アスカがVS三号機あたりで覚醒していたら、

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LCLの中をたゆたう無数のレイ。レイの姿をした白い肉塊。
それが崩れていく。微笑みながら。嬉しそうに嬌声をあげながら。

アスカは目の前でゆっくりとほどけ、沈殿していく少女たちの肢体に
呆然とするばかりだった。
見たくない。見たくないのに目を離せない。
目に映る光景を理解できなかった。
いや違う…理解したくない、と冷静に考えている自分がいるのが判った。

うずくまり、嗚咽するばかりのリツコ。
その耳障りな声を消したかったのだろうか。ミサトは拳銃を向けたが、
ついに引き金を引くことはなかった。
アスカ。ミサト。三尉。
みな、無言だった。この光景を前に、言葉などあろうはずもない。
シンジはうつろな目でその光景を見ていた。
「うふふ」
場違いな笑い。
「あははははははは」
いつのまにかシンジは車椅子から立ち上がり、よろよろと歩み始める。
笑い続けながら。ゆっくりと。
水槽に顔をつけて覗き込む。
楽しそうに。子供のように無邪気に。

アスカはそっとシンジのからだを抱きとめ、水槽から離そうとする。
シンジは抵抗せず、力なくその場にへたり込む。
天井を見上げながら笑い続ける。

もうシンジは、…治らない。
『かもしてない』なんて逃げ場すらなく。
もう二度と元のシンジに会うことはできないだろう。
確信に似た直感に、アスカは身をふるわせる。
シンジのからだをぎゅっと抱きしめる。そうしなければ自分自身が
くずおれてしまいそうだったから。