903 :
姉弟01:
「ふーん、ふー、ふーん。」
トントントン
「んー、ふーん、ふーん。」
ジュージュージュー。
「んー、んー、んーー……。」
いつもの朝。
料理する包丁と、フライパンの音でリズムを刻み鼻歌を歌う。
「よしっ完成。」
今日の朝ごはんは、ベターに目玉焼きに、お味噌汁、そして炊きたてのご飯。
それが全て完成した所で、
「ふぁー…………。」
後ろで眠たそうな声が聞こえた。
「えびちゅ、ちょーだい。」
その人は、朝一でそんな事を言う。
「姉さん、挨拶は?」
毎朝の事だが、ほとほと呆れてしまう。
全世界を探しても、一日の始まりにビールを要求する人間なんて姉さんだけだろう。
「ん?ああ、おはよう、シンちゃん。」
姉さんは、後ろから僕に抱きつきながら挨拶をする。
背中越しに伝わる、二つの柔らかい膨らみに、
気持ち良い………。
なんて思ってしまって、姉弟なのに、姉弟なのにと自己嫌悪してしまった。
「……………はー」
「シンちゃん?」
ため息に気付いた姉さんが、抱きついたまま後ろから僕の顔を覗き込む。
「気分悪いの?学校、休む?」
この人は、僕の事になると心配性過ぎる所がある。
904 :
姉弟01:2006/10/22(日) 14:54:02 ID:???
「大丈夫だよ、姉さん。今日、二日目なんだよ。」
「あら、生理?私は三日目よ。」
「なっ!!」
からかおうとして、逆にからかわれる。これが僕達、姉弟の図だ。分かってても、やっとしまう。
やってしまうと……
「シンちゃん今日、夜用買って来てくれない?漏れないやつ。」
止まらない。
「ね、姉さん!!」
「あら、真っ赤。」
姉さんは頬をつつきながら、
「生理が来ないの………って言ったら、どんなになってたかしらね?」
「か、からかうなよ!!」
大体、僕と姉さんは姉弟で、物心ついた頃からのたった一人の家族なんだ。
確かに、人にはあんまり似ていないなんて言われるし、
時々、姉さんの事を熱く見てしまう事もある。
姉さんが、他の男と話してる所なんて見ると嫉妬してしまう時もあるけど、
とにかく、姉弟なんだ。
姉さんが妊娠してしまう事はしていない。
少なくとも僕は。
姉さんは他の男とそういう事してるのかな?
なんて思うと、落ち込んでしまうけど。
多分、それは僕が少しシスコンなだけで、
そんな事より、今は慌ただしい朝だから、
「姉さん、早く顔洗ってきなよ。遅れるよ。」
姉さんを促す。
「はーい、えびちゅ出しといてねー。」
姉さんはヒラヒラと手を振りながら洗面所に向かった。
「三本までだよ。」
背中に語りかけると、
「えー、厳しー。」
いや、十分甘いと思う。
905 :
姉弟02:2006/10/22(日) 15:01:47 ID:???
「ごちそうさま。」
「はい、お粗末さまでした。」
先に食べ終わった僕が台所で食器を洗ってると、食べ終わった姉さんが自分の分を持ってくる。
「ごめんね、家事全部まかせちゃって。」
「気にしないでよ。これ位しか、僕には出来ないんだから。」
これまで、何度も交されてきた会話。
「大体、姉さんは家事なんて全然出来ないじゃないか。」
「ちょっち非道くない?シンちゃん。私だって、カレー位は作れるわよー。」
三十路の女が、頬を膨らます。
歳を考えてよ、って思うけど不覚ながら可愛いと思ってしまった。
「そ、そうだね。あ、あれはおいしいね。」
どもってしまったのは、姉を可愛いなんて思ってしまった罪悪感では無く、
作りたてなのに、食べた人を食中毒に落とし入れるその味のせいだ。
けど、
「でしょー。近い内にまた作ったげるわね。」
なんて満面の笑みで言われれば、
「うん。楽しみにしてる。」
断れるはずも無く。
それどころか、あのカレーが待ち遠しく、楽しみだと感じてしまう。
「オッケー。まっかせなさい!!」
大体、毎回、後悔してしまうんだけど。
906 :
姉弟02:2006/10/22(日) 15:02:55 ID:???
早くも、少し後悔しながら食器を拭いてると、
「荒れてる………。」
姉さんが、ふいに僕の手に触る。
「ね、姉さん?」
その行為に驚いてしまった。
普通の姉弟なら、こんな事では驚かないと思う。
やっぱり、僕は異常なんだろうか?
そう思うと、やっぱり自己嫌悪。
「ちょっち、待ってて。」
そんな僕を残して、姉さんはリビングにパタパタと向かった。
「あったかかったな。」
それに、柔らかかった。
姉さんの手。
ドキドキしてる。
「シンちゃん?シンちゃん?シンちゃん!!」
「ね、姉さん!?」
いつの間にか、姉さんが戻ってきていた。
「どうしたの?ボーとしちゃって?」
姉さんが真正面から、僕の顔を覗き込む。
その距離が近い。
唇も近い。
「な、なんでも無いよ!!」
何を考えてるんだ、僕は。
最低だ。
「そう?顔、赤いわよ。やっぱり、調子悪いんじゃない?」
姉さんが、僕の額に手を添えようとする。
まずいと思う。
今、姉さんに触れられると、止まらないかもしれない。
だから、
907 :
姉弟02:2006/10/22(日) 15:03:56 ID:???
パンッ!!!!!
姉さんの手をはたいてしまった。
「シ、シンちゃん?」
姉さんが、悲しそうな顔をする。
「ごめん、僕は大丈夫だから。」
けど、僕の想いをぶつけたほうが悲しいはずだから。
「そ、それより、何か取ってきたんじゃないの?」
「あ、ああ!!そうそう、これよ、これ!!」
姉さんは、手に持ってたビンの蓋を開けて、指に中身をとる。
「塗ったげる。」
姉さんは、やっぱり、ふいに僕の手を取り、指にとったそれを僕の荒れた手に塗っていく。
「ハンドクリーム?」
「そっ。」
クリームの冷たさが、僕の頭を冷やしてくれた。
「ありがと、姉さん。」
「ううん。」
姉さんは微笑んでくれて、
「ごめんね、姉さん。」
つい、さっきまであんな事を思ってた事が本当に申し訳無くなった。
「シンちゃん?」
姉さんが、目線を手から僕の顔に移す。
「泣いてるの?」
いつの間にか目から、涙が溢れていた。
「ごめんね、姉さん。」
姉さんは僕の為に限りなく優しいのに、
僕は、その姉さんにヨコシマな想いを抱いてしまって、
やっぱり僕は異常だと思う。
「ごめんね。」
こんな弟で。
908 :
姉弟02:2006/10/22(日) 15:05:21 ID:???
「バカね……。」
姉さんが、クリームの付いていない方の手を、僕の頬に添える。
「姉さん?」
「唇、見てたんでしょ?」
「ごめん!!」
バレてたんだ。
何を言われるんだろう。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い………。
こんな弟とは、一緒には居れない。
って言われかもしれない。
それは、嫌だ。
けど、姉さんがそう言うのなら、そうしなければいけない。
悪いのは僕だから。
「顔あげて。」
「うん………。」
うつ向いていた顔をあげて、最終宣告を待つ。
「シンちゃん……。」
姉さんが僕の名前を呼ぶけど、僕は姉さんの顔を見れない。
やっぱり、怖いんだ。
一緒には居れないって言われる事が。
それ以外の事なら、何だって受け入れられる。
だから、
「姉さん!!」
お願いだから、捨てないで!!
なんて馬鹿な事を言おうとしたけど、言えなかった。
909 :
姉弟02:2006/10/22(日) 15:10:13 ID:???
「んっ!?」
途中で、僕の口は塞がれたから。
「んっ…、ひんひゃん……。」
姉さんの唇で。
「ね、姉さん?んっ!?」
ぬめった何かが、僕の口の中に入ってきた。
え!?え!?え!?
混乱する。
僕は、ぬめった何かが姉さんの舌だと気付くのにたっぷり五秒かかってしまった。
「姉さん……。」
僕は、これが姉さんの味なんだ。
なんて馬鹿みたいな事を思ってた。
姉さんの中に、自分の舌を入れる勇気は無かった。
けど、その分姉さんの舌は僕の中を自由に動き回って、思考をどんどんと溶かしていった。
「んっと……。」
三十秒位して、姉さんは唇を離す。
「………………。」
訳が分からなくてボーとしてた僕に、
「大人のキスよ。」
姉さんは頬笑みながら言った。
「ミサトさん……。」
何故だか、僕は姉さんの事をそう呼んで、
「シ、シンジ君?」
姉さんは、それにうろたえていた様だったけど。
ピンポーン……
呼び出しのベルの音がなって、
「ね、姉さん、学校行かないと。」
「そ、そうね。」
さっきまでの事が現実では無い様な気がしていた僕は、その音に現実に引き戻された。
910 :
姉弟02:2006/10/22(日) 15:11:24 ID:???
「それじゃあ、行ってきます。」
さっきまでの事を上手く対処出来そうに無い僕は、逃げる様に玄関に向かった。
「行ってらっさーい。」
そんな僕に、いつも通りの挨拶をしてくれる姉さんに申し訳なくなったけど、
ピンポン!!ピンポン!!ピンポン!!ピンポン!!ピンポン!!ピンポン!!
お姫様達を、これ以上待たせる訳にはいかなかった。
プシュ―――!!
音を立てて、ドアが開く。
「おそい!!バカシンジ!!」
「……おはよう、葛城君…。」
姉さんとのキス以外はいつもの朝だった。