ヒカリ×シンジの可能性を(以下略) 2時限目

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932名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/05(土) 04:42:03 ID:???
>>921の逆パターンもある気もする
アスカと決裂して傷心のシンジを優しくいたわるヒカリ
933名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/05(土) 22:54:29 ID:???
「彼女は世界の端っこで」はヒカシンなの?
934名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/12(土) 01:50:57 ID:/jmavfC/
>>res698
ツヅキ…モウガマンデキナイヨ
935名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/12(土) 22:54:59 ID:???
ごめんなさい
すっかり忘れてました
おまかにお話の内容もきれいさっぱりと忘れちゃいました
もう一度、読み直してきます
936名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/13(日) 02:11:10 ID:???
シンジは委員長のことどう思ってるんだろ?
トウジやアスカとのつながりがなけりゃアウトオブ眼中なのか?
937名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/13(日) 02:18:50 ID:???
そらそうだろ。
勿論それはヒカリにとっても同じだと思うが。

SS版は違うらしいけど・・・
938名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/15(火) 00:27:37 ID:???
セガ1やりてー
939名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/15(火) 03:24:57 ID:???
キスするとバッドエンドだからwww
どうしろと
940res698:2008/01/15(火) 21:56:39 ID:???
>>795
「アスカちゃん。ちょっとお買い物に出かけるから、お鍋の方を見てもらえる? 予約して
あるケーキも受け取りにいかなきゃならないから」
 とユイさんが言った。
 アタシが”はい”と返事をすると、ユイさんは笑顔で、
「じゃあ、レイと一緒に準備を進めていてね」
 と言って、出かけていった。
 クリスマス・イブでも仕事が忙しいママだから、毎年アタシはシンジのウチでイブを
過ごしていた。そして、一人暮らしをしていたレイもやっぱりイブの夜は一緒だ。
 ただ、今はシンジの家族としてレイはこのウチで暮らしている。
「アンタ、鶏肉も嫌いなんだっけ?」
 とクリスマスツリーの飾り付けを直しているレイに訊いてみた。
「……好きではないわ」
「相変わらず菜食主義ね」
「違うわ。卵料理は好きだもの。オムライスや卵焼きはいくらでも食べられるわ」
「ふーん、やっぱ偏食ね。ところで、シンジはどこ行ってんの?」
 と言って、アタシは時計を見た。
 午後3時。陽がたいぶ傾き始めていた。
「碇君は洞木さんとデートよ。夕方には戻ると言っていたわ」
「あ、あー、そうか。そう言えば、そんなこと言っていたっけ。で、アンタはそれでいいわけ?」
 レイは不思議そうな目で小首を傾げた。
「……どういうこと?」
「だって、アンタ、シンジのことを好きなんじゃないの?」
 レイはほんの微かに笑みを浮かべると、
「なにも自分だけのものにするのが愛ではないわ」
 と、とても恥ずかしいことをさらっと言い切った。
「私は碇君が幸せならそれでいいもの」
「……あんた、神様?」
「違うわ。ただ今は碇君と家族になれただけでじゅうぶんなだけ」
「ふーん、アタシにはよくわかんないわ」
 少し考えるような素振りをしてからレイは、
「それは性格の違いね」
941名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/15(火) 22:21:58 ID:???
 と言った。
「まあ、アンタとアタシはなんでも正反対だしね」
「そう? ……似ている部分も多いと思うけど」
「どこがよ?」
 レイはオーブンの中にある七面鳥の照り焼きの様子を見てから、
「あなた、ドイツに行くの?」
 と唐突に訊いてきた。
「……知ってたんだ?」
「ええ、おじさまとおばさまが話しているのを偶然に聞いて」
「そうなんだ。そのこと、シンジも知っているの?」
「たぶん、知らないと思う」
「そっか…」
 アタシは横目でお鍋の中のシチューを見てから、
「ドイツに行かないことに決めた、みたいな?」
 と答えた。
「受験のこととか、将来のこととか、いろいろ考えると日本にいた方が都合は良いかなって」
「……そう」
 とだけ言って、レイはまたクリスマスツリーのところへ戻った。
「って、訊いておいて、反応はそれだけ?」
「……だって、私には関係ないもの」
「ホント、アンタは張り合い無いわね」
 レイはツリーの天辺にある星飾りの向きを調整しながら、
「碇君もよろこぶわ」
 と呟くように言った。
 本当にシンジは喜ぶのだろうかとアタシは思ったが、ドイツに行こうとしていたことを
言うつもりはないので、その答えはもう永遠にわからないと思う。
 その後、シンジとおじさまが一緒に帰ってきて、ユイさんが戻ってきたところでクリスマス
パーティーが始まった。
 おじさまにデートしているところを見られたシンジはさんざんからかわれていたが、それ
でもとても楽しそうな顔をして照れているシンジにちょっとだけ嫉妬を感じていたような気が
しないでもないような、そんな夜だった。
つづく
942名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/16(水) 00:13:49 ID:rjtvHk/r
>>res698
待ってまスた!
943res698:2008/01/16(水) 21:30:56 ID:???
 ママに振り袖の着付けをしてもらったアタシは鏡の前で自分の姿を見た。
 淡い桜色がなんとなくアタシに似合っているような、そんな感じがした。
「行ってらっしゃい」
 とママに見送られ、同じマンションにあるシンジの家へ向かった。
 シンジの両親に新年の挨拶をしてから、まだ眠っているアイツの部屋へと行く。
「シンジ! 起きなさい。もう昼よ」
「……ん? アスカ?」
 シンジは眠り目を指でこすりながら上半身をベッドから起こした。
「目が覚めた?」
「ん、うん」
「じゃあ、明けましておめでとう。シンジ」
「んー、おめでとう、アスカ」
 まだ意識は半分くらい夢の中にあるシンジはボケボケっとしたままだった。
「新年だっていうのに、シンジは相変わらずねぇ」
「……なんのこと?」
「ま、いいから、早く着替えなさいよ。初詣に行くんでしょう?」
「あっ、今何時?」
 シンジは急に目をパッチリさせて時計を見た。
「ごめん。今、着替えるから」
 アタシはダメな弟を見ているようで、ちょっと溜め息をついてから部屋を出て行った。
 その後、ダイニングでユイさんたちとお茶をしながらシンジを待つこととなり、
「アスカちゃん。振り袖姿、とても似合っているわよ」
 とユイさんが微笑みながら言った。
「そうですか? アタシ、着物にはちょっと自信が無くて」
「ホント、可愛らしいわよ。ねぇ、あなた?」
「うむ」
 と椅子に座って新聞を読んでいるおじさまは無愛想に返事をしたが、その前にアタシを
ちらっと見ていたのには気づいていた。
「こういう時、娘をもうひとり産んでおけばよかったって本当に思うわ。男の子なんて、つま
んないんだもの。母親をうっとうしがるし」 
944名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/16(水) 21:52:04 ID:???
「でも、今はレイがいるじゃないですか?」
「レイ、ねぇ」
 と言って、ユイさんは小さく溜め息をついた。
「あのコ、ファッションには全く興味ないみたいなのよ。素材はいいのにもったいないわ」
「は、はぁ」
「初詣にレイも行くんでしょ? 遅いわね」
「あっ、レイは寒いから家で寝ているそうです」
 ユイさんはまた溜め息をついて、
「レイの将来が心配だわ。本当に、シンジに頼むしかないかも」
「でも、好きな人でも出来れば、そういうことにも気を遣うようになるんじゃ」
「そうだといいわね」
 コーヒーカップに口を付けた後、ユイさんは微笑んで、
「ねえ、アスカちゃんは好きな人いるの?」
「ええっ、アタシですか?」
「そう。もしいないのなら、ウチのシンジなんてどうかしら? アスカちゃんが娘になって
くれるなら、おばさん、とってもうれしいわ」
「ア、アタシは……別に、」
「そんな簡単にはいかないわよね」
 とユイさんは静かに言った。
「いくらシンジとアスカちゃんの仲が良いといっても、それがすぐ恋愛に結びつくってもの
でもないものね。ねえ、アスカちゃん。恋愛の本質って何か知ってる?」
「本質ですか?」
「恋愛ってね、ただの錯覚なのよ」
「……錯覚?」
 ユイさんはコーヒーカップの縁を指でなぞりながら、
「錯覚だから、衝撃的な出会いで人を好きになったり、ある仕草にドキッとしたり、少し優し
くされただけで恋してしまったりするの」
「ちょっと身も蓋も無さすぎませんか?」
「ふふっ、まあ、そんな感じよ。だから、シンジとアスカちゃんは小さい頃からお互いをよく
知っているから、そういう錯覚なんてしないのかなって思ったりするのよね。少し寂しい話
だけど」
 と、ユイさんは微かに笑った。
945名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/16(水) 22:12:29 ID:???
「あの、じゃあ、おじさまとおばさまの場合はどうだったんですか?」
「あら、私? 私はどうだったかしら? ……そうね。私の場合、あれはゲンドウさんと
大阪へデートに行った時、」
「ユ、ユイ!」
 と、おじさまが大声を上げた。
 ユイさんはニヤッと笑って、
「あら、なにかしら? あなた」
「そ、それは言わないでほしいのだが」
「いいじゃありませんか、あなた」
 ニコニコっとした目でユイさんは言うが、おじさまはこれから話されることにいたたまれ
なくなったのか、そそくさと書斎に行ってしまった。
 ユイさんはそんなおじさまを見て、くすっと笑ってから、
「これは内緒よ。あの人、道頓堀の橋の上に登ると、結婚してくれなきゃ、ここから飛び降
りると叫んだのよ」
「はあっ? ホントですか?」
「これが本当なのよ。で、私が返事をする前に、あの人、バランスを崩しちゃって、そのまま
川の中へドボンと落ちちゃって、もう大変だったわ。今なら笑い話で済むけど、あの時は、溺
れて死んじゃったらどうしようって」
「道頓堀でですか?」
「シンジと同じで、あの人、泳げないのよ。それからよね。あの人がどうしても可愛く見えちゃ
って、あの時から今まで私はずっと錯覚したままよ」
 そう言うと、ユイさんはアタシへニコッと笑みを送った。
 その後、もう一杯コーヒーを飲んでいる時、やっとシンジが用意を終えて出てきた。
 ユイさんに見送られて出発したアタシたちは第3新東京市で由緒ある箱根神社へと向かった。
 もう境内の外から初詣客で大混雑していて、お賽銭を上げて願い事をするまで30分以上も
待ってしまった。
 アタシの願い事は……特にないけど、とりあえずママやアタシの健康を祈った。
 人混みから少し離れたところで、
「ねぇ、シンジは何をお願いしたの?」
「僕? 僕は来年の受験のことかな」
「へー、現実的ね」
「まあ、もうすぐ受験生になるんだし、そんなもんじゃないかな」
946名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/16(水) 22:32:02 ID:???
「んー、そうかもね」
「アスカは成績良いし、受験の悩みなんて無さそうだよね」
「アタシを羨ましがる暇があるなら、もっと勉強しなさいよ」
「あはは、そうだね」
 それから神社のそばにある甘味処でアタシたちはお汁粉を食べることになった。
 アタシとしてはこしあんよりも粒あんの方が好きで、だからぜんざいの方を注文した。
 シンジはお汁粉の方で、ともかく正月と言ったらあんこ餅よね。
 そんなアタシはおもちを食べながらちらっとシンジに訊いてみた。
「あのさ、アタシと初詣に来てよかったの?」
「ん? どういうこと?」
 と、シンジは口の周りにあんこを付けたまま訊き返してきた。
「だから、ヒカリと来なくてよかったのって訊いてんのよ」
「特に洞木さんとは何も約束していないけど」
「アンタたち、付き合っているんでしょ。こういうイベントは大事にした方がいいんじゃないの?」
「僕たち、付き合っているのかな? 実際、よくわからないんだ。そりゃあ、洞木さんはいい人
だけど、だからといって好きなのかどうか」
「まあ、最初はそんな感じだけど、付き合っていくうちに好きになったりするもんじゃない?」
「そうなのかな? 洞木さんとは中学生の時からの付き合いだし、トウジとのこともしってい
るし、そんな急に変われないような気がするんだ」
 と言って、シンジはお汁粉をすすった。
「そんなこと言ったら、アタシとアンタは小学校からの付き合いだし、もう永遠に恋愛関係に
なんてなれないんじゃないの?」
「んー、でも、アスカとは一生友達でいられると思う」
 そんな恥ずかしいことをさらっとシンジは言った。そして、お汁粉を全部食べきってから、
「アスカの振り袖姿、すっごくきれいだね。ちょっと、びっくりしちゃった」
「えっ、そ、そう?」
「うん。もう馬子にも衣装とか言えなくなっちゃったね」
 と言って、アタシに微笑んだシンジを見て、少しドキッとしてしまった。
 ユイさんは恋愛を錯覚と言ったけど、それならアタシは初めてシンジと会った時から
ずっと錯覚したままなのかもしれない。そんなことをふと考えてしまった。

つづく
947名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/17(木) 17:36:27 ID:j5OmLqI6
GJ!
948名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/17(木) 19:27:18 ID:???
結構可愛らしいな。萌えた
949res698:2008/01/18(金) 23:38:01 ID:???
 新学期が始まって、アタシはなんとなく退屈していた。
 昼休みはソフト部の部室でみんなとお弁当を食べていたし、放課後になると
すぐに練習を始めていたし、ちょっと普通の体育会系女子高生だった。
 この頃、ヒカリとはあまりしゃべっていないな。
 ふと、そう思った。
 いつ頃からだろう?と考えてみたら、ヒカリがシンジとつきあい始めてからだった
ような気がする。
 女同士の友情なんて、男が絡むとあっけないものなのかな、と思ったけど、振り返
れば、アタシも少しヒカリを避けていたような気がするし、かなり自己嫌悪してしまった。
 でも、なんとなく気まずい雰囲気をお互いに感じていたアタシたちはやっぱりどちらか
らともなく距離を取っていて、出来てしまった溝はなかなか埋まりそうにもない。
「ねえ、マユミ?」
 お昼休み、図書室前の廊下でアタシはパックのコーヒー牛乳を飲みながら話しかけた。
 隣にいるマユミは飲むヨーグルトのストローから口を離して、
「なんですか?」
「退屈ね……」
「そんなに退屈なんですか?」
「とーっても退屈。明日にでもサードインクパクトが起きればいいのよ。そうすれば、全て
がみんなチャラになるのに」
 マユミは粉雪が舞う景色を見つめながら、
「サードインパクトはともかく、明日にでも雪に埋もれて学校がなくなるといいですね」
 と言った。
 アタシはニッとマユミへ笑みを送り、
「アタシたち、けっこう気が合うわね」
「ええ、本当に」
 と、マユミもアタシへ笑みを返した。
 アタシは空になったコーヒー牛乳のパックを軽く握りつぶしながら、
「たまに思うのよね」
「何をですか?」
「女の子ってめんどくさいなって。男の子や他人の目をすっごく気にしたり、仲間意識が強かっ
たり、そのくせ話すことなんて、男のことやテレビのことみたいなどうでもいいことばっかで、
……時々ね、世界経済について語り合いたくなるわけよ。サブプライム問題とさか」
950res698:2008/01/19(土) 00:01:29 ID:???
「それって冗談ですよね?」
「うん、冗談。でも、半分は本気。だからかな、アタシ、どうも女の子の友達が少ないんだ」
「私も同じです。……でも、今はアスカさんがいますから」
「……ありがと」
 と、アタシは雪を見ながら小さく言った。
 マユミを同じように雪を眺めながら、
「私こそ」
 と小さく答えた。
 そんな1月の寒い週末、コンビニで肉まんにしようかカレーまんにしようか、少し悩んでい
た時だった。外はもう闇夜になっていて、今にも雪が降り出しそうに見えた。
「僕はピザまんと塩豚まんで」
 と背後から声をかけられた。
 ハッとして振り返ると、そこにいたのはシンジで、
「急に声かけないでよ。びっくりしたじゃない」
「ごめん。で、おごってくれない?」
「なんで、アンタなんかに」
「じゃあ、ジャンケン。ホイっ」
 瞬間、シンジはグーを出して、不意をつかれたアタシは思わずチョキを出していた。
 シンジはニコニコとアタシを見ていて、
「うー、わかったわよ。次はおごってもらうからね」
「じゃあ、10年後の今日ということで」
「絶対だからね。約束よ」
 結局、計4個の肉まんを買ったアタシは、シンジとそれを食べながら帰り道を歩いていた。
 頬に触れる空気は刺すような冷たさをもっていたが、肉まんを食べていると身体が暖かく
なってくるような感じがした。
「シンジ、」
「ん?」
「どっか、遊びにでも行ってたの?」
「まあ、ちょっとね」
 と、シンジは奥歯にものが挟まったような言い方をした。
 こんな時は、アタシになにか相談したいことがある。長い付き合いから、それがアタシには
わかった。
951res698:2008/01/19(土) 00:15:08 ID:???
 でも、アタシは何も訊かない。
 シンジが言い出すまで待っている。それがアタシたちのルールのようなものだった。
 やがて、肉まんを全て食べ終わってから、シンジはポツリ呟くように、
「今日、洞木さんのウチに誘われたんだ」
「ふーん、……で?」
「それだけ」
「そう、」
「うん、」
 そのまま数分、アタシたちは黙って歩いていたが、
「ウチに呼ばれたってことは、そういうことなのかなって思ったんだ」
「……?」
「でも、行ったら、洞木さんのお姉さんや妹さんに紹介されちゃって、」
「良かったじゃない。紹介されて」
「まあ、そうなんだけどさ……」
「なんか不満でもあるの?」
 シンジは恥ずかしがるようにうつむきながら、
「ウチに誰もいないから誘われたのかと思ってたんだ」
「……? どういうこと?」
「だから、……そういうことだよ」
 瞬間、アタシはピンときて、
「バッカじゃないの!? アンタねぇ、ホント、エロエロよね。どうしてウチに誘われただけで
そういう想像するわけ?」
「だ、だって、そんなの常識だろ?」
 と、シンジは顔を真っ赤にしながら反論してきた。
「だから、アンタは馬鹿なのよ。だいたい、何? シンジはヒカリのこと本気で好きなの?
「それは……」
 とシンジは言いよどんでから、
「よくわかんないよ。だけど、普通の男だったら、女の子にそういうことを言われたら、
好きかどうかの前に期待しちゃうもんだよ」
「ま、アンタの言い分もわからないではないけど」
 アタシは小さく溜め息をついた。
952res698:2008/01/19(土) 00:34:23 ID:???
「もし本当にヒカリがそういう気だったら、シンジはどうしてたの?」
「それは……」
  シンジはくちびるに指を当てて暫し考えていた。
「わかんないな。ホント、その時になってみないとわからないと思う」
「そう。……でも、どうしてアタシはこんなこと聞かされなきゃなんないのよ。いくら幼なじみ
とは言え、女の子に相談するようなこと?」
「ごめん、」
「まあ、いいわよ。シンジとは付き合い長いし、今さらよね」
 アタシは自分の吐く白い息を見ながら、
「どう? ヒカリのこと、好きになった?」
「……」
 少しの間、シンジは口を閉ざしていて、
「今日、洞木さんのウチへ向かい時は好きなような気がしていた」
「……」
「でも、今はやっぱりよくわかんなくなってる」
「そんな気持ちじゃ、いつかヒカリにふられるわよ」
「そうかもね」
 シンジは真っ直ぐ前を向いたまま、
「ちょっと自己嫌悪してたんだ。でも、アスカと話していてちょっと元気が出てきた。ありがと」
「……いいわよ。そんなこと」
「でも、ありがとう。いつも僕のそばにいてくれて」
 その後、アタシたちは家に帰るまでずっと無言でいた。
 ただ、歩む速度はいつもの3倍くらい遅かったような気がする。

つづく
953名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/21(月) 17:42:01 ID:???
加持の「ミサトの寝相直ってるか?」意味を唯一理解できていなかったシンジがマセガキになってて違和感あるな
954名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/23(水) 00:16:23 ID:???
久しぶりに覗いたら怒涛の連載投下にびっくり
GJ
955res698:2008/01/31(木) 21:51:00 ID:???
 おなか空いた。
 部活帰り、ぐ〜とおへその辺りを小さく鳴らせながらコンビニに入ると、
目の前にチョコレートがきれいに並べられた棚が目に入った。
「もうすぐバレンタイン、か、」
 と口に中で呟き、チョコの山を少し見つめていた。
 どれも美味しそうで、でもお財布の中身は少なくて、アタシは鮭のおむすびを
取ってレジに向かった。一緒に100円の板チョコも手にとって。

 妙にそわそわしている教室の空気。
 男子たちは明日のことで頭の中がいっぱいなんだと思う。
 まあ、明日になればもっとそわそわするんだろうけど。
 でも、それは女子も同じようなもので、ってそうでもないか。
 彼氏がいるコはともかく、多くは女子同士で交換し合ったり、まあ、いつもは
食べれないような美味しいチョコを口にする日なのよね。
 アタシもソフト部のみんなとチョコを食べるし。
 って、ちょっと涎が……。
 そんな感じで休み時間をぼーっとしていたら、
「ねぇ、アスカ?」
 とヒカリが声をかけてきた。
 ニコニコした顔をアタシに向けて、
「明日はバレンタインデーね」
「そうね」
「……」
 ちょっとの間、黙ってアタシを見つめていたヒカリは、
「アスカは明日だれかにチョコあげるの?」
「アタシィ?」
「毎年、碇君にあげてたじゃない?」
「あー、あれは誰にもチョコをもらえないのかわいそうだから。義理よ、義理。
そう、幼なじみの義理としてシンジにチョコをあげているのよ」
「ふーん、毎年、同じことを言ってるね」
「そうかしら?
「そうよ」
956名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/31(木) 22:10:27 ID:???
 ヒカリはわずかに小首を傾げながらアタシを見る。
 そんなヒカリの視線から少しだけ顔をそらして、
「でも、今年はあげないわよ。だって、ヒカリがシンジにあげるんでしょ?」
 ヒカリは照れるように頬を染めて、
「う、うん」
 と小さな声を出した。
「まあ、アタシもお小遣いが減らなくてよかったわよ」
「……そっか、アスカは碇君にチョコあげないんだ」
「今年はヒカリがいるからいいわよ」
 ヒカリはまた顔を赤くしてうつむいたが、その表情はとても幸せそうだった。
 そんな横顔をアタシはただ黙って見つめていた。

 放課後になり部活の練習が始まったが、アタシはグランドの隅に座って、ぼーっと
みんなを眺めていた。
 そんな時、
「よお、」
 と相田のバカが声をかけてきた。
 相田は戦自の空軍に入って戦闘機のパイロットになるのが夢らしく、そのために
体力作りとして山岳部に入っている。
 意外に体育会系のノリを持っているバカだ。
 相田はランニングの途中なのだろう、息を激しく切らせていた。
「なによ?」
「いや、惣流が黄昏れているなんて珍しいと思って」
「そんなふうに見える?」
「ああ。いつもと違ってちょっと女らしく見えるな」
「なにバカ言ってんのよ」
 相田は軽く笑ってからアタシの隣に腰を下ろした。
 もう夕暮れ時。はるか向こうに見える夕陽はアタシへ朱色の光をあてている。
 相田はただ黙って座っているだけで、アタシもずっと無言だったけど、
「アンタたちと出会ったのって中2の時だったわよね」
「俺たち?」
「そっ。アンタとヒカリとジャージよ。初めてクラスが同じになってさ」
957名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/31(木) 22:35:38 ID:???
「ああ、俺とトウジがシンジと仲良くなって、シンジの幼なじみの惣流が委員長と
仲良くなって、で、俺たちがだんだんと一緒につるむことが多くなったんだよな」
「あれから、もう3年以上も経つのね」
「そりゃ、そうだろ。俺たちももうすぐ高3になるんだし」
 アタシは夕陽を見つめたまま、
「アンタはジャージと今も友達してんの?」
「トウジか? まあ、学校が違うから中学の時と同じとはいかないけど、それなりに
たまには遊んだりしてるけど」
「そっか。……シンジ。最近、変わったような気がしない?」
「唐突だな。ま、確かにちょっと男らしくなったかもな。惚れ直したのか?」
「ばーか、なに言ってんのよ。もう中2の頃と同じじゃないんだよね、アタシたちは」
 相田は少しアタシを心配するような声で、
「なんか、あったのか?」
「……別に、」
 とアタシは前を向いたまま答えた。
 でも、少し相田やジャージ、シンジたちが羨ましかった。
 いつまでも友達でいるアイツらが。
 女の子って、めんどくさいと思う。
 今日だってヒカリがアタシに訊いてきたのは、やっぱりそういうことだと思うから。
 アタシは知らないうちに、
「……男の子って、いいな」
 と小さく呟いていた。

 そして、バレンタイン当日。
 特に何事もなくアタシたちはチョコを食べていた。
 けっこう食べ過ぎちゃったけど、その分ソフトボールの練習でカロリーは消費してい
るはずだし、たぶん大丈夫。
 ……大丈夫よね?
 ちょっと体重計がこわい。
 と、そんなこんなでソフトの練習が終わり、部室に戻ろうと体育館裏に回ったら、視
界の隅にヒカリの姿が映った。そして、その横にいるシンジも。
958名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/31(木) 22:50:39 ID:???
 アタシはさっと物陰に身を隠して、二人の様子をうかがった。
 すると、案の定、バレンタインのチョコを渡すシーンで、ヒカリのすごくうれしそ
うな顔が遠目にもわかった。
 チョコを受け取るシンジはすごく照れているみたいだった。
 で、そんな二人の様子を見ているアタシは意外になんともなくて、むしろ喜んでいる
アイツの顔を見て、
「よかったじゃん」
 と呟いていた。
 これからうまくいきそうな二人を予感して、アタシはどこか安心していた。
 と、そんなことがあった日の翌朝、アタシがマンションを出ると、一階のエントランスの
ところでシンジが待っていた。
「あ、シンジ、おはよ」
「おはよう。アスカ」
 心なしかシンジの声が少し沈んでいるような気がした。
 どうしても付き合いが長いと少しの変化でもわかっちゃうのよね。
 でも、アタシはそのことについて何も言わず、学校へ足を向けた。
 歩いていてもシンジの様子はずっと沈んだままで、いい加減、気になってきたので、
「シンジ、おなかでも痛いの?」
「あっ、別に、」
「そう。なんか調子悪そうに見えるから」
「……ア、アスカ?」
「ん、なに?」
 シンジはしばしアタシを見てから小さく首を振って、
「ううん、別になんでもない」
「ヘンなの」
 それからアタシたちは少しゆっくりと歩く速度を落としていた。
 遠くに校舎が見えた時、シンジが小さな声で、
959名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/01/31(木) 22:57:55 ID:???
「アスカは昨日……」
「……?」
「昨日、誰かにチョコあげたの?」
「アタシ?」
 シンジがそんなことを訊いてくるのがとても意外で、アタシは少し声を上ずらせてしまった。
「アタシがチョコなんてあげるわけないじゃない。まあ、部活のみんなでチョコの食べ合いっ
こはしたけど」
「そうなんだ?」
「そうよ、悪い? でも、まあ、間違って好きな人でもできれば、来年は誰かにあげるかもね」
 シンジは少し考え込むようにうつむいていたが、
「アスカ?」
「ん?」
 シンジはまたちょっと黙り込んでから、
「なんでもない」
 と小さく言った。
「アンタ、ちょっと今日ヘンね?」
「……そうかもしれない」
 それから教室に入るまでシンジはずっと口を閉ざしたままだった。
 でも、時折アタシへ向ける視線は何かを言いたそうな感じに見えた。


つづく
960名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/02(土) 17:06:12 ID:???
投下乙!
楽しみに読んでます
961名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/05(火) 13:41:14 ID:???
ъ(´ι _` ) グッジョブ!!
962名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/09(土) 14:10:05 ID:???
ポケモン板にもあったな
シンジ×ヒカリって
963名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/09(土) 23:53:51 ID:???
                -――- .
       , -― '´          `丶、
      く   /               \
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          l       l         `丶、 ',
         _」 -┬―┬――'-  .._      }\}
     f´: : : : :.人___.ノ y'ヌ_\   `>、/  /
      弋:_:_; イ/: : : :|  /レ}    ィィ_ ヽ/
       /: : /: : : : :|  じ'      /レハ/ノヽ
        /: : /: : : : : :!        じ' /{: : : :}
     /: : : l: : : : : : |       i  ′  ,: :|:_:_ノ
      /: : :::::|: : : : : :ハ.   ノ⌒   /: :|
   /: :::::/レヘ/|/\ \___  ィ: : : : |
  ∠: : :::::/     } \  ̄ ヽ}\ト、|: : : : |
   /:::::::::l     |  ヾー一|  \レvヘ:!
   レ!::::::::l     l     V∨|   ヽ\
    |::::::::l     l     v |     l  \
自分勝手なシンジなんか好きになるわけないじゃん。幼馴染でも
964名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/09(土) 23:54:59 ID:???
                /             \
           /       ,へ    \ \
          /  / / ,.  //>、   ヽ ヽ
          ' l  / / /   ///1  l\  l  ',
        /  | /  l/|  /イ !  」   l \|   ',
        / /l/  イFi テ/   ̄    l    l  ',
        l/ /| /ハ ー〈   - 、   |  /  l |
           | |/l  l    /   ) r┴――一ォ!
     -―- 、|/ l  ト、  \__/  V      | ___
  /   \  ヘ  V |∨l>   ´ / V      /   / \
  '  \   \  }   V く    `¨´丁´ }    /-―ァ'
 {   、 \  ヘノ)   /\     /}  j|  / ̄ ̄`ヽ
 l   \__)イ_ノ    /ヽ / ヽ  /    l / /    \
 }\\__ノノ 八   /  {    ∨    l( ∨  /
こんな女なんかよりもエヴァ初号機をゲットしてやるぜ 
965名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/10(日) 00:58:41 ID:???
>>963-964
萌え
966名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/20(水) 14:58:25 ID:???
誰?
967名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/20(水) 17:19:32 ID:???
いいんちょ×せんせはええで
968名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/20(水) 19:49:06 ID:???
>>967
トウジ乙
969res698:2008/02/20(水) 20:39:42 ID:???
 春は別れと出会いの季節。
 高2最後の春休みにママはドイツの研究所へと行ってしまった。
「アスカ、日本に残ると言ったからには、ママに泣き言なんて言わないでね。困った
ことがあっても自分で解決するのよ」
 と、空港でママは言った。
「でも、遊びにはいつでも来てね。ママ、ごちそうを用意して歓迎するから」
「……ママ、」
「じゃあ、アスカ。元気でね」
「ママも元気で」
 ママはアタシへ微笑みを見せると、ゲートへ向かって歩き始めた。
 でも、3歩くらいでくるっと振り返り、
「あ、そうそう。ユイさんの言うことはちゃんと聞くのよ」
「うん、わかってる」
「それからシンジ君にもアスカのこと頼んでおいたから。仲良くするのよ」
「なっ、なんでシンジなんかに」
 とアタシが大声を出すと、ママはニコッと笑ってから後ろ背に手を振りながら歩き去った。

 そんなこともあって、アタシはご飯を碇家で食べることになった。
 一応、一人暮らしということになるけど、朝食と夕食はいつも向こうで食べているし、ユイ
さんやゲンドウおじさんもアタシのことをよく見てくれるし、そんなに一人という感じはしない。
 そんなわけで春休みはソフト部の練習やシンジの家族と遊んだりしていた。
 ある日、ソフトの練習から自転車で家へ帰る時、視界の片隅にヒカリの姿が映った。
 アタシとは少し離れているバス停にヒカリは立っていて、時計を何度も見返していた。
 そんなヒカリに声をかけようかと思ったけど、ちょっとためらってしまった。
 いつものお下げ髪ではなくて、黒髪をストレートに下ろしていて、着ている服もどこか
よそ行きという雰囲気だった。
 その後、すぐにバスが着て、ヒカリの姿は消えてしまった。

 そんなことがあった数日後、碇家で夕食を終えてからアタシとシンジはリビングでTVを
見ていた。レイは自室に戻っていたし、シンジの両親はまだダイニングでお茶をしている。
 アタシはバラエティ番組を見て、ときどき声を上げて笑っていたが、横の視線が気になっ
てもいた。
970名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/20(水) 20:59:03 ID:???
 シンジがちらちらとアタシを見ているのがわかった。
 ほとんどシンジはテレビに目を向けていないし、こういう時はアタシになにか相談し
たいことがあるのよねえ。
 アタシはシンジに顔を向けて、
「ん? なに?」
「えっ、あ、うん。別に……」
「別にってことはないんじゃない。なんか言いたそうな顔をしてアタシを見てたくせに」
「そんな顔してた?」
「そりゃあ、もう思いっきり」
 シンジはしばし顔を伏せて思い詰めたような表情をしてから、
「ちょっと話があるんだ。僕の部屋に来てくれる?」
 と言った。
 その後、部屋を移したアタシたちはちょっと黙り合っていた。
 シンジはまだ言い出そうかどうしようか迷っているようで、アタシは久しぶりに入った
この部屋の中を見回していた。
 少しだけ男の子の匂いがする。
 机の前で椅子に座りながらそう思った。
 数分後、ベッドの縁に腰掛けたシンジは顔を上げてゆっくりと口を開いた。
「昨日、見たんだ」
「……?」
「隣駅にある楽器屋さんへ行った時、そばのスタバで……」
「何を見たのよ?」
 少しの間、シンジは口を閉ざしていたが、
「洞木さん、」
「ヒカリ? で、それがどうかしたのよ?」
「……トウジと一緒にいたんだ」
「えっ、鈴原と!?」
 思わず大声を出してしまったアタシに、シンジは小さくうなずき返した。
「う、うそ、」
「なんか楽しそうにしてた。遠目に見ただけだったけど」
 アタシは数日前のことを思い出し、あれはそういうことだったのかと少し考え込んでしまった。
971名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/20(水) 21:17:04 ID:???
「ねえ、アスカ。洞木さんとトウジ、どうなってんのかな?」
「知らないわよ、アタシ。ヒカリからは何も聞いていないし」
「そうなんだ?」
「……最近、ヒカリとはあんまりしゃべってないないのよね」
「そっか、」
 シンジはまたうつむいて、黙りこくってしまった。
「ねえ、シンジ」
「……ん?」
「アンタ、どうしたいの? そんなに気になるんならヒカリに直で訊けば」
「そ、そんなこと聞けないよ」
「じゃあ、どうすんのよ?」
「わかんないよ、そんなこと」
 と言ってから、シンジは小さく呟くように、
「でも、なんだかとてもざわざわするんだ、胸が」
 と声を出した。

 それからまた数日が過ぎて、シンジとは特に何も話さなかった。
 ヒカリと鈴原のことについてはアタシは何も関係ないし、シンジがアタシに何か言って
こない限り何もする気はなかった。
 アイツは今どうしようか迷っているみたいだし、きっとアイツ自身で決着をつけるような
感じがする。アタシはそれをただ見守るだけ。
 でも、ヒカリがシンジに酷いことをするようならアタシは決して許さない。そう心に決めていた。
 箱根湯本へショッピングに行った時だった。
 ちょっと喉が渇いて、コンビニへミネラルウオーターを買いに入った。
 そして、レジでお金を払おうとしたら、
「あっ、アンタ!」
 と大声を出してしまった。
 相手もアタシに気づいたのか、
「アスカさん……」
「アンタ、いつ戻ってきたのよ」
 それは中2の時に転校していった霧島マナだった。
972名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/20(水) 21:34:22 ID:???
 その後、霧島マナは少し時間をもらって、店を出てきた。
 人気の無い店裏でアタシたちは向かい合い、霧島マナは伏し目がちに立っている。
 あの頃、アタシとこの女の仲はよくなかったと言ってもいいだろう。
 どっちかというとアタシの方がぶつかっていっていた。
 原因はやっぱりシンジで、その頃、シンジの片想いの相手がこの霧島マナだったのだ。
 シンジの片想いは誰の目にも明らかで、この女もそれを知っていた。
 でも、ある時からシンジを避けるようになり、そして突然転校していった。
 その時のシンジの落ち込みようは酷く、アタシは見ていられなかったのを覚えている。
「ねえ、いつこっちに来たのよ?」
「春休みに入ってすぐ」
「そう、」
「こっちの学校に転校するの?」
 霧島マナは小さく首を横に振り、
「ううん、学校には行かない」
「どういうこと?」
「アタシ、今ひとりなの」
「ひとり?」
「うん。だから、学校に行く余裕なんて無くて」
「どういうことよ、それ?」
 アタシは霧島マナに近寄って訊いた。
 彼女はずっと黙ったままだったが、
「叔父さんの家を出てきたの。だから……」
「だからって、全然わかんないわよ。だいたい、叔父さんって何よ? アンタの両親は
どうしたのよ?」
「……私に両親はいない。もうずっと前に死んだの」
「えっ、死んだって。……まさか、中学の時?」
 彼女は小さな声で
「うん、」
 と答えた。
「じゃ、じゃあ、あの時、転校したのって?」
973名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/20(水) 21:48:01 ID:???
 彼女は微かに笑みを作って、
「いろいろあったけど、今は平気よ。一人暮らしも意外と楽しいし」
「……ごめんなさい。嫌なこと訊いて」
 今度は大きく首を横に振って彼女は、
「ううん、もう何でもないんだから平気よ。それよりアスカさんにまた会えてうれしい」
「……マナ、」
 それからアタシがこっちでのことを話すと、マナはそれを楽しそうにして聞いていた。
「ねえ、アンタ、部屋もこの辺に借りてるの?」
「うん。駅の北側の方に」
「ふーん、そうなんだ。第3の方にすればよかったのに」
 少しの間、マナは黙っていたが、
「ちょっと怖かったんだ」
「何が?」
「近くに行くのが少し怖くて、……でも、少しでも近くにいたくて、ここにしたんだ」
「もしかして、シンジのこと?」
 マナは顔を上げると、
「うん、」
「アンタ、シンジのこと好きだったんだ」
「……あの時、いろんなことあきらめなくちゃならなくて。でも、今日、アスカさんに会えて
決心できた」
「決心?」
 マナは視線を空に向けて、
「もうあきらめたりしないって。絶対に」
 と言って、笑顔を作った。
 アタシは微かに胸の奥がざわつくのを感じていた。


つづく
974名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/21(木) 16:33:42 ID:???
おい気になるじゃねえか
975名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/22(金) 10:08:44 ID:???
976名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/22(金) 11:09:24 ID:???
gj
977名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/22(金) 23:59:49 ID:???
GJ
978名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/23(土) 00:10:11 ID:???
おつ
979名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/23(土) 00:10:36 ID:???
次スレはどうするん?
980名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/02/23(土) 00:11:56 ID:???
つづくとあるからたてて
981名無しが氏んでも代わりはいるもの
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