聞いてくれる、綾波?
別に大した話じゃないんだけどさ。
この間、クモの巣を見つけたんだ。
うん…それ自体は珍しくないんだ。クモってどこにでもいるから。
綾波は、クモは嫌い?……そっか。
ええと、それでなんだっけ。
そうだ、そのクモ、車の中にいたんだよ。
車の中に、でっかいクモの巣があったんだ。
びっくりしたよ。クモって、たった二日で巣をはるんだって。
知ってた?……そっか。
でね、それでびっくりしたんだけど…。
なんだかそれよりも…なんていうか…悲しかったんだ。
そんな所に巣をはっても、何も来ないのにね。
いくら待ち続けても、欲しい物は手に入らないのに。
そのことに気づかないで、いつまでも待ち続けるのは、つらいことだよね。
それとも、あのクモは、分かっててあそこにいたのかな?
あそこでしか手に入らない、何かを待ってたのかな?
だとしたら、それは何だろうね。
綾波は、どう思う?………そっか。
そのクモ?…うん。
逃がしたよ。…普段なら、怖くてさわれないんだけど。
今度はちゃんとした場所に巣をはったかな?
うん?…そうだね。
多分、大丈夫だよね、綾波。