661 :
『旅立ち』:
全ては終わった。あの日、シンジは鬼神と化したアスカと共に、量産機を殲滅し
た。ドグマからアダムもリリスも消え、碇ゲンドウもおらず、ただ綾波レイが一
人ぽつんと立ち尽くすだけだった。レイはただ「……碇司令は、愛する人のとこ
ろに行ってしまったわ」と語るのみであった。
ゼーレは無理な量産機建造が祟って、経済破綻で空中分解。国連はNERVをエヴァ
管理のためひとまず存続させたが、エヴァは半永久的に凍結、NERVも段階的に縮
小される方針となった。
第三新東京市郊外の小さな墓地。市街地は零号機の自爆でほぼ潰滅してしまった
が、郊外のこの墓地は爆発を逃れてひっそりと佇んでいた。
真新しい墓標の前に立つひとりの少年。『TOUJI SUZUHARA 2001-2015』と書かれ
た墓標をじっと見つめていた。
「ごめん、トウジ。僕、そろそろ行かなきゃ」
少年は墓標に向かって話し掛けた。
「僕は……僕はトウジのことを絶対に忘れない。トウジのことを背負って、ずっ
と生きてくから……。だから、もうしばらく生きていていいかな、トウジ…」
きびすを返して立ち去ろうとした少年の足が止まり、肩が震えた。俯いた頬から
光るものがこぼれ落ちる。
「……ごめんトウジ。君の前では泣かないって決めてたけど、やっぱり無理だっ
たみたいだ……」
墓標に背を向けて、いつまでも立ち尽くす少年。その姿を、ただ光と風と雲だけ
が見ていた。
662 :
『旅立ち』:2009/03/20(金) 23:29:42 ID:???
「もうここには居たくない。エヴァのことを知ってる人にも会いたくない」と言
い残してアスカはドイツに帰った。シンジの気持ちもアスカと変わらなかった。
「……ミサトさん、僕、先生のところに帰ります」
「……そう。止めても無駄でしょうね……」
「…ごめんなさい、ミサトさん。でも僕はもう、エヴァのことは見たくないし、
聞きたくもないんです」
「そうね。その方がいいかもしれないわ。なにもかも忘れて静かに暮らせたら、
どんなにいいかしら……」
「ごめんなさい、ミサトさん。僕だけ逃げ出して……」
「いいのよ。また会えるわよね、シンちゃん?」
「はい。ミサトさんは、いつまでも僕のお姉さんですから」
「シンちゃん……!」
シンジはミサトと抱き合って泣いた。僅かな間ながら家族として暮らした女性と
の別れであった。
唯一の心残りだった親友の墓参りを済ませた後、シンジは駅に向かった。バスに
揺られながら、この街で出会った人達を想った。
ここで知り合ったほとんどの人とは、もう二度と会うこともないだろう。アスカ、
トウジ、ケンスケ、ヒカリ、ゲンドウ、リツコ、加持……そして、レイ。
考えてみれば、レイとはずいぶん前に会えなくなっていたのだ。あの日、レイは
自爆した。そして、今のレイはシンジの知らない三人目。双子山で微笑んでくれ
たレイはもういない。
(トウジ……綾波……。僕がもう少ししっかりしていれば、守れたかもしれない
のに。二人とも生きていて、僕に笑ってくれたかもしれないのに)
悔いばかりが残る日々。もう取り戻せない日々の思い出がシンジを苦しめた。
663 :
『旅立ち』:2009/03/20(金) 23:31:58 ID:???
『次は第三新東京駅、第三新東京駅でございます。お降りのお客様は忘れ物に…』
合成音声のアナウンスがシンジの思考を断ち切った。シンジはのろのろと立ち上
がり、ガラガラのバス内を降り口に向かった。
市街地は焼け野原になった第三新東京市だが、既に復興が始まっていて、駅はそ
れなりに混雑していた。切符を確かめたシンジは、未練を断ち切るように足を早
めた。
改札口に向かうシンジの目に、見慣れた制服が飛び込んだ。壱中の女子の制服を
着たその人はスポーツバッグを提げ、人待ち顔で改札口前の柱にもたれていた。
シャギーの入った蒼い髪、美しい紅い瞳の少女。綾波レイであった。
意外な人物の出現に、シンジの足が鈍った。ふと顔を上げてシンジを認めたレイ
は一瞬はっとした表情を浮かべ、次の瞬間瞳に決意を宿してシンジに歩み寄って
来た。
「いかり、くん」
「あ、綾波?こんなところでどうしたの」
「……碇くんこそ、どこへ行くの?」
「……ごめん。帰るんだ、元いたところに」
「…そう」
「綾波は、どこに行くのさ」
レイは戸惑ったように目を伏せた。
「あ、あの、綾波?」
「……………ていって」
「え?」
蚊の鳴くようなか細い声に、シンジは思わず聞き返す。頬を真っ赤に染めたレイ
は、必死の思いで声を上げる。
「連れて行って」
664 :
『旅立ち』:2009/03/20(金) 23:33:13 ID:???
「ええ!?連れて行ってって、綾波……」
「……置いて行かないで。私も連れて行って」
レイの紅い瞳から、涙の雫がほとばしる。焦るシンジ。そんなシンジの胸に縋り
付くレイ。
「あ、綾波、どうして?僕のことは知らないんじゃないの?三人目の君は」
「……知らなかったわ。でも、前の私の記憶が蘇ってくるの。笑うあなたの記憶
。泣くあなたの記憶。紅茶の記憶。……あなたの手の記憶」
「綾波……」
「前の私が愛した人の記憶。その記憶を繰り返し見せられて、いつの間にか、三
人目の私もその人に恋していたの」
「……綾波!」
思わずレイの手を握るシンジ。握られた手を見つめて、レイが呟く。
「碇くんの手……やっぱり暖かい」
「……これは、何度目なのかな」
シンジの問いに、三人目のレイが微笑む。
「……今の私には、これが初めて。でも、初めてだけど、暖かい」
「これから、何度も握っていいかな」
「……握って、ほしい」
改札口の前で手を繋ぐ中学生のカップル。通り過ぎる人たちは、不思議そうな、
でも、どこか暖かい眼差しを二人に注いでいた。
【終わり】
乙!
タン塩氏乙
乙です。
ただ、難点を言うなら、貞版でシンジがいたところは、先生じゃなくて伯父さん家です。
あと渚さんの名前が出てこないのも…
貞エヴァならシ者は要らんだろ
職人降臨待ち
「あ〜……暇やな」
いつもと変わりない学校での昼休みのことだった。
机に脚を乗せ、背もたれに体重をかけてイスを斜めに傾けて座りながら、トウジは実に退屈そうに呟いた。
「飯も食い終わったし、なんやおもろい事でも無いもんかのぉ〜…」
「じゃあ、大貧民でもどう…かな?トランプもあるし」
誰が持ってきたのか、もはやクラス内共有となってるトランプを手にしながらシンジが提案した。
「あかんあかん!んなチマチマしたややっこしい遊びなんかやってられるかい!!」
「そんなこと言って…。もしかしてトウジ、トランプできないんじゃないのか?」
そこでケンスケが挑発まがいなセリフを挟んだ。
「アホかぁ!!ワイかてそんくらいできるわい!!ただそんな遊びじゃ燃えないゆーとるんじゃ!」
「フフ…じゃあ、こうしたら少しは燃えるんじゃないかな…?」
シメたと言わんばかりに顔に意地悪そうな笑みを浮かべ、メガネを中指でクイッと押し上げるケンスケ。
メガネは光で反射し、その目を伺うことはできない。
「罰ゲームだよ。これが加わるだけで単純な遊びでも劇的に熱くなれるんだ…」
「ば…罰ゲーム…?」
「ほ、ほう……面白そうやんけ。それで、なんにするんや?」
実に楽しそうに口を笑みで歪ませながら喋るケンスケに、シンジとトウジは得体の知れない不気味さを感じ、
その額には冷や汗が流れていた…。
「そうだね…いくつか過激なものも知ってるんだけど、ここはやはり中学生らしくこの程度で行こう。
綾 波 の 脇 を 思 い っ き り く す ぐ っ て く る
最低でも10秒だ。」
メガネを光らせ不気味な笑みを浮かべたまま、ゲンドウと同じようなポーズでケンスケは静かに…しかし力強く提案した。
「な、なんや、その程度かい…っ!!」
「えぇええええ!?!?ちょ、ちょっと待ってよ!!」
ほぼ対照的な反応を見せるシンジとトウジ。
トウジは若干拍子抜けしたような、安堵の表情をしていた。
普段からヒカリに対してちょっかいかけてるせいか、その手のイタズラにそこまで抵抗は無かった。
ただ、相手がレイともなると、そのリアクションが想像できない分多少の不安を感じていた。
対してシンジは目に見えて動揺していた。
その手のイタズラなど勿論今まで一度もしたことが無く、加えて相手がレイともなれば尚更だった。
ヤシマ以降、せっかくうち解けてきたのに、そんな真似でもしたら今の関係が台無しになってしまうかもしれない…
そんな不安すらよぎったシンジは、頑なにその罰ゲームを拒否した。
「無理だよ…そんなの出来るわけ無いよ!!第一、なんで綾波なのさ!?」
「そこが肝なんじゃないか。他の女子じゃそのリアクションはたかが知れてるだろ?
あの綾波が怒るのか…大笑いするのか…それとももっと他の反応なのか…
想像がつかないからこそやる価値があるし、気軽に出来る相手でもないからこそ罰ゲームになるんじゃないか。」
「だって……だって綾波にも迷惑じゃないか…」
「大丈夫やって!軽い冗談やないか、そんなんで本気で怒る女子はおらんから安心せい」
「そうだよ。それに、こういうふざけ合いで仲が良くなることもあるんだぜ?
もしシンジがやることになっても、良いきっかけじゃないか」
「そ、そう……かな?」
「そうやって!おし、決まりや!!ほなさっそく始めよか」
ケンスケの話術とトウジの強い押しで多少強引に大貧民が始まった。
そして十分後……
一位・ケンスケ 二位・トウジ 三位・シンジ
「(計 画 通 り !!)」
そこには邪悪な笑みを浮かべるケンスケと、机にうなだれるシンジの姿があった。
大貧民と言えど、対人戦とはすなわち心理戦。
負けた時のプレッシャーがデカければデカい程、手は縮こまる。勝負所を見送る。
その所を熟知したケンスケと、プレッシャーをあまり感じないトウジ、元から引っ込み思案のシンジ。
この結果はまさにケンスケの計画通りだった。
「さて、シンジ。残念だったけどルールだ…。ちなみに、10秒は陰から計るからな。一秒でも早かったらやり直しだぞ」
「ほな、さっそく見せてもらうで!」
「う…うぅ……」
逃げちゃダメだ……そう自分に言い聞かせて、数分の葛藤の後シンジは席を立ち、ゆっくりとレイの席へと歩み寄った。
レイはイスに座り、本を読んでいる。
そんなレイの後ろから、シンジは両手をゆっくりとレイの脇に手を伸ばしながら近づく。端からみれば怪しい事この上なかった。
「あ、綾波!」
「なに?」
あともう少しの所で手を引っ込め、レイに話しかけるシンジ。
本を読むのを中断し、レイはシンジの方へと振り返った。
「あ、あの…ちょっといいかな?その…えっと……あ、屋上まで」
「別に…いいけど」
後ろからいきなりくすぐる事と、教室という他の生徒の面前でやる事への抵抗がシンジに場所を換えさせた。
しかし、屋上で二人きりになったとこで、自分のした事は間違いだったのではと後悔することになる。
「(ど……どうしよう……気まずい……お、落ち着け…落ち着け…!!)」
「………………………………」
二人で向かい合い、沈黙が流れる。
目線が定まらず、手を握ったり開いたりするシンジ。それをじっと見つめてるレイ。
そんな二人を物陰から覗くトウジと、なぜかカメラを構えてるケンスケ。
数時間にも感じる数分が経った時、ついに動き出した。
「綾波……ごめんっ!!」
すかさずレイの脇へとシンジの手が滑り込む。
そしてわきわきとその指を蠢かし始めた。
「え…?きゃっ!?ぅ……ッ…んっ!!…ゃ…ん…なにっ!?……ぁ…はっ……やめっ!!」
聞けば間違いなく勘違いされるような声が漏れた。
反射的に身を屈め、脇を締めるレイ。普段無表情と言えど、やはり神経には逆らえない。
しかしその口から大きな笑い声が漏れることは無く、唇を強く閉じて声が漏れるのを必死に堪えていた。
「ぅんんっ……!!ぁは……離っ……し……ッ!!ぁんんん…はぁはっ…っ…!!手ッ……抜い……ッッ!!」
シンジの手から逃れようと、反射的に身悶えするレイ。シンジとレイには10秒という時間が気が遠くなるほど長く感じた。
「(手…もう…離さなきゃ!!でも、10秒たったかな…?まだだったら…また…でも綾波が…!!)」
レイに振りほどかれたのか、それともシンジの手が緩んだのか、やっとシンジの手はレイから離れた。
それと同時に、レイは崩れ落ちるようにその場に座り込み、息を荒げた。
「ハァハァ…ハァ…ハァ………ハァ…」
女の子座りになり、制服は乱れ、頬は紅潮し、乱れた髪はしっとりとかいた汗で額やうなじにはりついていた。(貞エヴァ9巻扉絵参考)
その実に妖艶な姿にしばし目を奪われていたシンジだが、次第に自分のしたことへの認識が高まり、罪悪感が芽生え始めた。
「あ、その…ご、ごめん綾波っ!!これは…訳ありで…なんて言えばいいのか……」
罰ゲームでした…とは言えず、取り乱すシンジ。
トウジやケンスケの口ぶりからもっと気軽なものを想像していたが、実際にやってみるとこれは想像以上の大事な気がしてきた。
そんなシンジを尻目に、息を整えると、乱れた制服を直してゆっくりと立ち上がるレイ。
そしてシンジの元へと歩み寄ってきた。
「あ、綾波…ご、ごめっ!!」
このシチュエーションにいつぞやと近いものを感じ、身構える。
ビンタがくるかと思い目を瞑ったが、待っていたのは意外な感触だった。
「あれ…?綾波、なにしてるの…?」
「…………………仕返し」
レイの両手はシンジの両脇へと差し込まれ、もぞもぞと指を動かしていた。
しかしその華奢で力のない指使いは、くすぐるというより撫でるようなもので、くすぐったいというよりこそばゆい程度だった。
「どう?」
「え、いや、どうって聞かれても…。綾波、怒ってないの?」
「別に、怒ってないわ。碇君に触れられて…悪い気はしなかった…から」
その一言で一気に赤くなる二人。
二人とも俯いたまま、また沈黙が訪れる。
そしてその沈黙を破るように、休み時間終了のチャイムが鳴る。
「あ、もう帰らなきゃ」
「ええ」
どこか気恥ずかしさを隠すように、そそくさと教室に向かう二人。
しかし教室に着くまでの間、二人の掌は確かに触れ合っていた。
あれ?投下されてる
乙
(・∀・)イイヨーイイヨー
俺も身悶えた
職人待ち
684 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/04/25(土) 22:51:51 ID:JjOTBYgS
三次創作で 復活させたい 連載中断作品
1. EVA
(1) 「のんびりとてとて」 の 「あなた、何様?」
(2) Seven Sisters氏の 『I wish』
(3) 「Night Talker」の「エゴイスト」
(4) 陸稲さんの 『貴方が傍に居て欲しい』
2. ONE 〜輝く季節へ〜
(1) Time~it can`t be back~
城島司を主人公にして、中学生時代の里村茜,柚木詩子を攻略する ss
ttp://takasaka.hp.infoseek.co.jp/timefront.htm
干す
686 :
碇シンジ:2009/05/16(土) 23:19:38 ID:???
綾波、保守だよ
コンコン
「綾波、起きてる?」
学校から帰る途中、スーパーの袋を携えたシンジはレイのマンションを訪れ、控えめ
にドアをノックした。
しかし返事はない。
「あの…ちょっとお邪魔するね」
ゆっくりと音を立てないようにドアを開け、シンジは玄関へと上がる。
そしてシャワー室の方へ耳を傾け、レイが入浴中ではないことを確認する。
前回のような鉢合わせを避けるためだ。
できるだけ物音を立てないよう静かに部屋の奥へと進むと、そこにはベッドで静かに
寝息をたてるレイの姿があった。
しかしその額は少し汗ばんでおり、表情もすこし辛そうに眉をしかめていた。
「綾波、大丈夫?」
勝手に女子の部屋にあがり、あまつさえ寝ているところを起こすことに多少の抵抗を
感じるシンジだったが、
それらを気にしていてはいつまでたっても今のレイとは接触できない故の行動だっ
た。
シンジは体調を崩して養生しているレイの見舞いに来たのだった。
「・・・ん・・・碇・・・くん?」
うっすらとおぼろげな目でシンジの方に顔を向けるレイ。
その様子からも、やはりレイが弱っている状態であるのは明らかだった。
「ごめんね、勝手に上がって起こしちゃって。お見舞いに来たんだけど、調子はどう
?」
「うん…大丈夫。少し…良くなったから。」
と言っても、やはりその表情と口調は弱々しい。
そんなレイを見かねて、シンジはすかさず持っていた袋を漁り出す。
「あの、食欲はあるかな?果物とか買ってきたんだけど、食べれるなら食べた方がい
いよ」
「…ううん、ごめんなさい。食欲…ないの」
少し申し訳なさそうに首を横にふるレイ。
そんなレイを見て、シンジは更に何か自分にできることはないか…と、焦燥の念に駆
られた。
「あ、じ、じゃあお茶でも淹れるよ!せめて何か口に入れないとね」
そんなやり取りをする日々が何度か続いた。
シンジの涙ぐましい努力の甲斐もあってか、次第にレイも快調へと向かっていった。
そして何度目かの見舞いの日・・・
「綾波、もう大分顔色もよくなったね。食欲も出てきたみたいだし、安心したよ」
いつものようにベッドの傍らのイスに腰掛けるシンジと、上体を起こしてシンジと向
き合うレイ。
「僕、飲み物でも用意してるから、熱だけ計ってみなよ」
そう言って体温計を手渡すと、シンジはすっかり勝手知ったる台所のほうへと向かっ
た。
レイは体温計を脇へ挟み、数分の後計り終えた自分の熱を確認してみる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「綾波、熱どうだった?」
体温計をじっと見つめてると、いつのまにか隣にいたシンジにレイは思わずビクッと
体を震わせた。
「ご、ごめん…驚かせちゃったかな?あの…紅茶淹れたから、はい」
「あ、ありがとう…」
レイは手渡された紅茶を受け取ると、カップに両手を添えながら、どこか子供っぽく
それを口にした。
「…おいしい」
「もう、大丈夫そう?」
「うん…でも、まだ熱があるみたい……」
シンジから目線をそらし、伏し目がちにレイは一言そう告げた。
その表情は曇り、なぜか申し訳なさそうな雰囲気を醸し出している。
「そっか…じゃあ、明日また来るよ。あと、昨日の残りで申し訳ないけど、おかゆ温
め直しておいたんだけど、食べれる?」
「ええ」
「よかった、じゃあ取ってくるね」
台所からおぼんに乗せたおかゆを取ってくると、シンジは再びベッドの傍らにあるイ
スへと腰掛けた。
湯気の立つおかゆは、簡易的な料理といえど十分に食欲をそそらせた。
「えっと…やっぱり、いつもみたいな感じで?」
「うん…お願い」
するとシンジは、おかゆをスプーンで掬うと、フーフーと息を吹きかけ丁度良い温度
に冷ますと、
それをゆっくりとレイの口元へと持って行った。
レイはそれを一口で口に入れるのではなく、小さく口を開けて半分ずつだけ口にする
のが、シンジはなんだかレイらしいと思っていた。
まだレイが体を起こすのも辛そうだった時は、多少の照れよりも労りの気持ちが勝
り、シンジからこの食べさせ方を申し出たのだった。
しかし、まるで恋人同士のようなこのやり取りにシンジはいつまでたっても慣れるこ
とができなかった。
「碇君、どうしてこんなに良くしてくれるの?」
食事を終え一息つくと、レイは唐突にこの疑問を投げかけた。
「え?・・・・・・うーん・・・・どうしてって言われると・・・」
予想外の質問に困ったような表情を浮かべ、暫し沈黙して物思いにふけるシンジ。
少し考えた後、自分でも今気づいたことのように、その旨を話し始めた。
「やっぱり…困ったときはお互い様だし、なにより、この場合ちょっと不謹慎かもし
れないけど、
嬉しかったんだと思う…誰かの役に立てる事が…誰かに必要とされる事が……」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シンジの言葉を聞いて、レイは自分を振り返ってみる。
人が人を必要とし、必要とされること…その意味、それを望む理由……
「(私を必要とする人…碇指令……?私が必要とする人………)
碇君は、どうなの?」
「え?」
またもや唐突に投げかけられた言葉に、シンジは一瞬なんのことかを把握しきれない
でいる。
「碇君にとって必要な人は………私は、碇君にとって必要なの?」
「当たり前じゃないか!」
思わず声が大きくなったことにレイも、シンジ自身も驚いた。
なぜそんなムキになって声をあげてしまったのか。
シンジ自身にもその理由はハッキリとわからなかった。
自然と、反射的に声が出てしまったのだ。
しかしレイはそのセリフに、無意識ながらも喜びを感じていた。
ヤシマの時、なぜシンジがあんなに必死に自分を心配してくれたのか、なぜ涙を流し
ていたのか、
その理由をまた少しその身に感じることができた気がしたから。
「・・・・・・・・・・・・・」
レイは沈黙していたが、その表情は微かに微笑んでいた。
「あ…その…ごめん、大きな声だしちゃって………あれ?」
バツの悪さからか、目を泳がせていたシンジの目線がレイの枕元にある体温計へと止
まった。
その体温計を手に取り、まだ表示されているレイの体温を確認する。
「あ、それは……っ」
少し気が浮ついていたレイは遅ればせながらシンジの行動に気づいた。
と同時に、確か自分は体温計のリセットボタンを押し忘れていたことを思い出した
が、時既に遅かった。
「36.1度って…あれ?綾波、さっき熱があるって……」
「あの…ちがっ……それ…は…」
レイにしては珍しく、少なくともシンジの前では初めて取り乱す様子を見せた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
その場に、気まずさとも違った、重い空気の沈黙が流れた。
ふと書き始めてみたんですが、予想より長くなってしまい、夜も明けてしまったので一旦くぎります
中途半端で申し訳ないです
需要があれば近々続きを書いて投下させてもらおうと思います
待ってるお
需要ならあるお
待ってるお
(・∀・)イイヨーイイヨー
間を開けてしまい、しかもその割に書いてみれば残り短かったのが申し訳ないです
これなら最初に書ききってしまえばよかったですね…
>>692の続きです
------------------------------------------------------------
視線を落とし、シンジと目を合わせないようにするレイ。
その姿はまるで、イタズラが見つかり、叱られるのに怯える子供のようだ。
シンジは、レイがなんでそんな嘘をついたのか…今どんな気持ちでいるか…
聞くまでもなく既にわかっていた。
「……綾波」
決して咎める風ではなく、むしろ相手を安心させるように穏やかに声をかける。
そしてそっとレイの手に自分の手を重ねる。
「大丈夫だよ。こんなことしなくても、言ってくれればいつでも来るから」
そう言って、シンジはレイに優しく微笑んだ。
数秒の間を空けて、レイはおそるおそるシンジの顔へと視線をあげる。
「…本当?」
不安げな表情でそう呟く。
シンジはそんな嘘をつく人ではない…
そうわかっていながらも、レイはその言葉をもう一度聞きたかった。
「うん、もちろんだよ」
微笑みながらそう応えるシンジ。
レイは重ねるだけだったシンジの手をそっと握る。
その場には既に重い空気も不安げな表情もなく、優しい笑顔が二つあった。
碇君が来てくれるのが嬉しい。
碇君が帰ってしまうのが寂しい。
碇君ともっと一緒にいたい。
まだ、一緒にいたい…。
そう願いつつも、それを伝える言葉を知らないレイなりの、初めての我が儘だった。
乙乙乙
良スレですね!
どの職人さんも素晴らしい…
にやにやが止まらないw
電気もつけず、月明かりだけが照らす部屋の中で、レイはベッドの上にシャツ一枚で
仰向けに寝そべりながらじっと携帯を見つめていた。
その携帯の電話帳に登録されているのは、「碇シンジ」のみ。
それもそのハズで、この携帯は連絡用にとネルフから至急された任務のための物と違い、
シンジに勧められて今日一緒に買いに行ったばかりのものだった。
「・・・・携帯なら、もう持ってるのに」
レイにとって携帯とは緊急の際にも連絡が取れるための物で、
エヴァパイロットとして欠かせないものであり、
それ以上でも以下でもなかった。
だから、別にもう一つの携帯を持つ事に何も意味を見いだせなかった。
しかし、シンジからの強い勧めと、ちょっとした好奇心も手伝って購入に至ったのだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして今、レイは相変わらずもう一つの携帯を持つことに意味を見出さない一方で、
何かを期待して待つかのように携帯を見つめ続けている。
もうどれだけの時間そうしていただろうか…
不安げにその表情を曇らせ始めたころ、携帯のコールが鳴り出した。
「・・・っ!!」
驚いたような表情を浮かべると、すぐに携帯を開く。
この携帯にかけてくる人間は一人しかいない。
誰が見てるわけでもないのに、レイは俯せの上体から起き上がり、ベッドに腰掛ける形で
心なしか姿勢を正したように座った。
『・・・・もしもし?』
『あ、夜分にごめんね。今何してたの?』
『・・・・本を・・・読んでたの』
ずっと携帯を見ていた…とは言えず、咄嗟に口から出任せが漏れた。
『碇君は何をしていたの?』
『え!?あ、その・・・ぼ、僕も本を読んでたんだ!き、奇遇だね!』
そんな何気ない質問で、明らかに焦りを示すシンジ。
普通の人が聞けば本当に読書をしていたのか怪しいことこの上ない。
いや、実は本など読んでいなかったと考えて差し支えないだろう。
『どんな本?』
しかし、レイはそんなシンジの言葉を無邪気にも真に受け、怪しさから問い詰めるのではなく
純粋な好奇心からの疑問をシンジに投げかけた。
読書が唯一の趣味と言っても過言ではないレイに読書の話題で応えるのは墓穴だったようだ。
『えぇ!?え〜と・・・だから・・・○○○○って本だよ、今話題になってる』
咄嗟に最初に頭に浮かんだ本の名前を口にしたシンジ。
その本は今映画化されたことで話題になっている純恋愛小説だった。
『そう』
『・・・あ、あのさ、綾波』
『?』
『あの・・・今、あの本の映画やってるよね?
よかったらでいいんだけど・・・今度の日曜、一緒に見に行かないかな?』
『え・・・』
レイにとって、恐らくシンジにとっても予期しなかった誘いに戸惑う二人。
偶然か、今度の日曜はレイもシンジもネルフに行く予定も無い。
『それって・・・デート?』
『ち、ちがっ!?・・・・くも、ない・・・けど・・そ、そう・・・かな』
非常に歯切れが悪いがなんとか肯定の意志を見せるシンジ。
そもそも、レイの口からデートという単語が出たことが驚きの要因の一つだった。
『行きたい』
『本当!?えっと、待ち合わせの時間と場所は・・えと・・後でメールで送るよ!』
『そう、わかったわ』
『じゃあ、今日はこの辺で。あと、綾波・・・』
『?』
『おやすみ』
『・・・・・おやすみなさい』
プツッ ツーツーツーツー
通話が終わってからもそのまま携帯を耳に当て、
数秒の後名残惜しそうにゆっくりと耳から離した。
ベッドに腰掛けた状態のまま、通話の終わった携帯をじっと見つめる。
時間にすればせいぜい1分やそこらの会話だったが、
レイの心は先程と打って変わり満たされていた。
今なら、新しく携帯を買った意味がわかった気がする。
支給された携帯が鳴る時は、ネルフとの繋がりの表れ。
しかしこれが鳴る時は違う。
「(私と碇君との・・・新しい繋がり)」
寝支度を済ませると、どこか浮ついた気持ちのままベッドに入るレイ。
その胸には、大切そうに握られた新しい携帯があった。【つづく】
続け!乙
乙乙乙
乙
>>705続き
某日 日曜日 某駅にて
相も変わらず常夏の日差しが降り注ぐ中、軒下で涼をとるシンジの姿があった。
服装はポロシャツにジーンズというラフな格好。
まだ待ち合わせの時刻に達してないにも関わらず、そわそわと落ち着かない様子で
5分に一回は時計を確認している。
もう時間丁度になろうかという時に、不意に待ち人からの声が聞こえた。
「待った?」
声がした方へと顔を向けると、シンジは我が目を疑った。
オレンジ色のキャミソールに、ベージュ色のスカートという、
なんとも年相応の女の子らしい服装に身を包んだレイがいたのだ。
あまりに予想外かつ新鮮なレイの姿に、シンジは思わず魅入ってしまっていた。
「・・・・怒ってる?」
シンジの無言に不機嫌さを心配したレイは、不安そうにその表情を曇らせた。
「あ、ううん!!全然!僕が来たのが早すぎただけだから気にしないで!」
「そう。じゃぁ、いきましょう」
「そ、そうだね」
そして二人は駅のホームに向かう。
その道中、シンジはチラチラとレイのほうに視線を向けていた。
その視線に、さすがのレイも気がつく。
「・・・・・なに?」
「あ、いや!ごめん!その・・・綾波も、そういう服着るんだなって思って」
「・・・・・・・・・変・・・かな?」
「そんなことないよ!!すごく、似合ってるよ」
その一言に、無言でうつむくレイ。
しかしその頬はほんのり赤くなっている。
そう言うシンジも、慣れない言葉を使ったことに照れを隠しきれないでいた。
お互い、照れを隠すようにたわいのない会話を繰り返しているうちに映画館に着く。
やはり恋愛メインの映画なだけあって、客層はカップルばかりであった。
自分たちも、はたから見ればこんなカップルに見えているのだろうか?
そんな考えが頭をよぎり、シンジはそわそわと落ち着かなかった。
一方で、同じ事が頭をよぎったのか、それとも映画館が珍しいのか、
レイはキョロキョロと周りを見渡している。
席に着くと、まもなく映画が始まった。
・・・・
・・・
・・
・
数時間の後、映画が終わると、そこには涙を流す客が後を絶たなかった。
映画の内容は、主人公の恋人が病に伏して倒れ、
死が二人を別つまでを描いた悲恋モノだったからだ。
しかしそんな中で、レイとシンジの目に涙は無かった。
その代わり、二人の手はお互いを繋ぎ止めるように結ばれている。
人影もまばらになったころ、二人は躊躇いながらも手を離すと、映画館を出て帰路についた。
夕焼けを背にする二人の間に会話は無い。
二人とも思い詰めたように無言で歩いていると、不意にシンジが口を開いた。
「ねぇ、綾波。ちょっとそこの公園に寄っていかない?」
「ええ」
もう夕暮れのせいか、公園には人影は無く、二人はベンチに腰をかけた。
再び訪れた暫しの沈黙を今度はレイが破る。
「碇君は……エヴァに乗るのが怖い?」
「うん……やっぱり、怖いよ。もしかしたら、前よりも」
身の回りにいたカップルがみなそうしていたように、普通は見た映画の話題に触れる所を、
二人はなんの前置きも無くエヴァの、引いては今の自分達の立場について触れ始めた。
二人にとってあの映画の内容は決して人事ではないのだ。
いつ自分が、もしくは身近な人間が死ぬともわからない。
明日にも使徒が攻めてきて戦うかもしれない。
今日みたいな何気ない平和な一時はいつどんな形で崩れ去ってもおかしくない…
だからこそ、大切な人と居られる一時はかけがえのない大切な時間なんだと、
二人は改めて実感していたからだった。
「綾波は……綾波はどうなの?」
「……………今は……少し……怖い」
いつかと同じ質問をしたシンジに対し、返ってきたレイの答えは変わっていた。
その体は、少し震えている。
レイにとってゲンドウの命令に従うことに何の恐怖も躊躇も無かった。
しかし、今は……違う。
自分がいつか消えて失ってしまうのは余りにも怖いと思えるモノが、
既にレイには芽生えつつあったからだ。
「大丈夫だよ…」
「え…」
一瞬、何をされたのかわからず戸惑うレイ。
シンジのぬくもりが伝わってくることで、レイは自分が抱きしめられている事に気づいた。
「僕が…守るから。みんなを…綾波を…」
堅い決意がもたらす武者震いなのか、それとも重圧がもたらす恐怖によるものなのか、
もしくはその両方なのか、シンジの体も小刻みに震えていた。
「うん……私も、守るから…」
そう言って、レイはシンジの背に手を回して抱きしめ返す。
どれだけの時間そうしていただろうか。
二人の震えは既に止まっている。
数秒にも、数分にも思える時間が経過したころ、二人はそっと体を離した。
「……帰ろうか」
「ええ」
帰路に戻ると、やはり二人の間に会話は無かった。
しかしその表情はどこか満たされていた。
駅で電車を降り、最初の待ち合わせ場所へと着く。
「じゃあ、今日はありがとうね。また明日学校で」
「うん…また明日」
それだけ言葉を交わすと、二人はお互い背を向け、家路に着いた。
シンジはどこか後ろ髪を引かれる思いで歩いていると…
トゥルルルル
ピッ
『綾波?どうかしたの?』
『言い忘れてた事があったの』
『?なにかな?』
『碇君…おやすみなさい』
『…うん、おやすみ』
たったそれだけの携帯越しのやりとりだったが、
それだけで十分シンジは名残惜しさを吹っ切れた。
今夜はよく眠れそうだ…
そんな思いを、胸に秘めながら。
初々しくていいわぁ〜
和んだ。素敵。
おてゅ
乙乙乙乙乙
可愛いなぁ
物書きさんなの?クオリティ高い作品投下してくれるから嬉しいな
読んで頂いてありがとうございます!
レイがドコモチラシみたいな服装を普通に持ってるのは不自然と思ったけど、
書くと長くなりすぎてダレると思って端折ったレイの服装に関するサイドストーリーがあったんですが、
よかったらそっちも書いてみていいですかね?
>>718 そんな大したもんじゃないですw
たまにこの投下スレに自己満で妄想を書かせてもらってるだけの輩です。
ある日の放課後、委員長…洞木ヒカリは驚きを隠せないでいた。
というのも、
「洞木さん、私に……服を…選んで欲しいの」
そんなセリフをレイの口から自分に投げかけられれば無理もない。
ヒカリは席で帰り支度をしていた手を止め、傍らに佇むレイを目を丸くして見ている。
レイのほうから声をかけてくるというだけでも珍しいのに、その内容がショッピングとなるとこれは正に一大事だ。
「………やっぱり…迷惑?」
あまりに予想外の出来事に面を食らってると、レイの口から不安げな言葉が漏れた。
「え!?あ、ううん!そんな事ないわよ!ただちょっとビックリしてただけ。
でも、私なんかでいいの?」
ヒカリもやはり年頃の女の子なだけあってそれなりに服に気を遣っているが、
かといって人の服装を自信を持ってコーディネートできるだけの自負はなかった。
しかしレイにとってこんな事を頼めるのは、立場と性格も相まって今までで一番レイに話しかけてきたヒカリだけだった。
「…ええ。お願いできる?」
「うん、いいわよ!じゃあ、さっそく帰りに見て行きましょう」
ヒカリもやはり年頃の女の子なだけあってそれなりに服に気を遣っているが、
かといって人の服装を自信を持ってコーディネートできるだけの自負はなかった。
しかしレイにとってこんな事を頼めるのは、立場と性格も相まって今までで一番レイに話しかけてきたヒカリだけだった。
「…ええ。お願いできる?」
「うん、いいわよ!じゃあ、さっそく帰りに見て行きましょう」
委員長という立場から、孤立しがちだったレイをなんとかクラスに馴染ませようと今まで何度かレイに
声をかけてきたが、そんなレイが自分の方から頼み事をしてきてくれた事がヒカリは嬉しかった。
そんな調子で、意気揚々とヒカリはレイと共にショップへと向かう。
「それにしても、急に服を選びたいだなんて…綾波さん、何かあったの?」
「…………別に、何も」
少しの間をあけて、一見無愛想ながらも頬を少し赤らめてそう答えるレイを見て、ヒカリは確信した。
「ふふふ…もしかして、デート?」
「えっ…?ち、ちがっ…」
「隠さなくてもいいじゃない!もしかして…碇くんと?」
なにやら楽しげにニヤニヤと図星をついてくるヒカリにレイは困惑する。
なんでわかってしまうのだろう…?と、レイは驚きを隠せなかったが端から見れば一目瞭然だった。
と同時に、確かに隠す理由は無いはずなのに、咄嗟にごまかそうとしてしまう自分に疑問も感じていた。
「うん…。今度……映画を見に行こうって…」
観念したのか、レイは素直に白状する。
隠すことでは無いとわかってるハズなのに、やはり素直に話すと顔が熱くなるのを感じてしまう。
なぜこんな反応をしてしまうのか?
そもそも、なぜ一緒に映画を見に行くのに新しい服を買おうなんて思ったのか?
レイにとっては不可解なことだらけで、そんな自分に困惑していたが、
ヒカリのような同世代の女の子からすればなんの疑問の余地も無いのは明白だった。
「いいなぁ〜…はぁ…私も誘ってくれたらなぁ…」
レイの様子を見てうらやましく思ったのか、ヒカリもどこか遠い目でため息をついた。
その遠い目の先には既に特定の誰かを見ているようだったが、レイがそれを知るよしは無かった。
そうこうしているうちに、目的の店へと到着する。
「綾波さん、肌白くてキレイだし、こーいうの似合いそう」
そう言って差し出されたのは、白色のシンプルなワンピース。
さっそく試着室でそれを着てみるレイ。
「……どう?」
「うん、似合う似合う!でももう少し他の色もあった方がいいかなぁ…」
そうやって色々な服を試すこと数回。
最後に用意されたのは、オレンジ色のキャミソールとベージュのスカート。
例のごとくそれに着替えること数分後…。
「似合う…かな?」
「わぁ、すごく可愛いわよ!女の子らしいし、綾波さんの白い肌や髪の色にもよく合うし、
これにしたらどうかしら?」
「私も、これがいい」
最初は服の好みなど無かったレイだったが、ヒカリからの色んなアドバイスを聞いて
色々な服を選ぶ内に、レイにも服の趣味嗜好が芽生え始めていた。
「じゃあ決まりね!ところで綾波さん、よかったら下着も買わない?」
普段の体育の着替えの時や試着の手伝いの際に目にしたレイの下着は、
どれも飾り気一切無しのシンプルな下着ばかりだったが為のヒカリなりの気遣いだったのだが…
「あ!も、もちろん変な意味はないわよ!?中学生がそんなのダメなんだから!!
しょ、勝負下着だなんてまだ早いわ…(ボソッ)」
もちろん実践したことは無いが、知識としてそんな風習を知っていたヒカリは
深読みされまいと咄嗟に真っ赤な顔でフォローを付け加えた。
「ショーブ下着って何?」
だが、そんなレイの素な反応にすっかり毒気を抜かれたヒカリは落ち着きを取り戻した。
「し、知らないならいいのよ…やっぱり下着の話は無かったことにして。
あ、間違っても碇くんに聞いちゃだめよ!?絶対だからね!」
「? わかったわ」
そうして買い物は終わり、二人は帰路に着いた。
「洞木さん、今日はありがとう」
「ううん、いいのよ!綾波さんも頑張ってきてね!じゃあ、また学校で」
そう言って二人は別れ、レイは自宅に着くとすぐにシャワーを浴び、シャツ一枚でベッドに倒れ込む。
(明日は碇くんとデート…)
そう考えると、どうしても胸が高鳴り、眠れそうになくなる。
新しい服をシンジに早く見せたい…似合ってると言ってくれるのか、それともイマイチと思われるのか…
そんな期待と不安に入り交じった気持ちでレイは前夜を過ごした。
そして当日…
「……変…かな…?」
「そんなことないよ!!すごく、似合ってるよ」
シンジのその言葉で、今までの不安も思い悩んだ時間も全て報われた気がする…
言葉にならない喜びを噛みしめながらうつむくレイの表情は、嬉しそうに微笑んでいた。
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
乙乙乙
( ´∀`)イイデスネーイイデスヨー
でも、ダチョウ的な雰囲気が漂ってるのはなぜ?
上島「殺す気か〜っ!」
良いLRSw
最後可愛い
GJ
ケータイに関するストーリの方は無いのか