえば、加持と付き合っていた頃は同じようなラフな格好していたミサトのことだ。
新たな相手に見合う仕事ぶり、立ち振る舞い、女としてのしとやかさを身につけ、あなた色にそまります、と。
(まあ、その相手を特定したいところだけど……シンジ君と考えるよりも現実的ね。
ミサトなら、まず相手をベットに背負い投げしてから恋愛を始める女よ。
みんなの言う中学生同士のような片想いするミサトなんて、ありえない。
いや、でも中学生相手だからこそ――いやいや、ありえない、ありえない。)
とりあえず、リツコの中でこの問題は処理済みとなる。
さて――
時と場所を変えて、使徒戦である。
「いってきまーす!(どっかーん)ただいまー!」
はい、使徒戦おわり。
まだアスカとレイはプラグスーツに袖を通したばかりだというのに、
先鋒で小手調べのため出撃したシンジがあっさり倒してしまったようだ。
「ふー、終わった終わった。」
「どう、初号機はどっか壊れてる?」
「いや、ぜんぜん問題ないっス。」
「んー、それじゃもう仕事は無いか。飲み行く?」
最近、本部はなんだか機嫌が良い。
シンジがあっさり使徒殲滅を果たしてくれているお陰で、みんなの作業が格段に減っているのだ。
MAGIの端末を叩く青葉や日向も鼻歌交じり、
「お疲れ様」と言い合いながら帰る冬月副司令の足取りも、実に軽やかである。
475 :
前スレ35:2008/08/27(水) 19:27:39 ID:???
リツコが本部を後にしたのは、今だ日の沈まない夕方5時半。
(パイロットのメンテナンスが効いてるお陰ね。ミサトの功労賞というところかな。)
まあ、ミサトが恋の相手とせいぜい仲良くして頂くのはいいけれど、
もしかしたらシンジもまた、素敵なお姉さんと化したミサトに恋心を抱くかも知れない。
しかし、後は野となれ、ともいうべき人類補完計画の達成が目前である。
可愛そうだが、少年の恋心はみんなと一緒に補完して頂いて――
そんなことを考えなら今日も定時退社するリツコの前に立ちはだかる者共。
「ゼーレ諜報部の者です。」
「……何かしら。」
……(中略)……
その23.ミサトがシンジを伴い、映画や水族館などに出向くことが増えている。
その24.最近、シンジと手を繋ぐことに成功したミサトだが、身長差で腕が組み辛いことに悩んでいる模様。
その25.シンジの携帯電話の着信はミサトばかり。仕事を終えて帰るまで我慢できない様子。
その26.シンジと撮ったプリクラが大切な宝物。
その27.現在、身につけているピアスはシンジの初めてのプレゼント。お返しは頬への口吻。
その28.大雨の中、泣きながらシンジに絶叫し抱き合うという顛末が……
以上、シンジとミサトの恥ずかしくなるような恋愛記録を報告するのは、むっつりと無表情の黒服達。
「ちょっと待って。タバコ、吸わせてくれない?」
「どうぞ。」
リツコはどうにもたまらない様子でこめかみを指でもみほぐしながら、慌ただしくタバコを吹かす。
どうやらミサトの惚気話にこてんぱんにされ、アスカの「気持ち悪い」を体感しているらしい。
「それで?そんな報告を私にして、なんの意味があるのかしら。」
「は。サードチルドレンの変化に伴い、既に例の予定が狂いつつあるのはご存じかと。」
476 :
前スレ35:2008/08/27(水) 19:28:50 ID:???
「使徒殲滅は順調よ。問題ないわ。」
「我々が危惧しているのは、殲滅後のことです。」
確かにリツコも、最後の大詰めでシンジが「使えなくなる」ことを予測していた。
だが、碇ゲンドウの考えるもう一つの「計画」がある。
リツコはどちらかと言えば、そちら側の人間だ。
だが、ゼーレの指令に応じないわけにもいかない。
「で、私にどうしろと。」
「ここに新たなシナリオが用意されました。」
「これは――」
そして、リツコは本部に戻る。
既に業務は終了の筈、普段なら飛ぶように帰宅するミサトだが今日に限って残っている様子。
……というのは、諜報部より確認済み。
さて、ミサトは何処にいる?
管制塔にも居ない。休憩室にも、更衣室にも居ない。
いや……居た。オペレーター室で、マヤと話し込んでいるようだ。
「そんな……葛城さん大丈夫ですよ……きっとシンジ君は……」
切れ切れに聞こえてくるマヤの声。
とりあえず、リツコはいったん「それ」をバッグにしまう。
「大丈夫ですよ……私、信じてます……年の差なんて……そんな、泣かないで……」
リツコは、少しうつむいて考える。
任務を果たすべきか、否か。
477 :
前スレ35:2008/08/27(水) 19:29:48 ID:???
さて、彼女が出した結論は?
4年後――
がらん、ごろん、がらん、ごろん……
「おめでとー!」
「お二人ともお幸せにー!」
大勢の人々から祝福を受ける中、教会から出てくる二人。
だいぶ身長差は埋まりつつあるが、それでも幾分新婦の方が背丈がある。
「ねー、もう一回!もう一回!」
と、おねだりに応じて口づけをかわすが、つま先立つのは新郎の方。年齢の差も倍以上。
だが、そんな二人だからこそ祝福する人々の目には実にほほえましく映っていることだろう。
(あんなに幸せそうな顔しちゃって。人の苦労も知らないで。)
そんなふうに呆れ顔で二人を眺めるリツコ。
いったいどうやってゼーレの指令を回避したのか、それは定かではないのだが。
使徒殲滅の全ての任務を全うし、晴れて想いを添い遂げた二人。
まだまだ暗いご時世の中、「計画」を遂行せずに本当に良かったのかと悩ましいところだが――
「センパイセンパイ♪」
と、うきうきとリツコに囁きかけるマヤ。
「なあに?あら、ブーケはマヤが貰ったの?」
「えへへー、そうなんです。あのね、最後の報告があるんです。」
「もう勘弁して欲しいわ。あの二人の惚気話なんか……」
そういうリツコに、マヤはヒソヒソと囁いた。
478 :
前スレ35:2008/08/27(水) 19:30:50 ID:???
その52.ミサトが恋に落ちたきっかけは、シンジがベットインを拒んだその後のこと。
「アハハ、なーんだミサトらしいじゃないの。ちょっと安心した。」
「でも、そのベットでどんなドラマがあったんでしょうね……」
ハト達が舞い上がる第三新東京市の空は快晴。
実に見事な結婚日和。
「ねー、もういいでしょ?今すぐドイツに帰るんだってば!」
集まった大勢の中で唯一不機嫌そうなアスカの、そんな叫びが聞こえてきそうな結婚式会場。
本当に補完しなくて良かったのかと実に悩ましいところだが。
「写真とりまーす!お姫様だっこできますー?」
「むりむり!そーだ、新婦が新郎だきあげちゃえ!」
「アハハ、それなら大丈夫!せーの!」
とりあえず世界で一番幸せそうな二人の周りには、
満開のお花畑のような笑顔が広がっていた。
(完)
479 :
前スレ35:2008/08/27(水) 19:31:39 ID:???
よっしゃ投下制限いっぱいで完結w
終わりですーくだらない話ですんませーんw
くだらない話? ほほえましい話なんだろ?w
女性キャラが立ちションする小説を希望!
創作発表板なるものが出来たな
エヴァの二次創作もそっちに誘導されるんだろうか
あっちは純粋に評価されたい人が投下の方向じゃなかったっけか?
エロとかと違って分離する意味も無いから、
専板があるものが創作板に誘導されるって事はないんじゃね
エヴァの漫画版やゲームについて、いちいち漫画板とかに誘導されるわけじゃないし
エヴァ板は結局のところ隔離板だからね
クロスコラボの類は、こっちに該当スレが無かったら
あっちでやればいいかな?程度に思っておけばいいのかな
まぁ、まだあっちローカルルールも出来てないし、様子見
少しづつ盛り上がりつつあるようだね
まあ移動しろなんて誰も行ってないみたいだし
ここはここで普通にしてればいいんじゃないの?
まあなんか面白いスレ立つかも知れないしその板巡回対象には入れておこう
あちらでやるとなると、エヴァは1スレにまとまれとか怒られそうだ。
ここなら分野別に乱立できる。
ていうか、創作ならオリジナル設定じゃなきゃダメなんかな。
そんな事無いと思うぜ
展開次第でどうにでもなる。
ただ、それなりのアイデアを絞りだせる脳味噌と、それを文章に出来る力を持ち合わせていないと原作とそう変わらない駄作になるけどな
二次創作のスレいくつも立ってるぞ
俺向こうに投下したよ。あっちなら未完だろうが何だろうが、まだ許される雰囲気だからな
あっそ。読みにこいってか?糞戌め
呼ばれて、飛び出て、ババババーン!!!!!!
みんなのヒーロー、神戌様だよ――――!
釣られずにはいられない〜♪
>490
どのスレ?
クロスものか・・・クロスものって滅多にまともなの無いよな
これは面白くなってくれるといいんだが
聖衣?
青銅?白銀?黄金?
>>453の続き
『緊急警報、緊急警報をお知らせします
東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました
一般の方々は速やかに指定のシェルターに避難して下さい
繰り返しお伝えします、速やかに指定のシェルターに避難してください』
そう繰り返すアナウンス。
「シンジ君!」
人々が慌しくシェルターへと向かう流れの中、シンジはその場から動こうとはしなかった。
「早く逃げないと!」
リツコの言葉に、シンジは何の反応も示さず、呆然と空を見上げたままだ。だが突然、
「え!?シンジ君!?」
シンジは人の流れとは逆の方向に、いきなり駆け出した。リツコは意味がわからず呆気にとられてしまう。
しかしすぐに浮かんだ、追いかけなければ、という考えが、リツコを比較的早く回復させたのだった。
「ちょっと待って…」
シンジを追いかけようとするリツコ。しかしそれは出来なかった。
「君、早く避難するんだ!」
誰かがリツコの腕を掴んでいた。振り返り見てみると、それは警官だった。
「でも…」
「早く!」
シンジはどうする?リツコはシンジが向かっていった方向へ振り返る。
「そんな…」
もうシンジの姿は見えなかった。
「早く、行くぞ!」
「ちょ…知り合いが…」
リツコは警官に強引に引っ張られ、その場を後にするしかなかった。
499 :
322:2008/09/02(火) 12:35:18 ID:???
第弐話おしまい
第三新東京市市街地。見渡してみても、そこには誰もいない。いや、一人だけいた。
シンジだった。シンジがただ一人立っている。他に誰もいないといっても、そこに静寂はない。
なぜなら、上空では激しい戦闘が繰り広げられていたからだ。
その戦いの、一方は戦略自衛隊戦闘機。そしてもう一方は、あの翼を持った何かであった。
その有翼の何かの大きさは、戦闘機と比較してみるに2メートルほどのようだ。
戦況はその有翼が有利であるようだ。攻撃が直撃しているというのに有翼は無傷だった。
そしてその手に持つ、身の丈と同じぐらいあるブレードを振り回し
自身よりも何倍も大きいミサイルを、軽々と叩き落していた。
その有翼の存在の異常性、というのは、言わずもがなであるのだが
そのような状況にも関わらず、平然としているシンジも、なにか特異な存在に見える。
-----何だろう、これ。
何故避難もせずにこんな所に残っているのか、シンジは分からなかったのだが
それにしては、意識は冷めていた。とても静かだった。
-----僕は…。
リツコと一緒にいたのだが、彼女を置き去りにしたまま、走り出したはずだ。
無意識の行動だった。
-----怒るかなぁ、リツコさん。
この状況からそのような思考に至るとは、ピントがずれているような気がすると
シンジ自身内心苦笑したその時、シンジに異変が起こった。
足元のシンジの影が、一気にその範囲を広げ、半径一メートルほどの円状になった。
しかも、影というには、その色はあまりにも黒々としていた。
吸い込まれそうなほどの、漆黒の闇に似ていた。
そしてその黒の中から、スライムのような、アメーバのような、粘着質のバクテリアのような何かが
シンジの体を、まるで取り込んでしまうかのごとく這い上がっていく。しかしシンジは動じない。
膝、腰、そして胸元、さらに両腕もぞろぞろと蠢く漆黒に染まり、さらに首、そして、顔。
ついにシンジは、全身を飲み込まれてしまった。異変はそれだけにとどまらない。
体が、二メートルほどにまで巨大化した。いや、シンジの姿を確認することはできないので
それだけの量の黒い物体が、シンジに取り付いたのかもしれない。
-----血ノニオイガスル。
黒い物体の中、シンジはそう感じた。
すると、一時はシンジを覆いつくしていたそれは、さっと足元へと引き揚げていき、そして消えた。
そして影も、光が遮られてその者の裏側へと現れるモノ、という本来の姿に戻った。
シンジは己の手を見てみる。紫色をしていた。
横を見てみる。婦人服店がある。ショーウインドウのガラスに、シンジの姿が映る。
全身紫の甲冑を身にまとったような姿が映っていた。
額にある一本の角が、鬼を思わせた。それがシンジだった。
身長は二メートルほどあり、シンジ自身が実際に大きくなったようだ。
-----これが僕か。
シンジは驚くほど冷静だった。その時、背後から何かの奇声が聞こえた。
猛獣が唸るようなと言えば高すぎるようで、さびた金具がたてたようなと言えば低すぎるような声。
その声に、シンジは後ろを振り返った。夢で見た、白い異形が立っていた。
あの有翼の何かは、この白い異形だった。今は地上に降り立ったため、翼を畳んでいるのだろう。
再びシンジの影が広がり、そこから生まれるように、一本の棒状の何かが現れた。刀のようだ。
シンジがその柄を手に取ると、影はまた元に戻る。
-----マゴロクソード。
シンジは何故かそれの名を知っていた。
それを見ていた異形は、あの厭らしい笑みを浮かべた。
濃さ、厚みともに、重圧さをも感じさせるほどの殺気が、辺りを支配する。
時は夕刻、既に青空は無く、夕陽が街を赤く染めていた。
異形の背中から、翼が出現した。それ大きく羽ばたたせると、風が吹き付けてきた。
異形の体が、重さを感じさせないほど、軽く浮き上がった。宙でさらに羽ばたきし
数メートルほど舞い上がったところで、異形は急に翼の角度を変えた。
急降下してくる、とシンジは思う。柄を強く握り締めた。
異形の手にするブレードが、夕日をギラリと反射させたかと思った次の瞬間
それは猛スピードでシンジ目掛けて落下してきた。
シンジはそれを、軽く半身になっただけで簡単に避け、さらにすれ違いざまに刀の一撃をくわえた。
その一撃で体勢を崩した異形は、そのままの勢いで、アスファルトの地面を抉りながら
胴体着陸するように落ちる。
抉られた地面を見れば、その破壊力がどれほど凄まじいものなのかよくわかる。
アスファルトを抉ったのはブレードではなく、単なる体当たりだ。
それでもこの破壊力だということは、もしブレードでの一撃なら、さらにそれがシンジに命中していたら
一体どうなっていたことか。だがシンジは動じない。
異形も、何事も無いようにゆっくりと立ち上がった。しかしその手にブレードは無い。
いや、ブレードが無いというより、それを握っていた手首そのものが無い。
先ほどのシンジの一撃は、異形の手首を完全に切り落としていた。
シンジが自身の姿を映して見たショーウインドウのガラスが、粉々に割れている。
その中に、ブレードを握り締めたままの手首が転がっていた。
異形は態勢を立て直すため、一度空へ舞い上がろうと翼を羽ばだたせるが、シンジはそれを許さない。
一気に間合いを詰め、強烈な袈裟斬りを叩き込んだ。異形の胸に、斜めの大きな溝が生まれた。
噴出した返り血が顔面に噴きつける。生暖かいものが首をつたい、胸元までたれ流れてくる。
甲冑で覆われているはずなのに、シンジはその感触がまるで己の地肌で感じているようだった。
異形は仰向けに、大の字になるように倒れ、シンジはさらにそこに馬乗りになる。
そして、胸に手刀を突き立てる。手に肉を引き裂く、嫌な感覚がした。
さらに血が飛沫く。紫の甲冑はすでに全身血塗れだ。
普通の人間でいう、心臓の辺りまで手を突き刺したところで、骨とは違う硬いものに指先が当たった。
シンジは肉の中で手を広げ、その硬いものを握った。異形の体はビクビクと激しく痙攣している。
手の感触から、それは球体であることが分かった。シンジはその球体を一気に引き抜いた。
異形は一度大きく仰け反ると、後はぴくぴくと小さい痙攣を続けていたが、その内まったく動かなくなった。
シンジは既に屍となった異形に馬乗りになったまま、手にした球体を見つめていた。
赤い色をしている。血がついているのではなく、これそのものが赤い色をしているのだろう。
それを握る手に、力を加えてみた。球体にヒビが入る。さらに握り締めると、それは砕けてしまった。
異形が流した血が溜まっている中、シンジはゆっくり立ち上がった。
見上げてみると、夜を向かえ始めた暗い空に、時折閃光がきらめいている。
まだ上空での戦闘は終わってはいなかった。
咆哮が響き渡った。シンジが吼えていた。いや、シンジが、というより、甲冑そのものが、だろうか。
それは空にいる異形達に、お前達の仲間を一人殺してやったぞ、という声か。
さっさと降りて来い、敵を討ってみせろ、俺を倒してみろ、という声か。
もうその姿は、シンジを知っている者ならば、それがシンジだとどうして思いつくだろうか
というほどのものだった。鬼か悪魔かと、見た者は思うかもしれない。
そのシンジを中心に、まわりに降り立つ者達がいた。咆哮に呼ばれた異形達だった。
シンジは再び、柄を握る手に力を込めた。刀はまるで、次の獲物を欲しているかのようだった。
-----これが武者震いか。
甲冑の下のシンジの顔は、もしかしたら笑っているのかもしれない。
504 :
322:2008/09/02(火) 12:42:03 ID:???
いきなりゼルエル戦くらいの勢いでいきます
ロボットものじゃないエヴァになってちょっとガッカリ
エヴァはロボットじゃry
庵野がロボットものって言ってんだからいいんだよ
ガンダムもあれはロボットじゃなくて(ry
とか言うヤツいるけどガンダムもエヴァもジャンルはロボットものだよ
仮面ライダーチックなエヴァに違和感を個人的に感じただけで
投下作品を否定してるわけじゃないよ
ryと付いている時点でネタレスと判断できよう
すまん…
乙。ようやく話が読めてきた気がするぜ
ただ余計なお世話だが、ダッシュはたぶん全角で打つのがよいと思う
ところで最近このスレ、いくらなんでも乙とか言わなすぎじゃね?
このスレに限ったことじゃないよ。他のスレも覗いてごらん。
完全にスルーされてるのもあるよ。別に駄作ってわけじゃないのに。
例えば?
322氏乙
ギガンティックが出てくるのはどの辺からですか?
514 :
復讐者 〜シンジの場合〜:2008/09/05(金) 00:36:10 ID:NeGLClTg
逆行者 シンジ
使徒化 アダム
内容 アンチゲンドウ
白兵戦,銃撃戦,AT展開
ハーレム
EVA 新武器装備(AT製作)
覚醒 力の解放
愛武器 ブラウンディッパー
参照:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88M82 「父さん……。 僕と取引しない?」
僕はブラウンディッパーを父さんの頭に押し付けた。
もちろん安全装置は外してある。
僕が本気であるということを皆に知っておいて貰わないといけないから。
「やめなさいっ! そんなことして何なるの!?」
誰かが吼えている。
僕は人の名前を覚えるのは得意な方ではない。
特にどうでもいい人間の事なんかすぐに忘れてしまうんだ……。
「そうだな〜。 とりあえず僕の復讐が一つ果たされるかな?」
僕は笑顔で語りかける。
なのに、彼女の……ミサトさんの顔は引きつっていた。
ああ〜、今の僕はそんな怖い顔してるのかな?
それもそうだよね……。
だってこれは50回目の復讐なんだから……。
515 :
復讐者 〜シンジの場合〜:2008/09/05(金) 00:38:53 ID:NeGLClTg
「復讐とはどういう意味だ……」
「ボケるには早すぎるんじゃない? 僕にした仕打ちを忘れたんじゃないよね……」
母さんが死んでから日々は生き地獄だった。
母さんが死んでから僕はすぐに他人の家に預けられた。
そこで僕はいつも虐められていた。
一年が経って僕の家はプレハブになった。
つまり、家から追い出されたのだ。
さらに一年が経ってイジメが本格化した。
集団でイジメられるようになり身体に青痣が出来た。
そんな地獄のような毎日。死を覚悟した。そんな時あの手紙が届いた。
「来い」
手紙にはこれしか書いてなかった。
でも、僕は今の生活が変わるならと喜んで第3に行った。
しかし、第3に行ったら使徒とかいう化け物と戦争三昧
女の子と知り合えたが二人とも使徒に殺されてしまった。
そして、人類補完の日。僕は真実を知った。
全ての黒幕はゲンドウ。 そして、ゼーレ
僕の人生は仕組まれていたのだ。そして、復讐を胸に今50回目の逆行をしている。
「父さんには此処で死んでもらうよ。
でも、条件を飲んでくれたらもう少しだけ生かしておいてあげてもいいよ?」
途中保存です。
ここでうPしてみます。
よければ感想欲しいです^^;
agenaideyo
2レスで感想よこせってかwこれはまた酷いレス乞食が来たもんだw
レス乞食は嫌われるぜ、俺のようにな。ワンワン!
批評うんぬん以前に短いyo
そして、ブラウンディッパーに関しての描写が一切ないのが気になるyo
(参照だけ置いとかれても・・・・・・・・)
いくら二次創作で、読み手側が元ネタがエヴァだと言う事を知っていても、詳しい事を知らない人だっているし、
エヴァっていう作品自体が「視聴者」の解釈に因って大きく変わってきちゃうものだから、
作品は「エヴァ」という作品をどう解釈して、どう進めていくのかっていう事を細かく(細かすぎると読むのが面倒になるからバランスが肝要)書いた方が良い。
今回の作品は「50回も逆行しているシンジ」というのが植物でいう所の幹、茎になっている訳だけども、そういう「衝撃の真実」扱いのものを冒頭で全部出すのは宜しくないと思うんだ。
断片的な情報を出して、中盤か所版の終わり辺りで読み手に答えを突き付けたりした方が面白いと思う。
シンジは虐めを受け続けていたという事だけども、これも、ただの一行で「いじめを受けていた」だけで終わらせるよりは、
もうちょっと虐められている時の描写を入れたりしないと、読み手側がシンジに感情移入がし難くなよ。
他にもあるけど、一応これぐらいかな
完結する確率は何%ですか?
短さは別に問題ない。
最近、3行スレ@創作発表で遊んでるし、ここでも1レススレがなかなか楽しかった。
最初、ブラウンディッパーで何それって思った。知らないし。
愛武器でウィキペのリンク先まで書いてあるけどさ。
銃で良いよ。固有名詞なんて意味がない。判らない人には面白くないw
銃を突き付ける場面までの描写がない。
そういう唐突な展開も演出だろうけど、その絵が思い浮かばない。
どこでいつ?というのが判らないから。
おいおい説明をしてるけど、エヴァ本編のいつ、何処で?というのがないからさ。
で、こんな事きくと素人って言われるかも知れないけど、
「逆行」って何?本編の時間が逆転したりとか、振り出しに戻ったりすること?
FF、SSのジャンルを示す用語だと思うけど、それを文章に組み込んじゃうのはどうかと思うよ?
特に知らない人にはわかんなくて萎えるw
感想欲しいということで、素直な意見書いてしまいました。
さあ頑張ってw
>>514がんばれ。
こんな率直な意見、わざわざ書いてくれる奴らなかなかおらんぞ。
なんせ、きちんと読んで、考えて意見をまとめて、
さらにわかりやすく文章に書き込んでくれてる。
そんだけの手間をかけてもらった以上、
その期待にこたえねばならんぞ
>>514
522 :
戌流:2008/09/06(土) 00:16:55 ID:???
あたしのときは……そんなふうに感想なんて書いてくれなかったくせに……。
みんな、あたしのことを無視したじゃない!
なのに……なんで?なんでこの人にはそんなに親切なの……?
ぼくさいきんきたばっか^q^
>>514 はっきり言えば最低だな
でも最低の中の最低、キング・オブ・最低を目指すのもありだよ
自己嫌悪にならない程度にがんばれよ
525 :
戌神:2008/09/06(土) 16:41:55 ID:???
>>524 俺みたいなレスするなよ……
また嫌われるじゃないか……
文章レベル的には叩かれるほどにはひどくないと思う
ただ逆行で使徒化でアンチゲンドウなんて正気の人間にはまず書けないので
これをマジメに書いているなら君は厨二病に罹患している可能性が高い
とりあえず冷静になって自分を見つめ直すことをお勧めする
厨二病に罹患というよりは、リアル厨二のような気がするのは自分だけですか?
528 :
夢小説:2008/09/07(日) 22:53:04 ID:???
>>418からの続きです
手。手が触れてる。
膝小僧、肘に固いものが当たっている。
金属質の板の上に本が置いてあるのが見える。
息がかかった。
気持ち悪い。
手が触れた。
下のほうに手が触れた。
気持ち悪い。
夢を見た。
すごく嫌な夢。
下着が背中に張り付いているのがわかる。
目を覚ました場所はいつもと違っている。
ベットの両脇には転倒防止のための柵が取り付けられ、机のようなものが立てかけてある。
そこから少し離れたところには背の高さほどもある棚が置いてあり、テレビが棚の中ほどに置いてあった。
テレビのわきには箱のようなものが取り付けられている。
その箱の真ん中には差し込み口みたいなものがあり、差し込み口を指す矢印とともにテレビカードという文字列が印字されている。
「病院・・・?」
はてなマークは付いていたけど、それは9割が他間違いないことだと思う。
カードで動くテレビは普通の家庭には存在しないし、ホテルや旅館にも存在しはしない。
あるとすれば病院だけだ。
(とりあえず、これを外そう。邪魔だ)
ベットサイドのわきにある柵を外し、両膝をそろえるような感じでベットから降りた。
腕には点滴の管すら刺さっていない。
経過観察の途中かなと思いつつ、ドアを開け外に出た。
”ナースステーション”
外に出るなり目に大きな文字が目に飛び込んできた。
カウンターで仕切られた奥で白衣をきた女の人や男の人が作業をしている。
「あ、竜崎さん。病室にいてください」
529 :
夢小説:2008/09/07(日) 22:57:32 ID:???
看護師の一人が彼女の存在に気づいた。
医者を呼んでくるという言葉を聞きながら、病室に戻ると、白衣に聴診器をぶら下げた医者がやってきた。
夜勤明けなのか、医者の目の下にはクマができ、疲れているようにも見える。
今の調子はどうですかなどの問診を受けたが、特に異常らしい異常はなく、すぐに退院していいといわれた。
エヴァに乗っているときに痛みを感じたのも、エヴァの特性らしい。
煮え切らないものを感じたけど、ここにいても仕方ないので、退院手続きを済ませることにした。
エレベーターに乗って、病棟から1階のほうにおりると、時間外窓口と書かれているランプが目に入った。
ガラスで仕切られたテーブルの向こうに紺の制服を着た守衛さんが見える。
トイレの看板と事務室という看板を見ながら前に進むと、内科・皮膚科・麻酔科受付と書かれた看板が目に入った。
わきに予約受付機と書いてある機械が置いてある。
ある程度規模の大きな病院はこういう機械が置いてあり、これで受付を済ませることになっている。
その手前にはエスカレータ。
エスカレータの前にはボランティアという腕章を胸ポケットからぶら下げているボランティアの人が見えた。
軽く会釈をし、左側に進むと、お支払という文字が書き込まれているプラカードが目に入った。
カウンターの前には人が数人並んでいて、お支払いは精算機でお願いしますという声が聞こえてくる。
ここで支払いをすればいいと見当をつけ、自分の番が来るのを待ったが、カウンター越しに座っている事務の人からこう言われた。
「竜崎ケイさんですね。今回のお支払いはありません」
どうやら、NERVが代わりに支払ってくれるようだ。
病院に入院すると結構なお金がかかる。
後で保険組合から一定の金額を超えた分は帰ってくるとは言え、手続きをするのもめんどくさい。
お金がかかる済むのはありがたいことだ。
事務の人に頭を下げ、入口のほうへと足を進めた。
530 :
夢小説:2008/09/07(日) 22:59:02 ID:???
自動扉と書かれたガラス越しに通路が見える。
通路の外壁は白一色。両脇にはベージュの手すりが用意され、障害のある人が歩きやすいように配慮されている。
通路の横幅もそれなりにあり、ストレッチャーを4台並べても足りないぐらいの大きさがある。
そんな中をいろいろな服を着た人がこっちへ入ってきたり、こっちから出たりしている。
そのたびごとに自動ドアが開いたり、閉じたりし、休む暇もなさそうだ。
(人間だったら、大変だろうな…)
そんな感じのことを思いながら、自動ドアのわきを通り過ぎていくと、黒い服に黒いサングラスをかけた男性と白衣を着た金髪の女性が向かってくるのが目に入った。
一人は初号機に乗るように強要した人。もう一人は赤城リツコ博士。
両方とも顔見知りだ。
視線と視線が絡み合い、その脇を通り過ぎていく。
こちらから声をかけることはない。
黒いサングラスをかけた方とはあまりかかわり合いにはなりたくないからだ。
当然、あちらのほうも声をかけることもなく、そのまま、すれ違うと思ったが、黒いサングラスの男が声をかけてきた。
「あの時はすまないことをした」
深々と頭を下げている。
ふざけるなこの野郎。ものすごい痛かったんだぞ。
といいたいところだが、こういう態度をとっている人間に向かって、いうのもあれだ。
悪魔などといわれ、周りの人から白い目で見られることになる。
「気にしないでください。特に異常もなかったみたいですし」
適当に当たり障りのない言葉をかけ、病院を後にすることにした。
Gary Stu?
>>503から
その頃、研究所は混乱状態にあった。
「ええい、警報を止めろ!」
冬月は近くにいた職員に、怒鳴るように言った。
「一体どうなっているんだ…?」
冬月のその言葉は、現状を把握できていないということを、明確に表していた。
ここは研究所の中にある部屋の一つなのだが、何か軍の格納庫を思わせるような場所だった。
といってもそれほど広くはなく、置けたとして戦闘機の一機、といったところだろうか。
見れば、コンピュータや何かの計測機器などが、其処彼処に置かれているため
格納庫というよりは、何かを研究しているような場所なのだろう。
だがその研究対象となるような物が、どこにも存在している様子はなかった。
機械に囲まれている空間に、本来それはあるはずなのであろうが、そこには何も無い。
ただ、切れたワイヤーのような物が数本、無造作に落ちているだけだ。
切れたといってもその切り口は、空間ごと切り取ったのだろうか、と思わせるほどに、
おそらく単に鋭利な刃物では、ここまできれいには切れないだろう、というほどのものだった。
研究対象物はこのワイヤーに括り付けられていたのだろうか。
ならばそれは、今は一体どこにあるのか。
「所長」
冬月の後ろに立っていたナオコが声をかけた。この状況に、何か心当たりでもあるようだ。
「あれはディラックの海ではないかと…」
負のエネルギーの状態すべてが、ディラック粒子で満たされているとするディラックの海。
その分野は冬月の専門ではないが、話には聞いたことがあるようだ。
「虚数空間だとでも?」
「はい、おそらくは別の宇宙に繋がっているのではないかと…」
「別の宇宙に消えただと…国連にそう説明して、納得してもらえると思うかね?」
どうやらついさっきまで、研究対象物は確かにここにあったのだろう。しかしそれは別宇宙に消えてしまった。
そのあまりにも理不尽な、常識から逸脱するも甚だしい現象に、冬月は半ば呆れたようにしている。
そんな彼の問いかけに、ナオコも困惑した表情を返さざるを得なかった。
「…多分、納得はしてくれないでしょうね」
「だろうなぁ」
そして二人はため息をつく。許容範囲を超えてしまいすぎる現象が起きたのだ、無理もないだろう。
「あのー…」
そんな二人に、一人の職員が話しかけにくそうに声をかけた。
手には受話器を持っている。何処かから連絡が入ったのだろうか。
「国連軍からなんですが…」
「国連…軍?」
冬月は不思議そうにしている。
「何故いきなり軍なんだ?出撃させろ、というのならば、国連からそういわれるのはわかるが
それにしたっていきなり軍部から連絡など入らんだろう…頭ごなしすぎやしないか?」
「いえ、それがその…」
どうやらこの職員も、酷く困惑しているようだ。一体どんな連絡が入ったのだろうか。
「なんなの?」
その職員のはっきりとしない態度に、ナオコは、言いたいことがあるならさっさと言え、といわんばかりだ。
「ええと、もう出ているそうです」
「何がよ。って、まさか?」
「はい…『エヴァ』が既に出撃しているそうです」
――楽な相手だな。
シンジは思った。先ほど戦ってみてよくわかった。造作も無い相手だ。
いくら数がいようと、苦になろうはずもない。今シンジを取り囲んでいるのは、たった八体だけ。
しかも八体いるからといって、それらを同時に相手にするわけではない。
接近戦だ、同時に飛び掛るのはせいぜい三、四体。それ以上だとぶつかったりして、互いに動きを束縛しあう。
まずは向かって十一時、二時の方向にいる二体が飛び掛ってきた。
跳躍するように飛び込んでくる左方の一体の、すぐ横ぎりぎりをすり抜けるようにかわし、
すれ違いざまに背中を切りつける。そして振り向き素早く構え直すと、突っ込んでくるもう一体に振りかぶった。
だがそれと同時に背後から、いつの間にか回り込んでいたもう一体が、シンジに飛び掛ってきた。
しかしシンジはすぐさま振り返り、それを横一文字に斬り捨てると、その場からさっと真横に飛ぶ。
突っ込んできたもう一体は、その素早い動きにシンジを捉えることができない。
さらに、かなり大きくにブレードを振ってしまったようで、体勢をすぐに立て直すことができす、
その隙に、シンジの刀に体を貫かれてしまう。
シンジは一度刀を捻り、肉を抉ってから刀を引き抜いた。その異形は地にひれ伏した。
取り囲んでた異形達の内三体が、すで血溜りに沈んでいる。
足元に転がっている一体の胸部に刀を突き刺し、最初の異形の体内にあった、あの赤球と同じもの思しき
硬い感触を、シンジは力を込めて突き割る。
どうやらそれを破壊しなければ、止めにはならないらしい。しかし何故シンジはそのことを知っているのか。
――後五体か。
シンジは見回した。異形達は躊躇っているのか、なかなか向かってこない。
やはり異形といえど、命は惜しいのだろう。異形の骸から刀を引き抜いたシンジが、一歩前に出る。
と同時に、残りの異形達は一歩下がる。
――向かってこないな。
とりあえず先ほど倒した内、二体の赤球はまだ破壊していない。
シンジはそれぞれの胸部に刀を突き刺し、突き割っていく。残された異形達は、黙ってその光景を見ていた。
「こ、これは」
殺戮。冬月達が見たのはまさにそれだった。
国連軍から送られてくる衛星映像が、目前のモニターに映っている。
戦慄してしまうほど、衝撃的な、暴力的な絵だった。
逃げようと背を向け翼を広げた異形達を、自分達がエヴァと呼んだそれが、無慈悲に斬り殺していた。
一体一体を確実に仕留めていたのでは逃げられる、と判断したのか、
まずはとにかく広げた翼のみを狙い、それを斬る。斬り落とすまでする必要はない。飛べなくすればいいだけだ。
適当な部分を斬れば、それで舞い上がることはできない。五体全て、翼を傷つけられてしまった。
あっという間の出来事で、なんと素早い動きか。判断が的確だ。もう異形達は空を飛び逃げることは出来ない。
そしてエヴァは、一体、また一体と斬りつけていく。逃げることを諦めざるをえなくなった異形達は、
何とか抵抗しようとブレードを構え直すが、翼の痛みのせいか、その動きはよろめき半分といったところだ。
そのような状態で戦って勝てるわけもなく、異形達は血溜りに沈む一隗の肉片に成り果てる。
「誰が操っているというんだ」
その光景を見ながら、冬月は呟いた。
「…これを操れるのは」
ナオコの言葉に、冬月は彼女の顔を見る。言いたいことは分かっている。
これを動かせるのは、使えるのは、一人だけ。しかし冬月はそれを認めたくはなかった。
その該当する者は、このようなことが出来る人物ではない、そう思っていた。それはナオコも同じだ。
しかし否定したとして、他に誰がいる。いないではないか。それもまた、確かに二人が思っていることだった。
「エヴァ初号機を動かせるのは、シンジ君だけです」
それがシンジが身に纏っているモノの名だった。
「シンジ君が…戦っている、というのか」
「こんな戦い方、彼にはまだ出来るはずありません。ですが、所長」
冬月はモニターを睨み付けるように見る。
「彼以外には考えられないだろうな。しかしまさか、シンジ君のいる場所へ別の宇宙を経由していくとは…」
それはシンジが呼んだのか、エヴァが勝手に向かったのか。
――これで最後。
シンジはゆらりと刀を上げた。足元では必死にもがきながら、なんとか逃げようと這いずる異形が一体。
体中から出血し、その白い身体は紅に染まっている。
シンジは刀を逆手に持ち替えた。そして地面に突き立てるかのように、勢いよく下ろした。
刀は背中を貫き、脊髄を突抜け、そして胸の赤球に当たり止る。
――やっぱり硬いなぁ、一気にはいかないか。
刀を握る手にぐっと力を込め、それを突き砕く。念のため一度刀を捻ってから、ゆっくりと引き抜いた。
――終わり…?でいいのかな?
シンジは空を見上げる。閃光はすでになく、もう戦闘が終了していることが分かった。
戦略自衛隊の姿もない。異形は今相手にした数しかいなかったのだろうか。
リツコと見た群れを思い出してみると、正確な数は分からなかったのだが、それほどいなかったように思う。
十体もいなかっただろう。今倒したのが計九体である。どうやらこれで終わったようだ。
大きく刀を振って血糊を払ったとき、シンジの周囲に動くものはなかった。
――さて、これからどうしようか?
そういえばリツコはどうなった?探したほうがいいのだろうが、生憎今の姿はあまり見せられたものではない。
それにしても、とシンジは思う。この姿はあまりにも心地いい。まるで優しく抱きしめられているような、
とても暖かな感触に包まれている。どこか懐かしい、とも思えた。
――なんか眠いなぁ…。
いくら弱い相手とはいえ、戦いの疲れと、この心地よさが相まって、シンジは眠気を感じ始めていた。
そのあまりにも強い眠気に、このまま寝てしまいそうだ。
――う〜ん…。
こんな所で寝るわけにもいかないのであるが、それでも意識が薄れていく。
――…母さん。
そんな中、顔も覚えていない母親のことを何故か考えてしまう。
そして意識は途切れてしまった。母親の顔は相変わらず思い出せないままだった。
537 :
322:2008/09/11(木) 03:42:05 ID:???
いきなり背中向けて翼広げるなんて無防備もいいとこですけど
冷静でなくなったら、間抜けな行動って結構とるもんですよね
あとダッシュの打ち方変えました
こっちのが確かに見栄えいいです
最初から読む気がしないけど、具体的にどういう話なんだこれは?
仮面ライダーエヴァンゲリオン
仮面ライダーかな?その要素もあるとは思うが
デビルマンっぽいところもあるような気がする
バイオレンス・ジャックということですね、わかります
強蝕装甲エヴァーでは?
543 :
6:2008/09/13(土) 17:07:02 ID:???
読み返してみて、まだ使徒戦の描写に1レスしか使ってない事に気づいた。
まあ、次の使徒戦は4レスくらいにはなるはず。八割が会話だけどね。
544 :
逆行194:2008/09/13(土) 17:08:17 ID:???
「も…う! なんなのよ、あれは…!」
自室。アスカはやり場のない怒りを目の前の机にぶつけ、
ギリギリと歯を食い締めていた。
綾波綾波と、心底うれしそうに語るシンジの笑顔がどうやっても頭から離れない。
思い出せば苛立ちが募るだけと分かっているのに、何度も何度も頭に浮かぶ。
それがあまりにもイライラするから、涙が出そうになる。
その度にグスっと鼻をすすって、泣いてない、と自分に言い聞かせた。
――もう、何もかもが気に入らない。
能天気なバカシンジも、もちろんファーストも、ミサトの同情したような視線だって。
だが、アスカが本当に一番、怒りを覚えているのは……。
「分かってるわ。みじめね、アタシは」
アスカは何より、そんなシンジにうまく対応出来ず、
無様な態度を取ってしまった自分自身に憤っていた。
「シンジには、本当の意味じゃ相手にだってされてない。
なのに、ミサトの方には勘づかれたかもしれない。
ほんっと、カッコワルイ。恥ずかしい。消えたい…!」
一度、机にガンと額を打ちつけて、
「でも、みじめなままじゃ終わってられないのよ、
この、惣流・アスカ・ラングレー様はね!」
顔を上げ、ぐっと体を起こす。
「やれること、一つずつやっていかなくちゃ…!
アタシが今優先しなきゃいけないのは、あのバカシンジのことじゃない。
この世界の現状を理解するために、
……まずはあの女、ファーストと、向き合う」
そこで、ぐっと唇を噛み締めて、
「だけど、そのためには…」
渋い顔を崩さないまま、アスカは数秒黙考して、それから不意に動き出すと、
荒っぽくメモを一枚破り、そこに何かを書きつけ始めた。
545 :
逆行195:2008/09/13(土) 17:09:59 ID:???
――深夜も零時を回ってしばらく、
「…………アスカ?」
真っ暗なリビングに、シンジの姿。
シンジは暗がりの中、明かりも点けず、手探りで、
「アスカ? アスカぁ? ……いる?」
小声で呼びかけながら、たどたどしく奥へ進む。
指定された場所までゆっくりと歩を進め、
「――ッ!」
突然、暗闇から手が伸びてきて、シンジは『その部屋』に引きずり込まれた。
その腕はシンジの体を絡め取るように動きを封じ、
また一方の手は口を塞ごうと動いてきて、
「静かにしなさ…わ、ちょっと、この、あっ…!
アンタどこさわって、きゃあぁぁ……ふご、ふも…!」
叫び声をあげそうになったアスカの口を、逆にシンジが塞ぐことになった。
だがすぐさま、がじり、指を噛まれ、シンジは慌てて手を離す。
「ぷはっ! アンタ、いきなり何すんのよ!」
「な、何するって……。アスカだって同じことしようとしてただろ!
第一、最初に静かにしろって言ったの、アスカじゃないか!」
「う、うっさいわねぇ! アンタがどさくさに紛れて、
アタシに変なことしようとするのがいけないんでしょ!
全く、これだから男ってのは…!」
「ご、誤解だよ! いきなりこんなところに連れ込まれて、
そんなこと考える余裕…」
シンジは必死に己の無実を主張するが、アスカはまるで取り合わず、
「まあ、そんなことはどうでもいいのよ」
ムリヤリ軌道修正。本題へと移ろうとする。
シンジは小声で『全然よくないよ』と訴えるが、当然黙殺された。
「アンタ、ここに来たってことは伝言読んだんでしょ。
だったら用事は分かってるわね」
546 :
逆行196:2008/09/13(土) 17:11:37 ID:???
無論、シンジだって用もなしにこんな深夜、
電気も点けずにこの暗闇を徘徊するはずもない。
シンジは古風にもドアの隙間に差し出されたアスカからの手紙を読み、
その指令に従ってここまでやってきたのだ。
しかし、その考えている間の沈黙をアスカは違う意味に取ったらしく、
「なによ! アレに気づかなかったワケ?
こぉのウスノロシンジ! あぁ、もう、信じらんない!
……って、ちょっと待ちなさいよ。
それじゃ、アンタがここに来た理由って、単に用を…」
「ち、違うよ!」
こちらを見るアスカの視線に、
段々と軽蔑の色が混じっていくのを見ていられなくて、
それとまあ、なんとなく、
一応女の子であるアスカにその先を口にさせたらまずい気がして、
シンジは慌ててアスカの言葉をさえぎった。
「……手紙は、読んだんだ。でも、」
そこで、言いよどむ。
ドアに挟まれた小さなメモ書き。
そこには簡潔に、他人に知られたくない話があることと、
集合の時間と場所が書かれていた。
しかし、シンジには、何度首をひねっても、
理解の出来なかったことが一つ。
「でも、どうして集合場所がトイレなの?」
――なぜ、トイレに集まる必要があったのか。
それだけが、シンジにはどうしても理解不能だった。
547 :
逆行197:2008/09/13(土) 17:13:08 ID:???
「……盗聴対策よ」
口にされたアスカの返答は、シンジが想像の斜め横に行った言葉だった。
「と、盗聴?!」
しかし、聞き間違いではない証拠に、アスカは軽くうなずいて、
「そ。分かったら、もう少し声落としなさいよ。
そうしないと、ここで話す意味、なくなるじゃない」
だがそんなことを言われても、シンジが易々と納得出来るはずもなかった。
「で、でもまさか、家に盗聴器なんて……」
「アタシだって、確実にしかけられてる、なんて思ってないわ。
むしろない可能性の方がずっと高い、って思ってる。
だけどアンタは、ここに盗聴器は絶対にない、って言い切れる?」
「そ、それは……」
シンジは口ごもった。
自分たちに監視がついているというのは知っているし、知らされている。
だがそれでも、盗聴まではされていない、と思いたい。
「それに、もしそうならここだって…」
「いくらなんでも、トイレとバスルームの盗聴はミサトがさせないでしょ。
その辺りの最低限の良識だけは、ミサトに期待してるのよ」
それは、盗聴がミサトの関知しない所だとしたらここも安全ではない、
と言っているのだが、シンジはそこには異論は唱えなかった。
それよりも、避けて通れないもっと大事なことは……。
「そんな、今まで気にしてなかった盗聴器の警戒までして、
アスカは本当にこれから、人に聞かれたくない話を、
……聞かれちゃいけないような話を、するつもりなの?」
「そうよ」
アスカに即答され、シンジは息を飲む。
548 :
逆行198:2008/09/13(土) 17:17:05 ID:???
「なによ、ビビッてるワケ?」
それを揶揄するように、アスカは笑う。
「ビビッてる、とかじゃなくて……。
いきなりこんなこと言われたら、驚くのは当たり前で…!
……それに、アスカのことも、心配、だし」
もごもごと口にした言葉を、アスカは手をひらひらとやりながら、
「はーいはい。お優しいですね、シンジ様は」
わざとらしくさらりと受け流す。
「なんだよ、せっかく人が心配してやってんのに、その言い方。
……やっぱり今日のアスカ、ちょっとおかしいよ」
「おかしいのは、アンタの方でしょ」
アスカの鋭い視線と、シンジの戸惑ったような視線が、
宙空でぶつかり合う。
二人はしばし、至近距離でにらみ合うように見詰め合って、
「……やめよう、こんなこと。
ここで言い争ってたって、意味がないよ」
「……そうね」
お互いに、目を逸らした。
「それで? 人に知られたくないような話って、
一体何を話すつもりなんだよ?」
少しぶっきらぼうになったシンジの言葉に、アスカは首を振る。
「詳しく説明するつもりはないわ。
ただ、アンタと違ってアタシの立場はフクザツなの。
人に知られたくないことだって、あるってことよ」
「複雑って…」
口にしたい言葉を、ぐっと飲み込む。
代わりに、
「だったら、いいの? 僕にそんなこと話して…」
もう一つの、絶対に聞いておかなければならないことを口にした。
おお!久しぶり!アスカのマステマ装備じゃないけど
待 っ て ま し た !
550 :
逆行199:2008/09/13(土) 17:19:01 ID:???
「構わないわよ。アンタにはどーせ、
告げ口する度胸も、何か推理する頭もないだろうから」
あっけからんとそんな風に言われて、
さすがにシンジもムッとくる。
その表情をアスカはつまらなそうに眺めてから、
「そんな顔、するんじゃないわよ、バカ。
……信用、してんのよ。そのくらいは、一応」
そう口にしたアスカは照れるワケでも、微笑むワケでもなく、
まだつまらなそうな顔を崩していなくて、
だからこそ、シンジはそれを信じた。
「…うん。ごめん、信じるよ」
それを、アスカは今度は無表情に受け止めてから、
「それでいいのよ」
と短く言った。
「それじゃ、話、続けるわよ…」
とアスカが言いながら心持ち顔を近づけてきて、
「あ、アスカ、顔、近いよっ…」
シンジを大いに慌てさせる。
「そんなの今さらでしょ。……なに、アンタ。
シンジのくせして、いっちょまえに意識しちゃってんの?」
「そ、それは…」
どこか愉快そうに問い詰めてくるアスカに、
シンジは口ごもるしかない。
551 :
逆行200:2008/09/13(土) 17:21:21 ID:???
――そうなのだが、そうではないのだ。
実は問題なのは顔でなく、わずかに前屈みになったアスカの姿勢から、
薄手の服に包まれた胸の谷間がわずかにのぞいていることなのだ。
だが、そんなことを正直に言えるはずもない。
「そ、そういうんじゃないけど…」
(む、胸元見てたことが分かったら、絶対殺されるよ)
シンジは自然と胸元に吸い込まれそうになる視線を必死に押さえつけ、
あからさまに目を逸らしながら訴える。
「だ、だけどさ、アスカ。
ここ、ちょっと狭いんじゃないかなって思うんだ。
お風呂場でもいいならさ、そっちに移った方が…」
苦境に立つシンジの必死の訴えだったが、しかしアスカはそれを一蹴。
「アンタバカぁ? 使ってもいないのに二人でお風呂場にいたら、
一発で怪しいことしてるって思われるでしょうが!」
「……夜中に二人でトイレにこもってても、大概アウトだと思うけど」
それは、シンジとしては当然の返しをしたつもりだったのだが、
「あーもー細かい! 男のくせに小さいことをうじうじうじうじと!」
「お、男は関係ないだろ?! そういうの、男女差別…」
それがなぜかアスカの気に障って、言い争いになってしまう。
しかし、それが口ゲンカに発展する前に、
「……シッ!」
表情を険しくして、アスカが指でシンジの口を止めた。
552 :
逆行201:2008/09/13(土) 17:24:43 ID:???
「今、何か聞こえなかった?」
「……さあ、僕には何も」
それよりも、唇に触った指のひんやりとした感覚に、
シンジはドキドキを抑えるのに精一杯だった。
ドクン、ドクン、ドクン、鼓動の音だけが、時を刻む。
――息の詰まるような数秒間が過ぎ、
「……気のせいだったみたいね」
ほっと息を漏らして体を離すアスカに、シンジも弛緩する。
「もしかすると、ペンペンかも。時々、冷蔵庫の中で寝返り打ってるらしいし」
「……あんのペン公」
恨みがましい声で、アスカ。
この前のトイレの一件を、まだ根に持っているらしい。
「え、ええと、それで、聞きたいことって?」
不穏な空気を払拭するため、シンジは慌てて先を促す。
アスカは、むすっとした顔を崩さないまま、
「……ファーストのことよ」
と答えた。
その返答を聞いた途端、シンジの顔が輝き出す。
「あ、綾波の?! なんだ、だったらそうと早く言ってくれれば…」
「――ストップ!」
嬉々として話し始めようとするシンジを手で制し、
「アタシが聞きたいのは、アンタが今日してたような無駄話なんかじゃないの」
そう話す内にエキサイトしてきたのか、
「だいったい、綾波、綾波、綾波、綾波って、気持ち悪いのよ!
アンタ、綾波教の信者か何かなワケ?!」
「そんな……僕はただ……」
「うるさい! とにかく、アンタの都合なんてどうでもいいわ。
アンタはアタシが訊いたことにだけ、答えてればいいの!
……分かった?」
やたらと激しいアスカの剣幕に、シンジは渋々うなずく。
553 :
逆行202:2008/09/13(土) 17:28:28 ID:???
「――それで、綾波の何を聞きたいの?」
そこで、アスカは誰かが外で聞き耳を立てていないか、
もう一度確認してから、小さな声で話し始めた。
「……だから、前にも訊いたでしょ。
ファーストがタイムマシンの話をした時何て言ったか、
それを聞きたいのよ」
「あぁ、そういえば、そんなこと言ってたね…」
この世界のアスカと初めて会った時、空母の中で同じ質問をされたのを、
シンジはかろうじて覚えていた。
「ええと、でも綾波は、そんなに詳しいことは言ってなかったよ。
確か僕が、『タイムマシンとか信じるか』みたいなことを言ったら、
綾波は『信じない』、って」
「信じない?! あの女…ファーストは、本当にそう言ったの?」
「うん。『時計の針は元には戻せない』からだって」
そこで、シンジは軽く首を傾げて、
「だけど、それだけじゃなくて、他にも何か言ってたような……えーと」
「それだけじゃなくて、何て言ったの?!
重要なことなの、さっさと思い出しなさいよ!」
アスカに肩を揺さぶられる。
グラグラと肩を、そして脳を揺さぶられ、考えに考えて、
「そうだ! 覆水盆に返らず、だ」
シンジはようやくその言葉を思い出した。
今日はここまで?
555 :
逆行203:2008/09/13(土) 18:01:40 ID:???
「覆水、盆に…?」
戸惑った様子のアスカに、シンジはうれしそうに説明する。
「あ、ことわざでね。一度やってしまったことは、
もう取り返しがつかないっていう…」
「知ってるわよ、そのくらい!
こぼれたミルクは戻らない、って話でしょ!
それで? その他には、何か言ってなかったの?」
「あ、ええと、そうそう、
『だけど器に水を入れなおすことなら、出来るかもしれない』って」
「器に、水を入れ直す?」
「う、うん…」
シンジの言葉に、アスカは一人、ぶつぶつと考え始めた。
「覆水…は……時、の流れ、で…戻せないなら、時間移動は……、
だけど、入れ直す? 時間、を…? いえ、でも、針は戻らない、
のだから、なら、…水は、時間、ではなく、きっと、だったら、
――それって!!」
そうして、シンジが驚くほどの勢いで顔をあげると、
「これはもう一度、ファーストに会う必要がありそうね」
アスカの顔には、不敵とも言える笑みが浮かんでいた。
556 :
逆行204:2008/09/13(土) 18:03:10 ID:???
――ちなみにその頃。
「あー、もー! あんの二人、一体中でなぁにやってんのかしら…!」
ミサトはトイレのドアの前で人知れず煩悶していた。
夜中トイレに起き出してきたところ、なぜかトイレからは明かりが漏れていて、
オマケに中から二人分の声が聞こえてくるのだ。
一応話し声には気をつけているらしく話の内容までは分からないが、
中にいるのがシンジとアスカであることは疑いようもなかった。
「……にしても何でトイレなのかしら。
近頃の子供の考えることはワケが分からないわ」
密談するにせよ、その……青少年にあるまじき行為におよぶにしろ、
どちらかの部屋でやればいいのだ。
わざわざ場所をトイレに指定する意味なんて……
「――まさか、どっちかにそういう趣味が?
いやいや、ただ、トイレでしかやれないことがあるのよね、きっと」
そう考え、試しにミサトは『トイレでしか出来ないこと』を想像してみて……やめた。
考えれば考えるほど、ろくでもないことしか思いつかない。
「……あー。なんかアッタマ痛くなってきたわ」
最初に驚いて声を漏らしてしまった以外ほとんど音も立てず、
ミサトはずっとこの場所に頑張っているのだ。いい加減疲れてもくる。
それに、もし仮に中で二人が『いかがわしー行為』におよんでいたとして、
自分はそこに踏み込んでいくべきなのかどうなのか。
一応保護者という立場ではあるが、そこまで口出しする権利が自分にはあるのか。
というか、その後で自分はどんな顔をして二人に接していけばいいのか。
押し殺した話し声と明かりの漏れるドアを見つめ、ひたすらミサトは懊悩する。
その扉が開き、最高に気まずい瞬間が訪れるまで、あと数十秒。
――ミサトの煩悶は続く。
557 :
6:2008/09/13(土) 18:05:47 ID:???
以上。
というか、ちょっと小休止。
この続きはたぶん今日明日中に。
>>557 乙!!!!!!!!!
続きを早く読みたいのでお願いします( ̄人 ̄)オ・ネ・ガ・イ♪
559 :
逆行205:2008/09/14(日) 01:09:59 ID:???
「用事って、なに?」
放課後の屋上。
拍子抜けするほどあっさりと、レイはアスカの呼び出しに応じた。
「アンタにちょっと聞きたいことがあんのよ」
アスカはあくまでストレートに。
そこに何かの気配を感じたのか、レイは先に伏線を張る。
「……機密に関することなら、話せないわ」
だが無論、レイが危惧しているようなことを話題にするワケではない。
アスカはその言葉には鷹揚にうなずくと、
「それは大丈夫よ。たぶん碇司令も知らないことだから」
「碇司令も知らない? それを、わたしが…?」
戸惑いを見せるレイに対し、
「ええ、そうよ。……さぁ、答え合わせといきましょうか」
そう口にして、自分に気合を入れ直す。
(さて、と。ここが一つの正念場よ、アスカ)
――もう一度周りを見渡す。
そこにはアスカとレイ以外、誰の姿も見えない。
屋上の入り口はシンジに命令して見晴らせているし、
これでシンジを含め、誰かに話を聞かれる心配はない。
それを確認すると、アスカは一気呵成に言葉を紡いだ。
「単刀直入に言うわ。
アンタが、アタシを過去に戻したワケじゃないのね?
アタシは、時間を飛び越えてはいない。
過去に戻ったのは、世界の方」
「…なにを、言っているの?」
レイは表情を変えないまま、戸惑いの言葉を示す。
だが、アスカは気にしなかった。言葉を続ける。
「器から水がこぼれた事実は消えない。時間は戻せない。
でも、水を入れ直すことは、世界を作り直すことは出来る」
560 :
逆行206:2008/09/14(日) 01:11:10 ID:???
「きっとサードインパクトの時と同じね。
シンジとエヴァ初号機の力で、世界は再生された」
言いながら、アスカは油断なくレイを注視している。
少しでもその無表情に異変があれば、それに気づけるように。
「――それも、ただ再生しただけじゃない。
意図的だったのか無意識だったのか分からないけど、
シンジは直前の世界ではなく、それよりもっと昔、
もう思い出の中にしかないはずの過去の世界を完璧に模倣した。
まるで、時間を戻したみたいに……」
レイの表情に変化はない。
だから、ここからが勝負だった。
「だけど、その世界だって完全に昔と同じってワケじゃないわ。
以前の世界の記憶を持ってるアタシがまず一つ目の例外。
……そして、前の世界と違う反応をしている人間を、
少なくともアタシはもう一人知っている。
それは……アンタよ、ファースト!」
アスカはビシッと腕を振り上げる。
その指の先は、レイをまっすぐに示していた。
「数多くの人間の中で、
アンタだけが前の世界のアンタと不可解な相違を示している。
シンジや加持さんが前の世界と違う反応を示すのは分かる。
だって、前の世界とは違う今のアタシと接しているから、
違う反応をするのは自然だわ。
でも、アンタは違う。アタシと深い関わりもなく、
アタシが以前と同じように接触しているのに、
アタシの記憶とは違う対応を取った」
そうして揺るぎない確信を込めて指を突きつけたまま、
「さぁ、とぼけるのはもう終わりよ、ファースト!
本当のことを話しなさいよ! 今すぐ!」
アスカはレイに、弾劾の言葉を告げた。
561 :
逆行207:2008/09/14(日) 01:12:03 ID:???
そこまで詰問して尚、レイに全く動きはなかった。
アスカにとっては、耳に痛い沈黙が続く。
ただ、屋上に吹き抜ける風の音だけがその鼓膜を揺らし、
「……わるいけど」
ゆっくりと、レイは首を振る。そうして、
「あなたがなにを言っているのか、わからないわ」
そうして口にされたのは、さしものアスカでも、
それ以上食い下がる気も起きないほどの完全な否定。
おまけに、さらにアスカの意気をくじいたのは、
――この反応。演技じゃ、ない、わね。
レイの態度から感じた、否定しようもないそんな印象。
アスカはずっとレイの様子を観察していた。
それでもレイからは予想外の言葉をかけられた戸惑い以外の、
いかなる不自然さも見つけ出すことが出来なかった。
――少なくとも今目の前にいるこのファーストは、何も知らない。
どんなに不本意でも、そう結論づけるしかなかった。
それを悟った途端、失望と安堵、苛立ちと困惑、落胆と安らぎ、
様々な矛盾した感情が、アスカを駆け抜ける。
だがアスカは一瞬でそれを押さえ込み、
「……そう。ジャマしたわね」
それだけを会話の終わりとして、きびすを返す。
レイが何も知らないなら、これ以上ここにいる意味はない。
「――ハズレ、か」
口に出してしまった事実に、虚脱感だけが残る。
本来なら今の話の口止めをしなくてはいけないのに、それさえ今はわずらわしい。
構わずアスカはそのまま屋上を後にしようとして、
「――この世界は、碇くんの意思だけでできたモノではないわ」
突然背後からかけられた言葉に、その足が凍りついた。
562 :
逆行208:2008/09/14(日) 01:19:15 ID:???
振り向いて、声の主を探す。
――そこに立つ人影は、当然ながらたった一つ。
つい数秒前、無関係と断じた少女、綾波レイただ一人。
だが、そこに立っている彼女は決して先刻までの少女ではなかった。
こちらを見つめるあいかわらずの無表情な顔。
しかしそこには、無感動とは違う、何かの想いが渦巻いている。
「ア、ンタ…」
かろうじて、乾いた舌がそれだけを発音する。
だが、レイはそれを黙殺する。
相手の反応を無視して話し続けるのは今度は彼女の方だった。
「この世界では体がはなれていても、人の魂がつながっている。
肉体はもう、魂をとどめる枷とはならないわ。
それは、人がバラバラでいながらひとつでもありうるということ」
アスカの理解を超越して、レイは淡々と、言葉を紡ぐ。
「世界は、『彼ら』の意志によってそう作り変えられた。
例外は、前の世界から心と体を引き継いでいる、あなたと碇くんだけ」
あまりにアスカの理解を越えた言葉に、
アスカはただ何も言えずに立ちすくむしかない。
そんなアスカを置き去りに、異様な雰囲気をまとったレイは、
「碇くんを『彼ら』に、初号機にわたさないで」
その警句じみた言葉を最後に、口を閉ざした。
563 :
逆行209:2008/09/14(日) 01:20:02 ID:???
アスカがそれでも我に返れず、ポカンとレイを眺め続けていると、
「なに? まだ、用事?」
レイが怪訝そうにわずかに眉をあげてそう訊いてくる。
そこでようやく、アスカは自分を取り戻し、
「いいえ。用はもう、済んだわ」
乾いた唇をそう動かして、もう一度レイに背を向ける。
(まるで憑き物が落ちたみたいね…。
いるんだわ、きっと。ファーストの中に、もう一人)
そんなことを考えながら、アスカは校舎に続く扉に手をかけて、
「……!」
レイが口にしたことの意味に気づいて、思わず振り返る。
そこには、先ほどと全く変わらない位置、
変わらない格好でたたずむ彼女の姿があって、
当然ながらそこに答えはない。
――そう。
もし答えなんて物が、あるとすれば……。
扉の前で一呼吸。
アスカはドアノブに手をかけ、屋上の扉を開け放つ。
その向こうには、怒っているような、ほっとしたような、見慣れた顔。
――そう。その顔はあまりに見慣れすぎていて、
だからこそ、こんな簡単なことにも気づけない。
(ねぇシンジ。アンタはアタシと赤い海で暮らした、あのシンジなの?)
心の中、目の前で人がよさそうに笑うシンジに問いかける。
――そんなこと、今まで想像もしなかった。
だが、確かにレイは言ったのだ。
前の世界から心と体を引き継いでいる、あなたと碇くん、と。
それがもし、本当なのだとしたら……。
564 :
逆行210:2008/09/14(日) 01:21:23 ID:???
(でも、分からない。そんなの、分からない…!)
例えばそれが、長年を一緒に過ごした家族であったなら、
あるいは互いに心の最奥を見せ合った恋人同士であったなら、
もしや見ただけ、共にいるだけで、その違いを見抜けるのかもしれない。
だけど、自分たちは……、
惣流・アスカ・ラングレーと、碇シンジは、
――今まで心が通じ合ったことなんて、ただの一度もなかった。
自分を隠して、あざむいて、時には近づきたいと願って、でも出来なくて、
状況に流されるまま、最後には深く互いを傷つけた。
二人の思い出をたぐれば、つらいことや嫌なことばかりが思い起こされる。
(――それでも!)
たとえやり直したいような過去ばかりがあったとしても、
(それでも、もし、そうなのだとしたら……。
違う! その可能性が、たとえほんのわずかでも、あるのなら……)
前に立って階段を下りていく、能天気な背中を眺めながら、
(――向き合わなきゃいけない。今度こそアタシは、コイツと…!
だって、アタシは……)
言葉に出来ない想いを噛み締めて、アスカは独り、強く拳を握り締めた。
565 :
6:2008/09/14(日) 01:24:27 ID:???
以上。ここでとりあえず一区切り。
次とその次と、さらにもう一つ次の話も大体出来てはいるけど、
もう一度文章を練り直すつもりなので投下がいつになるかは未定。
では。
乙乙乙乙!!!!
>>567 そう早まるな。気持ちは分かるが。
まだ職人がいるだけでもありがたいと思え。
ほsh
570 :
6:2008/10/05(日) 02:13:53 ID:???
なんか、人、いなくなってるし……
571 :
逆行211:2008/10/05(日) 02:14:53 ID:???
全てを押し流し、全てを飲み込んだフォースインパクトの波。
レイに守られ、アスカは自分を保ったままこの新しい、
だが古い世界に放り出された。
それは時間の遡行としか思えない不可思議な現象で、
アスカは自分に起こった事態を受け止められずに混乱した。
あっけなくパニックに陥り、意味もなく物に当たり散らし、
逆に言い様のない恐怖に襲われて、
部屋の隅から一歩も動けなくなったこともあった。
――そして、
そんな狂乱と興奮の時期が過ぎ去り、アスカが一番初めに考えたのは、
――これで全部、やり直せる、
ということだった。
(もう二度と、失敗なんてしない。アタシは今度こそ全部、うまくやる)
使徒に負けて、無様な姿をさらしたこと。
エヴァにうまく乗れなくなって、誰彼構わず当り散らしたこと。
そのせいでシンジに嫉妬して、険悪な仲になったことも。
――それら全ては、自分が弱かったから、うまくやれなかったから起こったこと。
だからアスカは情報を集め、今まで以上の努力をして、
全ての準備を整えて日本へやってきた。
……完璧な自分をみんなに、シンジに見せるために。
最初から全て、やり直すために。
けれど思い描いた通りに使徒を倒して、それでも気持ちが満たされなかったのは、
それがアスカの本当の望みではなかったから。
(アタシは、アタシと一緒の時間を、あのつらい日々を一緒に過ごして、
お互いにひどく傷つけ合った、あのシンジとやり直したかった)
意識していなかったとしても、たぶんそういうことなのだ。
572 :
逆行212:2008/10/05(日) 02:17:49 ID:???
だから、そう考えていたからこそ、シンジが自分のことを『惣流』と呼ぶ、
と言った時、あれほど狼狽もした。
……無意識に、だろうか。
それとも、決別の意を込めて、だったのか。
最後にシンジが「頼むよ、アスカ」と自分の名前を呼んだ時、
どうしても我慢が出来なかった。
その言葉が本当の最後になることを、
もうシンジが二度と自分を『アスカ』と呼ばないと考えると、
いたたまれなかった。
身を裂かれるような恐怖を感じた。
前の世界での経験からシンジに名前を呼ばれることにトラウマを持っていたにも関わらず、
それでもほとんど迷いはしなかった気がする。
自分の、「アスカ」という呼び名を捨てることは、
それが前の世界のシンジとのつながりを捨ててしまうような気がして、
どうしても、本当にどうしても無理だったのだ。
しかしそれは、裏を返せば……
(アタシを惣流と呼ぼうとしたシンジは、
『アタシ』のことを忘れたがっている、ということ?)
どうあっても、アスカの思考はそこに行き着く。
この世界のシンジとは初対面だと思っていた頃は、
そんなこと想像もしなかった。
だが、レイは言ったのだ。
『前の世界から心と体を引き継いでいる、あなたと碇くん』と。
それは、つまり、
(この世界にいるシンジは、あっちの世界でアタシと一緒に暮らした、
あのシンジってことよね)
――そして、確かに、
話を聞いた今になって思い返してみれば、さして考えずとも、
色々と不自然な部分が浮かび上がってくる。
573 :
逆行213:2008/10/05(日) 02:19:20 ID:???
初対面でありながら、自分のことを『アスカ』と呼ぼうとしていたこと。
オーバー・ザ・レインボウを襲った使徒への対応の早さ。
レイに話したというタイムマシンの話題。
……自分のことばかり気にしていなければ、
アスカだってその不自然さに気づけていたはずだった。
今ここにいるシンジが前の世界のシンジであるならば、
当然シンジも前の世界から学習している。
前の世界で失敗したことを、うまくやりたいと思ったことを、
今度こそは成功させようと動き出すはず。
――それは、アスカと同じだ。
アスカは何度も、この世界での行動を、前回の経験から学んで改変している。
小さいことで言えば、
オーバー・ザ・レインボウで風でめくれるスカートを押さえたことや、
大きいことで言えば、
オーバー・ザ・レインボウを襲った使徒を、単独で倒したことなど。
その行動を見れば、その人の望みが見える。
何を望んで、どうして変わったか、それが分かってしまう。
それはもう厳然と、データとしてはっきりと、見えてしまうのだ。
そう。だからアスカは、
「――アンタはアタシじゃなく、ファーストを選んだってことね」
痛みと共に、その言葉をしぼり出した。
574 :
逆行214:2008/10/05(日) 02:20:55 ID:???
シンジの行動で、過去の世界と一番違った部分。
――それは、シンジとレイの関係だ。
シンジが積極的にレイに関わっていかなければ、
そもそもレイと仲違いすること自体なかっただろうし、
その結果としてあんなに親密になることもなかっただろう。
――その一方で、シンジはアスカとは距離を取ろうとしている。
『アスカ』という呼び慣れた名前をやめようとしたり、
自分がレイと仲がよくなったことをずっとアピールしたり、
自然と自分とアスカの仲が、冷え切っていくように……
「バッカらし。アイツにそんな器用なマネ、出来るはずないじゃない」
一言で、その迷走した思考を断ち切った。
――アスカにだって本当は分かってる。
今のは全部、ひがみだ。あるいはただ、混乱しているだけ。
本気でそんなことを考えているワケじゃない。
アスカのことを『惣流』と呼ぼうと決めたのはアスカへの気遣いのため。
レイと親しくなったからと言って、アスカを蔑ろにしているはずもない。
わざと自分とレイが仲良くなったことをアスカに聞かせていた、なんて、
あの鈍感なシンジにあっては妄想もいい所だ。
それに、シンジは何度も、アスカに歩み寄ろうと努力していた。
――だから、シンジがアスカを遠ざけたいと思っているなんて、全くの勘違い。
自然と、そういう結論になる。
「でも……」
そう、思うのに、そう考えているのは、決して嘘ではないのに……。
575 :
逆行215:2008/10/05(日) 02:22:13 ID:???
なのにこうして、不安に押し潰されそうになっているのはなぜだろうか。
おそらく以前の自分なら、鼻で笑って一蹴出来たはずのことが、
今はもう出来なくなっている。
「……アタシ、弱くなってるのね」
つぶやくが、しかし、それも当然だった。
――サードインパクトの後。
長いシンジとの二人だけでの生活でようやく獲得し、
取り戻した精神の平衡は、あの赤い海の中で粉々に砕かれた。
それでもこの時代にやってきてから、
バラバラになった心を偽りの目的意識で奮い立たせ、
前だけを見つめて、癒えない過去を振り返らないようにして、
自分を騙して進んできたのに……。
(いきなりこんなこと、急すぎるのよ…)
組み上げようとした心の基盤の、その根底を崩された。
すぐには立ち直れない。立ち直ったフリすら出来ない。
シンジに本当のことを聞かない限り、そこから一歩も進めない。
だが、そう思えば思うほどに、シンジが自分を必要としていないという予感、
いや、不安が込み上げてきて、アスカの行動を縛る。
(前にしか道はない。それを分かってるのに……)
――なぜ、自分はこんなに弱くなってしまったのか。
問いかけではなく、ただの愚痴として心の中でそう漏らし、
頭を抱えた、その時、
「アスカ、あんまり思いつめない方がいいよ」
まるでその心を読んだかのようなタイミングで、シンジの声がかかった。
576 :
逆行216:2008/10/05(日) 02:24:07 ID:???
「えっ…!?」
あまりのタイミングに、もしや自分の心が生んだ幻聴かもしれない、
と瞬間的に思ったが、もちろんそんなことはなかった。
驚いて顔をあげたその先、アスカのすぐ近くに、シンジの顔があった。
「え、あ…?」
周りを見渡してみると、もうとっくに授業は終わっていた。
考えごとに熱中しすぎて、気づかなかったようだった。
「な、なによアンタ。学校ではあんまり話しかけてこないでって言ってるでしょ」
動揺を隠すためと牽制のため、ついキツイ言葉が漏れる。
というより、学校ではあまり話しかけるな、ということ自体、
少なくとも『この世界』では言ったことがない気がしたが、
出てしまった言葉は止められない。
それを聞いてシンジは、
「それは、ごめん。すぐ、行くから。……でも、」
言葉の通り、アスカの机から体を離して、
「アスカが何を隠しているかは知らないけど、僕は、アスカの味方だから……」
そんな言葉を言い残して、自分の席に戻っていった。
「…………」
シンジの残した爆弾のような言葉に、悩みも、
自分の態度を取り繕うことも忘れて、アスカは呆然とする。
――たぶんシンジは誤解している。
アスカの悩みが、前回トイレで話したアスカの秘密に拠る物だと考えている。
そういう意味ではシンジのアドバイスは、ほとんど見当外れで、
――しかし、その一言でアスカの悩みは解決した。
あっさりと、解決してしまっていた。
……今のやりとりで、別段何か状況が変わったワケではない。
あるいは新しい何かが分かったワケでもない。
だが、さっきの一言で心は決まった。
――話そう、と思った。
577 :
逆行217:2008/10/05(日) 02:27:27 ID:???
シンジが前の世界のシンジであっても、そうでなくても、関係ない。
最初から全部、話してしまえばいい。
結局、そうすれば全て解決するのだ。
……色々と考えるフリをして、ただ逃げて、先延ばしにしていただけだった。
答えなど、初めから出ていた。
あと必要だったのは、それを実行する勇気だけ。
そう、それは自分には最後まで足りなかった勇気。
素直になって、ありのままを見せる勇気。
それが出来れば今度こそ本当に、シンジとの間に何かが始まる気がした。
世界が戻ったとか戻ってないとかとは関係なく、
シンジと新しい関係が築けるような気がした。
(……話すわ。今日、絶対に)
密かにそう決意を固め、計画を練る。
大げさな、と思うかもしれないが、さすがにこんな話、
他人のいる前では出来ない。
また、護衛兼監視としてついている情報部の連中もいる。
彼らに話を聞かれるのはどうしても避けたい。
すると、チャンスは……
「放課後、か」
――幸いにも今日はシンジが日直で、帰るのは少し遅くなる。
シンジの性格上、トウジやケンスケを待たせたりはしないだろうし、
それはもちろん、レイについても同様だろう。
その間、自分は他所で時間を潰し、
シンジが学校を出る時にでも偶然を装って話しかければいい。
そうすれば邪魔者は入らない。
仮にどこかで失敗しても次の機会を待てばいいだけで、こちらにリスクはない。
「うん。我ながら完璧な計画ね」
そんな軽口まで口をつく。
気持ちが上向いている証拠だった。
578 :
逆行218:2008/10/05(日) 02:30:02 ID:???
放課後。
シンジが一人で教室に残ったのを横目でしっかりと確認し、
アスカもヒカリと別れて職員室へ向かう。
適当な国語の教諭を見つけて、お勧めの漢字の問題集を聞く。
もちろんアスカとしてみれば、
こんなレベルの低い教師に物を尋ねなければならないなんて、
ちょっとした屈辱だが、勉強熱心をアピールして、
教師のポイントを稼いでおいても損はない。
優等生は一日にして成らず、だ。
感想でも聞かれたら厄介なので、
問題集の題名はメモしておく。
これは後でシンジにでも買いに行かせよう、
と密かに決める。
そして、
(……そろそろ頃合ね)
時間を見計らい、教師との退屈な話を切り上げる。
話し込んでいた教師には残念そうな顔をされたが、
これ以上無駄話を聞く気はなかった。
(さて、と。これだけ時間を置けば、いくら要領の悪いアイツでも、
そろそろ終わってるわよね)
よしんばもし終わっていなくても、
シンジが一人きりでいるならむしろ好都合だ。
(見ててじれったいとか何か適当な理由をつけて、
残った仕事をアタシがパッと片づけて一緒に出ればいいワケだし……)
なんてことを考えながら、アスカはとりあえず教室へと向かう。
579 :
6:2008/10/05(日) 02:31:06 ID:???
次、たぶん規制かかるんで、続きは明日……かな?
待ってたぜーーー!!!
乙!急かすのはいかんのだろうが続きが早く読みたい(笑)
待ってました!乙!
たぶん今は6さんしか投下する人がいないから過疎気味なんだと思うけど
俺みたいにロムって巡回してる奴はいるはず
おつ!
エヴァ板ってまとめ的なものがどこのスレも無いのか。
最近エヴァ板に来たばっかだから良く分からんが、何か理由でもあるのかね?
まとめが無くても把握出来るからかと
悲しい事言わすなよ
無いと把握できない奴一人
だってログたどってる暇も無いんだもの
SS系とかネタ系のスレは一応まとめはあるよ
このスレのまとめは作るかどうかまだ決まってないんじゃなかったっけ?
586 :
6:2008/10/06(月) 01:44:51 ID:???
見てる人はまだいるのか。
職人さんは……まあ、俺もさぼってた部分もあるしな。
587 :
逆行219:2008/10/06(月) 01:46:54 ID:???
まずはシンジのカバンを確認しようと教室に向かうと、
折りよくシンジが階下に下りていく所を見つけた。
(なるほど、ついてるわ。これもアタシの日ごろの行いって奴かしら)
辺りにシンジと自分以外の人影はない。
別にここで声をかけてもいいのだが、
(いーえ、ダメね。
それじゃまるで、アタシがシンジを待ち構えてたみたいじゃない。
あくまで偶然、偶然追いついて声をかけただけってことなんだから…)
そう言い訳して、シンジの後をゆっくりと追いかける。
(……言い訳?)
自分の思考に混じった言葉の選択に、言いようのない違和感を覚えながら、
アスカの集中力のほとんどは、シンジに向いていた。
よくよく見ればシンジは、自分のカバンを持っている。
これから学校を出ようとしているのは間違いがない。
(よし。これなら、計画通りね。
アタシがちょっとスピードを上げれば、玄関で追いつく。
そうしたら、全部話して、シンジの話を聞いて…)
そう、考えているのに……、
(何で? 遠くなってる?)
最初にシンジを見かけた時より、シンジとの距離が開いていた。
(シンジが急いでる? いや、違う。
……アタシが、遅れてるの?)
そこで、気づく。
自分が考えているよりずっと、足がうまく動いていない。
それどころか、シンジに追いついて話をすることを考え始めた途端、
進む足の勢いはさらに弱まり、今にも止まりそうなくらいになっていた。
588 :
逆行220:2008/10/06(月) 01:55:29 ID:???
自分の思い通りにならない両足を、にらみつける。
「……な、」
その目に映った自分の両足は、かすかに震えていた。
……愕然とした。
(びびってるっていうの? このアタシが?
たかが、シンジと話をするくらいのことを?
――冗談じゃないわよ!)
最後に残った意地がアスカに呪縛を破る力を与えた。
すくむ足を意志の力でねじ伏せ、まるで怒っているような大股で、
ほとんど走るくらいの勢いで玄関へ。
バクンバクンと心臓は無意味に早鐘を打ち、呼吸が苦しくてたまらない。
吸っても吸っても酸素が足りなくて、それでもいくら息を吸っても、
それが満たされないことは心のどこかで分かっていた。
一歩一歩、歩みを進める度にその苦しさと重みは増していき、
だがアスカはそれを精神の昂揚のせいだと説明付ける。
――玄関までは、あと少し。
あと少しで、着いてしまう。
知らない内に、手に汗がにじんでいた。
「ええい、情けないわよアスカ!」
そんな葛藤を、無鉄砲なプライドだけで打ち破り、
「……いた」
――見つけた。
幸いにも、シンジはまだ下駄箱の前にいた。
見慣れた制服の背中に向かって、
「あ、シン…」
そう、声をかけようとして、
「なん、で…?」
――今度こそ、足が、凍った。
589 :
逆行221:2008/10/06(月) 02:07:21 ID:???
その場に足を縫いつけられたように、アスカは一歩も進めない。
ただ、目の前に広がる光景を前に、呆然とつぶやく。
「どうしてよ…」
アスカが逡巡した、ほんの数秒の間に、
「なんでアンタが、そこにいんのよ…」
シンジの横には、別の人影。
そこには、
「なんでそこにいるのよ、ファースト!」
――そこには、レイが立っていた。
「なん、で…!」
どうしても抑え切れず、アスカの口から同じつぶやきが漏れる。
何が起こったのかくらい、もちろんアスカにだって分かる。分かっている。
玄関でレイがシンジを待っていたという、言葉にすればただそれだけの話。
だが、それでも『なぜ』という言葉が脳裏から離れないのは、
それが信じがたい事実で、信じたくない真実だから。
――なぜならそれは、今まで一度だって他人の都合を気にしたことのないレイが、
シンジのために時間を使ったということ。
ただ、シンジと一緒に歩くというだけのために、わざわざずっと、
こんな場所でひたすらにシンジを待っていたという、その……。
590 :
逆行222:2008/10/06(月) 02:27:27 ID:???
「――ッ!」
その時突然、レイが振り向いて、アスカの体が硬直する。
――見られた!
その視線の動きに、アスカは確信する。
屈辱と羞恥に顔が赤くなる。
しかしレイは、それからアスカについて何の反応もしはしなかった。
まるでそこに誰もいなかったかのように、ただシンジに向き直り、
そしてレイは、アスカの見ている前で、
――アスカがいるはずだった場所に立って、
――アスカが思っていたように話をして、
――アスカが望んでいた通りのシンジの笑顔を受ける。
そして最後まで、アスカのことは意識にものぼらせぬまま、
ただシンジに向けて『行きましょう』とレイの口が動く。
シンジがうなずき、そして、
「……ぁ」
並んで歩くその小さな手に、シンジがそっと、手を伸ばす。
数度、シンジの手はためらうようにレイの近くをかすめ、
それを受け入れるようにわずかにレイから手を寄せて、
そこで、二人の目が合って、どちらからともなく、
二人、まるで示し合わせたようなタイミングで手を触れ合わせる。
それでもその手はまだ躊躇って、シンジがレイの指の先を包むように、
じれったいほど控えめな、淡い結びつきをようやく作る。
それでそのまま、手をつないだまま二人は校舎の外へ歩き去って……
キター(・∀・)
592 :
逆行223:2008/10/06(月) 03:01:57 ID:???
「……ゆるさ、ない」
ただ立ち尽くすだけだったアスカの口から、ぼそりと言葉が漏れる。
(――行くのよ、アスカ!)
自分を叱咤する。
――他の、何が許せても、自分を無視することだけは、絶対に許されない。
嫌われても、遠ざけられてもいい。
けれど、まるで自分を、いない物のように扱うのだけは、絶対に…!
「許しちゃ、いけないのよ! アタシは…!」
そう声をあげて、アスカは――
……穏やかで、幸せそうな二人の空間に、割って入る。
ずんずんと、二人に向かって進んでいき、
「アンタたち、まだこんなトコにいたワケ?
もうとっくにNERVに着いてるかと思ったわよ」
手をつなぐ二人に無神経に声をかける。
それで二人の間の甘い空気なんて一瞬で吹き飛んで、
「なぁんて。さっきの、見てたわよ。
ずいぶんとアッツアツじゃない」
そんなことを言いながら、あいかわらず無表情なレイと、
狼狽するシンジの間にムリヤリに体を割り込ませる。
それで二人の仲が変わるワケではなく、だが少なくともそこにはもう、
二人の間に広がる特別な雰囲気などない。
「ああそうそう、シンジ。アンタに後でちょっと相談があるんだけど…」
だからアスカはそこで、自分から一歩を踏み出して……
――なんてこと、出来るはずもなかった。
593 :
逆行224:2008/10/06(月) 03:03:06 ID:???
前になんて、一歩も進めないまま、
楽しげな二人の姿を、直視することすら出来なくて、
現実のアスカは、ただ全てに背を向けて、
逃げて、隠れて、
追われるように逃げ込んだ教室の陰で、
震えながら膝を抱え、
何も出来ずにうずくまっていた。
そして、
「……ちく、しょう」
抱え込んだ膝の上に、悲しみの欠片がぽつりと落ちた。
594 :
6:2008/10/06(月) 03:04:14 ID:???
以上。短いけどここまでで。
手直ししまくってたら何か恐ろしい時間に…。
寝よう。
次回は出来たら次の週末くらいに。
乙
あせらなくてもいいからさだ○もとの様にはならないで
伏せ字になってない件について
さだ☆もと
ちょwwwww
久々に創作発表板行ってみたけど既に過疎気味だ
エヴァ系無いよね?
エヴァは専板あるんだし、基本はこっちで書くもんだと思うぞ
602 :
6:2008/10/13(月) 11:53:10 ID:???
>>595 寧ろ富樫と為るも貞本と為るなかれ、ってことだな。
……いや、富樫もどうかと思うが。
スマンが余計な加筆してただけで全然書けてない。
でもほんの少しだけ投下。
603 :
逆行225:2008/10/13(月) 11:56:52 ID:???
――シンジは困惑していた。
昨日から、アスカの様子がどうもおかしいのだ。
何が原因なのだろうかと、少し思い返してみる。
……そういえば昨日は、学校にいる時から何かに気を取られているようだった。
特に一度は、授業が終わったにも関わらず席に座ったままぼうっとしていて、
迷った末に思わず声をかけてしまったくらいだ。
とはいえ、シンジとも何度か話をしたし、多少ぎこちなかったものの、普通に会話が出来た。
今までのぎくしゃくした付き合い方を思うと昨日はうまくいっていた方だったはずだ。
――決定的な何かがあったとすれば、たぶん授業が終わった後。
放課後、シンジは日直の仕事を終え玄関に行くと、驚くべきことにレイが待っていてくれた。
今思うと、ただシンジが日直だということを伝え忘れていたせいなのだろうが、
その時のシンジはすっかり舞い上がり、まだ校内だというのに手をつないでしまったりもした。
……まあそれは恥ずかしかったので、校門を出る前に人目を感じてすぐに離してしまったが。
なんにせよNERVへの道中、シンジはレイとぽつりぽつりと会話をしながら歩いていた。
会話をしていると言っても、話をするのはもっぱらシンジで、
レイはそれに対し一言二言コメントをするという程度。
シンジはレイがそういう性格だと分かっていたし、
この会話を楽しんでいるようだというのも雰囲気で分かったが、
傍から見ればシンジがよっぽど舞い上がっているように見えただろう。
604 :
逆行226:2008/10/13(月) 11:58:56 ID:???
だが、ふとした拍子にアスカの名前が出て来た時だけは違った。
「……セカンド」
「え?」
「最近、なにかあった?」
今まで寡黙に相槌を打つだけだったレイが、少しトーンの違う言葉で応じたのだ。
そしてその後、
「アスカのこと? どうして?」
「…いいえ。ただ、昨日すこし様子がおかしかったから」
事情を聞こうとしたシンジに対し、そう突き放すように会話を終わらせたのを、
シンジははっきりと覚えている。
その時レイが口にしたアスカについての言及はそれだけで、
「やっぱり昨日、屋上で何かあったの?」とシンジが尋ねても応じなかったのだが、
少なくとも、レイが気にするほどにアスカの様子はおかしかったということだ。
――結局、レイからアスカのことを聞き出せないままNERV本部に着いて、
シンジは先に学校を出たはずのアスカがまだ本部にやってきていないことを知った。
そして、シンジとレイからたっぷり三十分は遅れてやってきたアスカは、
その時からもう、ひどく様子がおかしかったのだ。
605 :
逆行227:2008/10/13(月) 12:00:14 ID:???
放課後になってから、アスカがNERV本部にやってくるまでの数十分。
この間に何かが起こったとしか考えられない。
(空白の数十分、か。……その間、アスカに一体何があったんだろう。
もし僕がアスカの異変に気づいていたら、何か変わったのかな?)
つい、そんなことを思ってしまう。
しかし、現実にはシンジは、その時どこかでアスカが悩んでいることも知らず、
レイと二人きりで歩けることに胸を躍らせ、喜んでいたのだ。
そんな自分の能天気ぶりが今は憎らしい。
(もちろん、アスカの悩みは僕には関係ないかもしれないけど、
でも、少しくらいなら相談してくれたっていいのに……)
部外者だからこそ客観的な判断も出来るし、話すことで楽になる悩みもある。
だから、
(少し強引にでも迫って事情を訊いてみようか)
そんな風に思って、実際、朝は声をかけたのだが、
「……朝からうるさいのよ、アンタは。
少しでもアタシのことを思うなら、その口閉じててくれる?」
不機嫌そのもののアスカにシンジは思わず鼻白み、
「待ってよ、アスカ! 何か事情があるなら…」
それでもあきらめきれずにアスカを引き止めようと腕をつかむと、
「さわんないでよ!」
ヒステリックな声と共に、つかんだ手がすさまじい勢いで振り払われて、
「『アスカ、アスカ』って、アンタ、キモチワルイのよ!
みんながみんな、アンタに手を引かれて喜ぶなんて思わないでくれる?
少なくともそんなの、アタシはぜっったいにゴメンだわ!!」
手酷い罵倒の言葉を残して、アスカはシンジの前から駆け出していった。
606 :
逆行228:2008/10/13(月) 12:01:28 ID:???
あれから数時間経った今でも、その時のことを思い出すと心が痛む。
アスカからのあれほどの拒絶は、シンジにとっても久し振りだった。
教壇から聞こえる教師の平坦な声を聞き流しながら、
「……僕はまた何か、失敗、したのかな」
シンジのことなど眼中にないように、一心に黒板を眺めるアスカを盗み見る。
――アスカに何か秘密と悩みがあることは分かっている。
そしてその解決に、シンジはおそらく役には立たないだろうということも。
きっとアスカは何か大きなトラブルを抱えていて、
そのせいでシンジに関わっている余裕がなくなっているのだろう。
(それでも……)
シンジはもう一度、アスカと話をしてみようと決意をした。
――だって、困った時には他人を頼れと言ったのも、
レイに拒絶され、臆病になった心に喝を入れてくれたのも、
全部アスカだったから。
(だから、アスカ。僕は、あの時のアスカの言葉通りにするよ。
もう一度、君にぶつかってみる。……その結果が、たとえ拒絶だとしても)
――そうして。
チャイムが鳴り、教師が授業の終了を告げると共に、シンジは立ち上がった。
607 :
6:2008/10/13(月) 12:06:17 ID:???
以上で。
本当はもっとすんなり行くはずだったんだが、直してる内に長くなって、
さらにそのせいで先の展開も直さなくちゃいけなくなって、の悪循環。
でもまあ、次はたぶん近い内に。
乙!!!!!
その日はマンションを出る前に確かパッヘルベルのカノンを聴いていたはずだ。
とても緩やかな曲なので、
落ち着きたい気分の時にこの曲を選ぶことはよくあった。
日曜の、まだ朝早く人影も鳩の姿も無い住宅街の近くにある公園のベンチで、
青いジャージを着て自分は一人ベンチに座って待っていた。
公園の時計が5時を指して、黒色のジャージを着た初老の男がこっちに走ってきて、
その男は雨でも無い限りは、日曜日にはこの公園に殆ど必ずジョギングに来ているのを、
毎週確認していたので知っていたし、だから今までここで待っていた。
その男は、眼鏡はかけていたが、
年の割には浅黒く日焼けした肌をしていて、特に太ってもいなかったので、
不健康な感じがあまりしないのだった。
その男が眼鏡越しにこっちをちらりと見て、そのまま走り去っていく。
自分は、男が少し離れたところで、
ベンチの傍に停めておいたステンレス製の折りたたみ自転車に跨ると、
左手をポケットに突っ込んだままペダルを漕いで前進する。
男の背中が間近になって、自転車のベルを二度鳴らし、男に自分の存在を知らせてやった。
男が立ち止まってこちらを振り返る。
自分も自転車のブレーキを引いて止まると、
小さな拳銃を握った左手をポケットから出して、男の顔面に銃口を向けた。
男は目を大きく見開き、鼻をヒクヒクと動かしていて、
そのために顔には奇妙な皺が浮き出ていたので、きっと、こんな風な顔が、
鳩が豆鉄砲をくらった様な顔というんだろうなと思いながら、人差し指を少しだけ動かして引き金を引いた。
銃弾は眼鏡のレンズを貫通して、右目から男の頭の中に突っ込んでいき、
男は右目から血を噴出させると、地面に向かってうつ伏せに倒れこんでいった・・・・・・
鈴木ケンジはシートに背中を預けながら、イヤホンでパッヘルベルのカノンを聴いていた。
意識は虚ろであり、それは多分酒が弱いくせにウィスキーをストレートで一気に呷ったのが原因だろうが、
そういう状態の時に、無意味に過去のことを思い出してしまうのはケンジにとって特に珍しいことではない。
倦怠感が徐々に眠気へと変わってきていき、
ケンジは眼を閉じて睡眠への準備を少しずつだが整えていった。
「すいません、これ、どうやって使うんですか?」
隣のシートから、女の声で突然話しかけられたので、
ケンジは眠気眼で、気だるそうに声の方向に顔を向ける。
隣の席には、青色と白色をしたどこかの学校の制服を着た雀斑の女の子が、
恐縮そうな顔でこちらを見ていて、その女の子はどうやら、
客が旅客機に乗っている最中に退屈しないように、音楽や映画やビデオゲームのできる、
前列のシートの背中についている端末の操作の仕方がよく分からないので、
その端末でパッヘルベルのカノンを聴いているケンジに使い方を教えて欲しいようだった。
ケンジは、映画を観たいの?それともゲーム?、と尋ねて、
女の子は、映画を観たいです、と少し小さな声で答えたので
ケンジは女の子の席の前にある端末の液晶画面に眼をやると、
画面には簡体字が並んでいて、どうやら使用言語が普通話になっているようだった。
ケンジが画面の右下の隅にある、日本語、と書かれた部分に触ると、
瞬時に画面の中の言語が日本語に変わったので、女の子は小さく、あっ、と驚きの声を上げた。
ケンジが、これで大丈夫?、と女の子に聞くと、
女の子はこんな簡単なことが分からなかったのが恥ずかしいのか、
少し焦りながら、ありがとうございます、と礼を言った。
眠りたかったので、
それに対して特になにも答えずにケンジはまたシートに背を預けて眼を閉じようとしたが、
女の子がなぜかまだこちらを見ていて、それから、あの、と声をかけてきた。
ケンジは正直かなり面倒臭かったので無視しようか迷ったが、
この女の子は結構可愛いし、
無視したらかわいそうかな、と思って、なに?、と聞き返してやった。
「あの、あなたはこれから第三新東京市に行くんですか?」
女の子はこの時もやはり遠慮がちな感じで、
はっきり言って遠慮しているなら放っておいて欲しかったが、
ケンジは、うん、そうだけど、と少し我慢して答えた。
そう答えると女の子は急に明るい顔になって、ケンジは嫌な予感がしたが、
しかし女の子はそんなケンジの心境の変化には気づいていないようだった。
「じゃあ私達と同じですね、私達は第三新東京市の第壱中学に通って、今は修学旅行の帰りなんです。」
ああ、そうだね、周りに同じ制服着た子供達が沢山いるからね、
とケンジの答え方はそろそろぶっきらぼうな感じになっていたが、
女の子はそんなことは気にしていないようで、そう、それでみんなで沖縄を回ったんですけど・・・・・・、
とその饒舌さは増していく一方だったので、
ケンジは、空港からはこいつらとは別のルートで第三新東京市に行こう、
と固く誓いながら虚しい相槌を打ち続けるのだった。
まだ導入部だろうから続きに期待だが、
正直読みづらい印象はある
文章下手だな〜w もっと本読んで出直して来い!
雀斑の女の子が笑顔でこちらに手を振ってきて、
ケンジも好意は別に無かったが、一応笑顔で小さく手を振り替えしてやると、
女の子は小さく一礼して、それから空港の出口に向かう中学生の集団の中に入って消えていった。
結局女の子は、せっかくケンジが端末の操作の仕方を教えたのにも関わらず全然映画を観ようとはせず、
旅客機が空港に到着するまでずっとケンジに話しかけ続けて、
そのためにケンジは全く眠ることができなかったのだった。
例え可愛い雀斑の女の子でも、俺が眠たい時にひっきりなしに聞かれてもいない話を仕掛けてくるのは、
不快で疲れるものなんだな、とケンジはまた一つ人生について学習した自分を労う為に、
売店で栄養ドリンクを買うと、出口の近くにあるタクシー乗り場に向かいながら一気飲みした。
一気飲みしている途中ケンジは、そういえば昔、
栄養ドリンクは酸味と臭いがゲロに似ているので飲むと気持ちが悪くなる、
とケンジの妹が言っていて、確かに栄養ドリンクはゲロの味に似ているけど、
俺は何故かあんまり気持ちが悪くならないな、でもさすがに本当のゲロはやっぱり飲みたくないな、
と殆ど何の意味も無い確認行為をしながら、タクシー乗り場が見えてきて、
とりあえず一番近くにある緑色の、
少し太り気味の眼鏡をかけた運転手が乗っているタクシーに乗ろうと近づいていったが、
突然、前方からクラクションの音が聞こえてきたので、ケンジは反射的に素早く腰を屈めた、
突然大きな音がするとケンジは殆ど反射的に腰を屈めて姿勢を低くする癖がついている。
十七歳の頃に黒色火薬を詰めた鉄パイプ爆弾を自作して、
海岸の砂浜で爆発させる実験を友人と一緒にやった時だが、
友人は爆弾の導火線に点火して投げると素早く地面に伏せたのに対し、
その隣でビデオカメラを使って撮影していたケンジは、伏せると撮影し難くなるし、
それに小さい爆弾だから大丈夫だろ、と思ったので立ったまま撮影していたら、
爆発した鉄パイプ爆弾の破片が右肩に突き刺さって、
薄手の緑色のTシャツはドクドクと流れ出てくる血で赤く染まっていき、
酷く痛い思いをした経験があった。
それからというもの、ケンジはとりあえず何か大きな音がすると姿勢を低くする癖がついていて、
例えば中東で初めて射撃場に行った時も、銃声がするたびに身を屈めていたので、
何をやっているんだお前は?、と怪訝に思った警官に不審人物と間違われたことがあった。
クラクションの音がした方向に顔を向けると、20メートルくらい離れたところに黒色のタクシーがあって、
そのタクシーの窓から灰色っぽい髪の毛をしたショートヘアの女がこちらに向かって手を振ってきていて、
ケンジは、なんだあいつは、キチガイかな?、と少し怖くなったが、
女がこちらに手招きしているので、歩み寄ってみることにした。
もしあの女がキチガイだったとしても、それはそれで何か面白い思い出話しになるかと思ったからだ。
ケンジがタクシーに近づくと、タクシーの行灯には、個人、と書かれていて、
乗っている女の容姿も段々とよく見えてきた。
見たところ女は歳は二十代前半か中頃くらいで、肌がとても白く、
服装はスーツではなくて、黒いショートパンツに赤色のジャケットを着ており、
眼にはサングラスも着けていたので、とてもタクシードライバーには見えないのだった。
「このタクシー、乗ってかない?」
女はいきなり、ケンジにまるで中国人の女の呼び込みの様に馴れ馴れしい感じで話しかけてきて、
それでケンジは少し戸惑ったのだが、しかしどうやらキチガイでは無いようなので少し安堵した。
ケンジは女の顔を少しの間まじまじと見つめながら、いくら?、と一応尋ねてみた。
日本ではタクシーの料金はメーターで計るものだったが、この女は何だか肌が白くて、
白人との合いの子みたいだし、車も少し古いデザインで、
エジプトのタクシーに似ていたので料金交渉することができるかもしれないと直感的に思ったのだ。
「どこまで行くの?」
女が馴れた感じで尋ね返してきたので、どうやら本当に料金交渉ができるようだったから、
ケンジは少しワクワクとした気持ちになった。
料金交渉をするなど日本では滅多に体験できなくて、
それで海外にいたときのことを思い出して、少し懐かしい気持ちになったからだ。
ケンジは、ブルーウォーターホテル、と近隣の市内にあるホテルの名前を伝え、
それを聞いた女は、六千円、とすかさず即答した。
別に女の言い値でも良かったのだが、五千五百円が良いな、と一応冗談半分で値切ってみると、
女が笑顔で頷いて、手招きしたので、ケンジはますます愉快な気持ちになりながら、
タクシーの後部座席のドアを開けて乗り込んだ。
タクシーは空港を出て街中に入ると、途中にある交差点の赤信号で止まる。
タクシーの中はエアコンが良く効いているので暑くはないが、
中に射してくる日光はとても強く、2000年以降からは日本中どこでもそうだった。
セカンドインパクトと呼ばれる大災害が起きたせいだ。
そのころ自分はまだ小学生だったが、学校の帰りの道中で凄い地震があったのは今でもよく覚えている。
「ねえ、おじさんは海外から帰ってきたの?」
女は相変わらず馴れ馴れしい態度で話しかけてくるが、
しかしケンジは全く気にしていない。
それはケンジが寛大な心を持っているとかそういうことではなくて、
単純に女が美人だったからで、ケンジは美人に対してはできるだけ優しく接しなければいけないと考えていたし、
反対に醜い女に対しては大抵の場合、嫌悪感と悪意と希に強い殺意を持って接することを強く決心している男だった。
車の外を眺めていたケンジは、女のいる右側の運転席に顔を向けると、
いや、沖縄から来たんだよ、とできるだけ優しく答えた。
「じゃあ、おじさんは沖縄の人?」
ううん、沖縄には休暇で行っていたんだ。
「静岡には何で来たの?」
本当はね、静岡に来るのが目的じゃなくて、
仕事で第三新東京市に行くのが目的なんだけど、
ほら、東京が水没しちゃったでしょ?
だから、第三新東京市に行くためにはこっちの空港を使わないとダメなんだよ、
めんどくさいよね、ところで、
第三新東京市っていうこの名前を言うのも何だかめんどくさいと思わない?
「アハハ、おじさんって変だけど面白いわね。」
そうかな、まあ実はよくそう言われるんだけど、そんなに面白い?
そういえばお嬢さんは静岡の出身なの?
「ううん、違う、もっと遠いところ。」
そうだろうね、俺の友達には静岡の出身の奴がいるけど、
なんか話し方の発音が違うもん、訛りが全然無いし、
もしかして第三新東京市の出身かな?
「それも違う、ところでおじさんはさっき仕事で第三新東京市に行くって言ってたけど、
おじさんは一体何の仕事をしているの?」
何の仕事をしているように見える?
「うーん、普通のサラリーマンみたいには見えないし、ちょっとヤクザみたいな感じするけど・・・・・・」
結構良い線突いてるね、やっぱりタクシードライバーは色んな人と話す機会が多くなるから勘が良くなるんだろうね。
「それで、本当は何の仕事をしてるの?」
女はケンジの独特の雰囲気に何か好奇心を持ったようだが、
しかし、ケンジは女の質問には答えずに笑って誤魔化した。
ケンジは少し前までは、日本の左派的な政党である社会党に雇われていた探偵で、
社会党と敵対する他の政党の秘密を探って、
例えばそのネタを新聞社や週刊誌の記者に流して暴露させて、敵対する党のイメージを落としたり、
敵対する党に所属する議員をそのネタでもって脅して、社会党の要求を飲ませたりしていた。
別に社会党が好きだったからやったわけではない、
単純に接触しやすくて、資金力も丁度良いくらいに持っていたからだ。
ケンジによって暴露されたネタで自殺した人間も4、5人位出たが、
しかしケンジはそのことには大して罪悪感はなかった。
自分は仕事でやっただけで、別に悪気はなかったし、
自殺する以外にもそいつらには選択肢があって、
単純に自殺した奴は自殺したいと自分で思ったから自殺しただけで、
別に自分には関係ないとケンジは思っていたのだった。
ケンジがそういう法やタブーを犯すことをあまり躊躇わない仕事のやり方が、
知り合いの社会党の幹部の興味を引いて、その幹部が自分と繋がりのある企業を紹介してきて、
その企業の方が金を沢山払ってくれたので、今はその企業で昔と同じように他人の秘密を探っては、
その情報を色々なことに使う仕事をしている。
ただ、つい最近少し面倒なことになったので、
いつもとは違う仕事をしたのだが、しかし今はもう何も問題は無かった。
タクシーが何だか人気の無い、裏路地に入り始めていることに気づいたケンジは、
変だなと思って、女に、こっちの方向であってるのか?、と尋ねた。
女は、もうすぐ着くから、と前を向いたまま答えて、
ケンジはこの辺りには土地勘が無かったので、多分、この時間帯は表の方は混むから、
裏道を通って近道するということかな、と考えながら、
スーツの上着の内ポケットから鰐皮のシガレットケースを取り出すと、
中から煙草を一本出して口に咥えて火を点けた。
「おじさん、この車禁煙だけど。」
そう言えば、日本ではあまりタクシーに乗ったことが無かったから忘れていたけど、
タクシーの車内禁煙が最近酷く進んでいると言うニュースをテレビで見たことがある。
ケンジは小さく舌打ちして、硬いこと言うなよ、と女に言ったが、
女はいきなりサイドブレーキをかけて車を止めると、こちらに振り向いてサングラスを外した。
真っ赤な二つの瞳がこちらをじっと見つめてきて、
ケンジはその瞳があまりにも綺麗だったために息を呑んで、体が全く動かなくなっていた。
女は突然悪戯っぽく笑うと、何故かジャケットの懐に手を突っ込む。
「ダメ、罰として死刑。」
女が懐から手を出すと、銃口に減音器が取り付けられた小さな拳銃が握られていて、
それでケンジの胸に殆どくっ付きそうな位にピタリと狙いをつけると、
女が引き金を引いて、撃鉄が落ちて、銃口から銃弾が飛び出し、
その銃弾がケンジの胸を抉る様に突き進み、それから銃声が鳴ったのだが、
しかしケンジには、パチッ、と言う電気がスパークするような銃声が先に聞こえてから、
次いで全身を銃弾が命中したことを原因とする電撃のようなショックが襲い、
それか体中の力が抜けて、シートに仰向けに倒れこむという現象が起きたように感じられた。
女は相変わらず笑顔のままこちらを見下ろしている。
胸からは鮮血が心臓の鼓動とともにドクンドクンと噴出して、
ケンジの視界は少しずつだが暗くなり始めていた。
ケンジは、このまま全部真っ暗になったら、とても恐ろしいことになるぞ、
と本能的に感じたので、一生懸命眼を大きく見開いたのだが、
しかし何故か視界が暗くなるのは一向に止まらず、どうしてこんなに眼を大きく開けているのに暗くなっていくんだ?、
とケンジは不思議に思ったが、それは死が迫っているということだと理性的に気づいたときに、
どうしようもないくらいの焦燥感が全身を支配して、それから、畜生何てことだ、と悔しさと絶望感が頭の中にどんどん溢れ出してきたが、
しかしもう何もかもが手遅れで、ケンジの視界は完全に闇で埋め尽くされてしまった。
〜で、〜が、とか文を繋ぎ過ぎで文章として変なのがいっぱいありすぎ
一文が長すぎるんだよな
自分で推敲していて、読みづらくないのかな
確かに一般的な小説でも、一文に一行と半分など、長い文章を書く方も居る。
だが、その場合はおうおうにして句読点が少なくしてあるので読みやすいことが多い(精々一〜三個かな?)。更に言えば、短い文章もそれなりに多くて読みやすくなっている。
大変厚かましく恐縮ではあるが、今回の職人の文を私が少し直してみる。
>少し前までケンジは、探偵として、左翼政党である社会党に雇われていた。
>社会党と敵対する他の政党の秘密を探るのが主な仕事だ。
>例えば、そのネタを新聞社や週刊誌の記者に流して敵対する党のイメージを落としたり、
>所属する議員をそのネタでもって脅して、社会党の要求を飲ませたりしていた。
>別に社会党が好きだったからやったわけではない。
>単純に接触しやすくて、資金力も丁度良いくらいに持っていたからだ。
更に、
>敵対する
と言う語も一文の中に二度出ているのも読みにくい。
同じ文をだすなら、他の文章に別けて出した方が違和感が無いと思う。
それに、
>左派的な政党
よりも、せっかく左翼とかいう言葉があるんだから、こっち使ったほうがすっきりするのでは?
まあ個人的な意見だから、耳八分くらいにして聞いてくれや。
ていうか、なんかコピー元にしてる小説でもあるんじゃないの
印刷物は丸打ち込みしかないんで
小難しい言い回しや書き方がそのまんまになる割に
コピーしてる人の文章の悪さがそのまんま出ちゃうんだよねえ
ていうか、エヴァに何の関係もなさそうな内容についてツッコミは無しでいいのか?
話にも流れがあるだろ。
確かにこの先の話の流れ次第だが、エヴァ本編の世界や人物を使ってエヴァと
関係ない物を表現すると大抵ひんしゅくを買う気はする
それエヴァじゃなくていいじゃん、と言われるわけだな
ノンジャンルだから原則なんでも落としていいんだが、
投下していいっていうのと、評判がいいってのはまた別の話だし
まあでも、俺はこの文体好きだぜ
この文体好きってのは無理があるな
闇の中での孤独。
なぜかケンジは死んだはずなのに、
その闇の中では僅かだが意識があって、
意外にもその闇の中は暖かくて心地が良かった。
この心地良い闇の世界は何かに似ている。
多分それはケンジが生まれる前の、
或いは母胎の中にいた頃の記憶がそう思わせているのかもしれない。
しかし、どこかから煩わしい音が近づいていた。
その煩わしい音はケンジを無理やりにこの心地良い世界から、
何か得体の知れない恐怖で満ちた場所へと引きずり出そうとしている。
ケンジの残り僅かな意識はその音に対する不快感と拒否感で満たされていく。
だがその音はどんどん大きくなって無理やりにケンジを外に引き摺り出していった。
ケンジは泣きたかった、まるで赤ん坊のように。
「お客さん、着きましたよ。」
徐々にだがはっきりとしてくる視界。
周りの風景はぼやけてはいるが、何となくここは車の中だということが分かった。
「お客さん、ホテルですよ。」
前方、運転席に座る少し太り気味の眼鏡の男が前を向いたままケンジに声をかけてくる。
あの女はどこに行ったんだろう、そう心配しながらケンジは車内を見回すが、
あの赤い眼をした女はどこにもいない。
ケンジは少し頭の中が混乱していたので、状況を把握しようと努力しはじめた。
何時でも何処でも状況を把握するというのは大切なことだ。
状況を把握できないと、状況に流されてしまうばかりになって、
そのうち流れに飲まれて溺れ死んでしまう。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。
それら全てを動物的本能で駆使してケンジが得た結論は、
よく分からないが本当は俺はこの太り気味の運ちゃんのタクシーに乗っていて、
あの赤い眼の女は俺が眠っている間に見た夢だったんだ、と言う納得だった。
「お客さん、ホテルに着きましたよ。」
デブ未満の運転手が相変わらず前を向いたまま無愛想に話しかけてくるので、
ケンジは少し不機嫌になって、うるせえなあ、と怒鳴り返しそうになった。
「いくらだよ?」
怒鳴るのを我慢して、精神状態を不機嫌に抑えたままケンジが無愛想に運転手に訊き返す。
運転手は、五千五百円です、と答えて、
その五千五百円という金額に何かを思い出しそうになったが、
しかしすぐにどうでも良いと思って財布を出した。
あの夢のことを思い出しそうになったからだ。
丁度五千五百円を渡してからケンジは、釣りはいらねえよ、と試しに冗談で言ってみたら、
運転手が無視したので益々不快な気持ちになったてきた。
こんな奴がいるから日本のタクシー業界はダメなんだ、
と特に知りもしないタクシー業界のことを頭の中で罵りながらケンジはタクシーを降りる。
ホテルのエントランスに向かう途中、空が妙に薄暗いことに気がついて腕時計を見た。
Gショックは17時39分を表示しており、
確か空港に着いたときはまだ昼を過ぎたばかりだったはずだ。
これは間違いない。
なぜならあのゲロ味の栄養ドリンクを買った時に売店の中の時計を見ていたからだ。
しかしそれなら俺は結構な時間タクシーに乗っていたはずだから、
五千五百円だけで済むはずが無い、そう考えながらケンジは頭を捻ってみたが、
一向に結論が見つかりそうに無かったので忘れることにした。
そんなことを考えるよりも、
早くホテルにチェックインしてデリバリーヘルスを頼む方が先決だからだ。
だが、ここで最も重要なことがある。
それは沖縄と北海道の連中にだけは警戒しなければならないということだ。
沖縄でもデリバリーヘルスを頼んだことがあったが、
一度頼んだだけでもう二度と頼む気分にはなれなかった。
沖縄は昔太平洋戦争の時に激戦地になって、
そして戦争が終わった今も住民はアメリカ軍によって奪われた土地を取り返すために、
辛く苦しい戦いをしているから感動したとかいう理由ではない。
呼んだ女の体臭が酷い臭いだったからだ。
沖縄と北海道の人間は老若男女を問わず比較的高確立で酷い体臭の奴がいる。
だがそれは差別でも何でもなくて、
科学的に沖縄と北海道の人間は体臭が酷いという結論が出ているのだ。
あいつらのアポクリン線が原因で、
なぜかあいつらのアポクリン線は酷い臭いの体液を今日に至っても進化を止めたまま排出し続けていたのだ。
その生命の神秘はケンジを発狂寸前に陥らせ、
沖縄人のパンパンを何度も蹴り飛ばさせるくらいには筆舌に尽くしがたいほどの臭いだったので、
ケンジは二度と沖縄人の女を抱こうとは思わないのだった。
それに折角会社の金で良いホテルに泊まれるのだ、
なのに自腹で呼んだ女が酷い臭いだったりしたら本当に嫌な気分になる。
デリバリーヘルスに電話をかける時には、
北海道と沖縄の女は嫌だということを強く伝えておかなければ行けなかった。
なにしろ明日はキチガイに会うので、
疲れを残しておくわけにはいかないからだ。
そいつとは電話で一度話したことがあるのだが、
あまりにも非常にヒステリックな話し方をしていたので、
一度精神病院でハルシオンとかを貰ってきたらどうだろう、
とアドバイスしたら突然泣き出すくらいにはキチガイな奴だった。
しかし相手がキチガイだからといって仕事をないがしろにするわけには行かないし、
それにこの中々ランクの良いホテルを選んでくれたのはそのキチガイ男なのだ。
男の名前は時田シロウ。
何かこの前仕事で酷い失敗をやらかしたので、クビが危うくなっているらしかった。
普段興味のない投下作品はスルーしてるんだが
これは読んでて不快だな
作者が基地外なんじゃねえかと思うよ
致命的に文章がヘタクソ、単語の使い方も変、なんだよデリバリーヘルスってよ
小説なら女を呼ぶとか他の表現あるだろ、
せめて百歩譲ってもデリヘルだな
キチガイ連呼もうぜえし、とにかく人に読ませる文章じゃねえ
消滅した某スレで本編と全然関係ない、バイオレンス小説もどき書いてた人かねこれは
流石にコレは自分のサイトでやって欲しいわ
つまんないとかじゃなくてもはや不快の域だな
民の総意により貴様の追放を言い渡す!!
今後、一切の投下を禁止する! 逆らえば死刑!! 以上
犬キモい
本当に基地外が書いてたんだな
俺はスルーしたけど、そこまでバッシングする事無いだろうと思いながら文章読んだ
こりゃ叩かれるわ。
なんつーかタイプは全然違うんだが
筆力の衰えが激しくなってからの大薮作品を見るような無残さがある
ラノベ好きな奴は無理だな、コレ
ラノベとか関係無いだろ。何高尚ぶってんだ
>>640 本人乙。お前文章下手すぎなんだよ。中学生より酷いくらいだぜカスが。
口直しに俺が投下しようか? エヴァ関係なしの完全オリジナル短編小説だけどw
ハイハイ犬は帰れ
戌が叩かれてお得意の自演に走ったか
きっと名文を書いたつもりだったんだろうなw
戌はもう吊って氏んだから今荒らしてんのは偽者だよ
ここは魔王軍を指揮する魔王アスカの住まう居城、
黒尽くめの剣士が姿をみせ城への門をくぐると玉座の元へと向かう。
シンジ「……只今帰りました」
アスカ「ぷー」
シンジ「?」
レイ「また陛下が国庫から財源を持ち出されたので
今しがた説教をおこなった所です」
玉座に座る少女は頬を膨らませてクマのぬいぐるみを頭から齧ると
側近のシンジに怒鳴りつける。
アスカ「なによ! たったの10万ギルトスくらい
頑張った自分へのご褒美よ!!」
シンジ「10万て、ほとんど国庫の半分じゃないですか……」
レイ「損失した分は補填する必要がありますので、
近場の街から徴収してきてはもらえませんか?」
シンジはその場で頭を下げ城を出ると、
部下数人を引き連れ近場の街へと収奪に向かう。
魔族の王のアスカによる我侭放題の圧制に
虐げられた民衆が開放される時は来るのだろうか。
みなさんの声援に答えて投下www
容量がそろそろみたいだから次スレ立てようかと思うんだが
くそ〜偽者め…………………
なぜ偽者がこんなにもあらわれるんだ…………………
いつか絶対荒しまくってやるぜ
ネカフェからの無限荒し………ウケケケケケ!!!!!!!!!
まとめ
ラノベは低レベル
犬も低レベル
このSSも低レベル
携帯小説なんぞ論外
保守
652 :
妄想男:2008/10/28(火) 00:43:57 ID:???
part3の方に投下し始めたものです
とりあえずこっち埋めてから向こうを使うことになったんでこっちでやらせてもらいます
とてもうまいといえた物じゃありませんが感想、指摘くださるとうれしいです
653 :
妄想男:2008/10/28(火) 00:44:46 ID:???
「さあ、おとなしく観念しろ!この髭面!」
そう言い放ったのは、異様に長い日本刀を持つ黒髪の学生服を着た少年だった。
彼の周りには、彼が倒したチンピラ風の男達が100人近くは転がっている。
今まさに、この少年は長年非人道的な扱いを息子である彼に続けた上に、その私欲によって人類を滅ぼそうとした、
髭面の中年男に制裁を下すところだった。
「貴様はまだまだ甘いな。シンジ」
男はフッと不敵な笑みを浮かべると、縄で縛られたまだ中学生ぐらいの女の子の首元をつかみ、
これ見よがしにシンジの前に出した。
人質にしようというのだ。まだ14歳であるシンジに、人質の少女を殺す勇気はないはず。
シンジには成す術も無くなったかに見えた、が
「ぎゃあぁぁぁ……!!」
男は断末魔をあげるが、それは声にもならなかった。
男が知覚できないほどの速さで、少年が男の腕を斬ったのだった。
手首から先は吹き飛び、血が宙を舞う。
「哀れだな」
いかなる感情をも映さない黒い瞳をうずくまった男に向けてそれだけ言うと、シンジは少女を大切そうに抱えてその場を後にした。
守るべきものを守ったはずのその背中は何処か悲しみを感じさせた……。
654 :
妄想男:2008/10/28(火) 00:45:32 ID:???
っていうのは、僕の妄想に過ぎないけど――
そもそも僕はまだ中学生であって、あのリアルにチンピラの親分やってそうな190cm以上はあろうかという
親父を相手にするのは無理だっつーの!
プレハブ小屋のベットの上で、ボーっとしていた僕の表情筋がついつい吊り上ってしまう。ニヤニヤ。
何が面白いのかはさっぱり分からないが、表は真っ暗な上に、部屋の明かりを点けてないので非常にキモイ。
何故にあの厳ついオッサンから僕のような、なよっちいのが生まれたのかはFBIや、頭脳明晰の某新世界の神でも分かるまい。
X-FILEだ。世界七不思議だ。謎。
当然僕にも分からない。遺伝子工学の人とかに聞いたほうがよろしい。
しかし、小さい頃から同級生なんかにずいぶんとなめた態度をとられたのも、ひとつはこの容姿のせいもあると思う。
親は厳ついチンピラの崩れで、息子は頼りない印象なんて、実に面白くない。
不愉快になったのでニヤニヤ君もどっかへ行ってしまったようだ。
そんな、中身の無いくだらない生活を少なくとも親に捨てられてからの約10年間続けてきたが、
とうとう、意味の無い、でも平穏がタダで手に入ったこの生活を終わらすことになる。
たった1枚の紙切れのせいで。
655 :
妄想男:2008/10/28(火) 00:46:18 ID:???
ある日僕宛に郵便が届けられた。
ヒジョーに珍しい、つーか郵便なんて小学校の頃の数少ない友達からの年賀状くらいしかない。
ちなみに皆違う中学へ逝ってしまったので、今では永久保存版だ。
感無量とはこの事、とか思いながら開けてみるとその中身は素敵な親父様からの電報みたいな「来い」という文書と
書類にIDカードに、極めつけにはいかにも軽そうなボイン姉ちゃんの写真。
…なめとんのかい親父は。なんだよこの男を誘うために生まれし者的なものは。
こんなえさに釣られるとでも思ったか!?僕はもういい加減中学生なんだよ!
心の中で地団太を踏んでいる僕の顔は胡散臭そーな表情だろう。
そもそも、僕の心は清純な限られた中学女子にしか開かれません。
これは30代とかになっても変える気はさらさら無いので、その内世間様からは弾圧される立場になるだろう。
非常に悲しい。僕の良き理解者はもうこの世には生息してないのだろうか?
656 :
妄想男:2008/10/28(火) 00:47:04 ID:???
『本日12時30分、東海地方を中心とした、関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。
現在、特別非常事態宣言発令のため電話が通じなくなっています。…現在』
「なんのこっちゃ」
今僕は悲しいついでに第3新東京市まで着ていた。僕の家は第2なのでかなりの遠出になる。
が、ヒッキーにはどういうわけか、湯水のように使うほどの時間があるのだ。きっと何かの特典なのだ。
唐突に天才バカ○ンのまねをしてみるが、特別非常なんちゃらが分からないあたりで天才への道は絶たれているっぽい。
乗っていたリニアは止まった上に、駅員ごと町内の皆さんはずらかってしまったらしい。
ビル街の通りで1人ぼっちにされてる光景は異様で、実は親父のたちの悪い嫌がらせじゃないかと疑るほど不気味に思っていた。
まさにその時
「あぁあぁぁ!?」
向こうから幽霊的な女に見られとる!?
アッと驚くという事を体現してしまい、思わず両手を前に突き出す「ヤメテ!」のポーズをとってしまう。
それだけでは飽き足らず、足元からぶん殴られるような衝撃が街中に広がり電線もビルも激しく振動を食らう。
公衆電話に摑まってやっと難を逃れる姿はなんとも情けなかった。
「畜生め!えぇえええ!!?」
素っ頓狂な声を上げてしまったけど仕方なかった。
だって、振り向いて悪態をついたら目の前には山1つはあろうかという怪獣が居たのだ。
怪獣は真っ黒で首から上が無い人型の化け物だった。キモイし、めっちゃ怖い。
「勘弁!!」
すぐさま僕は背を向け一目散に逃げ出すが人の歩幅なんて糞みたいなもので、たった数歩のうちに
目の前に穴あけて火を噴いている家1つ分もあろうかというVOTOL機が目の前に突っ込んできた。
死ぬ!とだけ思った瞬間、青いスポーツカーが物凄い勢いで割り込んできて、奇跡的に僕は助かった。
信じられないと口を開けて唖然としていると、車の姉さんが一瞬にして僕を首からひねりあげて車にぶち込んだ。信じられん怪力。
その瞬間には車は急発進し、体験したことも無いような運転で僕は揉みくちゃにされる。
車内で散々に振り回されながら僕は九死に一生を得たようだった。
657 :
妄想男:2008/10/28(火) 00:47:54 ID:???
「ぼんっどあ゛な゛だは命の恩人でず。葛城さん。本当に、うぅ…」
使徒の予想をはるかに上回る進行によったトラブルのせいででかなり危ういところだったけど
間に合って本当によかった。
目の前の未だに口をパクパクさせてる子を見ると本当に年相応の子に見える。
もっと今どきのすましちゃった真面目君かと思っていたけど無理もない。
実際にあの使徒と居合わせて本当の死をぎりぎりで体験したのだから。
「そのうえあんな爆弾使うなんて狂ってますよ!また本当に死ぬかと思った…」
N2作戦は十分知らされていたのでまあ大丈夫だったけど…
いい加減にため息が漏れてきたが、仕方の無いことだ。
考えてみればこんな年齢の子に本当にチルドレンをやらせるつもりなのか。
レイやアスカは特別な例で、本当はやるべきではなかったのだ。むしろこの姿が本来の子供じゃないか。
そんなことを考えてもいまさらどうにもできないことが解りきっているだけに、
昔からの歯がゆい思いは一向に取れそうも無かった。
658 :
妄想男:2008/10/28(火) 00:50:25 ID:???
「ぼんっどあ゛な゛だは命の恩人でず。葛城さん。本当に、うぅ…」
使徒の予想をはるかに上回る進行によったトラブルのせいででかなり危ういところだったけど
間に合って本当によかった。
目の前の未だに口をパクパクさせてる子を見ると本当に年相応の子に見える。
もっと今どきのすましちゃった真面目君かと思っていたけど無理もない。
実際にあの使徒と居合わせて本当の死をぎりぎりで体験したのだから。
「そのうえあんな爆弾使うなんて狂ってますよ!また本当に死ぬかと思った…」
N2作戦は十分知らされていたのでまあ大丈夫だったけど…
いい加減にため息が漏れてきたが、仕方の無いことだ。
考えてみればこんな年齢の子に本当にチルドレンをやらせるつもりなのか。
レイやアスカは特別な例で、本当はやるべきではなかったのだ。むしろこの姿が本来の子供じゃないか。
そんなことを考えてもいまさらどうにもできないことが解りきっているだけに、
昔からの歯がゆい思いは一向に取れそうも無かった。
659 :
妄想男:2008/10/28(火) 00:58:51 ID:???
重複やらかしたorz
すみません
いいから続きを書くんだ
661 :
妄想男:2008/10/29(水) 00:33:40 ID:???
「冬月、後は頼んだぞ」
そう言うと私はエレベーターを操作して初号機のところへ急いだ。
我々には常に時間は与えられてはいないのだ。使徒が目前まで迫ってきているこの状況で、もう3年も会っていない
息子を説得し、いや乗らせるのだ。そのための茶番は既に自ら用意してある。
そう、これから仮にも自分の息子である子供に行なわれる仕打ちはすべて自ら選んだ。
未だに眠り続けているユイが聞いたらどう反応するだろうか?
少なくとも、自分にはシンジの父親であり続けるのは無理だった。
母親であったユイのことは今だって素直に尊敬できる存在だと思う。
しかし。
ただ、もう一度会いたかった。
662 :
妄想男:2008/10/29(水) 00:34:30 ID:???
僕はミサトさんと、赤木リツコさんという金髪の水着の上に白衣で現れたなんともエキセントリックな女性に付いて
ケージなるところに行くらしい。
ケージってあのウサギとか飼ってるあれかいな。
ぶっちゃけ生き物とか好きじゃないし、このデススターか何かのようななんとも入り組んだ建物も嫌いだ。
仮に鼻水たらして「帰りたいよう」とか言っても、ミサトさん位しか頼れる人がいない。これは絶対抜け出せない。
正直リツコさんはなんか自分の用事を第一に考える、そもそもそれ以外相手にしないわっていう
立ち入りずらい所がある。
「暗いから気をつけて」
といったそばから照明を付けてくれるのもどうなのよ。
「ふぉぉ…」
思わずため息が漏れる。赤いすばらしくでっかいプールがあたり一面に広がってる。
こんだけでかいとこう、丁度ウルトラマンみたいなのを置きたくなってくるもんだ。正義の味方発進〜!
でもこんだけ胡散臭い施設のしかも血のように赤いプールなので、やっぱり化け物面しとるのが丁度いいんじゃないか。
ウルトラマンの顔でも僕は十分怖いような気もするけど。だってあれいかにも人外って顔なんだもん。唇とか。
しかし、まさに今日怪獣に襲われた身としては何でもいいので何とかしてくれる人が是非欲しい。ハヤタ隊員みたく。
実におっかないのでさっさと済ましてもらいたい一心です。助けて!ウルトラマン!
「…これこそが人の造りだした究極の汎用ヒト型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオンよ。これはその初号機」
え、この目の前のSF巨大化け物って妄想の産物とかじゃなかったんだ…。ショック。
どうも僕にはときどき妄想と現実の区別が一瞬できないことがあってよくない。あくまでほんの一瞬。ちょびっとだ。
それにしてもこれはなかなかに信じがたい…。
「碇シンジ君、あなたが乗るのよ」
みんな!ちょっと待って!今赤木さんが何か言った!
663 :
妄想男:2008/10/29(水) 00:35:03 ID:???
「何故に僕がハヤタにならんといかんのですか!?僕、嫌です!」
ありえねえ!クソ。あんなおっかないのとやり合ったらこっちがお陀仏だ!絶対逃げる!
死ぬのだけは嫌だ!あぁ、来るんじゃなかった…。
興奮しかけたところで一気に肩の力が抜けてしまった。僕は死んじゃうのか?
「ちょっと!落ち着いて!」
ミサトさんが肩を揺さぶりながら語りかけてくる。
結局ミサトさんだってそっちの人間な訳じゃないですか。
僕の中では聞く気はまったく存在しない。それでもミサトさんは続ける。
「私たちだって怖いの!でも私たちが全力でバックアップするし、これはあなたにしかできないことなの。
あなたにだけ負担を掛けはしないわ」
嘘だ。じゃなくてもやろうとしてできることじゃないだろそれは。
「そもそも僕にしかできないなんておかしいじゃないですか」
「それに今答える必要は無い」
!?
唐突に聞こえた聞き覚えのある声につい声の方を向く。
そこには3年前と大して変わらないあの親父の姿があった。
3年のブランクを空けなんの心の準備もなしに対面してやや固まったがやはり最初に浮かんだのは怒りな訳で。
「おい!ふざけんなよ!こんな事をするために第3まで来た訳じゃないんだよ!いつもいつもえらそうに…」
「乗れ!早くしろ!乗らないのなら帰れ!」
言葉をさえぎってなお、傲慢に振舞う親父には相変わらず我慢がならない。
3年前だって、僕の言うことは少しだって聞いてはくれなかった。
僕はあの時父さんと決別して違う道を歩み始めたつもりだった。
664 :
電波受信:2008/10/30(木) 00:57:07 ID:???
ある日、シンジが暮らすアパートに、朱色の文字で「Judgement」と書かれた一枚の紙が届く。
それを見つけたシンジがミサトに見せると、ミサトは「何でもないわ。心配しなくていいわよ」
と苦々しげに言うと、その紙を丸めて捨ててしまった。
後日、そのことを綾波に言うと、綾波の家にも「Judgement」と
大きな字で殴り書きされた紙が、一週間ほど前に届いたという。
更に綾波は言った。最近、スーツを着た外国人風の男につけられている気がすると……。
何かが起きている、そしてミサトは何かを知っている。そう悟ったシンジはミサトを問いただす。
ミサトは始め、固く口を閉ざしていたが、遂には知っていることを話し始めた。
「Angel」。使徒をそう呼び、崇めている者達がいるらしい。彼らが言うには使徒は神が遣わした使者なのだそうだ。
今、世界は終末に差しかかっており、来るべき「最後の審判」に向けて、使徒は人間を神の前に導く役目を負っている。
彼らは固くそう信じている。そのため、彼らにとって、使徒を殲滅することは神の意に背く行為であり、神への最大の冒涜なのだ。
しかしミサトは言った。彼らは狂信者であり危険な存在だ。
だがネルフ保安諜報部が威信をかけて捜査、及び危険因子の排除に当たっている。
心配することはない……と。
完全に安心しきったシンジではなかったが、綾波身辺の警護を増強するということもあり、とりあえずは心配が薄れた。
しかし、そんな矢先、綾波が拉致されたとの情報が届いて……!
読んでみたいスレでも池カス
666 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/31(金) 01:03:08 ID:PUeTptEB
小坂めぐるのおっぱい
誤爆
続きが無いようだったら次の話を書き込んでもいいのかな?
だめ。絶対投下するな
えー読みたいよー
投下するときに許可求める奴ってロクなのいないから
今日も、スーパーで2割引の弁当を買い、一部屋の我が家への道を歩く。
あの頃から使い続けている、S-DATを聞きつつ、思い出されるのは……地獄の様な日々。
『ああすれば』『こうすれば』
『ああ言えば』『こう言えば』
幾ら、考えた所で。
幾ら、思い描いた所で。
幾ら、後悔した所で……過去が変えられる訳でも無いのに。
本格的に、思考の闇に堕ち駈けた時、袋に入った夕飯が目に留まる。
2割引で、398円の蟹クリームコロッケ弁当、まあ美味くも無く、そして不味い訳でも無い。
……何時からだろうか、炊事をするのを辞めたのは。
自称保護者が、生きていた三足草鞋の諜報員と結婚すると事に成り、一人暮らしを始めて直ぐだったか。
まあ、自称保護者の剰りの“生活無能力者”振りに、やむにやまれず、身に付いた技術だったのだから、その根本原因との同居が解消されれば、技術の使用目的の大半が消滅するから、まあそんなものか。
その後に転がり込んで来た、自称天才美少女も、大概“生活無能力者”だったが。
何故、あの時点で、あの家を出なかったのだろうか。
どうして、あんな物を、家族と思考停止をしてしまったのだろう。
立ち止まり、頭を振り、溜息を吐いて、空を仰ぐ。
夜空に浮かぶのは、あの時とは比較する必要も無い星空。
静かに見下ろすは満月。
何時とは、少しだけ違う闇に堕ちた思考も、一瞬で浮かび上がり、高一の半ばから過ごして来たアパートの屋根が見える頃には、完全に別の事柄に切り替わっていた。
「 ……ペンペン……元気かな…… 」
取りあえず謝罪してもらおうか
誤字・脱字等、指摘が有ったら宜しくお願いします。
我が家への、階段を昇りつつ。
鳥類の友人の、食生活に、多分の心配をしてしまうが……まあ、元三足草鞋が家事をしていると、潔癖症から聞いていたし心配無いだろうと、もう一度頭を振った。
そう言えば、似非金髪は、未だに髭眼鏡の愛人をしているのだろうか?
三人目だか、四人目も関係している様だが……それも、自分が気にする事では無いだろうと、溜息を吐いて、切り捨てる。
出来れば、同じ歳の異性を母とは呼びたくは無いと、願いながら。
そんな、取り留めも無い事を悩んでいると、何時の間にか自室の前に辿り着いていた。
自室の鍵を開け、引越てから、只の一度も異性を招いた事の無い、一部屋の我が家に無言で、入る。
それにしても、何故自分の周りには、女性関係で問題の抱えている“男”が多いのだろう。
髭眼鏡は、三人目だか、四人目と似非金髪。
元三足草鞋は、引越直後位には、天才少女に、手を出していた様だが………
盗撮眼鏡は、世界各地を転々としながら、各国の女性を妊娠させているとも……
それに変な影響を受けた、似非大阪弁も、元子供達と吹聴しながら、複数の女性と関係をしている様だし。
また、溜息を吐き、蛍光灯を仰ぐ。
毎回、毎回、奥さんと妹さんに相談される身にも成ってくれ…………
そんな事を、考えながら、頭を降り、鬘疑惑の有る、似非紳士の顔が思い出す。
貴方の気持ちが……漸く分かりました………
「面倒事は全て俺か?」
根本的な解決策など、思い付き様も無く、今晩、何度目かの溜息を吐く。
まあ、携帯と家の電話番号を変えるか、最悪、引っ越すのも手か、と、切り捨てる事も考えながら。
冷蔵庫から、買い置きの総菜と、麦酒を取り出し、麦酒を開け、小さな円卓に座ると、留守録の着信が点滅しているのが目に入った。
スーパーで買った、弁当を開けながら、少々思案する。
また、似非大阪弁の奥さんかと。
未婚者に旦那の不倫を相談しても、答えなど出ようも無いのだが…………
まあ、放置する訳にも行かず、用件を再生させる。
機械的応答が流れ、留守録の内容が三件だと告げた。
一件目は、妄想眼鏡の結婚式の日取りの報告。
二件目は、予想通りの似非大阪弁の家庭相談。
三件目は、盗撮眼鏡の帰国報告と、酒宴への誘い。
いい加減に、癖に成りかけている溜息を吐き、“噂をすれば陰か”と頭を振る。
そう言えば、鉄板少女は、あの後暫くしてから、戦自の佐官に拾われて、結婚したと聞いたが。
ふと、過去の淡い思いを想い出し……あの頃は本当に子供だったな、と自嘲が浮かぶ。
そんな時、沈黙した筈の、電話機から呼び出し音が鳴り響いた。
受話器を取ろうかと思案したが、先程の“噂をすれば陰”との考えが思い浮かび、思わず、留守録に設定する。
不在を知らせる機械的な応答の後に、電話機から聞こえてきた声は、久々に聴く、自称保護者の叫び声だった。
「………俺の平穏な一人暮らしを、返してくれ………」
コテ付けてくれないか
悪いけど読みたくないからNG登録したいんで
ノ 最近みんな冷たいと思います
内容はそんなに酷くないと思う。でも読点使いすぎで読みにくい。
あとこういうのなんて言えばいんだろう、似非〜とか回りくどくて鬱陶しい。
最近は投下あまり無いし続けて欲しい。読みたくない人もいるからコテもよろ
旧仮名遣いにすれば雰囲気でそうな文章ですね
680 :
戌神:2008/11/14(金) 00:12:49 ID:???
気取った文章だな。読みにくい(ストレートに言えばヘタクソな)文章だ。もっと読み手のことを考えたらどうだ、愚民よ?
愚民なさいと言ったらどうだ? ええ?
留守電に記録されるミサトさんの声を聴きながら、こう言った場合の彼女の行動を考える。
NERV勤務者は匿っても早い段階で理由と共にバレるだろうから除外。
そうなると…ヒカリさん(トウジ)の家も可能性が有るが、トウジも候補で有る事と、妊娠の理由が理由だけに除外する。
だいたい勘違いしたトウジが、ヒカリさんが不安定にさせているのに、態々トドメを刺しに行くとは思えない。
まあトウジが妊娠させたのなら、別の意味でトドメを刺しに行く理由には成るとは思うけれど。
おもわず怖い事を考えてしまい顔を引き吊らせるが、まあ別に子供が居る訳でも無いし、それもヒカリさんには良いのかも知れないな、と所詮は他人事と溜め息と共に切り捨てる。
其れは兎も角、ミサトさんが自分の所に電話を掛けて来たと言う事は、ミサトさんは此処に来ると考えた訳か?
そうなると、出来る事はそんなに無いか。
部屋から逃げても管理人に鍵を開けさる可能性が大きいし、この場合居座られない為に部屋に入れない方が重要だ。
ミサトさんが連れ戻しに来るのを期待して、居留守を使った方が良いかな。
人の部屋の前で修羅場を繰り広げないでくれよ、と本格的に引っ越す事も考えながら、アスカ襲来に備えて籠城戦(居留守)の準備に取り掛かる。
真っ先に部屋の電気を消し、玄関のチェーンを掛けゆっくりと鍵を締め直し、取って返しサッシの鍵が締まっているか見てから、カーテンの隙間から中が見えない様にする。
そうして少しだけ安心して小さく息を吐き、覚悟を決め受話器を取ってミサトさんに確認する。
アスカが救急車で運ばれた事。
運ばれたが理由が妊娠で有る事。
その後運ばれた病院から突然消え事。
それがそんなに前では無い事。
かなりの確率で相手が予測出来るし、消えた理由も想像出来るが、それはスッとぼけるしお首にも出さない。
本命加持さん、対抗トウジ、大穴ケンスケと言った所か。
まあ三人の中の何れにしろ、仮にそれ以外の男にしても、これから身に降り懸かる火の粉からどうやって逃げ切るか、そちらの方が重要だ。
そんな事を考えていたら、真っ暗な部屋にチャイムが鳴り響いた。
どうやらミサトさんにも聞こえていたらしく、受話器から声が途絶え沈黙に変わり静寂が耳を打つ。
この手の嫌な予感は、往々にして当たる物だと頭の中で毒付ながら、受話器を床に置き、ゆっくりと立ち上がり玄関先を映したモニターを覗き込む。
「……静かで穏やかな日々は遙か彼方か……」
わかったからもう投下するなよ。原作レイプは自分の脳内で楽しめばいいだろ。
そこまで言わなくても…
俺はコテ付けてくれたからNG登録したけどね
>>677にもあるけど最近皆冷たいな。確かに下手だけど
これから上手くなるかもしれないじゃないか。という訳で俺は続きを待つ
いや、これは内容が受け付けないんだろ
上手い下手の問題じゃないと思われる
688 :
徳川綱吉:2008/11/15(土) 16:41:15 ID:???
その通り。エヴァへの愛が感じられない。これでは小説を書くためにエヴァを利用しているに過ぎない。
題材がエヴァである必要がない。違うか?
ちなみに俺はこの世の創成主。諸君は我がしもべ。
題材がエヴァである必要はないかもしれないけど、エヴァであってもいい思う
愛を感じる作品てどんなの?
頭がパーな子に何言っても無駄だよ
>>689 「錬金術師ゲンドウ」とか「あやなみ」あたり?
俺はおもしろかったと思うけど
モニターに映し出されていたのは、余程急いで来たのだろうか、大きく息を切らしたヒカリだった。
“またトウジかぁ?”と、頭の中でつい毒づくが無視する訳にも行かずに、応答ボタンを押してマイクに話し掛ける。
電気も消していたし不在だと思っていたんだろう。
スピーカーから突然「ヒカリさん、そんなに慌ててどうしたの?」との音が出ると。
モニターの向こうでは掛けられた声に驚いて、顔を引き吊らせ硬直しているヒカリが居た。
“珍しい物が見れた”と、思わずにやけてしまうが。
そんなカメラの向こうに居る自分に気付き様も無く、ヒカリが荒い呼吸を整えずに声を絞り出す。
「アスカが… 病院から… 居なく… なったって… 聞いて… それで… 碇君の… 所じゃ… ないかって……」
口には出さずに“どいつもこいつも”と、さらに毒づくが。
『元』チルドレンンだった為に、そうそう此処(第三新東京市)から、出られない訳だし“家に来ると考えるのも…まあ仕方無いかな”と溜め息と共に諦める。
そんな考えてを振り払って「アスカだったら、来て無いよ。 今ミサトさんから、話を聞いてた所なんだ」ヒカリを落ち着かせる様にゆっくりと返事をした。
おもしろ〜いね〜(棒読み
あはは― たしかにおもしろーいよー
ヤンデレラ アスカ
“其れにしても、こんなに必死になってくれる友達が居るのに、妊娠した挙げ句病院から逃亡なんて、あの猿は何を考えているんだか”と考えてしまうが、“別に俺が『はらませた』訳でも無いし、所詮自業自得……自業自爆か?”と切って捨てる。
“まあ(火の粉が掛からなければ)どうだって良い事は兎も角、こんな時間だしヒカリさんを送るついでにトウジの様子を見に行くか”と籠城戦を捨て、鈴原家に逃亡する事にした。
「そうだ、ちょっと待っててくれる、話したい事(留守電の件)も有るし」と伝え、受話器を拾い上げると。
来たのはヒカリで、アスカでは無かった事、ヒカリを送る事、アスカが来たら電話をすると約束してから受話器を置く。
そう言えば諜報部の監視カメラが有る筈だよな……「そんな事で態々電話してくんなよまったく。」
ゆっくりと立ち上がると、ふと何事か思い付きを辺りを見回す。
探していたメモ帳とボールペンを拾い上げるて。
真っ白いメモ帳に『ミサトさんに連絡し病院に帰る事』と書き、紙を切り取りボールペンとメモ帳をテーブルに放り投げた。
切り取った紙を持ち、ベッド下から文房具の入ったプラスチックの箱を引っ張り出し、その中からセロテープを取り出すと、箱をベッドの下に蹴り込んだ。
そこから少しだけ動き、テーブルの上に有った財布と鍵、折りたたみ式の携帯電話を手に取ると、財布と携帯をポケットにねじ込み、鍵は手に持ったまま玄関に歩き出す。
“さて、ヒカリさんに今トウジがどうしているか、聞かないとね”と、これからの難問に頭痛を感じながら、ヒカリと話すために足取りも重く玄関へ向かう。
“それにしても、ミサトさんの様子からして、加持さんでは無さそうだったけど……さっきトウジの様子を見に行くって言った時、特に反応が無かったな……ミサトさん達(NERV)は知ってるのか、アスカ相手を?”
“此処(第三)の中ならMAGIは、まず穴は無いし、知っている確率の方が高いか……つまり、『アスカは探しているけど相手に関しては、知っているし興味なし』って事…か?”
“まさかケンスケ……?”
“それとも公に成ったら不味い人物なのか……って”
“まさか、髭じゃぁ無いだろうな?”
“アレはロリでペドで強姦魔だからな…最近はリツコさんの所に出入りしていた見たいだし。”
“その時は、(自分の)名字を変えるか(指令の)名字を変えてもらうか、してもらわないとなぁ…………”
“まっ、まぁ刺されるのは俺じゃあ無いしぃ、新聞発表の時には、旧姓を名乗って貰おうか。”
“後でリツコさんに電話してみるか…まだ金髪なのかな……あの人?”
“ミサトさんの様子からして、トウジじゃ無さそうだし、余計な火の粉さえ被らなきゃ、どうでもいっかぁー”
[どうやら、現実逃避する事で折り合いが付いた様で……根本的な所は変わらんな。]
“どちらにし今更猿がどうなろうと知った事では無いしねぇー”
そう脳内で結論を出すとチェーンを外し鍵を開け玄関を開き外へでる。
さくら色のパジャマに白いブラウスを羽織った、まだ息の荒いヒカリが背中を壁に預けて座りこんでいた。
玄関が開いたのに気付きゆっくりとたが、顔をこちらに向ける。
紅く染まった顔は親友の奥さんで無ければ、襲いたく成る位に『エロ』かった…………
後にS氏はK氏に語る。
「家の中で待ってもらわなくて…良かったよ……絶対に、確実に、100%の確率で……襲ってたょ……」
“ヒカリさん無防備過ぎ…下手すれば襲われるよ……”
とか思いつつ、廊下に出るとドアの表に回り、ドアの部屋番号の下にテープでメモを張る。
用の終わったセロテープは部屋の奥のカーテンに放り投げ、ドアを閉じ鍵を閉めた。
座り込んでいたヒカリはと言うと、鍵を取り出した時点で立ち上がろうとしていたが、膝が笑って中々立てない様で。
そんなヒカリに苦笑しながら手を差し出す。
「大丈夫?」
「うん、何とか……何を張ったの?」
ヒカリの手を引いて立ち上がらせた。
「アスカが来た時の為にね………自転車?」
「うん。」
そんな話しをしながらも、内心は別の事を考えていた。
“実際は猿避けなんだけどね”と。
無論そんな内心に気付かせる事、気付かれる事も無くヒカリ手を握ったままゆっくりと階段へ歩き出した。
まだ足下のヒカリに気を払いつつ、無言で階段を降りて行く。
“トウジが今どうしているか聞きたいんだけど…総入れ歯留守電入ってたっけ”会話の糸口を掴んで後ろを歩くヒカリに振り向かずに、問い掛ける。
「ヒカリさん? 昼過ぎに電話くれたよね…どうしたの?」
「最近無言電話が頻繁に掛かってくるの」
“まさかアスカ?”こんな状況だからこそ連想してしまう。
ヒカリもそう考えていたらしく、階段を降りる足を止め。
「碇君…アスカを妊娠させた「それは違うと思うよ。」……どうしてそうおもうの?」
言葉を被せて否定するが、内心は激しく同意していた。
ヒカリが止まった為に階段の途中で留まり、振り返る。
「アスカや俺がNERVにか…護衛されてるのは知ってるよね……そして此処はNERVが支配している。」
一旦話すのを止め、前を向き歩く様に促す、ヒカリもそれに応えて歩き出した。
歩き出したのを感じるとまた話し続ける。
「俺やアスカは常にカメラを透して見られてる…携帯には発信機と盗聴器、メールや手紙を出せばそれも見られ、電話掛ければ常に聞かれて、プライバシーなんて存在しないんだ。」
「何が言いたいかと言うと、ヒカリさんに電話を掛けた時にミサトさんは何て言った?」
「…アスカは来てないかって…」
「つまりNERVにもアスカの妊娠は寝耳に水なんだよ。」
「そう言えばトウジは、どうしてるの?」
「家で連電番をしてもらってるわ。」
「一人で?」
「ハルミちゃん(トウジの妹)とノゾミも一緒に居るわ。」
“はぁしっかりしてる事…それにしても、何か忘れている様な?”
少しだけ安堵し、新しい不安も増えたが会話が途切れた所で、階段も終点を迎えた。
アパートの出入り口で一旦を足を止めて、後ろを振り向く。
「自転車は?」
「えっと…そこに……」
そう言って指差した駐輪場の横には、改修前の零号機の色の様なフレームをした所謂ママチャリが横倒しに成っていた。
“スタンドを出して無い…自転車を立て様としてすら無い…そんな慌てて……ヒカリさん、いい加減に猿と手を切った方が良いよ……”
面倒見の良すぎるヒカリに少々呆れたものの、何も言わずに自転車に向かって歩きだす。
自転車の真横に立つと、ヒカリの手を離し腰を折り自転車を掴んで引き起こし歩きだした。
「こぐから、後ろに乗って。」
そう言うと自転車に跨り、ペダルに足を乗せ漕ぎ出す準備を終える。
そうして振り向くと、何事か言いたげに立っていた。
「大丈夫さっき言ったでしょあの部屋はドアと窓を監視されてるから、来たら直ぐ分かるよ。」
専ブラからメ欄丸見えだし、時間見る限りそのまま投稿欄に書き込んでるだろ。
メモ帳やらに書いて推敲する事覚えろ。出直せ
つまらん!氏ね!
704 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/21(金) 15:28:57 ID:RcPi8SQW
>>704 作者乙。投下出来無いくせに云々とか宣位なら少しでも推敲したらどうだ?ん?
およしなさいな二人とも。
言い返したいだけの喧嘩なんてくだらないから。
>>704 なるほど、料理の出来ない人間は
だされた料理の感想を言ってはいけないのですね?
>>674 で誤字、脱字指摘が有ったらよろしゅうって書いてるんだし。
まぁ、良いんじゃね?
取り合えず
>>702、専ブラでメル欄見えるって………?
だからどうしたの?
スレッドって基本的にsage進行じゃ無いの?
てか早く逆行の続き読みたい。
職人さん頑張って(^^)
710 :
???:2008/11/25(火) 00:45:52 ID:Hc9HOSZI
なん
にん
712 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/25(火) 05:42:38 ID:xaUALqBo
201X年…
世界は謎の大爆発サードインパクトによって炎に包まれた。
大地は枯れはて、あらゆる生命が死にたえていった…
だが人類は死滅していなかった…
Σデレレーン!デレデーレレーレレーデレレーン♪
713 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/25(火) 05:43:50 ID:xaUALqBo
あ
714 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/25(火) 06:13:50 ID:xaUALqBo
「おいお〜いじょうちゃんん!!盗みはいけねぇなぁ盗みハァァァァ!?親から盗みは駄目だって教わらなかったのか〜い??????ん?んん〜!?盗っとはお仕置きしなきゃなぁ〜!?」
二人の男がポリタンクを必死に抱えた少女に向かって詰めよっている
男達の眼光はまるで獲物を捕らえた狼みたいに鋭く、そしてまたいやらしい。
「はん、何が盗みよ! アンタらが水や食料を一人じめしてるからアタシはそれをほんのちょっぴり貰っただけよ!皆餓えて苦しんでるのに何よこのぐらい!」
「なんだとぉ〜このアマぁ!そんなにそいつが欲しけりゃあ俺らのモノをしゃぶれよ!
おらよ!!へっへへへぇ〜!!!!!!」
「うむぇ!!!!!!!何すん………ウゲゲ!!!!!」
「へっへへへへへ〜どうだ?んん〜俺のチンポの味は〜」
まるで
クズだ。だがこの見果てぬ砂漠ではこんな
事は日常茶飯事。生きるか死ぬかの弱肉強食!!
715 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/25(火) 06:28:01 ID:xaUALqBo
二匹のイカレタ猿は
最近の勝ち続けきで調子に乗っていた。
自分を大きな者だと過信して怖いもの知らずになった愚者は少女を痛め付けてご満悦になっている
だが…
ガブッ!!!!!!!!!!!
「Σあっ!アアアアアアアアァァァァァァ!!!!!」
716 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/25(火) 06:44:14 ID:xaUALqBo
「で、でめへぇ〜!!!!!!俺のチンポを…噛みちぎりやがっだのが〜!!!!!!??????」
「ぷぺっ!こんな汚いもん、口に入れられたってだけで
へどが出るよ!!」
「ごろじでやる〜でめぇ〜ごろじてやるぞ〜!!!!!!!!!!!!!」
「てめぇ!よくも相棒を!!」
逆上した暴徒は少女の胸倉に掴みかかると拳を振り上げて少女に殴りかかる
ドガス!
「きゃあ!!」
「よぉくも相棒を!!!!!一本とったつもりか!!!!?一本とったつもりなのかって聞いてんだよー!!!!!!!」
ドガス!
ベギシ!!
袋叩きにされる少女
「うぐ」
もはや息きもきれぎれだ。もはやこのまま死ぬのを待つばかりか?
だが…こう言う時にこそヒーローが現れるもんさ。そう言うもんだろ?色々な。
「おい。」
「あぁ〜ん?」
717 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/25(火) 06:53:46 ID:xaUALqBo
「Σギャビ!!!!!???????」
「Σあ、相棒オオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
奴らははじめ何が起こったのかを把握するのに時間がかかったようだ。
特に俺の腕で身体を貫かれた方は。
「おぶぇ!?おぶぇぶぇぶぇぶぇえええぇぇぇぇ!!!!?????」
「なく声もふざけた野郎だ。ちなみに一応言っておくが
後ろに垂れ下がってるそれが
お 前 の 心 臓 だ 。」
718 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/11/25(火) 07:05:08 ID:xaUALqBo
「は、ふえあああああああああああああ!!!!!?????????」
「悪党の血で汚れるのは好きじゃない。」
即座に腕を引き抜く。
「オベベベベベベベ!!!」
「相棒!!!!て、テメェ!!!!!!!よくもぉ!!!!!!よくもおおおおお!!!!!!!!!!」
「貴様らに相応しい最後だ。お前も、な!
ウウウウウウ
ワ チ ヤ ャ アアアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
もう片方の男にはローキックを食らわせた。
まるでパイナップルみたいに中身が飛び散った。ザコが!やはりこいつらも口だけか…
感想を一言
死ね!氏ねじゃなく死ね!
職人街
そう言うと。
まだ納得をして居無いだろうヒカリも、荷台に跨り、躊躇いながらも腰に手を回す。
そうして、漸く自転車は走り始めた。
背中に二つの柔らかい膨らみを感じて、心拍数が上がってしまう。
“信用してくれるのは、構わないけど…無防備過ぎる。”
そう思った物の、口には出させず、黙々と自転車をこいだ。
アパートと鈴原家の道のりも、半ばを過ぎた頃、黙って居たヒカリが口を開く。
「碇君は、どうしてアスカや綾波さんと別れたの?」
思い掛け無い質問に小さく笑う。
「……ヒカリさん…一つ勘違いをしてる。 僕は、アスカとも綾波とも、付き合った覚えは無いよ。」
「好きでは、あったけどね。」
「けど…「それに、僕はマゾじゃぁ無い。」
ヒカリの言葉に被せて、喋り続ける。
「料理を作るのも構わない。掃除だって。洗濯物も。弁当もそう。」
「同居していた頃は、朝・昼・晩と、カロリーや、栄養のバランスを考えた物を作って来たよ……」
「ただね。それを、当たり前だと思われても迷惑なんだ。」
「さっき言ったよね。僕は、マゾじゃぁ無いって。」
えぇと小さく肯定の返事か聞こえて更に言葉を紡ぐ。
「アスカが風呂に入って暫くしたら『ぬるい』と、タオル一枚で出てきた。」
「僕が、自分で暖め治せば良いでしょ。と、言ったら。アスカは『口答えするな』と、僕を張り倒した……」
「ヒカリさんだったら、どうする?」
ヒカリは、話の意味を掴み兼ねて居るのか、黙ったままだ。
それでも、アスカの弁護をしたいのだろうが、させる気は無い。
「こう言った方が良い?」
だから、簡単な喩え話にする。
「今言った事を、そのままトウジにされたらどうする?」
回された腕から、ヒカリの体が硬直したのが分かった。
「謝っても、はり倒され。自分でやってよ。と、言えば蹴られ。黙って暖め尚したら、人のいいなりに成るなと怒鳴られる。いったいどうしたら良かったの?」
そんなヒカリを無視して、話し続ける。
「中学の時に『やり返せば良い』何て、言う人も居たけどね。」
「アスカは、ドイツに居た頃に、軍隊の格闘訓練を受けてたんだよ。」
「殴り掛かったら、数秒も経たずに地ベタに、這いつくばってるだろうね。」
「張り倒され、殴られ、蹴られ、詰られ、罵られて…それが寝る時間以外毎日…誰が…いや僕の事を、奴隷か召使いとしか考えて無かった。そう思ってるよ。」
「だから、第一志望の答案用紙は、ケアレスミスだらけで出したんだ…アスカと距離を置く為にね。」
「勿論、受かろうと思えば受かったよ。」
真剣な口調を一転させ。
「単なる、遠吠えにしか聞こえないけどね。」
小さく笑った。
「だから第一と第二志望の偏差値が近かったの?」
硬直の解けたヒカリが、疑問を投げかける。
「そう結構苦労したよ、レベルの近くて距離的に離れた高校を探すのに。」
そして、自分の計画の一部を話す。
「当然、引っ越しも計算の内…まあ、ミサトさんと加時さんの結婚で、多少遅れたけどね。」
冗談めかした口調を小さく一息入れる事で、真剣な口調に戻す。
「ねぇ洞木さん。僕はね、彼女の父親でも兄でも無いんだ。同じ年の異性だ、それを求められても、正直手に余るよ。」
「それにね、たった二年の同居生活だったけど、学習しようとしなかったのは彼女の方だ。」
“本当に可哀想な裸の御姫様”
心の中で呟く、但しそれにあるのは嘲笑。
この時の表情を、ヒカリに見られなかったのは、幸いだった。
その表情は、彼の父親の其れと同じ物だったのだから。
「じゃぁ綾波さんは?」
「綾波の記憶が無くなったのは知っているよね。」
確認するまでも無い、中学最後の一年間学校ではヒカリが最も綾波を見ていたのだから。
だからこその、沈黙の肯定。
“まぁ実際は、4人目なんだけど。”
口に出した事とは別に、頭の中で補足する。
そして、黙って居るのを肯定と受け取り、話し続ける。
其れは、ヒカリに取っては、受け入れ難い現実。
「その時に、NERVの人が引き取って一緒に住んでたんだけど。その人がNERVの指令と付き合っていてね…「それが何の関係が?」…僕が引っ越してから、割と直ぐだった様だよ……」
「指令と一緒に寝る様に成ったのは。」
続きが気になる
726 :
6:2008/11/28(金) 20:48:18 ID:???
近い内に、とか言っときながらこんなに間が空いてしまったが、
いくらか書けたので投下させてもらう。
727 :
逆行229:2008/11/28(金) 20:49:54 ID:???
――アスカは苦悩していた。
昨日から、どうしても自分の感情がコントロール出来ないのだ。
いや、感情どころか……。
アスカは今朝の出来事を思い起こす。
朝、シンジに腕をつかまれた時、襲ってきたのは掛け値なしの恐怖だった。
「さわんないでよ!」
自分でも声が出せたのは暁光だと思う。
とにかくシンジの腕を振り払って、それから何とか罵倒の言葉を言いつくろい、
シンジの前から逃げ出すのがアスカの精一杯だった。
「なんで、なんで止まらないのよ。克服、したはずなのに…!
トイレで話した時だって、あんなに近くにいても大丈夫だったのに…!」
逃げ込んだ部屋の中で、アスカは震えていた。
どんなに強く体を押さえても、全く収まらない。
――捨て去ったはずのトラウマが、治り切ったはずの心の傷が、
再びアスカに舞い戻り、アスカの心を押し潰そうとしていた。
728 :
逆行230:2008/11/28(金) 20:51:20 ID:???
それから、アスカはシンジを避けた。
避けることしか、出来なかった。
……だって、話なんて出来ない。
向かい合っているだけで怖くて震えそうなのに、
逃げる以外に何が出来るというのか。
――いっそその怯えすらも全てぶちまけて、シンジと向き合えたら、
と夢想することくらいはある。
だがそんなこと、今まで一度としてやってこなかった。
一人ではどうしても乗り越えられない壁にぶつかった時、
アスカはいつだって自分の殻に閉じこもって、
自分以外の全てを拒絶してきた。
……だからアスカは、それしか知らない。
それ以外のやり方があるなんて、アスカは考えもしなかった。
――でも、そのくせ心の隅、無意識の領域では常に望んでいる。願っている。
自分を分かってもらうこと、この苦しさを、胸の痛みを、誰かに、
いや、あるたった一人の少年に、理解してもらうことを……。
729 :
逆行231:2008/11/28(金) 20:53:04 ID:???
そして、もしかすると、だから、なのかもしれない。
チャイムが鳴り、教師が授業の終了を告げ、そして彼が、
シンジがこちらに来ようとしているのが分かっていながら、
アスカが動けなかったのは。
「……アスカ」
アスカの席までやってきたシンジが、こちらは少し緊張に硬くなった声で、そう声をかけてくる。
『なによ』
と返そうとして、喉の奥が強張って、声が出せないことに気づいた。
――情けない。
そう自分を罵るが、仕方ない。
一層気まずくなることが分かっていても、一度は開いた唇を貝のように固く切り結んで、
アスカはだんまりを決め込む。
「あ、あの……」
そのアスカの拒絶に、気弱なシンジは何も言えなくなってしまう。
シンジは何度か口を開こうとして、それでも結局何も言えない。
そしてアスカも、何も言えない。
(もういいから早く、早くどっかに行ってよ!)
心の中、そう叫ぶ気持ちの一方で、
――シンジと話がしたい、全部伝えてしまいたい。
そういう思いもまた、拮抗して存在していた。
それが二重の呪縛となって、アスカからは何も出来ない。何も言えない。
そしてそのまま、時間だけが過ぎ、
「……ごめん。大した話じゃないから」
シンジはやっとそれだけを口にして、アスカの前から歩き去って……
――シンジの歩き去る先、視界の奥にレイの姿が見えた。
730 :
逆行232:2008/11/28(金) 20:54:39 ID:???
フラッシュバックする、あの時の光景。
『待って!』
アスカの奥のアスカが、声をあげる。
『待って、シンジ!』
手をつないで、アスカの前からいなくなる、シンジとレイ。
行かせてはいけない、そんな気がして、
行かせたくはないと、心が叫んでいた。
「……っ!」
それでもいまだ声は出せず、手だけが伸びていた。
遠ざかっていくシンジに、アスカは必死で、その手を伸ばし、
「……ぁ」
――しかし、届かない。
まだ、何も伝えてなどいないのに、
伸ばした手は、何もつかむこともなく、
「キャッ!」
バランスを崩したアスカは、無様に地面に倒れ込んだ。
「アスカッ?!」
慌てたようなシンジの声で、シンジがこちらに戻って来たのが分かったが、
(……かっこわるい)
アスカに残ったのは、苦い悔恨と羞恥の思いだけ。
シンジに手を伸ばした瞬間の勇気は、
もうどこかに行ってしまっていた。
731 :
逆行233:2008/11/28(金) 20:59:12 ID:???
「やめて。大丈夫だから、アンタの助けなんか…」
地面に両手をついたまま、顔も上げず、
アスカはシンジの助けを拒んだ。
触れられるのが、怖い。
伝えるのが、怖い。
また拒絶されるのが、……怖い。
――だから、シンジにはこれ以上、近づいて欲しくはなかった。
しかし、
「こんな時に、意地張るなよ!」
驚きすら感じるヒマもなく、
「え、あっ…」
意外に強い力で、腕を引き上げられる。
反射的に上を見上げると、そこに立つシンジの顔は、
なぜだか怒っているように見えた。
そして、こみ上げる怒りを、吐き出すように言う。
「アスカが最近様子が変なのは、アスカの隠してることと関係してるんだろ!
そりゃ、僕には話せないことなのかもしれないけど、」
「…は?」
全くかみ合わない言葉に、思わずアスカの口から間の抜けた声が漏れるが、
怒っているシンジは全く気づかない。
いや、元より鈍感なシンジが、気づくワケがない。
「だからって、体の調子が悪い時まで、人を遠ざけようとするなよ!」
ただそう言って、正面からアスカの顔を覗き込んでくる。
見当違いの心配をされてると分かっても、
それよりもまずそのまっすぐな視線に、アスカは動揺してしまう。
「ち、違うわよ。アタシは、アタシが悩んでるのは……」
それでもよく分からない誤解を解こうと、アスカもようやく口を開き、
――その時になって、やっと気づいた。
いつのまにか、震えも緊張も、びっくりするほどあっさり抜けていた。
今ここにいるシンジを、アスカを真剣な目で見つめてくるシンジを見ていると、
どうして、何を悩んでいたのか、そんな理由がもう思い出せなくなってしまう。
リアルタイムktkr!!
733 :
逆行234:2008/11/28(金) 21:01:25 ID:???
そんな驚きからアスカが顔を伏せて黙ってしまうと、
そこでシンジも我に返ったのか、
「あ、ご、ごめん…!」
アスカの腕から慌てて手を放す。
そうしてまるで思い出したかのように急に照れ始め、
「と、とにかく、理由とか、話とかはいいから、まずは保健室に行こう。
つらいなら、僕が付き添っていくから、すぐに…」
それでもアスカを気遣い、そんな提案をしてくるが、
「ああ、もう! それこそどうでもいいのよ!!」
そう、どうだっていいのだ、もうそんなことは。
どうしようもないことや、どうでもいいことばかり、気にしすぎていた。
……もちろんアスカは分かっている。
これが一時の感情で、後になったら後悔するだろうということも、
冷静になればすぐ気弱の虫が戻ってきて、悩むことになるだろうということも。
だが、それでもやっぱり、どうでもいいのだ。
――だって自分はここにいる。
だったらそれを、この惣流・アスカ・ラングレーという存在を、知らしめなくちゃならない。
「いーい、シンジ。とにかく――」
それが自分を騙す口実で、目の前の少年に伝えたいワケが別にあったとしても、
それだって大して重要じゃない。
大事なのは、話すこと、伝えること、……自分から、歩み寄ること。
だから、アスカは、
「――昼休み、屋上に来なさい!」
ようやくその最初の一歩を踏み出したのだった。
734 :
逆行235:2008/11/28(金) 21:05:42 ID:???
「我ながら意気地がないわね。
こんなになるまで、決心がつかなかったなんて」
誰もいない屋上で、アスカはそうひとりごちる。
授業が終わり、昼の休憩時間が始まった途端、
アスカはわき目も振らずに教室を出て、まっすぐに屋上へとやってきた。
こんな精神状態で昼ご飯が喉を通るはずもないし、だったら早めにここに来て、
シンジが来るまでに少しでも心を落ち着かせたかった。
「……ふぅ」
特に目的もないまま屋上の端まで歩いていき、手すりに背中を預ける。
体を反らすと、目の前に高い空が広がった。
「ほいっ、とね」
なんとなく思いついて、飛び上がって手すりの上に腰かける。
肩越しに下を見れば、目に入るのは十数メートル先の地面だけ。
何かの拍子にバランスでも崩して落ちてしまえば、
十中八九、助からないだろう。
落ちる想像をしていたせいだろうか、なんとなくアスカは、
弐号機で火口に下りていった時のことを思い出し、
「あぁ。そう、か。そういう手も、あるわね」
そんな風に呟いた時だった。
鉄の軋むような音を立てて、屋上の扉から、シンジが姿を現わした。
735 :
逆行236:2008/11/28(金) 21:06:12 ID:???
「……来たよ、アスカ」
シンジがそう呼びかけるが、アスカは答えない。
「アスカ…?」
訝しげな声。
それにも答えがないと知ると、シンジはそのまま、
少しずつアスカの方に近づいてくる。
――ゆっくりと縮まっていく、二人の距離。
そしてその距離が、五メートルを切ろうとした時、
突然アスカはふっと笑って、
「……ねぇ、シンジ、見て見て」
まるで、いつかの時のように、
「バックロール・エントリー」
手すりに腰かけたまま、頭をぐるりと後ろに倒す。
――空が遠退き、耳元で風がうなりをあげ、
「アスカッ!!」
聞こえる、悲鳴のようなシンジの声。
駆け寄ってくる気配。
――だが、遅い。遅すぎる。
その時にはもう、アスカの視界は百八十度回転、
頭は既に地面に向かって一直線に伸びていて……
「……なあんてね」
アスカは逆さになった視界のまま、そう呟いて笑った。
736 :
逆行237:2008/11/28(金) 21:08:16 ID:???
「よ、っと」
勢いをつけ、体を元に戻す。
飛び降りるつもりなど、端からさらさらなかった。
さっきは上体を逸らしただけで、アスカの足はまだ屋上の内側に残っていたし、
両手でしっかりと手すりをつかんでいた。
高所に対してことさらな恐怖心もなく、運動神経も良いアスカにとって、
特に気負う必要すらない行為だった。
「あ、アスカ…ッ!」
駆け寄ってきたシンジが、何が何だか分からない、という顔でアスカを見ていた。
そんなシンジの顔を、アスカは余裕の笑みで迎え撃つ。
「あははッ。なんて顔してんのよ。
もしかして、アタシが自殺するとでも思った?」
それでも驚きが大きすぎたせいか、シンジはパクパクと口を開閉させるだけで、
とっさには何もしゃべれなかった。
「なによ、心臓ちっちゃいわね。そんなに焦ったの?」
そんなシンジに、アスカはそう罵倒の言葉を吐く。
しかしこの時、アスカの心臓こそが暴れるほどに高鳴っていた。
「あ、焦るに決まってるだろ!
あ、あんなこと言いながら、体を倒したりしたら……」
――そう、その一言を聞きたくて。
「ふぅん。あんなこと、ねえ。……なら、覚えてたんだ、前にアタシがやってみせた、アレ」
「前にプールでやってたじゃないか。バックロール何とかって。それくらい…」
言葉を続けようとするシンジを、さえぎって、
「――ねえ。ほんとうに、覚えてるの?」
アスカは決定的な言葉を叩きつける。
737 :
逆行238:2008/11/28(金) 21:10:56 ID:???
「え?」
固まってしまうシンジに、一言ずつ、言い聞かせるよう、思い出させるように、
「……本当に、アンタは覚えてるの?
まだ、修学旅行の話すら出ていない今の時期に、
アタシとプールに行ったこともないシンジが、
『ソレ』を本当に覚えてるの?」
「あ、あ……」
ようやく、アスカの言いたいことが分かってきたのだろう。
シンジは言葉にならない声を出す。
(決まり、ね。これで決定的だわ)
バックロール・エントリーという言葉は、行けなくなった修学旅行の代わりに、
シンジたちがプールに行った時に口にした言葉だ。
もちろん今回の世界では、一度も言ったことがない。
「なん、で。なんで、アスカが、君が、それを知って……」
呆然と、シンジは尋ねる。
だがアスカは、無駄な問答をするつもりはなかった。
事ここに至っては、結論など一つだろう。
……本当は、シンジだってそれを分かっているはずなのだ。
「ねえシンジ。分からない? 本当に、分からないの?」
だからアスカは、それだけを問う。
もちろんシンジにとっても、それで充分だった。
長い、間。
アスカにとっては、数分にも思えるくらいの、長い長い間があって、
「……アスカ、なの?」
やっとしぼり出した、というような声で、
シンジはようやく、アスカの望み通りの言葉を発した。
738 :
6:2008/11/28(金) 21:16:24 ID:???
このままだと連投規制に引っかかる&スレの容量がヤバイ、
ので、少し休憩。
十時くらいになったら再開するつもりだけど、
残りの文章量調べて、容量的に入りきらないようなら
次スレに落とさせてもらおうかな。
739 :
逆行239:2008/11/28(金) 22:01:49 ID:???
「ええ、そうよ」
アスカは胸を張る。
しかし、シンジはその言葉では誤解の余地があると思ったのだろう。
少し言葉を考え、言い直す。
「本当に、本当に僕の世界のアスカ?」
だが、もちろんその質問への答えもイエスだった。
「あったり前でしょ! 前の世界のことだったら、何でも覚えてるわよ。
アンタが命令無視して使徒に取り込まれたことから、
アンタとやったくっだんないケンカまで、全部ね!」
「じゃあ、ほんとに……」
そう呟いたきり、シンジはまるで金縛りにあったかのように、
動かなくなってしまう。
一秒、二秒……アスカにとって、まるで拷問のような時間が過ぎる。
一向に何のリアクションも示さないシンジに、アスカはすっかり焦れていた。
お互い、もう会えないと思っていた相手に再会したのだ。
泣いて喜べ、とは言わないが、もう少し何か反応があってもいいとアスカは思う。
――それとも、やはりシンジは自分を、『この』アスカのことを、
邪魔に思っていたのだろうか。
そんなアスカの思いに気づかないまま、シンジがもう一度尋ねる。
「最後に、もう一回だけ、訊くけど……。
ほんとのほんとに、君は、『あの』アスカ…?」
「だからそうだって言ってるでしょうが!
いい? アンタが何考えてようと、アタシは…」
焦れていたアスカは叫ぶようにそう答え、しかし次の瞬間、
「アスカッ!!」
それに倍する声でシンジが叫び、突然アスカに飛びついてくる。
「ちょっと、な…!? キャア!」
その勢いに耐え切れず、アスカはシンジと折り重なるようにして倒れた。
740 :
逆行240:2008/11/28(金) 22:02:32 ID:???
「な、何トチ狂ってんのよ! こら! この、離れなさいって!」
アスカは暴れ、シンジのわき腹に手加減なしの膝蹴りを叩き込む。
だが、それでもシンジは離れない。
この細い腕によくもここまで、と思うほどの強さで、
アスカに必死にしがみついてくる。
そして、
「よかった! よかったよ! アスカ!!」
――そんなシンジの言葉を聞いた途端、
シンジを押しのけようとしていたアスカの足から力が抜けた。
いや、それどころか、全身からどんどん力が抜けていく。
体全体に感じるシンジの重みがなぜだか嬉しくて、
背中に回された腕のキツささえ、何か幸せな痛みに感じられた。
「アスカ、アスカァ…!」
気がつくと、胸の中のシンジの言葉は、いつしか嗚咽に変わっている。
それを聞いて、アスカは笑った。
「なによ。こんなことで泣いちゃって。……なっさけないヤツ」
そう突き放すアスカの顔には、しかし侮蔑の色はない。
あるのはただ、純粋な喜びだけ。
「だっ、て、ずっと、心配して……。
僕が、とんでもないことを、って……」
嗚咽混じりの、途切れ途切れの言葉。
支離滅裂で、聞き取りづらい言葉だったが、
それだけでも想いは伝わった。
それはアスカの胸にじんわりと染み込んでいき、
その心を温めてくれる。
741 :
逆行241:2008/11/28(金) 22:03:29 ID:???
「それじゃ、何言ってんだか分かんないわよ、まったく…」
口ではそう言いながら、アスカはやっぱり笑っていた。
屋上でシンジに押し倒されているという状況も、
体に回されたシンジの腕の力強さも、嗚咽と共に聞こえる情けない声も、
背中に感じる屋上の床の熱さすらも、何もかもを心地よく感じてしまう。
――そして、首筋に感じる、ぽつりと水の滴る感触。
「なに、泣いてんのよ、バカ。こんなことで……こんな、ことで…」
しかし、アスカの目にも熱い何かが込み上げてくる。
(ばか。泣けないわよ。こんなことで、アタシは…!)
だから慌てて上を向いて、それを堪える。
ただ、それでも込み上げるもう一つの衝動は堪えようがなく、
アスカは目の前に見えるシンジの肩に、ゆっくりと自分の両腕を回し……
「ええと、これ。何がどないなってこうなってこうなっとるんや?」
「…さあ?」
「アスカ、碇君……フケツだわ」
――観客に、気づいた。
742 :
逆行242:2008/11/28(金) 22:04:25 ID:???
見ると、屋上の入り口辺りにクラスメイトたちが集まって、こっちの様子を窺っていた。
……考えてみれば、教室であれだけ派手にシンジを呼び出しておいて、
野次馬好きなクラスメイトたちが様子を見に来ないはずもなかったのだ。
「〜〜〜ッッ!」
今の自分たちの行為が見られていたと悟り、アスカの顔はカアーッと赤に変わる。
……だが、それからがアスカの本領発揮だった。
正に電光石火。恐ろしい力でシンジをもぎ離し、
「――キャアアアアアア! チカン、ヘンタイ!!」
今さらな悲鳴をあげて、シンジをそのまま蹴り飛ばす。
「あ、アスカ……。はは、ひどいや」
シンジはアスカの突然の行動に多少驚いたようだが、蹴られて転がされたのに、
まだ嬉しそうにアスカを見上げる。
それを見て、アスカは一瞬「…う」と漏らして鼻白むが、すぐに立ち直り、
「あ、アンタってやっぱり最悪の男ね、シンジ!
か、か弱いアタシが無抵抗なのをいいことに、ムリヤリ押し倒して…!!」
ビシッと指を突きつけて、まあそういうことにしようとした。
「ムリヤリて、思いっきり背中に手、回そうとしてたやないか…」
「うんうん」
だが、こんな時ばかりは冷静に、トウジとケンスケがツッコミを入れる。
「う、うっさいわね! あれは油断を誘うための演技よ、演技!」
油断ってなんだよ、と屋上に様子見に来ていたクラスメイトたちは一様に微妙な顔をするが、
「い、いい? 今、起こったことはねぇ…!
さいしょっから最後まで、全部、嘘!! 冗談なの!!」
アスカはもう勢いだけでそう言い切る。……が、
「いまさら、そないなこと言われてもなぁ…」
「まあ、アスカがそう言うなら、そういう事にしてあげても…」
「惣流って意外と熱いヤツだったんだな。正直、見直したよ」
いくらトウジたちが鈍くとも、今さらそんなことを信じるはずもない。
743 :
逆行243:2008/11/28(金) 22:04:56 ID:???
ただ、一人だけ、
「嘘、だったなんて…」
シンジだけがアスカの言葉を信じ、呆然としていた。
「って、アンタが真に受けてどうすんのよ!」
それにはアスカも思わず、ツッコんでしまう。
それに対してクラスメイトたちが反応し、アスカが怒鳴り返して、
と、もはやしっちゃかめっちゃか。
どうにも収まりがつかなくなった所で、
「おい、一体何の騒ぎだ!? もう昼休みは終わりだぞ!」
騒ぎを聞きつけたのだろうか。
屋上の扉を開けて、教師までやってきた。
「げっ!」「…へ?」「うわっ」「やば…!」
束の間、時が止まる。
――真っ先に動いたのは、やはり機を見るに敏なアスカであった。
「な、何でもありません!
アタシ、NERVの仕事があるので早退します!」
そう言うと、制止しようとする教師の横をすり抜け、
アスカは一人、校舎に戻っていってしまう。
一方の主役がいなくなり、さらに教師の前だということもあって、
屋上での騒動はすぐに鎮静化した。
みんな表向きはおとなしく教室へと戻っていく。
その間、もちろんもう一人の当事者であるシンジは、
男子連中につつかれたり女子たちに小声でひそひそと何か言われたり、
そこだけはとてもいつも通りとは言えなかったが。
744 :
逆行244:2008/11/28(金) 22:05:27 ID:???
それでもクラスの全員が教室に戻り、ざわめきも収まって、
ようやく授業が始まったくらいの頃だった。
――バン、という音と共に教室の扉が開く。
入ってきたのは、アスカ。
教室に入るなり、きょろきょろと辺りを見回し、
「あ、アスカ…! これ……」
困ったような表情で、アスカのカバンを手に立ち上がるヒカリに、
ドスドスと音を立てて近づいていく。
そうしてヒカリの前まで来ると、アスカは顔を真っ赤にさせたまま、
ヒカリからカバンをふんだくるように奪ってUターン、迷わず扉に向かう。
そのあまりの迫力に、教師すら言葉をかけることを思いつかないまま、
再びのバン、という音で教室の扉が閉まる。
「……ッッ!」
それでも苛立ちは収まり切らないのか、アスカはそのまま止まることなく、
まるで怪獣のように乱雑で破壊的な足取りで廊下を進む。
「あぁ、もう、もう、もう、もう、もう!!
せっかくクラスで作りかけてたキャラも、これで全部台無しじゃない」
顔を下に向け、すっかりゆだってしまった顔を隠しながら、誰が見ても苛立っているのだと分かるように、
あんなの嫌だったのだと知らせるように、全身で怒りを主張しながら歩く。
「これもそれもあれも、とにかく全部全部、ぜぇーんぶ、あのバカシンジのせいだわ」
こぼれる言葉とは裏腹に、その口元はどうしようもなく弛み、前髪で隠した目元はかすかに潤んでいる。
「もう、ほんとにもう、バカ、なんだから!」
そうやって口に出していないと、内側から弾けて、どうにかなってしまいそうだった。
角を曲がり、人が誰もいないのを確認して、アスカは立ち止まって壁に背中を預ける。
「あぁああぁ! もう! バカシンジ! バカシンジ! バカシンジ!」
カツン、カツンと頭を壁に何度もぶつける。
それでもシンジの本当に嬉しそうな笑顔が、抱き締められた感触が、どうしても頭から抜け切らない。
だからアスカは、最後に、もう一度だけ。
「……バカ、シンジ」
まるで舌の上で蕩かすみたいに、そう、呟いた。
745 :
6:2008/11/28(金) 22:07:15 ID:???
以上。
いや、本当はもうちょっと長かったんだけど、入らないと困るので。
次回いつになるか分からないけど、これぐらい溜まったらまた来たいと思う。
うおおおおおおっ!!!!!
キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ !!!
ジャイアント・ストロング・GJ!!!!!
相変わらずGJ!!
早くも待ち遠しいわw
…すべてはこれからだ
神がいるスレはここでつか?
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GJ
楽しみに待ってるよ
どうでもいいけど長いね
それに質の低下は否めないワン やっぱり職人としての才能がいまひとつ欠けているようだワン
あ〜続き楽しみ〜
754 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの: