【村上】5分後のエヴァンゲリオン【ドラゴン】

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1名無しが氏んでも代わりはいるもの
【新皇紀エ号計画】
 時に皇紀2615年、休戦協定を破棄した米軍は本州上陸を企図する
 皇軍は学徒を総動員し、彼らに向精神薬「福音」(向現の試作段階薬)を
投与して戦場に派遣した
 いわゆるエ号決戦計画である。

「米軍襲来」
「見知らぬ艦影」
「鳴らない警報」
「鉄の雨、転身命令」
「零戦、空の向うに」
「決戦、第3国民義勇連隊」
「突撃、最終弾に重ねて」
「洞窟陣地」
「制止した闇の中で」
「奇跡の価値は」
「敵兵侵入」
 ・
 ・
「最後の一兵」
「5分後の世界」
「たった一つの冴えたやり方」
2名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/07(月) 19:05:02 ID:???
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3名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/07(月) 19:33:05 ID:???
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4名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/07(月) 19:35:33 ID:???
最下層タンおいで〜
5名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/07(月) 19:37:43 ID:???
( ^ω^)最下層タンおいでお
6名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/07(月) 20:09:32 ID:???
愛と幻想のファシズム
7名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/07(月) 21:26:39 ID:qyD6yo2Y
>>1
エヴァ板でドラゴンネタは"なぜか"盛り上がらない傾向がある。
はっきりいって、作り手に与えた影響は無視できないと思うのだけどな。

リテラシーのある大人からは、ほぼ黙殺されてるし、
そうでない子どもは、そもそも本読まないし…
8名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/07(月) 21:31:04 ID:???
皇紀2615年だと西暦1955年?



教えてエロい使徒!!
9名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/07(月) 22:27:10 ID:???
これ図書館で読んだわ
最後ヒカリが
10名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/08(火) 20:16:20 ID:???
ゼロ戦が2600年制式で、西暦1940か?
すると皇紀2615が西暦1955であってますね
11名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/19(土) 18:48:16 ID:???
何事にも受動的なシンジは食パンをくわえた謎の転校生と激突し、異世界へ迷い込む。
そこはジオフロントに潜伏し連合国と徹底抗戦を続ける5分後の世界の日本だった。
担任教師と瓜二つの女に導かれた先には、これまた父親と瓜二つの軍司令官。
襲いかかる米軍、火を噴くM2ブラッドレー主砲25ミリ徹甲弾。
米兵を殺せないシンジを庇い、傷ついた少女はあの転校生だった・・・
12角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/19(土) 20:24:53 ID:e8zOJqOv
>>11
やろうか?w
綾波はリナでおk?それとも原作ママ?
13名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/19(土) 20:40:21 ID:AZ7Y4H+B
読んだけど内容忘れた
1411:2006/08/19(土) 20:56:39 ID:???
是非読みたいです!しかし需要があるのだろうか!?w
綾波はシンジの前でだけリナな感じかな?
15名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/19(土) 21:07:05 ID:???
自宅に一晩泊めさせてもらう若い女将校ってマヤっぽいよな
16名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/20(日) 02:07:44 ID:???
九州戦争で女だてらにチャンコロを殺戮しまくり参謀にまで出世した葛城大尉
17角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/25(金) 19:09:31 ID:tNTtK2en
支援age

>>11

旧日本軍、連合軍の兵器とかの情報を求みます。
もう書き始めますので。
18名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/25(金) 20:51:34 ID:???
ひー!全然詳しくないんだけど。とりあえずWikiで。
http://ja.wikipedia.org/wiki/大日本帝国陸軍兵器一覧
http://ja.wikipedia.org/wiki/大日本帝国海軍艦艇一覧
主人公たちは五分前の世界から持ってきた現代兵器で戦う、みたいな設定でもいいかも?
55年なら敵さんは駆逐戦車M10ウルヴァリンからM36ジャクソンくらいですか。
歩兵はM1ガーランドあたりで。
19角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/29(火) 18:02:32 ID:nPSh3y7B
よし。ちょっと出来ました。
後で落とします。

とりあえず、若干設定は変更させて頂きました。
投稿は不定期で。
20角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/29(火) 18:26:32 ID:QmIiq7FC

茶色の落ち葉にどす黒い血が染み込んでゆく。
碇シンジ二等兵は既に立ち上がろうという努力を放棄していた。

人間って体の血の何分の一が無くなったら死んじゃうんだったっけ。
二分の一…いや、三分の一かな?
いずれにしろ、僕にはほとんど時間は残されていないみたいだ。

地面にうつ伏せに倒れたままシンジはそう直感した。
そして、その直感はあながち間違えてはいなかったようだ。

散発的な銃声と飛行機の爆音に混じって、がさっという落ち葉を踏みしめる音がした。
そしてその音は次第に近づいてくる。
ざっ…ざっ…ざっ…

シンジは残った力を振絞って土くれと乾燥した血で汚れた顔を上げた。
口から自然とうめき声が漏れる。

シンジの焦点の合わさらない目にぼうっとした人影が浮かんだ。
その背の高い人影が右手をゆっくりと上げてシンジに向ける。その右手には何かが握られているようだ。

テキ…かな?きっと、僕を殺しにやってきたんだ。もうおしまいだ。
さよなら、父さん。母さん。

シンジはそっと目を閉じた。

21角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/29(火) 18:27:19 ID:QmIiq7FC
以下の文章は大日本帝国陸軍戦没者名簿より引用されている。


大日本陸軍第一○九特務部隊

識別番号:零零八四二九
第三新東京・帝都第一尋常中学校二年い組。碇シンジ二等兵(消息不明)

紀元二千六百六年三月十一日に学徒一斉入隊。
乙種・学徒標準訓練ののち、第一〇九特務部隊に編入される。

紀元二千六百七十六年四月六日より伊豆大島に上陸した敵部隊の迎撃作戦に参加、第二十八学徒小隊に属する。
紀元二千六百七十六年四月九日午前八時過ぎ、波浮港周辺の田園地帯にて敵軍の総攻撃に遭い消息不明となる。

当小隊においての他の戦没者・消息不明者の一覧は以下の通り…。
22角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/29(火) 18:28:21 ID:QmIiq7FC
無数に存在している世界の一つでの出来事。
時は西暦2016年4月9日午前8時20分。第三新東京市欅坂通り緑地公園前。

食パンを口にくわえた青い髪の少女が通りを全力疾走している。
「ぐふぅ〜!チッコク遅刻ふぅ〜!初日っから遅刻なんて、超ヤバイって感じかもねェ〜!」

と、突然曲がり角の路地から少年が飛び出してきて、慌ててブレーキをかけるが間に合わず…

「うわっ!」「きゃ〜っ!!」

ガツーン!
23角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/29(火) 18:29:31 ID:QmIiq7FC

ギィイッ…ギィイッ

何かが軋むような音でシンジは目を覚ました。シンジはどこかカビ臭いベッドの上に寝かされていた。
ベッドがいくつか並ぶ薄暗い部屋の中、錆びた鎖で天井から釣られた石油ランプがオレンジの淡い光を放ちながら揺れている。

確か、僕は通学路で女の子と正面衝突して、それで…
シンジにはそこからの記憶が全く無かった。

僕は多分気絶してしまって…それでここは何処かの病院なのかな…
横になったままシンジはうっすらとそんな事を考えていた。

「すみません…どなたかいらっしゃいますか?」
薄暗い部屋にシンジの間の抜けた声が響いただけだった。他には誰もいないようだ。

シンジは周りを見渡そうとしてベッドから身を起こした途端…
「ぐうっ…!」
シンジは呻きながら再びベッドに倒れこんだ。脇腹に鈍痛が走ったのだ。
確か、打ち付けたのは頭なのに…

「駄目駄目ェ〜っ!まだ起きちゃ駄目よォ!」
突然ドアが開いて薄暗かった部屋に光が流れ込むと同時に、誰かが慌てて走りこんできた。

「やっと気がついたみたいね!気分はどお?。」白衣を着た青い髪の女の子がシンジの顔を覗き込みながら言った。
「まあねえ、アレほどの怪我で助かるなんてアンタ本当にツイてるよ。ホントに!」

アレほどの怪我…?助かる…?ツイてる…?
まさか、女の子に轢かれただけでこんなに…!?
24角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/29(火) 18:31:40 ID:QmIiq7FC
「こ…ここは…?」
と、疼いている脇腹の痛みで目を潤ませながらもシンジが呟いた。

「あ、アタシ?綾波レイ。レイって呼んでね!」

「いや…そうじゃなくって…」

「全くね、こんなカビ臭いトコに閉じ込めるなんてゼッタイどうかしてる。
 もう我慢できないわっ!あのオヤジ!今日こそはとっちめてやる!」

女の子、いや、綾波レイはそういい残すと猛然と部屋を飛び出して行った。

「あ、待って…」
慌てて手を伸ばそうとしたシンジだが、ガチャンという金属的な音とともに、その手は何かに引き戻されてしまった。

何だ?

シンジは傷口を刺激しないようにそっと首を回してその手を視界に入れた。
二対一組になった金属製の輪が右腕に嵌められており、そのもう片方はベッドのパイプに固定されている。

手錠…?
25角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/29(火) 18:35:53 ID:QmIiq7FC
アメリカ合衆国が世界に誇る大型空母『オーバー・ザ・レインボウ』。
海上数十メートルの高みにある司令塔の電波塔のてっぺん。

その艦長を一任されているアンブローズ・ハーマンはここが好きだった。
常に心地よい海風が吹き抜けているこの場所は、世界最強と云われる第九太平洋艦隊を一望出来る場所でもある。
艦隊は任務を完全に遂行し、物資補給のためホノルルへと帰投する途上なのだ。

艦の後方を振り返れば水平線の彼方にまで白い航跡が繋がっている。
そしてその航跡の彼方には黒煙を上げている都市群を抱えた日本列島があるのだ…

「艦長、こんなとこにいらっしゃったのですか。」
突然、後ろから声がした。副長のジーン・トリンプルだ。
艦長はゆっくりと振り向いた。

「ああ。暇なときはよくここにいる。」

「彼が目を覚ましたようです。」

「ほう…やっとだな。一応、本国に連絡しておけ。」

「分かりました。それで、本人の召喚と尋問はどうされます?
 まだ立ち上がれる状態ではないそうですが…」

「私から向かおう。午後二時過ぎはどうだ?小娘もそれまでに連れて来い。」
ちなみに、この艦に『小娘』は一人しかいない。
『小娘』はこの艦の中ではかなり顔の通る存在なのだ。
26角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/29(火) 18:39:06 ID:QmIiq7FC

「それで、彼女のことですが…」

「どうした?」

「怒り狂ってました。あんなところに怪我人を寝かせるなってね。」
副長は少し面白そうな顔をした。「放っておくとまた殴られますよ。どうされます?艦長。」

「フン…。」艦長はわずかに口髭を震わせた。
「だが、この船に余計な船室など無いぞ。寝かせるならお前の部屋で寝かせろ、とでも言っておけ。」

「それをエサに通訳を頼みますか。ただし、その場合は出入り口に数人の監視をつけます。」

「当たり前だ。万が一逃がしでもしてみろ。私達を含めて1ダースは首が転がる。」

「そうなれば嫌というほど休暇を取れそうですね。」

#今日はこのへんで。
#やれやれ。LRS二個抱え込んだら流石にキツイ。
27名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/29(火) 18:42:26 ID:ouhOe0i2
これのPS2ゲームあったよね
28角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/29(火) 22:57:56 ID:VZCx4Zrm
で、ちなみに村上春樹の文章は読んだことないんですよ。ドラゴンも同じく。
まあ…大丈夫…ですよね?
29名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/30(水) 00:40:39 ID:???
春樹は関係ない
30角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/30(水) 02:03:59 ID:ncsG+6mv
>>26つづき

碇シンジは目覚めた。

閉じた瞼を通して薄明かりが差し込んでくる。
肺に思いっきり吸い込んだ空気は、どこか消毒薬の匂いがした。

シンジにとってそれは驚きだった。

僕はまだ生きている!
誰かが死にかけていた僕を助けてくれたんだ!

誰かが近くにいるような気配がした。シンジはゆっくりと目を開けた。

黄金色の髪の少女が心配そうにシンジの顔を覗き込んでいた。
「やぁっと起きたの!?全く心配させちゃってさ。バカシンジ!」

「あ…ありがと…」

「全く、あれっくらいで気絶するなんて…ほんっとにあんたらしいわ!」
腕を組んで気丈に振舞っている少女だが、その頬には乾いた涙の跡が残っているのにシンジは気がつかなかった。 

「ホラ、あんたも早く謝りなさいよ!そんなとこに隠れてないでさ。」

カーテンの陰からおずおずと青い髪の少女が現れた。
「ご…ごめんなさい…」と蚊の泣くような声で謝ると小さく鼻をすすりあげた。

何故、謝られるのかシンジにはさっぱり見当がつかなかった。
だがそんなことよりもずっと気になることがシンジにはあった。
31角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/30(水) 02:05:08 ID:ncsG+6mv
「君達が僕を助けてくれたのには本当に感謝してるよ。でも…」
シンジは一瞬口ごもった。「他のみんなは…みんなは生きてるの?みんなはどうなったんだよ!?」

二人の少女、惣流・アスカ・ラングレーと綾波レイは顔を見合わせた。
目の前の碇シンジという少年が強烈な違和感を発散しているのに気がついたのだ。

「ちょ…ちょっとあんた…何言って…」

「僕だけ…僕だけがこんなとこで寝てるわけにはいかないんだ!僕がいなかったせいでみんなが死んじゃったらどうするんだよ!」
そう叫ぶとシンジは跳ね起きた。毛布がばさりと地面に落ちる。
 
「も、もしかしてアタシのせい?」と、レイが小さく呟いた。
32名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/30(水) 08:28:53 ID:???
乙です。本州が占領されてないんなら、兵器も陸海空出せますね。
原爆投下は阻止したのかな?それとも占領軍を追い払って?
にしてもいきなり虜囚の辱めですか…舞台は真珠湾?>>1設定で脱出?それともアスカが…
大島は何度も遊びに行ってるんで、夏の記憶と結びついててヤバいっす。
人格交換?で五分前世界も書くのは楽しいかも。フルメタっぽくなりそうだw
33名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/30(水) 10:54:06 ID:tGtVVmSO
角のケツが茶色く染まっていきます







ピリッ
ブチュチュッ‥ブリブリブリィ〜
角のケツからうんこがブビューッ^^
34角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/30(水) 20:21:20 ID:vtDlqN9Q
>>12
パラレルワールドと考えていただければ結構です。
皇紀2676年は西暦2016年とイコールです。
ちなみに戦時中の日本の描写は自我流で行います。

この小説を書き始めた動機。
例えば、人格交代モノなどの中には、多く「日常→非日常」シンジを取り扱ったものが存在します。
ただ、この作品では「非日常→日常」シンジのほうも描写させて頂きます。
二人のシンジを描くのも面白そうですので。

この小説では結局人格が元に戻るってヲチにはならないと思います。
主人公が死んで、とかそういうのにもならないかも。
第一、あまりにもありきたりですし。面白くありません。
35角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/31(木) 02:18:18 ID:3oaPm2/o

―皇紀2016年4月15日

唐突にドアが開くとさっきの少女が部屋に入ってきた。
マシンガンで武装した兵士二人と白い軍服に身を包んだ男、医師とみられる女性を連れている。
四人とも外国人のようだ。

軍服の男が兵士達に向かって英語で何か指示を出すと、兵士の手によってベッドに固定されていた手錠が取り外された。
シンジの右手は自由になった。

軍服の男は向かいのベッドに腰掛けるとシンジに英語で何かを話しかけた。

「私は彼らの言っている事を翻訳して伝えるわ。ほんの少しだから…辛抱して。」
レイはそう言うと目を閉じて外人の言ったことを翻訳し始めた。

『ようこそ、オーバー・ザ・レインボウへ。碇シンジ君。楽にしてくれたまえ。
 私はこの艦の艦長を任されているアンブローズ・ハーマンだ。よろしく頼む。』

「はあ…よ、よろしく…」

『時間は限られている。早速要点に移らせてもらおう。
 第一点。君は失血死の危険があるところを我が軍によって命を救われた。
 そして、本艦で治療を受け現在に至っている。』

失血死…?我が軍…?

『第二点。君の立場はアメリカ合衆国海軍の捕虜である。』

「捕虜…ですか…?」
シンジは思わず聞き返した。
36角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/31(木) 02:19:04 ID:3oaPm2/o
『ああ。君の身柄は我々が預かっている。
 分かっていると思うが、君の権利は条約で保護されている。これはいいね。』

「何故…何故僕が…捕まらなくてはいけないのですか?僕は何もしていない!」

『先ほど言った通り…』

「何だよ…一体何なんだよ!僕をからかわないでよ!」
薄暗い病室の中にシンジの絶叫が響き、レイが思わず息を呑んだ。

シンジはこれは夢だと信じ込んでいた。わけの分からない夢であると。
夢というものにはどこか漠然さがある。
だが、ここにはその漠然さがない。
脇腹の疼き、カビ臭い、石油ランプの温かみのある光、毛布の質感…
まるで…現実世界そのものだ。

シンジの混乱は限界に達しつつあった。

「動いちゃ駄目よっ!まだ治ってないんだからっ!」
起き上がろうとしたシンジをレイが慌てて押さえ込もうとしたが、シンジは渾身の力でレイを撥ね退けた。
勢いでレイが床に尻餅をつく。

「ここから出して!出してくれよ!」
シンジはベッドから飛び出そうとした。

次の瞬間、これまで部屋の隅でじっとしていた医師が慣れた手つきでシンジの上腕に何かを注射をした。
それと同時にシンジの意識は急速に薄れていった。部屋が霞んでゆく…
 
この時、シンジは気づいた。
これは夢ではな…
37角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/31(木) 02:20:20 ID:3oaPm2/o
小さな防圧仕様の窓からは日の光が差し込んできている。
明るい船室の壁際にはベッドが設置してあり、シンジが眠らされている。

あの後、軍医がシンジに精神的に安定できる場所を提供するよう艦長を説得したのだ。
ちなみにこの部屋のある廊下は数人の兵士に警護されているが、シンジの手錠は外されている。
レイが必死になって頼み込んだ結果だ。

「ごめんね…本当に…ごめんね…」
シンジがこの部屋に移されてきてから数時間、レイはずっとベッドの前でしゃくりあげていた。
自分を責めていたのだ。

早く彼を自由にしてあげたいばかりに無理をさせてしまった。
彼が落ち着くまで尋問を遅らせるべきだった。
でも…あの時の彼の口調は、単に「錯乱」の一言では説明できないような気がした。
一体、彼に何が起こったというのだろうか…

シンジが小さく呻き、レイは思考を中断させられた。

「君なら知ってると思うんだ。教えてくれないか?」
目を覚ましたシンジが弱弱しい声でいった。まだ鎮静剤の効果がわずかに残っているのだ。

「ええ。」と、レイは微かに震えた声でいった。

私に出来ることならなんでも…
そうレイは考えていたが、シンジの次の言葉は彼女を驚愕させた。

「この世界は…何だ…?」
38角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/31(木) 02:22:33 ID:3oaPm2/o
―皇紀2016年4月16日

「なあ、ケンスケ。今度こそ生きて帰れへんかもしれへんな。」鈴原トウジ一等兵がいった。
だが、その言葉には深刻さは全くみうけられない。まるで世間話でもするような口調だ。

「ああ。そうかもな。」ケンスケが同じく軽い感じで返した。
「シンジも死んじまったしな。俺達もそれそろヤキが回る頃だぜ。でもトウジ、洞木はいいのかよ。」

「委員長か?アイツは大丈夫や。多分…な。」
そういうトウジの瞳に一瞬だけ暗い影が宿ったのをケンスケは見逃さなかった。

「トウジ…お前だって、死にたくないんだろ?」

「な、何を言うんや…そんなワケ無いわ!アホ!」

「俺だって同じだからさ!トウジだって違うものか!」

二人の少年兵は原っぱに寝そべったまま黙りこんでしまった。
そう。誰だって死ぬのは怖い。

彼らの背後では五機の零戦・改が試験運転に入ったようだ。
零戦・改とは最高の航続距離と最高の運動性能を誇ると言われている機体だ。
ただし、実戦で運用された記録は無い。つまり大本営のプロパガンダに利用されていただけの機体なのだ。

まだ暗い原っぱに軽快なプロペラの音が響き渡る。戦闘機乗りにとってはどこか心をときめかせるような音色だ。
だがこの音色は彼らにとっての葬送曲だ。

「よお、お前たち。そんなトコにいたのか。」
突然、二人の肩が誰かに叩かれた。彼らと同じく飛行服に身を包んだ髭面の軍人だ。
39角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/31(木) 02:24:10 ID:vWiL1y9K
「あ…加地大尉…」二人は思わず間の抜けた声を出したが、慌てて立ち上がって敬礼をした。
「朝っぱらからご苦労様です!」「今日一日、お世話になります!」

「ああ。今日も世話になる。
 そういえばまだ少し時間があるな。休んでいて構わんよ。」

ケンスケが後ろを振り向くと二人のパイロットがこちらに向かって駆けてくるのが見えた。
同僚パイロットの川西ノボルと田中ジロウだ。岡山から送られて来たらしい。

年齢は彼らよりも少しだけ年上だが少年兵ということには変わりない。
「よろしくお願いします!」「よ、よろしくお願いします!」
二人の顔はかすかに青ざめていた。彼らにとってこれは初の実戦なのだろう。

「ああ。よろしく頼む。」と加地大尉。

プロペラ音がひときわ大きくなる。
「一号機から五号機、ともに準備は万全です!」「いつでも動きます!」
飛行機に取り付いた整備兵が大声を出した。
40角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/31(木) 02:26:29 ID:vWiL1y9K
「ご苦労!」加地大尉はプロペラ音に負けないような大声で礼を言うと少年兵達に向かいなおった。
恐怖と怯えが滲み出ている四つの顔に。

「お前たち、作戦の要領は既に頭に叩き込んであるな。」

「はい!大尉!」

「出撃の時間は迫っているが、その前に少しだけ聞いてくれ。
 戦場で一番初めに死ぬのは生きる努力を放棄した者だ!最後まで諦めるんじゃないぞ。いいな!」

「はい!」

「もしも命があれば再び地上で逢おうじゃないか!では行こうか。」

加地大尉は心の中で呟いた。
お前たち…許してくれ…

1630時、新湯本臨時飛行場に残った最後の五機は次第に明けゆく空へと飛び立っていった。
再び戻ってくることは無いであろう空へと。

#今日はここまで。
41名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/31(木) 11:47:50 ID:pfiK9SW1
支援age
42角 ◆uTN4HfUPlw :2006/08/31(木) 20:38:33 ID:6u7TH9tB
>>40訂正

誤)1630時、新湯本臨時飛行場に残った最後の五機は次第に明けゆく空へと飛び立っていった。
正)0430時、新湯本臨時飛行場に残った最後の五機は次第に明けゆく空へと飛び立っていった。
43名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/31(木) 23:53:28 ID:???
>>21五行目
紀元二千六百六年〜

はこれで合ってる?
44名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/09/02(土) 00:33:59 ID:???
5分後世界じゃないんだが。

700 Name: 名無し三等兵 [sage] Date: 2006/09/02(土) 00:29:14 ID: ??? Be:

    第壱話    南雲、襲来
    第弐話    負け知らぬ、戦場
    第参話    鳴り止まない、軍艦マーチ
    第四話    マッカーサー、逃げ出した後
    第伍話    コーラル・シーのむこうに
    第六話    決戦、ミッドウェー
    第七話    大本営の造りし発表
    第八話    ガダルカナル、来寇
    第九話    逐次、増援、重ねて
    第拾話    ダンピールダイバー
    第拾壱話   戦死した神の後で
    第拾弐話   奇跡のキスカ
    第拾参話   学徒、新入
    第拾四話   タラワ、恐怖の島
    第拾伍話   トラック島沈黙
    第拾六話   死に至るかぜ、そして
    第拾七話   三人目の適格者
    第拾八話   邀撃帯の選択を
    第拾九話   オザワの戦い
    第弐拾話   台湾のかたたち 戦果のかたち
    第弐拾壱話 カミカゼ、誕生
    第弐拾弐話 せめて、水上部隊の栄光らしく
    第弐拾参話 涙
    第弐拾四話 最後のシキ者
    第弐拾伍話 終わる帝國
    最終話    ビキニの爆心でバンザイを叫んだけもの
45名無しが氏んでも代わりはいるもの
新作エヴァは実はこの設定