LAS小説投下総合スレ16

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1名無しが氏んでも代わりはいるもの
LASを投下しましょう。甘LAS、シリアスLAS、イタモノLASなどジャンルは問いません。
また、LARSやハーレム物の中で描かれるLASなどもOKですが主軸はLASで。他カプが主軸なら該当スレへ。

エロ分が多ければエロパロ板へ投下で、当板は全年齢対象です 。
原作にどれだけ直球な表現があったからといってもエロ分が多いとスレ削除を食らいます。

あなたがLASと思えば、それはLASなのです。

過去スレ
01 http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1122558487/
02 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1109570903/
03 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1110008498/
04 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1110645039/
05 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1111194171/
06 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1111941594/
07 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1112530302/
08 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1113068736/
09 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1113238483/
10 http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1114138826/
11 http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1115760691/
12 http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1117711790/
13 http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1136124490/
14 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/eva/1140426670/
15http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/eva/1179413945/

evaFF転載板
ttp://yy10.kakiko.com/yy11307819/
21:2007/11/23(金) 05:28:03 ID:???
あ…過去スレちょっとミスった…orz

済まん、吊ってくる
3名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/23(金) 05:44:21 ID:???
明け方乙!
4名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/23(金) 07:20:03 ID:???
>>1


前スレ容量オーバーでdat落ちしたのね
5名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/23(金) 08:28:24 ID:???
ちょうど連載も全部終わったし、ちょうどよかったかもね
新作投下マチー
6名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/23(金) 08:32:33 ID:???
>>1
そして投下待ち
7名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/23(金) 08:43:43 ID:???
>>1
容量オーバーか
8名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/23(金) 19:55:56 ID:QS+oFaIV
削除以来出して来い
9名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/23(金) 21:22:23 ID:???
>>1乙です。
容量オーバーか…。一瞬焦ったぞw

とりあえず街。
10名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/24(土) 23:25:30 ID:GlTQPQRm
ちょwwアスカとシンジでSMスレ落ちた?
せっかく新作できたのに・・・ここにはスレチだよね。
11名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/24(土) 23:26:43 ID:???
エロスレは全削除されました
12名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/25(日) 00:33:59 ID:???
>>10
>>1参照
投下するならエロパロ板のこっちへ

【初号機】新世紀エヴァンゲリオン【出撃】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1174105047/

LAS読みたいって住人も居たから喜んでくれるかも
13名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/25(日) 05:44:35 ID:QLFCfrFv
>>12
わざわざありがとうございました!
でもあっちでSMはあまりなかったのと、エヴァの世界観があまりなかったので、投下はやめました。
14名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/25(日) 06:13:02 ID:???
投下するしないは、職人さんの自由だからかまわないけど、ちょっと読みたかったなw
あと、sageてやってほしいです
15パッチン:2007/11/26(月) 01:38:05 ID:???
「ハッピバースデイトゥーユー・・・♪
ハッピバースデイトゥユー・・・♪
ハッピバースデイディア、アスカ〜・・・♪
ハッピ…」
「もういい。アンタの歌聴いてるとハッピーになれないわ」
「・・・じゃあサッサとロウソク消してよ」
「ふぅ〜〜〜〜っ
はい。アスカちゃん27歳おめでとぉ〜」
パチパチパチ
「おめでとう。さて、ケーキ切ろうか」
「はぁ〜…。暗い誕生日パーティーだこと。アンタと2人きりって…」
「不満なら出て行っていいよ。彼氏と遊んできなよ」
「彼女の誕生日に仕事いれるような奴とは、とっくに別れましたよ〜だ」
「・・・えっと、22人目だっけ?」
「ぶ〜っ!30の大台に到達しました〜」
「ねぇ、やめなよポイポイ男変えるの」
「ふんっ!アタシに捨てられないような男がいないのが悪いのよ!
・・・ところでさぁ
・・・アタシ今『誰の物』でもないよ?」
「はぁ…。またなの?」
「あんな男と付き合ってたと思ったらイライラすんのよ!
…1回リセットしたいの」
「・・・わかったよ。シャワー浴びてくるから…」
「そのまんまでいい」
ガタンっ
「うわっ!?」
「うふふっ、シンジぃ〜♪」
「アス…カ」

やっぱりおかしいよ。こんな関係
16パッチン:2007/11/26(月) 01:40:24 ID:???
〜愛しき日々〜

翌日、ネルフ本部

僕はパソコン画面と、昨夜の情事による寝不足で完全に疲れきった目をグシグシと擦る
「ねむ…」
スパーン!!
「痛いっ!!なにすんだよ!!」
後頭部に強烈な刺激。振り返ると、丸めたテキスト片手にしたアスカ課長
「画面ぐちゃぐちゃよ馬鹿」
「へ?・・・うわっ!!」
いつの間にかキーボードの上にもたれかかっていたらしい
「す、すいません…」
「以後気をつけなさい!
・・・さて、お昼の時間だし食堂行きましょ」
自らの左手に付けた高級腕時計(17番目の彼氏による贈呈)を、僕の目の前にグイッと近づける
「あ、わかりました。ちょっと待ってください…」
家にいる時はタメ口で話しているが、会社ではアスカが上司だから敬語を話さなくてはならない
少し気持ち悪い感じもするけどね
「はぁ!?アンタ上司の言うことがきけないの!?」
このように上司面されることなんか日常茶飯事だ
「唐揚げ定食奢りますので…」
「うん、じゃあよろしい。手伝ったげるから早くランチにしましょ」
隣の椅子に腰掛けて、資料書類達に物凄いスピードで目を通していくアスカ課長
「さすがキャリアウーマンですね…」
「うるさい駄目シンジ」
17パッチン:2007/11/26(月) 01:42:46 ID:???
ただの同居人かといわれたら違う
ただの上司かといわれたら違う
愛する恋人かといわれたら絶対に違う
じゃあ…なに?
僕とアスカの関係を表す言葉って存在するの?

食堂に着いた僕とアスカは唐揚げ達が乗ったトレイをテーブルに置き、向かい合って座る
「ったく情けないわねぇ…。あんくらいで寝不足だなんて」
「僕はアスカと違って、ああいう不潔なことに慣れてないんだよ」
唐揚げに醤油をかける僕
ソースをかけるアスカ
「ふんっ悔しかったらアンタも他の女で練習しなさいよ
ネルフで誰か紹介してあげようか?」
「・・・」
「あっ!ごめ〜ん♪アンタ、ホモ説ながれてるんだったわね。あははっ」
「ながれたんじゃなくて、ながしたんだろ…。アスカが…」

あれは去年のバレンタインデー
アスカ以外の女性とは話す事も苦手な僕は、予想以上の量のチョコを貰って困り果てていた
そしてその事をアスカに相談したら…
『アタシにまかせなさい』
の一言を残してアスカは次の日、女性達が僕を白い目で見てくれる魔法の言葉をネルフ中に振り撒いてくれた

「あれから、うっとおしい女が近づかなくなったでしょ?感謝しなさい」
「時々うっとおしい男が近づいてくるんだけどさ…」
18パッチン:2007/11/26(月) 01:45:32 ID:???
「ところでアンタ、誰かいい男知らないの?」
「知らないよ。人気イケメン俳優まで捨てた女に似合う男を僕が知ってると思う?」
2年前、週刊誌の記者が撮影したスキャンダルをネルフが揉み消した事件は本部内では有名な話だ
「つまんないの〜
・・・あ。ごめんシンジ、隣行くわ」
不機嫌そうに唐揚げを箸でこねくり回していたアスカは、更に不機嫌顔になり、僕の隣の席にトレイごと移動してきた
「惣流くん。一緒にお昼どうかな?」
そしてやって来のは、毎日が常夏の日本とはいえ、冷房キンキンの食堂で、汗を大量に滴らすネルフNo.1のスケベっ子親父『里崎マサオ博士』
「え、えぇ。よろこんで」
顔をひきつらせながら答えるアスカ
なるほど。里崎が隣に座るのを回避するべく、僕の隣に座ったのだろう
案の定、里崎は僕の方を軽く睨みつけている
「おや、碇君もいたのかい?これはこれは」
「あ、いえいえ僕は失礼します。仕事がありますので」
そう言うと、口いっぱいに唐揚げを放り込み、僕は退散する
「な゛っ!!ちょっと待ちなさいよシンジ!!」
「惣流課長はゆっくりお食事しててくださいね♪
あ、そうだ!最近彼氏と別れたらしいし、里崎博士に相談したらどうですか?」
「おぉ!それは可哀想に。惣流くん、相談にのるから話してごらん?」
「え?あ、あはははっ…」(ギロリ)
隣に座った里崎はアスカの肩に手をまわし、異常に顔を近づける
食堂が一気にキャバクラに変化していく
「じゃあサヨナラ〜」
そして僕はアスカの殺意ムンムンの視線を背に、仕事場へと引き返していった
19パッチン:2007/11/26(月) 01:49:02 ID:???
夕焼け空の下、風をきって帰路を走る赤いスポーツカー

「ったく!あのエロ親父が!!ぬぁ〜にが『僕なら君に涙を流させない』よ!!あぁ〜気持ち悪い気持ち悪い!!」
ハンドルを操作する僕の隣で、体中をかきむしるアスカ
よっぽど嫌だったんだろうなぁ
「もとはといえばアンタがアタシを見捨てたから…」
「今さぁ」
「なによ!?」
「夕飯をハンバーグにしようか、野菜炒めにしようか悩んでるんだ」
「・・・ハンバーグ」
「おっけぇ」
車はスーパーの駐車場に滑り込んでいった



停止した車内でアスカは僕にビシッと指差して、命令する
「ビールとポテチとアイスクリーム買ってきなさい!」
「そんなに買ってどうすんだよ…」
「アンタばかぁ?明日から日曜日なのよ!なんの予定も無い日は、たくさん食べて、たくさんヤるしか無いでしょ!?」
そう言うと、僕のポケットから財布をふんだくり、お札を何枚かむしり取る
「薬局行ってくる!ゴム無なかったでしょ」
「ちょ、ちょっと…」
バンっ!!
「もぉ〜…」
1人車内に取り残された僕は、ハンドルにもたれかかり、意気揚々と薬局に走るアスカを眺める

夕日に照らされたアスカの金髪は悔しいほど綺麗だった
20パッチン:2007/11/26(月) 01:51:34 ID:???
翌日
昼の1時を過ぎたあたりで目を覚ました僕は、隣で眠るアスカを見やる
「幸せそうな顔…。なんか1人で悩んでるのが馬鹿みたいだ…」

僕とアスカはこの先どうなるんだろう…
いつまでこんなダラダラな…でもこの上なく心地良い関係でいられるのだろう…

脱ぎ散らかしたパジャマを再び着込む
先程まで温かいアスカに包まれた僕の身体は、冷えたパジャマを拒絶するように一瞬プルリと震えた



1時間後、キッチン
「ふわぁぁ〜ぅ、おはよシンジ…」
「おはよ…って服着てよアスカ…」
全裸で登場したアスカは、ダイニングの椅子に腰掛けると、テーブルをコンコンと叩く
「コーヒー?今作るから待ってて」
「んふふ〜♪うんっ♪」
『コンコン』でコーヒープリーズが伝わったのが嬉しかったのか、寝ぼけ眼で笑顔を作るとジ〜ッと僕を見つめている
・・・全裸で
「…なんだよ」
「毒入れないか見てるのよ♪」
「ふぅ〜ん。・・・本当に入れたらどうする?」
「う〜ん…。そうねぇ〜」
僕が先程アスカがコンコンした部分に出来上がったコーヒーを置くと、カップに視線を落としたアスカは小さく口を開いた

「・・・飲めるわよ。・・・アンタが入れた毒なら飲める」
21パッチン:2007/11/26(月) 01:53:46 ID:???
その後、昨日買ったカップ麺で昼食をとった僕らは、もう1度セックスした

夜になり、再びカップ麺で食事をとった後、昨日買ったお菓子を食べながらTVゲームをした

そして今はソファーに座り、正面から抱きついているアスカを抱えながら、ビールを一緒にチビチビ飲んでいる
・・・全裸で

「・・・ねぇ?なにやってんのかなアタシ達…」
「知らない。・・・でも、とりあえず僕はこれでいい
ううん…。これがいい」
食べ散らかしたお菓子の袋
コントローラーがいなくなったゲームキャラクターは、どうしていいかわからず、ピクリとも動かない
「アタシもこのままがいい…
もう男なんかいらない…。お金もいらない…。愛もいらない…。」
「明日も仕事だよ」
「やだぁぁ…。ずっとこうしとくぅぅ…」
ソファーの上で僕にしがみつくアスカは更に両腕に力を込める
「お風呂入って寝よう?ね?」
「ふぇっ…ひっく…」
涙が僕の右肩を濡らしていく
「明日なんかいらない…。時間止めてよシンジぃ…」
「・・・・・」
僕もそうしたいよ
でもできないよアスカ
明日は来ちゃう

当たり前のように、馬鹿みたいな日々が過ぎていく
22パッチン:2007/11/26(月) 01:57:56 ID:???
今回ここまでです
EOE後、ダラダラ生きる2人を書いてみました
アスカが他の男とヤリまくってる設定です。ごめんね
ファンフィクションだから許してね
23名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/26(月) 03:14:58 ID:???
おー、新作来たか。
ここはイタモノもおkのはずだから問題ないと思うよ。
とりあえず続きが気になる。
24名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/26(月) 07:33:30 ID:???
乙。
25名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/26(月) 18:50:36 ID:???
>>22
そういうことは、異性系イタモノという宣言だけにしといて、
中身は作中での描写で勝負しないと。
作者が言ってしまうと話が安っぽくなるぞ。
26名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/26(月) 19:40:37 ID:???
乙!
GJです!
27名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/26(月) 21:35:32 ID:???
俺も何か書いてみようかな……
28名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/26(月) 21:49:17 ID:???
>>27
頑張れ
29名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/26(月) 21:52:45 ID:???
>>25
仕方ない。世界観が飛びまくってるから今回のパッチン氏の文章だけでは
理解出来ん。

それにレベルが低いから修行の為に、ここで書いてるんじゃね?
実際でらとかレベルのものがかけるなら普通に投稿してるでそ。
30名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/27(火) 18:26:55 ID:???
>>15
GJ
こういうのも好き
31パッチン:2007/11/30(金) 20:42:28 ID:???
12月4日から3ヶ月が過ぎた3月某日

27歳になったアスカは、あれから彼氏を作らなくなった
理由なんかわからないけど、仕事の日以外はずっとマンションで生活している
そしていつも外ではイラついている。部下である僕らは、いい迷惑だ
「なんで最近イライラしてんの?」
「イライラしてる?そうかな?・・・うん、そうかもしれないかな。あはははっ♪」
そして家ではいつもこの調子。ボーっとして、時々笑って…
「よし、セックスしましょ」
こんなことばかり



ネルフ本部
『あっはははっあーっはっは!!』
用を足して男子トイレから出てきた僕の耳に届いたのは、女子トイレから響き渡る笑い声
アスカだ…。他に人の声は聞こえない
「アスカ…?」
「あはっ?シンジじゃな〜い♪なんで女子トイレにいんのよ?あははっ」
「ききたいのはこっちだよ…。なんで1人で爆笑してるの…?」
トイレの鏡で自分を見つめながらケラケラ笑うアスカ
不気味以外のなにものでもない
「ふふふっ、今日は早退しましょ。海行こ海♪」
アスカは笑顔でそう言うと僕の手を握り、女子トイレから飛び出した
「ちょ、ちょっとアスカ!?」

なんなんだよもう…
32名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/30(金) 20:45:41 ID:???
おー来てる来てる
支援
33パッチン:2007/11/30(金) 20:47:15 ID:???
ザザーン…
赤い海が広がる砂浜に僕と、先程と打って変わって沈んだ表情のアスカが並んで座ってる
「妊娠しちゃったみたい…なのよ…ね」
海に着いての第一声がそれだった
ポケットからデジタル式の妊娠検査薬が顔を出している
「何ヶ月とか詳しくはわかんないけど、『ここ』にいるのは間違いないと思う」
アスカはお腹をさすりながら、ポツポツと話す

ザザーン…
「なんか言いなさいよアンタさぁ…」
「・・・なんて言えばいいんだよ」
色々言いたいことはある。でも…
「結婚・・・しない?」
「したくない…」
「・・・ぷっ、あはははっ!言うと思ったぁ〜♪」

ザザーン…
「アタシみたいな使い古し女と結婚はイヤですか?シンちゃん?」
別にアスカが何人の男に抱かれてようが…
「僕とアスカって、そんなんじゃないと思ってたから…」
男と女だとはわかってた
「まぁ嫌がっても無理やり結婚するけどね。『多分』アンタの子供だと思うし」
「産むの?アスカ子供嫌いじゃ…」
アスカと僕の子供・・・なんか気持ち悪い
「楽しみじゃない。どっちに似るかとかさぁ♪」

ザザーン…
「・・・まぁ確かに楽しみは楽しみかな」
「じゃあ決定ね。結婚しましょ」
34パッチン:2007/11/30(金) 20:50:12 ID:???
ザザーン…
「べつに愛してくれなんて言わないわよ。結婚して、この子の父親になってくれたらそれでいい」
スーツ姿のアスカが母親ぶった顔になる
妙に気味が悪い…
「まぁアタシもアンタのこと愛してないから安心しなさい
戸籍にアタシとアンタを繋ぐ線を書くだけよ」
「愛のない結婚か…」
アスカのその言葉は、僕に心にのしかかる重圧を少し取り除いてくれた気がした

ザザーン…
「アスカは僕と結婚していいの?もう男遊びとかできないよ?」
「どうでもいいわ。アンタ以外の男は結局みんな同じだったしね」
「みんな同じ?」
なんか僕が変わり者みたいな言い方だな
平凡な性格してる自信はあるんだけど
「そっ。アンタ以外の男はみ〜〜んな同じ
ほれ、『これ』見て嫌がらないのはアンタだけよバカシンジ?」
ブラウスの下3つのボタンを外して、お腹をペロンと出すアスカ
「あぁ…それか…」

ザザーン…
13年前、ネルフのプールで水着姿のアスカが見せた可愛らしいお腹は、量産エヴァが喰いちぎっていってしまった
あとに残ったのは無惨に変色してズタズタになった…
「確かに気にしなくなってたね僕」
「ホントよね〜。昔はお腹見る度に謝ってクセに」
35パッチン:2007/11/30(金) 20:52:36 ID:???
「これ見たら、ほとんどの男は逃げるわね。まぁ目逸らしながらヤる男もいるけど
この前なんか『コスプレが好きなんだよ〜』とか言いながら、着衣セックス必死に求めてくる奴もいたし」
そんなことを言いながらアスカはケラケラと笑っている
・・・でも、僕はアスカを抱いた男達に猛烈にイラついていた
嫉妬とか同情なんかじゃない
アスカの男に対して感情を抱くなこと今まで無かったのに…

ザザーン…
「このお腹に耐えられた奴も、アタシの過去知ったら苦笑いしながら逃げていくしね」
「・・・・・」
「いくら世界の英雄でも『戦自殺し』みたいな面倒くさい肩書き持った女は嫌なんでしょ」
アスカの笑顔はまだ崩れない
でも僕のアスカに対する見方は完全に崩壊していた
僕の心の中で、お気楽に毎日を生きていたハズのアスカが

ザザーン…
「あははっ、アンタのこと騙したのよアタシ
本当はさぁアタシが男に捨られてんの」
「…もういいよ、わかったから」
「男と一緒にラブホ行って、帰りは1人で帰んの
ピロートークで戦自の話したら、血相変えて逃げてくから」
「ききたくない…」
「あははははっ」
「・・・」
「あはは…ははっ・・・はぁ…」

ザザーン…
36パッチン:2007/11/30(金) 20:55:24 ID:???
「・・・もう帰ろうか?夕飯の準備もあるしさ」
僕は立ち上がると、膝を抱えるアスカに手を伸ばす
「1人で立てる?妊婦さん?」
「・・・結婚」
「は?」
「ファイルアンサーしてない…。結婚するの?しないの?」
アスカは、うつむきながら僕の返答を待っている
「するよ。『愛の無い結婚』でしょ?
だいたい僕が子供作って逃げる男だと思ったの?」
「・・・アンタの子供じゃないかも…しれないん…だよ?」
ああ、確かにそうかもしれない
そのことをあんまり気にしてない自分は異常なのかな?
「アスカのお腹にいる時点で僕に無関係じゃないし、結婚するだけでアスカが満足ならそれでいいよ」
「・・・変な奴」
「あははっ、僕もそう思う
じゃあ、もう帰ろ。結婚祝いに今日はワインでも開けようか?」

アスカに子供がデキて結婚

昔の僕なら、頭から血が吹き出すほど悩んだだろうなぁ…
僕を同居人から婚約者に変えた女性は、僕の性格も大きく変えてしまったらしい

ザザーン…
「僕ら結婚したら何か変わるかな?」
「アタシは変わらないわよ。アンタに対する気持ちなんか今更変わりようがないし」
愛の無い結婚…
それが2人で一緒に出した僕らの結果だった

「あっ!でも子供産んだら週間セックス量増やしましょ♪夫婦なんだしさ♪」
37パッチン:2007/11/30(金) 20:59:42 ID:???
今回ここまでです
感想、ご指摘、ありがとうございます
なんか嫁がインフルかかったり、仕事増やされたりして書くの遅れてますw
38名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/30(金) 21:01:44 ID:???
乙!
嫁さんは大事になー
39名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/01(土) 00:19:06 ID:???

続きが気になる
40名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/01(土) 01:04:05 ID:???
GJ!
できのいい作品をコンスタントに書くいてくれてありがとう!
41 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 07:44:23 ID:???

アスカ誕生日記念SS


アスカ21回目の誕生日の朝。外では雀がさえずっている。ほんの少しだけ隙間の開いたカーテンからは日の光が一筋の光線となって、部屋を切り裂いていた。
アスカの部屋。窓側の壁に密着して置かれたベッドの上には人形のようにアスカが横になり、窓の方を向いて眠っている。
ベッド脇の小さい机の上には朝日で光る水差と、小さいコップが置かれ、水差の中に残っている水は半分に減っている。
左の壁際にはラックが置かれている。上にはいくつかの写真立てが置かれ、そのどれもに共通して、二人の男女が新婚の夫婦のように笑いあって写りこんでいる。
右の壁際にはデスクが置かれ、その上に備え付けられた棚には分厚く、高そうな辞書や、文庫本サイズのアスカの愛読書が並んでいる。
電気スタンドもあるが、ついてはいない。
ドア横の壁にはドイツの風景写真が添えて載せられたカレンダーが架けられ、十二月の頁が捲られて冬季風景のドイツが見えている。
フローリングの床にはパッチワークの美しい絨毯が敷かれ、ぬいぐるみやクッション、洋服に下着などが散乱している。
どうやらアスカは酷くだらしがないようだ。
「ん……。」
小さい呻きと共にアスカの体が、空気の入り始めた風船のような身じろぎをする。衣擦れの音。
彼女の瞼が薄く開かれるが、部屋を照らす朝日の明るさに再び閉じられる。
右手が布団の中から這い出し、肌寒い中を探る。枕元を何度かまさぐったその手が、やっと目覚ましに行き着く。
目覚ましを鷲掴みにした右手は、獲物を捕えて巣穴に引き込むウツボのような動きですぐ布団の中へ引っ込む。
アスカの瞳は蛍光塗料の塗られた時計板を見た。
時刻は十時三三分。数分の狂いはあるかも知れないが、今は彼女にはそれほど重要な事ではない。
しかしそこでアスカははっとする。そう、今日はアスカの誕生日なのだ。
ムクリと起き上がり、アスカはボサボサに乱れた長い髪をワシャワシャと掻き回した。少し頭を動かすが、アスカはピタリと止まったまま動かなくなる。
「いたぁ……。」
アスカは頭を右手で押さえて呻き、何度か頭を摩る。
「昨日呑みすぎた……。」
42 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 07:47:54 ID:???

痛々しい台詞を吐き捨てて、頭を気遣いながらアスカはベッドから降りる。
アスカの寝間着は綿の詰まった暖かいパジャマ。かなりの上等品のようで、「季節が戻り始めてるから」と十八の誕生日に貰った物だ。
これのお陰でアスカはこの寒い冬でも快適に眠る事が出来るし、大きめに選んであるので、
21になった今でも、修理をちょくちょく入れて大切に着る事が出来ている。
フカフカとした絨毯の上をアスカが歩き、デスクの抽斗を開けて『鎮痛剤』『胃薬』とラベルの貼られたふたつの小壜を取り出す。
内容のピルは、既に半分程減っている。
アスカはもう一度絨毯の上を歩いてベッドの上に座り、小壜からピルを数粒取り出して口に含んでサイドテーブル上のコップに水を注いで飲み込む。ピルが一緒に嚥下される。
アスカはコップの水を飲み干すとそれをテーブルの上に戻し、再び立ち上がる。
チェストから着替えを取り出し、小脇に抱えてドアへ向かう。アスカはドアノブを捻り、ドアを開けた。
寝室のすぐ外はリビングだった。向かって左はベランダ、右にはバスルームとトイレに外へ続く廊下への扉がある。
リビングの中ほどに進むと、右にはダイニングとキッチンに続く扉がある。部屋は殆どフローリング張りだが、リビングにはカーペットが敷かれている。
アスカは乱れた髪を手で撫でつけながら、右の扉に向かう。
床にある炬燵のスイッチと、壁にある備え付けられた暖房器具のスイッチを入れてからドアノブを回し、廊下に出た。
アスカは出てすぐに右の扉に入る。
ドアを開けたアスカの正面にはトイレへの扉がある。そこは脱衣所だった。
左にはバスルームがあり、昨夜彼女の設定した通りに湯が沸いていた。
アスカはパジャマと下着を脱いで脱衣籠に入れ、そのすぐ横の洗濯機の上に着替えを置いた。
「あ〜ダルい……。寒い……。」
とアスカは呟く。
彼女は体を両手で摩りながらバスルームの扉を開けた。
シャワーを温かくなるまでバスに空出しし、それから湯を浴びる。
丹念に髪を洗っている段になって、アスカの頭痛は薬のお陰で大分軽くなっていた。
髪を洗い、全身にお湯を浴びてサッパリとした表情で、アスカは風呂から上がった。如何にも気持ちよかったと言う風な顔だ。

43 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 07:48:50 ID:???

着替えは、余り飾りのない下着に見た目からして暖かそうな厚手のセーターとナイロンのズボンだった。
寒い脱衣所から飛び出したアスカは「寒い、寒い」とひっきりなしに呟きながら、直ぐにリビングに入る。
その部屋は、アスカがシャワーを浴びるうちにすっかり暖かくなっていた。息を吐きながら至福のふやけ顔をするアスカ。彼女は直ぐにリビング中央の炬燵に足を突っ込んだ。
「あ〜、やっぱ炬燵は良いわねぇ。」
かつて同居していたミサトの家で初めて体験した炬燵であるが、アスカはすっかりお気に入りになっている。
その上彼女の口調がミサトの口癖「やっぱビールは良いわねぇ」と同じである事にアスカは気が付いたであろうか?
しかし彼女が、炬燵の上に置かれた籠に入った蜜柑に手を伸ばした時に、ぐぅ〜と腹の虫がなる。誰もいないものの、アスカの顔が羞恥で赤く染まる。
「そういや……。」
お腹が空いた。とアスカは炬燵から抜け出す。ダイニングを過ぎてキッチンに向かう。
寒い室内。アスカは扉を閉めずに、ダイニングとキッチンにリビングの暖気を招き入れる。
「めんどくさ〜い。」
本当に面倒臭そうにしてアスカは冷蔵庫から食材を取り出そうと、開けた。
時計の針十一時三十分をさした時、アスカの家のベルを鳴らす者があった。
ピンポーンとインターフォンの呼び出し音が、アスカの耳朶を打つ。
「何よ、もう!」
と苛立たしげにアスカは玄関に向かう。
寒いのが嫌いなアスカだ。この上雪まで積もる外への扉を開けるなど、彼女の性格から推測するに、本心では居留守まで使う選択肢まで浮かんでいるのだろう。
しかしアスカの今就いている仕事の性格上、仕事関係の宅配も考えられる。
よって居留守の選択肢は消滅し、残る選択肢はカーディガンか何かを羽織ってから外に出るという物だけだ。
結局アスカは寝室に散らばっていたカーディガンを羽織り、玄関へ向かった。
靴をつっかけてチェーンと鍵を外してドアを開ける。
「は〜い、どちら様?」
機嫌の悪そうな顔をしてアスカが出ると、そこにいたのはお盆の上に覆いを載せた物を両手に持った青年がいた。
「おはようございます。××レストランのモーニングデリバリーサービスでございます。」
44 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 07:50:07 ID:???

××レストランと言えば、第3新東京髄一の良質サービスと料理を誇る一流レストランだ。
「え? そんなもの頼んでないわよ?」
目を丸くしてアスカは言った。
「失礼ですが、惣流アスカラングレー様でございますね?」
確認に肯首するアスカ。
「でしたら間違いございません。こちらのお食事は特務機関ネルフ様よりのご注文でございます。」
なんでネルフが? と訝みながらも受け取ってサインするアスカ。
青年は深々とお辞儀してから仰仰しく辞した。
扉が閉められる頃になると、アスカの興味は、寒さから謎のデリバリーに完全に移動している。
誰が何の目的で? とアスカは考える。しかし誰も思い浮かばない。ミサトにそんな気が回る訳はないし、他の職員にいまだかつてしてもらった事がない。
銀の盆を持ったアスカはリビングに行き、それを炬燵の上に置く。頬杖を突いてアスカはぼんやりと考えている。
しかし誰の顔も浮かばない。結局、おかしな物なら保安部が来るだろうと思い、蓋を開けてモーニングを食べるアスカだ。
中身はアスカにぴったりの独逸料理だった。
ふかふかの柔らかいパンに、明らかに本場独逸の物だとわかるヴルストと湯気が立ち上り水面が金色に輝くオニオンスープ。そして保温機に納められ、温もりを失わない芳しい薫りが鼻孔を刺激する紅茶。
新鮮な果物まで付いている。どれも一見しただけではその味は分からないが、一口食べれば調理人がどのような苦心と工夫で作り上げた料理か分かろうという物だ。
アスカの味覚神経はたちまちに刺激され、口腔内に唾液が分泌される。思わず唾を飲み込むアスカ。
「怪しいもんじゃないわよね……ネルフからのなんだから。」
確認と言うより、自分にいい聞かせる為に味覚神経が言わせていると言うような口調だ。
アスカはチラリとキッチンの方を見る。アスカが先に確認した冷蔵庫の中には、ミルク、ビールと酒のツマミ程度しか入っていない。それもアスカの食欲を余計に駆り立てる。
それに空腹のアスカが堪えられる訳は無かった。

久し振りのまともな朝食を終えたアスカは、炬燵に潜り込んで顎の下にクッションを置いてパソコンに向かっていた。どうやら寝そべって仕事をしているらしい。


45 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 07:51:07 ID:???

ブラインドタッチで次々と文章が打たれていく。まだ21だと言うのに随分と熟練した指捌きだ。
ウィンドウに打たれているのは、どうやら外国小説の日本語翻訳文らしい。
パソコンの横には、原稿用紙が数枚置かれ、そこには印刷された英文が羅列している。炬燵の上には茶封筒に百枚以上の原稿用紙が入ったままになっている。因みにこの他にも未処理の茶封筒がいくつかある。
仕事を始めてから30分ほど経った所で、アスカは肩をポキポキと鳴らす。すると炬燵の上に置かれた携帯のバイブレーションが震えた。
「ん……。」と呻いてアスカが体を擡げ、炬燵の上に置かれた携帯を取る。携帯のデジタル時計は十二時五分を示している。彼女はプライベートウィンドウを見てから、通話ボタンを押した。
「なぁに? ミサトぉ?」
如何にも面倒臭そうな口調でアスカが通話相手に話し掛けた。
「ヘロー!」
電話越しでこのテンションは酔っ払いとしか思えない。
「まさかミサト? デリバリー注文したの。」
「あたり! アスカも誕生日くらいまともなご飯たべなきゃね〜。愛しい恋人の手料理を食べれないアスカにプレゼントってとこね。」
恐らく、デリバリーの配達時間をアスカの遅い朝食ぴったりの時間にしたのもミサトだろう。
アスカの白磁のような頬が真っ赤になる。
「う、うっさい! 一言多いわよ!」
と吐き捨ててアスカは通話を切る。携帯を炬燵の上に置いて赤く染まった頬に手をやるアスカ。ミサトがもし見れたなら「あら、処女みたいに恥ずかしがっちゃって。」と冷やかしただろう。
顎の下にあったクッションを両手で抱えたまま悶えること三十分。やっと落ち着いたアスカは、蜜柑と暖かい紅茶を口にしてから仕事に戻った。


アスカは時計を見た。壁掛け式のそれは十二時三十分を示している。この生活スタイルなら、そろそろアスカが遅い昼食を取る頃だ。
「ん〜……。」
アスカが起き上がり、伸びをする。何度か体を揺らし、全身の筋肉をほぐす。
「はぁ……。」
一息吐いて肩をほぐしたアスカはムクリと立ち上がってキッチンに向かった。「寒い寒い」と連呼しながら体を摩るアスカ。
どうやら昼食をとる様子だ。
46 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 07:54:03 ID:???

そんなアスカの様子を見計らったかのように再び呼び出し音がなった。まさかと言った風にアスカが玄関を開けると、朝と同じ配達の青年が立っていた。
「御待たせいたしました。××レストランのランチデリバリーサービスでございます。」
「やっぱり……。」
とアスカが呟くと青年は「はい?」と首を傾げる。
「いや、なんでもないわ、ありがとうね。」
気恥ずかしいのかウブなのか、青年は顔を赤く染めて辞した。頬を赤く染めた青年は、どうみてもアスカより何歳か年上に見える。だがしかし、やはりアスカの日本人離れした容姿と大人っぽい雰囲気で年上に見えてしまうのだろう。
「昼は何かしらね。」
蓋を被った盆を両手に持ったアスカは軽く首を傾げながら呟く。
リビングに戻ると直ぐに炬燵にそれを置き、蓋を開けるアスカ。
料理のメインディッシュはアスカの予想通り、彼女の故郷、独逸の料理だった。それはいかにも昼食らしく、腹を満たすために朝よりヴォリュームが増している。
そのメインディッシュは独逸で比較的ポピュラーな煮込み料理であるアイスバインだった。蒸かしたジャガイモが添えてある。左下の皿には輝くようなライスが盛られ、右側に置かれた小皿には水々しいサラダが装られている。
全ての料理は日本人向けに調整されていが、日本人の味覚に近いアスカにはぴったりだろう。
豚の脛肉は鹿児島の黒豚。野菜も全て無農薬有機栽培の良質なものである。
そして米はセカンドインパクトから復興した米所、新潟県産の新コシヒカリだ。
適度な味の塩梅に、肉の柔らかさに野菜の形が崩れない程度の絶妙な煮込み加減。
肉の柔らかさは、まさに口の中で蕩けるような秀逸の歯触りだ。
「やだ、これスッゴク美味しいじゃない!」
久し振りに食べる本格的な故郷の味に、舌鼓を打つアスカ。如何にも幸せだといった至福の表情だ。
結局、米の一粒まで食べ尽してしまったアスカだが、その顔は体重を考える余裕もない、幸福の絶頂と言った風だ。
暫く食後の休憩を取っていたアスカだが、ふと思い出したようにパソコンを炬燵の上に上げて操作をしだす。
翻訳文をフォルダに保存し、彼女はメールを打ち出す。



47 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 07:57:07 ID:???

ここしばらくご無沙汰だったメールの遣り取りであるが、今日は流石にアスカ自身の誕生日であるし、なにも連絡を取ってはいけないという法はない。
極端に割り切った気っ風のアスカであるが、らしくなく様々なメールの文体をウィンドウ上に打ち出しては消していく。髪を弄りながら思案するアスカ。しかし中々文体は纏まらない。
元々他の外国人と変わらず、日本語における形容詞などに疎いアスカだ。しかし、それにしても随分悩む。
同居していた時はそれほど気を遣ってはいなかったアスカであるが、一旦活字に起こしてみようとすると、アスカは悩む悩む。
考えているのは文体から口調や漢字に至るまで全てだ。
強く書いてあまり寂しくないというようにすると彼はすねるし、あまりデレデレと想いのままを綴ると逆につけ上がる。アスカも気苦労が絶えない事だ。

思案すること三時間。たったメールひとつでここまで悩む人もそうはいないだろう。
結局アスカは伸びをして立ち上がり、欠伸を掻く。自室に戻り、着替えを持って風呂へ向かう。
熱い湯船につかって体全体の筋肉をほぐしたあと、パッと上がってイエローのティーシャツと白のショーツにホットパンツを穿く。因みにノーブラである。
リビングに戻ったアスカはさっさとパソコンをしまう。どうやらメールを諦めたようだ。
「お腹空いたわね。」
時刻は七時。二度あることは三度あるという諺がアスカの脳裏に浮かぶ。玄関の方へ向かうアスカ。
夕食のデリバリーを期待しているのだろう、心なしか顔の筋肉が緩んでいる。
外では十五センチ積もった雪の上に新たな雪が降り積もっている。
何が来るのかと少し楽しみにしながら、アスカは玄関の床に腰掛けて土間に足を降ろしている。
案の定インターフォンが鳴る。待ってましたと言わんばかりにアスカは扉を開けた。しかしそこに立っていたのは、デリバリーの配達では無かった。

「どうも、こんばんは! 早い安い安心丁寧がモットーの松代ガマガエル急便です! お荷物をお届けに参りました!」
男が帽子を取って挨拶すると、軽く積もっていた雪がはらりと落ちた。
帽子の下から現れたのは人の良さそうな中年男性だった。胸の名札から正規社員だと言うことがわかる。



48 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 07:58:22 ID:???

「……は? デリバリーじゃないの? ……。」
「はい?」
目を丸くするアスカに、配達員は怪訝そうにして聞き返す。
「いや! なんでもないのよ。」
取り敢えずサインをして荷物を受け取るアスカ。
「おじゃまいたしました!」
再び脱帽する配達員。
「ご苦労様〜。」
バタンと扉が閉まる。
箱は段ボールだった。貴重品のステッカーが貼られ、差出人は故意に削ってある。代わりに貼ってあるのは、ネルフから転送したというステッカーだ。
アスカは取り敢えずそれをリビングの炬燵に置き、携帯でミサトに電話する。
数回の呼び出し音の後、機械的な声が聞こえてくる。
「……電源が切られているか、電波の届かない場所にいるためお繋ぎできません……。」
「まったく! 肝心な時にいないんだから!」
苛立たしげに回線が切られる。カーペットの上に投げ出される携帯電話。
腕組みをしてアスカはジッと段ボールを観察する。なんらおかしい所は見付からない。差出人は消され、新たに転送とネルフ名義の差出人のサインが書かれてはいるが、それ以外は極々普通の段ボールだ。
結局宛てにならないミサトは諦めて、再び携帯のボタンをプッシュする。
「はい、伊吹の携帯です。」
出たのは真面目一本のマヤだ。なるほどマヤならどうとでもなる。
「あ、マヤ? アタシ、アスカだけど、アタシん家にネルフから転送されて来たって荷物があんだけどさ、調べてくんない?」
「良いわよ。すぐに調べるわね。」
携帯の置かれる音と、端末がタイプされる音。それがしばらく続いた後、ようやくマヤが電話に出た。
「確かに転送されてるわね。で? 何かあったの?」
「いや、なんでもないわよ……。」
49 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 08:02:01 ID:???

アスカは通話を切り、携帯を炬燵の上に置く。
「まぁ怪しいもんじゃないわよね。」
段ボールを閉じるガムテープを乱雑に剥がしていくアスカ。几帳面に貼られたそれを剥がし終わると、早速段ボールを開けた。中には段ボールが敷かれていた。その上には一枚の封筒が置かれている。
アスカは左手でそれを取り、右手でビリビリと乱暴に封を切った。中の便箋にはこう書かれていた。

ハッピーバースデイ、アスカ。
おめでとう。アスカもついに21歳だね。アスカが僕と同じ歳になって本当に嬉しいよ。仕事はどうですか? 捗っていると僕も嬉しいけど。
もうあの日から三年経ったんだね。アスカがずっと僕を待っていると言ってくれたあの日。今更だけど、僕は本当に嬉しかった。
本当はあの時に僕も何か言えれば良かったんだけど、結局何も言えなかった。今この手紙にそれを書くことも出来るけど、やっぱりそれは直接アスカに伝えようと思う。ごめん。
だけどクリスマスには言える。と言うのも、二十日後のクリスマスイブから三ヶ日の期間に許可が降りたんだ。君の所へ行く許可が。
正直、下りる訳ないと思っていたから凄く嬉しい。
だから年末年始にはアスカが誉めてくれた料理を、腕によりを掛けて作るよ。
自分で言うのもなんだけど、この三年間に随分腕を上げたんだ。きっと美味しいと思う。
今年のバースデープレゼントは、貯めたお金で少し奮発したんだ。
驚かせようと思って、ミサトさん名義で料理を送って貰ったんだけど、食べてくれたかな。アスカは不精者だから、きっとインスタントだけだったでしょう?
それで、このプレゼントが最後のバースデイプレゼントなんだ。
アスカ、誕生日おめでとう。
シンジ

アスカは口許に手を宛てて上品に微笑み、便箋と封筒を段ボールの傍らに置いた。
アスカが中に敷かれた段ボールを取ると中には落ち着いた紫色の指輪ケースがひとつ、綿に囲まれて納められていた。



50 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 08:04:45 ID:???

「これ……。」
驚いたアスカは段ボールを床に置き、指輪ケースを両手で包み込むようにして持ち上げた。目を丸くしてそれを見つめる。
彼女が蓋に手を掛けてゆっくりと開くと、クッションに納められた小さい指輪が姿を現した。それは飾り気のないシルバーリングだった。
明らかに高いものではないが、それでもアスカはまるで砂の欠片を扱うような手付きで手に取ると、慎重にリングが手の中で回転させる。リングの内側には、ドイツ語でこう書かれていた。
『Zu Asuka, den Shinji liebt.』
それを読んで、アスカはフフフッと微笑む。
「シンジが愛するアスカへ……か。気障なことすんじゃない、バカシンジの癖に……。」
言葉は乱暴だが、言い方には棘がない。それは妙に柔らかい印象を与える。アスカは左手の薬指に指輪を填めて、電気にかざして見てみる。シンジからの贈り物に、思わず顔か綻ぶ。
顔をにやけさせたアスカが絨毯の上に仰向けとなり、嬉しそうに転がる。
シンジが帰って来るんだ! シンジがお金を貯めて、アタシにリングをプレゼントしてくれたんだ!
まさに有頂天、幸せの絶頂と言った風だ。そしてもう一度左手をかざして薬指を見る。
アスカは立ち上がり、ノートパソコンを畳む。そして携帯を持って食事も取らずに自室へ篭った。中からは話声が聞こえてくる。


アタシよ、アタシ。……いいじゃない、今電話してんだから……まぁまぁね。
……ほら、そんなすねないの! ……わかったわかった、嬉しかったわよ。……ふふっ、そうなの? ……ん、わかってる、楽しみにしてるわよ。……そうなの、それでね……。


幸せな誕生日を迎え、二十日後のクリスマスを世界で一番心待ちにしている“少女”が、今ここにいる。


        終
51 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/04(火) 08:06:36 ID:???
短編です。
ドイツ語については自信ナッシング(´・ω・`)
英語の方がよかったかなぁ……なんて。
52名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/04(火) 15:16:30 ID:???
GJ!
53パッチン:2007/12/04(火) 21:42:05 ID:???
乙です!誕生日にピッタリな作品で、凄く良かったです!
こちらも誕生日記念にラストをポトリします
54パッチン:2007/12/04(火) 21:43:43 ID:???
『わたしのママとパパ』

2ねん3くみ 碇 ミライ
わたしのママはママです。でもパパはホントのパパじゃないです
よくわからないけど、そういうことらしいです。しかたないです

ママはパパをあいしていないらしいです。パパもママをあいしてないらしいです
よくわからないけど、そういうことらしいです。しかたないです

チヨちゃんもヒロくんも、わたしのパパとママはおかしいと言います
でもわたしはパパとママが大すきです
やさしいパパと、あかるいママはナイスコンビニーションだとおもいます



「ミライ…。アンタこんな作文、提出したの?」
「うん!かいしんの出来でしょ?」
「ナイスコンビニーション…。なんかレジ打ちとか早そうだね」
ミライの通う小学校に呼び出された僕とアスカは、ミライの書いた作文を見て深い溜め息を吐く
「ご家庭の教育方針に口出しをするワケではないですが…。
こういう内容の…そのぉ…、実のお父様でないであるとか、夫婦間に愛が無い等の会話は、ミライちゃんの前ではちょっと避けた方が・・・」
担任の女性教師は、このシュールな家庭を刺激しないよう、かなり言葉を選びながら話している

なんかごめんなさい。こんな家庭で
55パッチン:2007/12/04(火) 21:46:38 ID:???
結局アスカの身体はミクロの遺伝子まで、僕のことを愛してくれなかったらしい

碇ミライ
『昔のアスカはこんな感じなんだろうなぁ』と思わせる…。イヤ、それ以上の金髪碧眼超絶天才美少女だ
僕と血のつながりは無い、でも間違いなく僕の世界で一番大切な人

碇アスカ
僕の奥様…です。アスカを奥様と呼ぶと、やって来る変な感じが未だに抜けない

アスカは仕事を辞めて専業主婦になった
アスカの方が稼ぎがいいクセに…料理下手なクセに…

結婚式はパスした
『汝は愛することを誓いますか?』ときかれて、ハイと答えられる自信がお互い無いから

ミライの本当のパパは…よくわからない
でも僕がミライやアスカと生きていく上で障害になるなら関わりあいたくない。今のヘンテコな関係でいい
ミライがパパと呼ぶのは僕だけじゃないと駄目なんだ!
血の繋がりなんか関係無く、僕はミライが愛しくてたまらないから
56パッチン:2007/12/04(火) 21:48:21 ID:???
「ミライ?ランドセル重くない?持とうか?」
「・・・ばかねコイツ」
「大丈夫だよパパ♪」
学校からの帰り道。ミライは僕らの真ん中を陣取りながら歩いている
僕の右手とアスカの左手を握りながら、天使の笑顔を僕に向けてくれる
先程、担任の先生のお説教をうけていたとは思えない幸せいっぱいな表情だ
「パパぁ〜わたしアイス食べたい!」
「あっ!アタシもアイス食べたい!」
「うん。僕もアイス食べたい!」
夕暮れのアスファルトに揺れていた3つの影法師は、スーパーの中へと吸い込まれていった…

「え〜っと、アイスと、ポテチと、バヤリースと…」
「わ〜い♪パパのお菓子祭りだぁ〜♪」
「ちょ、ちょっとバカ!そんなに買ってどうすんのよ!!夕飯食べれなくなるでしょ!?」
57パッチン:2007/12/04(火) 21:50:11 ID:???
夜11時
「おやすみ…ミライ」
明日が休みということでいつもより夜更かししたせいか、子供部屋のベッドの上でぐっすり眠るミライ
起こさないようにソッと扉を閉め、アスカがいるリビングへ向かう
「お疲れ〜。正解Bだったわよ」
グビグビと缶ビールを飲みながら、さっきやっていたクイズ番組の答え合わせをしてくれる
「うん。ありがと奥様」
「ぶぁ〜か」
もしゃもしゃとスルメを口にほうばりながら、アスカは向かいのソファーに腰掛ける僕に缶ビールを手渡す
「ん…ありがと。でも、お酒やめたしさ」
「いいから飲みなさい!!飲め!でなければ寝ろ!」
「はぁ…」
しぶしぶプルタブを起こして、ちびちびビールを口に運ぶ
「アンタはミライに気をつかいすぎなのよ。『パパお酒臭い…』って嫌がられたことがあるからって酒やめるなんてさぁ」
「アスカになにがわかるんだよ…」
あの時のミライは汚い親父を見る目だった…
「アタシや仕事のことになると楽観的なクセに、ミライのことになると昔のアンタに逆戻りね」
「別に楽観的なんかじゃないよ…。アスカのことも真剣に考えてるよ」
「・・・ふぅん。酔ってるし、信用しちゃうわよ?」
「ホントだよ…」
58パッチン:2007/12/04(火) 21:51:53 ID:???
「じゃあアタシのこと好きになったの?愛してるの?」
ニタニタ笑いを浮かべたアスカが、缶ビール片手に僕の方に近づいてくる
「・・・別にアスカに対する思いが変わったんじゃなくてさぁ…
なんて言うんだろ…。よくわからないけど、アスカが僕にとって欠かせない存在っていうか…」
「僕にとって、か・か・せ・な・い・存・在?」
アスカのニタニタ笑いが、スーパーニタニタ笑いに変化している
ヤバい…自分で言って恥ずかしくなってきた
「と、とにかく!僕はミライやアスカと一緒にいるのが好きなんだよ!!それだけ!!」
「ふ〜ん♪まぁそういうことにしときましょ」
ニタニタアスカさんは僕の隣にピッタリと寄り添い、コツンと僕の肩に寄りかかると、上目づかいで僕をジッと見上げている
…流れのままに唇が重なる
「ぅん…。・・・ねぇ今日のミライの作文だけど…」
「気にしてないからいいよ。本当のことだしね」

ホントのパパじゃない

「いつもそればかりね…。ずっと気にしてないの?」
そんなことないよ
ミライが死ぬほど愛しいんだ。気にしないワケない
「アスカが気にすることじゃないから安心して。僕はミライを裏切らないよ」
「・・・1人でしょい込むなバカ」
59パッチン:2007/12/04(火) 21:54:42 ID:???
その後、ズルズルと寝室に向かった僕とアスカは夫婦な夜を送った

「30超えても何も変わらないね僕ら…」
朝日が眩しい…。カーテンを閉めるのが面倒なので目を軽く細めるだけ
「ミライはガンガン成長してるのにね」
「これでいいんだよね。僕が幸せで…アスカとミライが幸せで…」
「ちがうわ…よっと!」
僕の隣で天井を見上げていたアスカはグルンと勢いよく僕にのしかかって、胸に顔を埋める
「アンタが幸せなら、アタシ達も幸せなのよバカ…」
表情を見られたくないのか、顔を上げようとしない
「へぇ…。なんか僕の株がアスカの中で大きくなったのかな?」
「・・・アタシのアンタに対する気持ちはずっと昔から変わんないわよ…」
アスカが漏らした『はぁっ…』という熱い息が僕の胸にかかる
「アンタのこと好きじゃない…
でもアンタと一緒に生きた時間が…たまらなく愛しいの…」
ゆっくりとアスカの顔が上がり、青い瞳が僕の黒い目を貫くように見つめる
そして青い瞳の下に広がる頬は赤く染まっている
多分僕の頬も負けず劣らず真っ赤だろう…
「アンタとず〜っと一緒にいてあげる…。だからアンタもアタシとずっと一緒にいなさいよ…」
その言葉の後、寝室のベッドの上で2人の大人が、顔を真っ赤に染めている

「全裸でなにやってんだか…あの2人…」
部屋の外ではミライちゃんが呆れていましたとさ

おわり
60パッチン:2007/12/04(火) 21:56:39 ID:???
設定をイタくして、読むとあまりイタくないみたいな作品を目指したんですけど、どうでしたかね
オチ微妙でごめんなさい
このテのほのぼの話ってオチつけるの難しいですw

余談ですけど、ミライって誰が最初につけたんですかね?個人的にはアスカとシンジの子供の名前ではコレが一番好きです
61名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/04(火) 23:34:53 ID:???
乙です!
62名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/05(水) 00:36:10 ID:???
おもしろかったです!
なんだかほのぼのとした文体だと多少イタくてもすんなり読めるものですねWWW
いやはや…じぃじぇぃですっ!!!!
63名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/05(水) 00:55:45 ID:???
乙!
GJです
64名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/05(水) 11:11:11 ID:???
アスカが他の男とヤリまくり・2人の間に愛がない・ミライは他の男の子供
設定だけならド級のイタモノw
65名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/05(水) 13:04:23 ID:???
結局シンジもアスカも逃げてるだけとしか思えない
66名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/08(土) 11:54:41 ID:???
自分は逃げてるだけとは思わんかった
屈折しとるなとは思ったけど
でも、この二人は屈折してた方が自然な感じがするんだよね

GJですた!
67名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/08(土) 15:48:47 ID:???
GJ!

むしろこれも1つの愛の形なんではないだろうか、と自分は思ったが。
68名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/08(土) 16:40:33 ID:???
そしてミライとシンジの禁断の(ry
69名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/08(土) 16:55:34 ID:???
つか、LASである必要もないフツーの話w
70名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/09(日) 05:28:54 ID:???
俺は本編ありきの話だと思う。
多分愛がないのはシンジだけじゃないかな?アスカはホモ説ばらまいたり、最後の照れ隠しのような発言といい、本編後半の「シンジへの異常な執着心」を持ってるように思う。
腹の中に愛憎ためこみながら生きてそうだがなw
71名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/09(日) 13:12:31 ID:???
ちょっくらビルの屋上からコードレスバンジーしてくる。
72名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/12(水) 02:17:10 ID:???
投下街
73名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/13(木) 00:14:34 ID:???
>>70
本編ありきっ、て?
意味ワカランw
74名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/13(木) 09:28:12 ID:???
本編というよりLAS思想ありきじゃね?
75名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/20(木) 02:54:03 ID:???
職人降臨待ち
76名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/24(月) 21:47:49 ID:???
キモオタ職人待ち
77名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/24(月) 22:06:04 ID:???
78 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/24(月) 22:53:24 ID:???
>>76
来ましたよ(´・ω・`)ノシ


クリスマス記念SS

それは寒いクリスマスイブの事だった。そのペンションは第三東京から幾つもの山と峠を越えた所にある、スキー場の施設のひとつだった。ゲレンデに併設されたホテルから五百メートル以上離れた、宿泊用の施設。
そのスキー場は数年前に営業を再会したばかりだった。セカンドインパクトに影響を受けた雪崩れで、そのスキー場は壊滅していたのだが、サードインパクトに伴う四季の回復により、スキー業などのレジャー業が息を吹き返したのだ。
人々は復興に費やした時間の分だけ、反動とばかりに享楽に時間を費やし始めた。
かつて倒産を強いられた玩具会社やレジャー企業はここぞとばかりに再興を果たし、人々への享楽を再び提供した。

ペンションの中。シンジは談話室の中にいた。彼は一人掛けのソファに座って、暇潰しをするようにカバーの掛けられた文庫本を読んでいた。
部屋の壁にある暖炉の中ではパチパチと薪が撥ね、優しい光が灯っている。その灯は暖炉周りの古びた煉瓦壁の凹凸を刻名に照らし、部屋全体を柔らかく暖めている。
部屋の真ん中には、大きなクリスマスツリーがある。ペンションの管理人が、『エヴァパイロットの君達に。』と贈ってくれた物だ。
ツリーにはキラキラと飾りの電飾が煌めいて、綿の雪が柔らかそうに乗っている。
壁際に填め込まれたブラウン管のテレビからは、国営放送のニュースが流されている。
『浅間山の麓で降る雪は深夜には止むことでしょう。山頂付近の雪は朝まで止むことはなく、時には吹雪になることでしょう……。』
シンジは、リモコンで男性の読むニュースが流れるテレビを消し、代わりにラジオをつけた。ラジオのスピーカーからはシンジの期待通りの、甘いクリスマスキャロルが流れ始める。
シンジはソファ横のテーブルに置かれたコーヒーを一口含んだ。すると口腔内に、苦く香りのある後味がじんわりと広がる。

「碇クーン!」
シンジはその声に、首だけを動かして反応した。
隣のリビングから顔を覗かせてシンジを呼んだのは、洞木ヒカリ改め鈴原ヒカリだった。
彼女は酔っ払っているらしく、顔を紅潮させて大きく手を振っている。
「飲まないのぉ?」
「ヒカリ! いい加減に飲むのやめぇ!」
79 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/24(月) 22:54:21 ID:???

同じく酔ってはいるが、まだヒカリよりは耐性があるトウジが妻を諫めた。
「まだまだ飲めるわよぉ!」
どうやらヒカリは、かなり酒癖が悪い上に笑い上戸の絡み上戸らしい。しきりに楽しそうな笑い声を上げて、バンバンとトウジの背中を叩いている。
恐らく固辞したヒカリにミサトが無理矢理酒を飲ませた末路だろう。
「ごめん洞木さん、飲むと僕寝ちゃうし……。」
苦笑いしながらシンジが断る。
「じゃあトウジで我慢してあげるぅ!」
わしっとトウジに抱きつくヒカリ。
「ガマンてなんや、ガマンて!」
奥の方へ消えていく二人。昔からケンスケにからかわれた夫婦漫才は健在のようだ。
シンジは苦笑する。本に視線を戻し、頁を繰った。

「……面白い?」
シンジは振り向く。背後に立っていたのはレイだった。
「け、気配消して近付かないでよ……びっくりするから……。」
「解ったわ。」
レイは頷いてシンジの座っている物とはまた大分形の違うソファに座った。彼女は紺色の長いスカートを穿き、黄色いセーターを着ていた。
「面白い?」とレイが訊いた。
「うん、面白いと思う……。」
「どんな所が?」
シンジは本から手を離し、頭の中で本のダイジェストを探る。
「そうだね……主人公が恋人の事をずっと待ってる所、かな……。」
「今の碇君みたいね……。」
シンジはレイの顔をまじまじと見た。
「気付いてたの?」
80 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/24(月) 22:56:02 ID:???

「気付いていないと思ったの? ……。」
シンジは溜め息をひとつ吐いた。彼は嘘が苦手な上に、レイ相手だと嘘だろうが冗談だろうが他人が仕掛けた悪戯を見ただけだろうが、表情ひとつで見破られてしまう。
「じゃあさ、綾波はアスカが来てくれると思う?」とシンジが訊いた。
「碇君はどう思うの?」とレイは質問に質問で返した。レイは頬杖を突き、暖炉の中を見つめている。相変わらずシンジには、レイがなにを考えているのかまったく解らない。
シンジはかぶりを振って答える。
「来ない。きっとアスカは来ないよ……。」
レイは消えた表情のまま、シンジを見た。シンジはそれにどぎまぎとする。シンジは、昔からレイの何も感じられない赤い瞳があまり得意ではなかった。責められているように感じてしまうのだ。
「どうして……そう思うの……?」
「だって、元々僕はあの時に何も言わなかったし、アスカだって何も言わなかったんだ。今更来るなんておかしいだろ?」
それは至極当然の考えだった。しかしレイはゆっくりとかぶりを振って口を開いた。
「それなら、なぜあなたはアスカにメールを出したの?」
レイの瞳が、シンジの足元に隠すように置かれたノートパソコンを見た。それにシンジはドキリとする。
「来てほしいから書いたのではないの?」
シンジは俯く。確かにレイの言う通りだった。シンジは内心で諦めていた一方、期待もしていたのだ。
「だって……。」とシンジが口篭る。左手が右手首を掴み、右手が何度も開閉を繰り返す。シンジがするいつもの癖だった。
81 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/24(月) 22:59:18 ID:???

「『だって……。』何?」
レイが問う。
「だって……今なら……アスカに好きだって……言えそうな気がしたんだ……。」
「言えると思うの? 本当に?」
シンジがハッと顔をあげた。
「あの時、セカンドが出ていったあの時に、言えなかったのに?」
「それは……。」
「……碇君に、伝える事があるわ……。」
出し抜けにレイが呟いた。珍しい表情の変化が伺える。迷ったような、後悔するような表情だった。
「アスカの事よ……。」
「どうしてそれを綾波が……。」とシンジは訊いた。レイは立ち上がり、シンジの前に立つと彼の肩に手をのせた。レイの頬はいくらか赤くなっているように見える。
「知りたい?」
「それは……ングッ!」
シンジの声が途切れ、呻きが聞こえる。レイの唇がシンジの口を塞いでいた。ソファに座るシンジの唇に口付けをするレイのシルエットが、暖炉の火によって煉瓦の壁に映し出される。

シンジの意識は、螺旋階段をゆっくりと下るように、闇の中へ暗転していった。



コンフォート17。
「ここは?」
シンジが呟く。レイはいない。シンジは部屋の片隅に立っていた。部屋の壁や床や家具は、どこか遠い記憶の中にあるようにぼやけていた。
周りを見回し、シンジはやっとそれが自分の住んでいたコンフォート17だと解った。
シンジが視線を戻すと、そこには一組の男女がいた。
シンジ自身とアスカだ。シンジはもう一人の自分に悲鳴を上げるが、二人には聞こえていない。
82 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/24(月) 23:00:03 ID:???

シンジは腰を抜かしながら悟る。そうか、僕は幽霊みたいな存在なのか……。
事実、シンジがいくら自分に触れようと手を伸ばそうが、すり抜けて触る事は出来なかった。
『クリスマスプレゼント。』
それがアスカの声だと気付くまでに、シンジは数秒掛った。その一言で、シンジはこの日が、まだ真夏の日射しが輝いていた頃のクリスマスイブだと解った。
『な、何?』
自分の声とは改めて聞いてみると、また違った響きに聞こえる。
アスカがボードを差し出す。アスカの部屋に架っていたホワイトボードだ。拙い文字で書かれた立ち入り禁止の文字は、消えている。
シンジはその時の光景を、昨日の事のように覚えていた。
虚空のシンジがボードを受け取る。
『なに? これ……。』
『アタシこの家出るから。物置からの脱出、おめでとう。』
シンジは唇を噛んだ。この時の、自らの言動に後悔を感じていた。
『そう……帰るの?』
『まぁ、そんな所ね。』
アスカは腕を組んだ。
『いい加減、アンタの顔も見飽きたしね。』
『見飽きたって……。』
『そ、うざったくてさ、アンタ。』
シンジはこの時、全てが裏目に出たのだと感じていた。アスカに尽した全てが。
『そう……ごめん……退屈で……。』
アスカは、シンジを鼻で笑った。荷物を肩に担ぎ、彼女は出ていった。




83 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/24(月) 23:01:47 ID:???

舞台は変わる。虚空のシンジが消えていく。輪郭が朧になり、姿が砂嵐に晒されたように掻き消えていく。家具や壁が液体のように崩れ、新しく別の壁が構築されて行った。
そこは喫茶店だった。シンジは周りを見回す。硝子から見る外の風景はすり硝子越しのように濁り、人や車、建物の正確な形はわからない。店内も粘土細工のように白く、のっぺりとしていた。
シンジの横にはレイがいた。彼女の周りは色こそ着いてはいたが、服の境目さえも不明瞭だった。ただテーブルに置かれた紅茶とトーストははっきりと見えていた。
鈴の音が聞こえる。他の客が立てる物音は聞こえないが、その音だけははっきりと聞こえた。
最初、入店した人物の顔は他の人と同じく白かったが、レイが顔を上げて人物を見ると、シンジにも解るぐらいにはっきりと人物の顔が明らかになった。
それはアスカだった。
『久し振りね。』とレイが言った。シンジは、レイがアスカに喋りかけるのを見た事がなかったが、初めてみたそれは異常な程に嵌っていた。
『何? アンタが直々に呼び出すなんて、なにかあんの?』
レイが首肯する。
『あるわ。』
『めずらしっ。明日は雪かしらねぇ〜?』
両手を上げておどけながらアスカはレイの向かいに座った。
『ふざけないで……。』
『神に等しき偉大なリリス様のありがた〜いお言葉ですかぁ?』とアスカが侮蔑の篭った台詞でからかう。
『殴るわよ?』
『……解ったわよ……。』
レイが凄んで、ようやくアスカはふざけるのをやめた。
『で、何よ? まぁ大体想像はつくけど。』
『えぇ、碇君の事よ。』
アスカは小さく笑う。
『中々いい演技だったわ、我ながら。』
「え?」とシンジが声を上げる。しかし当然二人には聞こえない。
『そう、良かったわね。』とレイが言った。
アスカが頬杖を突く。
『それはアンタにとって?』
84 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/24(月) 23:03:59 ID:???

『皮肉よ。』と言ってレイは紅茶を一口啜った。
『へぇ、アンタにも皮肉のひとつも言えたんだ。』
アスカがわざとらしく驚き、レイが頷く。
『で……。』
アスカの顔が引き締まり、真剣な顔付きになる。
『シンジの事、頼むわね……。』
珍しく、レイが戸惑いの表情を見せる。
『いいの……本当に……?』
『遠慮? らしくないわね。』
レイはかぶりを振る。
『遠慮じゃない……貴方の事……。貴方は本当にそれでいいの?』
アスカが目を閉じ、息を吐いて首を横に振った。
『いいワケないわ……だけどさ、ファースト、アンタなら解ってるんでしょ?』
『ええ……。』と言ってレイは頷いた。
『……貴方は碇君を傷付けずにはいられない……。だけど碇君は……。』
レイの言葉を全て聞かず、アスカは立ち上がった。
『行くわ。外に保安部の奴ら、待たせてんのよね。』
アスカは伝票を手にとった。すると、アスカの注文していたコーヒーとトーストがようやく持ってこられる。
アスカがそれを断ると、ウェイターは確認をしてから辞して行った。
『本当にいいのね?』
レイが確認する。
『クドイわよ。ファースト。』
アスカが伝票を手の中で弄び、言った。
『これ、アタシが清算しとくから。』
アスカのスカートが翻り、大股にレイから離れていく。レイは冷たい紅茶を一口啜った。

続く
85 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/24(月) 23:06:30 ID:???
完結は明日(´・ω・`)ノシ
86名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/25(火) 00:46:22 ID:???
wktk
87名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/25(火) 03:40:38 ID:???
クリスマスを生きる希望
88名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/25(火) 23:32:43 ID:???
勿体振りに名作なし。
89 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/26(水) 00:04:36 ID:???
ちょっとまって……(;´Д`)
90 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/26(水) 01:46:24 ID:???



シンジが目を開ける。レイの唇が離れていく。その不可解なほど艶かしい彼女の動作を、シンジは薄く開かれた瞳で見ていた。
レイの閉じられていた瞳が開かれていく。
「碇君の唇……柔らかい……。」
二人は交互に吐息を吐いた。
「綾波の唇も……柔らかいんだね……。」
シンジは今まで知らなかった。自らの母親から遺伝子を受け継いだ彼女の唇や体が、ここまで彼自身の体を高ぶらせるなどとは、彼はまったく知らなかったのだ。
「どうして……こんな風に……?」
91 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/26(水) 01:48:07 ID:???
人間離れした能力を言われたレイは、気まずさと羞恥で目を伏せた。彼女はこれまでも数々の人間外れした能力を発露――どれもがシンジの前のみであったが――してきたのだ。
「喋るの、苦手だもの……。」
「こんな事も……できるんだ……。」
レイは頷いた。
「あまり使いたくはないわ……。」と言ってレイは顔を伏せた。
「ごめんね……。」とシンジが謝った。シンジは、これまでに人ならざるレイがアスカやシンジ達と違う事に悩んでいたのを知っている。
二人はソファに座り直し、暖炉の火を見つめた。
火はゆらゆらと揺れ、シンジとレイの頬を暖めていた。
「だけど……。」とシンジは言った。
「……アスカが来るっていう事にはならない……。」
「そうね……。」とレイは寂しそうに言った。
「きっとアスカは来ない……。」
92 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/26(水) 01:53:26 ID:???

夜が明ける。
シンジが寝返りをうち、瞳が開いた。木張りの天井には、カーテンの僅かな隙間から漏れだした雪原からの反射光が、一筋のスリットとなって床の陰を切り裂いていた。
「んん……。」
シンジは呻き、目を腕で覆った。
外からディーゼルエンジンの音が聞こえている。
リョウジが小型除雪機を使い、ペンション前の道から雪を退かしているのだろうか?
ゆっくりと体が起き上がる。
ガシガシとシンジは髪を掻き乱して頭を擦った。
昨日はミサトの誘いを断りきれなかったシンジだ。
呻き声が上がる。
手探りで荷物をあさり、薬の小壜から二日酔いの薬を取り出して飲む。
枕元の机の上にあるペットボトルに入っていたミネラルウォーターを飲む。
元にあった場所にそれを戻し、シンジは時計を取った。
93 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/26(水) 01:55:23 ID:???
時刻は既に昼近い。
シンジが寝ていたうちに、ヒカリやトウジ達はもうゲレンデへ滑りに出ていた。
シンジはコーヒーを飲もうと、部屋から出た。
頭の痛みはまだ残っていて、吐き気まである。
木で作られた床と階段を、ノロノロとしたリズムで降りて行く。
階段がギシリと軋む。
リビングの扉を開けるシンジ。
蝶番が、生き物のような音で軋んだ。

「遅いわよ〜バカシンジ〜。」
退屈そうな声が、リビングに入ったシンジに掛けられた。
シンジは自分をこう呼ぶ人物を一人しか知らない。
94 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/26(水) 01:59:01 ID:???

「アスカ!?」

叫ぶように名を呼んでシンジはツリーの方を見た。
そこにはアスカがいた。
彼女は前より幾分大人びた顔立ちになり、胸や腰回りもシンジが最後に見た時より成熟していた。
上着には厚そうな赤いセーターを着て、下には長めのスカートに防寒用のストッキングを履いていた。
そして頭には、プレゼントを縛る時に使うような大きなリボンが結んであった。

「早くほどいてよ。」
とアスカがリボンを指差して言った。
苛立っているようだ。

「うん……。」
戸惑いながらリボンをほどくシンジ。
はぁっ、とアスカは息を吐いてすっきりとしたように髪を振り乱した。
そしてヘッドセットをポケットから取り出して髪を結った。
95 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/26(水) 02:01:59 ID:???

「いくらアタシが決心したからって、プレゼントはないわよね。」
とアスカはシンジに同意を求めるように言った。

「うん……。」
とシンジは呆然としながら同意する。
「アンタね。他になにか言えないわけ?」

アスカは、座っていたソファの肘掛けに頬杖を突きながら文句を言う。

「な、なんでこんな所に……?」

「なんでって、アンタが呼んだんじゃない。」

試すような瞳で、アスカはシンジを見つめている。
「そりゃあ……そうだけど……。」
「まったくさぁ、ファーストとミサトってば強引でさ、ファーストに至ってはこのアタシに『プレゼントよ……』
とか吐かしてリボン巻きやがるしぃ……。」
とアスカはリボンをブラブラと揺らした。
「黙ってないでなんか言いなさいよ。」
96 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/26(水) 02:03:36 ID:???

正直言ってシンジは期待を捨てていたのだ。
不意打ちと言って良いほどのアスカの突然の訪問に、とっさに言葉が出てこない。
しかし言葉の代わりに昨日見た光景が頭に蘇る。
あの光景は、アスカが自分を傷付けるのが怖いが為に離れていったような意味に解釈出来た。

「伝える事があるんじゃないの?」
「うん……。」
シンジは外を見た。
大きな窓の外では、ちらほらと小さい雪が降りてきていた。
ホワイトクリスマス。
彼はアスカを見た。
表情が読めない。
瞳がうるんでいるようにも見えるし、眉には敵愾心が満ちているようにも見えた。
彼の手が握り締められる。
それをめざとく見付け、シンジが決意を固めたのだとアスカにはわかった。


僕はアスカが、
好きだ。



97 ◆8CG3/fgH3E :2007/12/26(水) 02:08:41 ID:???
投下遅れてすんません……
「なんか投下できねぇな……」とクリスマス夜の11時に思ってたら……

そうです。俺は携帯厨ですorz
なんか携帯に制限が入った感じなんで長文を分けざるを得なくなった次第……
や、ヤバイ……
98名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/26(水) 02:09:50 ID:???
乙!
GJです
99名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/26(水) 16:00:42 ID:???
乙華麗
GJでした
100名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/12/28(金) 01:50:23 ID:???
どうせクリスマスFFこねぇだろと思っていたら…
来てたGJ!
101名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/02(水) 03:46:45 ID:???
GJ!!!
今年一発目に読んだ作品でした
これからも作品投下をwktkして待ってます
102名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/08(火) 01:31:34 ID:???
保守まち
103名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/12(土) 21:16:45 ID:???
104名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/12(土) 21:32:10 ID:???
うわ〜
浮上してる〜
105名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/12(土) 23:38:08 ID:???
ある日アスカとシンジが公園を歩いていると

ブチュー
106名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/18(金) 22:24:57 ID:???
ほっしゅ
107名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/20(日) 03:24:19 ID:rgWkMvr6
ほっしゅあげ
108名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 02:39:12 ID:???
「さようなら、アスカ」
めずらしくしっかりとした口調で私の目を見てそういったあと、さっさと荷物を持ってそいつは玄関へ出ていった。
扉を開けると葉に透けた緑色の光が漏れ、いつのまにか少し広くなった背中を浮き上がらせた。
私は何だかどうでもいいような気分でそれを横目で追った。軽い空気音で扉が閉まったのがなんとなく滑稽で鼻を鳴らした。
しかしそのあとが手持ち無沙汰だった。テレビを点け、チャンネルをいくつか回してすぐに消す。やることもなくカーペットの模様を眺めているうちに時間が過ぎていく。

気怠い体を持ち上げて冷蔵庫に向かい、麦茶を取るついでに自分の部屋の隣のドアを開けた。

家具の消えた窓のない暗い空間はさっぱりとして、なにかから解放されたように堂々としていた。そこには生活の跡は形もない。文句の付けようもないくらい念入りに研かれていた。

そこで私は初めて、シンジがこの家に再び帰ってこないことを悟った。
109名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 02:39:48 ID:???
「馬鹿ね」
逃げたといえば逃げたのだろう。私から。けれどこの部屋からははっきりとした決別の意志が感じられた。
本当はわかっていた。逃げたのではなく、悩んで、考えて、そして決めたのだ。
私から離れると。
この新世界で、なにをするともなく馴れ合っていただけの二人の癒着はただの堕落に過ぎないととうとうわかったのだ。
私はシンジが気付く遥か昔からそれを知っていた。知っていて、見ないふりをした。
馬鹿なのは私だった。
今から走って追い掛ければきっとそのまだ薄い肩をつかんで、こちらに振り向かせることができるだろう。
プライドを捨てて、一緒にいてよと頼めばきっと戻ってきてくれるはずだ。
私はそうしたくなかった。みっともない女のような真似はしたくなかったし、頭を下げるのも嫌だった。
しかしいつのまにか私は堅いアスファルトを蹴って、息を荒らげてシンジを追っていた。
110名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 02:41:29 ID:???
見慣れた背中は思ったとおり、駅に向かう道を歩いていた。シンジ!私は叫んだ。振り返った目が見開かれた。
「アスカ?」
白いシャツを思いっきりつかんで離さないようにして、私はぜえぜえと煩い喉を少しの間休ませた。シンジがおろおろとしているのがわかる。
「どうして」
「勘違いしてん、じゃないわよ。……お別れをいいに来たのよ」
顔をあげて黒い目を真っ向から見据えると、シンジはいつものようにうろたえて後ろに下がろうとした。けれどシャツを掴む手がそれを許さなかった。
「シンジ、好きよ」
「ア」
「元気でね」
腕をぐいとひっぱって、噛み付くようなキスをしてあげた。大人のキスよ、なんて。往来でこんなことするなんて馬鹿げてるわね。人がいないのが救いだった。
顔を離すとシンジの目は潤んでいた。僕も好きだ、好きだよ。アスカ。シンジは泣きだしそうな顔をした。
「でも別れなくちゃ。このままじゃ駄目なんだ」
「わかってるわよ。でも、いつか」
「そうだね、いつか」
また会えたら。
私は日の光を反射するシンジの背を見つめた。白くて眩しかった。どんどん遠くなる間、一度も振り向かなかった。
111名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 08:01:07 ID:???
GJ!
112名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 15:56:20 ID:???
いい話だった。
113名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 17:14:31 ID:???
114名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 17:51:40 ID:???
あ〜・・・GJ!!
続きが気になるなぁwwww
115名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 19:39:04 ID:???
>>111-114
ありがとうございます
知ってるとは思うけど、この話はこれで完結してます。続きはご自由に
またちょくちょく投下するかもしれないんで、そのときはよろしく
116名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 23:00:29 ID:???
久々のGJ
117名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/22(火) 21:07:13 ID:???
すみません、現在LAS系スレ投下SSで
転載板に転載されてない作品をまとめたサイトを作っているのですが
http://las.nobody.jp/all14_89.html
↑こちらの作品は他のどなたかの作品を転載投下されたものなのでしょうか?
この作品について「転載乙」というレスが付いていたので…
118名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/23(水) 16:36:15 ID:???
わかんないけど、転載ガンバルンバ
119名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/24(木) 11:33:04 ID:???
俺もよくわからんけど
問題があるなら
わかった時に消せばいいんでない?
柔軟にいこう柔軟に
120117:2008/01/24(木) 19:49:52 ID:???
>118 >119
そうですね柔軟に逝きます
ありがとうございますた
121パッチン:2008/01/25(金) 22:08:17 ID:???
なんか久しぶりにポトリします
どこに投下するかかなり悩んだんですが、いつもお世話になってるのでここに失礼します
内容は・・・まぁ、投下先を悩むような内容ですw
122パッチン:2008/01/25(金) 22:09:51 ID:???
サードチルドレンが来る…
オーバーザレインボーにて、潮風をいっぱいに浴びながらアタシは騒がしくなった空を見上げる
「はんっ!実力の違いというモノを見せつけてやるわ!!このアタシがエースパイロットなんだから!!」
上空をうろついていたヘリがゆっくりと着陸する
「・・・来たわね」
あそこにサードがいる
アタシのパイロット仲間、そしてライバルになる存在…
ヘリから1人の人間が降りてくる。おそらくミサトだろう
少し緊張で早くなる鼓動をごまかす為、なるべく自然体な表情で近づいていく
「ハロ〜ミサト♪」
「アスカ久しぶりじゃない。ずいぶん背が高くなったんじゃない?」
「まぁね♪そういうミサトは・・・ちょっと老けた?」
「あはは…まぁね」
前回会った時より、少しやつれてシワが増えた感じに見える
「どうしたの?日本ってそんなにストレスたまるの?」
「いやぁ…。日本っていうか」
アタシがミサトに疑問をぶつけていると…

「外人さんだああああああ!!」

脳天気な声を撒き散らしながらヘリから飛び出してきた謎の少年が、アタシの両手をギュッと握りながら、ピョンピョン跳ね回りだした
123パッチン:2008/01/25(金) 22:11:34 ID:???
「え?え!?なによ!?」
「はろ〜はろ〜!ミサトさん!この子誰なんですか?」
「こ、こっちのセリフよ!!ミサト、コイツ誰なのよ!!」
まさかと思うが…
「あ・・・。セカンドチルドレンの惣流 アスカ ラングレーよ
こっちは、サードチルドレンの碇シンジ君…」
うぁ!!大体予想してたけど、やっぱコイツだった!!
「わ、わぁ!すごいや!本当に目が青いんだ!!すっごく綺麗だね!!」
アタシが衝撃をうけている間にグイグイと顔を寄せてくるサード
「髪も茶色で格好良いや!!赤い髪留め可愛いね♪僕も赤色好きだよ」
「あ…。ちょっ!!・・・あぅぅ…」
か、顔が熱い…。周りに人が大勢いて恥ずかしいのもあるが、こんなに男の子に顔を近づけられた経験なんか無い
何より黒い瞳をキラキラ輝かせながらあんなにベタ褒めされたら、いくら容姿に自信持ってるアタシだって顔が赤くなって当然で…
「わ、わかったから一旦離れなさいよ!!しっかり挨拶もしてないのにさぁ!!」
「あ!うん、そうだね。ちゃんと挨拶しなきゃ」
そう言うとサードは更にグイッと顔を近づけ…
「え?え??・・・んぐむっ!!?」

ちゅぅ〜っとアタシの唇に欧米的挨拶をかました…
124パッチン:2008/01/25(金) 22:13:38 ID:???
『ふわふわシンジくん』

船内の食堂
「えへへ、ごめんね。外人さんだから、挨拶はキスするのかなぁと思って…
あっ♪いただきま〜すっ!!」
左手で頬に咲いた真っ赤な紅葉をさすりながら、テーブルに運ばれたオムレツセットにニッコリ微笑むサードチルドレン『碇シンジ』
「ははは、大胆な子だなシンジ君は。初対面でいきなりアスカの唇を奪うとは」
「違うのよ加持さん!あれは事故なの!!アタシの心からのファーストキスは加持さんにあげるんだから!!」
もう今日最悪!!
初唇は奪われるは、加持さんに変な誤解されるは…
しかもその元凶は、テーブルの上のオムレツにケチャップで必死になって絵を描いている
「ミサトさん見て見て!!シャムシエルのシャムちゃん描いたんだよぉ」
「もぉ!!エヴァのパイロットが使徒の絵描いて喜ばないのっ!!」
…なんかミサトが老け込んだ理由がわかった気がする

「・・・ねぇ加持さん。なんでこんなヤツがパイロットなの…?」
アタシは隣でコーヒーをすする加持さんに問いかけてみた
「ん?まぁシンジ君は初戦でシンクロ率80パーセントを叩き出して勝利しているからな」
「へ??・・・な、なんですってえええええ!!!」
125パッチン:2008/01/25(金) 22:15:32 ID:???
初戦でシンクロ率80パーセントなんて馬鹿な数字出せるワケない!!
・・・いや、現実に目の前に馬鹿が存在するワケだが
もしやこの馬鹿は本当はスゴい馬鹿なのだろうか?馬鹿を装った天才パイロットなのかもしれない…
だとしたらマズい!!
そんなヤツが相手ならアタシは絶対にエースパイロットになんかなれない!!

先程まで『ただの馬鹿』を見る目で見ていた青い瞳をギラギラに変えて、サードを見やる
「ほらケチャップかけすぎたのよ。こっち向いて」
「はぁ〜い」
サードの口の周りにこびり付いたケチャップをハンカチで拭いているミサトが、殺気満載の雰囲気を漂わすこちらに顔だけ向けた
「あのさぁ…。あんまりこの子を過剰評価しないでくれる?
初戦でシンクロ率80パーセント超えたのは事実だけど、この子LCL注水した時にずっと息止めてて、そのまま酸欠で気絶したんだから…
そして気絶した途端、シンクロ率が跳ね上がってエヴァ暴走。そして勝利
あとの2戦も全部エヴァが暴走しての勝ちだったし…」
呆れ顔で言うミサトは真っ赤になったハンカチをポケットにしまうと、サードのおでこをペチリと小突いた
126パッチン:2008/01/25(金) 22:17:29 ID:???
「えへへ、だって僕泳げないし」
そう言うとニコニコ笑いながら、ポッポッと頬を赤くそめるサード
「な、なによそれ!!理由になってないわ!!アタシも訓練中にLCL濃度が原因で気を失った事あるけど、シンクロ率が上がるなんてなかったわよ!!」
「・・・・・なに怒ってるの…?
そんなにプリプリしないでよ…」
サードの先程までのフワフワな笑顔がブワっと崩れ、大粒の涙がポロポロこぼれ落ちてくる
「ちょ、ちょっと泣くことないじゃないのよぉ!!」
「ミサトさんもレッドさんもエヴァの時は怖い顔になるし…。もう嫌だよぉ…」
「わかったわよ!もう言わないから・・・」
ん?

レ?ッ?ド?さ?ん?

「誰よそいつ?レッドさんって…」
いきなり現れた謎の人物にキョトンとするアタシに、傍観していたミサトが口を開いた
「赤木博士のことよ。この子すぐあだ名で呼びたがるの…
ちなみに、あたしの事ミーちゃんとか呼んでた時期あったけど、一発殴って止めさせたわ」
…なにそれ??
なんか聞けば聞くほど『ただの馬鹿』に見えてくる

「と、とりあえずアタシも怒鳴って悪かったわ。同じパイロット同士だし気をつけるわ…」
「うん!アスカっち!」

アタシも一発ど突いた
127パッチン:2008/01/25(金) 22:19:19 ID:???
「よし、サード!ちょっと来なさい!!」
このままではコイツのペースに流されてしまう
アタシは『エースパイロットが誰であるかを見せつける』という本来の目的を遂行するため、動きだすことにした
「うんっ!お散歩だね♪」
「まぁそんな所ね。ミサト、サード借りるからね!」
「はいは〜いっ♪じゃあシンジくんよろしくね〜♪」
ミサトはケチャップで紅白になったハンカチを振りながら、上機嫌でサードを見送っている
そんなに疲れるのだろうか?サードの世話は…
「じゃあ加持さん。アタシ、弐号機の所まで行ってきます」
「わかった。気をつけてなアスカ、シンジ君」
「バイバーイ、カジマルさん♪」
「か、カジマルさん…」



「うわぁ〜!赤いんだ弐号機って!」
うふふ。食いつきはバッチリね
「違うのはカラーリングだけじゃ…」
「あのねあのねっ!僕の初号機は紫色なんだよぉ!!」
「所詮プロトタイプの…」
「なんかカブトムシみたいに角が生えてるんだ!カッコイいでしょ?」
「これこそ本物のエヴ…」
「『ガオー』って鳴くんだよ!!スゴいでしょ?」

「ちょっと!!話聞きなさいよアンタねぇ!!!!」

「あれ?『ぐおー』だっけ?」
128パッチン:2008/01/25(金) 22:20:09 ID:???
中途半端ですが…。今回ここまでです
なんかごめんなさい
129名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/25(金) 23:15:16 ID:???
イタモノじゃなければどこでも歓迎されるんじゃない?
異性、離別とかだとどこかみたく火を噴きそうw

乙←おつじゃなくてポニーテールな(ry
130名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/26(土) 02:33:34 ID:???
>>117さん転載板にも途中まで転載されている(放置)パッチン氏の「二つの涙」も転載お願いします
131名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/26(土) 02:38:48 ID:???
>129
二行目、そーいう発想だから馬鹿にされるんだよ
132名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/26(土) 03:25:42 ID:???
>>131
発想も何も炎上したのは事実でね?
133名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/26(土) 07:31:14 ID:???
GJ
シンジの性格変えは俺シン以外では珍しいな
ぶっとび過ぎなような気もするがw
134名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/26(土) 07:53:47 ID:???
>>132
マジなにも分かってない発言はヤメレ
ややこしくなる
135名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/27(日) 16:37:43 ID:???
LASネタ投下スレ全体に暗雲立ち込めた時期に馬鹿LAS GJ!
前回イタだったから不安だったがよかった。マジでタームみたいな作風だな
136117:2008/01/31(木) 14:01:14 ID:???
>>130
LAS総合スレでも話に上がっている件もありますから
バッチン氏がそれでよければ転載いたします。
137パッチン:2008/01/31(木) 23:36:50 ID:???
駄目だ…
アタシが、『この馬鹿に弐号機の素晴らしさを伝えること自体が無理だった』と気づき始めた
・・・と、その時

どーーーーーんっ!!!!

「わわっ!地震だ!」
「バカ!海上よここは!!・・・・・まさか、使徒…!?」
けたたましく鳴り響く警報音が、アタシの予想を確信へと変えていく
「・・・チャン〜〜〜スっ」
妙案が浮かんだ
口で言ってもわからないなら、身をもってわからせればいいのだ
弐号機の素晴らしさ、そしてアタシの華麗なる操縦を!!
「よしっサード!ちょっと来なさい!!」
「うんっ!今度こそお散歩だね♪」
「まあそんな所ね!アンタはそれに着替えて待ってなさいよ!!」
アタシは予備のプラグスーツをサードに手渡し、更衣室に走って行った



20分後
着替えを終えたアタシが再び戻って来ると…
「サード!!準備でき・・・ぷげぎゃっ!!!!」
着替え中のサードの白いオシリと出くわした…
「ああああ、アンタばかぁぁっ!?どんだけ着替えるの遅いのよぉ!!!」
「だって難しいんだもぉん!!ミサトさん手伝ってよぉぉ!!」
信じられないほどの鈍くささ・・・
ああああ!!!こうしてる内にも使徒が!!
138パッチン:2008/01/31(木) 23:38:18 ID:???
「もお!!手伝ってあげるから動くんじゃないわよ!!」
「わぁ〜い」
アタシはサードの背後にまわり、プラグスーツの着付けに取りかかる

ったく!!なんでこんな簡単な作業が…
・・・コイツ、すごく白くて綺麗な肌してる
だいたいミサトが甘やかすから…
・・・男の子とは思えないような繊細でツルツルな背中
プラグスーツに1人で着替えることも…
・・・そして、赤ちゃんのホッペみたいにフニフニで可愛いオシ…

ベチンっ!!

「ふぎゃぅっ!」
…なんか自分を見失いそうだったので、サードをど突いて気持ちを落ち着かせる



一方艦内
ミサト「だ〜か〜ら、使徒相手にはエヴァじゃないと駄目だって言ってるでしょうがぁ!!」
髭艦長「うるさい!これはワシらの船だから、ワシらが倒すんじゃ!!」
カジマル『葛城〜!ワルいが先に行くわ』
ミサト「ああああ!!あの糞男がああああ!!」
名無し「艦長!使徒が接近しています!!」
髭艦長「わはは!!海の男の底力みせてやれえええ!!」
名無しB「ダメです!艦隊が次々に沈んでいきます!!」
髭艦長「なにぃ!!使徒か!?」
名無しB「違います!!あれは・・・エヴァ弐号機です!」
139パッチン:2008/01/31(木) 23:39:58 ID:???
赤いプラグスーツに身を包んだアタシはサードを乗せて、弐号機を戦艦からぶっ放して発進した
「行くわよ〜!アタシの美しい戦いぶり見ときなさい!!」
「目がまわるよぉぉ…」
ガンガン艦隊を踏み散らかしながら使徒に接近してゆき、ナイフを抜き取って、近接戦闘に備える
「ミサト聞こえる!?ケーブル出して待ってなさいよ!!」
『アスカね!わかったわ!初めての使徒戦、期待してるわよ!!』
「ミサトさぁん…。ぅぷっ……」
「わー!!吐いちゃダメなんだからねバカー!!」
『・・・大丈夫かしら』

ガションっ!
「よしケーブルOK!どっからでもかかってきなさい!!」
ナイフをビシッとかまえて海を見やると、使徒が尾ビレだけを出し、こちらに急速に接近してくる
「あわわっ、ジョーズだ!!ハリウッドだよアスカっち!!」
「『アスカっち』って呼ぶなバカ!!
はんっ大丈夫よ!あんなのアタシが華麗に受け止めてやるわ♪」
『うろたえるサードと冷静なアタシ』という状況に多少の優越感を覚えていると
・・・予想以上のスケールで使徒が飛び出した

ざばあああああ!!

「でかっ!!!!」
「ジュラシックパークだ!!ハリウッドだよアスカっち!!」
140パッチン:2008/01/31(木) 23:41:32 ID:???
「「ふぎゃああああああああああ!!!!」」
巨大お魚使徒によって海に引きずり込まれた弐号機は、海底の障害物にガンガン当たっていく
「とめ、止めてよアスカっちぃぃ!!!」
「あす、アスカっちって呼ぶなぁぁ〜!!」
グルングルンとシェイクされていく中、通信装置からミサトの声が聞こえる
『2人共!ケーブルの長さが限界に達するから、衝撃に備えて!!』
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
慌ててアタシはインダクションレバーをギュッと握る
「ぼ、僕はどこに掴まればいいの!?」
「もお!!適当な所に掴まりなさいよ!!」
「う、うんっ!!」

ばい〜んっ!

ケーブルが限界に達したようだ…
弐号機は未だお魚使徒に喰われたまま、海中を漂い続けている
そして、その中では…
「あ・・・あああああ!!!アンタ、どこに掴まってんのよ!!エッチスケベど変態!!」
あろうことか、この馬鹿はアタシの『とんでもない所』に掴まっていたのだ
「い、痛っ!だって掴まれって言ったのはアスカっちじゃないか!!」
「ふ、ふざけるなバカバカバカぁ!!
親にも加持さんにも触らせたことのない場所をぉぉ!!!」
141パッチン:2008/01/31(木) 23:43:10 ID:???
一方艦内
ミサト「ふぅ、なんとか今はこれで時間が稼げるけど…」
髭艦長「どうするんじゃ!?このままでは、ワシらにも危険が及ぶぞ!!」
ミサト「ちょっと待ちなさいよ!今考えてるんだから!!
う〜ん・・・何かいいアイデアが…」

天の声『あら、まるで釣りやな…』

ミサト「釣り?…釣り・・・。そうよ釣りよ!!」

弐号機内
「とにかくアンタが悪いんだからね!!慰謝料\100兆円払いなさいよ!!」
「ぷいっ、僕悪くないもん!!」
「あんですってぇ!!世界の女神であるアスカ様の『あんな所』を触っといて、なによその態度は!!」
信じられないデリカシーの無さ!親の顔が見てみたいわ!!
「…ぼそぼそ」
「なによ!言いたいことがあるなら、ハッキリ言いなさいよ!!」
「・・・・・僕の『あんな所』ジロジロ見てたクセに…」
「ん゛な゛っ!!?」
ポポっと頬を赤く染めて、恥ずかしそうに顔を伏せるサード
「ひ、卑怯よ!!気づいてたなんて!!」
「えっちぃ…」
「あ・・・うぅ・・・
むきーーっ!!忘れろ!!全部忘れろーーっ!!!」
「い、いたい!いたいよぉぉ!!」

『あの〜?取り込み中、悪いんだけど、作戦発表していいかしらん?』
142パッチン:2008/01/31(木) 23:44:55 ID:???
「…なるほど。ようは使徒と艦隊がぶち当たる前に、口をこじ開ければいいのね?」
『そうよ、作戦は以上。簡単でしょ?』
アタシはインダクションレバーに手をかけ、ゆっくりと深呼吸する
「ええ簡単ね…。生きるか死ぬかの2択だし」
「ねぇアスカっち…大丈夫なの?」
アタシはシートの後ろで不安そうにしているサードの方に振り返ると、黒い髪をグシャグシャと撫でてやる
「ば〜か。なにシケた顔してんのよ!アタシに任せときゃ心配いらないから安心しなさい!!
ミサト、作戦スタートして!!」

アタシはエヴァへのシンクロに集中するため、グッとレバーを握る
「よし、じゃあアンタも手伝って」
「え…僕もするの?」
「初戦でシンクロ率80パーセント突破したんでしょ?
なんだかんだ言って、アンタの火事場の馬鹿力に期待してんのよアタシは」
今回の作戦は操縦技術よりもシンクロ率の方が重要だし、コイツの実力を見るいい機会でもある
「わかったよ。一緒に『開け』ってお祈りするんだね?」
「期待してるからね。サードチルドレンさん」
「うん!アスカっち!!」
「なんかその呼び方に慣れてきた自分が嫌…」

そしてサードとアタシは弐号機へのシンクロに取りかかった
143パッチン:2008/01/31(木) 23:47:30 ID:???

開け開け開け開け…
シンクロスタートと同時に、いつもは入り込もうとしても入らない部分にアタシはズイズイと引き込まれていく…
こ、こわい!!なによコレ!!
『こっちに来なよアスカっち、もっと奥においでよ』
開け開け開け開け…
体が自分のじゃないみたいな…。フワフワしたキモチイイ感覚
これ…アンタがいるからなの…?
『さぁ?僕知らない』
開け開け開け開け…
やがて、引き込まれた暗闇の中にうっすらと光が見える…
アンタ…なんなの…?
『あ!開きそうだよ!!』



接触まで残り30秒
ミサト「アスカ、シンジくん頑張って!!」
髭艦長「じ、時間が無いぞ!!」

その時、突如弐号機の四つ目がギラリと光り・・・覚醒した
ミサト・髭艦長「開いたぁ!!!!」

使徒の口が開き…
ミサト・髭艦長「・・・・・あら?」

…そのまま口からビリビリと使徒の身体も真っ二つに裂けていく
そして、さけてるチーズのようになった無残な使徒の隣を、むなしく戦艦が通り過ぎていく・・・・使徒殲滅
ミサト「な、なによそれぇぇ!!?」
髭艦長「こんな作戦ではなかったハズだぞ!!」
天の声『あら、まるでアジの開きやな』
144パッチン:2008/01/31(木) 23:49:13 ID:???
その後
回収される弐号機を眺めながら、アタシとサードは肩を並べてたたずんでいる
「シンクロ率150パーセント突破だって…」
「すごいや。ジュースなら特濃だね」
「そんなことどうでもいいのよ!!今までのアタシの苦労は何だったんだって話よ!!」
アタシは、エヴァに乗るために…シンクロ率を上げるために…。この10年、血の滲むような訓練をしてきた
それなのに今日コイツと2人でシンクロした時の馬鹿みたいな数字は何なのよ!
初めてシンクロ率50パーセントを突破した日の喜びと感動を、蹴っ飛ばされたような気分になるわ!!
「もぉ〜!!アタシの苦しみを返しなさいよ!!アタシは何のために頑張ってきたのよぉ〜!!」
地団太を踏むアタシの隣で、未だにキョトンとした顔をしているサード
「なんでそんなにカリカリしてるの…?」
「アタシの辛く厳しい訓練の日々をアンタは無駄にしたって言ってんのよ!!」
「辛い日なんか忘れたらいいんじゃないの?」
「んぐっ…」
「昨日までがグチャグチャでも、今日嬉しい事があったんだから笑顔でいなきゃダメだよ?じゃないと笑顔になれる日が無くなっちゃうもん」
「う、うるさいわよバカ!!」
145パッチン:2008/01/31(木) 23:50:36 ID:???
「嬉しい時は笑顔でなきゃね!
えいっ♪」
サードは、にっこり顔でアタシの前に回り込み…、そのままアタシの身体にダイブしてきた
「ひゃぅあ!?」
「ハグだよ♪アメリカの人ってこうやって喜ぶんでしょ?」
なんでコイツはそんな正解か不正解か難しい知識ばっかり取り入れてんのよ!!
「えへへ、今日からよろしくね♪」
「ん・・・ぐぅ・・・」
今朝の時のように、殴り飛ばしたい気分だったが…。まあ今日はコイツのお陰で勝てた部分も少しはあるワケだし…
「・・・・・ヨロシク」
おずおずとサードの背中に手をまわしてやる

・・・赤いプラグスーツ越しにサードの体温を全身に感じる
「あ、アンタ恥ずかしくないの?こんなことして…」
アタシの体温もサードに届いてるのだろうか?
「恥ずかしくないよ。すごく気持ちいい…」
だとしたら火傷してるハズよコイツ
「・・・ばか」
アタシ…今猛烈に熱くなってるし…
146パッチン:2008/01/31(木) 23:51:55 ID:???
「・・・・・ねぇ」
アタシ…頭おかしくなったのかな…?
「なに?アスカっち?」
なんか今…
「あの・・・さぁ・・・」
なんか今この瞬間…
「・・・今朝みたいに・・・していいわよ」
チュって…
「え…?でも怒らない?」
あぁ…。多分コイツから発生する、おかしな電波にやられたんだ…
「お、怒らないわよ!!アタシが言い出したんだから!!」
でもなんだろ…この気持ち
「うんわかった…。じゃあいくよ?」
そんな自分が…
「う…うんっ」
ふわふわ心地いい…





バッチーーーーーーンっ!!!!
「ふぎゃぅ!!!!」



ビンタの方じゃないわよバカ!!!
おわり
147パッチン:2008/02/01(金) 00:02:13 ID:???
『なんかシンジにキャラつけてやれ!』と思って書いたはいいモノを…難しいなぁ…

>>136
どうぞ載せてやってください。全く問題ないので
あとどうでもいいけど、パッチンです。バッチンじゃないですw
爪切り大好きで深爪気味なのでこの名前です
いや、ホントにどうでもいいんですが
148名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/01(金) 00:14:53 ID:???
おー、バッチン・・・じゃなかった、パッチンさんktkr!
お疲れ!

このFF読んでちょっと前に「うつうつシンジ」なるものを考えてたのを思い出した。
いつか文章に出来ればなァ……
149136:2008/02/01(金) 09:04:54 ID:???
あれま失礼しましたw
訂正しておきます。

転載サイトはttp://las.nobody.jp/になります
150136 ◆cLgN2Wx6G6 :2008/02/02(土) 17:21:42 ID:???
まとめ保管庫を勝手に作ってしまった者です。
まずお伺いを立てずに先走ったことをお詫びします。
各作品の作者様で転載の可不可をお伺い出来ませんでしょうか?
スレ住人の方がよろしければこちらで、またはサイトのメルフォでご連絡いただければと思います。
転載許可を頂ける場合で無タイトル・無記名の作品やスレ番、レス番が不明の作品は内容を簡単に併記して頂ければこちらでお探しします。
ご迷惑をおかけしますが宜しくお願いします。
サイトURL ttp://las.nobody.jp/
※現在は転載許可の降りたもの以外削除してあります。

尚、各スレへお伺いする書き込みを致しておりますのでマルチ投稿になってしまいますがご容赦下さい。
151名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/08(金) 00:56:40 ID:???
152パッチン:2008/02/10(日) 20:23:59 ID:???
愛するあなたに義理チョコを

2月14日。日本中がチョコレートの甘い香りに包まれるそんな日
そして、そんな日にミンミンと鳴く蝉の声に耳を傾けながら、シンジはダイニングのテーブルに汗でヘナった黒髪を擦りつけていた
「ね〜アスカまだキッチン開かないの?お昼の素麺茹でたいんだけど…」
「うるさいわねぇ!アンタの分も作ってやってんだから文句言うな!」
「・・・別に頼んでないのに」
シンジは、先程から同居人の少女がチョコ作りに没頭する様子をチラチラと眺めながら、深い溜め息を吐いていた
はっきり言って、まだまだかかりそうだ。時計は2時をまわり始めているというのに
「とぅるるる〜っ♪甘くて苦ぁいチョコレート♪」
「もういい加減にしてくれよ!お腹空いてるんだよ僕は!」
椅子からバっと立ち上がり、甘い香りが充満するキッチンに移動する
「なによ待ちきれないの?腹ぺこシンちゃん?」
「加持さんへのチョコはもう出来たんだろ!素麺茹でるんだから早く代わってよ!」
そう。アスカが今作っているのは同居人である碇シンジへの『どうでもいい義理チョコ』であった
そして、今朝作った本命用の巨大ハートチョコは冷蔵庫の半分近くを占拠している
153パッチン:2008/02/10(日) 20:25:32 ID:???
「朝早くからチョコ作り手伝わされて疲れてるし、とにかく僕は何か食べたんだよ!」
「ふんっわかったわよ!アンタがそんなに言うなら食事にするわ!」
先程までクリクリと混ぜていたチョコ入りボールを持ち、ダイニングに移動する
「ほらアンタもこっちに来る!」
椅子に腰掛け、何故か少し頬を紅く染めているアスカがこちらに手招きしている
「なんなんだよ一体…。素麺茹でさせてくれるんじゃないの?」
「コホンっ。いい?よ〜く聞きなさいよ?」
同じく隣の席に座ったシンジにむかって咳払いを1つ

「アンタが『お腹空いたお腹空いた』うるさいから、チョコ作りを中断してあげたのよ。ありがたく思いなさい!
でも今ある食材は見てのとおり溶けたチョコだけしかないでしょ?
というワケで優しいアタシは、このチョコをアンタのお昼ご飯とすることを許可するわ!
いい?わかった?わかったわね!?」
「は、はい。ごめんなさい…」

まるで台詞のようにスラスラと並べられた言葉達にグイグイと押されてしまったシンジは、首を縦に振るしかできない
しかも真っ赤な顔でこちらを睨みつけながら話すアスカに、すっかりビビり倒してしまい、何故か謝ってしまう始末であった
154パッチン:2008/02/10(日) 20:27:17 ID:???
「よし。・・・じゃあ食べさせてあげるからこっち向きなさい」
先程まで怒鳴るように喋っていたアスカが、今度は若干顔を伏せながら、しかし明らかな上から目線で命令してきた
「へ?…い、いいよ。1人で食べるし」
「ん…。こほんっ」
またしても咳払いを1つ

「さっきまで『お腹空いたお腹空いた』とか散々文句言ってたヤツに食わせたら、どんだけ食べるかわかったもんじゃないでしょ!
言っとくけど、このチョコはアンタだけじゃなくて、ネルフの職員の人達に配る分も含まれてるんだからね!
だからアタシがちゃんと調節出来るように、食べさせるって言ってんのよ!
いい?わかった!?わかったわよね!!?」
「は、はい…。ごめんなさいぃ…」

いつになく早口かつ饒舌である。まるで何日も何日も、この日のために練習してきたかのようだ
「ほら…、さっさと口開けなさいよバカ」
「う…ん」
マシンガンのような言葉が終わると、また先程のように顔を伏せて命令してくる
一方シンジはそんなアスカに怯えながらも、命令通り照れくさそうに口を開けた
イモムシを待つヒナ鳥のようで少しマヌケだ
155パッチン:2008/02/10(日) 20:28:49 ID:???
「・・・じゃあいくわよ」
アスカは口を開けて待つシンジを確認すると、左手に持ったボールに視線を落とし、ゆっくりと右手人差し指をチョコに浸した
そして…

「ハッピーバレンタイン、シンジ!!」
の一言と共に、チョコまみれの『人差し指』をシンジの口に突っ込んだ

「んん!?むにゃむ!!」
シンジは、いきなり自らの口内に飛び込んできた衝撃に、目を丸くしてジタバタ暴れ始める
「う、動かないの!どう!?甘いでしょ!!」
「あむむ、あむにゃぁ!!」
「げ、げほっごほんっ!」
またしてもアスカは咳払いを1つ

「いい!?落ち着いて聞きなさいよ!?
食器がもったいないでしょ食器が!今日の食器洗い当番アタシだから、今日のチョコ作りに使った分を洗うだけでも鬱陶しいのよアタシは。たとえスプーン1本とはいえね!
それとも何かしら!?アタシの指なんか小汚いから口に入れたくないってこと!?
そう思うんだったら早く吐き出しなさいよ!!ほら早く吐き出してみなさいよ!!」
「あむ…にゅ…」

照れか、怒りか、興奮か…。とにかく凄まじい形相と化したアスカの顔に圧倒され、黙ってその細い指を受け入れていくシンジ
156パッチン:2008/02/10(日) 20:30:21 ID:???
「ど、どう?改めて聞くけど甘い…?」
「…うにゅ。あ、あみゃいにょ」
ようやく大人しくアスカの指を…。もといチョコしゃぶりだしたシンジだが、やはり照れくさいのだろう。目線は泳ぎ、頬は真っ赤に染まっている
一方のアスカは自分が言い放ったハズの事なのに、シンジにしゃぶられる自身の指を信じられない物を見るような目でチラチラ見ながら、その度に更に赤くなりながら顔を伏せる。という行動をずっと繰り返している

そして、おずおずと舐めている舌が直にアスカの指をくすぐり始めた。どうやらチョコを舐めきってしまったらしい
アスカは少し名残惜しそうに、ゆっくりと指を引き抜いていく
濡れた指先にシンジの熱っぽい吐息がかかり、キュンと切なくなる
「・・・じゃあ次のチョコいくわよ」
「う、うん」
再び指でチョコをすくい取り、シンジの口に運んでいく
「今度はもっとしっかり舐めてよ…。アンタとろいんだから」

その後も異常にギクシャクとしたシンジの昼食は続き、チョコと口との往復を繰り返した人差し指は、すっかりふやけてしまっていた
157パッチン:2008/02/10(日) 20:31:53 ID:???


およそボールの中身が半分を過ぎ始めた頃、『ちゅっ』という音と共に指が離れた
…と同時に、シンジがアスカに向かってポツリと話しかけた
「アスカも・・・お腹減らない?」
「え…?」
シンジは、緊張によりキュッと固まっていた握り拳を解き、右手人差し指をピンと伸ばしてアスカの方をチラリと見る
「・・・チョコ甘くておいしいよ。一緒に…ね?」
トロンとした目で少しはにかんだ表情を作ると、シンジはチョコを軽くすくい、アスカの口元に近づけていく
「シンジ・・・」
そして、こちらもウットリとした表情になり、唇を開いてシンジの指を受け入れていった



ダイニングの部屋中に『ちゅっちゅっ』という音が小さく響いている
2人はお互いの指をしゃぶり合いながら、たまに目が合うと、照れたような表情を作りながら相手の指先をチロチロと舐めたり、軽く甘噛みしたりする
時計の短い針は5時を指し始めている
ボールの中身は既に空っぽになっていた
しかし2人はお互いの指を離そうとしない
その表情はチョコよりもずっと甘そうだった

おわり
158パッチン:2008/02/10(日) 20:37:54 ID:???
かなりフライング気味にバレンタインSSを失礼しました
バレンタインの思い出といえば、昔初めてもらったカロリーメイト(チョコ味)で、かなり凹んだ記憶があります
いや本当にどうでもいいですね。さようなら





その夜…

「シンジ!ホワイトデー楽しみにしとくからね!」
「う、うん。わかった!」
「あのさ…
ホワイトデーってさ・・・きゃ、キャンディがプレゼントなんでしょ?」
「え?」
「・・・い、一緒に食べるわよ絶対…
おやすみバカシンジ!!」
ピシャンっ!
「一緒にキャンディって・・・まさか」
159名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/11(月) 00:10:14 ID:???
フライングGJ!
160名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/14(木) 01:40:32 ID:???
ええ話や
161名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/16(土) 11:17:26 ID:???
自分はカロリーメイトチョコ味が1番好きだけどなぁ…GJ
162名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/16(土) 12:51:13 ID:???
バレンタインにカロリーメイトは絶対嫌だろw
パッチンさんにしては珍しく標準甘LASだった。ぶっ飛んだ作品も好きだが
163名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/23(土) 18:40:06 ID:???
164名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/01(土) 11:26:59 ID:???
職人町
165名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/08(土) 09:17:49 ID:???
166名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/08(土) 23:49:32 ID:???
あげちゃいましょう
167名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/15(土) 10:34:49 ID:???
168パッチン:2008/03/18(火) 16:56:59 ID:???
『一通を通る想いと言葉』

ミサトのいない夜
アタシはリビングでクッションを抱きしめながら、ボーっとテレビ画面を見つめている。
別に愉快な映像が動いるワケではない。黒い画面にぼんやり映った自分が見えるだけ。
夕飯も終わり、シャワーも浴びた。でもアタシの中の睡魔は、まだ殻に閉じこもったまま出て来てくれない。

「暇…だ、わ…」
明日は土曜日で学校は休み、訓練も無し。そんな夜は出来るだけ長い間起きていたいのが、人の性というもの。
そんなワケで、あまりにも退屈な画面から離れ、ウロウロと娯楽を探すアタシの青目。
・・・そして大した時間をかけずに、あっさりと最高の退屈しのぎを発見した。

広いリビングの端っこで、壁にへばり付くようにコチラに背を向けて寝転んでいるバカ。
アイツも暇そうで可哀想だし、ここは優しいアタシが相手をしてあげよう!
まずは四の字固めがいいかしら?
「シ〜ンちゃ〜んっ♪」
「・・・・・」
沈黙
むっ?シンジのクセに無視とは生意気だわ。
「ちょっとアンタ聞いてん・・・の?」
ピクリとも動かないシンジの身体にまとわりつく線が見える。

バカにS-DAT
バカの耳にイヤホン
169パッチン:2008/03/18(火) 16:58:34 ID:???
「・・・シンジ?」
もう一度呼び掛けてみるが
「・・・・・」
返ってくるのは沈黙のみ。
「シンジ!」
「・・・・・」
「シンジぃ〜」
「・・・・・」
「シンジきゅんっ♪」
「・・・・・」

かなりの音量が耳を支配しているのだろうか。『返事が無い、ただのシカバネのようだ』と、天の声が聞こえてきそうなほど反応が無い。
ナンカムカツク…

「あ〜ぁ。暇だし何しようかなぁ〜?あっ!そういえばヒカリに借りた本に、胸が大きくなる体操が書いてあったっけ?やってみよっかなぁ〜?」
「・・・・・」
「なになに?まずは服を脱いで…。えぇ〜恥ずかしいなぁ。でもやってみよ♪ぬぎぬぎ」
「・・・・・」
「えぇっとそれから…。胸を強く揉むわけね!こうかしら?こうかしらぁ〜?」
「・・・・・」
「あっあっ、なんかとっても変な気分っ!ああぁ〜!!」
「・・・・・」

「…なによバカっ!!!!」

先程まで抱えていたクッションを床に叩きつけ、アタシは置物になってしまったシンジをギロリと睨む。
「どんだけデカい音で聴いてんのよバカ…」
1人で別世界に行ってしまったアイツを見てると、急に1人ぼっちになってしまった気がして猛烈に寂しくなってしまう。
170パッチン:2008/03/18(火) 17:00:31 ID:???
なんだか叩き起こす気にもなれず、アタシはずっと音楽の中にいるシンジの背中を眺める。
「・・・・・」
アンタはずっとアタシのおもちゃのハズなのに…。
アンタはアタシが呼び掛ければ必ず答える…。ううん、答えなきゃいけない。
たとえアタシの声が聞こえなくてもね。

「どうせろくでもない曲聴いてんでしょ?」
「・・・・・」
こんなことを言ってもアイツは気づかない。
「バ〜カバ〜カ、バカシンジ♪シンジの脳みそツルっツル♪」
「・・・・・」
ほら何言っても気づかない…。
今なら何を言ってもアイツには・・・
「聞こえないんでしょ…?」
「・・・・・」
「・・・ね?」

そんなことを思いながらシンジの背中を見つめていると、何か変にドキドキしてきた。
「・・・シンジ〜?」
聞こえてないのよね?

「・・・すす、好きだぞ〜」

そう言った瞬間、少し怖くなってサッと身構えてみる。
「・・・・・」
だがシンジはそんなアタシには全く気づかず、背を向けたまま無言で音楽の世界に入り込んでいる。
「ふぅ…」
171パッチン:2008/03/18(火) 17:02:14 ID:???
「…す、好きよ〜シンジ〜」
限りなく小声でアイツの背中に呼び掛けているアタシ。
ちょっと情けない気もするけど、何かドキドキして楽しい。

「…今日の夕飯おいしかったわよ〜。いつもありがとね〜」
面と向かっては口が裂けても言えないような、こっ恥ずかしいセリフも、相手に聞こえていないとわかれば素直に言えてしまうのが不思議。

「…アンタは一生アタシの夕飯作らなきゃダメなんだからね〜」
なんかやってるうちに、自分の中で変なエンジンがかかってきている気がする。

「ていうかアンタは一生アタシのモノなんだからね〜」
知らず知らずのうちに声のトーン大きくなってきてるし。

「だから他の女なんか相手にしちゃダメなんだからね〜」
ひょっとしたらこれは何か恐ろしい遊びなのかもしれない。
危険なことはわかっているが、徐々にハマっきて抜け出せないアタシがいる。

「あ、アンタはアタシだけのモノなんだからね〜」
本当に止められない…。

「アタシもアンタだけのモノなんだからね〜」

そしてまた、アタシはシンジの動かない背中に語りかける。
172パッチン:2008/03/18(火) 17:04:06 ID:???
アタシは、いつシンジがこちらに振り返っても不自然じゃないように、いそいそとクッションを枕にしてゴロリと床に仰向けになる。
そして顔だけをシンジの方に向けて「…ふぅっ」と深呼吸をし、またしてもブツブツと語りかける。

「いつもありがとねシンジ。アンタのこといつもバカにしてるけど、ホントはスッゴく感謝してるのよ。・・・アンタわかってる?」
まあこんなカタチでしか感謝の言葉を言えないアタシに問題があるのはわかってるけど…

「アンタの鈍さも原因の一つなんだからね。たまに殺したくなるくらいよ?アンタの鈍感って…」
アタシがどんだけヤキモキしても、他の女にヘラヘラ笑顔振り撒くし。

「それともアンタは一生アタシの気持ちに気付かず、生きていくつもりなの…?」
言い終えたアタシは一瞬その未来を想像してしまう。

すると途端に、見つめるシンジの背中がブワッと歪む。
この危険なお遊びは、アタシの心臓だけでなくアタシの涙腺まで刺激しだしたようだ。

「アンタがいないアタシで生きていけっていうの…?」
ボロボロと頬を伝う涙がクッションを濡らしていってしまう。
173パッチン:2008/03/18(火) 17:05:15 ID:???
「・・・・・好きよ」
「・・・・・」

ほら、重大発表してるのよアタシが…

「大好きよバカシンジ」
「・・・・・」

別にこの想いが聞こえないのは今日に限った事では無い

「惣流アスカラングレーは碇シンジが大好きなのよ」
「・・・・・」

このバカはいつも気づかない

「アンタはアタシのこと好き?」
「・・・・・」

アタシはいつも叫んでるのに

「アンタの全部が欲しいのよアタシは・・・優しさだけなんかいらない」
「・・・・・」

アタシにだけちょうだい

「その代わりアタシの全部をあげてもいい。・・・ううん全部あげるわ。もらってよ」
「・・・・・」

だからだからだからだからだからだから

「シンジぃ…」
174パッチン:2008/03/18(火) 17:07:44 ID:???
一方通行な言葉を唱え続けたアタシはグルリとうつ伏せになり、そのまま流れた涙をクッションにこすりつけるように拭った。
「…は、ふぅ」
歪みきっていた視界が元通りになり、いっぱい泣いて少しスッキリしたアタシは、チラリとシンジの方を見やる。

すると、先程までピクリとも動かなかったシンジが突然イヤホンを耳から外してムクリと起き上がり、
「・・・・・」
ペタペタと裸足のおぼつかない足で無言のままトイレへ行った。

・・・危なかった。あと少しシンジの膀胱が虚弱だったらアウトだったわ。

「ふふっ、泣いちゃった…バカみたい」
単なる遊び心で始めたのに、いつしかマジになってしまった。お恥ずかしい。

アタシはうつ伏せ状態の身体をムクリと起こし、四つん這いになって、のそのそとシンジが寝転んでいた位置まで移動していく。
「まったく、アタシが一人で恥ずかしい思いしてたっていうのに…」

そこには先程までシンジが装着していたS-DATが転がっている。
「あのバカは一体何聴いてたんだか…♪」

床に置かれたS-DATを拾い上げ、液晶画面に目をやる。
そこには今までシンジが聴いていた曲名が表示されているハズなわけで
「なになに…?」


175パッチン:2008/03/18(火) 17:10:00 ID:???
トイレの水が流れる音が聞こえる。
ガチャリと扉が開き、ペタペタという裸足の足音がこちらの部屋にむかって来る。
…そしてその音の主はリビングに入ると、先程と同じようにイヤホンを耳に装着し、いそいそと壁際に寝転ぶ。

それを確認したアタシは音をたてずに起き上がり、ゆっくりとその男の背後に忍び寄る…。
そして・・・

「こぉぉの大バカシンジいいいい!!!」
「ふぎゃぅ!!」

黄金の左足で、思いっきりその背中を蹴っ飛ばした。
「な、なにするんだよ!」
「こっちのセリフよ!
アンタ、アタシの独り言を盗み聞きしてたでしょバカ!」
「え…あ…」
振り返って大声をあげた元気はどこへやら。アタシの怒鳴り声に、シンジは小さくなってしまう。
「し、知らないよ…。僕S-DATで曲聴いてたから…」
「ほほぉ〜。シンジ君は『電池切れ』っていう曲が好きなんだぁ?」
「あっ!」
急いでS-DATの『カラッポの電池マーク』が表示される液晶画面を隠すシンジ。
もう遅いってーの!!
「あああムカツクムカツク!ムカツクぅぅぅ!!」
「いたっ痛いよ!ゴメンよアスカぁ!」

あんな内容の独り言をシンジに聞かれた…。
あまりの恥ずかしさから、アタシはしばらくの間シンジをポコポコ蹴り続けたのだった。
176パッチン:2008/03/18(火) 17:12:00 ID:???
「あ、アンタいつ頃S-DATの電池切れたのよ…」
蹴りに蹴り続けて少し落ち着いてきたアタシは、一旦足を止め、壁際でフルフル震えているシンジに問いかける。
「え・・・あの・・・
『ああん変な気分だわぁ〜』って辺りから…」
「な、なんでよりによってソコからなのよおおおお!!!」
今度は膝をついて、シンジをグーでポカポカ殴る。

「ごめん!ごめんってばアスカぁ〜」
「なんでアンタ何も言わないのよぉ!『聞こえてるよアスカ』とかさぁぁ!!」
「だって言ったらアスカ、今みたいに叩いてたんだろぉ!」
「あ!・・・う・・・」
確かにそうかもしれない…。

アタシはシンジを叩いていた手をピタリと止め、握り拳のままダラリと両手を下ろした。
「アス…カ?」
シンジは防御のために構えていた両手を下ろし、アタシの方を恐々と見る。

・・・シンジに今の顔・・・見られたくない。

「泣いてるの…?」
「・・・最悪よ」
何もかも終わった気がする。
アタシの人生もプライドも全部。
あんな遊びするんじゃなかった。
バカなのは全部アタシだ…。アタシが全部終わらせたんだ…。
177パッチン:2008/03/18(火) 17:13:47 ID:???
「…ごめんね、アスカごめんね」
そう言うとシンジは、手近にあったティッシュを数枚取り、ぐしゃぐしゃ顔になったアタシに手渡そうとする。
「ふっ…ひっく。なんでアンタが謝んのよバカぁぁ」
でもアタシはティッシュを受け取らず、両手で顔を隠す。
無様だ。情けなさすぎる。
バカシンジに、こんな泣き顔を見られるなんて。
「もうサイテーよ…」
そのままアタシはグッと押し黙り、殻に引きこもる。
するとティッシュを持ったままのシンジが、ポツポツとアタシに語りかけだした。

「違う、悪いのはアスカだけじゃないんだ。ぼ、僕も悪かったんだ!」
「・・・・・」
「アスカに好きって言われて・・・僕嬉しかったんだ」
「・・・・・」
「ずっと嫌われてると思ってたし、僕なんか必要ないのかな?って…」
「・・・・・」
「でもアスカが僕のこと好きだって言ってくれて、いつもありがとうって言ってくれて。
嬉しくて嬉しくて…だから僕、それに甘えちゃったんだ」
「・・・・・」
「ずっと聞いていたくて、アスカが僕を必要としてくれることを感じてたかったんだ
…でも僕もハッキリ言うよ。アスカに僕の気持ち」
「・・・あ・・・ま、待ってシンジ」
178パッチン:2008/03/18(火) 17:15:07 ID:???
決意の一言を声に出そうとしたシンジを止めて、アタシはグシグシとシャツの袖で涙と鼻水を拭う。
「アスカ…?」
「ふんっ。ちょっと借りるわよバカ」
床に転がっていたシンジのS-DATを拾い上げてイヤホンをはめ、アタシは立ち上がった。
「アタシ曲聴いとくからね?アンタはそこで独り言でも言ってなさい」
「え・・・・・?
ちょ、ちょっとアスカ!」
何か言おうとしたシンジだったが、アタシが背を向けてゴロリと寝転んでしまうのを確認すると
「・・・・・」
グッと押し黙ってしまった。

そして何も機能しないイヤホンと、恐らく真っ赤になっているアタシの耳の隙間からシンジの優しい言葉が流れ込んでくる。


「…好きだよアスカ」
(アタシだって好きよ)
「アスカに出逢えて、一緒にいれて…。本当に本当に幸せなんだよ僕」
(うん。ありがと…)
「ずっと一緒にいてくれる?」
(当たり前じゃん。絶対離れてやんないわよ)
「ねぇアスカ?」
(なに?)
「大好き」

「・・・アタシも」

おわり
179パッチン:2008/03/18(火) 17:16:01 ID:???
短編です以上です。

この前久しぶりに近くのスキー場に行きました。
自分では得意と思っていたので、つい調子に乗ってハシャいでしまい
・・・気がついたらタンカに乗せられ、病院送りに…
左足ポッキリいっちゃいました

仕事場からは親切にお暇を頂き、嫁はポッキリ男を家に置いて実家に帰りました。
そのお陰で時間ができて、LASを書けました。ワーイ
180名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/18(火) 17:25:33 ID:???
GJ&お大事に
181名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/18(火) 20:25:17 ID:???
ぐっじょぶ!
スキー場で骨折って事は、救助隊のスノーモービルに乗った?
182名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/18(火) 22:26:04 ID:???
楽しませてもらいました
ツンデレアスカすばらしいです
183名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/19(水) 13:08:45 ID:???
GJ
地味に今一番期待してる作家さんなので次も楽しみです
184名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/20(木) 22:13:44 ID:???
(*´Д`)GJ
次作も期待してるよ
185名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/22(土) 23:52:42 ID:???
暇の度合いが気になる
186名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/31(月) 01:09:25 ID:???
バーローでこういう話あったよな?おっちゃんと奥さんで
187パッチン:2008/04/01(火) 23:34:46 ID:???
春の風吹かない第3新東京市。
セカンドインパクト以前ならば、ポカポカと暖かくなってくる時期なのだが、今はカンカンと照りつける太陽が恨めしい。
あまりにも恨めしいので、外に出ることすら億劫になってしまったアスカは、ずっとリビングの床をゴロゴロ転がっていた。
今この部屋には彼女1人だけ。
そして何もすることが無い彼女は、ただ転がることしかしない。
ピンポーン
インターホンを聞いたアスカはムクリと起き上がり、煙たげな表情を作りながら玄関に向かって行った。
「だる…」

『エイプリルフールの訪問者』

「おお惣流!元気そうで何よりやな!」
「終業式以来じゃなかったか、俺達に会えなくて寂しくなかったか?」
「最悪…」
扉を開けた先に待っていたのは2バカコンビ。何故か上機嫌でゲラゲラ笑っている。
しかし一方のアスカは心底、扉を開けた自分を恨んでいた…。
「マジ最低…」
「なんや惣流、今日は凄い人連れて来てんで?喜ばんかいな」
気だるそうなアスカに対してニタニタ笑いながら、とても自信満々なトウジ。
「凄い人?大阪府知事の子沢山弁護士でも連れてきたっての?」
188パッチン:2008/04/01(火) 23:36:33 ID:???
「へへ、そうじゃないんだよな〜?トウジ
ほら、こっち来なよ!」
ケンスケがそう言って手招きすると、アスカの死角になるケンスケの左隣から、その人はヒョッコリ顔を出した。

「こ、こんにちは。碇・・・シンコです…」

長い黒髪に黒い瞳、そして少しババくさいシャツとロングスカートという姿をした、アスカのよく知る人物にソックリな人が現れた。
「・・・・・は?」
「い、碇シンコです!」
ポカンと口を開けているアスカに、もう一度自己紹介するシンコちゃん。
「おぉ、やっぱり惣流もビックリしたか!ほんまにソックリやもんな〜」
「この娘、シンジの双子の妹なんだよ惣流。だから、碇シンコ!」

双子の妹?・・・シンジの?・・・妹?

「・・・いつも兄がお世話になってますアスカ…さん」
「え、あ…。こ、こちらこそ」
頬を赤く染めながら深々とお辞儀するシンコに、どうしていいのかわからないアスカは、とりあえずお辞儀し返した後、ギロリと2バカを睨む。
「どういうことなのよ!」
「いやいや実はこの娘、とってもお兄ちゃん想いの娘でな〜」
「今日は、はるばる親戚の叔父さんと一緒にシンジに会いに来たんだよ。な?」
「うん…。あっ…は、はい!」
189パッチン:2008/04/01(火) 23:38:15 ID:???
「シンジに双子の妹がいるなんて聞いたこと無いんだけど…」
髪の長さと服装が違うだけで、見た目はシンジそのものにしか見えない。
アスカは疑いの目で、シンコの身体を上から下までジックリ眺めだす。
「アンタ本当にシンジの妹ぉ?」
「おい、あんまりそんな目で見んなよ!シンコちゃんが可哀想だろ!」
「い、いいんです相田さん。あの・・・兄からよくアスカさんの話聞きます。
とっても…可愛い人だって…」

「え゛っ!?」

ボンっ!と、一気に顔がトマトになるアスカ。
「「いや〜ん♪シンジったら」」
「だ、黙れ2バカ!!
・・・・・ねぇシンコちゃん。今の…本当?」
アスカはシンコに顔を寄せて呟くように問いかけた。
シンコはそんなアスカの様子を見て、少し困ったような表情を作りながらも、コクリと首を縦に振った。
「手紙にいつも書いてるから…」
「ふ、ふぅん…。そっか、そうよね!
あははっシンジもアタシにメロメロってことね!そういうことね!」
アスカはそう言うと、腰に手を当てて後ろに振り返りケラケラ笑う。

…まるで真っ赤な顔と潤んだ瞳を正面に立つ3人から隠すように。
190パッチン:2008/04/01(火) 23:40:00 ID:???
「ところでシンジは何やってんのよ!こんな可愛い妹さん放っといて」
再びクルリと3人の方に振り向いたアスカは、シンコの頭をポンポンと撫でながら、トウジを睨みつけた。
「なんか叔父さんと一緒に話したいから、喫茶店に行くって言ってたで」
「ふぅ〜ん。・・・まぁいいか♪
シンコちゃん、リビングにおいで。コーヒー作ってあげるわ」
すっかりルンルン気分のアスカは、そのまま廊下を踊るように移動し、クルンと一回転してからキッチンに入っていった。


「と、トウジぃ…どうしよう…」
「くぷぷ、見たかケンスケ?あの騙されよう」
「見た見た♪やっぱ天才少女だかなんだか言っても、所詮は単純ツンデレ娘なんだよな」
アスカがいなくなった玄関でニタニタと笑う男子2人と、ずっと怯えた表情を貼りつけている『女みたいな男子』
名前は碇シンコなどではなく、碇シンジが正式である。

「でも惣流が騙されんのも仕方ないと思うで?だって完全に女やもんコレ」
トウジは隣にいるシンジの肩に手をまわし、にっと歯を出して笑う。
「ちょっとトウジ止めてよ…」
キッチンにいるアスカに聞こえないように、小さな抵抗をするシンジ。

完全に痴漢をうける可哀想な乙女だ。
191パッチン:2008/04/01(火) 23:41:42 ID:???
「シンコちゃ〜んコーヒー出来たわよぉ!」
「あ、待って!今靴脱ぐから…」
キッチンから玄関に跳ねるように舞い戻ってきたアスカは、シンジの手をギュッと握ると、『早く早く』と催促するようにクイクイと引っ張った。
「おぉ、じゃあワシらもコーヒー…」
「はぁ?アンタらの分なんか無いわよ」
アスカは、靴を半分脱ぎ始めていたトウジに素早くそう言い放つと、玄関に裸足で降りて、プシューっと扉を開けた。
「アンタ達は、シンコちゃんを送ってきただけでしょ?ほら、サッサと帰りなさい」
「えっ!お、おいマジかよ!?」
「いたた!何すんのや惣流!」
アスカにガッチリと耳を捕まえられた2人は、葛城家からポイッと放り出される。
「ちょ、ちょっと!その2人は…!!」
「ん?大丈夫よシンコちゃん。今日生ゴミの日だから、捨てて大丈夫」
「だ、誰が生ゴミやねんコラ!」
「じゃあねぇ〜♪新学期にまた会いましょ〜」
ヒラヒラと手を振ったアスカは、そのまま扉の開閉ボタンを押した。

プシュー


「おい、どうするねんコレ…」
外に残されたトウジは、同じく隣にいるケンスケに『ドッキリ大成功』と書かれた小さな看板を見せた。

「・・・俺もうシラネ」
192パッチン:2008/04/01(火) 23:43:20 ID:???
リビングのソファーに借りてきた猫のように恐々座りながらコーヒーを飲むシンジ。
そして、アスカはその隣でその様子をまじまじと眺めていた。

「本当に似てるのねぇ、双子って…。シンコちゃんはエヴァパイロットに選ばれなかったの?」
「う、うん。その…父さんが女の子には危ない仕事だからとかなんとか…」
「あら、アタシとファーストだって女よ?」
「え!?あ…そ、そうだよね。あはは」
「う〜ん、まあファーストのことを優遇してる件もあるし、自分の可愛がってる娘だけに優しくするタイプなのかしらね♪」
「あ、うんうん!そう言ってたよ確か!」
「え?司令が自分からそんなこと言ったの?」
「あ…イヤ…。言ってなかったかな…?やっぱり」

そもそも嘘があまり上手くないシンジの長髪カツラの下は、既に嫌な汗まみれになっていた。
確かに『エイプリルフールにアスカを騙してみたい!』と、トウジとケンスケに相談を持ちかけたのは自分だった。
そして女装をして碇シンジの妹になり、アスカを騙すという方法も、誰も傷つかない善良な嘘だと思いOKした。
しかし、彼はネタバラシという大きな壁を超えられなくなってしまっていた。

アスカがあまりにも楽しそうで…
193パッチン:2008/04/01(火) 23:45:15 ID:???
コクリ…とコーヒーの残りを全て飲み干したシンジは、勇気をグッと振り絞った。
やっぱり今のうちに言わないとダメだ…。

「ねぇアス…」「ねぇシン…」
「「あ…」」
言葉がユニゾンした。

「あ、いいよ。アスカさんが先に言って…」
「…うん。ありがと」
この時言葉を先に譲ったことによって、シンジはネタバラシの最後のチャンスを失った。

「さっきの手紙のことなんだけどね…。本当?」
「え…!」
恐らく『アスカをとても可愛い娘』と言った件であろう。
もちろんコレは、これを言えばアスカの正常な判断を鈍らせることが出来ると知っている『アスシンおちょくり男』の称号を持つトウジが考えた嘘である。

・・・シンジは迷う。

迷って迷って出した答えは、コクリと首を縦に振ることだった。
確かに手紙に書いたことは大嘘だ。
でもその内容は…その想いは…

「本当だよ」
「ふぅん…ありがと」
ソファーの上で、ちょこんと体育座りになったアスカは、嬉しさをグっと噛み殺すように、しばらく膝に額を擦りつけていた。

そんなアスカを眺めているシンジは、どんどん何も言えなくなってしまっていく…。
194パッチン:2008/04/01(火) 23:47:18 ID:???
「ふぅ・・・ところでシンコちゃん。さっきから思ってたんだけど」
「え…?」
先程まで小声で「キューキュー」唸っていたアスカが、突然お姉さん目線でシンジに話しかけた。
「もっとオシャレな服着た方がいいわよ?もう14歳なんだから」
「は…はぁ」
恐らくこれからの事を考えて、世話好きのいいお姉さんというのを印象付けたいのかもしれない。
…しかしまあ確かに、トウジの死んだおばあちゃんのタンスから漁りだした服を着た今のシンジは、オシャレからは程遠い姿であるのは否定出来ないのだが。

「ちょっと待ってなさいよ!服持ってきてあげるから!」
「え…!別に…」
シンジの言葉を無視して、エンジンのかかってしまったアスカはそのままピューっと廊下に行ってしまった。


10分後
未来の義理の妹に着せる自分の服を見繕っていたアスカは、何着かのお気に入りを抱えて、自室から出てくる。
小さい頃に母とお人形遊びをした記憶が蘇ったのだろうか、その表情はとても優しく、幸せそうだった。

しかし…

廊下に出たアスカの目についた1つの扉。
「あ…」

何かを思いついた彼女は、胸いっぱいに抱えていた色とりどりの服をバサバサッと床に落とし、ゆっくりとその中に入っていった。
195パッチン:2008/04/01(火) 23:48:42 ID:???



「す、すごい…。本当にそっくり…」
「う、うん…」
アスカの目の前に立つ男子制服を着た少女…いや少年。

あの後、結局アスカが持って来たのは自室のクローゼットを埋め尽くすコジャレた洋服などではなく、一般的には納屋と呼ばれるシンジの部屋から持ってきた一中の制服だった。
どうしてもこの制服を着たシンコを見てみたかった。
そして、何故か彼女にはこの制服が一番似合う気がアスカにはしたのだった。

そして、断固として着替えている姿を見られたくないというシンコのために廊下に出ていたアスカが、再び戻ってくると…

そこには愛しい人がいつもの服で立っていたのだった。

「髪が短かったら、そのまんまだわ…」
「ま、まぁ双子だしね…」
(ま、まぁ本人だしね…)
そんなことを思いながらシンジは、この異様な状況に戸惑いしか感じていなかった。
いつもと同じ服を着たシンジを、いつもと同じアスカが、好奇の目でまじまじと見つめている。

アスカはそのまま引き寄せられるようにシンジにゆっくり近づいていった。
「…なんで?なんでこんなに似てるの?」
「あ、アス…カ・・・さん」
シンジの両頬がアスカの両手に包まれた。
196パッチン:2008/04/01(火) 23:50:10 ID:???
「目も鼻も口も声も…。全部そっくり…なんで?」
「・・・・・」
「ごめんね。シンコちゃんはシンコちゃんなのにね…」
アスカの指が頬を滑るたびに、シンジの身体がピクピクと震える。
「でも…なんか変なの…。シンコちゃんの1つ1つ全部がシンジに見えて…」
「あ、あの!そろそろ着替えてもいい?」
アスカの目がおかしくなっていくのを間近で見つめるシンジの心に最初に宿った感情は恐怖だった。
離れようと一歩下がったシンジだったが、アスカは更に二歩前に進み、頬にかかった両手をシンジの首に回した。
そして、次にシンジの頬に触れたのはアスカの頬。
「匂いも同じ…。アタシの…」
「あ、アスっ!?」
「アタシの大好きな匂いだ…」



今日は早番で夕方に帰ってくることが出来たミサトは、我が家の扉の前で鞄をまさぐっていた。
「な〜んで鍵閉まってるかなぁ〜!?今日はアスカずっと家にいるって言ってたのにぃ!!」
左手にぶら下がったエビチュが入ったビニール袋を鬱陶しく感じながら、鍵を開けたミサトはようやく我が家の空気を吸うことが出来た。
が・・・

「ただいまぁ・・・って…なにやってんのよ、あんた達!!」
197パッチン:2008/04/01(火) 23:52:40 ID:???
玄関の直線上にある開け放たれたリビングの扉から見えた光景に、ミサトは玄関で靴を蹴り捨てて飛び出した。
リビングの床では、制服姿のシンジが仰向けで倒れ、その上から巻き付くようにアスカが抱き付いていたのだった。

「アスカ何やってんの!離れなさい!!」
「スキンシップよコレは…」
顔を真っ赤にしたアスカは、すっかりトロけた表情になっている。
そして下にいるシンジは何故か長髪のカツラを被って、こちらに助けを求めるように小さく震えている。
一体、何プレイなのだこれは!?
「何がスキンシップよ!年頃の男と女がこんなことしておいて!!」
「あはっ、アンタ馬鹿ぁ…?シンコちゃんは女の子だから、無問題なのよぉ」
そう言うと再び、ポフっとシンジの制服に顔を埋めて、スンスンと鼻を鳴らすアスカ。
「スキンシップぅ…♪」
「ちょっとアスカ!!何がシンコよ、女の子よ!いい加減にしなさ…!
・・・あっ!」
いよいよ沸点に到達しかけたミサトだったが、あることを思い出し、一気に我にかえった。

「あぁ、そうか!今日エイプリルフールだったわ!」

ポンと手を打ったミサトは、先程まで怒っていた表情を笑顔に変えて、アスカを見やった。
198パッチン:2008/04/01(火) 23:56:01 ID:???
「…エイプリルフール?」
「あはは、危うく騙される所だったわ♪おかしいと思ったのよねぇ〜
しかしあたしも年かしら?『嘘ついてもいい日』なんて楽しい日を忘れるなんて」
袋からエビチュを取り出し、グビグビ飲みだすミサト。
「でもあたしを騙すんなら、もっと工夫しなさいよぉ〜?
例えばシンちゃんに女物の服着せるとか、鈴原君とか相田君に協力してもらうとか…。
そんなカツラ被せただけで女の子なんてアマいアマいわ♪」

『嘘をついていい日』『女物の服』『2バカの協力』

そんなミサトのお気楽な言葉を聞いたアスカは酔いから覚めたような顔になり、ギギギッと『シンコ』を見やった。

「あ、アンタまさか・・・」
「・・・・・ごめんなさい」

アスカの手がゆっくりと『碇シンコ』の髪に伸びる。
ズルリ…と落ちる長い髪が落ちて、現れたのは、顔を伏せて泣きそうな顔になった『碇シンジ』だった



ドカバキドコ!
「あんた達さぁ〜。いくら、あたしを騙せなかったからって仲間割れはよくないんじゃないのぉ?」
ドカバキドコ!
「ちょ、ちょっとやり過ぎじゃないアスカ?」
ドカバキドコ!

終わり
199名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/01(火) 23:56:54 ID:???
リアルタイムGJ
200パッチン:2008/04/01(火) 23:59:06 ID:???
あとがき
間に合ったのか間に合ってないのか…。
すごい急いで書いたから展開が早すぎ…
そしてオチが無い…

でも1日の内に投下できてよかったと思います

それではヤクルトの連勝が止まったこともエイプリルフールのせいにして今日は寝ることにしますw
201名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/02(水) 00:02:27 ID:???
おつです
202名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/02(水) 12:58:42 ID:???
ほんとギリギリでしたねw。GJ
設定もおもしろかったです
203名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/02(水) 16:40:04 ID:???
アスカのだまされっぷりにもえた
GJ
204名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/02(水) 21:32:27 ID:???
むしろ落ちが「ドカバキドコ!」なのは個人的には良かったです。
GJでした!
205名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/03(木) 09:49:01 ID:???
発想がすごいおもしろいですよね!
とても楽しめました!GJです!
206名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/04(金) 00:06:28 ID:???
投下に気付くのが遅かったorz
とりあえずGJ!!!!
207名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/07(月) 11:20:16 ID:???
つまんね
208名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/08(火) 01:37:54 ID:???
オチってか締めんの下手やな
209名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 18:40:31 ID:???
つか、プロットが陳腐。
210名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 18:55:41 ID:???
俺は好きだけど?
211名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 19:41:30 ID:???
まあ、叩く人の素性は知れてる
212名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 20:03:32 ID:???
じゃあ他の人の意見も聞いてみるか
213名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 20:05:00 ID:???
シンジに告白された
シンジのことは嫌いではない、嫌いならそもそも同居はしない
だけど好きか?と聞かれたら困る
アタシが好きな人は前から加持さんなのだ、好きな人がコロコロ変わるような尻軽女ではない
「シンジ、ありがとう
だけどアタシは加持さんのことが好きなの
だからごめんなさい」
そしてシンジはこの家を出ていった
アタシはシンジのことを振ったのだから止めたくてもそんな資格はない
寂しいが仕方ない、アタシが選んだ結果なのだから 学校では毎日シンジと会うがお互い気まずく未だにに目を合わせることすらない
考えてみればアタシの毎日の生活はほとんどシンジと一緒だった
学校へ行くのも一緒、休み時間もシンジの席まで行っておしゃべりしてたしお昼は別だが帰りもだいたい一緒
シンジがいなくなって今更ながら気づいた
心にぽっかり穴が空くってこんな感じなのかな
アタシは一体どうしたいんだろう
わからない・・・
214名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 20:33:42 ID:???
続きはどうしたハァハァ

なんか文体にデジャヴを感じるが・・・
215名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 20:46:19 ID:???
大好きだからの移動だろ?
216名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 20:53:47 ID:???
アスカに振られた
アスカはいつも僕と一緒にいた、学校でも家でも最近は荷物持ちをしない荷物持ちとして遊びに出掛けたりもしていた
きっとアスカも僕に好意を持っていると思いこんでいた
だからアスカの返事は予想外だった、目の前が真っ暗になった
使徒に胸を貫かれたときよりも痛かった
胃液が逆流してくる感じがした
そして僕はあの家を出て行った
アスカが必要な人は僕ではなく加持さんなのだ
ミサトさんも加持さんが必要なのだろう
使徒もいなくなり僕はもう誰にも必要とされない
ここに来る前の状態に戻るだけなのになんでこんなに涙が出るのだろう
217名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 21:20:47 ID:???
376 名無しが氏んでも代わりはいるもの sage 2008/04/11(金) 12:18:11 ID:???
「帰るか・・・」
僕はネルフに帰る
セキュリティーの面から自由に住む場所を選ぶことはできない
できればあんな場所には行きたくないが仕方ない

「碇くん」
そこには綾波がいた、学校以外で会うのは久しぶりだ
いや、僕が意図的に避けてきたのだ
三人目となった綾波が、母さんのクローンだと解った綾波が、最後に僕を救ってくれた綾波僕には何か得体の知れないような存在に思え恐ろしく感じていただ
「何故そんなに悲しい顔をしているの?」
「なんでだろうね」
「・・・・これあげるわ」
そう言うと彼女は一つの飴玉を出した
「飴?」
「これを食べると元気が出るわ、葛城二佐から貰ったの」
僕は自分が恥ずかしくなった
こんなにも純粋な彼女をそんな風に思っていた自分を
「泣いているの?」
「あれ?ホントだ、僕泣いてるみたいだね」
「でも笑っているわ」
「嬉しかったんだ」
「そう、そんなにも飴が美味しかったのね
わかるわ、私も初めて食べたときこんな美味しいものがあるなんてって思ったもの」
「いや、飴じゃなくてね」 「?」
綾波は首を横にちょっと傾け分からないといった表情だ
その仕草が堪らなく愛おしく感じた
「そうだ、飴のお礼に僕の料理食べてくれないかな?」
「美味しいの?」
「これでも料理だけはちょっと自信があるんだ」
「ならいただくわ」
218名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 21:27:19 ID:6Pv5x8lt
投下すんの少し待てよ
文章がゴッチャになって読みにくいったらありゃしない
後出来れば名前欄にタイトルないし、番号ないしふって頂けると有難い
219名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 21:38:04 ID:???
コテつけてちょ
220にゃあ:2008/04/11(金) 21:43:18 ID:???
読みにくくてすみません
コテ付けて投下します、生温い目で見守ってください
221名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 22:10:30 ID:???
ガンガレ
222名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/11(金) 22:26:06 ID:???
できるだけ早くな!
気になって眠れないからw
223名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/12(土) 00:34:53 ID:???
ツマランから要らね
224名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/12(土) 18:50:14 ID:???
wktk
225名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/12(土) 20:12:42 ID:???
ヤベー超おもれーじゃんwww
はいはいwktkwktk
226名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/16(水) 17:58:34 ID:???
投下町
227霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 15:13:13 ID:???
【女神へのラヴレター 〜血の13歳・原罪の15歳〜】

夕暮れの芦ノ湖に僕はアスカといた。湖面は嫌になるくらいに、時を忘れたかのように静まり返っている。
石ころを積んで、持ってきた線香を立てる。マナが好きだったインド製の高級なホワイトムスクで、マナはよく
これを焚いて眠っていた。
黒く焼けた稜線に太陽が沈んでいく。相模湾、旧藤沢市沖30キロの海底。トライデント級陸上戦艦「震電」の沈没地点だ。
N2爆弾の直撃を浴びたトライデントの艦体はバラバラに四散して海底に散らばり、回収は絶望的との見立てだ。
君だろアスカ。
「なんのことよ?」
君がチクったんだろ、だからNERVが動いた!マナも、ムサシも、…お前のせいで!
「はん、なに寝言ほざいてやがんのよ…?あのN2、あれでアンタは消えちゃってるはずだったのにね…ちゃっかり生き延びやがって」
「どこまで僕のことをわかってるんだ…?」
「どこまで?ふざけんじゃないわよ、“最初から”よ!あの赤い海からすべて、アンタがアタシのすべてを
奪っていったこと、忘れるわけないっしょうが!」
最初から。赤い海から。すべてを。
そうか。
228霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 15:32:54 ID:???
立ち上がり、振り向く。
夕凪の狭間に紛れ込んだそよ風と共に、飛び込んでくる拳を皮一枚で交わす。頬を裂く空気の刃を感じながら
僕はきっと、虚ろな目でアスカを見ていたんだろう。
「っぐは!」
死角から振り上げられた左が僕の腹に突き刺さる。潰れた内臓が抱えたモノを吐き出そうと悲鳴をあげる。
河原の上に崩れ落ちた僕をアスカはじっと見下ろしていた。
跪き、僕を抱き起こす。
「くくくっ…笑っちゃうじゃん?アンタなんかよりさ…アタシに、このアタシにあの馬鹿ぁ惚れ込んでたンよ?
いっつも気づかない鈍い振りして…保護者ヅラして、そのくせ美味しいとこだけ全部掻っ攫ってったアンタなんかより、
アイツは…ムサシはずっと、アタシのそばにいてくれた!」
口の中に血があふれ、押し流そうとして唾液がとめどなく噴き出してくる。口から赤い糸を零して、僕は微笑んだ。
ムサシの声が聞こえる。
お前がやんなきゃダメなんだよ。アスカはお前がやるんだ。
やるってどういうことだよ?
そうさ、アスカを止めろって。だけど僕も止まれない。
229霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 16:02:45 ID:???
僕は今憎しみに駆られてる。秘めた想いがどうあれ、僕から君を奪ったのはほかでもないアスカ、だから。
弐号機の紅い機体が太陽の光を浴びて輝く。
構えた日本刀、マゴロク・エクスターミネートソード。その刃が味わう生き血は誰のものだ?
斬撃を浴びたトライデントの巨大な艦体がぐらりと傾き、被弾面が金属の悲鳴をあげて軋みへこむ。
「ふざけろよ…アスカ!」
抱きかかえられた体勢のまま、頭突きを打ち込む。鼻筋にぶち当たった感触。僕の視界も赤く染まり血の臭いが一瞬で身体中に満ち溢れる。
攻撃動作の隙に衝撃が僕の頬を貫き、僕は再び湖岸の砂利に叩きつけられた。尖った石が顔に突き刺さって皮膚を破る。
「カカカッ、あんだってェシンジ!?なんて言ったァ!?」
真っ直ぐ突っ込んでくる拳が見えて僕はとっさに頭をずらして避ける。頬骨が激しく削り取られて吹っ飛ばされ
そうになり、それでも堪えて立ち上がり間合いを取る。
上等だ。直接眼球を狙ってきやがった。
身体中の筋肉が切ないくらいに力を絞り出し、行き場のない拳を爪が手のひらに刺さるまできつく握り締める。
なぜ、戦う。
はぁ?アンタなに言ってんの。わけのわからないモンが攻めてきてんのよ。降りかかる火の粉は払うのが当然でしょうが。
前、そう聞いたよ。だけど今は違うよな。
僕たちはどうしてこんなに。
230霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 16:19:08 ID:???
血の滴が舞って拳が空を切る。直後、真横から脇に蹴りが襲う。
どうして!
どうにもできない。夢中で掴みかかり押し倒す。壊せ!壊せ!壊れろ!人間の身体なんて脆いモンのはずだろ。
それなのにどうして!
顎に再び一撃を受け、噛んだ口の中が切れて僕は血の飛沫を吐いた。
僕の吐き出した血がアスカの顔をいっぱいに濡らし混ざり合って垂れていく。
やり場のないこの焦りは何なんだよ。
ワケなんて、探すだけ無駄だろ?
このまま死ねるならきっと幸せだ。
殴り合うことが気持ちいい。
やりきれない想いを拳に込めてぶつけ、そしてそれが届き、受け止められていることをこの目で確かめられる。
僕に対しても同じようにね。だから、言っちゃ変だけど信頼できる、のかな?
楽しいぜ。
「なに笑ってんのよ?…シンジィッ!」
空に散る滴が、風に吹かれる花びらのように見えた。
231名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/17(木) 16:28:27 ID:???
…どしたのコレ?
232名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/17(木) 16:37:45 ID:???
逆行?AEOE?時系列が妙な気がする
どっちにしてもLASなのか微妙じゃね?
LMSにアスカ×ムサシみたいな描写あるし
233名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/17(木) 17:28:39 ID:???
てかマナとかムサシとかどうでもよくね?
ゲームに出てるって言ったって、もはやエヴァじゃないじゃんw

234名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/17(木) 17:31:27 ID:???
ここは総合だから基本何でもありだろ
235霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 17:48:01 ID:???
>>230

――西暦2014年 春

桜の花びらが舞い散る坂道を、芦ノ湖畔に広がる眩しい街並みを見下ろしながら私たちは学校へ駆けていた。
今日は第3新東京市立第壱中学校の入学式。今日から私と同じ学校へ通う友達、惣流アスカラングレーと洞木ヒカリを連れて、
私は校門前から振り向いて手を振った。
「ほら早く早くー、遅れちゃうよー?」
「まっ、待ってよもう、綾波さんったら足速いんだから…」
ようやく追いついてきた洞木さんが肩で息をしながら言う。アスカは息を切らしながら彼女のそばに寄り添っている。
昇降口前に掲示されたクラスわけをみんなで見上げる。時折あちこちから歓声があがり、私たちも自然と
気分がうきうきしてくる。
「あっ、あったわたしC組だ」
「えっうそうそ、アタシは…ああっ、A組〜どうしようヒカリ〜べつべつのクラスだよ〜」
チルドレン候補はA組と決まってるから、アスカがA組なのは当然だけど。他に知ってるヒトもいなさそうだし、アスカ、傍目から
見てもかわいそうなくらい不安がってる。
「それじゃ、新入生はあっちで待っててね。時間になったら先生が呼びに来ると思うから」
「ええっ、あ、綾波〜いっしょにいてくれないの?」
「しかたないでしょ、在校生はふつうにHRとかあるし。だいじょうぶ、式なんてすぐに終わるから。学校引けたら
3人で遊びいこ?」
236霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 18:11:30 ID:???
青い瞳を潤ませてオロオロしてるアスカをなだめ、私は2年A組の教室に上がる。と、碇司令と赤木博士からのメールが届いた。
ほんと、こんなことでいちいち心配しちゃって。私はもう14歳なんだから、ひとりで大丈夫よ、っと。
窓の外には桜の花びらが、途切れることなく舞っている。この学校の裏山には桜並木があるからそこから飛んでくるんだ。
赤木博士にも見せてあげたいな。いつも本部の研究室にこもりっぱなしだから。
それはそうと、司令は博士と再婚しないのかなぁ?
ってのも、野暮な話しかな。補完計画が発動すれば、ユイ博士に会えるって信じてるみたいだし。うまくいくのかは
私にはさっぱりだけど。やっぱ、なんだかんだで怖いんだろうね。そして諦めきれてない。ユイ博士の
サルベージにこだわるのは、裏を返せば思い出を振り切ることが怖くて拒否してるってコト。結果として、前に進めてない。
本人がそれでいいって言うんならしかたないけどさ。
私や赤木博士がそれでついてきてくれるのかってのはまた別な話しよ。

入学式はつつがなく終わり、私たちはまた3人で集まった。記念写真を撮っていた先生に私たちのも撮ってもらった。
洞木さんとアスカを両脇に抱えてピース。出来上がったポラロイドの写真には、カメラ目線を外しちゃったアスカと半分はみ出した
洞木さん、そしていっぱいに大写りした私がいた。うんうん、今日もこの艶やかな黒髪に天使の輪がばっちり出てる。洞木さんの
栗毛もきれい。アスカの赤毛は、まあ。
237霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 18:33:12 ID:???
「さっそく言われちゃったのよこの髪〜染めてるんじゃないって言ってるのにぃ〜」
頭を抱えて泣き言を言ってるアスカに私は思わず吹き出す。
「だっからぁ、そんなオドオドしてるからよ?堂々としてればいいのよ、堂々と。中学デビューしたつもりになって」
「う〜」
「デビューって、綾波さん…」
中学生になったんだからそれくらいはっちゃけてもいいのに、とは思うけどアスカの性格じゃ無理かなあ?
真っ赤なアタマのスケバン刑事、なんてね。周りをよく見てみれば、やっぱりアスカは他の子たちの注目を集めてる。髪の色もそうだし、
雰囲気もどこか違うから。血に刻まれた本能っていうのかな、やっぱり人種の違いってのは生理的にわかるんだと思う。
「あっあの、綾波、ヒカリ、先行っててアタシちょっと用事あって…」
いきなり言い出したアスカに私たちは不思議がる。いつもはどこへ行くにも私や洞木さんがいっしょじゃないとぐずるのに、ひとりでどこかへ行くなんて。
「んどうしたの急に?大丈夫よ、どっか行くなら送ってってあげる」
「だっ、大丈夫よおひとりでも!アタシだってもう子どもじゃないんだからっ」
唇をとがらせて言うアスカが意外に可愛い。
私と洞木さんは顔を見合わせて、作った笑顔を満面にたたえてアスカを見送ることにした。
アスカは頬を赤くしながら逃げ出すように行ってしまう。
238霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 18:51:57 ID:???
しばらく手を振ってから、私はおもむろに洞木さんにふっかけた。
「どう思う?」
「どうって」
「あの慌てよう」
「うん慌てよう」
「やっぱり」
「やっぱり」
「オトコね」
「おと…って、綾波さん!?」
いやなんというか、アスカもいつのまにかやるわねえ。私たちに黙って。なんだかんだでお年頃ですから。
洞木さんはフケツよとかぶつぶつ言ってる。

そんな私たちを遠くから見ている目があった。
「アイツぅ…あの赤頭の女ぁドコよ?」
運動場隅の体育用具室の影に座り込んでいる男子、というか不良生徒のグループ。校章の色を見ると彼らも新入生のようだ。中心に
いるドレッドに鼻ピアスの男が目を引く。彼がアタマか。
「知ってンぜアイツ仙石原小の惣流アスカだろォ?」
「あの髪ぁ染めてるんじゃねえってよ。なんでもバーチャンがドイツ人だとかでよ、クォーターっつうのか?そんなん」
「生意気だぜあんな見せびらかしてよう」
仲間たちが口々に言ってる。私は彼らの目に洞木さんが留まらないようにカバーしながら聞き耳をたてる。
239霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 19:11:57 ID:???
「だけっど、あいつだあの隣にいる背たけぇシャギーの奴よ。あいつが綾波っつってよ、あいつがちょっとやべえんだ。オレも同じ仙石原小で…」
私の名前がでた。
私の何がやばいって?
「あんだァテルオ?ごちゃごちゃ言ってンなよ?」
「き、キョウジくん…」
ドレッドの名はキョウジ、か。ぱっと見でもただ者じゃないってわかる。第壱中には今まで特に派手な不良とか
特別強い奴とかいなかったから、どうなるか。知ってる3年坊連中には、話し通しておいた方がいいかもね。こんなことで
ガードを借り出すのもあほらしいし。
「綾波さんー?」
洞木さんが呼んでる。私は気取られないように渡り廊下を過ぎ、人の流れに紛れた。
予想してなかったってわけじゃないけどアスカ、やっぱり目ぇ付けられちゃったね。ここは私ががんばらなきゃ。たしかに
彼女はチルドレンとしてトップの強さを持つけど、外に出ればひとりのか弱い女の子だから。私が守ってやらなきゃ。なにより、
私たちは小さい頃からずっと仲良しの友達だったもの。
またメールが来た。今度は赤木博士。
…?
240霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 19:24:28 ID:???
「どうしたの?」
「ごめんっ急用できちゃった!洞木さん、また今度、おごってあげるから今日はごめんね」
ぱちんと手を合わせる。洞木さんはすぐに察してくれたようで仕方なさげな微笑みを浮かべた。
「ううん、いいのよたいせつなお仕事だもんね」
「ほんっと、ごめんねー」
NERV本部へ急ごう。
ていうかアスカにも知らせないと、いや、彼女にも博士から連絡はいってるはず。
この用件、なにげに重大なことでしょ?
『サードチルドレンが選出された。』
いったい誰なんだろう?おなじA組の候補の子かな?それとも。

雪のような桜が舞い続ける道を、私はあたたかな希望を胸に駆けていく。芦ノ湖は今日も青く澄み渡っている。
道端に黒猫さんが、丸くなってひなたぼっこをしていた。
241霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 19:57:20 ID:???
泣いてる。
アタシが泣いてる。
『外人!ガイジン!』
『逃げろ〜赤鬼だぁ〜♪』
奪われた上履きを投げつけられる。床に落ちた筆箱のふたがこわれて、鉛筆や定規が散らばる。それも
投げつけられて腕に刺さる。
『こいつの母ちゃん自殺したんだぜーあたまがおかしくなってなあ』
『くるくるぱーで首吊り自殺♪ぶーらぶら♪』
『はい♪じっさっつヾ(^▽^)ノじっさっつヾ(^▽^)ノじっさっつヾ(^▽^)ノ』
涙の匂い。血の匂いが満ちる。
叫んでたかもしれない。
ただがむしゃらに向かっていって、気づいたときには教室の隅にうずくまってた。倒れた机と椅子が乱雑に、クラスの
みんなが汚れものを見るような目つきでアタシを取り囲んでる。
子どもじゃない。人間じゃ…ない。
敵。
敵なのよ。
『きゃはははっははははははは!』
トイレの個室に閉じ込められ、掃除につかった汚水がモップごと降りかかってくる。ホコリのかたまりと髪の毛と靴の裏についた
ごみと砂が口の中に入る。
吐きたい。
242霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 20:20:07 ID:???
床に蹴倒されて唇を切ってしまう。血が流れ出る。頭を踏みつけられ、尻を蹴られ、服は排泄物の混じった泥水でぐしょ
ぐしょに汚れていく。
それでもみんなが口を揃えて『アスカちゃんがひとりで勝手に転んだ』って言えば、それが正しいことになって
しまう。悔しくてつかみかかったりでもすれば、それはアタシが悪いことにされてしまう。
誰も味方はいない、この仙石原小学校には。
ううん、隣のクラスの洞木ヒカリさん、それから去年卒業していった先輩の綾波レイさん…彼女たちだけがアタシの友達だった。
アタシはいつもふたりのそばに。そうしなきゃ、みんなのいじめから身を守ることができなかった。
いっこ上の綾波さんはとても背が高くって力も強くて、6年生の男子でも逆らえないほどだった。ちょっと気が荒くて
怒りっぽいけれど、でも普段はとても明るくて気前のいい女の子。
そう。憧れだった。
アタシもあんなふうになりたかった。強くなりたかった。綾波さんのように強くなりたかった。
そうでしょ?世界に二人しかいない選ばれた人間、人類を守るエリートパイロット。それが自分の身も自分で守れなくてどうするの。
チルドレンに選ばれてからずっと、アタシはひたすらにシンクロテストを続け、シンクロ率はトップの座を守っていた。
だけどひとたびエヴァを降りれば、アタシは背もちっちゃくて力も弱い、無力な子どもでしかなかった。
243霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/17(木) 20:32:56 ID:???
うすうす気づきはじめてはいた。
だから余計に、エヴァに縋ろうとした。
エヴァに乗っていればすべてを忘れられる。強い力を持った気になれる。
だけど、それは自分の力じゃない。
拘束具にがんじがらめに固められ、5分しか持たない電源に縛られ、そして上官の命令には絶対服従。
それはあの小学校となにひとつ変わらない。
気づかないふりをしていた。
だけど、エヴァに嘘はつけない。
お見通しだったんだ。ママには、弐号機の中にいるママには。
低下していくシンクロ率。
焦れば焦るほど泥沼にはまる。
認めたくなかった、自分の弱さを。学校で嫌というほど思い知らされた自分の弱さを、エヴァに乗ってまで味わいたくなかった。
怖かった。
そんな折、サードチルドレンが選ばれたという知らせが届いた。
3人目の適格者。男の子だという。

彼は、NERV総司令の息子。
244名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/17(木) 21:42:29 ID:???
>>232
どうも作者のサイトでやっている再構成物FFの外伝みたいだね。
そんな物を説明もなく、いきなり投下し出す時点でよっぽどのナルな人
なんだろうかと思うがけど。
245名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/17(木) 21:52:12 ID:???
>>244
なるほど納得
作者の他の作品の傾向みたいに一筋縄じゃない展開かな
それはともかく書きながらっぽい投下は読みにくい
纏めてメモ帳に書いて投下はコピペとかは無理なんだろうか
246名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/17(木) 22:10:43 ID:???
ていうか自サイトあるなら、なんでそこでやらんの?
その作品全く知らないコチラはどうすれば…
247名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/17(木) 22:15:55 ID:???
おまえら、いい加減スルーを覚えろよ
248名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/17(木) 22:30:00 ID:???
スルーって、一応作品投下されてるワケだし、外伝作だってのも知らなかったし
249霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/18(金) 19:36:27 ID:???
>>243

たしか、梅雨が一週間ほど続いた金曜日だった。
アタシはまたいつものように学校から逃げ出して…あてもなくバスに乗って、この街へ来ていた。第3新東京市から
山を越えて、軍の基地があちこちにあって街のそこかしこを米兵が歩いているこの街へ。
静岡県御殿場市。雨に煙った山の中腹に戦略自衛隊御殿場基地が見える。街のはずれを走る東名高速のガード下に
アタシはうずくまって、泥だらけになった制服のスカートを抱え、何時間かそうしていたけれど雨はいっこうに
止まなくて、濡れた身体がすっかり冷え切ってしまっていた。
そんな街で彼に出会った。
「オイ、お前…どうしたんだよ?」
話しかけてきた声にアタシはようやく顔を上げる。
短髪とそばかすの一見気弱そうな少年、そして彼の連れらしい褐色肌の少年と茶髪の少女、それに…
「君、その制服は第壱中『イッチュー』のじゃないかい?名前は?」
「…アスカ…惣流アスカ」
「アスカか。僕は碇シンジだ。そんなところに黙ってると風邪ひくぜ、うちに来いよ。いいよなマナ?」
「大丈夫〜今日は母さんも義父さんもいないから」
「あ、彼女は霧島マナ。僕の義姉貴“アネキ”だ」
アイツに初めて会ったのはこのときだ。
このときは夢にも思わなかったわよ。まさかアンタが、“御殿場中『テンチュー』の碇”と呼ばれ恐れられる程の男だったとはね。
アタシはこの日初めて、NERVの訓練以外で“外泊”をした。
250霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/18(金) 20:13:46 ID:???
それから3日間、アタシたち5人は童心に返って遊び回った。そばかすの少年はケイタ、褐色肌の少年はムサシといった。
ムサシの家はママがフィリピン人で飲み屋をやっていて、雨がやんでカンカン照りになった翌日、みんなでジュースをごちそうになった。
シンジとマナの家はママが女流作家で3階建てのとても大きくてきれいな豪邸だった。マナのママ、つまり
シンジの義母は児童文学が専門だそうだ。アタシは自分の家からママの宝石箱を持ってきた。アタシの大切な宝物だ。
わあ、きれーい。
うんこの赤いイヤリング見て、光に透かすと中に十字架がみえるの。
アタシとシンジはちらばした宝飾品に胸を踊らせながら、安全ピンで初めてピアッシングをした。慣れない痛みに
二人して半ベソかきながら、それでもなんとかお揃いのピアスを左耳につけた。
僕たちこれでほんとの友だちだね。
うん。十字架になっちゃうまで、ずっと、ずっと友だちだよね、シンジ…
当たり前じゃないか、僕たち死ぬまで一緒だよ、アスカ…
白い巨大な女神が黒球を抱え、人類は皆赤い宝石に心の十字架を携えて還っていく。みんな、女神へのラヴレターを持って。
東名高速の非常階段で、石積み遊びを教えてもらった。崩しちゃったら罰ゲーム。アタシは慣れなくてすぐに崩しちゃって、ケイタに
さんざん笑われた。悔しくて手が真っ白になるまで泣きながら石を積んでいると、ムサシが背中をさすってなだめてくれた。
本当に楽しい、つらいこともいやなことも忘れられるひとときだった。

アタシにくっついて、シンジやマナ、ムサシは第3に乗り込んでくるようになった。彼らを知っている者も
第壱中には多くいたようで、ちょっとツッパっていただけの連中はすぐにアタシを避けるようになった。それがとても心地よくて、
本当に心強い味方を得たものだと思った。いや、自分が強くなったと勘違いしていた。
251名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/18(金) 20:53:21 ID:???
ごめん。まず何の作品の外伝か教えてくれ
サッパリわからん
252霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/18(金) 21:27:09 ID:???
どうも、きつねです
ごあいさつおくれました

>>251
ttp://www.eva-lagoon.net/mana/
こちらの【女神へのラヴレター】の前日譚(13歳編)を今かいてます

今ケータイしかないのでまとめ書きはチトむりぽです

ではフロはいったらまた続きをかきます
253名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/18(金) 21:57:38 ID:???
>>252
携帯でもメモ帳やメール本文部分にまとめ書き出来る
254霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/19(土) 01:09:46 ID:???
>>250

だけど、シンジたちに刃向かおうとする者たちにはそんなことはお構い無しだ。
たまたま、シンジたちがいないときを狙われた。
同じ一年生の支倉キョウジといったか…色黒でドレッド髪の男が仲間を連れてアタシを取り囲んできた。ヒカリが一緒に
いたけれど立ち向かえるはずもなく、アタシたちは校舎裏の草むらに連れ込まれて突き飛ばされた。
シンジ、ムサシ、彼らと共にいたアタシにキョウジたちは目を付けたんだ。
理由なんか、ただ目障りだ、それだけ、そして単に弱いものをいたぶって楽しんでるだけだ。ブラウスを引き裂かれてアタシは
地面に倒された。身体がすくんで立ち上がれない。
弱い自分、それをはっきり自覚した。
力が無い。
胸に刻まれた傷から血が流れて、殴られた頬が意識を朦朧とさせる。いじめっ子に囲まれていた小学生の頃、だけど今は、
獰猛な男たちに囲まれた処女。
ヒカリの悲鳴が聞こえた。アタシは声も出なかった。
助けを求めることさえできない。
シンジ、あなたならこんな奴ら、鎧袖一触に蹴散らせるでしょうね。
ムサシ、あなたがいてくれたら…!
「アスカぁーっ!いや、やあぁーっ!」
背後から羽交い締めにされ、腹を蹴られてむりやり脚を開かせられる。
「おとなしくしてろよっ」
「すぐにいい気分にしてやっからなぁ?」
「キンパツ外人女は今ぐらいが食べ頃なんだよ」
もう…やられちゃうんだ…
255霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/19(土) 01:11:44 ID:???
ガチッ、と、金属とコンクリートのぶつかる音がした。
異様な緊張が空気を締めつけてあたりに満ちる。
ヒカリの息をのむ声がした。
「ア…」
風切り音がアタシの頭上を飛び越して、肉と骨の潰れる鈍い音がした。
跳ねる黒髪、翻る長尺のスカート、そしてその右手に握られた…歪んだ鉄パイプ。吹っ飛ばされた男が血を吐きながら地面を
転がる。彼女はすぐに次の獲物を探して腕を振り上げる。唸り声とも雄叫びともつかない不気味な息遣いが聞こえた。
血の匂いだ、懐かしい。
懐かしい。
戦い。
骨を砕け。殺せ、なるたけ苦しむようにしてね。
そうでしょ…綾波…
「あっ、綾波さん…!」
しりもちをついたまま、這いずってアタシはとにかく逃げようとした。ヒカリが震える手でアタシを抱き寄せる。
泥と血に汚れてアタシたちは、二人抱き合って震えていた。
アタシたちを傷つけた。
許せるわけない。
殺してやる。
256霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/19(土) 01:13:07 ID:???
綾波はがむしゃらに鉄パイプを振るい、男たちを打ち倒していく。その表情は普段の彼女とは全く違っていた。
人間のものではないような気がした。
だけど、声はたしかに…綾波のもの。
「ぐあああっ!」
腕を折られた男が絶叫を上げてうずくまる。
綾波はさらにそいつに向けて鉄パイプを振り下ろし、アタシは思わず目をつぶって顔を背けた。
「うおらぁっこのぉ!あたしを見たなぁァッ!?」
土ボコリと血が混じって飛び散り、肉片もその中に混じる。
「上等かッ!?上等くれんのかって訊いてんのよっ!?」
三白眼になった瞳と唇の端からこぼれる涎がアタシの目に焼き付く。
何…なんなのよ、これ…
「アスカに手ェ出す奴はっ!死ねや!死んじまえよゴラァぁぁッ!」
死…ダメ、ダメよ綾波!本当に殺しちゃう!
このままじゃ…止めなきゃ!
でも身体が動かない。怖くて動かない。アタシは何を怖がってるの?男たち…それとも…
怖い、弱い、無力。無力なのはアタシ。
無力。弱いもの。
いじめられてる…
257霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/19(土) 01:14:24 ID:???
ヒカリも腰を抜かして立てない。
アタシがやらなきゃ…アタシが!
その時、アタシたちの後ろから飛び込んできた少年が綾波を取り押さえようと向かっていった。
「やめろっ綾波!もういいだろ、そこまでにしとけっ!」
綾波は彼の声も耳に入らないようで暴れ続けている。振り回した腕が彼の顔やわき腹をどついていく。
それでも少年は綾波を離さない。
「マジで殺っちまうって!おい!聞こえてんのかッ!」
肘が顔面に直撃する。
「綾波ィィッ!ってえな!」
「…!」
電池の切れたおもちゃのように綾波はだらりと腕を落とした。
アタシもヒカリも呆然として二人を見つめている。
「む…ムサシ君…?」
綾波は鉄パイプを地面に落とし、返り血まみれの顔で振り向いた。
「なぁによぅ…リーくんじゃないの、どしたのぉ?」
その声があまりに能天気すぎる普段どおりの調子で、アタシたちは再びあっけに取られた。さっきまで化け物のように
暴れまわっていたのが嘘のように、彼女はアタシたちに微笑みかける。
258霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/19(土) 01:15:49 ID:???
「だぁいじょーぶだった、アスカ、洞木さん?あ、制服いたんじゃってるね」
綾波はアタシたちの具合をみながら、ポケットから煙草を取り出して一服した。
「は…はは…」
気の抜けた声しか出ない。ムサシは呆れ気味に言った。
「ったくよう、たまにこっち来てみればコレだぜ。あんま派手なことしてっとまた停学くらうぞ?」
「あなたに言われたくないわね」
「ほっとけ」
「ところで霧島さんたちは?」
「しらねえよ、基地にでも行ってんじゃね」
向こうに転がされた男たちは時折呻いてはもがいてる。綾波はまるで他人ごとのように、早くバックレようと
言ってきた。アタシたちはそのまま、逃げるようにその場を後にする。
どうしよう。これがばれたらアタシたちまで怒られちゃう。
そんな心配をよそに、ムサシと綾波は颯爽と歩いていく。アタシたちは駆け足で追いかける。
ほどなくNERVからの呼び出しが来た。ただし綾波だけ。
ときどき司令から個人的に呼ばれているみたいだけど、何なんだろう。
綾波が行ってしまうのを待って、ヒカリがおそるおそる言った。
「ね、ねえ、やっぱりあの噂…本当なのかなあ?」
「なんだよ噂って」
「あ、綾波さん…駅裏の売人から盗んだクスリ売りさばいてるって…それで、自分でもやって…」
259霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/19(土) 01:17:09 ID:???
青ざめてるヒカリはさっきの光景を思い出してる。ラリってぶち切れてたとでも言うわけ?
「噂だろ、噂…んなわけねえって」
ムサシは気楽に否定するけど、ヒカリは心配と恐れが半々くらい。
アタシも思い出す。あの戦いぶり…エヴァで模擬戦をやったときはあんなに強くなかった。エヴァと生身は当然違うけれど、でも…
違い、その違いはなにか、アタシを強く奮い立たせてくれた。
「…かっこよかった」
「え?」
「綾波さん。アタシもあんなふうになりたい…強くなりたいよ」
見上げた空にアイツの顔が浮かんでる。ヒカリが慌ててアタシの肩を揺さぶる。
「あ、アスカ!?本気で言ってるの、だめだってそんなこと…!」
そういう意味じゃない。
「ケケケ、オメーにゃ無理だろぉアスカ?んなちっけえ身体でよ、まずぁ背ぇのばさねえとな」
いたずらっぽく笑いながらムサシはアタシの頭をなでる。
た、たしかにアタシはちびだけど。腕も細いし、これは女だから仕方ないけど、でも綾波はあんなに強い。性差なんか関係ないよ。
「いっ、いいでしょー思うくらい!アタシだって今におっきくなって強くなるんだからっ」
「はいはい、そんなら毎日牛乳のむか?カルシウムとれよお」
「むー!」
ぽかぽかとムサシの背を叩き、だけどアタシは楽しかった。こうしてみんなといられることが。
夏の太陽がアタシたちをまぶしく照らし、笑顔は輝いていた。きっとこのときのアタシたちには希望があった。
たとえそれがすぐに潰えてしまうものだったとしても。
260霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/19(土) 17:42:29 ID:???
>>259

「またなの?」
本部に着くなり、赤木博士にそう言われた。
「その顔よ」
「え、顔…あ」
そういえば、返り血を拭いてないままだった。赤木博士がため息をついて肩を落とす。
「本当に…誰に似たのかしらね。まあいいわ、腕を出して」
育ての親じゃないかなあ。皮肉屋なのは赤木博士に。喧嘩っ早いのは、若い頃の碇司令がそうだったみたいよ。
博士はいつものように“メンテナンス”の準備を進めていく。私が普通の人間と違うっていうのはわかってる。地下の白い巨人、第2使徒リリス…
小さい頃に何度も見上げた記憶がある。私はあの地下で生まれ育った。
腕を消毒し、注射器の針がゆっくりと刺し込まれる。
かすかに漏れる血がアルコールに溶けていくのを眺めながら、静脈に注ぎ込まれる薬の感触を確かめる。
「あの、赤木博士」
「なに?」
「サードチルドレン…こないだ写真見せてもらった、あの彼ってまだ呼ばないんですか?」
博士は物珍しそうな視線を私に向けてる。
「彼はあくまでも予備よ。今はあなたとアスカで十分でしょう」
それとも彼のことが気になるのかしら?
嫌みな瞳だね、博士も。私はじっと見つめ返す。もう身長165センチを超えた私は博士と向かい合っても
視線が同じ高さ。いつまでも子どもじゃないのよ、見くびってると痛い目に遭うんだから。
261霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/19(土) 17:43:53 ID:???
「でも、…アスカのこと」
「それはあなたが気にしても仕方ないわ。彼女自身の問題よ」
冷たく言い放つ。
何を隠してる?隠しごとじゃなくても、気持ちを隠してる。アスカのシンクロ率が最近、だんだん落ち気味なのはみんなわかってるでしょ。
博士はもちろん伊吹二尉も、他のスタッフも。原因の究明は当然やっているだろうし、それなのに何も言ってこないのはどういうこと?
それはそうとレイ、
「なんです?」
「あなた、こないだ“蒼龍会”の構成員とトラブルを起こしたでしょう。ちゃんと聞こえてくるのよ、保安部が仲介したから
いいけれど、あまりやりすぎるとこっちでも面倒見きれないわ」
「…気をつけます」
まあ。
やってることは、NERVの後ろ盾でもなければ一介の中学生にはとてもじゃないけど無理すぎることだし。たとえば霧島さんにしても
戦自がバックについてるからわりと好き勝手やれてる。
食い物にされてるだけだって?どうだか。
第壱中や、御殿場中の3年坊連中に流す分だけなら大したことじゃない、けど問題はそんなことじゃない。
私は間接的にみんなを守ってる、いや違うそんなたいそうなことじゃない。
ただの自分の勝手でしょ。
司令のお世話する時とか、男の子と遊ぶ時とか、あとはひとりでマッタリしたい時とかね。
262霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/19(土) 17:45:30 ID:???
蒼龍会『そうりょうかい』といえばこの街のみならず関東全域に広く勢力を持つ一大組織。代々、惣流家当主が会長職を務めてる。
…そゆこと。
お嬢様なのよね、なにげにアスカも。小学校低学年の頃は、家政夫の田宮さんによく遊んでもらったっけ。あの人も
今は組いっこ任されてるんだっけ?
博士の研究室を出ようとしたら伊吹二尉と入れ違いになった。あわてて私をよけて、レイちゃんまたですかとか怯えた声で博士に言ってる。
ヘッドハンティングだかなんだか知らないけど、きっと小さい頃から箱入り娘だったんでしょうね。やんちゃした経験がない。
司令執務室の前に立ち、いつものようにインターホンに向かって呼びかける。
「綾波レイ、参りました」
ややあって司令の返事が、待ち焦がれたように返ってくる。
サードチルドレンの彼のことを聞いてみようか?司令の息子だっていうし。それとも、できれば思い出したくないことだろうか。
顔の血はまだ洗ってないけど、どうせシャワーを浴びるんだからまあいいや。
初めて喧嘩して汚れた顔のまま帰ってきたときは司令びっくりしてたけど、今はもう慣れたみたい。ちょっぴり寂しそうに、
でも違う意味で興奮してたり。不思議なものだね人間って、ぼけっと突っ立って私はそんなことを考えていた。
疼く。
昼間のクスリがまだ抜けきってない。
263名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/25(金) 01:04:32 ID:???
ほしゅ
264名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/26(土) 10:21:54 ID:???
投下町
2651 ◆FPBUMtkkbw :2008/04/27(日) 10:47:07 ID:???
どれだけ長く、一体何故眠っていたのか。エヴァに乗って・・・それで・・・。

目を覚ますと、私は真っ白な砂浜に横たわっていた。
何故こうしているのかはわからない。空は暗く、星が瞬いていた。
体を起こそうと右手を着く。その腕に巻かれた包帯に気付いたが、特に痛みも無かったのでそのまま体を起こした。

顔を上げると、そこにはシンジが居た。
私の目の前で立ち尽くしているシンジの背中の更にその先には、血の様に真っ赤な海が広がっている。
「何よ・・・これ・・・」
シンジに尋ねた訳でも無く、ただ口から言葉が漏れ出た。
「アスカ!目が覚めたんだね!」
私が何の気も無く漏らした言葉にシンジは随分と大袈裟に反応した。
シンジが私の方に振り返る。その足下の真っ白な砂が舞い上がった。
「あの、その・・・ごめん」「何の事よ」
「苦しかった・・・でしょ?」「?・・・平気よ」
何か喉に鈍痛があったが、特に気にはならなかった。

私は辺りをぐるりと見回した。見慣れた物は何一つとして無い。
ここはどこで、皆はどこに居るのか。何故海が血の様に赤く、砂浜はこんなにも白いのか。遠くに見えるエヴァシリーズ。何故十字架に張り付けられているのか。
「そうだ・・・。アタシは、アイツらに・・・」
徐々に記憶が甦って来た。そう、私はアイツらに負けて・・・死んだはず。
だが、今の私には傷一つない様に思えた。まず右腕の包帯を外してみる。
やはり傷は無かった。次に恐る恐る左目の包帯を外す。
・・・大丈夫だ。ちゃんと見える。
「・・・アンタ、いつからここに居るの?」「多分、アスカと同じ。目が覚めたらアスカが横に居たんだ」
「そう。・・・ミサトは?ネルフは?皆は?」「わかんないけど・・・皆にはもう、会えないと思う・・・」
2662 ◆FPBUMtkkbw :2008/04/27(日) 10:49:16 ID:???
シンジの放った言葉はとても衝撃的だったが、私にも既にその予感はあった。
この世界にはきっと、私とシンジの二人っきりなのだ。
「・・・そう。皆には会えない・・・か。――これからどうするのよ?」「どう・・・しよっか」
そんな不安そうな顔されたって、アタシだってどうしたらいいかわからない。
でも、生き残る術を探すしかない。
「・・・とにかく、何か探しましょ」「あ、うん。そうだね」
私達は赤い海に背を向け足を踏み出した。何かあるという根拠等勿論無く、ただ漠然と歩を進める。
しばらく歩くと真っ白な砂浜が終わり、赤茶色の固めの地面に変わった。
だが、人工物は一向に見当たらない。そもそもここが日本と呼ばれた場所だったのかさえわからない。
ただ、歩き続けた。

足が痛み始め、地面の色がいつしか灰色に変わった頃、遥か遠くにビル群らしき何かが見えた。
「シンジ!あれ!」「うん。・・・何だろう。ビルかな」
「とにかく、あそこまで行くわよ!」
私達は休息を欲するその両足を無理矢理に進める。とにかく、何か人の痕跡を見つけたかったのだろう。

足がもはや本当に棒の様になる程に歩いた。そしてそれを目の当たりにする。
「何なのよ・・・これ」
それは私達が求めた人の痕跡に違いなかったが、もはや瓦礫の山と呼んで差し支えない物だった。
倒壊したビル群。なぎ倒された大量の家屋。ほとんど鉄骨だけになっている建物もある。
「アスカ!あの看板!日本語だよ!」
シンジが指差した先には地面に半分程埋まったボロボロの看板があった。そしてそれは間違いなく私達がよく見てきた物だった。
「じゃあ・・・ここは日本なのね」「うん。それに多分第三新東京市の近くだよ」
2673 ◆FPBUMtkkbw :2008/04/27(日) 10:52:08 ID:???
「何でわかんのよ」「だってほら、向こうにネルフのロゴ入りのお店みたいのもあるし」
私はまたシンジの指差す先を見た。確かにシンジの言う通り、ここは第三新東京市と呼ばれた場所の少なくとも近郊らしい。
その面影はもはや皆無と言ってもいい位だったが。
「・・・じゃあ食料もあるかも知れないわね。行きましょ」「あ、うん」
私達は殺伐とした廃墟に踏み入った。人の気配は勿論無い。
所々にネルフが携わっていたであろう建物はあった。だが、ネルフ本部があったはずのジオフロントや兵装ビル群等はどこにも見当たらない。

「ねえシンジ」「何?」
「一体ここで何があったの?」「・・・僕にもよくわかんないんだ」
シンジは一瞬間を置いて言葉を続ける。
「・・・でも、ここで戦ったんだ。人と。それと、エヴァ達と」「・・・エヴァシリーズね」
「うん。それから・・・サードインパクトが起きたんだ。・・・多分」
シンジの先を歩いていた私は足を止め、振り返る。
「サードインパクトが!?・・・じゃあ何でアタシ達は生きてんのよ?」
「それは・・・僕にもわからないよ。でも、二人だけが生き残ったんだ」
そこまで聞くと、私はまたシンジに背を向け歩き出す。
「・・・ホント、何でアタシ達生きてんのかしらね。エヴァに乗ってたからかしら?」
「そうかもしれないけど、でも弐号機は、その・・・」
シンジが言い辛そうにしているので、私から切り出す。
「そうね。目茶苦茶にやられたもんね」「う、うん」
「そう・・・アタシはあの時、死んだはずよね。・・・アタシ達、本当に生きてるのかしら」「・・・多分」
それからはただ黙々と歩み続けた。原型を留めぬ建造物達の間を彷徨い続ける。
2684 ◆FPBUMtkkbw :2008/04/27(日) 10:54:13 ID:???
「・・・何も無いわね」「・・・うん」
捜し回るのに疲れ果てた私達はついに足を止めた。座るのに適した瓦礫を見つけ、腰を降ろす。
「どうすんのよ。これから」「・・・わかんない」
二人で灰色の世界を眺めた。そこに希望なんてものは微塵も存在しない。
水も食料もない。足の疲れだけが残った。
「ねえシンジ」「何?」
「アタシ達、ここで死ぬのかな」「・・・」
シンジは俯き、ただ呆然と地面を見つめているらしかった。
「・・・寝る場所だけでも探しましょ」「・・・そうだね」
立ち上がる事を拒む両足をなんとか踏み出し、今夜の宿を探す事にする。

私達は屋根と壁がなるべく崩れていない廃墟を見つけ、そこで一晩を明かす事にした。
「ハァ・・・こんな所よりは病院のベッドの方が千倍マシね」「病院!?――あ、いや、何でもないよ」
シンジが何故か取り乱す。私はいちいち問い質すのも面倒だったので気にしない事にした。
何か布団の代わりになりそうな物を探しに建物内を散策する。窓にカーテンがあったのでそれを二人で引き剥がした。
更に奥へと進む。
大きなL字型のソファを見つけ、それをベッド代わりにした。二人で頭を寄せる様に横たわる。
「ところで今って夜なの?」「わかんない。でも、眠いよ・・・」
「そうね。アタシも疲れたわ。・・・明日、朝は来るのかしら」「・・・」
応答しないシンジの様子を窺うと、既に寝息を立てていた。
「・・・バカシンジ」
私も重い瞼を降ろす。一日中歩き回り疲れ果てた私はすぐに深い眠りに落ちた。
2695 ◆FPBUMtkkbw :2008/04/27(日) 10:56:40 ID:???
ジリリリリリリリリリリ!!!

どれ位眠ったのだろうか。私はやかましい目覚まし時計を止め、起き上がり、体を伸ばした。
真っ白な清潔感あふれる部屋。光の差し込む窓に目をやる。
そこには見慣れた青い髪の少女が居た。
「・・・ファースト!?アンタ何やってんのよ!?」「・・・新しい世界はどう?」
ファーストはゆっくりと私の方に向き直るとそれだけ言った。
「新しい・・・世界?」「そう。アナタの為の世界」
「アンタ、何言ってんの?」「――駄目よ。今更逃げる事なんて出来ないわ」
刹那、私の頭に全ての記憶が流れ込む。
「ッ・・・!ハァ・・・ハァ・・・そうだったわね・・・私は・・・」「そうよ。それがアナタの現実」
「ちょっと待って・・・。アンタさっき、アタシの為の世界って言わなかった?」「言ったわ」
ファーストは淡々と言葉を続ける。
以前会った時とは違い、なんだか妙に達観した様子だった。
「どこがアタシの為なのよ!あんな世界の!」「アナタが望んだ事よ」
「アタシが!?あんな世界を!?」「そうよ。碇君と、二人きりの世界」
「な、なんであんな奴と!!」「・・・ここでは嘘はつけないわ」
訳がわからなかった。目の前のあんなに無口だった少女がよく喋る様になったかと思えば、
全てを見透かす様な目で私の理解の範疇を超えた話を淡々と続けているのだ。
そして、ここでは嘘はつけない?じゃあ、私の考えている事は全てファーストに筒抜けだっての・・・?
「ま、まあいいわ。じゃあ世界があんな風になっちゃったのは、アタシがシンジの事を好きだったからってわけ?」「あら、そうだったの」
「ち、ち、違うわよ!!!」「・・・元の世界に戻りたい?」
「も、もちろんよ!・・・戻れるの?」「ええ。でもその世界ではアナタはきっと幸せになれないわ」
私が、幸せになれない?・・・でも今の世界に居たって、ただシンジと死を待つだけじゃないの。
そうよ。シンジと、二人きりで・・・。
「悪くない?」「ウ、ウルサイッ!!」
2706 ◆FPBUMtkkbw :2008/04/27(日) 10:59:15 ID:???
「・・・どうやったら戻れるの?」「簡単よ。命の海に足りないのはアナタだけだもの」
命の海?また訳の分からない事を。
足りないのはアタシだけ?何の事よ。
「アナタも見たでしょ?あの真っ赤な海の事よ」「・・・ア、アンタねえ・・・まあいいわ。じゃあアタシがその海に飛び込めばいいって訳?」
私は冗談っぽく言った。
「そうよ」「え!?そうなの!?」
「正確には溶け込む。そうすればサードインパクトは完遂される」「・・・そしたら、アタシとシンジはどうなるの?」

その答えを聞く前に強い風が吹き、純白のカーテンが大きくなびいた。それが元の位置に戻ると、もうファーストの姿は無かった。
部屋の照明が落ちる。純白の部屋は暗闇に包まれた。


バサッ
私が飛び起きた反動で薄汚れた灰色のカーテンが床に落ちる。
「・・・夢?」
嫌な汗をかいていた。
外は薄暗く、どうやら朝は来てくれなかったらしい。長く陽の光を奪われた為か、周囲は肌寒くなっていた。
「あ、アスカ。起きた?」「シンジ?・・・何よそれ」
シンジは何か缶詰の様な物を開いていた。
「非常食だよ!すぐそこにネルフの地下シェルターがあったんだ。ほら、水もある!」
シンジは満タンのペットボトルを私に差し出しながら言う。
「ありがとう」
私も喉がカラカラだったので、受け取ると一気に半分程まで飲み干した。
そしてシンジに促されるままに缶詰も完食する。
「お腹が空いてるとこんな物でもホントにおいしいわね」「ゴクッ・・・うん」
シンジは床に座り込み、二つ目の缶詰に手を着けていた。少し肌寒くなってきた。
私はソファから立ち上がり、シンジの背後に回り込む。
「うわっ!ア、アスカ?」「・・・アンタも・・・寒いでしょ?」
シンジの背中から腕を回し、抱き締める。その背中は温かく、早くなっていく心臓の鼓動も感じられた。
2717 ◆FPBUMtkkbw :2008/04/27(日) 11:03:23 ID:???
「・・・アンタさ、元の世界に戻りたい?」「え?どういう事?」
「だから、元の世界に戻りたいかって聞いてんのよ」「それは・・・戻りたいけど」
背中からでもシンジが困惑している様子が伝わって来た。
それでも私は続ける。
「そう・・・。じゃあ、最初の海に戻るわよ」「え?ど、どうして?」
私はシンジの腕を掴むと立ち上がる。シンジの左手から缶詰がこぼれ落ち、中身が床に散乱した。
「いいから!行くわよ!」
強引にシンジを引き連れ、私はファーストが命の海と呼んだものを目指す。
どちらに行けばいいのかを見つけるのは案外簡単だった。真っ赤な海が空を赤く染めていたからだ。

行きよりは割りと短く感じられた道中だった。途中でシンジに私が最初の海を目指す理由を説明した。
昨晩見た夢らしきもの。ファーストの言葉の一部。
シンジは黙って聞いていた。そして最後に一つだけ私に尋ねた。
「アスカはどうなるのか」と。
私は何の根拠も無く「大丈夫よ」とだけ答えた。

そして今、私達はまたこの砂浜に帰ってきた。風もなく、波の音だけが響き渡る。
「・・・じゃあ、行って来るわね」
「ま、待って!・・・その前に、言っておかなきゃいけない事があるんだ」
「何よ?」「えっと・・・その・・・ボクは、アスカを殺そうとした」
「ハア!?」「ゴメン!・・・じゃ、済まないよね・・・」
「・・・どうして?」「・・・こんな世界で、生きていける自信が無かったから・・・」
波が打ち寄せ、引いていく。空には相変わらず綺麗な星が瞬いていた。
「それで最初に・・・。・・・で、心中でもしようとしたってわけ?」「う、うん」
「ハァ・・・。ホンットにアンタはバカね」「ゴメン」
「どんくさいし、頼りないし」「ゴメン」
「謝ってばっかり。ホンット情けない」「・・・ゴメン」

「何でアンタみたいなのを好きになっちゃったのかしら」
「え?」
私はシンジに背を向け、真っ赤な海へと歩み出す。
2728 ◆FPBUMtkkbw :2008/04/27(日) 11:08:16 ID:???
足に波が当たった。生温かくて、少し気持ち悪い。
腿の辺りまで海に浸かった。まだファーストが言っていた様な事は起きていない。
遂に腰まで浸かる。まるで冷めたお風呂に入っている様だった。
振り返りたかったけれど、それは出来なかった。・・・泣き顔をシンジに見せたくはなかったから
そして肩まで。ファーストの話が本当だったなら、もう私はいつこの海に溶け込んでしまってもおかしくないだろう。
「アスカ!!」
私の足がピタリと止まる。
「ボクも!ボクもアスカが――!」
「バカシンジ!!」
シンジの言葉を遮り、私は振り返った。最後にその姿をこの目に焼き付ける為に。

「また会えたら、結婚してやってもいいわよ!」

一度だけ手を振ると、一気に頭まで浸かった。瞬間、意識が途絶えた。



・・・目が覚めてまず最初に目に入ったのは、見覚えのある天井。そうだ、ここはネルフの病院だ。
私は少し首を上げ、辺りを見渡す。何も無い、真っ白な部屋だった。
それに、左側の視界が無い。右手で触れてみようとしたが、右腕ごと感覚が無かった。次に左手を伸ばす。
やはり左目には眼帯が付けられているらしかった。右目だけで自分の体を確認する。
たくさんのチューブや訳のわからないコードらしきものが私の体から伸びていた。
私が目を覚ました事に反応したかの様に右手側にある大きな機械がやかましく騒ぎ立てる。
しばらくすると廊下が慌ただしくなり、白衣の男性や女性が入って来た。
その後、私の意識がある事を確認し、何やら色々と質問をしたと思ったら慌ただしく去って行ってしまった。
その人達によれば、私は随分と長い間眠っていたらしく、無理に動いてはいけないということだった。
今のところ動き回りたい気分でもなかったので従う事にする。
部屋をよく見回すと、壁にはカレンダーが掛けられていた。
「2025年!?」そう叫んだはずだったが、声にならなかった。
2739 ◆FPBUMtkkbw :2008/04/27(日) 11:12:24 ID:???
そういえば私は何故こんな所で寝ているのだろう。殆ど何も覚えていない。
シンジ達はどこ?・・・だが体を起こす事も出来ない私にはその存在を確かめる術は無かった。
何も出来ない。私はひたすら横たわっているしかなかった。

それから恐らく三日程が経っただろうか。
「アスカ!目が覚めたんだね!」
どこかで聞いた様なセリフだと思ったが、きっと気のせいだろう。シンジがお見舞いに来たらしい。
未だに殆ど体を動かせない私は首だけを動かしてその姿を見た。
「・・・アンタ、大きくなったわね」「う、うん」
見違える程に成長したシンジに私は驚きを隠せなかった。だが、恐らく中身は変わっていないのだろう。
「ゴメンね、アスカ。・・・ボクがもっと早く助けに行ってれば・・・」「・・・何の事よ」
また何かデジャヴの様なものを感じた。でも、思い出せない。
「そっか。・・・そうだよね」「だから何の事よ」
「エヴァシリーズと戦った時の事、覚えてない?」「・・・エヴァ・・・シリーズ?・・・!」
突然頭の中で何かが繋がった。次々と記憶が甦る。
「そうよ・・・!アタシはアイツらにやられて・・・それから・・・」
「それから奇跡的に弐号機のエントリープラグが見つかって、アスカはここに収容されたんだ」
シンジの話にどこか違和感を感じたが、どうやらそれが真実らしかったのと、
その違和感にあまりに具体性が無かったので疑問を口にする事も出来なかった。
「・・・で、アタシはいつになったら退院出来るのよ」「・・・それは・・・わからない」
「・・・そう。左目は見える様になるの?」「先生は・・・無理だろう、って」
「・・・そう。右腕はどうなってるの?」「・・・アスカが回収された時には、もう・・・」
「やっぱり・・・無いのね。・・・他には?」「脊髄を損傷したらしくて・・・下半身が・・・」
「そうね。・・・感覚、無いもん」「で、でも先生は生きてるだけでも奇跡だった、って・・・」
27410 ◆FPBUMtkkbw :2008/04/27(日) 11:26:20 ID:???
私の頭の中に、いつ聞いたかもわからないファーストの声が響き渡った。
「アナタはきっと幸せになれない」と。
「・・・そうね。全くだわ」「アスカ?」
何でもない、とだけシンジに告げると私は右目を閉じた。その右目からは、涙が止まらなかった。
シンジがそっと拭いてくれたが、正直疎ましく思えた。私は、絶望していた。

「で、アンタは何しに来たのよ」「謝りたくて・・・それと・・・」
いつまでも歯切れの悪い奴だと思ったが、シンジが言葉を続けるのを待つ事にする。
「・・・あの時の約束、覚えてる?」「あの時?」
「赤い海の海岸でした、あの約束」「赤い・・・海」
何か、思い出せそうな気がする。
「そうだよ。真っ白な砂浜だよ」「・・・白い・・・砂浜!」
瞬間、全てを思い出した。
白い砂浜。灰色の廃墟。純白の部屋。血の様に真っ赤な海。
・・・そして、最後に言ったあの言葉。
「・・・また会えたね。アスカ」「う、うん・・・」

「・・・結婚しよう」

シンジがどこからか指輪を取り出し、私に示した。
無意識に大粒の涙が右目から零れ落ちる。
「・・・ア、アタシ、もう歩けないのよ?」「うん」
「・・・色々、迷惑掛けるわよ?」「うん」


「・・・ありがとう」
私はシンジに左手の薬指を差し出した。



終劇
275名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/27(日) 11:31:56 ID:???

悲しいねこりゃ…
276霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 12:30:51 ID:???
>>262

御殿場の街をブラブラと歩きながら僕はお気に入りのラッキーストライクを吹かす。マナが携帯でどこかへ掛けていたがやがて
渋い顔をして携帯を畳んだ。
「あーもう、綾波さんも出ないしぃ〜暇だなあ」
ねえシンジ、なんか面白いことない?家で遊ぶ?
「だめ、今夜の体力がもたなくなるって。なんかドミニクが友達あつめてパーティーやるっていうからさ」
「それほんと?ちっくしょこの羨ましい奴」
基地の兵隊さん。
たまに、学校で彼らとトラブった女子の話しを聞くけれど僕にはあんまり意味ないな。生活指導のプリントをいつも苦笑いしながら
読んでるよ。マナも呼べば喜ぶだろうか?ウィル君とか。最近もまた女の子にふられたらしくて、リリィさんの店で飲んだくれて泣いてた。
そのたびに僕が慰めてやるわけだけれど、なんか、変な趣味にはまったりしないだろうな。
ムサシとケイタは第壱中に入り浸ってる。アスカとかいう赤髪の女の子によく構ってやってるみたい。下心丸出しだぞ、特にケイタ。
第壱中か、そういえば転校していった山岸は元気でやってるんだろうか。もしかしてそっちが目当てだったりしてな。
二股は上手くやらないとだぜ、ムサシ。いや待て三股か?僕も含めて。
含み笑いを漏らすとマナが不思議そうな顔で覗き込んできた。
いやなんでもないよ。
277霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 12:32:53 ID:???
「あっ!ちょっシンジ見てあれ!あれ!ああ〜」
「なんだよ」
マナが僕のシャツを引っ張って飛び跳ねる。彼女が指差す向こうに、黒い色をした古いスポーツカーが走り去っていくところだった。
太いマフラーからうるさい排気音を垂れ流してる。現代ではすっかり珍しくなったガソリンエンジン車だ。
「Zだ!S130!くぅ〜、シッブ〜い」
「ほんと好きだなあ」
「もう40年近くも前の車なのよね!がんばるなあ〜いいなあ〜」
キラキラと目を輝かせてる。この暴走族予備軍め。
僕もそんなに嫌いではないけれど。Zか、アメリカ人なら親が若い頃に流行った車だな。今度聞いてみようか。
マナの肩に寄りかかり、腰に手を回す。
何よぉシンジ?
「いつも僕のこと言うけどさ、マナだって戦自の基地によく通ってるじゃないか?あんま人のこと言えないぜ」
あれ、あれァケイタがさぁ。幼年学校で生徒募集してるっていうから、一緒に行かないかってよ。ケイタんちお父さんが戦自の
偉いさんじゃん?エリートコース予約済みだそうよぉ〜。
「で、そのついでに男を漁ると」
もう!
背中を叩かれて咳き込む。ああ、僕も不良な姉貴を持ったおかげでこんなに染められちゃったよ。
わざとらしく声に出して笑い出す。マナも一緒になって笑う。
馬鹿だよな僕たち!だからどうした。
278霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 12:34:33 ID:???
アタシはヒカリとムサシと一緒に学校帰りの道を歩いてた。
汚れて泥だらけになった制服、これ帰ったらまた言われるよ。ううん、なんて説明したらいいの。学校で男の子に襲われ
ましたって…いえるわけ…。
隣のムサシを見ると、綾波にどつかれた顔にすこし血がにじんでる。大丈夫なのかな。
友達と遊んでてこけたとでも言っとく?
「んじゃ俺ぁこの辺でな。お前らもマジで気ぃつけろよ、なんたって大事なのぁコレだかんな」
そう言ってムサシは腕を立ててみせる。大事なのは腕っぷしってそんな。
風になびく髪をそっと撫でる。
このストレートヘアーも、小さい頃から大事にしてきたけれど、なんか最近荒れてきてるみたい。エヴァの訓練も大変だし、学校じゃ
気が休まる時ないし。
こんなふうに安心して気を許せる友達といる時だけよ、アタシが心を休められるのは。
そう、…友達、友達だよね。
いつまでも子どもじゃない。
小学生だったのはもう昔のこと。
今はもう立派な大人へ向かって歩いていく時期だから。
279霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 12:35:59 ID:???
反対側の歩道を走っていくムサシの向こうに、第壱中の制服を着た少女の姿が見える。
誰だろう?
黒いロングヘアー。ねえ。誰なのよ。
「あ…C組の」
そういえば、昼休みにヒカリのところへ行くとたまに見かけた。最近転校してきたらしい。たしかマユミとかいった。御殿場中から
来たって言ってたけれど。
そゆこと、なの?
「あれ、マユミちゃんじゃない?あら…」
口癖みたいにフケツ、とヒカリが漏らす。
口癖だってわかってても胸に刺さる。
同じ御殿場中ってことは、知り合いだとしても不思議じゃないよね。
アタシは、まだ知り合ったばかりでなんにもない。
振り返らない。忘れようよ、こんなの。
アタシはひとりでやれる…ううん、ひとりでやらなきゃならないから。
スカートのポケットに手を突っ込み、道端の石ころをけとばす。
石ころは軽い音をたてて車道に転がっていって、走ってきた車にひかれた。
280霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 12:37:22 ID:???
家に帰ろうかどうか迷っていたら、アタシを探していたらしいケイタが夜の遊びに行こうと誘ってきた。今夜、シンジの友達が
パーティーをひらくらしい。アタシは促されるままケイタについてきてしまった。御殿場に着いて、シンジたちと落ち合うまでに
すっかり日は暮れてしまっていた。
家のみんなの心配する顔が頭の中から離れなくて不安だったけど、シンジの顔を見たら落ち着いた。
マナも遊び慣れてそうなふうに見える。
「なによぉケイタったら、アスカつれてきたの?やるねえ兄ちゃん」
マナにからかわれてもケイタは照れるばかりだ。
「ムサシはどうした?」
「さあ、どこいったんだか」
「まーまー来ない奴ぁしゃーないじゃん?それよりシンジ、はやく行こうよ〜」
マナはシンジの肩を押して歩かせる。アタシは一番後ろをついていった。
通りをいくつか越え、やがて長く高い鉄柵が見えてくる。シンジは迷いもせずその一角に入っていった。明らかに町並みの
空気が変わった。歩いてるのは外国人ばかり、それも…
「ね、ねえケイタ、ここって…」
「ん?国連軍御殿場基地だよ、戦自と隣接してるんだ」
「そ、そうじゃなくって」
離陸していく戦闘機の轟音がアタシの声をかき消した。
281霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 12:38:46 ID:???
「あっあのマナとかはよく来るの?こうゆうとこ」
思い切って呼びかける。マナはのんきそうに振り向いて、そうよ〜と事もなげに言った。
シンジが携帯を取り出して電話をかける。
「Hello. Oh, Jack! How are you tonight? Ok, ok, I will show you a newcomer. Look forward to cute girl. We will arrive soon!」
慣れた英語遣いにアタシは思わず面食らった。そうよね、こういう場所で遊ぶんだから…
やがて着いた兵員宿舎にはたくさんの国連軍兵たちが集まっていた。アタシたちが入るとみんなが歓声をあげて、アタシはとっさに
マナの後ろに隠れてしまった。
シンジはにこやかにみんなに挨拶している。
さあみんな飲んで飲んでとケイタがグラスを配る。アタシも受け取ったけどそれは強い酒の匂いがして頭がくらくらした。
怖がるなよ、とシンジが一気に呷る。アタシも恐る恐る口をつける。唇が痛くなってグラスを放すと兵士のひとりがどうしたんだい
具合でも悪いのか?と聞いてきた。
「Ya, She is a baby yet. This cocktail is too strong to her.」
「なっなに言ってるのマナったらっ」
「無理すんなよ飲まねーうちから赤くなっちまって」
みんながはやし立てて、アタシは思い切って半分くらいをいっき飲みした。
たまらず足元がふらついて、アタシは近くのソファに座ってたラテン系の男の膝の上に倒れ込んだ。
抱きかかえられて、アタシは身体から力が抜けてしまう。シンジが笑って見ててくれるから…
282名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/27(日) 12:59:23 ID:???
>>265-274
GJ!カンドーした!
283霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 16:20:29 ID:???
>>281

若くてちょっと優男風の金髪の兵士が気を利かせてくれて、アタシは薄いフルーツカクテルから次第に喉を慣らしていった。
とても浮ついた気分になって、抱っこされたり触られたりするのも気にならない。
マナは何人もの男にキスをあげて、制服の胸元はもう全開だ。アタシよりずっとおっきなおっぱい。
アタシはぺったんこ…。
シンジがこっちに来いとアタシを手招きした。アタシはぴょこんと男の膝から床に降りる。
「Dom! Hey, come here!You have nice coke? Let her play!」
突然マナが大声をあげて、見ると太った黒人が薬みたいな小瓶を持ってこっちに来るところだった。マナはアタシの頭をぽんぽんと
はたいてケラケラ笑う。アタシはそんなに子どもじゃないもん。
ドムと呼ばれた黒人はマナに白い錠剤をあげて、彼女はひょいとそれを口に入れて酒で飲んだ。
シンジも苦笑いしながら受け取る。
「Hey, girl. お嬢ちゃん、なまえは?」
「えっ、あ、アタシ?」
「かわいいね、染めたの?」
片言の日本語でドムはアタシに話しかける。この赤髪、可愛いって言ってくれるの?
「さ、Thanks... えっと…ま、My name is Asuka. My hair is not be color. Natural.」
「Oh, really? Are you American?」
「Ah... No, I'm Germany. I born in States. When I 4, I moved to Japan...」
ドムはそうかそうかとにっこり笑って、アタシの手に例の錠剤を握らせた。これって…
284霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 16:22:36 ID:???
突然黄色い声が上がった。
さっきの金髪の男にマナが抱きついてディープキスをしてる。スカートの中も見えて、や、やだ…。
アタシが惚けて二人の乳繰り合いを見てるとシンジが後ろからアタシを抱き上げた。
あったかい…。アタシもなんだか腰の奥がくすぐったいよ。
シンジはしょうがねえなウィルのやつも、と小声で言った。
「ね、ねえシンジ…アタシあしたシンクロテストが」
「ん、なに?」
「あ、そっか…え、えっとNERVの仕事があって、えーと仕事っていうのは…」
エヴァのことなんてしゃべれないし言っても信じらんないだろうし…
「大丈夫だよなんならうちに泊まる?学校なんて気にすることないって」
シンジも酔ってる。アタシも頭と体がふわふわして、どうでもいいやって気になった。
シンジのお義母さんもそんなこと気にしないみたいだし。
ママは…?
酔いがさめてきた?
こんなことして、ママはどう思うの?
子どもなのにお酒のんで、男の人たちとエッチな遊びして、…。
マナはソファに寝転がってやらしい声を漏らしてる。アタシもシンジに…おっぱい…。
アタシはドムからもらった薬を、マナと同じように酒で胃の中へ流し込んだ。シンジが濡れた口のまわりをキスで拭ってくれる。
もう後戻りできないよね。アタシがこの身を守るためにはこうやって、この人たちの仲間にはいらなきゃ…
285霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 16:24:01 ID:???
ものすごく頭がぐらぐらする。シンクロテストでプラグ深度を下げていく時にも似てる感覚。
目に入るもの、体に触れるものすべてがまるで異次元のよう。
シンジがアタシを抱きしめてるから飛んでいかない。
誰かがアタシを舐めてる…漏れそうだよお。
「アスカ、まだなんだ?」
えっなんのことシンジ?
頬を撫でるシンジの指に夢中で吸い付く。唇がぐにゃぐにゃと歪んで…ああ、ケイタ?顔がピノキオみたいに…
みんなの姿のまわりに光のもやもやが見える。これがATフィールド?
仰いだアタシの腕が…枯れ木になってる…
部屋のあちこちから光の球が出てくる。マナがゆらりと立ち上がる。アンタにも見えるの?
「あらーすっかり仲良くなってぇー」
マナの声もキンキンとハーモニクスが激しく振れる。
ねぇアスカぁ、私おなか減ったからぁ、冷蔵庫からピザもってきて?
え、ピザ?アタシはおなかへってないけどひとりでたべるの?ふとるよ?
「いいよマナ僕が行ってくる、オーブンであっためなきゃなんないだろ」
シンジがアタシを離してキッチンへ行こうとする。アタシは床に転がり落ちた。
あれれ床がぬれてるよ?マナおもらししたの?なんだかねばねばするよ?
「マナ?」
「シンジぃ…私は“アスカに”言ってんのよ…?」
寒気がした。
ドスの利いた声に一瞬でトリップから引き戻される。
286名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/27(日) 16:24:15 ID:???
なんで自サイトでやれんかね。そんなに目立ちたいのかなあ。
287霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 16:25:20 ID:???
意識は醒めても、クスリの回った体は自由に動かない。
思い切り喉元を持ち上げられる。息が詰まる。マナが開ききった瞳孔でアタシを睨んでる。
これが…人間の力なの?喉が握りつぶされる…!
「あぁっ、アスカ!あんたイッコ上のパシリもできねぇくれー偉くなったっての!ちょっとムサシに気に入られてっからって
チョーシくれてっとブチ殺すわよ、聞いてんのっ!」
大声を聞いてみんなも異常事態に気付く。
「Mana! Be cool down, release her!」
「落ち着け、な、マナ!落ち着けって!」
締め上げられたまま、つま先が床を離れる。
シンジが必死でマナの腕をゆすってる。アタシはどうすることもできない…
やっと体が自由になったと思ったら、アタシはさっきマナがエッチしてたソファにうずくまってた。その相手の金髪男…
ウィル、がタオルでアタシの顔を拭いてる。マナは向こうの壁にもたれてシンジに宥められてる。
「Asuka... Are you ok?」
「Yes... All right, don't worry...」
アタシはもう大丈夫だと言ってタオルを受け取った。首を絞められて泡を吹くなんて…ほんとにあるんだ。
たしかに今は成長期とはいえ、ひとつしか歳の違わないマナがあんなに、体格も腕力もあるなんて…アタシは綾波のことを
思い出して、無性に悔しくなった。アタシだって大きくなればもっと強くなれるのに…!
マナはふてくされたまま出て行った。シンジは気にすることない、どうせ朝になったら忘れてる、と言った。
アタシはドムから薬をピルケースいっぱいに貰って、その足でNERV本部に行って仮眠室で休んだ。
今日はこのままシンクロテストに臨む。
288霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 16:32:22 ID:???
ようやくプロットの半分くらいー

現状ネット環境がないのでうpはできないですー
投下でなんとかー
289名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/27(日) 20:00:03 ID:???
よく見たら愛以外にも投下あったんだね

乙。悲しいハッピーエンドだ
290霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 22:28:12 ID:???
>>287

「プラグ固定、ハーモニクス正常位置。双方向回線開きます」
いつものように伊吹二尉がオペレートする。
そう、いつものように…神経接続。インターフェースヘッドセットが帯電するかすかな感覚をつかむ。今アタシの脳神経にはかつてない
ブーストが掛かってる。コクピット前面に投影されたインストゥルメントパネルにはいくつものメーターが輝き、アタシの疼きを
これ以上ないくらいに表現してる。
こんなチンケな目盛りの数字に一喜一憂しなけりゃいけないなんて、馬鹿らしいと思ってた。だけど今ならわかる。限界に挑戦する
人間のあくなき本能ってやつがね。
惣流アスカラングレー…その力を解き放て!
「リミッター解除。アイドリングからレーシングへ。エヴァ零号機、エヴァ弐号機、テストモード起動。テストプログラムスタート」
「レイ、アスカ。集中して、いつも通りにね」
赤木博士の言葉を最後まで聞かないうちにアタシの意識は弐号機へ向かってダウントリム最大で急速潜行していった。
ブリッジからの声がはっきりとドップラー偏移する。目を閉じて…瞼の裏の光が赤方偏移する。
何てこと…これがエヴァの本当の力。乗ってる人間の脳の働きを、ここまで意のままに操れるなんて。今までアタシは弐号機の
本当の力の、ほんの3割も引き出せてなかったんだ。
加速する。弐号機コアのパルスが幾重もの光の波動になって見える。そう、波動の次元をアタシの精神は超える!
浮つく体がまさにLCLに溶けていくみたい…リツコが組んだシンクロテストプログラムとやら、今のアタシの感覚からはどうしようもなく
チャチでいかにも機械的に見える。生演奏には、エヴァの奏でる音楽にはそれじゃあノれない…さあ、地獄の舞踏会へようこそ…!
291霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 22:30:15 ID:???
…気付いた時にはLCLは排水され、弐号機との接続は切れていた。
ゆっくりと深呼吸する。唇のしびれにシンクロの余韻が残ってる。
綾波がプラグのハッチに寄りかかり、腕組みをして不敵に笑っていた。
「何よ…テスト、もう終わったんでしょ?」
「どうしたの今日は?やけに気合い入ってたじゃない。赤木博士たちびっくりしてたわよ?」
「別に…結果、どうだったの?」
「あなたの?シンクロ率では瞬間最大265%。ハーモニクスは1.7まで掛かったわ。テストシーケンスはスコア98.5で完走。飛ばしすぎよ
アスカ、もう少しでコアが圧潰するところだったわ」
そう言って綾波はハッチに背をもたれたまま、クククッと笑った。そのいやな笑い方は司令譲り?ともかく…
「…トンでもない数字が出たものね」
「まあ、私の零号機ならハーモニクスは2.0まで掛かるけどね」
よっこいしょ、と呟いてプラグを出たアタシの肩をつかんで、綾波は耳打ちした。
「私の口からは博士には言わないけど…ドラッグシンクロには手を出さない方が賢明よ。今の弐号機コアはまだ出力が低いからいい
けれど…じきに載る実戦仕様エンジンで同じことやったら間違いなく脳細胞が焼き切れるわよ」
「…そりゃまた、まるで経験者みたいな言い方ね?」
綾波は何も言わず流し目をくれる。
「ご忠告感謝しとくわ」
ともかく体を洗って水分補給だ。アンビリカルブリッジを歩きながら、建造途中で素体むき出しにセンサーアイのみの弐号機を見やる。
ハーモニクス2.0?プロトタイプのくせにエンジンに無理をかけて…制式型のアンタなら軽くひねれるスコアでしょ?
「保護者気取りが…!」
アタシがシャワーを浴びてる間、綾波はケイジから戻ってこなかった。
292霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 22:31:35 ID:???
実験管制室に戻ったアタシは有無をいわさず病院に放り込まれ、精密検査をされた。脳圧と脳脊髄液温度がヤバいことになっていたらしい。
ようやく解放されて本部を出た時には、もうすっかり真っ暗になっていた。
綾波はご苦労にも駅のベンチで待っていた。アタシの姿を見るや、絞られたようね?とまた不敵に笑う。
「まあねー。薬の残りも没収されたし」
リツコは凄い形相で、こんなものどこでと詰問してきた。アタシは友達から貰ったと正直に答えた。そうでしょ…あの黒人はシンジの友達。
だったらアタシの友達でもあるでしょ…
綾波の住んでるマンションはアタシの家とは正反対の方向だ。駅で別れてひとりになってから、昨夜の狂騒を振り返る。
何故アタシのガードが、あんな遊びに誘われたアタシを見過ごしたか…理由は分かってる。
「パパの馬鹿…」
いや、パパなんかじゃない。あの男がアタシの父親だなんて…ママの死に目にも来なかったくせに…!
「どいつもこいつも保護者気取りはうんざりなのよ…!」
シンジ…。アンタは…こんなしがらみに悩んだり、しないの…?
アンタはサードチルドレンに選ばれた…いずれ本部に呼ばれるはず。その時…アンタは、碇司令…自分の父親に、どう向き合うつもりなの…?
「…田宮さん?」
サングラスにスーツ、純金の装飾に身を包んだ男がアタシに礼する。小さい頃と違ってすっかり他人行儀だ。そう…あの家にとって
アタシは、次期惣流家当主、蒼龍会総会長に成ることを運命づけられているひとり娘なんだから…
「お嬢様、お迎えに上がりました。車の用意はできております。本日は綾波様共々お疲れ様でした」
黒塗りのベンツが静かに跪く。
「パパは…?」
「は、旦那様は日重共本社での式典に出席し…」
「わかったわ。もういい…」
「は、失礼しました」
293霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 22:32:59 ID:???
「…ちょっとここで止めて。買い物してくるわ」
アタシはコンビニの前で車を止めた。
入り口の棚から適当な新聞を取りレジに放り出す。お金を払おうと小銭入れを取り出した指が震えていることに気がついた。
薬のせい…わかってる。このキズは取り返しがつかない…。
「あれーキミ今帰り?塾でお勉強?気分転換にオレらと…」
高校生?アタシはわざと車のドアに手をかけてから振り返った。黒塗りのいかにもな車を見て軟派そうな高校生たちはそそくさといなくなった。
馬鹿…。
シンジに逢いたい。でも…今夜は無理だよね。
それに…マナ。いくら家族っていったって、血のつながってない義姉弟…アタシが割り込んでいけば、昨夜みたいなぶつかり合いは
避けられない。アタシは…マナに負けたくない。強い生き物に成る…。
だから…弐号機。アンタは正真正銘、アタシ自身の力だよね…
そうよね…ママ…

授業をさぼってひとりで来る、何度目かの屋上。空はどこまでも澄んでいる。
「屋上にて孤独に浸る…まさにヒーローの図ね」
「綾波…」
いつものピースの黄色い紙箱を手に綾波はアタシの隣に来た。
アタシはパーラメントをくわえなおし、綾波にライターの火を差し出した。二人揃ってフェンスにもたれ、煙を吐き出す。
「どういう風の吹き回しかしら?」
「別に…アンタの方が先輩だし、年上だし」
綾波はひざ下いっぱいに下げた長丈のスカートを揺すって笑った。何よ、そんなにおかしい?
294霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 22:34:15 ID:???
戦闘機が上空を旋回してる。御殿場基地の訓練かな。
アタシを介抱してくれた金髪の国連軍兵は戦闘機パイロットだって。彼もあんなふうに飛ぶのね。
アタシも来年の今頃は…完成した弐号機に乗って戦ってる。
だからなによりも…強くならなくちゃいけない。
負けてられないのよ…こんなとこで…!
「そうそう」
やおら身体を起こすと綾波が言った。
「今日正式に葛城一尉が作戦部長に就任するそうよ」
「ミサトが?」
「ええ。まあ、しばらくはドイツ支部での研修だけど」
「てことは、加持先輩といっしょってワケね」
「でしょうね」
アタシは煙草を踏んで火を消すと階段へ向かった。綾波がアタシの背中に声をかける。
「碇――シンジくんだっけ?彼と次遊ぶ時は私も誘ってくれる?」
「…そのうちにね」
保護者なんかいらない!パパもミサトも、リツコも綾波も…!
階段を降りきったところでアタシはまた囲まれてしまった。
絆創膏だらけのドレッド頭が手下を連れ、鼻ピアスを鳴らす。
「は…支倉君…」
「おーおーアスカちゃあん…オレの名前覚えてくれてたんだねえ…嬉しいぜ?あぁん…」
「今度ぁ綾波も助けに来てくれねえぜ?だからオレらとたーっぷり遊ぼうなあ」
にじり寄られる。ピアスを開けた右耳が…痛い。
295霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/27(日) 22:56:35 ID:???
執筆に集中しすぎてハナヂがでました。

枕が血まみれーすこしひとやすみします



ちにゃ!(;´∀`)・:'、
296名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/28(月) 08:29:11 ID:???
>>265-274
バタフライエフェクトっぽいなあと思った。面白かったよ
297名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/28(月) 18:30:52 ID:???
>>265-274
良かったよ〜
298霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:24:38 ID:???
>>294

わたしがまたいつものように図書室の当番をしていると、ムサシさんが遊びに来ました。
これで授業をサボるのも何度目でしょうか…
確かに、わたしは学校に自分の居場所を見つけられなかったのは事実です。でもわたしには勇気…逃げ出す、いいえ、自分の足で
居場所を捜しに行く勇気がなかったのです。だからいつしか…わたしは彼がこうやってわたしを誘いに来ることを楽しみにしていました。
それはきっとズルいことです。だからわたしは…今日も、彼との逢瀬を味わい尽くします。
『なんだぁガキが?生意気に昼間っから女つれまわしてんじゃねェゾ?』
わたしを守る為に…
『テメー知ってんだかんな?御殿場小のムサシっていやあ米兵のレイプで生まれたガキだってなあ』
彼は…
『“日本人じゃねえ”くせにこの国の土を踏み荒らしてんじゃねぇってンだよ!』
自分の誇りを賭けて…
「ムサシさん、わたしに構わず逃げてください!警察を呼びますよ!」
「マユミ…!てめェらッ、マユミに指一本でも触れてみろッ!ブッ殺すぞ!」
自衛官くずれのチンピラ集団が彼を捕まえて…わたしは何も出来ずに見ているしかありませんでした…
「はっ!警察でも機動隊でも呼んでみろってんだ、結局ブチ込まれんのはテメェだぞ?」
「ムサシ=リー=ストラスバーグ、てめぇは何を持ってんだ?日本国籍か?永住権か?てめぇは何も持たずに好き勝手してんだよッ!」
「うるせえッ!オフクロは、俺のオフクロはなあッッ!…!」
彼の叫びがどこまでも…この無機質で無慈悲な街、第3新東京市にこだましました…
299霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:26:03 ID:???
目の前が真っ暗で…揺れてる。キズだらけの木板敷きの床に赤い血が流れて広がっていく…
これ、アタシの血…?
「くはは、どうだよアスカちゃん?“初めて”のご感想はよォ…」
初めて…?
「う…ああ…」
んー?何かなあ?聞こえねーなあ?
「き…キョウジくん…」
血溜まりの中、男二人に両腕をつかまれて、破られた股の間から血と白濁を流して…アタシは正気を失ってる。
やっと口に出した名前に、アタシを囲む男たちが下品に笑い転げる。
「おいおいぃ…ずいぶんと馴れ馴れしいじゃねェかよ?あん?」
「せっかくオレらが“護って”差し上げようとしてんのによォ…?」
うなだれていたあごを掴んで顔を持ち上げられ、乱暴に唇を吸われる。
甘ったるい…トルエン?
「うう…んっ」
痛い…あそこが裂けちゃうよう…
「ああぁ…」
ほらほら、もっぺんオレを呼んでみな?
そしたら可愛がってやんぜ、なあ?
「は…はい…キョウジ…さん…」
ハーイよっくできましたあ!男たちがいっせいに手をたたいてはやし立てる。
アタシは動けない…体から魂が逃げ出しちゃった…
300霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:27:16 ID:???
自分の心臓の音が聞こえない…アタシは生きてるの?
『死ぬのは嫌…』
口々にアタシの肉体を指差して笑う男たち…
『死ぬのは嫌…』
これは誰のカラダなの…?
『今動かなきゃ、みんな死んじゃうんだ!』
アタシが…?
『そんなのもう嫌なんだよ…!』
だってアタシは…
『“一緒”に、“死んで”ちょうだい』
“強い生き物”に成る…!
『死ぬのは嫌…ッッ!』
「…ッァァぁぁああああああ!!!」
アタシの心臓が、再び強く…どんな人間よりも強く、動き出した。
視界が跳ねる。絶叫にうろたえた男の顔面めがけて腕を伸ばす。掴む!肉に指がめり込むステキな感触!
「ぐう、うあああ!」
「ウフフフフッ…ハア!」
アタシはキョウジの顔面を握り締めたまま、右腕を掃除用具入れのロッカーにブチ込んだ。床用洗剤の缶が破裂して、緑色の粘液が
飛び散る。強アルカリの液に皮膚が溶けるステキな感触…!
301霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:28:35 ID:???
突然の事態に男たちはみんな腰が引けて動けない。ふん…所詮中イチのナマガキってことね…
アタシはゆっくりと右腕を引き上げる。
「ひ…ひいぃっ」
「あぁん…?なァにやってんのよキョウジぃ…?自慢のドレッドがひでぇザマよ…?」
どろりと、顔に洗剤が流れ落ちる。
「うう…、ぎ、ぎゃあああああああ!」
洗剤が目に入ったキョウジは顔を押さえてのたうち回る。アタシはロッカーの奥をかき回し、床拭きワックスの缶を転がした。
シンナーの甘い香りが漂う。アタシはワックスを無造作に手につかみ、転げ回るキョウジの髪に塗り込んだ。
「ほらぁ…アタシがちゃあんとセットしてあげるから…ね?」
しゃがみ込んだアタシの背後から一人の手下が殴りかかってきた。
「う、うわああああ!」
アタシは目の前にあった柄だけのモップを振り回した。骨の部分が額をかち割る。手下の男は人形みたいに血を噴いて転がった。
最大限の笑顔のつもりでアタシは皆を見回す。誰もが恐怖におののいて…たまらなく愉快だ。
ようやく落ち着いて目を押さえて震えているキョウジを後目に、アタシもワックスをつけた手で自分の髪を掴んだ。
前髪を固めて散らして…後れ毛を持ち上げ、NERV本部からコッソリ持ってきたヘッドセットでトップに留める。いつまでもガキの
ヘアースタイルじゃあつまんないでしょうが…アルカリで髪がちぢれてウェーブがかかる。もう最高。
「そうそう…アンタら、アタシの“友達”よねぇ…みぃんな、アタシの“男”にしてあげるわ…ククク…ねぇ、キョウジぃ?」
「は、はい…惣流さん…」
「なぁにぃ…そんな気ぃ遣うことねェのよ…?アタシの“初めて”あげたんだからぁ…タメでいいのよ…?」
振り返り、微笑む。アタシはこんな奴らにビビっていた?ふん。今は違う…
そう…アタシは…強い生き物だ…ッッ!
302霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:29:50 ID:???
アタシたちはそのまま学校を出て、街に繰り出した。風がいつになく気持ちいい。
ゾロゾロと金魚のクソみたいについてくる男たち…なんて愛らしいの。アタシは愛に目覚めちゃったのね。
アタシの可愛い子どもたち!
「あっと、あ、アスカなのか?」
間抜けな声に振り返る。
ケイタ…そんな慌ててどうしたの?
「いや、ムサシ見なかったかなって…ん、んなことよりどうしちまったんだよその頭…」
ああ?イメチェンって奴よ。言うじゃん?日本人はカッコからって。見てくれがショボかったらナメられんゾぉ?
「見てくれってったって…」
「アスカさぁん!こ、小岩井コーヒー買ってきましたあ!」
お使いに走らせたキョウジが帰ってきた。しょうがないわね、ウチに連れていって手当てしてやんなきゃね。
アタシはコーヒー牛乳の紙パックを受け取り、再びケイタを見据える。
「失せな、スケベ野郎」
呆気にとられたケイタを捨て置いてアタシは歩き出す。
アスカさん誰っすかあいつ!
知らないわ…構うことない。
そーそーアンタ名前なんていったっけ?ん?テルオ?ヨシタカ?ふんふん、アンタらケー番もってんの?登録しとくわ。ナぁニ持ってない?
しょーがないわねアタシが買ってやんわよ。どーせ経費で落とすから。
アタシの目の前には新しい世界が広がっている。もうアタシは綾波に守ってもらう必要も、マナに遠慮する必要も無い!
303霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:31:06 ID:???
マナは朝から義母さんと里帰りだかで九州の実家に行ってる。
叔父さんも相変わらずパチスロばっかりで、僕は無駄に広いだけの家に独りきりだ。
この家だってどうせ父さんから渡されてる僕の養育費を勝手に使って建てたんだろ。いい気なもんだ。
綾波の部屋で昼寝していたら携帯が鳴った。
「なんだ?マナもしょうがないな…ん?公衆電話…?」
一瞬相手を邪推したが、ともかく出てみる。
「はい?」
『あっあのもしもし、シンジさんですか!?』
「そうだけど…、その声は山岸か?」
『は、はい!シンジさん、大変なんです…ムサシさんが、ムサシさんが…!』
「…なんだって!?」
山岸の声の調子は明らかに異常だ。ムサシの身に何かが…?
「山岸、落ち着いて話せ、一体どうなってる?」
『あっあの、戦自の人たちがムサシさんを捕まえて、それで、それで…!』
「戦自が?」
『わたしが悪いんです…わたしが自転車を倒してしまって、車がいるなんて思わなくて…!』
「ともかく状況だ、どこかに連れて行かれたのか?場所はわかるか?」
ムサシ…!アイツは確かに自衛官連中にはよく思われてないが、まさか本当に…!
『はっはい、乙女峠のふもとの造成地に…』
「わかった、僕が助けに行く!山岸は警察に…いや、今から言う番号に掛けて事情を話してくれ!碇シンジからって言えばわかるから」
『はい、わかりました…あのっ、シンジさん!』
「大丈夫だよ…僕はそう簡単にはやられない」
304霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:32:19 ID:???
「くそッ…!」
マンションを飛び出すと、真夏の日差しが僕をあぶった。
こんな時にマナがいれば…!ともかく仕方がない。僕一人でやるしかない。
建設中の高速道路の下をくぐると国道138号線だ。乙女峠に行くにはこれがいちばん早い。
「シンジ!ナぁニ走ってんのよ…!?」
「!?」
振り返る。
「アスカなのか…?」
「クククッ、何よシンジ?ヤバそーなツラしちゃって…」
コーヒー牛乳の紙パックを手にアスカは微笑みかける。雰囲気があからさまに違う…それに何だ、こんなに男を連れて…
「…君には関係ないよ。僕は今急いでるんだ」
そう言って踵を返そうとした時、それまで余裕たっぷりだったアスカの表情が途端に以前の弱々しいものになった。
「…シンジ!」
僕の前に割り込んで、眉をハの字にして僕の肩を揺さぶる。
「どこ行くの!?アタシも連れてってよ!見てよシンジ、アタシはもう前とは違うのよ!?もうマナなんかに脅えたりしないわ!」
違うって…相手は戦自だぞ!?アスカ、君なんかが敵う相手じゃない…!
「ケンカに行くんだったら…そうよ!コイツらも、アタシの命令なら何でもやるわ!殺しだって、盗みだって…!そうよね、キョウジ!?」
「あ…、う、うんアスカさん」
アスカは後ろの男たちを煽る。君の手下か何かか?でも…
「ねえシンジ!アタシたち友達でしょ!?“死ぬまで一緒”だって、約束したでしょ…!?」
305霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:33:46 ID:???
眩しい太陽の光が十字架を投影する。アタシたちのお揃いのピアス…ママの形見の紅い宝石…
アタシは右耳に、シンジは左耳に、それぞれ分け合ってつけた…アタシたちはふたりでひとつでしょ!?
「だからっ…シンジ!置いてかないで!だからアタシを見てようっ…!」
涙なんか見せない…アタシはシンジのことが好きなの…!
シンジの黒く澄んだ瞳。
今は誰を映してるの…?
「…うるさい」
ムサシ…なの?
「君にわかるか!これは僕のケンカだ!僕がカタをつける!」
「シンジ…!」
「ついてくるな!」
伸ばした手が振り払われる。シンジ…どうして…
「自分の大切な人間は自分で守る…!助けはいらない」
「だって、シンジアタシたちは…」
「いい加減にしろ!…こんなもの、ブッちぎってやんよッッ!!」
激昂したシンジは左の耳を…アタシのピアスをちぎって…
嫌…いかないで、シンジ…!
ヘナヘナと体から力が抜けてしまう。シンジは道路の向こうに走っていって…車がいっぱいで追いかけられない…
シンジ…!!
「…ぁぁぁあああああ!うあああああ!!」
アタシは…哭いた。ありったけ…ありったけ…哭き叫んだ。
「あ…アスカさん…」
キョウジが心配そうに声をかける。
道路にへたり込んだアタシを、車たちが激しくクラクションを鳴らして抜き去っていく。
306霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:35:03 ID:???
市街地を抜けて、僕の目の前には箱根外輪山の鋭い尾根が立ちふさがった。
どこだ…ムサシ!
「…あれは戦自のトラック!?」
打ち捨てられた工事現場事務所から、トラックが一台走り出していく。
僕はその工事現場に急いだ。
恐ろしいほどに人影がない。この街にはこんなところがあるのか…
「ムサシ!」
僕は事務所のドアを開け放った。
荒く息をつく。
「…ムサシ?」
事務所の中はもぬけの空だった…

僕は外に出た。
箱根山から見下ろす第3新東京市は…ひどく現実感を失った、模型の街のようだった。綾波のマンション…環状線の高架…第壱中…
中心部の繁華街、そして芦ノ湖…
すべてが嘘のようにこじんまりとまとめられ、僕はそれがミニチュアの街…箱庭のように思えた…
終わった…
いつのまにか、僕の左耳からたれ落ちた血は制服のシャツを真っ赤に染めていた。
307霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:36:19 ID:???
私は碇司令の私室にあるバスルームを出て、バスタオルで髪を拭いた。
ドライヤーで乾かしながら、光に透かして染まり具合を確かめる。
うん。きれいな青髪になった。
カラーコンタクトの梱包を開けていると、葛城一尉に辞令を渡しに行っていた司令が戻ってきた。
「…もう上がったのか、レイ」
「少しお待ちを」
鏡に顔を近づけ、第2東京のファッションショップから通販で取り寄せたヴァンパイアレッドのソフトレンズを目に入れる。
うん。私の天然だった灰色の瞳も紅く染まった。
私はキングサイズのダブルベッドを背に司令に向かい合った。
「どうです?似合ってます?」
「…ああ。よく似合っている」
司令は少し逡巡してからそう答えた。
「零号機とお揃いですよ」
弐号機の艤装工事開始と同時に、零号機も実戦仕様に改装され、それに伴ってボディカラーは青に塗り替えられる。
私はベッドに入り、裸の体をシルクに包んだ。
「実は私、小説を書こうと思っているんですよ。司令のご子息を主人公に…長く疎遠だった父から呼び出された14歳の少年は、ロボットを
操り謎の敵“使徒”との戦いに身を投じる…タイトルは“新世紀エヴァンゲリオン”なんてどうです?」
「…うむ。お前の思うがままに書くがよかろう…」

――この日、葛城ミサトは復讐の為の最強の駒を手に入れた。
そして…惣流アスカは、NERV本部を去った――


女神へのラヴレター 血の13歳編・了
308霧島愛 ◆MANA20euME :2008/04/28(月) 22:50:08 ID:???
13歳編はこれにて終章です
このあと本編第1話に続きます

14歳編は第8話で完結なので
続きは15歳編になります
トライデント事件終結後の話しです

ではー
309名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/29(火) 00:40:30 ID:???
0.

無口だけど、いざというときは頼りになる父。
学校でも評判の、美人で優しい母。
気のいい友達や同級生。
厳しくも愉快な先生。
寒い日に飲むミルクティー。
チェロを弾くとき、ごく稀に感じる楽器との完全な一体感。
喉の奥が見えるほど大きなあくびをして、伸びをする猫。
悪く言えばぬるま湯のような、良く言えば陽だまりのように穏やかな毎日。

僕の、平穏で、平凡な日常は、彼女の登場によって唐突に終わりを告げた。
310名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/29(火) 00:42:55 ID:???
1.

いや――。唐突というのは少し違うかも知れない。
転校生が僕たちのクラスに来るという噂が、数日前からクラスに広がっていたからだ。
噂の出どころは当然のことながらケンスケだった。
どんな手段を使っているのか分からないけど、ケンスケは異常なほど情報通なのだ。
「かなりの美人だっていう話だから男子は期待するよーに」
噂の真偽を訊かれた葛城先生は、そう言ってけらけらと笑っていた。

「例の転校生、今日らしいで。ええニュースや。なぁ、センセ」
教室に入ってくるなりトウジがにやにや笑いながら僕に話を振ってきた。
「そう?」
僕は気のない返事をしたけど、多少気になることは確かだった。
可愛い女の子に全く興味がない男なんて、子供か、老人か、あるいは女性に興味がないかだ。
だから僕がかなりの美人だという転校生に、ある程度の興味を覚えるのは全然おかしくない。
心の中でしなくてもいい言い訳を自分自身にしていると、トウジが大仰に仰け反った。
「そう?て。余裕の返事やなぁ。さっすがモテる男は言うことが違うわ」
「別にモテてないって……」
「ほなアケミのアレはなんや。アレは世間一般でいうラブ・レターちゃうんか?」
「こ、声が大きいよ! トウジ!」
僕はあわててトウジの口を塞ごうとした。
「まったくあなたたちって……女の子のことしか頭にないの?」
怒りに満ちた声の方に顔を向けると、委員長が腰に手を当て、仁王立ちで僕らを睨んでいた。
311名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/29(火) 00:44:13 ID:???
「あなたたちって、僕は関係ないよ。トウジが興味津々なんだよ」
トウジは委員長のほうを横目でちらりと見て、
「そりゃあーまぁー色気のない女がこうたくさんおるとなー。新顔に期待するのも無理はない話や」
「何ですって!」
委員長の頭から湯気が立ち上る。
「ああ怖いこわい。可愛い転校生ちゃん、はよう来てぇな」
トウジは自分の身体を抱きしめて、大げさにぶるぶる震えるフリをした。
僕は苦笑するしかない。
ふと、僕は意地悪をしてみる気分になった。二人の仲のよさをちょっとからかってみたくなったのかも知れない。
「まぁ、委員長も気になるよね? 別の意味で」
何か言いかけた委員長にそう声をかけて、意味ありげにトウジのほうに視線を送る。
「えっ?」
委員長が不意をつかれてどぎまぎする。
「ちょ、ちょっとそれどういう意味よ、碇君。私は別に――」
そのとき、ドアが勢い良く開いて、先生と――そして、噂の転校生が入ってきた。
312名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/29(火) 00:45:34 ID:???

教室がどよめいた。
ごく簡単に言って、息を呑むほど綺麗な女の子だった。
だけど、みんなが驚いたのはそのことだけではなかった。転校生は金髪で青い目のハーフだったのだ。
ケンスケの情報網でも転校生に外国の血が入っていることは分からなかったようだ。
感動のあまりか、ケンスケがメガネを外して目を押さえ、トウジが僕に向かって親指を立てる。
委員長がそんなトウジを見て不安そうな様子を見せていた。
「はいはいはい! 騒がない騒がない」
先生がぱんぱんと手を叩いてクラスを静かにさせる。
「みんながお待ちかねの転校生よ。じゃあ惣流さん、自己紹介してちょうだい」
転校生は特に緊張した様子も見せず、黒板にさらさらと自分の名前を書いた。
それから「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしくね」と言うと、くるりと振り向いて、微笑んだのだった。

簡単な自己紹介のあと――そこで彼女がハーフではなくクォーターだと知った――先生が転校生の席を決めた。
「惣流さんの席はとりあえず、あそこね」
先生が指を差した先は、僕が座っている列の一番後ろの席だった。
「見にくいかも知れないけど、すぐに席替えするから我慢してね」
先生は自分の気分次第で席替えをする。
ある男女が仲が良さそうだと思うと隣同士にしたり(普通は逆に遠ざけるものなんじゃないだろうか?)、
あるいは仲が悪い生徒を隣同士にしたり(これも普通は逆じゃないだろうか?)やりたい放題だ。
トウジと委員長が隣同士になるのも時間の問題と僕は見ていた。
313名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/29(火) 00:48:36 ID:???

「じゃ、惣流さんは席に着いて。ホームルームはじめるわよー。
……っていい加減静かにしなさい! 子供じゃないんだからいつまでも騒がないの!」
先生が机を勢いよく叩く。
転校生は自分が引き起こした騒ぎなど素知らぬ風で歩き出した。
顎を心持ち上げ、まっすぐ前を見つめて歩みを進めるその仕草から判断すると、自分の容姿が周囲にどういう反応を引き起こすか
十分に――いや、十二分に心得ているタイプの女の子なんだと思う。
後ろに侍従が付き従っていないのが不思議なくらい威風堂々としていた。
もっとも、すぐに選ぶのに困るほど立候補者が乱立するんだろうけど。

そして――彼女が僕の横を通り過ぎる、そのときだった。
彼女が小声で呟いた。
僕は思わず振り向いて彼女の後ろ姿を見つめた。
「ちょっと碇君、美人だからってあんまり見つめないよーに。惣流さんのお尻が気になるのかな?」
先生がなんだかすごく嬉しそうに囃し立てる。
「ち、違いますよ!」
教室がどっと沸いて、僕はたちまち赤くなった。
僕のどこが気に入ってるのか、先生は何かにつけて僕をからかうのだ。転校生がどんな顔をしてるのか
気になるけど、これでは後ろを見る訳にもいかない。
――まったく、先生ときたら。先生のほうが子供じゃないか。
僕は溜め息をつきながらも、転校生が――惣流・アスカ・ラングレーが呟いた言葉を思い返し、真顔に戻った。
聞き違いかも知れない。
でも、僕の耳には確かにこう聞こえたのだ。

「バカシンジ」――と。
314名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/29(火) 17:51:16 ID:???
これは期待するを得ない
315名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/04/30(水) 02:14:58 ID:???
新作きた〜!
つかみはOKだ!!続きがきになるぞ〜


>>314
笑えばいいのか??
316314:2008/04/30(水) 03:09:04 ID:???
>>315
×するを得ない
○せざるを得ない
orz

続き待ち……
317名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/01(木) 09:24:51 ID:???
てっきり期待できないってことをわかりづらくいってるのかと思った
318名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/01(木) 19:51:37 ID:???
きたなこれ!!!!!!!!!!!!
超期待
319名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/02(金) 04:11:56 ID:???
超期待!!
せっかくだから俺は全裸で待機するぜ!!
320名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/02(金) 23:36:57 ID:???
風邪引くなよ
321名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/03(土) 00:42:53 ID:???
>>313

1’.

私は葛城ミサトという胸の大きいだけが取り柄(絶対そうに違いない!)の女教師に連れられて、
2階の端にある教室の前まで来ていた。
――第3新東京市立第壱中学校2年A組。
これが今日から私が新しく編入するクラス。
私は思わずため息をついた。
仕事の都合だか何だか知らないけど、何が悲しくて日本なんかに来なきゃいけないの? 勘弁してよね。
ドイツじゃ大学まで出てるのに日本だと中学生に逆戻り。ま、年齢は確かにそうだけど。
私ぐらいの天才には特例で大学院に行かせてくれてもいいんじゃない?
ヤーパンもいつまでも横並び一直線が大好きだと先行き暗いわよ?

「みんな歓迎するから大丈夫よ。いい子ばっかりだから。ま、すこーしうるさいけどねー」
憂鬱な顔をしていると、何を勘違いしたのか、ミサトがこちらに微笑みかけてきた。
ヘイサテキなニホンに来た、ほとんどガイジンのワタシは、ちゃんとクラスに溶け込めるのか
シンパイでシカタありません……と不安がっているとでも思っているのだろうか。
ったく、そんな心配、こっちはハナからしてないってーの。
こっちが溶け込むんじゃなくて周りが私に合わせる。これが私の信条よ。
「さ、入りましょっか」
私はミサトのあとに続いて教室に入った。
322名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/03(土) 00:44:10 ID:???

とはいえ、私だって人間だから、さすがにちょっとは緊張する。
私はぐるりと教室を見渡した。
一見してどいつもこいつも大したことなさそうなのばっかりだとすぐに分かった。
私の緊張はたちまち溶けて無くなった。
さて。どうしようか。
私は「おしとやかで可憐な少女アスカ」でいくことにした。特に理由はない。
敢えて言えば、面白そうだから。ま、一種のゲームね。
「……じゃあ惣流さん、自己紹介してちょうだい」
ミサトに促されて、私は黒板に自分の名前を書いてから、
「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしくね」と言って可愛らしく微笑んであげた。
男どもが鼻の下を伸ばしてはしゃぐ。
案の定、バカばっかりだ。
323名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/03(土) 00:46:37 ID:???

それから質問攻めにあった。ま、それもそうよね。
こんなに可愛い女の子が目の前にあらわれたらあれこれ訊きたくなるに決まってるもの。
どこ出身なの?
ドイツです。ドイツでは飛び級で大学を卒業しました。
えー、すごーい。日本語がすごく上手だけど外国の方ですか?
えーと、母が日本人とドイツ人のハーフで父がドイツ人なので、クォーターです。
……。
だんだん笑顔が引き攣ってくる。
「はいはい、そこまで。あとは休み時間にでも訊いてちょうだい。
惣流さんの席はとりあえず、あそこね」
ミサトが切り上げてくれたので助かった。
「はぁ。バカらしい」
自分の席に着く途中、思わずため息をついて、内心思っていたことをつい口に出して言ってしまった。
いかにもひ弱そうな男子生徒が、少し唖然としたような顔でこちらを見るのが視界に入る。
やばい。聞こえた?
……ま、どうでもいいか。
ちょっとはいい顔してるけど、線の細いのはタイプじゃないのよね。
私は肩をすくめて授業の準備に取りかかった。
324名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/03(土) 00:53:56 ID:???


ただの聞き間違いかよw
何か凄い伏線だろうと思ってたのに
325名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/03(土) 01:37:47 ID:???


>>324
おれもそう思ったww
after eoeかなんかかと思ったよ・・・

でもGJ!!
人生の楽しみができたよ〜
がんばれ323!
326名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/03(土) 10:47:49 ID:???
>>324-325
同意。
もの凄い肩すかしをくらったw
327名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/03(土) 11:41:29 ID:???
でも期待は変わらないからな!
頑張れよ〜〜〜〜〜〜〜
328名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/03(土) 13:04:07 ID:???
( ゚Д゚)キキマツガイ…………

ま、いいかwktkwktk
329名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/03(土) 16:56:52 ID:???
こういうダブル一人称って、難しいんだよな。
一人称の最大の特徴である固定視点からの描写がぼけるし、時系列を遡っての重複描写はくどくなるし。
エロ以外に上手く機能した例を知らない。
330名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/03(土) 19:02:59 ID:???
あげ
331名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/04(日) 12:22:54 ID:vCRvPadS
AEOEでアスカがもっとツンツンしててちょっとだけデレるSSってない?
なんかしょっぱなから有り得ないほどデレデレなヤツって違和感ありまくりで
作品に入っていけないんだが。
332名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/04(日) 13:01:27 ID:???
聞く場所間違えとる
333名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/04(日) 13:11:11 ID:???
申し訳ありませんでした
334名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/05(月) 00:13:05 ID:???
>>323

2.

その後、僕は落ち着かない気分で授業を受ける破目になった。
「バカシンジ」。
あの言葉は一体なんだったんだろう。
彼女が僕の名前を知っているはずがない。だから僕が聞き違えたのだ。
ひょっとすると、ドイツ語の単語で「バカシンジ」に聞こえるのがあるのかも知れない。
思い当たるものは当然ない。だいたいドイツ語なんて言われてもぱっと思いつかないくらいだ。
それにもし彼女が何らかの理由で僕の名前を知ってたとする。
なぜ「バカ」なんて言う? 僕が何かした? ずっと前にどこかであってて、
僕が彼女のことを覚えてない様子だから怒ったとか?
そんな、少女漫画じゃあるまいし……。
335名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/05(月) 00:13:53 ID:???

――国語の時間も、僕はこんな感じでぼーっとしていた。
「じゃあ次は碇」
バカシンジ……バカシンジ……チャウ・シンチー? 僕は思わずあっと声に出しそうになった。
バカシンジと一番語呂があって、なおかつ意味がありそうな単語だ。
チャウ・シンチーと似てるやつがこのクラスにいるのだろうか?
……そんなわけないか。下らない。どうせ「バカらしい」と聞き間違えたんだろう。
「どうした、碇。君に当ててるんだが」
隣の席の女の子が、僕をつついて「碇君! 当てられてるよ!」と小声で囁いた。
「ああっ、はいっ! すいません!」
僕は驚きのあまり、物凄い勢いで立ち上がってしまっていた。
くすくす笑いがあちこちから聞こえてくる。
「一体何を考えていたんだ? 君は。……いや、分かるぞ。その顔は、女の子のことを考えていたな!?」
加持先生はにやりと笑って断言した。
「そ、そ、そんなことありませんっ!」
教室がどっと沸いて、僕はまた首まで真っ赤になってしまった。はいと言ってるようなものだ。
自分が招いたこととはいえ、今日は厄日としか言いようがない。
「まぁ、君の年ではしょうがないことなのかも知れんが、授業中は勘弁して欲しいなぁ」
頭を掻いてぼやくものの、あんまり怒った様子はない。むしろ楽しそうだ。
「すいません……」
336名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/05(月) 00:15:25 ID:???
「そういう加持先生も葛城先生のことばっかり考えてるんじゃないんですか?」
意外に(と言ったら怒られるだろうか)友達思いで男らしいところがあるケンスケが助け舟を出してくれた。
「ああ、そうだ。俺は葛城のことを愛しているからな」
加持先生はあっさりと認めた。男子が口笛を吹いて、女子がブーイングする。
このさばけた感じが加持先生の人気の秘密だ。
「でも、葛城先生は加持先生のこと嫌いだって言ってたよ。スケベだって」
と誰かが茶々を入れる。
「ははは、ケツの青い子供はこれだから困るんだ。いいか、よく覚えておけよ。
子供の好き嫌いと違って、大人の事情は複雑なのさ。好きだけど嫌いと言ったり、
そんなことは日常茶飯事なんだ」
「でも、スケベは?」
「それは、男は誰でもそうだから特に俺を嫌う理由にはならないな」
「先生。葛城先生のことは放っておいて、私に乗り換えてくださーい」
ひょうきんな性格の女子生徒が手を挙げておどけるように言った。
「まぁ、君たちはアレだ。もうちょっと大人にならないとな。特に出るところが出てないと」
先生はそう言うと、豪快に笑ってみせた。
「わー、セクハラですよそれ!」
「ああそうだ、俺はセクハラ先生さ。女の子は俺のまわりに近づくなよ」
「じゃあ俺たちは?」
「お前たちは女の子以上に俺に近づくな。俺が嫌だからな」
ひでー、と声が上がったところで、
「先生! 授業を進めて下さい!」
我慢ならないとばかり、憤然と立ち上がって抗議したのは当然委員長だった。
そして、元はと言えばあなたのせいよ碇君……とでも言いたそうな目で僕を睨みつける。
僕には小さくなるしか選択肢がなかった。
337名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/05(月) 00:22:30 ID:???
2’.

加持という国語の教師の授業が終わった。
――ふふん。いいじゃない。
私は少し機嫌が良くなっていた。
ハンサムだし、なにより大人の男の香りがする。
ガキっぽいのは私の好みじゃない――ってもう言ったっけ?
ライバルが多そうなのが玉に瑕だけど、いい男に女の目がいくのは当然のことだし。あ、逆もまた然りね。
日本なんて最悪って思ってたけど、そんなコトもないかな。
なんて思っていると、隣の子が「惣流さん、どうしたの?」とこっそり声をかけてきた。
「え、何?」
心を読まれたように感じてドキリとする。しかし、その子は意外な台詞を口にした。
「あの、あなた、泣いてる……?」
「誰が? ……私が!?」
何を言ってるのだろう?
私はそう思うと同時に、反射的に頬に手をやった。
そして、言われた通り、自分が涙を流しているのを知った。
「何だろ、これ。私、別に……」
そういう間にも涙は流れてくる。
338名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/05(月) 00:25:15 ID:???
別に悲しくなんてないのに。
悲しくなんて。
いや。
私は。
悲しい……?
漠然とした、何が原因か分からない、何と表現していいのか分からない悲しみが
私の心をひたひたと満たして、器に収まりきれない分が涙となって零れ落ちている。
強いて言えば、取り戻した大事な何かをまた失くしたような……。

私はドライアイ気味で、とか何とか適当な理由を言って取り繕うとした。
声が震えてまともに喋れない。
納得したような顔ではなかったから、彼女が口を開く前に立ち上がって廊下に出た。
騒がれるのは面倒だし、何より恥ずかしい。異国に来て情緒不安定になってると思われるのは癪にさわる。

だけど、廊下に出てニ三度深呼吸するころには、湧き上がってきた感情は、幻のように消えてしまっていた。
何だったんだろう?
困惑しながら席に着いて、こちらを窺う顔に愛想を振りまいた。
ふと気づくと、どういうわけか、加持先生を特別いい男だとは思わなくなっていた。
339名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/05(月) 00:38:56 ID:???
なんかどこに向かってんのか良くわかんないけどいいよ!!
とりあえず良作でなくても長作ならなんでもいいよ!!
ってか普通にいいよ!!
期待期待!!
340名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/05(月) 01:31:30 ID:???
またよくわからん伏線がww
続き期待
341名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/05(月) 11:01:46 ID:???
wktkしとく
342名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/05(月) 12:36:50 ID:???
伏線というか、ただの陳腐なヒキな気がw
343名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/05(月) 20:52:08 ID:???
め、めいさく!?
344名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/07(水) 20:39:25 ID:???
次のうpは週末か??
とりあえず期待
345名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/08(木) 23:31:19 ID:???
>>338

3.

昼休みになって、僕はいつものようにトウジ、ケンスケと一緒に昼食をとっている。
話題はあちこちに飛びつつも、結局は転校生のことに戻ってしまう。
彼女はさっそく囲まれて質問攻めにあっていた。
「モデルでもやってるんちゃうか?」
トウジが輪のほうを見ながら大口を開けておにぎりにかぶりつく。
「日本には来たばかりっていうからやってないんじゃないかな。ドイツでは分からないけど」と、僕。
「だとしてもスカウトされるのも時間の問題さ。あれだけの美貌じゃね」
ケンスケはそう言うと惚けたような笑顔を見せた。
「それに性格も良さそうだしさ。いいよなぁ。おしとやかで可愛いなんて最高だよ」
「おしとやか……そうかなぁ」僕は口ごもった。「結構気は強いと思うよ」
「何だよ碇。何を根拠にそう言うんだよ」
「いや、別に根拠があるってわけじゃないけど……歩き方とか」
「歩き方!? それだけかよ!」
「いや、それだけじゃなくて……」
僕はバカシンジのひとことを思い出した。でもあれは聞き違いだから、僕が間違っているのかも知れない。
よく考えると他人――それも今日初めて会った人の――性格を軽々しく断定するなんて、ずいぶん思い上がった
行為のように思えてきた。
346名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/08(木) 23:32:25 ID:???
「他に何か気になるところでもあるのかよ」
「いや、別にないよ。きっと僕の勘違いだ」
「碇が気になるのは転校生のお尻やろ」
トウジがそう言って笑った。
「ち、違うよっ」
「ま、性格は置いといて。ビジネスには関係ないし」
ケンスケの眼鏡がキラリと光った。
「ビジネスって、お前何をするつもりや」
トウジが何をするのかとあきれたような顔をする。
ケンスケは僕らが思いも付かないことを考え出して、そして実行するとたいていはとんでもない結果になるのだ。
「ふふ……写真部のエースである俺さまの腕前を見せるときが来たね」
「犯罪には手を出さないように!」
僕は冗談半分で言った。
冗談半分とは、冗談が半分で本気が半分ということだよ、ケンスケ……。
347名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/08(木) 23:33:36 ID:???

午後は余計な事を考えず、授業に集中した。
加持先生だったから良かったものの、赤木先生のときにぼーっとしていたら笑い事では済まなかっただろう。
赤木先生は厳しいことで有名だ。授業中はしわぶき一つ立たない……というのは大げさだけど、それに近い雰囲気がある。
声を荒げることなく論理的に問い質すさまは、まるでチェスの名人か、あるいはボクシングの名チャンピオンが
対戦相手を冷静にコーナーに追い詰めるようで、アマチュアの僕たちには手も足も出ない(というより
出そうという気すらおきない)。
一度宿題をやってこなかったトウジが先生に叱られたときには、真っ青になって危うく泣きそうになったほどだ。
ひとごとではない。下手したら僕も同じ目にあっていた。
本当に気をつけよう。僕は固く心に誓った。

それからは何事もなく学校が終わり、トウジは野球部、ケンスケは写真部(か情報処理部)に向かった。
僕は部活には入っていない。本当ならチェロが弾ける管弦楽部があればよかったんだけど、
うちの学校には吹奏楽部しかない。管弦楽は費用がかかるとか手入れが面倒とかの理由で
全国的にみてもある学校は少なくて、わが第3新東京市立第壱中学校もその例に漏れず――というわけ。
だから市の市民管弦楽団に所属して、そこでチェロを弾いている。
僕以外はほとんど大人で、いわゆる部活のイメージはない。練習も結構厳しい。
今は、定期演奏会に向けて練習している最中で、今日は練習の日だった。
348名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/08(木) 23:36:29 ID:???

僕の家は市にいくつかある、新興住宅街のひとつにある。
学校を出て大通り沿いにしばらく歩き、三つ目の十字路を右に曲がって三軒目がそうだ。
――うん?
隣の家に目をやると、引越し屋が荷物を運び入れているところだった。
いや、すでに運び終えて帰るようだ。車が排気ガスを吐き出して僕の側を通り過ぎる。
まさか。
僕は思わず立ち止まって考えた。
そんな偶然があるわけがない。
偶然?
第3新東京市は東京の名を冠してはいるけれど、まだ人口はそれほど多くはない。
住宅街だってここの他にいくつもない。
そもそも同じ学校ということは、同じ地区ということだ。
つまり、今日来た転校生が隣に引っ越してくることは、「あるわけがない」ような低確率の出来事ではない。
十分に有り得ることだ。
……って、僕は何を期待してるのだろう。
だいたい僕はあの転校生がそんなに気になってるわけじゃない。気になったのは転校生がバカシンジと言った
ような気がしたからで、けどあれは聞き間違いで、だいいち僕は静かでおしとやかなタイプがいい。
そう、僕は気にしてるわけじゃないんだ。
349名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/08(木) 23:38:34 ID:???

と思いつつ、こうやって見てれば誰か家の人が出てくるかも……と少しの間観察してしまった。
僕や周りの住宅と同じような感じの、新しくて、清潔な感じの一戸建ての家。
その点では転校生には相応しく、類型的という点では相応しくないとも言える。
しかし、いつまでもこうやって突っ立っているわけにもいかない。これではまるで怪しい人だ。
さっさと準備をしなければ。
隣が気になりつつも家に入る。
父と母は研究所勤めでこの時間だとまだ帰っていない。
僕は冷蔵庫の中のものを適当に食べて出かけることにした。
集中だ。僕はクロワッサンを頬張りながら思った。余計なことを考えず、しっかり練習しよう。

気を張ったせいか、練習はいつもより上手くいった。
いつもより疲れたけど、それは心地いい疲労だった。
僕はバスから降りて、今日は宿題をさっさと終わらせてテレビも見ないで早く寝よう、
などと考えながら角を曲がって――心臓が跳ね上がった。

転校生がいた。
350名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/08(木) 23:40:13 ID:???
3'.

昼休みになると、食事をとる暇もロクにないくらい質問攻めにあった。
あーもう、うざったい!
ホント、美しすぎるのも罪ね。
「ちょっとみんな! 惣流さん困ってるでしょう?」
そばかすが印象的な女の子が割って入ってきた。
「何だよー、委員長。困ってないよ」
女の子はこのクラスの委員長らしい。なるほど、そんな感じだ。
それはともかく、何であんたに私が困ってないかどうか分かるのよ。
「もう食べ終わった? 惣流さんが良かったら校舎、案内するけど……」
ええー、俺が案内するよー、と、先ほど困ってないと発言したニキビ面の男子生徒が声をあげる。
バカ? 何であんたなんかと。
「私が先生に頼まれてるの。ごめんね、山内君。そういうわけだから」
そばかすの女の子は体よくその男子を追い払った。
愛想良くするのにもいい加減疲れてきたところだ。
私は喜んで案内してもらうことにした。
351名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/08(木) 23:42:51 ID:???
「私の名前は洞木ヒカリ。よろしくね、惣流さん」
「アスカでいいわよ」
「えっ、と……そう? じゃあ私もヒカリって呼んでね、アスカ」
「もちろんオーケーよ、ヒカリ」
私たちは何となく笑いあった。
「何か……こんなこと言うとヘンに思われるかも知れないけど、初めて会った気がしないね」
少し驚いた。私もまったく同じことを思っていたから。
きっと友達になるというのはこういうことなのね。
それから私たちは色々なことを喋りながら、校舎の中を見て回った。
彼女とは初対面とは思えないほど話が弾んだ。
洞木ヒカリ。
私は彼女が気に入った。
嫌味のない正義感。潔癖そうなところ。潔癖すぎないところ。人の世話をやくのが好きなところ。
彼女みたいにガミガミ言うタイプは得てして嫌われるものだけど、クラスを見てるとそんな様子はない。
それはきっと、彼女が芯から優しい性格をしてるから。
放課後、私はヒカリに一緒に帰ろうと声を掛けたけど、彼女は野球部のマネージャーということで
断られてしまった。
残念。
ヒカリに合ってると思わないでもないけど、マネージャーなんて面白いのかしら。
私は当然まっぴらごめんよ。才能の浪費でしかないから。
352名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/08(木) 23:43:39 ID:???

寄り道したい気分だけど、今日は引越しの手伝いをしなければならない。
私に声を掛けようとする有象無象を振り切って家に帰ると、
さっそくダンボールの山ができていた。
「ただいまー」
「おかえり、アスカ。学校はどうだった?」
ママがダンボールから中身を取り出しながら私に訊く。
「うーん、まぁバカばっかりって感じかな」
ママはため息をついた。
「そんなこと言うもんじゃありません。みんなと仲良くしないと……」
「だってバカはバカだし。しょうがないじゃん。あ、友達できたんだ」
「そう。良かったわ」
ママのほっとしたような顔が私には面白くなかった。
「私、出かけてくる」
「ちょっとどこいくの、アスカ。荷物を整理しないと」
「自分の街を知るのは市民の義務よ。荷物は帰ってから片付けるから」
着替えると、夕食までには帰るのよ、の声を背に私は家を飛び出した。
353名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/08(木) 23:45:22 ID:???

私は第3新東京市は政府機関や研究所が中心の計画都市であることを忘れていた。
つまり取り立てて見るべき場所などはないということ。
繁華街には取りあえずはデパートがあって、一通りの娯楽施設があって、でもそれだけだった。
「あーあ、つまんない。大して面白い街じゃないわね。そろそろ帰ろっかな」
立ち寄る先々で注目を浴びるのは、毎度のこととはいえ鬱陶しい。
私は外出したことを後悔しはじめていた。
――そこを右に曲がるんだったわよね。
私は角を曲がり、自分の家の前でふと立ち止まって、あることに気がついた。
これは私の家じゃない。
私は引き返して一本隣の道に入った。
こっちも違う。
ひょっとして――
道に迷った?
なぜ!?
学校から帰ったときは迷わなかったのに。
「ええぃ、もう! 同じような道ばっかなのが悪いのよ!」
携帯を持ってこなかったことを後悔しつつも、急いで引き返してもう一つ隣の道に――
何だかここも違うような気がする。
ひょっとして大通りをはさんだ向こう側のブロックだったっけ?
戻ったほうがいいのか、この道で良かったのか。
私は戻ることに決めて振り返った。
どこかで見た顔が私の目に飛び込んできた。
354名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/09(金) 00:05:47 ID:???
キタ―――――――(゜∀゜)―――――!!!!!

なんだかAEOEの感がぬぐえなくて見ているのは俺だけ???
とりあえず、じゃないにしてもおもろいっぽいよ!
これからの展開に期待
355名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/09(金) 07:15:24 ID:???
乙カレ
356名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/09(金) 07:50:51 ID:???
ニヤニヤがとまらないよw
357名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/09(金) 10:39:40 ID:???
このスレの住人って東芝のau使いが多いのかw

職人さんG!ここは職人さんが豊富で良いスレですね。
358名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/09(金) 11:25:54 ID:???
>>357
ピンポイントで俺の事だわw
359名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/10(土) 04:11:47 ID:6ICBMcRM
>>345-353
キタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆

良い感じ
期待してます
360名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/10(土) 20:15:50 ID:???
【これがアスカの生きる道!高校編】

キンコン キンコン

六限目終了のベルが鳴る。今日の授業もおしまいだ。教室は
たちまちざわめく。帰りにどこへ寄ろうかと話す者、部活の
練習に飛び出す者と様々だ。授業を終えて立ち去りかけた
担任の赤木先生が振り返って言う。
「あ、碇君。10分ぐらいしたら、教員室に来て頂戴」
「…はい」
何かな。僕はクラス委員じゃないけど、よく学校行事の応援を
頼まれる。雑用係向きだと思われてるのかな…
「あんた、教員室に呼ばれるなんて、何か悪さしたのー?」
アスカが早速からかいに来た。
「そんなわけないだろ」
「どーだかねー」
「うるさいな。関係ないだろ」
周りのクラスメート達は「また始まった」という顔になった。
以前は夫婦喧嘩なんてからかわれたものだが、最近は見飽きた
のか、誰も興味を示さなくなった。
361名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/10(土) 20:17:35 ID:???
「碇君、もう10分経つよ」
洞木が教えてくれた。慌てて教室を飛び出す僕を「あたし
先に帰るわよー」と言うアスカの声が追いかける。

「お呼びですか」と声をかけると赤木先生は
「ああ碇君。ちょっと来て」
と立ち上がり、向かった先は生徒指導室。えっ、本当に説教!?
赤木先生は厳しいので有名だ。そんな心当たりはないんだけど…
「座りなさい」
「あっあの先生、僕が何か…」
「えっ?ああ、そうじゃないのよ。とにかくこれを見て頂戴」
先生は一枚の紙を机に置いた。えーと、進路志望調査票?
名前:惣流アスカラングレー、志望進路:第一志望「主婦」

ブラックアウト、という現象は聞いたことがあるけど、自分が
体験するとは思わなかった。周囲が真っ暗になり、「主婦」の
二文字だけが浮かび上がってくる。やがてその文字も消えて…
362名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/10(土) 20:19:09 ID:???
「ちょっと碇君、大丈夫!?」
「あ…すいません、ちょっとめまいが…大丈夫です」
「彼女は我が校でもトップクラスの成績よ。それが、進学も
しないなんて…あなた、彼女と交際してたわね?まさか…」
「いえ、そんな話は全然。僕も、アスカは進学志望とばかり…」
「おかしいわね。……こんなことを言うのは何なんだけど、
ひょっとして彼女が他の男性と付き合ってるなんてことは
ないのかしら?」
アスカが僕以外の男性と?アスカが?
「大丈夫?碇君、後は明日にしましょう。今日はもう帰った
ほうがいいわ。顔が真っ青」
「そうします……失礼します」
僕は無意識に登下校口に向かっていた。アスカが?本当に
アスカが?もう何がなんだか分からなかった。
363名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/10(土) 20:20:58 ID:???
…僕の下駄箱の前に、張本人が立っていた。
「どーしたのしょげちゃって!そんなにキツく絞られた?」
さすがの僕も、彼女を目の前にしてブチ切れた。
「なんだよアスカ!主婦志望って、誰と結婚するんだよ!
僕は…僕はまるでバカみたいじゃないか!」
「………バカシンジ」
「えっ?」
「…あたしが、アンタ以外の男と付き合うわけないでしょ!」
いきなり、向こう脛を思いっ切り蹴り上げられた。
「いてーっ!」
「あたしはアンタのお嫁さんになってあげるんだから!
感謝しなさいよ!」
「へ?僕の……?」
「いい?あたしは大学なんかとっくに卒業してるんだから
アンタが大学に通う間、やることないのよ!アンタはまだ
なんだから、大学に行かなきゃダメ。あたしはヒマなんだから
アンタのお嫁さんになって、大学四年間、面倒見てあげるの」
「…それって学生結婚てこと?…そんなの無理だよ」
364名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/10(土) 20:22:36 ID:???
「いや、でも無理だよ…大学に通いながら、アスカを養う
なんて無理だし。駄目だよ結婚なんて」
僕を見つめるアスカの目。深い青色の吸い込まれそうな瞳が
濡れ、大粒の涙が溢れ出る。
「………あたしをお嫁さんにしてくれないの?あたしじゃ
ダメなのシンジ?」
零れ落ちる、水晶のように輝く涙。僕は一瞬、その美しさに
見とれてしまった。
「そ、そんなこと言ってないだろ!大学を卒業して就職したら
アスカをお嫁さんにするよ。約束するから!」
「…本当に?」
「本当だよ。大学を出たら結婚しよう!」
「えへへー」
突然アスカが、僕にアッカンベーをして見せた。
「ア、アスカ…?」
「わたくし惣流アスカラングレーは、碇シンジさんのプロポーズ
を慎んでお受け致しますわ。オホホホホ」
「あっあのあの、えーと」
「ほらシンジ、行こっ」
「どこ行くのアスカ!」
「赤木先生のところよ!あっ先生、あたし志望を変更します。
シンジの志望大学はどこだっけ?」
「えーと、あの、K大だけど…」
「じゃ、K大の大学院を志望します。よろしくぅ」
「あのあの、アスカ、主婦志望って…」
「大丈夫!あたしがバッチリ勉強教えて、必ずK大に合格
させてあげるから!大学でも一緒よシンジ!あっ、それからね」
と彼女は僕の目を見つめて、素敵な笑顔で
「今日からは、婚約者だからね」
とささやいた。真っ暗な中に、輝く青い瞳が浮かび上がり、
ああ僕はまたブラックアウト。。。
365名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/10(土) 20:23:49 ID:???
イイヨイイヨー
366名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/10(土) 20:37:08 ID:???
ありゃ>>363-364の間が一行抜けちゃいますた
まあいいや。適当に補完してください。
367名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/10(土) 22:11:55 ID:???
おおー
いいねえ!楽しませてもらったよ

>>353

編期待
368名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/10(土) 23:04:53 ID:???
>>360-364
(・∀・)イイ!!
369名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/11(日) 08:40:57 ID:???
>>364
読み終えてからタイトルを見ると納得。
やっぱりアスカは男前な女でした。
370いつか名無しさんが:2008/05/11(日) 18:26:46 ID:???
【これがアスカの生きる道!家庭編】


今日は用事があるから、二人とも学校が終わったらすぐ帰る
ようにとミサトさんに言われた。昨日、ミサトさんがいきなり
「大掃除するわよ!」なんて言い出したところを見ると、お客
でも来るんだろう。ミサトさんが散らかさなきゃいいだけの話
なのに、僕が片付けた後からすぐに散らかし放題だもんなぁ…

キンコン キンコン
「シンジ、帰ろ?」
「今行くよアスカ」

「今日はお客さんでも来るのかな?」
「えっ、うーん、そうかもね」
怪しい。アスカが嘘をついてるのはすぐ分かった。
「お客が誰だか知ってるだろアスカ?」
「えー何のことー?(棒」
「何で隠すんだよ」
「まあ帰れば分かるし、いいじゃない」
気に入らない。そう言えばミサトさんも「用事」としか言わな
かったな。二人して何か隠してる?
371いつか名無しさんが:2008/05/11(日) 18:28:49 ID:???

マンションに着いた。呼び鈴を鳴らすとミサトさんがドアを開けた。
「お帰りなさい。お客様がもう見えてるわよ」
奥に入り、応接間に顔を出すと
「とっ、父さん!?」
「久しぶりだなシンジ。まあ座りなさい」
まさか父さんが来るとは思わなかった。わざわざ来るなんて、
また何か悪いことかな…まさか、また使徒が?
「アスカも座りなさい」
アスカが僕の隣にちょこんと座って、父さんにニッコリ笑いかける。
なんでそんなに愛想を振り撒くの?なんで僕にそんなにピッタリ
くっついて座るの?
「シンジ、受験のほうはどうだ?志望校は大丈夫か?」
「ええ、まあ頑張ってます」
口数の少ない僕をミサトさんがフォローしてくれる。
「大丈夫ですよ。こう見えてもシンジ君、成績いいんですよ。
それに、天才が家庭教師してくれてますから」
アスカがニッコリ笑う。すると、父さんまでがアスカに笑顔を
見せる。これって何なの?
「そうか、それなら安心だ。シンジをよく見てやってくれアスカ」
「お任せ下さいお義父様。あたしが必ず合格させます!」
幻聴?幻聴だよね?お義父様って何?
「本題に入ろう。お前達婚約したそうだな?」
アスカが、クラスメートや友人関係にあの件を触れ回るかも
知れないという危惧はあった。それがいきなり父さんかよ!
もう、隣のアスカの顔は怖くて見られない。
「どうなんだシンジ」
父さんが「あの目付き」で僕を睨む。
「…はい…大学を卒業したら結婚しようと、アスカと約束しました…」
隣のアスカの浮き立つ空気がビンビンに伝わってくる。僕はもう
父さんとアスカ、二匹のヘビに睨まれたカエルみたいだ。
372いつか名無しさんが:2008/05/11(日) 18:30:51 ID:???
「そうか。それならいい。男として責任を取るのは良いことだ。
私もアスカをお預かりしたドイツの御両親に責任がある。私の
息子が、お預かりした娘さんを傷ものにして逃げたとあっては
申し訳が立たん」
父さんはあの目付きだし、アスカはウキウキだし、僕は冷汗
タラタラ。助けてミサトさーん…
「だが、御両親には良い報告が出来そうだ。すまんが私も
忙しい身でな、もう行かねばならん。それと、お前の婚約者を
少し借りるぞ」
ミサトさんが言い添える。
「弐号機の修復の件でね、セカンドチルドレンのデータが
必要なの。たいして時間は掛からないわ」

父さんとアスカ、二人が車に乗り込む。乗りかけたアスカが
「すいません、少し待って下さい」
と引き返し、僕に駆け寄って抱き着き、
「すぐ帰るわ、シンジ」
と僕の頬にキスした。アスカ、君ってホントに…
373いつか名無しさんが:2008/05/11(日) 18:33:29 ID:???

僕はがっくり疲れて部屋に戻った。
「ミサトさん、お茶でも入れますか?」
「お願ーい。あたしも疲れちゃった。あっシンちゃん、婚約
おめでとう!」
「やめて下さいよ。話したじゃないですか。あれはアスカに
騙されて…」
「でもシンちゃん、アスカと別れる気はないんでょ?ならいい
じゃない。早いか遅いかの違いだけだし」
「でも納得行かないなー」
「あんたいつまでグズグズ言ってんのよ。覚悟決めなさい男の子!」
「ミサトさんはどっちの味方なんですか」
「悪いけど私、この件に関してはアスカの味方よ。あんたは
まだまだアスカのことを知らなさ過ぎるのよ」
「知らないって…?」
「あんた、どうしてアスカがドイツに帰らなかったか知ってる?」
「どうしてって…まさか…?」
「最初から話すわ。あなた達の生活費はどこから出てると思う?」
「…ネルフから?」
「パイロットだった頃はね。でも、パイロットを退役したら
手当も打ち切りよ。情け容赦なくスパーッとね。で、あたし
碇司令に呼ばれたの。『今後も二人の面倒を見て欲しい。来月
から二人の生活費は、ネルフからではなく私の個人口座からの
振込みになるので心得ておいてくれ』ってね」
「…アスカの分も、父さんが出してたの?」
「そう。で、あたし思い切って聞いたの。シンジ君はわかり
ますが、アスカの分まで司令が個人的に出されるんですか?って。
そしたらあんた、仰天したわよ。アスカが碇司令のところに
直談判に乗り込んだらしいの」
「ええええ!?」
374いつか名無しさんが:2008/05/11(日) 18:36:57 ID:???
「度胸あるわよね、あの子ったら。で、司令に言ったらしいの。
『あたしはシンジ君のお嫁さんになります。だからドイツには
帰りません。どうか、息子の嫁だと思って日本に置いてやって
ください!』ってね。」
「ええええええええ」
「で碇司令が言うの。『シンジの母親は、見た目はレイに
そっくりだが、気の強い女でな。アスカの、あの真っ直ぐな
視線を見て、亡き妻を思い出したのだ。シンジが、母親に
性格の似たアスカを嫁にするのも宿命かもしれん』って」
母さんて、そうだったの!?
「だから、あんたとアスカじゃ役者が違うわよ。向こうは
三年も前に、あんたの親に結婚宣言してるのよ?まあ早いとこ
腹を括って、あの子を嫁にもらうのね」
「〜〜〜〜〜」
「いじらしいじゃない?あの子、あんなにかわいいのに
寄ってくる男をみんな蹴飛ばして、あんたの後を追い掛け
回してるんだから。私も女だから、一途な女の味方なの。
そうだ!シンちゃんにプレゼントがあるの」
と言ってミサトさんが差し出したのは、一箱の…コンドーム。
「あんた達があたしに隠れてこっそりエッチしてるのを知ら
ないと思った?するなとは言わないけれど、正式に結婚する
まではきちんと避妊しなさいよ!」
「…すいません」
「あと、お願いがあるの。夜にはあの子が帰って来るわ。
きっとお腹を空かして帰ってくるから、うんとご馳走を
作ってあげて欲しいの」
「わかりました。腕によりをかけて作りますよ」
「でさ、あたしはがんがんビール飲んで寝ちゃうからさ、
今夜は好きなだけエッチしていーわよ。もちろんゴムは
忘れずにね!」
375名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/11(日) 21:55:44 ID:???
イイ!(・∀・)
376名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/11(日) 23:31:10 ID:???
>>353

4.

淡い水色のノースリーブのワンピースにサッシュベルト。クリーム色のサンダル。
すらりと伸びた手足の長さはやはり日本人離れしている。
むきだしの肌は目に痛いほど白い。
僕は視線を彼女のどこに向ければいいのか迷った。
葛城先生の「惣流さんのお尻が気になるのかな?」が脳裏によみがえって嫌な汗をかく。
転校生は先生のからかいの言葉を覚えているに違いない。
――先生のバカ!
思わず葛城先生を呪ってしまう。
僕と彼女の間に、妙な緊張が流れた。
「えーっと……」
もちろんここは僕のほうから声をかけるべきなのだろう。必死に台詞を探していると、
彼女が咳払いをし、喉に手をやって「名前は?」と言った。
「えっ!?」
僕は思わず驚いたような声を出してしまった。
バカシンジは聞き違いにしても、葛城先生にも加持先生にも僕は名前を呼ばれていたわけで――
それも彼女絡みのことで――、何かしら記憶に残っていると思っていたからだ。
転校生が顔をしかめて、
「はぁ? 何でそこで驚くのよ? 私は自己紹介したけど、あんたはまだでしょ?」
初日で色々あったから覚えていなくてもおかしくないのかも知れない。あるいは覚える気などないとか。
安堵すると同時に一抹の寂しさも感じなくはない。
377名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/11(日) 23:32:06 ID:???
「あ……そ、そうだね。ごめん。僕は碇シンジ。あの家に住んでるんだ」
僕は自分の家を指差した。
アスカは視線をそちらに移すと、少しの間じっと見つめた。
「あら。私んちの隣なんだ」
「やっぱりそうだったんだ」
「やっぱりって何よ」
「いや、僕が帰ってきたとき、ちょうど引越し屋さんが出てくところだったから」
「ふーん。そ。ま、隣に越して来たのも何かのよしみだし、仲良くしてあげるわ」
「はぁ……」
僕は少し呆気に取られた。何て言えばいいのだろうか。光栄です女王さま、とでも?
「なーんて言うと思ったら大間違いよ!」
「え、ええっ?」
「いくら私が可愛いからって、ストーカーみたいな真似は困るんだから! 今のうちに言っておくわ!」
転校生はそう言うと腕を組んで僕を睨みつけた。
「しないよそんなこと!」
僕はむっとして答えた。何なんだ一体。初対面でこんなこと言うか? 普通。
「はっ! どーだか。朝なんか私が出てくるの待ったりするんじゃないの?
で、たまたま今出てきたところなんだ……とか何とか言っちゃりしてさー」
「しないって! 何で僕がそんなことを」
転校生はそこで嫌な笑いを――何かたくらんでるような笑みを見せた。
「でも、私のお尻は気になったんでしょ?」
「ち、違うよ! あれは全然違う!」
僕は真っ赤になって反論した。やっぱり覚えていた。というか、冷静に考えると、
今日のことなんだから覚えていて当たり前だ。
しかし僕は今日何回赤くなって、何回この台詞を言っただろうか?
378名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/11(日) 23:33:16 ID:???
「じゃあ何よ」
ずい、と彼女は一歩前に出た。僕は思わず後ろに仰け反る。
「何よ」
吐息がかかるほど接近してくる。何でこんなに距離を詰めてくるんだろう?
「何なのよ!」
「う……その、僕の横を通り過ぎるときに、君がバカシンジって言ったような気がして……」
僕は本当のことを言うつもりなんてなかった。絶対おかしいと思われるに決まってるから。
しかし、彼女の迫力に負けてつい言葉が押し出されてしまっていた。しまったと思っても遅い。
転校生は一瞬、探るような目で僕を見た。そして、
「はぁ? なぁんで私があんたの名前を知ってるのよ! あんた妄想癖でもあるんじゃないの?」
信じられない、というように後ずさって首を振った。
「イヤぁぁ! こんな妄想癖のあるヘンタイの隣に住むなんて!」
「だ、だから気がしたって言っただろ! 僕の聞き違いだよ!」
「ふーん。何でそういう聞き違いをしたのかしら?」
「えっ? そ、それは……君がきっと似てる言葉を言ったから……」
いつの間にか全身汗びっしょりになっていた。何だってこういう羽目に陥ったのだろう?
「本当は私のことが気になったんじゃないのぉ?」
「そんなことないよ! 全然気になってなんかないさ」
「はぁ? 何? 私には魅力がないって言いたいわけ? ひっどーい」
転校生はわざとらしく傷ついた表情をつくった。
「転校してきたばっかりで心細い思いをしているか弱い女の子にそんなこと言っちゃうんだ、碇君て。
私すっごい傷ついちゃった。明日から不登校になっちゃうかも。それで夜遊びするようになって
出会い系サイトで会ったタチの悪い男にだまされてひどい目に遭うんだ。最後は手首を切って自殺しちゃうんだわ。
あーもう可哀そう! 可哀そうなアスカ! こんな男と同じクラスになったばっかりに……」
「な、何でそういう展開になるんだよ」
僕はF1のレースに突然放り込まれた免許とりたてのドライバーみたいに唖然とした。
379名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/11(日) 23:34:33 ID:???
「こういうときはどうするの? 無神経な言葉で女の子の繊細なハートに傷をつけたときは?」
「どうするって……」
僕は心底困って立ちすくんだ。はっきり言って、これほど困り果てたことは近年記憶にない。
「謝るんでしょっ! このバカ!」
彼女は人差し指をびしっと僕の鼻先につきつけた。
僕は反論しようと口を開きかけて――諦めた。
僕は諦めのいい方だし、仮にギネス級に諦めが悪い人でもこの場はこうするだろう。
「……すいませんでした、惣流さん」
「なんか心がこもってないわねー。ま、でも許したげるわ」
転校生は腰に手を当て、ツンと顎を反らせて勝ち誇るように言った。
それは彼女にとても似合う仕草で、悔しいけれど僕は少し見とれてしまった。
彼女はそれから突然何事もなかったように、「あ、それから私のことはアスカでいいわよ」と言った。
「惣流さんなんて気持ち悪いし。私もあんたのことシンジって呼ぶから」
「え……う、うん。分かったよ」
やはり外国人というか帰国子女はこんな感じなのだろうか。
いくらクラスメートとはいえ、今日会ったばかりなのに名前で呼び合うなんて僕は違和感があるけど。
「じゃ、ね」
転校生は――いや、アスカはそう言うと、自分の家に向かって走り出した。
玄関のところで急に立ち止まると、こちらを振り向いてあっかんべーをして叫んだ。
「バイバイ、バ・カ・シ・ン・ジ!」
「……バイバイ、そ……アスカ」
僕は深いため息をついた。台風みたいな女の子だ。台風じゃなくてハリケーンでもサイクロンでも
トルネードでもいいけど、規模は超弩級なのは間違いない。
まったく、どこがおしとやかだって? 彼女の性格にはおしとやかの「お」の字も見当たらないじゃないか。
やはり僕が言った通りだ。別に予想が当たっても全然嬉しくないけど……。
とにかくこれから先が思いやられてならない。
取りあえず明日の朝は絶対に鉢合わせにならないように気をつけよう。
380名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/11(日) 23:35:36 ID:???

僕は家に入ろうとして、突然、違和感を覚えた。
彼女は何故あっちから、つまり彼女の家とは逆の方向から来たのだろうか?
僕と話したあとどこかに行くこともなく、自分の家に入っていった。
ひょっとしたら誰か待っていた――?
いや。
今日の僕はちょっとひどい。
全部自分に都合のいい方に考えている。ホントに、一体どうしたんだろう。
僕は肩を落とし、玄関をドアを開けて力なく「ただいま」と言った。
381名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/11(日) 23:36:29 ID:???
4’.

助かった。危ないところだったわ。
やっぱりこの道で間違ってなかったんだ。
道に迷ってたこと、バレてないわよね。
家のすぐそばで迷子になったなんて知れたら私の沽券にかかわる。
それにしても。
碇シンジ。
あんないかにも頼りなさそうで、ふわふわしてて、すぐに他人の言いなりになりそうなヤツに
(あいつにそのつもりはなかったとしても、そして偶然としても)助けられるなんて腹が立つ。
……いや、助けられたなんじゃなくて、あんなヤツでも役に立ったと考えればいっか。
ん。
役に立つ。
言いなり。
――そうよ!
私はあることを思いついた。
あいつを――碇シンジを私の……。
日本の生活における、唯一の悩みの種に解決の見通しがついて、私は一気に機嫌が良くなった。
私はほくそ笑みながら玄関のドアを開けて「ただいま!」と言った。
382名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/12(月) 01:22:51 ID:???
383名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/12(月) 01:24:42 ID:???
ワックスワックス
384名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/12(月) 01:59:49 ID:???
>>370-374
ゲンドウがアスカを呼び捨てにするのが、LAS慣れしている俺には違和感w
385名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/12(月) 02:10:51 ID:???
>>384
実は貞エヴァで一回アスカって呼んでるんだぜ・・・
386名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/12(月) 04:41:33 ID:???
投下が続いて嬉しい・゜・(ノД`)・゜・。
387名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/12(月) 08:18:34 ID:???
投下神両名まじGJです
ニヤニヤとまらんwww
388名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/12(月) 08:52:47 ID:???

  ____,,... -‐ _ニ-=''7 。. +    
_二--‐‐='''" \/. .* ☆      >>376-381
  |.  σ |-/σ | +★ キタワァ !!
ー-\,.ヘ  レ' ''/ノ
389名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/12(月) 09:25:37 ID:???
「〜生きる道」は前編だけの方がオチてたな。
390名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/12(月) 19:50:15 ID:???
転校生アスカいい!
391いつか名無しさんが:2008/05/12(月) 21:05:06 ID:???
>>389
正直反論できない
次作も読み返したがつまらない
しかし懲りずに投下する
後悔はしていない

【これがアスカの生きる道!葛城三佐の憂鬱編】


あーあ、やんなっちゃう。もう十一時過ぎ。昇進するほど仕事が
増えるって本当ね。今日だってアホな部下のつまらないミスで
あわや泊まり込みかと思っちゃった。でも嫌な顔もできないし
ミスしたアホ部下の肩を叩いて「気にしないで。次にしっかり
やればいいのよ!」なんて励ましてやらなきゃいけなかった。
あたしはこれでも「太っ腹な葛城三佐」で通ってるのだ。
イメージを維持するのもつらいわぁ…
あーお腹減った。でも家に帰れば、シンちゃんがご飯を用意
してくれてるはず。あの子は本当に気がきいていて「これと
これはレンジで何分温めて、これは温めずにそのまま。冷蔵庫
に缶ビールが冷やしてあります」なんてわざわざメモして
置いといてくれる。あーシンちゃんがお嫁に欲しい…

そういえば、婚約以来アスカは、家でも必要以上にシンジに
ベタベタするようになった。シンジが立てば立ち、座れば
隣に座り、トイレにまでついていこうとして追い払われて
いたっけ。少々目障りだったけど、アスカの気持ちもわかる。
ずっと欲しかったものが手に入ると、必要が無くても何度も
取り出して、なくなっていないか確かめたくなる。それを
持っていなかった頃の自分に戻りたくないから。あの子も
シンジがどこへも行かないように、一生懸命見張っている
んだろう。初めて恋人を持ったときのドキドキとソワソワは
あたしにも経験がある。だから見逃してやった。
392いつか名無しさんが:2008/05/12(月) 21:06:54 ID:???

だけど人の心は変わりやすい。昨日あれほど好きだったものに
今日は興味を無くしたりする。かつて愛したものを愛せなく
なっていることに気付くのは辛いことだけど、どうしよう
もない。自分を騙すことはできないから。
でもそれを、幸せいっぱいの今のあの子達に言っても仕方ない。

人は誰しも、自分で流した血からしか学ばないから。

ましてあの子達は、初恋が実ったんだ。一生幸せに過ごして
くれれば素晴らしいことだし、あたしはそれを心から願う。
かつて、あの子達に殺し合いを教えるのがあたしの仕事だった。
だから、今度はあの子達に人を愛することを学んでほしい。
退役後もあの子達と暮らしたのも、アスカの恋の成就を応援
したのもそのため。もっともあの子は、あたしが応援する
までもなく、持ち前の行動力で鮮やかにシンジを手に入れて
しまった。あとは、あの子達が高校を卒業するまで一年
足らず。それであたしの仕事の続きも終わる。

マンションの駐車場にクルマを停めて見上げる。あたしの
部屋は明かりが消えている。あいつらは寝たみたい。少し
寂しかったけど、あいつらは明日も学校だ。あたしは明日は
遅出と決めている。
393いつか名無しさんが:2008/05/12(月) 21:08:52 ID:???

起こすと可哀相だから、カードキーでドアを開ける。やれやれ、
愛しの我が家にやっとご帰還か。あーブーツなんか履いて
出るんじゃなかった。脱ぐのも面倒臭い。
ブーツを脱ぎ捨ててリビングに向かうあたしの耳に遠い悲鳴
が届いた。反射的に腰を落として身構える。いけない、銃が
ない。バッグからペンナイフを取り出す。こんなものでも
素手よりはマシ。気配は…シンちゃんの部屋!油断なく
耳を澄ます。
「あん…シンジ…シンジ、好き…」


ア ホ ク サ ッ !
あたしが遅いのをいいことにラブラブかい!どうしてくれよう
かと思ったけど、あたしも大人だ。二人の愛を優しく見守る
のが大人の態度ってもんよ。しょうがないから見逃してやるか。


でもやっぱりムカつくので邪魔してやることにした。わざと
大きな音を立ててリビングのドアを開け、バッグを乱暴に
ほうり出し、テレビをでっかい音で鳴らしてやった。図太い
アスカはともかく、シンジはとても続けていられないはず。

案の定、シンジが部屋から飛び出してきた。精一杯平静を
装って、ニッコリまぶしい作り笑顔で。
「ミ、ミサトさん、お帰りなさい!すぐにご飯温めますから」
ふふん、カワイイやつ。首筋がキスマークだらけじゃない。
あの小娘、ベッドの上でも積極的ね。あるいはシンジへの
いたずらか。多分、両方だ。
394いつか名無しさんが:2008/05/12(月) 21:11:15 ID:???

小娘が、こっそりシンジの部屋を出て自分の部屋に向かうのが
見えた。逃がさないわよん。
「アスカ、何してんの?こっち来なさいよ!」
小娘が渋々やって来た。椅子に座り、ふて腐れる。カワイク
ないやつ。どうしてくれようか。
そこであたしは小娘をマジマジと見た。コイツ、以前から
ちょっとは可愛かったが、最近かなりキレイになって来た。
白い肌が上気して薄桃色に染まっている。これじゃシンジも
イチコロだわなぁ。
「アスカ、聞きたいことがあったの。エッチする時シンちゃん
は、ちゃんとゴム付けてる?」
ガチャーン!シンジが茶碗を取り落とした。ホントにカワイイ
子ねアンタは。カワイクない小娘はますますふて腐れて
「付けてるわよ!」
「そう、よかった。シンちゃんには、ちゃんと避妊するように
言っといたんだけど、あなたも気をつけなきゃダメよ。あなた
自身の体のことなんだから」
「あっあのミサトさん、ご飯出来ました。どうぞ…」
「まぁシンちゃんありがとう。あらーおいしいわ。ホントに
シンちゃんはよく出来た子ねぇ。いいダンナさんになれる
わよぉ。もしアスカに捨てられたら、あたしがお嫁に貰って
あげるから、いつでも帰ってらっしゃい」
「何よぉミサト!あたし達が何しようとカンケーないじゃない!」
「アスカ、聞きなさい。あんたは、もうシンジは自分のものだと
勝ち誇ってるけど、あまり調子に乗ると足元をすくわれるわよ。
所詮あんた達はまだ親掛かりの身分。あまり図に乗ると、痛い
目を見てシンちゃんを失う羽目になるかもね」
395いつか名無しさんが:2008/05/12(月) 21:13:07 ID:???

「あたしは、誰が何と言おうとシンジのお嫁さんになるの!」
「ねぇアスカ、あたしはあんたが好き。実の妹みたいに感じ
てるの。だから姉として言わせてもらえば、あんたは危なっ
かし過ぎ。突っ走るだけでブレーキを踏まなければ、いずれ
崖から落ちるわよ」
「…知らない!もう寝る!」
小娘は案の定ブチ切れて部屋に引っ込んだ。困り顔のシンジ。
「ねぇシンちゃん。そのうちアスカが『赤ちゃん出来てもいい
から…』なんて誘ってきても、絶対乗っちゃダメよ。あの子が
突っ走るのを止めるのがあんたの役目。それが結局あの子の
ためにもなるんだから」
「…はい」
「あの子はとてもいい子よ。あんたもとてもいい子。あたしは
あんた達に、どうしても幸せになって欲しいの。しっかり
しなさいシンジ」
「…努力します」
「わかったらもう寝なさい。あとエッチは控え目にね!」
「……お休みなさい、ミサト姉さん」
「…バカ」

パタパタ バタン

ふん、シンジにどこまでやれるか見物ね。いけないキスマーク
を注意してやるのを忘れてた。まあいいや。文句はアスカに
どうぞ。あーあ、あたしも幸せになりたーい。あたしを
さらって逃げてくれる王子様はどこにいるのぉ…
396名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/13(火) 01:50:51 ID:???
>>391-395
ミサトさん視点にすることでこれまでのと大分印象が変わりましたね
エヴァっぽいってゆうか

しかし論点はぶれてない
素晴らしいと思います
GJです
397名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/13(火) 05:59:03 ID:???
やっぱりムカつくミサトさんいいよミサトさん
398名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/13(火) 07:09:56 ID:???
LAMSの予感!!
すねてるミサトさんかわいいよ
GJです
399名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/13(火) 17:27:43 ID:???
うん、なんかいい
LASってシンジのキャラがくずれること多いけどそうでもないみたいで安心したw
400いつか名無しさんが:2008/05/13(火) 22:18:31 ID:???
【これがアスカの生きる道!暁の性獣編】


ふと目が覚めた。まだ暗い。あたしは枕元の、お気に入りの
クマのぬいぐるみ(名前:シンジ)を探した。ない。ないよぉ。
あ、ここシンジの部屋だ。エッチして、そのまま寝ちゃった
んだ。いま何時だろう。シンジの目覚まし時計は三時過ぎだ。
あたしは体を起こして部屋を見回した。チェロのケース、オー
ディオ、壁にはチェロを弾くハゲオヤジのポスター。カザルス
って有名な人?
いつもは片付いた部屋だけど、今はあたしとシンジのパジャマ
やら下着やらが脱ぎ散らかされてる。コイツが目を覚ます前に
下着は回収しとかなきゃ。あたしだって、下着を彼氏の目に
さらさないぐらいの恥じらいはある。シミが付いてたら
マズイからな。いけない、シンジが目を覚ましちゃう…

大丈夫だ、グースカ寝てる。蹴飛ばしても起きそうにない。
ホントに蹴飛ばして起こしてやろうか。
ふとシンジの寝顔を見る。三年ちょっとの付き合いの間に
背が伸び、たくましくなった。腕太いなぁ。今本気で喧嘩
したら、かなわないんだろうな。でも、無防備な寝顔には、
初めて会った頃の、女みたいな顔の面影が残ってる。こうして
見るとわりとカワイイかも。コイツ、あたしのもんなんだよな?
なんか実感がわかないなぁ。コイツと一生いっしょなのか。
401いつか名無しさんが:2008/05/13(火) 22:19:36 ID:???
寒っ。って素っ裸じゃん。あたしはそっとベッドを降り、
ブラとショーツを拾って着けた。そういやコイツ、脱がすの
上手くなったよなぁ。あたしを抱きしめて、キスしながら
ブラを外す手際はなかなかだった。忘れもしない初めての時、
コイツは焦って、あたしのここ一番の勝負ブラのホックを
壊しやがったのだ。おかげで記念すべき初体験が、ドタバタ
ギャグになってしまった。当然ケリを入れた後で、高いブラを
買わせてやった。むろん、コイツを女性用下着売り場に連れて
行って、女性客の視線にさらされてオドオドするのを見たか
っただけだ。
そんなシンジも慣れてきたのか、最近ケダモノの本性を現す
ようになった。おとなしそうな顔して、コイツがあんなに
スケベだとは思わなかった。何回すれば気が済むんだか。
まあ、無い知恵を絞ってあの手この手であたしを誘う必死さが
カワイイから許す。でもこれをネタにからかってやりたいなぁ。
そうだ、あだ名を付けてやろう。「性獣」「怪奇淫欲男」…
…ベタ過ぎる。「初号機発進!(性的な意味で)」…うーん
もっとファンキーな…そうだ「SEX MACHINE」なんてどう
だろう。とってもファンキーじゃない?

パジャマを着終わった。シンジの下着やパジャマをきちんと
たたんで、サイドテーブルの上に置いといてやる。あたしは
もう、ガールフレンドでも恋人でもなく、婚約者だから。
これぐらいはできるとこを見せとかなくちゃ。炊事や洗濯も
覚えなきゃなぁ。家事は好きじゃないけど、一生シンジに
やらせっ放しって訳には行かないことぐらい、あたしにも
分かる。

あーあ、もうひと寝しよ。シンジの隣に潜り込む。あったかい。
SEX MACHINEシンジ、おやすみー…
402名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/13(火) 22:58:41 ID:???
輪ロスww
せくすましーんwww

グッジョブでした
403名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/13(火) 23:38:43 ID:???
SEXマシーンてJBかよw
404名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/13(火) 23:39:53 ID:???
セックスマシーンてw
なんか「HAHAHA」って笑いそうだw
405名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 01:49:30 ID:???
ランボー並にレベルが落ちていったな、続編。
406名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 05:05:46 ID:???
ランボーもこのスレも見なきゃいいんじゃないかな
407名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 05:38:53 ID:???
>>406
感想を述べるのはNG?
408名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 07:06:00 ID:???
批判がNG
褒める言葉以外は書かないほうが平和
409名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 07:18:17 ID:???
批判にならない程度のアドバイスだよな。頭ごなしの否定は何にもならないし
大人ならできるハズだ
410名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 11:18:17 ID:???
置いときますね
壁|ω・)つ【褒めて育てる】
411名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 13:58:42 ID:???
以前なら乱獲しても良かったが、今はワシントン条約で保護しなきゃいけないってこった。
412名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 14:08:52 ID:???
せっかく投下が続いて嬉しいのに、喧嘩はやめてよー
・゜・(ノД`)・゜・。
413名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 18:37:09 ID:???
GJも本心からではないってことなのね。>ALL
414名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 19:07:45 ID:???
>>413
まあオマイのせいで、また投下が途切れるのは確実だがな
415名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 19:48:55 ID:???
個人的には凄いGJ
おもしろいと思うよ。
「初号機発進!(性的な意味で)」でちょっと吹いたし
416名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 20:30:17 ID:???
>>413
職人が礼儀正しい内は褒めて伸ばす。それが礼儀じゃね?
たたくのは何時でも出来る訳だし。
405みたいなのに反応するのは、過剰反応だが、
お前のその発言は無い。
417名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 20:51:44 ID:???
おいおい喧嘩はよしてくれ。
俺の尻でも使って落ち着くんだ。
418名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 22:15:23 ID:???
まあこれでもみて落ち着こうぜ

http://www.youtube.com/watch?v=OlAPTCX4vt8&feature=related
419名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/14(水) 22:23:49 ID:???
トリビアやりたい放題だなw
420名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/15(木) 00:08:48 ID:aTLw3WjI
421名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/15(木) 01:09:50 ID:???
>>416
まぁ、面白かろうがなかろうが、GJするのは礼儀だわな。
挨拶みたいなもの。
422名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/15(木) 01:14:59 ID:???
すげーツボで最高=GJ
俺のツボにはハマらんかったが良作だったんジャマイカ=乙
イマイチ=スルー

て、感じで使い分けてる
423名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/15(木) 05:51:53 ID:???
生きる道の人も転校生の人も、懲りずに投下してください
待ってます・゜・(ノД`)・゜・。
424名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/15(木) 08:28:29 ID:???
・高校生でやりまくりはdらでお腹いっぱい
・ミサトがシンジを呼び捨て

上は個人的なものだから無視してもいいけど
下は本編で君付けだったから気になる
425名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/15(木) 10:31:02 ID:???
いつものパターンだな
投下が続くと叩き派擁護派で荒れて過疎る
426名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/15(木) 11:11:51 ID:???
今このスレって転校生アスカと生きる道とパッチンの3人がいるんだろ?

いやはやこの調子で頼むよマジで。良作投下する人が複数いるってのは本当にいいことだ
427名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/15(木) 15:58:01 ID:???
>>400
個人的には、こういう何気ない作品が好きだな。アスカがマリッジブルー
みたいな感じでいい。
428名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/15(木) 17:22:40 ID:???
>>381
続編期待してるよ
429名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/15(木) 21:53:11 ID:???
>>427
>>400を「何気ない」と評する感性が危ないw
430いつか名無しさんが:2008/05/15(木) 23:22:32 ID:???
一人でも喜んでくれる人がいれば投下します。少し目先を変えてみました。

【これがアスカの生きる道!シンジ STRIKES BACK!編】


「ただいまー」
「遅いよーシンジ。買い物って何だったの?」
葛城家のリビング。シンジ君は一冊の雑誌をアスカさんに渡しました。
「旅行雑誌?『ドイツ・オーストリー特集』?」
「そう。アスカと一緒に見たいと思ってさ」
「へー」
顔を寄せ合って雑誌を見る二人。
「ザルツブルクは行ったことあるわ。『塩の聖堂』は知らないけど」
「ねぇ、このノイシュバンシュタイン城ってすごいねー」
「行ったことある!すごいのよーお菓子の城みたいで」
と言いながら少し寂しげなアスカさん。
「…ママと行ったの」
亡き母を思い出してセンチメンタルなアスカさん。その肩をそっと
抱いてやる優しいシンジ君でした。ページをめくるとドイツ料理紹介。
「ウィンナー・シュニッツェル?トンカツみたいだね」
「バカねーあんた、トンカツがシュニッツェルの真似なのよ」
「そうなんだ。アイスバインとかすごいなぁ。僕も食べてみたいなぁ
ドイツ料理」
「作ればいいじゃない」
「でも作ったことないしなぁ。そうだ!アスカが作れば?」
「なななんであたしが!?」
「だってドイツの人でしょアスカ?ドイツ料理ぐらい作れるよねぇ」
「あああたり前じゃないの!」
「それに僕…アスカの手料理が食べたいなぁ」
と言いながら、上目使いでおねだりポーズのシンジ君。
431いつか名無しさんが:2008/05/15(木) 23:24:17 ID:???
「しし仕方ないわね。このアスカ様の腕前を見せてやろうじゃない」
「やったぁ。いつがいいかなぁ。じゃ、次の日曜日の昼食はアスカに
任せるよ!」
「ままま任せなさい!あたしがすごいの作っちゃうから見てなさい」
「楽しみにしてるよ!あっ僕、夕飯の用意しなきゃ」
とキッチンに向かうシンジ君。アスカさんは雑誌を読むふりをして
ますが、脂汗ダラダラで目が泳いでる。それを横目に見て、ニヤリと
悪魔の微笑みを浮かべるシンジ君。そう、シンジ君のリベンジでした。
アスカさんに手玉に取られ、親公認の婚約者にさせられたシンジ君。
アスカさんのことは嫌いじゃないが、強引過ぎるやり方に怒って
企んだリベンジが「アスカに料理を作らせる」でした。もちろん
雑誌はネタ振りのためにわざわざ買ってきた。
しかし多少気がとがめるシンジ君。二人で雑誌を見た時の、アスカ
さんの楽しげな表情、ママを思い出しての淋しげな表情を見て
「…新婚旅行はドイツにしようかな」などと考える、鬼に徹し切れ
ないシンジ君でした。

翌日の昼休み、アスカさんは親友ヒカリさんにすがります。
「お願いヒカリ!シンジに手料理作るって約束しちゃったの。
料理教えて!」
「へー碇君が?そりゃ後には引けないわねぇ婚約者としては」
さて放課後、
「どうしたのアスカ?帰ろうよ」
「ごめん、あたしヒカリの家に行くの。夕飯もヒカリん家でご馳走
になるから」
「ふーん。早く帰ってきてね」
ヒカリさんと連れ立って帰るアスカさんを見て、ニヤリと笑うシンジ君。
アスカさんがヒカリさんに頼るのも想定済みでした。
432いつか名無しさんが:2008/05/15(木) 23:26:34 ID:???
スーパーで材料を買い込み、洞木家の台所に来たアスカさん。
「じゃアスカ、レシピは?」
「うん、これ…」
と一枚の紙を差し出すアスカさん。昨夜パソコンで必死に検索して
探した「なるべく簡単で見映えのいいドイツ料理」でした。
「『南独風豚ヒレ肉とジャガ芋のホワイトソース掛け』か。じゃ早速」
ジャガ芋の皮を剥くアスカさんとヒカリさん。ヒカリさんの見事な
手際に比べ、危なっかしいアスカさん。皮どころか実まで削って、
剥いたジャガ芋は大分小さくなっちゃいました。
「難しいよぉ…」
「うーん急には無理ねぇ。皮剥き用の器具使えば?」
「そうする…」
豚肉を一口大に切り、フライパンで炒めます。狐色に香ばしく
焼き上がったら、いったん皿に上げ、今度はジャガ芋の薄切りと
玉葱のみじん切りを炒め合わせます。さて肝心のホワイトソース。
小麦粉をバターで炒め、牛乳で伸ばします。少しでも手際が悪いと
ダマになったり粉っぽくなったりする、素人料理の難関です。
皿に肉と芋を盛り合わせ、ホワイトソースをかけます。最後に
パプリカを散らして出来上がり!
「…おいしーい!」
「うん、おいしいねこれ。これなら碇君もイチコロよ!」
「うん、あたし頑張る!」
「じゃ、次はアスカが一人で作るのよ」
「えええ、一人で?」
「一人でやらなきゃ練習にならないでしょ!」
普段は優しいヒカリさんも、料理の事となると鬼になります。
ヒカリさんにびしびしシゴかれるアスカさん、どうなりますやら。
433いつか名無しさんが:2008/05/15(木) 23:29:19 ID:???
いよいよ当日。アスカさんは朝からキッチンにこもり悪戦苦闘。
「キャーッ!」ガチャーン
「どうしたのアスカ、大丈夫?」
「大丈夫だから、あっち行っててよ!」
キッチンは阿鼻叫喚の巷。シンジ君も気が気じゃない。アスカさんも
心配だが、キッチンがもっと心配です。何しろキッチンはシンジ君の
聖域。ここにいればアスカさんもミサトさんも近寄らない禁猟区。
唯一の安らぎの場で、アスカさんが破壊の限りを尽くしてるんだから
たまりません。しかしこれもアスカのため、将来のため。アスカさん
に料理をさせるのは、何もリベンジのためだけじゃありません。
シンジ君だって、自分が一生料理係じゃたまりませんからね。

「…お待たせ」
ドイツ風ライ麦パンを用意して待ち構えるシンジ君、ドイツビール
を用意して待ち構えるミサトさんの前に、アスカさんが料理を運ん
できました。必死のアスカさん、もうフラフラです。
「いただきまーす!」
と声を揃えたシンジ君とミサトさん。固唾を飲んで見守るアスカさん。
「うん、おいしい!おいしいよアスカ」
「ホント?…よかった」
シンジ君の笑顔に胸を撫で下ろすアスカさん。しかし、ミサトさん
を目にして凍り付きます。最近気になる目尻の小皺が一気に増え
そうな表情。「口の中のものを飲み込みたいんだけど飲み込めない」
みたいな悲痛な顔のミサトさん。それを尻目に、自分の分を残さず
平らげたシンジ君、
「あれ、もう食べないのミサトさん。もらっていい?」
と、ミサトさんの分までおいしそうに食べるシンジ君。心なしか、
シンジ君の口元が引きつり、額に脂汗が浮かんでいます。
434いつか名無しさんが:2008/05/15(木) 23:31:58 ID:???
「ご馳走様!おいしかったよアスカ!後片付けは僕がやるから
座っててよ」
とキッチンに飛び込むシンジ君。しかしそこの惨状からの復旧は、
エルサレム大神殿の再建にも匹敵する難事業と思われました。

「ちょっとアスカ、何よあれは」
ミサトさんが小声でささやきます。
「肉は焦げてるし、芋は半生で固いし」
「う…」
とがっくり落ち込むアスカさん。
「でも、あれを笑顔で二人分食べちゃうなんて、シンちゃん凄い
精神力よねー。こりゃやっぱり愛だろ愛。この幸せモンが」
というミサトさんに、答える気力もないアスカさんでした。

深夜、シンジ君の部屋を訪れるアスカさん。
「あれアスカ、どうしたの」
「ごめん…あたし、ヒカリに料理教わって、頑張ったんだけど…」
「うん、火加減がもう一つだったみたいだね。でも、ホワイト
ソースはよかったよ」
「ホント?」
「うん、ホワイトソースって、すぐ粉臭くなって難しいんだよね。
あれがちゃんと作れるんだから、アスカは料理のセンスがあると思う」
「ホントにホントに!?ねぇホントに?」
「本当さ。後は、何度も料理をして慣れれば、アスカは絶対料理が
上手になると思う」
「そうかぁ。あたし、頑張ってみる」
「また必ず作ってね。約束だよ」
おやすみのキスをしてもらって、ウキウキで部屋に戻るアスカさん。
溜息をついて座ったシンジ君の机には、新三共胃腸薬の小瓶が
置いてありました。
ここで一句
『辛くとも 褒めて育てる アスカかな』  シンジ
435名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/16(金) 01:36:07 ID:???
我田引水キモス
436名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/16(金) 01:52:20 ID:???
>>435
人に面白いものを読まそうと努力してる時点で
何も書かずに文句だけのお前よりはマシ。
結果的に駄作であったとしてもだ。
437名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/16(金) 03:02:31 ID:???
俺、好きだけどなぁ・・・生きる道。
438名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/16(金) 03:21:04 ID:???
>>437
荒れるから、あんま言いたくなけど良作では無い。
好みもあるだろうけど、大半の人はスムーズに情景を想像しにくい
文章だとは思う。

他に気になるのは視点が毎回変わるってて世界観に入りにくい。
後、個人的に酷いと思ったのは、
>>430-434
だと地の文でのアスカさんやシンジ君ってギャグ風使ってるのに
最初が普通のギャグじゃない会話文から入り、状況説明も無いのは・・・。

430の最初に433当たりで書いてる計画云々を匂わす言葉を一言二言
入れとけば、また違ったと思う。

ただ、ちゃんと文章を推敲してるだろうって所は凄いと思う。
少なくとも今までで文法的に物凄いおかしかったりとか
誤字ってのが、ほとんど無い。
また一行一行も読み易い様に短めで区切ってるし話の区切れでは行間
ちゃんと空けてる。
こういう風に、きちんと読む人のことを考えてる姿勢ってのはマジで尊敬出来る。
439いつか名無しさんが:2008/05/16(金) 05:36:44 ID:???
「生きる道」作者です。我田引水というか、>>410さんの書き込みを
見て思いついたネタなので、そう書きました。
>>438
細かい批評ありがとうございます。参考にしてまたがんばります。
440名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/16(金) 08:20:36 ID:???
ガムバレ
441名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/16(金) 09:06:19 ID:???
>>439
GJ!「アスカの初めてのお料理」ってネタを思いつく人はいるだろうけど、実際に
書ききれる人はそんなにいないと思う。乙でした。
442名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/16(金) 13:07:45 ID:???
>>434
GJ
30点。(オチがなければ70点)
現実の鬱憤を作品中に持ち込んだのが見透かせると、作品全体が褪せる。
443名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/16(金) 19:03:16 ID:???
べつにおめえらの講評とか誰も読んで納得しねえよ
書き込むなら感想程度にしろよ
444名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 00:36:40 ID:???
>>381

5.

母さんも父さんも帰っていて、食事の準備をしているところだった。
「あらおかえりシンジ。着替えて手洗ってきなさい。ご飯、もうできるから」
僕は生返事をして母さんの言うとおりにする。
「知ってる? お隣、やっと入居したのよ」
母さんがご飯をよそりながら言った。
「ああ、あれね。今日うちのクラスに転校してきた子が住むんだ」
「ほう、そうなのか」と、相変わらずのんびりした父の声。
「男の子? 女の子?」
母さんは興味深々の様子だ。
「えーと、女の子だけど」
それから僕は転校生の情報を話した。クォーターということ、ドイツ育ちということ、
ドイツでは大学を卒業してるということ。とんでもない性格をしていること――は口にしなかった。
僕は慎み深い性格ということになっている。
「可愛い?」
「まぁ……可愛いと言う人が多いと思うよ」
僕は微妙な言い回しで表現した。この話題には踏み込まないほうがいいと思ったから。
「その子、今度うちに呼びなさい」だしぬけに父さんが言った。
「ぶっ」
僕は危うくすすっていた味噌汁を噴き出しそうになった。
445名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 00:40:47 ID:???
「な、何言ってるんだよ!」
「シンジが気になってるという子は俺も気になる」
「僕は気になってるなんて一言も言ってないじゃないか!」
「あら、別にいいじゃない。お隣に引っ越してきたことだし、この機会に仲良くすれば」
「そんな……男ならともかく、女の子を家に呼ぶなんて、気軽に出来ることじゃないよ」
「何でだ?」
「何でって……」
僕は返事に窮した。父さんも母さんも僕の年頃の子が取る行動を分かってない。
バレたら学校でどんな風に言われることか。いや、そもそも――
「だいいち、断られるよ」
普通に断られるんじゃない。さんざん罵倒されたあげく断られるのだ。
おまけに周囲に言いふらされて、とんでもない恥をかく羽目になる。
「そんなことないだろう。外国育ちだからそういうのはむしろ歓迎のはずだ」
「そんなステレオタイプな……」
「そうそう。日本に来て色々勝手が分からないことも多いでしょうし。お隣同士、助け合わなきゃ」
母さんはなぜかすごく嬉しそうに言った。
「ちょ、ちょっと母さん。勝手なことしないでよ」
僕は嫌な予感がした。母さんの性格を考えると、勝手に招待してしまうのはじゅうぶん有り得ることだ。
(結論からいうと僕はそんな心配はする必要はなかった。ただし嫌な予感自体は的中した)
「分かったわ、シンジがそう言うなら。でも残念ね」
母さんががっかりした顔で言った。
「そうだ。俺も残念だ」
父さんもじゅうぶんに注意して見ればがっかりした痕跡がなくもない顔で言った。
二人があまり残念そうだったから、僕は少し考えて「まぁ、仲良くなったら呼ぶよ」と言った。
これは我ながら名案だ。逆に言えば、仲良くならなければ家に来ることはない。
僕と転校生が仲良くなるなんて起こりえないから、彼女が家に来ることはない。
いや、余計なことは考えないでおこう……。
446名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 00:44:12 ID:???

テレビを少し見たあと(どこかの大富豪が500億を寄付というのがトップニュースだった)
宿題をやって、予定通り早めに寝ることにした。
僕の部屋はニ階にある。
CDプレーヤーの電源を入れて再生ボタンを押した。取りあえず音楽はかけておくのが僕の習慣だった。
トレイに入っていたのはバッハの「マタイ受難曲」で、思わず笑い出してしまった。
受難! 今日の出来事に出来過ぎなほどぴったりだ。
読みかけの小説でも読もうと本を手に取ったけど、身が入らない。
「惣流アスカ、か……」
ベッドに寝転がって口にした。
不思議なことに、「惣流」より「アスカ」と言ったほうがしっくりくるような気がした。
さっきは会って早々名前で呼び合うなんておかしいと思ってたのに。
きっと、惣流に対して、アスカは珍しくない名前だからだろう。
いや、本当にそうかな。そうと断言できないような気もする。
――まぁいいや。どっちでも。
それにしても今日は本当にヘンな一日だった。
おかしな感覚。
そう、まるで……。
まるで、何だろう。
目蓋が重くなって目を開けてられなくなってきた。
僕は本を置き、電気を消すと、バッハの重厚な音楽を聴きながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。
447名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 00:45:11 ID:???
5’.

食事の用意はできてたけど、パパはまだ帰ってなかった。
「つまんなーい。今日ぐらい早く帰ってきていいのに」
「しょうがないでしょ。新任だし、色々あるのよ。落ち着いたら三人で食事に行きましょう」
「ホント? 私お寿司食べたいなー。何てったって本場だし」
第3新東京市にはスーパーコンピューターMAGIを利用した研究所がいくつかあって、
パパはそのうちの一つ、人工知能研究所に主幹研究員として招かれ来日した。
私たちもそのお供ってわけ。

学校とクラスメートに話題が移って、私はヒカリのことを話した。
「お友達ができて、良かったわね」
「まぁね。何かはじめて会った気がしないのよね」
私はスープを飲もうとしてふと思い出した。
「そう言えば、隣に住んでるのは碇シンジっていってクラスメートなのよ」
「そうなの。いずれにしても挨拶しなきゃいけないわね」
「そのときは私も一緒に行くから声掛けてね」
「あら。その子が気になるの?」
ママがちょっと驚いた顔で言った。ふだん私が同年代の男の子なんかバカにしまくってるからだろう。
「んなわけないでしょ。ま、色々と考えてることがあるのよ」
「……あんまり迷惑をかけないようにね、アスカ」
「私がいつ他人に迷惑をかけたのよ! ヘンなこと言わないでよね、ママ」
「はいはい」
食べ終わってドイツのと同じくらいつまらないテレビ番組を見ていると、パパが帰ってきた。
パパが遅い夕食を摂っている間、私はママにした話をパパにもしてあげた。
パパはにこにこしながら私の話を聞いていた。
448名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 00:47:03 ID:???

それから私は自分の荷物の荷ほどきをして、整理に励んだ。
量が多くてあと数日はかかりそう。
ギブアップ。
すっかり疲れ果てた私は、お風呂に入ってさっさと寝ることにした。

さすがの私も、何だかんだ言って神経を使ったらしい。
ベッドに倒れこむと急に眠気が襲ってきた。
碇シンジ。
ま、私のタイプじゃないけど下僕ぐらいにはしてあげてもいい。
日本での記念すべき下僕第一号。
調子に乗りそうなタイプじゃないみたいだし、ちょうどいいわ。
あんたにふさわしい役目を与えてあげる。
シンジ。
バカシンジ。
――バカシンジ……?
何か大事なことを思い出したような気がした。
だけど、私はまどろみに全身をがっしり掴まれて眠りの沼へ引きずりこまれている最中で、
ここから何かを考えるのは不可能だった。
私はゆっくりと眠りに落ちていった。
449名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 00:48:45 ID:???
きたーーーー!!!!!!
すっげえなこれ
ホントまじで期待
450名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 01:19:08 ID:???
>>443
感想だろww
451名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 01:25:25 ID:???
A‐Story 0




昼と夜ともつかない紅い海の辺(ほとり)で

少年は少女の首を絞める


少年は少女を殺す気だった…


一人で生きて行く為に…


少女は残り僅かに残された力で少年の頬を撫でた

少女は少年を殴りたかったのかも知れない…


頬を撫でられた少年は、手に込めた力を抜くと、せきをきった様に泣き出した…

少女は呟くように…
そして、吐き捨てるように言った

自分の上に乗り泣く少年に視線を向けながら…


『気持ち悪い…』と
452名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 01:37:05 ID:???
A‐Story 01


あれから、どれくらい時間が過ぎたのだろう…

少年は波打ち際で、膝を抱え
ただ、さざ波に耳を傾けて居た…


時間だけが過ぎていく…

少年は、おもむろに立ち上がると

仰向けで倒れてる少女に歩み寄って行った…


少年は、少女の側まで寄ると

少年の手が淡く光り出し

少女の包帯が巻かれて居る部分を撫でた…


優しく

慈しむように…



その手が気持ち良いのだろうか

少女は気持ちよさ気寝息をたてはじめた
453名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 01:48:53 ID:???
A‐Story 1


『ピピピピ…』

目覚まし時計の音で少女は目を覚ました

少女の名前は
惣流・アスカ・ラングレー

この物語のヒロインである


少女の寝起きは良かったのか、背伸びをすると
寝ぼけた頭をなおす為にシャワーを浴びた

シャワーを浴び終わると、ちょうど母親が、朝ごはん作り終えていた

アスカは朝ごはんを口に運びながら時計に目をやった

時計は7時30分を刺していた
アスカは誰に対してでもなく
『そろそろ、あいつを起こしに行かなきゃ…』と呟いた
454名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 02:12:58 ID:???
投下来てるから置いときますね
壁|ω・)つ【2ちゃん全板共通ルール】
・うpは神
・叩きは糞
・荒らしはスルー
455名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 06:41:02 ID:???
神って・・・
悪いところを悪いって言うのは必要なことだろ
456名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 07:51:01 ID:???
おまえ何様だよ・・・
457名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 08:19:15 ID:???
ここが悪い、じゃなくてここはこうした方がいいかも

って具合に悪いところを指摘するだけじゃなくて改善策も書き込めばいいんじゃないかな
458名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 08:37:26 ID:???
エヴァ板は2ちゃん慣れしてない人が多いみたいなんで>>454の解説しときますね。
・うpは神
自分の創作物(イラスト、動画、文章作品など)をうpした人は、制作の労力、
叩かれる危険を冒した勇気等の点で、その作品のデキを別にして、うpしない人
より上に立つ、ということ。叩きに対して「ならオマイがもっと高レベルのをうp汁」
と言えるから。
・叩きは糞
うpは神だが、もちろん作品への評価は自由。ただし、具体的な指摘なしに
「下手」「低レベル」と罵倒するだけなのは叩き。
・荒らしはスルー
荒らしはたいてい「構ってちゃん」なので、無視が最も有効。
459名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 09:37:29 ID:???
>>448
ワックスワックス
460名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 11:19:23 ID:???
>>458
は〜い。ノ
461名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 14:28:06 ID:???
>>459
ちょっwwwwwww
ワッフルワッフル
462名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 17:23:09 ID:???
>>457
良い悪いの判断なんて最終的に個人の趣向の問題になると思う
ここは批評板じゃないんだからそんなのいらんだろ
気に食わない作品はスルーすれば?
463名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 17:56:11 ID:???
>>462
だから、各自が思うことを書けば良いんじゃないの?
464名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 18:10:58 ID:???
だから感想であって講評は書くなって誰かがいってたんじゃねーの?
講評って辞書でひいてみ。感想とはちがうよ
465いつか名無しさんが:2008/05/17(土) 19:47:17 ID:???
しつこく投下します。今回のは時系列的にアレなんで番外編+おまけ
ということで。内容の方は、ちょっとやり過ぎかなとも思いましたが
見逃してやってください。
466いつか名無しさんが:2008/05/17(土) 19:48:42 ID:???
【これがアスカの生きる道!番外編 SWEET SWEET SURRENDER】


その日の喧嘩は最悪だった。一線を越えていた。
「何よあんた!あんたなんかあたしのハダカ見てオナニーしたくせに!
最低よ!」
僕は、以前から思っていたことを全て言うことにした。
「…そう、僕は最低だよ。汚くて醜い最低の人間なんだ」
「…何よ」
「…僕は、ある女の子に出会ったんだ。その娘は初対面から人をバカ
呼ばわりするような子でさ。しかもその娘と同居する羽目になった。
最悪だよね?」
「…何よそれ!あたしのこと!?」
「同居後も、その娘は僕に炊事や洗濯を押し付け、下着まで洗わせた。
そのうえ高飛車な態度で僕を下僕扱いするんだ。そんな子、嫌いに
なって当然だよね?」
「あ、あたしはあんたに嫌われたからって…!」
「だけど、僕はその娘を嫌いになれなかった」
「…!」
「彼女にも色々事情があるとわかった。僕はその娘をずっと見ていた。
そして気付いた。この娘の中に、もう一人いるって」
「…何よそれ!?」
「もう一人は誰なのか考えた。わかった。小さな女の子だって」
「!!」
「彼女の話は聞いていた。子供の頃、一番見たくない、怖いものを
見てしまったって」
「…やめて!」
「それでわかった。その小さな子は、その時から時間が止まって
しまったんだと」
467いつか名無しさんが:2008/05/17(土) 19:51:21 ID:???
「やめて!やめて!」
「その娘は成長し、美人で天才になった。でも、その娘の中には
今でも小さな女の子がいて、寂しいよ、怖いよと泣いているんだ」
「いや!」
「僕は、その小さな子を助けたかった。でも、その子は、強気で
高飛車な天才少女、という仮面を被って、出て来ないんだ」
「…いや」
「その子は、これ以上傷付けられるのを恐れてる。僕は、その子を
助けたい。もう怖がらなくていいと言って抱きしめてやりたい」
「…」
「天才少女は、本当は淋しがり屋で甘えん坊なのに、それを高飛車な
態度で必死に押し隠してる。それが自分の弱点、欠点だと思ってる
からだ。でも、それは間違いだ。淋しがり屋で甘えん坊な時の彼女は
世界で一番素敵な娘なのに。彼女に、寂しいと言って泣かれたら、
僕は彼女を抱きしめてしまう。一生君を守ると誓ってしまう。
なのに、淋しがり屋の彼女は僕の前に現れない。高飛車な仮面を
被って『あんた、あたしの言うことが聞けないの!』って言う。
聞けないよ。だって、それは本当の彼女じゃないから」
「……何よ。あんたそれであたしに勝ったつもり?」
「…彼女の欠点はもう一つある。勝ち負けとか、上下関係で物事を
考える事。勝ったつもりとか、見くだすとか。勝ってどうする?
彼女は僕を信用してない。僕を、自分を傷付ける人間の一人じゃ
ないかと疑ってるんだ。僕は彼女を抱きしめて、もう無理しなくて
いいと言ってあげたいだけなのに」
「…ふ」
「『ふ』?」
「……ふえーん」
彼女は、子供みたいに泣きじゃくり始めた。僕は彼女を抱きしめる。
「いっぱい泣いていいよ。僕が何時間でも抱いているから」
468いつか名無しさんが:2008/05/17(土) 19:52:26 ID:???

彼女は何時間泣いたろう。泣いて泣いて泣きじゃくって、やっと
泣き止んだ時には、外はすっかり暗くなっていた。
僕は体を離して、彼女の顔を見ようとした。でも彼女は、僕の背中に
手を回して離れない。そして言う。
「ダメ。今、たぶんヒドイ顔してるから、見られたくない」
「じゃ、見ないよ」
「ねぇ、あたしでいいの?」
「アスカでなきゃ、イヤだ」
彼女は、また泣き出した。
469いつか名無しさんが:2008/05/17(土) 19:54:24 ID:???
【おまけ STAR CYCLE】


僕はユウジ。大学四年生。卒業も就職もほぼ決まった。ついでに
結婚も決まっている。幼なじみのレイコと、卒業後に結婚する。
で今日は、新居への引っ越しに備えて実家の物置を家捜ししている。
小学校や中学校の卒業アルバムや卒業文集が見つからない。
「あ、これ。まだあったんだ」
箱から出て来たのは一枚のカッターシャツ。相当古いものらしく
黄ばみを通り越して茶色くなっている。小学生の時、この物置で
「宝探し」した時に見つけたんだ。あの頃は汚いシャツに興味など
なく、親に見つからないように、元通りに戻しておいたっけ。
「ユウジ、一休みして冷たいものはどう?」
「あ、おばあちゃん。このシャツ何?」
「それ、おじいちゃんのシャツよ」
「でも、ずいぶん古いみたいだね」
「それはおじいちゃんが中学生の時のだから、もう六十年前のものよ」
「ふーん。何かの記念?」
「あの頃、あたし達はまだ仲のいい友達くらいの間柄だったの。
ある時おじいちゃんと喧嘩しちゃって、悔しいからあたし、おじい
ちゃんの胸に顔を埋めてワンワン泣いてやったの。そしたらおじい
ちゃん、あたしを抱きしめて、僕とお付き合いしてくださいって…
それから、去年おじいちゃんが亡くなるまで、ずっと一緒だったのよ」
「へえ。じゃ、この胸のシミは?」
「あたしの涙と鼻水よ。オホホ」
470いつか名無しさんが:2008/05/17(土) 19:56:06 ID:???
「でも、よく残ってたね」
「おじいちゃんが持ってたの。結婚して、あなたのママが生まれた
頃かしら。タンスの整理をしてたらそれが出て来て、おじいちゃんに
聞いたら、その時のだって。こんな古いもの、取っといてもしょうが
ないじゃないっておじいちゃんに言ったんだけど、君との思い出の
品だからって言うから捨てるに捨てられず、とうとう今日まで」
「へえ、おじいちゃんらしいや」
「それよりユウジ、話があるの。いらっしゃい」
居間に行くと、祖母は古い指輪を出して見せた。
「これはね、おじいちゃんから貰った結婚指輪よ。これ、レイコ
ちゃんにあげるわ」
「えっ、いいの?」
「バカね、いいからあげるんじゃない。さっさとレイコちゃんに
渡してらっしゃい」
まだ学生の身分で、彼女に贈る指輪を買うのに、最後の夏休みは
バイト三昧かと覚悟していただけに、祖母の贈り物は有り難かった。
渡すといっても、彼女の実家は二軒先だから何てことはない。
「レイコ!」
「あ、ユウジ君。どうしたの」
「これ、指輪」
「えーホント?わあ、ピッタリ…でもどうしたの、これ」
「今、おばあちゃんがくれたんだ。今すぐレイコに渡してこいって」
「じゃ、これって…」
「おじいちゃんから貰った指輪だって」
「ダメよ!そんな大切なもの、貰えない」
「いやでも、せっかくくれるって言うんだからさ」
「ダメだったら!」
「…なら、レイコから直接おばあちゃんに言ってよ。レイコも、
うちのおばあちゃんの孫みたいなもんだし」
「昔、二人でイタズラしておばあちゃんに怒られたわね」
471いつか名無しさんが:2008/05/17(土) 19:57:55 ID:???
「おばあちゃん!」
「あらレイコちゃん、どうしたの」
「ダメよこんな大切な指輪。あたし貰えないわ」
「バカねぇ、大切だからあなたにあげるんじゃない」
「…でも」
「じゃ、こうしましょ。あなたがユウジと結婚して、子供ができて
孫ができたら、孫のお嫁さんにそれをあげるといいわ。ね?」
「…わかりました。必ずそうします」
「…あなたもその頃になれば、孫の嫁に指輪をあげたい気持ちが
わかるようになるわ」

翌年、僕らは結婚した。その翌年、男の子が生まれた。おばあちゃんは
ひ孫を抱けるなんて夢のようだと喜んでいた。子供の名前は、おばあ
ちゃんの強い希望で、この子のひいじいちゃんの名前を貰ってシンジ
と名付けた。その名に、妻はすぐに賛成してくれた。彼女も子供の頃、
おじいちゃんに可愛がってもらったから。
「おじいちゃんみたいな優しい子に育ってほしい」
妻の言葉に、おばあちゃんはニッコリ笑ってうなずいた。
おばあちゃんは、ひ孫を抱いた数ヶ月後、眠るように愛するおじい
ちゃんの元に旅立った。

おばあちゃんの葬式の時、一人の女の子が弔問に来ていた。おばあ
ちゃんの知り合いだと言っていたけど、おばあちゃんは、どこで
知り合ったんだろう?青い髪と赤い瞳が印象的な、あの少女と。
【終わり】
472名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 20:18:02 ID:???
>>464
それは一個人の意見に過ぎなく、スレの総意じゃないだろw
473名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/17(土) 21:53:51 ID:???
最後のレイで某94歳LASを思い出した。
474名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/18(日) 00:09:32 ID:???
>>472
誰はおれの意見はスレの総意っていったよ・・・おまえめんどいな・・・
おれもだけど。

ここまできて反論する理由がお互いみあたらんだろw
もうやめよーぜ
475名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/18(日) 13:24:17 ID:???
>>471
一生幸せでよかった・゜・(ノД`)・゜・。
476名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/18(日) 23:23:23 ID:???
投下街
期待してるよー
477名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/20(火) 03:10:12 ID:???
「生きる道」の人お疲れさんです
次回作できたらまたうpしてください

楽しみにしてます
478名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/20(火) 07:28:30 ID:???
>>471
それって何人目?
479名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/21(水) 04:58:52 ID:???
>>429
亀レスだが、何気なくないか?女の独り言って感じで。
つか生きる道って、中の人は一人なのか?一本ごとにコロコロ作風が変わるし。
480いつか名無しさんが:2008/05/21(水) 18:27:02 ID:???
【これがアスカの生きる道!夜半の乱入者編】


その時、僕は寝ていた。遠くで何か音がする。だんだん大きくなる。
うるさいなぁ。僕は布団を頭から被った。
『ズドン!ドガン!バキャ!』
飛び起きた。誰かが僕の部屋のドアを蹴飛ばしてる!こんなことを
するやつは、アイツしかいない!
開けた途端に蹴飛ばされないように、用心してドアを開けた。
アイツが、クマのぬいぐるみを抱えて立っていた。
「…どうしたの、アスカ」
蹴飛ばされやしないかと身構えていたが、アスカはむしろ、
しょんぼりして立っていた。

「うるさーい、何時だと思ってんだあガキども」
奥からミサトさんの声がする。
「すいません、今静かにさせます。…アスカ、とりあえず入って」
アスカを部屋に入れて、僕のベッドに座らせた。
「どうしたのアスカ」
「ごめん…怖い夢見ちゃったの。一緒に寝ていい?」
怖い夢って…正直拍子抜けしたけど、アスカの表情はいつになく
心細げで、冗談とも思えない。ひょっとしたら『あれ』を夢に見る
のかもしれない。
481いつか名無しさんが:2008/05/21(水) 18:28:03 ID:???
「…いいよ」
アスカをベッドに寝かせて、僕も隣に入った。
「…腕枕してシンジ」
腕を出して、彼女の首を抱いた。彼女は脚を絡めてくる。
「ありがと…シンジって、あったかい」
「もう怖くない?」
「うん、シンジがあったかいから」
「…よかった」
アスカは僕の胸に顔を埋める。彼女の吐息で、僕の胸も暖かい。
アスカがぽつりと言う。
「…早く結婚したいなぁ。結婚して毎晩一緒に寝れば、怖い夢も
見なくなるかなぁ」
心細そうな彼女の声。僕は思わず言った。
「…大丈夫。僕がずっと見張っていて、怖いものが来たら追っ払う
から。だからアスカは安心して眠っていいよ」
「ありがとシンジ…大好き」
「僕もアスカが大好きだよ。ずっとそばにいる」
「うん」

安心したのか、アスカはやがて寝息を立て始めた。彼女の過去を
考えれば、怖い夢ぐらい見て当たり前かも知れない。今までアスカは
こうして何度も怖い夢を見ていたんだろうか。僕が一緒にいてあげ
れば、怖い夢を見なくなるだろうか。
なんだか急にアスカが可哀相に思えて、彼女のルビーの色の髪に
キスしてあげた。
【終わり】
482名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/21(水) 19:28:34 ID:???
イイヨイイヨー
483名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/21(水) 20:20:06 ID:???
一回タームの文章読んできたら参考になると思うよ。

ネタは良かった。
ただ最初がギャグ風味なのに説明も無くの急展開にちょw
マテやw
ってなった。
484名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 00:08:48 ID:???
生きる道の人GJ
>>471
のおまけ話とか好きです
485いつか名無しさんが:2008/05/22(木) 05:23:29 ID:???
>>484
ありがとうございます。あなたにプレゼント。
【おまけのおまけ プレゼント】


その日、彼女は庭の草取りをしていた。もともと、こんな汚れる
仕事は彼女の趣味ではなかったが、亡くなった彼女の夫の、晩年の
趣味が庭いじりだった。夫の残した庭の草花を枯らしたくない。
その一心で、彼女は庭仕事を続けていた。

ふと顔を上げた。通りから、垣根越しに誰かが見ている。目と目が
会った。赤い瞳と青い瞳が。
「…!…あんた…」
「…久しぶりね、セカンド」
「あんた、まさか…なぜ…」
「…あなたに会いに来たの」
「…そう。お上がりなさいな」
青い瞳の老女は、裏木戸を開けて赤い瞳の少女を招き入れた。
「そこに座ってて。冷たいもの持ってくるわ」

二人は庭を望む縁側に並んで座った。沈黙の後、老女が口を開く。
「…あんた、あの頃とちっとも変わらないのね」
「…変われないの、わたしは」
「今日はなぜ?」
「…碇君が亡くなったと聞いたから」
「去年亡くなったわ。一生平穏で、子供にも孫にも恵まれて。
もちろん、あたしみたいないい奥さんにも恵まれたけどね」
「…あなたらしいわ、セカンド。元気で安心した」
486いつか名無しさんが:2008/05/22(木) 05:25:07 ID:???
「あら、あたしが落ち込んでると思った?あの人が亡くなる時、
あたし、あの人にこう言ったの。お疲れ様。あたしの夫でいて
くれてありがとうって。あの人はとても誠実な人で、約束通り
一生あたしのものでいてくれたから。今はとても晴れ晴れした
気分よ。だって、あたしももうじきあの人の所に行くから。
あと何年かはわからないけど、その何年かはご褒美だと思って、
感謝しながら生きたいわ」
「…うらやましいわ。あなたは人生を全うしたのね。本当に
うらやましい…」
赤い瞳の少女は目を伏せた。
「そういうあんたはどうなの、ファースト」
「…わたしは変わらない。変われない。もう一度わたしの力が
必要とされる時まで存在し続けるの」
「…そうなの」
「…だからわたしはあなたがうらやましい。変われるあなたが
うらやましい。碇君を一生幸せにしてあげられたあなたが
うらやましい。わたしには、何もないから」
「…ちょっと待ってて」
老女は立ち上がり、奥に入る。少しして、古い手帳を持って
出て来た。
「これ、あんたにあげるわ。あの人の、第壱中学の生徒手帳よ」
手帳を受け取った少女は、不思議そうにそれを見つめる。
「…碇君の?」
「ほら、初めて手帳を持つと、嬉しくて色々書き込んだりする
じゃない。あの人もそうだったのね。色々書いてあるわ。クラスの
女の子のこととか」
「……」
「あたしより、あんたのことが多く書いてあるのよ。頭に来ちゃう」
そう言って青い瞳の老女は笑った。
487いつか名無しさんが:2008/05/22(木) 05:28:13 ID:???
「…いいの?貰ってしまって」
「大丈夫。あたしには、その後六十年分の思い出があるから。
嬉しいことも悲しいことも、いっぱい詰まった六十年があるから。
だから、それはあんたへのプレゼント。あたしの一生分の幸福の、
ほんの少しのおすそ分けよ」
「…ありがとう」
赤い瞳の少女は、古い手帳を胸に抱きしめた。
「…わたし、もう行かなきゃ」
「…今日は来てくれてありがとう。あたし達のことを忘れないで。
あんたと一緒に戦った、あたし達のことを」
「…忘れないわ」
少女の後ろ姿が遠ざかる。青い瞳が、その後ろ姿をいつまでも
見つめていた。
【終わり】
488名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 13:50:02 ID:???
GJ (´;ω;`)ブワッ
484ですが続きをいただけてうれしい限りです
いい話だなぁ・・・ありがとう

489名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 16:03:59 ID:???
「シンジの残した草花を枯らしたくない」と言って草取りするアスカさん・゜・(ノД`)・゜・。
490名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 23:02:10 ID:???
>>448

6.

翌朝、僕はゆっくりとドアを開けて、慎重に第一歩を踏み出した。
アスカにばったり出くわす危険がある。まさかそんな偶然が続くわけないと思うけど、
登校する時間帯はそんなに違わないのだ。可能性はある。
門を出たところが一番危ない。
僕は周囲の気配を読んで、そう、慎重に、ゆっくりと、気をつけて――。
「碇」
「うわああっ!」
僕は馬鹿みたいに大きい声を出してしまった。
「……何をそんなに驚いてるんだよ」
「そや。こっちが驚いたわ」
呆れたように言ったのはケンスケとトウジだった。二人の通学路は僕のと途中で一緒になっているのだ。
「何でもないよ。いきなりだったからびっくりしただけ」
僕は取り繕おうと笑顔を作った。冷や汗が滲んだ顔では成功したとは言い難かった。
「いきなりってほどか?」
ケンスケが不審気に眼鏡に手をやる。
「本当は違う人に声を掛けられたと思ったんじゃ?」
「ま、まぁいいじゃない、そんなことは。さ、行こう! 遅刻しちゃうよ」
「何か怪しいんちゃう?」
「怪しくなんかないよ! バカなこと言うなよ」
僕は転校生が隣に引っ越してきてことを言いそびれてしまった。何か隠しているみたいで居心地が悪いけど、
いったん言いそびれるとますます言い出しにくくなる。
まぁいいか、と僕は肩をすくめた。知らなかったことにすればいい。
491名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 23:03:02 ID:???

今日は緊急の全校集会があるというので、講堂に集合した。
「何だろう?」
「きっと期末テストが中止になるっちゅー話やろ」
「そうなればいいと思うけど、違うと思うよ」
「戦自の新装備システムの話じゃないの。ウェアラブルコンピューティングで情報の共有化が
素早く行われて迅速な部隊の展開が可能になるらしいぜ」
「……絶対違うよ」
みんなも今日の集会のテーマに興味があるのか、小声で話し合っていた。
校長の冬月先生がマイクを手に取ると、ざわめきは潮が引くように静まっていく。
冬月先生は咳払いした。
「皆さん、お早うございます。今日は残念なお知らせからはじめなければなりません――」
校長先生の話はこうだった。
最近、怪しい男がうちの学校の生徒に声をかけている。追いかけられた生徒もいるから、
特に帰宅時は注意するように。
男は、中肉中背で短髪。年齢は30から40代。
黒いスーツ、黒のサングラス、黒の靴下に黒の革靴。要するに黒ずくめということだ。
聞くだけで目立つ格好だと分かる。
しかし変質者がそんな服装をするんだろうか? まぁ、変質者を個人的に知ってるわけじゃないから
ああいう人たちが何を考えてるなんて僕には分からないけれど。
しばらくの間、6時までには全員下校するようにします、との言葉で解散になった。
492名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 23:03:42 ID:???

「転校生なんて危ないよな」
クラスに戻る途中、ケンスケが言い出した。
「そやな。……なあ。変質者に襲われてるとこ助けたら、ありがとう鈴原君、ステキ……なんてことになるんやないか?」
「彼女くらいだと逆にいつも注目されてるから安全なような気もするけど」
それにケンカしてもアスカなら普通に勝ちそうだ――とは口にしなかった。
あとから思うと呑気でバカみたいなことを、僕らは喋っていた。
ホームルームの時間、先生は珍しく真面目な顔で改めて状況説明や注意事項を述べていたけど、最後に嬉しそうに、
「それから、シンちゃんみたいに可愛い顔した男の子も危ないから気をつけなさいよ」
「シンちゃんはやめて下さい……」
僕はため息をついた。先生に何を言ってもしょうがないんだけど。

学校が終わり、僕はすぐに下校した。全体練習がない日は、ケンスケと一緒に情報処理部の
部室でゲームでもしてから帰るところだけど、さすがに今日は先生のチェックが厳しい。
おとなしく帰ることにした。怪しい男は見かけなかった。そもそも僕が通う道は人通りが多いところなのだ。
正直言って、不審者のことは全然心配していなかった。
あとはいつもの平凡な一日だった。
家でチェロの練習をしているうちに父さんと母さんが帰って来て、食事をして、テレビを見て――。
チャイムが鳴った。
「誰かしら。こんな時間に」
時計を見ると、八時を少し回っている。
「僕、見てくるよ」
僕はそう言って立ち上がった。
玄関のドアノブに手をかけたところで、ふと今日の集会のことを思い出し、のぞき窓から外を見る。
アスカと、おそらくは両親と思われる大人の男女が立っていた。
493名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 23:04:47 ID:???
6’.

翌朝、私は家を出ると背後から声をかけられた。
「惣流アスカくんだね?」
ロマンスグレーの紳士風、年齢は六十代ぐらいの初老の男だった。
どこかの教授のような知的な雰囲気を漂わせているけど、同時に軍人のような峻厳な
厳しさも持ち合わせているようにも感じる。年の割には背が高いせいだろうか。
「そうですけど……何か?」
誰だろう? 知らない人だ。見た目はまともだけど、最近はどんなヤツがアブないのか分かったもんじゃない。
でもパパの知り合いかも知れないし、あまりムゲにもできないかも……と思っていると、
紳士風の男は何かを確認するみたいに丁寧な口調で、「道に迷わせて済まなかったね」と言った。
「……は?」
私は意外な言葉に一瞬思考を停止してしまった。
――道に迷わせる? 誰を?
もちろん、私を――だろう。でなければ私に話しかけたりしない。
「ちょっ」
私が固まっていると、初老の男は歩き出し、角を曲がって見えなくなった。
待ちなさいよ、と言う暇もなかった。私はすぐに後を追って角を曲がり――立ちすくんだ。
男の姿は消えていた。周囲を探すものの、影も形もない。
――そんなバカな……。一体どこに行ったの?
しかし居ないものは居ない。まるで悪い夢のようだった。
「アスカ!」
びくっとして振り向くと、ヒカリだった。彼女の笑顔に思わずほっとする。
「おはよう、アスカ。どうしたの? 何かあった?」
「ううん。別に何でもないのよ」
道に迷わせる? 一体どういう意味だろう?
考えても分からない。取りあえず「頭のおかしいヤツ」で片付けておくしかなかった。
494名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 23:05:38 ID:???

学校に着くころには私は気を取り直していた。
私が昨日うろうろしていたのを見ていて、からかっただけとも考えられる。
ストーカー? ま、もし襲われたとしても、あんな爺さんなんて楽勝よ。
大事なところを蹴っ飛ばしてやる。
「全校集会よ。行こ、アスカ」
「全校集会? 何するの?」
「さあ……。校長先生が何かお話があるって」
どうせ訓示でもたれるのだろう。
あーあ、下らない。どうしてこうエライ人ってのは説教をしたがるのかしら。
ドイツでも同じだったし、たぶん世界中どこも同じなのだろう。
げんなりしながらヒカリと一緒に講堂に行く。
壇上では何人かの教師がマイクのセッティングをしていた。
その中の一人を見て――私は凍りついた。
「あれは……誰?」
「あれって?」
「背の高いおじいさんよ」
「校長の冬月先生だけど?」
ヒカリが私の様子を見て、不思議そうに言った。
495名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 23:06:29 ID:???

私はその日を浮かぬ気分で過ごした。
まさか不審者に気をつけろと注意する校長が怪しい男とは……。一体この学校はどうなっているの?
これ以上何かおかしなことを言ってきたら、しかるべき手段に訴えてやるから。
悩む私がいつもより魅力的なのか、ボンクラどもが声をかけてきたけど、適当にあしらって帰宅した。

今日はパパとママで出かける約束だった。
お寿司を食べて帰るころには、校長の謎の行動のことは私の頭からはすっかり消え去っていた。
「お隣に挨拶しに行くけど、アスカも行くんだっけ?」
「そうよ!」
「私もいくよ。碇という名前には心当たりがあってね」
「え? パパ、知り合いなの?」
「いやいや、知り合いではないよ。碇さんは人工進化研究所の所長なんだ。
MAGIをお互いの研究所で使うから、挨拶をしておこうと思ってね」
「そうなの。じゃ、行きましょ!」
そうして私たちはシンジの家の玄関を叩いたのだった。
496名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 23:20:29 ID:???
おっつ
497名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/22(木) 23:37:22 ID:???
おっつ!
次も楽しみだ
498名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/23(金) 00:07:42 ID:???
転校生キター
499名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/23(金) 00:21:23 ID:???
転校生の人GJ
続き楽しみにしてます(`・ω・´)
500名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/23(金) 01:31:02 ID:???
ワックスワックス
501いつか名無しさんが:2008/05/23(金) 05:53:53 ID:???
>>488
ありがとうございます。これは【おまけ】に続いて書いたのですが
同じネタを引っ張るのはどうか、また綾波さんを出すのはLAS的に
どうかと思って投下を控えていました。投下の機会を頂けて
ありがとうございました。
502名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/23(金) 21:25:16 ID:???
いやいやとんでもないです。作品の投下は氏の御意向のままに
作品もLASが感じられるし良いんじゃないでしょうか >>1 の範囲も外れてないし

投下が続くとどうしてもスレが殺伐としてきますが
これからも作品を投下してください
楽しみにしてます (*゚∀゚)=3 ムッハー


503名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/24(土) 07:31:29 ID:???
完全にLASでしょ
シンジと一生添い遂げて、最期を看取ったアスカが、一人取り残されたレイに
「思い出」を分けてあげる。( ;∀;)イイハナシダナー
504名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/24(土) 11:12:01 ID:???
顔文字うざすぎる
505名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/24(土) 11:51:53 ID:???
さっそく殺伐として参りました
506名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/24(土) 16:09:46 ID:???
ワロタw
507名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/26(月) 00:47:53 ID:???
ワックスワックス
508名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/26(月) 18:05:44 ID:???
ワッフルワッフル
509名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/27(火) 00:21:57 ID:???
何故あれているの?
510名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/27(火) 08:40:51 ID:???
まぁ、良作・佳作の時にはGJと乙の嵐で、批判的な意見は飲み込まれて埋もれる罠。
最近のは...、押して知るべし。
読者は正直だなw
511名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/27(火) 09:33:07 ID:???
こうやって煽るわけですね
512名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/27(火) 10:16:22 ID:???
ま、いい加減スルーしようぜ
513名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/27(火) 11:13:22 ID:???
パッチンさんも転校生さんも生きる道さんも待ってます
514名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/27(火) 11:46:52 ID:???
期待してるよ〜〜
515名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/27(火) 13:31:37 ID:???
>>513
パッチンなら引っ越したぞ
516名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/27(火) 19:02:19 ID:???
投下待
wktkwktk
517名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/27(火) 22:00:49 ID:???
投下侍
518名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/28(水) 23:53:46 ID:???
GJ!!!

あと、>>381さん、すごい楽しみにしてます!!
519いつか名無しさんが:2008/05/29(木) 20:00:35 ID:???
【これがアスカの生きる道!酒は泪か溜め息か編】


「何よ!やっぱりあんた、あたしを信用してないんじゃない!」
「そんなこと言ってないだろ!」
まったく、せっかくの日曜だってのに、朝っぱらからガキどもが
喧嘩を始めやがった。シンちゃんが、夏休みに夏期講習に行きたいと
言い出したのが始まりだ。
「あたしが勉強教えるって言ったじゃない!」
「でもさ、やっぱりそういう場所のほうが効率も上がるし、やる気も
違うから」
「あたしと一緒じゃやる気が出ないってこと!?」
「だからそんなこと言ってないだろ!」
「もう、知らない!」
アスカは部屋に飛び込んだ。溜め息をついて座り込むシンちゃん。
「どうして分かってくれないのかな…」
まあ、たいした喧嘩じゃない。ほっといてもいいんだけど、ここは
お姉さんがちょっちフォローしてやっか。
「まー、アスカの魂胆はミエミエだけどねー。勉強にかこつけて、
シンちゃんにベタベタしたいだけでしょ。あんたもそれが分かってる
から夏期講習なんて言い出したんでしょ?」
「はい…」
「いいじゃない、行ってらっしゃいよ。夏休み中ずっとってわけじゃ
ないんだし、いちいちアスカの言うこと聞いてたらキリないわ」
「…そうですね」
520いつか名無しさんが:2008/05/29(木) 20:02:23 ID:???
「…でもねシンちゃん。少しだけアスカにも気を使ってあげて。
女は好きな人とずっと一緒にいたいものよ。ましてあの子にとって
あんたは初めての彼氏で婚約者だし、世界で一番大切な人なんだから
一分一秒でも離れていたくないのは当然よね。だから講習に行っても
いいけど、講習の合間にメールの一つも送ってあげて。内容は何でも
いいの。何時に帰るでもいいし、今日の講習の内容はこう、でもいい。
女なんて、そんなメール一つでも安心するの。離れていても、わたしの
ことを考えていてくれる、あの人の心の中にわたしがいる、ってね」
「…そうします。あの、僕ちょっと出掛けて来たいんです。注文
してた本が届いたんで、本屋さんに。ほんとはアスカを誘って、
一緒に行こうかと思ってたんだけど…」
「あー、行ってらっしゃい。アスカも頭を冷やす時間が必要よ。
でも、あんまり遅くなっちゃダメよ。あの子が心配するから。
あとね、アスカにお土産を買ってらっしゃい」
「お土産…ですか?」
「高いものでなくていいの。女の子の喜びそうな、ちょっとした
小物で。いい、シンちゃん。喧嘩したあとは、仲直りのきっかけを
作ってあげるのも重要よ。喧嘩を引きずらずに、早目に仲直りする
のが長続きの秘訣よ」
「わかりました。じゃ…」

シンちゃんは出掛けたし、さーて、エビチュエビチュ…
プシュー  グビグビ
ぷはー。やっぱり朝酒はいいなぁ。グビグビ
おりょ?小娘が部屋から顔を出した。部屋にこもってまだ三十分も
経ってないのに、もうシンちゃんが気になるの。乙女心ねぇ。グビグビ
521いつか名無しさんが:2008/05/29(木) 20:03:48 ID:???
「…シンジは?」
「出掛けたわよん。注文してた本が届いたんだって」
「やっぱりあいつ、あたしのことなんかどうでもいいんだ!」
「『アスカを誘って、一緒に行くつもりだったのに』って言ってたわよ」
「…何それ…」
小娘が露骨にがっかりする。『しまった、デートのチャンスを
逃がした』って顔ね。
「ねぇアスカ。あんたの気持ちは分かるけど、シンちゃんの気持ちも
分かってあげて。飛び級飛び級で来たあんたには分からないだろう
けど、受験の合否なんて絶対評価じゃなくて相対評価なんだから、
家に閉じこもって勉強してても不安なのよ。やっぱり他の受験生の
顔を見て、全体の中での自分の位置を把握しないとね」
「…うん」
「それに、あんたも焦りすぎ。あんたはもう、親公認の婚約者なんだ
から。『碇シンジはあたしのものよーっ!!』ってデッカイ声で
叫んでも、どこからも文句は来ないんだから、もっとドッシリ構え
なさい。夏期講習ぐらい、『二人の将来のために、しっかり勉強して
来なさい!』って言って送り出すぐらいでなきゃ」
「うん。でも…」
「分かる分かる。十八歳の夏は一度だけだもんねぇ。だから講習が
終わったら、その分シンちゃんにたっぷりサービスさせてやんなさい
って。『あたしの夏を返せ』ってさ」
「アハハ何それ」
「ねぇアスカ。シンちゃんが帰って来ても、膨れっ面してちゃダメよ。
ヤな顔した女のいる家になんか、帰る気しないもの。普段通りに
ニッコリ笑って、『お帰り』って言ってあげなさい。そうすれば
向こうだって、仲直りしようかなって気になるじゃない。そういう
小さなことの積み重ねが長続きの秘訣よ」
「うん…努力してみる」
522いつか名無しさんが:2008/05/29(木) 20:06:08 ID:???
ピンポーン
「ほら、シンちゃんじゃない?お出迎えしなさい。わかってるわね?
ニッコリよニッコリ」
プシュー
「お、お帰りシンジ」
「たっただいまアスカ」
うーむ、カワイイのう。頑張れ青少年!グビグビ
「アッアスカ、お土産があるんだ」
シンジが差し出したのは、クマちゃんの形の石鹸のセット。
「キャー可愛い!ありがとうシンジ!」
うらやましい。あたしがそんなお土産を最後にもらったのは
何年前だろう…グビグビ
「でさ、アスカ。夏期講習の件なんだけど…」
「あっ、それなんだけど、あたし名案が浮かんだの。あたしもその
夏期講習受けるわ!」
「ええ!?だってアスカは大学院だろ?」
「いいのよ、そんな細かいことは気にしなくても!」
「いや、でもさ…」
ありゃりゃ。まったくこの小娘と来たら、人の予想を楽々越えちゃう
んだからかなわないなぁ。
523いつか名無しさんが:2008/05/29(木) 20:07:35 ID:???
「シンちゃん!もう一人分の受講料ぐらいお姉さんがひねり出して
やっから、アスカを連れて行きなさい。これは命令よ!」
「キャーッ!ミサト、ありがとう!」
どうだ小娘、思い知ったかお姉様のありがたみ。グビグビ
「なに困った顔してんのシンちゃん。男ならアスカのイチャイチャ
攻撃に耐えて、しっかり勉強して来なさいよ!」
「はぁ…ショボーン」
「わぁい、夏休み中ずっとシンジと一緒だぁ、ルンルン」
「アスカもイチャイチャだけじゃダメよ!シンちゃんのお嫁さんに
なるんだから、イチャイチャも勉強教えるのも、両方押さえとか
なきゃダメよ、わかった?」
「はーい、わかりましたーお姉様」
「よろしい!シンちゃん、あたしおつまみが欲しいなー」グビグビ
「あーあ、まだお昼なのに何本空けてるんですかミサトさん…」
「じゃかーしい!あたしの稼いだお金で、何本ビールを飲もうが
あたしの勝手じゃい!」
「もう出来上がってるよミサトさんたら…」
あったり前でしょ。朝っぱらからラブラブ全開見せつけられて、
これが飲まずにいられますかってんだ。グビグビ…
【終わり】
524名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/29(木) 21:19:38 ID:???
ミサトがいい姐御だ
GJ
525名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/29(木) 23:29:33 ID:???
和んだ
GJ
526名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 00:55:33 ID:???
>>495
7.

僕は玄関を開けようか一瞬迷った。もちろん迷うことはなかった。
引越しの挨拶に来ただけなのだ。別になんてことはない。
「……こんばんわ」
僕はドアを開けて挨拶をする。
アスカは襟元と裾に白いフリルをあしらえた黒のワンピースを着ていた。両親と外出していたのだろう。
「夜分遅くにすいません。隣に越してきた惣流ですが、ご挨拶にうかがいました。ご両親はいらっしゃるかしら?」
アスカの母親がにこやかな顔で話しはじめる。
アスカに似て(って当たり前だけど)美しい人だった。僕の母さんと同じくらいの年に見える。
この人も性格はアスカみたいなんだろうか――。思わず罰当たりというか不謹慎というか、ヘンなことを考えてしまった。
「あ、はい。呼んできます」
父と母が来て、大人同士の挨拶がはじまった。
僕はなるべくアスカの顔を見ないように、アスカの両親の方に視線を向けていた。
父親も母親も知的で、とても上品そうに見える。どうあったらアスカみたいな性格の子が育つのだろう。
やはり環境ではないということか。いや、逆にちゃんとした家庭環境だからこそ反発して……。
「……シンジ! 聞いてるのか?」
父さんが僕の肩に手をかける。
「え、ええと、何?」
「ええ。碇君にはとっても親切にしてもらってるんですよ。日本にはまだ慣れてないのですごく助かってます」
アスカが可憐な笑顔を見せた。
僕は反応できずに、口を半分開けたままバカみたいに黙っていた。
普通は初対面で人を罵倒することを「助けてもらう」とも「親切にしてもらう」とも表現しないんだけど。
それからアスカの母が粗品の贈り物をして、母さんが有難く押し頂いて一連の儀式は終了ということになった。
父さんと母さんに続いて僕も中に入る。
僕はふと何の気もなしに振り返った。
すると、アスカが僕の行動をあらかじめ分かっていたみたいに振り返って、ニヤッと笑ってみせた。
明らかに何か企んでいる表情だった。
アスカの企みが何であれ、僕にとって良いことか悪いことかと言えば、絶対に悪いことに決まっていた。
527名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 00:56:30 ID:???

「とてもいい子じゃないか。可愛いし、性格も良い」
父さんがビールの缶を開けながら僕に言った。
「まぁ、そうだね……」
「チャンスじゃないのか、シンジ」
「はは……」
何と答えていいか分からない。いったい何のチャンスなんだ。
父さんは女の子を見る目がない。確かにさっき見せた笑顔だけだといいところのお嬢さまにしか見えないけど、
見た目と少し話しただけで判断してしまうとは……。
いや、待てよ。母さんを選んでるんだから、見る目がないということはない。むしろ大アリ、一級の鑑定士だ。
ということはアスカに対する評価も……。
いやいや、違う違う。母さんの良さなんて誰でも、それこそ赤ん坊にだって分かる。見る目があるなしの問題じゃない。
「どうしたの、シンジ。考え込んで」
「何でもないよ……。母さんの男を見る目はあるのかということ」
「何よ、それ」
僕はこめかみを親指と中指で揉みながら、アスカが何を考えているのか、昨日から感じている不吉な予感は
何なのかをぼーっと考えていた。

僕の嫌な予感の正体はすぐに明らかになった。
具体的に言うと、次の日、学校が終わって帰宅するとすぐに。
528名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 00:57:16 ID:???


家に帰って三十分ほどすると、チャイムが鳴った。
「ケンスケかな」
もし何かのセールスみたいだったら居留守をしようと決め、足音を殺して玄関に向かった。
のぞき窓からのぞくと――アスカがいた。私服に着替えていて、ドアが開くのを待っている。
――何の用なんだ!?
僕が逡巡しているとアスカが苛立ったようにドアを叩いた。
「シンジ! いるんでしょ? 出てきなさいよ!」
まるで借金取りだ。というより、何で僕がいることを知ってるんだろう。はったりだろうか。
しかし女の子相手に居留守を使うのは情けないにも程がある。僕は覚悟を決めてドアを開けた。
「や、やあ。アスカ」
「……」
アスカは黙ったままじっと僕の顔を見ている。
「……」
僕もつい黙ってアスカの顔を見つめてしまった。
アスカは大げさにため息をつくと、「やれやれ」のポーズをとった。
「あんた、ホント気が利かない男ね……。レディをこんなところに立たせたままでいいわけ?」
「え。……上がるつもりなの?」
彼女には僕の言葉が聞こえなかったようだ。
きっと自分に都合の悪い言葉は鼓膜から先は通らないようになっているのだろう。
靴をひょいと脱ぎ捨て、ずかずかと上がりこむと居間のソファに勢いよく腰を下ろした。
「落ち着いてていい部屋ね。センスあるじゃない、あんたのお母さん」
「ちょっと待てよ。いったい何の用なんだよ。いきなり上がりこんで」
さすがの僕も腹が立ってきた。どちらかというと、アスカより振り回されつつある自分に、だけど。
529名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 00:59:58 ID:???
「レディはこんなことしないんじゃないの?」
「うっさいわね。用があるんだからいいの……きゃあっ」
話の途中でアスカが突然悲鳴を上げて、ドアを指差した。
「タヌキ!」
目を向けると、八キロの巨体を揺すってペンペンが居間に入ってくるところだった。
注目を受けているのが分かると、王様のような威厳をもって「にゃあ」と鳴く。
臣下よ今日もご苦労、といったところだ。
「ネコだよ。ペンペンっていう名前なんだ」
「ネコにしては大きすぎない? ……ペンペンね。ヘンな名前。ネコらしくないっていうか。何でそういう名前にしたの?」
「何でって……」
僕は説明しようとして言葉に詰まった。あれ、何だっけ? 
「何よ。あんたが付けたんじゃないの?」
「えーと……忘れちゃった」
僕は頭を掻きつつ答える。度忘れというやつだ。きっと誰かさんの行動がとっぴすぎて僕の脳が麻痺したのだ。
「はぁ? 若いのにボケちゃったの? あんたの飼い主は痴呆症にかかっちゃったみたいね」
アスカは足元に寄ってきて顔をこすりつけるペンペンの頭を撫でた。ペンペンがアスカの顔を見てにゃあと鳴く。
「あら、可愛いじゃない」
アスカの顔がほころんだ。何の作為もないその表情に僕は少しどきっとする。いつもこうだったらもうちょっとは……。
「ん。何よ」
アスカが僕の視線を感じたのか、顔を上げた。
「いや……アスカは犬かネコかって言ったらネコだなって思って」
僕はとっさに思いついたことを口にした。
「はぁ? 私は気まぐれだって言いたいわけ?」
そう言うと、僕を睨みつける。意外と自分の性格は分かっているらしい。
「ごめん、訂正する。君は犬だよ。種類はブルドッグ」
アスカは何か投げるものがないか辺りを見回して、さすがに思い直したのか、「それはともかく」と言った。
530名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 01:01:57 ID:???
アスカは何か投げるものがないか辺りを見回して、さすがに思い直したのか、「それはともかく」と言った。
「私はあんたとそんな話をするために来たんじゃないの。……実は、あんたに頼みごとがあるのよ。
あんたにとってもメリットがあることだから、間違っても断ったりしないこと。いい?」
「はいはい。で、何?」
僕は諦念に首まで浸りながら一応は内容を聞く。だいたい断るなという頼みごとがあるだろうか。
アスカは僕の言葉を聞くとすっくと立ち上がった。
「では発表します。じゃじゃーん!」
高らかに宣言する。
「碇シンジ! あなたを! 私の! 家庭教師に任命しまーす!」
僕は窓を開けて空を見た。今日もいい天気で、雲も気持ち良さそうにぷかぷかと漂っている。
僕もあの雲のようにのんびりと空を行けたらどんなに気持ちいいだろう。
「ホント、あんたってラッキーよねー。この私を教えることができるなんてまさに至高の名誉!」
いや、雲にならずとも、鳥になってあの大空を……。
「ま、あんたも分からないところがあれば"遠慮して"私に質問してもいいのよ。何も私もタダで教えろって
言ってるわけじゃないんだから。私もドイツじゃ大学まで卒業してる天才美少女だし……って聞いてんのか、この!」
アスカの下段蹴りが僕の太ももにまともにヒットした。
「いてっ! 何するんだよ!」
何という凶暴な女だ。口だけじゃなくて手(この場合は足だけど)も早いらしい。
「それは私の台詞よ! 無視するんじゃないわよ。よりによってこの私を!」
僕はため息をついた。最近どうも僕はため息ばかりついている。
「じゃあお聞きしますけど。天才少女アスカさまに僕ごときが何か教えることがあるんでしょうか?」
「天才美少女」
「……」
531名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 01:04:12 ID:???
僕の呆れ顔を見てさすがに思うところがあったのか、アスカは居住まいを正し、こほんと咳払いしてから「漢字よ」と小声で言った。
「え?」
「腺(B1えなかった? 漢字よ、カ・ン・ジ!」
ああ。なるほど。そう言われればそうか。
「イヤ?」
アスカはほんの一瞬、こちらが驚くほど真剣な顔をした。
「いいよ、別に」
僕はうなずいた。
「ま、あんたのためらいも分かるけど。このアスカさまにモノを教えるなんて恐れ多い……という気持ち」
「構わないよ、アスカ」
「でも私がいいって言ってんだからいいのよ。日本的な謙譲の美徳とやらも、この場合は必要ないから」
「だからオーケーだって!」
「え?」
そんなに簡単に受けるなんて下心があるんじゃないの?とでも言うかと思ったけど、彼女は黙っていた。
多少は言ってはいけないことを心得ているらしい。
言っておくけど、もちろん僕は下心があって引き受けたわけじゃない。
彼女は、自分が拒絶されるのではないかという恐れ――あるいは怯えを見せた。
そう。アスカはわざとらしいほど強がっているけど、僕に断られるのが怖かったんだ。
なぜ僕にそれが分かるのか? 出会ったばかりで彼女のことをロクに知りもしないくせに?
確かに僕の思い違いかも知れない。なんせ思い違いの実績はじゅうぶんあるし。
でも、僕は、アスカがあらわにした表情を見て、思わず胸が痛んだ。
ああいう顔をする子を、傷つけたくないと思った。
アスカの気持ちが実際はどうであろうと、僕がそう感じたのは事実で――それだけの話だ。
彼女が特別なんじゃない。アスカに限らず、僕は誰だって傷つけたくはない。
本当にそれだけの話だった。
ま、別に崖から飛び降りろと言われたわけでもないしね。
532名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 01:05:51 ID:???
上の>「腺(B1えなかった? 漢字よ、カ・ン・ジ!」
これは当然「聞こえなかった? 」で。

ていうかコピペ元はちゃんとなっているのになぜ。
533名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 01:07:01 ID:???
そうだ。この話が広まるとみんなに何を言われるか分からない。秘密にしとくよう釘を刺さないと。
「アスカ、ひとつ言って――」
「あ! 念のために言っとくけど、ぜっっったいに他の人にこのこと喋らないでよ。喋ったら殺すからね」
「……分かったよ」
不吉な予感の正体が分かっただけも良しとしよう。
ふと疑問が沸いた。
「でも、何で僕なの? 委員長と仲良いみたいだし、彼女に頼めばよかったのに」
「……ヒカリは部活で忙しいの。あんたを選んだ理由は……隣だからに決まってるでしょ、バカ」
アスカは横を向いてそう答えた。
なるほど。そう言われれば確かに隣は便利だ。
しかし、自分でこんなこと言うのはアレだけど、本当は僕が素直に言うことを聞きそうだという
理由なんじゃないだろうか。いや、僕の顔を見ないで答えたことを考えると、きっとそうに違いない。
僕は腹を立て……たりはしなかった。
アスカの性格を考えると人に頼みごとをするのは結構勇気がいったことだろうし、それでもあえて
僕に頼んできたのだから、彼女の内心にかかわらず、ここは度量の広さを見せるべきだ――と思ったからだった。
こう見えて、僕もなかなか男らしいところがあるのだ。
534名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 01:08:16 ID:???

母さんが帰ってきて食事の支度をしている間、僕は手伝いながらアスカの家庭教師役のことを考えていた。
やるからにはきちんとやりたい。
でも、よく考えればアスカの漢字のレベルがどれくらいかも分からないのだ。
最初にテストからはじめて、それから判断することにしよう。
まずは本屋に行って小学生向けの漢字の本を買って来るか。
母さんが、あら、という顔で僕を見た。
「嬉しそうね。何かあったのかしら?」
「そんなことないよ」
僕はむっとして答えた。厄介ごとを抱えて大変なのに、何てことを言うのだろう。
僕の気持ちを逆なでしないで欲しい。
「ちょっと本屋に行って来るから」
「何を買ってくるの? もう食事できるわよ」
「参考書を買ってくるだけだよ、すぐ帰るから」
僕はそう言い残して家を出た。
535名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 01:12:00 ID:???
8’.

私はシンジの家の玄関前に立ち、誰か知ってる人が通り過ぎないか様子を窺っていた。
こんなところを見られたらかなわない。
えーい、もう、早く出てきなさいよ。
それとも留守なのかしら?
私は空を見て、通りをこっそりと偵察して、腕時計で時間を見て、もう一度チャイムを鳴らして、
とんとんと足を踏み鳴らして、家に帰りかけて、やっぱり思い直した。
いっそのことドアを蹴り破ってやろうかと思った途端、ドアが開いて、シンジがおずおずと顔を出した。

536名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 01:12:20 ID:???
わっふるわっふる
537名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 01:12:40 ID:???

……私は意気揚々と引き揚げて、食卓に着いていた。
少々てこずった感は否めないけど、もくろみ通りシンジを私の家庭教師にすることに成功した。
ま、当然のことではあるけど。私の頼みを断るなんて男がこの世にいるなんて考えられないもの。
「あら、嬉しそうね。どうしたの?」
「へっへ。まーね」
「何、教えてよ」
「内緒!」
私はふとシンジの飼ってるデブネコを思い出した。ペンペン。ヘンな名前だ。
まるで……そう、ペンギンにでも相応しい名前。
「アスカ?」
「何、ママ」
「どうしたの、食欲ないの?」
「あ……え、と。別にそうじゃなくて。シンジが飼ってるネコがすごいデブなのよ。それ思い出しちゃって」
私は内心吹き出した。ペンギンなんて飼う家があるわけない。
「へえ。そんなに大きいの」
ママはそこで手を止めて私を見た。
「碇君の家に行ったんだ、アスカ」
しまった。自分でも良く分からない理由で少し顔が赤くなる。
「まぁ、ちょっとね。用があって」
「この間も言ったけど、あまり迷惑をかけないようにね」
「かけないわよ! 何で迷惑かけるのが前提みたいにいうの!? 
あいつの勉強を見てやる代わりにちょっと漢字を教えてもらおうと思っただけよ」
「……逆じゃないのかしら」
「ち、違うわよっ」
私は急いでスープを飲み干し、「ごちそうさま!」と言ってテーブルを離れた。
538名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 01:15:28 ID:???
>>535
8’.  → 7’.で
539名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 01:27:37 ID:???
GJ
シンジ、いい奴だなぁ
540名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 04:15:22 ID:???
生きる道さんも転校生さんもGJ
転校生、いい感じになって来たね
生きる道さんは相変わらずのラブラブでいい
541名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/30(金) 13:02:26 ID:???
ワックスワックス
542名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/31(土) 07:32:57 ID:???
両投下神GJです
>>519
ミサトさんいいなぁw アスカかわいいなぁw
>>526
アスカとシンジの掛け合いが板についてて
今後の展開考えるとニヤニヤしてしまったよw
いい演出だなぁ
543名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/31(土) 16:42:45 ID:???
転校生は、乗ってきたね。
544名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/31(土) 20:40:05 ID:R+4qEJGA
そうやって、わたしは見つけた。
お兄ちゃんが書いていた小説。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の話を使った小説を。
業界、って言うか、この界隈では二次創作って言うジャンルの、ネット小説。
お兄ちゃんはそこで、作家をしてたらしい。少し読んでからファイルを閉じた。
ぜんぜん判んない。わたしがエヴァンゲリオン見たのは幼稚園の頃で、憶えてない。
お兄ちゃんの部屋にDVDでもないかと思って探したけど、見当たらなかった。

何日かして近所のレンタルビデオ屋からエヴァンゲリオンを借りて見る。
幼稚園の頃はロボットがあんまり戦ったりしないマンガだって思って見てたけど、今見ると余計に判んなくなった。
最初はちゃんとしてたのに、後になってくると宗教の勧誘か自己啓発セミナーみたいになってくストーリー。
律儀に映画まで借りて、その訳判んなさに「金返せ」って叫んでクッションをボスボス殴って。

で、わたしはもう一度お兄ちゃんの小説を読んだ。
はっきり言うと、お兄ちゃんは才能がない。
読書感想文よりかはマシなんだろうけど、凄い下手に見えた。
現実、つまりパソコンの外側の世界に住む高校生が主人公。

で、ある日突然、精神だけが碇シンジ君に乗り移って、って言うか、碇シンジになっちゃう。
読みかけて別のいろんなサイト、お兄ちゃんの残したお気に入りの中のエヴァ関係サイトを調べて、
そんな小説が他にもあるのを知った。
だいたい酷かった。オタクの妄想の垂れ流しみたいなキモい展開、似たような内容。
お兄ちゃんのもそう。高校生なのに銃と格闘の達人で、軍隊にも詳しい。
見かけは碇シンジだって書いてあったのに大人、ミサトさん達なんかよりも偉そうにしてて人気者。馬鹿じゃないの?

その妄想小説とおんなじフォルダに入ってた、書き掛けみたいなのも酷い。
ミサトさんとか碇司令とかを極悪人にして惣流アスカや綾波レイと相思相愛。
あの最低映画じゃないけど「気持ち悪い」ってしか言えないわ。
545名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/05/31(土) 21:15:05 ID:???
コピペ荒らしはスルー推奨
546名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/01(日) 01:33:53 ID:???
>>544
GJ
547名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/01(日) 01:50:09 ID:???
検定4級くらいか?
548いつか名無しさんが:2008/06/03(火) 22:36:36 ID:???
すいません。今回のは、いつものとは異時空の話です。生きる道シリーズとは
関係ない話ですが、面倒なのでこのまま投下します。

【これがアスカの生きる道!異時空姉妹編】


あたし、碇アイ、14歳。第三新東京市立第壱中学の二年生。双子の
妹のミライがいるの。双子といってもあんまり似てないけど。
ニランセーソーセージってヤツ?でも、碇姉妹といえば『壱中の
美少女姉妹』で有名よ。えっへん。
あたしには彼氏がいるの。サッカー部の三笠君。カッコイイん
だから。前から好きだったんだけど、彼、モテモテだから、競争率
高いかなって思ったんだけど、この間、彼の方から告白されたの!
もちろんあたしは即OK。今はとってもハッピーよ。

「ねぇアイ、帰ろ?」
「今行くわミライ。サッカー部の練習見ていくでしょ?」
「…うん」
あたしとミライはグラウンドに行った。
あっ三笠君だ。相変わらずカッコイイなぁ。あたしに手を振ってる。
あっ上級生に殴られた。無粋なセンパイね。ぷん。
「あっ、ほら松嶋君よ!あんた松嶋君が好きなんでしょ?」
「…うん」
「松嶋君も結構イケてるわよね。三笠君ほどじゃないけど」
「…そんなことないわ。松嶋君の方が…」
「…言うわねミライ。ならさっさと告白しちゃいなさいよ!」
「でも、こわいし…」
「ホントにミライったら気が弱いんだから。そうだ、三笠君に
聞いてもらおうか?松嶋君の好きな人」
「えー。でも…」
「いいからあたしに任せなさい!ウジウジ言ってるだけじゃ
しょーがないじゃない!」
549いつか名無しさんが:2008/06/03(火) 22:38:02 ID:???
怖じけるミライを家に追い返して、あたしはサッカー部の練習終了を
待った。やがて部室からサッカー部員達がゾロゾロ出て来た。
「三笠君、あたし!」
「アイ!」
三笠君が「可愛い彼女のお出迎えかよー」という冷やかしの声に
送られて、あたしのところに猛ダッシュで飛んで来た。
「待ってたわ。一緒に帰ろ?」

あたしは並んで歩きながら三笠君に話した。
「妹のミライが松嶋君のこと好きらしいの。松嶋君はどうなのかな」
「えっ、ミライちゃんが?脈あるんじゃないかな松嶋なら」
「ホント!?」
「ほら、サッカー部でも話題になったんだよ、アイとミライちゃんの
ことが。二人ともめちゃカワイイって。そのあと『アイちゃんと
付き合ってるお前はけしからん』て僕がどつかれたんだけど」
「えー、ほんと?」
「でさ、そのあと『ミライちゃんもカワイイよな』って松嶋が
言うんだよ」
「じゃ、もしかして?」
「たぶんオッケーだと思う」

その翌日、三笠君から携帯にメールが来た。「松嶋のヤツ『ミライ
ちゃんが僕を好きなんて信じられない』って感激してた」だって。
早速次の日曜日にダブルデートをお膳立てしたわ。
550いつか名無しさんが:2008/06/03(火) 22:39:32 ID:???
いよいよ当日。ミライは朝から挙動不審。
「早く支度しなさいよミライ。遅刻しちゃうじゃない」
「待ってアイ。もうすぐだから…」
「あら二人ともおめかしして、デート?」
ママがのぞき込む。あたし達の自慢のママ。35歳だけど、とても
そんな歳には見えない。三人で歩くと三姉妹と言われる、若くて
きれいなアスカママ。
「うん。今日、ミライが松嶋君に告白してもらうの!」
「あらよかった。これで二人とも彼氏持ちね」
「おいおい、まだ早過ぎるんじゃないのか…」
パパもやってきた。ハンサムで優しいパパ。
「何言ってるのパパ。あたしとパパが知り合ったのも中学二年でしょ?」
「いや、でもなぁ…」
「男親ってしょうがないわね。さああんた達、遅刻しないように
早く行ってらっしゃい」
「「行ってきまーす!」」

待ち合わせ場所は公園。あっ、もう来てる。
「お待たせー!」
あたしはミライの手を引っ張って、三笠君と松嶋君の前に立った。
三笠君が松嶋君の背中を押し、あたしがミライの背中を押した。
「あっ、あの、碇ミライさん、僕とお付き合いして下さい!」
「……………ハイ」
あたしと三笠君は拍手した。耳まで真っ赤な二人。
「じゃ、遊園地行こ!」
あたしと三笠君は手を繋いだ。あたしがミライに、三笠君は松嶋君に
目でサインを送る。ミライが恥ずかしそうに出した手を松嶋君が握る。
「さあ行こ行こ!あたしジェットコースターに乗りたい!」
551いつか名無しさんが:2008/06/03(火) 22:41:09 ID:???
楽しかったデートも終わり、家に帰ったあたし達は、今日四人で
撮った写真を早速プリントアウトしてアルバムに貼った。これが
あたし達の習慣。画像データを保存しとくだけじゃつまらない。
やっぱりアルバムでなきゃ。このアルバムはあたし達姉妹のアルバム。
病院で、生まれたばかりのあたし達二人をママが抱いている写真から
始まって、幼稚園入園・卒園、小学校入学・卒業、中学校入学と、
パパが張り切って撮った写真が並んでる。久しぶりに、ミライと
二人でアルバムを見た。いろんな思い出が蘇る。
「ねぇ、小学校の卒業アルバムってどこだっけ?」
「あたし、捜してくる」
えーと、確か押し入れの、この箱の中に…ないなぁ。奥の箱だっけ?
奥の箱から一冊のアルバムが出て来た。
「ねぇ、これって…」
「なにそれ?」
最初のページをめくると、制服の少女の写真。
「これ、ミライ?違うなぁ…ひょっとして、ママ?」
写真に写っているのは、ミライと同じ髪の色の、同じ制服の少女。
でもミライじゃない。
「そう、これママよ!間違いないわ。これ、パパとママの中学時代の
アルバムよ!」
二人でページをめくる。次のページには、ママと並ぶ男の子。
「これ、パパだ!」
「パパ、可愛い…」
あたし達は夢中になってページをめくった。パパとママにもこんな
時代があったんだ…
552いつか名無しさんが:2008/06/03(火) 22:42:58 ID:???
次々ページをめくって、出て来たある一枚の写真に目が釘付けに
なった。これって…
それは三人が並んだ写真。一人の男の子に、二人の女の子が両側から
寄り添った写真。真ん中の男の子はパパ。右側の女の子はママに
違いない。でも、左側の女の子は…?その子に目が釘付けになった。
「この子…アイに似てない?」
ミライが言う。そうだ。髪と目の色が少し違うけど、目鼻立ちが
あたしにそっくり。あたしの髪は青みがかった黒。瞳は黒だけど、
写真の子は、抜けるような空色の髪に、赤い瞳。これ、誰?

以前から不思議だった。ミライはママにそっくりなのに、どうして
あたしは似ていないんだろうって。パパの髪は黒、ママの髪は赤
なのに、どうしてあたしの髪は青いんだろうって。まさか…
あたしの不安を察したミライが慌てて言う。
「そんなことないよ!ほら、赤ん坊のあたし達をママが抱いてる
じゃない!」
そう。それは子供の頃から見慣れた写真。でも、こっちの写真の子は
あたしに似過ぎている。

「あんた達、ご飯よ。聞こえないの?」
ママが来た。あたしは思い切って聞いてみた。
「ママ、この写真の子、誰…?」
ママの顔が曇った。
「…そう。あんた達、それを見付けちゃったの…」
ママは溜息をついて、そこに座った。
「仕方ないわね。二人とももう彼氏が出来たし、子供じゃないもんね」
いや!ママ、そんな顔しないで!
「いいわ、話すわ。アイはね、あたしが産んだ子じゃないの」
目の前が真っ暗になった。嘘!嘘でしょママ!
553いつか名無しさんが:2008/06/03(火) 22:45:02 ID:???
「その写真の彼女が、アイの本当のママなの。あたし達三人は、壱中の
同級生だったの。彼女もあたしもパパが好きで、パパの取り合いを
して、ママが勝ったの。ママはパパと結婚して、子供が出来た。
それがミライ」
ダメだ、あたし、体がガクガク震えて止まらない。
「あれは、もう出産間近の頃だった。仕事から帰って来たパパが、
突然ママに土下座したの。『ごめん、浮気した。向こうの女性にも
子供が出来て、もうすぐ生まれる』って。もう大ショック。大好きな
パパと結婚して子供を授かって、幸せの絶頂だったのに、まるで
天国から地獄よ。ホントに、パパを殺してやろうかと思ったけど、
パパが『僕を殺しても構わないけど、その前に訳を聞いてくれ』って。
で聞いたら、その彼女はもう長くないって言うの。彼女のことは
とても複雑な事情があるんだけれど、簡単に言うと、生まれた時から
あまり長くは生きられない宿命だったの。で、パパは彼女からその
ことを打ち明けられて、可哀相になって、一度だけ浮気しちゃった
って言うのよ。そのあと、しばらく会ってなかった彼女から『あなたの
子供を身篭った』って知らせが来て病院に行ったら、医者から
『出産まで生きていられるか分からない』って言われたの。パパは
その足で帰宅して、ママに土下座して『彼女に会ってくれ』って
言うのよ。まあパパを殺すのはいつでもできるから、ママは彼女に
会いに、病院に行ったの。そしたら彼女、ママの手を握って『ごめん
なさい。あなたの家庭を壊す気はなかったの。ただ、私も生きた証が
欲しかったから』って言うのよ。あたしも、彼女が可哀相になっ
ちゃって『なら生きてその子を育てなさいよ!』って言ったの。
そしたら彼女、首を振って『この子を産むまでは生きてみせるわ。
でも、それが私の限界』って言うの。もう、あたしもたまらなく
なっちゃって『ならあたしが育ててあげる。あんたのお腹の子と
あたしのお腹の子、二人まとめて面倒見るわ!』って言ったのよ。
そしたら彼女、ニッコリ笑って『あなたならそう言ってくれると
思ってた』って言うの。そして、あたしの手を握って言うの。
554いつか名無しさんが:2008/06/03(火) 22:47:32 ID:???
『子供二人と碇君、三人とも幸せにしてあげて。私には、もう
出来ないから』って。そう言われたら、あたしもイヤとは言えないわ。
だから、パパを殺すのは、彼女の子供が生まれるまで延期したの。
彼女の出産には、パパもママも立ち会ったわ。壮絶な出産だった。
最後は彼女の力がなくなって、半分だけ出て来たアイを無理矢理
引きずり出したの。出て来たアイに産湯を使わせて、すぐ彼女に
見せたの。彼女は『…私の赤ちゃん…』とつぶやいて、アイにキス
して、目を閉じて…そのまま逝ってしまったの。でも彼女の顔は
とても美しかった」
「………」
「そのあとがまた大変だった。その直後に今度はあたしが産気付いて
そのまま入院。翌日にはミライが生まれた。だから、誕生日は
一緒にして届けたけど、ホントはアイが一日だけお姉さんなの。
で、出産が済んで、初めてミライがあたしの所に連れて来られた時
あたしは言ったの。『彼女の子供はどこ?二人ともあたしの子供
なんだから、彼女の子供も連れて来て』って。病院の方も、規則が
どうとか言い出したから、パパに『何とかしなさい。それがあんたの
義務でしょう?』って言ったの。で、パパが病院に掛け合って
やっとアイが連れて来られたの。その時撮ったのが、そっちの写真。
だから、その時からあんた達は二人ともあたしの子供。あたしが
このおっぱいを吸わせて育てたあたしの子供よ」
「ママ…ママ!」
あたしとミライは、二人でママに抱き着いて泣いた。
555いつか名無しさんが:2008/06/03(火) 22:48:25 ID:???
深夜、物音がする。パパが帰って来た!
「ねぇ、様子を見に行かない?」
「そうね。もしリコンとかになったら…」
「ダメ!そんなの絶対ダメ!」
あたし達は二人の部屋から出て、こっそり様子を見に行った。
半開きのドアから、リビングの様子をうかがう。
「…ごめん」
「やめてシンジ。あたしはファーストと約束したの。アイとミライと
あんた、三人とも幸せにするって。だから、過去に囚われないで、
幸せになって。あんたが幸せにならなきゃ、あたしも幸せになれない。
アイもミライも不幸になるわ」
「ごめん…ありがとう」
パパがママを抱きしめた。
「…仲直りしたね」
「うん…よかった」
あたし達は部屋に戻った。落ち着くと、また涙が止まらなくなった。
「泣かないで、アイ…」
「ごめん、明日になったら、いつもの元気なあたしに戻るから、
今晩だけ泣かせて…」
あたしはミライの胸に顔を埋めて、また泣いた。
【終わり】
556名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/03(火) 23:40:19 ID:???
いつかktkr
557名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 01:01:05 ID:???
避妊しないとかシンジ外道過ぎる
558名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 02:31:04 ID:???
面白かったがアスカの説明文が長過ぎる。

正直地の文で補足しつつ説明する所じゃね?
559名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 03:09:02 ID:???
碇姉妹シリーズ化希望
560名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 04:43:32 ID:???
>>557
「…ゴムに針で穴を開けておいたの。だって、絆だから」
561名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 10:53:18 ID:???
女からみたらこれはないわ
562名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 12:48:20 ID:???
>>561
ならどうするの?やっぱりシンジ君を殺す?
563名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 12:55:34 ID:???
>>562
この展開が無いって意味じゃね?
564名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 18:37:07 ID:???
また凄い作品が出たなw
565名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 20:32:47 ID:???
駄作者の陥るセルフブービートラップ
・オリキャラを出すとキャラ設定が不十分なので、オリキャラの内面が描かれるべきシーンでグダグダになる
566名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 20:43:24 ID:???
GJ
上から目線の評論家気取りは気にせずガムバレ
567名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 23:16:48 ID:???
>>566
GJって、こんなのがまだ読みたいんかw
568名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 23:28:34 ID:???
>>567
枯れ木も山の賑わいって事じゃね?
569名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 23:31:09 ID:???
今回のは酷いだろ
レイが妊娠するまで浮気を黙ってたシンジが最低だ
よく数ヵ月も何食わぬ顔でアスカといられたわ
570名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 23:47:26 ID:???
>>569
突っ込む所は、そこじゃないだろ・・・。

まああくまで感想だからあれだが、お前も、もうちょい本
読んだ方が良い。
571名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/04(水) 23:54:40 ID:???
まあ批判だけなのもあれなんで、
多分一番の問題は565あたりが言ってる事。
小説の書き方講座ってサイトがあるから、そこの
「人」を描くとは、とかテーマとはってあたりをみるのが良いと思う
572名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/05(木) 03:07:06 ID:???
>>566
スルーしろ
構うな
573名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/05(木) 10:35:36 ID:???
>>548
とりあえず乙
>>552-553からこれは学園物を想定してるの?
だとすると結婚してもどっちつかずだったシンジに違和感を覚えるかなぁ
レイの死がアスカに同情以上の感情を生む理由となるような、
レイとアスカの絆みたいなものも伺えないし
それともお人よしのアスカに萌えろというのかw

その辺を掘り下げてぜひ続き書いてください
俺的にはスレに学園物と転生物がそろってwktkだおw




574名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/05(木) 13:19:42 ID:???
>>573
道男に創作意図を聞くのはイジメw
575名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/05(木) 15:08:31 ID:???
んなこたねぇだろw >イジメ
イメージだけでも教えてくんないかなぁ、と思ったんよ
576名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/05(木) 16:56:22 ID:???
>>575
考えて書いてる奴に対しては普通の質問でも、(ry
577名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/05(木) 18:59:41 ID:???
置いときますね
壁|・ω・)つ[煽りはスルー]
578名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/05(木) 22:06:13 ID:???
まぁ、道男も面白けれゃ叩かれないんだけどな。
579名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/06(金) 00:19:23 ID:???
エロ系は見逃しようもあったが、今回のはヒドサだけが目立ったしな。
580名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/06(金) 03:34:58 ID:???
>>579
それは翻訳すると「エロネタ書いて下さいお願いします」か?
童貞キモヲタのツンデレww氏んどけよw
581名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/06(金) 03:46:07 ID:???
>>580
このレベルの人がエロネタ書いても会話文だけのが出来そうだが。
てか、エロネタはもう良いわ。心情描写あるの少ないし、エロメインだと
どれ読んでも同じに思える。
582名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/06(金) 07:45:44 ID:???
シンジ誕生日SS投下待ち
583名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/06(金) 09:15:55 ID:???
愚作だとスレが荒れるんで、良作キボン
584名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/06(金) 09:24:13 ID:???
作品でスレが荒れるなんてことはないさ
問題はそれを受け取る側だ
585名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/06(金) 11:10:27 ID:???
まあしょせん2ちゃんだしな
叩き専門ヲタは山ほどいても、自分で書けるやつはいないもんな
586名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/06(金) 11:40:15 ID:???
>>583
これだけ荒れさせておいて投下待ちってどんなギャグ?
587名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/06(金) 13:35:46 ID:???
>>586
だからスルーだって
荒しは脳内あぼん
588名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/06(金) 21:11:11 ID:???
道シリーズは厨房の習作っぽい味が好きだけどな。
望むらくは上達してホスィ...
589いつか名無しさんが:2008/06/06(金) 23:56:57 ID:???
【これがアスカの生きる道!I'M GLAD IT'S YOUR BIRTHDAY】


六月六日は僕の誕生日。中学の頃は「誕生日なんかどうでもいい」と
言っていたけれど、祝ってくれる人がいるのはやっぱり嬉しい。
今年の誕生パーティも例年のメンツ。トウジ、ケンスケ、委員長にアスカ。
でも、このメンバーでの誕生パーティもたぶん高校三年の今年が最後。
そう思うとなんだか感慨深い。

「大丈夫?手伝おうか?」
「いいからシンジ、引っ込んでて!」
「そうよ碇君、主賓は座ってて」
葛城家の台所で奮戦中の委員長とアスカ。今年のアスカの気合いの
入り方は尋常じゃない。去年までは、主賓の僕が料理も作ってたけど、
今年は「あたしに任せなさい!」とアスカが宣言した。経験上、
彼女が張り切るとあまりいい結果を産まないんだけど、本人があれ
だけ気合いが入ってるのに水を注すのも可哀相だし、なによりアスカの
やる気が嬉しい。まあ委員長がついてるから、そんなに悲惨なこと
にはならないだろうし。お言葉に甘えて退散した。

「「こんばんはー!」」
トウジとケンスケも来た。二人とも、手に荷物を抱えてる。
「何それ?」
「ええから主賓は部屋におれや。準備が出来たら呼んだるわ」
トウジに背中を押されて部屋に戻った。なんか今年は大掛かりだなぁ…
仕方ないので受験勉強でもしようかと思ったけど、全然頭に入らない。
やっぱり、僕もワクワクしてるみたいだ。友達の友情に感謝。
590いつか名無しさんが:2008/06/06(金) 23:58:53 ID:???
開始予定の午後七時。ドアがノックされ、さっと開いて現れたのは
アスカ。芝居がかった口調と仕草で言う。
「お待たせしました。主賓碇シンジ様、御席へどうぞ!」
アスカの後についてリビングに向かう。リビングはきれいに飾り付け
され『シンジ君 お誕生日おめでとう!』なんて、トウジの下手くそな
字の看板まで下がってる。
主賓席につくと、手作りケーキに立てられた十八本のロウソクに
火が点される。明かりが消され、皆が『HAPPY BIRTHDAY』を歌う。
♪HAPPY BIRTHDAY DEARシンジ HAPPY BIRTHDAY TO YOU〜
歌の終わりに合わせてロウソクを吹き消した。皆の拍手。
「さあ、ここで碇シンジ様よりご挨拶を頂きましょう!」
アスカがおどけた調子で言う。
「僕は…僕は、この第三新東京市に来て、もう五年目になるんだけど、
最初は来たくて来たわけじゃなくて、父さんに呼ばれて仕方なく来て、
変なロボットに乗せられて…何言ってんだろ…とにかくそんなわけで、
でも今は、ここに来てよかったと思ってます。みんなに会えたから。
それまで一人もいなかった友達ができたから。だから…ありがとう。
みんな、ありがとう!」
また拍手。アスカが何か言いたげに睨んでる。
「えーとその、友達もできたけど、その…可愛い彼女もできたから」
また拍手。アスカが特にでっかい拍手。ケンスケ一人だけブーイング。
「では、パーティの開始です!」
たちまち料理が並べられ、ケーキが切り分けられる。飲み物はコーラに
ジュースに、ミサトさんのプレゼントのシャンパンが一本。
シャンパンが注がれ、皆に行き渡るとアスカが立ち上がる。
「では乾杯の辞を、不肖惣流アスカラングレーが務めさせて頂きます。
今シンジが言ったみたいに、あたし達は変なロボットに乗せられて、
まあ色々あったわけだけど、とにかく平和になったみたいだし、
あの戦いでひどい目にあった人もいるわけだけど、こいつはこいつ
なりに頑張ったんで、見逃してやって下さい」
591いつか名無しさんが:2008/06/07(土) 00:00:14 ID:???
「アスカ。君も頑張ったよ」
「…ありがとう。まあそんなわけで、みんな、シンジをこれからも
よろしく!乾杯!」
「「「「かんぱーい!」」」」

ふと見渡した。僕の前の料理だけ、皆のと微妙に違う。僕のだけ、
盛り付けが雑だし、形が崩れてたり、やや焦げっぽかったり。
顔を上げると、青い瞳が僕を睨んでる。そうか。分かったよアスカ。
君の気持ち、ありがたく戴くよ。

盛り上がってくると、アスカが立ち上がった。
「それではただいまから、王様ゲームを行います!」
王様ゲーム?僕らの間では、王様ゲームは禁忌のゲーム。その原因は
主にアスカにある。アスカは王様の命令でも、嫌なことは断固拒否
なので、ゲームが成立しないんだ。そのアスカが王様ゲームって。
みんなでクジを引いた。「あっ、あたし王様!」委員長が王様だ。
「えーと、じゃあ1番と2番、3番と4番がキスしなさい!」
「僕、1番だけど…」
アスカがにんまり笑って2番のクジを見せ付ける。だけど僕は見た。
クジ引きの時、委員長とアスカがアイコンタクトを交わしたのを。
仕組んだなアスカ。
「えーそんなぁ。こんな人前でキスなんて…」
わざとらしいよアスカ。早くも彼女は僕に寄り添い、僕を見上げて
目を閉じた。まあ乗ってやるか。今日頑張ったご褒美だ。チュッ
アスカに軽くキスした。彼女は目を開けた。その目が「これだけ?」と
言っている。そういうのは後でねアスカ。
592いつか名無しさんが:2008/06/07(土) 00:01:51 ID:???
悲惨なのは3番と4番だ。
「あの、委員長、どうしてもせなあかん?」
「何よ鈴原、王様の言うことが聞けないの?」
「いやそんな、でも…」
トウジが委員長に目で何事かを訴えている。だけど委員長はニッコリ
笑って拒否。何か委員長を怒らすようなことでもしたのかなトウジ。
「まだー鈴原」
「ええいしゃあない、ケンスケ許せ!」ブチュー
「ギャァァァァ」
恐ろしい。身もよだつ光景だ。待てよ、トウジの誕生日には、まさか
僕とケンスケがキ……止そう。今は考えずにおこう。

八時五十分になると、委員長が「そろそろ失礼しましょう」と言う。
「ほら鈴原」とトウジを促すと、飾り付けの撤去。僕とアスカは
食卓の片付け。「あたしも洗いもの手伝うわ」と委員長。「いや、
これぐらい僕にやらせてよ。アスカも手伝ってくれるから、すぐ
終わるよ」と僕。三人は帰って行った。
洗いものも済んだ頃、今日も残業のミサトさんがお帰りだ。もちろん
ケーキも料理もミサトさんの分は取り置いてある。
「ねぇシンジ、疲れたでしょ。もう寝れば?」
「えっ、でも悪いよ。疲れてるのはアスカだろ」
「大丈夫、あたしの誕生日には三倍返ししてもらうから」
「…そっか。じゃあ、お言葉に甘えて」
「おやすみシンジ」
部屋に戻った。今日のパーティの三倍なんて、相当派手にやらないと
無理だな。半年先だけど、今から計画を練るか。
593いつか名無しさんが:2008/06/07(土) 00:02:55 ID:???
そうだ、プレゼントを見てみよう。委員長からは、手漉き和紙の便箋と
封筒。お礼に、これで委員長に手紙を出そうか。でも、そうしたら
アスカが『あたしもシンジから手紙が欲しい』って言い出すだろうな。
ケンスケからは『惣流アスカ写真集スペシャル版限定一部』。こんなん
貰ってもなぁ…うん、でも悪くない。写真の彼女を見ると、直接見るの
とは違った表情がある。ボケッと気の抜けた表情とか、物思いに耽る
表情とか、僕の前では見せない表情がある。
トウジは…ロージンバッグ?こんなんどうしろと。まあ確かロージンて
松ヤニだからチェロには使えるかも。
アスカ…?アスカのプレゼントがない。パーティの準備で手一杯で
プレゼントまで気が回らなかったかも。無理ないな。

もう十一時過ぎか。もう寝よう。と思ったら、僕の部屋のドアに小さな
ノック。アスカだな。最近は、アスカが何時でも入って来られるように
鍵は掛けてない。
ドアが小さく開いて、アスカがのぞき込む。
「シンジ、起きてる?ちょっと来て」
何だろう。アスカの後に続くと、彼女の部屋だ。室内のテーブルには、
小さな手作りケーキが一個。
「…二人きりで祝いたかったの。おめでとうシンジ」
「そうか…ありがとうアスカ」
ケーキには下手くそな字で『THANK YOU SHINJI!』と書いてある。
「サンキューか…そう言ってもらえると、毎朝弁当を作る甲斐があるよ」
「えと、それ、違うの」
「じゃあ何?」
「あの………あたしを選んでくれて、ありがとうシンジ!」
耳まで真っ赤なアスカ。そうか。
「僕こそありがとうアスカ。君を選んでよかったよ」
彼女を抱き寄せてキス。パーティはまだまだ続きそう。
【終わり】
594名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/07(土) 13:18:09 ID:???
自己投影乙
595名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/07(土) 13:48:57 ID:???
>>594
どうした元気がないな
もっとしっかり煽らないと釣れないぞ
596名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/07(土) 19:03:44 ID:???
かまった時点で釣られたも同然だぞ馬鹿が
597名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 00:31:11 ID:???
>>537

8.

「ふーん。これがあんたの部屋?」
アスカは僕の部屋をじろじろと見回しながら、少し感心したように言った。
「意外とキレイにしてるじゃん」
「まぁ、ね」
彼女が他人を褒めるなんて夏に雪が降るに違いない。
もちろん僕はそんなことは口にしなかった。雪の代わりに血の雨が降るからだ。
きょろきょろとさまようアスカの視線がぴたりと一箇所に止まる。その先にはチェロのハードケース。
「何の楽器?」
「チェロだよ」
「へえ。あんた、弾けるんだ」
アスカの口調がまた感心したような色を帯びて、正直言って僕は少し得意な気分になった。
「うん。まぁ、チェロって比較的簡単だから」
「ちょっと弾いてみてよ」
アスカは椅子の背を前にして座った。背もたれのところに肘を置き、掌に顎を乗せて僕を見る。
いい退屈しのぎができた、といった様子だ。妙なことになってしまった。隠しておけばよかったと思っても後の祭りだ。
598名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 00:31:44 ID:???
「ええと……」
「何よ」
「そんなに上手くないよ」
「そーやって予防線張るのって男らしくないと思わない? じゃ、命令。弾きなさい、シンジ」
僕は苦笑してケースに手を伸ばした。まぁ、何か損をするようなことじゃない。
来客用の椅子を引っ張り出し、チェロを持って座る。
そして、心なしか緊張しながらバッハの無伴奏チェロ組曲を弾きはじめた。
アスカを横目で見ると、目を閉じて真剣に聞き入っている――ように見えるのは僕の希望的観測だろうか。
自然と熱が入った。真面目に聴いてくれるなら、こっちもそういう態度で演奏しないと失礼だ。
すぐに、稀に訪れる、あの感覚に入った。
楽器との完全な一体感。
僕がチェロになり、チェロが僕になる。
弓は僕の右手になり、左手は僕の声になった。
599名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 00:32:31 ID:???

……もう一人の僕が、忘我の境地に浸る僕に、何かを囁いていた。
僕は僕を無視しようとするけど、彼――いや、僕は執拗だった。僕は意外なことを言った。
――前にもこんなことがあったんじゃないか?
そんなバカな。はじめてに決まってる。
――そうか? 良く考えてみろよ。
考えるまでもないだろ。会ったばかりなのに。
――本当に? 本当に? 本当に?
うるさいな。いい気持ちで弾いてるんだから少し黙って――。
突然、僕の言う通り、こんなことがあったような気がしてきた。
いや。いったん意識すると、「気がする」というレベルではとどまらなくなった。
そう、これは「あったこと」だ。
目眩がするような既視感に僕は圧倒された。
今みたいに。
僕がチェロを弾いて。
アスカが拍手を。
「……!」
どこで?
あれは――。
600名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 00:33:35 ID:???


「……っと! ちょっとシンジ!」
「え? ……何?」
顔を上げた。いつの間にか弓が床に落ちている。
……僕は何を考えていたんだろう? 思い出せない。
「何、じゃないわよ。何ぼーっとしてんのよ」
アスカが呆れたように僕を見下ろしていた。
「入りこむのは分かる気がするけど、ちょっとやりすぎじゃないの?」
「あ……ごめん。たまになるんだ」
僕は嘘をついた。ぼーっとしたのは音楽にのめりこんだせいじゃない。
何のせいなのかは分からない。こんなことははじめてだった。
「よだれ、垂れてるわよ」
アスカが僕の口元を指差した。
「えっ!?」
慌てて手の甲で唇を拭う。
「う・そ・よ。ホント、簡単に引っかかるのね」
アスカはけらけらと笑った。椅子に腰を下ろすと、脚を組んで足先で僕をつっつくような仕草をする。
「やっぱり私を目の前にすると頑張りすぎちゃうのかしら? 可愛いところあるのね、シンジくんも!」
何がシンジくん、だ。
僕は少し腹を立てアスカの方に目をやる。
ミニスカートから伸びる白い脚が目に入って、あわてて視線を逸らせた。
「僕の演奏を聞きに来たわけじゃないだろ。はじめるよ、勉強」
601名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 00:35:31 ID:???

アスカは漢字の「読み」を何とかしたいということだった。書くほうは諦めてるらしい。
確かに漢字を読めなければ、国語のみならず何のテストをやっても厳しいだろう。
難しい漢字であっても読み方が一つしかないものは割とできるようだった。
しかし、読み方が複数あるようなもの、例えば「日」みたいな漢字の読みが難しく、
「お日さま」「日曜日」「二日」「本日」、しまいには「今日」「昨日」と、彼女に言わせれば
気が狂いそうになるらしい。
「あんただって英語のイディオムに苦労してるでしょ。それと同じよ。あ、まだそこまでいってないか。
これから苦労することになるのよ!」
「まぁ、確かに日本人はかなりの時間を漢字の習得に費やしてるからね」
「こんなの絶対非効率的よ……。日本人ってどうにかしてるんじゃないの?」
「うーん。でもしょうがないよ。現実はこうなっちゃってるんだから。さ、読んで」
「……みきてき」
「それは、"まっきてき"。下の棒が短いのは"まつ"または"すえ"。
長いのは"み"だよ。"みらい"の"み"だね。じゃあ、次の読んでみて」
「ためしてみる」
「こころみる、だね」
「ちょっと待ってよ! これは?」
「これは、ためす」
「なぁによそれ。意味は同じなんでしょ? どっちでもいーじゃないの、もう! あ、でも次は楽勝。こめさくでしょ?」
「残念。べいさくでした。でもこれはちょっと難しいかな」
「あんたは抜け作だけどね。次は……なまきもの」
「ナマケモノ? そんなのあったっけ?」
「ほら、これ」
アスカが指した言葉を見ると、「生き物」の文字が。
602名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 00:36:23 ID:???
「アスカ、それは"いきもの"だよ! あはは、なまきものは傑作だ!」
思わず僕は腹を抱えて笑ってしまった。が、すぐに自分の仕出かしたことに気がついた。しかし時すでに遅し。
アスカは顔を真っ赤にして勉強道具をかっさらい、バッグに詰めると勢いよく立ち上がった。
そして何も言わずに立ち去ろうとする。
僕も慌てて立ち上がって、アスカの腕を掴んだ。
「ちょ、ちょっと待ってよアスカ! ごめん、僕が悪かったから」
アスカは振り返るとじろっと僕を睨みつけた。
「私みたいに日本に来て間もない人間をあんたはバカにするわけ?」
「……ごめん」
「あんた、自分がこの世で一番サイテーサイアクの人間だって分かってる? 差別よ、これは。私の繊細で純粋な心を傷つけたのよ?」
「……ごめんよ」
「ごめんごめんって本当に分かってるの? 口先だけで謝られるのが一番頭に来るのよね」
「もちろん本当に分かってるよ! 本当にごめん……」
「いいのよ、私は。別にあんたになんか教わんなくたって、いくらでも候補者がいるんだから」
「……」
「いいの? 私が他の男に教わっても?」
「え……」
またこういう展開になってしまった。いや、今回は確かに僕が悪いんだけど。
「いいのって訊いてるの!」
「よ、よくないよ」
603名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 00:38:10 ID:???
正直それでいいような気も――という思いがまったく浮かばなかったと言えば嘘になる。
「あんたは私に教えたいのね?」
「う、うん。教えたいよ。教えたいです」
「そ。今度から気をつけるのよ」
どうやらアスカは機嫌を直したようだ。僕は大きく息を吐き出した。
「手」
「えっ!?」
「手、痛いんだけど?」
「あっ! ご、ごめん」
僕は慌ててアスカの手を離した。
アスカはわざとらしく僕が握った場所をさすり、「アザにならないかしら」と言うと
これまたわざとらしい仕草で僕を見て、当然僕はまた謝った。もっともこれについてはあまり怒っていないようだった。
僕はアスカにばれないようにこっそりとため息をついた。
取り扱い要注意にもほどがある。ニトログリセリンみたいな女の子だ。
それから一時間ほど一緒に勉強して、アスカは帰っていった。
帰っていったというより、母さんに挨拶するというアスカを無理矢理帰らせたと言ったほうがいいかも知れない。
何を言い出すか分かったもんじゃない。
だけど、僕の家に上げているのだから、アスカのことをいつまでも黙っているのもおかしな話だ。
ヘンな風に勘繰られても困る。
僕はアスカの話をするのは明日にしよう、と決めた。今日はもう精魂疲れ果てた。
604名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 00:39:09 ID:???

僕はベッドに寝転がって掌を見た。
アスカの腕の細さ、肌の滑らかさを思い出す。
あんな性格してるけど、やっぱり女の子なんだな……と思う。
――バカな。何を考えてるんだ。
期末テストが終わったらこの奇妙な関係も終わりだ。
アスカは性格はともかく、頭はやっぱりいい。僕なんかよりずっと。
本気になれば、すぐに出来るようになるだろう。
そうしたら僕の家に来ることもない。ただの隣に住んでるクラスメイトだ。
部屋の電気を消して目蓋を閉じる。
演奏を真剣に聞き入っていたアスカの顔が脳裏に浮かんだ。
――いい加減にしろ。
自分自身に呟くと、横を向いて、眠りが訪れるのを待った。
それはどこかで道草を食っているらしく、僕はなかなか寝付くことができなかった。
605名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 01:38:48 ID:???
おっつ!
606名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 13:03:40 ID:???
「最高の演奏ができるのは、君が音楽を演奏する時じゃなく、
音楽が君を演奏する時さ」
ロバート・フリップ
607名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/08(日) 16:41:58 ID:???
GJ!いい感じになってきた

誕生日が終わったら、ぱったり人がいなくなったな
やっぱり誕生日イベント潰し狙いの荒らしばかりだったか
608名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/09(月) 11:07:55 ID:???
なんでそういう挑発めいたこと言うかな…
構った時点で同類だぞ
609名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/09(月) 16:17:32 ID:???
ヽ(´ー`)ノマターリマターリとな
610名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/10(火) 03:09:26 ID:???
tes
611名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/10(火) 11:08:04 ID:???
転校生いいな
かなり好きだよ、そのSS
612名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/17(火) 21:51:23 ID:???
保守
613名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/18(水) 00:04:23 ID:???
>>604

8’.

「さわらないで!」
私は思わず声を荒げて、髪留めに触れようとした子の手を振り払っていた。
まわりがしんとなって私に驚きの目を向ける。
「あ……」
私はこわばった笑みを浮かべると、あわてて弁解の言葉を述べた。
「ごめんね。これ……おばあちゃんからもらった大事な髪留めだから」
「そうだったの……ごめんね。知らなくて」
少し青ざめた顔でその子が言った。こういう対応をされるとは思ってなかったのだろう。
当の私もこんなに強い拒絶反応を示すなんて思いもしないことだった。
"おばあちゃんから貰った大事な髪留め"の言葉には嘘はない。
だけど、別にさわられて怒るようなことでもないはずだった。
自分の弱さを認めるようでイヤだけど、やはり日本に来て精神的に疲れているのかも知れない。
それから私たちはお互いにしつこく謝り続けるという、私が大嫌いな日本的な儀式を繰り返して和解した。
それを見ていた周囲の生徒も、ほっとした様子で自分の世界に戻っていった。
614名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/18(水) 00:05:50 ID:???

昼休みになって、私はヒカリと一緒にお弁当を食べている。
ひとしきり教師の噂話をしたあと(加持先生はミサトと付き合っている! あの下品な女のどこがいいのだろう。
きっと胸の大きさに惹かれたのに違いない)、ヒカリが少し迷った様子で、
「アスカ、その髪留め……アスカのおばあちゃんのものにしては新しいというか……。面白い形、してるよね」
「そう?」
私は髪留めをさわる。そう言われればそうかも知れない。でも大事なのは形や新しさなんかじゃない。
「おばあちゃん、もう死んじゃったから。大事にしたいのよ」
「そうなの……。ヘンなこと聞いちゃってゴメンね」
「ううん、いいのよ」
謝るヒカリにそう答えながらも、私はあることに気がついて、内心愕然としていた。

家に帰ると、ママはもう帰宅していた。今日は早番らしい。
私はバッグを放り出すと、ママにおそるおそる訊いた。
「ね、ママ。この髪留め……おばあちゃんのだよね?」
ママはきょとんとした顔で私を見た。
「どうしたの、アスカ? 今さらそんなこと言って。おばあちゃんからじかに渡されたじゃない。
あなたが十歳のときよ。そんなに忘れるほど前のことじゃないでしょう?」
「そ、そうだったわよね。ちょっと……度忘れしちゃって」
私はかろうじて笑顔を作ることに成功した。
「上にいって、準備してくる」
「そうそう、漢字を教えてもらうんだったわね」
いつもの私だったら一言いいたいようなママのセリフだったけど、黙ってその場を離れた。
615名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/18(水) 00:07:01 ID:???

部屋に入ると、ドアを後ろ手に閉めてそのまま身体をもたれかけさせる。
部屋はまだまだ整理されていない。蓋が開いたままのダンボールが三箱もある。
もちろん部屋の整理のことなんか、私の頭にはなかった。
おばあちゃんから渡された……。
そんなことは、まったく記憶になかった。
でも、それはおかしい。なぜならおばあちゃんから貰ったということは「覚えて」いるから。
もう一度、でも――それもおかしい。どうやって貰ったかを覚えていないのに、なんで貰ったと断言できるの?
十歳の時のことを忘れた? そんな……。
大事な髪留めなのに。
妙な感じだった。何かが喉に詰まっていて、どうしても吐き出せない、とでもいうような。
ふと時計が目に入る。そろそろシンジの家に行く時間だ。
ひとまずこの問題は後回しにするしかない。
準備に取りかかった。――っと、その前に、着ていく服を選ばなきゃ。
私はクローゼットを勢いよく開けた。
616名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/18(水) 00:09:23 ID:???

「じゃ、ママ、行って来るから」
「しっかり勉強してくるのよ。あまりシンジ君に迷惑をかけないでね」
「もう! かけないわよ!」
私は混乱を引きずったまま、シンジの家の玄関のチャイムを押した。
「やあ、アスカ。入りなよ」
シンジが私の気も知らずに、穏やかな笑顔で私を迎える。心配事も何もなさそうなその笑顔に私は腹が立った。
「言われなくたって入るわよ」
「どうしたの? アスカ」
「何が?」
私は苛々していた。日本に来てからというもの、妙なことが起こり過ぎている。私のまわりにも、私自身にも。
「暗い顔してるから、何か心配事でもあるのかと思って」
どういうわけか、私は動揺した。
「あんたなんかに心配してもらうスジはないわよ。別に何でもないの。ちょっと……疲れてるだけ」
「そう? それだったらいいんだけど……。何か気になることでもあったら相談に乗るよ。
僕じゃ頼りにはならないかも知れないけど」
617名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/18(水) 00:09:54 ID:???
「ふん。優しいフリをして私を口説こうったって無理なんだからね」
言い終えた瞬間に私は後悔していた。
案の定、シンジは翳のある気弱な笑みを見せた。これは内心傷ついている時の表情だ。
見慣れているから私にはすぐに分かる。
「そんなつもり、ないけどな」
「あ……」
私は下唇を噛んだ。さすがに言い過ぎた。しかし、シンジに謝るなんて私のプライドが許さない。
――はずだったけど、考えるより先に口が動いていた。
「ちょっと!」
「何?」
シンジが振り向いた。
私は何を言おうか必死に頭を回転させる。しかし、この場にふさわしい台詞は考え付かなかった。
「その……お邪魔します」
「どうぞ。何か飲み物、いる?」
「別にそんな気遣ってもらわなくたって……アイスティーちょうだい」
「アイスティーね。座ってて。持っていくから」
シンジはそう言って冷蔵庫のドアを開けた。
618名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/18(水) 00:11:21 ID:???

認めるのは少々シャクな気がするけど、シンジはなかなか教え方が上手い。
普段はすぐに根気がなくなって投げ出してしまう漢字の勉強も、今日はわりとスムーズに進めることができた。
「今日はおしまい!」
私は叫ぶと、両手をばんざいの形にして後ろに倒れこんだ。ふとあることを思いつく。
「帰る前に、あんたのママに挨拶していかなきゃ。礼儀知らずなんて思われたらイヤだし」
「い、いいよ! そんなの! というか、母さん今日は遅いから早く帰ったほうがいいよ!」
シンジの慌てぶりは滑稽で、私はそれが面白くてあれこれ理由をつけて予定より長く居座ってしまった。
「あんた、エッチな本とかどっかに隠してないでしょうね?」
ベッドの下を覗き込む。エッチな本といえばベッドの下に決まってる。
「隠してなんかないよ!」
「じゃあ堂々とこの本棚に……。確か、こういう真面目な本の間に挟むのよね」
「ちょ、ちょっとやめてよ! そんなことするわけないだろ!」
「エッチな本、持ってないの?」
「持ってないよ!」
「嘘つきなさい!」
「嘘なんかついてないよ! というか、そんなのアスカに関係ないだろ!」
「関係あるわよ! エッチな本がある部屋で何か勉強したくないもの」
「何だよその理屈は……。どっちにしても持ってないから安心していいよ」
「何で私が安心するのよ」
「はぁっ!?」
シンジをからかうのにも飽きた。
「さーて、そろそろ晩御飯の時間だし、帰ろっかな」
「うん。それがいいと思うよ」
シンジは疲れ果てたような顔で言った。私に対してそんな顔をするとは、失礼なヤツ。でも腹は立たなかった。

家の玄関を開けて「ただいま」を言ったときには、私は家を出るときの憂鬱な気分をすっかり忘れていた。
619名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/18(水) 01:06:42 ID:???
転校生キター
620名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/18(水) 02:31:33 ID:???
一本創ってみた

転向生の後はキツイなぁ
6216月17日晴れ:2008/06/18(水) 02:35:43 ID:???
この国から四季が無くなって18年になるが
6月、梅雨だけはなぜか健在で、只でさえ四六時中暑いこの国、
日本をややこしいことにしていた。

それは避暑地として名を馳せたここ箱根駒ケ岳とて例外でなかった。
その中腹そこに今は広大な墓地、
第3新東京市共同墓地と銘打たれた墓地がある。
3年前の事件で急遽あつらえた墓地らしく
日本の墓石から西洋の墓、簡易的なポールのような墓まで様々な様式が
麓の湖、芦ノ湖を一望できる場所にところ狭しと並んでいる。
ただ、よほどここで弔われた人々によほど人徳がないのか
どの墓もこの3年ぞんざいな扱いを受けているいるようだ。

6月17日梅雨の晴れ間のこの日ただ一つ、磨かれている墓石を除いて。
6226月17日晴れ:2008/06/18(水) 02:41:04 ID:???
少年、とゆうにはいささか彼には失礼だろうか。
短髪、中性的な顔、白いシャツ、黒いパンツいわゆる学生服などのせいで
線が細く、幼くは見えるがよく見ると案外ガッシリとした体格で
彼が少年と青年の間にあることがみてとれる。
ともかく少年は「よし」と呟くと
乾拭きを終えた雑巾を足元のバケツに放り込み墓石のまえに屈んだ。
墓碑銘は―――

「シンジ?」
突然背後から声をかけられた少年は咄嗟に立ち上がる
「アスカ・・どうして・・・」
「アンタ何してんの?」
アスカと呼ばれた少女はこの場所日本式墓地に似つかわしくない容姿をしていた。
少年よりやや身長は劣るものの
日本人女性の平均を10センチ近く超えているようにみえる。
木漏れ日が当たり乱反射してくる金髪・碧眼
なによりその顔の造姿は大げさにいえば常軌を逸した完成度を誇っていた。
身にまとった服装が喪に服した色調でなければ、
いかに少年が少女に免疫があるとはいえ見惚れていただろう。
6236月17日晴れ:2008/06/18(水) 02:47:39 ID:???
少年は視線を墓に戻す
「何って今日は加地さんの・・」
「なんで今日墓参りしてんのよ。、今日は加持さんの誕生日じゃない。」
「・・・命日わからないから。それにアスカだってお墓参りにきたんだろ
初めてだよね。アスカがここにきたの」
「・・・もしかして全員の墓参りしてるの?」
「ミサトさんと加持さんだけだよ」
少女が何か言おうと口を空けた瞬間
梅雨独特の湿度を纏った重く強い風が二人を薙いだ。

「手ぶらできたの?」
「お墓参りってしたことないのよ。教えなさいよ」

いざ教えるとなると正しいのか分からなくなるのかこの少年の性分なのか
自信なさげに「手を合わせて心の中で話しかければいいと思うよ」とだけいうと
屈んで目を閉じ手をあわせた。少女はしばらくそれを見ていたが少年に習い手を合わせた

少女は早々に立ち上がると熱心に手を合わせる少年を待った。
「アスカは何を話したの?」
少年は自分で持って来たであろうバケツやら洗剤やらを抱えながら立ち上がり
少女に問うた。
「何も・・・アンタは?」
「自分の事とかもあるけどアスカの退院とかそんなこと。」

「・・・ねぇ、ミサトはともかくなんで加持さんなの?アンタとそんなに親しかったっけ?」
「やっぱりお礼かな」
「お礼?」
6246月17日晴れ:2008/06/18(水) 02:50:27 ID:???
少年は矢張り自信がないのか少女を見ずに遠く眼下に広がる第三新東京市を眺めた。
サードインパクトの折、
かつての要塞都市は壊滅状態にあったが徐々に復興が進んでいるという。
勿論要塞都市としてではなく、多少、湖は増えたが只の都市として。

少年は少女に向き直る
「うん。ここに、第三新東京市に来るまで
アスカを守ってくれてたのは加持さんだから、だからお礼」
この日初めて二人の視線が絡まりあう。
少年のその表情は泣いているようで笑っているような、
とかく曖昧な代物であったが少女には何か伝わったのか
「・・・何言ってんのよ。バカ」と言って今度は少女が俯いてしまった。
「アンタ、バッカじゃないの?思い上がりも甚だしいわ。大体アンタは・・アンタが・・・」

「うん。そうだね。でも本当にそう思ってるんだ」

少年は少女を見つめたままもう一度「思ってるんだ」というと、踵をかえす。
「それじゃ。」
6256月17日晴れ:2008/06/18(水) 03:00:53 ID:???
一歩また一歩と離れていく二人。
その離れていく空間に濃密な湿度をもった梅雨の大気が流れ込もうと押し寄せてくる。

だが―――
 
「バカシンジ!!!」

大気を切り裂く裂帛の怒声。
少年が振り返るとそこには片手を腰に当てる馴染みの体勢を取る少女がいた。
少年はフラッシュバックする。
以前幾度と無く見上げてきた少女の自信にあふれるそのポーズ。
もう二度と見上げることも無い、と半ば諦めかけいた 

陽の光を遮りながら碇シンジ「何?」
「自分だけ言いたいことを言いたいように言って偉くなったもんね!?」
惣流・アスカ・ラングレーはやや高い位置から、しかし真っ直ぐに少年をみる。
「ごめん」
碇シンジもまた真っ直ぐに少女を見据える
「はん!偉そうになったかと思ったら結局昔と変わんないんじゃない!
本当に悪いと思ってんの?」
「うん」

「だったら・・・・・海に行くわよ!!」

「へ?なんで??」
「なんでも!!アタシが行くって言ったら行くの!」
6266月17日晴れ:2008/06/18(水) 03:03:31 ID:???
シンジは笑う。
「わかった。でもどうやっていこうか?」
アスカは見下ろす。だが少なくとも構図ほどの刺々しさはない
「アンタどうせ自転車でしょ?それに乗っけてよ。アタシも途中漕いだげるから」
「いいよ、そんな」
「アタシ漕ぐっていったら漕ぐのよ!」

「・・ところでアスカ」
「・・・何?」

「お墓の上に立つのは拙いと思うよ・・」
「はっ・・・早く言いなさいよ」

少女は駆け出す6月梅雨の晴れ間を第三新東京市にむかって。
少年もそれに続く。ゆっくりと。どうせ結局は自分一人で漕ぐのだ。
脚力は温存しておかなければならない。

不意に強い風が吹く。しかしその風は重い湿気を纏ったものではなく
夏の乾いた風のように感じられる。

どうやら今年の梅雨明けは早いようだ


おわり
627名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/18(水) 03:26:19 ID:???
GJだわよん
628名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/18(水) 20:30:43 ID:???
GJだな
629名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/19(木) 16:10:00 ID:???
乙!
梅雨の合間に自転車に乗る二人って良いねえ
630名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/26(木) 18:09:28 ID:???
保守
631名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/27(金) 03:40:17 ID:???
LASが公式
632名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/06/27(金) 17:27:25 ID:???
sage
633名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 00:31:49 ID:???
>>618
9.

「シ・ン・ジ!」
寝不足気味のまま家を出たせいで、背後から声をかけられるまでアスカに全く気付かなかった。
彼女はいつものように元気いっぱいの様子だ。昨夜の煩悶を思い出して僕は少し及び腰になる。
「あ……アスカ。おはよう」
アスカは鼻に皺を寄せると、僕の背中を思いっきり平手で叩いた。思わず前につんのめってしまう。
「いたっ! 何だよ」
「辛気臭い顔してんじゃないわよ。朝から私の顔が見られたんだからちっとは嬉しそうな顔しなさいよ」
僕は思わず笑っていた。僕の密かな悩みがアスカの平手でどこかに吹っ飛んだみたいだった。
先のことを考えても仕方ない。今のこの状況を受け入れるしかないんだ。
「なに笑ってんのよ」
アスカはむっとした顔で言った。
「だって、辛気臭い顔するなって言ったのはアスカじゃないか」
「意味もなく笑うなって言ってんの。気色悪いじゃない」
「別にアスカのことを笑ったわけじゃないさ」
「じゃあ何で笑ったのよ」
「秘密だよ」
「はぁ? ……あんた、ひょっとしてマゾ? 叩かれたのが嬉しいんじゃないでしょうね」
「ち、違うよ! というか、女の子があんまりマゾとかサドとか言わないほうがいいと思うな」
「うるさい! バカシンジじゃなくてマゾシンジって呼んでやるわよ!」
「ちょっと勘弁してよ……。アスカの場合、本当に言いそうだから怖いよ」
二人してくだらないことを喋りながら角を曲がり、大通りに出た瞬間、視界の隅を人影が横切った。
人影は僕たちと入れ違うように一本向こうの道に入っていった。
黒っぽい服装の男だった。その姿は道端の石ころのように、目には入っても意識にまで上ってくることはなかった。
634名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 00:33:32 ID:???
「あ……!」
間抜けなことに五メートルほど歩いてから気がついた。あれは――校長が言ってた不審者なのでは?
慌てて振り向いたけど、男の姿はとっくに消えている。
「何? 忘れ物でもした?」
「角を曲がるとき、見なかった? 黒ずくめの男がいたんだけど」
「黒ずくめ? ああ……全校集会で言ってたヘンタイ?」
「うん。だけど、人違いかな」
僕は一瞬、走っていって確かめようかと思ったけど、考え直した。ちょっと見ただけで確証はないし、だいいち見てどうする?
あなたは不審者ですかと訊く?
それに、アスカには黒ずくめと言ってしまったけど、そもそもがちらっと見ただけだから、本当に黒ずくめだったどうかは分からないのだ。
「どこにいたの!?」
アスカがきょろきょろ辺りを見回して、空手のポーズを取った。
「来るなら来なさいよ。蹴り潰してやるから!」
何を?とはあえて訊かない。
アスカは僕をちらりと見て、
「もしヘンタイが襲い掛かってきたらどうする?」
「え? アスカなら楽勝だよ。僕は逃げるけど」
もちろんこれは冗談のつもりだった。
冗談が伝わらなかったのか、アスカは軽蔑の眼差しで僕を見た。
「こういうときは『僕が君を守るよ』とか何とか言うものなのよ、バカね」
そんなことは恥ずかしくて冗談でも言えない。僕は口ごもりながら、
「ナイト役は、僕には似合わないよ」
「あんたにはホントにがっかりさせられるわね」
ため息をついてアスカは言った。
それから学校に着くまで、アスカは不機嫌そうにおし黙ったままだった。
635名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 00:35:39 ID:???

「碇!」
トウジがにやにや笑いながら声をかけてきた。悪い予感がする。
「見たで〜」
トウジのにやにや笑いがさらに大きくなった。僕の悪い予感もそれにつれて大きくなる。
「な、何をだよ」
反射的に聞き返しはしたけど、トウジがこれから言うことはもう分かっていた。
「惣流、お前の隣に引っ越してきたやろ」
「何で知ってるの?」と、僕は思わず言ってしまっていた。引っ掛けかも知れないのに。しかし、そうではなかった。
「惣流が家を出て一緒に登校してきたのを見たんや」
やっぱり見られたのか。どこからだろう? 学校に入ってからはアスカが先に行って一緒には教室に入らなかったのに。
「そ、そう? っていうか、黙って見てたの?」
「そらそうや。邪魔したら悪いからな」
「いや、別に悪いとかそういうんじゃないから。たまたまだよ、たまたま。ほら、隣だから」
言い訳をしながら、額に汗が滲むのを感じる。
「たまたまねぇ……」
ケンスケがトウジの背後からひょこっと顔を出した。
「惣流のやつ、シンジが出てくるの待ってたみたいだったぜ」
「そんな馬鹿な……。冗談言わないでよ」
ケンスケはトウジに向かって、
「冗談じゃないぜ、な?」
「ああ、そうや。ホンマやで。しっかし、抜け駆けとはセンセらしくないな。男なら正々堂々と勝負せなあかん!」
「なっ、何だよ、抜け駆けって」
「抜け駆けは、抜け駆けやろ」と、トウジが言った。
「抜け駆けは、抜け駆けだよ」と、ケンスケも言った。
何を言うべきか分からないまま、取り敢えず誤魔化そうとしたその時、教室のドアが騒々しく開いて葛城先生が入ってきた。
たまには先生も良いことをするという実例だ。
「あ、ほら、先生だよ! 席に着かなきゃ」
「ちぇっ、何だよ。いいところで。まぁいいや。碇、あとで惣流のことで話があるからさ。昼休みに部室に来てよ」
ケンスケが自分の席に向かいながら僕に声をかけた。
「あ、うん」
話がそれてほっと胸を撫で下ろしたあとで疑問が湧いてくる。アスカのことで話がある? 何だろう?
636名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 00:38:54 ID:???

「実はさ」
ケンスケは写真部の部室に入ると、椅子に座って机の上に足を投げ出した。僕も適当な椅子を見つけて座る。
「惣流の写真を隠し撮りしてそれを売りさばこうかと思ってたんだけど」
僕はちょっと前にケンスケがビジネスがどうとか言ってたことを思い出した。やっぱり僕が思っていた通りだったか。
「本当にやるの?」
僕の声が少し大きくなった。もしケンスケがその気なら僕は止めるつもりだった。
ケンスケ自身のためもあるけど(バレたらどんなことになるやら)、まず、僕がイヤだった。
アスカの写真を僕が知らない誰かが――いや、知ってても――持つなんて、正直イヤだ。
「やらないよ」
ケンスケは肩をすくめて答えた。
「……あ、そうなの」
何か肩すかしをくらったような気分だった。いや、別にこれでいいんだけど……。
「いや、それがさぁ。やろうとはしたんだよ」
ケンスケが足を机から下ろして僕に向き直る。
「ところが、写真を撮ろうとしたら惣流のやつにバレてさ。さんざんな目に遭ったよ。で、中止ってわけ」
「へえ。勘が鋭いんだね、彼女。シャッターチャンスを狙って近距離から撮ろうとしたの?」
「いや、そういうわけでもないんだけどな」
ケンスケは首を傾げて、
「まるでゴルゴ13みたいだったよ。気配で分かったというか……。キッ!と振り向いてこっちにダッシュだよ」
「ふうん」
アスカのことだ、きっと動物的なまでに勘が鋭いのだろう。彼女らしいと言えば彼女らしい。
637名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 00:40:13 ID:???
その時の光景を思い浮かべると思わず笑いが浮かぶ。ケンスケが遭った「さんざんな目」は想像したくもないけど。
まぁ、何はともあれ、これで良かった。
しかし――。ふと、僕は違和感を感じた。
根拠は何もないけど、ケンスケは写真を撮ったような気がしたのだ。
「え、と。写真は撮れなかったんだよね」
ケンスケの気分を害するかもと思いながらも質問してしまう。
「そう。撮れなかった。一枚もね。残念だったよ」
ケンスケはお手上げとばかりに両手を上げて見せた。
「ケンスケ、本当に写真を撮る前だったんだよね?」
ケンスケはむっとした顔で、「何だよ、しつこいな。信じてないのか? 本当だよ」と言った。
それから何かに思い当たったようにニヤリと笑って、
「あ、そうか。お前としては心配なわけか。姫を守る騎士ってところか?」
「ち、違うよ!」
たちまち顔が赤くなった。こうなると、これ以上の追及は断念せざるを得ない。
チャイムが鳴った。
「おっと、昼休みも終わりだ。戻ろうぜ、碇」
ケンスケがそう言って立ち上がった。
638名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 00:44:01 ID:???
9’.

お手洗いに行く途中のことだった。
階段を上がってきた男子生徒が私とぶつかりそうになった。
手に持っていた何かを見ていたせいで、私に気付くのが遅れたのだ。
男子は直前まで浮かべていたニヤニヤ笑いをさっと消すと、いかにも慌てた様子で手を背中に回して隠した。
そしてそのまま階段を上りきって、走り去ろうとする。
あやしい。あやしすぎる。
普通の女の子なら、ためらって行動には移せないかも知れない。
だけど私は違う。行動するさいにためらったりしないのが私、惣流・アスカ・ラングレーよ。
「ちょっと待ちなさい!」
私は男子のもとに一直線に駆け寄った。
「わっ! な、何?」
男子は手を後ろに回したままずるずると後ろに下がる。
「何?じゃないわよ。今隠したの見せなさい!」
「それは……」
男子は背中に視線を向けた。チャンス! 私は素早く回りこんで男子の手からそれを取り上げた。
「あっ! 返してくれよ!」
取り返そうとするのを適当にいなしながら見ると――私を写した写真だった。
制服姿で、誰かと喋っているときのものだ。ちょうど笑顔を浮かべているところで、
なかなか上手く撮れている。いや、そうじゃなくて。
「何よこれ!」
怒りのあまり私は卒倒しそうになった。どこかのヘンタイに隠し撮りされたのだ。
怒りに任せて写真をばらばらに千切ろうとして、かろうじて止める。
これは貴重な証拠品よ。犯人を突き止めるまで我慢しなくては。
「さて……。これを撮ったヘンタイの名前を教えてもらいましょうか」
私はこぶしを作って掌に勢い良く当てると、ぐっと力を込めた。
「もしそれがあんただったら……覚悟することね」
男子は廊下に座り込むと、ひえっ、と情けない声を上げた。
639名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 00:45:30 ID:???

相田ケンスケというのが写真を隠し撮りしたヘンタイの名前だった。シンジとよく一緒にいる、
眼鏡をかけたチビだ。言われてみるといかにもそういうことをしそうな顔付きだった。
シンジもあんなヤツと友達だなんて、同罪としか言い様がない。
「アスカ、どうしたの? 何かすごく怒ってるみたいだけど」
ヒカリを見て、相田ケンスケはジャージともよく一緒にいることを思い出した。
「ね、ヒカリ。ジャー……鈴原って今どこにいるか分かる?」
「鈴原? アスカ、鈴原に何か用なの?」
ヒカリは急に不安な顔付きになった。
「ん。別に鈴原に用があるんじゃなくて、一緒にいる相田ケンスケっていうヤツに用があるのよ」
「そうなの」
ヒカリはほっとしたようだった。ん? これはひょっとして……? ちょっとヒカリ、もっと男を見る目を。
いや、ええと、今はそれは置いといて。
「鈴原は今屋上じゃないかな。さっき上に上がってくところ見たから。相田君も一緒にいたと思う」
「シンジは?」
「碇君は先生に呼ばれて職員室に行ったけど」
「そう。ま、あいつはどうでもいいんだけど」
シンジのバカは写真の件に関わってるのかしら。もしそうなら許さないなんてもんじゃない。絶交よ。
もう二度と話かけてあげないんだから。
「一体何の用なの?」
「え、と。いや、何でもないのよ。ありがと、ヒカリ!」
それ以上突っ込まれないうちに礼を言って私は教室を飛び出した。
640名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 00:49:22 ID:???

見つけた。
二人はヒカリの言うとおり、屋上にいた。給水タンクのコンクリートの土台に腰掛けて、何か小声で喋っている。
「ちょっと、そこの二人!」
私の声を聞くと、二人は電流に触ったようにびくりと顔を上げた。
「やあ、惣流さん。何の用かな?」
相田ケンスケがしらじらしく私に挨拶をする。しかし、その緊張した表情を見ると、私の用が何かすでに察しているに違いない。
鈴原トウジはそっぽを向いて口笛を吹いていた。
「あら? 何の用かはあんたがよーーーっく知ってると思うけど?」
「さ、さあ? 何のことやら? なぁ、トウジ」
「あんたが見るのはそっちのジャージじゃなくてこれよ!」
私は相田に写真をびしっと突きつけてやった。
「あんたの名前を吐いたからね。いくら言い逃れしても無駄よ」
「げっ! これは……ヨッシーのバカ野郎!」
ジャージがげんなりした顔で、
「だからわしは止めとけいうたんや」
「……これはどういうつもりなのかしら? 納得のいく説明をしてもらいましょうか。
って、もしそんなのがあるとすれば、の話だけど」
「ええと、それは……」
相田の額から汗が一すじ、流れ落ちた。
641名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 00:50:32 ID:???

私は屋上から戻ると、ヒカリにコトのあらましを話した。
「まぁ、相田君ったら。何を考えてるのかしら!」
ヒカリはまるで我が事のように怒っている。
相田にはしかるべき制裁を加えたあと、二度と写真を撮らないように約束させた。
もし約束を破ったら、今度はこの世に生まれたことを後悔するような目に遭わせてあげると宣言すると、相田は平伏して許しを請うた。
怒りが収まったのは、撮られた写真はあの一枚だけということと、あとは――シンジは関係ないと知って
少しホッとしたのもあるのかも知れない。
「事前に知らせたら止められると思って」との相田の台詞が私の機嫌をよくした。
ま、よく考えたら当たり前のことだけど。
「それで、その、アスカ」
ヒカリは言いにくそうに
「鈴原だけど――」
「あぁ、あいつならこの件には関係ないから。安心して」
本当はどうだか知らないけど、私はこう見えても友達想いなの。
「私みたいなのはタイプじゃないって」
私は片目をつぶってみせた。
「大丈夫よ、ヒカリ」
「え。何、それ――。私、別に――」
ヒカリの顔が赤くなった。かわいい。
ったく、ジャージにはもったいない!
チャイムが鳴って、昼休みの終わりを告げた。
642名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 01:10:30 ID:???
転校生キター
643名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 02:23:52 ID:???
転校生面白いよ
万の言葉を持って語りつくしたいよ
644名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/01(火) 11:55:35 ID:???
ワックスワックス
645名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/02(水) 16:54:34 ID:???
ワッホゥワッホゥ
646名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/07(月) 09:08:48 ID:???
保守
647いつか名無しさんが:2008/07/08(火) 05:30:15 ID:???
【これがアスカの生きる道!雨中熱投編】


ピンポン パンポン

六限目の授業が終わった。昼過ぎから降り出した雨は本降りになってる。
でも最近あたしは、雨が降ると分かっていても傘は持って来ない。もちろん
あたし専属の傘持ち係がいるからだ。
「シンジィ、帰ろ?」
「待ってアスカ、今行くよ」
しかし、コイツはおかしい。いまだに相合い傘だと赤い顔しておどおどしやがる
のだ。全世界公認婚約者のこのあたしと相合い傘で何が恥ずかしいんだか。
そういえば、デートの時もあたしと腕を組むと落ち着きがなくなる。まさか
コイツ、一生このまんまじゃ…?
「はいアスカ、これ」
シンジが手渡したのは折り畳み傘。
「…え、ちょっと、何これ」
「ほら、アスカはしょっちゅう傘忘れて来るからさ、アスカの分も傘を持ち歩く
ことにしたんだ」
そういって、もう一本の傘を鞄から取り出すシンジ。

こ、こ、こンのブァカシンジィィィィ!!!

なんで別々に傘差さなきゃいけないのよ!あたしはあんたの婚約者でしょ!?
相合い傘ぐらい当然だし、ついでに「もっとこっちに寄らないと濡れちゃうよ」
とか言ってあたしの肩を抱き寄せるぐらいしてもいいじゃない!

と叫びたかったけど、どうにか口に出さずにこらえた。あたしだって多少は
成長したんだ。シンジに嫌われると困るから、すぐに口に出したり手を出したり
しないように努力してる。でも、別々に傘を差すのは 絶 対 イ ヤ 。
どうしてくれようか…
648いつか名無しさんが:2008/07/08(火) 05:31:42 ID:???
登下校口を出て、シンジは傘を開いた。
「どうしたの、アスカ?傘差さないの?」
あたしの天才頭脳が高速回転。そうだ、ここの塀の向こうには…
ていっ!
あたしは折り畳み傘を塀の向こうにぶん投げた。二、三秒後、塀の向こうから
ジャボーン、と音がした。
「なっなっ、何やってんだよアスカ!」
「ごめーん。シンジがせっかく用意してくれた傘なのに、あたしうっかり
川に落としちゃった」
「うっかりじゃないだろ!?振りかぶって、綺麗な投球フォームで投げたじゃないか!」
「傘なくしちゃったから、シンジの傘に入れてくれる?」
あたしはすかさずシンジの胸に飛び込んだ。
「おうおう、なんや知らんがアッツイのぉ〜」
「ト、トウジ!?ア、アスカも離れてよ!」
「ヤダ」
「センセも往生際悪いのぉ〜。はよ惣流と相合い傘で帰ったり」
「やめなさいよ鈴原!」
「な、なんや委員長、おったんかいな」
「あっヒカリ、あんたの傘ちょっと貸して」
「ちょ、ちょっと、どうすんのよ」
「ていっ!」ジャボーン
「ア、ア、アスカ、あんた人の傘を〜っ!」
「鈴原、ヒカリの傘がなくなっちゃったから、あんたヒカリを家まで
送って行きなさいよ!」
「そ、惣流、おどれは〜!」
「さ、シンジ、帰ろ♪」
あたしはシンジの腕に手を回して歩き出した。
「ちょっと、まずいよアスカ!委員長の傘まで捨てちゃって…」
「大丈夫。見てみなさいよ」
振り返ると、真っ赤になって俯くヒカリと鈴原。
649いつか名無しさんが:2008/07/08(火) 05:33:13 ID:???
「でもさ、乱暴なんだよアスカは…何も川に投げ込まなくても」
「そんなこと言うのはどの口よ…」
「ひたひひたひ、ひゃめへひゃめへ」
「まったく、好きな女の子と相合い傘もできないなんて、あんたも鈴原も
サイテーね」
「いや、だって恥ずかしいし…」
「な ら 女 と 付 き 合 う な。一生童貞でいろっつーの」
「アスカ、そんな童貞とか露骨なこと言わなくてもさぁ…」
「あ、いいこと思い付いた。今後、あんたが相合い傘を嫌がったり、デートの
時に腕を組むのを嫌がったりしたら、一ヶ月間エッチ拒否ね」
「ええっ!いや、それはちょっと…」
「何よ。一緒にいるのが恥ずかしいような女と、エッチしてもしょーがない
じゃない!」
「いや恥ずかしいってのはそんな意味じゃなくてさ…」
「どんな意味よ!?」
「その、人前で女の子とデレデレすること自体恥ずかしいから…スケベだと
思われたらイヤだし」
「ふ〜ん。スケベじゃないシンジ君は、女の子とエッチしなくても平気よねぇ」
「い、いやそれは…意地悪だよアスカは!」
「意地悪はあんた。あたしは、人前に出せないような恥ずかしい彼女な訳!?」
「そ、そんなこと言ってないだろ!?」
「なら堂々と腕組んでよ!『この娘は僕の彼女です』って宣言してよ!
あたし、あんたが好きだから付き合ってるのに、なんでコソコソしなきゃ
いけないのよ…」
「ア、アスカ…ごめん、泣かないで」
「…いいわ。なら家まであたしの肩抱いて行ってくれる?それで勘弁してあげる」
「ええっ!?」
「ほら、傘はあたしが持つから、早く!」
「し、しょうがないな」ギュッ
シンジの顔は真っ赤。あたし達はしばらく無言で歩いた。
650いつか名無しさんが:2008/07/08(火) 05:34:09 ID:???
「…ねぇシンジ、もっと自信持ちなさいよ。あたし、肩抱いてもらって嬉しいよ?
あたしを幸せにできるのはあんた一人だけなんだから、もっと堂々と振る舞って
あたしをいっぱい幸せにしてよ」
「…う、うん。努力するよ」

中途半端な返事にムカついたけど、とりあえずシンジに追い込みを掛ける
のは止めにした。コイツはそうすぐには変われない。あたし達にはまだまだ
時間がある。たぶん一生分の時間が。その時間を使って、コイツの尻を叩き、
励まし、キスしてやるのがあたしの仕事になるんだろう。

あたしの肩に回したシンジの手がフッと離れる。離さないでって言ったのに!
でも、その手があたしの髪を撫でる。あ、これもいい。やるじゃんシンジ。
「髪の毛、跳ねてるね」
「雨の日はね」
「でも、綺麗だよね。アスカの髪」
「…ねぇシンジ」
「なに?」
立ち止まったあたしに、キョトンとするシンジ。あたしはシンジの首に抱き着き、
キスしてやった。ん〜
「…プハッ な、何だよ急に!」
「ありがと。ほら、行こ」
真っ赤になるシンジ。
「…シンジ、手」
慌ててあたしの肩に手を回すシンジ。
「でも、こんなところでいきなりキスしなくても」
「…髪を撫でてくれて、綺麗だって言ってくれたから。嬉しかったから」
肩に回したシンジの手に力がこもる。あたしはシンジを見上げて、あたしの
取って置きの笑顔を見せてやった。
【終わり】
651名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/08(火) 08:13:05 ID:???
いいよいいよー
652名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/15(火) 23:14:39 ID:???
>>641

10.

「おばさんの料理、本当に美味しいです」
アスカが肉じゃがに箸をのばして言った。
「あら、お上手ね、アスカちゃん。遠慮しないでどんどん食べていいのよ」
母さんがご飯をよそりながら言った。
「しかし、シンジはちゃんと教えているのか? 心配だな」
父さんが母さんから茶碗を受け取って言った。
「そうそう。逆に迷惑じゃないのかしら?」
母さんが心配そうに言った。
「そんなことないです。碇君には本当に良くしてもらってるんですよ」
アスカがにこやかに笑って言った。
僕は黙って右手に持った茶碗を見つめていた。
知り合って二週間くらいなのに、彼女はなぜ僕の家で夕食を一緒に食べているのだろう?
茶碗は僕の素朴な疑問には答えてくれそうになかった。きっとお腹いっぱいでそんな下らない質問には
答える気がないのだろう。僕は茶碗を空っぽにすべく、やけくそ気味にご飯をかきこみはじめた。
「しかし、こうやっていると女の子も欲しかったことを思い出すな。なあ、母さん」
「そうそう、女の子だったら名前はレイにしようって決めてたのよ」
「え〜、そうなんですか? 良かったら私を娘だと思っていいですよ……なぁんて言ったりして!」
何なんだ、この異様に和やかな雰囲気は……。ついていけないよ。
「どうしたの、シンジ? さっきから黙ってて」
「どうもしないよ」と、僕は言った。
653名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/15(火) 23:19:20 ID:???

――週に何回アスカの家庭教師役をするのか、僕はアスカと相談した。
僕はチェロの練習があるし、トウジとケンスケに付き合いが悪くなったと怪しまれるのはまずいから
(家庭教師のことが二人にバレたら何て囃し立てられるのか、考えただけで嫌な汗が出てくる)、
週にニ、三回ではどうかと提案したところ、それでOKということになった。
それでいいということになったけど。
今日、練習から帰って来ると、母さんが誰かと喋っている声が聞こえてきた。
父さん?
いや、父さんの声もしてる。それ以外の誰かだ。
それ以外の誰かって、この声は。
アスカ!?
居間に入ると、アスカが食卓に座って楽しそうにおしゃべりをしていた。
僕を見てにっこりと笑う。
「あら、碇君、おかえり」
僕はアスカの返事に卒倒しそうになった。おかえり?
動揺のあまり、危うくチェロのケースを落としそうになる。
「君は、ここで、な、何を……」
「ほら、あん……碇君のご両親に挨拶してなかったし」
本当にそんな殊勝な理由だろうか? 僕に対する嫌がらせとか……あるいは単に暇だったからとも考えられる。
母さんがエプロンで手を拭いながら、
「ついでにご飯を食べていったらって私が誘ったのよ。今日はアスカちゃんのご両親は遅くなるっていうから。
さ、シンジ。手洗って座りなさい。ご飯にするわよ」
「え!? ああ、うん……」
習慣とは怖いものだ。驚きが消えないまま、つい言われたとおりにする僕だった。
そして夕食の用意ができて、箸をつけたあとに、アスカが「おばさんの料理、本当に美味しいです」と言ったのだった。
654名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/15(火) 23:21:14 ID:???

話題はもうすぐ行われる期末テストの話になっていた。
嫌な話題だ。特に成績が悪いわけじゃないけど、だからといってテストが待ち遠しいレベルでもない。
「アスカ。そう言えば、テストのときはどうするの? やっぱり日本語で受けるの?」
「あったりまえじゃない。わざわざドイツ語に翻訳してくれると思ってるの? というかドイツ語できる先生いないじゃん」
「そっか。じゃあ国語は厳しいね」
「あー、国語ね。国語はもう捨てるからいいの。今回は数学とか理系を頑張るの」
「まぁ、そうだね」
父さんが割り込んできた。
「おや。シンジはもう名前で呼んでるのか? なかなか隅に置けないな」
父さんにしては驚いた顔をしている。僕は慌てて弁明しようとした。
「いや、これはアスカがそう言え……いてっ!」
「どうした?」
「い、いや……。何でもないよ」
アスカが足の指で僕の太ももの肉をつねったのだ。ヘンなところで器用なんだな。いや、感心してる場合ではない。
やめろよ、と僕はアスカに顔で訴えた。
アスカは父さんと母さんが見てない隙に、僕に向かって、まるで子供が親に反抗するときのように
鼻に皺を寄せ、下唇を突き出してみせた。余計なことを言うなというボディランゲージだ。
僕は肩を落とした。何を言っても無駄なのだ。いや、今回は何も言ってないけど……。
まぁ、一応母さんと父さんの前では大人しく猫をかぶっているだけマシなのかも知れない。
「じゃ、そろそろ帰ります。たぶんもうママも帰ってるから」
デザートの果物を食べ終えると、アスカが立ち上がった。
「あら、ゆっくりしていけばいいのに」
僕は心の中で母さんがこれ以上余計なことを言わないように念じた。
アスカに僕の子供のころの写真まで見せてしまう勢いだ。
「いえ、あまり長居するのも何ですし……。ご馳走様でした。じゃ、またね、シンジ君」
アスカは邪悪な笑みを浮かべた。母さんと父さんには、きっと可愛らしくて年相応の笑顔に映っているんだろう。
「……また明日」
僕は気弱な笑みを返すことしかできなかった。
655名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/15(火) 23:22:17 ID:???

その日の夜のことだった。精神的に疲れた僕は(というか、アスカが転校してきてから疲れっぱなしのような気もするけど)
早めに寝るために明日の準備をしようと思い――そこでカバンを下に置きっぱなしにしたことに気がついた。
舌打ちをして階段を下りる。これもアスカのせいだというのは八つ当たりかな?
居間のドアノブに手を掛けようとして、父さんが電話で話をしている声が耳に入った。
自分でも良く分からない理由でドアを開けるのを止め、耳を澄ませた。
理由――邪魔しては悪いと思ったから。
じゃあ何で盗み聞きするような真似をする? 話の内容を聞く必要はないはずだ。
何でだろう。そう――きっと、好奇心だ。
「ああ。すでに接触済みだ。……。順調だよ。分かっている。今度は成功させる。
なんとしてもだ。……。ああ。そうだ。人間には時間がないのだ。また報告する」
驚いた。人間に時間がないなんて、穏やかじゃない言葉だ。
僕はドアノブを回して居間に入った。
「ああ、シンジか。どうした?」
父さんが受話器を置いて、ゆっくりと僕のほうに身体を向けた。僕は唾を飲み込んだ。
「あの……カバン忘れて」
「そうか」
「父さん、あの……」
「何だ?」
「今の電話だけど」
「何だ、立ち聞きか? シンジも人が悪いな」
父さんは冗談っぽく言ったけど、目が笑っていなかった。僕は二の腕に鳥肌が立つのを感じた。
なぜかは分からない。口の中が乾いて次の言葉がなかなか出てこなかった。
「その、人間に時間がないって言ってたけど……」
父さんはすぐには答えず、視線を僕から逸らせた。
沈黙は居心地が悪くなるほど続いた。僕のほうから何か言ったほうがいいのかと思ったところで父さんが口を開いた。
「シンジは地球の人口が今どうなってるか知ってるか?」
「人口?」
656名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/15(火) 23:24:41 ID:???
驚いた。唐突な言葉だ。
「詳しくは分からないけど……。増えてるんじゃないかな」
「逆だ。減ってるんだよ。それも凄い勢いでな」
減ってる? 凄い勢いで?
「そんな話、テレビでも新聞でも見たことないけど、本当なの?」
父さんは眼鏡を外し、ティッシュを一枚取るとそれで眼鏡を丁寧に拭いはじめた。
その仕草にはどこか首筋の毛をそそり立たせるようなところがあった。
「シンジ、いいか。テレビだの新聞だのを見ても、真実はひとかけらも手に入らない」
僕は戸惑って父さんを見る。確かにそういう側面はあるかも知れない。だけど……。
「でも……。人口が減ってるなんて隠せるものなの?」
父さんは眼鏡をかける。蛍光灯の光が眼鏡に反射して、父さんの目が見えなくなった。
「その気になれば、組織は何でもできるんだよ」
「組織!? 組織って何の?」
「シンジは知らなくていいことだ」
「そんな……。気になるよ」
僕たちは一体何の話をしているんだろう。世界を股にかけて陰謀を企てる悪の組織の話?
って子供向けの特撮ヒーロー物じゃないんだし、きっと父さんは冗談を言っているのだろう。
……全然冗談を言ってる顔には見えなかった。
「もう寝るよ。明日は早いからな」
父さんはこの訳の分からない会話を続ける気がないようだった。
僕も気が削がれて、
「え。あ、うん……。僕も」
カバンを取って居間を出ようとした。
「シンジ」と、父さんがふと何か思い出しように僕に声をかける。
「何?」
「黒服の男には気をつけるんだぞ」
「は……!?」
どういう意味か訊こうとしたけど、父さんはすでに隣の寝室に入ってしまっていた。
校長先生の話が耳に入って、それで僕に注意を促したのだろうか?
普通に考えればそうだ。普通に考えれば……。
今日――というか、さっきの父さんは普通ではなかった。
僕は釈然としない気分のまま二階に上がった。
657名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/15(火) 23:27:20 ID:???
10’.

「ヒカリは?」
私は教室を見回した。いつの間にかヒカリがいなくなっている。
「あれ? さっきまで居たけど……。どこ行っちゃったんだろ」
前の席の子が私と同じようにきょろきょろとあちこちを見回す。
「借りてたCDを返そうと思ったんだけど……。ま、別に今じゃなくていいんだけど」
私の隣の席の子が、さっき外に出てったよ、と声をかけてきた。
私は礼を言って教室の外に出た。
ひょっとして関西弁のジャージとどこかで逢引なんかしてるかも知れない。ヒカリが危険な目に遭わないように
私が目を光らせておかなくては……というのは冗談。単にヒマだからぶらぶらしたいだけ。
あ、いた。職員室を過ぎた三階への階段のところにいる。
誰かと仲良く喋っているみたいだけど、柱が邪魔になって相手が見えない。私はもう少し前に進んだ。
ヒカリと喋っているのは――よりによってあの怪しい校長!
私は一瞬、見つからないうちに教室に戻ろうかと思った。だけど、遅かった。
「あ、アスカ!」
一体何に気がついたのか、ヒカリが振り返って私に手を振った。意外に(?)カンが鋭いわね。
こうなったらヒカリのところへ行くしかない。
「……こんにちわ」
自分でもぎこちないと思いながらも挨拶をする。
「おや。君は確か、新しく転校してきた……。何といったかな。年を取ると、どうも物忘れをしやすくてね」
校長が頭をかきながら言う。わざとらしい。腹が立ってきた。
「惣流・アスカ・ラングレーです」
「そうそう、惣流君だったね。日本はどうかな? 学校に早く慣れればいいのだがね」
「……おかげさまでもう慣れました」
ヘンな人はいますけど、という台詞が危うく口から飛び出そうになった。
658名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/15(火) 23:27:52 ID:???
校長はそれはよかった、と頷いて、
「ところで、惣流君は、将来は何になりたいのかな? いや、洞木君とそういう話をしていてね」
「そうなの。私は保母さんなんていいかなと思うんだけど。アスカは?」
「え……と。取り敢えず今は、パパとママみたいに研究者になるのもいいかな、と思ってます。
ま、正直真面目に考えたことはないんですけど」
うーん、なかなか学生と教師らしい会話ね……などと思っていると、校長が私の目を見つめて、驚くような台詞を口にした。
「パイロットはどうかね?」
「はぁ!?」
女だからとか、そんなツマラナイことを言うつもりはさらさらないけど、女の子に職業としてパイロットを
薦めるなんて聞いたことがない。一体どういう理由でパイロットが出てきたんだろう!?
「私、別に飛行機に乗りたいわけじゃないし……」
「そうかな。私も似合うと思うな、パイロット」
ヒカリが校長に賛同した。
「ヒカリ?」
驚いて思わずヒカリを見る。
「だって、かっこいいじゃない。アスカ、絶対似合うよ」
「そ、そう?」
「アスカは運動神経は抜群だし、頭もいいから」
そう言われたら悪い気はしないけど、それにしたって……。
「まぁ、飛行機だけがパイロットじゃないと思うがね」
校長は謎めいた笑みを浮かべた。
659名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/15(火) 23:28:51 ID:???
「じゃあ、何のパイロットなんですか?」
私は反射的に訊いていた。他に何かあったっけ?
「それは自分で見つけたまえ」
「はあ!?」
「こういうことは自分で見つけるのが肝要だよ」
「何よ、それ」
私は立ち去る校長の背中に向かって呟いた。
まったく意味不明な男だ。謎めいたことを言って生徒を混乱させるのが趣味なんだろうか?
「校長先生って落ち着いてていい人よね」
ヒカリが呑気に言う。
「そぉお? ヘンじゃない?」
「ヘンじゃないわよ」
力を込めて反論するヒカリに向かって、「ま、いいけどね」と答えて私は肩をすくめた。

今日はシンジがチェロの練習で、漢字の勉強はなし。何もすることがなかった。自分で勉強する気もおきない。
パパもママも今日は遅くなるから自分で食事の用意をしなければならない。あー面倒。
「つまんないの」
ベッドに倒れこんで呟く。街をぶらついてナンパしてくるバカどもを、片っ端から手酷く振ってやろうか。
ふいにある考えがひらめいて起き上がった。
別にシンジがいないときはシンジの家に行ってはいけないという決まりはない。
「きちんと挨拶するのが礼儀ってもんよね」
私は服を選びはじめた。
660名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/16(水) 01:02:04 ID:???
イイ!
転校生!お前が俺の生きてる理由だよ!!!
661名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/16(水) 07:53:12 ID:???
書き方が巧妙だな
662名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/20(日) 14:04:44 ID:???
いいなぁ
次回が気になるよ!
663名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/21(月) 21:38:18 ID:???
北行きたい
664名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/22(火) 18:23:04 ID:???
>>663
親愛なる将軍様のところか?
665名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 00:18:57 ID:???
>>659

11.

団長が、練習をはじめる前に新入団員を紹介します、と言って奥に引っ込んだ。
僕は興味と期待をこめて見守る。
どんな人なんだろう。できれば年が近いほうがいいな、と僕は思った。
やはり同年代がいないというのは寂しいものだ。団員はみんないい人ばかりだけど、
年上だとどうしても気詰まりな感じがしてしまうのは仕方がない。まぁ、僕の性格もあるんだろうけど。
団長はすぐに新入団員を伴って再登場した。
思わず息を呑んだ。
新入団員が、銀髪で赤い瞳の少年だったからだ。
僕と同じくらいの年齢で、女の子が相当に騒ぎそうな容貌をしていた。
色白で、一見すると繊細なタイプに見えるけど、唇に浮かんだ微笑がその第一印象を裏切っていた。
何かおかしいことがあるからというわけではなく、いつも浮かべているのだろうと思わせる微笑だった。
緊張している様子はまったくない。むしろ楽しんでいる様子だった。
彼は物怖じせずに自己紹介した。
名前は渚カヲル。僕と同じ十四歳ということだった。担当はヴァイオリン。
どこの中学校だろう? あとで訊いてみよう。
僕は同年代の団員の存在に、嬉しくなった。
さっそくウォーミングアップをする彼――渚カヲルを横目で見ながら、僕は、友達になれたらいいな、と思っていた。
僕の淡い期待は、すぐに裏切られることになった。
666名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 00:20:34 ID:???

休憩時間になると、渚カヲルが僕のところにやってきた。ちょうど空いているパイプ椅子に腰掛ける。
僕から声をかけようと思っていたのに。機先を制された僕はどぎまぎした。
「やあ、シンジ君」
「や、やあ」
彼がなぜ僕の名前を知っているのか、疑問に思う間もなかった。
彼のほうから声をかけるとは思ってなかったこともあるし、次に彼が発した言葉のせいもある。
「また会ったね」と、渚カヲルは言ったのだった。微笑が深くなっていた。
「え……と」
僕は失礼だとは思いつつも、つい見つめてしまった。彼は僕の凝視にもたじろがなかった。
もっとも、彼が何かにたじろぐ様は想像出来ないけど。
「どこかで会ったっけ?」
これほど印象的な人に会って覚えてないなんて有り得ない。よほど子供のころならともかく。
しかし、渚カヲルは僕の質問には答えなかった。
「エヴァは順調なようだね。今のところは……だけど」
「誰?」
声のトーンが高くなるのが自分でも分かった。何で僕の質問に答えないんだ?
「外国人に知り合いはいないよ。というか、さっきから僕を誰かと勘違いしてない?」
「満足しているようだね」
「何に?」
僕の質問にはいっこうに答えようとせず、自分の言いたいことだけを言う態度に、
さすがの僕も苛立たしさを感じはじめていた。
667名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 00:22:07 ID:???
せっかくの同級生かと思ったらこんなにヘンなヤツだったとは……。がっかりだ。
「今の生活に、だよ」
渚カヲルはまるで世界を示すように両手を広げた。
「まぁ、満足しているよ」
君みたいな妙な質問をしてくるヤツに出会ったりすること以外はね。
「どれくらい満足しているんだい?」
「どれくらい、だって? そんなの……」
僕は言葉に詰まった。そんなのどうやって言えばいいんだ。
「すごく……だよ。すごく満足しているよ」
「だろうね。でも、それが問題なんだ」
「何で?」
「世界が変わらないからさ」
「あの……ね。入団してきて早々にこういうことを言うのは何だけど、君はちょっとおかしいよ」
渚カヲルは少し笑った。それを見て、無性に腹が立ってきた。僕をからかっているんだ。
「おかしいかな?」
「ああ、おかしいね。からかうのは止めてくれよ」
「からかってなんか、いないさ」
そう言うと渚カヲルは立ち上がった。
「今に分かるよ」
結局、どこの中学校に在校しているのかは訊かずじまいだった。
668名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 00:24:52 ID:???


翌日――。
学校への道すがら、僕はアスカに渚カヲルの話をした。
アスカはあまり興味がなさそうだった。まぁ、無理もないか。
「あんたのまわりはおかしなヤツばっかりね。あんた、そういうのを引き寄せる何かを持ってるんじゃないの?」
「何かって何だよ」
「あんた気が弱いから、そういうのに狙われやすいのよ」
君がその"おかしなヤツ"の筆頭なんじゃないの? ――とは言わない。朝っぱらから新聞の事件面に載るような
目に遭いたくないからだ。
ふと、アスカは実際に彼に会ったらどういう感想を持つのだろう、と思った。
まさか、アスカはああいうのがタイプじゃないよな。でも顔はいいし――。
「なぁに心配そうな顔してんのよ」
アスカが僕の顔を覗き込んだ。心の中を見られた気がして、動揺する。
「な、何でもないよ」
「あんたの"何でもない"は"何でもある"なのよね」
「本当に何でもないったら」
よく考えれば、アスカはどんなのがタイプなのかなんて僕が気にすることじゃない。
僕はそう決め付けた。
矛盾に目をつぶって、強引に。

葛城先生は、教室に入ってくるなり転校生を紹介しますと宣言した。
「今度は女子が喜ぶ番よ」
ニヤリと笑う先生の横には、当然のように彼がいた。
渚カヲルが。
669名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 00:28:27 ID:???
11'.

ドアが勢いよく開いて――毎度毎度、何でこう無駄に元気なのかしら――、ミサトが教室に入ってきた。
続いて入ってきた男子生徒の姿を見て、教室がざわめいた。
「はいはい! 席について!」
ミサトが手を叩く。
「また転校生ですか?」
「そうよ。見ての通り、美少年でしょ! 女子は喜びなさい」
ミサトは大口を開けて笑った。ったく下品な女ね。って、実際に喜んでるコもいるし。
確かに転校生はミサトの言う通りの美少年タイプだったけど、ナルシストっぽくて私はイヤだった。
……それ以前に何か得体の知れない感じがする。上手く言えないけど、何もかも分かってるんだ、
とでも言うような微笑が癇に障った。
転校生は、渚カヲルと名乗った。
しかし、あと一週間で期末テスト、三週間もしないうちに夏休みなのに転校してくるってのも何だかね。
転校の時期は私も人のことは言えないけど、それにしても二学期がはじまったら「あんた誰?」状態じゃないの?
――と思ったけど、きゃーきゃーはしゃぐ女のコたちを見ていると、そんなことはないのだろう、と思い直した。
ま、私には関係ないわね。興味ないし。
大きく伸びをして窓の外を見る。雲一つない、脳天気なミサトみたいな、つまりバカみたいないい天気だった。
私に関係ないというのは、大きな間違いだった。
670名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 00:29:22 ID:???

休み時間になり、隣のコと他愛もないお喋りをしていると、ふと人の気配を感じた。
見上げると、得体の知れない微笑を浮かべる転校生が立っていた。隣のコがステキと呟いた。
「やあ。惣流さん。相変わらず、元気だね」
一瞬、息が詰まった。
「……何で私の名前、知ってるの?」
転校生は肩をすくめた。
「有名だからね、君は」
そりゃ私ぐらいの美人になると有名になるのは当然だけど、転校初日ですでに私の名前を知ってるなんて
ヘンだし、怪しい。校長に引き続いておかしなヤツの登場?
「何か用? 私はあんたには用はないわよ」
「おやおや、手厳しいね。……僕が聞きたいのはアダムのことさ」
「アダム? 誰?」
「最初の人間だよ」
「何? 聖書の話? 私、宗教関係はお断りだから」
私は身構えた。なるほど、ちょっと妙な雰囲気を感じるのはそっち関係のヤツだからか。
「聖書の話じゃないんだ」
「じゃあ、何の話なのよ」
「世界の話さ」
転校生はまるで世界を示すように両手を広げた。
「はい?」
これは校長よりもタチが悪そう。
「まぁ、強制しないというのがこちらが決めたルールだからね。安心してよ」
「お手洗いに行ってくる」
私は無視することに決めた。おかしなヤツは無視するのが私のルール。あんたはあんたのルールで好きにやればいい。
立ち上がってドアのほうに向かった。さっそく隣のコが転校生に話しかけるのが聞こえてくる。
転校生は如才なく相手をしているようだった。
ドアを閉めるまで、私は背後に転校生の視線を感じていた。
671名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 00:32:02 ID:???

テストの一週間前から部活動は休止になるということで、今日はヒカリと一緒に下校。
いつもこうだったらいいのに、と私は思う。
色々しゃべるうちに、あの怪しい転校生の話になった。
「どう思う、渚君って」
「あいつ絶対おかしいわよ」
憤然となるのはどうしようもない。
「何で?」
ヒカリは首をかしげた。私がヤツと会話していたときはいなかったからだ。
私はヒカリに詳細を話した。
「ふーん。ちょっとヘンな人だね」
「でしょ! まったく参っちゃうわよ。付きまとってきたらどうなるか見てなさいよってカンジ」
「ちょ、ちょっと。暴力行為はダメよ、アスカ」
「やらないわよ。多分ね。ヒカリはどうなの? ああいうタイプは」
ヒカリは眉をひそめた。
「あのね。こういうこと言うの、どうかと思うんだけど……」
それきり語尾を濁す。私は促した。
「何?」
ヒカリは小声で呟いた。
「渚君って……人間じゃないみたい」
672名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 05:02:01 ID:???
アフターものでしたか
673名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/23(水) 21:46:04 ID:???
ハッブルハッブル
674名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/24(木) 10:16:32 ID:???
どこまでもついてくよ転校生
675名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/07/31(木) 21:22:08 ID:???
保守
676名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/04(月) 07:59:16 ID:???
ふむふむ
677名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/07(木) 17:55:48 ID:???
保守
期待してるよ〜
678名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/11(月) 01:22:02 ID:???
アスカたん
679名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/11(月) 01:23:08 ID:???
アスカたん
680名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/14(木) 12:28:38 ID:???
〜序章〜


今、アタシは猛烈に怒っている。
『何故か?』って言うとアイツにはアタシだけを見て欲しいのに、
アイツは、よりによってアタシの嫌いなあの『人形女』を見やがった。
だから、アタシは復讐してやるの!!
この『惣流・アスカ・ラングレー』様が直々に、誰が1番かを教えてあげるわっ!
あの、鈍感バカにはアタシのなんだってのをね!
自室で拳を握り、少女は一人心の中で叫んだ
681名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/14(木) 13:25:57 ID:???
>>680

第一話
『アスカの誘惑と言う名の復讐』
朝、アタシは眠りから覚めてベッドから体を起こし、着替えを持って部屋を後にする。
もちろん、毎朝の日課であるシャワーを浴びる為に
アタシは少し熱めのシャワーを浴びて、すかさずバスタオルで身体を覆い、タオルで頭を覆ってから脱衣所から飛び出すと、すかさずあのバカに怒鳴り込んだ。
『あっつーぃ!!』
アタシの計算だとここで、アイツは『ゴメン…』と謝るはず。
「ゴ・ゴメン…」やっぱり謝った。
そこで、アタシはまくし立てる。
「ゴメン、ゴメンってアンタ本当に謝る気あんの?
アンタって内罰的すぎんのよ!」
『ハラリ…』
バスタオルが落ちた。
これも、計算だった。
アタシの裸見たらアイツの視線はアタシにくぎづけになるからだ。
でも、計算には狂いが生じることもある。
「あ〜ら、ダァ〜イタン♪」
この女が居た事だった。
いつも昼過ぎまで寝てるくせに、こんな時だけ早起きなんだから…
取り敢えずアタシは脱衣所に戻る事にした。
アタシはシャワーを浴びなおしながら、次なる手を考えていた。
682名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/14(木) 18:51:41 ID:???
終わり?続き町
683名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/15(金) 00:41:47 ID:???

新しいな
期待期待

転校生も期待してるよ(・ω・)/
684名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/15(金) 06:20:31 ID:???
>>680
>>681

『〜第一話〜アスカの誘惑と言う名の復讐』

シャワーを浴び終えたアタシは制服に着替えて、アイツと一緒に登校してやる事にした。
さっきは、ミサトに誘惑作戦を邪魔されたけど…
今度は登校途中で腕を組んで胸を押し当てたら、アイツは顔を真っ赤にさせて照れて、アタシの事を意識させてやるんだから!!
お風呂で再度計算しつくされた完璧な作戦を速やか実行に移つした。
だけど…よりによって、こんな時には必ず邪魔が入るのだ。アタシが手を繋ごうとした時
「碇くん、アスカおっはよ♪」
背後からアタシの友人であるヒカリがアタシ達に挨拶して来た。
「グーテンモルゲン」
アタシも挨拶をしかえして、ヒカリと一緒に登校する事にした。
だけど、ヒカリの登場は正直予定外だった。
こうして、アタシの『登校中に腕を組んで胸押し当て誘惑作戦(アタシながら長い作戦名ね…)』は未然に防がれた。
685名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/15(金) 09:24:53 ID:???
これは…キツいな……
取り敢えずもう少し書き溜めたらどうかと
686名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/15(金) 13:57:58 ID:???
第ニ話
『海に行こう〜アスカの誘い〜』


アタシはヒカリと一緒に学校へ到着し、鞄を机の横へ引っ掛けた。
アタシが学校へ到着してから、少ししてアイツはやって来た。
途中で一緒になったのであろう、ニバカと一緒だった。
アタシ達(と言っても、ヒカリだけなんだけどね)は、アイツ達の事を三バカトリオと命名している。
まぁ…三バカトリオの説明なんて要らないよね?
そうこう、している間に根府川先生の授業が始まった。
この先生の授業は正直、面白くないので聞き流しながら、アイツを見てみる事にした。
アイツの視線の先には…あの女の姿があった。
(やっぱり…あの女の事を見てるのね…)
アタシの胸が少し痛い…
だから、アイツを振り向かせアタシを見るように魅せる作戦を新たに立てる事にした。
687名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/15(金) 16:56:24 ID:???
アスカの復讐を書いてます
携帯から投下してましたが…その携帯がご臨終(全消去になった)なされて修理にだしてますので記憶を頼りにかいてますので、何かと迷惑かけますが長い目で見守ってあげて下さい
688名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/16(土) 00:52:54 ID:???
>>680>>681>>684>>686

第弐話
『海に行こう〜アスカの誘い〜』
アタシは授業中に考えた作戦を実行に移そうとしていた。
〜時間は昼休み〜
この時間を使わない手は無いだろう。
アタシ達は、いつもお昼休みになると決まったメンバーでお昼を食べていたから
いつものメンバーとは
『アタシとファーストとヒカリと三バカトリオ』
のグループである。
アタシは何気なくヒカリに話を振ってみた。「ねぇ、ねぇ〜。今度の日曜日に海に行かない?」
ヒカリなら、アタシの意図を読んでくれるはずだから。
「別に私は構わないけど…二人だけってのはねぇ…」
予想通りの答えが返って来た。 そして、ヒカリはチラチラと三バカトリオの一人の『鈴原トウジ』こと、ジャージを見ながらだったので、アタシが、もう一押しして
「なら、三バカトリオも一緒なら良いわね?
それに、アンタ達も一緒に行くわよねぇ?」
念のためジャージに声をかけた。
「ワシなら構わへんで♪それに、センセも一緒に行くやろ?」
と、ジャージがアイツに話を振った。
689名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/16(土) 01:04:16 ID:???
>>680>>681>>684>>686>>688

第弐話
『海に行こう〜アスカの誘い〜』

アタシは心の中で(ジャージナイス!!)とガッツポーズを決めた。
アイツ事だから、きっと返事は『Yes』だからね。
「う・うん。僕も行くよ」
ほらね♪
一応、ファーストにも話を振っておかないとね…
「アンタも行くわよね?」
アタシにとっては『No』と言って欲しい所なんだけど
「私も……行くわ…」
やっぱり…
一瞬、チラっとシンジを見たように見えたけど…
でも、アタシの悩殺ビキニで、シンジを悩殺してやるんだから!!
アタシは、心の中で雄叫びをあげた。



一方、三バカトリオの一人『相田ケンスケ』こと、メガネには、誰にも話題が振られなかった………合掌
690名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/16(土) 01:37:28 ID:???
わざわざ全部に安価しなくても名前欄に680とかでいいと思う
691名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/16(土) 15:19:36 ID:???
>>687
全部、思い出してから投下すれば良いのに。
692680:2008/08/16(土) 16:16:16 ID:???
第参話
『太陽と海と貴方に愛を〜アスカの行動〜』
Aパート
待ちにまった海に行く日がやって来た。
アタシは、この日に全てをかける為に用意した水着(マグマダイバーの回に着た水着)を持って来ていた。
でも、予想外な展開がアタシを襲った。
それは…
電車の座席だった。
アイツの隣には、ファーストが座って、前には、何故か着いてきたフィフス(渚カヲル)が座っている。
そして…その隣には、何故か戦自娘(霧島マナ)が座っていた。
通路を挟んで窓際の位置にアタシは座っている。
そして、アタシの隣は加持さんが座って前には、メガネが座って、横にはミサトがすわっている。
隣に座ってるのが加持さんだけに文句は無いんだけど…
今のアタシには向こうの座席が気になって仕方がなかった…
「どうした? そんな顔はアスカらしくないぞ?」
加持さんがアタシを気にかけて話してくれたから
「そんな事無いですよ♪せっかく加持さんの隣になれて嬉しいです♪」
嘘…今のアタシにはこれが精一杯だった。
「そか…俺はてっきりシンジ君の「かぁ〜じ君、それ以上ちゃかさないの♪」
ミサトが加持さんの言葉を制したんだけど…
顔がニヤケすぎてるわよ。
そうこうしながら海の駅に電車は近づいて行く
693680:2008/08/18(月) 21:44:01 ID:???
第参話
『太陽と海と貴方に愛を〜アスカの行動〜』
Bパート
いつの間にか、電車は海の駅に着いていた。
アタシ達は早速水着に着替えた。
塩の香りとさざ波が気持ち良い。
でも、アタシはしなければいけない事がある。
アイツが泳げない事は知っている。
だから、アタシが手取り足取り教えてあげるの♪
そして、あんな事や…
って何を考えてるのよアタシは…
そんな妄想をしてたのが悪かったのか、アタシはまた出遅れた。
楽しそうにファーストやフィフスや戦自娘に囲まれて微笑むアイツの顔を見たら少し寂しくなってきた…
とりあえず人気の無い所に行きたくなった。
だから、アタシは浜辺を一人で歩いた
694680:2008/08/19(火) 23:01:28 ID:???
第参話
『太陽と海と貴方に愛を〜アスカの行動〜』
Cパート
アタシが一人で落ち込みながら、浜辺を歩いていると
「彼女、一人かい?なら、俺達と遊ぼうぜ」
ナンパ男達が話かけてきた。
正直にウザイから無視をして歩いていると
「つれないなぁ〜…俺達と遊んでよ」
と、アタシの腕を強引に掴んできた。
アタシは頭にきたから、その手を振り払って
「アンタ達に付き合ってる程、アタシは暇じゃないの!!他をあたんなさいよ!!」
とナンパ男達に怒鳴りつけた。
これで、振りきったと思ってたら
「何か生意気じゃない?無理やりってのも、たまには良いんじゃない♪」
そう言うと、男達が一斉に飛びかかってきたので、アタシは溜ったムカつきを吐き出すように殴り倒した。
695680:2008/08/19(火) 23:22:46 ID:???
第参話
『太陽と海と貴方に愛を〜アスカの行動〜』
Dパート
アタシは、ここが砂地である事に後悔していた。
何故なら、砂に足を取られて思うように動けないし、何より打撃にダメージを与えられないからだ。
殴られても男達は立ち上がり、少しずつアタシを追い詰めていく
「中々やるじゃん♪でも、その程度じゃねっと!!」
『バキッ!!』
アタシの頬に衝撃が走った…男のパンチがアタシの頬に当たったからだ
「おとなしくしてば、こんな目にあわなくてすんだのに」
アタシは殴られた事に衝撃を受けて動けなくなっていた…
そして、男の一人がニヤケながらアタシの水着の上着を剥ぎ取った…
(イヤッ…シンジタスケテ…)
アタシは声に出せなかったけど、心の中でアイツに助けを求めた。
すると
「あの〜…その娘の知り合いなんだけど…」と、アイツが来てくれた。
アタシはいつの間にか、恐さと、シンジが来てくれた安心からか、目から涙が溢れてた。
それを見たアイツが
「アスカを泣かしたの誰ですか?他は見逃すので消えて下さい。」
アタシの涙を見るや否やシンジから殺気が判るくらいに出てた。
明らかに怒っている。
一人の男がシンジに向かって殴りかかって来たが、それを簡単に避けてから、手首の関節部分を捻り出して、投げた。
696名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 00:44:03 ID:???
>>671

12.

「シンジ。これ終わったら服買いに行くから一緒に来て」
アスカが漢字ドリルと睨めっこしながら言った。
「うん。いいよ」
僕は難しい連立方程式の問題にかかりきりで、つい生返事をしてしまった。
「ホントに分かってんの?」
アスカが僕のほうを見るのが気配で分かる。これはいけない。アスカはいい加減な返事をするとすごく怒るんだ。
「分かってるよ。アスカと一緒に服を買いに行けばいいんだろ」と、僕は言った。それから顔を上げた。
「今、何て言った?」

「ねぇ、アスカ。試験はあさってなんだから、こんなことしてる場合じゃないと思うけど」
僕は無駄と知りつつもそう言わずにはいられなかった。日はもうだいぶ傾いていて、アスカと僕の影が歩道に伸びている。
ときおり強く吹く風に踊る彼女の金髪が、夕日に映えて赤く輝いていた。
アスカはくるりと振り向いた。
「うるさいわねー、この小心者! 今さらじたばたしたってしょうがないでしょ。気分転換ってコトバ、知らないの?」
「いや、そりゃ知ってるけど……」
「これは運命なのよ。受け入れなさい」
僕は苦笑いを浮かべた。運命って、たかが服を買いに行く程度でおおげさな。アスカらしいと言えばアスカらしいけど。
697名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 00:45:49 ID:???

三十分後、僕とアスカは市内のブランドショップにいた。中学生が入るには少しためらうようなタイプの店だ。
店員の目が気になった。僕とアスカはどう見られているんだろう。お姫様とその召使といったところだろうか?
アスカは人の目など全く意に介さず、楽しげに物色していた。
「おー。これなんかいいじゃん? どう思う、シンジ?」
「うん、いいと思うよ」
「あんたホントにそう思ってるの?」
「も、もちろん本当にそう思ってるよ」
「じゃあ、具体的にどういいと思ったの?」
僕は四苦八苦しつつも少ないボキャブラリーを駆使して答える羽目になってしまった。もっともまともに答えられるはずもなく、
センスがないだの何だのと罵倒される結果に終わったけど。何故かは分からないけど、それほど不快な気分にはならなかった。
「ちょっと、こっち」
ひとしきり続いた僕への尋問を終えると、アスカは水着のコーナーに僕を引っ張っていった。
「ま、まずいよアスカ」
色とりどりの水着が否応なく僕の目を引く。
「なぁにがまずいのよ」
女の子と一緒とはいえ、水着コーナーなんて恥ずかしいに決まっている。僕が口を開きかけたとき、アスカは僕を横目で見てイヤらしい笑いを浮かべた。
「水泳の時間に私のほうをチラチラ盗み見てたくせに」
「みっ、見てないよ!」
698名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 00:47:02 ID:???
僕は思わず大声を上げてしまい、慌てて自分の口をふさいだ。少し離れたところにいた二十代半ばのカップルが僕たちをいぶかしげに見た。
「へえ。あんたの視界に私の姿はまったく、これっぽっちも入らなかったってわけ?」
「それは……多少は入るに決まってるよ」
また嫌な予感がした。このまま進めばアリジゴクの巣に落ちると分かっていながら進まざるを得ないアリの心境だった。
「アスカだけをじろじろ見てたりはしなかったってことだよ」
「ふーん、そう?」
意外なことにアスカはあっけなく引き下がり、僕は胸を撫で下ろした。
「見てシンジ! これどう?」 
アスカが手にとって胸に当てたのは、驚くほど紐が細くて扇情的な水着だった。僕は顔を赤くして水着から目を背けた。
「なーんちゃって! こんなの着るわけないでしょ。だいたい私、Dカップだからこれだとおさまらないし」
「Dもないだろ、アスカ」
僕は反射的に答えていた。アスカは口を丸くした。
「何で分かるのよ! あーっ、やっぱり見てたんじゃない! しかも胸のサイズなんか脳内で計っちゃたりしてて……。もう、最低!」
しまった、と僕は臍をかんだ。僕は特上級の間抜けだ。
「違うよ、普通に考えて、中学生がDはないと……」
「うるさい! このスケベ大王!」
699名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 00:49:15 ID:???

……と、こんな調子で振り回された末に、買い物はアスカが左右の手に持つワンピースとブラウスに帰着した。
シンプルなデザインのワインレッド色のキャミソール・ワンピースと、袖と裾に複雑な幾何学模様の刺繍を施したブルーのブラウス。
「どっちがいい?」
とっさに「どっちも似合うよ」という台詞が口をついて出ようとした。実際、どちらも似合うだろう。
しかし、僕は赤いワンピースを指差していた。
「こっち、かな」
アスカは僕の顔をじっと見詰めて「何で?」と言った。こちらが戸惑うほど真剣な表情だった。てっきりもっと考えなさいよ、
とでも言うかと思ったのに。僕は咳払いをして答える。
「アスカには赤が似合うと思ったから」
アスカは、ふうん、と呟いた。それから「分かったわ」とうなずいて、ブラウスを元の場所に戻すと、レジに向かった。
違和感が生じたのはその時だった。しかし、その正体を掴む前に支払いを終えたアスカが帰ってきて
僕と腕を組んだために、違和感は雲のように消えてしまった。どうでもよくなった、と言ったほうがいいかも知れない。
「さっ、用は済んだし、帰りましょ」
「う、うん……」
アスカの肌に触れた部分が、異様に熱を持っているように僕には感じられた。
700名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 00:50:07 ID:???

帰り道は従者よろしく荷物を持たされた。まぁ、大した重さじゃないけど、そういう問題じゃない。当然のようにアスカが僕に渡して、
当然のように受け取ってしまったのが問題なのだ。男として、少し情けなくはないだろうか。あるいはそんなことを考えること自体が情けないのだろうか。
「ねぇシンジ、あれ!」
僕の悩みも知らず、アスカが指し示した先にはゲームセンターのクレーンゲームがあった。
「私、欲しい人形あるのよね」
「へぇ。どれなの?」
人形なんてアスカらしくもない、と僕は思った。いや、ライオンだって満腹のときは穏やかで可愛い顔をしているものだ。
買い物をして精神的に満腹状態のアスカに女の子らしい一面が浮かんできてもおかしくはない。
筐体の脇に立って、アスカが指を差した。「これよ」
「え……。これ!?」
透明なプラスチックの箱に入ったそれは、奇妙な形をしたロボットの――たぶんロボットだろう――フィギュアだった。
ロボットにしては流線的な(ロボットというのは角ばってるものじゃないか?)形状で、赤く塗られていた。
おかしなことに箱には何も書かれていない。これじゃ何のフィギュアなんだか分からない。
「これが欲しいの!?」
僕は驚いてアスカを見た。アスカは僕を挑戦的に見返した。ゲームセンターの照明に照らされて瞳が猫のそれのようにきらきらと光っていた。
「そうよ。悪い?」
「別に悪くはないけど……。何でまたこれを?」
「この間ちらっと見かけたときから気になっちゃってさ。そういえばこれも赤いわね」
僕はまだ腑に落ちなかったけど、それはそれとして、「とってあげるよ」と言った。流れからいってそう言うべきだと思ったからだ。
「いいのよ、無理しなくたって」
アスカが珍しく優しいことを言った。
「無理じゃないよ。こんなの一発で取ってやるさ」
僕はむきになって宣言した。
目的の箱は熊のぬいぐるみに囲まれていて、取りやすいとも取りにくいとも言えないような、微妙な位置にあった。
筐体のまわりをぐるぐるとまわって、慎重にシミュレーションする。
701名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 00:51:49 ID:???
「ちょっと、早くしなさいよ! 朝になっちゃうわよ!」
アスカが焦れたように言った。
「分かったよ」
僕は百円玉を入れて、ボタンを押した。
一発で取ると言ったけど、実際はそんなに上手くはいかないだろう。だいたい一回で取れるようなものじゃないんだ。
あんなこと言わなければ良かったな――と思いつつも、固唾を呑んでクレーンの行方を見守った。
僕が期待した通りにツメがケースに引っかかり、持ち上げて、移動して、落とし穴まであと少し……。
……というところで握力が突然弱まったみたいに、ガクッとフィギュアの箱がずり落ちそうになった。
「あっ!」
僕とアスカは同時に声を出した。
やっぱり一回では取れないか――と、新しく百円玉を用意しようとした、そのときだった。うず高く積み重ねられた熊のぬいぐるみの一つが、
何の前触れもなく転がり落ちてきた。そして、落ちそうになった箱のちょうど下に入り、そのおかげで箱は持ちこたえて落とし穴に無事落ちた。
僕とアスカは声もなく、しばらく顔を見合わせていた。何だこれは――。何としても僕に景品を取らせようという、誰かの見えない手の計らいのようだった。
「ツイてるわね」
アスカが景品を取り出した。
「……みたいだね」
これはツイてるというのだろうか? 僕は首をひねったけど、アスカの喜ぶ様子を見ているうちにどうでもよくなってきた。
別にいいじゃないか、彼女が欲しかった景品を取ったのだから。仮に誰かの仕業としても悪い結果ではないのだから、大人しく受け入れるべきだ。
「これ、なんでケースに何も書いてないんだろう。おかしくない?」
僕は箱を覗きこんだ。筐体の外から見たとおり、やっぱり何も書いてない。
「さあ? きっと特別のフィギュアなのよ」
そうかな、とそのフィギュアに目をやる。近くで見るとそれは禍々しくて不気味な雰囲気を醸し出していた。
――何だか気色悪いな。
アスカの上機嫌な顔を見るとそうも言えず、僕は胸に何かがつかえてるような気分を抱えて立ち尽くしていた。
702名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 00:52:18 ID:???

その日の夕食の席で、僕は気になっていたことを訊く気になった。
「ねぇ、母さん。エヴァって何のこと?」
「突然なに、シンジ」
母さんは茶碗に伸ばした手を止めた。
「いや、ちょっと……。学校で転校生に言われて」
渚カヲルは今の段階では友達とは言えなかったけど、取りあえずはそう表現しておいた。
「エヴァは順調とか何とか。ちょっと変わったヤツなんだ」
「あら、そうなの? ともかく、友達が増えるのはいいことね。……そうね、エヴァって……イブのことじゃないかしら」
「アダムとイブのイブ?」
「そうよ。確かイブが英語読みで、エヴァがラテン語読みね」
「読み方が違うだけで、同じなんだ」
「シーザーとカエサルみたいなものだな」と、父さんが口を挟んだ。
アダムとイブか。そう言われても依然として渚カヲルの言いたいことは分からなかった。
いったい誰が順調なんだ? いや、きっとたいした意味はなかったのだろう。
本当に知りたいのなら本人に訊けばいいだけの話だけど、こちらから話しかけるのは躊躇われた。また訳の分からない話を聞かされるのはご免だ。
この話は、ここまでにしよう。
ごちそうさま、と言って僕は立ち上がり、食器を台所の流しに片付けた。
703名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 00:54:03 ID:???

僕は湯船に浸かりながら今日のことを反芻していた。楽しく過ごせた一日だった。最後のクレーンゲームはのぞいて、だけど。
ふと、ある考えが頭に浮かんだ。
――今日はひょっとして、俗に言うデートだったのではないだろうか。
「バカな。そんなこと考えてるなんて知られたらアスカに殺されちゃうよ」
そう呟いたものの、僕が選んだ服を着たアスカの姿を想像していた。脳裏にはアスカの肩甲骨のラインがはっきりと浮かんでいる。
これ以上はないと思えるほど滑らかで美しい曲線。あの完璧な曲線にそって指をすべらせてみたいと僕は思った。それからアスカのうなじにも。それから――。
僕は頭のてっぺんまで湯の中に沈んで、息が続かなくなるまでじっとしていた。我慢できなくなると水面から顔を上げて大きく息を吸った。
これじゃアスカにスケベ大王と言われても仕方ない。
……それにしても、僕はなぜあの赤いワンピースを選んだのだろう。いや、アスカに赤が似合うというのは本心からの言葉だ。
おかしいのは即座に選べたことだ。自分で言うのも何だけど、何かにつけてあれこれ悩むのが僕の性格、その僕がスパッと決めたのは珍しい。
やはり露出が多いせいだろうか? 正直言ってその要素がないとは断言できないけど、それだけじゃない。何かあるような気がする。何かが……。
それにアスカが欲しがったあの奇妙なフィギュア。不気味な形をしたロボット。
あれは……良くない。
たかが人形に自分でも馬鹿げていると思うけど、その想いは消せなかった。
あれを持っていると不幸な目に遭うとか。……まさか。その手のオカルトは僕は信じない性質なのに。
まぁ、だからといってどうなるものでもない。まさかアスカに捨てろとは言えないし。本格的におかしい奴と思われるだろう。
色々考えているうちに、すっかりのぼせてしまったようだ。
最後にシャワーを「水」にして頭からかぶり、浴室を出た。
頭は冷やせたけど、中身まで冷やせたかは自信がなかった。
704名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 00:54:30 ID:???
12'.

シンジは私が両手に持った服を前にして、固まっている。
――ったく、何でそんなに考えてんのよ。直感で言いなさい、直感で!
シンジはさんざん迷った末に、赤のワンピースを指差した。
「どちらかといえば、こっちがいいと思うな」
「何で?」と私は言った。てっきりブラウスのほうを選ぶと思っていた。だけどこちらを選んだってことは……。
「分かった! こっちのほうが露出が多いからでしょ!」
私がひと睨みすると、シンジは慌てて否定しにかかった。こっちが思うとおりに行動するのが可愛いと言えなくもない。
「違うよ! 何というか……」シンジは口ごもった。「アスカには赤が似合うと思って……」
「ふーん」
私は手元の服をじっと見つめた。赤が似合う……。ついさっきまでは特には感じなかったけど、シンジが言うとおり、
確かに私は赤という色が相応しい気がしてきた。
「じゃあ、こっちにするわ。それにしても何で私に赤が似合うなんて思ったの? 情熱的なところかしら?」
「気の強いところ、かな」
私はシンジのお尻を蹴っ飛ばした。
705名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 00:56:04 ID:???

私は湯船に肩までつかって、今日のことを思い出していた。
「赤、ね……」
おかしなコトもあるものだ。だいたい色なんて急に好きになったりするようなものじゃない。
別に嫌いでもなかったけど、シンジの言葉で、昔のことを突然思い出したように赤が好きになっていた。
ひょっとして……。
シンジに言われたから?
「まっさか」
そんなバカップルみたいな行動を私が取るわけない。そもそもカップルですらないのに。
でも、今日は他人から見たら完全に付き合ってるように思うだろう。
そういう誤解を招く行動は控えたほうがいいのだろうか?
「まっさか」
私は同じ台詞を繰り返した。私ともあろうものが他人の目を気にして行動するなんて、ありえないことだ。
何だかよく分からなくなってきた。きっと湯船につかり過ぎたせいだ。
私は最後にシャワーを一浴びして、浴室を出た。
706名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 16:28:18 ID:???
転校生きた!!!!!!!!
707名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/20(水) 22:17:33 ID:???
雰囲気的にまだまだ起承転結の「承」あたりかな?
楽しみにしてるよ。
708名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/22(金) 02:09:09 ID:???
転校生GJ!

>>695さんも続き期待してます
709680:2008/08/23(土) 15:21:41 ID:???
第参話
『太陽と海と貴方に愛を〜アスカの行動〜』
Eパート
男達がシンジに襲いかかって来るのだが、それを軽くいなしながら、アタシの元へ近付いて来る。
アタシの元へ辿り着くと、アイツは、アタシの水着のトップが剥ぎ取られている事に気付き自ら来ていたTシャツを脱ぎアタシに手渡した。
そして、アタシはシンジが昔と違う事に気付いた。
大分前に見たアイツの上半身と、今のアイツの上半身の違い。
それは、今の方は無駄な肉が無く、筋肉のベールをうっすらとまとっている感じだった。
そして、アイツはアタシの目から涙を優しく拭いながら、アタシの頬の腫れに気が付いたのだった…
アイツの手がワナワナと震えている。
そして、アイツはボソリと呟いた。
「僕の大切な人を傷付けた…僕は…僕は…そいつを絶対に許さない」
そして、アイツは立ち上がり、ソイツ達を睨みつけた。
それに怯んだのか、さっきまでナンパ男達は少しあとずさった。
シンジが殺気を込めて一歩づつ歩み、ナンパ男達の元へ向かい、攻撃を仕掛けた。
710680:2008/08/23(土) 15:43:45 ID:???
第参話
『太陽と海と貴方に愛を〜アスカの行動〜』
Fパート

シンジがアタシの為に怒っている…。
今まで見た事も無い顔だった…
それが、嬉しかったけど、でも、それ以上はしてはいけない。
それは、浜辺に横たわっている数人の男達(全員気絶させられてる)
シンジが全て薙ぎ倒していったからだ。
残ってる男は後一人、でも、そいつは、アタシの頬を殴った男…。
いくら、シンジが強くなっても、アタシを殴った男が何かをやってるのは間違いないからだ…
男が笑っている
「いやぁ〜、強いね君は♪でも、あんまり調子のってんと怪我するよ?」
すかさずシンジも言い返す。
「お前がアスカを殴ったんだね?お前だけは絶対に許さない!!」
男はなおもニヤケながら近付いて来る。
お互いの間合いに入ったのだろう、男が素早く右正拳をいれる。
シンジがそれに合わせて、正拳を左手でいなしながら右裏拳を男に叩き入れた。
自分の力+他人の力が加わるカウンターはかなり効き目があった。
男はあっけなく尻餅をついた…そして、シンジがトドメと言わんばかりに、渾身の拳を入れようとした時
「やめてぇーーー!!」アタシは思いっきり叫んだ。
あんな男をかばうつもりは毛頭無いのだけど、アイツの優しい手をあんなヤツの為に汚させたくなかった。
アタシの叫び声を聴いてピクリと動きを止めて、アタシの方に振り向いた。
その隙に男は逃げ出した。
それを見てもシンジは追い掛けようとはせずにアタシの方を見ていた
711名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/23(土) 19:45:35 ID:???
あー
単なる好き嫌いだけど、俺あんまシンジの性格・キャラが変わっちゃうLASすきじゃねーや・・・

転校生ガンバ!
712名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/23(土) 20:25:58 ID:???
性格変わるとシンジって感じがしない・・・
暴力とか振るっちゃダメだよ
713名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/23(土) 20:29:58 ID:???
スパシンとLASって相性悪いよな
714名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/23(土) 20:30:21 ID:???
まだ僕口調なだけいいけどね。俺シンジはキツいし

しかしエヴァに乗って暴走するシンジはカッコイいのに、生身のシンジが暴走すると、ツラく見えるのは何故だろう…?
715680:2008/08/23(土) 22:18:04 ID:???
第参話
『太陽と海と貴方に愛を〜アスカの行動〜』
Gパート
アレから(前話参照)暫くたって、アタシとシンジが波打ちきわに座っている。
アタシはとりあえず、お礼の言葉を口にする
「……アリガト…」
あんまり感謝の言葉をした覚えの無いアタシには、これが精一杯だった。
そんなアタシを見ながらシンジは
「うん…」
とだけ言った。
アタシは照れ隠しのつもりで疑問に思った事をぶつけてみる事にした。
「アンタ…何でそんなになったの?」
素朴な疑問だけど、気になったのは確か何故強くなったのか?
シンジは静かに語り出した。
「あの時さ…僕は守りたい物を守れなかった…僕は変わろうと思ったんだ…臆病で弱虫な自分を変えて、大切な人を守ろうとね。」
右手を見つめながら、開いては閉じてを繰り返しながらシンジがそう言った。
アタシは正直に思った事を聴いてみた。
「そっか…その大切な人って誰なのよ?」
一番聞きたい疑問で、一番聞きたく無い疑問をアタシはあえてしてみた。
「………アスカ…」
シンジがポツリとこぼした一言だった。
それが、アタシには嬉しい一言だった。
アタシは思わず涙を溢しながらアイツに抱きついた。
716680:2008/08/23(土) 22:35:39 ID:???
第参話
『太陽と海と貴方に愛を〜アスカの行動〜』
Hパート

今のアタシの顔は真っ赤になってるんだろうなぁ…と思いながら
「…お礼、ちゃんとしてなかったわよね?」
シンジの胸に顔を埋めながら、アタシは言った。
「お・おお礼ならいいよ…」
シンジも照れてるのか、うまく喋れてないようだ
それでも、アタシは続ける
「アンタが良くても、アタシがしたいって言ってんだから、アンタは素直に受けとんなさいよ!」
少し強めな言葉だけど、アタシらしくするなら、これくらいが丁度だから…
「わ…わかったよ。」アタシ強気は、まだシンジに通用するみたいね
「それじゃ、目をつむっててよ!!」
シンジは正直に目をつむった。
『chu-』

「これで、仮は返したわよ♪」
あの日から二度目のキスはなんだかしょっぱかったけど、今のは最高のキスだと思った。
太陽がアタシ達、二人照らしてくれてる
『太陽と海と貴方に愛を』
第壱部 完
717名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/23(土) 22:48:01 ID:???
>>714
>しかしエヴァに乗って暴走するシンジはカッコイいのに、

そか?

まぁ、LASなんて妄想なんだから、よりリアルな夢を見たいんだよ。
第一部も終わったようだが、暴走せんでも(せん方が)綺麗に収まっただろに。
718名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/23(土) 23:02:12 ID:???
うむ、俺もエヴァに乗って必死に戦ってるシンジは好きだ
スパシンの生身の暴力とはまた違う、色々と

ともあれ職人さんは乙です
常にマンセーはできなくて申し訳ないですが、
そーいうのも糧にしてまた頑張ってくれると凄くありがたいス
719名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/23(土) 23:06:52 ID:???
文体がケータイ小説なのはどうにかならんか
720名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/23(土) 23:20:21 ID:???
>>717
ゼルエル戦のカッコよさは異常だろ
721名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/24(日) 01:11:36 ID:???
>>720
同意
申し訳ないけど鳥肌たったよw

でもLASでは臆病で弱気なシンジくんでいて欲しいんだよなぁ・・・
アスカがレイプされてもなんか止めにいけなくてごめん的な・・・
注文の多い読者ですいません。職人さんGJです。

転校生ガンバ!
722名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/24(日) 01:13:18 ID:???
>なんか止めにいけなくてごめん的な

それはそれでどーかと思うがw
723名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/24(日) 01:25:43 ID:???
>アスカがレイプされてもなんか止めにいけなくてごめん的な・・・

最後に順番を待ってたりw
724名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/24(日) 01:26:54 ID:???
氏ね
725名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/24(日) 10:12:48 ID:???
普段は気弱だけど、いざという時はカッコイイのが好き
726名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/24(日) 10:46:34 ID:???
順番を上げるために戦うんでつねw
727名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/24(日) 13:41:39 ID:???
>>713
LAS系統のスパシン断罪厨御用達の唯我独尊ってのがあるぞ。
無名の人とタヌキのはちょっと違うと思うがな。でもその二人を
カムイや霜月梓あたりと一緒には出来ないか。
728名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/24(日) 19:21:14 ID:???
蒸し暑さが続く夜
少年は“ナイフ”を持って少女の部屋の前に立っていた。
『ギラリ』
と妖しい光るナイフ
「今日も…無理だったか…」
少年は少女の部屋を後にする

一方、少女の部屋では、ベッドの中で“カッターナイフ”の刃を、月明かりにギラつかせ握りしめていた。
少年の気配が消えると共に少女はカッターナイフの刃を収め眠りに着いた
「意気地無し…」
の一言を残して。

『憎愛ENDの果てに』
Act 1

朝、少年は眼を覚まし朝食の支度をしていた。
次に眼を覚ました少女が朝のシャワーを浴びに行く。
その間に少年と少女の保護者の女が眼を覚まし、少年が作った朝食を食べていた。
そして、シャワーから上がった少女が朝食をとり、少年も続いて朝食をとった。
お互いに朝食を済まし、それぞれが学校へ行く支度をする
しかし、少年の鞄の中には例の“ナイフ”が入っていて、少女のスカートのポケットの中には“カッターナイフ”が入っている。
729名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/24(日) 19:22:35 ID:???
728の作品にはグロイシーンが含まれてます。
730728:2008/08/24(日) 19:56:10 ID:???
『憎愛ENDの果てに』
Act 2
少年と少女は、端から見れば互いに仲良さそうに登校しているように見えるが
実際の所は、互いが互いに牽制しあっていた。
だが、牽制の理由は相手が隙を見せた時に狙えるようになのだが
少女はやがて友人である“おさげの少女”に出会い共に学校へ向かって行った。
一方、残された少年も学校へ向かっている。
途中で少年の友達である“ジャージの少年”と“メガネの少年”と合流し一緒に学校へ向かって行った。
少年は学校に辿り着くと自分の席に鞄を置き、辺りを見回した。
すると、少年の視線の先に“蒼銀の髪の少女”を見つけ話かけに行った。
それを見つめる少女の存在に気付かずに…
この時に少年は愚かにも隙を見せていた。
少女は「チャ〜ンス…」と誰にも聞こえないくらいに呟いて少年に近付いて行った。
731728:2008/08/24(日) 20:39:15 ID:???
『憎愛ENDの果てに』
Act 3
なおも少年は少女の気配に気付かずに“蒼銀の少女”と話していた。
少女はワザと少年にぶつかった。
少女とぶつかった少年は、突然の痛みに顔を歪ませながら床に膝を着いた。
少年の脇腹には“カッターナイフ”が突き刺さっていた
ポタポタと床に落ちる鮮血にクラスの皆は静まりかえっていた。
少女は少年を刺した時に感じた肉の感触に恍惚の笑みを浮かべトリップしていた。
少年は飛びそうになる意識を振り絞り必死に這いながら自分の机に向かって行った。
自分の机に辿りつくと鞄の中から“ナイフ”を取りだし、霞む眼で力の限り少女に向かって投げつけた。
少女は飛んで来る“ナイフ”に気付きとっさに避けて、後ろの掲示板に突き刺さった。
だが、間一髪避けたと思われたが、首にカスって首筋から鮮血が吹き出し、その場に倒れふしてしまった。
その光景に教室は騒然となり、パニック状態に陥っていた。
その中で“蒼銀の少女”は冷静に、ある所に電話をしていた。
それから、少しして救急車がやってきた
732728:2008/08/24(日) 21:11:16 ID:???
『憎愛ENDの果てに』
Act 4

少年が眼を覚ましたのは病院だった。
少年は生きていた自分に呆れるように呟いた
「まだ、生きていたのか…」
そんな時、部屋をノックする音がし、少年の保護者である女が入って来た。
女は少年のベッドの前まで来ると、簡易式のパイプイスに腰掛けて静かな口調で喋りかけた。
「貴方達がした事…わかってるわよね?」
少年は小さく
「はい…」
と、だけ答えた。
次に少年が女に語りかけた。
「あの…アスカは、どうなったんですか?」
それに女は答えた
「アスカなら、シンジ君の目覚める3日前に退院したわ」
その答えに少年は
「そうですか…」
とだけ答えた。
そして、女は冷たく言葉を発した。
「シンジ君のした事は許される事じゃないわ。
それに、貴方が此処に居ても居場所はきっと無いわ。
だから、貴方は退院したら元居た場所に帰りなさい。
そして、4年間頭を冷やして貴方の誕生日になったら、この場所に来なさい。」
と言って紙切れを少年に渡した。
「はい…」
と言って紙切れを受け取った。
それから、数ヶ月して少年は退院して、元居た場所へ帰って行った。
733728:2008/08/24(日) 21:48:51 ID:???
『憎愛ENDの果てに』
Act 5
あの事件から4年の月日が経ち、少年は青年になっていた。
そして、自分の誕生日の日に青年はある所に向かっていた。
青年の眼には決意の意思がこもっていた。
その頃
少女は女になっていた。
そして、女はドイツに返されていて、今日、日本に戻る約束になっていた。
あの頃の傷が跡になり、それを擦りながら飛行機乗って窓を眺めていた。
そして、女はポツリと呟いた。
「アイツ…来てるかな?」
そろそろ、飛行機は日本のある空港に着陸した。
青年はロビーで待っていた。
今の青年の手には“ナイフ”ではなく、“小さな箱”が握りしめられていた。
そして、青年は
「そろそろだね」
と、呟きながらゲートに向かって歩き出した。
そして、青年と女は4年越しの再開を果たし青年は握りしめていた箱を女に渡した。
「久しぶりだね。あれから、僕は僕なりに考えて、この結論に行き着いたんだ…良かったら、コレを受け取ってくれないかな?」
と、頬を朱くそめながら
女は
「アタシも、アンタと同じ想いだったと思う…でも、シンジが良かったら、アタシはコレを貰うわ」
と言って小さな箱を受け取った。
あの頃の少年と少女には思いの感情が幼すぎた為に、お互いを傷付けるしか無かった。
そして、命を手に入れて自分の物にするという考えしか思いつかなったのだが、4年間の期間が彼等を大人にして、もう一つの結論をだした。
それは、お互いに結ばれる事だった。
憎しみでは無く、愛に気付き、子供の頃に終わりを告げて、その果てに向かって行った。
734728:2008/08/24(日) 22:28:09 ID:???
『憎愛ENDの果てに』
おまけ、その1

そこには、ロケットの蓋をあけて、そこに映る写真を眺める男性の姿があった。
それから、少ししてドアをノックする音がしたので、音のする方に向いた。
ドアの向こうから
「支度が整いましたので、おいで下さい。」
と言われたので、ドアを開けて廊下に出ていった。
そして、真紅のドレスに身を包む女性を見つめ
「綺麗だ…」
と、言葉をこぼした。
女性はベール越しに
「ありがと♪」
と答えた。
今日は二人の結婚式の日だった。
二人はお馴染の結婚式のテーマと共に入場し、ゆっくりとヴァージン・ロードを歩いて行く。
男性は緊張している様子で、方や女性の方は堂々としている。
そして、神父の前に辿りつき、神父がお決まりの“誓いの言葉”をするのだが…
ちょっとした事件が起きてしまうのだった。
神父が
「汝は健やかなる時も、また、病める時も死が二人を分かつまで妻とする事を誓いますか?」
「ハ・ハ…ハハイ」
あまりに緊張してしまった為に、どもってしまったのだった。
そして、男性を女性に移すと、女性はプルプルと震えている…かなり怒っているようだ…
735728:2008/08/24(日) 22:57:39 ID:???
『憎愛ENDの果てに』
おまけ、その2

男性の額からサーっと血の引く音がしていた。
辺りからは、クスクスと笑いを堪える声が聴こえてきたが
神父は構わずに続けた
「えーっと…コホン。
汝、健やかなる時も、また、病める時も、死が二人を分かつまで夫とする事を誓いますか?」
彼女は、ハッキリと答えた
「誓わないわ!!」
彼女の言葉で辺りは静まりかえった。
神父はオロオロして、新郎は、さっきのせいだと深く落ち込んで居た
それでも彼女は胸を張り左手は腰に当て、右その人差し指は神父に向けて
「なぁ〜にが、死が二人を分かつまでよ!!死んでからもシンジはアタシの夫よ!!それに…アンタも、どもってんじゃないわよ!!」神父をまくしたてながら、ついでに新郎のダメ出しをする所が彼女らしかった。
だれかしらが笑い、それに釣られるように笑いがこだまし爆笑の渦に巻き込まれていた。
この笑いが沈静化するまで数十分かかったらしい。
そして、気を取り直しして神父の言葉が初めから再開される
「汝、健やかなる時も、また、病める時も、また、死が二人を分かっても、妻とする事を誓いますか?」
今度は
「ハイッ!」
新郎は噛まずに言えて満足そうにしている。
続い
736728:2008/08/24(日) 23:13:13 ID:???
『憎愛ENDの果てに』
おまけ、その3

続いて
「汝、健やかなる時も、また、病める時も、また、死が二人を分かっても夫とする事を誓いますか?」
新婦は答えた
「そんなの、あったり前じゃないの!!」
何処までも彼女らしさに、また、教会が笑いに包まれた。
神父は天を仰ぎ額に手を乗せて
「ジーザス…」
と、一言もらして首を振った
またもや、沈静化させるのに数十分の時間を要したのだった…
そして
メインである
“指輪の交換”をして
“誓いのキス”をするべく、新郎は新婦のベールを捲り二人は“誓いのキス”を交した。
包まれる暖かい拍手に見送られながら教会から出て、新婦の瞳の色と同じ雲一つ無い蒼空に向かってブーケを放り投げた。
二人の愛が永遠に続きますようにと祈りを込めて。
今度こそ本当に『完』
737名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/24(日) 23:16:33 ID:???
『憎愛ENDの果てに』の、おまけ・その2と3が途中で文章が切れた事を深くお詫び申し上げます。
738名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/25(月) 01:17:33 ID:???
乙!
739名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/27(水) 14:18:28 ID:???


生頑張れ

740名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/02(火) 21:00:12 ID:???
保守!
741名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/04(木) 17:37:33 ID:???
保守
期待してるよ
742名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/08(月) 22:27:45 ID:???
保守
743680:2008/09/10(水) 00:23:14 ID:???
第弐部
シンジの決意〜君の為に強くなる〜
第壱話

全てが終わった世界

そして

全てが始まろうとする世界の中で僕は居る
誰も守れなかった自分に嫌気を感じながら僕は思った
せめて隣に居る人を守れるくらいに、僕は強くなりたいと…
それから僕は毎朝、走り込むようになった。
それしか僕には思い付かなかったトレーニング方法だったから
あの時から何日が過ぎたか解らないけど、僕と君の二人だけの世界が変わろうとしていた
それは、今日も僕が走り込んでいた時の事だった
いつものように浜辺を走っていると、波打ち際に男性が一人打ち上げられていた。
その男性は、僕が良く知っている人物である『加持 リョウジ』であった
744名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/10(水) 12:58:43 ID:???
続き期待
745680:2008/09/11(木) 22:50:53 ID:???
シンジの決意〜君の為に強くなる〜
第弐話

僕は急いで加持さんの元へと駆け寄ってみたが、気を失っているらしく反応はなかった
僕は加持さんに肩を貸す形で家に帰って行った
日頃のトレーニングのお陰か、途中でバテる事もなく家にたどり着いた
僕は早速ソファーの上に加持さんを寝かせ、濡れタオルを頭に乗せた
それと同じくして、アスカが居間に姿を現した
「おはよ…って!!加持さんじゃないの!どうして…」
アスカは寝起きの事もあってか状況を把握していなかった
「あっ…朝、散歩してたら偶然倒れてる所に出くわして…そ、それで家に連れて帰ったんだ」
僕は敢えてトレーニングの途中で、とは言わなかった
746名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/13(土) 15:54:10 ID:???
>>745


ってかなんで職人の方はLASSSではシンジをマッチョにさせたがるの??
こんな弱いぼくだけど頑張ってアスカを守るよじゃないのか・・・
747名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/13(土) 18:30:31 ID:???
まあ人それぞれじゃない?
パイロットが格闘訓練してるとか本編じゃ見たことないけど、SSならけっこうあるしな
748名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/14(日) 17:34:55 ID:???
>>746

>シンジの決意〜君の為に強くなる〜

ってタイトルで強くならなかったら詐欺だw
749名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/14(日) 18:44:21 ID:???
マッチョとは限らんだろうよ
750名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/15(月) 19:26:09 ID:???
test
751名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/22(月) 08:39:12 ID:???
アスカの日記が…落ちてる orz
752名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/22(月) 09:16:32 ID:???
上がったの間違いじゃないのか?
753名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/22(月) 23:27:01 ID:???
『I miss you』
そのフレーズが心に響く
「…貴方が、居ないと、寂しいの…か…」
そうね、神様だけが知ってるアタシの本当の気持ち。

…アイツは絶対絶対ぜーーっったいに!!気付いてないんだわ!だってトロいし!鈍いし、鈍感だし…
「…寂しいの、か…」


携帯が鳴る。飛び付いて着信を受けると、久し振りのシンジの声。
「あ、アスカ。元気?ちゃんとご飯食べてる?お風呂は…」
「…何よアンタ!まるで口煩い姑みたいにポンポン言うんじゃないわよ!」
嬉しい。嬉しくて涙が出そうになるのを必死で堪えてるから、ついぶっきらぼうな声になる。
「今休憩なんだ。少しでも話しようと思って…あ、はい!ごめんアスカ、ちょっと待ってて」
でも、もう限界だった


「…神様だけが、知っている…『I miss you…』」

ぽつりとそのフレーズを歌ってしまう。暫くの沈黙。そして気付いた。さっきからシンジの仕事の話が止まっていた事に
「…あ、あ…」
「…アスカ」
「ち、違うわよ!かかか勘違いしないでよね〜さっきCMで聞いたからつつつい口ずさんだだけなんだから!違うわよ!違う!違うったら!!」
「…アスカ、ちょっと待ってて」
シンジが走り出す靴の音が聞こえる。
754名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/22(月) 23:43:29 ID:???
わくわくてかてか
755名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/22(月) 23:46:59 ID:???
終わりです
756名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/23(火) 00:04:20 ID:???
走ってる靴の音が次第にゆっくりになって、やがて止まった。
「ふう…ここなら、いいかな…?ごめんアスカ。お待たせ。あの、さ、笑わないで、ね?」
「…何よ?」
「聞いてて、くれる、かな?」
「何よ?早くしなさいよ」
「携帯から、耳を離さないでね?」

初めて聞いた、シンジの歌う声

大好きだから、ずっと
何にも心配要らないよ
My ダーリン Stay Gold
無邪気に笑って下さいな…

「…どう…かな?」
「…ダーリンの発音が違うし、アタシはダーリンじゃないわよ…」
「僕、あんまり上手くないから、あの、ごめん…あれ?アスカ?」
…寂しいのと嬉しいのと、ぐちゃぐちゃになって、訳分かんなくなって、電話口でわんわん泣いた

「もうすぐ戻るから、待っててね。帰ったら、休み取るから、一緒に何処か行こう?」
「…うん…」
「必ず帰るから。ちゃんと、えっと、あの、アスカの所に帰るからね」
「…うん…」


「それが2人のナレソメ?」
「そうだよ」
「ふうん。普段お母さん、あんなにお父さんを殴ってるのに」
「あれは「照れ隠し」だよ」
「あっバカシンジ!!何ばらしてるのよ!?」
仲良し両親を見て、将来自分もこんな夫婦になりたいと思う子供でしたとさ。
757名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/23(火) 00:11:14 ID:???
ごめん。ウタダの歌嫌いな人がいるかもなのにネタに使うし、一番最初が書き込めて無い上によくあるオチ、とどめは携帯厨なので空気読まずに投下してしまったorz

万死に値するな
吊ってくる
758一番最初です。すみません:2008/09/23(火) 00:25:41 ID:???
…シンジに会えない。
「ごめんアスカ。どうしても抜けられなくて。この埋め合わせはきっとするから」
「…別に?平気よアタシは。それよりアンタの方が寂しいんじゃないの?寂しくて泣いちゃったりしてね〜?」
「な、僕は大丈夫だよ!じゃ、行って来る!」
そう言ってアイツは飛行機で1ヶ月の出張。アタシは独りぼっち。でも平気。寂しくなんて無い。
だって好きな物食べられるし、好きなテレビ見られるし、好きな時間にお風呂入れるし、むしろ居ない方が清々していいわ!

「…嘘」
この部屋って、こんなに広かった?
「…嘘」
何もする気になれなくて、ずっとソファに凭れ掛かってるのは何故?
「…嘘」
外は真夏なのに、冷房点けて無いのに、どうしてこんなに寒いの?
「…嘘、ばっかり…」

点けっ放しのテレビから声が聞こえる。

私の声が、聞こえてますか
深夜1時の、Heart station
チューニング不要のダイヤル 秘密のHz

…ああはいはい只でさえ辛気臭いのに、そんなしんみりした曲なんか聞きたくないわよ。
でも消そうとした時に聞こえたフレーズがアタシの手を止めた。

神様だけが知っている 『I miss you』

「…貴方が、居ないと、寂しいの…?」
759名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/23(火) 00:51:18 ID:???
がむばれ、がむばれ!
760名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:01:48 ID:???
>>705

13.

家を出ると、数メートル先にアスカがいた。ほとんど同時に家を出たらしい。
「アスカ」と、声をかけると、アスカはパッと振り返った。その仕草は、何回見ても少しドキリとする。
「どう? 自信はある?」
今日は期末テストの日なのだ。
「べっつに〜〜」
アスカは大げさな素振りで手を広げてみせた。
「言ったでしょ? 私はドイツで大学卒業してるんだから、中学レベルのテストなんざどーでもいいの」
「そうだったね」
僕は頷いたけど、せっかく一緒に漢字の勉強をしたのだから、アスカにはいい点を取ってもらいたい。それが人情というものだろうと思う。
「まっ、でも、せっかくあんたみたいなボンクラが無い知恵を絞って教えたんだから、それなりに頑張るわよ」
僕は少し笑って、「ありがとう、アスカ」と言った。
「何であんたが礼を言うのよ、バカッ」
アスカは少し顔を赤らめた――ように僕には見えた。ケンスケなら、きっと希望的観測と言うだろう。
761名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:02:41 ID:???

教室に入ると、みんな難しい顔をしているのが目に入った。まぁ、テストの日に笑顔の人もそうはいないと思うけど。
「よっ、調子はどないや、センセ」
トウジが頭の後ろで組んでいた腕をほどいて、僕に向かってひらひら手を振ってみせた。傍目には余裕のポーズだけど、単に諦めてるだけだと分かる。
「まぁまぁ……かな」
「お前がうらやましいわ。わしもそないな台詞、言えたらなあ」
トウジがため息をついた。
「別に、そんなに自信があるわけじゃないよ。そうだ、トウジも分からないところを委員長に教えてもらえばいいのに」
トウジはギクリと身体を強張らせた。
「ヘ、ヘンなこといわんでくれや。そないなことになったら堪らんわ。だいたいあいつに……」
「待ちたまえ、ワトソン君!」と、ケンスケが眼鏡を指で押し上げつつ会話に加わってきた。
「今の碇シンジ君の台詞には重要なヒントが隠されている!」
「ワトソンって俺か」
トウジがぽかんとした顔で言った。
「そうだよ、君。君以外に誰がいるのかね? さて、今、碇シンジ君は"トウジも"と言った。"も"というのは二つの可能性がある。
762名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:03:27 ID:???
一つ目は委員長に意味がかかっている。つまり、碇シンジ君は委員長から勉強を教えてもらっているという意味だ。
しかしこの可能性はない。なぜなら委員長はワトソン君に手取り足取り教えているからね」
「ぶっ」トウジは咳き込みはじめた。「お前、何を……」
「二つ目は"教えてもらう"に意味がかかっている。トウジも僕みたいに教えてもらえば?ということだ。
この場合、問題は、誰に教えてもらっているのかということなのだが……」
ケンスケの眼鏡がキラリと光る。
僕は慌ててケンスケの台詞を遮ろうとした。しかし、熱の入ったケンスケは聞こうとしなかった。
「ケンスケ、うしろ……」
「そう! 勘の鋭い諸君ならもう分かっておられるだろう! 碇シンジは、そ……いてっ!」
「碇シンジは、じゃないでしょ! さっさと席に着きなさい!」
葛城先生からゲンコツを頭にもらったケンスケは、「はーい」と呟くと、しょんぼりと自分の席に帰っていった。
危ないところだった。思わず冷や汗をかいてしまった。
しかしケンスケのやつ、どうやって気がついたのだろう?
あとでケンスケに口外しないよう言い含めておかなければいけない。何らかの代償が必要になるだろうけど……。
763名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:04:13 ID:???

午後のテストがはじまるまで十五分程度あるのを確認して、僕は席を立った。今のうちにトイレに行っておこうと思ったのだ。
周囲を見ると、中にはすでに諦めている人もいるものの、だいたいは真面目に勉強を――最後の悪あがきと言ったほうがいいかな?――している。
僕はドアを開けて、廊下に出た。
すこし歩いて、そして――立ちすくんだ。
言葉では説明できない、途方もなく不吉な予感に全身が包まれたのだ。得体の知れない爬虫類系の生き物に首筋を舐められたような感触だった。
眩暈がした。口の中がからからに渇いていた。
「な、なんだ……。なんだこれ」
身体がこれ以上進むのを拒んでいた。その場にへたり込まないように、壁に手をつかなくてはならなかった。
一瞬、迷った。このまま進むか、教室に戻るか。理性で考えれば馬鹿げた話だ。なんでトイレに行くのに不吉な予感がするんだ?
それとも、身体の調子が悪くなったのだろうか?
僕は決めた。
――止めておこう。次の科目が終われば行けばいいだけの話だし、だいたいそんなに差し迫ってるわけじゃないんだ。
教室に戻ると、さっきの妙な感触は嘘のように消えてしまった。消えてしまうと途端に恥ずかしくなってきた。
今の奇妙な行動を誰かに見られたのではないかと、ついきょろきょろと周りを見てしまった。
ふとアスカと目が合った。アスカはすぐに目を逸らせて、隣の子とお喋りをはじめた。
僕を見てた? 何をしてるのかと不審に思われたのかも知れない。
やっぱりトイレに行っておくべきだったかな、と後悔していると、
「はじめるぞ。さ、教科書をしまうんだ。人間諦めが肝心だぞ!」と、加持先生が教師にあるまじきことを言いながら教室に入ってきた。
いずれにせよ、もう遅い。僕はため息をついて、テストの準備をはじめた。
764名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:06:59 ID:???
13’.

学校まであとニ、三分というところだった。今日はテストの日で、私たちの話題もそのことについてだった。
いったん会話が途切れたあと、シンジが遠慮がちに、「その、前からちょっと気になってたんだけどさ」と切り出した。
「ん。なによ」
「え、と……。アスカって、左目をつむる癖、あるよね」
「はぁ? そんなクセなんて、ないわよ」
いったい何を言い出すのかと、シンジを睨みつける。
「いや、あるよ。自分では気付いてないだけさ」
シンジは頑固に主張した。こいつは、たまに何かを思い出したように頑固になるのよね。
私はぱちぱちと瞬きした。
「そんなこと言われたの、はじめてなんだけど」
「そう? おかしいなぁ。結構目立つクセなんだけど」
私は反論しようとして口を開きかけた。

そのとき、ふいに――。
左目の視界がぼやけた。まるで目薬を差したときのように、世界が曖昧になった。

私は左目を押さえて立ち止まった。あえて言えば少し熱をもっているような感じだったけど、痛みはない。
「ど、どうしたの、アスカ?」
シンジが動揺して私の顔を覗き込んだ。
「……どうもしないわよ」
私は目を押さえていた手をすぐに離し、その手でシンジのお腹にパンチを打つフリをした。
実際、左目の視界はすぐに回復したのだ。本当にぼやけたのかどうか怪しく思えてきたほど一瞬の出来事だった。
「やめてよ、心配したじゃないか」
シンジがほっとした顔で言った。
「あんたがヘンなこと言うからでしょ!」
シンジはヘンなことじゃ……と途中まで言って口を濁した。後悔している様子だった。
「昔怪我したとかじゃないよね……?」
「ないわよ。何でそんなに気にするのよ」
「いや、何となく……」
シンジは口ごもっている。私は肩をすくめた。ヘンなやつ、と私は思った。
765名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:08:48 ID:???

シンジにはどうもしないと言ったけど、私の心には不安が渦巻いていた。漠然とした不安。
左目をつむるクセがある? ママにもパパにも言われたことがない。しかし、シンジはやけに確信があるような口調だった。
一瞬だけど、視界がぼやけた。あれは何だったんだろう? 私の目は実は悪いのだろうか?
私は思い切って、ヒカリに訊いてみることにした。
「ね、ヒカリ。ヘンなこと訊くようだけど、私って左目をつむるクセとかある?」
「え――!?」
ヒカリの驚く様子に、逆にこっちが驚いた。
「何でそんなこと訊くの?」
「いや、シンジに言われたから」
「碇君に――」
ヒカリは呟くと、うつむいた。
「ヒカリ――?」
「そんなクセ、ないよ。碇君の、見間違いじゃないかな」
ヒカリは顔を上げると、笑顔でそう言った。その笑顔が、なぜ強張って見えるのだろう?
「そう? ならいいんだけど」
私はほっとしたけど、どこかに不安な気持ちもあった。
その不安は、昼休みに的中した。
766名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:10:13 ID:???

お弁当を食べ終わるとヒカリはすぐに教科書を広げはじめた。まったく、真面目なコね。
私は試験勉強なんか今さらする気になれない。
とはいえヒカリの邪魔をするわけにもいかず、この雰囲気に耐えらなくなった私は、外に出てぶらぶらすることにした。
「どこ行くの、アスカ?」
「んー、ちょっとお手洗い」
ヒカリは何か言いたそうな顔で私を見たけど、結局何も言わなかった。
廊下にはほとんど誰もいなかった。きっとみんな教科書でも見ているのだろう。
凡人はタイヘンよね、と呟こうとした、そのときだった。
目の前の景色が、まるで映画の特殊効果のように、激しく歪みはじめた。
「なっ、なによこれ……」
私はよろめきながらトイレに駆け込んだ。幸い、誰もいない。洗面台に手をついて激しく呻く。
左目に痛みが走っている。激痛だった。
呻きながら鏡を見ると、私が物凄い表情で私を睨んでいた。
「畜生」と、私は言った。
「あいつら……」
"あいつら"が誰とも分からずに口をついて出た。
「殺してやる」
「殺してやる」
「殺してやる」
「ちくしょう」
「ちくしょう」
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!」
767名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:11:15 ID:???
髪の毛の先端から足のつま先まで、混じりけの無い、ある純粋な感情に私は満たされた。
純粋な感情――吐き気を催すような憎しみに。私はいわば憎悪の結晶と化したのだった。
私はちくしょうと叫んで、鏡を思い切り殴りつけた。鈍い音を立てて鏡が割れた。鏡の破片の中には、目を押さえて
鬼のような形相をした私が私を睨みつけていた。
右手から血が流れ出し、鋭い痛みが走る。いや、痛いなんてもんじゃない。痛さを通り越して、炎にあぶられているように熱い。
私はよろめきながらトイレを出た。
廊下に出ると、私の姿を見た生徒の口から驚きの声が上がる。
「ちょっとあなた、手、怪我してるわよ!?」
「黙れ」
私はその生徒を突き飛ばし、廊下をふらふらと歩いていく。
目が痛い。とてつもない痛みだった。
手が熱い。信じられない熱さだった。
この痛みを、熱さを、どうにかしなければ。
そのとき、私は気がついた。痛いとか熱いとかじゃない。これは、憎悪。左目と右手に憎悪が固まって、それを痛いとか熱いとか感じてる。
いや、どっちでもいい。そんなことは。
どうにかしなければ。
どうにかしなければ、私は。
誰か。
誰か――。
「あ……?」
誰かがいる。馴染みのある姿。あれは、
「シンジ……」
私は廊下の向こうにシンジを認め、思い切り叫んだ。
「シンジ!」
768名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:12:03 ID:???
「あ……アスカ!?」
シンジは一瞬立ちすくみ、それからこちらに駆け寄ってきた。
「ちょっと、いったいどうしたの? 手から血が……」
驚き、慌てているシンジに向かって私は両手を伸ばし――
その細い喉を掴んで思い切り締め上げた。
「ア……アス……なに……」
シンジは驚愕の表情を浮かべて私の手首を掴んだ。
「目が、痛いの」と、私は言った。
「手が、痛いの」と、私は言った。
「この痛みは、誰のせいなの?」と、私は呟いた。
「あんたのせいよ」と、私は呟いた。
「肝心なときにあんたがいなかったせいよ」私は、言葉を吐き出した。
「シンジ。あんたがいなくなれば、この痛みもなくなるのよ!」私は、内臓を吐き出すように、言葉を吐き出した。
シンジの目が大きく見開かれた。それからふっと力を抜いて、何か私に言った。
何と言ったのか、私の耳には届かなかった。
何でもいい、そんなことは。
早く、シンジを――。
誰かが、悲鳴を上げている。甲高い、女の声。
誰よ? うるさいわね。
今、手が離せないんだから。
もうちょっと力を込めれば――。
だけど、女の悲鳴が邪魔になって、集中できない。
769名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:13:02 ID:???
うるさい。
まるで耳元で聞かされているみたい。
うるさい、うるさい、うるさい!
何でそんな声を上げるのよ!? 力が入らないじゃない!
うるさいと怒鳴ろうとしたけど、何故か声が出ない。
もうちょっとなんだから。
あと少しで――。
――あと少しで、何?
そのとき、私は気がついた。
悲鳴を上げているのは、私だった。
何をしているの、私は!?
慌てて手を離そうとしたけれど、貼りついたように動かない。
「何で、何でよ!」
何で離れないのよ!
私は悲鳴を上げた。絶叫した。
誰か――。
誰か、私を止めて!
私の手首を掴んでいたシンジの手が、支えを失ったようにだらりと垂れ下がった。
私は、もう一度、悲鳴を上げようとした。
と、突然、バチッという音と同時に全身に衝撃が走った。
身体から力が抜け、目の前が暗闇に包まれた。
私には聞こえなかったはずのシンジの言葉が、意識が無くなる直前の私の脳裏をかすめて、消えていった。
770名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:17:09 ID:???


「これも計画のうちですか、副司令? それとも所長といったほうがいいのかしら」
「むろん計画外だ。修正がきくかどうか、頭の痛いところだよ。それから、ここでは校長で頼む」
「誰に聞かれても支障はないでしょうに」
「私にあるのだよ。あそこを思い出していかん」
「たまには思い出さないと、忘れてしまいますわよ。思い出は、人間が人間らしくあるための砦。最後のそれかどうかは知りませんけど。
――それにしてもシンジ君がああいうことを言ってしまうとは、ね。何とかなりませんでしたの?」
「彼以外は当然禁則事項にしていたのだがね。当の碇シンジでは手が出せんよ」
「ある意味、神様ですものね。ここではあなたが神様なのに」
意地の悪そうな笑い声が響いた。
シンジ? シンジの名前を聞いた途端、私の身体を恐怖が走り抜けた。これまで経験したことのないような種類の恐怖だった。
「笑いごとではないよ。君たちには喜劇であっても、我々にとっては未来がかかっているのだ」
私は必死に声を出そうとした。しかし、喉だけでなく、身体のどの部分も動かせそうにない。
頭もぼーっとしてうまく働かなかった。いったい何の話をしているの? それに、私は、何を――。
「で、どうなさいますの? もう――」
「まだ取り返しはつく。記憶を消すしかあるまい」
「科学とは便利なものですね。どこかのSF作家の台詞ではありませんが、ここまで発達すると魔法と見分けがつきませんわ」
「それでも、世界は救えんのだ。驚くことにね」
男の声に、苦いものが混じった。
771名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:18:22 ID:???
「あら、そうでしたわね。皮肉のつもりはなかったんですが」
「ああ、分かっているよ」
私はどうにか目を開けて声のする方を見た。視界はぼやけていたけど、二人の男女が私を見つめているのは分かった。
「あら。目を覚ましましたわね。これも本来なら有り得ないことでは?」
「そうでもない。彼女もコントロールがきかない存在なのでね」
女のほうは何も答えず、私の枕元に歩み寄ると、まるで熱を測るように私の額に手を置いた。
「次に目を開けたときには、嫌な気分は消えているから安心しなさい」
手が下にずれて、私の目を塞いだ。
「眠るのは得意でしょう? 今までやってきたことですものね」
私は叫ぼうとした。
しかし、必死の努力もむなしく、私の意識は再び暗黒へと舞い戻っていった。
「おやすみなさい、アスカ」
これほど感情のこもっていない"おやすみなさい"を、私は聞いたことがない。
772名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:20:19 ID:???

知らない場所だった。殺風景で白い部屋。カーテン。私はベッドに横になっている。
眠っていた? いや、そんなことはない。そもそも眠りに落ちた記憶がない。
「あ……」
私は呻いて、上半身を起こした。
「あら、お目覚め? 今起こそうと思ってたところなのよ」
にこやかに話しかけてきたのは、確か伊吹なんとかという保健室の先生だった。
「え、と……。私……?」
「どう? 眠気はとれた?」
先生は椅子から立ち上がると、私が寝ているベッドのところにやってきた。
「はい?」
私は目をぱちぱちとしばたたかせた。
「どうしても寝たいっていうから寝かしてあげたけど、今回だけですからね?」
伊吹先生は、いたずらした子供を軽く叱るような顔つきをした。
私……そんなこと言ったっけ? 全然記憶にない。
いや、違う……確かお昼休みになったら急に眠たくなって……。
そう、そうだ。それで先生に頼み込んで横になったんだった。思い出した。何でこんなことを忘れてしまうのだろう。
「あ、惣流さん。昼休みはあと10分しかないわよ! そろそろ教室に帰らないと」
時計を見て先生が言った。はーいと私は答えて保健室を出た。
773名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 00:20:47 ID:???
まだ少し頭がぼやけている感じがする。
「あら、惣流さん。こんなところで油を売っている暇があるのかしら?」
保健室を出てすぐに、赤木先生とすれ違った。少しあきれた様な感じで言われてしまう。
「油なんか売ってません!」
私はそう言うと、教室向かって早足で歩き出した。ぺろりと舌を出す。
しょうがないじゃない、あんなに眠かったらどうしようもないっての。
ふと、右手を顔の前まで持ち上げて、まじまじと見つめた。いつもと同じ、傷一つない、キレイな手だった。
なぜ急に手を見たくなったのかは分からない。
教室に入る前に、私は後ろを振り返った。赤木先生が顔をそむけ、保健室に入っていくのが目に入る。
私が振り返るまで先生は私を見ていた。その目つきが私には気に入らなかった。
それはまるで――。
私は奇妙な考えを振り払うようにかぶりを振った。しかし、しつこい汚れのように頭に染み付いて離れない。
そう、それはまるで私を観察していたような目つきだった。
774名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 18:45:15 ID:???
おー!
すげえ転校生!!
期待期待!!
775名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/24(水) 19:22:12 ID:???
おっつ!続き期待
776名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/25(木) 07:22:08 ID:???
うおッ、こんな展開だったとは……
いままでよんでなかったけど、読み返してくるわ
GJ
777名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/30(火) 16:24:22 ID:???
続き町
778名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/04(土) 03:10:03 ID:???
転校生きてたのかGJ
779名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/07(火) 17:07:33 ID:???
いいねぇ…
780名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/07(火) 23:56:45 ID:???
>>773

14.

今日は期末テストの結果発表の日で、僕もケンスケもトウジもまぁまぁの成績だった。
トウジはかなりほっとした顔をしていた。何でも今度のテストの結果次第ではお小遣いが減らされる危機だったらしい。
「やっぱり委員長効果だな」
ケンスケが納得したようにうなずいた。
「だぁー! ちゃうわ!」
トウジが真っ赤になって否定する。
「お前は余計なこと言わんでええねん!」
へへっ、と笑うケンスケを、トウジが追い掛け回しはじめた。
僕はその様子を苦笑いして見つつも、アスカの結果が気になっていた。もしアスカが良い点を取れば、僕の即席家庭教師も終わるだろう。
もちろん、それでいいのだ。そのための家庭教師なんだし。
でも……。
「シンジ、駅前のゲーセンに行こうや」
"トムとジェリーごっこ"に飽きたらしく、トウジがケンスケにかけていたヘッドロックを解いて言った。うん、行こう、と僕は答えた。
781名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/07(火) 23:58:08 ID:???

寄り道したせいで、家に帰るころには時間は結構遅くなっていた。普段なら良い顔はされないけど、今日ぐらいは大目に見てくれるはずだ。
「あ、アスカ……」
偶然にも、ちょうと家に入ろうとするアスカとばったりと出くわした。何故かアスカと出くわすことが多いような気がするけど、気のせいだろうか?
アスカはよそ行きの服装をしていた。家族と一緒にどこかに出かけていたのかも知れない。
アスカは僕の姿を認めると、鼻に皺を寄せた。
「ったく、寝る前にあんたに会うなんて私もツイてないわね」
「そんなこと言わないでよ」僕は苦笑いした。「アスカ、どうだった? テスト」
アスカは下を向いて、「ダメだったわよ」と言った。腕を後ろで組み、脚を振り子のように振りながら、
「やっぱり日本語って難しいわね〜」
「……そう」
僕は肩を落とした。アスカの頭脳のほうは問題ないはずだ。やはり僕の教え方に問題があるのだろうか。
アスカの性格からして、僕のことをかなり罵るのではないかと身構えたけど、彼女はそんなことは何一つ言わず、咳払いして人差し指を僕につきつけた。
「あんたにはきっちり責任とってもらうからね。私のテストの点が良くなるまで、教えなさいよ」
「え? う、うん。分かったよ」
僕はうなずいた。心のどこかで良かったと思う自分に、罪悪感を感じながら。
782名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/08(水) 00:03:10 ID:???
「よし!」
アスカは満足そうにうなずくと、じゃあねと手を振って家に入っていった。
僕も踵を返すと、アスカの母親の姿が目に入った。やっぱり家族で出かけていたんだ。
「あ。どうも……」
何となく僕は慌ててしまった。大人に挨拶するのはどうも苦手だ。綺麗な人というのもあるのかも知れない。
「あら、シンジ君。いつもアスカがお世話になって」
「いえ、こちらの方こそ。その、アス……惣流さんに教えてもらっちゃって」
「そんな、とんでもない。この間のテストもすごく良かったのよ。シンジ君のおかげね」
「え……?」
僕はきょとんとした。点数が良かった?
「あら、アスカは言ってないのかしら?」
僕はもごもごと、ええ、聞いてますとか何とか言うと、挨拶もそこそこに退散した。
アスカの基準だと良くなかった、ということなのだろうか? 
……まぁいいや、と僕は思った。テストの結果をどうとるかはアスカの自由だ。彼女がまだ勉強する必要があると思うのだから、その意思を尊重するべきだろう。
783名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/08(水) 00:04:03 ID:???

母さんに遅くなったのを詫びて食卓に着く。母さんが台所からテストはどうだったのと訊いてきた。
「そこそこかな。そうだ、アスカに責任とってもらうって言われちゃったよ」
僕の言葉を聞くと、たちまち母さんが血相を変えた。
「ちょ、ちょっと、シンジ。責任って……ど、どういうことかしら?」
「テストの結果の責任。僕が引き続いてアスカの家庭教師をやるってことだよ」
「ああ、そうなの。そうよね。そうに決まってるわね。いやだわ、私ったら……」
母さんは明らかにほっとした顔をして額の汗を拭った。そして、口元を手で隠してほほほと笑いながら台所に戻っていった。
いったい何だろう? 僕は首をひねった。母さんの反応の意味が分からない。風邪でも引いているのだろうか。
「どうした、シンジ。母さんの様子がおかしいみたいだが」
居間に入ってきた父さんが、台所をちらりと見て僕に訊いてきた。
「"アスカに責任とってもらうって言われた"って言っただけだよ」
父さんは遠い目で咳払いをした。
「責任……責任か。まぁ、男はいずれそういう時期が来るものだ。もちろん、シンジには早いが。俺も義父さんに会いに行くときは……」
「何言ってるの? 父さんも訳分からないこと言わないでよ」
僕は呆れて言った。母さんも父さんもどうかしているよ。
784名無しが氏んでも代わりはいるもの


「ね」
「何?」
僕は顔を上げずに答えた。ちょうど難しい数学の問題を解いている最中だったからだ。
「ドイツの食事って言ったらシンジは何を連想する?」
「何、いきなり。……まぁ、ソーセージとか。あと、ザワークラウトだっけ? キャベツの酢漬け」
「あんたにしてはよく知ってる方ね。じゃあ飲み物は?」
僕は顔を上げた。何のアンケートなんだ?
「飲み物……。ビールじゃないかな。というか、ビールしか知らないけど、ドイツの有名な飲み物って」
「正解! ねぇ、シンジはビール飲んだことある?」
「ビール? ないよ。未成年だもの」
「えーっ、ないのォ!? まったく、あんたは見た目通りのお子ちゃまなのね」
アスカは呆れたように言った。
「何だよそれ」僕はむっとした。「アスカはあるのかよ」
「ばっかねー。あるに決まってるじゃん」アスカは勝ち誇った顔で宣言した。「この間までドイツに住んでたのよ」
「それが、何なんだよ。ビール飲んだから偉いの? 下らない。それこそガキっぽいよ」
「そういう台詞は飲んでから言うものよ」
アスカはほくそ笑みながら言った。すっかりお馴染みの、何か企んでいる顔だ。
「ま、あんたはお子ちゃまだから飲めないんでしょうけどね」
「バカだな。飲もうと思えば飲めるよ。ウィスキーとか日本酒とか、ああいう本格的なお酒はちょっとアレだけど、
ビールなんてアルコール度数も大したことないんだし。父さんだって水みたいに飲んでるよ」
「ふーん。そ」
アスカは急に立ち上がるとドタバタと足音高く部屋を出て行った。
「ちょっと、アスカ? どこ行くの?」
アスカはしばらくすると戻ってきた。手にはビールの缶が二本。
「じゃーん。飲もうと思えば飲めるって言ったわよね」
僕は呆気に取られた。
「アスカ、それ……」
「あ」しまったという顔でアスカは言った。「ツマミ、忘れた」