ミサト×シンジの可能性を語るスレ 2回目

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890名無しが氏んでも代わりはいるもの
「シンジ君!!!」
病室に入ると、シンジ君は窓から私に目線を移した。
「ああ、ミサトさん生きてたんですね。良かった。」
気遣いの言葉。
けど、それには感情が込もっていなかった。
当たり前だ。
私は、それだけの事をシンジ君にしてきたのだから。
だけど、私は
「シンジ君………。良かった………。」
シンジ君の声をまた聞けた事が嬉しかった。
「ミサトさん?なんで泣いてるんですか?」
シンジ君は心底、わからないという様な感じで聞く。
「あ、ごめんね。みっとも無いね。」
私は涙を拭う。
「シンジ君の声、久し振りに聞いたから。ちょっち嬉しくてね。」
「嬉しい?どうしてです?」
「どうしてって…………。」
家族だから。
そう言いたかった。
好きだから。
そう言いたかった。
けど、言えなかった。
「僕は、道具にすぎなかったんですよね?」
そうだったから。
シンジ君は私にとって、復讐の道具だったから。
いや、それが全てでは無かった。
けど、結局私はシンジ君を無理矢理戦わせた。
シンジ君が戦わないと世界は滅ぶと、偽善を振り撒いて。
「使徒はもう来ないんですよね。だったら、僕はもういらないじゃないですか。」
891名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 16:06:10 ID:???
『そうじゃない!!!』
って、シンジ君の言葉を否定したいのに。
『シンジ君にいて欲しい。』
そう、思うのに。
そう、言いたいのに。
そんな事を言うのも、
思うのも
今更な様な感じがして。
「…………………ごめんなさい。」
結局、謝罪して。
それも、今更だった。
「…………………。」
そして、私は何も言えなくて。
うつ向いてしまう。
「ごめんなさい。」
沈黙がしばらく続いて、小さい小さい、シンジ君の声が聞こえた。
「シンジ君?」
うつ向いていた顔を上げて、シンジ君の顔を見る。
「ごめんなさい、ミサトさん。」
シンジ君は謝る。
「どうして!?どうして!?どうして、シンジ君が謝るの?」
訳が分からなくて、混乱してしまった。
「ミサトさん泣いてるから。」
今度は逆にシンジ君がうつ向いて。
「ごめん!!違うの、これは、違うの……。」
私は、言われて初めてそれに気付いて。
女の武器なんて言われている、シンジ君に謝らせてしまった見苦しいそれを拭った。
「ごめんなさい。」
私は、また謝って。
また、うつ向く。
けど、汚いそれは止まらなくて床にぽろぽろと落ちる。
892名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 16:08:34 ID:???
「ごめんなさい……。」
歪んだ視界は何も写さなくて、シンジ君の声だけが聞こえる。
「本当は、こんな事言うつもりは無かったんです。」
「そんなの!!私、言われても仕方無いもの!!だから、シンジ君が謝る必要な」
「みんなが、優しいんですよ………。」
シンジ君は、私の言葉を遮りポツリと呟いた。
「僕が目を覚まして、ここに色んな人が来たんです。
リツコさん、マヤさん、日向さん、青葉さん、冬月副司令、色んな人が。
みんなが優しいんですよ。
そして、みんなが謝るんです。
それに僕が『もう、良いですよ』って言ったら、みんな笑顔で帰って行くんです。
本当は、みんなの事許せ無いんです。
助けて、欲しい時に助けてくれないくせにって。
今更って。
でも、許そうって。
悪いのは、あの人達だけじゃないからって。
だから、許したんです。
だから、ミサトさんにも
『もう良いですよ』
って言おうって、思ってたのに。
ミサトさんを泣かしたくは無いのに。
それなのに僕は、やっぱり最低ですね。
ごめんなさい、ミサトさん。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。」
シンジ君は、心から謝罪の言葉を綴る。
893名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 16:09:50 ID:???
「なんで!?なんで!?なんで!?謝らないでよ!!シンジ君は悪く無いのよ!!」
私は、うつ向くのをやめシンジ君の顔を見る。
悪いのは、私達だから。
「一番、悪いのは僕なんですよ。」
そう言ったシンジ君は震えていた。
私が、シンジ君を送り出した後の事は知らない。
だから、シンジ君が何を経験したのかもわからない。
だけど、だけど、だけど、だけど……
「シンジ君は悪く無い!!」
それは、確かだと思った。
「ミサトさん?」
だから、私はシンジ君を抱き締めた。
「シンジ君は、悪く無いの。ね?悪く無いのよ。悪く無いの。」
今更だとしても
シンジ君に偽善だと、思われるとしても、
私は、シンジ君を抱き締める。
というか、勝手に体が動いて抱き締めていた。
「ミサトさん……。ありがとうございます。」
シンジ君も、おずおずと私の背に腕を回す。
「あったかいです。ミサトさん。」
あの紅い世界には、何も無かったから………。
シンジ君は聞き取れるか、聞き取れないか位の小さな声で、そう呟いた。
「そう、良かった。」
今は、それには触れて欲しく無いというのが分かったから。
私はシンジ君の震えがおさまる様にと、ただただ抱き締めて私の体温を伝えた。
894名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 16:11:16 ID:???
「ミサトさん、ミサトさん、ミサトさん、ミサトさん………。」
シンジ君は堰をきった様に泣きじゃくり、私を強く抱き締める。
「シンジ君、辛かったね。もう、大丈夫だからね。ごめんね。ごめんね。」
シンジ君を抱き締めてると、その身体の線の細さがあらためてわかる。
まだ子供だということがわかる。
そんな子供達に戦わせた事の罪深さをあらためて知った。
「シンジ君、私は傍にいるからね。ずっと、傍にいるからね。」
今更だとしても、こんなにも傷付いたシンジ君は私が癒さないといけない。
多分、きっと、この世で今シンジ君に一番近いのは私だから。
「ミサトさん、良いんですか?」
シンジ君は赤い目で、私を見て震えている。
「あったりまえじゃない。だって、家族でしょ。」
「ミサトさん………、ありがとう。」
シンジ君は微笑んで。
それを見て、私は気付く。
癒さないといけないじゃない。
私がシンジ君を癒したいんだって。
そして、もっともっと、この笑顔を見たいんだって。
「それに私、シンジ君の事大好きよ。」
そう言って、私はシンジ君の顔を自分の胸にうずめる。
「ミサトさん、ごめんなさい。」
「どうして、謝るの?」
シンジ君の髪を撫でながら尋ねる。
895名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 16:26:41 ID:???
「本当にあんな事、言うつもりは無かったんです。死ぬまで。」
「だって、本当の事でしょ。仕方無いじゃない?」
「半分だけなんですよ。」
「半分?」
「半分は、恨んでる………。ってのは本当なんですけど。」
「うん。」
「もう半分は、好きって気持ちなんですよ。」
「本当?」
「はい。」
「どうして?私、シンジ君に酷い事してきた。
それなのに、好きって言ってくれるの?」
「だって、嬉しかったんですよ。
『おかえり』って言ってくれて。
楽しかったんです。
アスカが来て、それから少しの間までだったけど本当に家族を感じれたから。
死んでまでして僕を守ってくれたじゃないですか?
僕の全部を道具として、見てた訳じゃ無いんですよね?」
「当たり前じゃない。
私だって、『おかえりなさい』って言ってくれて嬉しかった。
シンジ君とアスカと暮らせて楽しかった。
エヴァのパイロットとしてだけじゃない。
シンジ君と出会えて、良かったって思ってる。」
「良かった。じゃあ、やっぱり僕もミサトさんの事、好きです。」
「シンジ君…………。」
シンジ君も、私も涙や鼻水でぐしょぐしょで。
それなのに、笑顔で。
いつの間にか、嬉し涙に変わってて。
それが、とても嬉しかった。
896名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 16:28:45 ID:???
「分かってたはずなのに、あんな事、言ってごめんなさい。ミサトさん。」
「もう良いの、シンジ君。」
「でも……。」
私はシンジ君が何か言おうとするのを遮って、唇をシンジ君のそれに優しくつける。
「んっ!?………。」
シンジ君の頭を抱え込んで、逃がさない様にする。
「んっ、ん、ん…。」
シンジ君の唇の隙間から、舌を差し入れる。
「んっ!?」
シンジ君は驚いた様だったけど、それを無視してシンジ君の口内をたっぷり動き回って、唇を離す。
「ミ、ミ、ミサトさん!!何をするんですか!?」
「あら、シンちゃん私の事、好きなんでしょ?」
「好きって……、そうですけど。けど、それは……いわゆる男と女のそれでは無くて……。家族間のそれっていうか………。」
「あら、そうなの?私、悲しいわー。」
「えっ!?だって、ミサトさんには加持さんがっ……………てミサトさん?」
「なに?」
「からかいましたね?」
「あら?何の事?」
「ごまかさないでください!!」
「!!シンちゃん。こんな近いのに、大声を出すのはこの口かしらっ!!」
シンジくんの顔を胸にうずめてやると
「うぷっ!?ちょっと!!ミサトさん、やめてください!!」
って真っ赤になってくれて。
そんなシンジ君が、帰って来てくれて。
「おかえり、シンジ君。」
「……ただいま、ミサトさん。」
言いたい事が、やっと言えた。
897名無しが氏んでも代わりはいるもの:2006/10/18(水) 16:33:47 ID:???
「ミサトさん、苦しいです。離して下さい。」
「あっ、ごめんねー。」
シンジ君を解放して、頬を撫でる。
「本当に、生きて帰ってきてくれたのね。」
「はい。」
「続きは、退院してからね。」
「続き?」
「あの時、約束したじゃない。」
「あの時……、あっ!?けど、あれは………。」
「私は、その気の無い相手に舌まで入れちゃうキスなんてしないわよ。」
シンジ君は、多分人間の限界まで真っ赤になっていた。