24 :
830:
「本当にいいの?
またシンちゃんのこと傷つけるかもしれないよ? それでもいいの?」
「今さらミサトさんと離れて一人暮らしなんて、退屈すぎて無理ですよ。
それに・・・誰がミサトさんの料理の世話するんですか?
誰がミサトさんの部屋掃除するんですか? ビールの空き缶の片付けだって・・・」
「シンちゃん・・・」
「それに、僕がいなくなったら、泣き虫のミサトさんはずっと泣くんでしょ?
今みたいに。」
「何うぬぼれてんのよ!! 泣いてなんかないわよ!!」
「じゃあ、その瞳が濡れてるのは何故ですか?」
「これはっっ・・・目にゴミが入っただけよ!!」
「ふ〜ん。
じゃあ、ミサトさんは僕が出てっても平気なんだ?」
「誰もそんな事言ってないじゃない!!
一緒にいて欲しいわよ。当たり前でしょ?
この1週間、シンちゃんがいなくて、すごく寂しかったんだから。
一緒にいたい。ずっとずっと一緒に。」
25 :
830:2005/09/09(金) 00:52:50 ID:???
「だったらいいじゃないですか。」
「怖いのよ。
シンちゃんと一緒の幸せに、のめり込んでしまいそうで。
それに、シンちゃんを傷つけてしまうことが怖いのよ。
シンちゃんには幸せになって欲しいの。
一番大切な時間を、エヴァで取り上げてしまったから・・・
うんと幸せになってもらいたい。
そのためには、私なんかといるよりも、もっとシンちゃんの事を幸せにしてくれる人と一緒にいる方が」
「僕を幸せにしてくれる人かどうかって、どうやって見極めるんですか?
そんなの、わからないじゃないですか。」
「でもっ!!」
「今のこの生活が、ミサトさんと一緒のこの生活が僕の幸せなんですよ。」
「シンちゃん・・・」
26 :
830:2005/09/09(金) 01:09:10 ID:???
「今までこの家で色んなことがありましたよね。
辛いことが多かったけど、楽しいことだってたくさんあった。
そしてこれからも色んなことが起きると思う。
僕がミサトさんを傷つけるかもしれない。
ミサトさんに傷つけられるかもしれない。
でも、いつまでも“ヤマアラシのジレンマ”じゃ、仕方がないじゃないですか。
お互いに傷つけてしまうことがあったとしても、それ以上に幸せだと感じることができたらいいんですよ。」
「シンちゃん・・・
大人になったね。」
「そりゃあ、色々ありましたから。
でもお陰で、あの頃以上に最悪なことは、
めったに無いんじゃないかなって思えるようになりましたよ。
だから、ちょっと前を向いて歩けるようになったんだ。
僕は、これからもミサトさんと一緒にこの家で生活したい。
保護者と子供じゃなくて。 男と女として。
僕じゃ頼りないかもしれないけど・・・」
27 :
830:2005/09/09(金) 01:17:25 ID:???
「ううん。
頼もしくなったよ。
ホント、見違えちゃうくらい。
もっと若い時にシンちゃんと出会えてたらな・・・」
「歳なんて関係ないですよ。
僕は今のミサトさんが好きなんだから。」
「でも・・・
シンちゃんが若い女の子と一緒にいたら、嫉妬しちゃうと思うし。
やきもち焼いてるカッコ悪い姿なんて、見せたくないな。」
「大丈夫ですよ。 僕、浮気しませんから!!」
「心変わりってこともあるかもしれないじゃない。」
「・・・・・・僕って、そんなに信用されてないんですか?
ミサトさんと結婚したいなって考えてたのに・・・」
「結婚!?」
28 :
830:2005/09/09(金) 01:26:05 ID:???
「はい。
僕が大学卒業したら、ミサトさんと結婚したい・・・
って、誕生日プレゼント、ペンダントじゃなくて指輪にしたら良かったですね。
何で気付かなかったんだろう・・・
失敗したなぁ・・・」
「シンちゃん、私と結婚って・・・本気で言ってるの?」
「僕じゃダメですか?」
「ダメなわけない!!
でも、まさかシンちゃんの口からそんな言葉が出てくるなんて思ってもなかったから・・・」
「僕は本気ですよ。もちろん、ミサトさんがOKしてくれればの話ですけど。
って、何で泣いてるんですか!?????」
29 :
830:2005/09/09(金) 01:38:59 ID:???
「だってぇ、あんなにヒドイことをたくさんしてきたのに、
シンちゃんから優しい言葉をいっぱいもらった上に、結婚なんて。
耐えられないよ・・・」
「ミサトさん。
僕はもう、昔のことでミサトさんを責めたりしない。
あの頃があったから、今があるんだ。
だから、昔のことを思い出して泣くのは、もうやめて。」
「シンちゃん」
「1週間ミサトさんと離れて、よくわかった。
僕はミサトさんが好きなんだって。
お母さんのミサトさん。お姉さんのミサトさん。そして、女性のミサトさん。
どんなミサトさんも全部好きなんだ。
ずっと一緒にいたいって、そう思った。」
30 :
830:2005/09/09(金) 01:50:05 ID:???
涙が止まらなかった。
どうして彼の言葉は、こんなにも胸に響くのだろう?
温かくて、心地良くて、胸がいっぱいになった。
「ねぇ父さん。私、幸せになっていいかな?」
幸せなんて、私には無縁の言葉だと思っていた。
幸せって、手の届かない遠くにあるものだと思っていた。
だけど・・・
こんなにも近くにあったのだ。
私が1番大切だと思う彼と共に・・・
私は彼に抱きついた。
その身体は、たくましく成長していて、私を温かく包み込んでくれた。
彼は泣きじゃくる私の頭を、大きな手で優しく撫でてくれた。
そして耳元で囁いた。
「ミサトさん、愛してます。」
了。