学園エヴァで同棲生活
2 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/02(月) 17:27:51 ID:r9xtgiu2
セックスは花見の後にこっそりやるもんだぜ
糞スレ
糞スレ
LAS人だが、新スレはいらんだろと思います
6 :
シンジ:2007/04/04(水) 04:04:17 ID:???
乳首チュウチュウチュウ
使わないの?
本スレの過疎も止められないんだ
前スレなんてあった?
保守ってみる
11 :
課長代行(若大将) ◆KACHOGgMKg :2007/05/05(土) 04:02:39 ID:8gyDMon3
ここでアスカは、
こ う 言 い ま し た !!
(´・ω・`)今日はあの日だから無理なの。
バカシンジのくせにぃ〜ッ!! (///
14 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/05(土) 23:14:01 ID:YSvJ5raf
ちょっとバカシンジ!?私の肩、揉みなさいよ!!
15 :
課長代行(若大将) ◆KACHOGgMKg :2007/05/06(日) 18:46:52 ID:dOWaqjAv
お兄ちゃん、らめええええええええ!!><
16 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/17(木) 11:32:25 ID:6+biB4Q8
最終警告迷惑だ。 最終警告迷惑だ。 全ては宇宙人の行為だ。
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私を超能力扱いする。 こんなはずでは!!迷惑だ。 こんなはずでは!!迷惑だ。
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全ては宇宙人の行為だ。 私を超能力扱いする。 私を超能力扱いする。
Haku Haku 白政則
17 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/17(木) 12:13:59 ID:6+biB4Q8
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Haku Haku 白政則
おいおい大丈夫か↑のやつ。母親殺したりしねーだろーな
19 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/18(金) 02:05:25 ID:I4S4IcMJ
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あげ
あれほどしたかった同棲生活。
正直言えばアタシはアイツに幻想を抱いていたのかもしれない。
同棲から数ヵ月。
シンジと登校。
シンジと食事。
シンジと買い物。
そのどれもが楽しく、満たされた生活。
だけど、アタシの中には。ある感情が芽生えていた。
あまりにシンジは料理や家事をしなかった。
家庭科の実技は良かったのに。アタシは本気で、『シンジは筋がいい!』と思った。だけど……。
朝もそう。
自分ではけして起きない。
その総てがアタシに頼りきった生活。
そしてアタシは、ある決断を下した。
続かない。
寧ろシンジに家事頼りっぱなしだとオモワレ
学園だから〜としたいんだろうけど、もの凄くピンとこないネタだなw
眠りの中から僅かに意識が戻るころ、一番にアスカの耳には不規則な雨音が飛び込む。
週に一度の休日を迎える朝、彼女は外出を拒もうとする天の采配に憤りを覚えながら、
カーテンのすぐ下に九時過ぎを告げるデジタル時計を確認した。
時間が惜しいと感じたのかアスカは起き上がる。 重い上半身を、右手の力だけでゆっくりと起こす。
身体を包んでいた布団が重力のままに滑り落ちる。少し寒さを覚えながら、左手で目元をこすりボヤける
視界を修復するアスカ。 次に目をやったのは、自分のすぐ隣で同じ布団に未だ包まれたままの同居人だった。
碇 シンジは、身体をアスカの方へ向けたままいまだ眠りの中にいた。
幼さの残る端正な顔の無邪気さが引き立つ寝顔を、すでに何度も見ていながらも
堪能してしまうアスカ。 この男が眠ったままではアスカの一日も始まらない。
しかし、それでも彼の眠りを妨げる気が起きない。 アスカはこれを自分の悪癖だと自覚していた。
かつて所属していた組織が解体され、自身を縛り続けた任から解かれたアスカは
この国に留まる道を選んだ。 その時の己の心の中にあった小さな慕情に、彼女自身は
まだ、気付いていない。
それでも無意識下にその心に沿おうとする彼女は、進学と同時に独り立ちを決めた
同僚との暮らしを望み、また彼もそれを快く受け入れた。
一年が経ち、二人の関係は以前よりも深いものになりつつあった。
だが、アスカにとってのシンジは、最も必要とする異性であると同時に
組織の中では目の上の瘤でもあった。 その思いが今でも尾を引き
本心で望む進展を遮っている感は否めなかった。 そうした同棲の上に起こりうる
亀裂を防いでいたのは、シンジの純粋さであることをアスカは認めている。
雨音の中、姉のようにシンジを見つめるアスカの瞳はこの一年で手に入れた色をしていた。
26 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 10:55:12 ID:f2VTt0FL
エヴァの限定500のオーディオが・・・・
出品されてる^^;
君には続きを書く義務がある
存分にやりたまえ
ってか、やれ
あげ
age
ほしゅ
32 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/11(水) 16:17:56 ID:mWiDjMd5
街
33 :
21:2007/07/12(木) 16:48:00 ID:???
続いても良いですか?
汚名返上良いですか?
10時間の間には投下します宜しく。
街
綾波の方が良いのに
36 :
21:2007/07/12(木) 22:04:44 ID:???
「だぁ〜!どうしてアンタはそうトロイのよぉー!」
「そんな事言ったってしょうがないだろ!」
アタシとシンジの同棲部屋に響く怒号。
休みの日にこんなに騒いだら迷惑じゃないかと頭を霞めるけど、怒鳴らずにはいられなかった。
「だからなんでアンタは包丁の使い方がド下手なのよ!」
「しかたないだろ!あまりやったことないんだから!」
そう、とにかくコイツは包丁の使い方がまるでなっていない。
“猫の手”は知らないし、切ったら切ったでネギの数珠繋ぎだし……。
本当にもうどうしようもない。
味付けとか鍋の煮込み加減とかは完璧なんだけど。
「だから指先は猫の手にしろって言ってんでしょぉー!」
シンジはブスッとして答える。
「いいじゃないか……切れるんだから……。」
アタシはシンジの切ったネギの数珠をかざして言い放つ。
「アンタバカぁ〜?これのどこが切れてるって言うのよ!」
「食べれば同じじゃないか……。」
37 :
21:2007/07/12(木) 22:07:28 ID:???
その言葉に、アタシは溜め息を吐きながら椅子に崩れた。
「サイッテー……。」
沈黙が部屋を支配する。
何か……少しおかしい……。
いつもなら言い返してくる筈の、シンジの声が聞こえない。
そう思った矢先に、急にシンジの声が部屋に響いた。
「じゃあ出ていけばいいだろ?」
この言葉に、冷め始めていたアタシの頭は再び沸騰する。
「なによ!アタシが全部悪いってワケぇ?」
バッと俯いていた顔を上げてヤツの眸を睨みつける。
アイツは『しまった』って顔をしていたけど、たとえ間違いでも、アタシは許せない。
「なによ!アンタ一人じゃ家事の一つも出来ない癖に!」
あとは売り言葉に買い言葉。
それでアタシは公園でぶらぶらしてる。
シンジへの憤りと後悔のジレンマ。
歩き疲れて、アタシはベンチに座った。
時間はもう昼過ぎ。
休みの日だと言うのに会社員が多い。
休日出勤なのだろう。
持参の弁当を食べる者、買ったパンやおにぎりを頬張る者と様々だ。
ボンヤリとその光景を見つめていると、ふと太陽光が遮られ、暗く陰を落とす。
ハッと見上げる。
そこにいたのは……。
「なにをしている。」
「ゲンドウ叔父様……。」
左手に可愛いい熊の包みをぶら下げたシンジのお父さんだった。
今、アタシの隣には熊の包みから取り出した弁当を食べる叔父様がいる。
アタシの独白を聞きながら。
39 :
21:2007/07/12(木) 22:11:48 ID:???
全て話した。
普段のシンジ。
家事が駄目なシンジ。
アタシに出ていけばいいと言ったシンジ。
その話しが終わる頃には、叔父様の食事は終わっていた。
「そうか……まったく、バカなヤツだ。」
アタシは黙っていた。
いつもなら誰かれ構わず、シンジにそんな事を言えばつっかかって行っていたアタシが、沈黙していた。
叔父様の口がゆっくりと開く。
「君の言い分ももっともだ、しかしな……。」
叔父様は傍らの弁当箱を一撫ですると鼻でフンッと笑った。
「こんな弁当だが、私の様なヤツにとっては堪らなく嬉しい物だ。」
アタシはその時、弁当を撫でる叔父様の目が優しさに満ちている事に気が付いた。
叔父様はすくっと立ち上がる。
「どうだ?今日は煩い冬月もいない。研究所によっていくか?」
40 :
21:2007/07/12(木) 22:16:13 ID:???
うん、シンジやゲンドウのキャラがおかしいって人がいるだろうね。
まあ、シンジのキャラについては貞シンっぽく変えました。学園だしまぁいいかなぁ〜なんて。
ゲンドウだしたのもなんか加持出すのやだなぁなんて好みで決めてしまっただけです。
アスカの息くさそう
学園シンジか・・・多少違和感あるが
まあ職人乙
人そんなにいないみたいだし自由にやっちゃって
ここも夫婦スレのまとめに載っけるの?
夫婦じゃないけど
別にいいんでね?
45 :
21:2007/07/15(日) 21:44:50 ID:???
アタシは無言で立ち上がると、叔父様について歩き出した。
ネルフの研究所は地下にある。
地下の天然洞窟を利用して作られたらしい。
その空洞の真ん中に有るのはピラミッド型の研究棟だ。
叔父様に連れてこられたのはオフィスのような部屋。
表には名前が書いてあったから恐らく叔父様のだろう。
連れてこられてから、ゆうに30分は経っている。
唐突に扉が開く。
長身の叔父様がノッソリと現れて少し驚く。
だけど、アタシの目はその後ろに向いていた。
「誰よそれ?」
思わず素の口調で喋ってしまう。
だけどそうせずにはいられなかった。
後ろにいたのは、叔父様にはちっとも似合わない少女だったからだ。
青い髪で白い肌。赤い瞳でムスッとしている。
笑えばさぞ可愛いいだろうが、無表情ではその顔の魅力も半減している。
46 :
21:2007/07/15(日) 21:50:09 ID:???
その少女は叔父様に促されてやっと挨拶をした。
「綾波レイ……。」
呟くような自己紹介に気分が少し悪くなる。
叔父様も溜め息を吐いているようだ。
そして、声が聞こえる。
「しばらくレイと同居してみんか?」
沈黙が降りる。
「えぇぇえぇぇええ!?」
アタシの悲鳴がオフィス内に木霊した。
続く
遅筆の上に短いorz
家の魔窟を片付けたりしてたんで
ほ
48 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/26(木) 04:20:20 ID:YIsTcxke
過疎スレだな
アゲんな屑
はやく続きを
51 :
21:2007/08/01(水) 19:28:53 ID:???
「へぇ〜、結構やるのね、アンタ。」
アタシの目の前には美味しそうな料理が並んでいた。
「そう……。」
折角誉めているのに相手の反応は薄い。
それがどこか舐められている様で腹が立つ。
しかし、アタシは仕方ないと諦める。
感情が乏しい娘だから。
シンジへの軽い当て付けのようなものも手伝って、 アタシは綾波との同居をとりあえず、承諾した。
アタシは綾波との同居部屋に着くと、直ぐに彼女に命令を下す。
「もうこんな時間?ほら、夕ご飯作るわよ。」
昼ご飯もろくに取って居なかったアタシのお腹は空腹に哭いていたからこの選択はしごく当然の事だった。
アタシがキッチンへ向かおうと席を立つと、綾波は既にキッチンに立っていて、料理を始めている。
部屋からは地下の洞窟が一望でき、アタシはそれをただボンヤリと見つめて料理を待っていた。
やがて部屋の中には美味しそうな匂いが漂い、アタシの鼻孔から脳中枢を刺激した。
完成した料理を無表情な綾波がテーブルへ運ぶ。
52 :
21:2007/08/01(水) 19:31:32 ID:???
アタシが手伝うまでもなく作られた食事は基本的な日本料理で、中々の出来栄えでだった。
「まあ美味いわね。でも、アタシ的にはシンジの味付けの方が好きだけど……。」
思わずシンジの事を漏らしてしまう。
「誰?」
口に出すつもりは無かったのだ。
心の中にはシンジへの意地があったから。
しかし言ってしまったものはしょうがない。
アタシは渋々、箸を置いて説明を始めた。
「ああ、碇シンジ。叔父様……じゃない碇主任の息子よ。」
言うと決めるとアタシの口はヤツの事を聞きもしないのにベラベラと喋りだす。
「どうしようもなくトロくて情無いヤツなんだけど、まあそこが母性本能くすぐるっていうか……なんか側にいると落ち着くのよね……。」
彼女は暫くアタシの言うことをやっぱり無表情で聞いていて、アタシが語るのを止めると黙り込んで俯いていた。
そして唐突に口を開く。
「貴方。その人の事が好きなのね。」
53 :
21:2007/08/01(水) 19:34:02 ID:???
「え?あ……ええ?そ、そ、そんな事な、な、なんで思うのよ!」
ああ、駄目だ。思いっ切り動揺してしまった。
これでは肯定しているのと同じではないか。
いや、それよりも何故解ったのか。感付かれたのかと慌てた。
「だって貴方。その碇君の事を話す時、凄く楽しそうに話しているもの……。」
思わず顔に手をやる。
自分の顔が綻んでいたのに気が付く。
「そ、そんな事……。」
無い。とは言え無かった。
恋心を抱き、ママや叔父様に無理を言って同居した事は事実なのだから。
「解ったわよ!白状するわ!同居もしてるし、好きよ、好き!さあ!これで満足かしら!?」
言ってから気付く。
しまった、と。
「そう、同棲しているのね。」
同居を知られた挙句、それを同棲と脳内変換されたアタシは激しく動揺する。
54 :
21:2007/08/01(水) 19:38:55 ID:???
「あ゛……。」
慌てて口を塞ぐ。
動揺した上に変な声まで出してしまったアタシの顔は真っ赤に上気している。
綾波を見てみると、どこか目を輝かせてアタシを見ている気がする。
「な、なによぉ〜。」
アタシは少し凄んでみせるが、コイツはちっとも怯まない。
「貴方はどうしてここにいるの?」
「なによそれ?」
少しムッときた。
アタシがここに居て、何か悪いと言うのか。
しかし違った。
「彼の事が好きなら、何故貴方はここにいるの?」
的を射た言葉だった。
だけどアタシは、それを意地張って認めようとしないで。
「それは……。アイツがトロくて……駄目なヤツだから……。」
何時の間にかここにいる理由を探すアタシがいる。
「貴方が好きで同棲、しているのなら彼も貴方の事が好きなのではないの?」
55 :
21:2007/08/01(水) 19:40:06 ID:???
確かにそうだ。
いくら何でも好きではない人と同棲出来る程アイツは図太くない。むしろ繊細な方だ。
ならば、やっぱりアタシの事を好きでいてくれるのだろうか?
頭の中でフラッシュバックが起こる。シンジが冷たく言い放った言葉。
『じゃあ、出ていけばいいだろ。』
いや、最初にアイツへ酷い言葉を吐いたのはアタシだ。
『サイッテー。』
アタシが最低だ。
シンジだって苛ついていた筈なのに……。
出来ない自分と、煩いアタシに。
アタシだって悪いんじゃないの?
頭の中で自答する。
「悪いわね……。やっぱアタシ帰るわ。」
「そう……。」
決めた。
アタシは帰る。
あの部屋へ。
そう、アタシはアイツが好きなんだ。
ありがとう。
レイ。
「また来るわよ。今度はシンジも連れてくるから、待ってなさいよ!」
「……ええ……さよなら……。」
56 :
21:2007/08/01(水) 19:43:09 ID:???
シンジと会わせたらどうなるだろうか。
もしかして略奪愛とかならないでしょうね?
会わせてあげる。
きっと気が合う筈だ。
エアロックを開ける。
「ただいまぁ……。」
返事は無く、室内は沈黙している。
時刻は既に午後の10時を回っていた。
靴を脱ぎ捨て、ダイニングへ向かう。
シンジはいるのか?
いたならばどんな言葉を掛ければいいのだろうか?
ダイニングと廊下を隔てるドアをゆっくりと開ける。
そこにシンジは居なかった。
代わりにあったのは……。
「野菜炒め……。」
テーブルの上には雑に切られて炒められた野菜があった。
まさかシンジが作ってくれたのだろうか?
アタシは考える前に行動していた。
57 :
21:2007/08/01(水) 19:45:17 ID:???
廊下に飛び出すと、シンジの部屋へ駆ける。
部屋の中で一呼吸すると、ドアノブをゆっくり回して扉を開けた。
恐る恐る中へ入る。
暗い室内。
ベッドの方から聞こえてくるのは規則正しい寝息。
アタシはベッドの傍らに膝を突いてシンジの寝顔を眺めた。
安らかな寝顔。
ふと、手を見てみる。
コイツ……。
アタシは内心で呟く。
シンジの指には沢山の絆創膏が貼ってあって、怪我をしたのだと解る。
もしかしたらここまでしてあの料理を作ったのだろうか?
アタシは目を細め、慈しむようにシンジの手を包み込んだ。
「無理しちゃって……。」
終
58 :
21:2007/08/01(水) 19:47:50 ID:???
ラストの方がちょっとクサいかな〜と思う今日この頃。
いいんじゃん?乙華麗
また書けよ
できるだけはやくな
良かったよ。
はい置きますよ
つGJ
新作まだー??
この二人、結婚生活より
同棲生活の方が似合ってるような気がする
同棲ってか共同生活が似合ってんじゃないか?
アスカとシンジは兄弟設定のほうが似合ってたりしないか?
捕手
ほ
保守
明日香「ねぇ…しよぅ…」
しんじ「また…?」
やっべたまらね
☜
保守
保守
ほ
ho
あの長い様で短かった夏の日に別れを告げて1年余りが経った。
時折あの頃に戻った錯覚を起こすけど、概ねアタシ達は新しい生活と新しい関係を受け入れている。
まだ戸惑う事も多いのは、それはそれで仕方ない事。
夢か現実か、天国か地獄か、生か死か、創造か破壊か、どう喩えたら良いのかは判らないけど。
そして、サードインパクトを乗り越え戻って来た人々が口にした事は一致している。
その最中の内容を正確に覚えていると言う人は、誰一人居ないと言う事。
第3新東京市付近に居た人の証言に限れば、もっと特殊な状況だったと判った。
至る所に破壊された戦闘の形跡があるのに、何事も無かった様に無傷で倒れていたらしい。
ネルフ本部内にしても、戦自と量産機の攻撃により酷い有様だったみたい。
アタシ達はホテルで何事も無くライフラインを使っていたから、それを管理するMAGIが無事なのは知っていた。
次々と皆が意識を取り戻す中、それに逸早く気付いたのがネルフ側だったのが幸いしたのだと思う。
指揮系統が混乱し、戦意を失いつつある戦自に先手を打てたのも、全てMAGIのお陰だから。
だけど、アタシ達にとっては全く蚊帳の外の出来事だった。
何故ならその頃アタシ達は二人共、ジオフロントの奥深くに居たから。
全てが始まった立ち入り禁止地区に。
アタシはそこであった事に関して全くと言っていい程知らない。
奥へ奥へと進むシンジの背を追っただけに過ぎない。
シンジが何を考えていたのか、アタシは知りたいと思わなかったし、聞きもしなかった。
整理が付いたらきっと、アタシには打ち明けてくれると思っていたから。
立ち入り禁止の扉の向こうに入る事は適わなかったけど、そこに行く事自体がシンジにとって大きな意味があったのだと思う。
扉の前で佇んで居るシンジの背中を、アタシは少し下がった位置から眺めてた。
初めて会った頃はアタシが前を歩き、シンジがアタシの背中を追っていたと思っていたのに。
少しだけアタシを追い越した背、心持広くなった背中……逆になったのは何時からだろうと、ずっと考えながら。
アタシを振り返った時の顔は何だか憑き物が落ちた様だけど、浮かべた笑みは穏やかだったと思う。
その後地上に戻ろうとした途中、LCLに融けた人達が戻り、ネルフ側が戦自を巻き返している現場に遭遇する。
始めは夢じゃないかと二人共混乱した。
アタシ達がジオフロントに足を踏み入れた時は、間違いなく誰も居なかった。
あちこちに残る戦闘の傷跡を目の当たりにし、LCL溜まりと脱ぎ散らかされた服の隙間を縫って奥に進んだのだから。
それが夢でも幻でもないと確信出来たのは、アタシ達が無事だった事をみんなが祝福してくれた時。
アタシ達は心の奥底に抱えていた物が少しだけ軽くなった気がした。
今にして振り返れば、これが全て動き出した始まりだったのだと思う。
その直後、アタシ達は二人纏めて医療部に引き渡され、延々と精密検査を受ける羽目になる。
結果は日常生活に関しては今の所は問題無いと知らされた。
その代わり今迄の精神的な負荷が予想以上に大きく、どういう影響が出るのか気に掛かるが、と付け加えられたけど。
結局、それ以外の事は何も判らなかった。
栄養失調気味で体力も落ち、軽い衰弱を起こしていた事もあって、検査が終わっても暫くの間は入院生活が続いた。
地上は戦闘で新市街地が丸々吹き飛んだ事もあり、復旧には時間が掛かるかも知れないと人伝えに聞いた。
LCLに融けた人もまだ全員戻って来た訳じゃないみたいで、ミサトの行方は全く攫めなかった。
人材も資材も足りない中、アタシ達の入院生活を穏やかな物にしてくれたのは、意外な事に司令だったらしい。
ジオフロントの最深部で発見されてから、寝食を惜しみ身を削りながら、日本政府と戦自との折衝に動いてる。
それもあってかシンジとは病室が別だったけれど、眠る時と検査と診察以外はほぼずっと一緒に過ごす日々。
副司令はまだ行方が判らないらしい。
それがどういう影響を及ぼすのか、アタシ達には全く解らない。
ただ、今のアタシ達は無力な子供として保護されているのだけは判った。
直接知っている職員で、行方が判らないのはミサトと副司令と日向さんとマヤ。
リツコは司令と一緒に発見されたよと、小まめに様子を見に来てくれる青葉さんが教えてくれた。
毎日少しずつだけどLCLから戻って来た人が増えているそうだ。
どれだけ時間がかかるか判らないけど、世界中に人々が戻り以前の様に活気付くのも夢じゃない。
レイの事は誰も触れようとはしなかった。
彼女がどうなったのか憶えてはいなくても、薄々感じているのだと思う。
アタシ達は知っているけど口にする事は無かった。
彼女もそれを望んでいないと思ったし、それで良いんだと思う事にした。
彼女の想いはアタシ達が確かに受け取ったから。
アタシ達以外の周りが急激に変化していく。
以前はそれに付いていけずに、アタシもシンジも流されるまま心を壊していった。
自分以外の他人を傷つける事しか出来なかったアタシ。
自分以外の他人への恐怖に心を閉ざしていくしかなかったシンジ。
でも、もう大丈夫。
他人と向き合う事によって、自分を認める事が出来る。
あやふやで確かな物ではないけれど、アタシ達はお互いを認め、手を取り合い共に歩む事が出来る事を知ったから。
そんな中、日本政府と戦自との折衝が落ち着いた後、極僅かの内輪にだけ知らせる形で司令とリツコが入籍したという報せ。
勿論、アタシは素直に祝福する事が出来た。
二人に対して蟠りもあるけれど、結婚は純粋に喜ばしい事だもの。
シンジにとっては少々複雑な思いもあったけど、祝福する事は出来たみたい。
だからなのか退院後の司令とリツコの同居の申し出を保留し、アタシとの同居を選んだのも自然な流れかも知れない。
そして、アタシはドイツには戻らなかった。
ドイツ支部がサードインパクト直前の戦闘で敵対していた事もあったけど、アタシの両親の無事を確認出来なかったから。
復興途中の第3新東京市で、アタシ達は新しい世界の扉を開く。
退院後二人での生活を始めようとした頃、ようやくドイツに居る両親の無事が確認された。
アタシはちょっとだけ、ぎくしゃくしていた両親との関係を改善する事が出来た。
シンジもちょっとだけ、司令と話す時間が増えた。
表面上は殆ど変わらないかも知れないけど、アタシ達にとっては大きな意味があったと思う。
その証拠に新しい住居は司令とリツコの新居の隣。
絶たれていた縁を結び直す切欠になったのだから。
避難先から戻って来た人々。
新しく移住して来た人々。
復興後、再開された学校でのクラスメートとの再会と新しいクラスメートとの出会い。
LCLから戻って来た人々との再会。
小さな輪が少しずつ、大きな輪になり、世界が広がるのを感じる。
二人だけの輪が大きくなっていく。
以前は拒否したかも知れないけど、今のアタシ達なら受け入れられる。
他人と触れ合う事の恐怖を乗り越える事が出来たから。
二人でなら大丈夫、きっと。
パイロットだったのが予備役に変わっただけで、以前と然程変わらない毎日。
少しだけネルフに篭る時間が減った分、普通の中学生としての時間が増えた。
サードインパクトの影響なのか、セカンドインパクト以前の四季が戻りつつあるらしい。
廻る季節を感じながら、思い出を積み重ねる事が純粋に楽しく思える。
何気ない会話がこんなに大切に感じるなんて思いもしなかった。
偶に喧嘩もするけれど、それすらスパイスみたいな物かも知れない。
愛情を育む事がどういう事か理解出来た気がする。
ただ求めるだけじゃなくて、与える事も必要なんだって事が。
サードインパクト直後の二人で過ごしたあの日々は、思えば一方的に求めるだけ。
それ以前も見返りを得る為じゃないけれど、ただ周囲に愛情を求めただけで与える事は無かった。
気付かなかったからこそ、アタシ達は狂った様に肌を合わせ、快楽に溺れ、傷を抉る事になったのだと思う。
今とは正反対。
無理に肌を合わせなくても、解り合えるって気付いたから。
ままごとみたいな生活かも知れないけど、シンジと一緒に暮らす日々を愛しく思えるアタシは幸せ。
アタシはドイツで体験していたけど、シンジにとっては初めての冬。
まだ完全に季節が戻った訳じゃなかったから、少し肌寒いだけの冬。
アタシの誕生日はネルフの喫茶室で一緒にケーキセットを食べた。
ショートケーキじゃなくてミルクレープしかメニューに無かったのは残念。
「おめでとう、アスカ」って飾り気も何も無かったけど、シンジからのその言葉が一番のプレゼント。
それだけでも嬉しい。
クリスマスも雪は降らなかった。
まだ完全に落ち着いた訳じゃなかったから、特に何かする事も無く普段と変わらない日。
その頃再開した学校もまだ生徒が少なくて、見知った顔も疎ら。
付き合いがあった中で一番最初に再会出来たのは相田だった。
以前、シンジとの間に何があったのかは知らない。
けど、溝があったのは知ってる。
その溝を埋められるかどうか心配だったけど、取り越し苦労で済んだみたい。
再会後にどういう話をしたのか、アタシは聞かなかった。
それでもお互いぎこちない笑みで握手をしていたから、大丈夫だったんじゃないかな。
男と男の友情なんて解らないけど、多分一つの区切りが付いたんだと思う。
でも、アタシに向かって相田が言っていた事の意味は何だったんだろう?
「良かったな、惣流」って何が良かったのかしら?
深くは考えない事にした。
年も明けた頃、戻って来たのが確認されたのはミサトだった。
ケージ直通の廃棄予定地区で倒れていたのを、巡回調査中の職員によって発見されたそうだ。
アタシはちょっと複雑。
使徒との戦いの最後の方は、アタシ達の共同生活は破綻していたから。
シンジとの間に何かがあった事もアタシは何となく気付いてる。
でも、あの頃は誰もが何処かで狂っていたと思うしか出来ないから、アタシは何も言えなかった。
意識を失くしてICUに入っている彼女の意識は、まだあのLCLの中から戻って来ていないのかも知れない。
見舞いを終えて病院から部屋に戻った後、塞ぎこんだシンジは部屋に閉じ篭ってしまった。
アタシには何も出来ない。
これはシンジとミサトの間の問題だから。
苦しい時は何時だってアタシが聞いてあげるから、話せる時が来たら話して欲しい。
そんな事を思いながら食事の用意をする。
病院から戻る時の様子を聞いたリツコや、青葉さんが心配して電話をくれた。
夜遅くには司令からも電話があった。
何だかんだ言って、やっぱり司令も父親してると思う。
本当にどうでも良ければ心配して電話なんか掛けて来ない筈だもの。
アタシだけじゃない、他にもこんなに心配してくれる人が居るのよ?
アタシの作ったご飯じゃ余り美味しくないかも知れないけど一緒に食べようよ、シンジ?
もうすぐバレンタインデー。
多分、アタシの人生で初めての出来事。
本当に好きな人にチョコレートを贈る事。
加持さんに向けられていた気持ちは、子供の頃パパに甘える事が出来なかった分の裏返し。
愛情と言うよりは憧れや、パパの面影を求めていたのだと、今なら理解出来る。
手作りチョコを渡したくても、アタシの今の料理の腕じゃお菓子作りはとてもじゃないけど無理。
相談するにも相手が居ない。
ヒカリの消息もまだ分からないし、リツコは仕事が忙しいのもあるけど主婦って柄じゃない。
渋々市販品のチョコにする事にした。
その代わり、チェロのCDをリツコに頼んで手配して貰った。
シンジにはチョコとCD。
一応チョコは将来義理のパパになるかも知れない司令と、仕事の合間を縫ってはアタシ達を気に掛けてくれる青葉さんの分。
後、おまけで相田の分も用意した。
学校での他の女子への牽制のサポートのお礼の予定。
アタシ達が二人だけで一緒に暮らしていて、付き合ってるのが判っていても、ちらほらとアプローチを仕掛ける人が居る。
去年はお互いの気持ちが判っていなかったけど、今年からは違うもの。
シンジの一番大切な人はアタシなんだって、解らせてあげなきゃ。
絶対他の女子なんか一掃してやるんだからねっ!
春。
ホントは卒業して高校に進学する筈だった。
でも今年はサードインパクトの影響でもう1年、特別措置で日本は全学生が留年する事に。
欧米みたいに9月が新学期なら良かったんだけど。
これだけ世界中が混乱してる状態じゃ無理も無いかも。
だからアタシ達はもう一度中学3年生。
新しい制服になるかと思っていただけにちょっぴり残念。
でも、その分嬉しい事があった。
ヒカリと鈴原に再会する事が出来たから。
また一緒のクラスで学生生活を送る事が出来る。
3バカトリオの再結成?
それはやっぱりまだ早いかな…。
でも参号機の事故以来、シンジと鈴原は顔を合わせて居ない筈。
気になったけど、アタシが口出しする事も出来ない。
ヒカリにしても、シンジに対しては少し複雑だと思う。
だって、ヒカリの好きな人は鈴原だもの。
ただ見守る事しか出来ないのが歯痒い。
ヒカリが足を引き摺る鈴原の介添えをしていたのを見て、怪我の具合がどうなったのか聞いていないのを思い出した。
後でヒカリに聞いてみよう。
アタシ達に手伝える事もあるかも知れない。
あの時アタシはやられちゃったけど、一歩間違えばアタシがシンジの立場だっただろうし。
ごめんね、ヒカリ。
ごめんね、鈴原。
シンジの事が好きだから、シンジの事を理解して欲しいって思ってる訳じゃないの。
シンジにとってもアタシにとっても、二人は数少ない友達だと言える人だから。
だからこれ以上友達は失くしたくないの……。
今はぎくしゃくしてるかも知れないけど、少しずつ解り合えるよね?
以前みたいにバカな話をして、笑いあえる友達にまたなれるよね?
レイ、なんでアンタが一緒じゃないのよ……思い出しちゃったじゃないの、バカ!
6月6日、シンジの誕生日。
今日でシンジは16歳、アタシより半年だけお兄さん。
1年前は同じ位の身長だったのにすっかり追い抜かされちゃった。
夕方から5人でシンジの誕生日パーティ。
まだぎこちないけど、シンジと鈴原の仲もちょっとずつ解れて来たみたい。
ヒカリは気にしないでって言ってくれるけど、シンジは「はい、そうですか」って開き直れる性格じゃない。
気になるならさっさと仲直りすれば良いのに、出来ない所があの二人らしいと言うか何と言うか。
相田も苦労するよね、これじゃ。
まぁ、アタシとヒカリにもそれは当てはまるか…。
料理のメインディッシュはシンジが担当、アタシは付け合わせ担当。
ケーキはミルクレープにした。
お店で買って来ても良かったんだけど、アタシの誕生日の事を思い出したから。
ネルフの喫茶室に特別に頼んでホールでキープして貰った。
ヒカリに怒られながら、余ったケーキを全部食べた鈴原。
バッチリ怒られてる所を相田に撮られる。
去年はこんな事をする所か、誕生日すら忘れてた。
シンジには悪い事しちゃったな…。
でも今年からは違うから。
この先も、毎年一緒に誕生日を祝ってあげられればと思う。
アタシからのプレゼントは新しいチェロの楽譜。
弾ける様になったら一番にアタシに聴かせてね、シンジ。
それにしてもプレゼントを渡す段になって、鈴原も相田もなんて事言い出すのかしら?!
プレゼントはア・タ・シ♪なんて事は絶対に無いんだからっ!
それに……それはもう済ませちゃった様な物だし。
そんな事、絶対ヒカリには話せない…「不潔よーっ!」って騒がれるのがオチね。
因みに鈴原とヒカリからはエプロンが2枚、何故かお揃い。
相田からはまだアタシ達が心を壊す前のスナップのパネル。
何時の間にこんな物撮ってたの?
昼食を食べた後に屋上で飛行機雲を見上げるアタシとシンジ、それを眺めるレイ。
ずっとあの頃のままが良かったなんて言わない。
でも出来れば今、一緒にこの写真を見たかったわ……レイ。
夏。
サードインパクトから1年。
日向さんもマヤも、発令所に倒れていたのを発見された。
お見舞いに行ったら二人共結構元気だった。
ちょっと衰弱して記憶に混乱があったみたいだけど、大した事無いみたい。
また一緒に仕事が出来るって青葉さんが嬉しそうに話してくれた。
アタシ達が直接知ってる職員で、まだ戻って来てないのはこれで副司令だけ。
ミサトはまだ意識が回復してない。
ただ眠っているだけ。
ミサト、アンタはLCLの中でどんな夢を見てるの?
リツコもアンタが目覚めるのを待ってるのよ?
司令だって、辛そうにしてるリツコを見てるのが苦しそうだもの。
アタシもシンジも待ってるのよ?
アンタが戻って来ないと、シンジはずっと苦しむ事になる。
そんなシンジを見ているとアタシも苦しいの。
第一アンタが戻って来ないと、アタシ達の事自慢出来ないじゃない…。
憎み合い、傷付け合ったけど、解り合えて、一番大切だって思える様になったのよ?
色々言いたい事もあるけど、アタシとシンジを引き合わせてくれた事は感謝してるんだから。
だから早く目を覚ましてよ、ミサト。
秋。
大体寒さは去年の冬と同じ位。
日本は四季の美しい国だって聞いていたけど、こんなに綺麗だとは思わなかった。
セカンドインパクト前、とても美しい紅葉が見ることの出来ると言われていた場所の一つが、第3だったなんて信じられない。
ただ暑いだけで山に囲まれただけのつまらない街だと思ってたから。
休日にシンジと二人で箱根山に出掛けた。
遊歩道を歩くと紅葉のトンネルを歩いているみたい。
落ち葉もとても綺麗なのね。
紅葉狩りって表す風習も趣きがあって素敵だと思う。
何枚か持って帰って栞にして、ドイツの両親への手紙の中に同封する。
パパ、ママ、アタシは元気です。
日本と言う美しい四季が廻る国で暮らせる事が出来て、幸せです。
キョウコママが死んじゃってからは、辛い事の方が多かったけど、エヴァが無ければ日本に来る事も無かったから。
やっと2ndチルドレンじゃない、ただの女の子としてのアタシで居られるから。
キョウコママのもう一つの祖国で、アタシは宝物を見付ける事が出来たから。
シンジっていう一番大切な人に出逢えたから。
だから、キョウコママにも伝えて。
アスカは今、とても幸せですって。
「何してたの?」
「ん? 日記読み返してたの。もうすぐ二人で暮らし始めて1年でしょ? 色んな事があったなぁって」
一緒に暮らし始めてもうすぐ1年近くになる。
誕生日が来たら、アタシもシンジと同い年。
「早いね、もうそんなになるのか…」
「やぁね、この間司令とリツコの結婚記念日過ぎた所じゃない」
「そうだっけ?」
「実の父親の結婚記念日忘れる訳? そんな事じゃ薄情だって司令が気を落とすわよ?」
「そういう訳じゃないよ…僕よりもアスカの方が父さんと仲が良いみたいだからさ。よく覚えてるなぁって思って」
「あっきれたぁ…」
「隣同士で住んでるけど、やっぱりちょっとね…以前よりはマシだけど苦手な部分の方がまだ多いよ」
ティーポットにお湯を注ぎながら、シンジは隣の部屋の方向の壁を見つめる。
毎日顔を合わせる訳じゃないけど、仮にも隣同士に住んでいるというのに。
シンジも司令も親子揃って不器用なんだから。
まぁ、その分アタシとリツコが間に入って苦労する事になるのよね。
「でもホント、この1年色々あったよ…父さんと隣同士で住む事なんて考えもしなかったし」
「それはアタシだって同じよ。てっきり親子で住むものだと思ってたし、アタシも寮に入るつもりにしてたから」
「はい、紅茶入ったよ」
「ありがと」
ふと、窓の外を見ればちらちらと雪が舞っている。
「…見て、雪よ。冷える筈だわ」
「これが…雪?」
「今年初めてだから初雪ね。シンジは初めてだったっけ?」
「うん、実物は初めてだ…セカンドインパクト前の記録映像でしか見た事無かったよ」
「どう? ご感想は?」
「氷とはまた別なんだね、見た感じもふわふわしてる気がする」
「積もるともっとふわふわしてるのが判るわよ。クリスマス迄には積もるかしら…」
去年は結局何もせずに終わってしまった。
今年が実質、二人で初めて過ごすクリスマス。
「積もると良いね…」
「うん…積もったら何しようか?」
「雪ダルマに雪兎、かまくらも良いな。みんなで作ろうよ」
「良いわね、それ…でも雪兎は解るんだけど、雪ダルマとかまくらって何?」
「えっとね、雪ダルマは…英語のスノーマンの事。かまくらはテントが一番近いかも知れない」
「雪でテント作るの?」
「喩えだよ、ただの。僕も資料でしか見た事無いけどさ」
ドイツに居た頃は、雪が降ると憂鬱だった。
吹雪いて外に出れないし、太陽の光さえ射す事が稀な事すらあった。
セカンドインパクトの影響で常冬に近い気候だったのも、憂鬱さに拍車を掛けていたかも知れない。
でも、今年はそうじゃないのが嬉しくて。
このまま時が止まってしまえば良いのに。
ずっと、ずっと、二人だけで居たい。
でも、それは決して望んではいけない事。
シンジがLCLの中で選択した事を無にしてしまうから。
そして、ミサトの回復を望まない事に繋がってしまうから。
それでもそう思ってしまう程、時折心細くなる。
「ね、シンジ…来年のクリスマスも一緒に居られるかな?」
「急にどうしたの?」
「時々ね、不安になるの」
「あ…えっと…僕、何か拙い事しちゃった?」
「シンジの所為じゃないわ。 ただ、人の気持ちって移ろい易いって言うじゃない。アタシ達もそうなってしまうのかなって…」
「それは人それぞれじゃないかな…」
「でも、気持ちが変わってしまうかも知れないって考えたら、このまま時間が止まれば良いって思ってしまうのが嫌になるの」
「どうして?」
「止まっちゃったら…ミサトは目覚めないままになるわ。副司令みたいに戻ってきていない人だってそのままになる。
何だか自分の幸せだけ考えてるみたいで、折角シンジの選んだ事なのに全部無駄にしてしまう気がしてきて…。
でもそんな事を考えてしまう自分も嫌……」
とんでもないエゴだと思う。
あの夏の日々が、それだけでは人は生きていけないって気付かせてくれたというのに。
「大丈夫だよ、きっと。僕が起こしてしまった事は決して赦される事じゃないけど、得た物も少なからずあると思うんだ。
勿論、失った物もあると思う。人は一人では生きてはいけないから、常に誰かと一緒に居たいって思うんじゃないかな?
融け合うんじゃなくて、他人という形でね。それに気付いた人がLCLの中から自分の姿を思い出してる。
だから今でも戻って来る人が絶えないんだと思う…僕にとって一番身近だった他人がアスカだったみたいに。
アスカが思ってる事は、多分大事な人が居る人なら誰だって考える事じゃないかな。僕だって同じさ」
「シンジも?」
「いつかは僕から離れて行くんじゃないかって、そう考えると怖くなる事も時々あるよ。ずっとこのままで居たいって。
それでアスカが幸せになれるのなら仕方ない事だけどさ。でも、僕自身の気持ちはあの時から変わってないから。
出来れば一緒に居たいって思ってる」
バカみたい。
二人揃って同じ様な事で悩んでいたなんて。
でも嬉しい。
お互いの気持ちが通じ合ってる証拠だから。
「だから、来年のクリスマスも二人で居られるって信じてるよ。あ、でも来年の話をすると鬼が笑うって言うし…困ったな」
「どういう事?」
「未知な事を幾ら述べても意味が無いって諺だよ」
「未知だなんて、アタシ達の気持ちってそんなに薄っぺらな物だって思うの?」
「誰もそんな事思ってないよ…だから困ったって言ってるんじゃないか」
「未来の事を心配するよりは、今こうして居られる時間の方を大事にしたいな」
シンジは2杯目の紅茶を淹れて、今度はミルクティにして手渡してくれた。
こんな何気ない日常生活が夢の様に感じる。
アタシ達が子供の頃は望んでも手に入れる事が出来なかった物が、今目の前にあるという幸せ。
「そうね、その通りだわ。一緒に居られるんだものね」
「この先辛い事もあるかも知れないけど、一緒に年を取って、たくさん思い出を作っていきたいな。
父さんやリツコさん、ミサトさん、トウジ、ケンスケ、委員長…他の人達といつかは笑って話せる様な思い出をね。
勿論、アスカとの思い出は一番たくさん作っていきたい。ちょっと高望みし過ぎかな?」
「あら、アンタはそれ位我侭で丁度良いのよ? 普段から不器用な上に控えめ過ぎる位だもの」
「そうかな?」
「そうよ、アタシの方がずっと普段は我侭だと思うもの」
「僕は別にそれでも良いけどね。アスカが色々言ってくれるのは嬉しいし」
「じゃあ、これ以上無い位の我侭言って良い?」
「僕に出来る事なら」
「なら約束して? アタシよりも1秒でも良いから、長く生きていて欲しいの」
「うーん…善処してみるよ」
「善処じゃダメ。アタシよりも長生きして、アタシの事離さないって約束してよ。してくれないの?」
―――――約束の返事は、ほんのりとミルクティの味がした。
保守がてら投下。
某スレ投下中の続編役1年半後の後日談、姉妹スレ投下済分?年前の前日談。
投下中に某スレに誤爆しちまいました((;゚Д゚)ガクガクブルブル
こちらのスレも活気付く事を祈って…。
期待した甲斐があった
つ乙
乙!
全力でGJ!
保守
保守
保守
99get
100ゲト保守
下がり過ぎ保守上げ
ホッシュ
過疎だね、もう誰もいないのかねぇ……
いる。
でもSS書けないからマッタリ待ってる
ここにもいるけど…。
ちょっとニッチなところを狙いすぎたのかもね。
大好きだスレにも夫婦生活スレにも少しずつかぶるわけだし…。
ネタはある
ネタはあるが時間がないorz
時間出来たら書いてみる
それを待つ いつまでも
もう同棲なら学園だろうと本編だろうとなんでもいいわい!
二人並んで歩く影が長く伸び、
今が夕刻だということを認識させた。
汗ばんだ体を優しい風が吹き抜け、それをきっかけに
彼女は口を開いた。
「あんたとはここでさよならね。」
「そんな…」
「あんたは黙って言うとおりにすりゃぁいいの!じゃぁね」
二人の前に広がる道はもう決して交わることはなく、
それぞれの道を歩んでいく。
彼女は振り返ることもなく、駆けていった。
シンジはその背中を見つめながら小さく溜息をついた。
彼に与えられた道は長く険しい。
「…、ま、いっか。これでアスカが喜ぶなら。」
大きな荷物を抱え、歩みを進めた。
一人には少し広すぎるリビングが、
彼女に孤独を感じさせた。
だが、これから起こる未来への期待が
それに打ち勝つことは容易かった。
手早く支度を済ませ、部屋の電気を消す。
「これで完了。今日から新しいアタシ。
さよなら、昨日までのアタシ。」
110 :
続き:2007/10/15(月) 15:49:10 ID:???
プシュー。
「…ただいま」
漆黒に包まれた部屋に彼の声は吸い込まれ、
人気の感じられない空間に呼応する言葉もない。
いい知れぬ不安がずしりと心を沈ませ、
両のてに持つ買い物袋が指に食い込んだ。
明かりをつける気力もなく、暗がりの中奥へ進む。
リビングの扉へ手をかけたその刹那、
部屋の明かりが彼を包みこみ、突然の眩しさに顔をしかめた。
パン!パン!
乾いた音がこだまする。
「おかえり、アナタ」
クラッカーを手に微笑むのは先刻別れたばかりのアスカだ。
その笑顔は清楚な中にもすっかり大人の色香を帯び、
彼の疲れを優しく癒した。
二人は今日、入籍を済ませささやかなお祝いをするため
買出しにでかけたのだ。
帰路の途中、アスカはシンジに遠回りを強要させ、
彼が戻る前に急いで部屋の飾りつけをし、
真新しい白のワンピースに身を包んで
暗闇のリビングで身を潜めていたのだった。
111 :
続き:2007/10/15(月) 15:50:40 ID:???
「しっかし、アンタおっそいわねー。」
「し、仕方ないだろ!アスカが遠回りして帰って来いっていうから…」
「待ちくたびれておなかペコペコよ!どうしてくれんのよ!」
「…わかったよ。」
どっさり買い込まれたアスカの好物をテーブルに置いて、
エプロンを手に夕飯の支度をするシンジ。
「だってさー、新婚初日くらい別々に帰って
『おかえりなさい、あ・な・た。ご飯にする?お風呂にする?
それとも、あ・た・し?』って迎えてみたいじゃん。」
「(…、でもそれ全部僕がやるんだよね)ハァ…、え、い、今なんて?」
「ぶぁーか!アタシに触れようなんて100万年はやいのよ!」
「…、ですよね。ハァ。。。」
結婚しても、二人の生活に変化はない。
愛もまた不変である。
112 :
おまけ:2007/10/15(月) 15:52:54 ID:???
ちゃぽん。
浴槽に身を沈め、一人つぶやく。
「…、碇アスカ…か。」
新しい名前。昨日とは違う自分。
必死に自分が自分であることを守ってきた。
その自分を捨て、他人の苗字を冠する。
アタシはアタシ。でも何か違う。
この違和感、でも、それも悪くない。
それはシンジだから。シンジだけだから。
「しーんじぃ〜!」
浴室から、皿洗いをしているシンジに呼びかける。
「え?何?シャンプー足りないの?」
「…、あ、アンタも一緒に入ったら?」
カシャーン。ばたっ。
スポンジを握り締めたまま倒れるシンジ。
砕け散った皿と流れる鼻血が彼の動揺を端的に表現していた。
同棲生活じゃないwごめんなさいw
惜しい…夫婦生活スレだな、これ
でも良かった
リアルタイムGJ
>>113 ありがとうございます。
同棲ネタって難しいですね。
同居とも結婚とも違う、誰にもしばられないけど、
好きなだけじゃ続かない。
愛の深さが必要ってことですかねぇw
>>114 いや、ここは恋人期間のネタスレで結婚直前は夫婦スレでの住み分けになってる
そう言う意味で夫婦生活スレだなとw
確かに同棲ネタは難しいよね
ただ甘いだけじゃないからネタ探すのに苦労するよ
おお…確かに夫婦生活な感じだが
俺はとろけた
とろけたぞぉおお!!!!!!!!
保守
118 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/17(水) 11:45:53 ID:Qbz2WE6S
シンジは間違いなく…
サルだな。
いや、アスカもそうなる
加持とミサトみたいになる
>>118 シンジは、まったり抱き合うのがすきそう。
アスカは技を磨きそうw
シンジは…
早漏な気がする。
おまいらエロネタになったからって急にkskすんなよwww
とりあえずネタ湧いてきたから近い内に投下する
124 :
連投スマソ:2007/10/18(木) 07:37:43 ID:???
アスカ 「シンジィ〜っ、朝だぞ〜っ、起きなさ〜い!」
シンジ 「ん・・・アスカ・・・おはよう・・・」
アスカ 「あれあれぇ、まだ寝たままじゃない、さっさと起きてよぅ〜」
シンジ 「起きてる・・・けど・・・?」
アスカ 「さっさと起きないとぉ〜、口とか手とか、使っちゃうぞぉ〜っ!」
シンジ 「・・・どこに話しかけてんのさ・・・」
想像したら 興奮して死んだ
アスカかわいい
おお、こちらでも良い仕事です!
127 :
連投スマソ:2007/10/18(木) 17:41:51 ID:???
シンジ 「ねぇアスカ・・・なんで僕のTシャツばっかり普段着にするの?」
アスカ 「あらぁ、たいして面白くも無い理由だけど、聞きたいの?」
シンジ 「教えてくれるなら・・・」
アスカ 「あんたのTシャツ、洗ったばっかりでもね、ほのかにあんたの匂いがするのよ。あんたの匂いに包まれて、
あんたに抱かれてる感じがしてね、とっても落ち着くの。あんたが夜遅く帰っても、あんたが朝早く出てっても、
あんたが居ない間、私をね、しっかり抱き止めてくれるのよ・・・ 『アスカ、いつも側にいるよ』ってね・・・
ね、たいして面白くもない理由でしょ?」
シンジ 「・・・もしかして・・・今穿いてる僕のトランクスも、同じ理由なのかな?」
アスカ 「聞くまでもない事よ」
シンジ 「今、アスカを猛烈に抱きしめたいけど、そのTシャツとトランクスがあれば、君はもう満足・・・なのかな?」
アスカ 「フフ・・・素直に”脱いで欲しい”って言えばいいのに・・・」
シンジ 「アスカには・・・かなわないや」
うぐぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅ! GJ!
危うく死ぬところだった
エレメンタルエナジーエラーインパクト&神殺しの力&宇宙空間次元破壊崩壊消滅兵器超高度休校線物理攻撃使用
こんな糞スレあげんじゃねぇよ氏ね
131 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/18(木) 19:33:39 ID:MP0WXv6E
LAS
「調子はどう?」
「特に……変わりは無いと思います」
「そう、なら良いわ。でも少しでも気付いた事があったら、何でも教えて頂戴。今は大丈夫でも将来的な話となると別だから」
「はい、覚えておきます。有難うございました」
「じゃあ、また次の診察でね」
退院直前の診察は、実にあっけないやり取りで終わったと思う。
終わってしまえば、そんなものかと思える程度だった。
尤も、専門家に言わせれば他愛ないやり取りでも重要なのかも知れないけれど。
僕にとっては診察すら日常生活の延長にしか過ぎない。
第2で居た頃だって散々診察に通った。
治療の効果はあったんだか無かったんだか、僕には判らない。
その結果手の中に残った物は、先生の奨めもあって惰性で続けたチェロだけだ。
寧ろ1年強の第3での生活の方が、これ迄の人生の中では非日常と言える。
その要因は数え上げれば切りが無いし、数えるのも正直面倒だ。
でもその分、此処に来なければ得る事が出来なかった物の方が多かったんだろうと思う。
……失った物も多かったけれど。
今なら父さんに感謝しても良いと思える、ほんの少しだけ。
あの手紙が無ければ、こうして此処に居る事も無かっただろうから。
「終わった?」
「うん、終わったよ。アスカは?」
「アタシはこれから。問題無ければ手続済ませて無事退院よ」
診察室前の待合では、既に入院服から真新しい私服に着替えたアスカが座っていた。
ここ暫くは入院服の姿、その前はプラグスーツ姿が多かったから少し別人の様に見える。
「もう着替えたんだ」
「いい加減飽きちゃったもの。別に内診じゃないんだから、私服で充分よ」
そう言って、手にしていた新聞をラックに吊るした。
「何か目新しい事でも載ってたの?」
「特に無いわ。日本政府と戦自への国連の対応が少しだけ。……嘘ばっかりね」
「もう、僕達には関係無いよ。青葉さんも言ってたじゃないか」
「やぁね、関係無いのは解ってるのよ。入院中は大した情報も入らないから、世間に取り残される感じがして癪だったの」
特に娯楽も無く、休憩や仕事の合間に顔を見せてくれる青葉さんの話が全ての情報源に近かった入院生活。
病室にはTVも無かったし、偶に中庭に散歩に出たけど他の入院患者に会った事が無い。
朝から夕方迄診察と精密検査に追われて、睡眠時間以外はアスカと一緒に話をする位しかする事が無かった。
考えれば世間から隔離されていると言ってもいい位だ。
「要は待合時間の暇潰しを兼ねた情報収集?」
「あら、アンタにしちゃ冴えてるのね」
病室に戻り、入院服から私服に着替える。
出来れば二度とこんな物は着たくない、今回で最後にしたい。
こっちに来てから何度着る羽目になったんだろう?
退院準備と言っても元々荷物なんてあって無い様な物、数枚の下着とタオル類、それに洗面用具だけ。
それらをデイバックに詰めて、脱いだ入院服を畳み、ベットの上を軽く整える。
後は退院手続を済ませて迎えが来るのを待つだけだ。
多分、父さんは来ない。
一度だけリツコさんに引っ張られて顔を見せたけど、問題無いと一言漏らして直ぐに帰った気がする。
あれでも一応ネルフ総司令だから忙しいだろうし。
いや、一応父親と言った方がいいのか。
遺伝学上の父親だと言う事は理解出来るけど、それ以上の実感が無い。
所属する組織の長である事位の認識しか無いし、どっちにしても僕の日常の中での接点は無いに等しかった。
今更顔を合わせても、何を話して良いのか判らない。
それでも退院したら一度は話さないと駄目だろうな。
「けじめ…みたいな物か…」
バックを肩に背負いベッドに背を向ける。
窓から射す日差しがこの病室で過ごした時よりも、やけに無機質に感じた。
病室を後にし、階下の入退院窓口に向かう。
聞き違いが無ければ青葉さんが迎えに来てくれる筈だ。
副司令がまだ行方不明だから現在の直属の上司は父さんになる。
あの父さんの直属で仕事をしている上に勤務時間中だ、迎えに来て貰うのも何だか申し訳ない。
新しく用意された部屋もどうせ初めて此処に来た時に入る予定だった所の筈。
ジオフロント内なら案内用のフロアマップを見れば事足りるし、一人でも部屋に行けるのに。
時間も時間だし、廊下ですれ違う人は医療部所属の人だ。
皆戻って来た頃は多少職員が入院したり、通院で治療に来ていたのか、もう少し騒がしかった気もする。
今では足音が聞こえる事も稀かも知れない。
そんな所が余計に僕の目には色が失せて映る。
多分、今の僕はそれを不快だと感じているんだろう、窓硝子に映った表情はどことなく顰めっ面だ。
「人と会うのに、こんな事じゃ駄目だなぁ……」
何時の事だったか、咎められたのは。
あの時はその言葉に含まれた意図迄読み取る事はせず、ただ上辺だけしか受け止めなかった。
恐らくそれ以前もそう言う事が多々あったんだ。
ただ、僕が気付こうとしなかっただけで。
その癖、好意から来る物であってもそれが信じられなかったりして。
自分でも厄介だと思うけどね、そういう性分なんだから仕方ない。
結局突き詰めていけば、自分でも自分の気持ちが判らないだけの話だ。
だから他人の事も、その気持ちも解らない。
向けられた言葉をそのまま額面通り受け止め、そっくりそのまま自分の感情として跳ね返す。
それでも最近は少しマシになったのだと思わなければ。
自分の感情を不快感とは言え、自分の表情から読み取る事が出来る様になって来たみたいだから。
かと言って、こんな顔のままじゃ青葉さんに悪い。
辺りを見回すと誰も居ない、今だ。
窓硝子に向かい映っている顔を確かめながら、顰めている顔の筋肉を両手で掴み、強張っているのを解してやる。
すると突然、後ろから頭を小突かれた。
以前投下したPromiseの補完話、シンジ視点。
何回か続きます、申し訳ないです。
同時進行で書いてるので投下スピードは亀になりそうなんで先に謝っときますorz
かまわない
俺合わせて3人ほどしかいないしな
いやいや俺もいるぜ
>>138、相変わらずいい仕事!
待ち続けるから頑張れ!
乙!ここも活性化してきたなw
wktk
乙
お疲れ様
スレタイ見てたらかぐや姫の神田川思い出したwwwww
漏れヤバスwwwww
続きを…
街
街
マッチ
「「け、けっこん!!??」」
見事なユニゾンで驚きの声をあげるシンジとアスカ。
「そ。加治とは色々あったけど、結婚することになったからよろしくねん♪」
ミサトは呑気にビール片手にそう言った。
「じゃあ加治さんもここに住むんですか?」
「んー。そのことなんだけど、やっぱり此処に4人で住むのはちょっち狭いし厳しいと思うのよ。だからこれからはアナタ達2人で住んでくれない?あ、お金のことなら心配しないで。全部ネルフが出すから」
さらりとミサトが言う。
「・・・・・・」
長い沈黙。そして
「じ、冗談じゃないわよ!私達まだ高校生よ!!」
「あらいいじゃない。アナタ達、もうそーゆう関係なんでしょ?」
ミサトがいつものように二人をからかう。途端に二人共顔が赤くなる。
「そ、そんな…。僕達はそんな関係じゃ…」
「そうよ!私達は全然なんでもないんだから!」
必至に照れを隠す二人。
そう。二人は一緒に学校に登下校したり、一緒に買い物に行くなど、周りから見れば恋人同然のことをしているのに恋人ではない。相手のことが嫌いな訳ではない。むしろ好きな方だ。いや、かなり好きだ。ただ単に告白する機会がなく、なんとなく今に至ってしまっている。
「ま、とりあえず頑張ってねん♪」
またまた呑気にミサトがそう言うと自分の部屋に戻っていった。
こうして微妙な関係の二人の同棲生活が始まった。
GJだが一つだけ文句言わせて。
キャラ名調べてから書いてくれ・・・。
キャラ名間違えられると萎える。
こうして彼はまた一つ職人への階段を登ったのであった。
つ乙 よかったぜ
153 :
k:2007/11/20(火) 12:44:38 ID:6lZIqpbS
154 :
149:2007/11/20(火) 22:54:04 ID:???
三日後、二人は新居にいた。
その家にはすでに生活に必要最低限の家具や電化製品が用意されていた。ネルフが用意した物だろう。ミサトが気を利かせて前の家より学校に近くなっていた。
「まったくミサトったら、いくら早く新婚生活を楽しみたいからってこんなに早く私達を追い出すことはないんじゃない?」
「う、うん、そうだね」
シンジは戸惑っていた。
三人で暮らしていた時もこうして二人きりの時間は多かったのに、アスカと二人で同棲という決して邪魔者がはいらないという状況になった途端、何故かよそよそしくなってしまう。
それにあんな妄想やこんな妄想が頭から離れない。
「なに?アンタなんかヤラしいこと考えてるんじゃないてしょうね?」
「え!?そ、そんなこと考えてないよ!全然!全く!」
シンジは多少顔を赤らめながら両手を大袈裟に振る。
確かに高校生になったシンジがアスカを無理やり押し倒すことは簡単だろう。しかしアスカはこの臆病者のシンジがそんなことをできないのを知っていて、こうしてからかうのを楽しんでいる。
「どーだか。
まあいいわ。それより早く御飯作って。私お腹空いちゃった」
「うん、すぐに作るよ!」
そう言ってシンジはキッチンへ向かった。
この時すでにアスカは決意していた。
この状況を利用してなんとしてもシンジを自分に告白させて恋人になってやると。
窓硝子を確認してみると、眉を顰めたアスカが仁王立ちしているのが写っている。
「鏡のつもり? 身嗜み整えるなら整えるで、人の目に付かない所でやりなさいよ」
「ぁ……いや、そういう訳じゃないんだけど」
「じゃあどういうつもりよ?」
そう言われても困る。
単に強張った顔の筋肉を解していただけだし。
「もぅ、人が話掛けてんのよ? こっち向きなさいってば!」
強引に体の向きを180度回転させられた。
勢いが付きすぎて少しよろけてしまう。
肩に背負ったバックのお陰で重心が後ろに傾き、背中を軽く窓にぶつけた。
「……ごめん、力入れすぎちゃった」
「いや、いいよ。痛くなかったから大丈夫だし」
変わったな、と思った。
以前のアスカなら多分、トロいだのぼんやりしてるからだの、一言小言が先に付いてきた。
事実だから否定はしないけど。
「ホントに?」
「うん。それより診察は終わったの?」
「終わったわよ。これから病室に荷物取りに行く所」
「どうだった?」
「さぁ? また次の診察でねって話しただけよ。特に何も言われなかったわ」
診察内容は僕と余り変わらないのか、それとも形式だけの物か……退院出来るのは間違いないみたいだ。
「じゃあ、ここで待ってるから荷物取っておいでよ。窓口迄一緒に行こう?」
「ん、解った。そこ動くんじゃないわよ」
ペタペタとスリッパの足音を鳴らしながら、アスカは廊下を走っていく。
「あっ、ダメだよ! まだ病院内なんだから走っちゃ!」
曲がり角の影から顔だけ覗かせて、あっかんべーしてる。
誰からこういうの習ったんだろう?
「お待たせ」
「だから、病院内は走っちゃダメだって」
靴に履き替えてあるから足音が変わってる。
ヒールよりは少し鈍いけど、コツコツって硬くて軽い音。
入院中はスリッパの音ばかりだったから、こういう音を聞くと退院するんだという実感が沸く気がする。
「そりゃそうだけど……こんなトコ早く出たかったのよ」
「気持ちは解るけど、他の患者さんが居たら迷惑になるよ?」
患者なんてそんなに居ないのは判ってる、聞こえる足音やすれ違う人は医療部の人が殆どだから。
それでも浮き足立って転んだりしたら病室に逆戻りだ。
僕の本音としてはこっちの方で心配して言っている訳じゃない。
ここに運ばれた時、僕達は自分の体の状態を理解してなかった。
見た目よりもずっと体力も落ちていて精神的にも衰弱していた。
大した怪我もしていなかった僕でさえ、他の人から見ても明らかに弱っていた。
量産機との戦闘での強いフィードバックを受けたアスカの状態なんか僕の比にならない。
自宅療養出来る状態になったとは言え、まだまだ完全に体力が回復した訳じゃないし。
あくまでも、これ以上検査をして入院を続けても大した効果は無いって判断が出ただけ。
これで転んだりしたら、まだ退院するのは早いとか言われかねない。
「解ったわよ、もう走らないから。じゃ、行きましょ? お迎えの人来るんでしょ?」
アスカは軽い足取りで先に進んでいく。
入院の始めの頃が嘘の様だ。
病室に入って直ぐ、2〜3日の間はまだ良かったんだ。
自力で歩く事も食事を摂る事も出来た。
でも衰えていた体力は容赦してくれなくて、それまでの疲れが一度に溢れた。
僕の方は長く微熱が続いたし、アスカの方は高熱を出して一時は面会謝絶になった位だ。
「青葉さんが来てくれるって聞いてるけど、まだかも知れないよ」
「それなら先に退院手続済ませる方が良さそうね」
総合案内のあるエリアに直通のエレベーターを確認する。
下手に広い病院だと、エレベーターの位置に拠って遠回りする羽目になるからだ。
下の階へのボタンを押し病棟に止まるのを待つ間に、バックのサイドポケットからIDカードを取り出しておく。
「あれ?」
「何だ、2人共下りる所だったのか」
止まったエレベーターの中に居たのは青葉さんだった。
「荷物持ちのつもりで病棟まで来たんだがなぁ……荷物は他に無いのかい?」
「はい、洗面用具と下着位ですから」
僕の荷物は肩に掛けたデイバックだけだし、アスカの荷物もボストンバック一つきりだ。
アスカは青葉さんへの返事の代わりに、胸の位置までバックを持ちあげた。
「なら、このまま下りようか。乗った乗った」
ああ、そっか。
開ボタンを押したままで僕達が乗るのを待ってくれてるんだ。
「はーい。ほら、ボケっと突っ立ってないで乗んなさいよ」
アスカに背中を押される。
「そんなに急かさなくても大丈夫だから。段差で転んだりしたら事だぞ?」
背中を押されながらエレベーターに乗り込む。
アスカが乗り込んだ所でドアが閉まったのか、背後から空気が圧縮される音が微かに聞こえた。
「えーっと……俺の車は地下駐車場だから……」
「僕達まだ退院手続取ってないですよ?」
「あれ? 聞いてなかったのかい? 手続なら赤木博士が今取りに行ってる筈なんだけど」
初耳だ。
僕は青葉さんが迎えに来る事しか聞いてない。
「お迎えは青葉さんじゃないの?」
アスカも首を傾げている。
僕の保護者は一応父さんだから、直属の部下の青葉さんが代理で来るのは解らないでもない。
でもどうしてリツコさんが来るんだろう?
嫌な予感がする。
エレベーター内の僅かな気圧の変化が、粘ったL.C.Lの中に放り込まれた感触に思えてきた。
続き投下。
亀ですまんです。
暫く鬱々とした展開やも知れませぬ。
甘い展開期待してる人には申し訳無い、もう暫く待って下され。
>>149>>154 萌えました(*´д`*)
続きwktkして待ってます。
おう、神が二人も!www
二人とも乙&GJ!
続き、楽しみにしてるよ!
コイツはたまらねぇ
つ乙乙乙乙乙
161 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/11/21(水) 17:37:10 ID:WdfSym3Q
乙乙乙乙!!!!
162 :
149:2007/11/23(金) 11:52:19 ID:???
「なんや?センセはまた惣流とデートかいな?」
いつもの帰り道と違う道に行こうとしている二人を見てトウジが冷やかす。
「あ、そういえば僕達、昨日から二人だけで一緒にごふぇ!」
「そ、そうなのよ。今日もシンジとショッピングなのー。あははー。」
シンジに見事なリバーブローをいれつつ、ごまかすアスカ。
さすがに同棲してるなんてことがバレたら、何を言われるかわかんないじゃない!この馬鹿シンジ!
それを見ていたヒカリが
「アスカったらまた惚気ちゃって。それよりトウジ、今日は何処に行く?」
「そうやなぁ、今日はお好み焼きなんかどうや?」
「『今日は』じゃなくて『今日も』でしょ?トウジったら本当にお好み焼きが好きなんだから」
「ええやないか。ヒカリだっていっつもワシのお好み焼きを焼いてくれるやないかい。ワシはヒカリが焼いてくれたお好み焼きが一番好きやで」
「もうトウジったら…」
また始まったよ、この二人…
呆れた顔で見ているアスカと、先刻の一撃で青い顔のシンジ。
163 :
149:2007/11/23(金) 11:53:47 ID:???
「碇君。今日は私と遊びましょ?」
どこからともなく紅い瞳の少女が出てくる。
「わっ!ビックリした…ってレイ!シンジは私とショッピングに行くって言ってるでしょ!?」
綾波レイ。昔は一緒に戦った戦友。そして今は親友。でも事あるごとにシンジを誘惑してくる。昔はこんなに積極的じゃなかったんだけどなぁ。人って変わるもんね。
「そう、それは残念ね。
じゃ碇君また明日」
「まったくレイったらまたシンジを誘惑して…。
いいシンジ?あの女の誘惑に乗っちゃ駄目よ?アンタはアタシだけを見てればいいんだから!」
「う、うん。わかったよ」
アスカはよくこんな恥ずかしいことを言えるなぁと顔を赤くしながら、自分の三歩前を大股で歩くアスカに付いて二人の家へ向かうシンジであった。
164 :
149:2007/11/23(金) 12:07:19 ID:???
>>158 ありがとうございます。
自分も楽しみに待ってます!
乙です
保守
167 :
149:2007/12/04(火) 02:05:55 ID:???
今日はシンジが学校から帰ってきてから何か変だ。ずっとそわそわしてるし、時々ぶつぶつと独り言を言ってる。いつも一緒のソファでテレビを見ているのに今日は顔を赤くして自分の部屋に行ってしまった。私なんか変なこと言ったかな?
そして夜の11時半頃になって急にシンジが「今日も暑いから近くの公園にでも涼みに行こうよ」なんて言い出した。
さすがに一年中夏の暑さだけど、この時間になるとさすがに外に涼みに行くほど暑くない。第一、部屋にはエアコンがある。
そんなことを私が言うとアイツは「いいから、いいから」なんて言って、ほとんど無理やりに私を外に連れ出した。
もう、一体何なのよ?
そうして私たちは近くの公園にやってきた。
公園のベンチに二人で座る。それでもシンジは何も言わない。でもさっきらチラチラと腕時計を気にしている。私はシンジが一体何を考えているのかわからなかった。
すると突然シンジが口を開いた。
「ア、アスカ…」
「何よ」
「誕生日おめでとう」
「え?」
168 :
149:2007/12/04(火) 02:07:29 ID:???
私は一瞬なんのことかわからなかった。するとシンジが自分の腕時計を私に見せてきた。時間は0時ジャスト。
「今日はアスカの誕生日だよ」
「そういえばそうだったわね。でもなんでこんな事…」
「誰よりも先にアスカにおめでとうって言いたかったから…。それと誕生日プレゼントなんだけど、喜んでもらえるかわからないけど今から言うから…」
誕生日プレゼントを言う?この時、私の頭の上には「?」が出ていただろう。
「僕はずっと前から…、多分出会った時からアスカのことが…」
え!?嘘!?ついに!ついに待ちに待ったこの時がきたの?
「アスカのことが…、す、すk」
その時二人の耳に聞き慣れた車のエンジン音が。
時間は0時を過ぎているというのに、物凄い爆音を響かせてミサトが自慢の愛車で颯爽と登場した。
「あれ?なんで二人共こんな所にいるの?
そんなことよりアスカ!今日はアナタの誕生日よ!今からウチで誕生日パーティーするわよ!」
「ち、ちょっと、今大事な所…」
有無を言わさず二人を車に連れ込むミサト。
もう!ミサトったら大事な所で邪魔するんだから…。でもまあいいわ。シンジの気持ちは伝わったし…。ま、焦らずじっくりとね♪
その日、二人はミサトにベロベロになるまで飲まされ、その日の学校では完全に沈黙してしまった二人だった。
おつ!
めぞん一刻ばりにもどかしいぜ……
乙
ミサトさんってKY?(笑)
172 :
名無しが氏んでもかわりはいるもの:2007/12/07(金) 13:39:08 ID:vVafTI8v
>>171
2chでは空気嫁を使うのだ。
149氏、乙と言っておこう!
職人降臨待ち
176 :
149:2007/12/13(木) 16:55:39 ID:???
日も傾いてきた頃、リビングのソファーに寝転がりながら雑誌を見ているアスカ。そこに怖ず怖ずとシンジが近づいてくる。
「あのぉ…、アスカ?」
「なによ?」
シンジの初っ端から弱腰な態度に多少いらつきながら返事をする。
男ならもっとしゃきっとしてほしいと思うアスカだったが、こんなシンジも好きなのだから何も言えなくなるだが。
「そろそろお腹が空いたなぁなんて…」
「ハァ!?このアタシに作れっていうの?」
「だって最初ここに来た時に当番を決めたじゃないか」
そう、二人はここに引越しをしてきた時にいつの日かミサトとシンジがやったように家事の当番表を作ったのだ。もちろんそれはアスカが将来少しでも家事がうまくなれば僕も楽になるかなぁ、という自分のささやかな期待を込めてシンジから提案したのだ。
結果は勿論あの時と同じようにシンジがアスカの威圧に負けてアスカ担当の日が一週間に一回ほどしかないという、まるでデジャヴを見ているようなことになったのだが…。
「うるさいわねぇ!今日は疲れてるからアンタがやって!!」
そして先日まで一緒に暮らしていた保護者と同じような発言をするアスカ。
177 :
149:2007/12/13(木) 16:56:40 ID:???
「はあ…、そんなんじゃあ、お嫁に行けないよ?」
するとアスカはすぐさま言葉を返す。
「将来、家事はシンジがやればいいでしょ?私が仕事から帰ってきたらご飯とお風呂の準備はちゃんとしておいてよね!」
「アスカ…、それって…」
急に顔が紅くなるシンジを見て、ようやく自分の言っていたことの意味を理解するアスカ。
ヤバッ。ついつい本音が出ちゃった…。
「き、今日は私がご飯作るからシンジはここで待ってなさいよ!」
恥ずかしさで早くリビングから逃げだそうとバタバタと走り去るアスカを呆然と見ていたシンジは、先程のアスカの発言を思い出してだらし無い笑みを浮かべてしまう。
あれってアスカがこれからも僕と一緒に住んでくれるってことなのかなぁ?そうだったら嬉しいなあ。
そんなことを考えながら上機嫌でアスカの料理を待つシンジ。
しかし一時間後に出てきたアスカの料理はお世辞にも美味しいとは言えない料理だった。勿論簡単な料理くらいはアスカにだって出来るのだが、今回は料理よりも自分の心を落ち着かせることに手一杯だったのだ。
結局アスカの命令で晩御飯を作ることになったシンジは今度は一緒に作ってみようかな?とひそかに思うのだった。
数日後、顔を少し赤らめたアスカと、隣で嬉しそうな顔をしたシンジが仲良くキッチンで夕飯の支度をしていたとさ。
(*´Д`)乙
おつ!
乙です〜
「一応はまだE計画は続いている事になってるからね。責任者としては主治医の先生に聞きたい事もあるんじゃないかな?」
青葉さんはそう説明してくれたけれど、僕は何故か納得が行かなかった。
入院中に父さんを引っ張って来た時のリツコさんの視線が、前と変わっていた気がしたから。
何処が変わったのかと言われると、僕のボキャブラリーじゃ上手く説明は出来ないけれど。
「そりゃそうよねぇ……Childrenの健康管理も責任者としては把握しないとダメだもんね」
「その上で今後のE計画の方針が決まると思うよ。俺の仕事内容もそれに拠って変更はあるだろうな」
E計画……母さんが提唱したらしい計画。
いや、どうだったっけ?
母さんが初号機のコアの中に消えた原因の計画。
うん、僕の認識としてはそれ位だ。
何処までもコイツが僕に付き纏うのかと思うと、正直気が滅入る。
もしも、だ。
E計画が無ければどうなっていたんだろう?
母さんがコアの中に消える事が無かったのなら、父さんは僕を捨てる事なんか無かったのかな?
僕がエヴァに乗る事も無くて、サードインパクトも無くって……それ以前に、セカンドインパクトも無かったのかな?
だとしたら、だとしたら……僕はどうなっていたんだろう?
母さんが居て、父さんが居て、僕は一人っ子じゃなかったかも知れない。
ここに住んでなかったかも知れない。
僕が生まれていない可能性だってある。
「退院出来るんだから大した話も無いだろうし。診断書の受取が関の山さ、心配する程の事じゃないよ」
「……本当に、そう思います?」
もしもの事なんか考えても切りが無いのは解ってる。
でも、もしE計画が無かったらって考えてしまうんだ。
だって、僕はあの碇ユイと碇ゲンドウの息子なんだから。
痛い。
またアスカに頭を小突かれた。
「どうしてそうアンタは物事を小難しく考える訳? 一々そんなに考えすぎちゃ身が持たないわよ」
別にそういう訳じゃないんだけど。
やっぱり顔に出てるのかな?
「眉間に皺作って口までヘの字じゃない。ほら、もうちょっと愛想良くしなさいよ!」
「いっ、痛いってば、止めてアスカ」
「アンタにはちょっと痛い位で丁度良いの! 痛いのが嫌なら擽ってあげよっか?」
両頬をアスカに引っ張られた。
多分、愛想笑い位作れって事なんだろう。
だからってワザと痛くしなくても良いと思うけど、アスカなりに心配してくれているのかも知れない。
「まぁまぁ、アスカちゃんもその辺で勘弁してあげなよ。シンジ君もそんなに固くならなくても大丈夫だって」
青葉さんが頭を撫でてくれたけど、何だかクシャクシャと擬音が付きそうな感じがする。
髪の毛の根元が動く感触がする位だから、結構力入ってるのかな。
「やだっ、折角梳いてセットしたのにっ! 青葉さんもアタシに迄しなくてもいいじゃないのっ!」
アスカの頭の天辺が青葉さんの手で撫でられて髪が所々逆立ってる。
「……ったく、手間掛けさせるのだけは一人前なのネ?」
「何が?」
二人が僕の顔を見てるのに気付いた。
顔に何か付いてるのかな?
でも、さっき窓硝子に顔を映した時は何も付いてなかった筈なんだけど。
「シンジ、アンタ今笑ってるわよ」
「えっ?」
「少し肩の力が抜けたみたいだな。うん、その方が良い」
「ほら、アタシよりも頭ボサボサになってるじゃないの……青葉さんも加減しないしぃ……ん、これで良いわ」
アスカが手櫛で髪を整えてくれた。
って僕、今笑ってたの?
「入院してて笑い方忘れたなんて笑えないわよ?」
「久々に病院から出るんだから、緊張もするだろうさ。何にせよ気にしない事、気楽にする事、いいね?」
やっぱり、僕はダメだな。
ちょっとでも気になる事を耳にしたら、直ぐにその場でも考え込んでしまう。
周囲に気を使わせてばかりだ。
けど、何だか無性に嬉しかった。
地下駐車場に下りると、前とは違って少し肌寒かった。
サードインパクトで地軸が戻った影響が出ているのが少し身近に感じられる。
少しずつだけど季節が戻って来てるらしいのは聞いていたけど、病棟内は空調が効いていて余り実感が無かった。
サードインパクトが起きる前は常夏の気候って奴で、地下に入ると涼しくてちょっとホッとする位だったのに。
「これ、冷房なんて入ってないのよね?」
「多分……やっぱり季節が戻って来てる証拠なのかな?」
幾ら長袖の服を着ていても、肌に触れる空気はひんやりとしていて、今迄馴染みの無い感触には違いないと思う。
クーラーと違って自然な冷たさと言うか。
「俺が子供の頃はこれが普通だったんだがなぁ……二人共こっちだよ」
青葉さんの後に付いて歩いていると気付いた事がある。
空気の流れがゆっくりで、所々に水溜りが見える。
コンクリートの壁を見るとあちこち細かいヒビが入っていて、そこから染み出した水が水溜りを作っているのが判った。
地上での戦闘の影響なんだと思う。
かなり地下深い本部のケージからでも、上空からの戦自の爆撃の振動で衝撃の強さが凄まじかった事は判ったから。
あれだけの衝撃なら、多少離れた場所だとしても同じ市内ならこういう小さな被害があるって事か。
それから思ったよりも停まっている車が多い事。
「一般車両ばっかりだ……」
「復興が始まってから戦闘で吹っ飛んだ施設の代替として、無事だった所は一般開放してるんだよ。ここもその一つになるね」
「その割に入院患者は少なかったわよ?」
「初めは職員しか居なかったからさ。今は復興工事や何やらで入って来た人達が外来に診察に来たりしてるんだよ」
「工事に怪我人は付き物って事?」
「そんな所だね。さぁ、午後から忙しいんだから乗った乗った。昼飯食って、その後は買物もあるんだぞ?」
青葉さんが開けてくれた小さな軽自動車の後部座席に、アスカと二人で乗り込んだ。
車の窓から差し込む光が、地下駐車場の薄明かりの電灯から太陽の光に変わった瞬間、僕達の入院生活はピリオドを打つ。
でもこの時はまだ、エレベーターに乗った時の嫌な予感が、現実になるなんて僕は思いもしなかった。
乙!
乙
空気を読まずにイタモノ投下
僕とアスカが同棲を始めてどのくらい経ったのだろうか。
もう僕は正確な時期を忘れてしまった。
アスカは覚えているのだろうか。
ねぇアスカ……。
裏切り
1
外では雨が降っている。今、僕の視界に映るのはアスカの買ってきた鉄器の風鈴(東北地方のある地域に伝わる鉄器らしい)と、部屋と外を隔てる窓だけだ。
僕は床に敷かれた赤いカーペットの上に座っていた。背後には簡易テーブルが置いてあり、僕はそれに目をやる。
テーブルの上には冷めた紅茶があるが、僕は既に、それを飲む気がまったく失せていた。
僕はそのカップをキッチンへ持っていく。そのカップはアスカの物とペアだった。僕は流しに紅茶を捨てた。
雨の降り注ぐ音に、ダダダダと紅茶がシンクを叩く音も加わる。しかしその音も紅茶と共に空虚へと儚く消えてしまった。
僕は、空になったカップを調理台の上に乗せる。優しく、愛でる様にそれを見つめる。半ば舐め回す様に、しつこく、固執して。
その白いカップを暫く見ていた僕は、思い出した様にそれを手に取った。少し移動して、逡巡する。アスカの顔を思い浮かべ、アスカの罪を考えた。
そして僕は、玄関のコンクリートにそれを叩き付けて粉々にした。
僕はそれで、アスカへの想いを断ち切ったのだ。
少なくとも、僕はその時だけはそう思っていた。
◇
アスカが僕を裏切ったのは一週間前の事だった。
いや、そのずっと前からアスカにその兆候はあったのだ。
僕らが同棲を始めたのは何時だったか? 正確な時期は分からなかったが、確かアスカの十八回目の誕生日が終わった後だったような気がする。
僕らは小さいころからの幼馴染みだった。それも飛びきり仲の良い幼馴染みだった。同年代の幼馴染みと比べてみても、僕らの親密さは抜きん出ていた。
そして一番身近な異性として至極当然の様に惹かれ合い、至極当たり前の様に互いの体を重ねた。
そして中学三年の八月に僕とアスカは付き合いだした。その年の内に、体も重ねた。
僕達が初めて交わった場所は、近所にある小高い丘だった。更に詳しく言えば、その奥にある林の中だった。
その日はクリスマスイブだった。僕はアスカに誘われて花火のよく見える丘に行ったのだ。
そして、僕達が丁度山頂に着いた八時頃に上がった花火。僕はその全てを、今でも鮮明に覚えている。
僕は花火の下でいつもするキスとはまったく違う濃厚な物をアスカにした。それで二人の仲にひとつの合意のような物が出来た。
僕はアスカの体を横たえ、体中をまさぐった。そして情事を交した。
僕はアスカの体にしっかりと、極めて念入りな前戯を施した。アスカを弄び、一頻り喘がせた。そして僕は、その熱り立つモノをアスカの中へと、ゆっくり慎重に侵入させたのだ。
その動きは自分でも呆れる程にゆっくりだった。アスカの痛みを少しでも緩和させようとしたのだ。
しかし、当然の如くアスカは痛がった。だから僕は、酷い悪態を吐かれたり、さして厚くない胸板に爪を立てられたりした。
そしてその夜が、アスカの涙を初めて見た時だった。それが痛みからなのか、ヴァージンを喪った喪失感からなのかは、今でも解らない。
今思えば、僕はその時からアスカと最後に会った日まで、一度もアスカの涙を見た覚えがなかった。
そして、僕らは同棲を始めた。
どちらから言い出したのかは憶えていない。ただ僕らは大学に入る前頃に、両親の住むマンションから幾分離れたアパートに住み始めた。ただそれだけだ。
大学に上がってから、僕とアスカの距離は更に近付いた。僕達は、時に学校を休んでまで交わり、体液を交換しあった。
しかし、そこまでだった。
アスカはアルバイトを始めた。僕らは両の親から十分な金銭的支援を受けていたので、金がないという事はなかった。別段、バイトなどする必要はなかったのだ。多分アスカの気質がさせたのだろう。
アスカが、外で働くようになったからだろうか、その頃から僕とアスカの距離は次第に遠くなっていった。アスカのバイトへ行く時の化粧は段々濃くなり、服装も派手で露出の多い物になった。
しかしそれは未だ良かった。許せる範囲だった。それに、アスカは未だ僕と十分過ぎる程のスキンシップを取ってくれていた。
“事”だってしていた。
しかし、三週間前の日曜。
アスカのお母さんが、死んだ。
交通事故だった。
アスカは悲しみ、嘆いた筈だろう。しかし添い寝までしていた僕や、親にすら、一滴も涙を見せず気丈に振る舞っていた。
そんな独りで悲しみに堪えるアスカに、僕は声を掛けて慰める事さえ出来なかった。しない方がよいと思ったのだ。
それからだ。
アスカは変わった。
朝帰りがザラになる。煙草の匂いが漂い、酔って帰る様になった。
僕の諫めは、全く意味を持たなかった。どうして僕と同棲しているのかさえ不明瞭になり、理由や実体も消えていった。
それが、二週間前のアスカと僕との関係。。
そして一週間前。アスカは僕を裏切った。
その日、僕は大学の講義を早めに切り上げ、何時もより早く我が家に戻った。
それは勿論、アスカと話し合う為だった。
自宅のドアに鍵を挿した時、僕は違和感を感じた。
鍵が、開いていた。
確かに閉めて出てきた筈だ。しかし、扉が開いている。アスカが帰って居るのかと想像しつつ、僕は扉を開けて恐る恐る玄関に入った。
僕のアパートの間取りはあまり広くはない。1DKの小さい部屋だ。だから、玄関からは僕らの生活空間が見通せてしまう。
そこには僕が想像すらしていなかった光景が広がっていた。僕はそれから目を反らす事が出来なかった。
そこには無造作に敷かれた敷布団と、無機質に稼働する扇風機。そして敷布団の上に拡がったシーツの下に蠢く二つの人影。
一人は全く知らない男だったが、もう一人は良く知る女だった。
「……アス……カ?」
何故か僕の声は酷く擦れていた。
僕に気付いたのか、男に組み敷かれて喘いでいたアスカは首を擡げて驚いた様に目を見開いた。
彼女は僕を見る。
そしてアスカの上に被さっていた男は、後ろを向く様にして僕を見た。僕とはさして変わらない顔立ちの、優男に分類される風貌をした男だった。
無意識に、本当に無意識の内に、僕は男に向かって何かしらを叫んでいた。
多分「出ていけ!」とか、そんな系統の言葉を叫んでいたと思う。男は驚いた様に呆然として、急いで身なりを整えた。そして帰りがけにアスカの耳元で「またね……。」と囁き、僕の横を通って部屋から出て行った。
僕はその時、男になんのアクションも起こさなかった事を、今でも後悔している。
僕は酷く憤り、激怒していた。
アスカはシーツで体を隠し、僕を見ようとはせずに背を向けていた。
僕は靴も脱がずに部屋へ上がった。直もアスカは、僕の方を向こうとはしなかった。
「どうして……こんな……。」
そう呟くと、僕は歯噛みして視線を落とした。アスカのした事が、信じられなかったからだ。
これは浮気だ! アスカの裏切りだ!
何時の間にか、僕の頭の中では見知らぬ男への怒りが、アスカへの怒りにすり替わっていた。
いくら混乱していたとはいえ、今思えば僕は酷く浅はかだった。
「なんで……。なんでなんだよ……。」
アスカからの返答は無い。部屋には、扇風機の羽音だけが虚しく響いていた。
「なにもしてくれなかったクセに……。」
たしか、こんな事をアスカは言ったのだろう。それは微かな、呟くような小さい声だった。
アスカは床に散らばった衣服を急いで着けた。着け終わると、顔を伏せながら早足で僕の横をすり抜けて行った。
何故か僕の体は動かなかった。アスカを引き留めたい脳の思考に反して、動いてはくれなかったのだ。情けない事に、僕は離れていくアスカに声さえも、かける事が出来なかった。
僕は件の男に負けた。
僕はアスカを失った。
◇
玄関にはカップの破片が散乱したままだった。僕は納戸から、箒と塵取りを取り出して、散らばった陶器片を掻き集める。
集まった陶器片を、塵取りから茶色い紙の袋に入れて処理する。
僕はそれを玄関の隅に置かれたごみ袋の側に置いた。
取り敢えず、これを捨てるのは三日後の燃えないゴミの日にしよう。
そして僕は、三日前に買った食材とご飯を炒めて取り敢えずの食事を作った。出来上がると、その簡易チャーハンを居間運んだ。
そこは僕の寝所にも使われていて、端には畳まれた布団があった。
今、そこには折り畳み式の簡易テーブルがある。そのテーブルは、アスカと一緒に選んだ物だった。
気分が悪くなる。吐気がし、寒気まで込み上げる。まるでスモッグが天から落ちてきて、僕を急速に飲み込んでしまう様に。
僕はそのテーブルを渾身の力で蹴り上げた。
そしてチャーハンを床に置くと、蹴り上げて無惨に裏返ったテーブルを、窓から裏手の汚い運河へ放り捨てた。
バシャンと派手な音を立ててテーブルは運河に落ちた。
それは暫く、しぶとく浮かんでいたけれど、やがて沈んだ。そのくらい暗い泥濘の漂う運河の中へ。
僕はたったそれだけの運動で切れた息を整えながら、少しずつ沈むテーブルを暫く見ていた。
テーブルから千切れた二本の足が、その淀みに浮かんでいる。
僕は暫くそれを見ていたけど、やがてそれも飽きて、床に座って食事を始めた。
食べ始めた時は、一人で食べる食事など何時もと変わりないのだと高をくくっていた。
しかしそれは違った。その食事は普段と変わりない普通の食事なのに、実際に口の中で咀嚼してみると酷く味けなかった。まるで砂で出来た食事のようだった。
僕はその一口で食事をする気をまったく無くしてしまった。
そしてその殆んど手付かずのままチャーハンが残った皿を片手に持って立ち上がり、キッチンへ向かった。
僕は、その出来のいいチャーハンを生ゴミの袋にぶちこみ、皿をシンクに入れる。
水道の蛇口をキュッと絞ると水が勢いよく流れだして、皿をその塩素が混ざった水道水で満たした。
僕はスボンジを手に取り、洗剤を染み込ませて皿を洗った。
涙が流れるのも気にせずに。
◇
僕がカップを割ってから三週間が過ぎた。
すべては何事もなく過ぎた。と言っても厳密に言えばなにも無かったとは言えなかった。
僕がカップを割った日からしばらく過ぎた頃、カップの破片を捨てる筈だった日。
アスカの父親がこの部屋に怒鳴りこんで来た。彼は、アスカの居場所を僕から聞き出そうとしていた。
その時僕は殴られたのだが、僕だってアスカの居所は知らないし、アスカが浮気して出ていったと言っても信じてくれる気配は無かった。
だから、僕は黙って二、三発殴られた。
今でも、頬はガーゼで覆わなければいけないほど腫れているし、痛みも多分にある。
かなり重い拳だったので、もしかしたら頬骨に皹でも入っているかも知れない。しかし、僕は病院に行く気は無かったし、自分で施したこの治療で十分だと思っていた。
今日は、カップを割った日から二十五日経った十二月二十日だ。思えばアスカのいない内に、彼女の誕生日はとっくに過ぎ去ってしまった。
僕はその日、久し振りに外出らしい外出をした。
この二十日間、僕は殆んど外の土を踏んではいなかった。勿論大学へもだ。まるで天岩戸に篭ったアマテラスの様に戸を閉めて。
何故外出する気になったかと聞かれても、別に僕は美しい歌声を聴いた訳でも、祭りを聞き付けた訳でもない。世の中が闇になった訳でもない。
良くは分からなかった。しかし、敢えて言うとすれば、ただ外の空気を吸って酒に溺れたかっただけだ。
顔を洗い、風呂で体を洗った僕は、ジーパンとティーシャツ、そんな適当な服を着て、二万円ほどを無作法に右ポケットへ捻じ込んだ。
アパートのドアから出てみると、外は相変わらず焼け付くような暑さだった。
続
◆Yqu9Ucevto
gj
194 :
キョーコ:2007/12/19(水) 21:01:20 ID:???
好物キタコレgj
という夢を見た
保守
アパートを出て、アスファルトの反射熱を全身に浴びながら駅へ向かう。
途中、開発途上の空き地群を眺めながら駅に着いた僕は、第三新東京の中心へ向かう電車に乗り込んだ。
十分程で、電車は町の繁華街にあたる地区の最寄り駅に停まった。
僕は電車から降りると空を見上げた。
するとそこには、もう十七時だと言うのに、ぎらぎらと僕を刺し貫くような光を放つ太陽が輝いていた。
昔はこの日本にも四季があったというが、セカンドインパクト以降に生まれた僕には当然、まったく実感がなかった。
日が長いのも、年柄年中夏なのも、すべて僕にとっては至極当然の事で、周りにもその事を気にする友人はいない。
そんな事もあって僕は時々、四季のあった時代に生きた父さんや母さん達が無性に羨ましくなる。
見た所、繁華街には仕事帰りの会社員や水の道の人とかが多くいた。
日が高いというのに、街にはネオンが瞬き、どの店にも暖簾が架って営業を示している。
中には既に客引を始めた、客引女達の嬌声まで聞こえていた。
営業準備を始めたらしい風俗や、映画館を横目に見ながら歩く。
こんな時、僕は少々困る事があった。
何故か(認めたくはないが、恐らく童顔だからだろう)僕の顔は大学生に見られないのだ。
大学三年生でありながら、未成年扱いされて酒を出して貰えない事も屡々あったほどだ。
そんな訳で僕は普段、いつも身分証明書を持ち歩いて、店員に見せなければならなくなった。
しかし運の悪い事に、暫くぶりの外出とあってすっかり身分証明書を持ってくることを忘れてしまっていた。
そしてこの街の酒場は、この喧騒に不釣り合いなほど未成年かどうかに敏感なのだ。
それは数年前に当局が、未成年の飲酒問題を足掛かりに行った未成年者一斉検挙が原因(その捜査の過程で、黙認されていたいかがわしい風俗なども巻き添えに検挙された)だった。
そんな背景もあり、この繁華街に店を出す経営者達は薮蛇をつつかない様。あるいは未成年者の追い出しで、見返りの形で当局に風俗を黙認させている。
そんな裏事情がこの混沌にはあるのだ。
アスカの様な、一目で大学生以上だとわかる者と一緒ならば身分証明書など要らないのだが、生憎彼女はいないし、こうなった原因も彼女なのだ。
そして、諦めて帰ろうかとした時だった。
「あれ?碇くんじゃない?」
声が聞こえた方向を見遣わすと、そこには一人の少女が立っていた。彼女は、いわゆるアルビノ形質だった。
「綾波?」
「憶えててくれたんだぁ。」
駅の方向から駆け寄って来た綾波レイは、僕の前までくると嬉しそうに僕の手を取った。
彼女は真っ白なブラウスを着て、下には淡いブルーのスカートを穿いていた。
「忘れる筈ないよ……。それより、綾波はなんでこんな所に?」
そんな僕の問いに彼女は答えず、半ば強引に僕の手を引っ張って繁華街を歩いた。やがて彼女は適当な居酒屋を見付けて僕を連れこんだ。
彼女は、奥のテーブル席まで僕を連れて行くと、僕を入り口側に座らせ、自身は僕の向かいに腰を下ろした。
綾波は店員にビールとツマミを注文して、ようやく僕の事を見た。
「で。どうして私がここにいるのかって?」
強引に事を運ぶのは昔と変わらないようだと、僕は思った。
僕は頷いた。
「バイトの帰りなのよ。大学のウサ晴らしと、バイトのストレス発散。これにはアルコールが一番なのよ。」と綾波は答えた。
しかし、少なくとも僕の記憶には彼女が大学に受かったという話しを聞いた覚えがなかった。
「落ちたんじゃなかったの?入試。」と僕が訊くと、彼女は店員の持ってきたおしぼりで手を拭いながら答えた。
「ねぇ、碇くん? 世の中には浪人生って言葉があるのよ? 高校出てからもう二年以上経ってるんだから。」
彼女はそう言って、上目使いをして僕を見た。
「ごめん……。」
僕がそう謝ると、綾波は溜め息を一つ吐いておしぼりを神経質に畳み、テーブルに置いた。
「貴方、高校の時となんにも変わっちゃいないのね?」
「そんな事ないよ……。」
僕は自信なく言った。
「そんな事ない……。」
そんな僕の事を、綾波は暫く疑いの目で見ていた。だがビールが運ばれてきた途端に、彼女の瞳は輝いて興味は僕からビールに移った。
「お酒、いつからそんなに好きになったの?」
僕は、ビールジョッキを傾けて琥珀色の液体を啜る綾波に訊いた。
ビールを半分まで飲んだ彼女は、口許をハンカチで軽く拭ってから答える。ビールジョッキの縁には彼女の口紅が付いていた。
「いつからって……多分、う〜ん恐らく高二の時くらいかな……?」
彼女は人差し指を顎に当てて、少し考えるような仕草をしてから綾波は答えた。その綾波の答えに、僕は軽く溜め息を吐いた。よく補導されなかったな、と。
「はい、ここで私からの質問!」
唐突に綾波は人差し指を立てた。
「質問一!
碇くんは今何処に住んでいるのでしょうか?」
早くも酔いが回ったのかと思ったが、見る所彼女はまだ酔ってはいないようだった。
「ここから下りのJRで二駅目、駅から徒歩十分のボロアパート。」
取り敢えず僕は答える事にした。
中学の時からそうだった。彼女が話し、僕が相槌を打っているとアスカが話に乱入し、揃って競いあう様に喋りまくる。そんな二人を前に、僕は相槌を打ったり軽い意見を述べたりして微笑むのだ。
「それでは質問二!
顔のガーゼはなんなんでしょう?」
綾波はひょいっと、ピースするように、人差し指と中指を上げて、数字の二を示した。
「居酒屋で絡まれた時殴られた。」と僕は父さんの武勇伝を引用して言った。
「……冗談でしょ?」と真剣そうな面持ちで綾波は訊いた。
「うん。」
僕があっさりと冗談だと認めると、綾波は腕を組んで憤慨したように迎け反って言う。
「もうっ、私は本気で訊いてるのにぃ!」
腹を立てているような声色で彼女は言った。
しかし、僕が「ごめん、ごめん。」と言ってビールの追加を頼むと、彼女は直ぐに機嫌を直して「まぁいいわ。ビールに免じて許してあげる。」と言った。
綾波は半分まで減ったビールを一気に飲み干し、新しく運ばれてきたビールをまた半分ほど飲んで一息ついた。そしてまたハンカチで口許を軽く拭った。
彼女が置いたジョッキには、やはりピンクに近い系統色の口紅が付着していた。
「では、ここで質問三に移りまーす。」
僕は、頬が赤みざして大分酔いの回ってきたらしい彼女を見て「はいはい、どうぞご自由に。」と言った。
そして泡の消え掛けたビールを一口啜った。
綾波は人差し指と中指に、親指を加えて計三本の立てた指を僕に示した。
「碇くんは今付き合っている人はいるの?」
僕は否定した。“今”付き合っている人はいない。
しかし綾波は、怪訝そうに首を傾げた。
「……アスカは?」と綾波は訊いた。
「僕は捨てられたんだよ。」
僕の声は微かに震えていた。
他人からアスカの名前を聞かされてしまうと、望む望まないに関わらず、僕の意思とは全く関係する事なくアスカの姿が脳裏に蘇った。
それは同棲を始めて一、二ヶ月ほどたってから出掛けた海で目にしたワンピース姿のアスカだった。
僕は数あるアスカの姿の中で、その姿が一番好きだった。
僕は綾波の顔をジッと、しかしどこかぼんやりと見つめていた。
そして僕は、知らず知らずの内に、涙が頬を伝っているのを感じる。
それからは、まさに関を切ったように、それこそ暴れ川の堤を切った様に、感情の濁流が押し寄せて、それに僕は浚われていった。
僕は木のテーブルに突っ伏して、涙どころか涎まで締まりなく垂れ流して酷く泣いた。
僕の向かいの席で綾波がおろおろとしているのが、僕にははっきりと解る。
「ちょっと! 落ち着いてよ! こんなとこでこんなことしてたらおかしく見られるわ。私がなにか悪いこと言ったなら謝るから、ね?」
僕は何度か、ごめん大丈夫。
と言ってその高振りを治めようとおしぼりに顔を押し付けた。そしてその高振りは、試合の終わった野球場から観客が引き揚げる様に、ゆっくりと治まっていった。
やがてそれは嗚咽に変わり、鼻を啜る微かな音に落ち着いた。
「ごめん、もう大丈夫だから……。」
一度人の前で泣いてみると、僕の気分はほんの少しだが良くなっていた。
少なくとも、アスカがいなくなって数週間の間に溜った苦痛や悲しみは、コップの中で溶けた氷のように薄められて涙と一緒に抜けていってしまったようだった。
しかしそれでも、アスカに裏切られた怒りというか、憤りのような負の感情は深々と僕の心に深い根を張って、食い荒らしているように感じた。
「大丈夫?」
綾波が僕の顔を覗き込むようにして見ている。
「大丈夫だよ、心配いらない……。」
「でも……。」
なおも綾波は、僕を心配そうに見ている。
「本当に大丈夫だから……。」
そう言って僕はビールを飲み干し、笑った。しかし僕のその笑顔は引き攣っていただろう。
「ちっとも大丈夫には見えないわよ? 精神不安定なんじゃないの?」と綾波は訪ねた。
「やっぱり……そうかなぁ……。」
僕は引き攣った笑顔のまま言った。そして頬を指で掻く。
「ねぇ、私に話してみなさいよ。」
「え?」と僕は声を上げた。
「人に話して楽になる事もあるんじゃない? 貴方のことだからどうせ友達らしい友達もいないだろうし。」
確かにそれはあるかも知れない。
僕の生活はアスカを中心に回っていたし、恋愛相談を出来る友達――高校を卒業してから居場所のわからないトウジやケンスケを抜きにすればだが――など皆無だった。
だから僕は、思い切って綾波に話す事にした。
アスカがバイトを始めた事、キョウコさん――それがアスカのお母さんの名前だ――が亡くなった事。そして僕がアスカをそっとしておいた事や、アスカが僕を裏切って他の男と寝ていた事。
僕はその話を、アスカが家を出た件で締め括った。
綾波は途中、ビールを飲んだりツマミを食べたりしながら僕の話を聞いていた。
思えば、僕がこんなに語るのは初めての事だった。話すのは殆んどアスカや綾波の役割だったし、僕も話すことよりかは聞き手の方が性に合っていた。
要領を得ない醜い独白を黙って聞いていた綾波は、僕が語り終わると二本のビールと焼き鳥を追加注文した。
「それで?」と綾波が唐突に言った。
「それで貴方はどうしたいの?」
僕は何も言わず口を噤んでいた。
「アスカを取り戻したいのか、それとも彼女と別れて別の女と一緒になるのか?」と綾波が僕に訊いた。
「例えば?」と僕は訊き返す。
「私とか。」
僕は少し綾波の赤い瞳を覗きこんだが、彼女の瞳にはふざけや遊びは混じっていなかった。いや、分からなかったと言う方が正しいだろう。
僕は相手の目の色、声色や仕草などから、結構正確にその人の感情――察せれるのは本当の感情で、それは相手の思っていることや気持ちではない――を察する事が出来た。
所謂、他人の顔色を伺うと言うものだ。それも二十年間の腑抜け人生の賜物と言えた。
しかしその時の見た彼女の赤い瞳からは、感情など何一つ感じとれなかった。彼女は意図して感情を押し殺しているように見えた。
「綾波、君が何を言っているのかわからないよ……。」
どこかで聞いた台詞だな、と僕は思った。
「そのままの意味よ。」と綾波が言った。
「それはつまり……。」
そこで店員がビールや焼き鳥をこちらに運んできて、テーブルに置いていった。
僕はビールを一口含み、残っていた枝豆を食べた。綾波も同じようにしたが、彼女の方が少しビールの量が多かった。
「それはつまり僕と?」
「そ、付き合わない? って事よ。」と綾波はにべもなく言った。
続く
異性系に離別系…
イタガリータを殺したいのかw
乙
俺は既に死にそうだぜ
死にそうだけど頑張って読むよ!
GJ!
痛い…でも面白い…
wktk
綾波のキャラまるで違うな
だって学園エヴァでしょコレ
イタモノに飢えていたのでまじ続き期待
イタイイタイイタイ
最終的にはLASで終わるのか。
それとも・・で終わるか。
イタモノはまあ耐えられるが
誰もがアンハッピーはやだな。
「そ、そんなこと、高校や中学の時には風にも見せなかったじゃないか……。」
「それは貴方が鈍感だからでしょ?」と綾波がさも当たり前のように言う。
「私、結構アタックしてたのよ? 休み時間とか、アスカより早く貴方に話し掛けたり、アスカより貴方に近付こうと必死になったりしてね。」
綾波は微笑み、続ける。
「もちろん、今でも諦めてないけど。」と綾波は言って微笑みを深くし、僕の顔に寄った。
僕は顔を背け、床に目をやった。
綾波は一体何をしたいんだ。
「僕はアスカと別れたばかりなんだよ? なんでそんなこと言うんだよ。」
僕のささやかな抗議も、綾波には効かないだろう。
「今……だから言うのよ。」と言って綾波は僕から離れる。そしてビールジョッキを空にして、店員を呼び追加を注文した。
「最愛の彼女と別れ、傷付いた片想いの男の子を慰める私。そして片想いの相手は心の隙間を埋める為に私と体を重ねる。」と綾波は夢でも見るみたいに語った。まるで劇の荒筋みたいだなと僕は思った。
「でも……僕は……。」
「分かってる。」と綾波は言った。
「確かに貴方はアスカの事を忘れられないと思う。」
「じゃあなんで……。」と僕は言ったが綾波はそれを遮った。
「だけど……だけどね、私は貴方の事を忘れられないし、実を言うと貴方を私から奪った挙げ句に、不貞で裏切ったというアスカの事を……多分憎んでる。」
そうして綾波は言葉を切った。
それから僕達の間には長い沈黙が流れ、店員がビールを持ってきて置いていった。やがて綾波が口を開いた。
「で? 抱いてみる?」
思わず口に含んでいたビールを噴き出しそうになるのを抑えて飲み込むと、おしぼりで口許を抑えた。
「い、いきなりなに言うんだよ!」
僕は顔を真っ赤にして叫ぶが、綾波は顔色一つ変えずに口の前に指を宛てて、静かにするように促した。
僕は更に赤くなって浮き掛けた腰を椅子に落ち着けた。
「んで? どうなのよ?」
「やれる訳、ないじゃないか……。」
「へぇ〜ご立派ご立派。」と綾波は言って手を拍手するように叩いた。
「不貞を働いたアスカに義理立てするわけぇ?」
丸っきり中高生時代と変わらない生意気さの満ちた口調だった。
僕は力なく頷いた。
綾波はしばらく僕の事を品定するように見ていたが、やがて肩を落として駄駄っ子の我が儘を容認する親のような溜め息を吐いた。
「やっぱ幼馴染みには敵わないなぁ……。」
「ごめん……。」
「いいのよ。それよりね! 今日は呑むわよぉ! 潰れるまで呑むんだから!」と言い綾波はビールを飲み干し、豪快な吐息を漏らしてテーブルにジョッキを置いた。
僕はふと暖簾の架った窓から外を見てみる。霞んでいた。耳を澄ませば喧騒に混じって雨がアスファルトを打つ激しい騒音が耳朶に入った。
ど う や ら 外 は 豪 雨 の よ う だ っ た 。
2
それから僕らは、潰れはしなかったが僕の持ち金ギリギリまで呑み食いし、店前で携帯のアドレスとTEL番号を交換して別れた。
店を出る頃にはすっかり集中豪雨は止み、雲すらも一つも無かった。ただ全身濡れそぼった人がちらほらと見え、水溜まりがあるだけだった。
綾波の携帯番号をメモした紙切れ――僕は迂濶にも携帯を持ってきていなかったし、家のどこにあるのかさえ分からなかった――をジーパンのポケットに捩じ込んだ。
顔を赤く染め俯きながら虚ろな瞳に道路のアスファルトを映して、駅へ続く騒がしい繁華街を歩き始めた。
駅に着くまでに何度かごみ捨て場の横で嘔吐し、耳を打つ喧騒に顔を顰めた。
駅に着くと余った金で家の最寄り駅まで切符を買い、直ぐ来た電車に乗り込むと座席の一番端の仕切りにもたれ、体を左右に揺られながらやっとの思いで吐気を抑え、家の最寄り駅で降りた。
昼に来た道を夜に戻る。見上げると、そこに浮かぶのは燃え盛る太陽ではなくしっとりと、落ち着いた柔らかい光を放つ月だった。
ふと道端を見てみる。そこには一台の汚い自販機が童話に登場するマッチ売りの少女のように寂しく佇み、チカチカと光を放ち、虫達を僕ら人間には解らない魅力で引き寄せていた。
近所ながら、僕はあの自販機で買った事があっただろうか?
自販機を通り過ぎる。
しばらく歩く。次に道端にあったのは矮小な、それこそ誰が使うかすら見当のつかない公園だった。
園内には小さいブランコが一台と砂場、そして鎖でぐるぐる巻きにされて、使用禁止の札が貼られた球形の回転遊具があった。
公園を通り過ぎる。
開発途上の空き地地帯にに入り、アパートのある下町風に整備されていない町の遠景が月光に映されて見えてきた。
僕はアパート前に来ると咳払いを一つし、二階の自宅への金属製で錆び付いた階段をよろめきながら登った。
アスカが僕の家の前にいた。
◇
そこには確かにアスカがいた。彼女は僕の家の扉の横に膝を抱えて蹲り――それは体育座りと言われている物だ――その体はずぶ濡れだった。
服はブラウスなんて上等なものではなく、敢えてなにかといえば病院着のような――いや、それはまさしく病院着だった。
病 院 着 ?
なぜアスカが病院着を着、髪を幽霊のように垂らして、全身を濡れそぼらせながら、捨てた男の家の前に蹲っているのだろう? 見れば彼女の体は震えてさえいた。
寒さからだろうか? いや違う、もっと別の 何 か が原因だ。
湿り気をおび、未だに色が濃く変わっている錆びた赤茶色をした鉄の床を、僕はゆっくりと歩いていく。
蹲り、信じられないほどその存在が小さくなってしまったアスカの前に、僕は両足を揃えて立ち見下ろした。
「シンジ……。」
それはまるで空に散る紫煙のような儚い呟きだった。
僕は逃げる。
僕は後ろ手に扉を閉めた。胸に手を当てると、心臓の激しい高鳴りが掌にもはっきり伝わり、苦しさも増した。
僕は何をしているんだ。いま目の前にアスカがいたではないか。なぜ声を掛けてやらなかったんだ? いや、今でもまだ間に合う筈だ。
僕とアスカの距離は数歩しかない。しかしその距離は近くもあり、遠くもある。
携帯電話の呼び出し音が聞こえた。僕は足取り怪しくリビングの方へ入っていった。携帯は窓辺の充電器に据えられていた。
僕は携帯を手に取り、通話ボタンを押して耳にスピーカーを近付けた。
「もしもし……。」
「あ、碇くん?」
綾波の明るい声がした。
「あ〜よかったぁ。ウソの番号教えられたりしてたらどうしようかと思ったわよ。」
おどけたような声だった。僕は右手から左手に携帯を持ち変え、窓横の壁に背をつけて座った。窓の形に切り取られた月光が、畳の上を照らしていた。
「ねぇ、なんとか言いなさいよ!」
綾波は喋らぬ僕に痺を切らしたように言う。
「うん……。」
綾波は受話器際で溜め息を吐いたようだった。
「なんかもっと言えないわけ?」
僕は扉を見た。部屋にある唯一の出入口だ。僕がアスカの浮気相手とすれちがった戸口でもある。
それは所々錆び付き、そのいかにも古めかしい錆びは、セカンドインパクト前からこのアパートがこの場所に建てられていることを僕に思い出させる。
そしてその扉の向こうにはアスカがいる。
「綾波……。」
「ん?」
綾波は聞き返す。
「アスカがね、部屋の外にいるんだ……。」
言うつもりは無かった。いや、僕はこの事を誰かに言いたかったのかも知れない。もし電話相手が綾波でなく、トウジやケンスケでも同じ様に言った事だろう。
「貴方バカ?」と綾波は言った。しばらく黙った後だった。その沈黙は何かをじっと考え込んでいるような静けさだった。
僕は喋らない。答えない。目を閉じる。そうだ、僕はバカだ。しかし僕は散々アスカに言われて、ようやくそれに親愛の情が篭っている事を知っていた。
「怖いんだよ。」と僕は言った。それは事実だった。アスカに話しかけるのが、アスカに真実を話されるのが、アスカに拒絶されるのが怖かった。
綾波は何も言わない。さっきと同じ、何かを考えているかのような沈黙が続いた。
恐らく、綾波は僕がこんな深刻な懸案を話すとは思わずに電話をしたのだろう。或いは困っているのかも知れない。
「人間はね……。」
まさに厳かといった風に綾波は言った。
「やるときにやることをやらないと後悔するのよ。私みたいにね。」
彼女の言葉には妙に重みがあった。僕は何も喋ることが、口を動かすことが出来なかった。受話器越しに重苦しく沈んだ空気が漂う。
もしかすれば、僕は綾波に外にずぶ濡れになったままでいるアスカの事を話すべきではなかったのかも知れない。
自惚れる訳でも、自慢する訳でもないけれど、綾波は僕の事が今でも好きだと言ってくれた。その綾波に言うべき事象では無かったのではないか?
しかしそんな心配は、不要だった。
「アスカを逃がしちゃダメよ。」
「え?」
「浮気したアスカがわざわざ貴方の所に帰ってきたって事は、アスカ自身になにかあったんじゃない? 違う?」
考えてみれば、確かにそう思えた。なぜわざわざ去っていった女が、戻って来たのだろう。
「助けて上げなさいよ。」と綾波は言った。その語調は、どこかしら中学高校の同窓生である洞木委員長と似ていた。或いはわざと真似したのかも知れない。
「貴方、アスカのお母さんが亡くなった時、逃げたんでしょう?」
「逃げた?」と僕は訊く。
「そう、逃げたのよ。貴方は。傷付いたアスカに触れて、余計に傷付けるのが怖かったんでしょ。」
その言い方は尋ねると言うものではなく、どちらかと言えば確認の言葉に近かった。
確かに。僕の性格から言って、第三者にしてみればそう受け止められても仕方のないように思えた。
「僕は逃げた訳じゃ……。」
僕はなんとか否定をする。認めたくは無かった。もしそれを認めれば、アスカを失った責任が僕にあるという事になってしまうからだ。『僕は悪くない』と僕は自分にいい聞かせていた。
「……。」
なにも綾波は言わない。もしそのまま電話が切られてしまっても、別段おかしくはないようにも思えた。
「臆病者……。」
本当に、電話は切れてしまった。
電話を畳の上に置く。携帯のスピーカーからは、もうなんの音も発せられなかった。
膝を抱え、顔を埋める。
逃げた訳じゃない。そう信じていた。しかし解ってもいた、僕は逃げたのだと、僕はガラス細工のようになってしまったアスカに触れるのが怖かったのだと。
気付いているからこそ、その真実を認めるのが怖かった。
アスカを裏切ったのは、僕自身だ。
続く
普通に面白いわ。GJ!!
ただ一つ言うなら溜まった連載先に消化して欲しいが。
こんなアスカは死んでいいや
イタモノとして読むから
もっともっとイタくしていいよ
ガンバ!!
もうLASじゃないからどうなっても桶
ここで突き放しバッドエンド希望
他の男の子供を育てるなんて糞面白くないエンディングはやだ
イタガリータにはたまりません
最後までwktkして待っております
>高校や中学の時には風にも見せなかったじゃないか
これってどういう意味なんですか?
何かはじめて見る言葉遣いなもので
テラGJ!&続きwktk
エヴァFFじゃなくてチラシの裏だと思えば痛くない。
別スレでもこの人の作品読んだけど、今回のも前回のもアスカが優遇されすぎだろ。シンジが死ぬほど可哀想だし
あと文章がダラダラし過ぎだわ
文章は別にダラダラしていないんじゃない?
まあイタモノだしストーリーは好き嫌い出るのはしかたないのかな
個人的には面白いので好きだけど
ていうかファンフィクションなんだから自分の妄想垂れ流しでいいんだよ別に
それを気に入った人が読めばいい
まぁ、これでイタガリータに荒らすなという方が難しいw
なぜだろう、おいらは重度のLAS中毒なのに
ここのアスカには殺意が沸いてくる
そうか?もっとやれやれって感じだ。
幸せなSSがありすぎて退屈してた所さ
>>231 心配せんでもシンジを陥れることはできたんだし、
これから◆8CG3/fgH3Eが必死になって浮上させるだろ。
もっとアスカが痛い目にあってほしい
いやアスカもシンジもどん底まで落とすのよ。
あとは這い上がらせるだけ
ゴールイン結婚
いや、ここは這い上がらずにバッドエンドだろ
237 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/12(土) 15:25:28 ID:0GBJ7YYb
盛り上がってるなwwww
じゃあオレもwktk
いかん、sage忘れたorz
ごめん…
このシンジに非は無いだろ。
何でこうゆうイタモノって「シンジに非がある」「シンジが裏切った」とかばっかなんだろうね。
まぁこのアスカなら精神がヤバくなってようが悲しまない。
アスカもシンジも綾波も哀れだな
気持ち悪い話に名前だけとは言え使われて
このアスカは哀れだろうが辛くない。
シンジは作者の自己投影だしレイも色々と都合の良い女だな
イタLAS人はDQNアスカマンセーの為に他のキャラ壊すのいい加減やめたらどうだ
まぁなんだ、とりあえず続き待ってるよ
このスレは負の感情が渦巻いてるなw
◇
扉を開ける。戸口の横には、まだアスカが壁に背を預けて蹲っていた。
扉の音に反応したのだろう、アスカはゆっくりと僕に目を向けた。
彼女のあんなに輝いて眩しいほどだった蒼い瞳は、今は暗く淀み、霧が掛ったように濁りきって何も見てはいないようだった。
そんな彼女の目を見たのは、後にも先にもこれっきりだった。
――精神崩壊――ふとそんな現実離れした単語が脳裏に浮かぶ。しかしまさにアスカの姿は、そう形容するにふさわしい衰弱体だった。
「アスカ……。」
彼女の体は小刻に震え、僕が何度も口付けた柔らかそうな唇は切れて血が流されていた。
みれば、僕の体が触れる度に赤く染めていた頬は別の赤に染められ、痛々しく腫れていた。
なんで僕はもっと早くに声を掛け無かったのか。後悔が頭をよぎり、何かが頭を鈍器で殴るような気がした。
僕は恐る恐る手を伸ばし、アスカの体に触れる。
彼女の肢体が酷く緊張しているのが、はっきりとわかる。半開きだったアスカの口が、少し動いた。
僕はアスカの肩と二の腕に両手を置いたまま、彼女の微かな動き、変化を観察した。
しかし口がよくわからない動きをしてからは、アスカの身体にろくな変化は見付けられなかった。
僕は拒絶か受容の仕草を探していたのだ。
しかしそれを感じさせる動きは砂粒ひとつ程も無かった。
僕はアスカの体に触れていた両手を一旦離し、もう一度あまり変わらない場所に触れた。
しかしその手をその場に止まらせる気は無かった。
出来るだけ自然に、不自然に感じられる事のないように素早くその手をアスカの右脇と左の腰に充てて彼女の体を引き起こした。
その体は驚くほど軽かった。
僕はそのアスカの体を小脇に抱えるように、しかしきちんとアスカに両足で立たせて部屋に戻った。
改めて、あまり外と変わらない寒さに気付く。
僕はその空間から逃げるように、バスルームへアスカを連れていった。
脱力したアスカの体から病院着に似た薄いガウンを脱がせ、脱衣籠に放り込んだ。
アスカは下着の類をなにも身に付けてはいなかった。
産まれたままの姿になったアスカの体に、温度を慎重に調節したシャワーのお湯を浴びせ掛けた。
たちまちに彼女の赤く長い髪は濡れ、微細な色の変化が起こる。髪の一束一束にお湯が伝い、背中を滑っていく。
ぐったりとした彼女の両腕をお湯が流れ、指先へ集まってタイル床に滴り落ちていった。
僕はアスカの幾分に痩せた体を撫でて暖めていった。首筋を過ぎ、背中、そして……。僕ははっと息を飲む。
見付けたのだ。アスカの白磁を彷彿とさせる白い肌に、醜く残る様々な痕。それは明らかに、誰か第三者が付けた傷の痕だった。
どこで何をアスカは犯し、どこで誰にアスカは犯されたのかと思った。
しかし今は考える必要はない。
僕が今するべき事はアスカの体を暖めて服を着させ、二度と僕の腕の中から逃がさない事だった。
いつのまにかアスカの体からは湯気が立ち始め、彼女の肌は健康性を取り戻したように見えた。
しかし、向かいの鏡に映る彼女の瞳は、髪の毛一本程も輝きを取り戻してはいなかった。
それでも幾らかはましになったアスカの体を引き寄せ、ゆっくりと立たせる。
ティーシャツが彼女の体に滴るお湯にまみれ、肌に張り付いた。
しかしそんなものは一向に気にはならなかった。
それに僕の履いていたデニムのズボンは、既にずぶ濡れになっていた。
華奢なアスカの背中が僕の薄い胸板に触れ、そこから実に数週間振りになる柔肌のふわりとした感触が体全体に拡がった。
僕らはバスルームから脱衣所へ戻った。
僕はバスタオルで彼女の体を拭いた。髪を拭き、顔を拭き肩を拭いた。
屈んで腰辺りまで拭くと、ぐったりとした彼女の体は僕の背中へ寄りかかる様に倒れてきた。
僕は屈んだ体を起こし、アスカの体をもう一度よく腕の中に落ち着けてバスルームに手を伸ばし、先ほどまでアスカを座らせていた椅子をたぐり寄せた。
それに再びアスカを座らせ、改めて肌に乗った水滴を拭いた。
彼女の体を粗方拭き終わる頃には、困った事に僕の分身は自己主張を始めていて、こんな時にまで膨らんでしまう欲望が憎らしくなる。
それから僕は随分難儀して彼女の残した服を元の持ち主に着せた。
その服は彼女のお気に入りのインナーだった。
ホットパンツに大きなティーシャツ。
下着についてはよく分からず、着せられなかった――脱がすのは得意だったが。
体が暖まったからだろうか? 彼女は少しではあるが、弱々しい自立歩行をし始めていた。
僕は彼女の脇に手を入れ、別の手で肩を支えた。
リビングに辿り着き、取り敢えず布団を乱雑に敷くと彼女の体を横たえた。
直ぐにアスカの体は縮こまり、まるで胎児のように丸まった。
僕は本当に、アスカをどうして良いのかまったく分からなくなった。
綾波は、僕が逃げたのだと言う。別に逃げたくて逃げたのではない。
僕は右手を何度か握ったり開いたりを繰り返し、その手でアスカの頭に掌を乗せた。何度か彼女の赤い髪を撫で、梳いた。
「シンジ……。」とアスカは確かに呟いた。
それは酷くかすれ、虫の囁くような声だったけれど、確かにあの快活だったアスカが発した言葉だった。
僕は耳を彼女の頭に寄せ、もう一度よく聞こえなかったアスカの声を聞き取ろうとした。
しかしその声はもう二度と聞くことは出来なかった。
僕がアスカから耳を離し、頭に乗せた掌を退けた時、部屋の扉が蹴破られて何かが飛込んできた。
また他の男の子供を孕んでシンジと育てるエンドなら書かなくても良いや
どうせアスカをシンジが育てていくありがちなエンドだろ。たまにはそのばかアスカをつきとばすエンドやれや。
突き飛ばす?
甘い甘い。殺して貰わないと。
ひぐらし顔負けアニメ作ってやんよ
ぐぎゃれよ
235かよ
サルファで2年間同棲してたとかあったけど何も無いわけないよな
他スレで晒されてから読みに来ちまった
アスカはかわいそーで、シンジは酷い目にあっても他キャラに責められて、どうやってもアスカに未練たらたらで、「僕が悪かった」で、アスカにも一応適当に謝らせてはっぴーえんど・・・ですかw
こうやってLAS厨はバカにされ嫌われていくんだなw
3
部屋に入ってきたのは男だった。
彼は真っ黒なスーツを着ていた。ネクタイはしておらず、ワイシャツの裾はズボンから完全に出てしまっていた。そして左手はズボンのポケットに突っ込まれ、壁に突いた右手の甲には刺青がはっきりと見えた。
彼は月光の届かない暗闇から、淡い光の射す所まで進んだ。
ぼんやりと見えていた服装が、光に晒されて段違いに見易くなる。
彼は土足だった。床に足跡が付く。
月光の照らす範囲が、段々と高度を上げていった。あの男だった。
あの日、アスカと寝ていた優男だった。
驚きはしなかった。むしろ想像すらしていた。
もしかすれば、あの男がアスカを連れ戻しに来るのではないかと。
僕は鍵をかけなかった自分に舌打ちした。
「こんなとこにいたのか。アスカ。」
と男は言った。酷くドスの効いた、空恐ろしい声だった。
しかし僕はそんな事に恐怖を感じる以前に、アスカを呼び捨てにした事に苛立ちを覚えた。
「アスカぁ〜?」
男はまたアスカを呼んだ。今度は少し苛立ちを纏った調子だった。
しかしアスカは、僕の予想した通りに何も喋らなかった。男は舌打ちをした。
「あ〜……? もう壊れちまったんか?」
『 壊 れ る 』僕はアスカの顔を見た。
或いはその表現が一番今のアスカに合っているのかも知れない。
「まぁいいや……。」
男は刺青の入った方の手で頭を掻いた。
「……素材は良いし、こんなんでも客ぐらいは取れっかな? 人形だけど。」
「人形……。」
と僕は呟いた。しかしその声は、僕自身の周りを取り巻く空気を震わせる事はあっても、男の鼓膜を震わせる事は無かったようだ。
男は僕に無関心だった。
「坊っちゃん。」と男は言った。
僕は改めて男の顔をまじまじと見た。どうやら男は完全には僕の事を考えから外してはいなかったようだ。
「そこのお嬢ちゃんを渡してくれるかな?」
僕はアスカの顔を見る。いつの間にか彼女は眠ってしまっていた。
緊張していたのだろう、まるで糸の切れたマリオネットのように布団へ体を沈めていた。
「渡してくれるね?」
男はアスカに呼び掛けた時とは正反対の口調で言った。
この男には二面があるのだ、と僕は思った。
僕は男の言葉に答えようと口を開いた。唇は皹割れる程に渇いていた。
「……わ、渡せません……。」
僕の声は酷く震えていた。
「あぁ?」
と男は短く凄む。肩が無意識に震え、僕は膝の上で手を握り締めた。
「渡せません。」
今度は先ほどよりも幾分ましな声だった。少なくとも吃りはしなかった。
僕はアスカの顔しか見ていなかった。
スゥスゥと静かな寝息を立て、赤く綺麗な長い髪を布団の上に晒したアスカの姿に、僕は不謹慎にも綺麗だと思ってしまう。
僕はアスカの寝顔から目を離す。力を込め、睨むように男の顔を凝視した。
これは今僕に出来る、精一杯の凄みだ。
しかしその精一杯も、意図も容易く粉砕される。無表情だった男が、笑った。
最初は軽く、しかしやがて体を折り、腹を抱え始めた。大笑いしている。僕は戦慄した。
「あはははは! ケッサクだ! お姫様を守る王子様気取りかよ!」
僕は唇を噛み、血が滲むほどに手を握り締めた。
ひぃひぃと男は笑いを堪え、蹲った。そしてしばらく経つと立ち上がり、天井を仰いだ。そして僕を見る。
「ふざけんじゃねぇぞ! クソガキがぁ!」
男は目を見開き、僕はその顔に死の恐怖をはっきりと感じた。
男の目は血走り、口からは唾を巻き散らしていた。
突然、バンと何かが壊れた音がした。男が玄関の壁に穴を開けた音だった。
壁紙が捲り上がり、断熱材が周りに飛び散って壁の反対側まで貫通した。
男と壁で隔てられているシンクにバラバラと建築材の破片が落ち、金属と壁材の当たる異様な音が聞こえた。
僕がそれに気を取られた瞬間、男は駆け出し、僕の鳩尾に膝蹴りを繰り出していた。僕は防御どころか回避すら出来なかった。
まるで僕自身の体が自分の体では無いかのように軽々と吹っ飛び、窓下の壁に背中を打ち付けた。
男は休みを与えない。次の攻撃はなんとか避ける事が出来た。
無様に四ん這いになって逃げた背後で、何かが折れるような穴が空くような音が聞こえた。
何か武器はないかと周りを見回す。何もない。
僕は心中でテーブルを捨てた事を初めて後悔した。あれでも幾らかは武器になった筈だ。
壁に背中を付けて窓の方を見ると、男は既に別の攻撃に移っていた。
獣のような男の声と共に、速い拳が僕の額を霞める。僕は更に逃げた。
今度は玄関の方向だ。
這い回る時に、横目にアスカの後ろ姿が見えた。彼女はいまだに眠っているようだった。
「すばしっけーヤツだな。」と男の悪態と舌打ちが背後で聞こえる。
僕はリビングとキッチンを隔てた敷居を越し、玄関横のキッチンに入ると引き出しを開けた。
中から取り出せたのは包丁だった。いや、取り出せたのではなく取り出したのだ。
流石に刃物は洒落では済まないだろう。
僕は包丁の柄をしっかりと握り、前につきだした。
震える足で何とか立つ。少しだけ不安が消えた。
男は僕の姿を見て口笛を吹く。僕にはそれがバカにしているかのように感じられた。
いや、明らかに彼は僕の事をバカにしていた。
彼のその余裕に、力の付いたと少しだけ落ち着いた心は再び激しく揺り動いた。
「そうくるわけね。」
と男は言った。すると彼は懐に手を入れ、何かを取り出した。
それは月明かりで艶かしく銀色の光を反射させ、男が手の中で弄ぶと見事な動きでそれは形状を変えた。
再び男の手中に落ち着いた時には、その麻雀の得点棒に酷似したそれは一振りのナイフに姿を変えていた。
バタフライナイフだった。
そのナイフに、僕の落ち着きは粉ごなに粉砕された。
使い馴れた愛用の包丁は手の中から滑り落ち、リビングの畳床とは違うフローリングの床に突き刺さった。
その瞬間、ヒュッと男のナイフが音を立てて煌めいた。
なんとかそれを僕は避ける。「ひぃっ!」と情無い声を上げて。
こめかみに熱い感触を感じる。完全に避けきる事は出来なかった。
血の流れるこめかみを抑え、男の横を死にもの狂いで飛び、逃げた。
コロサレル
すぐ横の玄関に逃げ込み、震える指がドアノブを掴んだ。
僕はまた逃げるのか?
ふと横を見た。そこにはごみ袋と一緒に茶色い紙袋があった。
そのごみ袋はアスカのパパさんに殴られた日、出す筈だったごみだった。
その日から外には出ていない。
僕はドアノブから手を離し、不思議と落ち着きを取り戻した手で紙袋を掴んだ。
テープで留めた口を破き、右手を突っ込む。
確かにそれはアレだった。そのアレをしっかりと握り締めた。
存外にそれはこまかかった。
男が迫ってくる。彼はナイフを両手に弄び、ニヤニヤと醜悪な笑みを湛えている。
既に目的を、僕をいびることに切り替えたようだった。
僕は歯を食い締め、唾を飲み込む。
コロサレル
汗が額を伝い、こめかみの傷を刺激した。僕は意を決し、振り被った。
気を抜いていた男は反応が出来ない。目が渇く。体が熱く、汗が冷たい。
僕は叫び、細かく砕いたアスカとのペアカップを渾身の力で男に投げつけた。
それに男は反応出来ない。それは男の顔をクリーンヒットした。
「テメっ! あぁ! 畜生がぁ!」
男は左手で顔を抑え、右手に握ったナイフを振り回す。
どうやら上手く目に破片が入ったようだった。
カップをわざわざ小さく砕いた僕自身の几帳面さに、産まれて初めて感謝した。
「うわああぁぁぁ!」
僕は叫びながら玄関のコンクリート床を蹴り、男の懐に体当たりをかました。
男の振り回すナイフが、したたかに右腕を切りつける。
しかし不思議と痛みは感じなかった。
僕の頭が男の鳩尾を捉え、男と僕は揉んどり打つ。
僕は必死でナイフを掴んだ男の腕に縋り付き、この腕を離せば、僕は死ぬのだと思った。
「コノガキ!」
男の悪態に、初めて頭に血が上る。
「僕はガキじゃない!」
自分で言った言葉の荒さに驚き、次に自分の取った行動に驚く。
僕は男のナイフを持つ腕に噛みついたのだ。
「うあぁぁ!」
男は苦悶の声を上げ、ナイフを取り落とす。その時だった。
古びたドアが今日二回目の激しい開け閉めに、金属特有の心地悪い悲鳴を上げて開いた。
激しい足音。僕は目を瞑っていた。僕の肩を誰かが掴み、男と引き離した。
僕は目を開けてもがき、暴れた。
誰かが僕をなだめた。僕の前では男が侵入者に羽交い締めにされていた。
落ちたナイフは、既に男を羽交い締めにした侵入者が遠くの方へ蹴りだしていた。
羽交い締めにした男は黒い服を着てサングラスを着けていた。
僕にはとても落ち着いた考えは出来なかった。
僕は興奮していて、二人の侵入者が味方なのか、それとも僕の敵なのか、まったく判断が出来なかった。
「シンジ君! 冷静になるんだ!」
誰かの声がしたが、僕を押さえ付ける侵入者だろうか? それとも他に誰かいるのだろうか。
不意に体を反転させられ、頬を張られた。その痛みが、全てを連れて戻ってきた。
「……加持さん?」
僕の体を押さえ、頬を張ったのは父さんの懐刀と言えるボディーガードの一人、加持リョウジさんだった。
「落ち着いたか?」
と加持さんは静かな声で言い、サングラスを外した。まさしく加持さんだった。
よく見ると『研究機関ネルフ』のピンバッチも着けていた。
彼の静かな声が、この場の状況を僕に教えてくれるようだった。
僕はゆっくりと周りを見回した。玄関の壁には穴が開き、破片が床に散らばっていた。
男を拘束していたのは加持さんと同僚の剣崎キョウヤさんだった。
剣崎さんのサングラスは暴れる男に弾き飛ばされ、顔の所々を切ったり腫らしたりしながら、随分苦心して男を抑えているようだった。
男に切られた腕の痛みが込み上げてくる。顔を顰めて傷口を抑えた。
「バカ息子が……。」
不意に玄関の方から声が聞こえた。
僕がその声に振り向くと、僕の父さんが、後ろに僕の知らないボディーガードを二人従えて立っていた。
「碇主任。コイツどうしますか?」
声を荒げながら剣崎さんは父さんに聞いた。
父さんはうむと呟いて色眼鏡――威厳を付けたいらしいが、ちっとも似合ってはいなかった――を右人差し指でずり上げた。
「司法の手に委ねよう。」と父さんは言った。
母さんが見たらこう言うことだろう「格好つけないの!」と。
加持さんは父さんの言葉を聞くと、自分のネクタイをほどいてなおも暴れる男の手首を縛り上げた。
後ろ手に縛られた男が暴れながら毒付いた。
「暴れるな! お前、目になんか入ってんだろが! 失明するぞ!」と加持さんは言い、台所からコップに水を注いで持ってくると、男の目を開かせて洗ってやった。
「そんなヤツの手当てなんかすることはないんです!」と僕は叫んだ。
しかし父さんや加持さん達は悲しげな目で僕を見た。
僕はすぐに歯噛みし、俯いた。なんで僕がこんな目で見られなければいけないんだ。
男が剣崎さんに連れられて、僕の横を通り過ぎていく。しかしふと、男が思い出したように喋り始めた。
「あ、そうそう、言い忘れてた。」と男は最初に言った。
「お前は知らねぇだろうがな、この女、凄かったぜぇ? ヤクには手ぇ出さなかったけどな、狂ったみてぇにヤリまくりやがってよぉ……。」
僕はその言葉を聞いて、思わず手を握り締めた。
唇を噛み、目を閉じる。
男への憎しみが、沸々と心底から湧き出して来るのを感じた。
この男を殺してやりたい。と僕は思った。
顔面を頬骨が凹むくらいに殴りつけ、四肢を砕き、眼球を引きずり出して内蔵をズタズタに切り裂きたい。
「『シンジ、シンジ、ごめん、ごめんっ。』って別の男の名前叫びながら良い声で鳴くのよ、これが。
おめぇも拐って見せてやればよかったなぁ。
んでな、そのうるせぇアイツの口に俺の……。」
その言葉は最後まで発せられる事はなかった。
グシャリと何かが折れる嫌な音が男の頬から立った。
僕は今まさに男を殴ろうと拳を振り上げていた。しかしその拳は中空でずっと漂ったままだった。
男の両頬にはそれぞれ加持さんの拳と父さんの拳がめり込んでいた。
殴られて歪んだ男の口から歯がいくつか床に落ち、乾いた音が響いた。
父さんと加持さんが拳を離すと、男の首がガックリと垂れた。
父さんはチラリと僕を見て、さほど下がってはいない色眼鏡を限界まで押し上げると、ふんっと鼻を鳴らして拳を擦った。
「問題ない。前科のひとつやふたつ、増えたところであまり変わらん。」
ネルフの研究主任が暴力事件を起こせば、かなり外面的に問題があるのではないかと思ったが、結局言わない事にした。
剣崎さんが「俺も殴りたかった……。」と呟きながら、男を連行していった。
アスカはネルフの職員に結構な人気があるのだ。
恐らく多数のネルフ職員に恨まれるであろうこの男を、一度でも殴りたいと思う気持ちはよく理解できた。
剣崎さんと男がドアを閉めて出ていくと、僕はハッと思い出した。走りだし、リビングに戻り、床に膝を突いて死んだように眠るアスカの頭に触れた。ゆっくりと撫でる。慈しむようにゆっくりと。
畳を踏む足音。父さんだった。可愛いいキャラクターの刺繍がなされた靴下が視界に入る。それは母さんがふざけて買ったものだった。僕はすぐにアスカの顔へ視線を戻した。
「すまなかったな。シンジ。」
と父さんが言った。これまでに父さんが謝ったのを見たことが無かったが、驚いたりする余裕は無かった。
僕には父さんが何故謝ったのか分からなかった。
「なんで……謝るのさ……。」と僕は言った。
「アスカ君の事を助ける事が出来なかった。」
「いいよ……そんなの……。もう、そんなに子供じゃないんだ。全部、僕が悪いんだ。」
母さんが聞いたら一悶着ありそうな台詞だった。母さんが『もう! どうして貴方はそんなに自虐するの!? それにシンジはいつまで経っても私の子供なんですからね!』と言う光景が目に浮かぶ。
僕は手の甲でアスカの頬を撫でた。湯上がりからしばらく経ち、乾き始めた彼女の頬に、綺麗な睫の生えた瞼の間から、一筋の雫が流れ落ちた。
僕はその雫を、唇で拭いとる。一滴だけのその雫を丁寧に。アスカの紅い髪に覆われた綺麗な形の頭を、掌で撫でる。頭には、暖かさが戻り始めていた。
ふと父さんが口を開いた。
「眠れる森のいばら姫は、王子の口付けで目を醒ましたそうだ。」
それだけを言って、父さんがドスドスと足音をさせて部屋を出ていった。ガチャンと扉の閉まる音。
僕はアスカの側に膝を突いたまま、窓の外を見た。
漆黒の空にはよく見なければ解らないような雲が浮かび、月から出る光が周りの大気にぼやけていた。
アスカの呻きが聞こえ、僕は彼女の顔を、再び見た。
彼女は寝返りを打って、左手を顔の横に投げ出していた。
僕は彼女のはだけたタオルケットを直し、乱れた前髪を梳いて整えた。
余りに穏やかな寝顔に、僕は見とれてしまう。
僕はゆっくりと、彼女の唇に口付けを施した。
実に一ヶ月振りの口付けだった。柔らかい唇。
僕は瞳を閉じて、その溶けるような素晴らしい感触だけに集中した。
触れるだけ、触れるだけの優しいキス。
唇をつけたまま、僕は瞼を上げた。アスカの蒼い瞳がそこにはあった。僕は唇を離し、息を吐いた。
「おかえり……。」
僕は微笑む。出来るだけ優しく、暖かく。
「た……ただいま……。」とアスカが弱々しくかすれた声で言った。
「ごめんね……。」
僕の右の掌が、アスカの頬に触れた。
人差し指に暖かい感触が伝わる。
アスカは泣いていた。声もださず顔を歪めもせず、ただ涙だけを流した。暖かい涙が、僕の人差し指に伝わり、下へ下へと流れ落ちていく。
「愛してるんだ、凄く……。解ったんだよ……君がいなきゃ僕はダメだって。」
アスカの顔が始めて歪む。なにかを堪えるように顔を顰めて目線を避けた。
「アタシは……駄目よ……汚れてるから……。」
「……。そんなことない!」
僕は叫んでいた。両手で彼女の顔を挟み込み、僕の目を無理矢理に見させた。しかし直ぐにハッとする。傷付いたアスカに、僕はなんて乱暴な事をしているんだ。
「ごめん……。」
僕は直ぐに手を離して、彼女の頬を伝う涙を拭った。
「大丈夫だよ……。もう終ったんだ……。」
アスカは唇を噛んだ。悔しそうに。
「なんでアタシ……あんなこと……。」
衣擦れの音。アスカの手が握りこまれていた。僕は首を振り、掌でアスカの頬に触れた。
「ごめん……。全部僕が悪いんだ……。」
「シンジ……。」
「ほら、僕はバカシンジだからさ……君を慰める事すら出来なかったんだよ。」
アスカの口がぽっかりと開き、目尻には涙の粒が溜っていた。
僕は彼女の背中に手を回し、自分の体に引き寄せた。
「結婚しよう……。」
と僕はアスカの耳元で呟いた。ストレート過ぎるほどの告白だった。
こくりとアスカの頭が縦に動き、そして戻るのを耳の後ろで感じた。
もう僕らは夫婦だ。誰がなんと言おうと、僕とアスカは夫婦になったんだ。
アスカは僕の胸を濡らした。
彼女は僕に泣き縋り、「ママ!」と叫び、僕の名を何度も呟き、この二十年間で一度しか流さなかった涙を吐き出すように泣いた。
夜が明け、鶏が哭く頃。無粋な新聞配達のスクーターがエンジンを唸らせ、みんなが起き出し、一日が始まるまで、ずっと。
続く
いろんな意味ですいませんでした……。
なんかもう滅茶苦茶……。
ですが、あと少しだけ、お付き合い下さい。もう少しで終わりなんで……。
いやいやGJです!
乙です!
>>256 空気を読まないで、中二病レベルの俺的最高イタモノ妄想シチュエーションを
エヴァの固有名詞に差し替えて垂れ流してるだけなんだから、どんな
ご都合主義でふざけた話でもしょうがないと思うが。
所詮、チラシの裏にでも書けばいいような自己満足な落書きなんだし。
まぁ、アンチLASなどのスレで晒し者にされたり、
LAS厨のFFはこんな感じですと分析されたりする例を、そのまま具現化した内容ではある
でも>272は単なるブチキレた甘LAS厨だろ、ぶっちゃけ
面白くない終わり方が見えてきました
新しい形の荒らしか
まあ何て言うかイタモノだし、同棲生活あんま関係無いし、ここじゃなくて小説スレの内容だよね。
内容は個人的には、イタモノ駄目ってのもあるが、置いてけぼり感も強くて面白くなかった。
どうでも良いけど、見た直後イタモノ読ませんなゴルァーって、叩こうと思ったら272の
必死過ぎるレス見て急に冷めて叩けなくなった俺が居る。
今書いてる奴は確か他のスレでも
「このスレはイタモノスレと認識」
とか書いてたような…
どのスレ?
279 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/14(月) 12:18:13 ID:ePSHdEAK
あほ作品晒しあげ('A`)
だーかーらー
何でいっつもヤリマン精神ぶっこわれアスカをシンジが受け止めるエンドなの?
バカみたい。ほとんど235エンドしかならねぇじゃねぇか。
アスカを受け止め受け止め受け止め受け止め・・・・・ぐぎゃって殺せやカス
内罰的なシンジでも流石に
「コレは自分は悪くない」
って分かるだろうが。いちいち「僕が全部悪い!」とかすんなカスが
イタモノ少ないしこういう作品あってもいいと思うけど
嫌なら読まなければいいと思うし
この作者の作品はよくも悪くも話題にあがるよねw
こんな感じの展開のイタモノなんて腐るほどあるだろ。
珍しくも無い。
シンジがアスカを突き放す展開なら珍しいぞ?wwwwwやれよ
>>284 1レススレの荒らしとツンデレスレの荒らしを見りゃすぐわかる
近いうちに削除以来するらしいから早く見ないと消えるかもなw
ありがと
見てくるわ
いや上の作者と1レスの奴は違う人だろ
>>287 すまない
酉が似てた上、思考が何か似てたから勘違いしてた……
今確認してみたら違ったわorz
昔N3爆弾って名乗ってた人だよね?
>289
それはまた違うわ
>>284 LAS小説投下総合スレでリク作品を書いてた人のはず。
どうして毎回こうゆうイタモノはアスカが保護されるんだか不思議でたまらん
突き放せやシンジ
アスカが突き放されるなんて、そんなイタモノ書けるわけないじゃないw
アスカを突き放す。これぞイタモノだろwwwwww
ハッピーエンドなんてイタモノじゃないですぅ><
作者がこの反応見てどうにか対処を考えるのか、もう開き直ってくるのかを見守る
感想は完結してから書くわ
突き放せや
突き放せや
突き放せや
300ならシンジがアスカを突き放す
4
僕の家から上りでふたつ目の駅から降り、暫く歩くと中ぐらいの公園がある。市営の児童公園だ。
園内には十人以上の子供達と各々の母親がいて、子供達は各々に砂遊びをしたり遊具で遊んだりしていた。
チラリと腕時計を見る。僕の腕に填っているのは安っぽいプラスチック製の時計だ。買い換えようとは思っているが、機会が中々無く、買うことが出来ないでいる。時計は二時を示していた。
周りを見回すが、目的の人物は見えない。まだ来てはいないようだった。
僕はいくつか置かれたベンチに座ってその人物を待つことにした。僕は待つのが得意なのだ。
三時頃になって、ようやく待ち人が姿を現した。公園の、僕が入ってきた方とは反対の出入口から、綾波レイは手を振りながら駆けてきた。彼女は青いスカートに白いブラウスを着ていた。そして薄く化粧までしていた。
「待った?」と息も切らせずに綾波が言った。僕は軽く首を振る。
「待ってないよ。今来たところ。」
あっそう、と綾波は素っ気無く言い、公園を出た。僕もそれに従う。
綾波と僕は暫く無言で歩いたが、綾波は世話しなく町中にある店のウィンドウを覗きながら歩いていた。
「アスカの調子はどうなの?」
自販機で飲み物を買うとようやく綾波が口を開いた。
僕が珈琲を買い、綾波がコーラを買っていた。
「……まぁまぁかな?」と僕は少し考えてから言った。
缶のプルトップを上げて、もう一度良く考える。
「いや、よく解んないな……。」
言い直して珈琲を口に含む。
「よく解んないってどう言う事よ。」
綾波が怪訝そうにした。
「うん、お医者様は『問題ない』って言ったけど、どうなんだろう……。」
安心するようにとも言われたが、頭の中は不安で一杯だった。
「敏感なんだ、とにかく。」と僕は言葉を探しながら言った。
「怯えるって事?」と綾波が僕の探していた言葉を的確に言ってくれる。
「うん……そうだね、そういう事、かな……?」
「そして、貴方には心を許している……?」と訊くように綾波が言った。
頬が熱くなり、頭に血が上る。恥ずかしかった。
「で、一人にして大丈夫なの?」
「うん、今は症状も安定してきてるし、朝昼晩と薬を飲めば他人だって平気なんだ。それにネルフの人にも見てもらってるから一日くらい家を空けても大丈夫なんだ。」
アスカを診てくれているのは医療部の人と知り合いのマヤさんだ。
「そう、良かったわね。」と言いながら綾波は微笑んだ。
「あ、良いものがあるんだ。」
綾波がセカンドバッグから財布を取り出し、中から切符のような紙切れを二枚出した。各々はカラフルな紙面に大きな数字が印刷されて、裏には説明書きがあった。
「居酒屋のクーポン権なの、もし良ければちょっと飲まない?」
僕はその提案について少し考えた。アスカの事を考えて、僕を決心させてくれた綾波の恩を考えた。
「悪いけど、アスカの所に帰らないと……。」
一刻も早くアスカの顔を見たかったのだ。
残念そうに綾波は溜め息を吐いた。
「せっかく勝負下着着けてきたのに……。」
これにて終わりですが、この最終章は蛇足的なものなんで……。
まあ俺は、途中までどんなにイタモノでも最後にLASになればなんでもおk! という輩なんでエンドは突き放しナシにしました。
それにココに投下するようなモンではなかったですね。次回はきっと甘いのを……。
以後、イタモノには気を付けます。
いや、イタモノだからダメってレベルに達してなかったんだけど
レス見てそれも理解できないとかw
乙でした
書かなくて良いよ
君が書くと活性化より荒れるだけだから、来なくて良い
過疎スレによくもまあ集まったもんだ
他スレでも紹介されてたしな
スイーツ(笑)
私はそんなに嫌いではなかったし、そこそこ面白く読めたよ。
なにはともあれ、お疲れ様でした。m(_ _)m
良かったと思う俺は少数派か?
女は喜ぶかもね、こーいうの
315 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/15(火) 02:22:57 ID:/CI86R29
テラスイーツ(笑)
>>314 不満があれば何も言わずにガンガン他の男とヤりまくって遊んでも、
君を理解しない僕が悪かったんだ〜とかいって反省して何でも許してくれる(むしろ謝罪してくる)男の話だからなw
女視点では楽で都合いいなんてもんじゃない
でもまあこのアスカには天罰下ってるからな
下ってんの?
>>318 暴力受けた…みたいな描写あったし、精神的にヤられてたみたいだし
こういう場合の天罰ってのは、普通にシンジに見捨てられる事だろうな
まぁ、LASスレで見捨てるENDは書けんだろw
そんなことしたら甘LAS厨にフルボッコされる
しかし最近LASスレの風当たりが強いな
なんかアンチが増量するような出来事でもあったんだろうか
一応いっておくが
>>301は1レススレの荒らしじゃないからな
新劇のせいか変な人がきてる
どれを言ってるのか分からん
ここはLASじゃないだろ
同棲してるASの話し
よくここまで人が増えた物だ
よくやった作者
>326
てことは1レススレのあれとかも、人を増やしたからお前さん的には「よくやった」なのか
作者頑張れよ。めげずにな
頑張らなくていいよ。もう死ね
死ね
フォローしてるヤツもよく分からんこと言っとるな
スイーツ(笑)
スイーツすぎワロタ。
突き飛ばせカス
このアスカは生まれた子供に「りあむ」とか名付けそうだ
こんな糞ムカつくLASFFを読んだのは久しぶり
このアスカは死ね。今すぐ死ね。
自演くさい
いいから死ね
>>304 >>321 イタモノであり、最終的にLASだとしても、過程や心情がこうも馬鹿げた内容である必然性は無いな
今だけ盛り上がってもどうせこのスレはまた過疎る。
批評はもういいからLASを頼む
まだ誰もまともに批評はしてないけどなw
上のSS自体まともじゃないんだからまともな批判なんてできないよ
>>349ジャンルが違うだけだろう。
お前感想言ってみ。
スイーツ(笑)
ジャンルのせいにしだしたw
おいおい。情けねー荒らしだな。荒野に変えんじゃなかったのか?w
感想つか、最低系FFを皮肉った遊びを思い出した
最低系スパシンのお約束を箇条書きにしてまとめたものを、
次々とぶち込んでFFを作るっていう遊び
どこで見たんだっけな?
これまで各スレで語られてきた、いわゆる理不尽LASとか残念なイタモノLASのお約束を箇条書きにして、
その要素を詰め込んだだけのFFを作ったら、ちょうどこのFFが出来上がる
そんな感じ
スパシンvsU-1
ジョークかってくらいにテンプレ通りだったなw
>>256そのまんまで、それ以外の要素が一切無いってどんだけー
え?上のSSはジョークだろ?
死ぬのは嫌…捨てられるのも嫌…でもアンタが他人のモンになるのが一番嫌っ!
僕の心も身体も他の人に反応しないんだ。だから僕を見てよ。僕の全てをあげるから君の全てを頂戴?
わかったわ
ありがとう
「じゃあこの最後の唐揚げいただきます」
「マテ」
保守
キモイ
アンチがゆったり楽しく住み着くスレになりました
>>361 ◆8CG3/fgH3Eがいなけりゃ、全て丸く収まる
規則正しい音。
時計。
鼓動。
まどろむ意識の中で子守唄の様に。
甘く、深く、アタシのナカに染み込んで。
けれど、そんな時間はけして長くはなくて。
必ず終わりは来る。
目覚ましのアラーム音。
窓のカーテンの隙間からは光が差し込んで、一日の始まりを告げる。
もう少し、もう少し。
起きなければいけないけれど、このままで居たい。
布団の中から手を伸ばし、アラームを止めて時間を確認する。
午前6時、いつもの時間。
普段ならそろそろ起きなければ、学校に遅刻してしまう。
シャワーを浴びなければもう少し寝ていても間に合うのだけれど。
「……このまま登校するのは、やっぱ拙いわよね」
昨夜の情事の名残を纏わせたままでいるのは、教育上的には非常に宜しくない。
ある程度は拭っていても、勘の良い人間なら直ぐに気付く筈だから。
でも今日は、今日だけは、気付かれてもいいと思える。
「決めた、今日はシャワー抜き」
幸い、シンジはまだアラームに気付いていない。
朝日が昇るにつれて、ベッドの上を柔らかい光が包む。
「ふふっ……何時の間にこんなになっちゃったのかしら?」
光に透ける産毛の中に、薄らと疎らに髭が生えているのが見える。
地道な訓練の成果で、少しは筋肉も付いてきたのが見ているだけで解る。
着痩せしている所為で女みたいに細いから、見た目からではそうは見えないけれど。
服を着たままでは解らない部分にも、しっかりとした筋肉が付いてきた事を知っているのはアタシだけ。
尤も、過去の戦闘で付いた傷痕を知る事が出来るのも、アタシだけの特権ね。
初めて会った時はアタシの方が高かった身長。
サードインパクトを経て二人だけで過ごした頃は、同じ位か微妙にアタシが低い位。
それが今では完全にアタシより高くなってしまっている。
「アンタもどんどん男っぽくなっているのよね……ま、その分アタシも女っぽくなってはいるけどさ」
アタシの身長は結局、あの後からは余り伸びなかったけれど、その分胸や腰周りのボリュームは増したと自負出来る。
肥り過ぎではない程度の凹凸があるのは確か。
その証拠に下着のサイズも服のサイズも変わったもの。
成長し、男女の差がはっきりとしていく。
それは多分喜ばしい事なのだけれど、でもその分、煩わしい事も増えるという事。
今日という日に関してはアタシにとっては特に、だ。
だって、今日は――――――。
2月14日、Valentine Dayだもの。
「さぁてと、目覚まし止めたし二度寝二度寝……」
土足のままで靴の履き替えが要らない高校なのは助かるわ。
靴箱があったら、その中に入っているのは確実だもの。
お陰でアタシ宛のラブレターの数も、中学の頃と比べれば段違いに減った。
基本教科以外は単位選択制の授業なのもアタシには有利。
毎日教室移動ばかりで、自分の席に座るのはHRの時だけ。
そして、アタシもシンジも同じ教科を選択している。
運の良い事に今日の午前は選択授業ばかり。
だから授業が始まっている間に教室に入れば、渡そうにも渡せない。
授業が終わった所で、職員室に呼び出されるのは確実だろうし。
今日に狙いを付けて早めに登校している人には悪いけれど、たとえ義理でも嫌なのよ。
後は休み時間もずっとくっ付いていれば完璧よね?
本命の人だって、アタシが一緒に居ればそうそう簡単には渡せない筈だもの。
シンジが断る手間だって省けるわ。
「ぁ……これを忘れちゃダメだったわね………ん、OK♪」
首筋の目立つ部分にはっきりとしたキスマークを付ける。
一緒に遅刻しただけでなく、キスマークを付けたままなら、どれだけ鈍感な人でもアタシ達の関係がどういう物か解る筈。
これ以上確実な物は無いという保険を掛け、アタシは両手足をシンジという抱き枕に絡ませて、再び眠りに付いた。
もしシンジが寝坊に気付いた時、急いで支度すれば遅刻ギリギリの時間だったらどうするかって?
アタシ達は昨夜ベッドに入った時のままの姿……なら、話は簡単じゃないの。
方法は一つだけだと思うけれど?
――――――『確実に遅刻する事』をすれば良いだけの事よ。
即席バレンタインネタで保守。
「ビニール傘」は暫しお待ちを。
GJおつ
迎え火来てたよ迎え火
迎え火オッテュ
toukamathi
マッチ
ほす
保守
神田川的なLASが読みたい
アスカ「ド イ ツ の 塩!」
『最後に会ってから大して経っていないのに、こんなにも会いたいと思うのはホームシックなのかな?
既に頭の中は夏季休暇の事で一杯になってるし。
折角二人で決めた事なのに、心の何処かではもう帰りたいと思ってるんだ』
アタシの手元に届いたそんな一文で始まる手紙の消印は、エイプリルフールだった。
高校を卒業してアタシは第二東大の大学院に進学。
それと同時にネルフ松代支部の配属となった。
シンジは留学。
留学と言っても大学はついでに近くて、本命は職人修行みたいな物。
そして幸か不幸か、アタシ達が目指す未来はそれ程離れてはいない。
第三の再開発が進みサードインパクトの爪痕が薄れるに連れ、アタシ達の心に残っていた傷も癒される筈だった。
けれども物事は簡単には行かなくて。
表向きは平穏な高校生活。
それなりに楽しめたのは確か。
中学からの付き合いになるヒカリ、鈴原、相田以外にも友人と呼べる人が出来た。
アタシの外見から来るトラブルも多少はあったけれど、それはそれで何時かは良い思い出になると思う。
ホームステイではなく実質的な同棲という事がバレた時は大変だったけど、別にアタシ達が隠していた訳じゃない。
一応保護者は隣に住んでいたし、学校にも許可は貰っていたし、親しい人には周知の事。
結論として、やっかむ人は何処にでも居るという事だ。
多少のごたつきはともかく、傷が癒える速さに比例してお互いへの気持ちを育めた時間なのは確か。
本来なら使徒との戦いが終わった時点で、帰還命令により治療はドイツで行われていたとしてもおかしくない。
当時、朧気に心が通い始めたシンジと離れたくないと日本に残った、アタシの我侭を許してくれた両親には感謝している。
しかし、だ。
互いの気持ちが通じ合うに連れて、戦いが遺した爪痕の大きさが改めてアタシ達の上に圧し掛かった。
時計の針は戻せない。
どう引っ繰り返しても、アタシ達二人の出発点は普通ではないと思う。
勿論その事に関しては、後悔はしていないし、この先どんな事があってもする事は無いだろう。
それでもやはり、当時の環境が赦さなかった事とは言え、普通の恋に憬れる部分がアタシの中にあるのは否めない。
年相応の恋愛模様を目にする度に、年齢とは釣り合わない歪みから抜け出せない事に、アタシは次第に苛立ちを覚えた。
それはアタシだけでなく、シンジにしても同じ事で。
そう、単純に羨ましかった。
アタシ達二人には何もかもが眩し過ぎたから。
一つ間違えれば戦いの終盤の時の様に、再び精神が砕けてしまっていてもおかしくなかったと思う。
そうならなかったのは恐らく、医療部を中心とした長期的な治療と、当時を知る周囲の人の理解があったからだろう。
だからこそ、今のアタシ達がある。
それを忘れてはいけない。
その為に、アタシ達は自分自身とお互いへの想いを見つめ直す事にしたのだから。
「……わざわざマメな奴ね」
幾つになっても不器用な男。
会えなくても連絡を取る手段は幾らでもあるのに。
メールでも、電話でも良い。
消印の日付など気にもしていなかったんだろう。
「うーん……考えていてもキリが無いか」
暦一つに何かしらと極端に一喜一憂し続け、結果的には綱渡りの様な脆さを抱えてしまったアタシ。
多分それは、幼少の頃からひたすら訓練に明け暮れていた為の弊害。
欧米のそれと日本では慣習が全く違うという事もあったけれど、それだけでは片付けられない事。
来日する迄は誕生日一つにしても祝い事としてではなく、単に年齢を確認するだけの日という認識しかなかった。
アタシとは逆に、シンジは暦に左右される事は殆ど無く。
孤独だった思われる幼少時代が影響していたのは間違いない筈だ。
単純に鈍い訳ではなく、無意識に無関心を装う事で他人の輪の中に入らない様にしていた風に見えた。
その反動は大きかった。
TVや新聞、雑誌に左右される周囲の様子についていけない事も幾度かあった。
勿論、その中には恋人達恒例のイベントに纏わる事も。
アタシはしなくていい心配をする事で、必要以上に気疲れする羽目に。
シンジはシンジで自らの意図と外れた所で他人の輪の中に入っていた事で、混乱したり戸惑う事も。
良くも悪くもアタシ達の精神は、自分達が思っている以上に実年齢よりも幼かった。
そしてそれはアタシ達にとって、少々荒療治なれども良い方向に向かう転機となった。
けれども周囲から見れば、何の楽しみがあるんだろうと言わしめる結果となったのも事実。
喧嘩した訳ではない。
ただ何故かと問われれば、周囲の雰囲気に呑み込まれそうになる事に疲れた、としか言い様が無い。
アタシ達は、季節毎の催事という催事を日常から、意識的に切り捨てた。
高校の卒業式ですら、卒業証書を貰ってしまえば学校に用は無いとばかりに、クラスメートや担任と歓談する事も無く帰宅。
尤も、その経緯を知る一部の人からは、後日集まって食事でもしないかとメールがあった。
それに対してはアタシ達を気遣っての事だと解ったので、とても有難かった。
けれど、クラスで行われた打ち上げと称された卒業式後の謝恩会には出席しなかった。
幹事への連絡は、体調不良で欠席する事をシンジから伝えて貰った。
付き合いが悪いと言われようが、そんな表面上の部分だけの付き合いを、長々と続ける気にはなれなかったからだ。
取り繕わないまま自分以外の他人と向き合える迄は、余裕も時間もまだ足りない。
今のままの自分では身近な友人相手ですら無理かも知れないという意識は、アタシ達の間では暗黙の了解と化していた。
その日からは、ただぼんやりとした時間を過ごした気がする。
お互いの進路は早くから既に決まっていた為、年明けから準備していた所為もあってか急ぐ準備も無い。
漠然と、この部屋で一緒に過ごす時間は残り少ないという事が頭の中にあった。
大学を卒業して、再びアタシ達の進む道が重なった時。
その時ならきっと、また一緒に同じ部屋で時を過ごす事が出来るだろうとも思っていた。
このまま一緒に居るだけでは、アタシ達はヒトとして、何処かしら異質な物を抱えてしまう。
お互いに固執するだけに終わってしまい、どちらかが精神のバランスを僅かに崩しただけで何もかも壊れる。
それも、あっけなく。
5年前の二の舞になるだけだ。
そんな事が常に頭の中の片隅にある事を意識せざるを得なかったからか、部屋を出る日が近づくに連れて口数も減った。
アタシ達の様子は周囲から見れば、余りにもあっさりし過ぎていたのだろう。
ヒカリ達やリツコはともかくとして、司令まで激務の合間を縫って様子を伺いに来たのには正直驚いた。
シンジの事を親として気にかけているという事は、それだけでも充分過ぎる程感じられた。
目には見えないけれど、周囲の人達との確かな絆がアタシ達には存在している。
その事に改めて気付かされた。
けれど前に進む為には、それを振り切るかの様にしてでも、総ての出発点であるこの場所から一度離れなければ。
二人分の荷物の梱包と引越し先への配送手配も終わり、いよいよシンジが日本を発つという前日。
その日は一日中部屋に閉じこもったまま、アタシが来日してからの5年間の出来事を飽きる事無く話し続けていた。
そして、僅かな手荷物程度しか残っていない伽藍とした部屋を前に、明日からは一人だという事を嫌な程確認する。
二人で泣いた。
その為なのかは判らないけれど、第3を離れる時のアタシ達は、何処か他人事の様に淡々としていた。
『そういえば僕が日本を離れた時ってホワイトデーよりも前だったんだね。
カレンダーで日付を確認したら、まだこっちに来て3週間も経ってないのに気付いたよ。
そしたら高校の間は、誕生日以外は結局何もした事なかったのを思い出したんだ。だからこれはそのお詫び。
アスカの好みに合うかどうか判らないけど、気に入って貰えると嬉しいかな。
一通りの手続き済ませて落ち着いたら、また連絡するよ』
「だからって、普通こんな物送ってくるかしら?」
手続きが面倒なのは解る。
ネルフの特権を使えば大丈夫だとは思うけれど、ただのラブレターもどきの郵便物を届ける為に使う訳にもいかない。
「突拍子も無い物を送ってくるっていうのは、らしいと言えばらしいけどさ」
一緒に同封されていたカードの内容を確かめる。
確かに、何かとトラブルが起きそうなモノだ。
「これはもしかして……そういう事? だとしたら、シンジの癖にいい根性してるわね」
ちょっと待て、そういう事だとすると――消印も計算してた訳?!
瞬間、ニヤニヤしながら封筒をポストに投函しているシンジの姿が思い浮かぶ。
うん、これは不器用を通り越してムカついてくる。
得意とは言えないけど、それなりにアタシだって出来るのよ?!
一緒に住んでたんだから、一応一通りはこなせる事は知ってる癖にッ!
「えっと用意する物は……これ、日本で手に入るの? 面倒なモノ送ってくるんじゃないわよ、全くもうっ!」
急いで端末を立ち上げ、カードの内容を一つ一つ検索してみる。
…………あった。
専門店にいけば取り扱いはしてるっぽい。
問題は、個人で買える店かどうかって事だ。
「明日店に電話してみて、大丈夫そうなら買いに行くか。 …………シンジ、次に会った時には覚悟する事ねッ!」
カードに書かれていた物は多少の代用品が必要だったとは言え、一通り揃える事は出来た。
そして時間が空けばひたすらその内容を作る練習をし続けた結果、誰に出しても好評と言える腕前になった。
――――が、アタシの体重が2kg増えてしまい、増加分を元に戻すのに苦労する日々が続いたのは全くの余談である。
リアルタイムGJ
続くのかな?
激しく亀の如く遅れていますがホワイトデー&エイプリルフールネタで保守。
シンジ、底意地悪し(・∀・)ニヤニヤ
シンジ、アスカにホワイトデーのプレゼントとして留学先からレシピを送る
↓
アスカ、これが食べたいから作って欲しいと勘違い
↓
シンジの意図、作れると前提した手紙自体が嘘(=アスカは作れないが真実)なので消印は4/1
↓
アスカ、それに気付き意地になって作れる様になるが、結果は体重が増えて('A`)
というオチですた
なるほどw
乙ですた
お待ちしていた甲斐がありましたわ!
GJ!
◆Yqu9Ucevto氏乙!
迎え火の方もマターリ待ってるよ(・∀・)ノシ
待ち
今にして思えば迂闊だった。
一言で言ってしまえば、それに尽きる。
「……赤木博士? 大丈夫ですか?」
「………大丈夫です、そのまま続けて下さい」
「主治医としての立場から敢えて申し上げただけ、と御理解下さい」
「アレが起きてしまったから終わり、として進める訳にいかないという事ですか」
「私も一応計画に携わっていましたから、お二人の立場も解らない訳ではありません。だけど、子供達には関係ないでしょう?
アレの以前と今では確かに状況も病状も変わっています。寧ろ、計画が病状の悪化を推し進めたといっていい筈です。
本来ならば個々に対応すべきですし、この環境が悪化させると断言出来ます」
「それでも尚、この状況を維持すべきという事ですか?」
「ええ、その通りです。少なくとも、私とカウンセリング担当者の意見は一致しています。内科的にも神経科的にも、ね。
脳神経外科はともかく、セカンドの以前の主治医の意見迄は判りませんが。ま、堅苦しい話はここ迄。この先は立場抜きね」
そう言って、私を指名し診察室へと呼び出した女医はカルテから目を外す。
彼女が口にした事は、私を責めている物ではない。
けれど、私達大人が行なった事を今一度見詰め直せ、とでも言いたいのだと思う。
確かにその通りだとは思うが、またそれだけでは片付けられないのも事実だ。
「わざわざ病状の説明だけで呼び出すと思う? 何年同じ計画に参加してると思ってるのさ。 もう7年だよ、7年!
嫌味言いたくて呼ぶ程こっちも暇じゃないんだからね。一般外来の繁盛振り、見たと思うけど?」
「そうね。なら、単刀直入でお願いするわ」
「決着は付けてる訳? 本部詰めの古株の間じゃタブーだけど、この間の事は如何にもって感じが見え見えだったよ」
ああ、そっちの方。
確かにそう見えたかも知れない。
何しろあの人を無理矢理引っ張って来たような物だから、事情を知らない職員はさぞ驚いた事だろう。
「さあ? 付けたと言うか、付けていないと言うか……まだ話し合った訳じゃないわね。そんな時間無いもの」
時間が無いのは事実だ。
現にあの人は睡眠時間を惜しむ様に、率先して現場の指揮と国連や政府との折衝に当たっている。
その姿はまるで自らを痛め付けるかの如く、形振り構わずに、形相は別人かと思える程の勢いだ。
食事も満足に摂っていないのか、日に日に疲労の色が顔色に表れている。
「なら、医療部の計画担当主任として要請する。二人の保護者及び親権者の招集を。首に縄付けてでもアンタが連れて来て」
「それ本気で言ってるの?!」
それはつまり、あの人をここ迄引っ張って来いという事だ。
そしてあの人だけでなく、アスカのドイツに居る両親も。
「冗談だとでも? MRI画像と脳神経外科から回ってきたカルテ、全く見なかったとは言わせないよ。
第一今のあの親父の女房役、貴女でしょ。セカンドのあの状態をまた再現させたいなら話は別だけど?
アレ、実質作戦部と技術部の所為じゃないのさ」
「耳が痛いわね……否定はしないわ。ううん、出来ないと言う方が正確ね」
「計画の遂行に気を取られていたのは解らないでもない。でもね、やっぱり医者は病気を治すのが仕事だと思うんだよ。
幾ら仕事でも、人為的な病人を放置するなんて二度と御免だね。だからあの時指示に従った私も、アンタと同罪さ」
そう、人為的なのだ。
子供達をわざと追い込み、自我の崩壊迄追い詰めた。
シンクロ率が落ちたのなら、回復させる手立てを考えれば良かった。
補充出来るからとパイロットを使い捨て部品扱いすべきではなかった。
「そうね、あの子達を部品扱いしていたのは計画に携わった者全員だわ。私が特に気を配るべき立場だったのに」
「解っているなら話は早いね。一応これ、医療部で纏めた今後の指針。こっちが治療計画試案の関係各科医師別の奴。
それとドイツから今のセカンドの親も含めた4人分のカルテ、取り寄せてくれない? 司令とE計画責任者命令って奴でさ」
「私を指名した本当の目的はそれ? 随分回りくどくなくて?」
手渡された書類に目を通した。
内科、神経科、神経内科に脳神経外科……パッと見だけでも主な検査を行なった4つの科から意見書が出ていた。
意見書の表紙を一つ一つ確認すると、他にも血液内科や外科の名前がある。
一見関係無さそうな放射線科からも意見書が出ている事が判った。
「残念ながら発案は私じゃなくてウチの宿六。ああ、一番ペラい意見書は私からの分ね」
「………宿六って、貴女独身じゃない。職場結婚でもするの?」
「正確には違うよ、職員同士だけど。と言うよりは色々あって、籍だけ入れていたのを公表する気になっただけかな」
「初耳だわ……そっちの報告が本命なのね。相手は誰なの?」
「さあ、誰だろうね? でもこっちはその事とは関係無しに、アンタが試案的にはかなり重要だから指名したつもりだけど。
どう? ウチがあの髭親父に噛ます博打に一口乗らない? 悪い話じゃないと思うよ、仕事抜きにしても」
彼女は射貫くように私を見つめながら、口元をニヤリと歪める。
蛇に睨まれた蛙の気持ちとはこういう事を言うのだろうか?
今、この手の中にある試案と、彼女の挑戦的な視線。
弱い立場の子供達にフラストレーションを叩き付けていただけの、人形以下の愚かな私に、今更何が出来る?
治療を行なわずに放置を命じたのはあの人だが、直接医療部へ、彼女へと半ば命令気味に通知したのはこの私だ。
伏せられた真実を知りながら、破滅へと追いやった者の一人として二人に許しを請い、罪を償えとでも言うのか?
出来る物なら既にやっている。
だが、何も思いつかない……あの人を病室に追い立てた事以外、子供達に対しては本当に何も出来ていない。
再び器を持ち現実に戻って来てから抱き続けている、説明出来ない程の後ろめたさから、私は彼女の視線から顔を背けた。
沈黙が室内を支配する。
幾許かの時間が過ぎた後彼女は口を開き、別人かと思える哀願している様な声音を発した。
「別に罪を償えとか言いたい訳じゃない。アレが起きた以上補完計画は遂行済、E計画も遂行済の筈だろう?
司令だって総指揮を執っていた以上は職務を果たしたと言える。だから今、身を削って公人として動いているんだろう?
という事はアタシ達全員、職務を果たしたんじゃないのか? 勿論、職員全員が子供達を蔑ろにした立場なのは承知さ。
でも計画の破棄ではない、『本当の後始末』はどうなる? それが、今居る医療部の全員で考えに考え抜いた結論だよ。
責任者だったからって全部一人で背負い込まないで、もっと部下や同僚を頼ってくれないかな……。皆、同じ思いなんだ。
一番辛い思いをした子供達を何とかしてやるんだって、そう思う覚悟、無駄にさせないでおくれよ……なあ、赤木」
視線が再び交差する。
「……それは、伏せられていた事実を知った上で言っているの?」
あの人の指揮で進められている補完計画とE計画の公表の為の全ての資料の洗い直し。
その内容はここ10日程の間で幹部だけでなく、現在時点で戻って来ている末端の研究員迄、概要が知らされている。
研究員以外の全ての職員に、その内容が浸透するのも時間の問題だろう。
「そうだよ。知らなかったとは言え職員全員、片棒を担いだ様な物だろう? 手前の穴位は手前で拭かせろって言いたいのさ」
彼女曰く、仕事抜きでも悪い話じゃないという腕の中の試案の軽さが逆に、心への圧迫感を増していく。
行き場の無い罪悪感を抱えるだけの私に、彼女は何をさせたいのだろう………解らない、判らない、ワカラナイ。
約5ヵ月半振り('A`)
今回はインターミッション。
裏、色々進行中って事で。
迎え火乙だよ迎え火
キタ━(゚∀゚)━━
楽しみだよ〜
相変わらず文章が上手いっすね
なんか来てたー!
乙
待ち待ち
ほ
保守
保守
しとしとと降り続く雨、薄鈍色の曇り空。
失われた四季が戻りつつあるという事は、兎にも角にも鬱陶しい季節も戻ってくるという事で。
まぁ、単純な話。
さて時間が出来たとして、じっと部屋に篭るしかなくなってくる訳で。
「もうッ、どうしてこんなに降るのよぉッ!」
……梅雨なんて、大ッ嫌いッ!
「そんな事言ったって、仕方ないんじゃない? そういう季節なんだから」
「でも、つまんない。幾ら雨だって言っても、こう毎日続いたんじゃ滅入ってくるわよ」
そりゃ、アンタは良いわよね。
イロイロと時間潰しが出来るもの。
この間からずっとモバイル片手に辞書と睨めっこ。
「まぁ、洗濯物乾かないもんね……。確かに鬱陶しいな」
何処までも主夫根性が染み付いてるわね……。
そりゃ洗濯物が溜まるのは鬱陶しいでしょうよ。
でもね、家事を最近取り仕切ってるのはこのアタシ。
「アンタ、今家事やってない」
「……そうだっけ?」
「毎日バイトだか何だか知らないけど、泥だらけで帰ってきて……お陰で洗濯物の片付け追っ付かないじゃないのよ!」
生意気にも最近シンジの奴はバイトを始めたらしい。
尤も、らしいと付くだけあって、アタシもその詳細は全く知らない。
ただ毎日朝早く出掛けて、ちょっと遅い夕食位の時間に帰ってくる。
それは別に構わない。
うん、構わないんだけど。
「乾燥機があるでしょ?」
「それで追っつけば苦労しないわよ。全部が全部乾燥機の使える服じゃないのよ?」
一緒に居る時間が減ったのが、ちょっと淋しい。
同じ屋根の下に住んでるって事は、朝も昼も夜もずっと一緒って事だ。
勿論、学校も。
これは多分、ネルフの介入だと思うけど。
「え?! そんなに洗濯するのややこしい奴混ざってたっけ?」
「この雨で形状記憶のカッターシャツ、全部洗っちゃったのよ。それに、何でも乾燥機が使えると思ったら大間違いだわ」
一緒に居る時間が減った分、会話も少なくなる。
「タオルはともかく服は綿100%みたいな手触りでも、タグを見ると混合だったりする物もあるの。
家庭の洗濯機で洗えても、乾燥機はダメな物だってあるのよ? アンタ、今迄どうやってたのよ」
それは仕方の無い事なのだけれど。
でも、アタシってばどうしても物足りなくて。
「うーん……下着とタオル類と服に分けて洗って、判んない奴はクリーニング?」
「他には?」
「えっと、それだけだよ」
「じゃあ、乾燥機は?」
「普通だけど?」
「……ねぇ、今迄何回乾燥機回してたの? ホントの事言いなさい」
「ぅ……3回? いや、4回かな? 僕の物は分ける様な物も無いし、分けるのはアスカの洗濯物だけ……」
「あああああ……アンタ、馬鹿ぁッ?! 乾燥機は絡みやすいタオルを量の多い時に別にするだけでいいのよ?!」
ついつい突っかかっちゃうんだなぁ、これが。
理由だって、解ってるつもり。
でもね、やっぱり物足りないし、一人の時間は淋しいし。
何より退屈。
「……ったく、何やってるんだろ」
予備役になってからネルフに篭る時間が減った分、学校に居る時間が増えた。
その分、やっぱり他人と接する事も増えた。
アタシ達は互いに互いへ依存する事で、何とか自我を保っていた部分がある。
それが少しずつ改善していく事は、アタシ達にとって喜ばしい事なんだと思う。
でも、それは一緒に過ごす事も、会話を交わす事も減っていくという事。
離れている時間が増えている分、自分一人だけの時間が増える。
けれど、他人との接点を増やしていくシンジを見ていると、自分の事を振り返る度に世界は孤独なのが解る。
だって接点を増やすという事は、生きる上で退屈しない様にするって事だもの。
モバイルの中の文字の羅列を睨んで、考え込んでいる後姿。
片手にした辞書のページを捲り、必死に何かを調べている横顔。
朝早く出掛け、夜は遅めに帰ってくる。
バックの中は泥だらけになったタオルや着替えのシャツ。
顔だって、時々鼻の頭に泥が付いている。
接点を増やし、他者と世界への興味と情熱を増やしていく、シンジのそんな姿を見ているだけのアタシ。
たまにはヒカリ達と学校帰りに寄り道したりするけれど、基本的には学校と部屋の往復だけ。
……放課後ネルフに出頭する事もあるけど、学業に支障が出る事も無ければ以前程頻繁ではない。
帰ってきたら洗濯物を取り込んでから、お風呂の用意や食事の支度を済ませる。
そうこうしている内にシンジも帰ってくる。
シンジが帰ってくる前に全部済ませた時は、取り寄せた論文や研究書に目を通す事もある。
けど、変化の少ない単調な時間を過ごす。
シンジとはまるで正反対ね、アタシ。
でも、ドイツに居た頃とは比べ物にならない位、ゆったりとした自分だけの時間の過ごし方だろう。
実際にやってみて気付いたけど、アタシはどうも家事が苦手だと思い込んでいただけみたい。
よく晴れた日の洗濯物を取り込んだ時、太陽の柔らかい香りに混じるシンジの匂い。
シンジが帰ってくる前に、味の感想を予想しながら食事を作る時間。
それを今、アタシは心地良いと感じている。
時間に追われ、結果だけを求められ、研究に己の全てを賭ける日々。
成功には賞賛を与えられる。
自分自身の能力を生かすという事では、悪くない生活だと思う。
以前のアタシなら、迷わずそんな生活を望んでいただろう。
確かに結果が出ない時は単調だけど、結果が出た時の刺激は堪らない。
一度味わってしまえば、二度三度と味わいたくなる。
でも、立ち止まった時。
今のアタシには、凄くつまらない事にも思えてくる。
だってアタシ自身を必要とされている訳じゃなくて、能力だけを必要とされている事もありうるもの。
それに研究に全てを賭けてしまうって事は、とても孤独な世界に閉じ篭っている様にも感じる。
そんな人生って随分と淋しいじゃない?
「ほら、ちょっとは休んだら? そんなに根を詰めちゃ疲れるわよ?」
「? あぁ、もうこんな時間なんだ。ありがと、アスカ」
随分と頭を使っていた様だから、紅茶と一緒にさっき作ったエネルギー補給の簡単なデザートも出してみる。
「ん……これ何処のお店?」
「何馬鹿な事言ってんのよ。アタシが作ったに決まってるじゃない」
条件反射かしらね?
間髪入れずに随分と失礼な事を言うシンジの額を小突く。
「……ッたいなぁ、もう。何するんだよ」
「アンタが失礼な事言うからよ。こんな天気に出掛けられる訳無いでしょ」
「あ、そっか。何処にも行けないって言ってたっけ」
「何処にも行けないんじゃ、部屋で出来る事するしかないじゃない」
「それもそうか」
こういう何気ない日常が、アタシ達には足りなかった物なんだろうと思う。
アタシには平坦で変化の少ない日々かも知れない。
大して刺激も無い。
でも心地良いのも確か。
それに甘えてずっと留まる訳にもいかない。
いずれはアタシも世界との接点を増やしていかなければ。
けれど今だけは、その心地良さに浸っていたい。
日々の生活の中の些細な事でも、アタシには充分過ぎる程新鮮だったりする。
アタシはそういう事を見つけながら、退屈凌ぎに毎日を過ごしているのかも知れない。
だからアタシは時々、出来れば口を閉ざしてしまいたくなるのだ。
だって――――。
「大体、この天気が全部悪いのよ! 洗濯物は乾かないし、出掛ける事も出来ないんだから!」
「何で? 乾燥機で乾かせばいい事じゃないの?」
「アンタの頭は鳥かぁーッ! 毎日泥だらけで帰って来る上に雨が続いて、片付けが追っ付かないって言ってるでしょ?!」
「痛ッ! また叩いた!」
「ボケた事ばかり言ってるからよ。一体どこまでボケたら気が済む訳?」
構って欲しくなって、ついつい口も手も出過ぎちゃう。
「酷いなぁ、そんなに馬鹿とかボケとか言うなよ」
「事実でしょ。……ったく、その上物忘れ迄酷いとはね? アンタ、何でアタシが出掛けたいか解ってる?」
「何? 暇だからじゃないの?」
「カレンダー見なさい」
「へ? 何か今日はあったっけ?」
「このお馬鹿ッ! 自分の誕生日迄忘れてどうすんのよ、バカシンジ!」
「ぁ……!」
この分じゃデートにかこつけて、ディナーに出掛けるなんて無理そうだ。
でも、こういう誕生日の過ごし方も悪くないよね?
シンジの誕生日の一コマ。
ボケボケなので自分の誕生日も忘れてる可能性があるような気が。
誕生日記念&季節絡み物で保守。
誕生日投下乙!!
GJです!
何気ない日常の中の風景のやり取りなのに
すごく癒されるのはこの二人だからなんでしょうね。
シンジもよい誕生日を迎えられて本当によかったです。
お馬鹿に萌えた
保守々々
保守
この二人
夫婦より同棲のほうがしっくりくるな
確かに
かぐや姫さんの「神田川」をイメージ元に、SS書いても問題なかろうか?
いいんでないの
アスカたん
アスカたん
あ?スカタン
! ?
! !
ミサト「で、どうして同棲生活使用なんて思ったの?」
シンジ「ええ、どうせ生活するならって思ってるうちに
どうせ生活どうせせいかつどーせーせいかつ、同棲生活ってことに・・
ははっ」
ミサト「・・・アスカ、考え直すなら今のうちよ・・・」
エヴァ板良スレ保守党
ほっしゅ〜
430 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/08/29(金) 23:42:35 ID:XE2DNu2S
ま だ 飽 き な い の か こんな糞スレに
超過疎スレの保守age乙
俺はいつまでも待っているぞ
萌えるスレなのになぜかいいネタこないな
灰色
僕がアスカの髪をとかしてやると、彼女は気持よさそうに目元を細めた。
僕がいつも使うヘアブラシはリビングのチェストにしまわれている。
アスカはいつも僕に髪をとかすように促し、僕はそれに従ってゆっくりとヘアブラシを滑らせていく。
ヘアブラシの歯は、一本一本が滑らかにアスカの金の糸を一巾の絹のようにきめやかにしていく。
僕はその髪を、その五本の指で掻き分け、アスカの頭を撫でる。
アスカは肩に置いた僕の手に、自分の手を重ねる。
この世界は灰色だ。
僕も昔は夢を見ていた。暖かい家庭。優しい母親と、厳しいけれど暖かみの溢れた眼差しで僕を見てくれる父。しかし、それも最早手には入らない。
僕には遠くに行った夢だ。
誰かが、叶わない夢はないと言った。
そんなものは嘘に決まってるのにね、アスカ。
街外れのマンション。銀杏並木が並び、何台か車が通る。
今、この家には僕とアスカしかいない。
僕はアスカの髪をとかした後、ヘアブラシをテーブルに置き、彼女の左目に触れた。アスカはその手に自分の掌を重ねた。
「ありがと。」とアスカは言った。手が握られる。
最近アスカは僕に礼を言うようになったのだ。
例えば。僕が料理中に指を切ると、アスカはブツブツと言いながらその指を舐めてくれる。
髪を掻き上げながら指を舐めるアスカを見て、自分が彼女の髪をとかす様を思い出す。
僕は彼女の唇を奪う。彼女は抵抗などしない。十分に舌と舌を絡み合わせた後、僕の唇を噛む。
血の味が広がる。
もうアスカは血を流さない。
その日。僕がバイト先にいると、アスカから電話がかかってきた。
上司の鋭い眼差しを背後に感じながら、裏口で携帯を開いた。
「なんだよ、バイト中に電話掛けないでよ。前に言っただろ?」
アスカは黙っていた。僕は携帯のディスプレイを確かめる。
確かに自宅の番号だ。
もう一度携帯を耳につける。
「アスカ? アスカだろ?」
アスカは答えなかった。微かな息遣いが辛うじて聞こえる。
「何もないなら切るよ?」
アスカは答えなかった。
そして通話が切れた。
僕はバイト先を早引けした。アスカが気になったからだ。
僕が帰宅すると、太陽はその体の半分を地平線の下に隠していた。
マンションど銀杏並木の細長い影が、長く長く、アスファルトの舗装道路と、コンビニの屋根に落ちていた。
エレベーターで一気に三階まで上がる。
自宅の扉は開いていた。
玄関に上がると、アスカの靴があった。踵が二センチくらいある黄色いサンダルだ。
僕はその脱ぎ散らかっているサンダルを直した。
ダイニングに向かうと、赤い光が、廊下にまで差し込んでいた。
僕は扉をひらく。
ダイニングと廊下との境を越えると、アスカはリビングの窓から溢れる夕陽の中に体を置いていた。
彼女はテーブルに体を突っ伏し、小さな箱を握り締めていた。
「どうしたの?」
アスカは答えない。寝ているのかと思ったが、体を微かに震わせたのがわかった。
部屋の片隅に何かが落ちているのに気付く。微かな影。
僕はそれを手にとり、眺めた。
それは、妊娠検査薬だった。
僕はアスカを見た。
アスカは僅かに顔をあげ、腕の上から僕を見ていた。
「悪かったわね……。」
アスカの声は震えていた。僕はかぶりを振り、部屋を横切ってリビングに向かう。チェストの引き出しを開け、ヘアブラシを取り出す。
アスカの元に戻り、肩を抱いてしっかりと座らせてやる。
ゆっくりと髪を梳いた。
なだらかで優しい彼女の肩のラインにさらさらと、髪が一房、二房と流れる。
「おめでとう。」
夢は叶わない。と言ったね。でも、代わりにもっといい夢が与えられる事もあるんだよ。きっと。
「ありがとう。」
僕はアスカの頭を撫でた。
「あたしで、いいの?」
僕はアスカの、形の良い耳を撫でた。
「子どもなんか、あたし、愛せる自信ないわよ。」
「大丈夫だよ。」
僕は言った。
「産んで欲しい。」
僕はアスカの頬に触れ、左目を、慈しむように撫でた。アスカが手を重ねる。
アスカの頬と左目は、まるで朝露の浮かぶ若草のように、しっとりと柔らかに湿っていた。
終
リアルタイム乙
おひさしぶりですじゃ(´・ω・`)
懲りずに戻っただよ
乙
442 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/09/12(金) 01:31:11 ID:TsYU0yeT
ss投稿は流れがぶったぎられるから止めろ。
つまんね
更新万歳
GJ
保守がてら投下。
初めて書いてみたから過度な期待は禁物でよろ。
445 :
444:2008/09/13(土) 01:25:43 ID:???
「…逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……!!」
目の前には産まれたままの姿のアスカが目を瞑って横たわっている。
体が小刻みに震えている、凄く緊張しているみたいだ。
僕が優しくリードしてあげなきゃ…
446 :
444:2008/09/13(土) 01:27:08 ID:???
サードシンパクトから数年、街は徐々に復興の兆しを見せている。
補完計画によって失われた人々もほとんど帰ってきたみたいだ。
少なくとも僕の周りの人々はみんな帰ってきた。
ケンスケやトウジ、委員長やネルフの人達、そして綾波レイも…。
トウジとは参号機の一件以来初めて顔を合わせたけど、ネルフの
人達がウマく説明してくれてたみたいで気にしてないからお前も
気にするなって言ってくれた、ずっとわだかまりがあったから少
しだけ安心した。
(後から聞いた話だけど、アスカが必死になって説明したらしい。
「お前愛されてるな」ってトウジに茶化されたっけ)
綾波は、リツコさん曰く「ありえない奇跡」が起きたらしい。
どこをどう検査しても100%「人間」らしい。
リツコさんが「サードインパクト最大の奇跡だわ」なんて言って
たっけ。
もっとも、僕にはどう変わったかなんて分からないんだけど。
リツコさんが「レイが人間になったのなら、あの中の魂は一体誰
の魂なのかしら…」って言った時に父さんが小声で「間違いない、
ユイだ」って言ったのを僕は聞き逃さなかった。そして横でキッ
と父さんを睨んだリツコさんも。
447 :
444:2008/09/13(土) 01:29:05 ID:???
それから程なくして、父さんとリツコさんは結婚した。
義理とはいえリツコさんがお母さんだなんていまだに実感が沸か
ないや。
でも、それ以上に驚いたことが1つ。
綾波が父さん夫婦の養子になった。
これはリツコさんが言い出したらしい。
リツコさんはなんだかんだ理由を言っていたけど、何かと母さん
を重ねてる綾波を養子にして一緒に住むことで不安を取り除こう
としてるのは奥手な僕でも分かった。
そんなわけで僕と綾波は兄妹になってしまった。
それを知った時のアスカの表情が今でも忘れられない。
キュッと唇を結んだあの嫉妬とも憎悪ともつかないあの表情を。
448 :
444:2008/09/13(土) 01:30:24 ID:???
そんなこんなで、生活のほとんどがサートインパクト前に戻った
今の生活だけど、1つだけ戻ってないことがあって…
ミサトさんの意識だけがいまだに戻らない…。
担当医の人曰く「体はもうすっかり良くなってるんだけど、本人
が現実世界に帰ってきたくないように見える」って…。
ミサトさんは夢の中で加持さんと過ごしてるのかなって漠然と考
えてみた。
現実世界にはもう加持さんはいないから、だから帰ってきたくな
いのかな…。
だから僕達は今ミサトさんの部屋で実質同棲生活のような状態で。
同棲っていいうより同居なのかな。
僕達はいまだに手も握れない関係だから…。
お互い相手の気持ちに薄々感づいているけど、お互いそこには触
れない、みたいな。
触れると何かが壊れそうな気がして、目を背けてる。
本当は僕がいくべきなんだろうけど、やっぱり怖くて…。
449 :
444:2008/09/13(土) 01:31:56 ID:???
僕達が高校に入学したその日、父さん家族が隣に越してきた。
リツコさんが「思春期の若い男女を、宿主のいない部屋に2人っ
きりになんてしておけないわ」って言ってたけど多分僕と父さん
を近づける口実だったんだろうな。
父さんは相変わらずぶっきらぼうだけど、少しずつ会話も増えて
きてる。
夕食はほとんど毎日5人で一緒に食べてるし、やっぱりリツコさ
んには感謝かな。
夕食を作るのがほとんど僕の役目ってことを除いては…。
綾波も少しずつだけど、表情が豊かになってきた。
実はリツコさんに「レイは確かに人間になったけど、喜怒哀楽の
感情がまだ追いついてないのよ。だからシンジ君よろしく頼むわ
ね。アスカに言っても嫉妬して協力してくれないだろうから。」
って言われて。
アスカの嫉妬の意味がよく分からなかったけど、隣に越してきて
から意識的に綾波と話すようにしてたせいでアスカに「そんなに
ファーストがいいならファーストと結婚すればぁ?」なんて嫌味
言われたっけ。あれが嫉妬だったのかな…。
450 :
444:2008/09/13(土) 01:35:19 ID:???
そんな生活にも慣れたある日、(今日なんだけど)、授業中にリ
ツコさんから呼び出しがあって。
「3人とも大至急ネルフ本部に来てほしい」って。
まさか今更また使徒が?なんてありえないことを考えながら急い
でネルフ本部に着いたら今度はミサトさんの病室に急いでって言
われて。
ミサトさんの容態が急変したのかなって思って恐る恐る病室のド
アを開けたら…
「よう!」
そこには加持さんの姿が…。
そして加持さんに寄り添うように目を覚ましたミサトさんが…。
「おはよ、心配かけてゴメンね。」
451 :
444:2008/09/13(土) 01:36:43 ID:???
加持さんがいて驚くやらミサトさんが目を覚ましてて感動するや
らでなにがなんだか分からなくなったけど、どうにか落ち着いて
話を聞いてみると、加持さんはさすがにスパイをやってただけあ
って銃で撃たれた時に急所を外して受けたらしい。
相手が念には念をの一撃を撃ってこなかったのはラッキーだった
って言ってた。
でも、さすがにその場から動けなくてもうこのまま死ぬんだろう
なって覚悟してたら補完計画が発動したみたい。
あの時力尽きてたら今の俺はないよって笑って言ってた。
意識を取り戻した後は父さんの密命を受けて海外を飛び回ってた
って。
それがネルフ復帰の条件だったみたい。
日本に帰ってきて急いでミサトさんの病室に来て「いつまで寝て
んだよ、早く起きろよ」って言ったら本当に起きたからビックリ
したよなんてちょっと照れくさそうに言ってた。
ミサトさんはミサトさんで、「夢の中で怒られたのよね、コイツ
に。『いい加減現実に戻れ』って。んで起きてみたらコイツがい
るわけじゃない、思わず『戻ってるわよ!』なんて言っちゃった
わ。第一声がそれだもんね、コイツったら目を丸くしてたわよ」
なんて笑ってた。しっかり加持さんに寄り添いながら。
僕はチラッとアスカのほうを見た。
アスカの加持さんに対する想いは知ってたから。
嬉しいような悲しいような、複雑な顔をしてた。
僕には悲しい顔に見えた…。
452 :
444:2008/09/13(土) 01:38:20 ID:???
ミサトさんはまだ数日検査なんかで入院しなきゃいけないらしく
て、今日は俺が看てるからって加持さんに言われて僕達は帰宅し
た。
帰り道、綾波に「ちょっと気が早いけど3人でミサトさんのお祝
いしない?」って誘ったんだけど、気を利かせたのか「私はやる
ことがあるから」と言ってとっとと自分の部屋に帰ってしまった。
「じゃあ2人でお祝いしよっか」
そう言って僕らは近所のスーパーで買い物をして帰宅した。
「たまにはいいよね、おめでたい日なんだから」
なんて言ってお酒なんかも買って。
453 :
444:2008/09/13(土) 01:39:52 ID:???
家に着いて2人で色々話しながら飲んだり食べたりしてたけど、
僕の目にはアスカの表情が晴れやかには見えなかった。
「加持さん…」
僕は無意識にそう呟いていた。
その言葉にアスカは気づいたのか「まさか加持さんまで戻ってく
るなんてねぇ、ホントびっくり。それにしてもミサトと加持さん
長年連れ添った夫婦みたいだったわね」と笑って言った。
「ア、アスカはさ、やっぱり加持さんが戻ってきて嬉しいよね。
あ、あのさ、今日のミサトさんと加持さん見て、その、嫉妬とか
しなかったのかな…?」
「そりゃ嫉妬するわよ、妬けるくらい愛に包まれてたもの、あの
2人」
「そ、そうだよね、アスカは加持さんのことずっと好きだったも
んね、嫉妬するよね…」
そう言うとアスカの表情はみるみる怒りの表情に変わっていった。
454 :
444:2008/09/13(土) 01:50:08 ID:???
連投規制の為自分で携帯から支援w
あれ、支援しても投下できないや…´`
456 :
444:2008/09/13(土) 02:00:59 ID:???
あんたバカァ?ここまで鈍い男だとは思わなかったわ!」
「いい?1度っきりしかいわないからよーっく聞きなさいよ?」
「加持さんに対する感情はただの憧れ!芸能人なんかを好きって
言うのと同じ。ワタシが好きなのはアンタ!バカシンジ!アンタ
だけよ!」
そう言うとアスカは照れくさくなったのかそっぽを向いてしまっ
た。
僕は突然のアスカの告白に動転しながらもあることに気づいた。
そうか、アスカが悲しそうにしてたんじゃなくて僕が悲しかった
んだ。だからアスカが悲しそうに見えたんだ。
僕は意を決して言った。
457 :
444:2008/09/13(土) 02:02:21 ID:???
「ぼ、僕だって1度っきりしか言わないからね!僕はアスカが好
きだ!ずっとずっと好きだった!これからもずっと好きだ!」
「アンタ、1度っきりって3回も好きだって言ってるじゃない」
「あ、ごめん…」
「そんなことより、証拠はあるの?その、ずっと好きだって言う
証拠…」
「証拠って言われても…」
「キス、してよ…」
「アスカ…」
夕暮れに染まる窓からの光を浴びながら僕達は2度目のキスをし
た。それは前回を遥かに上回る、甘い甘いキスだった…。
「キス…だけで終わるの…?」
「…え?」
「アンタの証拠はキスだけなのって聞いてるの!もう!これ以上
女の子に言わせないでよバカシンジ!」
458 :
444:2008/09/13(土) 02:04:10 ID:???
「…逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……!!」
目の前には産まれたままの姿のアスカが目を瞑って横たわっている。
体が小刻みに震えている、凄く緊張しているみたいだ。
僕が優しくリードしてあげなきゃ…
僕にはこんな経験は初めてだ。でも、アスカもこれだけ震えてるっ
てことはきっと初めてなんだ。どうしたらいいのかわからないけど、
今の僕ができる最高の愛情をアスカにぶつけたい。アスカに僕の最
高の愛情を受け取って欲しい。
「…ねぇシンジ、その、しちゃう前に何か言うこと、ない?」
「…え?」
「もう、やっぱりバカシンジ。告白よ告白。アンタ好きだとは言っ
たけどだからどうしたいとは言ってないでしょ?ちゃんとはっきり
させて。ア、アタシは初めてなんだからね、こういうことするの。
だからちゃんとしてほしいの。アタシとどうしたいのか、これから
どうしたいのか。ねぇ、聞かせて?」
「ぼ、僕はアスカが好きだ。ずっと一緒にいたい。今はまだ学生だ
から結婚しようとは言えないけど、卒業して就職してアスカを養え
るようになったら結婚したい。だから、それまでずっと一緒にいて
欲しい…。」
「バカ…、飛躍しすぎ。どうして単純に付き合ってって言えないの
よバカシンジ…。でもね、ありがと。嬉しかったよ。ワタシも好き。
ずっと一緒にいようねシンジ…。」
こうして僕らは1つになった…。
459 :
444:2008/09/13(土) 02:06:22 ID:???
数日後、ミサトさんが退院した。
アスカと2人で迎えに行ったら何故か加持さんとニヤニヤこっちを
見てる。
「アンタ達、ようやく一線を越えたのね。保護者としてはちょっち
複雑な気分だけど、まぁ、アンタ達お似合いよ」
「……え?」
『ぼ、僕はアスカが好きだ。ずっと一緒にいたい。今はまだ学生だ
から結婚しようとは言えないけど、卒業して就職してアスカを養え
るようになったら結婚したい。だから、それまでずっと一緒にいて
欲しい…。ププーッ』
「ちょっとアンタやめなさいよ茶化すの。シンジ君だって一生懸命
アスカに告白したんだから!」
「!!!!ちょ、ちょっと!なんでそれを知ってるんですか!!」
「あら、アンタ達知らなかったの?いくらアタシがオープンだから
って思春期の中学生の男女が一緒に住んでるんだから間違い起きな
いように監視しなきゃじゃない。2人とも両親のことまで知ってる
んだから。だからね。これ。盗聴器。間違い起きそうになったらす
ぐ止められるように前から仕掛けてたのよ。こないだ目を覚ました
日にたまたま聞いてみたら愛の告白タイムなんだもん、驚いたわよ
」
460 :
444:2008/09/13(土) 02:08:09 ID:???
……!!! も、もしかして、その先も聞いてたんですか?」
アスカはもう顔を真っ赤にして俯いている。
「アタシだってそこまで野暮じゃないわよ。アスカがワタシも好き
なんて言ってそれからアフンアフン言い出したから慌てて切ったわ
よ」
「………、ちょ、ちょっと待って下さい、今、中学生って言いまし
たよね? い、いつからそれつけてたんですか…?」
「アスカがウチに来た日からよ。だからアスカが『キス、しよっか
?』って言ってキスしたのも知ってるわよ?」
アスカはもう完全に茹ダコみたいになってる。多分、僕も…。
「大丈夫よシンちゃん、シンちゃんが『アスカ〜アスカ〜』なんて
言いながらハァハァしてたことは内緒にしといてあげるから^^」
バッチーーーーーーン!!!!
夕暮れに染まる街並みに頬を叩く音がこだました…。
461 :
444:2008/09/13(土) 02:10:01 ID:???
終了です。
初めて書いてみたんでgdgdでゴメンナサイ…
乙
王道だな
>>◆8CG3/fgH3E氏
お前にもまともなSSかけたんだな
乙カレー
>>444 はじめてにしては中々よかったよ
文力は本を読むとか、実際SSや日記、雑記を書くことで養われると思うし
ネタ的にもよかった
乙でした
乙です
乙き見
466 :
?:2008/09/15(月) 01:42:36 ID:???
てすてす
投下あったのかよ全然気づかなかったちくしょー
あげてやる
乙今からみる
469 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/20(月) 09:10:52 ID:8U+XBZAg
うひょー
保守街
そう言えば、病んでる同棲生活等を書く場合もココなのか?
捕手
捕手
『酒は飲んでも呑まれるな』とは、昔の人はよく言ったものだと思う。
昔、保護者をしていた人の事は反面教師だと密かに思っていたけど、まさか他にも身近に居たなんてね?
「うるひゃいな。とっとと次のボトル開けてよ」
硝子が割れそうな勢いでグラスをテーブルに叩き付け、カンと心地好い音を鳴らす。
グラスの中の氷は具合よく融け、カランと音を立ててその佇まいを崩した。
「……アンタ、飲み過ぎ。珍しく飲んでるのは別にいいけどさ、絡み酒ってのはあんまりじゃない?」
そりゃあ、シンジだって人付き合いが苦手な割にはそれなりの友達付き合いはある。
いつもアタシばかり構ってる訳にはいかない。
それでも、だ。
酔っ払って帰ってきて食事もソコソコに飲み倒すってのは、アタシの立場としてはどうにも頂けない。
「別に、いいじゃん……。僕だって飲みたい時もあるんだから」
「それは解るけど、程度物だって言ってるの」
一応、アタシ達は未成年。
日本の法律ではアルコールは二十歳になってからという事になっている。
馬鹿正直に遵守している高校生なんてそうそう居ないのはともかくとして、飲み過ぎというのはどうかと思う。
でも、まぁ……偶には羽目を外すのも良いか、な?
「ちょっと待ってて。それ迄次の奴はお預けね」
テーブルの上のご飯を手早く片付ける。
オードブルになりそうにない物はラップを掛けて冷蔵庫へ。
入れ替わりで摘むには丁度良さそうな物を冷蔵庫から取り出しながら、作れる物を思案してみた。
ツナの缶詰はマスタードとマヨネーズでディップに出来そうな感じ。
ソーセージはボイルして、適当に切ったチーズと一緒にサラダの残りのチシャの上に乗せて。
戸棚を覗いたら上手い具合にクラッカーがあった。
クラッカーだけでは物足りないかなと思いながら、オリーブオイルをフライパンに敷きIHのスイッチを押す。
明日の朝食にと買っておいたフランスパンも切ってしまおう。
買い置きのパスタを一掴みして半分に折り、熱したオリーブオイルで軽く炒めて塩を振る。
後は油を切って、適当な大きさのグラスに突っ込む。
――残り物や買い置きの物でも結構何とかなるものね。
最後に小さな取皿にヴァージンオイルを入れる。
只のオイルでも、意外とパンに合うのだ。
十分もしない内に一通りのオードブルの完成だ。
「はい、お待たせ♪」
「結構作ったんだね」
「お酒だけじゃ胃に良くないもの」
嘗ての保護者が無類の酒好きだった恩恵だろう。
それ程料理が得意とは言えなかったアタシでも、出来る様になればそれなりにお酒に合う物は作れる様になっていた。
とは言え、料理もお酒もメニューはアタシの好みのしか出さないけど。
ウィスキーはシンジがボトルを空にした所で打ち止め。
アタシはどちらかと言うとワインの方が好みだからだ。
「これ、栓開けて」
「ん。じゃあ、コルク抜き取ってよ」
食器棚からコルク抜きを取ってくるついでに、真新しいワイングラスを下ろす。
「はい。この間みたいに失敗しないでよね?」
「もうしないってば。コルク屑が混じった奴はもうこりごりだよ」
この間飲んだ時は栓を抜くのに失敗した。
どうにも上手く抜けなくて、栓をボトルの中に突っ込む羽目に。
お陰でグラスに注いだワインには、突っ込まれた時に崩れたコルクの破片が浮いていた状態。
「……っと、今度は上手く抜けたな」
「んじゃ、早く飲みましょ」
取り敢えず、グラスの半分位までワインを注ぐ。
が、注いだ所で気付いた。
「あ! 折角の白だからソーダ水取ってこなきゃ」
「一杯目はそのままでいいよ」
「そう? じゃあ、後で良いかなぁ」
「それより、日本酒は?」
「あ、残ってた分は料理に使っちゃったわ」
何か、所帯染みてるのは気の所為かしら?
「で、男ばっかりの新年会はどうだった?」
「いつも通りさ」
「バカ騒ぎ?」
「アスカに掛かっちゃ、男だけで集まったら全部バカ騒ぎになるんだね」
「でも、否定しないでしょ?」
ディップの皿に指突っ込んで味見をしてる……って事は誤魔化したい訳よね?
「ま、深くは追求しないであげるわ。で、何してたの?」
「ん、AVの鑑賞会」
小気味良くない音が部屋に響く。
「……ったぁ」
「あ、あ、あ、アンタ馬鹿ぁッ?! 冗談でも言って良い事と悪い事があるでしょッ?!」
手近にあった新聞紙を丸めて、シンジの頭を叩いてしまった。
「ぃや、冗談じゃなくてさ」
「すると、何?! アンタ達マジでやったの、それ?!」
「……僕は見てないよ。台所に居たし」
シンジの顔はげんなりした表情だ
何か話が変ね?
あ、ワイン一気飲みしちゃった。
「台所って、アンタ何処に行ってたのよ?」
「店長ん家」
「店長って……例のバイトの取引先?」
「うん。で、僕は店長と一緒にケーキ作ってたんだ」
新年会に……ケーキ?
普通、ケーキって言ったら日本じゃクリスマスじゃ……?
やっぱり、変。
って言うか、今日は相田の伝手で鈴原と一緒に写真部の新年会にお邪魔するんじゃなかったかしら?
取り敢えずその辺は後で追求する事にした。
それより先に追求する事は他にもある。
「何でお正月にケーキなのよ。普通、日本は御節料理とやらじゃないの?」
「店長の奥さんが仕事明けでさ。お店探してる時に捕まっちゃって、家に連れていかれちゃったんだ。
でもって甘党だからケーキ作れ、って帰ったその足で店長に」
「……で、手伝ってた訳?」
「うん」
「お人好し」
「ぅ……」
「ちょっ、ちょっとぉ! いきなり泣き始めるんじゃないわよぉッ?!」
うっわぁ……シンジって泣き上戸だったのねぇ……。
今度はさめざめと泣き始めちゃった。
それもテーブルの上に突っ伏して。
「店長の奥さんってさぁ……僕ら男より男前なんだよねぇ……」
男より男前……?
まさか顔……なんて言わないわよね……?
その辺が気になる。
「ん……でね、捕まった時に言われたのがさ、男ばっかり雁首揃えて何やってるんだーって……」
「へ、へぇ……そうなんだ……」
シンジが空になったグラスを突き出すので、アタシはまたグラスの半分位迄ワインを注ぐ。
あ、また一気飲み。
ペースが速いんじゃないの、ちょっと。
「活入れてやるーって出してきたのがさ……」
「あぁ……そういう事……。で、アンタはケーキ作る手伝いって事で逃げた、と」
「うん」
「で、鈴原と相田は?」
「んとね、僕とトウジは見逃してもらったんだ。出来上がったケーキ持って帰れだって」
「何でまた?」
「……彼女持ちだから。ほったらかしにしないでケーキでご機嫌取って来いって」
「相田と他の部員は?」
「多分まだ、ケーキ食べさせられながら捕まったままじゃないかな? 朝まで付き合えって言われてたし。
それで仕方ないから、コンビニでお酒買って二人で公園で飲んでから帰ってきたんだ」
また……それは豪快な奥様だわ……。
って事は、持って帰ってきた包みの中はケーキって訳ね。
それにしても、相田と写真部員はご愁傷様って感じ。
「……今回は、褒めてあげるわ」
結局ボトルの八割方はシンジに飲まれちゃった。
オードブルは殆ど手付かず。
そんなにお酒に弱い方じゃなかったと思うんだけど、今日は早々に潰れちゃった感じ。
まぁ、女性にそんな事言われたら……アタシならショック受けるわねぇ。
「ほら、シンジ……寝るならちゃんとベッドに行ってよ……」
「ぅ……ん……」
返事はしてくれるのよ。
してくれるけど、中々動いてくれないのよね。
使徒戦の頃と違って、シンジの体は背が伸びて少し重くなった。
アタシも女としてなら力はあるんだろうけど、流石に軽々とシンジを運べる程の力は無い。
どうしようかと考えていた時、インターフォンのチャイムが鳴った。
「……はい?」
こんな時間に誰だろうと無視してしまおうかとも思ったが、そういう訳にもいかない。
出てみると、意外な人の声が聞こえてきた。
『シンジか?』
え?
まさか?!
アタシは慌ててドアを開けた。
「司令?! どうなさったんですか?」
「む……?! あぁ……アスカ君か。済まんが、シンジは留守かね?」
「えっと……今日は寝ちゃったんです」
「……そうか。では……出直すとしよう」
もう夜も更けて、結構な時間になっている。
こんな時間に幾ら隣とは言え、部屋を訪ねて来るのはおかしい。
そして、しきりに隣の部屋のドアを気にしている。
「待って下さい。どうかなさいました?」
アタシは何かあったのかもと、司令を引き留める事にした。
「いや……何、まだリツコが実家から帰っていない様なのでな」
リツコはあれでいて至極家庭的な面が多いとかで、毎日何時になっても司令の帰りを待っている。
夕食だって、毎日用意する。
となると……?
「もしかして……お夕飯の用意が?」
「ぅ……うむ、済まない」
ビンゴ。
残り物になっちゃうけれどアタシが作った物があるし、さっきのオードブルだって殆ど残ったままだ。
「もし……アタシの作った物で宜しければ、如何ですか?」
アタシは適温になったお湯と緑茶の茶葉を、少し大きめのガラス製のティーポットに入れた。
ふんわりと広がる茶葉がお湯の中で踊り、緑茶の鮮やかな緑が中で広がっていく様が好きなのだ。
紅茶の紅が広がる様も綺麗だけれど、緑茶の、それも玉露の緑はまた格別。
日本に来てからのアタシのお気に入りな事の一つだ。
食事の用意が出来る迄、まだ少し時間が掛かる。
それ迄はお茶でも飲んで貰おう。
「どうぞ。シンジが入れた物に比べれば、美味しくないかもしれませんが」
「気を遣わずとも構わんよ」
「申し訳ありません、変な事御願いしてしまって」
アタシの力じゃ無理だったので、司令をリビングの上座に案内した後、食事を用意する間にシンジをベッドに運んで貰った。
「テーブルの上散らかっちゃってて済みません。直ぐお出ししますから……どうなさいました?」
まだテーブルの上には、さっきのオードブルとグラスが残っている。
アタシは急いで片付けようと、皿とグラスをトレイに戻そうとした時。
その時目に入った司令の姿は、一組織の責任者という感じはしなかった。
シンジが空けたウィスキーグラスを手にして、殆ど溶けてしまった氷水をくゆらしながら、深い溜息を一つ。
「いや、皿はそのままでいい。それを頂こう」
「えっ? でも、これオードブルですよ?」
「充分だ」
「でも……いえ、それなら追加で何かお作りします」
空になっている皿だけアタシは片付けた。
が、司令はまだ空のウィスキーグラスを手にしていた。
「あの、新しいグラスお持ちしますけど……」
「酒は出して貰わずとも結構だ。ただ……時間が過ぎるのは早い、と思ってな」
「時間……ですか?」
時間、ねぇ?
学校に居る時なんかは、早く終わらないかなぁって思う位、ゆっくり時間が過ぎてる様な。
でも休みの日はあっという間に一日が過ぎた気がする……っていう感じの事を言ってるのかしら。
アタシは何故かその時、キッチンに戻らずに席に着いて、司令の話を聞いた方が良い気がした。
「うむ。時間が過ぎる……いや、子供の成長は早いと言った方が正しいかも知れん」
「成長ですか……」
アタシはトレイを絨毯の上に置き、下座に腰を下ろした。
「私の記憶の中では、シンジは幼かったからな。この町に呼び寄せた後でも、長い間、最後に別れた時の姿のままだった。
それが、もう十七かと思うと……感慨深い物が無いとは言えん」
「そうなんですか……」
「オロオロしていたら、あっという間に成人式になりそうでな」
「成人って、日本では二十歳ですよね。まだ三年もありますよ?」
「この年になると、三年はあっという間に過ぎる」
「まだそんな事おっしゃるお年でもないじゃないですか」
「いや、そんな年だろう。今となっては私の年代など、次の世代への腰掛程度に過ぎんよ」
司令はそう話すと、ウィスキーグラスをテーブルに置き、もう一つ溜息を着く。
そして、少し冷めた湯飲を手にし、玉露を一口啜り上げた。
「入れなおします」
冷めてしまった物を勧めるのは、あまりいい気がしないものね。
アタシは席を立とうとしたら、やんわりと止められてしまった。
「そう気を遣う必要もないだろう。何れは義理の親子になるのだからな」
「……ぁ」
残念ながらアタシとシンジは、公には同棲中の恋人同士だと見られているが、少し事情が違う。
「それは……」
「何だ、違うのか?」
「……それは、まだ判らないと思います。医療部からの報告はご存知ですよね?」
アタシはともかくシンジからはまだ、正式なリアクションは無い。
だから今のアタシの立場は、限りなく恋人に近い同居人でしかない。
「無論だ。だが、あれは……シンジはどうやら私に似た部分が多い。もしかしたら、私よりも不器用かも知れん。
口下手過ぎる部分も私から似たのかも知れん。物腰の柔らかさだけはユイから受け継いだ様だがな」
「そうなんですか?」
「シンジが君の傍に居る事を望んだ事は確かだ。引越しにしても、君と離れる事だけは嫌がった」
初耳だった。
アタシは単に、いきなり同居は難しいという事とリツコに気兼ねしているから、アタシとの同居を選んだのだと思っていた。
それが、不器用なシンジなりの司令とリツコへの気遣いだと。
「初めて聞きました。引越しに関してはアタシはお二人の事を思って、シンジなりに考えた事だと思っていましたから」
「君達は……お互いに話し合って、今ここに居るのではないのかね?」
「いいえ、アタシは違います。アタシはただ、待ってるだけなんです。シンジが答を出すのを。
確かにシンジは不器用で、口下手ですけど……アタシの問にはきっと、答えてくれる筈ですから」
「……そうか」
「はい。お食事、用意しますね」
「頼む」
アタシはキッチンへ向かう為に席を立った。
何を作ろうかと冷蔵庫の中を見ながら考える。
少しボリュームのある物が良いと思うのだが、何が作れるだろう?
ドアポケットを見ると、卵が幾つか残ってた。
チルド室にはサラダの残りのハーブ……バジルだ。
オードブルにはクラッカーとパンがまだ残っている。
スパイスはいつも充分な量を切らさないようにしているから……。
――バジルソースが作れそうね。と、すると……うん、これで行こう。
アタシは戸棚からボールと電動泡立て器を取り出すと、卵を冷蔵庫から取り出し、室温に馴らす為に放置した。
その間にバジルの葉を取り出してから細かく刻み、バターとスパイスと一緒に炒める用意をしておく。
後は卵を割り、白身を泡立て、黄身と胡椒を混ぜてふんわりとフライパンで焼き上げるだけ。
焼き上がったらバジルを炒めてソースにし、焼き上げた物にたっぷりと掛ける。
オムレツのバジルソース掛けの出来上がり。
小さめの卵一個で作ったから、それ程胃に重い量でもないだろう。
「お待たせしました。お口に合うと嬉しいのですけれど……」
「旨そうな匂いをしているな。頂くとしよう」
司令がオムレツに箸を入れる。
多分半熟になっていると思う……けど、大丈夫かしら?
……あ、ちゃんと黄身がとろりとしてる。
良かった。
緊張して思わずトレイを抱き占めちゃった。
「……味も良いな」
「有難うございます」
司令が食べている間に、アタシはポットを手にもう一度キッチンに戻り、お湯を沸かし直してお茶を入れた。
「司令、さっきのお話ですが」
「うむ」
「確かにアタシ、シンジからはまだ何も言って貰ってません。でも今は、それでもいいと思ってます」
「何故かね?」
「前にもシンジに言ったんですけど、アタシは今こうしていてくれる事だけで充分だと思ってます。
そりゃあ、きちんと言って貰えない事は哀しいです。将来、アタシの手を取ってくれる確証が無い訳ですから。
でもアタシ達は出会った最初から、普通ではありませんでした。お互い憎みもしましたし、恐怖の余り殺そうとも思った事も。
それでも、アタシはシンジが愛おしいと思いました。憎むほど気に掛けて居てくれたんですから。
だから、今はシンジの答を待ちます。もしその結果、シンジがアタシの手を取ってくれたのなら、アタシは嬉しいです。
手を取ってくれなかったとしても、シンジが幸せを掴めるのなら、アタシはそれでもいいと、今は思います。
それ以上に、シンジはアタシに大事な事を気付かせてくれましたから、アタシは充分です」
「しかし……私は、君には済まない事ばかりしてきた気がする」
そんな事、ない。
だって、司令から召喚の命令が無ければ、アタシ達は出会う事など無かった。
アタシとシンジの人生が交わる事など無かった。
だから、アタシは胸を張って言えます。
「いいえ、アタシは感謝してます。命令が無ければ、アタシは日本でシンジと逢う事なんて無かったと思いますから。
だから、アタシから言える言葉は『有難う』なんです。母の事は残念だったと思います。でも、職務だったんでしょう?
アタシが恨み言言う方が、母に叱られてしまいます。母がエヴァに未来を託したのは事実ですから。
それを否定する様な事なんて、言えません」
「そう……か」
それから後、会話は無かった。
出来なかった、と言う方が正しいと思う。
司令はとても忙しい方だし、いつも帰宅は深夜になる位と聞いている。
今日の様にアタシが司令とこんなに長い時間、話せる事の方が珍しい。
それに、さっき話した事以外の話題が見付からなかったのもある。
そうこうしている内に、司令が帰ると言い出した。
確かに、もう日付が変わっている。
隣の部屋なので見送るも何もないのだけれど、アタシは玄関迄見送る事にした。
「……旨かったよ。また機会があれば、頼みたい物だが」
「いつでもどうぞ。シンジが喜びます。シンジったら、まだ司令と顔を合わせるのが恥ずかしいだけなんですよ」
「そうか……それとだな、アスカ君。一応君はシンジの……私の息子のパートナーだ。
出来ればその、司令というのは止めて貰えないかね」
「でもそれは……」
「一応、日本での保護責任者は私になっている事だしな」
えーっと……これって、もしかして……そういう事?
何か、顔が凄く熱い。
もしかしてアタシ、顔が真っ赤になってるんじゃないかしら?
「嫌なら別に司令のままでも構わんが…・・・」
「そんな、嫌とかじゃなくて……有難うございます。でも『お義父様』とお呼びするのは、シンジの答が出る迄取って置きます。
取り敢えず今は、『おじ様』で。宜しいでしょうか?」
「構わん。では、な」
「お休みなさい、おじ様」
夢みたいだった。
司令が、アタシを……。
――夢じゃ、ないわよ……ね?
アタシは、頬を抓ってみた。
「……ッたぁい」
痛みがある。
という事は、夢じゃない。
その後に皿を片付けているアタシの顔は、多分にやけていたと思う。
でもってそれは、暫くの間アタシの顔に居座り続けた。
だって、翌朝のそのそ起きて来たシンジがアタシを見て、こんな事言ったのよ?!
随分失礼よね、これって!
「……アスカ、何か変な物でも食べたの?」
シンジ……アンタ、お仕置決定。
当然、司令との事は当分内緒にしておく。
あけおめことよろおひさしでござい。
正月の一コマだったり。
取り敢えずアスカ、ゲンドウ公認って事でヨロ。
今年こそ本編共々何とかしたいでありまするので、見捨てないでつかーさい('A`)
Good job!
素晴らしい!
今年の初LASが良作でよかったよ
GJ
今年もいろんなもの楽しみに待ってます
遅ればせながら
GJ!!
あいかわらずうまいなGJ
498 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/01/22(木) 23:09:50 ID:IEcjLpMK
凄くイイ!
マチ
職人降臨町
コイ ハ トテモ アマイ モノ
アマイ アマイ サトウガシ
オンナノコ ハ アマイモノ デ デキテイル
「だーかーらー! もう廃業したっつってんだろ。いい加減シツコイな、お前らも」
「そう言わずにさぁ、頼むよぉ!」
最近、休み時間になるとよく見る風景。
相田が何故か、他のクラスの生徒に追っかけられている。
今日は授業中迄追いかけられているみたい。
今は体育の授業中で隣のB組と合同授業だから、仕方ないと言えばそれ迄なんだけど。
「何なの、アレ? 珍しい事もあったものね」
アタシは横に座っていたカナとミハルに聞いてみた。
「あぁ、アスカは転校してきたから知らないんだっけ?」
「この時期はどうしても男女関係なく気になるからね」
「何が?」
「うーん、アスカと碇君には関係無い事よねぇ……」
「ついでに私達も関係ない」
「はぁ? 意味わかんないわよ?」
あっさりとカナとミハルに言い切られてしまう。
何が何だかサッパリ解らない。
「要するに、同じクラスだから必要無いのよ」
……更に解らなくなった。
「アスカの場合は聞かない方が良いと思うよ。腹立つだけだから」
「相田君の副業絡み、って言えば解る?」
「じゃあ聞かないでおくわ。でもアレって……」
「うん、已めちゃった。アタシ達もびっくりなんだけどねー」
「相田君ってカメラ命! って感じだったから、小学校からの付き合いの奴は驚いてたもんね」
「へぇ……アイツ、そんなに昔からやってたんだ」
「男子相手には小学校からみたいだけど、女子相手には中学から? ま、何処にでもミーハーな奴は居るって事よ」
シンジとぎこちない仲直りをして以来、相田は盗撮写真の販売を已めてしまった。
理由は知らない。
多分、シンジは知ってるんだろうと思うけど。
「で、それが何であの騒ぎに繋がる訳?」
「もう直ぐバレンタインが近いでしょ?」
「……バレンタインって?」
カトリックに関する行事だという事は、アタシでも知っている。
でもその日に行われる行事の内容迄は余り解らない。
ドイツに居た頃は、勉強しているか訓練しているか眠っているかのどれかだった。
周囲に優秀だと認めて貰いたくて必死だったから、カレンダーは日付位しか気にした事が無い。
「もしかして……アスカってば、知らないのぉ?」
「バレンタインって行事があるのは知ってるけど……詳しい中身迄は知らないわ」
「ドイツにはバレンタインって無かったとか?」
「そりゃああるけど、そういう行事って余り気にした事が無かったの」
二人とも目を丸くして顔を見合わせてる。
アタシ、何か変な事言ったのかしら?
「……案外、アスカってヌけてる?」
「この場合は損してる、じゃなぁい?」
「随分な言われ様ね?」
「だって、女の子のお祭りみたいな物じゃない! コレを知らないなんて損以外の何物でもないわよぉ?」
「言えてる。アスカ、知らないなんて勿体無いわよ!」
アタシ、随分色んな事知らないままだったんだな。
それが良くない事だったとは思わないけど、アタシには女の子として色々と欠けているんだろう。
カナの言う通り、損をしてる部分の方が多いような気がして、ショックだったのは事実だ。
でもそれよりも、兵士として育ったアタシが女の子と言えるのだろうかという、疑問の方が遥かに大きかった。
確かに今、アタシは恋をしているんだろうと思う。
断定ではなく暫定しか出来ないのは、アタシ自身の気持ちが整理出来ていないからだ。
単純に、好き嫌いだけなら理解出来る。
けれどアタシにはまだ、細かくその感情を判断する事が難しい。
シンジが一番大事だという事だけははっきりしている。
でも、使徒と戦っていた頃の加持さんへの気持ちとは違う気がする。
あの頃の気持ちは嘘じゃない……。
ただ、どう違うのか上手く説明出来ない。
「で、相談に来た訳?」
「うん……御免なさい、リツコだって忙しいのに」
「気にする事無いわ。でも、どうしたものかしら……」
コーヒーを一口啜ると、リツコは少し困った笑顔を浮かべた。
「いい、アスカ? 一つずつ確認していくわね」
「うん」
「今一番大事な人、これはシンジ君で間違いない?」
「そうね……やっぱりシンジが一番だと思う」
今のアタシの心の中で、一番大きな割合を占めているのは間違いない。
そりゃあ、他にも知っている男の人は居るけれど。
でも顔と名前を知っている程度としか言えなくて、いま一つピンと来ない。
一緒に暮らしていて身近な存在という事を抜きにしても、あの時に知った事はアタシにとって衝撃的な事ばかり。
アタシという存在の根本を揺るがした。
そういう事から考えれば、やっぱりシンジが一番だって言える。
「じゃあ、次ね。シンジ君と一緒に居る時と、加持君と一緒に居た時を思い出してみて」
「ん……シンジと加持さんね」
「一緒に居てドキドキしたかしら?」
「……うーん、多分。でも、シンジと一緒だと少し違うかも」
そう、確かにドキドキはするの。
でも加持さんと一緒に居た時のドキドキよりも、シンジと一緒に居る時のドキドキの方がちょっと苦しい。
「ちょっとだけだけど、苦しいの。何て言うか……ドキドキし過ぎて、時々泣きたくなる感じがする」
加持さんと一緒に居た時のドキドキは、今思えば嬉しくてドキドキしてた感じ。
だけどシンジと一緒の時は、嬉しいけど苦しい。
変よね、これって。
他には……そう、これを忘れてはいけない。
「後ね、加持さんには見ていて欲しいって感じがした。シンジは……見ていたいけど、苦しいの」
「でも、自分が女の子かどうかが解らないのね?」
「うん……今日もね、学校で話していて思ったの。アタシ、普通の女の子らしい事って本当に知らないんだなって。
確かにアタシの染色体はXXで、生物学的にも遺伝子的にも女性の体だっていうのは解るのよ。
でも、アタシは兵士としてずっと訓練を受けて来たから……いざ話を振られても、何も答えられない事も多くて……。
それに、アタシ自身のシンジへの気持ちが、本当に恋なのか自信が無いわ」
アタシがそう言った時のリツコの顔は、少し悲しそうに見えた。
「貴女が精神的に年相応でない部分があるというのは、ドイツから着任した時から解っていた事なのだけど……。
御免なさい、これは私達大人の責任ね」
「そんな事ないわよ。だって、エヴァはチルドレンしか乗れないんでしょ? アタシのママはコアの中だったんだし」
「でも、何も対策を行わなかったという責任はあるわ。気を配るべき立場だったのは確かなんだから」
「あの時は仕方なかったんだって、アタシもシンジも解ってるわ。だから気にしないで?」
だって、みんな何処かで少しずつ狂っていったのは確かなんだもの。
それでも職務は果たさなければならなかったし、あの状況で果たしたという事は凄い事なんだと思う。
アタシだって、よく生き残ったなって思う位、あの一年は凄まじい物だった。
「……有難う、アスカ」
それからアタシは、リツコからの質問に答えていった。
シンジと一緒じゃない時は不安かどうかとか、一緒に暮らしていてどう感じるかとかの日常の事を中心に。
「母さんの言っていた通りね。男と女はロジックじゃない」
「どういう事?」
「アスカ、貴女は間違いなく女の子よ。ただ、順番が少し違ったのね。だから余計に解らなくなってしまったの。
普通なら恋をして、好きな男性と結ばれるのだけれど……貴女の場合は逆だった様だから……」
「でもアタシ、あの時は……」
あのホテルでの時は、まだアタシはシンジに対して良い印象は無かった筈。
むしろ、憎んでいたと言っていいと思う。
少しずつシンジに対しての気持ちが変わり始めたのは、保護される少し前からだもの。
何処で話が食い違って来てるのかしら?
「ドイツから取り寄せた物も含めて、心理テストを精査したのよ。膨大な量だったから少し時間が掛かってしまったけれどね。
深層心理内では使徒戦の頃から、一番身近に感じている異性はシンジ君だったわ」
身近に……それは一緒に住んでいるなら当たり前の事だと思うけれど?
でも、リツコの言葉からだとどうやら違う様だった。
「確かに、異性という点では加持君も身近だったとは思うわ。でも……貴女の場合は父性に対する要素が欠けていた。
どちらかと言えば、加持君の場合は父性の割合が大きかったと見ていいと思うの。MAGIも同じ回答を出したわ。
それにね、第十五使徒との戦闘記録と照らし合わせれば、やっぱりシンジ君しか考えられない。
ただ……自覚したのが遅かったという事が、今の貴女の迷いに繋がっているのだと思うの。」
第十五使徒……最低で最悪な記憶しかない。
一言で表せば、見たくもない幻覚を延々と見せ付けられた、と言えるかも知れない。
そう言われれば、シンジの姿を見た様な記憶が朧気に残っている。
じゃあ、あれって……。
「アタシ、自覚してなかっただけなの……? じゃあ、加持さんは……」
「小さな子供がよく言うでしょ? 『パパが一番大好きなの』って。あれとよく似た物じゃないかしら、初恋はパパだって奴よ」
「そうなんだ……」
「そういう精神的な部分の成長を、貴女は色々と飛び越えて迄訓練や勉学に打ち込んでいたのよね……」
そうなのだ。
アタシが一番気になるのはソコ。
アタシはチルドレンとして選ばれてからは、殆ど同年代の子供と接する事が無かった。
今は、友達も居る。
でも……転校して来てからの暫くの間は、正直どう接していいのか判らない事も多かった気がする。
必要以上に強気なのは、幼い頃から大人の中で過ごしたアタシなりの処世術みたいな物だ。
大学卒業という大きなカードがあったからこそ、許された部分もあったと思う。
そうでなければ只の生意気な小娘に過ぎない事も、今では解る。
だからこそ、アタシは必要な何かを置き忘れてきた気がしてならない。
家事だって下手だし、料理だって、裁縫だって、何一つ満足に出来ないと言っていい。
本当に、シンジへと向ける気持ちが恋と呼べるのか、アタシには自信が無い。
「でも、心配しないで。アスカ、何処から見ても貴女は女の子だわ」
「本当に……? アタシ、女の子に見える? 料理だって下手なのに……得意な事って、格闘技位しかないのに。
全然可愛く無いわよ? 意地っ張りだし、乱暴だし……」
「そんな事ないわ。今は違うじゃないの。料理だって、シンジ君に習って少しずつ覚えているでしょう?」
「まだ簡単な物しか作れないわよ……」
「それでも、努力しているでしょう? 誰の為にしているのかしらね?」
瞬時に脳裏に浮かぶのは一人だけ。
アタシが料理を食べさせてあげたいと思う人。
「シンジ……」
クスクスとリツコが笑う。
「ほら、直ぐに名前が出るじゃない。それこそ貴女がシンジ君に恋している一番の証拠よ」
「あ……」
そっか。
そんな簡単な事で良いんだ。
アタシ、そんな事も解らなかったんだ。
「貴女は誰から見ても恋する魅力的で可愛い女の子よ、アスカ。焦らなくていいの、少しずつ恋を楽しみなさい。
それが、一番大事な事だから」
「ありがと……リツコ」
少しだけ、気持ちが楽になった。
アタシは、アタシのままで良いって言われた気がして。
リツコの言った通り、焦らず少しずつ、出来る事から始めてみよう
家事だって、料理だって、まだまだ下手だけど上手になりたい。
何時かはシンジに美味しいって言って貰いたいもの。
でも……一番の問題は棚上げされたままなのよね。
バレンタインが女の子のお祭りだなんて、日本って一体どういう国なのかしら?
これは聞いてみなくちゃダメだわ。
「ねぇ、バレンタインって何する日なの?」
ケンスケを追いかけてる人は写真の売上や買いに来た人で貰える数やライバルを調査したい人だったりー
チョコをあげる前段階の話ですが、一応アスカが目覚めたという事でw
GJです!
チョコ作りに奮闘するアスカが目に浮かぶ…
うお、投下あったの気づかなかった
当日に反応できずスマン
職人GJ!
「相変わらずボケボケとしてるな」
「否定はしないよ」
薄暗い空を眺めながら、地面に腰を下ろし息を整える。
訓練の成果は多少なりともある様で、この町に来る前に比べたら整う迄の時間は短くなった気がする。
「何考えてるか判んない位ぼーっとしたまま走ってるのに、気付いたら追い抜かれてるし」
「それは気の所為じゃないかな? ペース配分が狂わなければ、誰だって走れるさ」
トラックを走る周回遅れの生徒を目で追った。
今にも雨が降りそうな天気の日に、グラウンドで長距離走だなんて少し無謀な教師だ。
湿気た空気と季節外れの生温い空気が気持ち悪い。
これ以上無い位テンションの低さで、無造作に傍らの地面の上に脱ぎ捨てられたジャージの上着の固まりを漁る。
自分の上着を見つけるよりも、隣に座るケンスケの分を見つける方が早かった。
見つけた上着を手渡しながら呟く。
「嫌になってくるけどね」
体育館の方からは女子の歓声が聞こえて来る。
あの様子だと多分、バレーボールかバスケットボール。
長距離走の選択は、男女一緒には体育館が少し狭いからなんだろう。
いいとばっちりと言えなくもない。
「そういやさぁ、今年は卒業式無いんだよな。でなきゃ準備で体育館だって使えない筈だし」
サードインパクトの影響で、特別措置として今年はもう一年同じ学年をする事になる。
僕らは二回中学三年をする、という事だ。
毎年のこの時期なら、高校受験直前で余裕が無い。
そう考えると今年は実に暢気だ。
「まぁね。その代わり来年は大変じゃないかな。予想だと移住者は暫く増え続ける一方らしいから」
移住者が増えるという事は生徒も増える分、高校受験は狭き門になる。
「特別措置って、それを見越した救済じゃないかって思うよ」
「俺……受かる自信無いんだよなぁ……」
「一年余裕貰ったんだから、何とかなるさ。と言うか、何とかしないとダメなんだけどね」
自分に言い聞かせる様な物だ。
僕だって、そんなに成績には自信は無い。
二年の終わり頃からは授業は休みがちだったのもある。
正直、この町に来てからまともに授業を受けたと言えるのは、サードインパクト後からかも知れない。
多少は診察や検査で抜ける事はあっても、精々一日か半日程度だ。
使徒戦の頃の様に何日も連続でという様な事は無い。
「碇はまだ良いよ、俺とは頭の出来が違うからな」
「それこそ買い被りさ。別に頭の出来が良かった訳じゃない。昔はそれしかする事が無かっただけだよ」
この町に来る前。
あの頃は無気力で、趣味らしい趣味も無く、自堕落にもなれず、時間を消費する方法を知らなかっただけだ。
家事だって、先生に何も言われない様にと片付けていただけ。
その家事も済ませてしまえば、後に残るのは何もする事が無い。
かと言って、眠るにも早過ぎる時間を消費するのは苦痛だった。
先生に薦められたチェロだって惰性で続けただけだし、夜の練習は近所迷惑になる。
結局の所僕に出来たのは、つまらないその日の授業のノートや教科書を流し読みして、眠気をひたすら待つ事だけ。
勉強だの復習だの、大それた事をしていた訳じゃない。
「本当に出来が良い奴は、授業を受けるだけで理解出来る奴の事だと思うよ」
「そんなもんか?」
「そんなもんさ」
周回遅れの生徒の数が減っていく。
だがそれとは逆に、空の重さは増していく。
雨が降りそうな中、特に会話もせずぼんやりとした時間が過ぎていく。
僕とケンスケだけじゃなく、他の走り終えた奴の間にも会話は無かった。
トラックを走る生徒の足音だけが響く中、ケンスケが口を開いた。
「なぁ……最近何か考えてる事でもあるのか?」
「何が?」
「転校生が来てクラス中騒いでる間でも、我関せず、って顔してる。授業だって、割とボケっと窓の外見てるだろ?」
雲の色が灰色を濃くしていく。
僕の頭の中も、比例して灰色に染まる。
「そうかな?」
僕の返答を聞いたケンスケの溜息が殊更大きく耳に響く。
「惣流の奴がじーっと見てるの、気付いてねーな?」
「アスカが?」
「この間から色々突っ込まれてるんだぜ? 俺が何か吹き込んだのかってさ」
「何それ」
「俺が言うのも筋違いなんだろうけど、お前らちゃんと話してんの?」
「さぁね? アスカがしてないって言うなら、してないんじゃないかな?」
話をするって事自体、一体何だろうと思う事がある。
大体、今更何を話せとでも言うんだろうか。
今迄の事、今の事、これからの事。
確かに数え上げれば切りが無いだろう。
「お前、それ無責任」
「仕方ないだろ……何言えば良いのか判らないんだからさ」
そう、判らない。
言葉に意味を持たせようとすると、声が出なくなる。
どう言っていいのか上手く言葉に出来ない事が苛立たしい。
「例えば? 何が言いたいのか判らないじゃあ、アイツだって納得しねーぞ?」
ケンスケが言う事も尤もだと思うけど、言葉にならないのはどうしようもない。
「ボキャブラリーが貧弱だってのは理由にならないよね?」
「多分、な」
元々そんなに喋る事に慣れている訳じゃない。
色々と頭の中で考えてはいても、口に出すのと出さないのとでは勝手が違う。
「頭の中で考えれば考える程、判らなくなってく訳じゃないんだ。たださ、このままで良いのかなって」
「このままって?」
「言葉が見付からないままで良いのかなって」
別に難しい事を考えている訳じゃないのに、口に出せないのがもどかしい。
悪循環だという事は解ってる。
気をとり直してみようとはするけれど、結局の所堂々巡りにしかならないのが僕のダメな所だ。
「……自分でも、馬鹿だなって思うよ。考える程の事じゃないんだって。でも、考えなきゃいけない気がするんだ」
胸に残る痛み。
血の臭い。
爆発音。
あの時の事を、繰り返し、繰り返し、頭の中で再生する。
やっぱりどうしようもなく弱いんだ。
再生されたイメージを、僕はまだ思い出に出来ないから。
「だから、僕はまだ何も言えないんだと思う」
暫くの沈黙の後、頬に冷たい物が触れる。
「あーあ、授業終了迄持たなかったな」
ぽつぽつと大きな雨粒が落ちる。
地面に小さな穴が明いていくのが、チカチカと目に痛い。
「まぁ、何が悩みの元なのかは知らないけどさ……って、冷てぇ!」
ケンスケが先に立ち上がった。
他の生徒は雨粒に気付いたと同時に、半数近くが校舎に戻っている。
けど、僕は急いで戻る気にはなれなかった。
ヨロヨロと立ち上がる僕の背に声が投げられる。
「お前の場合は、惣流が心配する様な事をしないって事だけで良いんでねーの?」
それだけの事で?
何も言えない僕のままでも、いいって事?
「ほら、早く戻らねーとマジで風邪引いちまうぞ?」
ぼんやりと立ち尽くす僕に、再びケンスケから声が掛かる。
「ぁ……うん、判った。すぐ着替えないとダメだね、これじゃあ」
教室に向かいながら、上着を脱ぎ廊下で立ち止まる。
他のクラスは授業中で一層静けさが際立ち、小さな声でもよく響く。
「ま、悩んだ分だけ男はデカくなるって言うけど……そんな簡単にはいかねーよなぁ……」
ケンスケの言う事も一理あるのかな?
けど、悩むだけっていうのも案外疲れるものだと思う。
「悩みが尽きる事なんて無いよ。悩みが無い人間の方が少ないんじゃない?」
「まぁな。それより明日、どーするよ? 俺、何も準備してねーぞ」
「……明日?」
カレンダーを思い出してみる。
特に予定は無い筈だ。
診察日でもないし、授業もまだ明日は通常通り。
何かあったっけ?
「おい……明日の事で悩んでたんじゃないのか? ホワイトデーだぞ。アイツの事だから、忘れてたらヤバくないか?」
……すっかり忘れてた。
「その顔は忘れてたって感じか?」
「あー……うん、忘れてた。そっか、お返し要るんだ」
「義理の返し位した事あるだろ?」
「いや、そういうのは縁が無かったよ。マトモに貰ったのって、今年が初めてなんだ」
「へぇ、意外だな。てっきり一度や二度はあると思ってた」
そう、初めて。
好意を寄せられる事自体は初めてじゃない。
でも真正面からストレートに「好き」なんて言われた事は、この間が初めてだ。
だから僕は余計に悩んでいる……?
「何言われたのか大体予想は付く。それで返事に困るってのも何となく解る。でもよ、悩むのはちょっと違うんじゃないか?」
「え……っ?」
普通は悩むだろう?
第一自分の気持ちも解りかねてる状態なのに、悩まない方がおかしい。
釈然としないのが顔に出ていたんだろうか。
ケンスケが笑いながら言った。
「ああいうのはさ、自分の感情の方は取っ払っちまえば良いんだよ。貰った事だけ客観的に見れば簡単だろ?」
「そういうもんかな?」
「そういうもんなんだよ。嫌じゃなかったんだろ?」
「……うん、多分」
「だったら、素直に感謝しとくだけで良いじゃないか。他に何か必要なのか?」
雨はどうやらにわか雨じゃなかった様で、次の授業に入っても雨足は強くなるばかりだった。
少し風が混ざり横振りなのか、雨粒が窓に叩き付けられている。
濡れた窓硝子の向こうの景色は、何処か別の場所の様に映る。
授業は右耳から左耳へと抜ける様に、頭の中に少しも入ってくれない。
ケンスケの言う事は確かに正しい事かも知れない。
でも、僕はこうも思う。
後悔しない様に、後悔されない様にするって事は、とても難しい。
後悔したとしても、またやり直せば良いって事位は解ってる。
それでもこの世には後悔してはダメな事がある。
だからこそ、上手く言葉に出来ない事だってある。
多分、僕にとってアスカには特別な何かがあるから、後悔したくないから、今は言葉に出来ないんだと思う。
――逃げ、じゃないよね……?
こう思える様になった事を一番伝えたい人は、もう居ない。
一歩前に押し出してくれた人だって、今はまだ夢の中だ。
何も言えなくて、言葉が見付からなくて、同じ所をぐるぐると廻り続けるしか出来ない事に心が痛む。
まだ心の中にどす黒い何かがこびり付いている気がするのは、多分気の所為じゃない。
その何かを消化出来ないままでは、見付かる物も見付からない気がする。
だからまた、堂々巡りを繰り返す。
後どれ位降れば、汚れは落ちるんだろう?
後どれ位経てば、思い出に出来るんだろう?
後どれ位迷えば、消化出来るんだろう?
後どれ位考えれば、言える様になるんだろう?
そんな事を考える時しか、灰色の脳細胞は動かない。
目に映る何もかもが色褪せて汚れて見えるのは、多分その所為だ。
止まない雨。
流石に警報は出ないが、結構な荒れた天気になりつつある。
もう窓は叩き付けられた雨粒の形が判らなくなる程濡れていた。
硝子に付いていた汚れが線を描きながら滴り落ちていく。
そんな窓を眺めていると、雨の日はいつも思う。
雨が止んだ時、窓硝子の様に僕の心の汚れも洗い流す事が出来ればいいのに、と。
そうすれば、前が見える分また一歩前に進める。
後悔したくない事だって、言える筈だ。
そんな気がする。
ホワイトデー前日の話だったりー
色々考えてるけどちょっとだけ前向きになったシンジ君ですた
>522
GJ
当日の話や後日談も読みたくなるなぁ
「うわぁ……何だか被害出てないみたい」
「ホントだ」
「物質的な被害が出たのは、戦闘があった第三周辺だけだからね。それ以外の地域の混乱は殆ど無かったみたいだよ」
まだ第三付近は復興工事が始まったばかりで、それ程物資の流通がある訳ではないらしい。
実際通り過ぎた市街地は瓦礫すら殆ど残っていなかった。
残っていたのは建物の痕跡を示す鉄骨の基礎部分と、侵攻して来ていた戦自の戦車と戦闘機の残骸が僅かだけ。
全ての人が戻って来始めた時、一面の荒野原に戦自隊員が倒れていた状態だったそうだ。
それ以外の場所は、サードインパクト直前と比べると殆ど変わり無い状態らしいとか。
変化があったとすれば、地軸がセカンドインパクト以前の物に戻っていたという事位。
その証拠に道路を境にしていた事が多かった海岸線が、随分と遠くに見える状態になっている。
「あれが?」
「そう、セカンドインパクト前の海岸線の名残。随分と違うだろ?」
「じゃあ、あの橋桁っぽいのは?」
「あれは高速道路の残骸だな。あれを北に辿って行くと、崩れたレインボーブリッジのでかい残骸が見えるんだ」
「その向こうが……?」
「そう、旧東京。この辺に住んでいた人は、さぞ驚いたと思うよ。気付いたら目の前に沈んだ筈の市街地が見えるんだから」
遠い海岸線のその向こうに見える小さな影。
それは目的地に近づくにつれて大きくなっていく。
初めて見る景色。
如何にセカンドインパクトでの海岸線の上昇が凄まじかったのかが、車の中から眺めているだけの僕でもよく判った。
そして、行き交う車が増え始める。
「この辺は普通の生活に戻っているのね」
「生活だけはね。行政は色々とややこしいままだけど、基地の近いUNが警備に当たってる分この辺は安全なんだ」
「UNがですか?」
「お役所の調査員の護衛だよ。インパクト前の登記簿と目で照らし合わせなくちゃ、おいそれと再開発は出来ないからね」
「警察はどうしたの?」
「浮上した地区の空家状態の建物に入り込む奴が多くて、そいつらの取締りにてんやわんやしてるんだ」
久々の街の景色は新鮮だった。
第三に比べると、随分と緑が多いのは気の所為だろうか?
僕達を載せた車は街の中心を通り抜け、山の手に近い建物の駐車場に停まった。
そこは第三にあったショッピングセンターと同系列の店舗だった。
ただ、第三の店舗よりは幾分か古いみたいで、外壁が煤けた感じがする。
店舗が大型なだけあって立体駐車場も結構広い分、車を停めた位置から店舗の入り口迄の距離があった。
「少し歩くけど、ここでいいか。遅くなったが先に飯食って、買い物はその後だな」
時計を確認すると、針はもうすぐ午後二時になる所。
「そう言われれば確かにお腹減ったわ」
「うん、ペコペコだ」
「二時間近く車で走ったら腹も減るさ。ここは俺が奢るから、好きなだけ食べて良いよ」
「ホント? 病院食は飽き飽きだったのよねぇ」
入院中のアスカはいつも食事を前にすると、味気がないと零していた気がする。
胃腸が僕以上に弱っていて食が細かった為、普通食の許可も随分と遅かった。
味の濃い食事が恋しいと思う部分が強かったのかも知れない。
尤も、それは僕も同じ。
「じゃあ……洋食系はどう? 病院食って和食中心の時の方が多かったし」
「中華も良いなぁ。でもイタリアンも捨て難いのよね……」
「だったらファミレスが良いんじゃないか? あそこなら殆ど揃ってるだろう」
僕にもアスカにも異論は無かった。
話が纏まった所で移動する事にする。
駐車場のすぐ下のフロアはレストランエリアで、昼食の混雑時を少し過ぎた所為か人通りは疎ら。
それでも人の行き交う雰囲気が、元に戻ったんだという実感を湧かせた。
「本当に、何も無かったみたいだ」
「そうね……」
店の中を流れる音楽が途切れ、呼出の館内放送が流れる。
そんな部分にも、人が生きて生活しているという事を思い起こさせた。
食事は一言で言えば美味しかった。
何処となくチープな雰囲気を持ったチェーン店だったけど、それが余計に元に戻った事を感じさせる。
こういう所のメニューは殆どが冷凍食品やレトルト加工品を大量に使っているのが判るからだ。
そしてそれの一日で消費する量は相当な物。
という事は、物資が充分な量で流通していると言える。
それは些細な事かも知れないけれど、人の営みという物が続いているという事の証だ、と僕は思う。
ただ、アスカの食の細さは入院中と余り変わらなくて、全部食べ切る事は出来なかった。
それでもアスカは充分満足出来たみたい。
「ジャンクフードが懐かしく思えるなんて思わなかったわ」
多分、アスカなりの褒め言葉なんだろう。
けれど……何かが引っ掛かる。
「アスカ、もうお腹一杯なの?」
「うん。でも入院中に比べたら食べた方じゃない?」
「そりゃそうだけどさ……」
アスカの皿を見ると、何とか半分を空にしたかどうか位。
「多分、まだ本調子じゃないからじゃないか? その内食べられる様になるさ」
青葉さんはそう言ってくれるけれど、幾ら何でも食が細過ぎやしないだろうか?
今日こうして退院出来ているという事は、やっぱり問題無いという事だけど。
でも、前はこんなに食が細かったかな?
いや……前は間食もして食事もキチンと摂ってたから、今みたいに食が細かったなんて事は無い。
それに陽の光の下で見るアスカの横顔は、入院中よりはマシとは言え僕にはかなりやつれて見える。
やっぱり、サードインパクトの時の影響なんだろうか。
どちらにしても気を付けてあげないとダメだと思った。
でないとまた入院なんて事になったら大変だ。
本部に戻ったら、自炊出来ないか聞いてみよう。
どうせ暫くは居住ブロックに住む事になるんだろうし、簡単なキッチン位は部屋にある筈だ。
いざとなれば食堂のキッチンを借りてもいい。
多分、今の僕に出来る事はこれ位しかない。
ほぼ1年振りですんませんorz
>>523 その内書きますです
乙乙
乙かれです。
前のものから読み返し、楽しませていただきました。
続き期待しまくってます。
食事を終えた僕達は、案内板でフロアを確認してから売場に向かう事に。
その前に食後のコーヒーを飲みながら、買わなければならない物を箇条書きでリストにする事にした。
「ねぇ、やっぱり纏め買いしないとダメなの?」
「……近所で買えると楽なんだけどな」
「今急ピッチで旧市街地にショッピングセンターが建設中だから、もう暫くの辛抱さ。
食料品や日用品だけは年明けにも普通に買える様になるよ。それ以外の物は春にならないとダメだけどね」
そう言いながら青葉さんはサラサラと手帳に買う物を書き込んでいく。
二人分の着替え……靴も要るかな?
後は洗剤等の日用品も忘れちゃいけない。
「着替えは纏めて何枚か買わないとダメか」
「じゃあシンジ、荷物持ちお願いね?」
「え?」
「何よ、嫌なの?」
「嫌じゃないけど……そんなに沢山は持てないよ」
「解ってるわよ。カート係、それで良いでしょ?」
全く、どれだけ買うつもりなんだか。
それでも良い気晴らしにはなりそうだと思う。
よく考えたら、入院中は白い壁と白い病院服しか見てなかったんだよな……。
こうして外に出ると、病院が如何に無機質で異常な空間に感じるのが判る。
温かみのあるクリーム色の壁が使われている店舗の中が、妙に明るくて目にチカチカ痛い。
売場に移動したらもっと目に痛く感じるかも知れない。
けど、それが何処か新鮮だと思う部分もある。
アスカも心なしか浮かれているみたいで、口元から笑みが消える事は無かった。
そんなアスカの姿を見るのは初めてかも。
僕のまだ色褪せるには早い記憶の中のアスカは、いつも何処かに力が入っていて、顰めっ面なのが殆どで。
でも今はそんな事なくて、肩の力が抜けてリラックスしている感じなのかな?
多分、それはアスカにとって良い事なんだと思う。
こんな普通の事なんて一体何ヶ月振りだろう。
でもそれはきっと、以前だってあった筈だ。
ただネルフという特殊な環境の中に居た僕には、別世界の物だとしか感じられなかっただけの事。
本当は手を伸ばせば届いた筈の事なのに。
多分、僕は何もかも諦めて自分で動こうとしなかったから、普通の事だと言われている事が新鮮に思うのかも。
でも……何故だろう?
つい最近の事みたいに感じる。
時間の感覚が何処かおかしいのかも知れない。
例えれば、流れる川の真ん中に一人立ち尽くして居る様な。
そう、周囲に取り残された感じだ。
半年前にはもう、ネルフ関係者以外は全員疎開していたから……それより前の話になるのか。
その頃と同じ様に、何故か周囲に押し潰されそうな気もしてくる。
理由は判らない。
何故か空気が重い。
ああ、そうだ。
いつか入った映画館で見た映画みたいな。
スクリーンの向こうの造られた景色を見ている感覚と一緒なんだ。
僕は、何処かおかしいのかも知れない。
隣にアスカが居るのは解る。
青葉さんだって向かいの席に居る。
でもアスカはすぐ側に居るのが解るのに、青葉さんの事はドラマの登場人物か何かみたいな感じがする気がする。
何が違うんだろう……?
二人とも側に居るのに、どうして僕はこんな事を感じてしまうんだろう?
自分の事なのに理解出来ない。
いっそ頭の中を覗いてしまえれば、自分の事も理解出来るだろうか?
子供染みた発想。
でも……そんな発想に縋りたくなる位、僕は自分の事がよく解らない。
「……ちょっと、シンジ? 話聞いてる?」
「ぁ……あぁ、聞いてる。聞いてるよ、アスカ」
「もう、ちゃんと聞いててよね! 着替えだけ買って終わりじゃないんだから」
アスカにまた怒られた。
ダメだ、気を抜くとすぐに考え込んでしまう。
「まぁまぁ、腹も膨れりゃ眠気が起きるさ。なぁ?」
「いや……別にそういう訳じゃないんですけど……」
「青葉さん、甘い。そんな普通の反応する位だったら可愛いけど、コイツの場合はそんなんじゃないわよ!
絶対考え過ぎて自分でも何考えてたのか解らなくなってるに決まってるんだから!」
――何で判るの、アスカ?
その物ズバリを言い当てられて返事に困っていると、更にアスカに畳み掛けられた。
「ったく、ボーっとして……結構目が泳いでるから丸判りなのよ。いーい? 二度と言わないから覚えておくのよ?」
「う、うん」
「まず二階でアタシの買物済ませてから、アンタの買物ね。その後三階に上がって、タオル類や簡易チェストを買うの。
日用品は一番最後で、アンタはアタシの荷物持ち。解った?」
「うん……解った。取り敢えず、アスカの後を付いて行けば良いんだよね」
それなら何とかなると思う。
歩きながらぼんやり考えるなんて事をしたら、迷子になるかも知れない。
迷子にならない様にするには、アスカの後を付いて行くのが一番確実だ。
「じゃあ話が纏まったって事で、そろそろ行くかい?」
「はぁい」
「青葉さん、ご馳走様でした」
「俺は会計済ませてくるから、エレベーターの前で待っててくれよ」
青葉さんが会計を済ませている間、言われた場所には直ぐに向かわずに僕達は案内板を探した。
運良くそれは直ぐ見付かり、目的の売場の場所を確認する事も難無く出来た。
その後青葉さんと合流して、まずは二階の婦人服売場へ。
直ぐ横にあったエレベーターに乗り込んだ……けど、何だろう?
また、空気が粘つく感覚がする……。
話の流れはもう暫くまったり進行系だったり
投下もまた暫くはまったり気味だったりorz
なるべく頑張ってみるー|´・ω・)ノ
がんばってー
ちゃんと見てますぜ
待ってるぜ
投下町
537 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/04/08(水) 00:59:49 ID:VV/oqhyA
え
待ってるぜ。
まち
あげますよー
投下楽しみにしてます
保守
保守
シンジ!誕生日おめでとう!
保守
保守
新劇スレ立ち過ぎなので一応保守
「迎え火」が落ち着いたら「ビニール傘」を集中的に書きますんでヨロorz
楽しみに待ってるガンガレノシ
まっちまっち(*´д`)
549 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/02(木) 02:06:17 ID:gAkXEMDw
あげ
またアスカで抜くのか
あげ
エヴァ板良スレ保守党
保守点検
554 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/13(月) 03:42:22 ID:a2QSW9z2
保守あげ
星
エヴァ板良スレ保守党
557 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2009/07/22(水) 01:22:21 ID:ALStARgI
保守
保守