年下の彼-6 投稿者:M 投稿日:2019/12/08 11:59
それから夜が明けるまでの間、私はS君のキス以外の「初めて」を全部貰うのと引き替えに、私の全てを、彼に捧げました。
最初は戸惑っていた彼も、次第に慣れていく内に私の弱い所を責め立てる事を覚え、後は一枚一枚皮を剥ぎ取るように、
色々な私の姿を剥き出しにして、女として綺麗な所も、いやらしい所も、汚い所も、醜い所も、全部、十五も年下の子に晒してしまいました…
私の皮が剥がされる度、声を上げて絶頂に達する度、火が出るくらい恥ずかしくて堪らなかったのに、
S君は、そんな私を子供じみた「大好き」という言葉一つで、全て包んでくれました。
全身にキスされて舐められて、何度も彼が私の中に入って来て、想いが私の中に注ぎ込まれ、注いだ後も入ったままで、入ったままで抱き合って、
キスして、キスしたまま注ぎ込まれて…
幸せでした。
この掲示板の中でも猛者の方々には遠く及びませんが、私もそこそこの男性経験はあるつもりでした。下手もいれば上手もいて、
技量と経験値は当然快感度と正比例して、アフタフォローによって着陸の安定に差が生まれる。そんな計算も身に付いてました。
しかし、どんな相手でも、セックスによって幸福感が訪れる事は、S君との時まで一度もありませんでした。
それまで一番相性が良かったK君でも、事後どころか途中から不安感や寂寥感に襲われ、そのせいで別れてしまったくらいです。
むしろ身体が馴染むほど、別離や拒絶、信頼感の喪失への恐怖が強くなる。何となく自己分析でそんな傾向があると自覚はしていました。
今思うと、それで傷つけてしまった相手もいたのかもしれません。我儘で振り回して、結局振ってしまう。そんな女だったと思います。
でもS君は、極端に年下だからなのかもしれませんが、どんなに肌を合わせても、汚い事をしても、抵抗というか異物感を感じないのです。
それなのに、ほんの一言を囁かれたり、突然キスされるだけで、愛されているという実感が沸くのです。こんな「男」は初めてでした。
今まで、他人への恐怖や寂しさに抑えられていた快感のセンスが、一気に解放された感じと言えば良いでしょうか。
この子になら何をされても良い、裏切ったり、見捨てたりさえしないなら、殺されたって良い。本気でそう思いました。
そんな相手とひたすら心と身体を求め合うのは、女として最高の幸せではないでしょうか。少なくとも、私にとっては、そうでした。
それまでの人生の中で、最高のセックスでした。
サイドテーブルに置いた腕時計を見ると、午前9時でした。もうみんな、とっくに学校や職場にいる時間です。
でも私達はまだベッドに溜まった熱の中にいて、S君なんかずっと私の乳房を吸い続けていました。
赤ちゃんみたいにくっついて離れないくせに、下半身は繋がったままで常に小刻みに動いています。
そのリズムが私の頭をゆるく溶かし、思考があやふやなまま、いつまでも時間が過ぎてしまいそうでした。
「S君…」
「うん」
「もう、帰らないと…」
「分かってます」
「でも、離れたくないの?」
「だって、もうできないんでしょ?」
やはり、S君もこれが最初で最後のセックスだと覚悟を決めていました。口に出さなくても、あの指輪を貰った時に暗黙の了解として通じていたのです。
最後だからこそ、全て晒け出したのです。それはお互い同じ思いでした。
「S君…私達…どこか似ているのかな」
「似ていても、ずっと一緒にいちゃいけないんですよね」
言葉は冷静で現実的なのに、身体はいつまでも動いたままで離れようとしません。離れて欲しいという抵抗感もありませんでした。
でも、このままではいけない。
私は眠っていた理性を何とか叩き起こして、彼の身体を何とか引き剥がしました。
引き抜かれた彼のペニスは、初めて会った頃に偶然見た時とは比べ物にならないくらいに膨張して、亀頭も完全に姿を見せていました。
これが、ずっと私の中にいたのです。そう考えると、また頭が溶けそうになります。必死に振り払いました。
「だめ…Mさん…まだ…」
「ね、最初に言った事、覚えてる?」
「最初?」
「ここの部屋に入った時に、言った事」
「あ…服を…」
「最後、それにしよ?」
一緒に入ると言うS君を強引に押し切って、シャワーを一人で浴びました。その後にS君が一人で浴びる間に、元の服に着替えます。
思えば、この黒いドレスは最初にS君に会った時と同じ格好でした。彼にとっての第一印象の姿であり、私のイメージそのものでしょう。
S君も、私にとっての正しい姿、学生服の半袖シャツになりました。
最初の時と同じ服で、同じように向き合います。違うのはここがホテルの一室で、さっきまで男と女になっていた事だけです。
「やっぱり、Mさん格好良いです。改めて、そう思います」
「まあね。当然っしょ?」
「なんだか、さっきまでのが嘘みたいで…」
「ううん、嘘でも夢でもないわ。S君」
ベッドに腰掛けて、乱れきったシーツの上を撫でると、まだ私と彼の熱気が染みこんだままでした。
「ここで…私はあなたに抱かれたのよ。女として」
「はい」
「そこで人生の先輩として言わせて貰うけど…S君、あなたはもう立派な男。セックスだけじゃなくてね」
「…ありがとう、ございます」
「だから、S君、いつかきっと、あなた相応しい彼女かお嫁さんを連れて、私に会いに来て。ね?」
当然、それが別れの言葉だと知っている彼は、何も答えません。
「ね、約束して」
「…イヤだ」
「お願いだから」
「…頭では分かっているんです。そうしなきゃいけないって。でも…」
「復唱しなさい」
「え…」
「これは…命令よ。あなたの上司としての命令。だから、復唱しなさい」
「Mさん」
「復唱しなさい!」
自分の声が濁っていて、それで自分が泣いている事に気が付きました。
人生は、こうやって耐え難い苦しみを乗り越えて行く物だと、それまでの経験で分かっていました。
だから、自分は辛くないと思っていたんですが、心と身体は脳味噌ほど嘘を吐いてくれません。
でも、私が図らずも泣いてしまった事で、S君も覚悟を固めてくれたようでした。
「はい…僕は、Mさんに、彼女を見せに来ます。必ず…」
彼の方は嗚咽を隠しもしませんでした。それでも、未来に向かうと約束してくれた。それで十分です。
「…ありがとう。S君。じゃ、次の命令が、あなたの最後の仕事ね」
胸の部分をホックを外して、ドレスを着たままで下着だけを脱ぎ、再びベッドに横たわりました。
「抱いて。S君」
「ど、どうして…なんで…」
「女としての私を、全部覚えていて欲しいから」
一度突き放した直後にまた抱けという仕打ちに、S君も怒りを隠しませんでした。
無言で覆い被さって、半ば犯すように、服を着たままの私の身体を奪っていきます。優しさはありませんでした。
でも、私は満足でした。
これまで私はS君に散々依存し、部下として酷使し、親代わり立場を使って利用してきました。
ずっと心のどこかで、いつか、それを精算しなければいけないという想いが募っていたのです。
それには、恋人として抱かれるだけでなく、彼自身の手で保護者・上司という幻影を壊して貰うしかありませんでした。
そしてそれは、同時に隅々まで私が彼の女になる事でもありました。女として、彼の記憶に深く自分の姿を刻みつけたかったのです。
最後の射精が終わるのと同時に、私とS君は力尽きて、服を着たままだらしなくのびてしまいました。
妊娠の覚悟はしていました。と言うよりも、最初から妊娠するつもりでこの場に望んでいました。だから避妊しないまま、全てを受け止めたのです。
S君には酷い話ですが、私の描いた理想の経過は、このまま彼と別れ、私は指輪と彼の思い出、そして彼の子供を貰って生きていくという物でした。
それが一番、誰も傷つかない方法だと、愚かにも思っていたのです。
彼とのセックスに強い快感が伴ったのも、妊娠の不安から解放された故だったのかもしれません。
ともかく、本当の意味で自分の全てを彼に捧げた満足感に自分だけ浸っていると、胸に暖かい感触が落ちてきました。
「僕が、子供だから、いけないの?」
彼は、私の胸の中で、泣いていました。
「僕が、大人じゃないから、いけないの?僕に、何の力もないから、いけないの?どうしてダメなんだよ?」
「ち、違うわ…あなたは、ただ若いだけよ」
そう、ただ、若いだけ。彼には落ち度はない。
「私がもし、もし…お、同い年だったら…わ、わたし…S君…と…」
彼への気持ちに気付いた時の幻影、同じ時間と同じ背丈で一緒に歩く、私の姿が脳裏に浮かびました。
満たされていた胸が大きく張り裂けて、喜びも覚悟も流れ落ちて、涙も嗚咽も、止められませんでした。
「ごめんね…S君ごめんね…」
「何でもいいよ!家族でも、上司でも、何でもいいよ!僕は、ずっとMさんと一緒にいたいんだ!それがどうしてダメなんだよ!どうしてだよ!」
それは初めて見た、S君の号泣でした。大事な物を失った子供だけが見せる、心からの叫びでした。
私は、一緒に泣きながら、ひたすら彼に謝り続ける事しかできませんでした…
幸か不幸か、回数を重ねたにも関わらず、私は妊娠しませんでした。
そして、目一杯抱いて抱かれた上に、流せるだけの涙を流したお陰なのか、以降はそれまで通りの家族としての日々を過ごせました。
違っていたのは、私の右手に光る指輪と、時々、夜にあの日を思い出して自慰にふける習慣が増えた事くらいでした。
やがて、順調にS君達が高校に進学し、家を出て寮に入る日になりました。
未練があったつもりではありませんでしたが、前日の夜は扉の鍵を開けておいたりしたのですが、何事も起きませんでした。
それで、本当の意味で踏ん切りが付いたと安心し、子供達を送り出しました。
去っていくトラックの姿を、見えなくなるまで見送って、私の恋は終わりました。
指輪と彼の思い出さえあれば、生きていける。この時はそう思っていたのです。
取り敢えず、ここら辺が話の折り返し地点の予定です。
>>1さん、まとめ有り難うございます。
しかし、一応タイトルは「20191208.txt」なのでそこだけ…
それと、このスレ的に皆様に一つお尋ねしたいのですが、
あまり生々しい表現は避けた方が良いのでしょうか?
以後の傾向として修正できればしたいので、参考までにお聞かせ下さい。
仕事遅くて時間掛かる事もありますが、続きはまた後日に。