ミサト×シンジの可能性を語るスレ 5回目

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753通り掛りの者です

シンちゃんが入浴中、女3人でかしましく・・・と思っていた矢先、今最も聞きたくないメロディーを発しながら電話が着信を告げる。
アスカの、何か言いたげな流し目に片手で“ゴメン”ポーズをとってウインクしながら子機を持ちそそくさとベランダへ移動。
何かしら、まだヘコみ足りないのかしらね? 打たれ強い所は昔のままね

「よぉ、さっきは済まなかったな」

「あら、こんな時間に何か用なの?業務ノルマ達成の知らせかしら?忙しいんで手短にしてもらえる?」

「おいおい、そこまで無碍にする事はないだろうに・・・ 実は、君が知りたがってた情報なんだが・・・」

あーあー、そー言えばそんな事以前漏らした事あったかしらね・・・

「その事についてなんだけどね加持君・・・ ハッキリ言っときたいんだけどね・・・ もういいの」

「ちょっ、もういいって、君の念願だった筈だろう!? そこに居る理由も、葛城ミサトがそれを望んでいたんじゃないのか!?」

「んー、状況が変わったのよ・・・ チョッチ前なら喜んで飛びついたんだろうけど、今はね、プライオリティ凄く低いのよ」

「・・・そこまで、彼に入れ込んでいる、という事か?」

「・・・コトバ選んでくれる? 今は、目の前の職務に忙殺される事と、あの子達を守る事にしか興味がないの」
754通り掛りの者です:2007/07/06(金) 23:13:16 ID:???

秘匿とは言いながら恐らく通じている事を認識して、私は固有の名称を避けて会話する。もちろん、“シンジ”という単語に
過剰反応する二人の少女が身近にいる事も織込み済み。電話口という安心感からか加地君も食い下がる

「その情報が、彼らを知る手がかりになる、としてもか? 彼らを知り、自分の立ち位置を明確にした上で、君がなすべき事を
勘案する方が、作戦部長である葛城ミサトらしい立ち回りだと思うけどね」

「・・・・・・」

「良かったら、今からでもそっちに・・・」

「勘違いしないで頂戴ね。今、あなたがこのタイミングで持ち込む情報が、仮にあの子達に関するものだとしても、私にとっては
何の意味もなさない、それどころか害悪にすらなりうるわ。そんな情報に耳を傾ける訳にはいかないの。私を含めたネルフスタッフ、
チルドレン達、みーんな、あなたが“バイト”で仕入れた情報の断片、やがて結実するであろう事象に向かってゆっくりと前進する
歯車の一部よ。少なくても、私はそれを自覚している。だけど、それが何だって言うの? 歯車は歯車の役割があって、それ以上
高度な動きはできないわ。上の思惑なんてこの際どーでもいいのよ。そんな余計な情報を仕入れ、今の葛城ミサトが、あの子達を
妙な色眼鏡で見るような事になる方がよっぽど怖いわ。さっき執務室で言ったように、あなたはあなたのバイトに精を出せばいい
じゃない。リスクを冒す覚悟をしての行動なのでしょうから、今更とやかく言うつもりはない。だけど、その件に関して私を、
あなたの都合に合わせた歯車にするのはやめて頂戴。私はね、今の葛城ミサトで精いっぱいなの。これ以上余計な葛城ミサトが
増殖すると、内部で折り合いが付かなくなるわ」
755通り掛りの者です:2007/07/06(金) 23:16:20 ID:???

「随分と達観しちゃってんだな。それとも、開き直りか?」

「どちらも違うわよ。シンプルになっただけ。迷わないだけよ」

「俺が愛した葛城ミサトはもういない、って事か?」

「あら、ちゃんといるわよ? ただ、あなたが見ていた葛城ミサトは私の極一部。今の葛城ミサトのほんの一部分に過ぎないの。
今の私は、あの子達と触れ合い、新たに“母性”の目覚めを感じ歓びに満ちている。着飾る必要の、演じる必要の全くいらない、
あの子達の前だからこそ、私は“真の葛城ミサト”でいる事に幸せを感じているの。残念ながら、あなたとの時間では実現
されなかったけれどね」

「まずいな・・・益々惚れそうだ」

「フフッ、いい女になったでしょ? あの子達が変えてくれたのよ。惚れるのは自由だけど、確実に火傷するだけだから遠巻きに
見守るだけにしておきなさいね」

「わかったよ・・・ だけど、諦めた訳じゃないぜ?」

「知ってる。だから、今のバイトも長続きしてるんだものね」

「そういう事。じゃ、また連絡する」

「私絡みじゃない恋愛相談ならいつでも聞いてあげるわよ、それじゃ」
756通り掛りの者です:2007/07/06(金) 23:18:38 ID:???

通話終了。一つ大きな溜息をついて夜空を見上げる。加地君、か・・・ 思えば、彼と“恋人”と呼ばれる関係になった事もあった
んだっけ。でも、今思い返すと、私は何時も、加地君の前で“恋人”の葛城ミサトを演じているだけだった気がする。拒絶されて
しまう恐怖、そして彼が、常に私だけを見ているわけではない、という強迫観念。嫌われないようにする為、彼のお気に入りだった
私の断片が、当時の私の全てだった。一緒にいたいという欲望と、一緒にいる事で、目に見えない苦痛に身体を蝕まれてゆく

シンプルじゃない私。見せている部分は一部なのに、その一部に気を遣うあまり、本来の私が殺がれていく恐怖

シンちゃんに出逢って、肉親−母親・上司・友達・姉・・・いろいろな自分が安心して展開できた。シンちゃんを意識し始めてからも、
新たに恋人・妹・娘・・・ 全てを受け入れてくれたシンちゃん、考えたくないが、これから“オバサン”という追加バージョンの
私が出てくるだろう。幾らシンちゃんが寛大だからって、逆に自分に幻滅しないようにしなきゃね

物思いに耽りながら夜風にあたっている。ふと、中の二人が気になり振り返る。既に二人の姿はなく、代わりにタオルを首に下げ
洗いざらしの無造作ヘアが男っぽい印象を醸している湯上りのシンちゃんが、とても心配そうにこちらを窺っている。ああ〜っ、
いけない、柄にもない物思いでシンちゃんを心配させたようだ。慌てて中に入る
757通り掛りの者です:2007/07/06(金) 23:23:58 ID:???

「・・・大丈夫ですか?」

そんな顔しないでぇ〜、抱きついて頬擦りしたくなるじゃない!

「う、ううん何も、単なる業務連絡よ」

そう云いつつ、己が煩悩に平伏す私は浴室のカーテンがしっかりと閉じられている事を確認し、シンちゃんを思い切り抱き寄せる

「むぐっ、ならいいんですけど、もし・・・何か、僕で力になれるような事だったら、何でも言って下さい。少しでも、
ミサトさんの、役に立ちたいですから」

どーしてそーゆー涙腺が緩むような温かいコトバを掛けてくれるかなシンちゃんは!

「いいのよ・・・あなたがいればそれでいいの・・・あなたがいつも元気で笑っていてくれればそれでいいの・・・」

色々なカタチがあると思う。痛みや苦しみを共有し、互いに慰めあう。それも一つのカタチだろう。でも、今の私達には不必要。
今まで背負ってきたもの・今背負っているもの、それを理解する事は不可能だし、理解させようなんて思い上がりも甚だしい。
互いを理解したつもりで安心し、言わなくても通じているなんて錯覚を起こして互いを思い遣れなくなる。そんな関係ゴメンよ。
結局のところ、受けた傷の痛みの質や、治癒までに要する期間は当人にしか分らない。だから私は、シンちゃんには笑っていて
ほしい。私がシンちゃんの背負っているものの肩代わりができないなら、せめてシンちゃんの傍で、何時も能天気な葛城ミサト
でありたい

シンちゃんが私の胸の谷間からにっこりと微笑んでみせる。私は、この笑顔とエビチュさえあれば、どんな艱難辛苦もやり過ごす
自信がある。同時に、シンちゃんにとって、そんな風に思われる私でありたいと思っている。それがたとえ私の醜いエゴだとしても