ケンスケを追いかけてる人は写真の売上や買いに来た人で貰える数やライバルを調査したい人だったりー
チョコをあげる前段階の話ですが、一応アスカが目覚めたという事でw
GJです!
チョコ作りに奮闘するアスカが目に浮かぶ…
うお、投下あったの気づかなかった
当日に反応できずスマン
職人GJ!
「相変わらずボケボケとしてるな」
「否定はしないよ」
薄暗い空を眺めながら、地面に腰を下ろし息を整える。
訓練の成果は多少なりともある様で、この町に来る前に比べたら整う迄の時間は短くなった気がする。
「何考えてるか判んない位ぼーっとしたまま走ってるのに、気付いたら追い抜かれてるし」
「それは気の所為じゃないかな? ペース配分が狂わなければ、誰だって走れるさ」
トラックを走る周回遅れの生徒を目で追った。
今にも雨が降りそうな天気の日に、グラウンドで長距離走だなんて少し無謀な教師だ。
湿気た空気と季節外れの生温い空気が気持ち悪い。
これ以上無い位テンションの低さで、無造作に傍らの地面の上に脱ぎ捨てられたジャージの上着の固まりを漁る。
自分の上着を見つけるよりも、隣に座るケンスケの分を見つける方が早かった。
見つけた上着を手渡しながら呟く。
「嫌になってくるけどね」
体育館の方からは女子の歓声が聞こえて来る。
あの様子だと多分、バレーボールかバスケットボール。
長距離走の選択は、男女一緒には体育館が少し狭いからなんだろう。
いいとばっちりと言えなくもない。
「そういやさぁ、今年は卒業式無いんだよな。でなきゃ準備で体育館だって使えない筈だし」
サードインパクトの影響で、特別措置として今年はもう一年同じ学年をする事になる。
僕らは二回中学三年をする、という事だ。
毎年のこの時期なら、高校受験直前で余裕が無い。
そう考えると今年は実に暢気だ。
「まぁね。その代わり来年は大変じゃないかな。予想だと移住者は暫く増え続ける一方らしいから」
移住者が増えるという事は生徒も増える分、高校受験は狭き門になる。
「特別措置って、それを見越した救済じゃないかって思うよ」
「俺……受かる自信無いんだよなぁ……」
「一年余裕貰ったんだから、何とかなるさ。と言うか、何とかしないとダメなんだけどね」
自分に言い聞かせる様な物だ。
僕だって、そんなに成績には自信は無い。
二年の終わり頃からは授業は休みがちだったのもある。
正直、この町に来てからまともに授業を受けたと言えるのは、サードインパクト後からかも知れない。
多少は診察や検査で抜ける事はあっても、精々一日か半日程度だ。
使徒戦の頃の様に何日も連続でという様な事は無い。
「碇はまだ良いよ、俺とは頭の出来が違うからな」
「それこそ買い被りさ。別に頭の出来が良かった訳じゃない。昔はそれしかする事が無かっただけだよ」
この町に来る前。
あの頃は無気力で、趣味らしい趣味も無く、自堕落にもなれず、時間を消費する方法を知らなかっただけだ。
家事だって、先生に何も言われない様にと片付けていただけ。
その家事も済ませてしまえば、後に残るのは何もする事が無い。
かと言って、眠るにも早過ぎる時間を消費するのは苦痛だった。
先生に薦められたチェロだって惰性で続けただけだし、夜の練習は近所迷惑になる。
結局の所僕に出来たのは、つまらないその日の授業のノートや教科書を流し読みして、眠気をひたすら待つ事だけ。
勉強だの復習だの、大それた事をしていた訳じゃない。
「本当に出来が良い奴は、授業を受けるだけで理解出来る奴の事だと思うよ」
「そんなもんか?」
「そんなもんさ」
周回遅れの生徒の数が減っていく。
だがそれとは逆に、空の重さは増していく。
雨が降りそうな中、特に会話もせずぼんやりとした時間が過ぎていく。
僕とケンスケだけじゃなく、他の走り終えた奴の間にも会話は無かった。
トラックを走る生徒の足音だけが響く中、ケンスケが口を開いた。
「なぁ……最近何か考えてる事でもあるのか?」
「何が?」
「転校生が来てクラス中騒いでる間でも、我関せず、って顔してる。授業だって、割とボケっと窓の外見てるだろ?」
雲の色が灰色を濃くしていく。
僕の頭の中も、比例して灰色に染まる。
「そうかな?」
僕の返答を聞いたケンスケの溜息が殊更大きく耳に響く。
「惣流の奴がじーっと見てるの、気付いてねーな?」
「アスカが?」
「この間から色々突っ込まれてるんだぜ? 俺が何か吹き込んだのかってさ」
「何それ」
「俺が言うのも筋違いなんだろうけど、お前らちゃんと話してんの?」
「さぁね? アスカがしてないって言うなら、してないんじゃないかな?」
話をするって事自体、一体何だろうと思う事がある。
大体、今更何を話せとでも言うんだろうか。
今迄の事、今の事、これからの事。
確かに数え上げれば切りが無いだろう。
「お前、それ無責任」
「仕方ないだろ……何言えば良いのか判らないんだからさ」
そう、判らない。
言葉に意味を持たせようとすると、声が出なくなる。
どう言っていいのか上手く言葉に出来ない事が苛立たしい。
「例えば? 何が言いたいのか判らないじゃあ、アイツだって納得しねーぞ?」
ケンスケが言う事も尤もだと思うけど、言葉にならないのはどうしようもない。
「ボキャブラリーが貧弱だってのは理由にならないよね?」
「多分、な」
元々そんなに喋る事に慣れている訳じゃない。
色々と頭の中で考えてはいても、口に出すのと出さないのとでは勝手が違う。
「頭の中で考えれば考える程、判らなくなってく訳じゃないんだ。たださ、このままで良いのかなって」
「このままって?」
「言葉が見付からないままで良いのかなって」
別に難しい事を考えている訳じゃないのに、口に出せないのがもどかしい。
悪循環だという事は解ってる。
気をとり直してみようとはするけれど、結局の所堂々巡りにしかならないのが僕のダメな所だ。
「……自分でも、馬鹿だなって思うよ。考える程の事じゃないんだって。でも、考えなきゃいけない気がするんだ」
胸に残る痛み。
血の臭い。
爆発音。
あの時の事を、繰り返し、繰り返し、頭の中で再生する。
やっぱりどうしようもなく弱いんだ。
再生されたイメージを、僕はまだ思い出に出来ないから。
「だから、僕はまだ何も言えないんだと思う」
暫くの沈黙の後、頬に冷たい物が触れる。
「あーあ、授業終了迄持たなかったな」
ぽつぽつと大きな雨粒が落ちる。
地面に小さな穴が明いていくのが、チカチカと目に痛い。
「まぁ、何が悩みの元なのかは知らないけどさ……って、冷てぇ!」
ケンスケが先に立ち上がった。
他の生徒は雨粒に気付いたと同時に、半数近くが校舎に戻っている。
けど、僕は急いで戻る気にはなれなかった。
ヨロヨロと立ち上がる僕の背に声が投げられる。
「お前の場合は、惣流が心配する様な事をしないって事だけで良いんでねーの?」
それだけの事で?
何も言えない僕のままでも、いいって事?
「ほら、早く戻らねーとマジで風邪引いちまうぞ?」
ぼんやりと立ち尽くす僕に、再びケンスケから声が掛かる。
「ぁ……うん、判った。すぐ着替えないとダメだね、これじゃあ」
教室に向かいながら、上着を脱ぎ廊下で立ち止まる。
他のクラスは授業中で一層静けさが際立ち、小さな声でもよく響く。
「ま、悩んだ分だけ男はデカくなるって言うけど……そんな簡単にはいかねーよなぁ……」
ケンスケの言う事も一理あるのかな?
けど、悩むだけっていうのも案外疲れるものだと思う。
「悩みが尽きる事なんて無いよ。悩みが無い人間の方が少ないんじゃない?」
「まぁな。それより明日、どーするよ? 俺、何も準備してねーぞ」
「……明日?」
カレンダーを思い出してみる。
特に予定は無い筈だ。
診察日でもないし、授業もまだ明日は通常通り。
何かあったっけ?
「おい……明日の事で悩んでたんじゃないのか? ホワイトデーだぞ。アイツの事だから、忘れてたらヤバくないか?」
……すっかり忘れてた。
「その顔は忘れてたって感じか?」
「あー……うん、忘れてた。そっか、お返し要るんだ」
「義理の返し位した事あるだろ?」
「いや、そういうのは縁が無かったよ。マトモに貰ったのって、今年が初めてなんだ」
「へぇ、意外だな。てっきり一度や二度はあると思ってた」
そう、初めて。
好意を寄せられる事自体は初めてじゃない。
でも真正面からストレートに「好き」なんて言われた事は、この間が初めてだ。
だから僕は余計に悩んでいる……?
「何言われたのか大体予想は付く。それで返事に困るってのも何となく解る。でもよ、悩むのはちょっと違うんじゃないか?」
「え……っ?」
普通は悩むだろう?
第一自分の気持ちも解りかねてる状態なのに、悩まない方がおかしい。
釈然としないのが顔に出ていたんだろうか。
ケンスケが笑いながら言った。
「ああいうのはさ、自分の感情の方は取っ払っちまえば良いんだよ。貰った事だけ客観的に見れば簡単だろ?」
「そういうもんかな?」
「そういうもんなんだよ。嫌じゃなかったんだろ?」
「……うん、多分」
「だったら、素直に感謝しとくだけで良いじゃないか。他に何か必要なのか?」
雨はどうやらにわか雨じゃなかった様で、次の授業に入っても雨足は強くなるばかりだった。
少し風が混ざり横振りなのか、雨粒が窓に叩き付けられている。
濡れた窓硝子の向こうの景色は、何処か別の場所の様に映る。
授業は右耳から左耳へと抜ける様に、頭の中に少しも入ってくれない。
ケンスケの言う事は確かに正しい事かも知れない。
でも、僕はこうも思う。
後悔しない様に、後悔されない様にするって事は、とても難しい。
後悔したとしても、またやり直せば良いって事位は解ってる。
それでもこの世には後悔してはダメな事がある。
だからこそ、上手く言葉に出来ない事だってある。
多分、僕にとってアスカには特別な何かがあるから、後悔したくないから、今は言葉に出来ないんだと思う。
――逃げ、じゃないよね……?
こう思える様になった事を一番伝えたい人は、もう居ない。
一歩前に押し出してくれた人だって、今はまだ夢の中だ。
何も言えなくて、言葉が見付からなくて、同じ所をぐるぐると廻り続けるしか出来ない事に心が痛む。
まだ心の中にどす黒い何かがこびり付いている気がするのは、多分気の所為じゃない。
その何かを消化出来ないままでは、見付かる物も見付からない気がする。
だからまた、堂々巡りを繰り返す。
後どれ位降れば、汚れは落ちるんだろう?
後どれ位経てば、思い出に出来るんだろう?
後どれ位迷えば、消化出来るんだろう?
後どれ位考えれば、言える様になるんだろう?
そんな事を考える時しか、灰色の脳細胞は動かない。
目に映る何もかもが色褪せて汚れて見えるのは、多分その所為だ。
止まない雨。
流石に警報は出ないが、結構な荒れた天気になりつつある。
もう窓は叩き付けられた雨粒の形が判らなくなる程濡れていた。
硝子に付いていた汚れが線を描きながら滴り落ちていく。
そんな窓を眺めていると、雨の日はいつも思う。
雨が止んだ時、窓硝子の様に僕の心の汚れも洗い流す事が出来ればいいのに、と。
そうすれば、前が見える分また一歩前に進める。
後悔したくない事だって、言える筈だ。
そんな気がする。
ホワイトデー前日の話だったりー
色々考えてるけどちょっとだけ前向きになったシンジ君ですた
>522
GJ
当日の話や後日談も読みたくなるなぁ
「うわぁ……何だか被害出てないみたい」
「ホントだ」
「物質的な被害が出たのは、戦闘があった第三周辺だけだからね。それ以外の地域の混乱は殆ど無かったみたいだよ」
まだ第三付近は復興工事が始まったばかりで、それ程物資の流通がある訳ではないらしい。
実際通り過ぎた市街地は瓦礫すら殆ど残っていなかった。
残っていたのは建物の痕跡を示す鉄骨の基礎部分と、侵攻して来ていた戦自の戦車と戦闘機の残骸が僅かだけ。
全ての人が戻って来始めた時、一面の荒野原に戦自隊員が倒れていた状態だったそうだ。
それ以外の場所は、サードインパクト直前と比べると殆ど変わり無い状態らしいとか。
変化があったとすれば、地軸がセカンドインパクト以前の物に戻っていたという事位。
その証拠に道路を境にしていた事が多かった海岸線が、随分と遠くに見える状態になっている。
「あれが?」
「そう、セカンドインパクト前の海岸線の名残。随分と違うだろ?」
「じゃあ、あの橋桁っぽいのは?」
「あれは高速道路の残骸だな。あれを北に辿って行くと、崩れたレインボーブリッジのでかい残骸が見えるんだ」
「その向こうが……?」
「そう、旧東京。この辺に住んでいた人は、さぞ驚いたと思うよ。気付いたら目の前に沈んだ筈の市街地が見えるんだから」
遠い海岸線のその向こうに見える小さな影。
それは目的地に近づくにつれて大きくなっていく。
初めて見る景色。
如何にセカンドインパクトでの海岸線の上昇が凄まじかったのかが、車の中から眺めているだけの僕でもよく判った。
そして、行き交う車が増え始める。
「この辺は普通の生活に戻っているのね」
「生活だけはね。行政は色々とややこしいままだけど、基地の近いUNが警備に当たってる分この辺は安全なんだ」
「UNがですか?」
「お役所の調査員の護衛だよ。インパクト前の登記簿と目で照らし合わせなくちゃ、おいそれと再開発は出来ないからね」
「警察はどうしたの?」
「浮上した地区の空家状態の建物に入り込む奴が多くて、そいつらの取締りにてんやわんやしてるんだ」
久々の街の景色は新鮮だった。
第三に比べると、随分と緑が多いのは気の所為だろうか?
僕達を載せた車は街の中心を通り抜け、山の手に近い建物の駐車場に停まった。
そこは第三にあったショッピングセンターと同系列の店舗だった。
ただ、第三の店舗よりは幾分か古いみたいで、外壁が煤けた感じがする。
店舗が大型なだけあって立体駐車場も結構広い分、車を停めた位置から店舗の入り口迄の距離があった。
「少し歩くけど、ここでいいか。遅くなったが先に飯食って、買い物はその後だな」
時計を確認すると、針はもうすぐ午後二時になる所。
「そう言われれば確かにお腹減ったわ」
「うん、ペコペコだ」
「二時間近く車で走ったら腹も減るさ。ここは俺が奢るから、好きなだけ食べて良いよ」
「ホント? 病院食は飽き飽きだったのよねぇ」
入院中のアスカはいつも食事を前にすると、味気がないと零していた気がする。
胃腸が僕以上に弱っていて食が細かった為、普通食の許可も随分と遅かった。
味の濃い食事が恋しいと思う部分が強かったのかも知れない。
尤も、それは僕も同じ。
「じゃあ……洋食系はどう? 病院食って和食中心の時の方が多かったし」
「中華も良いなぁ。でもイタリアンも捨て難いのよね……」
「だったらファミレスが良いんじゃないか? あそこなら殆ど揃ってるだろう」
僕にもアスカにも異論は無かった。
話が纏まった所で移動する事にする。
駐車場のすぐ下のフロアはレストランエリアで、昼食の混雑時を少し過ぎた所為か人通りは疎ら。
それでも人の行き交う雰囲気が、元に戻ったんだという実感を湧かせた。
「本当に、何も無かったみたいだ」
「そうね……」
店の中を流れる音楽が途切れ、呼出の館内放送が流れる。
そんな部分にも、人が生きて生活しているという事を思い起こさせた。
食事は一言で言えば美味しかった。
何処となくチープな雰囲気を持ったチェーン店だったけど、それが余計に元に戻った事を感じさせる。
こういう所のメニューは殆どが冷凍食品やレトルト加工品を大量に使っているのが判るからだ。
そしてそれの一日で消費する量は相当な物。
という事は、物資が充分な量で流通していると言える。
それは些細な事かも知れないけれど、人の営みという物が続いているという事の証だ、と僕は思う。
ただ、アスカの食の細さは入院中と余り変わらなくて、全部食べ切る事は出来なかった。
それでもアスカは充分満足出来たみたい。
「ジャンクフードが懐かしく思えるなんて思わなかったわ」
多分、アスカなりの褒め言葉なんだろう。
けれど……何かが引っ掛かる。
「アスカ、もうお腹一杯なの?」
「うん。でも入院中に比べたら食べた方じゃない?」
「そりゃそうだけどさ……」
アスカの皿を見ると、何とか半分を空にしたかどうか位。
「多分、まだ本調子じゃないからじゃないか? その内食べられる様になるさ」
青葉さんはそう言ってくれるけれど、幾ら何でも食が細過ぎやしないだろうか?
今日こうして退院出来ているという事は、やっぱり問題無いという事だけど。
でも、前はこんなに食が細かったかな?
いや……前は間食もして食事もキチンと摂ってたから、今みたいに食が細かったなんて事は無い。
それに陽の光の下で見るアスカの横顔は、入院中よりはマシとは言え僕にはかなりやつれて見える。
やっぱり、サードインパクトの時の影響なんだろうか。
どちらにしても気を付けてあげないとダメだと思った。
でないとまた入院なんて事になったら大変だ。
本部に戻ったら、自炊出来ないか聞いてみよう。
どうせ暫くは居住ブロックに住む事になるんだろうし、簡単なキッチン位は部屋にある筈だ。
いざとなれば食堂のキッチンを借りてもいい。
多分、今の僕に出来る事はこれ位しかない。
ほぼ1年振りですんませんorz
>>523 その内書きますです
乙乙
乙かれです。
前のものから読み返し、楽しませていただきました。
続き期待しまくってます。
食事を終えた僕達は、案内板でフロアを確認してから売場に向かう事に。
その前に食後のコーヒーを飲みながら、買わなければならない物を箇条書きでリストにする事にした。
「ねぇ、やっぱり纏め買いしないとダメなの?」
「……近所で買えると楽なんだけどな」
「今急ピッチで旧市街地にショッピングセンターが建設中だから、もう暫くの辛抱さ。
食料品や日用品だけは年明けにも普通に買える様になるよ。それ以外の物は春にならないとダメだけどね」
そう言いながら青葉さんはサラサラと手帳に買う物を書き込んでいく。
二人分の着替え……靴も要るかな?
後は洗剤等の日用品も忘れちゃいけない。
「着替えは纏めて何枚か買わないとダメか」
「じゃあシンジ、荷物持ちお願いね?」
「え?」
「何よ、嫌なの?」
「嫌じゃないけど……そんなに沢山は持てないよ」
「解ってるわよ。カート係、それで良いでしょ?」
全く、どれだけ買うつもりなんだか。
それでも良い気晴らしにはなりそうだと思う。
よく考えたら、入院中は白い壁と白い病院服しか見てなかったんだよな……。
こうして外に出ると、病院が如何に無機質で異常な空間に感じるのが判る。
温かみのあるクリーム色の壁が使われている店舗の中が、妙に明るくて目にチカチカ痛い。
売場に移動したらもっと目に痛く感じるかも知れない。
けど、それが何処か新鮮だと思う部分もある。
アスカも心なしか浮かれているみたいで、口元から笑みが消える事は無かった。
そんなアスカの姿を見るのは初めてかも。
僕のまだ色褪せるには早い記憶の中のアスカは、いつも何処かに力が入っていて、顰めっ面なのが殆どで。
でも今はそんな事なくて、肩の力が抜けてリラックスしている感じなのかな?
多分、それはアスカにとって良い事なんだと思う。
こんな普通の事なんて一体何ヶ月振りだろう。
でもそれはきっと、以前だってあった筈だ。
ただネルフという特殊な環境の中に居た僕には、別世界の物だとしか感じられなかっただけの事。
本当は手を伸ばせば届いた筈の事なのに。
多分、僕は何もかも諦めて自分で動こうとしなかったから、普通の事だと言われている事が新鮮に思うのかも。
でも……何故だろう?
つい最近の事みたいに感じる。
時間の感覚が何処かおかしいのかも知れない。
例えれば、流れる川の真ん中に一人立ち尽くして居る様な。
そう、周囲に取り残された感じだ。
半年前にはもう、ネルフ関係者以外は全員疎開していたから……それより前の話になるのか。
その頃と同じ様に、何故か周囲に押し潰されそうな気もしてくる。
理由は判らない。
何故か空気が重い。
ああ、そうだ。
いつか入った映画館で見た映画みたいな。
スクリーンの向こうの造られた景色を見ている感覚と一緒なんだ。
僕は、何処かおかしいのかも知れない。
隣にアスカが居るのは解る。
青葉さんだって向かいの席に居る。
でもアスカはすぐ側に居るのが解るのに、青葉さんの事はドラマの登場人物か何かみたいな感じがする気がする。
何が違うんだろう……?
二人とも側に居るのに、どうして僕はこんな事を感じてしまうんだろう?
自分の事なのに理解出来ない。
いっそ頭の中を覗いてしまえれば、自分の事も理解出来るだろうか?
子供染みた発想。
でも……そんな発想に縋りたくなる位、僕は自分の事がよく解らない。
「……ちょっと、シンジ? 話聞いてる?」
「ぁ……あぁ、聞いてる。聞いてるよ、アスカ」
「もう、ちゃんと聞いててよね! 着替えだけ買って終わりじゃないんだから」
アスカにまた怒られた。
ダメだ、気を抜くとすぐに考え込んでしまう。
「まぁまぁ、腹も膨れりゃ眠気が起きるさ。なぁ?」
「いや……別にそういう訳じゃないんですけど……」
「青葉さん、甘い。そんな普通の反応する位だったら可愛いけど、コイツの場合はそんなんじゃないわよ!
絶対考え過ぎて自分でも何考えてたのか解らなくなってるに決まってるんだから!」
――何で判るの、アスカ?
その物ズバリを言い当てられて返事に困っていると、更にアスカに畳み掛けられた。
「ったく、ボーっとして……結構目が泳いでるから丸判りなのよ。いーい? 二度と言わないから覚えておくのよ?」
「う、うん」
「まず二階でアタシの買物済ませてから、アンタの買物ね。その後三階に上がって、タオル類や簡易チェストを買うの。
日用品は一番最後で、アンタはアタシの荷物持ち。解った?」
「うん……解った。取り敢えず、アスカの後を付いて行けば良いんだよね」
それなら何とかなると思う。
歩きながらぼんやり考えるなんて事をしたら、迷子になるかも知れない。
迷子にならない様にするには、アスカの後を付いて行くのが一番確実だ。
「じゃあ話が纏まったって事で、そろそろ行くかい?」
「はぁい」
「青葉さん、ご馳走様でした」
「俺は会計済ませてくるから、エレベーターの前で待っててくれよ」
青葉さんが会計を済ませている間、言われた場所には直ぐに向かわずに僕達は案内板を探した。
運良くそれは直ぐ見付かり、目的の売場の場所を確認する事も難無く出来た。
その後青葉さんと合流して、まずは二階の婦人服売場へ。
直ぐ横にあったエレベーターに乗り込んだ……けど、何だろう?
また、空気が粘つく感覚がする……。
話の流れはもう暫くまったり進行系だったり
投下もまた暫くはまったり気味だったりorz
なるべく頑張ってみるー|´・ω・)ノ
がんばってー
ちゃんと見てますぜ
待ってるぜ
投下町
537 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/04/08(水) 00:59:49 ID:VV/oqhyA
え
待ってるぜ。
まち
あげますよー
投下楽しみにしてます
保守
保守
シンジ!誕生日おめでとう!
保守
保守
新劇スレ立ち過ぎなので一応保守
「迎え火」が落ち着いたら「ビニール傘」を集中的に書きますんでヨロorz
楽しみに待ってるガンガレノシ
まっちまっち(*´д`)
549 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/02(木) 02:06:17 ID:gAkXEMDw
あげ
またアスカで抜くのか
あげ
エヴァ板良スレ保守党
保守点検
554 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/13(月) 03:42:22 ID:a2QSW9z2
保守あげ
星
エヴァ板良スレ保守党
557 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/22(水) 01:22:21 ID:ALStARgI
保守
保守