すばやいレーンチェンジでFDは33Rの左後方へ躍り込んだ。33Rがコースセンターからコーナーへ突入する。
緩やかな左曲がりの先に、鋭い右が待っている。多くのドライバーがここで足元をすくわれる、環状の罠だ。
「わかってきたようね…そのFDの走らせ方を」
一般車はいない。インをカットして33Rがフル加速に移る。FDもそれを追い、コーナー前半で旋回を完了させる。
フルスロットル。FDのグラマラスな赤いボディが深く腰を沈め、強力なトラクションで前へと押し出る。
「ママがこの13Bを設計した理由…それは他でもない、REのすべてを受け入れるため」
回頭時間を最小限に、FDはコーナーからの立ち上がりに全力を注ぐ。それはアスカがこのFDで今まで貫いてきた
セッティングのポリシーだ。車高調はFDで一般的な前下がりではなく、リアに荷重をかける高さ。超高速域での
デッドステアリングを代償に、アスカのFDは比類なき高速安定性を備えている。
「FDはピュアスポーツとよく言われる…だけど」
バックミラーにFDのスリークライトの閃光を浴びながらレイが呟く。彼女もまた、26歳という若さで一端の
チューナーとして、自動車の女神と呼ばれた赤木ナオコの直弟子として、走り屋として新たなステップに上りつつあった。
「それは裏を返せば、スポーツという代名詞でしか生きられなかった十字架でもある…」
一般的なレシプロエンジンに比べて軽量、コンパクトなRE。RX-7がピュアスポーツと呼ばれるのはひとえにこの小型軽量な
エンジンによる軽い車体、小さい慣性モーメントによる運動性能だ。しかしそれはそのまま、REの弱点にもつながる。
軽い車体は荷重をかけることができずにトラクションの不足を生み、旋回姿勢を不安定にさせる。高速で回転するローターの
回転モーメントは、そのまま車体への負担となり旋回時の安定性を欠く。鋭いコーナリングは、一歩間違えば
まっすぐ走らない暴れ馬になってしまうのだ。MAZDAはそれを承知で、「RX-7はコーナリングマシン」とアピール
してきた。そこには自動車メーカーとして譲れない意地があったのだ。
「FDの車重は1250kg…対してこのR33 GT-Rは1540kg…数字だけ見ればFDが軽くて速いように見えるけれど…
知ってる?FD3S型が発売されたのは1991年…その時から基本骨格は同じ、つまり同じボディ…軽量化されたボディ」
銀座のシケインで33Rが加速する。この狭いコーナーであえて勝負に出る。S字の切り返し、レイの力強い腕が33Rの
ステアリングを一閃させ、アテーサET-Sシステムが800馬力のフルパワーで路面を蹴り飛ばす。
「軽ければ軽いほどいい…だけど、ただ軽ければいいってものでもない」
右にワンボックス、その先、左にトラック。レイは迷わずその隙間に33Rを突っ込ませた。FDも追う。流れた
テールが側壁をかすめる。
「一般的なレシプロの出力軸はエンジンの一番低いところにある…シリンダーブロック、オイルパン、トランスミッション…
重要な駆動機器はすべて車体最下部に集中している」
「対してREはエンジンの中心に出力軸がある…これの意味がわかるわね、レイ?」
「ええ…REはその構造上、重心を下げられない。だから車体を軽量化し、エンジンをフロントミッドにマウントし、可能な限り
重量物を中央に集めるしかなかった」
「アスカ…気づいてる?キョウコ博士の組んだシャーシを移植した時、ボディ補強も同時に行った…その結果、車重は100kgゲインの
1350kg。ロールケージはクロモリで専用設計、極力車体上部の重量増を抑え、アスカ…あなたがこだわる立ち上がりの加速力を
高めているわ」
走りながらの会話でも、レイとリツコの集中はよどまない。燃調マップの最適化により、7500rpmでのトルクがさらに増した
33Rは宝町のストレートでFDを突き放す。江戸橋分岐は右。湾岸へ向かう。
福住の直線を突っ走る。一般車を避けるスラロームで、33Rは抜群の安定性を発揮する。
「車体の軽量化はボディ剛性との天秤…ボディが軽いってことはつまり、それだけ剛性が足りない」
FDが離されていく。アスカはさすがに冷や汗を流し、唇を噛んだ。
「つう…あいつの腕もあるけど…本当にすごい車を作ったものね、リツコも」
「最高速バトルはパワーだけでは戦えない…わかる?そのパワーをしっかり受け止められるボディがあってこそ成り立つ、
ボディなしに車は成り立たない…」
辰巳ジャンクション、湾岸合流。葛西から直進してきたZ32が、33RとFDの後方から猛烈な勢いで追い上げてきた。
「来たわねシンジ…さあ、ここからが本当の勝負よ!」
アスカはFDのアクセルを目いっぱい踏み込んだ。フロントミッドに搭載された13B-Tから絞り出されたパワーは、
ドイツはゲトラグ社製のシーケンシャル5速からNERVオリジナルLSDを介し、265/40ZR17の横浜アドバン・ネオバを
限界までグリップさせる。激しいアフターファイヤーを吹きあげ、FDはZ32を突き放し、33Rに競りかけた。
並ぶ。33Rも800馬力を全開。後方からZ32も速度を伸ばしてくる。4速全開9000rpm、Z32のVG30DETTが
最もパワーをみなぎらせるポイントだ。
Z、FD、R。3台が連なって有明を突き抜ける。メーター読み280km/hで13号地コーナーをクリア。
その先にはどこまでも深い、東京港海底トンネルが口をあけて彼らを待ち構えている。
奇しくも湾岸ミッドナイトでは今FD編が連載中ですー
最高速は車の持つ総合性能が要求されます
>>925 まこっちゃんのR33GT-RはT88ビッグシングル仕様です!w
937 :
882:2008/02/12(火) 00:04:37 ID:???
うはっ、霧島さんGJっす!
緊迫感が伝わってきますねぇ。
それに比べて俺の文章のしょぼさったら。。。。。orz
でも投下折角書いたんで投下しまっす。
938 :
882:2008/02/12(火) 00:18:25 ID:???
日が工場街をオレンジ色に染める、廃業した工場を買い取り、リフォームした日向マコトの
ガレージ兼住居でシンジはエスコートのメンテナンスをしていた。
エンジンと駆動系のオイルを交換し、消耗したブレーキパッドを組替える。
「終わったら休憩しなよ、そこの冷蔵庫から好きなの取っていいから」
968CSのメンテナンスを終えたマコトはガレージの片隅に置かれたチェアに、ふぅと溜息を付
いて腰を下ろすとペプシを一口、甘味と炭酸が頭をリフレッシュしてくれた。
「頂きます、…効きますね」
作業を終えたシンジも、冷蔵庫からアクエリアスを持って来てチェアへ座る、プルタブを開けて
ぐいと飲むと背もたれに背を預ける。
「いつ見ても凄い光景ですねぇ」
ガレージを軽く見回すと溜息、古びた外観には似つかわしくない清潔なリノリウムの床にランチ
アデルタS4、アルピーヌルノーA110、ディーノ246GT、シトロエンクサラキットカーが照明に
照らされて佇む。
奥には様々な工具に工作機械、パーツが整然と棚に並べられる。
入り口近くには普段乗りのR32GT-R、個人のガレージとは思えない光景があった。
「ったってクサラ以外は爺様から預かってるだけだよ」
「クサラだけでも普通じゃないと思うんですけど・・・」
呆れるシンジにマコトは苦笑い、確かにネルフは他の公務員より高給(日向は整備手当も受け取
ってる)は言え、簡単に所有出来る車ではないだろう。
「アレはそんなにお金掛かって無いよ、日本に持ち帰った時はエンジンと駆動系が無いほぼドン
ガラだったんだから」
「そうだったんですか?でも元ワークスカーでしょ?」
今までマコトが関わった車のファイルが並べられた本棚から一冊取り出すとシンジに渡す、開く
と中には作業工程の写真とパーツリストが纏められていた。
「ロクな入賞歴の無いカスタマーカーだっから、色はこっちで塗り替えたんだ、お陰で遠慮無くイ
ジれたよ、勉強にもなったしね」
ファイルは几帳面なマコトらしく簡潔に纏められ、使用したパーツのデーターも載せられていた
、国産車用の流用品が目立っている。
おつ
940 :
882:2008/02/12(火) 00:20:03 ID:???
「ピストンにコンロッド、結構国産の部品多いですね」
「エンジンは事故車から降ろした奴、ミッションとデフはフランスからリビルドした中古品
を買ったんだ、レギュレーション変更でキットカーの行き場が無くなってたから安かったよ」
フルチューンGT−Rより安上がりだったとマコトは笑う。
2リッターNAで300PSとなるとストリートでは耐久性に不安が残る、そこでマコトはターボ化を
選択した、タービンはSR20用のHKSGTタービン、インタークーラーはランサー用、各メー
カーの部品仕様書や整備書を仕事を終えてから、朝まで読み漁る事もザラだった。
「ヨーロッパの合理主義と執念を思い知らされるね、市販車のホワイトボディから組み上げるん
だけど、補強する前にサンドブラストで鉄板を削って軽量化してるんだよ、その上で補強するか
らあれだけロールケージや当て板入っても重量は軽くなってるんだ」
ロードカーにその手法を持ち込むにはヤバいけどね、と日向は付け加える。
「その時の経験が今生きてるんだよ、あの時は後悔しながらだったけどね」
クサラをロードカーへコンバートする事でマコトが得たノウハウは、シンジ達のクルマへ投入さ
れた、特にエスコートはルーフパネルの肉薄化(強度はロールケージが受け持つ)、スペアタイヤ
、バッテリー、ウオッシャータンクの設置位置変更等が施されハンドリングは激変した。
「高性能なパーツは確かに魅力的だけどね、最後は人間の手と経験なんだよ」
そう言うとクサラのイグニッショんをON、350PSを発揮するエンジンは目を覚ました、ステンレス
製のマフラーからは僅かな湯気と重い排気音が吐き出される。
「どうだい久し振りに?」
マコトの笑みにシンジもエスコートをリフトから降ろし、エンジンをスタートさせる、2台の
排気音がガレージの窓ガラスを震わせた。
「イイですよ、ガチで行きましょうか」
すでに周囲は闇に包まれ始めた、2人は車を外に出すとガレージの鋼製のドアを閉める。
無人の工場街をゆっくりと峠へと走り出すと、周囲は再び静寂に包まれた。
941 :
882:2008/02/12(火) 00:27:38 ID:???
こちらのマコト君の造る車は峠に特化した車が多いみたいです。
ファイナル組替えて最高速は捨ててますね(^^;;
ちなみにカーマガジンの記事によると、ランチアデルタはホワイトボディを上記の手法で
肉薄化した結果、市販車比で200kgの軽量化を果たしてるそうです。
昔だとアシットディッピング(酸の入ったプールにボディを漬けて。全体の肉厚を
薄くする)ってもっとえげつない方法もあったとか(汗)。
二人ともいいよ〜(・∀・)
>>941てか、くわしすぐるwwww
でもただでさえぐにゃぐにゃボディで有名なデルタタンをさらに肉薄化していたとは…
まあ、ほとんどスペースフレームみたいな考え方なんだろうが
>>936 だから「俺」仕様だって!
俺のは2.8L、GT-RS×2でワイドボディなの!www
またまたごめん!もうやめときます^^;
944 :
882:2008/02/12(火) 20:50:40 ID:???
>>942 俺の知識は雑誌とかから得たのが多いんで胸張れたモンじゃねーっす(^^;;。
肉薄化ですが、日向クンが言う通り、競技車両だから出来る裏技です、衝突安全性
とか確実に落ちますし、補強して十分な剛性確保出来てもヘタリは確実に早くなる
らしいです、競技車両のボディーは使い捨ての消耗品ですからね。
ルーフパネルの軽量化はランエボはアルミ製、BMWM3Ti?がカーボン製に交
換する手法で採用してます。
945 :
943:2008/02/12(火) 23:34:49 ID:???
なぜかアメリカの古いナスカーのフロント周りのカウル一式が家に
あるんだけどw、すごいフニャフニャですよ!!wwホントにwww
ジュースのペットボトルみたいな感じww
>>943ワイドボディで2.8L化してあるR33にナスカーのフロントカウル一式って…
家を漁らせてww
何年位のナスカーのノーズなんでしょうねぇ、気になりますわぁwww。
ナスカーの場合、スペースフレームに鋼板のガワ被せた構造ですから、軽さ最優先で
極薄の鋼板から成型したナスカー専用品です。
昔は市販車のモノコック使用してたんですけど、コストを下げる為に現在の構造に
レギュレーション変更されたみたいです。
モノコックは一回変形させれば新品から造り直しですけど、スペースフレームは曲
がった部位だけ交換すれば済みますからね。
市販車のガワ被ってた頃、ホワイトボディから防錆の下塗り剥がして、生の鉄っちん
ボディを硫酸の風呂桶に沈めて板厚を減らして軽量化するという、無茶なチューナー
がごろごろ居たのでヤメになった>ナスカーボディの市販車縛り
ぶつけるどころか風圧ですらベコベコになり、防錆も何もないので1シーズンもたない
というけったいなシロモノ被ってレースやってた。そこまでするなら市販車由来で無くて
もええやん、と。どうやらメリケンのチューナーはアタマがオカシイw
もっとネジの緩んだ連中にリノでレシプロ飛ばしてる奴らが居るが。
949 :
882:2008/02/16(土) 19:18:17 ID:???
>>948 パイプフレーム化の理由はそっちでしたか(^^;;
指でへこむとか肘附いたら屋根が潰れた車もあったらしいですからね。
でも当時のトランザムレースの写真見ると、現在のレースカーと遜色無い位
ゴツいロールケージ入ってますから安全性と剛性は十分あったみたいですね。
リノのオサーン達>
まぁあの方々は特殊ですからねぇ、殆どが本業が別にある方々の道楽みたいな
モンですし、確か医者だの大富豪も操縦桿握ってたよーな。
保守
保守上げ
上げとく
さげとく
あげさげ
ほしゅ
おわり?
どうかな
958 :
お:2008/03/03(月) 13:51:27 ID:???
り
おしまい
おつかれ
はらへった
?
963 :
882@会社:2008/03/04(火) 23:16:29 ID:E4MNV0S2
年度末進行で書いてる暇無ぇっすorz
てかバトルよりクルマが関わる日常の方が筆が進む気がする(汗)
チューナーになったシンジ君でも書いて見ようかなぁ・・・・
残業マンセー(涙)
ドライバーはアスカで御願いします!
がんがれ
よーやく残業終了っす
Novels Garage:REBIRTHの作品や田中むねよしのスイートホイールズみたいな
ほのぼの系って需要ありますかね?
書きたいように書けばいいと思う
今現在作品に飢えてる状態だし
がんばればよし
969 :
882:2008/03/06(木) 00:01:09 ID:???
「やっほー、来ると思ってたわよん」
パーキングに入ると自販機の前で、GSX-R400RRに寄り掛かったミサトが缶コーヒーを飲んでい
た。
2人のクルマを確認すると缶を持った右手を掲げて合図する。
「珍しいですね、GSXで来るって」
「たまにはね、エンジンのナラシも終わったし」
シンジに応えるとテールカウルをポンと軽く叩く、本来テールランプのあった位置には2本のサイレ
ンサーが突き出してるのが見える。
「走るんでしょ?スターターするわよ」
一般車が来ないのを確認すると2台を路上へ、麓は2車線なので走行側にクサラ、登坂側にエスコート
、2車の間にミサトが立つと両手を振り上げ、カウントダウン。
『3』
マコトはセンターコンソールのダイヤルを《TC》から《SS》へ、ECUのマッピングが切り替わ
りレブリミッターが解除される。
『2』
シンジもEVCをハイブーストへ切り替え、窓を数センチ開けエアコンを切った。
『1』
ミサトが息をごくりと飲む。
『スタート!』
両手を振り下ろすと2台はフルパワーでダッシュ、タイヤの焦げる匂いにミサトは顔を顰め振り返る。
2台のテールランプが小さくなりコーナーへ消える。
「アタシも行きますか」
ヘルメットを被るとGSX−Rに跨りキック、載せ替えされた500cc2ストロークのエンジンが目を
覚ます。
軽快なスクエア4のサウンドと4本の白い排気煙をうっすらと残して走り去った。
970 :
882:2008/03/06(木) 00:07:55 ID:???
「出遅れたか」
先行するエスコートのテールをマコトは睨む。
980kgとエスコートより軽量と言えども、4WDに対してFFのクサラはやはり不利、
高速セクション中唯一の3速進入。
『ドン』とブレーキペダルを踏み込む、サーボの無いAPの8ポッドは踏力を要するが、ダイレクト
に感触を伝える、ロック寸前の絶妙なブレーキングでエスコートのイン側へ飛び込む。
「しまった」
ラインを塞がれた状態になったシンジはアクセルを踏み込めない、その間にクサラはリードを取った
、トラクションが掛かれば軽量なクサラの加速は鋭い、敢えて小さめのタービンが組まれたエンジン
は軽快に吹け上がる。
(腕は上がっても駆け引きはまだ苦手かな)
コーナーを立ち上がり僅かなストレートで、ミラー越しにやや離れていくエスコートを確認すると5
速にシフトアップ、ハーフスロットルで次のコーナーへ、左足ブレーキでフロント荷重を残してフラ
ットアウト。
「!おっと」
FF特有のトルクステアに一瞬気を取られる、ハイパワーFF、特に強力なLSDが組まれたクサラ
のキックバックはかなり強烈だ。
ターマックに特化したシャシーはシャープな回頭性を誇る、しかし《フロントに付いて行くだけ》と
揶揄されるリアにはそのハンドリングの代償で不安定さが覗えた。
対するエスコートは縦置き4WDならではのバランスの良さと安定したトラクションでスムーズなコ
ーナーワークで駆け抜ける。
「まだまだこれからだ!」
一瞬の隙を見逃さずクサラのテールへ喰らい付く、テールトゥノーズで高速セクションの最終コーナ
ー進入、2台のミスファイアリングシステムのバックファイアが、夜の峠に木霊した。
971 :
882:2008/03/06(木) 00:33:21 ID:???
とりあえずチョビチョビ書いたの投入してみますた。
バトルの表現が課題って感じですねorz
あと前に書いたのも間違いとかあったんで修正したいですねぇ。。。
972 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/03/07(金) 01:35:46 ID:JDUaxkpE
後少しで1000(´_ゝ`)
次スレ頼む
しんたろう
しんのすけ
ひろし
みさえ
サザエ
マスオ
フネ
ナミヘイ
タラ
よろしく