落ち着いてLRS小説を投下するスレ5

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1名無しが氏んでも代わりはいるもの
このスレはLRS(レイ×シンジ)小説を投稿するスレです。

過去ログ

落ち着いてLRS小説を投下するスレ
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1083495097/

落ち着いてLRS小説を投下するスレ2
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1110013621/

落ち着いてLRS小説を投下するスレ3
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1146477583/

落ち着いてLRS小説を投下するスレ4
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1155597854
2名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 17:29:34 ID:???
クソ
3名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 17:34:34 ID:???
>>1
乙。前スレ落ちちゃってたな。
4名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 17:37:26 ID:???
荒らし・煽りは華麗にスルーしましょう。
5名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 17:47:03 ID:???
はーい
6名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 17:50:18 ID:???
yes,sir.
7名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 18:23:41 ID:???
いちおつ
8名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 20:21:01 ID:???
「きみのことが好きなんだッ!!!」

その日から私たちは付き合い始めた


9名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 20:26:08 ID:???
>>8
短いね
10名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/21(火) 22:23:44 ID:???
ワラタ
11名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/22(水) 07:10:02 ID:???
シンジがもし告白するとしたらそれくらいシンプルだろうなとは思った

………二行のSSに感想なんてつけらんねえyo!
12名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/22(水) 11:51:04 ID:???
〜シンクロテスト中〜
リ「おかしいわ…」
ミ「ん?」
リ「見て、信じられない」
ミ「何よこれ?レイのシンクロ率がガタ落ちじゃない?安定性ではダントツのレイがなんで?」
リ「わからないわ…原因を突き止めなきゃね」
ミ「カウンセラーの手配しておくわ」
リ「カウンセラーじゃあてにならないわ。あの子の場合ね…もっと身近な人間…シンジ君でどうかしら?」
ミ「わかったわ…」
シンクロテスト後
ミ「シンジ君あなたに頼みたいことがあるわ」
シ「何でしょう?」
ミ「最近レイのシンクロ率が落ちてきているの知ってるでしょ?」
シ「はい」
ミ「あの子何か悩みがあるんじゃないかな?」
シ「それはわからないです」
ミ「そこで、アスカは嫌がると思うからネルフ本部の用意した部屋で一週間暮らしてもらうわ。かわりにレイをうちに連れて来て、様子を見ることにしたから…」
シ「はい…」
ミ「だから…シンジ君が様子見たり、相談に乗ったりしてあげてほしいの」
シ「はい…」
続く
13名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/22(水) 15:24:12 ID:???
ツヅキマダー
14名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/22(水) 16:53:27 ID:???
>>8の続き投下しようと思ったが時間がないorz
15名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/23(木) 07:50:29 ID:???
age
16名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/23(木) 09:01:35 ID:???
>>12の続き
入口の方へ歩いていくとレイが待っていた。ミサトの車は二人乗りなのでネルフの車を借りて自宅に帰ることに、
ミサトの家に着くとレイは用意された部屋に引きこもったきり出てこない。
ミサトはリツコと飲みに行くと言い、再び外出する。シンジはレイの部屋の前に立ち…
シ「綾波…夕飯なにがいい?」
レ「…」
シ「ねぇ〜」
レ「…」
シンジは首を傾げて居間に座る。
しばらくするとシンジはどこかから視線を感じるシンジは視線の方を振り返る。どうやらレイが部屋からシンジの事を覗いていたようだ。シンジはびっくりして引くとレイはびっくりしたシンジにびっくりして2センチ程開いた襖を閉める
続く
17名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/24(金) 10:38:35 ID:???
おつ
18名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/25(土) 17:25:15 ID:???
淡白だけど良いよ良いよー
19名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/26(日) 22:56:09 ID:oojI/8WJ
LRS!LRS!
20名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/26(日) 23:02:32 ID:beK6X1PO
>>12
>>16
乙!!
21名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/28(火) 02:25:07 ID:???
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆おまえらきんもーっ☆
22名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/28(火) 16:03:51 ID:???
自己紹介乙
23名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/28(火) 18:47:28 ID:???
>>16
シンジはレイの行動を不思議に思い再び扉越しに部屋の中のレイに話し掛ける
シ「あの、綾波?」
レ「…」
シ「何?」
レ「…」
シ「えっと、欲しい物とかあるなら取ってくるけど。」
レ「あるわ」
シ「何?」
レ「碇君」
シ「何?何取ってくればいいの?」
レ「入って。」
シ「は?」
レ「入って。」
シ「なっ、何で?」
レ「…」
シ「出ておいでよ」
レ「出ていいの?」
シ「いいに決まってるじゃん。」
レ「わかったわ…」
レイの足音が扉に一歩一歩近づいてくる
続く
24名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/28(火) 20:47:40 ID:???
乙だけど、えっと、セリフの前の名前いらんと思う。
25名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/30(木) 04:41:05 ID:???
うん、そしてついでに死ね
26名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/30(木) 22:54:58 ID:???
ひどいな
27名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/01(金) 22:16:18 ID:2QVOo/HE
あげ
28小ネタ:2006/12/02(土) 15:07:00 ID:???
シンジのサルベージは成功した。
翌日、本部内中央病院には、検査入院中のシンジを見舞うレイの姿があった。

「碇くん……」
「綾波……来てくれたんだ……」
「もう大丈夫?」
「うん……体に異常はないってリツコさんが」
「そう……よかったわね」
「うん……あの、綾波、ありがとう」
「どうして?」
「……よくわからないけど、僕が帰って来られたの……綾波のおかげなんだと思う」
「……私の力じゃないわ。私は祈ってただけ」
「でも……あの、綾波どうしたの? なにかあったの?」
「……そう、碇くんには分かるのね」
「話してみてよ、僕も綾波の……綾波の力になりたいんだ」
「碇くん……」
「あ、ちょっと気合い入りすぎ? は、はは……」
「……碇くん、わたし初号機に拒絶されたわ」
「……うん、ミサトさんに聞いたよ」
「ダミープラグも、初号機を起動させられなかった」
「うん」
「そして碇くんは……初号機に一ヶ月も幽閉されたわ」
「……幽閉?」
「碇くん……わたし御義母様に嫌われたのかしら?」
「綾波さん?」
29名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/03(日) 13:14:46 ID:???
>>28
シリアスな雰囲気だったのにwwwww
30名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/03(日) 23:20:00 ID:???
>>28
ワロた!才能有るよ、あんた。庵氏を思い出した。
31名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/04(月) 06:56:23 ID:???
俺は庵氏本人の作だとおもうが。名前を出さないだけで。
32名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/05(火) 18:54:27 ID:???
庵氏の作品殆ど残ってないからな
復活なら嬉しい
3328の人:2006/12/06(水) 09:43:17 ID:???
ごめん、別人です。

俺も氏の作品が大好きなので、そんな風に言ってもらえてとても嬉しい。
……ちょっと冷汗出るけど。
34名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/07(木) 00:39:45 ID:???
第3新東京市にやって来てから数ヶ月。
僕はじんるいをまもる組織の一員になっていた。
いろいろあったけど学校に友達もできたし、ミサトさんとの同居生活も楽しいし、
僕はそれなりに充実しているような気がする。
それに今、僕はその組織の同僚が少し気になっていた。
いや、かなーり気になっているような、そうでないような、モヤモヤした気持ちだった。
そんなわけで眠れない夜を3週間続けた僕はとうとう一大決心をした。
「綾波、ちょっといい?」
と言ったのは、放課後に訓練へ向かう途中だった。
ジオフロントへの直通リニアレールには僕と彼女しかいないから、勇気が萎まなかった
のかもしれない。
隣に座って文庫本を読んでいた彼女はすっと顔を上げて僕を見ると、
「なに?」
と短く言った。
冷たいような感じがする声。
でも、この数ヶ月の付き合いでこれが彼女の普通なんだと僕は知っている。
「あのさ、今度の土曜日、綾波は訓練あるの?」
と、僕は訊いた。
彼女はただ黙って無表情に僕を見るだけで、何も答えない。
かなりのプレッシャーを感じた僕は口を開いて、それを流さざるをえなかった。
「僕は休みなんだ。なんか久しぶりだよね。休みなんて」
あは、は、と僕は乾いた笑い声を上げた。
でも、やっぱり綾波は無言で僕の気持ちは萎えかけたが、ここで止めるわけにはいか
なかった。ここで止めるとまた一ヶ月くらい眠れなくなってしまう。そんな事態は絶対に
避けなくてはないらないのだ。
「あのさ、綾波。今度の土曜日に、えーと、その、あの、……」
「……」
「だから、僕、僕と一緒にどこか遊びに行かない?」
僕は言った。言ってしまった。もう後戻りはできない。
けれど、やっぱり彼女は表情を変化させることもなく、僕は逃げてもいいかな?と思い
始めていた。
しばし、綾波は僕を見つめ続け、僕はうつむき続け、そんな状況が続いたが、
35名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/07(木) 00:58:36 ID:???
「それは、デートに誘っているの?」
と、彼女が静かに訊いてきた。
彼女がデートなんて言葉を使うことに驚くのと同時に、僕は急に恥ずかしくなっ
てしまい、ただ小さく、
「うん、」
と答えるだけだった。
彼女はやっぱり表情を変えることもなく、
「そう、」
と呟くように言うだけで、いつの間にか列車は駅に到着していた。
彼女が先にホームへ降りて、僕はその後をついて行く。
すると、彼女は鞄からケータイを取りだして、なにやら電話をし始めた。
数十秒くらいだろうか。彼女がケータイをまた鞄にしまった時、僕のケータイの呼び
出し音がけたたましくなった。
「はい。碇です」
「私、ミサト」
「あっ、ミサトさんですか」
「シンちゃん、やるー。レイにデートを申し込んだんだって? やっぱりオトコノコな
のねー。お姉さん、うれしいわぁ」
「な、なんで知っているんですか!?」
その後、さんざんミサトさんにからかわれた後、僕は彼女に詰め寄り、
「どうしてミサトさんに言うのさ? 酷いよ。綾波」
「命令だから。碇君のことは逐一報告。葛城一尉からの最重要任務よ」
と無表情に言う彼女に、僕は言葉を無くすしかなかった。
でも、そのすぐ後、
「碇君、土曜日の予定はどうすればいいの?」
と言った彼女に僕はただ驚いて、しばらくぼーっとなっていたけど、
「う、うん。じゃあ、10時に綾波の家へ迎えに行くよ」
と自分でもびっくりするくらい大声で答えていた。
その夜から僕はまた違った理由で眠れなくなったけど、でも全然かまわなかった。
ただ早く土曜日にならないかと待ち遠しい気持ちで一杯だった。
36名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/08(金) 02:57:15 ID:???
続きマダーム
37名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/09(土) 23:39:14 ID:???
〜レイとシンジ。その他が皆普通の高校生だったら〜
と言う内容で話を作りたいのですがどうでしょうか??もちろんLRSで
38名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/09(土) 23:44:17 ID:???
高校生である必然性が見えない。大学受験とか就職をテーマにするの?

本編でも中学生なんだが、それを高校生に改変して何か違いが出てくるの?
39名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/10(日) 00:09:42 ID:???
オリジナルでやれよ。
無論、他の板でな。
40名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/10(日) 23:20:01 ID:???
まぁ高校生である必要性ってのは全く分からんけど。
とりあえずシンジとレイが回りのお兄さんお姉さん方に教育されるとかってのは勘弁して欲しい

だけども、好きにやらせてやれよ。スレ状況は過疎なんだし。
LRSならスレ違いにはならんだろ。
41名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/11(月) 01:19:59 ID:???
オリキャラにシンジ・レイと名付けて、
訳の分からないドタバタコメディやってもLRSなんだろうか?
それなら他の板でやって欲しいね。
42名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/11(月) 01:23:21 ID:???
>>41
書かれてもいないのに邪推しすぎ
43名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/11(月) 01:27:20 ID:???
はいはい、スルースルー。前のスレにもいた荒らしだろ。
とりあえず書いてみたら。駄目だったら容赦無く批判されるが、それは2chならどこでもそうだ。
44名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/11(月) 01:58:59 ID:???
そういう最低っぽいのは理想郷に投稿してくれ。
45名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/12(火) 16:39:03 ID:???
>>34, 35 の続きはまだ?
46名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/13(水) 00:14:05 ID:???
待ち
47名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/13(水) 20:27:51 ID:???
続きいいんですか?
反応がないから駄目かと思っていました。
48名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/13(水) 23:50:47 ID:???
待とう
49名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 00:57:17 ID:???
反応が無くてもそこあきらめたら終わりだよ
しつこいくらいに投下すれば何かしらの反応はあるさ
50名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 01:03:48 ID:???
俺としてはダメ。
でも、そんなことレスして雰囲気悪くしたくなかったからスルーしてた。
今回は反応を催促されたようなのでレスしてみる。
51名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 01:25:25 ID:???
まぁ俺は待ってるけどな
52名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 04:42:32 ID:???
最近投下系のスレは過疎だよな
53名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 05:54:26 ID:???
>>47
俺も投下待ってるよ。頑張れ。
>>50>>52
俺たちみたいに投下を待ってるのもいるんだからわかってるなら雰囲気悪くするような
レスは控えて欲しいんだよな。
54名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 10:36:13 ID:???
>>53
他人に指図するのは止めた方がいいぞ。
雰囲気悪くなる。
55名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/14(木) 19:45:41 ID:???
横レスで悪いが>>53は明らかに指図してないと思うぞ。お願いはしてるけど

とか言ってても無駄だからとりあえずおれも待ち
56名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/15(金) 00:04:54 ID:???
漏れも町
57名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/15(金) 00:09:23 ID:???
この流れではもうあきらめるしかないだろ
新しい人を待つしかないと思う
58名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/15(金) 01:04:43 ID:???
恋愛投下スレは職人いぱーいいるのに何故ここにはいないんだ
俺悲しいよ
59名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/15(金) 01:49:42 ID:???
>>55
お前、邪魔だから消えて欲しいんだよな。

こんな内容では、お願いではなく指図と取られても仕方ない。
60名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/15(金) 14:02:13 ID:???
おまえらやめろ
こんな空気だから職人来ないんだろ
61名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/16(土) 20:49:38 ID:???
ほしゅ
621:2006/12/17(日) 06:11:26 ID:???
 ― 道行 ―

碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。

そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。

彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、
時を得られればシンジにとって最も大切になったであろう少女が、若くして散った場所でもあった。


シンジは湖の水際に近寄ると砂浜に腰を下ろし、ゆっくりと息を吐きだした。

空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。
幾つかあったはずの壊れかけたオブジェすら、シンジの目には影にしか見えない。
その場所で動かずに微かな波音だけに意識を傾ければ、自分の存在すら見失えそうな孤独に包まれる。
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、このまま全てを綺麗に洗い流し消えてしまえたら…。
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖に据えて、そこにただじっと座りつづけた。

しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いた。
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほうを向き立ち止まる。
シンジもまた視線を上げることはない。
しかし、彼は自分の隣に立った人影、長い髪を背に垂らしたその女性が何者か知っていた。
彼女はシンジに言いたいことがあって彼を追いかけてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む彼に直接声を掛けるようなことはしなかった。
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。
632:2006/12/17(日) 06:12:36 ID:???

「………カヲル君は、好きだって言ってくれたんだ。……僕のこと」

その沈黙を先に破ったのはシンジのほうだった。
塞ぐ心を奮い立たせるように、シンジは小さく吐き出したため息に混ぜて言葉をつないでいった。

「初めて、初めて人から、好きだって言われた」

それは彼が心を寄せた少女に、告げることなく終わった言葉でもあった。
少女は長く彼の傍らにいたのに、臆病なシンジが声に出すことを恐れたために、
伝わることなく失われてしまった言葉だった。

「僕に似てたんだ。………綾波にも」

―――彼らのあの透明な笑顔はどこから来たのだろう。
シンジの記憶の中で、幾度か目にすることができたレイが向けてくれた微笑みはカヲルのそれと重なる。

「好きだったんだ………。
 …………生き残るなら、カヲル君のほうだったんだ。
 僕なんかよりずっと彼のほうがいい人だったのに。
 カヲル君が、生き残るべきだったんだ」 ―――あるいは、綾波のほうが。

自分を守って死んだ少女。
たとえ彼女が人ならざるものだったとしても。
その命が造られたものだったとしても。

レイがシンジにくれた気持ちは、今もシンジの中に変わらずに存在している。

カヲルが「使徒」でありながらも、確かにシンジの「友」だったように。
643:2006/12/17(日) 06:14:12 ID:???
シンジは抱えた膝の上に顔を乗せ、目を閉じた。
彼は外界の一切を拒絶し、胸の痛みだけを感じ取ろうとしていた。
シンジにとって今はそれだけが、二人の残してくれたものに思えたから。
背中を丸めたシンジの上を、湖を渡った風が優しく撫でていく。
シンジの言葉を黙って聞いていた女性は、彼に触れることなく距離を置いたまま静かに言葉を返した。

「違うわ。生き残るのは、生きる意志を持った者だけよ。
 彼は死を望んだ。生きる意志を放棄して、見せ掛けの希望に縋ったのよ。
 ………シンジ君は、悪くないわ」

―――なら、綾波は?

シンジの閉じた目の奥は、燃えるように熱い。
痛みに耐えるようにいっそう体を小さくしたシンジは、けれど泣けなかった。
ただ胸のうちで荒れ狂う叫びに耐えていた。

―――彼女は死にたくなんてなかったはずだ。
彼女は僕を守ろうとしただけだ。
それでも、彼女は死んでしまった。

僕のせいだ。僕がいたからだ。
僕が(初号機が)、彼女の(零号機の)そばにいたから。
綾波は使徒から僕を守るために…。

あの時。
僕は使徒を倒せなかった。有効な攻撃が出来なかった。

だから、綾波は…!

だから、今度こそ、僕は絶対に「使徒」を倒すと………。
654:2006/12/17(日) 06:15:04 ID:???
でもそれで、どうなった?

絶対に、「使徒」を倒す。
必ず、「使徒」を殺す。
次は、躊躇ったりしない!!  

………そう、誓った挙句、僕は次に誰を殺めた?

綾波は死んでしまった。
カヲル君を僕は殺した。

みんな、みんな僕のせいじゃないのか?

僕がいたから、僕が殺した、僕のせいだ、全部僕の、ぼくのせいで!!

シンジの中の嵐は静まることを忘れたようだった。
慙愧が、後悔が、シンジ中で膨れるだけ膨れて彼の心を押し潰そうとしていた。
出口を求めるように暴れるのは、感情の波。
けれど、飲み下せない悲しみという塊が喉を塞ぐ。
悲鳴にも似た彼のその叫びを押し留め外に出すことを許さない。
ほんの僅かに漏れたのは、シンジが口を膝頭に押し付け殺した嗚咽を混ぜた空気だけ。

「・・……冷たいね、ミサトさん」

―――いっそ責めてくれる方が苦しくないのに。

病に伏せる者のように、細く掠れたシンジの声は風にまぎれてしまうほど儚い。
半分ほどしか音にならなかったその彼の言を、ミサトが聞き取れたのかどうかは判らなかった。
しかしミサトはそれ以上は何も言わなかった。
シンジもまた口を閉ざし、他者を拒絶する気配をまとわせたまま顔を伏せた。
665:2006/12/17(日) 06:15:53 ID:???
彼女は蹲るシンジを見ることもなく来た時と同じ姿勢で立ち続け、やがて踵を返した。
すれ違う時シンジの背に向かい、「あまり遅くならないように」とだけ声をかけるだけで、
彼を連れ帰ろうとはしなかった。
彼女の足音が離れていく。

シンジはミサトが遠ざかるとそこから意識を切り離すように、再び湖を見つめた。

水面は、まだ暗い。


それからどのくらい経った頃だろうか。

シンジの視界の隅に、ぼんやりと白い影が映った。

白い影はまだ遠く朧げながらも人の形をしているようだった。
興味なさ気にぼんやりと、頭を動かす気力すら失ったかのように動かないシンジに、
それはだんだんと近づいてくる。

水面をすべるように。

漣に触れることなく。

やがてシンジの正面で静かに止まったその影は、少女の形をしていた。
月すらない闇の中に佇みながら、その肌は自ら燐光を発するように仄かに白かった。
薄青の髪の下、覗く瞳は赤。
シンジもよく知る造詣を持つその者の名は、綾波レイ。
それは、………『エヴァから創り出された、唯一つの魂を入れるための器』
676:2006/12/17(日) 06:16:42 ID:???
湖の上、シンジの手が届くほどの近さで、綾波レイは無音に佇む。

シンジの目はただ虚ろに水面に立つレイを映す。

それ以上の動きは、ない。

動かないシンジには、彼なりの理由があった。
彼にとってのレイはただ一人だけだった。
言葉を交わし、時に助け合い、僅かながらも触れ合うことの出来た、ただ一人の、少女だけ。

それ以外の『綾波たち』が、同じ形をし、…もしかしたら同じ魂を宿しているのだとしても。

三人目との最初の邂逅の時。
『綾波レイ』は、シンジをまるで見知らぬ人でも見たかのようにその瞳に映した。
形ばかりはどんなに同じでも。
それが、彼にとっての「レイ」、幾度も彼が「綾波」と呼びかけた少女と同一の存在だとはとても思えなかった。

それに、その後に起こった幾つかの出来事も、新たな『綾波レイ』をシンジに関わり付けたりはしなかった。

新たに知った事実により、『彼女達』の成り立ちを不憫だと思う気持ちはシンジにもある。
だがその時も、悲しいほどに心が痛んだのは彼の「綾波」に向かってだけだった。

いつかシンジが彼の父を詰った時、レイは怒りに手を振り上げた。
彼女はあの時どんな思いで怒ったのか。
思い起こせば自分の不用意な発言の多くがレイを傷つけたかもしれない。
今の『綾波レイ』を見ても、シンジの頭に浮かぶのは記憶の中の「彼女」のことばかりだった。

リツコに壊された『綾波レイ』達を見て感じた恐怖さえ…。
それの齎すグロテスクさへの嫌悪よりも強く感じた痛みは、
壊れ失われていくその『カタチ』に零号機とともに散っていった「彼女」の最後を重ね、
その苦痛を共感したが故のものだった。
687:2006/12/17(日) 06:17:31 ID:???
「レイ」の『形代』を見るのは辛い。

どんな形であれ『綾波レイ』なのだ、それでいいじゃないか、と、シンジの中の悪魔は囁く。
絆を求め、不器用ながらもシンジに向かって手を差し出していたあの少女とどこが違う?と。
記憶喪失だとでも思えばいいじゃないか、もう一度最初からやり直すだけ、それだけのこと。
そんな風に………、後悔に疲れ果てたシンジの心は揺さぶられる。

けれど。

違うのだ。

同じではない。彼女とは違う。
その瞳が。 その声が。
同じ色、同じ音であっても、そこに映る感情の揺れが、その音に乗せられた想いの彩が…。
…シンジに錯覚を許さない。

『綾波レイ』と関わることはシンジをさらに深く傷つける。
見れば辛さが増す。
だからシンジは『綾波』を避けた。
『綾波』に心揺れる自分も嫌だった。
同じ辛く苦しいことでも、シンジは出来るなら「彼の知る綾波」のことで苦しみたかった。

だから目の前にいる存在から、目をそらす。

シンジはその衝動に沿って、『綾波』を無視しようとしていた。
698:2006/12/17(日) 06:18:20 ID:???
「…碇君」

声は、夜を震わせる。

「碇君」

震えるのは、夜ばかりか?

「碇君」

それは懐かしい、響き。

「碇君」

どうして?

「…碇君。
 ……………ごめんなさい。
 泣かないで」

失われた、彩。
心を伝える音。
抑えられた抑揚の中に確かに感じられる、情(こころ)。

頭で考えるよりも先に体は反応した。
シンジの見開かれた目から、涙が溢れていく。

その涙を映し揺れるのは、赤い瞳。

そこには確かにシンジを想う気持ちが映っていた。
709:2006/12/17(日) 06:19:09 ID:???
「………どうして……」

聞きたいのはそんなことではないのに。
これが夢なら覚めるなと、シンジは怯えながら願う。
夢でもいい。
幻でも。
レイの声に震えた心がシンジを急き立てていた。
混乱した頭は、「今」を繋ぎ止めようと必死になる。
消えるな、消えないでと祈りながら、触れようと無意識に伸ばされるシンジの手。

しかし、その手はレイに触れる寸前、………力なく落ちた。

苦しげに細められたシンジの目に宿ったものは、深い慙愧。

―――レイに触れていいはずがない。
何故一瞬でもそれを忘れたのか。

シンジは罪に塗れた自分の手を握り締めた。
汚れてしまった自分の手は、永久に彼女に届くはずもない。

黒い嵐が再びシンジを覆っていた。
二つの命を手にかけた、失わせてしまった罪の意識は強くシンジを縛っている。
シンジにとってレイは誰よりも大切にしたい大事な少女だ。
たとえ今ここにいるレイがシンジの夢の住人なのだとしても、彼女を汚すことなど出来ない。
触れればきっと汚してしまう。
手を伸ばすことすら許されぬこと。
自分はもうとうにその資格を失ってしまったのだ、と。



再会の喜びに輝いたシンジの目が、僅かな時も許さず絶望と諦念に染められていくのをレイは見ていた。
7110:2006/12/17(日) 06:20:44 ID:???
まるでレイを恐れるようにシンジの体は後ろに数歩下がった。
その距離を詰めたのはレイだった。
けして大きくはない彼女の声がシンジに届いたとき、離れていこうとした彼の体はその場に繋ぎとめられた。

「碇君。
 
 私が、怖いの?
 私は、もういらない?

 ………私が死んでも代わりがいるもの。

 会ったのでしょう? ……次の『私』に。

 『たくさんの私』を、あなたは知ってしまった。
 『彼女達』は壊れてしまったけれど。
 
 あれが、本当の『私』
 『私たち』を知って、あなたは………」

溢れる想いを抑えるように、レイの声は静かに震えていた。
でもそこに隠された彼女の不安がシンジには聞こえた。

毅然とした眼差し。けれど、その声が孕むのは【涙と痛み】。

それはシンジの闇と同じほどに重く、レイを苛み続けてきた影だった。
  
どうして突き放せるだろう?
例えどれほど彼女に相応しくなかろうと、シンジは誰よりもレイを守りたいのに。 
その思いは逃げようとしていたシンジの心を引き戻し、訴えかけるレイに向き直らせた。
7211:2006/12/17(日) 06:51:54 ID:???
このまま言葉を重ねれば重ねるだけ、レイが彼女自身を傷つけていくことがシンジにはわかった。
自分の心を殺せばレイを諦めることは出来る。
しかし、彼女を傷つけることは論外だった。
シンジはレイを守ると誓った。
それは一度、叶わず失ってしまった誓いだけれど。
目の前で再びそれを許すほどシンジは呆けてはいない。
自分を傷つける後悔の鎖より、彼女が傷つくほうがシンジには痛い。

シンジは懸命にレイの声を遮った。

「嫌いになんてならない!
 綾波しかいらない!
  どうして、そんなこと…、言うんだよ!

 僕は、綾波が居ればいい。
 他のことはどうだって、いいのに!」

レイへと吐き出した叫びが、彼の真実だった。
ミサトにも言えなかった、シンジの本当の気持ちだった。
7312:2006/12/17(日) 06:52:43 ID:???
「わからないんだ。
 今だって、本当のことが何なのか、どこにあるのか、僕にはわからない。
 父さんのことも、エヴァも、リツコさんも、…母さんのことだって。
 皆な勝手で、僕には何にも教えてくれないままで…。
  ………あの死んじゃった『綾波たち』のことだって。

 怖いのは、君じゃない。

 どうしたらいいか、わからないことだ。
 わからないことが、怖いんだ。
 
 綾波が居なくなって、
 アスカも入院して、
 それでも僕はエヴァに乗って……。
 乗らなきゃいけなくて。
 使徒を倒さなきゃ、…いけなくて。

 ………カヲル君は、使徒で。
  
 エヴァがあったから!
 エヴァさえ無かったら!!

 僕は誰も傷つけたくはなかった。
 ただ、それだけだった。

 何度も、何度も、そう思ってた、なのに。

 でも、・・………………エヴァが、『絆』だから……。


 ……綾波、との。たった、一つの」
7413:2006/12/17(日) 06:54:15 ID:???
「僕には、綾波だけだ。
 綾波だけ、なんだ。

 だから、僕は………」

君を。

―――失いたくないだけだったんだ。

逃げたくなるような現実から、目を閉じ耳を塞ぐようにして。
シンジが縋りついた藁が、エヴァだった。
以前レイが言った言葉が、シンジに残されたたった一つの縁だった。
消えてしまった彼女に繋がる唯一の糸。
だからシンジはエヴァに乗り続けた。
エヴァを嫌悪し、その立場に苦しみながらもそこから離れられなかった。

それだけがシンジに残された「彼女」との絆。
シンジにとって唯一の、あの「綾波レイ」が与えてくれたもの、彼女が生きた証。

だからシンジが「レイ」を怖がるはずもない。
生きることすら苦しい今の彼にとって、彼女は最後に残った「灯り」だった。

その根本である「レイを拒絶すること」などシンジは考えたことも無かった。
まして「レイに拒絶されること」など、彼には世界の全てに背を向けられるにも等しいことだった。
7514:2006/12/17(日) 06:55:47 ID:???

「………夢でもいいんだ。
 幻でも。

 綾波に会えた。

 嬉しいんだ。
 怖いくらい、嬉しい。
 泣きたいくらい。 …嬉しい」

―――汚れてしまっても、その資格がなくても。
    もう一度だけでいい、その声で。
    僕の名前を呼んでくれるなら。
 
考えることを放棄して儚く微笑ったシンジに向かって、レイはその両手を差し伸べる。

「私は、ここに居るわ。

 …碇君。

 …碇君。
 
 泣かないで。 拒絶しないで。
 私に、触れて。 私は、居るの。
 その手で触れて。 確かめて、碇君」
7615:2006/12/17(日) 06:59:34 ID:???
―――ほんとうに?

「ええ」

―――きえない?

「ええ」

シンジの縋りつくような瞳に、レイは何度も頷くことで応える。
少しだけシンジの手が持ち上がる。
確かめるように見つめる目。
レイは、待つ。

シンジは何も浮かばない真っ白な頭で、レイに向かってその手を伸ばす。

泣き言は言ってしまった。
それによってシンジの罪も暴かれてしまった。
それでもレイはシンジに手を差し出してくれる。
嵐の名残はまだシンジの胸に蟠っている。
でも触れることをレイが許してくれるならかまわない。
シンジは他の何もかもを押さえ込んで、ただ手を伸ばした。

僅かにも永久にも思える時間をかけて、シンジはレイに辿り着く。

シンジよりも少しだけ小さな手が彼の手の中に納まった瞬間、レイの浮かべた微笑。
それは嘗てシンジが見た月下の微笑みに似ていた。

まだ自信がないのかシンジの手はレイの手に乗せるように添えられているだけだった。
不自然な形だったが、手放すことも出来ず触れ合った僅かな面積が互いの慰めを齎していた。
シンジの手は確かにレイに触れている。
とりあえずはそれだけでいい。
7716:2006/12/17(日) 07:00:38 ID:???
手は預けたまま、シンジはレイを見つめた。
最初に投げたものよりもはっきりとした視線がレイを捉えている。
同じ強さで返ってくる視線。

シンジを知り、シンジを想う赤い瞳。
もう二度と見ることはないと思っていた。
もう二度と、自分に向けられることはないと思っていた。
瞬きすら惜しむように見入るシンジに、レイの眉が僅かに顰められる。

「…碇君。
 ちゃんと、食べている?」

問いただすよう投げられたレイの声は、微かに硬い。

「…寝ている?」

瞬き一つせず、何一つ見落とすことの無いように。
レイの目も真っ直ぐにシンジを見つめている。

レイに食べることの大切さを教えたのはシンジだった。
体を休め、自分自身の健康を守るよう言い聞かせたのもシンジだった。
彼女を守ろうと心を尽くしたシンジに学び、レイもまた人を慈しむ方法を覚えた。

その結果があの悲劇につながったわけだが、源は些細な、しかし確実なやさしさの積み重ねに他ならない。
命を懸けて相手を守ることも、相手の体調に気を配ることも、想いの向きは一緒だった。

怒りにすら滲ませるきつい言葉も、心配だから。
伝わる気持ちは、ただただ暖かい。
7817:2006/12/17(日) 07:02:06 ID:???
「…これから。
 食べる。…ちゃんと、寝る。
 何だって、綾波の言うとおりにする。
 だからっ。
 綾波、綾波、もう、どこにも…」 ―――いかないで。

幼子のようなシンジの言葉。
けれども、そこに応えはなかった。

「…っ、なんで!!」

あがったのは悲鳴。

「…わからないの。
 ごめんなさい、碇君。
 私にも、わからないの。
 
 何故今ここに居られるのか。
 『私』以外の私が、どうして存在することができたのか。

 けれど今ここに、私は、居るわ。
 私は、碇君に触れられる。
 
 私は、私。
 記憶も、想いも、失われずここにある。
 
 私は、碇君に会いたいと思ったの。
 もう一度、触れたいと、…思った。
 
 でも、本当なら、これはありえないこと」
7918:2006/12/17(日) 07:03:45 ID:???
「私は、あの時、零号機を自爆させた。
 私の体はエヴァと共に失われた。

 ここにいるはずがないの。

 私は、碇君に触れているのに。
 確かに、碇君はここにいるのに。

 まるで、まるで、ここは………夢の続き」

だから、この先はわからない。
淡々と続くレイの言葉にシンジの表情が凍りつく。

「なんで…」

喜びの一瞬後に地獄に突き落とされる。
喜びが大きければ大きいほど、その落差は激しい。

繋いだ手がすり抜ける。
離れていこうとする二つの手。

しかしそれを繋いだのは、レイだった。

待つことしか知らず、シンジを受け止める形でしか情を表したことのない彼女がした初めての行動。
レイの細い指は震えるほどの力を込めて、シンジの手をしっかりと握り締めた。

つよく、つよく、引き寄せるように力を込めて。

彼女の腕力ではシンジは動かない。
だから、動いたのはレイの体だった。
8019:2006/12/17(日) 07:05:30 ID:???
ふわりと。 二人の距離が詰まる。
握り締めた指先から、近づいた体から、互いの鼓動が聞こえるほどに。

シンジはまるで自分の内側から響いてくるような、レイの声を聞いた。


ごめんなさい。
それでも、あなたに会いたかった。
それでも、あなたに触れたかった。

もう一度突き放すしかなくても、ただあなたが心配だった。
そして、あなたを傷つけると判っても、私は知りたかった。

私の意味を。

私のうまれたことの意味を。

私の存在を。

私の心を。

あなたの優しさに報いるのにふさわしくないのは私のほう。
私の心はこんなに醜い。

碇君。

誰かを壊すほど酷いことを、あなたがしてしまったとしても。
それくらいでは、とても嫌いになんてなれない。
あなたが生きていることが嬉しい。
あなたが私を思ってくれていることが嬉しい。
8120:2006/12/17(日) 07:07:38 ID:???
あなたが私の為に、哀しんでくれることさえ、こんなにも嬉しい。

やさしさばかりをあなたはくれたのに。
私が返せるのはこんなにも醜いおもいだけ。

人を好きになるのは、どうして綺麗なばかりではいられないのかしら。



レイの頬は濡れてはいなかったけれど、彼女の心は泣いていた。
捧げるように、尊ぶように、彼への思いを大切に抱いてレイは泣いていた。


シンジはレイの声に耳を傾けながら、そこに強い共感を見つけ出した。

彼の心には、レイと同じものがしまってあった。

同じ問いをシンジは持っていた。
そして、その答えを彼もレイの中に探していた。
彼女の訴えのすべてが、シンジもまた抱いているものだった。

……彼の心、は。

傷ついて、傷つけても。
レイの中に『シンジ』が深く刻み込まれていることを嬉しいと思った。
彼女が懺悔を聞かせてくれることが嬉しいと思った。

傷つけることも泣かせることもさせないと誓ったはずなのに。

その涙が自分のために流されてると知ったとき、シンジの心は深い喜びに震えた。
8221:2006/12/17(日) 07:37:16 ID:???
シンジは閉じていた目を開けた。
レイの声に集中するように彼は今まで目を閉じていた。
レイもそうだった。
シンジの視界の中で、レイの長いまつげが震え、ゆっくりとその瞳を見せていく。

息がかかるほどの傍で。

「………碇君しか、見えない」

吐息のように小さな声でレイが囁いた。

「碇君しか見えなくて、うれしい」

ならば連れて行って。
もう離さないで。

奈落のそこまで共に。

シンジの無言の懇願をかわすように、レイは再び目を閉じようとする。
シンジはそれに追い縋った。
彼はもう躊躇わなかった。

愛されてると判ったから。

レイの心もシンジを求めている。
8322:2006/12/17(日) 07:38:10 ID:???
「言って。…綾波。
 
 『いい』って。

 『もういいの』と訊いて。

 ……Yes(うん) と、答えるから」

シンジが望むのはレイと共に在ること。
一緒にいられるなら、それ以外は望まない。

「好きだ」と言ってくれなくてもいい。
「愛してる」と言ってくれなくてもいい。
「何か」を望んでくれなくてもいい。

ただ、「もういいの?」と尋ねてくれたら。

それだけで、シンジは選べる。
世界と未来とこの先にあるすべてのものよりも、「レイ」を。
「レイ」と共にいくことだけを。
その選択をシンジ自身がする。

彼のその決意にも似た願いは、レイにも届いていた。
8423:2006/12/17(日) 07:39:14 ID:???
しかし、レイにとってそれは叶えられない望みだった。
シンジの「願い」は、レイの「願い」に反していた。

どのような奇跡が働いてか、レイは今ここにいる。
今ここにいて、傍らにはシンジがいる。
シンジはレイの声に答え、彼女自身を認めてくれた。
「レイ」の「想い」を受けとめてくれた。
シンジが「レイ」を心の片隅においていてくれるなら。
それだけで彼女には充分だった。

レイはこれ以上、彼に望むことなど出来ない。

シンジがレイにくれた一番綺麗な気持ち。
大切な相手だからこそ、―――幸せになって欲しい。

その気持ちだけをシンジに捧げて、後はその為に全てを投げ出したかった。
シンジを幸せにするためだけに自分に与えられたのかもしれないこの「奇跡」を使いたかった。

だから、連れてなどいけない。連れて行ってはいけない。

シンジの苦しみを消すためにならなんでもする。
でも、シンジのこの望みは聞けない。

レイは振りきるように目を閉じて唇を噛み締めた。
8524:2006/12/17(日) 07:40:12 ID:???
シンジは、レイの葛藤を見ていた。
レイの瞳が揺れているのを見ていた。

背負った罪とレイを求める気持ちの強さが彼を苦しめていることに、レイも気づいただろう。
そして、レイが望んでいるのはシンジの「普通の幸せ」なのだろう。
……けれど。
彼女の居ない世界で、それがどれほどの意味を持つというのか。

シンジはレイが「もういい」と、「自分(レイ)とともに来てもいい」と言ってくれることだけを待っていた。
彼女が迷い苦しむのを慰めるように、シンジはレイの背に腕を回しそっと撫でた。

「………………だめ。
 それはだめ」

「一緒に、居たいんだ。
 綾波の、傍に。

 ………綾波は、…違うの?

 夢でもいいんだ。
 ……嘘でもいいから。言って。お願いだよ」
 
「だめ。できない。
 言ってしまったらきっと、…嘘になんて、出来ないもの。

 初めて知ったの。
 我侭も、エゴも。
 碇君に会いたくて。
 他には何も考えられなかった。
 碇君に会うことしか考えなくて、ここまで来てしまった」
8625:2006/12/17(日) 07:41:19 ID:???
「そして。
 碇君に会ったら、声をかけずには居られなかった。

 ――碇君にとっての「私」は死んでいて、もう居ない。
    次の『私』が居るなら、「私」は碇君には会うべきではない。
 「私」の行くべき場所は、あの地下の研究室だけ。
 正しい答えが、頭の中にはあるのに。

 私は碇君を探してしまった。
 私は碇君に声をかけてしまった。
 ……あなたの声が聞きたいと思ってしまった。

 いけないこと。すべきでないことだと、わかっていたわ。

 けれど、私は。
 碇君に、 あなたに「私」を見て欲しかった」

やさしい碇君。
私は、あなたを傷つけるばかり。
あなたに甘えてばかり。

だからこれで最後。
もう私はあなたを守れない。
私の我侭は、きっと碇君を傷つける。

ごめんなさい。

もっとそばに居たかったけれど。
私は私自身が怖い。
いつか、碇君を傷つけても、望んでしまうかもしれない自分が怖い。
8726:2006/12/17(日) 07:42:15 ID:???
ごめんなさい、碇君。

好きになって、ごめんなさい。

あなたの為に今の私が出来るのは、きっと消えることだけ。

もう一度会いたいと思ってなど、いけなかった―――


レイの「願い」は誠実だった。
彼女の心は確かにシンジを想っていた。

しかしそのレイの「想い」に対し、シンジの心に湧いたのは「怒り」だった。

「愛しい」と思うからこそ、湧き上がった「怒り」だった。
シンジは衝動を殺さなかった。

そんなことは許さない!

離さないでと、言うように。
離しはしないと、言うように。

シンジはレイをつよく抱いた。
そして言葉にならないほどの激しい感情を伝えるために。
シンジがレイに与えたのは不器用な口付けだった。
ぶつけるように奪うように、涙と血と愛しさと切なさが、二人の初めてのキスの味になった。

それは言えなかった言葉だった。
それは祈りに代えた告白だった。

8827:2006/12/17(日) 07:43:38 ID:???
苦しいキスだった。
辛い告白だった。

愛してるじゃなく、助けを求めるような、深い口付けだった。
レイの背に回ったシンジ手は小刻みに震えて、
今ここで振りほどかれたらそのまま奈落に落ちていきそうな切迫感が満ちていた。

―――最後になんてさせない。

彼の覚悟の叫びが、確かに聞こえた。

最後だなんて言わないで。
僕は君と共にいく。
君の行く先が、僕の行き先だ。
………置いて、いかないで。

突き放す力を奪われたレイは、シンジの腕にその身を委ねた。
シンジの「願い」をレイが受け入れた瞬間だった。
たとえ共に在ることが、相手を破滅に導くことになっても、もうこの手を離すことは出来ないだろう。
これもまた幸せな結末なのかもしれない。
光のない深い闇の中で、レイとシンジは抱きしめあったまま静かに目を閉じた。
                                            
湖畔の静寂を揺らすものはもういない。                       FIN
                              


「道行(みちゆき)」 ―――――旅、移動の意。

歌舞伎や浄瑠璃では、しばしば恋の逃避行や心中場所へ向かう道のり、
または恋人を追いかける旅の道中をさす。
89名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 12:57:45 ID:???
いやとりあえずアニメの方のエヴァの主題とかはほとんど捨てて、シンジが既に人を好きになれてるけど二次創作でしかも短編だし別に構わないと思う。
タイトル通り「道行」みたいな展開を読んでる分には普通におもしろかった。
まぁ二人の、ここまでに至るシーンを読んでみたかったです。シンジがこんな感じになる過程っていうか。
90名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 13:00:46 ID:???
これ新作か?
どっかで見た気がするんだが
91名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 13:29:41 ID:???
道行って題名がじゃね?
前にそんなコテつけた人が5レスくらい投下してたような気がする。

内容ならわからん。なんかエウレカやSRの結末と似た展開ってだけだろ
92名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 15:03:25 ID:???
乙。文才はあって凄い良いと思う。
93名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 15:09:17 ID:???
うーん…ハッピーエンドなようなハッピーエンドじゃないような…
最後は2人で消滅しちゃったのか?
94名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 15:24:44 ID:???
というか3人目がまだ生きている時・・・だよな。
なのにレイの魂?が出てきた時点でちょっと違和感ある。
2人目と3人目を別人と示しているのを強調しているんだろうけど
実際身体は違っても同じ魂を持った同じ人な訳だし。文才もあるし
シンジサイド、レイサイドのそこんとこのお互いの葛藤とか意地の張り合いを書いてくれればより良かったと思う。
只最後の結末は良かったと思う。俺はこういうの好き。
95名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 16:07:17 ID:???
この人は前のパクリの人か?
前の時からしつこいくらいに二人目三人目とか言っているが、
あれって魂が移動して記憶がリセット(完全ではないけど)されてるだけでしょ。
綾波はそれを含めて綾波という存在なんじゃないの?
それを否定したいのかね?
96名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 19:41:28 ID:???
俺的には楽しかったよ
しいて言えばやっぱ>>94が言ってるみたいにそこんとこ違和感あるけど
97名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 22:11:46 ID:???
オレ的にはつまらなくて途中で読む気が失せた。
綾波の性格変わり過ぎ。
くっさい三文芝居を見せられた感じ。
98名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 22:54:27 ID:???
ならそういう>>97に期待しようか
>>62-88
ともあれまとめて投下乙
小出しに投下されるより読みやすくて良かった
話を一生懸命考えてこれだけ投下してくれた事自体ありがたいよ
次はちゃんとシンジと3人目綾波の複雑な心情も書いてくれる事に期待する
99名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 23:03:46 ID:???
すごくよかったな。こういう心中モノ好きだから余計に良かった。
生き続ける事が幸せって言うのが正しいとは思えないし、シンジとレイの選択は良かったと思う。
貞元板シンジとレイの設定なのかな?そうだとしたら違和感なく読めた。
アニメ板を設定としているのなら、この現在の二人の関係にまで進むストーリの補足とか
が読んでみたいな。
100名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 23:16:20 ID:???
文章自体は自己陶酔系?だから、好き嫌いは別れるだろうね
101名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 23:24:41 ID:???
喧嘩ものが見てみたいよ。決闘ものとか。
逆行シンジvsリリス綾波とか。
そんで終盤につれて仲良くなっていくのとかさ。
102名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 23:26:45 ID:???
アイデアなら恐ろしいくらいにいっぱいあるんだけどなぁ。
文才ないし実際に書くとなると難しいモンがあるね。。
103名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 23:39:29 ID:???
じゃあそのアイデアを披露してみたら?
文才ある人がSSに仕上げてくれるかも。
君とlは逆に、文才はあるけどアイデアがないって人もいると思うし。
104名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/17(日) 23:51:23 ID:???
>>103
俺のアイデアは>>101なんです。
105名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/18(月) 00:59:50 ID:???
そういうアイディアというか妄想の専用スレがあったはず。
そっちでやった方が良いと思うが。
106名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/18(月) 02:02:22 ID:???
>>105
ごめん。じゃあそっちでやるよ。
107名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/20(水) 23:37:40 ID:???
保守派
108名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/22(金) 22:43:20 ID:???
保全
109名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/24(日) 11:39:45 ID:???
ho
110名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/12/28(木) 21:11:04 ID:???
お願い、まだ落ちないで!
111名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/01(月) 00:39:35 ID:???
おまえら、あけおめ
112名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/01(月) 00:41:24 ID:???
おまえら、あけおめ
113名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/01(月) 03:49:07 ID:???
もう新年か…
114名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/04(木) 05:36:52 ID:???
115名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/04(木) 23:50:07 ID:???
続きたのむ
116自信無し:2007/01/05(金) 11:36:57 ID:???
全ての使徒が消え、ゼーレが進めていた人類補完計画はエヴァによって失敗に終わる。
平和になった世界で、ネルフは国防機関の一つとして存続していたが、残存していたエヴァ初号機と弐号機は世界にとって危険な物と判断され、破棄、解体が決定し、抹消される。
解体されるエヴァを見守るシンジとアスカとレイ。シンジにとっては目のまえで自分が存在する意味を壊されているような気がした。アスカにとってはプライドをバラバラにされるような気持ちがしていた。
レイはいつものように解体される2機を冷ややかに見つめている。解体が終わるとミサトが三人の前にやってきて、
「エヴァが無くなっても私と暮らす事ができるようになったから安心して!」
と無理に明るく振る舞う。その言葉を聞いてもシンジとアスカの表情は暗い。それを不安そうに見つめるのはレイだった。
続く
117名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/05(金) 12:51:40 ID:???
プロット?
118名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/06(土) 00:35:34 ID:???
糞ネタ晒しは専用スレでやってくれ。
ここではスレ違いだよ。
119自信無し:2007/01/06(土) 00:52:28 ID:???
>>116のつづき
あれから一ヶ月。アスカはすっかり立直り、ヒカリ達と楽しく会話をしている。
シンジはエヴァに乗る事があんなに嫌だったはずなのに、心にポッカリと穴が開いたような気持ちになり、無気力になっていた。結局、シンジは生きる理由として、エヴァに縋るしか無かったのだろう。
今日もフラフラと下校する。帰り道、いつも通り掛かる公園の中を覗くと、ベンチに腰掛け、無邪気にボールを蹴る子供達を見つめるレイが居た。シンジはまるでレイに吸い寄せられるように近づいていき、話し掛ける
「綾波、何してるの?」
「子供。」
「あぁ。どうしたの急に。」
「何が?」
「だって、エヴァに乗ってた時の綾波って、子供とかに興味無しって言うか、その。」
「エヴァ…私にはそれしかなかったわ。でも、今の私には何も無い。寂しいのね…」
「じゃあ、綾波は僕と同じだ。」
「そう…」
続く
120名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/06(土) 05:02:21 ID:???
投下乙。久々に来たな。
121名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/06(土) 10:15:38 ID:???
>>116,119
自信ないような物なら人前に晒すなと言いたいところだが
少し感想を言わせてもらうと、どうも薄すぎる。
>>117の言うとおり>>116はプロットにしか見えないし、
会話の途中に地の文がないと登場人物の感情がわからない。
というか、それは文章を書く上で必須だと思うんだが。

とりあえず、先人たちのものを見て勉強して出直してきたほうがいい。
意欲はあっても技術がなけりゃ相手にされない。
文章を書く能力を身につけたらまた来い。
122名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/06(土) 13:37:38 ID:???
>>121
まぁ、過疎ってる訳だし、好きなようにやらせておけばいいじゃないか?
123名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/07(日) 05:37:18 ID:???
なんで好きでもない奴がわざわざこのスレに来るんだ?
124名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/10(水) 05:42:20 ID:???
>>119
投下乙。短すぎてまだ先が読めないけどこれから楽しみに待ってるよ。
もうちょっと長くてもいいかな。その方が読みやすいし。
125自信無し:2007/01/10(水) 12:58:14 ID:???
自信無しと言うのはシンジの心境の事です。

>>119
レイは、一見以前と変わらないようだが、酷く落ち込んでいる。レイにとってはエヴァは唯一の他人との掛橋であった。今ではゲンドウと会う事は無い。シンジはレイの隣にそっと腰掛けると話し始める
「綾波は、あれからいつも何してすごしてるの?」
シンジはレイの事を心配していた。
「何?」
ただそう答えるレイ。
「父さんとは?」
シンジがゲンドウの事を尋ねるとレイは不快そうな表情を浮かべ
「あの人の事はもう忘れたいの」
とただ、ゲンドウへの憎悪を吐き出すように答える。シンジはそんなレイの表情を見て、慌てて謝る。
しばらく沈黙が続く。シンジは言葉を見つけられなかった。珍しくレイの方から話し始めた
「碇君。私の秘密、知ってるわよね?」
レイは不安そうに言う。「うん。知ってる。」
シンジは重々しく答える
続く
126名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/10(水) 20:12:00 ID:???
きたよきたよー
>>125
相変わらず短いな
ともあれ乙w
127名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/10(水) 22:24:31 ID:???
肝心のとこで続く・・・かよ
128自信無し:2007/01/11(木) 00:18:25 ID:???
>>125
「碇君にだけは知られたくなかったわ」
レイはそう言うと下を向く。
「でも、全部父さんが悪いんだと思う。綾波も僕も母さんもアスカもリツコさんもトウジも加治さんもみんな被害者って言うか…」
シンジは暗い表情で語る。水槽の中で浮かぶ大勢のレイ、そしてリツコによって破壊されていくグロテスクかつショッキングな場面を思い浮かべながら。
「正直、あの時は…」
途中まで何かを言いかける
「見てのとおり、私は人間じゃないわ…」
シンジはなにも答えられない。
「私は碇君や、私、弐号機パイロットが戦ってきた使徒と呼ばれる怪物と同じなのよ…」
レイが語っていると子供達が蹴ったサッカーボールがレイの足元に転がってくる。レイがボールを手に取ると、子供の一人がボールを取りに来る。レイは少し微笑み、子供にボールを手渡す。
「ありがとう。お姉ちゃん!」
とレイにお礼を言い、ボールを手に取ると子供は去っていく。それを見ていたシンジはレイが‘使徒’であるとは思えなかった。
「確かに、綾波は普通の人間じゃ無いのかもしれない。でも、今の綾波を見てたら人間じゃ無いだなんて思えないんだ。十分過ぎる程、人間だと思うよ。」
慰めでも無い正直な気持ちだった。 つづく
129名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/11(木) 21:35:31 ID:???
見てのとおり、って何を?
130名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/11(木) 21:39:08 ID:???
また、人間じゃない、人間だよの展開か
ここからアッと驚くような誰も考えつかないような展開になるんだろうな
すげー楽しみだ
131名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/12(金) 17:30:03 ID:???
ここ、投下しにくいよな。なんでも批判するし。
はっきり言って>>130>>129みたいな発言が過疎の原因だと思う
132名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/13(土) 03:07:56 ID:???
>>129
いや普通に不自然な色だろ、体の。
>>130は言い方はアレだが内容には半分同意。
しかし
「投下はありがたい」
この一言につきる
133名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/13(土) 03:45:18 ID:???
書く人の自由なんだろうけど、
今の状況だと全部完成してからの投下のほうが
いいような気がする。

どうせまた投下しにくい空気になってくだけだから。
134名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/13(土) 23:35:40 ID:???
>>132
そういう人って実際いるんじゃないの?
あそこまでハッキリしていなくてもさ。
何か差別発言に見えるんだが。
135名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/14(日) 01:51:24 ID:???
ならエヴァ自体が差別だろうよ。
「体の色が普通ではあり得ない色」を人外である印にしてんだから。裏には商業的な理由があるとはいえ。

それに、どうせそういう所は話の流れで解決していくのだから、
LRSにおいてそういうツッコミすんのは不毛だ、と俺は思うよ
136名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/14(日) 05:44:48 ID:???
使徒の印はATFでしょ。
アルビノを使徒の印にはしていないと思うが。
137名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/14(日) 08:16:58 ID:???
ミサトも髪が紫色なので人間じゃありません
138名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/15(月) 12:06:23 ID:???
>>136
ATフィールドは人間も持ってるよ

というか、ごめん。印としているって言い方が悪かったな。
正確には「印になってる」んだよ。結果的に。
まぁレイとカヲルだけあんなハッキリした色違いで、その二人が使徒だったとなると
視聴者がそういうイメージ持つのは仕方ないよ。

SSとかじゃレイが自分の容姿を嫌うシーンが多々あるしね。

って事で>>132は差別のつもりで言ったわけじゃない。
139名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/15(月) 19:03:03 ID:???
>>138
そういえば、人間も使徒だっけ。

正確には「印になっていると君が思ってる」でしょ。
偶然の一致といえばそれまで。
公式設定になっているわけでもなし(なってたらゴメン)。
「アルビノの人外がいる」のと「アルビノ=人外」は別物。

SS云々は何か関係あるの?もう少し詳しく。

つもりはなくとも差別発言だと思うよ。
140名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/16(火) 09:33:26 ID:???
SSじゃレイが自分の容姿を嫌う例が多くある

それは作者がレイに自分を人外であると認識させている例として
レイの容姿を挙げている事に繋がる。

そしてそういう作品が多くあるのは、そう考えている作者が多くいるから。


だから「印になっていると俺が思っている」わけではなく、
「印になっていると多くの人が思っている」

そしてそれは仕方のない事だよ、と。


作中で使徒以外の普通の人間としてアルビノを出演させていれば「アルビノの中に人外がいる」
という君の言葉には同意するが、
エヴァという作品に出てくる二人のアルビノ(てかあれアルビノなの?)はどちらも使徒。

そしてそれが制作できない現実ではなく、
制作できるアニメである以上、「偶然の一致」だとは言えない。

制作者がいる以上、アニメに「偶然」なんかはあり得ないから。

そしてそのエヴァで差別を指摘するのは不毛だと思うよ。
141自信無し:2007/01/16(火) 13:51:34 ID:???
>>128
「でも、私はATフィールドを張れるわ」
レイはあくまでも自分は人間でないと言い張る。シンジはどうしても人間である事を証明させたい。
「じゃあ、やってみて」
「何?」
「ATフィールド、張ってみてよ。」
シンジの要求に戸惑うが、結局首を縦に振る。
シンジは鞄からスポンジのボールを取り出すと、大まかな事を説明する
「いい?ボール投げるから、ATフィールドで防いでみてよ。」
「ええ。」
二人は立ち上がると5メートル程離れる。レイは目を閉じる
「いい?」
シンジの問い掛けに頷くシンジは思いっきりボールを投げつける。レイはターミナルドグマで張った時とおなじようにやったつもりだが、ボールはレイの腹部に命中する。
「あら?私、どうして?」
レイは何故かATフィールドを張れなくなっていた
続く
142名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/16(火) 18:42:09 ID:???

143名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/16(火) 19:53:40 ID:???
ポカーン
144名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 00:18:22 ID:???
前スレから続いてた粘着の荒らしだろ?糞スレ扱いや投下しにくい状態にしてる奴は
投下人は気にせずに投下したらいい。相変わらず短いけど何も投下しない連中よりマシ。
145名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 00:30:33 ID:???
>>140
まず、「印になってる」と「印になっていると思っている」は別物。
その違いが分かるだろうか?その辺の理解ができていないと話にならないんだが。

次に、ただ「多くの人」というのは抽象的過ぎ。せめて「〜より」と対比にしないと。
君が思っている「多く」と、他の人が思っている「多く」に差ができてしまうでしょ。
それでは正確とは言えないよね。

それと、SS書く人のみを取り上げているね。
SS書かない人達のことも忘れないであげてください。

あと、公式設定についてだけど、設定が決まっていないのなら言えるでしょ。
この「言う」というのは製作者が、だよ。

で、差別問題をエヴァに責任転嫁するのはどうかと思うよ。
146名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 02:02:44 ID:???
差別やらなんやら正直ウザいよ
そんなもんどうでもいいだろってかいちいち差別差別つっかかってたら二次創作読めねぇよ
大体言い争う元になった>>132から>>129への発言は普通だろ
>>129が読解力ねぇってだけの話で別につっかかる内容じゃない
偽善はやめろ

132の奴も適当に謝っときゃいいのに長引かすなっての



とにかくよそでやってくれ
147名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 08:57:31 ID:???
君の為のスレではないので、君がウザイと思っているからといって辞める理由にはならないよ。
関係の無い話題でレス消費しているわけではなく、内容についてのレスなので、別に問題ないと思うが。
148140:2007/01/17(水) 14:28:28 ID:???
>>145
もうレスは半分くらいしか読んでないが、君の情熱は十分過ぎる程受けとったよ。
君のような人が増えればいつか差別なんて言葉すら消え失せるだろう。正直スマンカッタ。
あとは一般人として投下を待たせていただきます。
149名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 20:06:59 ID:???
投下待ちしてるけど一応
でもあんま短いと日があくうち何の話だかわからなくなってくるから一変に
投下して欲しいって気持ちはある

でももう文句は言わない
150名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/17(水) 21:31:59 ID:???
注文が煩い
お前等は何様だ
黙って待ってろ
151名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/21(日) 17:44:47 ID:???
ほしゅ
152名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/26(金) 21:55:05 ID:v9ZdCtns
hosyuujyugyou
153名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/27(土) 01:56:48 ID:???
いつかのコピぺ荒らしの再来と思いたい。
素でやってたら痛すぎる・・・
154名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/28(日) 13:23:54 ID:trHQHvgY
LRSなんてどこがいいんだ?
つーかありえねー
155名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/28(日) 17:34:45 ID:???
↑中川ショウコウ
156名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/28(日) 18:15:04 ID:???
職人まだかな
157名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/28(日) 21:18:48 ID:???
低レベルな人のはいらんよ。
前からそんなのばっかりだし。
158名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/28(日) 21:21:15 ID:???
うるせー馬鹿
オマエが失せろ
159名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/29(月) 11:41:43 ID:DWaIJQ6/
LRSなんてどこがいいんだ?
つーかありえねー
内乱するとはな
160名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/29(月) 15:14:21 ID:???
>>154
>>159
コピペするなよツンデレアスカ厨
ありえねーのはLASキチ
161名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/29(月) 23:50:39 ID:???
>>160
スルー
162少数派の10:2007/01/31(水) 00:21:01 ID:???
はいはい,流れを読まずに途中まで投下。建設的な(ここ大事)批評お待ちしています。
163少数派の10:2007/01/31(水) 00:27:34 ID:???
 僕とレイとが婚約をしたのは実に強引な流れだったと思う。
酒に酔ったレイによって無理やり恥ずかしい台詞を連呼させられての強制プロポーズ。
あれは本当に忘れたい思い出だ。
まあ、もともと早い事レイと結婚して周りの男を牽制したいとは思っていたから、結果オーライなのかもしれない。


 夕日が傾く中、スーパーの袋を自転車の籠に入れ、シンジとレイは家路をのんびり帰っていた。
まだ年若い男女が並んでスーパーで買い物する姿は、あるいはおかしな姿に見えるかもしれないが、
二人はもう顔なじみといった感じで当たり前のように買い物を済ませる。
周りの人間も、ああ、あの子達か、という目でしかもう見ない。
目の前で「あなた」だの、「今日の夕飯はなにがいい?」だの、二人の関係を全く隠す気配さえ感じられない女の子の存在と、それに振り回される情けない男の子は、逆に周囲に健康的な印象を与え、歓迎的な雰囲気さえ出ていた。
 と言う訳で、ただいま碇シンジ君(19歳・首輪着用)と綾波レイさん(18歳・縄装備)は婚約の後、同棲という、一般的には極自然な流れにより、年齢から考えれば不自然極まりない生活を送っていた。
しかし、二人ともどこかずれたところがあるので、現在の状況にあんまり違和感は抱いていないので問題ないようだ。
 シンジは小さな頃から思春期にかけて、悲惨な家庭状況しか味わった事がなく、レイに至っては家庭というもの自体を全く知らないありさま。
好きな相手、しかも将来の伴侶確定の相手との二人きりの生活にむしろ満足していた。
 
164少数派の10:2007/01/31(水) 00:29:10 ID:???
 大学の冬期休暇前のレポート地獄から開放され、二人は久々に商店街の方に顔を出していた。
お正月の御節の材料を買いこむためだ。
クリスマスも一応は祝ったのだが、祝う本人達がリリスと救世主という、聖書に出てくる登場人物と同値な役割を持っているものだから何となく毎年微妙な盛り上がりにしかならなく、二人の年末年始のメイン行事は大晦日とお正月ということになっていた。
 京都の冬は寒い。だが、二人には関係ない。愛の光が二人を暖めるからだ。
 
 綾波レイ嬢はその体から遠赤外線を常に放射し続け、さらにATフィールドでポカポカ空間を維持すると言う離れ業をやってのける。
アスカ女史からは人間ハロゲンヒーターなどと言う誠にありがたい名前をいただきレイ嬢がおおいに喜んだのはまた別の話。使徒の面目躍如といったところか。
 
そんな、夏涼しく、冬暖かな彼女となか良く手を繋ぎ、シンジは商店街のアーケードを注意深く歩いていた。勿論一番安い店を探す為である。主夫としての心得だ。
 そこで彼は魚屋で上等な鯛、スーパーでは栗……と言った具合に次々に材料を買いこんでいく。
毎年毎年新年参りと称し赤毛の女と巨乳のバツイチ女がやってきては大量に食べて行くので材料の量は半端なモノではない。
鯛に至っては2尾。ほかのものも通常の御節四つ分を常に用意しているあたり彼の律儀さと誠意あふれる心根の程が分かろうというものだ。
 「シンジ、アレが良い。去年もなかなか美味しかった。やっぱり兵庫。金箔なんていれない潔さが職人の心意気を感じさせる。」
もちろん、酒のみの彼女の為に大量の酒も買いこまねばならない。
最低四升は買わねば。大事そうに酒瓶の入った袋を持つ彼女。あの細腕に一体どんな力がこめられているのか。
 クリスマスがあまり盛大にならないのはここでの出費を予想しての所為でもあるかもしれない……
165少数派の10:2007/01/31(水) 00:30:58 ID:???
 鴨川を自転車で渡りマンションに向かう。この時ばかりは寒さが身にしみるシンジ。しかし、鴨川の夜の光景は美しいのでまあいいのだ。
 勿論帰りには出町柳駅にあるTUTAYAでDVDを借りる。最近のお気に入りはミュージカルだ。
じーざすくらいすとすーぱーすたーをレイが気に入って以来、いくつも借りている。またまた、この二人でこの作品を見るのは妙な心持ちになったがそこら辺は気にしないようにしている。
 5枚ほど一週間で借りる。ミカンも箱ごとあるので、これで新年対策はばっちりだ。


 そして、餅をこね、御節を作り、大掃除の邪魔をしに来たアスカを追い出し、年末特番超常スペシャルを見つつコタツにミカンで完璧な新年を迎える。
 因みに二人が食べているミカン「ぜろごうき」は株式会社ネルフ日本がその超科学力で生み出した、甘味、保存性、収穫量、防虫性………etcが従来の物より格段に優れた新品種である。
試験的にジオフロントで作られたこれは、その創造者の元に大量に送られており、同じく新品種トマト「にごうきぱいろっと」、ナスビ「しょごうき」と共に綾波家の食卓をおおいに賑わせてくれている。
ネーミングの元がなんであるのかは全くの謎である。更なる余談であるが、穂が白いトウモロコシの実験品種nerv02こと、「ふくしれい」は救荒作物として世界中の注目を集めており、早期の配布が望まれている。
166少数派の10:2007/01/31(水) 00:32:32 ID:???
そんなこんなで元旦の今日。昨日の夜更かしの所為で二人は手を繋いだまま床でのんびりお昼寝中。小鳥のさえずりも聞こえず、家鳴りさえ聞こえない。
まるで雪の音が聞こえそうな雰囲気である。

ガチャガチャ!……ドンッドンッ!!
玄関を蹴る音が……

「こらー、私がきひぇあげらのになんで開けれないのよー!!」
 この二人の正月の平穏をいつもぶち壊す人間街宣車こと惣流アスカラングレー嬢のご登場である。
毎年毎年違う彼氏と共に2年参りしたあと大騒ぎしてからこの家に来るのが定番であるので、二人ももう慣れたものだ。とはいえ少しばかりのため息が出るのはいかんともしがたいものである。
「ん,んー……来たね……。レイ、玄関開けてくるから,御節コタツの方に持ってきてあげてくれる」
「…あい……わかったわ」
のろのろとホットカーペットから起き上がり玄関に向かう。玄関から響く騒音は続いている。
『コレで美人じゃなかったらアスカってどうしてたんだろうなー』詮無いことをボンヤリ考えつつ玄関を開ける。
「こらぁー!遅いじゃないの!このあうか様が開けろって言ってんのにバカシンジが遅れるにゃんて、たりゅんでるんじゃないにょー??」
バコッと一発殴りながら、千鳥足で部屋に入っていく。新年初「アスカニズム」である。誠にめでたい。
「イッタイなー。もう」
苦笑いしながらもアスカを支えてあげるシンジはやはり犬属性だろう。
167少数派の10:2007/01/31(水) 00:33:52 ID:???
 居間ではもう、レイがコタツの上のミカンを片付け、かいがいしく御節のお重をならべていた。勿論コタツの脇には一升瓶が何本も並べてある。
「アスカ、まずはワインよね?白,赤どっち?」
「ん。やっぱ赤よ赤!肉、肉、にきゅー!」
「はいはい、わかったわ。肉の海苔巻も七面鳥のホイル焼きもこっちのお重にあるからあんまり騒がないで」
ニコニコしながら、アスカの座る面に肉料理のお重を移動させて、ワインも用意してあげている。シンジはコタツに入ってそれをボーっと眺める。
 『いいなー、こういうの。やっぱり良いお母さんになるだろうなー、早く子供欲しいなー』他の人から見たらレイは無機質に動いてるだけに見えるのだが、フィルターというものがこの世にはあるのだ。いや、正しくは細かな真実を見とおす顕微鏡かもしれない。

 「こりゃ,シンジ!さっさとこのアスカ様に酌しやさい!」
そんなシンジのほのぼの空気も暴君の一言によっていとも簡単に崩される。なんとなく14歳の頃を思い出し再度苦笑。なつかしい。
 アスカを振ってからはなんとなく集まり辛かったし、婚約してからはなおさら三人でつるむ事はなくなり、こんな雰囲気になれる機会はうれしいのだ。
ボトルのコルクを抜き、フラフラ震えているアスカの手のグラスから甘露が零れないように慎重に慎重に注いであげる。
押し並べて言えることだが、酒好きは酒をこぼすと、飲まない人間には理解不可能なほど怒るのだ。未来の愛妻を筆頭に酒好きに囲まれているシンジはよーくそれを知っていた。
「……うー、とりはえずこんだけれでいいわ……そういえば……ミサトもそろそろ来るっれ電話があったわよ。あんたたちに電話したけど出なかったからって、ぃ、言ってらけど」しゃっくり交じりでアスカが告げる。
本来美人の酔う姿は艶っぽいものだが……しゃっくり交じりでは色気もクソも無い。
168少数派の10:2007/01/31(水) 00:35:24 ID:???
ピンポーン

「あ、噂をすればミサトさんかな?」
再び玄関に向かう。シンジの予想通り葛城ミサトの来訪であった。
「あけましておめでとー、シンちゃん,レイ、アスカ……も来てんのよね?」
「にゃによー、こにょアスカ様の神々しい姿が目に入らないってわけぇー??」
疑問形のミサトにコタツでワインをかっくらっている自称女神様が咆える。呂律が回っていないので威厳の欠片も無い。
「だってあんた携帯に電話したら訳わかんない事ばっかり言ってたじゃない。そりゃ無事につくか怪しむわよ」
どうやらあれでもまだ酔いが醒めている方らしい。
「はいはい、口論は後にして、とりあえずミサトさんもコタツに入って下さいよ。レイがお猪口用意してくれてますから」
再び苦笑いでシンジが纏める。まるで幼稚園の保父さんになったような気分だろう。
「ん、そうね、とりあえず駆けつけ3杯いただこうかしら」
「はい、どうぞ」
レイが一升瓶を丁寧に持ち上げ、酌をする。白皙の美貌を持つレイが正座で酌をすると美酒の薫りも相俟ってなんとも言えない婀娜っぽさを感じさせる。
ネルフの飲み会でおじさん方に酌をよく頼まれる理由も分かろうというものだ。
「んー、ありがと、相変わらず良いお酒買ってくるわよねー。ほんと。たまには日本酒も良いもんだわ」
「ふふ、ちゃんとエビチュも買ってありますのでご心配なく」
注ぎ終わった一升瓶の口についた雫を指でふき取りながらレイが答える。いつもならこのまま指を舐めるところだが、今日は二人きりでは無いのでちゃんと布巾で指を拭っているらしい。
『ああ言うちょっと子供っぽいところもいいんだよなー』とまたシンジ。ただ酒好きなだけな気がするが……。
 彼女のどんな仕草を見てもいちいち見とれてしまう。まさに恋は盲目、あばたもえくぼ。

169少数派の10:2007/01/31(水) 00:38:03 ID:???
ここまでで一旦終了。
今投下しておかないといちがつがおわるとおもった。反省している。
謝罪と賠償には応じないがな!!
170名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/31(水) 05:55:55 ID:???
乙。でもLRSってよりネルフ団欒って感じだな。
結婚生活スレに投下した方が良かったのかもしれないが、もう一度言う。乙。
171名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/31(水) 07:21:54 ID:???

織り込まれた小ネタも楽しく、今後のお話に期待wktk
172名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/31(水) 19:55:40 ID:???
乙!
なんかこういう勢いのある文って好きだ
続きが気になるw
173名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/01/31(水) 22:46:48 ID:???
もう 俺としては作品を投下してくれるだけでもありがたいね
作品自体も楽しかったぜ 
174名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/01(木) 06:25:13 ID:???
>>163-168
凄い乙です。文章が凄く上手しほのぼのしてて良い。
後綾波が可愛いな。野菜の名付け親は綾波でFA?
175名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/01(木) 07:46:28 ID:???
自演乙です。
頑張ってください。
176少数派の10:2007/02/01(木) 10:29:48 ID:???
>170
この話の前の話をこのスレに投下したんで、ここにしました。なんかちょっと違和感ありますかね。
そこらへんは御容赦下さい。一応LRSなんで。
>171
ありがとうございます。子ネタももっと楽しい物にできればと思っています。
MENTHOLとかが理想なんですがあそこまでのレベルは難しいですね。精進します。
>172
勢いあるって言われたのはじめてなんでとても嬉しいです。ありがとうございます。
>173
投下しないと荒らしに負けそうだったんで途中投下に至りました。スレの活性化に繋がると良いなー
>174
野菜の名付け親も、実際に生み出したのもレイさんです。
前話にも書いてますが、彼女は神様って設定なんで。なんでもありです。
>175
はいはい、ワロスワロス
177名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/01(木) 19:17:56 ID:???
レイ 「碇君 likeとloveの単語の違いが解らないの・・・・教えて・・・」
シンジ「え?でも、この前の英語の授業では普通に両方とも略してたじゃないか」
レイ  「じゃあ・・・碇君の私に対する感情はどっち?」
シンジ「なっ 何を言ってるんだよ綾波は (/// も もちろんlikeのほうだよ・・」
レイ  「そう・・・likeが愛って意味ね ありがと・・」
シンジ 「え? 綾波?・・・」
178名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/01(木) 23:32:47 ID:???
これ、小説なの?
スレ違いじゃね。
179名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/02(金) 00:14:39 ID:???
スレ違いだ 間違いない
180名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/02(金) 09:17:31 ID:???
スレ違いもまたいいものだな。

だがあえて問おう。略してどうするのか、と。
181名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/02(金) 12:06:45 ID:???
>>180
長文が書けないことを誤魔化してるんだよ
182名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/02(金) 18:19:48 ID:???
小ネタ投下したくらいで叩かれてる>>177に敬礼
183180:2007/02/03(土) 02:32:16 ID:???
>>181

> 普通に両方とも略してたじゃないか

について言ってるんだわ。
184181:2007/02/03(土) 02:59:32 ID:???
そういう事かww
スマン 意味を取り違えた
日本語 勉強しなおしてくるわ
185名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/03(土) 23:25:37 ID:???
てか、今、改めてみるまで気付かなかった……
186名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/04(日) 22:04:34 ID:???
warota
187名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/09(金) 00:12:22 ID:???
>>176
乙ー
続きも楽しみに待ってます
188名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/14(水) 22:15:58 ID:???
189名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/18(日) 20:01:28 ID:???
ほsyつ
190名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/22(木) 23:32:00 ID:???
hoしゅ
191名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/26(月) 03:15:48 ID:???
「ギャ!グッワ!待ってくれ!待ってくれ!」
 オヤジは、叫んだ。
 「許してくれよ!入れたかっただけなんだから」
 「バキッ!ボコッ!」
 ケンはかまわず殴り続ける。
 「ヒッー!助けてー!助けてー!」
 オヤジが悲鳴に近い叫び声をあげた。
 「お前みたいな奴がいるからいけないんだ!」
 ケンが叫びながら殴り続ける。
 「ギャー」
 オヤジの血があたりに飛び散った。ケンのコブシも血で染まっている。
 「世の中!狂ってんだよ!狂ってんだよ!」
 ケンの形相は、もうフツウではなかった。その様子を見ていた、ミクも従業員も言葉を失ってしまっていた。思わずミクが言った。
 「店長!それ以上やったら死んじゃう!」
 「ガッシ!ボカ!」
 ケンには、まったく聞こえていない。オヤジも失神したのか動かなくなった。
 「キャー、やめて!」
 ミクが叫んだ。
 「あっ……はい」
 従業員が後ろからケンを押さえた。
192名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/26(月) 03:39:23 ID:???
キタw
193名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/26(月) 18:28:43 ID:???
>>191お前ホント何処にでも現れるなww
194名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/02/27(火) 00:13:19 ID:???
せめて
ケン→シンジ、ミク→レイ
と書き換えて投下するくらいの芸はないのか
195名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/01(木) 01:36:08 ID:???
待ち
196名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/03(土) 22:17:10 ID:???
ほしゅ
197名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/06(火) 22:57:48 ID:???
198名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/09(金) 18:05:51 ID:???
199名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/10(土) 21:26:42 ID:???
200名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/11(日) 22:14:20 ID:???
きれい
201名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/13(火) 01:06:28 ID:???
なわけない。曇りでなにも見えん。
202名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/13(火) 21:42:53 ID:???
なんだこの流れw
203名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/16(金) 22:49:52 ID:???
時は流れる
204名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/17(土) 20:59:07 ID:???
愛は流れる
205名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/17(土) 22:10:40 ID:???
結婚生活スレ、なんとかならんの?
206名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/18(日) 22:58:45 ID:???
ヒント:荒らしに構うな
207名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/19(月) 00:29:20 ID:???
俺はあのスレとっくに見捨ててるから、何が起きているかすら知らない。
208名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/19(月) 01:06:19 ID:???
とりあえず無視決め込んで荒らしは地道に潰していけば良いだけの事だろ
209名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/23(金) 11:11:41 ID:???
ほす
210名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/23(金) 20:26:25 ID:???
けりつぶして
211名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/25(日) 23:53:27 ID:???
LRS
212名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/28(水) 00:54:30 ID:???
待ち
213名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/28(水) 09:00:04 ID:7M2Nh8/s
最近LRSスレもLASスレもあれますな
214名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/29(木) 00:05:19 ID:???
>>213
あげて尚且つLASスレの話題はやめてくれ
215名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/29(木) 00:09:20 ID:B015MEue
別にいいと思うけど
216名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/29(木) 00:19:47 ID:???
>>215
良くない
217名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/29(木) 01:48:56 ID:???
少数派の10に期待
218名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/29(木) 17:21:09 ID:???
荒らし排除はどーすればいい?運営に連絡?
219名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/29(木) 18:10:34 ID:???
220名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/29(木) 20:43:31 ID:???
さて投下はまだか
221名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/30(金) 01:36:12 ID:???
今日はレイの誕生日だよ
222名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/30(金) 05:19:11 ID:???
レイたんユイさんおめでとう〜
223名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/31(土) 00:42:46 ID:???
誕生日投下期待してたのに・・・
224名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/03/31(土) 20:08:35 ID:???
LRS
225名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/02(月) 22:48:06 ID:???
まだ?
226名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/02(月) 23:30:08 ID:???
どんな話が読みたいんだよ>レイ誕生日記念
227名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/02(月) 23:40:43 ID:???
壮大なLRS
228名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/03(火) 02:15:44 ID:???
>>226
どんなって・・・それはまかせるよ。甘いシンジ×レイが見たいんだ。
229名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/03(火) 21:14:19 ID:???

シンジ「ボディーが……甘いぜ!」
渾身のボディーブローがレイの脇腹に突き刺さる。
230名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/03(火) 23:07:55 ID:???
まだかな
231名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/04(水) 20:47:40 ID:???
ただ待ってるより、自分で書いてみろよw
232名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/05(木) 02:55:36 ID:???
文才があればな
誰かアイデア出してくれ

どうすれば上手く書けるかわからないんだw
233名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/05(木) 18:52:18 ID:???
「ねぇ、綾波」
「何?碇君」
「僕は誰?」
「何を言っているの?」
「僕は誰?」
「……碇君は碇君よ」
「そう……じゃあさ」
そう言って彼はどこからか眼鏡を取り出してかけた
「僕は誰?」
「何を……言っているの?」
眼鏡はどこかで買った新品のものらしくて
だからだろうか
オレンジ色のレンズがやけに光っていた
234名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/05(木) 19:37:10 ID:???
なんか「ここはとあるレストラン」を思い出した
235名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/05(木) 21:06:20 ID:???
痴呆シンジ?
236名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/05(木) 22:18:32 ID:???
>>どうすれば上手く書けるかわからないんだw

自分が好きな小説家の文体を真似るところから始めるとよい。
国語で習うような大御所でなくてもいい。
ハルヒとかのライトノベルの作家、アニメのノベライズ作家から
入るのも、とっつきやすくていいだろう。
237名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/05(木) 23:39:31 ID:???
ハルヒw
238名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/06(金) 00:18:40 ID:???
>>232
>>236の意見を参考にして俺もお勧めのライトノベル教えてやるからそれで勉強しろ

つE.G.コンバット
つダブルブリット
239名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/08(日) 00:00:27 ID:???
ライトノベルと言えば5年くらい前に「リバーズエンド」っつう最終兵器彼女みたいなの読んだ事があるが
それっきりだな。

読めない。どうもヲタ臭くて…
まぁこのスレにいる時点であれなんだけども、LRSはやめられないんだ。
この葛藤はおまいらにもあるのだろう。
240名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/08(日) 01:41:52 ID:???
やめたくてもやめられないw
241名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/08(日) 01:46:37 ID:???
いや、エヴァFF読んでいないが、
こういうスレの住人の相手をするのを目的として来る人もいるだろ。
俺の様に。
242名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/09(月) 20:16:17 ID:???
>>241に期待
243名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/09(月) 22:15:08 ID:???
>>238
十二国記とバシレイスが抜けてるぞ
244名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/12(木) 21:50:07 ID:???
飛浩隆も混ぜてみやう。凄い使徒が出来るかも試練。
245名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/18(水) 00:05:49 ID:???
ho
246名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/21(土) 04:35:09 ID:???
永遠ーー永遠ーー永遠ーー永遠ーー永遠ーー
永遠に生きることが叶ったとして、それは幸せであるか。友人が老い、恩人が老い、愛すべき人が老い、死んでいく中で自分一人生き長らえることは、幸でもあり、不幸である。
だが万人には万人の考え方がある。世界で一人になろうとも生き続けたいというのもまた一つの考え方だ。
 しかし一人で会話ができるであろうか? 出来ない。なんて悲しいんだ。そんな環境下で幸せに暮らせるだろうか? 私はその問いにNOと答えるであろう。
何と寂しい人生(みち)か。
 下らない。人の温もりを感じられないそんな下らない世界では私は生きてはいけない。万人が嘲笑おうとも私は突き動かされないし、この想いも枯らせはしないであろう。
誰も戻らない世界で生きるのは辛い。人の温もりを感じられないのが寂しい。だが……何よりも……何よりも、最愛の人がいないのがーー悲しい。
 今更気付かされるとは、あの消滅の光の際に思ってもいいはずの、この喪失感、虚無感の正体が彼女の為だとは、この心にぽっかりと空いた穴を埋めていた物の重要さが、今になってやっと分かるとは、情けない。

「……一人でいるのには……ここは……少し寒いや……」
少年は赤い少女の亡骸の隣で、静かに涙を流しながら、
「……綾波……」
最愛の人の名を口にしーー



「何?」

本来その場にいるはずのない最愛の人がその場にいて、少年の呟きに応えた。



短いとかはいわないで、携帯じゃこれ精一杯。
批評覚悟で載せてみる、まあ批評も感想も作者のエネルギーになるんだなこれ
247名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/22(日) 00:27:12 ID:???
tdkwktk
248名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/23(月) 00:15:54 ID:???
きたこれ
249名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/23(月) 23:35:37 ID:???
>>246
普通は「批判覚悟で」だと思うな。
取り敢えず、俺的には、読み辛い&イミフメ
250246:2007/04/24(火) 03:58:36 ID:???
前半が確かに意味不でしたね……いや、オリキャラ視点でやるつもりだったんですよ
読みづらいならば丸ごと修正していくしかないか……PC使いたいorz
半年ROMって勉強します。
251名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/24(火) 14:29:47 ID:???
こういうの美文調っつうのか?とりあえずそれがダメな俺

こういうの好きな人もいるんだろうけど
252名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/28(土) 12:15:06 ID:???
俺は良かった
253名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/28(土) 16:27:58 ID:???
悲恋ものは好かん
254名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/29(日) 00:43:32 ID:???
>>246>>250
とりあえずこれからに期待して続き待ってるw
255250:2007/04/29(日) 13:03:08 ID:???
や、期待はありがたいのですが、やはり書き方に工夫を加えたりストーリーにもう少し付け足ししたりと色々あるものでして……
冗談抜きで半年間ROMらせていただきます。いやまあこのスレがその時まであればの話ですが……
私に期待してくださった皆様(何人かはわかりませんが)には本当に申し訳ないと思っています。すいませんでした
では半年後にまた……
256名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/29(日) 13:09:52 ID:???
おま…ほんとに半年ロムる人初めて見たよ…
257名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/29(日) 13:58:46 ID:???
自演乙。
258名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/29(日) 18:53:54 ID:???
>>257
半年ロムれ
259名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/29(日) 19:02:26 ID:???
ハムれ
260名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/30(月) 01:05:42 ID:???
>>255
乙でしたー ノシ
261名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/30(月) 21:15:06 ID:???
ここってさ、何の意味もないただ二人がほのぼのしてる日常の話でもいいの?
262名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/04/30(月) 21:43:25 ID:???
もちろんおk
つーか他に何を望んでると?
263263 −1:2007/05/02(水) 12:01:13 ID:???
--- Redemptio ---


碇シンジ。
初号機パイロット。

私が彼を最初に意識したのは、いつのことだっただろう。

・・・・・・






もしも「私」に始まりと言うものがあるのなら、それは揺れる水面と名を呼ぶ遠い声。
264263 −2:2007/05/02(水) 12:02:15 ID:???
生きた時間の積み重ねを、『人』は【記憶】と呼ぶ。
けれど、その『人』と括られる存在が普通は【記憶】とどう向かい合っているのかを、綾波レイは知らない。
なぜなら、その「レイ」と呼ばれる少女にとっての【記憶】とは、彼女自身の体験ではないから。
他者によって、造り注ぎ込まれたものだから。

【記憶】、それは…。
確認し再び触れることの可能な【知識】とは違い、一度去れば二度と繰り返すことは叶わぬ【思い出】。
手を伸ばそうとも届かず指をすり抜ける陽炎を、レイはただ憧憬する。
不確かな存在である自分(レイ)に与えられた、【確かに存在したヒト
】の過去を。

自分のものではないもの。
自分が手に入れることのできないもの。

それでも。 
それが唯一つ、唯一番最初に、その身に贈られ与えられたものならば。
レイは何かを確かめるかのように、外界からの情報を全て拒み、静かにその【誰かの記憶】に身を委ねる。

【私】を呼ぶ、愛しい人
【私】にふれた指
かわされた言葉
その眼差し

光を沈ませる紅い水、深く
揺れる波の感触も、遠く

いつか

自身の全てを包む【水】に伝わる、彼の人の声が。
もう一度、優しく、そして残酷に、彼女を目覚めさせるまで。
265263 −3:2007/05/02(水) 12:03:55 ID:???
………綾波レイ。
エヴァンゲリオン零号機に搭乗する、ネルフ日本支部所属のテストパイロット。

それが、この少女に与えられたもの。
今年14歳になるとされる彼女の身分を保証し、居場所を与える「肩書き」。
レイはその存在の初めから「ネルフ」に所属し、それ故彼女はこの「ネルフ」以外の世界を知らない。
別に情報統制が布かれているわけではない。
レイにも本やその他の知識媒体によって、「ネルフ」の外にも世界と言うものが存在することは分かっている。
けれど、それを受け止めるための『経験』や心理的な『成長』を彼女は持っていない。
だからレイにとっての「世界」とは「ネルフ」であり、それが「全て」だ。

そして、その「ネルフ」には、支配者が居る。

………碇ゲンドウ
ネルフ日本支部の司令長官を務める人間であり、また、レイを呼び起こした男でもある。

母の子宮を思わせるやわらかな世界からレイを引きずり出し、過酷な現実に投げ入れた者。
自らの目的のためには他者を省みない冷酷さをもった存在。
そんな彼こそが「ネルフ」と言う組織の長であり、レイの世界の中心にも位置している。

彼は。
レイが「綾波レイ」であることを望んだ男。
その存在を利用すると言う形ではあろうとも、彼女を肯定し認めた唯一人。



ゲンドウとネルフ、そして、映り行く影よりも朧に遠く存在する人々。
それがレイの認識。
彼女の閉じた世界とその日々は。
【約束】の期日の訪れるまでを、その身に課せられた役割を果たし続けるだけにある。
266263 −4:2007/05/02(水) 12:06:01 ID:???
繰り返す日常。課せられた役目。
エヴァの開発やそれに伴う危険は、レイの心に強い刺激を齎すものではない。
「体」と言う器の損傷も、「代わりの在るもの」と自らを認識する彼女であれば意味を見出せるはずもない。
「人」として生活はしても「他者」との接触は抑えられ、彼女自身に気を配るものは僅かにすぎず。
ルーチン化したそれらはレイの情緒を感化するには弱すぎて、いまさら何の影響も及ぼすことはできない。
音もなく沈み行く小石のように、何事もレイの心を揺らすものなどあらわれない。

碇司令。赤木博士。クラスメイト。ネルフ職員。・・・・・・
レイが個別に認識しているのは、片手で足りるほどの人数にも満たない。
それ以外は皆同じ。
彼らはレイに話しかけ、通り過ぎていく影のようなもの。
それは儚く淡い水彩画にも似た風景に溶ける。
LCLの中に浮かぶ、魂のない人形達のように。
それぞれが違う個体であろうとも、「ヒト」と言う一括りの中に埋没する。

レイに彼女自身の【自己】を必要とさせるほどの存在はいない。


―――エヴァのために存在する私。
      ヒトであるために擬態を繰り返す私。


    ( ワタシハ  ダレ )     ダレデモナイ

      ( ワタシハ    ナニ )     ナニモノニモナレナイ


レイの声に答える者はいない。
267263 −5:2007/05/02(水) 12:07:43 ID:???
彼女は繰り返す。

話すということ。食べるということ。
眠るということ。   そして、………笑うということさえも。

親しいと特定される人々に対し、肯定的な反応をかえすこと。
それは、人として生きる上で他者との関係を円滑にするためには重要なこと。
そう、教えられて。言われるがまま、催されるがままに、

音を紡ぐ。
       ヒトの言葉。
「笑み」を模る。
          ヒトの表情。

彼女にとって、特別とカテゴライズされるヒト。碇司令。 
近しい存在、……………エヴァ。
それが全てで、それで終わりとなるレイの世界。
長い間そこに新たに含まれる存在はなく、そしてそれを不思議に思ったこともない。
他に親しいと呼べる相手など、レイが関心を寄せる者が新たに現れることなどは、望んだこともない。

けれど、変化は訪れる。
そう、あの日。 

          ・・・・・【第三の使徒襲来】・・・・・


その少年は、彼の血を継ぐ者。
命の始まりより連綿と続く、【親子】という絆を有するもの。
使徒の脅威に晒されたその場所で。
    レイは、            『碇シンジ』 に出会った。
268263 −6:2007/05/03(木) 21:49:40 ID:???
最深部に比べればその場所は確かに地表近く作られていた。
…とはいえ、堅牢でないなどとはとはとても言えない。
言えるはずもない、【エヴァ初号機】専用ゲージ。
そこが今、微かな振動に震えていた。


「予備が使えなくなった。もう一度だ」

そのゲージに程近い予備の一室に、簡潔に入った連絡。
エヴァへの搭乗を求められ、その場所からレイは移動寝台に乗せられ運ばれていく。
彼女は少し前に行なわれた零号機の起動実験により怪我を負った。
今まだ軋む手足は彼女の意思ままには動かない。
それでも命令されれば、それが彼女の役目ならば。
レイには「否」と言う選択肢はない。

ゲージの扉が開き、運び込まれるキャリー。
嗅ぎなれたLCLの匂いが微かに届く。………エヴァの匂いだ。

レイの半ば塞がれた視界には、高座に位置する碇司令の姿は見えない。
けれども、彼の声は聞こえた。
「乗れ」と言われれば、乗る。
他は知らない。
届くかどうかも確かめず、彼女は応えを返す。
レイに見えているのは高い天井と、白い照明だけ。

………もう二度とあの人をこの目に映すことなく、私は、壊れる。

状況を省みての冷静な思考と、けれどそれに反応したように不意に感じた胸の違和感。
しかしその時。
レイが自分の胸を刺した痛みの理由を求める前に、衝撃が世界を揺らした。
269263 −7:2007/05/03(木) 21:52:42 ID:???
衝撃。一瞬にして閉ざされる意識。
体の感覚を受け止めるよりも早く、レイの『何か』が判断を下す。

投げ出された手足は動かない。     
                    ウゴカナイカラダ イラナイ
役立たずな、体。壊れた、器。
                    イラナイカラ ステルノ

     淡く拡散してゆく意識。  
                    …キエテイク

しかし。

それを繋ぎとめる、手があった。

誰かに。
引き上げるようにして抱え込まれたレイの体は悲鳴を上げた。
けれど喉は震えず、零れたのは肺に残った僅かな空気がもらした音だけ。
が、寝台から転げ落ちたレイの元に駆け寄った小柄な影は、彼女のその声が聞こえたのか彼女に何か言葉をかける。
痛みに強張るばかりのレイには、その言葉の意味を掴むほどの余裕はまだない。
でもその音に、人の声に、彼女の意識は再び収束していく。
痛み、痛み、痛み…。レイに感じられるのはそればかり。
それでもその痛みの中で、光を求めるように彼女は涙で滲む目を開いた。
その、霞む視界に映る、顔。知らない顔。

                         ダレ?    アナタハ ダレ

・・・・・・
それが初号機の専属パイロットであり、「碇シンジ」と言う名の少年であるとレイが知るのは随分後のことになる。
初号機の暴走と言う形ではあるが、使徒殲滅の報を告げられた、…その後のことだった。
270名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/03(木) 21:53:48 ID:???
正直読みにくいだけだし
面白みが一つもない
271263 −8:2007/05/04(金) 17:34:45 ID:???
第三使徒は倒された。
倒したのはエヴァ。……エヴァ、初号機。

今現在、レイの視界に映るのはあの高いゲージの天井ではない。
すでに見慣れた無機質な病室の天井だ。
その天井を見つめながら、一人ベットに横たわったレイは回想していた。

あの時、司令はこう言った。
『予備が使えなくなった。もう一度だ』

『予備』   ………【予備】

予備のエヴァパイロット。それは、「綾波レイ」の代わり。
この「器」=「エヴァパイロット」の代わりということだ。
けれどそれならば。その言葉の示すものは………
次の【綾波レイ】のはずではなかったのだろうか?

地下の水槽にたゆたう数多の【入れ物】達。
空っぽの【魂の器】。次の【綾波レイ】の体。
一つの器が壊れても、次の器がある。
それが【綾波レイ】と言う存在の…。
「約束の日」を迎えるための人形の意義だったはずだ。

けれど。
あの場所に、次の【レイ】は居なかった。


代わりに。
あの場所に居たのは、一人の少年。
272263 −9:2007/05/04(金) 17:35:48 ID:???
使徒の攻撃によって寝台から投げ出され、痛みに動かなくなったレイの体を救い上げてくれた腕。
それは彼女の知っている「【記憶】の中のもの」とは違い、細く頼りない腕だったけれど。

それでもその手はとても熱くて。
極度の貧血から体温の低下していたレイの体には、まるで焼け付くように感じるほどの熱さで触れてきて。

そして。その、熱い、手は。………まだ小さなその手は、確かに、震えていて。

なのにその手の持ち主は。
あの少年は、レイを抱いて、レイの代わりに、「エヴァに乗る」と宣言したのだ。

レイが呼び出されるまでの間にあったゲージでのやり取りを、彼女は知らない。
しかし、当初司令が「予備が使えなくなった」と言ったからには、彼は搭乗を拒んでいたのだろう。
それなのに。
何を思って、あの時、彼はその意見を覆したのか。

何故彼は、私に触れたの?
何故彼の手は、震えていたの?
何故?
ナゼ?

今まで他者に関心を向けたことのなかったレイには彼の心などわからない。
どんなに考えても想像もつかない。
思い出すのは彼の手の熱さや、伝わってきた小さな震えばかり。
耳元で聞いたはずの声音は再生できず、彼の内側を知る手がかりは乏しい。
なのにレイの思考はまるでループにでも嵌ったかのように、【彼】について考えずにいられない。


その【誰かを知りたい】と思うことがどれほど彼女にとって特異な事なのか、
この時のレイはまだ気付いていなかった。
273名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/04(金) 20:05:35 ID:???
                ,-、 nn
.r-、 _00           /::::'┴'r'
.|::::'´::::r┘  !「`L00、|.l└ク_;厂  /
.|::::「|:::|    l| |Ln:::r┘|.l _lニユ、 ./
. ̄└r''"´]_ l| | r゙=゙┐ |└ァ::/ /  /
、ヽ、 ,ゞ´_::::| l| |「二:::7 .|.l └′/  / /
. \\`´ |:::|. l| l 〈::/  、 !     '/
     \ ̄  l   ,>ィ''ヾト:r:‐、_
.       , / ,.-、/ /::\  `‐'^ヾ;<´
      / { ゝイ  /.:::::....`丶、.__戈‐
       ! _ | ::|  |::::::::::::::::::::::::::::::;イ:l
      /  `ヾl、 l:::(\____:::::::/ l::|
.     {     ,ム\\:`‐-‐':/  /:/
     ヽ;:-ィ'´,.、 `、、 ̄´  /='ィ⌒i
     ! {. ヾ;| l  \  `ヾ='´;: -‐'^'''゛
    ', '、  \\_,,>   ノ::/  } !
      ヽ,\  ヾ;、.__,/∠_   ノ/
        丶丶、ヽ;:::::::;:ィ´  ゙,  /
           `'‐-<.___ノ
274名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/04(金) 22:16:39 ID:???
×:ゲージ
○:ケージ
275名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/05(土) 08:08:02 ID:???
>>272
乙。
読みにくいとあったが、別にそこはさほどでもないとオモ
とりあえず期待しときますよと
276名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/05(土) 12:39:18 ID:???
>投げ出された手足は動かない。     
>                    ウゴカナイカラダ イラナイ
>役立たずな、体。壊れた、器。
>                    イラナイカラ ステルノ
>
>     淡く拡散してゆく意識。  
>                    …キエテイク
>
>しかし。
>
>それを繋ぎとめる、手があった。
>
>誰かに。
>





読み辛いよ

                   誰かに

277名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/05(土) 17:12:43 ID:???
カタカナ?些細な事だな
だから「さほどでもない」って言ってるんじゃね

誰かに
278名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/05(土) 20:30:02 ID:???
>>270

あえて問う。
このスレで言うところの面白みあるLRSって、たとえばどんなの?
279名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/05(土) 22:16:48 ID:???
>>272
ぬお!投下がw乙!
ありがたやー


序盤のモノローグみたいな感じかな。今後に期待w
280名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/06(日) 02:20:28 ID:???
>>278
新ネタ。
281名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/06(日) 08:34:46 ID:???
>>278
読みにくいのは、色々なサイト回って勉強するのがいいよ
文字をずらすのもマイナスポイントかもしらん。
ここぞって時くらいじゃないとさ。
面白みも有名どころの書き方を見てくれればわかると思う。
282名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/06(日) 09:38:24 ID:???
いや横レスだが、なにがそこまで言う程読みにくいのかちょっとわからん。>>276のにしてもね。

たまに意味不明なとこあったけど、文章の書き方も悪くはないだろ。ちゃんと体言で止めたりしてるし。
スコッパーしてたらたまに出てくる、常に動詞で終わるような単調な文章よりは普通にマシ

面白みに関しては、今時そんな面白みのある作品がポンポン出てくるとも思えない。
新ネタが出たら出たでいい事だと思うが、投下スレで求めるのは酷。
ましてや>>272なんてまだ序の口で新ネタ入ってんのかどうかすらわからない。

よって、>>272は普通だろ。至って普通。標準。序盤でまだ面白いもつまらないもない。
なのにやたらとハイレベルなもん求めるから投下が来にくいんだろうよ。
このスレは原則として>>261>>262のようなスレじゃないのか?
このスレの方向性ってどうなってんの

と暇を持て余した俺が熱くなってみる
283名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/06(日) 11:46:46 ID:???
>>282
空白やら空行を使い過ぎで普通に読み辛いよ。
体言止めしてりゃいいってもんじゃない。

普通ってことは、つまらんってことだよ。
ありきたりな展開なんてウンザリする程読んでいるので、「またかっ」という感じ。
それプラス、文章が陶酔系で鬱陶しいから不評なんだろ。
284263 −10:2007/05/06(日) 20:46:56 ID:???
あの使徒戦の日を境に、レイの平穏は失われた。

初めて知った感情。
初めて知った心の揺れ。

たとえそれが【−(マイナス)の感情】であっても、レイはそれを無視できない。
「自分の心の痛みから目をそむける」ということさえ知らないほどに、彼女は無垢だった。
誰かに教えられたもの造られたものではない、自ら生まれた【感情】にレイは困惑する。
体の不調とは異なる、胸を締め付けるような息苦しさに。

「知りたい」けれど「わからない」、と言う戸惑いが「不安」を育てていく。
そしてそれは重なればさらに大きな波になる。

「碇シンジ」のあの行動の意味だけではない。
彼はレイを不安定にする要因を多く見せつけた。

あの人の、『碇司令』の望みを果たすことが、レイの存在理由だった。
しかし今回は、それが叶うことはなかった。
レイの代わりにエヴァに乗った少年は勝利し、そのことによって知らず彼女の基盤を脅かしていた。

そしてさらに。

レイには絶対に持てないものを「碇シンジ」は持っていた。
彼女にとってただ一人とも言うべき相手との確かな関係。
「血」と言う絆。…「ヒト」の証を。


使徒戦後、病院のエレベータホールで一度だけすれ違ったその一瞬。
彼の面影に「ゲンドウ」を見たとき、彼女は自らの異端を突きつけられたように感じ、ただ震えるしかなかった。
285263 −11:2007/05/06(日) 20:48:04 ID:???
あれから幾許かの日を置いてレイは病院を退院し、学校に来ていた。
今、彼女の視線の先には「碇シンジ」がいる。
明るい陽光の差し込む校舎の廊下、そのわずかばかりの影になる部分に佇んで、レイはシンジを見ていた。

黒い髪、黒い瞳。 14歳。 中学生。
よく似た無秩序に動くひとかたまりの子供達の中に、「碇シンジ」はいた。
生物学的には、見慣れているはずのクラスメイトと同じカテゴリーに属する少年。
けれどその中から【彼】だけを見つけてしまうのは何故だろう?
目が離せないのは何故?
視線が自然【シンジ】に引き寄せられるのは?
同じように見える彼らの中で、シンジだけが特別に見えるのは何故なのか。
わからないが故に、教室に入ることなく距離を保ったまま、レイはシンジを目で追い続ける。
じっと見つめれば胸が苦しくなるような気がしても。
その理由が【不安】を煽るからだとは気付かないレイは、ただシンジを意識せずにはいられない。

教室の中では、休み時間だからか大勢のクラスメイトに囲まれてシンジは何か話している。
「エヴァ」や「パイロット」等の台詞が漏れ聞こえることから、先の使徒戦についてでも話しているのだろう。
何故そんなことができるのだろうか?
彼が「エヴァ」で「使徒」に勝ったから? …あの時、何の役にも立てなかったレイとは違って。
彼女の眼差しの先で、戸惑いもなく何人もの人たちと言葉を交わすシンジは、いっそ自信ありげにも見える。
彼女とはあまりにも違う、「ヒト」。

それは何故?        ………ホンモノ、ダカラ?

再びあの時のようにどこかが痛んだような気するが、確かめようにもレイには痛んだ場所さえわからない。
けれどそれはシンジが一人のクラスメイトに引き摺られるように連れて行かれ、
その視界から消えるまで彼女を苛み続けた。

その後、第四の使徒の襲来。
………碇シンジはその使徒をも単機によって退けた。
286名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/06(日) 21:16:08 ID:???
何ていうんだろう?ポエム?
287名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/07(月) 00:07:02 ID:???
こう言うところの投下物は、もっと即物的な方が良いと思うんだ。
プロローグ的な物を一話分とか、要所要所に挿入されるのならともかく、何回にも分けて
延々続けられると鬱陶しいだけだと思うな。心理描写なんて物は。
288名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/07(月) 00:39:42 ID:???
ここに投下するよりLRSサイトに投稿した方が良いように思うよw
いや、マジで。
正直、掲示板向きではない文体だ。

ココノタンとか
綾幸とか
綾展とか

おすすめは綾展かな。
今あそこは読者層にアプローチしているから感想もらえると思うし。
289名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/07(月) 01:26:34 ID:???
停滞気味のスレなのに意見は厳しいのばかりだなw

現状ではバッサリ切り捨てられるほどの
内容でもなければ長さでもないだろ
290名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/07(月) 20:53:52 ID:???
そーかもしらんが、一言で言えば掴みを失敗してると思うぞ。
291名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/07(月) 21:53:16 ID:???
掴みって、簡単に言えば最初のほうを読んだだけで
「これって面白いかも」と予感させるような書き方のことか?

音楽にしても、最初のほうを少し聞いただけで良い曲かどうか
なんとなくわかることがある。それと同じようなもの?
292名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/07(月) 22:03:09 ID:???
読みたいと思わせるもの、だろ。
上のは読み辛い時点で失敗してる。
加えて内容もよくあるパターン。
これを読むのは暇人だけ。
2chには合わないな。
293名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/08(火) 00:06:51 ID:???
>>284>>285
投下ありがとう。今後の2人の絡みに期待


読みにくい読みにくい言う奴がいるけど俺的にはそうでもなくすんなり読めた
言うなれば「」はいらないかも
294名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/08(火) 22:00:48 ID:???
>>292
いや暇人が読めたら十分だろ普通に…
ながちゃんの所のやつなんて暇人の俺でも読めん


作者はとりあえず書き溜めた方がいいよ。サイトに投稿するにしても投下するにしても
295名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/08(火) 22:29:35 ID:???
>>292
暇人の俺でもこれは読めないわ
ながちゃんの所のやつのが普通に読めるくらいだし
自分で理解力がないとは思わないんだが…
296263 −12:2007/05/08(火) 22:47:42 ID:???
綾波レイの定められた運命に突然割り込むようにはいってきた、碇シンジ。
彼女の心を乱し、彼女の心を占め、強くその印象を刻み付けた彼。
静かだった内面に投げ込まれたその存在は、さらに大きな波紋を描き影響を広げつつある。
到来する嵐を告げる「不安」と言う名の暗い波も、その一端に過ぎない。

そしてその同じ渦が。
在りようは違えど同じ原因に端を発する嵐が、第三東京市をも飲み込もうとしていた。

第三使徒に続きあまり間を置かずに襲来した第四の使徒。
襲来は予想されていたこととはいえ、人の子の造る都市は使徒の脅威の前にあまりにも無力だった。
続く使徒の襲撃が考えられる中、対抗策として唯一有効な手段がエヴァしかない。
それも今、稼動可能なのは初号機単機だけという命綱なしの綱渡りのような危機的状況下にある。
ドイツにある弐号機に対する交渉も水面下で進んではいるが、それもまだ政治の闇の中に過ぎない。
だからこそ藁にも縋るように「早急に戦力の増強を」と試作機に近い零号機の再起動が望まれていた。

・・・・・・

そしてその零号機の再起動実験当日。
最終確認のメールがレイの携帯に届けられた頃、まだ彼女は浅い眠りの中にいた。

シンジを心に掛けるようになって齎された不安定さが、レイから安眠を奪って久しい。
深くおちていくこともできず、現実と虚実を繰り返す長い夜。
その中で、レイはわずかばかりの安らぎを求めて【記憶】を繰り返していた。

………夜の闇の中で見る幻を人は【夢】と呼ぶ。

ならば。そう、あれ以来。
レイは夜毎のように【夢】を見ていた。
297263 −13:2007/05/08(火) 22:49:27 ID:???
しかし、「それ」をレイは【夢】だとは思っていなかった。
なぜなら彼女にとって、それは【記憶】の反復に他ならないからだ。

LCLの水槽に帰らずとも訪れる過去の記録。
繰り返すのは、誰かの記憶。
その中でレイは「幸せのカタチ」を垣間見る。

  【私】に笑いかけてくれる、【あなた】
  【私】もまたあなたに微笑みを返す。
  【私】の心は暖かい思いで満たされる。

   光の中、彼の呼ぶ声の、穏やかな響き。
   時に熱情を孕み、その甘さに絡めとられる、夜。

全ては、失われた遠い過去の出来事。
データとして残された、【思いの残滓】に過ぎないというのに………
幸せな記憶、幸せな夢は、麻薬のようにレイを虜にする。
決して、絶対に、ゲンドウが「レイ」を【ユイ】の代わりにすることなどありえないとわかっていても。
そう、哀しいほどにわかっていても、レイは静かに溺れていく。

けれど、【夢】はどこまでも夢でしかない。
設定したアラームが朝を告げれば、【過去】と「今」は速やかに切り替わる。
暗い失望にも似た闇を纏うようにして目覚める、レイにとってのいつもどおりの朝がくる。
そしてその不快ささえもすでに慣れてしまった彼女は、習慣になったシャワーを浴びに行く。

そこまでは確かに全ていつもと“同じ朝”だった。


ただ、その日。
違ったのは、部屋に戻ろうとバスルームの扉を開けたレイの前に、『碇シンジ』が居たこと。
298名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/08(火) 23:06:24 ID:???
おつ
【私】ってなにかと思ったらユイか
つまりユイの記憶の残骸がレイに残ってるって設定なのか…

続きが楽しみというよりは続きが不安です
299名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/09(水) 00:07:05 ID:???
何か、何時の間にやら第5使徒戦ですよ。
ほとんどモノローグのみで、このまま最後まで突っ走るのか?
それともここから化けるのか?
300263 −14:2007/05/10(木) 22:42:13 ID:???
何故、朝早くシンジがレイの部屋に居たのか。
それは、新しく発行されたカードをレイに届けるためだった。
必要なことであるからそれについての問題はない。
今までも連絡事項を伝える相手に対し、レイが何かしらの感想を抱いたことはなかった。
それがどんな非常識な時間や仕事であっても、ネルフと言う組織に所属する以上当然のことだ。
しかしそのことと、その後に起きた事件は別だった。
彼が勝手にレイの私物に手を出したことは。

バスルームのドアを開けたレイの目にはいった光景。
なぜシンジがここにいるのかと疑問がわく前に、レイの手は彼に向かって伸びていた。
自分がどんな格好をしているのかということも、彼が何者かなどということも頭にはなかった。
焦り? 怒り? 不安? いや、そんな生易しいものではない、もっと奥深くから……。
湧き上がるその感情のままに、レイはシンジに手を伸ばした。彼女の手は奪い返そうとしていた。

シンジが戯れにかけた、ゲンドウの眼鏡、を。

それは、レイのただひとつのともいえる『私物』だった。
レイにとって、初めて形あるもので手にした品であり、そして、おそらく最後になるだろう贈り物。

それを、彼が、無断で手に取っていた。

彼女の手を避けるように後退しようとするシンジを追って、さらに踏み込むレイ。
その時のレイの頭に「とりかえしたい」という考えが浮かんでいたかどうかはわからない。
「それがじぶんのものだから」という明確な認識があっての行動かどうかも。

ただシンジに向かうレイの内に響いていたのは悲鳴のような不協和音。
耳を塞ぎたくなるような、胸をかきむしりたくなるような嫌な音。

けれどもしも他に聞くものがいたとしたら、それを女性が泣き叫ぶ声だと言ったかもしれない。
………「奪わないで」と願う悲しい声に聞こえると。
301263 −15:2007/05/10(木) 22:43:59 ID:???
エヴァ

使徒戦

親子と言う絆

「ヒト」であること

何もかもを
何もかも すべてを    アナタハモッテイルノニ

【記憶】は、借り物
【器】は、仮初
【言葉】も【表情】も、造られたまがい物


【感情】さえも自分のものといえるのは、知っているのは
  凍えるような【不安】と過去に対する【憧憬】だけ

私は何も持っていない まだ何も手にしていない
なのにあなたは私から これ以上何を奪おうとするの?

    あなたは全部持っているのに
 
    だから どうか これ以上 とらないで

シンジを追うレイは本当に無我夢中だった。
彼に向かって手を伸ばす彼女は、表情を造ることも言葉を選ぶことも忘れていた。
【綾波レイ】である自分自身に対する諦観も、それを踏まえた他人との距離感も見失った。

…伸ばした指にこめられた悲痛なまでの【懇願】を残して、全てが消えていた。
302263 −16:2007/05/10(木) 22:46:11 ID:???
揉みあった末転んでシンジの体を受けとめきれず床に倒れこみ、彼女自身が我に返るまで。
レイはその【衝動】ともいえる感情に浚われ、突き動かされ、自らの心のままだけに動いていた。

しかし、………床に打ちつけた体の痛み。それが彼女をいっきに冷ます。
「あなたは何をしているの」と、どこか呆然とした頭の片隅から冷たく問いかけてくる声を聞く。
碇シンジ を相手に、「何を求めているの」「そんなことをして何の意味があるの」と。
「求めたところで、一度だって、その望みが叶ったことなどなかったでしょう」

素肌に感じる、濡れたタオル越しに伝わる床の冷たさとシンジの衣服の粗い布目。
それらの確かに現実を告げる感触が、彼女の中にいつもの【綾波レイ】を呼び起こす。
パターン化した行動をなぞる、いつも同じにしか動かない、動けない、人型。
与えられた役割を演じる、「ヒト」としての在り方を擬態する存在に、…【綾波レイ】に戻す。
でもその裏にあるのは悲壮な何かではなく、「わからないからそうするだけ」という単純な理由だ。
「衝動」から覚めれば、後は起こった出来事に困惑し取り乱しどうしようもなくなって彼女は行き詰る。
知らないから、経験がないから、自分の感情に対しても彼女はどう反応すればいいのを決められなくなってしまう。
だからレイは造られた【綾波レイ】を演じようとする。

けれどもまた。
先ほどレイを襲った「衝動」についてこの場でじっくり考えることが彼女には重すぎる荷なのも事実だった。
自分の心に何が起きたのか。その変化を省みる必要があっても、今のレイにはできそうにない。
考え、答えを導き出せば何かが変わるような気がして、彼女は恐れさせる。
今以上の混乱には耐えられない。でも、答えが出せなければこの混乱から抜け出すこともできない。
そうして生まれたあまりにも明白な矛盾。もはやレイはいっぱいいっぱいだ。

それは、再びシンジを見ることさえ苦痛にさせる。だから、レイは彼女ができることを選んでしまった。

303263 −17:2007/05/10(木) 22:51:34 ID:???
シンジに背を向け、ゲンドウのめがねをケースに片付け、下着を拾い、
怖さに震え、色をなくした冷たい指を持て余しながらも手早く服を着て。
そして後ろを振り返らずに部屋を出た。彼女の後ろに立つ来訪者など忘れたように。

そう、レイは、………逃げたしたのだ。シンジを部屋に置き去りにしたまま。

しかし、シンジがそんなレイの心情を察するはずもなく、当然彼女を追いかけてくる。
そしてネルフの長いエスカレーターでとうとう彼はレイに追いつき、無視しようとする彼女に話しかけてくる。
レイにしてみれば話などできる状況ではなくて、今はそっとしておいて欲しいと思っているのに。
だから短い返答しか返さないことで、レイは彼を突き放そうしてみた。

が、シンジはそれにさえ気付かず……、彼女が決して無視できない言葉を続けて、さらにレイを追い詰める。

「綾波は怖くないの?もう一度あの零号機に乗るのが」

怖い?
コワイ? 「怖い」って、何?

碇シンジ。
碇司令の息子。
初号機のパイロット。
私とは違う。 ホンモノノ クセニ
そのあなたが、何故そんなことを言うの?

「あなた、碇司令の子供でしょ」
「うん」
「自分のお父さんの仕事が信じられないの?」
「うん」
「………」
「…当たり前だよ。あんな父親なんて」

そして最後に、シンジは顔を歪めて、レイをおもいきり殴りつけるに等しい言葉を、吐きだした。
304263 −18:2007/05/10(木) 22:52:50 ID:???
―――あなたが、私を否定するの? 
   【碇シンジ】であるあなたが?

   碇司令を。
   彼から与えられた任務を。 私の、存在理由を。

   それを、あなたが。
   あのひとの (アノヒトタチノ) むすこである【あなた】が!

【記憶】の中、叶わぬと知っていて憧れ、割り込めないとわかっていて望んだ、幸せな情景。幸せな夫婦。
そしてその結実ともいえる、碇シンジ。
決してレイには手に入れられない「両親」という確かな血の絆を与えられた彼。
なのにその二人の息子でありながらシンジが吐き捨てた言葉はナイフのようだった。
レイを切り捨て傷つける、まさしく彼女に対する裏切りそのものだった。

だからこそ。
レイもまたシンジについては何も知らないからこそ、彼女は純粋に[怒り]を湧きあがらせた。

レイの中に生まれた、眼前を赤く染めあげるほどの[怒り]。
とても冷静さを装うことなどできない強い感情が、無表情無反応という擬態を容易く引き裂いていく。
生まれて初めて感じたあまりにも激しいその[怒り]は、レイの鼓動を高鳴らせ、目を眩ませる。
だからその心のままに。レイの手が動いた。

シンジの視界の端に映る華奢な白い手。
しなやかに翻る指先を目で追いながら、しかしシンジは動けなかった。

そして、衝撃。鮮やかに響いた平手打ちの音。

熱を持った頬に呆然と手を当て見つめるシンジの前で。
初めて見せた感情の色を乗せたレイの視線が、ただ真っ直ぐにシンジを見つめていた。
305名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/10(木) 23:12:46 ID:???

本編解釈系か
306名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/13(日) 01:21:13 ID:???
悪いけどさ、もうちょっと分かり易いコテにしてくれ。
NG登録しやすいように。
307名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/14(月) 18:19:13 ID:???
‘シアワセ’ってなに?
最近私は考える。
「人は生きていく上で最終的にはどんな形であれ‘シアワセ’を求めるものなんだ。」
と彼が言っていた。
使徒の襲来が終わって、私は『用無し』になった。
用の無くなった私は何?
私が死んでも代わりは居た。でも【彼女】たちは、もう居ない。
仮に、居たとしても要らない、不要なもの。
要らなくなった物は捨てられる、だから私も捨てられる。そう思ってた。
それは仕方の無いこと、いつかはそうなる事を予想していた。
だから、私は自分を絶とうと思った。
前に赤木博士から貰っていた「辞めたくなったら飲む薬」は今も持っている。
必要が無ければ赤木博士が回収しに来るはず、それがないのはこのことを意図しているから。
小さな容器から一粒取り出す、白い乳白色の直径1cmにも満たない。
これを飲めば私の存在は消える、要らなくなったものに存在の意味も価値も無い。
でも、いつまでも飲む事が出来ない、口に運ぶ事も、手を動かす事も出来ない。
違う、出来ないじゃなく、したくない。
これは私の意志、生きたいと願う。私の意志。
私はまだ生きていたい、生きて沢山の事を知りたい、彼のことが知りたい、彼にもっと近づきたい。
胸が苦しくなって、いつの間にか瞳から体液が漏れていた。
これは『涙』、悲しいときに出る物、私は今悲しんでいるの?
何故?私の存在が消えるから?違う、彼の記憶から私が消えてしまうのが悲しい。
悲しい、嫌、怖い、彼が私のことを忘れ去ってしまうのが。
「ゎ、わたしは・・・」   生きたい。

「綾波!」
扉の外で私を呼ぶ声がする。
「綾波、入るよ?」
『プシュッ』と言う音を立てて開く扉の向こうから彼は、来た。
308名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/14(月) 21:08:50 ID:???
>>306    263でNG登録してください
309263:2007/05/14(月) 21:09:57 ID:???
263 −19
・・・・・・
実験開始のベルが鳴る。

モニター正面に向けた目線をずらせば、ゲンドウの眼鏡が映る。
けれど今プラグ内のシートに深く腰掛けたレイの目には何も映ってはいなかった。
仄かに色を変えて移り変わる各種指標たちに照らされながら、レイは右手に集まった熱だけを感じていた。

初めて他人(ひと)に向かって振り上げ叩きつけた、自分の手。

熱を持った手のひらがその存在を訴えかけてくる。
皆が待っていたこの再起動実験は、レイにとっても最重要事項であるはずなのに。
熱く疼く右手にともすればそれすら見失いそうになる。
落ち着いてシンクロに集中しなければいけないのに、どうしてもそこを意識してしまう。
早く気持ちを切り替えなければいけないと、レイにもわかっているのに。
しかし。
振り切らなければと、少し体を強張らせ唇の内側を噛んで感情を静めようと努力してみても。
冷静に、エヴァの起動にだけ集中しなければならないと自分に言い聞かせてみても。
一度知ってしまった心の色はもはやただの白には戻らない。
特に先ほど生まれたばかりの感情の色は強烈で、容易く拭い去ることなどできそうにない。

結局、レイの思考は、その色を生み出した原因、その感情を引き出した相手に帰結していく。
接続に集中しようと思うのに、エヴァを起動させなければいけないのに。

何も知らなかった頃なら、レイにとってエヴァとのシンクロは簡単なことだった。
エヴァへと心を開いても、レイがその中に見るのは抽象的な記憶のコラージュ程度だったから。
でも今は、心を開けば雑多な「想い」が勝手にあふれ出てこようとする。
[不安][痛み][懇願][怒り]、もしかしたらもっとたくさんの複雑な色達が鮮やかに展開する。
それらは、特別なはずの碇司令でも、長く付き合いのある赤城博士でも、
エヴァでも使徒でもなく、ただ一人の少年によってレイから生み出されたものたちだ。
でもそう考えればまた、冷静さとは遥か遠く、思いはぐるぐる巡ってシンジのことへと戻ってしまう。
310263:2007/05/14(月) 21:11:47 ID:???
263 −20
嵌ったような思考からレイは抜け出せなくなっていた。
今までレイは自分の心を制御することがこんなにも難しいと思ったことなどなかった。
だから、もう心を落ち着かせることができないなら、いっそこの乱れる心を全部捨ててしまいたいとまで考えてしまう。
綺麗さっぱり消してしまえたら、こんなに思い悩むことなどない。
こんな少し捨て鉢なことさえ考えてしまうレイの感情にもし表情が伴っていたら、管制の人間達は大慌てしただろう。
しかし傍から見ているだけではわからないから、実験は止まることなく進んでいく。
そうしてオペレーターに緊張を孕んだ声で進行を伝えられれば、レイも「問題ありません」と返すしかない。
もはや止められる状況ではない。実際は問題があろうとなかろうと、答えは「Yes」しかないのだ。
今レイが零号機の起動指数を割るわけには行かないということも彼女が一番よくわかっている。

エヴァに乗ることもできなくなったレイにどんな価値が残るというのだろう?
………「依り代」でしか望まれないならば、地下の水槽で浮いているだけのアレでもかまわないのだから。


ならば、レイがここにいる【綾波レイ】である為に、優先すべきは何か。

エヴァを動かすにはシンクロ率が上がらなければならない。
だからエヴァとの繋がりを絶ってはならない。
心を否定し自分と向き合うことから目をそむけるということが、エヴァを拒絶することと同義なら。
レイは自分自身から逃げだしてはいけない。………その結果に何を見ることになっても。

レイは熱い右手を胸元に寄せぎゅっと握り締める。
反対の手を縋るように添えたのは無意識の動作。
そして、目を閉じて、エヴァへのシンクロを思い描く。
選択はなされた。冷静になれないなら、そうであるがままに。
浮かんでくる幾つもの状景を、受け入れて………、エヴァへと繋ぐ。


最初の出会い。レイをこの器に引きとめたシンジ。
(不思議だった。だからあれから、常に目で追いかけてしまった)
311263:2007/05/14(月) 21:12:49 ID:???
263 −21
レイの部屋で。ゲンドウの眼鏡をかけていたシンジ。
(「とらないで」と願った。無我夢中で彼に掴みかかった)

二度目の接触。レイは混乱し、逃げ出してしまった。
(彼の行動はレイの心に矛盾した感情を同時に浮かべさせた)

追いかけてきたシンジ。レイは激情に呑まれて彼に手を上げた。
(レイが必死に縋りつくものを、シンジが要らないと投げ捨てたから)

エヴァとのシンクロが見せたもの。
それは、レイの心を占める、彼に向けた興味とそこから生まれてきた感情の【記録】
レイの心の襞に刻まれた、彼女自身の【思い出】。

シンジと出会い、変わっていったレイの心は、彼の存在に刺激され思い悩むことによって、個として確立していった。
おぼろげで遠かったはずの世界は、今、色鮮やかにレイの心を揺らす。
だから。自分では何も考えない、何も感じない、……そんな人形のようにはもう生きられない。
彼を知らなかった昔の心には、もう戻れない。


レイは深呼吸するように最後の空気を吐き出して、肺の奥までLCLで満たされるのを感じとる。
覚悟を決めた光を宿し伏せた眼をあげれば、耳に届くシンクロ率を告げるカウント。
彼女の心の解放を知らせる数値は、ゆっくりと上昇していく。

エヴァ零号機、起動。

接続されたエヴァの知覚が無意識に捉え伝えてくる、唯一人の人間の情報。
もはや隠しようもないほど晒されてしまったのだから、彼女も自覚するしかない。 

  ―――レイの心はシンジでいっぱいなのだと―――
312名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/14(月) 23:24:50 ID:???
263は他のスレで出てくるだろ。
トリップ付けろや。
313名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/15(火) 03:00:15 ID:???
なんか普通に面白いと思ってしまってるわけだが俺異端なの?
とりあえず乙って言っときますね…
314名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/15(火) 08:08:41 ID:???
>>313
やあ俺。
315名無しが氏んでも代わりはいるもの :2007/05/15(火) 19:49:00 ID:???
批判したい奴は、ちゃんと具体的に言わないと頭悪く見えるぞ
316名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/15(火) 20:02:08 ID:???
スルーしたいからトリップつけてと言うのは駄目なのか?
じゃあ、見えてムカついた場合、荒らしてもOKなのか?
317名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/15(火) 21:30:34 ID:???
正直、ポエムはうんざり。
書くなとは言わないから、トリップ付けろ。
318263:2007/05/16(水) 19:08:54 ID:???
263 −22
必要に迫られてではあっても、レイは変化を肯定した。
それは、その変化を齎したシンジへの肯定にも繋がる。
今はまだいい感情ばかりではないが、この先はわからない。
どう変わっていくのか?という不安は絶えずそこに潜んでいるが、でも、もう自分は逃げようとは思わない。
…それがエヴァとのシンクロによってレイが得た自覚だった。

けれどその生まれたての心を、やさしく抱きしめて育てていく時間を「今(現状)」は許さなかった。

耳障りなサイレンが、起動実験の成功に安堵した人々を引き裂くように響き渡る。
使徒の襲来を告げる、非常警戒警報。
浮き足立つ人々に一喝するように最高責任者の言葉が下れば、
起動したばかりの零号機を置いて、初号機の発進準備が急遽整えられる。
遠く装甲シャッターの開閉音が響くなか、
今回もレイは地上へと打ち出された初号機の姿を見送る事しかできない。

初号機の出撃に伴いLCLさえ抜けたゲージの広い空間に、残されたレイは一人ぽつりと佇む。
その大きな隙間は、「また自分は役に立たない」と思うレイの胸の空虚さに似ていた。

シンクロが切れれば、レイは自分の心と直接向き合う必要はなくなる。
零号機以外には彼女の変化を知るものもいない。
それでも、レイは以前よりも感じやすくなった自分自身に対して素直に、頭上の戦いに思いをはせる。
  シンジは今回も一人で戦って勝つのだろうか。
  そうして帰ってきた彼に対し、次に自分は何を思うだろうか………。



しかし同時同刻。
大きなエネルギーを打ち出した使徒の攻撃によって、初号機は大破。
ネルフは撤退を選択し、戦術の変更を余儀なくされていた。
319263:2007/05/16(水) 19:10:59 ID:???
263 −23
出撃のとき以上に慌しい撤収作業が行なわれている。
引き降ろされた初号機の胸部装甲はみごとに溶け爛れている。
殺気立った作業班が回収された初号機に群がり、初号機パイロット「碇シンジ」もICUへと運び込まれる。
戦術班の怒号、オペレーターたちの狂騒。
新たな戦術が組まれ、レイも作業に借り出される。

そうした一時の騒乱の後の間隙。
作業の邪魔にならないように部屋の隅に立っていたレイを、一人の女性仕官が呼び止めた。
「命令」を「頼みごと」と言い換えた疲れた顔の彼女に肩を叩かれ、レイはその場を後にする。
そして向かったある病室。
部屋の中央に一つ置かれた白いベットに横たわる人影は、碇シンジだった。

レイは今まで誰かの見舞いに行ったことはない。
自分以外の人間が寝ているという状況に遭遇することも初めてだった。

レイはそれを酷く不思議だと思った。「何故彼がここにいるのだろう?」と。
理由はわかっている。
それなのに「どうして?」と思ってしまう自分も不思議だった。
運ぶようにといわれたワゴンに手をかけたまま、レイはシンジを見つめていた。
起きて動いているときと印象が違うような気もする。

そうしてしばらく見つめていると、シンジが目を開けた。
寝ぼけた様子はないから、レイが入ってきたときから気付いていたのかもしれない。
しかしシンジは少し視線をレイに向けた後また天井を向いてしまった。
しかも「綾波…」と彼女に呼びかけたのか独り言なのか判別もつかないような小声で零したきり、後は何も言わない。

どちらも新たに行動を起こさない。
外の喧騒も届かないその病室は、そこだけ取り残され時を止めた静止画のようだった。
320263:2007/05/16(水) 19:13:31 ID:???
263 −24
ただシンジはレイを見ないが、レイはシンジを見続けていた。
レイは感情初心者で、まだ他人のそれにまでは洞察が及ばない。
けれど、すでに『特別』と認識してしまったシンジのことなら気にせずにはいられない。
シンジに行動を起こされると観察している余裕などなくなってしまうので、今は絶好のチャンスだった。
とても近く、レイの目の前にシンジがいる。
レイはじっくりとシンジを観察する
…そしてその結果、彼が何かしらの屈託を抱えて考え込んでいるのだろうという結論を得た。
眠ろうとしているのではないから、彼は考え事をしているのだろう、と。
レイにしては精一杯がんばった結果だが、でもわかるのはそこまでで、考え事の内容まではわからない。

意味がありそうで全くない思考に時間を費やした後、レイはここで初めてシンジから視線を外し自分の手元を見た。
掴んでいるのは、食事の乗ったワゴン。
レイはシンジに食事をさせ、今後の連絡事項を伝えるという役目を負ってシンジの病室に来たのだった。
なのにそれを今の今まで忘れていた。
シンジを見ることに夢中になりすぎて、着替えさえまだ渡していない。
レイは慌てて手帳を出し、まずは優先事項と思われるこれからの予定を読み上げる。
そして、シンジの復唱を待った。

しかし、シンジは黙ったままだ。

「感情」にレイが不慣れなように、シンジにこういう経験がないということにまでレイは考えが至らない。
だからじっとシンジが口を開くのを待っている。

でも、シンジは何も言わない。
321263:2007/05/16(水) 19:16:30 ID:???
263 −25
……こんな時、どうすればいいの?
私が何か言い間違えた?それとも、声が小さくて聞こえなかった?それとも…、それとも……。

今までレイが作ってきた【綾波レイ】の仮面はシンジへの怒りが引き裂いてしまった。
たぶんそこからだろう、レイはシンジに対して偽りの感情が造れなくなっている。
エヴァとのシンクロを経て、さらにむき出しになってしまったレイの心を包む殻はもうない。
心を平坦にして教えられたマニュアルの中から対応を選択していた【レイ】はいなくなった。
表面上はかわらないけれど、中身は大きく変わってしまっている。
殊にシンジに対して、今のレイはあまりにも無防備だった。

レイの常識とは異なるシンジの反応に、早くも彼女は混乱をきたし始めていた。

けれど体感時間と現実の時間が違うのはよくあることだ。
レイにとっては長かったが、シンジにとってもそうだとは限らない。

まさかこんな短時間でレイをプチパニックに陥れているなどとは思いもしないシンジは、
ここでようやく動きを見せた。
彼は無言で体を起こし、膝を抱えてシーツで抱くように体を丸めた。

他人を拒絶しながらも寂しさを訴える高度なボディーランゲージなのだが、レイにそれをわかれと言うのは無理だろう。
「大丈夫?」や「どうしたの?」などと気やすく声をかけるスキルをレイが持っているはずもない。
レイはレイで自分のことで手一杯で、同じ台詞をかけて欲しいくらいなのだ。
会話の不自由なもの同士が、相手から声をかけてくれるのを待っていては一向に話が進まないという見本のようである。

二人がその典型的な組み合わせだったのは、やはり不幸なことだったかもしれない。
322263:2007/05/16(水) 19:18:16 ID:???
263 −25
結局、しばし押し黙ってお互いの出方を見た後、先に口を開いたのはシンジだった。

「……ごめん」
「………何が?」
「…………、わかんないけど、たぶん、いろいろ」
「そう」

「これ、食事」
「何も、…食べたくない」
「そう」

「………。あの!」
「何?」
「…眼鏡、ごめん。勝手に触っちゃって」
「……もういいの」
「うん」

「これ、着替え」
「ありがとう。あっ、ごめっ、僕、裸で…」
「気にしないで」
「でも…」
「いいの」
「………うん」

会話が続かない。
それでも、一度口を開いてしまえば話したい気持ちがあるのは二人同じだから、途切れるたびに交互に話題を振る。
でも、続かない。どうしようもなく不器用であることも否めない事実だった。
本当は話したい話さなければならないことがあるのに、それを無意識に避けようとしている。
だから、会話をつなげられないのだ。
しかしどれほど遠回りしようと、避けて通れないものはある。核心はすぐそこだった。
323名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/16(水) 22:44:51 ID:???
長編やる時はトリ付けようぜ。
マジで鬱陶しいぞ、お前。
324名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/16(水) 23:50:37 ID:???
>>263
だから、NG指定するにしても影響が他スレの閲覧時にも及ぶから騙り防止の意味を含めて
トリを付けろと皆はゆーとるのだが、ひょっとしてトリの付け方知らんとか言わんよな?
325名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/16(水) 23:52:45 ID:???
>>263
取り敢えず壷だと、本文と名前欄に"263 −"でNG指定すると、あぼーん
してくれるけど、
名前欄の表記変えたから、本文にも指定しなくちゃならなくなったろーが。
326名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/17(木) 08:06:12 ID:???
とりあえず名前欄に
〇〇(コテ)#(トリ)

これをしてもらいたいわけだが。
トリップは半角英数だからな。
327名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/17(木) 09:03:15 ID:???
トリップでなくてもいいから、もう少し誰も使っていないようなHNにしてください
328307:2007/05/17(木) 13:19:12 ID:???
307だけど…
邪魔にならんように投下してなかったが
誰も評価(批判)してくれてないのな(´・ω・`)
もしくは、暗に『喪前いらねぇYOッ』って言われてるのか orz
329名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/17(木) 16:45:41 ID:???
>>328
ごめん、>>263に気をとられてて全然気付かなかった。
悪意は無いんだ。
でも投下を続けるなら、やっぱりコテトリは付けたほうがいいと思う。
最近別スレで投下始めた漏れも
「コテトリは付けたほうが他の人と紛れないし、後から抽出しやすい」
って言われたよ。
330名無しが氏んでも代わりはいるもの :2007/05/17(木) 17:47:44 ID:???
>>328
短すぎてなんとも言えないけど、俺はいいと思ったよ
331名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/17(木) 17:54:45 ID:???
>>307>>328

悪くはない。私はあんまり沢山の作品を読み込んでるわけじゃないけど、「辞めたくなっ
たら飲む薬」みたいな発想は新しいような気がする。ただ、彼女は既に「生きたい」と思っ
てしまっているので、この薬をどう生かすのかは難しいかも。入ってきたシンジが「そん
なの飲むの止めろよ。僕には綾波が必要なんだ」「私は必要とされてるの?」的な展開だ
と凡百の話と同じになる。それでも悪くはないけど。
それでもなお薬を飲む決意をするレイ、というような展開になると、決意した理由によっ
ては期待できるかもしれん。
今いえるのはこのくらい。

それから、ポエムっぽいのは嫌われる傾向にあるみたいなんで(私もあんまり好きじゃな
い)、その辺は気にするといいのかも。今回の文章はこれでいいと思うけど。
コテトリは付けた方がいいと私も思います。
332名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/18(金) 11:44:31 ID:???
>>331 「辞めたくなっ たら飲む薬」みたいな発想は新しいような気がする。

以前LAS投下スレで同じネタを見たよ。
シンジがその薬を持っていて、アスカが止める話だった。
シンジが飲もうとするのをアスカが奪って代わりに口に入れて…という展開。
333名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/18(金) 15:33:27 ID:???

綾波が死んだ。

と聞かされたけど……。
様子が……。
おかしかったんだ……。

「綾波レイです!ヨロシク!」
「……!?」
「あ〜!この前の乳揉み魔!」
「!!!!??」

僕はどうしたら良いんでしょうか……。母さん……。
334名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/18(金) 15:57:08 ID:???
>>333
麦茶吹いたwww

揉め。揉んで揉んで揉み倒すんだ!!
335名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/20(日) 23:04:03 ID:???
>>333
和んだww
336名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/22(火) 02:06:18 ID:???
263が来なくなったね。
コテトリ付けるのがそんなに嫌だったのか?
付けてればああまで言われずに済んだだろうに。
337263 ◆p97Qgein9M :2007/05/24(木) 21:29:42 ID:???
トリップつけました
削除どーぞ
338263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/24(木) 21:34:11 ID:???
あ、トリップはこっちで
スイマセン保存し損ねた
339263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/24(木) 21:35:20 ID:???
263 −267
「………うん」そう言った後、シンジはごそごそとシーツをかき寄せた。
つたないながらも会話を続けていたときはレイのほうを見ていたのにそれもやめ、下を向いてしまった。
俯いた髪から覗く赤い耳。その染まった耳を見て、なぜかレイも目を逸らしたほうがよいような気になる。
そうして動かした目線は、レイが渡したシンジの衣服の上の彼の小物をまとめた透明な袋に留まった。

「あと、…60分」

レイの目を引いた光は、チカチカと点滅している彼の携帯だった。メールでもはいったのかもしれない。
その光の下に表示されているのは現在の時刻。
この病室には時計はないし、シンジの腕時計も同じ袋の中だ。
膝元に目を落としている彼には時間がわからないと思ってのレイの言葉だった。

けれどその言葉を聞いて、シンジはレイから見てもわかりやすいほど体を強張らせた。

「………それ………」
「次の作戦の開始時間」
「……………。
 また、あれに乗らなきゃいけないのかな…」
「…………」
「…乗りたく、ない」

シンジは細い声でそれだけ言うと、膝を抱える腕の中に顔を押し込むようにして隠してしまう。
体を縮め、まるでできるだけ小さくなろうとでもしているかのようだ。
そんな姿勢をとられると、立っているレイには彼の旋毛しか見えなくなる。
黒い頭と腕とシーツ。これではシンジかどうかわからない。
……シンジであることは確かだけれど。
340263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/24(木) 21:37:02 ID:???
263 −268
先ほどまでの少しは友好的だった雰囲気が嘘のような、頑なに閉ざされたシンジの姿勢。
そんな彼の急変にレイは驚いて目瞬く。
けれど同時に、その変化は彼女の思考の淀みを払うものにもなった。
それは、最初にレイが感じた違和感の正体を気付かせた。
シンジと普通に会話することに流されて、隠されてしまっていたあの【不思議】さ。
病室のドアを開けベットの上にシンジを見たときにうけた、どこか居心地の悪くなるような感じ。
それが意味するもの。それは、彼がここにいることの【理由】。

碇シンジは、【負けた】のだ。あの、使徒に。

その事実を「俯き拒絶するシンジ」の姿によって改めて認識する。
忘れてなどいなかった。そのはずなのに…。
シンジを前にして、今レイが感じる衝撃はまるで初めて気付いたかのように強いものだ。

………レイにとって、【シンジが負ける】など想像にもしていないことだった。
彼は最初からレイにとって【誰とも違うヒト】だった。
最初の、初めての邂逅から、彼はレイの中でかなり「特別」な位置にあった。
碇司令の息子で、初見でエヴァに乗り使徒を倒し、………彼にはできないことなど何もないようにレイには見えた。
彼は何もかも持っている、【綾波レイとは全然違うヒト】なのだと、…思っていた。
だから、彼が「負ける」事など考えもしなかった。

でも、その彼が背中を丸めて、ここにいる。

目の前に居る彼の存在が、現実だった。
レイの受けた衝撃は、自分が彼に見ていた姿が、彼女の「思い込み」であったということにもある。
現実には「絶対」なんて存在しないのに、まるで彼だけは違うと自然に思い込んでいた。
レイが「こうなりたい」と思う理想を全て兼ね備えた、「完璧なヒト」なんだと。

しかしそれは幻想でしかなく、シンジはここにいる。
341263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/24(木) 21:39:15 ID:???
263 −269
レイが受けた衝撃は大きいのに、シンジはそれにさらに追い討ちをかけるようなことを言う。
けれど二度目になるその言葉…
「乗りたくない」と言ったシンジの言葉に、何故かレイは反発を覚えなかった。
それは、あの時と同じにエヴァを否定する台詞のはずなのに。
怒りがわかない理由はなんだろう?
それに…。シンジが何故「それ」をレイに向かって繰り返すのかもわからない。
レイにはわからないことばかりが多く、戸惑いが先にたつ。
でも、怒りは浮かばない。心は不思議と凪いでいる。
だからかもしれない。その疑問は、レイが思うよりも静かな口調でシンジに投げられた。

「……乗らないの?」
「……………。……綾波は。
 まだあれに乗って怖い目にあったことがないから、そんなことが言えるんだ。
 ……もう、あんな思い、したくない」

     『怖くないの? エヴァに乗ることが?』 

そして返されたシンジの言葉に、あのときの台詞がもう一度、重なって聞こえた。

シンジは顔を隠したままでいるが、ここまで言われればいくら初心者のレイでもわかる。
彼は、エヴァに乗ることを、怖がっているのだ。

そしてその【感情】は、レイも知っている【感情】だった。
シンジは「レイが怖い目にあったことがない」などというがそんなことはない。
つい最近、いやほんの少し前に、レイは【それ】と向かい合わなければならなかった。
零号機とのシンクロで、自分の心と向かい合って、自分の変化を受け入れることはとても【怖い】ことだった。
それは、暴走した零号機に放り出されて怪我をすることよりも、ずっと【怖い】ことだった。
342263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/24(木) 21:41:00 ID:???
263 −270
今ならレイにも簡単にわかる。
あれほどまでに自分が悩み迷い躊躇ったのは、シンクロ(エヴァ)が【怖かった】からだ。
よく見れば、あのときの気持ちにシンジの姿勢はよく合っているようにも思える。
知っていればレイも、今の彼のようにプラグのシートの上で丸まってみたかもしれない。

シンジの言う【怖さ】と、レイの感じた【怖さ】の意味が同じかどうかは問題ではなかった。
今ここでは、レイもまた【エヴァに対し怖がった】という事実があったことに意味があった。
『自分とは違う』と強く思い込んでいたシンジとレイに共通するものがあるということ。

レイは、この時、生まれて初めて、【共感】というものを知った。

レイはシンジがどんな顔をしているのか見たいと思った。
自分と同じ事を考えたているシンジはとても「遠いヒト」には思えない。
完璧じゃないシンジはどんな表情を浮かべているのだろう?
あの時はどうだっただろう?
思い出そうとしても、前の言葉を聞いたときのシンジの顔も思い出せなかった。
もしかしたら見ていなかったのかもしれない。
あの時もレイは自身のことに手一杯で、シンジのことなど見ていなかったのかもしれない。
だから、気付かなかったのだろう。

彼が怖かったのは、【彼自身が】エヴァに乗ること。

ならばあの後の言葉も、違う意味を持ってくる。
シンジは【エヴァそのもの】を否定したわけじゃない。……レイを否定していたわけじゃなかった。
シンジは「何でもできるヒト」はなく、「レイの存在理由を否定したヒト」でもなかった。
新たな認識は、シンジを認めると決めた後もレイの中から消せなかった影をほんの少し拭い去った。
そしてその代わりにレイが得たのは、消えた影を埋めたのと同じだけの親近感。


疑問も衝撃も疎外感すら吹き飛ばすほど、初めて感じたそれは甘い感情だった。
343263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/24(木) 21:42:48 ID:???
263 −271
【共感】は歩み寄るために必要な最初の一歩になり得る。
そしてその小さな親しみは、勢い次の言葉をレイに言わせることになる。

「じゃ寝てたら?」

乗りたくないなら、このままここで寝ていればいい。
レイはどうしてもシンクロしなければならない事情があったから挑んだけれど。
彼はレイと少し「同じ」で、でもやっぱり「違う」存在なのだから。
同じ選択をしなければならないということはないはずだ。
得たばかりの「共感」を裏切られるのは辛い気もするが、それも「碇シンジ」という人の一面だ。
「シンジ」は【綾波レイ】ではないのだから、違う道を選んでもいいと思う。

「初号機には、私が乗るわ。
 赤木博士なら初号機のパーソナルデータの書き換えも用意しているわ」
「……リツコさんが?」
「ええ。 …もう、行くわ。書き換えるなら早くしないと。
 たぶん、ケイジで葛城一尉と赤木博士が待っているから。
 ………さよなら」
344263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/24(木) 21:49:13 ID:???
263 −272
シンジがエヴァに乗らないならば、確実に今後の作戦に支障をきたすだろう。
用意があってもそれが次善策であることはレイもは知っていた。
でも、それがシンジの決めたことなのだ。

「理想」ではなかったかもしれないが、レイにとってやはり彼が「特別」であることはかわらない。
シンジはレイに幾つもの感情と、ついには【共感】までも教えてくれた人だった。
でもこれまでは、レイとシンジの間に「関係(絆)」と呼べるものはなかったから、
レイから彼に与えられるものなど何もなかった。一方通行で貰うばかりだった。
でもその彼が、レイにもできることを望んでいる。レイの本来の役目と同じ事を。

シンジが望むなら、それを支持しよう。

一度決めてしまえばレイの行動は早い。彼女は決断を覆すことを知らない。
それに、もともとレイは無駄なく行動することにも慣れてもいる。
背中でシンジが慌ててレイに声をかけたような気もしたが、彼女は振り返らなかった。
病室に入ってきたときとは違う奇妙なまでにさっぱりとした感覚を胸に、レイは颯爽と出て行った。
345名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/24(木) 22:10:57 ID:???
消えたと思ってたのにまだいたんだ
346名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/24(木) 22:29:26 ID:???
俺はそこに作品があれば何でも読むんだけどさ
一つ言わせてもらえばやっぱり「 」と【 】が多いのが気になるっつーか
少し偉そうな表現でスマンが鼻につくんだよな
強調したいならここぞというときにだけ使ったほうが効果あると思うし

話の筋的にはこのすれ違い具合からどうやってLRSへ持ってくのかある意味楽しみなんだけどね
347名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/24(木) 22:48:48 ID:???
おかえりなさい。
348名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/25(金) 01:35:56 ID:???
263  ◆OQt/Av6lPM
期待してます
349名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/25(金) 03:19:57 ID:???
面白いかも

つーか続きがえらい気になるなこういうのって
350名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/25(金) 03:52:09 ID:???
続きっていっても、原作なぞってるだけじゃん。
これから何か変化があるのかねぇ。
351名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/25(金) 05:47:07 ID:???
いつからこんな厳しくなったんだ

口を開けば大先生
文を書かせれば素人
352名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/25(金) 07:06:31 ID:???
文の頭に付いてる263 −272とかは、何の意味があるの?
353名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 05:37:33 ID:???
早く続き読みたいんだが…
まだ?
354名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 17:03:27 ID:???
アニメ見とけば?
どうせ展開同じだし。
355名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 19:34:13 ID:???
↑悲観的だな〜
356名無しが氏んでも代わりはいるもの :2007/05/26(土) 19:34:30 ID:???
なんか変なのが来てるな…
357名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 19:36:48 ID:???
投下がくるまでは待ってる
全ては読み終わってからだ
358名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 19:38:25 ID:???
投下ネタへは批評批判禁止にすればいいんじゃね
つまんねと思ったら、読まないようにということで
んで、レスがつかなくなったら読者0で終了にすればいいと思う
359名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 19:40:36 ID:???
こういう鬱展開から始まる2人の関係って好きだよ
初っ端からイチャついてるのより続きが気になる
もっと鬱でもいいくらい
360名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 20:43:15 ID:???
批評批判も中身のあるものだったらいいんだけど。
短絡的な否定レスは荒らしと同義。
361名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/26(土) 20:59:13 ID:???
それなら感想そのものを禁止にするべき。
362名無しが氏んでも代わりはいるもの :2007/05/26(土) 23:51:32 ID:???
興味が無い、面白くないのであればレスしないだけだしなあ…
一行批判レスは、何かの意図が有ると思わざるを得ない
363名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 00:35:23 ID:???
ここでやられるのがうざい
正直投稿向け
絶対ここ向けではない
364名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 02:36:30 ID:???
別に投稿しても良いと思うが、批判禁止とか言い出したら鬱陶しいな。
2chに投稿するなら、それくらい覚悟してからやれよと。
365263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/27(日) 06:05:37 ID:???
263 −32
ネルフの長い廊下をレイが早足で進んでいく。
その後ろから小走りでシンジが追いかける。


……あれから。
もう来ないと思ったシンジは何故かレイの隣で作戦の説明を受け、
作戦遂行地点「双子山山頂」までの道のりを共にしていた。
使徒を刺激しないようにと郊外のその地点までエヴァの起動を見送られた為、移動距離も長い。
薄いカーテンで仕切られた車(バン)の中、プラグスーツに着替えれば後はすることもない。
微かに響くエンジン音を聞きながら二人は黙って座っていた。
車内からは窓がないため現在地がつかめない。
それでもここまでかかった時間から残りの距離をレイが頭の中で試算し始めたとき、シンジの溜息が聞こえた。

「…綾波。
 さっきの、ことだけど…」
「何?」
「廊下で…」

シンジが言っているのは、作戦内容を聞いた後廊下で彼が何かレイに言いかけたことだろうか?
あの時は、スタッフが呼ぶ声が聞こえて彼の言葉を最後まで聞けなかった。
彼は、何と言っていただろう?

「作戦、のこと?」
「そう…だけど、そうじゃない…。
 綾波は、[あれ]でいいの?」
「[あれ]?」
「零号機が、盾を担当するって…」
366263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/27(日) 06:07:27 ID:???
263 −33
声のするほうを向いても、シンジの姿はレイからはシルエットでしか見えない。
彼が何を言いたいのかレイにはわからない。
ただ途切れがちに話す様子に、彼が迷いながら言葉を選んでいるように感じるだけだ。

シンジはいつもレイの予測を裏切るようなことをする。
エヴァに乗りたくないと言っていたくせに、一緒に作戦を聞いたり、
こうしてバンに乗っているのに、いまさら作戦内容に疑問を言い出してみたり。
シンジによって沸き起こる感情の揺れもそうだが、それ以上にレイは彼に振り回されている気がする。
だから、多少なりとも芽生えたその自覚に警戒心を乗せて、レイも慎重に答えを探した。

「シンクロ率はあなたと初号機のほうが高いから」
「それは…。でも…」
「でも?」
「…っ、綾波は、何でエヴァに乗るの?」

でもどうしてもレイの努力は無駄足に終わるらしい。
突然飛んだ話題にレイはついていけない。
作戦の話から、何故そこに繋がるのだろう?
知らず顔を顰めてもう一度問い直そうとするレイを、しかし遮るように、シンジの声が…。

「だって、死ぬかもしれないんだよ」

「………え?」

その時、バンが止まった。
367名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 06:54:22 ID:???
>>362
意図があって批判するのは君ぐらいじゃね
つまらないと思ったことをそのまま書くのはよくあることじゃないかな
368名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 08:17:10 ID:???
【批評】物事の長短・優劣などを論じて価値を定めること。
【批判】事物のよしあしを批評し、その価値や正当性などを判定すること。

作品の内容について不備や矛盾点があって、それについて指摘するなら
投下人にとっても次回に活かせる反省材料になるが、
ただ「うざい」とか「つまんね」とかの幼稚な駄々こねたレスは
スレの雰囲気が悪くなるだけの荒らし行為と大差ない。
そんなに欝陶しいならトリップをNG指定するか、もうこのスレを見なければいい。

誹謗中傷と批評・批判とを取り違えるなよ。
369名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 09:18:19 ID:???
お前らうるさい。
投下しないならだまってろよ。
370名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 12:41:04 ID:???
以後はもう投下以外の書き込み禁止
371名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 13:32:32 ID:???
>>368
だから、それは一行マンセーレスにも言えることでしょ。
投下人は次回に何も活かせやしない。
372名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 13:48:55 ID:???
>>369-370
すまないがこれだけは言わせてもらいたい。

>>371
>投下人は次回に何も活かせやしない。

一理あるけど、悪意を持って投下人の意欲を削ぐことは無い。

もうこれ以上はいいよな?後はチラシの裏にでも書くから。
373名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 16:42:01 ID:???
うざい・つまらない
感じたことをそのまま正確に言うのに何が悪いんだか
何が、と聞かれるなら文章・内容共に全てとしか答えようがないから
一行レスとかになるんだろうよ
374名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 16:45:38 ID:???
>>372
悪意も何も、率直な感想というだけだろ。
そういうのを被害妄想という。
375名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 16:56:09 ID:???
無視すりゃいいのにそれもできなくてレスしちゃうのはツンデレだとでも思っとけばいいんだよ。
そう思えばあの反応の速さも笑えるって。
うざい・つまらない、でも感想だと言うんなら一応読んでるんだし。
スルーできないくらい気にしてるってこと。ツンデレだよ、ツンデレ。
376名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 16:59:16 ID:???
一行だけ読めば大体どういう文章書くかわかるだろ
自己陶酔した文章とか特にな
だからうざいって言われるんだ
377名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 17:24:57 ID:???
何でそこまで攻撃的になるのかなぁ。
自分が嫌だからって、他人までそうとは限らんでしょ?
>>376 一行読んで自分に合わないと思ったなら読むのやめればいいじゃん。
うらやましいよ、最後まで読んで裏切られることってよくあるんだよね。
いい才能持ってんだから活用しなよ。
うざいって言うも自由だけどさ、そこまでむきになることでもないと思うんだよね。
ここは個人のじゃないんだから、いろいろあるのは仕方ないことなんだし。
LRSであれば後の趣味は人それぞれっしょ。


378名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 17:27:40 ID:???
うざいってのも単なる感想だろ
個人的にうざいっていう感想を書いたことで
どうこう言われる筋合いはないと思うけどな
379名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 17:41:15 ID:???
レスはやっ!
あー、悪いとは言ってない…と思う。どんな感想でも。
気を悪くしたら、ごめんね。
スレの雰囲気がもっと穏やかのほうがいいかなぁと。
そしたらもっと投下してくれる人が増えるかもしんないし。
380名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 17:55:36 ID:???
レス早かったのはたまたま
Jane使用してるから癖で十分くらいの感覚でリロしてしまうんだよな
まぁ雰囲気については同意する
だが、うざいって感想をレスしたってことだけを言いたかっただけだしな
381名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 18:09:27 ID:???
同意d、書いてもらいやすい雰囲気のがいいよね。
前向きな感想つけるから投下してくださいってお願いしたら来るかな?
ラブコメ読みたいです。レイが可愛いの。
誰か書いてくれないかなー。
382名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 18:20:21 ID:???
自分から見れば、ただ一言「乙」というのも小馬鹿にされているような感じがして嫌
383名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/27(日) 22:01:53 ID:???
>>382
それなんとなくわかる
〜に萌えたとかそういうのだけでも嬉しくなるな
ちゃんと読んでもらえてるって感じがする
384名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/28(月) 00:14:17 ID:???
毎度批判しかいわねーのはどっかからきてる荒らしだろ
愚痴しかいわねえ奴は気に入ってるスレが過疎ってるからここで憂さ晴らししてんだよ
可哀相な奴だと思って無視しとけ

>>366
続き期待してるのでじゃんじゃん書いちゃって下さい
今投下してるのは君だけなので。愚痴は気にせずどんどん投下してくれ
385名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/28(月) 00:16:22 ID:???
>>365-366
ただこの段階だとまだ萌えるーとかまではいかないよな・・・
どういったらいいか

とりあえず今後の展開に期待してるとしか言いようがない
386名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/28(月) 00:17:46 ID:???
流れを読まずに263の感想。

話としてはまだ良くわからんけど、面白そうだし期待はしてる。淡々としてて、でも決し
て静かでなくしかも硬い文体ってのも、個人的には好きではある。

でもやっぱり読みにくい。これは文章の密度が濃いという要素による部分が高いと思う。
どこかのサイトに投稿するなら何とかしてくれるかもしれないけど、投下向きの文章じゃ
ないわな。あと、この手の文章で、いわゆるポエムっぽく書いてるのもどうかなとは思う。
ポエムっぽくしないともっと読みにくいかもしれないけど。体言止めもちょっと鼻につく
感じがある。

誰が語っているのかもいまいち不明確。恐らく普通に第三者でいいと思うんだけど、1で
いきなり「私が彼を最初に意識したのは」って出てるし、2で「【私】を呼ぶ、愛しい人」、
13で「【私】に笑いかけてくれる、【あなた】」と出てくる。
もしかしてユイが語ってるのかなと思うと、やっぱり13で「ゲンドウが「レイ」を【ユイ】
の代わりにすることなど」って出てくるから、違うのかなとも思う。よくわからん。
今のままの感じで行くなら、レイ一人称で語った方が効果的なような気もする。

しかしこれ、ほんとに本編解釈系でこのまま最後まで行こうとするなら、投下するような
量じゃないぞ。下手すると2〜3スレ消費しかねない。

タイトルの「Redemptio」ってのは「贖い」でいいのかな?

とりあえず私は期待してます。
387名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/28(月) 00:54:00 ID:???
毎度のことだけど、
感想にイチャモン付けてスレを荒らす人がいるよね。>>384とか。
そんなことするから荒れるって分からないのかな。
もう少し考えてレスして欲しい。
388名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/28(月) 00:57:20 ID:???
>>384
俺、うざいとか読みにくいとか言ってる一人だけど
荒らしじゃなくて、普通に感想としてレスしてるだけだがな
荒らしでも愚痴でもなく、感想を書くことすら許さないおまいがどうかと思うぞ?
389名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/28(月) 07:44:36 ID:???
>>384
オマエも相当スレの空気を荒らしている
できればオマエには書き込まないでほしい
390名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/28(月) 10:34:48 ID:???
>>384叩かれ杉w

投下しやすい雰囲気を作るべきだと思う
とりあえずよく考えて、感想・意見をレスするべきだ
それが難しいんだけどな
391名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/28(月) 11:07:24 ID:???
やあ (´・ω・`)
ようこそ、出張バーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
落ち着いたら、これを見てくれ。
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/eva/1140444918/108

どうだい、このレスを見れば、ここで議論していることなんて、
ほんの些細な事のように思えてこないかな。

あと、>>384はこれを見て落ち着いてほしい。
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/eva/1171470456/590-591

じゃあ、僕は本来のバーボンハウスへ帰るよ。
392名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/28(月) 22:24:32 ID:???
賞賛以外いらねと宣言するのは、ある意味すがすがしいな
393263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/29(火) 21:22:43 ID:???
なんかすごく丁寧な感想をいただいてしまって…気後れしてます。
それから、続きを待ってくれてるといってくださる方々もどうもありがとう。
もちろんそのほかのご意見についても、同様に。
試行錯誤に稚拙な表現、描きたい画が描けずに悔しいのは自分が一番なんで、
どんな評価も当然と受け止めてます。
感想も解釈もそれを述べるのも、個人の自由だと私も思いますし。
ただ否定的な意見が並ぶことによってスレが荒れた印象になり、
これから投下しようと考えておられる職人さんに、
不安や疑心を感じさせてしまうかもしれないのは大変申し訳ないです。ごめんなさい。

それで、どうも上手く伝わるように書けていないので…、
途中に解説を入れるのはとても恥ずかしいのですが、…恥書きます。

Redemptioは三人称レイ視点です。
レイ中心に少し外野を入れる感じで書いているつもりです。
レイの「記憶」の描写は、ユイの視点から「過去」をレイが覗いているという状態。
【私】はユイであるレイですが、追体験ではなくただのデバガメです。
このまま本編解釈系で行くつもりはありません。
レイがいきなり「シンジを好き」と言い出すのは不自然かなと思ってそこまでの下地を作りたかった。
乖離していってもオリキャラ化はさせたくないので最初は本編導入でと思いました。
捏造多いのに「本編と同じ」系のレスが入ったときは正直嬉しかったです。どうも。
今後の予定は、アスカ参戦&レイが今までのデバガメ学習の成果をシンジと実践しようとしたり…、
と言うような感じにもって行くつもりです。でもそこにたどり着くまでは遠いです。

書き方や表現については、「投下向きではない」と言うのも一理あると思うので、
一段落着いたら再考します。
器用な方でもないので、いきなり大きく変わったりはできませんが。

題名「Redemptio」は受け取る側も含めた「贖い」「贖われるもの」「救済」

394263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/29(火) 21:24:18 ID:???
263 −34
双子山から見下ろす第三新東京市。
決戦を前に静かにその町の灯が消えていく。
薄闇に沈むエヴァの傍ら、各機ごとに据えられた昇降用タラップの上で膝を抱えそれを見つめる。
下方の作業も粗方終わったのだろうか、人の声ももう聞こえない。
ここに残されたのはエヴァのパイロットである二人だけだ。
夜に突き出すように与えられたそれぞれの場所。
二人の距離は僅かに数メートルだけなのに、行き来することは叶わない。
見えていても、声を交わせても、間にあるのは深い闇だった。

レイはそこで膝を抱え、ずっと考えていた。
車内でシンジに尋ねられたことを。

『何でエヴァに乗るの?』
『死ぬかもしれないんだよ』

あの時車が止まってすぐに最終点検などに追い立てられ、レイはシンジに答えを返せなかった。
もしもあの場ですぐに返事を促されたなら、レイは簡潔な回答を選べただろう。
例えば、
「エヴァに乗る」のは、それが「役目」だから。
「死ぬかもしれなく」ても、「代わりはいるから」。……というように。
けれど、タイミングがずれて、その答えは声にならないまま時間を経てしまった。

レイは考える時間を、得てしまった。
395263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/29(火) 21:26:28 ID:???
263 −35
『何故エヴァに乗るのか?』

そんなことを疑問に思ったことなどレイにはなかった。
「怖くないの」と聞かれてエヴァが、…自身が共に否定されたと思うくらい、
それで瞬間的に怒りを覚えるくらいに、【エヴァ】はレイにとっての必然だった。
シンジと出会って感情を知ってシンクロを困難に感じたとしても、優先順位は変わらなかった。
彼が尋ねてこなければ、改めて考えることもないほどそれは当たり前のことで…。

では、何故シンジにとってそれは当たり前ではないのだろうか?

シンジもエヴァに乗れる「ヒト」なのに。
シンクロできる子供…、エヴァの開発者を母に、ネルフの最高責任者である碇司令を父に持つ子供。
関わりで言うなら、彼とエヴァの関係の深さはレイに勝るとも劣らない。
それなのに、何故?

『死ぬかもしれないんだよ』

…これなら、少しはわかる。
レイは【依り代】、代わりのある器だから【死】は【死】であってそうではない。
器の一つが壊れても、次の「綾波レイ」がいる。
でも、「碇シンジ」はそうではないから。
彼には『死ぬかもしれない』ということに意味があるのだろう。…レイには、なくても。

レイとシンジの違い。
それが、レイが彼の言うことを理解できない、同意できない理由なのだろうか?
シンジにあってレイにないものが、エヴァを求める心の違いにもなるのだろうか?

         ならば、それは、何?
396263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/29(火) 21:29:06 ID:???
263 −36
くしゅんと、殺しきれず詰まったようなクシャミの音がレイを引き戻す。
昼の熱気も高場にあたる風に払われて確かに肌寒い。
プラグスーツに守られて不快に感じるほどではないけれど、髪を揺らす風は冷ややかに森の匂いを運んでくる。
モーターの焼ける匂いも微かに、交えて。
それらを分けるように目を細めたレイの隣で、
シンジがさらにもう二つ三つクシャミを重ね、腕をこする仕草を見せた。

「寒いの?」
「…綾波は?」
「いいえ」
「………そっか」

「灯が消えたね」
「ええ」
「エネルギー全部、ここに集まるんだ」
「そうね」
「エヴァ、か……。
 綾波にとってエヴァって…、ごめん。
 なんか、同じ質問ばかりしてるね」
「………」
「ごめん」

「絆」

「え?」

「エヴァは、絆だから」
 
捜していた時は見つからなかった答えは、まるで初めからそこにあったかのようにぽろりと零れた。
397名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/05/31(木) 17:45:14 ID:???
待ってるんだぞ まだか
398263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/31(木) 20:12:43 ID:???
263 −37
たった一文字の言葉が、解けるように深く馴染む。
それは、シンプルでストレートで、でも過不足なく表す言葉だった。
シンジにあって、レイに足りないもの。
シンジに強く、レイに薄弱なもの。

レイが見つめる先で、シンジもまたレイを見ていた。
シンジの座る姿の向こうに初号機の横顔が見える。
こうしてシンジとレイが話しているのも、エヴァがあるからだ。
エヴァという絆を介して、今までなかったシンジとの関係も生まれた。

エヴァがあるから。

だからシンジもレイに話しかけてくる。
レイに関わってくる。

エヴァがあるから………。

「絆…。
 父さんとの?」

けれど。
自分の放った言葉の持つ意味を彼を見ながら噛み締めていたレイに返った、シンジの声。
レイが考えていたのはこの疑問を呈したシンジについてだったから、彼の言葉に彼女は驚かされた。
シンジを見て、彼と話していて見つけた答えなのに。
シンジがまるで違うことのように受け取って見せたから。
399263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/31(木) 20:14:19 ID:???
263 −38
「―――みんなとの」

「あなたとの、」と、レイは言えなかった。
シンジは深くレイに関わり、彼女の根本すら揺るがすようなことまでしたけれど、
彼自身はレイからどれだけの影響を感じているのかはわからない。
シンジは学校のクラスメイトたちともそれなりの関係をきちんと結べる人である。
それらを見てきたレイだから余計に、
自分を主体にシンジ一人にスポットを当てるような言葉をかけることは躊躇われた。
思ったことと違うことを答えてしまう自分に戸惑うようにレイの視線が下がる。
彼といるとほんとうに…、次々と見知らぬ自分を発見する。

「強いんだな………綾波は」
「私には、他に何もないもの」

そんな風にテンションを下げたレイを知らぬ気にシンジは零す。

彼は残酷だ。
何も知らないくせに深くレイに立ち入って、そうしてこんな言葉で簡単に彼女を切り捨てるのか。
悪意も揶揄もない素直な響きで返った声だからこそ、シンジの真情だとわかる言葉だった。
彼には何の咎もないこともわかっているのに、いっそ腹立たしささえ感じて、
レイもそれに身を任せるように考えもせず答えを返す。
これが人の言う「やつあたり」と言うのかもしれないなどと、隔離した心の端で思いながら。
そうしないと「不安」によく似た、…たぶん「悲しみ」に溺れてしまいそうで。
わからないのはお互い様で、もしかしなくともレイの方がより多くわからなかったのに。

今は、何故か言葉がすれ違うのがレイにはとても辛かった。
400263  ◆OQt/Av6lPM :2007/05/31(木) 20:16:25 ID:???
263 −39
【相手を理解したい】と思ったから、真剣に相手の言葉を考えた。
彼の問いはレイの深層の渇望を晒す言葉だったけど、彼女は目を逸らさなかった。
でもだからこそ、そこから【相手に理解されたい】と言う欲が生まれてきてしまった。
「興味」から「反発」、そして「共感」から「譲歩」を経て、ここまでたどり着いてしまった。

だからこんなに、胸が痛い。

いつもなら聞こえるはずの「望みを押さえつける」警鐘も鳴らないまま。
放たれた望みは叶わなくて、悲しく痛い。
わかりあえないのが辛いのに、わかってもらうためにかける言葉をレイは知らなかった。

「他に、何もないって―――」

シンジの少し掠れた声がレイに届く。
レイは抱えた膝に顔を伏せた。

あの病室での構図とちょうど正反対だった。
401名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/03(日) 21:10:04 ID:???
期待
402名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/04(月) 18:19:33 ID:???
投下まだー?
403名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/04(月) 20:26:09 ID:???
>263
全部読んだ。
俺はオタには程遠い新参だが、
そのほうが素直に読める作品のような気がする。
というか、自分が如何に適当に見てたか知らされた感じ。
俺は楽しく読ませてもらったよ。
読みにくいとも思わなかった。
今後も期待しているよ。
404名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/05(火) 02:51:17 ID:???
Redemptio 続きで表現に煮詰まったので書き直し中。
それで、習作に短編書いてみました。


【 はじめてのひと 】


今日初めて碇君に押し倒された。

正直に言うと、とてもショックだった。

私が碇君と付き合い始めてちょうど三ヶ月目になる。
恋人同士として隣にいるようになって三ヶ月。
もしかしたらそういう関係になるのも普通のことなのかもしれない。
でも、私は碇君との関係を心のつながりと言う形でしか、
求めていなかったのかもしれなくて。
そしてそれを、…碇君も同じだと思っていた。

だから碇君と二人で話していて、
急に碇君が私の腕を掴んだときもどうしたのかと思うだけで、
そこからふいに体重がかかって、
ころりと後ろに倒れこんだときもどうしてかわからなくて、
いつもなら背中にそっとまわるだけの手が、
制服の中に入り込んできたときのその手が熱くて驚いて、

思わず、「いや」 と、言ってしまった。
405263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/05(火) 02:52:47 ID:???
404−2
前にも一度だけ、似た状況に陥ったことがあるけれど、
その時は決してこんな風に意味を持ったことではなかったのだと思う。
碇君は私をじっと見つめたりはしなかった。
私はどきどきしたり焦ったりはしなかった。
でも今回のこれは、違ったから…。

「嫌」と言うのは拒絶の言葉で、相手の行動にNOと言うこと。
ほんとうは言ってしまったのは、条件反射。
でもそう言い訳できればよかったけど、もう遅くて。
その言葉を聞いた碇君は私の上で少しだけ固まって、
そして「ごめん」と一言だけ言って、
部屋を出て行ってしまった。

碇君は私を求めてくれたのに。

パタンと閉まったドアの音が、痛いぐらいに切なかった。


私は、状況に流されて碇君を好きになったのではないと思う。
碇君が誰かに似ているから好きになったのでもないと思う。
恥ずかしいし、どんな時に言えばいいのかいつも迷ってしまうから、
あんまりたくさん言ったことはないけれど、

私は、―――碇君が、好き。
406263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/05(火) 02:54:23 ID:???
404−3
碇君は普段はあまり話上手な人ではないけれど、
でも時々とても饒舌になる。
そんな時は、一人でたくさん話してそしてふいに我に返って、
少し照れくさそうに視線を逸らしたりする。
それで「…綾波は、どう思う?」なんて、
話題に関係なく聞いてきたりする。

私の意見を聞いてくれようとするところが、好き。
私がすぐに返事ができなくても、待ってくれるところが好き。

セカンドチルドレンと賑やかに話していても、
黙っている私に気付いてくれるところが、……とても好き。

授業の間の休み時間に教室にいる時も、
下校間際に下駄箱にいた時も、
友人達の間を抜けて私の所に歩いてきてくれた。
声をかけるタイミングというのがいつもつかめなくて、
見返すことしかできなかった私に当たり前みたいに挨拶をくれた。

「おはよう、綾波」
「綾波、次移動教室だって」
「綾波も今から帰るの?」

義務や定時連絡ではなく、とても自然な言葉を幾つもかけてくれた。
いつの間にか碇君を見かけると、
話しかけてくれないかなと待ってしまうほどに。

だから初めて碇君に好きだと言われたときもとても嬉しかった。
407263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/05(火) 02:55:44 ID:???
404−4
私も好き。

素直にそう思った。
でも、……………そこまで。
私の気持ちは、そこからあまり先に進んではいなかったのかもしれない。
言葉を交わして、いつも隣にいて、時々手を繋いでも。
それ以上を考えてみたことはなかった。

碇君は、普通の男の子だから。
たぶんもっと他にも、望むことがあるってことに気付かなかった。

そして、驚いて、ろくに考えもせずに拒絶してしまった。

碇君はあれから、私と顔をあわせない。

こんな時に限って連休で、必ず会えるはずの学校はお休み。
ネルフの検診には来たって聞いたけれど、
私が行ったときにはもういなかった。
それから食堂で見たと聞いたから行ってみたけど、
そこでもちょうどすれ違うように出て行ってしまったらしい。

私に会うのが嫌なのかもしれない。
私が碇君を拒んだから、……もう嫌われてしまったのかも。

そう考えるととても悲しかった。
こんな落ち込んだ気分だときっとシンクロも上手くいかない。
射撃やフォーメーションの訓練だってきっと集中できない。
まだまだ時間はあったけれど、今日は帰りたい。
私はそう思って、ネルフを後にした。
408263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/05(火) 02:57:22 ID:???
404−5
地上に出ると日差しはまだ高くて、影は短かった。
それでもところどころにある日陰を踏むようにして歩く。
公園の傍まで来た時、そこにはジュースを飲む葛城三佐がいた。

「レイ?
 珍しいわね、今帰り?」
「…こんにちわ」
「あー、せっかくだから奢ってあげるわよ。
 だからサボってたのはリツコに内緒にしてね。
 何飲む?」
「いいえ」
「遠慮はしなーい!
 口止め料よ。ほら、どれがいい?」
「……レモンティ」

どれ?と言われても知っているのはそれだけしかなかった。
私が赤い紅茶のボトルを受け取ると、葛城三佐はふふっと笑みを零す。
それがなんだか企んでいるような笑顔だったので、
言いかけたお礼の言葉が引っ込んでしまった。
こんな時はなんて言ったらいいのかわからない。

「シンちゃんがねぇ、言うわけよ。
 綾波と紅茶飲んだーとか、図書館行ったーとかね。
 いいわねー、初々しくて!」

本当にどう言っていいのかわからない。
私が反応に困って俯くと、
葛城三佐は「立ってても暑いだけでしょ座ろっか」と言って、
公園の中に入って行ってしまった。
409263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/05(火) 02:59:36 ID:???
404−6
追いかけて木陰のベンチに並んで座る。
葛城三佐がふぅーと大きく息を吐いて伸びをする。
木漏れ日の下はやさしく涼しかった。

「なぁーんかもう仕事なんてしたくないかも。
 そうも言ってられないのもわかってるけどね。
 んー、そうねぇ、レイは加持って知ってる?
 ほらこうちょっと尻尾のついた…」

葛城三佐がそう言って後ろ髪を片手でまとめて振って見せるので、
私は頷いた。
 
「あいつね、…昔、付き合ったことがあるのよ。
 学生時代、ほんとーにすごい昔にね。少しだけ。
 ………………。
 今はあんなで、何か軽いでしょ?
 気安く肩を抱いたり、口説いたりもする。
 もちろん、こっちだって軽くかわしもする。
 深刻にならないで、言葉遊びみたいにね」

言うほどに楽しくはなさそうな、
どこか痛みをこらえるような葛城三佐の横顔から目がそらせない。
 
「でもね、最初にキスした時は震えたわ。
 触れるだけの、下手くそなキス。
 どきどきして、せいいっぱいで、でも…
 …幸せだった。
 ………きっと、好きだったからね」
410263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/05(火) 03:01:49 ID:???
404−7
何かを思い出すように目を伏せる葛城三佐。
私は、碇君を思い出した。

いつか二人で図書館に行ったとき、
メモを見ながら本を探していて私が何かにつまずいて、
その時は転ばずにすんだのに碇君が片手を差し出してくれて、
そして、二人で手を繋いでコーナーを回った。
見つけた本を持ってくれたのは碇君。

震えた指。
ぎこちなく握った手をはなさずにいてくれる心が愛しかった。

「その時は好きでも…、今は違う。
 …変わってしまったのに、でも忘れない。
 忘れないのは何故…、ですか?」

「初めて好きになった人だからじゃない?
 そーゆーのって、絶対忘れらんないのよ。
 そーゆーのを忘れるのは女じゃないわ。

 だからね、大切になさい。

 後悔しても迷ってもいいけど、初めては一度だけだから。
 初めての恋はね、特別なのよ」

はっとするような鮮やかな笑顔で、葛城三佐は笑った。
きっとそれが、恋をするってこと。
411263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/05(火) 03:03:03 ID:???
404−8

「碇君、こんばんわ」
「……綾波?」

私は背中を押してくれた葛城三佐に甘えて、マンションの鍵を借りた。
葛城三佐は苦笑していたけど、刹那を知っている人だから。
戦況は決して楽観できるものではなく、私の立場もうすうす気付いているんだと思う。
たぶん最初にいなくなるのは私。
それでも今を大切にしたい。
未来が見えなくても、この先がなくても、投げやりにはしたくない。
だから私は、まだ碇君が私を嫌いになってしまっていないことに賭けた。

「伝言。
 葛城三佐からは、
 『ごめん今日夜勤だった。明日の夕食には帰るからね』
 セカンドチルドレンは、
 『ヒカリんとこ泊まるから。冷蔵庫のプリンは食べないで』」
「…えっと、うん、わかった」
「鍵を、葛城三佐から。
 今日は、私、…泊まってもいい?」
「えっ、あの、それって」
412263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/05(火) 03:04:59 ID:???
404−9

「…碇君。

 私は、碇君が、好きです」
 
驚いた顔をする碇君。
それからまるで臆病な猫でも触るかのようにそっと触れてきた手。





私は少しだけ泣きたくなったけど、怖かったからではないと思う。
涙が出てしまったのだとしても、それは悲しくなったからでは絶対にない。

これから先、残された時間が後どれくらいあるかはわからないけど、
私が決して忘れないことがわかったから。

     ――― 碇君のこのぬくもりを、きっと最後の瞬間まで。


                          fin
413broken ◆zA4Cele172 :2007/06/05(火) 07:57:50 ID:???
習作の二人、初々しくていいなぁ…

>Redemptio 続きで表現に煮詰まったので書き直し中。

ヤシマ作戦終了までは続きますよね?
なにはともあれ待ち。
414413:2007/06/05(火) 08:01:27 ID:???
すみません、コテトリ外し忘れました。
415名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/05(火) 21:30:11 ID:???
「Redemptio」(263)感想
会話が入ってきて以降、レイの思っていることとそれが上手く言葉にならない感じがいい
と思う。こういう感じで会話文が入ってると読みにくさも気にならない。書き上がってか
らまとめて読むと、最初の方の文章の硬さがいいアクセントになるかもしれない。期待値
は上昇。

396の「初めからそこにあったかのようにぽろりと零れた。」の「ぽろり」という言葉の
選び方とかもすごいと思う。これはそうそう書けるもんじゃない。263氏が今まであまり
文章を書いてない人なら、センスはあると思う。
でも、321で出て来る「プチパニック」は、下でちょっと触れるけどシンジ主体になって
るとはいえ、読んでてちょっとコケる。文体にそぐわない感があるように思う。

>>393
> Redemptioは三人称レイ視点です。
> レイ中心に少し外野を入れる感じで書いているつもりです。

いいと思うんだけど、「少し外野を入れる」っていうのは結構難しい。例えば321の後半
はちょっと違和感がある。「まさかこんな短時間で」あたりは視点が完全にシンジになっ
てるし、そのちょっと前の「シンジにとってもそうだとは限らない。」も「〜とは限らな
い。とレイは思った」とか読んでしまう可能性がある。具体的にどう書けばいいのかはわ
からんわけだがw
でも三人称視点で外野が入ってる文章で書かれた本は沢山あるから、そういう目で本を読
み直すと手法の勉強になるかも。ちゃんとした文章の書ける作家さんの本ならね。

ともあれ、どう贖われるのか、期待してます。
416名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/05(火) 21:32:12 ID:???
続けて「はじめてのひと」感想
細かい事は抜きにして、非常にいい。ミサトの背中の押し方も絶妙だし、アスカの気の遣
い方もいい。
そして、411のレイがシンジの話を聞いてないというか、会話が微妙に成立してない所が、
冷静なようでいて舞い上がってるのが良くわかって激萌え。

ラスト、シンジが触れてくるんじゃなくて、レイがシンジの手を取ってきっかけを作って
あげるんだったら個人的には死ぬほど転げまわる。レイに触れて、レイがシンジの手を離
してもシンジの手はレイに触れたままで、やがてゆっくり動き出したりすると発狂するな。
404で「制服の中に入り込んできた」のは、いくらなんでもスカートの中じゃないだろう
からw、ラストシーンでは例えば頬に触れてから制服の上を滑って胸に行くのか、それと
も制服の上から触れて、それから中に……。

妄想が止まらないのでこの辺でw
417名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/06(水) 02:26:37 ID:???
同じく<はじめてのひと>感想:
ミサトが超イイあねさんチックでよかた。
でも411の「たぶん最初にいなくなるのは私」でorz
ラスト、最後の瞬間まで、とかめちゃくちゃ切なくなりました(´;ω;`)ウッ…
儚さもレイの魅力の1つだけど、
この先この2人にとって未来がある事を個人的に祈っときます。

自分はRedemptioはちょい堅くて最初で挫折した人なんだけど
(ごめんね、でも批判レスは1度もしてないよ)
こっちは一気に読めました。面白かったですよ。---以上、素人感想---
418名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/06(水) 17:11:30 ID:???
>>413
バーボンで頑張ってた人ハケーン
419名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/09(土) 07:11:10 ID:???
保守
420名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/12(火) 22:14:09 ID:VxdAgNeV
最下層より浮上します
421名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/16(土) 18:25:47 ID:???
保守
422名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/17(日) 16:40:01 ID:???
つづきまだ?
423名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/19(火) 22:27:21 ID:???
まだ?
424名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/19(火) 23:43:55 ID:???
あの人はもういいよ。
他の投稿者募集中。
425名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/19(火) 23:54:31 ID:???
おまえらが感想を書かないからだ
426名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/20(水) 00:28:16 ID:???
それは仕方ないだろ、
NG登録してるんだから。
ここのスレ住人のスルー能力は優秀だぜ。
427名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/20(水) 04:47:49 ID:???
>>426
NG登録してたわけじゃなく
最近忙しくてこれなかっただけなんだけど
428名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/20(水) 09:17:27 ID:???
つまり、427を含めて感想を書きたかった人が4人ということか
これはかなり多い方だと思うな
429名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/20(水) 17:47:56 ID:???
俺は待つよあれ面白いし
だからはよ書け
430名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/20(水) 18:52:30 ID:???
4レス≠4人
431名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/20(水) 21:52:12 ID:???
まだ?
432263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/21(木) 20:12:39 ID:???
263 −40
息を呑み言葉もないシンジと俯き拒絶を示すレイ。

風の音も止み、二人の間にあるのは針の落ちる音さえ聞こえそうな、静寂。

沈黙はレイにとってよく慣れ親しんだもの。
口数も少なく話し相手もいないレイであればそれも当然のことだった。
けれどその慣れたはずの静かさが、今は重い。
辺りを包む薄闇の青さまで今の彼女には息苦しく感じられる。
これで目を閉じてしまえば、光も見えない真の闇になる。
いっそそれでもいいと、レイは逃げるように両腕に深く顔を埋めた。
けれどその時、耳に強く押し付けられた腕から、
止まることなく音を刻む拍動が伝わってくる。

 ―――生きている証の音―――

「死んだ体」というものをまだ見たことはないが、
この体が壊れる時はこの鼓動も止まるだろうと言うことはレイにも漠然とわかる。
シンジが怖がっていた『死ぬと言うこと』。
それは怖いことのはず。…けれどそれさえも、本当はレイには意味がない。
だって、壊れても…『代わりがいる』から。

「なにもない」。…本当に、私には何もない。

レイが得た『感情』も、その行動の『結果』も、いつか【記録】として次に引き継がれていくだけのもの。
今だけ、この瞬間だけは、【自分】が受け取ったのだと思えても何時かは………。
考えれば考えるほどに、全てが儚い感傷に思えレイの心は沈んでゆく。
やっと見つけた“絆”と言う手がかりさえも、自分が放った言葉で否定してしまった。
シンジと直接会話をして自分を見つめなおして、僅かばかり何かをつかめた気になれても、
欲を出せば結果はこうして幻のようなものだと思い知らされる。
433263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/21(木) 20:13:48 ID:???
263 −41
シンジは何も知らない。

レイの生まれも、その存在の意図も、何も知らないのだから彼を責めるのは間違いだった。
彼女の真情が理解できないからと言って、彼が悪いことなんて少しもない。
レイが初めて得たそれがどんなに特別で、貴重なものかなんて彼が知るはずもなく。
その絆に縋ってレイが打ち明けた告白がどんなに重い意味を持つのかに気づかない事さえも当然のこと。
彼がレイの気持ちを受け止めてくれないのは、それは仕方のないことだと。
………そうわかっているのに。
まだレイの中には、どこかシンジを責めるような気持ちが燻っている。
―――自分にとって彼だけが特別なのに、何故わかってくれないのだろう、と。


レイの手元のタイマーが指す作戦開始時刻まではもう少し時間があった。
それでも、必ずこの場所に座って待機しなければならないと言うわけでもない。
このまま話を打ち切ってエヴァの中で個々待っていてもいい。
シンジとこれ以上会話を続ける気力のなくなったレイは考える。
しかし、…そう思うのにレイの体は動かない。
立ち上がろうと込める力まで、足先から抜けていくようで、
レイはひやりとしたタラップの床から離れられずにいた。

―――私はここでこれ以上何をしたいの?
「さよなら」と言って、立ち上がって、エヴァに入って、
作戦についてもう一度シミュレートでも何でもすればいいのに。
それもできずにいる自分はなんて未練がましいのだろう。

そんな自分が嫌で、唇を噛んでレイがもう一度全て振り切ろうとした時、

「………綾波」 シンジの声がした。
434263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/21(木) 20:16:28 ID:???
263 −42
名前を呼ばれ、レイの肩がぴくんと揺れる。

「綾波は、…何もないって、本当にそう思っているの?」
「…………。
 ……………ええ」

「嘘だ」

一言の否定。
でもレイは、シンジに言われた言葉の意味が直ぐにはわからなかった。
わからなくて掠れる声で聞き返す。

「な、…んで?」

「…怒ったじゃないか、綾波は。
 あの時、怒ったから、僕を叩いたんだろ。
 あんな風に怒れるのに、何もないなんて嘘だ」

シンジは少し早口にレイに訴える。
耳を打つ彼の言葉を理解しようと、訝しげに首を傾けレイの頭が腕の間から持ち上がる。
顔を上げたレイの目には、遠く、明かりの消えた市街地に浮かぶ使徒の青い影が見えた。
彼の言うそれはちょうどあの真下あたりでシンジと交わしたやり取りだった。
まだあれから一日しかたっていないというのに、もうずっと遠い昔のことのようにレイには思える。
もちろんあの時シンジが言ったことを忘れたりはしていない。
でもそれも…、いや、それこそエヴァが発端で起きた出来事だったはずだ。
シンジがレイとの会話をちゃんと気に留めていてくれたことは嬉しいけれど、
結局は何もかもがエヴァなのだ。

シンジはわかっていない。
始まりも終わりもエヴァに結び付けられた運命がここにあるのだということを。
435263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/21(木) 20:19:25 ID:???
263 −43
レイの心に空いた虚しさと、そこから湧いたほんの少しの反発心。
しかしそれをまるで知っているかのように掬いあげて、シンジは言い放つ。

「それもエヴァだからって言うの?
 でもエヴァのパイロットなら、僕だってそうじゃないか。
 エヴァに乗れるんだから同じだ。…同じはずなんだ。
 でも…、
 僕と綾波は違う。
 綾波はずっと前からここにいて…、父さんのことだって……」

「碇、司令?」

「綾波はちゃんと……。
 ……っ。
 ごめん、…なんでもない」

激昂すると言うほどでもないが、大きくなっていたシンジの声が急に萎んだ。

碇ゲンドウはネルフの総司令であり、日本でのエヴァ運用の最高責任者だ。
そして碇シンジの父親でもある。
ゲンドウがこの会話で引き合いに出されるのはこれが二度目。
レイにとってエヴァと碇司令は不可分ではあるけれど、シンジにとってもそうなのだろうか?
でもそんなふうには聞こえなかった。
レイはシンジの真意を読み取ろうと彼の姿に目を凝らせる。
436263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/21(木) 20:21:11 ID:???
263 −44
「こんなこと…、言うつもりじゃなかった。
 …ごめん。
 ………。
 でも、さ、何もないなんて言うなよ。
 綾波に何もないなんてこと絶対ない。
 上手く言えないけど、あの時の綾波は何もなくなんてなかったよ。
 そう思う、絶対に!
 …それに、……、これからだろっ。
 綾波とは少ししか話してないから、今はまだ全然わかんないけど。
 でもこれから、まだ聞きたいことも話したいこともあるんだ、だから!」

身を乗り出すようにして言葉を重ねるシンジ。
感情ばかりが先走るような、不器用な拙い台詞だった。
それでもその言葉は慰めとして確かにレイに届く。

シンジの言っていることはレイが求めていたかたちではなかったし、
レイに対する正しい理解でも受容でもない。
でもそこには【レイ】と言う一人の少女を見つめて彼が感じた、
彼女自身のための言葉があった。
彼女の求められる役割にでもエヴァの部品にでもない、【綾波レイ】のためだけに向けられた言葉。
今まで誰がそんな言葉をレイに与えてくれただろうか?
一生懸命なシンジの言葉に、心を覆う影を洗われていくような気がして、
レイは思わず自分を抱きしめる。

影の拭われたその胸の奥から、新たに生まれる感情に、
まだレイの知らない、名前もわからない「新しい気持ち」に強く揺さぶられて。
わかりあえないことは未だ寂しいままなのに、
でもそれと同じ、…それ以上の何かが心を満たしていく感覚に、レイは小さく震えた。
437263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/21(木) 20:26:12 ID:???
263 −45
―――シンジの中にも自分(レイ)がいる。
 これから話したい、理解したい相手として彼に認められている―――

それだけのことなのに。
こんなにも高揚する。
私は嬉しいの?  レイの自分への問いかけ、その答えは素直にYesと返った。

そして、もう一つ。

「綾波」 と、何度もシンジに呼びかけられてレイは気付いたことがある。
最初に、そうそれは一番最初に出会ったときに触れてきた彼の熱い手と同じだということ。
まだ小さいその手には「記憶の中で『彼女』が感じていた手」のような安心感はないけれど、
でもしっかりと【レイ】を掴み引き留める力を持っていた。
レイの命を繋ぎとめた力と同じだけのものが、今のシンジの言葉の中にもある。

形にならず溢れる何かに押されるように、レイは空に向けて顔を上げた。
夜の空には白い月が輝き、いくつもの星が瞬いている。
真っ暗だと思っていた空は驚くほど明るかった。
レイはその白い月に誘われるようにタラップの手すりに手を伸ばす。
萎えていた体は嘘のように軽く、立ち上がる足にもしっかりとした感触がある。
そして振り返れば、シンジが真っ直ぐに彼女を見ていた。


いつまでも彼を見ていたい。
いつまでも彼の声を聞いていたい。

レイの心は思う。
何故?や、どうして?と言ういつもの疑問さえもう浮かばない。
ただ「今この瞬間が終わることなく続けばいい」と、レイは無意識に祈っていた。
438263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/21(木) 20:30:19 ID:???
263 −46
しかし。
そう願うレイの気持ちとは裏腹に、セットされていたタイマーが作戦開始の時刻を知らせる。

「…ぁ」
「音が…。…時間、?」

夢から覚めたようにゆるく瞬くレイを、シンジが気遣わしげに見つめる。

「碇君…」
「綾波、………大丈夫だよな?
 ………っ、綾波。
 作戦、頑張ろう」

「ええ」

先に不安がっていたのはシンジのほうだったのに、
それすらも忘れたようにレイばかりを気にしてくれる彼の様子が嬉しかった。
呼びかけてくるシンジの声にレイはすぐに答えたけれど、
向けてくれた彼の気持ちにそれだけでは足りないとも彼女は思う。

シンジは二度もレイを救ってくれたと言うのに、
こんなそっけない返事しかできないなんて。
439263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/21(木) 20:35:14 ID:???
263 −47
一度目は、壊れた体を諦めようとした時。
二度目は、自分の中に生まれた感情を否定し、アイデンティティを見失いかけた時。
レイのためにシンジは、その手を差し伸べ助けてくれた。

最初は真意がわからず戸惑ったし、今も彼の心の全部がわかるとは言えない。
でも、シンジが彼自身の意思でレイに手を差し伸べてくれたことだけはもう疑いようもない。

二度も助けてくれた彼に自分は何ができる?

「誰かの何か」…碇司令の息子とかそういう関係での特別ではなく、
真実、レイにとって他者とは違う場所に位置する人になったシンジに。
そんな彼に、何を返せばいいのか。
ありきたりな言葉さえも口下手なレイはよく知っているとは言いがたいし、上手くも言えないだろう。
それでも彼女は自分のせいいっぱいの感謝の気持ちをシンジに伝えたかった。

だから。

「碇君」

大切に、とても大切に彼の名を呼んでレイはシンジを見つめた。

隣のタラップからレイを見返してくるシンジの向こうには、静かに佇む初号機がある。
レイの乗る零号機は彼の機の盾になる。

レイはゆっくりとエヴァに目を移した。
初号機と、そして、自分の乗る零号機に。

これから行なわれる作戦、レイに下された命令が、別の意味を持って彼女の中で熱を持つ。
440263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/21(木) 20:36:14 ID:???
263 −48

手すりを掴み立ち上がった彼女の表情は、
月をバックにしているせいでシンジからは朧気にしか見えなかった。
それでもその時、ふわりと、レイの周囲の空気が変わったのをシンジは感じた。
月の淡い光が、彼女の輪郭をほのかに白く滲ませていく。



「あなたは死なないわ、私が守るもの」



彼を守る。
自分の意思で。
自分にできる全てで。

―――ああ、これが、きっと「愛しい」という気持ちなのね。

逆光に沈む赤い瞳に、優しく柔らかな光を灯して。
胸に満ちた“想い”の名を見つけたレイが眼差しを甘やかに溶かし知らず微笑む。


その儚くも美しい微笑を。
月と、エヴァと、シンジだけが見ていた。

                       …………………第一部完
441263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/21(木) 20:37:32 ID:???
随分間が空いてしまいましたすみません。

感想レスありがとうございました。
一つ一つがとても勉強になります。
活かせるかどうかは難しいですが、
できるだけ取り入れられるようがんばります。

読んでくれてありがとう。
442名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/21(木) 22:27:52 ID:???
オッチュ
443名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/22(金) 02:47:34 ID:???
>>441
乙!!第二部も期待してますよ
本当に続きが読みたい
444名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/22(金) 13:04:34 ID:???
G
J
445名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/22(金) 21:50:51 ID:???
ちょww「第一部完」てww

まあそれはおいといて、こういう本編に近いレイの簡潔具合すごく好き
あとシンジの必死っぷりもw
最初のすれ違いっぷりからだんだん2人が近づいてきてるのがすばらしい

六話の重要ワードをはずした続きがどうなるのか楽しみに待ってる

つーかマジで一度どこかの投稿サイトに送ってみたらよいかと
446名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/24(日) 02:29:40 ID:???
>>441

伝えたいお話しがあって、それが伝わるようにと、とても丁寧に書かれているところが素晴らしいと思う。
肝心の“お話し”については、それに感銘を受けたから感想を書いているわけだ、もちろん。

>>386
> あと、この手の文章で、いわゆるポエムっぽく書いてるのもどうかなとは思う。
> ポエムっぽくしないともっと読みにくいかもしれないけど。

386が言うように、書きたい内容に応じて選択された文体なんだろうな、とは俺も思うけど、
386が言うように、あの段階ではそれでも読みものとしてつらいと感じてた。
それでも読まずに済ますのがもったいないお話だったんで読んだわけですが。
が、いつの間にか(ってのは批評として手抜きで済まんが)内容にしっくりとした文体が
出来上がってきて、お話はとてもすんなりと伝わってきて、
「ああもうっ、レイかわいいよレイ」って感じだ(ってのは感想として手抜きで済まんが)。

しかしまぁ、「ポエム」って表現もアレだよねwwww、386が(“いわゆる”って)言うように。

それにしても、

> 真っ暗だと思っていた空は驚くほど明るかった。

そりゃ別に、斬新な手法だなんて言うつもりは無いけれどもそれでも、
こういうの食らわされるとやっぱり「やられた」って思うんだよね。
文芸って面白ぇよな、って。

でだ、やっと描かれ始めたシンジについてもたぶん、
「シンジかわいいよシンジ」ってなりそうな予感なので、第二部よろ。
447名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/24(日) 13:54:33 ID:???
本人か?

自演乙
448263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 16:24:29 ID:???
二部はまだ大筋しか決まってなくて、
細かい肉付けに時間がかかりそうなんで暫くは短編投下していきます。

エヴァキャラは皆好きなんで、それが伝わってるのが嬉しいです。
レスありがとう。
449263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 16:25:59 ID:???
449-1 【 無題 】

時々、綾波がコンフォートに来て夕食を作るようになった。
帰ってきて「ただいま」と言う僕の声に、「お帰りなさい」と返って来る彼女の声。
どこにでもあるような当たり前の風景なのに、何度繰り返しても大切に思う。
些細なことを幾つも積み重ねていくことや、綾波が傍にいる日々を。



…最初、綾波は何も知らなかった。

アスカがうやむやのうちにここに同居するのが本決まりとなった頃からか、
何故か綾波もこのマンションに訪れる回数が増えてきた。
それでも初めて一人で来た時は、玄関先で帰ってしまったらしい。
アスカがそんなことを言っていた。
その後は何度かアスカに引っ張られるようにして来て、
それから一人でも来るようになった。
あの二人は仲良くなんてなさそうだけど、よく一緒にいる。不思議だ。

それで、まあ遊びに来てくれるようになった綾波だけど、
でもだからといって急に社交的になったわけでもない。
ペンペンと遊んだり、アスカと並んでテレビを見たりしていても、
彼女がはしゃいで笑い声を上げたりするのは聞いたことがない。
綾波は僕のとこにも来てくれたけど、
話したくても僕だってそう話題が豊富なわけでもないし。
綾波が何に興味があるかもよくわからない。
唐突に変なことを言って、彼女に「変なやつ」だって思われるのは嫌だった。
もう充分かっこ悪いところは見られてるけど、そこは男心ってやつだ。
笑ったら可愛いのを知ってるから、笑って欲しいのにそれが一番難しい。
どうすればいいかなんてさっぱりわからない。
450263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 16:28:02 ID:???
449-2
そんななかのアスカもミサトさんも居ないある日の夕方のこと。
綾波と僕は話題もなくキッチンのテーブルに並んで座りお茶菓子を食べていた。

お茶の話はもう何度もしてて、すでにネタ切れ。
それに同じ話を繰り返したらかっこ悪いから却下。
お茶菓子は煎餅各種でミサトさんがどこからか貰ってきたもらい物なんだけど、
それを話題に出すのもなんだかなぁ、って感じで口が重かった。

海苔煎餅の海苔を、食べる分だけちょっとずつ剥がして、
ぽりぽりかじる綾波は可愛いんだけどね。

横目でそれを見ていられる僕は結構楽しいけど、綾波はつまんないだろう?
話も何にもなくて、二人でお茶飲んでるだけなんて。
でもほんとうにその時は話題が思い浮かばなくて、僕は少し焦っていた。
綾波はあまり大食いじゃないから、いつまでも煎餅一枚で引っ張れるわけもない。
でも話がない。
でもこのまま返しちゃうのはいけないような気がする。
強迫観念っぽくぐるぐるそんなことが頭を回り始めて、で、ぷつんと切れた。

「今日、夕食当番なんだ。
 だからご飯作らないといけない」
「…ご飯?」
「うん」
「碇君が作るの?」
「うん」
「……そう」

ちょっとだけ、綾波はもう帰っちゃうかなと思ったのが正直なところだと白状する。
でもそれよりもうちょっとだけ少なめに、綾波が手伝ってくれたらいいな…と、思いました。うん。
451263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 16:29:08 ID:???
449-3
それで、僕の下心どおり僕が台所に立つと、綾波が追いかけてきた。
だから手伝ってくれるのかと思って、
食材提供サービス「今日の夕食パック」から魚の切り身を出しながら、
「みりんを取って」と言ってみた。
「はい」とか言って渡してくれたらイイ感じかもと少し妄想。

でも。

「みりん?」

それが何だかまるで見当もつかないみたいに綾波は小首をかしげた。

「知らないの?」
「知らない」
「醤油は知ってるよね?」
「ええ」
「塩」
「知ってるわ」
「砂糖や、胡椒は?」
「知ってる」
「味噌」
「………知ってる」
「ラーメンのメニューにあるからじゃないよね?」
「…………」
452263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 16:30:24 ID:???
449-4
…脱線を修正し、「みりん」が調味料の一種だと教え、
料理に入れるのだと言うと驚くように瞬く赤い目。
綾波のじっと見てくる目はとても印象的だ。
見つめられると少し恥ずかしくて、でもすごく好きだとも思う。
この目に自分だけが映ってるときに感じる優越感って言うのは特にすごい。
自分が本当に特別になったような気がする。

綾波にずっと見つめていてもらえるなら、悪魔に魂売ってもいい…って言うのは大げさだけれど。

彼女の知らないことを教えてあげられる機会なんてそうあるわけじゃない。
って言うか、たぶん初めてで僕は舞い上がった。
料理なんて好きじゃないし、当番だからと仕方なくやってたことだけど、
じゃんけんに負けまくったことにさえ今なら神様に感謝できると思った。

と言っても、僕のしなければならないのは、
すでにある程度加工済みの食材に味をつけ、煮たり焼いたりすることぐらい。
それがミサトさんが頼んでいる夕食宅配の仕立てだった。
「出来合いのものよりうちで作る感があるのがいい」らしい。
それだって、一人でやらなければならない時は面倒に感じるけど。

でも、綾波に教えながらじゃ物足りない。全然足りないよ。

感心したように僕の説明を聞いたり、
「やってみる?」と言われて恐る恐る手を出したりするとこをもっと見たい。
僕の欲求は加速度的に肥大し、そしてついに堰を越えた。

「綾波。
 料理って面白いだろ。
 教えてあげるから、明日も来る?」
453263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 16:31:46 ID:???
449-5
今思えば赤面しそうな台詞で、僕にしてはよく言ったと思う。
頭で考えるのは簡単だけど、それを少しでも口に出すのは難しい。
綾波は確かに僕にとっては親しい部類に入る女の子なのかもしれないけど、
こんな馴れ馴れしいことを言ったことってなかったから。
言っちゃってから、うわぁって思った。
アスカやミサトさんやペンペンにも会いに来てるだろう彼女が、
まるで僕のためだけにうちに来ることを勧めるような台詞だもの。

「ええ」

…頷いてくれるまでの、僕の体感時間は長かった。

でも、それが、全ての始まり。


僕はアスカやミサトさんに訝しがられながら料理当番を一手に引き受け、
綾波は学校帰りに日参するようになった。
彼女に教えたくてウェブを見たり本を引いたりもした。
この隠れた努力はすぐにアスカたちにばれてさんざんからかわれたけど、
調理の時に乱入してくることはなかったから気を使ってくれてたのかもしれない。

そのうち綾波もエプロンなんかを持参してくるようになったりして。
最初は学校で使うようなシンプルなやつだったのに、
いつの間にか可愛いひらひらしたのをつけてる。
たぶんミサトさんあたりが面白がって贈ったに違いない。
454263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 16:32:43 ID:???
449-6
冷蔵庫をのぞきながらいつまでも目的のものが見つからず、
うろうろと視線をさまよわせていた綾波が、その中のレイアウトを完璧に覚え、
頼まれるよりも先にいろいろ差し出してくれるようになったのはいつからだっただろう。
食事になんて全然関心がなくて、
冷蔵庫を開けるのは飲み物か保管してる薬を出す時だけ…なんて言ってたこともあったのに。
片手行平のでこぼこを不思議そうに撫でてみたり、
軽量枡を珍しそうに持ち上げてみたりするのもいつのまにかなくなって。

綾波はたぶん一人でも、料理を作れるようになった。



そうそしてそんな綾波が一人で台所に立つようになる、ちょっとしたきっかけがあった。

その日のメニューはハンバーグで、たまねぎのみじん切りが必要だった。
綾波は肉があまり好きじゃないらしいから、ひき肉は三分の一におさえ残りは豆腐にしてあった。
卵も入れたそれを彼女に捏ねてもらい、僕がたまねぎを切っていたときだった。

「碇君、目。
 赤くなってるわ…、大丈夫?」

後ろでハンバーグの種と格闘していたはずのレイがいつの間にか傍らに立って、
僕を覗き込んでいた。
455263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 17:04:01 ID:???
449-7
「たまねぎのせいだよ。しばらくしたら涙と一緒に流れるから、平気」

綾波の声があんまり心配そうなんで、僕は困った。
…抑揚の少な目な彼女の声からも感情を読むのが得意になったのは僕のひそかな自慢だ。
それはさておき、泣き顔なんて見られて嬉しいものじゃない。
たまねぎのせいなんだけど、僕だって男だし。
でも涙を拭いたかったけど手にもたぶんたまねぎがついているし、
目をしばたかせて涙を払おうにも、僕の意思に反して何故かどんどん出てきてしまう。
そのせいで視界も滲んでどこに何があるのかよくわからない。
綾波が目の前にいるのだけはわかるんだけど。
だからとりあえず綾波に、何か拭ける物でも取ってくれるように頼もうと考えた。

そしたら。

ふわっとして、

ぺろっと、…して、

………涙が拭われた。たぶん、…綾波の唇で。

ふわっと感じたのは綾波の髪で、ぺろっとしたのは綾波の舌。
暖かくてやわらかいそれが、目じりあたりを何度もそっと撫でる。

「えっ、えっ、ちょっと待って綾波っ。
 なんでっ!」
「私も手、汚れてるから」
「…………っ」
「もうすこし」
「…………」
456263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 17:05:25 ID:???
449-8
綾波が瞬くたびに上下するまつげが少しだけ頬をこすってくすぐったい。
僕はどんどん頭に血が上っていくのを感じてた。
キスされてるのとは違うんだけど、……違うんだけど、でも。
死にそう。
驚いて目を閉じていたけど綾波がどんな顔して舐めているのかも気になった。

だから、薄目を開けてみた。

綾波は、とても真面目な顔をしている。
猫のお母さんが子供を舐めるみたいに彼女は真剣そうだった。

ちょっと血が上ってたのが自分ばかりだったことに拍子抜けして、
なんだか力が抜けて僕はそばにあった椅子に座り込んだ。
まだ耳の辺りがどくどくいっている。…心臓が働きすぎ。

「綾波、…何でも舐めちゃダメだ」
「どうして?」
「………。 そういうことは、普通はあんまりしないんだよ。
 人のこと舐めたりはあんまりしないんだ」

「…変?」
「変じゃないけど、でも、普通は…、嫌だろう?」

「嫌じゃないわ。
 碇君だもの。
 どこも全部……… 碇君は、碇君の味がする」


僕は椅子から、 …………立てなくなった。
457263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 17:08:12 ID:???
449-9 
血が上がったり下がったり忙しすぎて貧血になったんだと言い訳しとく。
でもそんな理由で料理することのできなくなった僕のかわりに、
綾波は一人で後の全部を作った。

その日の夕食、それを知ったミサトさんは綾波を褒め称え、アスカは胡乱な目で僕を見た。
もちろん耐えた。
綾波が嬉しそうな恥ずかしそうな顔していたのを見れたのだけが救いだったな。

それでその夕食を皆で食べた後、僕は綾波が帰るのを送って行った。
いつも帰りは僕達の間にあんまり会話はない。
あるとすればその日の夕食の出来ぐらい。

だけどその日ばかりは、綾波は気にしてない風だったけど、僕は沈黙が気詰まりだった。
全く完全に本人とはかけはなれた妄想と、相手の善意を曲解して汚してしまうのは違う。
これは僕のマイルールでしかないけれど、でもその線引きはとっても重大だ。
今日の出来事はそれに抵触していた。

でも、綾波に「ごめん」とは言えない。
言ってしまえばその理由を話さなければならなくて、そんなの死んでも言えない。
綾波に他のとこも舐めてもらう妄想したなんて、…あああ、僕は変態かもしれない。
ごめん、ごめん綾波。でも綾波が「碇君の味」とか言うから…、うぅ。

後悔は大きい。僕は後ろめたさを払拭する方法を探していた。
黙っていればばれないのわかっている。
わかっているけど、綾波にそんなことをしたくない。
引け目みたいなものをこのまま引き摺ってたら、きっといつか顔をあわせるのが怖くなる。
何かあったとき、僕は自分の悪かったことを連鎖で思い出してさらにどつぼに嵌るタイプなんだ。
だから「ごめん」とは言わずに綾波に少しでも償える方法を、僕は道すがらずっと考えていた。
458263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 17:11:26 ID:???
449-10
そして一つ、思いついた。

それは、言えないことは言えないけれど、それ以外の言いたくない弱みを一つ綾波に話すこと。
僕は、誰にも言わないつもりだった僕の「弱さ」を一つ綾波に打ち明けて、
懺悔の代わりにすることに決めた。

「えっと…。
 今日、夕食作ってくれてありがとう。
 途中から全部任せちゃってごめん。
 
 で、さ。
 すごく、嬉しかったんだ。
 綾波が、料理してるの見て、いいなって思った。
 ……誰かが、自分のために料理してくれるのって、いいなって。

 ………。
 子供の頃、夕方が嫌いだったんだ。
 夕方になって、あちこちから誰かのお母さんが子供を呼ぶ声がして、
 夕ご飯のにおいがして、賑やかな夕食の音が聞こえてくる。
 僕はそれが嫌いだった。…憎んでた。
 
 僕はたいていいつも一人で、誰も待っててくれる人なんて居なかった。
 誰かが台所に立つ背中なんか、知らない。

 ……だから嫌いだった。そういうの連想させること全部」

思い出したら、泣きそうになる。
絶対に泣かないけど。もう僕は子供じゃない。
459263  ◆OQt/Av6lPM :2007/06/24(日) 17:15:45 ID:???
449-11
「でも綾波のさ、背中見てて。
 …思った。
 
 ―――ほんとうは嫌いじゃなくて、羨ましかったんだなって。

 羨ましくて、でも自分のものにはならないのわかってたから、
 嫌おうとしてたんだ。
 ……………………僕は、嫌なやつだろ」

「……いいえ」
「………。
 でも、そんなこと考えてた。
 綾波が作ってくれたのは、純粋に嬉しかったけど」
「…嬉しかったのね?」
「うん。
 それはほんとう」
「そう。
 …よかった」

僕の一方的な懺悔はここで終わって、この後、綾波は普通に「さよなら」と言って帰っていった。


でも、それから時々、綾波がコンフォートに来て夕食を作ってくれるようになった。 
僕が帰るよりも早くついて待つために、たぶん走ってここに来て、
そして、僕に「お帰りなさい」と言ってくれようになった。

だから。
どこにでもあるような当たり前の風景を、僕がこんなにも大切に思えるのは。
きっとそこに綾波のやさしい気持ちがあるのを知っているからなんだ。       fin
460名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/24(日) 17:26:06 ID:???
無駄にスレ消費しまくってるな
461名無しが氏んでも代わりはいるもの :2007/06/24(日) 18:30:11 ID:???
王道的流れだな
個人的には、レイがなにかシンジに教える展開希望
でも好きに書けば良いと思うよ
462名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/24(日) 20:54:32 ID:???
無駄にスレ消費…
463名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/24(日) 21:54:02 ID:???
いい短編だったと思うよ
464名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/24(日) 22:12:20 ID:???
>>449
GJです。こういうほのぼのした話いいな。

ただ一つなぜか綾波→レイになってる部分が気になった。
465名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/25(月) 00:36:42 ID:???
>>449-459
猫みたいな綾波 (*´д`*)ハァハァ

gj!!
466名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/25(月) 02:18:59 ID:???
これからが気になる2人だなw
467名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/26(火) 00:23:49 ID:???
初々しくて良い
468名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/26(火) 10:06:04 ID:???
469名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/27(水) 02:11:07 ID:???
ちょっと遅れたけどRedemptio感想
>>432-440
与えられた何かを別の形で返そうという意思(あるいは想い)を持ったというのが、嬉し
くもあり悲しくもある。彼の言葉が彼女に届いてそれが彼女の意思に変わったというのが
嬉しく、感謝の気持ちを伝えるとき「あなたは死なないわ、私が守るもの」という言葉に
ならざるを得なかったのが悲しい。この言葉は、彼女が命に換えても守りたいものを見つ
けた、という意味では喜ぶべきなんだと思うけど、やはり私としては「お前が彼女を守る
んだよシンジ!」と言いたいわけだw
でも確かに、この時点で彼女が言うべき言葉は他にはないんだけど。

446氏も書いてるけど、「真っ暗だと思っていた空は〜」はすごくいい。物は心で見るん
だよな。
> こういうの食らわされるとやっぱり「やられた」って思うんだよね。
> 文芸って面白ぇよな、って。
完全同意です。
それから445氏の書いてる通り、レイが本編に近いのもいい。
470名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/27(水) 02:12:10 ID:???
続き。ここまで誉めたのでちょっと文句もw

>>393で書かれてる
> レイ中心に少し外野を入れる感じで書いているつもりです。
がやっぱりちょっとこなれてない感じがする。>>433の「シンジは何も知らない。」とか、
読んでてあれっと思った。ただ、もしかすると次の空行を抜くか「レイの生まれも〜」と
同じ行にしてしまえば気にならないのかもしれない。ただ、これを>>434の最後の「シン
ジはわかっていない。」とペアで考えてるなら難しいところ。

基本三人称だけど語尾が微妙に揺れてる所があって、そこもちょっと気になった。例えば
>>434の「嬉しいけれど」は「嬉しかったが」あたりになるんだと思う。

これは個人的感覚なんだと思うけど、セリフにも若干違和感を感じる部分がある。この時
点でのレイは「な、…んで?」とは言わないと思う。「どうして?」でしょう。いや、こ
っちの思い込みかなw
シンジも「大丈夫だよな?」とは言わない、とは言わないけどw、「大丈夫だよね?」じ
ゃなくて少し親しげな感じ(と読めた)でこう言ったということは、それなりの決意か勢
いがあったはずで、その辺の描写も欲しい。「気遣わしげに」と「レイばかりを気にして
くれる」だけだとちと弱い。文体の制約上シンジの心理描写は出来ないから、レイの目か
らそう見えた、見たいに書かないといけないのは大変だけど。

色々書きましたが、私は文句を言うだけで実際にはとても書けませんのでw、二部も期待
しております。

【 無題 】の感想は後日改めて書きますが、「玄関先で帰ってしまった」り「うろうろと
視線をさまよわせていた」りするレイにゲロ萌えw

長々と失礼しました。
471名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/27(水) 02:54:01 ID:???
自演乙
472名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/27(水) 03:49:08 ID:???
↑の471は毎度の事ながらほっといて・・・
続きマダ〜?
473名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/27(水) 19:38:29 ID:???
この感想は普通に自演だとしか思えないな
474名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/28(木) 06:13:45 ID:???
自演乙
475名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 02:46:59 ID:???
>>449-459
オッチュ
476名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 02:48:10 ID:???
十日町
477名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 04:08:10 ID:???
469です。
自演じゃないんですけど、それを証明するのは不可能だし、スレの雰囲気が悪くなって
263氏が投下しにくくなるのは本意ではないので、どういう感想があるべき姿なのか理解
できるまでROMります。
失礼いたしました。
478446:2007/06/29(金) 12:17:22 ID:???
>>477

そんな気遣いは無用だと思うよ。
長々と感想を書きたくなるほど Redemptio に萌えた同士として
(ごめん、俺はレイに萌えただけかもしれんけど)。

アンタの感想は丁寧で面白かった。
> シンジも「大丈夫だよな?」とは言わない
のくだり、俺も違和感を覚えた。うんうん。

あー……“アレ” は、ここじゃ“秒針のカチコチ”みたいなもんだから、
それにびびって投下できないようじゃ 263 も所詮……ってことじゃね?
479名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 12:21:03 ID:???
>>477>>478も両方自演だろ
うぜぇからもういいよ
480名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 13:36:48 ID:???
秒針乙。
ゴミ減らし感謝。
481名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 15:08:50 ID:???
>>478
スレ読み直せば263の華麗なるスルースキルがわかるだろう。
最初めっちゃ叩かれてたけど、めっちゃ普通に投稿しまくってる
482名無しが氏んでも代わりはいるもの :2007/06/29(金) 18:26:49 ID:???
確かに263の華麗なスルースキルについてはもっと評価されても良いと思う
483名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 18:28:50 ID:???
そして住人にスルーされてるw
484名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 20:50:36 ID:???
>>479-483
自演乙
相変わらずアンチ必死だな
スレ荒らすんなら他いけよ
つかつまんねーなら見なくてよくね?
楽しみに待ってるのからしてみれば凄い迷惑なんすけど
485名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 20:52:00 ID:???
自演乙しか言えねえのかよ
これだからオウム返しのLAS厨は・・・
486名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/29(金) 21:54:54 ID:???
>>485
そこでLAS厨とか言い出すおまえは只の荒らしだ。
487名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/30(土) 00:56:01 ID:???
>>486
今度は都合良く荒らし扱いか?邪魔だからさっさと出て行け
488名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/30(土) 01:27:38 ID:???
なにこの透明あぼーんの量。

またなにか湧いたのか?
489名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/30(土) 10:42:05 ID:???
>>488
いちいち報告しなくてもいいから
490名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/30(土) 17:37:39 ID:???
まぁ待ち
491名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/06/30(土) 22:05:28 ID:???
>>487
解ってねぇな。
要は他カプ厨を引き合いにだすなって事だよ。
どこからともなく真性の連中が湧くから。
492名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 18:45:54 ID:???
つかもう湧いてるじゃん
言われるのが嫌なら荒らすなよ
493名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 18:47:08 ID:???
しつこいLAS厨は死ねよ粘着
494名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 19:05:42 ID:???
>>484に同意
投下待ち
495名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 19:47:38 ID:???
>>479は俺だ
そしてそれしかレスしてねえw
アンチじゃないけど、つまらないから最初読んで今はもう読んですらいない
読ましてくれるLRS希望
496名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 20:38:13 ID:???
あの人が投稿してる最中、かなりのスルー状態だったのにね。
アンチが必死ってことは無いと思うんだが。
そういう煽るレスこそがスレが荒れる原因だと気付いて欲しいね。
スルーしろと言うのなら、君こそスルーすればいいんだよ。
497名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/01(日) 21:00:13 ID:???
たぶん、スルーしろと言っている人自身が煽り屋さんなんだと思う
まあ、俺はただの通りすがりの茶化し屋だけど
498名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:32:28 ID:???
>>495
>読ましてくれるLRS希望

自分で書けばいいじゃない♪
499名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:34:21 ID:???
>>495
正体がバレたからって必死に隠そうとするなよ糞LAS厨
投下人の邪魔するくらいなら消えろ
500495:2007/07/02(月) 00:38:23 ID:???
>>498
自分で書いて投稿はしてる
でも書くのと読むのはまた違うからなぁ
>>495
マジであれしかレスしてなかったんだけどな
LASだけは勘弁してくれwww
それに邪魔してるわけじゃなくて、感じたことをそのままレスしただけだ
別に今投下してるのがどうじゃなくて、自演くさいと思ったからそれを書いただけだぜ?
501名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:40:22 ID:???
>>496
自演乙と繰り返している奴程滑稽だよな。思いっきり的はずれだし。
感想がつくとすかさず自演乙とレスがつく。1人でそれの繰り返し。
だからアンチ必死と言われるんだろ?
502498:2007/07/02(月) 00:42:02 ID:???
>>500
>自分で書いて投稿はしてる

kwsk
503名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:43:02 ID:???
>>500
お前が本当にLRS人なら投下人やここのスレ住人の事すこしは考えたらどうだ?
あんま荒らしがしつこいようなら運営報告するんでそのつもりで
504名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:43:48 ID:???
>>502
詳しくって言われてもな
自分で一人よがりな作品だと思う
それにLRSじゃなくて投稿してるのはハーレム系に準じるやつだからkwskは言わない
505名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:44:10 ID:???
LAS厨キモスw
506名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:45:48 ID:???
>>504
んじゃやっぱ部外者じゃね?俺はお前が必死になって自演といってる
作者の投下が見たいんであんま邪魔しないでくれよ
507名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:47:17 ID:???
荒れたけど静かに投下町
508名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:47:52 ID:???
>>503
ん、1回のレスで思ったこと書いただけなんだけどな
それともここは思ったことも感じたことも書いちゃいけないスレなのか?

まぁ確かにこのままレスしてたら荒らし状態になるからこれで終わるわ
初期からこのスレいるけど、感じたことを書くくらいはよかったはずだが…

>>506
ごめんな、あのレスが両方自演だと思ったからそう書いただけだったんだ
509名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:49:11 ID:???
>>508
なんかしらんけど必死だな
510名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:50:53 ID:???
スカ厨キメエ
511502:2007/07/02(月) 00:51:06 ID:???
>>504
        ショボーン

  ヘ⌒ヽフ    ∧,,∧   ヘ⌒ヽフ
 ( ´・ω・)   ( ´・ω・)  ( ´・ω・)
ω(,_U_U  c(,_U_U  ω(,_U_U
512名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:52:20 ID:???
さてと・・・>>477の投下を待つとするか・・・
513名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 00:57:29 ID:???
というよりあれのどこがそんな自演自演と騒がれるのか
不思議なんだけどな・・・
>>477は気にせずこれからも投下して下さい。
自演だなんて思ってない。少なくとも俺はずっと楽しんで読んできたので
こんな荒らしくらいでやめられると非常にがっかりです。
514名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 08:36:56 ID:???
ちょwおまいら投下すんのは>>477じゃなくて263だww

待ってますよ263
515名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 18:50:58 ID:???
ごめん・・・素で間違えた
待ってます263氏
516名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/02(月) 23:18:36 ID:???
自演という言葉に過剰反応しちゃう辺りがカワイイな。
誰も感想書いてくれないから、自分で長々と感想書いてたんだろw
こういう人がいるとスレが荒れるから、どっか余所へ行って欲しいなぁ。
517名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/03(火) 03:16:55 ID:???
↑自演連呼してる的はずれなアンチの自演厨はどっちなんだかなぁ
いい加減荒らし報告してきていいか?
518名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/03(火) 03:19:09 ID:???
投下まだ?
519名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/03(火) 15:35:46 ID:???
ごめん、まだ。因みに俺は少数派の中の人
520名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/04(水) 02:02:24 ID:???
>>517
報告しておいで。
証拠として、そのレスもここに貼り付けてくれ。
まあ、どうせクチだけだろうけどw
521名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/06(金) 23:55:47 ID:???
>>519
投下?頼んだよ
待ってるんだからな
522名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/07(土) 00:19:49 ID:???
>>517
どんどんするべき
後荒らしは無視な
523名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/07(土) 19:08:30 ID:???
まだー?
524名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/10(火) 00:34:32 ID:???
喧嘩したレイとシンジが仲直りするきっかけは、
どんなのがいいと思う?
525名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/10(火) 01:01:11 ID:zL2abqpd
14歳時点の喧嘩か
数年たってからかで全然変わってくるわけだが
526名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/10(火) 01:43:48 ID:???
スレ違い
余所でやってくれ
527名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/10(火) 06:59:05 ID:???
どこのスレが適当?
528名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/11(水) 22:07:55 ID:???
>>523
ここで良いよ
どうせ過疎ってるし荒らしのせいで投下人も来ないし
529名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/11(水) 22:09:27 ID:???
安価間違い
×523
○527
530名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/11(水) 22:12:25 ID:???
>>524
なんか投下してくれんの?(・∀・)wktk
531名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/12(木) 19:05:23 ID:???
連投乙
532524:2007/07/12(木) 23:35:33 ID:???
>>525
14才のシンジとレイです。

レイに赤ちゃんが出来てしまい、お腹が少し膨らみます。
それをシンジに見せたら「太った」と言われ、喧嘩したと言う想定です。
533名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/14(土) 00:36:17 ID:???
いい!
534名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/14(土) 05:32:17 ID:???
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)  ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
535名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/14(土) 11:47:48 ID:???
見たまえ、諸君。
また新たな宇宙が誕生しようとしている。
536名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/17(火) 06:48:20 ID:???
h
537名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/18(水) 21:01:15 ID:dKOW3NTC
投下を待ってばかりいないで、お前らがなんか書けよ!
538名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/19(木) 11:40:36 ID:???
>>537
言い出しっぺが(ry
539名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/19(木) 13:16:43 ID:???
wktk
540名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/20(金) 00:47:55 ID:???
ちょっとまて、14才のレイに孕ませる気か!!???
541名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/20(金) 01:55:29 ID:???
現実なら犯罪だけどな。まあ、いいんじゃないか?
まさか読んで真似するやつもいまい?
542名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/20(金) 04:16:24 ID:???
早くぅ!!
543524:2007/07/20(金) 20:36:21 ID:N7x1q612
書き上がるのに、まだしばらくかかります。

>>540
突っ込むところ、なんか違ってませんか?
普通「血を流さない女のレイが何故?」だと思うが・・・

それはそうと、今度のヱヴァでもシンジたちは14なのでしょうか?
16歳に設定変更だと言う話と、それはネタだという話が混在して
よくわからんのですが。
544名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/20(金) 23:58:19 ID:???
レイが子供産めるって良いな
545名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/21(土) 02:57:04 ID:???
まあ、ピッコロみたいな感じで、だけどな。
546名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/24(火) 00:10:05 ID:???
こんな業界だと、排卵萌えって奴も居るんかね?
547名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/24(火) 02:46:57 ID:???
レイがピッコロみたいに口から卵出す姿想像しちまった。
正直キモイ…orz
548524:2007/07/26(木) 00:43:00 ID:5WfSa2IE
>>546
俺は排卵でもいいかなぁw

お腹膨らんだレイがぽこん、ぽこんと真ん丸い卵を産んで、
びっくりするシンジが見てる前で卵にヒビが入って、
中から2頭身で身長15センチくらいのちびちびシンジが
卵の数だけたくさん産まれてくるの。
549名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/27(金) 14:44:22 ID:???
エイリアンみたいなのを想像した俺はここにいていいのだろうか
550名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/07/31(火) 19:12:13 ID:???
ほしゅ
551名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/07(火) 22:42:32 ID:???
過疎age
552名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/08(水) 23:27:58 ID:???
LRS派としたら体験EVAはどーなの?
553名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/09(木) 03:52:40 ID:???
至高の一品だね。
554名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/12(日) 20:24:03 ID:???
ho
555名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/14(火) 11:56:17 ID:???
age
556名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/14(火) 22:02:21 ID:???
俺は霧島冒険隊のほうが良い
557SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2007/08/15(水) 00:10:07 ID:???
お久しぶりです。
前スレで投下して未完のままだった拙作を、やっと書き上げました。
新しい劇場版が出る前に間に合って、本当に良かった(つД`)

長すぎて投下するのが困難なので、うpろだに置いときます。
エロシーンもあるので、そういうのが駄目な人は遠慮してください。

ttp://up.spawn.jp/file/up42378.zip.html

passはメル欄の魔法の3文字です。
558名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/15(水) 07:12:10 ID:???
ウゼェよボケ
投稿サイトにでやれや
559名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/15(水) 14:24:23 ID:???
>>557
乙です
後でじっくりと見さしてもらいます
560名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/15(水) 14:25:24 ID:???
ていうか、削除されてて見れないじゃん・・・
561SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2007/08/15(水) 15:12:58 ID:???
すみませんです。
うpの後、色々調べていたらLRS小説スレまとめサイトというのが出来ており、
アップローダもあったので、
ttp://lrs.s282.xrea.com/up/upload.html
こっちに移動してあります。
完成にあたり、Lovey-Doveyとタイトルをつけました。

午前中に場所替えして、このスレにも報告を入れたつもりだったんですが、
操作のミスか誤爆かで書き込み失敗していたようです。
562名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/16(木) 13:46:47 ID:???
早速読んでみました、完結おめでとうございます
ヤンデレ入ってた三人目のレイが生きてたのが嬉しい

あと気になったのですが、
>中学時代のレイと同じ容姿を持つ彼女こそ、三人目の綾波レイに間違いなかった。
>その左右で両手を繋いだ二人の小さな男の子。
三人目のレイは成長してないのに、その子供が成長しているのはどうしてなんでしょ?
ていうか向こうの世界と現実世界の時間差のつじつまが合わないような…
そのへん突っ込むのは野暮なんでしょうか
563SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2007/08/16(木) 22:35:49 ID:???
>>562
どうもです。

>>三人目のレイは成長してないのに、その子供が成長しているのはどうしてなんでしょ?

ご指摘の通り、ここは時間差のつじつまが全然合っていませんね(汗
大人になった二人目レイと、まだ中学生の姿の三人目レイが向かい合う構図をラストに
出したかっただけで、書いてる最中はそこまで細かく考えていませんでした。
564名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/17(金) 12:33:58 ID:???
ところでレイが妊娠発言をかましてからはゲンドウ達はどういう行動を取ったんだろう?

孫が出来たことで父性愛に目覚めたか
無理にでも補完計画を進めようとして、レイに全部暴露されてネルフから追い出されたのか
(ネルフの職員が真実を知ったらゲンドウと冬月とリツコは只じゃすまんだろうし)

非常に気になる

カヲルは出てきたらすぐにレイに抹殺されるような気がするがw
565名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/17(金) 20:02:41 ID:???
自演ウザイ。
どっか余所でやってくれ。
566名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/17(金) 23:38:20 ID:???
過疎ってるのに二言目には
ウザいだの余所だのって何だかななあ…

てか、元々ここの職人なんだから
知らせるのも評価するのも
なんら問題ないことだと思うんだが
567名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/18(土) 02:31:08 ID:???
>>566
自演ウザイ、自演乙、スレ違い、余所でやれ、くらいしか語彙のないかわいそうな人(たち)なので
スルーするのがよろしいかと思います。
568名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/18(土) 02:47:34 ID:???
しつこい自演だな。
どっか余所でやってくれ。
569SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2007/08/18(土) 11:54:36 ID:???
>>564
そこまで考えてはいませんでしたが、言われて改めて考えてみると、
20歳のレイとシンジがいるくらいなので、人類補完計画が頓挫した
世界って事だと思います。
レイの子宮がゲンドウの手のアダムと融合もしなければ巨大化もせず、
結果としてサードインパクトは起きなかったんじゃないかと。
子宮には大事な赤ちゃんいるし、レイのほうが触るのを許してくれないと思われ。
570SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2007/08/18(土) 12:44:39 ID:???
>>レイが妊娠発言をかましてからはゲンドウ達はどういう行動を取ったんだろう?

発言直後は、ゲンドウはしばらく例のポーズのままで真っ白になっていたんじゃないか
と思います。
結局二人の処遇は、シンジが現状で計算できる唯一の戦力なので
初号機パイロットを今までどおり勤めることを条件にレイの交際、
同棲も認めるって形に落ち着いたんじゃないですかね?
零号機は既に無いのでレイは戦力外、ただ過去に初号機とシンクロした実績
はあるので、初号機の予備パイロットという形ではないかと。

その場合、初号機の中のユイがレイとのシンクロを拒絶したことはありますが、
今回はシンクロ可能なのかは、私にもわかりません。
自分のクローンが、息子の子供を妊娠するってのはどんな気分なのか……
もしレイがシンクロ不可能でも、お腹の子供がシ両親譲りの才能でンクロ可能であれば、
子供とへその緒で繋がってるレイもシンクロ出来るのかもしれないし、
その為にいつも妊娠してなきゃならない、シンジの子作りが運命のレイってのも
LRS的にはいいかも。

>>孫が出来たことで父性愛に目覚めたか

それはなさそうw
ゲンドウにすれば、息子のシンジに妻の姿をした女を寝取られたようなもんだし。
571名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/20(月) 19:09:05 ID:???
ほしゅ
572名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/23(木) 20:53:36 ID:???
hosyu
573名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/26(日) 09:34:07 ID:???
ほぜん
574名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/08/29(水) 22:01:34 ID:???
mada-?
575名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/02(日) 02:13:41 ID:???
早くぅ
576名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/03(月) 21:46:06 ID:???
>>570
同意
577名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/04(火) 02:53:38 ID:???
まだ?
578名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/04(火) 19:54:04 ID:???
すみません、勢いで書きなぐったのを、まとめサイトにUPしました。
ttp://lrs.s282.xrea.com/up/upload.html

告白というタイトルをつけてみました。
序をみて、なんか書きたくなってしまいましたので・・・・・。
579名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/04(火) 23:16:50 ID:???
>>578
ざっと読ませていただきました。成る程。
告白以外の何者でもないw
なんつーか、LRSでハッピーエンドが欲しくて、ささっと作ってみた感じだね。
序はまだ見てないからなんとも。出来れば明日にでも行こうと思うが。
580名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/05(水) 01:49:38 ID:???
ぬお!キタ!?
581名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/05(水) 02:14:44 ID:???
>>578
読ませて頂きました
大袈裟でクサいけど素直に愛を全面に出して告白するシンジが良かったなぁ
二人目と自分の狭間に揺れる綾波も可愛かった
遠回しでないシンジの綾波好き度が凄く良くわかるストレートで甘い作品ですね
積極的なシンジ、それに対し消極的で慎重な綾波ってありそうであまりないから(逆は良く見るけど)
僕は凄く新鮮で面白いと思いました
582名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/05(水) 11:39:49 ID:???
>>561
読めない・・・
583名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/05(水) 17:44:01 ID:???
584578:2007/09/05(水) 17:47:49 ID:???
>>579、581

ありがとうございました。今度はゆっくりと何か書いてみたいと思います。
とにかくハッピーエンドのエヴァが見てみたいです。
映画はどうなるのやら。
585579:2007/09/05(水) 20:20:51 ID:???
>>584
ハッピーエンドは俺も大好き。
頑張ってねー
586名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/05(水) 22:10:38 ID:???
ここに投下しないのならスレ違いだろ。
宣伝は別のスレでやってくれ。
587名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/05(水) 22:55:28 ID:???
2chに投下するの、長いの作っちゃうと大変なんです。

行数制限もあるし、連投しすぎると見事に規制されます。
コンパクトにまとめた方が良い場合もあるし、
ここに投下すれば読む側も目につきやすくて携帯でも読めるし、
感想貰いやすくて良いですが...
まあ、状況に応じてってことで。
588名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/06(木) 02:01:27 ID:???
それは単なる宣伝でしょ。
そういうのは専用のスレを作って、そこでやるべきじゃないの?
このスレの趣旨とは少しズレているように感じる。
589名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/06(木) 03:59:23 ID:???
>>561
久しぶりにのぞいたら懐かしいのが。
590名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/06(木) 14:41:33 ID:???
>>588
LRS小説スレまとめサイトは前スレや前々スレの荒らしへの対抗処置として設けられているはずだから
このスレの趣旨とはズレてはいないだろ
というか長編がスレに投下されたら、あの荒らしが戻ってきそうで怖いw
591名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/06(木) 20:10:28 ID:???
それはまとめサイトの趣旨であって、このスレの趣旨ではないでしょ。
ここは投下スレであって、投下されたのを宣伝するスレではないよ。
592名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/06(木) 22:30:52 ID:???
まあ、厳密に言えばそうだろうけどね。

まとめサイト(あるいはまとめサイトスレ)
のほうが活性化すれば、別にこのスレが廃れてもいいし。

このスレに見切りつけてる人も多いんじゃない?
盛り上がりようがない。


593名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/07(金) 00:36:33 ID:???
えーと、こんばんは。
ちと思いついて考えた設定があるんですけど、少しさわりだけ書いてみました。
このスレ的に問題無さそうなら続きを考えてみようかな、と思った次第でして。

次のレスから始めます。
とりあえずゲンドウを殺してみたところから。
594まずゲンドウを殺してみた:2007/09/07(金) 00:38:03 ID:???
「ねえ、レイ……お願い、返事をして……」
一人の女性が、床にべったりと座り込んでいる少女に背後から語りかけている。
その女性、NERV本部スタッフの一人、伊吹マヤ。
更に、そこにもう一人。
科学者らしい白衣を着た女性が一人、その場に訪れた。
マヤは、その相手を見上げて訴えかける。
「先輩……レイがここから、碇司令の元から動こうとしないんです。
 いくら声をかけても返事をしてくれない……」

マヤが碇司令と称したのは、目の前にある永眠したばかりの遺体であった。
白い布で顔や全身が包まれ、傍らに線香が点されている。
それに対して白衣の女性、NERV技術部顧問たる赤木リツコは冷たく答える。
「返事をしないんじゃなくて、もう聞こえていないのかも知れないわね。」
「え?でもそんな……」
「ほら、見なさい。」

その時、その少女の左腕が肘のあたりからボタリと崩れ落ちた。
まるで組み立てた模型が壊れ始めたような、無機質な千切れ方で。
「ひっ……」
「もうダメね。自我の象徴を失い、自らの存在を保てなくなっている。」
595まずゲンドウを殺してみた(ここまで):2007/09/07(金) 00:41:27 ID:???
マヤはうろたえながら左腕を拾い上げ、つながるはずもないのに接続を試みるようなことをした。
そうしながらも尋ねる。
「自我の象徴って……それって精神的な概念だけの話じゃないんですか?
 本当に肉体がくずれるなんて……」
「その通りよ。私達なら、そんなに簡単に壊れやしない。
 でもこの子の場合は極めて精神と肉体の構造がデリケート、というかシンプルに出来ていて、
 私達と同一視出来るものではないわ……仕方ないわね。」
そしてリツコが白衣のポケットから取り出したもの。
それは一丁の短銃だった。
「ああ、死人の前じゃ静粛にしないとね。」
そんなことをいいながらサイレンサーを取り付ける。

「せ、先輩!何をするつもりですか!」
「どうしようもないシステムエラーが出たときどうするの?
 電源の入れ直し、あるいは再インストールしかないじゃない。えーと、青葉君?」
リツコは少女の後頭部に銃口を当てながら、携帯電話を耳に当てた。
「三人目を用意して。もうすぐ総司令のご子息がやってくるから急いでね。」

パスッ……
596名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/07(金) 06:55:03 ID:???
GJ

普通に先読みたいです。
597593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/07(金) 08:49:27 ID:???
ありがとです。続き、考えてみます。
正直、長くなりそうな気がするのでここに投下し続けるのはキツイかな、
と迷ったりしますが基本的にここに投げてみます。
また、キツイ内容になったらご免なさい。
598age:2007/09/07(金) 16:50:41 ID:???
age
599名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/08(土) 05:16:25 ID:???
思いつきでホイホイ書いて、
途中で飽きて投げ出すパターンだな。
キツイのなら投稿サイトでやれば?
600名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/08(土) 12:46:42 ID:???
>>599
投下待ってる身としてはいい加減迷惑なんで他スレ行ってくんね?過疎なLAS投下スレとか
601名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/08(土) 12:48:48 ID:???
>>593
wktk
602名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/08(土) 19:17:13 ID:???
言い訳しながら投下する人って見苦しいからな。
黙って投下だけしてればいいのに。
603名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/08(土) 21:08:16 ID:???
荒らしに負けず頑張れ
604593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/08(土) 23:58:52 ID:???
第三新東京市。

僕はいくらかの荷物を抱えてそこに到着した。
泊まりになるかも知れないと思って、いくらかの着替えを入れただけの軽い荷物だ。
何しろ人一人が死んだのだ。それも自分の父親だ。日帰りではすまないだろう。
でも、自分の親が死んだ時って何をすればいいんだろう。
って、何も判らない僕が判るはずもない。
とりあえずNERVとかいう所の人に話して、どうしなきゃいけないか聞くしかないだろう。

駅をおりて手紙にあった通りに電話を入れる。
そこで待っていてください、という受付嬢らしい返答を聞いて近くのベンチに腰を下ろした。
あれ、待ち合わせの時間を言わなかったな。まあいいや。
まだ昼間だ。駅の周辺にいるのはせいぜい買い物に出向いた主婦とその子供達。
中にはスーツ姿のビジネスマンや、学生達も混じっている。
そんなふうに人物観察というほどでもなく、平和そうな人々の様子を眺めていると、
僕の目の前に一台の黒く巨大な車が停車した。
下りてきたのは、車に不似合いな白衣姿の一人の女性。
「碇……シンジ君ね?」
僕を見るなり、彼女はそう言った。
605593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/09(日) 00:00:54 ID:???
彼女は自分の名前を名乗り、僕を車に乗せた。
名前は赤木リツコ。父さんのすぐ側で働いていたという。
とりあえず、僕は尋ねた。
「父さんは、どうして……?」
「事故よ。実験中に鉄材が崩れ落ちて頭部に障害を受け、そのまま亡くなられたの。」
「そうなんですか。」
「不幸、としか言いようがないわ……シンジ君、あまり悲しそうじゃないわね。」
「……はい、これまで大して話もしたことないし、顔も覚えてないぐらいです。」
「そうだったの。」
そんなふうに僕に尋ねた彼女だったが、彼女の方こそ悲しそうでないのが気になった。
僕よりむしろ、共に仕事をしていた彼女こそ親しい人であるはずなのに。

そのことを尋ねようとしたその時、何やら車の外から警報が鳴り響いた。
「もう始まるの?もう少し時間が欲しいところなんだけど。」
「ど、どうかしたんですか?えーと、赤木さん。」
「リツコ、でいいわよ。マヤ?来たのね?」
彼女は携帯を取り出して、部下らしい人に尋ねてた。

「……そう、判ったわ。すぐそっちに戻るから、あの子とエヴァの準備を急いで。」
「あの、何かあったんですか?」
606593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/09(日) 00:04:10 ID:???
大人の仕事に口出しするいわれはないだろうけど、僕は思わず尋ねた。
「大丈夫よ。焼香する時間ぐらいは取れるわ。おいおい、説明するから心配しないでね。」

地下の壮大な空洞、ジオフロントへと向かい、そこにあるNERV本部へ……
という経緯はとりあえず省くとして、ほどなく僕達は到着した。
その時、リツコさんは僕にあるものを手渡した。
「はい、これがあなたのIDカード」
「あ、はい……?あの、カードって」
「これからずっと使うことになるから、無くさないでね。」
「……はぁ」
なんだか事情が飲み込めないけど、父の葬儀うんぬんだけで僕を帰すつもりはないらしい。
カードを渡し、ずっと使うことになる、と言うことは、ここに所属しろ、ということだ。
この場だけのゲストカードでは無いのかもしれない。
このまま、はいはい、と頷くのはまずいだろう。
「あの……」
僕を案内するリツコさんの背中に向かって尋ねようとした、その時。
「リツコ!」

少し離れたところから駆け寄ってくる女性が一人。
どうやら軍関係の属する物らしい、襟章のついた制服姿で現れた。
607593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/09(日) 00:05:39 ID:???
「どこにいってたの!ついに使徒が現れたのよ!あんたがいなけりゃ……その子は?」
彼女はすぐに僕の存在に気が付いて尋ねた。
僕が何かを言う前にリツコさんが素早く答える。
「聞いていたでしょ?この子が総司令のご子息、碇シンジ君ね。」
「ああ、ご苦労様。」
まぎれもなく緊急事態の最中らしく、僕のことは形式以下のねぎらいの言葉で片付けた。

「で、この勇ましいお姉さんがNERV戦術作戦部の葛城ミサト……」
「ご紹介にあずかっている場合じゃないの。だいいち、ご子息のお迎え案内なんて事務の子にでも」
「いいえ、もはやこの子抜きには計画は進まないの。今となってはね。」
「まさか、ご子息がサード……」
「違うわ。この子にエヴァは指一本動かせない。サード候補はまだ見つかってないわよ。」

もう、この二人が何を言ってるのかサッパリ判らない。
しかし尋ねるスキも与えてくれず、でも話しているのは僕のことのようだ。
一体僕をどうするつもりなんだろう。何だか恐ろしくなってきた。

その僕の思いに気が付いたのか、リツコさんは僕に振り返って言う。
「とにかく、この子に見て貰わなきゃ。まずはエヴァから。」
608593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/09(日) 00:07:16 ID:???
それから僕は本部の中心部らしい奥深くまで案内された。
そこで目にした巨大なもの。

「ここれは……巨大ロボット?」
「そうよ。これが汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオン。通称エヴァ。
 これの開発と運営がNERVの、あなたのお父さんの仕事。」
「まさか……僕にこれに乗って」
「ウフフ、まさか。これに乗ることの出来るパイロットはごく限られている。
 さっきも言ったけど、あなたには指一本動かせやしないわ。」
「試したこともないのに、判るんですか?」
「乗りたい?でも乗れる条件はある程度は判明していて、事前に判別が可能なの。」
その時、後ろからイライラしたような様子で先程のミサトさんが僕達に向かってきた。

「いくらご子息だからって、ここに立ち入らせるなんて……いったいその子は何なのよ。」
「説明は後で。赤木一尉、そろそろ使徒を迎え撃つための準備をしなくてもいいの?」
「副司令がいるんだし、まだ主導権は戦自が握っているわ。ねえ、一体」
「シンジ君、次に行くわ。あのエレベータに乗りましょう。さっきにカードを出してくれない?」

もうリツコさんはミサトさんを相手にしようとせずに、僕をエレベータらしい赤い鉄の扉へと押しやった。
609593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/09(日) 00:09:26 ID:???
「そう、そのセンサーにカードを通して。」
僕はリツコさんに言われるがまま、カードを機械に滑らせる。
するとエレベータは即座に扉を開き、僕はリツコさんに後押しされるまま乗り込んだ。
「その扉のカードを持っているなんて……リツコ、待って」
そんな、ミサトさんの言葉をかき消すように扉が閉ざされた。

「あの……どういうことなんですか?」
僕はようやく尋ねることができた。
もう、父の葬儀だけの用ではないことは明白、そんなことを口に出しても仕方がない。
「表向きはエヴァの開発、裏ではそれに加えてパイロットも開発しているの。
 言ったとおり、エヴァに乗ることの出来る人間は限られている。いや、もう存在していない。」
「開発って……パイロット、人を……?」
「そう、もはや人の手で生み出すしか無くなってしまった。
 それを作っているのが……ここよ。シンジ君、冷静にね。」
「……え?」
 
そしてエレベータが開き、僕が見たものは!

「うああああああああああッ!!」
610593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/09(日) 00:11:22 ID:???
とりあえずここまでっすー
611名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/09(日) 00:46:11 ID:???
乙です
まだ先が読めないけどこれからのLRSに期待
612名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/09(日) 10:02:11 ID:???
GJ

いきなりの展開で続きに期待
613名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/09(日) 10:32:43 ID:???
即興LRS


「綾波は人間だよ」ニコッ

ポッ


END
614名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/09(日) 12:29:18 ID:???
いきなり綾波生産工場逝き!?
まさかシンジがゲンドウの代わりにレイの親役をやるのか?
615名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/09(日) 14:37:57 ID:???
>>608
の3段落目の2行目の「赤木一尉」ってのは葛城一尉の間違い?
616593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 00:48:53 ID:???
エレベータを下りて巨大な実験室に入り、そして僕が見たもの。
それは、壁のほぼ全体を占めている巨大な水槽。
そこに浮かぶ数え切れないほどの何か。

それは、すべて同じ姿をした少女の肉体だった。

「う、うう、ごふっ……」
僕はその異様な光景を見た衝撃に耐えかね、その場にへたり込んで嘔吐し、
昼食に食べたサンドイッチなどを全てはき出してしまった。
そして、その部屋に最初から居たらしいもう一人の女性が、僕の側に駆け寄り背中をさすってくれた。
そうしながら、リツコさんを見上げて抗議する。

「そんな……そんな、この子にいきなりこれを見せるだなんて……」
「マヤ、いいから作業を続けて。どうなの?」
「それが、まだ完全に熟成したものがないんです。これでは幾らも……」
「そう?それでいいわ。青葉君、一体ひきあげて。」
リツコさんが別の方向に向かって命じると、別の職員らしい男性の一人が何やら機械を操作した。
そして水槽から引きずり出された少女の体をかかえ、ベッドまで運んでいる。
そして手早く何か端子のようなものを取り付けたりしているが、正直なにをしているのか判らない。
なんだかその光景は、まるで生け簀のある割烹料理屋で魚をさばいているかのようだった。
617593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 00:50:28 ID:???
リツコさんはその少女の側により、そして声をかける。
「レイ、わかる?起きなさい……レイ!」
「先輩、やはり無駄ですよ。総司令でなければ……」
リツコさんにそう言っているのは、さっきマヤと呼ばれた人。
「だから、ご子息に来て貰ったと言う訳よ。」
「でも、もし上手くいかなかったら」
「全て終わりよ。エヴァは動かず、NERVは赤っ恥をかいて使徒に破壊され、
 サードインパクトが起きて全てが終わる。それだけのことじゃない?」
やっぱり何を言ってるのか判らないけど、なんだかもの凄くリツコさんって投げやりだ。
そして僕のところまでやってきて、ほとんど無理矢理に僕を助け起こす。
「さあ来て。あなたがレイを起こすのよ。」
そして「まな板の上に乗せられた」レイと呼ばれる少女のとこまで僕を引きずっていった。

正直、女性の裸を見るのはこれで始めてだ。
見たところ僕と同じぐらいの年齢で、か細くはあるが発育が始まったらしい女性らしい体。
でも美しいとか、性的興奮を覚えるとか、そんなふうにはとても見ることが出来なかった。
雑誌のヌードモデルに見るような美しさなど欠片も見あたらず、
むしろ胸のふくらみなど、かえってグロテスクに見えて仕方がない。
女性の体というものは見方によっては、こうも違うのかと驚かされる。
618593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 00:52:42 ID:???
更に側によってみて、さらにその姿に驚かされた。
遠目には灰色に見えた髪が、近づいてみると青みがかっているのが見てとれる。
その色は派手好きが髪を染めるのとは少し違う。
なんだか、苦悩の果てに白髪と化したような病的な青、というのがもっとも当てはまる表現だろう。
そして、その顔はぼんやりとした表情で、その僅かに見開いた目。
なんとその瞳は完全な深紅であった。

「さあ、その子に声をかけて。」
そう言って僕を少女の前に押しやる。
が、僕はまだ混乱状態から立ち直れておらず、さらには少女のすぐ側まで来たときに、
どうやら漬けられていた薬品のものらしい匂いを嗅いで、さらに嗚咽してしまう。
しかし、リツコさんの強引さも手伝って、恐る恐る少女の顔を覗き込んだ。
そして再び吐いてしまうのをどうにか堪えながら僕が何か言おうとした、その時。
なんと、その少女の目がハッと見開かれ、僕のことを凝視したではないか。

「ほら、効果てきめんね。すばらしいわ、流石はご子息。」
さっきからの怖面が一転して軽やかに微笑むリツコさん。
「本当に……先輩の言うとおりだったんですね。なんだか信じられない……」
少し離れたマヤさんも驚いている。
が、その彼女の暗い表情が消える様子が無かったのだが。
619593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 00:54:20 ID:???
「さ、その子を助け起こして。」
そう命じられて、まだしばらくは動きの取れない状態だったけど、
どうにか声が出てくるようになってから、尋ねた。
「……あ……あ、あの……動けるんですか?彼女は……」
「心配要らないわ。立ち上がることや歩くことなどの基本動作や言語の理解など、
 生活に必要なある程度の記憶を埋め直すことに成功している。」
「な、なんだかよく判らな」
「理解する必要なんて無いから、早くその腕を取りなさい。」
「あ、は、はい……」
もう僕は言われるがままだ。
促されるままに、僕は薬品でずぶ濡れの彼女の腕を握った。

そして戸惑いながらも彼女の肩を抱えてベッドから起こしたのが、
驚くほど素直な動作で僕に導かれるままに立ち上がった。
従順、といえば聞こえは良いけれど、濡れそぼった髪で隠された顔と、
その間から僕を凝視し続ける赤い瞳、そしてペタペタと床を歩く姿が、
なんだかホラー映画に出てくる何かに見えて恐ろしくて仕方がない。

そしてリツコさんは僕に命じる。
「さ、その子を産湯に漬けてあげなきゃね。いらっしゃい。」
620593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 00:55:29 ID:???
「え、あの」
「さ、こっちよ。」
そしてリツコさんは、やってきたエレベータとは別の扉へ僕を案内する。

僕はその全裸の少女の手を引きながら連れて行かれたのはシャワー室。
「さ、そこで薬品を洗い流して。」
「は、はい……」
「ん、あなたも脱いだら?そのままだと濡れるわよ。着替え、用意するの面倒だし。」
「……」
「恥ずかしがる必要なんて無い。男の裸なんて見慣れているから。」
……って、そういう問題じゃないんだけど。

仕方なく僕は自分も全裸になって、少女を連れてシャワー室に入った。
リツコさんと言えば煙草に火を付け、屑籠から灰皿に使うつもりらしい空き缶を拾い上げている。
なんだかドライで格好いいと言えば良いけれど……もう少し気遣いをして欲しいところだ。

そして温度を調節しながらシャワーを少女の身体にあてる。
だいぶぬるめにしたのだけど、かなり刺激が強かったのだろう。
当てた瞬間にビクリと身体を震わせた。
621593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 00:59:16 ID:???
が、やがて慣れてきたらしく、そのまま僕にされるがままシャワーを浴びている。
そして僕を見つめていた目は心地よさそうに細められ、
むしろ自分から身体をシャワーに浴びせるような仕草を取り始めた。
(あ……)
その様子を見て、思わず声が出そうになった。
そして慌てて彼女と身体が触れるか触れないかの状態から身を遠ざける。
なんだか始めて女の子と一緒に裸で居ることに気付いた気分で、急激に恥ずかしくなってきたのだ。

もういいだろう、と思い、彼女を連れてシャワー室から外に出ると、
既にリツコさんはおらず、代わりに分厚いバスタオルが2枚用意されていた。
僕はそれを手に取り、はい、と彼女に手渡そうとした。
が、彼女は呆然とそれを眺め、そしてまた僕の目を見つめ直す。

「生活に必要な動作は知っているって言ってたのに……」
思わずそう愚痴りながら、仕方が無くタオルを広げて彼女の身体を拭いてやった。
すると彼女の目が細められ、さらにうっとりするような表情に変わっていく。
なんだか、主人の愛撫を受けて喉を鳴らす子猫のようだ。
僕は今更ながら目のやり場に困りながら拭いていたが、
今度はその手に彼女の柔らかい身体の感触が伝わってくる。
でも何故だろうか。性的興奮というよりも、触れてはならぬものに触れているような緊張感や、
早くも彼女に対するいとおしさというか、妙な気分がまぜこぜになっていき……
622593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 01:00:53 ID:???
「やはり裸のつき合いが一番のようね。いい顔になってるわ。
 レイも、そしてシンジ君もね。」
そこにバタンと扉を開けて入ってきたのはリツコさんだ。
一言なにか言って欲しい。僕は全裸で身体はほとんど濡れたままだ。

「さ、あなたも身体を拭いて、早く服を着て。そしてこれを彼女に着せるのよ。」
そして僕に全身つなぎの白いスーツを示した。
「これが、いわばエヴァのパイロットスーツとなるプラグスーツ。
 改めて紹介するわね。その子がエヴァンゲリオンパイロットのファーストチルドレン、綾波レイよ。」

なんだか呆然としながらリツコさんの言葉を聞いていた。
僕のことを相変わらず見つめ続ける、純真な深紅の瞳に見とれながら。
623593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 01:02:16 ID:???
とりあえずここまでっすー

>>615
申し訳ないです。葛城一尉の間違いです。
またいずれ改めて訂正します。
624名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 01:56:39 ID:???
なるほど…しかし、真面目にLRSやると、
矢張り、りっちゃんは悪役がデフォかね
625名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 02:11:56 ID:???
これは良作の匂いがぷんぷんしてくる

自分のペースで頑張って
626名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 02:16:56 ID:???

これは自演の匂いがぷんぷんしてくる

さて、いつまで続くか・・・
627名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 02:20:47 ID:???
こういうアホがいるから
芽もでてこなけりゃ、育たないんだよなあ・・・
628名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 03:17:30 ID:???
自演と言う名の肥料じゃ、どうせ真っ直ぐには育たんよ
629名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 04:11:46 ID:???
育てる前に枯らすくせに
育成について語りますか
630名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 10:29:39 ID:???
最近、子供を叱れない親が増えたよね。
悪いことは悪いと叱ってあげるのも、一つの優しさだと思うんだ。
631名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 11:54:03 ID:???
頑張れ、職人
てか、どんなレスでも付くだけ俺よりマシだぞ〜
632名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 12:00:48 ID:???
職人というより、無職だろうけどな。
こんなことしてる暇があるのかね。
633名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 12:49:19 ID:???
>>630
つまらん・自演・ウザい

これが優しさですか、そうですか。
634名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 13:02:57 ID:???
LASは苦手だが、LASの投下スレの流れが良いのは
普通に羨ましい
635名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 13:58:31 ID:???
>>633
そんなこと書いてないじゃ。
捏造はいかんよ。
636633:2007/09/10(月) 15:37:45 ID:???
>>635
最近までの流れを考えて
批判厨の言う優しさを
指摘したんだが。

まあ、受け手の俺の勘違いみたいだから
素直に謝らせてくれ、すまん。
637593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 19:38:52 ID:???
リツコさんは僕達を伴い、再び例の巨大ロボット「エヴァ」の方へと向かった。

正直いって彼女が言葉を理解しているのか判らなかったが、
「えっと……レイ?こっちへ。」
僕はみんなが呼ぶように名を呼び、ついてくるように促そうとした。
が、そうするまでもなく彼女は僕にピッタリ張り付いて、トコトコと着いてくる。
よく慣れている飼い犬、というよりもまるでゲームにあるようなオプションの動きだ。
そして不安なのか僕の肘をそっと掴んで離そうとせず、
なんだかそこばかり意識してしまって仕方がない。

「レイ……大丈夫なの?」
そこに心配顔で待っていたのは先程の葛城ミサトさんだった。
背後で整備士達がエヴァの準備をしている中で、腕組みしながら僕達を待っていた。
それに対してリツコさんは軽やかに答える。
「とりあえず。でも、これまでの訓練はパーよ。もう以前のレイでは無い、と言っても良いわ。」
「そんなに……それほど司令が亡くなられたのがショックだなんて。」
「でも、ご子息のおかげで息を吹き返したわ。動けるようになっただけでも上等。」
「そう……」
ミサトさんは、そう嘆息しながら今度は僕の方をジロリと見る。
それは、紛れもなく疑いの目だ。
638593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 19:40:07 ID:???
要するに、ミサトさんはレイのことについてあまり知らされていないらしい。
恐らくNERV内部でも一部しか知られていない機密なのだろう。
が、一部の者しか入れないエレベータの存在など、
明からさまに「機密がありますよ」と明言している以上は、
何か裏があることぐらいミサトさんや他の人も気付いていると思うけど。

「ま、いいわ。司令塔で待ってるから。今、戦自が総力を挙げて交戦中よ。」
そう言って、昇降用のステップに乗り上のフロアへと上がっていった。
それを見送った後にリツコさんは振り返って言う。
「さ、レイをこっちへ。エヴァに乗せるわよ。」

僕達はエヴァの背後へと周り、その首筋の辺りから飛び出ている筒の前へとやってきた。
それはエントリープラグと呼ばれ、それがエヴァの操縦席というわけだ。
僕は指示を受けてレイを中に押し込む。
もちろん彼女は促されるままに乗り込んだが、
僕は離れていくのをみてキョトキョトと左右を見渡し、慌てて僕に着いてこようと飛び出そうとする。
それをなんとか押し込んでここに止まるように言うと、ようやく彼女は納得して席に着いた。
どうやら言葉は通じるらしい。
とりあえずは一段落、とはいえ何だか不安な心地がする。
639593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 19:41:42 ID:???
「あの、大丈夫でしょうか。操縦することとか何も判っていないんじゃ……」
その不安な気持ちに素直に従い、リツコさんに尋ねる。
「心配ないわ。その操縦桿を握らせて。そう、それ。それを掴んで離さないように言ってちょうだい。」
「はい……」

これで僕の作業完了、と言うわけかな。
彼女が乗ったエントリープラグが挿入されるのを見送り、そう考えた。
そう思った瞬間、どっとへたり込みそうなくらいに肩の力が抜けていった。
が、その様子に気付いたのか、リツコさんは僕に言う。
「さあ、本当に大変なのはこれから。着いてきて。
 今度は通信であの子に指示して貰わなければならないわ。」
一体、僕はどこまでこのNERVに引きずり込まれていくのだろう。
なんだか否応無しの調子で引っ張り回され続けている。

それならそれでいろいろと来ておかなければならない。
「あの、リツコさん。」
「ん?」
「下のことは……内緒ですか?」
「そうね。別に言っても良いわよ。あんなことを公言したところで誰も信じやしないわ。
 実物をこの目で見ない限りね。ましてや、あなたが口頭で言ったぐらいでは。」
640593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 19:44:17 ID:???
成る程、そういうことですか。
そう言えば、さっきのリツコさんも肝心なことは言ってないけど、けして嘘はついてない。
なんなら本当のことをズバリ言ってもいい、と言う訳か。
それなら下手に嘘をつくより自然に振る舞うことが出来そうだ。
「さあ、着いてきて。いよいよ始まるわよ。」
彼女はそう言って、さっきミサトさんが乗ったステップへと僕を案内した。

と、その前に。
「これを着なさい。」
そう言って手渡された物。それは一着の黒い上着。
「あなたのお父さんの物よ。大きすぎるわね……肩に引っかければいいわ。
 うん、格好いいわよ。シンジ君。」
もはやリツコさんはお茶目な口調でそんなことを言ったけど、まさか……

そして。
「す、凄い……」
僕は思わず、そう口に漏らした。
やってきたのは巨大な空間に広がるNERV本部の司令塔。
立体映像が開発されたことは知っていたけど、
三次元レーダーとして完全にそれを実用化されているのには驚愕した。
そして幾階層にも及ぶフロアで活動するおびただしい数のスタッフ達。
僕がやってきたのはその頂点と言うべき箇所であった。
641593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 19:46:04 ID:???
そして巨大なパネルに映し出される映像。
それは戦略自衛隊の物らしい戦闘ヘリが隊列を組んで飛来し、そして無数のミサイルが放たれる。
そして響き渡る轟音。
僕はここにやってきた後、そんな状態になってるなんて想像もつかなかった。
いったい何が起こったというのだろう。

「出し惜しみは無しだ!厚木と入間も全部上げろ!」
「駄目だ!この程度の火力ではらちがあかん!」
僕達が居るすぐ側で、軍人らしい男達の声が聞こえる。
どうやら戦自の幹部で、ここで指揮を執っているらしい。
そして、さらに凄まじい轟音が響き渡った。どうやら、更なる強烈な攻撃を加えたようだ。
この司令塔にビリビリとその振動が伝わってくる。

「あれはN2地雷ね……無駄だというのに……」
リツコさんは解説がてらに、そんな独り言を言った。
モニタに映った、巨大な炎とキノコ雲。が、その中心でおぼろげながら姿を現したもの。
その、この世とも思えぬ恐るべき姿に僕は思わず身を乗り出した。
「あれは……」
僕がそう言うと、リツコさんが解説する。
「あれが使徒。あのセカンドインパクトの原因ともなった使徒がついに再来したの。
 あれを迎え撃つためにこそ、あなたのお父さんがNERVを、そしてエヴァを開発したのよ。」
642593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 19:47:50 ID:???
その時、戦自の幹部が一人、僕の存在に気が付いて怒鳴り散らした。
「おい!何故ここに子供なんかいるのだ!」
するとNERVスタッフ達や戦自の幹部を含めて一斉に僕を振り返った。

そして、その中の一人が僕の側によって小声で言う。
「その格好……リツコ、何を考えているの!」
それはミサトさんだった。
だが、リツコさんは動じずにクスリと笑っただけで何も答えない。
そうこうしているときにもう一人、NERVの制服らしいものを身につけた初老の男が近づいてきた。
「成る程、そういうことか。確かにそれが手っ取り早いな。」
そう言ってニヤリと笑い、何事もないかのような口調で説明した。
「こちらが他界した碇ゲンドウに代わり総司令の任に着く碇シンジ君。実の息子です。
 以後、お見知りおきください。」

次の瞬間、戦自幹部の面々は恐慌ともいうべき形相で一斉に怒鳴り散らした。
「な……なんだと!総司令の責務をそんな子供が勤まるはずがない!」
「貴様ら、一体何を考えている!世襲制度など通用する仕事ではないだろう!」
が、先程の初老の男はさらりと言う。
「もちろん、今のシンジ君には何も出来ません。ただ、一点においてのみ彼の力が必要なのです。
 おいおい、我々の手で然るべき教育を施していく予定で……」
643593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 19:49:12 ID:???
その時、何か連絡を受けていたらしい幹部の一人が、受話器を下ろしてこちらに向き直った。
「今、君達に指揮権が譲渡された。どうやら我々の手には終えないようだ。
 お手並みを見せて貰おう。君達なら勝てるのかね、碇シンジ君?」
恐らく嫌みのつもりで名指ししたのだろう。一斉に視線が僕に集まる。

僕は別段、度胸が据わっていたわけでもないけど、こう言った。
「そのためのNERVでしょ?」
それを聞いたリツコさんはプッと吹き出して笑った。
644593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/10(月) 19:50:53 ID:???
とりあえず、ここまでっすー
645名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 20:07:37 ID:???
>>644
GJ

クロニクルの表紙みたいな
展開に吹いたw
646名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/10(月) 22:34:40 ID:???
分かりやすい自演に吹いたw
647名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/11(火) 01:57:11 ID:???
>>643
乙。
シンちゃんはちょっと強めの性格か
648名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/11(火) 02:38:50 ID:???
あんまり弱いとガチのLRSはちょっと……

つーか、シンジ君萌え;
649名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/11(火) 08:00:29 ID:???
どういう展開になるのか予想がつかんな
続き期待してます
650名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/12(水) 00:25:53 ID:???
>648
貞エヴァとか
「その為の…」の件は結構つよいなーと思わせるので。
余裕というか(そういや、余裕が無いのがエヴァ登場人物の不幸の大元か)
ともかく、期待してますよー
651593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/12(水) 00:56:45 ID:???
「フン……」
そう幹部達が鼻をならしつつ、この司令塔から去っていった。

「さて、シンジ君。私はNERV副司令の冬月というものだ。よろしく。」
さっき僕を新しい総司令と称した人が僕に挨拶した。
……などと悠長に挨拶を受けている場合ではない。
なんか無茶苦茶だ。こんな大人達に混じって総司令などと名乗れるはずがないだろう。
とりあえず抗議しなければ。

「あ、あの……なに勝手に決めてるんですか。僕に司令なんて務まるわけ……」
「面倒なことは私がやる。総合的な指揮や外向きのことは任せてくれたまえ。
 エヴァの指揮は作戦部長たる葛城一尉が、技術的なことは赤木博士が勤める。」
「それじゃ、僕が居る必要なんて」
「君の仕事はファーストチルドレン・綾波レイに指示を下すこと。
 それは君の父親にしか出来ない仕事だった。必要なことがあれば、おいおい覚えていけばいい。
 みんな、出来ないことを君にやらせるほど愚かじゃないよ。」
「でも……」
「それに、あの面々を目の前にして君が見せた剛胆さ。あれこそ父親ゆずりだな。
 期待してるよ。碇シンジ君」
「……」
652593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/12(水) 00:58:01 ID:???
本当にいったいなんの冗談なのか。
今は緊急事態の筈、しかしこの冬月さんて人はこの成り行きが面白くて仕方が無さそうだ。
ずっとニヒルな笑顔を浮かべながら僕との会話を楽しんでいる。
が、そこにミサトさんが割り込んでくる。
「あのぉー!お楽しみ中にすみませんがぁー!」
「え?あ、はい」
「エヴァ初号機の出撃。構いませんね、総司令さん?」

そんな皮肉げな口調で言われて、いい加減ぼくも頭に来た。
「……僕がダメっていったら出撃させないんですか?」
というと、かなりムカッとした顔をしたミサトさんだったけど流石に自制したようだ。
何も言わずに振り返り、オペレーター達に指示を下す。
「エヴァンゲリオン初号機、出撃準備!」

その号令と共に司令塔が騒然とする中、僕はリツコさんに引っ張られていく。
「さ、この席について。これでレイに直接、話しかけることが出来る。」
そうしてリツコさんに連れて行かれた場所は、
この司令塔の頂上と言うべき高さにある巨大なデスク。
……本気で僕を総司令に据え置くつもりなのかな。
「あの……本当に僕を……」
「とりあえず言う通りにすればいいわ。不安に思うことなど何一つ無い。」
653593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/12(水) 00:59:28 ID:???
「でも、レイに指示するって言っても……彼女、操縦なんて何ひとつ判らないんじゃ……」
「エヴァはパイロットとの神経接続によって操縦を可能とする。
 つまり、パイロットは動きをイメージさせればいいだけ。」
簡単なようで、微妙に難しいと思うけど。
「レイはあなたの言うことしか聞かない。逆にあなたの言うことなら何でも聞くはず。
 もはや、あなた抜きにはこの作戦は遂行できない。頑張って。」
「……はぁ」
要するにエヴァを操縦するレイを、僕が操縦するって言うことか。

そうこうしているうちに、遂にエヴァは地上に排出された。
今や夜となり、ライトアップに照らされた街中で轟音を立てて出現したもの。
あれこそが僕が格納庫で見た巨大ロボット、エヴァンゲリオン初号機。
しかし、なんであんな怖い顔にデザインされてるんだろう。
「あの……どうすれば」
少々あせった気持ちでリツコさんに尋ねる。
「待ちなさい。エヴァが動けるのはリフトオフしてから。」
「り、りふとおふ?」
「まだエヴァは拘束具で固定されている。それが解かれて始めて発進したことになる。
 それが……」
その時、ミサトさんが叫んだ。
「エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!」
654593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/12(水) 01:00:46 ID:???
「ね?あのお姉さんがリフトオフって言ってから。」
って、もう始まってる訳じゃないですか。
そして目の前のモニタに映し出される様々な視点から見たエヴァと「使徒」との状況。
そして、その傍らに写っているのがレイの横顔。
なんだか、ぼーっと座っているだけだし。大丈夫なのかな?本当に。

「あの、なんて指示をすればいいんですか?」
「とりあえず歩かせてみて」
「は、はい。えーと……レイ、聞こえる?」
僕がマイクに向かって問いかけると、その瞬間にレイはキョトキョトと首を左右に振る。
声がどこからするのか探しているのだろう。そして見つけたらしい。
いわゆるカメラ目線でこちらの方をジッと見ている。
「向こうのモニタにあなたの顔が写っている筈よ。」

そういうことか。
僕を見つけてほっとしたのか表情を少し和らげた様子がうかがえる。
いや安心している場合じゃないよ、レイ。
「あ、あの、レイ、聞こえる?いや、まず前を見てよ。そして歩いて。歩くんだよ。」
するとレイは素直に正面を向いたが、またこちらを見て小首を傾げるような顔をした。
あれは、こんな狭い所でどうやって歩くの?ていう顔だ……な、なんだかまどろっこしい。
655593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/12(水) 01:02:16 ID:???
「あ、あのね?えーと……」(ちょ、ちょっとリツコさん!何て言えば)
(だからイメージさせるのよ。自分が歩いているところを想像させればいい。)
(だ、だからぁ、それを何て言えば)

そんなふうにリツコさんと僕が小声で話していると、今まで以上に怖い顔でミサトさんが振り返る。
「リツコ!ダメならそう言って!引き上げさせるわ!」
「待ちなさい。焦っても仕方がないわ……マヤ、パイロットの状態は?」
「シンクロ率、32.7%……ただ、心拍数、血圧、血中酸素濃度、いずれも低下しつつあります。
 やはり、もうレイは持たない……」
「それでいいのよ。構わないからこのまま続行。」
「え、しかし……」

なにかマヤさんとリツコさんが言い合ってるけど、こっちはこっちで必死だ。
「レイ、判る?イメージっていうか、想像するんだよ。自分が歩いていることを思い描いて……」
でも、エヴァは歩き出すことはおろか、指一本動かそうとする様子も見せない。
あのロボット、本当に動くのかな。
「ねぇレイ、聞こえてる?あの……」

その時だった。
使徒と呼ばれている巨大な怪物が、遂にエヴァを見つけて近づいて来るではないか。
当然と言えば当然だ。
これまで破壊の限りを尽くしてきた使徒が、エヴァみたいな巨大なものを放っておく筈はない。
656593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/12(水) 01:03:43 ID:???
「き、来たよレイ!あ、歩いて!ていうか逃げて!」
と僕が叫ぶと、操縦席のレイは余計にあたふたして藻掻くような様子を見せていたが、
なんと初号機が突然に走り出したではないか。

「走った!すごいわ!」
驚くリツコさん。それに続いてスタッフ達が、おおおっとどよめく。
そうか。もしかしたら、もっと大ざっぱに目的を言えばいいのかも。
って言っても……あれじゃ女の子走りだ。ほら、もう追いつかれた。

「シンジ君!街を踏み壊しながら鬼ごっこさせてる場合じゃないわ!使徒に対して攻撃!」
なんか一言多いな、ミサトさんって。
「はい。レイ!そいつを倒すんだ!えーと、ぶん殴るとか蹴ったおすとか!」
が、もう遅かった。
使徒は初号機に襲いかかり、顔と腕に掴んでそのまま真っ二つに引き裂こうとしている。

『っ……』
モニタに映るレイの顔がゆがみ、声にならない悲鳴が聞こえてくる。
やばい、このままではやられてしまう。僕は必死で指示を出そうとする。
「レイ!ふりほどいて、あの……え?」
657593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/12(水) 01:05:29 ID:???
その時だった。
隣にいたリツコさんがデスクを操作して、プチンとモニタを切ってしまったのだ。
「な、なにをするんですか!」
「レイに指示を出すのはここまで。後は初号機に任せるわ。」
「え……?」

使徒はさらにやりたい放題に初号機を痛めつけ続けた。
掴んでいた腕を、そして頭部を破壊し、そのまま初号機は地面に叩き付けられる。
「何をしてるの!シンジ君!早くレイに立ち上がらせて!」
叫ぶミサトさんだが、そんなことを言われてもモニタを切られてる以上はどうにも……
「リツコさん!」
僕はリツコさんに振り返って叫んだが、彼女は動じない。
「構わないから放っておきなさい……始まるわよ。」

そしてオペレーター達が悲鳴を上げ始める。
「左上腕、稼働不能!頭蓋に亀裂!初号機、活動レベルさらに低下!」
「パイロット、生命維持に支障をきたしています!心拍数、血圧がさらに……」
「神経接続が次々と断線!モニタ出来ません!」
「初号機、活動停止!完全に沈黙しました!」

が、それを聞いてもリツコさんは動じない。
まるで予定通りに事が進んでいるかのように。
658593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/12(水) 01:07:54 ID:???
何より僕は心配だった。
このモニタを切った状態では、レイは操縦席で完全に孤独になっている状態では?
「リツコさん……これではレイが……」
僕はそれを告げようとしたが、リツコさんは一言。
「始まるわよ。」
……何が?

その次の瞬間、マヤさんが絶叫する。
「しょ、初号機活動再開!暴走状態です!」
659593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/12(水) 01:09:04 ID:???
とりあえず、ここまでっすー
660名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/12(水) 02:52:58 ID:???
りっちゃんが語り部かー
切口おもしろいね
661593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:15:08 ID:???
「え……あの、暴走って」
僕はリツコさんに尋ねようとしたが、彼女はモニタを食い入るように睨んだまま動かない。
さらに、隣にいた冬月副司令が一言。
「勝ったな。」
ええ?

その時だった。
エヴァ初号機が一気に豹変したのだ。
固定されていたかに見えた顎が無理矢理にこじ開けられ、そこから放たれる巨大な咆哮。
そして次の瞬間、初号機は猛然と使徒に向かって走り出す。
変わるはずもないその姿は二足歩行の人のそれでありながら、恐々しい肉食獣と化している。
もう言葉を尽くそうにも尽くせない。あれこそ「暴走状態」以外の何者でもなかった。

もはや司令塔のスタッフ達もパニック寸前の大騒ぎだ。
「制御、戻りません!モニタ不能!」
「パイロットの状態不明!」
「さ、左腕復元!……し、信じられない!」
「初号機が使徒のATフィールドを引き裂いて……いや、浸食しています!」
正直、いってることがさっぱり判らないけど、
とにかく信じられないことが立て続けに起こっているらしい。
662593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:16:33 ID:???
そんな混乱の中、僕はどうにかリツコさんに尋ねることが出来た。
「あの……そんな……あれはレイが?」
「違うわ。あれこそ、初号機の本来の姿。」
「本来のって……」
「暴走状態とは制御が不可能となり、自らの意志で行動している状態のこと。」
「それじゃ、レイは?操縦しているレイはどうなったんですか。まさか……」
「……」
「リツコさんは、あれを意図的に……?」

その僕の問いかけに薄く笑ってこう答えた。
「鋭いわね。まさに総司令の名にふさわしい。」
「……からかわないでくださいよ。モニタを切ったの、リツコさんじゃないですか。
 初号機に任せると言って。」

そうこうしているうちに事態が急変する。
なんと使徒と呼ばれる怪物の身体がゴムのように伸びて、
初号機を完全に包み込んだではないか。

「自爆する気!?」
絶叫するミサトさん。まさしくその通りだった。
663593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:17:54 ID:???
 ズドドドドドドド……
 
使徒と、そして初号機が居た場所に巨大な火柱があがり、そして何もかも判らなくなる。
その有様を見て凍り付くスタッフ達の顔。が、それが次第に恐怖で満たされていく。
巻き上がった火柱の中から、何事もなかったかのように姿を現した初号機の姿を。
あれほどの爆発の中を……無傷で?

「あれが……エヴァンゲリオン……」
僕は思わずそうつぶやいた。何も判らない僕でも判る。
その姿、その力がどれほどの驚異であるか、ということを。

「制御、戻ります!あ……パイロットの」
「マヤ!」
「え?あ、はい!パイロットの生存不明!初号機、再び活動レベルが低下!」
「ミサト?」
「判ったわ!作業員、並びに医務班は初号機の活動停止と同時に現場に急行!」

……なんだ?今の。
誰が何を言っているのか判らなかったけど、間違いない。
リツコさんがマヤさんのアナウンスを制止したのだ。
664593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:23:57 ID:???
「さあ、シンジ君。あなたは全てを見ておく必要があるわ。私と一緒に来るのよ。」
そういってリツコさんは僕の腕を無理矢理に引っ張っていく。
「り、リツコさん、ちょっとどこへ?」
「現場よ。さ、急いで……マヤ?」
「……はい、医務班に手を回します。」

そして連れてこられた場所。
そこは使徒とエヴァ初号機が踏み荒らした瓦礫の山であった。
既に作業員が詰めかけ、初号機には幾十にもワイヤーが張り巡らされている。
成る程、暴走直後だから暴れないように縛り上げたということか。
「あの程度で、本気で暴走を食い止められるとは思えないけどね。」
僕の考えていることを覗き込んだかのようにリツコさんは解説する。
まあ、時間稼ぎぐらいにはなると思うけど。

けど、そんなことはどうでもいい。レイは無事なんだろうか?
見れば操縦席であるエントリープラグが排出されて、クレーンでしずしずと下ろされているところだ。
そこに医務班と思われる白い全身スーツの連中が、医療器具らしいケースやタンカを抱えてどっと取り囲む。
「さ、来なさい。」
そうリツコさんに促されて、僕を人の輪の中に引っ張り込んでいく。
いいのかな。僕なんかがこんな立て込んだ現場に近づいても。

665593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:25:14 ID:???
「赤木博士!なんですか、その子供は!」
ほら、やっぱり。医務班らしい一人から見とがめられた。
でもリツコさんは構わず、
「この子はもっとも重要な関係者です。ほら、シンジ君。」
そういって僕を前に押しだし……え?
「ああああっ!」

思わず僕は叫び声を上げた。
エントリープラグのハッチが開かれ、そこから転がり落ちてきたもの。
それは人の頭部だった。その後になって、どさりと首のない体がドサリとこぼれ落ちる。
それは間違いなく綾波レイのものだった。

「あ、あ、あ、あ……」
僕はもう言葉に出来ない嗚咽を上げていた。
リツコさんはその体に近づき、それが身につけているプラグスーツのジッパーを下ろす。
そして、買い物袋をひっくり返すようにスーツを逆さにして振ると、
どさどさとこぼれ落ちてくる胴体の破片、腕、手のひら、指、足……

「うわああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」
666593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:26:42 ID:???
-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

気が付くと、僕は見知らぬ天井を見上げていた。

どこだろう、ここは。
ゆっくり身を起こすと、僕は白衣を着せられていた。
どうやら患者が身につけるものらしく、僕が寝ていたのは病院のベットらしい。
ベットから下りようとしたけど……なんだか体がフラフラする。
なにか投薬されたのかも知れない。風邪薬を飲んだときと同じ感じだ。
腕を見れば注射の後にするガーゼが当てられている。恐らく点滴でも受けたのだろう。

そのまま部屋の外に出てみると、今はもう真夜中だった。
誰もいない閑散とした長い廊下を月明かりが照らしている。
僕はそのまま漂うようにあてどなく歩き始めた。

気が付くと、僕は待合い場所らしいロビーで座っていた。
なんだろう。別に忘れてしまったわけじゃないけど思い出せない。
僕がNERVにやってきて、お前は総司令だとか何とか紹介されて、
そして使徒と巨大なロボットが戦ってて、そして……
そして、そのパイロットは……

パイロットは……
667593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:28:24 ID:???
カチリ。

それはライターで煙草に火を付ける音だった。
何時の間にやってきたのか、隣にリツコさんが座っていた。

「……レイはね。あなたに最初に見せた通りに人の手で生み出されたクローン人間なの。」
「……」
「この前、説明した通りに使徒と呼ばれる怪物によってセカンドインパクトが起こった。
 世間では隕石の衝突とか発表されているけどね。それが真実。
 その人類の半数を失うに至った使徒の再来が我々に迫っていた。そして、それは遂に訪れた。」

「そのために……レイを?」
「使徒を倒すには同じ力が必要。そのため、セカンドインパクトのあとに残った使徒アダムの形骸、
 それを我々が利用することで、使徒に対抗する計画が立ち上がったの。
 それがE計画、Project-Eva……私がその責任者。」

「リツコさん、そのためにレイを死なせたんですか?」
「けれども、使徒の体を制御するには並大抵の事ではなかった。
 その体を制御するには使徒アダムとの全神経の制御が必要で非情に困難と思われた……けどね?
 使徒アダムの体は人間とそっくり同じ構造なの。それもそうね、アダムはいわば我々全ての父に等しい存在。」
668593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:30:11 ID:???
「ねえ、リツコさん。あなたはワザとレイを死なせて……」
「でも、完全に使徒とパイロットをシンクロさせることは不可能に近かった。
 誰も、誰かと同じ肉体を持っているものなど一人もいない。DNAが違う、といえば理解できるかしら。
 そういうことなら誰もがみな同じ事を考える。クローン技術でシンクロ可能な人間を生み出すこと。」
 
「そんな……だからといって……幾らでも作れるからと言って……」
「そうね。私はもはや、無尽蔵に生み出せるレイなら幾らでも犠牲にして良い存在だと思っているかもしれない。
 私はね。E計画の責任者として、レイに愛情を注ぐことは許されないの。」
 
「……」
「あなたが呼び起こしたレイは、完全に成熟した体ではなかった。
 あなたのお父さんが育てていたレイとは違い、薬品の中で急速に14歳の年齢まで育てられた物。
 それはそれで完成間近だったのだけど、でも使徒襲来に間に合わず未成熟の状態で表に出すしかなかった。
 今回は、そのことをこれ幸いとして暴走状態の誘発に利用した。
 突然にパイロットの存在が失われて、不穏な状態のエヴァの足かせが外され、エヴァ自身の思う様に……」

「……」
「私はそれでいい。レイを愛することが出来ない立場で構わない。
 あなたを総司令にしたことは伊達じゃないわ。
 これから先、お父さんに変わってレイを育てるのは、あなたにしかできない仕事。」
「……?」
669593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:32:24 ID:???
「さあ、来なさい。新しいレイを起こすわ。今度は大丈夫……次こそレイの完全体よ。」
「……でも、戦わせるんですよね。次に現れる使徒と。
 それでレイが死んだら、あるいは使えなくなったら、また再び……」
リツコさんはそれには答えず黙って席を立ち、歩き始めた。

僕は病室での白衣のまま、再びリツコさんに伴われて「レイの生産工場」までやってきた。
そして、新しいレイの肉体が引き上げられて蘇生の作業が施される。
……蘇生っていうのは違うか。いわば、レイの電源を入れる作業、といえばいいのか。
リツコさんは、「あとはよろしく」といってその場を立ち去り、
後に残されたのは僕と作業しているマヤさんだけになった。

もう、このレイはあの時の子とは別人なんだ。
何ともいえない気分でそんなことを心に唱えているとき、マヤさんが突然に口を開いた。
「前回のレイは確かに状態が不安定だったのだけど、死んだ原因はそれだけじゃないんです……
 シンジ君、確か先輩……赤木博士は、レイとの通信を途中で切ってしまったんですよね?」
「……はい。」
「この子、もしかしたら孤独に耐えることが出来ないんじゃないかと思うんです。
 更に前のレイ、あなたのお父さんが長年にかけて育てたレイにも同じ事が起こったの。
 総司令が亡くなられた後、レイは完全に自我を失い……そして肉体まで崩壊してしまった。
 ホントなんですよ……信じられない話だけど。」
「……」
670593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:34:51 ID:???
「なんだか、一人にすると死んでしまうウサギさんみたいね。ほら、目だって赤いし。
 ……ああ、その話ってガセだったんでしたっけ。あはは……」
そんなことをいいながら苦笑いするマヤさんは、今にも泣き出しそうに目を潤ませていた。

そして新しいレイを伴い、いわば産湯を使わせるためにシャワー室へと連れてきた。
そこには既にタオルと着替え、それも僕の分まで用意されていた。
これ、リツコさんかな。マヤさんはずっと作業してたし。

そしてシャワーを浴びさせる。
なんだか、以前に見た映像を再生しているかのようだ。
あの時と全く変わらない。
気持ちよさそうにシャワーを浴びて、僕の愛撫を従順に受けている。

そんなレイを見て、僕は思わずこう言った。
「おかえりなさい。」

すると、レイはしばらくキョトンとした顔をしていたが、やがてか細い声で返事をしてくれた。
「……ただいま。」
それが、レイの初めて口にした言葉だった。
671名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/13(木) 00:42:31 ID:???
科学者としてのりっちゃんが前に出てるのね(と、見せかけてやっぱり女としての…か?
ミサトさん出番少なくてカワイソス
ただいま、って原作意識してる?
続きを期待
672593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/13(木) 00:44:27 ID:???
とりあえずここまでですー
673名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/13(木) 01:26:12 ID:???


三人目通り越して、四人目のレイか…。
674名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/13(木) 05:29:15 ID:???
中々深いんでないのこれ
675名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/13(木) 10:25:37 ID:???
age
676名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/13(木) 12:13:52 ID:???
age禁止
677名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/13(木) 21:54:35 ID:???
>>673
いや、原作と違うんだし、今回死んだのが二人目かもよ?
678名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/14(金) 13:37:50 ID:???
>>677
人数の上から言うと今回が4人目だと思いますよ。
ゲンドウ死亡時に自己崩壊→2人目
初号機暴走時に自己崩壊→3人目
今回登場→4人目

個人的には今回登場した4人目のが原作での3人目で、
それが魂が誕生した最後のレイだと予想しますけど。
679名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/14(金) 21:38:43 ID:???
>>678
「ゲンドウ死亡時に自己崩壊したレイ」が一人目かもしれんだろ?
二人目と断定できる描写がどこかにあったっけ?
あったなら俺の見落としだが。
680593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/14(金) 21:58:30 ID:???
>>673-679
私が回答すべきことなのに恐縮です。
「ゲンドウの死」以前を定義していないので、
その過去を原作通りとするならば>>678さんが整理していただいた通りです。が……

正直なところ、先行きとかあんまり固まっていない(いきあたりばったり)状態だし、
それにつれて過去も作り替える(っていうか辻褄を合わせる)ことをするかもしれません。
でも、現状は4人目とお考えください。

それから、ついでに、なんですが、
シンジのレイに対する呼称は「綾波」が常識ですが、それはクラスメイトという立場からであり、
今の話の設定では「レイ」と呼ばせる方が適当かな?と、少々迷いましたが決めました。
ご了承ください。

まだまだ話を作り始めたばかりなんですが、皆さん読んでいただきレスを付けていただいて感謝です。
皆さんのおかげで、続きを貼ることができます。
ありがとです。
681名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/14(金) 22:40:28 ID:???
自演乙
682593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/14(金) 22:54:43 ID:???
ゼーレ最高幹部会議。

『……なんだね?君は。』
「あ、はい。碇シンジです。」
『だからなんだと聞いているのだ。なぜ君のような子供がこの会議に出席している!』
「えーと、あの、僕は他界した碇ゲンドウの息子で、このたび総司令に就任して……」
『はあ!?何を言っているのだ!そのような重大なことは君らだけで決定できることではない!
 冬月はどうした!副司令の冬月はどこにいる!』
「冬月さんは忙しいので、とりあえず僕が出席してご挨拶して判らないことはメモを取るようにと……」
『なんだと?いったい、あの男は何を考えている!』
「えっと、あの男は何をかんがえて……」
『そんなことはメモを取らんでいいッ!!』

なに?この爺さん達。
始めっから怒りっぱなしだし、何でこんなに偉そうなんだろう。
こっちは挨拶してるのに名乗りもしないし、SOUND ONLYとかいって顔も見せない人もいる。
あれ?あそこの人、消えちゃった。怒って抜けちゃったのかな。
って見てたら、キールとかいう一番偉そうなおじさんが、とびきりデカイ顔で乗り出してきた。

『とにかく、これでは話にならん。冬月はどうした?
 今すぐ呼び出したまえ。どこに居ようと電話のみで出席可能だ。』
683593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/14(金) 22:56:03 ID:???
「ああ、でも政府の要人と会うので連絡して欲しくないそうです。
 来週の火曜日なら空いてるので、今回は議題だけ聞いてくるように言われて……」
『……』
「あの、特にないんでしたらこれで……」
『待ちたまえ。議題というなら、今回の使徒殲滅において事後処理に必要となった莫大な予算、
 それから、今後のエヴァの運営について……』
「はい……えーと、こんかいのしとせんめつ……あれ、せんめつってどう書くんだったかな。
 とりあえずひらがなでいいか。そのじごしょり……」
『……もういい。退席したまえ。』
「退席って……これ、電子会議でしょ?」
『モニタのスイッチを切ればいい。』
って、こっちが切るより先に向こうの人達が消えちゃった。

次の瞬間、僕の周りを取り囲んでいたホログラフィが消えて総司令執務室の照明が点灯する。
そして、僕から幾らか離れたところから姿を現した人。もちろん副司令の冬月さんだ。
最初から居ないことにして、ずっとこの会議を眺めていたのだ。
そして僕を見るなりクックックと笑い出す。もう……こっちは死ぬほど緊張したというのに。

「冬月さん……これでよかったんですか?ていうか、いいんです?こんなことして。」
「ああ、上出来だよ。こうしないと君を相手にしてくれそうもないからな。」
684593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/14(金) 22:57:53 ID:???
「まったく相手にされてませんよ。いったい僕を司令にしてどうするつもりなんです?
 僕なんて、レイの世話役にしか役に立たないと思うし……」

そう言っても、冬月さんはニヤニヤ笑ってばかりで何も言ってくれない。
ゼーレの人達もそうだけど、この人もこの人だ。
いったい何を考えているのだろう。なんか、先が思いやられる……

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

「えーっ!?シンジ君をゼーレの人達に突き出しちゃったの?」
葛城ミサトの驚愕の声に、他の客達まで一斉に振り向く。
そのミサトの様子を面白そうに眺めながら、すましてグラスを傾ける赤木リツコ。
二人はバーのテーブルで並んで座り、
その対面に居るのは会議の傍聴を勤めたばかりの冬月副司令。

「いやなに、シンジ君はこのE計画に深く関わることになるのだから、と思ってね。
 あの連中とのつき合いは避けて通れない。ましてや、総司令に就任したからにはな。」
「……だから、副司令。根本的にそれがおかしいと言ってるんです。
 まだ14歳の子供に、総司令などという責務を負わせるなんて……」
と、ミサトは不審顔でブツブツ言っていたが、冬月もリツコも笑ってばかりで何も答えない。
そして冬月はビールの残りを飲み干して立ち上がった。
685593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/14(金) 22:59:33 ID:???
「それじゃ、私はこれで失礼するよ。シンジ君にレクチャーするため、
 いろいろと資料を揃えておかなければならんのでね。君達もほどほどに。」
「あ、はい。お疲れ様です。」

そして冬月が去った後、黙って二人の会話を聞いていただけのリツコがようやく口を開いた。
「言ってみるものね。まさか副司令がこうして一緒に飲んでくださるなんて思ってもみなかったわ。」
「総司令が亡くなられて足かせがなくなった感じね……リツコもそうじゃない?
 あんたこそ気落ちしてるだろうって思ってたんだけど、意外とスッキリした顔してるし。」
「男と女の関係なんてそういうものよ。ミサトこそ、ウブじゃないんだから判るでしょうに。」
「あんたの恋愛観を押しつけないでよ。」
「ウフフ……」

「あ、そうだ。シンちゃんって、どこで寝泊まりしてるの?」
「本部でお父様が使われていた部屋があるの。そこをそのまま利用してるわ。
 なんでも広すぎる上に届いた荷物が少なくて寂しいって嘆いてた。」
「おー?噂に聞く総司令ルームか。よしよし、今度あそびにいってやるかな?」
「あら、なんだか仲がよさそうね?シンちゃん呼ばわりしてるし。
 最初の時がアレだったから、そりが合わないと思ってたわ。」
「昨日さぁ……あいつ、私の所に挨拶しにやってきたのよ。
 あの時は生意気言ってご免なさい、これから宜しくお願いしますってね。
 可愛いところあるじゃない?でも、小憎(こにく)らしいところはかわんないけどぉー」
「あら、そうだったの。」
686593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/14(金) 23:01:08 ID:???
「でもいいなぁシンちゃん。NERVに通うの、エレベータで下りてすぐだもんね。
 よし、もっと仲良くなっておいて気軽に泊まり込めるようにしておこうっと。」
「あらあら、14歳の男の子を食べちゃうつもり?」
「ちょっとぉ!いくら何でも子供に手ぇ出しゃしないわよ!」
「でもダメよ。シンジ君、その部屋でレイと同棲中なんだし。」
「あら、それは残念……って、えええええええええええええええええっ!!」

「ミサト、周りに人が居るのよ?そんな大きな声を出さないで。」
「ちょっとぉ……マズイわよ。二人とも第二次成長期の性欲真っ盛りの年頃よ?」
「あら、いいんじゃない?二人がセックスをするほど仲良くなってくれたら有り難いわ。
 これから二人三脚で使徒と戦って貰わなくちゃならないんだから。」
「だから、それがマズイっていってるんだけど……
 よし、シンちゃんにビシッと言っておかなきゃ。せっかくのパイロットを壊されたら大変だし。」
「そう思ってゴム渡しておこうとしたんだけど、そんなことしませんっ!ってシンジ君怒っちゃって。」
「リツコ……いい加減にしてよ……」
「大丈夫。ちょっとだけ、おまじないをしてあるから。」
「なにそれ?」

そんなこんなで、二人の夜は更けていく……

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687593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/14(金) 23:02:43 ID:???
で、僕のレイとの新しい生活がスタートした。

正直、レイを手取り足取りで世話をしなきゃならないのかと不安でしょうがなかったけど、
意外と自分でいろいろ出来るみたいで一安心した。
ある程度の基礎知識は埋め込んであるって言ってたのは、確かにその通りだった。
「食べる」「飲む」とか「着替える」とか普通に出来るし、
水道とかお風呂やトイレとかの使い方を知らなかったみたいだけど、一度やってみせれば大丈夫。
意外と物覚えは良いみたい。今も一人で風呂に入ってるし……ん、出てきた。

って、前言撤回。
「レイ、その……脱衣所で服をきてよ。あの、僕も男だし……って言ってもわかんないかな。
 あーもう、ぱんつは腕に通すんじゃないんだってば。足を通すんだって。
 ……そうそう、それでいいよ。え?ああ、ブラか。弱ったなぁ……」
確かに背中のホックって難しいし、手伝わなきゃしょうがないか。
でも男の僕じゃ判らないし……こんど、マヤさんにでも相談してみるかな。

そんな訳で、ここ数日間はレイの世話に振り回されっぱなし。
今日で休暇も終わりで、明日からNERVの皆さんからいろいろ教わらなきゃならないし、
もう正直いって一杯一杯。
あーあ、僕は何でこんな目に遭わなきゃならないんだろ。
688593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/14(金) 23:04:01 ID:???
とりあえず睡眠だけでもしっかり取ろう。僕も風呂に入って寝るか……え?
「レイ、一緒に入りたいの?今、上がってきたばっかじゃん……どうしても?」

ふるふるふるって首を横に振ってるってことは「どうしても」ってことか。
まずいなぁ。抱き癖がついたみたいに僕に何かして貰うことばかり考えてるし。
ここはガンとして……

「……しょうがないな。それじゃ、おいでよ。」

やっぱりダメだ。この赤い瞳にまっすぐ見つめられると、どうにも……
689593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/14(金) 23:05:14 ID:???
とりあえず、ここまでですー
690名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/15(土) 00:10:56 ID:???
GJ!!
冬月が無駄に活き活きしててなんか新鮮だ
続きも期待してます
691名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/15(土) 02:24:29 ID:???
このレイ萌えるwww
続き期待してます!
692名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/15(土) 03:38:32 ID:???
痴呆化か……
693名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/15(土) 04:00:33 ID:???



スペアの移行続きで
鬱展開かと思いきや、
シンジ(の天然振り)が良い意味で中和してると思う
694名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/16(日) 19:27:44 ID:???
おつ
695593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/16(日) 21:17:27 ID:???
「レイ、それじゃ行ってくるね。留守番、大丈夫だよね。」
こくり……(うなずいてる)

「お腹が空いたら、冷蔵庫にサンドイッチがあるからね。牛乳と一緒に食べるといいよ。」
こくり……

「コンロとか危ないものに触っちゃダメだよ。何かあったら、あのボタンを押してね。
 誰か来て助けてくれることになってるから。」
こくり……

あの「ただいま」以来、レイは一言も口をきかないな。まあ、いいか。

「それじゃ、良い子にして待っててね。行ってきます。」
「……いってらっしゃい。」
お、返事してくれた。取りあえずはひと安心、かな?
行ってくるといっても、行き先は下の階のNERV司令塔だからエレベーターで下りるだけなんだけど。
さて、今日からスタッフの皆さんにいろいろレクチャーして貰うことになっている。
でも……

なんで、そうまでしてもらって、総司令なんてやらなきゃいけないんだろ?
696593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/16(日) 21:18:42 ID:???
「よーし、来たわねシンちゃん!
 私はエヴァとその戦い方についてビシビシッと叩き込むから覚悟してついて来なさいよ!」

最初は気合い十分の軍人上がり、葛城ミサトさんから。
実はいうとミサトさんに会う前に、いくつかアドバイスをリツコさんから貰ってた。

(まずは最初に開口一番で謝っておきなさい。
 ほら、最初の使徒との戦闘の時、互いに嫌みタップリのやり取りしちゃってたでしょ?
 ミサトはああだし、あなたも意外とトゲトゲしく皮肉を言って楽しむ性分があるみたい。
 それはそれで構わないけど、少し可愛いところを見せて仲良くしやすい土壌を作った方が良いわ。
 ミサトはあれでけっこう世話好きだし、味方に付けると役に立つことが必ずある。)

そう言うリツコさんも、知り合いを冷たい目で分析するのが好きみたい。
ま、おかげでミサトさんとは衝突せずに済みそう。

次は副司令の冬月さん。
「さて、いいかな?今、渡した資料を持ち歩いて、ことあるごとに目を通しておきたまえ。
 NERVの各部門と、それらの役割とどういう場合にどのような動きをするのか、十分理解しておくんだ。
 丸暗記ではなく全てを関連づけて把握すればいい。私の言うところにアンダーラインを引いて……」

流石は元大学教授。久々に学校の授業を受けてる気分。
697593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/16(日) 21:19:51 ID:???
次、オペレーターの日向さんからMAGIコンピュータについて。

「RDBとか扱ったことは無いかな?中学じゃそんなことは教えないか。
 とりあえず、画面のメニューに従って操作すれば誰でも使えないこともないけど、
 知っておくといろいろ便利なコマンドがあってね。まずは……」

なんていうか、僕のためというより自分の知識を披露したいって感じ。
まあいいけど。

そしてNERV本部の中を案内してくれたのはマヤさん。

「ここが食堂です。支払いは給料天引きなんだけど、総司令となったら食べ放題かな?
 アハハ、そんなわけないか。で、その隣の喫茶が意外と本格派なんです。
 コーヒーとかすっごく美味しいし……そうそう、そこのチーズケーキが最高なの。
 ね、ね、ちょっと寄って……」
 
そんな感じで、時には僕と腕を組んだりしながらデート気分で案内してくれた。
僕に気を使ってくれたのかな。無理に明るく振る舞ってくれてたような。
「レイの生まれた所」で出会って、暗い顔を互いに合わせてばっかりだったし。
698593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/16(日) 21:21:32 ID:???
そして、襲来してくる使徒については青葉さんから。

「おお?シンジ君、チェロなんて弾くんだ。凄いじゃないか。
 な、な、俺さ、ギターやるから二人でセッションとかやってみない?
 ほら、ウッドベースってあるじゃん。え、出来ない?
 俺のダチがベースやってるから、そいつに教わって……」
 
何?この人。仕事の話をしましょうよ……

そう思ったけど、それは前座の余談。
実は僕にとって青葉さんのレクチャーは特に重要だった。

「青葉さんはここの担当なんですか。」
「伊吹と一緒にな。なんか貧乏くじを引いた気分だよ。世の中には知らなくてもいいことは沢山ある。
 かなりレベルの高い機密事項に関わってる訳なんだが、出来ればこんなことは知りたくなかった。」
「……なんだか同感です。」

襲来する「使徒」についてざっくり説明を受けてから僕達がやってきたのは「レイの生産工場」。
といっても何度もここに来てるんだけど、改めて説明をうけることになった。
薬品の中で数え切れない「レイ」が漂う、NERVにとって重要な秘密の場所。
間違いなく僕にとって、もっとも理解しておかなければならない分野だろう。
699593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/16(日) 21:23:17 ID:???
「青葉さん、聞いても良いです?」
「ん、なんだ。」
「こんなに必要なんです?レイの体が。」
「本体の予備の他には、怪我をしたときなどの交換のパーツとしても使われている。
 けど、それだけじゃない。エヴァの量産型を建造する計画があがっているらしい。」
「量産型……」
「使徒を倒すための戦力増強……だけじゃないかも知れない。
 軍事兵器として開発を進めようとしてるんじゃないかと俺は睨んで居るんだけどね。」
「……」
「使徒との戦いが済んだら、シンジ君は早くここから抜けた方が良い。
 こんなことに関わってちゃ禄なことはない。」
「……そうですね。」

「この技術が在れば、戦争なんかじゃなく医学にずいぶん貢献できるんだがな。
 音楽をやる奴にとって体を損なうのは致命的だ。俺のダチに事故ったあげくに腕を無くした奴が居てな。
 絶望して首を括ろうとして大騒ぎになっちまって。」
「……まあ、最新技術は軍事産業から出ることが多いですし。」
「確かにな。国家事業だから金のかけ方が違うし……さて、俺の説明はここまでだ。
 こっから先は赤木博士に聞いてくれ。更に下の階とかな。」
「……はい、ありがとうございました。」
700593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/16(日) 21:24:54 ID:???
なんか……なんともいえない気分だ。
まるで愛玩動物のように僕に慕っているレイが、戦場に狩り出されて戦うなんてとても想像が出来ない。
そうはいっても再度の使徒来襲が迫っている現状、戦う手段がレイ以外にないとすれば仕方がないのか。
……なんで、人間ってそうまでして生きて行かなくちゃならないんだろう。
ミサトさんが言っていたセカンドチルドレンが早く来てくれたらいいんだけど。
さあ、早く帰らないと。次はレイの世話という仕事が待ってるし。

「ただいま……ちょ、ちょっとレイ!」
僕は驚いて声をあげてしまった。
部屋に戻ると、真っ暗な玄関でレイが座り込んで僕を待っていたのだ。
「こんなところで何やってんのさ。まさか、僕が出てからずっとここで待ってたの?
 電気も付けないで……ん?レイ、泣いてるの?」

いや違う!目から血を流してる!それだけじゃない、腕や脚からも……
大変だ!

「り、リツコさん!リツコさんはいないの!誰か来て!早く!」
僕はあたふたしながらも携帯を取り出し、NERV全館に響き渡るほどの大声で叫び続けた。
701593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/16(日) 21:26:40 ID:???
その僕の連絡を受けて、リツコさんはすぐに医務班を引き連れて駆けつけてくれた。
そしてレイの具合を見ながら、何故か僕に謝る。

「ごめんなさい。完全体と言っておきながらこんな有様になってしまって。」
「いえ……もとから完全なことなんてありえませんから。」
「それも真理ね。そう理解してくれると助かるわ。
 青葉君から説明を受けたみたいだけど、レイに関してはマニュアルなんてないの。
 あなたのお父さんがレイを生み出した頃は私は単なる学生だったし、その時の資料なんて残っていない。」
「……そうなんですか。」
「肉体の崩壊が始まったばかりだったみたいだから、すぐに治ると思うわ。
 まだ耐久性が低いみたいね。いろいろデータを取って様子を見るから、シンジ君は……」
「はい、側を離れないように気をつけます。」

そういってリツコさんが立ち去った後、薄明かりの病室で僕はレイをジッと眺めていた。
本当にマヤさんの言った通りみたい。一人にしてしまうと死んでしまう蜻蛉よりも儚い存在。

父さんは何を考えてるのだろう。
溶けて消えてしまいそうな女の子を、生死をいとわぬ戦いに繰り出そうとするなんて。
確かにレイは作り物かも知れない。でも現にこうして生きて……

702593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/16(日) 21:28:41 ID:???
その時、ふっとレイの手が僕の腕に触れた。

「起きてたの?」
そう聞くとレイは微かに頷いて、僕の腕を掴んで弱々しい力で引っ張ろうとしている。
むしろレイの方が心配顔で僕の顔を覗き込みながら。
「どうしたの?何か言いたいのかな、レイ。あの……」
尋ねても何も答えず、レイは僕の腕を引っ張るばかり。
しゃべれない訳じゃないはずなのに。

ああ、そうか。
「それじゃ、一緒に寝ようか。」
そう言ってシーツをめくって潜り込むと、彼女は潤んだ瞳で頷き、僕を受け入れてくれた。

何も言わない。言う必要はない。何も言わなくて良い。言葉に何の意味もない。
あるいは、私はただ一緒にいてくれればそれでいい、どんな戦いが待っているとしても、と……
レイはそう言いたいのかも知れない。

僕はそのまま、かぼそいレイの身体にいだかれながら深い眠りへと落ちていった。
703593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/16(日) 21:29:46 ID:???
とりあえず、ここまでですー
704名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/17(月) 00:16:33 ID:???
乙。
読みやすいよ。貴方のは。
705名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/17(月) 01:31:24 ID:???
GJ
ぜひハッピーエンドになる事を望む。
706名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/17(月) 06:53:21 ID:???
白痴にするのは、現実の女性に対する恐怖心の裏返し。
ロリコンと同じ様な心理状態なんだろうね。
こういう展開のを読んでいると、書いてる人のコンプレックスが読み取れて面白い。
707593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/17(月) 08:07:28 ID:???
「レイ、それじゃ良いかな?エヴァの回収スポットとか一通り覚えてるよね?」

僕がそうたずねるとレイはモニタ越しに、こくり、と頷く。

「それじゃ始めるよ。目標、つまり使徒の赤いコアを狙って攻撃するんだ。
 ATフィールドを中和しつつパレットライフルで射撃。今日はそれをやるからね。」

こくり……

数日間の訓練を経て、レイはエヴァの操縦をかなり習得しつつあった。
それは僕の訓練も兼ねていて、僕は司令塔で指揮を取ることを想定して、
シュミレーターで訓練を受けるレイにモニタ越しで指示を出していく。
まあ、リツコさんの作った台本通りに進めてるだけなんだけど。
とりあえずレイの物覚えの良さは信頼できるし、
僕の言うことに二度聞きせずにテキパキとこなして……そうでもないか。
「何度いえば判るのさ。僕の顔じゃなくて前みてよ、前。」
ったく……

それはいいとして、
僕の周りにいるオペレーターの人達が時々クスクス笑うのが気になってしょうがない。
なんなんだろう?
708593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/17(月) 08:08:50 ID:???
ある時、ミサトさんが僕に声を掛けてきた。
「シンちゃーん!ねねねね、このサングラスかけてみてよ。」
「え?いいですけど……あれ、これ度が入ってるじゃないですか。」
「あなたのお父さんのものよ。それかけてれば、なんか御利益があるかもよ?」
「……そういうもんなんです?ああ、ごめんねレイ。続きをしようか。
 それじゃ、目標をセンターに入れてスイッチ……センターに入れてス……」
そう指示を出しながら渡されたサングラスをかけ、つい癖で両手を口元で組み合わせると、
今度はスタッフ全員から大爆笑が巻き起こる。リツコさんまで声を上げて笑ってるし。
……なんなんだよ、いったい。

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そんな忙しい日々を送ってたんだけど、ある時ミサトさんがこんなことを言い出した。
そろそろ学校に通え、手続きは全て済んでるから、と。
そして僕の目の前に突き出した制服と教科書一式。

「でも、ミサトさん。僕には司令としての仕事があるんでしょ?
 それに、レイの側を離れる訳には……」
「だぁーいじょうぶ!まだまだ修行中のアンタに、そこまで仕事をさせられないわ。
 それにレイも一緒に通うんだから、なんの心配もいらないわよ。」
「ええ!?でも、レイは以前とは、えーと、その、ほとんど別人なんだし……」
709593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/17(月) 08:10:33 ID:???
「その辺も踏まえて、精神的な病気にかかってますってことで手を回してるから。
 アンタがレイの付き人って事で学校側も了解済み。」
「よけい無茶ですよ。そんなの……」
「ンなこといって、義務教育をサボるなんて許さないわよ。それにレイも外の空気をあてなきゃ。
 あの子に問題がないようキッチリ世話するのもアンタの仕事よ。いいわね?」
「……はぁ」
ミサトさん……僕がどれほど気苦労てんこもりなのか判ってくれてないみたい……

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そうは言ってもしょうがない。僕も中学を禄に通ってませんっていう経歴なんて御免だし。
レイを連れて玄関から出ようとする直前、さんざん言って聞かせたことを繰り返し確認する。
「それじゃ、レイ。もう一度くりかえすよ?」
こくり……
「あ、いや頷くんじゃなくて、ちゃんと返事をして。いい?」
「……はい。」
「うんうん。まず、授業中は僕を見ないで前を見る。はい、復唱。」
「……授業中は前を見る。」
「僕がどこかに行っても、慌ててついて来たりしない。」
「……慌ててついて行かない。」
「お手洗いとか、必要なことがあれば自分一人で行動する。」
「……自分一人で行動する。」
710593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/17(月) 08:12:44 ID:???
「よし……まあ、授業中以外は必ず側についてるからね。大丈夫だよ。」
……こくり。

うーん、まあいいか。よし出発。

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「そうだったのですか。お父さんを亡くされたとは、綾波さん大変でしたね……」
そんな感じの校長先生の挨拶から始まった。僕に対しては、はいよろしく、で終わり。
本当に父を亡くしたのは僕の方だけど、実質的にはこれが正しいかな。
そして教室に連れて行かれて紹介にあずかるという段取り。

「えー、転校生の碇シンジ君です。それじゃ、この列の空いているところに。
 それから、綾波さんはしばらくご病気で休まれていましたが、ようやく復帰して……」
そんな先生の紹介にもシラっとしている生徒達。多分、レイは存在感がなかったんだろうな。
あとは、レイの以前の席が判らなかったぐらいで特に問題は無し。

何事もないように僕達は教室に飲み込まれて授業開始。
授業の方は問題はなかった。
しばらく学校に行ってなかったので取り返すのが大変だ、と思ったけど、
この学校の進み具合は大したことなくて助かった。
711593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/17(月) 08:13:53 ID:???
むしろ生徒よりも教師の方が私語、というか余談が多い。
ことあるごとに「あのセカンドインパクトが」とか言い出して、ろくに授業になってない。
まあ、いいんだけど。いい休息になりそう。

そうこうしていると、なにやらヒソヒソという声が僕を取り巻く。
何あいつ?綾波さんを名前呼び捨てで馴れ馴れしい、彼氏かな、等々……
まあ、こんなもんだろうな。予想はしてたけど。
って思ってたら、自分の使っている生徒用ノートPCに何やらメッセージが表示される。

 “碇君が、あのロボットのパイロットというのはホント? Y/N”

これは予想外。見渡すと女子の何人かがこちらを見ながら手を振っている。
ていうか、人の苦労を知らないとはいえ……
もう面倒だからシカトした。

そして昼休み。
「おい、ちょっと顔貸せや。おまえ……エヴァのパイロットやろ?」
はあ?なんだ、この関西弁野郎は。
「違うんか?変な怪物がやってきて疎開する奴が増えてるいうのに転校してくるんおかしいやろ。
 違うなら違うってハッキリ返事せんかい。」
712593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/17(月) 08:15:29 ID:???
だから、レイの付き人として、とか言いかけたけど、つい言ってしまった。
「だとしたら、どうなの?」
次の瞬間、胸ぐらを掴まれて引っ張られていく……はいはい、どうとでもしてください。
僕はされるがままに連れて行かれながら、大声で呼びかけた。
「レイ、大丈夫だからそこから動かないで!いいね!」
「うるさい!とっととこんかい!」

   バキィィィッ!!

はい、殴られました。
「お前の下手くそな操縦のお陰でなぁ!俺の妹が大怪我……」
気持ちは判る、と思う。でも、正直言いたい。
君の妹と同様、僕を慕ってくれる子を矢面に立たせなきゃならない僕の気持ちも判れ、と。
ほっておくだけで死んでしまいそうなレイのことに比べれば……

でも、こう言い返すのが精一杯。
「好きで乗ってる訳じゃない。」
もちろん、レイが。

はい、もう一発。 バキィィィッ!!
713593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/17(月) 08:17:15 ID:???
もう待ちきれなかったのだろう。
パタパタと駆け寄ってくる足音がする。レイだ。見なくても判る。
そして非力な腕で僕を助け起こそうとしながら、僕を殴った連中の後ろ姿をギロリと睨み付けた。

……レイ、怒った顔が怖い。こんなところもあるんだな。
なんだか、この学校で悪い影響を受けてしまいそうな気がする。
外の空気に、というミサトさんの言うことも判るけどNERV本部箱入りで育てたくなってきた。

「大丈夫だよ、レイ。ケンカにもなってないし。それに……」
僕はビリビリとバイブで震える携帯を取り出しつつ、こう言った。
「緊急招集だ。また、エヴァに乗らなきゃいけない。」

まあ、このレイにとっては初めてだけど……
714593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/17(月) 08:18:27 ID:???
とりあえず、ここまでですー
715名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/17(月) 15:14:28 ID:???
投下乙です

>そう指示を出しながら渡されたサングラスをかけ、つい癖で両手を口元で組み合わせると、
>今度はスタッフ全員から大爆笑が巻き起こる。リツコさんまで声を上げて笑ってるし。

ゲンドウが居なくなったおかげでかなり風通しが良い組織になってるなネルフw
716名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/17(月) 21:45:18 ID:???
>NERV本部箱入りで育てたくなってきた。
一瞬殴り返すのかと思ったけど、フィードバックが綾波に向かうんだな、このシンジ;
717名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/18(火) 00:36:22 ID:???
GJ!続きに期待!
718名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/18(火) 12:16:13 ID:???
面白い
ロン毛に微妙に日が当たっててワロタ
719名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/18(火) 14:35:59 ID:???
長ぇ…頼むから終わった後どっかにまとめられてて下さい
720名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/18(火) 14:54:59 ID:???
シンジが貞シンジよりもスレてる(?)せいか、
悲壮感が漂ってこなくて良い感じだ。
721593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/19(水) 00:31:23 ID:???
「シンジ君!レイの発進準備いそがせて!」
学校から帰ってきたそうそう、叱責に近いミサトさんの指示が飛んできた。
無理もない。あの使徒襲来から3週間、いつ来るのかと待ち受けていた使徒が遂に現れたのだ。
ミサトさんだけじゃなく、スタッフ達の顔も緊張で強ばっている。

だがそんな中で、意外にもレイがいちばん落ち着いていた。
そう言えば良く聞こえるけど、何も考えずにのほほんとしているというのが正しいところ。
次は何するの?と僕の顔色を確認しながら、しずしずと発進準備の着替えを続けている。
余計なことを考えない(要するに何も考えていないだけなんだけど)その落ち着きぶりが救いの神。
後は、作戦指示に従って戦ってくれればそれでいい。
「それじゃ、モニタで指示を出すからね。」
そう一言いってエントリープラグが挿入されるのを見送り、僕は司令塔へと急ぐ。

肩で息をしながら司令塔に辿り着くと、既に大型パネルには新たに襲来した使徒が映し出されていた。
それに対して戦略自衛隊の猛攻撃が降り注ぐ。が、
「無駄ね。シンジ君、あの銃弾一発が幾らか知ってる?」
やってきたばかりの僕にリツコさんがささやいた。

見ればその通りだ。使徒は蚊に刺されたほどの影響も受けてないらしい。
蛇のようにも、虫のようにも見える巨体をゆすぶり、禍々しい光を放つ触手で自衛隊を蹴散らす有様は、
敵ながら壮観と言ってもいい光景だ。
722593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/19(水) 00:32:37 ID:???
まあ、億単位で銃弾の費用が無駄にふっとんでいるのだろうけど……
そんな余談はどうでもいい。

「リツコさん、勝てるんですか?あんなのに。」
「勝つしかないわ。でも、レイに練習した以上のことは出来ない。」
「……」
「それが通用しなければ、奇跡を待つしかないというところね。」
その「奇跡」、待つんじゃなくて起こすんですか?あの時みたいに。

「エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!」
そのミサトさんの号令と共に、初号機の拘束具が外される。
さあ、いよいよだ。そんな緊張と共に僕はモニタを見ながらレイに指示を出す。
「レイ、前を見て。目標はあの使徒の赤いコア。練習と同じようにセンターに合わせて射撃。
 僕の合図と同時に。いいね?」
こくり……とレイは頷く。

そして、ミサトさんがクイッと顎をしゃくって僕に示す。よし!
「レイ!やるんだ!」
しかし……

のっし、のっし、のっし、のっし
723名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/19(水) 00:33:11 ID:???
>>720
確かに。
個人的には、余裕があるなと(リツコも)
エヴァの登場人物は概ね余裕が無いのが、話を暗い方向へ導いてるので、
こーいう主人公だと救われるな。
724593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/19(水) 00:33:46 ID:???
だ、ダメだ。初号機がお散歩モードで歩いてる。
それを見て焦るミサトさん。
「ちょ、ちょっとシンジ君!急がせて!」
「は、はい!レイ、急いで!使徒が……ああっ」

 ズシャッ……
                 ズドドドドドッッ!!

使徒を撃つどころか、銃を構えるのも間に合わずに初号機は使徒の触手にひっくり返される。
「レイ!立つんだ!早く!」
「シンジ君!使徒が初号機の頭上に飛来してくる!そのまま撃たせなさい!」
「え?は、はい!レイ、いいからそのまま、いや、立たなくてもいいから」
「立ってしまったのなら、早く距離を取らせて!」
「え、えーと、レイ!とりあえず逃げて!……くそっ!」
初号機は、あっという間に使徒に捉えられ、触手で抱え上げられてしまい……
あーっ!!もう、まどろっこしいっ!遅い!遅すぎる!
ミサトさんの指示を僕が聞いて、それをレイに伝えてたんじゃあまりにも遅すぎる!

もう初号機は子供扱い、いやオモチャ同然だ。
これじゃ使徒殲滅なんて夢の夢。戦自に無駄弾を撃たせた方がよっぽどマシだ。
725593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/19(水) 00:34:52 ID:???
そして使徒は初号機を放り投げ、

   ズシィィィンッ!

手近な山へと叩き付ける。
きっと、あの山に初号機の跡がクッキリと残るだろう。それも漫画のように。
そして、このままライフルの一発も撃てずに終わる?これじゃいい笑いものだ。
莫大な費用を掛けて、大勢の人員を費やして、
そして何より、レイと一緒に頑張ってきた結果がこれ?
……って、冗談じゃない!

「レイ!使徒が来る!立って……レイ?」
なんだろう、下を見下ろしてる。初号機の手元?
あれは……あの二人は……

「あれは、シンジ君のクラスメート?」
「なんで、あんなところに?住民の避難は全て完了しているはずでは?」
スタッフ達の声に驚いてモニタを見れば、
その二人の顔がアップで映され、名前からクラス番号、年齢まで表示されている。
あいつらだ。僕を殴った奴とその連れだ。

ん?レイ!?
726593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/19(水) 00:36:06 ID:???
レイの顔が、あの時と同じように険しく歪み始める。
そして初号機の手がゆっくりと持ち上げられ……まさか!

「レイ!何をするつもりなんだ!止めろ!!」
レイはその僕の一喝でビクリと身体を震わせ、初号機は動きを止めたが……
あの二人を叩き潰すつもりだったのか?
あのレイがそんな勝手なマネをするなんて思いもしなかった。いくら僕のことで恨んでいるとはいえ。
もう僕の苛立ちは押さえられず、その勢いのままに初号機の外部スピーカーをこちらから操作して、
初号機の側でうずくまっている二人に向かって怒鳴りつける。
「こらぁ!そこの二人!早くそこから逃げろ!走れ!」

「!?」
それを見とがめたミサトさんが、こちらに向かってツカツカと近づいてきた。
「待ちなさい、シンジ君。走って逃げるだけでは爆炎や熱攻撃から……」
「物理攻撃ならいいんですね!レイ!プログナイフ装備!」
忠実なレイはためらわない。僕の言葉通りにナイフを抜いた。
「シンジ君、止めなさい!私の言うことを……」

うるさいッ!!

「レイッ!!そのナイフで使徒のコアを砕け!!突撃だ!走れ!」
レイは一瞬、僕の怒鳴り声に泣き出しそうな顔をしたが、逆らえず無我夢中で突進し、そして……
727593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/19(水) 00:37:20 ID:???
   パキィィィィィッ……

「……使徒、活動停止。」
オペレーターの一人がそう報告すると、どっという溜息が司令塔から漏れる。
とりあえずは勝った。レイは僕が命じた通り、使徒のコアを見事に砕いたのだ。
その余韻を味わっているのか、スタッフ達は戦闘終了時の次のステップへと移せずにいる。
僕自身も終わったことが実感できないまま呆然としていた、その時。

   パァァァンッ
   
「シンジ君、聞こえる?私の言うことを聞いて。」

ミサトさんだった。いつの間にか僕の目の前に来て、平手打ちを喰らわせたのだ。
だが、ミサトさんは落ち着いていた。極めて静かな口調で僕に語りかける。

「ちゃんと見ていた?最後の突進の最中で、初号機は2箇所にわたり使徒の攻撃で負傷している。
 今、初号機が無事なのは使徒の攻撃が運良く急所がそれて、そして運良くコアを砕くことが出来た。
 単に運が良かっただけ。幾ら勝利しても、成り行き如何では担当者の首が飛ぶ。
 いや、それだけではすまない結果もある。」
「……」
「あなたはNERVスタッフとしては新人。いくら総司令の名を冠したところで経験不足にも程がある。
 どれほどせっぱ詰まった状況でも、私や副司令、その他スタッフの確認の元に行動してください。」
728593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/19(水) 00:38:31 ID:???
この言い聞かせるような落ち着いた口調。返ってバカにされているような気がする。
その気持ちのまま、僕は無理矢理に言い返す。

「……出来ませんよ、そんなこと。」
「え?」
「ミサトさん……さっきは僕も必死だったんです。それを……」
「判っているわ、シンジ君。謝罪すべきなのはあなたではなく私にある。」
「え?」
「作戦部長として、あなたたちを上手く活かす作戦行動を取らせることが私の任務。
 どのような結果になっても私の責任。あなたが自分の役割を果たそうと頑張ったのは判る。」
「……そんな」
「それを活かせなかったのは私の責任。ううん、違うわね。
 準備があまりにも不足していた。それが正解ね。
 明日から新しい強化プログラムを組みましょう。リツコも交えてね。」
「……」

なんか、上手くミサトさんに丸め込まれた気がする。
どうにも僕の心に「しこり」が残っているようで気持ちが悪い。だいいち……

いったい、そんな総司令って何の意味があるのか。
何をするにも、いちいち誰かにお伺いを立てなきゃならない総司令なんて。
729593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/19(水) 00:40:11 ID:???
その時、誰かにポンと肩を叩かれた。リツコさんだ。
「大人相手に刃向かったって、太刀打ちできないわよ?
 ましてや、経験豊富な倍ほどの年齢のお姉様にはね。」
「歳の話を出すんじゃないわよ、リツコ!あんただって」
「はいはい、お互い険しい道を踏み越え乗り越え、苦節30年の大ベテラン……」
「ちょっとぉ!私はまだ……」
もう明るい口調で騒いでる。大人の人ってこれだから。
リツコさんもリツコさんだ。余計に納得できなくなっちゃったじゃないか。
って僕が顔をしかめているとリツコさんがまた側による。

「とにかく、欲しいことや、やるべきこと。それをガッチリものにすればそれでいいの。
 勝負に勝とうと負けようとね。」
リツコさん、相変わらず人を見透かしたように言う。
「リツコさん……もうどうでもいいですよ。」
「すねないで、シンジ君。そうそう、私のレクチャーがまだだったわね。
 いろいろ話したいけど……最終的には、あなたが総司令でなければならない理由をね。」
「え?」
「さあ、レイを出迎えてきなさい。あなたがねぎらってあげなきゃ。
 私の話はそれからにしましょ。いつでもいいから後で連絡してね。」

そんな意味ありげなリツコさんの言葉を後にして、僕はエヴァの格納庫へと向かう。
やってきてみれば、収容したエヴァの改修のため大勢の作業員がごった返している有様。
730593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/19(水) 00:41:53 ID:???
でも、すぐに見つけた。遠目にもすぐ判る、レイのほっそりした白いプラグスーツ姿を。
彼女もこっちをジッと見つめているが、こちらに近づこうとはせず、
なんだかおびえたような顔でモジモジしている。
ああ、そうか。もしかしたら僕がまだ怒ってると思ってるのかな。

「レイ、さあ帰ろう。今日はよく頑張ったね。」
「……」

なんかバカみたいな、たどたどしいねぎらいの言葉だ。
自分でも自分の顔が引きつっているのが判る。
けど、それを聞いたレイはようやくこちらにやってきて、おずおずとした様子で僕の側へと寄り添った。
その彼女の柔らかい身体の感触を感じて、気持ちが少しずつほぐれていくのが判る。

一瞬はここから、NERVから去ろうとも考えた。
馬鹿馬鹿しい、何が総司令か、冗談にも程がある、その結果がこれではないか、と。
そんなことを考えていたから、よほど僕は暗い顔をしていたのだろう。
「ああ、レイ。大丈夫だよ。僕なら大丈夫……」
そう言って、心配げに僕の顔を覗き込むレイをなだめようとした。

大丈夫、このレイを置いて立ち去るなんて出来やしない。
リツコさんがどんな話を用意しているのかは知らないけれど。
731593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/19(水) 00:43:01 ID:???
とりあえず、ここまでですー
732名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/19(水) 12:26:09 ID:???
投下乙です
やっぱりあの2人を潰そうとしたか
しかもミサトが気づいてないっぽい…
733名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/19(水) 16:29:22 ID:???
GJ!
これからの展開が色々と気になるな
734593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/20(木) 23:29:11 ID:???
「ほらっ!ダッシュよ、ダッシュ!!」

自転車に乗って号令をかけるミサトさんを追いかけて、僕とレイは走り出す……
って、ミサトさんてば、やっぱり軍人さんだな。
思いついた強化プログラムがこれですか。

「あったりまえじゃない!何をするにも基礎体力が物を言うのよ!
 ほら、あんたが走らなきゃレイがついてこないでしょ!」
「はぁ、はぁ……でも、今からこんなことを始めて役に立つんです?
 明日にも使徒が来るかも知れないんでしょ?」
「言われなくても判ってるわよ。養うのは体力だけじゃないわ。
 私の号令でレイが動けるように、この訓練を通して下地を作るのが最終目標。」
「でも、肝心のレイが全然ついてこれてないんですけど……」
「……あらら。」

気が付くとレイは遙か後方。一生懸命に走ってはいるけど……あらら、へたりこんじゃった。
「レイ、以前は泳ぐことすら出来たのに。」
そんなため息混じりのミサトさんの言葉を後にして、僕はレイを助けに戻っていく。

……ミサトさん、いいかげんレイが以前とはまったくの別人だって気付いてるんじゃ?
いくら父さんが死んだのがショックだからって、そこまで能力的に変わるものじゃないだろうに。
735593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/20(木) 23:30:31 ID:???
「レイって入退院の繰り返しだったし、かなり衰えちゃったかな?」
そんなことを言いながら帰り支度をするミサトさんは、知っててとぼけているような気がして仕方がない。
そして僕はレイをおぶさり、ゆっくりと自転車をこぐミサトさんについて帰路につく。

「ん、どうしたの?シンジ君」
「え?」
「目が暗い。なんか悩んでる?」
「いや……別に」
突然、そんなことを尋ねられたけど……探りを入れてきたかな。

「なんか気になってることある?言ってみなさいって。
 私も覚悟を決めたわ。うっかりレイを孕ませちゃったとか?何を聞いても驚きゃしないわよ。」
「だ、だからぁ!そんなことする訳ないじゃないですか!」
「なんで?」
「へ?」
「あんた、自分を慕ってる女の子と一緒に寝泊まりしてて何にもしないの?
 それはそれでレイが可哀想じゃない?」
「あ、あの、ミサトさん、本人がここに居る前でそんな……」

といっても疲れたのか、僕の背中で寝息を立ててるけど。
736593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/20(木) 23:31:47 ID:???
まあ、常識的に考えたらそうなんだろうな。
なんだか無垢なレイにそんなことをするなんて思いつきもしないのが正直なところ。
それに……

「ほらほらシンちゃんてば、またそんな暗い目つきする。それって心配してくれって言ってるようなものよ?」
「いや、そんなつもりは……」
「ま、とりあえず考えてみるわ。レイの出来るエヴァの使い方を。
 既にドイツから弐号機とパイロットが出発している。それまでの辛抱だから。」
「弐号機って、新しいエヴァってことですか。」
「期待してなさい。パイロットも十分に鍛えられているから。」
「はい……」

ようやく本部にたどり着いた僕達は、それぞれに別れようとした時のこと。
「とりあえず、レイをよく歩かせて。そのレベルから体力を付けなくちゃ。」
「はい。」
「どんどん、栄養のあるものを食べさせて。それから……」
急にミサトさんの目がマジになる。
「シンジ君。リツコから何を聞いたの?」

来た。直撃だ。
なんと答えればいいだろう。リツコさんが以前に言った通りに、そのものズバリ答えて良いんだろうか。
でも……
737593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/20(木) 23:33:03 ID:???
「いや……何でもないですよ。」
まだ僕の中で消化できていない状態では、そう答えるのが精一杯だった。
「……そう?」
と言ってミサトさんは立ち去ったけど……いや、ミサトさんには全て話してもよかったかな?
単にミサトさんが興味本位で聞いてる訳じゃないことは判る。
本気で僕達を心配してくれているのかもしれないし。

その夜。
「レイ、先に寝ててよ。ちょっと見たい番組があるから。」
そう言いながらTVの前を陣取っていたその時、
レイはそんな僕の腕を取り、ぐいぐいと引っ張って行こうとする。
「ええ?僕も寝ろってこと?いや、今日は大目に見てよ。
 このコンサート、以前から楽しみにしてて……いや、だからぁ……」
やれやれ仕方ない。リアルタイムで見たかったんだけど録画して後で見よう。

なんだかレイに、夜更かしするな、早く寝ろ、そうたしなめられている気がして仕方がない。
ずっとレイのことを無垢で従順な性格だと思っていたけど、
考えてみればレイの方から僕をいざなうことも多い気がする。
あのリツコさんの話を聞いてから。

そして仕方なくベッドに潜り込むと、レイは心地よさそうに僕の胸に顔を付けて目を閉じた。
なんだか子猫のお気に入りの場所になってしまったかのようだ。
738593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/20(木) 23:34:48 ID:???
そして早くも寝息を立て始めたレイを見ながら、僕はリツコさんの話を思い返していた。

(セカンドインパクトを巻き起こした使徒アダムの形骸。そのコピーがエヴァンゲリオン。
 そこまではミサトから話を聞いてるわね?それを操るのがパイロットの役目。)
(はい……)

(そのパイロット第一号があなたのお母さん、碇ユイ。
 そして、その稼働試験は失敗に終わった。エヴァを操るまでに居たらずパイロットは姿を消した。
 あなたも実はそこに居たの。覚えていない?あなたのお母さんが消える瞬間を。)
(ええ?なんにも覚えてませんよ。)

(幼い頃のことだから思い出せないようね。
 調査の結果、エヴァのコアにパイロットが取り込まれたことが判った。
 あなたのお父さんはユイさんを救出しようとした。しかし、これは失敗に終わる。
 けどね?このことが、エヴァ開発を進展させるに至った。)
(え?)
(不可能と言われたエヴァとのシンクロ、それは取り込まれたユイさんが架け橋となることで成功したの。
 直接、エヴァとは無理でもユイさんとなら出来る。同じ染色体を持つパイロットなら。)
(そんな、まさか……)

(レイがクローンと聞いて、それなら誰のクローンなのか今まで気にならなかったの?
 あなたがレイに出会った瞬間に気付くと思っていたわ。自分の母親なら尚更。)
739593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/20(木) 23:36:15 ID:???
(そんな……僕には母さんの写真すら見たことがない……)
(あなたのお父さんは全て捨ててしまったらしいけど、見たい?ほら、この人。
 ちなみに、これが私。)
(レイ!?いや……これが僕の母さん……?)
(人間とは非情な生き物よ。人は生きるために人の死を利用する。
 医学ですら、どれほどの犠牲の上になりたっているのか知れたものではない。)
(……)
(今のうちに、この話をよく吸収しておきなさい。このことだけでショックを受けている暇はないわ。)
 
(リツコさん、それじゃ……なぜ、僕を総司令に?)
(人類補完計画。)
(え?)
(あなたのお父さんが提唱した、そしてゼーレが進めようとしている計画。
 あなたのお父さんが亡くなった今、
 それはゼーレの連中ではなく、あなたの手で遂行されなければならない。)
(それは一体……)
(今のあなたに理解するのは無理。今日の話をよくかみしめなさい。
 理屈ではなく、あなたの想いにしっかりと沈み込むまで。)

僕はその話を聞いてショックを受けたというより、ただ唖然としてしまった。
自分の母親の成り行きよりも、そうした人の犠牲を投じることが平然と行われている、ということに。
740593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/20(木) 23:37:25 ID:???
僕は何も覚えていない。
僕も一度はここに来ているという。でも、何一つ思い出せることがない。

自分の母親がエヴァ開発の犠牲となった。それは確かにショックな話だ。
ただし、普通の人にとっては、の話。
驚け、悲しめ、などと言われても僕には無理。母の存在なんて僕は知らないんだから。

でも、何故か母さんの笑顔だけは覚えているような、そんな気が……
ん?

「レイ、起こしちゃった?」
「……」

気が付くと、レイは目を覚まして僕の目をじっと見ていた。
そして僕をなだめるように腕を回して抱きしめてくれている。

綾波レイ、見た目にはほぼ同年代の女の子。
その無垢な彼女の性格のおかげか、とてもそんなふうには見れなかった。
でも今ではそれを通り越して、母親ってこういうもんなんだろうか、と考えてしまう。

そういえば……僕はレイが笑ったところを見たことがないな……
741593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/20(木) 23:38:50 ID:???
とりあえず、ここまでですー
742名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/21(金) 11:17:39 ID:???

切り口が良いね。けど、ユイと染色体(遺伝子とかDNAで無いのが複線?)
一緒の設定で、LRS上大丈夫?上手い展開を期待してます
743名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/21(金) 11:20:13 ID:???
投下乙です

やっぱりユイは取り込まれてたか
だったら何故リツコは、『シンジでは初号機を動かせない』と言ったんだろう?
リツコが嘘を言ったのか、それとも…
謎が深まるばかりだぜ
744名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/21(金) 13:52:06 ID:???
>>743
作者さんの設定次第だと思うんだけど、動かせないと言ったのは
司令官&レイへの指示が出来る人間であるシンジがが居なくなることを避けるためなんじゃないかな?
シンジが初号機を動かせるかどうかは、リツコか冬月しか分からないんだから...
745743:2007/09/21(金) 14:27:04 ID:???
ああそういえばその通りか
シンジがもし使徒との戦いで重傷を負ったり死んだりしたら、レイも全く役に立たなくなるんだから
パイロットとして戦場に出させるわけにはいかないわな

個人的には一度くらいシンジが初号機に搭乗して戦う話とかあったらいいなと思ったりする(ゼルエル戦とか量産機戦辺りで)
レイとの二人乗りでも可
746名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/21(金) 16:44:14 ID:???
あ、何か繋がったような・・・
ともかく、楽しみにしてます。ガンバレ〜
747593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/21(金) 21:33:14 ID:???
よし、ジャガイモもニンジンも良い感じで煮えてきた。
味付けはもうちょっとかな?いや、我慢我慢。気持ち程度に抑えて……
「ん、レイ?待っててね。もう少しで出来るから。」

僕は夕飯のシチューの仕上げをしている真っ最中。
料理は久しぶりだけど、どうやらなんとかなりそう。
包丁を使うのが慣れてなくて苦労したけど。
「いや、レイ。もうちょっと待ってよ。味見してみる?って……え?」
こ、この肘にあたる生の柔らかい感触。ま、まさか?

「ちょ、ちょっとレイ!なに素っ裸になってんのさ?ええ、お風呂ぉ!?
 だーから、お風呂はご飯の後に入ろうってあれほど」
「こんちゃーっ!!シンちゃん、遊びに来たよーって……
 ああああああああああああああああああああああっ!!」

「……み、ミサトさん!?なに勝手に上がりこんで大声出してるんですか!」
「あんた達こそ、まだ日も落ちてない時間から何やってんのよッ!!」
「そっちこそチャイムもノックもしないで……レイ、早く部屋に隠れて服来て着てよ!早く!」

あーもう、何なの?このミサトさんて人。ガサツというかなんというか。
リツコさん……後ろで笑ってないで何とか言ってください……
748593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/21(金) 21:34:24 ID:???
(仕方なく)お二人を我が食卓にご招待。
でも、ミサトさん達は僕達の夕飯をおごるつもりだったらしく、
山のような食料を買い込んで来た……って、あ〜あ、全部あけちゃうんですか?
おいといてくれたら、また明日にでも食べれるのに。

「シンジ君、ごめんなさいね。お相伴にあずかって。」
「いや、いいですよ。二人分には多すぎるほど作ったし、レイは小食だし。」
「そーよぉリツコ。遠慮しあってばかりじゃ仲良くなんてなれないわ。
 ほらほら、いっぱい買ってきたから代わりにどんどん食べちゃってよ。」

ってミサトさん。あんたはもっと遠慮したほうがいい。
その所狭しと並べたコンビニ食料が恩着せがましいったらありゃしない。

「シンジ君、その歳でずいぶん料理上手なのね?いいお味。
 男の人でこれだけ丁寧に料理が出来るって珍しいわ。」
「いやぁ、褒めすぎですよ、リツコさん。」
「でも、ちょっと味うすい。シンちゃん、胡椒とってくれる?私にゃ刺激がたんない。」
「いや、ミサトさん。ワザと薄くしてるんです。レイにはこのくらいが丁度良いと思って。」
「なるほど、離乳食って訳ね。」

そのリツコさんのツッコミに、思わずゴフッという物凄い音でシチューを吹いてしまった。
749593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/21(金) 21:35:53 ID:???
リツコさん……そんな意味ありげなこと言っていいんですか?機密なのに。
ミサトさん、なんか白い目で僕達を見てるし。まあ、ある程度は知ってるんだろうな。
まあ、とりあえずリツコさんからお褒めの言葉を頂いたからよしとしよう。
レイも夢中で食べてるし。
ん、胡椒?あーもう、ソースでも醤油でも何でもかけちゃってくださいな。

「ミサトの舌なんか気にすることないわよ、シンジ君。
 レトルトを使っておいて料理自慢する人とは大違い。ね、ミサト?」
「うっさいわねぇ。私のカレーはちょっとしたもんよぉ?ね、シンちゃん。今度あそびに……」
「無理。ミサトのマンションじゃ散らかってて座る場所がないから。
 それに、あんなものレイに食べさせたら死んじゃうわよ?」
「あいかわらず刺々しいわねぇリツコ……ん?レイってお肉ダメなんじゃなかったの?」
「前総司令はベジタリアンだったから、それで食べなかったのかも知れないわね。
 今やシンジ君の作った物ならなんでも美味しいんじゃない?」
おお、リツコさんナイスフォロー……かな?

「はいはい、ごちそうさま……ってさぁ、シンちゃん。」
「……なんです?ミサトさん。」
「いくら慌ててたからと言って、その平常心ランニングをレイに着せるこたぁないんじゃない?」
「し、仕方ないじゃないですか。レイの服は僕と共用なんですから。」
750593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/21(金) 21:37:31 ID:???
「ねぇレイ?もうちょっとお洒落しなさいよ。女の子なんだから……」
「ん、レイおかわり?ちょっと待っててね。」
「こら、レイ!私の話、聞いて……」
「ミサト?聞こえてないみたいよ。」
「リツコは黙ってなさいよ。シンちゃんもおかわりついでないで、ちゃんと教育したらどうなのよ。
 ほらほら前屈みはダメよ、レイ!おっぱい丸見えじゃないのさ!」
……うるさいなぁ、ミサトさん。

その時、リツコさんが何やらバッグからごそごそと取り出した。
「丁度よかったわ。これ、渡しておく。言うなれば、総司令の特典その一。」
そう言いながら僕に手渡したのは一枚のカード。
「え、これってクレジットカード?」
「ああああああああああああっ!!」
と、それを横から覗き込んだミサトさんが絶叫する。

「それ金額無制限のプラチナカードじゃないの!」
「そそ、しかも支払いはNERVを通じて国連の資産から支払われてることになってるから。
 必要ならビルでも戦車でも無申請・無許可で買えるスペシャルカード。」
「ちょっとぉ……そんなもの渡したらシンちゃんの人生こわれるって。」
「大丈夫よ、ミサト。シンジ君は結構おりこうさんだし。
 さっそく、レイを連れてプリティーウーマンしてきたら?
 どんな服がいいか迷ったらスタイリストから雇っちゃえばいいんだし。」
751593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/21(金) 21:38:36 ID:???
なんか、無茶苦茶だな……
でも何を買ったか後からチェックされるだろうし、それ考えたら無駄遣い出来そうもない。

そのカードを僕に渡した後、リツコさんは仕事が残ってるとか言って早々に立ち去った。
で、僕達の間に訪れる変な沈黙……リツコさん、ミサトさん忘れてかないでよ。

しばらくビールをチビチビ飲んでいたミサトさんだったけど、ようやく口を開く。
「あんまり無茶するんじゃないわよ?いろんな意味で。」
「……はい。」
「レイは大事なエヴァパイロットよ。しっかり育ててくれなきゃ困るわ。」
「……」
「ん、不満なの?押しつけられたと思ってる?」
「いえ、そんなことは考えてません。」
「そう、なら良いけど。とにかく……」

そう言いながらミサトさんはビールを飲み干し、立ち上がる。
「私に知らされていない機密が沢山あることは知ってる。あなたがその多くを知っていることも知ってる。
 勿論それに興味はあるけど、無理に聞きたいとは思わない。
 私がやらなければならないことは他にある。それだけでも、私の手に余るほどの仕事よ。」
「……」

752593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/21(金) 21:40:08 ID:???
「でもね、シンジ君。お互いの仕事を進める上で、
 私が知っておいた方が良いことがあるなら何でも言いなさい。
 前にも言ったけど覚悟は出来ている。ある程度しってるし、推測できることもある。
 いちばん困ることは、あなたが一人で悩んだり、レイがパイロットとして使えなくなること。」
「……はい。」
「だから、私のことをいちいち気にするのは止めなさい。いいわね?」
「はい。」
「オッケイ、それじゃ私も帰るから。」
「……あの」

ふと、思わず呼び止めてしまった。
「……どうしたの?」
「いえ、その……何でもありません。」
「判った。信用するわよ?その、何でもないって言葉を。」
「はい。」

そして帰って行くミサトさんを見送り、溜息をついた。
ん?レイ、そんな心配そうに見つめないでよ。

あーあ、やっぱハッキリと片付けていけって言えばよかった。
この食べ残し、どうしよう……
753593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/21(金) 21:41:22 ID:???
そして翌日。

丁度、休暇の日だったのでレイを連れて街へ出向くことにした。
確かにレイがオシャレ出来る服なんて何一つ無いし、それはあまりにも可哀想だ。
とりあえず在り合わせの僕の上着を着せて、学校のスカートに合わせてみる。
う〜ん、これが精一杯かなぁ。
「レイ、どう?こんな感じで。」
って尋ねても、レイは鏡の前できょとんとしてる。自分の格好に興味がないのかな。
まあいいか。なんか学校帰りに道草する女の子みたいだけど。

「これは総司令、デートですか?ごゆっくり。」
などとお愛想を言うスタッフ達に見送られて、街へ直行するリフトに乗り込み街へと繰り出した、
……までは良いけれど、どこに行けばいいかなぁ……そうだ、さっそく。

「誰か居る?」
僕が真後ろを振り向いて言うと、誰もいないかに見えた影から黒いスーツ姿の男達が数名現れた。
これが、リツコさんに貰ったカードに続く総司令特典その二、諜報部員のボディーガード。
でも、常に見張られてるのって特典じゃ無いような気も。
「諜報部なら知ってます?女の子が喜びそうな服とか置いてるところ。」
っていったら、ゴツイ顔にサングラスの二人が顔を見合わせる……いや、笑顔ぐらい見せてよ。

そうしてたかと思うと、黒い車が僕達の前に現れた。
754593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/21(金) 21:42:44 ID:???
その車に乗って到着した店。
うわ、高そう。流石は諜報部。

早速、店に入り、
「あの……これ。」
と、例のカードを見せると、気付かない振りをしていた店員の目の色が変わる。

「は、はい……よ、ようこそいらっしゃいました!」
「ねぇ、この子に似合いそうな服を何セットか見繕ってよ。」
「はい、お任せください!ささ、どうぞこちらへ。」
「それから、あの……」
「はい、なんなりとお申し付けを!」
「ちょっとこの子、病気してるんで……変に思わないでね。僕が着替えを手伝ったりもするけど。」
「……心得ております。」

これだけでも王様気分だけど……世の中はお金だな。
やっぱ、このカード凄いんだ。下手に持ち歩いてたら腕ごと切り落とされてしまいそう。
などと考えていると、既にレイを店員達が束になって取り囲んでる。
「まあ、なんとも不思議な蒼い髪ですこと。とても美しいですわ。それなら、この色に合わせて……」
もはや困り顔のレイ。待ってね、すぐ助けるから。
755593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/21(金) 21:44:27 ID:???
さて、一着目。
「如何でしょうか?その……」
なんだか妙に自信なさげな店員の声。ああ、やっぱりな。無理もない。
服のセンス自体は凄いんだけど、やる気のないレイの表情が全てぶち壊し。
アハハ、だめだこりゃ。

「その、他の組み合わせもお試しに……」
「うん、ありがと。試着はもういいから、用意してくれたセットを全部ください。それから……」
「はい、何でしょう。」
「この子が今つけてる下着と同じものを30組ほど。」
「え?は、はあ……」
ついでに普段着に出来そうな物を適当に買って終了。
買いすぎたかな?まあ、総額100万を超えてないし、まあいいか。

「よし、レイ帰ろっか。車が待たせてあるから……いや」
そうだ。レイにはよく歩かせなくちゃ。
「のんびり歩いて帰るのもいいか。さ、おいで。」
そう言ってレイの手を引くと、心なしか今日一番の嬉しそうな様子で僕についてきた。
それでも……やっぱりレイは笑わないんだな。

「ええ?おんぶ?だから、運動しなくちゃって……まあいいか。
 ちょっ……そんなにおっぱい押しつけないでよ!ああっ!」
756593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/21(金) 21:45:37 ID:???
とりあえず、ここまでっすー
757名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/21(金) 22:12:28 ID:???
乙です。
おっぱいだらけですねw
758名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/21(金) 23:18:38 ID:???
GJ!
ハッピーエンドで終わることを期待します。
759名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/22(土) 02:42:16 ID:???
よしゃー久々に来たら投下来てた!!
760名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/22(土) 12:18:01 ID:???
自演乙です。
さっさと終わることを期待してます。
761名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/22(土) 13:18:43 ID:???
自演age
762名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/22(土) 22:38:50 ID:???
GJ!
そろそろヤシマ作戦か色んな意味で期待してます
763593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/23(日) 07:51:52 ID:???
「総員、えっと……第一種戦闘配置に。」
その僕の号令と共に、NERVスタッフ達や各種部隊が一斉に動き出す。

遂に現れた第五の使徒、ラミエル。
その正八面体の幾何学的な姿に人々は驚愕する。
「完全な直線や平面が宇宙に存在するなんて思いもよらなかったわ。」
そんなふうに小難しい独り言を言うリツコさんはなんだか嬉しそうだけど、
事態はそれどころではない。

使徒は浮遊したまま、ゆっくりとこちらを目指して飛来してくる。
第三新東京市は戦闘形態へ移行、戦自の各種部隊も配備を終えたが、
こちらから何一つ動きを取ることが出来ない。
いくら入念に防衛戦を組み上げたとしても、通常兵器では歯が立たないのは判っているのだ。
もはや戦自に無駄弾を撃たせるという空しいことは止めてしまい、
あとはNERVが誇るエヴァの出動を待つばかり。だが……

「絶望的ですね。あのレイでは……」
誰がそう言ったのか。いや、別に誰でも良かった。みんながそう思っているのだ。
前回は奇跡的な勝利を得た。また、その奇跡に期待する訳にはいかない。
ただ、NERV本部は静まりかえるばかり。
764593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/23(日) 07:53:19 ID:???
が、いつまでもこうしてはいられない。
「とにかく出すしかないわね……」
そうミサトさんが何か言いかけたその時、リツコさんが一言。

「シンジ君、零号機を出してみる?」
ああ……あれ、ですか。
「あれね。使えるの?」
と、振り返るミサトさん。
「何も出来ないけど、使徒の先手を知ることが出来るかも。どうかしら。」
「いいわ。零号機発進準備。」
「はっ!零号機発進準備!」
零号機……なんだか気がとがめて仕方がないけど。

「零号機、発進!」
というミサトさんの掛け声で地上に射出されるエヴァンゲリオン零号機。
新型ではない。旧式のプロトタイプに改良を施した物だ。
初号機と違い、一つ目のシンプルな顔立ちをしている。
「シンジ君、そんなに暗い顔つきをしないで。あなたの発案よ。」
そういってリツコさんが僕の顔を覗き込む。
「はい……確かにそうですが……」
「初号機をいきなり出すよりはマシでしょ?でも、これで何もなかったらその次は……」
765593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/23(日) 07:54:53 ID:???
その時、オペレーターの一人が急を告げる。
「使徒中心に高エネルギー反応が収束しています!」
「これは……可粒子砲……!?」
「まずい!零号機を早く戻して!」

が、間に合わなかった。使徒の放った閃光が零号機の胸部に直撃したのだ。
目の前に表示された零号機の、そしてエントリープラグ内部の計器類が急反転する。

「胸部装甲板、融解!」
「なんてこと、ATフィールドの展開は出来ていたの?」
「はい、確かに!」
「それで、この威力だなんて……」
「零号機、収容完了!」
「……使徒、攻撃を中断し移動再開。おそらくこの本部上空が目標地点。」

そのアナウンスの通り、もう使徒は何事もなかったように浮遊している。
「ミサト、試しておいて正解だったわね。」
「そうね……何よ、あの使徒の態度。余裕たっぷりなのが憎たらしい……ん?シンジ君?」
その二人の会話を後にして、僕はエヴァの格納庫へと急いで向かった。

……無事なんだろうか。
766593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/23(日) 07:56:43 ID:???
下りていくと、胸部をドロドロに溶かされた零号機に作業員達が詰めかけていた。
僕はそれを尻目に、既にイジェクトされたエントリープラグの方へと向かう。

「君!ここに立ち入ってはいけない!危険……あ、これは総司令!」
「ねえ、どうなったの?」
僕がそう尋ねると、作業員の一人が首を横に振りながら報告する。
「やはり耐えきれなかったようです。完全に崩壊しました。」
「そう……お疲れ様です。」

そう言ってため息をつき振り返ると、レイが心配そうな顔をして僕に近づいてくる。
「ああ、レイ……僕なら大丈夫だから。」

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「使徒はこの上空に到着後に掘削を開始、防壁を突破しつつあります。このまま進めば約八時間でここに到達。」
「砲撃、爆撃、ミサイルなど、あらゆる攻撃手段に対し、使徒は全く影響を受けていません。」
「こちらからの攻撃に対し、確実な反撃が行われています。有人兵器の投入は無条件には許可できません。」
「使徒の放つATフィールドは、その相転移空間が肉眼で確認できるほど強力な物が展開されています。」
「あのフィールドを破るには日本とアメリカが保有するN2火薬を全て投じる他はありませんが……」
「近接戦闘は不可能。攻撃に対し強力な可粒子砲で確実な反撃が繰り出されています。」
767593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/23(日) 07:58:25 ID:???
そんな絶望的な報告が続けられる、NERVと戦自の幹部達による緊急会議。そこに僕も出席した。
その中心でとりまとめているのがミサトさん……こうしてみるとミサトさんは凄いな。
年配のベテランと思われる人達を相手に対等にやりあっている。
会議っていうものは長くかかるのかな。あまりレイを一人でしておきたくないし、僕では只の傍観者だ。
そう思って僕は立ち上がろうとしたとき、ミサトさんがいきなり僕を指名した。

「シンジ君?使徒を殲滅するのに、それらが展開するATフィールドに接近し中和することが、
 エヴァによる戦闘において絶対不可欠。だから近接戦闘がベストと考えられてきた。
 しかし、起動したエヴァを見せた瞬間に、ATフィールドをも突破する回避不可能な攻撃を繰り出す。
 使徒自身が放つATフィールドも過去2体と比較しても最強なものよ。
 よって、近接戦闘は不可能。もとから、レイの操縦技術ではそんな戦い方を期待できない。
 さあ総司令。ご意見をどうぞ。」

む、無茶いわないでよ。僕に提案なんて。
しかし、そこに並み居る怖面にギロリと睨まれる中、何も言わないわけにはいかない。えっと……

「使徒に見つからないところからATフィールドが突破可能な兵器で長距離射撃、ですか?
 でも、そんな方法なんて僕には判り……」
「総司令、見事なお答えです。では皆さん?総司令の絶対命令ですから、星を動かしてでも遂行してください。」
僕の言葉尻を覆い被してミサトさんが皆に周知する。
それを聞いたスタッフ達は、総司令のご命令だ、なんとしてでもやりとげねばなりますない、
何てことを言いながら笑い合う……なんか馬鹿にされてるな、僕は。
768593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/23(日) 07:59:58 ID:???
って、あるんですか?そんな方法。
「しかし、ミサトさん。ATフィールドを突破するにはN2爆雷の大量投下や、あとは……」
ほらほら、日向さんが眉をしかめてる。しかし、ミサトさんは自信たっぷり。
「日本が保有する全ての電力を投入しなければ、でしょ?
 ほら、そこの戦自研!とっとと例の物もってらっしゃい!」
それを聞いた冬月副司令は立ち上がる。
「日本政府各省への通達は任せたまえ。君、電話を。」

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

『今夜、大規模な停電があります!皆様、ご協力を宜しくお願いします!』

テレビ、ラジオ、各都市での警報など、ありとあらゆる手段で、民衆への緊急事態が告知される。
こうして事を公にしたということは、もはや完全に作戦行動が認められ、開始したということだ。

そして次々と本部へと入る報告。
「各省からの認可が全て揃いました!作戦の全てにおいて遂行可能!」
「陽電子砲の改修はあと3時間、完了次第すみやかに現地へ……」
「エネルギーシステムの配備は3%の遅延。ただし、作戦開始までは間に合わせます!」
僕はただ座って聞いているだけだけど、ミサトさんはそれを聞きながら更に次々と各方面へと指示を飛ばす。
やっぱりミサトさんは凄いな。もう何時間もああやってる。
その隣に積み上がる缶コーヒーとドリンク剤の山も物凄いけど。
769593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/23(日) 08:01:14 ID:???
こうしてみると何もかも上手く言っているように見えるけど……
僕は不安な気持ちに任せて、隣にいる副司令の冬月さんに尋ねてみた。

「冬月さん……本当にこんなことをしていいんですか。」
「ああ、全国の電力全てを結集させることが、かね?」
「そうです。そんなに簡単なことなんですか?なんというか、規模が大きすぎて……」
「医療、交通、防衛、防災、流通……当然ながら、ありとある国としての機能に影響が出るだろう。
 それは当然だ。だからこそ、政府各省への通達が必要だった。」
「いや、規模が大きいからこそ、小さなことが犠牲になったりしませんか。」
「君は面白いね。その歳で哲学的に物事を考えようしている。」

なんか子供扱いはしょうがないとしても、そんなふうに分析されるのはちょっと気にくわない。

「シンジ君、確かにその通りだ。
 例えば医療の面など、セカンドインパクトを経て災害時に対する様々な対策としての備えがある。
 が、それは大規模な一部の施設だけだ。小規模な所では、この数時間で大きなダメージを喰うだろう。
 それは医療方面だけに止まらない。しかしね、シンジ君。」
「……はい?」
「だからと言って、この作戦を止める訳にはいかない。それは全て一言で説明がつく。
 これに勝たなければ我々人類に明日は無い、と。」
770593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/23(日) 08:03:03 ID:???
僕はつい熱くなって聞き返してしまった。
「でも、犠牲になる少数の人の明日を奪っても、ですか?」
「そうだ。いいかね?犠牲となるのは、日本の片隅にいる僅かな人々だけではない。
 我々NERVは矢面に立ち、使徒を迎え撃つことを覚悟して集結した者ばかりだ。
 レイ君が敗れ、次に倒れるのは君を含む我々だ。使徒はここの潜入と破壊が目的なのだから。」
「……」
「君にその覚悟が無かったのなら、今からここを立ち去るしかない。
 人は人を犠牲にして生きていく。哀しいかな、それが人間なんだよ。
 しかし、犠牲となることを自ら望むことが出来るのは幸いなことだ。」
「いえ……それは判っているつもりです。」
そうはいっても、納得できない気分だ。
理解はしている。でも、納得は出来ない。

そんなことを考えている僕を見て、忙しいはずのミサトさんが僕の所にやってきた。
「少し休憩を取りなさい。もうすぐ出撃なんだし、レイを可愛がってきてあげたら?」
そう言ってミサトさんは優しく微笑む。
突っぱねたい気もしたけど、正直いって疲れた気もする。
ここは素直に従おう。

「レイ、おいで。お風呂に入ろっか。」
こくり、と頷いて僕についてくるレイは……やっぱり誰よりも落ち着いてるな。
771593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/23(日) 08:04:11 ID:???
とりあえず、ここまでですー
772名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/23(日) 09:53:04 ID:???
>>771
乙です、>>766
> 「やはり耐えきれなかったようです。完全に崩壊しました。」
これでレイが崩壊したように思えたんですが…
773名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/23(日) 16:00:14 ID:???
>>772
水槽の中から一人、素体をだして零号機のプラグにいれたのでは?
774名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/23(日) 17:26:14 ID:???
乙!!
うん、面白いよ。オレは好きだな、これ。
シンジがちゃんと人を犠牲にすることを割り切れないトコとかよかった。
次も待ってるわ。
775名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/23(日) 21:43:55 ID:???
まあ、結局は原作通りなんだけどね。
変化といえば、痴呆レイといちゃいちゃしてるところ位だし。
その内レイが悩んで、シンジが「レイは人間だよ」ニコッ、ポッという展開になるんでしょ。
うわぁ〜楽しみだなぁ〜
776名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/23(日) 21:56:56 ID:???
GJ!
何気に冬月がいい味だしてるなぁ
777名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/24(月) 01:48:32 ID:???
久し振りに来たら良作投下されとる!超期待。かなり原作と違う雰囲気になっていて
好みだぜ。
今はあんまり自我が無いレイがこれからどう成長していくのか。楽しみだ。
778593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/25(火) 08:39:08 ID:???
出撃まで時間はたっぷりある。睡眠を取ることすら出来そうだ。
今日はシャワーを浴びるだけ、というのは止めて、ゆっくり湯船に浸かることにした。
湯船に足を伸ばして座り、レイを後ろから抱きしめる格好を取る。
これがレイのお気に入り。一人で入ってると、よく僕の目の前に潜り込んでくる。
嬉しくない訳でもないんだけど、照れくさくもあり……まあ、今日はいいか。
そういえば、以前もミサトさんは言っていた。

(自分を慕ってる女の子と一緒に寝泊まりしてて何にもしないの?
 それはそれでレイが可哀想じゃない?)

別にレイのことを女の子として見れない訳じゃない。
僕が経験が無いからと言うわけでも……それの方が大きいかな。
何故だろう。とても何かする気になれない。
いや、僕の身体はちゃんと反応している。
こうしてレイの柔らかい身体に刺激されて、何も思わずにはいられない。

……どうしてだろう。レイが僕の母親のクローンだから?
確かに近親相姦なんて、法律はどうでもいいけど道徳的、医学的にも問題がある。
そんな理屈のため?いや、違う……

「そうだ。戦うために、君は人類のための犠牲者となるために生まれてきた。
 そんな君だから……僕は君を女の子として見れないのかな……」
779593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/25(火) 08:40:15 ID:???
思わず、僕は声を出して、考えていることをレイに話してしまっていた。
僕に身を委ねていたレイは、その時ピクリと体を震わせる。

「戦いのために生まれて、エヴァパイロットのためだけに生かされて……
 
 レイ……なんで?
 どうして君は僕のことを慕ってるの?
 こうして僕と喜んでお風呂に入る同年代の女の子なんて、普通に考えてありえない。
 もし、君を抱いてしまったらその時こそ君は……君は人形になってしまう。
 それも単なる人形じゃない、なんていうか、いわゆる……
 
 だから抱けない。何も出来ない。君を女の子として扱えない。
 そんな哀しい存在にしてしまうことなんて出来ない。
 
 もしかしたら、君は……父さんにとって母さんの代わりだったかもしれない。
 そして父さんは以前の君を……
 
 そんなこと、考えたくもない。なんだか気持ちが悪い。おぞましい。
 
 それが辛い。哀しい。君を見て、そんなことを考えたくない。
 もしかしたら、君を嫌いになってしまうかもしれない。
 君のことを置き去りにして、僕はどこかへ行ってしまうかもしれない……」
780593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/25(火) 08:41:18 ID:???
「でも、もう僕は……
 
 僕は……
 
 僕は……」

 その時、レイは身を翻して僕に向き直った。

「レイ?」

「私は……」

「え?」

「それでも私は生まれた……あなたが産んでくれた……
 私にはそれが全て……あなたが全て……」
 
「レイ、だからそれが……」

「それがダメなら……私がダメなら私は消える……でも……でも……」

「レイ……」
781593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/25(火) 08:42:22 ID:???
「私はあなたが全て……それが私、私の全て……だから、私はあなたの側に居たい……
 それが叶うなら私をどうしてもいい……何でもする……
 それがダメなら私は消える……あなたが私を嫌うなら……私はあなたの側に居たくない……」
「……」
「でも……でも……やっぱり、生きていたい……あなたにいらないと言われても……
 あなたを守りたいから……あなたが生きる世界を守りたいから……
 うまく言えない……でも、やっぱり私は死にたくない……あなたを守るために……」
「……」

始めて、レイが喋った気がする。
僕の「告白」に対して、レイが必死で答えようとしてくれたのだ。
たどたどしい、か細い声で。
これほどレイの声を聞いたのは、本当に始めてのことだった。

でも違う。やっぱり違う。
そうじゃないよ、レイ。
僕が全てだなんて。僕を全てと、そう定められてしまったなんて……

しかし、
「ありがとう、レイ。ごめんね……」
僕はそう言うのが精一杯だった。
そうであるように作られた当人には、何の咎もないのだから。
782593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/25(火) 08:43:42 ID:???
-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

「……シンジ君?」

僕達が休息を終えて司令塔へと向かうと、出迎えたミサトさんが驚いている。
なんだろう。

「レイ、いったいどうしたの?」
「な、何がですか?」
「顔つきが違う。まるで別人だわ。いったい、あなたは何を……ああ。」
急にミサトさんは言葉を切り、ニヤリと笑った。

「何かした、という訳ね。」
「あのミサトさん。誓って言いますが、僕は……」
「またまたァ」
「い、いい加減にしてくださいよ!」
「まあ、いいじゃない。そのレイの顔は期待できる。
 あんたも頼むわよ。これ、急ごしらえだけど作戦手順書だから熟読しておいてね。
 称してヤシマ作戦、開始時刻は今夜0時。一時間後にはここを出発。」
「……了解です。」
僕はとりあえずそう返事して、さっそくマーカーと付箋紙を片手に資料をめくった。

783593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/25(火) 08:45:02 ID:???
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そうして揺れるヘリの中で資料を読んでいるうちに到着したのが双子山。
そこが作戦行動の現場であり、既に壮大なスケールで仮設基地が建設されていた。
さらに、それを数え切れないほどのトレーラーが渦状に取り囲み、
それらが陽電子砲のためのエネルギー制御・供給の勤めを果たす。
その有様は、もう数年越しに計画されたビッグイベントのようで、
これを数時間のうちに準備が進められたというからNERVの力は驚異的だ。
そして、その中心には巨大な銃座が設置され、丁度そこに2体のエヴァが空輸されてきたところ。
2体?

僕はリツコさんに振り返って尋ねた。
「あの、また使うんですか?」
「そうよ。零号機には初号機の盾となってもらうわ。」
「でも……」
そこにミサトさんが割り込んでくる。
「暴走の心配はないんでしょうね?」
「それはないわ。零号機と初号機は違う。」
「そう?プロトタイプは以前にずいぶん暴れたって聞いたけど。」
「大丈夫。すべて検証済みよ。」
僕はそれを聞いて思わず嗚咽を上げそうになった。
リツコさんに付き合わされた稼働試験のことを思い出して。
784593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/25(火) 08:46:12 ID:???
「そう、ならいいわ。シンジ君、作戦の手順は大丈夫ね……シンジ君?」
「……あ、はい。」
「しゃんとしなさい。頼むわよ?」
「はい。」

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

「作戦、開始!」

そのミサトさんの号令で遂に発動した「ヤシマ作戦」。
戦自研が開発したという陽電子砲、ポジトロンスナイパーライフルによって使徒を狙撃する。
標準を合わせて撃つだけなら無人の砲座で十分と思うけど、
汎用性やパイロットの意志が直接反映される操作性、
そして戦況に応じた対応を考慮すると、エヴァのような人型兵器がベストだという。

防御においては初号機の幾らか前に盾を構えた零号機が座り込む。いや、座らせる。
零号機は自分で動くことは出来ないからだ。
その設置を初号機にやらせた光景は、ちょっと滑稽だったけど。
そして、僕達は仮設の司令室となるトレーラーに乗り込み、そこから作戦指揮を執る。

「では、シンジ君。」
ミサトさんのその指示に頷き、僕はモニタに映るレイに向かう。
785593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/25(火) 08:47:42 ID:???
「レイ、標準システムの使い方は大丈夫だよね?
 リツコさんの言っていた地球の磁場と重力に対する誤差の設定、数値を伝えるからそれを忘れないで。」
こくり……と、いつもと変わらずレイは頷く。

でもミサトさんの言う通りに明らかに違う。
何が、といえば、あえていうなら目の輝きが。
魂が入ったといえば言い過ぎだけど、あえていうなら「本気になった」というところか。
レイを戦いの道具とすることを嘆いていた僕を見て、
むしろ戦うことが自分の生まれた意味であることを示そうと、そのことを僕に訴えるように。
そんなことを僕が考えていたからか、改めてレイが僕に語りかける。

「私が守る……皆も……そして零号機も必ず守る……」
それを聞いた隣のミサトさんがギョッとなって振り返ったが、しかし何も言わなかった。

「送電、開始します。」
「全冷却システム、作動。」
「誤差修正値+0.0009……照準システム作動、問題無し。」
「最終安全装置解除。」
「全エネルギー、ボジトロンライフルへ!」
786593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/25(火) 08:49:07 ID:???
そうして着々と射撃の手順が進む中を、一人のアナウンスの絶叫が引き裂く。
「目標に高エネルギー反応ッ!!」
……見つかった!?
いや、もうこちらも発射準備は出来ている。間に合うか?

「発射ッ!!」



787593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/25(火) 08:51:25 ID:???
とりあえず、ここまでっすー
788名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/25(火) 12:28:42 ID:???
毎日が日曜日っすー
789名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/25(火) 16:48:26 ID:???
GJ!
先が気になるっすー
790名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/25(火) 19:37:24 ID:???
なあなあ、スレ違いなのは承知で質問なんですが
LRS投下スレとかLAS投下スレ等々はあるけど、それ以外のSSはどこに投下すればいい?
ジャンル区別無しなスレって無いんですか?
791名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/25(火) 19:42:30 ID:???
恋愛投下、で検索すればある
792名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/25(火) 20:16:44 ID:???
恋愛抜きの話だとは考えないのか?
793名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/25(火) 21:01:39 ID:???
それ以外の投下スレはぱっと見た感じ
見当たらないし
このスレで聞くんだから、ね
794名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/25(火) 22:43:16 ID:???
エヴァFF総強盗化スレってのがあったんだがな

>>790
新スレ立てちゃいなYO
795名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/26(水) 00:16:18 ID:???
自分の書きたいテーマで新スレ立てるのが一番。
まあ「俺様のスレ」でも良いけど。
そうすりゃやりたい放題。
でも客が来ないとめっちゃ寒いw
796790:2007/09/26(水) 00:22:12 ID:???
この前糞スレ立てたばかりだからスレ立てできないw
まあFF総合投下スレでその内立てるかもです。
サンクス&スレ汚しすみません
797593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/26(水) 00:57:15 ID:???
ミサトさんの合図で初号機によりポジトロンライフルが発射された。
しかし使徒ラミエルの可粒子砲が放たれたのもほぼ同時。
しかも、その狙いは零号機と初号機の居る銃座めがけて。

「し、使徒の可粒子砲が!」
「互いの砲撃が交差し……」

その一瞬の出来事に、オペレータ達は状況を見定めることは出来ず、
それぞれの閃光はそれぞれに着弾した。
その凄まじい轟音と衝撃が、距離を置いていた司令室にまで襲いかかる。

「使徒の攻撃、エヴァ各機の前方120にて着弾!」
「こちらの攻撃もそれました!恐らく、双方のエネルギーが交差した際に干渉しあい……」
「狙いは完全だった。だからこそ……」

しどろもどろに状況を整理しようとスタッフ達が顔を見合わせる中、
ミサトさんは即座に次の展開へと行動に移す。
「前送電システム確認!第二射の発射準備!エヴァは無事?」
「は、はい!零号機、初号機ともに健在!各種装備には影響なし!」
「ポジトロンライフル、作動問題無し!エネルギー再充填開始!」
「第二射用意!再度、照準の修正を!」
798593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/26(水) 00:58:22 ID:???
ミサトさんに続き、再度の発射に向けてスタッフ達は動き出す。
正直、僕は何が何だか判らなくなりそうだったが、
モニタに映るレイの顔は相変わらず落ち着き払っている。
そうだ、僕も落ち着け。

「エネルギー充填完了!」
「照準はまだなの!」
「エヴァが爆破の衝撃でポジションがずれています!再計算がまだ!」
「使徒に再度の高エネルギー反応!来ますッ!」
「そんな、早い!」

  ズシャァァァァァァッ!!!

「零号機のシールドに直撃!」
再び巻き起こる轟音と衝撃。
見れば、使徒の可粒子砲が零号機の盾に直撃している。
そのまま使徒の砲撃にあびせ続けられ、盾が早く変形し始めていた。

「盾が持たない!」
「そんな、これだけのエネルギーを放出しつづけられるなんて!」
「まだか!まだ撃てないのか!」
「ダメだ!照準の微調整が完了しなければ!」
799593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/26(水) 00:59:26 ID:???
その時だった。
うつぶせで構えていた初号機はガバッ立ち上がり、
正に戦場で銃を構える戦士のように、ライフルを大きく振り回して肩に構え直し、
自らの意志で使徒に狙いをつけた。
レイがキレた?まさか、照準システムを無視して自分で狙いをつけるつもりか。

「レイッ!いったい何をする気!止めなさい!」
ミサトさんは僕を通さず、直接レイに怒鳴りつける。
それが聞こえないのか、レイは止めようとはしない。
そして、そのままポジトロンライフルが放たれる!

  キュワァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアッ!!
  
         ズドドドドドドドドドド……

「……コアに命中!!」
「使徒、崩壊していきます。エネルギー反応消失!殲滅完了です!」

その報告にスタッフ達は驚愕し、歓喜した。
800593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/26(水) 01:01:26 ID:???
「よっしゃぁッ!!」
「嘘でしょう?システム抜きで命中させるなんて……」
「まさに奇跡だわ!」
「これぞ、フォースが共にあらんことをって奴だな。」
「お前、そんな古い台詞を……」
そんなことをスタッフ達が言い合い歓声をあげる中、ミサトさんは苦笑いで僕に言う。

「後でレイをこってり絞ってやらなきゃね。勝ったからといって、あの振る舞いは許せない。」
「……そうですね。僕からよく言っておきます。」
内心ではそんなつもり全然無いけど。

そうしているうちに、初号機が零号機の側により何かしているのが見て取れた。
あれは……そうか、外部からエントリープラグの強制イジェクトをしているのか。

「あの……リツコさん。」
「判っているわ。ジープをまわすから見に行きましょうか。
 今度は大丈夫、零号機に直撃はしてないから。多分ね。」

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-
801593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/26(水) 01:02:47 ID:???
「おかえりなさい……」
そう言いながら、マヤさんは「レイ」の一体を薬品の中へと沈めていた。

ここはレイのいわゆる「生産工場」。
作戦が終了した後に、零号機の仮想パイロットとして使用した「レイ」を連れ戻しにやってきたのだ。
このまだ生きていない予備の「レイ」の身体、本物の代わりに使用することが出来るのでは?
という僕の思いつきをリツコさんは拾い上げ、実戦に投入されたのが零号機。
今、生きているレイが死ぬよりは……という軽い考えで言ったのだけど、
実はこれが後に開発する予定の「ダミープラグ」の原案であるという。
ただ、その稼働試験には閉口した。
まず最初に一体の「レイ」を犠牲にして零号機のコアを作るところから始めたのだから。

「そうだったの。それで、レイが……」
そして、マヤさんは「レイ」達の世話をする合間に、レイのあの時の話を聞いてくれた。
一通りの事情を知っていて、何でも話せそうな人は限られている。
そして彼女もこの「レイ」達を使う計画に心良く思っていないためだろうか、
僕に親身になって相談にのってくれた。

「潔癖性なのね、シンジ君も。」
「そうですか?」
「私もよく先輩から言われる……それじゃ苦労するわよって。この仕事をしていくには。」
「……」
802593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/26(水) 01:04:51 ID:???
「でも、シンジ君。レイはあなたのことを無理矢理にすり込まれた訳じゃないと思う。
 今まで、総司令以外に誰もレイに命を吹き込むことは出来なかった。」
「……」
「そして、その次はシンジ君だった。レイは起こされたんじゃなく、あなたを見てレイは生きることを選んだ。
 本当のところは判らないけど、私はそう思う。」
「僕を見て生きることを……」
「この子達も……いや、それこそ判らないわね。
 でも、私はシンジ君自身が思うようにするのが一番だと思う。
 抱きたいと思うなら我慢せずにそうすればいいし、それがイヤだと思うならしないほうがいい。
 あなたが無理をしたら、それこそレイが可哀想。」
「……でも」
「レイは一生懸命なんだと思う。シンジ君を喜ばせようとして。
 レイにとってシンジ君が全てなら、シンジ君が辛い思いをしていることなんて見たくない。」
「……」
「だから、シンジ君は無理をしたり、こうしなきゃ、こうでなきゃ、なんて思う必要はない。
 シンジ君が楽しくなければ、レイは永遠に幸せにはなれない。
 レイは……そうだな、シンジ君にとって鏡のようなもの。」
「鏡……?」
「そういえば、私はシンジ君の笑顔って見たことがないな。心から笑っている、幸せそうな笑顔を。」
803593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/26(水) 01:06:12 ID:???
とりあえず、ここまでですー
804名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/26(水) 02:27:10 ID:???
GJ!!
とりあえず綾波さん本領発揮か?ww
次も楽しみにしてるわ
805名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/26(水) 12:35:35 ID:???
>>790
どこかの使われてないスレを利用すればいい
806名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/26(水) 21:58:14 ID:???
新スレ立てる方がいいと思う。
スレタイ見て、そういう傾向のを書いてみよう、という人が増えるかもしれないし。
再利用はスレタイと内容が一致し辛く、読む人が居ない→書く人のやる気減少、のコンボが怖い。

そういうスレが立ってないのが不思議だ。
すぐ落ちちゃうのかな?
カプ率高いもんなエヴァFFは。
807名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/26(水) 22:02:14 ID:???
総合スレ立てようか?
808名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/26(水) 22:24:25 ID:???
>>806
いやいや、別にスレタイと中身が違ってもいいんだよ。
人が少なくても少しくらいは見てるもんだ。
面白ければそのうち他のスレで紹介されたりするし。
温泉ペンギンの夢スレとか。
809593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/27(木) 22:23:13 ID:???
『やはりダメですね。シンクロ率が起動可能レベルに達していません。』
「……そうですか。」
『もう一度、最初からやってみますか?調整次第では起動できるかもしれません。』
「いや、いいです。時間の無駄だし。」
そう言いながら、僕は起動停止の操作を始めた。
レイの訓練に付き合ってたせいか、すっかり覚えてしまったな。

「シンジ君、お疲れ様です。」
そんなマヤさんの出迎えを受けて、僕はエントリープラグから外に出た。
どうにも、このLCLってのには慣れないな。肺に入れるとき死ぬかと思った。
「マヤさん、無駄な時間を取らせてごめんなさい。一度は試しておきたかったので。
 やっぱり、肉親というだけじゃ……あ、いや。」
そううっかり口に出しかけた僕にリツコさんが言う。
「大丈夫、マヤも知ってることだから。完全にDNAを一致させる必要はないし、
 肉親でも接続が可能なことは判明しているけど、どうもシンジ君はお父さんの血が濃いみたいね。」
「そうなんですか。みんなの父さんの話を聞く限り、僕が似てるとは思わないんだけどなぁ……」
それを聞いたマヤさんはクスクス笑ってる。そうでもないって言いたい訳?
「それじゃシンジ君。20時にはお客さんが来るから、それまでに食事と着替えを済ませてちょうだい。」

そういって去っていくリツコさん……僕に客?
こんな飾りの総司令に何の用があるというのだろう。
ん?ああ、レイ。シャワーまで僕に付き合う必要ないからね。
810593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/27(木) 22:24:18 ID:???
-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

で、総司令執務室。
「あの、冬月さん。なんでこの執務室って、こぉーんなに無駄に広いんですか?
 おまけに床と天井の模様、何が何だか……」
「ハハハ、無駄っていうことはあるまい。いろいろ役に立つものだよ。
 例の電子会議にはうってつけだし、何よりそれを盗み聞きされる不安がない。」
「また、あの変な爺さん達と話すんですか?もう勘弁して欲しいです。」
「難しい話は私が受け持つさ。何も不安に思うことはない。」
「難しい話って……人類補完計画のこと?」
「ああ、そうだな。そろそろ君に話していくか。とりあえず、これを読んでおきたまえ。」
“よく判る裏死海文書”……なんだこりゃ。また冬月さんの手作り資料?

その時、机にある受話器のアラームがチカリと光り、それを冬月さんが受け付けた。
「来たか?通してくれ。」
「今日のお客さんってこれに関わる話ですか。」
「そうだ。私が受け持つ難しい話というのは具体的なNERVの運営に関わることで、
 君はむしろ補完計画の中心人物となる。もうすぐ、その要となる物の一つが到着する。」
「かなめ……」
「ん、来たようだな。」
その時、目の前の床が開いて一人の男がせり上がってきた。
こんな仕掛け、勘弁して欲しいな。うっかり落っこちてしまいそう。
811593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/27(木) 22:26:06 ID:???
現れたのはラフなスーツを着た30ぐらいのスカした男で、長髪を後ろで束ねて顎には無精髭、
手に持っているのは頑丈そうなスチールのケース。
「いやはや、波乱に満ちた船旅でしたよ。おお、君が噂の跡継ぎというわけだな?」
「……あなたは?」
僕がそう尋ねると、うやうやしい仕草でからかうように僕にお辞儀した。

「加持リョウジ、NERVドイツ支部からおみやげをお持ちしました。」
「あ、確かセカンドチルドレンの人の付き添いでしたっけ。おみやげって、弐号機のこと……」
「いいえ、それらは既に葛城に引き渡してあります。洋上でね。
 私の持ってきたドイツ土産は……これですよ。あなたのお父さんのご注文です。」
そういいながら、持ってきたスーツケースを開けた。

ケースの中にあったのは、何かで固められた気味の悪い物……何これ、胎児?
「ぐ……なんですか?これ、まさか食べ物?」
「アッハッハッハッハ、君は面白いことを言うね。副司令、本当にこの子に渡して良いんですね?」
すると、冬月さんも面白そうな顔でスーツケースの中を覗き込む。
「もちろんだ。これぞ人類補完計画の要。最初の人間、アダムだよ。」
「最初の人間……サルが人間になった瞬間?」
「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ」

なんだこの加持さんって人。そこまで笑うことないでしょうに。
812593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/27(木) 22:27:23 ID:???
-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

馬鹿馬鹿しい。
そう考えた僕は、読んでる途中の「裏死海文書」を思わず放り投げてしまった。
なんだかなぁ。聖書とか神様とか天使とか……アダム?最初の人間?嘘っぽいなぁ。
本当かどうか判らない神話のために戦ってるの?莫大な予算をかけて?沢山の犠牲を出して?

……とまあ、単純に考えてしまいそうになるけど、実際に使徒、つまり天使が現れた。
そしてセカンドインパクトも起きた。
夢幻と思われていた神話の登場人物が実在だと判ったということになる……

(ぱちん)

「ちょ、ちょっとレイ、電気消さないでよ。(ぱちん)えーと、さっきの書類は……」

神話や神様っていうのは、意外と嘘じゃないっていう説も聞いたことがある。
太古には太陽や星々、炎、山、あるいは動物。様々な天候にいたるまで人々は神様と崇めてた。
それらは「神様」という言葉にはとても及ばない存在だけど、
それらが巻き起こす事故・事件を擬人化して物語にしたてて、それを教訓にして子孫に語り伝える。
それが神話という話。
813593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/27(木) 22:29:37 ID:???
神様、それは天地の創造主。
過去を、未来を、人の運命までも司る絶対の力。
僕達と同じ世界に姿を現すなど、そんなことなどあり得ない存在。
僕達が戦ってきた使徒、つまり天使達というのはそんな「神様」ではないかもしれない。

なにせ実在して物理的に破壊できてしまうのだから。
太陽や星々同様に、実は「神様」でないことが「ばれてしまった」というところか。
それなら最初の人間とかなんとかの話はもしかしたら嘘じゃないかも。
人間の祖先がサルっていうのも、そっちの方が本当かどうか判らない話だ。実際に見た人がいた訳じゃ……

(ぱちん)

「いやだからレイ、消さないでって……判ったよ。おやすみ、僕は居間の方で起きてるから。」

やれやれ……問題なのはこの死海文書が預言書っていうこと。
預言なんてものこそ信じられない。預言した時点でそれを当事者がそれを知れば未来が変わる。
それを見越して嘘の預言を捏造することがあるかも。人を思い通りに操るための、正に孔明の罠だ。
あ、もう一つある。
手順書。言い換えれば企画書、計画書……「人類補完計画」というわけか。

「ん、レイ、起きてきたの?え、一緒に起きてるって?
 あのね、パイロットの君は十分に睡眠を……判ったよ。僕も寝るから。」
814593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/27(木) 22:30:43 ID:???
-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

「航海中の国連艦隊の目の前に突如として現れた第6の使徒。
 国連軍艦隊の数隻を撃沈するに至る被害を及ぼす。
 これを緊急事態と見て、独断にて弐号機を起動し、応戦す。」

僕を含めたNERVスタッフの主だったメンバーは、戻ってきたミサトさんから説明を受けていた。
彼女が引き継いだドイツ支部からの贈り物、エヴァンゲリオン弐号機とその専属パイロットについて。

「弐号機はB装備のまま、使徒に対してほぼ互角に近接戦闘を展開。
 そして戦艦二隻の砲撃に導き、これを殲滅……どお?見事でしょ。強い援軍の到着よン♪」
そういってミサトさんが手柄顔で紹介したのは、僕と同い年の一人の少女。
赤毛で、顔立ちからしてハーフかな?……えーと、何ってったっけ。

「惣流!アスカ!ラングレェエッ!!覚えた?」
「わかったよ!わかったってば!耳の側でそんな大声あげないでよ!」
「アスカでいいわよ。えーと、シンジだっけ。」
「そ、そうだけど……」
815593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/27(木) 22:31:56 ID:???
「で、そっちの子がファーストチルドレン?ちょっと、挨拶ぐらいしなさいよ。
 こら、人が話してるんだからこっち向きなさいってば。」
「ちょ、ちょっとレイは勘弁してよ。何て言うか……普通の子とは少し違うから。」
「ふん、まあいいけど。それから、あんたが総司令だって?なにそれ、ふざけてんの?」
「他の人に聞いてよ、そんなこと。」
「はあ?あんた自身、納得してるからここにいるんでしょーが!」
「仕方ないだろ?いろいろ都合があって便宜上……」
「あっそ。なら、別にあんたの言うこと聞く必要はないわね。
 仕事の話は全部ミサトに通して。私に命令なんかしないでよ。OK?」
「……おーけー」
「じゃ、疲れてるからもう帰るわよ?引っ越しの片付けもしなきゃなんないし。
 ねえミサト、私の引っ越し先はどこ……えー!ミサトの部屋!?冗談じゃ……」
 
何あいつ?初っぱなからこれかよ……ん、振り返ってまたこっちにやってきた。もう勘弁してよ。
「……あんた総司令って事は、まさか私のこと全部しってる訳?冗談じゃないわよ!」
「まだ資料とか見てないよ。」
「見てないって……あんた、やる気あんの?それで総司令やってるつもり?」
「どっちなんだよ。君こそ僕が総司令ってこと納得してないんじゃないの?
 あーもう、見てないし見るつもりなんてない!これでいい?」
「……ふん。」

やれやれ。いっそのこと、総司令権限でクビにしてしまいたい……
816593 ◆LRvRIPAn.s :2007/09/27(木) 22:33:34 ID:???
とりあえず、ここまでっすー
817名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/28(金) 10:55:06 ID:???
ぱちんに萌えたw
818名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/28(金) 13:19:55 ID:???
あ、あれ?
なんかアスカにDQNっぽい雰囲気がwww
819名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/09/28(金) 15:14:24 ID:???
元々そうだろ。
820保守:2007/09/30(日) 16:30:11 ID:???
保守
821名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/01(月) 23:57:12 ID:???
おつ
822名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/03(水) 00:15:01 ID:???
続きマダー?
823 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/03(水) 00:53:16 ID:???
携帯からです。続きは出来てますが、現在eonet規制の巻き添え喰らってます。
ゴメンナサイ。
824名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/03(水) 18:33:07 ID:???
ほほー、それは難儀な。のんびりどうぞ
825名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/03(水) 21:08:26 ID:HOpXIn5Y
楽しみにマットリマス
毎日来てる俺w
826名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/04(木) 00:22:49 ID:???
俺もだww
ついつい新作が投下されてないかと覗きにきてしまう
楽しみに待ってますんで自分のペースでお願いします
827593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/04(木) 19:12:20 ID:???
「シンジ君、あまりその資料を大っぴらに広げるのはよしてくれないか。」
「ああ、すみません。えーと、この前の使徒は魚型だからガギエルって言うわけですか。
 じゃ、今度のは?」
「形状ではなく使徒の波長パターンで識別している。あれはイスラフェルだ。」

そう隣に立っている冬月さんに解説を受けながらモニタをみる。
両手両足を持つ使徒、イスラフェル。音楽を司る天使だとか。
最後の審判の日にラッパを吹き鳴らし……あ。
「冬月さん、この椅子にどうぞ。」
「おお、すまんな。そういえば、君の父さんに椅子を勧められたことなど無かったな」
ひどい人だね、父さんって。お年寄りにさえ情け容赦ないんだな。
ってそんなことをのんびり考えてる場合じゃない。使徒だよ、使徒。

『あんたは私をしっかり援護すんのよ……こら!私より前に出るんじゃない!
 聞こえてんの?このノータリン女!』

アスカ、なんか戦闘前から大騒ぎしてるし。
それに非道い言い方。レイは気にも止めてないから良いんだけど。
そうそう、指示ださなきゃ。
「レイ、打ち合わせ通りに側面に回り込んで援護射撃。間違っても赤いのに当てちゃダメだよ。」
『こらぁ!私の可愛い弐号機を赤いの呼ばわりしないでよッ!』
はいはい。どうでもいいから、とっとと倒してよ。
828593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/04(木) 19:13:23 ID:???
「でも冬月さん。音楽を司る天使って誰がどうやって知ったんです?
 この説明書き通りだとしたら、最後の審判が来ないと判らないんじゃ?」
「さあな。古代の伝承なぞ、どんな経緯で伝わったのか私は知らん。」

『うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああッ!!
 どう?これが私の実力よ……って、何コイツ!二つに分離するなんてインチキ!!』

「でも、実際に見たから言い伝えが出来たんでしょ?」
「ウハハ、使徒から直接きいたんじゃないのかね?」
「あ、そういうこともあるかも。成る程……」

『ちょっとぉ!何よこれ、コア潰したら倒れるんじゃないの?どーなってんのよぉ!!
 こらこらこらこらッ!ノータリン女さがりなさい!危ないってば!』

「人間が知恵の果実を盗んだのに対して、神様は生命の樹を守るために生命の果実を与えた獣を配置……
 それが天使という訳なんですね。だから、あんなふうに傷つけられても復活出来るのか。」
「ほら、あの使徒に赤いコアがあるだろう?それが生命の果実、我々がS2機関と称する物の実態だ。
 だからこそ赤いコアを砕かねば使徒を倒せない。」
「でもなんか、明からさまに弱点を見せびらかしてるのもおかしいですね。」

『こらそこの司令部ふたり!人が苦労してんのに雑談して笑ってるんじゃない!
 そのコア潰しても倒れなくて難儀してるのよ!なんか考えなさいよ!』
829593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/04(木) 19:14:47 ID:???
うるさいなぁもう……って思ってたら、今度はミサトさんだ。
「アスカの言う通りよ。戦闘中なんだからあんたも集中しなさい。」
「判ってますよ。あの使徒、二匹ワンセットだから片方潰しても片方が直しちゃうってことじゃ?」
「そんなこと、あなたに言われなくてもとっくに気が付いてるわ。
 コアが二つあって、互いに修復し合うってことは同時に壊さなきゃダメね。」
「ああ、成る程。えーと、二人とも聞いてる?二つ同時だって。」

『出来るわけないでしょ!それにあんたが命令するんじゃないって言ったでしょ!』
「ならいいよ。レイ?赤いのに合わせて、せーので使徒のコアを攻撃。いいかな?」
『……(こくり)』
『あんた気安くうなずいてるんじゃないわよ!あんたみたいなのノータリンに出来るわけが……
 もうッしつこいなぁコイツ!うりゃあっ!!』

 ばきん(攻撃音)
 ぱきゅん(銃声)

   きゅどどどどどどどどどどどどどどどどぉぉぉぉぉぉ……(爆発音)
   
『うっそぉぉぉぉぉん』
「よし勝った。ミサトさん良いです?二人とも帰投させて。」
『だーから、あんたが命令すんなっていってんでしょうがッ!!』
はいはい、お疲れ。
830593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/04(木) 19:15:54 ID:???
-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

「レインマンって訳ね?ようするに、その子は。」
「は?アスカ、なにそれ。」
「自閉症患者をテーマにした映画のことよ。外界との接触を閉ざしているが故に驚異的な能力を持つに至った……
 あんた、有名な映画なんだからこれぐらい見ておきなさいよ。」
「たまたま知らなかったことを何で責められなきゃなんないのさ。」
「責めるって、ちょっとあんた被害妄想つよすぎない?」

ここは僕の部屋。
アスカ歓迎をかねて、初の初号機と弐号機による共同戦線で勝利した祝賀会を開くことになったんだけど、
なんで僕の部屋なの?しょうがなく、どうぞって言ってみれば、
「何これ?部屋はだだっ広いんだからもっと家具おきなさいよ。センスないわねぇ。」
入った瞬間この調子。なんだかなぁ。

「まあまあ、いいじゃない。シンちゃん慎み深いから贅沢したがらないのよ。ほら、カンパイ。」
そう言ってミサトさんは軽く笑ってなだめようとするが、アスカの横暴は止まらない。
「いいけどさ、(がちゃっ)ここ寝室?……ちょっとぉ、寝具が一つしかないってヤラシイわね。」
「ちょ、ちょっと勝手にあちこち開けないでよ!」
「いーじゃん別に。あんたたちの関係って、ようするにそーいうことなわけね。」
「あ、あのねぇ……そんなんじゃ……その」
「ナニよ?」
831593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/04(木) 19:16:57 ID:???
とっさの思いつきだけど言ってしまった。
「……レイは妹なんだよ、実は。」

「は?あんたたち同い年じゃ……ああ、二卵性って奴?」
「あら?そんな話、初耳だわ。」
ちょ、ちょっとミサトさん、そんなツッコミ入れないでよ。えーと、
「ほ、ほら、レイは名字が綾波でしょ?父さんにも事情があって言わなかったんじゃない?
 後からリツコさんから聞いてさ。もしかしたら、そういうことかも知れないって……」
でもミサトさんは納得できない顔。ちょっとぉ……お願いだから僕の味方についてよ。

「リツコからそんな話きいたことないけどな。レイって何者?って何度か聞いたことあるけど。
 でも、おかしくない?シンちゃんは碇でお母さんの実家が碇。司令はもともと六分儀……
 あらら?レイ、なに耳まで真っ赤になってるのよ。」
「あ、ああ、もしかしたらレイ自身に話すの始めてだったかも……アハハ。」
「やーねぇ、シンちゃん。そういう大事な話は二人っきりで襟を正してするものよ?」
「アハハハ……」

うん、我ながら良い思いつきだ。なんか、これまでモヤモヤしたものが吹っ切れた気がする。
というか、僕はレイのことをずいぶん色眼鏡を通して見てしまってたからかな。
よく考えて見りゃ同じ母親を通して生まれてきた僕達だ。兄妹というのも当たり前の関係じゃないか。
ああ、それもこれもミサトさんやいろんな人にいろんなことを言われたせいだよ、きっと。
832593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/04(木) 19:18:45 ID:???
うん、間違いない。そうだ。僕とレイは兄妹なんだ。
僕達は家族なんだ。

って僕が満足してたら、
「何この馬鹿アニキ?ニヤついてんじゃないわよ。妹とか余計やらしー」
「シンちゃん……実の妹に萌えてた訳?やーねぇ……」
この二人は……

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

で、やっぱり後片付けもせずに退却ですか。
「ん、レイ。手伝ってくれるの?別にいいのに。
 それじゃ片っ端から袋に放り込んでくれればいいからね。え……?」
「……」

あ、レイの滅多にない何か言いたそうな顔。

「ど、どうしたの?レイ。」
「……ありがと。」
「えええ!?……あ、あの……その……こちらこそ……」

やばいって……顔まっ赤に染めてそんなこと言われたら僕は……
833593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/04(木) 19:20:01 ID:???
規制とけますた
とりあえず、ここまでですー
834名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/04(木) 21:04:38 ID:???
お疲れ様で〜す。
835名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/04(木) 21:28:13 ID:???
赤いの……(゜д゜;)
836名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/04(木) 21:29:42 ID:???
やっぱ文章で戦闘シーンやるのは難しいな…としみじみ感じた
コメディータッチなのね、OKOK
837名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/05(金) 00:32:24 ID:???
乙〜
838名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/05(金) 01:43:10 ID:???
あんまりアスカが邪険にされないといーなー…
839名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/05(金) 15:40:23 ID:???
シンジと冬月がいいコンビすぎるw
つーかゲンドウがとんでもない極悪人扱いだよ、その通りなんだけど…

あと『赤いのに合わせて、せーので使徒のコアを攻撃。いいかな?』で
本当に合わせて攻撃できるレイすげぇw
840593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/05(金) 17:26:48 ID:???
司令塔にて。

「使徒を捕獲する!?」
僕は貰った作戦書にびっくりしてミサトさんを見返した。
「そーよ。孵化する前の使徒を発見したの。
 こんなチャンスは絶対に逃せないわ。特殊ベークライドに固めて徹底的に調査してやるの。」
「でも……危険な作戦ですね。浅間山のマグマに突入って、エヴァにそんなこと出来るんですか?」
「局地戦闘用のD型装備なら問題ないわ……ってさぁリツコ。
 ちょっと聞きたいんだけど、シンちゃんとレイが実の兄妹ってマジなの?」
や、やばい。リツコさんと話を合わせるの忘れてた。

「あら?ミサトにはまだ言ってなかったっけ。私も最近になって知ったんだけど。」
おお、さすがリツコさん。聞いたばかりなのにサラリと間を開けずに話を合わせてくれるとは凄い。
でもミサトさんは納得してないっぽい。

「年齢一緒だから双生児かと思ったけど、二人の誕生日ちがうでしょ?わずか3ヶ月しか違わないし……」
「なら、誕生日が間違ってることになるわね。」
「え?そういうことって……ああ、ありうるかもね。」
「気になるなら、血液とかDNAの照合でもしてみる?データはあるし。えーと、マヤ?」
「いいわよ、リツコ。そっちもこっちも忙しいんだし。それじゃアスカ連れていってくるわ。」
……リツコさん凄い。ちょっと強引だけど一分の隙もない言い回し。
841593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/05(金) 17:28:09 ID:???
そうしてミサトさんが去った後、作戦書を眺めていた僕にマヤさんがぼそり。
「そういうことにするのは……止めた方がよかったかも。」
キーボードを叩く指を叩くのを止めずに言う。

「でも、僕達は本当に肉親同然なんです。僕もなんかさっぱりした感じがするし、
 なにより、レイが喜んでるみたいです。物凄く。」
「そうね。シンジ君て、人とあまり近づきたくないように見えるから。」
「……そうですか?自分では判りません。」
「兄妹宣言は、レイにとってシンジ君が少し近づいてくれたようで嬉しかったんだと思う。
 でも、肉親という縛りでしかレイのことを見てないことにもなってしまうわ。」
「恋愛でなければ人間関係は成り立たないんですか?」
「ううん、その……ごめんなさい。なんだか私、野次馬気分で人の恋路を眺めてるだけかも。
 気を悪くしたら謝るし、余計なことはもう言わない。だけど……」
「なんです?」
「レイはただの生き別れの肉親じゃないのよ。シンジ君は理解してるの?レイのことを。」
「クローンだからっていうこと……え、何これ?ご、ごめんなさい、マヤさん。なんなら、後で話しましょう。
 冬月さん!ちょっと待ってください!」
別に僕は逃げるつもりは全然無かった。
その時、さっきの作戦書に物凄いことが書かれてあることに気がつき、慌てる他は無かったのだ。

「なにかね?シンジ君。」
「ここに書いてあること、本気ですか?失敗したら即座にN2爆雷の大量投下するって。」
842593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/05(金) 17:29:15 ID:???
「もちろんだとも。使徒殲滅が叶わない場合は我々すべての死を意味する。
 それはNERVのみならずゼーレ、そして国連各国の合意であり、命令でもある。」
「我々すべての死……」
「前にも言ったはずだ。必要なら君にも死んで貰う。」
「……」

人類の存亡。
その言葉の前にはぐうの音も出ない。自分の命にすら価値の無いつまらないものに見えてしまう。
僕は黙って引き下がる他はなかった。

こうして、僕はよく夢から無理矢理に連れ戻される。
僕達はあの使徒、正しく神に通じる天使を相手に命がけで戦い、
そして全人類よりも先に死ななければならないという現実に。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

が、僕に入った第一報がそんな暗い気持ちを吹き飛ばしてくれた。
ミサトさん曰く、「シンちゃんごめーん、やっぱり使徒殺しちゃったぁー」
アスカさん曰く、「馬鹿兄妹げんきぃ?私達、これから温泉よーん♪おーほっほっほっほっ……」

チッ……心配した僕が馬鹿だった。
やれやれ。レイ、帰ってお風呂はいって寝ようか。
843593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/05(金) 17:31:05 ID:???
まあでも、アスカの存在は使徒との戦いを楽観視できるほどに頼りになっていることは言うまでもない。
レイとは数段上を行くエヴァとのシンクロ値、そして自信満々で訓練に挑むその姿。
「これからどんな使徒が来るか判らないのよ!次はサキエルの5倍増しでやって!」
こんな感じで、エヴァに乗れるからと言って無理矢理やらされている感じがしない。
本当に使徒との戦いは自分の戦いであるかのように熱心であり、懸命だ。
おかげで僕とレイは少しだけのんびり出来そう。これまで切羽詰まった感じだったし。
でも、

「こらこら!なんで馬鹿兄貴まで女子更衣室に入ってるのよ!
 ちょっ……こらぁ!ぱんつぐらい自分ではけ!このノータリン女!」
「……ねぇファースト、自分の食べたいものぐらい自分で選んだら?こら、聞いてるの?」
「ほらほら、接続試験ぐらい一人で来なさいよ。もう住所は馬鹿兄貴の左腕ですって登録したら?
 もう!いつまで、そんな男におっぱいサービスしてんのよ!離れなさい!」

って、全然のんびりさせてくれないし。なんだかなぁ……次の使徒戦でもこんな調子。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

「こらぁっ!そこの脇役!さも仕事したような顔してへたり込んでるんじゃない!」
はいはい、アスカさんのご帰還のようです……って脇役がへたり込んじゃダメなんですか。
844593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/05(金) 17:32:41 ID:???
「あのねぇ、アスカ。こっちは大変だったんだから。
 人力で巨大なエヴァの発進準備するのって、どれだけの手間がかかると……」
「あんたの貧弱な身体がどれだけ役に立ったっていうのよ。司令だったら黙って見てりゃいいじゃない。
 出撃してから、あんたの指示が適当だからノータリン女を守るのどれだけ大変だったか。」
「うるさいなぁ。司令だからって何もしない訳にはいかないじゃないか……」

えーと、簡単だけど説明を。

使徒が来ました。
でもNERVの電力がストップしちゃいました。
しょうがないので人力でエヴァの発進準備をしました。
使徒を殲滅しました。

以上、説明終わり。

「あんたねぇ、使徒に負けて最初に死ぬのはこっち……
 こらこら、そこのノータリン女!そんな馬鹿兄貴の肩なんか揉んでるんじゃない!
 パイロットが一番大変なんだって私が言ってる最中でしょーが!」
「はいはい、アスカはもう休んでてよ。こっから先の後片付けは関係ないんだし。」
「あんただって大して関係ないでしょ?よーし、一時間後にロビーに集合。そのノータリン女つれていらっしゃい。」
「はぁ?今からどこに行こうって言うのさ。」
845593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/05(金) 17:34:34 ID:???
「私、今だにこの街の何処に何があるのか知らないのよ。案内してよ。」
「あ、あのねぇ……エヴァの出撃して使徒を殲滅した直後だよ?二人とも体を休めて……」
「だからよ。普段は訓練やら試験やらで大して遊ぶ暇なんてないじゃない?
 こういう使徒襲来直後で予定がメチャクチャになった今しか無いのよ!ほら、ミサトの許可も取ってあるから。」
 強引だなぁ……
 
-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

で、僕達は地上の街へと繰り出した。
あれ?もしかしたら何日も外に出てなかったかも。太陽がまぶしい……
「そんなに外に出てないの?あんた、学校は?」
「もう行ってないよ。もうそんな暇なんかなくってさ。そういうアスカも通ってないじゃん。」
「私はいいのよ。もう大学も出てるし……んー!?あんた、まだ私の資料よんでないの?」
「読まないし読むつもり無いっていったじゃない。」
「……馬鹿正直ね。ほらほら、行くわよ。たまにはあんたのノータリン女も散歩させなきゃ。
 あれ?どこよ、あの女。」
「なにいってんのさ。僕のすぐ後ろ、ほら。」
「ああ?そんな格好してるから全然わからないじゃないのよ。何その格好?あんたが着せたの?
 センス無いわねぇ、それじゃ性別すら判らないじゃないのよ。ほら、帽子ぐらい脱ぎなさいよ!」
「ちょ、ちょっと止めてよ。青い髪が目立つから隠してるんだってば!」
「その子の髪が青いなら私の髪は赤いのよ!どこに問題があるっていうのよ!」
「ちょっ……それ答えになってない……」
846593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/05(金) 17:35:59 ID:???
「ほら、行くわよ!その子の服選びから!」

そんな訳で、僕達の街中冒険の開始。
案内しろって言われても、僕も大して何処に何があるのか全然わかってないし。
とりあえずデパート一巡りから開始してバーガー屋で一休み。
もう、レイの服とか山ほど買っちゃったから山のような荷物もたされてヘトヘト。
でも、アスカは元気いっぱい。そりゃそうだ。手ぶらだし。

「さーて、次はどこ行く?そうだ、日本のカラオケって行ってみたいな。」
「えー、もう帰ろうよ。こんなに荷物もったまんまじゃ……」
「コインロッカーにでも放り込んでおけば?さぁさぁこれからよ!」
「ってさぁ、もう6時じゃない……あ。」
「……何よ。どうしたの?」
「やばい、今日はリツコさんの所にレイを連れて行かなきゃならない日だったんだ。」
「ええ!?そういうことは早く言いなさいってば!」
「急いで戻らなきゃ!えーと……」
「ゴミの片付けなんていいから!外に出てタクシー拾うよ!」
「あ、待って。おーい!」

僕の一声でやってきました、黒服のお兄さん達。
847593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/05(金) 17:37:03 ID:???
「な、何よこいつら!」
「僕の監視と護衛をしてる諜報部だよ。お願い、すぐ戻るから車まわして!」
「ハッ!!」

「……それじゃ、私達の買い物してるところとか、ずーっと着いてきてた訳?」
「しょうがないだろ?僕は司令だし君だって重要人物なんだし。ほら、車が来たよ。」
「じょ、じょ、冗談じゃないわよ!何で私が監視されなきゃ……」
「もういいから兄さん達、アスカを車に押し込んじゃって!早く!」
「ちょっ!止めなさいって!モガモガ……」

流石は諜報部、良い仕事してくれます。

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

「お疲れ様でしたぁー」
「お疲れ様です。」
そんな声が飛び交うNERV本部の中を僕達はリツコさんを探してまわる。
といっても、こういう組織だし大半は24時間いのってるんだけど。
とりあえずオペレーター室の手近な人に尋ねて回る。
「え、赤木博士ですか?もう更衣室に向かわれたから、お帰りになったんじゃ……」
「そうですか……しょうがない。明日にするか……」
と、僕がため息をついてると後ろから声が。
848593 ◆RqK9R7Pg2Y :2007/10/05(金) 17:38:10 ID:???
「しょうがないじゃないでしょ?シンジ君、早くレイを連れてきて。」
おお、リツコさん待っててくれたのか。
既に化粧をし直し、完全にアフター5の準備を整えたままで。
そして専用の医務室へと向かい、レイにいつもの注射を施す。

「まあ、あなたが忘れるはずがないと思ってたから信じて待ってたわよ。
 遊びに行くのもいいけど、レイの保護者としての責任を忘れないでね。」
「すみません。」
「いいけど、レイはこれを打たないと生きていけないことを忘れないで。」
「はい……」

そして部屋の外に出ると、そこにアスカが待っていた。少し心配そうな顔をして。
「怒られちゃった?」
「いや、大丈夫だよ。ごめんね、今度また何処かに行こう。」
「……」
「ん、どうしたの?アスカ。」
「……泊めてくんない?疲れちゃった。ミサトのとこまで帰るの面倒。」
「ええ?あの……まあいいけど……」
849593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/05(金) 17:39:51 ID:???
あれー?トリップがおかしくなってた。
とりあえず、ここまでですー
850名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/06(土) 00:43:57 ID:???
使徒襲来直後に店開いてるのか?
停電してるのに。
851名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/06(土) 00:48:42 ID:???
今回は随分と割り切ったなwww
バル・ゼルあたりがどうなることやらwwwww
852593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/06(土) 10:47:53 ID:???
>>850
仰るとおりでしたorz
ああ、考えてなかった。後でまとめるときにフォロー文を混ぜておきます。
ご指摘助かります。ありがとです。
853名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/06(土) 22:58:22 ID:???
会話文ばかりだな……
854593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/06(土) 23:25:26 ID:???
で、アスカも連れて僕の部屋へ。

「ほら、コーヒー。」
「ありがと。」
「何か食べる?簡単な物なら……」
「ううん、いらない。さっき食べたばっかりじゃない。」
「そうだね……」

う、レイ。その様子は、風呂に入りたいって顔だな。
でも今はちょっとなぁ……

「どうしたの?」
「いやその……レイ、僕はいいから先に風呂に入っておいでよ。」
「入れてあげたら?どうせあんたのことだから、いつも一緒に入ってるんでしょ?」
「いやその……」
「私のことは気にしなくて良いから。」
「……じゃレイ、入ろうか。」

あんまりこういうところ見せたくなかったんだけど、今のアスカは僕をからかうつもりは無いらしい。
後からなんか言われるかな?まあいいか。

ああ、レイ。僕の服を脱がせようとしなくてもいいからね。
855593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/06(土) 23:26:42 ID:???
で、風呂場。

かぽーん……こーん……

「じゃ、レイ。後ろ向いてよ。背中を流すから……(がらがらっ)……ちょええええええええええっっ!!」
「風呂場でそんなに大きな声ださないでよ。うるさい。」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと、アスカ!なんで入ってくるのさ!」
「ん?見るのは良いけど、触ったら殺すわよ。」
「み、見ないってば!ぼ、僕達はもう上がるから!」
「いいじゃん。ほら、ちゃんと洗ってあげなさいよ。それとも、エッチなことしてる途中だった?」
「しないってば!兄妹なんだって!」
「……そう。そうだったわね。」
「……」

……少し見てしまった。こっちは見たくても見れないんだよ。こら、息子よ落ち着け。
レイの体ですら無反応で居られないのに、このダブルパンチはちょっと困る。
しかし……アスカの方が大きいかな……いやいや、見てはいけない……

「見たいなら、しっかり見たら?ほら。」(ざぱぁっ)
「ちょっ……僕達が洗い終わるまで湯船から出ないでよ!」

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856593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/06(土) 23:27:47 ID:???
風呂に上がってレイの髪を乾かしているうちに、アスカも風呂から上がってきた。

「もっと、しっかり洗ってあげなきゃダメよ。兄妹だったらもっと遠慮無く体に触ったら?」
「僕達のこと、そんなにとやかく言われても困るよ。」
「とやかく言いたくもなるわよ。私達、いってみればパートナーよ?
 その子とあんた、セットでね。義務じゃなくって、一緒に行動してればいろいろと気になってくる。」
「……」
「その子、寝かしつけたら少し話さない?」
「……いいけど。」
しょうがないなあ。やっぱり、人からレイとのことをあれこれ言われたくないけど、
逃げられないならさっさと済ませておきたい気もする。

で、僕は寝室から出て居間で待っていたアスカに向き合い、コーヒーを入れ直す。
「で、話って?」
「そんなに構えられても困るけどね。あの子は寝てる?あんた抜きで。」
「いや、寝付いたかどうかは判らないけど。」
「あんた達、本当にピッタリ一緒なのね。いつでもどこでも……どうすんの?これから先。」
「どうするって?だから、僕達は兄妹なんだし……」
「兄妹だからよ。あの子、どっかの男をちゃんと好きになって結婚したり出来るのかって聞きたいのよ。」

それは……考えてなかった。
857593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/06(土) 23:29:16 ID:???
「い、いや、いずれは世間にも慣れてくるだろうし……最初の頃に比べてしゃべれるようにも……」
言い訳しようにも、だんだん口ごもってしまう。
なにせ、最初にまともに話したことは「僕が全て」なんだから。

アスカは黙って僕の言葉を待っていたが、しょうがなく僕にたたみかけてきた。
「あんたはいいわよ。私とエッチなことする?って言ったら出来るでしょ?」
「な、なに言ってるのさ。」
「変に反応しないでよ……それじゃ、こう言えばいい?
 あんたならどっかの女捕まえて結婚して子供作って仕事して稼いで家族喰わせて老後を迎える。
 そういうあったり前な人生をあんたなら送れるけど、その子は違うでしょ?
 あの子は生きていけるの?あんた抜きで。」
「せ、成長するさ。レイだって。」

なんとか言い返そうとした僕にアスカはきっぱり言い切る。
「無理。」
「ちょっと……君がレイの何を知ってるのさ。」
「知らない。けど、あの子はエヴァに乗るためだけに作られた子。違う?図星でしょ。
 前の司令に育てられ、最近になって出会ったあんたにそこまでなついてるのはおかしい。」
「……いや、あの」
「知らないけど判るの。私もそうだから……後でちゃんと私の資料を読んでね。
 私はね。エヴァに乗るために遺伝子の選別を受けて選ばれた精子と卵子で生まれたの。」
「え……?」
858593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/06(土) 23:30:51 ID:???
まさか……もしかしたら、と思ってたけど……

「それじゃ……その、君には両親はいないの……?」
「母さんは居たわ。父は知らない。どっかの偉い科学者らしいけど、素性は知らされていないの。」

「そう……君の母さんは日本人かな?アスカって名前だし……一緒に来たの?」
「違うわ。私が小さい頃にエヴァパイロットが決まった直後に亡くなったの。」

やっぱり、そうなのか。

「……」
「私のような子は私の他にも沢山いたわ。その子達との競争の中で私は選ばれた。
 そして母さんが死んだ後、使徒と戦うため、それだけのために育てられた。
 私はエヴァが、NERVが全て。もうそれ抜きでは生きられない。」

「……」
「だから私は負けない。負けるわけにはいかない。
 この戦いでパートナーのあの子に足をひっぱられてはたまらない。」

「……そんな、なんていうか打算的な考えで……」
「そうかもしれない。戦いにおいてだけじゃない。あの子に不幸になって貰っては困るの。
 それは私も同じ立場だから。だから親身になりたくもなるわよ。」
859593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/06(土) 23:32:38 ID:???
「……」
「私はあんなノータリンとは出来が違うと本気で思ってる。そりゃ、あの子の凄いところもあるけどね。
 でも、あの子は私と同じなの。
 あんたの心配なんかしてないわよ?あんたみたいな普通の子のことなんか。」

僕が何も言わなくなったのに呆れたのか、アスカは急に立ち上がった。

「やっぱりここに泊まるの止める。」
「……え、今から?もうこんな時間だし……」
「私に監視、ついてるんでしょ?なら問題ないわ。」
「……」
「それじゃ……あと、兄妹宣言は撤回したら?法律の問題だけクリアしときゃ、それでいいじゃない。」
「マヤさんと似たようなこと言うんだね……レイはずっと僕が面倒みるさ。
 何も結婚とか、せ、セックスが無くても……」
「あんた男でしょ?あの子も女よ……それじゃね。」

(バタン……)

いや、レイのことを考えるのは後でも良い。ついでにアスカの将来のことも。

なんてことだろう……アスカは知らないのだろうか。
何故、エヴァと接続できているか、ということを。
860593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/06(土) 23:34:29 ID:???
「レイ、やっぱり起きてたの?今の話、聞いちゃった?
 ああ、そんな目で僕の顔、見ないでよ。大丈夫だから……」

アスカの話が、パイロット決定直後に母親が死んだのなら間違いない。

選ばれたのは、むしろアスカじゃない。母親の方だ。

コアにふさわしい女性を捜し当て、アスカを産ませておいて弐号機に押し込んだんだ。

アスカを乗せるために。

エヴァのパイロットを人為的に生み出すために。
861593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/06(土) 23:36:28 ID:???
とりあえず、ここまでですー
862名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/07(日) 11:55:43 ID:???
>>861
投下乙です
さてシンジは次々と明らかになってゆく真実に耐えていけるのだろうか…
863名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/08(月) 12:58:46 ID:???
これは小説というのか?一度読み返してから投下した方がいいと思う。まあ、乙
864名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/08(月) 15:57:49 ID:???
GJ!
アスカが何気に面倒見がいいんだな
865名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/08(月) 17:36:40 ID:???
>>593
アスカがレイとシンジの関係に反発するかと思ったけど
物わかりいいな。

でも面白かった、次期待してる。
866593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/08(月) 22:08:02 ID:???
エヴァ接続試験中。

『なんで私達、裸になんなきゃいけなのよォ!』
「私達はエヴァと共に成長し続けなければならないの。シンクロ率の向上に向けて新たな試み、というわけ。」
エントリープラグ内で大騒ぎするアスカとそれをたしなめるリツコさん。

今回の接続試験ではプラグスーツに変わる新しい方法を模索するため、全裸による接続が試みられていた。
彼女たちパイロットは様々な訓練の他に、こうした試験も付き合わされている。
これで技術向上をすれば僕だって乗れるようになるのかな。
コアとは肉親なんだから、他の人よりもシンクロしやすい筈なのに。

『シンジ、そこにいるの!?まさか見てるんじゃないでしょうね!』
なんだよ、この前は堂々と見せてたくせに。
「はいはい、見たくても見えないってば。映像はちゃんとプライバシー保護のためにマスクされてますぅ!」
そう返事した僕にリツコさんはささやく。
(ね、ね、ね、ね)
(へ?なんですか、リツコさん……うわ!そのモニタ、マスクしてないじゃないですか!)
(ウフフ、こうしてみると二人のスタイルが比較しやすいわね。どっちがお好み?)
(ダメじゃないですか!切ってくださいよ!)
(いいじゃない。後でこの画像をメールしてあげるわね。)
(ちょ、ちょっとバレたらどうすんですか!)
『なにコソコソ話してんのよ!結果はどうなの?恥ずかしいんだから早くしてよ!』
867593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/08(月) 22:09:20 ID:???
「な、なんでもないったら。」(……もう、リツコさん。からかわないでくださいよ。)
(ゴメンなさい。最近、シンジ君て仏教面だから。なんか、悩んでる?)
(悩まないで済むなら誰も苦労なんてしてません……ん、あの壁、ずいぶん汚れてますね。)
(ああ、あれは……)

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

「使徒ぉ!?」
僕はリツコさんの答えに、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
とはいえ、汚れについて尋ねてから即答した訳じゃないんだけど。

「はッ!総司令、パターン青が検出されています!間違いなく使徒です!」
「試験用の模擬体に感染しつつあります!パイロット2名のエントリープラグ、射出完了!」
「レーザー照射……ダメです!既にATフィールドが展開されています!」
「ん、ハッキングを受けてる?くそう、こんな時に!Cモードで対応!」
「使徒は爆発的に増殖しつつあります!このままでいけばNERV本部が全て埋め尽くされる時間は……」
「くそっ!人間業じゃないぞこりゃ……おい、逆探知の結果はまだでないのか!」
「そんな……内部から侵入?プリズノーボックス!?」
「このコードは……ヤバイ!MAGIに侵入するつもりですッ!」
「総司令!如何しますか!」
868593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/08(月) 22:11:14 ID:???
って、飾りの僕に聞かないでよ!
何がどうなってるんだか、いろんなアナウンスが飛び交ってて、さっぱり訳が判らない。
使徒?ハッキング?えーと……
「どちらも同じよ。敵は一つ、使徒はハッキングによってMAGIの乗っ取りを謀るつもりね。」
と、リツコさん。これだけ垂れ流される情報から、よく聞き取れるなぁ……

「でも、リツコさん。それならMAGIに物理的に乗っ取っちゃえばいいんじゃないですか?」
「MAGIの機能をそのまま流用したいらしいわね。恐らく目的は本部の爆破。
 ほら、ご覧なさい。すでにメルキオールを乗っ取って自爆決議をさせようとしている。」
リツコさんがそう言うのが早いか、MAGIから流れる機械音声のアナウンス。

『メルキオールにより自爆決議が提訴されました……否決……否決……』

「それじゃリツコさん、とりあえずエヴァ各機をNERV本部から緊急射出……かな?」
「そうね。エヴァが乗っ取られてはここが爆破されるのと同様、何もかもお終いね。
 それから、MAGIのロジックモードを15秒単位に。それで時間が稼げる。」
が、それを聞いたミサトさんが怖い顔で振り向いた。
「何いってるの、エヴァ抜きで使徒と戦うつもり!?」

だが、リツコさんは澄まし顔で答える。
「大丈夫よ。この使徒はこちらの環境、つまり私達の土俵で戦うことを望んでいる。
 ましてや、電子戦なら戦う手段は幾らでもあるわ。ミサト、私に任せてくれない?」
869593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/08(月) 22:13:24 ID:???
-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

で、リツコさん主導の緊急会議。
なんでも、逆に使徒にハッキングを仕掛けて自滅に追い込む、という。なんだかよくわからない。
「この使徒は情況に応じて進化している。それこそ正に生物のように。
 進化する生物なら方法があるわ。アポトーシスよ。ほら、ガン細胞を自滅に追い込む手法。
 それをコンピュータ的に再現してやればいい。」
そんなふうに緊急会議で皆に解説するリツコさんだけど、やっぱり訳が分からない。
こんなメカニックな世界で生物学や医学の話が出てくるとは思わなかった。なんだかとても着いていけない。

しょうがない。僕に出来ることをやるだけだ。
「えーと、射出されたエヴァ各機の確認と野外での起動の準備、そしてエントリープラグの回収。
 あ、そっちを最優先ね。それから……」
これから突貫工事にかかるリツコさん指揮下のオペレーター部隊を眺めながら付け加えた。
「……軽食とドリンク剤を大量に用意して。」

で、みんな揃ってMAGI本体に突入。それを内部から直接に操作しようとしているらしい。
うず高く積み上げられた軽食とドリンク剤の隣りで、マヤさんが猛烈な勢いでキーボードを叩き続けている。
とても話しかけれる雰囲気じゃないな。退散しようか……ん、ミサトさん?

「リツコが呼んでるの。ここに入って。」
「え……僕ですか?なんなんだろう。うわ、狭いですね、ここ。」
870593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/08(月) 22:14:30 ID:???
そうして中に入ってみると、内部の装置の一面にベタベタと張り紙がしてある。なんだこりゃ?
「ここはね、言うなれば私の母さんのお城。母さんがここに潜り込んでMAGIの調整をしていたらしいわ。」
「リツコさんが作ったんじゃないんですか?」
「私は最後の仕上げをしただけよ。んっ……」
手を止めてリツコさんは自分の腕に何かをしている……え、注射?

「栄養剤。シンジ君も打つ?半端なドリンク飲むより効果抜群よ。」
「い、いいですよ僕は。その……注射といえば……」
「その5番の端末とってくれない?」
「あ、はい……レイの注射ってなんなんです?どこでも手に入るんですか?」
「あなたが心配している通りよ。ものすごく貴重な上にお金を出しても手に入らない。」
「そんな……それじゃレイは……」
「シンジ君、とりあえずは使徒殲滅よ。その後のことは追々考えるしかないわ。」

そんな話をしながらも、リツコさんは端末を叩く指を止めない。
凄いというか……これはこれで人間業じゃないな。

「あの……リツコさん。僕に何か用なんです?僕じゃ邪魔になるだけじゃ……」
「とんでもない。私の可愛いシンジ君が側にいてくれるだけで元気倍増。」
「な、何いってんですか。」
「シンジ君って案外もてるじゃない?ミサトやマヤともよく話し込んでるし、アスカもまんざらじゃないみたい。
 レイもあの通りだし、私も負けてられないと思ってね。」
871593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/08(月) 22:15:44 ID:???
「アスカって僕に文句ばっかりだし、そんなことは……」
「地を出せる相手っていうことよ。シンジ君にはその意味が判らないかな。ほら、あの落書き見てご覧なさい。」
「……ん、『碇のバカヤロー』って……父さんのこと?」
「そうよ。母さん、あなたのお父さんとそういう関係だったし。」
「はあ?いや、その……」
「もちろん、あなたのお母さんが消滅した後の話。お父さん、お母さんが居なくなって寂しかったんじゃないかな。」
「そういう……もんなんですか……?」
「フフ、男も女も心と体は寂しがり屋だから、誰も一人きりではいられないわ。
 ……そういうわけで総司令特典その4、司令になった人は女技術部部長とのセックスがついてきまーす。」
「ええええ!?ちょ、ちょっと何いってんですかぁっ!!」

その時、ひょいと狭い入り口からミサトさんが覗き込む。
「どしたの!大声出して、何かあったの!?」
が、リツコさんはケロリと答える。
「なんでもないわよ、ミサト。そうだ、コーヒーお願いできる?」
「……ああ、コーヒーなら僕が」
と、逃げようとしたけど、リツコさんは僕の肩を抱いて離さない。
しかも、もう片方の手はタイプを続けたまま……なんて人だろう、本当に。

「だーめ、逃がさない。」
「ちょ、ちょっとぉ……そういうからかわれ方されても僕は困りますってば。」
「あら、本気よ?からかってないわ。今すぐキスしてあげたら信じてくれる?」
872593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/08(月) 22:16:49 ID:???
「いや、だから……ちょ、ちょっと止めて下さい。ほら、使徒の浸食に間に合わなく……」
「大丈夫。私、タダ働きなんていやよ?この後でシンジ君との素敵な夜が待ってると思えば、そりゃあもう……」
「こ、困ります!そんなことを言われても!」

その時、外から大声がした。
「先輩、いけます!」
マヤさんだ。どうやら作業も大詰めらしい。

が、リツコさんの誘惑は止まることを知らない。
「さてさて、シンジ君?決心はついたかな?」
「あの、マヤさんがなんか言ってますけど……」
「こっちはとっくに準備オッケー。後は実行すればいいだけなんだけど……
 どっしよっかなー?シンジ君にふられちゃったら使徒殲滅して生きてたってつまんないし。」
「り、リツコさん!?」
「どうする?私と寝る?Yes or No?」
もう頭に来た。

「いい加減にしてくださいよッ!!」

リツコさんは苦笑いでようやくキーボードを一押し。
873593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/08(月) 22:17:55 ID:???
すると、

「成功です!使徒の反応が消失していきます!」
「危なかった……あと一秒おそければ……」
外からそんな報告と歓喜の声がわき起こる。ホントにもう……

-=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=- -=-

スタッフ達が後片付けに取りかかる中、僕はむっつりとリツコさんにコーヒーを差し出した。
「美味しいわ……ありがと。今はこれで我慢しておく。でも、コーヒーは媚薬効果があるって知ってる?」
「もう、リツコさんてば、そんなことばっかり。」
「ウフフ……でも私は本気よ。いつでもいいから私のマンションにいらっしゃい。
 そろそろ年上の女から手ほどきを受けても良い年頃だと思うんだけどナ……」
「行きませんてば。もう失礼します。」

やれやれ……と、ため息をついてると後ろから誰かがポンと僕の肩を叩く。
「ずいぶん疲れた様子だね。お疲れさん。」
そりゃ疲れるよ、と思いながら振り返ると、そこに居たのは旅支度を調えた冬月さんだ。

「あ、お疲れ様です。では、いよいよ行くんですか?南極へ。」
「そうだ。『槍』を取りに行く。ゼーレのいう補完計画の要だからな。」
「はい……」
874593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/08(月) 22:19:10 ID:???
「ゼーレといえば、キール議長が君に話があるそうだ。」
「またですか?なんだか、気が進みません。」
「仕方ないさ。ゼーレはとうとう君をNERV総司令にしたことを承認するようだ。」
「……」
「今日の22時だ。なに、不安に思う必要はない。それじゃ。」
「はい、いってらっしゃい……」

今回の使徒、たしか「恐怖」の象徴だったかな。
なんか……いろんな意味で合っているような、合ってないような。
875593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/08(月) 22:20:42 ID:???
とりあえず、ここまでですー
876名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/08(月) 22:23:11 ID:???
乙ー。
りっちゃんの毒牙がやばいwww。
877名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/08(月) 22:33:40 ID:???
何かリツコさんが可愛い
878名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/08(月) 22:36:46 ID:???
欲求不満だなw
879名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/08(月) 22:37:16 ID:???
性欲をもてあます
880名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/09(火) 00:56:37 ID:???
リツコさんこえーよwww
「目が血走ってる」とかの表現がなくてよかったよ、いやマジでwww
881名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/09(火) 02:08:53 ID:???
りっちゃんあけすけ過ぎだww
だがそれがいい
882名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/09(火) 08:15:38 ID:???
なんか唐突だな。
883名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/09(火) 15:56:47 ID:???
ゲンドウの赤城母娘の親○丼に対抗して、リツコが○子丼返しwとかやってるSS思い出して吹いたw
>>882
寂しいんだよ、リツコさんも…
このままいったら某Vガン○ムの敵側女性キャラみたくはっちゃけそうだがw
884名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/09(火) 16:08:36 ID:???
自演多過ぎじゃね?
ちょっと引くわ
885名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/09(火) 16:26:44 ID:???
>>883
そうだなよく考えたらリツコも親子丼になるんだよな
886名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/10(水) 00:36:23 ID:???
>>883
ゼーレに拉致られて壊れたりっちゃんが、ナオコ入りの量産型に乗りつつ
たのしい、たのしいわよシンジ君!!!
もっと私を楽しませて!!!!みたいなw
887593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/10(水) 22:48:39 ID:???
総司令執務室にて、ゼーレの議長、キールとの対談。

『さて、調子はどうかね?』
と、キール議長。あいかわらずの迫力のある顔で、正面から僕を見据える。
ゼーレの委員会の人達はこの人以外に誰もおらず、僕と話をする時は何時も二人きりだ。

「はい……悪くありません。ああ、今回は使徒の侵入を許しました。」
『副司令の冬月は否定していたが君は素直だな。本来なら責任者を解任すべき失態だが仕方がない。
 君をとがめはしないよ……何か、飲み物でも取り寄せてはどうだ?少しくつろぎたまえ。』
「いえ、結構です。話を手短にしたいので。」
『ヌハハ……素直すぎるのも困るな。相変わらずの君の物言い、面白い。私は少しやらせて貰うよ。』
酒かな?何かグラスから飲み始めた。

もう何度となくこの人との対話を繰り返している。
話す内容と言えば、例の補完計画の事に限らず世の中のこと、最近おこったことや、僕の生い立ちに至るまで。
なんだか、僕の人格や経歴を確かめているかのように。

『……確かに非道い世の中だ。だからこそ、補完計画を確実に行わなければならない。』
「それが、どんな犠牲や代償を支払ってもNERVを運営させている理由ですか?」
『その通りだ。我々が最後に求めることは何か。様々な願い、願望、欲望を突き詰めれば、それは何か。
 それこそは心の平穏だよ。知っての通り、我々に手に入らぬ物はない。例え人の命でも。』
「……人の人生を左右することも?」
888593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/10(水) 22:49:49 ID:???
『そうだ。それについて、我々が心を痛めぬ訳ではない、といっても君は信用しないだろうがな。』
「……」

『話を変えるが……君は、幼少から寂しい人生を送ってきたはず。それは私に話してくれた通りだな。
 母親と死に別れ、父親に見捨てられ里子に出されて只一人で生きてきた。』
「……」
『そして、君の他人と傷付け合う不愉快、他人の冷たさを味わいながら生きてきた。
 その君だからこそ、我々の計画の価値が理解できない筈は無い。』
「僕をそうし向けたのはあなた方じゃないですか。あなた方の計画で僕はそうなったんだ。」
『そうだ。我々を敵視しても構わないが、その我々を利用してやろうとは思わんかね?』

(ガタン……)

僕はもう嫌になって、そこで席を立った。
そんな僕をキール議長は笑う。
『……フフ、いいだろう。よく考えたまえ、碇シンジ君。本当に君が成すべきことは何か、を。』
僕は何も言わずにデスクのスイッチを切ろうと思ったけど、どうにも我慢できずに一言だけ。
「もういいよ。うるさい。」

止めておけばよかった。キール議長はますます笑い出す。
『ウハハハハハ……これはいい。ますます君のことを気に入ったよ。
 君は父親以上の逸材かもしれんな。ウハハハハハ……』
889名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/10(水) 22:50:12 ID:???
>>886
流石にそれはねぇよw
どんだけはっちゃけてるんだよ
890593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/10(水) 22:51:49 ID:???
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キール議長の話、判らない訳じゃない。
いや、判らないどころか僕には痛いほどにその意義を理解できる。

「レイ、ただいま。今日はもう遅いし何か食べに行こうよ……ん、何してるの?」
「……おかえりなさい。」

もし仮に僕の父さんが、そして母さんが居たところで、どの程度さみしい思いを済んだといえるだろうか。
母親、それは一番最初に出会う他人。父親なんてそれ以上だ。

「ええええ!?君が作ったの?このシチューを?」
「うん……」
「ああ、そうか。僕が作ってるところを見てたんだね……うわ、僕の味と全く同じじゃないか。」
「うん……」
「ん、でもちょっとだけ違うな。なんだろ……アハハ、そうか。お肉が入ってないんだな。
 やっぱり嫌いだったの?まあいいや、ありがとう。食べようか。」
「あの……食べたら……」
「え?」
「食べたら……」

そう言いながら、頬を染めるレイ。なんだろう?ああ、そうか。
891593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/10(水) 22:53:07 ID:???
「もう、いい加減に一人でお風呂に入れるようになろうよ、レイ。」
「でも……」
「……判った。いいよ。もうそんなこと言わないから泣きそうな顔しないで。」
「うん……」
やはりレイには逆らえない。
今のレイの顔、こんなことを言い出すように見えて仕方がなかったから。

(父さん!どこに行くの?僕を見捨てないで!僕を置いて行かないで!ねえ……)

僕の側に居て欲しかった。例え、家族という名前で縛られた他人でも。
母さんも、そして父さんも。

「大丈夫だよ、レイ。僕は君の側から離れないから。」

マヤさんの言う通りだ。レイは正しく僕の鏡。
この寂しそうな顔をしながら、必死で僕にしがみついてくるレイこそ僕自身の心。

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「ごめんなさい、マヤさん。この間は話を無理矢理たち切ってしまって。」
「いえ、いいのよシンジ君……どう?あれからレイとは。」
そう言ってマヤさんが見上げた先。それは巨大なカプセルに納められて「メンテナンス」を受けるレイの姿。
892593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/10(水) 22:54:31 ID:???
「良好ですよ。最近、レイの言葉かずが増えてきたんです。」
「そう……成長してるのね。」
「そうですね。あの、父さんと一緒だったレイってどんな感じでした?」

マヤさんは巨大な装置を操作する手を止めて、少しのあいだ目を閉じる。
「そうだなぁ……なんというかクールだったわ。必要以上に物を言わない。誰とも関係を持ちたがらない。
 総司令以外とは誰とも。それでも司令から三歩さがって歩く感じだったけど。」
「……」
「以前の稼働試験は失敗ばかりで事故が多発して、『レイ』はキズだらけの毎日だった。
 でも、あの『レイ』は総司令の意志に忠実に従い、死ぬことをも恐れずにE計画を担って励んでいた。」
「それは今のレイと大きくは違わないですね。」
「でも、もし出会っていたら判るわ。なんというか、目が違う。
 鋭くはないけどまっすぐ見つめる、冷たいほどに冷静な『レイ』のあの目が忘れられない。」
「もしかして、その目は父さんそっくりだった、と?」
「そうね……あれは総司令としてNERVを指揮していたあなたのお父さんの目だったのかも。
 今のレイ、いつでも寂しそうで、それでいて人を恐れているようで……」

僕は思わず苦笑いで答えた。
「僕、そんな目をしてますか?」
「前にも言ったでしょ?レイはあなたの鏡。あるいは……」
「あるいは?」
「あなたのお父さん、そしてシンジ君の望み通りの人格となって生まれてくるのではないか、と……」
893593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/10(水) 22:55:57 ID:???
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マヤさんの言う通りかも知れない。
僕はベットにレイと潜り込んでから、そのことばかり考えていた。

しばらく目を閉じずにレイの目を見つめていた。深紅の綺麗で純真な目を。
レイもまた、眠らずに僕を見つめかえす。
僕がそうしてレイの目を見ていたい、という望みに答えてくれるかのように。
あれ……レイ、泣いてる?

「ちょ、ちょっとレイ、まばたきしなくちゃ……」
「……うん。」

僕は見つめるのを止めてレイの体を引き寄せると、待っていたかのように体をすり寄せてくる。
そうやって打てば響くように答えてくれるレイは……正直いって危険だ。
女性と付き合ったことなんてない僕には判らないけど、通常の女性にはありえないんじゃないかと思う。
確かめ合わなくとも絶対に僕から離れないだろうという安堵感。レイにはそれがある。
それはどれほど愛し合っている相手や、実の親に対しても感じることはないだろう。

アスカが言っていた、レイが僕と離れられない、というのはまったく逆だ。
なんだか、二次元の女性に恋をするオタクに似ているような気がするけど、それとは少し違う気もする。
レイの中に僕が居る、という感動がある。
894593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/10(水) 22:57:09 ID:???
駄目だ。もう僕はレイと離れて生きていけない。

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レイのメンテナンスはまだ続く。
「マヤさん。すいぶんかかるんですね。」
「そうね。今は記憶のバックアップに入ったから、まだまだかかりそう。」
そういいながらマヤさんは、うーん、という猫のような伸びをした。

「あの、マヤさん。聞いても良いですか。」
「ん?」
「レイが打っている注射って何なんですか?その、やっぱり入手困難なものなんです?」
「ああ……私はよく知らないの。ご免なさい。」
「そうですか。とすれば、知っているのはリツコさんかなぁ。」
と言ってると、噂をすれば影。リツコさんがやってきた。

「まだ、かかりそうね。シンジ君、待ってる間にどう?私からの最後のレクチャー、しましょうか。」
「え、えーと、何の話ですか?」
この間のこともあるし、まさか……なんて考えてたら、リツコさんはクスクスと笑い出した。

「大丈夫よ。押し倒したりしないからいらっしゃい。フフ……マヤまでそんな顔をしないで。
 今日は大詰め、いよいよ補完計画について説明するから。」
895593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/10(水) 22:58:40 ID:???
とりあえず、ここまでですー
896名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/10(水) 23:08:38 ID:???
乙。

注射ってやっぱ漫画版のヤツ?
897593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/12(金) 00:11:58 ID:???
そしてリツコさんは僕を連れていく。まだ下りたことのないNERV本部の最下層へと。

リツコさん……女性として、素敵だ、と思う。目つきは鋭いけど、なんといっても美人だし。
白衣の間からチラリと見せる、科学者らしからぬ素顔と仕草にドキリとさせられることも少なくない。
この前はそんなリツコさんから迫られたのだ。
ホイホイと誘いに乗るどころか、かえって萎縮してしまう。こんな大人の女性相手では。
……いや、そんなことばかり考えてはいけない。

エレベーターが最下層に到着するまでの間、リツコさんは僕に問いかけてきた。
「キール議長から、ある程度は計画について話を聞いてるわね?」
「はい。何でも、人類を新しい形にするとかなんとか。この戦いはそのためでもあるとか。
 具体的な話は聞いてないんです。何故、それをしなければならないか、ということだけ。」
「それをしたらどうなるのか、ということも聞いてない?」
「はい。世界は残酷で、人間が生きていくには辛い世の中で……だから補完計画を遂行する、と。
 それで、何をするのか、どうなるのか、ということは何も。」
「フフ、どうなるのかっていうことを聞いたら、シンジ君はきっと驚くわよ。」
「え……?」
「その計画はね?簡単にいえば、みーんな一緒に死んで天国に行きましょうっていう話なの。」
「えええ!?なんですか、それ?」

リツコさんは、驚く僕の様子を面白そうに笑いながら話を続ける。
898593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/12(金) 00:13:00 ID:???
「簡単に言えばね。連中の言い分では、それは単なる死ではなく人間を一つとするための計画らしいの。
 人と人の間にある障壁を取り除き、みな一つの魂となって融合するためだ、と。
 人はどうして苦しむのか。その多くの苦痛が他人に対する恐れ……判る?」
「……全然わかりませんよ。キールっていう人の話はそんなことだったのか。」

そう言ったものの、他人への恐怖と言われれば判らない訳じゃない。

誰かが一緒じゃなければ寂しいという苦痛。
誰かが一緒だと傷付け合ってしまうという恐れ、不安。

なぜ、こんな苦しみを味合わなければならないだろう?
それは、間違いなく他人というものが存在するからに他ならない。
どんなに話し合っても立ち入れない、立ち入らせることが出来ない人の心。
その心の障壁が全て消え去り、誰もが共にいられればどんなに良いだろう。
それについては判らなくもないけど……
なんで皆で死ななきゃならないのか、この戦いでどうしてそうなるのか、まったく話がつながらない。

やがて、エレベータが到着して、僕達は長い廊下を歩いていく。
そして前方に見えてくる巨大な扉。それが目指すところらしい。

「それじゃ、リツコさん。僕達は生き残るためじゃなくて、むしろ皆で死ぬために戦ってるんですか?
 まったく意味が判りませんよ。なんのために僕達は必死で……」
899593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/12(金) 00:14:01 ID:???
「使徒を全て殲滅した後、ある儀式が行われるはず。それによって天に贖罪を果たす。
 それにより、我々は天の楽園に回帰することが出来る……らしいんだけどね。」
「……」
「その儀式を行うために、我々は天の楽園にあるという生命の樹に到達しなければならない。
 しかし、それは神が作り出した獣に守られている。シンジ君、その獣というのは?」
「使徒、ですか?」
「そう。死海文書の復習よ。思い出して。」

彼女なりのジョークだろう。
女教師モードにチェンジするリツコさんは、巨大な扉の操作パネルに向かう。

「それじゃ、まさかあの……むしろ、使徒が襲来している訳じゃなくて……」
「良い勘してるわね、シンジ君。むしろ天界の楽園に襲来しようとしているのは我々の方。
 それを防ぐために、使徒は必死で身を挺して戦っている。」
「……多くの犠牲を出してまで僕達は攻め入っていると?」
「それが戦争というものよ。歴史の授業で習ったでしょう?」
「それじゃ、サードインパクトが起こるというのは?」
「口八丁っていう訳。」

そしてリツコさんの操作の後、かすかな電子音、そして大地を揺るがすような重低音と共に扉が開く。

 (ピピッ) ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
900593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/12(金) 00:15:02 ID:???
そこで僕が見た物。
それは顔に謎めいた仮面をかぶり、壁の十字架に貼り付けた気味の悪い白い巨人。
「あれこそ第2使徒、リリスよ。」
リツコさんはそういって薄い笑みを浮かべた。

そこからの説明は長かった。
かいつまんで説明すると、まずは使徒を殲滅する。
それによって、天界にあるという生命の樹に至る道が開ける。
そこから先は二通り。

まず、ゼーレのいう補完計画。
これは先程、リツコさんの説明通りに儀式を行う。
それは『槍』を用いた処刑であるという。
生命の樹のもとで、その処刑で流された血によって地上の罪が浄化され、
全ての人の魂は楽園への回帰を果たす。その受刑者がこのリリスだとか。

そして、もう一つ。
僕が加持リョウジという男から貰った『使徒アダムのレプリカ』、そして『使徒リリスの魂』、
それらとの融合を行い、さらにこの『使徒リリスの肉体』との融合を果たす。
それによって、『リリスの完全体』が『使徒アダム』との『禁断の結合』を果たしたことになり、
神に等しい力を得ることが出来る……なんだそれ?
901593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/12(金) 00:16:04 ID:???
リツコさんは説明を補う。
「と、いう話をあなたのお父さんから聞いたの。
 正直いって私にもよく判らない。でもね、碇ゲンドウの口癖はこう。
 『私はこの計画で必ずお前との再会を果たす』……とね。
 つまり、ゼーレの計画を横取りして、あなたのお母さんを救うつもりだったのよ。」

なんだか、物凄く電波な話を聞かされているような気がする。
生命の樹だとか楽園とか神に等しい力とか……ゼーレとかいう権力者達の実態はオカルト集団だったのか。
でももう一つ、判らないことがある。

「あの……何故、僕なんです?僕が遂行しなきゃならないって言ってましたよね?」
「その融合に必要な『使徒リリスの魂』、それの持ち主がレイ。彼女が融合を許すとすれば、その相手はあなただけ。」
「はあ?あの……レイはパイロットにするために作られたんじゃないんですか?
 でも、なんでそんなことが判るんですか?」
「実はね。NERVの持つ、言うなれば『使徒レーダー』はマスク処理が加えられているの。
 でなければレイが使徒として反応してしまう。」
「レイが使徒?そんな……」
「もしかしたら、レイが操縦できているのはそれが理由かも知れないわね。
 さらに言えば、あなたのお母さんもまた、それに通じる者だったのかも。」

……もうだめだ。理解不能で吐きそうになってきた。
でも、リツコさんの言うことが全て本当のことだとすれば、これはとんでもない話だ。
902593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/12(金) 00:17:07 ID:???
つまり、ゼーレは人類を全て無に返すために、この計画を起ち上げて、
その計画の中で僕の母さんが、そしてアスカの母親が犠牲となり……
その後にセカンドインパクトを起こしたという使徒の再来し、
それから人類を守るという名目で組織されたNERV。
だが、それは防衛のためではなく、むしろ使徒を呼び出して殲滅するためで、
それの最終目的は人類を滅ぼすためであり……ああ、贖罪のためだったか。
父さんは、その計画を横取りして母さん一人を助けるために、
そのためにレイやアスカが命がけの戦いに繰り出され……

言えない。レイはともかく、アスカにこの計画のことなんて口が裂けても言えない。
アスカの母親が犠牲となって建造された弐号機。
そのことだけでも口に出せる話ではないというのに。
アスカの戦い、それは自分の存在理由のための戦い。
そして、それは人類を守るという名目があればこそ。
それが母さん一人を助けるためとか、人類を無に返すとか……

だめだ……明日から僕はどんな顔をしてアスカと話せばいいのだろう。
ましてや、僕が命ずるままに戦っているレイは……
そんなことのために?そんなことのために、NERVの人達は自分を犠牲にして昼夜とわずに働いているというのか。
僕は……

僕は……そんなことをするために……
903593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/12(金) 00:18:22 ID:???
「こら、また難しい顔してる。」
そういいながら、リツコさんは自分のおでこを僕のおでこにコツン。

「ひっ……」
などと声を上げてしまう。
まさか、リツコさんはあっちの方へモードチェンジするつもりか。

「シンジ君、この計画は既に始まっているの。既に使徒の8体まで倒している。
 既に戦いは始まってしまったの。その中で、あなたが何をすべきかを積極的かつ前向きに考える必要がある。
 これまでの、これからの犠牲のことよりも、最終的に到達すべき地点は何か、を。」
「でも、人類を滅するためにとか、母さんを助けるためにとか、そんなことのために皆が犠牲に……」
「考える順序がおかしい。このままでは、ゼーレのために人間社会が無に帰してしまう。
 まさしく人類が滅亡に及ぶサードインパクトが起こってしまうわ。
 そのために、犠牲を惜しまず我々NERVは戦わなくてはならない。違う?」
「……正義の味方って訳ですか。」
「ただ、生きていたいだけよ。シンジ君は、お母さんを助けたくはないの?」

そう言われても困る。母さんのことは何も覚えていないし、助けたいという気持ちがなんだか薄い。

「つまり、僕に父さんがやろうとしたことをやれ、と?」
「それはシンジ君にしか決められない。実行する人にその気持ちがなければなんの意味もない。」
「僕が人類を滅ぼしたいと考えたら?」
904593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/12(金) 00:19:36 ID:???
そう尋ねたが、リツコさんはキッパリ。
「それはないわ。」
「何故、そう言い切れるんですか?」
「レイを愛せるあなたなら、そんなことを考えたりしないわ。あなたが人を愛せるなら。」
「でも、レイは普通の人間ではないですし、それに……」

そうだ。リツコさんに確かめたいことがあったんだ。
いい加減、こんな電波な話ばかり聞いていたくない。

「やっぱりレイは、あの注射抜きで生きられないんですか?……ああ、ちょっと違う話になっちゃうけど。」
「そうね。レイはごく僅かな命。NERVやゼーレという巨大組織のバックアップが無ければ生きられない存在。
 そして確かに、ある意味で人間とは言えない存在ね。」
「……あの、やっぱりそうなんですか?レイは他の人のように生きる方法は無いんですか?」
「その方法があるとすれば?」
「補完計画、ですか?でも、僕とレイが融合してしまったら、レイは居なくなっちゃうんじゃ……」
「居なくなったりはしないわ。言い換えれば、あなたもレイも居なくなって融合体へと変化する。
 それもまた、レイとあなたが共に居続ける一つの方法じゃないかしら。」
 
結局、その電波物語につなげちゃうんですか……なんだかなぁ。
905593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/12(金) 00:20:53 ID:???
とりあえず、ここまでですー

>>896
仰るとおり、漫画版も参考にしてますー
906名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/12(金) 14:47:05 ID:???
おつ
907名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/12(金) 16:11:20 ID:???
>>905
投下乙です
リツコさんがまるでシンジの母親みたいなポジションな感じだ
『必殺親○丼返し!』はまだ諦めてないんだろうかw
908名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/13(土) 02:43:08 ID:???
乙。

リツコさんは計画を知ってる人のなかで一番シンジに身近な人だからなぁ。
909保守:2007/10/14(日) 16:44:59 ID:???
保守
910名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/14(日) 18:48:28 ID:???
   /:::::::::::::::::::::>'' ´        , イ ハ    l     lヽ:::::l
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     ヽi    l /  ̄/Zニ≠-' /ーz_=ニ',¨ヘ  !     l l
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     ll  l   l l、   ヽ: : : : : : : : /    l ,l  !   .l ,l
     ll  l   .l l ヽ、   ヽ‐--‐/    ,イ l  l   ! /l
     ,イ!  !   l l/ ハ\   `二´   , イ l l  l   l/ l
911593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/14(日) 20:52:40 ID:???
リツコさんの最後のレクチャーを終えて、僕達は上層へと戻るために再びエレベーターに乗り込んだ。
何かいろいろ聞こうと思ってたのに、なんだか頭の中の収集がつきそうもない。
あんなオカルトを聞かされたせいか頭よりも胃の方がムカムカする。
その辺で全部はき出したいぐらいだ。今日一日だけでもいいから、さっき聞いたことを忘れていたい。
いや、まあとりあえずレイの話を……とはいうものの、何を聞けばいいんだろう。
そんな考えていたら、リツコさんの方から話しかけてきた。

「で、どう?シンジ君、レイとは。」
「え……なんですか?どうって。」
「まだ妹とか言ってるみたいだから、どうやらレイは手つかずみたいね。」
「手つかずって……あの……」
またそんな話か。正直、それも勘弁して欲しい。

「シンジ君、やっぱり女が怖い?」
「……なんでそうなるんですか。」
「あの子、あれだけあなたに親しんでるんですもの。触れたって怒ったりしないでしょ?」
「いや、そう言われても……僕にはレイにそんな感情を持てませんってば。」
「ウフフ……それ、本気で言ってるの?」

いえ、嘘です。僕だって男です。毎日、レイに見つからないように自己処理するのが大変なんです。
実のところは。一緒に風呂に入ったりするけど、あんまし見ないようにするとか気苦労が絶えません。
……おかしいな。あの薬品で浮かんでる全裸のレイを見た時は吐いてしまったぐらいなのに。
912593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/14(日) 20:54:35 ID:???
「本当は、未経験でどうして良いか判らずに手を出せなくて困ってるんでしょ。
 だから教えてあげるって言ってるのに。処女と童貞じゃ大変よ?きっと苦痛だけで終わってしまうわ。
 今からついていらっしゃい。優しくしてあげるから。」

や、やばい……リツコさん、お願いだから側に寄らないで。
ああ、ダメだ。レイには無いリツコさんの香りがたまらない。もう、落城寸前……

(チン!) ガラガラガラ……

「あ、ああ、着きましたよ。やあ、レイ。メンテナンス終わったんだね。」
エレベーターを降りてすぐのところにマヤさんとレイが待っていてくれた。
よかった、お陰で正気に戻れそう。
僕は慌てて駆け寄ろうとするけど、しかし僕の肩を掴むリツコさんはその手をゆるめようとはしない。

「マヤ、今夜一晩だけレイを預かっててくれない?ちょっと、シンジ君を開発してくるから。」
「ちょ、ちょ、ちょっとリツコさん!?マヤさんはともかく、レイに変なことを吹き込まないで……」
「変な事じゃないわよ。人間にとって肌の触れ合いこそ大切なことなんだから。
 そのことを教えてあげる。さ、いらっしゃいってば。」
「……あの!僕はもう帰ります!さ、行くよレイ。」
もう限界だ。逃げるしかない。と、強引にリツコさんの手を振りほどいてレイの手を握った。
しかし、そんな僕をリツコさんは静かな、そして真面目な口調で僕をたしなめる。
「それで良いの?レイの寿命、長くはないのよ?」
913593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/14(日) 20:56:06 ID:???
「え、あ……」
「補完計画がどのようになろうと、レイの手をそうして握れるのも今のうちだけ。
 その意味は失ってからしか判らない。シンジ君は本当にそれでいいの?」
「……」
「あなたが後悔するのも見ていられないけど……むしろレイの方が可哀想。
 あなたが悶々とした気持ちを抱えているのを、レイが気が付いてないと思う?
 レイの短い命の中で、ちゃんと女の子として扱ってあげられるのはシンジ君だけよ。」

……正直、リツコさんは僕のことをからかってるだけだと思ってたけど、
そんな真剣な話とは思っても見なかった。
アスカからも似たようなこと言われた気がするけど。

「あの……リツコさん、僕ってそんなに悶々っていうか……」
「顔に全部かいてあるわ。大人の女の見る目を甘く見ないでね。
 フフ……ま、これぐらいで勘弁してあげる。課外授業はあなたの良いときにいつでもいらっしゃい。」

リツコさん、追いつめすぎてはダメだと思ったのだろうか。
ようやく僕を解放してくれた。
もう挨拶もそこそこに、レイを連れて逃げる僕って……なんだか情けない……

今の会話、レイが理解してたらどうしよう。
いつもの視線が妙に痛く突き刺さる……
914593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/14(日) 20:57:45 ID:???
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碇シンジがその場を去った後、伊吹マヤは後片付けに追われながらも赤木リツコに問いかけていた。
それも、すこしあきれ顔で。

「まさか、先輩がシンジ君にモーションかけるなんて思ってもみませんでした。本気なんですか?」
「だから、私はレイのことが心配なの。あんな男の子が三十路女を真剣に相手してくれる訳ないじゃない。」
「いや……その、三十路と言っても先輩はステキですよ。いや、その……」
マヤは自分でそう良いながら赤面してしまう。
が、彼女はひるんでいる場合ではないらしい。

「……その、あの使徒戦の時、MAGI内部でシンジ君を口説いてるの、全部きこえてましたよ?
 もう私、あきれちゃって……」
「あら、そうだったの。ご免なさい、気をつかわせて。」
「いいえ!どういたしまして!おかげさまで、あの時ほど肝を冷やしたことはなかったです!ホントにもう……
 いくらレイのことが心配だからって、いや私もレイとシンジ君とのことが心配だけど、でも……」
「ま、レイのことは建前半分、実のところは欲望半分。
 でも、ふられちゃったわ。突然すぎたかな?もう少し、時間をかければよかった。」
そう言いながらクスクス笑うリツコ。お陰でマヤの立腹は収まりそうにない。

「だからってダメですよ。あんな14歳の男の子をたぶらかすなんて。」
「不潔?フフ、相変わらずの潔癖性ね。やっぱり三十路女は恋なんてしちゃダメなのかな……」
915593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/14(日) 20:59:03 ID:???
「え……」
マヤは突然かわるリツコの口調にキョトンとする。

「あの……先輩……」
「素直に言って、同年代でシンジ君に会いたかったな。ううん、せめてプラマイ5歳以内かな。
 それなら、まだ世間の目にもおかしくない組み合わせだったのに。」
「先輩、私はその、そこまでは言うつもりじゃ……」
「私は好きよ?シンジ君のこと。まだまだ知識も薄いし未熟だし、ちょっと生悟りのところはあるけれど、
 私の話を真剣に聞いて、それでいて自分の主義と論理を保とうとしてる。
 そんな彼と話をするのが楽しくて仕方がない。でも、やっぱり未熟だから傷ついてしまう。
 見ていて壊れてしまいそうで怖い。そんな彼のことを思わず抱きしめてあげたくなってしまう。」
「先輩……」
「でも、補完計画を遂行するために容赦できないところもある。これまでも彼にとって厳しいことをして来たと思う。
 それでも彼はひるまずに頑張ってる。お飾りではあっても総司令としてね。切ないくらいに。」
「……」
「それだけ頑張れるのは何故?それはレイのことが可愛いからね、きっと……」

そしてリツコは寂しげな苦笑いを浮かべながら改めてタバコに火をつけ、話を続ける。
「シンジ君……レイを失った後、どうなってしまうのだろう。せめてアスカとでも仲良くなれればいいんだけどね。」
「あの……先輩?」
「ん?」
「私、先輩が本気なら応援しますよ。そこまでシンジ君のことを愛しているなら、年の差なんて関係ありません。」
916593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/14(日) 21:01:10 ID:???
真剣な告白に感化されたか、マヤは真剣なまなざしでリツコを見上げる。
「シンジ君の苦しみを一番わかっているのは先輩だけです。全てが終わった後にシンジ君をいやせるのは……」
が、そんなマヤに対して、リツコはペロリと舌を出して見せた。
なんちゃって、という合図だろう。それを見たマヤは改めて憤慨する。

「先輩、あの……ひどぉい!私、真剣に聞いてたのに、からかってただけなんですか!?」
「ウフフ……そうね、マヤ。真面目に考えることも、その次の瞬間に全てをジョークにしてしまうことも出来る。
 これだから歳を取るのは哀しいわ。マヤ、早くあなたも恋をしなさい。純粋な気持ちを持てる今のうちにね。」
「……」

もう、怒る気力も失せた様子で溜息をつくマヤ。
そして後片付けも済んだらしく、書類をトントンと揃えて立ち上がる。
「それでは先輩。ここ、閉めますから出ましょうか。」
「そうね……少し考え事をしてから行くわ。私が閉めておく。」
「そうですか。それでは……」

そして扉から出る間際に、再びマヤは振り返る。
「あの……先輩?」
「ん?」
思い切りが必要だったのだろう。少し間をおいてからマヤは尋ねた。

「やはり、先輩が碇ゲンドウを殺したんですか?」
917593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/14(日) 21:02:54 ID:???
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眠い……なかなか寝付けなくて睡眠不足だ。

リツコさんからあんな話をされたせいか、夜中にトイレに駆け込むはめになってしまった。
お陰で僕の妄想は大爆発。かといって、いまさらレイから離れて寝ることも出来ず僕は増長するばかり。
やれやれ、レイは目を覚ましていなかっただろうか。
あれ、レイがいない。
もう起きてるのか。最近、自立行動が多くなってきたな。

「レイ、お早う。ん、この香りはお味噌汁?」
「おはよう……あの……」
「え、味見?」
「見て……」

といって僕に小皿を突き出すレイ。そりゃ見ては見るけど、この香り……
「おいしい……?」
「う、うん、おいしいよ。そりゃ勿論。」

おいしくないはずがない。
さてはレイ、この前にとっておきの料理を作るために買ってきた特級品の鰹節を山ほどぶち込んだな?
いったい、どんな料理番組を見てこんな作り方を覚えたんだろう。
918593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/14(日) 21:04:27 ID:???
あーあ、あれ本当に高かったのに。
でも、なんか不協和音がまじってるっぽい。これはこれで面白いんだけど。

「でも、ごめんね。ちょっとお鍋見せて……げげ、味噌汁に鶏肉いれたの?」
「……うん、お肉。だめ?」
そうか、僕がシチューに難癖つけたのを覚えてたんだな。
いや、怒ってないよ。そんなに可愛く小首を傾げられたら怒るわけにもいかないじゃないか。

「ああ、いや、悪くないよ。ただ、朝向きじゃなかったかな。
 なんていうかこう……朝はあっさりした材料の方が良いし、それから鰹節も贅沢しすぎると、お金が……」

って……心配はいらないんだったっけ。
こんな贅沢を出来るのはNERVのお陰だけど、こうしてレイと居られるのもNERVのある間だけ、か。
僕は耐えられるだろうか。その瞬間を。

「どうしたの……お金……?」
「いや、レイ。いいんだよ、お金のことは。」
「……うん。」
「そうだ。せっかくだからお味噌も飛びきり良いのを買って来ちゃおう。後で一緒に行く?」
「うん。」

レイはあいかわらずの無表情だけど、そのレイの返事はなんだか嬉しそうだった。
919593 ◆LRvRIPAn.s :2007/10/14(日) 21:05:52 ID:???
とりあえず、ここまでですー
920名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/14(日) 23:30:37 ID:???
そうか、じゃあもういいから死ね
921名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/15(月) 00:47:16 ID:???
乙!
>>593氏の書く
りっちゃんかっこいいな!
922名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/15(月) 21:29:34 ID:???
取り敢えずレイが短命と聞いても大したショックも受けないシンジがムカつく

>いい加減、こんな電波な話ばかり聞いていたくない。

この話全てが電波そのものだと思いますありがとうございました
923名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/15(月) 22:08:59 ID:???
>>593氏GJ!
今後のレイとシンジの関係がどう変化していくのか非常に気になるな
924名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/16(火) 00:07:08 ID:???
長くないか…?
投下よりは投稿向きだと思うがまぁいいか
925名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/16(火) 20:32:32 ID:???
長いのばっかり続いてるのもなんだし、スレ埋めがてらに小ネタ貼ってみます。
よければ続き考えます。
926名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/16(火) 20:33:39 ID:???
ミサトマンションの食卓にて。

なにやら重たいような、そうでもないような空気が漂う中で、いそいそとお茶を煎れているシンジ。
腕を組み、その様子を無言で眺めるアスカは何だか面白く無さそうな顔つきだ。

「シンジ、アタシは暇じゃないのよ?手短にして欲しいわね。」
「あ、ごめん……とりあえず、お茶。」
「ん。」
アスカは貫禄たっぷりに受け取り、ずずっと音を立ててお茶をすする。

そして、話の口火を切ったのはアスカから。
「で、相談って何?」
「あのさ……綾波をデートに誘おうと思うんだけど……」
「はぁ!?」
「いや、あのさ。だから、綾波を……」
「言い直さなくても良いわよ。聞こえてる。」
「そう、それでさ……」
「で?あのファーストとデートしたいからって何で私に相談するわけ?
 二人して何処でも好きなところに行ってくりゃいいじゃないのよ。」
「いや、アハハ……なんていうかさ……」

(注)一応、これはLRSです。
927名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/16(火) 20:34:45 ID:???
アスカはしかめっ面をしながらどうしようかと考えている様子。
しかし興味が引かれるところもあったのか、ここは話を聞いてやることにしたらしい。

「ま、いいわ。相談に乗るから言ってみなさいよ。しかし……
 へぇー?あんたみたいな冴えない男もとうとうヤル気になった訳ね。へぇー?」
「い、いや、へぇーへぇー言われても困るけどさ。」
「で、何よ。」
「あの、どうやって誘ったらいいのかと思って……」
「は!?」
「いや、だから、どうやって誘」
「ちょっと、アタシがそんなとこから教えてやらなきゃいけない訳?それぐらい自分で考えなさいよ!」
「いや、だからさ。女の子ってどこに連れて行くと喜んでくれるのかな、とか思ってさ。」

アスカの言いようも酷いが、それでも笑って相談を続けようとするシンジの様子も情けない限りである。
とにかく、それほどまでに思い悩んでいる、ということかも知れないが。

「あのさ、シンジ。女の子、女の子っていっても、全ての女を十把一絡げに考えてるんじゃないでしょーね。
 まさかアタシとあの人形女と趣味趣向が同じなわけないでしょ?」
「に、人形女って……そう言わないでよ、アスカ。綾波もあれで女の子らしいところもあるんだから。」
「どうだか……」
もう付き合いきれないと思ったのだろうか、アスカはグイッとお茶を飲み干し、立ち上がる。
928名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/16(火) 20:36:09 ID:???
「食事にでも誘えば?本人と話し合えばいいじゃない。」

そしてガラガラピシャンと自分の部屋に帰ってしまう。
そんなアスカを、シンジは障子越しに礼を言う。

「アスカ、ありがと。そうか、取りあえず食事に誘ってみるよ。」

(三日後)

「アスカぁ!行ってきたよ。」
「……どこに?主語が抜けてる。もう一回。」
「い、いや、その、綾波とデートして来たんだってば。」
「ほぉー?あの子、OKしたんだ。あんな司令のロボット女が。」
「ひ、酷いなアスカ。何もそんなふうに……」
「で、何してんのよ。話がしたいなら、お茶ぐらい煎れたらどう?」
「あ、ごめん……」

かちゃかちゃ……こぽこぽこぽ……

どうにもシンジのプライドの無さが気になるところだが、それはさておき。

「で?あの子と何処に行って何してきたのよ。」
「あ、ああ、それはもちろんアスカに教えて貰ったとおりに食事を……」
929名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/16(火) 20:37:20 ID:???
「は?それだけ?」
「い、いや、それだけって言っても、綾波が誘いに乗ってくれただけでも凄いじゃないか。」
「ふん。で?どこで何を食べてきたのよ。」
「ああ、あそこ。NERVの8階の……」

ブッ!! 

「ど、どうしたのアスカ。お茶なんか吹き出して。」
「お茶も吹くわよ!それって、いつも通りにエヴァの試験の合間にご飯食べに行っただけじゃないのよ!」
「ちょっと、そんなに怒らないでよアスカ。」
「ウルサイ!ほら、さっさと拭きなさいよ!」
「じ、自分が吹き出しておいて……」

文句が言いたいならハッキリ言えばいいのに、
言われるがままにテーブルと自分の顔を拭くシンジも大概である。

「くだらない。それでデートしたとか言い出すなんて、この馬鹿は……」
「そ、そう言わないでよアスカ。それで、また相談なんだけど。」
「……」
「いや、あの……アスカ?」
「なによ!」
「あのさ……次はどこに行けばいいのかな、と思ってさ。」
930名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/16(火) 20:39:08 ID:???
「……」
「……あの、アスカ?」
「あんた……馬鹿?」

ヒクヒクと顔を引きつらせているアスカ。もう激怒寸前の様子である。

「だからぁ!食事しながら本人と相談してこいって言ったじゃないのよ!」
「い、いや、いくら話しかけてもさ。
 『……そう?』
 『わからない』
 『なら、そうすれば?』
 しか喋らなくってさ。」
「あんた、そんな女の何が良くてデートなんかに誘ってるのよ。」
「いや、そんなこと言われても……あ、アスカ?何処に行くのさ。」
急に席を立つアスカ。
もう呆れられちゃったのかな、とシンジは溜息をつくが、すぐにアスカは帰ってきた。

「ほら、この雑誌みて映画にでも連れてけば?」
がらがらっ!ぴしゃんっ!

「……アスカ。ありがと。僕、頑張るよ。」

(続かない?)
931名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/17(水) 00:15:10 ID:???
乙。
だがこれだけではこれはLASにしか見えない気がするがw
932名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/17(水) 02:32:48 ID:???
確かにLASだわコレw
こういうLRSを見てみたいw
933930の次:2007/10/17(水) 21:33:33 ID:???
(一週間後)

「行ってきたよアスカ!」
「だーから、主語が無いって言ってんでしょーが!このバカシンジ!」

というわけで、ここはミサトマンションの台所。言わばアスカの相談室である。

こぽこぽこぽ……
「アスカ。はい、お茶。」
「……言わずにおこうと思ったけど、お茶菓子ぐらい用意する気遣いはないの?」
「あ……ごめん。」
「まったく。ああ、良いわよ。で?あのロボット連れて映画に行ってきたんでしょ?」
「あいかわらず酷いよアスカ。ロボットだなんて。」
「ふん。報告してみなさいよ。聞いてあげるから。」

そして、どんっと両足をテーブルに乗せるアスカ。ずいぶん行儀の悪い荒々しい態度である。
しかし、その組み合わされた美麗な両脚のお陰で、それほど粗雑に見えないのが幸いしている。

(注)あくまでもLRSです。

「で、なに見てきたのよ。」
「今、絶賛上映中の『実録セカンド・インパクト』。あれ、前から見たくってさ。」
934名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/17(水) 21:34:36 ID:???
「ああ?なんでデートでそんな映画みるのよ。アンタの趣味なんかどーでもいいでしょーが!」
「い、いや、凄く面白かったんだってば。僕、感動しちゃって……」
「デートが本意で、映画は単なるネタなんでしょ?ったく……
 しかも、ウチの広報部がばらまいた嘘っぱちをわざわざ見に行くなんてどういう神経してんのよ。」
「い、いや、綾波も別に嫌がらなかったし。」
「そりゃあの人形女にゃどーでもよかったんじゃないの?だからさぁ……デートなんでしょ?
 良いムードになれるような恋愛物とか、そういうの選びなさいよ。アンタ、あの子と先に進みたいんじゃないの?」
「あ、ああ、そういうもんなんだ。」
「そういうものなの。しかも、そんな嘘っぱち映画で感動したぁ?ホントにもう……嫌われるわよ、あの子に。」
「そ、そんなぁ……」

そして、しばし無言で互いにお茶をすすり合う。
アスカはしかめっ面、シンジはしょぼくれた顔をして。
アスカがそうしている以上は別に話を聞きたくないわけでも無さそうだし、お茶の味も悪くないようだ。
やがて、仕方なさそうにアスカはシンジに問いかける。

「それで?今度は話ぐらいしてきたんでしょーね?」
「いや、まあ……少しだけ。えーとね……
 『ごめんね、待った?』『別に。』
 『それじゃ行こうか』『うん。』……」
「アンタ……ぜんぶ覚えてる訳?」
「もちろんだよアスカ。僕が綾波の言うこと忘れるわけ無いじゃない。」
935名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/17(水) 21:35:40 ID:???
などと、自慢げにそういうシンジはやっと明るい顔をする。

「で、次。
 『綾波、この映画館だよ。』『そう。』
 『ああ、時間に間に合わなかったね。途中から見るのも何だから待っていようか。』『うん。』
 『あ、終わったみたいだね。はいろうか綾波。』『うん。』 ……」

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!ていうことは何?あの子をほとんど映画一本分の時間を待たせた訳?
 しかも、そのあいだ終始無言で過ごした訳?」
「え、えーと……そういうことになる、かな?アハハ……」
「アタシなら絶対に途中で帰るわ。で、次は?」

「うん……
 『ああ、面白かったね綾波。』『そう、良かったわね。』
 『それじゃ、帰ろうか綾波。』『さよなら。』
 ……で、終わり。」
 
「……」
「あの、アスカ?」

アスカは乗せていた足を下ろし、拳を固めてテーブルにドンッ!!
936名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/17(水) 21:36:48 ID:???
「アンタねぇ!それだけで会話したって言い張るつもり!?
 『うん』『そう』『さよなら』とか、あの子はそんなことしか言ってないじゃない!
 それを、ぜんぶ覚えてる、などと、この男は……」
「い、いや、それでも進歩したんだよ。『よかったわね』なんて言うのは初めて……」
「アンタを馬鹿にしてんのよ、それ。」
「そんな……」
そしてシンジは再びしょぼくれる。
しかし、その復活は意外にも早かった。

「で、でもさ。聞いてよ、次のプランは自分で考えたんだ!」
「普通は自分で考えることなの。なに自慢げに言ってんのよ……で、何よ?」
「あ、あのさ。これなんだけど。」

そう言いながらシンジはパンフレットを一枚取り出す。
それを見たアスカは即時に激怒。

「ああ!?温泉だぁ!?」
「そ、そうなんだ。ほら、この前に僕達だけで使徒殲滅のついでにいってきたじゃない?
 綾波は置いてけぼりだったし、可哀想だと……」
「話も弾んでない男と2回目のデートで温泉に行く馬鹿女がどこに居るっていうのよ!」
「い、いや、アスカ。3回目だってば。」
「あのお昼休憩をデートって言うなぁ!!」
937ここまで:2007/10/17(水) 21:38:08 ID:???
アスカはテーブルを力一杯ドンドンッ!
もう怒りたい放題である。が、シンジはめげてはいない。

「そ、それならもう一つプランがあるんだ。
 あのさ、ケンスケがキャンプ道具貸してくれるって言ってるから、一緒に星を見に……
 あの、アスカ?」

アスカは拳を固めたままワナワナと震えている。
何を怒鳴り出すのか、と思われたが、やがて絞り出すような声で一言。
「……遊園地。」
「え?」
「遊園地に行ってきなさい!乗る物はあの子に選ばせなさい!
 『うん』『そう』だけでもいいから、あの子に意思表示をさせるの!
 最後に何がよかったのか言わせて、『うん』『そう』以外の単語を喋らせるの。わかった?」
「え、あ……そうだね。アスカの言うとおりにするよ……えーと。」

(ぴっぽっぱっ) ああ、綾波?今度の休みに……などとシンジはさっそく電話をかける。

行動は早いのは良いけれど、とでも言うようにアスカは溜息をつく。
何か不満げというか、どうにも気がかりだ、というような顔をして。

(注)あくまでも、これはLRSです。
938名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/17(水) 22:24:14 ID:???
正直、LRSでもレイが出てないのはLRSとは言えないと思う
これならLASスレにでも投下した方がいいよ
939名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/17(水) 22:53:05 ID:???
(注)LRSの神様がお怒りのようです。
940名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/18(木) 01:50:08 ID:???
この先の展開がどうなるか分からないが、LASスレも見ている自分から言わせると、
現時点で、これは間違いなくLASだw
941名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/18(木) 15:39:28 ID:???
本質的にLRSならいいのではアスカとは漫才してるようなもんだし
個人的に面白いと思うからここで続けて欲しいな
942名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/18(木) 17:12:46 ID:???
>>937
白いモノでも作者が黒と言えば黒になるってことなのかなこのSSは
943937の次:2007/10/18(木) 21:31:57 ID:???
(更に一週間後)

「アスカ、行ってきた……」
「いいから、ここに座りなさい!早く!」

はい、ここはアスカの相談室。

「ちょ、ちょっと何でいきなり怒ってるのさ。とりあえず、お茶を煎れるよアスカ。ここにお煎餅が」
「煎餅なんていいから!何あれ?アンタ、本当にヤル気あんの?」
「……アスカ、何あれって、まさか。」
「そぉーよ!アンタ達がデートしてるとこ、わざわざ着いていって見させて貰ったわよ!」
「えーっ!?」

シンジは驚く。ていうか、呆れている。
当然だろう。人のデートを覗き見するなど、とても褒められた行為ではない。
しかしアスカ曰く、
「あのね、私も普通ならこんなことしないわ。
 でも、相談を受けて遊園地を勧めた以上は、責任ってものを感じて仕方がなかったのよ。」

物は言い様って程でもないが、怒る権利はこっちにあるとアスカは言いたげだ。
944名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/18(木) 21:33:49 ID:???
「……でもさ、アスカ。何ものっけからそんなに怒ることでもないじゃない。」
そう言いながらも、一応はアスカにお茶を煎れるシンジはなかなか辛抱強い。
しかし、アスカは差し出された煎餅をバリバリ囓りながら文句たらたら。

「まず、ファーストの格好。何あれ?学校の制服で遊園地つれ歩くなんてどういう神経してんのよ。」
「あ、あのねぇアスカ?それを僕に怒るわけ?」
「アンタ、責任感ってものがないの?まさか映画を見に行ったときも?」
「そ、そうだけど……いいじゃないか。そんなの綾波の自由だ。」
「自由も糞も無いわよ!まるで学校サボってるか遠足してるみたいでダサイったら無いわ。
 あんた、自分の連れに恥をかかせて平気なの?相談するならそういうこと言ったらどうなのよ。」
「そ……そんなこと言われても……」

流石のシンジも口をとがらせる。まあ、そこまで言われちゃ無理もないが。
しかし、アスカの勢いは止まらない。

「それともさ、あの子にゃ全くやる気ないんじゃない?女の子ならそれなりに努力するわよ、普通は。
 はっきり言ってアンタ相手にされてない。仕方なくアンタにお義理で付き合ってるだけ。判らない?」
「いや、あの……」
「で?遊園地に行って?小一時間ぐるぐる回って?最後に観覧車だけ乗って帰ってきました?
 それも、あの子じゃなくてアンタが乗ろうって言い出したんじゃないの?
 あーあ、こんなに尾行が楽に終わるとは思わなかったわ。」
945この次の投下で終わりにしますー:2007/10/18(木) 21:35:14 ID:???
「だ、だから、僕も自重してたんだってば。どの乗り物にも感心なさそうだったし、
 せっかくだから観覧車で景色を見ようよってことで……あの……」
「で?お話ぐらいは出来た?」
「……」
「はいはい、もうお仕舞い。悪いことはいわないから、あんな子やめたら?
 アンタ、クラスでもエヴァパイロットってことで良い顔なんだし、普通の子を選びなさいよ。」

これには流石のシンジも激怒する。
「い、いい加減にしてよアスカッ!普通って何が普通だって言うのさ!
 もういいよ!もうアスカに相談なんかしないからッ!!」

がらがらッ!ぴしゃんッ!

一人残ったアスカは、自分でお茶を入れ直しながら大きな溜息をつく。

「ったく。普通じゃないから普通じゃないって言ってるのよ。どーせ、こんなことになるんじゃないかと思った。
 エヴァに乗るためだけに育てられたあの子をデートに連れ歩くなんて、よっぽどの覚悟じゃ出来ないことだわ。
 判ってんのかしらね。あの馬鹿……」
946名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/18(木) 21:48:26 ID:???
お前さ、この状態のままならもう書くな
荒らしと同じだと認定するぞ
947名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 00:25:26 ID:???
綾波をネタにアスカに会いにいっているようにしか見えん。
948名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 01:58:17 ID:???
>>947
自分もSS書いているから言えるが、
レイと違って能動的に動いてくれるアスカは書きやすいんだよね。
話に絡ませやすいというか。
LRSを標榜しているサイトを見ると、アスカは
二人の仲を取り持つようなトリックスター的役割を担うものが多いよ。
逆にLASはレイが二人の仲を取り持つみたいなことはないけど。

だからアスカが出てくるということはシンジとレイが次のステップに移るインターバル
みたいなもんだと自分は思ってるんだが。

949名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 02:08:35 ID:???
楽してるだけジャン
950名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 02:19:16 ID:???
>>948
俺もSS書いてるから言わせてもらう。
確かにアスカのが動かしやすいよな。
でも、LRSとして書く時にレイを出さないってのはないぞ?
そして俺の場合だけど、アスカは二人の仲を取り持つ事なんて絶対させない。

どっちにしろシンジとアスカしか出てない今の状況だと、完全にLASだろう。
951名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 05:29:16 ID:???
結末まだなんだろ?
だというのに荒らしだなんだと騒ぐなよ。落ち着け。

なんか恐いよあんたらw
952名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 09:59:16 ID:???
結末だけレイとくっつけばLRSなのか。
その理論でいけば、HolidayはLASだよな。
果たしてあの作品を読んで何人がLASだと感じるだろうか。
953945の次:2007/10/19(金) 10:37:59 ID:???
言いすぎた気がしないでもない、とアスカは思う。
あれからシンジとは口を聞いていない。
正直なところ、気にならない訳じゃない。
しかし自分から折れるには妙なプライドが許さず、根本的に関心を示したりすら出来るものではない。

そんな状態が続いたある日のこと、シンジが泊まりがけで遊びに行って帰ってきた。
ミサトには「トウジやケンスケと遊びいってくる」と告げていたが……これでは気にせずには居られないではないか。

(女子更衣室にて)

おたがい、後ろ向きで着替えをするアスカとレイ。
二人きりになると会話の弾む関係ではない。でも、やっぱりシンジのことも気になる。
シンジとは口をきけない状態なのだ。レイから聞き出そうにも、気安く声もかけられない。
でも、なんとなくチラ見してしまうアスカ……しかし、そこでアスカが気付く。
むしろレイの方がこちらをチラチラと見ているではないか。

「……なんか用?」
そう言いながら、ダンッとロッカーを閉めるアスカ。
まあ、別に相手を脅すつもりは無いのだろうが。

そう言われて、レイはアスカの方を振り向く。
しかし、やや目を伏せたかと思うと、ゆっくりと顔をそらしてしまう。
954945の次:2007/10/19(金) 10:39:08 ID:???
アスカはそんなレイの態度を見て、
「あっそ。なら良いのね?アタシ、帰るから。」
と、愛想を尽かした振りをして出て行こうとする。

ようやく、レイは一言。
「待って。」
「何よ。」
「碇君、その……大丈夫?」
「……なんで?」
「……」

ふうっとアスカは溜息をつく。
やっぱり興味が無い訳じゃない。ここは素直に自分の気持ちに従う気持ちになったらしい。
しかめっ面をゆるめて、レイの側に近づいた。
「時間ならあるから話してみなさいよ……ここじゃちょっとアレね。
 とっとと着替え、済ませなさいな。行くわよ?」

で、場所変え。帰り道の公園らしき場所。

「はい。」
と、親切にもジュースを買って手渡すアスカ。
レイは代金を渡そうとするが、アスカは手を打ち振って拒否を示す。
955名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 10:40:13 ID:???
「こういう場所にでも来ないとね。あんなNERVの建物なんかじゃ、どこにマイクが仕込んであるかわかりゃしない。」
パキンとジュースの蓋を開けながら、ため息混じりにアスカはつぶやく。
やや間をおいて、レイはそれに対する返答をぼそり。

「確かに……私もあなたも監視されてるから。」
「今、こうしてることも?」
驚くアスカに対して、こくん、とレイは頷く。

そうと聞いてアスカは周囲を見渡す。が、周りに人影は見あたらない。
しかし、ここは新生の第三新東京市。どこに何が仕込まれているか知れたものではない。
こんな町はずれの公園でも。

それでもアスカは、今さら気にしてもしょうがない、と開き直ってレイに問う。
「それで、アイツとはロクに会話しなかったとか?……ああ、シンジからアンタを色々と連れ歩いたことを聞いててさ。」
「それは……」
「ん?」
「……」

なかなか打てば響くように進まない会話。アスカは少しじれったく思う。
しかし、だからといってせかす訳にもいかない。それに話したいと思っているのは相手の方。
寡黙なレイが相手だ。ここは気長に構えるしかないとアスカは腰を据えた。
956名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 10:41:35 ID:???
そんな無言のプレッシャーをアスカから受けたせいか、ようやくレイはポツリ、ポツリと話し始める。

「私はそんな中で育った。NERVの沢山の人に見守られながら私は育った。
 女の子らしいことなんて何も知らない。
 デートとか言われても何も知らないし、判らない。
 でも、そんな私と映画を見に行こうって、碇君が誘ってくれた。
 映画なんて見たこと無かったけど、何故だか判らずに誘いに応じた。
 何故だろうと考えてたけど判らない。
 もしかしたら、碇君が誘ってくれたのが不思議だったからかも。
 NERVに閉じこもっているだけの、何も知らないこの私を。」
 
アスカにしては珍しく茶々もいれずに相づちを打つことすら遠慮して、レイの長台詞を聞いていた。
私は聞きたいことはそんなことじゃない、とは考えていたのだが。
しかし、そのまま辛抱強く聞き入る中で感じ始める。
静かな声で語り続けるレイがまるで別人と化していくのを。

「見た映画はセカンドインパクトの話。私が生きてきた14年間と丁度おなじ長さの映画。
 国連の発表と同じ大質量隕石の衝突が原因で起こったという、事実とは異なる話だったけど、
 映画の主題からして、そんなことはどうでもいいことだった。
 人口の半数を失うという被害を受け、その地獄の中から立ち上がり、再び近代社会を取り戻す人々の姿。
 それは嘘でも何でもない、実際の映像を交えた本当の話だとか。でも、多少の脚色されているかもしれないけれど……
 私はそれを複雑な気持ちで見ていた。それに比べて私の14年間はなんだったのだろう。私は……」
957名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 10:42:39 ID:???
ここで流石にアスカは音を上げた。
「ちょ、ちょっとタンマ!いったいアンタの話はどこまでいってしまうのよ?」
「……ご免なさい。」
「まったく、アンタと出会ってから原稿用紙一枚分もアタシと会話したこと無かったって言うのに。
 まさか、それがアンタの本性って訳?だったら、なんでシンジとちょっとぐらいお話しして……ん?」
「……」

アスカはそこまで鈍くはない。
今のレイの沈黙でピンと来たらしい。

「ファースト?まさか本当は……シンジにもその勢いで喋り倒してたって訳?」
「……」
「あー、言わなくても良いわよ。シンジには話せて、このアスカ様には話せない内緒話をしてたって訳でしょ。
 アタシだってそんな野暮じゃないわ。別に話の内容は言わなくてもいいけど、そういう訳ね?」

そのアスカの言葉で、ようやく頷くレイ。
それを見て、アスカは渋い顔で大きな溜息。

「そういうことね……あのヴァーカ!なーにが、『うん』『そう』『さよなら』しか言わなかっただぁ?ったく。
 あの馬鹿は、アンタの秘密を守るために、アンタが無口だからって押し通そうとしてた訳か。」
「あの……誓って言うけど、それは全て私の話で……あなただから話せない内容だから、という訳じゃなくて……」
「はいはい。よかったわねぇ、あんたのカレシの口が硬くってさ。で?」
958名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 10:44:03 ID:???
アスカから先を促されて、さらに語り続けるレイ。
はたしてレイに火をつけたのはアスカか、それともシンジだろうか。その口調は更に勢いを増してくる。

「全部を話すわけにはいかないけれど……
 碇君は私の話を全て聞いてくれた。
 自分では、これでいいと思っていた。
 このままでいい、と思っていた。
 こうするしかない、と思っていた。
 それを全て碇君に話した。
 それを聞いた碇君は否定すると思ってた。
 もう止めろ、そこから逃げろ、と言うんじゃないかと思ってた。
 でも……
 
 でも、碇君はそんなことは言わなかった。
 逃げろとも、逃げるなとも言わなかった。
 逃げられない私のことを、碇君は判ってくれた。
 そして、ただ一言だけ言ってくれた。
 この私と一緒に居たいと、言ってくれた。
 こんな私と一緒に居てくれると、そう言って私の気持ちを抱きしめてくれた……

 遊園地に行ったときも、そんなことばかりを話していた。
 碇君は私の話を熱心に聞いて、そしてありのままの私を賢明に受け止めようとしてくれていた。
959名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 10:45:07 ID:???
 なんだか碇君に悪いことをしたと思う。そして、あなたにも。
 碇君は私を普通の女の子として扱うために、あなたに相談してまで連れてきてくれたのに。
 そして自分の乗りたい物もあっただろうに。普通の女の子とデートするみたいに。

 でもせっかくだからと碇君に何か乗ろうと言ったとき、彼が選んだのは観覧車。
 まだまだ話をしようよって、そういうつもりだったんだと思う。
 でも、ゴンドラが上がり始めたときに、もう私は何も話せなくなった。
 あまりにも……あまりにも夕日に照らされた街が綺麗で……
 よく判らないけど何だか……初めて世界をこの目で見たような、そんな気がして……」

「それで?次はどこに行ったの?」
そう促すアスカの顔からは険しさが消え、優しい笑顔さえ浮かべていた。

「一緒に星を見に行こうって……でも、私達の監視体制の中でそれは無理だと思った。
 でも、とても断る気にはなれなかった。
 今一度だけで良い。明日にでも終わるかもしれない私達だからこそ。
 だからこそ少しだけでも良い。同じ夜を過ごしたいと……そう思ったから。」

その言葉を聞いて、アスカは想わず目を伏せる。
確かに自分達は命がけの戦いを強いられている。
しかし、ならば使徒に打ち勝てばそれでいいのではないか、とも考える。
「何も知らないアスカ」には少し腑に落ちない話だった。
960名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 10:46:20 ID:???
「そして、二人でカップラーメン食べて、
 一つしかない寝袋を碇君は私に貸してくれて、
 そして二人で並んで寝そべり、夜空を見上げていた。
 いつまでも、いつまでも、今度は何も話さずに。
 
 そうしていると、私は想わずにはいられない。
 私達の住まう星は、幾万の宇宙の中では塵芥の一つでしかなく、
 この星の深い歴史は、永遠に広がる宇宙の時の中の刹那の如く、
 使徒と呼ばれるこの星の古き者共の力は、偉大なる宇宙の煌めきに比すべき程ではなく、
 その運命に揺さぶられる私達など虚無の存在に等しく……
 
 そんな物思いにふける私に、碇君は言ってくれた。
 こんな広い宇宙の中で私と出会うなんて奇跡に等しいことだね、と。
 それを聞いた私は初めて思った。
 私は逃げたい。あの人から離れて碇君と一緒にどこまでも行きたい。この奇跡を絶対に失いたくない。
 決してこの手を離したくない。今、この瞬間に碇君が行こうと言ってくれたなら、と。
 一瞬、私は本気で心に決めた。本気で私から碇君の手を引いて、そして……
 
 でも、そこまでだった。」
 
じっと黙って聞いていたアスカであったが、そこで口を出さずにいられなくなった。
「そこまでって……どうしたのよ。」
961名無しが氏んでも代わりはいるもの:2007/10/19(金) 10:47:22 ID:???
「私の監視が、タイムアウトを告げに……」
「ああ!?何それぇ?」

思わず目をむき、大声を上げるアスカ。
それとは対照的にレイは哀しい目で顔を伏せる。

「その後、私達はNERV本部に連れ戻されて……私はともかく、碇君はあの人に酷く叱られて。
 それでもう……私を長時間つれだしてはいけないって言われたみたいで……」
「やーれやれ。大丈夫?って聞きたかったのはそういう訳ね?
 成る程ねぇ……確かに、そこまで聞かないと判らない話だわ。成る程ね。」
「あの……ご免なさい。私……変なこと、言ってない……?」
「変なこと言ったって構やしないのよ!ズバーンと思ったことを言えばいいの!ズバーンとね!
 しっかし、ムカツクわねぇ!あの人って司令でしょ?あーもう、あの人なんて言っちゃダメよ!アイツで十分!」

そう言いながらも、はち切れんばかりの笑顔で笑うアスカは、既にいつもの調子を取り戻しつつあるようだ。
そしてレイに顔を寄せて耳打ちをする。

「で?次は温泉でしょ?」
「え?どうして、知って……」

ここまでのところ、アスカが思っていたよりもずっとシンジの方がレイのことを理解していて、
はっきり言えばアスカの方が一本とられた結果の筈ではあるのだが、しかしそんなことで怯むアスカ様ではない。
962(完)
「フフン、アタシは何でも知ってんのよ。まあ、このアスカ様に任せておきなさいな。
 なんとしてでも、あんた達を混浴風呂に叩き込んでやるんだから。」
「あ、あの……混浴って……」
「なーに赤くなってんのよ。ずいぶん人形みたいだったアンタも女の子らしくなったじゃない?
 そこまでの仲になったんだから、裸の付き合いしなくてどうするのよ。
 ……これは燃えるわ。あの総司令なら相手にとって不足はない。よーし、ミサトも巻き込んで……」
「無理……あの人の監視の中では……」
「ああ?このアタシに火をつけておいて文句をいうつもり?とにかく、このアスカ様に万事まかせておきなさい!
 アタシの弐号機で使徒なんかドッカンドッカン倒して、必ずあんた達を天国まで連れてってあげるから。」
その言葉に裏があるのか無いのか、レイはもう苦笑いで聞くしかなかった。

「そうと決まれば戦の前の腹ごしらえよ!ほら、さっさとシンジ呼び出しなさい。
 これからはアンタから声を掛けるの!デートコースから服選びまで、アタシがとことん相談に乗るからね。
 さーて、あの旨いラーメン屋台はどこにいるかなーっと!」
 
と言うわけで、まだまだアスカ相談室は盛況なご様子。
洞木ヒカリがその扉を叩くのも、もうまもなくという頃合いか。

……とまあ、こんな感じで終わりです。
誠にお粗末様でした。

(完)