ダメ、ミサトさん!僕はペンギンなんだ!クうっ...

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1名無しが氏んでも代わりはいるもの
あたしと一つになりたい?
2ぺんぺん:2006/02/01(水) 00:13:25 ID:???
なりたいなりたい
3名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 00:16:37 ID:???
ペンギンは卵生だからムリだよ
4名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 00:16:56 ID:tkEgO6UY
きもちいいことしたい
5名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 00:18:17 ID:???
ペンギンは鳥類だから乳首ないよ
6名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 00:50:48 ID:???
なんか伸びそうにないスレだな…
7名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 01:17:17 ID:???
2杯目のビールでタバコが欲しくなった。今夜は、冷える。
反射神経のように、加持のアパートを思い出す。「冷たい」と同じ記憶分野に格納されているのだろう。
無理も無い。
あの頃は、暖を取るのには簡単な方法があった。欲しい、と言えばよかった。

居間。付けっぱなしのテレビ。ソファの上で丸まっている黒い背中。
後ろから抱きしめる。銀色のファンクーラーが、あたしの首のネックレスに当たり、かちり、と音を立てた。
もっと強く抱きしめる。振り向いた彼の顔がちょうどあたしの顔の前に来るように。

--似ている。この子は、加持と同じ目をしている。何か、胸から溢れ出すような気がして、怖くなる。とっさに、目を閉じて、顔を近づける。逃げてしまわないように。

くちばし。多少、魚臭いが気にならない。これ以上舌を入れると、反芻してしまうと思いながらも、

やめられない。もう、止まらない。ペンペン---
8名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 02:23:10 ID:???
>>7
神と呼ばせていただきたい。
さぞかし名のある山のヌシとお見受けした。GJ
9名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 02:54:26 ID:???
ネ申キタコレww
ミサトとペンペンでなんてエロくならんだろと思ってたのに…
GJ!!
10名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 03:07:47 ID:???
>2杯目のビールでタバコが欲しくなった。今夜は、冷える。
反射神経のように、加持のアパートを思い出す。「冷たい」と同じ記憶分野に格納されているのだろう。

ここの下りがすごい好き
11名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 07:13:22 ID:???
7 が書いたらネ申スレになるな…
7よ…VGJ(*´Д`)b
12名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 12:45:05 ID:h6kHM2Kb
LMPあげ
13名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 13:51:41 ID:???
あの頃は、暖を取るのには簡単な方法があった。欲しい、と言えばよかった。

俺ここすげーオモタ。簡単だがすげーリアルに感じる。
14名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 13:58:47 ID:???
>>8
おまえもけっこうおもろいよ
15名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 18:34:03 ID:???
>>1
神GJ!
この次はカヲルにぬっ頃されたぬこたんや
アスカのサルのぬいぐるみで頼む
16名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 20:15:35 ID:???
腐女子ウザ
17名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 22:47:54 ID:???
15 いくらなんでも、そりゃ無理やない…?








とマジレスしてみる
18名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/01(水) 23:12:32 ID:???
>>7
セカンドインパクト後は常に夏のはずなのに、
「今夜は冷える」とは、これいかに?
もしかして、サードインパクト後の世界?
そう考えるとしっくりくるなあ。・・・加持もいないし・・・。
19名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/02(木) 01:12:08 ID:???
日本は常夏だけど他の国は違う
20名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 00:36:07 ID:???
やわらかい所を見つけるのが好きだ。

かみ殺したため息、喉の本当の奥からの喘ぎ声。何か、良いことをして誉められたような気分になる。

硬そうに見えても、どこかしら皺が寄るものなのだ。ゆっくり、探せばいい。
首の後ろ。膝の上。舌を走らせると、加持はよく笑い出した。

--くすぐってるのか、葛城?
笑わせたいんだな?よし、こうしてやるよ--- 

--何、やってるのよ。ばか、雰囲気が壊れちゃった--

嘘だ。壊れるものなんてあの頃は無かった。落ちても、踏みつけても壊しようがなかった。

今は、そのかけらを夢に見るだけだ。朝、頬が涙にぬれていて、どうしようもなく惨めでも、もう一度だけ同じ夢を見たいと思う。

だから、ペンペン。今までのひとりの夜を、帳消しにして。あたしをひとりにしないで。
今まで逆の事をしてきたのに--今は、人間らしく、まっとうな幸せに濡れていたい。
21名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 02:06:33 ID:Iivdo8jJ
age
22名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 02:22:32 ID:???
>>20
 神 再 降 臨

すげぇwww
23名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 07:11:38 ID:???
ま さ に ネ申
24名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/03(金) 23:41:24 ID:???
このスレタイで、この中身とは....
25名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/04(土) 01:13:28 ID:???
泣ける!なぜか、泣けるんだよオオ!
26 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:2006/02/04(土) 13:27:55 ID:o5xaHt/L

       ∧_∧ ハァハァ
 シコ   ( ´Д`/"lヽ
      /´   ( ,人)
 シコ  (  ) ゚  ゚|  |  <とか言いつつ、下はこんな事になってまつw
      \ \__, |  ⊂llll
        \_つ ⊂llll
        (  ノ  ノ
        | (__人_) \
27名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/04(土) 13:59:55 ID:???
神降臨記念真喜子
28名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/04(土) 14:05:18 ID:8cmN7u7R
JR東日本でアルバイトしてるんだ。
29名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/04(土) 19:18:52 ID:???
スイカ
30名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/04(土) 20:07:30 ID:???
いやーんな感じ
31名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 00:58:47 ID:???
「ただいま」

あの娘が帰ってきた。あたしは、すぐにセーターを着直す。
---ペンペン、ちょっと、おあずけね。ゴメン。

あの娘が帰るだけで、この部屋の空気が入れ替わったものだ。人を鋳造する神様のかまどから、冷却されないまま放り出されたようなものだ。あの娘は。

男の子があの娘に夢中になるのは、無理は無い。綺麗だから、一緒にいるだけで--男に生まれてよかった、と思わせてくれるから。

彼らも無意識に「やわらかい所」を探しているのだ。あの娘の鎧の隙間、そこを自分の指で掻き分け、他の女の子が夢にも見ないような、焦げる温度をその手で感じてみたいと思うのだろう。あの小さな体に触れば--

--火傷しちゃったりして。ねぇ、シンジ。

あの子は、いやそうな顔をして、もう、アスカちょっと静かにしてよ、と言う。

--ミサトさんからも、注意してくださいよ。一日中、この調子なんです。---

その時、自分は今 何かを作っているんだ、と思えた。驚きもした。自分が、造る側に回れる人間だとは、到底思えなかった。急に怖くなり--2人が寝た後、空っぽの居間のテーブルを見つめながら、
もう一本ビールを空にした。街の明かりが、2人の部屋のドアの隙間から漏れ、ちらりちらりと動くのをぼんやり見つめ、そのまま寝てしまった。

あんなに酒が美味しく思えた時は、後に無かった。
32名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 01:10:09 ID:???
「おかえりなさい。お腹、すいてるでしょう?」

その瞳は、空しく光を失っている。このどうしようもなく冷たく、くだらない世界との温度差に耐えられないのだ、この種の人間は。その事を一番わかってやれるのは、あたしくらいだ。

「寝るわ。疲れてるの」

同情は禁物だ。手を差し伸べることも。この娘は、過剰に反応するだろう。世界の冷たさをあたしに転換し、憎しみを思い切りぶつけるだろう。頭が良い、酷い言い方で。今の自分にそれが耐えられない事くらい判る。

「だから---どいて」

ここで何もしなくても、憎まれるのは同じだ。何も出来ない人間として彼女の長いリストに加わるだけだ。だから--

後になってみれば、この娘が、自分と真直ぐ向かい合ってくれた人間が居たことだけを思い出せればいい。

「---話があるの」

「疲れてる、、って何度言えばわかるのよッ!!」

肩を掴み、無理やりこちらを向かせる。

「大事な話よ。お願い---聞いて」
33名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 02:11:38 ID:???
>人を鋳造する神様のかまどから、冷却されないまま
放り出されたようなものだ。あの娘は。

色んなエヴァ小説読んできたけど、アスカを表すのに最適の言葉だとオモタ。
34名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 06:18:38 ID:???
確かに旨い表現だな
35名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 18:14:40 ID:???
最初スレタイみて糞スレだと思った…。でも中身が気になって見てしまった。そして見てるうちに泣けてきた……。
職人さん超GJ
36名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/05(日) 21:04:46 ID:???
良スレ(・∀・)ハケーン!!
37名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/07(火) 07:24:40 ID:???
ネ申スレあげヽ(´∀`*)ノ=3
38名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 01:42:26 ID:???
あげあげヽ(´∀`*)ノ=3
39名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 01:49:33 ID:???
神町
40名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 06:47:28 ID:???
すごい……
こんな神見たことない
41名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/08(水) 08:06:13 ID:wHiZhLOQ
続編希望age
42名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 00:50:48 ID:???
「大事な話よ。お願い---聞いて」

「--触らないでよ。造酒所より酷い臭いしてるわ」

言葉の刺々しさが耳を流れて体を伝い、みぞおちのあたりでバッテリー液に変わる。

見越しいていたように、小さな体は素早くあたしの腕を払いのける。 追いかけ、暴れる手首を再び掴む。小さい肩が暴れる--ドイツ支部。定期テスト、LCL濃度の調整ミス。
スケジュールに追われた、自分のミスだった。意識不明のセカンド・チルドレンをLCLから抱き上げる。

小さな肩が、あたしの中で震えていた。医療スタッフの名前を呼ぶ自分の悲鳴、ストレッチャーのけたたましい音、サイレン、そして耳元で----ただいま、ミサト。何か美味しい物食べにいこうよ---

--その後、何かあって二人で死ぬほど大笑いしたが、何であったのかは今は思い出せない。

自分の指を摺り抜けていったもの、自分が壊したものしか思い出せない。こんな物ばかり溜め込んでどうしようというのだ。

--目の前で、何かが破裂する。頬に痛みが走り、目の周りが熱くなる。滲み出る涙の向こうで、アスカが手をゆっくり下ろすのが見えた。

「離してよ。もう一度ぶつわよ」

「--えらそうに説教する資格なんか無い人間が、あなたにしようとしているのよ--ぶたれて当然だわ」

「--」
ため息。行き場を失った視線があたしから離れ、ひとりだけの場所を床の上に探す。あたしには、よくわかる。普段は気付きもしないような場所だろう、そこは。
自分の世界が縮み、聞こえる声の主は己の最悪の部分だけだ。鋭い既視感を伴う、この世で一番冷たい「おかえりなさい」だ。

--そこには何も無いのよ、アスカ。

ゆっくり手を離すと、あの娘は台所に消えた。
43名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 01:06:21 ID:???
「疲れてるんだ、あたし。お願いだから構わないで」

「一つだけ答えてくれたら、好きにしていいわ」

「聞いとく」そう言って、あの娘は冷蔵庫に寄りかかる。こちらを見ていない。

「熱力学の第二法則。知ってるでしょう?」

「何よ、いきなり」

「習わなかったの?」

大学の卒業はこの娘がエヴァの外でしたことの中で、一番誇らしいことだ。キツい話になる前に、その事を頭に叩き込んでおく必要がある。

反応は--

「...クラウジウスの法則--熱は、暖かい所から冷たいほうに流れる也。使った後のトースターと冷たい、そうね、ビールをくっ付けて置いたら、熱はビールのほうに流れる。実際の計算式はもうちょい複雑だけど」

アスカが投げてよこしたビールを片手で開く。「さすが、ご名答。どちらが、熱を奪っているのか、考えたこと無いかしら?」

「熱は、流れるだけよ。形も実態も無いもの。そんな事--」

この娘は、勘が良い。良すぎるくらいか。寄りかかった冷蔵庫を見上げ、悲しそうに言うのが聞こえた。「--それが、自然の摂理だから。そう言いたいの、ミサト?」

「なら--遠慮も、要らないじゃない。冷たいほうへ、暖かい人間から。恥じることは無いのよ、アスカ。それは、あなたの価値を落とす事じゃないのよ」

ゆっくり近づき、彼女の横に腰を下ろす。震えているのがわかる。
44名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 01:11:42 ID:???
「--ミサト、あたしは、誰からも奪いたくも無いし、多分、---貰う権利は無い。
バカにしてるのよ、皆のこと。自分こそが本当の役立たずで--それに気づくのが遅かった

--あたしみたいのは、他から体温を奪うだけよ」

「嘘よ--」これだけは正直な気持ちだ。「あたしは、たくさん貰ったもの---あなたから」

暗い影から、白い歯が一瞬だけ顔を見せた。

「悲しいときは、そう言えばいいの。あなたは、それを早く覚えなくちゃ」

暗闇で、あの娘の頭の重みがゆっくり、肩に伝わってきた。

---自分を冷やさない暖め方もあるのか。こんなにも当たり前の事に、この年で気付いた自分に愕然としていた。

----------------------
明かりを消し、アスカをベッドに寝かせる。もう乾いた涙の跡を、手で払う。こういう傷跡が残らないのは、良いことなのだろう。

「自分だけ一方的に喋って悪かったわね。--Guten Nacht」

前かがみなり、前髪を払って、そっと額にキスする。
「--Guten Nacht」
背を向けたあたしの腕を、離そうとしない。

「聞かせてよ、加持さんの話」

---自分が冷えない暖め方は、ある。今回は違うようだ。   「聞きたいの?」
45名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 02:47:44 ID:enEFel1i
神様仏様age
46名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 05:35:24 ID:SkC+OK7y
これ…スゴイ…
47名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 06:59:36 ID:???
うわあああああああああ
神過ぎる
48名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 07:07:51 ID:???
イイ(・∀・)スッゴクイイ!
49名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 22:42:14 ID:???
神スレage
50名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/09(木) 23:58:40 ID:???
まじで 神 降 臨
ありがたや〜
51名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 05:42:42 ID:???
なに?このスレタイはギャグなのに、中身は無茶苦茶格好いいスレは
52名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 19:34:45 ID:???
Guten Nachtってなあに?
53名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 19:36:55 ID:Jv5QHjPW
発音はグーテナハト って感じ。意味はドイツ語で「おやすみ。いい夜を…」
54名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 19:50:31 ID:???
ちっ物知りめ!!
55名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 20:44:12 ID:???
ペンペンがなかなか出てこないことにツッコミは無しですか?
56名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/10(金) 21:15:55 ID:???
もはやそれどころではない
57名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/11(土) 22:30:30 ID:???
ペンペン、カワイソス....
58名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/11(土) 22:50:20 ID:???
神街
59名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 02:15:41 ID:???
--聞かせてよ、加持さんの話

あの夜以来、彼の名前が口にされたことは無い。それは、契約のようなものだ。

「聞きたいの?」

言葉が世界を切り取り、人間のようなか弱い生き物が、かろうじて理解できる形に押し込めている。あるいは、納得できる形に。

会話とは、そういうものだ--外にある理解しがたい異物とのぎりぎりの境界線で線引きをし、

お互いに確かめ合うのだ--ここまでは大丈夫、と。それは約束であり、お互いのためでもある。

迷い込んだ夜の生き物のように---その名前が部屋の暗闇にぶら下がり、ゆっくり落ちてくる。あたしには、よく見慣れた光景だ。

背を向けたまま、ベッドの上に腰を下ろす。足の具合がおかしいのか--妙に大きな音がした気がした。

視線が合い、ゆっくりと落ちるその名前を2人で同時に見てしまわないように気を払いながら、あの娘のほうに目を向ける。

硬く閉じられた瞳、毛布の端を握る指の節が白くなっている。

---年頃の女の子は、ああいうのと遊びたいのよ。あの娘だって本気じゃないわ。

バカか、あたしは。なぜ、あんな事をいったのだろう。 何回もこの娘から聞かされただろう、好きなんだ、本当の気持ちなんだ、と。

「ミサトが、辛くなかったら。あたしは、待てるから」
60名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 02:20:12 ID:???
「アスカ、 加持はね---」

口に出してしまうと、その名前が冗談や、女同士の噂話の話題であったことを思い出し、あたしを絶望させる。エレベーターの中。妙に芝居がかった駆け引き、女独特のくすぐるような会話。「子供と
する話じゃないわよ、こんなの」。その時、ドアが開き---

--また、俺の話か。油断も隙もあったもんじゃないな。

誰が、あんたの話なんか。

--どうせ悪口だろ?ご婦人の噂の種とはこれ光栄だが、きれいさっぱり、忘れられたほうが楽かもな。---

だから、つらいんだ。死人に恋をするのがどれだけ辛いか、あんたには一生解らない。今のあなたは、あたしを傷つけるだけだ。だから、もう消えて。

「ミサト、ごめん」

いつものように、鼻で笑ったつもりだった。末期患者の咳にしか聞こえないだろう。

「参ったわね、あたしも年だわ」

-----------

ちょうど部屋の反対側に位置するビルのひかりを見つめていると、発光性の珊瑚の海に体ごと飲み込まれてしまったような気分になる。

あの話があった---あれは、良い話だ。
61名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 03:06:45 ID:???
キタコレw

wktk
62名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 03:52:29 ID:cX5wOiAO
ミサトさん…オレが一緒に泣いてあげるから…
63名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/12(日) 09:06:08 ID:???
キターヽ(´∀`*)ノー
64名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 01:55:41 ID:2GXr96YB
あげとくよ
65名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/13(月) 14:18:13 ID:???
神乙です
66名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/14(火) 07:23:54 ID:x2aCzNKi
age
67名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/16(木) 00:43:37 ID:???
  _  ∩       _  ∩
( ゚∀゚)彡 GJ!GJ! ( ゚∀゚)彡 GJ!GJ!
 ⊂彡        ⊂彡
68名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/16(木) 23:55:03 ID:???
--アスカ、起きてる?

眠りと目覚めの狭間、0と1の間の時間。時計にすら表示されない、夜の時間だ。

日頃の森羅万象を動かす歯車や記憶装置がゆっくりと休み、今 何をしても世界のログに記録が残らないのでは、とさえ思う。

胸の腕で、小さな頭が少し動いた。妙に、頭だけは冴えている--ゆっくり手を伸ばし、アスカの手を握る。

そして、落ちていく---あの暗闇の中に。

----

「手をはなすなよ」加持が厳しく言う。あたしをここまで連れてきたことを後悔しているのだ。

建設中の第三首都。夜間の貯水槽は寒さが厳しく、危険に満ちている。竹とファイバーグラスで組んだ足場は今にもくずれそうで、あたしは来た事を後悔する。懐中電灯に照らされた部分以外、水の色は黒に近い。

加持は先導しながら、自分の足跡をたどるように指示していた。太陽の光が届かないシャフト内の気温は昼間でも息が白くなるくらいに冷たい。動きやすいように、と手袋をしてこなかったのも間違いだった。
両手を口に当てて暖めたいのだが、手すりから手を離せない。

---貯水ランプが黄色になってから、早2時間。着るものも着ずに、加持についてきたのだ。

異常気象による水不足、加えて掘削作業に必要な膨大な量の水。その必要に迫られた委員会の回答が、地下にクモの巣のように張られたファイバーグラスだった。
本来は砂漠で使われる技術で、空気中の水蒸気を極密度のフィルタで集め、貯水する仕組みだ。ここの地下の空間の大きさなら、何とか賄える。

羽を広げ、灼熱の中で水分を集める砂漠の昆虫がモデルだと、あの娘から聞いた。生命の適応する力の見事なサンプルだ、と。

その適応性がこのザマだ。人知れず、休み無く働く地下の作業員たち--ここ数年の経済成長の波に乗れず、十字軍のような日当で働く落伍者たち、
「あれ」以来希望を持てなくなった者も大勢いる--その命をつなぐ、細長い管。それが一つでも詰まれば、凍えるような寒さでもあたしたちは下に降りていく。
69名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 00:06:24 ID:???
加持はその一つ一つを照らして確認しながら先に進んでゆく。あたしと同じ幹部候補生に、面白い男がいる、そう聞いていた。

地下上がり、だそうだ。

地下労働者を一手に引き受ける各班の親方連中、その中には稀に技術や能力を見込まれゲヒルンの正式スタッフとして日の目を見る者もいる。
「地下上がり」は、決して軽蔑の言葉ではない。あたし達の世代で、地面の底を舐めなかった人間は、いない。お互い、痛い腹は探らないものだ。

--インフラ部門か。あたしとは縁がなさそうね。
--情報処理、らしいわ。上がってきてから、試験を受けなおしているのよ。


靴の中で、親指の確認をするのが困難になる。地下水は、染み込むのが早い気がする。巨大な貯水タンクが静かに波打つが、貯水槽の壁に
照らされた、懐中電灯の反射でわずかに確認できるくらいだ。

手すりから釘が突き出している部分を避けようとして手すりから手を離した拍子に、バランスを崩して前に倒れこみ、加持の肩に肘をついてしまう。
加持は後ろに手を伸ばし、あたしの両手の上に手を置く。引き寄せされ、ちょうど後ろから抱き付いているようになった。

「このほうが暖かい」

加持の手は暖かく、強く握られていると指先から血の気が戻ってくるのを感じる。加持の髪に息がかからないように気をつけながら、大半を地下で過ごしてきた彼にとって、このような接触は何を意味するのかと不思議に思う。
70名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 00:29:57 ID:???
「一つ教えて」肩越しに冷たい水を見つめながら聞いていた。

「あなたの当直は、今朝の零時で終了してるわ。3日間、お疲れ様。部屋でビールをちびちびやるより、あたしと2人がいいのかしら?」

---少し、わざとらしかったか。

「自販機のビールの全銘柄、一週間で切らした化け物がいてね。買えなかった。それと
--俺だってもっといい場所を選ぶさ。下心があれば」

少し悔しかったが、笑うことにする。「あら、少し嬉しかったのに---

(---コートを羽織り、階段を駆け足で下りる--踊り場で加持と目が合ったが、まさか無言でついてきてくれるとは思わなかった。)

--ありがとう」

「せめて、カイロの代わりにでもなれれば、と思ってね。案外、役に立つだろ?」

ふざけている加持の声は、少し緊張している。もう管を見つけ出したのだ。

「この中では無理ね」

加持が気持ちよさそうに笑う。手を離すタイミングは今だ。
71名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 00:30:47 ID:???
「そう、無理だな」加持は少し身震いをすると、一瞬だけあたしの方に振り返る。懐中電灯でシャフトの壁を照らしてみせる。

「水が溜まりすぎてる。少しポンプで排出しないと作業できないだろうな」

白い息が懐中電灯の光で克明に見える。

「わかった」それだけ言うと、手際よくナップサックから排水ポンプを取り出し、ホースを延長させる。長さは十分のはずだ。

小型のバッテリーを置く安定した場所がないのでケーブルだけ出してナップサックに入れたまま手すりに結びつける。

ポンプは稼動中の間はあたしが抑えているしかないだろう。加持は階段の一番下まで下りてホースが暴れないように先端部分を足場に固定する。

指が冷え切って細かい作業が困難になるが、手際よく行えば問題はないはずだ。加持がうなずいて合図を送ると、あたしは作業コードを入力してポンプをスタートさせる。

ポンプを落とさないように片手で抑え、もう片方の手で手すりにつかまる。
――
72名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 00:58:21 ID:???
age
73名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 05:55:29 ID:???
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
ハイクォリティすぎ。
乙です。
74名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 11:55:14 ID:???
キター(゜∀゜)(゜∀゜)ー神光臨
75名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/17(金) 22:26:40 ID:g556EqH8
キターヽ(´∀`*)ノー
76名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/19(日) 00:37:15 ID:???
あげとくよ
77ロメオ ◆rHza36ec2U :2006/02/20(月) 07:56:54 ID:???
文章表現パクりたくなってる俺を誰か止めてくれw
78名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/20(月) 08:47:57 ID:???
悪いこと言わんからロメオは巣に戻りぃ(´・ω・`)… 所詮お主にこの表現は真似できんよ
79名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/21(火) 12:55:46 ID:???
続きキボン
80名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/21(火) 14:07:11 ID:???
Gj
81名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/21(火) 22:10:04 ID:???
うまいなぁ……
素直に尊敬する
82名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/23(木) 00:37:56 ID:???
ちょっち待っててね。
83名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/24(金) 23:33:11 ID:???
まだぁぁぁぁぁ???
84名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/25(土) 00:17:57 ID:???
こらこら(´∀`;)気持ちは分かるが焦るでない
85名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/25(土) 21:01:39 ID:???
――
ポンプの緑色のインジケーターを頭の中で7で割る。表示が切り替わる前に割り切れたら、持つ手を変えても良いことにする。

下の桁が点滅し、(4になる前に、上三桁を素早く計算する--1は余らない)ポンプの冷たいハンドルが、親指の付け根に食い込み、錆びた鉄の味を擦り切れた皮下組織で感じるが、指先よりはましだ。(8で待ち伏せる)まだ終わらないのか--

「--葛城、割り切れたか?」 さっきは、数字を逆に読み上げ出したので、思い切り睨み付けてやった。 「あまり、意地張るなよ」

「まだよ。邪魔しないの」―1961。さっきのは、割れたはずだ。1962--番号が西暦に近い。計算しなれてる分、有利か--

ちらりと、笑いをかみ殺している加持に目をやる。言いたいのか。言ってみるがいい。

「4,8,2--おっと、嘘だ。怒るなよ」

「殺してやるわ。覚えてなさいよ」みぞおちのあたりが、痙攣する。機械油に濡れた傷口を見つめ、こういった感情や痛みが同居できる事を不思議に思う。喜びを感じる器官は、独立したモノなのだろう。激痛にも左右されず、恥じらいも無く、ひたすら生を謳歌する器官。

(当たり前だ。自分が良い見本だ。あんなに大勢のひとが―)

要は、別腹だということだ。

(―んだのに。割り切れるものなのか、そうやって)

「995、996 --割れないわね」ため息混じりに、そう言う。吐息が懐中電灯の光の中で、上へと急ぐ。
86名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/25(土) 21:19:54 ID:???
「1996は割り切れるだろう。掛け算を習った年だ。今のガキが使ってるラップトップなんか無くてね―」懐かしい話だ。「―黒板をめい一杯使って、今年の年号は割れるでしょうかって」

「どこでも、同じ事やってたのね」

「―97、98―俺の初恋の年だな。99、2000―」 重い貯水タンクが揺れる。空洞が闇を増幅させるのだ。脱出ポッド。こびりついた血の匂いは、自分のものではない、多分。 ストレートに死を連想させる、圧倒的な光の欠如。

「すまない」

「気にしないで。結局、曲がり角で待ってるのね―こういうの。そして、何をしても思い出すのよ」

「厭か、--思い出すのは」

「好きじゃないわ。あなたは、聞きまわるのが好きみたいだけど」

そんな噂を聞いた。中には、怒りをぶつける人間も居るだろう。あたし達の世代が、話さないことの一つだ。貯水槽の脇で、レンチを下に下ろす音が聞こえた。オイルライターの金具が音を立てる。一瞬の切り取られた光が、煙草を包む太い指を映し出す。

「俺は、好きだな。あの時、あの日、みんながどこに居たのか、何をしていたのか--聞くのが好きだ。覚えてない奴はいないから――来いよ、こっちに。一本、吸うだろう」

ホースの蓋をしめる音がする。うなずき、ポンプを一旦下に置く。作業中止コードを震える指で叩き込む。「いただくわ」

いつの間に上がってきたのか、あたしのすぐ前に立っている。フィルタなしのポールモールを差し出されると、それが通貨であった事を思い出しながら口にくわえる。

オイルライターの鼻を突く臭い。顔を近づけ、何か別の臭いに気付く。人差し指が反応する臭い―射撃訓練施設のレーン。

鼻のてっぺんで感じる、染み付いた火薬の臭い。
87名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/25(土) 22:39:29 ID:???
―幹部候補生全員に課せられる2週間のベースキャンプ。国連軍直々の指導でたっぷり泥を飲まされたあの2週間以来、銃器には一切触れていない。 この男も、もう、とっくに終わらせているはずだ。

地下上がり。情報処理。2つの言葉を並べると、不吉な物のように感じる。

「何故聞いて回るの、そんな話」 煙草の煙が肺をゆっくり暖めていく。  暗闇で、煙草の焔をじっと見つめていた目が、こちらに振り返る。

「好奇心、かな。純粋に」  

「馬鹿言わないで。何が好奇心、よ―」

「葛城、俺たちの世代の人間が歴史の教科書に載るとしたら、それはあの南極の衛星写真の横だ。セカンド・インパクト世代、俺たちはこれからも、そう呼ばれる。無理もないさ。『あれ』は俺たちの運命を左右し、決定させた―今ある形にね。
俺たちの人生で何をしても、覆せない、圧倒的な出来事だ。興味深いだろう?その話を、皆から聞いてみたい。それだけさ」

違う。あんな物、ただ怖かっただけだ。

「同じような話ばかりでしょう――名前が違うだけで。」自分の声がそう、吐き捨てる。 
88名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/25(土) 22:49:20 ID:???
「いい話もいくつかあるんだ、中には」

「笑わせないで。誰のも、みんな同じよ。身内の名前から始まり、その時住んでた場所の名前。 そう、『あの頃はまだ、蝉の声が』とかいうのも良く聞く台詞ね。聞き飽きたわ。誰彼の名前を尋ね人の看板に書き付けただとか、さよならを言えなかった、とか。」

―もういい。十分だ。もう、止めろ。

「深酔いすると、その話になるわね。普段は思い出さないくせに、挙句の果てに言うのよ、だから俺が、あたしが代わりに生きてやろう、と思ったんだ、てね。雁首揃えて、よく言えるわね―-

―鉄筋をむきだしにしたコンクリートの壁が、トラック2台に牽引され地面から取り除かれる。焼け焦げた地面に石膏のような塊が姿を見せると、周囲からうめき声が上がる。

――骨盤が小さい。まだ子供だろう――冷たい目で見下ろすと、あたしと大きさを比較をする。もう一度、亡骸に目を落とし、あたしを見る。大きさ以外の何か、別の物を比較すると、あたしから目を逸らす。

――生きてて、嬉しくて仕方が無いくせに」 それだけ言うと、手すりに寄りかかる。彼が、こう言うのが聞こえる。「もう、終わりか?」 唇を噛み、こみ上げる涙を飲み込む。コツがいるが、何回もやっている事だ。

もう一度聞く。「もう終わりか、葛城?」

今になってもどちらが先だったのか、どうしても思い出せない。あたしが頷くのが先だったのか、それとも彼の大きな肩があたしを覆い、引き寄せ、暗闇の中で唇を重ねた方だったか。

どちらにしても、暖かい事だけは思い出せる。今は、それで十分だろう。それがあの人の優しい腕の温度だったのか、暗闇で共鳴する魂の発する温度なのか、または溢れ出て止まらない自分の涙だったのかは、思い出せないことのリストの一つだ。
89名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/25(土) 23:58:02 ID:41rZpjNd
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
90名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 00:06:43 ID:b7b8cb+8
  ,、..--.、_,、-、,,,,、、,_
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  |   ヽ  l| ,、‐ ' " '゛‐ 、|`´|,、=-‐ '' ‐- 、!'    〉!!|
  |ヽ    >'        `||´       ' ,    |!!|
  |!i    / /          ||       i  ',    |!|
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  /,ヽ/`ー ヽ         ||,.、、.,__  __ 〉‐-'、_  |
  〉 ゝ     `ー---i ̄i ̄      ̄  ̄``` ` |
  ヽ、 ヽ         |  |               〉
   |!', ヽ    , -----、|_|       ,.、-‐ ''‐-'、/
   |!!!', `゛ ̄      -‐``i''"7ー‐ '´     ヾ|
.   |!!!ト、            |  |         i'゛|
   |!!| |` 、   _     !_!―‐ 、   __, /
91名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 00:33:52 ID:???
ま さ に ネ申
92名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/26(日) 20:16:49 ID:???
キタコレ Gj
93名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/27(月) 19:52:12 ID:???
人稲杉。。。     _| ̄|○

俺も含めて4人くらいか、見てくれてる人。
リクも受け付けるから、誰か感想書いてくれ。。。
94名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/27(月) 22:11:30 ID:???
見てるよネ申!
地の文の語り口が素敵過ぎて泣きそうだよ!
9591:2006/02/27(月) 22:42:57 ID:???
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ_
               /:::::::::::::::::::::::::::::::::r 、::::::, 、:::::::::::::::::::::::::::... ::::`ヽ、
             r'´:::::: : : :: :::  ::/‐-、Y, - ''、::::  :::: ::: : :: :   :ヾ'
          ,': :: :: :::: .::::.. :::::::::i       !:::..::i .. ... : . :...::..:::|
          i:: . :::..::::::::::::!、_!、_ヾ、    ノ'ノ,_!、.ノ!:.:.:.:.:.:.:.:|'、i '
           ', !、:.:.:.:.、:','´'__,.--ニ゙´    ゙̄,.- 、'_' ノ 'ノ:.:.:.:.:.ノ '
               |`゙゙i‐、'  ' ゙、トッノ ...::::::...  i トッ ) ´7、:./|
           i:.:.:.'、ヾ、    ̄::::::::::::::,  :::::::` ̄   /( ノ::::i そんな・・・>>93が神だとでも言うの!?
           !:::::::::ヾ, i      〈.! .       /゙ノ:::::.:.i
             /:::::::::::::::`ヽ      _       /:::::::::.:::.:.:.!
          /::::::::::::::::::::, ‐>、    ( ̄,.)     /、::::::::::.::::.:.:.'、
         /:.:.::::::::::::/ '´ |, i、ヽ、   `     /| `ヽ、、:.:.:::.:.:.:.:ヽ
        /::.:.:.:::::://´   !ヾ、 `ヽ、_,. ‐'´ ノ 〉   \ 、::.:.:.:.::::i
      /::.:.:.:.:::/ ! i    r':::::`ヾ、、    , '/!       \、ヽ、_ |
     /::::.:.:., ‐/ / i     !::::::::::::::::`ヽヽ //::::::ヽ       ヽ、 i, `\
     !::,. ‐'´ /  ! /    i |ヽ::::::::::::::::::::! 'i./::::::::::/ヽ.       , 'ノ!.  \
    /   !  i !    i i::::',::::::::::::::::::| | !:::::::::/::::::!、    , '/  !   i i
 _,/ \  !_  i、ヽ    i  !::::ヽ:::::::::::::::i_!ノ:::::::/:::::::::i '、 /r'´ ヽ、 ヽ、 i l`ヽ
'´       \ \      
96名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/27(月) 23:39:58 ID:???
今までなかったタイプの文章構成…そして絶妙な表現‥‥。
最初糞スレかと思い開いた先には新境地…!
今ではこのスレの虜さ 川´⊇`)
神よ‥ガンガッテ下さい
97名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/27(月) 23:47:09 ID:???
見てる見てる。いつも楽しみにしておるよ。
98名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 09:06:04 ID:???
テメー見てないと思ってたのか!
リクなんて勿体なくてできるかよバーロー
99名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 16:24:50 ID:???
すごく・・・好きです・・・・・・
続きをいつも楽しみにしてるよ
100名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 16:42:28 ID:???
かつて書いていた自分のSSモドキが、ゴミ以下の文字の羅列としか思えないです…
素晴らしい!
101名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/02/28(火) 23:12:28 ID:???
ROMだけだったけど、見てます。
文章素晴らしすぎてもうもうもう
102名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/01(水) 00:14:31 ID:???
>>86 
のくだりだけど、なんでカジ謝ってるの?
103名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/01(水) 00:59:43 ID:???
その年を思い出したくないミサトと無神経に読み上げてしまったリョウジ
104名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/02(木) 13:57:38 ID:???
(;´Д`)ハァハァ
105名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/02(木) 23:41:53 ID:???
ずっと前に、別の板の今はもうない別のスレで神を見たことがあるかもしれない。
あの頃、月の名前で呼ばれてた人と同じ人だったら嬉しいな。
もっと読みたいとずっと思ってたから。
106名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/03(金) 15:36:47 ID:???
ネ申よ… まっちょるぞ(´‐`)v-~~~
107名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/03(金) 19:58:53 ID:???
俺も… まっちょるぞ(´‐`)v-~~~
108名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/04(土) 02:22:46 ID:7x7bdO3k
紙町
109名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/04(土) 02:42:02 ID:???
つ _,,..i'"':,
  |\`、: i'、
  .\\`_',..-i
   .\|_,..-┘
110名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/04(土) 10:10:01 ID:???
>>108
雨がふったら大変ですね
111名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/04(土) 14:07:15 ID:???
>>109
dクス。助かりました。
112名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 01:58:52 ID:???
―優しく、してくれたの?

通りからのヘッドライトが部屋の天井を舐め、深い闇に波を刻む。

果実の厚い皮に似た、冗談や皮肉といったフィルタを剥ぎ取ってしまえば、一組の男女の話など、しごく簡単な物だ。あまりにも剥き出しになった、その言葉を見つめてみる。

―優しかったわ。

子供相手に話している事を忘れた、自分の声に少し呆れる。その言葉が、言った途端に闇に埋もれてしまうので、もう一度繰り返す。カーブを曲がるライトの明りが、胸の上の蒼い瞳を照らす。あたしも、こんな顔をしていたのだろうかと思う。時間が、少し逆行しているようだ。

同じ闇でも、こうも違うのは、暗闇が単に光の欠如だけでは構成されていないからだろう。

――

錆びた鉄の臭い。掘削作業に特有の新しい土の匂い。冷たい温度に閉ざしていた、嗅覚の神経のつぼみが息を吹き返していく。冷えた汗の臭い。火薬の臭い。

深呼吸し、もう一度だけ涙を出し切ってしまったら、もう終わりだと言う。

自分がいかに不器用な生き方をしているのか、こいう所でツケがくるものだ。ため息混じりにそう言う。かさぶたを引き剥がすように、そっと離れて自分の足で立つ。

「――借り、作ったわね。後で返すわ」ちゃんと言えた。もう、大丈夫だ。「だから、泣きたい時は、あたしの胸でどうぞ」

子供をあやすような目は、優しさをあたしに返してくる。

「お言葉だけ頂戴するよ―それに、そんなまな板な胸じゃ、泣くに泣けない」

113名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 02:00:19 ID:???
こういう時に、声を出して笑うのは危険だ。体が、胸の鼓動を別のものとして認識してしまうだろう。吊り橋で出会った相手と、というやつだ。厄介なものだ。

「俺の胸はいつでも貸せるし、君だったらツケも利く。」 その言葉だけ暗闇の中に残すと、あたしに背中を向ける。愛しく、見慣れた光景になるとは、この時は知る由も無かった。

「覚えとくわ」 手首を軽くマッサージすると、ポンプをもう一度持ち上げる。再起動コードを入力し、パネルを見つめるが、7で割り切れる数字に集中できない。

「加地君――聞いてる?」

口に懐中電灯をくわえたまま、レンチで2回、貯水槽の壁をたたく音。

「さっきのツケの代わりに話すわ。」脳の感情と出来るだけ離れた部分を使い、言葉を編んでゆく。

「――セカンド・インパクト。あなた達が朝刊や臨時ニュースで見た、南極の衛星写真。あの場所に、あたしはいた。父親に脱出ポッドに入れられ、一週間 南氷洋をクルージングしたわ。そこまでは、噂通りよ。」
114名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 02:05:07 ID:???
半分だけ残っていたポールモールをポケットから出し、片手で火をつける。階段の下で、定期的な音を立てていた金具の音が一瞬だけ止まる。「噂通り、じゃないのは、あたしがその後サナトリアム入りしたこと。
心的外傷後ストレス傷害、と診断されたわ。随分、刺々しい言葉の羅列ね。結局のところは、徹底的に打ちのめされた、それだけ。

―いつまで、そうしているつもりだ?一回でいい。先生と一緒に、外へ――

―いやだ。何もしたくない。死にたい。

「1年間、周囲の人間を呆れさせたわ。腕のバンドの患者コードの桁数が、すぐに3桁になったわ――当時は、あたしみたいのが沢山いたものね。」ふと、手首を見る癖は今でも治らない。この癖だけは、墓の下まで持って行くしかないだろう。

「ある晩、夜中にトイレに行ったら、片足の男の子と通路でぶつかった。ひどい音をして、その子が床に倒れたわ。『大丈夫?』、って。
その子を起き上がらせ、松葉杖を返して、『ありがとう』と伝えると、裸足のままサナトリアムから街に出たの。それ以来、振り返っていないわ。どんなに悪い状況でも、あの頃よりはマシね。そう思うことにしてる」 

「良い話だ。ありがとう、話してくれて」

作業が終わったのだろう。加地がこちらへ上がってくる。もう一つ、ある。こちらは、誰にも話したことがない。
115名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 02:06:16 ID:???

「今でも夢に見るのよ。あのポッドの中は。誰も助けてくれない、そう思っていた。父が死んだ後だったものね、あたしは世界のみんなが死んでしまった、そう思ったわ。暗い壁を、何度も拳でたたいたわ。
その度に、誰かが聞いてくれるんじゃないか、ポッドの外から、返事をしてくれるんじゃないか、そう思って思い切り壁をたたいて、その度に裏切られた。たまに、その音を聞くのよ。

――冷たい鉄が揺れる音、反響音がだんだん小さくなってく。自分も消える、そう思い、鉄の壁を殴りつける。

「それ以来、他人には期待しないわ。気持ちよく接するし、優しくも出来る。人間は、好きだもの。お互いの距離を保てるんだったら、体を重ねてもいい。でも――突然二度と会えなくなるのよ、あんなに簡単に。
そして、あたしはまた泣きながら、返事を待つことになる。暗い中でね。だから、あたしは期待しない。」

手を強く握り、貯水タンクを叩く。深く響くその音が、返ってこない事だけを確認すると、あたしの正しさをゆっくり相手にのしかからせる。

寂しそうにこちらを見る加地と目が合う。

「同じだろう――だれも愛せないのも、君だけの暗闇にいるのも。寂しくないのか、葛城?」

「慣れたわ」本当だろうか。今でも、いつも泣いている気がする。重いポンプを持ち上げると、上の階段を目指す。一段、また一段。誰の助けも借りない。寒さと擦り傷で悲鳴あげる右手を強く握る。

低く響く音が、貯水タンクを揺らす。地下、深くからの激しい鼓動。鉄筋が、壁に打ち付けられる規則的な音。
116名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 02:07:07 ID:???
「下の連中だよ」加地が、言う。「水道が復帰したんだろう。」

長く響く音が、母親の胎内の鼓動を連想させる。短い音が、その後に続く。

「--T--H--A。旧式のモールスコード。」それだけしか、口に出来なかった。

「--N--K--S。『ありがとう』か。なんて、返事する?」加地が重い道具箱を下に置く。

振動が、暖かいものにかわり、胸を揺さぶる。「返事だよ、葛城。泣いている場合じゃないだろう」

「聞こえた。そう、返事して」壁によりかかり、あの時聞けなかったその音を全身で感じた。もう2度と合えない、後で会ってもお互い解らないだろうその相手の鼓動を、全身で感じ、闇を震わせるのをじっと聞いていた。

---------------

震える身体を石油ストーブで温め、加地の小さなアパートが温まるのを待つ。指に小さなバンドエイドを一枚ずつ貼っていると、風呂の方から声がする。

――先に入れよ、葛城。

風呂場の前でキスをされた時は、強く押し返した。期待しないで、そう言ってカーテンを閉めてしまう。ため息をつき、入って、と言う。残った温度を奪い合うように冷たいタイルの上で愛し合い、生まれたままの姿で身体を重ねた。

冷たい闇が、表の世界で朝に代わるのを感じながら、自分の震える声があの人の名前を世界に響き渡せるのを聞いた。
117名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 02:18:36 ID:???
いろんな意味で泣けた
何故こんなにも透明な文章が書けるのか
118名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 02:35:46 ID:???
エロすぎるwww
119名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 08:46:09 ID:???
ペンペンまだー?
120名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 09:17:54 ID:???
神キター(・∀・)ー
ここ見てるとなんだか不思議な気持ちに浸れる…。
121名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 18:40:03 ID:???
>>117
つ _,,..i'"':,
  |\`、: i'、
  .\\`_',..-i
   .\|_,..-┘
122名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 21:02:19 ID:???
関係ないけど保湿ティッシュって舐めると甘いんだよな
123名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 22:24:49 ID:???
ああ、甘いな
124名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 22:27:28 ID:???
問題ない
もっと舐めたまえ
125名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/05(日) 23:26:31 ID:x1IOaZxj
碇…老人達が黙ってはいないぞ
126名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/08(水) 23:49:31 ID:???
ネ申よ〜来て下され〜!!
127名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/11(土) 02:03:48 ID:???
良スレ
128名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/12(日) 20:52:48 ID:???
神マダ〜(´・ω・`)
129名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/12(日) 22:49:40 ID:???
前回のが異様にテンション高かったからな…
つかれてんじゃね?
130名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/14(火) 01:02:26 ID:???
ネ申は今手休めをしているようだ…ネ申サマGJ
131名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/14(火) 02:02:11 ID:???
今日も更新なしか。寝よう。
132名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/14(火) 08:54:51 ID:???
気長に待つさ(´∀`)v-~~~
133名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/16(木) 23:30:03 ID:p8bd3TMy
ミサトさん、神が書いてくれないんだ....
悲しいのに、書いてくれないんだ....
134名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/17(金) 00:25:43 ID:dYd9Zwzj
ここに入れちゃってどう"ぁ〜っと



ちょっと…変なもんいれないでよ
135名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/18(土) 00:51:11 ID:???
>>134
どっちやねん
136名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/18(土) 01:20:56 ID:???
○ カレー
× ちむぽ     逆か?
137名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/18(土) 05:47:11 ID:???
保守
138名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/18(土) 23:06:51 ID:???
ネ申は今、自由に動けない…よって保守
139名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 01:48:26 ID:???
―スケベね、ミサト。

あの娘は、そう言って笑う。久しぶりに聞いたその笑い声を、あとで思い出せるようにしっかり覚えておく。

―悪かったわね、そう言い返す。あるがままに話したのだから、何を言われようが仕方がないだろう。

――――――

さび付いた南京錠を合鍵で開け、重い扉を開く。倉庫を改装したアパートは、天井の高さだけは通常のマンションの3倍はある。天窓を見つめると、床の上から同じ窓を見るのが待ち遠しい。もうすぐ来るだろう。

朝は、お互いのぎりぎりの時間まで肌を重ね、昼食の時間にはバスの中で昼食を腹に詰め込み、このマンションまで走る。必要があれば、いくらでも時間を作る――今日手に入るものを、明日まで待たない。あたし達の世代は、皆そうだ。
国連軍払い下げのB-3ジャケットの襟を立て、最近妙に規則的な減り方をするタバコに火をつける。重い扉が、開く。

初めて傷跡にキスされた時、あたしは泣いた。

心と体を縛っていた弦が姿を消し、今まで響くような音を立てていた頭の音が、ひとつ、またひとつと消えていく。
簡単で、フェアな取引だ。がたつくキッチンのテーブルの上。仰向けのまま、時折首を傾けて火に掛けたままのフライパンを気にしながら、落ちないようにテーブルの端に爪を立てる。テーブルの上のくだらないものが床に落ち、ひとつ音が消える。
狭い毛布の中で、寒いと言い、2度目にはそれがなぜか気の聞いた冗談に変わり、2人で笑い、もう一つ消える。心地よい音楽のような優しい言葉、指がまだ暖かいところを探し、ゆっくりと開いていく。またひとつ、音を立てて弦が切れる。

軋む音が鼓膜を揺さぶる。今度こそ、消えてしまうのだろう。あたしも一緒に。

その明瞭な沈黙の中、ふと夜中に目を覚ますことが多くなった。暗闇の中、胸の鼓動とシーツの擦れる小さな音を確認する。起こしてもいいのだが、その必要はないだろう。
140名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 01:50:31 ID:???
明朝、ローン未払いのドゥカティ916に跨り、無人の環状線を走る。建設中の新首都を後ろに流すと、頭が軽くなる。去年、腰にひびを入れたばかりだが、この癖は治りそうに無い。
余力を残す朝の太陽が墓標のような巨大クレーンや、内部を剥き出しにした高層ビルを照らし、夜の終わりを街の小さな影に告げていく。

昨晩そうしたように、重いハンドルを力いっぱい握り締める。

――助平な顔してるわよ、また。

――してた?ゴメンね。

呆れた表情であたしから目を逸らす。研究用の白衣に両手を深く入れ、こちらをにらみ返す。この娘の子供っぽい癖を見ると、散らかったあたしの部屋を思い出す。

子供時代の欠如、か。どこかしら、欠けているのだろう、あたしたちは。呆れた表情でこちらを見つめ、ため息をつく。空のコーヒーカップを手からぶら下げ、すれ違いざまにこう言う。

――よかったじゃない、ミサト。

あまりにもくすぐったかったので、ちょっと腹を立てた顔をして見せる。

――そうだ。あれ、ちゃんと買っといてくれた?

――抜かりは無いわよ。本当にやるの、あれを?

二人で、腹を抱えて笑う。

141名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 01:52:46 ID:???
―――――――――

地下の建設施設は、小規模なゴーストタウンといった趣だ。電力供給さえままにならないこの地域では、剥き出しの蝋燭や地下ガスを流用した街灯が目立つ。

――綺麗ね。見たことも無いのに、懐かしい感じがする。

まさに光の街だ。

ここは、ネオンとヘッドライトが夜の妖しさを演出する地上の繁華街とは違う。あそこの街灯はせいぜい、大気圏外からの衛星写真で鑑賞するのがおあつらえむきなのだ。
大陸の海岸沿いに灯された、夜明けまでの間、原始の暗闇を遠ざけるだけに充分なだけの灯り。
だが光の洪水のような街を歩けば、そこでの光がせいぜい見てくれの良い売女であることに気付く。安定した火元を供給する発電所に依存し、
安っぽい硝子で装ってはスパークしそうなきらびやかな出で立ちで 歩行者を魅惑する彼女らの今の役目はせいぜい店の呼び込だ。
ネオンの光が売春宿屋に最もしっくりくるのは、決して偶然ではないのだ。ネオンの老いた発光ガスの筒は、己を忘れ、役目さえも忘れた奴隷のように配列を繰り返し、
業務終了の明け方を待つのみ、か。

バカだ。

誇大妄想の極みだろう。それにネオンと売女、というアナロジーもいささか詩心に欠ける。リツコに話して聞かせたら大いに笑われること、間違いない。

加地から教えられたアパートがあるブロックの角で足を止める。一度でいいから、と誘われて来たものの、妙に気が引ける。アパートの入り口には錠前すらかかっておらず、新鮮な夏の夜を開け放たれた内部へと誘っている。

「加地君――来てるの?」

ドアの隙間を少し広げ、ひんやりとした部屋に入る。
142名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 01:55:28 ID:???
「葛城―」背後からの声に振り返る。

「こっちだ。キッチンの方。心得たゲストのように、ワインを持ってきてくれたか?ちょうど一本空いたところさ」

先程は無人だったキッチンから数名の笑い声が聞こえる。廊下を抜け、キッチンの暗闇の中に大き目のテントを見つける。入り口のチャックから光が漏れている。

「竪穴住居とは、恐れ入ったわね。偏見そのままじゃない」、狭いジッパーの中に顔をもぐらせて言う、「こんな事ばかりしてるから世間一般で後退人種とか呼ばれるのよ」

「言わせておけばいいですよ」加地の横に座っている眼鏡の青年が言う。小さな目が眼鏡の裏でいたずらそうに笑っている。地下上がりでも、こんなに若い人間がいるのだと驚く。

「まぁ、我々は裏方仕事ですからね。人知れず、地下ごもりですから――上界の、敗退した文明世界からの客人さんたちには目に毒でしょう」

「野蛮かつ快適な文明社会から、きちきちに冷えたワインを持ってきた客人、かな。もっと正確に言うと」

「すごい」 眼鏡の後ろで、大きな瞳が見開く。

――文明の英知の二つの遺産―プロメテウスの炎、デオニッソスの葡萄酒。そうだ、猿ども、冷えた炎の前にひれ伏すがいい。

「本物よ。インパクト前の骨董品」

「ゲヒルンの資料館からの贈り物」リツコがあたしの後ろから顔を出して言う。「液体窒素入りのボトルでかちかちに冷えてるわ。文明の炎に触れたい人は?」

加地はボトルを手に取ってしげしげと見つめた。蝋燭の光で、彼の目が一瞬だけ、哀愁に満ちた表情に変わった。

「懐かしいな」 そして、ボトルを隣に座っている青年に手渡して言う。「いささか、悪趣味だがな。感謝するよ」 彼が本当に笑うのを初めて聞いた気がした。「まあ、適当に腰掛けてくれよ」
――――

ワインのボトルが空けられるとボトルに内蔵された合成音のヴォイスチップが、ワインの購入者が毎年20組抽選で選ばれる2000年のトスカーナ地方のワインの旅に入選されていることを告げた。結果は、ワインが空になると同時に発表されるはずだ。

――――
143名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 01:57:21 ID:???
―――――――――――――――――――

先ほどの眼鏡の青年は日向といい、加地と同じ地下上がりだそうだ。

テントの中心には、掘削地特有ののオレンジ色のランプが下がっている。その下には小さな木製のテーブル、
クロス代わりのビニールシートには第2青函トンネルの完成の写真がラミネート加工されている。数年前の記事だが、作業現場から次へと移動してきた彼らの誇りなのだろう。

重機の横に立っているのは加地――厚手のコートに身を包んでこちらに手を振っている――と数名が記念写真のように肩を組み合っていた。

「僕も映っていますよ、ちなみに」日向が身を乗り出して写真を指差した。

「君はまだ15、6才だったはずでしょう?」

「はい。義父が重機関連の下請けをやっていましてね。」日向はそう言うと写真の端のクレーンの窓を指差す。

「見えないわよ」写真の操縦室は暗闇に近い。

「拡大すればわかりますよ。15才で、クラッチに足が届かないまま操作していたんですから」

暗影の中にそんなおぼろげな人影が見えないこともないような気もする。そう伝える。
144名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 01:58:43 ID:???
「あのころの業界では、青函トンネルみたいに危険な現場に搬入する無茶をやるバカは親父ぐらい、でしてね。
みんな、家族もちだったし。今考えると、無茶しました。臨時ボーナスに目がくらんで、親父の代わりに行ったんです。
トンネルの搬入口もすごい傾斜で、まっすぐ走ってくれなかったんですよ。
歴史に残るほどひどい吹雪の日で、こっちは絶搬入許可が出ないって、踏んでた。
顔見知りの業者に、『このまま立ち往生になってボーナスは頂きだ、志願すりゃあ良かったのに』って言って笑ってやりましたよ」

そう言うと、日向は人懐っこそうな顔を加地に向けた。

「ところが、管制塔はOKを出してきて、信じられませんでしたよ。予定どおり工事をやるから、コンサートホールみたいな傾斜を下がって来い、って言うんです。
僕はもう、やけくそになってエンジンを全開にして、下りました。死んじまえ、くらいに思われてたんでしょうね。加地先輩も、僕も。
人の命が、安かった時代ですよ――葛城さんの頃に比べれば、落ち着いていたでしょうけど」

「工事は、延期されなかったの?」

「あのころは、マヤちゃん――」テントの向こう側に座っている華奢な女の子を指差す。最近、しょっちゅうリツコの後をつけている研究員の娘だ。地下上がりだとは、知らなかった。
「――の具合が良くなくて。加地先輩としては、一日でも早く終わらせたかったんでしょう。これを逃したら、後1ヶ月遅れてしまう。だから、直接に操縦席に来て僕に頼んだ。
『責任は俺が取る。下ろしてくれ』、ってね」

――――――
145名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 01:59:34 ID:???

日向は義父の元に、戻る事はなかった。恐れを知らない重機オペレーターは工事終了後の祝賀式――廃墟ビルで深夜にひっそりと行なわれたのだが――で、ワインをたっぷり振舞われたのだった。

(「いい気分でしたよ、正直」と日向は言う。)あくる日、日向が初めての極上の二日酔いから目が覚めると、窓の外で加地と伊吹たちが、朝の光の中でおんぼろの重機にワックス掛けしていた。

「出来ることといえば、この位でね」と加地は若干恥ずかしそうに日向に伝えた。

日向は、その後2日間、重機のコックピットに横になりながら、加地達が現場から足場を外し、トラックに積む様を見ていた。何か、見てもいても飽きなかったんだ、と言う。

トンネルが開通し、重機を外に出せるようになったその日、日向は加地に、ここに残って、しばらく手伝いを続けていいか、と尋ね、それ以来地下の生活者になった。

――――――
146名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 02:01:44 ID:???
―――――――――

蝋燭の明かりの中、空けられたばかりのボトルからはまだ冷気が立ち上っている。一箱も空けたのは、初めてだった。

「ほら、覚えてるでしょ、昔の東京ビルを取り壊したときよ。テレビが復帰して間もない頃」

確か、シェルター暮らしの頃だったはずだ。午前中から雪が止まなかった日だ。娯楽室のテレビでは特番を組んでおり、帝国ビルを偲んで集まった群集の顔を捉えていた。
ビルの中央部分に埋め込まれた巨大ディスプレイが巨大なクレーンに取り外され、海中に放り込まれると、群集からうめき声が上がった。 それを打ち消すように巨大なストロボ花火が
空に上がったのを覚えている。

「花火が―」呂律がうまく回っていないが、花火、という言葉がこんなに美しく響くとは知らなかった。起爆的な単語だ。もっとこういう言葉を使うべきなのだ、普段から。

「花火が、上がったのは、あれだっけ?」
「花火?嘘、そんなの上がったかな?」加地が怪訝そうに尋ねる。

「ほら、当時流行りだったストロボ花火で――」

「ああ、懐かしいね。何年前かな?今の規定じゃぁ、あんなの上げさせないだろう」

「ほら、上野動物園が再オープンした頃よ。加地先輩と一緒に、新東京まで白熊のつがいを見にいったもん。」マヤが、そう言う。日向は、懐かしそうな顔をした。

「君らが見たかったんだよ、俺は恥ずかしかったよ、正直言って。」加地が苦笑いする。「あの白熊も、インパクトの生き残り、とか鳴り物入りでデビューした割には、すぐお陀仏になったな――」

かみ殺した笑い声が、テントを満たした。こういう瞬間だけを、心に残しておきたい。いつかそれが全てなくなるとしても、あたしは構わない。そう思えたのは、この日が初めてだった。

「――色々、あったわね」 リツコがそう言う。「あたしたち」

「ありましたね」一瞬だけ、見えない何かに目を向けると、日向は言う。「これからですよ、僕達は」

全員の視線が、一瞬だけ交差する。口では言えない物、表せない物のかたまりをそれぞれの方法で見つめる。

「これから、か」加地が言う。「そうだろう、葛城?」
147名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 02:04:52 ID:???
テントの中、各々が重なり合うようにして、眠い者から眠りにつく。彼らにとっては、これが当たり前なのだろう。丸めたジャケットを毛布代わりにして、体を横にする。
壁に寄りかかり、うとうとしていた加地と、目が合う。

「ありがとう」それだけ言うと、目を閉じて白熊の夢を見た。

――――――――――

――撮るぞ。俺の場所、空けとけよ。

三脚の上に乗る旧式のライカ。血圧計のようなタイマーが、時を後ろに流していく。3人で映れるように、小さなフレームの中で加地に寄りかかる。
レンズの瞬きを待つあの時間は、思い出すほど長くは無かったのかもしれない。

――――――――――

暗闇の中。語り尽くされた暗闇に別れを告げ、現在の深い闇に帰る。――結局、泣かせてしまった。そう後悔しながら、震える肩をもう一度抱いてやる。もう一度だけ、テントの中で見たあの顔を思い出してみる。

――俺の場所、空けとけよ。

今だって、空いている。そう、暗闇に告げる。

148名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 02:24:49 ID:???
ネ申

でもこれどうやってペンペンに戻すんだ?
149名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 02:36:39 ID:???
再起動age
150名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 02:44:08 ID:???
GJ!
俺らはマターリまっとくからがんばってくれ
151名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 02:58:08 ID:???
乙です
152名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/19(日) 23:37:15 ID:???
ネ申サマGJ!ホントにスゴいです!本にだって出来る!そしたら買う!間違いなく!
153名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/20(月) 01:03:21 ID:???
もうペンペンは正直どうでも良い。
154名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/20(月) 04:30:38 ID:???
いやどうでもよくない
155名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/20(月) 14:11:36 ID:???
自分は神の文が読めることが一番の幸せだよ(・∀・*)
156名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/20(月) 15:41:32 ID:???
俺も
157名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/25(土) 08:54:47 ID:???
age
158名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/28(火) 22:00:12 ID:???
保守
159名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/29(水) 00:50:53 ID:???
保守
160名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/03/31(金) 13:33:00 ID:???
保守
161名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/04(火) 15:04:09 ID:???
保守」
162名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/06(木) 13:58:41 ID:???
「保守」
163名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/07(金) 20:43:45 ID:???
保守
164名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/09(日) 01:39:44 ID:???

離れていったのはいつだったろう。理不尽な質問だ。最後に見たのがいつだったか思い出せれば、誰も亡くし物などしないのだ。
冷えたビールで首の後ろを冷やし、テーブルの上の携帯電話で本部の警戒レヴェルを確認する。それから、技術部のストレージにログインして上からデータを洗う。
元来は予算が取れそうにない技術的な改善や、具体的な実現方法がない提案をまとめておくフォルダだが、リツコの計らいで今は旧ゲヒルンの候補生たちのちょっとした
連絡先になっている。モニタから目を離せない日向や、行き先が掴めない加持に連絡を取りやすいように、との一案だ。

――冷蔵庫よ。覚えてるでしょう?

あれか。あの頃の食堂には大型の冷蔵庫が鎮座しており、ステンレスの扉に学会の呼びかけやら、地下施設の通路の近道(大半はガセで、よく酷い目にあった)のメモなどが貼り付けられていたのを思い出す。
w
ファイルの中には、上層部が開かないようなファイル名で保存された、口にはできないような伝言も含まれている。本来、352通りしか存在しないMAGIのシステムアップ時の
エラーログに353-360と記されたファイルを空け、文字化けにしか見えない数字の羅列を日本語に置き換える。

「サード、依然、連絡つかず。諜報部の接触も無し.HM」

ため息をつき、「ありがとう。もう少し洗ってみて。お礼はするから.KM」と書き込み、携帯電話を閉じる。日向なら、もう少し粘ってくれるだろう。本当に欲しい物は与えずに、使い走りばかりさせているような気がする。

もう帰ってこないのか、あの子は。

―――
165名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/09(日) 01:41:58 ID:???

定期試験終了。週末にまとまった休みを取れるようにと、スケジュールを大分詰めた金曜日だった。旧松代からの定期便がキャンセルになったので、倉庫から小型のヴァンを拝借して、2人で新東京に向かう。

舗装もままならない旧道、スプリングが剥き出しになった座席シート――無人の廃墟ビルや食料配給センターの跡地が少しずつ、見慣れた風景に変わっていくと思わず口元が緩む。
第3新東京市の新規居住者に配布されたビデオ――高台に設置されたカメラが、高速早回しで焼け跡から高層ビルが生えるのを撮影した、あれだ――をフロントガラスに投影しているような気分だ。
アクセルを踏む足が、少し緩む。木材で造られた臨時用の電線柱を、夕日の中に後ろに流す。

排熱ダクトの設計ミスのせいで視界がよどむような暑さだった松代のケージが嘘のように、心地よい風が車内を拭きぬける。ブラウズのボタンを外し、タンクトップの下に新鮮な空気を送風していると、呆れ返ってこちらを見るあの子と目が合う。

――サービス、サービス。ちょっと、目に毒かな?

光化学スモッグに濾過された夕日が、不自然なほどオレンジな光で社内を照らす。髪の毛に残ったLCLを、タオルで拭いているあの子に目をやる。

――信じられないでしょう?地方から、一日に数百もの人間がここに集まってきたのよ

――疎開、してたんじゃないんですか?密集地なんて、酷かったんでしょう――特に。

慎重に言葉を選んでいるのがわかる。シートのスプリングがきしむ音を立てる。

――ヨーロッパの黒死病と同じよ。近代都市のインフラ設備は、ある程度の人数が必要なの。そうしないと、凍結してしまうものね。だから、人が駆り出された地方から逆に過疎化するのよ。

寂しいのかな、とあの子は言う。皆で、まとまっていないと。

――かもね。本能みたいなものが集合的な無意識に働きかけて、ひとつの場所に集まるのかもね。あたしや、アスカや、あなたみたいに。

あたしが言ったことを一々深く考えたり、赤くなったりするので中々飽きない。窓の外を見てしまうので、中指で耳たぶを軽く弾いてやる。最近、段取りも定着してきた漫才のようなレパートリーを二人でこなしてしまうと、窓から入ってくる風に半ばかき消されそうな声で尋ねる。
166名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/09(日) 01:44:51 ID:???
――知ってる、シンジ君?ヨーロッパから、神様が消えちゃったのは黒死病のせいでもあるのよ。
   当然よね。あちこちでバタバタ倒れられたら、神様も、ご利益も、お役御免でしょう?歴史の先生達は、ヨーロッパの人口の3分の1が死亡、それだけで終わらせちゃうわね。
   でも、シンジ君、考えたことある?疫病や戦争が、個人に与える影響――そして、その影響を受けた人間が大人になって、世界を作る。あたしは、そっちの影響のほうが大きいと思うわ。


(冷たい雨の音が、畳に響く。うつぶせになり、音の中に足音を聞く。時間の概念も無いまどろみを、重い何かが隣に寝そべる何かが破るのを待つが、感じるのは冷たい視線だけだ。
先週の通達で追加された演習のせいで、瞼が重い。不動のまま、こちらをじっと見つめる黒い影。ブリーフケースを床に置くと、こちらにかがみより、頭をなぜると、頬に優しく

――火薬の臭い。乾いた、血の臭い。あたしの、知らない人だ――

翌朝、まだ眠る加地を片目で見張りながら、散々迷った挙句、小型のブリーフケースを開いてしまう。
グロック17。背広の下からでも抜ける、ナイロン製のホルスター。これ位は、予想範囲内だ。ゴムバンドでまとめられた、同じ顔写真に違う名前が並ぶID。
細長い金属は、ドアピックだろうか。先端が鋭すぎような気もする。ペンチ――歯科医が奥歯を抜くのに使う、あれだと気付くのに少し時間がかかる。
小型のテープレコーダー、イヤホンを片方だけ着けて再生ボタンを押す。


ビープの後、短い金属音。沈黙の後、誰かが、うがいをしているような音。「全部、吐き出してみろ。そんなもの飲み込むと、体に悪いぞ――」
コンクリートの床を、パイプ椅子が暴れる音。「こっちには十分、時間がある。あんたにとっては、不幸な事実だ」声が、少し近くなる。
「喋ってもらう――前の方に行くほど痛いらしいからな。始めるぞ――

――二度と家には持ち込まない。約束するよ、葛城」

上半身を布団から起こし、振り返ったあたしを見つめている男が、そう告げる。)



167名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/09(日) 01:46:26 ID:???
―――

塗装された道路の上に乗り上げると、タイヤがアスファルトを削る定期的な音に変わる。

――刹那的な娯楽ばかり、流行ったそうよ。漁船いっぱいの死体を海まで漕ぎ出して、沈めてたくらいだもの。教会の前には行きずりのカップルが列をなして、挙式を待っていたんだって。
   団体割引まであったらしいわ。随分、いいかげんな神父もいたものね。

あの子の視線が、開けっ放しにしたブラウスの合間を泳ぐ。お目当てのものは見つからなかったのか、すぐに視線を窓の外に返す。
首の十字のネックレスが、傷跡の結合部を冷たく舐める。

――でも、これには裏があるのよ。教会や修道院は病人の看護で、真っ先に疫病の毒牙にかかった。ほぼ壊滅ね。
   後釜は、新米の神学生か、二重婚姻を許すようなバッタ物の神父だったわけ。扱いも知らない人間の手に渡って、神様も消えてしまったのね。

(モニタに移されたあたしの影を見つけ、あの子がこちらを振り返る。一瞬、緊張した顔をするが、構わずに近づき白衣の肩に後ろから寄りかかる。

蛍光灯の光。机の上のクリップやスチール写真。まるで事故写真のような――

――ミサト。見ないで。お願い。

あの子の細い手首を掴み、デスクからどける。一枚目:ドイツ支部からの視察スタッフとの記念写真。自閉症患者の少年少女を数名連れて、研究所を歩いていた。
二枚目:白黒のフラッシュ撮影。白く光る金属のピンが、針鼠のように打ち付けられた、スポンジ状の丸い物体――剥き出しの脳髄。突然のフラッシュに見開いた目がメスで切り開かれた前頭葉の下から、こちらを見つめている。

「―ミサト、あたしを信じて」

知らない女がそれだけ呟き、あたしは部屋を後にする。)

――
168名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/09(日) 01:48:34 ID:???


(あたしは、走る。戻ってきた、あの音に突き動かされて。

激しい頭痛を模擬する、地震のような音。あたしは必死に別の音でそれをかき消す。

射撃レーン。卒業と同日に志願したドイツ支部。内戦の焔が未だにくすぶる、世界一の地雷の埋蔵地だ。
本部建設地周辺の地雷撤去作業、旧東ドイツ側から西側への密入国まがいの技術者のエスコート。ゲヒルン内では、解雇処分の最後通達であるチケットだ。
騒音だけは、事欠かないはずだ、そう言い聞かせる。

空港のロビー。国連機を待つ間、見送りに着てくれた2人の姿を人ごみの中に見つける。

――本当に、行くのか?

うなずき、重いスーツケースを脇に下ろす。2人に同時に手を回し、思い切り抱きしめる。良い部分だけを、思い出せるように暖かさをしっかりと胸に刻印する。

――君が、決めたことだ。君なりの答えを探してくれ。

電話するから、それだけ告げて後ろを振り返らない。プロペラを回転させる輸送機のタラップまで、滑走路を走る。スーツケースは、ロビーに置いたままだ。

旧ベルリン市外。水銀レバーをゆっくりカバーから外し、親指と人差し指で抑える。血管の動きで、水銀が波打つ気がする。もう片方の手で液体窒素のスプレーのキャップを開き、電源供給部分を凍結させる。
地雷の上に足を置いたままの同僚に、もう少しで終わるから、と伝える。

――度胸あるな、姐さん。
169名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/09(日) 01:50:53 ID:???
どうでも、良いだけかもね。ドイツ語でニュアンスまで伝わったのか、不思議に思う。金属探知機に掛からない地雷を、足の下から撤去する。
あたしの番の方が少ない、と指摘される。「別にいいわ。お互い様だしね――こういうのは」 ドレスデン。初めてハズレを引く。ペンチに挟んだ銅線を見つめながら、撃鉄を起こす音を首の後ろで聞く。
藪から鳥が一斉に幅立つ音、沈黙。半分ズボンを下ろし、汚れた歯をあたしに見せて笑う。バレルでチャックの部分を指差し、口で吸い付くような仕草をする。
銃身で少し離れた背の高い草薮を指差す。おれとお前、あそこで。

うなずき、ペンチから手を離す。――動いちゃダメよ。すぐ、戻るから。ジャケットを脱ぎ、ブラに手をつけたところで、熱に圧縮した空気を全身で感じる。
目の前が白く変わり、血と肉片を顔に浴びる。起き上がり、ズボンを下ろしたままの相手と銃を奪い合う。つばを吐きつけ、ストラップで相手の首を固定したまま、やっと見つけたトリガーを引く。
剥き出しの喉仏が、テレビの雑音のような音を立てる。振り返らず、同僚の元に走る。ベルトで出血部を縛りたいが、ほぼ腰から下まで損傷しているのでうまく行かない。残った足の部分を、シートベルトを
使って止血する。モルヒネを2本、あたしの分まで打ってやる。肩に掛かる顔、鎮痛剤の霧の中からの告白。

――もっと、早く言ってくれればね。

止血ベルトの少し上――溢れる血液で濡れた、生き物のようなかたまり。一番もろい場所なのに、無傷だ。モルヒネは、筋肉弛緩の効用もあるのか、思い出せない。
手を伸ばし、震える片手で可能な、出来るだけ優しいリズムを刻む。夢の中で、自分が落ちる場所を探すような喘ぎ声。口付けを交わした後――

―もういいよ、姐さん。
170名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/09(日) 01:52:09 ID:???
臨時特設キャンプ。シャワーを浴び、少しだけ泣くと、明日の志願表に自分の名前を書き付ける。
死の臭いを発しているのだろう、廊下でもあたしに挨拶するのは、よっぽどの変わり者くらいだ。手持ちのボールペンから、インクが漏れだしているので、うまく書けない。
近くにいる、白髪混じりの男に、ペンを貸してくれように頼む。

「その必要は無いよ、葛城君。」懐かしい何かを探しているその目を見て、父の知り合いであることに気付く。「新しい仕事を、君にもってきた
――所長が君の噂を聞いてね、ぜひ君に任せたい仕事があるそうだ。」差し出された名刺。聞いたこともない組織のロゴを見つける。ドイツ語では、「神経」の意味だ。

「そいつは、擦りたてでね。自分は、冬月コウゾウという。あちらのお嬢さんは、惣流アスカ――本日から、君の娘だ」

廊下の影から、小さな足音がこちらに向かってくる。歯車が音を立てて動き出す。その音が、あたしの中の音を掻き消す。)

――――――

――結局、ヨーロッパの教会が本来の力を取り戻したのはそれからずっと後よ。後の世代よ、それをやったのは――疫病を知らない世代。後の世代が頑張れば、ちゃんと伝わるものなのね、中継ぎがどれだけ悪くても。

少し、泣いているのかもしれない。僅かな雫を目元から払う。

――ゴメン、押し付けがましかったかな?

あの子は、首を振る。あまりウェイトを掛け過ぎないように、慎重に。大事なのは、ゆっくり気持ちを伝えることだ。
あたし達には無かった時間が、この子達には十分にある。ハンドルから片手だけ離すと、また窓の外を見つめ、拳をしっかりと握ったあの子の手の上に、手のひらを重ねる。
171名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/09(日) 01:53:31 ID:???
――シンジ君、好きな娘いるの?

環状線を降り、強羅インターチェンジ前の渋滞を待つ間、そう尋ねる。

――ねえ。いるの?
――特には、いません。

「特には」の時点でこれ以上無いぐらいにバレバレなので、ハンドルに寄りかかり、笑いを堪えるのに必死になる。数日振りに吸う排気ガス混じりの空気が、夜の街の湿気と共にリアルに肺に染み込む。

――クラスメートの名簿、上から順番に読んでみましょうか?それとも、下からがいい?

――越権行為ですよ、ミサトさん。

――どこが好きなのか、だけでいいわ。我慢しとく。

――我慢も何も、無いですよ。いいですよ、どうせ名簿には載ってませんから。

載っていないだろう。あの子は、転校生だ。こういうのは、大分後にならないと笑えないものだ。ゆっくり、手を離す。 ――そっか。アスカが好きなんだ。

そうなんだ。

後部からのクラクションを合図に、ヘッドライトの群れが光の街を目指す。

――だったら、頑張らなきゃね。

――わかってますよ。

――努力よ。後、忍耐ね。転んでも泣かない。わかった?

それから、転びっぱなしの人間の言葉は重みが違う、と感心気に言うので首根っこの辺りを思い切り押さえつけてやった。買い物袋を2人で抱えてマンションまで上がり、3人で遅い夕食にした。話題になっていると言うので、3人で寝そべって蛙が出てくる漫画を
見たが、どうにも話しがうまく掴めない気がする。深夜枠の映画で、白黒の古い映画を途中まで見ていると、話が気になったので朝まで見てしまうことにする。ソファの上の特等席を巡り、2人で口論するが、譲るのはシンジ君の方だろう。
172名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/09(日) 01:55:05 ID:???
映画の途中、廊下に出て加地の番号に電話を掛ける。

――まだ起きてるのか、葛城。俺がいないと、そんなに寂しいか?

――後生憎さま。あの子達との休日を満喫してるのよ。そうだ――加地君――覚えてる? あの貯水タンク。

――忘れるわけがない。

少し、間が空いてから。 ――どうか、したのか?


――今日ね、久しぶりにあの音を聞いたの。誰かが、返事してくれる声。ずっと、してた音なんだけどね――今日、突然気が付いたのよ。 それだけ。あなたには、知っとく権利があると思ったから。


――そうか――よかったな、葛城。


来週、飲みに行く約束を取り付けると、居間に戻る。テレビのモニタの中で、ヒロインが群集に拍手喝采を浴び、祝福されるのを見ながら、布団の上に腰を下ろす。
173名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/09(日) 02:34:41 ID:???
age
174名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 19:07:53 ID:???
LAS人かよ、ネ甲...

_| ̄|○
175名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 19:39:13 ID:???
>>164-172
ktkr!相変わらずネ申!!
ミサトさん可愛いよミサトさん
>>174
せっかく続きを書いてくれたのにその反応は失礼じゃないか?
176名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 19:46:23 ID:???
ん、ここも作者マンセースレなのか?
177名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 20:10:05 ID:???
作者マンセーの何が悪い?
過疎板のSS・FFはおだてて書かせるもんだ
178名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 21:44:14 ID:???
LASとかLRSってだけで叩くというのはマンセーするしない以前の問題かと
確かにLASスレじゃないけどそもそもシンジがメインのスレですらないからねー
179名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 21:46:09 ID:???
って別に叩いてないな
スマソ
180名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 23:05:49 ID:???
ここはLMPスレだ。
別スレではLPGも進行してるし、案外不可能じゃないな。
神以外でもLMPに挑戦する勇者募集
181名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/10(月) 23:40:24 ID:???
地雷の所がよくわからん。

歯が汚いヤツ→ミサトを草むらでレイープ。
同僚→助けようとして、あぼーん  でおK? その後は?
182名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/11(火) 00:28:56 ID:???
私も地雷良く分からん。
同僚Aが地雷に足を置く→足をどけてしまうと爆発するからミサトが慎重に解体している?
→途中で歯の汚いもう一人の同僚Bにsex誘われ、Aを待たせてそっちに向かう?
→同僚Aの地雷爆発→虫の息のAがミサトに告白
→ミサトがAをしごいてやって息を引き取る?

うーん、でもどうりょうBとは銃を奪い合ってるんだよね?
しかもなぜかどうりょうAを待たせて誘いにのったのかも不明。
183名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/11(火) 00:29:52 ID:???
>>177別にそれはSS等に限った事じゃないだろ。作品の良し悪しに限らず作家はおだてて書かすのが定石。
ただ誤解してほしくないのはココの作者はマジ上手い。
だからネ申これからも頼む!ってこれじゃああんま説得力無いな… orz
184名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/11(火) 03:39:16 ID:???
歯の汚い奴ってのはその辺にいたチンピラだろう、ミサトが誘いにのったのは断れば同僚共々死んでしまうからでは?
185名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/11(火) 15:00:19 ID:???
同僚の足元の地雷解体作業中
→敵が背後から銃をつきつけミサトにsex強要
(ミサトの同僚が動けない状況にあるのを確信して、「拒否すれば殺す」or「断れば地雷を撃つ」みたいな)
→同僚に「待っててね、すぐ済むから」と、敵に従うミサト
→で、同僚はミサトが好きだから、動かないでと言われても動かずにいられなかった
→動いて爆発。
→ミサト、爆発に気を取られている敵から銃を奪い取って撃ち殺し同僚のもとへ
→同僚虫の息、告白→好きな人の手で同僚のをしごいてやる(冥土の土産)
186名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/11(火) 16:57:59 ID:???
なるほど
187名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/12(水) 00:55:04 ID:???
ミサトたんの手コキ… (;´Д`)ハァハァ
188名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/14(金) 17:00:01 ID:LvyzDjjB
舞い上がれ
189名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/15(土) 06:22:25 ID:jyHFvmS9
sage
190名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/15(土) 19:49:46 ID:???
本当にうまいね。語の選び、拍のとり方。
やはりさぞや名のある山のヌシに違いあるまいて。
2chの外では自分の名も持っていそう。

ひとつ校正事項

「加持」 がいつの間にか 「加地」 になっているよ。

この話では「加地」なのかもしれないが、念のため。
191名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/18(火) 16:09:20 ID:???
そうかな?ただ文章が好きな高校生とか大学生辺りだと思うけど
こういう語の選びとかは海外小説たくさん読んでれば身につく
持ち上げ過ぎ。究極のオナニー文章。神じゃない。本にしても売れないよ
192名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/18(火) 17:50:16 ID:???
はいはいわろすわろす

保守
193名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/19(水) 00:34:26 ID:???
まあ、現実問題として文種の上手い下手と売れる売れないがそれほど関係しなくなってるからな
巨匠と呼ばれる人たちでも日本語として読んでみると明らかにおかしい文章書く人たちだっているわけだし
ただ、ここの投下人さんの文章が上手いってのは確かだね
なんていうか、とても読みやすい
194名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/19(水) 04:52:01 ID:???
>>191
なぁに? あんた嫉妬してんの?
195名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/19(水) 11:23:30 ID:???
>>191
とりあえずお前がなんか書いてみろカス。
196名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/19(水) 15:11:17 ID:???
>>191
なんで素人とプロを比べてんの?
素人が劣るのは当たり前だろ
197名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/19(水) 22:34:51 ID:???
釣られんなよ…
職人さん頑張れ
198名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/22(土) 22:52:52 ID:???
保守
199名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/23(日) 09:58:21 ID:???
今更ながら文章の上手さにビックリした俺が来ましたよっと



別に金払ってる訳じゃないんだから、楽しめなかったらスルーしとけ
200名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/24(月) 00:12:04 ID:sJP/Prtl
200get!
201名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/24(月) 01:01:41 ID:???
いい加減褒め殺しにしか見えなくなってきたぞここの感想…
いや煽りじゃないんだ。文章に文句もないんだ。
だが二言目には「文章上手い」って感想ばっかりじゃ
作者もかわいそうだ。
内容に突っ込んだ感想なんて、数えるほどじゃないか…
202名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/24(月) 21:44:14 ID:???
すごく申し訳ないけれど正直俺は内容に関してはあまり好きじゃない。
ふーん、位で感想がでてこない。
だけどやっぱり文章は上手いから読みたいと思って、何度も読み返したりする。

神、ごめん。でも俺待ってます、次の投下。神の小説読みたいです。
203名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/24(月) 21:45:50 ID:???
内容は無いよう
204名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/25(火) 15:02:03 ID:???
文章表現は勿論、内容も嫌いじゃない。
だけど上手く表す言葉が無いんだよなー。語彙が少ないもので…。すまん。
205名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/25(火) 22:03:30 ID:???
本当に個人的な感想を述べると、臨場感?みたいな、こう・・・上下の浮き沈みがないような気がする。ただ文字をズラズラッと読んでいくような感じ。





けど好き
206名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/26(水) 01:02:49 ID:???
つーかむしろそういう書き方がこの作品の雰囲気作ってると思うんだ
じめじめしてるというか、重苦しいというか・・・
207名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/26(水) 19:44:29 ID:???
自分より数段優れたものに出会ってしまうと、よっぽど鍛えてなきゃ評価なんてできないよ。
ただ、すごい とか、面白い とか陳腐な言葉しか出てこないのが現実。
職人さんにはちょっと物足りないだろうけどね。
208名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/26(水) 21:31:42 ID:???
と、いうようにエヴァ板FFスレの住人が書き手ばかりとなったのが、
感想レスが廃れた原因の一つなんだよな
209名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/26(水) 21:49:57 ID:???
おまえらが変なレスばっかりするせいか職人が来なくなった…

文章がどうとかそうゆうのはあとにしろ!
210名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/26(水) 22:48:38 ID:???
どんなレスがあろうと待っている人がいる
職人よ、投下する姿勢を大切にしてくれ
211名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 00:10:16 ID:???
同意。
神は投下してこそ神なんだ。
どんな感想でも、決して「嫌いだ」という人はいなかった。
その気持ちだけ受け取って、書きつづけてください。
212名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 00:46:20 ID:???
ここのSSは嫌いです。
213名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 00:53:52 ID:???
糞以下。オナニー。やめちまえ。
214名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 00:57:40 ID:???
文章がキモい。
215名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 01:24:24 ID:???
高校生が書いたんだったら80点あげてもいいかな。
大学生以上で本気で作家目指してるんだったら止めた方がいい。
こんなの書ける奴俺の回りにゴマンといるから。







もう投下すんなよ、チンカスwww
216名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 01:25:15 ID:???
いま酷い自演を見た
217名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 01:59:02 ID:???
さぁ、荒れてきました。
218名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 02:03:18 ID:???
こいつわ醜いや
219名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 07:21:25 ID:???
釣られるが、嫌なら来るなといいたい
220名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 10:15:47 ID:???
>>215
ワラタwwwwwwwwwwwwww

お前本人が書ける訳じゃないんだなwww
自分に能力も無いのに他人の能力を自分の能力と勘違いして
他人批判してんじゃねーよ!
他力本願だろ?ついでにママの腐ったオッパイでも吸ってろ!
あぁ、ママは男とどっか逃げたか?じゃ、セルフフェラでもしとけ、
阿婆擦れ息子の被差別部落居住者!
221名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 11:45:31 ID:???
アホか
思いっきり釣られやがって
222220:2006/04/27(木) 12:30:25 ID:???
そんな餌で俺様がクマー
223名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 13:05:21 ID:???
こんな不味そうな餌に食い付く悪食がいたなんてな
224220:2006/04/27(木) 15:06:27 ID:???
すまない、腹へってたんだ
迷惑かけついでにもう一つ頼みたいんだが


針飲み込んじゃって、どうしようもなくなったんだ。
どうしたらいい?
225名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 15:44:49 ID:???
>>224
必死だな
226名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 15:47:38 ID:???
そんなことよりペンペンは(ry
227220:2006/04/27(木) 16:08:54 ID:???
うはぁ…また餌なのか…
228名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 16:46:29 ID:???
ここはもう釣り堀と化してしまった
気にすることはないよ

フフフ…
229名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 19:24:20 ID:???
みんながあんまりこのスレ誉めるもんだから嫉妬した他スレの職人・住人どもがハライセに荒らしてるんだろ…



以外と酔っぱらいスレあたりかな?
230名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 19:41:40 ID:???
どっかの馬鹿がいろんなスレに
「ペンペンのスレはいいよ!」
って宣伝するから湧くんだろ?
そうじゃなきゃスレタイ見て、スルーする人のほうが多い。
231名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 19:56:44 ID:???
>>229
実際確かめようはないんだから、そういうことは書くな。
ただ、荒らしてるのは1人だろう。
232名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 21:07:04 ID:???
>>229
 なんでそこがでるんだ?
ジャンルが全然違うじゃねーか
233名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 22:28:27 ID:???
もうやめてよぉ……
なんでみんな喧嘩するの?
なんで仲良くできないの?
こんなのやだよ……仲良くしてよお
234名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 23:16:37 ID:???
>>230
俺もそうだった。でも、200もレスが付いているから???と思って空けた。
235名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/27(木) 23:36:22 ID:???
>>229
どっちも愛読してるからそうであってほしくないな
てか229の妄想だよな?

あと原因のほとんどはあちこちに宣伝しすぎなせいだと思うんだが
236名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/28(金) 01:08:31 ID:???
嵐なんてある程度小説投下してたりすれば自然に沸く

ここの住人はかまいすぎだ
237名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/28(金) 03:26:07 ID:???
>>229
お望み通りバッチシコピペしといてあげたよ

作者も賞賛が欲しくてあちこち宣伝してたのに、この結果
哀れだねぇwwww
可哀想だねぇwwwwwwww
238名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/28(金) 03:45:54 ID:???
>>237
GJ!
これであのアホ共もおとなしくカススレでしこしこオナニーしてくれるだろ
いいか!?もう荒らすなよ、糞職人and糞住人!!!
239名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/28(金) 03:47:35 ID:???
いまひどい自演を見た
240名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/28(金) 03:54:34 ID:???
>>239
自分の気に入らない発言は全部自演でつか?
頭の中はお花畑で一杯なんですね?(プツー、クスクスwww
241名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/28(金) 03:59:52 ID:???
>>239
つ拾.煽り・荒らしを無視できなきゃ私、許さないからね!絶対許さないからね!
242名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/28(金) 04:09:07 ID:???
おまえらスルーぐらいはしろ
243名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/28(金) 05:12:51 ID:???
キャハッ♪
244名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/28(金) 16:05:57 ID:???
気持ち悪い
245水先案名無い人:2006/04/28(金) 17:14:12 ID:???
久々に来てみたら何これ
最近のエヴァ板は厨がひどいな
このスレといい、あのスレといい……
246名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/29(土) 00:07:11 ID:???
そろそろ最後の投下から3週間になる…

職人さん早く来て
247名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/29(土) 02:12:29 ID:???
m9(^Д^)プギャー
248名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 00:10:33 ID:???
;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン


249名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 02:35:57 ID:???

――――――

マグネシウムの発煙筒を点火すると、燃焼する亜鉛の白色の光が暗い空間を満たしていく。

――気をつけるのよ。もしもの時は、あたしにつかまって。

シャフトの遥か上、こちらを見張る作業員に手を振る。クレーンが降下すると、ハーネスで結ばれた命綱が緩み、あたしたちは下に降りていく。

――緊急用の発電所になる、らしいわ。ここも、見納めね。

旧地下街は、奇跡のような歴史のコラージュだ。かつて人の造りし物だった廃墟を寄せ集めで作った街だ。

大きい建物がないからだろう、空が大きく見える。色の違うコンクリートで作られた壁には白い塗装がなされており、
ベニヤで剥き出しの鉄筋を隠している。ここでは、家の素材がステータスだったことを思い出す。自分の家には、旧日銀の壁を使っている、と自慢する男がいたのを思い出す。
どの家にも住居者の手によって独自の趣向がなされている。今まで見たどの共同体よりも美しく、繊細な機能性と生活の息吹にあふれている。その全てが、奇跡だ。

あたしは、それが自分の歴史の一部であることを誇りに思う。

下に、あの貯水タンクが見える。ジオフロント上部から欠落した防御壁が直撃し、今では上からでも剥き出しになっている。この分だったら、このまま降りていける。

安定した水温を提供できる最新鋭の貯水タンクに比べれば、こいつは過去の遺産だ。それでも、よく頑張ってくれた。朝から冷たいシャワーを浴びることはもう無いと思うと、少し悲しい。

足場が安定しそうな所を見つけると、素早くハーネスを外す。空のタンクの上に寝そべり、丸く切り取られた空を見つめる。下を覗くあの子の顔が可笑しいので、ここ数日振りに初めて
声を出して笑う。あなたに、見せたかったんだ、と言う。

――あたしの大切な一部よ。もう、無くなっちゃうけどね。

空のタンクからは、カが抜けたような音しか返らない。心配そうに、あたしのほうを見つめる。
250名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 02:39:14 ID:???
――知ってるんでしょう、加持の事?

目を逸らすように頷く。アスカに何て言えばいいのか、わからないと言う。今は何もしないで、と答える。

――今は我慢よ。あなたも、キツいでしょうけど。

――ミサトさんです、一番辛いのは。

――優しいのね。あたしは、大丈夫。あの人の時間が少ないことは知ってたわ。

バックパックから、3人で撮影した写真を取り出す。旧地下街からの引き上げの際に、適当に鞄に入れておいたものだ。いつの間にかポケットに収まり、危険な地雷解体をする前には必ずポケットの上からこれに手を触れた。
危険な火薬が自分の四肢を吹き飛ばそうが、死んだらあそこに帰れるんだと言い聞かせると、手の震えが収まった。かちり、というペンチの音の後でもう一度写真に触れる。

悩んだが、これはここにあるのが一番良いと思う。そう口に出して言う。

――大切な思い出、でしょう?

――今はあたしを傷つけるだけのね。いい部分は全部覚えているもの。あの人の心がここを離れる事は無かった。

  セカンド・インパクト――あたしたちは、生き残ったと思ったわ。でも、待ち伏せされていただけなのね、15年も経って。


もう一度見て、それが自分の記憶と誤差が無いことだけを確認し、色褪せた紙片を黒い闇の中に葬る。上げて、と上の作業員に合図する。ケーブルの軋む音の中――無くなっちゃうんだ、と言うのが聞こえた。

――何もかも。何にも、残らないんだ。

廃墟の町を下に眺め、あの子がそう言う。

――当たり前よ。生きてくって、無くし続ける事なのよ。

それに耐えてこそ、人間は変われる。そうでなければ、生きていけないだろう。本当に伝えたかったのは、その事だった。あの子の表情に影が差すのを見たが、その時は何も思わなかった。
251名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 02:40:12 ID:???

空っぽのキッチンに声が響く。

――きちんと、説明して。もう乗らない、それだけで済む話じゃないわ。

震える声を抑えるのに、必要以上に声が大きくなる。ここ数日、仕事に打ち込むようになり、必要以上に過酷なテストを重ねていた矢先だった。

――答えなさい。あたしには、聞く権利があるわ。違う?

空ろな目が、膝の中に沈む。――怖いんだ。あれに乗るのが。

ため息をつき、横に腰を下ろす。

(何もしたくない。死にたい。)

――図々しい。そう、言われるかもしれないけど――あたしには判る。辛いのも、痛いのも知ってる。でも、それを乗り越えなきゃ何も始まらないのよ。

黙って、闇の中に沈むあの子を見る。あの子の手を握り、体を任せる。

――シンジ君。もし、あなたが望むんだったら――あたしは、あなたを喜ばせる方法をいくらでも知ってる。あなたは、欲しい、と言うだけでいい。だから、もう止めるなんて言わないで。

今思えば、その言葉はあの子なりの感情の表し方だったのだろう。加持を無くして間もないのもあった。だが、その言葉は、深くあたしを傷つけた。

――ミサトさんには、わかりませんよ。

手首を掴み無理やり起き上がらせる。暗い貯水タンク。必死だった。何もかもが。あなただけには、わかってもらえると思っていた。思った以上の力で押し返すので、思い切り押しのける。
小さな体が食器棚に当たり、ガラスの砕ける音がした。逃げ出そうともがく体を押さえ、髪の毛を思い切り掴む。ガラスの破片に足を取られ、2人してキッチンの破片まみれの床に転ぶ。

伝えられない言葉だけが、騒音の後に残る。

一瞥すると、あの子はこちらを振り返らない。玄関のエアロックを解除する音。追いかける気力は無かった。
252名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 02:42:11 ID:???
―――――――――――

目を閉じ、少しだけ自分を甘やかす。肘をつつき、二日酔いの生暖かいまどろみから、頭痛が待つ現実の側へと手繰り寄せる。

―風邪ひきますよ、ミサトさん。

―いいのよ。誰も心配なんかしてくれないんだから。2、3日休めれば言うこと無いわ。

空のビール缶を集め、流しのほうに運ぶ音。柔らかい毛布を可能な限り接触を避けながら、あたしの上に乗せる。寝た状態でも手が伸ばせる位置に、
ミネラルウォーターのボトルを置く。厭らしい笑い声を響かせていたテレビが、ぷつりと消える。

―シンジ君?まだ、いるの?

その返事は、夢の中で溶け合う男性のイメージだ。姿は無く、脳の聴覚より深いレヴェルで再生されているので、声色もあいまいだ。名前も無いような場所から
走ってきたという事になっていて、いつでも息切れしている。ずっと、探していたんだ、そう息継ぎしながら告げる。

――探しましたよ、ミサトさん ――どこに行ってた、葛城? 

はやしたてるように、言葉を紡ぐ。目覚めても、何を口にしたかは思い出すことは無い――自分史の中の、断片的なイメージの洪水だからだろう。

暗い脱出ポッド。サナトリアム。くすぶる硝煙の中。こんなに走って、あなたに辿り着いた。わかってもらえるのだろうか。

あたしの言葉をゆっくり聞き、何度も頷く。手を伸ばし、相手に触れたり、透けて触れなかったりする。ここで雨が降りだすのは、水のイメージの連想で、
あたしが実際に泣いているからだ。自分の甘さを呪い、少しだけ感謝する。夢の都合のよさや、優しい部分が崩れていく。

―どうした、葛城?
253名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 02:44:15 ID:???
―優しくしないで。後で、辛いから。

―減るもんじゃないし、良いだろう?もう、どこにも行かない。

だけど、あなたは死んだ。汚い倉庫の床で――脳味噌の半分を吹き飛ばされて。別の場所に移り、あたしはまた走っている。
日向からの電話を受け、緊急病棟のあなたのベッドにまで走る。廊下のタイルは滑りやすく、何度も転ぶ。病室のドアを空け、
奇跡的に息を吹き返したあなたを胸に抱く。ここで――

――手を伸ばし、暗闇をひとかたまり掴む。現実の摂理が、体を流れていく。あたしはダメだ、そう口に出して言う。震えが止まらない頃よりは少しはマシだ。
ソファによりかかり、玄関を見つめる。靴が減るのはひどく寂しい事だ、と思う。

腰の下にあったテレビのリモコンで、適当にスイッチを押す。「ミサト―」

差し出されたコーヒーの酸味が鼻につく。部屋の隅のブラウン管の蒼白い光が、自然光にはない毒々しさでその被写体を照らしている。残酷で、剥き出しで、正確だ。
モノクロームの光の反射で、純白のミルクの中に血を流したように、赤褐色の髪が揺れる。光を見据える薄青色の水晶体が少し活気を帯びているのを見て少し安心する。 「ありがとう。少しは――眠れたの?」

「だいぶ楽ね。夢も見なかったわ」冷めた目が、ちらりと玄関に泳ぐ。舌打ちの後――「帰ってこないわね、あのバカ」

黙って頷き、取っ手まで熱いコーヒーを一気に飲み干す。食道を通じて、血管と肺、次第にこめかみが熱を伝える。カフェインが血流を泳ぎ、
昨夜のビールの残りを体内から消し去るのを待つ。あの娘は、割り込むようにソファの半分を独占すると、あたしにこう尋ねる。「それ、面白いの?」

付けっぱなしのテレビ。放送開始前のカラーバーだ。唇を噛み、少し自嘲的な笑い方をする。適当に別のチャンネルに合わせ、青白い光りの亡霊で居間を満たす。
最新鋭の液晶テレビの紹介、深夜ニュースの再送、インパラの親子がサバンナで生き別れになるドキュメンタリー。

そのどれもが、脈略の無い映像のように目の前を流れる。「きっと――」スピーカーの音より近い声。「――同じ所をぐるぐるまわってるのよ、あいつ。いつもそうだもの」
254名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 02:49:39 ID:???

「心配、なのかな?」

口を小さく開け、人差し指で喉を指差すと、嘔吐するような仕草をする。「勘弁して」

「素直じゃないのね。可愛くないわよ」

「苦手なのよ。待ったり、期待したりするの――」

テレビの中、小さなインパラをヘリから空撮した映像。そんなに近くに居るなら、母親の所に届けてやればいい。普段は気付かない、この世界に要らないものばかりが目に付く。
口を開きかけた時、あの娘がまだ何かを言いたがっているのに気付く。伝えられない言葉を飲み込み、プライドまで飲み込めてしまえれば、楽だろう。

「アスカ――あたしは、つらい。あの子が帰ってこないことが、つらい。悔しいけどね」 画面の中、赤外線カメラに捕らえられた緑のインパラが彷徨うのを見る。

あの娘は、ため息をつくと髪を掻き揚げ、ソファに深く沈む。

「あたしは――コクピットの中で自分が本当に役立たずだって、思い知らされるのが辛い。 腫れ物に触れるみたいに、みんなが避けるのが辛い。
加持さんに、もう会えないのが辛い。
何より、定期テストの後、あのバカが先に家に帰ってて、同じ場所から来たのに、白々しく『おかえり』って言ってくれないのが辛い。」

アルコールが抜けるのを感じる中、あの娘に少し寄りかかる。二人同時にため息をつくと、テレビのチャンネルを変える。「待つしかないのね。あたしも、苦手よ」

―――
255名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 02:52:06 ID:???

あの時と一緒だ。脱出ポッド――あたしは、闇を持ち返っただけなのかもしれない。窓の外を見つめ、もう朝も近い闇にあんな奇跡を2度も期待できるのか、疑わしく思う。
冷たいポッドの中から、鉄板を引き剥がす音を聞く――夢の中ではない、外の世界の音。ソファから飛び上がるようにして起きたアスカと顔を見合わせる。無言のまま、耳を澄ます。

磨り減った運動靴の音が、玄関の前で止まる。カードキーがゆっくり差し込まれ、エアロックに開放された空気が居間に流れ込む。
イヤホンから漏れる音楽が、ぴたりと止む。小さな足音が、こちらに向かってくる。ドアが開き――

寝ていると思っているのだろう。こちらの気配に気がつく様子は無い。肩から提げた鞄を置くまもなく、ソファの上のあたしたちと目が合う。「おかえりなさい」

「どこ――ほっつき歩いてたのよ、このバカ」

「元気――そうだね、アスカ。ただいま、ミサトさん。あの、別に戻ってきたわけじゃないんです」

優しく、頷いてみせる。今はそれでもいい。もう、何も押し付けはしない。
自分なりの答えを見つけて、あたしに帰ってきてくれれば、それでいい。

「帰ってきたのは、その――渡さなくちゃいけない物があった、から。これだけ置いたら、出て行くつもりです。また。」

差し出された写真を見ると同時に、あの子の手が土に汚れていることに気が付く。

「戻ったの、あそこに?」ハーネスすら付けずに、あの中を降りたのか――廃棄物まみれのあの中を、一人で捜したのか――あたしの為に。

――返事だよ、葛城。泣いている場合じゃないだろう。

ワイシャツの襟を掴むと、小さな体を引き寄せて思い切り掴んだ。

「本当に、バカね。何回泣かせたら気が澄むのよ」、そうアスカが言うのが聞こえる。あの子は多分困った顔をしているだろう。

この事で、後で一悶着あるのだろう。これを種にして、口うるさい口論があるのだろう。そして、譲るのはこの子の方だろう。何度と無く聞いているが――何があっても、あたしはその場にいたい。

256名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 03:54:51 ID:???
居間。付けっぱなしのテレビ。ソファの上で丸まっている黒い背中。
後ろから抱きしめる。銀色のファンクーラーが、あたしの首のネックレスに当たり、かちり、と音を立てた。
もっと強く抱きしめる。振り向いた彼の顔がちょうどあたしの顔の前に来るように。

――似ている。この子は、加持と同じ目をしている。何か、胸から溢れ出すような気がして、怖くなる。とっさに、目を閉じて、顔を近づける。逃げてしまわないように。

くちばし。多少、魚臭いが気にならない。これ以上舌を入れると、反芻してしまうと思いながらも、

やめられない。もう、止まらない。ペンペン――
257名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 13:50:05 ID:???
きたああああああああああああ
258名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 14:27:25 ID:???
>>249-256
続きktkr!!また神の文が読めて嬉しいよ。おかえりなさい。
259名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 15:28:25 ID:???
スレがどんなに荒れてようと何も言わずに投下だけすることろに好感が持てる
260名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 16:40:27 ID:???
やっとLMPになったww
GJ!
261名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 18:50:47 ID:???
再 起 動 ktkr!!
262名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 18:58:57 ID:???
>>258
そういうレスが荒らしを呼び込むんだと思う。
263名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 19:18:12 ID:???
>>262
そういうレスもしない方がいいと思う
264名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 21:25:55 ID:???
>>263
そういうレスもしない方がいいと思う
265名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 21:27:10 ID:???
>>264
そういうレスもしない方がいいと思う
266名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 21:50:15 ID:???
>>265
そういうレスもしない方がいいと思う


267名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 22:43:39 ID:???
>>266
そういうレスもしない方がいいと思う
268名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 23:02:28 ID:???
>>268
そういうレスもしない方がいいと思う
269名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 23:03:59 ID:???
お前ら・・・
270名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/04/30(日) 23:54:16 ID:???
以下、そういうレスもしない方がいいと思う禁止
271名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/01(月) 00:12:48 ID:???
>>270
そういうレスを一番しない方がいいと思う
272名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/01(月) 00:32:12 ID:???
笑えばいいと思う
273名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/01(月) 01:13:37 ID:???
ニヤニヤ
274名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/01(月) 23:50:42 ID:???
ここも終りだな
275名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/02(火) 02:18:47 ID:???
そもそも始まってもいないよ
276名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/04(木) 17:45:20 ID:???
捕手
277名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/05(金) 22:51:47 ID:fmjY06lV
ほしゅ
278名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/05(金) 22:56:36 ID:???
保守っても、ペンペンの話はあれで終わりだろ?
279名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/05(金) 22:59:49 ID:???
あげんなや…
280名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 00:13:41 ID:???
>>256 は荒らしだろ。前後の投稿時間見てみ。
次回はシンジが帰ってきたところからじゃない?
281名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 01:33:10 ID:???
>>280
工エェエ工

なんかあれでこの上もなく感動してしまった俺には許しがたい真実だな…
職人さん、>>256は別人なのか?
282名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 07:00:12 ID:???
過去の内容もすっかり忘れ去って文体だけを神神褒める住人に呆れた俺が来ましたよ。
283名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 08:41:52 ID:???
しょせん2chレベルだ
文体がうまいだけでも神と拝める人はいるだろう
284名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 11:09:50 ID:???
文章力ばっかの厨うぜ
285名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 13:20:35 ID:???
ストーリー、そんなにひどいか?各エピソードは面白いと思うぞ。
地下道の加持とミサトのシーン、ぐーてんなはと、テントの中の飲み会、前回のミサトの夢のくだり
あたりがピークかな。全体的に統一感が無いから中身スカスカに感じるだけで。
286名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 14:34:50 ID:???
>>282のは
>>256>>7だと気づきもせずに賛辞送りまくった人間に対する皮肉だと思
忘れてんじゃんお前ら、みたいな
287名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/06(土) 16:49:18 ID:???
>>280
ああ…実は気になってたんだよな。>>255>>256とで間が開きすぎてる。
それにどうして最初に戻るんだ、こういう終わり方なんだろうか?って、おかしいとは思ったけど、久々の投下だったんでついレスしちまった。
288名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/09(火) 11:32:45 ID:???
ストーリーとしては、
>>31までが現在の話、>>32からが過去の思い出話。
で、アスカとの関係も修復され、家出したシンジも帰ってきて、
ホッとしたミサトは>>256>>7
>あんなに酒が美味しく思えた時は、後に無かった。

ってことだろ?
投稿時間は謎だが、もし別人による荒しだとしたら、>>256>>7を入れたセンスには脱帽だ。
289名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/10(水) 18:20:59 ID:jZkModTI
ざっと読んだが、時間があれば後10回は読み返すか。
こんな文章書きたいな。
290名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/13(土) 05:51:53 ID:???
保守
291名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/18(木) 13:17:21 ID:???
保全さげ
292名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/20(土) 21:52:35 ID:???
くそすれあげ
293名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:00:23 ID:???
――――――――――――――


バッテリーの酸味の強い臭いがガレージに染み渡る。イグニッションの火花を確認し、最後のネジをきつく締める。

オイルで汚れた手で、エンジンをスタートさせる。ドアの金具を揺らすような騒音が心地よくあたしに帰ってくる。

機械いじりが好きなのは、こんな瞬間があるからだ。半年前から解体したままのドゥカティのタンクを叩いてやる。

「――出来上がり、ですか」何回か後ろに乗せた事があったが、あまり好きではないらしい。満足げに頷いてみせる。
あの子がわざわざガレージまで運んできた朝食を片手で受け取る。魔法瓶にいれたコーヒーを2人分注ぎ、新聞紙の上で久しぶりの朝食を共にする。

「アスカは?」

「寝てますよ。ぐっすり」あの後、いきなり眠気が刺したと言って、毛布を引きずりながら部屋に戻っていった。部屋の前を通った時に、2人分の話し声が聞こえてきたので、
邪魔をしないようにあたしはここに降りてきたのだ。

「安心したのかもね――それでも、行くの?」

小さな顔が、頷く。「そっか。途中まで送るわよ」

ここで、この子を失うのは賢くない。任務上は、解雇にも繋がる越権行為だろう。アスカのシンクロ率は過去最低、迎撃システムも壊滅状態。本来なら縛ってでも、
エントリープラグに乗せなければならない――しかし、それは、この子が決める事だ。二人三脚のようなぎこちないパートナーシップだったが、今は信頼のような物が目覚めている。
無言のまま、二人して朝食を終える。この子が、帰りたいと思ったときに、待っててやれるのがあたしの仕事だ。

朝の太陽が本腰を入れる前の、ブルーに透き通った時間。マンションのベランダから、下を歩くあの子に手を振る。恥ずかしそうに、小さく手を振った後、小さくなる背中――
それを、飽きることなく見つめる。表通りの人ごみに消える前に、期待していたとおりに――一度こちらを振り返る。

――大丈夫だ。この子は、帰ってくる。
294名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:02:44 ID:???


人ごみの中、ずっと朝刊を片手にバスを待っていたサングラス姿の男が、こちらに携帯電話の画面を反射させて合図を送る。サングラスの下の顔はよく見えないが、
表情だけは想像できる。

――いいのか?

黙って頷き、男が旧型のヴァンに乗って立ち去るのを見る。お互い、夜勤が終わったわけだ。


―――――

破損したアスファルトの部分を避け、力の限りハンドルにしがみつく。

あの時と、あの頃と同じ太陽が夜の影を散らしていく。多少目に入るのが気になるが、前髪の間から差し込む光は暖かく、間近に感じられる。

頭の片隅では、もう今日の激務を計算している。素早く、きっちり終わらせて、アスカと夕食にでも出かけよう。今週のシンクロ率のテストも、今の彼女なら受けてくれるかもしれない。
――何よりシンジ君の話だ。どうやって誘き寄せるか、2人で策を練らなければならない。

その前にリツコとの打ち合わせ――先週から頭を悩ませてる「あの件」も回答を提示しなければいけない。国連軍上層部との電話会議、ゲージのセキュリティのレポートの納期は、昨日までは明日のはずだった。
一気にケリをつける他無いだろう。昨夜からほぼ徹夜の状態だが、コーヒーをたっぷり胃に入れれば大した事は無い。二日酔いのままの、学科末期試験のような妙な胸騒ぎが心地よく響く。

太陽の光に追いやられるように、先へ急ぐ。

―――――
295名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:04:19 ID:???

皮肉なものだ。科学の叡智を結集した挙句、ここの施設は先祖帰りしている。

結界を守る、厳重なセキュリティ扉。蛇のように、冷たいリノウムの床を這う電源ケーブルが目指す先は――

神の劣化コピー。エヴァンゲリオン初号機。「あれ」が積み上げた屍の山から、こいつはは生まれた。父を奪い、当たり前の幸せあたしからを奪い、
その余波は、人の温もりを教えてくれた人を葬った。そして今、あたしの唯一の寄り所である、あの子達――

――そんなものまで奪うのか。お前は。

見られているような――厭な気分になり、視線を逸らす。ロス・アラモス――原爆を造った男達。遺伝子を顕微鏡の淫らな光の元、羊の卵子に注入した男達。
彼らの内で、異議を唱えるものは居なかったのか。本能なのだ――未知へと手を伸ばし、神の領域へと近づく願望。原始の闇に震え、濡れた木の板を擦りつけ、
枯葉の中に小さな焔を焚きつけた時から。暖かさ、闇を照らす明り――それを継続させ、外界を満たす――強くそれを願ってこそ、今あたし達はここにいる。

だとしたら、それは時限爆弾のようなものだ、と思う。遺伝子に組み込まれた、種全体の自爆スイッチだ。

その冷たいトリガーを、目の前に見つめる。内圧の定期調整で、ゲージ全体が細かく震える。

拘束具。アフリカの鉱山が復旧した今となっては黒歴史だが、どこの国も資源不足を補うためにサルベージ船で海底を漁っていた。
水位を増した海底から陸橋やレールを引き上げたあのケーブル――
296名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:05:43 ID:???

(シェルターから出てきて間もないので、光が目に染みる。目を細めながら、隣の老人にあれは何かと尋ねる。波によるサルベージ船の上下運動にワイヤが耐えられるように、
空圧式のアブソーバーが船の横でブイのように浮いている。夕日の中、溶接具のパックを背負ったダイバーたちが上がってくると、歓声が上がる。)

――それが20メートルのコンクリートに埋め込まれ、この未知の機体を押さえつけている。メインシャフトにケ一ブルを溶接する、という初期のプランはあっさりと凍結された理由は、
シャフト崩壊のリスクに見合う、拘束具としての有効性の保証が無かったからだ。

もし、今こいつが無人のまま動き始め、拘束具を解除した場合、壁に埋め込まれた別のワイヤに自動で通電する。強カな電磁石を数珠繋ぎにしたワイヤワイヤが瞬時に壁を四方から突き破り
――ここにいる、あたしたち皆の体を引き裂き――こいつを押さえつける仕組みだ。

それでさえ、こいつが止ってくれると言う保証は無いのだ

あまりにも巨大な墓標だ――今度こそダメだった時は、誰も居なくなった荒地にこいつが立ち尽くすのだろう。愚かしく、貪欲だった人類の墓標として。だが、今はこれがあの子達にとっての強い鎧である事を望む。
あたしが送り出し、任務を達成するまでの強靭なシェルターであり、あの子達が無傷で帰ってこれる途中下車なしの往復切符である事を。散々、憎しみを吐いたばかりの空間に、祈りのような言葉を残す。

――頼んだわよ、しっかり。

「――やけに早いのね」背後からの声に振り返る。密度の濃い闇の中で、白衣がくっきりと浮かび上る。とりまく闇と、自分との境界線が明確なのだ。ぎりぎりの所で境界線を引ける、からだろう。それが頼もしく思えたときもあった。だが――今は深く入りすぎだ。


「加持君から、連絡は?」 闇を取り入れない。3人の思い出が、あの娘にとって「こちら側」にあることを知り、嬉しく思う。同時に、もう話せない話題である事も知り、心が酷く痛む。

「――どこ行ったのかしらね、あの馬鹿」

297名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:06:53 ID:???
頷き、初号機を冷たく見つめる。タラップに寄りかかり、今朝から漠然と頭にあった事を吐き出す。「リツコ――あんた、来世とか信じる?」

「信じなかったんじゃないの、そういうのは」心配そうな表情が、一瞬だけ氷を溶かす。

「年なのかもね、あたしも――あんな中を十分に生きて、図々しいわね」点滅する巨大なビーコンの赤い光に二人で飲み込まれる。血で染まった女だ、二人とも。
「当直帰りにあなたと一杯引っ掛けて――資料館から何本ワインをくすねたのかしらね。今まで話した事も無い事をあんたには言えた。その塊一つ、一つに、あんたは名前を付けてくれえた――」

――トランジスタス、ホメオスタシス  ――なぁに、それ?


「――千鳥足で寒いアパートに帰ると、加治が布団の中で待ってて――幸せだったな、やっぱり」


――加治君、変われたのかな――私。  ――葛城が決めた事だ。


「あたしは死んだらあそこに戻れる、そう思う事にしてる。嘘、だけどね。そんなの。今はそう思いたい」


「無理よ」 クリップボードの数値を見つめながら、そう返す。「――今のあなたには。シンジ君たちがいない、でしょう」

その表情に寂しさが少し滲むのを見て、あの噂は本当なのかと思う。どんな人なのだろう。

――優しくしてくれるの、あんたに?
298名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:08:04 ID:???


真っ先に教えてくれる約束だったが、あの頃の約束の値段は安かった事を思い出す。

「どうにでもなるわよ――あたしは今のアパートであの子達と暮らして、あんたは学生時代の下宿で猫と暮らして――気が向いたら会いに来ればいい」

「悪くないわね――それ」

赤い光が消える中、2人でもう一度あの怪物に目を向ける。例の会議の約束を取り付けると、カフェテリアまで急ぐ。そこで、「もう一人」と偶然にも出会う。

―――

「もう一人」は、人もまばらなカフェテリアで、窓の外を見つめている。目が痛むような白い肌、優しい藍色の髪が空調の乾燥した風の中で泳ぐ――
見つけやすいのは、この娘の良いところの一つだ。周囲との間に温度の壁を作ってしまうのか、この娘の隣はいつも空いている。本当は思いやり深く、芯の強い人間だ――
それは、あたしも知っている。多くの人間が知っているだろう――とっつきにくいだけなのだ。

「いいかしら、隣?」

トレイの横の古めかしい書物から顔を上げない。無言で頷くのを見ると、パイプ椅子を引き寄せ、隣に腰を下ろす。

特大のマグカップから一口コーヒーを飲み、こう尋ねてみる。「言語学か、随分と難しそうね。」

書物から目を離すと、あたしの方を一瞬だけ見る。こくり、と頷くとまた殻の中に帰ってしまう。諦めかけた、その時――

「言語の起源、ことばの始まりを解き明かそうとする本――らしい――です。」

「ふぅん。人の最初の、言葉か。――動物の警告音みたいな物じゃなくて?『逃げろ』とか、『危ない』とか――種類があるんでしょ」

「言葉、とは言えない気が」
299名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:09:30 ID:???

「いいえ――言語よ。お互いを守る、大切な言葉ね。」人指し指を唇に押し付け、しっ、と蛇の様な音を出す。ロを小さく開けたまま、こちらを凝視する顔――

「残っているのよ、使わないだけで」案外、役に立つものだ。例えば、有刺鉄線を越えて忍び込んだ夜間の食料配給センター。巡回する懐中電灯の長い光。当直
終了までの2時間の『暇つぶし』がかなり大掛かりで感傷的なものになり、学生寮の薄い壁が気になる時。

「そういうのは、大学で?」

「一応、課題だったしね。何でも聞いて」教科書の半分が絶滅種ばかりで、授業が進まなかったのを思い出す。

「ここ、です。プレーリードッグは、鳴き声で驚くべき量の情報を伝達する。」――テレビで見る、もぐら叩きの的のようなやつだ。
いかなる奇跡で「あれ」で滅びなかったか、頭が痛む。「外敵の大きさ、距離、種類までも鳴き声に組み込まれ、発情期の求愛活動の際には――、飛ばします――言語を定義する条件として、以下の条件が挙げられる。一、抽象的であること」

「面白そうなとこ、飛ばしたわね」

「――二、すなわち、『今』という時間と『場所』から切り離し可能であること。ここが、よく、わからない」眉間に少し皺がよる。

「例えば、ね。あたしが今『碇指令』と言えば、それはあの人があたし達の前に居る、という意味ではないわよね。昨日、碇指令と話した、
という過去のの話かもしれないし、彼の噂話かもしれない。または、『碇指令』という単語の持つイメージの話かもしれない。
でも、プレーリードッグの言葉で同じ言葉を言ったら、みんな巣の中に隠れちゃうわ。」例えが悪かったか――「時間と空間で今ここに『ない』ものを語れてこそ、
完全な言語と呼べる――そういう理論ね。」
300名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:10:39 ID:???

「嘘の無い言葉でしょう、でも?」視線を少し落とし、冷たい目で書物を見つめる。白くの写真は、汚れた雛鳥に餌を運ぶカケス、渡り鳥の空撮
――どちらもインパクト前だろう。「子供が母親を呼ぶ、高い声。山の間を滑降する渡り鳥が放つナビゲーションの音。

そのどれもが、真意で、混ぜ物が無い言葉。神経から、理のように溢れ出す言葉。あたしには、無いような気が――生まれつき欠如しているから、たぶん」

そうか。「なんだ、そんな事考えてたの?」

「たまに、何を言っても虚無のような気がする――んです。本当に気持ちを伝えたい、そんな時でも自分の言葉が見つからなかったら、と思うと――」
――今は、喋ってるじゃない。こんなに沢山――出てきた言葉を、ぐっと飲み込む。

「――大丈夫よ。本当に必要な時には、出るものよ。それこそ、その時間と場所に限られた言葉よ――その時になれば、いいえ――その時になってこそ、
その言葉が何であるか、あなたには判るわ。」

「――本当に?」
「――保証するわ」絶え間ないモノレールを遠く見つめる目。その想いの先は、まだ見ぬ相手、ではないようだ。力強く頷くと、照れたようにこちらから目を逸らす。「あなたは、いつも『さよなら』って言うわね。
でも、そう言いたくない相手も、『また会いたい』と言える相手も、あなたの先にはいるわ。きっとね」

言葉の意味が、開けっ放しの蛇口のように空間を流れる。

「――もう、行かないと」書物を鞄に入れると、出口のほうに目をやる。背後から、いつもとは少し上付いた声が囁く。「さようなら」

「『また今度ね』、レイ」

こくり、と頭を下げ、無言のまま逃げるようにして振り向く。ため息をつき、半分残ったコーヒーをマグカップの中に見つめていると――「葛城三佐――」

――また、今度。

大きく手を振って、またね、と言う。カップを持つ手が強く取っ手を握る。何か、決定的ではないが――手応えがあった。散々追いかけさせられたが、もう観念してもらう。時間は常に動き、距離は縮みつつある。

―――
301名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:12:23 ID:???

猫のマグカップと、ステンレス製の野外用カップ――ドイツから持ち帰った数少ない所持品だ――を並べながら、コーヒーの香り越しに説明を聞く。

3ヶ月前、本部SCに侵入した「12番目」の肉体は高熱で滅却され、汚染区域の隣接する建造物は、ネルフ施設内部の溶解炉で 外部に持ち出される事なく処理された。
メインSCと接触を持つ端末は出荷時のデフォルトに初期化、記憶媒体は全て交換――侵入を許した技術部に対する懲罰でもあるが、この処置は完全に正しい。

この復旧作業中、一部の端末がネットワーク上から突然消えたり、逆に同じ管理番号が複数存在する、といった奇妙な現象が起きた。MAGIから隔離した後、端末ごとの
チェックを行った技術部員は、その原因をセキュリティシステムの中に見つけた。各ドアの開閉履歴の記録や、監視カメラ映像の管理――元来、MAGIの管轄だったが、
諜報部の横槍で今は独立したシステムだ――その絶え間ないデータの流れに混ざり、見慣れない名前のプログラムがひっそりと作動していた。

――外部に記録を残したの?あれが。

除去作業直後の事だった。眠そうな目を擦りながら、データのプリントアウトをこちらに遣す。

――記録、ではないわね。懸念があったように、自分のコピーを残したわけじゃない――あんな膨大なシステムを記録できる媒体はないもの。本部の全データベースを上書きしたとしてもね。
生命が造ったもの――その造りはシンプルでも、データ化しようとするとかなりの量になるわね。

それでも、本体に依存せずに、外部のリソースで動く事に変わりは無い。あれが殲滅された後も、現に動いているのだ。モニタに映し出されたアプリの簡略図に目をやる。これは、まるで――

――これ、ハニーポットのような物?

――ご名答。MAGIが周辺機器に行う定期チェックを、完全に模擬している。エミュレータ―ね、造りは雑だけど。

信号が迷子になっていたわけだ。幼稚だが、架空のネットワークを作り上げている。もう少し精度を上げれば、外部からはMAGIが走っているようにしか見えないだろう。定期的に行われるMAGIの相互チェックで、
中国やドイツに飛び火したかもしれない。

――生命は、外に出たがるのね。自分の一部を残したいと思うのは――

――処分して、赤木博士。今すぐに。
302名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:13:24 ID:???

データとしての希少価値はあたしでも判る。相手の『指紋』としては、これ以上クリアなものは無いだろう。プログラムほど、書いた人間の性格がわかる物は無い――
相手のロジックや思考回路、優先事項さえも憶測できる――ご丁寧にこちらが理解できる言語で、これを書いているのだ。技術部はこれが喉から手が出るほど欲しいだろう。
考える暇も無く、テーブルの上を強く叩く。

――あれのスピード見たわよね?あんただって、2度とゴメンな筈でしょう?

恨めしそうな顔をこちらに向けるが、こちらの気迫に押されたのか、その場はそれで収まった。



本部から外への回線を早めに遮断していたのが幸いしたのか、汚染中にMAGIが外に記録を残した形跡は少なかった。中国のMAGIのに書き掛けのデータが見つかったが、
定期チェックで痕跡無く削除されていた。

諜報二課からドイツの諜報部を通じて、伝達があったのは2週間前のことだった。奇妙な伝達になったのには、理由がある。技術部は使徒が残したデータのパターンを各支部に伝達し、
特に注意を払うように指示を出した。諜報戦の例に漏れず、ドイツの諜報部はこれに手をつけ、『本部への使徒侵入』の物的証拠という「切り札」を掴むために大いに張り切ったらしい。
はしゃぎ過ぎた挙句、たらい回しにされたデータは流出――だがこれが好機を生む。ある機関のある施設で、偶然にもパターンがマッチしたのだ。

303名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:15:41 ID:???
ジレンマa:データを掴んだのが、ハッキングを生業とする怪しげな業者だった事。この男は重い体を引きずって聞きまわり、ついには「宝くじ分析センター」
――諜報員ならすぐにわかる、ネルフ諜報部の隠れ蓑のひとつだ――に現れ、お探しのデータをあるルートで入手できたかもしれない、と受付の男性に伝えた。
受付はデータの入手先、誰と話をしたか、などをそれとなく聞き出し、軽い雑談の後に、水道パイプのクリーン液を頚動脈に注射した。血管内の液体が凝固し、
床の上の男が青くなるのを観察しながら、諜報部員は考る。切り札、入手――

ジレンマb:パターンマッチの場所が、ドイツの中央銀行のメインバンクだった事。セカンド・インパクト後最大のハッキング事件――切り売りされた個人情報や企業名義の
口座残高――それの残りカスが、意味不明のデータとして業者にたまたま流れていただけだった。本来なら、これはお手柄だ。しかし、元々は技術部から盗んだデータ、
しかもそれを流出させている。不幸は重なる。ハッキングをした犯人グループは一挙に検挙、データの販売先を供述し始めている
――当局があの業者まで行き着くのは時間の問題だ。ネルフ上層部から特捜部に横槍を入れるにしても、おいそれと口にできるような事柄ではない。まずい事になった――

結局、ドイツの諜報部長から――リツコ曰く「遊んで欲しい猫が、わざとらしく『こんな物、見つけたんだけど』とボールをくわえてるように」――本部の諜報部に伝達が入り、
辞任のメールがそれに続いた。言い訳がましく、中央銀行から流出したデータはどれも完全なものではなく、オリジナルは銀行のデータテープにしか残っていないと言う事を
付け加えて。
「あそこは、初期の人格移植OSを使ってる――母さんの、同僚達が造ったものよ。OSの人格形成時に、データ交換をさせたのよ。『想像上の友人』というポジションで
お互いに会話させたらしいわ――今では、心理学の教科書に載ってるくらいよ。母さんが寂しいと思って、直の回線は残してあったの」

「銀行のメインバンクじゃぁ、調べようが無い、か。使徒があんな所に侵入したとはね――あたしの口座の残高でも増やしといてくれればいいのに」



304名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:18:11 ID:???
「相手にとっては、数字の羅列でしょう。人間だけに価値がある数字だもの――迷い込んで、首をかしげたでしょうよ」

「冗談、ね。さっきのは」
くくっとかみ殺した笑いを久々に聞く。「わかってるわよ、ミサト。それで――あなたの意見は?」


「変わらないわ。危険すぎる――作戦部は反対として票を入れるわ」

「見返りは、あるのよ。リスクに見合う――聞きたくないでしょうけど。ご存知の通り、下の機体は継ぎ接ぎも良い所だわ。我々が作った部分、そして我々が知らない部分――
――このギャップはかなり深い。ブラックボックスという表現は言いえて妙ね」そう言うと、タイルの下を見過ごすように下に目を向ける。あたしの視線がそれに続き、
継続的な地下音を再び意識する。

「意見は、変わらないわよ。走らせたら、何が起きるのか――」

「だからこそ、よ。手懸かりになるのよ。あれとあたし達のギャップを埋める事が出来る。もう少し制御できれば、それはあの子達の安全に繋がる。あたし達が手にしているのは、
使徒と既存のテクノロジーの間を埋める事は確かだわ。
現時点ではあり得ない話ではあるけど、機体の遠隔操作さえも可能かもしれない。」

「――」あざとい。だが、それは欲しい。もしかしたら、の希望ではなく、確実にあの子達を守れるなら――あたしたちが近づく事で、あの怪物の毒牙とあの子達の距離が遠ざかるのなら。「――続けて」

「説明した通り、実際に走らせるわけではないのよ。完全に隔離された場所で外部からデータテープを部分ごとに赤外線でスキャン、分析の後にこちらで再度組み立て直す。
あたし達が走らせるのは、プログラムのMAGI環境でのシミュレーションね。処理速度も限界まで落とす」


「分析したいだけだったら、データをMAGIに食わせれば――」

――無理なのか、それは。
305名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:19:58 ID:???

「データテープは、今はドイツ支部にあるわ。あそこの特殊隔離室を使うのよ。レポートには、Gefangnisとあったわ。意味は――」

「――牢獄。あそこに入ったら、2ヶ月は出れないから」

――各ユニットのBC兵器への抗体を作っていた所だ。地下300m、外部からは完全に遮断――電気・動力も自給自足。
第2世代のエボラ・ウィルスの現存するサンプルも唯一ここで眠っている。雑菌レヴェルでの侵入も許さないし、何かがここから出て行ける
という事は考えられない。極小の隙間からのリークを懸念して、MAGIへの優先回路はおろか、外部への電話線すら通していない。密室だ。

「指令は賛成――ということは副指令も無条件で賛成ということね。今回の件では諜報部は蚊帳の外――当然ね。あたしは、賛成」

ゲヒルンという母体組織のせいで、技術部は少々微妙な位置に居る。「あれ」直前の軍隊のように研究員に階級を与える事はなく、
リツコ自身も『二.5佐ぐらい』の地位に甘んじているが、作戦遂行に関しては作戦部、もしくは指令にダイレクトに「提案」を突きつける権限を持つ。
この場合、副指令、あたし、諜報部長どれか一人の賛同を得られれば、その提案は絶対となる――全権限をオーバーライドできる指令に異議が無ければ、の話だが。
この微妙なパワーバランスの結果、かなり重要な事柄がこの娘の研究室で、コーヒーを飲みながら決定される事になった。皮肉交じりに『コーヒー談合』と称されたが、
あたしが走り回ってオペレータ達や加持、パイロット3人の意見を聞いた上で、リツコと2人で案を練り、議題に上げる――
司令部から何の牽制も無いのを見ると、あたしの採用もこれを見越した事だったのかと思う。
306名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:21:41 ID:???

「指令が賛成、と言う以上変わらないでしょう――何も。」

「じゃぁ、決まりね」

何か――見落としているような気がする。明らかに切り易い位置のワイヤを切るような、あの厭な感じだ。デコイのワイヤをつかまされたあの気分
――こちらの角度から見えないリレーがこちらの不注意を待っている。爆薬に通電する接触を待ちわびている――だが、切って見れば案外上手くいった例も多い。

「――決まりね。作動開始はフタマルを予定――技術部各班は最終調整に入るわ。」

頷き、緊急時のマニュアルと作戦要綱の原案を受け取る。両方とも、あたしの署名が必要だ。完全な密室。動く事さえ怪しいデータ塊。
前回の失態をカバーしたい技術部は総力をあげて安全確保を固めるはずだ。全ては、順調だ。なのに――

――何だ、この胸騒ぎは。



――――――――――――――――――――――
307名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 03:32:52 ID:???
うん、いいよ
職人さん、いいよ

だがすまん、これを他のやつらにも見せてやりたいんでage
308名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 09:33:20 ID:???
職人さん、乙!
309名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 13:44:26 ID:???
ktkr、GJ!
でもひとつ言って良いかい?「指令」じゃなくて「司令」だよ
310名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/21(日) 19:53:39 ID:???
新展開期待上げ
311名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/05/21(日) 20:56:34 ID:???
クうぅぅ!
312名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/26(金) 10:24:05 ID:???
見慣れたはずのエヴァなのに、語りの視点が違うと別物に見えるね。
翻訳物を読み込んでいそうな職人さんの文章もイイ!
続きを楽しみにしてます。
313名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/05/28(日) 15:22:14 ID:???
age
314名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/03(土) 21:39:00 ID:???
315名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/10(土) 21:15:17 ID:???
保全さげ
316名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/11(日) 01:41:43 ID:???
――――

「第三隔離室の見取図です。」モニタからの光が色を変えるたびに、室内の影が色を変える。白衣の上の干草色の金髪が微かに赤みを帯びた色に変わり、
その横では四角い眼鏡が赤い光を闇に投げかけている。光に呑まれそうな華奢な影を残すのは、マヤだろう――
いつもよりリツコの距離が開いている気がする。今回の件、気乗りがしないのだろう。あの子なりの意思表示か――モニタの横、電磁波混じりの光に長髪をなびかせる影
――名前は、思い出せない――の方に近い場所を取っている。

この光の洪水の中、色を変えない影二つ――コントロール室最上部、司令デスク。

モニタからの光が届かないその場所では、デスク上の小さな読書灯でしか確認出来ない影だ。神のように鎮座し、神の権限を持つ言葉を下界に響かせる黒い塊
――どんな気分だ、そこから見下ろすのは――影の中で眼鏡が猛禽類のような鋭さで一瞬光り、あたしは目を逸らしてモニタを見つめる。

モニタ左下に日向の親指が見える。各支部への配慮で、パネルは本人にしか見えない――全員での観閲は、コンソールに取り付けられたCCD力メラの出カを共有する事で
ファイル自体の共有を避けている。元々、技術部員が複雑な配線などを写真に収める際に使用していた拡張機能ユニットだが、こうした使い方のほうが多くなっている。


「隔壁の厚さは2m―」モニタの中にドイツ支部の断面図を確認すると、日向の声が続ける。

基本的な造りはここと同じだ。各層に跨る巨大施設は、オレンジ色で表された装甲版で区切られている。断面図の中央、装甲版よりひときわ太い赤線が画面を横切っている。
モニタ左の虫眼鏡のアイコンが反転すると、全体がズームアウトされ、オレンジの中心線を細めてゆく。下から押し寄せるオレンジの線に混じり、
もうー本赤い線が姿を見せ、平行に並び――左右からの赤線と正方形を形成する。

「ボックスと呼ばれる所以です。1/1000まで拡大――続けて水平視線を維持してローテート」断面図が画面いっぱいに表示され、赤い正方形は中心に収まる――

――旋回するように視点が回転すると立方形が内部でスピンする――「電気系統の可視属性を1に。」毛細血管のように施設を循環する点滅線――その全てが、体内の胆石のようにボックスを迂回している。
317名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/11(日) 01:44:37 ID:???
デスクからのスピーカーが雑音を立てると、全ての影が動きを止める。その声が副指令の物であることが判るまで、緊張が続く。「いける、か――伊吹二尉、続きを頼む」

「はい。ボックスへの搬入ロは、西の1箇所のみ――臨時の疾病管理センタ一でもある為、レヴェル4の生体有害物取り扱いにおける安全規定を満たしています。
換気はボックス内で循環、発電所は最下層――動力である固形燃料とタンクが週に一回搬入されます」

「中の制御は?――外をいくら固めても、中を握られないと言う保証は無いのよ」リツコに向かい、そう尋ねる。
「あたしから補足します。モ二タ、チャネル3に。」繊細なモ二タラインを傷つけるような、砂嵐が視界に広がる。懐かしい、と思うのと人間の輪郭が砂塵び浮かぶのは、ほぼ同時だった。

カメラが低く設置されているのか、こちらを覗き込んでいる――壁の色や、空間の使い方が似ているので、モニタというよりマジックミラー越しに隣の部屋を覗いた気分になる。
知った顔が何人か居るが、向こうからは見えない。

「通信用のケーブル、1本ぐらい通したって良いだろう。」副指令の呆れた声がスピーカーから漏れた。「UHFの無線中継など、最後に見たのは――」
「念には念を。実験の標本から考えても、今ドイツ支部とこちらをオンラインで繋ぐのは得策ではありません――ホットラインは全て遮断、電話線にいたるまでドイツ支部全体を隔離してあります。
ボックスの外壁部にアンテナを取り付けてあります。そこから、ケルンの中継所を経由して映像・音声を衛星でこちらに送っています。鉄板越しですから、ノイズは多いですが。
最低限の意思の疎通はできます。」そう言うと、モニタの画像を見ながら流暢なイギリス訛りで――「Box, This is TK3―」

2秒ほどのディレイの後に、モニタ内の顔がこちらを振り返る。雑音交じりの音声が暗闇に響く。

「This is Box. Read you loud and clear. Initiating contact with BabelServer(こちら、ボックス。よく聞こえる。BabelServer起動する)」

自分のコンソールで音声を少し調節した後、マヤがこう言うのが聞こえる。
「Affirmative. This is 1st Lieutenant Ibuki, assigned for communication interface of this operation. TK3 also initiating Babel.(了解。こちら、技術担当の伊吹2尉。TK3もBabelを起動)」
318名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/11(日) 01:47:48 ID:???

随時翻訳ソフトは、会話の流れやトピックから判断して適訳を選ぶ。最大の強みである訳文の同期化は今回は無理だが、同時にスタートしたほうが、スムーズに進む。

「『緊急退避用』の辞書も追加しといて。優先順位は3番目くらいでいいわ」


モニタの中、若干太めの男がこちらを振り返る。口を開くと同時に、キャプションの字幕が顔の横に表示される。

「Did I hear Officer Katsuragi? --This is Chief Kremens, hading the operation.(カツラギ少尉の声がした。こちらクレメンス、本作戦の指揮を取っている)」

「Major, Now. "Also" heading the operation from TK3. (三佐よ、今は。『こちらも』第三新東京市から本作戦を指揮するわ)。――Babelの精度、上がってるわね」

モニタの中。クレメンスがイヤホンを取り外した後、すっくりと立ち上がるとこちらに敬礼する。靴下とスラックスの間、アルミの義足――言われなければ、気が付かないだろう。

「ご案内する」、そう言うとカメラの三脚を調整して部屋の全体が見えるように高さを固定する。25mプ一ルほどの空間が、巨大な部屋の中心に掘られている。その中に、規則正しく並べられた
正方形の箱の列。ユニットを授受繋ぎにしたオリジナルのSCだ。ウィルスの人体の進行をシミュレートしていたため、計算速度はかなり高い。

束ねられたケ一ブルの束は、プールサイド四方に伸びている。左右両サイドには長テ一ブルがオリンピックの審査席のように配置され、オペレ一ターが2名づつ配置されている。こちら側に伸びるケーブル、ちょうど飛び込み台の位置

――あれか。物々しく、中央銀行のジェラルミンケースに入れられ、接触自体が死を意味する病原菌にしか許されない、放射形のシールをあしらわれている。コンピュータ・ウィルスを記録した媒体は、独自の輸送用コードが有るはずだが、こいつは規定外だ。
319名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/11(日) 01:49:25 ID:???

クレメンズが屈みこみ、マ二ラ色の封筒から乱数表を取りだす。「どうぞ――」

モ二タの光の中、白衣が光に魅せられた夜の蝶のように指令デスクへと近づく。手にしているのは、同じ色の封筒――デスクから差し出されたアクリル板を受け取ると、乱数表の上に重ね、
パキッという乾いた音を立てるまで曲げる。アクリルを流れる蛍光塗料が酸素に触れ、発光しては、ゆっくリと消える。

乱数表の上、グリッドのように浮かび上がる枠内の数字を読み上げる。どの順番で光るかは、中の発行塗料の組み合わせと配置で決定される。レーザーやX線などに晒すと、塗料が劣化するため、
古典的かつ安全な暗号装置になっている。

「Delta-2, Wsikey1, Tango3---(デルタ2、ウィスキー1、タンゴ3――)」

モニタの中、乱数表を睨みながらジェラルミンの表面のキーパッドを慎重に押していく。キーケースの番号は、お互いに知らなかったわけだ。それほど、デリケートな問題なのだ。

読み終えたリツコからアクリル板を受け取り、シュレッダーの方に歩く伊吹を、冷たい声が制止する。上からの声、だ。全員の体が瞬時に反応する。

「――伊吹二尉。構わん。そこのごみ箱に捨てたまえ。機密保持担当の二課に拾わせる」

本部施設から出る、大量のゴミ。この作戦の蚊帳の外に置いた挙句、ここ1ヶ月はゴミ漁りまでさせる気だ。

「――酷いな、碇」マイクからの音声が途切れる前に、それだけ聞こえた。


スピーカーから、エアロックが外れる音が聞こえると全員の視線が一点に集中する。

蓋がスライドし、肝心の中身が姿を見せると、クレメンスが気まずそうに微笑む。ケースは空だ――まるで高価な食器のように底部にはめ込まれたリール以外は。
320名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/11(日) 01:50:35 ID:???
フリスビーのように片手でテープを持ち上げると、ジェラルミンのケースが音声による受け取りサインを要求し、空ケースを最寄の支店に返すようにとの指示が続く。2人がかりでリールを
取りつけ、へッダに食い込ませる作業は、あっけなく完了する。

――当然だ。蛇みたいに、襲い掛かってくると思っていたのか――

モ二タ上の純白の画面の中心に太い黒線が横に走り、画像がへッダに取りつけられたカメラからの映像だと気付く。リ一ルが固定されると、暴れるかのように黒い線が上下する。

「へッダテストを開始――」

テ一プ表面の細かい傷が、深海の闇を潜航する魚群のように右に泳ぐとぴたリと止まり、また元の位置に元る。0と1でびっしりと埋まった小ウィンドウが画面右を埋め尽くす。
リールがもう一度動き、左半分も数字のウィンドウで埋まり、両方とも瞬時に赤く染まる。

「ベリファイ、100%。誤差修正なし。全I/Oポート、開放。ここからは、C208の発令が必要です」

――MAGIシステム(エミュレータ―含む)の起動許可だ。これで初めて、起動開始となるわけだ。

「許可する」上からの声が、下界に響く。

「了解。ランレヴェル3へ切り替え。」クレメンスがオペレーターに合図すると、一瞬だけモニタがブラックアウトする。ログイン画面はなぜか闇に浮かぶケルン大聖堂だ。

「本物の、マギ・オリジナルか――呆れたな」副指令とリツコが苦笑したが、意味は判らない。画面が変わり、見慣れたMAGIの審議画面に――CASPERを残し、他の2機はグレー表示されている。
代わりに、白い正方形が有線ラインを示すオレンジ線でCASPERと繋がれている。メンテ時に、リツコのノートを繋いでやるとこういった表示になる事が多い。

「セクタ1から20をスキャン開始――」
321名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/11(日) 01:52:44 ID:???

正方形が点滅を開始する。データ通信を表すオレンジ線が光り、機械環境の中に再現したMAGIシステムの中に呼び寄せている。

「セクタ20読み取り終了。スキャン一時停止」

「見せてみろ。ミサト、たびたびすまないがC299の発令許可が必要だ」

昔の呼び名に帰ったので、少し驚く。「C299――レヴェル2以上の機密簡閲許可。なぜなの?」

「最初のセクタは、辞書攻撃の辞書だ。パスワードクラック用かな。「Alpine(アルピーヌ)」「tortoiseshell(三毛猫)」なんて言葉も登録されている」モニタからの視線が、こちらの表情を伺う。

アルピーヌのバッテリーは、本部のパソコンから注文した事が一度ある。パスワードはもっと複雑な物が義務付けられ、あの侵入以来全職員のパスワードは全て変更している。

それを見越して、データの中から使用頻度の高い単語で辞書を作ったのか。「2番目のは、予想だが――辞書攻撃が失敗した時のためのウィルスだ。おたくの空港管制システムがターゲットだ

――うちのヘリポートでも使っているが、3D環境での航空管理を共有している。そうだな?」

本部上空は飛行禁止区域だ。緊急用の発着を盾に、戦自がリクエストしたものだ。だが、お互いのレーダーや各機体のデータを共有することを双方のお偉い方が拒んだため、お互いの位置と高度、
機体コードだけをリアルタイムで送信するできそこないのプログラムが出来上がった。当然、使い物にならず、双方のパイロット達もレーダーからの情報を信頼し、モニタには目をくれていない。
上層部が満足するための官僚的なマスターベーションだ。パイロット同士のメッセージもレーダー上に表示されるが、お互いの組織への罵倒のようないたずら書きで大半は埋めつくされている。
322名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/11(日) 01:55:07 ID:???

「――してるわ。MAGIとの間に2重の防壁を使ってね」リツコが答える。

「例えば、待ち受けのようなメッセージ画面を登録できる、かな。『現在、基地に接近中』とか、簡単なものだ。それが、5000文字以上だとしたら?」

「パイロット用の端末で、それより低く指定してあるわ。10文字以内。1秒につき、何千回もの更新を行うもの。バッファが飛んでしまうわ。外部から、パイロットを装ってメッセージを送ろうとした場合は――」

――確認する術が無い。戦自の機体が垂れ流している信号を、こちらは直で受け取るだけ――官僚組織との共存というネルフの微弱性を利用した、セキュリティホールだ。

両組織の上層部の監視の中、戦自の技術班と作り上げた代物だ、しかも使わずに放置――技術部も見落としていた訳だ。

「確かに、可能ね。バッファを溢れ出させ、監視の目をすり抜けて、コマンドの一つや2つは実行できるでしょうね。でも、それだけでは先には――もちろん、埋めるけど」

「辞書攻撃かこれか、いずれかが成功すると、こいつはまた別の関数を呼び出しに行く。その関数は、データテープのまだ先にあるから、何をするのかはまだわからない。ただ――

これを分析するとなると、こういった物に出くわすだろう。だから――」そう言うと、オペレーターのモニタのスイッチを切る。「見れない」

リツコがモニタから目を逸らし、上の2人を見つめる。その横顔が、老猾な夜の漁師のように闇を計る。その闇の奥まで見える事を伝えるためか、一瞬だけ繊細な顔に微笑みが浮

かぶ。あたしは、この娘がこんな顔をするのを見た事が無い。

「よかろう――」上からの声が、闇をさらに濁らせる。「――クレメンズ中尉、並びに同行オペレーターに全機密の簡閲許可を与える。2ヶ月間のボックス内での拘束、期間内の外部との接触を禁じる――いいな」
323名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/11(日) 02:07:49 ID:???
話のテンポが悪い。
どうでもいい描写に文字数を使いすぎだと思うが。
324名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/11(日) 18:04:51 ID:???
>あの子なりの意思表示か――モニタの横、電磁波混じりの光に長髪をなびかせる影
>――名前は、思い出せない――の方に近い場所を取っている。

ちょw青葉www
カワイソスwwwwww
325名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/11(日) 19:11:26 ID:???
寺GJ!
326名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/13(火) 21:01:19 ID:???
もっぺんageてみる
327名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/13(火) 22:21:15 ID:???
GJ
328名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/14(水) 00:47:36 ID:???
故あってageる
329名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/18(日) 20:44:08 ID:???
チョット待て
ペンペン何処行った?
330名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/19(月) 13:05:35 ID:???
あげる
331名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/28(水) 23:28:59 ID:???
舞い上がれ
332名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/28(水) 23:32:52 ID:???
舞い上がれ×3
ペンペン〜♪
333名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/29(木) 00:01:00 ID:???
最初のほうしか読んでないけど感想
描写がくどくどしすぎて気持ち悪いというか、読みにくい
334名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/29(木) 13:42:06 ID:???
じゃあ読まなきゃいいじゃない♪
335名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/06/29(木) 17:57:55 ID:???
まぁそこらへんは賛否両論なんだな
この世に完全なものは存在しないさ
336名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/02(日) 14:14:25 ID:???
337名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/03(月) 13:20:33 ID:???
338名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/09(日) 00:30:29 ID:???
339名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/17(月) 20:51:33 ID:???
クうぅ!!
340名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/18(火) 00:00:51 ID:???
シャル
341名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/07/24(月) 17:32:03 ID:???
投下町
342名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/03(木) 23:29:31 ID:???
保守
343名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/04(金) 01:59:16 ID:???
くぅ
344名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/04(金) 02:00:38 ID:09LcFCK9
http://v.isp.2ch.net/up/3591b0e4fdbc.exe
誰かこの綾波コラを詳しく頼む
345名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/04(金) 17:11:46 ID:???
飼い猫が発情期の時、暇潰しに猫を責めてる時がある。
乳首触られるの好きみたいなんだよね…オスだけど
ミサトさんもシンジにそんな事してるのかな
346名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/06(日) 16:10:57 ID:???
「今日は危険日なの。…でも、してくれる?」
「…クエッ」コクン

「あっ、あっいいわ。いいわよペンペン――」
「クエックエックエッ」
「あーっいくー」
クエーーーーーーーーッ
あーーーーーーーーーっ

347名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/06(日) 16:22:29 ID:???
「ねぇ、ペンペン。私、妊娠したみたいなの」
ペンペンは慌てた様子で自分の部屋に戻り、部屋から何かを持ち出してこっちに戻ってきた。
「クエッ」
「えっ?これ…」

(これは……ペンペンが大事にしてた………)
「ちくわ、ね。」
「クワァァ」
そっと、ミサトの左手にチクワをはめる。
窓からさす光に左手をかざす。とてもキレイなはずなのに、涙でにじんでよくわからなかった。
348名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/06(日) 16:34:13 ID:???
「うれしい…」
喜びのあまりに涙をこぼしたミサトに、何も言わず小鳥のような、軽い……しかしとても優しいキスをした。
            月日は流れ――

「おやすみ、ペンペン」
おやすみのキス。
(え……?)
ペロペロ ペンペンの舌が唇から、ミサトの首筋にむかって円をかくようになめる。
「あっ、駄目よ。駄目、ペンペン、赤ちゃんに怒られちゃうわ。」
349名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/06(日) 16:51:06 ID:???
トン
            「!?ペンペン、いま動いた。赤ちゃんが動いたわっ」
ミサトのお腹に静かに耳をあてると、確かにお腹を蹴る反応があった。
「クエーッ」
「ペンペン、泣いてるの?あなたの涙、初めてみたわ」

私は今までたくさんの人を巻き込み、犠牲にして生きてきた。諦めちゃいけないと、死ぬ気でここまでやってこれた。
でも…時々ふと思う
――人の命を犠牲にしてまで、生きる価値が私にはあるのだろうか?――
350名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/06(日) 17:05:12 ID:???
一生懸命生きてきたつもりだった。窮地に追いやられても捨て身で頑張ってきた気がしてた。
でも……そんな重みや過去の呪縛から逃げ出したくて、本当は死にたかったのかもしれない。
            「ペンペン…」
そっと、愛しい人のこぼれた涙をふきとり、あらためて想う。
「好きよ、ペンペン」

(生きてきて、良かった)             この新しい命、必ず護って見せる。そう、誓った。
351名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/06(日) 17:11:00 ID:???
完。
352誰もいないので:2006/08/06(日) 17:18:33 ID:???
番外編。


「ヒッヒッフー。って呼吸を繰り返すんですよ。奥さんを安心させて下さいね。あなたにしか、できないんですから」
看護婦さんの言われた通りに呼吸を繰り返す。手を繋ぐ彼女の手にはとても力が入っていて、こっちまで汗だくだ!
「クエックエックエェェ」(がんばれ、がんばれ)

呼吸を続ける事まもなく、繋いだ手により力が入った。
「生まれるぅぅ!!」

353名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/06(日) 17:40:18 ID:???
クェェェェーーーーー
元気な産声が病室にひびきわたった。 

「おめでとうございます。とても元気な男の子ですよ」                       「あなたも抱いてくれる?」           「あなたに似た、とても可愛い男の子よ。」
今夜は、赤飯ね。
           完。
354名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/06(日) 18:38:36 ID:???
卵じゃないのか。乙
355名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/06(日) 19:54:34 ID:???
>>354
あっ。

マヤ「ここは、LMPのスレなのよね?」
綾波「はい」
マヤ「私たち、これで正しいのよね?」
綾波「はい」
マヤ「そうね。でも何かがおかしい気がするわ…」
綾波「…。だって、文才ないもの」
356名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/12(土) 17:57:20 ID:???
ペンペンあげ
357名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/08/21(月) 02:36:35 ID:???
>>333 おれもそう思う。
「人を鋳造する神様のかまどから、冷却されないまま放り出されたようなものだ。」
ナニこれ巨神兵?正直68まで読んだとこで限界だった。
 ジオフロントの内部ってって何で寒いわけ?斜め読みしてたらポールモールやらドゥカティやら、
どっかで聞きかじったとしか思えない単語ばかり出てくる。しかも必然性がない。
だいいちguten nachtって・・・。読んでて気づかないってのもねえ。
 くどくした描写とあいまってとても読めたシロモノじゃない。そのままイカ臭いペンペンでも書いてな。
358名無しが氏んでも代わりはいるもの
干す