ミサト×シンジの可能性を語るスレ 6回目

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614「20191208.txt」
年下の彼-10 投稿者:M  投稿日:2019/12/08 15:21
 
 
 えーと時間が開いてすみません。先ほどの文章を書き終わったS君が、リアルで泣き出してダウンしてしまいました。
丁度、私の記憶も大体この先は繋がっている筈なので、再び私、Mが続けさせて貰います。
 
 と、書いたものの、正直、ここまでの話を読んでどうしたら良いのやら…
 
 S君が家に来た時、私はビールのみならずウイスキーやら焼酎やらジンやらワインやら、各種チャンポンで飲んでいて、
完全に記憶が飛んでいたのです。
勿論、そこに至るまでの経緯はちゃんと覚えているし、目が覚めた後も、『なにやらS君に酷い事をしたらしい』という事実は認識してました。
しかし、まさかこれほどとは…良く彼は、今まで私に付き合ってくれたと思います。聖人です。仙人です。神すなわちゴッドです。
 本当は、取り敢えずここへの書き込みを中断して、S君に土下座でもしたい所なのですが、彼が最後まで書いて欲しいと言い張るので、
まずは完走する事にしました。こうなると、彼は頑固です。拗ねているのとは、また違うのです。
 
 さて、あの日の私の記憶は、良く見知ったS君の部屋の天井から始まります。
 
 目を開けた瞬間、猛烈な勢いの頭痛に襲われ、激しい喉の乾きを覚えました。平衡感覚が極端に弱体化し、視野もはっきりしません。
もうお判りでしょうが、完全な二日酔いです。それも、脳がアルコール漬けになるくらい、重いヤツです。
ああ、さては、また酒飲み過ぎて記憶が飛んだな、と自己嫌悪の中で何とか起きると、久しくご無沙汰だった自前の寝間着を着ていました。
S君の部屋に引き籠もってから、トイレとペ鳥の餌やり以外はひたすら酒を飲んでは着替えもせずに寝て起きての繰り返しだったので、
はて、いつの間にこんな物を着ていたんだろうと不思議に思いました。それにタオルケット。勿論そんなもの一々被ったりしません。
記憶の無い時間の内に、変な事をしている経験は何度かありましたが、それらが丁寧だったり慎重だった事はありません。
ましてや、こんな真っ当で丁寧な眠り方をする訳はないのです。
615「20191208.txt」:2007/08/26(日) 12:24:10 ID:???
 まさか、と思ってベッドの傍らを見ると、S君がいました。床に座ったまま、ベッドに突っ伏す格好で寝ていました。
さては、とうとうアル中になって幻覚を見るようになったかと思って、彼の手に触れてみると、暖かい肉としっかりとした骨があります。
 来てくれた。S君が、来てくれたんだ。
 皮肉な事に、現実のS君を見た瞬間に、上記でひたすら彼が気にしていた『約束』は私の頭からポーンと飛んでいってしまいました。
腕を揺すり、肩を揺すり、髪を掴んで頭を揺さぶり、ひたすら声を掛け続けても、なかなか起きません。
そうやっている内に、彼の頬にうっすら残った運河の跡が目に入りました。瞼から始まって、顎の先へ伸びる水の痕跡。
 やだ、この子、泣いていたの?
 と言うより、むしろ、私が泣かせたの?
「Mさん…」
いつの間に、薄目を開けて、S君が私を見ています。
その瞳が、あっという間に潤んでいき、月光に照らされて宝石みたいに輝きました。
綺麗。
うっかり口から出そうになるリリカルな言葉を押し戻して、なるべく年上っぽい台詞を捻り出しました。
「Sちゃん、いい男が台無し。顔洗ってきなさいよ」
しかし、S君は私の言葉なんて全く無視して、思い切り全力で抱き付いてきました。
「ちょ、Sちゃん、聞いてるの?」
「良かった…Mさん…良かった…」
表向きは、彼の背中を撫でながら、よしよしとか言っていたんですけど、内心では、私はどんなヤバい事をしたんだろうと焦ってました。
で、その中身は↑で書かれた通りで…そりゃ、彼の態度も当然だなと今は思います…orz
 で、当然ですが、その時はもう一人の自分の言動など知る由もなく、嫌な予感に震えながらS君の背中を叩いてよしよし、なんてするしかありませんでした。
それでも、ずっと彼は離れようとせず、延々良かった良かったなんて言い続け、何だか生き別れの親子再会みたいな事になっていたので、
「ね、Sちゃん、今ちょっと頭痛いから…水持って来て」
どうにかお願いして、離れて貰いました。まあ、自分が絶好調なら食虫植物よろしく美味しく頂くんですが…まずは、現実の確認が先決です。
616「20191208.txt」:2007/08/26(日) 12:25:54 ID:???
 ラージのグラスに氷まで入れて持ってきてくれたのを一気に飲み干し、更に二杯おかわりしてから、覚悟を決めて訊ねました。
泥酔している間、私は何か酷い事を言ったり、したんじゃないか、と。
「…もう疲れたって言ってました」
「何に」
「その…はっきりとは分からないんですけど…つまり…多分…僕と…」
「あああああもう良いわ。それは分かったから。他には」
「僕が高校に入ったから彼女が選び放題で、だからここに来てくれないんだって」
「他には」
「だったら誰でも良いからってみんなにメールしたら、誰も来なかったって」
「…他には」
「自分が母親と同じ女になっちゃったって」
「…それで」
「だから…自分を、殺して欲しいって」
「そっか…言っちゃったか」
よりによって、S君本人に言ってしまった。一番傷つける事を。決して表には出すまいと思っていたのに。
「本気、だったんですか」
「え?」
「僕の手で殺して欲しいって、あれ、本気だったんですか」
目が怒ってます。当然です。この時は知りませんでしたが、実際手までかけさせたのですから。
何と答えたら良いのか、少なくとも一言じゃ終わらない。長い長い話が、必要になる。
でも、この子には聞く権利がある。いや、私が、聞いて欲しい。嫌われても構わないから。
「S君、お風呂、入ろっか」
「Mさん、僕は…」
「大丈夫、逃げたりごまかしたりしないから。ちゃんと全部話すから」
ベッドから出て立ってみると、何とか頭痛は収まって、平衡感覚も戻ってます。この時ばかりは自分の肝臓に感謝です。
「大体、ずっとお風呂入ってなくって身体が臭いし…S君も顔酷いよ?面倒だから一緒に入ろ?」
「うん」
S君の怒りが消えた事にホッとしている自分を自覚して、こりゃもう戻れないなと、この時点で観念しました。
617「20191208.txt」:2007/08/26(日) 12:29:10 ID:???
年下の彼-11 投稿者:M  投稿日:2019/12/08 15:35
 
 
 風呂にお湯を入れている間、私達は窓という窓を開け放ち、種類構わずゴミを袋に詰め込んで、取り敢えず悪臭の元を断ち切りました。
更に、丁度明日がビニールゴミの日で、ゴミの中身も大体はレトルト等のビニル系包装だろうと断定し、夜中の内に全部ゴミ捨て場に放り込んでやりました。
何度か部屋と一階を往復し、それからトイレに行って、やっとアルコールが抜けた私を見て、S君がニコニコ笑ってます。
「なぁによ、気味の悪い」
「ごめんなさい、何だか、本当にここに帰ってきたんだなって思って」
私も、机に雑巾がけをしている彼を見て、本当に帰ってきてくれたんだ、という実感が湧きました。
このまま、何事もなく全てを綺麗さっぱり片づけて、後で適当に一回くらい彼と寝れば、また元通りの生活に戻るかもしれない、
そんな逃避っぽい発想も頭に浮かびました。
 
 でも、泥酔していたとは言え、S君にあれだけの事を言ったのですから、もう逃げる訳にはいきません。
 
 お湯が入った、と言われて大人しく風呂場に向かうと、神妙な面持ちでS君が待っていました。既に全裸でした。
初めて彼と寝た時とは逆に、今度は私が彼の手で素裸にされていきます。
タンクトップも、ホットパンツも、ショーツも、まるで儀式のように速やかに静かに脱がされました。
その間、彼の股間の物は獰猛な姿で完全に直立したまま、ずっと私の方を向いているのです。そしてそれを隠そうともしません。
私を知りたいという心と、私を抱きたいという欲求が、まだ幼いS君の中でせめぎ合っているようでした。
 風呂場の中でも、私は彼のなすがままに全身を洗われました。
女としては有り得ない程の長い間放置された私の汚い所を、泡で包んで隅々まで擦ってくれます。
いやらしさの欠片も見せない手付きに反して、彼の膨張したペニスが、身体が近づく度に肌に触れて、断続的に存在をアピールするのです。
618「20191208.txt」:2007/08/26(日) 12:30:37 ID:???
その熱と、堅い感触が、私の心の芯を段々と熱く、緩くしていきます。
ああ、もう面倒くさい、さっさとこの子をひっ掴んでベッドに連れて行きたい。
あの時みたいに、思う存分この子に抱かれたい。好きという言葉を死ぬ程聞かされたい。後先考えない本気の情熱を全身に浴びたい。
…これはもう、煩悩と言うべきでしょうか…赤黒い欲望が脳内を満たして水槽みたいにタプンタプン音を立てる、そんな感じでした。
 いや、いやいやダメダメ。言わなきゃいけない事がある。
 じゃないと、また同じ事を繰り返すだけだから。
 
 考え込んで飛んだ意識が、肩から浴びせられたお湯で引き戻されました。
「洗うの、終わりました」
「ありがとう」
 それ以外、何も言わないのに、私達はほぼ同じ呼吸で湯船に浸りました。
汚れの薄皮が剥がれて露出した新しい肌に、入れたてのお湯の熱と、S君の指先が触れます。
久しぶりの風呂の感触。こんな安らぎも、ずっと忘れていた。思わずため息が漏れます。
それを見計らったように、S君が私の背中にくっつき、両腕を古傷の残る腹に回して、抱きかかえるように引き寄せてくれました。
お尻の真上辺りに、鉄みたいに堅くなった彼の分身がぴったりと張り付いて、かすかに脈打っているのが伝わってきます。
そして、私の長い黒髪の中に、彼の顔が埋まるのが分かりました。
「ん、まだ、髪の毛洗ってないでしょ。汚いわよ」
「でも、Mさんの髪の匂い、好き」
「バカ」
 私はS君の身体を椅子にして座るような形で、湯船の中に浮かんでいる状態でした。
胸を揉んだり愛撫したり、また挿入する訳でもなく、ただ肌と肌を密着させる事で、私達は一つになってました。
S君は何も言わず何もせず、私の為の椅子になりきって、癒しの海の中に私を浮かべてくれたのです。
そのまま10分くらい過ぎたでしょうか。
温かいお湯と彼の体温に包まれて、すっかり緊張の解けた私は、大事な話の最初の一言をやっと口にできました。
 
「…最初のきっかけはね、S君から貰った指輪を無くした事だったの」
 
619「20191208.txt」:2007/08/26(日) 12:32:05 ID:???
 それは、たまたま手を洗うか何かの拍子に外して、気が付いたらどこに置いたのか忘れてしまうという、ごくありがちなパターンでした。
なので、書類や車の鍵を無くした時みたいに、過去の行動を思い出して探せばすぐ見つかるだろうと高を括っていたのです。
でも、思いつく限りの場所を探しても、見つかりません。
何度も同じ場所をぐるぐる回り、そこら中の物をひっくり返し、何時間も探したのですが、ダメでした。
仕方ない、指輪が無くても、私のあの子への想いは変わらない。そう信じて、取り敢えずいつも通りの日々を過ごして出てくるのを待ちました。
 しかし、自分で思っていた以上に、指輪を失ったダメージは、重く永く心に居座っていたのです。
まず、日常の中で喜んだり、驚いたりする時、自分でもコントロールできない感情が出てくるようになりました。
上手く表現できないのですが、自分の意思表示を、他人が理解してくれないのではないか、そんな不安が常に付き纏うのです。
失敗する度に、指輪を無くした事実が頭をよぎり、ストレスをより重くしていきます。
そして、次に自己嫌悪が追い打ちをかけてきます。
あんなに大事な物を簡単に失う。これから支えにする筈の物を、うっかりで失う。所詮私はそういう女だ。そうやって大事な物を、全部失うんだ、と。
実際、物でも仕事でも人間関係でも、そんな前科が何回かあったのです。だから余計に歯止めが利きませんでした。
誰かに相談しようにも、物が物なので説明する訳にもいきません。
二週間しない内に、一々無闇に大袈裟で感情的な態度を取るようになり、周りの皆が自分を訝る事が増えました。
彼らには他意はなく、純粋に心配する気持ちで見ていたのは、「頭では」分かっています。
でも、そんな理屈よりも、自分が少しずつ正常からズレ始めている不安の方が遙かに勝ってしまうのです。
620「20191208.txt」:2007/08/26(日) 12:35:33 ID:???
 実は、かつて、私はセカンドインパクトの被災によって何年かの間、失語症になっていた事があります。
腹に癒えない傷を刻まれ、目の前で父を失い、たった一人海の真ん中で、絶望の内に震える。
この記憶は、今でも忘れられず、時々夢に見る事もあります。
私は、その天涯孤独の身から、今の場所まで這い上がるのに、膨大な努力と学習、自分への「教育」を積み重ねてきました。
学歴と社会的立場、容姿、性格、人間関係、色んな物を見て、読んで、聞いて、必死に自分の中に取り込んできました。
 なのに、今は職場の仲間達の目が、ひたすら私を責めている、私を見下している。
それは、昔の自分に戻っていっているからではないのか?今までの努力が、失われているからではないか?
指輪を無くした喪失感が、いつの間にかそんな恐怖へと変換され、膨張していきました。
 
 そして、その恐怖を振り払う為に、また無意識に大袈裟な態度を取ってしまう。間違っていると知っているのに。
 
 後は、この絵に描いたような悪循環の繰り返しです。
果てに、とうとう仕事の精度にも、差し障りがでるようになりました。
自分がここまで築いてきた立場や実績が、全て失われてしまうかも知れない。
漠然とした不安が、仕事の喪失という、より確かな形を伴って大きくなっていきました。
それでも冷静に時間をかけて、必ず好転させてみせる。今の私に残っているのは、仕事だけなのだから。
それも無くしたら、本当にひとりぼっちになってしまうから。
そう考えていた矢先に、上司であるR子から、強制的に休暇を取らされてしまいました。
彼女に恨みはありません。私が同じ立場なら、多分同じ事をしたでしょう。
でも、結果としてこれが私を更に追いつめる事になったのです。
 
「この家に篭もったらさ、なんか、ね…もう外に出る気が無くなっちゃた」
 
621「20191208.txt」:2007/08/26(日) 12:36:38 ID:???
 一晩、酒を飲んでぐっすり寝れば、起きた時には本来の自分に戻っている筈でした。
それが、全く逆というか、違う意味で本来の自分に戻ってしまったのです。
目を覚ました時に、自分の心を支配していたのは、底なしの絶望でした。
 外に出ても、もう私の居場所はない。
 誰にも、私は必要とされていてない。
 努力は、全て無駄で、未来なんかどこにもない。
 だって、一度は全部手に入れたのに、もう無くなっちゃったんだから。