ミサト×シンジの可能性を語るスレ 6回目

このエントリーをはてなブックマークに追加
233「20191208.txt」
年下の彼-7 投稿者:S  投稿日:2019/12/08 13:01
 
 
 恋愛体験掲示板の皆さん、初めまして。Sです。
 Mさんの投稿が続いていますが、ここから少しの間は、僕の視点の方が正確に話が分かるだろうという彼女の判断で、
僕が書く事になりましたので、よろしくお願いします。
 と、書いてみたのですが、どこから始めたら良いのか少し迷います…書きたい話は僕も一杯ありますし。
あくまでMさんの投稿の補佐という形で書く方針なので、あまり自分の事は書かないようにしますね。
 
 …今、後ろからMさんに小突かれて、私が恥ずかしい話を書いたんだからS君も何か書きなさいと言われました.
 
 なので、少しだけあの日の後を書かせて貰います。と言っても、本当に特に目立った出来事は無いんです。
ただ、僕はMさんみたいに諦めは良くなくて、表面上は家族として過ごしていた裏で、毎晩泣きながらオナニーしていました。
ほんのすぐ側に大好きな人がいて、しかも数え切れないくらいセックスしたのに、もう手も触れられないのが辛くて堪りませんでした。
人によっては、手を出せば良いと仰るかもしれませんが、彼女の言う通りに、僕もあくまで家族という形を失いたくなかったのです。
ここまでMさん以前の投稿も少し読ませて頂いてのですが、そこに書いてあった、僕達よりも更に身近な異性と恋愛した人の苦しみは、
ある程度僕も分かる気がします。僕達は、まだ楽な方なのかもしれませんけれど。
 その後高校に進学しても、会えなくなった分だけ忘れるどころか未練が強くなり、却ってオナニーの回数が増加するだけでした。
学校内では中学からの友達や、AやRと平静を装って過ごしていましたが、夜はただひたすら、彼女の事ばかり考えてました。
AやRの事も好きでした。でも、Mさんとは別であり、中途半端に付き合おうとすると、彼女達の身体だけをMさんの代わりにするように思えて、
とてもイヤな気持ちになったのを覚えています。むしろ彼女たちの方が積極的だったのですが、そういった理由で結局友達のままでした。
234「20191208.txt」:2007/07/28(土) 20:27:37 ID:???
 そんな悶々とした日々が入学から三ヶ月ほど続いたある日、Mさんの同僚で、やはり僕の昔の上司にあたるR子さんから電話が来ました。
滅多にR子さんから僕に電話なんか来ません。だからその時点で凄く嫌な予感がしました、勿論、Mさんに関してです。
 想像していた通りに、話はMさんの異常な行動についての話でした。
元々R子さんは理詰めで話す人で、あまり余計な事は話そうとしません。特にそれは、状況が大変になればなる程、顕著になりました。
そういう人が、電話の会話なのに箇条書きみたいに順序立てて機械的に説明を始めた場合、降りかかる恐怖は想像を絶します。世界の終末さえ連想します。
 僕にとっての世界の終末は、つまりMさんに何か酷い事件が襲いかかる事で、そしてその可能性は、思っていたより深刻でした。
R子さんの説明は次のようなものでした。
 
 ・一ヶ月前から、Mさんの様子が目に見えておかしくなった。
 ・大した事でもないのに一々大騒ぎしたり、突然挙動不審になったり、躁鬱を繰り返し激しく見せるようになった。
 ・それでも仕事に異常はなかったものの、更に半月経ってそれも危なくなった。
 ・本人は拒否したが、身体的にせよ精神的にせよ疲労による症状と見て、副所長が三日間の休暇を与えた。
 ・その結果、三日どころか、今まで二週間余りの間、ずっと出て来てない。
 ・携帯に電話メールしても反応はない。但し、生存している事実は次の出来事で実証されている。
 ・事もあろうに、課内の同僚男性職員数人の携帯に、誘いとも受け取れるメールを送りつけた。
 ・幸い、前後の状況と文面の地雷臭を適切に判断し、殆どの男性陣はこれを応じず、メールをR子さんに報告した。
 ・唯一、はりきって行こうとしたHさんは、事態を察知した全女性職員に力ずくで止められた。
 
 話は前後しますが、Mさんがここに投稿している中身には、僕が今まで知らなかった話も含まれています。
ここまでこういう形で読んでみて、納得する事もあれば、驚く事もありました。でも、裏切られたという感じはしません。
色々な意味で、いかにもMさんらしい、という感想を抱きました。今現在の彼女と比べても、少しもブレてません。
235「20191208.txt」:2007/07/28(土) 20:28:41 ID:???
 しかし、ここから先は僕にも自分自身の行動が不可解に思えるような、少し重い話が含まれます。
既に、お互いに納得して解決しているのですが、今まで口に出さないまま、心に引っ掛かる細かい事も、無いとは言えません。
今、僕達はある転機を迎えているのですが、そういうタイミングでこの投稿を始めたのは…
 要するに、一種の交換日記みたいな物なんじゃないか、と思うのです。
 つまり、直接言ったりしない方法で、中途半端な秘密や隠し事を無くす為に、手紙を目の前で音読するTVの企画みたいなノリで…
なんて書いていると、余計な真似するなと、また後ろから小突かれたので、続きを書きます。
 
 状況を把握したR子さんは、副所長さんと相談して、一時的にMさんの生活を復帰させる為の人員を派遣すると決めました。
「それが、君よ」
「え?」
「S君、申し訳ないけど、少しだけ、Mの面倒見てやってくれないかしら」
 言われるまでもありません、命令だろうが何だろうが、今すぐ駆けつけたくて仕方ありませんでした。
ちゃんと食べているんだろうか?ペットの鳥の世話はできているのか?ゴミ出しちゃんとしているのかな?洗濯は?部屋の掃除は…
とめどなく懸念事項が沸いては消え、最後に、とにかく自分の目で確かめたいという結論が固まりました。
「あの、明日の学校の方は」
「こちらで対応するわ…すぐ行くつもりね」
「はい」
「二人には適当に説明しておきなさい。口裏は合わせるから」
 何をどうしろ、という指示はありませんでした。ただ、行って面倒見ろと言うだけです。
R子さんはあの日の事は知っているので、今更何を言う必要も無いと思ったのでしょうか。でも、いわゆる「そういう」空気になるとは思えませんでした。
むしろ命に関わる事態になっている可能性が高い。それくらいは当時の僕にも分かりました。
AとRに『Mさんが急病になったので面倒見に行く』と説明すると、
「どうせ自分で作った物に当たったんでしょ、せいぜい旨い物でも食わせてやれば」
と、言ってさっさと帰って行きました。大丈夫、変に怪しむ気配はありません。
 寮には帰らないで、駅前のスーパーで適当に買い物をしてから、かつての自宅へ急行しました。
236「20191208.txt」:2007/07/28(土) 20:30:51 ID:???
年下の彼-8 投稿者:S  投稿日:2019/12/08 13:14
 
 
 着いた時にはもうすっかり夜で、元々住民の少ない周囲には人影もありませんでした。
 三カ月ぶりに見るマンション独特の鉄扉の前で、深呼吸します。
落ち着こうとしても、R子さんから聞いたMさんの状況が頭の中でぐるぐる回って、どうしても心臓の鼓動を抑えられませんでした。
大丈夫、おかしな行動をしたらすぐにR子さんが気付くはず。大丈夫、幾ら何でも死んだりはしない。大丈夫、レトルトで生きていくのは慣れっこの筈じゃないか。
今ここでMさんと向き合えるのは、もう僕しかいないんだから、逃げちゃ駄目だ。どんなに苦しくても、現実から逃げちゃ駄目なんだ。
 
…でも、それを、現実と向き合って生きろって僕に教えてくれたのは、Mさんじゃないか。
そのMさんが今、埋もれている苦しみを、僕なんかがどうにかできるのかな?
大体、もう手遅れで、風呂場で血まみれになっていたら、僕は、どうしたら良いんだろう。
…いや大丈夫、おかしな行動を(略
 
 そんな思考のループが何度か繰り返され、その度にドアノブに伸ばした手を引っ込めたり、また出したり、まるで悪戯して逃げた子供のようでした。
そして最後に行き着いたのは、実の所今まで生きてきた中で最悪の結論でした。
 
 もし、どうにもならなくなっていたら、Mさんと一緒に、死のう。
 
 酷く稚拙で極端で救いがたい理屈だと思います。でも、その時はもうこの決意一つを胸に秘めて地獄の扉を開けるしかなかったんです。
決意が鈍らない内に、急いで扉を開けて中に滑り込みました。
「ただいま」
他に思いつかなくて言ってみた言葉が、見慣れた間取りの玄関に空しく響きました。
勿論、返事も人の気配も無くて、その代わりに鼻と耳に入ってきたのは、
 
腐臭と、蠅の羽音でした。
237「20191208.txt」:2007/07/28(土) 20:32:00 ID:???
瞬間、一番見たくないMさんの姿が頭を駆けめぐり、靴を脱ぎ捨てて、かつてAとMさんと僕の三人で日々を過ごしたダイニングに駆け込みました。
すぐに元凶は分かりました。テーブルに積まれた、インスタントやレトルト食品のゴミの山です。
臭いも、そこにたかる蠅も、その山を中心にして部屋中に広がっていたのです。
予想通りと言うべきか、キッチンは既にゴミ置き場として満杯になっていました。その代わりがこのテーブルなのでしょう。
そこで家族として過ごした僕達の時間と記憶は、今や見る影もありませんでした。
 次に確認したのが、風呂場でした。言うまでもなく、良くドラマで見る、アレを心配していたのです。
幸い、そこにもMさんの死体など無く、こちらはさっきのダイニングに比べればゴミもなく、綺麗でした。
ただ、それは正しい意味での綺麗さではなく、一定期間使ってないが故の清潔さに見えました。水気が、全く無かったのです。
 いよいよ、本格的に絶望の暗雲が立ちこめてきました。
確かに死体はありません。ありませんが、状況の示す情報は、どれも酷い物ばかりでした。
偏った食生活、仕事以外は何も気を配らない生活、掃除もほとんどしていません。
R子さんの言うおかしくなった時期は一ヶ月前ですが、それ以前から、もう何かが変わっていたとしか思えませんでした。
 声を出して、Mさんを探すべきでした。でも、怖くて、その名前を口にできません。
もし返事が無かったら、僕はどうすれば良いんだろう。そこで思考が止まって、この地獄の中で固まってしまいそうでした。
それよりは、自分の判断で、最悪の可能性を一つずつ潰していきたかった。その全てが該当しなければ、そこでひとまず安心できるから。
ベランダ、トイレ、Mさんの部屋、Aの部屋、全部見ても、何も変化はありませんでした。不自然なくらいに。
一番入るのが怖かったMさんの部屋などは、多少服が脱ぎ散らかっている以外は、本当に大した変化もないのです。
洗濯機の籠に凄い量の洗濯物が積んであるのは、もはや想定内だったので驚きもしませんでした。
238「20191208.txt」:2007/07/28(土) 20:33:47 ID:???
 唯一、ポジティブな要素が見つかったのは、冷蔵庫でした。
と言っても、中身自体は相変わらず酒ばかりで食料と呼べる物はろくに無く、命綱であろうレトルトも棚には残りわずかしかありません。
希望の光は、ペットの鳥が何の異常もなく冷蔵庫に居座っている事でした。
久しぶりに顔を合わせた彼は、僕のことなど全く関心無さげに一瞥をくれて、昼寝を続けました。その側には一応餌も水もあります。
 
よし。
 
よし。
 
本当に大丈夫だ。まだ、最悪には至っていない。少なくとも、大事な命を見捨てる所までは来ていない。
 
 やっと本当に安心した僕は、ゴミまみれの床にへたり込んで、この状態をR子さんに報告しようか考えました。
そこでやっと肝心な事を思い出しました。生きているなら、じゃあ、Mさんはどこにいるんだろう。
この部屋に入ってから、Mさんが変わり果てた姿でいないで欲しいという願いの元に探し回っていたせいで、一番大事な事を忘れていたのです。
でも、ここまで思いつく限りの場所は大体探しました。物置部屋まで見ても、姿は無かったのです。
 あと残っている部屋は…かつての、僕自身の部屋だけ。
まさかここにはいないだろうと思って最初に除外したそこが、最後の候補地でした。
ここにいなかったら、いつの間にか外に出ているとしか考えられず、そうしたら、もう僕にはどうしようもありません。
でも、確かMさんの愛車は駐車場にあった筈。それでも外にいるとしたら…悪い想像ばかりが、頼みもしないのに幾らでも浮かんで来ます。
近所の森で首を吊っている姿なんて見たくもないのに、脳味噌は容赦なくその映像を作り上げます。
239「20191208.txt」:2007/07/28(土) 20:35:21 ID:???
 そうじゃない、そうじゃないんだよ。
 現実から逃げないっていう事は、そうじゃないんだ。
僕は悪い想像も楽観的な妄想も頭の中から全て振り捨てて、ありのままを受け入れる心の準備をしました。
その為に捻り出したのは、二人だけで過ごしたあの夜の記憶でした。Mさんの全部を貰った、あの夜。
普段見せる姿とはかけ離れた、獣のような嬌声と震える身体。信じられない事を求め、それを満たす毎に、Mさんは僕の知る「Mさん」から遠ざかっていく。
でも、そのどれを見ても、気持ちは揺るがなかった。もっともっと、見たいと思った。誰も知らないMさんの全部が欲しかった。
 だから、今だって、揺るがない。たとえもぬけの空でも、死ぬ気でこの周りを探そう。夜で見えなくても、何としても探そう。
その結末が例え「死」だったとしても、僕はそれを彼女の一部として、受け入れよう。
 
 未だに僕の名前入りのプレートが吊ってある扉を開けると、Mさんがいました。
 
 扉が開いたのにこちらを向かず、ぼっと天井を見ながら、煙草を吸っていました。
 
「今更、何しに来たのよ。アンタ」