春眠不覚暁 俺とシンジのLOSスレ 白昼夢 第七夜

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200プール

 シンジきゅんの背中、シンジきゅんの太もも、シンジきゅんのふくらはぎ。
 だからシンジきゅん、なんであっち向いて着替えるんだよう。
「お兄さんがヤラシイ目で見てるからじゃないですか」
 おっと声が出てたか。
 じろりとこちらを睨み付けると、シンジきゅんは素早く水着に着替えて更衣室を出ていってしまった。まあ可愛いお尻が見れたからいいんだけどさ。

 オレとシンジきゅんは、市民プールにやってきていた。セカンドインパクト後の、終わらない夏を涼しく過ごす為だ。ただ、泳げない人間には楽しい場所じゃないのは確かだ。
 オレも急いで着替え、シンジきゅんに追いついた。
「ま、待ってようシンジきゅん」
「もう。その「きゅん」っていうの、外では言わない約束だったじゃないですか……」
「う、冷たいなあ、シンジきゅ……くぅん。冷たいのはプールの水だけで充分だよ」
「……僕、見てますから、どうぞ入ってきて下さい」
 ご機嫌斜めだなあ。目的地がプールだと知った時からずっとこんな調子だ。
「騙すみたいに無理やり引っ張ってきたのは謝るからさあ、いっしょに泳ごうよー」
「遠慮しておきます」
「だから教えてあげるって」
「人間は浮かぶようには出来てないんです」
 手ごわい。こーゆーときは。
「お願い! シンジ大明神様! 足のつくところでもいいからいっしょに!」
「ちょ、ちょっと。お兄さん、みんな見てるよ……」
 思いっきり拝んだら注目の的。案の定、シンジきゅんは顔を赤らめて辺りをはばかる。
 こうなればしめたものだ。
「ダメ?」
「はぁー……分かりました」
 肩を落としたシンジきゅんがしぶしぶ頷いてくれた。よし、シナリオ通りだ。
201プール:2005/06/22(水) 00:27:19 ID:???
 子供用の浅いプールはひざぐらいまでしかない。軽く準備体操をしたあと、二人座り込んで水に浸かった。
 シンジきゅんが、周りのはしゃぐ子供たちを見て肩を竦める。
「僕たち……浮いてませんか?」
「シンジ君は浮かないんじゃなかったっけ」
「う……」
「さ、始めようか」
 シンジきゅんの手を取った。男の手というにはまだまだ頼りなげな手だ。オレの両手をぎゅっと握りながら不安そうにこっちを見上げる。
「……やっぱり泳がなきゃ駄目?」
「往生際が悪いねえ。とりあえず自力で浮かんだらご褒美あげるから頑張ろう」
「う、うん……」
 水に浮かべて引っ張ってみる。身体に力が入ってるなあ。
「ダメダメ、力抜かないと」
「そんなこと言われても……」
 手を離すのはもったいないけどしょーがない。
「んじゃ、プールサイドに手をかけて。……そう。足を伸ばしてー」
 足細いなー。
 こうして日光の下で見るとよく分かる。適度に筋肉は付いてるみたいだけど、脂肪がないからやっぱり細い。まだスネ毛も産毛程度だし、すべすべして気持ち良いんだよな。
「あのー、お兄さん?」
 気がつくとさすっていた。いかんいかん。日光の下では健全に行かないと。
202プール:2005/06/22(水) 00:30:43 ID:???
「んじゃ、ばた足してみようか」
 言われるままに足をばたつかせるシンジきゅん。オレはその腰に手をやった。
「な、なに?」
「シンジくぅん、腰に力入ってるよー」
 つつつと人さし指で背骨をなぞる。ぴくんと反応して身体が沈んだ。
「ちょっ、んっ……わっぷ」
「ほら、力入れるから沈むんだって」
「だって今、お兄さんが……」
「何? まさか、感じたりしてないよね」
「し、してないよっ」
「じゃあ続けるよ。今度は仰向けになってみよう」
 片手で細い腰を支えて、水に浮かべる。
「逆らうから力が入るんだよ。イったあとみたいに脱力してみなよ」
「イ……い?!」
 想像したのかとたんに赤くなる。シンジきゅんもエッチだねえ。
「そ、そんなの分からないよ」
「じゃあ今イってみる?」
「お兄さん!」
「じょーだんじょーだん」
 周りで遊ぶ子供たちが不思議そうにこっち見てるから、さすがのオレも無理。小さなお子様たちにはもれなく保護者もついているしな。
203プール:2005/06/22(水) 00:33:37 ID:???
 オレはコツを伝授する。
「水に身を任せる感じかな。いつもオレに身を任せるみたいにさ」
「や、やっぱりそういう例えなんだ……」
 うんざりした様子で、それでもシンジきゅんは素直に身を預けた。
 無防備な身体に、ついついイタズラしたくなるのは人の性。空いた手で脇の下をわきわき触る。
「ひゃっ、やめ、てよっ……ぅく、くすぐったいってば」
「ほらー。力入れるから沈んじゃうでしょーが」
「そ、そんなこと、言ったって」
「特に、そうやって頭上げるのがいけないな。耳は水の中に沈むくらいがいいんだよ。顎を上げれば頭が沈むから」
 シンジきゅんの身体のことはよーく知ってる。顎が上がるポイントは乳首だ。軽くタッチしてみる。
「あっ」
 シンジきゅんの身体がわずかに反った。
「ほらね、今、一瞬浮いたよ。コツ分かったかな?」
「わ、分かったから、こんな教え方やめようよ……」
「ダメ。身体は言ってるよー。もっと教えて欲しいって」
 言いながらつんつん突く。
「ちょ、やっ……」
204プール:2005/06/22(水) 00:36:25 ID:???
 しばらく繰り返すと、耳が水に浸かることに慣れたのか、仰向けで浮かぶことができるようになった。
 まさか本当にあんなんで浮かべるようになるとはなあ。ちょっと顔が赤くなってるけどよしとしよう。
 シンジきゅんが心地よさそうに水面を漂っている。
「はぁー浮いてる……」
「気持ちいいだろ?」
「うん……」
 オレは、ぷかぷかと浮かぶそのおでこにキスをした。
「ほい、ご褒美」
「……これだけ?」
 物足りなさそうに見上げる顔に、少しクラっとくる。
 やばいやばい。泳げるようになったシンジきゅんと誰もいない海へ行く、という計画が先に控えてるんだ。今はギャラリーが多すぎるし我慢我慢。
「シンジ君は、もっと激しいのが欲しいんだ?」
「そ、そういうわけじゃ……」
 照れながら目をそらすもんだから、もっとからかってやろうとオレは身を乗り出した。
205プール:2005/06/22(水) 00:38:35 ID:???
 突然、すぐ横で子供の声がした。
「いま、ちゅーした!」
 無邪気なツッコミに、シンジきゅんは真っ赤になって身を起こした。浅い水深だというのに沈みかける。
「わぷっ……ちちち、ちがっ」
 いや、違わないってシンジきゅん。おでこだけどちゅーはしたぞ。
 おそらく小学校入学前の女の子だろう。首をかしげてシンジきゅんに話しかける。
「おにーちゃん、びょーき?」
「なな、なんで?」
「おかお、まっか」
「そ、そっかな」
「ママもね、あたしがびょーきのとき、ちゅーしてくれるの」
「そうなんだ……。でも僕は、病気じゃないよ」
「そ。今のはご褒美のちゅーだよ」
「お、お兄さん」
「ごほうびのちゅー、うちのママもしてくれるよ」
 別の子供も話に割って入ってきた。
 その間にも、ぞろぞろとオレたちの周りに子供たちがやってきて取り囲む。目立ってたからなあ。女の子がきっかけになったんだろう。さすがにこんなに大勢のガキどもの相手なんてしてらんない。
 オレたちは逃げるようにしてその場を離れた。
206プール:2005/06/22(水) 00:41:55 ID:???
 プールサイドを速足で突き進む。そんなに慌てなくてもいいのにな。赤くなって先を行くシンジきゅんに嫌な予感がした。
 飛んできたビーチボールを避けた拍子に、案の定、滑った。
「うわっ」
「あっ、シンジきゅん!」
 バランスを崩したシンジきゅんはプールへどぼん。
 やばい、足がつかないところだ。運の悪いことに近くに人もいない。ちょうどプールサイドにも手が届かない距離だ。
 オレ向けて手を伸ばしながら、もがくシンジきゅんが沈む。やっと追いついたオレはすぐさま飛び込んだ。
207プール:2005/06/22(水) 00:42:55 ID:???
 引き上げたシンジきゅんの顔は真っ青になっていた。
「シンジ……きゅん?」
 まずい、息をしてない。オレは迷わず口に縋り付いた。
 人工呼吸なんて、高校の授業でやったっきりだ。ええっと、確か、気道確保して、鼻をつまんで、息を――。
「ごほっ、がほっげほっ」
 三度目の息の注入で、シンジきゅんは咳き込んで水を吐いた。ふー、これで一安心。
「ん……」
 シンジきゅんが薄目を開ける。虚ろな目には、覗き込むオレしか映ってない。もうろうとした意識の中、シンジきゅんがオレの首に手を伸ばした。
 小さく擦れた声で同じ単語を何度も繰り返しているのが聞こえた。
「……さん……いさん、お兄さん……」
「ん、なに? んんっ!?」
 突然のシンジきゅんからのくちづけに、さすがのオレも動転した。しかも濃厚なやつだ。
 積極的なのは、お兄さんとーっても嬉しいんだけど、ちょっとギャラリーが多いなあ。
208プール:2005/06/22(水) 00:45:44 ID:???
 おーい。
 口を塞がれたままぺちぺちと頬を叩くと、シンジきゅんがはっと気づいた。一瞬後、強い力でオレを突き放す。ひ、ひどいよシンジきゅん。
「ぼぼぼ、僕っ」
「熱烈なのは嬉しいんだけど、この場所ではさすがのお兄さんも続きはできないよ」
 耳元で囁いたオレは、ゆでダコになったシンジきゅんを肩に抱きかかえた。
「い、いいよ、降ろしてっ。僕、一人で歩けるから」
 聞く耳持たず、オレはすたすた歩き出す。ぼこぼこと背中に食らうシンジきゅんのパンチなんて、てんで威力がない。
 プールサイドを出て人気の無い場所に移動するオレに、降りるのをあきらめたシンジきゅんが訝しんだ。
「どこ……行くんですか……?」
「だから続きをしに。ご褒美欲しくて誘ったんでしょ、シンジきゅん」
「さ、誘ってなんか」
「まあまあ、シンジきゅんの気持ちは分かってるから」
 それには何も言わず、シンジきゅんはぼそっとクレームをつける。
「……僕、いま溺れたばっかりなのに……」
「だいじょーぶ。オレはいつもシンジきゅんに溺れてるし」
「僕は流されてる気がする……」
「それが気持ち良くなるコツだよ。さあて、個室はどこかなー」
 こうしていたいけな少年の拉致に成功したオレは、早速ご褒美を開始した。

(おわり)