落ち着いてLRS小説を投下するスレ4

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1名無しが氏んでも代わりはいるもの
このスレはLRS(レイ×シンジ)小説を投稿するスレです。

過去ログ

落ち着いてLRS小説を投下するスレ
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/eva/1083495097/

落ち着いてLRS小説を投下するスレ2
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1110013621/

落ち着いてLRS小説を投下するスレ3
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1146477583/
2名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 08:26:52 ID:???
荒らしはスルーで
3名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 08:41:31 ID:???
需要もないのに次スレ立てるな
4名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 09:26:42 ID:???
>>1
5角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/15(火) 10:07:52 ID:nNdYzMs3
>>1
乙であります。
6名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 10:11:14 ID:???
現在連載中の作家達

SeventySix ◆DTDSamiQ9U 氏
角 ◆uTN4HfUPlw 氏
―道行― 氏
7名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 10:16:22 ID:JC5YhbDO
終了
8最下層 ◆1/VLK68q7c :2006/08/15(火) 10:16:37 ID:???
みなさん頑張って下さいね♪
9名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 10:21:07 ID:???
最下層 ◆1/VLK68q7c
↑専ブラの設定でNG推奨。
10最下層 ◆1/VLK68q7c :2006/08/15(火) 11:13:18 ID:???
>>9さん、ひっどーい!所で専ブラって何?
11名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 11:15:34 ID:???
だれかLGSを書いてくれ
12名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 11:21:49 ID:???
>>1
13名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 11:28:34 ID:???
ERROR:このスレッドは512kを超えているので書けません!
前スレ、書けなくなりましたw
14名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 11:39:17 ID:???
ほんとだw

>>1
マジで乙
15名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 11:41:33 ID:???
>>6
ろくな職人いねー
16名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 16:54:47 ID:???
お前らみたいな二次元しか愛せないヲタクはこの世から消えてくれ頼むから。
17名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 17:18:17 ID:WfWKUTvC
レイ:や ら な い か

シンジ:け…結構です;

レイ:問答無用!!南○水○拳奥技!肛門貫通拳!!

シンジ:ちょwwまwwwwアーーーーーーーーーーッ!!!

FIN
18名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 17:22:02 ID:WfWKUTvC
自分的には自信無いけど、なんとかここまで書く事がてきました!
感動物を書いたつもりだけど伝わったかな…f^_^;
とりあえず読んでくれた皆さん本当にありがとうございました。
19最下層 ◆1/VLK68q7c :2006/08/15(火) 17:32:17 ID:???
>>18さん、お名前は?
20名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 17:34:43 ID:???
>>1
21名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 17:35:35 ID:???
>>18
感動した
22名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 17:58:12 ID:???
>>15
角氏は前スレで長編を一本完結させてる。
SeventySix氏も長めのSFホラーを連載してるし。
まあ、個人的には道行氏の腕前に超期待。
23名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 17:59:24 ID:???
だからなに?
24名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 18:02:18 ID:???
>>1
25名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 18:12:19 ID:???
最下層って何?
26名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 18:16:25 ID:???
LRSスレっていつからあんな感じなの?
粘着してるのは一人だと思うけど
27名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/15(火) 18:54:28 ID:???
>>26
先月の10日あたりかな。
一人だけだとしたら、余程の執念だよねw
28名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/16(水) 01:00:43 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
29名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/16(水) 12:36:20 ID:???
>>28が見えない
30SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 18:16:03 ID:???
「ちょっと、何言ってんの綾波。」

シンジの声は笑いを含んでいた。

「ここが違う世界って……第3新東京市と同じビルが建ってるし、電車だって走ってるだろ?
何も違うところなんて無いじゃないか。
そりゃあ、他のみんなの姿が見えなくなってしまってるのはちょっと変だし、なんでだかわからないけど……」

「街の姿が同じ……それは、ここが別の世界じゃないことの根拠にはならないと思うわ。
碇君は『多次元世界理論』って知っている?」

聞いたこともない言葉にシンジがかぶりを振ると、レイは解説をはじめる。

「前に、赤木博士から借りた本で読んだことがあるの。
宇宙には同時に複数の世界が存在していて、並行して変化しているという理論よ。
複数の世界が存在しているなら、私たちがいた世界と大きくかけ離れている世界もあれば、
あまり変わらない世界もある。私たちの世界と何もかも同じだけれど、私たち以外の人と
時間だけが失われたのが、ここかも知れない。」

シンジは返事を返すまで、少しの時間があった。
あまりにオカルトに傾斜した、馬鹿馬鹿しい説に思えたからだ。
31SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 19:54:18 ID:???
「綾波は……本気でそんなこと言ってるの?
そういう説があるってだけの話じゃないか。そんなの、映画とか小説の中だけの話だよ。
本当にそんなことがあるわけないだろ。
他のみんなは……例えば使徒がやって来たとかで、どこか別の場所に避難とかしたせいで
いないだけかも知れないよ?
それに時計が止まってるのだって……プラグスーツが故障しちゃってるだけかもしれないだろ?」

「碇君の腕時計はそうかもしれない。でも、プラグスーツの時計は違うわ。
故障したときに切り替わる予備が付いているの。その両方が止まる可能性は、普通に考えれば有り得ないと思うわ。」

「……」

「碇君はここに来て間もないけど、私はずっと暮らしてきたわ。
今まで一度も夜になることはなかった。この夕方みたいな明るさが続いてた。
時間が無いから、昼も夜もこの世界には無いのよ。
それに、どこに行っても誰とも会わなかった。
他の人と会ったのは、碇君が最初だったの……碇君、電車の中で眠ったと言っていたわよね。
目が覚めたら、一人だけだったって。」

「うん」

「碇君は眠っていた、つまり意識がなかった。それがこの世界に来れた条件なのかも
知れない……私も同じだったから。」

32SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 19:59:49 ID:???
「え? 綾波も?」

「零号機で自爆したとき、気を失ったんだと思う。
操縦席で強い光に包まれて……気がついたらこの世界に来ていたの。」

「強い、光……」

シンジは思い出す。電車の中で睡魔に屈する寸前に見た光景。
夕焼けの橙一色の雲からただ一筋だけ、白く差し込んでいた眩しい光。

「そうだ! 僕も……僕もあの光の中を通ってきたんだ!」

「たぶん、その光の中にここへの入り口があるのかも知れないわね。
そしてその入り口を通ることが出来るのは、意識の無い人だけなのかも知れない。」

レイがそこまで語ったとき、シンジは電撃にでも打たれたように感じた。

これで理屈が通る!

頭の片隅がそう叫ぶ。
乗客たちの残した気味の悪い痕跡。その謎が解けた気がした。
ロジックや常識なんてものを超えたところにある、人知を超えた真実。

恐らくシンジと違い、彼らは皆起きていたんだろう。そしてこの世界へ通じる、
あの光の中を通ったときに、消えてしまったんだろう。
あの置き土産だけを残して。
33SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 20:00:52 ID:???
となると不明だった三人目の消息は、いよいよもって明らかだ。
不憫ではあるが、彼女もまた他の乗客同様に、光の中を通ったときに跡形なく消滅したに
違いない。あの文庫本だけを残して――。

視線を本に静かに落とした姿勢のままに、光に溶け込むように輪郭を失っていく三人目
の姿が、シンジには見えるような気がした。

そのままレイの部屋に泊まったその日は、一睡もせず夜を過ごした。
34SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 20:04:05 ID:???
その後数日の間、シンジはレイを伴って街のあちこちを見て回った。
レイが言うには、市街の地理の把握や食料の確保のためシンジも同行して欲しいと言う事だったが、
それに付き従うシンジにとって、それは二の次でしかなかった。

無人の商店街やデパートから食料を失敬しながら、シンジは常に探すような視線をあちこちに飛ばしていた。
この期に及んでもまだ、彼は自分たち二人以外の誰かがひょっこりと何事も無く姿を見せてくれることを
心のどこかで切望していたのであろう。
端的に言えばその誰かとは、同居人のアスカでありミサトであり、級友のトウジとケンスケとヒカリであり、
厳格なる父ゲンドウであり、顔見知りのNervの職員たちであり、つまるところ彼の知る人々の全てだった。

しかしそれも最初だけのこと、シンジの望みは数日のうちに諦観へと変わる事になる。
死に絶えた街から、彼とレイ以外の住人はその気配さえも感じることはなかった。

(この世界にいるのは僕と綾波の二人だけだ。)

その現実を嫌というほど痛感したのに、不思議と悲壮感の無い事が自分でも意外だった。

なぜかと自問するまでも無く、答えはとっくの昔に出ているような気がしてもいた。
たとえ二人だけではあっても、自分一人ではないからだ。
しかも共にいるのは、この世で多分一番そばにいて欲しい少女。
何を悲観することがある?
35SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 20:13:43 ID:???
確かに食料調達は生きていくうえで不可欠だが、たかが14歳の胃袋2つだ、
一日中それに費やす必要があるわけではない。
何より、食料の調達に苦労が無いのが嬉しかった。
二人だけのお腹を満たす分には、第三新東京市全域の食料在庫は無限といっていい量
だったからである。おまけに、何日経っても野菜は瑞々しく、肉や魚は鮮やかな色を保った
まま腐ることが無い。
私が来たときからそうだとレイに聞かされ、シンジは改めてこの世界に時間と言う概念の
無いことを確信したのである。
食料だけではない。衣服もいくらでも調達できるし、電気も使い放題だった。
ドラッグストアに行けば薬もあって、大きな怪我や病気でもしない限りは、生活を送るのに
何の不安も無い。

そう割り切ってしまうと、シンジの時間の費やし方はずいぶんと変わった。
暇さえあれば、レイと共に身を寄せ合って過ごすことを選んだのである。

咎める邪魔者が誰もいない世界に、14歳のまだ若すぎる男と女の二人きり。
それもお互い惹かれあった者同士とあっては、程なくして一線を越えてしまったのは
仕方の無いことだったかもしれない。
出会ってから7日目――時間の無い世界で日付を重ねるのもおかしな話ではあるが、
二人は体内時計に任せて日に3度の食事を欠かさず取っていた為、それに従えば
そうなる――その日シンジは初めて、ベッドに押し倒したレイを貪った。
そしてレイも、それを拒まなかった。
36SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 20:15:30 ID:???
それから程なくして、二人はこのホテルに住まいを移したのである。
レイの部屋を捨てたつもりはない。
ただあの部屋のベッドでは、二人だけの時間を過ごすにはやはり小さすぎたというのもあるが、
市街中心から離れていて物資調達が不便だったと言う理由もあった。

「碇君」

役に立たなくなった壁の時計に視線を止めたまま固まっていたシンジは、
レイの声に我を取り戻した。
前にいた世界で暮らしていた頃には意識しなかったけれど、こうして聞くと
こんなにも素敵な声だったのかと思う。

「どうしたの?」

「あ…う、うん。ここって、この世界って……綾波の言ったとおり、ほんとに時間って
ものが無いんだなぁ、って改めて思ったから」

誤魔化すシンジに、

「そう」

今更そんなことかという風にそっけなく、銀鈴みたいな声で返しながらもレイは
バスタオルで髪の水気を拭っていた。
頭を拭いている間、しばしシンジからの返事は無くて。
また考え事にふけってるのかとチラリと向けた視線の先で、シンジは彼女の裸身を
じっと見つめていた。
37SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 20:24:18 ID:???
少年の黒い瞳に、レイ自身が映り込んでいる。
空色の髪とルビーの瞳が印象的な、端正な面持ち。
そして首から下には、女らしさを帯び始めた白磁の裸身。

見つめ合うままのひと時が過ぎる。

どうしたのと問いかけようとして、レイはその言葉を飲み込んだ。

彼女の時間感覚ではほんの1時間ほど前、レイから喘ぎを搾り出しシンジの一部が、
徐々に持ち上がっていく――問うまでもなく、シンジの望みは明らかだった。

「また……なの?」

顔を染めてそこから目を逸らすレイの反応は、以前なら有り得なかったものだ。
そのことにはシンジばかりか、誰あろうレイ自身が一番驚いてもいる。
一般には羞恥心と呼ぶべき、ある意味ではかつてのレイからは最も縁遠かった感情が
身に付いたのは、やはりシンジの存在が大きい。

初めて自分を求めてきたシンジと肌を合わせる前に、裸の自分を見つめるシンジの
熱い視線を感じたときに胸の奥で高鳴った、今まで感じたことのない怪しい鼓動を、
レイはずっと忘れられないだろう。
38SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 20:30:06 ID:???
「……もちろんだよ」

生唾を飲み込みながら、上ずった声でシンジはレイの細い肩に手をかける。
そのままベッドの真ん中に押し倒す動作も、もうすっかり手馴れていた。


皺だらけになったベッドのシーツは、たっぷり二人分の汗を吸っている。その湿った布地の
冷たさが、上気した肌に心地よい。

「綾波?」

仰向けのレイが起き上がる気配に、折り重なっていたシンジが呼びかける。
空色の髪の間から控えめに覗かせる、レイの形の良い耳を見つけて、耳たぶの柔らかさを
唇で楽しんでいたところを押しのけられたから、その声は少しだけ恨めしげだ。

「何か飲み物、取ってくる。」

レイはベッドの縁に座り、乱れた髪を手で軽く整えながら少し気だるい声を出した。
その白い首筋に、一つだけ赤黒い跡が見える。シンジが睦み合いの最中に刻み込んだ
キスマークだ。
それが、自分がレイを独占している証にも思えて、シンジはなんだかうれしくなった。

「そう……僕も少し休むよ、疲れたし。」
39SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 20:31:29 ID:???
そう言ってパタリとまた横になったシンジを見届けて、レイは部屋のドアへ歩き出す。
もちろん素っ裸だ。
最初の頃は、部屋の外に出るときは何か着てよとシンジがうるさかったが、今はもう何も言わない。
レイの裸を誰かに見られることを心配しての事だったが、二人だけの世界では無用の心配である
ことに、程なくして彼も気付いたのだ。

自分の住んでいた部屋の安っぽい開閉音とはまるで趣を異にする、樫の木の扉が閉まる重厚な音を
背中で聞き届けて、レイは廊下を歩き出す。
ダブルベッドを備えたスイートルームは、ハネムーンの新婚夫婦や恋人が利用することも多い。
無論、相当な富裕層に限られはするのだが。
それゆえ、室内での『営み』が外に漏れることの無い様、髪の毛ほどの隙間も無くぴっちりと閉まる扉ばかりか、
壁や床、天井にも分厚い高級木材が惜しげもなく使われ、防音は万全であった。

目指すのは、同じフロアの外れにある小さな厨房。
レイの小さな素足が足首まで沈むかと思うような真っ赤な高級カーペットを踏み締めながら、
まっすぐそこへ向かう。
ルームサービスの為の設備なのだろう、そこには軽食や飲み物、酒までがふんだんに用意されている。
このホテルに来て以来、シンジがそこで食事を作っていた。
二人がホテルに居を移した理由のひとつが、間近で食料を調達できるこの手軽さだった。
ここの食べ物が尽きたところで、別のフロアに行けば同じような部屋がある。ずっと下には、このホテル
の中核をなす大きな厨房があることも知っている。
食べ物はいくら経っても腐らないのだから、心配は無かった。
このホテルの在庫を食べつくしてしまったら、また別のホテルに移ればいい。
40SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 20:35:16 ID:???
いくつかある冷蔵庫のひとつを、レイはしゃがんで開ける。
引き出し式のドアを開けると、サイダーやミネラルウォーターと一緒に、よく冷えた
アイスティーのボトルが入っていた。
高級ホテルのルームサービスで出される代物だ。
そこらの店で缶入りで売られている、清涼飲料のアイスティーとはまさにランクが違う
逸品だと、既にシンジと一緒に舌で確かめてある。
同じ冷蔵庫で冷やされているグラスに注いでから、一気に飲み干した。
控えめな甘さだけ舌に残して、冷たさが食道から胃へと流れていく感覚。

ふう、と息を吐いて空のグラスを口から離してから、シンジにも一杯持っていこうと
別のグラスに伸ばしかけた手を……止めた。
少しだけ躊躇したが、いま自分が飲んだばかりのグラスに注ぐ。これをシンジに持っていこう
と思ったからだ。

二人して同じグラスを使う。レイが口をつけた場所に、シンジも口をつける。
それは二人の間に、また一つ新しい絆を紡ぐこと。

レイはもう一度、冷蔵庫の中に目を向ける。
その片隅に収まっている、他のボトルと比べてずっと小ぶりな茶色のガラス瓶を取り出した。
この冷蔵庫に備え付けてあったものではない。レイがドラッグストアから持ち出してきたものである。
ちなみに一度だけ使用した経験がある。朝昼晩の変化が無い単調な世界での生活がストレスに
なったのか、一時シンジが無気力になったときのことだ。
ならば元気が付く薬をと、ドラッグストアから失敬してきたのがこれである。

持ってきた2本のうち、試しに1本を飲ませてみた。
果たして、その効果はあった。むしろありすぎたのである。

『男性ホルモン配合 蝮ドリンク 黒蛇精』とラベルの貼られた瓶を、シンジは臭いがきついのか
顔をしかめながらも全部飲んだ後、すぐに様子がおかしくなった。
41SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 20:41:14 ID:???
見ている前で、シンジの息遣いがせわしくなって肌もピンク色に火照りはじめる。
結果、レイの身に何があったかは……言うまでもないだろう。

レイは、雪のように白い首筋に指を這わせる。
そこには、そのときにシンジが刻み込んだ所有の証が今もくっきりと残っている。

白磁の肌に、赤黒く残るキスマーク。

ベッドの上で登りつめた後、汗まみれのレイがバスルームに向かったときに、鏡に真っ先に映ったのがそれだった。

レイに夢中になるあまり、よほど強く吸い付いたのだろう。あれからだいぶ日が経っているのに、
薄れることも無くまだくっきりと輪郭を残していた。

(もう一度……)

もう一度碇君を夢中にさせたい。

胸の奥で、怪しい鼓動が脈を打った。レイは決意も新たに、小瓶を握り締める。

その背後に不意に、誰かの気配。
他に誰もいない世界で、心当たりは一人だけ。

「碇君?」

良いタイミングだと、その表情に喜びも隠さずレイは振り返った。
42SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 20:45:38 ID:???
ひとまず小休止。

実は結構な分量のエロシーンがあったのですが、ここはbbspinkじゃないし、
季節柄たくさんの夏厨もいらっしゃいますのでw大人の事情で割愛しますた。
43名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/16(水) 21:06:42 ID:???
>>42
GJ
待ってたぜ

>実は結構な分量のエロシーンがあったのですが
まぁそこらへんの部分は気が向いたら
http://c-au.2ch.net/test.php/-/eva/1080803519/
にでも投下してくれ。
44SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 21:28:14 ID:???
よし。
しばらく様子見てましたが、新スレ立ってからはコピペ厨はいないようですね。
昨日わざと間を空けたことだし、大丈夫でしょう。

>>43
thx!
LRSサイトに投稿するときに復活させようとおもっています。
45SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 21:33:03 ID:???
「綾波?」

ルームサービス用とおぼしき厨房を覗き込みながら、シンジは恋人の名を呼んでみる。
けれど返事は、無い。

「綾波、いないの?」

腰にバスタオルを巻いただけの格好で、シンジは中に足を踏み入れた。

「おかしいな……」

誰の姿も見えない室内の様子に、シンジは小首を傾げる。
なかなか戻らないレイが心配になって、彼は部屋を出てきたのだ。
飲み物を取ってくると言っていたから、この部屋に用があるのだろうと目星をつけて
来てみたのだが……。

ドアが開け放たれたままの冷蔵庫の前には汗をかいたアイスティーのグラスが置いてある。
グラスに触れてみればまだ冷たく、注いでから間もないことは間違いない。
冷蔵庫のドアが開けっぱなしなのを見ても、レイがここを訪れたことは確かだ。

「どこいったんだろ?」

言いながら冷蔵庫を閉めて、廊下に首だけ出してキョロキョロ見回してみる。
廊下にもレイの姿は無かった。
レイが彼のいない部屋に戻れば、ドアの閉まる重い音がここまで聞こえて判るはず
だからと、ここで少し待つことに決めた。
手近にあった椅子に腰を下ろして腕を組み、足で床をペタペタやりながら時間を過ごす。
46SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 21:35:21 ID:???
(やけに遅いな、トイレかな?)

そう何気なく思案しつつも、実際シンジの胸には黒い不安の霧が湧き出しつつあった。
確かにここに居た痕跡はあるのに、姿の見えない綾波レイ。
その現状が、あの電車の中と酷似していることに思い至ったのである。

一瞬だけ頭の片隅に浮かんだ不吉な考えを、頭を振って消そうとする。
だがそうすればするほど、逆に意識してしまうものだ。
シンジは、自分が震えていることに気がついた。手足はカタカタと貧乏揺すりしているし、
歯の根もガチガチと打ち鳴らされている。いつしか、体も芯から冷えていた。

「寒い……」

震える声帯でそう言いながら、両腕で裸の上半身を抱く。手のひらの下の肌は、
冷たく嫌な脂汗をかいていた。
寒さから来る震えのはずがなかった。時間を失ったこの世界の気温は朝晩の肌寒さも
昼の暑さもなく、常に程よく一定していたからだ。

怖かった。ただただ、怖かった。
レイを失ったかもしれない予感が。

気がつけば、半狂乱になって廊下に飛び出している自分がいた。

(綾波は消えてなんかいない! どこかにいる! きっと見つける!)

同じ階の部屋のドアを全て開け、狂ったように中を探し回る自分。
クローゼットを開け、ベッドの下まで覗き込んだ。

47SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 21:38:33 ID:???
それが全て徒労に終わっても、絶望に沈むなどという考えは湧いてこなかった。
ならば他の階を、このホテル全部を探すまで!
それが駄目なら綾波の昔の部屋とNerv本部も探しに行って、それでも駄目なら
この街全部、いや世界中だって!
そんなにまで高ぶる心とは裏腹に、エレベーターの前でボタンを押しながらシンジは泣いていた。

エレベーターが上がってくる。
チンという音を響かせて、ドアが開いていく。中に飛び込もうとしたシンジの足が止まった。

ドアが開き切ったエレベーターの中に、何事もなくレイが立っていた。
何故か、見慣れた中学校の制服姿で。

「あ、綾波?」

「碇君……」

気合だけが空回りした拍子抜けに、前を隠すのも忘れて唖然とするシンジに、薄く
はにかむように微笑んでレイが応える。
ちなみにシンジが腰に巻いていたバスタオルは、レイを探し回っている間にどこかに
行ってしまったらしい。

「綾波っ!」

叫んでレイに抱きついた。
そのまま両腕で固く抱きしめる。

半泣きで安堵するシンジに、

「碇君、どうしたの?」

さすがにレイが問いかける。
48SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 21:42:29 ID:???
「だって……急に綾波の姿が見えなくなっちゃったから、綾波まで消えちゃった
かと心配になったから……」

「ごめんなさい、心配かけて」

泣き笑いの声のシンジの背中をさすりながらレイが詫びる。

「綾波……」

「ほんとに、ごめんなさい……部屋に戻って、服を着替えてたから」

レイの言っている部屋とは、状況から考えてスイートルームではなく、団地の彼女の住まいのことを
言っているのだろう。そこに戻って制服に着替えて戻ってきたという事だろうか。
それなら筋が通ると、シンジは納得した。
一時の興奮が収まってみれば、今度は不満な気持ちも湧く。

――それならそうと、僕に声をかけてくれればよかったじゃないか。
――大体、今更学校の制服なんかに着替えなくたっていいだろ?
――たったそれだけのために、僕をこんなに心配させて!

考えるほどに段を踏んで彼の不平は大きくなっていき、最後には憤慨さえ芽生えてくる。

――綾波に『お返し』しなくちゃ!

そんな考えまで頭をもたげる。
どんなやり方で『お返し』するかは考えるまでもなかった。
しばらく休んだおかげで、またスタミナが回復してきたところだ。
彼女の柔らかい肢体の感触が制服越しに彼の両腕の中にある。
シンジの雄の本能を存分に刺激してやまない、魅惑的な甘い香りを放ちながら。
ゴクリと自分の喉が鳴る音が、頭の中にやけに大きく反響する。
49SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 21:51:55 ID:???
「部屋に戻ろうか、綾波」

レイの背中に手を回しながら、にやけて言った台詞には下心が透けている。
それが伝わったのだろう。

「……また、するの?」

レイの呟きも、図星をついていた。

「え?! い、いや、僕はただ、部屋に戻ろうとだけ……」

完全に見透かされていると知りつつも、目を泳がせながらシンジは必至に言い繕うが。

「……いいわ」

「え?」

小さくも熱に浮かされたようなレイの声に、シンジは立ち止まる。

「いいのよ、楽しみましょ。これ、用意したわ」

まだ言い訳を探す素振りのシンジの機先を制するように言い放って、レイはポケットから
取り出したものをシンジの手に握らせる。
その正体を確かめて、シンジはその場に固まってしまう。

50SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 22:01:08 ID:???
手の中の小瓶は、あの『黒蛇精』だったのだ。

初めて飲んだときの暴走振りを思い出してしまい、少し青ざめて見返した視線の先で、
レイがにんまりと笑う。
見ただけで、シンジ自身がもう一回り元気になってしまったほどの、さっきまでとは
別人のように怪しく、そして妖艶な笑みで。

「うん……」

浮かされたような面持ちで、シンジはその言葉に従順に従う。
レイの微笑と、体温の魅惑に取り憑かれた彼には、抗う思考も気力も無かった。
51SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 22:34:55 ID:???
ドアの重く閉まる音を背中で聞いて、レイは廊下に出た。
搾り取られたシンジは疲れ果てて、今出てきたばかりの部屋の中で眠っている。
もう何度目とも知れない交わりの後だ。疲労がたまるのも無理もない。

あれから、かなりの時間が経過したことを彼女は知っていた。
元いた世界であれば、おそらく数ヶ月に値する時間は経過しているはずだ。
その間二人は、まさに寝食を忘れ愛し合った。
食事も睡眠も、愛し合う合間を縫って取るだけ。そんな日常を消費している。

ただ、前とは一つだけ変わったことがある。
ベッドの上で、レイが積極的にシンジをリードするようになったことだ。

黒蛇精は今や、冷蔵庫に余るほど詰まっている。街に出るたび補充した成果だ。
レイは限界が見え始めたシンジに何度でも黒蛇精を与え、奮い立たせた。
しかしそれでも、シンジの体が若さの盛りではあっても、人間の体には限界がある。
薬でオーバーヒートしていただけのシンジはついに燃え尽き、今は泥酔状態だ。
さっき見届けてきたシンジの顔は、目の下に濃い隈が浮かんでいた。

無論レイの体にも、いい加減にタールのように頑固な疲労がまとわりついている。
廊下を歩いている足にも、床を踏みしめている実感がなかった。
霞の上でも歩いているみたいに視界が揺れる。
疲弊しきった肉体が休息を求めて赤信号を点滅させていることは、他ならぬ自分
自身が一番判っている。
だが、疲れきった体とは裏腹に、レイの意識は冴え渡っていた。
心も疲労に沈み込むどころか、徐々に徐々に高揚していくのを自覚する。
唇の端には、薄く余裕の笑みさえ浮かんだ。
52SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 22:42:50 ID:???
そう。

いくら体が疲れていようとも、彼女こと『綾波レイ』は休息など必要ないほどの
満々たる活力に満ちていた。
また、休めと誰かに言われても従いはしなかっただろう。

それに、今の彼女には目的があった。
『負け犬』に餌を与えなければならない時間だったのである。


エレベーターで一階分降り、廊下を進んだ先に彼女の目的地はあった。
同じような客室のドアが、廊下が果てるまで並んでいる。
レイとシンジが居たスイートルームより1つランクは落ちるが、それでも庶民には
なかなか手が出ない高級客室の列が続いていた。
その一角で、レイは足を止める。
ちょうど、あのスイートルームの真下辺りに位置する部屋のドアの前で。

手に隠してきた鍵で開錠し、躊躇いも見せず足を踏み入れる。
奥に見える寝室やリビングには目をくれずまっすぐバスルームに向かって、
なぜかそこも施錠されていたドアを開けた。
中の光景に、思わず笑みが深くなるのをレイは自覚した。

ドアの奥、もう一人の彼女がそこにはいたのである。
53SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 22:44:37 ID:???
自分を敵意丸出しの視線で射抜こうとするその全裸に、レイはクスクスと嘲笑を
飛ばしてから呼びかける。

「体調は問題ないかしら?」

「……問題ないわ」

返ってきたその声は、明らかに同じ人間の声帯から出たとしか思えないものだった。
まさに瓜二つ。

声だけではない。全裸のまま向かい合うその姿は、まるで鏡にでも映したかのように寸分の
違いも見られないではないか。

二人を分かつ物はただひとつ。その足首を戒める、鎖が有るか無いかだけ。
だがそれだけの違いが、まさしく二人の立つ場所の差を物語っていたかもしれない。

「そう。食事もちゃんと食べてるみたいね。今日の食事、持ってきたわ」

肉や魚が残されている以外は空になってるコンビニ弁当に視線を投げてから、袋詰めの菓子パン
を放り投げる。

「……あなたこそ、疲れてるんじゃなくて?」

目の前に落ちたそれに目をくれず、鎖でつながれたほうのレイが切り返す。
だがそれを見下ろす側のレイには、表情も変えずそれを受け流すだけの余裕があった。

わかっているのだ。所詮これがこの女に出来ることの全て、精一杯の虚勢だと。
だから、口調にも余裕を滲ませながら言い返す。

「ええ。でも不快な疲れではないわ。知ってるはずね、どうしてなのか。」
54SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 22:47:28 ID:???
前以上に凄まじい敵意の視線が向けられたのを感じるが、構わず続ける。

「知ってるでしょう、ここの上で、私と碇君が何をやっているのか。どうして私が疲れているのかも。」

「く!……」

顔をこわばらせて睨みつけてくる、もう一人の自分のそんな様子をむしろ楽しそうに
眺めながら、レイはたたみかける。

「あれから碇君に毎日、いっぱい愛してもらってるんだもの。寝る間も惜しんで、ずっとね。」

「言わないで……」

さっき見せた虚勢はどこへやら、耳をふさいで俯くもう一人の自分。
その姿を見てレイは思う。

これが敗者の醜態か、実にみっともない。
そして勝者の自分の、なんと誇らしいこと。

「言わないで……聞きたくない。」

消え入りそうな声だった。

「気に障ったかしら? ごめんなさい。」

謝罪の気持ちが欠片ほどもこもっていない、まさしく口先だけの侘びを薄ら笑いと共に
済ませてから、言葉を続ける。

「でもこれ以上、あなたの気に障る事を言うつもりは無いわ。あなたと会うのも、多分これが最後だから。」
55SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 22:50:16 ID:???
「……え?」

「私、元いた世界に帰るわ。碇君と二人で。
でもあなたは残るの、ここに。一人さみしく。
わかる? 二人目(セカンド)?」

二人目と呼ばれたレイの顔がこわばる。
それを見るもう一人の顔には、満足そうな嘲笑が浮かんだ。
56SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 23:12:18 ID:???
二人のレイの姿が、仙石原駅にあった。
もう説明するまでもないだろう、三人目と二人目の綾波レイである。
説明を兼ねて、三人目のレイがもう一人の自分をここに連れてきたのだ。

「もうすぐ来るわ」

三人目が線路の彼方を見ながら、そう告げる。
二人目は特に言葉も返さず、三人目の視線を追った。

実は三人目は、電車の中で消失などしてはいなかった。
ちゃんと生きていたのである。
あの光の中をくぐる瞬間、三人目も浅いながらも眠りに落ちていたのだった。
誤解が生じたきっかけは、三人目がシンジよりわずかに早く目覚めたためだ。
目覚めてみれば自分とシンジ以外誰も居ない異変に三人目も驚き、他の車両の様子を見に出かけていった。
シンジが目覚めたのは、まさにその折だったのである。

三人目もまた、この誰もいない世界でしたたかに生き抜いていた。
もともと生まれながらに明晰な頭脳は、すぐにこの世界を統べる特異な物理法則の存在を看破し、
差し当たって自分には何も出来ることがないという現状を正確に認識したのである。

彼女自身が一度も乗ることなく零号機が失われたことは、生まれたときに与えられた知識
として知っていた。
それはすなわち、専属操縦者としての自分の価値も失われたということ。
だから用済みの自分は何もしなくて良い、というわけではない。どれほどの必要性があるかは
ともかく、特に都合のない限りNerv本部に詰めているようにとの命令を受けている。
ならば、この現状にあっても任務に復帰するため、あくまで帰還することを念頭に置き
行動するのは当然のこと――三人目の綾波レイはそう考えた。
57SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 23:13:25 ID:???
それからは、生存と探求にだけ明け暮れる日々が始まった。
歩き回ってはこの世界のことを調査し、元の世界に戻るための方策を練る。
その単調な繰り返しを彼女は特に不満とも、苦しいとも思わなかった。命令のみを淡々と遂行する
機械さながらの彼女にとって、任務は楽しいものでも辛いものでもない。
ただ遂行するべき任務がそこにあるというだけだ。

だが、ある時を境に、そんな彼女の心境は大きく変貌していく。
自分と瓜二つの人影が、シンジと手をつないでホテルの中に消えていく姿を見たときから。

自分以外誰もいないと思っていたこの世界に、他の人間が二人もいた事も驚きだったが、
それより大きな衝撃が自分を貫いたのを、三人目のレイは感じた。

初めて感じたそれは、悲しくも激しい『感情』だった。

二人目(セカンド)と一緒にいる碇君。寄り添う二人。
それを見た自分はどう思ったか。

「嫌だと思ったわ。」

微かに遠く、電車の音が聞こえてくる。
その方角だけを見たままの姿勢で、二人目を振り返りもせず三人目はぼそりと呟く。

「あなたが憎いと思ったわ。碇君には私だけを見て欲しいと思ったわ。そして――」

三人目がその先を語る必要はなかった。
58SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 23:17:42 ID:???
二人目がその先を引き継いだからだ。声質も口調も全てが同じ、傍で聞くものがいたら、
同じ一人の人間が喋ったとしか思わないだろう声で。

「――そして、寂しいから、いつもそばにいて欲しいと思ったのね。」

いや、実際本当に同じ人間だったのかも知れない。二人目と三人目の綾波レイは。
なぜなら三人目が口にした悲痛は、かつて二人目が痛いほどに感じた想いと同じであったから。

だから――

「……そうよ。なぜ、わかるの?」

三人目があっさり首肯したとき、二人目は躊躇もせず答えた。

「同じだもの、私と。
……碇君が惣流さん(セカンド)のお見舞いに行くのを見て、私も同じことを思ったわ。」

「あなたは惣流さんではないわ。誰かにお見舞いに来てもらう必要もない。
……あなたと私は違うわ。よく似ているかも知れないけれど。」

「違わないわ。
あなたは私、私はあなた。綾波レイと呼ばれている、たくさんあるうちのふたつ。
たぶん、あなたの考えは私の考える事と同じ。だから、わかるわ。」

その声を背中で聞きながら、三人目の口元に薄く嘲笑が浮かんだ。
見る者がいたら凍りつきそうなくらいに、暗く陰惨な微笑。
だが背中を向けられている二人目は、それに気づかない。

「そう思うの? だったら、ついてきて。
教えてあげる、私とあなたの違いを。」
59SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 23:19:29 ID:???
「そう思うの? だったら、ついてきて。
教えてあげる、私とあなたの違いを。」

二人が話し込んでいる間に、ホームには入ってきた電車が止まっていた。
三人目は開いたドアから車内に上がりこむ。二人目も続いた。

ドアが閉まり、車体がゆっくりと走り出す。
窓の外に、もう見慣れた青く沈んだ町並みが流れてゆく。
体に加速度を感じながら、三人目が口を開いた。

「時計を見て。」

言われるままに腕時計を見た二人目の瞳にはっきりと驚きを認めて、三人目は少しだけ満足した。
二人目が驚いたのも道理。
ここに来てからピクリとも動かなかった時計の秒針が、いま確かに時を刻んでいる。

「あなたは知らないかもしれないけど、これは私と碇君がここに来たときに乗ってきた電車よ。
この車内には、元いた世界の『時間』が残っているみたい。多分、私と碇君を乗せてこの世界に
来たときに『時間』も中に閉じ込められているのね。
わかる? ここには元の世界の『時間』が、つまり元の世界との接点があるの。
でも、それを確認できるのは限られた時間だけ。そして、うまくその時間のうちに乗れたときは……見て。」

三人目の片手が進行方向の窓を指差す。

ガラスの向こうに、白い光が満ちていた。
黎明の色の空が大きく裂け、そこからまばゆい白い光が降り注いで、街の一角をスポットライトのように照らし出している。
二人のレイを乗せた電車はまさに、その真下に向かって進んでいた。
60SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 23:21:51 ID:???
それは、かつてシンジが見た光景とまさに同じものだった。
奇しくも、電車に乗っていない二人目のレイも見覚えがあった。
あれは零号機が爆発する寸前、彼女を包んだ光と同質のものに間違いない。
身を包んだあの光が消えたとき、彼女はこっちの世界に来ていたのだ。

つまり……

彼女の中で一つの仮説が形を取り始めたとき、いま一人の綾波レイの言葉も続く。

「あの光がこの世界と元の世界、少しだけ異なる2つの次元を分ける境界。
そして、その両方を繋ぐゲートだと推測されるわ。」

「そうね。」

その推論に頷く二人目。
さすがは同じ綾波レイというべきか、三人目の口にした言葉は二人目の推論と完全に一致していたのである。

「つまり、あの光の下をもう一度通れば――」

「ええ。元の世界に帰れる可能性があるわね。」

「……それであなたは」

「なに?」

「それであなたは、戻るつもりなの? 碇君を連れて、元の世界に。」
61SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 23:26:10 ID:???
その問いに、三人目は薄笑いだけで応じた。
やがて、光が降り注ぐ線路の一つ手前の駅に電車は止まる。
環状線だ。駅と駅との感覚は短いのである。

「降りて。」

言うなり開いたドアを先に抜けた三人目に促され、二人目も無人の駅に降りる。
ここで三人目が降りるのは道理だと、二人目も理解したのだ。
あくまで推測が正しければだが、ここで降りなければ電車ごとあの光の中に飛び込み、
同じ綾波レイ二人して仲良くもとの世界に戻ることになる。

シンジを置き去りにして、だ。
むろんどちらの綾波レイも、それを望むはずがない。

「戻るの? 碇君と。」

降りた場所で足を止めて、二人目は再び問う。
それを背中で受けて、ホームを出る階段に歩きかけていた三人目が足を止める。
その姿勢のまま、両者の間に無限とも思える時間が流れ――背後に電車の音が遠ざかっていく。

答えが返ってきたのは、それがだいぶ小さくなってからだった。

「そう言ったはずよ。」

静かな口調の中にも、決然たる意思を滲ませた三人目の声。
だがそれは、二人目にとっては到底受け入れられるはずのないものだ。

だから――

「……そう。でも私も戻る。碇君と一緒に。」
62SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 23:27:36 ID:???
凛として言い返す。もう一人の自分に負けないくらいに強靭な決意を込めて。
二人目のレイは、恐らくは自分でも気付かないうちに両手を固く握り締めていた。
その決意の固さにふさわしく。
彼女の小さな拳がどれほど固く握られているかは、元より白い肌であるのに拳の関節
から血の気が失われ、皮膚が白くなってるのを見れば明らかだ。

二人目は思った。
自分こそが本物の「綾波レイ」なのだと。『碇君にとって』の。
だから、碇君のそばに付き添う綾波レイは他の誰でもない、自分でなければいけなかった。

「――駄目よ。」

それを見て取ったのかどうか、少しの間を置いてから、吐き捨てるみたいに三人目は言い放った。
いつの間にか、彼女は振り返っていた。その瞳が二人目をねめつける。
自分と同じはずの、その紅い瞳の奥に漲る冷たくも熱い炎が、さしもの二人目をもすくませた。

「駄目よ、碇君と帰るのは私だけ。あなたは残るの。
ここに残って、一人寂しく死ぬの。そうでなければ、不公平だもの。」
63SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/16(水) 23:29:13 ID:???
今日はここまで。
64名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/16(水) 23:41:25 ID:???
>>63
GJ
65名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/17(木) 00:05:37 ID:???
>>63
三人目怖えぇぇぇぇぇぇ!!!
66名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/17(木) 02:12:55 ID:???
いいよいいよー
67名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/17(木) 18:51:18 ID:???
凛として言い返す。もう一人の自分に負けないくらいに強靭な決意を込めて。
二人目のレイは、恐らくは自分でも気付かないうちに両手を固く握り締めていた。
その決意の固さにふさわしく。
彼女の小さな拳がどれほど固く握られているかは、元より白い肌であるのに拳の関節
から血の気が失われ、皮膚が白くなってるのを見れば明らかだ。
「――駄目よ。」
二人目は思った。
自分こそが本物の「綾波レイ」なのだと。『碇君にとって』の。
だから、碇君のそばに付き添う綾波レイは他の誰でもない、自分でなければいけなかった。

「――駄目よ。」

それを見て取ったのかどうか、少しの間を置いてから、吐き捨てるみたいに三人目は言い放った。
いつの間にか、彼女は振り返っていた。その瞳が二人目をねめつける。
自分と同じはずの、その紅い瞳の奥に漲る冷たくも熱い炎が、さしもの二人目をもすくませた。
「――駄目よ。」
「駄目よ、碇君と帰るのは私だけ。あなたは残るの。
ここに残って、一人寂しく死ぬの。そうでなければ、不公平だもの。」
68名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/17(木) 18:52:08 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
69名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/17(木) 19:25:57 ID:???
>>62 乙。

私も「ランゴリアーズ」を愛読している者です。
原作を読んだことがあるからこそ、なのかもしれませんが余りストーリーに重みがありません。
いや、全く無いと言ってもいい。

これはあなたの投稿作品なのですから、あなた自身がストーリーを構築する権利があります。
それなのに、あなたはその権利を放棄しているように感じます。
早い話、原作の影響を受けすぎている。少しくらい自分で考えなさい、ということです。

>>59とか。
>「あなたは知らないかもしれないけど、これは私と碇君がここに来たときに乗ってきた電車よ。
>この車内には、元いた世界の『時間』が残っているみたい。多分、私と碇君を乗せてこの世界に
>来たときに『時間』も中に閉じ込められているのね。
原作でも、その世界にやって来た飛行機の中では時間が残っていた。

>ガラスの向こうに、白い光が満ちていた。
>黎明の色の空が大きく裂け、そこからまばゆい白い光が降り注いで、街の一角をスポットライトのように照らし出している。
>二人のレイを乗せた電車はまさに、その真下に向かって進んでいた。
原作の、「タイム・リップ」の事ですね?意識があれば通ることが出来ない、奇妙なワームホール。

これはごく一部です。


まさか、原作通りに、「世界が次第に虚無に呑まれていき」「タイムリップをくぐることを余儀なくされる」事になる、なんて事、勿論ありませんよね?
勿論、他のオチを考えてくれますよね?

これは嫌がらせではありませんよ?あなたのためです。
70SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 20:52:31 ID:???
「不公平?」

「……わからない?
あなたもう、碇君から一番大切なものをもらってる。私はまだ、もらえてないのに。
それはとても不公平だわ。だから、私も碇君と共に生きて、碇君から同じものをもらうの。
そうすれば私もあなたと同じになれるわ。だから……邪魔しないで!」

三人目の身が反転するや、何かの薬品臭が二人目の鼻をついた。

(何!?)

何の薬品だったか、咄嗟にその名前までは浮かばなかったが、本能のどこかが激しく警鐘を鳴らした。
真っ当な薬とは思えない刺激が鼻の粘膜に染み渡る。

だが警戒して身構えた動作は間に合わず、口にハンカチのような布を押し付けられる。
それこそが臭気の発生源だったようだ。鼻腔に満ちる一層強烈さを増した臭気で、
そこから全身に痺れに似た麻痺が神経を侵していく。
意識のどこかが警報を鳴らした。これは危険だと。

「う!」

正常な空気を求めて、反射的に息を吸い込んでしまったのが逆効果だった。
口からも気化した薬を吸いこんでしまったのだ。

肺いっぱいに甘ったるい臭気が満ちたと思った次の刹那、酩酊のような脱力感がフワリと全身を襲う。
反射的に紅い瞳を大きく見開いて薬に抗おうとするが、無駄な努力だった。
もはや足の裏がコンクリートを踏みしめている感覚さえ、彼女には無い。
71SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 20:55:12 ID:???
雪のような顔が、一層白く染まる。
三人目を突き飛ばそうと動かしたはずの腕は、薬の驚くほどに迅速な作用のせいでもう力を失っている。
たちまちに意識が暗闇の底に沈んでいく。華奢な体を支える両膝もくず折れる。
冷たいコンクリートに上半身が崩れる寸前、彼女はわずかに残った力で頭を動かし三人目を見た。
そこにあるのは自分と瓜二つの、いつも鏡で見慣れているのと同じ顔だ。
それなのに、その印象が鮮烈に網膜に焼きついたのはなぜだろう。

紅い瞳に嫉妬や悔しさといった負の感情だけを込めた顔。
顔かたちだけでなく、内面までも自分と同じ存在がそこにいた。

毎日病院に来て、セカンドの顔を見続ける碇君の背中を自分は何度も見た。
その度に、胸に熱く満ちた想いがある。
それをどう言い表せばいいのか、彼女の語彙は答えを持たなかった。

セツナイ。クルシイ。ツライ。

その全てであり、そのどれでもない。そんな感情。

いたたまれない気持ちで逃げ込んだトイレの鏡に映る、そんな自分の顔。
それは今目の前にある三人目の顔と、寸分違わず同じ。
三人目はあの時の自分と同じなのだと、薄れる意識の中で二人目は思った。
痛いくらいに感じた。この人は自分に負けないくらい、碇君が好きなのだと。

そこまでが限界だった。

二人目の意識は急激に闇の中に落ちていった。
72SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 20:58:42 ID:???
シンジは困惑していた。
どこかへ姿を消していたレイが部屋に戻ってきて、一緒にこれから電車に乗りましょと言う。
なぜそんなことをと尋ねてはみたが、碇君とデートで乗りたいからだと返されただけ。
結局言われるままに服を来て、シンジは駅に来ていた。

「綾波、どうして電車なんかに?」

人気の無いホームで椅子に隣り合って腰掛け、聞いてみる。

「言ったでしょ、デートよ。一緒に乗ってみたいと思って、碇君と。」

言うまでもなく、これは嘘だ。
確かにシンジを伴って乗る必要はあるのだが、それ自体が目的ではない。
一緒に乗って、元いた世界に二人して帰ることが目的である。

「え……でも……」

シンジがそれだけ言って答えを口ごもった理由を、三人目のレイは察していた。
当然だ。彼女も同じ電車でこの世界に来たのだから。

「……嫌なの? 電車に乗るのが。」

レイの問いに、男の子にしては細い肩をピクリと反応させてから、

「……うん」

シンジは弱々しく頷く。
きっと、あの時の車内の光景がプレイバックされているのだろう。
忘れたくても忘れられない光景だ。
目の前のレイが実は三人目であることを、シンジはまだ知らない。
彼女のほうもまだそれを告げるつもりは無い。告げれば、二人目はどうしたと詰問
されるのがオチだ。
73SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:01:03 ID:???
今は二人目に成りすますしかない――いや、たぶん、この先もずっと。
事実を告げようものなら、シンジが二人目と共に時間を過ごしたこの世界に残る道
を選ぶ可能性もありえる。
ちなみにその二人目は、さっきの駅に気を失わせたままで残してきた。
今もまだ地べたに転がっているはずだ。
嗅がせた麻酔は強力なものだ。効き目が切れて目が覚めた頃には、自分とシンジは
もうこの世界から脱出している筈である。

だがシンジにとっての『綾波レイ』はあくまで二人目――三人目にはそれが歯がゆく、何より妬ましい。
それはシンジと二人目との揺ぎ無い絆を示す証であり、三人目にとっては疎外と敗北を意味するものだ。

そんな二人目を置き去りに、自分がシンジと共にこの世界を去る――それが三人目の望む勝利だった。
正直、二人目に成りすますのは難しいことでもなんでもない。
外見なら寸分たがわず同じなのだから。
まさしくもう一人の自分―――少なくとも三人目はそう思っているし、普段と同じように振舞えば露呈
しないと踏んでいる。
74SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:12:06 ID:???
これまでの観測から推測して、あの光のゲートの出現は不定期で予測不可能である。
だから消えてしまう前に事を遂げなければならない。この機を逃したら、
次はいつになるかわからなかった。
唯一の不安要素は二人目の存在だが、今その邪魔者はさっきの駅で気絶しているはずだ。
当分目は覚ますまい。
今日という好機をみすみす逃さなければならない理由など、どこにも無いのだ。
その決意が、無意識のうちに力の加減を狂わせたようだ。

「ち、ちょっと、痛いよ綾波!」

繋いでいた左手を予想外の力で握りしめられ、シンジが悲鳴をあげる。

「あ……ごめんなさい」

「……別にいいけど」

「そう……」

「……」

二人の間に流れたのは、重苦しい空気。
それは漠然とした違和感となって、シンジの胸を満たした。

(なんだろ?)

二人目といたときには感じなかった、間に立ちはだかる見えない壁のようなものをシンジは感じていた。
隣にいる綾波との距離がとても遠く、これから先も、けっして縮む事は無さそうに思われたのである。
表向きは親しげな二人の間を隔てる、比類なき強固な心の壁――不可視のATフィールド。
それをまざまざと見せられている気がした。

(綾波が……なんだか別の人みたいな感じがする……)
75SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:18:29 ID:???
思考の底なし沼から彼を引き上げたのは、スピーカーから突如流れたアナウンスだった。
電車がホームに入ってくることを告げている。機械仕掛けで流れるその声は、この駅から
人の姿が無くなってもなお、ただひたすらに忠実に孤独な任務を果たしていたのだった。
程なくして、見覚えのある車体がホームに滑り込んで止まる。
ため息のような空気音と共に、乗降用のドアが開いた。

「乗りましょ、碇君」

言うレイに手を引かれるままシンジは乗り込む。
車内に入るや、シンジの顔がはっきりとこわばる。
目の前には記憶の中と同じ光景があった。座席に置き去りにされた、乗客たちの忘れ物。
その一つ一つのどれもが、明らかに見覚えがある、忌まわしい思い出ばかり。
偶然にも、あのとき乗ってきたのと同じ電車の、それも同じ車両に乗り込んでしまったのである。
座席の上で生々しい脈動を打ちつづける人工心臓が目に留まる。命を繋ぎとめるはずのそれは、
今はどこかに消えてしまった主を悼むレクイエムをドクンドクンと奏で続ける、墓標のようにも見えた。

「う…えっ!」

短く呻いて、両手で口を押さえてシンジはしゃがみ込んだ。吐き気が襲い掛かったのである。
目を固く閉じて耐えるシンジの背中をレイがさする。

「碇君、大丈夫?」

「う、うん……」

蒼白な顔でそれだけ答えるのが精一杯だった。
レイに支えられて座席に着いたシンジは、体に伝わる加速度と揺れを感じる。
見れば既にドアは閉まり、窓の外の景色も徐々に徐々に流れ去る速さを増していく。
いつの間にか電車は動き始めていたのだ。
76SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:21:07 ID:???
二人を乗せた電車が走り続けて、どのくらい時間が経ったのだろう。
レイの介抱の甲斐あってだいぶ落ち着いたシンジは、何を語るでもなく座席からただぼんやりと車内
を眺めていた。彼の焦点の合わない瞳は、あの時のことを思い出し愁いにふけっているようでもあり、
そのくせなにも考えていないようにも、そもそも考える事自体放棄しているようにも見えた。
いずれにせよ、体半分ほどの微妙な距離を置いて隣に座っているレイにとってはなんだか居心地の
悪い空気ではある。さっきから二人は無言のまま。
話が弾みそうな話題も、さしあたっては見つからない。
ただ気まずい空気ばかりが流れていく。

「うわあ!……見なよ綾波、空が綺麗だよ!」

だから、突如シンジが素っ頓狂な声を上げたときはレイのほうが驚いた。
見れば、シンジは窓の外を見ている。その視線を追うと、窓の向こうにあの光が降り注いでいるのが見えた。
シンジの顔が、その照り返しで輝いている。

「なんだろあれ? はじめて見るよ、あんなの」

「本当、綺麗ね」

同じように窓の外を見て同調する振りを演じつつ、三人目のレイは内心ほくそ笑む。

このままあの光の中に電車が飛び込んでいけば、自分はシンジと一緒に元の世界に戻れる。
つまり、自分はシンジを手に入れるのだ。戻ってしまえば、もしシンジが自分を三人目だと看破
するようなことがあっても、そのときにはもう彼には何もできないだろう。

唇をわずかに歪める。
その体に緩やかなGがかかるのを感じた。ただし加速とは逆方向で。
電車は減速を始めていた。
窓の外を、見覚えのある景色が流れていく。
三人目にとっては、さっきも見たばかりの光景。そう、電車はあの駅に着こうとしていた。
77SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:23:13 ID:???
(!……迂闊だったわね)

ある事実に思い当たって、三人目は密かに胸の中で毒づいた。
二人目をあのホームに、薬で気絶させたままだったことを思い出したのだ。
強力な催眠薬である。まだ意識も戻らないままあの場所に転がっているだろう。
だから安心……と言えるほど簡単な問題ではないことに、今になって気がついた。
二人目も三人目も関わりなく常に冷静沈着な彼女、綾波レイらしからぬ失態であった。
ホームの冷たいコンクリートに横たわる二人目の姿を、シンジに見られたらどうなるか?

チラ、とシンジに目をやれば、彼は相変わらず窓の外の光の芸術に魅入られたままだ。
この位置からだと、流れていくビルが空を遮って邪魔なのだが、それでもシンジは
憑かれたように飽くこともなく見つめている。

少なくとも今のところ、ホームは彼の視界に入っていないようである。
しかし、駅に電車が止まれば話は別だろう。ドアは二人以外には居もしない乗客を迎え
入れるために開くし、アナウンスも流れる。
駅に入れば、空は駅舎の屋根に隠れて見えなくなる。その間シンジの意識が逸れるのは
間違いなく、その時シンジがホームに横たわる二人目の姿を視界に納める危険は非常に大きい。
もし運良く見逃しても、あの綺麗な光をもっと近くで見たいから、この駅で降りようなんて
言い出すのではないだろうか。
ホームに降りれば、まず間違い無しに二人目を見つけられてしまう。
78SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:26:08 ID:???
そう思案している間にも電車はどんどん減速している。程なくホームに停車してしまうのを
見て取って、三人目は決断を迫られたことを察した。
とにかく、シンジの注意と視線をホームから逸らすしかない。シンジに何か話題でも振って、
注意を引くのが適当だろうか。
とは言え、あまり場違いな話題というのもおかしい。
例えば、もっと近くで空が見えるように運転席のほうに行って見ましょうとでも誘うべきだろうか。
とにかく確実に、シンジの意識を駅のホームから奪う術を選ばなければならない。

その心当たりならあった。ここ最近、すっかり体に馴染んだやり方が。
三人目は、意を決した。

「碇君」

「……んむぅ!?」

いきなり抱きつかれた相手の、その桜色の唇で塞がれた口からそんなおかしな声を出して、
シンジは目をぱちくりさせてしまう。
数時間前にその体を清めたフローラルのボディソープも混ざった、レイ特有の清涼感のある、
それでいて甘ったるい香りがシンジの鼻をくすぐる。
レイの顔が視界を埋めるほど間近で、綺麗な紅玉の瞳が、びっくりして思わず見開いた
自分の黒瞳を覗きこんでいる。
一瞬見とれてしまったその綺麗な紅い瞳の瞼が、キスに酔いしれたようにゆっくり閉じていく。

(綾波……)

それに引き込まれるように、シンジも瞼を閉じた。
79SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:28:45 ID:???
あんなに見とれていた外の光景さえ、今の彼の意識からは完全に消え去ってしまっている。
そう、いま碇シンジは、目の前の『綾波レイ』に完全に虜になっていた。
お互いの体を知り尽くした男と女の関係になっても、むず痒くなるほどに初々しいキス行為
というやつは、まだ若すぎる二人には麻薬のような効果を発揮するのかも知れなかった。
それが彼女――三人目の策とは知る由もなく。

三人目が選んだ方法とは、つまりは色仕掛けである。
なんとも安直ではあるが、彼女には一番手馴れたやり方には違いない。

シンジの唇の体温を同じく唇で感じながら、レイは薄く瞳を開ける。
案の定、シンジは眼を閉じたまま頬を染めて、キスに酔っているようだ。
三人目は重ねたままの唇の端を僅かに歪めた。
とっさの機転だったが、上手くいきそうだった。
この分ならシンジがホームに横たわる二人目に気付く余裕はまずあるまい。このまま
この駅を通り過ぎれば、あとはあの光の下まで一直線に向かうだけだ。

半ば成功を確信し、いよいよ近づいてきたホームを横目で見る。
急激に減速しているのがはっきりとわかる。光差し恵むあの空も、人口の屋根に阻まれてもう見えない。
気がつけば、電車はもう駅舎の内に入っていたのだ。
ガタゴト、ガタゴトと繰り返す耳障りな音もずいぶん間延びして、速度も静止する寸前まで落ちている。
ついに、その視界に見覚えのある灰色のコンクリートの広がりを収めた。電車がホームに入ったのだ。
キスを続けながら、流し目で二人目の姿を捜し求める――敗者の無様な醜態を。

(居ない!?)

電撃に似た驚愕が走った。
眼前のホームのどこにも、自分の生き写しの少女の姿は無かったのである。
80SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:33:05 ID:???
ついに電車は止まり、目の前でドアがゆっくり開いていく。
その向こうに見える灰色のコンクリートのホームは、誰一人いないお陰で一層広く見えていた。
いつもは無駄なくらいのな音量で到着を告げる女性の声のアナウンスが、どこかずっと遠くで
聞こえているような気がした。

「……波、綾波!」

呼ぶシンジの声に、途端に我に返る。

「どうしたの、急に?」

シンジの顔が、ちょっと不満そうな表情で自分を覗きこんでいる。

「あ……」

いつの間にかキスを中断してしまっていたことに気がつく。二人目が消えている事に驚いて、
知らぬ間に唇を離してしまったのだろう。

「どうしたの?」

「……いえ、なんでもないわ」

努めて平静を装い、三人目はかろうじてそれだけを返した。
この場は、この場だけは、なんとしても怪しまれずに乗り切らなければならない。
なにしろ、あと少しで彼女の願いは叶うのだから。
気絶させたはずの二人目の姿が消え失せたのは確かに驚きだったが、冷静に
なってみればその理由を推察できないこともない。

二人目がここに居ないという事は、少なくとも麻酔の効き目が切れたことは間違いない。
彼女が二人目に嗅がせた麻酔は、相当に強力なものだったはずである。
こんな短時間で醒めるはずは無い。
それは三人目にとって、確かに誤算と言えば誤算だった。
81SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:43:53 ID:???
しかし二人目もまた、決定的な判断ミスを犯したようである。
三人目の彼女には、哀れな二人目の一挙手一投足が手に取るように想像できた。
それはある意味で当然だろう。どちらも同じ、綾波レイなのだから。
ならば自分がするのと同じように二人目も考え、行動するはず。だから二人目の行動を
推理するには、同じ立場に自分を置き換えればいい。

自分が二人目の状況で、麻酔から醒めたらどうするだろうか。
おそらく奇跡的に麻酔から醒めた二人目は、気を失っていた時間の浪費に慄然としたはずである。
自分がどれだけの時間眠り続けていたのか、それが致命的なロスにならなかったか、
まずそれを考えたに違いない。
けれども、それはいくら考えても知りようがない事である。なぜなら、ここには時間というものが無いのだから。
凍りついたまま動かない時計の針から、過ぎ去った時間を読み取る術などあるはずもない。

とすれば、その状況で二人目の取る行動は1つしか考えられまい。
とにかく急いであのホテルに戻ることだ。三人目の自分から、シンジを取り戻すために。
だがシンジは今、こうして自分のそばにいる。

(無駄なのに)

三人目は、哀れな二人目を胸の中で嘲笑した。
(無駄なのに)

三人目は、哀れな二人目を胸の中で嘲笑した。

『ドアが、閉まります』

女性の声で無機質なアナウンスが響き、ゆっくりとドアが閉まる。
やがて車体もゆっくりと滑り出していく。
82SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:46:06 ID:???
これで最後だ。もう、この電車が次の駅に着くのを見ることはない。
なぜなら、ここと次の駅の間の線路にはあの光が降り注いでいるからだ。
そこに電車が飛び込んだとき、すべては終わる。

自分の勝利だ。

これで碇君は――私だけのもの。
徐々に増していく心地よい加速度を全身で感じながら、三人目はその事実に酔いしれた。
些細な計算違いはあったが、それも誤差の範囲内にすぎない。
まずは文句なしの大成功と言えるだろう。

「クス…」

思わず笑いがこぼれて、こんな風に人並みに笑える自分だったのかと、彼女自身が誰よりも驚いた。

一旦笑い出してしまうと、もう笑いが止まらなかった。
おかしくてたまらない。

「ウフ、ウフフフ……フフ、ウフフフフ!」

たちまちのうちに速度を上げていく車両の座席で、三人目は身を折って腹を抱え、笑い続ける。
尽きることなくこみ上げる笑いを堪えようにも堪え切れない、止まらない。
笑いというポジティブな感情表現からはおよそ縁遠い存在と思っていた自分が、
普通の女の子のように笑い続けている――その事実が、笑い転げる三人目自身にさえ信じられなかった。
83SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:47:31 ID:???
「あ、綾波…」

シンジが呆然とした声で、自分の名を呟くのが聞こえる。
でも、無理もないと思う。
自分がこんなにまで、心の底から人並みの歓喜を感じて笑い転げることの出来る人間だったとは、
彼女自身でさえ今まで知らなかったのだから。
自分を見てる碇君はきっと、信じられないものを見るような顔をしてるはずだ。

そんなことを思いながらシンジに向けた視線は、シンジの顔に貼り付いて止まる。
予想通り、彼は信じられないという顔で目を剥いていた。
それは彼女の予想のうちだ。ただ一つ――シンジの視線が彼女自身を見ていなかったことを除けば。
シンジは真っ青な顔で、あさっての方向に視線を送っていた。

まだ小さな胸に、ざわめきが広がっていく。
何か予感のようなものに打たれ、彼の視線をたどっていき、今度こそ三人目も座席の上で息を飲み込んだ。

どうしてこうも、彼女の計算外のことばかりが続くのだろう。
運命は、三人目を見放したのかもしれない。

二人の視線の先、後続車両とのドアの前に立つ人影こそ、二人目の綾波レイに他ならなかった。
84SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:49:16 ID:???
「あ、あの、こ、これって!?」

自分ともう一人を交互に見ながら、傍らのシンジは半ば混乱モードに入りつつあるようだ。
自然な反応だろう。

僕の大好きな綾波が二人もいる! ラッキー!……なんて能天気な考えは、よほどの
馬鹿でない限り浮かぶまい。

彼のほうを見るまでもなく、気配と口調からシンジの動揺を察しながら、三人目は二人目を
敵意の視線でねめつける以外に術を持たない。

動転してホテルに戻っただろうと踏んでいたが、まさか同じ電車に乗っていたとは!


「碇君から離れて」

その声は、あくまで静かに、けれども凛と車内に響いた。
二人目の綾波レイの声が。
毅然と言い放ち、歩み寄ってくるその姿は、自分と寸分も違わない。
同じ、ジャンパースカートの制服。
同じ、空の色の髪。
同じ、病的なまでに白い肌。
そして――同じく、底知れないほどに強い輝きを放つルビーの瞳。

まるで、目の前に一枚の鏡が立っているかのよう。
そう。目の前に立つ彼女は全てが自分と同じ存在なのだ。
85SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:54:16 ID:???
それなのに。

それなのに、そのもう一人の自分の姿に縫い付けられたまま、視線が逸らせない。
この女が放つこの圧迫感は、一体何なのだろう。
そして、対する自分がひどくちっぽけで無力な存在に思える、この感覚はなんなのだ?
自分とあの女は、優劣などない対等の存在であるはずなのに。

「薬は……どうしたの?」

静かな気迫に圧倒されながらも、それに抗うように声を絞り出して問う。
強力な麻酔の効き目からなぜ開放されたのかを、純粋に知りたくもあったのだが。

「……もう一度言うわ。碇君から、離れて」

「……くっ!」

取り付く島も無い拒絶に、三人目は唇を噛んだ。
自分との問答には興味など、いささかも無いらしい。

「碇君から、離れなさい」

今度の言葉は、ゆっくり区切るように投げかけられる。
その声はひどく落ち着いて聞こえた。
ただ感情を含まぬだけの声であれば、冷たくも熱くもない、無味乾燥で無機質な単語の羅列
としての音があるだけだ。ここまで氷のような冷たさを感じることもないだろう。
いつも以上に平静に聞こえるからこそ、その冷たい声は教えてくれる。
二人目は身を焼く程の怒りを、おそらくは大変な忍耐でもって努めて抑えているのだと。

だからこそ、今感じる言葉の冷たさが、殊更に恐ろしい。
86SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:56:33 ID:???
いつしか息遣いさえ飲み込んでしまっている自分に気づく。
背中に、冷たく濡れた布地が貼り付く不快な感触。やっと、汗をかいた背中を座席の背に押し付けている。
まるで二人目から距離をとろうとするような無意識の行動で、全身に冷たい脂汗を滲ませながら三人目は自覚した。

自分は今、間違いなくこの女に気圧されているのだと。

突如、痛みを右目に感じた。額を流れた汗の塩分が右目を刺したのだ。
額から、気づかぬうちに驚くほどの汗が滴っている。

「く!…」

言葉にならない呻きと共に汗を拭いながら、負けられないと、三人目はただそれだけを思った。

二人目は、彼女のすぐ目の前で立ち尽くしている。
高みから自分を見下ろしているのは、冷たくて、けれども炎のような意思を放つ紅玉の双眸。

力負けしそうなその視線を、同じ色の瞳で迎え撃ちながら数瞬――三人目は決然と言い放つ。

「嫌よ」

傍らのシンジの左腕を強引に引き寄せ、これまた無理矢理に自らの腕を絡めながら言い放った言葉だった。

「譲れないものがあるのは、私も同じ……あなたに碇君は渡さないわ」

それを聞き届けた二人目の瞳が険しい光を放つ。
その桜色の形のいい唇が少しだけ歪む。その奥でキリリと噛み締める音が三人目には聞こえた気がした。

交渉決裂であった。それが交渉と呼べるものであったかはともかく。
87SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 21:58:38 ID:???
両者の間に、この上なく冷たい空気が流れていく。
互いに息も身じろぎもせず、負けじと視線を激突させていた時間は数秒、いや数分だったかもしれない。

そんな膠着状態を破ったのは、空気を読むのが苦手な残り一人の、混乱しまくった声だった。

「あ、あの……い、一体、どうなってんのさ!?」

碇シンジ――彼はすっかり状況に取り残されていたのである。
二人の綾波レイの顔を忙しく交互に見ながらどもるシンジに、二対の視線が絡み合う。


「……綾波レイよ、どっちも」

ややあって静かに口を開いたのは、シンジの傍らに座っていたほうの綾波レイ、すなわち三人目のほうである。

「え?」

「どちらも同じ綾波レイなのよ、私もこの人も」

「そんな…それってどういう……」

「碇君も知ってるはずよ。私たちは……綾波レイと呼ばれる存在は一人じゃないわ、たくさんいるの。見たでしょ?」

「あ……」

短く声を上げたシンジの脳裏には、あのときリツコやミサトと見た光景――巨大な水槽の中で無残に
崩れていく、レイの姿をした抜け殻たちの様がプレイバックされていたに違いない。
まだ幼い14歳のココロにトラウマを刻み込むには十分過ぎるくらいに、凄絶な光景。
ともかく、この一件を機にレイの部品となる肉体のスペアは永久に失われ、綾波レイと呼べる存在は
三人目の彼女ただ一人になった――シンジはそう認識していた。
88SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:02:03 ID:???
少なくとも、この世界で二人目に会うまでは。

「でも、三人目の綾波は確か、こっちに来た時消えて……」

その三人目は消えたはず。そう彼は思っていた。

「今乗ってる電車の中で消えたはず。そう言うのね?」

「…うん」

シンジの返事にクスリと小さく笑ってから、三人目は続けた。

「碇君はなぜ、そう思ったの?」

「え? だって、三人目の綾波の姿が消えてたから……本だけ残ってて、他の人たちみたいに……」

「では碇君は、三人目の私が消えるところをその目で見たの?」

「え!」

小さな雷に打たれたような気がした。
言われてみれば、三人目が消失する瞬間を、シンジはその目で見てはいない。
彼の見ている目の前で、座席に座っていた三人目がスゥッと消えたわけではないのだ。
彼女の読んでいた本だけ座席に残っていたという状況証拠から、三人目も他の乗客と共に
消えたという推論を、自分が勝手に導き出していたにすぎないとも言える。

――となると。
89SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:03:32 ID:???
「それじゃあ、もしかして……」

呆然とするシンジに、畳み掛けるように続ける。

「そう、三人目の私も生きていたの。碇君や私と同じように、この世界で。
碇君が目を覚ました時に、たまたま席を外していただけだったの。」

三人目の自分も生きていた――これを言ったのが二人目のレイであれば、そこには何の不自然もありはしない。
だがよりにもよって三人目本人の台詞であったから、当然ながら二人目のレイは、疑惑の眼差しを向けることになる。
そして、その目の前に、すっと指が一本突き出された。

「そう、そこにいるのが三人目の私。」

シンジの横に座るレイは、目の前に立つもう一人の自分を指差して言い放った。
次に、指差した手をそのまま自分の胸に押し当てる。

「そして、私が二人目の綾波レイ。碇君が一番良く知っている、綾波レイよ。」

二人目の目を見据えながら、そう平然と言い放ったのである。
さすがの二人目の表情が、このときばかりは凍りついた。

あろうことか、三人目は自分こそが二人目だと偽ろうというのだ。
のみならず、本物の二人目には三人目のレッテルを貼ろうとしている。
当然です、と言わんばかりの自然さで茶番を演じてみせた三人目の役者ぶりは、
なかなかに見事と言うしかないだろう。
90SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:11:51 ID:???
事実、二人目は完全に虚を突かれて二の句を次げなかった。
予想を超えた展開に、思考が停止したとも言える。
けれども、二人目の彼女にとって本当に残酷に響いたのは、それに続いたシンジのセリフであったろう。

「そ、そうなんだ……生きてて良かったね」

それが彼女に視線を向けて放たれた、どこかぎこちなく微笑むシンジの言葉。

「碇君?!」

二人目の胸は悲しみに張り裂けそうだった。
シンジの言葉は、彼が三人目の戯言を信用したことを教えている。
いや、彼女が本当に悲しかったのはその事じゃない。
三人目の言葉ではないが、二人目である自分はまぎれもなく、シンジともっとも親しい綾波レイである。
否――シンジにとっての綾波レイとは自分だけと言い切っても差し支えないし、それだけの自負もある。

それなのに、それなのに。

その碇君は私が二人目だと気づいてくれていない!
無残に引き裂かれた心の裂け目から、血がこぼれそう。

悲しいことに、その理由は容易く理解できた。
自分ともう一人、二人の姿かたちはまさにうり二つ――どちらも綾波レイの外観を持っているのだから。
双子よりも似通った二人を、他人が外見だけで区別できるはずもない。
また、三人目もそれを計算の内に織り込んだ上で、大芝居を打ったことは多分間違いなかった。

「無事でよかったね……ほんとに。でも、今までどこにいたの?」

屈託ないシンジの質問が、今はとても残酷に響く。
シンジが目の前にいるのに、二人目は痛いほどの孤独を感じていた。
一番そばにいて欲しい人の温もりが、彼女の傍らには無い。
91SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:15:01 ID:???
ココロが、寒い。
心底そう思う。けれども、まだ幼い恋する少女は、それを表現する為の術を知らなかった。

だから―――

「あ…綾波…どうしたの…」

不意にかけられたシンジの声に、二人目は我に返った。
なぜだろう、自分を心配そうに見上げるシンジの顔が歪んで見える。

「泣いてるの?」

そう言われて初めて、なんだか腫れぼったい瞼の熱さにも気が付いた。

「え?……あ……」

頬を拭った指は湿っていた。彼女は、気づかないうちに涙を流していたのだった。
拭っても、拭っても、こぼれる雫は止まらない。

「う…く……うぅ……」

しゃくりあげる自分の声を聞きながら、そんな自分が惨めだった。

「あ、綾波…大丈夫? 一体…どうしたのさ?」

シンジが心配して声をかけてくれる。肩に手を置いて、彼女を心配してくれる。
でもその優しさが、今の彼女にはこの上なく辛くて。

今、シンジは彼女を綾波と呼んだ。これまでそうだったように。
けれどその時は、そう呼ばれる存在は自分ただ一人だった。シンジの声は二人目の彼女、
すなわち自分だけに向けられたものだった。
92SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:18:21 ID:???
しかし今、綾波レイの名を持つ存在はこの場に二人もいる。
今シンジが呼んだ綾波レイとは、果たしてどちらなのだろうか。
自分か、それとも、もう一人の自分なのか。
視界の中のシンジの顔が、ひときわ大きく歪んだ。涙が堰を切ったように零れ落ちていく。

「碇君の……馬鹿っ!」

気がつけば、感情も露わに叫んだ自分がいた。それは二人目にとっても恐らく初めての
ことだったろう―――シンジを罵倒した事も。
その叫びが涙声であったことに、シンジが気づいたかどうか。

「碇君にだけは…碇君だけは、私が二人目だって……気づいて欲しかったのに!
どうして……」

一転して、二人目はしゃくりあげていた。

涙に歪んだ視界に、そんな彼女を呆然と見つめるシンジの顔。
久々に会った彼を目の前にして、彼女の奥深いところから湧き上がってくる狂おしい激情。
それは瞬きほどのうちにどんどん大きくなって、小さな胸を埋め尽くす。

いま想う事はひとつだけ。

―――碇君と一緒にいたい!

ひとたび想いが爆発してしまえば、それを理性で抑えることはもうできなかった。だから、その想いに身を委ねた。
だから、彼に抱きついた。強く、強く抱きしめた。
93SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:19:42 ID:???
シャツを通して伝わる彼の体温。
思春期の男の子の清清しい汗の匂いがレイを包む。
久しく忘れていたシンジの感触。温もり。
それが今、確かに彼女の腕の中にある。
彼を抱く腕から伝わる体温の暖かさが、彼女の中にまで満ちていく。

レイは、シンジの右手を取った。そのまま、自分の頬に当てる。

暖かかった。記憶にあるままの、シンジの体温を感じる。
暖かい雫がふた筋頬を伝って、シンジの右手も湿らせていく。
94SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:21:52 ID:???
濡れた少女の瞳を凝視したまま固まった彼の胸に、ルビーの瞳を濡らした華奢な影が飛び込んでくる。

―――私が二人目。
―――どうして気づいてくれないの。

ハンマーのように殴りつけたその言葉が、幾度も頭の中で反響する。
少年がその意味を噛み砕いて理解するまでに、わずかの時間が必要だった。

彼の鼻先をくすぐる空の色の柔らかな髪の毛。微かに香る甘い匂い。
確かに覚えがある。懐かしい、この感じ。

――私があなたの綾波レイ。

向かいの座席と窓が占める視界の下半分に、差し込む光を跳ね返す水色の髪の毛。
それがグニャリと歪んだ。
自分が泣いているせいだと気づいたのは、頬を伝う涙の熱さを感じたときだった。
「あ…ああ…あああ」

声と呼べるかどうかも怪しいような、震える息が喉から漏れる。

今、シンジは胸の少女の言葉の意味をようやく理解したのだ。
そしてその言葉に、偽りのないことも。

彼の胸に縋りつく細い体の温かさ、柔らかさ。
そして何より、右手の甲に触れる彼女の頬の温度。
何度も肌を合わせたこの体だ、間違えようがない。
95SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:33:11 ID:???
―――僕の知ってる綾波が、戻ってきた。戻ってきてくれた。

胸を埋めたのは、その想いただ一つだけ。

約束したんだ。一緒に生きようって。

「あ…ああ…綾波だ! 綾波!」

腕に抱きしめた人の名を呼びながら、少年は歓喜にむせぶ。

「碇君! 碇君っ!」

胸の中の少女の感極まって叫んだ声も、歓喜に濡れていた。
固く抱き合った若い二人の彫像は、窓から斜めに差し込む光に包まれて、神々しくさえあった。
そんな二人を、取り残された格好の三人目は険しい眼差しで見つめるだけだ。
両手の拳がぎりりと音を立てて固く握りしめられる。

「碇君……」

幽鬼が地の底から発したような、なんとも陰惨な声が響いた。
二人だけの世界に飛んでいってしまっていたシンジと二人目さえ、ぎょっとしてそちらに
視線を向けなければならなかった程に、退廃きわまる負の感情に塗りたくられた声で。
もう一人の綾波レイの存在を、二人はいっとき失念していたのだった。
96SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:36:36 ID:???
「碇君……どうして……」

恨みと嫉妬だけが塗りこまれた、怨嗟の声が流れる。

「君は……」

「どうして私よりその人を……」

「一体……何人目?」

「信じるの?」

互いに発する問いは見事にすれ違い、噛み合っていない。
しかし互いに、自分が問われた内容は理解できているのだった。

「君が、三人目の綾波なの?」

彼女の問いにあえて答えず、シンジは問うた。
実際その通りなのだろうと半ば確信しつつも、あえて聞いたのだ。

「……違うわ」

すぐに答えが返ってきたのは少し意外だったけれども、予想と正反対の返答。
97SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:37:28 ID:???
「え?」

「二人目は私だと言ったはずよ。
碇君は私を信じられないの? なぜその人の言葉だけを信じるの?」

「え? それは……」

シンジが戸惑うように口ごもる。

彼女を三人目と確信したばかりの彼の確信は、頼りなく揺らぎ始めていた。
それを見て、三人目はまだ脈ありと判断する。
密かに湧き上がる歓喜を外に漏らすまいと抑えつつ、畳み掛けるように続ける。

「確かなことは、碇君にも判らないのね。
どっちが二人目の私か、量りかねているのね。
無理もないわ。私もその人も、姿形は同じだもの。」

「……」

沈黙するシンジを満足そうに見てから、言葉は続く。

「碇君、その人の言葉に騙されては駄目。その人は碇君を欺いているわ。
言ったでしょう、私が二人目よ。」

そう言いつつ胸に手を当てた動作にも、シンジを偽る口調にも、不自然さは微塵もない。
その女の芝居に騙されるなと言う三人目こそ、なかなかの芸達者であった。
98SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:40:21 ID:???
寸分違わず同じ姿をした自分達を、さしものシンジと言えど判別できるはずが
ない―――三人目の読む勝機はそこにあった。
嘘でもそれを貫き通せばいい。そうすることで、嘘も真実になるかも知れない。
どうせシンジはその真偽を判定できないのだから、とにかく嘘を言い通せばいいのである。

だがその場には、それに異議を唱える者が一人だけいたのである。

「嘘を言わないで!」

ぴしゃりとそう言い放ったのは、二人目だ――無論こちらは本物なのだが。
三人目のみならずシンジの視線も、彼女に注がれる。

だが、自分に注がれる絶対零度のルビー色の瞳を動じることもなく、劣らぬ冷たさで見つめ返して、
三人目は静かに問い返す。
ある程度予想もしていた反撃だ。ゆえに驚くことも無い。
ぼろを出さない程度に冷静に対処すればいい。

「嘘?」

わざとらしい問い返しだ。
自分の言葉こそが嘘なのは、自分がよくわかっている。
二人目が、何を言いたいのかも。

「……三人目は、あなたでしょう」

二人目は、毅然と真実を言い放つ。それは三人目にとって、案の定であった。

三人目の答えが返ってくるまでのわずか数秒が、二人目には思いがけず長く感じられた。
じりじりとした数瞬が流れ、そして答えは返ってきた。

「……違うわ」
99SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:41:38 ID:???
「く!……」

両拳を握り締めた二人目の肩が、怒りに小さく震える。
さすがに簡単に嘘を白状するとは思っていなかったが、それにしてもなんたる往生際の悪さか。

この女は、どこまでシラを切りとおそうというのか。
そして、どこまで碇君の心を欺こうというのか!

激情のままに二人目は掴み掛ろうと踏み出す。
しかし動いたのは三人目のほうが速かったのである。


するりと抜き取った制服の赤いリボンが二人目の首に巻きつくや、そのままギリギリと締め上げていく。
三人目がリボンを手にして締めるまでの動作にはいささかの淀みもなく、まさに電光着火の早業。

「三人目は……あなただわ!」

尚も偽りを叫びながら、二人目の首を絞めあげる。
二人目は苦悶に顔をゆがめ、喉元に食い込んでいくリボンを解こうとするが、無駄な抵抗であった。
こうした場合、紐を使って締める側と締められる側では、体勢的に前者が圧倒的に有利なのだ。

それに加えて、両者の体力差もある。
どちらも同じ綾波レイの肉体の持ち主。本来の身体能力も同等の筈ではあるが、長いこと監禁
されていた二人目の体力と筋力は、やはり相当に落ちていたのだ。
100SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:47:41 ID:???
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。

二人目の体から急速に抵抗が失われていくのを感じ、三人目は勝利を確信した。
締め上げていた二人目の体が力を失いぐったりと崩れ落ちるのを、両手に伝わる重みで実感
しつつ、これでとどめと、リボンを引く手に渾身の力を込める。
これで全てが、何もかもが終わる……はずだった。

「やめろおっ!」

その叫びがシンジの声と認識する間もなく、突き飛ばされた三人目は座席に倒れこんだ。
座席のクッションが衝撃を吸収したお陰で怪我は無かったが、憤慨しつつ見上げた視線の先には、
二人目の体を両手で抱き抱えながら肩で荒い息をつくシンジが立っていた。

「碇君……なぜ三人目を助けるの?」

自分に向けられる険しい眼差しを動じもせずに受け止めながら、三人目はなおも偽る。
どうせシンジに見分けられるはずが無いと、たかを括ってもいたのである。

けれども。

「……嘘だ」

返ってきた返事には、一片の迷いも無かった。
101SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 22:50:17 ID:???
「君の言ってることは、嘘だ。君は三人目だ。二人目じゃない。
僕が腕に抱いてるこの綾波が……二人目なんだ。」

そう言いながら眼差しを投げた腕の中の少女は、やっと自由になった呼吸でシンジを見上げた。

嘘を見抜かれた。あまりにあっさりと。

その事に驚愕しながらも、それを容易には認めないだけの気概も、三人目にはまだ残っている。
へまをやらかした心当たりはないし、シンジが自分達を見分ける明白な根拠を持っているとも思えない。
だからきっと、これは何かの間違いだと思った。きっと、シンジの思い込みか何かだと。

だから。

「違うわ。」

そう言って、なおも成りすましてみようとしたけれど。

「違わないさ。」

そう返したシンジの声は決然としていた。
「碇君は何故、そう言えるの? 勘違いしてるだけなのに。」

「勘違いなんかじゃない。上手く言えないけど……わかるんだよ、僕には。
君は三人目だって。二人目なんかじゃ……僕の知ってる綾波じゃないって、わかるんだよ。
ううん……たった今、わかった。」
102SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/17(木) 23:05:46 ID:???
ここまでが、今まで書き溜めてある分の全部です。

前に悩んでることがあると書きましたが、この先の展開のことなのです。
シンジ君には二人目を見分けてもらわないといけないんですが、
見分ける事の出来る理由として何が必要でしょうか?
103名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/17(木) 23:09:11 ID:???
GJ!乙です。

見分ける理由……匂いかなwww。
104名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/17(木) 23:12:12 ID:???
>>102
GJとしか言えんがGJ!!
いや…笑えばいいt(ry
105名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/17(木) 23:23:23 ID:???
>>102
GJ

なんか3人目がちょっと可哀想だ
106名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 00:07:38 ID:???
ところでなんで投稿間隔がまちまちなの?
ときどき10分とか空いてるし。
107名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 00:19:13 ID:???
多分、書きながら順次投下しているか<可能性は低い
アラシの横槍が入るのを嫌っているからか?
108名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:17:49 ID:???
>>102
君は神になれるよ
109名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:20:08 ID:???
久々に来たら凄い投下されてるし。乙!
でもこの話・・・3人目痛いな・・・。
110名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:23:47 ID:???
「君の言ってることは、嘘だ。君は三人目だ。二人目じゃない。
僕が腕に抱いてるこの綾波が……二人目なんだ。」
「違うわ。」
そう言いながら眼差しを投げた腕の中の少女は、やっと自由になった呼吸でシンジを見上げた。
「違うわ。」
嘘を見抜かれた。あまりにあっさりと。
「違うわ。」
その事に驚愕しながらも、それを容易には認めないだけの気概も、三人目にはまだ残っている。
へまをやらかした心当たりはないし、シンジが自分達を見分ける明白な根拠を持っているとも思えない。
だからきっと、これは何かの間違いだと思った。きっと、シンジの思い込みか何かだと。
「違うわ。」
だから。
「違うわ。」
そう言って、なおも成りすましてみようとしたけれど。
「違わないさ。」
「違うわ。」
そう返したシンジの声は決然としていた。
「碇君は何故、そう言えるの? 勘違いしてるだけなのに。」
「違うわ。」
「勘違いなんかじゃない。上手く言えないけど……わかるんだよ、僕には。
君は三人目だって。二人目なんかじゃ……僕の知ってる綾波じゃないって、わかるんだよ。
ううん……たった今、わかった。」
111名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:25:05 ID:???
「え?」
「二人目は私だと言ったはずよ。
碇君は私を信じられないの? なぜその人の言葉だけを信じるの?」
「え? それは……」
シンジが戸惑うように口ごもる。

彼女を三人目と確信したばかりの彼の確信は、頼りなく揺らぎ始めていた。
それを見て、三人目はまだ脈ありと判断する。
密かに湧き上がる歓喜を外に漏らすまいと抑えつつ、畳み掛けるように続ける。

「確かなことは、碇君にも判らないのね。
どっちが二人目の私か、量りかねているのね。
無理もないわ。私もその人も、姿形は同じだもの。」
「え? それは……」

沈黙するシンジを満足そうに見てから、言葉は続く。

「碇君、その人の言葉に騙されては駄目。その人は碇君を欺いているわ。
言ったでしょう、私が二人目よ。」
「違うわ」

そう言いつつ胸に手を当てた動作にも、シンジを偽る口調にも、不自然さは微塵もない。
その女の芝居に騙されるなと言う三人目こそ、なかなかの芸達者であった。
112名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:27:11 ID:???
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
113名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:28:00 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
114名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:30:06 ID:???
それが今、確かに彼女の腕の中にある。
彼を抱く腕から伝わる体温の暖かさが、
シャツを通して伝わる彼の体温。 匂いが
思春期の男の子の清清しい汗の匂いが
久しく忘れていたシンジの感触。温もり。
それが今、確かに彼女の腕の中にある。
彼を抱く腕から伝わる体温の暖かさが、
シャツを通して伝わる彼の体温。 匂いが
思春期の男の子の清清しい汗の匂いが
久しく忘れていたシンジの感触。温もり。
それが今、確かに彼女の腕の中にある。
彼を抱く腕から伝わる体温の暖かさが、
シャツを通して伝わる彼の体温。 匂いが
思春期の男の子の清清しい汗の匂いが
久しく忘れていたシンジの感触。温もり。
それが今、確かに彼女の腕の中にある。
彼を抱く腕から伝わる体温の暖かさが、
シャツを通して伝わる彼の体温。 匂いが
思春期の男の子の清清しい汗の匂いが
久しく忘れていたシンジの感触。温もり。
それが今、確かに彼女の腕の中にある。
彼を抱く腕から伝わる体温の暖かさが、
シャツを通して伝わる彼の体温。 匂いが
思春期の男の子の清清しい汗の匂いが
久しく忘れていたシンジの感触。温もり。
それが今、確かに彼女の腕の中にある。
彼を抱く腕から伝わる体温の暖かさが、
シャツを通して伝わる彼の体温。 匂いが
思春期の男の子の清清しい汗の匂いが
久しく忘れていたシンジの感触。温もり。
それが今、確かに彼女の腕の中にある。
彼を抱く腕から伝わる体温の暖かさが、
115名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:31:22 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当て
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向
シンジがふら        子はまるで亡霊         る方向へと
けれどそ    われ     つの間にか   ようだっ    はていた
そこは、    号機によ    れた都    て生まれ   散った彼は自
彼、碇シ     て「渚    というこ    った場    、散った麗に洗
時を得られれ        切になったで          った影にのだろ
シンジは湖の水際   所で砂浜に腰を下ろし、ゆっ 所で吐きだした。都
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。あ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてし
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖   て、そこにただじっと座りつづ
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞い
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げるこ
しかし、彼は自分の               垂らしたその女性
彼女はシンジに言い             てきたのだろうと思
けれどシンジの保護者          るその人は、座り込
何も言われないことが、 ンジを僅かに安堵させた。何も言
けれどシンジの保護者 あり上司でもあるその人は、座り
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何
116名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:33:11 ID:???
―――僕の知ってる綾波が、戻ってきた。戻ってきてくれた。

―――胸を埋めたのは、その想いただ一つだけ。

―――約束したんだ。一緒に生きようって。
「あ…ああ…綾波だ! 綾波!」
―――腕に抱きしめた人の名を呼びながら、少年は歓喜にむせぶ。
「碇君! 碇君っ!」
―――胸の中の少女の感極まって叫んだ声も、歓喜に濡れていた。

―――固く抱き合った若い二人の彫像は、窓から斜めに差し込む光に包まれて、神々しくさえあった。

―――そんな二人を、取り残された格好の三人目は険しい眼差しで見つめるだけだ。

―――両手の拳がぎりりと音を立てて固く握りしめられる。
「碇君……」
―――幽鬼が地の底から発したような、なんとも陰惨な声が響いた。

―――二人だけの世界に飛んでいってしまっていたシンジと二人目さえ、ぎょっとしてそちらに
―――視線を向けなければならなかった程に、退廃きわまる負の感情に塗りたくられた声で。
―――もう一人の綾波レイの存在を、二人はいっとき失念していたのだった。
117名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:35:35 ID:???
そう思案している間にも電車はどんどん減速している。程なくホームに停車してしまうのを
見て取って、三人目は決断を迫られたことを察した。
とにかく、シンジの注意と視線をホームから逸らすしかない。シンジに何か話題でも振って、
注意を引くのが適当だろうか。
「……んむぅ!?」

とは言え、あまり場違いな話題というのもおかしい。
例えば、もっと近くで空が見えるように運転席のほうに行って見ましょうとでも誘うべきだろうか。
とにかく確実に、シンジの意識を駅のホームから奪う術を選ばなければならない。
「……んむぅ!?」

その心当たりならあった。ここ最近、すっかり体に馴染んだやり方が。
三人目は、意を決した。

「碇君」
「……んむぅ!?」

いきなり抱きつかれた相手の、その桜色の唇で塞がれた口からそんなおかしな声を出して、
シンジは目をぱちくりさせてしまう。
「……んむぅ!?」

数時間前にその体を清めたフローラルのボディソープも混ざった、レイ特有の清涼感のある、
それでいて甘ったるい香りがシンジの鼻をくすぐる。
レイの顔が視界を埋めるほど間近で、綺麗な紅玉の瞳が、びっくりして思わず見開いた
自分の黒瞳を覗きこんでいる。
「……んむぅ!?」

一瞬見とれてしまったその綺麗な紅い瞳の瞼が、キスに酔いしれたようにゆっくり閉じていく。
(綾波……)
「……んむぅ!?」

それに引き込まれるように、シンジも瞼を閉じた。
118名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:37:48 ID:???
「……んむぅ!?」
シンジは困惑していた。
どこかへ姿を消していたレイが部屋に戻ってきて、一緒にこれから電車に乗りましょと言う。
なぜそんなことをと尋ねてはみたが、碇君とデートで乗りたいからだと返されただけ。
結局言われるままに服を来て、シンジは駅に来ていた。

「綾波、どうして電車なんかに?」
「……んむぅ!?」
人気の無いホームで椅子に隣り合って腰掛け、聞いてみる。

「言ったでしょ、デートよ。一緒に乗ってみたいと思って、碇君と。」

言うまでもなく、これは嘘だ。
確かにシンジを伴って乗る必要はあるのだが、それ自体が目的ではない。
一緒に乗って、元いた世界に二人して帰ることが目的である。

「え……でも……」
「……んむぅ!?」
シンジがそれだけ言って答えを口ごもった理由を、三人目のレイは察していた。
当然だ。彼女も同じ電車でこの世界に来たのだから。

「……嫌なの? 電車に乗るのが。」

レイの問いに、男の子にしては細い肩をピクリと反応させてから、

「……うん」
「……んむぅ!?」
シンジは弱々しく頷く。
きっと、あの時の車内の光景がプレイバックされているのだろう。
忘れたくても忘れられない光景だ。
目の前のレイが実は三人目であることを、シンジはまだ知らない。
彼女のほうもまだそれを告げるつもりは無い。告げれば、二人目はどうしたと詰問されるのがオチだ。
119名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:39:53 ID:???
「……んむぅ!?」
寸分違わず同じ姿をした自分達を、さしものシンジと言えど判別できるはずが
ない―――三人目の読む勝機はそこにあった。
嘘でもそれを貫き通せばいい。そうすることで、嘘も真実になるかも知れない。
どうせシンジはその真偽を判定できないのだから、とにかく嘘を言い通せばいいのである。
「……んむぅ!?」
だがその場には、それに異議を唱える者が一人だけいたのである。

「嘘を言わないで!」

ぴしゃりとそう言い放ったのは、二人目だ――無論こちらは本物なのだが。
三人目のみならずシンジの視線も、彼女に注がれる。

だが、自分に注がれる絶対零度のルビー色の瞳を動じることもなく、劣らぬ冷たさで見つめ返して、
三人目は静かに問い返す。
ある程度予想もしていた反撃だ。ゆえに驚くことも無い。
ぼろを出さない程度に冷静に対処すればいい。
「……んむぅ!?」
「嘘?」

わざとらしい問い返しだ。
自分の言葉こそが嘘なのは、自分がよくわかっている。
二人目が、何を言いたいのかも。
「……んむぅ!?」
「……三人目は、あなたでしょう」

二人目は、毅然と真実を言い放つ。それは三人目にとって、案の定であった。

三人目の答えが返ってくるまでのわずか数秒が、二人目には思いがけず長く感じられた。
じりじりとした数瞬が流れ、そして答えは返ってきた。
「……んむぅ!?」
「……違うわ」
120名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:43:00 ID:???
フトコロが、寒い。
心底そう思う。けれども、まだ幼い恋する少女は、それを表現する為の術を知らなかった。
「あ…ああ…綾波だ! 綾波!」
だから―――

「あ…ああ…綾波だ! 綾波!」

不意にかけられたシンジの声に、二人目は我に返った。
なぜだろう、自分を心配そうに見上げるシンジの顔が歪んで見える。

「泣いてるの?」

そう言われて初めて、なんだか腫れぼったい瞼の熱さにも気が付いた。

「え?……あ……」
「あ…ああ…綾波だ! 綾波!」
頬を拭った指は湿っていた。彼女は、気づかないうちに涙を流していたのだった。
拭っても、拭っても、こぼれる雫は止まらない。
「あ…ああ…綾波だ! 綾波!」
「う…く……うぅ……」

しゃくりあげる自分の声を聞きながら、そんな自分が惨めだった。

「あ、綾波…大丈夫? 一体…どうしたのさ?」

シンジが心配して声をかけてくれる。肩に手を置いて、彼女を心配してくれる。
でもその優しさが、今の彼女にはこの上なく辛くて。

今、シンジは彼女を綾波と呼んだ。これまでそうだったように。
けれどその時は、そう呼ばれる存在は自分ただ一人だった。シンジの声は二人目の彼女、
すなわち自分だけに向けられたものだった。
121名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:44:34 ID:???
「……え?」

「私、元いた世界に帰るわ。碇君と二人で。
でもあなたは残るの、ここに。一人さみしく。
わかる? 二人目(セカンド)?」

二人目と呼ばれたレイの顔がこわばる。
それを見るもう一人の顔には、満足そうな嘲笑が浮かんだ。

「……え?」

「私、元いた世界に帰るわ。碇君と二人で。
でもあなたは残るの、ここに。一人さみしく。
わかる? 二人目(セカンド)?」

二人目と呼ばれたレイの顔がこわばる。
それを見るもう一人の顔には、満足そうな嘲笑が浮かんだ。

「……え?」

「私、元いた世界に帰るわ。碇君と二人で。
でもあなたは残るの、ここに。一人さみしく。
わかる? 二人目(セカンド)?」

二人目と呼ばれたレイの顔がこわばる。
それを見るもう一人の顔には、満足そうな嘲笑が浮かんだ。

「……え?」

「私、元いた世界に帰るわ。碇君と二人で。
でもあなたは残るの、ここに。一人さみしく。
わかる? 二人目(セカンド)?」
122名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:46:00 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
123名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 01:48:20 ID:???
「え?」 「言った通りよ。私たちがいるこの世界は、時間というものが無い世界なのかも知れないわ。」
「ちょっと綾波、何言ってるの?」
「推論よ。今まで得られた状況証拠から一番破綻の無い可能性を導き出しただけ。この世界には時間が無い。
だから、時を刻む時計が動かないの。」
「ちょっと綾波、何言ってるの?」
シンジは言葉を継ぐ事が出来なかった。レイの推論があまりに突拍子も無いものに思えたからだ。
それも、安っぽい三流のSF小説にしか出てこないような設定の。
よりにもよって、時間が失われた世界とは!
「この世界って言い方は、つまり……」
「ちょっと綾波、何言ってるの?」
そう前置きしてから、

「つまり綾波は、僕たちのいるここは別の世界で、例えば異次元みたいなものだって言ってるの?」

シンジがそう言葉を続けてレイの言わんとすることを確認すると、その目の前で、レイはこくりと頷いた。
「ちょっと綾波、何言ってるの?」
思わず吹き出すのを、シンジは堪えられなかった。
それほど、レイの意見は途方もない暴論に思えたのである。
124角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 08:56:24 ID:???
>>102
すっごいGJです!面白い!
ダーティな綾波もええなあ。


my投稿作品は…ちょっと今、作戦練り直し中也。
お時間頂けないか、な?
125名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 09:06:18 ID:???
>>124
待っとりま
126角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 11:47:29 ID:???
改行の件なのですが…
無駄な改行は出来るだけ避けようと努力してはいるのですが。

私の書き方では、これ以上改行を潰すことは難しくなりそうです。
何度か実験してみたんですが、違和感ありまくりでした。すみません。

↓から投稿しますので。
127角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 11:48:13 ID:???
僕ははちきれんばかりに膨らんだ買い物袋を片手にミサトさんの部屋のドアを叩いた。
最近では、家事は僕とレイで分担してやっている。
若干14歳にて主夫になるのも、あながち悪いことではないようだ。
暫くするとミサトさんが扉を開けてくれた。

「おっかえりなさい!遅かったわね。」と、ミサトさん。

焼き魚をくわえたペンペンを片腕に抱えている。この時間帯で、缶ビール以外のものを手にしているのは珍しい。

「あ、はい。ちょっとジオフロントに用があったんです。」

「あらそう。レイも今、そこに行ってるわよ。会わなかった?」
彼女の姿は学校が終わってからは見ていない。あいにく入れ違いになってしまったらしい。

「えっと…あとどれくらいで帰ってきそうですか?」

「そうね…二時間くらいかしら。今日は時間がかかると言ってたわ。」

「それなら、後で迎えに行って来ます。前みたいな事がまた無いとも限らないので…。」

「格好良いコト言うわねぇ、シンジ君!」とミサトさんが茶化してきた。「お兄ちゃんみたいにしっかりしてるじゃない!」

「グェッ!」ペンペンもミサトさんの腕の中ではしゃいでいる。

「と…ところで…なんでレイはよくジオフロントに行っているんですか?」
ミサトさんが急に真面目な顔になった。

「定期健診よ。あの子は持病を抱えているからね。
ちょっち厄介なもんだからシンジ君のご両親の勤めている研究所のお世話になっているの。
なにしろ、世界に何人もいない珍しい病気らしいわよ?」
128角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 11:49:38 ID:???
設立から十五年余り、人工進化研究所は人材を活かして当初の目的の他にも研究分野を広げてきた。
新薬の合成や、遺伝病の解明などが専門の部門もある、という話を耳に挟んだことがある。

「それで、今日も研究所に行ってるんですか?」

「ええ。ま、ちなみにお薬を飲み続けている限りは日常生活には全く支障は無いって向こうのお医者さんは言っていたわ。
 そこは心配しなくても大丈夫よ?」と、ミサトさんが僕の顔を覗き込みながら言った。

「わ、分かってますよ。」

「それならいいの。」ミサトさんは急ににっこりした。
「お迎えなんだけどね、シンジ君に頼んじゃおうかな〜。私、もうビール飲んじゃったしィ。」

なんだ、やっぱり飲んでたのか。

「わかりました。それじゃあ先に夕飯作っておきますけれど…
 レイって鶏肉は食べられるんでしたよね?横着して焼き鳥買ってきてしまったんですけれど…」

「ええ。でもレバーとかは駄目。
 焼き鳥のなら食べるんだけどね。ただし、塩焼きの場合に限るわ。」
129角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 11:52:18 ID:???
この第三新東京市は箱根山の外輪山に囲まれた山間の街である。
だから五月の初めにも関わらず今夜はかなり涼しい。というより寒い。

遅いな、と僕は心の中で呟いた。
リニア地上駅改札前のベンチで待つこと一時間。
空になったコーヒーの缶は既に手の中で冷たくなっている。

しゅっ、という空気の抜けるような音を立てながらリニアが駅に滑り込んできた。
車両の窓から一瞬、レイの姿が見えた。学生鞄を抱えて座席から立ち上がるところだ。

「シンジ…?」
車両から降りてきたレイは僕をみつけて驚いたのか、その場に立ち止まった。

「ミサトさんに頼まれて迎えに来たんだ。もう遅いから帰ろう。」

「私を…今日はお姉ちゃんじゃないの…?」と、少し困惑ぎみにレイが言った。

「うん。あ、これ。寒いかな、と思ってさ。」
僕はレイに自動販売機で買ったミルクティを手渡した。

「え…あ…ありがとう…」
レイが小さく言った。

僕は自転車を引きながらレイと並んで夜道を歩いている。毎度の事ながら、僕達二人の間に交わされる言葉は無い。
初めはかなりの居心地悪さを感じたものだが…すっかり慣れてしまった。
レイが僕に話しかけるのは必要に迫られた場合だし、僕がレイに話しかけるときも不要な世間話は避けるようにしている。
それに世間話をしたところで、彼女がついて来れる可能性はゼロなのだ。
130角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 11:53:29 ID:???
>>129

誤)それに世間話をしたところで、彼女がついて来れる可能性はゼロなのだ。
正)それに世間話をしたところで、彼女がついて来られる可能性はゼロなのだ。
                               ↑
   
「ら」抜きスマソ
131角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 11:55:28 ID:???
ちらりと、となりのレイを横目で見た。
学生鞄を両手で提げて、歩きながら夜空を見上げている。

雲一つ無い夜空には、満点の星空とまではいかないまでも無数の星が夜空に散りばめられている。
第三新東京の活動の拠点は主に地下にあり、地上には住宅地程度しかないからだろうか。
人工の光で汚された旧東京の空とは、えらい違いだ。

「ねえ、レイ?」
僕はレイに呼びかけた。

「何?」と、レイが答える。
依然、空を見上げたままだ。

「君は…星が好きなの?」

「…分からない。でも、星空を見ていると、変な感じがするの。」

「綺麗だから?それなら僕と同じだね。」

「いいえ…。星はみんな、隙間も無いほど集まって仲良く輝いているようにみえるわ。」

「うん。」と、僕。

「でも本当は違うの。星と星の間は離れている。想像もつかないほど。そうでしょう?シンジ。」
そう言うとレイは星空から目を逸らした。

耳元でびゅっ、と音を立てながら夜風が僕達の間を吹き抜けた。
頭上では星が静かにまたたいている。

「私とみんなも…同じ…」と、レイが小さく呟いた。
132名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 12:29:18 ID:BupN69XN
102→三人目が自分の消えた瞬間の事を言っていたので、「三人目が消えた瞬間が解るのは三人目しかいない!!」みたいなかんじで良いんじゃない?

と無責任な意見ww
133名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 12:38:15 ID:???
>>131
乙。
134名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 12:38:26 ID:???
  _   ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい! おっぱい!
 ⊂彡
135名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 12:39:24 ID:???
         _、_
      .(;^ω^)\
      | \ / \√|    
      ( ヽ√| ` ̄
      ノ>ノ  ̄
      レレ   ((

さすがの俺でもこれは引くわ
136名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 12:41:09 ID:???
>>102 乙。

冗長で、必然性が判らない文章が多い。

>>70
> (略)本能のどこかが激しく警鐘を鳴らした。
    :(略)
> 意識のどこかが警報を鳴らした。(略)
重複、とか

>>74
> 二人目といたときには感じなかった、間に立ちはだかる見えない壁のようなものをシンジは感じていた。
    :(略)
> それをまざまざと見せられている気がした。
>
> (綾波が……なんだか別の人みたいな感じがする……)
表現してることが同じ、とか

>>88
> 小さな雷に打たれたような気がした。
    :(略)
> 消えたという推論を、自分が勝手に導き出していたにすぎないとも言える。
読者にとってガイシュツ(なぜか(ry、とか。

で、えらくノンビリしているような印象を持つので
「環状線で駅と駅の間が短いんじゃなかったっけ?( >>61 )いつになったら『光』に到達すんの?」
などとチグハグ感が高まる。

>>71 の「三人目の顔がかつて鏡に見た自分の顔と同じ」って描写はすげぇ好き。
# その後、三人目がシンジをあまり「好いて」はいないように見えるのが残念。
137角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 12:54:06 ID:???
#>>131つづき。


ごつん。

何か、鈍い音が聞こえた。
「…っ!」レイが頭を抱えてその場にうずくまる。
見事、電柱と正面衝突、である。

「だ、大丈夫!?」
あの音じゃ、結構痛いだろうな…

「痛い…」と、レイが額をさすりながら立ち上がった。

「だ、だからさ、ちゃんと前を見ないと駄目だよ…?」

レイは微かに頬を赤らめて言った。「そうみたいね…星が散ってるわ…」
そして、薄暗い街灯と星空の下で、レイは恥ずかしげにくすりと笑った。


#今日はこのへんで。
#ああ〜上手く書けないorz
138名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 13:10:12 ID:???
>>102

>>35-51あたりからのセックス関連の描写は何のために入れたの?
必要性を全く感じないんだけれど。黒蛇精のところとか、特に。

まさに蛇足。
139名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 18:32:27 ID:???
ごつん。
何か、鈍い音が聞こえた。
「…っ!」レイが頭を抱えてその場にうずくまる。
見事、電柱と正面衝突、である。
「だ、大丈夫!?」
あの音じゃ、結構痛いだろうな…
「痛い…」と、レイが額をさすりながら立ち上がった。
「だ、だからさ、ちゃんと前を見ないと駄目だよ…?」
レイは微かに頬を赤らめて言った。「そうみたいね…星が散ってるわ…」
そして、薄暗い街灯と星空の下で、レイは恥ずかしげにくすりと笑った。

ごつん。
何か、鈍い音が聞こえた。
「…っ!」レイが頭を抱えてその場にうずくまる。
見事、電柱と正面衝突、である。
「だ、大丈夫!?」
あの音じゃ、結構痛いだろうな…
「痛い…」と、レイが額をさすりながら立ち上がった。
「だ、だからさ、ちゃんと前を見ないと駄目だよ…?」
レイは微かに頬を赤らめて言った。「そうみたいね…星が散ってるわ…」
そして、薄暗い街灯と星空の下で、レイは恥ずかしげにくすりと笑った。
140名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 18:34:28 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
141角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 21:01:59 ID:???
『探査針の中枢神経への打ち込みを開始します。』『拒否反応は確認されていません。』…
赤木ナオコ博士の事務室のスピーカーからはしきりにオペレーターからの連絡が流れてきている。

ナオコ博士は腕を組んで実験の進行具合を現すモニターを凝視している。
博士の十年余りの試行錯誤、それが遂に実を結ぼうとしているのだ。

「赤木博士、お時間です。」
事務室の戸口に伊吹マヤ研究員が現れた。心なしか、堅い表情をしている。

「始まるわね。」
そう言うと、ナオコ博士は机から立ち上がった。
マヤは、ナオコ博士が白衣の下に潜水服を着用しているのを見て取った。

「はい。現時点では、深刻な問題は全く発生していません。」

『接続、20%完了…』『続行して下さい…』

「それでは行きましょう、伊吹さん。」

「はい。」

二人はR-41と赤文字で大きく描かれたリニアシューターに乗り込んだ。最高度機密地区への直通便。
ナオコ博士は白衣のポケットからIDカードを取り出すと、それをコントロール板に差し込んだ。

リニアシューターが音も無く動き出した。
コントロール板の階数表示が目まぐるしく回転してゆく。

30…29…28…

「これで…私達の願いが叶うわね。」ナオコ博士がぽつりと言った。「この瞬間をどれほど待ち望んだことか…」
142角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 21:03:42 ID:???
「でも博士…、私達は…本当にこれで正しいのでしょうか…」
しばらく黙っていたマヤがナオコ博士におずおずと尋ねた。

「私達、科学者は真実を探求することにその存在価値があるのよ。
 見当違いの道徳意識ほど、私達にとって有害なものはないわ。」

「…」

「自分は汚れてしまった、と?」
ナオコ博士が逆に問いかけたが、マヤは返事をすることができなかった。

4…3…2…

『セントラル・ドグマ最深部、中央コントロール室に到着しました。ドアが開きます…』

ゴォッ…

気圧が急激に変化し、リニア・シューターに生暖かい風が吹き込んできた。

ナオコ博士は微かに顔をしかめた。
「全く、何度やっても慣れないわね。これ。」

コントロール・ルームでは何十人もの科学者達が慌しく動き回っている。

「お疲れ様。人工神経節の打ち込みはどう?」

「もう完了します。予定よりも30%以上早い!」
143角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 21:04:54 ID:???
大型モニターの表示が全てグリーンに変わる。
『神経接続、ほぼ完了しました。』『拒絶反応は確認されませんでした。』
『各部門に伝達。第三段階が完了しました。繰り返します。第三段階は完了しました。』

大きな歓声が上がった。科学者達は互いに抱き合って喜んでいる。

「やりましたね、赤木博士!」初老の研究員の一人が後ろの赤木博士を振り返ってねぎらいの言葉をかけた。
「これで人類の歴史が変わりますよ!」

「ええ…。ありがとう、皆さん。でも、まだ気を抜かないでね。」
潤んだ目で周りを見渡すと、一人地面に暗い視線を落としているマヤが視界に入った。
ナオコ博士はそっとマヤに近づいた。

「もう、後戻りは出来ないわよ。」マヤにしか聞こえない小さな声でナオコ博士が言った。
「私達は、もう行くところまで行かなければならないみたいね。」

科学者達の歓声がこだまする中、マヤは独り唇を噛み締めた。
144角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/18(金) 21:06:30 ID:???
#今日はこのへんで。
#なんかレイが出てこない部分のほうが完成度が高いような気がするw
145名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 21:33:09 ID:???
最近は投下がいっぱいあって良いね。
146名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 22:34:37 ID:???
>>144
乙。
147名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/18(金) 23:13:24 ID:???
読み応えありそうな投下量だな
148名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/19(土) 20:00:55 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
149名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/19(土) 20:02:27 ID:???
「……んむぅ!?」
寸分違わず同じ姿をした自分達を、さしものシンジと言えど判別できるはずが
ない―――三人目の読む勝機はそこにあった。
嘘でもそれを貫き通せばいい。そうすることで、嘘も真実になるかも知れない。
どうせシンジはその真偽を判定できないのだから、とにかく嘘を言い通せばいいのである。
「……んむぅ!?」
だがその場には、それに異議を唱える者が一人だけいたのである。

「嘘を言わないで!」

ぴしゃりとそう言い放ったのは、二人目だ――無論こちらは本物なのだが。
三人目のみならずシンジの視線も、彼女に注がれる。

だが、自分に注がれる絶対零度のルビー色の瞳を動じることもなく、劣らぬ冷たさで見つめ返して、
三人目は静かに問い返す。
ある程度予想もしていた反撃だ。ゆえに驚くことも無い。
ぼろを出さない程度に冷静に対処すればいい。
「……んむぅ!?」
「嘘?」

わざとらしい問い返しだ。
自分の言葉こそが嘘なのは、自分がよくわかっている。
二人目が、何を言いたいのかも。
「……んむぅ!?」
「……三人目は、あなたでしょう」

二人目は、毅然と真実を言い放つ。それは三人目にとって、案の定であった。

三人目の答えが返ってくるまでのわずか数秒が、二人目には思いがけず長く感じられた。
じりじりとした数瞬が流れ、そして答えは返ってきた。
「……んむぅ!?」
「……違うわ」
150名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/19(土) 20:04:26 ID:???
そう思案している間にも電車はどんどん減速している。程なくホームに停車してしまうのを
見て取って、三人目は決断を迫られたことを察した。
とにかく、シンジの注意と視線をホームから逸らすしかない。シンジに何か話題でも振って、
注意を引くのが適当だろうか。
「……んむぅ!?」

とは言え、あまり場違いな話題というのもおかしい。
例えば、もっと近くで空が見えるように運転席のほうに行って見ましょうとでも誘うべきだろうか。
とにかく確実に、シンジの意識を駅のホームから奪う術を選ばなければならない。
「……んむぅ!?」

その心当たりならあった。ここ最近、すっかり体に馴染んだやり方が。
三人目は、意を決した。

「碇君」
「……んむぅ!?」

いきなり抱きつかれた相手の、その桜色の唇で塞がれた口からそんなおかしな声を出して、
シンジは目をぱちくりさせてしまう。
「……んむぅ!?」

数時間前にその体を清めたフローラルのボディソープも混ざった、レイ特有の清涼感のある、
それでいて甘ったるい香りがシンジの鼻をくすぐる。
レイの顔が視界を埋めるほど間近で、綺麗な紅玉の瞳が、びっくりして思わず見開いた
自分の黒瞳を覗きこんでいる。
「……んむぅ!?」

一瞬見とれてしまったその綺麗な紅い瞳の瞼が、キスに酔いしれたようにゆっくり閉じていく。
(綾波……)
「……んむぅ!?」

それに引き込まれるように、シンジも瞼を閉じた。
151名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/19(土) 20:05:56 ID:???
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
152名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/19(土) 20:06:49 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
153名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 01:51:09 ID:???
キーンコーンカーンコーン・・・
「レイ〜」
「ん・・・」
「もう授業終わったわよー」
「んん・・・・あ・・・おはよう・・・」
「はい、おはよう。最近よく学校で寝てるわねー・・・寝不足?」
「ん・・・そうね・・・」
「ふーん・・・夜に何かやってんの?」
「えぇ・・・実はマン・・・」
「あ!・・・もしかしてやらしい事?」
「そうね・・・うん、確かに・・・かなりやらしいわね・・・よくわかったわね」
「え・・・マ・・・マジでそんな事を・・・?」
コクリ
「そ・・・そっかー・・・いつの間にレイにそんな相手が・・・」
「・・・?一人でしてるわよ・・・」
「ひ・・・一人で!?じゃ、じゃあすごい道具とか使っちゃうわけ!?」
「・・・?道具は基本的なものしか使わないわ・・・最低紙とペンさえあれば・・・」
「か・・・紙とペンで!?」
(え!?え!?ペ・・・ペンは何となく想像つくけど・・・・・紙!?か・・・紙なんて一体どういう風に使うと・・・)
「・・・興味あるの?」
「え!?(ドキッ!)・・・い・・・いやまぁ・・・その・・・人並みぐらいには・・・」
「じゃあ今日この後教えてあげましょうか?・・・私も一人でやるより二人の方が楽しいし・・・」
「レ・・・レイと二人で!?わ・・・私は割とノーマルというか・・・」
「・・・嫌なの?」
「・・・い・・・嫌というか・・・」
(ドキドキ・・・)
154名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 01:52:12 ID:???
「・・・わかったわ、ただし教えてもらうだけ!それ以上の関係はありえません!(ドキドキ)」
「えぇ、それでいいわよ(複数人でのサークル活動は面倒そうだし・・・・)」
「(あぁ・・・ついに私も大人の階段を・・・)・・・で・・・紙とペンで一体どんな・・・プ・・・プレイをしてるわけ?」
「プレイ・・・?」
「だからその・・・いかなる状況で紙を・・・どう利用して・・・き・・・気持ちよくなるのか・・・」
「・・・?アイディアが浮かんだときにそこに紙がないと始まらないわ・・・」
「ど・・・どういう事?」
「・・・何を言ってるの?紙にはマンガを描くに決まってるじゃない」
「マ・・・マンガ・・・?」
「そう・・・知りたいんでしょ?書き方・・・」
「・・・・・・?(※回想中)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!(/////)」
「?」
「そ、そうよね!そうだったわね!」
「・・・何の話だと思ってたの?」
「マンガよね!もちろん分かってたわ!ってことはレイはエロマンガなんて描いてるのね!いやらしー!!!」
「最初に言ったわ・・・」
「あ!私今日用事があるんだった!!」
「?」
「ゴメンバイバーイ!!」
「・・・・バイバイ(・・・・・描くより先に即売会に誘ってみようかしら・・・)」
155名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 01:58:03 ID:???
帰ってくれ
156名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 02:17:56 ID:???
この流れワラタ
157名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 02:19:12 ID:???
つまんね
158名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 02:35:53 ID:???
>>152
今更だけどどうせなら字繋げてやれよ
159名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 18:21:54 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
160SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/20(日) 20:55:05 ID:???
「……何故? 何故、そうまで言い切ることができるの?」

そう問う声は、わずかに狼狽している―――心なしか、シンジにはそう思えた。
いや、それは、彼だからこそ気付くことの出来た、綾波レイの感情のさざ波だったかも知れない。
彼以外の人間であったなら、いつもと変わらない感情の欠落した声の中に、何の変化も
読み取ることは出来なかっただろう。

このとき、既に三人目は自分の完全な敗北を予感していたのかもしれない。

なんて往生際が悪い女と、自分でも思う。
だが、彼女にも矜持と未練はある。
だから到底認められる敗北ではなかったからこそ、シンジにそう問わずにはいられなかったのだ。
161SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/20(日) 20:57:11 ID:???
「時間……かな。」

「……時間?」

シンジの答えが、彼女が薄々気付いていた通りであったのか、全く予想外のものであったか、
三人目自身にもよくわからなかった。

「うん。今までずっと一緒に過ごしてきた時間。
それが二人目の綾波と、三人目の君とじゃ違うんだ。」

「……説明になってないわ。」

微かに苛立ちを感じさせる口調で、強張った面持ちの三人目はそう言い捨てる。

二人目の綾波レイと接していた時間のほうが自分より長いというのは、事実その通りだろう。それは認める。
しかし目の前のシンジが、その経験を自分達を見分けられる水準にまで昇華しているとは、
彼女にはおよそ納得できなかった。
それが証拠に、二人目を監禁していた間も、シンジは何も気づかず自分と戯れていたではないか。
それを今になって、長く付き合っていたから二人目をばっちり見分けられますなどとは詭弁も甚だしい。
そう言ってやりたかったが、それでは自分が三人目ですと暴露するも同然だ。

ここは冷静にシンジと言葉のキャッチボールを続けてみて、シンジが二人目を見分けられた理由
とやらを聞き出すのが上策だろう。
二人目特有の癖とも言うべき些細な身のこなしや仕草、そういった所でシンジは見分けているのかもしれない。
シンジは二人目と過ごした時間が長いからだと言っていた。おそらく、二人目と暮らすうちに、そういう癖を
見つけたから区別できたという意味なのだろう。
三人目はそう推察した。
162SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/20(日) 20:59:20 ID:???
なら、少し骨は折れるだろうが、元の世界に帰ってからその癖なりを身につけてしまえばいい。
それでシンジは自分達を見分けることが出来なくなる―――そう踏んだのである。
その為には、彼女とシンジが無事に元の世界に戻り、なおかつ、彼女が三人目だと気付かれていない
という条件が両立されていなければいけないが、打算はあった。

どちらにしても二人目が邪魔な存在である事は変わらない。
だから、いずれは消さねばならない。しかも、シンジに気づかれることなく。
しかし、その点についても心配はない。
彼女が手を下すまでもなく、じきに二人目は死亡する。しかも、シンジに知られることなく。
なぜなら―――

一秒にも満たない間に、灰色の脳細胞をフルに稼動してそこまで考える。
見透かされた動揺で揺れていた心にも、余裕が出来てきていた。
そんな折だった。シンジから答えが返って来たのは。

「手かな。」

それは、三人目にとっておよそ想定外の答えだった。

「……手?」

だから、オウム返しのように問い返してしまう。
163SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/20(日) 21:01:47 ID:???
「僕の手を握ってみて。」

その目の前に、シンジの左手が差し出される。
意図がわからず、その手に注いでいた視線をシンジの顔に移す三人目に、なおも念を押すシンジの声が掛かる。

「……握って。」

「……ええ。」

自分も同じ左手で、言われたままに三人目はシンジの手に触れ、そのまま握り締めると、シンジも握り返してきた。

「……」

「……」

左手は握り合ったまま、視線はお互いの瞳を見詰め合ったまま、どちらも声を発しない。
そのまま互いの体温だけを感じる、短いとも長いとも取れる時間が過ぎていく。

「僕の手……どう思う?」

三人目のルビーの瞳を真っ直ぐに見て、先にシンジが口を開く。

「え?」

「綾波は、握った僕の手をどう感じる?」

「それは……」

視線を握ったシンジの手に一旦落としてから、ほんのいっとき逡巡して、三人目は思ったままを告げた。

「碇君の手……とても暖かいわ。」
164SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/20(日) 21:03:08 ID:???
シンジは、そのまま彼女を見つめていたが―――

「僕もそう思うよ。」

そう返したのである。さっきから変わらない、無表情のままで。

「でも、それだけなんだ。」

「えっ!…」

短い叫びを上げて、三人目が目を見開く。
三人目のそんな表情を見るのは、シンジも初めてだったかも知れない。
その一瞬の変化をカメラに収めることが出来たら、知らずに写真を見た者は、雷にでも打たれて硬直した
瞬間の写真とでも思いそうな、そんな顔をしていた。

「僕も、君の手は暖かいと思ったよ。でも、それだけなんだよ。
僕の知ってる二人目の綾波の手は、そんなんじゃない。
だから、判った。この手を握ったときに。
僕の腕の中にいる綾波が、僕の一番大好きな二人目なんだって。」

言われて初めて、三人目は気付いたのだった。
シンジの右手が、腕の中の少女の手をしっかりと握り締めていた事に。
恐らくは、救った二人目の身体を抱き抱えたときから、そうだっただろう事に。
165SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/20(日) 21:05:10 ID:???
「では、二人目の私の手だったら、碇君にはどう感じられるというの?」

何としても、それを知りたかった。
それをモノにできれば、自分は二人目の代わりとしてシンジと添い遂げることが出来る―――
この期に及んでも、三人目はそんな希望を捨ててはいなかったのだ。

「……碇君。」

策を巡らす三人目の耳に、自分と瓜二つの声が聞こえた。
弱々しいけれども、三人目は確かにその声を聞いた。
声は、シンジのすぐ側からした。
知らぬ間に、彼の腕の中で二人目が意識を取り戻していたのである。

シンジの胸元に伸びた華奢な左手を、彼は同じく左手に取る。
そのまま指を絡め合ってから、お互いにぎゅっと握り合う、二人の手。
しっかりと握り締めて、シンジは二人目に語りかけた。

「綾波。君の手を握ってるこの手が……離れたがらないんだ。離したくないんだ、もう。」

「……ええ。」

シンジの腕の中で、その言葉をどんな気持ちで聞いたのか。
二人目の綾波レイは満ち足りた表情で、微かに微笑みながら目を閉じてから小さく頷く。
それはきっと、私もあなたと同じ、と言う意思表示であったのだろう。

それを見届けたシンジの顔にも、負けないくらいに幸せな笑顔が浮かんでいるのを、
三人目は棒立ちのまま見ていることしか出来なかった。
166SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/20(日) 21:07:33 ID:???
「これが、君への答えだよ。」

自失の最中に声をかけられ、三人目は我に返った。シンジと二人目が、揺ぎ無い視線で自分を見据えている。
二人目はもう自分の足で、シンジの傍に立っていた。
ただし、その手はしっかりと繋がれたままだったが。

「僕達だって、最初からこうだったわけじゃないさ。」

シンジの言葉を、二人目が引き継いだ。

「最初碇君の手に触れたときは、私も何も感じなかったわ。
でも、時間をかけて碇君を知るうちに、碇君の手の虜になっていった。
暖かいと感じた次は、嬉しいと感じたの。
嬉しいと感じた次は、胸がドキドキしたわ。」

「そして今は、もう離れたくないんだ、二度と。何があっても、絶対に。」

「……今の私がいる場所は、あなたがとっくの昔に通り過ぎてきた場所、とでも言いたいの? あなたは。」

低く地を這うような声だった。
少し顔を俯かせて、上目遣いで二人目とシンジを見る三人目の口調は、怨嗟の色に塗り固められている。

恋する乙女にとってまさに無情。
臆する風もなく、その素っ気無い一言でもって、彼女の未練を二人目はあっさり切り捨ててのけたのだ。

私は、あなたなんかの手の届かない程に、ずっと遥か先にいるのよと。
碇君の言っていた『時間』とは、そういう事なのよと。
それが碇君と私との、『絆』なのよと。
167SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/20(日) 21:12:29 ID:???
すみません。たぶん今日はここまで。

この前の投下で書き溜めてきたストックを全部吐き出したので、これまでのような長文の
大量投下は無理です。
これからは少しずつ書いては投下していくか、そこそこの量を何日か置きにまとめ投下
するかのどっちかになりそうです。
168名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 21:18:41 ID:???
>>167
169名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 21:20:10 ID:???
今日もいい仕事です
170名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 21:52:26 ID:???
「……何故? 何故、そうまで言い切ることができるの?」
そう問う声は、わずかに狼狽している―――心なしか、シンジにはそう思えた。
いや、それは、彼だからこそ気付くことの出来た、綾波レイの感情のさざ波だったかも知れない。
彼以外の人間であったなら、いつもと変わらない感情の欠落した声の中に、何の変化も
読み取ることは出来なかっただろう。
このとき、既に三人目は自分の完全な敗北を予感していたのかもしれない。
なんて往生際が悪い女と、自分でも思う。
だが、彼女にも矜持と未練はある。
だから到底認められる敗北ではなかったからこそ、シンジにそう問わずにはいられなかったのだ。

「……何故? 何故、そうまで言い切ることができるの?」
そう問う声は、わずかに狼狽している―――心なしか、シンジにはそう思えた。
いや、それは、彼だからこそ気付くことの出来た、綾波レイの感情のさざ波だったかも知れない。
彼以外の人間であったなら、いつもと変わらない感情の欠落した声の中に、何の変化も
読み取ることは出来なかっただろう。
このとき、既に三人目は自分の完全な敗北を予感していたのかもしれない。
なんて往生際が悪い女と、自分でも思う。
だが、彼女にも矜持と未練はある。
だから到底認められる敗北ではなかったからこそ、シンジにそう問わずにはいられなかったのだ。
171名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 21:54:09 ID:???
「時間……かな。かな。」

「……時間?」

シンジの答えが、彼女が薄々気付いていた通りであったのか、全く予想外のものであったか、
三人目自身にもよくわからなかった。

「うん。今までずっと一緒に過ごしてきた時間。
それが二人目の綾波と、三人目の君とじゃ違うんだ。違うんだ。」

「……説明になってないわ。」

微かに苛立ちを感じさせる口調で、強張った面持ちの三人目はそう言い捨てる。

二人目の綾波レイと接していた時間のほうが自分より長いというのは、事実その通りだろう。それは認める。
しかし目の前のシンジが、その経験を自分達を見分けられる水準にまで昇華しているとは、
彼女にはおよそ納得できなかった。
それが証拠に、二人目を監禁していた間も、シンジは何も気づかず自分と戯れていたではないか。
それを今になって、長く付き合っていたから二人目をばっちり見分けられますなどとは詭弁も甚だしい。
そう言ってやりたかったが、それでは自分が三人目ですと暴露するも同然だ。

ここは冷静にシンジと言葉のキャッチボールを続けてみて、シンジが二人目を見分けられた理由
とやらを聞き出すのが上策だろう。
二人目特有の癖とも言うべき些細な身のこなしや仕草、そういった所でシンジは見分けているのかもしれない。
シンジは二人目と過ごした時間が長いからだと言っていた。おそらく、二人目と暮らすうちに、そういう癖を
見つけたから区別できたという意味なのだろう。
三人目はそう推察した。
172名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 21:55:14 ID:???
なら、少し骨は折れるだろうが、元の世界に帰ってからその癖なりを身につけてしまえばいい。
それでシンジは自分達を見分けることが出来なくなる―――そう踏んだのである。
その為には、彼女とシンジが無事に元の世界に戻り、なおかつ、彼女が三人目だと気付かれていない
という条件が両立されていなければいけないが、打算はあった。

どちらにしても二人目が邪魔な存在である事は変わらない。
だから、いずれは消さねばならない。しかも、シンジに気づかれることなく。
しかし、その点についても心配はない。
彼女が手を下すまでもなく、じきに二人目は死亡する。しかも、シンジに知られることなく。
なぜなら―――

一秒にも満たない間に、灰色の脳細胞をフルに稼動してそこまで考える。
見透かされた動揺で揺れていた心にも、余裕が出来てきていた。
そんな折だった。シンジから答えが返って来たのは。

「手かな。かな。」

それは、三人目にとっておよそ想定外の答えだった。

「……手?」

だから、オウム返しのように問い返してしまう。
173名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 21:57:30 ID:???
「僕の○○○を握ってみて。」

その目の前に、シンジの○○○が差し出される。
意図がわからず、その○○○に注いでいた視線をシンジの顔に移す三人目に、なおも念を押すシンジの声が掛かる。

「……握って。」

「……ええ。」

自分も同じ左手で、言われたままに三人目はシンジの○○○に触れ、そのまま握り締めると、シンジも○○返してきた。

「……」

「……」

○○は握り合ったまま、視線はお互いの瞳を見詰め合ったまま、どちらも声を発しない。
そのまま互いの体温だけを感じる、短いとも長いとも取れる時間が過ぎていく。

「僕の○○○……どう思う?」

三人目のピーの瞳を真っ直ぐに見て、先にシンジが口を開く。

「え?」

「綾波は、握った僕の○○○をどう感じる?」

「それは……」

視線を握ったシンジの○○○に一旦落としてから、ほんのいっとき逡巡して、三人目は思ったままを告げた。

「碇君の○○○……とても暖かいわ。」
174名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 22:00:37 ID:???
シンジは、そのまま彼女を見つめていたが―――
「僕もそう思うよ。」
「……んぅ!?」

そう返したのである。さっきから変わらない、無表情のままで。
「……んぅ!?」
「でも、それだけなんだ。」

「えっ!…」

短い叫びを上げて、三人目が目を見開く。
「……んぅ!?」
三人目のそんな表情を見るのは、シンジも初めてだったかも知れない。
その一瞬の変化をカメラに収めることが出来たら、知らずに写真を見た者は、雷にでも打たれて硬直した
瞬間の写真とでも思いそうな、そんな顔をしていた。

「僕も、君の手は暖かいと思ったよ。でも、それだけなんだよ。
僕の知ってる二人目の綾波の手は、そんなんじゃない。
だから、判った。この手を握ったときに。「……んぅ!?」
僕の腕の中にいる綾波が、僕の一番大好きな二人目なんだって。」

言われて初めて、三人目は気付いたのだった。
シンジの右手が、腕の中の少女の手をしっかりと握り締めていた事に。
恐らくは、救った二人目の身体を抱き抱えたときから、そうだっただろう事に。
175名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 22:02:29 ID:???
「では、二人目の私の手だったら、碇君にはどう感じられるというの?」

何としても、それを知りたかった。
それをモノにできれば、自分は二人目の代わりとしてシンジと添い遂げることが出来る―――
この期に及んでも、三人目はそんな希望を捨ててはいなかったのだ。

「……碇君。」

策を巡らす三人目の耳に、自分と瓜二つの声が聞こえた。
弱々しいけれども、三人目は確かにその声を聞いた。
声は、シンジのすぐ側からした。
知らぬ間に、彼の腕の中で二人目が意識を取り戻していたのである。

シンジの胸元に伸びた華奢な左手を、彼は同じく左手に取る。
そのまま指を絡め合ってから、お互いにぎゅっと握り合う、二人の手。
しっかりと握り締めて、シンジは二人目に語りかけた。

「綾波。君の手を握ってるこの手が……離れたがらないんだ。離したくないんだ、もう。」

「……うぇ。」

シンジの腕の中で、その言葉をどんな気持ちで聞いたのか。
二人目の綾波レイは満ち足りた表情で、微かに微笑みながら目を閉じてから小さく頷く。
それはきっと、私もあなたと同じ、と言う意思表示であったのだろう。

それを見届けたシンジの顔にも、負けないくらいに幸せな笑顔が浮かんでいるのを、
三人目は棒立ちのまま見ていることしか出来なかった。
176SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/20(日) 22:05:05 ID:???
コピペ厨はウザいけど、>>173は吹いた

マジ受けるwww
177名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 22:06:06 ID:???
「これが、君への答えだよ。」
「……んぅ!?」
自失の最中に声をかけられ、三人目は我に返った。シンジと二人目が、揺ぎ無い視線で自分を見据えている。
二人目はもう自分の足で、シンジの傍に立っていた。
ただし、その手はしっかりと繋がれたままだったが。

「僕達だって、最初からこうだったわけじゃないさ。」
「……んぅ!?」
シンジの言葉を、二人目が引き継いだ。

「最初碇君の手に触れたときは、私も何も感じなかったわ。
でも、時間をかけて碇君を知るうちに、碇君の手の虜になっていった。
暖かいと感じた次は、嬉しいと感じたの。
嬉しいと感じた次は、胸がドキドキしたわ。」
「……んぅ!?」
「そして今は、もう離れたくないんだ、二度と。何があっても、絶対に。」

「……今の私がいる場所は、あなたがとっくの昔に通り過ぎてきた場所、とでも言いたいの? 某格闘漫画の様に。」

低く地を這うような声だった。
少し顔を俯かせて、上目遣いで二人目とシンジを見る三人目の口調は、怨嗟の色に塗り固められている。
「……んぅ!?」
恋する乙女にとってまさに無情。
臆する風もなく、その素っ気無い一言でもって、彼女の未練を二人目はあっさり切り捨ててのけたのだ。
「……んぅ!?」
私は、あなたなんかの手の届かない程に、ずっと遥か先にいるのよと。
碇君の言っていた『時間』とは、そういう事なのよと。
それが碇君と私との、『祟り』なのよと。
178名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 22:45:40 ID:???
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
179名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 22:47:57 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
180角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/21(月) 07:28:06 ID:A5lUB0An
レイに関する部分が上手く書けない。
ちょっと俺、旅に出て気分切り替えてきます。

てことで、次の投稿は九月の初め?まとめて?

実をいうと、もう最後の章は書き終えています。
だから、途中での中断は心配ないと思いますよ多分。

>>176
www
181角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/21(月) 07:29:58 ID:???
sage忘れスマン。
182角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/21(月) 20:14:14 ID:???
>>143書き直し。


次の瞬間、大型モニターの表示が次々とグリーンに変わっていった。
『神経接続、ほぼ完了しました。』『拒絶反応は確認されませんでした。』
『各部門に伝達。第三段階が完了しました。繰り返します。第三段階は完了しました。』

大きな歓声が上がった。科学者達は互いに抱き合って喜んでいる。

「やりましたね、赤木博士!」初老の研究員の一人が後ろの赤木博士を振り返ってねぎらいの言葉をかけた。
「これで人類の歴史が変わりますよ!」

「ええ…。ありがとう、皆さん。でも、まだ気を抜かないでね。」
潤んだ目で周りを見渡すと、一人地面に暗い視線を落としているマヤが視界に入った。
ナオコ博士はそっとマヤに近づいた。

「もう、後戻りは出来ないわよ。」マヤにしか聞こえない小さな声でナオコ博士が言った。
「私達は、もう行くところまで行かなければならないみたいね。」

科学者達の歓声がこだまする中、マヤは独り唇を噛み締めた。

そして、ガラス張りのコントロール・ルームの遥か下方、
オレンジ色の液体に満たされたプールの底で、巨大な眼球がぎょろりと動いた。
183名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/21(月) 20:42:40 ID:???
とりあえず気楽に頑張れ
184名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/21(月) 23:52:58 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
185名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/22(火) 19:37:21 ID:???
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
186名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/22(火) 21:13:59 ID:???
>>182
乙。荒れ気味だけど気長にのんびり投下待ちしてるよ。
187SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/08/22(火) 21:42:42 ID:???
>>ちょっと俺、旅に出て気分切り替えてきます。

旅行の為にまとまった時間が作れるって、うらやましいです
188名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/22(火) 22:01:13 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
189名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/23(水) 20:10:49 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
190名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/24(木) 00:11:02 ID:???
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
191名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/24(木) 00:12:10 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
192名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/24(木) 21:16:27 ID:???
>>182の作品ってさ、結局、学園モノなの?

でも、南極の大空洞もジオフロントも存在してるでしょ。
それにエヴァっぽいのも出てくるね。

冒頭でアスカが南極に流されてワロタwww
で…レイが飲酒で謹慎処分とは…

193名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/24(木) 22:01:38 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
194名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/25(金) 00:48:04 ID:???
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
意識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
ガクガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
雪のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
頭部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
それによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
195名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/26(土) 00:30:29 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
196名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/26(土) 09:50:47 ID:???
角のケツからうんこがピリッ^^
197名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/27(日) 00:14:52 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
198名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/27(日) 21:26:04 ID:???
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
199名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/28(月) 22:13:38 ID:???
「これが、君への答えだよ。」
「……んぅ!?」
自失の最中に声をかけられ、三人目は我に返った。シンジと二人目が、揺ぎ無い視線で自分を見据えている。
二人目はもう自分の足で、シンジの傍に立っていた。
ただし、その手はしっかりと繋がれたままだったが。

「僕達だって、最初からこうだったわけじゃないさ。」
「……んぅ!?」
シンジの言葉を、二人目が引き継いだ。

「最初碇君の手に触れたときは、私も何も感じなかったわ。
でも、時間をかけて碇君を知るうちに、碇君の手の虜になっていった。
暖かいと感じた次は、嬉しいと感じたの。
嬉しいと感じた次は、胸がドキドキしたわ。」
「……んぅ!?」
「そして今は、もう離れたくないんだ、二度と。何があっても、絶対に。」

「……今の私がいる場所は、あなたがとっくの昔に通り過ぎてきた場所、とでも言いたいの? 某格闘漫画の様に。」

低く地を這うような声だった。
少し顔を俯かせて、上目遣いで二人目とシンジを見る三人目の口調は、怨嗟の色に塗り固められている。
「……んぅ!?」
恋する乙女にとってまさに無情。
臆する風もなく、その素っ気無い一言でもって、彼女の未練を二人目はあっさり切り捨ててのけたのだ。
「……んぅ!?」
私は、あなたなんかの手の届かない程に、ずっと遥か先にいるのよと。
碇君の言っていた『時間』とは、そういう事なのよと。
それが碇君と私との、『祟り』なのよと。
200名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/28(月) 22:15:06 ID:???
「僕の○○○を握ってみて。」

その目の前に、シンジの○○○が差し出される。
意図がわからず、その○○○に注いでいた視線をシンジの顔に移す三人目に、なおも念を押すシンジの声が掛かる。

「……握って。」

「……ええ。」

自分も同じ左手で、言われたままに三人目はシンジの○○○に触れ、そのまま握り締めると、シンジも○○返してきた。

「……」

「……」

○○は握り合ったまま、視線はお互いの瞳を見詰め合ったまま、どちらも声を発しない。
そのまま互いの体温だけを感じる、短いとも長いとも取れる時間が過ぎていく。

「僕の○○○……どう思う?」

三人目のピーの瞳を真っ直ぐに見て、先にシンジが口を開く。

「え?」

「綾波は、握った僕の○○○をどう感じる?」

「それは……」

視線を握ったシンジの○○○に一旦落としてから、ほんのいっとき逡巡して、三人目は思ったままを告げた。

「碇君の○○○……とても暖かいわ。」
201名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/29(火) 18:04:50 ID:???
私怨粘着ワロスwww
202名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/29(火) 19:55:34 ID:???
角氏が村上スレでLRS書いててワロタ
203名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/29(火) 21:16:20 ID:???
ほんとだwちょっと読んでくる
204名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/29(火) 21:40:12 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
205名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/30(水) 20:05:02 ID:???
面白いw
206角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/31(木) 02:30:06 ID:???
>>202
LRSじゃありませんよw
そもそも気分転換で書き始めたんですけどね、気分転換にしては長くなりそうですw
207名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/31(木) 06:39:47 ID:hx7TBsst
角が街中で痴漢行為を働いている模様です
208名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/31(木) 21:40:18 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
209角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:28:48 ID:???
村上スレの作品ですが、まだ余り分量も溜まってないのでここに移植してよろしいですか?
最近投下はなさそうですし。

LRSメインで進めたいとは思いますが、個人的こだわりでそれ以外も多少入れます。
そこは許して下さい。

では↓から。
210角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:32:15 ID:???
―プロローグ@

茶色の落ち葉にどす黒い血が染み込んでゆく。
碇シンジ二等兵は既に立ち上がろうという努力を放棄していた。

人間って体の血の何分の一が無くなったら死んじゃうんだったっけ。
二分の一…いや、三分の一かな?
いずれにしろ、僕にはほとんど時間は残されていないみたいだ。

地面にうつ伏せに倒れたままシンジはそう直感した。
そして、その直感はあながち間違えてはいなかったようだ。

散発的な銃声と飛行機の爆音に混じって、がさっという落ち葉を踏みしめる音がした。
そしてその音は次第に近づいてくる。
ざっ…ざっ…ざっ…

シンジは残った力を振絞って土くれと乾燥した血で汚れた顔を上げた。
口から自然とうめき声が漏れる。

シンジの焦点の合わさらない目にぼうっとした人影が浮かんだ。
その背の高い人影が右手をゆっくりと上げてシンジに向ける。その右手には何かが握られている。

テキ…かな?きっと、僕を殺しにやってきたんだ。もうおしまいだ。
さよなら、父さん。母さん。

シンジはそっと目を閉じた。
211角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:33:53 ID:???
以下の文章は大日本帝国陸軍戦没者名簿より引用されている。


大日本陸軍第一○九特務部隊

識別番号:零零八四二九
第三新東京・帝都第一尋常中学校二年い組。碇シンジ二等兵(消息不明)

紀元二千六百七十六年三月十一日に学徒一斉入隊。
乙種・学徒標準訓練ののち、第一〇九特務部隊に編入される。

紀元二千六百七十六年四月六日より伊豆大島に上陸した敵部隊の迎撃作戦に参加、第二十八学徒小隊に属する。
紀元二千六百七十六年四月九日午前八時過ぎ、波浮港周辺の田園地帯にて敵軍の総攻撃に遭い消息不明となる。

当小隊においての他の戦没者・消息不明者の一覧は以下の通り…。
212角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:34:53 ID:???
―プロローグA

食パンを口にくわえた青い髪の少女が通りを全力疾走している。
「ぐふぅ〜!チッコク遅刻ふぅ〜!初日っから遅刻なんて、超ヤバイって感じかもねェ〜!」

と、突然曲がり角の路地から少年が飛び出してきて、慌ててブレーキをかけるが間に合わず…

「うわっ!」「きゃ〜っ!!」

ガツーン!
213角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:36:33 ID:???
ギィイッ…ギィイッ

何かが軋むような音でシンジは目を覚ました。シンジはどこかカビ臭いベッドの上に寝かされていた。
ベッドがいくつか並ぶ薄暗い部屋の中、錆びた鎖で天井から釣られた石油ランプがオレンジの淡い光を放ちながら揺れている。

確か、僕は通学路で女の子と正面衝突して、それで…
シンジにはそこからの記憶が全く無かった。

僕は多分気絶してしまって…それでここは何処かの病院なのかな…
横になったままシンジはうっすらとそんな事を考えていた。

「すみません…どなたかいらっしゃいますか?」
薄暗い部屋にシンジの間の抜けた声が響いただけだった。他には誰もいないようだ。

シンジは周りを見渡そうとしてベッドから身を起こした途端…
「ぐうっ…!」
シンジは呻きながら再びベッドに倒れこんだ。前触れ無しに脇腹に鈍痛が走ったのだ。
確か、打ち付けたのは頭なのに…

「駄目駄目ェ〜っ!まだ起きちゃ駄目よッ!」
突然ドアが開いて薄暗かった部屋に光が流れ込むと同時に、誰かが慌てて走りこんできた。

「やっと気がついたみたいね!気分はどお?」白衣を着た青い髪の女の子がシンジの顔を覗き込みながら言った。
「まあ、アレほどの怪我で助かるなんて、アンタ本当ににツイてるわよ!」

アレほどの怪我…?助かる…?ツイてる…?
まさか、女の子に轢かれただけでこんなに…!?

「こ…ここは…?」
と、疼いている脇腹の痛みで目を潤ませながらもシンジが呟いた。
214角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:37:59 ID:???

「あ、アタシ?綾波レイ。レイって呼んでね!」

「いや…そうじゃなくって…」

「全く、こんなカビ臭いトコに閉じ込めるなんてゼッタイどうかしてる!
 もう我慢できないわっ!あのオヤジ!今日こそはとっちめてやる!」

女の子、いや綾波レイはそういい残すと猛然と部屋を飛び出して行った。

「あ、待って…」
慌てて手を伸ばそうとしたシンジだが、ガチャンという金属的な音とともに、その手は何かに押しとどめられた。
シンジは傷口を刺激しないようにそっと首を回してその手を視界に入れた。

二対一組になった金属製の輪が右腕に嵌められており、そのもう片方はベッドのパイプに固定されている。

手錠…?
215角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:38:49 ID:???
アメリカ合衆国が世界に誇る大型空母『オーバー・ザ・レインボウ』。
海上数十メートルの高みにある艦橋構造上部の電波塔のてっぺん。

その艦長を一任されているアンブローズ・ハーマンはここが好きだった。
常に心地よい海風が吹き抜けているこの場所は、世界最強と云われる第九太平洋艦隊を一望出来る場所でもある。
艦隊は任務を完全に遂行し、物資補給のためホノルルへと帰投する途上なのだ。

艦の後方を振り返れば水平線の彼方にまで白い航跡が繋がっている。
そしてその航跡の彼方には黒煙を上げている都市群を抱えた日本列島があるのだ…

「艦長、こんなとこにいらっしゃったのですか。」
突然、後ろから声がした。副長のジーン・トリンプルだ。
艦長はゆっくりと振り向いた。

「ああ。暇なときはよくここにいる。」

「彼が目を覚ましたようです。」

「ほう…やっとだな。一応、本国に連絡しておけ。」

「分かりました。それで、本人の召喚と尋問はどうされます?
 まだ立ち上がれる状態ではないそうですが…」

「私から向かおう。午後二時過ぎはどうだ?小娘もそれまでに連れて来い。」
ちなみに、この艦に『小娘』は一人しかいない。
『小娘』はこの艦の中ではかなり顔の通る存在なのだ。

「それで、彼女のことですが、怒り狂ってましたよ。あんなところに怪我人を寝かせるなってね。」
副長は少し面白そうな顔をした。「放っておくとまた殴られますよ。どうされます?艦長。」
216角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:39:59 ID:???
「フン…。」艦長はわずかに口髭を震わせた。
「だが、この船に余計な船室など無いぞ。特に敵軍捕虜に関しては警備の問題がある。」

「通常病室への移送をエサに通訳を頼みますか。ただし、その場合は出入り口に数人の監視をつけます。」

「当たり前だ。万が一逃がしでもしてみろ。私達を含めて1ダースは首が転がる。」

「そうなれば嫌というほど休暇を取れそうですね。」
217角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:42:16 ID:???
―西暦2016年4月9日

碇シンジは目覚めた。

閉じた瞼を通して薄明かりが差し込んでくる。
肺に思いっきり吸い込んだ空気は、どこか消毒薬の匂いがした。

シンジにとってそれは驚きだった。

僕はまだ生きている!
誰かが死にかけていた僕を助けてくれたんだ!

誰かが近くにいるような気配がした。シンジはゆっくりと目を開けた。

黄金色の髪の少女が心配そうにシンジの顔を覗き込んでいた。
「やぁっと起きたの!?全く心配させちゃってさ。バカシンジ!」

「あ…ありがと…」

「全く、あれっくらいで気絶するなんて…ほんっとにあんたらしいわ!
 ホラ、あんたも早く謝りなさいよ!そんなとこに隠れてないでさ。」

カーテンの陰からおずおずと青い髪の少女が現れた。
「ご…ごめんなさい…」
蚊の泣くような声で謝ると小さく鼻をすすりあげた。

何故、謝られるのかシンジにはさっぱり見当がつかなかった。
218角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:44:24 ID:???
「君達が僕を助けてくれたのには本当に感謝してるよ。でも…」
シンジは一瞬口ごもった。「他のみんなは…みんなは生きてるの?みんなはどうなったんだよ!?」

二人の少女、惣流・アスカ・ラングレーと綾波レイは顔を見合わせた。
目の前の碇シンジという少年が強烈な違和感を発散しているのに気がついたのだ。
彼は、絶対に何かが変だ。

「ちょ…ちょっとあんた…何言って…」

「僕だけ…僕だけがこんなとこで寝てるわけにはいかないんだ!僕がいなかったせいでみんなが死んじゃったらどうするんだよ!」
そう叫ぶとシンジは跳ね起きた。毛布がばさりと地面に落ちる。
 
「も、もしかしてアタシのせい?」と、レイが小さく呟いた。
219角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:45:09 ID:???
―皇紀2016年4月15日

唐突にドアが開くとさっきの少女が部屋に入ってきた。
マシンガンで武装した兵士二人と白い軍服に身を包んだ男、医師とみられる女性を連れている。
四人とも外国人のようだ。

軍服の男が兵士達に向かって英語で何か指示を出すと、兵士の手によってベッドに固定されていた手錠が取り外された。
シンジの右手は自由になった。

軍服の男は向かいのベッドに腰掛けるとシンジに英語で何かを話しかけた。

「私は彼らの言っている事を翻訳して伝えるわ。ほんの少しだから…辛抱して。」
レイはそう言うと目を閉じて外人の言ったことを翻訳し始めた。

『ようこそ、オーバー・ザ・レインボウへ。碇シンジ君。楽にしてくれたまえ。
 私はこの艦の艦長を任されているアンブローズ・ハーマンだ。よろしく頼む。』

「はあ…よ、よろしく…」

『時間は限られている。早速要点に移らせてもらおう。
 第一点。君は失血死の危険があるところを我が軍によって命を救われた。
 そして、本艦で治療を受け現在に至っている。』

失血死…?我が軍…?

『第二点。君の立場はアメリカ合衆国海軍の捕虜である。』

「捕虜…ですか…?」
シンジは思わず聞き返した。
220角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:47:05 ID:???
>>219
訂正。

誤)皇紀2016年
正)皇紀2676年
221角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:48:32 ID:???
『ああ。君の身柄は我々が預かっている。
 分かっていると思うが、君の権利は条約で保護されている。これはいいね。』

「何故…何故僕が…捕まらなくてはいけないのですか?僕は何もしていない!」

『先ほど言った通り…』

「何だよ…一体何なんだよ!僕をからかわないでよ!」
薄暗い病室の中にシンジの絶叫が響き、レイが思わず息を呑んだ。

シンジはこれは夢だと信じ込んでいた。わけの分からない夢であると。
夢というものにはどこか漠然さがある。
だが、ここにはその漠然さがない。
脇腹の疼き、カビ臭い、石油ランプの温かみのある光、毛布の質感…
まるで…現実世界そのものだ。

シンジの混乱は限界に達しつつあった。

「動いちゃ駄目よっ!まだ治ってないんだからっ!」
起き上がろうとしたシンジをレイが慌てて押さえ込もうとしたが、シンジは渾身の力でレイを撥ね退けた。
勢いでレイが床に尻餅をつく。

「ここから出して!出してくれよ!」
シンジはベッドから飛び出そうとした。

次の瞬間、これまで部屋の隅でじっとしていた医師が慣れた手つきでシンジの上腕に何かを注射をした。
それと同時にシンジの意識は急速に薄れていった。部屋が霞んでゆく…
 
この時、シンジは気づいた。
これは夢ではな…
222角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:50:33 ID:???
小さな防圧仕様の窓からは日の光が差し込んできている。
明るい船室の壁際にはベッドが設置してあり、シンジが眠らされている。

あの後、軍医がシンジに精神的に安定できる場所を提供するよう艦長を説得したのだ。
ちなみにこの部屋のある廊下は数人の兵士に警護されているが、シンジの手錠は外されている。
レイが必死になって頼み込んだ結果だ。

「ごめんね…本当に…ごめんね…」
シンジがこの部屋に移されてきてから数時間、レイはずっとベッドの前でしゃくりあげていた。
自分を責めていたのだ。

早く彼を自由にしてあげたいばかりに無理をさせてしまった。
彼が落ち着くまで尋問を遅らせるべきだった。
でも…あの時の彼の口調は、単に「錯乱」の一言では説明できないような気がした。
一体、彼に何が起こったというのだろうか…

シンジが小さく呻き、レイは思考を中断させられた。

「ここは大丈夫。落ち着いて…」

「君なら知ってると思うんだ。教えてくれないか?」
目を覚ましたシンジが弱弱しい声でいった。まだ鎮静剤の効果がわずかに残っているのだ。

「ええ。」と、レイは微かに震えた声でいった。

私に出来ることならなんでも…
そうレイは考えていたが、シンジの次の言葉は彼女を驚愕させた。

「この世界は…何だ…?」
223角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:51:29 ID:???
―皇紀2676年4月16日

「なあ、ケンスケ。今度こそ生きて帰れへんかもしれへんな。」鈴原トウジ一等兵がいった。
だが、その言葉には深刻さは全くみうけられない。まるで世間話でもするような口調だ。

「ああ。そうかもな。」ケンスケが同じく軽い感じで返した。
「シンジも死んじまったしな。俺達もそれそろヤキが回る頃だぜ。
…でもトウジ、洞木はいいのかよ。」

「委員長か?アイツは大丈夫や。多分…な。」
そういうトウジの瞳に一瞬だけ暗い影が宿ったのをケンスケは見逃さなかった。

「トウジ…お前だって、死にたくないんだろ?」

「な、何を言うんや…そんなワケ無いわ!アホ!」

「俺だって同じだからさ!トウジだって違うものか!」

二人の少年兵は原っぱに寝そべったまま黙りこんでしまった。
そう。誰だって死ぬのは怖い。

彼らの背後では五機の零戦・改が試験運転に入ったようだ。
零戦・改とは最高の航続距離と最高の運動性能を誇ると言われている機体だ。
ただし、実戦で運用された記録は無い。つまり大本営のプロパガンダに利用されていただけの機体なのだ。

まだ暗い原っぱに軽快なプロペラの音が響き渡る。戦闘機乗りにとってはどこか心をときめかせるような音色だ。
だがこの音色は彼らにとっての葬送曲だ。

「よお、お前たち。そんなトコにいたのか。」
突然、二人の肩が誰かに叩かれた。彼らと同じく焦げ茶色の飛行服に身を包んだ髭面の軍人だ。
224角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:52:57 ID:???
「あ…加地先生…」二人は思わず間の抜けた声を出したが、慌てて立ち上がって草いきれを払い落とすと敬礼をした。
「いいえ…大尉!朝っぱらからご苦労様です!」「今日一日、お世話になります!」

「ああ。今日も世話になる。
 そういえばまだ少し時間があるな。休んでいて構わんよ。」

ケンスケが後ろを振り向くと二人のパイロットがこちらに向かって駆けてくるのが見えた。
同僚パイロットの川西ノボルと田中ジロウだ。岡山から送られて来たらしい。

年齢は彼らよりも少しだけ年上だが少年兵ということには変わりない。
「よろしくお願いします!」「よ、よろしくお願いします!」
二人の顔はかすかに青ざめていた。彼らにとってこれは初の実戦なのだろう。

「ああ。よろしく頼む。」と加地大尉。

プロペラ音がひときわ大きくなる。
「一号機から五号機、ともに準備は万全です!」「いつでも動きます!」
飛行機に取り付いた整備兵が大声を出した。

「ご苦労!」加地大尉はプロペラ音に負けないような大声で礼を言うと少年兵達に向かいなおった。
恐怖と怯えが滲み出ている四つの顔に。

「お前たち、作戦の要領は既に頭に叩き込んであるな。」

「はい!大尉!」

「出撃の時間は迫っているが、その前に少しだけ聞いてくれ。
 戦場で一番初めに死ぬのは生きる努力を放棄した者だ!最後まで諦めるんじゃないぞ。いいな!」
225角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:53:47 ID:???

「はい!」

「もしも命があれば再び地上で逢おうじゃないか!では行こうか。」

加地大尉は心の中で呟いた。
お前たち…許してくれ…

0430時、新湯本臨時飛行場に残った最後の五機は次第に明けゆく空へと飛び立っていった。
再び戻ってくることは無いであろう空へと。
226角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 19:57:19 ID:???
本土上陸作戦が決行されてはや一ヶ月、沖縄は既に連合軍の制圧下となっている。
コバルト爆弾の試作一号が投下され東京も焦土と化し、日本の降伏も時間の問題とされていた…

だが追い詰められた日本軍は思わぬ行動に出た。残った全勢力を一箇所に集中させたのだ。
手始めに、大本営をハコネヤマ外輪山内部にある要塞都市に移設した。
降伏勧告を無視し、連合軍と徹底抗戦する姿勢を明らかにしたのである。

この要塞都市は対空防御も徹底されており、直接攻撃を仕掛けた超高度爆撃機B-29も80%以上が戻らないという有様だ。
日本人はは何か強力な対空兵器を発明したという噂も流れている。

最後の防衛線を突破すべく仕掛けられた連合軍のイズオオシマ攻略作戦。
この島が落ちれば難攻不落のハコネヤマ要塞を上陸部隊で攻撃する足がかりが出来る。
だが、作戦開始から一週間以上経つが未だ戦いは続いている。

旗艦オーバー・ザ・レインボウの艦長には一つ気になる事柄があった。
合衆国大統領の特別機が8日、南太平洋上で消息を絶ったのだ。
南太平洋の島々を制圧している米軍を激励に向かう途上だった。
合衆国海軍はすぐさま通信が途絶した地域に駆けつけたが、残骸の一つも発見することは出来なかった。
今もなお捜索が続いているが今のところ手がかりは全く無い。
つい昨日、駆逐艦部隊の一部も捜索の増援部隊として第九艦隊を離れた。

この件について副長は猛烈に抗議した。
曰く、艦隊の防御力が著しく低下するのを黙ってみている訳にはいかない。
副長は潜水艦に攻撃されることを恐れていたのだ。

戦力を近海に集中させている日本軍には外海にまで戦力を分散させてはいない。
更にまだ数隻の駆逐艦は艦隊に残っており戦力の低下も致命的なレベルではない。
こう考えていた艦長は抗議を完全に跳ね除け、それに副長が噛み付いたのだ。
227角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 20:00:13 ID:???
その影響か、今日の午前中二人の間にはずっと険悪な空気が漂っていた。

「ところで、碇シンジ二等兵の容態はどうだ?意識が戻ったと聞いているが。」
艦長が唐突に話題を変えた。

「あ…はい。彼の容態ですが、まだかなり混乱が続いているようです。
 時間の経過とともに回復するとは思いますが。」

「ちなみに、先方はどう答えている?
 こちら側から呼びかけてもう三日になるが。」

「本国によると、先方からの返答は全く無いそうです。我々の通告は完全に無視されています。」

「まあ当然だな。これで彼はホノルルに到着次第、現地の特設収容所に送られることになる。」

「はい。以後は本国から特命があるまでは、そこで身柄を保護されることになると予想されます。」

これは十分予想されていた事柄だと艦長は思った。
息子が捕虜にとられた程度で、あの男が動揺する筈が無い。
圧倒的不利に陥っているにも関わらず徹底抗戦を続けているような男が。
たった一人の少年兵の身柄ごときで。
228角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 20:03:10 ID:???
果てしなく広がっている雲海に小さな影を落としながら五機の零戦・改と十五機の零戦は編隊を組んで大空を疾走していた。
それぞれの機体の脇腹には大重量爆弾や対艦魚雷が積載重量限界近くまで搭載されている。
先ほど新たに編隊に加わった十五機も、あちらこちらの飛行場から掻き集められてきた機体だ。
搭乗しているパイロットの大半は学徒兵である。この時分、熟練のパイロットなど滅多にいない。

太陽も既に高く昇っており、上空5000mの強烈な日差しが狭いコクピットに差し込んでいる。
加地大尉はゴーグルを外し風防から下を覗き見た。

この雲海の下には、雲がどんよりと垂れ込んだ灰色の海が広がっているのだろう。
奇襲攻撃には絶好のタイミングである。
「天の恵みだな。」加地大尉は小さく呟いた。

目的の海域に到着したようだ。
この雲の下に獲物がいる、と大尉は直感した。

加地大尉は十九機の僚機に最後の無線連絡を入れた。

「全機に通達する。急降下の後、攻撃を開始せよ。攻撃開始。」
加地大尉は無線を切ろうとして、やめた。もう一言だけつけ加える。これが無茶な命令だということは知りながら。
「死ぬんじゃないぞ。お前たち。」

編隊は細い雲の筋を引きながら、次々と雲海への急降下を開始した。
229角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/01(金) 20:06:06 ID:???
「自分は他の世界からやって来ました、なんて信じられるもんですか!
 人を馬鹿にしてんじゃないわッ!」
シンジの病室にレイの怒声が響いた。

レイは悔しかった。

何日も死んだように眠っていたシンジを夜通し看病していた。
自分の疲れも気にならなかった。
そして、彼が目覚めた時など本当に嬉しかった。
それが今はどうだ。ワケの分からないようなコトばかり聞かされるだけだ。
私の気持ちも知らないで!とぼけるのも大概にしなさいっ!

「やっぱりそうだよな…僕だって信じられないよ。」
シンジがそう俯き加減に言った瞬間、レイの平手がシンジの頬を打った。

「馬鹿…大馬鹿ッ!アンタなんか知らない!」

完全に取り乱してしまったレイは泣きながら部屋を飛び出そうとして…戸口で立ち止まった。

小さな丸窓の外から、奇妙な音が聞こえてきたのだ。
何かが空気を切り裂くような…次第に大きくなる…

#今日はここまで。
#内容スカスカのレスが発生してしまいましたが、許して下さい。
#前の作品は、その気になったら再投稿します。
230名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/01(金) 21:06:01 ID:???



















                    ウザイ


                    失せろ








231名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/01(金) 22:37:43 ID:???
>>229

粘着さん宿題は終わりましたか?
232名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/01(金) 22:54:11 ID:???
>>209
で、疑問形で問うている割に、ほとんど間を置かずに投下するのはどうかと思うが?
ざっと読んだ限りでは、それなりに面白そうだけど、ここ向きじゃないとも思うな。
余所でやったのが良いと思うぞ。
233名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/01(金) 23:32:34 ID:???
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
234名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/01(金) 23:33:34 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
235名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/02(土) 21:22:42 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
236名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/04(月) 19:53:00 ID:???
だが作品を選別している余裕は我らには無いぞ?
237SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/09/04(月) 23:58:43 ID:???
ざっと拙作を読み返してみたら、シンジはあの光で元の世界に帰れることを
知らないんだよね・・・展開上これは誤算だったかもしれない。
シンジにも光の秘密を教えるシーンを、どこかに入れなきゃだめなんだな・・・
238名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/05(火) 00:36:07 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
239名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/05(火) 00:37:25 ID:???
「僕の○○○を握ってみて。」

その目の前に、シンジの○○○が差し出される。
意図がわからず、その○○○に注いでいた視線をシンジの顔に移す三人目に、なおも念を押すシンジの声が掛かる。

「……握って。」

「……ええ。」

自分も同じ左手で、言われたままに三人目はシンジの○○○に触れ、そのまま握り締めると、シンジも○○返してきた。

「……」

「……」

○○は握り合ったまま、視線はお互いの瞳を見詰め合ったまま、どちらも声を発しない。
そのまま互いの体温だけを感じる、短いとも長いとも取れる時間が過ぎていく。

「僕の○○○……どう思う?」

三人目のピーの瞳を真っ直ぐに見て、先にシンジが口を開く。

「え?」

「綾波は、握った僕の○○○をどう感じる?」

「それは……」

視線を握ったシンジの○○○に一旦落としてから、ほんのいっとき逡巡して、三人目は思ったままを告げた。

「碇君の○○○……とても暖かいわ。」
240名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/05(火) 04:23:05 ID:???
>>237
お久しぶりだな。
とりあえず待ってます
241名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/05(火) 22:38:01 ID:???
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
242名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/05(火) 22:38:50 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
243名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/06(水) 19:36:54 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
244名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/07(木) 01:46:34 ID:???
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
245名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/07(木) 01:47:30 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
246名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/11(月) 20:45:11 ID:???
247名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/11(月) 20:58:23 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
248名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/11(月) 20:59:15 ID:???
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
249名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/11(月) 21:00:05 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
250名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/11(月) 23:06:14 ID:???
うおスゲエ
荒らしのおかげで保守できてるスレ初めて見た
251名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/11(月) 23:40:26 ID:???
だ、駄文か何か投下した方がいいのかな?
252名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/12(火) 00:37:10 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
253名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/12(火) 00:38:00 ID:???
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
254名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/12(火) 00:38:49 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
255名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/14(木) 00:15:04 ID:???
職人待ち
256名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/14(木) 07:04:56 ID:???
3人もいたのにどこいったんだ
257名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/14(木) 21:12:36 ID:???
無免許で飲酒運転して人を跳ねて逃げて電柱に突っ込んで死んだよ
258名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/16(土) 06:41:08 ID:???
hosyu
259名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/17(日) 02:37:35 ID:???
待ち
260名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/17(日) 23:44:43 ID:???
ろん
261角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/19(火) 18:04:45 ID:???
その…TBSのせいで書く気失せたんですよorz

今更、前作に戻るのもアレだし…
どうしよう。
262名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/19(火) 21:06:48 ID:???
>TBSのせいで

何の話?
263名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/20(水) 00:33:16 ID:???
いいから早く続き書きたまえ
264名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/20(水) 13:24:40 ID:???
>今更、前作に戻るのもアレだし…
別にいいじゃないか。
前作の方の続きを書いておくれ。
265角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/20(水) 21:58:09 ID:???
あと三週間で夏休みという六月の終わりの日曜日。
今日は夏休みの前に立ちはだかる最後にして最大の試練、期末テストの前日でもある。

シンジは、前の学校ではまずまず良い成績をとってはいたものの、今回は余りにも気を抜きすぎていた。
両親がいないという緊張感の欠落が原因だ。
ちなみに、父親に成績表を送ってよこせと要求されている。

ということで、シンジとレイは朝から食卓に教科書を広げながら詰め込みで勉強しているのだ。

レイの傍らにはびっしりと英単語や歴史用語が書き込まれたレポート用紙が山になっている。
一歩も椅子から動くことなく何時間も集中力を持続できるレイは、シンジにとってはある意味で驚異的な存在だった。

明日の一時間目は代数なのだが…今日のレイは一度も数学をやっている気配をみせなかった。
もう夜の九時過ぎである。そろそろ始めなければ危ないのではないだろうか。

気になったシンジは聞いてみる事にした。
「あの…レイ?」

「…何?」と、英語の教科書から目をあげてレイが言った。
教科書には色ペンで単語や文法事項がびっしりと書き込まれている。見るからに優等生の教科書だ。
トウジやらケンスケを始めとする遊び呆けている男子達が試験直前にコピーするから貸してくれと頭を下げているのも分かるような気がする。

「明日、代数あるんだけどさ、勉強しなくて大丈夫?」

「今更やっても無駄だもの。」

「へ…?」

この思い切りの良い性格はトウジ顔負けである。
シンジが驚愕したのは言うまでもない。
266角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/20(水) 22:01:16 ID:???
「あ…でもさ…」

「もういいの。」

「もういいの…って…」

「よくありませんッ!」突然、風呂場からミサトがひょいと顔を出して言った。憤怒の形相だ。
「ねェ、シンちゃん。レイが赤点なんて嫌よね?」

「ハハ…ま、まあ…」

「そこで相談よ!レイに数学を教えてあげてやってくれない?」

「へ…?でも、ミサトさんは先生…」

「だってさ、私も数学苦手だしィ。頼みの綱はシンちゃんしか無いみたいなの。
 お願い!ね?」

「は…はあ…」

「ホラ、アンタも頭下げて頼みなさい!」

「………お願いします。」

ミサトに一喝されたレイは納得のいかない表情のまま、ぺこりと頭を下げた。

悲しい事に、この優柔不断な少年は申し出を断る勇気と度胸を持ち合わせていなかったのだ。
こうして、シンジはレイの選任家庭教師を任せられる事となった。

#改行ユルシテ
267角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/20(水) 22:02:52 ID:???
午前一時半、酔っ払って無造作に床に転がっているミサトを尻目に未だシンジの授業は続いていた。

「えっと…そこのxに数式@を代入すると、xの二次方程式が出来るんじゃないかな…多分…」

「…こう?」
一分後、レイが解答を書きこんだレポート用紙をシンジに手渡した。

「うん…きっと正解…あれ…?
 Aを代入するんだった…ごめん。もう一度やってくれないかな…」

「ええ。」

再び問題に取り組みはじめた時、レイはある事に気がついた。
以前は、苦手で手もつけたくない分野だったのに彼に教えてもらっていると全く苦痛に感じない。
その理由はレイにもなんとなく分かるような気がした。

「…大丈夫?」

「え…ええ。何でもないわ。」

突然シンジが声をかけてきて、レイは現実に引き戻された。考え事をしていたせいで筆が止まっていたのだろう。

傍目に見れば、少しシンジはお節介が過ぎていたかもしれない。
でも、そういうシンジの心遣いの一つ一つがレイには嬉しかった。そしてシンジの一生懸命な姿が。

268角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/20(水) 22:05:58 ID:???
「終わったぁ〜」
そして数十分後、シンジが安堵して声を上げた。
レイが遂に数学の試験範囲と、諦める予定だった数学関連の提出物の全てを終わらせたのだ。
文字通りの一夜漬けである。

「じゃ、寝よっか。お疲れ…ファァ…」

「待って…」
ふらふらと自分の部屋に向かおうとしたシンジを、レイが呼びとどめた。

「あ、うん。どうかした?」

「どうして…私にここまで親切にしてくれるの?」

「へ…?」
予想外の質問に、シンジは間の抜けた声を出した。

「このあいだ、あなたは絡まれていた私を助けてくれたわ。
 それに、毎朝のようにお弁当まで作ってくれるし、帰りが遅くなったら駅まで迎えにまで来てくれる。
 今日は、夜遅くまで私に勉強を教えてくれた…どうして?」

その理由は、シンジにはさっぱり見当がつかなかった。

「ごめん…迷惑だったかな…」

「いいえ…私こそ、あなたの邪魔になってるのかもしれない…あなたが無理して私に構ってくれてるだけかもしれない…そう思って…」
レイの言葉の最後のあたりは、蚊の鳴くような声になっていた。

「そんな訳…」
269角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/20(水) 22:09:06 ID:???

シンジがこの家に来る前、彼女の義理の姉であるミサトが唯一の心を許せる存在だった。
姉以外の他人にどう言われようと、他人がレイの事をどう考えていようとも、レイがそれを気にする事はなかった。

でも、ミサトの言う通り、シンジがこの家に来てからレイは変わってしまった。
レイは、シンジの一挙一動について、一喜一憂している自分に気付いていた。
そしていつのまにか、レイの中で一つの疑問が膨れ上がってきた。

彼は私をどう思っているのだろう?

レイにはそれが不安でたまらなかったのだ。
考えるたびに胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われる。

もしかして、私は彼に嫌われる事を恐れているのかもしれない…
そして、恐らくそれは間違っていないのだろう。

そう。レイは生まれて初めて、他人に嫌われる事を恐れた。



#なんかぐだぐだで…ゴメンナサイ。
#次回の投稿は遅れます。忙しいので。
270名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/21(木) 12:48:19 ID:???
早速の投下乙。
あと諦めがよすぎるレイに萌え。
271名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/21(木) 21:42:32 ID:???
あと三週間で夏休みという六月の終わりの日曜日。
今日は「へ…?」 夏休みの前に立ちはだかる最後にして最大の試練、期末テストの前日でもある。

シンジは、前の学校ではまずまず良い成績をとってはいたものの、今回は余りにも気を抜きすぎていた。
両親がいないという緊張感の欠落が原因だ。
ちなみに、父親に成績表を送ってよこせと要求されている。

ということで、「へ…?」 シンジとレイは朝から食卓に教科書を広げながら詰め込みで勉強しているのだ。

レイの傍らにはびっしりと英単語や歴史用語が書き込まれたレポート用紙が山になっている。
一歩も椅子から動くことなく何時間も集中力を持続できるレイは、シンジにとってはある意味で驚異的な存在だった。

明日の一時間目は「へ…?」 代数なのだが…今日のレイは一度も数学をやっている気配をみせなかった。
もう夜の九時過ぎである。そろそろ始めなければ危ないのではないだろうか。

気になったシンジは聞いてみる事にした。
「あの…レイ?」
「へ…?」
「…何?」と、英語の教科書から目をあげてレイが言った。
教科書には色ペンで単語や文法事項がびっしりと書き込まれている。見るからに優等生の教科書だ。
トウジやらケンスケを始めとする遊び呆けている男子達が試験直前にコピーするから貸してくれと頭を下げているのも分かるような気がする。

「明日、代数あるんだけどさ、勉強しなくて大丈夫?」
「今更やっても無駄だもの。」
「へ…?」

この思い切りの良い性格はトウジ顔負けである。
シンジが驚愕したのは言うまでもな「へ…?」 い。
272名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/21(木) 21:43:29 ID:???
「あ…でもさ…」
「もういいの。」
「へ…?」
「もういいの…って…」

「よくありませんッ!」突然、風呂場からミサトがひょいと顔を出して言った。憤怒の形相だ。
「ねェ、シンちゃん。レイが赤点なんて嫌よね?」
「へ…?」
「ハハ…ま、まあ…」

「そこで相談よ!レイに数学を教えてあげてやってくれない?」
「へ…?」
「へ…?でも、ミサトさんは先生…」

「だってさ、私も数学苦手だしィ。頼みの綱はシンちゃんしか無いみたいなの。
 お願い!ね?」
「へ…?」
「は…はあ…」

「ホラ、アンタも頭下げて頼みなさい!」
「へ…?」
「………お願いします。」

ミサトに一喝されたレイは納得のいかない表情のまま、ぺこりと頭を下げた。

悲しい事に、この優柔不断な少年は申し出を断る勇気と度胸を持ち合わせていなかったのだ。
こうして、シンジはレイの選任家庭教師を任せられる事となった。
273名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/21(木) 21:45:33 ID:???
午前一時半、酔っ払って無造作に床に転がっているミサトを尻目に未だシンジの授業は続いていた。
「えっと…そこのxに数式@を代入すると、xの二次方程式が出来るんじゃないかな…多分…」
「…こう?」
一分後、レイが解答を書きこんだレポート用紙をシンジに手渡した。
「うん…きっと正解…あれ…?
 Aを代入するんだった…ごめん。もう一度やってくれないかな…」
「ええ。」
再び問題に取り組みはじめた時、レイはある事に気がついた。
以前は、苦手で手もつけたくない分野だったのに彼に教えてもらっていると全く苦痛に感じない。
その理由はレイにもなんとなく分かるような気がした。
「…大丈夫?」
「え…ええ。何でもないわ。」
突然シンジが声をかけてきて、レイは現実に引き戻された。考え事をしていたせいで筆が止まっていたのだろう。
傍目に見れば、少しシンジはお節介が過ぎていたかもしれない。
でも、そういうシンジの心遣いの一つ一つがレイには嬉しかった。そしてシンジの一生懸命な姿が。
274名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/21(木) 21:46:45 ID:???
「終わったぁ〜」
そして数十分後、シンジが安堵して声を上げた。
レイが遂に数学の試験範囲と、諦める予定だった数学関連の提出物の全てを終わらせたのだ。
文字通りの一夜漬けである。

「じゃ、寝よっか。お疲れ…ファァ…」

「待って…」 「へ…?」
ふらふらと自分の部屋に向かおうとしたシンジを、レイが呼びとどめた。

「あ、うん。どうかした?」

「どうして…私にここまで親切にしてくれるの?」

「へ…?」 「へ…?」
予想外の質問に、シンジは間の抜けた声を出した。

「このあいだ、あなたは絡まれていた私を助けてくれたわ。
 それに、毎朝のようにお弁当まで作ってくれるし、帰りが遅くなったら駅まで迎えにまで来てくれる。
 今日は、夜遅くまで私に勉強を教えてくれた…どうして?」

その理由は、シンジにはさっぱり見当がつかなかった。
「へ…?」
「ごめん…迷惑だったかな…」

「いいえ…私こそ、あなたの邪魔になってるのかもしれない…あなたが無理して私に構ってくれてるだけかもしれない…そう思って…」
レイの言葉の最後のあたりは、蚊の鳴くような声になっていた。

「そんな訳…」 「へ…?」
275名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/21(木) 21:47:49 ID:???
シンジがこの家に来る前、彼女の義理の姉であるミサトが唯一の心を許せる存在だった。
姉以外の他人にどう言われようと、他人がレイの事をどう考えていようとも、レイがそれを気にする事はなかった。
でも、ミサトの言う通り、シンジがこの家に来てからレイは変わってしまった。
レイは、シンジの一挙一動について、一喜一憂している自分に気付いていた。
そしていつのまにか、レイの中で一つの疑問が膨れ上がってきた。
彼は私をどう思っているのだろう?
レイにはそれが不安でたまらなかったのだ。
考えるたびに胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われる。
もしかして、私は彼に嫌われる事を恐れているのかもしれない…
そして、恐らくそれは間違っていないのだろう。
そう。レイは生まれて初めて、他人に嫌われる事を恐れた。
シンジがこの家に来る前、彼女の義理の姉であるミサトが唯一の心を許せる存在だった。
姉以外の他人にどう言われようと、他人がレイの事をどう考えていようとも、レイがそれを気にする事はなかった。
でも、ミサトの言う通り、シンジがこの家に来てからレイは変わってしまった。
レイは、シンジの一挙一動について、一喜一憂している自分に気付いていた。
そしていつのまにか、レイの中で一つの疑問が膨れ上がってきた。
彼は私をどう思っているのだろう?
レイにはそれが不安でたまらなかったのだ。
考えるたびに胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われる。
もしかして、私は彼に嫌われる事を恐れているのかもしれない…
そして、恐らくそれは間違っていないのだろう。
そう。レイは生まれて初めて、他人に嫌われる事を恐れた。
276名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/21(木) 22:28:21 ID:???
>>269
乙!
277名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/21(木) 22:55:01 ID:???
>>269
乙です。レイって数学できる設定多いけどこういうのもイイね
278名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/22(金) 01:11:09 ID:???
自演乙です
279名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/22(金) 01:33:11 ID:???
>>278
あのさあ、ここに何しに来てる訳?
280名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/22(金) 02:45:56 ID:???
角さんにはがんばって欲しいです。
新劇場版の決まったのでめげずに
書いてくれるとありがたいです。
GJです
281名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/23(土) 17:09:07 ID:9yHhBCvi
282名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/24(日) 13:17:05 ID:???
自演乙です
283名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/25(月) 19:39:56 ID:???
保守。
284名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/26(火) 18:35:08 ID:???
>>279
普通に荒らしだろ。投下しずらい雰囲気作ってるだけ。
以降荒らしは無視の形で。
投下人はきにせず投下汁。
285角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/26(火) 20:06:50 ID:???
>>269書き直し

シンジがこの家に来る前、彼女の義理の姉であるミサトが唯一の心を許せる存在だった。
姉以外の他人にどう言われようと、他人がレイの事をどう考えていようとも、レイがそれを気にする事はなかった。

でも、ミサトの言う通り、シンジがこの家に来てからレイは変わってしまった。
レイは、シンジの一挙一動について、感情が揺れ動いてしまう自分に気付いていた。
そしていつのまにか、レイの中で一つの疑問が膨れ上がっていた。

彼は私をどう思っているのだろう?

レイにはそれが不安でたまらなかったのだ。
考えるたびに胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われる。

もしかして、私は彼に嫌われる事を恐れているのかもしれない…
恐らくそれは間違っていないのだろう。


「そんな事、考えているワケが無いじゃないか。
 もし、嫌だったらとっくにやめてるさ!」

思わず語気を強めてしまったシンジだが、びくりと身体を震わせたレイを見て後から慌てて付け加えた。

「僕だってお世話になってるんだから、これくらい当然じゃないかな。」
「それに…別にミサトさんに『やれ』と言われたからやってるんじゃないよ。」
「やるべき事だって思ったから、やってただけだからさ。」

レイは返事をしなかった。ただ俯いて床をみつめているだけだった。

286角 ◆uTN4HfUPlw :2006/09/26(火) 20:07:46 ID:???
掛け時計が、午前二時を打った。

やっぱし、僕の言葉じゃなんともならないのかな。
僕がいたところで、この一件が解決するとは思えないや…
余計にこじれたりして…

彼女を一人にしてやったほうがいい、と感じた。
明日になったら彼女も落ち着くだろう。

そう考えたシンジだが、もう遅いからおやすみ、と言い残して自分の寝室に三歩進んだところでその足が止まった。

これで本当に正しいのだろうか。
レイの気持ちも考えずに、このまま彼女を放っておいていいのだろうか。

レイの気持ち…そうか。

シンジは後ろで立ち尽くしているレイを振り返った。
気配を感じたレイがゆっくりと顔を上げる。

自分でも少なからず恥ずかしかったが、思い切って言う事にした。

「これくらい僕は気にしないし、レイだって気にする事なんて無いよ。
 だって、もう君と僕は友達だもの。家族みたいなものなんだ。


「だから…君さえよければ…明日また一緒にやろうよ。家庭教師。」
287名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/26(火) 21:30:41 ID:???
シンジがこの家に来る前、彼女の義理の姉であるミサトが唯一の心を許せる存在だった。
姉以外の他人にどう言われようと、他人がレイの事をどう考えていようとも、レイがそれを気にする事はなかった。

でも、シンジがこの家に来る前ミサトの言う通り、シンジがこの家に来てからレイは変わってしまった。
レイは、シンジの一挙一動について、感情が揺れ動いてしまう自分にシンジがこの家に来る前気付いていた。
そしていつのまにか、シンジがこの家に来る前、レイの中でシンジがこの家に来る前一つの疑問が膨れ上がっていた。

シンジがこの家に来る前、彼は私をどう思っているのだろう?

レイにはそれがシンジがこの家に来る前不安でたまらなかったのだ。
考えるたびにシンジがこの家に来る前、胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われる。

もしかして、私はシンジがこの家に来る前、彼に嫌われる事を恐れているのかもしれない…
恐らくそれは間違っていないのだろう。


「そんな事、考えているワケが無いじゃないか。
 もし、嫌だったらとっくにやめてるさ!」

思わず語気を強めてしまったシンジだが、シンジがこの家に来る前、びくりと身体を震わせたレイを見て後から慌てて付け加えた。

「僕だってお世話になってるんだから、これくらい当然じゃないかな。」
「それに…別にミサトさんに『やれ』と言われたからやってるんじゃないよ。」
「やるべき事だって思ったから、やってただけだからさ。」

レイは返事をしなかった。シンジがこの家に来る前、ただ俯いて床をみつめているだけだった。
288名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/26(火) 21:32:22 ID:???
掛け時計が、午前二時を打った。

やっぱし、僕の言葉じゃなんともならないのかな。
僕がいたところで、やっぱし、この一件が解決するとは思えないや…
やっぱし、余計にこじれたりして…

彼女を一人にしてやったほうがやっぱし、いい、と感じた。
明日になったらやっぱし、彼女も落ち着くだろう。

そう考えたシンジだが、やっぱし、もう遅いからおやすみ、と言い残して自分の寝室に三歩進んだところでその足が止まった。

これで本当に正しいのだろうか。
レイの気持ちも考えずに、このまま彼女を放っておいていいのだろうか。

レイの気持ち…やっぱし、そうか。

シンジは後ろで立ち尽くしているレイを振り返った。
気配を感じたレイがゆっくりと顔を上げる。

自分でも少なからず恥ずかしかったが、やっぱし、思い切って言う事にした。

「やっぱし、これくらい僕は気にしないし、レイだって気にする事なんて無いよ。
 だって、もう君と僕は友達だもの。やっぱし、家族みたいなものなんだ。


「だから…君さえよければ…やっぱし、明日また一緒にやろうよ。家庭教師。」
289名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/27(水) 19:59:39 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
290名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/27(水) 21:22:24 ID:???
>>285>>286
書き直し乙。続き待ってるよ。
291名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/27(水) 21:38:53 ID:???
自演乙
292名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/27(水) 23:28:31 ID:???
>>291
自演じゃないし・・・
293名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/29(金) 23:42:27 ID:???
hosyu
294名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/03(火) 00:42:00 ID:???
保守。
295名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/03(火) 01:32:37 ID:???
まだー?
296名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/03(火) 02:28:53 ID:???
職人は小出しにしないでいっぺんに投下したほうが読みやすくて良いと思う
正直荒らしのせいで読みにくい
297名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/03(火) 22:10:05 ID:???
職人というか無職だけどな
298名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/03(火) 22:19:17 ID:???
ま、気長に待ちましょう。
299名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/09(月) 03:09:19 ID:???
300名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/12(木) 22:37:08 ID:???
301名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/14(土) 00:29:11 ID:???
302名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/14(土) 23:41:48 ID:???
303SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/10/16(月) 22:47:21 ID:???
心のどこかでは気付いていたのに気付きたくなかった真実。それが三人目の前に突きつけられる。
それは、そんな瞬間だった。

底無しの無力感だけが流れ込んでくる。
―――我が力、ついに及ばず。

「認めないわ……そんなの……私、認めない……」

握った拳と声を震わせて、気丈にも運命に抗う三人目。
だが、もはや勝敗がはっきり決したことは、誰が見ても明らかであったろう。
両手の拳を握り締めたままで、俯いて足元の床の一点を凝視したまま肩を震わせるしかなす術がない、
その敗残者の姿を見れば。

「……ごめん。」

見ていていたたまれなくなったのか、シンジが声をかける。
シンジの情けに縋るような視線を向けてきた三人目の姿に、彼の胸は痛んだが、それでも自分の気持ちに嘘はつけなかった。

「ごめん……悪いけど、僕のそばにいて欲しいのは君じゃないんだ。」

その言葉を、三人目は身じろぎ一つせずに聞いていた。
けれどその頭の中では、今のシンジの言葉が何度も何度も反響していた。
全身から力が失われていく感覚。膝が崩れてしまいそうで、まだ自分で立っていられるのが奇跡のようだった。
304SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/10/16(月) 22:48:31 ID:???
シンジの言葉を引き継ぐように、二人目の声が続く。

「ごめんなさい。」

それは、謝罪の意味の言葉。懺悔のときに紡ぐ言葉。
けれど、三人目を冷ややかに見据えながら放ったその言葉は、文字通りの謝罪の意味からはあまりに遠く、
敗者を突き放す冷徹な意図が込められている。

いつの世でも、どこの国でも、泥沼の三角関係の果てに意中の男を手にした者は、敗者の女にきっとこんな
口調と視線を向けるのだろう。

―――あなたの負けよ、と。

「碇君は……」

そう言って、二人目はシンジの腕を抱き寄せ、言葉を続ける。

「私と一緒に元の世界に戻るわ。」

そこで驚きの声を上げたのはシンジだ。

「え!? 元の世界に…戻るって?」

彼はまだ、この電車が進む先に待つものを知らないのだ。

唖然とするシンジに、二人目はしっかりと頷いて見せたのである。
それから、自分の知る全てを彼に伝えた。
出来るだけ詳しく、それでいて無駄なく簡潔に。的確に要所を捉えたその説明ぶりは、流石は綾波レイと
感嘆すべきものであった。
305SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/10/16(月) 22:49:52 ID:???
「そんな……」

二人目の話が終わった後、呆然とそれだけ言ってシンジは言葉を失った。

この世で彼が一番の信頼を置く女性の言葉であっても、それを直ちに事実として受け入れるのは難しかったのである。
それだけ荒唐無稽な話であったのだ。

それでも、時間が経てば精神状態も落ち着いて、冷静に考える余裕も出てくる。
彼女の主張は、つまるところ推測を積み重ねただけの憶測にすぎない。推測に推測を重ねて、帰納法的に得た答え
が途方もないものであったという事だ。
まともな人間なら、論理が飛躍しすぎていると誰しもレイを批判するだろう。

しかし導いた結果がどれほど荒唐無稽であれ、彼女の話は一応筋は通っている―――シンジはそうも思うのだ。
常識では到底信じられるような話ではないが、彼女の説を補強する状況証拠ならある。こっちの世界に来てから
固まったまま動かなかった彼の腕時計の針が、この電車に乗った今は確かに時を刻んでいるではないか。
自分も彼女もあの光の中を通ってこの世界にやって来たのだ。ならば、あの中にもう一度飛び込んだその先には、
彼女の言うように、かつて居た世界が広がっているのだろう。

信じてみる価値はあると思った。
もう迷いはなかった。右手を拳に変え、ぎゅっと握り締める。

「綾波、帰ろう。一緒に。」

そう話すシンジの笑顔に、この世界への未練はもう無い。
306SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/10/16(月) 22:53:28 ID:???
二人目を取り戻したシンジにとって、どうしても元の世界に戻らなくてはならない理由があるわけではない。
今までここで楽しく暮らしてきたのだ。
ここには無限に近い食べ物もあるし、二人の仲を邪魔する者もいない。ただ、三人目の存在が想定外だったというだけだ。
むしろ元の世界に戻れば、今までのように二人の交際を続けるのはかえって難しくなることだろう。
綾波レイの出自を考えれば、かのゲンドウが二人の交際を容認する筈もなかった。冬月やリツコはゲンドウ寄り
のポジションを採るだろうことがなんとなく予想できるから望みは薄い。
あるいは保護者のミサトならば、驚きながらも二人の仲に理解を示し、応援してくれるかも知れない。
自分達の味方になってくれる期待が持てるのは、まずミサトだけだと思っていいだろう。
しかし、一番心強い味方になってくれるだろう彼女とて、ゲンドウの意向にどこまで抗えるかは未知数である。
Nervという組織において、ミサトはゲンドウの遥かに下位でしかない。
絶対者たるゲンドウが強権を振るえば、ミサトの首もろとも自分達の仲は物理的に引き裂かれてしまうだろう。

元の世界に戻れば、たぶん間違いなく今より状況は悪化する。
シンジも、無論二人目も、それを知っていたに違いない。
だからこそ、今の言葉にはシンジの尋常ならぬ覚悟が詰まっている。

―――なにがあっても一緒にいるよ、と。

二人目もきっと、それを察したに違いなかった。

「……ええ。」

シンジを見ながら、はにかんで二人目はうれしそうに言葉を返す。

だがシンジの言葉は、それで終わりではなかった。

「そして……君も一緒に帰ろう。三人でさ。」

それは、三人目に向けて投げられた言葉。
揺れる車内に、静かな爆発が生じた瞬間だった。
307SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/10/16(月) 22:55:56 ID:???
今度こそ、驚きの視線が二対、シンジを貫いた。

「碇君……何を……」

呆然と漏れたその声は、どちらの綾波レイの声だっただろうか。

この期に及んでも三人目をいたわる優しさを、碇シンジは持ち合わせていたのだ。そんな少年だからこそ、
二人の綾波レイは揃いも揃って彼に心を奪われたのかも知れない。

「僕は君のそばには居てあげられない。だから、君の気持ちに応える事は出来ない。
それは、本当に悪いと思ってる。ごめんって、謝るしかないよね。」

「……」

「君も、今僕のそばにいる綾波も、どっちも同じ綾波レイだけど……僕にはそう割り切れないんだ……。
だって、どっちも同じ綾波だよなんて言ったら、二人目の綾波にとても失礼だろ?」

黙りこくったまま、両方の綾波レイはその言葉をどう聞いたのか。
なおもシンジの言葉は続く。

「でも、僕は君のことを恨んじゃいない。恨もうとは思わない。
僕の傍には、一番居て欲しい綾波が居る。それだけでいいんだ。
それ以上は何も望まない……だから、君のことも何も恨まない。僕達に君がしたことも許そうと思う。
だから……君も一緒に帰ろ?」

それは、通告だった。
碇シンジにとっての綾波レイは、二人目以外にはありえないという事の。

その上で、シンジは三人目を許すと言っているのだ。
その優しさが、三人目にはかえって痛かった。
二人目がシンジの手に戻ったから、シンジが望みが叶えられたから、自分は情けをかけてもらえただけなのだ。
美しい彫像のように立ち尽くしたまま、まさにこのとき三人目は己の敗北を本当に理解したのである。
308SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/10/16(月) 22:57:25 ID:???
不思議と涙は出なかった。

代わりに彼女の内から漏れ出してきたのは―――笑いだった。

「ククッ…クスクスクス……ウフフ……」

銀鈴が鳴っているような綺麗な笑い声が、車内に満ちていく。
しかし麗しいはずのその声には、その心地よさに引けを取らない毒が感じられる。美しい薔薇には
棘があると言うけれど、もっと退廃的で、致命的な何かが。

こんな状況下でどうして笑えるのか、三人目には自分でも不思議だった。ただ、こみ上げる笑いを
抑えきれない自分がここにいる。
自分の奥底から、何かドス黒いものが湧き上がってくるのがわかる。
それを心のどこかで嫌悪しながらも、三人目はそれに魅せられた。吐き気を催しそうな醜悪さに
嫌悪を感じつつも、甘い麻薬のようなそれに心を委ねてしまうのを抑えることが出来ない。
シンジと二人目の目の前で、三人目は笑い続ける。

ひとしきり笑ってから、

「碇君……何か大切な事を忘れていない?」

そう問いかけた自分は、鏡で見たらきっととても邪悪な目をしていた事だろう。

「……え?」

三人目が何を言っているのか、シンジにはわからなかった。大事なことを忘れている事と言われても、心当たりが無い。

「碇君。あなたが……いえ、私達があの光を通ってこっちの世界に来た時、何をしていたか覚えている?」

「……え?」
309SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/10/16(月) 22:58:43 ID:???
降り注ぐ光は、いよいよ車内にも流れ込んできていた。
窓から斜めに差し込むスポットライトのように車内の空気を切り裂いて、反対側の座席と床を照らす。
三人目はその光を背負って立っていた。
口元に軽く握った右拳を添えたその表情は、シンジの位置からは逆光に薄暗く塗りつぶされてしまってよく見えない。
その中で、シンジを見つめるルビーの色の双眸だけが強い光を放っていた。

問われたままに、シンジは頭を巡らす。こっちの世界に来た時、この電車の中で自分が何をしていたか。

―――自分は、音楽を聴いたりしながらただ座席に座っていた。

それだけだ。
それがどうしたというのか?

それを口にしようとしたシンジの横で、微かに乱れた息遣いが聞こえた。
目をやると、二人目が目を見開いている。
尋常な様子ではなかった。大きく見開かれた紅い瞳が揺れている。乱れる息を抑えようとするかのように、
両手で口を押さえながら。
彼女の白い額に汗が流れるのを、シンジはそのとき初めて見たのである。

「そっちの『私』には、わかったみたいね。」

三人目の声は、実に楽しげだった。
310SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/10/16(月) 22:59:51 ID:???
「まだわからない? 碇君。じゃあ、助け舟を出してあげる。
あなた以外の他の人たちはどうなったの?
何故、あなたは無事だったの?」

「……あ!」

アスカに罵倒されてきた通り、自分は本当に馬鹿だとつくづく思った。

そうだった!
あの光の中を通ったとき、自分は寝ていて意識が無かったのだ!
だから助かったのだ!

ならば、また眠れるか?
あの時のように。


否。

無理な相談だと、自分が一番よくわかっている。
今のこの精神状態では、安らかな眠りに落ちることなどできるわけが無かった。

時間もあまりに少ない―――絶望的なほどに。
さっきまで逆光だったはずの光は今や、三人目を横から照らし、薄ら笑いを浮かべた横顔の陰影を
嫌にハッキリと浮き出させていた。
光は迫っている。

このまま進めば、三人仲良く消滅する以外に道は無かった。
311SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/10/16(月) 23:02:04 ID:???
お久しぶりですね、皆さん。
マブラヴにハマってしまって、筆がさっぱり進みませんwww
312名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/16(月) 23:35:41 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
313名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/16(月) 23:37:01 ID:???
心のどこかでは気付いていたのに気付きたくなかった真実。それが三人目の前に突きつけられる。
それは、そんな瞬間だった。 ―――我が力、ついに及ばず。

底無しの無力感だけが流れ込んでくる。
―――我が力、ついに及ばず。

「認めないわ……そんなの……私、―――我が力、ついに及ばず。認めない……」

握った拳と声を震わせて、気丈にも運命に抗う三人目。
だが、もはや勝敗がはっきり決したことは、誰が見ても明らかであったろう。
両手の拳を握り締めたままで、俯いて足元の床の一点を凝視したまま肩を震わせるしかなす術がない、
その敗残者の姿を見れば。

「……ごめん。―――我が力、ついに及ばず。」

見ていていたたまれなくなったのか、シンジが声をかける。
シンジの情けに縋るような視線を向けてきた三人目の姿に、彼の胸は痛んだが、それでも自分の気持ちに嘘はつけなかった。

「ごめん……―――我が力、ついに及ばず。悪いけど、僕のそばにいて欲しいのは君じゃないんだ。」

その言葉を、三人目は身じろぎ一つせずに聞いていた。
けれどその頭の中では、今のシンジの言葉が何度も何度も反響していた。
全身から力が失われていく感覚。膝が崩れてしまいそうで、まだ自分で立っていられるのが奇跡のようだった。
314名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/16(月) 23:38:12 ID:???
シンジの言葉を引き継ぐように、二人目の声が続く。

「―――我が力、ついに及ばず。ごめんなさい。」

それは、謝罪の意味の言葉。懺悔のときに紡ぐ言葉。
けれど、三人目を冷ややかに見据えながら放ったその言葉は、文字通りの謝罪の意味からはあまりに遠く、
敗者を突き放す冷徹な意図が込められている。

いつの世でも、どこの国でも、泥沼の三角関係の果てに意中の男を手にした者は、敗者の女にきっとこんな
口調と視線を向けるのだろう。

――――――我が力、ついに及ばず。あなたの負けよ、と。

「碇君は―――我が力、ついに及ばず。……」

そう言って、二人目はシンジの腕を抱き寄せ、言葉を続ける。

「―――我が力、ついに及ばず。私と一緒に元の世界に戻るわ。」

そこで驚きの声を上げたのはシンジだ。

「え!? ―――我が力、ついに及ばず。元の世界に…戻るって?」

彼はまだ、この電車が進む先に待つものを知らないのだ。

唖然とするシンジに、二人目はしっかりと頷いて見せたのである。
それから、自分の知る全てを彼に伝えた。
出来るだけ詳しく、それでいて無駄なく簡潔に。的確に要所を捉えたその説明ぶりは、流石は綾波レイと
感嘆すべきものであった。
315名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/16(月) 23:40:19 ID:???
「そんな……―――あなたの負けよ、と。 」

二人目の話が終わった後、呆然とそれだけ言ってシンジは言葉を失った。

この世で彼が一番の信頼を置く女性の言葉であっても、それを直ちに事実として受け入れるのは難しかったのである。
それだけ荒唐無稽な話であったのだ。

それでも、時間が経てば精神状態も落ち着いて、冷静に考える余裕も出てくる。
彼女の主張は、つまるところ推測を積み重ねただけの憶測にすぎない。推測に推測を重ねて、帰納法的に得た答え
が途方もないものであったという事だ。
まともな人間なら、論理が飛躍しすぎていると誰しもレイを批判するだろう。

しかし導いた結果がどれほど荒唐無稽であれ、彼女の話は一応筋は通っている―――あなたの負けよ、と。
常識では到底信じられるような話ではないが、彼女の説を補強する状況証拠ならある。こっちの世界に来てから
固まったまま動かなかった彼の腕時計の針が、この電車に乗った今は確かに時を刻んでいるではないか。
自分も彼女もあの光の中を通ってこの世界にやって来たのだ。ならば、あの中にもう一度飛び込んだその先には、
彼女の言うように、かつて居た世界が広がっているのだろう。

信じてみる価値はあると思った。
もう迷いはなかった。右手を拳に変え、ぎゅっと握り締める。

「綾波、―――あなたの負けよ、と。」

そう話すシンジの笑顔に、この世界への未練はもう無い。
316名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/16(月) 23:44:24 ID:???
二人目を取り戻したシンジにとって、どうしても元の世界に戻らなくてはならない理由があるわけではない。
今までここで楽しく暮らしてきたのだ。 ―――あなたの負けよ、と。
ここには無限に近い食べ物もあるし、二人の仲を邪魔する者もいない。ただ、三人目の存在が想定外だったというだけだ。
むしろ元の世界に戻れば、―――あなたの負けよ、と。今までのように二人の交際を続けるのはかえって難しくなることだろう。
綾波レイの出自を考えれば、かのゲンドウが二人の交際を容認する筈もなかった。冬月やリツコはゲンドウ寄り
のポジションを採るだろうことがなんとなく予想できるから望みは薄い。―――あなたの負けよ、と。
あるいは保護者のミサトならば、―――あなたの負けよ、と。驚きながらも二人の仲に理解を示し、応援してくれるかも知れない。
自分達の味方になってくれる期待が持てるのは、まずミサトだけだと思っていいだろう。
しかし、一番心強い味方になってくれるだろう彼女とて、ゲンドウの意向にどこまで抗えるかは未知数である。
Nervという組織において、―――あなたの負けよ、と。ミサトはゲンドウの遥かに下位でしかない。
絶対者たるゲンドウが強権を振るえば、ミサトの首もろとも自分達の仲は物理的に引き裂かれてしまうだろう。

元の世界に戻れば、たぶん間違いなく今より状況は悪化する。
シンジも、無論二人目も、それを知っていたに違いない。
だからこそ、今の言葉にはシンジの尋常ならぬ覚悟が詰まっている。
―――我が力、ついに及ばず。
―――あなたの負けよ、と。
―――なにがあっても一緒にいるよ、と。
二人目もきっと、それを察したに違いなかった。

「……ええ。」

シンジを見ながら、はにかんで二人目はうれしそうに言葉を返す。

だがシンジの言葉は、それで終わりではなかった。

「ごめん……悪いけど、僕のそばにいて欲しいのは君じゃないんだ。」 」

それは、三人目に向けて投げられた言葉。
揺れる車内に、静かな爆発が生じた瞬間だった。
317名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/16(月) 23:50:31 ID:???
今度こそ、驚きの視線が二対、シンジを貫いた。

「碇君―――あなたの負けよ」

呆然と漏れたその声は、どちらの綾波レイの声だっただろうか。

この期に及んでも敗者を突き放す冷徹な意図を、碇シンジは持ち合わせていたのだ。そんな少年だからこそ、
二人の綾波レイは揃いも揃って彼に心を奪われたのかも知れない。

「ごめん……悪いけど、僕のそばにいて欲しいのは君じゃないんだ。
それは、本当に悪いと思ってる。ごめんって、謝るしかないよね。」

「……」

「君も、今僕のそばにいる綾波も、どっちも同じ綾波レイだけど……僕にはそう割り切れないんだ……。
だって、どっちも同じ綾波だよなんて言ったら、二人目の綾波にとても失礼だろ?」

黙りこくったまま、両方の綾波レイはその言葉をどう聞いたのか。
なおもシンジの言葉は続く。

「でも、僕は君のことを恨んじゃいない。恨もうとは思わない。
僕の傍には、一番居て欲しい綾波が居る。それだけでいいんだ。
それ以上は何も望まない……だから、君のことも何も恨まない。僕達に君がしたことも許そうと思う。
だから……君も一緒に帰ろ?」
認めないわ……そんなの……私、認めない……」
それは、奇跡のようだった。
碇シンジにとっての綾波レイは、二人目以外にはありえないという事の。

その上で、シンジは三人目を許すと言っているのだ。
その優しさが、三人目にはかえって痛かった。
二人目がシンジの手に戻ったから、シンジが望みが叶えられたから、自分は情けをかけてもらえただけなのだ。
美しい彫像のように立ち尽くしたまま、まさにこのとき三人目は己の敗北を本当に理解したのである。
318名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/16(月) 23:57:31 ID:???
不思議と涙は出なかった。

代わりに彼女の内から漏れ出してきたのは―――笑いだった。

「認めないわ……そんなの……私、認めない……」

銀鈴が鳴っているような綺麗な笑い声が、車内に満ちていく。
しかし麗しいはずのその声には、文字通りの謝罪の意味からはあまりに遠く、
敗者を突き放す冷徹な意図が込められている。棘があると言うけれど、もっと退廃的で、致命的な何かが。

こんな状況下でどうして飛躍しすぎているのか、シンジの笑顔には自分でも不思議だった。ただ、こみ上げる笑いを
抑えきれない自分がここにいる。
自分の奥底から、何かドス黒いものが湧き上がってくるのがわかる。もう迷いはなかった。右手を拳に変え、ぎゅっと握り締める。
それを心のどこかで嫌悪しながらも、三人目はそれに魅せられた。吐き気を催しそうな醜悪さに
嫌悪を感じつつも、甘い麻薬のようなそれに心を委ねてしまうのを抑えることが出来ない。
シンジと二人目の目の前で、三人目は驚きながらも二人の仲に理解を示し、応援してくれるかも知れない。

ひとしきり右手を拳に変え、ぎゅっと握り締めてから、

「碇君……何か大切な事を忘れていない?」
シンジを見ながら、はにかんで二人目はうれしそうに言葉を返す。
揺れる車内に、静かな爆発が生じた瞬間だった。

「……え?」
「……ええ。」
三人目が何を言っているのか、シンジにはわからなかった。大事なことを忘れている事と言われても、心当たりが無い。

「碇君……何を……いえ、私達があの光を通ってこっちの世界に来た時、何をしていたか覚えている?」
「……え?」
「……ええ。」
319名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 00:00:58 ID:???
降り注ぐ光は、いよいよ車内にも流れ込んできていた。
窓から斜めに差し込むスポットライトのように車内の空気を切り裂いて、三人目にはかえって痛かった。
三人目はその光を背負って立っていた。
口元に軽く握った右拳を添えたその表情は、シンジの位置からは逆光に薄暗く塗りつぶされてしまってよく見えない。
その中で、シンジを見つめるルビーの色の双眸だけが強い光を放っていた。
「綾波、帰ろう。一緒に。」
問われたままに、シンジは頭ぎゅっと握り締める。こっちの世界に来た時、この電車の中で自分が何をしていたか。

―――我が力、ついに及ばず。

それだけだ。
それがどうしたというのか?

それを口にしようとしたシンジの横で、微かに乱れた息遣いが聞こえた。
目をやると、握った拳と声を震わせて、気丈にも運命に抗う三人目。
尋常な様子ではなかった。大きく見開かれた紅い瞳が揺れている。乱れる息を抑えようとするかのように、
両手で口を押さえながら。
彼女の白い額に汗が流れるのを、シンジはそのとき初めて見たのである。

「私と一緒に元の世界に戻るわ。」

三人目の声は、実に楽しげだった。
320名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 00:05:53 ID:???
「まだわからない? 碇君。じゃあ、助け舟を出してあげる。
あなた以外の他の人たちはどうなったの?
何故、あなたは無事だったの?」
「……ごめん。」
「……あ!」
揺れる車内に、静かな爆発が生じた瞬間だった。
アスカに罵倒されてきた通り、自分は本当に馬鹿だとつくづく思った。

そうだった!
あの光の中を通ったとき、自分は寝ていて意識が無かったのだ!
だから助かったのだ!

ならば、また眠れるか?
あの時のように。

―――あなたの負けよ、と。
否。

無理な相談だと、自分が一番よくわかっている。それでも自分の気持ちに嘘はつけなかった。
今のこの精神状態では、膝が崩れてしまいそうで、まだ自分で立っていられるのが奇跡のようだった。

時間もあまりに少ない―――我が力、ついに及ばず。
さっきまで逆光だったはずの光は今や、三人目を横から照らし、薄ら笑いを浮かべた横顔の陰影を
嫌にハッキリと浮き出させていた。
光は迫っている。あの中にもう一度飛び込んだその先には、彼女の言うように、かつて居た世界が広がっているのだろう。
信じてみる価値はあると思った。
このまま進めば、三人仲良く消滅する以外に道は無かった。
321名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 00:07:06 ID:???
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
いきなり唇に吸い付かれて、レイは驚きの声を上げる。
彼女のファーストキスは今こうして、あまりにもあっけなく奪われたのである。
「好きだよ、綾波」
「ん、んむぅ……い、碇君っ?」
「好きだよ、綾波」
シンジに熱く吸いつかれた唇の間から、レイはどうにかそれだけを訴えるが――
「……んぅ!?」
「好きだよ、綾波」
「……んぅ!?」
その言葉にピクリと反応したレイの動きは、そのまま凍りついてしまう。
「……んぅ!?」
「大好きだよ」
「……んぅ!?」
目を見開いたレイの唇にさっきよりも強く吸い付きながら、シンジは言えないままだった秘めた想いを打ち明けた。
告げるべき人を一度失ったとき、価値を失ったと思った言葉。この先もずっと、告げることは無かったはずの想い。
「……んぅ!?」
「綾波……愛してる!」
「……んぅ!?」
その言葉と共にレイをより強く抱き寄せて、もう一度シンジは彼女の唇に吸い付いた。
レイは拒まなかった。シンジの頭をかき抱いて、彼の求めるままに唇を捧げる。
自爆の時以来の涙が、彼女の白磁の頬を静かに伝っていく。
「……んぅ!?」
求め合う唇に等しく、握り合う二人の手の指もまた絡み合う。
もう二度と離すまいとするように、限りなく熱く。
「……んぅ!?」
これで――6度目。
「……んぅ!?」
6度目に握り合ったレイとシンジの手は今度こそ、その姿がレイの部屋の扉の奥に消えるまで離れなかった。
322名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 00:08:28 ID:???
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。 雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
識と思考がすうっと遠くへ飛んでいくような感覚。その一瞬だけ、二人目は苦悶さえも忘れた。
クガクと揺れていた膝が力を失い、そのまま折れて身体と意識が奈落に沈み込んでいく。
のような白い顔が、たちまちに赤黒く染まる。雪のような白い顔が、たちまちその一瞬だけ、
部に流れ込む動脈血はそのままに、静脈血の流れだけが阻害された結果だ。、たちまち
れによってもたらされた脳内の血圧上昇は、二人目の自我を奪うには十分なものであった。
323名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 00:09:46 ID:???
碇シンジには、どこに行く当てもなかった。碇シンジには、どこに行く当てもなかった。
彼は俯き、ただ機械的に出す足先を見つめ進んでいた。ある方向へと向かっていた。
シンジがふらふらと彷徨う様子はまるで亡霊のようだった。ある方向へと向かっていた。
けれどその心許無い足取りで、いつの間にかある方向へと向かっていた。生まれた湖。
そこは、エヴァ零号機によって失われた都市を抱いて生まれた湖。散った場所でもあっ
彼、碇シンジが初めて「渚カヲル」という少年に出会った場所であり、散った場所でもあ
時を得られれ     ○    切になったであろ    ○    散った影にしか場所で。
シンジは湖の水際     砂浜に腰を下ろし、ゆっ      吐きだした。都市を抱い
空も水面も何もかもが宵闇に蔽われ、今は墨を流したように暗かった。ある方向へ
幾つかあったはずの壊れかけたオブ  すら、シンジの目には影にしか見えない
その場所で動かずに微かな波音だだ  意識を傾ければ、自分の存在すら見失
瓦礫をくぐる風と水音に呑まれ、この  全てを綺麗に洗い流し消えてしまえ
シンジは涙も出ない乾いた瞳を湖  えて、そこにただじっと座りつづけた。
しばらくして、その静寂を破り砂の軋む音をシンジは背中越しに聞いたほう
やがて傍らにまで寄った人影が、足元に座るシンジを見ることなく湖のほう
シンジもまた視線   ることはない。シンジ  た視線を上げることはない
しかし、彼は自分の              に垂らしたその女性が何者
彼女はシンジに言いた           けてきたのだろうと思われた。
けれどシンジの保護者で       もあるその人は、座り込む彼に
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言われ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込む
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も言わ
けれどシンジの保護者であり上司でもあるその人は、座り込
何も言われないことが、シンジを僅かに安堵させた。何も
324名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 00:11:07 ID:???
「僕の○○○を握ってみて。」

その目の前に、シンジの○○○が差し出される。
意図がわからず、その○○○に注いでいた視線をシンジの顔に移す三人目に、なおも念を押すシンジの声が掛かる。

「……握って。」

「……ええ。」

自分も同じ左手で、言われたままに三人目はシンジの○○○に触れ、そのまま握り締めると、シンジも○○返してきた。

「……」

「……」

○○は握り合ったまま、視線はお互いの瞳を見詰め合ったまま、どちらも声を発しない。
そのまま互いの体温だけを感じる、短いとも長いとも取れる時間が過ぎていく。

「僕の○○○……どう思う?」

三人目のピーの瞳を真っ直ぐに見て、先にシンジが口を開く。

「え?」

「綾波は、握った僕の○○○をどう感じる?」

「それは……」

視線を握ったシンジの○○○に一旦落としてから、ほんのいっとき逡巡して、三人目は思ったままを告げた。

「碇君の○○○……とても暖かいわ。」
325名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 00:24:27 ID:???
>>303-311
乙彼!GJ!
遅筆なぞ御気になさらず頑張ってください。
326名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 00:25:57 ID:???
まだ粘着しているよ
気持ち悪い
327名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 00:26:15 ID:???
>>303-311
乙!・・・3人目(´・ω・) カワイソスだな
ギャルゲーにはまるのもいいけど続き書いてくれw
328名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 00:48:52 ID:???
職人さんが戻ってきたー
329名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 01:16:14 ID:???
自演乙
330名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 02:46:54 ID:???
>>312-324
>>329
自演乙
331名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 07:03:46 ID:???
おお、こう来たか。作者さんgjです。粘着なんかには負けないでね。
332名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 13:50:36 ID:???
>>51
>元いた世界であれば、おそらく数ヶ月に値する時間は経過しているはずだ。
今更言うには遅すぎる疑問なんだが、仮に元の世界に戻れたとしても
既にサードインパクトで元の世界は崩壊してるんじゃ…
333名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 20:27:56 ID:???
無職は黙ってろ
334SeventySix ◆DTDSamiQ9U :2006/10/17(火) 20:39:41 ID:???
>>332氏にお答えしときます。そこの所は私の書き方が足らなかったですね。
こっちの世界には時間が無いので時計も動かず、何日経ったかも二人にはわかりません。
しかし、食ったり寝たりしてる二人の体内時計は機能してるわけで、それによれば感覚的に
数ヶ月経ってるのかな、って思えるくらいの時間を過ごしてるって意味です。

尚、こっちの世界と元の世界の時間の経過が一緒であるとは限らないと思ってもらってもいいです。
こっちでの1ヶ月が、元の世界での1ヶ月だとは限らない、みたいな感じ。
ホントはそこまで設定して無かったのですけどね。
335名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 20:58:42 ID:???
映画のパクリだしな
恥知らずとはコイツのことを言うんだろうな
336名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/17(火) 22:52:44 ID:???
>>335
消えろ粘着
>>334
粘着は気にせずどんどん続き投下して下さい
個人的にはどうなるか楽しみなんで
337名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 01:43:38 ID:???
続きキターGJ
338332:2006/10/18(水) 15:19:20 ID:???
>>334
説明に感謝します。
実は『浦島太郎』みたいな結末(結局戻らない方が良かったというオチ)
になるんじゃないかと考えてたもので…
339名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 20:18:56 ID:???
ランゴリアーズ(?)をパクってる人がいると聞いて飛んで来ました
340名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 23:30:05 ID:???
ランゴリアーズ自体知らないので問題無い
341名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/19(木) 01:06:33 ID:???
昔、NHKでも前・後編でやったらしい
原作はスティーブン・キングだっけ?

>>69でそのことについて語られてるね
342名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/19(木) 04:31:17 ID:???
知らないし興味もないので問題無い
343名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/19(木) 21:46:47 ID:???
ま、パクリ野郎には糞しかいないってことだな
344名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/20(金) 21:59:04 ID:???
いいかげん粘着荒らし君がうざいんだ。
345名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/20(金) 23:05:45 ID:???
じゃ、どっか行けば
346名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/21(土) 00:13:30 ID:???
>>345
荒らしがどっか行けばいいんじゃないか?このスレに興味ないんならさ
347名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/22(日) 01:15:48 ID:???
嫌なら来なければいいだけじゃないか?他人を追い出そうとしないでさ
348名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/22(日) 16:28:42 ID:???
これは…苦し紛れな釣りですね
349名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/22(日) 16:32:08 ID:???
そうだな
パクリを無かったことにしたいらしい
無駄なことを
350名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/22(日) 16:52:49 ID:???
またかなり苦し紛れというか強引な釣りしてるけど、この人はなにより、

「レス返すの早い」

いや正直ビックリしました。すごい粘着っぷりですね。

そしてこの人、荒らし方がおすすめスレにいた荒らしと同じ事、このスレに対する粘着っぷり、「粘着」である事は否定しない事などから他カップリング支持者というかアホな事がわかります。

まとめ
オタクなのはいいけど、よそのスレ荒らすような迷惑なオタクにだけはなっちゃいけないよ☆
以降はスルーしようね
351名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/22(日) 19:25:41 ID:???
とりあえず待ち
352名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/22(日) 23:27:04 ID:???
自己紹介乙
353名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/26(木) 16:29:25 ID:???
待ち
354名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/29(日) 21:57:40 ID:???
ほしゅ
355名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/30(月) 23:56:09 ID:???
すっかり錆びれちゃったな
356名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/31(火) 00:40:58 ID:???
元々パクリ野郎が自演してたスレだからね
一人消えれば皆消えるさ
357名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/31(火) 00:54:06 ID:???
ウケケ
粘着
358名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/31(火) 18:09:36 ID:???
粘着キモス
359名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/31(火) 21:57:07 ID:???
ちょっとまってて、今から久し振りになんか書いてみるわ。
投下はいつになるか分からんが。久々に暇になったから、またここに投下したくなってきた。
360名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/31(火) 22:25:41 ID:???
また失業者か……
361名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/31(火) 22:53:25 ID:???
>>359
やたッ(・∀・)マターリ待ってるから是非ともよろしく!!
362名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/31(火) 23:11:54 ID:???
なんか嘘臭いな・・・このスレお馴染みの作家なら、なぜトリップを
出さないんだ?
363名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/01(水) 01:31:41 ID:???
>>359
期待しときます
364名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/01(水) 07:54:02 ID:???
>>360
うん、当たらずとも遠からず。来年の進路が決まってるから、今からちょっと暇なんだわ
>>362
私はお馴染みの作者さんでは無いです。少数派の10って名前でこのスレの2か3に投下した人間です。
トリップはその頃にもないのでつけてません。
365名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/01(水) 14:02:46 ID:???
>少数派の10
ああ、レイが誕生日に結婚をせまるという話の作者さんか。
あの話は酔っ払って子供みたいになってるレイが可愛かった。
366名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/01(水) 22:11:22 ID:???
自演は勘弁な
367名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/01(水) 23:27:44 ID:???
釣りもな
368名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/03(金) 20:22:47 ID:ZlBxDTJa
捕手
369名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/04(土) 00:34:14 ID:???
なんだこのスレ。
エヴァキャラ使ってランゴリアーズの設定で何か書いてみましたってことか?
単なるどっちつかずの劣化版でしかないな。
書いてる人は何考えてんだ?
370名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/05(日) 22:24:00 ID:???
>書いてる人は何考えてんだ?
良く言えば、面白いクロス物を書こうとした。
悪く言えば、単純にパクった。

と言うことだろう。
俺は「ランゴリアーズ」を知らないんで、成功しているのか失敗しているのか
判断がつかないが。
(知っているらしい人の書き込みからすると失敗っぽいな)

だが、「○○の設定でエヴァFFを書いてみました」なんての自体は珍しくもないんだから、
そのことで貶すのは酷だろう。

尤も、隠すつもりがなかったのなら、予め「○○とのクロスです」とか「○○を基にしています」
みたいなことを断っておくべきだったろうが。
371名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/06(月) 00:29:28 ID:???
まあ途中で参考にしているみたいな事は言っていたから
粘着している奴がキモイだけなんだけどね。

作家さんには落ち着いて続きを投下してもらいたいものだ。
372名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/06(月) 03:06:14 ID:???
参考程度じゃないけどね。
パクリがバレたから言い訳してるという感じだし。
書いてる人は今頃になって自分のやってることを恥じてるんだろ。
態々ageないでそっとしておいてやればいいのに。
373名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/06(月) 05:41:57 ID:???
投下を楽しみにしてるヤツのスレなんだよここは。ぱくり云々なら他で愚痴れ。
374名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/06(月) 19:46:29 ID:???
パクリの人以外の投下を楽しみにしてますw
375名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/08(水) 00:12:01 ID:???
ざっと読んでみたけど、パクリ云々を抜かして評価してみた場合ランゴリアーズの
劣化版というより、これは単に刺激の強いLRSで、それ以上でも以下でもないと思う。
普通にLRSを押し出しただけのストーリーだ。

>単なるどっちつかずの劣化版でしかないな

と書かれてるけど、原作のランゴリアーズってそんなに名作なの?
その割には知名度が今一つのように思うのだけど。
376名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/08(水) 18:51:57 ID:???
>>375
発想が逆。
原作があまりにも有名で誰でも「ああ、アレな」と分かるならパクリとは言わない。
無名だからこそパクリと言われる。
もっとも、ランゴリアーズは結構有名だけど。
377名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/09(木) 12:47:15 ID:???
正直、こんな掲示板で文章丸ごとでなく、ただ設定をパクッタだけ
なんてことは腐るほどあると思うんだけど。
そこまで潔癖症なら2ちゃんなんてやるなよ。
家で製本されたちゃんとして小説だけ読めばいいじゃん
378名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/09(木) 22:22:09 ID:???
さすが、平日の昼間にレスする人の言うことは違う。
援護するフリして、腐るほどある量産型の凡作だ、と酷評するとは。
379名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/09(木) 22:28:05 ID:???
>>377
もっとひどいパクリがあるからといって、設定くらいパクっても良いという道理はない。
さらに言うと、ランゴリアーズは、その設定にこそキモがある小説なので、
なんのヒネリもなく丸パクリしているのを見るとさすがに鼻白む。
380名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/09(木) 23:04:20 ID:???
>>377に完全同意
つまらない事でスレ全体の雰囲気を悪くしないでくれよ。
投下人が投下しにくくなるだろうが。
言うほどパクられてるわけでもなし。
381名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/09(木) 23:58:07 ID:???
>>380
パクらなければ雰囲気悪化しなかったのでは?
既に>>69に於いて必要かつ十分な指摘がなされているにもかかわらず、
ここにいたるまで、SeventySix氏の正面からの返答がないことにイラつく。

剽窃と二次創作は全く違う。
盗作は、いやしくも創作者にとって精神の自殺に等しい。
たかが2ちゃん、たかがFFだからと言ってパクリを「つまらない事」と言い切るのはいかがなものか。
382名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 00:41:05 ID:???
>381
パクリパクリと連呼する奴が現れなければ雰囲気悪化しなかったな。

投下されたFFが蔓延すれば話は別だがな。
そんなに気になるんなら作者ないし出版社に報告してみれば?
もしくは削除依頼出すとか。
こんなところで喚いているより余程実のある行為だとおもうけど?

このFFの投下を待っている住人にしてみれば
パクリパクリと喚いている奴は荒らしと同じぐらいウザイだけだしな。

それとも本当に荒らしてみるか?
383名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 01:09:46 ID:???
>>382
> このFFの投下を待っている住人にしてみれば
> パクリパクリと喚いている奴は荒らしと同じぐらいウザイだけだしな。
なぜ、「喚いている奴」とか「ウザイ」とか人格を攻撃する言葉を使う必要がある?
パクリじゃないと思うんなら端的にそう言えばいい。
(まぁ、ID出ないエヴァ板では誰が誰だか分からないので、
 パクリ指摘をしているやつを全部一緒くたにしてしまうのも無理もないけどw)

老婆心ながら言っておくと、
お前のやっていることは逆効果。かえって作者に迷惑がかかる。

実際、エヴァキャラでランゴリアーズするのも面白いと思うし、
SeventySix氏の文章はなかなか巧いと思えばこそ、
>>69の指摘に対してどう答えるかに興味があるわけ。(但し、俺は>>69ではない)
それを、荒らしと同視されるとこっちも感情的になってしまうだろ?
384名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 01:18:55 ID:???
>>383
パクリじゃないんじゃないか?騒ぐほどのものですか?
スレを荒らしてんならやめてくんない?
385名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 01:43:59 ID:???
>>384
だから、なぜ荒らしと決めつけるんだ?ってばw

パクリかそうでないかを外野同士が言い合っても水掛け論にしかならないから、
ここは一つ、SeventySix氏が何らかの見解を示してくれれば丸く収まるんじゃないだろうか。

もちろん、「ランゴリアーズにインスパイアされたのは事実だが説明不足だった」
とか言ってお茶を濁すんじゃなくて、パクリじゃない、とはっきり否定する。
あるいはパクリでしたスミマセンと謝罪する。若しくはパクって何が悪いと開き直る。
そういう風に本人が白黒つけたほうがいい。

つーか、個人的には否定して欲しい。で、今後ランゴリアーズと全く違う展開になって、
良い意味で予想を裏切ってくれることを期待する。
386名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 01:56:18 ID:???
>>385
荒らしてるじゃん実際。くだらない事ばっか喚いてるし。
投下しにくい雰囲気いつも作ってるしさ。可哀想だぞ。
387名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 01:57:40 ID:???
ランゴリアーズなんて俺知らないし別にどうでもいいけ
388名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 02:05:05 ID:???
パクっておいて、それを指摘されると荒らし認定か。
逮捕された万引き犯が通報者を逆恨みするのと似てるな。
スレが荒れる根本的原因はパクッたからだろうに。
389名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 02:10:05 ID:???
>>388
お前が粘着してるからだ。
390名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 02:11:03 ID:???
391名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 02:22:26 ID:???
>>386-387
「くだらない」、「どうでもいい」と思うんなら黙ってろよ。
俺は、たかがFFとはいっても立派な「作品」だと思ってるから、五月蠅く文句言うんだよ。
どうでもいいとか言う方が余程作者が可哀想だろうが。

>>389
いや、粘着してるのが二人いるんだよ。
俺は>>376=>>379=>>381=>>383=>>385。比較的穏健な方なw
もう一人はかなり強硬なようだww

つーか、さっきも書いたけど、パクリか否かは水掛け論。
つまんないのでヤメにしようや。>>386の言うとおり投下しにくくなるしな。
もし、SeventySix氏が投下続けるんなら、一言コメントしてからにして欲しい。
それだけ。
392名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 02:59:09 ID:???
>>391
だからそういうのは他でやれっての。
393名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 03:02:04 ID:???
作者を追い詰めるような事して楽しいのか?
俺みたいに投下を待ってる奴もいるんだから少しは考慮しろよ
ここで喚くな
394名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 03:09:20 ID:???
>>393
だから、喚いてないだろ。
なんで無意味に煽るんだよ。頭悪いのか?
395名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 03:15:45 ID:???
>>394
頼むから消えてくれ
396名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 03:21:23 ID:???
>>395
お前もな
397名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 03:24:26 ID:???
>>395-396
だから、逆効果だっつーの。消えろと言われたらムカついて余計粘着するのが人情だろうが。
いいこと考えた。一緒に消えようw

やっぱ、SeventySix氏が一言コメントするのが一番丸く収まると思うよ。
398名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 14:48:45 ID:???
ランゴリアーズとパクリでNG登録しますた
399名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 14:59:47 ID:???
なんか、「いかかがなものか」とかに朝日臭を感じてしまった俺。
主張の仕方とかがあまり理性で話そうとしない左翼の人に似ている。
すぐに「おれはなっとくしない」とか「君の言葉は感情を煽る」だの
他人がそれを聞いてポカーンとしてるの理解できてないのなら、
君は恐らく人と話す時に相手の顔をあまり見ようとしないんだろうね。
相手と話しててこんなこといわれたら普通は呆気に取られた顔をするから、自分の発言の
レベルに気付き、恥じ、直そうとする物だからね。
400名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 15:05:29 ID:???
( ´,_ゝ`)プッ
401名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 15:07:24 ID:TJEKR/WH
>>399
パクリ作者必死だなw
402名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 15:12:35 ID:???
>>399
気にくわない相手は朝日臭か。
いやぁ、理性的でレベルの高い発言だねw
403名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 15:26:37 ID:???
なんか、作者自演臭を感じてしまった俺。
404名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 17:02:28 ID:???
まあ、いいじゃん。双方とも無駄に煽るなよ。
スレタイの趣旨に戻ってまったり投下待とうや。
405名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 17:16:46 ID:???
初めてこのスレを覘きましたが、スレ違いは承知であえてカキコさせていただきます。

パクリ云々の問題はともかく、作品への批評はただの作者万世よりよっぽど
建設的な意見に見えます。作品をちゃんと読んでいないと批評はできないわ
けですから。

中には本当にただ荒らしている方もいるようですが、
少なくとも上で指摘されている>>69の方は(表現が若干煽っている感は否めま
せんけど)まともな指摘をされているようですし、こういうスレッド形式のFF
では読者の意見が反映されることもメリットとなるので、批評される方を荒
しと即断されるのは些か短絡的じゃないでしょうか?
私はユニクロみたいに悪評を昇華してより良い作品を書いてほしいと思います。

まったりな流れを壊してまで横槍失礼しました。
406名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 19:51:31 ID:???
最近どこも議論多すぎ
スレタイに沿った内容でレスついてればそれでいいと思うの。。。
407名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/10(金) 23:40:25 ID:???
>>404
だよなぁ。普通は。荒らしてる奴はここのスレ潰したいだけだろ?
上の変なコピペ荒らしと良いいいかげんにしろよ。
408407:2006/11/10(金) 23:41:20 ID:???
×>>404
>>406
409名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/11(土) 00:04:55 ID:???
俺は無理に弁明しなくても良いから、SeventySix氏には、「ランゴリアーズ」を
ちゃんと知っている人をも呻らせるオチを付けて欲しいなと。

で、現在の氏の沈黙は、その捻りのあるオチのためであると期待。
410名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/11(土) 00:07:13 ID:???
静かに投下待ち
411名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/12(日) 00:14:54 ID:???
>>409 に同意

それが二次創作の醍醐味だわな、作り手にとっても受け手にとっても。


……成功・失敗はあるにせよ。
412名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/11/12(日) 02:22:26 ID:???
普段は煩いくらいにレス返す癖に、
こういう話題になると逃げるのはムカつくよね。
出てくるなら何らかのコメントはして欲しい。
413名無しが氏んでも代わりはいるもの
それより、ほかの作家はどうしたんだ?
このスレの作家はSeventySix氏だけじゃないのに、奴のことしか騒がないというのも
おかしい話だ。