『Final for America South Western Air, flight 135 service to Houston, Texas...』
ラスベガス・マッキャラン空港には、二人が次の都市へ向かう便の搭乗最終案内アナウンスが流れている。
日本からのフライトでサンフランシスコへ到着した二人は、沿海の国道をロサンゼルスまで走り、そこから州間道路でラスベガスへ、という旅程をたどっていた。
次の目的地はテキサス州のヒューストン。ここには国連空軍宇宙部門の最先端基地がある。また、広報目的もかねた巨大なテーマパーク風博物館もあり、職業病か技術や軍事から離れられない二人は、旅行ついでに足を運ぶことにしたのである。
20分後、スマートな翼を持つB737機は針路を転換し、ラスベガスの空を南東に向かって飛び立っていった。
そのころの綾波家…
「最近、いろいろ作るようになってきたじゃん、リナ姉」
最近といっても、ここ3・4日だが。
チビレイは知らないが、そのころ、相変らず食パン一枚口にくわえて交差点に全速進入したリナレイが、同級生の男子と激突してしまって、手料理に熱心になりだしたのは実はそれからのこと。
はじめは、カレーや、「野菜を切って入れるだけ」シリーズ、「豆腐を入れるだけマーボー豆腐」などだったか、今晩は餃子。
皮を除いて、中身は手作りである。にんにくが多いのがこの家の仕様だが…
「はいよ、皮少し焦げてるけどこのぐらいなら大丈夫っしょ」
「おいしそ〜 こんなんできるなら始めっから作ってよ、リナ姉〜」
運びつつも、目の前に完成した料理とその湯気越しに見えるチビの人影に、リナの眼に交差点クラッシュの青年が浮かぶ。
これが恋か、恋といえば今姉夫婦は何やってんだろー なんて一人心の中ではしゃいでいると、妹の声で現実に戻された。
「ちょっと、聞いてるの! リナ姉!」
「あっ、うん。聞いてるよ」
我に返って答える。
「まったく、この歳でプチボケ? だからリナ姉はオバサン…」
「オバサン言うなーーー」
と怒鳴り返すリナ。と、何かに気づいたか顔色を変える。
「……って、チビ…… 考えてみて、レイ姉とシンジ兄さんの間に子供が出来てごらん、
そしたら私たち… この歳で揃いも揃って本当に伯母さん… よ…」
リナの発見に同じように顔色が変わってしまったチビ。
「私も… リナ姉だけじゃ… なくて…?」
「うん… あんたも。 私もチビも… 同じレイ姉の妹だし… 下手すると… あの二人的にはうまくいくと10ヵ月後には…」
完全に動揺しきっている二人。普段リナにオバサン発言を連呼しているチビも、自分には若さがある、とたかをくくっていたが、内心でそれは間違いだったと今になって気づいたとさ。
「この歳でオバサンはイヤーーーーーーーーーーーーーーーーー」
2つの叫び声が鳴り響いた、そんな綾波家。