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それからしばらくして、シンちゃんは高校へ行くと言い出した。
「いつまでも、閉じこもってたってしょうがないから」
高校生活は彼に何らかの影響を与えたようで、毎朝楽しそうに登校する姿は、微笑ましかった。
彼は私のことを、完全には許していない。
それでも、学校での出来事を話してくれるのは、同居人として認められているからなのだろう。
今の私たちは、以前の私たちよりも、良い関係を築けているのではないだろうか。
彼の作った料理を食べ、
休みの日には料理を教わり、
それでも上手く作れなくて呆れられて・・・
私が理想としていた生活。
姉弟のような、家族のような・・・
アスカがいた頃に、こんな生活が送れていたら、今ごろ私たちはどうなっているのだろう。
なんて、考えるだけ無駄。
そんなのただの夢でしかない。
理想と現実を痛いほど実感しながら、目の前のビールを飲み干した。