それまで何もなかったところから突如、ある潮流が生み出されるっていうのは
文化シーンではママあることだよ。例えばOVAとかね。ただ、それも、アニメ史の中で
見ていくと、小さいながらも必ず先行作品のようなものは見出せると思う。
マンガ、小説、全部そうですよ。まして、「エヴァ」のようなある意味でオタクの中のオタクである庵野秀明が、
自らの内なるオタクの総決算であり、精算のために作り出した作品である場合、
そのさまざまな先行作品の影響やオマージュ、パロディを無視してあの作品を理解することは
できないはずなんだよ。にも関わらず、あれをアカデミックに読み解こうとする場合、
そういったオタク的ファクターが切り捨てられて、元ネタを知っている者が見れば大したことないことに
過剰な意味づけが行なわれ、またオタクにとっては大きな要素である部分、たとえばペンギンの
ペンペンなんてキャラクター、あそこがまるきり切り捨てられたりしてる。
こういう奇形的な論がまかりとおってるのは可笑しい、と思うのね。
だからもちろん、「エヴァ」という作品自体にまったく意味がないとか、作品自体が
くだらないとか言いいたいわけじゃない。そんなこと、毛頭思ってない。
ただ、ここの人が言うほどの作品じゃないとは思う(笑) 要はね、語りやすいんですよ、「エヴァ」に関しては。
アニメにさほど深い知識がなくても、他の分野である程度知識があれば、そこに引っ掛けてフックしやすい、
いろんな意味をとっつけやすい。だから、「エヴァ」を語ること自身に、僕は大した意味を見出せない。
それに比べりゃ、自分がなぜ「式日」が好きかということを説明するには無茶苦茶な表現のパワーが(笑)
大変な表現力とか説得力、相手を説得するための努力が必要じゃないですか。
それに比べりゃ「エヴァ」はね、あれにはこういう意味があるんじゃないか、っていうふうに説明しやすい。
その説明のとっかかりになるフックをいっぱいぶら下げてる作品だった、っていうことが一番大きいかと。
こういうのは別に否定じゃないですよ。過小評価でもない。まさに「エヴァ」はそういうところにおいて優れてると思うわけ。