いちおつ
壱乙
3get
>1乙
4ゲト
無駄のないスレ立てに惚れた
一応前スレ977氏待ち
9 :
アスカ:2007/05/19(土) 05:06:23 ID:???
1乙!です
こういう場合続きから投下すればいいのかしら?
続きがかけてる場合はそうだと思うよ
暇?
小説のパロディーなら短いの今すぐに投下できるんだが。
>>11 正座して待ってるのにまだですか?
そろそろ足の感覚が無くなってきました。
13 :
アスカ:2007/05/20(日) 02:08:00 ID:???
「私がイイって言ってるんだから扱いてごらんなさいよ」
シンジの最後の抵抗、タオルケットを毟り取る。
「……ぁ」
情けない声。股間に視線を移すと…勃起してた。まったくコイツったら…
「シンジ…何で勃起してるの?」
私は悪戯っ子の様に笑った……
「ね、良い子だから見せて」
すっ裸のシンジを立たせる。
必死に股間を隠しているシンジ。
でもビンビンに勃起したモノは両手からはみ出し、隠しきれて無い。
男の子の身体って面白いわね…
向かい合ってシンジの頬を両手で押さえ話かける。
「シンジ私の目を視て…」
シンジは恐る恐る私に顔を向ける。
「シンジの恥ずかしいオナニー視ててあげる」
「この私が最後まで視ててあげるからね…」
そう言って足元にしゃがみ込む。
ちょうど、おちんちんの位置に顔がくる。
もう一度顔を上げ話かける。
「ね…シンジ」
口調は優しいが命令形で……
14 :
アスカ:2007/05/20(日) 02:10:16 ID:???
シンジの目を上気した顔で見つめる。
「ね…」
そう呟いて必死で股間を隠している両手を掴み、ゆっくりと退かす。
「うわぁー、凄い…」
初めて目の前で見るおちんちんは吃驚する程の大きさ…
「はぁ……ぁ」
思わず溜息が出ちゃう。
私の唇から発した、甘〜い溜息がシンジのおちんちんに当たる。
「あっ…」
シンジが身体を捩る。
陰毛が溜息で、そよいでる…
「ア、アスカ…」
シンジは、泣きそうな顔をしてる。
勿論、嬉し泣きでしょうけどね……
視られてる恥ずかしさからか、身を捩って私の視線から逃げている。
しかし、身体が震える度おちんちんが揺れて滑稽だ。
まだ私が両手をしっかり握ってるんだから逃げられないわよ…
15 :
アスカ:2007/05/20(日) 02:11:30 ID:???
そそり起つおちんちんは、お臍にくっ付きそう。
視てるだけで興奮する。
「ゴクッ」
恥ずかしい!唾を飲み込む音が聴こえる。
眼の前30cmのおちんちん。恥ずかしがってる癖にビンビンに勃起してる。
「シンジ、こっち視なさいよ!」
私の顔を視るよう声を掛ける。
シンジは淫らな予感に逆らえない。素直に顔を向ける。
「あ!?」
うふふ…ようやく気が付いたみたい。
私の顔がシンジのいやらしく勃起したモノの直ぐ近くに在る事を…
「ねえシンジ、よーく視てご覧なさい」
「こーんな近くで、シンジのおちんちん視てあげてるのよ」
「どう?」
シンジはもうハァハァ息を荒くして、何が何だか判らない位興奮してる。
「ハァハァ、アスカ、アスカに視られてる。アスカの顔が…ハァハァ」
ハァハァとおちんちんをヒクヒクさせてる。
私に握られている両手には、先程までの抵抗は既に無い。
16 :
アスカ:2007/05/20(日) 02:12:58 ID:???
「アスカ・・・は、恥ずかしいよ・・・」
嘘ばっかり。
本当は嬉しいくせに・・・
私に見せつけるかの様に、おちんちんがピクピクと動く。
腰が微妙に前後してる。興奮しすぎて勝手に動いてるみたいね・・・
早く刺激が欲しくて堪んないんだ。
シンジ…弄ばれて喜んでるの?
可笑しくって思わず「くすっ」と笑う。
「アスカ・・・」
シンジは甘える様な声を出し、私を見つめる。
何を期待してるの?
私はそう質問する代わりに大きく深呼吸した。
「うわぁー、シンジのおちんちん、何かイカくさ〜い」
おちんちんに顔を近づけて大袈裟に言う。
「くんくん、ねえ?何でなの?」
シンジの目を視ながら意地悪に訊いてみる。
アスカったら酷い娘ね・・・そう思うでしょ?シンジ。
あ、目を逸らした。
恥ずかしいんだ、やっぱり・・・
んふふー、シンジ可愛い〜
17 :
アスカ:2007/05/20(日) 02:14:29 ID:???
再び、おちんちんを見つめる。
「あれ?ねえシンジ!」
驚いて、ずっと掴んでいた両手を放しちゃう。
「えっ?ね、ね、シンジ。おちんちんから透明なのが垂れてきたわよ?」
「凄〜い!糸引いてるよ〜」
「ねえ、シンジったら、教えてよ・・・」
恥ずかしがるシンジを質問攻めにする。
「ア、アスカ…もう許してよ」
シンジは顔を真っ赤にして呟く。
「駄目!答えなさいよ。じゃなきゃ、もう視るの止めちゃうわよ!」
視てて貰いたいんでしょ、シンジ?
もっと夜を楽しみましょ、二人の夜はこれからよ・・・
18 :
アスカ:2007/05/20(日) 02:16:05 ID:???
ハァハァ、シンジの恥ずかしい喘ぎ声が続いてる。
「ねえ、教えて。何なのこれ?」
おちんちんの先から垂れるその雫はキラキラと光りながら、
ゆっくり、糸を伸ばして行く。
このままだと脚に垂れちゃう・・・
私の脚がいやらしい汁でマーキングされちゃう・・・
「アスカ、恥ずかしいよ」
また嘘ついて・・・
もう両手を押さえられてないんだから隠せるのに・・・
視られて喜んでる変態。
シンジは変態。私は・・・私はチョットだけHな女の子なんだからね。
19 :
アスカ:2007/05/20(日) 02:17:28 ID:???
「教えなさい」
シンジには少し強い口調の方がイイのよね・・・
「が、我慢汁だよ・・・」
「我慢汁?」
「カウパーの事だよ。気持ち良くなると濡れるんだよ、おちんちんも」
濡れる?
その言葉にドキッとする。私も濡れてるのよ・・・・・・シンジ。
シンジに心を見透かされない様に誤魔化す。
「ふーん。何かマギみたいな呼び方なんだね」
照れながら喋る私の脚に我慢汁が垂れた。
「あっ」
温かい。シンジの体温を感じる。
マーキングされた。シンジに・・・私シンジのモノになっちゃった。
膝の付近に光る我慢汁。きらきら光ってる。
溜まった汁を指で摘んでみる。
ヌルヌルしてる。
いやらしい、けど心地よい滑り。
「シンジ、ほら」
指先をシンジに魅せつけ、ぴちゃぴちゃ音を鳴らす。
「アスカ、いやらしい・・・」
シンジは興奮してる。今迄、妄想していた事が現実に・・・
「私の事、嫌いになった?」
微笑みながらシンジをからかう。
私とシンジは透明な糸で繋がってる。
赤い糸じゃ無く・・・いやらしい糸で。
20 :
アスカ:2007/05/20(日) 02:19:17 ID:???
続く
GJ
>>12 ゴメン 寝てた
僕はウェイターを呼んで四杯目の注文をした。おかわりが来るまで
アスカはカウンターに頬杖をついていた。店の中には五、六人の
客がいたが皆酒を飲んでいてアルコールの香りが薄暗い店内に
夜の親密な空気を作り出していた。
「今度の日曜日アンタ暇?」とアスカは僕に訊いた。
「この前も言ったけど、日曜日はいつも暇だよ。
六時からのアルバイトを別にすればね」
「じゃあ今度の日曜日、私につきあって」
「いいよ」
「日曜の朝にアンタの寮に迎えに行くわよ。
時間はちょっとはっきりわからないけどかまわない?」
「どうぞ。かまわないよ」と僕は言った。
「ねぇ、シンジィ。私が今何したいかわかる?」
僕はつばをゴクリと飲み込んで一瞬の沈黙を掻き消す為に口を開いた。
「さあね、想像もつかないよ」
「広いふかふかとしたベットに横になりたいの、まず」とアスカは言った。
「すごく気持がよくて酔払っていて、隣にはアンタが寝ているの、そして
ちょっとずつ私の服を脱がせるの。すごくやさしく。お母さんが
小さな子供の服を脱がせるときみたいに、そっと」
「ふぅむ」と僕は言った。
「私途中まで気持ち良いなあと思ってぼんやりしているの。でもね、ほら、ふと
我に返って『ぬゎにやってんのよ、バカシンジ!』って叫ぶの。
『私、シンジのこと好きだけど、私には他に付き合っている人がいるし
そんなこと出来ないの。だからやめて、お願い』って言うの。
でもアンタはやめないの」
「や、やめるよ、僕は」
「知ってるわよ。あんたが意気地なしだって言うことぐらい」
アスカは、さっきからグラスの中の氷を手でかき回していた。
「もう一杯、飲む?」
「うん」
「そしてね、私にばっちりみせつけるのよ、あれを。そそり立ったのを。
私すぐ目を伏せるんだけど、それでもチラッと見えちゃうのよね。そして言うの
『駄目よ、本当に駄目、そんなに固くて大きいのとても入らないわよ』って」
「そんなに大きくないよ、普通だよ」
「いいのよ、別に、幻想なんだから。するとね、アンタは怯えた目で私を見るの、
なんだか可哀想だから慰めてあげるの。よしよし、可哀想にって」
「それがアスカの今やりたいことなの?」
「そうよ」
「やれやれ」と僕は言った。
最後のウオッカ・トニックを飲んでから我々は店を出た。僕はいつものよにお金を
払おうとするとアスカは僕の手をぴしゃっと叩いて払いのけ、財布からしわひとつない
一万円札を出して勘定を払った。
「あの、どうしたのアスカ?」
「アンタ、筋金入りの弱虫ね、私が奢ることぐらいだってたまにはあるわよ私が誘ったんだし」
それでも財布を握っている僕を見てアスカは続けた。
「それに入れさせてもあげなかったし」
「固くて大きいから」と僕は言った。
「そう、固くて大きいから」
それからの四日間僕は、大学に出席し講義のメモを採り小説を読んで
部屋に戻ってからは溜息と精液を吐き出した。
アスカと同じ大学に合格できたら告白しようと決めていたあの頃を思い出すのは
憂鬱でしかなかった。そもそも、後期日程で地方の大学を受験した僕は
アスカの彼氏になる資格は無いんじゃないかとも最近では考えるようになってきた。
アスカに彼氏が出来たと聞いたせいで半月遅れて始まる僕の夏休みの予定は空白になった。
日曜日に着ていく服も僕の気持ちも夏休みの予定もすべてが空白で、きっと神様が見ていたら
『オイ、イカリシンジ、お前はどうしてそんなに真っ白になれるんだ』って言うに違いない。
『そんなの仕方ないよ、アスカに彼氏が出来たって聞いたとき思わずオメデトウとか
言っちゃったわけだし、アスカと同じ大学に通うだけの頭は持ち合わせてなかったわけだし』
『お前には失望した』
きっとそんなことを言うんだろう。
日曜日の朝の九時半にアスカは僕を迎えに来た。誰かが僕の部屋を
どんどん叩いて、おいイカリ、女が来てるぞ!とどなったので
玄関に下りてみるとアスカが信じられないくらい短いジーンズのスカートをはいて
ロビーの椅子に座って脚を組み、あくびをしていた。
朝食を食べに行く連中がとおりがけにみんな彼女のすらりとのびた脚をじろじろ
眺めていった。アスカの脚はたしかにとても綺麗だった。
「ようやくお目覚めね、バカシンジ!」
「これから顔を洗って髭を剃ってくるから十分くらい待ってくれる?」
「待つのはいいけど、さっきからみんな私の脚をじろじろ見てるわよ」
「あたりまえじゃないか、男子寮にそんな短いスカートはいてくるんだもの。
見るにきまってるよ、みんな」
「大丈夫よ。今日のはすごく可愛い下着だから」
「そういうのが余計にいけないんだよ」と僕は溜息をついて言った。
急いで部屋に戻って、顔を洗い髭を剃った。平常心と書かれたTシャツを
着て下に降り、アスカを寮の門の外に連れ出したときには、冷や汗をかいていた。
「ねっ、ここにいる人たちがみんなオナニーしてるわけ?シコシコッて?」
とアスカは寮の建物を見上げながら言った。
「たぶんね」
「男の人って女の子のことを考えながらあれやるわけ?」
「景気変動とか不規則動詞とかサハラ砂漠のことを考えながらオナニーする男は
まあいないだろうね。大体は女のことを考えながらするんじゃないかな」
「サハラ砂漠?」
「たとえば、だよ」
「つまり特定の女のこのことを考えるのね?」
「あのね、そういうのは君の恋人に訊けばいいんじゃないの?
‥‥‥アスカの彼氏って誰なの?いいかげん教えてくれたっていいじゃないか」
僕は神経をやすりで削る思いになって訊いたのにアスカは黙り込んだ。
「あの、うん、えっとね、考えるよ。少なくとも僕はね。
他人の事まではよくわからないけど」と僕はあきらめて答えた。
「シンジは私のこと考えてやった事ある?正直に答えてよ、怒らないから」
今度は僕のほうが黙り込んでしまった。本当のことを言えばいいのに
それすらできない僕をアスカが覗き込んだ。アスカの瞳に映る情けない僕の顔に
気がついて先に目を逸らしてしまった。微かな雨が僕の鼻先をそっとぬらした。
「ねぇ、シンジ。一回くらい私を出演させてくれない?私そういうのに出てみたいのよ。
これアンタだから頼むのよ。だってこんな事他の人に頼めないじゃない。
幼馴染のアンタだから頼むのよ。そしてどんなだったかあとで教えてほしいの。
どんなことしただとか」
僕はため息をついた。
「でも入れちゃ駄目よ。私たちただの幼馴染なんだから。ね?入れなければ
あとは何してもいいわよ、名に考えても」
「どうかな。そういう制約のあるやつってあまりやったことないからねえ」
「考えておおいてくれる?」
「考えておくよ」
「本当に一回でいいから私のこと考えてよね」
「試してみるよ、今夜」と僕はあきらめて言った。
僕は約束を果たすためにアスカのことを考えながらオナニーをしてみたのだったが
どうしてもうまくいかなかった。仕方なく途中から綾波に切り替えてみたのだが
綾波のイメージも今回はあまり助けにならなかった。それでなんとなく
馬鹿馬鹿しくなってやめてしまった。そしてウイスキーを飲んで、‥‥気がつくと
アスカに電話を掛けていた。
「あ、あのやっぱり入れさせてくれないかな。うまくいかないんだよ」
「だめよ、約束したじゃない」
「そんなのむちゃくちゃだよ。どうしてそんな制約つけるんだよ」
「‥‥‥アンタ、私のこと好き?」
会話は途切れて、僕は、部屋の窓を叩きつける雨のBGMを聞いていた。
それから、僕は何を言ったか覚えていない。夢中になっていた。
そう夢中になっていて、十年以上溜め込んでいた思いを空っぽになるまで
ただ空っぽになるまで吐き出した。
アスカは長い間電話の向こうで黙っていた。その間僕はずっと窓ガラスに
額を押しつけながら目を瞑っていた。
「じゃあ、ひろいふかふかのベットの上でなら」
リアルタイムで遭遇(*´д`*)
GJでした
僕はアスカの体を抱き寄せて口付けをした。
「そんな下らない傘なんか持ってないで両手でもっとしっかり抱いてよ」とアスカは言った。
「傘ささないとずぶ濡れになっちゃうよ」
「いいわよ、そんなの、どうでも。今は何も考えずに抱きしめてほしいのよ。
私十年近くこれ我慢したのよ」
僕は傘を足元に置き、雨の中でしっかりアスカを抱きしめた。
アスカは僕の履いたジーパンのボタンをはずし僕の勃起したペニスを手に取った。
そして息を呑んだ。
「ねぇ、シンジ、悪いけどこれ本当に冗談抜きで駄目。こんな大きくて固いもの
とても入らないわよ。嫌だ」
はい、GJです
乙かれです
しゃれてて微妙にえっちくてよかったです
乙。
でもなんか文章までまんまだなwwwそこまでパクらんでも…。
で、アスカはこの後ギリシャで失踪しちゃったり、
京都の山奥のサナトリウムに行っちゃったり、
はたまたかつら工場で住み込みで働くようになっちゃったりするのか?
ちょっと聞きたいんだが、これは何の小説のパロディなの?
これ、原文の名前を変えただけじゃね?
あ、だから春樹ストか!
>>36 人間関係がピッタリ当てはまるから名前変えただけでガチだったんだorz
結構いろいろ編集したんだが‥‥
結構楽しかったからオリジナルを書いてみた。
見切り発車だけどどうしても書きたいシーンがあるのでそこまではがんばろうと思う。
40 :
ハル:2007/05/23(水) 02:10:48 ID:???
僕はお姉さんと住んでいる。お姉さんといっても
姉でもなければ義姉でもない。
母親以外の年上の女性はお姉さんかおばさんと呼ぶのが一般的であるけれど
彼女は僕の財布を握っている。だからここではお姉さんと呼ぶ。
そのお姉さんは今日帰ってこない。
なぜなら今日は9月15日で彼女は国連の職員だから。
毎年この日になると世界中でテロが発生する。
世界一治安の良い日本でも例外ではない。
『毎年9月になると服のサイズが1号若返るのよねー』というのは伊達ではない。
もちろん学校は休みで、外出も極力控えなければならない。今日はとても退屈で
どこのチャンネルをつけても報道特番とやらを垂れ流している。
親友の誕生日を密かに祝うという9月15日の過ごし方を、ここ数年実行
してきたけれど今年は出来そうに無い。
昔流行ったアニメのグッズ・通称白い量産機ストラップは後日渡そう。
一人で食べる夕食はあまりおいしいとは感じられず久しぶりに残してしまった。
冷蔵庫のビールを一口飲んでみたけど不味かった。
それから寝るまでの間ペットのペンペンで遊んだ。
ハムスターは、げっ歯類特有の前歯が特徴的で、それをつつくと面白い反応をする。
ウン、なかなかいい子だ、ペンペン。
ミサトさん(お姉さん)が久しぶりに帰ってきた
‥‥と思ったら、さっきからずっと電話をしている。
僕の知らない言語で喋っているから何を話しているかちんぷんかんぷんだった。
電話を切って開口一番
「シンちゃん、明日から家族が一人増えるから」
だからてっきり結婚するんだと思って「加持さんと結婚するんですか」って訊いたら
「だーれがあんなぶゎかと」って怒鳴られた。
話を聞いたところドイツではテロが激しくて
内戦状態になっていて、いつ治まるか目途がたたない状態らしい。
それで日本に縁のあるドイツの女子大生(たぶんVIP)が疎開?するらしい。
僕はベットに横たわり満月の優しい光に包まれながら先ほどの言葉を反芻した。
「『家族』か、末っ子長男だな」それもわるくないかも。
空は高く風の強い午後、僕は空港へ向かった。
おろしたてのシャツに身を包み未だ見ぬ姉との待ち合わせ。
モニュメントの周りを一周したけど女子大生風の外人など見当たらなかった。
人探しをしているっぽい外人は二人いて一人は男性で
もう一人は女性ではあるが大学生にはとても見えなかった。
心配になった頃僕の携帯に着信が入った。
番号を確認していると、ふと視線を感じたので僕は振り返った。
山吹色のワンピースを着たもう一人のほうの外人が
片手は携帯にもう片方の手は腰に手を当て仁王立ちしていた。
突風・僥倖そして一瞬の静寂
>>ネ申風氏
GJ ( ゚∀゚)o彡
僕は彼女に平手打ちという名の挨拶をもらった。
「なーんでアンタなの?ミサトから美形だって聞いていたのに」
そういって少女は携帯のメールに添付された写真を見せ付けた。
そこには透き通るような肌をした王子様と形容すべき少年が映っていた。
「ミサトさん、時々こういうイタズラするんだ。
僕だって大学生だって聞いていたんだよ」
「私はね正真正銘の大学生なの」
僕は一瞬ためらったが年齢を訊いた。
「えー、じゃあ僕より年下なの?」
こういう事情でぼくは二番目の姉が年下だということが判った。
僕たちはモノレールとバスを乗り継いで帰宅した。
その間二番目の姉といろいろ話をした。
名はアスカといい、風貌は外人というよりハーフといった感じで
実際に日本人の血を分けている。
ミサトさんは学生の頃彼女の家にホームステイしていたことが判明した。
帰宅後僕はアスカに街を案内させられた。
アスカに貸したキャスケット、カットソー、カーゴパンツは
風の強い午後の装いにはぴったしだ。
何を着ても似合うなんてズルいや。
僕はアスカを自転車の後ろに乗せて
コンビニ・公園・スーパーマーケットを廻りメールに添付された写真の人に
四日遅れの誕生日プレゼントを渡し、帰りにはひまわり畑から種を拝借した。
背中に感じる女の子の身体の感触で僕は溶けてバターになりそうになった。
わざと遠回りをした。
「アイツって、ホモ?」
「そんなこと無いよ、カヲル君には彼女だっているんだから」
「あんた達、怪しかったわよ。それにしてもアンタ、センス無いわね。
私だったらあんな『白いうなぎ』もらったらグーでパンチよ」
とりあえず ここまで
一応四季のある世界です。
肩の凝らない小説を目指します
次はしばらく後
初めてなので練習用に使いますが何か?
なごんだ。GJ
GJ
期待。
続けて貰えると有難いです。
確認と質問
まず確認、アスカって来日時点で13歳だよね。
質問
1)ユニゾンで使われた曲名は?
2)ユイの命日はいつ?
3)ユイってカトリック?
4)ハムスターの飼育方法は?
教えてエロい人
>>49 >アスカって来日時点で13歳だよね。
14歳です。
>1)ユニゾンで使われた曲名は?
第9話の英文サブタイトルと同じ。後は調べなさい。
> 2)ユイの命日はいつ?
不明。12月20日という考察はあるけど、yahooのエヴァ特集で取り上げられたりしたw
>3)ユイってカトリック?
不明
>4)ハムスターの飼育方法は?
ぐぐれ。
アスカは12月4日生まれ
日本に来たのは9月の終わり頃だったよね
14歳なのか
どっかのサイトのタイムテーブルだとユイの命日は3月27日らしい
>>51 それが作られた頃はまだアスカの誕生日の設定はなかった。
14歳という年齢の設定はあったけどね。
どもです
ユイの命日12月説を採用します。
がんばって。
>>53 惣流アスカラングレーのタイムパラドックス
>>57 だからパラドックスでも何でもないって。
そもそも誕生日の設定が無く年齢の設定があったんだから
セカンドインパクト
妊婦や新生児だけ災禍をまぬがれる事が出来るわけでは
もちろん無く、全ての人々に平等に見舞われた。
年齢別の人口の統計は、どこの国でも一箇所だけ不連続領域がある。
それが僕らの世代だ。
今期の中学二年はほとんど、どこの学校でも一クラスしか無かった。
僕とアスカが同じクラスになった理由の一つがそれ。
もう一つの理由は、同世代の友達と思い出を作れるようにとの
ミサトさんなりの配慮があったため。ただし、これを知ったのは
もっと、ずいぶんあとになってからだ。
転校生の噂は瞬く間に全校に拡がった。
みんな、知らないんだ‥‥彼女の本性を。僕は溜息をついた。
『違いのわかる男』演出家 相田ケンスケは知っている
上質な舞台芸術は、誰をも魅了する役者によって完遂せしめることを。
昼休みの話題は7日後に迫った学園祭、僕らのクラスはミュージカルを演じる。
『違いのわかる男』脚本、監督、演出による
『浪速のクマテツ』こと 鈴原トウジ主演
のミュージカル『ダンス・ダンス・ダンス』
「で、どうするんや?もう配役は決まってるわけやし」
「変更はしないよ、ラストに一分ばかし追加をすればいいじゃないか
一分だったら今からでも練習間に合うだろ」
ケンスケはコーヒーを飲みながら片手で絵コンテをスラスラ描きあげる。
それをトウジに渡すと、彼は大きくうなずいた。
ケンスケは A pod を取り出し曲を僕に聞かせた。
たしかにいい曲だ。
「それからシンジ、放課後に惣流を音楽室に呼び出してくれ」
「な、何で僕が?」
「シンジって、惣流と同居してるんだろ?」
ケンスケとミサトさんがメル友だということを、この日初めて知った。
秋の西日が差し込む音楽室に僕らは集まった。
最初、アスカは不機嫌そうな顔をしていたが説明を聞いて
目を輝かせた。やはり、舞台のセンターというのが効いたらしい。
62秒の追加シーンはセンターにアスカ、その後ろを僕とクマテツが踊る
僕がピアノで Dance Like You Want to Win!を弾いて
それに合わせてクマテツが舞う、違いのわかる男がそれを録画する。
華麗な舞に流石のアスカも舌を巻いた。
僕らの六日間の特訓生活はこうして幕を開けた。
家でビデオを見ながら踊りの練習。アスカの上達は確かに早かった。
僕がステップを間違えると「何度も足引っ張んないでよ!」って怒鳴られる。
怒鳴るより先に蹴りが入る、いいケリが幾つか入った。
それから、ケンスケの助言どうり生活のペースをアスカに合わせた。
起床も就寝も同じ、歯磨きや洗面も一緒。
お風呂も同じ
銭湯で。
5日目にしてようやく、同時に待合室に出れた。
そんなことでも、なんとなく嬉しい。
突然の大雨で僕たちは、一本の傘で帰ることになった。
いつもより、身を寄せて歩く夜の帰り道
一台のA podでイヤホンを僕の右耳とアスカの左耳にあてて聞いた。
「ゴメン、僕がへたくそすぎて」
「アンタね、そうやってすぐ謝るところキライ」
「ゴ、ゴメン‥‥」
「いい?本番は絶対に成功するの。だから謝らないで」
アスカの意志の強さを彼女の横顔で読み取った。
少しだけ心が、近づいた気がする。
6日目にトウジがマンションまで来て一緒に最終調整をすることになった。
僕らの進捗度をみてクマテツは泊りがけになることを覚悟した。
合宿はかなり楽しくて、時間はあっという間に過ぎていく。
僕はとろろで巻いたおにぎりを夜食に作って、これが結構好評だった。
ユニゾンは二時過ぎにようやく完成し、僕とトウジは居間に布団を敷きそこで寝た。
なんとなく寝付けなくて僕はA podで明日の曲を聴いていた。
突然、襖が開く音がして、慌てて寝たフリをした。
耳を、澄まして‥‥‥
カラカラカラカラ
ジャーーーーーーーー
近づく足音
近づく足音?
近づく足音????
!!!!!!!!!!!!!!!!
ここまで
その後の展開はインスピレーション待ち
今のうちに訂正
62と63変えます
あとクマテツは熊川哲也
銭湯で。
5日目にしてようやく、同時に待合室に出れた。
そんなことでも、なんとなく嬉しい。
突然の大雨で僕たちは、一本の傘で帰ることになった。
いつもより、身を寄せて歩く夜の帰り道
一台のA podでイヤホンを僕の右耳とアスカの左耳にあてて聞いた。
「ゴメン、僕がへたくそすぎて」
「なんでもかんでも、すぐに謝って。本当に悪いと思ってるの?」
「ゴ、ゴメン‥‥」
「いい?本番は絶対に成功するの。だから謝らないで」
アスカの意志の強さを彼女の横顔で読み取った。
少しだけ心が、近づいた気がする。
傘の上で踊る雨粒たちの歌は聞こえない。
一台のトラックが僕の横を通過するとき、アスカは僕の身体を引っ張った。
バランスを崩し、後ろ向きによろけるアスカと
それに向かって前向きによろける僕。民家のブロック塀に僕は手をついた。
その横にはアスカの顔、傘だけはしっかり離さなかった。
イヤホンは耳からこぼれ落ち、荷物は地面に飛散した。
鼻息がかかる距離まで顔が近づき、頭の中は真っ白になって
世界の中で二人だけに一時停止のボタンを押した。
固まる二人
雨粒たちの歌
イヤホンから漏れるピアノの音色
今度は左手に傘を持ち少しだけ車道を気にして帰った。
6日目にトウジがマンションまで来て一緒に最終調整をすることになった。
僕らの進捗度をみてクマテツは泊りがけになることを覚悟した。
合宿はかなり楽しくて、時間はあっという間に過ぎていく。
僕はとろろで巻いたおにぎりを夜食に作って、これが結構好評だった。
ユニゾンは二時過ぎにようやく完成し、僕とトウジは居間に布団を敷きそこで寝た。
なんとなく寝付けなくて僕はA podで明日の曲を聴いていた。
突然、襖が開く音がして、慌てて寝たフリをした。
耳を、澄まして‥‥‥
カラカラカラカラ
ジャーーーーーーーー
足音はアスカの部屋に収束し襖が閉じる音がした。
僕はA podのスイッチを切って今度こそ寝た。
7日目の朝、僕は初めて四人分の朝食を作る。昨日あまったとろろを味噌汁に入れて
鯵を焼いた。箸でごはんを食べるアスカの姿が板についてきた。
生まれて初めての、騒がしい食卓に眠気が吹き飛んだ。
冬服に身を包んでの登校、もちろん真ん中にはアスカが歩き
練習どうりのフォーメーションを学校まで貫いた。
舞台の終盤、アスカの登場。62秒の追加シーンに
場内の心は一つになった。最後の着地で僕はミスった。
誰も気がつかなかった。
ショートでBUMPの車輪の唄ベースにSS1本書いたが何故か最後がLASじゃなくなった・・・。
選挙区ミスだな
GJ!乙!
GJ。
次回は是非LASで!
ハルキスト氏が書いたパロSSの元って村上春樹のなんていう小説?
今日どうしても読みたくなって本屋に行ったんだけど、結局どれだか分からなかったんだ
短編集?
ノルウェイの森
ワタナベ → シンジ ナオコ → 綾波
緑 → アスカ レイコ → リツコ
永沢 → 加持 ハツミ → ミサト
キズキ → カヲル
と脳内変換して読むことをお勧めする。
最初LRSだけど最後はきちんとLASだ。
>>75 でもそれだと最後…シンジ君はリツコさんとwwww
>>75 つまり、アスカとケンスケが元カレカノでヤリヤリなわけですね
まあ、シンジに彼氏のことでエロエロ相談をするアスカも面白いかもしれんね
そして、その度に吐血するシンジというのも見てみたい
79 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/28(月) 00:16:21 ID:gJzSmF6E
>>75 サンクス
嫌いな友達が春樹好きで今まで読まず嫌いしてたんだが読んでみる
ageちまった…スマン
>>76 淋しくないお葬式で解禁だから別にしてもいいだろ。やっても
そのあとアスカに電話かけて、多分するだろ
リツコですら四回だから想像つかねえよ。
スレ違い自重
僕はカゼをひいた、修学旅行の前日に。
確かにその日は朝から違和感があった。疲れとダルさそして
寒気があった。でも、疲れのほうは昨日アスカに買い物に付き合わされた
ためだと思っていたし、寒気のほうは深まる秋のせいにしてた。
昼休みには、保健室に行って少し休んだ‥‥つもりだったけど
時間とともに悪化してきたから家に帰された。
誰もいないはずの家には、めいいっぱい着込んで、さらに毛布をかぶった
アスカがぶるぶると震えていた。
「アンタも、今日中に治すのよ」
僕は既に諦めていたから気の無い返事をした。
アスカは大学生だから修学旅行に行けるチャンスは
これが最後なのかとふと思った。
五時過ぎにミサトさんから電話が来るまで二人はマグロ。
僕は一番上の姉に事情を説明した。
「あ、やっぱりカゼひいたんだ。そっちに加持よこすからそれまで我慢して」
『やっぱり』が気になる‥‥‥
さらに三十分して加持さんが合鍵で入ってきた。すぐにタクシーを手配して
くれてリツコさんの所へ行った。診察もせずに『風邪ね』と一言。
ミサトさんからのもらい物だってことがこの時分かった。
アスカが『呪ってやる呪ってやる‥‥』とつぶやいたのは聞かなかった事にしよう。
リツコさんに注射をしてもらったが修学旅行は諦めさせられた。
「この状態で晩秋の北海道は無理よ」たしかにそう思う。
家に帰ると病人に必要な物全てが揃っていた、しかも三人分。
居間に三つ布団を並べて寝るのはさながら修学旅行のようだ
枕投げをする気力も無いけど。
加持さんの手際の良い看病でこの日は何とか乗り切った。
朝、目が覚めると朝食が用意されていた、加持さんはいない。
ミサトさんも今日は有給を使い体調管理に専念。
アスカはサミトさんに恨みをぶつける。
「‥‥エリモミサキ‥‥オタルウンガ‥‥ヒツジガオカ‥‥
ワインジョウ‥‥ダテジダイムラ‥‥ジョウザンケイ‥‥」
アスカはMPを使い果たすまで呪文を唱え続けた。
私ね、雪の降る中で温泉に入りたかったの‥‥」
日本の温泉とドイツの温泉では質が違うからなぁと僕は思った。
「アスカ、今度の土日に温泉に連れて行くから許して」
「私ね、『雪の降る中で』温泉に入りたかったの‥‥」
「分かった、雪の降るところに連れて行くから」
「昨日の人もこないかなぁ」
「ハイハイ、加持ね。分かったわ」
「ねぇ、ミサト。前に私のこと本当の妹のように思っているって
言ってくれたわよね。妹ってのはね、姉からお下がりをもらう
権利があるの。ミサトの『お古』私にくれない?
今、付き合ってるわけじゃないんでしょ」
アスカは加持さんとミサトさんの関係を見抜いたんだろう。僕は
あの関係を理解するのに二年もかかったのに。
「ダダだめよ、サ、サイズがね、合わないから。アスカにはまだ早いわよ」
ミサトさんがドモるのをこの時初めて聞いた。
長野県安曇野市、第三東京から五時間はかかるであろう道のりを
ミサトさんのドライビングテクニックで二時間半で到着した。
血のつながりの無い、僕らの家族旅行は山奥の高級そうな旅館。
しっかりと、積もっている雪にアスカはそうそう、これこれと頷く。
アスカの美意識は日本人的なのだと思う。
「ペンペンはどうしたんだい?」加持さんが僕に話しかけてきた。
「リツコさんに預かってもらったんです」
「まさか、リッチャン猫飼ってるんだぞ」
「冗談です、本当はマヤさんに預かってもらったんです」
「シンジくん、明るくなったんだな。前は、冗談なんか言わなかったはずだ」
確かに僕は以前に比べて少し明るくなったのかもしれない。
ひんやりとした岩場を裸足で抜けるとかなり広めの露天風呂。
漆喰の塀が辺り一面の雪景色と調和している。
加持さんは湯の上にお盆を立てて徳利とお猪口を乗せた。
父のこと、母のこと、ミサトさんのこと、女の子のこと
僕は加持さんに訊きたい事がたくさんあったけど何から話せばいいか
言葉が見当たらない。きっと、この人は何でも知っているんだろうと
思うけど訊きたい事がありすぎて一言も言葉に出来ない。
加持さんはそんな僕の気持ちを知ってか、知らずか空を眺めている。
あせる必要は無いんだなと思った。
男湯は無言で、片や塀の向こうでは会話が弾んでいるようだった。
なんとなく右手に力を入れて、力こぶを作ってみた。
「ハハハ、シンジくん、まだまだだな」加持さんはそう言って左手で力こぶを作った。
「加持さんの、すごく大きいですね」
「毎日、鍛えてるからな。こっちの方はもっとすごいぞ」こんどは右手で力こぶを作る。
「触ってもいいですか?」
「かまわないさ」
「うわぁ、すごく固いや。やっぱ加持さんはすごいなぁ」
ようやく加持さんと打ち解けた気がする。
入浴後、アスカだけでなくミサトさんも僕に対して冷たかった。
シモネタ落ちorz
公式設定とか調べれるサイトあったら教えてください。
なにぶん初めてエヴァ見てから四ヶ月なので‥‥
wikiに載ってるので十分
EVAwikiじゃなくて本家ウィキペディアな
アッー!
91 :
アスカ:2007/06/02(土) 03:17:35 ID:???
19からの続き
シンジの右手を再び掴む。
「ねぇシンジ、私が好きならオナニーしてみせて」
右手をおちんちんに近づける。
「シンジが私のこと、どれ位好きなのか知りたいの」
我ながら滅茶苦茶な事言ってると思う。
「アスカ・・・」
もう一押し。この台詞で・・・
「わ、私で・・・セ、セ・・・」
恥ずかしいよー
シンジの手をおちんちんに添える。
「わ、私で・・・セ、センズリ扱いて・・・」
顔が真っ赤になる。
いくら面白そうだからって、こんな言葉、恥ずかしい・・・
92 :
アスカ:2007/06/02(土) 03:18:38 ID:???
「え、アスカ!?今なんて?」
シンジのばか!
答える替わりにシンジの右手を掴み動かしちゃう。
おちんちんを扱かせる。
「あぁぁー、アスカー」
嬉しい声を上げるシンジ。
「もう一度言ったら自分でして見せてくれる?」
誘惑する。
喘ぐシンジ・・・
「ねえ、シンジ」
動かしていたシンジの右手を止める。
「あっ、意地悪しないでよアスカ・・・」
「もう一度聴きたい?」
私は手を離して意地悪く訊き返す。
これでシンジはもう自分で扱くしか無くなった。
このままパンツ履ける訳ないもんね。ニヤリ。
「う、うん。だから、ねえ・・・お願い」
「お願いします。でしょ!」
「お願いします」
「そんなにシンジが観て貰いたいんだったら、しょうが無いわよね」
ハァハァ言ってるシンジ。
「わ、私をオカズにしてセンズリ扱いていいのよ・・・」
「シコシコ、シコシコしてごらんなさい。観ててあげるから・・・ね」
「早くー、おちんちん扱いてよ、シ・ン・ジ」
93 :
アスカ:2007/06/02(土) 03:21:11 ID:???
ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ
規則正しく音がする。いやらしい音・・・・・・
「す、凄ぉぉぉーい」
誘惑に負けたシンジ。
右手は快感を求め激しく動いてる・・・
いざ目前で見せつけられると圧倒されちゃう・・・
「はぁぁぁー」
溜息が出ちゃう。
昨夜覗き見た時より迫力が有る。
男の子って何時もこんなに激しいの?
おちんちんの先っちょから溢れ出る液・・・
糸を引きながら私の脚に垂れ、溜まっていく。
濡れた脚。
指で淫らな汁を弄びながらおちんちんを見る。
「シンジ、おちんちん気持ち良い?」
ハァハァ喘いでるシンジに訊いてみる。
もっと恥ずかしい言葉を言わせたい。ううん、聞いてみたいの。
「ねえ、シンジったらぁー」
夢中で扱いてるシンジに答えさせる。
「ハァハァ・・・う、うんアスカ気持ち良いよ・・・」
94 :
アスカ:2007/06/02(土) 03:23:21 ID:???
もっと聞きたい。いやらしい気持ちが溢れ出て止まらないの・・・
「どこが気持ち良いの?」
シンジを言葉で弄ぶ。
「お、おちんちん。おちんちんが気持ち良いんだよ、アスカ」
あぁぁぁー。シ、シンジ私・・・もう・・・
「誰をオカズにセンズリ扱いてるの・・・シンジ?」
「あ、ハァハァ・・・」
気持ち良すぎて答えられないの?
「ねえ、シンジ。誰のこと考えてセンズリ扱いてるの?」
だ、駄目よアスカ・・・いつからこんないやらしい女の子になっちゃったの?
「ア、アスカ・・・アスカのこと考えて毎日弄ってたんだ」
「アスカ、アスカ可愛いよ、アスカ大好き!」
ドキ・ドキ・ドキ・ドキ
めまいがする。
心臓が興奮で張り裂けそう。
「あぁ、シンジ・・・」
95 :
アスカ:2007/06/02(土) 03:24:36 ID:???
「ア、アスカ・・・アスカのこと考えて毎日弄ってたんだ」
「アスカ、アスカ可愛いよ、アスカ大好き!」
シンジの言葉が媚薬のように私の心を酔わせる。
シンジの足元にしゃがんでいた私は激しく動く右手に釘づけ。
恥ずかしい・・・あそこが疼いてる。
疼きを誤魔化す様に腰の位置をずらす。
「あ!」
あそこに電気が駆け抜けたかのような快感が走る・・・
偶然あそこに当たった踵から甘美な刺激を与えられる。
文字通り腰砕け・・・・・・
ジワッと恥ずかしい液体が溢れ出る。
ヌルリとパンツが滑る。
「はぁぁー」
淫らな溜息が・・・
顔が一気に赤くなる。
96 :
アスカ:2007/06/02(土) 03:25:51 ID:???
「アスカ」
私の変化に気付いたシンジが声を掛ける。
右手を激しく動かしたまま。そう、私に見せ付けるように近づけて。
今度は私がハァハァする番になっちゃった・・・
「ア、アスカも興奮してるの?」
このバカシンジめ!
「ねえ、アスカ?」
こんな気持ち良い感じ初めて・・・
今迄こっそり肌を弄んでた時とは違う・・・
「あ、あんたバカぁー、か・感じてなんか無いわよ!」
「シンジが、おちんちん魅せつけたから濡れたんじゃないんだからね!」
しまった・・・
でも、踵は小刻みに動かしていた。快感を求めて・・・
続く
放課後の音楽室。ここに来て三、四十分ピアノの練習をするのが
僕の日課。時折、アスカが来てアレ弾いて、コレ弾いてと
リクエストをしに来る。アスカが来た日には、いつも一緒に
帰っている。その時に「あの時の曲良かったじゃない」と言って
褒めてくれる。いつも、すぐには褒めてくれない。
僕がコンクールに出場したときは、初めてすぐに褒めてくれた。
入賞はしなかったけど、元々プロになるつもりなんてなかったから
アスカに褒めてくれる事の方がよっぽど嬉しい。
聞かせる相手がいると練習は楽しい。十年近く続けてきて良かったと思う。
カヲル君がコンクールに入賞した。悔しさなんてこれっぽっちも無い。
ライバル視していたのは、随分と昔のことで学年が一つ違うこともあって
素直に認め合うことが出来る。彼の弾くベートーベンはとても力強く
それでいて繊細だ。
カヲル君の入賞パーティーをウチでしてもいいとミサトさんから許可が出た。
一万円を貰い五人分の料理の食材とケーキを購入した。
特にあの二人は小食だからとあまりたくさんは買い込まなかった。
綾波レイ。僕が初めて彼女にあったのは今年の春、カヲル君の通う
私立の中学校のグラウンド。合わせたい人がいる、と言う彼の誘いに
陸上部の練習場に足を運んだ。空気は冷たく日差しのみが暖かい
グラウンドで槍投げの練習をする彼女を見つけた。
二度目に合ったのは、梅雨の季節の或る日曜日。ピアノを弾きにカヲル君の
家まで行った時、私服姿の綾波がいて初めて会話した。
『どうして綾波は槍を投げるの』と訊いたのに対して
『私には他に何も無いから』と言ったのを今でも覚えている。
綾波はとても華奢でなぜ槍投げなのかはどうしても分からない。
繊細な硝子細工を傷つけたような気分になったので
『走ればいいと思うよ』と言ったらにっこり笑ってた。
その綾波が今日、ウチに来る。
フィンガー・サンドイッチに鰯のマリネ、オクラの胡麻和え、ふくさ焼き
イカとエビのアーモンドフリッター。
あは、ほとんどがミサトさん用のおつまみだ。まあ、スポンサーだから
仕方が無い。日曜の昼に作る料理はちょっと豪華なパーティー仕様。
僕は料理をしながら主役の登場を待った。
二時を回った頃、今日の主役が登場した。カヲル君と綾波はお似合いのカップルで
よくもまあ、世界の中でこの二人が出会ったものだと感心する。
ちょうど、料理も出来て乾杯でもしようかと思った頃、僕の携帯に
着信があった。ケンスケから今日一緒に遊ばないかという誘いだった。
今日は家でパーティーがあるからと僕が言ったのに対して
『ミサトさんの昇進パーティー?すぐ行く』と言って切ってしまった。
意味が分らず、ミサトさんに聞いてみたら三佐への昇進が内定したらしい。
「じゃ、昇進祝いも兼ねるのはどうだい?」とカヲル君が言ったので
アスカが「それなら、ヒカリと加持さんも呼ぶ」と言って電話を掛けはじめた。
そういう訳で、僕は追加の食材を買出しに出かけた。
買出しにはアスカもついてきた。僕たちは落ち葉のじゅうたんを踏みしめながら
スーパーへ向かった。くしゅくしゅと二人の足音が調和する。
「あの娘のこと、好きなんでしょ?」
「分らない。よく分らないんだ」
僕が、綾波に特別な感情を持っているのは事実だけど、それが恋愛感情かと
言われれば多分違うと思う。親友の恋人という特別な事情を差し引いても
僕は綾波に何も見返りを求めていない。前に加持さんが言ってた
『異性を好きになる』というのは心のどこかに見返りを求めていて
だからこそ胸が苦しくなるんだ、と言っていたのを思い出した。
綾波の雰囲気を例えるならば、『線香花火の儚さ』護ってあげたく
なるけれど、それは無償の行為で、母性愛に近いのかもしれない。
じゃあ、愛は恋よりもっと、高尚なものかと訊いたら
『それも、違うな。大人になれば分るさ』と返ってきた。
僕には、まだ分りません。
「じゃあ、アスカには好きな人がいるの?」
よく、聞き取れなかった。アスカは何も答えなかった
のかもしれない。でも、僕はこの時『バカシンジ』って感じた
聞こえたのではなく感じた。耳から入ってきたのではなく、直接、頭に入ってきた。
それに対して、自信が持てる訳でないけれど、聞き返すのも良くない。
『好きな人はいるの?』と訊いた直後に『いま、僕の名前呼んだ?』
はあまりにもデリカシーが無さ過ぎる。かといって
確かめる方法なんて何も無い。この『バカシンジ』というフレーズ自体も
初めて聞いた言葉で、アスカは僕たちのことを3バカトリオって呼んでるけど
僕のことを直接『バカシンジ』と呼んだことは無い。
スーパーまでの道すがら、確かめる方法を模索したけど、とうとう見つからなかった。
食料を買い込み、帰宅すると靴は玄関を埋め尽くしていた。
僕は大急ぎでキッチンに向かった。手伝ってくれたのは洞木さんだけ。
大人たちは、既に出来上がってるらしく『おつまみ、まだー』と催促をする。
子供たちは、子供たちでカラオケに盛り上がっている。
大忙しではあったけど、こういう風に料理を作るのは、結構楽しい。
料理をテーブルに運んだときにカラオケで、僕の得意な曲が選曲されてるのが
分った。僕は『誰が歌うの』って訊いたら、アスカが答えた。
「アンタが歌うのよ、バカシンジ」
僕はこの時、顔を真っ赤にしていたと思う、たぶん。
GJ
あぁぁぁぁああぁぁあ!
イイ!なんか切れ目切れ目とかがすごくいい!
GJです!
すごくいいです。
はやく続きを読みたいものです、はい。
感想レス、マジ感謝!ホント励みになります。
ちょっと、遅れたけど誕生日つながりの話題を投下します。
11月最後の日の昼食時、僕はケンスケに相談を持ちかけた。
「じゃ‥‥、コーヒーで」その台詞に対して僕は頷いた。
急いで売店まで行き、あの上質なコーヒーを買った。
アスカの誕生日にグーのパンチを貰わないためには、軍師の助言が必要で
その助言とやらもタダではない。
軍師の助言に従い、向かった先はデパートの一階。
僕にとっては場違いな場所でプレゼント用の香水を探す。
何本かのテスターを嗅ぎ、自分にとって一番しっくり来るのを選んだ。
選ぶのに50分もかかった。それが、ラベンダーの香りがする香水で
お小遣い三か月分。これで殴られたら報われないなぁ。
12月4日に渡すべく、綺麗にラッピングした状態のまま机の中に眠らせた。
そして、12月4日
僕とアスカはミサトさんからの呼び出しを受け、彼女の職場を訪ねることになった
放課後、一旦帰宅し着替えてから向かうことになった。
ミサトさんからのアスカへのプレゼントだって事は分っていたし
その内容も大体は予想がつく。だけど、先にばらしてしまう様な無粋なことはしない。
だから何事か訊かれても、はぐらかしておいた。
UNフォースの第三東京基地。30分にも及ぶボディーチェックや手荷物検査
身元確認を経て比較的セキュリティーレベルの低い区画にあるビルの屋上に通される。
屋上はヘリポートになっていて軍用ヘリが一機スタンバイ。
家族特典とやらで年に一度コレに乗れる機会がある。
僕は高所恐怖症だから去年は A pod が欲しいと懇願し事前に回避することが出来た。
今回はアスカの誕生日だからと辞退することにしよう。
で、
僕は今ヘリの中にいます。
40分間の遊覧飛行。ミサトさんの操縦するヘリに乗って
僕とアスカで第三東京の街並みを俯瞰する。
当初の不安とは裏腹に意外に快適だった。案ずるより産むが易しか。
帰りのエレベーターでアスカは上機嫌だった。
軍師の知恵があっても此れに適う物は無い。
僕らを乗せた密室は目的地とは違う階で停止して
扉が開く代わりに照明が落ちた。つまり、停電という事か。
僕はアスカに相談し非常用のボタンを押した。
ウンともスンとも、いわないから事態は深刻なのだと気付く。
基地には携帯を持ち込むことは出来ないので、外部と連絡を取る手段が全く無い。
つまり、大ピンチという事か。
「すぐに予備電源に切り替わるわよ」この一言で僕は落ち着くことができた。
10分経つけど切り替わんねぇ‥‥‥
こういう時、人は二通りの行動パターンを採る。おとなしく助けが来るのを待つか
自力で脱出を試みるか。もちろん僕は前者なんだけど残念ながら決定権は無いので
脱出を試みることになった。
アスカはバッグの中からハンカチを二枚取り出して、それを繋ぎ合わせた。
そして、僕に目隠しをする、既に暗闇なのに。
つまり、肩車をして上部のハッチをこじ開ける計画だけど、アスカはここに
ミニのプリーツスカートを穿いて来た。
「絶対に変なこと考えないでよ!!」釘を刺された。
だけど緊迫した状況だから、そういう事は考えない自信があった。
むしろ、不安を紛らわすために珍しく強気に返した。
「考えるわけ無いよ、今はそれどころじゃないんだ」
僕は目隠しされた状態のまま、肩車をした。その上でアスカが作業したんだけど‥‥
多分、目隠しは逆効果だったと思います。
人は、目が見えないとき、他の感覚が敏感になります。
つまり、直接手で支えるアスカの腿の感触に少なからず興奮してしまいました。
強気に返したことをひどく後悔する。
たぶん、目隠しがいけないんだ。きっと、そうに違いない。そうだよね?
アスカは、ハッチをこじ開けるために力を入れる。
悪戦苦闘している様子が声で判る。
「コノ、コノ、なんで開かないのよー」アスカが力を入れれば入れるほど
腿で僕の首が絞まってく。僕は腿と首の間のスペースを確保すべく
手を腿の内側に移動させた。その時、はっきりと聞こえてしまった。
「んぁっ‥‥」
その声を聞いて、僕は、その、つまり、あの、一言でいうと
ボ ク ノ シ ョ ゴ ウ キ ガ ボ ウ ソ ウ シ タ
初号機(仮)が僕の意思とは無関係に大きくる。焦れば焦るほど
シンクロ率は上昇する。頬だって緩みっぱなしだし‥‥‥
とんでもない爆弾を腰にぶら下げたために思いのほか前かがみになった。
肩車をしたまま、前かがみ。これは事態の更なる悪化を意味する。
なぜなら、僕の頭はスカートの中にすっぽりと入っているのが感覚で分かる。
そして、アスカの体重を支えているのは肩ではなく頸骨の辺り。
僕の頸骨にはスカートではない布地が密着している。
シンクロ率は時間とともに単調増加、400%を超えている。
グーのパンチでも済まされないだろう。
突然、機械の作動音が鳴り、エレベーターは動き始めた。
僕はバランスを崩し壁に頭をぶつけ脳震盪を起こしたらしい。
薄れゆく意識の中でアスカの悲鳴が聞こえた。
その後、しばらくアスカからは口もきいてくれなくなった。
プレゼント、どうやって渡せばいいだろうか?
GJ
GJだが下ネタ好きなんですねw
GJっす
昨日、丸一日費やして最終回の原稿を書いた。
吐き気がするほど文章と格闘したかいがあって最後だけは自信作。
だけどラストを先に書くとね制約が付いて次から大変になるんだわorz
次回は最初に書いたところだから、とっくの昔に出来てるんだけど
下ネタ部分を削除しようか、かなり迷ってる。どうしよっか?
全然OK
14歳らしいのが伝わるのでむしろ削らない方向で読みたい。
母さん、僕はあなたの命日に女の子とキスをしました。
生まれて初めてのキスです。
今日僕は女の子の唇を知った。
キスをして、そして‥‥‥
「アンタ、怖いの?男の子のくせにー」
「あぁっっ‥‥、アス‥カ、お願い、もう‥やめて」
「やめるわけなーいジャン」
「うん、怖い。本当に怖い。だから、もうやめて」
僕は全身を氷像のように固まらせながらアスカに願いを乞うのが精一杯だった。
しかし、徐々に確実に昇ぼる。
「そっか、シンジ怖いんだー、どーしよっかなー」そういっても全く止める気は無い。
アスカは、腰を浮かしては沈め、沈めては浮かせていた。
「こ‥‥これ以上、揺らさないで」
「あぁ‥‥はぁぁ‥‥アーーーー!!!」
そして僕が見たものは‥‥‥
僕は今、墓地に来ている。日本人がイメージする墓地とは違うカトリックの
簡素な墓碑が並んだ墓地。
今日は朝5時に起きて7時には母の墓前に到着したのに
既にユリの花が手向けられていた。
今年こそ父さんに会えるかも、と思ったが来年まで持ち越した。
僕は母さんを知らない。
どんな食べ物が好きなのか、どんな音楽が好きか、どんな小説を読み
どういう映画を観るか、ラーメンにはニンニクを入れるのか
カップのアイスのふたを舐めるのか?
顔も知らない、声も知らない、あるのは曖昧模糊とした『母』というイメージ。
だから、家族の好物を持ってきた。タッパの蓋を開け
ハンバーグにデミグラスソースをかけた、そしてえびちゅを横に置く。
手袋をぬいで両手を合わせる。ポケットからハーモニカを取り出した。
一曲目はクイーンの『ボヘミアンラプソディー』
次にドビッシーの『月の光』バッハの『G線上のアリア』
ビリー・ジョエルの『ピアノマン』と『アニスティー』
ビートルズからは『イエスタデー』と『ミシェル』
ベートーベンの『第九』そしてアニメの主題歌『残酷な天使のテーゼ』
最後にボサノバの名曲『 Fly me to the moon 』
『来年で、11回目だね。次までにあと1曲覚えるよ』
午後からは、僕とアスカ、カヲル君と綾波で遊園地でのダブルデートをした。
前は大雨が降って台無しになったけど今度は雲ひとつ無い天気だ。
寒さに目をつぶれば絶好の遊園地日和だ。
今回はカヲル君のセッティングで普段の僕とアスカの関係からは考えられない
『デート』という行為が実現した。
実は僕もアスカも遊園地に行くのは初めてで結構楽しみにしている。
最初にジェットコースターに乗った。
もちろん初めて乗るわけだからかなり緊張したけれど
思ったほど怖くなかった『案ずるより産むが易し』
その後、僕らは遊園地の定番の乗り物を巡った。
そして、日が傾いた頃に観覧車に乗った。
まず、カヲル君と綾波が乗って。次のゴンドラに僕とアスカが乗った。
僕は元々高いところが少し苦手だった。だけど今日乗った遊園地の乗り物で
怖いと感じたものは無かった。だから大いに油断した。
まさか観覧車が揺れるとは‥‥‥
観覧車は小高い丘の上に建っていて下から見たときより遥かに高く感じた。
「アンタ、怖いの?男の子のくせにー」アスカはわざとゴンドラを揺らす
「あぁっっ‥‥、アス‥カ、お願い、もう‥やめて」
「やめるわけなーいジャン」
「うん、怖い。本当に怖い。だから、もうやめて」
僕は全身を氷像のように固まらせながらアスカに願いを乞うのが精一杯だった。
しかし、ゴンドラは徐々に確実に昇ぼる。
「そっか、シンジ怖いんだー、どーしよっかなー」そういっても全く止める気は無い。
アスカは、腰を浮かしては沈め、沈めては浮かせていた。
僕は手のひらに信じられない位の汗をかいていた。
「こ‥‥これ以上、揺らさないで」
「あぁ‥‥はぁぁ‥‥アーーーー!!!」
ゴンドラが頂上に差し掛かる頃僕は見てしまった。
カヲル君と綾波がキスをしている。
アスカも咄嗟に振り返った。
このとき僕は、たぶん、きっと、とても情けない顔をしていたと思う。
涙が溢れそうになったから目を瞑った。
ゴンドラが少し僕のほうに傾くと、汗だらけの手の上に柔らかい手が乗って
僕の口に何かが衝突してラベンダーの香りがした。
アスカの髪が、僕の肩をくすぐった。
ああ、これがキスなんだなと直ぐにわかった。
たとえ、もし、このゴンドラが落下しても僕たちは無傷でいられる様な気がする。
理由なんて無い、そんな気がするだけ。
神様‥‥‥
もう少しだけ
僕は神様にお願いした。
しかし、昇りの百分の一の時間で到着した。
僕は今、確信している。
僕はアスカに恋をした。
その日の晩、ドイツ領事館から電話があった。
前 編 完
GJ!
久々に来たけどN3はどうなったん?
お星様になりました
|
― + ―
|
|
|
マジで?
そうか。夜型の仕事みたいだったからな…
携帯からで良かったら、投稿させていただけませんか?
普通に投下してる輩もいるからOK
つまんない・・・
今日、何度目だろう?
大学の食堂から外を見ながら、アスカはぼんやり考えていた。
サードインパクトから6年、彼女は美しく成長し毎日を過ごしていた。だけど、この空虚なキモチはなんだろう?
自分にとって、大事なナニカが無い事に気付いているが、何処かで其れを認められずに時間だけは過ぎてきた。
このまま、大学卒業して、どうするんだろ。私は
そんな事を考えながら、サービスパスタの器を洗浄スペースに運ぶ。
アスカのローライズジーンズのポケットから、静かにメロディが奏でられた。
見れば、それは彼女の同居人からだった。
「はい、ミサト? どうしたの、こんな時間に。」
「アスカ、今日連絡来たわ。シンジ君が帰って来るわよ!」
続く
今回は とりあえずは導入部分だけです、ゲーム板のスパロボ兄弟スレの資料集めに、久しぶりにエヴァを見ていて、出来上がった妄想を形にしてみました。
批判等々お持ちしています。
感想も何も、短かすぎだろ、オイ!
と突っ込むだろ普通。
もう少し読んでから。
きもw
137 :
132:2007/06/11(月) 23:34:01 ID:???
132の続き
ミサトから電話を聞き、胸が高鳴る。アイツが帰って来る?
シンジが、バカシンジが
「も〜し、も〜し、聞いてんの、アスカ?」
「聞いてるわよ、ミサト!」
そう、アイツが帰ってくる。
サードインパクトの後でいきなり私の前から消えたアイツ、碇シンジが・・・。
「シンジ君は明日、第三新東京に到着予定らしいから、歓迎の準備しなくちゃね。」
「そーいう訳なんで、アスカ。部屋の掃除お願いね〜。 シンちゃんにあの頃より酷い部屋見せたくないしね〜。」
「ちょっと、勝手な事言わないでよ。ミサトッ!」
彼女は大学を飛び出し、住居(魔窟?)に帰り、ため息をつきながら、掃除を開始した。
まだ頭の中はグルグルといろんな事が駆け巡っている。
シンジ、本当に帰ってくるの?
どんな顔して会えば良いの?
やっぱりアイツも変わったのかな?
夕方になり夜になり、クタクタになりながら、ようやく掃除は終わった。
「まったく、ミサトのエビチュばっかりじゃない。何やってんのよ。」
缶を分別していると、玄関で呼び鈴が鳴った
アスカは掃除の時のエプロン姿のままで玄関に向かった。
「アスカァ〜、買い物してきたから、玄関開けて〜」
やれやれ、原因の同居人が帰ってきたようだ。アスカはなんのきなしに玄関に向かい、ドアを開けた。
アスカは油断していたのだ
見慣れない男性が立っていた、そいつは彼女を見ると微笑みを浮かべて言った。
「ただいま、アスカ。」
138 :
132:2007/06/11(月) 23:47:53 ID:???
戸惑ってしまった。
そして、事実に気付いた瞬間に、なぜか涙が溢れてきた。
哀しいわけじゃない、なのにどうして・・・?
「あっ ゴ、ゴメン。アスカ、僕何かしちゃった?」 昔と同じ様にあわてて、私にあやまるアイツ。焦った時にこめかみを指でかく癖は直ってない。
顔は自らの意思に反して、真っ赤になっていく。
それをシンジの陰から隠れていたミサトがニヤニヤしながら、見ている事に気付いた瞬間。
バッチ―――ン
と激しいビンタの音が終わった後は、シンジの左頬に赤いアスカの見事な手形を残していた。
「アンタ、バカァ! ドアからの埃が目に入って痛かっただけよ!」
「ヒドイよ、アスカ・・・。6年ぶりなのに・・・。」
「も〜、素直じゃないんだから、アスカは。」
そんな騒ぎをペンペンは静かに見ていた
続く
続きwktk
140 :
132:2007/06/13(水) 16:35:27 ID:???
久しぶりに再会したのに、私は何やってんだろ・・・。
左頬を腫らしたシンジを見ながら、私は内心ため息を付いた。 涙を見られた私はとっさにシンジにビンタをお見舞いしてしまい、結果はぶすけたシンジと笑いを噛み殺すのに必死なミサトと食卓を囲んでいる。
ミサトが笑いながら、話したのは私を驚かせるために、あの電話の時にはシンジはミサトの側にいたらしい。
むぅ、なんだか、ひとりであわてて掃除していた私が馬鹿みたいだった。それもあって、私はちょっと不機嫌だった。
シンジが帰ってきた事を祝う宴なのに、シンジが全ての料理を作ったのも、妙な話だが、私を驚かせた罰として、作らせる事にした。まぁ、三人の中では一番料理がうまいのがシンジなのだから、仕方ない。
シンジ自身、ちょっとブツブツ言ったりしながらも、笑いながら、楽しそうに料理していた。
テーブルに並んだ料理を口に運んで、驚いた。あの6年前よりもシンジの腕が上がっていたのだ。
ちょっと悔しかった、私もこの長い時間の中でヒカリに教わったりしながら、料理を勉強してきて、自分では“シンジを越えた!”と思っていたのだから、でも当然か、私も長い時間を過ごしたように、アイツも同じ時間を過ごしたに違いないのだから。
この後、宴はいつもの如く酔っぱらったミサトが爆弾を私達に投げ込んだ。
「シンちゃ〜ん、これから何処に住むの〜、ウチに住むぅ〜?」
ミサトッ GJ!
私が気になっていた事をズバッと聞いてくれた。さすがは女みの○んた!
昔は三人一緒に住んで、“家族”として暮らしていた私達。でもねぇ・・・、あの頃でさえ、テーソーの危機を感じた事もあったし、気にはなっていた。
あの頃より、可愛く美しくなった私にバカシンジが我慢出来るはずがないのだ!
シンジはちょっと言いにくそうにしながら、こう言った。
「ネルフ本部近くに父さんが残したマンションがあるんです、そこに住むようにしています。荷物はもう運ばれているはずです。」
ちょっと意外だった、アイツの父親碇ゲンドウとシンジの仲は他人の私から見ても最悪だったのに、やっぱり変わったのかな?
シンジも・・・。
続く
141 :
132:2007/06/13(水) 17:59:23 ID:???
久しぶりに心の底から楽しいと感じられる食事だった。ただ、調子に乗った私とミサトはエビチュとシンジのお土産ワインで完全に酔っぱらって・・・。
記憶がない
朝、ペンペンのペタペタ歩く足音とキッチンから漂うフレンチトーストの良い香りで目が覚めた。
さすがに昨晩は飲みすぎたのか、経験した事がないくらいに痛む頭を抱えて、部屋を出てみると、シンジが朝食を用意してくれていた。
「おはよう、アスカ。早く目が覚めたから、前みたいに朝食作ってみたから、食べてよ。」
チクショー、久しぶりに再会したのに、昨日はビンタ、今日は朝から朝食の準備までされた。シンジの前なのに、アタシはぜんぜんっ良い所ないじゃない!
まっ久しぶりに食べるシンジの作ってくれたおいしい朝食に免じて、今回は目をつぶる事にした。
私が朝風呂から出てきて、身支度を整えた頃に、ようやくミサトが酒の匂いをさせながら、起きてきた。
「うぉはよぉ〜 シンジ君、アスカ。」
「おはようございます、ミサトさん。」
「また二日酔いなの? ミサト!」
私の声にミサトは頭をしかめながら、私に想定もしていなかった事をしゃべった。
「アスカァ、今日はアタシ二日酔いだし、休みだから寝るわ。」
私にとって、衝撃の宣告を言ったミサトはまた部屋に戻っていた
続く
142 :
132:2007/06/13(水) 19:25:45 ID:???
今から、バスやリニアレールを乗り継いでも、大学には間に合わない、途方に暮れそうな私に思わぬ救いの神が舞い降りた。
「アスカ、僕車だから大学まで送るよ。」
へっ? まったく想定外の事を言われて、一瞬止まってしまった私にシンジはこう言った。
「昨日はここまで自分の車で来たし、車の中で寝たんだよ。だから気にならなきゃ送って行くよ。」
確かに以前シンジが使っていた部屋は私とミサトの倉庫になっていて、シンジがどこに寝たのか、ちょっとだけ気になっていたのだけど、まさか自分の車とはこのアスカ様でも考えて付かなかった。
なんて事を頭の中で考えていると、シンジに呆れられたように、「急がなきゃ、間に合わないんだろ。アスカ?」
ちょっと上から優位にたったような言い方はしゃくに触ったが、ここは有りがたく、シンジの提案を飲む事にした。
まっ、ちょっと、ちょっとだけシンジの車とやらにも興味があったのは、事実だ。
私が身支度を終えて、マンションの入口まで走って行くとちょっとスポーティな銀の車が止まっていた。 どうやら、これがシンジの車らしい。
「早く乗って、出すから。」
助手席に座ると、昔感じた事のある香りに気が付いた。シンジが使っていたボディシャンプーの香りだ
「この車、新車で乗せたのアスカが最初だよ。」
そう言ったシンジの言葉を聞いて、ちょっと嬉しくなった。私がシンジの車の最初の同乗者というそれだけの事がたまらなく嬉しく感じた。
それに朝の日射しを避けるために、薄い色の入ったメガネをかけたシンジは、ちょっとカッコ良かった・・・。
妙にドキドキしながら、シンジの運転する車で私は大学へ向かった。
続く
143 :
132:2007/06/13(水) 21:18:43 ID:???
大学にはミサトの運転だと、15分で着いていたがシンジはその性格の為か、安全運転で20分程かかった。その信号待ちの間にシンジの携帯アドレスをちょっと強引に聞き出して、私の携帯に登録した。
正門前でシンジの車から降りて、一応わざわざ送ってくれたシンジに礼を言う。
「ダンケ! シンジ。」
いつもギリギリのミサトの送迎よりかなり時間があったので、ロビーに座りシンジの携帯アドレスを登録していた、そこに我が親友が表れた。
「おはよう、アスカ。今日はいつもより早いわね。」 洞木ヒカリ あの3度目の前からの私の日本での友達であり、常に本音で語り会える大事な人だ。まっ彼女の男の趣味はねぇ・・・。
「ああ、今日はシンジに送ってもらったの。アイツ昨日、帰ってきたのよ。この街に」
「えっシンジって、碇君!?」
「ヒカリ、あのシンジがたくさんいたら、凄くうっとしいじゃない。」
ヒカリは私を見ながら、微笑みながら、こう言った。
「ふ〜ん、それで今日のアスカは妙に嬉しそうなんだ。」
ヒカリの思わぬ言葉に私は飲んでいたミルクティーを噴き出しかけた。
「そんな事はないわよ、まっアイツにしては成長したんじゃない? このアスカさんを送迎しようなんて、自分から言い出すなんつね〜」
その後、ヒカリにもシンジのアドレスを教えて、まっ、本人の許可はとってないけど知らない仲でもないし、私が許した。
ヒカリは早速、シンジの事を楽しそうに自分の恋人に連絡していた。
ヒカリの恋人はともかく、やっぱり恋人同士の語らいはうらやましいと思ってしまう。何故か運転中のシンジの顔が思い浮かんだのは、いったい何で?
続く
144 :
132:2007/06/13(水) 21:43:46 ID:???
ヒカリとは科が違うので、昼休みに会う約束をして分かれた。
今の私は現代文学科の学生であるアスカというわけ、セカンド・チルドレンとしてのアスカは未だに私の誇りだけど、今の学生のアスカとしての人生も気に入っている。
教室では同じ科の女子が私を「聞きたい事がある!」と待ち構えていた。
内容はどうやら、シンジの事らしい、いつもならミサトの車で大学に来るのに、今日は違う車、しかも同い年くらいの男に送られてきた事が同じゼミの男共には、ショッキングな出来事だったらしい。
口々に恋人なのか?とか付き合ってどれぐらい?などと聞かれた。
私は想像もしていなかったが、他人から見たらシンジと私は恋人同士に見えるらしい。バカバカしいと思ったが、ミサトは姉でシンジは従兄弟という事にしていた。
私は講義中、恋人同士に見えたというシンジの運転中の横顔や微笑みが頭から消えず、教授の声も耳に入らなかった。
そういえば、シンジ・・・。恋人なんかいるのかな。アイツの事だから、やっぱりいないんだろうけど。可哀想だから、アタシが付き合っても・・・! 何考えてるんだ、私は!
そりゃ昨日、久しぶりに再会したアイツは正直かなりイイ男になったと思う。 でも、まだまだこの大学のボンクラ男共と同レベルかちょっと良いだけよ!
このアスカ様には釣り合わないわよ、シンジごときじゃね。
でも、なんでこんなアイツが、バカシンジが、碇シンジという男が気になるんだろう。
アイツと私は6年前に共にEVAに乗り、一緒に戦った戦友?なのであって、お互いに勘違いした恋愛感情みたいなものはあってのかも知れないが、恋愛、親友ヒカリの様な結婚を考えるような関係ではないはずだ。
なのに、なんでこんなにアイツの事が気になって、頭から離れないんだろう。 まさか、これが恋というヤツなの!?
続く
145 :
132:2007/06/13(水) 21:57:09 ID:???
入院中のヒマにまかせて、多目に投下してみました。
至らない部分やお気にめさない表現もあると思いますが、よろしくお願い致します。
>>145 乙。内容はGJです。
改行は40字前後でやった方がPCで見やすいと思います。
Take care of yourself.
大学生が新車買うのかよ
どんだけのボンボンだ
バブル期なんだろ
>147-148
細かいトコロを気にするな。
つーかオレも大学入ってすぐに買った車は新車、
貯金180万+親からの借金でなんとかなった。
久まで読んだ
151 :
132:2007/06/14(木) 21:29:19 ID:???
今日は昼までしか講義を入れていない私はヒカリと学食で食事をとっていた。 ヒカリの話では私が男の車で登校した事はかなり話題になっているそうだ。
「なんで、男はバカみたいにそんな事気にすんのよ。本当にバカばっか!」
「アスカ、仕方ないわよ。去年の現代文学部のミスキャンパスなんだから、注目もされているわよ。」
最近でこそ、忘れていたが私は昨年の学園祭で現代文学部のミスキャンパスなんてのに、選ばれていたんだった・・・。 あの後からしばらくは毎日のように男達がデートを申し込んできて、本当にうっとおしかった。
「このままじゃ今日の帰り道はまた追い掛けられるかもよ、アスカ?」
ヒカリはちょっと意地悪そうにこちらを見ていた。
どうしようかと悩んだ結果、今日はミサトに迎えに来てもらい、難を逃れる作戦を思い付いた。
早速、善は急げとミサトの携帯に連結すると、電源を切っていた。ヒカリの恋人の車にヒカリと同乗するのも、申し訳ないと思っていた時にひとつ閃いた。
そうだ! 朝みたいにシンジに頼んでみよう。
なんだかヒカリがニヤニヤしながら、私が電話する所を見よう無視して
ちょっと離れて、朝聴いたシンジの携帯番号に電話した。
ちょうどシンジは新しい住居への引越し作業の途中らしく、優しい私は手伝いを交換条件にシンジという専用タクシーを手に入れた。
ヒカリに話をすると、彼女とその恋人鈴原トウジもシンジを手伝いたいと言ってくれた。
続く
152 :
132:2007/06/14(木) 22:04:26 ID:???
ヒカリの恋人鈴原トウジは私やシンジや綾波レイ、ヒカリと一緒の中学校の生徒だった。当時はシンジともう一人、メガネのミリオタ合田ケンスケと共に三馬鹿と呼ばれていた奴だ。ヒカリは彼と中学時代から親しくなり、サードインパクトを乗り越えて、今や結婚を誓い合う仲だ。
そして、フォースチルドレン。彼が乗る筈だったEVA参号機はその起動試験中に使徒に侵蝕、使徒として初号機のダミープラグにより、撃破された。
鈴原はその際に負った重傷の回復とリハビリに時間はかかったが、今では日常生活を送れるまでになっている。
もちろんそれには、親友ヒカリの助けと支えがあったからこそだ。なんだかんだ言いながら、私はこのカップルの幸せを祈っている。
ヒカリは鈴原との待ち合わせがあるらしく、一足先に帰っていった。 私はシンジとの待ち合わせ場所にした朝と同じ校門の前で待っていた。何人かまた、男共が話しかけてきたが、無視してやった。
几帳面なシンジらしく、待ち合わせ時間の5分前には来てくれた。正直引越し作業の最中に呼ぶのは気が引けたが、まぁ良いだろう。
「引越し終わったの? シンジ。」
車に乗り込むなり、私は開口一番に聞いた。
「うん、家具や大概の物は終わったよ。ほとんど業者さんに任せたから、後は細かい物を自分でやるだけだよ。」
「じゃあさ、シンジの新しい部屋見せてよ! 私が採点してあげるわ。」
「駄目だよ、まだ完全には片付いてないし・・・。」
「良いじゃない、手伝ってあげるわよ。」
結局、私が強引にシンジに部屋を見せる事を承諾させた。しょせんシンジでは私には勝てないのだ。
ふふん♪
続く
153 :
132:2007/06/14(木) 22:26:57 ID:???
シンジの住居はミサトのマンションとはちょっと比較にならない高級そうなマンションにあった。まぁ、碇司令が残した部屋らしいからなんだろうけど、ちょっと生意気だと思った。私は6年間も狭い部屋のままなのに!
部屋の中はシックというよりも寂しい部屋だと感じた。孤独な心の中をそのまま、部屋にしたようなイメージだった。
「父さんが残したいろんな物のひとつにこの部屋と僕名義の通帳やカードがあったんだ。」
その話をするシンジはヤケに寂しそうだった。机の上に二つ程、写真立てがある事に気付いた。
シンジも気付いたらしく隠そうとしたが、私の方が一足早く手に入れた。
「あっアスカぁ、見ないで!」
バカなシンジだ、見ないでと言われて、はいそーですかなんて、私が言うもんですか!一枚目の写真は綾波レイ? でも年が違うし、雰囲気も違うし?
「母さんだよ、冬月さんからもらったんだよ。」
確かにシンジに似ていると言うか、シンジを女性化したらこうなるのでは?というような印象だった。
そして、もう一枚はっ・・・。
「それだけは見ないで、アスカ!」
必死のシンジの抗議を無視して、二枚目を見るとそれは私だった。
プラグスーツを着て、勝気な表情でブイサインを決めている私の写真・・・。
シンジはどうして、私の写真を持っていたの?
パイロット同士でしかない私の写真をわざわざ写真立てに入れて、大事に
続く
GJ!
155 :
132:2007/06/15(金) 20:45:29 ID:???
シンジは顔を真っ赤にして、完全に固まっている。その顔は昔のままだった、一方の私も頭の中は何人ものアスカが激論を交していた。
ASUKA 01「やっぱりシンジは私が好きなのよ!」
ASUKA 02「ミサトのイタズラでもらった写真を捨てなかっただけよ〜」
ASUKA 03「気持ち悪い気持ち悪い・・・」
ASUKA 04「私にはもっと見合った加持さんみたいな良い男がいるはずよ!」
好きな事を言ってる、ASUKA評議会は無視して、とりあえずは頭の中の会議を強制終了させて、シンジを改めて、引越しの手伝いをすると言った。 その私の言葉でシンジも少々、かなり? バツが悪そうに動きだした。
妙に重い空気に耐えきれなくなった私は意を決して、シンジに話しかけた。
「「あの・・・ さぁ・・・」」
同じタイミングでしゃべってしまい、また黙ってしまった。う〜ストレスが溜るぅ〜
私がイライラしている所にシンジが話しかけてきた。
「アスカ、お腹空いてない?」
思わずテレビのげーにん並にずっこけてしまった。
「あ、アンタねぇ、今する話なのそれ?」
「でも、もうこんな時間だよ。」
時計を見れば、夜7時を指して、窓の外も薄暗くなっていた。どうしようかと悩んでいると、いきなり“ぐぅ〜”と間抜けな腹時計の音がシンジのお腹から聞こえてきた。
思いっきり、シンジを怒鳴りつけてやろうと思っていた私も力が抜けて、思わず笑ってしまった。シンジも照れ隠しから笑いだして、ようやく私達二人の妙な空気は晴れていった。
時間も時間なので、シンジがまた送ってくれる事になり、その途中で今日の作業お礼に食事を奢らせると約束させた。
やったね!あっでも、ミサトの食事用意してないし、どうしよう。ほっとくとペンペンのエサでビール飲み始めないとも限らないし・・・
続く
156 :
132:2007/06/15(金) 21:12:54 ID:???
携帯でミサトに電話してみると、弱りきった声で
「アスカァ〜 お腹減ったぁ〜」と言ってきた。
それを聞いたシンジが途中のドライブスルーに寄ってくれる事になった。
そのまま、シンジの車で途中でミサトの分を含めて、買い物して帰った。
車から降りる時に私は、どうしても気になっていた事をシンジに聞く事にした。
「ねぇ、シンジ? 聞きたい事あるんだけど、良い?」
「えっ、何?」
「6年前、どうして私達の前からいなくなったの?
ミサトやネルフの人達に聞いても誰も教えてくれなかったし・・・ 私、最初はアンタが私を嫌っていなくなったと思っていたのよ。」
6年間、私の心に一番澱のように残っていた事・・・
あのLCLの海で私が彼に投げつけた。あの言葉が彼を傷つけたのではと、ずっと気になっていたのだ。
傷だらけの私を見て、涙を流しながら喜ぶ彼を私は否定したも同然だったのだから・・・
車内は薄暗く、メーターとオーディオの光しかない中で見たシンジの顔は、あの時と同じぐらいに辛そうな顔で何かを噛みしめていた。
「アスカのせいじゃないよ・・・」
絞り出すような声でシンジは返事をした。
「じゃあ、どうしてよ! 私が退院した時にはアンタいなかったじゃない!」
「ごめん、アスカ・・・ それだけは言えない。言えないんだよ。」
急に涙が出てきた、シンジと再会した時の喜びの涙じゃない、悲しい、本当に悲しい涙。私は助手席のドアを開き、泣きながら部屋に戻っていった。
シンジにまた私は拒絶されてしまった事が悲しくて・・・
続く
157 :
132:2007/06/15(金) 21:45:36 ID:???
部屋のドアを開けるとミサトが待っていてくれた。「おかえりなさい、アスカ。酷い顔よ、とりあえずシャワー浴びてらっしゃい。」
ミサトの言葉に従い、私は熱いシャワーを浴び、お風呂に入った。
お風呂から上がると、ペンペンが立っていた。なんだか心配そうに私を見て、首を傾げている。ペンペンにまで心配かけるような酷い顔で私は泣いていたのか・・・
ミサトは座って、私を待っていた。
「シンジ君が忘れ物届けてくれたわよ、わざわざ私の好きな翔竜軒の餃子まで買ってきてくれたのね、ありがとう。」
私は無言で頷いて、自分の部屋に戻ろうとした。
「アスカ、シンジ君にいなくなった理由聞いたの?」ミサトは決して叱ったり、なじる様な口調ではなく、やさしく聞いてきた。
その言葉に堪えてきた涙がまた溢れだした。
「とりあえず、餃子と唐揚げセット食べようっか。貴方もお腹空いてるでしょ」
頷いて、二人で無言でまだ、ほのかに温かい餃子と唐揚げを食べた。
人間なんて、本当に現金なモノらしく、お腹がいっぱいになると私の気分も少しだけ晴れた。
「アスカ、シンジ君がいなくなった理由を知りたいの?」
ミサトは私に聞いてきた、私は少しだけ考えてから頷いた。私はやっぱり知りたかった、シンジがいなくなった理由、私の前から・・・
ミサトも喋りにくそうに少しずつ話をしてくれた。
「サードインパクトの後、私達はLCLの海から還ってきた・・・、ようやく事態が沈静化しだした時に国連が動きだしたの・・・」
「ゼーレはいなくなり、彼らはエヴァの力を手に入れようと欲したのよ。常任理事国は自国にあるネルフ支部を接収し、本部の資料開示を求めてきたわ・・・」
知らなかった、私がサードインパクト後、半年程ネルフ内の病院に入院していたなんて・・・
「日本政府と戦自はネルフ本部は日本国の物として、一部資料だけを渡して、納得させたわ・・・」
話を聞きながら、この話とシンジのいなくなった理由が結びつかなかった私は分からなくなってきた。
ミサトも話しながら気付いたのか、先に進んでくれた。
「代わりに戦自はエヴァシリーズの解析を依頼、というより命令ね・・・その附属品全てを持っていたわ。」 それって、まさか・・・
私はこれ以上聞くべきか迷った
続く
158 :
132:2007/06/15(金) 22:02:33 ID:???
ミサトも次の言葉を絞りだすように言った。
「エヴァ初号機 パイロット、サードチルドレンである碇シンジの身柄よ。残された初号機や弐号機も予備パーツも含めてね・・・」
話を聞いていて、自分自身が情けなくなった。シンジは自らの意思とは関係なしに拉致されていたのに、私は6年間も真実を知らず、シンジが逃げ出したんだと思っていたのだ。私を否定し、いなくなったんだとばかり思っていたのだ。
「シンジ君の場合、碇司令の息子という立場もあって、碇司令がLCLの海から帰ってきた際に人質として意味合いもあったようね・・・」
シンジが私に話したくない、話せないと言うのは当然だ。なのに私はシンジの傷をまた開いてしまったのだ。
どうしようか・・・
どうしたら良いの?
どうすれば償えるの?
「アスカ、シンジ君は怒ってないわよ。貴方に謝りたいと言っていたわ。」
謝らなきゃならないのは私だ、傷つけたのは私なのに・・・
話し終えたミサトは急に話題を変えてきた。
「ところでアスカ、貴方シンジ君の気持ちに気付いているの? まっ自分自身の気持ちにも気付いてないんでしょうけど?」
えっ、アイツの気持ち?私の気持ち?
続く
乙です。
けど一回一回『続く』って書かなくていいと思う。
神が降臨しとるGJ
『アスカが側に居ること』それは、ごく当たり前で
僕にとってそれがずっと続くものだと思っていた。
昨日も今日も、一番に挨拶したし、明日も明後日も一年後も
まるでそれが普通であるかのよう。
だからアスカが今、ここに居る理由はいつの間にか失念してた。
それを思い出させたのが、ドイツ領事館からの電話だ。
テレビやネットなどで、世界の治安の好転を伝えているのを
最近よく目にする。僕は遠い世界での出来事などに関心を払わなかった。
でも事実として、アスカは疎開のために日本に来ている。つまり
そのニュースは、僕とアスカが一緒に居られる期間が短くなることを意味している。
アスカの居ない日常生活は、今の僕にとって、とても想像がつかない。
三ヶ月前の出来事なのに、それが遥か遠い昔のココに来る前の出来事のようだ。
だけど、アスカの居ない日常生活に戻る事は、最初から決まっていたことで
そんな事をすっかり忘れていたのをひどく後悔する。
162 :
ハル携帯:2007/06/16(土) 08:13:42 ID:???
アク禁くらったかもしれん。
ベージが表示されないorz
163 :
132:2007/06/16(土) 19:28:34 ID:???
ミサトからの思わぬ言葉は私をさらに混乱させた。シンジの私への気持ち? 私のシンジに対する気持ち?
ミサトはやさしい顔で私に言った。
「シンジ君は貴方とまっ正面から向き合うと決めたのよ。」
私はただ聞く事しかできなかった・・・
「アスカ、あなたも正直にシンジ君と向き合いなさい。気持ちのままにね」
ミサトは微笑みながら、私に言ってくれた
「正直に気持ちを伝えないと、後で後悔するわ・・・ 私とアイツのようにね。」
その日はそのまま寝てしまった。次の日はいつもの通りミサトの車で大学へ行った。
いつものように大学を終え、帰り道にふと携帯を見ると、たくさんの着信通知と1通のメールが入っていた。
シンジからだった・・・ メールを見ると、週末にシンジの引越し祝いをするので来て欲しいと書いてあった。
昨日の私の言葉には何ひとつ触れられずに、待っていると書いてあったメールを見て、シンジに謝りたいと思った。
送った返事には短く、「Yes」と打ち込んで返送した。
どうやって、シンジと話せば良いのかなと思い悩んでいたら、バスを乗り過ごしてしまった。
ちょっと失敗してしまった
その日の晩はヒカリに電話して、シンジの家に引越し祝いで持って行くものをどうしようかと、けっこう長電話してしまった。
彼女の恋人には申し訳ない事をした、ごめん! 鈴原。
164 :
132:2007/06/16(土) 20:01:30 ID:???
そして、当日の金曜。
決戦は金曜日! んっなんかミサトが聴いていた古い曲のワンフレーズが何故か私の頭をリフレインしていた。
鈴原夫妻(ヒカリカップルが二人でいる時は私はこう呼んでいる)がシンジの自宅を知らないし、私もシンジの家に行く手段が無いので、シンジが大学まで来てくれる事になっていた。
私達を迎えにきたシンジは私に小さく言ってくれた。
「ごめんね、アスカ。」
謝るのは私と言いたかったけど、鈴原とヒカリの前では言えなかった。 それに鈴原と対面したシンジは泣き出してしまい、釣られて、鈴原も泣き出してしまった。 二人とも参号機の事件以降、一度も会えなかったのだ。
二人はようやくバツが悪そうにお互いを見て、笑いあった。7年前のあいつらを見ているようなとびっきりの笑顔を見せながらね
シンジの部屋に到着すると、鈴原とヒカリもびっくりしていた。まっ私は先に見せてもらったし、ふふん♪
料理はシンジがあらかじめ作ってくれた料理とヒカリが作ってくれた料理もあり、充実していた。
一応、私もケーキとビスケットを作ってきていたので、後で皆食べる事にした。
会話は取り留めのない話ばかりで中学時代の話がメインだったが、鈴原は仕事先で昇進するという話には拍手を送った。
「シンジは今から惣流と同じ大学に行くんか?」
かなり酔ったらしい鈴原がシンジに聞いてきた、すぐにヒカリが鈴原をたしなめていた。ヒカリに鈴原は完全に尻に引かれているわね・・・
シンジは普通に答えた
「いや、ネルフの研究部に入るんだ。生体義肢をするんだ。」
聞いた私達はびっくりした! あのシンジが研究者なんてねぇ・・・
あっ、でもシンジの両親は父親の碇司令も母親のユイさんも有名な研究者だったらしいし・・・ バカシンジなんて、私はよく言ったりしていたが、シンジは成績は優秀だったんだっけ?
シンジは静かに喋りだした。
「エヴァのパイロットでネルフにいた僕は今のサードインパクト後、何かをしたかったんだ。それでトウジの足やたくさんの紛争被害者を見て、ネルフの技術を生かした義肢は出来ないと思って、研究始めたんだ。」
ううっ、私はシンジを甘く見ていた。大学で私は好きな文学に浸り、日本の大学生活を楽しんでいた。その間にシンジは自らの境遇や環境に負けずに、新しい道を見つけていたのだ。
165 :
132:2007/06/16(土) 20:23:10 ID:???
その後はひたすら、飲んで騒いだ私達。多分うるさかったに違いない、シンジの両隣の部屋の方、ごめんなさい
ベロンベロンに酔っぱらった鈴原と介抱するヒカリは私が呼んだタクシーで帰って行った。楽しい宴だった・・・と思い、私も帰り支度を始めようと思ったが、先に私にはやるべき事があった。シンジに謝らなきゃ!
シンジは汚れた皿を片付けようとしていた、私は思いきって話しかけた。
「シンジ、こないだは嫌な事を聞いてごめんなさい。」
シンジはびっくりして、目を白黒させていたけど、急にやさしい顔になって、私を見た。 やだ・・・ ちょっとかっこいい・・・
「僕の方こそごめんなさい、アスカに嫌な思いをさせてしまって。」
シンジはひとつ、深呼吸をしてから、私に言った。
「アスカ、僕は、碇シンジは6年前から、アスカが、惣流・アスカ・ラングレーが好きでした!」
びっくりする位に大きな声でシンジは顔を真っ赤に紅潮させて、一気に喋った。
シンジは私が好き・・・? シンジが私を・・・?
シンジが私?
私がシンジ?
私はシンジ?
私はシンジが好き?
私はシンジが好きなの?
い、いけない。落ち着きなさい、アスカ。
COOLよ COOLになるのよ、アスカ!
シンジは私が好きだと言ってくれた、あの時否定した私を好きだと言ってくれた・・・。
私の気持ちはどうなの?
私はシンジが好きなの?
パニックになっている私を見て、シンジは一言だけ・・・
「君の気持ちが決まるまで、僕は待つよ。」
私はひとまず、シンジの部屋を出て、タクシーで帰ってきた。
シンジの言葉が頭の中で繰り返されて、どうやってタクシーから降りて、帰ってきたのかさえ覚えていない。
なんで、シンジはいきなり私に気持ちを伝えてきたんだろ? 私はシンジにきちんと答えられるの?
続く
COOLになれと自分に言ってる時点でKOOLになってそうだがw
しかし今回もGJだぜ
GJ!!
中途半端な投下してゴメソ
単なるPCの不調だった。
とりあえず最初から送ります。
サブタイトルは 『新右衛門さん』
『アスカが側に居ること』それは、ごく当たり前で
僕にとってそれがずっと続くものだと思っていた。
昨日も今日も、一番に挨拶したし、明日も明後日も一年後も
まるでそれが普通であるかのよう。
だからアスカが今、ここに居る理由はいつの間にか失念してた。
それを思い出させたのが、ドイツ領事館からの電話だ。
テレビやネットなどで、世界の治安の好転を伝えているのを
最近よく目にする。僕は遠い世界での出来事などに関心を払わなかった。
でも事実として、アスカは疎開のために日本に来ている。つまり
そのニュースは、僕とアスカが一緒に居られる期間が短くなることを意味している。
アスカの居ない日常生活は、今の僕にとって、とても想像がつかない。
三ヶ月前の出来事なのに、それが遥か遠い昔のココに来る前の出来事のようだ。
だけど、アスカの居ない日常生活に戻る事は、最初から決まっていたことで
そんな事をすっかり忘れていたのをひどく後悔する。
電話はミサトさんに取り次いだ。そして、僕はその様子を
後ろから黙って、まるで置物の人形のようにじっと見ていた。
ただ、静かにしていれば良いだけなのに、その間の僕はずっと
カーネル・サンダースで、電話が終わるまでの間、その事にすら気付かなかった。
電話が終わると、僕はすぐさまミサトさんに質問した。
「アスカのことですよね?これからどうなるんですか?」
その言葉に対して、ミサトさんは少し躊躇した後
普段僕には見せない、とても真剣な顔つきになり静かに口を開いた。
「ちょっちね‥‥、アスカのビザの期限の更新について私的に問い合わせてみたの。
アスカから、頼まれたらいつでもできるように、準備しておいた方がいいから‥‥」
僕はそのセリフから、沢山の疑問が頭の中に浮かんだ。
だけど、それを言葉にするにはミサトさんの表情が重すぎた。
扉二枚隔てた向こうでは、今アスカが入浴している。
僕はベットに横たわりながら、初雪によって微かにかすむ夜景を眺めた。
僕の部屋にまで雪が降ってきて、朝になればきっと雪に埋もれているだろう。
それで、僕は目を覚まして僕の上に積もった雪から顔だけ出して、『冷たいな』
と独り言を洩らし、そのまま二度寝する、そこで50時間は眠りたい。
アスカが突然、居なくなってしまうかも知れないという『不安』
そして、アスカが居なくなってしまうと僕はぷっつりと
停止してしまうのではないかという気になってしまう。
『誰か、背中のぜんまいを巻いて下さい』
『不安』という言葉は『安心』という言葉の対義語であるそうだ。
アスカは僕にちっとも安心を与えてくれない。なのに、僕はアスカが
居なくなるかも知れない、と思うと不安になる。
混沌とした僕の心に問いかけてみる。地球の裏側に繋がっているんじゃないか
と思うほど深い井戸に石を投げるような行為だ。
『ぽちゃん』という音も聞こえないんだ。
不安という悪魔に取り付かれて、僕は電話を掛けた。
「じゃあ、水曜日の午前中に来てくれ」
その言葉に僕はお礼を述べて電話を切った。
僕は、玄関のチャイムを鳴らすと、その男はくわえ煙草のまま出てきた。
「よう、遅かったじゃないか」と言ったのは、クリスマスイブの前日という
大事な時間を気にしてのことだろうか?
軽い皮肉に対して律儀に謝った僕は、その事を加持さんに笑いながら指摘された。
一面に張られた窓からはちょうど富士山が見える。
それを、遮るビルは一つも無いほどの高さ。
生活感の無いと表現すべき部屋で生活している男の淹れたレモンティーを口にした。
悔しいくらい美味しかった。
「あの、色々と調べてくれてありがとうございます」
僕はかしこまりながら、今日三度目になるお礼を述べた。
「気にすることは無い、俺は君に借りを作ることが得だと判断しただけの事さ」
僕は加持さんの作成した資料に目を通した。アスカのビザの期限、期限の延長の可否
その問い合わせをした事に対する記録等。全てを頭の中に収めるべくゆっくりと読み込んだ。
セカンドインパクトの影響もあって、ビザの取得や更新が著しく困難なことは知っていた。
だけど、その期限を知らないとアスカが僕の前から突然姿を消すことが起こりうる。
それは僕にとっては、とても嫌な事だけど心の準備が出来ているほうがショックは小さい。
その資料からは、僕が三日前からの一番の疑問は分らなかった。
『なぜミサトさんは、アスカがもっと長く日本に居たいと思っているのだろうか?』
僕は、その疑問を素直にもらした。すると意外な言葉が返ってきた。
「簡単な事さ」そう言いながら煙草に火をつけ、煙を大きく上に吹きかけた後に続けた。
「彼女って、大学生なんだろ?あの年で大学生だっていうのを想像できるかい?」
14才の大学生なんてアスカ以外に僕は知らない。その事を只、頭がいいだけに思い
もっと、根本的なことに頭が回らなかった。
「例えば、君の通う中学校に一人だけ7才の子がいたら、まともに相手にするかい?
彼女は周りの人間が常に自分より年上という環境で育って、それで人間が成長する
過程で経験する様々な事がすっぽりと抜け落ちているんだよ」
僕は今の言葉を聞くまで、アスカの本質的な性質というものに全く気が付くことが無かった。
いや、気が付いてあげれなかったという方が正確なのかもしれない。実際に、気が付くだけの
判断材料はあった。だけど、それを鈍らせたのはある種の憧れのような感情で
今までアスカの虚像だけを見ていたのかもしれない。
現実のアスカは、人間関係を構築するのがかなり苦手なのかもしれない。元々僕は、アスカが
プライドの高い人間だと思っていたけど、ただ、単に自分から人に歩み寄ることが出来ないだけだとすると
すごく損な性格だ。そして、今は実際にそうなんだと実感する。
アスカが日本の中学校に通うことを、最初不思議に思っていたけど
今となっては、それが配慮なり気遣いだというのが判る。
ミサトさんとアスカの間には僕の知らない絆というものがあるのだろう。
だから、僕はドイツでのアスカがすごく気になった。
「つまり、ドイツには人間関係を築く相手がいないという事ですか?」
「家族、も含めてかい?」と煙草をもみくしゃにしながら言った。
それに答えるよりも先に彼は続けた。
「葛城が留学していたのはハンブルグの大学で、すぐ近くに住んでいたらしい。
だけど、惣流はミュンヘンの大学に通ってるんだぜ。ハンブルグとミュンヘンじゃ
日本だと北海道と九州みたいなものだ。こっから先には推測なんだが‥‥」
僕は加持さんの話を聞いて、アスカの為に自分が出来ることがあればと決意した。
ビザの期限は3月末。国連からの正式な要請があれば期限の延長は出来るらしいが
ミサトさんにはそこまで権限は無い。もし、ミサトさんにその権限があれば
『なりふり構っていられない』と言って公私混同であっても要請はしただろう。
なら、僕は‥‥
僕は2年ぶりに父に手紙を書いた、それだけが僕に出来る全て。
2年前、僕はカヲル君の通う私立の中学を受験したいと父に申し出た。
父からは、『そんな下らないことで連絡するな』と返ってきた。
それ以来、僕は父に対し何も期待しなくなった。
だけど今回諦めると、たぶんもう二度とアスカに会うことが出来なくなるかも
知れないと思った。確かに、アスカの事情を知ってそれでも諦めたら
僕はアスカに顔をあわせることが出来ない。
父上様 お元気ですか?
夕べ杉のこずえに 明るく光る星一つ見つけました‥‥
GJ
シンジが(・∀・)カコイイ!!
乙です
シンジてんぱって手紙の書き出しがおかしくなってるw
177 :
132:2007/06/17(日) 18:59:36 ID:???
その日、帰ってきた私はお風呂でシンジの顔と言葉が頭の中から消えなくて、溺れかけた上に湯当たりしてしまった。
その後はペンペンのおしりを蹴ってしまい、私のおしりもつつかれた。
痛かった・・・ でもそのお陰ですこし冷静になれた。
翌日、私は、シンジに連絡を入れた。私が昨日の晩ほとんど眠らず、(眠れるわけないじゃない!)決めた考え、この惣流・アスカ・ラングレーの一大決心! 私からシンジにデートのお誘いをする事にしたのだ。
シンジも驚いて、声が上擦っていた。私はこのデートの中で私のシンジに対する気持ちを確かめたかった。 シンジの気持ちに曖昧な返事はしたくなかったから・・・
シンジからの返事は二つ返事でOKだった。コースはシンジにお任せにした、多分、悩むんだろうな、シンジは。なんだかガイドブックやPC見ながら、悩んでいるシンジが想像できて楽しかった♪
しかし、いざデートの約束をすると、途端に私が不安になってきた。よ〜く考えてみると、私は誘われたお義理のデート?はあっても、本当に自分から行きたいと思ったデートは初めてなんだっけ・・・
あぁ〜 どうしよう〜
とりあえずは周りの計経験者に聞く事にした。最初はヒカリ、失敗した、ヒカリのとこは毎日がデート状態だった・・・ 他人のオノロケ聞かされるのが、こんなに苦痛だったなんて。親友だからこそ、腹が立つのかな?
リツコは、どうやら地雷だったらしい。「私はデートなんかした事ないわよ・・・」と怒りに肩を震わせながら、呟いていたのでさっさと逃走した。
伊吹さんは・・・ 思い出すだけで赤面するような○○なデートだった。あの潔癖症のマヤさんが・・・
次に一応、男の立場からメガネとロンゲもとい、日向さんと青葉さんに聞いた。日向さんは学生時代はひたすらガイドブックやグルメサイトを見たと笑いながら、教えてくれた。
青葉さんは自作の曲をプレゼントして、振られたらしい。泣いていた、ごめんなさい、トラウマ開いてしまって。
そして、私の同居人であるミサトに聞く事になった。
178 :
132:2007/06/17(日) 19:17:45 ID:???
聞くんじゃなかったよ・・・この人には・・・
ミサトはまず、いきなり避妊の重要性など喋りだしたから、持っていたジャ○プの角でつっこみを入れておいた。かなり涙目だったけど自業自得だ、冗談でも許してやるもんか。
まずは楽しめというお言葉は有りがたくいただいておいた。そしてミサトは私に意外な事を言い出した。
「アスカ、あなたシンジ君とのデートは何を着ていくの?」
はぅ! 実は一番私が気にしていた事をズバリ指摘してきた。この女みのめぇ〜
「私が買ってあげるわ、あなたの記念すべき初デートだもんね。」
「良いの? でも・・・」
「任せなさい〜 お姉さんに。かわいいアスカのためですもの」
ミサトは私に言ってくれた。
「私にとって、あなたは本当の妹みたいに思っているから。世話焼き姉さんからのプレゼントよ」
ママが死んで、私はセカンドチルドレンになり、日本に来た。ヒカリと家族たちのような、お姉さんや妹の関係はうらやましかった。
でも、私にもお姉さんがいたのだ、やさしく私を見てくれるお姉さんが・・・
ビールが好きで片付けが嫌いな所はあるけどね。
嬉しかった、ありがとうね。ミサト姉さん・・・。
続く
なんか和んだ。ありがとう。
180 :
132:2007/06/19(火) 09:52:36 ID:???
すいません、昨日晩に投下予定でしたが、体調不良で病室内で点滴受けていて。できませんでした。
181 :
132:2007/06/19(火) 10:43:19 ID:???
幸い、シンジとのデートまでは時間があったので、服を買いに行く事も出来た。
バーターとして、かわりの1ヶ月間お風呂掃除が押し付けられたが、シャナルの新作にガルティエのアクセサリーまで買ってくれた。
やったね!
まっちょっとミサトの後ろ姿の肩がプルプルと震えていたのは・・・気のせいにする事にした。
デートの3日前にシンジからメールが私に来ていた、どうやら何気ない会話に見せかけて、少しでも私の希望をリサーチしたいらしい。
ちょっとだけいじわるして、新しくオープンしたカフェのケーキセットが評判らしいと送ってやった。 本当は、ヒカリとよく行く定番コースなんだけどね。
そして、いよいよ当日。
ぜんぜん、眠れなかった・・・。目は冴えて冴えまくり、気分はハイ
起床から妙にせわしなく、朝のお風呂も長めに念入りに体を磨いた。
いや、その、ねぇ、期待なんかはねぇ、してない、いや本当にしてないんですよ。
やっぱり、デートするに辺り、こちらの礼儀としてねぇ、やっぱり・・・
食事は軽めにして、食前、食後に念入りな歯磨きをして、さぁ着替えましょう!
こんなにドキドキしながら、服を着るなんて何年ぶりだろう? 初めてプラグスーツを着た時以来かしら。今から考えるとセクハラよね
着替え終わって、みだしなみチェックをしたら、ペンペンに向きなおって
クルリとひと回転して、「どう?」なんて聞いてみた。ペンペンはバンザイして、「クワッ」と一言。
合格点もらえたみたい。
ペンペンに見送られて、シンジとの待ち合わせ場所へと向かった。
182 :
132:2007/06/19(火) 11:40:11 ID:???
リニアレールの駅前にあるカフェでシンジとは待ち合わせしていた。大きな駐車場がある場所で分かりやすいランドマークは駅前だったので、待ち合わせ場所にした。
カフェをちょっと遠くから覗いてみたら、シンジはシルバーフレームのメガネをかけて、何かレポートみたいなものを一心不乱に読んでいた。
あまり邪魔したくなかったので、静かにシンジが座っている席の前に座った。ようやく気付いたらしい、この鈍感オトコは。
「お、おはよう。」
「待ち合わせ場所で相手来たのに、書類読んでいるらんてサイテー、減点2ね。」
「ご、ごめん。トウジ用義足の資料見ていて・・・ ようやく昨日ネルフ病院から来たからさ。」
「鈴原のデーター?」
「うん、今度民間のある会社がトウジの為にAI制御の義足を試作してくれる事になったんだ。」
「ヘェー、良かったじゃない。でも、今日は私が相手じゃないの? シンジ?」
「あ、そうだね。ごめんね、アスカ。」
ちょっとシンジを冷やかしたけど、シンジが鈴原の為に駆け回った結果なのだろう。鈴原の義足を作ってくれるという会社には、私からもお礼が言いたいぐらいだ。
「ね、シンジ、今日はどんな予定で楽しませてくれる?」
シンジは無言で私を見ながら、ポツリと一言言ってくれた。
「今日、一段とかわいいね。アスカ」
くぅ、こいつ、できる! ちょっとドキンとしたぞ、このやろー。 KOOLじゃなくて、COOLになるのよ、アスカ。
「うん、とりあえずはちょっと見せたいものがあるからさ。車で行こうか」
シンジの言葉で二人で駅前の立体駐車場へと歩いて行く。
「ねっ、シンジ。 手つなご。」
「ええ、恥ずかしくないの?」
「デートなんだから、それらしくしないとね。それとも嫌なの?」
シンジはちょっと顔を赤くしながら、少し私に手を出した。手を繋いでから、ふと思った。いつの間に、シンジを私を見下ろす高さになったんだと・・・
男性と手を繋ぐなんて、ああ、そうか・・・ 加持さん以来なんだ。
加持さんとはだいぶタイプは違うけど、シンジと手を繋ぐとなんだか安心出来た。やっぱり私は・・・
>>180 GJ!
無理しないで体調優先で投下よろ。
自分は今の所自宅安静だが入院自宅問わず療養中ってのはキツいよなぁ…。
お大事にね。
184 :
132:2007/06/19(火) 12:05:46 ID:???
シンジの車で向かった先はあのLCLの海の中心地だった場所、かつてのセントラルドグマの直上に作られたインパクト・レリーフ。私も初めて来た、あの時以来だ。
シンジはレリーフを見ながら、私に話しかけてきた。
「アスカ、エヴァの中でお母さんにあった?」
そうか、シンジも気付いたのだ、エヴァシリーズの中に自分の母親がいる事を・・・
「離れている間にネルフの事や父さんの事、エヴァの事を知りたくない事まで知ったよ・・・」
「シンジ・・・」
「綾波は、綾波レイは僕の母さんの肉体とリリスの混じりあったものだったんだ・・・」
以前、シンジの新しい部屋で見た綺麗な女性、シンジのお母さんである、碇ユイさんが綾波レイの半分? 昔の私なら、馬鹿馬鹿しいと片付けただろうけど、あのサードインパクトを経験し、エヴァというママに守られていた私には痛いほどわかった。
シンジは泣いていた、母の気持ち、父の気持ち、を託された気持ちを思い・・・
私は背中からシンジを抱き締めて、一緒に泣いたの。もう馬鹿みたいに二人でワンワン泣いたの
「シンジ、あなたのお母さんもお父さんも私のママを罪を背負って生きろなんて、言ってないわ・・・ 」
「アスカ、僕は・・・」
「良いの、私も一緒にあなたと歩く、歩きたいの。」「ありがとう・・・ アスカ」
「ううん、私こそありがとう。シンジ」
やっとわかった、私はやっばりこの人が好きなんだ。心の底から、愛してるんだ。
ママ、私ね。ようやく愛する人を見つけたよ、ずっとずっと一緒にいたい人なんだよ。ちょっと頼りない所もあるんだけど、大事な人なんです。ママ・・・
私たちは顔を見合わせ、静かにキスをした。昔のような遊びのキスじゃない、恋人同士の甘いキスを・・・
長く長く・・・
続く
体調優先でいいぞー、と昔、
普通に病院内を歩けるくらいから、
容態悪化→
血圧急低下→
心停止→
医療スタッフ10名近くが8人の相部屋に緊急集結→
蘇生→
I.C.U送りを味わった俺が言ってみる。
G J !
体調のいい時、ゆっくり書いてくださいね
いつでも待ってます
187 :
132:2007/06/22(金) 15:34:12 ID:???
私達はインパクトレリーフを後にして、また車で走りだした。
二人とも、なんだか妙に気恥ずかしくて、顔を赤くしながら、無言になっていた。
後ははっきりと覚えていない・・・ 気付いたら、日向さんおすすめのドイツ料理の小さな料理店についていた。
派手さはないが、味は一流で楽しめた。ドイツパンやソーセージは手作りで、おみやげにいくつか買って帰った。
188 :
132:2007/06/22(金) 16:14:51 ID:???
シンジに頼み込んで、前から行きたかったショッピングモールへ連れて行ってもらった。
夏物のチェックをしたりした。途中で新しい水着を買いたくて店に入り、シンジに水着見せたら、顔を真っ赤に染めていた。
ちょっと意地悪だったかな・・・。ごめんね、シンジ
その後、私達は食事をしながら、いろんな事を話しあった。途中でビールを頼んだのが、失敗だった。
あんな事になるなんて・・・、ううっ二日酔いで頭痛い。
続く
189 :
132:2007/06/23(土) 23:03:12 ID:???
二日酔いの頭を抱えて起きたら、朝からミサトに怒られた。
どうやら、パーフェクトに出来上がった私はわざわざ送ってくれたシンジ(運転するからと飲まなかった)に絡んで、パロスペシャルからOLAPをかけて、KOしたらしい・・・
しばらくお酒の量をセーブしなくてはシンジに嫌われてしまう。恥ずかしくて恥ずかしくて、逃げ出したかった。
それからしばらくは、シンジも私もお互いに研究と学業に忙しく、なかなか会えない時間が長かった。
メールは毎日何度もしていた、でもシンジはなかなか返事をくれないのが、ちょっと悔しい。私は毎日100通は送っているのに〜
それをヒカリに相談したら、真顔で怒られた。社会人のシンジのペースと学生の私のペースは違うのだから、強要するなと言われた。
ちょっと納得できなかった。
190 :
132:2007/06/23(土) 23:09:26 ID:???
シンジが久しぶりに私の所に来てくれたのは、パロスペシャルから2週間も経った頃だった。
鈴原用の義足の試作を見に行くのに、鈴原、ヒカリと一緒に行かないかと誘われた。
なんでもアーケードゲームの開発メーカーが自分達の技術を医療部門にも使おうと立ち上げた部門で、若い人達が中心らしい。
私は二つ返事で返答した、来週が楽しみだなぁ。
シンジとお出掛けだ
続く
GJ!
192 :
132:2007/06/26(火) 17:42:19 ID:???
シンジや鈴原との約束の日が来た、私はヒカリと一緒に前に打ち合わせた通りにお弁当を作って行った。 シンジの車で大人4人はキツイかなと思っていたら、さすがはシンジ! ワゴンをレンタルしていた。
やはり、鈴原の足を心配しての事らしい。鈴原の義足はかなり優秀な物らしいが、やはり長時間はしんどいらしい。
私達は完全にお出掛け仕様の服装でシンジを待っていたのだが、シンジはスーツを着込んでいた。
そりゃまあ、そうか・・・
研究の協力してくれる所に行くのに、ラフな服装はねぇ・・・
車は第3新東京インターから第2東海道ラインを新箱根を経由して、旧横浜へ向かった。先方が横浜まで来てくれているらしい。
私とヒカリは邪魔にならないかとちょっと心配だったが、付いていく事にした。 後で中華街は連れて行ってくれるとシンジも約束してくれた。
目的地に着いて、驚いた。超有名なゲームメーカーの【イーディス】じゃないの! あのDP【デンジャープラネットYの主要開発メーカー! シンジも凄い所と共同開発してるのね。素直に驚いちゃった。
シンジが先に受付でアポイメントの確認をして、3分ぐらいで向こうの開発スタッフらしき一団が降りてきた。
若い赤毛の男性にちょっと背が高い男性とハーフらしき女性に・・・
? ? ? エエ、エ〜!
なんで、ウサギの着ぐるみがいるのよ〜!
後ろを振り返ると、鈴原もヒカリも呆気にとられた顔をしている。そりゃまあ、そうよね。
シンジはもう慣れっこらしく、少し話をしてから私達も入るように促してくれた。
ちょwwww
BREAK-AGEwwwww
部長ktkr仁村夫妻もセットwwww
tu-ka似たようなネタ考えてましたorz
132とは激しく趣味が合うヨカーン
194 :
132:2007/06/26(火) 18:08:02 ID:???
シンジと向こうの開発スタッフの話はけっこう神経伝達信号の受信デバイスの関係なんかの話をしていた。鈴原とヒカリと私はハーフの女性に連れられて、会社内を見学させてもらった。
DPの最新版をプレイさせてもらったのはラッキーだった、私は本当は【バーニングPT】の方が得意なんだけど・・・
案内してくれたハーフの女性、彩里さんが実はイーディスの社長で赤毛の開発部長仁村さんの奥さんだと、後からシンジに聞いて、びっくりした。夫婦というよりはかなりノロケの入ったカップルにしか見えなかったし・・・
でも、あんな夫婦にシンジと一緒になれたら良いなと思ったのは私だけのナイショ。
鈴原の義足は素晴らしい出来だった。
そのままで泳げるし、接続部分も特殊な人工皮膚に覆われているので、痛みも格段に減るらしい。
シンジの話ではエヴァの操縦時の脳内電気信号を検知して動くらしい、装着は簡単でプラグスーツの技術らしく、ピッタリと密着していた。
けっこう時間がかかったがシンジの予定も終わり、いざ、中華街へGO!と思っていた。
突然、シンジの携帯が鳴り、ミサトからの連結を受けたシンジが顔がみるみる変わって行った。
凍結保存されているエヴァのゲージ付近である人物達が発見されたと・・・
G J !
いつでも待ってます
196 :
132:2007/06/30(土) 03:54:50 ID:???
私達はミサトからの連絡で急いで、第3新東京へ戻った。
普段は使う事のない緊急用通路の使用許可が出ていた事が余計に事態がただ事ではない事を証明していた。
私達二人は到着と同時に待っていてくれた日向さんに案内されて、ネルフ病院内の特別ICUに向かった。
私にとっては嫌な記憶しかない場所だ、シンクロ率が落ち込み、自暴自棄になっていたあの頃の記憶が頭をよぎる・・・
ICUの前にある待合室にはリツコとミサトに冬月司令代行がいた。
リツコはいつもの様に淡々と事実から伝えてくれた、でも彼女も動揺している事が良くわかった。
シンジが先にそのエヴァのコアから表れた二人の女性を見に行った。帰ってきたシンジは顔色が悪く、言葉が出せないぐらいにショックを受けていた。
そして・・・ 私の番がきた
一応、手を消毒し、サージカルマスクを付けてからICUに入った
心電図などの生命維持機器からの信号音や人工呼吸器からの音しか聞こえない部屋は一種独特の雰囲気だった。
最初に見たベットに寝かされていた女性は・・・ 綾波レイ? と一瞬思ったが違っていた。でも、何処かで見覚えがある・・・
まさか、そんな事があるなんて・・・ 私が以前にシンジの部屋で見た写真の中で微笑んでいた女性・・・
碇ユイ、シンジのお母さんだった。というか私にはそうとしか思えなかった。
私は混乱する頭を落ち着かせようとしたが、疑問点が後から後から湧いてくる。
197 :
132:2007/06/30(土) 04:14:33 ID:???
そして、私はもう一人の表れた女性の正体に対して、言い知れぬ不安を感じた。
そちらへ行こうとする意志に反して、足は全く動かず、冷や汗が出ていた。それでも私は覚悟を決めて、もう一人の女性が寝ているベットを見た。
間違いない、ママだ。私のママがそこにいた。私を置いていなくなった・・・
そこで私は愕然とした、私はママの葬式、埋葬を見ている・・・ 私にとってのトラウマだが、その記憶は確かにある。
じゃあ、なぜ? 今ここで眠っているママはママじゃないの? ママに限りなく似た他人なの?
頭の中を渦巻く疑問に耐えきれなくなった私は吐き気を覚え、ICUを飛び出した。
私が戻るとネルフの化学スタッフ、医療スタッフなどが集まり、今回の事についてのわかった事を報告しあっていた。
シンジも私も心配されたが、少しでも情報が知りたくて、話を聞いた。
最初に聞いた話から、エヴァのコアチェックを行う為に私とシンジの現在のデータをベースにしたダミープラグを使い、初号機と弐号機を起動させようとしたらしい
しかし、ダミープラグを挿入してからも起動信号を両機が受け付けず、MAGIに強制リンクした上で起動させようとした時に異常が起こった
ダミープラグ内に充満していたLCLが消えた上にコアから異常な反応が見られ出したそうだ。
その反応はMAGIが記憶していたLCLと同化したシンジが再び表れた時と同じパターンであり、気付いたら両機のコア付近から二人の女性が裸で表れていた・・・
これがあらましだった
それだけでもしんじられない話なのに、リツコと医療班合同の調査はさらに私達を打ちのめした
198 :
132:2007/06/30(土) 04:33:37 ID:???
リツコと医療班はすぐに意識の無い女性二人を緊急治療して、意識は戻らないが生命の危機は脱した。
そしてCT・MRI・血液検査にDNA検査と今出来る全ての検査と調査を行ったらしい。
結果は・・・ MAGIによる推論も含めて89.9%まで、過去のDNAバンク内のデータと合致
二人をかつてエヴァのコアに吸収された碇ユイと惣流キョウコだと思われるとの結論だった。
シンジは顔を真っ赤にして、リツコになぜ思われるなどと曖昧な結論なのかを普段からは考えられない口調で聞いていた。
私はあのママがいなくなった時と全く同じ姿で表れたママらしき人物を受け入れる事ができなかった。
結局、その日はそれ以上の事は分からずにネルフ病院を後にする事になった。 緊急事態という事もあり、私とシンジはネルフ施設内のビジター用宿泊施設で休む事になった。
部屋についても私はただ、眠っているようにベットに横たわるママとユイさんの顔しか浮かばなかった。 遅めの夕食で用意してあったサンドイッチを食べる気にもならず、時間ばかりが過ぎて行った。
夜中になっても眠れずに、隣の部屋にいるシンジと話をしようと思い、扉に手をかけると鍵はかかってなかったらしく、扉は空いた。
部屋にシンジはいなかった・・・
私は急に不安になり、シンジを捜した。見ると通路の先にある自動販売機コーナーで人の話し声がしていたので行ってみると、シンジと冬月司令代行が二人で何かを話していた。
邪魔を為ないようにして、私は静かにその話を少しだけ聞く事にした。
199 :
132:2007/06/30(土) 04:36:58 ID:???
今回はここまで
ちょっとオリジナルに走り過ぎているかなぁと反省しています。
ここまでで物語は後半に突入、後もう少しだけ 私132の駄文にお付き合い下さい。
G.J!
ガンバレ
正直全然面白いよ
オリジナルってもオリキャラオンパレードな訳じゃ無いし
全然セーフ
202 :
132:2007/07/01(日) 22:56:34 ID:???
シンジは冬月司令代行にお母さん、碇ユイの事を聞いていた。
ただのお爺ちゃんだと思っていた冬月司令代行は実は元大学教授でシンジの両親や私のママの恩師だったなんて、人は見掛けによらないわね。
そんな話を聞いていたら、私はうとうとと眠ってしまったらしい・・・
「アスカ、アスカ。こんな所で寝ていたら、風邪引くよ。」
「ん・・・ あっ、シンジ・・・」
「冬月さんとの話を聞いていたの・・・」
「うん、途中までね・・・」
私達は言葉少なにそれぞれの部屋に帰って行った。「おやすみのキスして・・・ シンジ」
冗談半分だったけど、シンジは静かに私にキスしてくれた。嬉しかった・・・
翌朝、シンジと私は朝食と言ってもコンビニのパンと牛乳を食べていた。
あの二人の意識が戻る気配はなく、結局夕方近くになるまで何の変化もなかった。私達は一旦帰る事になった。
私はミサトの車で帰る事になった、シンジと一緒の方が良かったのになぁ・・・
部屋に戻ってから、ミサトに話があると切り出された。
「あのね、アスカ。このマンションだけど老朽化で建て替える事になったらしいの。それで話なんだけど・・・」
ええ、そんななぁ。私いきなりあの再放送でやっていたドラマのユミ・アダチみたいに「家なき子」になるじゃないの。そんな事をいきなり言われても困るじゃないの!
「それでアスカも一人暮らししてみる? 部屋なら探してあげるわよ。」
一人暮らしかぁ、それも良いけど、どうしよう。
「それとも、シンジ君の部屋に住む?」
ミサトの一言で私の脳内はシンジとのラブラブハッピー生活の妄想で止まらなくなった・・・
203 :
132:2007/07/01(日) 23:30:08 ID:???
私はミサトのエビチュアタックでようやく正気に戻った。工事開始は来月らしく、ミサトはしばらく考える時間をくれたので、私もじっくり考えてみる事にした。
大学入ってから、一人暮らし始めたヒカリにも相談してみよう。まっヒカリの場合は鈴原の部屋の隣に引っ越したんだけどね・・・
結局、その週は普通に過ぎて行った。私もシンジもあの二人の事は気になったが、連絡がなかったのでジオフロントには行かなかった。
そして、金曜日
私は大学から帰って、お留守番していたペンペンを脇に洗濯物を直していた。
最初はミサトと私の洗濯物は別々に、お互いが洗う事にしていたが、ミサトはなかなか休みがなく、洗濯物は溜る一方だったので、今は私が気付いたら、洗うようにしている。ちゃんとアイロンもかけたりしているのだ、えっへん。
ペンペンはそんな私を見ながら、お利口さんに座っている。いつもの日常だ、でも来月には無くなる光景だ、そんな事を考えていると携帯が鳴り出した。
呼び出し音はミサトの物だ、恐らくは夕食か今やっている洗濯物の事だろう・・・
無視してやろうかと思ったが、後でメンドくさいのも嫌なんで、でた。
「あ、アスカ! すぐに来て! キョウコさんが目を覚ましたわ。ついさっきよ」
ママが、いえ、ママらしき人が目を覚ました。
私はすぐにジオフロントに向かおうとしたが、ふと冷静になった。向かう交通手段がない! とりあえずは近くまでタクシーでと思っていたら、今度はシンジから電話が来た。
用件は短かった。
「アスカ、今から迎えに行くから、ジオフロントに向かう準備だけしておいて。」
それだけ言うと、電話は切れた。私もようやく、少しだけ落ち着いて、準備を始めた。
私とシンジは二人でネルフ病院へ向かった。近付けば近付く程に、なんだか怖くなってきて、心臓の音が凄いビートで聞こえてきた
でも、私はシンジの「アスカ、僕も一緒だからさ。心配しないで。」この一言で異常な興奮は消えて、落ち着いた。
204 :
132:2007/07/02(月) 00:08:17 ID:???
彼女との対面前にリツコやミサトから聞いた話では、彼女本人は自ら惣流キョウコと名乗ったそうだ。
ネルフに残っていた資料と彼女の話は全て合致し、リツコは彼女を惣流キョウコとして認識するべきだと言った。
リツコが言うには、私が彼女と会うのは最後のテストでもあるのだ。私が惣流キョウコの娘アスカであると分かるのだろうか。
私はリツコから渡されたネルフの制服に着替えて、髪型もポニーテールに変えてから、彼女がいる病室へ入った。私は極力顔を下に向けつつ、ネルフ職員のふりをして、彼女を見た。
やっぱりママの顔そっくりだ、でも・・・
「大きくなったわね、アスカ・・・ それに綺麗になったわ。」
彼女が私を見て、微笑みながらつぶやいた。
私は持っていたファイルを落としてしまい、自然と出てくる涙がこらえきれなかった。
ようやく私はかすれ声でつぶやいた。
「ママ、ママなの?」
「そうよ、アスカ・・・。あなたの母親キョウコよ」
私達二人は抱き合ったまま、泣いていた。
ママは私を見ながら、言った。
「驚いたわ、私の記憶ではエヴァ弐号機のコアとのリンク試験で途切れていたのに気付いたら、病院のベッドの上で寝ていたんだから、赤木さんとこのリツコちゃんらしき人と葛城先生の娘さんらしき人がいろいろ聞いてきたのよね〜」
うっそうだった、すっかり忘れていたが、ママは話し出すと止まらなくなるんだった・・・
まっ良いか。ようやくママと再会できたんだしね
続く
205 :
132:2007/07/03(火) 00:44:30 ID:???
私の中でもこの人はママだと確信したのは、私とママしか知らない事を知っていたからだ。 私が猿の縫いぐるみの前に持っていたお気に入りのブタさんの縫いぐるみを知っていたからだ。
対面を終えた後で、リツコに聞くとまだ体力も弱ったままなので、一般病室に移して、様子を見る事になったと聞いた。
シンジは我が事の様に喜んでくれたが、私はまだ目覚めぬユイさんを思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
ユイさんが目覚めたのはそれから1週間程経ってからだった、シンジはちょうどジオフロントにいたので、すぐに対面出来たらしい。
私もママのお見舞いで頻繁にはジオフロントに足を運んでいたが、その日は大学にいた。
そのユイさんの覚醒から一月としばらく経って、ママは自分で短い距離なら歩く事も出来るまでに回復した。
私はママを車椅子に乗せて、病院の外にある公園に連れ出した。ちょうどシンジも同じようにユイさんを連れて、公園に来ていた。
私は初めて、シンジのお母さんであるユイさんと対面した。しかし、お互いの母親同士が喋りだし、私達は呆然と見る事しかできなかった。
私はまたママの笑顔が見られるなんて、思っていなかったから、ただ笑顔で見るだけでも幸せだった。
シンジは自分の記憶にはない母親のユイさんとのコミュニケーションに当初は苦労したみたいだけど、今は普通の仲良し親子にしか見えなかった。
この風景がこのまま続けばと思い、私達はそれを信じて疑わなかった。だってようやく手に入れた風景なんだもの・・・
消えてしまって、二度と手に入らないと思っていたこの光景。
当たり前だけど、シンジも私も縁遠かったものだから・・・
続く
206 :
132:2007/07/03(火) 22:29:55 ID:???
シンジは仕事があるが、私はちょうど大学の夏休みに入り、時間があるので最近は病院にいる時間の方が長かった。
ある日、ママがリハビリ前の検査中にユイさんが私に聞いてきた事があった。
「アスカちゃん、住む部屋が無くなるという話をシンジから聞いたのだけど、本当なの?」
最初の頃はユイさんは私の事を“さん”付けで話しかけてくれていたが、今はほとんど、“ちゃん”だ。私の方はずっとユイさんだが、ある時に「お義母様と呼んでね」と言われて、驚いた事もある。
〜閑話休題〜
「あ、はい。ミサ・・葛城さんのマンションが建て替えになるらしくて、探してはいるんですけど・・・」
ユイさんは私の返事を聞くと、満面の笑みで私にとんでもない提案をしてきた。
「今のシンジの部屋に住んだらどう? シンジ一人では広すぎるらしいから。」
あまりにも突飛な提案に呆然としたけど、これって・・・
同棲の公認というやつデスカ! 私とシンジが以前の生活のように一緒に住む・・・ でも、シンジも私も・・・
「お〜い、アスカちゃ〜ん。聞いてるぅ〜?」
ユイさんの問いかけでようやく妄想から脱出出来た。 でも、母親が息子の恋人に同棲しないかなんて聞くとは思ってもいなくて、動揺を引きずっていた。
「キョウコさんとはもう話し合っていたんだけど、やっぱりアスカちゃんの同意も必要だと思ったのよ。」 なんと、ママとユイさんの間では密約が結ばれていたらしい。この二人の母親は時々というか、頻繁に子供達を驚かせる言動や計画を立てるので、すこし辟易している。
207 :
132:2007/07/03(火) 22:53:04 ID:???
ユイさんの話によると、来週シンジがまたイーディスに出張らしいので、その間に私の荷物を運び入れるという計画らしく、その計画を楽しそうに話すユイさんはまるで子供みたいだった。
ふと、そこで思い出したのはユイさんとママは退院後、どうするのかという話を思いきって聞いてみた。 ユイさんの話では、シンジの住んでいる階の下に4つ程空き部屋があるらしく、退院したらそこに住むつもりだと言う。
いつの間にか、帰ってきていたママも話に加わり、女三人でイタズラ会議を行って、打ち合わせもした。
それから、計画当日まで私はヒカリにも手伝ってもらいながら、引っ越しの準備を進めた。
ただ、引っ越しの荷物整理は遅々として進まなかった。ヒカリも私も出てくる品一つ一つで話が盛り上がってしまい、なかなか箱詰めや整理ができなかった。
シンジの部屋のカギはユイさんがシンジから預かり、それを複製したのを私が持つ事になった。
そして、いよいよXデー到来!
ニイタカヤマ ノボレ!
作戦決行の当日になった。 正直、前日から興奮してしまい、眠れなかったので朝はかなり辛かった。
シンジが出かけたのを確認してから、私は手筈通りにシンジの部屋の鍵を開け、荷物の搬入を始めた。
ユイさんがシンジの部屋に住むと騙して(ごめんね、シンジ)、準備させた部屋に私が自分の荷物を入れて、帰宅したシンジを驚かせて、同棲生活開始!
とこんな予定で打ち合わせはしていた。ほとんどの荷物はプロの手により、迅速に搬入された。
後は私が整理するだけ・・・
208 :
132:2007/07/03(火) 23:16:42 ID:???
荷物はけっこう細かく分けていたので、とりあえずはおおまかに配置して、まずは生活できるレベルの物だけを出した。
ユイさんやママは大丈夫と言ってくれたけど、やっぱり黙って、部屋に入って私がママ曰く、“押し掛け女房”という状態でいると、さすがのシンジも怒るんじゃないかと、そればかりが気になってしまい、仕方なかった。
昼過ぎには業者は帰り、一人で荷物を整理していた私はちょっとだけ眠たくなり、段ボールに寄りかかりうたた寝をしてしまった。
眠りから覚めて、気が付くと、窓の外は真っ暗。マズイわ、時間がなくなっちゃった。と慌てた私はさらに慌てさせたのは私の肩にシンジの上着がかけられていた事に気付いたからだった。
あわてて、部屋のドアを開けるとシンジが食事の用意をしていた。
「あ、アスカ。起きたんだね。今天ぷらそばが出来た所だし、先に食べようか。」
てっきり、怒られると思っていた私は拍子抜けしながらも、引っ越しで疲れた事もあり、お腹ペコペコの私はシンジの作ってくれた海老天入りの天ぷらそばを食べた。
そばを食べ終り、シンジが出してくれた食後の紅茶を横目に見ながら、私はシンジに謝った。
「ごめんね、シンジ・・・ びっくりした? 私がいて・・・」
「びっくりしたよ、誰もいない筈の部屋に電気がついて、アスカがうたた寝しているんだから」
「あのね、私・・・」
「大丈夫、詳しい話は母さんから聞いたよ。 母さんは頑張れ!と笑っていたけどね・・・」
結局、私がうたた寝している間にユイさんやママがシンジに今回の件を全て話したそうだ。
シンジも最初こそ、びっくりしていたが私の部屋の事はミサトから聞いていたらしく、私が一緒に住む事を了承してくれた。
209 :
132:2007/07/03(火) 23:32:34 ID:???
次の日からはシンジも手伝ってくれたので、荷物もすぐに片付いた。
お気に入りのマグカップなんかはシンジのカップの隣に置いたが、なんだかくすぐったいような気持ちになった。
同棲という言葉や状態には魔力があるらしく、なんだか妙にホワホワとした妙なテンションだった。
全ての荷物の整理が終わったのは二日後で、シンジと私はお祝いをした。
ミサトからもらったワインをリツコにもらったワイングラスで乾杯した。
あの頃、私はシンジと一緒にいる事が普通な自分に違和感があった。同い年の男の子と一緒に暮らすなんて、思っていたけど
実際には兄弟みたいな生活だった、私はそれで良いと思っていたし、それ以上でもそれ以下でも無かった。
あれから時が過ぎて、私の前に座っているシンジは嫌々住んでいる同居人から同棲相手になった。
あの頃のワタシが今の私を見たら、なんて言うだろう? 「バカシンジなんかと一緒なんて、嫌ぁ!」かな?
前のワタシと今の私は本質的には一緒になんだけど、やっぱり違う。
今はその違う事がたまらなく嬉しい、シンジと一緒に暮らしている生活で私はもっと変わって行けるだろう。
幸せはこんな事を言うのかな・・・
続く
GJすぐる。
仕事が速い132が大好きだ。
212 :
132:2007/07/05(木) 23:18:27 ID:???
恥ずかしながら、ベットはシングルを二つ並べる形にした。ママがダブルベットを買ってくれると言っていたが、さすがに断わった。
1週間経った今は片方のベットしか使っていません・・・ ヒカリにもミサトにも、それを突っ込まれました。
良いじゃないのよ〜!
私達のママ達の退院もあと一月後くらいになると連絡があり、そちらの準備もあれこれと始まった。
生活は別段変わった事はない、毎朝、起きたらシンジにおはようのキスをしてもらって、二人で作った朝ごはんを食べる。最近はシンジが仕事の都合でパン食のメニューが多くなったが、私は和食を練習中だ。
ダシからきちんととるのよ、煮干し・昆布・鰹ダシ・椎茸とダシだけでもかなりの技法があるので、勉強に励んでいる。
昼間はシンジは仕事で研究所へ、私は普段は大学だが夏期休講の今は病院に行き、ママとシンママ(ユイさんはこの呼び方がお気に入り)のリハビリのお手伝いと話し相手をしている。
あのサードインパクト前の使徒と戦い続けていた頃から考えると嘘みたいな毎日が続いている今・・・
でもあの頃があったから、今がある。
シンジがそう言ってくれた時にようやく私は今を受け入れる事が出来るようになった。
ちなみにおやすみのキスも当然、毎日です。ハイ
213 :
132:2007/07/05(木) 23:43:47 ID:???
料理の練習や家事の全般を一生懸命にやっているのは、シンママが退院した後の事を考えてだ
まあ、その、なんと言うか・・・ 義母さんになる人に認めてもらう為と言うか、ぶっちゃけ、そのまま最終段階まで行くためなんですよ・・・ ヒカリは来年、挙式予定だから、なんとかねぇ・・・ その頃には
ママはママでこの間はシンジがいる前で「早く、かわいい孫が抱きたいわぁ〜」なんて、言うものだから、シンジは飲んでいたお茶が気管に入って、咳き込んでしまった。
さすがにそれはちょっと早いわよ。まだシンジと二人の今の生活を楽しみたいじゃない。
そんな毎日を過ごしていた8月のある日、それは起こった。
私とシンジが買い物に行った駅前商店街で開催されていた福引をした、二人が2回ずつ出来たので、やってみたら・・・
私は残念賞のボックスティッシュと6等の「DX超合金 スーパー兄弟合体 ネオ・グレンラガン」だった。シンジは残念賞となんと、なんと! 特別賞の宮島観光ツアーのペア招待券!!
さすが、我が愛しのパートナーにして、神さま仏さま、無敵のシンジ様!
もちろん、すぐに予定に入れたわよ。二人の予定にね、ただ、何故かママもユイさんも私達が話す前に知っていたし、ネルフのお姑連合(ミサトとリツコ)もニヤニヤしながらも話を聞いていたのはなんでだろう?
まっ、良いか! お出掛け、お出掛け〜♪
シンジと一緒に泊まりの旅行だぁ〜
嬉しいなぁ〜♪
続く
「予定通りに目標にチケットは渡ったよ・・・」
「ありがとうございます、先生。続いての宮島M作戦もお願いします。」
「何、我々の暇つぶしも兼ねているし、私もあのカップルの子供は見たいからね・・・ 」
「全ては孫のために・・・」
?
1日が終わり新しい1日が始まる。
1年が終わり、また新しい1年が始まる
そして2学期が終わり、3学期が始まった。
その間の時間は僕にとって、とても短いものだった。
アスカと居られる残り僅かな時間。
最近僕は、授業中に上の空になることが多い。
その授業もどうせ脱線し、セカンドインパクトの話になるんだけど‥‥
ペンをくるくる回して物思いに耽る。
突然授業の真っ最中に、放送で呼び出しが入った。
「鈴原トウジ、鈴原トウジ至急校長室まで」
僕はトウジにアイコンタクトを送った。
『トウジ、また何か悪さでもしたの?』
『いや、今回は心当たりがあらへん』
授業中に呼び出しなんてよっぽどな事なのに
それでも心当たりがないと返された。少し心配になった。
その後、僕はトウジにしつこく問い詰め翌日の放課後
体育館で3バカ会議が開催されることになった。
「ワシ‥‥来月からな‥‥」トウジはバスケットボールをついて
ゴールを狙いながら喋り始めた。床に重低音が鳴り響く。
「英国ロイヤルバレエ学校に留学することになったんや‥‥」
ボールはリングに吸い込まれ、ボールと地面の衝突音だけが
1回、2回、3回と少しずつ間隔を短くし僕の耳に入っていった。
トウジは大きな夢を一つ叶えた。と同時に僕らは離れ離れになる。
『おめでとう』と声をかけるべきなのだろうか、と迷っていると先にケンスケが
『おめでとう』と言ったので僕は追随した。
ケンスケの方がトウジとは長い付き合いだ。
本当はケンスケの方がもっと寂しいだろう。
トウジはボールを拾い、元の位置に戻りゴールを狙った。
「ワシ‥‥ホンマ言うとな‥‥ごっつ怖いんや」その手は少し震えていた。
今度はリングにはじき返され、ボールは遠くに跳んでいった。
トウジの期待と不安は肩代わりすることは出来ない、気休めの言葉は掛けられなかった。
この事は三人だけの秘密にした。『漢の約束や!』だってさ。
トウジは他の誰にも告げず、ひっそりとみんなの前から去るのだろうか?
翌日の昼休み、僕はアスカに呼び出され音楽室に入った。
そこには、アスカのほかに洞木さんがいて少しもじもじしていた。
アスカは僕の姿を見つけると僕を指差し言い放った。
「シンジ、どうしたらヒカリとあのバレエバカがラブラブになれるか考えるのよ!」
僕は、この言葉を聞くまで洞木さんがトウジの事を好きだなんて全く気が付かなかった。
あの二人はいつもケンカばかりしているような気がしたからだ。
正直、こういうのは当人たちの問題だから回りが騒ぐことでも無い。
でも、アスカだから仕方が無いと思って、諦めて考えることにした。
来月にはバレンタインがあるんだし、と思ったところで重大な事に気が付いた。
その時には、トウジは既に日本には居ない。僕は思わずアッと声が出てしまい
その反応でバレない様にごまかした。しどろもどろになった。
僕は、トウジのお気に入りのトウシューズが破けてしまって、少し落ち込んでいることを伝えた。
「洞木さんって、裁縫とか上手でしょ。直してあげると喜ぶと思うよ!」
「それ、採用!」と何故かアスカが決定してしまった。
そうして、放課後に二人を合わせる手配を取って計画を完成させた。
放課後帰宅してから、僕は洞木さんの事を考えた。
多分、トウジは来月から海外だという事を洞木さんに伝えていない。
トウジと洞木さんの状況を僕とアスカに照らし合わせた。アスカが去ることを事前に
知らせてくれなかったら、僕はその人のことを恨むだろう。
そう考えると、僕は洞木さんに酷い事をしたと今になって後悔した。
後悔と慙愧、同情と憐憫が僕の頭を支配した。
そして僕は走り出した。
凍った歩道に何度か脚を取られながらも、走り続けた。
息を切らせながら、僕は教室の扉を開いた。
そこには洞木さんが居て、例の作業に取り掛かっていた。
洞木さんは僕の方を振り返らず、そのままの姿勢で僕に話しかけてきた。
「‥‥分っているの、本当はね。だから、それ以上何も言わないでいいよ。
だって鈴原、嘘つくの下手だから‥‥」
泣いているのだろうか?
僕はそれ以上、一歩も近づくことは出来なかった。
その場所から、飛行機の便と日時だけを伝えた。
後日、ケンスケに相談し僕たちは見送りに行かないことにした。
『漢の約束』破ってゴメン!
描きやすいところから順番に書いていったので、ここにまできて苦戦した。
筆に迷いが生じています。
一応、最後まで行きます。
投下します。
アフターEOEものです。
最初はLASに見えないかもしれません。
220 :
夕焼けと影:2007/07/08(日) 04:41:53 ID:???
『夕焼けと影』
歩いた。
アスカから遠く離れたかった。離れなければいけないと思った。
もうどれくらい歩いたろうか、いつの間にか夜が明けていた。太陽の光が海の赤さを際立たせ、はっきりと今の世界の姿を僕の目に焼き付
けた。グロテスクな世界。
赤い海のほとりを歩く。太陽の位置が高くなっていき辺りを灼熱に変えた。僕の喉は乾き切り、汗がシャツに張り付き、頭が朦朧とする。
このままでは倒れてしまうと思い日陰を探す。周囲には細かな瓦礫だけで他には何もなく、進む先に目を凝らして見ても何もないようだっ
た。それは海の反対側、内陸の方も同様だった。ためらいがちに後ろを向く。砂浜に自分の足跡が残っているだけで何もなかった。アスカ
の姿も。
風も雲も一切無かった。ただ小波の音だけが響いている。
「もう、誰もいないんだ。」そうつぶやいて着ている物を脱ぐ。濡れたシャツや下着に砂が付かないようにまとめて、海に入った。
水面に浮かびながら僕は考え始める。
(食料や水の無い、こんな状況でこれからどうやって生きていけばいいんだろう。このままじゃ、すぐ死ぬ。探すしかないのか。探しても
見つかるのか?)
思考を一旦遮るように、海に潜る。
(みんな、この海に溶けてしまった。人間だけじゃなく他の動物、もしかしたら植物や細菌なんてものまで溶けてしまったのかも知れない
。母さんは、自分をイメージ出来ればすぐに戻れるって言ってたけど、一体、いつまで待てばいいんだろう。本当に戻ってくるのかな。自
分のイメージなんてこの海の中で持てるものなんだろうか?)
水面から顔を出す。
太陽は傾きかけていたけれど、それでも日は強かった。僕はもう少しこのままでいようと思った。
221 :
夕焼けと影:2007/07/08(日) 04:56:15 ID:???
しばらくの間、水面をたゆたっていた。
不意に、強い波が来て僕の体は水の中に潜り込む。
鼻と口に水が入り慌てて水面から顔を出す。
ケホッ、ケホッ、としばらくむせている間、乾いた喉に飲み込んだ水が染み込んでいくのを感じた。
(この水、飲めるんだ。)
僕は特に考えもせず水を飲み始める。乾いた喉が潤っていく。おいしい、と思った。
僅かにあった空腹感も後押しするように僕に赤い水を飲み込ませる。喉を潤わす爽快感と腹が満ちていく満腹感で僕の心は満たされ始める。LCLの味に似てる。
忘れていた、この水の中には多くの人たちが溶けている事を。
思い出して今飲み込もうと口に含んだ水をすべて吐き出す。それでも口の中に残る味を消したくて唾を吐き続ける。
頭の中に今まで出会ってきた人たちの顔がよぎっていく。
その瞬間、僕は猛烈な吐き気と眩暈に襲われる。
海から上がりながら腹の中から何とか今まで飲み込んだ分を吐こうとし続ける。
しかし、腹の中には最初から何も入っていなかったかのように、唾液と胃液がせり上がって来ただけだった。
それでもしばらくの間、僕は吐き出そうとし続けた。
太陽がもうすぐ沈む。僕は服を着るのも忘れてただ海に沈みゆく太陽を見ていた。
海の色は赤から紅になり、空も、何もかもが紅く染まって昼間の醜い世界が隠れていく。
結局、飲み込んだ水は吐き出せなかった。何故飲んでしまったのかと後悔した。
それ以上に 'おいしい' と感じてしまった自分に嫌悪感が湧いた。
その一方で、人間は他の生き物を食べて生きて来た。なら、生き物が溶け込んだこの水を飲んでいれば僕たちは生きていけるんじゃないか、という考えも浮かんでいた。
それが一層、僕自身に対する嫌悪感を強めた。
222 :
夕焼けと影:2007/07/08(日) 05:01:32 ID:???
(自分の知っている人たち、おじさんやおばさん、トウジやケンスケや学校のみんな、ミサトさんやリツコさんやネルフの人たち、その人
たちだったモノを、いつか帰ってくるかもしれない人たちの命を僕は飲んだのか・・・)
(だが自分が今まで食べてきたモノだって他の命を奪って得たものだ。生命は他の生命を奪わなければ生きていけないのさ。)
(それに人は所詮、傷つけあい、奪いあわなければ生きていけない生き物だ。お前も、今まで他人に傷つけられ奪われ、他人を傷つけ奪っ
て生きてきたんだろう。)
頭の中で誰かのようで誰でもない、自分自身の声がする。
(だから奪ってもいいのか!傷つけてもいいってのか!他の命を!)
(でも、奪わなければ生きていけないわ。それが現実。)
(僕がみんなをこんなふうにしてしまったんだ。僕が世界をメチャクチャにしてしまったんだ。それなのに、これ以上、誰かの命を奪って
生きていていいはずないんだ。そんな権利、僕にあるはずないだろうっ!!)
(そうね。じゃあそのまま死ねば?あんたが死んだって世界は何も変わらない。今更なのよ。)
223 :
夕焼けと影:2007/07/08(日) 05:07:44 ID:???
太陽はもう半分以上海に沈み世界を更に紅く染め上げる。
世界のすべてが紅に染まる中で唯一つ、自分の影だけが黒く、まるで世界から取り残されたかのようで、それは自分の孤独を現しているように見えた。
自分が自分である限り、この影は消えない。ならいっそ、自分もこの海に、みんなのように溶けてしまいたいと思った。
その夕焼けは僕が今まで見た中で最もきれいな夕焼けに見えた。
「生命は生きている限り、他の生命と戦い、奪い合わなければいけない、それはとても孤独なこと。」
「人は生きている限り、他人と傷つけあい、奪い合ってしまう、それはとても孤独なことだと思うよ。」
太陽はもうほぼ完全に海に沈み、消え去る直前の残光を発していた。
それはとても眩しくて、まるで世界のすべてが橙色の光に包まれたように見えた。
「ぅぅぅぅぅぅぅううっぁああああああああああああああああああああっ!!!」
気づかぬうちに声が漏れ、そのまま僕は叫んでいた。
どうしようもない程のさみしさに襲われる。胸が締め付けられるように痛い。苦しい。
もう誰にも傷つけられたくなくて、もう誰も傷つけたくなくてここまで来たのに。
(それでも人は、一人では生きてはいけない。)
会いたい、と思ってしまった。
224 :
夕焼けと影:2007/07/08(日) 05:13:55 ID:???
「この海で溺れて死ねば、みんなの所に行けるのかな?」自嘲気味にそう言ってみる。
(まーた逃げるのね。アタシをおいて。)そんな答えが頭の中から返ってくる。
夕焼けが闇に変わっても、まだ寂しさは消えない。
僕は思い出していた、エヴァに乗ってきた、これまでの事を。
トウジやケンスケやミサトさんや加持さん、綾波にカヲル君、そしてアスカ。
辛い事ばかりだったけど、それだけじゃなかった事。偽りだったのかもしれないけど、楽しかった、嬉しかった。
忘れていた、大切な思い出。
みんな消えてしまったけど、ただ一人だけ。
もう戻らないかもしれないけど、たった一つだけ残るつながり。
それを守りたいと思った。もう消えないように。
僕は左頬をそっとなぞり、「戻ろう。」と呟いた。
続く
225 :
夕焼けと影:2007/07/08(日) 05:17:34 ID:???
最初ミスっちまったorz
失礼しました。
226 :
132:2007/07/08(日) 14:56:07 ID:???
活気付いてきましたね〜
しばらく投下待っていた方が良いのかな?
他の人の邪魔はしたくないしなぁ
>>132 止めるなんて言わずに、是非書いてくれ
正直酷い言い方だがあなたのは文章的には他の職人より
酷いと思うが俺はそれでも132の作品が一番好きでここに
毎日通ってるんだ。書いてくれたら嬉しいぜ
>>ハルさん
5、6冊しか読んで無いが村上シリーズ俺も大好きだ。これからも期待してるぜ。
>>夕焼けさん
正直内容は俺好みじゃないが結構内面的な事を
書いてるのに難しい言葉じゃなく簡単な言葉を使って
る所に分かりやすく説明しようとしてる努力と腕を感じて
単に自己満に走って無い様で好感だわGJ
228 :
夕焼け:2007/07/09(月) 13:51:50 ID:???
>>132さん
新参者の俺が云うのもなんですが、気にしないで良いと思いますよ。
むしろ俺の方が自重するべきで、そう言われると俺が投下しずらいです。俺の話、結構長いですし暗いですし・・・
>>227さん
ありがとう!そう言って貰えると嬉しいです。残りを投下する勇気貰いました!
続き、投下します。
229 :
夕焼けと影:2007/07/09(月) 13:57:53 ID:???
足跡はまだ残っていた。その跡を辿りながら歩いた。
歩き出したはいいけど、どんな顔をして会えばいいのかわからなかった。
僕はアスカに酷い事をしてきた。殺そうとさえした。許されないかもしれない。当然、何らかの償いをしなければならない。
でも、何をすればいい?僕に、何が出来る?きっと、何も出来ない。
それでも、行かなきゃいけない。
いちいち考えながら歩いていたせいか、夜が明け、かなりの高さまで太陽が昇ってもまだアスカの元には着かなかった。
今日も雲一つどころか風さえ無く、太陽が容赦無く照りつけて体力を奪っていく。
すぐ傍に赤い海があるけれども、今度は入る気にも飲む気にもならなかった。
やがて、砂浜に横たわる赤い何かが見えた。
アスカだ。
さっきまで熱と日射しで鈍っていた頭が一気に冴えていく。
心臓がバクバクと音を立てているのがわかる。
早く辿り着きたいと思う一方、逃げ出したい思いに駆られる。一歩一歩がとても遠く、遅く感じた。
アスカの元に辿り着いた。僕がここから去ったときと違い、アスカはうつ伏せに倒れている。アスカの長い髪は顔どころか首や耳さえ完全に隠していた。
ただ、それ以外に動いたような形跡は無かった。
230 :
夕焼けと影:2007/07/09(月) 14:06:02 ID:???
「アスカ。」呼びかけるが返事が反応が無い。もっと大声で、何度も呼びかけてみても全く反応しない。
恐る恐るアスカの体を揺さぶってみる。徐々に揺さぶりを強めていってもまるで人形のように無反応だ。
(まさか、死んだのか?!)そう思い焦った僕はアスカの顔を確かめようとする。
アスカの髪を掻き分けてアスカの肌に触れる。熱い。アスカの顔を両手で掴んでこっちに向ける。
顔は赤く染まり、吐息が荒く、苦しそうだった。
ほとんど動いた形跡が無いことから考えて、アスカは昨日今日とずっとこの炎天下の元、何も口にせず居た事になる。
とにかく何とかしないと、と思った僕はまず太陽を遮ることを思いつく。
しかし昨日からずっと歩いてみたけど日陰になりそうな物は何もなかった。
いや、あった。僕だ。僕の体を使って日陰を作ればいい。
そう思った僕は早速実行に移すが太陽の位置は高く、僕の影はアスカを完全には包めなかった。
それに、これだけじゃダメだ。何でもいいから何かを食べさせないと・・・。
海が目につく、赤い水。
しばらく躊躇したけど、海に向かい両手に水をすくえるだけすくってアスカの元に急いで戻る。
しかし、何回水をアスカに飲ませようとしてもうまくいかない。
何とかアスカの口まで持っていっても唇を濡らすだけでほとんど口に入らない。
口に入ったとしても僅かな量で、その僅かな水ですら唇から流れ出した。
「どうしたら、いいんだ。」苛立ちながら呟く。
231 :
夕焼けと影:2007/07/09(月) 14:11:43 ID:???
いい方法を思いついた。
普段ならためらうけどアスカの命がかかってる今はそんな場合じゃない。
僕は海まで行き水に口を付ける。口の中に水を含めるだけ含んでアスカの元に向かう。
両手でアスカの顔を掴んでしっかり固定してアスカの唇をこじ開けるように僕の唇を合わせる。
そしてそのままアスカが吐き出さないようにゆっくりと口に含んでいた水をアスカの口に流し込んだ。
うまくいったみたいで咽る様子も無かったので僕はまた海に向かう。
そうして四、五回ほど水を飲ませていると水が逆流してきたので慌てて唇を離す。
アスカは少し咽ていたけどすぐに収まって、顔色も少し良くなり吐息も穏やかになっていた。
僕は掴んでいたアスカの顔をゆっくりと下ろして立ち上がり、再びアスカに日陰を作った。
何度か倒れそうになりながらも何とか持ち直し、やがて世界がまた紅に包まれた。
夕焼けは相変わらず綺麗だったけど、昨日よりは寂しくは無かった。
太陽が完全に沈むまで、僕は太陽とアスカの間に立ち続けた。
232 :
夕焼けと影:2007/07/09(月) 14:17:03 ID:???
暗闇が辺りを包み始めた時、僕はアスカの様子が気になってアスカの頬に触った。
コップ数杯分の赤い水と、僅か数時間の間だけ太陽を遮っていただけだけれども、熱は引いていた。聞こえる吐息も穏やかになっていた。
僕は少し安心してアスカから離れた所に座る。
(僕は正しかったんだろうか。アスカに赤い水を飲ませてしまった事。僕自身、また少し飲んでしまった。もう、慣れちゃったのかな。他の命を奪ってしまうことに。)
今度は誰の顔も浮かばなかった。
(僕には生きていていい資格なんて無い。アスカの傍に居ていい資格なんて無い。それでも・・・)
死にたくない、って強く思ってるわけじゃない。寂しいってだけなのかもしれない。それでも・・・
(生きていたい。ここにいたい。)
あの夕焼けを見た時から、僕は強くそう思ってしまっている。
僕は立ち上がると赤い海に向かって歩き出す。両手で水をすくい上げる。
「みんな、ごめん。」
そう言って、自らを禊ぐように、自らで穢すように、僕は手の中の水を一気に飲み干した。
233 :
夕焼けと影:2007/07/09(月) 14:25:11 ID:???
しばらくすると疲労感が一気に襲ってきた。
考えてみれば一睡もしないで、口にしたものはあの赤い水だけでここまでやってきたんだった。
当然だった。よくここまで持ちこたえたもんだと思った。
心は達成感でいっぱいだった。仰向けに大の字で寝そべって顔をアスカのほうに向け、
「おやすみなさい。」とアスカに言った。
そしてそのまま心地よい眠気に誘われて僕は眠りに落ちていった。
曖昧な意識の中で、何かが動く気配と声を聞いた気がした。
起きた。
まだ日射しは柔らかく、夜が明けてからそう経っていない事がわかった。
起き上がろうとする。痛い。全身に針で刺されたような痛みがした。腕を見ると皮膚が赤かった。日焼けだった。
筋肉痛も併発したらしく起き上がるのが辛い。
アスカを見る。
相変わらずうつ伏せだったけど、昨日とは微妙に位置が違っていたし、砂の形跡からもアスカが動いていたことがわかった。
僕は立ち上がり、海に向かった。水を飲み、顔を洗った。腕と顔にやたらと水が染みた。
アスカの元に向かう。昨日と同じように日射しを遮断する。
まだ日が低いおかげで僕の影はアスカの体をほとんど覆うことが出来た。
日焼けで痛んだ皮膚に直射日光は辛い。暑さと痛みで朦朧とする中で、何とか楽をしようと身体の向きを変えたり、アスカが影から出ないように太陽の位置に合わせて動いたりする。
長時間立ち続けなければいけないのも辛くて、しきりに足を動かしてみたり、フラミンゴみたいに片足で立ったりしていた。
倒れそうになるので途中で何度も水を飲みに行った。
そのまま海に飛び込みたかったけどここは我慢して、日射しが直接当たる顔と腕だけ水を浴びて戻る。
ようやく辺りが夕闇に包まれる頃には僕はクタクタで、何とか気力だけで立っている状態だった。
夕焼けは相変わらずだったけど、寂しさより疲労感や達成感を際立たせた。
ようやく日が沈む。なんだか昨日より疲れた気がする。
234 :
夕焼けと影:2007/07/09(月) 14:31:01 ID:???
そういえば昼の間、アスカは全く動かなかった。
「アスカ。」呼びかけても反応しない。
寝てるだけかもしれないけど何か心配だったので、念の為アスカに水を飲ませようと思い昨日と同じように水を口に含んでアスカの顔をこちらに向ける。
気持ちに余裕が出来たせいかアスカの唇が妙に艶っぽく見えた。
ダメだ。変な気持ちになってきた。振り払うように目を瞑り一気に唇を合わせて水を送る。
が、すぐに逆流してきた。恐る恐る目を開ける。
アスカの目が開いていた。
続く
235 :
夕焼けと影:2007/07/09(月) 14:36:38 ID:???
今日はここまでにします。
続きは明日のだいたいこの時間に投下するつもりです。それでは。
236 :
132:2007/07/09(月) 23:14:24 ID:???
旅行は私とシンジの予定を確かめあった結果、1ヶ月後になった。
楽しみだ、たしか有名な神社があって、鹿がたくさんいるそうだ。
ガイドブックを買ってきて、いろいろ調べて、計画を立てるのがなかなか楽しい。
でも、シンジにガイドブック10冊は買いすぎだと言われてしまった。良いじゃない、それぐらい。
そんな事を毎日繰り返していたが、目下の悩みは最近の天候だ。毎日雨ばかりでせっかく干して出かけた洗濯物も帰宅すると濡れている事が多くて、手間ばかり増えている。
そこで最初のうちはコインランドリーに行っていたが、近場にないし、面倒なので、乾燥機を購入する事がお互いの合意のもとに決まった。
ただ、シンジは社会人で一応給料が毎月あるが、私は3ヶ月に一度、ネルフから支給されているお金しか無い。先月支給はあったんだけど、ちょっと使ってしまって・・・ 新色のマスカラにリップ、夏服に水着・・・
シンジに正直に話したら、「ある時払いで良いよ」と言ってくれた。
ごめんなさい、反省しています。
週末に乾燥機を買いに行く事を約束して、ついでにシンジの部屋着も買う事になった。
さすがに昔みたいに“平常心”なんてタンクトップは着なくなったが、シンジはあまり服装に頓着がある方ではないので、気にはなっていた。
私が全て見立ててあげると決めたので、また週末の楽しみがひとつ増えた。
237 :
132:2007/07/09(月) 23:38:12 ID:???
最近は用事が無い時は、ほとんどネルフ病院でママやユイさんのお見舞いばかりだったので、二人だけのために何かするという事が少なくなっていた。
でも、部屋にいる時はしっかり甘えているのよ。私は
そんな毎日を過ごしていたある日、私は夢を見た。
哀しそうな目で今の私を見ているプラグスーツのあの頃の私・・・
「シンジと一緒で幸せなの? 大嫌いじゃないの?」
あの頃の私はそう、今の私に問いかけてきた。
答えようとした瞬間、足元が崩れて、まるで奈落の底に落ちていくような感覚を味わった。
ふと、気付くと前にシンジが立っていた。私はシンジに駆け寄ったが、シンジにはまるで私が見えていないように、反応しなかった。
シンジは誰かと楽しそうに話して、笑っている。私に見せてくれるあの笑顔だ。でも、私はそれをただ見るしか出来ない、テレビドラマを見ているかのように、向こう側にある風景を見ているような感覚・・・
なんだか、胸に大きな穴が空いたような、哀しくて耐えられない気持ち。
私は泣きながら、シンジに触れようと、話しかけようとしたが、出来なかった。
「アスカ、アスカ!」
シンジの心配そうな顔でその悪夢は終わった。
うなされて、泣き出した私を見て、シンジがびっくりして起こしてくれたのだ。 夢だったとホッとした私、気付くと寝汗で汗だく、しかも泣きじゃくったせいで酷い顔だった。
心配したシンジの勧めでシャワーを浴びる事にした私は浴室に向かった。
なんで、あんな夢を見たんだろう。
そんな事をボンヤリと考えながら、熱いシャワーを私は浴びた。
続く
238 :
132:2007/07/09(月) 23:40:57 ID:???
終盤という事で最初から自分で読み直していたら、なんだか恥ずかしくなるやら、情けなくなるやらでかなり落ち込んでしまいました。
書く事自体止めようかとも思いましたが、初めての作品で逃げるわけにも行かないと、踏ん張って書きました。
GJ過ぎるぜあんたら
あんたらのSSで毎日の研究室の徹夜続き苦行に耐えれてる俺が居る。これからも頑張って下さい
240 :
夕焼けと影:2007/07/10(火) 12:55:12 ID:???
「んぐむぶっ?!」
唇と唇の隙間から水が噴出する。慌てて唇を離す。
気道に入ったらしく僕がしばらく咽ている間に、アスカは何度か唾を吐いた後、身体を起こそうとする。
その動きはゆっくりで、痛みを堪えながら動いているように見えた。
やがて上体だけ起こした状態でアスカは僕と向き合う。
あまりに突然だったので、僕の頭の中は真っ白になっていた。
アスカは嫌悪感で一杯という表情だった。
アスカと目が合う。
その瞳は怒りで満ちていて、目だけで人が殺せそうだと思った。
僕はすぐにでも目を逸らして逃げ出したくて仕方なかった。
(逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ・・・)
頭の中で必死に唱え続けて、何とか目だけは逸らさないようにする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
異様な空気が流れる中で何とかさっきの状況だけでも説明しようとするけど言葉がうまくまとまらない。
僕の口から「あ・・・。」と、言葉になってない言葉が漏れた。
「さっきの・・・何?」先に言葉になっている言葉を発したのはアスカだった。
まとまらない頭で何とか言葉を紡ぐ。
「あ、アスカが・・・、倒れてて苦しそうだったから・・・、水を飲ませようとしたんだ。コップも何もなくて・・・、手ですくってもうまくいかなくて、・・・だから・・・その・・・く、口移しならうまくいくと思って・・・。」
しどろもどろになりながら言う。アスカからはもう目どころか顔も逸らしてた。
「それで・・・、水はあそこから・・・」「あっそ。」僕の言葉を遮るように強い口調で、掃き捨てるようにアスカが言う。
そしてそのまま、また痛みを堪えているようなゆっくりとした動作でうつ伏せに寝転んだ。
僕の心は早くも折れかけていた。さっきまであった心地よい肉体的な疲労感は気持ち悪い精神的な疲労感に取って代わられていた。
「もう、寝よう。」
241 :
夕焼けと影:2007/07/10(火) 13:02:44 ID:???
陰鬱な気分で目が覚めた。
日射しの感じからして大体昨日と同じくらいの時間だろう。昨日と同じように海に向かい水を飲み顔を洗う。
相変わらず雲どころか風さえない。それが僕の心を更に沈ませた。
とぼとぼとアスカの元に向かい昨日と同じように立つ。昨日のように身体の向きをあまり変えたりはしなかった。
変えてもアスカが視界に入らないようにしていた。
暑さと痛みで頭が朦朧とするけど陰鬱な気分が薄まるのはちょっとした救いだ。
モゾッ。
後ろで何かが動く気配がする。言うまでも無くアスカだ。
モゾッ、モゾッ・・・
後ろでアスカが動くたびに言い知れない緊張感に襲われる。背中に力が入り、流れる汗の量が多くなる。
(何・・・してるんだろ?)気になったけど見る勇気が無い。でもそろそろ時間が経ったから影の位置を確認しなきゃ・・・
「アンタさ・・・」
ビクッとして思わず全身が固まる。
「何してんの?」
僕はゆっくりとアスカの方を向く。アスカはうつ伏せからしゃがみ込むような体勢に変わっていた。俯いていて表情はわからなかった。立ち上がろうとしている?
「だから、何やってんのって聞いてんのよ。」
「・・・アスカが日に当たらないように、・・・影を作ってる。」
・・・・・・・・・・・・・・。沈黙が流れる。アスカが動く音と波の音だけがする。
たぶん、返事は無い。それに沈黙が辛かったから太陽に振り返ろうとした。
その時、
「バッカじゃないの?」
アスカが散々、僕に言ってきた言葉だ。なんだか懐かしくって、嬉しくなった。
いい意味の言葉じゃないけど、無視されるよりはよっぽどよかった。
「余計なことしないで。」
拒絶の言葉。でも・・・、
「ごめん。」
それだけ言うと僕はアスカが影に入るように移動して、太陽と向かい合う。もう陰鬱な気分も変な緊張感も無くなっていた。
242 :
夕焼けと影:2007/07/10(火) 13:15:26 ID:???
もうすぐ日が暮れる。
後ろではアスカが僕の影を避けようとしながら、何度も立ち上がろうとしていた。僕はアスカが影からはずれるたびに移動した。
「アンタ、アタシをバカにしてんの?」
「違う。」
「満足に立てないアタシを哀れんで、庇って、優越感に浸って居たいだけなんじゃないの?」
「そうかもしれない。けどきっと違う。」
「それとも・・・」ただでさえ低かったアスカの声のトーンが更に下がる。
「それで償ってるつもりなの?アタシに。」
「・・・。」
「・・・なら、ほっといてよ。何もしないで」
「・・・。」
沈黙。アスカが立とうとする音と、波の音だけがする。
「・・・アスカは、何で立とうとしてるの?」
「・・・。」
なんとなく理由はわかる。僕の助けを借りたくないんだ。
僕はアスカの左腕の下から右手を入れてアスカの背中をつかむ。そしてそのまま一気に立ち上がる。僕がアスカに肩を貸している格好になる。
「ちょっ、いきなり何すんのよ!離しなさいよ!」アスカが抵抗する。無視する。
「離してよ!離して!離せ!離せ!離せっ!!離せっーーーーー!!!」
立つこともままならないのに何処にそんな力があるのか、凄い力でアスカは僕から離れようとする。
左腕が暴れ回り僕を殴ってきたり引き離そうとしたり首に巻きついて締めようとしてきたりする。
すぐ近くでわめかれるので耳が痛い。それでも構わず僕は海に向かう。アスカは必死に抵抗するのでそのうちバランスが崩れて僕とアスカはお互い向かい合う格好になる。
アスカは嫌悪感と憎しみで一杯という表情だった。お互いに目が合う。
アスカの瞳はまるで、殺してやる、と言っているようだった。
それでも、今度は何故か、僕は恐いと思わなかった。
目が合っている間、お互い瞬きすらしなかった。アスカの抵抗は止んでいた。
どれくらいの時間が経っただろう。先に目を逸らしたのはアスカだった。
アスカはそれから何も言わず、何も抵抗しなくなり、僕達は海に向かった。
僕は今どんな顔をしているんだろう。今の僕の顔を見たらきっと誰もが狂ってると思うんじゃないだろうかと歩きながら思った。
波打ち際でアスカを離す。完全に離れる間際、アスカは小さく「気持ち悪い。」と呟いた。
同感だと、僕は思った。
243 :
夕焼けと影:2007/07/10(火) 13:21:22 ID:???
アスカは結局、水を飲まなかった。
僕はまたアスカに肩を貸すと元居た場所よりも少し海に近い場所でアスカを離した。
「ずっと、このまま飲まないの?」
「・・・。」
「じゃあアスカが気を失っている間に、また口移しで飲ませるけど、それでもいいの?」
「イヤ・・・。」首を横に振るアスカ。
「そうだ。僕が手ですくってくるからそれを飲みなよ。」
僕は両手を引っ付けて杯を作りアスカの前に腕を伸ばす。
アスカが同じように杯を作り、僕の作った杯の下に腕を伸ばす。
「それを、ここに入れて。」
「わかった。」
僕はうなずいた。
244 :
夕焼けと影:2007/07/10(火) 13:35:51 ID:???
続く
入れ忘れた。今日はここまで。
gj言ってくれた人ありがとう。
245 :
夕焼けと影:2007/07/12(木) 18:29:20 ID:???
それから三日が過ぎた。
相変わらず雲どころか風さえ無かった。
僕の考えが正しかったのか赤い水を飲んでいるだけで僕たちはまだ生きている。
空腹感は全く感じなくなった。
それと同時に、今のところ口にしているのが赤い水だけのせいなのか、便意どころか尿意すら催すことは無かった。
一日数回ガブ飲みする僕ですらそうなんだから、一日一回だけしか飲まないアスカもそうなんだろう。
僕はいまだにアスカと太陽の間に立ち続けてる。
僕の肌は今では健康的な小麦色になっている。
日焼けの痛みはもう全くない。
一日中、日に照らされている割にはそれほど焼けていない気がする。
一方、アスカは僕が日光を遮断しているせいか、それともドイツ人の血のせいなのかまだ肌は白いままだ。
あれ以来、僕とアスカは話してない。
僕はアスカに常に背を向けて立っていて、アスカも僕なんて居ないように振舞う。
アスカに赤い水を運ぶ時も、アスカが杯を作っている限り僕が水を運び続けるという暗黙のルールが出来上がっていた。
アスカは無闇に僕の影から出ようとはしなくなったけれど、ずっと一人で歩けるようになろうとし続けていて、今では一人で立って二、三歩ほど歩けるようになってる。
身体の痛み自体、無くなってきてるみたいだ。
この調子だとすぐに僕の助けも要らなくなるだろう。すごい執念と回復力だ。
日が沈んでからしばらくの間、僕は探索、と言うよりは散歩をするようになった。
この時間からだと夜にはちょうど目が慣れてきて、月明かりだけで辺りの様子は大体見える。
残念なことに、まだ何も見つけれてはいないけど・・・。
246 :
夕焼けと影:2007/07/12(木) 18:34:49 ID:???
さらに数日が過ぎた。
天候は相変わらずだった。
アスカはすでに海まで一人で歩けるようになっていたけど日中は変わらず僕の影の中に居る。
ただ、やっぱり僕たちの間に会話は無かった。
一方、僕の方は、廃墟群を見つけた。
今にも崩れそうなところばかりでとても住めそうにはないけど何かが出るんじゃないかと期待できる。
パラソルみたいな太陽を遮るものが見つかったらめでたくお昼の御役目御免だ。
そうなれば、もっと探索に時間をかけられる。
僕たちの気持ちは離れたままだけど、それぞれに希望が見えてきた。
アスカとのつながりは元に戻りそうもないけど、これはこれでいい気がしてた。この時点では。
いつものように探索に出かけた。
夕闇が完全な夜になってからしばらくして僕は違和感を感じる。
(暗すぎる。)空を見ると月が何処にもなかった。
(そうか、今日は新月なんだ。)危険なので僕は探索を中止して戻ることにした。
戻ってくるとアスカの気配が無かった。アスカがいつも寝てる辺りを探してみたけど見つからない。
ジャボッ。
波の音に混じって水をかき分ける音がする。嫌な予感がした。もっとよく聞こえるように耳を澄ます。
ジャボッ。
(こっちだ。)音の聞こえた方へ走る。
新月の夜の闇は深くて、何も見えない。
ジャボッ。
音がさっきより大きく聞こえる。方向はこっちであってる。僕は海に目を凝らす。海上を動く影がうっすらと見えた気がした。
(あれだ。)影は海をさらに進もうとしているように見えた。僕は服が濡れるのも構わず海に入り影に向かう。
こっちに気づいたのか影の動きが止まった。影が振り返ったように見えた。
247 :
夕焼けと影:2007/07/12(木) 18:40:22 ID:???
「アスカッ!!」僕は叫びながら影に向かう。
胸まで浸かり、ようやく影に追いつく。
顔は見えないが影の形からアスカだとわかる。
もっと影に近づく。
よく見えないが威圧されてるような雰囲気だけが伝わってくる。
近づいてアスカの肩をつかむ。
アスカの顔をはっきりと見る。
人形のように無表情で、目だけが大きく開かれている。
その瞳には強い、それでいて方向の定まっていない感情が渦巻いているように見えた。
前に見た殺気立ったものではなく、何か得体の知れない迫力があった。
狂ってる、と僕は感じて、あの時の僕はこんな瞳をしていたのかと不意に思う。
瞳に異様な迫力を感じたのは一瞬で、アスカの瞳はすぐに、新月の闇よりも光を感じさせない、死んだような瞳になっていた。
「・・・っ何っ、してるんだよっ。」ここまで必死だったので息を切らしながら僕は言う。
「別に。ただ水浴びしていただけよ。」そう言ってアスカは陸に向かいだした。
「何でプラグスーツのままなんだよ。」
「脱ぐのがめんどくさかっただけよ。」
「めんどくさいって、プラグスーツが濡れたまんまでいるのは気持ち悪いじゃないか。砂だってつくし。」
「身体が乾くまで待つのがだるかったのよ。待ってる間にアンタが帰ってくるかもしんないし。」
「・・・なんでこんな遠くまで来たんだよ。」
「アンタに裸を見られたくなかったから。最初はプラグスーツ脱ぐつもりだったのよ。」
「でも・・・、」
「現にアンタ、アタシを探してここまで来たじゃない。それも服のまんま。」
アスカについて行く形で僕も陸に向かう。アスカの表情は見えない。
「これは・・・」
「しつこいわね。あんたが何勘違いしてるんだか知らないけど、ただそれだけよ。」
納得なんて出来ないけど、これ以上、何を聞いても無駄なんだと思った。
アスカは髪の濡れた部分を少しの間絞っただけで、すぐに砂浜に倒れこんだ。
僕はアスカが見える位置に座り込む。濡れた服の感触と張り付く砂が気持ち悪い。
さっきのは本当にただの水浴びで、一瞬見えた異様な瞳も気のせいだったと思えてきた。
(何も、わからないや。)
アスカが何を考えているのかわからなかった。ただ、このままじゃダメなんだと、漠然と感じていた。
248 :
夕焼けと影:2007/07/12(木) 18:45:55 ID:???
夜が明けた。
あれからアスカがまた海に行くんじゃないかと心配だったり服の感触が気になったり、他にもいろいろ考えてたせいでほとんど眠れなかった。
眠気を抑えながら水を飲み顔を洗う。そしていつものように影を作る。アスカはまだ寝ているようだ。
僕はこれからどうするべきか、昨日の続きを考え始めた。
後ろで動く気配がした。アスカが起きたんだ。
僕は大きく深呼吸して、今出来る精一杯の笑顔を作り、アスカの方に振り向いて、言った。
「おはよう、アスカ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
アスカは上体を起こして頭をボリボリと掻いていたが、手の動きが止まった。何が何だかわからないって顔をしている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
間が辛い。
自分の顔が引きつっているのがよくわかる。
やがて、
「アンタ、なんか気持ち悪いわよ・・・。」とアスカが言った。
僕の顔は引きつったまま凍りつく。その顔のままゆっくりアスカに背を向ける。
(失敗だ。)泣きたい気分だった。
後ろでまたボリボリと頭を掻く音が聞こえ始めると、はぁ〜、とわざとらしい溜め息が聞こえてきた。
そして、
「おはよう、シンジ。」投げやりっぽい口調でアスカが言った。
「あのさ、服、気持ち悪くない?僕もまだ乾いて無くってさ・・・。」
「そうね。」面倒くさそうにアスカが言う。
「そうなんだ・・・。」会話が続かない。
「あのさ、アスカが水浴びしたいなら僕に言ってよ。アスカがいいって言うまで後ろ向いてるからさ。」
「そんなのアンタが覗かないって保証がないじゃない。」
「覗かないよ。」
「どーだか。」
「・・・。」会話が続かない。
続く
「ところでさ、アンタそれ何?」
普段持ち歩かない紙袋の束を指して言った。
「ああ、今日はバレンタインデーだからね」
「何、そのバレンタインデーって?」
「元々はね、女の子が好きな男の子にチョコレートをあげる日。
だけど、最近ではね親しい友人とかにも普通にチョコのやり取りがあるし、
女の子が別の女の子に渡しても特に変な意味とか無いんだよ」
台所を掃除していたとき、僕はアスカが昨日チョコレートを
作っていたんではないかと勘繰っていたので少し落胆した。
「チョコって、クラス全員に渡したりする物なの?」
「まさか、そんなわけ無いよ」
「アンタってさ、紙袋が必要なほど人気者だったっけ?」
失礼な質問だったけど少しなんかホッとした。
「カヲル君ってさ、この辺でも有名な美少年なんだよ。
昔はカヲル姫って呼ばれてたくらいにさ、で、私立の学校に通ってるだろ。
それで、皆僕に渡してくれって頼むのさ」僕はそう言ってさらに続けた。
「断るのも大変なんだ。一つ受け取ったら全部受け取らなきゃならなくなるし‥‥」
それから、僕は2月14日のチョコレートの流通の仕組みを説明した。
受け取ったチョコは、カヲル君一人では食べられないから
結局僕とミサトさんで分ける事、それをさらに、僕から青葉さんやマヤさんに
送ること、日向さんはミサトさん経由でしか受け取らないこと等。
「他人宛のもらって、うれしかったりすんの?」
「そんなわけ無いよ、僕宛の一度も貰った事無いんだよ。
『本命』はハードルが高すぎるし『義理』は別の意味で貰えないんだ。
だってそうだろう、あげてる方なんだから」
僕がそう言うと、アスカは鞄から何かを取り出した。
「アンタも、つくづく果報者ね。初めての相手がこの私だなんて」
「わーぃ、『義理』でも嬉しいや」僕がそう言うと、アスカは鞄で僕を張り倒し
僕は地面にキスをした、埃の味がした。
「『お情け』チョコよ!このバカシンジ」
僕が立ち上がったときには既にアスカの姿は見えなかった。
今回は異常に短いんですけど、疲れたから手を抜いたわけではありません。
なぜなら、1ヶ月以上前に書き上げていたから。
最近はプライベートが忙しくて、板を覗くのも疎くなっているけど
既に完成はしていて、後推敲だけという状態なんで近日中に完結します。
夕焼けさんGJ!
ハルさんGJ!
出勤前にいいもの見ました。
続き楽しみにしています。頑張って
253 :
132:2007/07/13(金) 13:27:20 ID:???
普段通りの毎日を過ごしていたある日、その連絡は突然届いた。
ママとユイさんの容態が急変したと連絡を受けたのだ、私達は急いで、ジオフロントのネルフ病院へと向かった。
病院に到着して、病室へ行くと、ママもユイさんも酸素吸入に薬物を点滴されていた。
昨日まで、元気でリハビリをして、いつ退院しようとか皆でどんな所に遊びに行こうとか話しあっていたのよ・・・ なんで、どうしてよ!
リツコに呼ばれて、私達は説明を受ける事になった。
「二人の体は急激に衰弱しているわ、本来では考えられないスピードでね。おそらくは二人の身体を保っていたATフィールドの弱体化と共に、身体組織の崩壊が進んでしまったようね。」
「リツコさん・・・ 理由はどうでも良いんです。母さんやアスカのお母さんが助ける事は出来るんですか。」
「難しいわね、最初にあの二人がEVAのコアから出現した時にも言ったわね。体内組織の一部が明らかに人間の体組織とは違いがあると・・・」
「それは聞いてるわよ、それとどうゆう関係があるのよ! ママの容態が変わった事と!」
説明は雲を掴むような観念的な説明ばかりでいい加減に焦れてきだした頃にシンジが喋りだした。
「リツコさん、母さん達を助ける事がたとえ数%でもある方法はないんですか?」
「無い事はないわ・・・ ただし、奇跡と呼べるぐらいの成功率しかないのよ。」
「それでも良いんです、どんな方法なんですか?」
254 :
132:2007/07/13(金) 13:55:08 ID:???
私達が説明されたその方法は想像を越えていた。
私達の細胞組織から取り出したヒトES細胞を培養増殖させて、ママ達の体に注入し、体内組織の崩壊防止と再生を促すという治療方法だった。
それを聞いた私達はすぐに承諾した、一刻でも早く苦しむママ達を助けたかったから・・・
リツコも私達の気迫に負けたのか、渋々ながら承諾してくれた。彼女がなぜそこまで嫌がるのか、私には分からなかった。
その晩、一応帰宅した私にミサトが話しをしてくれた。
「リツコね、レイを・・・綾波レイの一件以来、ネルフ内でのクローン関連の研究を全面ストップさせていたのよ。二度と命をもて遊ばないように・・・ そう言ってね。」
綾波レイ・・・ 優等生、ファーストチルドレン。あの子はユイさんとリリスの混じりあったクローンだった。あの頃は本当に気に食わないヤツだったけど、彼女の存在がなかったら、たとえ数%でもママ達が助かる可能性自体がなかったのかも知れない。
そう考えると、私は彼女に感謝せずにはいられなかった・・・ あなたが生きた事が、証がママ達を助けるためのキーになってくれるかも知れないと・・・
次の日、私達はネルフ病院の特別処置室で体内細胞の提供処置をした。脊髄の内の骨髄液の採取と皮膚組織の採取を行った。
麻酔で痛み自体はなかったが、そんな自分の痛みよりもこれで助かって欲しいというその気持ちでいっぱいだった。
細胞培養には、早くても4日はかかると言われた私達にはそれからの4日間は恐ろしく、長く辛い時間だった。
そして、当初の予定より2日も遅れたその日、ついにES細胞治療の開始される日が来た。
無菌ICUの窓ごしに見るママとユイさんは衰弱した姿のまま、目をさまさなかった。
知らず知らずに私は泣きながら、神様に祈っていた。ママをユイさんを助けてくださいと・・・
そんな私をシンジは優しき抱き締めながら、「大丈夫だよ、リリスさんや皆を信じようよ、母さん達は必ず治るよ・・・」と言ってくれた。
続く
255 :
夕焼けと影:2007/07/13(金) 18:48:28 ID:???
さらに数日が過ぎる。
天候は相変わらず。
廃墟からは結構いろんなものが出てきた。
でも使えそうなものは今のところ、水筒、ライター、電池、カッターナイフ、懐中電灯ぐらいだ。
懐中電灯を発見したのは僕にとってちょっとした革命だった。
これのおかげで月の光の届かない廃墟内の探索がだいぶ楽になった。スペアの電池もあるので当分は使えそうだ。
一方、僕とアスカはというと、続かないながらも何とか会話はしてる。
「おはよう、アスカ。」
「おはよう、シンジ。」
「前に廃墟を見つけてそこを探索してるって言ったよね。昨日もさ、行って来たんだ。それで廃墟の一つに入ったらさ、いきなり、行こうとしてた場所の天井が崩れてきてびっくりしたよ。もう少し進んでたら危なかったよ。」
「そっ。」
「・・・。」この素っ気無さ、綾波と会話してるのを思い出す。ただ違うのは、
「アンタん所にも崩れたらよかったのに。」たまに辛辣な言葉を言われることだ。
「そうだね。」何故かそう答えてしまった。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
以前の僕なら少しは反論して口ゲンカになっていたけれど今の僕はそういった言葉を素直に受けてしまう癖が出来てしまっているようだった。
だからだろうか、会話が続かなかったりぎこちなかったりするのは、
「つまんない。」アスカが呟いた。
256 :
夕焼けと影:2007/07/13(金) 18:59:45 ID:???
傘を見つけた。
黒い傘だ。
骨組みは折れていて、布にも穴が開いていてボロボロだったけど何とか傘として使える形にまで直した。
アスカを隠すには小さすぎるけど、僕自身に当たる日射しはある程度遮れそうだ。
これで日中の仕事が楽になると思った僕は上機嫌だった。
翌日、
傘を持ってアスカの前に立つ僕。
背中に動く気配。僕はアスカの方を向く。
「おはよう、アスカ。」
「おはよう、シン・・・・・・・っっぷっ。」アスカが吹き出した。
僕は怪訝な顔をした。
「っっっっ・・・・・・アンタっ・・それっ・・何っ?っっ・・・」アスカは笑いを堪えながら言う。
「傘だよ。見ればわかるだろ。」
「っっっ・・・ふぅんっ、そうっ・・っっ・・・わかった・・・っっっ」アスカは抑えるように笑い続けてる。
(わけがわからないや。)僕はアスカに背を向けたけどしばらくしてもまだ笑い続けていた。
何か背中がむず痒い。ぼんやりと小学校の頃失敗して陰で笑われたことを思い出す。
「何で笑うんだよ。」
「っっっ・・・・だってっ・・・アンタっ・・・っっっ・・・っ昨日まで普通だったのにっ・・・っ・・いきなりそんなボロい傘持って立ってんだもんっ・・・っ・・・しかも・・っ・・・・何かっ・・・っっっ・・・誇らしげだしっ・・・・・・っっっっ」
それがここまで面白いことなんだろうか?
アスカは外国育ちだから感性が違うのかな?
よくわからない。
しばらくすると静かになったけど、僕が太陽に合わせて動くたびに「ぶっ」っと吹き出す声がして、また抑えた笑い声がしばらく聞こえる。
それは太陽が沈むまで続いて最終的にアスカは声を出して笑っていた。
僕はやるせない気持ちになっていた。夕焼けにアスカの笑い声が響いてやるせなさを際立たせた。
「あんたっ・・・、やれば出来んじゃないっ!」
「・・・・・・。」何がだろう・・・。楽なはずだったのにひどく疲れた。
「それとアンタ前から言おうと思ってたけど汗臭いのよっ!せめて二日に一回ぐらいは水浴びしなさいっ!」
全然脈略無いじゃないか・・・。
とは言え、アスカが初めて笑ったのは良いことだ。何か腑に落ちないけど。
257 :
夕焼けと影:2007/07/13(金) 19:11:32 ID:???
さらにその翌日、
陰鬱な気持ちで目が覚めた。
「おはよう、アスカ。」
「おはよう、シンジ。」
あれ?
アスカは傘をじーっと見て、
「アンタまたソレェ?つまんなーい。同じネタで笑いをとろうなんて甘いのよ!」
って言ってたけど、僕が太陽に合わせて動くと「ぶっ」っと吹き出して、
「あははははははっ・・・・ごめんっ・・・やっぱ無理っ・・・それ反則っ」
って言ってまた笑い出した。
どうなんだよ。
さすがにアスカが傘に反応しなくなった頃。
僕とアスカの会話はやっぱりあまり続かないままだけれど、僕からだけじゃなくて、アスカのほうからも話しかけてくれるようになった。
「ねぇバカシンジ、アンタがいっつも行ってる廃墟に布とか服とか落ちてないの?」
「瓦礫ばっかりで布とかそういうのは見たこと無い。今度見つけたら持って帰ってくるよ。」
「あーあぁ、身体乾かすのに時間かかるのよねー。プラグスーツはむれるしさぁ。」
多分、僕が寝てる間にでも水浴びしてるんだろう。昼は寝てることが結構多いし。
「ねぇ、アンタさ、何でずっとアタシの為に影作ってんの?」
「え・・・なんでって?」
「だってアンタ、アタシが倒れてたから日を遮ってたんでしょ?アタシが元気になったらもうそんなことする必要ないじゃない。」
「・・・また倒れたら困るかなって・・・。正直あんまり考えてないや。」
「はぁ〜〜。あんたバカァ?それで夕方から廃墟探索って、いつかアンタが倒れるじゃない。」
これはアスカなりに心配してくれてるんだろうか。アスカは僕の持つ傘を指差して、
「そのボロ傘で十分よ。アンタはもっと便利な物が見つかるよう、探索に力入れなさい!」と言った。
少し迷ったけれど、
「うん。わかったよ。ありがとうアスカ。」と僕は言った。
こうして僕は立って影を作る仕事をクビになり、探索一本になった。
258 :
夕焼けと影:2007/07/13(金) 19:17:14 ID:???
「行ってくるよ、アスカ。」
そう言って僕はこの前見つけたばっかりの鞄に懐中電灯と赤い水を入れた水筒を入れて出発した。
しばらく傘で楽してたから、久しぶりに直射日光を長時間浴びるとふらふらする。
太陽の下で見た廃墟群は、僕が思っていたものよりもずっと広かった。
これだけ時間があって視界もいいと色んな物が見つかるんじゃないかってワクワクした。
実際、収穫は大きかった。アスカのリクエストである布が数枚、今もっている物より大きな水筒や懐中電灯、救急箱、何かのぬいぐるみ、小型の折りたたみ式のテントなんて物まで出てきた。
「さすがに全部は持って帰れないや。」
とりあえず見つけたものを一箇所に集めて何日かかけて持って帰ることにした。
帰ってくるとちょうど夕暮れ時だった。
アスカは傘の下で眠っていた。僕は今日持って帰ってきた分の荷物を置くとアスカの傍に座った。
「ただいま。」
持ってきたぬいぐるみを傍に置く。アスカの顔を見る。穏やかな寝顔だった。
左目に痛々しく巻かれた包帯に目が移る。
この包帯の下がどうなっているのか、僕は知らない。
でもあるのは多分、傷、エヴァ達との戦いで受けた傷。
僕が直接つけたものではないけれど、僕が戦っていればつかなかったかもしれないもの。
僕が自分の罪と向き合う為には、この包帯の下を見なければいけない、と思った。
包帯に手を伸ばす。
「ママ・・・。」
包帯に伸ばした手が止まる。寝言か。
「ママ。」
アスカは、とても幸せそうな顔をしていた。
・・・・・・・・。
僕は、包帯に伸ばした手を下げて、アスカの左頬を撫でて、そのまま手を止め、ずっとアスカの頬に触れていた。
太陽が沈むまで、ずっとそうしてアスカの顔を見つめていた。
259 :
夕焼けと影:2007/07/13(金) 19:22:46 ID:???
目覚めると珍しくアスカが先に起きていた。
昨日、僕が置いたぬいぐるみを持って、赤い海を見つめていた。
「シンジ。」アスカは海を見つめたままで言う。
「このぬいぐるみ、あんたが?」
「うん。」
「・・・そう。」
それだけ言ってアスカはずっと海を見つめていた。
その顔はどこか、がっかりしたような、さみしそうな顔に見えた。
260 :
夕焼けと影:2007/07/13(金) 19:38:13 ID:???
「ただいま。」
「おかえり。」
廃墟を探索し終え、今日の分の荷物を持って帰ってきた。無理してたくさん持って帰って来たからくたくただ。
「へぇー。結構色々あるじゃない。」持ってきた荷物を見てアスカが言った。
「やっぱりアタシの判断は正しかったわね!感謝しなさいよ。バカシンジ。」
確かにね。
「これ何?」
「折りたたみ式のテント。」
「へぇー。」そう言うとアスカはテントを勝手に組み立てだしてあっという間に完成させてしまった。器用だ。
テントは思っていたより小さくて、入れても三人ぐらいがやっとのように見える。
アスカはさっそくテントに入って、
「んじゃ、アタシここで寝るから、アンタはいままでどーり外で寝てなさいよね。」とテントから首だけ出して言った。
「蒸し暑いんじゃない?」
「どうせ風が無いんだから一緒よ。」そう言ってアスカは首を引っ込めてテントのファスナーを完全に閉めた。
「・・・。」
(何だかどんどん以前のアスカに戻ってきてる気がする。これで良いはずだよな。これで良いはずなんだ。これで良いはずなのに。)
何かが胸に引っかかる。
包帯。
(余計なことしないで。)
(そのほうがいいな。)
夜の海で見たアスカの瞳。
「あっ、そうそう・・・」
「あのさ・・・」ほぼ同じタイミングで言葉を発した。
アスカはテントから首だけ出して言う。
「何よ?」
「・・・包帯、換えさせてほしいな。なんて・・・」
「・・・。」
「ごめんっ!変な事言って!アスカはさっ・・」
「いいわよ。」
「えっ?」
261 :
夕焼けと影:2007/07/13(金) 19:44:57 ID:???
それからアスカは首を引っ込めて右手だけをテントから出した。
「早くしてよね。」
「う、うん。」僕は慌てて救急箱を持ってきて中からハサミと包帯を取り出す。
「ずっと換えたいと思ってたのよね。」
「・・・。」僕はハサミで右腕の包帯を切っていく。そして右腕から包帯をすべてはずした。
「・・・。」思わず息をのむ。
右腕には中指と薬指の間から肩までにかけて、溶接されたように塞がった、大きな一筋の傷跡が走っていた。
バラバラにされた弐号機。
「っ・・・。」
声を必死で殺す。包帯を持つ指が、震えだす。
「・・・。」アスカは何も言わない。
震える指で何とか包帯を巻き始める。巻く事で傷を隠そうとする。
「アンタ、アタシの間接を曲げさせない気?」
「ごっ、ごめん。」慌てて包帯をちゃんと巻き直す。巻いているうちに落ち着いてきた。
何とか全部巻き終えると、僕は放心していた。
「こっちは、いいの?」
アスカはテントから出てその左目の包帯を指差した。僕は我に帰って頭の包帯も切っていく。包帯が落ちてアスカの左目が見えた。
刺された後のような大きな傷跡が二つ、瞼とその上にそれぞれあった。こっちも既に塞がってる。
ただ、瞼の膨らみから眼球自体は残ってるようだった。無事かはわからないけど。
「アスカ、左目開けれる?」
アスカは瞼をしばらくビクビクと動かしていた。
「ダメ、みたい・・・。」
「・・・そっか、傷はもう塞がってるけど、包帯巻く?」鏡のようにはっきり顔を映すものは無いし左目も開く可能性があるなら巻かない方がいい気がした。
「シンジに任せるわ。」
「・・・そっか、止めとくよ。」
262 :
夕焼けと影:2007/07/13(金) 19:56:44 ID:???
「おやすみ。」
「おやすみ。」アスカがテントに入った。
一人になって僕はアスカの傷跡を思い出し、そしてバラバラに食い散らかされていた弐号機を思い出す。
あの時の何十分の一かの大きさの感情の渦が生まれ、僕は声を上げそうになる。それを必死に押さえ、
また、アスカの傷と、あの光景を思い出し、また感情の渦を作り出した。
そしてまた同じ様に何度も何度も、心をえぐるようにそれを何度も繰り返す。
なぜこんな事をしているのか自分でもよく分からないまま、気づけば夜が明けていた。
疲弊しきった頭でぼんやりと、
(アスカの痛みを知ろうとしたのか?)と、自分に尋ねた。
263 :
夕焼けと影:2007/07/13(金) 20:05:48 ID:???
延々と思考のループを繰り返した果てに、いつの間にか眠っていたらしく、起きたら夕方だった。
顔の横にはボロ傘がさしていた。アスカが気を遣ってくれたんだろう。
「やっと起きたのね。」
「ごめん。」
「アンタ、無理しすぎなのよ。何焦ってんのか知んないけど。」
(焦ってる?僕が?)
アスカの顔を見る。包帯の取れたその左目には大きな傷。
「焦ってもしょーがないじゃない、こんな世界じゃ。ゆっくりやってけばいいのよ。何とか生きていけてるしさー。」
何だか自分がちっぽけに思えてくる。
「強いな。アスカは。」
「あんたバカァ?アタシを誰だと思ってんのよ?無敵の惣流・アスカ・ラングレー様よ。当ったり前じゃない!」
あれだけの事があったのに、アスカはもう自分の力で立っている。今までだってずっとそうやって立ち上がってきたんだろう。
本当に、凄いと思う。
それに比べて僕はずっとただ逃げてきただけだった。僕は本当に、どうしようもない奴だ。
(そうやって自分に価値が無いなんて思い込む事で、結局何も出来なくなるんだったよな。止めよう。)
「相変わらずだな。アスカは。」僕はそういって笑った。
「何よそれ。」アスカはむっとした表情を作った。
(アスカはアスカ、僕は僕だ。)
「そういえばアスカ、左目は開きそうなの?」僕はアスカの傷を見てもそれほど動揺しなくなっていた。
「ダメね。何度か動かそうとしてるんだけど・・・、目玉は動くんだけどね。」
「でもきっと、アスカの事だからすぐに開くようになるよ。」
「そうよね。ありがとっ、シンジ。」本当にそう思った。
続く
132さん、夕焼けさんGJ!!
265 :
夕焼けと影:2007/07/14(土) 13:44:42 ID:???
数日が経った。
アスカの左目は本当にあれからすぐに開いた。視力も問題ないみたいだ。
一方、僕の方はあれから生活リズムが狂ったみたいで、朝寝て夕方起きるという生活リズムが続いたので探索は夜に行ってる。まあ懐中電灯は二個あるし、生活リズムが戻るまでしばらくこれで行こうと思う。
夕方に起きると、
「シンジ、ちょっと。」テントから首だけ出してアスカが呼んできた。プラグスーツを投げつけられる。
「それ、洗ってからテントの上に干しといてよ。」
「またぁ?何でいつも僕に任せるんだよ。」
「つべこべ言ってないでさっさと洗ってきてよ。」
「へーへー。」たまにこういう事がある。
「それと、テント覗いたら殺すからね。」覗かないよ。
すごい発見をした。はやる気持ちを抑えながら僕は家路を急ぐ、早く伝えたい、早く教えなきゃ。
夜が明け始めていた。
僕はテントを見つけると一直線にテントにむかってテントのファスナーを開けた。
「アスカッ!」
「へっ?」
瞬間、時が止まる。
テントの上にはプラグスーツが干していた。つまり今、アスカは裸だ。
「あっ・・・・・・。」
気づいた瞬間にでもすぐに後ろを向けばよかったのに、目はアスカの身体に釘づけになっていた。
傷。
胸元から太ももにかけて、抉られたような、引き裂かれたような傷が無数、それは特にお腹の辺りに集中していた。
「見ないで。」
アスカは傷を庇うかのように身体を丸める。
我に返りテントを閉めようとするが慌てていたせいかうまく閉まらない。仕方が無いのでそのまま後ろを向いた。
「ごめんっ・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
波の音だけが響く。
266 :
夕焼けと影:2007/07/14(土) 13:50:34 ID:???
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「びっくり、したでしょ?」
「・・・・・・・・・。」言葉が出ない。
「これでもう、アンタのオカズにもなれないわね。」
「そんなこと無いっ!!」何故か力強く即答してしまった。
自分で言ったことの意味に後から気づく、しまったこれじゃまるで・・・、
「いや、違うんだ。だから、そのっ、そういう意味だけどそういう意味じゃなくて・・・」
「・・・ぷっ、は、あはははははっ。」アスカが笑い出した。
「へぇー?じゃあシンジはまだまだアタシをオカズにするんだ〜?」
「だからそういう意味じゃなくて。」
「じゃーどういうイミ?」
「だから、えーっと、オカズに使えるほど十分キレイだって意味だよっ!」
「へーじゃあここでやって見せなさいよ。」
「なっ!?で、出来るわけないだろそんなのっ!!」
この流れは何だろう?なんか、不自然だ。
「そーいやアンタ普段どーしてんの?」
「アスカには関係ないだろ。それより早く服着ろよ。」
「じゃー上のそれ取って。」
僕は顔を逸らしたまま、アスカにプラグスーツを渡した。
267 :
夕焼けと影:2007/07/14(土) 14:03:36 ID:???
パシーンッ!!
「いいわよ。」とアスカが言ったので、僕は振り返ったがそれと同時にまるでカウンターのようにビンタが飛んできた。
朝焼けに清々しいほどの良い音が響く。
「とりあえず、見物料よ。」
どっかで聞いたセリフだ。そういえば最初に会った時もビンタされたっけ。
「そういやアンタなんでそんなに服に血がついてんの?」
そうだった、色々あって当初の目的を忘れていた。僕は水筒とカッターナイフを持ってきてカッターナイフで自分の手首を強めに切った。
「ッ。」
「ちょっ!?ちょっと何やってんのよっ!!」
手首から血がダクダクと流れ出る。
「いいから見ててよ。」そう言って僕は傷口に水筒から赤い水を注ぐ。
血が洗い流され傷口が露出する。やがて傷口がみるみる閉じていき、すべて注ぎ終わるとうっすらと白い線だけが残った。
「すごい・・・。」
「帰ってくる途中、頭の上に瓦礫が落ちてきたんだ。血が止まらなくてさ。
とりあえず傷口を塞ぐ為にまず血を洗い流そうとして水筒の水を傷にかけたんだ。
そしたらだんだん痛みが引いてきて、血も出なくなってた。
それで傷を触ってみたら塞がってたからもしかしたらって思ってさ。」
アスカの顔をみる。
「もう塞がった傷に効果があるかわからないけど、浴び続けてたら傷は消えるかもしれない。」
アスカの顔がパアッと明るくなったのがわかる。表情には出していないけど、喜んでいるのは見て分かる。
「ホントに?」
「まあ、あくまで可能性だけど・・・。」
喜んでるはずなのに表情は困惑しているようだった。
「あれを見れば、期待はしてもいいと思う。」思えばアスカがこんなに早く自由に動けるようになったのも、この水の影響だったのかもしれない。
「・・・。」
「アスカ?」
アスカの様子がおかしい。感情表現が直接的なアスカならもっと喜んでてもおかしくないのに。
「ちょっと・・・、しばらく一人にして。」
そう言ってアスカはテントに入って閉じこもった。
不可解だった。嫌な予感がした。
アスカがいなかったあの夜のような。
268 :
夕焼けと影:2007/07/14(土) 14:14:50 ID:???
(何でアスカは、あんまり喜ばなかったんだろう。)考えれば考えるほど分からなかった。
(アスカだって、自分の傷が消えたら嬉しいはずなんだ。なのに何であんな顔、してたんだろ。)
自分の不安の核心がそこにあるのは間違いなかった。
(この嫌な感じ、あの時と同じだ。)
暗い海で見たアスカの顔が浮かぶ、一瞬だけ見えた狂気の瞳と、その後の死んだような瞳。
(そうだ、この気持ち、恐いんだ。アスカを失うんじゃないかって。)
そして僕は一つの結論に達する。それは最近のアスカからは不自然なもののように感じたけど。
(考えすぎ、なのかな?)合っている気がした。
ようやく眠気がやってきた。
太陽はもう結構高い所まで昇っていた。
僕はアスカが差してくれた傘の影に頭だけ入れて眠ろうとした。
今日はずっと寝て、探索は止めとこうと思った。ずっと眠ることでこの嫌な気持ちが消える気がした。
目が覚めると夜だった。
横にアスカが座っていた。
僕が起きたのに気づいてこっちを向いた。
「おはよう。」アスカが言う。
「おはよう。」僕が返す。
「また睡眠時間ズレたわね。アンタ。」
「うん。」
「今日はもう行かないの?」
「うん。今日はこのまま、また眠ろうと思う。」
「アンタまだ寝るの?ナマケモノばりの睡眠時間ね。」アスカが呆れたように言う。
アスカと話していると僕の感じていた不安は気のせいだったんだと思えてきた。
269 :
夕焼けと影:2007/07/14(土) 14:20:14 ID:???
「・・・そっか、その方がいいかもね。」アスカは僕に顔を向けるのを止めた。
「アンタ、明日の探索、アタシも連れて行きなさい。」
「なんで?」
「行ってみたいからに決まってんじゃない。ずっと同じ景色ばっかり見ててもつまんないし。」
「でも、危ないよ。瓦礫が崩れてきて怪我するかもしれないよ?」
「アタシをアンタみたいなマヌケと一緒にしないで。それに、アンタと一緒だったら大丈夫でしょ?」
「大丈夫じゃないよ。この前僕に崩れてきたって言ったじゃないか。」
「ならなおのこと連れてってよ。アンタみたいなマヌケが一人でいる方が心配だわ。」
「でも・・・」
「それとも・・・」
「アタシと一緒にいるのがイヤ?」
「・・・。わかった。」僕はうなずいてしまった。
「起きなさいバカシンジ!」
朝だ。
今日も雲一つどころか風すらない。
アスカを連れて行くことになってしまって自分の中の不安感が大きくなった。
おかげでほとんど眠ってない。まあ、それまで散々眠ってたってのもあるけど。
「ほら、さっさと顔洗って支度しなさい!」心なしかアスカのテンションが高い。
急かされるまま海まで行き水を飲んで顔を洗う。
「ほらっ、早く早く!」リュックと鞄に必要なものを入れ支度を済ます。
(いけね。水筒に水入れるの忘れてた。)急いで海まで行き水筒に水を入れる。
「おっそーい!何やってんのよバカシンジ!」
「ごめんごめん。」慌ててアスカの元まで行く。
アスカは待ってられないとばかりに先に歩き出す。
「待ってよ。道分からないだろ。」
「平気よ。アンタの足跡辿ってけばいいんでしょ。」僕に構わず先々進む。ちなみに荷物は全部僕が持っている。
時折、瓦礫で足跡が分からなかったり、足跡が分かれていたりすると、
「シンジー、次どっちー?」と聞いてくる。僕が方向を教えるとまた僕に構わず先々進む。まるで子供がはしゃいでいるみたいだ。
まあ、ずっとあそこで同じ景色ばっか見てたんだから無理もないか。
廃墟に近づいて行くにつれ、瓦礫が多くなって足跡が分かりにくくなってるせいか僕とアスカの距離は徐々に縮まっていった。
270 :
夕焼けと影:2007/07/14(土) 14:25:52 ID:???
廃墟群に着いた。
アスカが廃墟群を一通り見渡す。
「思っていたより広いのね。ここって元々なんだったんだろ?」
「さあ、わからないよ。僕達の居たところも第三新東京市の近くだったって事ぐらいしか分からないし。」
「ふ〜ん。」
そういうとアスカは息を大きく吸い込んで、いきなり、
「わぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」と大声で廃墟に向かって叫んだ。
どっかでガラガラと瓦礫が崩れる音がした。
「へー。本当に崩れやすいんだ。」
「いきなりやめてくれよ!心臓が止まるかと思ったじゃないか!」
アスカが僕の方に向かってきてリュックを勝手に開いて水筒を取り出した。
(今度は何だ?)
「んじゃアタシ、ちょっとその辺見てくるわ。」
「なっ!?危ないよ!一緒に行くんじゃなかったの?」
「ヘーキよ、ヘーキ。大丈夫よ。それにアンタが迷ったらちゃんとアタシが見つけてあげるわよ。」と言って勝手に廃墟に入っていった。
「待ってよ!アスカッ!」
仕方が無いのでアスカの後について行く。アスカは時折、「ふーん」とか「へ〜」とか言って辺りを見渡しながら先々進む。
脈略無く突然曲がったりするから道を憶えにくい。帰れるか心配になってきた。
「別についてこなくてもいいのに。」
「心配なんだよ。それにこんなグネグネ曲がって、帰り道わかるの?」
「わかるわよ。それにしても何もないわねー。あんたよくあれだけ色々見つけてきたわね。」そう言うとまた勝手に進みだした。
(まったく。)
キラッと、横目に光が飛び込む。何だろうと振り向いて目を凝らす。ナイフだった。しかも結構ゴツい。
何であんなものがと思いながらもアスカは先に行ったし別に切るものは間に合ってるからいいかと思い。アスカについて行った。
271 :
夕焼けと影:2007/07/14(土) 14:31:40 ID:???
しまった。
見失った。
あれからしばらくしてアスカがいきなり
「そうだシンジ!鬼ごっこしましょ!」って言ったかと思うと僕にタッチして、
「はい、アンタが鬼ね。負けたら罰ゲームよ。」と言って走り出した。
「なっ!?」しばらく呆気にとられたけど我に返ってすぐ追いかける。しかしグネグネと迂回しながらアスカは進むので、しばらくするとアスカを見失っていた。
あれから結構経った。
最初から嫌な予感はあったけどこれは予想外だった。
「アスカー、もう僕の負けでいいから出て来てよー。罰ゲームでもなんでもするからさー。」廃墟を回りながら呼びかける。
しばらくすると、
「やったー!アタシの勝ちね!」とアスカが勝ち誇ったような顔で出てきた。
続く
272 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/14(土) 16:50:44 ID:w8II/OgI
乙
GJ
乙
だけど
ごついナイフでアスカが自傷しようとする……
とかの予想しやすい展開は無しでな
出来るだけ捻り入れて書いてくれ
なんだ?このスレは職人と3〜4人しか居ないのか?
投下と感想レスの比率に驚いたwww
276 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 04:48:27 ID:???
来たら上がってたんでビビッたw
投下する。
何も問題がおこらなければこれで最後の投下。
277 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 04:54:52 ID:???
「それじゃあ罰ゲームね。」
何が来るかと僕は身構えて唾を飲んだ。
「アンタの水筒とアタシのを交換しなさい!」
(えっ?そんなんでいいの?)身体から力が抜ける。
僕は自分の水筒を取り出してアスカに渡し、アスカの水筒を受け取る。
空だ。
「久しぶりに走って疲れたから全部飲んじゃったのよね。」とアスカが言った。
僕はこれ以上ここに居ると次は何があるか分からないと思い、
「そろそろ帰らない?」とアスカに提案する。さすがに疲れたのかアスカも、
「そうね。帰ろっか。」と同意してくれた。
とは言え、帰り道が分からなかった。何となく、朧気ながらこの辺りに見覚えがあったので、僕はかすかな記憶を頼りに歩き出す。
ドボボボボボボボ・・・・
背後で水が流れる音。
僕の中で眠っていた不安が突然目を覚ます。
カラン、カラン。
金属音。
不安が一気に膨張する。
「シンジ。」
(ダメだ!)無我夢中でアスカの方に振り返る。
「サヨナラ。」アスカがその言葉を言い切るその前にアスカの左手を僕の右手が掴んだ。
278 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 05:00:25 ID:???
アスカの手はナイフを握っていて、今にも自分の首を切ろうとしていた。
その手を全力で、アスカの首から遠ざけようと引き寄せる。
無我夢中でアスカに向かったせいで、僕はアスカの方に倒れこみ、そのままの勢いで二人一緒に地面に倒れた。
脇腹に感触。
熱い。すぐに強く鈍い痛みが伴う。
脇腹を見れば案の定、ナイフが深々と刺さっていた。
「あ・・・。」
感じていた痛みが強くなる。シャツにじわりと血が滲み始めてる。
「アス・・カ・・・。」アスカはまるで人形のように無表情で、虚ろな瞳で僕を見ていた。アスカの手からナイフを離す。
「ぐっ・・・、あっ・・・。」僕は起き上がろうとする。動くたびに鈍く、鋭い痛みが走り、シャツの血が広がっていく。
脇腹に刺さったまんまのナイフがもたらす異物感が気持ち悪い。
何とか起き上がり、そのまま転がるようにアスカの横に仰向けに倒れこむ。
血が、止まらない。
口の中に血の味が広がっていく。
呼吸するのが苦しい。
痛みより、傷口の熱さや流れ出る血の暖かさを強く感じる。
視界の端に地面に転がっている水筒が見える。赤い水はもう、アスカが全部流したんだろう。
そこに至ってようやく、もうすぐ自分は死ぬんだと悟った。
279 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 05:05:47 ID:???
ブツン。と、視界が暗転した。何も見えない。
音も、匂いも、何もしない。
何も感じない。痛みさえも。
恐い。
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い
恐い、はずなのに、
意識の表層をただ言葉だけが滑り落ちていく。
まるで、実感がない。
感情が、無くなっていく。
何もない。
自分だけ、いや、自分さえいなくなる。
これが死ぬって事なんだろうか。
あの時、君もこんな気持ちだったのか、アスカ。
アスカ?
光。
空、土、石、砂、壁、瓦礫、水溜り、水筒、指、手、腕、包帯、赤、身体、髪、頭、目、鼻、口、耳、顔。
視界が鮮明に甦る。
血の味。
寒い。
痛み。
恐い。
麻痺していた感覚、感情が戻ってくる。
(これで最期、なんだ。)
恐くて、痛くて、仕方がない。
鮮明だった視界がまた、ぼやけ始める。
世界のすべてが、遠ざかっていくような不安。
何かに、誰かに、縋り付きたい。
アスカ。
(そうだ。これで最期なんだ。)
まだ、伝えたい事、伝えていない事がある事に気づいた。
280 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 05:11:11 ID:???
アスカの顔がこっちを向いていた。
その瞳は虚ろで、口は何かを言いたそうに見えた。
「これも・・・罰ゲーム?」
精一杯、冗談っぽく言う。口を開くのがつらい。
「ずっと・・・謝らなきゃ、って・・・思ってたんだ。」
視界がぼやけてアスカの表情は分からなくなっていた。
「僕は、無神経に、アスカを傷つけて、・・・アスカが、つらい時も、アスカに頼って、逃げようとして、
・・・僕が、戦わなかったせいで、アスカが、傷、ついて、
・・・挙句の、果てに、・・・殺そうとまで、・・・した。・・・だから、これは、罰、・・・なんだ。」
グボッっと喉の奥から熱さを持って血の塊がせり上がって来る。口の端から血が溢れ出した。
「この、数日間、たのし、かった。・・・こんな、・・・どうしようもない、僕に、
・・・構ってくれて、・・・やさしくして、くれて、うれし、かった。
・・・ありがとう、アスカ。・・・そして、・・・・ごめん。」
視界は、更にぼやけていく。頭が、朦朧とする。
「母、さんが・・・いって、たんだ。・・・すぐに・・・みんな・・・かえって、くるって。
・・・だから、一人じゃ、無いから・・・、ひとりじゃ、なくなるから、・・・生きてよ、アスカ、・・・いきて・・・・・・」
ぼやけて、何も分からない。頭が、うまく働かない。ひどく、眠たい。
でも、とても、安らかな気分だ。
もうすぐ・・・
完全に意識が途切れる間際に、「ママ・・・」という声が聞こえた気がした。
何だろう。脇腹の傷口が、暖かな水に包まれているような感触がする。
「ママ・・・」
「ママ・・・」
「ママァ・・・」
泣きながら誰かが言う声がする。これは、夢なんだろうか。
そう思いながら僕は再び深い眠りについた。
281 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 05:21:57 ID:???
紅い。
瞼を閉じていても分かるほど紅い光が飛び込んできた。目をそっと開ける。
ここは何処だろう。すべてが紅く染まっている。
一瞬、僕はみんなのところにいけたのかと思った。
「うっ、うっ・・・」
すぐ近くで嗚咽が聞こえる。
みると僕の身体の上でうずくまって震えているアスカが見える。
(そうか、生きてるんだ。)
「・・・カ、アスカ。」搾り出すように声を出した。
アスカの震えがとまる。そのまま顔を上げて僕を見ると
「・・・っあ。・・・・・・っああああ、あああああああああああああ」
アスカが泣きながら僕に抱きついてきた。
僕は状況がよく分からないながらも、アスカが泣き止むまで紅い世界の中、アスカの頭をずっと撫で続けた。
282 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 05:27:13 ID:???
満天の星空に、月と、赤い虹が見える。
僕は仰向けに寝転がり、アスカは僕の横、少し離れた位置に膝を抱えて座っている。僕からはほとんどアスカの背中しか見えない。
「何でアンタが・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・死にそうになってるアンタを見て、何でかママを思い出した。アンタをこのまま死なせることが、何でかママをまた死なせてしまう事みたいだった!」
それが僕を助けた理由。
水筒にはまだ少しの赤い水が残っていて、あの後アスカは僕の脇腹からナイフを引き抜き、傷口に赤い水をかけて、血と、赤い水が零れないようにしてくれたようだった。
「何でアンタなんかがっ・・・・なんで・・・」
「・・・あのさ。」僕は口を開いた。何とかしゃべれるみたいだ。
「僕があのまま死んでたらさ、アスカ、あの後死ぬつもりだったろ。」
「・・・・・・。」
「きっとアスカのお母さんは、アスカに生きていてほしかったんだよ。」
「・・・・・・。」
アスカの肩がわずかに震えているのが見える。泣いているのだろうか。表情は、ここからは見えない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・danke.」
たぶん、ドイツ語で、アスカが何か呟いた。
何となくだけど、ありがとうって言われた気がした。
283 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 05:38:02 ID:???
星空に、月と、赤い虹が見える。
僕は仰向けに寝転がり、アスカは僕の横、少し離れた位置に僕と同じ様に寝転がっている。ちょうどいつかと同じ様に。
「アタシが死のうとしてるってわかってたのね。」
「・・・うん。」
「何で?」
「アスカを夜の海まで追いかけた時から、ずっと嫌な予感はしてたんだ。ずっと気のせいなんだって思ってたけど、ずっと心の隅に引っかかってた。」
「・・・。」
「赤い水で傷跡が消えるかもしれないって言っても、アスカ、あんまり喜んでなかった。
それが気になって、考えて、心の隅にあった不安が、アスカがいなくなるんじゃないかって不安が大きくなって、もしかしたらアスカは死にたがってるんじゃないかって、思ったんだ。」
「・・・。」
「あの時、アスカが僕を呼んだ時、何故か、ああ、不安は当たってたんだって、すぐにわかった。あとはただ、必死だった。」
「・・・そう、なんだ。」
284 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 05:43:24 ID:???
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しばしの沈黙の後、
「アタシね・・・」とアスカが口を開いた。
「アンタがアタシの首を絞めて、泣いた時、アタシはまだこの世界で生き延びてやるって思ってた。アンタがしばらくしたらいなくなって、むしろせいせいした。一人でも生きてやるって、思ってた。」
「・・・。」
「アタシは身体を動かそうとした。でも、身体に力が入らなくて、ほとんど動かなかった。何度も動けって思いながらやっとの思いで身体を起こした時にはもう太陽が昇ってた。
遠くには気持ち悪いオブジェばかりで、近くには何もなかった。遠くに見える崩れたファーストの顔が、今のアンタには何も出来ないって嘲笑っているように見えた。
それを見たくなくて、否定したくて、後ろには何かあるんじゃないかって思って後ろを見ようとした。上半身だけを曲げようとしても出来なくて、全身をつかってようやく振り向いたけど、やっぱり何もなかった。
身体を支えきれなくなってそのままうつ伏せに倒れこんだ。
身体は自由に動かせなくて、周りには何もない。あっても遠くに気持ち悪いオブジェがあるだけ。それがアタシを絶望させた。この醜く変わってしまった世界で生きていっていたって仕方ないって思った。
もう、太陽の光さえ見たくなくて、最後の気力を振り絞って、何も、砂しか見えないように首を動かして、そのまま眠ろうと思った。
そしてこのまま、何もしないで、死のうと思った。それが、アタシをこの世界に残した誰かに対する復讐になるんじゃないかって思えたから。」
285 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 05:48:47 ID:???
「・・・。」僕は黙ってアスカの話を聞き続けた。
「それからずっと、アタシは眠り続けた。太陽がアタシを照らして、熱くて、渇いて、苦しかったけど、それでもアタシは眠り続けた。そうしていつか死がやってくるのをアタシは待ってた。そんな時にね。」
「・・・夢を、見たの。ママの夢。アタシはまだ赤ちゃんで、ママの腕の中で、ママのおっぱいを吸って、そのままママの腕の中で眠ってしまう夢。気づいたら、アタシは目覚めてた。
身体の熱さや苦しさ、口の中の渇きまで無くなっていた。ママが来てくれた。ママが助けてくれた。そう思ったアタシはママを呼びながら、ママを探そうと身体を起こそうとした。
さっきまでと違って動くたびに身体に痛みが走ったけど、動けないことはなかった。
でも、そうして身体を起こしてみても、世界は何も変わってなかった。がっかりした。夢、だったんだと思った。
その時、アタシは近くで誰かが動く音を聞いた。ママだと思って見たら、アンタが寝てた。アタシはとても不愉快になって、またママの夢が見たくて、眠った。」
「・・・。」
「ママの夢はもう見なかったけど、眠っている間、アタシは心地よさを感じてた。太陽の光がアタシに届いてないこと、誰かがアタシの傍に立ってる事に気づいた。また夢だと思ってた。
しばらくしてその誰かはアタシの顔を持ち上げて、アタシの口に何かを流し込んできた。気持ち悪くなって、その何かを吐き出そうとした。目を開けたらそこにアンタの顔があった。」
「・・・。」それがあの時か、と僕は思った。
286 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 05:54:25 ID:???
「アタシは一気に不愉快になったわ。アンタがしていた事やあの水についてもそうだけど、アンタの話を聞いてるうちに、アンタがアタシにママの夢を見させたことに気づいたから、アタシとママとの絆を汚された気がした。
それが何よりも嫌だった。」
「・・・。」
「アンタが憎かった。アンタが傍に居るだけで、アタシの事を助けようとするたびに、アタシとママとの思い出を汚されていってるような気がした。だからアタシはアンタから離れようと思った。」
「・・・。」
「アンタがアタシを無理やり海に連れて行った時は、本当に、嫌だった。これ以上、アタシの心を汚されてたまるかって思った。アンタが憎くて、殺してやろうかと思った。でも・・・」
「・・・アンタの顔を見たとき、アンタまるでアタシに殺されてもいいって瞳をしてた。自分はどうなってもいいって思ってるんだ、って思った。そして、何故か、アンタとファーストの顔がダブって見えた。
何かに飲み込まれるような気がして、アンタの瞳が見れなくなった。それでアタシは、抵抗する気を無くした。」
「・・・。」あの時の僕はそんな瞳をしてたのか。綾波と僕がダブって見えた理由は、何となく分かる気がする。
「それからアタシは、一刻でも早く、自由に動けるようになりたいと思った。一刻でも早く、アンタに頼らないで、アンタから離れられるようになろうと思った。
でも・・・、一方で、アンタの影の中にいるのを心地良いと思っている自分がいた。アタシは、それを認めたくなかった。」
「・・・。」
287 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 05:59:47 ID:???
沈黙。
「・・・あの新月の晩、アタシは初めてアタシの身体の傷跡を見た。黒い塊みたいな感情の渦がアタシの胸に生まれて、それが大きくなっていくのを感じて、すぐに傷を隠した。
でも、その感情の渦はどんどん大きくなって、アタシは、最後の戦い、エヴァ達との戦いを思い出した。あの時の痛みと、あの時の憎しみと、何も出来なかった悔しさと虚しさが蘇ってアタシの心を掻き乱した。何もかも壊てしまいたいと思った。
でも周りには何もなくて、アタシはただこの心の中の嵐が通り過ぎるのを待つしかなかった。そうしてうずくまって、心が落ち着いて来て、最後に残ったのは、恐怖、だった。」
「・・・。」
「何もかもが、恐いと思った。恐くて動けなかった。暗闇からエヴァ達がやってきて、アタシを突き刺しに、貪り喰いにくる気がした。恐くって、何かに縋りたかった。
そして、ママを思い出していた。ママなら助けてくれる。アタシを守ってくれる。だってずっと弐号機の中でアタシと一緒に戦っていてくれたんだもの。弐号機。弐号機はアタシと一緒に・・・。
そしてまたアタシの心の中に嵐が吹き荒れた。アタシだけじゃなくてママも殺したんだ。ママも奪ったんだ。・・・最初よりも大きな嵐だった。
しばらくして嵐が収まると今度残ったのは恐怖だけじゃなかった。自分に対する怒りだった。アタシがもっと強ければ、ママは死なずに、二度も死なずにすんだんだ。
そう思ってアタシは暗闇の中のエヴァと戦おうと立ち上がった。恐怖と、闘おうとした。そうだ、そうやってアタシはいつも立って来たんだ。そうやって闘って何もかもを勝ち取ってきたんだ。そうやって・・・、その結果が、コレ?
・・・今度は無力感が襲ってきてアタシはまたうずくまった。一気に恐怖に押しつぶされた。
恐怖感と無力感の中で、アタシに何かが囁いた、アタシはあの時ママと一緒に死ぬべきだったんだ、アタシがもっとママを支えていれば、ママは死なずにすんだんだって。アタシはその囁きが正しいような気がした。
そして、気づいたら海に入ってた。」
288 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 06:05:42 ID:???
「・・・。」
「誰かが近づいてくる気配がして、頭の中でアンタだって、声を聞いてアンタだってわかってても、暗闇から槍が伸びてきて、アタシを突き刺すんじゃないか、アタシを貪りに来るんじゃないかって、恐かった。
音を立てたら一気に襲い掛かってくる気がして立ち尽くす事しか出来なかった。あたしの心は恐怖で押しつぶされそうだった。だからアタシは必死に、今度は自分で心の中に感情の嵐を作り出して恐怖と闘った。アンタの顔を見るまで。」
「・・・。」
「アンタだって分かって、恐怖感は消えて、冷静になったけど、代わりに無力感がアタシの心を支配した。
もう、疲れ果ててた。もう、傷つきたくなかった。」
「・・・。」それが、あの時見えた一瞬の狂気の瞳と、死んだような瞳の理由。
「アタシの心はもう、この身体のように傷だらけで、もう以前のアタシじゃない、もう、戻れない。
だからせめて、これ以上、アタシの心を変えられたくなかった。傷つけられたくなかった。
でもアンタは、今のアンタはきっと、アタシの心がこんなになってるのを知ったら、何とかしようとする。もっとアタシの助けになろうとする、傍に居ようとする。
そうなれば、アタシの心はきっと、変わって行ってしまう。
だから、アタシは、アタシの心を守るために、アンタが心配して何かしないように、アンタの望む、記憶の中の『アタシ』を演じようと思った。アンタに何も悟られないように、ゆっくりと、少しずつ。
そうやって、心の中に壁を作って、アタシは何とかバランスを取っていく、はずだった。」
289 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 06:11:38 ID:???
「・・・。」
「アンタと一緒にいて以前の『アタシ』を演じるのは、楽しかった。何も変わってないんじゃないかって、戻れるんじゃないかって、思った。
でもその度に、自分の傷跡を見ると、もう以前の『アタシ』じゃないって、もう戻れないんだって、現実に引き戻されて、哀しい気持ちになって、つらかった。
だからあえて、自分から傷跡を見るようになった。自分の境界線を、明確にするために。」
「・・・。」
「アンタが包帯を換えてくれるって言ったとき、『アタシ』じゃないアタシを知ってもらえるかも、理解してもらえるかも知れないって期待した。
アンタの手は震えていたけど、アンタは一生懸命平静を装っていたけど。嬉しかった。」
「・・・。」
「アンタが包帯を換えてくれた後、アタシは自分の傷を見ても、哀しい気持ちにならなくなってた。
アタシは自分の境界が曖昧になって行ってるって感じた。それに気づいたとき、アタシは自分が自分じゃなくなるんじゃないかって、自分が分からなくなるんじゃないかって、恐くなった。
アンタに傷を見せた事を後悔した。それでも、心の何処かで、ホントのアタシを知ってほしいと思ってた。」
「・・・。」
「アンタがこの傷が治るかもしれないって言った時、最初は嬉しかった。けど、この身体の傷が消えたら、アタシの心は、心の傷は、ママの居場所は、どうやって確認したら良いの?
身体の傷が治っても、アタシの心に傷は残っていて、アタシは自分の心が分からなくなって、アタシはアタシじゃなくなっていく。
そしたら、変わってしまったアタシを見たアンタは、アタシの首を絞めた時みたいに、アタシのママみたいに、アタシが要らなくなって、アタシの元を去るんだって思った。
そうやってまた、アタシは一人になってしまうんだ、それならいっそ、自分から一人になった方がマシだった。それで、アタシは、アンタの元から去ろうと思った。」
290 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 06:17:18 ID:???
「・・・。」
「最初は、この廃墟で迷った振りしてそのまま消えようと思ってた。最後だから、『アタシ』として思いっきり楽しんだ後で。
でも、廃墟の中でナイフを見つけて、アタシはこのあとアンタと離れて、一人であの感情の嵐や、恐怖と闘っていくより、ここでもう死んだ方が楽だって思って、
それに、一人で孤独に死ぬよりも、最後ぐらいアンタに看取ってもらいたかったから、もう、ここで終わらせてしまおうと思った。」
「・・・。」
「でも、もう、分からない。アタシが何をしたいのか、何をすればいいのか、アタシが何なのか、わからないの。」
「・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・シンジ。・・・泣いてるの?」
いつからだろう。気がついたら涙が流れてた。
アスカの話を聞いてるうちに、アスカの悲しみや苦しみが、僕に流れ込んで来てるみたいだった。
僕は、全然アスカの事をわかってなかった。何の助けにもなってなかった。
それが不甲斐無くて、情けなくて、どうしようもなかった。
どんな言葉をかければいいのかも分からなくて、僕は唯々、涙を流し続けていた。
「・・・・・・。」
「・・・・・ごめん。・・・・・・・」泣きながら、それだけ言うのがやっとだった。
「・・・・・・シンジ・・・・手に、さわってもいい?・・・・」
「・・・・・うん。・・・・」
アスカの手のひらが僕の手の甲を包み込むような形で二つの手が重なる。
それだけで、何もしない。
しばらくの間、僕は静かに泣き続けた。
291 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 06:22:53 ID:???
涙は止まった。
何だか、心が空っぽになったみたいな気分だった。
何かを、自分の中の何かを話したい、と思った。
「この世界に取り残された時、横にアスカがいた。僕は、また拒絶されるなら、また否定されるならいっそ、アスカを殺してしまおうと思って、首を、絞めた。」
「・・・。」
「アスカに頬を撫でられて、僕を受け入れてくれた気がして、気づいたら涙が溢れて、僕は泣いた。
僕を拒絶するもの、僕を否定するものなんて死んでしまえばいいと思ってたのに、また、受け入れられたい、認められたいって、思ってたんだ。
僕は、自分の気持ちが、どうすればいいのか、わからなくなったんだ。」
「・・・。」アスカは、ただ、黙っていた。
「ただ、あそこに居れば僕はアスカに受け入れられたいって、強く思うようになってしまう気がした。
でも、きっと受け入れられるはずなんてなくて、そしたらきっと、僕はまたアスカを殺そうとするんだと思ってた。
だから僕は逃げたんだ。もう傷つけられないために、もう、受け入れられたいだなんて、思わない為に。」
292 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 06:28:24 ID:???
「・・・どうして、戻ってこようって、思ったの?」
「・・・夕焼けを見たんだ。とても、綺麗な夕焼け。赤い海を紅に染めて、何もかもが紅く染まっていって、すべてが一つになって行くような気がした。
それはとても綺麗で、僕はこのまま、この景色をずっと見ていたい。ずっと、この景色の中にいたいって、思ったんだ。海に溶けた、みんなみたいに。
でも、・・・影に気づいたんだ。自分の影。
それは紅い景色の中で唯一つ黒くって、まるで、誰とも分かり合えない自分みたいに見えて、どうしようもなく寂しくなったんだ。
独りでいる事なんて、分かり合えない事なんて、慣れていたはずなのに、寂しさで胸が痛くて、苦しくて、ただ声を上げるしかできなかった。
・・・夜になっても寂しさはずっと消えなかった。そんな時、僕はこの街に来てからの事、エヴァで戦ってきた間のことを思い出したんだ。
父さんに会って、ミサトさんに引き取られて、トウジやケンスケとつるんで、綾波とわかり合って、アスカとケンカして、加持さんと語り合って、カヲル君と触れ合って・・・。
どれも偽りだったり、壊れてしまったりしたけど、大切な思い出だったんだ。大切な、つながりだったんだ。僕がもっと強ければ、僕がもっと強く望めば、守れたかもしれないものなんだ。
・・・みんな死んだ。みんな消えてしまったけど、まだアスカだけが、アスカとのつながりだけが残ってた。
だから僕は、もう手遅れかもしれないけど、傷つくかもしれないけど、アスカを、アスカとのつながりを、今度こそ失わないように、何があっても守ろうって思ったんだ。
僕にとって、アスカが最後に残った、希望だったんだ。」
293 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 06:33:49 ID:???
「・・・。」
「僕は、アスカの傍に居る資格なんて無いし、何も出来ないかもしれない。・・・それに本当は、僕はずっとあの時感じた寂しさから逃げているだけなのかもしれない。
でも、そんなの関係なかった。そうやって気にして何もしないで、今までずっと、大切なものを失ってきたんだ。資格なんて無くても、何も出来なくても、たとえこの気持ちが偽りだったとしても、僕は前に進もうと思った。
それが、僕がここに、アスカの横に戻ってきた理由。」
「・・・。」
「アスカにとって迷惑だったと思う。余計な事ばかり、してきたと思う。現に今、僕のせいで、アスカを混乱させてしまってる。
それでも、僕はアスカの傍に居たい。だから、・・・アスカの傍に居ていいかな?僕でいいなら、アスカが望むなら、僕はずっと傍にいるから。」
「・・・・・・。」
アスカは何も言わなかった。
ただ、重ねていただけだった手が、ぎゅっと強く握られるのを感じた。
僕はそれに応えるように、アスカの手を握り返した。
それだけで、お互い何もしなかった。何も言わなかった。
ただずっと、空を見ていた。
294 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 06:39:45 ID:???
太陽の光で目を覚ました。
いつの間にか寝てたみたいだ。
アスカの手と僕の手は握られたままだった。アスカの寝息が聞こえる。
僕は自分の脇腹を見る。シャツは血でベットリと赤く染まっていた。アスカの手を握っている方とは反対の手で、シャツをめくり上げた。
脇腹には、塞がっているけれど、痛々しい大きな傷跡が残っていた。
「ん・・・」
アスカが起きたみたいだ。
「おはよう、アスカ。」
僕達は帰ることにした。
立ち上がると傷が痛んで、ふらついた。
「ちょっと、大丈夫?」
心配してアスカが肩を貸してくれた。確かに一人じゃ歩いて帰れそうになかった。
帰り道は分からなかったけど、太陽の位置で大体の方角は分かったから、それを頼りに歩いた。
廃墟群を右往左往して、太陽が傾きだした頃には何とか迷路みたいな廃墟群を抜け出していた。
それからしばらく歩くと、遠くに赤い海が見えた。もう辺りは、紅い光に包まれていた。
「キレイね・・・。」アスカが呟いた。
「うん。・・・・」と僕は答えた。
立ち止まって、太陽が沈むまで二人でその光景に見とれていた。
延びていく二つの影。
もう夕焼けをみても、あのさみしさはやって来なかった。
295 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 06:46:07 ID:???
それからしばらくして僕達はいつもの場所まで辿り着いた。
もうすっかり夜になっていた。
「はぁー、疲れた。やっと帰って来れたわね。」
「ごめんね、アスカ。肩貸してもらって。」
「何言ってんのよ。元々アタシのせいなんだし。・・・アタシの方こそ、ごめん。」アスカが俯きながら言う。
「いいんだよ。気にしなくていいって、何度もそう言ってるじゃないか。」
「・・・。」
アスカは僕をゆっくりと離す。
僕は地面に座り込み、アスカも僕と向き合うように座る。
「シンジ、アタシね、・・・昨日アンタにアタシの気持ちを話して、アンタが自分の気持ちを話してくれて、何となくだけど、アタシが何なのか、アタシが何をしたいのか、分かった気がするの。」
「そうなんだ。良かった。」
「・・・シンジ、昨日アンタさ、・・・アタシの傍に居たいって、・・・アタシと、アタシとのつながりがアンタにとっての希望だったって、言ったわよね。・・・その気持ち、・・・今も、変わらない?」
「うん。」むしろ以前よりも、この気持ちは強くなってる。
「なら、目を瞑って、」僕は言われるままに目を瞑る。
「アンタに、もっと大きな希望をあげる。」
296 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 06:51:43 ID:???
そう言って、アスカは僕にキスをした。
突然の唇と唇の合わさる感触に思わず目を開けると、目を閉じたアスカの顔がすぐ近くにあった。僕はまたゆっくり目を閉じた。
ずっと、こうしていたいと思った。
どれくらい経っただろう。長いようで短い時間。やがて名残惜しそうに唇が離れて、僕は目を開ける。
アスカと目が合う。何となく気まずくてお互いに俯く。
アスカの顔が赤くなっているのが分かった。
僕も自分の顔が熱くなっているのを感じた。恥ずかしい。
「・・・あ、アタシ、水筒に水汲んでくるわ!」
アスカも恥ずかしいんだろう、そう言って慌てて海に向かっていった。
何となく、空を見上げた。
満天の星空と、月と、赤い虹。相変わらず雲一つない。
不意に、風が吹いた。
心地良い夜風が火照った頬にあたり、少し伸びた髪を揺らす。
何かが変わったんだと、僕は思った。
終
乙!GJ!
楽しかったよ
GJ!
良かったよ
299 :
夕焼けと影:2007/07/15(日) 07:57:14 ID:???
あ〜〜終わった。
乙って言ってくれた人やgj言ってくれた人ありがとう。
>>274 期待にそえれなくてすまない。
既に完成してて変にいじくると自分のやりたかった展開に行けなかったりするから今更いじくれんかった。
正直勢いで書いてる部分が大きかったからもう少し推敲とかするべきだったと反省してる。
本編と矛盾してたりするし。
まー楽しんでくれたら幸いです。それじゃ。
超GJ!!!
おもしろかった!!
乙!
途中、ちょっと独白しつこい感じしたけど全体的には良かった。
乙。面白かったよ。
皆さんGJ!です。
読み応えありましたw
あれから、僕は手紙を書き続けた。
というのも、以前送った父への手紙は依然として返事が来なかったからである。
かれこれもう、20通以上も書いた。いや、ここは敢えて正確に言うと23通だ。
その、23通目を窓口の人に渡した時に、返信が届いていることを伝えられた。
いつもの僕なら既に諦めていたと思う。
『諦めたらそれで終わり』これは、中学受験を断念したときに得た教訓。
その教訓が初めて実ったのだと思う。
その日のうちに、僕は自分の部屋で封筒を開けた。
中には全く予想外の物が入っていた。
航空券と僕名義のパスポート、それとたった一言『来い』とだけ書かれた手紙。
父の所在は僕ですら知らされていない。航空券を見ると香港行きだった。
香港に国連の施設なんてあったのだろうか?と疑問に思ったが案外近いことに少し安堵した。
学校に二、三日休むことを連絡し、出国の準備をした。
あと、料理の出来ない同居人のためにカレーを大量に作っておいた。
ミサトさんは『がんばって』と励ましてくれたけど、アスカは何かそっけなかった。
平日の昼間だから仕方が無いけど、一人で空港に向かうのは少し寂しかった。
飛行機に乗ってから僕はとんでもないことに気付いた。
香港のどこに行けば良いのか全く見当が付かないのである。
父からの手紙を何度読み返してみても『来い』としか書かれていない。
空港に父が迎えにきてくれるのだろうか?とも思ったが僕は父の顔を知らない。
僕は飛行機の中でたまらない不安に襲われ2度嘔吐した。
飛行機を降りると直ぐに、黒服を来た2人の男が案内してくれたが、そこからが
まさに地獄だった。さらに、別の便に乗り換えさせられて、どこに向かっているのか
分らないまま少しずつ意識が薄まった。最後に覚えているのは美味しくない機内食だった。
目を覚ますと、どこかの国の国連軍基地のビジタールームという事はすぐに分った。
内装が第三東京にあるのとほとんど同じだったからである。
父はUNフォースの司令という立場にあり、警備上の都合で実の息子である僕にすら
居場所を明かすことは出来ないらしい。
そういう訳で父との対面は、周囲が細心の注意を払っていると感じられる。
まず、ビジタールームにしても窓が無くどういう気候の地域なのかすら分らない。
目を覚ましてから5分位して、さっきの黒服のうち背の低い方が入ってきた。
僕はその男に無言のままついていき、案内された部屋の扉を開けた。
その部屋は異様に広く、しかし中にある備品は机が一つあるのみ。
例えて言うなら、太平洋の孤島。そんな感じの部屋で、窓はあるのに偏光硝子を使っているのか
外の様子は全く見えなかった。
遠くに男が一人、僕はその人に近づいて、そしてよく観察した。
父と思われる人物、名は確かゲンドウ、そう、碇ゲンドウ。
背はとても高く、僕を見下ろす視線には色眼鏡越しにも軍人特有の威圧感があった。
10年ぶりの父との再会に感動は無い。父に対する記憶というものがほとんど無かったのも理由だし
この男が本当に父なのかどうか怪しいものである。影武者なのではないかと勘繰ってしまう。
それにしても僕が勝手に思い描いていた父の姿とはかけ離れていた。
現実は得てしてこういうものなのかもしれない。
「久しぶりだな、シンジ」その声は、2年前に電話で聞いたことのある声だった。
「あ‥‥うん、そうだね」
僕は父さんの事なんて、もう覚えていないって、言ってやろうと思ったのに言えなかった。
ここで会話は途切れ、広い空間を静寂が支配して、まるで宇宙空間に放り出されたような
重力と音の無い世界に滞在している感覚になった。
「手紙は全て目を通した」再び言葉を発したのは父の方で、その言葉によってますます喋りにくくなった。
なぜなら、伝えたいことは全て手紙に記しているからである。
「あ、あの、アスカのビザの件お願いします」
「‥‥管轄外だ」
管轄外、そんなことは始めから分っていた。それを承知でお願いしたけど結局は駄目だった。
単なる自己満足なだけかもしれないけど自分に出来る全てをしておきたかっただけなんだ。
これまでの苦労の成果は得られなかったけれど、10年ぶりに父に会えたという別の成果はあった。
帰国したときには実に10日も経っていた。パスポートの履歴には17もの国の出入国があったらしい
それも無意識の内に。父と一緒に過した時間は僅か2時間で、一緒に昼食をとったけど会話は無かった。
この2時間のためにアスカと一緒に居られる10日間を犠牲にした。
その10日間の間に日本では色々なことが起こっていた。僕の作ったカレーにミサトさんが独自の味付けを
施して、それによってアスカが体調を崩したこと。学校では僕が失踪したのではないかと話題になっていた事。
そして、なによりアスカの帰国の日取りが確定したこと。
アスカの帰国は最初から覚悟していたこと。それまでの時間をどう過すかが大切なのだと思う。
だから、僕は思い切ってデートの約束を申し出た。
「あのさ、14日一緒にどこか行かない?」
「悪いけど、夕方から用事があるからダメ」台詞以上に語気はとても冷たかった。
その上、アスカは僕と目を合わせようとしなかった。
「あ、でもさ、昼ごろだけで別にいいんだ。今まで2人で一緒に出かけたことなんて無かったし
バレンタインデーのお返しだってしたいし」
「‥‥ま、お返しとやらは貰ってあげてもいいけど」
「じゃ、12時に駅前で」
そういって、僕は自分の部屋に閉じこもった。
3月14日まであと7日
次回は最終回
今夜か明日にでも投下します。
ハル氏乙!
今日という一日の始まり、そして今日という日は‥‥
私は目覚ましよりも20分早く目が覚め、静かにカーテンを開けた。
ビルの隙間から太陽が覗き込んでいる。まだ、目は明るさに慣れていなく
目を細めながら街を見下ろした。街の営みはいつもと変わらず
まるで一年のうち365日がそうであるかの様だった。
決意は、とっくに出来ていた。でも、実際にその日になってみると
緊張で胸が締め付けられる。頭は妙にスッキリしていて冷静なのに
身体はその逆で落ち着いてなんていられない。胃液が逆流しているのが分る。
僅かに希望があるから心が掻き毟られる。
どうせ裏切られるなら、希望なんて無いほうがいい。
どうせ裏切られるなら‥‥‥
こぶしをキュッと握り締め、聞かせる相手は街なのか
太陽なのか、ベランダの植木鉢なのか、独り言をつぶやいた。
「アスカ‥‥いくわよ」
最初で最後の二人きりでのデート。
この為に、わざわざ美容室で2時間もかけてセットしてきた。
服装だってあの時以来、封印してたミニのプリーツスカート。
待ち合わせの時間より15分も早くアイツはやって来た。
それよりも早くからアイツを待っていた自分が腹立たしい。
のんきな表情でのんきな挨拶をするバカシンジはもっと腹立たしい。
気合を入れた髪形に気付かないアイツの横っ腹を思いっきり殴ってやった。
『その髪可愛いね』の一言で女の子はどれだけ救われるのかあいつは知らない。
まだ肌寒さの残る春先、公園のベンチでシンジに買わせたクレープを頬張った。
私は一人、考え事をしていて会話の内容もクレープの味も路傍の人。
こんなつまらない女とデートするなんてシンジは不幸な奴だと思う。
ママが他界してから7年、そして父が再婚してから7年。
居心地の悪い家庭から逃れるために、早く大人になるんだと決意してから7年。
それから、私は血の滲む様な努力をした。
おかげで私は同世代の子を蔑む捻じ曲がった性格になった。
あの子達を置き去りにする事でアイデンティティーを保つ私。
ううん、ホントは置き去りにされたのは私の方。日本に来てようやく分った。
皆、自分の大切なモノを持っている。7年前の私の決意はただの『逃げ』だった。
周りの人間が私のことを天才だと騒ぎ立てたのは、賞賛ではなく憐憫だったなんて。
それに気付かなかった私はホントに馬鹿。
ねぇシンジィ、ホントはねぇ、もっと日本に居たいよぅ。
アンタもちょっとぐらいは気付いてるんじゃないの?
帰国の日取りは本来より1週間延期した3月14日。つまり、今夜の便。
3月14日になれば、アイツからアタシは、アタシは、欲しいものが貰えると思って
期待してこの日まで延ばした。そんな期待はどうせ裏切られるんだけどさ‥‥‥
あいつの口から『アスカ、行くな』このセリフ、聴けるはず無いって分ってんのに‥‥‥
もし、それが聴ければ、私は航空券をその場で破って、それで、それで
アタシの全部、アンタにあげる。
ビザは、ミサトに頼めば何とかなるかもしれないし、大学だって何年休学しようとも
人より遅れてなんかいない。そのセリフ何時になったら聴かせてくれるの?
今日って告白にはぴったりの日なんじゃないの?
私は今まで、バカシンジの勇気ある一歩を期待して、そのたびに裏切られてきた。
何度裏切られても、懲りずにまた期待する私。だけどあの馬鹿はまた私を裏切る。
きっとそうに違いない。この無限ループも今日で終わりだけどさ。
ねぇシンジィ
私は今、あなたに嘘をついているのよ。
帰国が3月20日だっていうのは、あれ嘘。ホントは今日の便で帰国します。
バッグの中にはパスポートと航空券が入ってます。
だってさぁ、アンタが空港まで来られたら、私ドイツでどう過せばいいの?
私、空港まで見送りに来たアンタの表情を思い出すたび
きっと堪えられずに泣き出しちゃうよ。責任取れないでしょ?
だからアンタは空港まで来ないの。
そして私は二度とアンタのこと思い出さないように努めなければならないの。
あはは、大変なのよ。アンタのことを忘れるのは。アンタはもう私の一部で
アンタのことを膨大な時間で希釈しなければならないの。
既に泣きそうなのよ。わかってんの?バカシンジ!
そして‥‥さようなら。もう二度と会わない私の愛しの人。
時刻は六時を過ぎ、シンジにとってつまらないであろうデートを終えなければ
ならない時間になった。私は、とうとうホワイトデーのプレゼントを貰わずに
空港へ向かう。あの馬鹿、プレゼントすら用意していないとは‥‥‥
どうせ貰っても、ドイツまで持ち込まない覚悟でいたからむしろ好都合ではあったけど。
出国手続を済ませ、ハンブルグ行きのボーイング747を待つ。
希望が消滅し、待ち望んでいたはずの絶望はやっぱり辛かった。
『どうやって日本での出来事を忘れるか』という命題は
3月15日から半年前の私に戻ればよいというのが私の出した結論。
そう、明日から私は自称天才、惣流・アスカ・ラングレー。
あんな、冴えない奴は歯牙にも掛けない。
あと、四時間半があの馬鹿のことを考えてられる猶予。
そして、私は半年前の自分に戻すタイムマシンに乗り込んだ。
心の喪失、私の胸にぽっかりと空いた穴。
機内のBGMだけが心に空いた隙間を通り抜けていく。
やがてBGMはシンジがコンテストで演奏したあの曲に変わり
私はひどく混乱した。肩をいからせ涙に堪える、必死だった。
熱い雫が私の頬を伝いスカートへ向けて自由落下。
やがて、ドイツ人のエアホステスがやってきて気分が悪いのかと訊いてきた。
「大丈夫です、ありがとう。ちょっと悲しくなっただけだから」
「そういうこと私にも時々ありますよ。よくわかります」
彼女はそう言って首を振り、私にとても素敵な笑顔をくれた。
涙はいつになったら枯れるのだろうか?
ようやく涙が乾いた頃に、さっきのエアホステスがやってきて
封筒を差し出し、私に話しかけてきた。
「碇 シンジ様より。預かっております」
私宛の手紙だった。涙が枯れたはずの瞳がまた熱くなった。
私はそれを乱暴に奪い取り、そしてはっと気付いて謝った。
「ゴ、ゴメンナサイ、取り乱していました」
「いいのよ、それ、大切な人からのでしょ?
時間はたっぷりあるから、落ち着いたら読めばいいと思うわ」
彼女はハンカチをそっと私の膝の上に置き、もといた場所に去っていった。
封も開けられず、封筒との睨めっこが暫く続いた。中にカードのような物が入っている
なんだろうか。中を開けて確かめたい好奇心よりも、待ち望んでいたはずの絶望が確定する
恐怖感の方が強い。ちょっとの勇気じゃ開けられそうに無い。
それでも封筒を開け、中の手紙を取り出した。そして、読みやすい場所に置いた。
あとは、目を開けるだけ。それが‥‥出来ない‥‥
決意し目を開けた。漢字にはルビが振ってあるのがすぐに目に映る。
‥‥‥コワイ
あなたが、この手紙を読んでいるのは、ちょうど空の上でしょう。
僕はあなたに伝えないといけないことがたくさんあります。
何から伝えればよいか迷ってしまうので、結論から伝えます。
僕の本心はアスカにドイツに帰ってほしくない。だけど、アスカは
日本に留まるより、ドイツに帰ったほうが良いと思います。
ここまで読んで、私は手紙をしまいたくなった。本心だけを素直に
伝えられないアイツはお人好し。アタシの全部はアンタの物なのに‥‥
私にとって、続きを読むにはあの苦いブラックコーヒーが必要だった。
さっきの人を呼んでコーヒーを注文。熱くて苦いその液体を喉に通して
もっと苦い文章と戦闘再開。
僕はアスカがもっと長く、日本に居たい事を知っています。
そして、ボクもずっとアスカといっしょに居たい。それで、ボクは
アスカのビザの、期限の延期が出来るかどうかミサトさんに聞きました。
でも、ミサトさんの権限じゃそれは不可能だって知りました。
そのころから、ボクは父に手紙を書くようになりました。
その後、ボクは父に会いに日本を出国しました。
父に頼んだけれど、管轄外だと言われました。
‥‥‥アイツ、私の為に。
シンジの居ない一週間はとても調子の狂うものだった。
その後、私はアイツに対してつらくあたったのを思い出す。
私をほったらかした罰、そう心に決めて接していた。
だけど、シンジの今までの行動が全部私のためだったなんて思いもよらなかった。
ミサトに頼めばビザは何とかなると思い込んで、のんきにアイツの一言を待っていた私。
『ホントに馬鹿ね、私って』
手紙は所々、涙で滲み読みにくくなってきた。
少し冷めたコーヒーを一口、手紙を捲り2枚目に目を移す。
つまり、アスカがビザの期限を無視しても強制送還されるって事が分りました。
だから、ボクはアスカに帰らないでほしいと伝えないことを決心しました。
僕はトウジが出国してから、元気の無い洞木さんを見てると
切ない気持ちが伝わってきます。ボクもこういう気持ちを味わうのかと思うと切なくなりました。
気丈に振舞うヒカリの空元気には、私も正直どう接してよいか分らなくなる。
友達と呼べる存在が誰一人いないドイツに帰らなければならない私は、一人だけ不幸な存在だと
思い込んでいたけど決してそんなことはない。
皆、辛い事を抱えて大人になっていくんだ。
僕は大切な人と合えなくなる辛さを理解しました。だから、僕は
自分の出来ることがあれば、全力でこの状況に立ち向かおうと思います。
さて、遅れてしまったけどホワイトデーのプレゼントを同封します。
プレゼントの一言に私の胸は高鳴った。
心臓が百個くらいあって、そのうち二、三個口から出そうな勢いだ。
期待すればそのたびに裏切られて、何度裏切られても学習せずにまた期待して
そんな自分がつくづく厭になった、だけど今回は、今回だけは私の欲しいものが
入っていると思う。あのカードのような物が私の幸せの扉の鍵だと確信する。
普通の読解力をもってすれば絶対にそうだ。まして、私は天才。
確信はしているのに、大きく深呼吸してからでないと、この先は読むことは出来ない。
私は呼吸を整え、すっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干した。
父が罪滅ぼしだと言って、用意してくれたミュンヘンのアパート
そのカードキーが入っています。僕は手続が済み次第そちらに行こうと思います。
もし、嫌でしたらなるべく早く送り返してください。
やっぱり、シンジはつくづく不幸な奴。
ドイツまで来たら逃げらんなくなるのよ、わかってんの?バカシンジ!
ようやく手にした宝物に私はキスをした。そして、大切に仕舞い手紙の続きを読む。
もう、ドキドキしながら読む必要は無いのに、それでも心臓の鼓動は勢いを緩めない。
少し早いんだけど、僕から提案があります。3年後の6月6日に日本人になりませんか?
あと、最後にプレゼント、1週間も遅れてしまってゴメンナサイ。
僕は最近、大切なものを大切な日に渡せていませんね。
不意打ちよ!
ズルイ、ズルイ、ズルすぎる!
アタシの全部アンタに奪われちゃったじゃない。
私を空っぽにした責任、ちゃんと取って頂戴ね。
私は最後の一行が気になって腕に巻かれたカルティエを見た。
短いほうの針が、ちょっとだけ左の方にお辞儀していた。
「バカ‥‥間に合ってるじゃないの」
終 劇
ふー、ようやく完結。
ちゃんと構成考えてから書かないとご都合主義になることが分ったよ、
3バカのスペックが高い点に関してはかなり後悔している。
あと、ずっと前の手紙のところは一休さんのエンディングが元ネタ。
GJ!
やっぱりあれは一休さんだったかwwwww
322 :
132:2007/07/18(水) 22:46:48 ID:???
うわぁ、皆さんきれいに完結されている・・・ 自分のが大丈夫か。かなり不安だ
連休前に上げたかったけど、人工透析中に危うく、死にかけるところだったんで、すいません。
>>322 とりあえず体調優先で頼む
しかし透析も辛いなぁ…無理だけはしないでくれよ
時間かかるのなんか気にしてないしBREAK-AGEとのクロスネタ楽しみにしてる
>>322 wktkしながらも大人しく待ってるから無理しないでくれ
死んじゃったら二度と書き込み出来ないんだから……
325 :
132:2007/07/18(水) 23:09:38 ID:???
あの処置が二人に行われて、もう何日が過ぎただろう。二人とも検査結果はウソみたいに正常なのに、意識は戻らなかった。
季節は夏から秋、そして冬の足音が聴こえてきそうな時期だった。
私達は毎日、時間の許す限り、眠ったままの二人のもとに行き、話しかけたりしていた。いつか目覚める時が来る事を信じながら、ただ、時間だけが過ぎて行った。
そんなある日、ママが自発呼吸を始めたという連絡がシンジから大学にいた私に届いた。 ヒカリに頼んで、無理矢理、仕事を抜け出してきてくれた鈴原に感謝しながら、送ってもらった。
いつもは明るく、馬鹿な話ばかりする鈴原が車内で真剣な声色で私に話しかけてきた。
「なぁ、惣流・・・」
いつもなら、ヒカリに習い、私をアスカもしくはシンジ嫁と言ってる鈴原では考えられない重い言葉だった。
「俺もヒカリも、物心ついてから、両親はおった・・・ だから、正直片親のお前やシンジの気持ちはわからへん。だけどな、お前もシンジも本音で親と向かいあったんか?」
「トウジ・・・ 今はやめなさいよ。」
「確かにお前もシンジも一生懸命に世話していたし、それは周りのワシらもよ〜くわかる。けどな、本音で、心底からの言葉を交したんか?」
鈴原の言葉は私にママ達が帰ってきた時からの私達の事を思いださせた。本音で・・・ 喋る?
私もシンジも毎日、良くなって行く二人を見るのは嬉しかったし、本当に楽しかった・・・ でも、何処かでわだかまりがあった。
鈴原の言う本音が正直、何を指しているのかは、分からない。でも、私の中には必ず、ママに伝えなきゃならない言葉が確かにあった。
私はこの言葉をママに、そしてユイさんにも伝えたい。自分の口で
>>ハル氏
まずはGJ! 最後だけアスカ視点ですね。
アスカはいつの間にそこまでシンジのことを想うようになっていったのかな。
でも最後のシンジ君はカッコいいですよね。アスカ様もかわええ。
そして何より、キレイに完結したのがもっとすばらしい。それだけでもこの作品の価値は5割増しっす。
ええもの読ませてもらいました。
>>132氏
がんばってください。ってか早く病気治してください。
続きは期待してますし完結してもらいたいけど、指南といてくださいまし。
未だにアスカ様と言うヤツがいるのか
328 :
132:2007/07/18(水) 23:35:02 ID:???
病院の入り口にはシンジが待っていてくれた、私はともに病室へと向かった。 ベットの横にひざまずき、懸命にママに呼び掛けた。何度も何度も、ひたすらに私達は呼び掛けた。
私が握りしめていた手に微かな力が入ったのは、その時だった。
ママの顔からは涙が静かに落ちていた、そして、ゆっくりと目は少しずつだけど、開かれた。
「アスカ・・・ シンジさんと貴方の声、確かに聞こえたわよ・・・ ありがとう・・・」
私はママを抱き締めながら、わんわん子供みたいに泣き叫んだ。
良かった・・・ ママが戻ってきてくれた。私のヒドい顔を見たママは少し微笑んで、シンジに向きなおって、「こんなヒドい、料理も出来ない娘ですが、よろしくお願いします・・・ シンジさん。」
そう、シンジに微笑みながら、ママは言った。
シンジは顔を真っ赤にして、ボソボソとしゃべっていた。
その日は私の強い希望でママのベットの隣で寝る事にしてもらった。まだ、意識の戻らないユイさんは病室を移される事になった。
消灯も終わった病室でママは静かに喋りだした。
「アスカ、私はずっと夢を見ていたみたわ。あなたがシンジさんと子供と一緒にいる風景をずっと見ていたのよ・・・」
「ママ・・・? どうしたの。」
「うん、貴方とお話したくてね。二人っきりでこんな時間に話す事なんて、なかったでしょ・・・」
「ママ・・・ 私もママにはなさなきゃならない事があるの・・・」
「あら、なぁに。改まって、どうしたの?」
鈴原が言っていた言葉がずっと頭をリフレインしていたが、私は意を決して喋りだした。
「ありがとう、ママ。ママ達のお陰で私達の未来はあるわ・・・」
ママは少しだけ、頬を膨らませて、私にデコピンしながら言ってくれた。
「違うわよ、アスカ・・・ 私達古い世代はレールを引いて、ただ道を照らしただけよ。今のセカイがあるのは、シンジさんとあなたが選んだからあるのよ。」
「私とシンジが・・・? アダムとイブみたいに?」
「そうよ、あなたたちは選んだ。他者との関係を、セカイを・・・ それはまったく新しい道だったのよ。」
329 :
132:2007/07/18(水) 23:51:34 ID:???
次の日、ママに起こされ、朝早く目覚めた私はユイさんの病室に泊まりこんだシンジが心配になり、見に行った。
シンジは昨日着ていた研究用の白衣を脱ぎ捨てたまま、姿が見えなかった。そして、病室のベットから、ユイさんの姿も消えていた。
急に嫌な予感がした私が必死に探していると、後ろからのほほんとした声がした。
「あれ、アスカ。どうしたの? あわてて?」
後ろを振り向くと、シンジが立っていた。
「し、し、シンジ・・・ 病室から、消え、消え、ユイ、ユイさんが!」
「そんなに慌てなくても、母さんなら、今処置室だよ。夜中に急に自発呼吸が始まってね・・・」
「え、じゃ、じゃあ、ユイさんも、意識が・・・ 」
「うん、戻ったよ。ただ、まだ衰弱も残っているから、処置と検査を朝一番でやってもらっているんだ。」 そこまで言うと、シンジは大きな欠伸をしながら、「ごめん、アスカ。安心したら、眠たくなっちゃったから。そこのソファで仮眠とるよ。」
そう言うとシンジは廊下のソファにごろんと横たわり、堅いソファなのに、よっぽど疲れていたのか、シンジはあっという間に眠りについた。
しばらく、シンジの寝顔を見ていた私は、ソファに腰かけるとシンジが寝やすいように、ひざ枕をしてあげた。
続く
GJ
透析すると血がサラサラになるよな。
332 :
132:2007/07/19(木) 00:43:01 ID:???
すまない、皆勘違いしている人も多そうたが、人工透析は治らない。移植しない限りは死ぬまで、毎回4時間を繰り返す。ある意味拷問だ、だから、皆腎臓には気を付けてくれ。
一応、後2回から3回で終了の予定です。
アンタも気を付けろよ。
シャントがあるから血栓飛びやすいからな・・・
>>332 新ブラよろでちょうどテーマになっているから、最近は分かっている人も多いと思うよ。
移植という手もあるけど、それがいかに厳しいかもね。
すまん、こういうときどう言えばいいかわからないんだ。
小説は楽しみに待ってる。
335 :
132:2007/07/20(金) 12:27:08 ID:???
ようやく、二人が車椅子に乗れるほどに回復した頃に鈴原とヒカリの結婚披露宴の案内状がきた。
もちろん、返事は“出席します”に丸を書いたら、シンジに怒られた。礼儀としては、出席の後に“させていただきます”と書き加えなくてはいけないらしい。あ〜良かった、笑われなくて。
ネルフスタッフにも招待状が届いていたが、ミサトやリツコの目の色が違う・・・。どうやら、ブーケを狙っているらしい、マジの目付きだった
うっかり「相手もいないのに・・・」と口走った青葉さんはしばらく、徹底的にロン毛としか言われなくなって、凹んでいた。
なんとマギのシステム管理の登録さえ、ロン毛だった。あの二人だけは怒らせまいと私は心に誓った。
そんなある日の晩、久しぶりにシンジの方から、予約している場所があると、連れ出された。
第3新東京一の高級フレンチ店だった・・・ そりゃ、前にシンジには行きた〜いと甘えて言った事はあるけど
本当に連れて来て貰えるなんて、思ってもみなかった。
車の中でも、シンジはいつも以上に口数も少なく、思い詰めている表情だった。
料理は素晴らしいの一言だった、全てのコースが終わった時にシンジがある物を出して、私に言った。
「アスカ、これを受け取ってくれない。」
それは指輪ケースで私は心臓の高鳴りでなかなかうまく開けなかった。
ケースを開くと綺麗な指輪がキラキラと輝いていた。シンジからのプロポーズだった。
336 :
132:2007/07/21(土) 16:20:42 ID:???
シンジは真剣な顔で私を見ながら、言ってくれた
「本当はもう少し、前に渡そうと準備していたんだけどね・・・」
何故だか、胸がいっぱいになった私は泣き出したい気持ちを押さえながら、
「本当に私で良いの?」
本当はそんな事思ってもないくせにシンジを試すような事を言ってしまった。
「うん、アスカじゃなきゃ、駄目なんだ。僕は」
私達は7年も離れて、遠回りをしてきたけれど、本当に必要なパートナーに巡りあった・・・
幸せはこんなに身近にあったんだ。そう思いながら、見るリングはちょっと涙でぼやけて見えていた。
それから一月後、ついに鈴原専用の義足が完成したと聞いて、シンジと鈴原にに無理矢理、同行した私達はイーディスのチーム0の待つ研究室へ向かった。
「やぁ、ネルフの皆さん、遠いところをわざわざすいませんねぇ。」
迎えてくれたなかなかイケメン、(まっ、うちのシンジには劣るわね〜)男性は見た覚えはないが、えらくフレンドリーに迎えてくれた。
誰?と疑問に思っている私達に気付いた仁村さんが耳打ちしてくれた。
「会長・・・ 前にウサギを着込んでいた長船さんだよ。今回はプレス発表もあるんで、会長の厳命であの格好なんだ・・・」
あのふざけたウサギの中身はイケメンでした・・・ なんの冗談よ、それ!?
シンジはチーム0の面々と鈴原に装着する新型義足の最終チェックに余念がなかった。
私とヒカリは仁村さんの奥方の彩里さんに案内されて、社長室で紅茶を頂いていた。
会話を楽しんでいる時に私の指にはめられた指輪に気付いた彼女は私を祝福してくれた。
PETERの気ぐるみ天国と地獄ktkrwwww
GJ!
でも彩理が彩里になってるのはワザとかい?
338 :
132:2007/07/21(土) 16:41:19 ID:???
プレス発表はイーディスと新東京進化研究所(シンジの所属部署の対外的な名前)の共同開発として、発表された。
シンジの名前はプレス資料を隅から隅まで見ても見付けられなかった。思わず、「うちのシンジの研究の成果よぉー!」と叫びたくなったが、ヒカリに睨まれたので、断念した。
くすん・・・
発表会はスムーズに進行し、終わった。いよいよメインイベントである鈴原への最終装着試験だ。
シンジと鈴原は何度もここ、イーディス本社にて試験を繰り返し、細かい改良を繰り返していた。
実際、最初にみたものはモロにロボットの足みたいで、モーター音がうるさかったのが、まったく聞こえずに静かだった。
怪人ウサギ男こと、長船氏は「ギミック付けたかったと・・・」といじけていたのは、見ない事にした。
ギミック以外にも、何故か義足のパーツを赤く塗ろうとしていたらしい・・・
よく分かんない人だ。シンジの話では国府高専の指導教員で研究室まで持っている人らしいんだけど・・・
リツコもそうだけど、研究ばっかりしていると妙な性格になるのかしら? シンジがそうならないように気を付けなくちゃ!
その日はそのまま、イーディスの皆さんと打ち上げになり、楽しい時間を過ごした。私とシンジが婚約した事も祝ってもらった。
たくさんの人から祝福される事がこんなに嬉しい事だとは知らなかった。
続く
339 :
132:2007/07/21(土) 16:44:41 ID:???
>>337 す、すいません・・・ 携帯からなんで、彩理の字が変換ミスしていました。
昨日、全て投下する予定でしたが、所用で中途半端になってしまい、申し訳ありませんでした。
>>339 いやいや、わざと変えてあるのかなとw
ありそうでないリンク物だし、両作品とも時代的にも設定的にもマッチしてるし
検索避けかなぁと密かに思ってた
投下は気長にwktkして待ってるよ
B-Aムーン・ゲッターネタにお目に掛かれるとは思いませんでした(*´д`*)ハァハァ
なんかグダグダっぽくて俺は好きじゃねぇな
俺が完璧にアンチオリキャラだからかも知れねぇが……
まあ好きにやってくれや
>>341 序盤は普通に面白かったが流石にな…
まあそれでも結構読めるレベルだし面白いよ。
例え、シンジとアスカの名前変えたらエヴァ小説だと完全に気付かない作品でも。
作者は多分オリジナル書きたいけど、人にも見て欲しい。>そうだエヴァの名前
借りれば見る人多いじゃん。って考えたんじゃね?
個人的にはSSだし設定改変は良いが原型とどめてるキャラが皆無なのは致命傷だわ。
と散々言ったが俺は132の小説自体はエヴァと無関係として見れば充分楽しめ
てるので頑張って書いてくれGJ
ちなみに読者側のアドバイスエヴァ小説書くメインキャラを決めたら、そのキャラ
には多少は原型を残したら何が書きたいのか読ませたいのかが分かる。
132氏の作品は、アスカ視点なのにアスカがのどんな部分を読ませたいか不明、
キャラ改変のしすぎだが。勿論周囲の人が原型とどめてるなら、そいちら使って
表現出来るだろうけど、シンジ以外は出番が少なく、シンジは改変され過ぎてる。
読み手の取り方とSSの主題決めないからgdgdになってるんだろうね。
まあ読み手の取り方って言ったが、書く側は神様なんだから、お前ら愚民に
読ませてやるって態度で良いんだが、他人の評価を得たいなら読み手の事も考え
るべきだわ。
読む人の事考えないならチラシの裏に書けば良いしね。
以上長文失礼
ユイとキョウコの復活に殆ど意味がなかったのが、致命的だと思ふ。
344 :
132:2007/07/23(月) 10:27:38 ID:???
みなさん、御指摘を読んで、だんだん恥ずかしくなってきました。
今まで、不快な思いをさせていた事をお詫びします。今後は投下も止めたいと思います。文才ないのにのぼせ上がって、申し訳ありませんでした。
おまいらチラ裏吐き出すなら投下終わってからにしろよ('A`)
>>344 そうやって、嫌なことから逃げているのね
>>344 まあまあ。そんなに恐縮することはないと思うよ。
私も他スレで投下していてそれなりに叩かれたりしてるw
でも、万人に受け入れられるものなど書くことは不可能だし、
誰かが面白いと思った部分が
他の誰かには不快感を与えたりもするし。
批判や評価はこれからの創作に生かしていけばいい。
結構いい肥やしになるよ。
そう思って私は書いてる。
実際、批判や論評で新しいものが生まれたりもしているし。
とにかく、ここまで来たらめげずに最後まで投下して下さいませ。
カラダの方と相談しながらでいいですから、
待ってますwww
>>347 万人受けは確かに無理だが、この場合は違うだろ。
その書き方だと多少極論だが、今からエヴァの小説書きます。
僕は碇シンジ、愛機はガン○ムでシャ○を倒します
とか書いて批判来ても万人受けじゃないしで済ませられるぞ。
>>344 色々言ったが132氏の作品自体はオリジナルとしてみれば面白い。
虫が良いが投下希望
349 :
341:2007/07/24(火) 02:56:24 ID:???
実際エヴァってのは結構ヨレてるんだよな。
だけどエヴァと使徒との戦いが中心であんまりヨレてない。
132氏の場合、グダグダ色々詰め込んで収拾付かなくなっているみたいに感じた。
復活した母二人とかなんかほっぽってる感じだし。
俺も書き手の末席に居るが、余計なアドバイスとして言わせてもらうと……。
まずテーマはきちんとした方が良いと思います。
大学の中でのLASとか、ネルフ内でのエヴァをめぐるLASとか……。
なんならエロを通したLASを書いて見ると、テーマがセックルとか中学生淡い性欲とか結構勉強になる。精神的描写とか、行動描写とかです。精力が結構いりますが……。
132氏はそんな文章力も悪く無いから、後は構成力身に付けて、それに合わせた文章磨くと良いと思う。
あとオリキャラ出すなら出来るだけ本編キャラやゲームキャラとかに設定変えて出す位すれば良いと思う。
糞レススマソm(_ _)m
>>349 まあ言ってることは分かるがエロLAS云々はお前の妄想の可能性もあるがな。
既に何回も結構きつい事書き込んでるが書き込んでるだけではあれなんで具体的に
ぱっと気付いた事。
クロスオーバーにした意味
トウジの義足関連
母親復活
とかあるんだが、
クロスオーバーにするならギャグとかで使うんじゃない限りは、その作品を出す意味を
作るべきだと思った。
後もう散々言われてるが母親を出した意味あるの?
シンジとアスカが人間的に成長したとか言うのを表現したいんだろうけど、結局母親達と
2人の関係性が見えてこない。
それとトウジの義足関連の話もシンジが努力してるって事を表現したいのだとは思うが、
それならもっとシンジが義足関連について苦悩してる描写とかも出すべきだと思った。
母親の話やられて唐突に義足の発表会。それまでトウジとの絡みも無いし義足関連で
悩んでる様子も特に無い。
その義足の技術は誰でも実装出来る簡単な物だったのか、もしくはシンジの才能が凄す
ぎて、長年実現不可能だったものを一瞬で考えもせず実現出来る能力があったのか。
と取れる。後者ならそれはそれで良いが、それを匂わす表現はするべき。
あげていけばキリが無いがそんなもん。
クロスの意味=義足関連なんだよなぁ
クロス元の外伝でエヴァの神経接続に似た設定での義肢義足の話がある。
時代設定的には2015年だと開発段階と予測。
2012年から義肢義足による神経接続アミューズメントゲーム操作システムの開発開始。
サイバネティクス・オーガナイズ技術の延長として作中に登場してる。
留学中のシンジのアイデアを既に実現させていたた企業の設定で登場してると思った。
説明不足なのもあるからネタ元とエヴァを知らないと解らんかも。
投下された話だとEOEから7年後だから2022〜2023年と推測。
後、キャラに尽いては全部クロス元の主人公達なんでオリジナルではないよ。
それぞれ義肢関連の
途中で送信してしまった
それぞれ義肢関連の応用技術と思われる分野の専門家として外伝の続編で登場してる。
蛇足だが着ぐるみの長船はリツコと同い年。
桐生はチルドレン達より10歳上、彩理は桐生の1歳上って設定もあるからクロスしやすい作品なのは確か。
>>350 まあ、小説なんてもんは所詮妄想や空想の産物みたいな物だからなぁ……
354 :
351:2007/07/24(火) 04:32:50 ID:???
義肢義足ってのも変だな、全部義肢で脳内変換よろ
後、神経接続技術は最終的に義肢でも宇宙飛行士として活躍出来る事を目標に開発開始されてる設定ってのが抜けてた。
神経接続の義肢はたぶん現実世界でもそう遠くないうちに実用化になるだろうしねえ。
研究レベルではかなり進んできているし。
オリジナル云々書いたのはキャラが原型留めて無いからなんだが。
他にもあるが何か職人が投下しにくい流れになりそうなので
以下いつもの流れで
357 :
夕焼けと影:2007/07/26(木) 05:45:10 ID:???
数日振りにスレ覗いたら流れが・・・
132氏の投下が全部終わるまで待ってようかと思ったが・・・
投下する。
前に書いた『夕焼けと影』の続きです。
『夕焼けと影』エピローグ
『二人が旅にでかけるまで』
雨だ。
シンジとキスした日から、今まで決して変わることのなかった天候が変わり始めた。
最初に風が吹き始めて、次に雲が戻ってきた。
しばらくは穏やかな天候が続いてたけど、今日、とうとう雨が降った。
霧雨程度の雨で、ほとんど音もなく降り続けてる。
テントの中、背中越しにシンジがいる。雨で濡れるとかわいそうだから入れてあげた。
アタシ達はお互いに背中を向け合って寝てる。
テントの中には雨で濡れないように他に荷物を入れてるからかなり狭い。
だから、アタシとシンジは背中越しに密着してる。
背中越しに、シンジの体温が伝わってくる。
「・・・もうちょっと、離れてよ。」
本当は、もっとシンジの体温を感じていたいけど、そんな思いとは裏腹な言葉が出た。
「ごめん。」
そう言ってシンジは少し身体を動かす。二人の間に少しの隙間が出来た。
あれから、アタシ達の関係はほとんど変わってない。
キスも、あの一回きりだ。
アタシもシンジも、そういう雰囲気になるのを意図的に避けてる。
アタシは、恥ずかしくていま一歩踏み出せないでいる。シンジは、どうなんだろ・・・?
「あ〜あ、絶対に崩れない壁でもここにあったらいいのに。」
「ジェリコの壁だっけ?懐かしいね。ユニゾンの時を思い出すよ。」
「あの時結局、アタシ達一緒の部屋で寝てたわよね。アンタ本当に何もしてない?」
「まだ疑ってたの?ホントに何もしてないってば。」
「ふーん。まあいいわよ。」
ユニゾンか・・・。あの時は、シンジの事をこんなに好きになるなんて考えても見なかったわね。
一体、いつからアタシはこんなバカに惹かれてたんだろ。
もしかしたら、最初に会ったときからそうだったのかもしれない。
「そういえばあの時、使徒を倒したのはいいけどアンタのおかげで大恥かいちゃったじゃない。」
「なっ!?確かに最後ミスったのは僕だけどあれはアスカがあの後僕に電話で突っかかってきたからじゃないか。」
「何ですって?」
そういってアタシは後ろを向いたままシンジに蹴りを入れる。
「痛い痛い痛い。痛いって。止めてよアスカ。」
蹴るのを止める。
「はー。バカシンジの戯言に付き合うのも疲れるわね。」
「・・・。」背中越しにシンジが何か言いたげな雰囲気を漂わせてる。
「・・・。」
また、やっちゃった。
思えばシンジにはアタシこんな態度ばっかりとり続けてたわね。
どうして加持さんに甘えてた時みたいに素直になれないのか自分でもわからない。
こんなんじゃ、いつまでたってもシンジはアタシに振り向いてくれないわね・・・。
アタシがシンジに惹かれていることにはっきりと気づいたのはいつだろう。
使徒が、アタシの心を侵した時だっただろうか。
アタシは認めなかった。認めたくなかった。
加持さんがいたから、
シンジに対してエヴァのパイロットとして劣等感を抱いていたから、
エヴァのパイロットとしてのアタシのプライドがズタズタにされて、
加持さんを失って、それどころじゃなかったから。
それに、シンジにとってアタシは特別な対象じゃあ無かったって、わかってたから。
サードインパクトの時、アタシに縋り付くシンジの姿や、心が流れ込んできて、アタシの心は傷ついた。
シンジは縋れるなら誰でも良かったから。そんな気持ちでアタシに近づいてほしくなかったから。
だから、アタシはシンジを拒絶した。
なのにすべてが終わった後、アタシは生きていた。
ファーストの正体は使徒リリスで、補完から甦らせる事ができなかったから。
ミサトの記憶が流れ込んで、それにシンジが嫌悪を感じたから。
ヒカリや鈴原や相田には、負い目を感じていたから。
シンジを拒絶したアタシには、負い目なんか感じなかったんだろう。
だから消去法的に、シンジの寂しさを紛らわすためにアタシが選ばれたんだと、アタシは解釈した。
シンジがアタシの首を絞めて、アタシを殺そうとした時、シンジがどうしようもなく哀れに見えた。
人に拒絶されるのが恐くて、それでも人に会いたいから補完を拒んで、
それにもかかわらずこの期に及んで人に拒絶されることを恐れるその姿はあまりに哀しく見えた。
気づいたらアタシはシンジの頬を撫でていた。
アタシの上で嗚咽を漏らすシンジの姿は哀れで、滑稽だった。
殺されかけたのにアタシの心には怒りも、憎しみも湧かなかった。
それほどシンジを好きになっている事に気づいた。
その事実を認めたくなかった。
相手を傷つけることで得られる、昏い喜びに浸っていたかった。
醜い世界も、泣き続けるシンジも、それを許せてしまう自分も、
何もかも気持ち悪いと思って、突き放したかった。
せめて自分の気持ちだけでも誤魔化したくて、
シンジの頬を撫でた理由を、
そうすることでシンジが首を絞めるのを止めるだろう事を無意識的に悟って行った、
自己防衛から来る打算的なものだとすり替え、
心の中に何とかしてシンジに対する憎しみを抱こうとした。
シンジが戻ってきて、アタシの中の薄っぺらな憎しみはすぐに消えていってしまった。
シンジがアタシのためだけに尽くしてくれて嬉しかった。
でも、シンジはきっとアタシじゃなくてもそうするだろうと思ってた。
だから、その気持ちを認める訳にはいかなかった。
そうやってアタシは自分を誤魔化して、シンジを失いそうになってさえ、自分の気持ちを認めようとしなかった。
シンジは、自分が死にそうなときにも、アタシを気遣って、励ましてくれた。
アタシの話を聞いて、アタシの為に泣いてくれた。
アタシの傍に居たいと、傍に居てくれると言ってくれた。
(アンタにもっと大きな希望をあげる。か、本当に希望を貰ったのはアタシの方なのにね・・・。)
アタシがシンジに抱いている感情と、シンジがアタシに向けてくれている感情は多分違うものだけど。
シンジはアタシじゃなくても他の誰かにその感情を向けていたかもしれないけど。
アタシはこの気持ちを認めようと思った。
いつか、シンジがアタシの事を本当の意味で好きになってくれると信じて。
(そう思ってる割には素直になれないのよね。何でなんだろ。本当に恥ずかしいだけ?)
シンジへの気持ちを認めて以来、シンジが傍に居るどころか、シンジの事を考えるだけで胸の奥が熱くなる。
ただ、そうなればなるほど、シンジを邪険に扱ったり、避けてしまってる自分がいる。
(そっか、恐いんだ。シンジに拒絶されるのが。結局、アタシもバカシンジと一緒じゃない・・・。)
「ねぇシンジ。」
「何?アスカ。」
「・・・やっぱり、そんなに離れなくていい。」
そういってアタシは二人の隙間を埋めるようにシンジと背中を合わせた。
シンジの体温が背中越しに再び伝わってくる。
胸の奥が熱くなって、シンジに伝わるんじゃないかってぐらい鼓動が大きくなる。
それだけで心が満たされて、幸せな気分になれた。
今は、これだけで満足だわ。
続く
GJ
GJ
朝。
雨は既に上がっていて、変わりに霧が辺りを包んでいた。
湿った、ひんやりとした風が心地いい。
「それじゃあ今日も行ってくるよ。」
シンジはもう、かなり前に動けるまでに回復してる。
「ちょっと待ってよ!霧が出てるじゃない!」
「大丈夫だよ。そんなに濃い霧じゃないし、空も晴れてきてる。
それに、アスカのテントにいつまでも居続けるのも悪いしね。」
「・・・そんなこと、ないわよ。」蚊の鳴くような小さな声。
「ん?何か言った?アスカ?」案の定、シンジには聞こえていない。
「うるっさい!なんでもないわよ!行くんならとっとと行ってきなさいよ!バカシンジ!」
「わ、わかったよ。何怒ってるんだよ。」
そういってシンジは逃げるようにそそくさと出かけていった。
は〜。
思わず溜め息が漏れる。
どうしてアタシはいつもこうなんだろう。つい反射的に憎まれ口を叩いてしまう。
軽く自己嫌悪を感じる。
そもそもシンジにしてもアタシがキスまでしたっていうのにアタシの気持ちに気づいてないはずないじゃない。
なのにアタシに何もしないっていうのは・・・・アタシのこと、そういう対象で見れないって事なの?
(ダメよアスカ!そんなの関係ないじゃない!
アタシが勝手にシンジを好きになったんだから、アタシはただ素直に気持ちをぶつけるしかないのよ!)
わかってるけど不安は消えてくれない。
(シンジはアタシの傍に居たいって、アタシの傍に居てくれるって言ってくれたじゃない!)
そうだ、シンジがアタシの傍を離れることはないんだ。それだけは、信じることが出来る。
アタシの心からようやく不安は消えて行った。
右腕の包帯を解いていく。
腕を縦に裂いている痛々しい傷が露わになる。
プラグスーツを脱いでいく。全身にある傷が目に映る。
アタシの心と同じ様に、傷だらけのアタシの身体。
シンジにこの身体の傷を見られて以来、この傷を見てもつらい気持ちにはならなくなったけど、
それでも、何かがズレている様な違和感はまだ感じ続けてる。
それと、
(こんな身体じゃ、シンジも嫌だよね・・・。)以前とは違う種類の哀しみを感じるようになった。
徐々に曇り空は晴れていってるけど、まだ空は薄暗い。水浴びをしてもそれほど日に焼けることはないと思う。
アタシは赤い海に身を沈めていく。
早くこの傷を消してほしい。
そうなればアタシはもっと素直にシンジと向き合えるような気がする。
水面をたゆたいながらアタシはその事だけを想い続けてた。
いい加減身体がふやけてきたからアタシは海から上がった。
布で身体を拭いて、その布で身体を巻いて、そのままアタシは赤い海の前で立ち尽くしていた。
空はまだ薄暗い。
遠くにまるで十字架のようなエヴァシリーズの残骸、でも特に感慨はない。
石のように無機質になったそれは、確かに気持ち悪いけど、アタシを貪ったあの醜悪なものとはほど遠く感じられた。
だからアタシが最初にあれを見たときも、もはや景色の一部としか認識してなかったし、あの時の記憶が深く呼び起こされることがなかったのだろう。
今も、あの時の記憶にうなされる。一人の時、寂しいと思う時に、それはやってくる。
恐怖と、感情の嵐。
この時だけ、助けに来てくれなかったシンジをアタシはいつも憎んでしまう。
逆恨みだって、わかってるけど。
それでもこの苦しみから解放してくれるのはいつもシンジだった。
シンジの声で、気配で、アタシは解放された。
たまにシンジへの憎しみが残ることがあるけれど、
それがもたらすであろう結果をアタシはもう知っているから、アタシはいつも平静になることができた。
こうして考えてみればアタシのシンジへの想いはかなり大きく揺れ動いている事に気づく。
さらに遠くに見える半分に割れたファーストの顔。
まるで、嘲笑っているような不気味な微笑みを浮かべていたそれは、今はかなり崩れてとても正視できないようなものになってしまってる。
(アンタの事キライだったけど、こうなってしまうと寂しいものね・・・。)
赤い海。
多くの人々が溶けている海。
LCLに似てるけど、明確に違うもの。
アタシ達はこの海の水を飲んでいるだけで今のところ生きている。
それだけでもおかしな事なのに、この水は出来たばかりの傷ならば瞬時に治す力がある。
(そういえば、エヴァが使徒のパーツを取り込んで再生したことがあったわね。)
サードインパクトの時わかった事だけど、ヒトの身体はATフィールドによって形作られてる。
この水は、身体の中に取り込むことで身体を造るATフィールドを補強したり補完したりする効果があるのだろう。
だから、飲んで身体に取り込むことで身体を維持できて、傷口というATフィールドの綻びから取り込むことで傷が治っていく。
ATフィールドを失ってみんな溶けたけど、ATフィールドを生み出す力の源だけがこの海に残って溶け込んでいるのかもしれない。
そんな事を何となく思った。
(あるいは、アタシ達自体、もう使徒やエヴァみたいなものになってるのかも知れないわね。)
エヴァ、か・・・。
「ATフィールド!!」
「・・・・・・・・・・・・何やってんのかしら・・・。アタシ。」
何だかバカバカしくなってテントの中に戻ることにした。
「ただいま、アスカ。」
「おかえりなさい。シンジ。」
夕暮れ時に、シンジが帰ってきた。空はもうすっかり晴れてる。
アタシはテントから顔だけ出した。
「霧が出てたから、結局思うように進めなかったよ。昨日の雨で瓦礫も崩れやすくなってたし。」
「ほーらごらんなさいよ。せっかくこのアタシが心配して止めてあげたってのに、無理していくからよ。」
「止めたって、最初だけじゃないか。その後すぐに急かしたくせに。」
「バカの癖に揚げ足とりだけは上手いんだから。いいこと?バカシンジ?
このアタシが心配してあげたって事ほどありがたいことなんて他に無いのよ?
感謝こそされても批判される筋合いなんてこれっぽっちもないわ。」
「言ってることがムチャクチャだよ。ま、アスカらしいけどさ。」
「何よすましちゃって。なーんかムカつくわね。」
何となく地面を見る。まだ砂浜は湿ってる。
「・・・まあ、心配してくれたのは素直に嬉しいよ。ありがとう。アスカ。」
そういってシンジはアタシに笑って見せた。
アタシは、胸の奥から何かがこみ上げてくるのを感じた。
「・・・。」
「ごめんね。アスカ。二日も連続で泊まっちゃてさ。」
「・・・別にいいわよ。今日は荷物は外に出してるからそんなに狭くないしね。
それにあんな湿った砂浜じゃ気持ち悪くて寝れないでしょ。」
テントには余裕があったから、アタシ達は昨日みたいに互いに密着することも無く、背中合わせで寝てる。
距離が、もどかしい。
「ねぇ。シンジ。」
「何?アスカ。」
「・・・初めて、キスした時の事、憶えてる?」
「・・・どうしたの?急に。」
「・・・答えてよ。」
「・・・アスカに鼻をつままれてたから、息が出来なくて窒息するかと思った。」
「・・・ごめんね。」
「・・・。」
「ねぇ。・・・そっちに、行っていい?」
こみ上げてくる気持ちを、止める事が出来なかった。
返事を聞く前に背中越しにシンジに抱きつく。
シンジが息を呑んだのがわかった。
シンジの体温が伝わってくる。
シンジの、匂いがする。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ・・・・・
鼓動が、大きく、激しくなる。
きっとシンジにもアタシの鼓動が伝わってる。
身体が熱くなっていく。
アタシの体温も、シンジに伝わってる。
恥ずかしくって、目を瞑った。
これ以上、何も出来ない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
時間だけがただ流れていく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ねぇ・・・?」
期待と不安を入り混ぜてシンジに囁いた。
か細い小さな声。だけど確実にシンジには伝わってる。
「・・・・・・。」
沈黙。やがて、
「ごめん。分からないんだ・・・。」
気づいたらシンジから離れて、背を向けていた。
身体が、心が、急速に冷めていく。
疲労感が重たくのしかかり、アタシは眠った。
続く
アスカせつねぇ('A`)
GJ
GJ
目が覚めた。
シンジはいなかった。もう出かけたんだ。
何も、する気力が湧かない。
拒絶、されたんだ・・・。
視界が滲んだ。
今頃になって、悲しさや、悔しさがやってきた。
(分かってたのに、シンジがアタシに対して持っている気持ちと、
アタシがシンジに抱いてる気持ちが違うって、分かってたのに。)
昨日の、軽率な自分が許せなかった。
縋りつくものを失ってしまったような喪失感。
(それでも、シンジは、アタシの傍にずっと居てくれる。)
(でも、傍に居るだけ、何もしない。何もしてくれない。
そっちの方が、ずっとつらくて、残酷じゃないの?)
「ぅ、ぅぅぅぅうっく、ううううううううううううう」
遂にアタシは嗚咽を漏らし始めてしまう。
それでも、声を上げて泣き喚いたりしなかった。
希望を投げ出してしまう気がしたから。
(シンジは、例え傷ついても、アタシを、アタシとのつながりを守るって言ったんだ。だからアタシも・・・)
それがシンジからもらった希望。
シンジはきっとあきらめない。だからアタシも自分の想いをあきらめたくない。
例えどんなにつらくても、今のアタシにはシンジしかいないから。
包帯を解き、プラグスーツを脱いで海に入る。
とにかくこの気持ちをどうにかしたくて、水浴びをして気を紛らわしたかった。
傷が嫌でも目に入る。
(なんでこんなに半端な状態でアタシは生き返ったりしたのよ・・・。)
自分の傷が恨めしかった。こんな傷さえなければと思った。
でも本当は傷なんて関係ないことなんてわかってる。
昨日までとは違って雲一つ無い快晴。
太陽は既にかなり高い。
いつもは夜や朝、曇りの日にだけ浴びていたから日射しがキツい。
今のアタシの精神状態と相まってすぐに意識が朦朧とした。
空を仰ぐ。
白い何かが飛んでいるように見えた。
鳥?
違う。
それは太陽を直視した事と朦朧とした意識が見せた幻だった。
空を旋回するエヴァシリーズ。降ってくる槍。
一瞬にして記憶が甦る。
「ぃ、きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
アタシは錯乱した。
記憶のフラッシュバックがあまりに突然すぎて心の準備が出来てなかった。
いつもはジワジワと思い出すのにこんなことは初めてだった。
錯乱したままアタシは海から必死で上がり、何も身に着けずにそのままテントに閉じこもった。
恐怖心だけだった。いつもセットになってやってくる憎しみや悔しさの感情の嵐はやってこない。
アタシはただ、テントの中でうずくまって怯え続けた。
助けて欲しかった。
誰に?
シンジに。
どうして、あの時、助けにきてくれなかったの?
どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?・・・
アタシを見捨てたんだ。アタシを見殺しにしたんだ。
憎い。
憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。・・・
違う!
あの時アタシはシンジに助けなんて求めてなかったじゃない!なのに何で?何で?・・・
「ただいま。」
シンジの声にハッと我に返る。
いつだってこの悪夢はシンジが終わらせる。
まるでシンジがこの悪夢を操っているかのようだ。
憎い!
違う!
いつものようにアタシはシンジを刺してしまった時の事を思い出す。
(そうよ、憎んでもあんな結果が、あんな気持ちが待ってるだけじゃない。)
それでようやく、アタシは冷静になれた。
「アスカ?大丈夫?」
異変に気づいたシンジが声をかけて来た。
「・・・。」答える気になれなかった。
「外にあったプラグスーツと布、テントの前に置いとくよ。」
「・・・。」
「アスカ?」
「・・・。」
「・・・アスカ、開けるよ。」
「やめて。」
そういってテントから右腕だけ出してプラグスーツと布を受け取った。
「そのままでいいから、聞いて欲しい。」
「・・・。」
「・・・アスカ、昨日は、ごめん。」
「・・・。」
「アスカの気持ちには、気づいていたんだ。アスカに抱きつかれて、・・・嬉しかった。
でも、僕がアスカと同じ意味でアスカを好きなのか、自分ではまだよく分からないんだ。
それなのに、そんな半端な気持ちのままでアスカに何かしたら、またアスカを傷つけるんだけになると思って、何も出来なかった。
だから、本当に勝手だけど、アスカの事を好きだって自信を持って言えるまで、待ってて欲しいんだ。」
「・・・。」
「ごめん。」
「・・・そんな事、分かってたわよ。バカシンジ。」
「・・・じゃあ」
「待っててあげるわよ。だから早く、自分の気持ちに整理つけなさいよね。」
「うん。ありがとう、アスカ。」
何とか気丈に振舞ったけど、テントの中、今度は嬉しくて泣きそうだった。
まだ、望みは消えてないんだ。
アタシはまだ、シンジを想っててもいいんだ。
それだけで、不安や悲しみが消えて、少しだけ、幸せだと思えた。
続く
速攻GJっす
GJすぎ(*´д`*)
それから数日がたった。
最初のうちはまだ、アタシ達はギクシャクしていたけど、今ではもう元通りになっていた。
「しんじらんなーい!ホント、アンタってどうしようもなくバカなんだから!」
「ひどいよアスカ!そこまで言わなくたっていいじゃないか!」
「フンッ、本当のことを言ったまでだわ!だいたいシンジって昔っから・・・」
あいかわらず些細なことでケンカしてる。
まあ最初に突っかかるのはいつもアタシなんだけどね・・・。
結局、これがアタシ達の一番自然な形なのかもしれないわね。
変わったことは、アタシが、例のボロ傘を差して、シンジと一緒に探索に出かけるようになったことだ。
ずっと一緒に行きたいと思ってたけど、あの廃墟群であんなことがあったから、アタシはその事を言い出せないでいた。
でも、もう待っているだけなんてイヤだった。少しでも、シンジと一緒に居たかった。
あの日から、アタシのシンジへの想いは膨らみ続けてる。
分かってはいたけれど、シンジにはっきりと、アタシの気持ちに気づいてるって言われて、吹っ切れた部分があるのかもしれない。
だから、
「ねーシンジ、ちょっとこっちきてよー。」
「わかったー。ちょっと待っててよー。」
シンジがアタシのほうに駆け寄ってくる。
「ここになんかあるみたいだから掘ってほしいのよ。」
「うん。わかったよ。」
そういってシンジはスコップを取り出して地面を掘り始める。
チャーンス♪
「ねえアスカ、ホントにここに何かあ・・・」
「好きよ。シンジ。」後ろからシンジに抱き着いてシンジの耳元で囁いた。
シンジはしばらく固まってたが、
「なっ!?なんだよいきなり一体!?」
と、顔を真っ赤にしながら耳元を押さえてアタシに振り向いた。
「シンちゃんったら真っ赤になっちゃって、かーわいー♪」
「か、からかうなよ!アスカ!」
「からかってなんか、ないわよ。」真剣な顔を作って言った。
「えっ?・・・」
・・・・・・・・・・・。
「ぷっ、あははははははははははは!
さっきのアンタの顔、写真があったら撮っときたかったわ!
アンタって単純だからすぐひっかかるわよね!」
「ちょ!?ひどいよアスカ!」
だからアタシはもう、こうやってシンジをからかうことが出来る。
素直になりきれた訳じゃないけど、以前に比べれば、アタシは前に進んでる。
「ここって?」
アタシは見覚えのある景色の前に立っている。
忘れもしない。アタシがシンジを刺した場所だ。
血の跡は、雨で流れてもう無かった。
(ホント、バカなことしたわよね・・・。)
あの時、シンジが止めてくれなかったら、アタシは多分もうこの世にいなかった。
シンジが命懸けでアタシを守ってくれた。その事を思うと胸の奥が熱くなる。
ここで語り合った言葉を思い出す。
そして、
(アタシは必ず、シンジを振り向かせてみせる。)
そう心の中で強く誓った。
続く
前向きアスカかわええ(*´д`*)
GJ
苦しい。
アタシは今テントの中にいる。もう二日間ほとんど籠りっぱなしだ。
生理だった。
ナプキンなんて気の利いたものは無いけど、幸いシンジが以前見つけてきた救急セットの中のもので、
生理用品の代わりとして使えるものがいくつかあるから、事なきを得てる。
動け無いことはないけど、辛いからアタシはずっと寝転がってる。
暇だ。
苦しみが和らぐと、一人で居る寂しさがやってきた。
(こんなことなら、無理してでもシンジについて行けばよかった。)
最近ずっとシンジと一緒に居たから、一人になると余計に寂しさが募る。
会いたい。早く帰ってきて。
ドクン、と、鼓動が突然大きくなる。
来た。
この前、海で思い出したように突然襲いかかって来るんじゃなく、
いつものようにゆっくりと記憶の扉が開き始める。
あの時の記憶。
感情の嵐と恐怖と無力感。それらがまるで波のように交互にやってきてアタシを揺さぶる。
アタシはただじっと、声も出さずに耐え続ける。
ただずっと、シンジの帰りを待ってる。
シンジだけがこの悪夢を終わらせる。
まるでシンジがこの悪夢を操ってるかのようだ。
アタシの事、助けてくれなかったくせに。
憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い。
まただ。
いつの間にか憎しみがシンジにも向かってる。
でも、シンジがくれば、アタシは落ち着く。
そうなれば、また、シンジを刺してしまった時の事を思い出せばいい。
そうやっていつも乗り切ってこれた。
そうだ、そうやっていつも・・・
いつも?
いつから?
アタシがシンジまで憎しみだしたのっていつから?
ザッ、ザッ、と足音が聞こえて、アタシは我に返った。
シンジが帰ってきたんだ。
心が落ち着きを取り戻す。アタシはシンジを失いかけたときのことを思い出す。憎しみが消えていく。
「ただいま、アスカ。」
「おかえりなさい、シンジ。」
そうよ。いつものようにすればいいだけ。いつものようにシンジを失いかけた時の事を・・・
じゃあ、それが起こる前のアタシってどうしてたの?
シンジへの憎しみは、どうしてたの?
アタシって、シンジの事を憎んでたの?
アタシがシンジまで憎しみだしたのっていつから?
・・・・・・・。
寒気がした。
足元が崩れて、落ちていくような感覚に襲われる。
気づいてしまった。
アタシ、シンジを好きだって認めてから、シンジを憎むようになったんだ・・・。
どうすればいいのかわからない。
でも、きっと大丈夫、アタシはシンジを憎んでどうこうしたりはしない。
だって、その先に何があるか、もう知っているから。
大丈夫。
大丈夫、
大丈夫?
本当に?
多分、アタシはもっと、シンジの事を好きになっていく。
だけど、それと一緒にあたしの中の憎しみが強くなっていく。
そうしてアタシは、シンジをいつか傷つけてしまう。
いつか、そうなる気がした。
(違う!憎いんじゃない!甘えてるだけなの!わかって欲しいだけなの!)
(そう。甘えてるだけ。わかって欲しいだけ。アタシの苦しみを。)
(だから、シンジを傷つけたい。)
「アスカ。大丈夫?」
「大丈夫よ。なんでもない。」
「ホントに?何か落ち込んでるっぽいけど。」
「アレなのよ。わかるでしょ。ほっといてよ。」
「あ・・・、ごめん。」
続く
速筆な職人氏、大好きだGJ!
いいよいいよー
GJです
生理は止まったけど、まだアタシはテントに籠りっぱなしだった。
シンジと顔を合わせることが出来ない。
シンジを好きになっていけばいくほど、シンジの事を傷つけたくなってしまう。
そんなジレンマに、アタシは陥っていた。
(アタシはただ、シンジの事を好きなだけなのに。なんで。)
外にシンジがいる。アタシを心配して今日は出かけないでいるんだろう。
その心遣いが嬉しかったけど、今は、優しくなんてされたくなかった。
「・・・アスカ、ホントに大丈夫?」
「・・・。」
「・・・あのさ、アスカの気に障るようなことしたかな?・・・そうだったら、謝りたいんだけど。」
「・・・。」
「アスカ?」
「・・・心配、しないで。」
「・・・・・・・・・わかった。アスカが望むんなら、そうする。」
心が痛い。
(考えてみれば、いつもシンジに助けられてた。なのにアタシ、シンジに何もしてやれてない。
今だって、シンジに心配かけて、・・・シンジの事、傷つけたいと思ってる。
そんなアタシに、シンジを好きになる、好きになってもらう資格なんてあるの?)
・・・・・・・。
(内罰的ね・・・。シンジの事、悪く言えないじゃない。
でも、どうしたらいいのかわからないの。・・・助けて、ママ・・・。)
・・・・・・・。
(・・・ママ、か。シンジに縋れなかったら今度はアタシ、ママに縋ろうとしてる。
・・・最低ね。アタシって。)
・・・・・・・。
(アタシって本当に、シンジの事が好きなのかな・・・。縋りたかった・・・だけだったのかな。)
そう思うと、悲しくなって視界が滲んだ。
(違う!最初はそうだったかもしれない。でも今は違う!今は違うの!)
・・・。
(でもどうしたらいいのかわからないの!これ以上好きになったら、シンジの事、好きになったら、アタシ、いつか・・・。)
血まみれで横たわる、シンジの姿。
(もうシンジを傷つけたくないの!)
涙が、流れ落ちた。
外にいるシンジに気づかれないよう、嗚咽を抑えるのが精一杯だった。
暗いテントの中で一人、アタシはしばらく静かに泣き続けた。
「喉、渇いたな・・・。」
泣き疲れたアタシはテントから出て、水を飲みに海に向かった。
もう陽が傾いていて、辺りは紅く染まっていた。
しばらく行くと太陽の光の中に黒い人影が見えた。
シンジだ。
今は、会いたくなかった。
けど、ここで下手に避けたら、またシンジを心配させてしまう。
だから、黙って俯いて傍を通り過ぎようと思った。
「アスカ、大丈夫なの?」
シンジがこっちに気づいた。影がこちらに振り返る。
「・・・うん。」
「本当に?アスカ、何か目が赤いよ。」
アタシは慌ててシンジから顔を逸らした。
逆光でシンジの表情はわからないけど、シンジからはアタシの表情が良く見えるはずだ。
「な、なんでもないわよ。きっと寝起きだからだわ。」上ずった声でアタシはそう答えた。
「そう、なんだ。・・・あのさ、そのまま、聞いて欲しい事があるんだ。」
「・・・水が飲みたいから、早くしてよね。」
シンジはしばらく黙って、二、三度、手を閉じたり開いたりして、言った。
「・・・アスカ。好きだ。」
・・・・・・・・・。
一瞬、意味が理解できなかった。
すぐに、胸の奥から熱い想いがこみ上げてきて、嬉しくて、どうにかなりそうだった。
乾いた瞳がまた潤んでいくのを感じた。
「・・・この数日、また僕一人で出かけるようになって、アスカが傍に居ないことが、寂しいって、思ったんだ。
それで、気づいたらアスカの事ばかり考えてた。
思い出したんだ。世界に僕達二人だけが残ってから、僕はアスカの事ばかり考えてた。
・・・死にそうになった時も、僕の頭に真っ先に浮かんだのはアスカだったんだ。
そのことに気づい時、目の前が開けて、何かが僕を貫いた気がした。
胸の奥が熱くなって、これが、好きって気持ちなんだって、気づいたんだ。」
「・・・・・・。」
「遅くなってごめん。アスカ。」
「シンジ・・・」
その先の言葉を紡ごうとして、アタシは口を噤む。
アタシはいつか、あの時みたいに、シンジの事を傷つけるかもしれない。
それなのに、アタシに、シンジの気持ちに応える資格なんて、あるの?
さっきまで喜びに満ちていた心が、悲しみで、ぐちゃぐちゃになっていく。
「・・・・・・・。」
「・・・アスカ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・ごめん。・・・アンタの気持ちに、応えられない。・・・」
シンジは今、どんな表情をしているのだろう。逆光で、よく見えない。
アタシは俯き、シンジの横を通り過ぎようとする。
胸が痛い。
アタシは、シンジの気持ちを裏切った。
それでも、いつか、今よりひどい裏切りを、きっとアタシはしてしまう。
だから、今ここで終わらせなければいけないと思った。
「・・・待ってよ。」
シンジが通り過ぎようとするアタシの手を掴んだ。
「・・・離してよ。」
アタシは力無くそう答える。
「・・・アスカ、何かあったんだろ。さっきから様子がおかしいよ。」
「何も、何もないわよ。シンジには、関係ないじゃない。・・・お願いだから、アタシの事なんて、ほっといてよ・・・。」
「ほっとけるわけ無いだろ!・・・話してくれるぐらい、いいだろ。」
心の中に、シンジに頼りたい気持ちが沸き起こる。
でも、ここでシンジに頼ったらアタシは・・・
だから、気力を振り絞る。
「・・・ハッ、あんたバカぁ?いくら振られたからって往生際が悪いのよ!
アンタなんかに話したって、何にもならないのよ!」
「・・・。」
「いつもいつも、余計なお世話なのよ!アンタなんか、別になんとも思ってないのよ!
だからいい加減この手を離してよ!」
「・・・じゃあ、なんでそんな泣きそうな顔してるんだよ。」
思わずシンジから顔を背ける。シンジは離してくれない。
「知らないわよ!アンタなんかにアタシの気持ちなんてわからないのよ!
だからもう、この手を離してよ・・・。」
「あのさ・・・、話す事ができないなら、それでもいいけど、
・・・余計なお世話かも知れないけど、僕じゃアスカの力になれないかな?」
「・・・。」
そんな風に優しくしないでよ。
せっかく突き放そうとしたのに。
頼りたくなんてないのに。
「・・・。」
「・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・。
夕焼けの中、しばらくの間、アタシ達は黙り込んだままだった。
シンジはずっと、アタシの手を掴んだままだ。
アタシは、もうこれ以上黙っていても仕方ないと思った。
「・・・アタシの話、聞いてくれる?」
「うん。」
アタシがあの日の記憶に今だ苦しめられていること。
その間、シンジの事を憎むようになったこと。
シンジへの憎しみはシンジを刺した時の記憶が抑えてくれること。
シンジを好きだと認めてから、憎みだしたことに気づいたこと。
そして、シンジを好きになればなるほど、その憎しみは強くなっていき、
いつかアタシはシンジを傷つけるだろう事を、アタシは話した。
「・・・気に、しすぎじゃないのかな。」
「違うわよ!自分でわかるもの!・・・結局、甘えてるのよ。自分の苦しみをわかって欲しがってるのよ。
アンタを傷つけてまで。」
「でも、アスカは今まで抑えてこれたんじゃないか。それに、例え憎まれても、僕はアスカの傍にいるよ。」
「それがイヤなのよ!アンタを憎みたくなんかない!アンタをもうこれ以上、傷つけたくないのよ・・・。」
「・・・僕にはアスカの事がわかるわけじゃないけど、アスカは僕を刺してしまった事を気にしすぎてると思う。
仕方なかったんだよ、事故みたいなものだったんだから。
それに、僕だってアスカを殺そうとしたんだ。しかも、僕自身の意思で。」
「アンタはあの後、アタシの為に尽くしてくれたじゃない。アタシを、守ってくれたじゃない。
なのにアタシはアンタの事を傷つけて、それでもまだ傷つけようとしてる。
そんなアタシに、アンタと一緒にいる資格なんてあるわけないじゃない・・・。」
「じゃあ、これからどうするの?」
「・・・アンタから離れて、一人で生きるわよ・・・。」
シンジは、掴んでいたアタシの手を離した。
そしてアタシの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「僕は、アスカといて幸せだった。アスカは、どうだったの?」
「・・・アタシも、シンジといて幸せだったわよ。でも、このままじゃアタシ、アンタを不幸にする。」
「僕は今まで、償いきれない程の罪を犯してきたんだ。幸せになる権利なんて、もうないんだ。
だから、アスカは何も気にしなくたっていいんだよ。
・・・アスカは僕から離れて、一人になって、幸せになれるの?」
「幸せになんて、なれるはずないじゃない・・・。」
「僕だってそうだよ。アスカと離れて、アスカが幸せじゃないのに、僕が幸せになれるはずなんてないよ!」
「・・・。」
「僕は、アスカに傷つけられたって構わない!
アスカを不幸にするなら、アスカを失うぐらいならその方がずっとマシだ!
どうせ不幸になるんなら、どっちだって一緒じゃないか!・・・そうだろ?アスカ。」
シンジは真っ直ぐにアタシの瞳を見て言った。
アタシは、瞳を逸らさずにはいられなかった。
「・・・アンタに、アンタなんかに何がわかるって言うのよ!
好きな人を傷つけるかもしれない事の恐さなんて、アンタにわかりゃしないのよ!!
なのに、勝手なことばかり言わないでよ!!」
「わかるよ。」
「・・・なんで、なんでそんなに簡単に言えるのよ!
アタシの事なんて、シンジにわかるはずないじゃない!!」
シンジは数歩、海に向かい進んで立ち止まり、しばらく海を見た後、アタシに振り返った。
太陽はもう海に沈みかけていて、橙色の残光を発している。
逆光で、シンジが黒い影に見える。
「・・・綾波が使徒と一緒に自爆した後、僕の周りには頼れる人がいなくなった。
・・・アスカはいなくなってて、ミサトさんは加持さんを亡くした悲しみから抜けれなくて、綾波は以前の綾波じゃあ無くなってた。
そんな時、渚カヲルっていう子に会ったんだ。フィフスチルドレンとして、カヲル君はネルフに来た。
誰にも頼れなくて寂しかった僕に、カヲル君は構ってくれた。優しくしてくれた。・・・僕の事を好きだって、言ってくれた。
でも、・・・カヲル君は、最後の使徒だったんだ。」
シンジの背中越しにエヴァの残骸が見える、逆光の中で黒い十字架のように見えた。
「・・・だから僕は、エヴァで、この手で、カヲル君を握り潰した。
初めて、僕の事を好きだって言ってくれた人を、僕はこの手で殺したんだ・・・。」
そう言って、シンジは俯いて、少し、項垂れた。
まるで、シンジが黒い十字架を背負ってるように見える。
十字架の重さに、耐えているように見えた。
「最後の戦いが始まっても、僕はエヴァに乗る気が、生きる気力が無かった。
僕が生きていても、好きな人を傷つけるだけだ、だからエヴァに乗る資格なんて僕には無いんだって思ってた。
そうやって、僕が何もしなかったせいで、ミサトさんが死んだ。
アスカが苦しんでるのもわかってたのに、僕はエヴァに乗ろうとしなかった。
ようやくエヴァに乗ったときはもう、全部手遅れだった。
バラバラにされた弐号機を見て、アスカが死んだって思って、どうしようもなくなった。
僕はそのまま、混乱したまま、事態に流されるまま、サードインパクトを起こしてしまった。
そして、世界を、みんなをこんなにしてしまった。
・・・一緒なんだよ、あの時の僕と。アスカ、逃げてるだけなんだよ!!」
「・・・・・・。」返す言葉なんて見つからなかった。
アタシが、シンジの心の傷を蒸し返してしまった。
ただ、その事が、申し訳なかった。
「・・・ごめん。こんな事言う資格、僕には無いのにね・・・。アスカが今、苦しんでるのだって僕のせいなのに。
でも、これでわかったろ。アスカが僕を傷つけても、それは僕の自業自得にしか過ぎないんだよ。
・・・・・・だから、僕のために幸せを捨てるようなことしないでよ・・・。僕の傍にいてよ!!アスカ!!」
「シンジ・・・。」
アタシは項垂れるシンジに近づいて、抱きしめた。
シンジも、アタシを傷つけるのが恐かったんだ。
そんな単純な事に気づけないなんて、アタシはホントにバカだ。
シンジもアタシを抱きしめ返してくれた。
心が繋がったような、安心感と幸福感で、アタシの心は満たされた。
しばらく、ずっと抱きしめあってた。
やがてどちらとも無く離れて、シンジがアタシの横に座った。
海を見ながら、指を、お互いに絡ませあった。
「・・・・・・これからアタシ達、どうなるのかな・・・?」
「わからないよ・・・。でも、今は、正しいと思うことをやり続けていくだけだ。」
アタシ達は、これから傷つけあったり、憎みあったりするかもしれない。
でも、アタシ達は、もう一人じゃ生きていけない。
だから、アタシはずっと、シンジの傍に居ようと思う。
アタシ自身の為だけじゃなく、シンジの為にも。
「早く来なさいよー、バカシンジー」
「わかってるよー、アスカー、ちょっとまってー。」
あれから、数日がたった。
アタシ達は他の場所に移ることにした。
あの廃墟群は一通り探索し終わったし、天候の心配もあった。
だから、ちゃんと暮らせるような、新しい場所を探すことになった。
今のアタシ達はあの赤い海から離れて生きることは出来ないから、海沿いをずっと歩いている。
あの日から、アタシはシンジに対して素直になろうとするのを止めた。
シンジに対する気持ちを抑えきれなくなると思ったから。
シンジは、アタシがどんなに傷つけても許してくれるだろう。
でも、それに甘えていると、いつかシンジを傷つけても何も感じないようになる気がした。
だから、二人の間に、アタシは自ら心の壁を造った。
正直、もどかしくて、切なくて、つらい。
いつか、こんな素直じゃないアタシに、シンジは愛想を尽かすかもしれない。
それでも、シンジを傷つけるぐらいなら、その方がマシだった。
それに、
シンジが傍にいるだけで、アタシは幸せだ。
時間は、まだまだある。
ゆっくりでも、あの悪夢から一人で抜け出せるように、アタシは強くなりたい。
そしていつか、
この心の壁を壊して、シンジに素直になれる日が来ることを、アタシは信じてる。
立ち止まって赤い海をみる。
いつか、ここから誰かが還ってくる。
でも今は、もう少しだけ、シンジと二人だけでいたい。
シンジが追いついてきた。
アタシはシンジに振り返り、シンジの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「どうしたの?アスカ?」
「なんでもないわよ。バカシンジ!」
アタシはそう言うと、シンジにぷいっとそっぽを向いた。
終
リアルタイムで読んだよー
GJでした(*´д`*)ハァハァ
職人氏のこの筆の速さ見習いてぇ…('A`)
終わったーーーーーーーーー。
GJ言ってくれた人達に感謝!
正直、俺が書いたアスカをかわいいと言って貰えるとはおもわなんだ。
最後の投下は昨日にしようと思ってたけど、投下直前に半分以上書き直したから一日ずれた。
後、一旦完成させて投下してるから別に筆が早いわけじゃあない。
最後に、前の奴含めて長々と拙い文に付き合ってくれてありがとうございました。
それじゃ。
GJ!
乙でした
GJ!!
毎回楽しく読ませていただきました!
ありがとう!!
おつかれさまでした。
また近いうちに何かよろしくです<(_ _)>
ほ
☆ゅ
★ュ
ほし
職人町
待ち保守
ほ
保守
417 :
灰白色の空:2007/09/05(水) 21:06:32 ID:???
窓から空を見上げると、灰白色と鼠色が混じった陰鬱な雲が広がっている。
重苦しい空。
今にも雨が降りそうな気配を感じた。
今日は、何も予定のない日。
バカシンジはどこかに遊びに行っているようだし、私も何も予定がない。
ミサトはネルフで残務処理があるからとのことで家にいないから、私一人。
やることも何もなくて、ただぼけっと空を見上げていた。
陰鬱な気分。何か釈然としない気分。
何かが足りない気分。
「バカシンジ」
意味もなく、理由もなく呟いてみた。
すると、少しだけ気が晴れた。
なぜだろう。アイツの名前を言うだけで、少し楽になる。
そして、少し苦しくなる。
不思議。
ピリリリリ、と、携帯電話が鳴りだした。
私は「誰よ・・・・もう」と愚痴りながら、のそのそと携帯電話を取る。
・・・・・って、優等生!?
な、なぜ。あの優等生がなぜ私の携帯電話に連絡を?
何か問題が起きたとでも言うの!?
418 :
灰白色の空:2007/09/05(水) 21:08:07 ID:???
「・・・・あ、ええと。こほん。めっずらしいじゃなーい!何よ突然」
「起きてる?」
「・・・・夕方よ。何で寝てないといけないのよ」
「猫はよく寝る」
「・・・・どういう意味よ」
「あなたは猫っぽい。以前からそう思っていた」
「・・・・喧嘩を売るためにわざわざ電話をしてきたの?いいわよ買うわよいくらよ」
「違う。私は喧嘩を売るために電話をしたのではないわ」
抑揚のない喋り方は癇に障る。
最近、何だか昔以上にこの優等生に対してムカつくことが多い。
「・・・・じゃぁ、何よ。早く用件をいいなさいよ」
電話の先で、優等生は少しため息をついた。
そしてゆっくりと話し始める。
419 :
灰白色の空:2007/09/05(水) 21:11:10 ID:???
「今日、碇くんはそこにはいない」
「出かけているわよ。何よバカシンジに用事でもあるの?直接電話しなさいよ」
「もう、した」
「・・・・・・・・・・どういう意味?」
「碇くんに電話をして、これから会うことになっている」
「・・・・・・」
「碇くんに会うことになっている」
「・・・・・・・・二度言わなくていいわよ。何、それがどうしたのよ」
「二人だけで碇くんと会うことになっている」
「だから、それがどうしたっていうのよ!」
「まだわからない?」
何を言っているんだろう、この女は。
わかるわけないじゃない。
シンジと会うことになっているって、どういう意味よ。
日本語喋りなさいよ。
変なヤツとは思っていたけど、ここまで変だったとは。
「私、決めたの」
「・・・・・何を」
「碇くんに、好きだと言うことを決めた」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え。
「言葉を換えれば、告白をするということ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええ!?
420 :
灰白色の空:2007/09/05(水) 21:12:49 ID:???
「告白【名詞】。心の中に秘めたる思いを告げること。その思いを全て伝えること。またはその言葉」
「説明しないでいいわよ!」
「そして、私の心の中に秘めたる思いというのは、好きであるということ」
「な・・・・・」
「そしてその対象者は、最初に言ったとおり、碇くん」
「・・・・あ・・・・」
な、な、何を言っているの、この女。マジでわけわからない。
え? どういう意味?
告白するって、アンタ、シンジのこと好きだったの?
そんな素振りなかったじゃない。
どういうことよ!
「今日、告白する」
「・・・・・」
「そのために呼び出したわ。これから会って伝えるつもり。私の思いを」
「あ・・・・・ええと」
「あと1時間が過ぎれば、私は告白し、そして碇くんと恋人同士になるわ」
なんと!?
421 :
灰白色の空:2007/09/05(水) 21:15:12 ID:???
「ちょ、ちょ!」
「それを伝えたかった」
「ちょ!ちょっと待てって!な、なんでバカシンジに告白ですぐに恋人同士なのよ!」
「私の思いは伝わるはずよ。そして、碇くんは私の思いに応えてくれる」
「・・・・・・・・・・・そ、そんなわけないでしょ。なに言っているのよバッカじゃない!?」
「なぜそんなわけがない、といえるの?」
え。
「・・・・・・ええと、バカシンジがそういうアンタの気持ちに、ええと、応えるわけないじゃない」
「理由になっていないわ」
「と、とにかくやめなさいよ! アンタが傷つくだけよ。あのボンクラはそんな恋愛とかそういうのダメっぽいし!」
「なぜフられること前提なの。碇くんには恋人はいない。それとも、誰かと付き合っているとでもいうの?」
「・・・・・し、知らないわよ。誰とも付き合っていないんじゃない?」
「もちろん、あなたとも付き合っていない」
あ、あったりまえでしょ!?
バカよこの女。
頭おかしいんじゃない?
「ば、ば、バッカじゃない!? なんでアタシがあんなバカと付き合わないといけないのよ!?」
「それについては調査済み。あなたと碇くんは何もない。また、碇くんは他の女性とも付き合っていないことは確定している」
「あ。あ。あったりまえじゃない!何で私があんなのと・・・・・」
「碇くんは恋人がいない。だから、私が恋人になる」
「・・・・・・・・・・・だから、どうしてそういえるのよ!」
「なぜあなたが無理というのか、そっちの理由のほうが聞きたい」
「・・・・・・・・・・・・」
「とにかく、これから碇くんと会うから。告白するから。そして恋人同士になるから」
422 :
灰白色の空:2007/09/05(水) 21:16:48 ID:???
「・・・・・・・・・・・ちょっと待ちなさいよ。どこで会うのよ」
「その質問に答える義務は何一つないわ」
「そりゃそうだろうけども! ええと、別に邪魔なんかしないから場所と時間を教えなさいよ」
「あなたが邪魔をする理由はない」
「ないわよ!」
「でも、あなたに教える理由もないわ。じゃあ、電話を切るわね」
「・・・・・・・ま、ま、ま、ま、待ちなさいって言ってるでしょ!何でどうして私にこんな電話をかけてきたのよ!」
「なんでかしら」
「・・・・・・私が聞いているのよ」
「あなたに言いたかった。ただそれだけな気がする。じゃあ、切るわね」
携帯電話から、ぷーぷーぷーという音が聞こえた。
私は唖然として、立ち尽くした。
しばらくして、身体中に強い感情が湧き出てきた。この感情の名前は、怒りというものだろう。
意味も分からず、私は強い怒りを感じた。その裏には、さらに訳の分からない感情が渦巻いている。
「やっぱり喧嘩売るために電話したんじゃないの!」
私は携帯電話を床に投げつけた。
423 :
灰白色の空:2007/09/05(水) 21:17:58 ID:???
しばらく、私はイライラとしながら部屋をうろついた。
何度かバカシンジの携帯電話に連絡をしたが、バカはやはりバカだ。携帯電話の電源を切っている。
どうするつもりよ、もしバカシンジか優等生が、待ち合わせの時間に遅れることがあったら連絡どうするのよ。
女の子と会うのに携帯の電源切る、普通?
というか、優等生に呼び出されて、何のこのこと会いに行くのよ。
私はイライラしながら、再度、バカシンジに連絡を試みる。
ダメ。
あのやろう・・・・・。
なぜイライラするのかわからないけど、とにかくバカと能面が会う場所を調べないと。
ミサトに聞くか。
424 :
灰白色の空:2007/09/05(水) 21:19:14 ID:???
「ねえ、ミサト。ちょっと教えて欲しいんだけど」
「あらアスカ。電話してくるなんて珍しい。急ぎ?」
「急ぎ。今、あのバカはどこにいるの?」
「バカ?」
「バカシンジ」
「あのねぇ、アスカ。シンちゃんのことバカバカバカというのやめなさいよ。嫌われるわよ」
「何言っているのよ! 嫌われてどうだっていうのよ!あんなヤツにどう思われても関係ないわよ!」
「もう。ほんとに素直じゃないわねぇ」
「とにかく、バカシンジの今いる場所を教えて。あずすーんあずぽっしぶるよ」
「アスカ。ぷらいべーとって言葉、知ってる?」
「バカシンジにプライバシーって言葉もプライベートって言葉も存在しないわ」
「・・・・・・」
「どうせ私たちのことはいつも監視しているんでしょ?場所くらいわかっているんでしょうから教えて」
「ええと。そう簡単には教えられないわよ」
「バカシンジが駄目なら、優等生の居場所でもいいわ。とにかく教えて」
「ん? シンちゃんじゃないくて、レイなの?」
「いいから。どっちでもいいから教えてってば!」
ミサトが小さなため息をついた。
そして、なにやら機械を操作している音が聞こえる。
よし。これであのバカ二人の居場所がわかる。
425 :
灰白色の空:2007/09/05(水) 21:20:33 ID:???
しばらくして、何やら楽しそうなミサトの声が電話口から聞こえた。
「・・・・・・・・・・理由」
「え?」
「理由を聞かせてくれたら、教えてもいいかなぁ〜」
「り、理由?」
「なんで、シンちゃん若しくはレイなのかなぁ〜。シンちゃんだけじゃなくてレイもなのかなぁ〜」
ミサトの楽しげな声が、妙に気に障った。
何か、とても嫌な予感がする。
「い、いや。別に。ファーストなんて関係ないわ。ぜんっぜん関係ないわよ。いいからシンジの」
「あれー。おやー。んー? なんでシンちゃんとレイは、同じ方向に向かって進んでいるのかなぁ〜」
「!」
なんだと!
「このままだと、二人は同じ場所で遭遇しそうねぇ〜。あらら、なにかしら。二人で待ち合わせ?」
「!!!!!」
「ん〜? あれ〜? なに、二人はデート? あれ。あれれ。デートなのかしら〜」
「し、知らないわよ! なっ、ば、バカじゃないの? 何よデートなんて」
「あれ〜? なんでアスカは二人の居場所を知りたいのかなぁ〜?」
「・・・・・」
「同じ場所に向かっている二人がどこに行くのか知りたい理由は何〜?」
426 :
灰白色の空:2007/09/05(水) 21:21:45 ID:???
語尾をのばすミサトの口調がとってもムカつく。
「ええと、その。あ・・・・・そ、そう。私、シンジに用があるのよ。急ぎで伝えることがあるから、その、直接」
「へーへーへー。用があるんだ〜。電話でいいんじゃないの〜?駄目なの〜?」
「あのバカ。ケータイの電源切っているのよ」
「急ぎなの〜?」
「い、い、急ぎって言っているじゃない!」
「だったら〜♪ 私がその用事聞くわよん〜。シンちゃんに伝えるから。ネルフの力があればすぐに伝えることできるわよん」
「・・・・・・」
「で、用件って何〜」
こ、このクソ女・・・・・。
「あ、え、う、い・・・・。ええと、プライベートな用事よ。ネルフには知られたくないわ」
「シンちゃんにはプライバシーもプライベートはないってさっき聞いたわよん〜」
「・・・・・」
「で〜、何〜?用件って何〜?場所を知りたい理由って何〜?」
我慢の限界。
「頭キタ。電話切る」
「あれ〜?いいの〜? 二人の場所、わからなくなっちゃうわよーん?」
「う」
427 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 09:22:48 ID:???
そうくるか。確かに、ミサト以外に無理やり二人の場所を突き止めることができる人はいなさそうだ。
ここは我慢しなければならないということ?
でも、どう答えればいいのよ。私だって理由を知りたいわよ。
なんで私、こんなに二人の居場所を突き止めようとしているんだろう。
「まぁ。これ以上イジメるのもかわいそうかなぁ。でもね。本当に簡単に教えるわけにはいかないのよ。規則だし」
「・・・・・」
「規則を破るとね。大人はね。責任をとらないといけないのよ。だからそう簡単には規則を破ることはできないの」
「・・・・・・・・」
「規則を破った罰は、とても辛いのよん」
「・・・・・・・・・・・何が望みよ」
「ん〜 どーしよっかなー」
「いいなさいよ。何をすりゃいいのよ」
「ん? あれ。キャッチが入ったみたい。ちょっと保留にするわよ」
「・・・・・」
電話口から、何だか古い歌謡曲のような音楽が聞こえ始める。
イライラ。
イライラ。
なんかわからないけどとにかくイライラ。
ああ、こんなことしていたら、もうあのバカシンジと優等生が会っちゃうじゃない!
会ったからどうだってわけじゃないけど!
何を長電話しているのよ、本気でつかえないミサトね!
しばらくして、さらに嬉しそうな楽しそうな気持ち悪いミサトの声が聞こえた。
428 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 09:25:00 ID:???
「あーあーあーごめんごめん。いや。うふふ。なるほどね。よくやるわ、あのコも」
「・・・・どういうこと? 誰、電話?」
「うふふん内緒。しかし単純なのね、アスカって」
「どういう意味よ!」
「こっとっばどおりー。まぁ、いいわ。タイミングもとても良かったし。シンちゃんの場所、教えてア・ゲ・ル」
「なんかとても殺したいわ」
「場所、携帯にメールで教えるわね。よーく考えて行きなさいよん」
「・・・・・? 意味わからない」
「とにかく。感謝しなさい。色々と。さてと一旦切るわよ。メールで場所送信するから」
「・・・・・・・なんかイヤな感じがするけど、とりあえずお礼はいうわ」
「いいのいいの。これから私も忙しくなるし」
「?」
「カメラとか色々と設置しないといけないし・・・・あ、こっちの話ね。うふふふふふふふ」
「キモい」
「んじゃ、頑張ってね〜ん」
ミサトとの意味不明の電話は終わった。
たぶん、私は永遠にミサトの頭の中の構造を理解することはできないだろう。
あの女はおそらく使徒よりも意味不明な存在なのだ。
深く考えるのはやめよう。
429 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 09:28:45 ID:???
ミサトから送られた地図をみると、なんだ、私がいるマンションのすぐそばの公園にシンジはいるようだ。
シンジはその公園から動かず、一人で立っているとのこと。
ミサトの情報が正しければ、二人の待ち合わせ場所は間違いなくその公園。
優等生はその公園に向かって現在進行中だそうだ。
私は慌てて着替えて、マンションから外に出る。
空を見上げると、まだ陰鬱な灰白色の空が広がっている。ああ、エヴァで雲を蹴散らしたい。
私は走った。
理由も分からないけど、とにかく二人が会う前に、その公園にたどり着かなければならないと思った。
走った。
走った。
息が切れそうだけど、それ以上に心が張り裂けそうだったから、とにかく走った。
公園まで15分くらい。私はずっと走り続けた。
泣きそうだった。
私は泣かない。今までどんな辛いことがあっても泣かないって決めた。
でも、どうしても我慢できないくらい泣きたくなっていた。
理由なんかわからない。どうしてこんな気持ちなのか分からない。
喪失感が漂う。
失ってしまう。私から何かがなくなってしまう。怖い、とても怖い。
イヤだ。こんなわけの分からない状況で、涙なんて流したくない。
涙を流す状況になるのがイヤだ。
イヤだ、イヤだ、イヤだ。
430 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 09:32:09 ID:???
公園には、シンジが一人でぽつんと立っていた。
誰もいない。公園にはシンジ一人。まだ、優等生はついていないようだった。
私が走りながら公園に入ってきたのをみて、バカシンジはびっくりしているようだった。
「・・・・・アスカ。いくら時間に遅れたからってそんなに走らなくても」
なんだかシンジが笑みを浮かべている。
この笑顔の意味は分かる。不安を隠そうとして愛想笑いを振りまいているのだ。
さらにムカついてきた。
「・・・・・・・・・・なに、いっているのよ・・・・・まだ、ファースト、来てないのね」
「ん? 綾波? なんで? 綾波も来るの?」
「なんでって・・・・・・・・・・・・・何、いってるのよ。あの女から電話あったんでしょ」
「うん。あったよ」
シンジはさらに愛想笑いを振りまく。
この愛想笑いを、今後ずっと、あの能面女に振りまき続けるってことか。
・・・・・・・・・・恋人になるから。
いや。
なんか、絶対に、いや。
暗い。本当に暗い、汚い、そんな気持ちが渦巻く。
どろどろする。身体中を取り巻いていく。イヤだイヤだイヤだ。
431 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 09:40:43 ID:???
「あんた。どうするのよ。・・・・・・・・・・付き合うの?」
「・・・・・・・・・?」
「やめなさいよ。絶対やめたほうがいいわよ。あんなのと付き合っても絶対に幸せになんかならないわよ」
私は何をいっているんだろう。
気持ち悪い。私自身がおかしい。なんでこんな気分の悪いこと喋っているんだろう。
なんで、優等生の悪口を言おうとしているんだろう。
おかしい。こんなこと、私が言うわけがない。でも、言葉が止まらない。
「ああそうか。まだ、アンタ・・・・告白されたわけじゃないもんね。知らないのよね。でも、忠告するわ」
「アスカ?」
「絶対にあんなのと付き合ったら後悔するから。先にいっとくわ。絶対に、後悔する」
なに私。
私ってなに?
なんでこんなイヤなこと喋っているの。最低な人間。おかしいわよ。
私、何でこんな気持ちを抱いているの?
わかっているのに止められない。どうして、どうして・・・・・・。
「アスカ・・・・意味わからないけど」
「そうよね。わからないわよね。でも、すぐにわかるわ」
「?」
「どうせ、告白されたらニコニコして尻尾振るわ。アンタ。でも、絶対に後悔することになるから」
「・・・・・告白? え、僕、誰かから告白されるの?」
あ、キレそう。
432 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 09:49:00 ID:???
「あ。だからアスカ、ここに呼び出したんだ・・・・・・なんだ、大事な話って聞いていたけど・・・・そうなんだ・・・・」
「・・・・・・・・・」
「アスカの友達? ええ、でも、困るな・・・・どうしよう」
友達なわけがない。あんなの、友達じゃない。
そう思う。思わないと辛すぎる。
「アスカ・・・・・その、アスカは何も思わないの?・・・・・僕が、その、誰かに告白されるのが」
ナニモオモワナイノ。
シンジの言葉が私を貫いた。
・・・・・・・・・・・わかった。
わかってしまった。
私の今の気持ち。
私のこの邪な気持ち。そして純粋な気持ち。
・・・・・・・・・・嫉妬。独占欲。
それらの気持ちの根底にあるのは・・・・・・・・・・私の、シンジへの・・・・・・。
駄目だ・・・・・もう、駄目・・・・・。
「な、な、な! 何でアスカ泣くの!? ど、どうしたの」
「・・・・・・うるさい」
「ちょっとどうしたの? 何か悪いこといった?」
「うるさいっていってるでしょ・・・・・」
433 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 10:00:05 ID:???
もうどうしようもない。この場にうずくまりたい。逃げ出したい。
「・・・・・・アスカ、本当にどうしたんだよ。いきなり呼びつけて、いきなり誰かが告白とかいって、それで泣くなんて」
・・・・・・・・・・え?
「バカシンジ・・・・・・今、なんていった?」
「え?」
「そういえば・・・・・・さっきもそんなこと言っていたわね。私が呼びつけた?」
「そうじゃないか。わざわざ綾波に伝言を頼んで、ここで待ってろって」
えええ?
「なにいってるのよ。あんた、優等生に呼び出されたんじゃないの?」
「綾波から連絡はあったけど。なんかアスカが大事な話があるとかで、この公園にて待ってろ、って」
「え?え?え?」
「あれ?違うの?とてもとても大事な話だから、絶対に行くように、て言われたよ?」
「・・・・・・・・・?」
「綾波からは話の邪魔にならないよう携帯の電源を切っておくように、ともいわれた」
「なにそれ」
「いや、なにそれ、って聞かれても・・・・・。アスカが用事があったんじゃないの?」
「いや、私は別に・・・・・・・」
「大事な話って聞いたらから・・・・・まさか、もしかしたらって・・・・・・でも、そんなはずはないとか・・・・・」
「・・・・・?」
突然、私の携帯電話が鳴り響く。
見ると、電話をかけてきたのは、あの優等生。
434 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 10:17:16 ID:???
「・・・・・・・お疲れ様」
私が電話に慌てて出ると、いつもとは少し違う感じの優等生の声が聞こえた。
「お、お疲れってなによ!」
「そろそろちょうどいい時間かと思って」
「意味分からないわよ! あんた、今どこにいんのよ!」
「部屋に戻るところ」
「部屋って・・・・・・・・・アンタ、まさか自宅に戻っているの!? どういうことよ!」
「気持ち、わかった?」
・・・・・・・・・え?
「・・・・・アンタ、なに言ってるの」
「あなたの『秘めたる思い』がなにか、わかった?」
「・・・・・・・・・」
「あなたがいつも抱いていた。でも認められなかった思いがわかった?」
私の想い。
もう、間違いなく理解できている想い。
シンジに対する想い。私の大事な想い。それが、わかったのか、と聞かれている。
わかっている・・・・そう、もうわかった。
私の想いの内容。その意味。求めるもの。全て、わかった・・・・・・・・。
435 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 10:19:07 ID:???
「・・・・・・・」
「わかったのなら、やることは一つ。告白という言葉の意味、もう伝えた」
「・・・・・・・・」
「今のあなたなら言える。たぶん、言える。いいえ。言わなければダメ」
「・・・・・・・・」
「ここまでお膳立てした。これを台無しにするなら、私もさすがに怒る」
お、お膳立てって・・・・・。
アンタ、まさか、今までのこと、全て・・・・・。
「じれったい、という気持ちを毎日感じていた。だから、強攻策にださせていただいた」
「・・・・・・あ。アンタ・・・・・」
「さっさと碇くんに正直に思っていること全部話しなさい。それはあなたの大事な仕事」
「・・・・・・・・ちょ、ちょっとアンタ」
「碇くんを見て」
いわれるまま、シンジに視線を向ける。
シンジは、何があったのかさっぱりわからないような顔をしていたけど、私と視線があうとまた愛想笑いを浮かべた。
・・・・・・・・違う。
これは、愛想笑いじゃない。
いつもみせていたのは、愛想笑いじゃない。
436 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 10:20:37 ID:???
「碇くんの気持ちも、あなたの気持ちも、同じもの。でも、二人とも臆病すぎる」
「・・・・・・・・」
「あなたは怖がって認めなかった。でも、もうその気持ちを認めたはず。だから、今がチャンスよ」
「・・・・・・・チャンス、って・・・・・・・」
「行け」
「・・・・・・・・・」
見たこともないけど、なんだか、この電話の向こうの優等生が笑顔を浮かべているような気がした。
想像したその笑顔は、けっして、ムカつきもしなかった。
むしろ、とても綺麗な笑顔のような気がした。
優等生からの電話は、切れていた。
私は、もう一度、シンジを見つめる。
シンジは少し照れたように視線を外すけど、また私のことを見つめなおす。
「ええと・・・・・今の電話、綾波? で、あの。結局、どういうことなの?」
「・・・・・・・・」
シンジの声音が私の身体を優しく撫でる。
437 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 10:27:40 ID:???
「なんか、アスカも泣き止んでいるし・・・・。あの、できれば説明をしてくれると嬉しいんだけど」
シンジの笑顔が、私の心を包んでいく。
「ええと、アスカ?」
自然に笑みが浮かぶ。ああ、なんだ、とっても簡単に、とっても幸せな気持ちになる方法があったんだ。
ミサトの声が聞こえる。
素直になったほうが、って。
そうね。ムカつくけど認めるわ。素直になったほうが、とても楽なのね。辛くないのね。
「アスカ?」
「・・・・・・・・・バカシンジ」
「はい!?」
「ちゃんと聞きなさいよ」
「え?」
438 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 10:30:00 ID:???
「いい。一言一句、聞き漏らさないで聞きなさいよ。一言でも聞き逃したら、あんた、殺すから」
「え、え?」
「それでちゃんと答えるのよ。考え込んだりためらったりしたら本気で殴るからね」
「ど、どういうこと?」
「大事な話、って聞いているんでしょ!? 黙って聞きなさい!」
「は、はい!」
「いい? 私はね」
空はいつの間にか、晴れようとしていた。
雲の切れ端から差し込む光は、灰白色だった雲を光り輝かせていた。
私の心のように、それはとても晴れやかで。
私の気持ちのように、それはとても穏やかで。
私の想いのように、それはとても・・・・・・・・・・・・。
439 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 10:33:09 ID:???
なお、後にこの公園の出来事が全てミサトという最低な女の手によって録画されていたことを知り。
その映像がネルフ内部のネットに全て流出されていたことを知り。
指令を含む全ての職員が生暖かい目で見ていた事実を知り。
その映像に出演していた一人(女)が、汎用人型決戦兵器人造人間を用いネルフ本部で大暴れしたことは、
また別の話である。
終
リアルタイムキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
最後のオチワロタ
GJでした
乙
けど
>指令
途中まですごくよかったのに最後の最後で萎えた
442 :
灰白色の空:2007/09/06(木) 10:40:34 ID:???
ああ、誤字・・・・・。最後の最後で・・・・。
すみません、ぐだぐだ&定番になってしまいました。
お目汚し、ご容赦ください。
GJ !
楽しませてもらいました!
GJ!
癒されましたw
おお久々に投下されてる。
GJ!
凄ぃネ…自分も書けたらナァ…GJ!
策士・綾波がいいカンジ。こういう話は大好物です。GJ
後半の綾波の台詞がクドイ。
投下スレ的には及第点。
保守
ここって設定だけ考えて書いてもらうとかってアリなの?
アスカとシンジのシンクロ率が逆パターンの話ってどう?
シンジはシンクロ率が下降していき、せっかく見つけた自分の居場所(エヴァのエースパイロット)を最近来たアスカに奪われて落ち込み気味
さらにアスカの弐号機が3号機に乗っていたトウジを重傷にした事で、アスカをかなり嫌っている(あまり面には出さないが)
一方アスカはシンクロ率上々で、大好きなシンジと同居している生活に大満足している
ただ、幸せすぎて周りが余り見えていなく、シンジが自分を嫌ってる事に気付かない。(むしろ良い関係だと思ってる)
そんな感じの設定で誰か書けない?俺は文章力無いから無理だけどさw
ていうか、こういう設定のSSってある?ただ読んでみたいだけなんだけどね
>>451 こんなエヴァ小説がどうしても読んでみたい!!
というスレがある
まぁでも悪くはない設定だと俺は思う
シンジの性格が変な方向に行きそうだが……
453 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/18(火) 01:05:07 ID:/B3JW8p2
>>451 いちゃもんつける気は無いが、ダミーじゃなくアスカがトウジを重傷にしたら
絶対シンジは許さないし、許せないと思うんだが・・・。シンジがそのわだかまり
をアスカへの恋心で和らげれるか不安。不幸ENDしか思いつかないおれは
駄目男なのか。
う〜ん…確かにトウジの事件を絡ませると、修復不可能な可能性は高いですねぇ…。
ていうか設定だけ持ってきてオチは職人さん任せは、ちょっと自分勝手すぎでしたね…。
僕的にはゼルエル戦でシンジを助けるためにアスカが弐号機に溶けて…
みたいなんがあったら仲直りするだろうみたいな浅めな考えだったんでw
少なくとも今寝起きの俺には無理だw
考えてみてもいいけど。
>>454 アスカがシンジの自分への感情に気づいてない、というのは無理があるかも
多分ゲンドウとアスカ一緒くたにして面罵すると思うから
しかし、この設定だと本編以上にシンジ壊れてしまいそうだ
俺は好きだけどw
>>456 このドSが!!
・・・まあ俺も好きだけどね。地味に今まで読んだ事が無い設定だし、シンジが自分の事が嫌いだったと知った時のアスカは激しく萌えそうだw
だからトウジ事件までアスカが嫌いな事を黙っていたシンジだが、
アスカが3号機を倒した(アスカはトウジが乗っていた事を後にシンジから聞かされる)事によりブチギレてアスカに罵声をあびせてネルフを去ろうとする
しかし、ゼルエル襲来でネルフの黒服に無理やり初号機に乗せられるシンジ
その事を聞き、シンジに嫌われていたと知り、落ち込んでいたアスカだったが、弐号機で出撃→そして暴走
そして、弐号機に取り込まれたアスカと、それを見つめるシンジの行方は!?
みたいな感じならOK?
ちなみにアスカがシンジを好きになった理由はマグマダイバーで説明つくよな?
そんな入口も出口もない脳内妄想に「だから」とか「OK?」とかいわれても
困るんだが
実際にFFとして完成させるつもりがないなら普通の総合スレ池よ
>>458 わかりにくい設定持ってきてごめんね。
でも、いつも脳内妄想で考えてた設定が文になってくれたら嬉しいですw
頑張ってくらはい〜
★ュ
保守
ほ
アタシは怖くなった。皆がアタシを必要としなくなることが。でもアイツだけでもアタシを必要としてくれるなら怖くないかもしれない。
大切な言葉を伝える勇気がない。アタシはいつからこんなに弱くなったんだろう。
『……保守』
保志ュ
ちょっとリクのヤツじゃないですけど、短編投下します
深夜11時、碇家の1人息子シンちゃんのお部屋の壁からは、奇妙なノック音が鳴り響く
コンコン…
「ん?なんだろ?」
僕もノックを仕返す
コンコン…
すると、こちらのノックを待ち望んでいたかのように、すぐさま返ってくるノック音
コンコンコン…
「3回…。穴か…」
僕は自室の壁に不自然に貼り付けたポスターをめくる
「やっほ〜。寝てた?それとも変な事してた?」
「し、してないよ!そんな事!!」
「くっくっく…静かにしなさいよ。夜中なんだからさ」
直径30cmの穴を通して下品に顔を歪ませてケタケタと笑う金髪碧眼の美少女
「なんの用だよ…」
「そんなカリカリしないの。はいっ借りてたCD返すわよ」
「あぁ、ありがと…」
「じゃあね〜もうノックしないから、ゆっくり変な事していいわよ?」
「しないよ!!」
「くっくっく…なんだったら、あの時みたいに見ててあげようか?」
「バカっ!!」
ここで『バタンっ!』と木製ドアを閉めれればサマになるが紙製のポスターをペタリと貼り付けるしか出来ないので怒りの迫力はかなり半減しただろう
『ほんじゃおやすみね〜シンちゃん♪』
「うぅバカアスカ…」
まぁこのオドオド少年が怒っても元から迫力など無いのだが
もともと、このマンションは壁が薄かった。とにかく壁が薄かった。
小学5年生の少女が勉強机最上段からのミサイルキックを、幼なじみの少年にブチかますハズが見事に壁にブチ当て空洞化させてしまった…。という逸話を残すホドの薄っペラペラさなのだ
最初は親に怒られると思い焦った2人(本当に悪いのは1人)だったが、幸い開通先がその幼なじみの少年の部屋だったので
お互いの部屋の壁に近くのCDショップからタダでもらった売れない歌手のポスターを貼り付ける事で隠ぺい工作成功となり、中学2年になった今も親達にはバレないでいる
(ちなみにシンジの部屋はアイドル葛城ミサトが年甲斐なくVサインを決め、アスカの部屋は演歌歌手加持リョウジが怪しく薄ら笑いを浮かべている)
親達にはバレないで済んでいるが、男女の部屋にトンネルが開くと望まれぬ事件が偶に起きる
壁を通した密会を行う時は相手の部屋にノック3回を義務づけていたが
一度ノックをせずに少年を驚かせるため、小さな穴から少年の部屋に顔を出した時に、せっせと自家発電する少年に出くわした時もあった
まぁそんな事件もアリはしたが、今はすっかりこの生活に慣れてしまった2人だった
「はぁ…暇ねぇ〜」
アタシは先ほどまで読んでいたファッション誌を床に放り投げ、ベッドの上に旧知の仲であるサル太郎と一緒にねんごろりんして、ボーっと天井を見上げる
「シンジ何してるだろ…。宿題かな?今日多かったし…」
ちなみにアタシは天才美少女だから、宿題なんか学校の5分休みで全て終わらせている
いつも『お願いアスカ…宿題見せて…』と、すがりつく子犬の用な眼で言ってくるアイツのために出来るだけ早く終わらせるのだ
「それともゲームかな…?新しいの相田に貰ったとか言ってたし…」
ちなみにアタシは天才美少女だから、あのバカに一度もゲームで負けた事は無い
『うぅ…手加減してよアスカのバカ…』と、ウルウル上目づかいで可愛く抗議されるためなのだ
「・・・それとも…また1人でシテるのかなぁ・・・きゃっ♪」
そして、あの時シンジの部屋で見た光景を思い出し、狭いベッドの上をサル太郎と一緒に縦横無尽に転がり続ける
ちなみにアタシは天才美少女だから、自家発電をアイツに見られた事など一度も無い
ちゃんとシンジの部屋に聞き耳をたてながら、声が漏れないよう枕に顔を押し付けてシテいる
まぁ将来、協力発電するための練習ね
お、リアル?
がんばれwktk
でも初めて見た時はビックリしたわ。アタシの可愛いシンジが、あんな下品な事するとは思わなかったし
でも『アンタ何してんのよ!』って叫ぼうとした時、見えたのよねぇ…アタシの写真がさぁ…
だからもう許してあげたの。それはシンジがアタシを好きな証拠だしね!
それに、もしもの時の脅し文句にも使えるしね
『知ってんのよ?アンタがアタシをオカズにしてる事…』ってね
「ふぅ…シンジ何してるんだろ…?」
ひとしきり転がったアタシはサル太郎を枕元に座らせて、いつものガラスコップを手に持ち、壁に当てて耳をすませる
俗に言う盗聴だが、アタシの辞書には調査と載っているから問題無い
『う〜ん…本当に大丈夫かなぁ?』
むっ?誰かと携帯で話してるようね。鈴原かしら…?
『電車わかる?乗り換え多いし迷わないでよ?』
誰か来るのかしら…
『あははっごめんごめん。じゃあ明日待ってるよレイ。ばいばい』
レイ?・・・レイって誰よ…
『ふぅ…。明日レイが来るし部屋片付けなきゃ』
だからレイって誰よ!女!?女なの!?
コンコン…
「ひゃいっ!?」
コンコンコン…
「穴ね!!」
急いで『演歌界の3重スパイ加持リョウジ』と描かれたポスターを引き剥がすアタシ
「なによバカ!!」
「うわっなに怒ってるんだよ!?」
「うっさい!早く用件を言いなさいよ!!」
「ごめん…。あ、あのさ…明日って家に居る?」
「な゛っ!!」
な?ん?で?そ?ん?な?事?聞?く?の?
『レイ…可愛いよレイ…』
『あんっダメよぉ…。お隣さんに聞こえちゃうわ…』
『大丈夫っ隣の家族は全員どっか行ったからさ
だからレイの可愛い声をいっぱい聞かせてね?』
『あぁぁ〜んシンジくぅ〜んっ』
ウソ…ウソよそんなの…!!
でも…駄目…怖い…シンジが他の女に…
「アスカ?アスカどうしたの!?」
奪われる…シンジが奪われる…
汚される…シンジが汚される…
「あ…アスカ!?顔がライチみたいな色になってるよ!!」
チクショウ チクショウ チクショウ チクショウ チクショウ
糞女…殺してやる…
「何にもない…
明日はアタシ出かけるわ…」
殺してやる…
「あぁそう、じゃあいいや。おやすみアスカっ」
コイツ殺してやる…
「おやすみシンジ」
アタシも死んでやる…
ベッドの上で息を潜め、左手に持ったガラスのコップを耳に当てるアタシ…。そろそろシンジが帰ってくる
見知らぬ女と一緒にね…
右手に持った出刃包丁が閉め切った暗い部屋の中でギラリと光っている…
まずは糞女から殺す…死体はすぐに窓から捨てなきゃね。シンジが怖がっちゃう
そして次にシンジを殺す。でも包丁は綺麗に洗わなきゃ…。シンジが糞女の血で汚れちゃったら可哀想だし
最後はアタシが死ぬ…。シンジの血を包丁にいっぱい塗り付けてから刺すの。そしたら多分痛くない
『ほら入りなよレイ』
『お邪魔しま〜すっ』
きた…
『えへへっここがシンちゃんの部屋?初めて来た〜』
『そうだね。レイの部屋には何回か行ったけどね』
「あぅ…あぅ…」
涙と右手の震えが止まらなくなってくる…
『あははっシンちゃんのベッドふっかふかだね〜』
『そうかな?あっ!こらレイ!』
『シンちゃんの膝の上、柔らかくて好きぃ〜』
殺す!!
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!!!!
『なにこの音?』
『なんだろ?・・・ってアスカ!?』
アタシは我を忘れて壁を拳から血が出るほど殴りつけ、加持リョウジのポスターを突き破った
そして…
「えへへっ勘違いしちゃったみたい。ごめんねシンジ?」
それが20分後のアタシのセリフとなった
あの時のことは半狂乱になっていてよく覚えていないんだけど、ポスターを突き破ったアタシは直径30cmの穴からシンジの部屋に這い出したの
(どうやってあんな小さい穴から抜け出せたんだろう…。シンジからは、『貞子みたいに出てきた』って言われちゃった。えへへ)
その後、右手に持った包丁を振り回してなんか色々叫んでたんだけど、汗ばんだ手から包丁がすっぽ抜けて飛んでいってシンジとアタシの写真の入った写真立てを壊しちゃったのよね…。反省…
(写真はシンジの机の上にあったの。ちなみにアタシの机には68枚飾ってあるわ)
包丁が手から離れたと同時にシンジがアタシを抱きしめたの。アタシが落ち着くまで、ずーっとね
(まぁ羽交い締めともいうけど…)
そして今までポカンとアタシを眺めていた糞女が、アタシの足元にやって来て言うのよ
「お姉ちゃん誰?」ってね…
幼稚園児の糞女がね…
シンジの親戚で、遠くから1人で来た賢くて可愛い糞女がね…
そしてアタシを抱きしめるシンジに言ったのよ…
「シンちゃん、らぶらぶぅ〜」って…
いやんっもうレイちゃんったら♪
深夜11時、碇家の1人息子シンちゃんのお部屋の壁からは、奇妙なノック音が鳴り響く
コンコン…
「ん?なんだろ?」
僕もノックを仕返す
コンコン…
すると、こちらのノックを待ち望んでいたかのように、すぐさま返ってくるノック音
コンコンコン…コン…
「4回…。穴か…」
僕は自室の壁に不自然に貼り付けたポスターを見やる
アイドル界のビア樽娘葛城ミサトの姿は無く、あの日アスカが壊した写真立ての写真が10倍になって貼り付けてある
『シンジぃ〜?まだぁ〜?』
「あっごめん!」
慌ててポスターを剥がす僕。シワにならないようにね
「おっそ〜いっ!!」
「ごめんごめん」
壁の向こうでプリプリ怒っているのは、僕の彼女。惣流アスカ
「ねぇ…。アタシ4回コンコンしたよシンジ…?」
4回のノックは2人の新しい秘密の暗号
「うん。聞こえてたよアスカ」
そして僕達はおやすみのキスをした…
おわり
なんつー落ちw
よかった、GJ!www
リアルで読んで頂いてありがとうございます…
そしてこんなアスカが好きですいませんw
GJGJ!
女コロス→ジンジコロス→あたしも死ぬ
っていうアスカの女的思考回路が妙に生々しくてうまいとオモタ
癒されたよー(*´д`*)
GJ
すげー自演
おぉ久しぶりに投下されとる
ヤンデレ系かな?アスカ怖えなGJ!!
おもろいな。GJ!
GJ
本編アスカ@学園
アスカのカワイイ所、ヤバイ所がそのまま移植されてるほのぼの系
やるなー
文章もユーモアがあって好きだな。ここで他に何か書いてる?
みなさま感想ありがとうございます
他のLASスレではちょこちょこ書かせてもらってるんですが、ここでは初めてです
また新しいの書いてるんですけど、今回のは長引きそうなんで、途中まで投下します
アラエル戦
光がアタシを包む…
使徒がアタシの心を覗いている…
アタシの過去がグルグルとアタシを締め付ける
怖いから目を閉じる…
ダメダメダメダメ
怖いから耳を塞ぐ…
ダメダメダメダメ
宙吊りのママがアタシを見ている…
怖いよ怖いよ怖いよ怖いよ
こんなのママじゃないよ…
アタシの大好きなママじゃないよ…
『アスカちゃん…ママよ…』
チガウチガウ、ママジャナイ
加持さん助けて…
ダメダメダメダメ
加持さんはアタシを助けてくれない…
チガウチガウチガウチガウ
アタシは加持さんに助けてほしいんじゃない…
ダレダレダレダレ?
誰?に?助?け?て?ほ?し?い?の?
1人ぼっちで溶岩の中に居たアタシ…
怖いよ怖いよ怖いよ怖いよ
アタシを助けてくれた人…
ダレダレダレダレ?
シンジだ…
シンジシンジシンジシンジ
シンジ助けて…
『シンジ君じゃなきゃダメ?』
シンジじゃなきゃダメなの
『アスカちゃんはシンジ君が好きなの?』
好き好き好きっ
『よかったわね…』
うんっ
『じゃあ頑張って生きなきゃね』
あ…れ…
「ママ…ここに居たのね…」
弐号機シンクロ率100突破
強力なATフィールドを展開
使徒殲滅
弐号機を降りたアタシを待っていたのはアタシの待ち望んだモノでは無かった
「…ミサト」
「アスカ使徒殲滅おめでとう!シンクロ率すごい数値よ!」
2時間前のアタシなら飛び跳ねて喜んだであろうその言葉も今のアタシにとってはどうでもいい事…
「シンジは?」
「へ?シンジくんならケージに居るけど」
行かなきゃ…
あれ…?足…動か…?
「ちょ、ちょっとアスカ!?」
そして『グラグラドスン』という音を残しアタシの視界はそのまま暗転した
・
・
・
明転…。病室
目覚めたアタシの寝起きの目にいきなり蛍光灯の光が射す
眩しい…
「ぅんっ…」
しかしアタシの不快感は一気に吹き飛ばされてしまう
蛍光灯の光に負け、右に顔を背けたアタシの目に飛び込んできたのは…。最愛の人の寝顔
「シンジ…」
そして右手に感じる温もりがアタシを完全に溶かす。アタシはたまらず右手を包むシンジの手を引き込み
「あぁシンジ…シンジぃ…」
目を細め愛おしげに頬ずりする
「シンジごめんね…ごめんね…」
散々辛くあたった今までの傷を癒やすように手の甲に2回、3回と口付ける
「んっ、ちゅぷっ…ひんりぃ…」
そしてアタシの渇きを癒やすためシンジの細い指を貪るようにしゃぶった
「ん・・・。あ!目が覚めたんだねアスカ!!」
「とっくにね。寝ぼすけなアンタとは違うのよ」
「よかったぁ…。あっ、待ってて!リツコさん呼んでくるよ!」
「えっ!?ちょっ!待ちなさいよ!!
・・・って行っちゃった…。もうっ!」
シンジにかまってもらえなかったアタシは、病室ならではの固いベッドにふて寝を決め込んだ
あ〜あ。もっとお喋りしたかったなぁ…。・・・でもアタシが寝てる間は手を握ってくれたのに、元気とわかった瞬間ソッコー出て行くとは…
「・・・病気のままだったら、ず〜っと…アタシにかまってくれるのかな?」
そんな名案をアタシの天才頭脳がはじき出した次の瞬間、廊下からバタバタとやかましい足音が響きわたる
ガラガラっ!
「アスカ大丈夫!?」
「大丈夫よ」
「よかったぁ…。急に倒れたからビックリしたわよ?」
病室に入って来たミサトはゼイゼイ息をしながら、ベッドに寄って来た
と、そんな事より…
「ねぇシンジは?」
「はぁ…。シンジくんは明日学校があるから帰ったわよ…。ねぇアスカどうしたの?口を開けば『シンジシンジ』って」
「ふんっ!シンジはアタシの恋人なんだから気にするのは当たり前でしょ!」
「はぁっ!?」
303号室は異様な雰囲気に包まれていた
カルテを睨み付けながらブツブツ独り言を呟くリツコ…
アタシとリツコを不安な顔で交互に見やるミサト…
リツコがたまたま持って来ていたシンジの身体検査結果の用紙を凝視しているアタシ…
えっとB.W.Hは…。うんっ予想通り細身ね!えへへっ可愛いなぁ…
「ねぇリツコぉ、アスカ絶対おかしいわよ…。使徒の精神汚染にやられたのよ絶対」
「いいえ。検査結果は全て正常よ」
はぁ〜いつかあの細身の身体を弄くり倒したいわ。シンジったらどんな声出すのかしら…
「アレが正常って言えるの!?」
「言えないわね…。ねぇアスカ?」
「カワユス♪シンジ♪カワユス♪」
「アスカっ!!!」
妄想のアタシがシンジのブリーフの分け目に手を滑り込ませた瞬間、リツコが現実世界にアタシを引き釣り込んだ
「ふぇっ!?なに!?」
「弐号機の中で何があったか、説明してくれる?」
あぁ、そんな事か
「んっとねぇ…
使徒がアタシの精神に入り込んできた時に、アタシもアタシの心の奥に入り込んじゃったみたいなのよねぇ
そして、そこでアタシが見たのは…。
シンジシンジシンジ♪シンジだらけの世界だったの!!」
きゃっ♪言っちゃった恥ずかしいっ♪
「つまり、アスカが自分でも気付かないほど心の奥にしまい込んでいたシンジくんへの気持ちが、使徒の精神攻撃によって掘り起こされたっていう事?」
「まぁそういう事ね」
ミサトの問いにおざなりに答えるアタシは、身体検査結果の用紙にプリントしてあるシンジの肢体を写し出した写真達に夢中であった
むむぅ…これは鼻血モノね…。あっ、こんな所にホクロ発見!う〜んセクスぃ〜♪
「はぁ…アホらしい…。帰る」
「おっと、待ちなさいよ」
呆れ顔で帰ろうとしたミサトとリツコを引き止める
「ん?なに?」
「あのさ、アタシ今日からこの病室に住むからね」
「病室に?1人暮らしする気?」
「違うわよ〜。これからはシンジと2人で住むの!こ・こ・で♪」
「はぁっ!?」
「シンジには、アタシが使徒の精神攻撃によってツラい入院生活を送ってる事にするの」
「で?」
「毎日アタシを看病する人が必要
でもアタシの病気は難解で、アタシが心を開いた人が看病しないと治らないの
『アスカが心を開いた人間…。それはシンジくん!あなたなのよ!!』
とかなんとか言ってきてよ!素直なシンジなら信じちゃうからさぁ〜♪」
「リツコぉ…。あたし頭痛くなってきた…」
「素敵な作戦だけどそれは無理ね」
リツコはいつもの冷めた口調でアタシの名プランをバッサリ否定する
「なんでよぉ!」
「シンジ君は大切なパイロットよ。たとえ仮病とはいえ看病をするとなったらかなりの体力を消耗するわ
あなたのワガママでパイロットを1人失うなんて、そんな馬鹿げた事が許されると思う?」
「大丈夫よ。使徒なんかアタシ1人で全部倒せるもん
だからシンジがパイロットを引退して、アタシのお婿さんになったら良いのよ
きゃはっ♪ちょっと気が早いかなっ?」
「1人で勝てるほど甘いモノじゃないって知ってるでしょ!?何回戦ってきたのよ!」
ミサトが声を荒げる
「何回も戦ったからわかるのよ。今までの使徒レベルだったら、内部電源が切れる前に9匹は殲滅出来るわね」
「あのね!ちょっとシンクロ率が上がったからって天狗になっちゃダメよ!」
「出来るわよ。アタシと弐号機・・・ううん…
アタシと『ママ』ならね♪」
リツコの黒い眉がピクリと跳ねる
「どういう事…?」
「詳しくはリツコに聞いたらぁ〜?」
「・・・リツコ?」
「そこまで知ってるとはね…
・・・・・わかったわ…。シンジ君看病作戦を許可します…」
「サンキュっ♪よろしくね」
シュリシュリシュリ…
「あーっ!!皮全部剥いちゃダメよ!ウサギにしてよぉ!」
「あっ!ごめん…剥きすぎちゃった」
そう言って極端に耳が短くなったウサギリンゴを差し出すシンジ
「もうっ!これじゃウサギじゃなくてネコじゃないのよ!」
「ご…こめんね」
「駄目っ!罰として、これからシンジはネコ言葉で喋ること!」
「な、なんでだよ!」
「アタシは病人なのよ?アタシの言うことが聞けないの!?」
「うぅ…
・・・ごめんニャさい…」
きゃーー!!可愛いーー!!
・・・こうしてアタシとシンジの病室ライフ初日は始まった
アタシがリツコ達に出した条件は次の通りだ
・シンジがアタシの看病をする
(アタシの看病を任された時シンジは『僕アスカのために頑張ります!』って力強く言ったらしいわ
そのシーン見たかったなぁ…)
・使徒が来たら、シンジは初号機の中で絶対待機
(シンジを危険な目にあわせられないもんね)
・シンジに戦闘中の状況説明は絶対ダメ。使徒は全部ファーストが倒した事にする
(アタシは療養中なんだから戦闘に行ったらおかしいもんね)
以上の事を破ったらアタシは絶対にエヴァに乗らないと決めた
アタシとシンジの甘い生活のためね
夜10時…
「アスカ、そろそろ寝ないと」
「ん…そうね」
確かに少し眠たいかもしれない
アタシは左目をグシグシとこすりながら、狭い病院ベッドの半分を空ける
「うん。じゃあ僕は仮眠用のベッド借りてくるから待っててね」
「な、なに言ってんのよアンタ!!」
アタシは半分空けたベッドの上をバンバン叩く
「ここで寝ればいいでしょーが!」
「な゛っ!!そ、それは無理だよ!」
真っ赤な顔で、両手をパタパタさせながら声をあげるシンジ
あぁ…可愛い…
「アタシがどういう病気か知ってんでしょうが!1人で寝ると発狂しながら近くに居るアンタの首絞めちゃうかもしれないわよ!」
そんな病気があるのか知らないけど、なんか有りそうな気がする
「それともシンジは恋人の横にしか寝れない?」
「・・・・・」
「アタシはシンジの恋人になってもいいかなぁ〜♪」
「・・・・・」
「ねぇ?シンジはどう?アタシの恋人に…」
「わかった。寝るよ」
そう言うとシンジはアタシの隣に背を向けて寝ころぶ
「・・・シンジ…?怒ってるの?」
「怒ってないよ…。でも僕は恋人の横にしか寝れないような男じゃない…」
震えた声で、そう言ったシンジはいつもよりも小さく見えた
深夜2時…
アタシの隣で可愛く寝息をたてるシンジ…。アタシが眠れないのも当然だ
そして、アタシが寝ているシンジに悪戯したくなるのも当然の話だ
「はぁ…シンジぃ…」
弄くる。弄くる。
シンジの身体を好きにしている喜びにアタシは浸る
「ぅん…。・・・え゛っ!?」
気持ち良さそうに息を漏らすシンジが可愛い…
「あ!アスカっ!?」
寝言でアタシの名を叫ぶシンジが愛おしい…
「や、やめてよ!!ダメだよぉ!!」
寝言でイヤイヤと声をあげるシンジが愛くるしい…。・・・あら?起きてる?
「やめてよアスカぁ!!!」
ドンっ!!
「キャアっ!」
身体に巻き付いていたアタシを突き飛ばしすシンジ
「痛っ…」
「あ…!ご、ごめんアスカっ!」
シンジに拒絶された…
シンジに嫌われた…
「ふぇっ…ぐすっ…。ごめん…。ごめんねシンジぃ…」
「な、泣かないでよアスカ!!痛かったの?ごめん!」
「ふぇぇぇぇぇんっ!!シンジごめんねぇぇぇぇぇ!!」
「ごめんよ!お願いだから泣かないでよ!ごめん!ごめんよアスカぁ!」
「ごめんなさいシンジぃぃぃぃぃ!!」
「ごめんアスカ!本当にごめん!!」
その後、15分アタシとシンジの謝り合戦は続いた
たいへん面白かったです。
時間があれば又、お願いします!
乙です。癒されますなw
らーぶりっを思い出した
そして謝り合戦の20分後…
「はふ、はふ…。シンジぃ…気持ちいいよぉ…」
「うん…」
アタシはシンジに愛撫されている…
あの合戦の後、アタシは先程の夜這いの言い訳を必死で考えた
そして出た結論は…
「精神攻撃のせいで夜になると、とってもHな気分になってどうしても男が欲しい身体になっちゃったのよ!」
…我ながら苦しい言い訳だったと思うわ
でも新世紀のピュアボーイ碇シンジは
『そっか、大変だね…。ねぇ僕に何か出来る事ない?』だってさ
ちょっと将来が心配になるわね…。消火器とか壷とか買わされてないかしら…?
でもまぁこんなチャンスを逃すアタシじゃない
「じゃあね、じゃあね?シンジがアタシの欲求不満を静めてくれる?」
「え…それって…」
「ち、治療よ治療!ヤらしい意味じゃ無いわよ!?」
先程の事があるしあまり意識させすぎると、またシンジが怒っちゃうかもしれない
「・・・うん、わかった…。治療だよね…。治療だもん。アスカが困ってるもんね…うん…」
なぜか自分に言い聞かせるようにブツブツと呟いた後、アタシをギュッと抱き締めてくれた
「アスカ…」
「シンジぃ…」
そしてシンジはゆっくりとアタシの身体をまさぐり始めた…
「ねぇシンジ…?」
「なに?」
「えへへっ、気持ち良かったよ?」
夢のような時間が終わり、シンジの左腕に巻き付いて首筋の辺りに顔をうずめるアタシ…
わかる?アタシいま人生で1番幸せなんだよシンジ…?
「うん。アスカが喜んでくれて、僕も嬉しいよ」
「うんっ♪」
そして、これからもこの幸せは続くの…
だってシンジと一緒なら、いつだって世界1の幸せチャンピオンだもん
「でも明日は本番もしようね…?」
今日は結局Bまでだった。シンジがセックスは駄目だって言ったから
「・・・・・」
「だめ…?」
「・・・ごめん」
そう言うとシンジは目をそらして小さくうつむいた
「あっ!ごめんごめん!気にしないでね?
…アタシは幸せなんだからさ!セックスは大人になってからね!」
「・・・・・」
「でもシンジすごく上手だったね?アタシ初めてなのに、いっぱいイっちゃったし」
「そうかな…?」
「そうよ。はっはぁ〜ん♪さてはHなビデオとか見て覚えたんでしょ!このスケベっ♪」
「そんなの見ないよ…」
何故かシンジはさっきから落ち込んだ顔をしている
アタシはこんなに幸せなのに…
「もう寝ようかアスカ…?」
「うんっ」
アタシイマシアワセダヨネ?
すいません…。連投規制というものが有るのを知らなくて、えらく中途半端な部分で終わってましたw
一応今回はここまでです。感想ありがとうございます
癒された方と「らーぶりっ」を思い出した方には申し訳ないんですが、あまりハッピーな方向には進まないと思います…
な、マジかw
うわあああorz
使徒襲来
「よっしゃー!!全力で行くわよ!!」
敵は円を描いたような形をした使徒だ
まぁ敵が円だろうがドルだろうかアタシには全く関係無い事
こちらに気付いた使徒は蛇のような形に変化し、突っ込んで来る
しかし弐号機が右手をかざしATフィールドを発生させる…
ズギャっ
使徒殲滅
303病室…
「シンジおかえり〜。お疲れさん」
「ただいま・・・って僕は何もしてないんだけどね…。綾波が倒して僕は待機してただけだし」
本当はアタシなんだけど、これはトップシークレット
「ふぅ〜ん。でもお疲れ様、まあゆっくりしなさいよ」
そう言いながらベッドを半分空けて隣をバンバンと叩く
「ありがとう、でも午後から学校に行くよ。今日は別に疲れて無いしさ」
「えぇ〜!?行かなくていいわよ学校なんて〜
ほらっおいで?シンジ?」
「あはは…ごめんねアスカ。その代わりに今日は綾波がお見舞いに来るからさ」
ガラガラっ
「こんにちは」
「はやっ!!」
「あっ、綾波お疲れ!今回の使徒戦凄かったらしいね
ねぇ初号機のモニターが映らなくて見えなかったんだけど、どうやって勝ったの?ライフル?ナイフ?」
「4の字固め」
どんだけ嘘が下手なのよこの娘…
「はぁ…シンジは結局学校行っちゃったか…」
外は快晴ぽかぽか陽気。だけどもここは雨がザーザー降ってる気分
カチャカチャ…
「むっ?アンタ何してんの?」
「知恵の輪…。赤木博士から暇な時に遊びなさいって貰ったの」
そう言いながらアタシには一切目もくれず知恵の輪を弄くるファースト
「アンタねぇ…。自分からお見舞いに来といて、なにソッコー暇になってんのよ…」
「やってみる?いっぱい有るから」
そう言いながら銀色の物質を差し出すファースト
「はんっ面白いじゃない!どっちが早く外せるか勝負する?」
「別にいい」
「・・・つまんない女…」
アタシもマイペースで知恵の輪の攻略に取り掛かる事にする
「ん〜?難しいわね…。こう?こうかしら?」
「違うわ。多分ここをこうよ…」ガギっ
「あははっアンタも出来てないじゃ〜ん!」
「・・・ムスッ」
「なに膨れてんのよ?ほらでも、こっちに回したら…」ガギギっ
「クスっ…出来てない」
「うるさーーい!!」
知恵の輪を外そうと手を取り合うアタシとファーストの間には、ほんの少し友達の輪が見えたような気がした
「もう飽きたわ…1人で頑張って。シャリシャリ」
「アンタなに勝手に人のリンゴ食べてんのよ!!」
ネルフ本部、技術部のお部屋
「ふぅ…きつぃ…」
私は両目の間を軽く揉みながら、再びパソコンに向き合う。ネルフ職員は大変なのだ
プシューっ
「こんにちは、お疲れ様ですマヤさんっ」
「・・・シンジ君…」
入って来たのは学生鞄をぶら下げたシンジ君
「なにしてるの?今日は午後から学校行くって…」
「サボリです」
「はぁ…」
「マヤさんに会いたくて…。あの、迷惑でしたか…?」
手を前でモジモジさせながら、上目づかいで問い掛けてくるシンジ君
殺人的に可愛い…
「でも学校に行かないんならアスカの所に居てあげなきゃ…。あの子寂しがってるわよ絶対」
「いいんです。アスカとはずっと一緒に居ますし…」
そう言いながら私の肩を持ち、椅子を回して私と向かい合う格好になる
「それにこんな時でしかマヤさんと一緒に居れないです…」
あたしの膝の上に座り、首に手を回してソッと抱きつくシンジくん
「マヤさぁ…ん」
「だ、駄目よシンジ君っ…。ね?帰りなさい?」
私は切なげな声を出しながら首筋に顔をうめているシンジ君の髪を撫でながら説得を試みる
「・・・マヤさんの為に還ってきたのに…」
ビクッと私の肩が震える
「僕を捨てないで…」
シンジ君が初号機に取り込まれて15日目、私は初号機の前に立っていた
「シンジ君還ってきてよ…」
最初の方こそ職員達が心配そうに様子を見ていたこの場所も今では私1人…
なんで私はこんなに必死になってるんだろう…自分がわからない
でも私はシンジ君を失いたくないからここに居る
そんな気がした…
サルベージ決行当日、夜11時
ネルフ本部、自動販売機前
「あれ?シンジ君?」
「あっマヤさん!」
私の姿を見ると小走りで近寄って来るシンジ君
「どうしたの?こんな夜遅くに…」
「その…。ま、マヤさんを待ってたんです」
「私?」
シンジ君は少し照れたような顔をしながら私に微笑んだ
「僕、マヤさんのお陰で還って来れたんです!
初号機の中に居た時、ずっとマヤさんの声が聞こえてて…。それで…」
私は驚いた
まさかあんな声がシンジ君に届いていたなんて思わなかった…
「それで…。僕『ありがとう』の他に、もう1つ言わなきゃイケない事が有って…」
そしてさらに驚いたのは…
「マヤさんが好きです」
シンジ君がそう言いながら私にソッと抱きついた事だ…
でも本当に1番驚いたのは、私がシンジ君の背中に迷わず手を這わせた事だったのかもしれない…
ネルフ本部、女子トイレ
「もう5時…そろそろアスカの所に戻らないとダメよ…?」
私は乱れた着衣を整えながらそう問い掛ける
『不潔…』昔の私が私を見て呟いている…
「はい…わかってます」
シンジ君はゆっくりと私から離れる
「ねぇ…アスカとの事、私知ってるわよ…?
毎晩2人の声が盗聴器に録音されてるの知ってるでしょ?」
「・・・アレは治療です…。アスカはああしないと変になるらしいから…」
「アスカは治療と思って無いわ。アスカにとってアレはシンジ君との愛の儀式よ?
ねぇ、アスカの事考えてあげてよ…。あの子にはシンジ君しかいないのよ…?」
「僕にだってマヤさんしか居ません…
アスカは家族です。家族の間に恋愛なんておかしいですよ…」
個室の開閉レバーに手をかけるシンジ君
「僕が恋するのはマヤさんだけです。僕はアスカの事、そんな風に見れません…」
「シンジ君…」
「でも家族には幸せになって欲しいんです。だからアスカには他の男性と幸せになってもらいます」
バタンっ…
私は便座に座り1人頭を抱えた
目から涙。口元は徐々に引きつり始める
「この事がアスカにバレたら…
・・・ははっ…。完全に殺されるわね私…」
今日はここまでです…
まぁこういう話です…
甘甘を期待してた方すいません…
>>512 GJだがコテつけてくれたらありがたい。
514 :
パッチン:2007/10/11(木) 02:19:14 ID:???
あぁすいません…
感想ありがとうございます
これはどっちが軸なんだ…orz
ヤバいマヤに甘えてるシンジが可愛かったw
天然レイもGJ
イタいがほのぼのシーンとの合わせ技があるから良い
次スレではテンプレから『エロLAS』を削った方が良さそうだな。
削除依頼が出されてたし……
977氏みたいのももう止めるか、エロパロに行ってもらった方がいいかも知れない……
該当部分だけエロパロに投下するなりの手が無難ではあるな。
あの依頼だしまくってた荒らしの理屈には一部の理も認めんが。
LRSスレは削除されてないんだってさ
LRSというか
やめてよ綾波!(ryスレが
やっぱりか
でもあそこの内容もスレスト案件に引っ掛かってるよね…
まあいいじゃん
きゃぁスレも建て直したし
ここはスレストされなかったしさ
523 :
パッチン:2007/10/12(金) 00:14:36 ID:???
ネルフ本部、作戦部長室
召集されたアタシ達3人のチルドレンの前にミサトと1人の銀髪紅眼のニヤけた男が立っている
「今日から新しく仲間入りしてくれるフィフスチルドレンを紹介するわ」
「渚カヲルです。よろしく」
この時期に新しいチルドレンが来るの…?
アタシが居る限り使徒戦は問題ないハズなのに…
「アスカどうしたの?ずっと車椅子だから疲れちゃった?」
「へ?あぁなんでもないわよ」
う〜んっシンジはやっぱり優しいわねぇ〜。今晩も優しく可愛がってもらおっ♪
「よろしくね碇シンジ君」
「あ、うん。よろしくね渚君」
「あははっカヲルでいいよ。僕もシンジ君って呼ぶからさ
ほらっ親愛の握手」
「う、うんカヲル君。ははっ…親愛の握手…」
なっ!なによこの男!!!アタシのシンジに気安く触りやがってぇぇ!!
それに何が『カヲルって呼んで』よ!!気持ち悪いわっホモホモ野郎よ絶対!!
「えっと…セカンドチルドレンの惣流さんだね?
よろしく。親愛の…」
「触るな触るな!!アタシに触っていい男はシンジだけなんだかんね!!」
ガルルと唸るアタシに気押されてサッと手を引くフィフス
「ははっ…ずいぶん嫌われてしまったようだね…」
524 :
パッチン:2007/10/12(金) 00:17:27 ID:???
「アスカ失礼だろ…カヲル君ごめんね。ちょっとアスカ精神病で、心を開いた人以外と話すと…」
「イヤいいんだよ、でも僕にも心を開いてくれたら嬉しいかな?」
「ぷいっ」
そっぽを向いたアタシをスルーして、ファーストの前に移動するフィフス
「よろしくね?ファーストチルドレンの綾波さん
親愛の握手は…してくれそうに無いね。ははっ…」
ファーストは先程から紅い眼でジッとフィフスを睨みつけている…
怖っ!!
「はいはいっじゃあ今日の挨拶会は終わりね。みんな仲良くするのよ?」
そう言ってミサトは部屋を出て行った。
・・・加持さんが死んだ事はアタシも聞いている
何故ミサトはあんなに気丈に振る舞えるんだろう…
もしシンジが死んだらアタシ…。アタシは…
「ねぇシンジ君。本部内を案内してくれないかな?」
「うん、いいよ。ここ迷路みたいでややこしいからね」
なにっ!?
「はぁっ!?ちょっと待ちなさいよシンジ!!」
「アスカごめんね?
綾波、アスカの車椅子押して帰ってくれる?」
「いいわよ」
「勝手に決めてんじゃないわよぉ!!」
そう叫ぶアタシを背に、部屋を出て行ってしまったシンジとホモ野郎
ヤバい…。シンジが…シンジが掘られちゃう…
525 :
パッチン:2007/10/12(金) 00:19:34 ID:???
「ったく!あんなホモ野郎と可愛いシンジを一緒に行動させるなんて!」
「彼…危険ね…」
「そんな事わかってるわよ!あのシンジを見つめるイヤらしい目!気味悪いったらありゃしないわ!!」
「カヲル君、さっきは本当にごめんね…アスカ悪い子じゃないんだけど…」
「あははっ気にしなくていいよ本当に。彼女が良い子なのはわかってるよ」
「良い子か…。カヲル君はアスカの事よくわかってるね」
「そういう意味で危険なんじゃないわ…。彼は別の意味で危ないよ」
「別の意味で危ない?なにが?」
「僕が惣流さんの事をわかってる?
あははっ1番わかってあげてるのはシンジ君だよ。彼女の瞳は君一色だ」
「僕はアスカの家族だからだよ。アスカも心を開いてくれたら他の男の人も見えてくるさ」
「彼は人間じゃない…私と似て非なる存在…」
「アンタさっきから何言ってんの…?まるでアンタもアイツも人間じゃないみたいな言い方じゃない」
「・・・・・」
「ねぇカヲル君はアスカをどう思う…?」
「ん?まぁ魅力的な子だとは思うね。とっても一途で情熱的な子だ」
「そっか…」
526 :
パッチン:2007/10/12(金) 00:21:34 ID:???
「・・・私はセカンド…アスカとは違う…」
「アンタがアタシと違うのは当たり前じゃない」
「違うっ!!私はアスカ達とは違う!!」
「・・・ファースト…?」
「そんな事聞いてどうするの?あははっ彼女の良い所を聞いてノロケたかったのかい?」
「僕とアスカはそんな関係じゃないよ…。家族だ…
アスカは大切な大切な僕の家族だ…」
「ねぇどうしたのよ…?アンタが大声出すなんて…」
「・・・・・」
「そんなにツラい事なの?」
「・・・アスカは私がどんな存在でも一緒に居られる…?一緒に居てくれる…?」
「彼女は君の事をそう思ってないよ?彼女は君の事を1人の男として見ている」
「今アスカが心を開いている男が僕だけなだけだよ…
もっと素晴らしい男性が現れたらアスカもすぐに心を開いてくれるさ」
「・・・アンタがどんなヤツだろうとアタシはアンタを見捨てたりしないわよ」
「・・・ありがとう…」
「こんな事でお礼言ってんじゃないわよ
友達でしょ?レ・イ・♪」
「うんっ…」
「・・・じゃあ話してくれる…?」
「カヲル君は素敵な人だ…。きっとアスカも心を開いてくれるよ」
「シンジ君…なにが言いたいんだい…?」
527 :
パッチン:2007/10/12(金) 00:24:30 ID:???
「彼、フィフスチルドレン渚カヲルは最後の使徒…タブリスよ
そして私も使徒…
サードインパクトの要…使徒リリス」
「僕はアスカを愛する事が出来ない
アスカは家族だから…
僕には他に愛する人が居るから…
だから…だからカヲル君が、アスカを幸せにしてあげてほしい」
大丈夫かよこの展開…怖えよ
ちょ、LASだよな、そう信じていいんだよな?
既に心が抉られたような痛みで苦しんでいる俺w
たとえ種付けされて出産まで至っても最後シンジとアスカが結ばれるなら耐えられる
イタモノは苦手だが、この程度なら全然GJ.
N3レベルまで行くと個人的には読むのが厳しい。
活性化してきたな!
わっしょいわっしょい
続きマダー?
537 :
パッチン:2007/10/15(月) 00:44:04 ID:???
538 :
パッチン:2007/10/15(月) 00:45:20 ID:???
「ただいまアスカっ」
病室に入って来たシンジはパイプ椅子を組み立て、アタシのベッドの傍に腰を下ろした
「おかえり…。遅かったのね」
さすがのアタシも今回ばかりは明るくシンジと喋る元気は無い
フィフスが使徒…レイが使徒…サードインパクトの要…アタシ達の敵…
「ねぇアスカ、カヲル君の事なんだけど」
アタシの身体がビクリと震える
「カヲル君って格好いいよね。優しいし頭も良さそうだし、何より大人っぽいもん
ねぇアスカはどう思う?僕が女の子だったら好きになっちゃうかなぁ…」
使徒タブリス…
「アイツに関わっちゃダメーーーっ!!!」
病室がアタシの大声に包まれた
「な、なに怒ってるの…?」
「あ、ごめん…
・・・ねぇシンジ…アイツの話は止めよう?アタシ、フィフスの事苦手みたい」
とにかく今はその話題から逃げたい…
「そんな言い方よくないよ。カヲル君はとっても良い人だしアスカも気に入ると思うよ絶対」
逃がしてくれない…
なんで?なんでシンジはフィフスの話をしたがるの?
シンジはフィフスが好きなの…?
539 :
パッチン:2007/10/15(月) 00:47:07 ID:???
「ねぇレイ…。フィフスが使徒っていう事はアタシ達の敵よね…?」
「そうなるわね」
次の日、シンジが学校に行ってる間いつものようにレイがお見舞いに来ていた
文庫本をパラパラとめくりながらアタシの問いにおざなりに答えていくレイ
「ていう事はアタシがフィフスを殺しても問題ないわよね?」
「えぇ問題ないわ…。でも生身では絶対に勝てないし、エヴァに乗るにはネルフから電力を借りなきゃイケない。だから今すぐ殺しに行くのは無理よ」
「むぐっ…。わかってるわよそんな事!!」
「だったら枕の下の日本刀片付けて。病室には似合わないわ」
「わかったわよっ!!」
アタシはしぶしぶ妖刀『かぼちゃ丸』を窓から投げ捨てた
「フィフスを殺すのは彼が正体を現して、碇司令がGOサインを出してからよ」
「でも正体を現す前にシンジが掘られちゃうかもしれないし…」
アタシは俯きながら、シンジがフィフスに掘られて泣き叫んでいる絵を想像してしまう…
・
・
・
・
・
・・・興奮したアタシ死ね!!
540 :
パッチン:2007/10/15(月) 00:49:43 ID:???
ランチタイム
アタシの前には病院の味気ない飯オールスター達が並ぶ
「本当に病院のご飯は不味いわねっ!なんとかならないのかしらっ!?」
プンスカと怒るアタシを尻目に黙々とオールスター達を口に運ぶレイ
「アンタ文句も言わずによく食べるわね…」
「私は美味しいと思うから文句を言わないだけよ」
そう言いながら、ほぼ調味料ゼロのほうれん草のお浸しをムシャムシャと頬張る
「アタシは嫌いだな〜。はぁ…シンジの料理が恋しいわ」
「碇くんの料理はそんなに美味しいの?」
「もっちろん!シンジの料理はぜ〜んぶ美味しいんだから!特にハンバーグは最強よ最強!世界チャンピオンなんだから!!」
シンジの自慢話が出来るとわかったアタシは身振り手振りで説明しだす
「アンタも今度食べに来なさいよ?歓迎するわ!」
「そうね。全て終わったらね…」
「・・・あっ…」
サードインパクトの要…
『使徒リリス』
それがレイの正体…
「・・・ねぇ…?アタシ達っていつか殺し合うのかな…?」
「わからない。でも私はアスカを殺したくない」
「アタシだって…!!」
「私を殺さなければ碇くんも死ぬわ」
「・・・・・じゃあ殺す…」
「くすっ、正直ね」
541 :
パッチン:2007/10/15(月) 00:52:01 ID:???
同時刻、発令所
「パターン青!使徒です!ターミナルドグマへゆっくりと下降しています!!」
オペレーター伊吹マヤの声が響く
「モニター表示されます!」
モニターに最後の使徒が映し出される。その人の形をしたモノは学生ズボンのポケットに両手をつっこみ、当然のように重力を無視したスピードで落下していく
「渚くん…?」
その使徒は昨日、葛城ミサトの隣で笑顔を浮かべていた
再び303病室
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「使徒…?使徒…。使徒っ!?
ホモホモ野郎だわっ!!」
「思ったより早く尻尾を出したようね…」
先程まで気落ちした顔をしていたアタシはベッドから飛び降り、青い瞳に炎を燃やす
「シンジをたぶらかしたホモホモ野郎…。この手で潰してくれるわ!!」
同時刻、ジオフロント内の小さな湖
「はぁ…」
湖のほとりで少年は気弱そうな顔を俯かせ、小さな小さな溜め息を吐いていた
「不安なのか?世界を守るヒーローさん?」
背後から聞こえる声…
あの時と同じ声…
二度と聞けない思っていた声…
「非常警報が出てるぞ。またあの時みたいに男の会話でもするか?」
「加持さん…?」
そこには死んだはずの男がスイカ片手に立っていた
GJ!
毎回いいところで切られるので
続きが気になってしょうがありません
スレが活性化して嬉しい
いいねぇ!GJ!!
パッチンさん頑張って!
『かぼちゃ丸』
なにそのネーミングセンス可愛すぎwww
545 :
パッチン:2007/10/17(水) 00:37:36 ID:???
「加持さん生きてたんですね…」
湖のほとりで非常警報が鳴り響く中、肩を並べスイカを食べる少年と中年
「あぁ、まあ加持リョウジは死んだ事になるがな。名前を変えて海外のどこかで静かに暮らす事になる」
「そうですか…。ミサトさんには会ったんですか?」
「もちろん真っ先に会いに行ったぞ
・・・全て終わったら一緒に暮らしてくれるらしい。こんな俺とな…」
そう言いながら少し照れた顔をごまかすようにスイカにかぶりつく
「ところでシンジ君は行かなくていいのか?」
「初号機は凍結中だし僕が行っても意味無いんです…」
そう言い、膝を抱えて深く溜め息をつく
「そうか…。アスカは元気か?」
「会ってないんですか…?」
「はははっ、会いたかったんだが口が軽そうな人には会わないようにしてるからな」
『みんな聞いて聞いてー!加持さん生きてたのよー!!みんなでパーティー開きましょうよー!!』とか叫んでいるアスカが目に浮かぶ…
「ところでアスカとはどうだ?葛城の話では一緒に病室で二人暮らししてるらしいじゃないか」
「・・・・・」
静かに目をそらし、スイカを口に運ぶシンジ
「・・・悩みの原因はそれか…?」
546 :
パッチン:2007/10/17(水) 00:39:29 ID:???
「僕…アスカが好きなんです…。たまらなく大好きなんです…」
湖を眺めながらポツリポツリと『自分』を話し始めるシンジ
「いつ頃から好きになったかなんか覚えてないけど…。でも、マグマに飛び込んだ頃には『この娘のためなら死んでもいい』と思えるくらい好きだったんだと思う…」
「・・・・・」
「でもアスカは僕のこと嫌ってて…
僕はアスカに嫌われるような事しかしなくて…」
叱られる前の子供のように小さく震えだす
「初めてキスした日にうがいされたんですよ…?
アスカの誇りのシンクロ率ぬいたんですよ…?
僕はアスカにとって邪魔な存在なんだ。居ない方がアスカは喜ぶんだって思えてきて…」
「シンジ君…それは…」
「初号機に取り込まれた時だってそうだ…。
外の世界からみんなの声が聞こえきたのに…。ミサトさんやリツコさん、加持さん、そして綾波
なのに…
なのにアスカの声は聞こえなかったんだ!!アスカは僕の事なんかどうでも良かったんだ!!アスカは僕が死んでもよかったんだ!!」
非常警報が鳴り止んだ静かな湖に悲痛な叫びが響いた
547 :
パッチン:2007/10/17(水) 00:41:29 ID:???
「・・・初号機の中にいた時…。1番支えてくれたのがマヤさんの声だったんです…」
「・・・・・」
「それで…。僕…還ってきた時、マヤさんに…」
「シンジ君…」
先程まで大声をあげていた少年の声は小さな涙声に変わり、瞳からはボロボロと涙がこぼれ落ちてくる
「ぼく…マヤさんを汚しちゃったんです…優しい…優しいマヤさんを…
拒絶されたイライラを忘れたくて…セックスいっぱいして…。マヤさんは嫌がらないから…」
シャツの袖で涙をグシグシと拭い、再び顔を上げる
「・・・そんな時にアスカが使徒の精神攻撃をうけて入院して…。そして、僕の事を好きになって帰って来たんです…
・・・でも、僕はアスカの恋人にはなれない…」
「シンジ君…。アスカは精神汚染でシンジ君を好きになったんじゃない
葛城が言ってたぞ…?アスカは心の奥でシンジ君を求めていて、それを使徒が掘り起こしただけだ…
だからアスカが君を好きなのは使徒のせいなんかじゃない。そんなことに負い目を感じなくてもいいんだ」
加持はシンジの正面にまわり、顔を覗き込みながら説得する
548 :
パッチン:2007/10/17(水) 00:43:02 ID:???
「アスカが精神病じゃないことなんて知ってます…。四六時中一緒に居るんです、いくらバカな僕でもそれくらいわかります…」
「ならいいじゃないか…。好きな者同士が結ばれるのは自然の摂理ってもんだ」
「でも、でもマヤさんが…」
「シンジ君…」
「僕にはもうマヤさんがいるからダメだって…アスカが僕のこと好きになった途端マヤさんにサヨナラなんて言えない…
アスカへの気持ちは家族愛だって誤魔化そうと…。アスカが別の男を好きになったら諦められる…」
「君はそれで満足なのか…?アスカを他の男に取られていいのか?」
「でもマヤさんが…」
「アスカが他の男と恋に堕ちてもいいのか?
アスカが他の男とキスしても平気なのか!?
アスカが他の男とセックスしても笑ってられるのか!?」
「・・・っ!!」
身体を縮こませて耳を塞ぐ
「逃げるな!!これは君が望んだ事だ!!
自分で考えて決めた未来だ!!」
加持の怒声が湖に響きわたり、その後再び静寂が周りを包む
「・・・怒鳴って悪かったな…。あの時も言ったが最後に決めるのは君自身だ」
加持はシンジの頭をゆっくりと撫でてやる
そして、しばらくすると『スンっ…スンっ…』と少年の泣き声が小さく響き始めた
549 :
パッチン:2007/10/17(水) 00:44:26 ID:???
「加持さん…、僕アスカが好きです…アスカを盗られたくない…」
その言葉を聞き、フッと笑顔になる加持
「あぁ、それでいいんだ…。マヤちゃんには一緒に謝りに行ってあげるから安心していい」
決心した少年の頭から手をどけ、そう言って勇気付ける
・・・すると先程まで泣いていた少年は中年の胸に飛び込んで抱きついてきた
「お、おいっ!?シンジくんっ!!」
経験豊富な加持とはいえ、男に抱きつかれた経験などほとんど無い…
「加持さん、僕がんばります。アスカと幸せになってみせます」
「あ、あぁ…。がんばれよ…」
少し涙で濡れた顔を上げて会心の笑顔を見せながら、そう言った少年は男らしくと言うよりも可愛らしく見えた
「えへへっ…、やっぱり加持さんは優しいです」
「はははっ…。そ、そうか…?」
「はいっ大好きです♪」
14才の少女に動じなかった男が、14才の少年にドキリとさせられている…
少年はゆっくりと加持の胸に顔を寄せて小さく溜め息を吐いた
「加持さぁ…ん」
『果たしてこの常軌を逸した可愛いさを持つ少年を伊吹マヤが手放すのだろうか…?』
加持リョウジは少年の背に両手を這わせながら、そんな事を考えていた…
550 :
パッチン:2007/10/17(水) 00:46:42 ID:???
と、今回はここまでです。感想ありがとうございます
まだ続きますんで、もうしばらくお付き合い下さい…
加持シンGJ
がんばってね、シンちゃん
急展開に吹いたw
あぁ・・・やっとイタから解放されそうだ
どうでもいいけどパッチンさんの作品のキャラって全員かわいいなw
うほっ
555 :
パッチン:2007/10/18(木) 00:44:16 ID:???
セントラルドグマを下降する大小の影
ガギィっ!!
ホモホモ野郎のATフィールドが弐号機のプログナイフをはじく
「ふんっ、やっぱ最後の使徒だけあるわね
でもアタシが本気出したらアンタなんか速攻で千切りに出来んだから!」
「はははっ…。それは勘弁してほしいからお先に失礼するよ」
そう言い残すと猛スピードで最下層に落下していくホモホモ野郎
「あぁーー逃げたーー!!
ちょっとミサト!このケーブル最下層まで伸びる!?」
『大丈夫よ!アスカ早く追いかけて!!』
「よっしゃー!!」
先程まで掴まっていたロープから飛び降り、そのまま落下していく弐号機
『目標、弐号機、共にロストしました!』
『・・・頼むわよ…アスカ』
バシャーーーン!!
「ひゃ〜なにここ?ネルフの地下にこんな所があったとはねぇ…」
地下なのに明るいそこはLCLが湖のように広がり、巨大なドアがぽっかりと開いている
「ん…?
いたーー(゚∀゚)ーーっ!!ホモホモ野郎!!」
その巨大なドアのむこうに、巨大な十字架と、巨大な白い巨人と、小さなホモホモ野郎の存在が確認できた
「あ…見つかっちゃったみたいだね…」
「ふんっ!生まれてきたこと後悔させてやるわ!」
556 :
パッチン:2007/10/18(木) 00:46:41 ID:???
弐号機はフィフスの体を掴むと握り潰すように構える
「抵抗は諦めたようね!」
まさに弐号機の手中に収まっているフィフスは、これから殺されるというのに何故か笑顔が崩れない
「ねぇ、なんで君はそんなに怒ってるの?」
コイツっ…!!
「アンタがシンジを盗ろうとするからよ!!」
「盗ろうとした…?
ふっ…、僕はシンジ君を奪ったりなんかしないよ?彼にはもう大切な心に決めた女性がいるみたいだしね」
「こ、心に決めた女性!?」
や、ヤダっ!シンジったらフィフスに話しちゃったのかしら!?アタシとシンジの熱〜い関係を♪
「嬉しいかい?シンジ君に大切な女性いて」
「当ったり前でしょ!
くぅ〜っ!!『心に決めた女性』かぁ〜♪こりゃ結婚まで既に秒読み段階ね!!」
あぁ…結婚かぁ…。嬉しいなぁ…
「くすっ…、結婚式か…呼ばれるといいね
『誰かとシンジ君の結婚式』にね」
は??…誰かと…?
よばれる…?
「はぁ?花嫁のアタシが、なんで呼ばれる側なのよ馬っ鹿じゃないの?」
なに…?
コイツなに言ってるの…?
「くすっ…シンジ君の隣に座る花嫁は君じゃないよ?
だって惣流アスカラングレーは碇シンジの心に決めた女性じゃないからね」
557 :
パッチン:2007/10/18(木) 00:48:44 ID:???
・・・どういうこと…?
ア?タ?シ?何?を?言?わ?れ?た?の?
「残念でした。でもしょうがないよね、シンジ君は惣流アスカを家族としてしか見てないって言ってたもん」
あまりに悪質な嘘だ…。シンジがアタシ以外の女を愛するワケ無い…
「嘘言ってんじゃないわよ…」
信じない…。こんなヤツの言葉なんか…
「嘘なんかじゃないよ?シンジ君が自分で…」
「シンジがアタシより大切に想ってる女がいるって言うの!?」
「クスっ…、だって言ってたもん」
早く握り潰さなきゃ…こんなヤツ…。こんな嘘つき…
「君、シンジ君に『愛してる』って言われた事ある?」
無い…
「クスクス…
・・・あっ、ねぇ良いこと教えてあげようか?」
聞きたくない…!!殺さなきゃ…!!
「・・・っく…!」
聞いちゃ駄目!!
「シンジ君。僕と君に付き合って欲しいんだって。幸せになって欲しいんだって♪」
う…そ…だ…
『アスカはカヲル君の事どう思う?
きっと気に入ると思うよ絶対』
シ…ン…ジ…
「うそよ!!!
うそようそようそようそよ!!!
ウソウソウソウソウソウソウソウソ!!!」
アタシの心の中に大切に保存されていたシンジの言葉が急激に凍りついていく…
558 :
パッチン:2007/10/18(木) 00:50:34 ID:???
「シンジはアタシを看病するって言ったもん!!面倒見るって言ったもん!!」
「だって家族だもん。家族の面倒見るのは当然だしね」
チクショウ…チクショウ…チクショウ…
「シンジは毎晩アタシの身体を慰めてくれるもん!!」
「シンジ君は治療としか思ってないよ。
それにシンジ君は毎日『大切な女性』に慰めてもらってるんだろうね」
チクショウ…チクショウ…チクショウ…
「シンジはアタシの病室以外には学校くらいしか行ってない!!学校が終わったら寄り道せずに5時には帰って来るもん!!
その女に会ってる暇なんて無いわよ!!」
「クスっ…、学校の生徒なんて全員疎開して1人もいないよ?
だから朝から5時までずっと『大切な女性』と一緒に居るんだね」
チク…ショウ…
アタシはシートにゆっくりと身体を沈めて顔を両手で覆った…
「ふぅ…、もう諦めたのかい?」
「ふっ、ひっく…。シンジぃ…シンジシンジぃ…」
ホモ野郎なんか信じたくないのに…。アタシが信じてるのはシンジだけなのに…。
アタシの思い描いていたシンジとアタシの幸せへの確信は、アタシのタダの勝手な妄想へと姿を変えようとしていた
「あぅ…あぅ…あぅ…」
「こんな事で壊れる弱い心…」
559 :
パッチン:2007/10/18(木) 00:52:40 ID:???
「ガラスのように繊細で…とても割れやすく弱い心…」
シンジシンジシンジシンジ…
「割れたガラスの破片は触れる物を傷付ける」
うるさいうるさいうるさいうるさい…
「憎いんだろう?シンジ君を奪った女が」
殺したい殺したい殺したい殺したい…
「シンジ君が欲しいんでしょ?」
欲しいよ欲しいよ欲しいよ欲しいよ…
「自分だけの物にしたい心、独り占めしたい心、リリンの心に存在するどうしようもなく汚い部分…」
そんなのどうでもいいよ…。シンジがアタシだけの物ならそれでいい…
「君の願い…。どうしようもなく身勝手で…、悲しいくらい一途な願い
叶えてあげるよ…この僕が…」
弐号機がゆっくりと口を開き始める
「僕を取り込むんだ…」
シンジが欲しい…アタシだけの物にしたい…
「僕を取り込めば教えてあげるよ。この世界の秘密も、ネルフの謎も、シンジ君を手に入れる方法も…」
シンジ…欲しい…。アタシだけを見てくれるシンジが欲しい…。
もしもシンジがアタシを見てくれないなら
そんなシンジいらない
そんなシンジ殺しちゃうよ…
そしてシンジが見てくれないアタシもいらない
そんなアタシも死んじゃうよ…
こう来たかΣ(ノ∀`)ペチーン
続きwktk
先にシンジの告白があるせいで、アスカとカヲルが茶番になってないか?
結果が見えてるって感じか。まあ、とにかくGJ
563 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/18(木) 23:01:37 ID:/pLElwcc
悲しい最後だけにはしてくれるな。頼むぞパッチン殿。
564 :
563:2007/10/18(木) 23:23:52 ID:/pLElwcc
すまない、sage欄チェックしてたのにあげになってもうたorz なぜなんだ。
このスレに投下されてるんだからどんな結末でもいいんじゃね?
567 :
パッチン:2007/10/19(金) 02:51:45 ID:???
303病室
「アスカただいま」
「シンジ…」
病室に入ってきたシンジはベッドに腰掛けているアタシの隣に座る
「フィフスが使徒だった…」
「うん、さっき聞いたよ…。ビックリした…」
そう言うとシンジは肩をすくめて小さく俯く
「元気だしてよシンジ…。シンジが元気無かったらヤダよ…?」
アタシは右手をゆっくりとシンジの左手に重ねる
「アスカ…」
「・・・ねぇ、シンジは…」
コンコンっ
いつもよりぎこちない会話を中断させるように病室の扉がノックされる
「あ…ごめんアスカ、外に人待たせてるんだ。ちょっと出掛けるね?」
「・・・・・」
アタシは立ち上がろうとするシンジの腰にしがみつく
「ん…?アスカ?」
コンコンコンっ
「アスカごめん…行かなきゃダメなんだ、すぐ帰ってくるから…」
「・・・イヤ…」
絶対に離さない…離してたまるか…
「アスカの甘えんぼ…」
そう言うとシンジはアタシの前髪をかきあげると、額にスッとキスをした
「絶対すぐに帰ってくるよ…
・・・それで帰ってきたらさ…」
シンジはアタシの耳元に唇を寄せて静かにささやく
「…セックスしよ?」
その言葉を残し病室を出て行ったシンジの瞳は微かに涙で濡れていた…
568 :
パッチン:2007/10/19(金) 02:53:52 ID:???
ネルフ本部、技術部のお部屋
プシューっ
「ん…?シンジ君、・・・加持さん!?」
まさかの訪問者に驚く私に気さくに手を振り、シンジ君の肩を押しながら部屋に入る加持さん
「はははっ、まぁ一応生きてたんだ」
「ハイ!よかったですね加持さん!
心配してたんですよ?絶対死んだと思ってました」
「はははっ…、それはそれは…」
「じゃあいよいよ葛城さんと結婚ですね?」
「いや、それが明日海外に高飛びするつもりだ」
「あ、そうなんですか…。ごめんなさい…」
「まぁあまり長居できないんだが、ちょっとマヤちゃんに用事が…な?シンジ君?」
先程から顔を伏せていたシンジ君は加持さんの言葉を受け、静かにひざまづいて土下座した…
「ちょ、ちょっとシンジ君!?」
慌てる私の声を遮るように床に顔を貼り付けたシンジ君は涙声をあげた
「ごめんなさい…マヤさん…。ごめんなさい…。
ぼく…、ぼくが…最低で…。マヤさんを汚して…傷つけて…
ごめんなさい…。ごめんなさいごめんなさい…」
清掃班がサボって、汚れに汚れている床にポタポタとシンジ君の涙が小さな水たまりを作っていく
「シンジ君…」
「・・・まぁ…、なんで謝ってるかわかるだろ…?」
「はい…」
569 :
パッチン:2007/10/19(金) 02:56:02 ID:???
私は土下座するシンジ君の前にしゃがみ込み、頭を撫でてあげる
「シンジ君、顔上げて?ね?」
「ひっく…、マヤさぁ…ん」
シンジ君は顔を上げて涙と鼻水でグチョグチョな顔を私に向ける
「クスっ…泣いちゃダメでしょシンジ君?これからアスカと幸せになるんだから」
私はポケットからハンカチを取り出し、シンジ君の顔を拭っていく
「私は大丈夫よ?シンジ君が居なくても
逆にこんな小さな彼氏、友達に紹介したら笑われちゃうわよ」
ハンカチをポケットに戻し、今度は一枚の写真を取り出す
「ほら、恋人っていうか年の離れた姉弟みたい」
「マヤさん…、これ…」
「ふふっ…偉いでしょ?いつも持ってたんだよ?」
そこに写るのは私とシンジ君
私達に残る唯一の思い出の品
「シンジ君はもう捨てちゃったかな?」
「あ、あります!」
そう言うとシンジ君もポケットから一枚の写真を取り出す
「うん、偉い偉い
でもアスカを愛してるなら、こんな写真持ってちゃダメよ?
これは私が大切に保存しとくから」
シンジ君から写真を取り上げ、2枚の写真をポケットにしまう
「マヤさん…」
570 :
パッチン:2007/10/19(金) 02:58:00 ID:???
「ふふっ、アスカにこの事も言っちゃダメよ?あの娘なにするかわからないし、私殺されちゃうかもしれないわ」
私は冗談っぽく…でも本気で心配していた事を言って、シンジ君の頭を撫でながら笑ってあげる
「私のことで悩んでくれて…私のことで泣いてくれて…
私はそれだけで嬉しいよ?シンジ君とサヨナラしても寂しくないよ?」
可哀想なくらい真っ赤に泣きはらして私を見つめるシンジ君の瞳にソッと口づける
「マヤさん…」
「これで最後…。
いっぱい私で泣いた分、アスカといっぱい幸せにならなきゃダメよ…?」
シンジ君はまた泣いた
瞳につけた『最後の私との絆』は涙と一緒に流れていったことだろう
・
・
・
「頑張ったなマヤちゃん。偉かったぞ」
「はい、大人ですからね」
シンジ君を見送った後、私と加持さんはネルフ内の廊下を歩いている
「じゃあ俺もそろそろ行くよ。元気でな」
「はい、加持さんもお元気で」
エレベーターのボタンを押し、振り向いた加持さんは私の頭を撫でてくれた
「君は良い子だ。本当に良い子だ。
だから絶対に幸せになれる」
「ありがとうございます…。さようなら加持さん…」
571 :
パッチン:2007/10/19(金) 03:00:31 ID:???
ネルフ本部、喫煙所
「あらマヤ、どうしたの?こんな所で」
「あっ先輩!ちょっと煙草を…。えへへ…」
灰皿の前に腰掛けて、持っていたライターを慌てた様子で隠すマヤ
瞳からは涙がポロポロとこぼれている
「ケホッ…、でもやっぱり煙草なんて駄目ですね、けむたいだけでした。あははっ」
「はぁ…慣れない事するからよ…、ほら涙拭きなさい」
そう言い、猫が可愛くプリントされたハンカチを差し出すリツコ
「ありがとうございます。
・・・ホント慣れないことするもんじゃないですね…」
「マヤ…?」
「えへへっ…さて、私は仕事に戻ります!」
力強く立ち上がり、仕事場まで小走りで戻って行ったマヤ
1人喫煙所に残されたリツコは、ソッと灰皿の中を見やる
「はぁ…。馬鹿なんだからあの子…」
そこには煙草の吸い殻など1本もなく、燃えカスになった2枚の写真が寄り添う様に転がっていた
さよなら私の恋…
572 :
パッチン:2007/10/19(金) 03:03:36 ID:???
303病室
「アスカただいま
・・・あれ??」
病室にアスカの姿は無かった
ベッドの上はパジャマが脱ぎ散らかしてあり、私服を入れていたロッカーが開けっぱなしになっている
「アスカ…?」
病気が嘘なのは知っていたがシンジの前ではあくまで病弱だった。1人で外に出るなんて今まで無かった
「どこ行ったの?アスカ?」
『…セックスしよ?』
自分が言った言葉がアスカを苦しめたのだろうか…?
・
・
・
「アスカ…遅い…」
すでに病室に帰ってきて5時間はたった…
ベッドに1人腰掛けて深いため息を吐く…
「アスカ…帰ってきてよアスカ…」
ドーーーーーンッ!!!!
ビーッビーッビーッビーッビーッ!!!!
けたたましい爆発音と非常警報が鳴り響く
「…っ!?使徒!?」
ガラガラガラっ!!
「シンジ君!!」
「青葉さん!?」
病室に飛び込んできた青葉さんは僕の手首を掴むと走り出した
「戦自が攻めてきたんだ!!おそらく君達を狙っている!!」
青葉さんは廊下を走りながら状況説明をする
「アスカはっ!?アスカが病室に居ないんです!!」
「アスカちゃんはロストした!!
弐号機と共に!!」
573 :
パッチン:2007/10/19(金) 03:09:20 ID:???
え〜…。ど深夜にLMSとよばれてもおかしくない物を投下した者ですw
いろいろな御意見ありがとうございます。嬉しいです!
そろそろクライマックスなんで頑張ります
PS、
>>563さんへ
え〜あまり期待しないで下さいw
リアルタイム(*´д`*)=3
wktkして待ってる、GJ
投下してくれるだけで神だが、せめてキャラの語尾?等は
統一して欲しい。
同じ事を言ってるのにシーン毎に単語が結構変わってるせいで、
同じキャラなのに別のキャラに見える場合が・・・。
しかしそれ以外はGJ、投下楽しみにしてます。
。・゚・(ノД`)・゚・。ウワワァァァン
どうなるの〜
アスカ〜どこいったの〜
甘、シリアス、イタ、友情、エロ、心理描写、感動、病み、ギャグ
こんなに色々詰め込んだ作品で、しかもそんなに長い話じゃないのに1つにまとまってるのが不思議だな
ラストはどうなるんだろう
自分はドキドキし過ぎて寝不足です。続きがとっても楽しみです。
579 :
パッチン:2007/10/21(日) 03:46:27 ID:???
ネルフ本部、発令所
「初号機は!?シンジ君は乗った!?」
作戦部長葛城ミサトの声が響き、確認作業に取りかかる日向マコト
「はい!いつでも発進できます!」
「よし、シンジ君聞こえる!?」
『ミサトさん…』
スピーカーから聞こえてきたのは戦いの前にしては、あまりにも弱々しい声
『アスカがいないんです…。なんで…弐号機もなくなるなんて…』
「あの子がいなくなった理由はわからないけど、あの子が弐号機を動かした事は間違いないわ
多分さっきの使徒戦の時にS2機関を取り込んだんだわ。電力無しで誰にも気付かれずに発進するなんて…」
そう言うとミサトは悔しそうに顔を歪める
「レイも行方がわからないし、今戦えるのはシンジ君。あなただけなのよ」
『・・・・・』
俯き黙っているだけのたった1人の戦士を必死で励まそうとするミサトだったが、死がすぐそこまで迫っている
「時間が無いわ。作戦を発表します」
『・・・・・』
「シンジ君、今回戦う相手は使徒じゃないわ…戦略自衛隊、人よ」
『・・・人…?
人を殺すんですか…?』
「そうよ、全員殺しなさい。
…作戦は以上よ」
580 :
パッチン:2007/10/21(日) 03:49:45 ID:???
『・・・・・』
予想通りの沈黙に深くため息を吐く発令所の一同
「シンジ君行きなさい!命令よ!!」
『・・・・・』
沈黙
「はぁ…。もうどうしたらいいのよ…」
座席に腰掛けて両手で頭を抱える作戦部長
…と、その時
プシューっ
「シンジ君!!」
そんな重い空気が流れる発令所に飛び込んで来たのは伊吹マヤと赤木リツコ
『マヤさん…?』
「リツコ!!」
座席から立ち上がり、リツコの所まで走って行くミサト
そしてマヤは入れ替わりにその座席に座り、シンジに話しかける
「シンジ君聞こえる!?」
『マヤさん…、僕…』
「シンジ君!行かなきゃダメよ!!
アスカと幸せになるんでしょ!?このままじゃアスカどころか誰も救えないわよ!!」
『・・・アスカを…救う…』
モニター越しに説得の声を荒げる
「アスカも葛城一尉も加持さんも碇司令もレイも友達もいない、そんな世界で幸せなの!?
そんな世界で幸せになれるの!?」
『・・・・・』
マヤの説得をうけ、ゆっくりとインダクションレバーに手をかけるシンジ
瞳は涙で潤んではいるが迷いの色はだいぶ薄れている
『・・・・・わかりました…。戦います…
僕は…、アスカと…
みんなと一緒の世界がいいです…』
581 :
パッチン:2007/10/21(日) 03:51:25 ID:???
「エヴァンゲリオン初号機、発進!!」
地上に射出された初号機を見送り、ミサトはリツコのもとに向かう
「はぁ…、言いなれた言葉もこれが最後かと思うと少し寂しく感じるわね…」
そんなことを言いながらリツコからコーヒーを受け取る
「指示はいいの?作戦部長さん?」
「オペレーター3人が頑張ってるから大丈夫よ
・・・そんな事より、あんたのポケットがさっきから気になんのよねぇ…
自爆作戦なんか指示してないわよ?」
そう言うとリツコは白衣のポケットからリモコンのような物を取り出す
「ふふっ…、徹夜で作ったのに使わなかったわね…」
クスリと笑い、フタを開けて単3電池を取り出し、ポイポイと捨てるリツコ
「・・・ネルフ爆破未遂の動機は?」
「好きな男と心中したかったのよ」
自分には似合わない言葉ね…。リツコはそんなことを考えながら静かにコーヒーを口に運ぶ
「・・・未遂で終わらせた理由は?」
「幸せにならなきゃいけない子がいたからよ…」
リツコの目線の先には必死に初号機を援護する1人の女性
「あの子が幸せになるまで死なせたくなかったのよ…」
「ふぅ〜ん…、天下の赤木リツコが人の幸せを願うなんてね」
「本当…。無様ね…」
582 :
パッチン:2007/10/21(日) 03:53:33 ID:???
同時刻、ネルフ本部最深部…
エレベーターから降り、ターミナルドグマへと向かう碇ゲンドウと綾波レイ
「この時を待ち望んでいた…」
レイは無言でゲンドウの後をついて行く
「もうすぐターミナルドグマだ。
レイ、心の準備はいいな?」
「はい…」
リリスへと続く扉を開くゲンドウ
・・・が、そこにはすでに先客がいた
「お待ちしておりましたわ」
その先客はゆっくりと振り向き、青い瞳をこちらに向ける
「お義父さまっ♪」
リリスの真下に立ち、微笑みながらそう言ったのはセカンドチルドレン
惣流 アスカ ラングレー
「セカンドチルドレン…?貴様なぜここにいる…」
拳銃を取り出し、微笑みながらふざけた態度をとるアスカに銃口をむける
「そこをどけ…殺すぞ…」
「お義父様!?家庭内暴力はダメですわ!!」
なおもふざけるアスカに苛立ち、ゲンドウは拳銃の引き金を引く
バキューーーガギンッ!!!!
だが、赤い血が舞い上がるハズだった視線の先に現れたのは六角形の心の壁
「っ!?」
驚愕に顔を歪めたゲンドウの前には、クスクスと笑いをこらえているアスカが立っている
583 :
パッチン:2007/10/21(日) 03:55:38 ID:???
「レイ。こっちに来なさい危ないわよ…」
「えぇ…アスカ」
ゲンドウの後ろに立っていたレイはアスカのもとに歩いていく
「ATフィールド…。レイ、お前が出したのか…?」
アスカと並ぶように立ったレイはゲンドウの問いに無言で首を横に振る
「ママのATフィールドよ…
アンタ達ネルフが殺したママのね…」
先程まで笑っていたアスカの目が、冷たいモノに変わっていく
「ママ、出てきていいわよ?」
アスカが呼びかけると、巨大な十字架に隠れていた弐号機がゆっくりと顔を出す
「貴様…何が目的だ…」
「アンタみたいな糞野郎には教えるつもり無いわよ
ねぇアタシさぁ、アンタ嫌いなのよね…。シンジをイジメるから…シンジを苦しめるから…
そしてなにより…
糞野郎のクセにシンジがアンタと仲良くしたがってるから…」
アスカはゆっくりと左手を上げる
「シンジが…俺と仲良く…?」
「そうよ…。アンタはシンジの気持ちを踏みにじったのよ…」
シンクロする弐号機もゆっくりと左手を上げる
「・・・そうか…
・・・すまなかったな…シンジ…。」
「ママ…。右手以外いらないから切って…」
アスカと弐号機が同時に左手を振り下ろした瞬間ゲンドウの右手以外の部分が吹き飛んだ
584 :
パッチン:2007/10/21(日) 04:05:43 ID:???
えぇ〜今回はここまでです。
感想、ご意見ありがとうございます
>>575 ご指摘ありがとうございます。なにぶん前回の短編が初めて書いた小説で、まだまだ未熟者でして…。
読みにくい部分が多々あると思いますが頑張って勉強していきます
>>577 一貫性が無いだけですw
>>578 自分の作品を待ってくれる人がいるのは凄く嬉しいです!!
けど寝て下さいね?今回も変な終わらせかただったんで心配ですw
キタ━━(゚∀゚)━━ヨ
リアルタイムGJ(*´д`*)
>>586 専ブラ使ってるから俺じゃねえ。ちょっとだけドキッとしたw
アスカが黒いな・・・
この展開は予想外だ
職人乙
1
ごめん
玄関の方から大声が響く。その青空を裂く雷のような彼女の声は、僕の耳を文字通り劈いた。
どうやらその声は僕を呼んでいるようで、その声の主は酷く苛立ちながらもワクワクと興奮しているように感ぜられた。
僕は、思わずその身が竦んでしまう声に負けじと、大声を張り上げて「今行くよ!」と告げた。
僕は深い溜め息を吐きつつ、ポケットに携帯を捩じ込んで玄関へ向かった。
玄関にはジーパンに半袖姿というボーイッシュな服装のアスカが、まさに準備万端という風に僕を待っていた。
彼女は腕を組みながら、足の爪先でコンクリートの床をトントンと貧乏揺すりをするように細かく叩いていた。
「遅いぃ〜!」
とアスカは言って、ダンと一発コンクリートの床を踏み付けると、仁王立ちになって僕の鼻先に人差し指を突き出した。人を指差してはいけないと教わらなかったのだろうか?
「何時間待たせる気よ!」
「そんな……何時間って……せいぜい二十分……。」
「問答無用! さっさと行くわよ、バカシンジ!」
とアスカは僕のささやかな抵抗を粉砕し、にんまりと喜色を浮かべると僕の左手を鷲掴みにして、右手を突き上げながら歩き出した。
何が楽しいんだろう? そこまで僕を引きずり回して遊び回って。
「しゅっぱーつ!」
◇
アスカが僕に意見を求めている。ここは第三新東京市で一番大きなデパートの五階に入った洋服店で、彼女は両手に二着の洋服を持っている。
右手に持つのはデニムのミニスカートとレモンカラーのティーシャツのセットで、左手に持つのは白を基調としてストライプの入れられたワンピースだった。
アスカはそれを僕の目の前に突き出すように提示していた。
「どっちがいいと思う〜?」
正直どっちでも良かった。周りの買い物客も、この違和感ありありなカップルを注視している。もっとも、男性方に関しては僕ではなくアスカ単体への眼差しだろう。
それに、どうせ僕が何を言おうともアスカの選択には大した影響は及ぼさない筈だった。
だから、僕はなかば投遣りに白いワンピースを指差して「こっちが良いと思うよ。」と言った。
それを聞いたアスカは「ふーん、あっそ。」と言ってレジに向かって行った。
僕はアスカが会計を終えるまで、洋服店の前で彼女の荷物を抱えたまま待っていた。荷物を降ろさないのは、僕がそれを地べたに降ろすとアスカが怒り出すからだ。
アスカは店から出てくると、一つの袋を僕に押し付け、僕がそれをちゃんと落ち着ける前に、ご満悦という感じで次の店へ歩き出していた。
だから、僕は彼女の傍若無人なところが好きではなかった。
◇
結局彼女は午前中までに、部屋着や洋服を合計八着にアクセサリーを三品買い、全てを僕の腕に預けた。更に彼女は僕に弁当まで制作させており、それの入ったバスケットまで僕に持たせていた。
体力に自信も定評もない僕にはその荷物持ちという簡単な仕事でさえ、重労働だった。
どうやらショッピングの前半戦を最高に近い形で終えることの出来たらしいアスカは、意気揚々として疲れ果てた僕をデパートの側にある公園に連れこんだ。
広い芝生を見つけた彼女は、すぐさまその青い芝生の上にシートを敷くように僕へ命令した。僕は溜め息を吐きつつシートを広げ、荷物をその上に置くと、アスカに言われるままにバスケットから昼食を取り出してせっせと並べた。
アスカは随分腹がすいていたらしく、ドカっとシートに腰を降ろすと、僕が並べた端からタッパの蓋を開け、卵焼きやらウインナーやらをパクパクと頬張っていった。
「お行儀が悪いよ……アスカ……。」
聞く耳無し。僕は半分諦めの境地で自分の分の昼食をゆっくりと食べ始める。
◇
昼食というインターバルを置いたアスカは、益々その激しい衝動を高みへ持っていった。
そして、その僕にあまり好ましくない彼女の衝動は、結果的に僕の腕への負荷を衣料品三品増す事になった。
僕は彼女のこういう、何も気遣わないところが好きではなかった。
◇
この憂鬱に拍車が掛けられている。
それはひとえに、今日、シンクロ率がまた下がったからだった。
と言うのも、最近の下がり具合いは自分でも信じられない位だからだ。
それまでちょっとのコンディションや心境の変化で上がり下がりしていたシンクロ率は、異常とも言える速度で急激に下がり始めた。
それは丁度、僕が球形の使徒に取り込まれた後のシンクロテストからだった。
使徒に取り込まれて暴走し、記憶がなく脱出した翌日から、僕は毎夜の如く嫌な夢を見るようになった。
多分不調の理由は、恐らくその夢だろう。
父さんに捨てられ、駅で泣く僕の夢。
忘れたくて、忘れようとしていたものがまるで親に縋り付く子供、もう一人の僕のようにまとわり付いて離れなかった。
そして僕から下がった分のシンクロ率を吸い上げるように、ただでさえ高かったアスカのシンクロ率は木に登る猿のようにスルスルと上がっていった。
だからだろうか? アスカの機嫌は頗るよくなった。普段ならば彼女の機嫌が良いという事は喜ばしい自称なのだが、僕にとってはそれがマイナスの方向へ向いてしまった。
彼女は自分の機嫌がよくなるのに比例して、僕の事を街での買い物や公園へ連れ出すようになった。
先の一日のように。
僕としては極力外界からの刺激を減らし、部屋の中でジッとシンクロ率の回復を待ちたかったのだが、アスカは僕の事をソッとして置いてくれない。
そりゃアスカは楽しいだろうが、気晴らしや荷物運びなど召し使いのように連れ回される側になってみれば憂鬱なだけだ。
僕が「今日は家に居たいんだけど……。」と言っても、アスカは「アンタバカァ? こんな美少女と一緒に歩けるっていうのに、ぶちぶち文句言うんじゃないわよ!」と満面の笑みで言って、決して取り合ってはくれなかった。
荷物運びなんて、アスカなら手頃なヤツが斬って捨てるほどよってくるだろうに、何故僕でなければならないのだろう? まったく分からなかった。
そしてアスカは僕の、やっと出来た最初の友達を殺し掛け、一生残る傷を負わせた。
◇
その日は透けるほどにまっさらな青空で、大きな入道雲がぽっかりと浮かんでいた。
ミサトさんもリツコさんも出張、そして鈴原トウジも居なかった。
そして僕は学校でネルフに呼び出され、出撃した。
その日、シンクロ率の低下していた僕が様子見の前衛で綾波が中堅、そしてシンクロ率が順調に上がっていたアスカが、主力である後衛だった。
僕は今でも、どうしようもない後悔をしている。なぜシンクロ率が下がってしまったのか、と。
その日はいつもと違う事がいくつかあった。
命令をしていたのはミサトさんではなく父さんで、尚且つ敵はエヴァだった。
不審に思った僕は、通信を使ってアスカにパイロットの事を尋ねてみたが、彼女は一向に教えてはくれなかった。
知っていた筈なのに。
僕はバズーカを手に、小山の裾野に控えていた。
汗の滲む両手でイグニッションレバーを握り締め、緊張する。
僕がそうして体の底から湧く震えをその体で実感していると、両手をダラリと垂らしたエヴァが、夕日を背にしてこちらへ向かってくる影が見えた。
ノソリノソリと、ゆっくりと。
僕は緊張しつつ、銃口を敵に向けるとしっかりと狙いを付け、射程に敵が入るまでジッとしていた。
するとエヴァはグルリと顔を僕に向けた。その瞬間。
エヴァの右手がその先を擡げ、何をするのかと見ていると、突然その手がゴムのように伸びてあっというまに僕の頚を捕えた。
恐ろしい力で頚が絞め上げられ、気管が圧迫されて呼吸がきつくなる。
手に力が入らず、バスーカを持っていられない。
段々とボンヤリとして落ちていく意識の中、アスカの悲鳴が聞こえた。
僕の名も聞こえたが、なぜわざわざ僕の名前を呼んだのか、その理由を考えている余裕はなかった。
薄く目を開けると、エヴァはその伸縮自在らしい腕を縮めながらもう僕の傍まで来ていて、次の瞬間には僕の体は山の斜面に倒されていた。
エヴァは僕に馬乗りになって、延びていなかったもう片方の手も使って更に首をきつく絞め上げた。
初号機の頚と僕の首が悲鳴を上げる。ギシギシと装甲が軋むような不快音も聞こえる。
もう少しで意識が飛ぶ。そう思った時だった。
首の苦しさが消え、呼吸が楽になる。思わず首を押さえて蹲り、激しく噎た。
目を開けて見ると、そこにいたのはスマッシュホークを手にしたアスカだった。赤い弐号機のボディに、夕日が反射している。
目を横に向けると、そこには鮮血を迸らせる腹の傷を押さえて蹲り、恨めしそうに眼光鋭くアスカを睨むエヴァがいた。
「大丈夫!? シンジ!」
アスカから通信が入り、ディスプレイにアスカの顔が四角い枠に表示された。
僕はその画面に向かって無事だと軽く頷いた。
通信はすぐに切れる。
しかし切れ際に、聞こえるはずのないアスカの「ごめん。」と言う声が聞こえた。
そしてアスカは使徒を倒し、トウジを殺しかけた。
◇
僕は病室のベッドに寝ていた。
しばらく僕が何故ここにいたのかよく分からなかったが、すぐにその理由を思い出した。そうだ、僕は錯乱――ある意味では反乱――してアスカと弐号機を攻撃し、遠隔操作で父さんに気絶させられたのだった。
やおら記憶が蘇る。
アスカはスマッシュホークで3号機、トウジをエントリープラグごと攻撃して使徒を倒した。
スマッシュホークの衝撃で、使徒の侵食で腐った背後のカバーからエントリープラグが飛び出し、段差になった道路にまともに衝突した。
そして無惨にそれはひしゃげ、中から人影が見えた。そしてパイロットの顔は紛れもなく……。
痙攣するように、体が震える。激しい頭痛を感じる。
頭が割れるような強烈で激しい頭痛が、僕の無力を苛む。僕はベッドの上で蹲り、頭を抱えて痛みに耐えた。
「シンジ……。」
入り口の方向から女の声が聞こえる。
それは彼女には似合わない、水底から浮き上がるように静かで、僕みたいに機嫌を伺うような声だった。
僕は折り込んだ膝の間から、そこに埋めていた首を少し擡げてアスカを見た。
アスカは一中の制服を着て、バッグを両手に提げて立っていた。
敢えて言うなら、アスカは運が悪かった。
もしこれが目覚めた後、頭痛に堪えている時でなければ幾分マシだった筈だ。
そう、僕はその時、僕自身の憤り、怒りをぶつける相手を見つけたのだ。
「なにしに来たの?」
沸々と湧く怒りを出来るだけ抑え、感情を込めずに俯いて言った。
アスカは柄にもなく頬を掻いたり、俯いたりバッグを持つ手元を蠢かしたりして口篭っていたが、やがて吃りながらも口をきいた。
「あ、あの……早く元気になりなさいよ……。い、家でご飯作ったり洗濯したり……アタシの話し相手になるの……アンタしかいないんだから……。」
つまり家政婦ってこと?
それになんの謝罪もないのか。人の友人を殺しかけておいて?
余計に頭痛が酷くなる。
「それに鈴原があんな風になったのはアンタのせいじゃないし……。」
そうだ。僕のせいじゃない……。
アスカのせいじゃないか。
「だから……。」
僕はアスカのその顔を見て、トウジのことで糾弾するのをやめた。冷静に考えて、どうせ僕にはそんな復讐する度胸も無いし、他人を傷付ける事も出来っこないのだから。
しかし、こんな僕でも他人を憎む事くらいは出来る。
「心配してくれてありがとう。でも、もういいよ。」
なかば面倒くさくなり、アスカを追い返そうと冷たい声をかけた。
アスカは何か言い掛けるように口を開いたが、結局なにも言葉を発する事はなく、後ろ髪を引かれるように名残惜しげに病室を出ていった。
アスカの消え、寂しくなった病室で僕は一人溜め息を吐いた。
アスカが憎くて堪らない。
僕を召し使いか何かと勘違いしているようにこき使い、疲弊させ、 シ ン ク ロ 率 を 奪 い 、 挙げ句にやっと出来た友達を僕の手の中から奪っていった。
憎くてたまらない。
僕を動かせなくした父さんが憎い。
だけど、トウジをあんなにしたアスカが一番憎い。
僕は病室の皺がれたベッドの上で、栓の壊れたポンプみたいに泣いた。膝を抱えて幼児のように、日が暮れて月が夜を知らせ、眠りが僕を深い谷の底へ引き込むまで。ずっとずっと。
第1章、ごめん投下終了
全9章予定
あぁ〜シンジに見えねぇし文章も自信ねぇorz
まぁ、一応このスレに投下するのはこれが初めてです。ちょくちょく他スレでゲリラ的活動はしてましたけど……
訂正
全9章×
全7章○
一気に2連載の活気あふれるスレになった
GJ!!続き楽しみだわ
600
新作投下乙
文章がすごい好みなので
wktkしながら続きを待っております
毛色の違う2作品だけど
両方とも面白いです
>>590 凄く好みの展開になりそうなヨカーン
期待しつつGJGJ!
604 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/23(火) 00:55:49 ID:+PRJDlCp
シンジっぽくないけど、今後に期待
いや、ある意味シンジっぽい
今後を期待してるよ
すれ違いLASと黒シンジが好きな俺には完全ストライクです
まじ楽しみ
607 :
パッチン:2007/10/24(水) 23:38:45 ID:???
>>597 すごくおもしろかったです!続き楽しみにしてます
続きポトリします。こっちはもうすぐ終わりです
608 :
パッチン:2007/10/24(水) 23:40:44 ID:???
地下
アタシは血にまみれた碇ゲンドウの右手を拾い上げ、手袋を抜き取って手のひらを見やる
「これがアダム…」
「そうよ。それがアダム…、サードインパクトの要…」
独り言のようにポツリ呟くアタシの後ろから声をかけるレイ
「これがあれば、アタシの望む世界になるの…?」
「そう、あなたの望むままの世界…
あなたの思い描くイメージに限り無く近い世界に生まれ変わるわ」
アタシはアダム片手にレイの言葉に振り向く
「…ねぇレイ?
アタシの願い事わかる?」
アタシの問いかけにレイはフッと微笑む
「あなたの考えることなんか大体わかるわ…」
地上
S2機関を取り込み、強力なATフィールドを操る初号機に次々と破壊され、戦自の軍隊はほぼ壊滅的であった
…が、今は戦自など相手にしていられない
新たに上空から舞い降りた量産型エヴァ9体
「ハァ…ハァ…。
なんなんだよコイツら…」
腹に穴を開けても、足を切り落としても、蘇る9体のエヴァ相手に戦い始めて1時間は経過した
そもそも戦闘自体が久しぶりなシンジは体力も限界に近い
「…っくそぉ!!!」
グヂュッ!!
再び量産エヴァの顔面にナイフを突き刺す
シンジは殺しの無限ループに突入していた
609 :
パッチン:2007/10/24(水) 23:42:39 ID:???
地下
アダムを手に入れたアタシはレイのもとに歩み寄っていく
「・・・レイ…」
「さぁ、アダムを私に…」
両手を前に出したレイにアタシはアダムを差し出す
アタシは今、アタシの望む物のためにレイを…
友達の命を利用しようとしている
「・・・ねぇレイ…、ごめん…ごめんね…。
アタシ最低かな…?」
アダムをレイに渡したアタシは、血に濡れた手で流れでた涙を拭った
「最低かもしれないわね…。
・・・でも私はアスカがどんな存在であっても見捨てたりしないわ」
アダムがゆっくりとレイの腹部の辺りに吸い込まれていった…
「友達でしょ?」
そう言ったレイは最高の微笑みをアタシに向けてくれた
「・・・うんっ…。ありがとうレイ…」
レイがアタシの視界からゆっくりと消えていく
ただいま
リリスの仮面が剥がれ落ちていく
おかえり
白い光がアタシを包む
何も見えない真っ白な世界がアタシを包む
レイの姿は見えない。でも聞こえるレイの声
アタシの心に聞こえるレイの声
『アスカ・・・。あなたは何を望むの・・・?』
アタシの身体が溶けていく…
シンジに抱かれるような温もりに包まれながら…
LCLに溶けていく…
610 :
パッチン:2007/10/24(水) 23:45:12 ID:???
発令所
地上で量産エヴァに苦戦するシンジを援護していたマヤは、地下からの異変にいち早く気付いた
「…っ!?ターミナルドグマより強力なATフィールドが発生しています!!
パターン青!!使徒です!!」
マヤの報告に一気に混乱に陥るネルフ職員達
「な、何が起こったのよリツコ!!」
ミサトは一番状況を把握していそうなリツコに問う
慌てふためくミサトに対して、冷静とも諦めともつかない表情でリツコは問いに答える
「…何が起こったかは大体わかるけど
どうなるかはサッパリわからないわ」
地上
すでに限界を超えた疲労は初号機の動きにも完全に現れていた
一体の量産エヴァの腕を引きちぎり、次の相手に身構える
「ハァ…ハァ…。・・・っ!!」
後ろからの気配に、振り向きざまにATフィールドを発生させる
そこに存在したのは巨大な槍
「・・・なんだ…?・・・この槍…」
槍はATフィールドをゆっくりと貫通していく
「ひっ…」
急激に恐怖がシンジの身体中を這い回る
そして次にシンジを襲ったのは右目から全身に広がる激痛
「ぎゃあああああああああ!!!!」
悲鳴をあげたシンジは右目を両手で抑え、指の隙間から大量の血をこぼす
611 :
パッチン:2007/10/24(水) 23:47:56 ID:???
「あぐぅぅ…。ひぃぃい…」
痛い・・・痛いよぉ・・・
右目を抑えていた手をゆっくりと離す。
「はぐぅ…。ぐぎぃぃ…」
もうやだ・・・戦いたくない・・・
血まみれの両手でインダクションレバーを握る
「はぁ…あぐぅぅ…」
でも・・・負けたら終わりだ・・・
初号機は右目に刺さっている槍を握り、ゆっくりと引き抜いていく
「ひぎぅぅ…。くふぅっ」
コイツらを殺して・・・僕は・・・みんなと生きる
自らを貫いた槍を右手に持ち、量産エヴァに向き直る
「うあああああああああ!!!!」
『苦しまなくていいよ…シンジ…』
「ーっ!!?」
心に直接響くような声が、血と狂気に染まったシンジを止まらせた。その声は最愛の女性によく似ていた
「アスカ…?アスカなのっ!?」
『シンジぃ、ここだよぉ〜』
キョロキョロと辺りを見やるシンジを、『アスカ』が後ろからギュッと抱きしめる
『頑張ったね…偉かったよシンジ?』
「・・・あぅ…。・・・アスカぁぁ…」
シンジはアスカの胸に顔をうめて、小さな子供のようにエンエンと泣く
『ふふっ…。気持ちいい?シンジ?』
・・・うん・・・気持ちいいよアスカ
僕の身体が溶けていく…
アスカに抱かれながら…
LCLに溶けていく…
612 :
パッチン:2007/10/24(水) 23:49:46 ID:???
発令所
「ターミナルドグマの使徒がどんどん巨大化していきます!!
初号機、量産エヴァ、共に活動停止しました!!」
「シンジ君!!シンジ君返事して!!」
地下、地上の異変の状況説明に必死な青葉シゲルと、急に通信が途絶えた初号機に呼びかける伊吹マヤの声が響く
「・・・リツコ、どうなるの…?」
「さぁ?どうなるかしらね
でも初号機と量産エヴァが止まったのは地下にいる人が原因なのは間違いないわ
そして、これから私達がどうなるかも、その人次第よ」
リツコはそう言うと煙草に火を灯す
「『その人』って誰よ!?誰が地下にいんのよ!!
そいつは、なんでこんな事すんのよ!?」
ミサトは隣で煙を吐き出すリツコに向き直り、怒鳴りつける
「・・・それがわかっても私達にはどうする事も出来ないわよ
ほらっ、煙草いる?」
そう言うと、胸ぐらを掴む勢いのミサトに1本差し出して少し微笑む
「・・・もらうわ」
再び煙草片手にリツコの隣に立つ
「・・・あんたの笑顔なんか久しぶりに見たわよ」
「そう?最後かもしれないし、いい思い出でしょ?」
「ハァ…。ホントどうなんのかしらね…」
「さぁね。・・・まぁ生きて還ってきたら、また笑ってあげるわ」
613 :
パッチン:2007/10/24(水) 23:51:42 ID:???
今回ここまでです
え〜。次が最後の予定なんですが、あくまで予定ですw
リアルタイム乙!
(;´Д`)スバラスィ ...ハァハァ
リアルタイムGJ
(;´Д`) ハァハァしながら神光臨待ち
617 :
パッチン:2007/10/28(日) 06:26:03 ID:???
あああああ…。
ごめんなさい。
>>613で書いた事ですが、続き書いてる内に大嘘になってしまいました
まだ続きそうです。ごめんなさい!
続きポトリします
618 :
パッチン:2007/10/28(日) 06:31:43 ID:???
第3新東京市 コンフォート17
「んぁ…。朝…か…」
朝日差し込む僕の小さな部屋の、小さなベッドの上で僕は目を覚ました
見飽きた天井だ
「むにゃ…、ふぁ〜ぅ…」
まだショボショボする瞼をグシグシと擦りながら、ノソノソと布団から這い出す
朝には強い方だけど、日曜日の朝は強敵なのだ
「…眠い」
でも起きなきゃダメだ。今日も遊びに行く約束しちゃったし
はぁ、顔洗お…
洗面所には先客がいた。
「おはよう。カヲルお兄ちゃん」
「や、やぁ。おはようシンジ君」
顔洗いの途中だったカヲルお兄ちゃんは声をかけた僕の方を、ボトボトの顔で振り向たせいで床を濡らしまい、1人焦っている
カヲルお兄ちゃん29才
血のつながりこそ無いけど僕の大事なお兄ちゃんだ
…まぁお兄ちゃんと言える年でもないのだが、昔からこうだから今更だよね
「ははっ、今日は休みなのに早いね。どこかに出かけるのかい?」
長身の体を縮こませ、床を拭きながら僕を見上げるカヲルお兄ちゃん
「うん。遊びに行くんだ」
「そうかい。じゃあ早く朝ご飯を食べよう
僕は先に行くよ」
そう言いながら何事もなかったかのように、キッチンに向かう姿は少しマヌケに見えた
619 :
パッチン:2007/10/28(日) 06:33:48 ID:???
キッチン
「おはようございますマヤさん」
「おはようシンジ君。朝ご飯出来てるわよ」
キッチンに来た僕を笑顔で出迎えたのは、伊吹マヤさん
今年さんじゅう××才になる僕のお母さんみたいな人だ
「今日も出かけるんでしょ?早くご飯食べましょ」
「はいっ」
席についた僕は朝ご飯の目玉焼きにプツリと箸を刺して黄身を潰す
…何故かこれをする時は、いつも右目が少し疼く
「今日もお隣に行くのかい?」
そう言ったのは僕の隣で、大量の納豆をグリグリとかき混ぜるカヲルお兄ちゃん
「うん。一緒に宿題もしたいしね」
「ふふっシンジ君も来年から受験だし、いっぱい勉強しなきゃね」
キッチンでの作業を終えたマヤさんは僕の後ろに回り込んで、僕の頭を撫でる
「わかってますよぉ!」
「あはは、怒った怒った〜♪」
「もうっ!子供扱いしないでください!」
からかわれた僕は少しムスッとしながら、お味噌汁に口をつける
「ねぇシンジ君。僕も一緒に行っていいかい?」
僕とマヤさんを傍観していたカヲルお兄ちゃんは僕にそう言ってきた
「え…カヲルお兄ちゃんも来るの…?」
「ははっ。心配しなくても アスカちゃん を盗ったりしないよ」
「そ、そんな事気にしないよ!!」
620 :
パッチン:2007/10/28(日) 06:35:38 ID:???
ピンポーンっ
お隣のチャイムを鳴らすと中からトテトテと足音が聞こえ、ガチャッとドアが開く
「あら、いらっしゃい」
出て来たのはレイお姉ちゃん。カヲルお兄ちゃんと同い年の、とっても綺麗な人だ
「こんにちは、レイお姉ちゃんっ」
「ふふっ、こんにちはシンジ君
・・・それで、ソコのあなたは何しに来たの?」
僕には微笑みで挨拶してくれたレイお姉ちゃんは、カヲルお兄ちゃんをギロリと睨みつける
「ははっ、まだ怒ってるのかい?過ぎた事は水に流そうよ」
この2人は同じネルフという研究所で働いてるらしいんだけど、カヲルお兄ちゃんがいつも余計なことをやらかして仕事を増やすらしく、仲が非常に悪いんだ
「ごめんねシンジ君。アスカまだ寝てるから起こしに行ってきてくれる?」
「はい。わかりました」
「じゃあ綾波さんは僕と一緒に映画でも行こ…」
メギュッ!!
「さよなら」
「・・・好意にあたいしないよ」
靴べらでカヲルお兄ちゃんの鼻をへし折ったレイお姉ちゃんは、僕だけを部屋に入れてドアを閉めた
血まみれの靴べらを持ったレイお姉ちゃんは僕にむかって微笑んだ
「シンジ君はあんな大人になっちゃ駄目よ?」
・・・怖い…
621 :
パッチン:2007/10/28(日) 06:37:52 ID:???
「あら、シンジ君いらっしゃい」
玄関で待っていたのはリツコおばさん今年よんじゅう××才
アスカのお母さん代わりの人だ
「ふふっ、いつも大変ね。アスカ待ってるわよ」
いつもの笑顔を浮かべて僕にそう言ってくれるリツコさん
僕はこの人の笑顔が大好きだ。
優しい優しい笑顔だから
「あら、レイ今日は靴べらで殺ったの?」
「えぇ、虫ケラでも血は赤いのね」
「うふふっ、本当ね♪」
でもこの人のこういう笑顔は怖い
「ほらシンジ君、アスカ起こしてきて」
「あっ、はい」
僕はリツコおばさんの言葉にハッとして、アスカの部屋にむかった
・
・
・
「アスカ〜?僕だよ〜」
アスカの部屋に入った僕は、ベッドの上のこんもり膨らんだ掛け布団に話しかける
「すぴゅ〜すぴゅ〜」
寝息らしきモノが聞こえる
いつものようにアスカのベッドに顔を寄せる僕
「ねぇ起きてよアスカ…」
すると、なんとビックリ
静かな寝息と共に上下していた布団が吹っ飛んで、アスカが顔を出したのだ
「ジャーン!!起きてま〜したっ!!」
「わ〜びっくりしたな〜」
そして『いつものように』驚いた僕は
「シンジぃ〜♪おはようのキスぅ〜!!」
『いつものように』アスカに唇を奪われた
622 :
パッチン:2007/10/28(日) 06:41:17 ID:???
その後、しばらくベッドの上でキャッキャとじゃれあっていた僕とアスカだったが
『ぐぅ〜っ』
…というアスカのお腹から発生した終了の鐘により、シーツがしわくちゃになったベッドの上は沈静化した
「うっ…。だって朝ご飯食べてないしさ…」
少し頬を紅く染めて、言い訳がましく呟くアスカ
「じゃあ朝ご飯リツコおばさんに持って来てもらう?」
「うんっ♪」
嬉しそうに頷くと、寝転がっていたアスカは今まで入り込んでいた僕の腕の中から出ようとする
…でも僕は離さない
「ぅんっ?ちょ、ちょっとシンジ、ご飯食べるんでしょ?離してよ」
「・・・ねぇ、寝起きのアスカって温かいね…。それに甘い香りがする…
シャンプー?石鹸?…アスカの匂い?」
抗議の声を無視して、僕はアスカの首筋に顔を埋める
「ば、バカっ!!朝っぱらから何言ってんのよぉ!!」
耳まで真っ赤っかだね…
僕は首筋に埋めていた顔を徐々に下げていき、アスカのお腹の辺りに辿り着く
「ねぇ、もう1回お腹鳴らしてよ…?
可愛かったよ、さっきのアスカ…」
「や、やだぁ…。恥ずかしいよシンジ…」
気弱なアスカの声
僕しか聞けない…、そして他の誰にも聞かせたくない
そんな、どうしようもなく可愛い声
そんな声を聞いてしまった僕は、お腹に貼り付けていた顔をゆっくりと上げてアスカを見上げる
「アスカ…。セックスしよ…」
そう言った僕の顔を見つめて、顔を真っ赤にして『迷うフリ』をするアスカ
…そして、いつものように小さく頷く
623 :
パッチン:2007/10/28(日) 06:43:14 ID:???
僕とアスカには両親がいない
今から14年前の2016年、僕らが産まれた年にネルフという研究所で働いていた僕の両親とアスカの両親は、事故で亡くなったらしい
そして引き取ってくれるような親戚もいなかった僕らを、ネルフで働いていたマヤさんとリツコおばさんが引き取ってくれた
(当時からカヲルお兄ちゃんと、レイお姉ちゃんは研究のお手伝いをしていたから、一緒に住んでいたらしい)
そして同じ境遇にあり、お隣さんの幼なじみだった僕とアスカは急激に仲良くなり、小学5年生の頃には『こいびとどうし』になっていた
そしてそれと同時に・・・大人の階段を登ってしまった
正直なんであんな歳であんな事をしたのか、なんであんな事をしようと思ったのかもわからない
でも何故か行為が終わった後は、罪悪感や後悔の念は欠片も無く
僕もアスカも、まるで『昔からの約束』を果たしたかのような充実感の中、いつまでも抱き合っていた
『この娘と一緒に生きよう』と思った
『僕と一緒に生きたい』と思ってくれた
こうなる事が…。アスカと愛し合ってるのがすごく当たり前のような、でもなんだか夢の中ような不思議な気分だった
僕達は何故こんなにも愛し合うんだろう・・・
624 :
パッチン:2007/10/28(日) 06:44:54 ID:???
今回ここまでです。
え〜間違いなく
>>612の続きですw
625 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/28(日) 09:36:49 ID:KC3a7E9H
アスカかわゆす
何、この萌える展開(*´д`*)=3
GJ
俺は萎えたw
続けて読んでるのに一冊飛ばしたかのような錯覚。
面白いから自分は読むけれど。頑張れパッチンさん。
629 :
パッチン:2007/10/30(火) 00:28:52 ID:???
赤木家のベランダ
赤木家のベランダと伊吹家のベランダは壁一枚を隔ててあるだけなので、少し体を外に出せば相手の家の人間と会話が出来るような仕組みになっている
そして今日も煙草片手にリツコが、布団叩き片手にマヤが楽しげに世間話をしていた
…だが、会話の合間に赤木家からは、朝とは思えないような声が時たま響いてくる
『ふわうぁぁ〜っ!!シンジもっとぉ!もっとぉぉ〜!!』
「はぁ…うるさいわねぇ、あの子達」
リツコは煙と溜め息を同時に吐き出しながら、愚痴を吐く
「ホントですねぇ
…あれで付き合ってるのが、バレて無いと思ってるからスゴいですよね」
マヤはそう言うとクスリと笑った
あの2人はあくまでも他の人達の前では、ただの幼なじみを演じている
(演じてはいるが目を覆いたくなるような三文芝居である)
「まぁ成長したって事よね…」
「そうですね。もう『あのアスカとシンジ君』と同い年ですもん」
「はぁ…。年取るワケね」
リツコは自らの顔を指でさする
すっかり母親が板についてしまったリツコの顔は、多用し過ぎた『笑顔』のためか、優しさの年輪が増えてきていた
「私が母親か…
ふふっ、14年前の私が聞いたら発狂しそうね…」
そしてリツコは煙を吐き出し、14年の思い出にふける
630 :
パッチン:2007/10/30(火) 00:32:12 ID:???
14年前
2016年 ネルフ本部
戦自を壊滅に追い込んだ初号機と、量産エヴァが停止した
そしてその後、地下の使徒の反応が役目を終えたかのように消えた
一時の緊急事態の連続がウソのように、一気に平和になってしまったネルフ職員達は呆気にとられていた
「リツコ?これで終わり?あたし達の戦い…」
葛城ミサトはポカンと口を開けながら、隣のリツコに訪ねる
「・・・みたいね。サードインパクトも防げた。
戦自と量産エヴァも攻撃してくる様子無し。
つまり私達の勝ちね」
静まり返る発令所は伊吹マヤの猛烈なタイピング音のみが響いていた
「・・・あっ!初号機エントリープラグ内のモニターが映ります!!」
その声に、やるべき事が見つかった職員達は慌ててモニターに目をやる
しかし、そこに見えた様子は過去に見た映像と非常に酷似していた
「いない・・・。シンジ君がいない・・・」
「LCLの成分を調べて!!急いで!!」
モニターの映像に呆然と立ち尽くすミサト
その隣で職員達に早急に指示を出すリツコ
職員達がリツコの指示に従い、発令所を出ようとした瞬間、その職員達を押し戻すようにこちらに向かってくる2つの影
ミサトは目を丸くする
「レイ!!…渚君!!」
631 :
パッチン:2007/10/30(火) 00:34:04 ID:???
「LCLの成分は調べなくてもわかるよ
惣流さんとシンジ君がその中で溶け合っているんだ
ね?綾波さん」
カヲルは笑顔でそう言うと、隣のレイを見やる
「えぇ、これがアスカの望んだ結果
碇君と共に、永遠に一緒でいたい…。
アスカはそう願ったの」
・
・
・
その後、状況把握がまるで出来ていない作戦部長のあたしのために、緊急会議が開かれた
その時、レイと渚君は全てを話してくれた
『自分達が使徒だったこと』
『2人がLCLに溶けたのは、アスカの仕業だったこと』
『その時、アスカが願った事はそれだけでは無く
量産エヴァの停止
レイと渚君を人間にする事
を願ったらしい。』
「ははっ、正直僕は惣流さんに嫌われてると思ってたからビックリしたよ」…と渚君
「大事な弐号機に変な寄生虫がいるのが嫌だっただけでしょ」…とレイ
『アスカとシンジ君は、もともとお互いを愛し合っていたから、LCLからサルベージするのは非常に難しいとのこと』
そしてネルフ職員達に、・・・もちろんリツコにも告げられる最後の報告
『碇司令はドグマで死んだ
殺したのはアスカ』…との事だった
その最後の報告の後も会議は続いたが、リツコは1人会議室を抜け出して行った
632 :
パッチン:2007/10/30(火) 00:36:19 ID:???
そして会議から3ヶ月後…
ネルフ本部 研究所
初号機から取り出したアスカとシンジが溶け合ったLCLは、本部内の巨大なガラス張りの水槽の中に移動させられていた
その水槽を前にリツコ、マヤを筆頭としたネルフの頭脳達が作業を続けている
そして今、アスカとシンジのサルベージが始まった
同時刻、ネルフ本部 休憩所
「あの2人還ってくると思うかい?綾波さん」
自動販売機前のベンチに腰掛け、白玉入りおしるこを飲みながら隣の少女、綾波レイに話しかける渚カヲル
「知らない。私はあの2人じゃないもの」
素っ気なく答えるレイを見て、カヲルはニヤリと笑う
「クールなキャラ演じても、お守り両手に握りしめながらじゃ違和感ありありだよ?」
見透かしたようなその言葉に、レイは頬を少し紅らめる
「…文句言わないであなたもお祈りしなさい」
レイはスカートのポケットから、神社で大人買いしたお守りをカヲルに投げつけた
「うわっと・・・安産祈願のお守り…。
叶うかな…?」
カヲルは苦笑いを浮かべて、缶の奥に溜まった白玉を口に放り込み、そのまま空き缶をゴミ箱に放り込む
そしてレイと同様にお守りを両手で握りしめ、再びベンチに腰掛ける
633 :
パッチン:2007/10/30(火) 00:39:05 ID:???
「ねぇ、惣流さんとシンジ君を補完したのは綾波さんだろ?
なんで還ってきてほしいの?」
アスカの望むように2人をLCLに溶かしたのは、他ならぬ綾波レイだ
そのレイが2人が還ってくるのを願う事にカヲルは疑問を抱いていた
「わからない
でも私は間違っていたような気がするの…」
お守りを握る両手に顔を押し付けて、悲しげに呟く
「ふぅ〜ん
・・・まあ僕も後悔してるんだけどね
惣流さんに補完計画の秘密を教えたのは僕だし」
お守りの紐を指で摘みながら、カヲルはそれをクルクルと回す
「ゼーレの計画に惣流さんの気持ちを利用した僕は最低だ
しかも、作戦は大失敗。補完されたのは2人だけで、ゼーレはネルフに撲滅される
そして、ゼーレの回し者であるその使徒は人間になり、今はネルフ本部で暮らしてる」
「ツラいの…?」
おどけた様子で話していたカヲルの瞳は、うっすらと涙が滲んでいた
「・・・ツラいよ、僕は裁かれていないんだ。
ネルフは僕をかばってくれた、殺さなかった
あの2人を利用しようとした僕は最低なのに…」
自らの犯した罪が自らを苦しめている
最低な僕を、あの2人を裏切った僕を殺してほしい
パーーーーンっ!!!!
634 :
パッチン:2007/10/30(火) 00:40:29 ID:???
いつの間にか立ち上がって正面にまわっていたレイはカヲルの銀髪を左手で掴むと、右手で頬を思い切り張った
「…っ!?」
急な出来事に反応できないでいるカヲルに、レイが口を開く
「あなたは最低よ。だから叩いたの
あなたの気が済むまで…。あなたの罪が消えるまで私が叩いてあげる」
そう言ったレイは少し微笑むと、カヲルの右手を握る
「綾波さん…?」
「そして私も最低な人間よ
あの2人を溶かした私の罪が消えるまで、あなたも私を叩いてほしい」
あまりにも不器用な方法だ
パーーーーンっ!!!!
「まだ消えない?」
「うん…、こんなもんじゃ消えないよ」
パーーーーンっ!!!!
「消えそうかい?」
「まだまだかかるわ…」
パーーーーンっ!!!!
休憩所の床には血が滲み始めていた
635 :
パッチン:2007/10/30(火) 00:43:03 ID:???
「あ、あんた達なにやってんのよ!!」
廊下を歩いている時、凄まじい張り手の音が聞こえた葛城ミサトは、張り手音の発信元である休憩所に来た
すると、そこに居たのは鼻血と頬のモミジで真っ赤な顔になった2人だった
「葛城三佐…」
「ケンカしてる場合じゃないわよ!!
アスカとシンジ君のサルベージ終了の連絡が来たのよ!!」
「…っ!!」
何か言いたげな顔をしたレイだったがミサトの言葉にハッとした表情になり、無言のまま研究所に走り出す
そしてカヲルとミサトも後を追うように走る
廊下にはレイとカヲルの鼻血が点々と足跡を残していた
・
・
・
その時、研究所は異様な静寂に包まれていた
「先輩…。これは成功なんでしょうか…?」
「わからないわ…」
悩む2人の前には、サルベージされたアスカとシンジが存在するが…
「「「赤木博士(リツコ)!!!」」」
そんな研究所に飛び込んで来た3人の人間は、先程まで静寂していた研究所を再び慌ただしくする
「「ふぎゃあああ!!」」
「・・・リツコ…。なによコレ…」
「ちょっと起こさないでよミサト!!やっと寝たんだから!!」
アスカとシンジが居るハズだった水槽の前には、赤ん坊が2人
「え〜っと…、紹介します。
サルベージされたアスカとシンジ君です」
苦笑いでそう言ったマヤは、研究員に抱かれた赤ん坊2人を指差す
呆然とするレイのポケットから『安産祈願』のお守りがポロポロとこぼれ落ちた
636 :
パッチン:2007/10/30(火) 00:44:43 ID:???
今回ここまでです
ひねくれた書き方で、読みにくかった方すいません…
リアルタイム乙!
最後まで頑張ってな
おう、おつかれ!
もう少しで最後か、少し寂しいな。
GJ
残り少ないけど続き楽しみにしてる
640 :
転載初号機:2007/10/30(火) 01:39:09 ID:???
とりあえず何番のレスがパッチン氏の作品かどなたかまとめていただければ
まとめスレへ転載してみようと思うのですが、需要ありますか?
>>640 今からまとめてみる
いつもお疲れさんです。
あそこに作品載るの久しぶりじゃね?
パッチンさんおめでと
個人的には題名が欲しいなw
645 :
転載初号機:2007/10/30(火) 02:57:30 ID:???
とりあえず確認しましたー。
時間かかりますが順次転載進めたいと思います。
それがめでたいかどうかはわかりませんが(笑)。
中坊がやる話はでらでおなかいっぱい
ひくわ
647 :
パッチン:2007/10/30(火) 18:28:58 ID:???
題名『二つの涙』でお願いします
あそこに載るのうれしいですね。めでたいことです
◆8CG3/fgH3Eさんの作品を待ちわびる俺
649 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/31(水) 23:32:24 ID:J5AvxU3N
◆8CG3/fgH3E
俺もこの人のが待ち遠しい
650 :
パッチン:2007/11/01(木) 01:10:26 ID:???
ずっと2人だけでいたい。2人だけなら幸せだから
みんなと一緒にいたい。一緒に幸せになりたい
アスカとシンジ君の中にある二つの思いが、中途半端なサルベージを引き起こしたらしい
第3新成田空港
「私がシンジ君を引き取ります
だから心配しないで下さいね」
手を上げたのはマヤだった。そして渚君も
「こんなことで罪滅ぼしになるなら、僕は一生シンジ君のお兄さんでいいよ」
そう言うと、しゃがみ込んだ渚君は青いベビーカーで眠るシンジ君の頭を優しく撫でる
「アスカは私が育てます。イタイ…
だから安心して行って下さい。ヤメテ…」
続いて手を上げたのはレイ
最初は赤いベビーカーに乗っていたアスカだが、じっとしてるのが嫌らしく、今はレイに抱かれながら青い髪の毛を不思議そうに引っ張っている
「…レイ1人じゃ心配じゃない?」
彼女には悪いが、レイ1人に任せるのは不安でしょうがない
「私も居るから大丈夫よ」
「リツコ?」
先程まで無言を貫いていたリツコが口を開いた
「リツコ…。あんたでも碇司令…」
「飛行機出るわよ。早く行ったら?ミサト」
確かに時間はあまり無い…
しゃあない。少々不安だが、マヤも近くに居るし大丈夫だろう
651 :
パッチン:2007/11/01(木) 01:13:12 ID:???
「ふぅ、じゃあそろそろ行くわ」
私はそう言うと、レイが抱っこしているアスカに顔を寄せる
「ふふっ、今度はもっと素直な可愛い性格になるのよアスカ?」
好奇心旺盛の蒼い瞳で私をパチクリ見やるアスカのプルプルほっぺにソッとキスする
可愛い私の妹ちゃん。今度は天才じゃなくてもいいんだよ?
幸せになってくれたらそれでいい
続いてベビーカーで眠るシンジ君に顔を寄せる
「あんたはもっと男らしくなること。もうウジウジ悩んだりしちゃ駄目よ?」
可愛い私の弟くん。今度は苦しまなくていいんだよ?
元気に育ってくれたらそれでいい
私は眠るシンジ君のほっぺに唇を寄せる…
「あぅ〜!!た〜う〜っ!!!」
「ん?・・・ぷっ、なに?アスカ嫉妬してるの?」
ほっぺに唇が触れる寸前にアスカがもの凄いうめき声をあげる
私はクスクスと笑いながらほっぺから狙いを変えて、寝ているシンジ君のプリプリの唇に唇を重ねる
「あ゛う゛〜!!!あ゛あ゛〜め゛〜!!!」
私は唇を離してアスカの方を見て、ニヤリと笑う
「葛城三佐…。根性悪い…」
暴れまわるアスカを抑えながら、レイは呟く
652 :
パッチン:2007/11/01(木) 01:15:13 ID:???
「みんな〜バイバ〜イ♪」
スーツケース片手に私は搭乗口にむかう
「また14年後会いに来るわね〜!!」
ブンブンと手を振る私
最後まで明るくね
お別れの寂しさは、あのバカにだけ話そう
そして14年後…、再会の喜びはみんなでね♪
653 :
パッチン:2007/11/01(木) 01:17:12 ID:???
『ああああ〜っ!!シンジぃ好き!!好きぃ〜イクイクぅぅ〜っ!!
あああ〜んっ好きぃ〜!!』
バタバタドタンッ
「はぁ…。なによ、人がせっかく思い出に浸ってる時に…」
屋内から響く、聞いてるだけでも恥ずかしい声にリツコは現実に引き戻される
「思い出?14年前のことですか?」
「まあね。
・・・ふぅ、ミサトが帰ってくるまで、あと3日か…」
やっと静かになったベランダに、ライターで煙草に火を灯す音が小さく響く
「この前ひさしぶりに連絡ありましたよ。『リツコはちゃんと母親してるの?』って」
「ふふふっ、想像つかないでしょうね。私のこんな姿」
「そうですね。でも、エプロン姿の先輩も素敵ですよ♪」
「ありがと。もう『ママ』って呼ばれることにも違和感ゼロだもの」
そう言うとリツコママは再び煙を吐き出す
「あら、もうこんな時間ね…。昼ご飯作らなきゃ」
煙草をくわえて腕時計を見やる
おそらくお腹ペコペコで昼飯にありつくであろう2人のためにリツコは主婦に戻る
「じゃあシンジ君のお昼はこっちで作るから
マヤ。また後でね」
「あ、はい。じゃあよろしくお願いします」
リツコが部屋に戻ったのを確認すると、マヤも布団叩き片手に部屋に戻った
654 :
パッチン:2007/11/01(木) 01:23:08 ID:???
カラカラカラ…
「ふぅ、暑かった…」
ベランダから部屋に戻ったリツコは、後ろ手に窓を閉めるとキッチンに行き、冷蔵庫を開ける
額にたまった汗に当たる、ヒンヤリとした冷気が心地いい
「…チャーハンでいいわね」
材料を取り出し、まな板の上に並べる
「ん?・・・あ、これ…」
ふと目に止まった戸棚を開ける。中には黒っぽい液体の入った小ビンが転がっている
…ハッキリ言って毒薬である
「そうか…。14才の誕生日に…」
14年前の私…。アスカを憎んでいた私…。
14才のアスカを。碇司令を殺した『14才のアスカ』を殺したかった私
アスカを殺すためにアスカを育てる決意をした私
14年前の私は今の瞬間を待ち望んでいただろうに…。14才のアスカに料理を振る舞う瞬間を…
でも・・・「くすっ、忘れてたわね…。」
本当に忘れていた
「幸せすぎて…」
目の前に広がる世界に小さくため息を吐く
3才のアスカが書いてくれた私の絵
額縁に飾ってある素敵な思い出
10才のアスカと24才のレイと、3人で芦ノ湖に行った時の写真
テレビの上に飾ってある素敵な思い出
流し台の排水溝に黒っぽい液体が流れていく…
『し、シンジ〜っ!!激しいよぉ〜!!
2回目だから優しくしてよぉ〜っ!!』
「無様ね…」
655 :
パッチン:2007/11/01(木) 01:26:56 ID:???
今回ここまでで、次回ラストです
そして◆8CG3/fgH3Eさんの連載待ち遠しいです…。
GJ
リツコ…ほんと素敵なママになったなぁ。・゚・(ノ∀`)・゚・。
GJ
りっちゃんはあまり幸せ感が漂ってない人だから
こうやって温かみのある生活になじめてよかったなって思えます。
LASで回りも幸せになれるなんて、素敵☆
2
再び
僕はミサトさんと別れを済ますと、すぐ側に停車して僕を待っていた黒く光る車に乗り込み、黒服の運転でモノレールの駅へ向かった。
流れる街の風景を眺めながら、ミサトさんへ去りがけに告げた言葉を思い出す。
「アスカに伝えてください。」
ミサトさんはその時、怪訝そうな顔をしていた。
「アスカに伝えて下さい。『僕は君を憎みつづける。』って。」
我ながら陰湿な仕打ちだと思う。アスカには直接会わずに憎しみを伝え、暗にこれからもその憎しみを糧として生きると宣言した。
思わず、平生の僕には似合わない陰湿な笑みが漏れる。
その上に、一通の“ラブレター”をアスカの部屋の襖に挟んできた。その書面には、如何にアスカが僕に対して酷い仕打をしてきたか書いてある。直接にはとてもじゃないが言えないし、二度とは会うつもりもなかった。
あのアスカに効くとは到底思えないけれども、無いよりはましだろう。
駅が見えてくる。もうすぐこの街ともお別れと思うと、清々とすらした。
しかし雲行が怪しくなる。気持ちが既に決まっていると言うのに、前部座席の黒服二人が騒がしくなったかと思うと、車が突然駅側のロータリーでUターンし、来た道を引き返し始めた。
「なんで引き返すんですか!」
僕は抗議の声を上げたが、黒服はまったく取り合わずに淡々と感情のない声で告げた。
「使徒が現れた。君の解任は不許可になった。これより引き返す。」
なぜ今頃引き返さねばならないのか。僕は愕然とし、震えた。
時間から言って、アスカは僕の残した例の手紙を読んだ筈だ。今から戻るなんて冗談ではない。逃げ出したくなるが、それは出来ない相談だった。
「僕はもうエヴァには乗らないって決めたんだ!」
黒服はもう一言も喋らなかった。
やがて僕は喚き疲れて車のシートに体を埋め、頭を抱えた。
そうして僕は、またエヴァに乗った。しかしこの本部への帰りがけに見た光景で、いくぶん気分がいい。
無様に両手頭を切り取られて、血をダラダラと垂れ流しながら棒のように立ち尽くす弐号機。爽快だ。きっとこれはトウジにアスカがしたことの報いだ。
普段の僕ならそんなことは思えないが、今僕の精神状態は――自分で言うのもなんだが――かなり不安定でおかしいと思うので、問題ない。
父さんに直訴して乗せてもらうっていうのも気に触るけど、仕方がない。この際なんでもいいじゃないか。ケイジの拘束具が外れる。しばらく歩くと目の前には今まさに下に降りて行こうとする使徒の姿。僕は何も武器を持たず突進した。
◇報告書
エヴァ初号機は暴走、第十四使徒を捕食したエヴァンゲリオン初号機の専属パイロット碇シンジは、現在乗機内に取り込まれ、赤木リツコ博士を筆頭とする技術部は総力を上げてサルヴェージ計画が進行中である。
◇
ここはどこだろう……。
エヴァ? ミサトさん、綾波、アスカ。僕の世界? 狭いんだな……。
優しくしてる? ウソだ。アスカ……優しくなんかない。
「優しくしてるわよ。」
とミサトさん、アスカ、綾波が言った。
「優しくなんてない。」
アスカなんて嫌いだ。もう戻りたくない。
◇
「シンジ。」
母さん?
「僕はここにいていいの?」
行きたい。母さんの所へ行きたい。ここに居たい。でも。
「どこだって天国になるわ。」
足が動かない。香りがする。いい香りだ。誰だろう? 会ってみたい。僕は、一向に母さんへ進まなかった足を、海原の向こうへ向けた。
3
アスカの日記
○月×日
今日日本に着いた。
ホントにふざけんじゃないと言いたい! 加持サンはアタシに見向きもしないし、それどころか初めて会ったサードチルドレンは情けなくて意気地無しで、しかも無意味にアタシの母性本能をくすぐりやがる。
それにあの中性的な顔だち! これまでアタシの周りにまったくいなかったタイプだ。それにルックスは悪いどころかAあげてもいいぐらい。それに強気のアタシと組めばちょうどよくなりそうな弱気具合い。ある意味釣り合いが――って何書いてんのよアタシは……。
万年筆で書かなきゃ良かった……。
△月□日
未だにアタシの頭は混乱のきわみだ。
日記をつける気分ではないのだけれど、気持ちの整理をつけるために事の一部始終をここに記したいと思う。
なにから書いたらよいのか分からないので、結論から書く。
使徒に負けて、碇シンジと同居することになった。
もちろんアタシは断固拒否した。だけどミサトに「作戦上必要だ」なんて言われたら断れる訳がない!
そうしてアタシは仕方なしに渋々承諾した。
まぁバカシンジの部屋はトーゼンアタシが頂いた。ところが! 荷物が半分も入らない!
なんでこんな狭い部屋に住まなきゃならないのよ。あ〜ホント! 日本なんて嫌いだ。
い月は日
もうムカツク! ホントにシンジはドンクサイったらありゃしない! 前にA評価なんていったけどありゃ撤回する! C評価に降格することにした!
そりゃあんまりじゃないかと言われそうだけど、フザケるなと言いたい! これでも一中のヤツらの中では最高評価なのだから。
アイツったら、楽器やってたみたいに音感だけはいいんだけど、運動神経がまるでナシ。アタシのダンスとなんテンポも遅れているし、何度も転んでアタシの足を引っ張る。
ホントにいい加減にして欲しい。
大体、なんでこんなショボイ男が使徒を三体も倒せたのかまったくわからない。なんかの間違いじゃない?
●月■日
決戦日はいよいよ明日。流石にシンジも様になってきた。完璧とはいかないケド。
まあ太平洋艦隊の戦いの時に、アイツは本番に力を出すヤツだって分かったから、きっとなんとかなると思う。うん、きっと大丈夫。もししくじりやがったらシメてやることにする!
と言うわけでアタシはもう寝ることにする。
Gute nacht Mama.
朝起きたら、アタシはシンジの布団で寝ていた。
何故だろう……?
▽月△日
今日アタシは死に掛けた……。シンジやミサトには何も言わなかったけど、実はさっきになって体が震え始めたところ。
火山に飛込むなんてバカな作戦立てたヤツは誰かしら。まったく……。
不本意なんだけど、アタシを助けてくれたのはシンジだった。
認めるわ、シンジ、アンタはA−に昇格させてあげる。
だけどすぐに借りを返さないことにはアタシのプライドが許さない!
だけどすぐにシンジはC評価にしてやる。
◎月〇日
やばい、じつにやばい。そりゃシンジに借りは返したし、シンクロ率も断トツトップ←ここ重要! だし、シンジと毎日のように遊びに出掛けて楽しいのたけれど……。
あの浅間山で助けてもらった夜から、いつもシンジの事ばかり見てる。加持さんの居場所が、アタシの中から消えていってる。前より電話の数も少なくなってしまって、シンジと遊ぶ程、顔を見る機会も極端に少なくなってしまった。
加持さんはアタシにとってそれだけの存在だったの……?
シンジの影がアタシの中でどんどん大きくなっていく。
それに今日、アタシはシンジにファーストキスを捧げてしまった。アタシ自身はあんなヤツ好きじゃないって信じてるけど、心がホワっと暖かくなって今までに経験しなかった心地良さを、アイツの側にいると感じてしまう。
それにキスの後急に恥ずかしくなって思わず洗面所に逃げ込んでしまった。ホントに、アタシらしくない。
シンジはアタシにとって特別なのだろうか……?
□月■日
どうしたらいいのか解らない。
アタシは取り返しのつかないことをしてしまった。
鈴原の片足を奪ってしまった。
何年も訓練してきたけど、親友の、ヒカリの好きな人を傷付けた時にどうしたらいいのかなんて、誰も教えてはくれなかった。
アタシの心が、らしくない後悔で一杯になってしまう。
家に帰ってから、アタシはもうどうしていいのか分からなかった。
家にシンジはいなかった。
部屋を覗くと、荷物は全部ダンボールに詰められていて、まるで引っ越しのようだった。
台所の食器とか調理器具は、不審なくらい丁寧に片付けられていて、嫌味なくらい詳細に家事のノウハウが紙に書かれて冷蔵庫に貼ってあった。洗濯の仕方やあるコロッケや肉じゃがなど程度の料理のレシピ。
掃除の重点区域とか安いスーパーの場所まで、それこそ重箱の隅をつつくぐらい細かく。
自分の部屋に戻ると、置き手紙があった。
アタシはその手紙をさっき読み終わったところだ。
涙が止まらない。泣かないって決めたはずなのに、日記の紙面も涙で歪んでよく見えない。
思い出すのも辛いのだけれど、一応のあらすじを書いておく。じゃないと真正面からこのことを受け止められそうにないから。シンジは、不本意ながらもアタシの心で重要な位置を占めていたから。
手紙の書き出しはアタシへの恨みつらみだった。シンジはアタシとの関係をただの召し使いとご主人様の関係に思っていて、アタシはシンクロ率で目立って、シンジの上げた戦績を埋めさせてシンジの居場所を奪い、挙げ句に鈴原のことを傷付けさせた。
まるで逆恨みのように書かれていた。
その手紙を読んでやっとわかった。全てはアタシの思い込みで、シンジはアタシのことをただの傲慢な女だと思ってたんだ。
バカみたい。
一人で悩んで、一人でシンジのことを大切な位置につけたりして。
ホンット、バッカみたい。アタシ。
いま携帯が鳴った。
使徒が来たらしい。
はぁ、なんかヤル気なくなっちゃった。心になんか大きな穴が空いたみたい……。もうどうでもいいかな……。
●月△日
シンジがエヴァに取り込まれて三日が経った。
突然だけど今日からしばらく日記をつけるのを止めようと思う。
五日かそれ以上、ちょっと遠くまで行こうと思い立ったの。
本当は第三から離れられる状況ではないのだけど、何故かあっさりと許可が下りたのよ。使徒がしばらくこないとが分かっているみたいに。
と言うことでみんなとも――といっても誰にこの日記を見せる気は無いのだけれど――お別れ。
Bis bald!
◇
アスカの日記はここで途切れていた。
2章&3章投下終了
アスカのシンジへの想いを幾分示したかったので『アスカの日記』を書いた
2章の最後、精神世界のパートは最後までつけるかどうか迷ったものなので、できればこのシーンについては言及無しで……
GJ
続きが楽しみだ
乙
二作品ともGJ!
668 :
パッチン:2007/11/03(土) 04:39:00 ID:???
「ねぇママぁ〜まだ着かないの?
ていうか、どこ行くのよ?」
平日だというのに、学校を休まされた僕とアスカは、リツコおばさんの車の後部座席に並んでいる
「さぁ?どこかしらね」
「もう!朝からそればっかりなんだから!!」
どこに行くのかもわからない車に乗せられ、アスカはかなりカリカリしている
…僕は学校サボれて嬉しいけどね
「ふふっ、もうすぐだから安心しなさい
邪魔しないから、その間2人でイチャイチャしてたら?」
「な、なに言ってんのよママ!!アタシとシンジはそんなんじゃないわよ!!」
…と、叫びながらバックミラーの死角を利用して僕と絡めている指を、キュッと握り直した
・
・
・
第3新成田空港
空港に着いて、ロビーをうろついていた僕達3人。
はじめはポカンとした表情で僕の隣を歩いていたアスカだが、徐々に顔がニヤけ始める
「旅行!?旅行だったのねママ!?嬉しいぃ〜っ♪♪」
「違うわよ」
「ガーーーン!!」
アスカの喜びピョンピョン運動は、おばさんの一言で完全停止した
「なによなによ…
なによもうっ!!」
ドスドスと地団太を踏むアスカに苦笑いを浮かべながら、僕はリツコおばさんの方に振り向く
「ねぇリツコおばさん?」
「なに?」
僕は、『何故この場所にいるのか?』という疑問をリツコさんにぶつけ…
「しっ、シンちゃーーーんっ!!!!」
…ようとしたが、僕の開きかけた口は巨大な胸に押さえつけられた
669 :
パッチン:2007/11/03(土) 04:40:42 ID:???
「うぅ…。シンちゃん、シンちゃん…」
むりむりと胸を押し付けられながら、ワシャワシャと頭を撫でられる
凄まじい混乱の中聞こえるのは、どこか懐かしい女性の泣き声と、怒髪天を突くアスカの絶叫
「だ、誰よアンタぁーーー!!
こら糞ババア!!さっさとシンジから離れろぉぉ!!」
「あぁ!!アスカぁーーー!!!」
ぎゅぅぅぅっ
「ぎゃああああ!!!」
そして僕を抱き締めていた女性は僕から離れ、そのまま怒り狂うアスカを抱き締め始めた
ハグ魔か…?
「ヤダぁぁ離れろぉぉ!!シンジ見ないでぇぇ!!」
無茶苦茶に撫で回す手によってアスカの髪はグチャグチャになっている
ごめんねアスカ。ちょっと面白いから見ちゃうや
「アスカもすっかり大きくなってぇ〜!!あの頃と変わらないじゃないのよぉ♪♪」
『大きくなった』『あの頃と変わらない』
矛盾しまくりな言葉を発しながら、アスカのほっぺにキスの乱れ撃ちをする
「ひぃぃっ!!やめてぇぇーーーーー!!!!」
・・・こんな目に合わせるために僕達を連れてきたんですか…
リツコおばさん…?
670 :
パッチン:2007/11/03(土) 04:42:32 ID:???
コンフォート17
「ただいま〜♪嗚呼久々の我が家!!」
「シンジの家よ!!アンタの家じゃない!!」
空港、車内、そしてマンションに着いてからも常にハイテンションな葛城さん
葛城ミサトさん今年よんじゅう××才
元ネルフ職員で、僕とアスカも赤ちゃんの頃可愛がってもらったらしい
…正直こういう人に会うと、どうしていいかわからない
相手はノリノリで僕らに話し掛けてくるが、こちらは苦笑いを浮かべるしか対処のしようがない
…まあアスカは『空港抱きつき事件』から、ずっと葛城さんのこと毛嫌いしてるみたいだけどね
「おかえりなさいみんな!葛城さんもお久しぶりです!!」
キッチンから、スリッパをパタパタいわせながら走ってきたマヤさん
「久しぶりぃマヤ!う〜んっ、あんたはあんま変わってないわね」
そう言うと、葛城さんはリツコおばさんをチラリと見る
「ふふっ、先輩が変わり過ぎなんですよ
葛城さんも老けた以外は昔と変わらないですね♪」
「・・・あんた、やっぱ変わったわ」
葛城さんとマヤさんが話をしてる間に、僕とアスカはキッチンに行くことにした
「おかえり、シンジ君。アスカちゃん」
「2人共おかえりなさい」
671 :
パッチン:2007/11/03(土) 04:44:14 ID:???
キッチンで調理中だったカヲルお兄ちゃんと、レイお姉ちゃん
「ただいま。ねぇあのババアって、レイ姉さんの知り合い?」
「えぇそうよ。昔はあなた達も可愛がってもらったのよ」
「はいはい。その可愛がってもらった話は、あのババアから腐るほど聞きましたよ〜だ」
耳にタコをぶら下げたアスカはムスッとしながら、調理場のお皿に目を移し…
「すっご〜い!ご馳走じゃない♪」
すぐに機嫌を直した
「おぉっ!!渚君もレイも大人になったわね!!
そっか、もうあの時のあたしと同い年だもんねぇ〜」
ウキウキした様子でキッチンに入ってきた葛城さんは、2人を交互に見やりながら、ニタニタ笑う
「お久しぶりです葛城三佐」
「ふふっ、再会はいいね。心まで昔に戻れる気がするよ」
3人共幸せそう
僕とアスカは、置いてけぼりをくらったような気分で、ちょっと寂しくなり、小指同士をつなぎ合わせてその様子を傍観していた
672 :
パッチン:2007/11/03(土) 04:46:54 ID:???
「それじゃ!みんなの再会を祝して、かんぱ〜い♪♪」
その一言を残し、猛烈な勢いでビールを飲み干す葛城さん
「飲みすぎですよ葛城さん…。肝臓とか大丈夫ですか…?」
「あははっ、へっちゃらへっちゃらよん♪
リツコママ〜?ビールおかわりぃ〜」
若干引き気味なマヤさんの発言を無視して、グビグビとビールを流し込んでいく
「はぁ…。マヤの言う通りよ、肝臓の検査とか行ったら?」
「をぉっ!!さっすがリツコママ!優しいわねんっ♪」
「・・・酔いどれババー」
ぼそりと呟くアスカ
「あっ、そうだそうだ!ちょっちアスカとシンちゃんに渡す物があんのよねぇ」
「へ?僕とアスカにですか?」
「そうよんっ。今のあんた達に渡したいのよ
他の人は悪いけど、出て行ってくんない?」
キョトンとする僕とアスカにそう言うと、他の4人にキッチンから出て行くように指示する葛城さん
「ん…。わかったわ行きましょみんな
・・・アスカ、シンジ君?ミサトの言うことよく聞くのよ。いいわね?」
リツコおばさんはそう言うと、いち早くここから退散していく
その後に続いて3人もキッチンを出て行った
そして残された僕とアスカは、葛城さんと向かい合う形で座っている
673 :
パッチン:2007/11/03(土) 04:52:12 ID:???
「なによプレゼントってさぁ?」
アスカは疑いの目で葛城さんを見ている
まあ顔には出さないが、僕も不安でいっぱいだ
「うふふっ、懐かしいわ…。ホントに懐かしい…」
「はぁ?」
先程までの『酔いどれババー』から一転『センチメンタルばばあ』に進化した葛城さんを不思議そうに見つめる僕とアスカ
「ホントにあたしまで若返ったみたいね…。
ぐすっ…こうして14才のあんた達と、この部屋で、このテーブルでさぁ…」
「あのさぁ?全然話が見えてこないんだけど。あんた何が言いたいの?」
しまいには涙まで流し始めた葛城さん
はっきり言って意味不明だ
「ねぇ?あんた達付き合ってるんでしょ?」
ボンっ!!
急な爆弾投下に真っ赤に熟す僕ら2人の顔
「な、な、アンタ馬鹿あああ!?」
「そ、そんなこと誰に聞いたんですか!?」
「照れなくてもいいじゃない。ホントのことでしょ?
愛し合う事を恥ずかしがることはないわ」
今度は真面目な顔になる葛城さん。彼女のキャラがわからない…
「そうよ!付き合ってるわよ!!悪い!?」
「愛し合ってるんでしょ?」
「…愛し合ってます」
「好きで好きでたまんないでしょ?」
「好きで好きでたまんないわよ!!」
「なんでかわかる?」
「「…え?」」
「なんでかわかる?」
674 :
パッチン:2007/11/03(土) 04:54:06 ID:???
そう言うと葛城さんは、スーツケースから一本のビンを取り出す
中にはオレンジ色の液体が…
っ??
な?ん?だ?こ?れ?
「変な気分でしょ?」
隣を見るとアスカもビンをボーっと見つめている
「無理もないわ。あなた達の半身だもん」
半?身?
「何故この液体が半身なのか、何故あなた達に親がいないのか、何故2人が愛し合うのか
今からあたしが説明するわ」
隣のアスカがブルブルと震えだす
「この液体はLCLという液体よ」
あ…れ…?
「そして、あなた達に絶対に知ってもらわなくてはいけないこと…」
僕も震えてる…?
「14年前、あなた達は…」
怖い…!!
「エヴァという…」
僕じゃなくなる…!!
「あなた達は、エヴァに乗っていた14年前の…」
あ…あ…あ…
「うるさーーーーーーい!!!!」
突如ダイニングにアスカの叫び声が響いた
675 :
パッチン:2007/11/03(土) 04:55:43 ID:???
「うるさいうるさいうるさいうるさーーーい!!!
アタシはアタシよ!!
シンジはシンジよ!!
他の何者でもないわ!!
アタシ達に親がいない!?笑わせんじゃないわよ!!
アタシのママは赤木リツコよ!!
シンジのママは伊吹マヤよ!!
変わりなんて存在しない!!そこに嘘なんか欠片も無いんだから!!
アタシ達が愛し合う理由!?
アンタなんかに何がわかんのよ!!
アタシがシンジを愛した理由なんて、アタシにも説明できないわよ!!
ただ好きで好きでたまらないだけよ!!
それ以外に理由が必要!?
もし、その理由が無くなったらアタシはシンジを嫌いになるとでも言うの!?
なめんじゃないわよ!!
アタシはシンジに何があっても、シンジが何かしたって、アタシは一生シンジのこと愛し抜いてやるわ!!
ここで証明しろって言うんなら、いくらだって証明してやるわ!!
アタシ達がどれだけ愛し合ってるか見せてやるわよ!!
シンジ!!服脱ぎなさい!!セックスするわよ!!」
アスカ暴走
676 :
パッチン:2007/11/03(土) 04:57:54 ID:???
シンジ・・・シンジ・・・
なになに・・・アスカ・・・
お外に・・・変な3人がいるの・・・
ホントだ・・・ケンカしてるね・・・
でも・・・悲しい顔じゃないよ・・・
3人共・・・お互いが大好きなんだよ・・・
ねぇシンジ・・・シンジ・・・
なになに・・・アスカ・・・
アタシも・・・シンジのこと好き・・・
うん・・・僕もアスカのこと好き・・・
シンジ・・・好き・・・
おわり
677 :
パッチン:2007/11/03(土) 04:59:10 ID:???
あとがき
以上で『二つの涙』終了です。
長かったですね、ごめんなさいorz
自分の頭の中では、もっと短くまとめるハズが…。ねぇ…
え〜、題名は私の愛するサンボマスターさんの曲名から取り、実際この曲を聞いて思いついた感じです
(一応、涙がLCLのつもりです)
では、また短編をちょこちょこポトリしていこうと思います。ではさようなら
◆8CG3/fgH3Eさんへ
頑張って下さい!!
続きめちゃ楽しみです!!
いや、良かったGJ
でも海外に身を隠した加持は何処行ったの?
ミサトが追いかけて海外に出たんだと思ってたから、一緒に戻ってくるんだとばかり(´・ω・`)
ビミョーと言うか、話が見えない。
680 :
パッチン:2007/11/03(土) 13:17:50 ID:???
>>678 身を隠したから帰ってきませんでしたw
家でゴロゴロしてると思います
…ホントは出したかったんですが、『名前を変えて海外で暮らす人』って、日本に帰っと来れんのかな?
とか考えたら、ちょっと出しづらかったんです(鋼鉄のマナも二度と会えないオチがあったし)
そんな理由で削除しました。すいません…
あと冬月と一中の生徒達にもすいません…
GJ!!
最後のアスカの独白が良かったね
GJ
なかなか良かったです
最近LAS長編でアタリが無かったが、やっとありつけた気がする・・・
文章がイマイチあっさりしすぎな気がするが、台詞まわしと意外な展開の連続が良かったと思う
4
謝罪
目が醒める。
やはりそこは白くて最近やっと知り合ったばかりの天井だった。
ピッピッと生命維持装置の電子音と、アルコール消毒液の鼻を突く匂い。
首を傾けてみるとそこにはカレンダーが掛けてあって、それは僕が無理矢理エヴァに押し込められてから一ヶ月近くか、それ以上経っていることを示していた。
ボストンバッグを肩にぶら下げて病院から出ると、正面の道端にアルピーヌA110が停めてあった。ミサトさんはその車にもたれていたが、僕の姿を認めると体を車から離して片手を上げた。
僕もミサトさんに倣って片手を上げて挨拶すると、車に駆け寄ってボストンバッグを肩から下ろした。
「お久しぶりですね、ミサトさん。」
と僕は軽く微笑みながら言った。
しかしミサトさんは無言のまま、冷たく車の助手席を開けて乗るように促し、僕は素直に従った。
僕の乗り込んだ助手席を閉めたミサトさんは、運転席に座るとキーを回してエンジンをスタートさせた。
ガチガチとギアレバーを動かし、クラッチペダルをゆっくり開放させてギアを噛ませると、アルピーヌは見事なくらいゆっくりとスタートした。
本部病院の敷地内を出てジオフロントから地上に出たアルピーヌは、いくつかの見慣れた角を曲がり、直進し、結局僕が予想した通りの場所に辿り着いた。
アルピーヌはコンフォート17の正面玄関前で停車した。ミサトさんはサイドブレーキレバーを引き起こし、ステアリングから手を離すと僕に向き直り、ただ一言降りるようにと言った。
「あんまりここには戻りたくないんですけど……。」
「分かってる。アスカの事でしょう?」
ミサトさんはサングラスを外して、未だに助手席に座る僕の顔をジッと見た。図星だった。
「いやなの?」
「……いやですね。」
と僕が言うと、ミサトさんは溜め息を一つ吐いて、ステアリングに再び両手を置いた。
「貴方がアスカを嫌っているのは分かる。それが鈴原君の事が原因だと言うのもね。」
ミサトさんは諭すように言ってくれるが、僕はミサトさんの顔も見ないし、声も出さない。僕が何も喋ろうとしないのを見ると、また一つ深い溜め息を吐いて諦めたようにかぶりを振った。
「いいわ、そうじゃないかと思ってた。家に入りなさい。アスカはもう部屋を引き払ったから。」
とミサトさんは言った。
いないのか、アスカは。
僕は荷物を持ち、やっと車を降りた。まるで駄駄っ児のようだなと少々恥ずかしくもなるが、それはあまり後を引かずに霧散した。
僕は形式だけの挨拶をミサトさんと交してコンフォート17へ入り、部屋へ向かった。
部屋は一ヶ月前とは何一つ変わってはいなかった。アスカがいないこと以外は。
玄関からはアスカの靴は消えていた。部屋の前からは拙い筆跡で書かれた立ち入り禁止の札は外され、代わりに僕の部屋を示す札が架けられていた。
家の中は驚くほど綺麗に整頓されていて、帰ってきて早々の掃除にならなかった事に心中でほっとした。
ダイニングに入り、ふと時計を見てみると時刻は既に正午近く、腹も減っていたのでとりあえず昼食を作る事にした。
ボストンバッグをダイニングテーブルの側に置くと、冷蔵庫を物色する。中にはそれなりの食材が入っていたが、僕はその中から葱とほうれん草、豚肉を取り出して調理台に置いた。
キッチンキャビネットからインスタントラーメンを取り出して他の食材と一緒に調理台へ置く。その隣のキャビネットから鍋を取りだし、それに水を入れて沸騰させる。
せっかく退院したのにインスタント麺なんてどうかと思ったが、まともな料理をする気が起きないのだから仕方がないし、野菜や豚肉をプラスするのだから栄養面でもまあいいだろう。
煮立った鍋に乾麺を投入し、煮込む。ある程度柔らかくなるまで、僕はダイニングチェアを引っ張り出して座り、目を閉じて口笛を吹いた。
しばらく自分の吹いている曲が何か分からなかったが、前半を一吹きしたところで思い出した。そうだ、これはユニゾン訓練の時使った曲だ。そう、あの時はアスカが寝惚けて僕の寝床に入り込み、僕は危うくキスをしてしまうところだった。
少しの後悔が頭をよぎる。どうせならあの時、アスカにキスしとけば良かったかな……。僕は口笛を吹くのを止め、目を開いた。
でも……嫌いだ、あんなヤツ。
調理台の方に目をやると、コンロの上ではグツグツと麺が湯だっていた。
僕はダイニングチェアから腰を上げ、菜箸を箸立てから取って麺を一本掬い口に運ぶ。
目を瞑っていた時間はそれほど長く感じなかったが、物理的には短く無かったようで、茹で上がったそれはすっかり伸びきって不味くなっていた。
僕はそれを生ゴミの袋に捨て、ラーメンに入れる筈だった食材を冷蔵庫にしまった。
食べる物が無くなる。冷蔵庫を開けたまま中を眺めていたが、改めて探してみると結局惣菜のサラダと作り置きのコロッケが見付かったので、それをダイニングテーブルに置き、ご飯を茶碗に座って昼食を済ませた。
コ ロ ッ ケ ?
なぜ冷蔵庫の中に、ラップのかけられた手作りのコロッケがあるんだ?
僕はダイニングチェアに座りながら、目の前に置かれたコロッケの残滓がこびりついた皿を眺めてなかば自失していた。
僕は前に作った残り物の腐ったコロッケを食べたのか? いや違う、味もなんとも無かったし一ヶ月前にも作った覚えがない。
このコロッケは誰が作ったんだ? ミサトさん? いやミサトさんが作れる筈がない。ではアスカ? いやアスカだって作れる訳がないじゃないか。
僕と暮らしている間、彼女は一度もキッチンなんて立たなかったんだから。
惣菜だろうか? だが味はどこか特徴があって、惣菜のような平坦な味ではなかった。
考えても考えても、誰の顔も浮かばない。
僕はやがて考える事に疲れて、椅子の背もたれに体を預けて天井を仰いだ。
そうしてただ天井を見ていると、段々いろんな事がどうでもよくなってきた。
僕はコロッケの残滓が残る皿と、惣菜のサラダが入っていたプラスチック容器をシンクに放り込んで、床に置いていたボストンバッグを担いだ。
自室への復活を遂げた部屋の扉を開け、中に入るとボストンバッグを置き、ベッドに寝転んだ。
誰もいないんだ。
この家には 誰 も い な い 。
◇
一週間が過ぎた。
何も無かった。無さすぎるほどになかった。
家の中は静まり返り、聞こえるのは僕自身の息遣いか咳払いか衣擦れの音だけだ。
ベッドの中から時計を見る。午前十時だった。外からは雨が地面を打つ音が聞こえる。
僕はベッドから抜け出し、洗面所で顔を洗って歯を磨いきうがいをし、キッチンに向かって冷蔵庫から牛乳を取り出して飲み、空になったそれをシンクに置いてリビングに入った。
テーブルの前に腰を下ろそうと屈むと、どこからか僕の携帯の呼び出し音が耳に入る。ボストンバッグの中に置き忘れたのか退院の日に着ていた服かと思ったが、一ヶ月前のネルフ脱退騒動の時に保安部へ返したのを思い出した。
僕はリビングの隅々から、自室や玄関までそれこそ虱潰しに探してみたが、一向にその殆んど使われた事のない真新しい携帯は見付からなかった。
もう一度リビングを探していると、一ヶ所だけ探していない場所があるのに気付く。僕が前に使っていた物置部屋だ。
戸に近付いてみると、やはり鳴る筈のない携帯の呼び出し音が、戸を境に多少くぐもって聞こえる。
戸を少し開けると、僕の耳に入るその音は少しクリアになった。
戸を半分まで開き、部屋に入って中を見回してみる。
そこには、荷物の入っているであろうダンボールや机が置かれ、まだ一ヶ月も経っていないというのに、それらには既に埃がうっすらと積もり胡散臭い雰囲気と重苦しい空気を漂わせていた。
机?
なんでここに机なんかがあるんだ? ミサトさんは使っている。僕の机だって部屋にある。じゃあこの机は誰の机なんだ?
携帯の呼び出し音は机から鳴っていた。僕は机に近寄って机上の携帯を取り、そこにある何かを確かめるように机の表面を撫でた。それは紛れもなく、アスカが使っていた机だった。
携帯の通話ボタンを押す。
「はい、もしもし……。」
通話の相手はミサトさんだった。
「あ、シンジ君?」
「なんですか?」
「いや、なにって訳じゃないんだけどね……。携帯がちゃんとシンジ君の手元に戻っているか気になってね。確かアスカが自分からシンジ君に渡すって言ってたのを思い出して……。」
「アスカが?」
「そうよ。その様子だと一応あなたに渡ってたみたいね。安心したわ。これからは特に予断を許さないから、携帯は肌身離さず持ち歩いてて頂戴ね。」
とミサトさんは言って一方的に電話を切った。
アスカが僕に渡すと言っていたって? なぜ? あれから僕とアスカは一言も喋るどころか顔を合わせていなかった。
しかし顔を合わせることぐらいは出来た筈だ――それも、僕の意思を無視して。しかし彼女はそうはしなかった。なぜか?
机上をもう一度良く見てみると、そこには最初見た時には気付かなかった封筒があった。
それは横書き用の、横に長い封筒だった。
心臓の、血液を送り出す音が、耳の奥で僕の脳を刺激する。僕の鼓動が体の芯まで響く。
封筒の口は蝋で封印がされ、『シンジへ』と宛名が書いてあり、裏には『アスカ』と差出人の名前が小さく書かれていた。
蝋の封印を外し、中身を取り出す。入っていたのは一枚の便箋だけだった。
『ごめんなさい』
手紙には、それだけが書かれてあった。
僕は震える両手で手紙を封筒に戻し、本来あった所に置き直した。
◇
僕が物置部屋から出ると、ポケットに捩じ込んだ携帯が鳴った。電話の主はまたミサトさんだった。
僕はポケットから携帯を取り、通話ボタンを押して耳に近付けた。僕はその電話でミサトさんに、使徒が襲来した事を告げられた。
僕が外に出ると、コンフォートの前には保安部の黒い車が停車していて、保安部の黒服が待っていた。僕は促される前に車へ乗り込み、黒服の運転でネルフへ向かった。
ネルフ本部に着いた僕は誰とも会話することなく、更衣室でプラグスーツに着替えてケイジへ入った。
一週間振りにエヴァに乗った僕は、随分久し振りに感じるエントリープラグの匂いを鼻孔一杯に吸い込み、その後に流し込まれたL,C,Lを肺へ取り入れた。
アスカの弐号機を見る。それはいつもと変わらず、そこにいて出撃を待っていた。当然アスカの顔は見えない。
ミサトさんから通信が入る。
「シンジ君。悪いけど今回は貴方の出撃は無いわ。」
「どうして……ですか?」
「いま初号機はS2機関を搭載しているからよ。凍結されているの。」
通信が切れ、エントリープラグを沈黙が支配するが、完全な沈黙ではない。外から発進シークエンスの類の音や機械音が聞こえる。
僕は溜め息を吐いてシートに体を沈めた。
まあいい。休めるんじゃないか。使徒はアスカと綾波に任せよう。
僕は右腕で両目を覆い、息を吐いた。
◇
アスカの悲鳴が聞こえ、心臓がその悲痛な叫びを受けて不意に軋む。必死で父さんに僕を出すように言い、ミサトさんに懇願するが、一向に事態は良くならず僕の手に余った。
使徒の可視光線に犯されて苦しげに喘ぐアスカが、一言だけ僕の名前を呼んだ。だがそれだけだった。
公開されていた通信が切られ、僕とアスカを結ぶ紐は無残にも引きちぎられた。
やがて綾波が得体の知れぬ槍を持って出撃し、使徒を殲滅した。
僕は、アスカがエントリープラグから下ろされて病院送りになるところまで、その一部始終をただ黙って眺めていた。
結局、僕は何も出来ないままエントリープラグから降りるしか無かった。
僕は更衣室に戻り、帰り支度を始める。さっきの事を、着替えながら改めて考えてみると僕の思った事が酷く矛盾しているように思えた。
僕は確かに何かをしたかったと言う風に考え、現に父さんやミサトさんに出撃させてくれるように懇願した。
なぜ? なんで僕は憎んでいるアスカを助けようと思ったんだろう?
僕はそれについて、シャワーを浴びるときまでも理由を探し続けたが、結局その答えは見付からなかった。
◇
僕が制服に着替えて廊下に出ると、そこにはネルフの制服を着たミサトさんが真剣な面持ちで僕が出てくるのを待っていた。
「どうしたんですか? 何か用ですか?」
と僕が尋ねるとミサトさんは「ええ、チョッチね。」と独特の言い回しで用があると告げた。
さらに僕が何かと訊くと、ミサトさんは来て欲しいと言って僕の腕を掴んだ。僕の腕を捕まえたミサトさんは医療区域へと僕を連れて行く。
僕はささやかな抗議と目的地を設問したが、ミサトさんはほとんど取り合わない。十分ほど歩き、ようやくミサトさんが立ち止まる。
医療区域に向かった時点で既になにか嫌な雲行ではあったが、結局その悪い予感は当たっていた。
立ち止まった場所はとある普通の病室。303号室、名札には『惣流・アスカ・ラングレー』と書かれていた。
「ここにはアスカが入院しているわ。」
僕はハッとして振り返る。ミサトさんは僕の背後に立ち、逃げる事の出来ないようにしていた。
「ノックして。」
抵抗するのは無駄だと解っていた。僕は二度三度、病室の無機質な扉をノックする。帰ってくる答えはなく、静寂だけが漂った。
このまま病室の前から逃げてしまいたかった。もしかして、ミサトさんに止まるよう言われて腕などを捕まれても、喚けば見逃してくれるかもしれない。
しかし僕は知らず知らずのうちに「逃げちゃ駄目だ。」と心中で呟き、リノリウムの床の上に残留していた。まるで裸山にポツンとしぶとく残る枯れ木のように。
その姿がしぶっているように見えたのだろう、ミサトさんは立ち竦む僕をしり目にドアノブを回し、扉を開けた。
病室内の白い壁と大口の窓、そして電源の切れた見慣れて久しい生命維持装置とベッド。
アスカはそのベッドの上に蹲っていた。彼女はシーツを体に纏い、膝を抱えて顔をそこに埋めていた。
「アスカ? 大丈夫?」
とミサトさんは言い、僕を病室内へ手招きした。
「大丈夫な訳ないでしょ……?」
それは酷く疲れたような、擦れた声だった。
「それもそうね。」
僕は黙って病室の敷居を跨いだ。僕の姿は見えていないようだ。
「なんの用よ?」
微かにアスカが動き、衣擦れの音が聞こえた。
「会わせたい人がいるのよ。お見舞いがてらね。」
それが僕の事であると言う事は即座に分かった。ミサトさんはちらりと僕を見た。
「イヤよ。」
とアスカが言った。
ミサトさんは驚いたような目でアスカを見た。
「なぜかしら?」
「シンジとは会いたくない。」
きっぱりと、それは絶対に無いのだと断定した口調でアスカが言った。ミサトさんは黙りこくり、俯いて頭を人差し指でカリカリ掻きながらしばらく考えていが、やがて顔を上げた。
「分かった。行くわよシンジ君。」
僕の名前が響き、アスカの耳に入ると彼女の肩が強張ったように見えた。僕はそれに黙って従い、部屋を出た。
それが僕の一ヶ月と一週間振りに目にしたアスカの姿だった。
◇
目が覚める。暗い、ひたすら暗い。枕元の時計を見ると時刻はまだ三時、早朝の三時だった。
「なんだよ……こんな時間に……。」
掌で目を擦り、時計を置く。玄関の方からチャイムの耳障りな電子音が鳴り響き、僕の耳朶を打った。眠りの阻害の主はそれだった。
僕は眠り眼のまま、呆けた体を引きずって玄関へ出るとドアのロックとチェーンを外してドアを開けた。
「こんな時間にどちら様ですか?」
と言おうとしたが、僕の口からは空気しか漏れなかった。僕の口は壊れたポンプのように空気だけを吐き出した。
最初に口をきいたのは、僕ではなく彼の方だった。
「よっ、センセ! ご無沙汰やったなぁ! なんや黙りこくってからに、パクパクしよって鯉みたいやぞ!」
「トウジ……。」
「やっと喋ったのがそれかいな……。ま、立ち話もなんやし、お邪魔するで。」
その場にいる筈のない鈴原トウジは、僕の意思を聞くこともなく敷居を跨ぎ、かつてのように変わらない所作で振る舞い、僕の横を通り抜けた。一つ、違うものがあるとすれば、彼には片足がないと言う事だけだった。
銀色の目立つステンレス製の松葉杖を突いたトウジは、僕を後ろに従える形で部屋の中へ推し進む。
「惣流はどこや?」
トウジはリビングの入り口で振り向く。
「おらんのか?」
トウジの視線が僕を鋭く貫き、覚えのない罪悪感を掻き立てる。僕はゆっくりと首を振った。
「なんでや。」
とトウジは僕を責めるような口調で言った。
僕が黙ったままそこにつっ立っていると、彼は一つ溜め息を吐き、カーペットの上に座った。
「座れや。」
僕はトウジのテーブル向かいに座った。
傍らに松葉杖が置かれる。
「大丈夫なの?」
「ん……ああ、これか。」
とトウジは言い、左足の切断されたであろう場所を二度叩いて撫でる。
「なんでもあらへん。今はぎょうさん立派な義足があるさかい。すぐ歩けるようになるて病院の先生も言っとったがな。」
そう言うとトウジは快活そうに笑った。
「病院……抜け出して来たの?」
「おう、意外と難儀せなんだわ! 病院の看護士はん達出し抜く程度なんでもあらへん。」
「よくここまで来れたね……。」
僕は、トウジの入院した病院の場所を松代だと聞かされていた。
トウジはここまでの旅路を話してくれる。
彼は病院を抜け出したあと、親の財布からくすねた金――2000円程度――で電車に乗り、道中安い弁当や公園の水道などで空腹を満たしてやっと甲府まで辿り着くと、そこに住んでいる年上の友人に頼み、車でここまで送って貰ったのだと言った。
「大変、だったんだね。」
「なんも……大変な事なんてあらへん。センセが間違った事しとらんか気になったからやし……。ま、悪い予感は当たったけどな。」
とトウジは言って、座り心地が悪そうに体勢を変えた。
「悪い……予感?」
僕がそう言うと、トウジはしまったと言う風に自らの頭を叩いてポリポリと掻き「そうやそうや、肝心な事うっかり忘れとったわ。」と言った。
「おのれ、惣流ん事恨んどるやろ?」
とトウジの言った瞬間に僕の五体は、指先から真の髄までもがまるで氷水に浸けられたようにひやっと冷たくなった。
「な……だ、だからなんなのさ……だってあいつはトウジの足を……。」
と僕は吃りながら呟くように言うと、トウジの目線を避けて俯いた。
「それはセンセが気にしたり、恨んだりする事やない。」
それは妙に冷めた、トウジには到底似合わない口調の言いだった。
僕ははっと俯いていた顔をあるべき正常な場所へ戻し、トウジの顔を見た。彼の目線は明らかに僕を責めている。人と触れ合う事の乏しく、相手の心境を推し図る経験のなかった僕でも、何故だかそれが分かった。
「惣流な……ワシのとこに来たんや。」
その言葉を脳内で言語として認識した僕は「え!」と驚きの声をあげ、訝むようにトウジを見た。
「んで、謝った。ワシや無いぞ! あの惣流がやぞ! あの惣流が、ワシの前で両手ついて謝りおったんや。」
俄かには信じられなかった。
「あいつの手、両手がな、肩とか、震えとった。おのれのプライドとと、必死になって殺りあってたんがワシにでもよう分かった。多分、あの髪の下じゃ歯ぁ食い縛ってたんやろな。隣にいた委員長も苦しそうにしとった。」
そこまで話してトウジは一息吐き、座る体勢を変えた。
「だけどな、ワシはなんも恨んどらんのや。それどころか感謝しとる……。」
「感謝……?」
と僕は顔を引き攣らせて言った。
「そうや、感謝や。そやな……考えてみい、もし……もしワシの事を惣流が止めてくれなんだら……。ワシは、ワシはセンセを殺してたかも知れん。」
「あ……。」
と僕は声を上げた。
「センセ殺すぐらいなら……それに比べたら足一本くらいなんともないわ。」
とトウジは言い、笑った。
◇
トウジは帰っていった。
最期にこの三日間、第三に泊まる場所の住所と電話番号を手渡して。
僕が早く帰らなくて良いのかと聞くと、
トウジは「しばらくこの町見てから帰りたいんや。最近はキナ臭い噂で出ていくヤツばかりやからな、妹にも家の様子伝えよ思うてな、
それに保安部の兄ちゃん達にワザと見付かれば、タダで松代まで送ってくれるかも知れんし。」と言って何でもないように笑った。
そして僕とトウジは別れた。
トウジを見送り、部屋に戻って渡された紙切れを見てみると、そこに書かれた住所はここから反対側の町中にある団地だった。
時計を見ると短針は四時のところを過ぎていて、僕は少し小腹が空いたのに気付く。しかし何故か食欲というものが湧かなかった。
僕はキッチンに入って薬缶に水を入れるとそれを沸かし、インスタントの珈琲を煎れて飲んだ。
不味いその黒い液体は喉を通って胃に落ち込み、多少の空腹を満たして喉を潤した。
一息つくと何もする事がないと気付く。
今から寝るのも難しかった。コーヒーではなく、ミルクでものんで置けば良かったと後悔する。
僕はしばらくダイニングテーブルの前で逡巡していたが、やがて思い立ったように自室へ向かい、久方振りにチェロをケースから取り出した。
手に取るのはアスカと苦い――と言っても本当に苦くはなく、むしろ甘かった――キスした日以来だと思い出す。
僕は軽くチェロ調弦し、一心不乱に知っている曲を弾いた。
バッハにベートーヴェン、そしてドヴォルザーク、果ては名もよく知らぬジャズの一節まで、自分のレパートリーを絞り尽すように。
実はチェロなんてもう二度と弾きたくなかったし、持ちたくもなかった。
しかし時間を潰し、朝の夜明けを待つには他にない。
つくづく自分の人間の薄さを思い知らされる。
チェロを弾いていると脳裏に様々な記憶が蘇り、頭の中を支配した。アスカにあの時掛けた言葉や、取った態度。
思えばアスカは、トウジに傷を負わせた後からかなりおかしくなっていた。
もしかすれば、僕が気絶された後に病室で言った言葉。あれはもしかして僕を慰める言葉だったのか? 僕の回復を願う言葉だったのか?
そう考えると僕の行ってきた行為全てが、まるで悪意に満ち満ちているように感ぜられ、一旦客観的視点から改めて見てみると、酷く子供染みて見えた。
しかし僕は最初のうち、その感情が何であるか分からなかった。
それに僕は、例えあのプライドの塊のようなアスカがトウジに謝り、そしてトウジがアスカを許せと言っても、とてもではないが許す気にはなれなかった。
僕はこれまであまり意地を張らずに生きてきた。預けられていた先生のところでも、「素直な子だね。」と言われた――もっとも、僕がなにを考えているかなんて分かってくれてはいなかっただろう――くらいだ。
しかし今回ばかりは、あの傍若無人なアスカを許せないと僕は思った。
金属の切れる音と共に演奏がいかれた。閉じていた瞼を上げてチェロを見てみる。チェロの弦は見事に全てが切れ、飛んでいた。
弦を押さえていた手が急に痛み出し、顔を思わず顰めて痛む指を見た。その指はチェロの切れた弦が跳ね、綺麗なほどに赤いミミズ腫れをつけていた。
僕は弦の切れて弾けなくなったチェロをケースにしまい、キッチンの水道で腫れたところを冷やした。
指を冷やしていると、ふと気付く。そうだ、あの感情は後悔だ。僕は後悔しているんだ。
蛇口を捻り水を止める。水道水で濡れて腫れた手をタオルで拭った。
でもなんで、僕は後悔しているんだろう?
リビングへ振り返り、テーブルに立掛けたチェロを手に取ると、リビングに開いた大きな窓を見た。いつの間にか夜は明けていた。
僕の見た部屋の中には、朝日の陽光が差し込み僕の体や部屋のカーペットを優しく暖めていた。
第4章〜謝罪〜、投下終了
伏線張ったけど、わかりやす過ぎたかorz
アスカが手を突いた事については、アスカ自身がヒカリから恋愛相談を受けていたと言うのを加味し、ヒカリへの罪悪感を重視しました。
アスカを謝らさせないととてもハッピーエンドとはほど遠いので……
クライマックスはまだ先です……orz いいですよね?451氏!
神乙
ktkr!
あんた最高w
乙!
リアルタイムGJ
トウジ良い奴だな(ノД`)
なかなかの自演だなw
乙
702 :
パッチン:2007/11/04(日) 21:16:24 ID:???
文章上手いなぁ…。すごい神様です!GJ!
今更暴露ですけど、
>>451あれ僕ですw
あぁ…すっごい続きが楽しみです!
乙です!
トウジktkr
超GJです。
◆8CG3/fgH3E氏 GJ!
>>702 SS投下時以外はコテ名乗らない方が身の為だよ
街
>>533 で書き上がってる発言があったのに続き遅いな
手直し時間かかってるのか?
まったり待とう
二つの涙読みませていただきました・・・
前半は甘えん坊アスカしゅきしゅきな俺にとってまさに至高というべきものでした
かつてのターム氏を彷彿させるような文章にマジで鳥肌ものでした
サクサク読めて、さらにこの先どうなるんだよ!と思わせる構成にどんどん引き込まれる感じがしました
あと登場するキャラ一人一人がとてもかわいくてもう辛抱たまらんという感じでよかったです
それだけに後半に明かされるシンジのアスカとマヤに対する本当のキモチにちょっと違和感を感じました
その前にアスカのことを想ってるって匂わせること無しに、いきなりホントはアスカのこと〜
ってのには強引過ぎるんじゃないかなって、全体的に色々詰め込み過ぎて消化不良になった感というか
でもそれだけ詰め込んでも読める文章を書き上げた作者さんはすごいです
かなり自分好みの作風なので激しくGJを送り次回作をwktkして待ちます
素晴らしい作品を読ませていただきありがとうございました
感動したのは分かるがマルチはやめろ。
すみません
灯火街
5
記憶と嫉妬と汚れ
その日の昼過ぎ、使徒が襲来した。
僕はトウジが帰った後、トーストを焼いてバターを塗って食べ、ミルクを飲んだ。それを片付けると僕はリビングでテレビをただぼんやりと見て、しばらくするとテーブルに突っ伏して眠ってしまっていた。
目が覚めて時計を見ると時刻は正午過ぎだった。
僕は切れた電源を再び入れたようにテーブルから身を起こし、何か腹に入れようと思ってキッチンへ向かった。
しかし特にお腹がすいていると言う事は無かったので、キャベツやキュウリをぶつ切りにしたものを皿に入れ、ドレッシングで和えてボソボソと食べた。
サラダを食べ終わると僕はその皿をシンクに運び、麦茶を冷蔵庫から取り出して飲んだ。
飲み終わり、コップをシンクに置いたところで携帯が鳴っている事に気付いた。
僕は自室に戻り、携帯を充電器から取って通話ボタンを押した。
「はい、もしもし……。」
「シンジ君?」
ミサトさんだった。
僕は使徒が襲来したと告げられた。携帯を切ると同時に警報が聞こえてきた。
僕は下へ降り、黒服の車に乗り込んだ。
◇
僕はネルフに着くと前と同じ様に、誰とも口をきかずに更衣室に入った。僕はプラグスーツに着替え、ケイジに向かった。
いくら見回してもケイジにはアスカの姿は無かった。
僕は無意識の内にアスカの事を探す自分を見付ける。なんで、なんで恨ましい筈のアスカの事を僕は探していたのだろう。僕はエントリープラグに搭乗してから、通信を使ってそれとなくアスカの事を訊いてみた。
「アスカ? アスカならまだ入院中よ?」
とミサトさんは怪訝そうにしながらも教えてくれた。
だからだろう、ミサトさんはそうでも無かったのだが、比較的アスカとは仲のよくなかったように見えたリツコさんは柄にもなく主力(アスカの事だ)の不在にあからさまな不快感と、不安感を呈していた。
僕の初号機はやはり待機、凍結だった。つまり、出撃するのは綾波の零号機だけと言うことになる。
◇
綾波は死んだ。
僕は危機に陥った綾波を救うべく出撃したが、まったく役に立たなかった。
綾波は僕を助けるために自爆した。第三新東京市もろとも。その爆発は激しく、そして人一人の最期にふさわしく、儚かった。
そう、まともに考えれば町ひとつを吹き飛ばす程の爆発で、華奢な人間の少女が生き残れる筈はなかった。しかし三日後、彼女は僕の前に現れた。綾波レイはこの世に生きて、僕の名を呼び、物に触り、包帯を巻いていた。
◇
コンフォート17はかの激しい爆発でも倒壊せずに生き残ったが、僕とミサトさんとアスカの送ってきた生温かった同居は、崩壊した。僕はミサトさんに本部の宿舎での待機を命令された。
僕はネルフの人に手伝ってもらい、コンフォート17からいくつかの荷物を運んで貰った。僕の引っ越したネルフ宿舎の部屋はそれほど広くは無かったが、炊事などに問題はさほど感じられなかった。
職員の人達に部屋へ荷物――と言ってもそれほど多いわけではない――を運んでもらうと、僕は運んでもらった荷物の中でも一番大きい荷物だった机を撫でた。
それはアスカの机だった。ネルフから荷運びに来た職員にどの荷物を本部の部屋へ運ぶか聞かれた時、本来の僕が使っていた机と掏り替えたのだ。
机に浮かぶ綺麗な木目を指でなぞりながら考える。アスカと綾波、二人の女の子が僕の周りにはいる。綾波は僕を 知 ら な い 。アスカは入院していて、憎んでいると伝えた僕を――恐らく――憎んでいる。
どうやら僕は、また独りきりになったようだった。
部屋には窓一つ無かった。月の光も、太陽の光もない。例えるなら月が綾波で、太陽がアスカか。なにかの皮肉だろうか? 僕は同時に四つの光を失ったのだ。
一人で嘲笑し、アスカの机に両手を突いて顔を伏せる。バカだ、僕は本当にバカだ。せっかく欲しかったものを手に入れられるところだったというのに。
バカシンジ……。
ぴったりだよ……。バカシンジ。
◇
それから僕は一度だけアスカの姿を見た。
僕はその時、偶然に病院三階の廊下にいて、窓から庭にいる彼女を見ることが出来たのだ。その姿は幾分元気そうに見え、誰かに罵声を浴びせているようだった。
怒られている人――その人はアスカの罵声を軽く受け流しているようだった――は遠目で見る限り男で、中々の美形に見えた。敢えて言うならば銀髪だった。
その男は両手をズボンのポケットに突っ込み、病院着を着て庭を散歩しているアスカの周りをまるで衛星のように付き纏っていた。
どうやらアスカは、その男のお陰である程度の元気を取り戻したようだった。
僕はその光景を見たとき、どこか変な心持ちになった。黒く重いなにかが僕の中に沸き上がり、染めていく。
しばらくの間、僕は歩く二人を眺めていたが、どんな夜にも終わりがあるようにアスカと男の姿は病院建物の死角へ消えた。
僕はアスカの消えた角を一、二分ほど見ていたが、やがて目を離して病院を出てネルフの仮住まいへ帰った。
僕は味気無い食堂の定食を食べ、腹を満たすと部屋へ戻ってベッドに仰向けに寝転がった。
あの庭で見たアスカ。怒ってはいたものの、なんやかやで楽しそうに見えた。今思い出してみれば笑みも零していたかも知れない。
もしかして僕といたあの日々よりも楽しそうだったかも知れない。
僕は右腕で目を覆った。
沸き上がった、黒い何かの正体。少し考えて直ぐに分かった。嫉妬だ、それは嫉妬だ。最初は何も分からなかったが、今こうしてアスカと男の姿を思い起こし、自分の感情を改めて見てみると、それは多分嫉妬だ。
しかしそれは初めての感覚で、はっきりとそれだとは言い切れない。
だけど、これは嫉妬だ。
僕 は 、 憎 い と 思 っ て い た ア ス カ に 嫉 妬 を 感 じ て い る 。
◇
僕はその日、ミサトさんに呼ばれて綾波の正体を知った。確かに数日前ならば、その真実は僕の精神にとって酷く重要な物だったに違いない。
しかし今の僕にとっては、そのおぞましい真実はそれほど重要な事項ではなくなっていた。それよりも重要なのは、僕がアスカに感じたあの感覚、嫉妬だ。
それは確かに僕自身の精神をコントロールする上で、多大な影響を及ぼした。
おかしくなりそうだった。
なぜ僕は憎んでいる筈のアスカに嫉妬を感じているのか、なぜ僕はアスカが僕ではない他の男といるだけで、その他の男に憎しみ――それもアスカに向けていた憎しみとは違う――を感じているのだろう。
認めたくなかった。もうそんな人間との関わりで傷付きたくなかった。
他人を傷付けるくらいなら、自分を傷付けたほうがいい。
そんな、僕の根底にあって容易に浮かばないまでも僕の精神に深く根を張る言葉が、何度も僕の心に浮かんでは苛む。
まるでもう一人の僕が槍を持って『何でお前はアスカにあんな酷いことをしたんだ?
あぁ、そうだな、お前みたいにナヨナヨしてて、意気地が無くて、根暗なヤツならアスカだけじゃなくミサトさんだって、父さんだって嫌いになるよなぁ?』と叫びながら、その槍で僕の全身を突き立てているように思えてならなかった。
僕はアスカの姿を見た日――それは綾波の正体を知った日と同じ日だった――から三日、一度も部屋を出ずに風呂にも入らなかった。
なんだか体中に汚れがフライパンの焦げのようにこびり付いて、いくら洗おうともその汚れが取れないような気がしたからだ。取れないなら洗う意味なんてない。
警報が鳴っている。随分久し振りのような気がしてくる。動きたくなんかない。戦いたくなんてない。ずっと寝ていたい。でもそんな事は出来ない事など分かっている。
僕が自発的に行かなければ、黒服がやってきて僕を無理矢理エヴァに乗せるだろう。
仕方ないので、僕は三日着替えていない制服のワイシャツ姿のまま、エヴァの待つケイジへ向かった。
第5章〜記憶と嫉妬と汚れ
投下終了
もうすぐクライマックスですが、ラストの展開に持っていくための伏線がちょっと無理矢理感を感じる方が居られると思いますので、ご覚悟を……
因みに投下の遅れは、単なる体調不良と時間です。
体調に関しては、支那で言う未病です。つまりは酷めの筋肉痛みたいなもの……
リアルタイムGJ
乙
GJGJ
GJ!
続きを期待せずにはいられません
6
最後のシ者
僕は更衣室で制服を脱ぎ捨て、シャワーで頭から水を被るとプラグスーツに着替えてケイジに向かった。エントリープラグが引き出され、扉を開けて僕を待つエヴァ。僕はその中に、なんの躊躇いもなく乗り込んだ。
そして僕がエヴァに乗って先ずしたことは、肺一杯に血の臭いがする液体を吸い込んむ事だった。
そしてミサトさんが先ずしたことは、僕に真実を伝える事だった。
淡々とした、軍人で大人だと感じさせる、乾いた口調でミサトさんは僕にそれを告げた。
「敵はフィフスチルドレン、渚カヲル。弐号機及びセカンドチルドレン、惣流アスカラングレー。」
確かにミサトさんはそう言った。 ア ス カ が 敵 ?
アスカは味方じゃないのか。なぜ敵なのか?
「なぜアスカが?」
と僕が聞くと、ミサトさんは舌打ちを一つ打ち、苛立たしげに口を開いた。
「アスカは裏切ったのよ。私達……人類をね……。」
ミサトさんが衝撃である筈の事実を、感情をわざと圧し殺したように感じられる淡々した口調で告げる。
「アスカが……裏切った?」
と僕は呆然として呟くが、ミサトさんはそんな僕の急激に憔悴していく心など少しも酌量せずに冷たく言った。
「頑張って、シンジ君。」
通信が切れ、いつも聞こえる発進シークエンスや整備員の声が聞こえるが、しかしそれはいつもと違い、どこかにもの悲しさを含んだ喧騒だった。
僕はセントラルドグマへ続くシャフトを、ゆっくり降下していく。
なにも解らない。アスカがなぜこんな事をしているのか、なぜその渚カヲルとか言う男と居るのか。それを考えると、僕は会った事もないその渚カヲルという人間に激しく燃え盛る火焔のような殺意に似る衝動をひしひしと感じた。
そう、認めるよ。僕は嫉妬をしている。
落ちるようにしてシャフトの底に足が着くと、僕は先ず注意深く周りを見回した。
その空間は暗く、不気味で淀むような雰囲気が漂い、背筋が凍るようだった。水の溜ったそこには、幾本かの白い棘のような柱がそそりたち、まるでホラー映画のような不気味感を、余計に強く煽り立てていた。
そのホールのような空間の先、壁が破れたその先に彼等はいた。
「アスカ!」
と僕は叫び、近寄っていった。
そこには弐号機と中に浮かぶ人影があり、それらは僕が叫ぶとほぼ同時に振り返った。
アスカの操る弐号機の側に浮く、恐らく渚カヲルであろう人影、彼の顔と特徴的な頭髪を見て僕は既視感を覚える。そう、彼は間違いなく病院の庭を連れだって歩いていた男だった。
丸く光る弐号機の双眼と、冷めた渚カヲルの瞳が、君はこの場にふさわしくない邪魔者なんだと言わんばかりに、僕を見つめた。
「遅かったね、碇シンジ君。」
ホールの壁に反響した渚カヲルの声が、僕の耳に入る。僕は、嫌味ったらしいニュアンスを含んだ彼の発言には反応しない。僕は歩を進め、アスカの名を呼ぶ。
「アスカ!」
「君はアスカ君を憎んでいるんじゃ……。」
「アスカ!」
と僕は渚カヲルの言葉を遮る。彼はやれやれと肩を竦める仕草をしたが、僕にはそんな彼の事など気に留める余裕はなく、わめくように孔へ進み、手を伸ばした。
僕はそれがまだ届かないと知っている。しかし本能的にその腕を懸命にアスカへ伸ばした。
「来るんじゃないわよ!」
広い空間にその声は幾度も反響した。僕はその声に動きを止め、伸ばした手を胸から腰の高さまで下ろした。
一瞬、それが誰の声か分からなかった。しかしそれは、弐号機のスピーカーを通して多少劣化しているようではあったけれども、明らかにアスカの声だった。
「アンタ……アタシの事嫌いなのよね?」
スピーカー越しにアスカの声が聞え、弐号機はプログナイフを抜いた。なぜスピーカー越しか気になったが、直ぐに発令所との通信が不通になっている事に気付いた。電波が届かないのか?
「なんでこんな事を……。」
アスカはプログナイフの切っ先を脅すように僕へ向ける。虚空を隔てても伝わるアスカの剣幕に、僕は思わず後退った。
「『なんで?』」
とアスカが僕の台詞を繰り返す。
「『なんでこんな事を……』?」
もう一度繰り返し、溜め息をひとつ吐いた。
「アンタバカ……?」
覇気のまったく感じられない、静かな湖の底を思い出させる語調だった。
「アンタがアタシを憎んでるからでしょ?」
「それは……。」
僕が口籠り、俯くとエヴァも同じ様に俯いた。
「相変わらずね……。」
弐号機は手首を回し、挑発するようにナイフの切っ先を捻った。
「だけどね、アタシはアンタを責めたりしないわよ?」
俯いた顔を戻し、アスカを見る。
「もしアタシのシンクロ率が下がって、アンタみたいに 落 ち ぶ れ た ら、同じ様になってただろうしね。」
僕はもう一度俯き、瞼を下ろした。そう、僕は落ちぶれて、アスカにあの陰湿な置き手紙や、家事をしなかったアスカに対する嫌味のような家事のメモを残す、女々しくも意地の悪い上に面と向かってアスカに何も言えないようなドブネズミのみたいにこそこそする男なんだ。
だけどきっとアスカはそうはしない。僕に敵慨心を燃やした事だろう。
沈黙が流れ、ホールの天井から滴る水滴の音がいくつか聞こえた。
僕は決心しなければならない。そう感じていた。僕の心の内にはアスカに伝えるべき言葉がひとつあった。
恐らくアスカはそんな下らない事を覚えてはいないだろうし、僕がそれに気付いているとも思ってはいないだろう。しかし確信はないが、僕はそれをしたのがアスカだと思っている。
僕は目を瞑り、必死に自らの決心を固めていた。もし外れていたら、多分アスカは激昂し、サードインパクトを起こすだろう。なんとしても、僕はそれを阻止したかった。
「イヤなのよ……もう……。」
声が震えている? はっとする。泣いている? あのアスカが泣いている?
「こんな世界……もう……。」
そうだ、アスカだって僕と同じじゃないのか? 愛したくて、だけど愛して貰えなくて、みんなが遠巻きに観察し、理解もせずに触れ、遠ざけたり気を引こうとする。
直感でなにか、理性や論理からは説明できず、掛け離れたなにかが心の底から沸き上がり、僕をつき動かす。
もう、自分を信じるしかない。間違っているかも知れない。でも伝えるんだ。僕はアスカに。
「コロッケ……。」
と僕は呟くように言い、その虫のようなか細い声はスピーカーに増幅されて、アスカに辛うじて通じたようだった。
「え?」
レバーを強く握り締めると、プラグスーツの中に汗がジワリと噴き出すのを感じた。
「アスカのコロッケ……おいしかった……。あの……ありがとう……もう一度……食べさせてよ……。」
返ってくる声はなく、もしかして違ったのか、あのコロッケはアスカが作った物ではなかったのだろうかと不安がよぎる。
しかし、僕に向けられた弐号機のプログナイフの切っ先が、静かに下へ向いていった。
「卑怯者。気付いて……たなんて……お礼なんて……もう一度作って……なんて……。」
プログナイフがアスカの手から離れる。大きい水音と共に、飛沫が上がりプログナイフが沈む。
スピーカーで拡張されたアスカの溜め息が、暗く丸い空間に木霊した。渚カヲルはズボンのポケットに両手を突っ込んだまま、微笑んでいた。
「渚ぁ〜……アタシ……もう駄目だわ……。」
弐号機が天を仰ぎ、アスカがどこか投遣り気味に呟くと、両手が力なく垂れた。
渚カヲルは息を短く吐き、微笑みの刻みを深くしてアスカを見上げた。
「良いさ……これも自由意思……。」
言い終わるか終わらないかのうちに、渚カヲルの体がアスカの手中に収まり、銀髪を乗せた顔だけが覗いた。アスカは、渚カヲルを握った。
「さあ、殺してくれ……あの猫のように……。そして、僕の事を覚えていてくれ……。」
と渚カヲルは言い、瞳に瞼を被せた。
僕は背筋に冷たい何かが走るのをはっきりと感じる。考えなくてもわかる。アスカはあの渚カヲルを今から殺すのだ。
そう考えると、僕の体は脳の意思に反して動き、アスカとの距離を詰めていた。本能的に、或いは衝動的に。
弐号機の双眼は驚いたように僕を見ていた。
僕はそんな視線を半ば無視し、渚カヲルを握ったアスカの右手の上に自分の右手を重ね、渚カヲルの頭を隠して左手を下、足の方へ添えた。
4円
例えプラグスーツ越しだろうとなんだろうと、アスカの暖かみと渚カヲルの命の鼓動を自分の掌ではっきり感じた。
「アンタ……。」
アスカが何か言いたげだけど、今だけは、今だけは無視する。多分これからもずっと無視なんて出来そうもないから。
「僕も……やるよ……。」
「アンタ……。」
「あの……ごめん……。」
僕が謝ると、アスカの溜め息がスピーカーから聞こえた。
「バカ……。」
僕ら二人はその掌に、渚カヲルの潰れる頭蓋や内臓の漏れ出す生暖かい感触を感じながら、最後のシ者を殺した。
第7章へ続く
GJGJ
4円→支援
投下街
◆8CG3/fgH3E ってN3と文体似てるな。
>>732 で?
読んだら先に乙いいなさいゆとり厨
(´,_ゝ`)プッ
街
>>732 シンジがキモジだし、その他も色々そっくりだし、
普通に同一として眺めてたけど違うのか?
投下待ち
待ち
投下キテタ!
まじでGJ!!
十日町
7
そして終わり、鰻を殲滅したあと。
水面が揺れた。ゆら、ゆら。僕の前で、水面が揺れていた。
水面の揺れる湖には、白い鰻によく似た不気味なエヴァが、頭を潰されたり腕や足をもぎ取られた、それこそ様々な姿で突き刺さり、細やかな波の圧力だけで無様にボロボロと崩れていた。
僕と彼女の乗機は瓦礫の向こうに並んで跪き、背中からエントリープラグを剥き出しにしている。体の各所には様々な傷があり、真っ赤な血液を止め処なく迸らせていた。
僕は静かに、尚且つ慎重に瓦礫に囲まれた周りを見回し、最後にその瓦礫の中でも一番高く、大きい瓦礫の上に立つアスカを見た。
膝を抱えていた僕はアスカを一見し、もう一度ゆっくり揺れる水面を見つめた後に、また左を向いてアスカの横顔に目をやった。
「アタシの事、好き?」
そう言って、アスカは僕を見た。
不意に彼女と目が合う。
「解らない。」
と僕は言った。
「『解らない』?」
とアスカが繰り返す。
そうだ、僕は何故、好きなのか解らないのにアスカの人殺しの罪を半分背負い、あまつさえ共闘したのだろう。
アスカはしばらく僕の顔を、感情の乾いたような沈んだ瞳で、ジッと見つめていたが、やがて再び水面を見つめた。
「バ〜カ……。」
「ごめん……。」
アスカは貶し、僕は謝った。それは一緒に暮らした数ヵ月の間にあった、僕らの関係そのものだったが、やはりどこかが決定的に違い、異質の物に思えた。
「ねぇシンジ……?」
僕はまだアスカの横顔を見ていた。
「アタシは好きよ……少し……。アンタ、気付いてた?」
僕はかぶりを振り、視線を落とした。
「とてもそうは見えなかった……。」
と僕は言った。アスカは「そうよねぇ……。」と言い、短く息を吐いた。
「じゃあさ、落ち着いたら、デートしよ……。」
それは紛れもなく、デートの誘いだった。前のような傍若無人な命令ではなく、誘いだった。
「召し使いじゃないなら、いいよ……。」
「意地悪いわね、アンタ……。」
「ごめん……。」
僕がいつものように謝ると、アスカは溜め息を吐き、腰に手をやって目を据えて僕を見た。
アスカは前のようにとはいかないまでも、幾分元気に見える。だけど、アスカは多分、今ここで僕を誘う事で自分の誇りを削ったのだろう。
僕は思う。仕方ない。義理や、責任からでは(少なくとも)なく、僕はその削れたプライドのあった場所を“何か”で埋めなくてはいけないような気がした。
埋めることは僕にしか出来ないとも思う、はっきりと。そして、最低でもアスカが一人で再び立てるまで、そして最高でも……。
「……いいよ……。デート、しよう。」
アスカは僕を見た。僕が再びアスカの顔を見ると、すぐに僕とアスカの目線が合致した。アスカはまるで弾けた胡桃のような、尚且つひまわりのような笑顔を僕に向けた。
それは何ヵ月も同居し、同じ学校の同じ教室に学び、同じ戦場を戦った中で見たどの笑顔よりも、一番輝いた笑顔だった。
僕はゆっくりと立ち上がり、両掌でプラグスーツに付いた砂を払った。
遠くから車の轟音と、ミサトさんの僕らを呼ぶ心地良い声が聞こえた。
高い所にいるアスカには、車のヘッドライトや運転手や台数や、ミサトさんの姿が見えているのだろうか? 僕とアスカの差は余りにも大きく、溝は深い。
手が伸ばされる。僕の前には白く細い、柔らかそうなアスカの右手が差し出されていた。
そうだ。簡単なんだ。近付こうとすれば近付ける。近付く事が出来るんだ。
僕がこれまで臆病過ぎただけなんだ。
アスカの長い髪が風でふわりと揺れ、その心地いい香りが僕の鼻孔に潜り込み、記憶を刺激した。
そうだ、あの初号機の中で感じたあの綺麗な香りだ。いなかった筈のアスカの香りを感じるほど、僕はアスカを必要としてたんだろうか?
生きていけるかも知れない。
紆余曲折や、喧嘩もあるかも知れないけれど、どうにかしてアスカと触れ合えるかも知れないと僕は思う。あの最後にチェロを弾いた夜の気持ちが、まるで嘘のように、素直に思える。
僕は差し出されたアスカの手をとり、ぎこちなく微笑んだ。
終
終わった、終わった。
いやぁ〜736氏、キモジで悪うござんした(´・ω・`)
たまたまこんなシンジになっちゃったんですよねぇ。いや、一人称はもうちょっと主人公のキャラに気を付けねば。
機会があったらまた投下します。よろしく。
リアルタイム乙!
よかったよ!
次回作も期待してる!
キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
普通にアスカもシンジも可愛いよ
自分はそんな風に思わなかった
次回作楽しみにしてるよ、GJ