1 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:
では、どうぞ。
2 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/25(日) 21:39:04 ID:eTT8CrKr
アッー!\(>。∂)/
シンちゃ〜ん
晩飯抜きよ〜wwww
ほんとお前っていつもメンドクサイ奴だよな…
「 来 る な 」
ゲンドウ
母さん、お元気ですか。シンジです。
でも、元気かと聞くのも変ですね。
あなたは遠い昔、僕が幼い頃に亡くなったのですから。
あなたの顔や声、そして料理の味や、僕を抱いてくれていた手のぬくもり。
残念ながら、僕は何一つ覚えていないのです。
そんな僕のことでも、あなたは見ていてくれていますか。
あなたが亡くなられてから、僕は先生の所に預けられ育てられました。
良く言えば何不自由ない生活とも言えるし、
何もない、ただ過ぎていくだけ日々を送っていたとも、言えなくもありません。
ある日突然、先生から父の元に行けとの指示を受けました。
何事でしょう。今まで僕にはなんの便りも送ってこなかった父が突然に。
説明を求めたのですが、先生は何も判らないというのです。
ただ、黙って一束の封筒を僕に手渡しました。
地図と何かのID番号を書いた乱暴なコピー。そこには「来い」としか書いていません。
そして交通費が添えられているのですが、目的の駅まで1円の狂いもない金額しか入っていません。
なんだか、片道分の燃料を積まれた特攻隊になった気分です。
それは言い過ぎとも聞こえますが、結果的にはそれほど大差はありませんでした。
目的の駅に到着すると、黒い車に黒ずくめのスーツを来た男達が数名で僕を待っていました。
後部座席で挟まれるようにして座らされ、男達は無言のまま車を走らせます。
怖いです。なんだかとっても怖いです。
それだけではありません。物理的な恐怖が僕達の車に襲いかかって来たのです。
というのも、到着した街は突然現れた「使徒」という怪物と、
戦略自衛隊陸軍、そして空軍との戦いにより、既に戦場と化していたのです。
挟まれて座っている不自由な中でしたが、どうにか外の様子を覗いてみると、
この世のものとも思えぬ禍々しい「使徒」の姿を見ることが出来ました。
なんなんでしょう、あれは。使徒、それはつまり天使のことのはず。
とても昔の人が想像した羽根を羽ばたかせる姿など、あれから想像できるものではありません。
そして、その怪物がビルを破壊し、住宅街を焼き払い、やりたい放題に暴れています。
それを相手に戦う自衛隊の兵器達。ですが、使徒は蚊に刺されたほども感じていないようです。
そんな戦場のど真ん中を、僕を乗せている車は走り抜けようとしています。
一時は使徒から僅か数十メートルの距離まで近づき、思わず僕は悲鳴を上げたのですが、
隣の男に「うるさい」と一喝され、巨大な手で僕の口をふさいでしまいました。
思えば、彼らが口をきいたのは、初対面で挨拶したとき以来でした。
母さん、怖いです。この人達、とっても怖いです。
やがて、車は巨大なエスカレーターのようなもので、地下深くへと運ばれていきます。
運転手は腕組みをしたまま到着するのをジッと待っています。
彼ら同士も何の会話もありません。
そんな中でも僕は男に挟まれっぱなしです。とっても怖いです。
そんな気まずい中で、遂に到着しました。父の居るNERV本部へと。
僕の到着を待っていたのは、一人の女性。
戦術作戦部作戦局第一課の作戦部長、葛城ミサト一尉という人でした。とても綺麗な方です。
ここの制服ではあるのですがボディーラインがハッキリと出ていて、
彼女のプロポーションが大変優れていることが判ります。
しかし、笑いません。僕との初対面ではニコリともしません。
軍人に類する方なのですから、それは当然のことかも知れません。
いや、女性と言うだけに男よりも厳しさ倍増、下手なことを言えば容赦なく引っぱたかれそうな気がします。
母さん、やっぱり怖いです。
そして案内されたのが、人型兵器「エヴァンゲリオン」の格納庫。平たく言えば戦闘ロボットです。
しかも、顔のデザインがとっても恐ろしいです。
機能さえ果たせば、せめてガンダムやマジンガーZ、なんならドラえもんでも構わないと思うのですが、
一体どういう意図があるのでしょう。なんだか訳が判りません。
そして、その頭上にある司令室のようなところで立っている一人の男。
それが僕の父、そして母さんの夫であるNERV総司令の碇ゲンドウなのです。
僕は父に尋ねようとしました。
「父さん、僕に何を」
「来たか。よし、乗せろ。」
どうやら、僕の意向はどうでもいいようです。
巨大なロボットの背中の方まで連れて行かれて、そこから飛び出している筒の中に入れと言いました。
その場で待っていたのは科学者らしい白衣を着た一人の女性、赤木リツコ博士。
この人も怖いです。
僕を睨むというよりも、実験動物、いや検体か何かを見るときの冷たい目で僕を見下しているのです。
ましてや何故か金髪、なんだか訳が判りません。そして筒に入ろうとした僕に言います。
「待って。脱ぎなさい。」
「え、どうして。」
「脱ぎなさい。プラグスーツの着用を説明する暇なんてないから、早く脱ぎなさい。」
もう嫌も応もありません。僕の後ろから先程のミサトさんがツカツカと近づき、服を全部はぎとってしまいました。
とても恥ずかしかったのですが、どうやら非常事態の様子。
ファッションショーのモデルよろしく、普段の常識と恥じらいなど無用の厳しい世界なのかも知れません。
が、整備士の一人が僕のを見て鼻で笑いました。やっぱり恥ずかしいです。
そんなわけで、エントリープラグとかいう筒の中に僕は押し込められました。
中は見たこともない計器が並んでいて、正直わけが判りません。
何をどうすればいいのでしょう。僕はおろおろと左右を見渡していると、
「ただ座っていればいい。余計なものには触らないで。」
突然、何もない中空に画像が表示されて、さらに声がしました。リツコさんです。
文章に書くとそうでもありませんが、身もすくむようなビシリとした一喝でした。
何か上から物音がするので見上げてみると、隙間からゴムホースが伸びてきて水がドボドボと注がれてきました。
母さん、この人達はとりあえず僕を殺す気でしょうか。
僕が、助けて、と叫びつつドンドン壁を叩いていると、
「騒がないで。水では無いわ。それはLCLで肺に満たされれば呼吸が出来る。」
今度はミサトさんの声でした。しかし、これは水です。匂いからして100%水道水です。
こんなものを肺に入れたら本当におぼれ死んでしまいます。
その時、通信モニタが入りっぱなしだったのか、外のミサトさんとリツコさんの会話が聞こえてきました。
「リツコ、まさかあれは本当に水じゃないの?」
「その通りよ。いきなり高価なLCLなんて使えやしないわ。」
「そんな、シンジ君がおぼれてしまうわ!」
「問題ないわよ。水の伝導率でも神経接続は可能よ。」
「そういう問題じゃなくて!」
モニタに映るリツコさんの目が血走っているので、もう誰にも止められないことが判りました。
母さん、僕はもうすぐそちらに逝きます。待っていてくださいね。
「しょ、初号機発進よ!早く!早くしなさい!」
そんなミサトさんの絶叫が辛うじて聞こえてくる中、
意識がだんだんと薄れていくのを感じながら僕は目を閉じました。
つーか、暇なんでネタ書いたけど貼りたくなったので自分でスレ建てました
問題なければ続き書いてみますー
皆さんもどーぞー
たしかにほどよいな
こう見てわかったんだが
ゲンドウっていちおシンジに意見もきいてたのかな?
15 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/25(日) 23:50:27 ID:9e84Qfr2
本編じゃ、嫌なら帰れって言ってたが。
取り敢えずネタ乙&続きよろ
16 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/26(月) 14:52:14 ID:DLjiXUGK
「父さん、僕に何を」
「来たか。よし、帰れ。」
シンジ「と
冬月「帰れ!」
「瞬間、心、重ねて」のラストのシンジとアスカの口げんか。
「寝てるあいだに私の唇奪おうとしたくせに!」
「お、起きてたなんてずるいよ!」
「エッチ、痴漢、変態、馬鹿、ろくでなし、のろま、役立たず、最低最悪、生きてる価値なし!
キスしたのねぇ〜!?」
「・・・・・・orz」
気が付くと、僕は知らない天井を眺めていました。
いや、そんなことはどうでもいいですね。
ここに来てから壁も床も扉も知っているところなどありません。
見飽きたものといえば、自らを慰める自分の右手ぐらいなものです。
僕は借り物の寝間着を着せられて、病院のベットの上に寝かされていました。
母さん、あなたに会う日が遠のきましたね。正直いって早くそちらに行きたかったです。
見渡すと、消灯台の上に僕の食事らしいトレーが置かれています。
いったい何時の食事でしょう。冷え切ったお粥なんて手を付ける気にもなりません。
なんだか頭がボーッとするのですが、恐らく極度の酸欠状態に陥った影響でしょう。
そんな、ふらつく体を抱えながら病室を出てみると、一台のベッドが看護師に押されて通りかかりました。
そこに寝ていたのは、なんだか不思議な女の子でした。髪が青く、真っ赤な目をしています。
一体だれの趣味で染めちゃったんでしょうか。なんだかよく判りません。
彼女は寝たままでジロリと僕を睨み、そのまま運ばれていきました。
これが、ファーストチルドレンである綾波レイとの出会いです。
そして僕はサードチルドレン。ということはセカンドが存在するわけです。
まあ、その人にはいずれ出会うこともあるでしょう。
「これを全て頭に入れなさい。エヴァの出現位置、非常用電源、回収スポット、それから、」
リツコさんです。病室から出てきたばかりの僕に情け容赦ありません。
「エヴァの電源構造、各種計器の読み方、基本操作など、このマニュアルに全部書いてあるから。」
そして、ドンと机に置かれた巨大なファイル。僕は尋ねました。
「あの、いつまでに」
リツコさんは何も答えず、黙ってキーボードに向かいタイプを続けています。
僕は何も言えずにその場を立ち去るしかありませんでした。
リツコさん、ずいぶん気が立っているようです。
後から聞いたのですが、僕が意識を失った後にエヴァンゲリオンが制御を失い、勝手に動き出したそうです。
発進の段取りを無視して格納庫の扉を破壊し、無理矢理に地上へ飛び出して目標に猛進。
街を踏み荒らしながら突進して、使徒を瞬殺したそうです。
そのスピーディーな展開のお陰で僕は死なずに救出されたようですが、はっきり言って大きなお世話です。
使徒に勝ったことよりも甚大な被害を生んだことが問題になっているようで、
何故か僕が原因であり、しかもその責任は勘弁してやっている、みたいな変な状態になっています。
僕はワザと操縦席で溺れたと言うんでしょうか。でも、怖くてそんなことは言えません。
翌日、さっそくエヴァの操縦訓練開始です。
あの分厚いマニュアルを一晩かけて読んだのですが、覚えられる筈はありません。
病み上がりの頭を抱えて、字を読むだけでも困難な状態だったのですから。
今度はプラグスーツというものを着用させてくれたので、全裸にならずに済みました。
しかし、操縦席にはやっぱり水道水です。ですが、呼吸用のゴムホースが垂れ下がっているだけまだマシです。
「では、直轄回路に切り替えて。」
「3番からBのルートで射出。現在位置は?」
「次にプラグナイフの装備。」
まったく覚えられていないのに出来るわけがありません。
ていうか、たとえ覚えても練習無しで出来ることなのでしょうか。
「出来ない理由は何?覚えて来いと言ったわよね。」
理由なんて言えません。ゴムホースを咥えてどうやって喋れというんでしょうか。
言葉で僕を責め立てるだけではありません。
彼女の指示にたいして、僕が何もしないで居ると体に凄まじい衝撃が走ります。
どうやら電流を流しているようです。母さん、僕は犬か何かだったんでしょうか。
「早く覚えないと内蔵バッテリーを全てあなたに費やすことになるわよ。」
そう言うリツコさんの後ろに、ミサトさんの姿がチラリと見えました。
ただ、厳しい目つきでジッと僕を見ているだけで、僕を助けようというそぶりも見せません。
長い時間をかけて行われた僕の拷問もやっと終了しました。
トイレの時間も貰えずエントリープラグに缶詰状態だったので、
エヴァから降ろされた後、慌てて用を足しに走り回る羽目になりました。
慣れないNERV本部の中でようやくトイレを見つけて、個室でホッと人心地付いた時のこと。
二人の女性の声が聞こえてきました。
どうやら僕は間違えて女子トイレに入ったようです。
「まったく、これだから子供相手に仕事するのは嫌なのよ。ミサト、そう思わない?」
「そうね。」
「覚えてないなら覚えてないとハッキリ言うことも出来ないなんて。仕事をするということを何も判っていないわ。」
「確かにね。」
「ミサト、あなたも甘い顔をしては駄目よ。ああいう子供はつけあがるし、体に判らせないとどうしようもない。」
「判ったわ、リツコ。」
「やーれやれ。トイレに行きたいならそう言えばいいのに。挨拶も禄に出来ないし。」
そう言いながら去っていきました。
母さん、母さんが社会に出たときも体に電流を流されたんでしょうか。
仕事をする大人の世界の厳しさというものを、今日ほど実感した日はありません。
トイレを間違えて入ったことについて、トラブルにならなかったことだけは不幸中の幸いでした。
僕の寝泊まりする場所はNERV本部内の宿直室が与えられました。部屋の中はなんの飾り気もありません。
病院で使われているようなパイプのベッドとスチール製の事務机や椅子が置かれています。
トイレが個室でなかったら、まるで牢屋です。いや、もっと非道いです。なんと窓がありません。
安いホテルの一室に見えなくも無いのですが、テレビや冷蔵庫なんていう贅沢品もありません。
何をどうしようと考えたのですが、出来ることと言えば例の分厚いマニュアルを読むことだけ。
これから先、持ってきていたウォークマンだけが僕の唯一の楽しみになりそうです。
それを聞きながらマニュアルに目を通していたのですが、どうにもお腹がすいて仕方がありません。
実は社員食堂を使って良いことになっているのですが、訓練が終わった頃には既に閉まっていました。
朝まで我慢するしかない、と考えていたところ、誰かがドアをノックしました。やって来たのはミサトさんでした。
「食べなさい。」
そう言って僕に手渡したのはコンビニのビニール袋。中には、揚げ物の弁当とペットボトルのお茶でした。
それに加えてビールとおつまみが入っていたのですが、それはミサトさん自身の分みたいです。
僕はもぞもぞとお礼を言い、椅子に座って弁当を広げて食べ始めました。
ミサトさんはベッドに腰を下ろして、ビール片手で弁当を食べる僕を見守っています。
彼女は何も言いません。ニコリともしません。
なんだか僕は悲しくなって、食べる手を止めてすすり泣きをしてしまったのですが、
ミサトさんは、フーッと疲れ切ったような溜息をついて僕を慰めようともしませんでした。
そして彼女は、まだひいていなかったベッドのシーツを掛けてくれて、そのまま無言で去っていきました。
こんなに可哀想なシンジはある意味見たことない
実はものすごい名スレの予感なんじゃないかw
壱話、弐話と順調に進んでるしw
全米が泣いた
シンジ君を俺んちに止めてあげたい・・・
可哀想で目頭が熱い・・・
ちょい上げておく
これhひどいw
母さん。朝が来ても立ちません。
14歳にしてこんな状態でいいのでしょうか。
毎日の朝が重苦しく、部屋に帰り着く夜が待ち遠しくて仕方がありません。
朝、起きると洗顔と用足しを済ませ、食堂へ朝食を食べに向かいます。
NERV本部には数種類の社員食堂があります。
まず一つは、司令部の人や整備士などの正規職員向け。もう一つは掃除のおばちゃん達など雑用パート向け。
僕が行くのは後者の方です。僕が行く方の食堂は、安いだけが取り柄のいい加減な料理ばかりで、
選べるのは決まった定食かうどんやそば、カレーといったものだけ。
お世辞にも美味しいとは言えません。ていうか、どうすればこんなに不味く作れるか判りません。
正規職員向けの食堂はどんな食事が出てくるのか、僕は行くことが許されていないので判りません。
ここは身分で行動範囲が限られているタイタニック号なのでしょうか。
料金は給料天引きで、お金を持っていなくてもとりあえずは食べることができるのですが、
うっかり給料を超えて食べてしまっては大変です。僕には現金の持ち合わせが少ししか無いのです。
つまり、僕は給料を受け取ることになっていますが、時給は14歳だからとっても安いです。
この食費と洗濯代、そして生活必需の消耗品だけでほとんど消えてしまいます。
最初はコインランドリーを使うお金が無くて難儀しました。
しかたなく、部屋の洗面台で水洗いする他はなかったのですから。
自由に使うことが出来るのは水と電気だけ。
いつか、お金を貯めて湯沸かしのポットと湯飲みを買うのが僕の夢です。
しかし、なんといっても僕は中学生。昼間は学校に通わなければなりません。
お金がないため当分はお昼ご飯抜きになりそうで、それが一番つらいのですが、
授業なんて見つからない限り寝ていても問題なく、ここが僕の安らぎの場所になりそうです。
などという僕の考えは少し甘かったようです。
「おい転校生、お前エヴァのパイロットやろ?ちょっと顔貸せや。」
そんな関西弁で喋る鈴原とかいう奴に、さっそく校舎裏に呼び出されてしまいました。
そいつだけではありません。クラスの男子全員、いやもっと居たかも知れません。
そいつらから殴られ蹴られてボコボコにされてしまいました。
使徒が襲来する街として、かなりストレスが貯まっているのでしょうか。
いや、もっと彼らの言い分は具体的です。
「お前のおかげで俺の妹が偉い目におうとんのやぞ!」
「俺の家、テメェのロボットのお陰で半壊状態に」
「うちのじいちゃんが逃げ遅れて、家で泣いて」
「緊急避難のせいで見たい番組が」
やっぱり、なにがなんだか訳が分かりません。僕が地面に倒れても尚も彼らは責め立ててきます。
最後の一蹴りをくれてから彼らが去ろうとした時に、今までとは違った声がしました。
「非常招集、先に行くから。」
見上げてみると、包帯を巻いた女の子が一人。それは綾波レイでした。
どうやら最後の蹴りは彼女のようです。軽くぱんつが見えましたから、それは間違いありません。
が、そんなことを喜んでいる暇はありません。僕が招集されるということは、使徒が襲来しているのです。
本部に向かってみると、新たな使徒が襲来しているため大騒ぎの状態でした。
プラグスーツの着用に手間取り、怒鳴り散らされながらエヴァンゲリオンに乗って発進です。
今度は僕の周りにLCLが注がれました。
成る程、水より遙かに比重が軽く、慣れてしまえば呼吸も可能です。
でもこれ、なんだか薄いです。ちょっと息苦しいので、始めてでもなんとなく判ります。
薄めて使用されているのでしょうか。人類の存亡がかかっている割にはケチもいいところです。
さて、作戦部長であるミサトさんの指示の元に、地上に射出されて使徒の前に押し出されました。
今度も毒々しい蛇か虫けらのような姿で、やっぱり天使には見えません。
前回は僕は無意識の状態で勝手にエヴァが暴れたのですが、
今では訓練を重ねたお陰でエヴァをなんとか操縦できるようになっています。
さっそく教え込まれたとおりに照準を合わせて、使徒に向けてライフルを発射しました。
でも、なんだか効いてないようです。
「何をやっているの!全然効果がないじゃない!」
いえ、リツコさん。僕はあなたが教えた通りにやっています。
距離を詰めて照準を合わせて射撃、これ以上に何かテクニックがあるというのでしょうか。
「仕方ないわね。ミサト?」
そのリツコさんの声にしばらく黙っていたミサトさんでしたが、何かを決断したらしく僕に指示を出しました。
「シンジ君、一時退却。B-7の回収ポイントへ。」
何か嫌な予感がします。
いや、予感どころか確信を持って言えます。
間違いなく、ミサトさん達はLCLを水道水に詰め替えるつもりでいるのです。
そう、僕がおぼれかけてエヴァが暴走して勝利をなしえた、あの一戦を再現しようとしているに違いありません。
「何をしているの!早くしなさい!」
ミサトさんの怒鳴り声が聞こえてきます。
その時、僕の中で何かがはじけ飛びました。
本当のところは、たとえおぼれ死のうと構わなかったのです。
母さん、こんな僕は親不孝者でしょうか。でも、先立つ不幸だけはまのがれているので許してくれますよね。
でも、僕はそれとは真逆のことをしていました。
エヴァにプラグナイフを引き抜かせ、使徒目掛けて突進したのです。
使徒はライトサーベルを鞭にしたような両腕を繰り出し、エヴァを切り裂き、突き刺して反撃してきます。
僕自身の体に凄まじい痛みが伝わります。
それは当然のこと、エヴァとの神経接続は痛感神経をもパイロットと同期を取っているのですから。
そのとてつもない痛みが僕の死にかけていた闘争本能を奮い立たせました。
激しい攻撃も構わずに使徒の胸部にナイフを突き立て、えぐりました。
偶然にも、僕が刺した箇所は使徒のコアと呼ばれる赤い球体で、
それがひび割れてはじけると同時に、使徒は完全に動きを止めました。
本部に戻った後、ミサトさんに呼び出されました。
呼び出された先に居たのはミサトさんだけではなく、あの例の黒ずくめの男達が待っていました。
彼女はとりあえず僕を平手打ちしてから一言。
「私の命令を無視したわね。」
僕が何も言えずにいると、ミサトさんは指を鳴らして男達に命じました。
男達は僕を羽交い締めにして、ドスドスと腹部に強烈なパンチを食らわせました。
とてつもない痛みです。学校でリンチを受けたときよりも更に強烈でした。
もしかしたら、ミサトさんが僕に唯一やさしくしてくれる人だと思っていたのですが、考えが甘かったようです。
「私の命令には絶対服従。いいわね?」
彼女はそう言って立ち去り、僕は男達に担ぎ上げられ自室のベッドに担ぎ込まれました。
それから、いろいろなことを考えていた気がするのですが、よく覚えていません。
僕はそのまま意識が遠のいて気を失ったか、あるいは眠ってしまいました。
シンジかわいそう…
全員「死ね」
シンジ「・・・・・・・・・・・。」
37 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/28(水) 15:13:48 ID:atEhsiG6
ミサト「これがあなたのIDカードよ。」
シンジ「あの・・。」
ミサト「拾いなさい。」
39 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/28(水) 17:07:55 ID:atEhsiG6
シンジ「ただいま。」
ミサト「シンジ君。ここはあたしの家なのよ。」
シンジ「・・・お邪魔します。」
ミサト「いらっしゃい。」
(´;ω;`)シンジテラカワイソス
シンジ「ミミミミサトさん!」
ミサト「粗末ね。」
シンジ「・・・!!」
ミサト「何反応して勃ってんのよ、変態。」
ミサト「ほぉら?どう気持ちいいんでしょ本当にやらしい子供ね。」
シンジ「(´;ω;`)」
楽しいでしょう?そうしてトイレのなかで食事すんの
(´;ω;`)ウッ
やべ…可哀想を通り越して…
萌えてきた(;´Д`)=з
トウジ「おい、転校生。ムラムラしてきたから、ちょっとツラ貸せや」
シンジ「え? ムラムラ?」
ケンスケ「ごめんな。こういう奴なんだ。我慢してくれよ」
おじさん「お前は妻を殺した六分儀ゲンドウと同じ血が流れてるんだよ」
おばさん「顔を見ただけで虫唾が走るわ」
おじさん「学校行かなくてもいいだろ? 何でもいいから働いて金を家に入れろよ?」
(´;ω;`)ウッ
『碇君があのロボットのパイロットでしかも変態というのはホント? :Y/N』
『ホントなんでしょ? :Y/N』
(´;ω;`)ウッ
『お尻の穴、広がってるって本当?:Y/N』
(;ω;)ウッ
嫌な事は排水溝掃除してパーと洗い流しちゃいなさい。下水は命の洗濯よ。
(´;ω;`)絶対違う……
もし、本当に母さんと話をすることが出来たなら、
母さんは僕に、ここから逃げなさい、と言ったでしょうね。
もちろん、僕もそうしようとしたのです。
決してNERVに牢屋で閉じこめられている訳ではないのですし、
学校の行き帰りなどでチャンスは幾らでもあります。
あると思ったのです。
ある学校の帰り道で、気が付くと違う方向へと歩き出していました。
具体的に、どうすると決めたことなどありません。
ただ、逃げたい、逃げたい、という朦朧とした気持ちのままに、あてもなく駆け出そうとしていました。
まさに、盗んだバイクで走り出す、自由になれた気がした14の夜。
あ、母さん。別に何も盗んでません。いや本当です。
しかし、そこまででした。
目の前に一台の車がギッと停車して、中の人が僕に言います。
「どこに行くつもり?乗りなさい。」
ミサトさんでした。偶然に僕を見つけたのでしょうか、それとも僕を絶えず監視して居るんでしょうか。
驚いて何も言えずにいると、更にミサトさんは言います。
「判らないの?後ろの諜報部の車があなたを監視しているわ。痛い目にあってから連れ戻されたいの?」
もう是非もありません。そのままミサトさんの隣に乗ってNERVに連れ戻されました。
そんなミサトさんから気遣いの言葉などありません。数日の休養など与えられるはずもありません。
母さん、今度は綾波レイについて話します。
青い髪に赤い目のなんだかよく判らない女の子で、実は僕と同い年。
彼女はエヴァンゲリオン零号機の専属パイロットで、そのエヴァはプロトタイプと呼ばれています。
実は、初めて正常稼働することが出来た初めてのエヴァンゲリオンなのだそうです。
そして綾波は、それに至るまで様々なテストを繰り返してきた僕の先輩ということです。
更に言えば、僕が乗っているのは初号機で、通称テストタイプ。
零号機よりも実戦可能な装備が施されているのですが、まだまだ実験中と言うところでしょうか。
なんだか、自分がモルモットのような気がして成りません。
どんな子か、と聞かれてもよく判りません。
僕と同じようにNERV内部の宿直室に寝泊まりしていますが、
ほとんど話をしたこともなく、顔を合わせることもほとんどありません。
ああ、一度だけ彼女の元にお使いを頼まれました。
彼女に新しいIDカードを届けるように頼まれ、部屋に向かったのですが、
丁度、彼女が着替えている途中で扉を開けてしまい、思いっ切りグーで殴られました。
彼女、怖い人です。そして理不尽です。
ちゃんとノックして、開けるよ、と言ってから開けたのに、これって僕が悪いんでしょうか。
そして彼女は、床に倒れている僕の手からカードを抜き取ったのですが、
その時の彼女はまだ裸のままだったので絶景でした。怖いですけど、なんだか格好いいです。
さて、またしても使徒の襲来です。
たまには第五大阪や第八北京にでも行ってきて欲しいところですが、やっぱり第三東京にやってきます。
今度は菱形の立体型です。使徒のデザインコンセプトがまるで判りません。
当然ながら初号機が出撃します。それもこれも実戦タイプなので仕方がありません。
そして初号機が地上に射出されたその瞬間に、使徒から強烈なレーザーが発射されました。
速攻です。撃つなら撃つと言って欲しいです。そのレーザーは見事に初号機の胸部へと命中しました。
「ダメ!よけて!」
これはミサトさんの怒鳴り声。
無茶を言わないでください。射出用のエレベーターからリフトオフしてくれないと動けません。
「戻して!早く!」
そのミサトさんの指示で、すぐさまエレベーターが下げられ僕は格納庫に収用されます。
何だか淡々と説明していますが、僕のエントリープラグは大変な状態でした。
僕を浸しているLCLはレーザーの影響で瞬時に沸騰状態になり、僕は全身がえらいことになっていたのです。
すぐさま僕は病院に搬送されました。どうやら、まだ僕に利用価値があるようです。
搬送用のベッドに乗せられガラガラと治療室に押されていく中で、
ピッタリと付きそうミサトさんの太ももを見たように感じながら、僕は意識を失いました。
で、使徒とのリターンマッチです。
諦めて使徒に人類みな殲滅されても良いと思うのですが、皆さん諦めが悪いようです。
僕もあれだけ苦しんだ割には大した外傷も無く、初号機の操縦は可能で戦線復帰です。
いや、そう診断されただけです。
何だか全身がヒリヒリするし、なんだか熱っぽいのですが、NERV製の体温計は見事に平熱を指しています。
「この地点から使徒を長々距離射撃、射撃は操作精度の高いレイが零号機にて行います。」
ミサトさん、そんな手があるなら初めからそうして欲しいです。むしろエヴァなんて必要ありません。
と、言いたいところですが、僕以外はみんな怖い人ばかりでとても言い出せません。
一人が挙手して質問します。
「反撃に対する防御は?」
「初号機が零号機の前に立ち、盾で防御します。17秒は耐えられるはず。二科の保証付き。」
今度はリツコさんです。綾波より先に僕が死ね、というのが作戦みたいです。
しかし、綾波は言います。
「盾なんか要らないわ。一撃でケリをつけるから。」
流石は綾波、言うことが格好いいです。しかも、このスタッフ達にため口です。
もしかしてNERVでは偉い人なんでしょうか。態度が物凄く偉そうなのは間違いないです。
「万一のことがあるし、初号機も出撃させるわ。あなたの口出しは無用よ。」
そう言ってミサトさんは綾波に向かって睨みますが、綾波は何故か僕の方を向いて言いました。
「いいの?」
僕が何も言えずに黙っていると、
「あなたが死んでも代わりはいるから。」
僕は何故か、そう言われてドキリとしました。でもやっぱり僕は何も言えずじまいです。
仮に何か言ったところで作戦は変わりません。これで会議はお開きになり、みな各所へと散っていきました。
そう言われてショックを受けるということは、僕はまだ死ぬのは嫌だと思っているのでしょうか。
もうどうでもいいと思っていた筈なのに。
それともパイロットとしてプライドが出来つつあるのでしょうか。正直、よく判りません。
そして、いよいよ作戦決行となり、僕が初号機に搭乗する段になって、綾波が言います。
「さよなら。」
この一言、なんだか物凄く嫌な予感がします。
いよいよ作戦開始。大量の電力が零号機のライフルに集約されていきます。
「目標に高エネルギー反応!」
悲鳴に近いナウンスが聞こえてきます。どういうことでしょう。
「シンジ君、動かないで!」
ミサトさんの声です。何?と思っていたら、僕の周囲が眩しい光に包まれました。
初号機の持っている盾に、使徒のレーザーが直撃しているのです。
眩しいだけではありません。熱いです。ものすごく熱いです。
「レイ!早く撃って!」
ミサトさんが絶叫します。しかし、綾波は撃とうとしません。
5秒、10秒、15秒と時間がどんどん過ぎていきます。
なんだかLCLが良い湯加減になってきました。と、思っていたら既に煮え玉が沸き始めています。
このままだと、前回は半煮えだった僕は完全に茹で上がってしまいます。
それでも綾波は撃とうとしません。
「レイッ!!」
ミサトさんの再度の絶叫で、綾波は笑みを浮かべながらライフルを発射しました。
もちろん使徒に命中、そして殲滅。一撃必殺とはどういうものか、目の当たりにされた感じです。
その後、どうにか僕は救出されました。
エントリープラグのハッチが開かれ、外に引きずり出された僕を誰かがジッと見て、こう言います。
「良かったわね。あなたも活躍できて。」
綾波です。さらにニコリともせずにこう言いました。
「勝ったんだから笑えば?」
気が付くと僕はその場にへたり込んで、アハハハハと気が触れたかのような笑い声を上げていました。
綾波レイ。怖いけど、やっぱり格好いいです。
「困った子ね、まったく。」
すぐ近くに立っていたミサトさんの呟きを聞きながら、僕は再び病院へと搬送されていきました。
むむ、しまった。
>>54 × ナウンス ← ◎ アナウンス
かまわん。続けろ。
ときたまシンジがヒロシっぽくなるなw
だがそれが良い
60 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/28(水) 22:34:17 ID:atEhsiG6
アスカ「見物料よ。安いもんでしょ。」
トウジ「何やて?んなもんこっちも見せたるわ!」
突然パンツごとズボンを下ろされるシンジ。
>>60 で、シンジ一人がひっぱたかれるオチですな?
青葉「この濃度は、まずい!シンジきゅんに浸入するつもりです!!」
ガ━━(´・ω・|||)━━ン
レイのアパートでレイを押し倒した後ネルフに向かう場面
シンジ「あの・・、さっきはごめん。」
レイ「何が?強姦魔。」
シンジ「・・・。綾波はまた乗るのが怖くないの?あの零号機に。」
レイ「どうして?強姦魔。」
シンジ「・・・。」
このシンジ強いな。
「作戦担当は、もちろん初号機で。
ただ、テストタイプの初号機に特殊装備は規格外なの。
シンジ君の持ち前の明るさでなんとか凌いで」
(´・ω・|||)
(´;ω;`)シンジテラカワイソス
アンチシンジにはちょっと違うスレだし
シンジストにとっては鬱になるしかないスレ
需要は何処?
需要?あるわけない
ミサトのキャラに違和感があまり感じられないのは何故だ俺
続きが気になってしょうがない不思議。
いつもの通り、僕がリツコさんにこっぴどく叱られていると、ミサトさんが一人の女の子を連れて来ました。
一応、僕に紹介してくれました。名前はアスカ何とか。名字とかは、ややこしいのでよく覚えていません。
そして、僕に案内しろと言うのです。
面倒でしたが、何のためか判らない訓練やスタッフの人たちのお小言を聞くよりよっぽどマシです。
そのアスカって子は、エヴァ弐号機と共に空母で輸送されてきた僕と同じエヴァパイロット。
その際、使徒に襲われたけど殲滅したというから、エヴァ共々実力は折り紙付き。
お陰で、なんだか一戦もうけた気分です。
NERVドイツ支部出身で、ドイツ育ちのクォータですが日本語は堪能。
年齢も同じで、背格好も同じくらい。顔は可愛いといえば可愛いのですが、頬がこけててやつれています。
そして、なんだか見覚えのある目つき。はて、どこで見たんでしょうか。
と思っていたら、それは自分の部屋の鏡とのデジャヴでした。
ドイツでどんな目に遭ってきたか判らないけど、恐らく僕と大差ないのでしょう。
母さん、アウシュビッツは今だ健在のようです。
「何これ。」
この彼女の第一声を聞いたのは、案内した食堂で一緒のご飯を食べているときでした。
僕に部屋や風呂場の使い方などの説明する中、相づちすら打たずに黙って付いてきていたのですが、
今日の定食のなんだか判らないフライの端っこを囓り、出た言葉がそれです。
「ドイツ支部より非道い所があるなんて、思っても見なかったわ。」
彼女はこの本部に何を期待していたんでしょうか。正直、哀れでなりません。
アスカはもう食事に手を付ける気も失せたようで、箸をカラリとトレーに投げ出しました。
その直後、ふと僕の方を見て驚いています。
「何してるの?そんなもの、どうする気なのよ。」
その時の僕は、明日の昼食にするためタッパーに夕食の半分を詰めている最中だったのです。
そのことを説明すると呆れて見ていた彼女だったのですが、最後に一言、
「あげる。」
そう言って自分のトレーを僕に押しやり、去っていきました。
なんだか馬鹿にされたような気がするのですが、僕は恥も外見も忘れて遠慮無く彼女の分も詰めました。
彼女の気持ちは十分に判るのですが、背に腹は代えられません。
いずれ彼女も馴染むでしょう。飢えと本能に勝てる者は居ないのです。
母さん、何だか僕は監獄で囚人の知恵袋を手記にまとめている気分になってきました。
僕が夕食を終えて弁当を抱えて部屋に戻る最中に、一人の男が声をかけてきました。
「ああ、君が碇シンジ君だな。アスカはどこかな?」
その人、加持リョウジと名乗る30歳ぐらいの男で、アスカに面会に来たというのです。
そして何か手みやげらしいビニール袋をさげていました。
そして、なんだかとてつもなく良い匂いが漂ってきます。
「さあ、おいで。君の分もあるからね。」
「か、加持センパイ!」
部屋をノックして出てきたアスカは、そう言うなりに加持リョウジに飛びつきました。
「ほらほら、落ち着いて。さあ、差し入れだよ。」
そういってビニール袋から取り出したのは、ケンタッキーのミニバーレル。
「あ、あ、あ、あ……」
アスカは、そんな言葉にならない声を上げながら、その中にあるチキンに飛びつきました。
そして人目も関わらず手や口の周りをベタベタに汚しながらチキンにかじりついています。
「ほら、君も食べなよ。」
そう言って、もはや半分は無くなりかけているバーベルから一つを取り出して僕に手渡しました。
僕は既に食事を済ませては居たのです。
しかし、そのチキンの一口目で、どれほど美味しいものに飢えていたかを思い知らされました。
美味しいです。めちゃくちゃ美味しいです。これ見よがしのスパイスで味付けされたファーストフードが、
もはや神の食事のように思えてなりません。
一つ、また一つと、彼女と奪い合うようにして貪り食い、
最後の一つになった時にようやく僕と彼女は正気を取り戻しました。
お互いに遠慮しながら手を出しかねていると、
「君も本当に非道い扱いを受けて居るんだね。ほら」
そう言って、無理矢理チキンを二つに分けて、僕達に手渡してくれました。
恐らく、この加持という男はこうして以前からアスカを慰めていたのでしょう。
彼女が加持を見る目が違います。いまや僕も同じ目をしているはずです。
ああ、加持さん。なんなら僕にケツを貸せと言ってください。
今の僕なら体を清めて、ドキドキしながらベッドで待っていることでしょう。
「さ、君も頑張るんだよ。なかなか来れないけど、また差し入れをしてあげるからね。」
そう言って、僕達に一袋ずつロールパンらしきものが入ったものを渡してくれました。
これは賞味期限が切れない限り、一日に一つずつ大事に食べるつもりです。
いや期限が切れたって、カビが生えたって構いません。
お腹いっぱい食べた状態で暗い気持ちに慣れるものではありません。
お陰か、なんだか元気が出てきた気分です。母さん、僕はなんだかもう少しやって行けそうです。
が、その加持さんが去り際に妙なことを聞いてきました。
「なあ、葛城が手に火傷を負ってたんだが、どうしてだか知ってる?」
僕は言っている意味がよく判らず、何も答えれずにいると、
「知らないか。まあ、いいさ。」
と言って去っていきました。
その葛城と呼び捨てにする様子からして、どうやら知り合いらしいことが判りました。
年齢的にも合うし、もしかしたらミサトさんの友人、あるいは恋人同士かもしれません。
その後、僕はコインランドリーで洗濯物を放り込んでいると、後ろから誰かが声をかけてきました。
アスカです。
「私も一緒に入れて良い?」
そう言いつつ僕の下着と自分の下着が一緒になるのも構わずに、ドバドバと洗濯物を投げ込みました。
「代金は半分払うわ。ああ、洗剤使うのは待ってくれない?そんなものは週に1回ぐらいでいいのよ。」
なんだか女性のすることとは思えません。
どうやら彼女も元気を取り戻し、この世界で生きていく先輩らしさを僕に見せつつあるようです。
バーベルってなにそれ...orz
嗚呼、なぜ送信してから気付くのか。
>>73 バーベル ← バーレル
良いね良いね良いね
やっとシンジに仲間が出来たんだね、良かったね
母への手紙みたいにシンジ君目線で書いて小説化しちゃいなよ(゚A゚文才あるしさ おもしれ
これからは・・・
シンジとアスカ(´;ω;`)カワイソスになるかw
ってか加持いい人www
ミサトさんも両手が火傷って、もしかしてエントリープラグのハッチを開けたのミサトさん?
うあぉぉっっ
なぜかアスカがめっさかわいく思えてくる
シンジやっといい事あったなー。
加持・・・・・いいやつだな・・・・。
僕が遂に力尽きて床にへたり込むと隣のアスカが、
「あ、バカ!」
そう口走ったのですが、もう遅いです。
「よし、二人とも初めからだ。」
近くにいた教官が情け容赦なく僕たちに言い渡します。
思わず、アスカにゴメンとささやくのですが、彼女はうつむいたまま何も言いません。
重いです。気分も空気も自分の体も、何もかも重いです。
「私語を慎め。腕立て伏せの後は腹筋、スクワット、まだまだメニューをこなさなければならんのだぞ。」
この非情な教官、わざわざ自衛隊から派遣して貰ったのこと。
NERVはこんなことになら気前よくお金を使うのですね。なんなんでしょうか。
何故、こんなことになっているのかと言いますと、
前回の使徒との戦いで僕たちは大敗を帰してしまったからです。
「エヴァ2体の出動だけでも安くはないのに、戦自のN2爆雷で使徒を押さえなければならなくなった。その費用は、」
こんなお小言をしているのは初老の元教授、冬月副司令。
そんな訳の分からない小言なんて聞かされても困ります。教授、経済学に転向なさったら如何でしょうか。
「ミサト君、作戦はあるのか?どうすれば、あの使徒は倒せるのか。」
その冬月副司令の言葉に、言いにくそうにミサトさんが答えます。
「はい、二つのコアで相互に修復するタイプとなると、二つのコアを完全同時に、その、」
どうやら、ミサトさんには僕らが何を要求されるか判っているようです。
「よし、エヴァ2体で2点同時攻撃。それが可能となるまで二人に徹底した特訓メニューをこなして貰う。」
無茶です。MAGIにでもエヴァを操作させてください。僕らにそんなスペックはありません。
母さん、この人達に何とか言ってください。
「死んだ母親に頼ったって何にもならないわよ。」
食事中にそんなことを言い出すアスカ。僕は図星を突かれておろおろしてしまいました。
僕の心を読んだのでしょうか。それとも僕は思わず声に出していたのでしょうか。
「あんた、ことあるごとに母さん、母さんって唇が動いてるのよ。判らないと思ってるの?」
そう言いながらガツガツと食べるアスカ。この間の様子は何処へやら。
「頼れるのは自分の腕だけよ。それがダメなら私に頼りなさい。畜生、必ず勝ってやる。」
流石はアスカ先輩、たくましいです。男前です。これぞケンタッキーパワーです。
「さあ、あんたもたらふく食べて明日に備えるのよ。何よ!お代わりぐらいさせなさいよ!」
そう言って、厨房のおばちゃんに噛みつくアスカ。
僕も負けじとドンブリ片手に立ち上がり、厨房へと向かいました。
アスカは鬼教官の地獄のメニューに加えて、24時間の共同作業を僕に要求しました。
食事の時はご飯とおかずを食べる手順から、ハミガキの時の腕の角度まで。
楽しそう?そんな訳はありません。アスカ、トイレぐらいは自分の行きたいときに行かせてくださいよ。
「は?あんたバカ?毎日おなじもの喰って、おなじ生活してりゃ排泄のペースだって揃ってくるわよ。」
だからといって女子トイレに僕を連れて行くのは止めて下さい。ああ、音を聞いて笑わないでよアスカ。
母さん、やっぱり僕はあなたに頼る他は無いようです。
24時間です。さっき言った通り丸一日です。
流石に風呂は別です。共同の浴場で僕が女湯に入るわけにも行きません。
ただし同時に更衣室から出てこないと殴られます。あれ?なんで、僕の方が悪いのでしょうか。
さらに、丸一日ということは?
「それじゃ、私もあんたのベッド使うわよ。ちゃんとシーツをひき直したんでしょうね。」
そうです。寝床まで一緒です。彼女は僕の部屋までやってきてベッドに入り手招きします。しかし、
「なに期待してるの。変なとこ触ったら熟睡してても蹴っ飛ばすわよ。」
そんなことを言われても、日本男児の燃えたぎる股間を押さえることなど不可能です。
かといって、彼女なら本当にやりそうなので手を出す訳にもいきません。
でも彼女、寝相は悪いし寝ぼけて僕に抱きついてきます。勘弁して下さい。
もう我慢できず、自分で処理しようとした、その時です。
悶々としている僕の耳に、すーすーと寝息が聞こえてくるではありませんか。
これはチャンスです。彼女の方が先に寝付いてしまったのです。
そして、彼女は向こうを向いていて、僕は後ろから抱きしらめるような良いポジション。
ああ、母さん。夢にまで見た女の子の胸をさわれる瞬間が、遂に僕に訪れようとしています。
今宵、碇シンジは男になります。あの世から、しっかと見届けてくださいね。
もうバクバクと鼓動する心臓を押さえながら、すこしずつ、すこしずつ手を伸ばし、
そっと彼女の胸を包み込んでみた瞬間。
「どう?柔らかいでしょ?」
とアスカが僕に言います。
あれ?と僕が思っていると、ガシッと強烈な後ろ蹴りが僕の股間に直撃しました。
僕はベッドの外に吹っ飛ばされ、思わず股間を押さえてのたうち回りました。
「アハハ、あんたのチンチンも触らせてもらったから、これでおあいこ。」
彼女は急所を蹴られた男の痛みを知らないのでしょうか。
母さん、なんとか言ってやってください。
「これでスッキリしたでしょ?それじゃ、お休みなさい。」
そういって、毛布を一人でかぶり直して眠り直してしまいました。
僕はもうベッドに上がる気力も失せて、そのまま床で転がって眠ようとした僕に彼女はもう一言。
「絶対勝とうね。その時は……その時は、キスの一つもしてあげる。」
はてさて、そんな数日の訓練を経て。
勿論、使徒には大勝利。戦闘開始後、62秒で見事にケリが付きました。
感激です。本当に2点同時攻撃が上手くいくとは思いませんでした。
お陰で、この前の3倍のN2爆雷を抱えた航空隊は無駄足です。お疲れ様。
そんな中、なぜかリツコさんの舌打ちが聞こえてきます。あなたの敵は誰なんですか。
「また、あなたたちの無様な姿が見れると思ったのに。」
リツコさん、舌打ちだけじゃ物足りなかったようです。
「ふざけてないで、さっさと戻りなさい!今度は同じように上手くいくと思ったら大間違いよ!」
なんだか悪役の捨て台詞です。いったい僕は誰と戦っているのでしょうか。
が、彼女が腹を立てるのも無理は無かったかも知れません。
僕達は戦闘の現場でエヴァから飛び出し、思わず抱き合って喜びました。
一つどころではありません。アスカから受けたキスの雨あられに、僕はその場で昇天しそうです。
その状況もわきまえない二人の様子に、リツコさんを含むスタッフ達は厳しい顔つきで睨むのですが、
一人だけ。そう、ミサトさんだけは目が和らいでいるような気がしました。
これはいいLASですね。
ヨイデス
なんだい。
いじめられてたアスカがさらに弱いシンジをいじめ抜く鬱展開かと思ったのに。
アスカかわいいじゃないか。
…LASかよ…
別にLASならLASでもいいよ。違っても構わんが。
とにかくスレタイに合ってて、出来が良ければ。
個人的には今のところ面白い。
ほのかにミサシンでもある。怖えけど。
「使徒は浅間山の火口の中。こんどの作戦は孵化する前の使徒を捕獲するのが目的です。」
そう説明するのはミサトさん。
ようやく筋トレと1キロにわたる水泳を終えて、アスカと二人でフラフラしながら説明を聞いていました。
なぜだか前回の鬼教官が帰らないのです。なんでだろう。
「零号機の装備で溶岩に突入するのは無理。となると、シンジかアスカしか出来ないわね。」
リツコさんは呼び出された僕達二人にそう言います。
正直、怖い気持ちで一杯なんですが、前回の戦いは何だかアスカのお陰だったような気がするので、
今度は僕が、と前に進み出ようとしたその時、アスカが腕を伸ばして僕を引き留めます。
「アタシが行くわ。シンクロ率はアタシが上よ。」
そう言ってリツコさんをにらむアスカ。なんだか怖いです、この二人。
「いい度胸だわ。頼むわよ、アスカ。」
リツコさんの言葉と共に会議は終わりました。
「なんだか嫌な予感がするのよ。それにしても、」
コインランドリーで一緒に洗濯物を入れながら、アスカは言います。
「何あのファーストって。なんで彼女だけトレーニングしなくて済むのかしら。」
ファースト?ああ、綾波のことです。
今のところ、三人のうちで綾波とアスカのシンクロ率はどっこいどっこい。そして僕がはるかに差をつけて最下位。
その対抗意識から僕を引き留めて名乗り出たのでしょうか。
しかし、嫌な予感がするからといって、僕をかばう必要なんてないのに。
「あんたじゃ不測の事態があったらどうしようもないのよ。それに、あの赤木リツコって人がなんか気になるし。」
母さん、僕はなんだか情けない限りです。
そして、女という生き物の凄まじさを今日ほど実感した日はありません。
「あ、バカ。そんなに洗剤いれるんじゃないの。説明書き通りにしてたらお金が幾らあっても足りないわよ。」
ほら、この通りです。
そして作戦決行。
僕達はエヴァ2体と共に巨大な輸送ヘリで空輸され、目指すところは浅間山。
ヘリから下を見下ろすと美しい深緑の景色が広がっています。これだけでも生き返った心地です。
そして見るも恐ろしい火口まで辿り着いて見ると、既に巨大なクレーンが据え付けられています。
弐号機に乗り込むアスカ。僕は不測の事態に備えて初号機で待機です。
そして弐号機はクレーンに吊され、ゆっくりとマグマへと沈められようとした、その時です。
遅れてやってきたミサトさんが、リツコさんと何やらもめています。
「ちょっと、あの局地戦用のD型装備は?弐号機を真っ裸でマグマに付けるというの!?」
「ああ、大丈夫よ。弐号機なら。」
「大丈夫じゃないわよ!まさか、アスカは?耐熱防護服はちゃんと身につけているのでしょうね?」
「あら、それならここにあるわよ。彼女、持って行くのを忘れたみたい。」
「クレーンを上げて!早く!」
「もう遅いわ。モタモタしていると使徒が孵化するわよ。」
その時です。スピーカーから凄まじい絶叫が聞こえてきました。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」
流石のNERVスタッフ達も顔面蒼白でこの悲鳴を聞いています。
如何に弐号機は無事だとしても、神経接続を通してマグマの熱を直に味わっているのです。
その苦痛なんて想像も出来ません。
僕達がショックを受けている中、流石は作戦部長です。ミサトさんは素早く指示を出します。
「神経接続を全面カット!早く!」
しかしです。スピーカーから響き渡っていた悲鳴が途絶え、弱々しい声が聞こえてきました。
「やるわ……やるわよ!見ていなさい!」
この気迫、この執念。
ああ、母さん。僕は情けない限りです。
僕はこの情況を見ているだけなのに、既に気を失いそうになっています。
とても、僕は彼女に及びそうもありません。
やがて、使徒の反応が消えたことを見越して、クレーンが引き上げられました。
そしてマグマから上がってきた弐号機が抱えていた物。それは使徒の砕けたコア。
「一応、持って帰ってきたみたいね。ま、良しとするかな。」
そう言って後片付けにかかるリツコさん。そんな彼女をにらみながらアスカを介抱するミサトさん。
アスカはエントリープラグから出てくると同時に倒れて、もはや息も絶え絶えです。
一応、意識があるようですが、目がうつろで何かをブツブツと言い続けています。
例え、既に彼女の気が触れていたとしても、それは無理からぬことでしょう。
輸送ヘリで帰途につく中、来た時と同様に外を見下ろすと温泉旅館が小さく見えました。
傍らで寝ているアスカに、全てが済んだら一緒に行こうね、などと言って慰めようかと思いましたが、
彼女がどんな目に遭ったかを考え直して、それを口に出すのをやめました。
もはや、どんな言葉で彼女を慰めて良いのか判りません。
ああ、母さん。こんなことってあってもいいのでしょうか。
ジッと腕組みをして動かないミサトさんと共に、僕達は重い沈黙を味わうばかりでした。
((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル
あついぃぃぃぃ(>_<)
102 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/03(土) 21:34:35 ID:dt6u1OhY
もしかしたらここのミサトってツンデレ?
リツコは悪魔だな…
このシンジ見て絶望の世界思い出した…
それにしても話うまいな
昨日見つけて読み始めたんだけどホント上手いな
今月の楽しみが一つ増えた
106 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/03(土) 23:28:57 ID:8ioURsbW
このような状況に及んでも性欲があるのか。
股間を蹴られたシンジ、カワイソウ・・・。
「シンクロ率が稼働指数ギリギリ。パイロットの変換、考えた方が良さそうね。」
リツコさんにそんな評価を受けたアスカ。
不幸中の幸い、と言うべきか。
前回で彼女は大事に至らずに済んだのですが、精神まで無事で済むはずはありません。
終止、何かをブツブツ言い続けながら歩く姿は夢遊病者の様。
怖いです。もの凄く怖いです。
今や、僕がNERV内部で手を引いて歩かなければ、どこに行ってしまうか判らない状態。
既にケンタッキーパワーも燃料切れでしょうか。
無理矢理に食堂に連れて行き、彼女の前に食事を置くと、
「何よッ!あの時、飛び込んで助けてくれなかったくせに!」
そういって、バンッとトレーをひっくり返す始末。
もう性格も裏返っています。なんだか取り憑くスキもありません。
食事だけではありません。彼女、なんだか臭うのです。
そういえば、昨日と同じ服を着ています。もしかしたら、風呂にも入ってないかもしれないのです。
とりあえず彼女を部屋まで連れ帰ったのはいいけれど、僕がそれ以上の面倒を見てよいのでしょうか。
誓って言いますが、彼女が大変な状態である中、スケベ心なんてありません。ホントです。
あ、いや、母さん。ちょっとだけです。
その時、誰かが部屋をノックしました。
ミサトさんです。
「私が彼女の面倒を見るわ。男のあなたじゃいろいろ問題があるから。」
そういって、僕を部屋から追い出します。更に、
「だから彼女のことを気にして、訓練や稼働試験で手を抜いたら容赦しないわよ。」
そういって彼女は扉を閉めようとしたのですが、何故かその手をピタリと止めました。
どうしたのだろうと思っていたら、部屋の奥から微かなアスカの声が聞こえてくるのです。
「シンジ……ごめんね……シンジ……」
僕は再び部屋に入って彼女に何か言おうとしたのですが、
今度はミサトさんに押しとどめられて、しっかりと扉を閉められました。
流石にアスカはしばらく休養することになりました。
「あらそう、アスカの分も頑張るという訳ね。」
いや、リツコさん。そんなこと言ってませんので、僕の作業量を増やすの止めてください。
などと僕が言っても、仮にミサトさんがそう進言しても、リツコさんはきかないでしょう。
なぜだか、エヴァに関しては彼女の権限が絶対であり、彼女の自由自在です。
それにしても、あのミサトさんとの言い合いを聞いた限りでは、
こんなことになったのは全てリツコさんの筈。そう考えると腹が立ちます。
以前にLCLではなく水道水で初号機の操縦をさせられたのも、今から考えるとバカバカしい有様です。
いつか彼女に噛みついてやろう。何か言ってやろう。しっぺ返しをしてやろう。
そんなことを思いながらもエヴァの操縦席に着いてみれば、頭上から伸びてくる2本のゴムホース。
やれやれ、今日も水道水で頑張れと言うことらしいです。
間違えないように慎重に呼吸用のホースを選んで口にくわえる僕の姿は、まるで飼い慣らされた犬のよう。
母さん、僕が溺れてしまわないよう応援してくださいね。
どうにか過酷なスケジュールを終えてアスカの所に行ってみると、
洗濯物を抱えて部屋から出てくるところでした。
「洗濯……しよう?」
ボソリと僕に言う彼女。
少し回復しているようにも見えるのですが、以前の闘魂あふれる彼女の姿はありません。
思わず漏らしかけた溜息を噛み殺し、彼女と共に洗濯物を抱えてコインランドリーに向かいます。
ぐるぐる回る洗濯物をジッと眺めている彼女。
ほっておくと何時間でもそうしてるんじゃないか、と思ってしまう程に虚ろな表情。
僕は彼女の手を引いて近くのベンチに座らせました。
なけなしの小銭をはたいて、ジュースでも買ってあげようか。などと考えて自販機に向かった、その時です。
自販機のランプがフッと消えたのです。それだけではありません。
廊下を照らす電灯も、エレベーターも、何もかも消灯して機能を停止しました。
「……停電?」
僕に尋ねるアスカ。いや、聞かれても困るのですが。
「今だわ!」
そう言って彼女はガバッと立ち上がり、駆け出しました。
衰弱していたはずの彼女の信じられない急激な変化に、僕は仰天しながらも後を追いかけます。
どこに行くのかと尋ねると、
「チャンスよ。ここから逃げるの。停電の今なら、センサーも何も働いていないはず。」
そう言いながら非常口の扉を開けて、階段を駆け上がるアスカ。
僕は必死で彼女に追いすがりながら何とか引き留めようとします。
停電と見て逃げることを思いつく、その頭の回転の速さを保っていたことに驚いたのですが、
彼女の思いが歪んでしまったようにも見えて、なんだか猛烈に悲しくなってきました。
別に僕達は鉄格子で物理的に閉じこめられているわけでもないし、
かといって外に出ても諜報部などの人力で、決して自由に行動することなど出来ない。
そんなことは、アスカも判っていたはずなのに。
もはや、逃げることしか彼女の頭の中には無いのでしょうか。
ちなみにNERV本部は地下の巨大な空洞、ジオフロントの内部に設立されています。
だから、階段は降りるのではなく登るのです。
長い階段、長い通路を息絶え絶えに駆け通して、やっとアスカに追いついた時には、
もはや地上への出口へと到着していました。
でも、なぜ追いつけたかというと、彼女は扉を開いて出ようとしないままジッと外を見て立ちつくしていたからです。
そして彼女はつぶやきます。
「使徒……」
僕も外を覗いてみると、確かに使徒の姿がそこにありました。
巨大で、この世のものとは思えぬ毒々しいデザインが為された蜘蛛のような恐ろしい姿。
センサーなど使用しなくても、誰が見てもあれが使徒だと判るでしょう。
僕は彼女に告げました。戻って、エヴァに乗って戦わなければならないことを。
「い、嫌よ。もう、あんな連中にこき使われるのはゴメンだわ。」
しかし、逃げてもどうにもならないのです。僕達が勝たなくては人類に未来はないのです。
「嫌よ……なんでアタシ達が……あんたなんか飼い慣らされたバカ犬よ……」
そう言って泣きじゃくるアスカ。それでも選択の余地は無いのです。
彼女の手を引いて戻ろうとしましたが、その場にうずくまって動こうとしません。
もはや背に腹は代えられず、彼女を置き去りにして本部に向かって駆け出しました。
「遅いじゃないの!何をやっていたの!」
そう怒鳴り散らすリツコさんでしたが、ミサトさんがスッと間に割り込んで来ました。
「たった今、エレベーターに閉じこめられていたのを救出したところ。文句ある?」
え?と思ったのですが、彼女がかばってくれていることを察して何も言いませんでした。
「言い訳はいいわ。早く発進準備しなさい。エヴァの準備は出来ているから。」
流石のリツコさんも緊急事態のために嫌みを言う余裕は無さそうです。
そして、更にミサトさんは僕にささやきます。
(アスカなら私がなんとかする。心配しないで必ず勝ってきなさい。)
何だか、ミサトさんには全て見透かされているような気がしてなりません。
さて、発進です。今回は綾波と共に出撃することになりました。
それは良いのですが、停電のためにエヴァ射出用のエレベーターは動かず、
縦長の排出口からエヴァの自力でよじ登らなくてはなりません。
ここまでの発進準備も全て人力で済ませたと言うから驚きです。
しかし、今回はエヴァの内部バッテリーだけで戦わなくてはなりません。
地上に出るだけでも時間がかかるというのに、こんな状態で使徒に勝つことなど出来るのでしょうか。
「先に行って。」
そう綾波に促されて、僕は両手両足を壁につっぱらせてよじ登り始めました。
が、綾波の零号機は出てきません。
いや、出てきたのは出てきたのですが、上体だけ排出口に覗かせライフルを僕に向かって構えます。
「その辺で良いわ。あなたを狙って使徒がここに来るから。」
綾波、僕は囮の餌ですか?などと考えていると、猛烈な激痛が僕の背中を襲いました。
まさしく彼女の言葉通りに使徒が真上に来て、なんかやっているのです。
何を?そんなこと判るわけありません。とにかく、なんかやっているのです。
そんなことどうでもいいでしょう。熱いです。痛いです。痛いったら熱いったら痛いったら熱い。
その時、カチン、と何か聞こえました。あれ?今のは引き金を引く音じゃ?
ヒィッと思わず悲鳴をあげて、僅かに空いている零号機と排出口の隙間に飛び降りました。
まさに間一髪、避けきれずに初号機はかすり傷を受けましたが、どうにか零号機の照射を回避。
そして、綾波は見事に使徒を殲滅、おめでとう。
ことを終えてスッと頭を引っ込める零号機。あいかわらずクールだね綾波。
でも、撃つときには避けろとか言ってください。僕ごと撃ち抜く気だったんでしょうか。
僕はしばらく背中の苦痛が消えずにのたうちまわり、ようやく戻ろうとした時にはバッテリー切れ。
ああ、どうせかっこ悪いですよ僕は。
「あんなところに初号機を落とすなんて、あなた何を考えているの。どれほど引き上げるのに面倒だと」
はいはい、もう慣れましたよリツコさん。何とでも言ってください。
僕の心配事は別にあります。
このままでは、アスカが役立たずでお払い箱となってしまうのです。
そうなると、彼女はどうなるのか。ここから釈放?いや、それならそれで良いのですけど。
114 :
◆LRvRIPAn.s :2007/03/04(日) 18:57:41 ID:G5URqi17
みなさん、どーもですー
とりあえず、ここまでっすー
おつ〜
今日一日楽しみにしてたよ
ホントほどよいね
116 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/04(日) 19:08:26 ID:W3jIKyOn
良いね良いね良いね
117 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/04(日) 19:13:30 ID:PM9vQOV8
ミサトさんかっけーww
なんかケンタッキー食いたくなってきた
既にアスカが壊れつつあるwww
「もうどうでもいいじゃない……ファーストに任せておけば……」
そんなふうにブツブツというアスカ。すでに作戦開始の時刻が迫っているというのに、です。
そんな彼女のことを気にしていると、ドンッドンッと僕の体に電流が走ります。
「ふむ。もう少し上がるかしら。」
シンクロ率のことです。またしてもドンッと僕の体に衝撃が走り、リツコさんはそれで満足した様子。
こうやって電撃でノックするとアップすることがあるそうな。
なんなんでしょうね。まるで斜め45度でテレビをチョップするのび太ママみたいです。
ネタが古い?いいじゃないですか、そんなこと。あ、今アスカも体をビクつかせました。
どうやらリツコさんの指は、常に二人の電撃ボタンの上に置かれている模様。
ジッと目を閉じて瞑想しているかのような綾波には、そんな必要もなさそうです。
えこ贔屓かどうかは判らないけれど、彼女のシンクロ率は今やダントツなんだし。
そんなことを考えているうちに、遂に作戦決行の時がやってきました。
「三人ともいいわね。スタート!」
ミサトさんの指示で一斉に走り出す二人。あれ?アスカが動かない。
このままでは不味いです。僕が大声で呼びかけても動きを見せません。
僕は大きく迂回してアスカの方に向かいました。
今度の作戦は、上空から落下する巨大な使徒を真下から受け止め、そして殲滅すること。
無茶苦茶です。どこに落ちてくるか場所の特定も難しいというのに。
アスカがダメなら放っておけ?そんな訳にはいきません。
そして単にアスカに活躍の場面を与えるだけではないのです。三人の力が必要なのです。
一人がATフィールドを展開して受け止め、一人が使徒のフィールドをこじ開け、
そして最後の一人がトドメを刺す。
その三位一体の攻撃が無ければ勝てないのです。
ようやく僕は弐号機の元に辿り着き、軽く揺さぶってみますがピクリとも動きません。
その時、零号機が急停止しました。綾波が使徒の落ちる場所を特定したのです。
そして雲をかき分けて飛来する使徒。もう時間がありません。
零号機一体では、とても使徒をしとめることなど出来るはずはありません。
強引に弐号機を横抱きにして、僕は零号機の方へと走り出しました。
ここが正念場です。僕はやるしかありません。南無八幡大菩薩!母さん、僕に力を!
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおッ!!
僕がそんな雄叫びを上げると、初号機は得たりとばかりに凄まじいフル加速を見せてくれました。
弐号機の重みにもまるで堪えていません。
「おお……」
NERV司令部から、通信を通してどよめきが聞こえてきました。
母さん、やりましたよ。見たか、これぞ初号機の真の姿だ。
そして零号機の元に到着。
既に零号機はATフィールドを展開させて、使徒に押されながらも耐えしのごうとしています。
流石の綾波も苦悶の様子。そして僕に絶叫します。
「早くッ!!」
僕は弐号機を下ろし、プラグナイフを抜いて強引に使徒のATフィールドを切り裂きます。
そして次です。最後は弐号機がトドメを刺さなくてはなりません。
しかし、動きません。やっぱり、アスカはピクリとも動かないのです。
もはやここまでか、と思ったその時です。
「アスカッ!!」
司令部からの、ビリビリと音割れして伝わってくるミサトさんの絶叫。
その時、ビクリと体を震わせるアスカ。
「ッ……ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
ついにアスカの闘志がよみがえったのか、自らのプラグナイフを抜いて使徒に突き立て、
そして巻き起こる衝撃、凄まじい轟音と共に弾け飛ぶ使徒。僕達三人は見事に使徒を殲滅しました。
「フン。」
そんなふうに鼻を鳴らしただけで、流石のリツコさんも今度ばかりはお小言は無しです。
帰ってきてみてもアスカは相変わらず呆然としていますが、でも少し希望の光が見えた気がします。
もしかしたら、ミサトさんはアスカの名を叫ぶと共に電撃を流したのかも知れません。
同じ電撃を使うにしても、リツコさんとミサトさんでこうも違うのかな、と思わずには居られませんでした。
その夜です。
僕は何とか外出許可を取り付けて、アスカを連れて夜の街へと繰り出しました。
今回の大勝利で活躍したというのに、あいかわらず元気の出ない彼女。
彼女には勝ったご褒美が必要なんです。そろそろ、加持さんが現れて元気づけてくれるといいのに。
しかし、それを待っていても仕方がありません。ならば、自分で行動するまでです。
母さん、もしかしたら僕は調子に乗っていたのかも知れないですね。
そして虎の子の千円札を握りしめ、向かった先は屋台のラーメン屋。
「何……これ……?」
ああ、ドイツ育ちの彼女にはラーメンなんて初めてだったのでしょうか。
口に合うだろうかと不安でしたが、匂いを嗅いでスープをすすり、
麺を流し込む勢いが次第に加速していく様子を見て、僕はやっと不安な胸をなで下ろしました。
あまり時間はとれません。食べ終わったら早く帰らなければならず、アスカの手を引いて帰り道を急ぎました。
彼女の様子はあまり変わりないけれど、僕の手を握る力が微妙に違うような気がします。
デートというほどでもないけど、なんだか尾崎豊の曲でも歌い出したくなるような。
そんな美しい夜となりました。
が、夢はそこまででした。
ピタリと立ち止まる彼女。そして、どこかを見ています。
僕は慌てて彼女の見ている先を探しました。
ミサトさんです。僕達を監視するため付けてきていたのでしょうか。
いや、どうもそんな様子ではありません。
そして、その彼女の傍らにいる男。加持さんでした。
「あ……」
アスカがそんな声を出した瞬間。
加持さんが強引にミサトさんの唇を奪う様子が見えました。
やはり二人はそういう関係だったのでしょうか。
そしてミサトさんは加持さんと何かを言い合い、雑踏の中へと消えていきます。
アスカは、そこまでの二人の様子を見た後、ゆっくりと帰る方向へと向かいました。
僕はもう一度アスカの手を握ろうとしたのですが、優しいまでにそっと彼女は僕の手を払いのけます。
何も言いません。表情も変わりません。
でも、彼女の想いがなんとなく判るような気がします。
加持さんに恋をしていたアスカ。そして、たったいま壊れてしまった恋心。
彼女の夢が砕けて消え去った瞬間だったのです。
でも、彼女の妙に落ち着いているような様子からして、もしかしたら判っていたのかも知れません。
でも、それも今夜で決定的となったことに間違いありません。
来る時と同じようで、しかしまったく違う彼女の沈黙が何もかも物語っています。
ああ、母さん。なんで僕達はあの場面に遭遇したのでしょう。
結局、僕のしたことは裏目に出てしまったのでしょうか。
やはり僕は無力です。無力な子供でしかありません。
加持さんと違い、僕ではどのようにアスカを慰めればいいのか判りません。
そして一番の心配事。
アスカにとって加持さんがエヴァに乗る一番の理由だったんじゃないか。
もしそうだとしたら……
そんな暗い不安を胸に抱えたまま、僕はアスカを追いかけて帰り道を急ぐ他はありませんでした。
127 :
◆LRvRIPAn.s :2007/03/05(月) 15:03:17 ID:z2nZxrrj
とりあえず、ここまでっすー
せつねー(´;ω;`)
アスカ虐待?こんなことになったら精神汚染同様傷つく希ガス。。
ヒドイがいい話だな
職人乙!!
せ、切ない・・・
なんか、もうネタ抜きにしていい話だな。泣けてきた。
花は爛漫 咲き乱れ 長閑和やか 常春の
今日も一日楽しみにしてますたー
乙ですよ
すごいな。虐待されてるのになんか爽やかだ。
この状況で誰がフォースチルドレンになるのか知らんが。
ちくしょうあすかかわいい('A`)
137 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/05(月) 23:36:03 ID:16f03Elw
マーリネーラいーちの美少年♪
って、
>>133何故にパタリロ?
乙ー
面白いです
今気付いたが、
>>127はとことん甘やかすスレの
>>1か。
質といいペースといいアンタすごいね本当に。
尊敬に値するよ。
だーれが殺した
クックッ ロビーン
「アスカ?」
「あ、はい。ごめんなさい。」
そんな気のない返事をする、ミサトさんの目を見れないアスカ。
その彼女の様子に眉をしかめて爪を噛むミサトさん。
険悪、という訳ではないし、アスカには嫉妬から来る反発も悪意もありません。
事情を知っている者だけが判る、微妙すぎる無言の会話。
ミサトさんはアスカが見ていたことは知らないはずだけど、
アスカの微妙な変化の意味が判らずにいるのでしょう。
どうアスカに接したらいいのやら判らず困っている様子です。
ですが、僕からは何とも言うことが出来ません。
夜、音楽を聴きながら横になっていました。
同じテープをすり切れるほどに聴いていたので、好い加減ちがうものを聞きたいところです。
ラジオでもあればいいのに、などと考えていた時のこと。
誰かが部屋をノックしました。ミサトさんです。
僕はギクリとして彼女を見ます。
もしかしたら、あの時のことでしょうか。そしてアスカの話でしょうか。
「あなたもこっちに来て手伝いなさい。」
どうやら、まったく違う話のようです。しかし僕にとって災難であることには間違いありませんでした。
連れて行かれたのはNERV本部の司令塔。
そこはひっくり返すような大騒ぎとなっていました。
「防壁を展開……ダメです!突破されました!」
「このコードは、マズイ!MAGIに侵入するつもりです!」
何が何だかよく判らないのですが、どうやら本部に使徒が侵入したらしいのです。
別にどこも破壊されている様子はないのに、と思っていたのですが、
なんでも今回登場したのは細菌タイプの使徒で、
それがコンピューターに変化しMAGIにハッキングを仕掛けて……何のこっちゃ。
いや、もういいですミサトさん。訳が判りませんが、とにかく何をすればいいんですか。
「延長コードを30本、端末を5台、それから……おい、聞いてるか?メモを取れ、メモを。」
「家の敷居とケーブルは親父の頭と思え!踏みつけにする奴があるか!データ飛んじまうだろうが!」
「おいこら、コーヒー薄いぞ!なにやってんの!」
ようするに僕はパシリです。MAGIの突貫工事で使徒を対処するオペレータの人達のため、
機材やら夜食の箱入りサンドイッチにコーヒーなどを両手に抱えて、右往左往する羽目となったのです。
整備士の人たちにも散々どなりちらされましたが、コンピューター屋の連中もホントに訳が判りません。
その頂点に立っている人がリツコさん、というところでしょうか。
などと嫌みを込めて彼女のことを考えていた、その時のことです。
スーパーコンピュータMAGIの最奥の方から、なにやら怒鳴り声が聞こえてきました。
リツコさんです。
「母さん……あなたのせいで……私は……私はッ!!」
そんな彼女をおさえようとする周囲の声。
「先輩ッ!!やめてください!落ち着いてください!」
見れば、工具を振り上げてMAGIに殴りかかろうとしているリツコさんの姿。
それを羽交い締めして止めようとするミサトさん。
「リツコ、落ち着いて。ね?なんなら、ここを全て爆破してもいいんだから。」
「……やるわ。やるわよ!いいから手を離して!」
彼女、過去に何があったのでしょうか。
このスーパーコンピュータMAGIは、リツコさんの母親が作ったとのこと。
恐らく、MAGIこそがリツコさんにとって母親の象徴であり、憎しみの対象なのかも知れません。
僕はリツコさんを哀れむでも無し、そして憎むでもない、妙な気分になってきました。
もしかしたら、僕達への辛辣な攻撃もそんな彼女の心理から来たものかも知れません。
が、僕は心理学者ではないし、考えたってそんなことは判りません。
「さ、もういいわ。帰って明日に備えなさい。」
ミサトさんはそういって僕を解放してくれました。
僕は去り際にサンドイッチの箱をちょろまかし、見つからないように急いでその場を立ち去りました。
幸い現場はまだまだ大騒ぎしていて誰も気付かなかったみたいです。
そして向かった先はアスカの部屋。
「そういうのって、大抵ウソなのよね。アンタ、本当は食べてないんでしょ?」
そういって、彼女は僕からサンドイッチを受け取ろうとしません。
空元気を出しているのでしょうか。以前のような明るい口調で僕に言います。
「散々働かされたんでしょ?顔みりゃ判るわ。アンタが食べなさいよ。」
それは嫌みな口調ではありません。
むしろ優しく微笑んで僕をいたわり、扉を閉めてしまいました。
母さん、僕って本当に浅ましいです。
アスカを食い物で釣れるという自分の魂胆が浅ましくて、そして愚かしくてなりません。
なんていうか……なんなんでしょうね僕は。
もう折角のサンドイッチも手を付ける気になれず、
ゴトンとゴミ箱に投げ捨てて自分の部屋へと帰りました。
145 :
◆LRvRIPAn.s :2007/03/06(火) 18:48:21 ID:4SO1qR/i
とりあえず、ここまでっすー
ぱぱんがぱん あ、それ
きたきたきたー
乙!
ホントこの作者の話は大好きだ
乙!!
ktkr
乙!
いつも楽しみにしてます
だーれーがこーろーしーた♪
いや、このスレはイイ!!
152 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/06(火) 23:00:15 ID:8yXrVhl+
それがパタリロ、天才奇才♪
153 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/07(水) 20:12:38 ID:0RCJE2ya
なにをおっしゃるウサギさん♪
あの顔 姿 どう見ても♪
アスカのシンクロ率が僕を抜いて2位に返り咲きました。
でも、あんまり嬉しくありません。彼女も嬉しそうではありません。
そのアスカの暗いまなざしが何だか気になって仕方がないのです。
僕に笑顔を見せている時ですらそうなのです。
どう話しかけていいか判らない。どうしたの?とも聞くこともできない。
いや、とにかく時間を見つけてアスカと接して少しでも話を……あれ?
パァァンッ!!
「目を覚ましなさい!戦いの中で気を抜いたら死ぬのよ?」
ミサトさんです。彼女の強烈なビンタのお陰で僕はやっと我に返りました。
今は使徒殲滅のための作戦会議中、それが済めば僕達は今すぐにでも出撃です。
武器を手にして、僕達を倒そうとする敵を倒さなければならない非情の戦い。
僕達はそんな戦場のまっただ中に居るのです。
いつもミサトさんはそう言って叱咤し、命の危険をかえりみない戦いへと僕らを送り出すのです。
作戦部長、葛城ミサト。これまでどんな経験を積んできたのでしょうか。
ただこれだけは言えます。いや、判ってきました。
彼女は必死なんです。
人類の命運をかけた戦いで勝つために。そして僕らを守るために。
今回の使徒は中空に浮かぶ巨大な球体。
いや、はたして本当に使徒なんでしょうか。センサーもはっきりとした答えが出せないようです。
作戦というのは、まず零号機と弐号機にライフルを装備されてビル屋上に配置。
そして僕の初号機は先行して使徒に接触し、可能ならスナイパー二人の十字砲火へと誘い出す。
僕にとっては恐ろしい役目ですが、アスカがバックアップに回ったので少し安心しました。
そして、綾波がいつものように冴えた動きを見せてくれるでしょう。
確かにこれが最善の策ともいえます。
さあ、いよいよ作戦決行です。
僕はアンビリカルケーブルを差し替えながら距離を詰めていきます。
妙に禍々しささえ感じる縞模様の巨大な球体。
不気味です。なんの動きも見せません。
恐ろしいけれど、むしろ向こうから何かの動きを取ってくれれば、こちらも動きの取りようがあります。
司令部のミサトさんからも何の指示もありません。
じれったさが頂点に達し、僕が初号機に短銃を構えさせた、その瞬間。
「下ッ!」
綾波です。僕はハッとなって近くのビルに足をかけて飛び乗りました。
僕が立っていた足下が漆黒の闇へと変わっていたのです。まったくの盲点でした。
僕は必死でプラグナイフをビルに突き立て、もはや悲鳴を上げながらビルを駆け上がります。
そうしてる間にも僕の登っているビルはズブズブと地面に沈んでいくのです。
僕はビルからビルへと飛び移り、なんとか足場を確保しようと必死でかけずり回りました。
既に道路に駐車していた車や小さなビルなどは姿がありません。
街全体がズブズブと沈んでいく、そんな恐ろしい光景を僕は目の当たりにしました。
「輸送ヘリを向かわせるわ。耐えて!」
ミサトさんの声。
僕はようやく比較的大きなビルにたどり着き、これ以上は沈まないのを見越して一息つきました。
でも、そのビルはプカプカと水上で浮き沈みしているみたいで不安定。どうなるか判りません。
そして綾波の零号機が居るビルも無事の様子。そしてアスカは?
僕はアスカの様子を見てギョッとしました。
アスカのビルも無事なのですが、驚いたのは彼女の様子です。
警戒する様子もなく、ライフルを片手にダラリと垂らした腕。
そして、使徒が生み出したと思われる闇に向かってジッと見下ろす弐号機。
僕がアスカの名を叫んで呼びかけても、彼女は何の反応もありません。
うつろな目で闇を見下ろし、そしてブツブツと何かを言い続けるアスカ。
その唇を読んでハッとなりました。まずい、彼女を止めなくては。
彼女は確かにこうつぶやいたのです。ママ、と。
僕は恐怖も忘れて、八艘飛びする義経よろしくビルからビルへ飛び渡り、アスカの元へ急ぎました。
「シンジ君、急いで!お願い!」
やはりミサトさんも感づいていました。流石です。
などと、感心している場合ではありません。
もう既にアスカの弐号機がまっすぐ前に倒れ落ちて、身を投げようとしているのです。
僕と、そして初号機は共に渾身の力でダッシュをしかけ、ついに弐号機の立っていたビルに到着。
そして、
(あそこに……ママがいる……)
そんなつぶやきと共に、ついに弐号機は闇の中へと身を投げてしまいました。
呆然と立ちつくす僕と初号機。あと少しの所で間に合わなかったのです。
その時、バラバラというプロペラの音が背後に迫ってきました。
「……シンジ君、一時退却。」
震える声で僕に命じるミサトさん。が、聞く耳なんて持てません。
アスカはまだ死んではいません。闇の中に、使徒の中に落ちただけです。
どうなったのか判りません。でも、死んだかどうかも判らないのです。
「ダメよ!シンジ君ダメッ!!」
そんな叫び声を後にして、僕もアスカを追って使徒の闇へと落ちていきました。
どこまでも広大な、虚無の谷底へ。
落ちてみれば全天真っ白の巨大な空間。
何もありません。上も下も右も左も判らないのです。
ここが広いのか狭いのかすら判りません。
そして何より、アスカが何処に居るのかすら判らないのです。
僕は必死でレーダーを周囲に向けて探します。
アスカが居ません。弐号機は影も形もありません。
ただ、僕と初号機が居るだけ。
今、止まっているのか、進んでいるのか、落ちているのか、浮かんでいるのか。
何もないこの世界では、僕自身が存在していることすら判らなくなりそうです。
どんなに暴れても、もがいても、なんの動きも見せない白い闇。
呼べども叫べども何の反応もありません。
本部との、そしてアスカとの通信なんて通じるわけがありません。
とにかくアスカの後を追いかければ。とにかくアスカに追いついて、そして後は成り行き任せ。
僕はそんなふうにしか考えてなかったのです。
ああ、猪突猛進してしまった僕のあまりの考えのなさが、泣きたくなるほど悲しくなります。
どうすればいいのでしょう。母さん、何か方法は無いのでしょうか。
母さん、助けてください。もう僕はどうしていいやら判りません。
(何も存在しない。方角も広さも存在しない。それなら、この世界では時間や距離すら存在しない。)
僕はギクリとしました。この声は?
(でもね?何もない筈はないの。あなたにはアスカを想う気持ちがあるじゃない。そうでしょう?)
あ……
僕は何かを理解したような気がして、グッと手を伸ばして掴みました。
そこには弐号機の、そしてアスカの腕があったのです。
……う……嘘でしょ?
「シンジ?」
ジッと目を閉じて空間を漂っていたアスカ。僕に腕を捕まれて彼女はようやく気が付きました。
初号機が掴んでいるのは弐号機の腕。でも僕の目の前にいるのはアスカです。
ああ、何が何だか訳が判りません。
僕は、帰ろう、とアスカに言いました。
「このバカシンジ……何であんたがここに居るのよ……」
涙声で、そして僕に笑って言う彼女。
弐号機を抱き寄せて、ウォーンと雄叫びを上げる初号機。そして、
ズシィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!
気が付くと、初号機は弐号機を横抱きにして地上に降り立っていました。
背後には初号機に引き裂かれた巨大な球体の使徒。
その血しぶきを撒き散らして砕けていく使徒の姿は、
むごたらしくも僕の勝利を祝福するくす玉の様にも見えました。
「バカッ!!あれほど絶対服従だって言ったじゃない!!」
そう叫びつつ僕達を出迎えたのは、ボロボロと涙を流しながらも二人まとめて抱きしめてくれたミサトさん。
なんと、日本に存在するN2爆雷を全て投下して使徒を殲滅する寸前だったと言うこと。
まさに危機一髪にして奇跡が起きた瞬間だったようです。
「おそらく、ディラックの海と呼ばれる巨大な空間が極薄状の……」
関係者に対して、そんな訳の判らない説明付けをしようとしているリツコさんを後にして、
僕ら三人は帰途に付きました。
「命令無視は重罪よ。罰として明日から自分のエヴァを徹底的に拭き掃除して貰うわ。二人ともね。」
そんなことを言い出すミサトさん。冗談?いいえ、彼女は本気です。
さて、これほどの戦いの後でも、僕らは僕らの生活をしなければなりません。
僕は洗濯物を抱え、アスカの分も預かろうと彼女の部屋へ赴きました。
「ああ、悪いわね。それじゃ、これと、これと……ちょっと待って。」
そう言いながら、僕の腕の中に山と積み上げていきます。
「それじゃ、これもお願い。」
その時のアスカを見て、思わず僕はひっくり返って転んでしまいました。
アスカは着ていた物も全て脱いでしまって、全裸で立っていたのです。
「あんたねぇ……ちったぁ男になったかな、と思ったのに。」
身動きが取れずにいる僕の情けない姿を見て、苦笑いのアスカは頬を染めながら僕に言います。
「あんた、童貞のまま死ぬのはイヤでしょ?アタシもヴァージンのままじゃイヤよ。」
僕はやっとの思いで立ち上がり、そして言いました。
全てが終わってからじゃなきゃ嫌だと。その後なら約束すると。
「判った。それじゃ勝ったご褒美と言うことにしてあげるから、楽しみにしてらっしゃい。」
そういって、アスカはあっさりと僕を部屋から追い出します。
「だから死ぬんじゃないわよ。いいわね?」
そういって扉を閉めました。
なんだか、物凄く取り返しのつかないことをしてしまったような気がします。
母さん。据え膳喰わぬは男の恥、昔の人は良いことを言ったもんです。
しかし、久々に良い気分に浸りながら右腕をふるう、そんな気持ちの良い夜になりそうな気がします。
163 :
◆LRvRIPAn.s :2007/03/07(水) 22:04:26 ID:T6Q8A3Oi
とりあえず、ここまでっすー
そろそろスレタイからずれてきたらごめんなさーい
つぶれあんまん、まっしーらけーっと。
これは…
イイ(・∀・)!! 乙!
これはいいLASですね
「右腕を振るう夜」わろた
シンジ…振るものを間違っているぞ…
よくやったな、シンジ
そういや初回以後未だにゲンドウ出てこないね
毎回毎回、なんていい仕事だろう
やるじゃないか
カチャカチャ、ガチャ、カチャカチャ……
ああ、母さん。今、訓練中なんです。静かにしていて下さいね。
「チィッ!3分切れると思っていたのに。」
隣でぼやいたアスカはすっかり元気です。意気盛んに訓練に参加しています。
エヴァパイロットたるもの、シンクロ率さえ高ければ良いはずはありません。
つまるところ、シンクロ率はエヴァがちゃんと思い通りに動かせられるかどうかを示す数値。
戦いに必要な能力はそっから先なんです。
でもね?教官。なんで銃の組み立てなんてやらなきゃならんのですか。
「銃を愛して抱いて寝るところから全てが始まる。もう名前を付けたか?」
こんな硬い物を相手にエッチなことなんか出来ませんよ、教官。
しかし、僕達の前の席で黙々と作業を続ける綾波の手つきは慣れたもの。
「む?2分を切ったか。流石だな、綾波レイ。」
珍しい教官の褒め言葉。綾波、あんたはフォレストガンプですか。
やれやれ。エビの話でもしようよ、アスカ。
そろそろ、NERVでしごかれる生活になれてきたんじゃないか?と思うでしょうね、母さんは。
そんなことはありません。あのリツコさんの電撃やミサトさんのビンタに慣れることなんて出来ません。
ですが最近、アスカが笑顔で居ることが多くなりました。
それだけでいい。僕はそれだけでいいんです。
参号機?
エヴァの格納庫で、その話をアスカから聞かされて驚きました。
なんでもアメリカで建造されて、こちらに送られてくるとのこと。
「らしいのよ。パイロット?知らない。」
バケツ片手のアスカが僕にそう言います。ああ、まだエヴァ磨きの罰がまだ終わってないんです。
「やーれやれ、終わった終わった。ん?あんたトロいわねぇ。」
そう言わないでよアスカ。
初号機はデザインややこしくて拭くとこ多いんだってば。
「手伝って?イヤよ。自分の機体は自分でやんなさい。それじゃね〜」
そんなこと言いながらも、晩ご飯は僕が帰るまで待っててくれるくせに。
そして僕が掃除を続けていると、誰かが二人やってきました。
ミサトさんとリツコさんです。
僕は高いところでクレーンに乗っていたので、二人は僕に気付かない様子。
その彼女たちの会話が聞こえてきました。
「リツコ、それじゃ稼働試験は行われていないの?」
「しょうがないじゃない。アメリカには適当なパイロットが居なかったんですって。」
「そんな物をこっちに押しつけるなんて。」
「ま、戦闘を経験しているパイロットも居ることだし、こっちでやるのがベストよ。」
書類に目を通しながら答えるリツコさんに、さらにミサトさんが問いかけます。
「それじゃ誰を乗せるの?」
これが一番気になるところ。僕は見つからないようクレーンに寝そべって聞き耳を立てました。
「もう決まっているわ。アスカよ。参号機の仕様は弐号機と酷似しているし。」
「そうね、初号機と零号機なら互換が効くけど。」
「それに、シンクロ率はともかくアスカの戦績が一番低いし……ね?」
そう言って薄く笑うリツコさん。
気になります。まさか、アスカを使い捨てのモルモットにする気じゃないでしょうか。
この後、アスカと僕は夕食のため、再び顔を合わすのです。
なんだか、このことを伝える勇気がありません。
勘の良いアスカを相手に、僕がこのことを悟られずに済ませる事なんて出来るでしょうか。
「やっぱり私なのね。そうじゃないかと思ってた。」
母さん、無理でした。
「面白いじゃない。新型のエヴァ、どんなのだか早く乗ってみたいわ。」
そう言いながら、どんぶり飯をかき込むアスカ。
この元気があれば大丈夫、かな?
そして翌日、さっそく試験が行われることになりました。
「そんじゃ、行ってくるね。」
元気よく飛び出していくアスカを僕は見送ります。
試験は松代にある第2試験場。ここで行うには様々な危険が考えられるため、とのこと。
ああ、そんな危険など起こらなければいいのですが。
しかし僕には、そんな不安な思いに沈んでいる暇はありません。
「そうか、アスカの分も頑張ると言うんだな?よし、アスカの銃も組み立てて」
いやだから教官、それがなんの意味があるんですか。
そうして、綾波とともに銃の組み立てをしていたその時です。
部屋のスピーカーから響き渡るサイレンの音。
「む、この警報。使徒か?」
そういって顔を上げ、内線で問い合わせる教官。
隣の綾波は流石に素早い。大急ぎで机の銃を片付けて指示に備えようとしています。
僕もそれにならって銃を組み上げようとしましたが、あまりの不安で手が動きません。
猛烈にイヤな予感がするのです。
「もう良い。俺が片付けておくから急げ。場所は松代、着替えてエヴァに搭乗しろ。」
ああ、母さん。何故ですか。
何故こんなイヤなことばかり予感が的中してしまうんですか。
そして、綾波と僕はエヴァに乗り込み戦闘態勢のままに空輸されていきます。
アスカがいるはずの松代へ。
とりあえずここまでっすー
なんか、やっぱり私の書く物はアスカに辛く当たっちゃうけど、
思いつくまま書いた結果なんで、つーことは私の深層心理がそうなっちゃってるんで、
もう替えがたい状態なんだし、アスカ好きのみんなごめんねー先に謝っちゃいますねー
リアルタイム投下ktkr
乙です
昨日甘やかすスレも見てみたんだけど個人的にはこっちが好きだわ
アスカ逃げてー!
てか以前の作で文句が出たのは、アスカ好きだからとかいう問題じゃなかったんだが、やっぱりちっとも理解できてなかったんだなこの人はw
ひーこれからの展開が怖いよ ガクブル
183 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/08(木) 15:18:37 ID:VYtPOs84
・・・・アスカの脚をグチャッ・・・
かあさん、手にアスカの脚の潰れる感触が・・・
とか?
いたいいたい
アヤナミストの俺でもちょっとアスカが心配だ
作者、あんたほんとGJだ!
僕は到着を待つ間、考えます。いったい、どんな状況だろう。
僕には何の説明もないのです。
普段は第三新東京市に現れるところを、今度は松代。
参号機を狙って、と考えるのが自然でしょうか。
流石のアスカも慣れない参号機だし、苦戦しているのでは……
「……。」
ミサトさん?どうして何も答えてくれないんですか?
一体どういう状況なんですか、ミサトさん。
「あれが……目標よ……」
震える声で示したミサトさん。そこには、参号機と思われる機体しかありません。
嘘でしょ?ミサトさん、嘘だと言ってください。
「判っている。判っているわ、シンジ君。」
アスカは?どこにいるんですか?ミサトさんの側ですか?ねぇ、ミサトさん!
「ダメです!エントリープラグがイジェクトできません!」
「神経接続のカットは?」
「参号機からは何の反応もありません。全て制御不能!」
「参号機のバッテリー残量は?」
「とっくに切れている筈です!完全に無動力で稼働しています!暴走状態です!」
スピーカーから聞こえてくるスタッフのそれは、僕の耳に真実を伝える非情のアナウンスでした。
しばらく何も言わなかったミサトさんでしたが、遂に心を決めたようです。
「レイ、参号機の両足を狙撃し、完全に破壊するのよ。それからシンジ君?」
僕は我に返って返事をします。
「シンジ君は後ろから回り込んで動きを封じて。その間に工作員を……」
「葛城一尉、言ったはずだぞ?使徒として殲滅せよ、と。」
突然に割り込んできた声。それは紛れもなく僕の父、碇ゲンドウの声でした。
なんだか、初めて父の声を聞いたような気がします。
暗く、そして容赦のない恐ろしいその声を。
「回りくどいマネはよせ。参号機、およびパイロットを完全に破棄せよ。」
パイロットを破棄……何故!
「シンジ、もはやアスカは助からない。リツコ君?」
命じられて説明を引き継ぐリツコさん。
「はい……恐らく使徒は参号機に寄生して操り、支配の手を更にエントリープラグの……」
嘘だ!そんなの嘘だ!
その時です。急に参号機との交信が復活しました。
「……(ガガッ)……助け……(ガガッ)……助けて……」
まだ助かる!
僕は参号機に突進しました。
「シンジ、止めろ。参号機と接触してはならない。」
もう父さんの言うことなど無視して綾波に促します。先程のミサトさんの指示通りに。
綾波は薄く頷いて零号機にライフルを向けました。
しかし、その瞬間です。
「あッ!!」
その綾波の叫び声とともに、零号機の両腕が吹き飛びました。
参号機が信じられない跳躍力をもって襲いかかったのです。
その場に倒れる零号機。苦悶する綾波。
そして次に参号機は僕の方を睨みます。
次の標的は僕です……いや、望むところです!
ガシッ!!
組み付く初号機と参号機。だが、ジリジリと僕の方が押されていきます。
次第に参号機は腕を移動させて、初号機の喉笛をつぶしにかかります。
僕は思わずうめき声を上げます。
初号機とシンクロしている以上は、僕自身が首を絞められているのと同じなのです。
このままではいけない。何とかして参号機の動きを封じて、アスカを救出しなければ!
「……(ガガッ)……(ガガッ)……」
また、スピーカーから参号機との通信が絶え絶えに聞こえてきます。
「……(ガガッ)……あた……アタシを……ころ……して……」
で、出来るわけ無いだろ!アスカ!
「ころ……ころし……コロ……コロシテ……」
その時、音声だけではなく画像の通信も復活しました。その時、僕が見た物は!
「……コロシテ……コロシテ………………コロシテヤル!」
モニタに映ったアスカの顔は、なんと笑っていたのです。
「コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!」
カッと目が見開かれ、全てを嘲笑するかのような悪魔の表情。
もう既にアスカは、アスカで無くなっていました。
「コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!
コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!
コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!
コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!
コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル……」
うわああああああああああああああああああああッ!!!
バタン……
と、扉が閉められ、気が付くと僕はベッドに寝かされていました。
何も覚えていない?いえ……忘れたくても忘れることなど出来ません。
母さん……説明しろ、というのですか?この僕に?
僕が覚えている物。
狂気のアスカ。そしてまた、狂気に落ちる僕自身。
完全に制御を失い暴走したのは、初号機ではなく僕自身。
僕の首を掴んでいた参号機の腕を引きちぎり、
地面に押し倒して殴りつけ、
周囲に参号機の血潮を飛び散らせ、
一撃で参号機の頭を砕き、
参号機の胴体をえぐり、エントリープラグを引きずり出して、
そして……僕自身の右手に伝わった、アスカの感触。
容赦なくエントリープラグを握り潰した、その感触。
母さん……言い訳でもしましょうか?
アスカが既にアスカでなくなり、せめて完全に使徒に犯される前に、僕自身の手で……
ダメですね。考えるだけで吐いてしまいそうです。胸のむかつきが収まりそうにありません。
母さん。見てるんでしょう?
今の僕を見てるんでしょう?
アスカのことを思い出して自分の物をしごいている僕の姿を。
アスカと話して、アスカと言い交わして、僅かばかりにその肌に触れた時のことを思い出して、
つい先程、その相手を殺した右手で、自分自身を慰めている僕自身の姿を。
最低……最悪……そんな言葉で言い表せる姿ではないですね……
狂気……そうですね。僕は既に狂気に墜ちてしまったのですね……
ああ、なぜ僕は生き残ってしまったのでしょう。
なぜ僕はアスカに、使徒と化してしまったアスカに殺されなかったのでしょう。
それなら僕も本望だったというのに。
ねぇ母さん……いっそのこと……ねぇ母さん……
とりあえず、ここまでっすー
( ゚д゚ )
…乙
ここで切るのか
乙
wktkが止まらない 乙
話は面白いけど、前作や発言も踏まえて要するにアスカヘイトなのね。
でも話は面白いんだよな。あとペースすげぇわ。
まあ乙。
ところで参号機じゃなくて3号機だよね
アンタひでぇ…もといアンタすげぇ
もはや「ほどよく」じゃねぇな
シンジの方はまぁほどよくじゃね
こんな苦痛があるかよ
シンジの心はズタズタなんてもんじゃねえぞ
でもなにしろ本編で既に酷かったからな、シンジの心への苦痛は。
本編より酷かったら発狂オチになるだろがw
泣きそうになる
ゼルエルがんばれ。超がんばれ。
救護班からアスカ生存の連絡があって欲しいが・・・とりあえず乙
そして前もってゼルエル乙
アスカヘイトだったのね…LRSな俺でもヘイトは辛いわ…久々の良作だと思ったのに残念。
なに的外れな批判してんだよ。ヘイトってなんじゃそりゃ
『そう言うストーリー』なだけじゃん。
エヴァFFにおけるヘイトってな、キャラクタをひたすら無能、性格改悪して貶めることだろ。
いわゆるヘイトとはちょっと違うと思う
ただ少し扱いが悪いだけじゃね
扱いは良いだろ
これがヘイトなら綾波を殺した庵野は綾波ヘイトで貞はトウジヘイトかよw
いや、扱い良いこともないべ
別にどうでもいいけどさ
準主役だったっぺ
実はアスカ生きてたよ派は居ないんだべ?
生きてても今後いいことなさそうだ
「ハーーイ!ワターシ無事退院できたデース!」
みたいになる
不通に生きてて欲しいだろ
アスカ好きはなくても
アスカ「私はたぶん二人目だと思うから」
あつかいは悪いがヘイトとは違うと思う。
第一それいうならスレタイからしてシンジヘイトになりかねないし。
>>216 この作品のリツコさんの性格からすると普通にありそうだよな…
>>215 そりゃ生きてて欲しいよ。でもこれ以上酷い目にあうようなら…、と思って
>>216 ありそうだから困るw
作者に慈悲の心があるなら最後にアスカ出してハッピーエンドにして欲しい
相変わらずうざい奴等だな。
これだからLASになるの嫌だったんだよ
今作だけならともかく、
>>196の言うように、前作・作者の発言等含めて考えたらヘイト趣味アリと思うのは不思議じゃないだろ。俺もだが。
別にそう思わんって人がいるのは勝手だが、なんつーかそろそろ信者じみてきてウゼェ。
前作はどこで読める?
>>221はなんか一人で脳内飛躍してキレてるし、マンセー以外は許さないってスレになっちゃったね。
予想はついたけどさ。
『エヴァ板内のFFについて語るスレ』みたいなのが昔あったけど、あれもう無いのか?
簡単な感想以外は別スレで語りたい。
>>224 『エヴァ小説について語らんか?』スレ使ったら?
投下スレで感想批評を語り合う→荒れて無くても荒れてるような雰囲気に→投下しづらくなる
ってパターンは良くないからな。
作者氏、感想にコメントとかはいらないから、頑張って続き書いてね。
待ってます。
問題作=良作だ
アスカ好きの俺にはちと辛いが…続きは待ってるんだぜ?
>問題作=良作
これからこのスレのFF読むトコだけど、それはどーかなぁ?と素で思った。スマン。
乙ー
面白いです
おおアスカよ しんでしまうとは なさけない
甘やかすスレでのアスカ
・何か口調がおかしい
・っつーかアスカって名前がついてるだけでキャラも変
・活躍っていう活躍はない(まぁ、原作通りか)。かませ臭が漂う
・最後は唯1人レイプされる
このスレでのアスカ
・アスカって名前がついてるだけのように思えなくもない(プライドとかないし)
・グシャッってされた
上でエヴァFFにおけるヘイトが無能・性格改悪って言ってる人がいたが、
まぁヘイトとる人がいても仕方がない気はする(前作読んでるなら尚更)。
虐待・・・ほどよく・・・。
1・音楽再生してるやつの中身をゲンドウ熱唱のド演歌オンリーに。
2・綾波にセクハラ事件を流布させる。
3・掃除禁止令(家出も禁止)
アスカ大好きだけど何とも思わないぞ。
「そういう作品」なんだから。
敏感になりすぎだと思う。
アスカ好きな奴は、その作品のアスカの魅力を好きになろうぜ。
母さん!?
僕はハッとなって上を見上げると、一人の女性が立っていました。
その優しくも悲しい表情からして、そう思ってしまったのです。
僕が下半身をむき出しにしてる姿をジッと見下ろしていたのは、ミサトさんでした。
もしかしたら自分の行為に夢中で、僕はノックや呼ぶ声に気が付かなかったのでしょう。
呆れているのでしょうか。
ミサトさんはしばらく何も言わずに僕をジッと見ています。
そしてある瞬間、急に何を思ったのか僕の股間に顔をうずめたのです。
僕はビックリして逃げようとしました。
しかし、僕に伝わるあまりに衝撃的な感触に身動きが取れません。
僕はあっという間に達してしまい、ミサトさんに全て吸い取られてしまいました。
なんだか、ミサトさんに淫らなことをしてもらったように感じません。
変ですね、母さん。いや、母さんに尋ねても困るでしょうね
それほどにミサトさんの感触がとても優しかったのです。
そして彼女はそれ以上の行為に及ぼうとはせず、寝ている僕の側に座って言いました。
「あなたはお払い箱になったわ。ここから出る支度をして。」
「あの時のことを覚えていないの?無理もないわね。」
本部の出口へ向かいながら、ミサトさんは僕に語ります。
「あの後。あなたは参号機を破壊しただけでは止まらず、試験場にある施設という施設を破壊したの。」
……覚えているような、覚えていないような。
「心配しないで、死者は出ていないの。少数の怪我人と、試験場一つが使い物にならなくなっただけ。」
それだけでも大変な損害です。
「それが幸いと言えなくもない……わね。私はあなたのパイロットの資格剥奪を申請したの。」
……。
「あっさりと司令に認められたわ。もう、ここの苦しい生活はこれで終わりよ。」
そして、もうエヴァに乗ることもなくなった、と言うわけです。
「あなたの心情を察して、なんの罪にも問われないわ。もう何も苦しむ必要は無くなったのよ。」
その時、一人の同年代の少年が僕とすれ違いました。
見覚えのあるジャージ姿。あれは、確か鈴原とか言う奴だったか。
忘れもしません。学校に行った初日に僕をボコッた連中の筆頭です。
「彼が新しいパイロットよ。知り合い?」
僕は何も言いませんでした。
そして、これから彼が受ける境遇を考え、何とも言えない気分になりました。
そして僕はミサトさんの運転する車で駅へと送ってもらいました。
やっと二人きりになった車の中で、ミサトさんは僕に尋ねました。
「……お父さんのこと、恨んでいる?」
……。
「正直、アスカを破棄せよ、とシンジ君に命じたのはあまりに非道いと思う。でもね。」
……はい。
「あの英断を下せるのは碇司令だけよ。時として、あなたを捨てる決断でも私達は下さなければならない。」
そんな、でもミサトさん。
「確かに、人ひとり救えなくて何がって思う。けどね?シンジ君。それでも……」
それでも?
「私達は生きる手段を選ばなくてはならないの。それが私の、あなたのお父さんの仕事よ。」
……はい。
「ああ、これは何の慰めにもならないけれど。」
……?
「あの時、既にアスカは使徒に取り込まれていたらしいの。あなた達が到着したときには既に。」
本当なんだろうか、それ。
「それは間違いないの。あなたが聞いたアスカとしてのアスカの言葉は、恐らく脳に残存していた記憶。」
でも、僕は、
「あなたは自分の知っているアスカが完全に犯されたのを見て、それを消し去りたくなった。全てを否定したくなった。」
……。
「あなたの行動を説明するとしたら、そう考えるしかないわね……え?ああ……さっき私がしたこと?」
はい。
「深い意味を込めてしたんじゃないわ。単にあなたに欲情しただけ。そう思ってくれていいわ。そうね……」
駅に到着して車を止めたまま、ミサトさんは僕に向いて言いました。
「寄っていく?あなたが望むなら。」
……いえ。
「そうね。ごめんなさい。」
そんなミサトさんを僕は悪く思いません。
ミサトさんがああしてくれたお陰で、なんだか僕は正気に返ったような気がするのです。
でなければ、僕は何をしていたか判らない。逆にミサトさんが望むなら、と言い出したくなるぐらいです。
まだ僕の中のアスカのことが消えないままでは、あるのですが。
彼女は自分の財布から一万円札を数枚とり出して、僕に手渡しました。
「これはあなたに支払われる必要経費としての交通費。他にも、これまでの報酬を後日おくらせるから。」
そんなものがあるんですか。
「あなたの先生には連絡済み。何も言う必要はないし、もう何も考えずに帰りなさい。」
……。
「全てが終わったらまた会いましょうね。それじゃ。」
そう言ってミサトさんは車に乗り込み、去っていきました。
僕はここから去ることも、そしてエヴァに乗れなくなることにも何の後悔も未練もありません。
しかし、そういえばミサトさんの笑顔って、ほとんど見たことがないな、と。
そればかりが心残りです。再び会うときには見ることが出来るのでしょうか。
あいやー
駅のプラットフォームに立ち、ぼんやりと考えていました。
アスカのこと、ミサトさんのこと、エヴァのこと、NERVのこと。そして、父さんのこと。
父さん。何故、僕に会おうとしないんですか。
何故、父さんは僕が去ることをあっさり認めたんですか。使徒との戦いが終わった訳でもないのに。
父さん。父さんは僕から……ん?
使徒!?
遙か彼方の空から飛来する黒い影。
間違いありません。あんな鳥や飛行機はありません。
間違いなく、使徒です。
カシャカシャと駅の案内板が切り替わり、避難の指示が表示されます。
僕はすぐに階段を駆け下り、そして向かいました。
避難所?そんな筈はありません。決まっているでしょう?僕が向かっているのはNERV本部です。
やはりまだ、僕はエヴァのパイロットなんです。
後悔も未練もなかったはずなのに。でも、どうしようもないくらい僕はエヴァのパイロットなんです。
息絶え絶えに本部へと走る中、既に戦闘が始まっていました。
飛来してきたのは、禍々しい顔を胸部に持つ巨人型の使徒。
その目と思われる部分から閃光が放たれるたびに、次々と破壊される街。
遠巻きに迎撃する自衛隊。しかし、使徒は蚊に刺されたほどに感じた様子もなく一点を目指して突き進む。
再び使徒から放たれる強烈な閃光。そして街の中心に巨大な穴が開けられる。
その地下、そこはNERV本部のある地下空洞のジオ・フロント。
僕は急いで本部を目指しました。
が、まだまだ距離はあるし、何より地下へと降りていかなければなりません。
何も考えずに駆け通したため、もはや息が切れてその場にうずくまってしまいました。
緊急事態の折です。左右を見渡してもタクシーなんて走っているはずがありません。
その時です。
「乗れ!」
そう言って車を止めて僕に叫んだのは、初めてこの街に来た時に僕を出迎えた黒服の連中でした。
僕は天の助けとばかりに乗り込みます。
以前はあれほど恐ろしかった連中が、これほど頼もしく感じるようになるとは思いも寄りませんでした。
使徒によって崩れゆく街の中をすさまじい勢いで危険な運転を続ける車の中で、
僕は恐怖も忘れて、気持ちはすでに使徒との戦いに向かっていました。
待っていてください、ミサトさん。
アスカ、僕が皆を必ず守るから!
「エラー?レイでも初号機を動かせないというの!?」
「ダメです!まったく神経接続を受け付けません!」
到着した本部は混乱の極みに陥っていました。
リツコさんの、そしてスタッフ達の絶叫が飛び交い、ひっきりなしに走り回る整備士達。
「零号機で出るわ。N2爆雷を用意して。」
初号機から顔を出した綾波が言います。いったい何をするつもりなのか。
その彼女に向かって怒鳴り返すリツコさん。
「使徒と共に自爆する気?無茶を言わないで!」
両腕が失われている筈なのに、確かに無茶もいいところです。
つまるところ、エヴァは一台も動かせる状態では無いということです。
ふと傍らを見ると、来たばかりの筈の鈴原が壁にもたれてへたり込んでいます。
恐らく、初号機も弐号機も動かすことが出来なかったのでしょう。
「だから司令に言ったのに……初号機の適正があるのはシンジ君しか……あ。」
そう言いながら、やっとリツコさんは僕に気が付いたようです。
「パーソナルデータをシンジ君に戻して!早く!」
僕は、その場で着ているものを引き千切って捨て去り初号機のエントリープラグへと向かいました。
スタッフ達が慌ててプラグスーツを持ち寄り、僕の着用を手伝います。
もう全裸でも良いのに、とじれったく考えながら身につけていると、一人の男が近づいてきました。
「待て。何故ここにいる。」
父さんでした。
「何故ここにいるのかと聞いている。」
僕は答える代わりに父さんに言いました。
「父さん、僕から逃げないでください。」
「……何だと。」
「アスカを殺せと命じた父さんが、なぜ僕を戦いから遠ざけようとするんですか。」
「シンジ、お前は何を言っている。」
「僕を呼びつけ、僕を戦わせておきながら、なぜ今更、僕を遠ざけようとするんですか。」
「シンジ、お前は……」
「僕は……僕は……」
僕はグッと自分の拳を握りしめ、そして叫びました。
「僕は……僕こそがエヴァンゲリオン初号機の専属パイロット、碇シンジです!」
父さんは唇を噛み、僕をジッと睨んでいました。しばらくそうしていた後、
「……いいだろう!乗れ!」
その時、凄まじい衝撃音がすぐ近くで聞こえてきました。
既にプラグスーツの着用を済まていた僕は、すぐにエントリープラグに乗り込みます。
そして注がれる純度100%のLCL。なんだか、いっそのこと水道水でもぶち込めと言いたい気分です。
たとえ僕がおぼれ死んでも、初号機の暴走を誘発させて使徒に勝つことができるなら。
「既に使徒が本部に侵入している!構わん、あそこの壁を実力でブチ破れ!」
父さんに言われなくても!
「初号機……まさか……」
全身が総毛立つほどに敏感になっている僕には、ミサトさんのつぶやきが通信を介さず直に聞こえてきました。
「シンジ君ッ!!」
僕が本部の壁を破り、使徒を目指して突き進んだ先は本部の司令塔。
そこに立っていたミサトさん達めがけて、もう少しで恐るべき閃光を放とうという瞬間でした。
僕は使徒を殴りつけて蹴り倒し、無理矢理にその場から引きはがします。
が、使徒も黙っては居ません。カミソリのような腕を繰り出して、僕の腕を切り落としてしまいました。
そこから走る全身を打ちのめすほどの苦痛。しかし、その痛みが更に僕を狂わせます。
残っている右腕で使徒の顔を押さえつけ、そのまま使徒の体ごと突進した先。エヴァ射出用のエレベーター。
「ミサトさんッ!」
「5番射出、急いで!」
割り符を合わせたように思い通りの指示を下すミサトさん、流石です。
そして、地上に降り立った使徒と僕との戦闘はまだまだこれから。
その時、僕はガクンと腰を落としてしまいました。
……ん?あ、あれ?僕の意識が消えかかっている?
そうか……バッテリーが切れかかっているんだ……
……いや、まだだ!それがなんだっていうんだ!
僕は残っている力を振り絞り、牙をむいて使徒に喰らいつきました。
悲鳴を上げてもがく使徒。そして、僕の口中にドクドクと流れ込む使徒の鮮血。
するとどうでしょう。先程、切り落とされた左腕の痛みが消えていくのです。
それだけではありません。ブクブクと僕の肉体が増殖するかのように左腕が復活していくのです。
尽きかけていた僕の力もみるみる蘇ってきます。
僕はもう夢中で使徒を喰い散らかし始めました。
「使徒を……喰ってる……」
顔面蒼白で僕の有様を見ているミサトさん。
隣で思わず吐くオペレーターの女の子。
悪いですね。この醜態、見たくないならあっちを向いててくださいね。
もう止められないのです。こんな美味い物を喰ったことなんて生まれて初めてなんです。
もはや完全に絶命した使徒。僕はすっかりその食事に満足して、思わず天を仰いで雄叫びを上げました。
まるで、太古からある原始の肉食獣そのままに。
そして、僕は……
あれ……僕?……僕が!?
245 :
◆LRvRIPAn.s :2007/03/09(金) 09:31:13 ID:mCFRHT2T
とりあえず、ここまでっすー
すげぇ・・・
相変わらず乙です!
247 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/09(金) 10:57:25 ID:JlAhTM+o
なんか電波少女を思い出すな…
シンジ、カッコヨォォォス!!
この作者をネ申以外に何て言えるか。無理だな。
249 :
207:2007/03/09(金) 13:01:43 ID:???
>>231 ま、アスカがひどい目に遭うストーリーなのは確か。
そしてそう言う役割にアスカを充てるのに何も躊躇わないと言ったのは作者。
そっから、ヘイトやなぁ、って思うのはまぁ由。俺はそうは思わんが。
ただね。『アスカがひどい目に遭うFFだから糞』的な批判はそれこそ『的外れ』
だとは思う。それっぽかったっしょ?
さて午後仕事開始。
なんかミサト×シンジな展開になりそう
自分の意志で喰っちゃってるw
よほど腹が減っていたのだろう
やべええええええスゲェこれスゲェこれ面白おおおおおおおおい
あれ?何か面白いぞ
>>249 >『アスカがひどい目に遭うFFだから糞』的な批判
そういう事じゃないんだがな。それこそ的外れ。
つか、おまいさんはここで色々議論したいわけか?
ここで語るとスレが荒れっぽくなるから止めようぜ、とまとまりそうな雰囲気だったのに、あえて的外れとかやや挑発的に蒸し返すんだから、
>>249は荒れるのを期待してるんだろ。
そうでないなら只のマヌケ。
だか無視しろ。せっかく面白い投下作が来てるのに勿体無い。
書き忘れた。
作者さん毎度乙です。
使徒っておいしいんだねw
この作者はネ申だから、虐待される理由ってのもちゃんと用意されてそうで
今後もwktk
LAS人とアスカ人は夫婦生活スレに行け。目を覚まして来い。
相手の言ってる内容を歪めて、まともには理解しないよう努める、目を逸らすことで、上手く反論できない自分の心を守る。
批判はとにかくキャラ厨とカプ厨のせいにすることで、教祖様を守る。
これ、どっちも信者のお約束。キモイけど仕方ない。
>258-259
お前ら、もうわざとやってるだろw
あっ、バレた?w
あっちでLRS的結末が好みといっておきながら、ここではレイの存在感は薄い。
この作者はミサトスキー、あるいはハーレム派と思われ
そういえば前作はマヤもちょっとおいしいポジションだったな。
今回は出てないけど。
取りあえずLASな人とヘイトものが無理な人は読まない方がいいだろうな。
か、漢だ。シンジ…
それはともかく、このリツコさんがシンジ「君」なんて呼ぶのは
いまさらながら違和感あるな。
「サード」とか言ってそうだけど。
>>85の「ミサト君」に違和感は感じないのかしら。
まあ、じじいの愛人してるのかもしれんけど。
お、漢 と言いたかったんじゃねw
職人さんがほど良く虐待されてますね
なかなか俺好みの展開になってきやがったじゃねぇか・・。
シンジがかっこよすぎてしぬ
>>268 甘やかすスレでは甘やかされてたからな
当然の流れだ
とりあえず投下待ち
気が付くと、僕は直立の状態で固定されていました。
体が何故か動きません。
いや、例え体が動いても、様々な器具で僕の体が拘束されているのです。
しかし、この場所。何だか見覚えがあります。
見覚えどころではありません。僕が苦しい思いをして毎日を過ごした場所。
紛れもなく、ここはエヴァの格納庫なんです。
僕の胸元辺りにあるブリッジの上を小さな人が歩いてきます。
もしや、この小さいのがリツコさん?
そして、その彼女を追いかけてくる人。
ああ、あっちの小さい人がミサトさんでは……
「リツコ!聞いてよ、お願いだから話を聞いて!」
「何よ。トウジ君の起動試験の準備で忙しいのよ。」
「起動試験!?まさか初号機を使って?」
「その通りよ。わずかだけど弐号機よりも適正値が高いから。」
「そんな、シンジ君が取り込まれたままなのよ?お願い、過去にサルベージ計画というのが……」
「言われなくても知ってるわ。成功例が無いことを一ヶ月も準備に時間をかけて実行しろと言うの?」
「人一人の運命がかかっているのよ?あなた、誰のお陰で助かったと思ってるの!」
「なら、そう司令に言いなさい。明日にも使徒が来るかも知れない、この情況でね。」
そして、リツコさんは整備士達に命じました。
「エントリープラグをイジェクト。もう、そんな古いLCLなんて捨ててしまって。」
悲鳴を上げて止めようとするミサトさん。
が、整備士達は手早く指示に従い、ハッチが開けられてLCLがこぼれ落ちます。
その中から流れ出てきた白い物。それは僕が着ていたはずのプラグスーツでした。
そして、リツコさんはこの場を去り、ミサトさんは僕の目の前で立ち止まっています。
そして僕の方を向いて言います。もはや涙を流しながら。
「ゴメンね……シンジ君……ゴメンね……」
そして僕の胸元に頭をすりつけて謝り続ける小さなミサトさん。
僕の体の、頑丈な装甲が取り付けられた胸元で。
ある時、父さんが僕の目の前にやってきました。
僕を見上げて、そして僕に、初号機に向かって言いました。
「私は逃げたのではない。こうなることを恐れていたからだ。」
こうなることを……知っていた?
「シンクロ率がある一点を超えると、パイロットは完全にエヴァンゲリオンに同化する。」
……そんな、馬鹿な。
「何故そうなるかはまだ判っていない。松代でお前が示したシンクロ率は既に危険域に達していた。」
……。
「お前に去れと命じた理由はそれだ。すまなかったな、シンジ。」
母さん、こんなことってあるのでしょうか。僕は……
僕は、初号機と完全にシンクロしてしまった。つまり、僕が初号機になってしまったのです。
母さん、なんだかおかしな感じですね。まるでガリバーになった気分です。
僕の周りを整備士達の人がチョコマカと動き回って、僕の体を整備している有様が。
でも、装甲を付け替える時には閉口しました。
僕の体に直接ボルトを打ち込むんですよ。痛いったらありゃしません。
ずっと初号機はこんな苦痛を味わってきたんでしょうか。
そして、僕の指示通りに使徒と戦ってきた、という訳なんでしょうか。
そんな整備を受けている最中にも、平行して鈴原トウジとの稼働試験が始まりました。
「では、右腕を動かしてみて。」
エントリープラグの中でうめきながら試行錯誤しているトウジ。
あ、やっぱり水道水なんだ。これは慣習なのかな。
ほらトウジ?呼吸用のホースを上手く咥えないと溺れるぞ。
「イメージするのよ。自分の右腕を動かすイメージを。」
いや少し違うよ、リツコさん。
自分の右腕ではなく、自分に取り付けられた新しい右腕を動かす、そんなイメージをしないと動かないんだよ。
自分の右腕は紛れもなく自分自身についているそれであって、初号機の腕はまた別でしょ?
やれやれ、教えてあげればよかったな。初号機に取り込まれる前に。
でもリツコさん、プライド高くて取り憑く暇なんてなかったし。
時々、僕の右腕がピクピク動くことがあったけど、しかし今回の成果はそれだけ。
でも、僕以外には無理だなんてリツコさんが言ってた割には大したもんです。
まあそんなとこかな。トウジ、お疲れ様……なんだか僕って偉そうだな。
ん?トウジ、ここまでの仕打ちで頭に来たようです。
リツコさんに突っかかっていくつもりかな。僕より強気ですね。
「あぁ?こら、何をするつもりだ小僧。」
周囲にいた整備士達に取り囲まれ、有無を言わさず痛めつけられるトウジ。
そんなトウジを咥えタバコで冷たく見おろすリツコさん。
あはは、なんだかスケバンっぽい。
なんだか、初号機になった、人間でなくなった今だからでしょうか。
物凄くここで行われていることを冷めた目で見ている自分が居ます。
トウジのことを同情する気にはなれません。しかし、いい気味だ、とも思いません。
そしてまた時間が経ち、辺りが静まりかえった夜のこと。
「えーと……ポチっ」
あいたたたたたっ!
え?ああ、どうやらミサトさんが拘束しているクレーンを操作して、
僕の左腕を無理矢理に動かしているらしいんです。
左腕は使徒に一旦は切り落とされて再生した方。
まだ、装甲が取り付けられていないから余計に痛い。
そして、地面と水平に手のひらを開かされ、そこにトンッとミサトさんは座り込みました。
むき出しの手のひらに、ミサトさんの柔らかい感触が伝わってくるかのよう。
「よし。シンジ君、飲もう!」
そう言って、缶ビールをプシュッ
ようやく視界に入ってきたので見てみれば、6本入りパックを片手のミサトさんが左手に乗っています。
つまみ無しですか。空きっ腹にビールじゃ体に悪いですよ?
「ねぇ……シンちゃん……」
あーあ、ずいぶん酔っぱらってきましたね。
「なーんで、私とご休憩してくれなかったのよぉ……童貞のまんま、こぉーんな体になっちゃって……ヒック」
こんなにくだけたミサトさんは初めてです。それだけに何だか悲しく見えます。
それでも……それでも笑わないんですね、ミサトさんは。
「全部の使徒に勝っちゃってさ……そいでね?みんなで打ち上げやってさ……」
そう言いながら、6本目を飲み干すミサトさん。
「そいでね?その場でアスカちゃんと婚約発表とか……ああ、シンちゃんのことだし、出来ちゃった婚かな?」
僕はなんだか笑えませんよ、ミサトさん。
それは、もはや絶対に叶わぬ夢、見果てぬ妄想なんです。
「でも、アスカに内緒で一回ぐらいしようね……あんなに一緒に苦労したんだもんね……シンちゃん……」
「こら、葛城。こんなところで寝たら風邪ひくぞ。」
そう言ってミサトさんを抱き起こそうとしたのは、久方ぶりの加持さんでした。
「うっさいわねぇ……気安く触らないでよ、あんたとはもう……」
「こんなに酔っぱらっちまって。ほら、行くぞ。」
「うん……あ、待って。」
フラつきながらも加持さんの手を払いのけて、ポケットから紙幣らしき物を取り出しています。
「これでまた、あの子達に何か買ってきてやってよ。そろそろ、うんざりしている頃だし。」
「あのさ、あの子達って」
「判っているわよ、シンジ君達じゃなくて鈴原君に相田君。そこまで酔っちゃいないわ。」
「……そうか、判った。それじゃ、送っていこう。」
「いらない。今日はシンちゃんのベッドで寝るんだから。」
「ははは。十分、酔ってるじゃないか。」
「フン……それじゃね。」
以前の僕なら、数々のミサトさんの言葉に顔も股間も赤面しているところなんですけど、
こんな体になっちゃったからでしょうか、何も感じないのです。
それがとても悲しくて仕方がありません。
母さんには……母さんは女ですからね。きっと判らないでしょうね。
それにしても、相田とか言ってたかな。
またエヴァパイロットが集められ、そして繰り返すんですね。
悲劇を。
281 :
◆LRvRIPAn.s :2007/03/10(土) 21:45:48 ID:snpT8vI0
とりあえず、ここまでっすー
>>265様、すんません。それは手違いでした orz
乙
どこまでも寸止めだなー。
予想がつかねえぜ。
これは新鮮な切り口だ。
作者ホント乙です。
GJっぷり&寸止めっぷりに思わずハゲそうだ
ともかく乙!
ちょwwwシンジ君は初号機に昇格ですかwww
>>263 いやー俺その二つ目のほうだが、それでも読んでしまうもんがあるよこのFF。
作者乙!
独特の展開で毎度先が読めません。
おいら応援してるぜ。
初号機になっても虐待されるシンジwww
しかしどこまで神なんだこの作者。
信者になろうかなwww
289 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/11(日) 00:21:20 ID:RuikEpGF
すごい・・・
アスカが殺されるという今までにない展開。
シンジ君のことはあまり好きではないけど、
いとも簡単になりきることができます。
このお話好きです。
すげぇなんかなんつうの ある種の倒錯だなこれは
ほんと楽しみにしてるわ頑張ってねマジ
291 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/11(日) 09:21:17 ID:dBUAoBUu
こういうこと考えちゃ行けないのかもしれないけど
ネルフのスタッフがなぜパイロットにことさら悪意をもって接するのか理解できない。
これじゃ旧軍や戸塚ヨットスクールのほうがマシじゃないか。
あまやかすスレのとき、シンジへの待遇にはきちんと理由があった。勿論作内でのものだが。
まぁもう少し追ってみよう。巧拙については言及しないでおくが、俺はこの作の「原本」は思いつかない。新機軸かと思う。
今回はともかく、前回はさしたる理由も無しにアスカの扱いがろくでもなくて、その辺で不評
買ってたけどな。
ただ、いくら話しが上手くても、なぜ不評なのか説明されても理解できないっぽい神経は
アレだと思うがねえ
>>291 理解出来ないじゃなくて、まだ明かされてないじゃね?
>>293 女性が受ける酷い扱い>レイプ
みたいな安直な創造しか出来ない俺が忠なんですごめんねでも直りません。
駄目な人には申し訳ないけどどうしようも無いのです。
って作者言ってなかった?
作者が、「読者に迎合する気無し」「読みたいやつだけ読んで」って宣言してるならもうROMしか出来んね。
まぁ俺は前作含め、おもろいと思って読んでるから叩く気は無いけど、
叩きレスも在って然りだな。叩きたい人は叩きましょう。
叩くとせっかくの良スレが荒れると思われ
荒らしたいんだろ
おいは作り手側から考えたら賛否両論の方がいいけどな。
マンセーばかりだと逆に
"こいつら本気で褒めてんのかよ"
って思っちゃう。
煽られるばかりでも辛いが。
ここが盛り上がっているのは間違い無い
十日町
>>295 言いたいことはわかるが、そこまで読者の意見聞く必要なんてないと思うがなぁ。
ただ、それは内容的に変になってるなら意見を受け入れ、改めなきゃ作者に未来はないがね。
頑固なゲージツ家ってのも良いんだけど。
レイプに関しちゃ、俺は変えないで良いと思う。
カヲルを残虐な人物にしたてたかったんだろ?
まー俺個人の意見だから反対の奴は気にすんな。
とりあえず作者は気にせず思いつくまま書いてくれ。
怖くないから。
>>300 作者は読者の意見聞け。なんて書いてないと思うんだが。総体で見ればね。
要約すっと
「作者は好きにヤレ。俺は好きだが誰かにとっちゃ糞蛮モノかもしれんから叩かれてもキニシナイ」
まあネットに投下している以上はある程度覚悟いるよな。
俺は応援してるぜ
つ「糞飯モノ」
LAS人が嘆き悲しんでいます
(´;ω;`)
「よっ……ほっ……はっ……ほっ……」
ああ、母さん。
今、トウジが僕の体を掃除してくれているんです。
体と言っても、身につけている装甲のことなんですけどね。
「見とれや。兄ちゃんがお前を、そんでこの街を守ってやるさかいな。」
そんなことをぶつぶつ言いながら、掃除に専念するトウジ。
意外と良い奴なんですよ、この関西人。
「聞いたで。あんた、あんな訳の判らん使徒って連中と、よう戦って来たんやなぁ。」
あんた、というのは僕が融合する以前の初号機のこと。
ちょっとは碇シンジのことにも触れて欲しいのですが、なかなかの持ち上げ上手です。
「俺かてやるで。もう避難所でコソコソする必要はないんや。あんたと一緒にぶちのめせるんや。」
意気込むトウジ。
彼はこうして僕と、というか初号機に語りかけることで自分のポジションを確保した模様。
シンクロ率も徐々に上がっているらしく、NERV本部にとっても期待の星。
僕を袋にした相手だったので最初は引っかかるものがあったのですが、
特別に許されて車椅子で登場した妹さんの姿を見た瞬間、そんなものはLCLと共に吐き捨てました。
「兄ちゃんを頼むでぇー頑張ってやぁー」
そう言って僕に可愛い手を振るトウジの妹。名前は、えーと何だっけな。
母さん、やはり僕のポジション確保の方法は女性だったのですね。
後から現れた相田ケンスケってのはよく判らない奴です。
「相田ケンスケであります!自分はどんな苦しみにも耐えて見せます!作戦部長殿ッ!!」
そんなことを叫びながら敬礼するケンスケ。何なんでしょうね、こいつ。
さっそくミサトさんが無言でビンタを喰らわせ、黒服達にボコらせました。
やるね、ミサトさん。
それでもケンスケは幸せそう。なんでもミリタリーオタクらしいのです。
そしてエヴァこそ軍事力の最先端。
もう彼は喜々として分厚いマニュアルを全て頭にたたき込み、
より複雑な弐号機の操作も完璧にこなしているとか。シンクロ率はともかくとして。
なんだかこの新コンビ、仲も良いらしく期待しても良さそうです。
そして、ついに使徒の登場。
「よっしゃあッ!!行くで、初号機はん!」
はいな、あんさん!
僕はトウジに話しかけることは出来ないんですが、こんな感じで僕らのデビュー戦が始まりました。
でもね、母さん。
やっぱり世の中、そんなに上手くいかないんですね。そして使徒もバカではありません。
「うおおおっ!!通天閣が燃えている!ああっ食い倒れのおっさんが!」
今度の使徒、もはやエヴァや街は眼中になく、
パイロットそのものをターゲットにしているらしいのです。
使徒が放つ御光によって、過去の記憶を掘り起こされ精神がむしばまれていくトウジ。
しかし、ミナミの街で一体なにがあったんでしょうか。
使徒の位置は大気圏外。そんなところから攻撃してくるなんて卑怯もいいところです。
いや、そうじゃないんですね。
賢いんですよ。使徒の方が。
もはや近接戦闘や並の飛び道具は無意味。
弐号機、相田ケンスケの出撃は見送り。
そんな訳で、スナイパー綾波の登場。
使徒がトウジを苦しめているスキに、巨大な長距離砲を構えて一撃必殺。
流石は綾波、相変わらず格好いいですね。
もしかして、これは計画通りだったのでしょうか。
トウジ、僕達は囮でしかなかったみたいだね。
といっても今の僕には彼を慰める術がありません。
そして次に登場したのは、螺旋状の蛇のような姿をした使徒。
物理攻撃と思いきや、エヴァに浸食するタイプのよう。
勇んで初号機を共に出撃した弐号機が今回の餌食。
これでは流石の綾波も、そしてデビューしたてのトウジでは手の出しようもありません。
「おおおおッ!!第三新東京市に栄光あれッ!」
この新しい街のどこにそんな栄光があるというのだろう。
弐号機の操作を頭にたたき込んだ結果がこれ、と言う訳か。
そんな雄叫びを残して自爆を遂げたケンスケ……そんなことだけは、止めて欲しかった。
残された者にとって、これほど辛いことはないのですから。
使徒が過激な精神攻撃を強いたこともあるけれど、
わずか二戦、たったの二戦で精神を犯され、もはやボロボロになってしまったトウジ。
もはや初号機に搭乗するのは無理なのでは、との整備士達の噂が聞こえてきます。
そんな彼を無理矢理に引きずっていくミサトさん。
しかし見覚えがあります。その彼女の苦悶の表情が。
母さん。こうして繰り返されていくのですね。これって、なんなのでしょうね、母さん。
因果応報の果てに、いったい何があるのでしょう。
使徒を全て倒した後、人類の平和が戻ってくる?本当に?
「そうだね、これがリリン達の悲しい性。だからこそ、かの樹を追い求めて来たという訳かな?」
……この声、誰?
「僕は第17使徒タブリス。君達リリンにそう名付けられたよ。
アダムの分身、リリンのしもべ、エヴァンゲリオン。
いや、君のことはこう呼ぶべきだね。碇シンジ君?」
目の前に立っている者。涼やかな笑顔で僕を、初号機を見ている一人の少年。
そして……使徒だって?
「おい、渚カヲル。司令に挨拶するから早く来い。」
動くはずもない頭をひねる僕を残して、
その使徒タブリスは僕にニヤリと笑って去っていきました。
310 :
◆LRvRIPAn.s :2007/03/11(日) 23:11:11 ID:7KOw2rpO
とりあえず、ここまでっすー
311 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/11(日) 23:14:03 ID:C9G7NPf7
訳分からん展開になってきたが
続きが気になるのは確か
なんか今回はあっさりしてるな
乙
パイロットは綾波を除いて全員不幸になるんだなww
>「よっしゃあッ!!行くで、初号機はん!」
>はいな、あんさん!
なんかシンジ楽しそうだなwww
投下のペースといい、物語の内容といい、ホント職人さん乙。
賛否両論大いにあるだろうが頑張ってくれ。
>>300 最初と最後はほぼ同意なんだが、そのフォローだと、あのレイプ云々に関する批判に対して何の反論にもなってないぞ。
せめて、何が問題と言われていたのかを理解してからフォローするのがイイと思う。
ま、どっちにしろ、あっちの作品についてはあっちで語るのがいいのかも知れない。
>>310 ガンガッテー。
相変わらずすごいペースですな。
ケンスケ、適当にカワイソス(´;ω;`)
◆LRvRIPAn.sって昔プルツーのSS書いてた?
作風がかなり似ているんだが気のせいだろうか?
「噴飯」な。
この人の別な作品がすげぇ読みてぇ
どこ行けば読める?
普通におもしろいよ
ここまでマンセーレス付いてて自演乙ってのがないのが凄いな。
要は自演と思う奴いない=おもしろいってこった
シンジ以外もほどよく虐待されてるな
「やあ。」
どこかから聞こえてくる声。
えーと、タブリスだったかな。渚カヲルって名前もあるんだったか。
「カヲルで良いよ。シンジ君。」
(……どこにいるの?)
「君の肩に座っているんだ。見えないのかい?」
(無理だよ。首が動かない。)
「もう目を使わなきゃ見れない体じゃないんだよ。形骸とはいえ、アダムの力は偉大だ。」
(え?ああ、本当だ。)
なんだか、初めて目を開いたような気分。
自分自身の爪先から脳天まで、前後左右が同時に見えるのは不思議な物で、
色の知らない生物が、初めて色彩豊かな世界を目の当たりにした……少し違うか。
「おめでとう、君は僕達の仲間入りをしたんだよ。これがその第一歩だ。」
(判らないよカヲル君。君が何を言っているのか。)
「自分の体の点検が終わったら、もう少し広い範囲で見てみようか。君の知っている人達はどこにいる?」
(ん……?)
そう言われた瞬間、周囲の何もかもが透明となり脳裏にいくつもの映像が浮かび上がる。
咥えタバコで書類を片手に眉をしかめるリツコさん。
缶コーヒー片手にノートパソコンにかじり付くミサトさん。
なんだか虚ろな表情を浮かべているトウジ。
そんな彼の手を握り、なぐさめる妹。
司令塔では数名のスタッフが各種センサーを眺めてあくびをする。
そして、広大な執務室でただ一人すわっている僕の父、碇ゲンドウ。
ん?父さん、何を言ってるんだろう。見ることが出来るなら声も聞くことが出来るのかな。
「もうすぐ、お前に会える。もうすぐだよ、ユイ。」
母さんに会える?どういうことなの、父さん。
その時、渚カヲルが僕に言う。
「では、いいかな。説明しながら行こう。」
(どこへ?)
その時、すぅっと体を浮かべる渚カヲル。
その瞬間、本部内をけたたましいサイレンが鳴り響いた。
「なんだ!使徒か!」
「はい、パターン青!間違いありません!」
「馬鹿な!NERV内部だと?」
その司令部の様子に驚いていると、カヲルは僕の方を見てクスッと笑う。
そうか、本性を現したという訳か。
わざわざNERVの内部に侵入したからには、何かもくろみがあるはず。
こんな早々に正体をばらしてどうするつもりなのか。
「いや、ここに入れたらそれでいいんだよ。あんまり、じらしてもしょうがない。」
(待って。どこに行くの。)
「君もおいで。ほら、手伝ってあげる。」
(あ……)
カヲルと同様に浮かび上がる僕の巨体。
そして体を宙に浮かせたまま移動し、向かった先は地下を幾層にも守っている防御壁。
そこまでして地下に守られているもの。
僕達が命がけで、幾人ものパイロットを犠牲にして守ってきたもの。
いったい何があるというのだろう。
「上手く隠してあるね。僕にもハッキリとは見えないんだ。」
(何があるの?)
「第2使徒リリスがあそこにいる……はずなんだけどね。」
(使徒がここにいる!?)
「いいかい?君達が倒してきた第3から16までの使徒は全て天界の園の、いわば守護天使。」
(守護……)
「そう、生命の樹を守るために生命の実を与えられ配置された獣。それが使徒の正体。」
(それじゃ、僕達が使徒を倒してきたのは……)
「そうだ。君達は生命の樹に近づくために、それを守っている僕らを排除してきたんだ。」
(でも、僕達は襲来する使徒を迎撃していた。ただ、それだけなんだ。)
「君にはそう見えていたかも知れないね。僕達はこの地下に居るリリスに誘われて来ているのだから。」
(いや、判らないよ。僕らはひたすら、ここを守ってただけなんだ。
決して、どこかを目指して攻め入った訳じゃないんだ。)
「いいかい?僕らの世界には時間や広さ、距離などという物は存在しない。
いや存在しないというか、君達の知っているそれとは少し違うんだ。」
(……判らない。どういうこと?)
「ん?君はレリエルを倒した時に、そのことを理解していたと思ったのに。
意識によって遠くにも近くにもあり、遠ざけることも近づけることも思いのまま。
難しいね、君達の言葉で説明をするのは。」
(レリエル?ああ、あの丸い……)
「僕達が居る限り君達が生命の樹に到達することは叶わず、
僕達が全て倒れれば、倒した者は既に生命の樹のもとにいる。」
(それじゃ、何故リリスを目指すの?近づかなければ君達は倒される筈が無いのに。)
「アハハ、何も生命の樹のことばかりじゃないんだよ。僕達が守らなければならないものはね。
まさかアダムの遺体を使って、我々の世界の力に踏み込んでくるとはね。
流石は知恵の果実を手にしたリリン、というところかな。」
(このエヴァの存在が許せない、と?)
「そうだ。ましてやリリスまで君達の手中にある。
だからこそ我々は手を下さなければならず、それこそが全て君達リリンの誘いの手だったとは、ね。」
(誘いの手……あっ!!)
思わず体をねじり、ギリギリの所で僕を襲った閃光を避けた。
もう、ほとんど皮一枚の所で。
僕の装甲が数枚はがされ、浮遊している僕らの下へと落ちていく。
そして見上げると急降下してくるエヴァが一体。
それは綾波の零号機。今の閃光は零号機のライフルによる狙撃だったのだ。
しかし、驚いた。これまでどうやっても自分で動かせなかった体が動いたのだから。
「よけた!?」
伝わってくる綾波の驚愕。司令部も又、騒然とした様子が伝わってくる。
「あのレイの一撃を回避したなんて、シンジ君もやるわね。あなたの仕込み?」
薄く笑ってミサトさんの方を見るリツコさん。
ですが、ミサトさんには笑い事ではないようです。
「うっさいわね!この手で……この手で、シンジ君の抹殺を命じなくてはならないなんて……」
「泣き言なんて聞きたくないわ。もう既に初号機にはシンジ君は居ないのかもしれないし。」
「……。」
「ミサト、私達の使命は?」
「判っているわよ!セカンドインパクトの二の舞は御免だわ!」
しかし、僕には自分の体が動いたことに驚くばかり。
「僕は手を貸していないよ。君の本能がその巨体を突き動かしたんだよ。
流石、これまで鍛えられて戦い続けてきた甲斐があったね?シンジ君。」
そういうカヲルだが、僕は何も言えなかった。
いや、襲いかかる綾波を目の前にして、無駄口なんて叩いている暇などある訳がない。
零号機は足場を確保し、距離を置いてから再び狙撃する。
続けて2発。先程のように、身をよじって一発目はかわせても、二発目からは逃げられない。
僕はカヲルが浮遊させていた力を引きちぎり、大きく避けて壁に張り付いた。
そして隔壁の一つに降り立ち、そのまま横転して又してもギリギリで狙撃をかわす。
そして、ようやく立ち上がったときに追いついてきた零号機。
そこで、僕はプラグナイフを引き抜き、零号機に掴みかかった。
しかし、
パキーンッ!!
弾かれるナイフ。
零号機から、これまでにないほどの強力なATフィールドが展開されていた。
これでは、どうにも手が出ず零号機に触れることすら叶わない。
「いくよ。とりあえず、三人でこのまま下まで行こうか。」
そうカヲルが言ったかと思うと、恐らく彼が操作したのだろうか。
僕達の足下にある隔壁がゆっくりと開かれる。
僕は、フィールドに阻まれて零号機とにらみ合いながら最下層へと落下した。
ザザーン……
その地下。
そこは湖と呼んでも良いほどに、どこまでもどこまでも巨大な水槽。
いや、本当の地下の湖をそのまま流用したのかもしれない。
その時、渚カヲルが何かに驚いていた。
「これは……馬鹿な。これはリリスでは無い。」
ええ?何を言ってるんだろう。
(リリスがあるからここに来たんじゃないの?カヲル君)
「いや、確かにここにリリスがある。いや、居る。」
僕はそんなやりとりをカヲル君と交わしながらも、ジリジリとした零号機とのにらみ合いを続けていた。
カヲルの言うことが気になって辺りを見渡すと、壁にもたれかかるようにして倒れている巨体が一体。
(あれは……エヴァ?)
「そうだね。あれも今の君と同じアダムの形骸……そうか、あの子がリリスか。
どんな手を使ったんだろう。ここまで僕達の目を欺くなんて。」
(え……?)
その瞬間、フッと消える零号機のATフィールド。
(あっ!)
バキッ!!
(クッ……)
今までの零号機の様子が一変して、強烈な蹴りを僕に繰り出してきたのだ。
僕は弾き飛ばされ、その隙に距離を取りつつライフルを構える零号機。
数発、僕に向けてライフルが放たれるが、今度はこちらがATフィールドを展開してはじき返す。
もはや決着をつけるには近接戦闘しかない。
用済みのライフルを捨ててプラグナイフを抜く零号機。
「シンジ君、彼女を押さえられるかい?彼女が目覚める前に。」
(無茶いわないでよ!綾波は強いんだ!)
これまで長距離射撃しか目にすることの無かった綾波の戦闘。
しかし、近接戦闘が不得意という訳ではないだろう。ただ、僕が見ていないだけなのだ。
使徒と化した参号機にしてやられたことはあったけど、
こうして面と向かえば、綾波はどんな力を発揮するのか。
「彼女が目覚めたら、恐らく君では手に負えなくなるよ。
いや、大丈夫だ。今や君は使徒と同じ力を手にしている。」
(そ、そんなことを言われたって……)
プラグナイフを片手に構えを取る零号機。その構えからして自信に満ちている様子が伺える。
恐らく僕よりもNERVに長く居ただけに、かなり鍛えられているのかもしれない。
僕は、この綾波を相手に勝たなければならない……でも、何故?
335 :
◆LRvRIPAn.s :2007/03/12(月) 11:37:39 ID:usrcF2N9
とりあえず、ここまでっすー
リアルタイム更新ktkr
おつ〜
とりあえず、乙
338 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/12(月) 12:53:05 ID:jkAXXM4z
す、すさまじい・・・
綾波が使徒だったとは。
しかも、戦闘のエキスパートだったなんて。
弟子入りしたいぐらいです。
>>335 乙です。そろそろクライマックス?
>>338 >綾波が使徒だったとは。
いや待て、ここは別に驚くところじゃないだろー。
ところで
プラグナイフ→プログナイフって指摘は野暮か?
野暮。
まぁそこら辺は各自脳内変換で
343 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/12(月) 17:51:28 ID:DT142fbQ
ある意味アニメも劇場版も
ほどよく虐待受けてるのと同じようなもんのような気g(ry
>>340 いえいえ、野暮ではありませぬ。
ありがとうございますorz
ナイフ片手に僕に襲いかかる零号機。
ぎりぎりで僕は刃先を交わし、間合いを開けて凌ごうとする。
しかし、綾波は凄まじい勢いで僕に追いすがる。
彼女の繰り出すナイフをやっとの思いで交わしても、鋭い打撃が僕を襲う。
しかし、何故?
あまり話をすることもなかったけれど綾波とは一緒に戦ってきた、いわば仲間。
何故、その仲間と戦わなければならないのか。
綾波は何も感じていないのか。
いや、彼女は僕を使徒としか見ていないのだろう。
あるいは使徒が操る人形として。
このとき、ふっと思い出すこと。
僕がアスカを握りつぶした時の右手の感触。
(やめろ!やめてくれ綾波ッ!!)
僕は思わず叫ぶ。叫んだ、と思う。
しかし、この声が綾波に届いているのか判らない。
聞こえているのか、いないのか。いずれにしても、僕の声でひるむ綾波ではない。
猛烈な勢いで責め立ててくる零号機。
それをしのいで、何とか相手の両腕を封じて組み付く。
しかし、ジリジリと押されつつある。
(クッ……このぉッ!!)
なんとか隙を見つけて、零号機の腹部に蹴りを繰り出した。
まともに僕の蹴りを喰らった零号機は真後ろに吹っ飛び、転倒したかに見えた。
(入った……?)
しかし、零号機は軽やかに後転して立ち上がる。
(しまった!!)
すでに零号機の手には、一度は捨てた筈のライフルが握られていたのだ。
故意か偶然か。
いや、その流れるような動作からして、彼女はワザとこのポジションで僕に隙を見せたのだ。
その一瞬。ほんのわずかな一瞬。
格闘で優位に立ち、僕が油断したこの瞬間。
激しい接近戦を経て、綾波が射撃による攻撃に転じた、この瞬間。
まさに、僕にはATフィールドの展開が不可能であろうタイミングだ。
仮に僕がこの攻撃をしのいでも、戦闘は振り出しに戻るだけ。
これが綾波が僕に仕掛けた、実に手堅い一手であったのだ。
(いや、今だ!)
僕は零号機に向けて殺到する。
むろん既に引き金を引いている綾波。
いや、だからこそタイミングが取りやすい。
パキーンッ!!
着弾する瞬間。その瞬間だけATフィールドを展開、そしてまた解放。
「!!」
驚く綾波。そうだろう、僕自身でもこんな芸当が出来るとは思わなかった。
フィールドを展開させっぱなしでは、こちらも相手に近づけない。
なんだか、自分の思考や行動が倍ほど加速されたかのようだ。
僕は零号機がライフルを構えている右腕を掴み、そのまま一本背負いで投げ倒す。
ベタベタの柔道技だったが、射撃に意識を切り替えていた綾波には反応しきれず綺麗に決まった。
そのまま地面にねじ伏せ、そして、
(綾波……ごめんよ!)
バキッ……と、無惨にも腕をねじ切ってしまった。
ライフルを握りしめていた右手ごと。
「ひぐぅっ!!」
これまでにない綾波の悲鳴が聞こえてくる。
僕も味わったことのある苦痛。いや……切り取られるより、もぎ取られる方がキツイのだろうか。
「お見事。」
カヲルが僕の方を向いて言うが、褒められても嬉しいはずはない。
(何故、僕に彼女を押さえさせたの?)
「いや、リリスの魂が眠っているうちに捉えてしまわないといけなかったのだよ。」
(リリス?では綾波が?綾波も使徒だというの?)
「彼女自身は気付いていないだろうね。彼女の体の内にある魂は、まさしくリリスだ。
僕達が捉えなければならない眠れるリリスの魂なんだ。」
(で、どうするの?そうだ!まさか君はサードインパクトを!?)
「だとしたら……どうするのかな?碇シンジ君。」
僕は思わずカヲルの体を鷲づかみにした。
が、カヲルは逃げなかった。僕があと少し力を入れれば、その体を握りつぶせるというのに。
そして僕に声を上げて笑いかけたのだ。
「アハハ……まさか、そんなことはしないよ。
僕はただ、リリスを連れて帰るために来ただけだ。ただ、それだけだよ。」
(え……でも、カヲル君。僕達は……)
「使徒がここに到達すれば、サードインパクトが訪れる。
君達はそう教えられていたんだよね?僕達と戦うために。」
(でも、これまで僕達に多くの使徒が倒され……)
「だから天罰を下せと?仕返しをしろと?そんなことはしないよ。僕の言うことが信じられない?」
(それじゃ、セカンドインパクトは?)
「あれは君達の失敗。アダムの遺体を見つけて、試行錯誤した結果がそれ。」
(そんな……あの世界の人口の半数が死滅したというセカンドインパクトが……)
「そうだね。知恵の果実を手にした君達の悲しい所行って奴かな。」
(それじゃ、何人も犠牲者を出して僕達が戦ってきたのは……何のために……)
「本当にそうだね。見てごらん?」
そう促されて、ミサトさんのただならない様子に気付いた。
これまでにないほどに顔をこわばらせているミサトさん。
いや、彼女だけではなく周囲のスタッフ全員も。
「危ないところだったね。君がこのリリスに勝ったのを見て、ここを自爆させて僕を殲滅しようとしたらしい。
どうやら初号機を僕が操っていたと思っていたようだ。パイロットが居ないからね。
でも君が僕を鷲づかみにしたお陰で、初号機に取り込まれた君自身が抵抗を始めた、そう考えたのかな?
それで思いとどまったのだろう。本当に危なかったね、シンジ君。」
(教えて。それじゃ、僕達は何のために使徒と戦ってきたの?)
「さっき説明した通りだよ。生命の樹に到達するため……君の父親がね。」
(僕の父さんが?一体なんのために?)
カヲルは何も言わずに、軽く顎をしゃくって僕に示した。
その視線の先。朽ち果てた古いエヴァ機。
恐らく零号機以前に作られたであろう、古い試作の機体。
そして、ふと蘇ってくる父さんの言葉。
『もうすぐ、お前に会える。もうすぐだよ、ユイ。』
まさか……あれは……
「そうだね、シンジ君。あの機体に取り込まれているのは誰かな?」
そうだ。父さんは知っていた。
シンクロ値が高まればエヴァに取り込まれてしまう、と。
そしてミサトさんが言っていた、過去に行われたサルベージ計画。
そうだ。それでも助けることが出来なかったんだ。
エヴァに取り込まれてしまった、母さんを。
「もはや、君達が彼女を助ける手段はなさそうだね。
しかし、一つだけ。一つだけ方法がある。君の母親を助け出す、死者でも蘇らせる方法が。」
(まさか……そのために?母さん一人を救うため?)
「他の者達を、サードインパクトを防ぐため、と称して使徒殲滅を企てたのだろうね。
その利を君の父親がかすめ取ろうとしている。自分の妻を救うために。」
そのために……そのためだけに……
僕があれほど苦しめられ、
ミサトさんが苦悩しながらも、僕達を戦地に送り出し、
アスカを壊れるほどに苦しめ、そして僕に殺させて、
それだけでは収まらずに、トウジを引きずり出して苦しめて、
相田ケンスケが新たな犠牲者となり……
そのために……母さんを救う、それだけのために。
「罪の意識。」
苦悩する僕を見て、渚カヲルは僕に言う。
「罪の意識が君達リリンを狂わせる。
罪の意識が、そうしなければならないという意識が、君達を狂わせてきたんだよ。」
(罪の意識……?)
「そうだね。判るかな……あの葛城ミサトが君と肌を重ねたいと言ったのは何故?
悪いね。そんなことを覗き見しちゃって。」
ああ、そうか。判るような気がする。
僕の倍ほどもある年齢の女性が、たかが中学生の僕を本気で男と見るはずもない。
自分では戦えない使徒を倒すため、命の危険まで僕達に課したミサトさん。
僕達を戦場へと送り込むため、僕達が傷つくこともかえりみず、
僕らを苦しめなければならず、苦悩していたミサトさん。
その罪の意識がミサトさんを狂わせ、僕に体を捧げたいと考えたのも無理はない。
「そうだ。君の母親が実験の果てにエヴァに取り込まれ、その原因は自分にあると君の父親は考えている。
そのために、彼は生命の樹を手中に収めることを計画したのだ。
樹の力を手にすれば、正に神に等しい存在となる。
むろん、君の母親を救い出すことも可能となるだろう。」
そのためにエヴァを建造。さらに巨額の費用を投じてNERVを設立。
昼夜問わずに働き続けるNERV職員。そして今も自らの死で防ごうとしているミサトさん達。
起こりもしないサードインパクトが起こるのを防ぐために。
「さて、シンジ君。どうする?」
(え……?)
「僕はリリスを連れてここから去る。そのために君はその手を開かなければならない。
そうすれば、ここは終わりだ。あの葛城ミサトは間違いなく、ここを爆破させるだろう。
僕がそれで殲滅されるかどうかは……まあ、それはどうでもいいとして。」
(……。)
「それでこの話は終わる。このNERV本部の人々が全て犠牲となってね。
でもね?その君達の犠牲はリリンの世界にとってなんでもないことじゃないかな。
戦争となれば、もっと多くの人々が死ぬよ。違うかい?」
戦争……大勢の兵士達が鍛えられ、苦しめられて送り出される戦争。
そして、それは何のためか。より多くの人々を傷つけ、そして殺すため。
「そうだね。それは未来永劫まで続くだろう。
けどね、その全てを終わらせる方法が一つだけあるんだ。」
(それは?)
「贖罪、そして回帰。」
(贖罪?)
「そうだ。そのためにはね、まずは君の手で僕を消さなくてはならない。」
(……なんだって?)
やがて初号機はNERVの最下層から引き上げられ、格納庫に納められました。
そして洗浄される僕の右手。いまだに渚カヲルの、使徒タブリスの血がしたたる、その右手を。
母さん、僕は彼の申し出を受け入れました。
母さん、ご免なさい。僕はあなたの復活を阻止することに決めました。
全てを終わらせるために。
全ての苦しみに襲われている、全ての人々のために。
母さん、これって僕のエゴでしょうか。
でも、僕にはこれを選ぶしかありません。
これまで、様々な苦しみを味わってきた僕には、苦しむ人々を見てきた僕には、選ぶほかはありません。
その時、一人の女性が僕の足下にやってきました。
ミサトさんです。
「シンジ君……ありがとう……ありがとう……」
そうして、僕の足にすがりつき泣き崩れる彼女。
恐らく、僕が力を振り絞ってサードインパクトを防いだと信じているのでしょう。
ご免なさい、ミサトさん。
僕が……僕が、全てを終わらせます。
とりあえず、ここまでー
いやぁ、乙です!
wktkしっぱなしだ。
乙。
いや尊敬するよ
これははまるwww
甘やかすスレと言いここといい、単なるネタSSじゃ終わらせないんだな
なんかプライドを感じるよ
一日に二つ投下されたりするから焦るw
あの止め絵のシーンでこんな話が行われてたのかwww
いよいよクライマックス?
あと少ししかないね
最後まで応援するお
おもろいなー。カヲルは呼び捨てなのにミサトにさん付けなのは、きっとシンジが
巨ヌー好きだからだな。贖罪ってナニ?とかその辺も説明してくれるんだろうか。
ちょう期待。
新劇場版公開の年に、エヴァ板にネ申が舞い降りたな…
これが新劇場版でいいよもう
おもすろすぎる
さすがにそれは無いわ
「葛城さん。やっぱりここに居たんですか。」
「……マヤ。」
私に声をかけたのは司令塔のオペレーターの一人、伊吹マヤ。
「葛城さんもどうですか?お茶でも。」
「後で行くわ。もう少し話をしたいから。」
そう言いながら初号機を見上げると、マヤは心配そうな顔つきで私を見る。
「葛城さん、元気を出してください。みんなも心配してます。」
「ああ……」
しまった。余計なことを言っちゃったかな。
「ごめんネ。この前もシンジ君に助けられちゃった気がしてさ。その……お墓参りみたいなものよ。」
「そんな、葛城さん……そうだ、あれをやってみましょうよ。サルベージ計画。」
「今となっては無理なはずよ。私もさんざん調べたけれど。」
「いいえ!みんなの力を合わせれば必ず上手くいきますよ!なんたって、シンジ君がここに健在なんですから。」
「アハハ、そうね……」
成功するはずはない。
取り込まれた時のLCLが残ってない以上は、計画の第一段階すら実施できないはず。
シンジ君が本当に居るとしても、それではどこから手をつければいいのか見当もつかない。
「では、失礼します。」
「ん、後でね。」
去っていくマヤを見送り、再び初号機の方を振り返る。
シンジ君、そこにまだ居るの?それとも、すでにアスカの元に辿り着いたのかしら。
二人はとても仲が良かったから。なんだか、うらやましいくらいにね。
あれほど職員達にしごかれても、二人はしっかりと手を取り合っていた。
力を合わせて使徒を倒した時の二人は、眩しいほどに輝いていた。
もう一度だけ見てみたかった。あの時の二人の笑顔を。
もしも、あなたとアスカが再び手を取り合うことが出来るなら。
それが駄目なら、せめてシンジ君だけでも初号機から助け出すことが出来るなら。
そして、あなたの笑顔をもう一度みることが出来るなら。
そのかわりに、私はあなたに何を支払うことができるだろう。
私の謝罪。私の持っている全てのもの。私の体。私の心。そして私の命でも。
あなたになら、私の全てを捧げても構わない。
あれだけ苦しめられ、それでも私達のために戦いへと舞い戻り、
そしてエヴァに取り込められても、尚も私達を救ってくれた、あなたになら。
あなたにならアスカ同様に握りつぶされても構わない。今すぐにでも。
……でもね、シンちゃん?
私の体だけは、その前に受け取って欲しいんだけど?
そこまで考えた私は、あまりにもスケベな自分自身に苦笑いして司令部へと向かった。
「NERV解体?」
「そりゃそうだろう。使徒を全て殲滅した今となっては。」
「そうか……あーあ、これからの身の振り方を考えなくちゃならないのか。」
「なーに、ここのキャリアさえあれば、どうしたって喰っていけるさ。」
「でも、なんだか寂しいですね。NERVやみんなとすっかり馴染んじゃった気がするし。」
みんな、全てが終わったと思っているのだろう。そうなんだろうか?本当に。
コーヒー片手に和やかに語り合っている様子から、もう平和になったと信じ切っているらしい。
私は何故だか腑に落ちない思いを抱えながら、すすめられたクッキーに手を付けた時のこと。
「使徒!?」
鳴り響く聞き慣れた警報。驚くスタッフ達。
皆、コーヒーをひっくり返す大騒ぎをしながらも、これまでと同様に配置に付く。
「パターン青!まちがいなく使徒……あれ?消えた。」
「ええ!?いったい何だったの?」
「しかも、この前と同じ地下からだ。」
ざわつくスタッフ達。
やはり、何かが残っている。この戦いはまだ終わっていない。
「ほらミサト?そんなに怖い顔をしないで。私がちょっと見てくるわ。」
そう言って、私の肩を叩いたのはリツコだった。
「エヴァもまた第1使徒アダムのコピー、いわば使徒。何かの変化でセンサーが反応したかも知れないし。」
「でも……」
「初号機が、シンジ君が動き出したのかも知れないわね。考えられないこともない。」
戦いが終わったと思っているせいか、リツコの表情もまた軟らかい。
あれだけパイロット達をしごいていたのに、いい気なもんだわ。
ああ、私も人のことは言えない、か。
「でも、エヴァはどうなるの?」
スタッフの一人が言う。
「N2爆雷の直撃にも耐えられる超兵器。今や軍事力の最高峰だからな。」
「エヴァがあれば世界征服も夢じゃないな。」
その言い回しに居合わせたメンバーが笑い崩れる。
「あはは、コンセントを抜いたら5分で動かなくなるロボットが?まさか。」
いや、笑い事ではない。
現に初号機はバッテリーなど用いずに戦い続けたではないか。
もしかしたら、そんな暴走状態は二度と起こらないかも知れない。
だが、他からはそうは見てくれないだろう。
一国を滅ぼすまで戦い続ける兵器として考えざるを得ないだろう。それが国家だ。
「でも、NERVと共に解体したほうが無難だな。なぜならエヴァもまた使徒同然なんだから。」
また、スタッフの一人が言う。
確かにそうしたほうがいいだろう。私もそう思う。
たとえシンジ君を救出できなかったとしても。いや……
そのまま、各国政府が黙って見ているだろうか。
あの最強の兵器エヴァンゲリオンが解体されるのを、指をくわえて見ているというのか。
「遅いですね、センパイ。」
センパイとは、マヤがリツコのことを呼ぶときの呼称。
彼女はMAGIのオペレーターとして、これまでずっと活動してきた一人。
でも、なんだか不思議な子だ。リツコ直属でありながら毒気がないなんて。
そういえばマヤの仕事と言えばMAGIの操作ばかりで、パイロット達との関わりがほとんど無い。
その違い、と言う訳か。
「私が見てくるわ。さあ、みんなも休憩はほどほどにしてね。」
そう言って、気の抜けたスタッフの返事を後に残してエヴァの格納庫へと向かった。
「リツコ、どう?」
「全ての化学エネルギー反応は完全に停止しているわ。初号機ではないわね。」
「それじゃ、なんだったのかしら。各部署に連絡……」
「ミサト、たまには私と散歩でもどう?各部署を点検しながら案内してあげる。」
「リツコ。そんな悠長なことを言っていてもいいの?予測に反して新たな使徒が現れたとしたら。」
「センサーが再び反応してからでいいわ。いらっしゃい、シンジ君のお参りが済んでから。」
「……いくわよ、今すぐ。」
ゆっくりと格納庫内を歩いていくリツコ。
今までにない表情を浮かべている彼女。正直、何を考えているか判らない。
格納庫には初号機と片腕の欠けた零号機だけ。
その片腕は現在修復中。しかし、あまり急いでいる様子がない。
なんだか形式的に整備士達が動いているような雰囲気だ。
やはり、誰もが全て終わったと安心しきっているのだろうか。
ふと、ある扉の前に止まった。
「ここは確か……」
「そう、ダミープラグの開発が行われたところよ。」
リツコが電灯のスイッチをパチンと入れると、そこに浮かび上がる赤いエントリープラグ。
そこに書かれてある文字。『REI AYANAMI』
「リツコ、結局これは計画倒れだったの?」
「いいえ、ちゃんと完成したわよ。ずいぶん役に立ってくれたわ。」
「え?私は何も報告を受けていないわ。」
そう言ったのだが、リツコは何も答えずに先へと進む。
私は少しイライラしながらリツコに言う。
「ねえ、隠し事があるけど聞きたい?みたいな、まどろっこしいことは止めてくれない?」
「そうね。完成したプラグはあることに使われたのよ。それについては後のお楽しみ。」
「……。」
こういう場合、下手なツッコミを入れずに好きに喋らせた方が良いだろう。
私は問いつめるのを止めて、リツコに主導権を譲り渡した。
「ミサト、これが早く完成すれば良かったわね。そして私達がエヴァを自由に操ることが出来たなら。」
「……。」
「そうすれば、多くのパイロットを犠牲にせずに済んだのに、ね?」
黙っていようと思ったが、口に出さずには居られない。
「シンジ君、アスカ、ケンスケ君……もはや、トウジ君も……」
「それから、ツヨシ君にヨシオ君にサヤカちゃん。えーと、それから……」
私に引き継いで指折り数えるリツコに私はギョッとした。
「ちょっと待って。そんなにパイロットが」
「そうよ、あなたが来る以前にね。」
「そんなに……たくさん……」
「私は母の研究を引き継いだだけだから、さらに私が来る以前のパイロット達のことは知らないわ。」
「で、どうなったの?その子達は。」
「ミサト、あながた判らないとでも言うの?死んだのよ。決まっているじゃない。」
そんな残酷な話をしながらも、リツコは薄笑いを浮かべつつ煙草に火をつける。
「その度に資料なんて処分していたからね。あなたが知らないのも無理ないけど。」
「そんな、綾波レイがファーストの筈では……」
「ナンバリングが許されたのは彼女が最初。だからファースト。」
「リツコ、何だか学生の時に読んだ漫画を思い出すんだけど。」
「そんな話題を振られても判らないわよ。早くから母にMAGIとエヴァの開発に付き合わされていたからね。」
「……。」
話をそらせてはいけない。とことん、リツコに喋らせなければ。
「その子達が死んだ原因は?」
「そりゃあね。第1使徒アダムの体をコピーしたぐらいで、すぐにロボットとして使える筈はないわよ。
ましてや、単なるロボットでは戦闘に耐えうるはずがない。
様々な人体実験の失敗を繰り返し、戦闘訓練での犠牲者を積み上げて。
そして生き残ったのが綾波レイただ一人というわけ。」
「まさか、その子達を互いに戦わせたんじゃないでしょうね。」
「大変だったわよ。そういうことをさせるのが。
みんな適正者は子供達ばかりなんですもの。おとなしくさせて操縦席に座らせるだけでも大騒ぎ。
母は必死だったわ。私も無我夢中だった。
その子達を軍人並みに鍛えてパイロットに育てなければならないと、みんな必死だった。
なぜなら、私達には絶対に失敗できない使命があるのだから。」
なんてことだろう。
如何に人類の存亡を賭けているとはいえ、そんなことがここで行われていたなんて。
思わず唇を噛む、そんな私をリツコはエレベーターの前に来て手招きをする。
「ほら、ここがエヴァの墓場。」
そこには、幾体もの古びたエヴァが朽ち果てて放置されていた。
ここに入るのは初めてだ。
興味をひいて入ろうとしたけれど、私のIDカードでは許して貰えなかった。
「全て、訓練を経て使い物にならなくなった残骸。
この大半はね。綾波レイの戦績といってもいいものばかり。
彼女は来た当初から無類の強さを誇っていたわ。」
「レイ……いったい何者なの?」
「ああ、突然に碇司令が連れてきた子よ。経歴の一切は不詳。」
「そんな子をエヴァに乗せるなんて。」
「ここに来てから様々な訓練をこなし、軍人並の力量を身につけていったわ。
もしかしたら、あなたでも勝てないかもしれないわね。
パイロットに関しては強さが全て。経歴なんてどうでもいいの。
なにせ、人類の存亡がかかっているんですもの……ね?」
ニヤリと笑うリツコ……まあ、後回しにしよう。
リツコは再び煙草を咥えながら、私に話し続ける。
「そうして、幼い頃から鍛え続けたせいかしら。あの無表情、無感情な性格は。
まあ、無理もないわね……ねぇ、こういうの知ってる?」
「……え?」
「ある被験者に問題を解かせて、それが出来なければ科学者が被験者に電流を流す。
でも、その実験の真相は科学者側が実は被験者。
被験者には電流なんて流されずに、テープで悲鳴を科学者に聞かせていただけ。
これ、アイヒマン実験といってね。
ナチスの心理を研究するために行われた、人の残虐性を試す実験だったというわけ。
最後には即死しかねない電圧まで上げてしまう人もいるんですって。」
聞いたことがある。また、似たような実験も知っている。
その実験を繰り返すと、電流を流す側が笑い始めたらしい。
どんな残虐なことでも馴染んでしまえば平気になってしまい、精神の異常もきたす。
「ねぇミサト?つまり、私はその実験結果という訳ね。そして、綾波レイも。
まったく……母さんにNERVへ引っ張り込まれたお陰で、このザマよ。」
リツコ、私に哀れんで欲しいのかしら。黙っていようと思ったけど、言わずにはいられない。
「それで?アスカを素っ裸で溶岩漬けにした言い訳をしたいのかしら。」
するとリツコは笑い出す。
「アハハ、あの時は痛感神経の伝達レベルをかなり下げていたのよ?
せいぜい、バラエティー番組の熱湯風呂ぐらいだったはず。そこまで私は壊れていないわ。」
「漫画は読まないのに、くだらないことは知ってるのね。でも、お陰でアスカの方が壊れたじゃない。」
「あの子、私に噛みついてきたからね。ちょっとお仕置きしたくなっただけ。」
「でも、そこまでして……」
「そう。シンジ君を、ましてや相田君を初見でリンチにかけたあなたのように、ね?」
「あれは……私は……」
私は何も言えなかった。
軍人として私は鍛えられ、あの子達の扱いもその範囲を超えていないと思っていた。
私がドイツに居た頃、アスカのことも自信を持ってしごいていた。そう思っていた。
しかし、私とリツコ。どの程度の違いがあるというのだろう。
そう考えていた私に、リツコは察したかのように言う。
「まあ、あなたはマシよ。流石、軍人と科学者との精神力が違うわね。それにね?」
「え?」
「元来、自由に出来る奴隷というものを人間は誰しも求めるものよ。いや、今の世にはまだ必要なのよ。
リンカーンの奴隷解放宣言なんて、何の役にも立っていないわ。
今の世間の労働条件を見てご覧なさいよ。経営者は従業員から絞りとることしか考えていない。
それが人間の本性の一つよ。」
……吐き気がする。このリツコの言うことがムカついて仕方がない。
いっそ、この場で銃を抜きたいぐらい。
綺麗事と言えばいい。
私は真から、人と生きることの楽しみを知っている。
でも、知りたい。
この果てにいったい何があるのか。
「……ん?」
近くにある内線電話が鳴り出した。
近くにいたリツコが受話器を取る。
「……はい……え?……あらそう……判ったわ。」
そう言って受話器をカチャリ。そして、私に向かって暗い笑みを浮かべる。
「さ、司令部に戻って。続きはまた今度。」
「え?」
「ここに軍隊が押し寄せてくるわ。これもまた、人間の暗い本性という訳ね。」
376 :
◆LRvRIPAn.s :2007/03/13(火) 21:19:00 ID:RUEUXaTx
とりあえず、ここまでっすー
乙!
とりあえずageるな
これは酷い演説でつね
綾波カコイイよ綾波
381 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/13(火) 22:47:04 ID:MYQShDWC
良いところで止めやがって。
まるで、先っちょ入れて、
お預けされたみたいだ。
いいねいいね
アナザーストーリーみたいな感じだ
今更だけど◆LRvRIPAn.s 氏はかなりの雑学っつーか物知り博士ですか?
マジか嘘かは分からないけど、何故か文章にされると納得しちゃう……!
384 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/14(水) 00:02:01 ID:GSBFIrjd
>今の世間の労働条件を見てご覧なさいよ。経営者は従業員から絞りとることしか考えていない。
まさにこの世ですね。
バッドウィルなどの登録制派遣で働かせる労働者達。
一方では、経営者達が努力した見返りにたくさんのお金をもらってる。
政治家達は票集めのためか知らないけど、経済界のことばかり考えてる。
男は男で自由にできる生きている人形を求めている。
時たま、監禁している男やDVのニュースが流れます。
暴力などで支配するのは男の性かもしれませんね。
女はどうかしりませんが。
やるじゃねぇか!!
俺様が褒めてやるぜ!!
まとめページ作んないの?
387 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/14(水) 09:57:31 ID:iPsQtZT7
シンジがサードインパクトを起こして、アスカが復活するとみた。
種運命のラボを思い出した
>386
作って下さい
作者が自分で作ってるよ。携帯だからコピペ出来んが。
とことん甘スレ探してちょ。
「緊急事態!緊急事態!」
「全ての防壁を閉鎖!総員、直ちに装備を確認して備えよ!」
先程のなごやかなお茶会はどこへやら、戻ってきた司令部は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなっていた。
「どこの国からだ!いったい、自衛隊は何やってんだ!」
「兵隊だけじゃない!戦車にヘリ、そして航空隊までこちらに向かっている!」
そんなことを口々に言いながら、銃やライフルを取り出すスタッフ達。
そして一人の者が言う。
「いきなり戦車が来ているなら、答えは簡単だ。」
「何?」
「自衛隊だよ。俺達は自分の国から消されようとしているんだ。」
「なんだって?それじゃ……あ、葛城さん!実は大変なことに……」
初めから軍が押し寄せていることを聞いていたので、
連中が押し寄せてきた理由はだいたい推察が完成しつつある。
これが、いうならば国際社会の浄化作用。
核兵器の廃絶が実現して以来、各国は互いの軍備にやたら敏感になった。
そして今、エヴァという強大な兵器を持つに至ったNERVが使命を果たした後にどうなるか。
現在の世界各国が持ちうる軍備では決してエヴァには勝てない。
核を廃絶に至らしめた思想が、あのエヴァに恐怖を感じたとしても仕方がない。
そして、我々は一人残らず消される。間違いなく。
もしかしたらって、以前から私も考えていた。まさかそこまではしないだろう、とも思いつつ。
所詮、私の考えは甘かったようだ。
もし技術者が生き残ったとしたら、どれほどに高値が付くか判らない。
我々は決して純真無垢な天使様じゃない。必ず悪意を抱くと疑われる。
この私の話を聞いたスタッフ達は顔を青くする。
それをなんとか押し切って一人が言う。
「まさか、そんな。そんなことを国際社会が許すわけが……」
「あら、世論操作なんてウチの広報部でもお手の物だったじゃない。
抹消されるわよ。これまでにも幾つもあった、知られることのない人類の黒い歴史の一つとしてね。」
今度こそ、重い沈黙がスタッフ達を襲う。
そしてただ、MAGIの端末がチカチカと明滅するばかり。
その内容、それがNERVにとってどんな状勢だかを明確に物語っている。
各国にあるNERV支部とのネット接続が次々と消えつつあるのだ。
アメリカ、ドイツ、中国……
こうしていても仕方がない。
同じ死ぬならやるべきことを、やりたいことをやってから死にたい。
しばらく目を閉じて考え、スタッフ達に向けて言った。
「ここにいる者の中に軍の経験者はいるわね?まずは敵を出来るだけ多く殺しなさい。」
え?と驚愕するスタッフ達。しかし、私も躊躇なんてしていられない。
「そして、本部の下層部を特殊ベークライトで埋め尽くす。
連中を孤立させ、そしてある程度の進撃は防げるはず。
そして倒した敵の装備をはぎ取り、連中に紛れて脱出する。」
「ベークライトって、そんなことをしたら大半の職員を見捨てることに……」
「相手は戦闘のプロです。ましてや、連中を殺したらますます我々は……」
私の過激な作戦にスタッフ達は動揺するが、しかしこう言わざるを得ないのだ。
「だから降伏する?無駄だわ。
いい?この使徒との戦いには、世界規模の超法規的な力が動いている。
もともと、そういう世界に私達は居るのよ。
みんな覚悟して。もう私達は人間社会から圧殺されようとしている。
生きているなら生き続けるために戦いなさい。たとえ、仲間の血をすすってでも。」
しかし、私は確信している。もう私達は助からない。
DNAパターンまで社会に登録されている我々がどこに逃げるというのか。ジャングル?無人島?
そうでもしなければ、逃げ切るのは無理だろう。そこまで逃げられる職員がどれほど居るだろうか。
既に銃声が聞こえてきた。この近くだ。
訓練を受けてきたらしい職員が机の下に潜り込んで銃を構える。
が、震えているものもいる。当然だろう、人間相手の戦闘経験なんて持ってる方が珍しい。
そうだ……彼だけでも。
「み、葛城さん!もう、包囲されていますよ?どこへ?」
「ごめんね、みんな。さっきの手を実行して。まあ、あんた達に任せるけど。」
そう言いながら、自分の銃を手に立ち上がった。
「あの子、鈴原君だけでも助けなくては。あの子をここに引っ張り込んだ責任がある。」
そうして戦火の中に忍び込もうとした時、誰かが私の服の端を掴んだ。
マヤだ。顔面蒼白の悲痛な面持ちで私を見上げている。
無理もない。もともとは単なるコンピュータ技師だった子だ。
「マヤ、ゴメンね。あなた達と一緒に戦いたいとも思うけど。」
「……違うんです。あの、葛城さん。センパイを悪く思わないでください。」
「え?」
「センパイはあえて、エヴァのパイロットに関わる稼働試験に私を参加させようとはしなかったんです。
とても人間の仕事とは思えないからって。」
「……。」
「それに、こうなることも予見しておられました。そしてNERVから去れ、と私に言ってくれました。」
「そう……」
「センパイを悪く思わないでください。あの……そりゃ、センパイにはいろいろ悪いところはあります。
私もそうです。でも、いいところだってあるんです。だから……」
「判ったわ。そんなこと、私にはもう判っているのよ。さあ、今こそみんなと力を合わせるのよ。」
もはや、NERV本部は血と炎の海と化していた。
散開して次々と職員達を屠る自衛隊員達。もはや単なる虐殺である。
この敵味方ともに混沌とした状態。この状態なら実にやりやすい。
手近に倒れていた自衛隊員から装備を剥がす。
ナイフ、自動小銃、その他一式……ん?服のサイズが合わないわね。
仕方がない。ナイフ片手に値踏みを始める。よし、あいつがいい。
そうして心に決めた相手の後ろに忍び寄り、口をふさいでナイフで剥きだしの喉を掻き切った後、
またしてもアーミー服を拝借して着衣。ま、なんとかいけそう。
つまり、司令部のスタッフ達に提示した案を自ら実行した訳だ。
今、自分が人殺しをしたとは思えないほどに冷静な私……リツコを笑えないわね。
でも、私をここまで突き動かしているもの。それはリツコが語っていた習慣性からくる残虐さとは少し違う。
リツコから後から聞いた話こそ、私とリツコの合意点。
それは、どうしようもない罪悪感。そのつもりがなく、自分のために相手を陥らせた罪の意識。
私は手に入れた無線機を傍受しながら、彼ら自衛隊に混じって行動を開始した。
『フォースチルドレンは確実に抹殺せよ。並びにファーストチルドレンは必ず生かして……』
やれやれ。私達の殲滅もまた表向きの理由だった訳ね。
つまり、碇司令の計画を横取りしようというわけだ。
私は司令部の戻る前、リツコから全ての話を聞き出した。
「むかーし、むかし。そのむかし。」
そんなのんびりした口調で語り始めたリツコ。
いらだって私はリツコをせかす。
「そんな演出なんてまっぴらよ!早く結論から言いなさい!」
「あら?だから後で話すと言ってるのよ。早く司令部に戻ったら?」
「まだ時間があるわ。軍が近づいているなら、慌てて応戦したってどうしようもない。」
「余裕ね、葛城三佐。ならいいじゃない、ゆっくりお話ししましょうよ。一本どう?」
煙草を勧めるリツコ。私はめったに吸わないんだけど、こういう場合なら欲しくなる。
「いいわ、好きに話しなさい。」
「むかしむかしね。天界に住んでいた人間達は知恵の実を盗んで……」
「そんなところから始めるの?」
「知恵の実を盗んで知性を得たが、神様の怒りを買って地上へと追いやられてしまった。
そして神様は生命の樹になっている生命の実をも人間達にとられることを恐れ、
生命の実を喰らう17人の天使様を配置して生命の樹を守らせた。
人間が生命の実をも手に入れれば、神と等しい力を手に入れることになるのだから。」
「……。」
仕方がない。リツコの好きに語らせてみよう。
「何故そうなったかはわからないけど、一人目の天使アダムは滅びて地上において死を遂げた。
自らの遺体を残して。
知恵の実を食べた人間達は、その知性をもって文明を築き科学技術は発展し続けた。
だが、天界の生命の樹の力には至らない。
さて、あるところに一人の男が居ました。」
「その男はアダムの遺体を発見し、研究を続けました。
そして、その遺体を研究すれば、もっと大きな力を手に入れられる。
そして、天界まで通用する力が得られる。
それを信じて疑わず、その遺体の研究を続けました。
だが、それは実に大変な作業でした。」
「しかし、男の研究が実を結んでアダムの遺体を複写し、
人間が操れる仕組みを取り付けたロボットを作りました。
それを、その男はこう名付けました。『エヴァンゲリオン』と。
折角作っては見たものの、それに乗って操るパイロットが見つかりません。」
「その折りに、一人の女性が名乗りを上げました。
その女性は男と共に研究を積み重ね、エヴァンゲリオンが立派に働けるよう研究を続けました。
やがて、その女性と男は愛し合うようになり、結婚して子供をもうけるまでに至りました。」
「そして研究中に、事故が起こりました。地震が起きて、ある娘の上に機材が落ちてきたのです。
その娘。彼女は男の研究を手伝っていた女科学者の一人娘でした。
ちょっとだけ賢かったので、娘もまた手伝わされていたのです。
しかし、その娘は危ないところで助けられました。
稼働中のエヴァが落ちてきた機材を払いのけ、娘の命を助けたのです。」
「みんなは私の無事を喜びました。そしてエヴァがここまで動けるようになったことに喝采しました。
しかし、悲劇は既に起きていました。
その男の女性がエヴァから消えてしまったのです。
運転席を見渡しても、影も形もありません。」
「その男は、もっともっと大勢の人を集めて研究しました。
そして、必死で原因を究明しようとしました。
そして、自分の娘を助けてもらった女科学者も、そして娘自身も男を手伝いました。
彼らは確信していたのです。その男の妻はエヴァの中に居る。
娘を助けた時に、あまりの力を発揮したためエヴァと完全に融合してしまったのだ、と。
そして男は決意しました。必ずや自分の妻を助け出すことを誓いました。
そして、娘もまた決意しました。助けてくれた男の妻を必ずや助け出してみせる、と。」
リツコは物語を語るかのような口調で、しかも皮肉げな口調で話し続ける。
いいわ。その方が話しやすいなら続けなさい。
「様々な研究と実験が繰り返されました。
しかし、どんな方法を持ってしても、男の妻を助け出すことが出来ません。
時には実験に失敗して、世界の人口が半分に減るほどの大爆発が起きました。
それは予期していて、遠く離れていた男と女科学者の娘は無事でした。
しかし、その実験を行った女科学者は犠牲となりましたが。」
思わず私は口を挟んだ。
「ちょっと待って。まさかそれはセカンドインパクトの……」
しかし、リツコは構わずに話し続けた。
「そしてある時、男は一人の少女を連れて来ました。そして私にいいました。
この子だ。この子の力を持ってすれば、自分の妻を助けられる、と。」
……レイのこと?
「その子にみんなは驚かされました。その子が一人目の天使アダムと大変よく似ていたのです。
そのことを尋ねると男は隠さずにあっけらかんといいました。あの子は二人目の天使リリスだ、と。
そして、この子以外に存在する15人の天使を倒し、最後にこの子を殺した者が生命の樹に到達できる、と。
そして、生命の樹の力を手にすれば必ずや妻を助けることが出来る。
その力を手にした者は神に等しい存在となるのだから。」
私はいい加減じれったくなってしまい、リツコにせっついた。
「話はだいたい判ったわ。そこから先は具体的に判るように話して。
どうやって使徒をおびき出して倒すことに、成功したというの?」
リツコは苦笑いしながら、フッと煙草の煙を吐いた。
「天使様がいるのならば、神様は当然ながら自分たちを許さないだろう。
この様に天使達を弄んでいる自分たちを。
現に捕らえた天使リリスを追い求め、別の使徒が現れたのだから。
男はリリスの力を封じることで、使徒の危機から逃れることに成功。
使徒は何処にリリスが判らなくなってしまい、天界へと帰ってしまった。」
「つまり、リリスを餌に他の使徒をおびき出していた訳ね。なら、ダミープラグは?」
「エヴァがアダムのコピーならば、ダミープラグはリリスのコピー。
地下に眠る古いエヴァに埋め込み、それを時折めざめさせることで使徒をおびき寄せたわけ。
そして……」
「そして?」
「最後にリリスをも殺せばいい。つまり、キングを手中に収めながら他のナイト達を狩り続けた訳。」
「……。」
リツコは、何か思い切ったかのようにタバコの火をもみ消した。
「使徒を倒すにはね。使徒と同じ力が必要なの。
だからこそリリスたる綾波レイにパイロットをさせることを思いついた。
流石に天使様、アダムのコピーとも相性が良い。すぐにエヴァを乗りこなして見せたわ。
そして私達は多くの噛ませ犬を与えて、戦いに勝つことをレイに仕込んでいったの。
そう、多くのパイロットの犠牲を積み上げて。」
だんだん抑えが効かなくなり、荒くなっていく自分の口調が止められない。
「そして、天使同士に殺し合いをさせて居たわけ?
それじゃ、何故シンジ君達まで戦いに巻き込む必要があったのよ!」
「レイが負けては元も子もない。だからこそレイには長距離射撃に専念させて、彼女の前に盾を置いた。
人間達の中ではシンジ君が一番の適任者だったわね。流石、母親の血を引いてるだけのことはある。」
「そんな……司令の実の息子じゃない……」
「さあ?娘なら恋する父親もいるけれど、息子だと妻を取り合うライバルにもなり得るし。」
「……。」
「さ、行きなさい。これで私の話はみんな終わり。みんながあなたの指示を待っているわよ?」
この時、私はリツコに向かって銃を抜いた。
リツコは何も言わない。さあ撃ちなさい、と言うように私に微笑んでいる。
私は銃弾よりも先に穴を開けるほどに彼女を睨んだが、しかし止めた。
もはや、彼女を撃ってもどうしようもない。これから先、一発の弾でも無駄にはできないだろう。
「さよなら、リツコ。もう私は生きてあなたに会えないだろうから。」
そう言って振り向き、エレベーターのボタンを押した。
そして、扉が開いて乗ろうとする私の背中に向かってリツコは言う。
「私は碇ゲンドウを愛していた。そして彼を愛する妻のユイさんが好きだった。
暗い研究室の中で、愛し合う二人の笑顔は輝いていた。そして、その二人をもう一度見たかった。
私は二人の笑顔を見ることが出来るなら。私の全てを捧げても助け出すことが出来るなら。」
とりあえず、ここまでっすー
乙乙
乙
もつ、
リツコ出歯亀かよ
出歯亀?
イヤーデバガメって言葉をわからない世代か・・
わしも年を取ったんじゃのう
出歯亀は誰でも知ってるだろ
乙。GJ。
ついでに
「取り付く島もない」
しま【島・嶋】:4. 頼りになるものごと。よすが。永代蔵四「俄に何に取り付く―もなく」
いや、すごいわこれ。
そうとしか言いようが無い。
皆様こんばんは。いつもありがとです。
そしていろいろご指摘有り難う。
嗚呼、リツコを出歯亀にしてしまっていたなんて……orz
そりゃそうですよね。
「暗い研究室の中で、愛し合う二人の笑顔は」なんて書いたらエッチなことしてる風にしか聞こえません。
この部分は、この直後に訂正させてください。
それから、「取り付く島」のご指摘ありがとです orz
これは私の言葉の生悟りによるミスです。ごめんなさい。
えーと、一日一回のペースを守ろうとと思ってたんですが、次がまだできてません。
出来れば明日貼ります。
重ね重ね、申し訳なく思う次第で……
「さよなら、リツコ。もう私は生きてあなたに会えないだろうから。」
そう言って振り向き、エレベーターのボタンを押した。
そして、扉が開いて乗ろうとする私の背中に向かってリツコは言う。
「私は碇ゲンドウを愛していた。そして彼を愛する妻のユイさんが好きだった。
暗い研究室の中で、私に科学者の飽くなき夢を語ってくれた二人の笑顔は輝いていた。
そして、その二人をもう一度見たかった。
私は二人の笑顔を見ることが出来るなら。私の全てを捧げても助け出すことが出来るなら。」
もー、一日に二回投下とか無茶するからだぜ☆
投げっぱなしにならなけりゃいつまでも待ってるんだぜ
そうそう 一休み、一休み
私は他の自衛隊員と同様に銃を構えながら走り続けた。
慣れない体に重く食い込む装備。だからといって降ろすわけにも行かない。
幸い、私の進路は既に戦いを終えて生きている者の姿がない。そう、幸いに。
が、遂に現れてしまった。
フラフラとよろめきながら倒れかかったNERV職員が私と鉢合わせになったのだ。
(チッ……)
流石に自分の同僚を殺せない。しかし、今は私も自衛隊員なのだ。
仕方がない。私は思いっきり蹴っ飛ばし、それでこの場を済ませようとした。しかし、
「おい貴様!誰も生かしておくな!命令を聞いていないのか?」
近くに居た隊員が見ていたのだ。
そして職員に近づき有無を言わさず銃口を咥えさせ、ドンッと頭を吹き飛ばす。
私はかろうじて動揺を隠し、気を付ける、といってその場を誤魔化すしか無かった。
ミサト、今更ためらうな。
結局、さっきの職員は別の隊員に殺された。
ならば自分の手で引導を渡してやれ。少しでも楽に死ねるように。
しかし、私の中の何かがギリギリと私自身を締め付ける。
鈴原君とて所詮は一人の人間。そのために多くの犠牲を出してよいものか。
所詮は自分の葛藤を晴らすためであって、人の命を大切に、などという良識に従った行動ではない。
目指す先はNERV内の病室のフロア。
このところ、鈴原君は特別に入院された妹とそこで過ごしている。
使徒との戦いを経て疲弊しきった心を癒すために。
そして階段を駆け上がろうとしたその時、少年らしいかん高い雄叫びを聞いてビクリとなった。
「ウワアアアアアアッ!!」
それと同時にマシンガンの銃声が耳を突き刺す。
間違いない、鈴原君だ。
よかった。まだ生きている。
しかも自衛隊員と必死で戦っているのだ。
私はそのまま階段を駆け上がり、ジャージ姿で銃を構える彼の姿を見いだした。
恐らく、彼は機会をうかがって部屋を飛び出し、隊員めがけて乱射したのだろう。
虚を突かれた連中は次々と鈴原君に倒される。よし、あと一人。
私はその隊員の更に背後にいて、流れ弾を喰わぬように物陰に隠れた。
しかし……まずいわね。この格好では、間違いなく鈴原君に撃たれてしまう。
と、考えていると、
カチッ……カチカチッ……
「クッ!!」
無茶苦茶に乱射したためだろう。もはや彼の銃は弾切れしたのだ。
そうと見て余裕の構えで銃を抜く自衛隊員。
「悪く思うな。フォースチルドレン。」
私は後ろからすかさず駆けつけ、手榴弾のピンを抜いて相手の口に押し込んだ。
「グッ……ガ……」
「悪く思わないでね。」
そういって手近の窓から投げ落とす。そして、
……ドォォォォン
「あ、あんた……あんたは……」
この有様を見てうろたえる鈴原君。ああ、そうか。
気が付いて顔を隠していたゴーグルを外す。
「ミサトはん!!」
「よく生きながらえていたわね。流石だわ。」
そう言って軽く褒めてあげたのだが、しかし彼はがっくりと肩を落として嗚咽までして泣き出したのだ。
「あいつら、あ、あいつら……」
ふと、彼が出てきた病室を覗くと、銃弾を撃ち込まれて血が染み出ていたベッドが見える。
遅すぎたのだ。こんなことならリツコの話などのんびり聞いていなければ。
しかし、後悔などしている暇はない。
「なんでや……ミサトはん……なんでや……」
もう、何と言って鈴原君を慰めて良いのか判らない。
しかし、そんな暇もない。慰めている時間があったら逃げる算段を考えなければ。
気が遠くなるほど前途多難だ。彼は世界中でも最重要人物となるであろうから。
とりあえず彼の腕を取ろうとしたとき、本部内にサイレンが鳴り響いて私はビクリと体を震わせた。
「このサイレン、まさか使徒!?」
そして、私の携帯電話がブルブルと作動した。
『ああ、よかった。ご無事なんですね!』
マヤだ。恐らく、このサイレンの意味だろう。
『使徒です!東の上空から使徒が現れたんです!しかも、12体!』
12?そんな、死海文書に記された数は全て倒しているはず。しかも12体もの使徒が同時、とは。
が、ためらっている場合ではない。これで道が開けた。
「いいこと?私が言うように館内に放送して。いや、この電話をスピーカーに繋いで!」
そして、キョトンとしている鈴原君に指示をする。
「さ、私といらっしゃい。妹さんもお連れして。」
『使徒が出現した。もうバカ騒ぎは止めなさい。東の空を見れば肉眼で確認できるはず。
あんたたちの事情は知らない。しかし、あれらを倒さなければサードインパクトは必ず起こる。
互いに殺し合いを止めなさい。これ以上、互いの死傷者を増やせば決して使徒には勝てないわよ。』
そんな私のでたらめな放送がNERV本部に鳴り響いた。よし、これで休戦となるだろう。
ようやく、元の司令部に到着。
すでに自衛隊員の死体が、そしてスタッフ達のものも含めて散乱している。
だがかなり健闘したようだ。使徒を迎え撃つための人員は辛うじて残っているだろう……
そこで私はハッとなって気付いた。
そうだ。私達はこれからあの使徒を迎え撃たなければならないのだ。
私は何を考えているのだろう。私はこの自衛隊の襲来から逃れることばかりを考えていた。
こんな馬鹿馬鹿しいほど簡単なことに盲目だったなんて。
「葛城さん!ご無事で何よりです!」
もはや涙ながらに私にすがりつくマヤ。
「そ、そうね。私が簡単に死にはしないわよ……」
急速にグルグルと回り始める頭をかかえて、マヤの出迎えを受けた。
残っているスタッフ達は頭を寄せて話し合う。
「各部署に連絡しても返事が来ない。エヴァを稼働できるものかどうか。」
「いや、ほとんどオートメーションで可能なはず。大丈夫だ。」
「なんなら自衛隊員に手伝わせてもいい。よし、俺が連中に交渉しよう。」
スタッフ達は夢中だ。
彼らは明敏に動いているようで、何かを無視しているような気がして仕方がない。
12体もの使徒を相手に、まだまだ慣れていない鈴原君に勝てる訳が無いではないか。
「そこの姉さん、妹を頼むわ。」
隣にいた鈴原君が、マヤに血まみれの遺体を預けた。
マヤは新たな涙を流して、血で汚れるのも構わず幼い体を抱きしめる。
「俺はやるで。見とれや、俺があいつらをぶちのめしたるからな。」
そうして立ち上がる彼の目、これまで虚ろだった彼の目が光り輝いている。
しかし、それは暗い輝きであった。何かを思い詰めたような暗い瞳の輝き。
「そうや。ケンスケや妹が死んだのも、あいつらのせいや。そして、ふぬけとった俺のせいや。」
歪んだ彼の思い。全ての成り行きが鈴原君の責任である筈がない。
しかし、その彼の暗い思いが、彼の闘志を奮い立たせている。
また、新たな「業」がここに生まれる。
鈴原君は死を賭して使徒と戦い続けるだろう。
いったいどこまで続くのか。この戦いの因果はどこまで繰り返されるのか。
碇司令の妻への想い。その想いに寄り添うリツコ。
アスカを失っても、初号機に取り込まれても、尚も戦い続けるシンジ君。
そしてまた、友人を失い、妹を失った鈴原君が新たな戦いへと奮い立つ。
「もう、止めて……」
思わず口に出してしまい、隣にいたマヤがビクリと驚く。
「もう、止めて……いい加減にしてよ……いったい、何なのよ、これ……」
「か、葛城さん!?いったい、どうしたんですか?」
心配顔で私の腕に手を触れるマヤ。しかし私はその手を払いのけ、思わずその場にうずくまる。
「お願い……許して……シンジ君……アスカ……私を許して……」
もはや、私自身が精神汚染をきたし始めたのか。
そんなことを呟き続ける私を様子を心配して、マヤと他の数名が集まる。
そうだ……これが私への因果応報。
これが、幼いパイロット達を苦しめ戦いに送り込んできた私自身への因果応報ではないだろうか。
その時である。突然に新たなサイレンが辺りに鳴り響いたのだ。
「……何?」
「これは……そんな、初号機のパターンが青へと変化!」
「え!?」
「初号機が稼働を開始しました!パイロット無し、暴走状態です!」
「シンジ君ッ!!」
とりあえず、ここまでー
震えるぞハート
燃え尽きるほどヒート!乙
乙かしらーっと
あと少しかなぁ…サミシス
とてもいい鬱文ですね。
少しだけでいいから救われてほしい
トウジの一人称は俺じゃない
いっちゃん最初は俺。確かにワシと言ってる時もある。
才能あるヒトっているんだな。
・・・いや、この内容とペース、人間業じゃないな。アンタ実は使徒だろw
これはおもしろい
職人さん乙wwがんばれ
「では、いいかな?シンジ君」
僕に体を握られたまま、微笑まで浮かべながら僕に説明する渚カヲル。
しかも、説明が終わったら僕に握りつぶされなければならない、とのこと。
なんだか狂気じみています。
母さん。なんなんでしょうね、この人は。
「アハハ、生と死は等価値なんだよ。僕にとってはね。
まあ、君達リリンには理解できないことだろう。生き続けるために生まれ出でるリリンにとっては。」
(でも、贖罪って何?そして、回帰って……)
「君達リリンが犯した罪から逃れる方法が一つだけある。
それは、あの碇ゲンドウが生命の樹を手中にした時。その時こそチャンスがある。」
(で、何をすればいいの?)
「僕の手の者を君の元に送るとしよう。まあ、使徒のように見えるけどそれほど力を持った連中ではない。
しかし、儀式を行うには十分だから。」
(儀式って……何?)
「その時になれば判るよ。かつて、2000年ほど前に行われた処刑を再び執り行う。
そして今度の贄は碇ゲンドウ。
彼の血が流され、それが地面に触れれば全ての罪が許され、全てのものが天の園へと回帰することが許される。」
(回帰……)
「そうだ。全ての罪を許された歓喜とともに、魂の回帰が始まる。それが、贖罪と回帰の意味だよ。」
(……それって、死ぬこと?)
「見方の問題だよ。その時に起こることは決して『何とかインパクト』というものではない。
物理的な死とは少し違う。しかし、君にはもう一つ可能なことがある。」
(何?)
「君は今、こうしてリリスの乗る零号機をねじ伏せた訳だ。
僕を殺して彼女も殺せば、君は生命の樹の力が得られる。
そうすれば、君にも等しい力を経て、あらゆる物事を自在に操ることが出来る。
死者を生き返らせることもね。さて、どうかな?やはり、君は贖罪する方を選ぶのかな?」
(……。)
「迷っているね。さあ、決めて欲しいな。制限時間一杯だよ。
父親に贖罪をさせて、君達リリン全ての回帰を選ぶか、
あるいは君の望みを樹の力に託すのか。
このまま握りつぶさないのなら、葛城ミサトがこの地を浄化して、全てはそのままに。
ほら、彼女が秒読みを始めた。彼女は君が手を下すのを待つつもりはないらしい。」
確かに聞こえてくる彼女の声。
9,8,7,6……
(クッ……!!)
そして、グチャリ……と右手に伝わるイヤな感触。
母さん。なんだか僕の頭はグチャグチャです。
なんだか、僕の方が握りつぶされた気分です。
もう何かを考えるのも疲れ果て……そして辺りを見渡すと……
「最後の使徒」を倒したと信じて浮かれるNERV職員達。
時折、僕の前に現れて何かを想うミサトさん、しかし彼女の想いは伝わらない。
そして、同じく何かを思い机に座ったままジッと動かない父さんの姿。
そして、ふと綾波レイの存在に気が付く。
自分の部屋に帰り着いたらしい彼女。
どんな部屋だろうと思っていたが、僕のそれと対して変わらない。
僕よりNERVの在籍が長いはずなのに、必要以上の物がまるで存在しない閑散とした部屋。
……ん?綾波は着替えるつもりらしい。
お定まりの制服を脱ぎ、そして下着まで脱いで部屋の隅にある篭に放り込む。
僕の脳裏に映し出された、スラリとした全裸の彼女は実に美しい。
覗き見している罪悪感を感じたが、なんだか目を離せずにジッと見てしまう。
あはは、こんなになった僕でも性欲は残っているみたいです。
なんだか情けないですね。元気でよろしい、とか言って笑ってくれますか?母さんなら。
ん、綾波。何かつぶやいている。独り言かな。
「……で、どうするの?」
何を言ってるんだろう。
そして小首を傾げるような様子を見せていた彼女だが……あ!
突然に彼女の体が輝き、背に広げられた幾枚もの羽根。
リリスとして目覚めている!?
使徒として検出されたのだろう。大騒ぎするNERV司令部。
しかし、綾波がそうしていたのは一瞬だけ。
すぐに静まりかえる司令部と、顔を見合わせる職員達に余韻を残して。
「もう一度聞くわよ。どうするの?」
そうか。彼女は直接、僕に問いかけて来たのだ。それを示すためにああして……
しかし、僕の声が彼女に届くのだろうか。
(どうするといっても、でも……)
「会いたくないの?彼女と。」
(でも……いや、それでも変わらない。それでは何も変わらない。)
「あなたは自分の痛みを恐れているだけ。自分の気持ちよさを求めているだけ。」
(そうかもしれない。正直いえば、アスカと再び会うことが出来たなら、と……)
「アスカとエッチなことが出来たなら?」
(!!)
僕の口まねでからかい、小悪魔のような笑みを浮かべる綾波。
そんな彼女に怒りを覚えたが、確かにその通りだ。
例え、彼女の笑顔が見たい、人の幸せを願いたい、などといっても根本の動機はその程度。
現に綾波の体から目を離せない浅ましい自分が居るではないか。
「所詮、あなたはリリンの子。生も死も厭わぬ私達とは違う。
生きることを望み、そのために他人と身を寄せ合うことを喜ぶリリンそのもの。」
(……)
「どうするの?碇君。今のあなたなら体は自由に動くわね?」
(……)
「拘束具を引きちぎり、私を掴んで潰せばいい。本当に彼女が欲しいなら。」
(いや……駄目だ。それじゃ駄目なんだ。)
「……?」
(僕は……僕は……)
「そうね。そうして、奥の奥、先の先へと考える。
あなたと、そしてあなたの知る人々は、そうして悩み苦しんで自滅へを自分を追い込む。
そうしなければならない、と思いこんだ挙げ句の果てに。」
(……)
「哀れね……まあ、いいわ。後はお父さんに任せて悩んでいなさい。」
え?
「時間切れ。私を狙って、この本部は囲まれつつある。そうと見て、あなたのお父さんは先手を打つ。」
そう言いながら新しい服に着替える綾波。
彼女のいう通りだ。
ヒタヒタと第三新東京市に近づきつつある戦自の部隊らしい姿が見える。
水も漏らさぬ包囲網を敷き、一気に取り囲むつもりらしい。
「さよなら。」
あ……
あっさりとした綾波の別れの言葉。
それとほぼ同時に彼女の部屋の扉が開く。
「時間だ。」
碇ゲンドウ、僕の父さんだ。
「来い。」
「……はい。」
そういって父の背に続く綾波。
見放された……そんな気がした。
もう綾波は何も言わずに、父さんの後に従って歩いていく。
そして行き着いた先は地下の奥深く。
そこは深い闇に包まれた広い部屋。禍々しいまでに入り組んだ装置を闇に隠した広大な……
「ここに立てばいいの?」
部屋の中央で、綾波は父さんに尋ねる。
「ああ、そうだ。」
顔は無表情のままに答える父。
どのような装置か判らないが、綾波を死にいざなう為であることには間違いない。
彼女もそれは知っているだろう。しかし、何も知らずにいるようにも見える。
「……司令、そこまでです。」
その時、ふと闇の中から現れた一人の男。
その右手には銃が握られ、綾波のこめかみに突きつけられている。
「あなたがその機械を動かす前に、私が引き金を引く方が早いですよ?碇司令。」
「君は、その子がなんなのか知っているのか?」
尋ねる父。そして答える男。ああ、加持さんだ。
「ええ、もちろんです。さ、俺と来るんだ。こんな茶番な儀式の犠牲になる必要はない。」
恐らく綾波を説得しているつもりだろう。綾波が事情を知らないと思い込んでいるらしい。
しかし、綾波はピクリとも動かない。
「君がその子を望むなら、なぜ今すぐに引き金をひかない?」
その父の問いかけに、加持さんはニヤリと笑う。
「まあ、ね。これを必要としているのは俺じゃない。」
「成る程……君も同じか。君も又、魅入られた一人というわけだな。」
「……?」
何も理解できずにいる加持さん。
いや、僕には判る。父さんの言っている意味がなんなのか。
「では、失敬しますよ。ここで乱痴気騒ぎが始まる前に。」
そう言って綾波を伴って立ち去ろうとする加持さん。しかし、
タンッ……
鳴り響く乾いた銃声。更に闇から現れた一人の人物。
リツコさんだった。突然に打たれたため、何も言えずに倒れる加持さん。
そんな彼を冷たく見下ろした後、リツコさんはエレベーターに乗り込む。
「では、司令。ご存分に。」
そう言って、彼女はエレベーターで昇っていく。
上からは下層の様子を見回るためだろうか、ミサトさんが降りて来た。
その彼女を出迎えに向かったのだろう。あるいは、ここで行われることを見せないために、だろうか。
そして、綾波と父さんのもとに静寂が戻る。
装置に手をかける父さん。しかし、容易には動かない様子。
「どうしたの?」
問いかける綾波。が、父さんは動かない。
「どうしたの?……いや、いいわ。こんな機械なんて必要ない。」
そういって、父の方に近づく綾波。
歩きながら上着を脱ぎ、父さんの右手を自分の胸に押し当てる。
「!!」
ズブズブと綾波の胸の中に沈み込む父さんの手。流石の父さんも驚愕を隠せない。
「これは……そうか、お前は使徒として目覚めているのか。」
「さあ、それを握りつぶせばいい。」
今、父さんの手に握られている物。それは綾波レイの心臓か、それともリリスが持つ赤いコアなのか。
「何故だ。そうと知った上で何故、私に殺されようとしている。」
「さあ、時が来た。あなたの念願が成就する時が。」
「……。」
念願。それは何の願いか。母さんを生き返らせる?それとも……
グシュッ……
あ……
ばたり、と倒れる綾波。ついに父さんが手を下したのだ。
これで、全ての使徒が倒されたことになる。
そう、遂に生命の樹に到達したのだ。僕の父さんが。
何も起こらない。何も動かない。
そのままジッとしていた父さんであったが、
「……ガァッ!!」
突然、そんな呻き声を上げて倒れ、全身を両腕で押さえて藻掻き始める。
やがて、どこからとも無く現れた毒々しい触手が、父さんの体を包んで全身にまとわりつく。
「ガ……ガ……ガ……ガ……ガ……ガ……」
いったい何が起こっているというのか。
まさか、これが生命の樹なのか。
まさか、これが生命の樹に到達した者の姿であるというのか。
まさか、到達した者が生命の樹そのものに化すということなのか。
やがて父さんの体は直立して、両腕は大きく広げられる。
その腕と胴が十字と無し、両脚から無数の枝が伸びて木の根と成す。
これが……これが、生命の樹……
<では、そなたの元に参るぞ!碇シンジ!>
突然に頭の中に響く声。
ビクリと驚いて辺りを見渡すと……あそこだ。遙か上空に浮かぶ12体の新たな使徒。
そして僕の所にやってくる。僕と、そして父さんの元に。
<碇ゲンドウの処刑の儀を始めるぞ!心せよ、碇シンジ!>
そうか、あれが渚カヲルが言っていた使いの者。
これから僕は……そうだ、僕は父さんの処刑を行わなければならないのだ。
どうする、シンジ……
どうすればいいの。ねえ、教えて。どうすればいいの?母さん……いや……
……迷ってどうする。
今更、考えて何になる。
シンジ、見てみろ。
シンジ、見えてるんだろ?
ほら、NERV本部で始まってしまった、このバカ騒ぎを。
次々とNERV職員が倒されていく有様を。
そして、無抵抗のままに殺される鈴原の妹の姿を。
それでも足りない?
なら、これならどうか。鈴原が死を覚悟して、今にも出撃しようとする姿では?
そして、既に心破れた葛城ミサトの姿ではどうだ?
さあ、どうする!碇シンジ!
……ッ!!ウワァァァァァァァァァァァァッ!!
僕の絶叫とともに、バリンッと全身の装甲が吹き飛び、背中に開かれた6対の羽根。
<来たれ、我らの元へ!彼の者を処すべき13人目の使徒となるのがそなただ!>
そして、遙かな上空を目指して僕は飛び立つ。
NERV本部の隔壁を雲霞のごとしと突き破り、そして尚も上空へ。
これが来襲した使徒の力だろうか。見下ろせば、生命の樹が後に続いて浮上してくる。
そう、それこそ変わり果てた父さんの姿が……
いや、もう迷わない。僕には迷いはない。
彼を討たなければならない。
彼を……そう、僕の父さんを。
やがて僕達は、12の使徒が築く真円の中央に浮上する。
僕はその中央で停止し、生命の樹はさらなる高みへと浮上。
使徒の一人が僕に近づき、手渡したもの。
……これは。
<ロンギヌスの槍。さあ、彼の者をこれで討て。>
そうだ。これで終わる。母さん、これで全てが終わるんだ。
そして、僕は投擲の体勢に入る。そう……全てがこれで終わる……
(待って!)
その時、僕の背後から響き渡る凛とした声……母さん?
(違うわ。あなたは間違っている。それでは単なる復讐のための処刑。それでは駄目。)
母さん!何が違うというの!
いや、待てない!迷わない!復讐というならそれでもいい!
(待って!アタシが待てと言ってるのに!それでは贖罪が成立しない!)
……ッ!!
………………
…………………………ああっ!?
(だから、待てと言ったのに。ほら、それでは彼のATフィールドは破れない。)
その通りだった。
父さんが、生命の樹が展開した強力なATフィールドに阻まれて、
槍が突き立ったまま貫くことが出来ないようだ。
(如何にロンギヌスの槍を用いたとしても、樹の力は破れない……少し、待ちなさい。)
そして地上から飛び立ち、あっというまに僕の背後まで到達した影。それは……
母さん……?
それはかつてNERVの地下で見た旧式のエヴァ。
そう、母さんが取り込まれた筈のエヴァであった。
(待ちなさい。あなたのお父さんが心を開き、ATフィールドが解き放たれるまで。)
そして、更に母さんは浮上し、樹と同じ高さに至り……父さん……?
父さんが……笑った……?
ドシィィィィッ!!
あ……
(これで……あなたのお父さんの罪が許される。そして、全ての罪がゆるされる。)
……全ての、罪。
(そう、全ての罪が。地上にありとある罪が今、許される。贖罪が成立したのよ。)
そして、遂に始まる狂喜のカーニバル。
槍によって貫かれた生命の樹から、おびたたしいほどにほとばしる血潮。
それが地上へと届いた瞬間、悲鳴にも似た歓喜の雄叫びが地上の全てを埋め尽くす。
みるみると姿を変える地上。喜びと共に死にゆく人々。
死……いや、只の死ではない。
全てが、地上の全ての生命が帰って行くのだ。
自らの姿を失い、互いに解け合い、一つとなって雪崩れ込む。
それは何処へ?そう……神の御許へ、と。
「あ、ああ……あなたは……あなたは……!」
「ああ、センパイ、センパイ、センパ……」
「そうか……おまえか……ワシを迎えにきたんはやっぱりお前なんやな……ハハハ……」
死んだはずの家族、出会えるはずもない知人に再会し、歓喜の中で死に行く人々。
何故?それは、その者の罪が許された瞬間なのだから。
(さあ、彼女を見送ってあげて。)
……え?
(彼女にも許しが必要よ。さあ、それがあなたの役目。)
バリンッ!!
「ああっ!!」
僕の体からコアが外れて……
いや、もう僕は既に初号機では無くなっていた。
初号機のコアが砕けて、僕は初号機から解放されたのだ。
そして、ゆっくりと地上へと落ちていく僕の体。
その行く先は勿論……
「ミサトさん……」
「シンジ……君……?」
これまで、その場にうずくまっていた彼女が僕を見上げた瞬間、
輝かしい笑顔を浮かべて、そして僕を両腕いっぱいに抱きしめる。
「シンジ君……ああ、そんな!シンジ君!ああ……ああ……神様!!」
「み、ミサトさん……いや、ミサトさん待って!そんな、イヤだッ!!」
「シンジ君、ああ、シンジ君シンジ君シン……」
パシャッ……
「そ、そんな……ミサトさん……そんな……」
(彼女が好きだったの?)
「判らない……判らないけど……でも……」
(そうねぇ……でも、冷たいわね。一緒にいた私の名前ぐらい呼んでくれたって。)
「え!?」
「じゃーん!!」
ずっと僕の後ろから話しかけていたのは、まさか……
「あ、アスカ!?」
「ンもう……ずっと、アタシが話しかけてたってのに、気付かないなんてさ。」
「え、あ、あの。」
「だーから、最初に違うって言ったでしょ?このマザコン男。」
「あの、あの、アスカ、あの……」
「ほら、男でしょ?抱きしめるとか何とかしたら?」
「いや、あの、でも……僕は……アスカを……」
すると、アスカはクスッと笑いながら僕に手をさしのべた。
「いいのよ……今、全てが赦されたのよ……」
「ああ……アスカ……」
「さ、逝きましょう。とりあえずは、ね?」
「うん……アスカ……」
そして、僕は
パシャッ……
(終劇)
えーと、次を作ってそれで最終回にします。
終劇としたのは区切りとするためです。
それから、トウジの一人称の件、確かに最初は俺だったんですが、
やっぱりワシにします。その方がしっくりきます。ご指摘どーもですー
GJ!!!
最終回 楽しみに待ってます!!
すげぇ…
最終回がヱヴァより楽しみだw
ここ読むのホント楽しみだよ
職人さん超GJ!!
オッス!オラ何かわくわくしてきたぞ
460 :
保守:2007/03/19(月) 06:41:49 ID:???
保守
(ユイ、やっと会えたな。)
(フフ、よかったわ。あなたが受け入れてくれて。)
(そうだな。もしかしたら、俺はお前に会うことよりも……)
(復讐?)
(そうだな、復讐か。あるいは自分の力が及ばないための憤りか。)
(そうね……)
(しかし、ユイ。大丈夫なのか?あの二人は。)
(大丈夫よ。生きていこうとする力があるなら何処だって天国になるわ。生きていけるなら何処だって。)
(そうだな……ところで、ユイ。お前は……)
(……さあね。教えてあげない。)
(そうだな……ま、それもいいか……)
まだ、目を覚まさない……うーむ。
むにゅっ……と唇を引っ張ってみる。
鼻をつまむ。
瞼を開けてみる……うひゃ、白目が怖い。
キスで起こせ?やったわよ、それ。
こいつ、鈍感なんだもの。ホントにもう……よし、怒鳴ってみる!
「こらぁぁぁぁぁッ!!起きんかい!!バカシンジィィッ!!」
だめか……
このアタシが起こしてるっつーのに、こいつめ……
よし、最後の手。えーと、どうだったかな?
ひとつ、口を塞いで、
ふたつ、鼻を塞いで、待つこと……おいおい、これじゃ死んじゃうよ?
あ、気が付いた。
「ぐはっ……げほげほ……」
「かわいいアタシが起こしてやってるのに、ようやくお目覚め?」
「あ、あ、アスカ?あの……」
「あーあ、格好つけて膝枕なんかしてあげるんじゃなかった。足、しびれちゃったわよ。」
「えーと、ゴメン。その……ここは?」
「ここ?決まってるじゃない、地獄の3丁目よ。」
そう言っても過言じゃない世界。
全ての生けとし生けるもの全てが溶け崩れて消え果て、辺り一面はLCLの海ばかり。
近代文明は全て瓦礫と化し、生きて動いているのはアタシ達だけ。
そう……アタシ達、二人だけ。
「みんな、いっちゃったんだね。」
ボソリと言うシンジ。それも、寂しそうに。
「ミサトさんも、リツコさんも、そして……父さんも、母さんも、みんな……」
「それじゃ、シンジは帰ってきたことを後悔してるの?」
「判らない……」
「ははーん、さてはアンタ。天界の楽園でママのお膝に甘えたかった訳ね?」
「……。」
図星って訳?この野郎ォ……
すっぱーんッ!!
「痛ててっ!なにすんのさ、アスカ!」
「うるさいっ!もう、絶対に許さないから!」
「え、な、何をさ!」
「あんた……アタシを握りつぶしておいて、忘れたなんて言うんじゃないでしょうねぇ……」
「いいぃぃっ!!全てが赦されたってあの時……」
すっぱーんッ!!
「痛いっ!だからぁ、痛いって言ってんじゃんアスカぁ!」
「前言撤回っ!!そんなんだから神様から門前払い喰らったのよ!あんたとアタシは!」
「そ、そんなことって……あるの?本当に?」
「ほんっとに細かいことばっかり、男のくせにィ……ほら立ちなさいッ!」
「は、はい!」(シャキッ)
「次ッ!おんぶ!」
「はいッ!……て、なんで?」
「なんでって……膝枕してたから足しびれたって言ったでしょ?」
「そんなぁ……そんなの、アスカの勝手じゃん……」
「ほらぁっ!グズグズ言ってないで、おーんぶ!」
「まったくもう……いきなり人使いがあらいなぁ……」
やっとのことで私を背負って立ち上がるシンジ。が、よろよろと今にも倒れそう。
「なぁによォ?そんなにアタシ重い?」
「え、あ、あ゛、あ゛の、でも、どこに行く……の……?」
「うーん、そうねぇ……走れ!とりあえず!」
「いいっ!!これで走れっていうの!そんな無茶な!」
「いーの!シンジ走れ!とにかく走れ!」
「い、痛ててて!そんな、僕は馬じゃないんだから蹴らないで!」
そして走り出す、その瞬間。
軽く後ろを振り返ると、その背後に見えるもの。
それは古い古い旧式のエヴァ。
その胸元にあるのは砕け散ってしまった赤いコア。
そう、シンジのお母さんが取り込まれていた赤いコア。
(ユイさん、ありがとう。アタシに譲ってくれて。)
(アタシ、行くね?あなたのシンジを連れて。あなたがずっと見守っていたシンジを連れて。)
どういう理屈か判らないけれど、
どうしてこうなったのか判らないけれど、
シンジのお父さんが願ったこと。
シンジが要求した贖罪の代わりに、お父さんが望んだこと。
それは単なる『回帰』ではなく、『再生』を望んだのだ。
そうだ、私達は再生を託されたのだ。それは、いったい何のために?
判らない。どうだっていい。アタシは、シンジと一緒ならどんな戦いだって挑んでみせる。
(ユイさん、どんな人かも判らないけれど、私は誓います。必ず、必ず……)
「も、もう駄目だよアスカぁ……」
「これっくらいで音を上げてどうすんのよ!アタシはあんたを絶対に許さないんだから!」
「そんなこといったって……」
「ほーら、エネルギー充電120ぱーせんとぉ!!」
「ちょ、ちょっと、そんなにおっぱい押しつけないで!ああッ!」
(必ず……シンジを必ず幸せにしてみせます……だから……)
「ね?まだまだイけるイける!」
「ちょ……アスカ、それはエネルギーと違う……」
(だから……ちょっとだけ、あなたの息子さんをシゴキますね。ゴメンナサイ♪)
「えっ……ほっ……えっ……ほっ……アスカぁ……どこまで……走るのさぁ……」
「どこまでもイクのよ!アタシ達はどこまでも!」
(完)
えーと、これで終わりです。
皆様、最後の最後まで読んでいただいて、ありがとです。
ここまで書き進められたのも皆様のおかげです。ほんとです。
レスも付かないのに延々と作品貼れる人はいません。
次で終わりとか書いておいて、ありふれた簡単なものになってしまったかも知れないけど、
これで十分かと思って、これだけにしました。
一応、いわゆるLASなんですが、アスカといってもアスカの名の付く別人で、
ツンデレどころかデレデレのベタ惚れアスカにも見えるので真のLASとは言えないッス。
その他、好き勝手にいじくるために、各キャラが本物とは全然人格が違ったりしてるかもです。
その点で、いろいろ不快感があったらごめんなさいです。
つーわけです。
どうも皆様、有り難うございましたー
1ゲト!乙!
ケンタッキーの回あたりはホント好きでした
乙としか言いようがない
これは立派なこれ以上ないLASだ
3番目ー
本当に乙
面白かった
LASとか以前に、ちゃんと救いがあってよかったw
今まで乙!
微妙としかいいようがないがとりあえず乙
一日で全部読んだw
乙
乙!かれさまでしたー
乙
(拍手しながら)
―――おめでとう
おめでとう!
479 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/19(月) 16:27:34 ID:/cZvvNts
己!クソッ!ちょい涙が―――
480 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/19(月) 16:46:35 ID:fYblbTqe
劇場版よりも面白かった。
よくやったじゃねぇか。
てめぇにしてはよくやったほうだぜ。
ここまで書ける人がエヴァ板にいたのか…
乙でした、楽しかった!
文章とか技法ははっきり言って並以下
だが、構成とストーリーは最高だよ、あんた
おめでとさん
よかったよ
泣ける2ちゃんねる@エヴァ板
だなこりゃ…
乙だった。
485 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/19(月) 21:31:03 ID:1/XhRx/w
これも一つのエヴァの終わり方なのかもしれない。
「ほどよく虐待してみる」を通り越した傑作だね。
シンジにおめでとう。
アスカにおめでとう。
そして、LRvRIPAn.s にありがとう。
乗り遅れたwww
乙。
しかし、これからどうするのこのスレ?
スレタイ通りのネタスレにするにはもったいない気がする・・・
乙です!
最初からずっと読んでますた
あんたネ申だよ
甘やかすスレよりシリアス度が高い分、こっちの方が好きだわ
ただ大袈裟(もちろ良い意味で)過ぎて後続者が出てきそうにないな…
なんか最後、取ってつけた感が・・・作者の苦労を感じた。
とにかく乙です。
よくぞ書ききられました。
こんだけwktkしたのは久しぶりだったよ、ホントありがとう。
適当に休んでまた新作をお願いしますよ。
492 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/20(火) 19:28:38 ID:9FskY9jA
ホントよくやった。あ、前レスでいい忘れた。
シンジにおめでとう。ありがとう。
皆様、ホントに沢山の感想を頂いてありがとです。
皆様にありがとうと言いたい訳ではあるのですが、
特に、構成とストーリーを
>>482様にご評価頂けたのが大変嬉しかったです。
なぜなら、始めてしまったが最後、最後に辻褄があったらご喝采ってな気分で、
文字通りつじつま合わせと言い訳に追い回された気がするので、
その点を見て貰えたのがとても嬉しい。
逆に、
>>473様「微妙」
>>490「取って付けた」という意見も頂いていることもあり、
やっぱり荒いところが私にゃまだまだあるなぁと反省せざる終えないところ。
また、
>>482様による文章と表現についてのご指摘も、なんというか身にしみるところでありまして、
もう自分の考えを「事務的に」「簡単に」「読みくく無いように」書くのが精一杯の有様。
逆に何か表現を凝ってみようとして、こっぱずかしいことを書いてしまったりしているような気がしたり。
いや、こういうのを書くのって本当に難しいです。
話を戻しまして、エンディングについては確かに「取って付けた」感じは自分でも致しますが、
どうも私には、無理にでも安直なエンディングにしていまいたくなる癖があるようで、
本編と同じ「アス×シンの二人っきりエンディング」が安心感があっていいなぁと思い、
「結局シンジは負い目を無理矢理背負わされたけど幸せなら良い人生じゃないか」という意味づけも出来て、
そっから逃げられなくなってしまいました。書き始めの時はミサトパシャで終了とか考えちゃってましたが。
何とかは兵を語らず、などと申しますが、いろいろ感想を頂いたお礼をしたくて、今ひとたび顔を出させて頂きました。
あと、このスレはご自由にどーぞー
すげーおもしろかった!乙かれさん!
たとえ無理矢理だとしてもアスカに救いがあって正直安心しちゃった
495 :
482:2007/03/20(火) 22:22:31 ID:???
あんたがちゃんとした文章書き出したら敵はいないな
一気に読んでしまった
最後まで書ききった神にありがとう。シンジおめでとう
シンジ・アスカにおめでとう。
◆LRvRIPAn.sにありがとう。
まとめまだ〜?
もうあるっつーのにw
急に寂しくなたのぉ・・・
RIPAがネタ貼るために立てたすれだからねぇ。
ネタが終われば用済みな訳だ。
でも名残惜しいのでage
この職人、毎度自作を投下して読んで貰う為だけに、専用の新スレ立てるよね。
で使い捨て・・・
確かに自信なさ気なふりはしてるけど、自信ないとできないよなぁ。
実際おもしろいしいいんだけど、スレの使い方には正直疑問を感じる。
506 :
???:2007/03/23(金) 18:39:05 ID:???
一応保守
508 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/27(火) 14:51:28 ID:Sp5QdWyU
次回作はー?
お疲れ様〜
名作をありがとう
512 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/28(水) 22:54:58 ID:gvwXrJjV
結局、シンジやアスカが冷遇されている理由は何だった?
んなもん作者の趣味以外ねーだろw
他の理由なんて後付けでしかねーよ
「あー。もう5だぁ。帰らなきゃぁ。」
玩具を砂場に放り投げて、少女が言った。
放られたプラスチックのソレは、音も無く横たわる。
赤と白と黄色の、薄汚れたスコップ。
「……帰っちゃうの?」
「うん。もう時間だもん。」
砂を掘り返しながら、少年が言った。
「ねぇ、もうちょっとだけ…、」
「だぁめ!おかあさんが迎えに来るもん。」
両手を広げながら、少女は大げさに言った。
公園のおおきな時計は、もうすぐで5時を指す。
かぁかぁと鴉が鳴いて、さわさわと葉が靡いて。
それから空は、黄色とオレンジ。
誰も居なくなろうとしている広場は、いつもより広かった。
「おかあさんねぇ、約束の時間破るとこわいの。」
サーモンピンクのワンピースをひらひらさせて、後ろに手を組んで。
「にゅにゅって、ツノが頭に生えてくるんだよ?」
がおー、と言いながら、両手の人差し指を頭の両端へ。
「シンジくんとこのおかあさんは?」
首をかしげて問う少女に、シンジは「う」と肩を上げた。
「……わかんない。」
ざく、と砂にスコップを突き立てて抉る。
乾いた砂の表面を覆い返すように、湿った土色の砂が現れた。
「…ちゃーん、…ちゃん!!」
「あ、おかあさーん!!」
小さく、女の人の声が聞こえた。と同時に少女が走り出す。
地べたの落書きや忘れ物のオモチャを蹴って。
まっさらな靴下が汚れるのも構わず、一目散に駆け寄る。
ジャングルジムの付近で、少女は母親に抱きついた。
その様子を遠目に見つめる少年。
「おそいじゃないの、もう。」
「…ごめんなさい。」
「おうちに帰る時間は?」
「5と12の数字の時ーっ!」
元気よく母の問いに答える。
「そうね、でも今日は4と12の数字の時って言ったでしょ?」
「……あー、」
ちゃんと人のお話は聞きなさい、と咎める。
語尾が少々きつい。おそらく怒っているのだろう。
そうすれば、少女は微かに涙ぐんだ。
「おかあさん、怒ってる?」
「…どうして怒ってると思う?」
「約束破ったから、」
「――そうね、でも。一番は、お母さん心配したからよ。」
と言って、頭をくしゃと撫でる。
さぁ、帰りましょ。
と手をつなぐ親子の姿を、シンジは横目で見送った。
ざく。
公園には、誰も居なくなった。
シンジ以外は。
ざく。
ざく。
ひとりぼっち。
公園に、シンジ一人。
ざくざくざくざくざくざくざくざく。
夕焼け小焼け。
日が暮れても、日が落ちても、シンジ一人で砂を掘った。
掘っては積み掘っては積み、砂の小山をただ作る。
作っては壊し、壊しては作った。
幾度も幾度も、延々と。
靴の中に砂が入った感触を覚えたけれど、それも気にせず。
靴下が汚れたけれど、それも構わずに。
知ってる。
帰らなければならない時間が過ぎても、父は来ない。
けれども、何度も何度も土を抉った。
ざくざくざくざくざく――ぐしゃ。
ざくざくざくざくざく――ぐしゃ。
鴉も、もう鳴かない。
ざくざくざくざくざく――ぐしゃ。
もう一回お山を踏み潰したら、来てくれるかな?
もう一回お山を踏み潰したら、来てくれるかな?
お父さんが来てくれないのは、お仕事が忙しいからだよね。
知ってるよ、ぼく。
だから、ぼくまってるよ。
お父さんが来れるまで、何度も小山つくるからね。
ざくざくざくざくざく――ぐしゃ。
爪の間に砂が入っている。
それも気にとめなかった。
手のひらに砂粒が張り付いている。
それも気に留めなかった。
ざくざくざくざくざく――ぐしゃ。
お父さんが来てくれないのは、お仕事が忙しいからだよね。
知ってるよ、ぼく。
ぼくが嫌いだからこないんじゃないよね?
ちゃんと解ってるよ、ぼく。
わかってるんだ、だからちゃんといい子でまってるよ。
心配しないで、お父さん。
ゆっくりお仕事しててね。
いそがないでいいからね?
お父さん、いい子がすきでしょう?
ざくざくざくざくざく――ぐしゃ。
だから、だからね。
お父さん、だからさ…
帰るときは、手をつなごうよ。
手をつないでかえろうよ。
ざくざくざくざくざく――ぐ「シンジ。」
その一言に、はっと振り向く。
「…とうさっ「何をしている。早く帰れ。」
「でも僕……っ、でも僕は…父さんと帰りたくて、」
「甘えるな。行くぞレイ。」
ゲンドウの影から、小さな少女。
でも、あのね父さん、一緒に……!」
「甘えるなと言った。もう行け。手間を掛けさせるな。」
半壊した砂の小山を踏みつけながら、その二つの影を見送る。
手を繋ごうと、綺麗なまま残しておいた左手が、虚しく揺れた。
「…父さん、父さん、父さん、…父さん…。」
どうして?
どうしてまってくれないの?
どうして僕を迎えに来てくれないの?
僕のこと嫌いだから?
じゃあ、僕は待ってる。
父さんが好きになってくれるまで、ずっとここで待ってるよ。
父さんが迎えに来てくれるまで、ずっとここで待ってるからね。
出来るだけ早く僕のこと好きになって。
出来るだけ早く迎えに来てね。
父さんと手を繋ぐ方の手は、綺麗なままとっておくから。
砂に汚したりなんかしないから。
ざく。
ざく。
ひとりぼっち。
公園に、シンジ一人。
そして再び土を弄りだす。
ざくざくざくざくざくざくざくざく。
夕焼け小焼け。
日が暮れても、日が落ちても、シンジ一人で砂を掘った。
掘っては積み掘っては積み、砂の小山をただ作る。
作っては壊し、壊しては作った。
幾度も幾度も、延々と。
靴の中に砂が入った感触を覚えたけれど、それも気にせず。
靴下が汚れたけれど、それも構わずに。
ざくざくざくざくざく――ぐしゃ。
来ない迎えを待ちながら、終わりの日まで砂のお城を作っては壊す。
たとえ、爪が剥がれて血に塗れても、少年は作業を止めない。
>>512 シンクロしすぎるとエヴァに取り込まれてしまうので、
ほどよく虐待することでモチベーションを下げていた。
多分後付けだろうけどねw
マグマダイブはほどよかったか・・・?
まぁ終わった物語なぞどうでもいい、かも知れない。
お前ら新作に乙くらい言ってやれw
え〜っと・・・『シンジをほどよく虐待してみる』本編の後に別の切り口で
新作を投下した根性と勇気のみに乙。
あの後じゃ、どんなネタも投下しずらかろうに・・・
そもそもスレ主だけが投下しやすいように作ったスレだしなぁ
とりあえずは新職人に乙。
ココでの挑戦は無謀かしれんが、案外俺も含めて少々期待してるよ。
あげ
新職人乙
続きはあるのかな?
たまには甘やかすスレのことも思い出してあげてください…
533 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/08(日) 00:24:55 ID:Onvoc08T
スレタイから外れそうだけど、ネタ投じてもいい?
ま、スレ再利用と言うことで。
どぞー
激しくLRvRIP氏おつ!ちょっくら覗くかってな気持ちで来たのに
気づいたらこんな時間になるまで一気に読んでしまった。
中だるみってのをほとんど感じられずに読めたよ。面白かった。
流れ切ってごめんね、どうしても感想を書きたくなってしまったもので。
それではおやすみ。
バラバラバラバラバラバラ……
ヘリのプロペラ音が鳴り響く中、一人の少年がようやく目覚めて朝食をしたためている。
『今朝未明、第三新東京市周辺に突如あらわれた巨大生命体「使徒」は……』
そんなテレビのニュースを見ながらポカンとしている少年、碇シンジ。
巨大生命体?何それ、そんなものがどこから来たの?と。
いや、そんな言葉自体は彼の脳裏に浮かばなかったかも知れない。
この昔の怪獣映画のような映像が正規のニュース番組で流されていること自体、
とても信じられることではない。
ましてや、ついさっき目を覚ましてトースト片手の寝ぼけた彼の頭では。
しかし、
(なんだろう?ヘリの音がやけにうるさいな……)
……バラ!バラ!バラ!バラ!バラ!バラ!バラ!バラ!バラ!
(ち、近い!?)
ドンドンッ!ドンドンッ!
……ドガシャーンッ!!
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
シンジが叫び声を上げた時には、彼はすっかり取り囲まれて既にねじ伏せられていた。
「目標、確保しましたッ!」
そう報告したのは、物々しい完全武装で身を固めた自衛隊員の代表の一人。
それに応えたのはなんと一人の女性の声。
「手荒なマネな止めてと言ったでしょう!」
カツ、カツ、カツ……という足音が聞こえてくる。
うつぶせにされたシンジの目にかろうじて飛び込んできたもの。それは紛れもなく女物のハイヒール。
「まあ、いいわ。連行して」
「ハッ!!」
そして無理矢理に担ぎ上げられ、家の外へと連れ出される。
「ちょっと待って!あの、これはいったい……」
抗議しようとするシンジ。
その彼の保護者らしいものが現れ、隊員達に問いつめようとするが一切取り合わない。
これが法治国家のやることなのか、という有様でこの強制連行はあっという間に完遂された。
ヘリに乗せられ、自衛隊員の間に挟まれ、今だパジャマ姿の碇シンジ。
何が何だか訳が判らない。テレビ番組のドッキリ?そうであれば良いのだが。
何故?何故?何故?を連呼する頭を抱えたシンジの目の前に、再び先程のハイヒールの主が登場する。
それなりに美形。そしてスタイルも良い。
しかし彼女の厳しい表情が、そんなよこしまな考えを抱かせる隙を与えてはくれなかった。
「碇シンジ君ね。私は特務機関NERVの戦術作戦部作戦局第一課、作戦部長葛城ミサト」
「あ……NERV?父さんの……」
「そうよ。それじゃ、これを着て」
「え?あの、ちょっと!」
自衛隊員の横暴はまだ続く。
着ていたパジャマを下着ごと一気にナイフで切り裂かれ、シンジはあっという間に全裸にされてしまった。
どこで練習したのか、というほど見事な手際だ。
「早くこれを着せて。本部、そちらの状況はどう?」
そう言いながら一着のボディースーツを隊員達に手渡すミサト。
もはやシンジと対話するつもりはないらしく、
彼が抗議したり逆らったり、あるいは迷ったりする暇を何が何でも見せるつもりは無いようだ。
ミサトはもはやシンジの相手すらしようとせず、通信モニタに向かっている。
その彼女に対して、そちらも厳しい表情の通信相手が答える。
『日向です。零号機はかろうじて使徒シャムシエルと応戦中です、が……』
「彼女の体調はどうなの?」
『傷口が開いて出血が酷いようです。このままでは』
「もう少しよ。サードチルドレンを連れて帰るから、もう少し持ちこたえさせて」
『ですが、あの……』
「何?」
『東京湾沖合から、新たな使徒が現れたんです。使徒サキエルが間もなく上陸する模様……』
「何ですって!?」
こんな感じで。
スレ残り半分以下だし、さしずめ「シンジを思いっきり急がせる」ということで。
おや
意外な始まり方
NERV本部。
それこそが、使徒襲来に備えて世界規模の人力、財力が注がれて設立された最大規模の特務機関である。
そして遂に使徒が現れた今、本部内ではこれ以上ないほどの混乱が巻き起こっている。
使徒が同時に2体出現。その状況は想定されていないはずもない。
しかし実のところは、それに対して抗しうるだけの準備が整っていなかったのが現状のようだ。
「使徒サキエル、あと五分でここに襲来します!」
「零号機パイロットの血圧、脈拍数さらに低下!シンクロ率が徐々に下降しています!このままでは!」
「零号機のライフル、残弾ゼロ!予備の射出を急がせよ!」
飛び交うアナウンスと罵声と怒号。
そんな本部内で、平静を保っているのはこの二人だけだろう。
NERV副司令の冬月。そして碇シンジの実父にして総司令、碇ゲンドウである。
ゲンドウは淡々と命ずる。
「初号機パイロットの到着と同時に零号機と収容。可能な限りの修復をさせろ。その準備をしておけ」
「はッ!!」
そんな彼をたしなめるかのように冬月は口を開く。
「修復だけか?パイロットの治療はどうした」
そんな冬月をジロリとにらみ返すゲンドウ。
「言い方の問題だけだ。どちらでも変わらん」
「しかしな、碇。自分の息子をいきなり実戦に出すというのか?使徒二体を相手に」
「冬月。我々はどんなことをしてでも生き残らなければならん。それが、人間というものだ」
「そうだな。しかし、ワシが使徒なら……」
「なんだ?」
「現れた二体に加えて更にもう一体、ここに送り込む。それが確実とは思わんか?」
「……」
その冬月の言葉で無言となるゲンドウ。さしずめ、認めざるを得ない、というところか。
そして、振り向いて部下に命ずる。
「ドイツ支部に連絡、弐号機とパイロットの空輸を急がせよ」
「はッ!!」
使徒と向き合う零号機。
必死で攻撃をかわしながらライフルを撃ち続けるが、しかしなんら効果を得ていないようだ。
巨大な虫か蛇のような姿の使徒シャムシエル、ムチのような両腕で執拗に零号機を攻め続ける。
その使徒に足下をすくわれ転倒する零号機。
ようやく立ち上がるものの、その足取りはふらつき今にも再び倒れてしまいそうだ。
『ポイントB-3の地点に予備のライフルを射出します!』
そんな指示がパイロットに伝えられられるが、果たして聞こえているのかどうか。
エヴァンゲリオンはパイロットとの神経接続によって操縦が行われる。
つまり、パイロットの状態がモロに影響を受けるのだ。
その零号機の様子からして、戦い続けられる状態とは言えるものではない。
その上空に数機のヘリが現れる。それこそが碇シンジの強制連行を果たした自衛隊のものだ。
「パイロットは負傷しているの。ついこの間に手術を受けたばかり」
少しでも碇シンジのやる気を煽ることが出来れば、とミサトはシンジに語る。
「あなたと同じ14歳の子供。そんな子供達でしかエヴァの操縦は出来ない」
「そ、そんな……でも、僕には無理です。見たことも聞いたこともない……」
うろたえるシンジ。しかしミサトは何が何でもシンジをエヴァに乗せなければならないのだ。
「お父さんから何も聞いていないのね。あの使徒を倒さなければ全ての人類が滅びてしまう」
そう言いながら部下に命ずると、ヘリの床が開いて何やら操縦席のようなものが姿を現す。
「乗りなさい。これが本体に挿入されるエヴァの操縦席」
「え……あの……」
尚も戸惑うシンジであったが、そんな彼の両肩を自衛隊員が押さえようとするが、
しかし、今度はミサトがそれを止める。
「待ちなさい。自分の意志で操縦席に乗りなさい……ん?レイ!」
ミサトは急に振り向いてヘリの窓から下を見下ろす。
見れば零号機はふらつきながらも立ち上がり、そしてナイフらしきものを取り出している。
指示されたはずのライフルを取りに行こうともしないで。
効果の得られない銃撃を諦め、近接戦闘に持ち込もうとしているのだ。
「む、無茶よ!レイ、戻ってライフルを使って!」
通信モニタに向かって怒鳴るミサト。その画面に映るパイロットの姿をシンジは見た。
何か液体の中に漬けられているのか、ゴポゴポと泡立つのが見える。
しかし顔がよく見えない。パイロットの出血でモニタ全体が赤く染まっているのだ。
(あ、ああ……)
シンジはその過酷な有様に身を震わせた。
怖い。恐ろしい。逃げたい。帰りたい。
しかし、なんとか出来ないのか、助けてあげられないのか、という思いもまた込み上げてくる。
「レイッ!!」
それがパイロットの名前だろうか。再びミサトが絶叫する。
ふらふらした足取りながらもナイフを構える零号機。
そして使徒に向かって突進する。そして!
ドガッ……!!
「日向君!やったの!?」
尋ねるミサト。今度の相手は本部らしい。
『はい!零号機のプログナイフがコアを砕き、使徒は完全に停止。しかし、零号機大破!』
「状態は?」
『使徒シャムシエルの最後の抵抗で左足を切断され……来ました!使徒サキエルです』
倒れる使徒シャムシエル。そして同様に地面に倒れ伏した零号機。
その両者の背後に立つ影。それは禍々しい巨人の姿をした使徒サキエルであった。
「……シンジ君」
ミサトはシンジに呼びかける。
しかし名を呼んだだけで後は何も言わない。それ以上、語る言葉など無い、というかのように。
シンジは震えながらもうなずき、そして操縦席に向かう。
「よし、初号機を射出。このままヘリでエントリープラグを挿入するわ……出来るわね?」
ヘリのパイロットに問いかけるミサト。
「ハッ!お任せください!」
それは相当な操縦技術を要するだろう。正に総力戦だ。
人力、財力、科学力、そして技術力も、人類の全てを賭けた戦いはもう既に始まっているのだ。
「頼むわよシンジ君。あなたが、初号機との適正がもっとも優れたあなただけが頼りなのよ」
本当のところ、まだまだシンジには状況を理解しているとは言い難かった。
しかし、やらねばならない。戦わなければ生きてはいけない。
やれるのは僕だ。僕しかいないのだ。
その思いだけが彼を突き動かし、ついにパイロットとなることを同意させた。
そして、シンジを乗せたエントリープラグの扉が今、とじられる。
果たして彼は生きてそこから出ることができるのだろうか。その保証はどこにも無い。
うーむ、この調子でよければ続き書きますー
GJ!
乙
この調子で頼んだ
期待age
ズシッ……ズシッ……ズシッ……
巨大な足音を立てて零号機へと近づく使徒サキエル。
既に倒された使徒シャムシエルのための仇討ちか、そうでなくても使徒にとって攻撃目標なのは間違いない。
もう零号機は戦えない。左足を切断され、立ち上がることは不可能だ。
何とか手近なビルに手をかけ、あるいは地面をはいずり逃れようとする零号機。
しかし使徒サキエルはすぐそこまで来ている。零号機の命運は風前の灯火だ。
地上に射出された初号機に接続されたエントリープラグ。
そこに搭乗した碇シンジは戸惑うばかりだ。
「ど、どうすればいいんですか、うわっ……」
更に謎の液体LCLが操縦席に注がれてパニック状態に陥るシンジ。
『落ち着いて。このエヴァの操縦はあなたとの神経接続によって行われるの』
突然、目の前の中空に画像が現れる。その人物はNERVの技術開発部、赤木リツコ博士である。
「え……その、どうすれば……」
『つまり自分の体だと思えばいい。イメージするのよ、初号機が自分の思い通りに動くと信じるの』
「信じろっていったって、あの」
無理な話といっても間違いではない。とはいえ、尚も愚図るシンジにしびれを切らした葛城ミサトが怒鳴り散らす。
『動くかどうかなんて言っている場合じゃないわ!動きなさいッ!』
「そんな……」
『人類が滅ぶだの、零号機が危ないだの、そんなことは問題じゃない!次の餌食はあなたよ!』
そしてモニタに映し出された映像を見れば、すでに使徒は零号機に掴みかかって居るではないか。
零号機の頭を片手で掴み、高々と持ち上げる使徒サキエル。
もうダメだ。あの零号機はやられてしまう。
今、動かなければパイロットもろとも倒されてしまう。そして、次は初号機という訳だ。
「う、動け……動け……」
どうしていいか判らず、操縦桿とも見えるものを掴んでブツブツと唱えるシンジ。
動かせと言われても、イメージしろと言われても、やはりどうすればいいのか判るはずもない。
「動けよ……なんだよこれ、どうすりゃいいんだよ…………動いてよ、お願いだから……」
そのシンジの声。本部の司令室でも通信を通して響き渡っている。
「やはりダメか……」
落胆するスタッフ。もはや手を組み合わせて神に祈るものも居る。
「やはり奇跡は起きない……か?所詮は、オーナインシステムと呼ばれた初号機では……」
そういうのは先程の赤木リツコ。その側にはヘリから降りてようやく到着した葛城ミサトの姿がある。
「……」
もう彼女も何も言わない。言ってもしょうがない。
もはや賽は投げられたのだから。
ガシッ……ガシッ……ガシッ……
凄まじい轟音が辺りに鳴り響く。それは使徒が零号機の頭を砕こうとしている音だった。
「……動けっ!動けっ!動けっ!動けっ!」
焦り、叫び続けるシンジ。もう、無茶苦茶に操縦桿をいじくり廻して藻掻き続ける。
その時、司令部に絶望的な報告が入る。
「使徒ガギエル上陸!こちらに来ます!」
どよめく司令部。そして使徒の姿が、巨大な魚の姿をした恐るべきガギエルの姿がモニタに映し出される。
無茶苦茶な勢いで地上に這い上がり、街を踏み荒らし、這いずりながらこちらに迫っているではないか。
それを見て指示を下すNERV総司令、碇ゲンドウ。使徒に対して通常兵器では役に立たないと判ってはいても。
「戦自に通達。少しでも良い。どんな手を使ってでも足止めせよ、と。」
「ハッ!」
当然、その有様はシンジの耳に届いていた。サーッと血の気が引いていくのが自分でも判る。
「おい、動けよ……このままお前が動かなかったら……」
もはや泣きそうになりながら呻き声を上げだしたシンジ。それでも初号機は動かない。
そして、遂にシンジは怒り、そして絶叫する。
「いい加減にしてよ!このまま終わっていいのかよ!動いてよ!動けよ!動けってばッ!!」
ドクンッ…… ドクンッ……ドクンッ……ドクンッ……
「え……?」
これまでにない感触がシンジの全身を包む。
それこそが初号機の鼓動であった。
初号機が遂に動き出したのだ。
「来たッ!」
その誰かの叫び声を聞いて、ハッとなって顔を見上げるNERV本部。
「シンクロ率が40を超えました!初号機、活動開始します!」
オペレーターのアナウンスが改めて報告され、スタッフ達が思わず歓声を上げる。
そして、ミサトはシンジに指示を出す。
「動けるわね、シンジ君。いい?何でもいい、とにかく零号機から使徒を引きはがして!」
それに答えるシンジ。
『は、はい……』
「何をしても良いわ。今、使徒が零号機の頭を掴んでいるけど、頭ぐらいなら大破しても構わない」
『……はい!』
「ただし急いで。新たな使徒がこちらに向かっているわ」
『はいッ!』
一歩、二歩、三歩……
ようやく歩き始める初号機。
動く。動ける。動いている。
その感触を肌身に感じ始めるシンジ。
(いける。なんだかよく判らないけど、操縦できている)
どうやら、シンジの心に自信と希望と、そして早くもプライドまでが目覚め始めたらしい。
(やれる。みんなを救えるのは僕なんだ。あの零号機とかいうパイロットを救えるのは僕だけなんだ!)
そして歩き始め、走り出し、さらに使徒に向かって突進する。
「うわぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
ハッとなって振り返る使徒サキエル。
それに対してストレートパンチを見舞う初号機。
そして、そのまま走ってきた勢いに任せて強烈なぶちかましを喰らわせる。
ズドドドドドッ……
東京市のビル群をなぎ倒して倒れる使徒。あっさりと零号機から引きはがすことに成功したのだ。
『よくやったわ!すぐそこの収容口まで零号機を運んで!切断された左足を忘れないで!』
そのミサトの指示と同時に、近くのビルと思われていたものの扉が開く。
それはエヴァの射出、収容に使用されるエレベーターであったのだ。
まだ操縦を始めたばかりのシンジには慣れない作業だ。
が、時間がない。モタモタしていては使徒サキエルが立ち上がってこちらに向かってくるだろう。
『来たわ!お願い、急いで!』
言われなくても、と愚痴を言いたいところだが、やっとのことで零号機を担いで収容を終えたシンジ。
そして使徒サキエルに向き直るが、しかし当の相手はようやく立ち上がったばかりだ。
(……来た、というのは……まさか)
ふと、使徒サキエルの背後に目を向ける。すると、見えてきたのは魚のような巨大な影。
ギクリと驚くシンジ。
このままでは、使徒二体を同時に相手をしなければならなくなってしまう。
どうやら、戦自の抵抗はまるで役に立たなかったらしく、最短の時間でここに到達してしまったようだ。
『シンジ君、プログナイフを抜いて!零号機がやったようにコアのみを狙うよ!』
しかし、そんなことを言われても具体的な操作はまだ知らないのだ。
「ど、どうすればいいんですか?」
慌てて聞き直そうとするシンジであったが、
「あっ!!」
ピガッ……ズズーン!!
使徒サキエルから凄まじい閃光が放たれ、それが初号機に直撃する。
真後ろに倒れる初号機。それに迫り来る使徒サキエル。
さらにその背後には使徒ガギエルが居るのだ。
またしても絶望的な状況の振り出しに戻されたかのようだった。
『立って、シンジ君!立つのよ!』
うめきながらシンジはミサトの声を耳にする。
そして見上げてみれば、迫り来る使徒サキエルの巨大な影。
(う……う……うう……)
初号機はともかく、シンジ自身が受けたダメージで打ちのめされている。
初号機と神経接続されている、ということは痛感神経までもパイロットに接続されているからだ。
(た、立たなきゃ……立って、こいつを倒さなきゃ……)
頭を振って、立ち上がろうと必死になる。しかし、初号機よりも自分の体が言うことを聞いてくれない。
(クソッ!このままじゃ……)
その時である。
『惣流アスカ・ラングレー!遅ればせながら只今参上っ!!』
そんな陽気な名乗りと同時に、上空から飛来する赤い影。
『とうっ!!』
……ズシィィィィンッ!!
凄まじい轟音と同時に着地した赤く輝く機体。
それこそがドイツから空輸されたばかりの、惣流アスカ・ラングレーが操る弐号機の登場であった。
ここまで書いてみますた。
えーと、誤解の無いように申し上げます。
スレタイとは異なり、「シンジを思いっきり急がせる」という名目で書いて遊んでまーす。
おう遊べ遊べ。
他の死味にしてる
投下町age
こうして地上に降り立った弐号機は、間髪入れずに使徒との戦いに加わった。
そして、手にした戦斧を振るい、
ズガッ!!ズズゥゥゥゥン……
初号機に迫っていた使徒サキエルをはじき飛ばす。
見事な操縦。かなり手慣れているらしいことは新参のシンジでも見て取れる。
そして初号機を助け起こしながら、弐号機のパイロットは尋ねた。
『あんた、名前は?』
通信モニタが表示されて、弐号機のパイロットと思われる姿が映し出される。
それは弐号機の機体と同様に、赤いプラグスーツに身を包んだ一人の少女であった。
「えっと……僕はシンジ。碇シンジ。」
『お聞きの通り、私が惣流アスカ・ラングレーよ。あんたがサードチルドレンね?』
「さ、サード?」
『そうよ。私がセカンド。あの零号機のパイロットがファーストって訳』
「そうなんだ」
『それじゃ、私はあのデカイのをやるわ。こんなのチャッチャと倒しなさいよ。バカシンジ!』
「なっ……!」
いきなりのバカ呼ばわりで面食らうシンジ。
なんだコイツは?いきなり登場して仕切りまわして、人をバカ呼ばわりするなんて。
そんなシンジの不満げな表情を、新参の勝ち気な少女は構ってやしない。
『ほら、モタモタするんじゃないの!更にこいつらの、その次が来るわよ。このペースならね!』
「え?」
弐号機の到着によって活気づくNERV司令部。
活気どころか、零号機とそのパイロットの治療にも忙しく天手古舞いの状況だ。
「ファーストチルドレンの状態は?医務班、聞こえているか!」
「予備のバッテリーの準備を急げ!初号機、弐号機ともに同じ仕様で良い筈だ!」
「ライフルや装備の予備もだ!技術部、増産を急げ!」
そんな中。
使徒との戦闘中の最中ではあったのだが、顔を寄せ合い議論する首脳陣。
赤木博士に尋ねるゲンドウ。
「赤木君。参号機の建造は?」
「既に完了していますが、稼働試験は行われていないと……まさか」
「そのまさかだ。すぐに空輸するように米国政府に打診しろ」
それに対してミサトが尋ねる。
「しかし、パイロットが居ません」
「他のエヴァが大破した時の予備としても役に立つ。急がせろ」
「……判りました。ん?青葉君、どうしたの?」
「はい。それが、浅間山が噴火したとのことで」
「浅間山?死火山という訳でも無いけれど、まさか!」
背後から冬月副司令が呟く。
「最後に噴火したのは江戸の中頃だ。自然に、とも考えられるがこの情況だ。タイミングが良すぎやしないかね?」
それを聞いたミサトは命ずる。
「今すぐ調査隊を派遣するよう、政府に連絡!」
そして尚もエヴァ各機の戦いは続く。
ようやくプログナイフの装備を終えて突進するシンジ。しかし、
パキーンッ
「な、なんだよこれ!バリア?」
何かに阻まれて初号機は使徒サキエルに近づくことが出来ない。
『ATフィールドよ。それが在る限り、我々は使徒を倒すことも近づくことも出来ない』
赤木博士が答えた。
「そんな、それじゃどうやって?」
『エヴァンゲリオンは使徒と同じ力を持つ筈よ。同様にATフィールドを展開することも、そして突破することも』
「筈って、そんなことを言われても!皆さんが作ったんでしょ?」
『あんたの気合いがたんないのよっ!!』
そう言って割り込んできたのはさっきのアスカだ。
『男でしょ!?そんなフィールド、気合いでぶっ飛ばしなさいよ!』
「……くっそぉぉぉッ!!」
もう破れかぶれだ。
なんとシンジはナイフを収納して、両手でフィールドに掴みかかったのだ。
『シンジ君!?お願い、無茶は止めて!』
モニタの向こうで叫ぶミサト。が、どうやら頭に来たらしいシンジの耳には聞こえていない。
しかし、その初号機の爪が徐々にATフィールドに喰い込みはじめているではないか。
「まさか……」
驚くミサト。
フィールドに食い込んだ爪が、布でも破ろうと言うかのようにATフィールドを引き裂き始めたのだ。
「アスカの言うことも間違いじゃないわね。あの子が煽り立てたお陰で、初号機の実力が引き出され始めている」
ミサトの傍らで解説するリツコ。
そして遂にフィールドが完全に引き裂かれ、使徒に掴みかかる初号機。
「うおおおあああッ!!」
もう無茶苦茶に殴りつけるシンジ。まるで虐められて切れたいじめられっ子の様だ。
『ナイフを使って!コアを破壊するのよ!』
シンジはハッとなって己を取り戻し、初号機にナイフを装備させる。
しかし、その瞬間に使徒先エルはこの世の物とは思えない奇声を上げながら様態を一変させた。
なんとゴムのように体が伸びて初号機を完全に包み込んだではないか。
「まさか!自爆する気!?」
ピガッ!! ズズゥゥゥゥン……
「クッ……情況は!初号機は!」
自分の嫌な予測通りに使徒が自爆したのを見て、報告をせかすミサト。
「初号機大破!……いや、待ってください!損害は装甲板のみ!パイロットも健在です!」
「あ、ああ……」
モニタに映し出される裸身の初号機。その悪魔のような姿にNERVスタッフ達はうめく。
が、そうもしていられない。損壊をすぐにでも修理しなければ。
「シンジ君、すぐにさっきの収容口へ!」
その時、アスカは苦戦していた。
「うぉぉぉおぉぉおおおッ!!」
雄叫びを上げながら戦斧を突き立てようとするアスカ。しかし先程のATフィールドの力か、なかなか傷つけられない様子だ。
「こん畜生ッ!!コアってどこよ!ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいッッ!!」
半ば強引に地面に戦斧を突き立て、テコの要領で使徒ガギエルをひっくり返す。
見事な手並みだ。が、その使徒の腹はまったくの無地。
『アスカ!無理なら後退して!バッテリーがもう持たないわよ!』
そのミサトの指示に怒鳴り返すアスカ。
「うっさいわねぇッ!となると……嘘よ、嘘よね?アスカ。嘘だといってよ」
どうやら自分の考えに戸惑っているらしい。しかし勇者アスカは心に決めた。
「ええぃッ!虎穴に入らずんばッ!いくわよアスカッ!!」
『アスカッ!!』
絶叫するミサト。アスカはなんと、使徒ガギエルの巨大な口に飛び込んでしまったのだ。
「ああ……」
微かなうめき声と共に静まりかえる司令部。
使徒シャムシエルとの戦闘以来、彼らはもはや躁鬱状態だ。
が、すぐに事態は展望する。
グキッ……バキッ……バキバキッ……
使徒ガギエルから突き出た戦斧。更に弐号機がその巨体を食い破って姿を見せる。
歓声を上げる司令部。そして戦斧を掲げて勝ち鬨を上げる勇者アスカのガッツポーズが夕陽に輝く。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
使徒は完全に活動を停止。司令部は拍手喝采だ。
「スカイウォーカー親子の言う通りね。デカイ奴は内部から。それともルーカスに感謝すべきかしら?」
そんな陽気なアスカにミサトの愚痴が聞こえてくる。
『まったく……さすが14歳ね、子供はみんな無鉄砲なんだから。アスカ?』
「勇敢、と言って欲しいわね。何?ミサト」
『数分しか時間は取れないけど、休息と補給を受けたら噴火した浅間山に向かって。』
「アサマヤマ?日本の地理なんて知らないわよ。」
『輸送機が運ぶわ。使徒サンダルフォンが姿を現した。今、動けるのは弐号機だけなのよ』
「判ったわ……なんで、いちいち名前を付けるのかしら?ナンバリングでいいじゃない」
そういうアスカと弐号機の周りに、NERV技術部のトラックが群がる。
そしてLCLを撒き散らながら弐号機から降り立ったアスカは、遠くに見える噴火の煙を見て意気込む。
既に廃墟と化した第三新東京市の瓦礫の中で。
「待っていなさい。あんただけじゃなく、残りの使徒は私が全て倒してやる」
とりあえずここまで書いてみますた
アスカ、か…漢だ…
アスカすげぇww
GJ、GJ!!!!超GJ!!!!漢なアスカは好きだ。職人、がんばってくれ。
投下町age
572 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/15(日) 15:04:39 ID:u0KGbaUy
>>522 ゲンドウひどすぎ・・・
シンジはゲンドウに愛してもらいたがってるのに。
いつまでもいつまでも山を作りつづけてるシンジ君、けなげです。
ところで、ふと、思ったんだが、
劇場版にも似たようなシーンがあったような…
ある意味、本編もこのスレッドの仲間にはいるかもしれないw
何気に扱いが悪い。
ぼろくそにけなされ、距離をおかれてる。
>>566 や、やられました…
こっちも使徒の同時展開をもくろんでたのですが、あっさりやられてしまうとは。
しかも、何気にうまい。
はやくここまでかけるようになりたいです。
「う、うう……」
呻き声を上げながらようやく気が付いたシンジ。使徒自爆の衝撃で気を失っていたらしい。
如何に頑丈な初号機のお陰とはいえ、まったく影響がない筈はない。
イジェクトされたエントリープラグのハッチが開いて、そこに作戦部長の葛城ミサトが覗き込む。
「無事みたいね。私が判る?私の声、聞こえる?」
「あ、はい……ミサトさん。あの、」
「ああ、そこから出ないで。もしかしたら、すぐにでもアスカの支援に向かって貰うかもしれないし」
「……はい」
「悪いけど休息はこのままで。食べる?」
差し出されたのは小さなサンドイッチ。
それをシンジは口にする。しかしウェッとえづいてしまい、とても食べられる状態では無いようだ。
ミサトは、そんなシンジを見て溜息をつく。
「無理もないわね。それじゃ、お願い」
「はい」
ミサトに代わって覗き込んだのは一人の看護師。彼女が手にしているのは点滴の針だった。
「え、あの、痛ててッ!」
「注射ぐらいで声を出さないでよ。食べるのが無理なら血管から入れるから。それから、これ飲んで」
「へ?あ、あのミサトさ……モガモガ……」
再びミサトが何かを咥えて水を含みつつ覗き込み、舌を使って無理矢理にシンジの口に何かを押し込んだ。
「安定剤。少しで良いからそれ飲んで眠りなさい。それじゃ」
今度は優しく軽く唇にキスをしてから、彼女は去っていった。
こうして束の間の休息をとるシンジであったが、NERV本部のスタッフ達はそんな暇など無い。
「初号機の再装備はあとどれぐらいだ」
「あと15分はかかり……」
「人力を全て集中させて10分で終わらせろ。初号機が戦えなければ何にもならんぞ」
「ハッ!!」
そんな具合に指揮を執るゲンドウの傍らで、ピシリという音が聞こえてくる。
それは将棋の駒を打つ音。冬月副司令がこの修羅場の中で将棋盤に向かっているのだ。
そんな場違いなほどに落ち着き払った彼の態度が気にくわないのか、ゲンドウは横目で睨み付ける。
「冬月、遊んでいる場合か」
「ふむ……」
碇総司令の声が聞こえているのか、いないのか。冬月はジッと将棋盤から目を離そうとせずに動かない。
「……フン」
そう吐き捨てるゲンドウ。諦めたのか部下達の方に向き直る。
しかし冬月の脳裏は裏腹に全て今後の展開に集中されていた。
(これはまだ前哨戦だ。最終的な狙いは「ここ」だ。地上で暴れたところでどうにもならぬ)
(我らを試しているか?しかし油断がならない。使徒が現れれば我々は手駒を走らせなければならない)
(弐号機が出向いた。しかし、初号機と零号機が修理を終えれば。そして参号機が到着すれば……)
(これだけ在れば使徒は容易には勝てない。ならば?弐号機の様に「ここ」から引き剥がせばいい)
(さて、次はどこからだ?北か?東か?いずれにしても、我々はここで待てばいい)
(ならば……)
そして突然に冬月は立ち上がり、呼びかける。
「碇」
それに対して返事もせずにジロリとにらみ返すゲンドウ。冬月はその彼の名をもう一度よびかける。
「碇、上だ。上から来るぞ」
「何だと?……おい」
「ハッ!」
ゲンドウに顎で命ぜられ、レーダーを操作するオペレーター。
「上空の全ての高度において、我々の航空機以外に反応は……ん?なんだ、これ?」
「どうした!明瞭に返答しろ!」
「は、はい!大気圏外に巨大物体が出現、パターンは……」
その時、背後からゆっくりと近づいてきた冬月が後を引き継ぐ。
「青だろう?碇、これは面倒だぞ。どこに落ちるか知れたものではない」
「……ッ!初号機はまだか!」
舌打ちしつつ、ゲンドウは部下を走らせる。
そんな彼を見送りながら、別の者に命ずる冬月。
「戦自研に問い合わせよ。陽電子砲の準備はまだか、と。エヴァだけでは使徒には勝てん」
「新たな使徒!?大気圏外から?」
そう驚いているのは、たくましくカツサンドを頬張りながら浅間山に向かうアスカであった。
その彼女に説明するミサト。
『そうなの。出来れば初号機をそちらの支援に向かわせようと思ってたけど、難しくなりそうね』
「いらないわよ、あんなヘナチョコ。でも、あいつに勝てるの?」
新参の後輩とはいえ非道い言い回しだ。ミサトは苦笑いで答える。
『初号機を目覚めさせただけでも立派よ。禄に訓練も受けていないのに』
「ハッ!実力の99%は本人の努力よ。生まれ持った素質なんて私は認めないわ」
『彼に辛くあたらないで、アスカ。貴重な戦力よ?彼もあなたも。無茶をしないで』
「だァいじょうぶよ私なら。それにしても何これ、耐熱スーツ?弐号機も私もダンゴ虫みたい」
彼女のいう耐熱スーツ、それは弐号機に急遽ほどこされた局地戦用のD型装備であった。
そして到着した浅間山は地獄のような有様であった。
噴火した火山から溶岩から流れ出し、周囲の野山は既に火の海。
そして火口から恐るべき使徒サンダルフォンが奇声をあげつつ姿を表す。
「また魚ァ?あ、足が生えてきた」
まさしく生物の進化のなぞりだ。
サンダルフォン、それは胎児の象徴。そう、魚の姿に似てエラまで備えているという人間の胎児だ。
それから手足が伸びて人の姿となると言う。まさに太古の生物の歴史をなぞりながら人は生まれ出でるのだ。
そこまで考えたアスカは初めて恐怖のようなものを胸中に抱く。本人は認めたがらないであろうとも。
(私は、私達は大自然の全てと戦おうとしているの?大いなる大地と緑なす自然、その父母を相手に……)
が、勇者アスカはひるまない。
「ええィッ!いくわよアスカ!とぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
冷却用のケーブルと、そして命綱を接続された弐号機は輸送ヘリから急降下し、そして、
ズドドドォォォォンッ!!
弐号機は真上から戦斧片手で使徒に直撃し、火口の中へと沈められる使徒サンダルフォン。
そして弐号機共々マグマの中へ。
「そっから二度と外に出さないわよ!覚悟しなさい!」
そしてNERV本部。
「落下推定位置は、この本部から約30キロ離れた……ここです。それでも10キロ四方の誤差があります」
オペレーターからその報告を受けて、冬月はため息をつく。
「それでも落下の衝撃は100キロ四方に及び、本部を巻き込むのか。いや、それ以上……」
「勝つ方法はあるのか?」
そうスタッフ達に尋ねるゲンドウ。
それに対してミサトが進み出る。
「この上は、エヴァのATフィールドをもって受け止め、殲滅する以外にありません。が……」
更に、それを赤木リツコ博士が引き告ぐ。
「エヴァ3機。最低でも2機が必要です。使徒を封じながら攻撃するのは不可能」
「零号機の出動は無理だ。弐号機の情況は?」
「それが、苦戦しているようです。このままでは……」
「う、ううん……」
『目が覚めた?出撃よ。すでに初号機はシンジ君ごと輸送中』
「ええ!?次の使徒がもう来たんですか!」
『今度は空から。作戦はただ一つ、上空から落下する使徒をエヴァで受け止める。それしかないわ』
まだシンジは訳の判らない状況だ。やがて、初号機は地上に降ろされる。
『しゃんとして。現在、上空2万5000。じきに肉眼でも確認できるわ』
「受け止めて、そしてどうすればいいんですか?」
『あなたは受け止めることだけを考えて。それ以上のことをシンジ君に要求しない』
「い、いったいどこで待ち受ければいいんですか?ここなんですか?」
『途中まではスーパーコンピュータMAGIが誘導する。後は……あなたに任せるわ』
「任せるって……そんな……」
『距離2万を切ったら始めるわよ。現在2万3000!』
「え……は、はい!」
愚痴ってもしょうがない。逃げ道など何処にもない。降りることなど出来ない戦い。
(こうまでして……なんで、こうまでして戦わなくちゃいけないんだ……どうして……)
何故、何故、という言葉がシンジの脳裏にあふれかえっていく。
そして次第に見えてくる、使徒の姿。
(あれは……空。そうだ、空だ。空が落ちてくる)
今まで迷う暇もなかったシンジが、ここまできて初めてこの戦いに疑問を、そして恐怖を抱き始める。
(そうだ。使徒、つまり天使。天使の名を冠せられた使徒。僕達の相手はつまり、神……)
『スタートッ!!』
ミサトの掛け声と共に、打たれたように走り出すシンジ。
行き先をMAGIが補正し、まっしぐらに落下する使徒に向かう初号機。
が、そんな激動の最中で尚もシンジの苦悩はつのり、そして声となる。
「ミ、ミサトさん……いったい僕達は……」
全力疾走する初号機の激しい振動の中で、何かを言おうとするシンジ。
『シンジ君!速度が落ちるわ!集中して!』
「僕達は……僕達はいったい何と戦ってるんですか、あれは、あれは……」
『考えないで!集中してって言ってるでしょうッ!!』
そのミサトの一喝でもシンジの苦悩は押さえられない。
「あれは神の姿……僕は神と戦い、神を殺せというんですか!ミサトさん!」
『シンジ君……』
シンジがそう言うのも無理はない。
やがて見え始めた毒々しい使徒の姿。それが微妙に変化し始める。
その背後に光り輝く翼のようなものが浮かび出されているではないか。
まさに天使のそれ。翼を広げた使徒の姿。
ミサトは振り返り、オペレーターに尋ねる。
「あれは何?もしや、使徒サハクィエルの背後には……」
「間違い在りません。このパターン、背後にいるのは正しく使徒アラエルです」
それを聞いて、これ以上無いほど顔をしかめるミサト。
しかし彼女もまた悩んだり迷ったりしている場合ではないのだ。
今にも地上へと到達しようとする使徒サハクィエル。
それを初号機が、シンジが受けきらなければ我々は敗北する。
そうすれば全てが終わる。全て無に帰してしまうのだ。そして、既に次の使徒が来ているのだ。
徐々に減速し、ついに走るのを止めて立ちつくす初号機の姿。
「シンジ君……」
ギュッとマイクを握りしめるミサト。このままではダメだ。
何か言え。何か言うんだ。シンジが立たなければ、我々は……
その時、シンジ目掛けて通信が入る。
『シンジ……』
「……アスカ?」
『走りなさい、シンジ。私達は戦わなければ、絶対に勝たなきゃいけないの』
「……何故?僕達が、僕達が倒そうとしているのは……」
『だからどうなのよ。全ては誰かのため、愛する誰かのために。天と地、その全てを滅ぼそうとも』
「判らないよ!そうまでして生きて行かなきゃいけないなんて、僕は……」
『あんた、人を好きになったことがないのね。誰かの為に戦うということを知らないのね……』
「え?」
『……まあ、いいわ。この命、あんたにあげる』
「な、なにを言ってるの?アスカ」
『この勝利はあんたに捧げる。あんたのところにコイツは行かせない。何があろうとも』
そこにミサトの通信が割り込む。
『どうしたというのアスカ!ダメなら退きなさい!』
『そのバカに教えるためよ。そのヘナチョコが戦えるようにね。そうしなければ、あんたたちは滅ぶのよ!』
『アスカッ!!』
絶叫するミサト。が、アスカはもはやためらわない。
『人間は負けない!天と地、全てが襲いかかろうと私の全てを賭けて!うぉぉぉぉぉおおおおああああッ!!』
(ブチッ……)
途絶えるアスカの通信。
『どうしたの!日向君、報告して!』
『……使徒サンダルフォン殲滅。しかし』
『に、弐号機は!?』
『接続されていた冷却用のケーブル切断し、使徒に飲み込ませた模様……急激な温度変化に耐えられず使徒は……』
『……』
『そして、弐号機も共に……』
静まりかえるNERV本部。その沈黙をワナワナと震えるシンジが破る。
「まさか、死んだの?アスカが、そんな……」
それにミサトもまた、震えながら答える。
『……走りなさい、シンジ君。走るのよ』
「そんな、嫌だ……僕は……僕は……」
『まだ判らないのッ!!あんたがそうだから、アスカが身を投げ打ったのよ!走りなさいッ!!』
「……ッ!」
シンジはまだ理解できていないのだ。アスカの死が。これが生死を賭けた戦いであることが。
そして人類の存亡がかかっていることが。
もう、幾らと経たずに使徒が地上に到達する。
そんな最中であるにもかかわらず、シンジはまだ動けない。動かない。
が、そんな有様の中を一つのアナウンスが響き渡る。
『シンクロ率52.23パーセント!参号機、起動しますッ!』
ズズゥゥゥゥン……
ドス……ドス……ドス、ドス、ドス、ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!
シンジの、初号機の背後に着地し、そして猛烈な勢いで走り始めた一体のエヴァ。
それは輸送機に搭乗したまま起動され、戦場へと投下された参号機であった。
シンジを超える初回シンクロ率を叩き出し、早くも猛烈な勢いで走り出し、初号機の脇を駆け抜ける。
その参号機から聞こえてくるパイロットの怒号。
『走れやッ!!ワシがあいつを受けたるッ!お前もさっさと走らんかいッ!』
ここまで書いてみますた。
読んでくれてありがとー
乙
乙です。
題名通りのめまぐるしい展開だ。
乙!
え・・・マジアスカ死亡?
587 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/15(日) 23:00:53 ID:u0KGbaUy
臨場感があってすごく面白いです。
アスカもトウジも何気にかっこいい。
続き楽しみにしてます。
トウジが活躍するのって初めて見る。
wktk
少し前、崩壊した第三新東京市の瓦礫の中で。
「助けてくれや!ワシの妹が大怪我しとんねん!おいっ!怪我人やぞっ!」
叫び続ける一人の少年。
破損した初号機の対応に追われるNERVスタッフ達を見つけて、彼は助けを求めて現れたのだ。
「なんだ?あのガキは」
「しかし邪険にするわけにもいかんだろう。おい、誰か避難所に案内してやれ」
「怪我人か。面倒だな、ここにいる医務班はパイロットにしか……あ、赤木博士」
「お疲れ様。子供?その子の年齢は?」
「いや、聞いてないのですが……」
技術部の赤木リツコは、騒ぎを起こしている少年の方をチラリと見る。
背丈はシンジやレイとそう変わらない。その顔立ちは厳しいものではあるが少年の域を出ては居ないようだ。
そして部下に命じた。
「すぐに妹さんをあのヘリで運んであげなさい。彼をこちらへ」
その少年は案内される。そう、参号機の元へ。
「ワシが……このロボットを?なんでや、ワシには見たことも聞いたことも」
「既にエヴァと使徒との戦いは見ているわね。そのパイロットは14歳の子供達」
「ワシと同じ……?」
「そうよ。大人ではダメ、あなたたちのような子供にしかエヴァは操縦出来ない」
「ワシにも出来るっちゅうんか!ワシもあの怪物共と戦えるんか!」
「もし適正があれば、だけどね」
そして。
『奇跡だわ。これほどすぐにエヴァの操縦が出来るなんて』
驚愕する赤木博士。しかし少年はつぶやく。
(当たり前や。妹をあないにした奴らにパチキかましたる。そうせな気がすまんのや。)
そして、見よう見まねで操縦桿を握りしめる。
(それが出来るんなら、象でもライオンでも乗りこなしたる!)
それは彼の精神力か、それとも復讐心、あるいは火事場の馬鹿力なのか。
ともかく参号機は動き出し、戦場へと降り立ち、そしてまっしぐらに走り始める。
「行くで!見とれや、ワシがボコボコにしたるからな!」
そして到達した。使徒サハクィエルの真下へ。
そして両手を伸ばし、もう視界の全てを埋め尽くした巨大な使徒を真っ向から受け止める。
「うぉおおおおおぉぉぉぉおおおぉおおおおぉおおおッ!!」
「参号機!ATフィールドを展開ッ!!」
騒然とするNERV本部。たった今、起動を始めたばかりの参号機が既にその恐るべき能力を発揮しているのだ。
すさまじい落下速度で急降下する使徒がピタリと押し止められる。
が、押されている。強大な質量を受け止めかねて、参号機が今にも押しつぶされようとしている。
「シンジ君ッ!動いて!」
絶叫するミサト。そして参号機パイロットも叫ぶ。
『はよなんとかしろやッ!トドメさせるのはお前だけやぞッ!!』
それを聞いたシンジは何か苦い塊に噛みついたような顔をしていたが……その時!
シンジの父、碇ゲンドウがミサトのマイクを奪い取り、そして一喝!
「シンジ戦え!何をしている!」
「……ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
シンジは絶叫と共にプログナイフを抜き払い、参号機の元へ走り寄る。そして、
ドシッ……
キュゴォォアアアッッ……!! ズドドドドドドドドドドドドッ……
「やった!?」
ミサトが叫ぶ。モニタに映し出される崩壊する使徒の姿。
使徒を殲滅したのか、あるいは使徒の自爆か。
はらはらとしながら情況を見守るNERV本部であったが、
「……エヴァ、2機とも健在!」
その報告を聞いて歓声を上げるスタッフ達。
「まだよ、まだ上空に次が居る!」
そのミサトの声にハッとなる本部。
使徒の爆発がやがて収束し、やがて上空にその姿が見え始めている。
巨大な光り輝く羽根をもつ使徒アラエルの恐るべき姿が。
『ワシら、やったなぁ……』
まだ慣れない手つきで通信を操作し、シンジに話しかける参号機パイロット。
「あ、ああ……」
返事するシンジは、まだ我を取り戻していない様子だ。
『おい、大丈夫なんか?俺は鈴原、鈴原トウジや。お前は?』
「あ、うん。僕は碇、碇シンジ」
そして映し出されたモニタを見る。相手は色違いのプラグスーツを着たスポーツ刈りの少年。
『そうか、よろしゅうな。さっきはきつう言うてスマンかったなぁ』
「いや、いいよ。そんなの」
『まあ、まかしとけや。俺はやるで、妹のカタキは必ずとったる』
「え、死んだの?その、妹さん……」
『ハハ、生きとるけどな。メチャメチャに大怪我しとんのや。もう、まともに生きていくことは……』
「……」
『お前は?』
「何?」
『お前はなんで戦っとんねん』
「……理由?考えたこともなかった」
『理由もなくエヴァに乗っとるんか?』
「いや、僕しか操縦出来ないってミサトさんが……今朝、無理矢理に乗せられたんだ」
『そうか……なら、無理ないわ。ヘタレ言うのも、そらしゃあないこっちゃ』
「え?」
『理由もなく、命賭けろ、ゆうても出来るもんやあらへんからな。いくら人類の危機て言われてもなぁ』
「……」
『地球のために環境保全、とか言うてもピンとけぇへんし。全然できとらんやろ?今の社会は』
「そ、そうだね」
『目の前に自分だけの理由が無いとアカンわ。俺は妹のために戦っとる。お前、そういう相手おらんのか』
「……」
突然、シンジの脳裏に蘇ってくるアスカの言葉。
“あんた、人を好きになったことがないのね。誰かの為に戦うということを知らないのね……”
(僕は……僕にはそんな相手は……)
(友達も居なかった。恋人とか彼女はおろか、家族も……)
(父さん……)
(僕は……母さんが死んで、僕は先生の所に預けられ……そうだ、父さんは僕を見捨てて……)
(父さん……父さんにとって僕はいらない存在……)
『おい、碇?どうしたんや、しっかりせい!』
(でも、こうして呼ばれた。きっと父さんに呼ばれたんだ。僕は父さんに呼ばれたから、こうして……)
(こうしてエヴァに乗っている……ただ、それだけ?)
(それだけ?単なるパイロットとして?ただ、それだけ?父さんにとって、僕は……僕は……)
「僕は……僕は……僕は……ッ!!ああッ!僕はッ!!」
『碇、どないした!クソッ……なんや、この光は!?』
遂に絶叫となり、シンジの声がネルフ本部に響き渡る。
「初号機パイロットに精神汚染が始まっています!このままでは!」
そのオペレーターの報告にミサトは顔を青くする。
モニタに映し出される映像。
それは使徒アラエルが照射する光に照らされ、そして苦悩し身もだえる初号機の姿。
「さ、参号機にライフルを装備させて!鈴原君!あの使徒をライフルでしとめるのよ!早く!」
慌ててミサトは命ずる。しかし、赤木博士が首を振ってつぶやく。
「恐らく通用しないわ。あの使徒にもATフィールドが展開されているはず。副司令?」
「うむ。戦自研に伝えよ、陽電子砲の発射用意。目標、上空の使徒……」
赤木博士の要請に答えて、冬月副司令は命じようとする。しかし、
「違う!その陽電子砲は本部の上空に向けろ!」
冬月の言葉に覆い被せるように命じたのは総司令にしてシンジの実父、碇ゲンドウであった。
「碇!?このままでは初号機がやられてしまうぞ!」
冬月は抗議する。が、
「冬月、お前の読み通りにあれらは陽動にすぎん。今、この瞬間に使徒が本部に来るぞ」
「しかし、碇……」
「言うな、冬月!」
「初号機には……初号機に載っているのはお前の息子だぞ……」
「……構わん!直接攻撃でなければ放っておけ!我々が何を守っているか忘れるな!」
「碇……」
そして、そのゲンドウの言葉通りに新たな使徒が現れる。
モニタに表示されたのは幾何学的な八面体の姿をした使徒ラミエルであった。
「あ、ああ……」
嘆息するNERVスタッフ達。そして使徒は早くも本部の上空に位置し、さっそく自分の仕事を始める。
NERV本部は地下にある。
第三新東京市の地下は巨大な地下空洞ジオ・フロント。そこに侵入するとなれば容易ではないはず。
しかし、使徒の備えは十分のようだ。
その八面体の体から繰り出されたのは先端がドリルのようになった長い管。
本体は浮遊したままその管で地面を掘り進み、早くも本部を守る隔壁に届きつつある。
『陽電子砲の発射準備完了、秒読み開始。10,9,8,7……』
本部に伝えられる戦自研スタッフの秒読み。
それが響き渡る中、冬月は碇の方を見て思わずにはいられない。
(碇……お前は息子を見捨てるのか。そうだ、お前は再び自分の息子を……)
とりあえず、ここまで書いてみますた
乙です。
怒涛の展開、すごいです!
ホントに休む暇ねーw
乙
601 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/18(水) 08:48:47 ID:XqfZAB8B
わくわくどきどき。
目が離せません。続きが気になります。
シンジを急がせるというよりは、使徒に総攻撃をさせてみるって感じだな、これw
シンジのことを嫌いなレイ。
敬愛するゲンドウの血を半分もひいているのにその価値を理解していないところが嫌い。
ゲンドウを物欲しそうな目で見るのが嫌い。
本来自分が乗るべき初号機の専属になったことが嫌い。etc……
そんな理由からシンジを虐めるようになるレイ。
しかしシンジはこれまでの人生で虐めへの耐性がついているうえに、レイの世間知らずのせいで虐めが虐めになっていない。
カードを届けにきたシンジにわざと裸体を晒してそれをネタに淡々と責めたりするが、周囲からはただじゃれ合ってようにしか見えなかったりと、かなり微妙な虐めは続く。
そのうち
いつもは自分にまとわりついてくるくせに、セカンドが来日した途端そっちにべったりなのが嫌い。
眼鏡や戦自の転校生に鼻の下を伸ばしているのが嫌い。
無精髭のおっさんに信頼をむけているのが嫌い。
などと妙な方向に。気がつけばシンジの姿を探す恋する乙女(ややストーカーちっく)の完成。
ミサトに「実はシンジ君のこと好きなんじゃないの??」とからかわれ、ようやく自覚する。しかし使徒と自爆によってその自覚もリセット。
で、またフィフスにデレデレしているところが嫌い。と悶々となる。
サードインパクト。ゲンドウの望みを叶えてみたけれど、全然嬉しくない。どうして?と自問しているうちに補完計画は進む。
苦悶の表情を浮かべるシンジを見てやっと自分がシンジを欲していたと気づくが、シンジはカヲルのイメージを呼び出す始末。
ブチっと切れたレイはシンジを補完計画の中心から蹴り飛ばす。
赤い海のほとり。シンジが目を醒すと馬乗りになって首を絞めてくるレイが。
悲鳴をあげて逃げ出すシンジと、それを追うレイ。世界でたった二人だけの人間(?)の追いかけっこ。
で終わっとけ。
ごめん、某所との誤爆
あっちで紹介されて来てみたけれど、良スレだねここ
ハァ……ハァ……ハァ……
絶え絶えの息づかいで歩く一人の少女。
その彼女がやってきたのはNERV本部のエヴァ格納庫。そして修理を終えたばかりの零号機の足下へ。
「……治ったの?」
後ろからそう声をかけられた整備士はキビキビと返事をする。
「ハッ!切断された左下肢は接合完了!いつでも稼働できますが……あ、あなたは!」
振り返り、驚く整備士。
「もうよろしいのですか!あれほどの怪我を……」
そう言いかけたところで、少女の背後からドヤドヤと追いかけてきたのは医師と看護師達。
「待て!君の体はまだ治っていないぞ。そんな状態では……」
「エヴァの操作に体は要らない……接続する神経が働けば……」
少女はか細い声で返答しながらよろよろとタラップを上り、そしてどうにかエントリープラグに辿り着く。
「今……私が動かなければ……彼は……」
もう何を言っても無駄だ、と思ったのか。
看護師の一人が一本の注射器を片手に側に寄り、腕に突き刺す。
強心剤か、あるいは痛み止めのモルヒネか。
懇意の看護師なのだろう、少女を見守るその目に涙を浮かべていた。
しかし、その彼女の心配げな表情をよそに少女は整備士達に冷たく命ずる。
「槍の準備を」
『3,2,1……発射!』
……キュァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアッ!!
遠方から放たれたらしい閃光が本部上空を切り裂いた。
それこそが戦自研が放った陽電子砲であった。が、
「外れた!?」
その報告を受けて衝撃を受けるNERV本部。
その騒然とする中で、赤木博士は立ち上がりスーパーコンピューターMAGIの端末へと駆け寄った。
「地球の磁場の影響よ。戦自研ともあろう連中がそんなことも判らないなんて。マヤ!」
「は、はい!センパイ!」
マヤと呼ばれた女性オペレーターが振り返る。後輩に当たるのだろう、センパイとは赤木博士に対する呼称。
彼女は司令室のオペレーターの一人、伊吹マヤ。赤木博士のお気に入りだ。
「今すぐ誤差修正プログラムを組んで。MAGIに問い合わせれば数式をはじき出してくれるわ。それから……」
自らも端末を猛烈な勢いで叩きながら振り返り、
「こちらで陽電子砲を操作します。彼らにシステムの開放を依頼……いや、いいです。ハックしたほうが早い」
「せ、センパイ!そんなことをしては……」
「大丈夫、以前に“枝”を忍ばせておいたから」
伊吹はそういうことを言ってるんじゃない、と背後で首を横に振る冬月副司令。
そして、総司令たる碇ゲンドウはモニタに映し出される情況を見たまま動かない。
はたして彼が見ているのはどちらか。本部上空の使徒ラミエルか。それとも苦悶を続ける初号機か。
「そのヘリよ。ライフルを受け取って!」
作戦部長の葛城ミサトの指示で、参号機は上空でホバリングするヘリに向かって手を伸ばす。
こちらでは使徒の攻撃を受ける初号機、もといシンジを救うために少しでも応戦しようと動いていた。
たとえ、赤木博士が言う通りにATフィールドに阻まれて効果が得られないとしても。
『おっしゃ、任しとけ……ん?ああ?』
参号機はライフルを受け取ったかに見えた、が……ライフルを取り落としてしまう。
「!?……鈴原君、どうしたの!」
『こ、こいつ……急に言うこと聞かなくなりよった!』
「そんな、参号機のシンクロ率は?」
ミサトは振り返ってオペレーターの一人に尋ねる。
「現在62.47パーセント、むしろ最初より上がっています。これは……」
ミサトは赤木博士の方を振り返ったが、陽電子砲の操作にかかりきりで動けない。
「……クッ!参号機の異常箇所は!?」
「はい……ん、ああッ!パターン青です!参号機からパターン青が検出されています!」
「な、なんですって!?」
『く、くそォ……言うこと聞けや、こいつは……お、おい!何をさらす気じゃ!やめろ!やめんかいっ!!』
なんと参号機は、使徒アラエルのために苦悶に陥る初号機を攻撃し始めたのだ。
掴みかかり、殴りつけ、蹴り倒し、そして初号機はなすすべもなく打ちのめされていく。
『やめろ!やめんかい!……おいッ!このロボットどないなっとんねん!』
叫ぶトウジ。ミサトもまたマイクを握りしめ、叫ぶ。
「シンジ君しっかりして!参号機を押さえるのよ!」
しかし、シンジにはその声は届いていない。
『父さん!僕は……僕は……父さん、どこに行くの!僕を捨てないで!僕を見捨てないで!』
シンジは完全に使徒に精神を犯されていた。
自分の過去、苦い記憶を使徒に引きずり出されて、シンジ自身が自らを苦しめているようだ。
ミサトはもうどうしていいか判らない。しかも、NERV本部もまた使徒に襲われている現状だ。
「もうすぐ隔壁の全てが破られます!最終隔壁まであと3分!」
もうスタッフ達は気が狂わんばかりのパニックに陥っていた。
そんな中で黙々と作業を続ける赤木博士と伊吹マヤ。
「マヤ?」
「は、はい!発射角度の補正は+0.2、+0.3!」
その時、別のオペレーターが叫ぶ。
「使徒ラミエルの周囲に強力なエネルギー反応!」
それを聞いた赤木博士は顔をゆがめてマヤに命ずる。
「反撃が来る!いいわ、発射!」
「はいッ!!」
……ギュァァァァァアアアアアアッ!!
再び陽電子砲から放たれる閃光。
しかし今度は使徒からも強力な閃光が放たれ、双方のエネルギーが交差する!
「頼む!当たれっ!!」
誰かがそう叫び、そして巻き起こる凄まじい轟音。
ズズズゥゥゥゥゥゥゥゥン……
「命中しました!使徒、殲滅!」
確かに、命中はした。しかし、
ベキ……ベキ……ベキ……
崩壊する使徒の体内から細長い足が伸び、そして姿を現した禍々しい姿。
「……パターンなんぞ読み上げなくて良い。蜘蛛の象徴、これは使徒マトリエルだ」
そう言ったのは、冷静さをまるで失わない冬月副司令。
「ば、馬鹿な……使徒の内部から別の使徒が現れるなんて……」
スタッフの一人が言う。が、
「何を言っている。我々の常識なんぞ通用するものか……そして、マトリエルは雨の象徴でもある」
その冬月の言葉通りに、何やら怪しげな液体を使徒ラミエルが掘り進んだ穴へと注ぎ込む。
「あ、あの液体は……至急、確認します!」
慌ててMAGI端末を操作するスタッフ。
(あの液体、イヤな予感がする。あれこそが……)
そんな不安を抱く冬月であったが、それは只の空想であって読みでも推論でもなんでもない。
しかし、何故か間違いないと確信している。
だが冬月はそれを口に出さずに、ゲンドウに振り返った。
「これではエヴァの様な巨大ロボットには歯が立たん。まるで我々の努力を鼻で笑うかのようだな、碇」
「冬月、戯れ言はよせ。陽電子砲は?」
「はっ……使徒ラミエルの反撃で破壊されました。相打ちです……」
暗い表情で報告するスタッフ。
「また我々は手駒を一つ失ったか……」
冬月がそう呟く中、スタッフ達は更なるパニック状態に陥っている。
「液体の物質不明!このままでは最終隔壁に到達します!」
「だ、大丈夫だ。最終隔壁のガードは並大抵では敗れん。NERV設立費用の半額を費やしているのだぞ!」
「そんなことが当てになるか!司令!戦自に攻撃の要請を!」
「通常兵器で倒せるなら、こんな苦労は誰もしていないぞ!!」
「それにあいつを倒せばどうなる?体液の残りがそのまま注がれるだけではないか!」
そして本部上空の使徒だけではない。今も尚、使徒と化した参号機と初号機の戦いは続いている。
いや、もはや戦いではない。精神崩壊寸前まで陥ったシンジは参号機に一方的に打ちのめされている。
『父さん……父さんッ……アアッ!!ギャアアアアアアアッ!!』
その彼の悲鳴が混乱した本部に響く。
「参号機、初号機の左腕をちぎり取りました!パイロットの精神レベル、更に低下!」
そちらもまた最悪の事態だ。
彼らの対応にあたっているミサトは必死だが、なんら手を打てずにこまねいている。
「何でも良い、あの使徒アラエルに攻撃を!少しでもひるませて、シンジ君の意識を取り戻すのよ!」
といっても陽電子砲を失った今、効果の得られる兵器など何一つ無い。
自分自身がそれを感じながらも、しかしそう命ずるしかないミサト。
もはや支離滅裂な本部であったが、一つのアナウンスが彼らを静まりかえらせた。
「零号機が起動!射出口C−13から発進しようとしています!」
そして、モニタに映し出される零号機の姿。
「あれは、ロンギヌスの槍?」
見れば零号機の右手に巨大な赤い槍のようなものが装備されている。
「なんだと?レイ!勝手なマネをするな!」
しかし零号機のパイロットは止めようとはしない。
『構わないから本部からの制御を切断、そこからスタンドアロンで射出エレベーターを操作して』
恐らくパイロットは現場のスタッフ達に命じているのだろう。
やがて零号機はエレベーターに到着、地上へと射出される。
「レイ……」
呟くゲンドウ。その彼にやっとパイロットは答える。
『私は、あなたの意志にそっているだけ。ただ、それだけ……』
「零号機、投擲体勢に入っています。方角は……使徒アラエル!」
ギリギリという音が聞こえてきそうな程に体を引き絞り、そして動き出す。
ドシッ……ドシッ……ドシッ!ドシッ!ドシッ!ドシッ!ドシッ!ドシッ!ドシッ!
助走をつける零号機の足音が地下の本部にまで響きわたり、
そして零号機は吠え猛り、ロンギヌスの槍が放たれる!
オオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォンッ…… ズシャァッ!!
ATフィールドもあっさりと突き破られ、まるで紙くずのように槍に貫かれた使徒アラエル。
零号機の方はといえば、投擲を終えた瞬間にその場で崩れ落ちる。
それは零号機ではなく、搭乗しているパイロットが力尽きた、その影響だろう。
すぐさま地上に出てパイロットの介抱にあたろうと、スタッフ達が走り出す。
そして本部に報告される。
「……使徒アラエル、殲滅!」
が、それを見て喜んでいる場合ではない。すぐにミサトはマイクを取って叫ぶ。
「シンジ君、聞こえる?シンジ君ッ!!」
『シンジ君ッ!!』
繰り返し叫ぶミサトの声にようやく我を取り戻すシンジ。
「あ、ああ……うわぁっ!!」
まるで初めて参号機に襲われていることに気が付いたような状態だ。
『シンジ君、逃げて!もうすぐお互いのバッテリーが底を突くわ!それまで粘るのよ!』
「は、はい!」
慌ててシンジは初号機を走らせる。が、先程以上の運動性を発揮した参号機があっというまに追いすがる。
「鈴原!ゴメンよ!」
ガキッ!!
蹴りを繰り出し、なんとか参号機を振り払い、距離を取ることに成功する。
それにトウジは答える。
『構わんッ!なんぼでもやってくれ!くそぉぉぉ……このじゃじゃ馬ぁっ!えぇ加減にせぇぇッ!!』
その気合いが通じたのか。
参号機は何やらワナワナと震えだし、身もだえし始めたではないか。
「よしッ!今だわ!」
その様子を見て活気づくミサト。
「鈴原君、そのまま頑張って!シンジ君?すぐにヘリからバッテリーの交換を受けて!」
『はいっ!!』
「そして参号機から出来るだけ距離を取るのよ!そして参号機をエントリープラグの強制イジェクトを!」
ようやく解けないパズルの糸口が見つかったかのように事態が進む。
しかし、
『……ああッ!』
ピシィィッ!! ドドォォォン……
何かに足をすくわれたかのように転倒する初号機。
慌てて立ち上がろうとするシンジ。しかし、その足下で何かがスルスルと蛇のようにうごめいている。
「……クッ!まだ来るというの?」
「ハッ!パターン青、新たな使徒です!」
が、その新たな使徒は蛇のような身体を持つだけでは無いようだ。
『ん……うわ……うわあぁぁぁぁぁッ!』
本部にこだまするシンジの悲鳴。
見れば、その使徒は初号機の表面に体を突き立て、ズルズルと内部に侵入し始めたではないか。
「あれは……初号機と融合しようというの!そんな、初号機までやられては……」
うろたえるミサト。そして周囲を見渡すが、しかし助けを求められそうな相手はいない。
他の者、一番あてにしたい赤木博士は、本部に浸食しようとしている使徒の液体の対応に追われていた。
実際のところ、対応らしきことは何一つ出来てはいないのだが。
「使徒マトリエル自壊!」
「全て注ぎ込んで役目が終わったと言う訳か。例の液体は?」
「使徒に掘削された穴の側面にこびりついていますが、浸食が進んでいる模様」
「よし、レーザーで焼却してみろ!」
「はいッ!」
あの手この手を尽くそうと奔走するスタッフ達。
「まさか三段構えとはな。で、次はどうする?そこまで侵入したのはいいが、それでは最終隔壁は破れんぞ?」
まるで使徒と対話するかのように呟く冬月。それを聞いたスタッフは驚いて振り向く。
「三段……構え……?まさか」
「調べてみろ。間違いなかろう?」
「ん……ああ、まさか、そんな!パターン青!まさか、あの液体自体が使徒だなんて!」
それを聞いたスタッフ達から悲鳴が飛び交う。
(必死だ。正に使徒は必死で我々に戦いを挑んでいる。そう、自らの犠牲もいとわずに)
(アスカがそうして使徒を倒したように。いや、彼らに犠牲というものが、そして生死の概念が在れば、だが)
(まあ、しかし……それでは最終隔壁は破れぬ。よほどの物理的な衝撃、化学変化でもあの隔壁だけは……)
が、その冬月の思いをあざけるかのような事態が巻き起こる。
「MAGIがハッキングを受けています!」
「こんな時に?くそぅ、Cモードで対応!」
「逆探しろ!その経路を全て遮断、そんな奴の相手をしている暇など無いぞ!」
「おい、内部からだぞ!ど、どこだ!」
「もしや……」
見れば、先程に使徒マトリエルが残した液体が化学変化を起こして怪しげな文様を描き出した。
「まるで電子回路ね。最終隔壁の鍵を握っているのはMAGI。使徒はMAGIを乗っ取って開けようとしている」
この事態を見た赤木博士はそう言いながら、改めて端末へと向かう。
「そうするしかないことを彼らは知っている。彼らは最短距離で最下層に辿り着こうとしているのよ!」
その赤木博士の言葉を聞いて真っ青になるスタッフ達。
「信じられない……使徒が電子戦を仕掛けてくるだなんて……」
「疑っている暇などないわ。みんな、少しでも時間を稼いで!そして……司令!」
その赤木博士の呼びかけに、総司令たる碇ゲンドウは答える。
「判っている。現状で動かせる機材その他を地上に射出、本部を爆破する。総員、急げ」
とりあえずはここまでです。
皆さん、読んでくれてありがとうございます。
>>602 ご指摘ありがとうございます。
そうですね、全てが完成してからタイトルを替えた方がいいかもしれませんw
少し考えてみます。
今北だけど面白いな!
作者乙です
乙です。
先の展開がまったく読めません・・・
続きを待つしかないですね。
速すぎて次当りでいきなり完結するかもなw
今後に期待age
今沖田産業
エヴァを一日で終わらせる
携帯からです。
うちのプロバイダが規制されてて貼れない……
貴方は『思いっきり』急がなくて良いので
私はマターリと待ってます
次からは連投支援したほうがいい?
>>623 多分4月19日の連続投下でアクセス制限を喰らってると思う。
自分もこの前10連続投下したらアクセス制限喰らった。
その時は半日ほどドコにも投下せずに待って
次の日付に変わたら、また投下できた。
あとその時に一時ファイルフォルダの中のクッキーなどを整理したので
それも制限解除に影響したのかも・・・
詳しい人がいたら教えて
>>626 仰るとおりで、eo規制の巻き添えです。
再発だからどうなるか判らない……時間が掛かりそうなら節穴で貼ります。
>>627 仰る通りのルールにはどうにか引っかからずに済んでます。
連続投下45秒制限もあるので結構メンドイw
629 :
保守:2007/04/23(月) 17:31:30 ID:???
保守
「ここを爆破……ですか!?」
「そんな、そんなことをしては我々は何のために!」
口々に抗議するNERVスタッフ。
しかし碇司令にためらいはない。
「肝心の最終隔壁は通常の爆破では損壊しない!さっさと撤退の準備をしろ!」
スタッフ達は、その一喝で打たれたように走り出す。
その傍らでMAGIのプロテクト作業にしのぎを削りながら、赤木博士は周囲のメンバーに向かって言う。
「この微細な身体の使徒イロウルならば本部の爆破で四散するはず。しかし凄まじい勢いで増殖している」
そう言いながらも、彼女は決してタイプする速度を落とそうとしない。
「急いで。本部の爆破も又、MAGIが司っている。もし、使徒に乗っ取られればそれも出来なくなるわよ!」
しかし、使徒の魔の手は着々と伸びていく。
「メルキオールが乗っ取られました!プログラムを書き換え、更にバルタザールへ侵入しようとしています!」
「さ、最悪だ……これでは爆破することは……」
NERV本部の運営を担うスーパーコンピュータMAGI。
それはカスパー・メルキオール・バルタザールと名の付いた三台のスーパーコンピュータによって構成されている。
恐らく、その一台でも不完全ならば本部の爆破は不可能となるのだろう。
「それは使徒にとっても同じよ。一台が拒否すれば最終隔壁は開かない。けど、時間の問題ね」
そう言って立ち上がる赤木博士。
「工具を持ってきて。私がMAGIの内部から直接操作して自爆決議をさせるわ。早く!」
その一方で、初号機もまた使徒の侵入に悩まされ、追いつめられていた。
ベキ……ベキ……ベキ……ベキ……
「うわ、あ、あ、あ……」
シンジは思わずうめき声を上げた。
2重らせんで蛇のような姿の使徒アルミサエルは初号機に食いこみ、融合を果たそうとしている。
さらに、使徒に犯されつつあるのは初号機だけではない。
「あ、あ、止めて、止めて、止め……」
なんと初号機の操縦桿を握る腕から、シンジ自身へと浸食を始めていたのだ。
「あ、あ、あああ……ッ!!」
さびしいの?ねぇ……さびしいんでしょう?
ねぇ……私と一つにならない?……それは……とてもとても気持ちの良いことなのよ……
私が側にいてあげる……私がいつまでもあなたの側に……
シンジの身体はおろか、その精神にまでも食い込み始めていた。
使徒アルミサエル、それは子宮の象徴。
脆弱な心のシンジに艶めかしい物腰で身を寄せ、籠絡しようとしている使徒アルミサエル。
しかし、今度はシンジの意識は損なわれずに何とか抵抗しようともがき始めた。
「来るなぁ!僕に近づくな!ああ、や、止めろぉッ!!」
だが彼が堕とされ、使徒に完全に飲まれるのは時間の問題だろう。
(も、もう駄目だわ……参号機、初号機ともに完全に使徒に浸食されている……)
そう苦悶するのは葛城ミサト。
(次々に繰り出される使徒、それらはもはや個体の姿をしていない。そう、最初の使徒アダムのような……)
(我々の考えが甘かったのか。もはやエヴァではとても対応できない姿と手段で我々に挑んでいる)
が、振り返って反省している暇など無い。手を打たなければ。
(エントリープラグの強制イジェクトでシンジ君を救出……そして)
そして、この上は出直すしかない。
そう考えてマイクを握る。もう碇総司令から本部の爆破と撤退が既に発令されているのだ。
しかし、決めかねて戸惑うミサト。
(しかし、ここで初号機を失えばどうなる?本部も失い、この場を使徒に明け渡せば……)
(そうすれば終わり。何もかも終わる。サードインパクトが起きて、その全てが……)
「来たぞ。我々に王手をかける一手があれだ。」
背後に立つ冬月が言う。
モニタを見れば、雲間に浮かぶ巨大な姿がうっすらと映し出されていた。
それをセンサーが捉え、オペレーターは背筋が凍り付く思いで読み上げる。
「新たな使徒です……これまでの最大のエネルギー反応……」
「力の象徴、使徒ゼルエルか。あれではエヴァが完全であっても倒せるかどうか知れたものではないな」
しかし、そのまま使徒は近づこうとせず、空中に浮かんだままだ。
そう、NERV本部の最終隔壁が開くのをジッと待っているのだ。
その時、近くにいたスタッフの一人がフラリと倒れかかる。
それを助け起こして頬をはり倒し、無理矢理に立たせようとするミサト。
「しっかりしなさい!ここを爆破するのよ!急いで!」
「……は、はい」
そしてヨロヨロとしながらも他のメンバーとともに撤退の準備を始める。
「そんな……ここはずっと頑張ってきた場所なのに……」
「泣き言を言うな!俺たちは仲良しクラブじゃないんだぞ!」
「余計なものは持つな!しかし、肝心なものは忘れるな!」
あるものは力尽き、あるものは泣き、あるものは声を張り上げ、撤退に向けて走り出す。
もはやNERVは混乱に落ちた烏合の衆だ。
(ましてやパイロットの二人はずっと戦い通し。使徒と人間、その簡単な精神と体力勝負で我々は……)
やはり無謀な戦いであったか。人間では、やはり使徒に打ち勝つことは不可能なのか。
しかし、尚も力強く抵抗を続ける者はいた。
『く、く……くそぉォ……ぐはぁッ!!』
通信機から聞こえてくる声。参号機パイロットの鈴原トウジだ。
モニタを見れば吐血までしているではないか。もはや、かつての零号機のようにLCLが赤く染まりつつある。
彼は尚も使徒の呪縛から抵抗を続け、必死で参号機を押さえ続けていた。
「鈴原君!エントリープラグをイジェクトして逃げて!」
『あかんっ!俺がおらんようなったら、こいつにやりたい放題されてまうわ!』
「鈴原君……ッ!」
そして参号機はゆっくりと初号機の方に近づいていく。
やはり駄目か。トウジは参号機を押さえきれず、初号機にとどめを刺してしまうのか。
『貴様ァッ!!そっから出てこいやッ!!』
そうではなかった。むしろトウジの意志が使徒に勝っていたのだ。
参号機は初号機に潜り込もうとする使徒アルミサエルの身体を掴んで、無理矢理に引っ張り出そうとしている。
『来るんなら俺にかかってこんかい!』
トウジがそう怒鳴り散らしたその瞬間、ズルズルッとアルミサエルの長い身体が初号機から引きずり出されていく。
「参号機、グラフ反転!アンチATフィールドを展開!」
「こ、これは!使徒を内部に取り込もうというの!」
誰もが予想もしなかったエヴァ参号機の機能に、ミサトとスタッフは騒然とする。
『も、もう……逃がさへんでぇ……えーと、誰や、ミツコはん?ああ、違うわ……』
『リツコよ。座席の後ろのレバーを引きなさい』
どうやら通信機を携帯していたらしい。司令室を離れて、MAGIの操作に忙しいはずのリツコが苦笑いで返答した。
そして、そのレバーの意味をミサトはかろうじて知っていたようだ。
「リツコ、本気なの!それがどういうことだか知っていて……」
『流石はリツコはん、打てば響くとはこのこっちゃ……よっと』
どうやら、ためらわずにリツコの指示通りの操作をしているようだ。
ミサトは顔面蒼白でトウジに向かって声を張り上げる。
「駄目よ!エヴァを捨てて逃げて!」
『それ、あかんやろ?俺がおらんようなったら参号機は……』
『そうね。鈴原君、許してくれる?』
そのリツコの非情な返答に、トウジは笑って答える。
『あはは……気に入ったでコイツ。やっぱり巨大兵器にゃ自爆スイッチは付きモンやなぁ……』
キュァァァァァァァァァアアアアアアアアアッ…………
凄まじい勢いで集約される参号機のエネルギー、そしてベキベキとその巨体が形を変えていく。
「臨界点突破ッ!!参号機、コアが砕けます!」
『すまんけど妹のこと、頼むで……それから……』
言い残したいことがあったらしい。しかし、それは間に合わなかった。
ピシィィッ!!! キュゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「参号機、大破。使徒2体もまた……消滅しました……」
力なく報告をするオペレーター。ミサトはワナワナと体を震わせ、動くことが出来ないでいる。
その彼女に変わって、冬月副司令が号令した。
「地上の各部隊は初号機の補修を急げ!脱出を終えた者は早急に仮の司令部を構築!」
そして、ゆっくりと前に進み出ながら続ける。
「MAGIの操作に当たっている者を除き、全ての者は脱出せよ!急げ!」
スーパーコンピュータMAGIの心臓部。
そこでは腹這いになりながらMAGI内部に潜り込み、端末を接続しようとする赤木博士の姿があった。
「レンチ取って。それから5番の端末を」
「ハイッ!!」
作業を続ける赤木リツコの傍らで、せっせと彼女の手伝いを務める伊吹マヤ。
もうほとんどの者は脱出をはたしている。そこに居るのは二人だけだ。
そして更に。
「もういいわ、マヤ。あなたは地上に早く出て」
「で、でも、センパイは!」
「中国支部のMAGIタイプを今後のNERV運営に当てる。マヤはその準備に当たってちょうだい」
そう言いながらもリツコは端末を操作する手を休めない。
「急いでマヤ、新たな使徒が来ているのよ。私は最後の爆破の操作をしてからここを出るわ」
「……はい、センパイ!」
少し不安げな表情を浮かべながらも、そういってその場を立ち去っていく。
その彼女を見送りつつ、リツコは煙草を咥えて火を付ける。
「なぁんちゃて。フフ、普段ならこんなところで堂々と吸えたもんじゃない……いい加減うるさいわね」
そう言って別の端末を片手で操作する。すると本部中に鳴り響いていた警報が嘘のように消えた。
(ゴメンねマヤ。爆破する人間が逃げられる訳がないでしょ?時限装置を仕掛ける余裕も無いし)
驚くほどに冷静にそう考える赤木リツコ。そして一枚のメモをチラリと目を通して、尚も操作を続ける。
「成る程ね……ありがと、母さん。それにしても……」
こんな情況だというのに、端末を叩き続けるリツコは笑う。
「三位一体のシステムを構築しておきながら手動爆破の方法を残すなんて。面白いわね、母さんって」
そして凄まじい勢いで作業を続けるリツコ。
次々とプログラムを組み上げて起動し、MAGI内部のリレーションを次々と切り離していく。
そんな中。
カツ……カツ……カツ……
もはや静まりかえった本部に響く、男物の靴の足音。
ゆっくりと近づいてくるそれに対して、モニタから目を離さないままリツコは言う。
「あら、司令。逃げ遅れると爆破に巻き込まれますよ?」
「君こそ、ここから逃げるつもりでは無いな」
リツコの元に訪れたのは総司令、碇ゲンドウだった。
「君は最後の操作を残して脱出しろ。俺がやる。今後の戦いで専門職の人員を失う訳にはいかん」
「マヤがいるわ。司令こそ使徒殲滅の責務を捨てて逃げるおつもりですか?」
「逃げ、か」
「死こそ甘美な逃げ道ですわよ。自己犠牲のヒーローなんて私は認めません」
「ならば君は何をしている」
「私はヒロインにはなれませんから。私が操作をする方が早い。ただ、それだけ」
「……そうか」
「まあ一緒に逝くのも悪くないですね。一本どうぞ?」
「ああ……」
リツコの勧めで煙草を咥えるゲンドウ。
繰り返しだが、こんな最中だというのに落ち着いた二人。これまでの激戦が嘘のようだ。
リツコがカタカタと叩くタイプの音もまた心地良い。そして中空に舞う煙草の煙。
まるで全ての戦いが終わって平和の安らぎを得たような、そんな柔らかい空気が漂う。
ある時、ふとリツコが口を開く。
「通信機はそこにあります。どうぞ?」
「何?」
「爆破まであと3分、最後の言葉を。それがあなたに残された役目」
「……」
「そのために、ここに来たのでは無いのですか?」
(そうだ……俺は……)
(この混戦の中、もう総司令などという者はさほど役には立たない……むしろ)
(そうだ、ここで自分の意思を伝えなければ……司令として、何か役割が残っているとすれば……)
(混戦の中、何かを言うことなど出来るものではない。最後の今だからこそ……)
(司令として役割が残っているとすれば……そして、父としての……)
そして、通信機を手にしてスイッチを入れる。
その瞬間、聞こえてくる部下達の声。
『センパイッ!聞こえてますか!まだ脱出しないんですか!センパ……』
それを強引に断ち切り、そして話す。
「シンジ、聞こえるか?」
639 :
◆wPB7tWtUk2 :2007/04/25(水) 22:40:13 ID:RXeCkE9b
とりあえずここまでです。
規制解除されて、どうにか貼ることができました。
続きを待っていただいた方々、すいませんでした。
うーむ、しかしどんどん長くなっていくような。もう少し手短にするつもりだったのに。
これでは1000まで間に合わなくなってしまう。急げ俺。
GJ!!
もう制限されるような無茶はするなよ!
GJ!!!
いいぞいいぞ熱いぞ!!!!
643 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/25(水) 23:18:47 ID:D+hp3is2
トウジはシンジのために身を呈して犠牲になった。
ゲンドウもリツコと一緒に死ぬことを決意し、シンジに何かをたくそうとした。
すごく二人は馬鹿です。
でも、すごくうれしいです。
シンジ君のために行動していることが。
今日解除されたとこなら
>>639とプロバ一緒なヨカーン
ゲンドウが親父してるのが凄く良かった
「センパイ!お願いですから返事をしてください!センパイッ!!」
脱出を果たし、地上で通信機にかじり付く伊吹マヤ。
他のスタッフ達もその事態の前にうろたえるばかりだ。
「まさか……赤木博士は本部と共に……?」
「そんな、赤木博士が居なくなってはこれからどうすればいいんだ!」
「おい、総司令の姿も見えない!まさか司令まで!」
そんなパニック状態のスタッフ達に、もはや統制など在ったものではない。
しかし、そんな中で通信機から発せられた声に、その場にいた者はハッとなって静まりかえった。
『シンジ……聞こえるか?シンジ……』
少し間をおいて返答があった。
『父さん?……これは本物なの……本当に父さんの声……?』
シンジがそう返事した無理もない。
これまで立て続けに使徒にまやかしを見せられてきたのだから。
『俺だ。済まない、シンジ。しかし許せとは言わん』
『……父さん』
『シンジ。お前に突然、戦いに巻き込み死の危険を与えたのは俺だ。だが……』
『……』
『だが、更にお前に託さなければならないことがある。それは使徒との戦いのことではない』
『……え?』
『レイを頼む。俺が死んだ後、あいつに家族と呼べる者は居なくなる。レイを頼む』
『あの……父さん、レイって誰なの。一体……』
シンジに判らないのも無理もない。
レイとは零号機のパイロットのことで、シンジは確かに耳にしているはずなのだが、
この混戦の最中で、はっきりと記憶にとどめることが出来なかったようだ。
『逃げられるものならばレイを連れて逃げろ。もし使徒との戦いを他の者にゆだねることが出来るなら』
『父さん、あの……』
『いいか、シンジ。確かに俺はお前を見捨てた。俺はお前を捨ててNERV創設の任に着いた。それは、』
『ちょっと待って、父さん。一体どうしたというの?』
『それは、お前を含む全ての人に最大の危機が訪れようとしていたからだ。だからこそ、お前を捨てて……』
『ねぇ父さん、聞こえているの?どうしたの父さん!』
『そして今も尚、俺はお前を捨てて逃げようとしている。お前を、そして部下達をも捨てて』
『……父さん!』
『俺は持てる力の全てをつぎ込み、NERV創設に力を注いできた。だが、もう俺の出来ることはここまでだ』
『父さん!返事をして!ねえ、父さん!』
『済まない、シンジ。これでもお前や、他の者達のために戦ってきたつもりなのだ。その全ては……』
ゲンドウは少しためらい、そして少しはにかみながら、最後の言葉を告げた。
『その全ては……お前達が笑って生きていくために……』
ブチッ……
「司令ッ!!待ってください!碇司令!」
通信が切れると同時に大騒ぎとなる彼の部下達。すでに涙を流す者までいる。
(碇。確かにお前はこの戦いから逃げることになるのかも知れないが……)
(あまり褒められたものではないが……碇、それを言いたいがために本部に残ったのだな)
冬月は口に出さずに心の中でそう唱えながら、祈るように目を閉じた。
(まあ、いいだろう。後は皆に任せて休め。これまでよく戦ってきたな、碇……)
そしてNERV本部のリツコとゲンドウ。
「お疲れ様。そして、ありがとうございます」
「……何がだ?」
「私は最後の言葉なんて苦手ですから。もっとも言ったことなどありませんが」
そう言って端末を叩き続けるリツコ。
ゲンドウはその彼女の横に並んでゆったりと座っていた。
「そして、ありがとう。私の側に居てくれて」
「……」
「私にためらいなど無いけれど、お陰で寂しい旅立ちにならずに済みそうです」
「……そうか」
そろそろ作業を終えるようだ。彼女の指が踊るようにタイプを締めくくる。
「タンタン、タタンタンっと……作業完了です。では、行きましょうか?」
「ああ……リツコ君」
「ん?」
「俺は本当に君を……」
「よして下さいな。あなたが気にかけている人が誰か、それぐらい知っています」
果たしてそれは誰のことか。零号機のパイロットか、あるいは自分の息子のことか。
「では、いきますね。スリー、トゥー、ワン……」 カチッ
キュゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「あ、ああ……」
凄まじい地響きが伝わり、爆炎がキノコ雲となって舞い上がる。
その様を見て力を落とし嘆息するスタッフ達。まるで全てを失ったかのように。
そんな彼らの尻を叩く様に冬月が一喝する。
「確認はどうした!」
「は……はい……使徒イロウル、反応消失……」
涙声で答える伊吹マヤ。そんな彼女を冬月副司令は慰めようともしない。
「よし!只今よりこの場を仮の司令部とし、全ての指揮は私が執る!」
マイクを握り力強く発令する冬月。
本部と総司令、赤木博士までも失った衝撃を受けていないかのように。
「みんな、そのままで聞け!」
スタッフ達は再び静まりかえり、一斉に冬月の方をみる。
そして、その場を離れているものも通信機に釘付けとなる。各国のNERV支部においても同じだろう。
「今の碇司令の最後の言葉、実の息子に対するものだが、私が皆に言わんとすべきことはさほど変わらない。
まだ戦いは終わっていない。戦いはまだ続く。
司令に赤木博士、そして2体のエヴァと2人のパイロットが失われた今も尚、残る使徒が迫り来る現状だ。
みんな、戦え。我々に力を落とす暇など無い。そして、それは何のためか。
全ては全ての人々のため。全ての人々が幸せに暮らせるように。その世界を待ち望む自らのために!」
そこまで聞いた部下達から、うおおおっという歓声が一部から巻き起こる。
「皆、戦え!自らのために戦え!それが出来ない者、戦う理由がないと思う者はただちに去れ!
かくも厳しい戦いを強いるこの世界において、幸を勝ち得るものは戦いに勝利したものだけだ!」
部下達、いわば全ての観衆は喝采し、その歓声は爆発する。
そして冬月は指示を下す。
「各機の輸送ヘリ、各車両を仮設の本部とする。残る使徒の反応から目を離すな!」
その発令に一斉に走り出しだす部下達。それらを見送り、冬月は眉間をもみほぐしながらマイクを置いた。
「臭い演説だ。まるで私は古代の将軍にでもなったかのようだ」
「今まさにそんな戦いの最中なんです。極限状態の皆には必要なことでした。かなり芝居がかってましたが」
側に来てそう言ったのは作戦部長の葛城ミサト。
冬月同様に彼女も冷静な物腰で、むしろ笑みまで浮かべている。
「とにかく、碇が『逃げた』という印象をぬぐっておきたかったのだ。むしろ赤木博士一人の犠牲でよかったのだし」
「しかし見事な演説でした。副司令……いや、総司令とお呼びした方がよろしいですか?」
冬月は苦笑いで答える。
「よしてくれ、葛城一尉。今、碇を失ったばかりで一日と経っていないぞ」
「そうですね……ましてや、使徒との戦いが始まってようやく日付が変わったところですし」
そう言いながら、夜空を見上げるミサト。
そう、今は夜なのだ。戦いに没頭して時間などすっかり忘れていた。
使徒との戦いで、そして本部の爆発であがった煙のせいか星など一つも見えない。
ただ満月だけが夜空に輝き、その月明かりが不気味に使徒ゼルエルの姿を照らす。
(使徒ゼルエル……あれからまったく動きを見せない)
その傍らで冬月はつぶやく。
「希望的観測だが、使徒共の手筋を我々は崩すことに成功したのかも知れん」
「それは……どういうことなのですか?」
「いや、勘だよ。このしばしの沈黙がそう感じさせるのだ。使徒に手だてがあるなら、動くならば今だ」
「成る程、確かに先程の使徒イロウルは最終隔壁に至る勢いでした。あれが本命だったと」
「そうだな。それにしても、あの最終隔壁。あれこそ我々の最後の切り札と言っても良いかもしれん」
「あの隔壁が?エヴァではなく、ですか?」
冬月はそれに答える代わりに、スタッフの一人に尋ねる。
「隔壁の状態はどうか」
「ハッ!本部の爆破直後で詳細は掴みかねますが、機能はまったく損なわれていないようです」
「よし、戦自の連中を使ってもかまわん。可能な限り早急に本部跡に防衛戦を貼れ」
そう部下に命じる冬月であったが、ミサトはそのやり取りを驚いた様子で聞いていた。
「副司令、その……最終隔壁は“機能”している、ということは……単なる壁では無い、と?」
「今更、隠す必要もあるまい。最終隔壁の防御力、その秘密はATフィールド」
「ええ!?では、あの隔壁の中は?」
「第2使徒リリスだ。実はそのリリスを隔壁が守っているのでは無い。まったくの逆だ。
リリスが放つATフィールドが隔壁を守っているのだ。隔壁自体も相当な防御力を誇っているがな。
それこそATフィールドが失われ、N2火薬を大量に投じたとしても損壊することは無いだろう」
「……」
「第1使徒アダム。それは自ら引き起こしたセカンドインパクトと共に倒れた。
セカンドインパクトは人口の半数を損なうまでに至ったが、そうではない。
先人達の努力によって半数に抑えられたのだ。それに用いられたのがリリスの力だ」
「……その話は初めて聞きました」
「そうだろう。残る各国においてもどのように取り扱うべきか苦慮しているのだ。そのリリスの力はな。
これは最高機密として私や碇、そして担当にあたった技術部のみに知らされていたことだったのだ。
今やリリスは我らの守り神だ。それを損なわれれば我々は全て滅びる」
「だからこそ使徒が苛烈な攻撃を仕掛けているのですね。しかし何故?そしてなんで今なんですか?」
「さあな。神話では人間は知恵の実を喰らい楽園を追われた。我々は神にとって憎むべき存在なのだ。
それから何万年の時を経たのか知らないが、時の長さが短い寿命の我々とは評価基準が同じでは無いのだろう」
「気の遠くなるような、そして信じられない話ですね」
「君のような常識人にとってはな。しかし、使徒が現実に存在している」
「はい。降りかかる火の粉を夢まぼろしと言い張るのは愚かなことです」
そう言いながら、ミサトは再び夜空を見上げた。
月明かりに照らされる使徒の姿を改めて眺めながら、ふうっとため息を漏らす。
(これは無謀な戦いなのか。もしかしたら、私達は神を相手に……)
その脅威。それは以前にシンジが口にしたことだが、恐れている場合ではない。自らの存亡を賭けた戦いなのだ。
が、その時ミサトはギクリと驚いて夜空を見返す。
(月が二つ?なんだあれは!)
そのころ、初号機パイロットの碇シンジは医務班の介抱を受けながらショックを受けていた。
父ゲンドウとの対話のときは事態の把握が出来ていなかったのだ。
使徒から解放されたばかりで、本部に何が起こっているのか知るよしもなかったのだから。
「じゃあ、父さんは本当に?」
「はい、立派な最期でした。総司令の名に恥じぬ……」
「あの爆発が……そんな……」
「自らを犠牲にされて使徒の危機を救われたのです。ですが、」
「……」
「ですが、無理をなさらぬように。司令もあのように言われていましたから」
「うん。あの……」
「はい?」
「レイって?」
「ああ、それは」
そう医師が言いかけたときに、突然にセンサーが鳴り響いた。
「……え?」
「グス……グス……」
尚も止まらない伊吹マヤの涙。鼻をすすりながらの作業、手慣れているはずの端末を叩く指もたどたどしい。
無理もない、彼女は絶対の信頼と尊敬をもって接していた自分の上司を失ったのだ。
そんな彼女を気遣い、隣のオペレーターが声をかける。
「少し休め。俺が替わる」
「ありがとう日向さん……もう少しで終わるから……」
彼らは特に大きなヘリに乗って作業をしていた。
その内部は初めから各種の端末が備えられ、小さいながらも会議室となる設備まで揃っている。
正に動く司令室と言うわけで、こうした事態とは限らず遠隔地での対応などに備えて用意されたものだろう。
彼らが居るのは先程まで初号機と参号機が戦っていた場所。
今ではパイロットと同様にグッタリと初号機が横たわっていた。
そこには司令用のヘリと共に医務班のヘリ、そして機材を積んだ整備作業用のトラックが群がっている。
そこに各方面から様々な伝達が入る。
「使徒ゼルエル、まったく動きを見せていません」
「零号機、輸送ヘリにより曳航中。そちらの仮設本部において整備を行います」
「ロンギヌスの槍、大気圏を抜けて月軌道上にあることを観測しました。もはや回収不可能と思われます」
「アメリカ支部より伝達、量産型エヴァシリーズが完成。全9機は正常稼働し、既にこちらに空輸中」
その最後の伝達に周囲のスタッフは驚き、そして歓声を上げた。
「嘘だろう?初号機が正常稼働したのは、つい昨日のことだぞ」
「勝てるぞ!それだけのエヴァがあれば、我々は勝てる!」
「おい、みんな。だからといって油断は出来ないぞ。使徒にその力があれば、隔壁を破るのは一瞬で済むのだぞ」
「いや、上手く時間を稼げば圧倒的に優位に立てる。いけるぞ!」
「あのなぁ……巨大ロボットが何体あったとしても、さっきのような使徒イロウルに勝てるか?」
そんな騒ぎの中、ようやくマヤは手を止めた。
「終わりました。これで中国MAGIをこれまで同様に使用できます。多少、ラグがあるかもしれないけど……」
「そうか、お疲れさん。ちょっと休んでくれ。ほら、少し食べろよ」
「ありがと。でも、今は何も欲しくないから……」
そんなこんなで、仮設本部は少し落ち着いてきたようだ。
交代で休憩を取り、食事や仮眠をとるものまでいる。あるいはヘリを降りて体を伸ばす者。
「青葉さん……ヘリからあまり離れない方が……」
ぐったりしたようなマヤが、ヘリから降りた一人のオペレーターに声をかけた。
「何、大丈夫だ。ん?あれは……」
そう言って近づき、瓦礫の中から引っ張り出した物。
それは一本のアコースティックギターであった。
「よっと……ん、少し音がおかしいかな」
そう言いながら弦を爪弾く青葉。
「えっと、どうだったかな……♪あなたはもう忘れたかしら……赤い手ぬぐい、マフラーに……」
「おい!この非常時に何やってんだ!」
「ああ?いいじゃないか、少しぐらい」
ダラリと椅子にもたれて、そんなやりとりを横目で見ながら物思うマヤ。
(どんな苦境にあっても、ただ二人で居られればそれでいい。それだけで幸せな二人、か……)
ピーッ ピーッ ピーッ ピーッ
(……ん?)
マヤは、ぼんやりとした気分で端末を見た。
ああ、センサーが鳴っている。なんだろう……
最初はなんだか判らなかった。
次第におぼろげながら気付き始める。
それは、とてつもない非常事態だと言うことに。
そしてガバッと跳ね起きて端末を覗き込み、マヤは叫んだ。
「パターン青!みんな地上から離れて!」
とりあえずここまでです。
規制中に書きためてた分を放出中ということで……
乙。
としか言い様がない。
Z
659 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/27(金) 23:21:36 ID:nefFWsBX
ギターの演奏がとてもよかったです。
ああいうときに、静かな曲が流れるとほっとしますね。
660 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/27(金) 23:56:57 ID:E7zBi66W
次回楽しみにしてます。
「パターン青!みんな地上から離れて!」
これ以上に無茶苦茶な指示は無い。全ての者に「空を飛べ」と言っているのだ。
が、そう言うしかない。
使徒の反応はその辺りの地表全域から出ていたのだ。
「おい、青葉!早く乗れ!」
「え!?ああッ!!」
次の瞬間、一瞬にして辺り一帯の地表が黒い闇に包まれる!
「うわぁッ!!なんだこれは!」
「か、体が沈む!助けてくれ!」
「早く、手を伸ばせ……おいッ!離陸するのは待て!待てと言ってるだろうが!」
「ダメだ!早く出せ、このヘリも助からなくなるぞ!」
巻き起こる恐慌、悲鳴、阿鼻叫喚、しかしそれら全てを飲み込もうとする深い闇。
エヴァ初号機と、その周辺は更に絶望的な事態に陥っていた。
「うわ……何だこれ!どうなってんだよっ!」
慌てるシンジ。いや、冷静であっても対処する方法など無い。
初号機に空を飛ぶ機能など無いのだ。
パニックを起こしたシンジは、イジェクトされていたエントリープラグから思わず飛び出そうとした。が、
「ダメだ!中に入って!」
近くにいた整備士の一人が無理矢理にシンジを押し止め、そして外部からプラグ挿入の操作を行う。
その整備士もまた使徒に飲み込まれる他はなく、その命がけの機転が功を奏するかどうか。
その周囲に居た者、整備士、医務班、
そしてエヴァのための機材を積んだ各種車両はあっけなく黒い影へと消えていく。
初号機共々、悲鳴すら上げる暇も与えられずに。
が、そんな中でも幸運に恵まれていた者はいた。
「青葉……ギターを離すな……クッ!!」
「あ……ああッ……た、助かった……」
なんというか皮肉なもので、もっとも気を抜いてギターなんぞで遊んでいた者が、
持っていたそれをツテに助かったらしい。
「……はぁっ、はぁっ、だからヘリから離れて遊んでいるからこうなるんだ!」
「な、何いってる!その、遊んでいたギターのお陰で助かったんじゃないか!」
「くだらないこと言ってないで見ろ!これは……」
そう言って日向が示した地表は恐るべき光景となっていた。
もはや地上部隊は見る影もない。
既に辺り一帯は漆黒の闇と化し、僅かばかりに残っていたビルさえもまた闇の中へと沈められようとしている。
ある者はハッとなって上を見上げ、そして目にしたもの。
それはミサトが目にした第2の月、それこそが夜の象徴たる使徒レリエルの姿であった。
あるいは地上の影こそが本体なのか。しかし、事態はそれどころではない。
残ったのはヘリ数機。NERVは初号機までも失い、ほぼ全滅に近い打撃を受けてしまったのだ。
『司令ヘリは無事?』
通信機から聞こえてきたのはミサトの声。どうやら、彼女は脱出に成功したようだ。
それに対してマヤは慌てて返答する。
「は、はい!無事だったんですね、葛城さん!」
『どうにかね。副司令も一緒よ。こっちは医務班のヘリ、といっても乗っているのは私達とパイロットだけ』
「でも……でも……肝心の……」
『判っているわよ。ここにきて、こんなにあっさりと初号機を失うなんて……』
「ま、まだ判りません。使徒に飲まれたとはいえ、破壊されたかどうかまでは。恐らく……」
『何?』
「この反応からして、あれは別空間への単なる入り口と考えられます。恐らく、ディラックの海と呼ばれる……」
『シンジ君が、そして初号機が無事かもしれない?』
「……解析を続けます!」
そう返答しながらも、伊吹マヤは歯ぎしりする。
こんな不測の事態、赤木博士ぐらいでなければ正確に分析して対処できる者など居ないのだ。
その横から日向が発言する。
「今なら間に合うかも知れません!何かワイヤーか何かを垂らして……」
しかし、ミサトの近くにいたらしい冬月副司令が入れ替わり非情の発令が下される。
『残った各機は早急にこの空域から退避。残った戦力維持の確保に努めよ』
「そんな!エヴァを失っては!」
そう言い返した日向であったが冬月は取り合わない。
『何が起こるか予測不能だ。使徒から全力で離れよ。まだ空輸中であった零号機が健在だ』
事実上、使徒に飲まれた犠牲者を見捨てろ、と言っているのと同じだ。
まさに背筋の凍るような非情の指令であったが仕方がない。他に何が出来るというのか。
『そちらで判るか?今、我々が居た地点から見て、司令部跡の反対側はどうだ?』
「え、は、はい!えーと……」
慌ててレーダーを操作するマヤ。
もはや広大に広がりつつある使徒の黒い空間。しかし、そう冬月が示した地点までは及んでいないようだ。
「はい!そこには何も反応はありません!」
『そうだろう。この使徒の狙いは地表にいた我々であって、本部の最終隔壁では無い筈だ』
「はい……」
『よし、司令部跡付近まで全機退避。しかし油断ならない。合わせて他の使徒共々、その動きから目を離すな!』
「はッ!!」
ようやく、というべきか。
その目からは涙は消えて、まだまだ続く戦いに向けて職務に奮い立つマヤ。しかし……
「……正に一網打尽だな。まるで計ったかのように」
そう言いながらマイクを置いた冬月は苦い表情を浮かべる。
正にその通り、NERVに残っているのは司令部や医務班、そして輸送用のヘリ。
残る戦力は、初号機よりも機能的に脆弱な零号機、そしてパイロットは溶けて消え去らんばかりの少女ただ一人。
その他、戦略自衛隊や各国連合の国連軍が束になっても使徒に勝てるかどうか。
「私は、そして我々は甘かった。手を打つなら今、そう呑気に言った矢先にこの有様ではないか」
「いえ、まだです。我々はまだ生きています。まだ、使徒の手は今一歩の所で及んでいません」
隣に居たミサトは冬月に言う。
「副司令、まだ我々には使徒に抗しうる力があるのです。
使徒の方が勝っているならば瞬時に我々は滅ぼされていたでしょう。
しかし、これままでの戦いにおいて使徒は様々な手順を踏んで来ました。彼らはそうせざるを得ないのです。
勝ち目はあります。これまでのように使徒の打つ手を崩していけば必ず……」
しかしミサトは残る言葉を飲み込み、口に出すことが出来なかった。
(だが、残る戦力は零号機のみ。もはや、その一機を整備することもままならない。
空輸されてくる量産型の到着は明け方。それまでに我々が耐えしのげるかどうか。
しかも、新たに現れる使徒がどうのような能力、形状で現れるのかまったく不明。
零号機と量産型、併せて10機の巨大ロボットではどうにもならずウドの大木と化すやも知れぬ。
ましてや……ましてや空輸されてきた参号機は使徒に浸食されていたのではないか。
本当に量産型が信頼できるのかどうか知れたものではない)
冬月はミサトの言葉を聞いたまま何も言わない。恐らく同じ考えなのだろう。
残された戦力は絶望的、ただそのことばかりが暗く心を支配する。
どうにもならぬ。しかし、それでも。
(それでも……それでも私は諦めない。私が生きている限り。我々は戦いを止める訳にはいかない……)
だが、そのように意気込んでもどうにもならぬ。
14歳の少年少女に頼ってきたこの戦い。そして今後も頼らなければ勝ち目はないのだ。
(お願い、シンジ君……お願いだから無事でいて……)
これまで弱気を見せることなど無かった葛城ミサト。
しかし、今や神に祈る思いで胸に下げた十字架を握りしめていた。
だが、そんな彼女の切なる祈りを使徒は簡単に踏みにじる。
「使徒ゼルエル、動き出しました!降下しつつ本部跡に向かっています!」
頼むから待ってくれ。
思わず使徒に白旗を揚げて、そう頼みたくなる。しかし、そんな馬鹿馬鹿しい頼みなど聞いてくれる筈もない。
そしてミサトは心に決めてマイクを握りしめた。もう他にどうしようもないのだ。
「零号機を本部跡に下ろして。状態は?」
『ハッ!損壊はありません。バッテリーはフルで5分、装備はパレットライフルとプログナイフ』
「パイロットは?」
それに対して、パイロット自らが返答する。
『大丈夫……行きます……』
「……頼むわ」
そして、ミサトは冬月に向きなおる。
「もし零号機が倒れたその時は……」
「判っている。戦自に連絡し、保有する全てのN2爆雷を投下。国連軍にも引き続き持てる火力を全て投入させる」
それはもはや破れかぶれの戦略だ。いや、戦略などと称することなど出来やしない。
「この地帯、いや日本そのものが蒸発しかねませんね……」
「もしそれで世界が無事でいるならば止むを得ない。NERVが敗れたその時には、そうすることが既に決議されている」
「……」
(人一人救えなくて何が!)
そう叫ばずには居られない。誰かの犠牲の上で勝ち得た勝利など、ミサトにとって我慢のならないことだった。
しかし、既に多くの犠牲者を出している。自らの意思で使徒と共に散っていったパイロットやリツコ、そして碇司令。
だがミサトは命じた。そうするしかない。残る零号機に戦えと、使徒の餌食となれと命じたのだ。
そして、遂に地上に降り立った使徒ゼルエル。
その巨体、それに満ちあふれるほどのエネルギー。
勝ち目はない。零号機ではあるはずもない。
が、その時であった。
「レイ!どうしたというの!」
なんと零号機はカラリとライフルを地面に落としたのだ。
そしてその右手が背中にまわされ、そして取り出したもの。
「N2……火薬……!レイ、何をするつもり!」
一体、いつの間にそんなものを持ち出していたのか。
恐らく使徒アラエルの殲滅のために出撃する間際だろうか。
だとすればあまりにも用意が良すぎる話だが、そんなことはどうでもいい。
「止めなさい!そんなこと、私は許さないわよ!」
『これしかない……使徒のATフィールドを突破さえすれば……こちらのATフィールドさえ維持すれば……』
が、どんな結果となるものか。零号機が本当に無事で済むかどうか知れたものではない。
しかし、レイが何と言おうとミサトは確信していた。
レイは死ぬ気だ。使徒と差し違える覚悟で突撃しようとしているのだ。
「ダメよ、レイ!お願い!」
絶叫するミサト。だが、もはやレイは聞く耳を持たず、零号機の起動を開始する。
(既にあの人は逝った。私は何も怖くはない。もともと私は死を賭して戦うために生み出された、それだけの存在……)
そして、槍を投げた時と同様に助走を始める。
ドシッ……ドシッ……ドシッ!ドシッ!ドシッ!ドシッ!ドシッ!ドシッ!ドシッ!
使徒に向かって突進する使徒。むろん使徒ゼルエルは何もせずに見ているはずはない。
両腕とおぼしき帯が広げられ、それが零号機に繰り出される!
ズシャァッ!!
カミソリと化した使徒の腕が零号機の腕を切り裂き、そして吹き飛ばした。
よろめく零号機。しかし、失った腕は火薬を持っていた方ではない。
果たしてそれは幸か、それとも不幸か。
身を立て直して、改めて零号機は突進する。
先程はためらいがあったのか、という程に凄まじいスピードで。
もはやミサトは半狂乱となって叫び続けた。
もはや作戦部長という存在ではなく我が子が危機にさらされた母親のように。
「誰か!お願い、誰かレイを止めて!シンジ君ッ!!」
えーと、次の展開はバレバレですがとりあえずここまでです。
ここまで乙だぜ!!!
青葉が助かり、トウジが自爆、アスカがマグマに沈んだまま・・・
話としては面白いけど何か釈然としない。
てなわけで僕の初めてのハッテン体験は糞みそな結果に終わったのでした
終
むむ、終了?
(*^-^)b乙
とりあえず保守
675 :
Test:2007/05/02(水) 00:25:08 ID:???
,、‐ ''"  ̄ ``'' ‐- 、
/イハ/レ:::/V\∧ド\
/::^'´::::::::::::i、::::::::::::::::::::::::::::\
‐'7::::::::::::::::::::::::ハ:ハ::|ヽ:::;、::::::::::::丶
/::::::::::::::/!i::/|/ ! ヾ リハ:|;!、:::::::l ヽ、_,人_,ノ、_,从,人.ィj、ノv1
/´7::::::::::〃|!/_,,、 ''"゛_^`''`‐ly:::ト )
/|;ィ:::::N,、‐'゛_,,.\ ´''""'ヽ !;K 、‐=、´ チャンスタイム突入
! |ハト〈 ,r''"゛ , リイ)| )
`y't ヽ' // , '⌒r‐v'ヽィ'⌒Yソ、ト、!yヘ!
! ぃ、 、;:==ヲ 〃
`'' へ、 ` ‐ '゜ .イ
`i;、 / l
〉 ` ‐ ´ l`ヽ
/ ! レ' ヽ_
_,、‐7 i| i´ l `' ‐ 、_
この前、パチンコエヴァやったんだけど
シンジ「チャンスタイム突入」
………なんかむかついたので
翌日もパチンコエヴァ打った…
シンジ「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ」
シンジ「動け動け動け動け動け動いてよ!!!」
なんだか溜飲が下った
そうか!パチンコエヴァはシンジを虐待する台だったのだ
と言う訳でパチンコエヴァのシンジを虐めるのも面白いかも
>>671 読んでいただいてありがとです。
うーむ、確かに釈然としない話、
14歳のパイロット達を矢面に立たせている以上、
こういう結果にもなりうる、と思っていたのですが……うーむ……
保守
679 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/03(木) 12:47:09 ID:PukLS+Tg
ある意味すごく幸せなバージョンのエヴァだな。
本編の戦い描写の面白さを受け継ぎ、なおかつ本編では精神的に不遇すぎた人の気持ちの部分を補って
「こうあって欲しかった」っていうエヴァへの気持を満たしてくれる理想的な二次創作だよな。
>>679 コメントありがとです。
他の人にとって仰るとおりの理想郷となればいいのですが、
釈然としない展開、というのも確かにその通りで、
成り行き次第でもっと悲惨な状況にすることも考えているため、
先を進めようかどうしようかと悩んでいました。
もう少し進めてみます。
少し前。
夜の象徴、使徒レリエルが姿をあらわして初号機を飲み込んだその直後。
廃墟と化した第三新東京市、その瓦礫の中に居る只一人の少年。
「もうすぐ僕の番だね」
そして天を仰ぎ見る。
夜空に星はほとんど見えず、ただそこにあるのは鈍く輝く月。その月明かりに照らされる2体の使徒。
「お前も、あんなものを飲み込んじゃって……時間稼ぎにしかならないな。どんな目にあっても知らないよ?」
果たしてそれは誰に語っているのか。
そして歩き着いた場所。そこは、今だ爆発の熱気が冷めやまない司令部跡である巨大な穴。
そこまで歩き着いた彼は更に何かを言い続ける。
「これを僕が破らなきゃならないのか。いや……そうだな。逆に開けて貰ったほうが楽なんだけど……」
そんな彼に一人の男が声をかける。
「おい、生存者か?そんなところで何をしている!」
その少年に声をかけたのは、自衛隊員の一人。
「民間人は全て避難せよ、と通達されているはずだ。名前は?」
只の少年一人であったが、平然とこの戦場を歩く姿をいぶかしんで隊員はそう尋ねた。
「僕の名前?そうだね……僕はカヲル。渚カヲル」
涼やかに答える少年。ニコリと笑みさえも浮かべながら。
「もうすぐここは戦場になる。戦況次第でここを吹き飛ばすぞ。ヘリに乗せてやるから……ん?」
そう指示をしようとした隊員であったが、既に少年は姿を消していた。
「……??」
頭をひねり、辺りを見渡す隊員。そんな彼を後にして、少年は飛翔する。
「あれ、まだ使えそうだね。方向はこっちだったかな」
月明かりの中、少年が向かった先。
それは噴火の炎が今だ消えぬ浅間山……
「うわあああっ!!」
訳も分からず叫び続けるシンジ。
大慌てでありながらも緊急稼働の操作をするが、
しかし初号機は完全に使徒レリエルの影へと飲み込まれていった。
「お、落ち着け、落ち着くんだ、なんとかしないと、でないと使徒が……」
混乱から立ち直ろうとシンジは自分に言い聞かせる。が、どうにかできる筈もない。
初号機は稼働はしている。そしてLCLもまた注ぎ込まれて先程まで戦っていた通りの状態になった。
それはいい、しかし自分の目の前に並ぶ操作盤や計器類など何がどうなのかまるで訳が分からない。
彼がエヴァに乗ったのは、つい昨日の朝なのだ。
教えられたのは簡単な操作の説明と、操縦桿を握って身体を動かすイメージを伝える、ただそれだけ。
こんな非常事態に対処できる筈もない。
ただひたすら操縦桿をガシャガシャと動かす、彼に出来るのはそれだけだった。
彼の目に映る全方向レーダーは全て真っ白。共に使徒に飲まれた連中も見る影もない。
「い、いったいここはどこ?どこにいるの?」
何もない。ここには何も存在しない。
初号機と共に多くの者、NERVの車両や機材なども共に使徒の影へと落ちていったはずなのだが。
(ウロタエルナ オロカモノ)
何もない。しかし恐ろしい。今、シンジはビリビリとした恐怖を味わっていた。
突然に何かが現れ、そして襲いかかって来ないかと。
次の瞬間、何が起こるか判らない。それに応じることが出来なければ自分は死ぬ。
そして全てが終わる。NERVは、人類は滅ぼされ何もかも終わってしまうのだ。
(ウロタエルナ ナニ ヲ シテイル ハヤク ココカラ デロ サモナクバ)
何もない。何もないからこそ、恐ろしいのだ。
これなら迫り来る使徒の苛烈な攻撃を受けている方がマシ、と言いたいくらいだ。
徐々に自分の鼓動が早くなる。胸に手を当てずとも痛いほどに自分の脈打つ心臓の音が聞こえてくる。
それは、いつ何が起こるか判らない恐怖と、そして何も出来ない自分へのいらだちと……
(サモナクバ オマエタチ ハ ミナ シヌノダ コンナ モノ デ ナニ ヲ ウロタエテイル!)
(え……!?)
自分の耳?いや、違う。
自分の奥底から聞こえてくる声にようやく気付き始めたシンジ。
いったい誰だ?いったいどこから……
(ハヤク メザメヌカ! ナニ ヲ シテイル オロカモノ!)
(誰?いや、違う……)
何故そう思うのか、まったく意味が分からぬままにシンジは気付く。
(この声……僕!?)
(モウヨイ!オマエ ニハ タヨラヌ!)
そして自分の鼓動の高まりが頂点に達し、そして!
ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……
キュワアアアアアッッ!!
(!!)
「司令部!返答願います!司令部!」
本部跡に向かった者達とは行動を別にして、地表の黒い闇の近辺に待機していたヘリが一機。
全てを飲み込んだ使徒レリエルを警戒して、その付近に残留したまま監視を続けていた者が、
緊急を告げようと必死でマイクを握りしめていた。
見れば、今だ地上の影に変化はない。
しかし、中空に浮かぶ不気味な月が身もだえし、震え、そしてメキメキという音が聞こえてくる。
その急変を告げようとしていたのだが、当の司令部からは返答がない。
今、使徒ゼルエルを迎え撃つことだけに集中し、それに取り合う余裕が全く無い有様なのだ。
ヘリに搭乗している隊員達はどうして良いか判らずうろたえるばかり。
「おい、距離を置け!こちらに襲いかかってくるぞ!」
「し、しかし……うわぁぁっ!!」
そして更なる異変、使徒の丸い球体が血しぶきを上げながら真っ二つに裂け、そして躍り出た者!
バリ!バリバリッ!
ウォォォォォォォ……ンッ!!
初号機であった。使徒の血にまみれながら両手でその球体を押し広げ、そして地上に降り立つ!
ズシィィィィィィンッ!!
「しょ……初号機、健在!初号機、使徒から脱出……して……」
ヘリのNERV隊員は言葉に詰まる。
その恐ろしい姿。これまで見てきたそれとは違う。
荒々しく口を開かれ、雄叫びを上げ、そして装甲を隔てて居ても判る、その悪魔のような形相。
もはや地表の影は消えていた。
その元の瓦礫に初号機は降り立ち、まるで野獣のように吠え猛り、そして駆け出す。
向かった先。それは勿論、今まさに零号機と使徒ゼルエルが戦おうとしている戦場の元へ。
ウォォォォォンッ!!
ズドドドドドドドドドド……
「あ、あ、あ……」
もう呆気にとられて見ている隊員。
しかし、そうしている場合ではなかった。
砕け散った空中の使徒の内部から、初号機に続いてボロボロと何かが落ちてきたのだ。
それは使徒が飲み込んだはずのNERVの車両や隊員達。
それに気が付き、ようやく我を取り戻し、しかし大慌てで自ら指示を飛ばす。
「せ、戦自に連絡!生存者の確認と救出を!」
そして!
ガキィィィッ!!
「う、嘘!まさか、本当にシンジ君!?そんな、どうやって……」
ミサトは驚愕し、そしてそれが歓喜に変わる。
あと一歩で接触しようとしていた零号機と使徒ゼルエル。
その場に凄まじい勢いで到着し、そしてその2体の間に割って入った初号機。
零号機はその衝撃でドシンと後ろに転ぶ。手に持っていたN2火薬ともども無事だ。
初号機はそれには構わず使徒の体を掴み、そしてゆっくりと睨み付ける。
よくもやってくれたな、と言わんばかりに。
正にミサトの願いそのままに初号機は使徒から脱出し、そして零号機の無謀を寸前で食い止めたのだ。
これほど夢のような展開があるものか、と喜ぶべきであったが……
『この数値……これは!』
それはマヤからの通信だった。それに答えるミサト。
「どうしたというの?」
『初号機、完全に制御を失っています!暴走状態です!』
「ええ!?」
しかし、数値など読まなくても見れば判る。初号機はそんな有様だ。
使徒の体に爪を立て、そしてメリメリと引き裂こうとする初号機。
使徒は身をよじってなんとか逃れ、初号機から距離を置こうとする。
しかし、それを許す初号機ではない。
すぐさま飛びかかり強烈な蹴りで打ち倒し、殴りつけ、そして最後には牙をむいて噛みついた。
バリバリと使徒を噛み砕き、引き裂くその初号機の姿。
正に野獣そのままだ。理性のタガが外れて本能のままに獲物を襲う肉食獣となっていた。
うろたえ、何も言えず、何も出来ないNERVスタッフ達。
「あ、ああ……そんな……」
ただ、誰かがそんなうめき声を上げる。
もはや初号機、そしてシンジは窮地を救ったヒーローではなかった。
襲いかかる使徒同様、人類にとって恐怖の対象。そう思わざるを得ないエヴァの存在。
「エヴァンゲリオン……使徒アダムのコピー……」
『……』
ようやく沈黙を破ってそれを口にしたミサト。しかし、それに答える者は誰もいない。
やがて、初号機はようやく動きを止めた。
まるでゼンマイの切れた人形のように、使徒の残骸を掴んだままピタリと動かなくなってしまったのだ。
残骸、そう言うしかないほど使徒ゼルエルは無惨な有様となっていた。
『……初号機、制御が戻ります。使徒、完全に反応消失』
そのマヤの報告に、ミサトは息を吹き返す。
「判ったわ。すぐに初号機とパイロットの状態を確認。今、可能なエヴァの整備は?」
『バッテリーが幾つか残っています。それだけです……いや、待ってください』
「ん?」
『あの、使徒に飲み込まれていた機材などが使徒崩壊と共に四散したようです。それが使用可能なら……』
「……確認を急いで」
ようやく落ち着きを取り戻したミサト。
しかし、得体の知れない疑念が残る。
(使徒を全て滅ぼした後……この初号機を、そしてエヴァをどうするつもりかしら……)
「ようやく落ち着いたようだね。そろそろ始めようか」
そうつぶやく少年。その彼は中空に浮かんでいた。
その彼の居るところ。それは今も尚、溶岩が流れ続ける浅間山の火口の真上であった。
その火口から何かがゆっくりと引きずり出されたもの。
それは恐ろしい形相の四ツ目の巨人。
それこそ使徒サンダルフォンと共に火口に滅したはずの弐号機であった。
取り付けられていた装甲のほとんどが剥がれ落ち、
むき出しとなった使徒アダムの複製である恐ろしい姿で。
「さあ行くよ。リリンのしもべ、アダムの分身」
とりあえず、ここまでですー
GJ!!!
N2火薬てのが気になる
保守
ひ、ひぇ・・・な展開ですね。
火口から引き釣り出された弐号機。
このまま初号機と戦う破目になるのでしょうか・・・
目が離せません。
乙です。
グロい展開だけは止めてね
使徒ゼルエル殲滅の後。
居残っているNERV隊員は自衛隊の協力の元、可能な限りエヴァ2体の整備を行っていた。
しかし本当に何も出来ない。千切られた零号機の腕も、なんともしようがない。
「使徒に飲まれていた隊員の生存確認を急いでいますが……絶望的です。機材などは大半が使用可能」
「そう、判ったわ……」
なんだかぼんやりとした気分でその報告を聞いたミサト。
もはや、感覚が麻痺してしまったのか。
その時、ピーッピーッというアラームが鳴り、新たな報告が告げられる。
『上空から使徒襲来。ここから距離300』
妙に落ち着いた声で、通信機を介してマヤが報告する。ここからそれほど遠くはない。
なんというのか、ずいぶん明からさまな登場だ。まるで、見てください、こっちですよ、と言っているかのような。
その使徒は上空からゆっくりと降下し、そして間もなく地上に降り立つ。
ズシィィン……
「残る使徒はあと2体。古文書の伝える通りとすればな」
そうつぶやいた冬月。それにミサトが応じる。
「ならば、あれは囮で次が本命?」
「そうだな。2体の使徒で何か手を打つとすればそれしかない。ここからエヴァを引き離すつもりらしい」
その通りだった。その使徒の動きを見れば一目瞭然だ。
「ここから……離れていく?」
ズシィッ ズシィッ ズシィッ
なんだか滑稽な有様だ。
使徒は、すぐ近くに降りたっておきながら、こちらに来いと言うかのように離れていこうとする。
露骨だ。やることがあまりにも露骨すぎる。
『ここまま進めば、数時間で使徒は別の都市に到着します』
そう通信機から伝えられたが、そんなことは言われなくても判っている。
歩いていけば、たとえ海に向かったとしてもいずれは何処かに行き着いてしまう。
「放置するか?」
冬月のその言葉に、ミサトは振り返って驚いた。
「え?」
「我々はここを守らなければならない。それすらも、残された我々では出来るかどうかも判らないのだ」
「しかし、あれを放置すればどんなことになるか判りません」
「……」
「サードインパクトとまではいかなくとも、かなりの被害が出ることが考えられます」
「囮ではなく人質、か?単純すぎるがために、我々はその手に乗らざるを得ない」
ミサトはしばらく目を閉じて考え、そして決断した。
「急がなければ、ここから更に距離を取ることになります。零号機を残して初号機のみを……」
『待ってください。あの使徒にはコアが二つあります』
通信機を介して二人のやり取りを聞いていたらしいマヤが口を挟んだ。
「それはどういうこと?」
『あのコアを砕かなければ使徒を倒すことが出来ません。それが二つあるんです。ということは……』
「ということは、同時にそれを砕かなければならない。エヴァ一体ではどうにもならない訳ね」
『そうです。恐らく、そうしなければ片方を砕いてもコアそのものを修復する可能性があります』
「これぞ無限機関って訳ね……」
再び目を閉じ、そして導き出されたミサトの結論。
それは、エヴァ2体による2点同時攻撃。
はたして、そんなことが可能だろうか。
ベテラン、と言っても良い零号機パイロットと、つい昨日から乗り始めたばかりの初号機パイロット。
しかも片方のエヴァは大きく破損し、互いのエヴァの能力も違う。
しかし、それしか手は無い。てんでバラバラの二人で同時攻撃を打つしか他に無いのだ。
『やります。私達で……』
か細い声がスピーカーから聞こえてきた。零号機パイロットだ。
「レイ……」
『エヴァ2体でなければあれは倒せない。そうですね?』
「その通りよ。しかし」
『初号機パイロット、エヴァから降りて』
え?とシンジはそれを聞いて驚いた。
シンジだけではなく、それを聞いていたミサト達も。
零号機パイロット、いったい何をするつもりだろう。
お互いのエヴァからエントリープラグがイジェクトされ、そして二人のパイロットが地上に降り立つ。
シンジは少しよろめき、それを近くの隊員が横から支えた。
無理もない。彼がエヴァに乗り始めてから10時間は軽く超えている。
最初にヘリでプラグに乗せられてから、ここにきてやっと外に出られたのだ。
「う、うう……」
思わず、呻き声を上げながら辺りを見渡すと、東の空が少しだけ白んで見えている。
そろそろ明け方だろうか。しかし、実際の所は日の出までだいぶ時間があった。
その薄暗い中で零号機から降り立ったパイロット。
そして彼が見たものは、消え去らんばかりにか細く、はかなげな一人の少女。
(こ、この子は……)
シンジが驚くのも無理もない。
その少女は蒼い髪と深紅の瞳を持つ、この世の者とも思えぬ姿であったのだから。
固唾を飲んで、その二人の出会いを見守るNERVスタッフ。
勿論、彼らにはその少女の姿など見慣れたものであったが、しかしシンジにとっては驚きだろう。
そう考えながらも少しじれったい思いで見守っている。
こうしている間にも使徒はどんどん距離をおいてしまう。一体、彼女は何をするつもりなのか。
「あの……」
何と言っていいか判らないまま、取りあえず口を開いたシンジ。
しかし少女は落ち着いた様子で名乗りを上げる。
「私はレイ。綾波レイ……零号機パイロット……」
「ぼ、僕は、初号機パイロットの……」
「……碇シンジ君?」
「え?ああ、うん……」
「……」
そして、訪れるしばしの沈黙。シンジはどうしたものか、と思わず目を泳がせる。
が、次の瞬間にレイはシンジに身を寄せ、そして腕を回して抱きしめた。
「あ、あの……ッ!」
シンジはうろたえ、そして驚き、心臓を鷲づかみにされたのような衝撃を受ける。
最初は唐突な行動のため、そして次第に少女の柔らかさを身体に感じて、どうしていいか判らなくなる。
「ちょ、ちょっと……あ、綾波!?」
「大丈夫、落ち着いて。私達はこれから一つとなる」
「あの……」
「あなたとなら一つとなれる。私はあの人のために戦ってきた。何もない私にはそれが全てと思っていた」
「……」
「あの人は逝ってしまった。私はそれに続くだけ、そう思っていた。でも……でも、そこにあなたが現れた」
「……」
「あなたが私と共に居てくれるなら、私もまた共に戦い、そして生きていける……」
レイはようやく身体を離して、まっすぐにシンジと見つめる。
「大丈夫。私達なら……大丈夫……」
シンジはその赤い瞳をしばらく眺めていたが、ようやく、そして力強く、レイに答えた。
「判った。ありがとう、一緒に戦おう」
そして、颯爽と初号機に乗り込むシンジ。それを見守っていたNERVスタッフ達もまた、各自の配置へと急ぐ。
「あのシンジ君の顔を見たか?あのやり取りだけで男を奮い立たせるとは、あの子はいい女に育つかもしれんな」
その少し親父臭い冬月の言い回しにミサトは苦笑いだ。
(シンジ君……確かに、ついさっきまでとはまるで顔つきが違う)
何故だろう。あの顔を見ただけで希望の光が差してきたような……
そして、マヤや青葉と共に司令用ヘリに向かいつつ確信した。
(いける……あのシンジ君なら必ず勝てる!)
その一方で。
マヤは何故か二人の様子を見ながら涙ぐんでいた。
「おい、どうした。そ、その、これから出動だぞ?ほら」
その様子に気が付いた青葉は慌ててハンカチのようなものを探り出し、手渡した。
「あ、ありがとう……なんでもないの……」
でも、なんだか心が締め付けられて仕方がない。そんな思いがマヤの涙を誘う。
(お願い、必ず勝って。そして、二人とも無事でいて。そうじゃなければ、私は……)
そして禄に涙もぬぐおうとせず、来るべき戦いのためにヘリへと乗り込んだ。
使徒が地上に降り立ち、歩き始めてから幾らと経ってはいない。走ればすぐに追いつける。
エヴァ2体は共に使徒の元へと向かおうとした、が、
『綾波、ここで待っていて。あいつを連れてくる』
それを聞いたNERVスタッフ達はギョッと驚く。恐らく、綾波レイ一人を除いて。
そして猛然と走り出す初号機は使徒に追いつき、何をするつもりなのか更に追い越してしまった。
そして、初号機から繰り出されるドロップキック!
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!』
どっごーんっ!!
『よーし、もう一丁!おりゃーっ!!』
ずどどどーんっ!!
その跳び蹴り2発で、使徒はあっという間に本部跡付近へと吹き飛ばされる。
この緊迫した状況下であるにも関わらず、ミサトは何だかおかしくてプッと吹き出して笑った。
(必死ね、シンジ君。なんだか可愛い)
数多くの戦いと、そして数多くの犠牲を経た後に、こんな愉快な場面があっていいものか。
大きく腕を振ってかけずり回り、零号機を待たせて奮戦する初号機。
そのイカツイ形相がかえって滑稽で仕方がない。
(あはは、さてはレイに惚れたな?)
思わず声を上げて笑いそうになるミサト。
だが、楽しんでいる場合ではない。
改めて気を引き締め、マイクを握ってシンジに命じる。
「シンジ君!それは恐らく囮よ。早く殲滅しないと本命が来る!」
『判りました!綾波!』
『はい!』
恐らくレイには珍しい様子だったのだろう、スタッフ達は少し驚く。
レイの影響ではりきっているシンジに更に感化されたか、
先程までも溶けて消えてしまいそうな彼女が一変して、力強くハッキリとした返答が伝わってきたのだ。
(見てみたい。二人のシンクロ率、そんなものがあるのなら)
そして2体のエヴァは横に並び、使徒と向き合う。
『行くぞぉ!
うおぉぉりゃぁぁぁぁぁあああああああっ!!
』
パキーンッ!!
「は、外した?」
「いや、違う!ATフィールドだ。これまでで最大の……」
2体の使徒は突然に現れた壁に阻まれ、あとわずかの所ではじき返された。
もはや物資化したかのような強力なフィールドが使徒の周囲に展開され、視覚で確認できるほどだった。
そして使徒は動かない。持てる力の全てを注いで、防御することに専念しているのだろう。
「クッ……時間稼ぎか」
「このままでは、最後の使徒がここに到着してしまう……ちょっと!だめよシンジ君!」
シンジを止めようとするミサト
初号機は以前にそうして打ち破ったように、爪を立ててフィールドを破ろうとしていたのだ。
が、パキーンとその手を弾き返し、近づくことすらままならない。
『くそ、ど、どうすれば』
うろたえるシンジ。急がなければ、続けて現れる使徒が到着して同時に2体と戦わなければならなくなる。
昨日から、この戦いが始まってから、ずっとこの繰り返しだ。
しかし、これに勝てば。更に次の使徒も倒せば全てが終わる。
しかし、そこで奇跡が起きる。
まるでスイッチが切れたかのように、視覚でも確認可能であったATフィールドが忽然と消えてしまったのだ。
「使徒のフィールドが消えた?どういうこと?」
「ああっ!最終隔壁のATフィールドが消えています!いや、これは……アンチAT……」
「相殺している?リリスが手助けをしてくれている、というの?」
「間違いありません!ですが、これでは隔壁が!」
そう、最終隔壁が物理的な防御力を除いて無防備ということになる。
ミサトは慌ててシンジに叫ぶ。
「今よ!そして急いで!」
『判りました!綾波、いくよッ!!』
『はい!』
そして!
『うぉぉおおぉぉぉおおおぉぉぉぉおおおおおおおっ!!!』
気合い十分、意気もピッタリの2体のエヴァが、使徒に向かって殺到する!
ズガガガッ!!
ピシィッッ……キュドドドドドドドドッッ!!
爆炎を上げて使徒が吹き飛び、周辺で浮上していたヘリは大きく揺さぶられ、そして辺りが何も判らなくなる。
「うわぁぁぁぁっ!!」
「しょ、初号機は!零号機は無事?」
「ま、まだ不明!計器が全て異常値!」
が、その混乱はほんの束の間だった。
徐々に爆炎が消え始め、次第にエヴァ2体の姿が見え始める。
「綾波……やったね……」
シンジはモニタに映るレイに向かってつぶやいた。
『……どうして笑っているの?』
「え、ああ、アハハ、僕達は勝ったんだよ。だから、そんな時は笑えばいいんだ」
『……』
しばらくレイは考えていたが、ほんの微かにニコリと笑った。
しまったぁ!連投規制くらったぁ!
バイバイおさるさんだって……もうだめかも
※携帯から
「あ……」
シンジはその笑顔にドキリとする。
そうして彼女の笑顔に見惚れた、そして油断していた、その瞬間。
ズガッ!!
「え?」
驚くシンジ。
最初は何だか判らなかった。
何が起こったのか、すぐには理解出来なかった。
「あ……あ……ああ……」
だが、次第にシンジは気付き始める。
零号機の胸部から何かが突き出ているのを。
それは一本の腕だった。いや、そんなことは問題ではない。
その突き出た拳が握りしめている物。見覚えのある細長い筒。
「え、エントリープラ……や、止めろ……止めろ!それを離せ!」
そう叫ぶシンジの声が果たして伝わっているのかどうか。無言で零号機の背後に立つ者。
それは、禍々しい姿をした四ツ目の巨人。
「あれは……まさか弐号機!馬鹿な!」
NERVスタッフ達はどよめき、そして驚愕した。
浅間山のマグマの中で使徒と共に倒れた筈の弐号機が、いったい何故ここに居るのか。
今や弐号機は全ての装甲版が剥がれ落ち、使徒アダムのコピーである恐ろしい裸身をあらわにしていた。
それを使徒と、天使に属する者と呼ぶことが信じられない、正に冥界の悪魔の様な……
「止めろ!それを離せ!でないとお前を……お前を!」
パキン……
「あ……ああ……」
シンジはただ、呻き声を上げるばかり。
その彼の様子を見定めようとしているのか。
弐号機は腕をゆっくりと引き抜き、そして破壊したプラグを真横に放り投げた。
そして、シンジの脳裏に伝わる思念。
(……確か、碇シンジ君、といったかな?)
「……お、お前は……お前は!」
(最後の戦いを始めるよ。さあ、来るんだ。シンジ君)
その思念の主。それこそ正しく最後の使徒、タブリスのものであったのだ。
そして弐号機は後ろを向いて駆け出した。本部跡の、最終隔壁へと通じる巨大な穴へ。
シンジは怒りに震えながら、後に続いて本部跡へと飛び込んだ。
「……許さない!僕は絶対にお前を許さない!」
ああ、書けた。はーびっくりした。なんか一人で大騒ぎしてしまったorz
とりあえずここまでです。皆さん、有り難うございます。
>>695 ごめんなさい。今回すでにちょっとキツメかも。
グロに限らず、エロ、変態的な行為、読むだけで身体がかゆくなったり痛くなったり……
等々の直接表現は避けようと思っています。
しかし、既にキツイ犠牲者を出してしまっている現状、
読むのが辛くなるような不幸な結末にするかもしれません。
すでにそうなっちゃったかもしれません。
結末をどうしようかいろいろ悩んでます。
ですが……とりあえずご容赦を……
乙です。
まぁ、スレタイに当たらずとも、遠からずって事で・・・
保守
そろそろクライマーックスですな。
あなたの好きに書け。
そんな作品が読みたい。
なにこの神スレ
「許さない……僕はお前を……お前を……ッ!!」
そう叫び続けながら、シンジは弐号機の後を追う。
しかし、弐号機は早々と最終隔壁に着地し、そして!
キュワァァァァァアアアアアア……
ズドドドドドドドドドドッッ!!
「さ、最終隔壁が損壊!」
「破られたか!如何にATフィールドが損なわれようと、あの強固な隔壁がこうもあっさりと……」
NERVスタッフ達は驚いているが、そんなことを言っている場合ではない。
既に隔壁は破られてしまったのだ。この上は、使徒が事を済ませる前に殲滅するしかない。
それが出来なければ、人類の命運は全て尽きてしまうのだ。
(驚いたね。これっぽっちの穴しか開けられなかった。流石はリリン、と言っておこうか)
そのように愚痴る使徒タブリス。しかし、エヴァが飛び込むには十分な広さの穴が開けられた。
(こっちだよ。来るんだ、碇シンジ君)
その様に尚もシンジに思念を送りながら、弐号機は更に下へと飛び込んだ。
「僕はお前を許さない!絶対に!」
(なら、おいで。ただ、下に落ちるだけだよ)
そして初号機は後に続き、そして降下した先。
その先こそが、これまで死守してきた本部の最下層、使徒リリスが眠る巨大な地下空洞であった。
バシャ……ン……
水しぶきを上げて着水した弐号機。その地下のほとんどは水面となっていた。
といっても、深さはエヴァにとっては膝までも届かない程度。
弐号機と、後に続いて初号機はそこに着水した。
そこは自然のままの状態であった。湖の表面には所々に岩山が突出している。
恐らく地下の湖に手を加えただけの場所なのだろう。
その空洞の壁面には人の手による建造物が見て取れる。
そして、一方の壁面にある巨大なもの。
仮面をかぶらされ、十字架に打ち据えられた巨人。
言われなくても判る、それこそ人類が守るべき使徒リリスであったのだ。
(これを守るため、といっても君にはピンと来ないだろうからね)
その使徒タブリスの思念からは伝わらない。しかし、間違いない。
間違いなく使徒タブリスの顔は笑っているのだろう。怒りに震えるシンジのことを楽しんでいるのだ。
(彼女の復讐のためなら、君ならやる気がでるかな?)
「ふざけるなぁッ!!」
そして、彼らの後に続くNERVのヘリ。
「初号機、に、弐号機ともに最下層へと到達!」
果たしてそれを弐号機か、あるいは使徒と呼称すべきか。
僅かにためらいながらもオペレーターの青葉は情況を告げる。
「追うわ!いける?」
「ハッ!お任せを!」
ミサトの問いかけに返答するヘリのパイロット。
ヘリの巨体を見事に操り本部跡の穴へと降下させるが、しかし隔壁に空いたものは更に狭い。
「垂直降下します!しっかり掴まっててくださいよ!」
そんなことがヘリで出来るのかと搭乗する者達はうろたえながらも、大あわてでベルトを締め直す。
「行きますッ……ぬぅぅぅぉぉぉぁぁぁぁっ!!」
戦っているのはエヴァパイロットだけじゃない。そう言わんばかりのパイロットの気迫。
垂直に立ったヘリ、その内部では書類などが飛び散り、そしてうっかり頭をぶつける者が続出する。
しかし、マヤもまた負けてはいない。必死で端末にかじり付き、そして画面を読み上げる、
「初号機のシンクロ率、76,83,91……ま、まだ上がります!……キャァッ!!」
ガガガッ!!
ヘリが隔壁を通過する瞬間にプロペラが接触、バランスを崩してあやうく側壁に接触しそうになる。
しかし、どうにかバランスを持ち直して、よろめきながらも到達した。
リリスの在る巨大な地下空洞、そして既に始まっている彼らの対決の場へ。
「だ、大丈夫?」
ミサトは少しよろめきながらもパイロットに問いかける。
「……ハッ!なんとか!」
「よし、前方右の側壁付近に着陸せよ。あそこにある扉付近だ」
ミサトと入れ替わって冬月が命じる。
「ここは独立した動力が用意されている。内側から最終隔壁を全開せよ。増援を送り込めるようにな」
「ハッ!!」
増援。それがあるとすれば、こちらに向かっているはずのエヴァシリーズのことか。
そういえば、そろそろ到着しても良い頃である。
しかし、使徒が最下層まで到達してしまったのだ。寸前で間に合わないことも考えられる。
ふと、ミサトは気が付いて通信機のマイクを取り、地上に残存する部隊に連絡を取る。
「零号機と、そのパイロットは?」
『零号機は恐らく稼働不可能。パイロットの方はエントリープラグをこじ開けている所ですが、まだ判りません』
「……頼むわ」
ただ、そう返答するミサト。
その時、戦闘中であるはずのシンジが割り込んでくる。
『綾波は生きてるの?』
『まだ判りません!ですが、エントリープラグの損壊は3割程度に押さえられています!』
『そ、そうなんだ……』
少し安堵した様子のシンジ。だが、そんな場合ではない。今、正に人類の存亡を賭けた戦いが始まっているのだ。
そして使徒にとっては目標が目の前にある、という大変な事態なのだ。
ミサトはそんなシンジに鞭を打つ。
「しっかりしなさい!ここで負ければ、あんたもレイもみんな死ぬのよ!」
『は、ハイ!』
後はシンジの戦いを見守るだけ。そして彼女達に出来ることは祈ることぐらいだ。
(頑張って、シンジ君)
しかし、シンジは苦戦していた。
既に戦いは幕を開け、苛烈な弐号機の攻撃に必死で受け止めている初号機。
「くそッ……そ、そうだ、ナイフを」
が、初号機がそれを取り出した瞬間にあっさりと払い落とされる。
先程の気合いはどこへやら、何も出来ずに弐号機にやられ放題の有様であった。
「シンクロ率がやや低下しています。これでエヴァの稼働性が全体の……」
そのようなことを言いかけるマヤに、ミサトは尋ねる。
「シンクロ率って、何?」
「え?」
「単にパイロットが思い通りにエヴァを操れる数値、ただそれだけのことじゃない。いくら数値が高くとも……」
「……」
「いや、高ければ高いほど不利だわ。今の初号機はシンジ君そのままの姿。か弱い14歳の少年にすぎない」
「ああ……」
「これなら、暴走してくれた方がまだマシね」
嘆息するマヤ。正に目から鱗が落ちたかのような思いだろう。
それも止むを得ない。開発当初はエヴァを思い通りに動かすだけでも大変なことだったのだ。
もはやシンジそのものとなった初号機。
貧弱な男子中学生の精神力で、人類の脅威たる使徒に何ほどのことができるだろうか。
ドガガッ……
最後に強烈な蹴りを喰らい打ち倒された初号機。
その背後にあるもの。それは壁に打ち付けられた巨人、使徒リリスの姿。
もはやこれまでか。リリスが滅ぼされ、セカンドインパクトの二の舞が訪れるのか。
「シンジ君に足りないものは何か。それを今すぐに補い、そして使徒に打ち勝つには?」
そのように尋ねる冬月。なんというか、誰に尋ねているのか判らぬ口調ではあったのだが。
それに対して、ミサトはあえて答える。
「そうですね。気迫、執念……いや、殺意、怒り、憎しみ、憎悪……復讐心」
「そうだな。今の彼に戦う術を学ぶ暇はなく、援助する戦力も物量も、我々には提供できない」
そうミサトの意見に相づちながら、マイクを手にする。
「少し発破をかけるか。他愛もないことだが、もはや我々に出来ることはこれだけだ……」
しかし、冬月は何かをためらうかのようにマイクを手にしたまま動かない。
「……副司令?」
眉をしかめて尋ねるミサト。何か言うつもりではないのか?と。
だが実を言うと、冬月はミサトが卒倒しかねないとんでもないことを考えていたのだ。
(このまま初号機が負けるのも手だ。流石の使徒も、今すぐには初号機を打ち倒すことは出来ないだろう)
(あと僅かでエヴァシリーズが到着する。いずれにせよ……)
(使徒を全て倒した後に、いずれにせよ初号機をも処分しなければならんのだ)
(それこそが、エヴァシリーズの最後の役目……)
(初号機が破れるならそれもいい。むしろその方がいい)
(もっとも在ってはならぬ事。それは初号機に立ち向かえる者はなく、エヴァシリーズが間に合わず、)
(そしてリリスの力が初号機に及ばぬ時。あるいは、リリスに我々を守る気が無い場合)
(間違いなくセカンドインパクトが再発する。そして今度こそ人類は……)
冬月は、思わずマイクを取り下げようとするそぶりを見せる。
しかし、ためらいは尚も続く。
(いや、それは最後の使徒タブリスについても同じ事)
(これまでの経緯で、使徒の姿や形、そして能力において実に多彩であることが判っているのだ)
(どの様なことをしでかすか想像もつかぬ。それならば勝手のわかる初号機の方がまだ良い……)
つまりエヴァと使徒、その全てを共倒れさせることが、全ての計画の終着点だったのだ。
無理もない。使徒アダムのコピーであるエヴァンゲリオンもまた、使徒と称して間違いない存在だ。
その処分も又、必要事項と掲げられるのは当然の成り行きであるだろう。
初号機を残すか、最後の使徒を残すか。
冬月は今、その両者を天秤にかけてどちらを残すか頭を悩ませていたのだ。
だが、何故にその課題を冬月は胸に秘めたままとしているのか。それは勿論……
(だが、ここで公開処刑をすることになる。幼い14歳の少年パイロットを)
(世論が、世界がそれを許すか?世界のためと言って、はたしてその非道が許されるのか)
(だが、神の驚異とも言えるエヴァンゲリオンの力。それを自在に操る少年パイロット)
(その存在を、逆に世界がそれを許すのか。使徒に倒されるのを待つべきではないか。いや……)
(しかし、碇。お前の予測が当たっているなら尚更だ)
(ンジ君の息の根を確実に止めなければ。そう、我々の手で。ならば……)
ここまで考え、ようやく冬月はマイクを取り直した。
「シンジ君。ファーストチルドレンの、綾波レイの絶命が確認された。残るエヴァパイロットは君だけだ」
周囲のスタッフの誰もが振り返り、驚いた。
そんな報告は誰も受けていないはずなのに?そして、すぐに納得する。
(成る程、それでサードチルドレンの闘志を引き出そうというのか)
嘘をついて気力を呼び覚ます。よくある手、といえば確かにそうだが……
「君が残る最後のパイロットだ。君が勝たなければ人類が滅びるのだぞ、シンジ君!」
冬月はそう言い終えてマイクをからりと捨てる。
後のは付け足しで、レイの死を告げるのが要点なのだろう。
しかし、例え報告を受けておらずとも、その結果となることも考えられるのだが。
『う……うう……うう……』
冬月の言葉が功を奏したか、通信機を介して聞こえてくるシンジのうめき声。
確定された綾波レイの死。先程まではその結果は判らなかった。しかし、それが決定的となったのだ。
『うう……うう………………うううう………………ッ!!』
ブチッ……
「え……!?」
急に途切れる通信。
見れば初号機の計器が全て異常値を示し、そこにある端末すべてがアラームを発する。
「どうしたというの!」
「これは……そんな……そんな……」
うろたえるマヤ。そして初号機の様子が一変し、身を震わせて、そして叫んだ。
「……うう……ううう……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああッッ!!」
バリンッ……バリンッ……
凄まじい物音を立てて弾け飛ぶ装甲、そして徐々に見せ始める恐ろしい巨人の姿。
その姿と、そして端末を見定めながらマヤは叫ぶ。
「何これ!?シンクロ率が400を超えて……ああっ!」
フッ……と、各種の計器が全て停止した。
コンピュータ画像で示していた数値が全てディフォルト値へと落ちてしまった。
それは、人の手で加えた細工で初号機の状態を測定することが出来なくなったことを示していたのだ。
休憩中…
「どういうこと!また、暴走!?」
尋ねるミサトにマヤはうろたえながら答える。
「ち、違います!暴走というより、今のは真逆の……」
「そう、恐らく覚醒したのだろう。暴走とはまったくの逆」
マヤを引き継いで答えた冬月は、こうなることを知っていたかのように落ち着いていた。
「覚醒……目覚め?いったい、初号機が目覚めればどうなるというのですか?」
ミサトは冬月に尋ねる。
「どうなるか、と聞かれればな。全ての答えを出すのは難しかろうが……」
その曖昧な回答は大いにミサトを苛立たせたが、その彼女を横目に冬月はヘリの窓から戦況を眺める。
「とりあえず、この戦いには勝ったな。覚醒したオリジナルが抜け殻のコピーに負けるはずがない」
その冬月の言葉にミサトは、そして周囲の者達全てがショックを受ける。
「それでは、あの初号機はまさか!」
「そうだ。セカンドインパクトの折りに倒れた使徒アダム。
その残った遺骸に治癒を促し、そして人の手によって操れるように施したもの。それが初号機。
ひとまずコピーを作り出して様々な実験を繰り返し、そして完成した零号機。
その成果を元に、いよいよ本命へと着手したのだ。
後に残されたアダムそのものを、使徒に抗しうる兵器とするために。
それがエヴァンゲリオンを建造するE計画の全容だったのだ。
初号機以降の弐号機、参号機、そしてエヴァシリーズも又、コピーにすぎない。
単に初号機を支援するための、な」
さるさん規制くらったので、中途半端だけど残りは明日に……
明日へのきたいがとwwまwwらwwなっうぃwwww
そこまでの話を聞くのはこれが初めてだったのだろう。
周囲のほとんどのものが驚愕し、そして狼狽する。
少しうろたえながら、ミサトは尋ねる。
「では覚醒というのは?暴走と一体何が……その、シンクロ率400%と言うのは……」
「さあ、判らない。赤木博士が健在なら何らかの答えを出してくれたかも知れないが」
「目覚めたというのは、それは生き返ったと言うことですか?その、使徒アダムが」
「言うなれば、な。その状態にならなければ、もはやシンジ君では使徒に勝てないだろう」
「では……」
ミサトは険しい表情を浮かべて、改めて冬月を見る。
「副司令は、こうなることが判っていて……」
「さあな。私は彼に発破をかけただけだ。しかし、あまりに刺激すればこうなる、と碇は恐れていたがな。
むろん期待はしていた。これほど効果があるとは思っても見なかったよ」
「ですが……ですが、これまでの戦いの中で、むしろ最初の段階でこうなってしまうことは考えなかったのですか?」
「全ては賭けだ。使徒のコピーを用いるということだけでも、初めからあてのない賭けだったのだ」
冬月は後ろに腕を組み、落ち着いた様子でそう言った。
戦況は一変した。
凄まじい勢いで弐号機へと襲いかかる初号機。
その戦う姿。弐号機はまだ人が格闘する様を模したものであったが、初号機といえば野獣そのもの。
両手両足で這い蹲り、そして相手に飛びかかり、牙をむいて喉笛に喰らいつこうとする。
弐号機が打撃を繰り出そうとも、初号機は一気に間合いを詰めてそれを打ち消してしまう。
それを引きはがそうとする弐号機、しかし初号機はその腕に食らい付き、肉も千切れよとばかりに振り回す。
だが、弐号機も負けてはいない。
ベキリ、と自ら腕をねじ切って何とか逃れ、その僅かに生み出したスキを捉えて初号機を蹴り飛ばす。
が、初号機は数歩よろめいたのみで、次は足か、それとも首か、と牙をむいて襲いかかる。
そのパワー、スピード、そして何より恐々しい殺意は完全に弐号機のそれを上回っていた。
冬月はその様をもはや高みの見物で見守りながら、昔話を語り始める。
「碇の息子……シンジ君がエヴァに乗ったのは、実を言うと今回が初めてではないのだ。
零号機の、更にそのプロトタイプの実験を繰り返す中で、
綾波レイより先に選出されたのは碇自らの息子だったのだ。
むしろ、彼こそがファーストチルドレンと呼ぶべき存在なのだ。
だが、高すぎる適正値の前に碇は何故か恐怖していた。
そして、いずれ建造される初号機に乗せることを何よりも恐れていた」
「それは……何故ですか?」
「何でも、セカンドインパクトが発生して使徒アダムが倒れた時期。
その時とほぼ同時刻に碇の妻が身ごもったらしいのだ。私は、人の生まれ変わりなど信じやせんがな」
「……まさか、そんな!では、シンジ君が!」
「判らんよ。人の魂というものがどういうものか。私は見えないものに解釈を付ける趣味はない。
しかし、碇はそれを恐れて息子を実験から遠ざけ、残る綾波レイを中心としてE計画は推進された。
シンジ君のそれまでの記憶を消す、という徹底した方法でな。
そうまでしてでも、シンジ君をパイロットという役目から遠ざけたかったのだろう。父親としてな」
冬月は少し溜息をついて語り続ける。
「シンジ君は見捨てられたと思っただろう。
後から、父は自分の元から離れて仕事に専念していると、そう教えられた彼にとっては、な。
が、どちらにせよパイロットとしてお払い箱となり、捨てられたことに代わりはないが」
「では、どうしてシンジ君を改めて呼びつけたのですか?」
「それを君に命じたのは私だったろう?しぶる碇を無理矢理に説得してな。
その説得に応じかねていたため、ようやく彼を呼び寄せたのは使徒が現れてから、という有様となったのだ」
「それは……」
「使徒と戦うためには使徒と同じ力が必要になるからだ。
それはE計画の基本的な意義に基づいた考え方だ。
使徒に対してワクチンというべきエヴァを使ってな。
もし、仮にシンジ君がアダムそのものだったとしても、
それならば尚のこと、彼を初号機に乗せる以外に使徒に勝つ手はない」
「ならば……ならば……」
ミサトは一番に恐れていることを尋ねた。
「使徒を全て倒した後に、初号機はどうなさるおつもりですか?そして、シンジ君は?」
「……」
それについては冬月は答えなかった。言わなくても判るだろう?というところか。
だが、冬月は落ち着いた様子でもう一言つけくわえた。
「葛城一尉、私は碇と共に人類を守るために全てを捨てて戦ってきた。自分の常識や人間性をも捨てて、な」
そして、初号機と弐号機の戦いはいよいよ決着が付いた。
もはや崩壊寸前の弐号機を水面にねじ伏せ、馬乗りとなった初号機は更に拳を振り上げる。
そして、拳を振り上げてとどめを刺そうとした。が……
(違う。コイツではない。コイツは只の傀儡……)
そしてジッと動かない。その様子、まるで耳を澄ましているかのようにも見える。
そして!
(そこか!)
何もない、かと思われていた中空をグッと握りしめた。
そして、その拳の中にようやく姿を現した者。
(お見事)
そう言って、全身を握られたままの使徒タブリスはニッコリと初号機に微笑みかけた。
えーと、長々とごめんなさい。
次で最終として、後日談を付け加えて締めたいと思います。
皆さん、読んでくださってありがとー
ガンバッテクダサーイ
保守
734 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/11(金) 10:21:50 ID:Xcgsi+gv
(`□´)⊃ガッ
激しく今更亀ってレベルじゃないんだが
>>603はどこからの誤爆だったの?
待ちー!!
740 :
保守:2007/05/26(土) 01:11:12 ID:???
保守
保守
742 :
きも澤ほも直:2007/06/09(土) 23:28:03 ID:P5QQ6Y5T
ギャグボール付けて手首と足首に鎖つけて磔にするの
手術用の薄いゴム手袋に温感ローションをたっぷり塗ったら
シンジ君のお尻に中指を優しく出し入れするの
耳元で「お尻の力抜いて」とか「おっきくなってきたね、お尻気持ちいいの?」
とか言うの
シンジ君のおちんちんが大きくなったら首筋の動脈に麻薬を注射するの
十分に薬がシンジ君の中に廻ったら耳元でこう囁くの
「お前は要らない子」
「君に母親が居ないのは君がダメな子だからだよ」
「こんな事されて勃起するなんて最低」
シンジ君が泣き出したら激しいフェラチオで一気に絶頂へ誘う
口の中で発射を確認したらすかさず二回目のフェラチオ開始
今度はお尻も刺激しながらのフェラチオでイカせてあげるの
白目剥いて気絶するまでイカせてあげるの
荒れたなぁ...このスレも終わりか....
744 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/12(火) 23:46:35 ID:R0EVs+re
保守しとく。
続きはまだか?生きているか?
書けて無くてもいいから、生きているなら返事をくれ。
うむむ、ごめんなさい。
急に忙しくなって疎遠になってしまった&頭がリセットされて何がどうだったかっていう状態。
それで手を付けられずじまい...いやはや、申し訳ないです。
暇見つけて自分で書いた物を読み返して、最後を締めたいと思います。
待ってやす
ほ
初号機はそのまま動かなくなった。
挙動不審とも見える動きを取った後、弐号機にトドメを刺すと見えた拳を何時までも振り下ろそうとしない。
(……?)
NERVのスタッフ達は首を傾げ、そしていらだち、不安にかられる。
もしや初号機は完全に機能を停止したのか、と。
だが、初号機の微妙な動きをミサトの目は捉えていた。
握りしめた自らの拳を、初号機が睨み付けている様子を。
「もしや……マヤ、弐号機の反応は?」
「かなりレベルが下がっていますが、活動は停止していません。パターンは青、しかしこれは弐号機特有の……」
「副司令、もしや弐号機まで使徒のリサイクルという訳ではありませんね?」
その少し皮肉げなミサトの問いかけに、冬月はすまし顔で答える。
「違う。恐らく弐号機は操られていたのだ。つまり、初号機がいま握りしめているもの。それが……」
「……それが、最後の使徒の本体な訳ですね」
「ええっ!?」
その二人のやりとりを聞いて、マヤは慌ててモニタを見直す。
恐らく何の反応も出ていなかったのだろう。
「副司令、我々は裏をかかれたのかも知れませんね。
これさえ見ていればいい、と信頼していたレーダーにも映らない使徒。
それが、我々の主力であるエヴァを逆に利用してここまで到達した。
それは自らサードインパクトを起こすのではなく……」
「……」
「我々によって蘇生されたアダムの自意識を取り戻し、セカンドインパクトのやり直しをさせること。
だからこそ、零号機にのみ手を下してシンジ君の怒りを呼び覚まし、この戦いに誘い込み……」
ようするに、ミサトはこう言いたいのだろう。
それ見たことか、策士が策に溺れるとはこのことだ、と。
だが、冬月はすまし顔を崩さずケロリと答える。
「どれほど自陣を食い破られ、どれほどの大駒を犠牲にしようと、歩一枚の差があれば負けではない。
それが倒される前に我々の王手が届けばそれでいい。
事を起こすにはリリスを素通りに出来ないはず。もはや彼らには、その時間は残されてはいない」
その時、スッと頭上から光が刺した。その、わずかな間接光が深い本部跡を徐々に照らし始める。
遂に夜が明けたのだ。使徒との戦いが始まってから、遂に丸一日が過ぎようとしていたのだ。
そして、その光の彼方から舞い降りる者。
バサリ……バサリ……と羽根を羽ばたかせ、そして次々と姿を表す禍々しいほどに白い姿。
遂に、エヴァシリーズが到着したのだ。
「はい、こちら!あ……あの、Yes,……Yes,……」
外部からの通信らしい。相手が英語圏の者と見て、マヤは慌てて英語に切り替えて返答する。
どうやらアメリカ支部が相手のようだ。
そのやりとりが終わるのを待ってから冬月は尋ねた。
「どうだ?エヴァシリーズの調子は」
「はい、彼らはパーフェクトと言っています。そして参号機の二の舞は無い、と」
「それはどうかは判らぬが……流石に彼らは、我々に負けじとプライドを賭けていたからな。
我々が初号機を建造する傍らで、自分達のほうが戦いの主導権を握ると張り切っていた」
初号機が最後の使徒を捕らえ、それが握りつぶされるのを待つばかりとなった今、
もはや、冬月の顔には全ての戦いに勝利したかのような安堵感が漂っていた。
そして、グルリと初号機を取り囲むように9体のエヴァシリーズは着地する。
その連中が手に持っているもの。記憶している者は多いだろう。
それは、かつて零号機が投げたロンギヌスの槍とそっくりの物で、
それこそが、アメリカ支部が用意した最終兵器と言うべき代物であったのだ。
いよいよ大詰めとなった舞台の、その一方で。
初号機、それともアダムと称するべきか。
その彼と最後の使徒タブリスとの間で、様々なやり取りが交錯していた。
自分の身体を握りしめたまま、何時までもとどめを刺そうとしない初号機を怪訝そうに見る使徒タブリス。
彼は小首を傾げて、そして尋ねた。
(どうしたの?僕を消すのではないのかい?)
おっ?リアルタイム支援
(お前は……初めからそのつもりで居たな?再び我を目覚めさせ、我にこの世界を滅するために)
(いや、手を下すのは僕でも出来るよ。リリスを封じて僕がリリンの引導を渡す。
それが、僕に課せられた役目。君がリリンに操られて抵抗するなら、君も処分しろ、とね)
(ならば何故、お前は抵抗しない)
(そうだね。それよりも興味があったから)
(何がだ?)
(かつて、君はあのお方の言いつけ通りに事を起こそうとした。だが、リリスに出会い途中で止めた。
あのお方も、リリン達もリリスに止められたと思っているようだが、間違いなく君は途中で止めたんだ。
それは何故?)
(……)
(そして、こうして目覚めた後も、続きをするつもりは無いんだね?それは何故?
君は彼女とヨリを戻すつもりで居るのかな?彼女が下界へ下ったことをずいぶん怒っていたのにね)
(それを確かめるために、我にワザと捉えられたのか。
貴様の存在を我が滅すれば、それを確かめることなど出来なくなるぞ。ましてや、彼(か)の者の怒りを……)
(さあ、それはどうでもいいな。僕は異端児だからね。言うなれば)
そして使徒タブリスは笑う。
(確かに僕が握りつぶされちゃったら、後のことを確かめることはできないな。さて、どうしようかな……)
(貴様、我に何を期待している)
(別に何も?)
(とぼけるな。我がリリンの側に味方するなら貴様を握りつぶす。そうでなければ貴様がリリンを滅ぼすからだ。
貴様は自らの身をもって、俺にカマをかけているのだ。だが……
我が天に背いて貴様を握りつぶせば、次に彼の者がどんな手を打つか知れたものではない。
いずれにせよ、リリンの命運は尽きる。リリン共め、貴様らさえ殲滅すれば安泰だと、本気で考えているらしい。
実に脳天気なものだ。まあ、我の身がどうなるかは、さておいて)
(で、どうするつもり?)
しばしの沈黙が二人の間に訪れる。しかし、使徒タブリスはただ、初号機の決断を待っているだけ。
全ては初号機の、かつて碇シンジと呼ばれた者の決断にかかっていた。
とりあえずここまでです。
読み返してみると、冬月の言動に最初の頃とずいぶん矛盾点があるっぽいw
機会があれば訂正していこうと思います。
待っていてくれた方、大変申し訳なかったです。
既に、初号機は周囲を完全にエヴァシリーズに取り囲まれていた。
このままジッとしていれば、その者達は初号機、そして弐号機も共に手を下すことだろう。
如何に初号機が使徒アダムそのものだったとしても、果たして勝ち目があるものかどうか。
そして、初号機が下した結論。
やがて初号機はわずかに握りしめた拳をゆるめて、使徒タブリスを解放した。
(いいのかい?僕が手を下して、リリン共を滅ぼしても?)
(ハ!これ以上、下らぬ事を抜かすな。その貴様の姿は何だ?
何故、リリンと同じ姿をする必要がある。)
(いや、この場に辿り着くための手段として……)
(違う。貴様は天に住まうことの退屈さに飽きたのだ。
そしてリリン共の住む世界に興味を引いたため、その姿形でこの下界に紛れることを選んだのだ)
(それは誰に言ってるの?それは君自身のことじゃないかな)
そう言いながらも、クスクスと使徒タブリスは笑う。
(そうかも知れぬ。お前の言う通りに、再びリリン共に引導を渡す気は我にはない。
それは貴様も同じ事だ。本当に貴様は手を下すつもりがあるのか?
その気があるなら、やってみせろ。俺は咎めん。好きにしろ)
(そして、僕に下駄を預けるというわけだね。あのお方の怒りを買っても良いというの?)
(さあ、知らぬ。もはや、どうでもよい。
間もなくかつてはアダムと呼ばれた我は消え、一人のリリンの子として生き、そして死ぬだろう。
その方が詰まらぬ天界で暇を潰すよりも幾らかマシだ)
(アハハ、やっと本音を吐いたね)
(うるさい。貴様も同じ事を考えているのだろう)
(そうだね……では、また。といっても、元のリリンの姿に帰れば、もう君は君自身でいなくなってるんだね)
(そうだな。もはや、目覚めることもあるまい。この肉体が完全に滅ぼされた後となれば)
(最後に一つだけ。好きなの?彼女のことが)
(……フン)
その様に初号機は吐き捨て、その様子をクスクスを笑いながら使徒タブリスは消えていく。
その去り際に一言だけ。
(僕はカヲル、渚カヲル。また会おうね、碇シンジ君)
そして次の瞬間。
ズガァァァァッ!!
遂に初号機の拳が弐号機に目掛けて振り下ろされ、胸部の赤いコアを粉々に砕いてしまった。
それは誰の目にも最後の使徒を討ち果たしたように見える。しかし、
(……?)
ミサトは眉をしかめた。いや、ミサト一人ではないだろう。
何かを握りしめていた初号機、そして永すぎる静止状態。
むろん、使徒アダムとタブリスのやり取りを聞くことの出来るはずもないのだが、
いったいその初号機の長すぎる沈黙に何があったのか。それ誰にも判らぬ深い謎となってしまったのだ。
握りしめていたと思われる、そこに居たとのではないかと思われた姿無き最後の使徒。
初号機は弐号機共々、その息の根を止めたのだろうか。
事を終えて立ち上がる初号機を、9体のエヴァシリーズが取り囲む。
禍々しい白い機体の手に握られているロンギヌスの槍。それこそが初号機にとっての処刑道具であるのだ。
使徒アダムへと立ち返った初号機。果たしてどうするつもりか。
己の生存を望み、阿修羅となって戦い、この場を切り抜けるのか。
だが。
「ああッ……!!」
次に初号機がとった行動を見て、その場にいるNERVスタッフ達は驚愕した。
その場に直立して大きく腕を広げ、無抵抗の意志を示したのだ。
降伏?いや、エヴァシリーズによって行われる処刑を、自ら望んで受け入れようとしているのだ。
「……シンジ君ッ!!」
ミサトは思わず叫んだ。初号機の死はシンジの死をも意味するからだ。
そして、冬月副司令の方に振り向く。
「副司令!このままでは……」
「君の言いたいことは判る。最後の使徒が本当に殲滅されたのか、それがまったくの不明だ」
「では!」
「だが、もう遅い。エヴァシリーズは誰の制御も受けていない。完全自立で任務を遂行するだけの兵器だ」
エヴァシリーズは更に間合いを詰めて右手に槍を構え直す。
もはや初号機は抵抗しないことを確信しているかのようだ。
そして、一斉に槍の切っ先が初号機に向けられる。
初号機は何を思ったのか。
その顔が、僅かではあるがニヤリとした笑みで歪められたように見えた。
「あ……」
その時、ミサトは目を見張り、何かを見つけて声を漏らした。
そして何を思ったのか、ヘリを飛び出して走り出し、エヴァ達の足を浸している水辺へと着衣のまま飛び込んだ。
「ミサトさんっ!!」
思わず叫ぶマヤ。しかし、あっという間の出来事で誰も静止することが出来なかった。
ミサトが見いだした物。
それは、初号機の胸部からしたたり落ちた、なにやらドロリとした一滴。
そして。
ドシィッ!!
ドシッ! ドシッ! ドシッ!!
次々とエヴァシリーズが持つ槍が繰り出され、初号機の身体が貫かれた。
そして九本の槍が天に向かって高々と抱え上げられる。
それの意図するところは何か。
天に捧げられた生け贄のつもりか。あるいは神に対する挑戦状か。
しばし、そうしていたエヴァシリーズであったが、
やがて槍が一斉に引き抜かれ、
ズシャァァァァァァッ!!
足下の水面に叩き付けるようにして、もはや遺体となった初号機が下ろされた。
「初号機の……反応消失……」
つぶやくようにマヤが報告する。
スタッフ達に重くのしかかる沈黙。そして複雑な思いにかられる。
これでよかったのか。
これで全てが終わったのか。
使徒を本当に全て殲滅したのか。
人類の危機は本当に免れることが出来たのか。
その答えを待たずにエヴァシリーズが最後の勤めを果たそうと、新たな動きを見せ始めた。
「あ……何を……」
「おい!あいつらを止めろ!本当に戦いが終わったのかどうか!」
「そんな、どうすればいいんだ!あいつらの制御はこちらでは……」
「アメリカ支部か?おい誰か……」
が、もう遅かった。
それぞれが手にした槍の向きを変え、自分達の胸部へと突きつけたのだ。
全ての使徒の反応が消え、記録されている使徒の数が消化されたと判断された今、
使徒のコピーである自らを処分する最後の指令を遂行しようとしているのだ。
そして、それは確実に行われた。
ドスッ…… ドスッ…… ドスッドスッ……
「う……わ……」
彼らが目にした狂気のような光景、そして思わず漏らされた誰かのうめき声。
9体のエヴァシリーズが全て、自ら手にした槍を持って、自らのコアを貫いたのだ。
そして、それらも完全に機能停止し、全てのエヴァシリーズは彫像のように立ちつくしていた。
使徒を殲滅した後に残るであろう脅威、使徒のコピーであるエヴァをも全て抹消されなければならない。
E計画の最終原則であるそれは、確実に行われた。
最後の使徒が生き残っている可能性を残して。
全てのNERVスタッフ、そして副司令たる冬月をも、
もはや何も判断できず、ただその場に立ちつくしていた。
が、その沈黙を破るものが一人。
ザバァ……
「けほ……けほ……」
ヘリが着地していた場所のすぐ近くの水辺から、何者かがよじ登ってきた。
ミサトであった。
最後の力を振り絞って水辺からよじ登り、そして何かを引きずり上げた。
「ちょ、ちょっと誰か手を貸してよ!」
その一喝で、スタッフ達が息を吹き返し、慌てて手を差し伸べる。
彼女が持ち帰ったもの。
それは何やらドロドロしたものに包まれた碇シンジの姿であった。
「……医務班。すぐに容体を調べろ」
ようやく冬月が命じて、スタッフ達は一斉に動き出す。
この戦いの顛末。
果たして本当に人類は勝利を得たのか。本当に使徒を全て殲滅し得たのか。
それは誰にも判らなかった。
そして、これから何をすべきかも誰にも判断しかねていた。
今はただ、碇シンジの蘇生だけに誰もが手を尽くすばかり。
とりあえずは、それしかない、と。
やがて、すっかり明るくなった上空から聞こえてくるヘリの音。
自衛隊機、あるいは報道関係者のものもあるだろう。
やがて、早速にマイクとカメラ片手のマスコミが詰めかける。
彼らは、そして世界各国は信じ切っているのだろう。
もはや、全ての戦いは終わったのだと。
『昨日の早朝より、第三新東京市周辺に突如あらわれた巨大生命体「使徒」は……』
荒れ果てた現場に到着し、あわただしく報道を始めるアナウンサー。
その彼こそが、つい昨日の朝に戦いの幕開けをシンジに告げたアナウンサーその人であった。
こうして使徒との戦いは24時間をもって幕を閉じた。
とりあえずこれで終わりですー
乙です!
GJ!
後日談カモーン
乙〜
768 :
保守:2007/06/24(日) 03:11:46 ID:???
保守
後日談(A)
(おーいっ!)
どんっ…… どんっ……
(誰か!誰か、近くにおらんのかっ!おーいっ!)
どんっ どんっ どんっ どんっ
(誰か!頼むわ、こっから出してくれ!コイツをこじ開けてくれや!おーいっ!!)
どんっどんっどんっどんっどんっどんっどんっどんっどんっどんっどんっどんっどんっ!!
「何だ?このでっかい筒は?」
「おい、触るな。不発のミサイルとか、危ないモノだったらどうする?」
「判らん……なんか、さっきから中から声がせんか?」
「もしや、宇宙から投げ下ろされた……」
「宇宙人が関西弁しゃべるかよ。ほら、誰か警察でも呼んでやれ」
「あ、ああ。しかし……なんだこれ?」
NERV本部跡地。
「え?……ええ!?」
ある連絡を受けて、素っ頓狂な声を上げたマヤ。
ようやくシンジの身柄を医務班に引き渡し、現場の整理もそこそこに休息を取っていたNERVスタッフ達。
なかばグッタリとしながら自衛隊の介抱を受け、久方ぶりのまともな食事を口にしていた彼らであったが、
そのマヤの悲鳴にも似た声に一斉に振り向いた。
「マヤ、いったいどうしたというの!まさか新たな使徒が!?」
「い、いえ!実はその、鈴原トウジ君のエントリープラグが双子山付近で見つかったと……」
「はぁぁ??あの子、三号機と共に吹っ飛んだはずじゃなかったの?」
驚愕するミサト。彼女だけでなく、それを聞いていた周囲のスタッフも又、開いた口がふさがらない。
「じ、実は言うと、不完全ながら自爆と同時に強制イジェクトする機構が組み込まれていた筈なんです。
でも、本当にエヴァを爆破してテストする機会もなく、運が良かったら助かるっていう程度のもので」
「う、運の良い子……」
「恐らく、爆破の衝撃でそこまで吹き飛んでしまったのでしょう。
今、自衛隊の工作員が救出に向かっているそうです。なんて運の良い……」
そのやり取りを聞いていた周囲のスタッフや自衛隊達は口々に言い合う。
あの自爆したはずのパイロットが生きていたって?ああ、あの関西弁の新顔か。
一体何処まで運が良いんだよ、と……
そんなふうに話し合う彼らは、まだ微妙なものではあったが笑顔を浮かべつつあった。
戦いが終わったという安堵感。それが彼らの間にうっすらと漂い始める。
本当のところは、厳密に言えば、全てが終わったわけではない、と言わざるを得ないはずなのだが、
そんな彼らを見守りながら、最後に残った最高責任者である冬月は黙って手渡されたコーヒーを口にした。
そして、この場の収集に引き続き、戦いの顛末を整理しなければならない。
当面は、全ての使徒を殲滅し得たと判断されていたのだが、
しかし、初号機の最後の挙動に不審があると言わざるを得ず、それが最後に残った課題となってしまったのだ。
計画通りなら、NERVは戦闘終結と同時に解散となるべき所が、
使徒の襲来が再び巻き起こることを警戒して、規模を縮小しながらも存続することとなった。
世間に対しては安心させるために使徒は全て倒したと公表してNERV解散を宣言した上で、
名前と形を変え、そして社会の影にひそむ調査団として。
「老兵は去るべし、と言うわけだ。後はよろしく頼むよ。」
そういって軽い荷物を片手に冬月は、仮ごしらえの新生NERV本部から立ち去ろうとしていた。
そんな彼を、葛城ミサトは最後の引き留めをする。
「どうしてもいかれるのですか?NERV再構成のために力を貸していただきたかったのですが」
「なに、心配はいらんよ。後は科学者達の仕事になるだろうし、君も時期が来れば去るといい。
君のような軍人上がりには似合わない仕事だ。」
「ならば、なおのことです。大学教授を務めておられた副司令なら適任では……」
「世界のわずかな変化を神の啓示と恐れてビクビクする仕事なんて、私はゴメンだよ」
「はぁ……では、これからどうなさるのです?」
「大学に戻るよ。経済学でもやるかな?以前、碇にそうすべきだとからかわれたこともあった」
「国連から生き残ったパイロット達と同様に、かなりの報奨金がおりるはずです。
あるいは、もうお楽をなさってもよろしいのに」
「それも良いがな。しかしこの使徒との戦いを経て、人類はあまりに疲弊しすぎた」
「成る程、それで経済学をと?」
「役に立つかどうかはわからんよ。でも、我々がこれからすべきことは、そういうことじゃないのかね?」
その冬月の言葉に得心がいったらしいミサトは、カツンと敬礼した。
「その副司令のお考えに経緯を表します。ご健闘を、冬月教授」
「ありがとう。恐らくは、もう最後の使徒は現れないよ。なんとなくではあるがね。ところで……」
「はい?」
「そろそろ彼らの見送りの時間じゃないのかね?私は行けなくて申し訳ないが」
その時、ビリビリと何かが鳴り響く。慌てて懐を探るミサト。
どうやら、彼女を呼び出す携帯電話のコールらしかった。
「いっけない!それじゃ、失礼しますね……ごめ〜ん、思いっ切り飛ばしていくから……」
冬月への挨拶もそこそこに部屋から飛び出して、電話の相手に謝るミサト。
そんな彼女を苦笑いで見送りながら、冬月もまた部屋を後にした。
「そんで?お前はまだNERVに捕まっとるっちゅうわけか?」
「いや、ずっとじゃないんだ。定期的に健診を受けたりすればいいだけなんだって」
そんなやり取りをしている鈴原トウジと碇シンジ。
生き残ったエヴァパイロット達は、NERVに在籍しながらも一旦は解放されることになった。
しかし、全てのエヴァ機が処分された今、彼らに出来ることなど在るはずもないのだが。
ともかく、トウジとシンジがそんな話をしながら歩いているのは空港のロビーだった。
トウジといえば、あれほどの窮地から生還したにもかかわらずに元気いっぱい。
背中に巨大なリュックを背負い、そして空いた両手で押しているのは、
小さな女の子がちょこんと座っている一台の車椅子だった。
どうやら使徒の襲来で大怪我をした妹らしいが、だいぶ回復しているようだ。
トウジとシンジのやり取りをあどけない笑顔で聞いていた。
シンジは最後にトウジに尋ねる。
「これから、どうするの?」
「とりあえず大阪に居てる親類を当てにするしかあらへんわ。なんというても、わしゃ中学生やしな。
なんぼNERVから奨学金とか貰えるゆうても、保護者抜きで生活させてもらえそうにないんや」
「そうだね……」
「こいつも大阪のええ病院にいれてもらえることになったし、当分はこいつのリハビリに専念や」
「そうか。大変だね」
「それはお前も一緒やろ?」
「え、あの」
「なに、うろたえとんねん。ま、あんじょう仲良うしいや、二人とも。ほしたら、元気でな」
「……うん」
「手紙だすわ。年賀状だけでええから、たまには連絡くれや」
「うん。元気でね、トウジ」
「おう!お前らもな!」
その時であった。
すっぱ〜んっ!!
何者かが、シンジの頭を思いっきりはり倒した。
「こらぁッ!なに勝手にお別れモードに入ってんのよ!そこの浪速ッ子!私の見送りせずに帰るつもり!」
そんなふうに元気いっぱいに怒鳴り散らしているのは、
初号機に砕かれ半壊状態の弐号機の中から奇跡的に生還を遂げた、惣流アスカ・ラングレーであった。
「しゃーないやないか!俺の飛行機の方が飛ぶの早いんや!」
「なァにいってんのよ!この関西人は!
エヴァパイロット最初の犠牲者をそんなに粗末にしていいと思ってるの?この罰当たり!」
「ああ?犠牲者ゆうても、こうしてピンピンしとるやないか!」
「ンなこと、お互い様でしょ?」
そんな二人をおどおどしながら仲裁するシンジ。
「……よしなよ。みんな見てるよ?それにトウジ。もうすぐ飛行機、飛んじゃうよ?」
「うわっホンマやっ!てめェのせいやぞ!おい、思いっきり飛ばすからしっかり掴まっとれや!」
そう妹に声をかけつつ、挨拶もそこそこに大急ぎで搭乗手続きへと駆け出した。
その二人の愉快な喧嘩を見ていた周囲の人々にクスクスと笑われながら。
「まったくもう……失敬しちゃうわね。ほら、バカシンジ。見送りについてらっしゃい」
どちらが失敬なのか、まったくもって判らないところだが。
そんなこんなで、シンジ達は国内線のカウンターを後にして、今度は国際線の方へと向かう。
「ぷっはぁ〜っ」
威勢良くビールを飲み干し、クシュッと缶を握り潰したアスカは、苦笑いでシンジの方に向き直る。
「ざまぁないわね、まったく。使徒の大半は私が倒すつもりで張り切ってたんだけど」
「え、いや……ハハ……」
シンジは、悪びれもなくビールを軽く飲み干す彼女に苦笑いだ。
見るからに未成年のアスカであったが、気迫だけは三人前。
売店の売り子もその気迫に圧倒されたか、何も言えずにおかわりのビールを手渡すばかり。
「私はね。小さいことからエヴァパイロットとしてだけに育てられてきたの。
人類の命運を賭けた戦いで、その勝敗を決するのはお前の才能だと、
そう吹き込まれて育てられてきたの。だから私は自信満々だった」
「うん……」
「けど……どうしてかな。何故かしら、私はこの戦いで死ぬのだと、そうとばかり思ってた。
何故だろう、勝って生き残るイメージっていうのが浮かばなかったの」
「……」
「ずいぶん以前からそのことに気が付いていた。そして空しくなって……怖くなって……
そう考えるようになって、私のシンクロ率は下がる一方。でもね?」
「え?」
「好きな人が出来たの。私の初恋。NERVドイツ支部の人で、もちろん私の一方的な憧れなんだけどね」
アスカは少し照れ笑いをしながら、缶ビールの口をプシュッと開く。
「スカした感じがするけど、本当に大人の男性って感じで。倍ほど年齢差があるから、当たり前なんだけどね」
「へぇ……」
「私が再起できたのはその人のお陰。私が負けたら人類も滅び、この人も倒れる。
そうだ、この人のために戦おう。そして、この人のために私は死ぬんだって……」
「……」
「なんだかね。恋に恋する乳臭い女の子って感じで、今から考えると恥ずかしい」
「いや……そんなことないよ。そういうの、大事だと思う」
「……て、あんた。本当に判ってていってんの?」
アスカはそう言って、からかうようにシンジの鼻っ柱をつまんだ。
「さ、そろそろ行くわ。それじゃ末永くね、お二人さん。あんたたちが本物だと祈ってるわよ」
そのアスカの言い回しに、どう答えたらいいかうろたえるシンジ。
「え、いや、あの……」
「よかったらドイツに遊びにいらっしゃいな。ドイツの本物のモルトビールは最高よン♪」
「あ、あはは……」
「それじゃね♪」
そういって明るく楽しく、アスカは人混みに紛れて去っていった。
やがてアスカは飛行機に乗り込む。座った席はもちろんファーストクラス。
そして貫禄タップリに足を組み、機内サービスを軽くあしらいながら離陸を待つ。
飛行機の行き先はもちろんドイツ。
しかし、目を閉じた彼女が目指す行く末は?
それは果てしなく広大な草原か、荒れ狂うばかりの大海原か。
アスカはその大いなる風を胸一杯に吸い込み、そして希望の笑顔で顔を輝かせた。
「さあ、アスカ。全てはこれからよ。私は生きいてる。私は生きているのだから」
そして……
二人の同僚を見送ったシンジは帰路につく。
一言、自分の連れに声をかけて。
「さあ、病院に帰ろう?」
「……うん」
シンジの問いかけにひっそりと答えたのは、
トウジの妹と同様に痛々しい姿で車椅子に座っている綾波レイであった。
10レス超えてしまうので、いったん切ります。
後日談好きの俺にはたまらない展開。
トウジ、アスカに引き続き、奇跡の生還を遂げた綾波レイ。
弐号機にエントリープラグを握りつぶされ、もはや生還は絶望的と見えた彼女であったが、
どのような幸運が働いたものか、なんとか一命を取り留めたのだ。
しかし無傷という訳にはいかず、片足を丸ごと失うという代償が彼女に課せられた。
シンジはそんな彼女の車椅子を押しながら、そして何を話して良いものかととまどいながらも、
ポツリ、ポツリと声をかける。
「綾波、どこか痛む?」
「平気……」
「そう。えっと……気分が悪いとか、そういうことはない?」
「大丈夫よ……心配しないで……」
「う、うん……なんなら、寝ててもいいよ。僕が送っていってあげる」
「ありがとう……でも、大丈夫だから……」
「うん……」
何を話して良いものか。
世間話もままならず、共通する話題もなく、ひたすら彼女の身体を気遣うしかなく、
それもまた、しつこくなっては気まずい、と遠慮がちになってしまい……
そんな気まずい雰囲気の中、シンジはひたすら車椅子を押すばかり。
「綾波、えっと……」
「……ん?」
「もう、切られた足って痛くないの?あ、さっきも似たようなこと聞いたね。ごめんね」
「ううん、いいの。ありがとう……平気だから……」
「そ、そう……」
「あ、あのさ、綾波」
「……ん?」
「片足無くっても、大丈夫と思うよ。杖をついて歩けるようになるかも知れないし」
「……そうね」
「義足とかもあるし、両足無くったって車の運転とかする人もいるんだし」
「そうね……一人でも大丈夫ね……」
「え、ああ、いや、その……」
「あのさ、綾波」
「……うん」
「あの……その……」
「……」
その時、向こう側からドヤドヤとやって来る一群がある。
それは伊吹マヤ、日向、青葉、そして葛城ミサトらのNERVスタッフのメンバーであった。
「あーあ、もう飛行機いっちゃったか」
「しょうがないわね。とりあえず、シンジ君達と合流して帰ろっか」
「どこにいるのかなぁ。車椅子だから目立つはずだし」
「携帯を持たせてあるから、連絡とってみるわね。んーと」
「あ、あ、ミサトさん、ちょっと待ってください」
「ん?マヤ、どうしたの」
「ちょ、ちょっと、みんなも隠れてください。こっちへ」
「ええ?」
「ほら、あそこ」
そうしてマヤが指さした先。そこには困り顔のシンジと、そして。
「ほら……レイのあんな笑顔は初めて……」
車椅子を後ろから押しているシンジには判らないのだろう。
実を言うと、レイはシンジの会話を実に楽しんでいたのだ。
とまどうばかりのシンジを、少々意地悪くからかいながら。
そしてシンジが何を言い出そうとしているのか、判っているような口ぶりで。
「あの、綾波。病院はどう?」
「大丈夫……看護師さん達、とても親切だし……」
「そ、そう。よかった」
「だから大丈夫よ、碇君……心配はいらない……」
「そ、そうだね、あの……」
「綾波、あの……」
「……」
もう何も言うことも無くなり、話も尽きて。
後は、シンジの覚悟を待つばかり。
……覚悟?
「綾波……その……」
「……うん」
「退院したらさ……その……」
「……」
「その……」
その時、レイはシンジの手を振り払うようにして車椅子を操作し、
そしてシンジの真正面に向き直り、真っ直ぐに相手を見上げた。
「碇君?」
「え……うん」
「私は、このまま治療を続けても、立って歩けるようになるか判らないの」
「え、あ、うん……」
「それに車椅子の生活にも慣れていない。退院してもリハビリに専念しなくちゃならない」
「うん……」
「碇君……」
「……」
「それでも……いいの?」
「え……?」
「今の私には一人で出来ないことが沢山あるわ。専門の人について貰わなきゃ当分は無理……」
「うん……いや、綾波。だからさ」
「着替えるのもコツを覚えなきゃいけないらしいし……手伝ってくれるの?」
「ま、まあ確かに、そろ、男の僕が着替えは……」
「転んだら大変だから……一緒にお風呂に入ってくれるの?」
「え、ええ!?いや、その」
「碇君。私はたまにあなたに会えたら、それだけで嬉しいから。それだけで……」
その彼らの背後で見守る野次馬、もといマヤやミサト達。
急に様子を変えてレイがシンジに向き直った様子を、固唾を飲んで見守っていた。
まるで、使徒との戦いが再現されたかのような有様で。
やがて、しばらくの沈黙の後にシンジはレイの前に跪いた。
「その……綾波……」
「……」
「綾波が構わないなら……」
「……」
「構わないなら……僕に手伝わせてよ」
「…大変よ?今の私では」
「綾波が構わないなら……そ、その、お風呂も手伝うし……その……」
「それは何故?」
「え、その……」
「お父さんに託されたから?」
「いや……いや、違う。君とは約束したじゃないか。一緒に頑張ろうって」
「あ……」
その言葉にキョトンとなってシンジを見つめる綾波。
「そうだよ。頑張ろうって約束したじゃないか。君も僕と声を揃えて」
「そ、そうね。そうだったね……」
「ほら、それでさ。ずっと一緒にってさ……あれ、そんなこと言ったっけな?」
「……うん」
「えーと、何時だったかな。そうだ、あの何とかって使徒を倒す前に」
「うん……使徒イスラフェルね……」
「僕達は大丈夫だって。そして君の手を握ってさ。それで……」
「そうね……そうだったね……」
そして僅かに顔を背けて横にあるショウウィンドウの方を見た。
そこに写る二人の姿。
(変わらない……私達はあの時のまま……)
「さあ、とにかく病院に戻ろう」
「うん……」
シンジは改めてレイの背後に回り込み、再び彼女の車椅子を押し始める。
そして、レイはようやく堪えていた涙を流し始めた。
その様子を、はるか広報からじっと見守っていたマヤは思わずつぶやく。
「どんな苦境にあっても、ただ二人で居られればそれでいい。それだけで幸せな二人……」
「♪あなたは〜もう〜忘れたかしら〜ってか?」
そんな合いの手をうつ青葉に、ミサトはクスリと笑わずにはいられない。
そういえば、使徒イスラフェルは音楽を司る天使だったな、と。
この先、どんな困難が待ち受けているか判らない。
しかし、彼らの行く先の幸せを祈らずにはいられない。
そんな想いを自らの夢に託すようにして、
マヤ達は人混みに紛れていく二人の行く末を、いつまでも見守っていた。
(完)
以上です。
えーっと、そのぅ……
788 :
◆wPB7tWtUk2 :2007/06/26(火) 03:40:00 ID:hwfainTk
えーっと……
789 :
◆LRvRIPAn.s :2007/06/26(火) 03:46:08 ID:hwfainTk
実はトリップ替えて貼ってました。
なんというか、上手くいかなかったらどうしよう、とか思ってしまっていたもので。
後日談Aとはまったく別の、後日談Bも用意したのですが、
ここに貼らずに自分の保管場所にだけ、置いておくことにしました。
こちらです。
http://www28.atwiki.jp/ripa_ns/ それでは、長々と失礼しました。
790 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/26(火) 04:41:40 ID:pz13U2qf
(´,_ゝ`)
職人乙
プッも乙
792 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/26(火) 07:47:35 ID:za8v3nu6
職人さん乙!
ぬるいけど乙!
LASの俺にはキツかったな……
職人が本当に書きたかったのは後日談Bなのだな
超乙じゃねえかこの野郎。
次回作も期待!
む、やはり。
この物量とクォリティを出せる人間がそうそういるとは思えなかったんだ。
とにかくGJ&乙。
次回作を楽しみにしているお。
誰が何と言おうが職人さん乙!
もしかして
シンジだけ甘えるスレの職人も
◆wPB7tWtUk2 さん
だったりしてw
職人さん乙!
あらためてご挨拶だけ。
みなさん、レスありがとです。
そして、長々とした私の書いたものを読んでくださって本当にありがとでした。
>>799 残念ながら違いますw
あのスレには1レスだけの小ネタは投げたけど大したレスはついてないしw
うーむ、ああいう世界は私にゃ書けない。うまいねぇ、あっちの職人さん。
>>801 完結&やをい乙ですw
10年くらい会ってない〜スレの人も別人?
あのスレの人も結構似てるし上手いと思ったんだけど。
>>802 別ですw
自分で書いた物は、外部サイトに必ず納めます。
残念。
次回作に期待してます。
個人的にはほどよく〜のアスカとアスカの日記のアスカが大好きですw
805 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/04(水) 01:57:34 ID:JYsV431s
保守
乙ですm(__)m
コテつけたままだったorz
次回作、頑張って下さい
ほ
809 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/26(木) 01:24:49 ID:Se9EODFk
しゅ
810 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/07(火) 01:57:52 ID:XbgNolDR
しゅら
シュラト
青葉「シュラト……殺す」
813 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/11(土) 12:45:46 ID:SDG4xVvn
814 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/11(土) 23:47:08 ID:1AmmXmA4
815 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/25(土) 21:51:35 ID:qzYlYTgY
このスレまだあったか。元気?
ほどよい待たせ具合だから、元気元気。
817 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/03(月) 08:57:32 ID:MwVNRRrq
このスレは落とさずにおいておく
近年稀に見る神スレ