その頃…
加持はゲンドウの前にいた。
「いやはや、波乱に満ちた船旅でしたよ。やはりコレのせいですか?」
そう言いながら、トランクのロックを解除する。
「硬化ベークライトで固めてありますが、生きています。間違いなく。食糧補完計画の要ですね?」
「そうだ。最初の米、O. rufipogon、紫黒米だよ。」
ベークライトの中で不気味に光る一粒の籾殻。
顔を上げながら不気味に笑うゲンドウ。
こうして食糧補完計画のシナリオは進行してゆく。
翌日。村の集会場で談話している三バカトリオ。
「ホン〜マ、顔に似合わずいけ好かん女やったな。」
「同情するよ。」
暗い顔のシンジ。
そのとき集会所の戸が開く。固まる三人。
「はっきり言う。気に入らんな。」
後日、あの時は赤い悪魔にしか見えなかったとシンジは語っている。
何はともあれ、役者は揃った。
台風のような女性陣に囲まれる羽目になったシンジ。
だが、日本の、いや、世界の農業の未来は彼らの肩にかかっている。
〜第八話 台風、来日 Fin〜
「ハロー、シンジ。グーテンモーゲン♪」
「…お、おはよう。」
前回の赤い彗星っぷりにドン引きのシンジ。
正直、これから毎日顔を合わせるとなると気が重くなる。
ここへ来てしまったことを改めて後悔する。
アスカは綾波レイの顔を見るためにシンジを連れ出した。
ちょこんと成ったミニトマトをゆらめかせているPF・改を左腕に引き連れて…
綾波、発見。ベンチに腰かけ、気だるそうに『現代農業』を読んでいる。
「あたしアスカ。エヴァ弐号機のパイロット。仲良くやりましょ。」
言葉とは裏腹に、アスカのPF・改とレイのPFは互いを牽制し合っている。
「どうして?」
牙を剥き出しにして威嚇するレイPF。
「その方が都合がいいからよ。イロイロとね。」
攻撃のチャンスを窺うアスカPF・改。
「命令があればそうするわ。」
再び『現代農業』に目を戻し、『特集・今、ハウス栽培イチゴが熱い!』の項を読み始めるレイ。
互いに噛み付きあい、血みどろの様相を呈している両PF。
「―変わった子ね。」
二人が離れた後も、まだレイPFとアスカPF・改は威嚇し合っていた。
先生のところに戻ってもいいですか、と自問自答するシンジだった。
第九話 瞬間、苗、植えて
第七使徒 イスラフェル(スギナ)襲来
アスカのトマト栽培予定地(現在は畝たてまで完了)にスギナが生えているのが確認される。
直ちに第一種戦闘配置がとられ、指揮は不在のゲンドウに代わり、冬月副農場長が執っていた。
迎撃態勢となる第三新東京市。配備されるエヴァ初号機と弐号機。
「・・・したがって今回の迎撃は、目標をカルチベーターで中耕することにより、一気に潰すわ。
初号機並びに弐号機は交互に目標に対し波状攻撃、近接戦闘でいくわよ。」
「あーあ、日本でのデヴュー戦だっていうのに、どーしてアタシ一人に任せてくれないの?」
「仕方ないよ。作戦なんだから。」
「冗談ではない!」
「攻撃開始!」ミサトが命令を下す。
「じゃ、アタシからいくわ!援護してね。」
「え、援護?」
「付け焼き刃に何が出来るというのか!」
猛スピードでカルチを操るアスカ。みるみるうちにスギナを殲滅してゆく。
「お見事!」
「ナイス、アスカ!」
「ドレン、私を誰だと思っているのだ?」
勝ち誇るアスカ。皆が勝利に酔いしれ、使徒殲滅に成功したと思っていた。
だが、しかし…
つづく
一週間後。
「…ぬわんてインチキッ!?」
殲滅したはずのスギナが再び生えてきたのだった。
生命力・繁殖力に優れたスギナにはあまり効果がなかったのだ。
幸い農協のN2(有機窒素系)農薬投下によって使徒の足止めだけには成功した。
しかし農薬耐性を持つ使徒の進行は目に見えていた。
「まったく恥をかかせおって。いいか君達。君達の仕事はなんだかわかるか?
…しかし、碇はどこへ行った?もう一週間も経つが…」
「ま、立て直しの時間が稼げただけでも儲けものっすよ。」
使徒攻略に失敗したミサトは抗議文と被害報告書の山に埋もれて唸っていた。
そのミサトのもとに、攻略アイデアを持ってリツコがやってきた。
手渡されるメモリーカード。
「さっすが、赤木リツコ博士。持つべきものは心優しき旧友ね。」
「残念ながら旧友のピンチを救うのは私じゃないわ。このアイデアは加地君よ。」
「加持が…?」
つづく
チラシの裏
>>300氏
参考サイトの貼り付け、ありがとうございますm(__)m
カルチベーターは、雑草除去用の耕運機のことです。
エヴァは汎用家庭菜園型特殊自動車なので、コンバインのほかにも
色々な農作業用の特殊自動車に変換できるということでお許し下さいませ。
>たまの農閑期だからデートに誘った
ワロタw
一方で。
家に帰ったシンジを出迎えたのは、大量のトマトの苗とアスカだった。
いつの間にか引越してきているアスカ。
「…!(絶句)」
「あんたは今日からお払い箱よ。ミサトはアタシと暮らすの!」
「もう、イヤ…」
ゲンナリして言葉も見つからないシンジだった。
帰宅したミサトに説明を受ける2人
「第七使徒を倒すには、畝に黒色ビニールの被覆材、マルチを被せて太陽光線を遮蔽、枯死させるしかないわ。
マルチがけは、通常二人がかりの手作業で行われるのよ。
そのためには二人の協調、完璧なユニゾンが必要だわ。
そこであなたたちにはこれから一緒に暮らしてもらうわ。」
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工工。」
「…出資者は無理難題をおっしゃる。」
つづく
>>304氏
よく写真が見つかりましたねw GJです。
弐号機に乗っているオジサンを見たら、アスカはさぞご立腹でしょうねw
次回なのですが、
>>42氏のネタをベースに作成しております。
使用することをお許し下さいませ。
>>306 どんどん使っちゃってくださいな
俺42じゃないけど
三日も学校を休んでいるシンジとアスカ。
そのお見舞いに、委員長、トウジとケンスケがミサトの家へやってきた。
門についている銅鑼を鳴らしても返事はない。そこで三人は農場へ向かってみる。
農場でペアルックのつなぎを着ているシンジとアスカ。
「イヤーンな感じ。」
「ふ、不潔よ!二人とも!」
そこへミサトがレイを連れてやってきた。
パニクる三人に事情を説明するミサト。
「そうならそうと、はよ言うてくれたらよかったのに。」
「で、マルチがけはうまくいってるんですか?」
「それが見ての通りなのよ…」
息の全く合っていない二人の姿に一同、ため息。
「あったりまえじゃない!このシンジに合わせてマルチがけをしろったって、うまくいくわけないわ!どだい無理な話なのよ!」
「じゃ、やめとく?」
「他に人、いないんでしょ?」
「レイ、見せてあげて」
「合点、承知!」
自身の畑まで案内し、それを見せるレイ。
レイの畑には最新鋭のマルチがけ装置、マルチャーが配備されてあった。
得意げにマルチャーを操縦し、あっという間にマルチをかけ終わるレイ。
唖然としてそれを見つめるアスカと一同。
「…これは作戦変更して、レイのマルチャーを使った方がいいのかもね。」
ショックを受け、走り去るアスカ。
「冗談ではない!やってらんないわ!」
やってられないのは僕も同じだよ、ひどいよレイとミサトさん、と思いつつ追いかけるシンジ。
「―あの…」
「何も言わないで。分かってるわ。私のプライドを傷つけたマルチャーだからな。」
何だよこのガンオタ、追いかけなければ良かった、とまたも後悔するシンジだった。