>>594 気長に待ってます
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と__)__) +
597 :
399:2005/08/02(火) 06:44:52 ID:???
受験者さんが書けない時にこのスレを保守するのが俺の役目。
というわけで続きを書こうと思うのだが、設定がなにやらこんがらがってるみたい。
みんなの意見を聞きながら整理。
先行者に変身できる半島シンジ
過去の世界に出た瞬間、たまたまそこにいたミサトと入れ替わってしまう
でとりあえずFA。
この後の展開は選択で決めてくれ。
1、そこにいたのは大学時代のリツコ
2、とりあえずリツコに謝罪と賠償を要求する
3、そこにいたのはネルフ時代のリツコ
4、そこにいたのは嫌韓厨のリツコ
5、何か希望があれば
1で。
こんがらがりすぎw
「ミサト?」
は?
この金髪マッドは何を言っているニダ。
よりにもよって偉大なるウリをアル中と間違えるなんて。
謝罪と賠償を(ry
「大丈夫?変なこと呟いてたけど」
「チョパーリの頭が大丈夫ニカ?ウリをあんな女と間違えるなんて謝罪と賠償(ry」
間違える相手にも程がアル。
ウリと似てる似てない以前に性別とか身長とかなにもかもが違うニダ。
これはウリを妬んだ嫌がらせに違いないニダ。
謝罪と賠(ry
「……ミサト、本当に大丈夫?」
ファビョーン!!
アイゴー!!なんでウリをそんな哀れみの目で見るニカー!!
これは本当に新手の嫌がらせとしか思えないニダ。
謝罪(ry
1、何か希望があれば
1で。
…じゃあ加持登場。
もしかして評価板のアレって
602 :
受験者:2005/08/07(日) 02:16:04 ID:???
>>601 はい、アレは僕ですね。
名前考えるの面倒なんでこのままの名前使いました。
ちょうど読んでみたいスレで話題に上がってたものを気分転換のつもりで書きました。
こっちの奴が詰まってて、中々うまくいかなかったんで。
タイトルから最後まで主人公の名前ミスるという致命的ミスを犯しましたが…orz
603 :
受験者:2005/08/07(日) 02:17:38 ID:???
シンジはその手を取った。
紅いビー玉の光がシンジの掌を暖かく包んでいくのを感じられた。
ぼんやりと暖かい、そして安心する。
まるで母の掌のようだ。
気付けば目の前にいた幼いシンジは何処かに消えていた。
しかし今のシンジにはそんな事はどうでも良かった。
シンジは先程までの激高を忘れ、そっと目を瞑る。
思いだす母の暖かい手、あの柔らかい笑み、優しい匂い。
そのどれもがこのビー玉には含まれていると思った。
「シンジ」
後ろから呼ばれてシンジは振り返った。
誰かいる。
だけどその姿がはっきりと見えない。
まるで靄がかかっているようだった。
「シンジ」
もう一度シンジを呼ぶ声がした。
シンジは必死になって目を凝らす。
「………もしかして母さんなの?」
604 :
受験者:2005/08/07(日) 02:19:08 ID:???
「本部の状態は?」
「第六区間まで、すでに侵入されています」
ミサトの質問にマコトは恐い顔をして答えた。
敵はもうそこにいる。
発令所まで来るのは時間の問題である。
「特殊ベークライトで第7からここまでの通路を一斉封鎖。避難勧告も出して」
避難など間に合うはずもない。一斉封鎖なのだ。
頭を生かすために尾は切り捨てる。
ミサトはそんな自分の命令を非常に思ったが、それも仕方ない事だとすぐに気を取り直した。
「少しだけ待ってちょうだい。MAGIがもう少しで取り返せるから」
リツコがミサトの方を、ちらりとだけ見て言った。
皆、リツコの作業を固唾を飲んで見守る。
MAGIの占拠は本部を占拠されるのと同じだ。
ネルフ本部の全てをMAGIが任されているのだから。
MAGIが取り戻せなければ自分達に出来る事など高が知れている。
リツコがキーボードを叩く音だけが発令所に響く。
そして一際大きく、エンターキーを押す音が鳴り響いた。
甲高い電子音と共にディスプレイに映し出されていた赤い汚染域の表示が、みるみると青色に塗り替えられていく。
605 :
受験者:2005/08/07(日) 02:21:38 ID:???
「666プロテクトをかけたわ。これでしばらくは大丈夫なはず」
「よし、ベークライト流して」
活気付いた発令所の中で、ミサトはすぐに指示を出した。
しかし。
「ダメです。もう間に合いません」
マコトが言うのと同時に発令所の扉が前に吹き飛んだ。
そして続く銃声。
「隠れて」
ミサトは反射的に叫ぶとデスクの下へと隠れる。
隠れ遅れた何人かのオペレーター達の悲鳴が聞こえたが、それもすぐに途絶えた。
「対人設備の経費削減、まさかこれを見越しての事だったんですかね」
マコトが皮肉っぽく笑う。
「そうね…あながち間違いでもないかもしれないわね」
ミサトはデスクの下にあるダンボールから銃器を取り出し、すばやく点検をし始めた。
「持久戦に持ちこむしかないか」
こんな装備では勝つ事は出来ない。
ならば時間を稼ぐしかない。
せめて上にいるアスカが戦い終わるまでは。
606 :
受験者:2005/08/07(日) 02:22:36 ID:???
「おりゃあぁぁああ」
弐号機は後ろに大きく足を突き上げた。
背後で滞空していた戦闘機が爆発と共に塵と化す。
そしてすぐさま正面に向き直ると、前にいる戦闘機の尾を掴み、棍棒のように振り回して辺りの戦闘機諸共破壊した。
その姿は正に鬼人。
「もぉ、なんで戦自の戦闘機が。それに通信は繋がんないし……一体どうなってんのよ」
アスカは意図的にシンジ、いや初号機の事は言わなかった。
外に飛び出す事に成功したアスカの視界に広がる不気味で信じがたい映像。
そして襲い来る戦闘機。
アスカは考える事を止め、目の前の敵に専念する事を選んだ。
というよりも逃げたのだ。
考えれば考えるほど恐ろしさが込み上げてくる。
エヴァとは何なのか? という恐怖が。
「エヴァは……エヴァは私を守ってくれる。私を見てくれてる!!」
自分で自分の不審を振り払うように、アスカは目の前の戦闘機をまた一つ叩き落とした。
「くっ、そろそろ電源が」
アスカはモニターに映るカウントを見て悪態をつく。
「いい加減にぃ…」
右腕をぐるっと回して掌を前に振り出す。
「……しなさいよぉ!!!」
アスカと戦闘機の間に赤い壁ができあがった。
可視化できる程の強力なATフィールドである。
戦闘機の砲弾がATフィールドに当たり炸裂する。
爆撃は更なる爆撃を巻き起こし、戦闘機を巻き込み燃え上がる。
「これで終わり?」
目の前にいるあらかたの戦闘機を一掃したアスカは、近くの電源供給用のビルから電源ソケットを取り出し装着する。
その時、ふと地面を這う黒い影に気付いて空を仰ぎ見た。
白い巨体が翼を広げ、円を囲む形で飛んでいた。
「エヴァシリーズ…………完成していたの?」
607 :
受験者:2005/08/07(日) 02:23:34 ID:???
デスクの下から素早く顔を出したミサトは3発程銃弾を打ち放つと、またすぐにデスクの下へと隠れた。
その後を追うように敵の銃弾がデスクを散らかす。
「外の様子はどうなってるのかしら?」
一時の銃撃戦から戻ってきたミサトが独り言のように言った。
その横で、今度はマコトとシゲルが戦自兵に向けて銃撃を行っている。
長い。
ミサトは二人が体を出している時間を見て、そう思った。
所詮、ネルフに勤めている人間は軍人ではないのだ。
装備以前に兵士の質の問題だ。
マヤなど、さっきまで泣き喚いていたくらいだ。
リツコが宥めてくれたお陰で今はノートパソコンに向かって必死に何か打ち込んでいるが。
「こんな事なら日本政府とコネを作っておけば良かったですね」
弾込めにしゃがんだマコトが額の汗を拭いながら言った。
ミサトの頭の中に、無精髭でヨレヨレのシャツを着た男が浮かび上がっていたが、ミサトはその考えを無理して振り払った。
「ええ、でももう過ぎた事よ。今考えなくちゃいけない事は、今、この時をどうするかという事だけ」
思わずミサトの言葉が厳しくなった。
608 :
受験者:2005/08/07(日) 02:24:41 ID:???
「ここにはMAGIのオリジナルがあるから、相手もそう簡単には攻めて来れないでしょうね」
そんなミサトに気を使ったのか、リツコは珍しく楽観的な意見を言う。
確かにMAGIオリジナルは、戦自側にとっては喉から手が出るほど欲しいだろう。
だが、だからと言ってそれで安心だとは言えない。
焼け石に水と言ったところだ。
リツコにも、それは分かっているだろうに。
ミサトはそう思いながらもリツコの言葉にのった。
「それに、そのMAGIを一番理解しているリツコもいるものね」
「あら、それじゃあ私は人質なの?」
リツコが心外だとばかりに、わざとらしく怒った顔をしてみせた。
「銃撃戦じゃあお荷物なんだからそれぐらい良いじゃない」
「酷いのね」
「もし生き残れたら謝罪も兼ねてご飯、おごるわよ」
「じゃあ前に行ったあの高そうなバーで。楽しみにしてるわ」
「………いつも行く居酒屋で良いんじゃない?」
そう言って、二人は見詰め合って笑った。
まるで学生時代に戻ったようにミサトは感じていた。
この前までは立場や仕事といった事で、妙にギクシャクしていたと言うのに。人間、死が近くなると素直になるものだ。
それともこれがセカンドインパクト世代に生まれたものという事なのだろうか? だとしたら酷い時代に生まれたものだ。
奇しくもその時、リツコも同じ事を考えていた。
「撤退し始めた!?」
突然、シゲルが驚きの声をあげた。
ミサトは、そっと扉の方を伺い見る。
確かに戦自兵は撤退を開始していた。
「どういう事?」
このミサトの疑問は、すぐに解決する事となる。
しかし、それは望んでいたものでなかった。
609 :
受験者:2005/08/07(日) 02:26:06 ID:???
「センパイ、画面出せます」
マヤが元気よく声を出す。
戦自兵がいなくなった事で安心した様子だ。
「良くやったわ、マヤ。メインスクリーンに回せる?」
先程からマヤがやっていたのは、外の状況を知る事が出来るカメラを探していたのだ。
戦自兵が突入する際にネルフ周辺のレーダーサイトは破壊されたが、リツコは何処かに戦自が使徒戦偵察のために仕掛けたカメラがあると睨んでいたのだ。
マヤにはそれを探させ、映像を横流しするようにさせていた。
「はい。やってみます」
先程の銃撃戦でデスクやメインスクリーンが故障している可能性もあるが、戦自兵もいなくなったのだし、試してみるのも悪くない。
マヤはノートパソコンとデスクをコードで繋ぐと、デスクに内蔵されいているコンソールを開いた。
「何なの?」
ミサトはその作業を待ちきれずに、マヤのノートパソコンを覗いた。
画面の中では弐号機と巨大な剣を持つ9体の白い巨人が対峙していた。
「エヴァシリーズ……そういう事なのね」
「何がですか?」
「敵は予定を変えたのよ。というより上からの命令で変えざる得なかったのね。本部の占拠から避難へ」
「えっ!? 避難…それって」
マヤの顔が、スーッと青くなった。
610 :
受験者:2005/08/07(日) 02:27:04 ID:???
「補完が行われるなら占拠なんてする必要ないもの。所詮、戦自もゼーレの手駒ってわけね。これ、通信は出来るの?」
「え……あ、はい!!」
ミサトの質問に、慌ててマヤは作業を行う。
「これでできます」
同時にメインスクリーンに画面が映し出される。
「アスカ、聞こえる?」
『ミサト? 今まで何してたのよ!!』
「ごみんごみん。それよりもアスカ、エヴァ量産機は全機倒すのよ」
『ちょっと……まぁそれは別に良いけど、意味が分かんないのよ。意味が』
アスカの怒鳴り声に思わず顔を顰めるミサト。
「理由は後でゆっくり話してあげるわ。これもサードインパクトを防ぐチルドレンのお勤めの一つだと思って。よろしくねん」
『じゃあ一つだけ教えて。……アレは………アレは何なの?』
アスカの言うアレというのは、すぐに分かった。
初号機の事だ。
「シンジ君よ」
『嘘!!』
「本当よ。だから守ってあげて。シンジ君、私達がいなきゃ何にも出来ないんだから」
そういって自分の伝えたい事だけ言ってミサトは通信を切った。
努めて明るい風を装ったのは、ミサトにまだ保護者としてアスカ達に申し訳ないと思う気持ちがあったからかもしれない。
「さぁ。これからが本番よ」
ミサトは画面を睨みつけた。
611 :
受験者:2005/08/07(日) 02:28:02 ID:???
「………ミサトも軽く言ってくれちゃって。全部倒しなさい? 1対9じゃない」
その言葉とは裏腹にアスカの顔に、不敵な笑みが宿る。
「でもいっちょ……やってやろうじゃないぃぃぃ!!!」
先制攻撃と言わんばかりにアスカは弐号機を突進させると、まず一番近くにいた量産機の頭を潰しにかかる。
跳び箱を跳ぶようにして量産機に乗りかかると、顔の上半分が嫌な音と共に下唇へとめり込む。
「erst」
その傍で遅れて動き出した量産機。
それに比べると弐号機の動きは洗練されていた。
サッと量産機の首をプログナイフの一閃が横切る。
「zweit」
量産機の首から真っ赤な鮮血が飛び出し、弐号機の赤いボディをどす黒く染めた。
ゆっくりと倒れるこむ量産機を気にせずアスカは次なる標的に向かう。
ダンっと地面を蹴って上空に飛び上がると、その落下の勢いと共に量産機の顔面にプラグナイフを突き立てる。
プログナイフはその勢いで折れたが、刃はしっかりと量産機を突き刺していた。
「drittっ!!」
使い物にならなくなったナイフを弐号機が捨てると、それを見計らったかのように後ろから量産機が掴みかかってくる。
「なめんじゃないわよぉぉぉ!!」
肩のパーツが開きニードルが飛び出す。
そのニードルが量産機の顔を不細工に縫いつけた。
弐号機は、動かなくなった量産機を振り解くとすぐさま横に跳んだ。
先程までに弐号機をいた場所に量産機の巨剣が振り落とされる。
弐号機は倒した量産機から巨剣をもぎ取ると、力いっぱい剣を横に振るう。
同じく巨剣を振り回す量産機と刃が交わる。
火花を散らしながら弾かれる剣と剣。
巨剣に体を持っていかれ大きく仰け反る弐号機と量産機。
先に動き出したのは弐号機だった。
「funft」
量産機の首が綺麗に切り落ちる。
その時、ピーという電子音がアスカの耳に入り込んだ。
それと同時にコックピットにカウントダウンの表示が映し出された。
612 :
受験者:2005/08/07(日) 02:29:03 ID:???
「何!?」
驚いて電源コードを見ると、別の量産機が巨剣でコードを断ち切ったのが分かった。
「こぉんのぉ」
アスカは重過ぎる巨剣を捨てスピード重視に切り替える。
物凄い勢いで突進すると量産機の顔に掌底を繰り出す。
そしてそのまま倒れこみ量産機の顔面をグチャリと潰した。
「後、三機!!」
時間は、まだ3分もある。
弐号機は一番近くにいる量産機に飛び掛ると、量産機の体を力尽くで壊そうとする。
「うりゃあぁぁぁああ」
ねじ切れる量産機の体。
ちらりと初号機の姿が目に入った。
「バカシンジなんて当てに出来ないのんだからぁぁ」
気合と共に次の量産機に向かって走り出す。
タックルを食らわせ、倒れこんだ量産機の首を圧し折る。
その量産機を、最後の一機に向かって投げつける。
それにぶつかりバランスを崩したところを、アスカの弐号機が駆けていく。
「これでラストぉぉぉおおおぉぉーーーー!!!」
弐号機が量産機の腹を目掛けて突きを繰り出した。
量産機の腹を弐号機の腕が突き破った。
不気味な断末魔をあげ、目の色が消える量産機。
「はぁ…はぁ…はぁ…終わっ…た」
電源はまだ1分ほど残っている。
余裕だった。
そう思った瞬間、アスカは嫌な予感に振り向く。
巨剣がアスカ目掛けて投げられていた。
「まだ動ける奴が!?」
驚きと共に右腕を前に出しATフィールドを広げる。
巨剣はATフィールドにぶつかり止った。
かのように見えた、が。
613 :
受験者:2005/08/07(日) 02:30:04 ID:???
「ロンギヌスの槍!?」
みるみると巨剣は槍へと姿を変えるとATフィールドを突き破り、そのまま弐号機の掌に突き刺さる。
「ぎゃあああぁぁぁああぁぁぁぁ」
高シンクロをしていたアスカは、あまりの激痛に悶え苦しんだ。
制御を失った弐号機がそのまま槍の勢いに手を持っていかれ地面に倒れこむ。
痛みを堪え、急いで立ち上がろうとするアスカだったが、槍が弐号機の掌を通して地面に刺さっていたため、うまく動きが取れなかった。
必死で槍を抜こうとするが、深く突き刺さっているのか全く抜ける気配はない。
まるで意思を持って、そこに刺さっているように感じられた。
その弐号機の周りに倒したはずの量産機が起き出し、わらわらと群れをなし始める。
こうなったら掌を引きちぎるか。
アスカの中で厳しいながらも勝つためのシミュレーションが行われる。
しかし無情にも弐号機の電源は切れた。
「あ!! い……や………」
不気味な笑みを浮かべる量産機達。
思わず恐怖に怯えた声がアスカから漏れる。
3本の槍が弐号機に向かって投げられた。
「アアアアアアァァアァァァァアァアァァァっ!!!」
電源が切れてシンクロも切れたはずのアスカの腹部に激痛が走る。
量産機は、もう動かない弐号機に興味を失ったのか目の前から飛び去って行った。
その先には初号機がいる。
614 :
受験者:2005/08/07(日) 02:31:05 ID:???
ぼんやりと見えていた輪郭が段々と色濃く、はっきりとしていく。
シンジは少しずつ期待が膨らんでいくのが分かった。
「母さん?」
シンジは、よろよろと輪郭に向かって歩き出す。
輪郭が手を広げたのが分かった。
シンジはパッと明るい顔をして、その中に飛び込んでいく。
「やっぱり!! 母さん」
ユイはそんなシンジをそっと抱きしめてくれた。
そしてシンジの耳元で囁く。
「時が来たのよ。契約の時が」
「何?」
言っている事が分からず、思わず顔をあげる。
するとユイの笑顔が見えた。
「その紅いビー玉、コア。人がヒトになる準備が出来たのよ。そう、そしてそれを導くのはシンジ。貴方なのよ」
「母さんが何を言ってるのか僕には分からないよ…」
シンジはますます分からないと、苦渋に満ちた顔でユイを見つめた。
そんなシンジにユイは微笑む。
「全ての心を一つにするの。誰も貴方を傷つける事のない世界。痛みや寂しさのない世界ができるのよ」
「痛みや寂しさがない……」
シンジは呆然とユイの言葉を反芻する。
本当にそんな世界ができるのなら、それは幸せな事なのかもしれない。
「そして、それはとてもとても気持ち良い事よ」
ユイが追い討ちをかけるようにシンジの頭を優しく撫上げる。
シンジは心地よく目を閉じると、そのまま体を預けようとした。
その時だった。
「違う。それは違うよ。シンジ君」
「え?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
振り返ると、そこにはカヲルが立っていた。
615 :
受験者:2005/08/07(日) 02:32:31 ID:???
「カヲル君? 生きていたの!!」
あまりの嬉しさに破顔するシンジ。
急いでカヲルの元へ駆け出そうとするシンジだったが、その腕をユイが掴んだ。
「行ってはダメ」
「母さん?」
シンジは訝しそうにユイを見る。
しかしユイはシンジの腕を放してくれなかった。
「確かに心が一つになれば一時の寂しさを埋める事ができるかもしれない。だけどそれは温もりを無くす事でもあるんだよ」
カヲルは悲しそうに、それでいてユイを睨みつけた。
ユイはそんなカヲルの視線をやんわりと受け入れる。
「知りたいのよ。進化の終着点を。真のヒトの姿を。そしてそれが人が生き抜くための道なの」
「僕達はそんな事のためにシンジ君に魂を託したんじゃない。僕達はシンジ君、君に希望を見出したのさ」
シンジにはユイとカヲルの話が掴めず、ただ困惑する事しかできなかった。
「希望?」
「シンジ君は僕らに最も近いヒトであると同時に最も遠い人でもあった。だからこそ僕らが望むものになれる。そう信じたんだよ」
「カヲル君が、カヲル君が僕に望むものって何?」
ネルフでも言っていた。
自分はカヲルの望むものになれると。
シンジはそれがずっと気になっていたのだ。
616 :
受験者:2005/08/07(日) 02:34:31 ID:???
「温もりだよ。心の虚しさを消して欲しいんだ」
「そのために心を一つにするのよ。貴方ならそれが分かるはずよ?」
ユイが可笑しそうに笑った。
だけどカヲルは首を横に振って答えた。
「僕達の心は満たされてなんかいない。人と違って心の隙間を埋めてくれる者がいないからね」
「心の隙間を埋める?」
「例え寂しさや孤独を感じたとしても、他人に傷つけられたとしても、それを埋める事ができるのもまた他人だけなんだよ。だから僕達はアダムに他人を求めた。
でもこれはただの堂々巡りなんだ。アダムと一つになったとしても、また一人の寂しさが襲ってくる。それが分かっていても求めずにはいられなかったけどね。生き物には他人が必要なんだよ。お互いに触れ合う事のできる他人が。それでもまだ君達は一つになろうとするのかい?」
カヲルの哀れんだ視線にユイの表情が変わった。
「しかし人は補完されなければ破滅の道を進むより他にない。より貴きに導かれなければ生きていけない!!」
豹変したユイの顔を見てシンジは恐怖を感じる。
「母さん? ……じゃない!! これは母さんじゃない!!!」
シンジのその叫びに、ユイの唇がニタリと釣りあがる。
そしてその姿が白い化物へと変貌した。
「わぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああ」
半狂乱になったシンジは逃げ出そうとするが、掴まれた腕は解けなかった。
「助けて!! 助けてよ、母さん……助けて…
1 助けて父さん!!!」
2 助けて綾波!!!」
3 助けてアスカ!!!」
3.じゃあまりに情けないというか、これ以上アスカを痛い目に合わせるというのか。
(個人的には見てみたいんだけど)
2.だと劇場版と同じだね。
スターウォーズと同じ1.でお願いします。
アスカに頼ってこそのシンジ君でしょうw
3がいいな
レイの出番が少ないんで2
620 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/08/17(水) 03:54:37 ID:p/pJa+FA
保守
3で頼んます
亀だけど2!
623 :
受験者:2005/08/25(木) 03:38:28 ID:???
「助けて!! 助けてよ、母さん……助けて…助けて父さん!!!」
シンジは我武者羅に暴れ周り逃げようとするが、怪物の手は力強くシンジを離さない。
そしてもう片方の怪物の手がシンジの持つビー玉を奪おうと伸びる。
それを本能的に感じ取ったシンジは、必死になってビー玉を庇った。
だが、シンジは絶望の表情を浮かべる。
シンジの周りには、他にあと8体の怪物がいたからだ。
そしてシンジの世界も変わっていく。
暗闇が辺りを覆っていく。
光が闇に飲み込まれ、そしてカヲルも消えた。
暗く、寂しい空間に変わっていく。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
エヴァを囲むように9機の量産機は集った。
不気味につりあがる口からは、気味の悪い笑声とふしだらな涎が垂れている。
まるで宴の前の興奮を抑えきれないような様子であった。
量産機と初号機は不可思議な力で、共に宙へと昇っていく。
誰も邪魔する事のない遥か彼方へと。
そして中心に位置する初号機を死と再生を繰り返す人の魂、ティファレトに見立て、空にセフィロトの樹を描く量産機。
ATフィールドがそれを空に映し出す。
時は満ちた。
「……!! ウオオォォォォォォォォ――――――ン」
それを悟ったかのように、今まで無反応であった初号機を叫び声を上げた。
初号機の胸の肉が左右に裂け、そこからあの紅いビー玉、コアが浮き出した。
すると地が胎動するように揺れた。
そして初号機の足元にある地面が紅い閃光と共に噴出する。
その閃光の正体はオリジナルのロンギヌスの槍であった。
ロンギヌスの槍は勢い空へ良く飛び上がり、初号機の前まで来るとピタリと止まった。
そして、まるでそこが自分の居場所であるかのように、初号機の胸のコアへとゆっくりと進んでいく。
624 :
受験者:2005/08/25(木) 03:40:13 ID:???
その状況を司令部のモニターで見ていたコウゾウは思わず唸り声をあげた。
「むぅ。やはりゼーレはシンジ君を器として補完を行うようだな…………おい、聞いているのか碇?」
「今………」
シンジの声が聞こえた気がする。そう言おうとしてゲンドウは口を閉じた。
そんなわけがない。
シンジは今、モニターで映っているアレなのだから。
「迷っているのか?」
コウゾウはそんなゲンドウの中に迷いを見つけ出した。
しかしゲンドウは、そんなコウゾウの言葉を鼻で笑うと席から立ち上がった。
「迷いなど何も…」
「本当にないのか?」
「ない!!」
しつこいとばかりにゲンドウはコウゾウを睨みつけた。
しかし、それが逆にコウゾウに教えてくれた。
ゲンドウは迷っていると。
普段ならばここまで感情を出す男ではないのだ。
「何を迷っている。この時に」
悠長な事をしている暇はもうない。
すでに補完は開始されている。
それでもコウゾウはゲンドウに問いただした。
気心こそ知れなかったが、かつての教師と生徒。
それがコウゾウを突き動かしていた。
625 :
受験者:2005/08/25(木) 03:41:13 ID:???
「ついに待ち望んだ補完の時が来たのだ。今更迷う事などない」
そう言いながらもゲンドウの表情は優れない。
頭の中に浮かぶのはシンジの姿、顔、声、表情。
女性になったシンジを見た時に感じたユイと自分の面影。
短い期間とは言え、一緒に暮らしたあの時間。
止まっていた時が動き出したかのような躍動感を感じさせてくれた。
自分が求めていたものは何なのか? ユイをここまで求めるその理由は?
ユイは唯一、自分を受け入れてくれた。
心の虚空を埋めてくれた。
そう、埋めたのだ。
何もかも分かったかのようなスッキリとした顔立ちになったゲンドウは、黙って待っていてくれたコウゾウを向く。
「………………私は間違っていたのかもしれません」
そのゲンドウの言葉に、コウゾウは笑った。
ゲンドウは仏頂面で押し黙ている。
恥ずかしがっているがコウゾウにも分かった。
この時、かつてユイがゲンドウの事を可愛いと言った気持ちが、コウゾウにもほんの少しだけ分かったような気がした。
「間違いに気付いたのなら、それでいいんだろう」
「冬月………先生?」
コウゾウの周りに淡い光が漂い始めた。
「頑固なお前が新たに導き出した答え、聞いてみたかったな」
「あとで教えてあげますよ」
「楽しみにしているよ。もう行かなくてはな。ユイ君が呼んでいる」
パシャッ
コウゾウの姿はオレンジ色の液体となって消えた。
626 :
受験者:2005/08/25(木) 03:42:12 ID:???
槍を飲み込んだ初号機は、その姿を大樹に変えていた。
正にそれは、真の意味でセフィロトの樹だった。
「ついに、ついに補完が始まったのね」
メインスクリーンに映し出されたその景色を見ていたミサトは、震える手で必死に自分の体を握り締めていた。
気を抜いたらその場に崩れ落ちてしまいそうだからだ。
心の隙間を埋めるための補完計画。
それは絶対の安らぎを生み出すと考えられている。
リョウジの残したデータに書いてあった。
しかし今感じているのは絶対の恐怖だった。
オペレーターの何人かは、すでにその姿を消した。
次は自分の番かと思うと恐怖で吐きそうだった。
「………母さん?」
不意にリツコの声が聞こえた。
ヤバイ。
感覚的にそう思った。
リツコの目は何処か在らぬ方向を向いたまま恍惚としていたからだ。
「リツコ、目を覚まして。リツコ!!!」
必死になってリツコの肩を揺するミサト。
しかし。
627 :
受験者:2005/08/25(木) 03:43:22 ID:???
パシャッ
「あ…あ………あ……………」
ミサトは必死に何か言おうとしたのだが、口から出るのは意味不明な音の塊だけだった。
手にはリツコだったものの雫が残っている。ほんのりと暖かく、そして気持ち悪い。
恐ろしいはずなのに口は自然とつりあがる。
目は驚きに開かれ、そこから恐怖の涙が流れ落ちる。
なのに表情は笑っていた。
引き攣った笑みを浮かべて意味不明に喘ぐ事しかできない。
「葛城さん」
自分の名を呼ぶ声に、不気味な表情のままミサトは振り向いた。
しかしそれは違ったのだ。
「センパイ」
「ギター」
目の前にいる全ての人が、その姿をオレンジ色の液体と変えていく。
補完の訪れ。
「………た…助け…て」
かすれた声で、ミサトはようやく助けを求める事ができた。
しかし周りにはもう誰もいないのだ。
「助けて……加持君」
最後の心の拠り所。
真に会いたい人の名を呼び、ミサトは恐怖から逃げるために目を閉じた。
「俺は補完なんて望んでいない。満たされてしまったら葛城が見向いてくれなくなるからな」
懐かしい声。
ずっと待っていた声。
加持の残したデータの最後の一文を読み上げるその声に、ミサトは安堵を感じた。
628 :
受験者:2005/08/25(木) 03:44:21 ID:???
「全ての生命を一つに……か」
人の気配の消えた発令所の中で唯一存在する人間であるゲンドウは一人呟いた。
ゲンドウはその右手に宿したアダムのATフィールドによって、初号機から発せられるアンチATフィールドをかろうじで防いでいたのだ。
「ゲンドウさん」
「ユイか…」
かけられた声に振り返ると懐かしい人、ユイが立っていた。
「いや、これは私の心の中にいるユイ。私の心の溝を埋めてくれているユイなのだろう?」
ユイは何も言わずに、ただ微笑んだ。
答えになっていなかったが、ゲンドウにはそれで十分だった。
「さぁ、私をシンジの元へ、そしてユイの魂の元へ導いてくれ」
手袋を外してアダムと融合した右手をユイの方へと差し向ける。
ユイはその手を黙って握ると、二人は光の粉となって飛んでいった。
そして世界には誰もいなくなった。
629 :
受験者:2005/08/25(木) 03:45:17 ID:???
「助けて!! 誰か助けてよ……」
何とか怪物の手から抜け出したシンジは、その勢いで床に転げる。
ビー玉はまだシンジの手の中にある。
これを取られたらお終いだ。
シンジには本能的にそれが分かっていた。
あとは周りにいる8体の怪物から逃げれれば…。
「無駄だ」
「え!?」
怪物らしからぬ、しわがれた老人の声にシンジは驚きの声を上げる。
そしてそれを皮切りに怪物達は、その姿を老人へと変えていった。
「ここは君の心の奥底」
「君の肉体はすでにヒト、リリンとなった」
「しかし魂は、心は違う」
「人は満たされぬ虚空の心を持つ」
「欠けた心ゆえの寂しさを、孤独を生み出す心の部屋を」
「故に誰もここに立ち入る事はできない」
「左様、ATフィールドを貫くロンギヌスの槍を持つ我ら以外はな」
「だからお前を助ける者は誰一人いないのだ」
8人の老人がシンジを囲みながら言う。
シンジには、この老人達がまるで呪文を唱えているように聞こえていた。
そして先程までシンジを掴んでいた怪物だった老人がシンジの前に立った。
「恐いのだろう。寂しいのだろう」
確かに恐かった。
ここにいるのが寂しかった。
630 :
受験者:2005/08/25(木) 03:46:50 ID:???
暗い暗いどんよりとした闇がシンジを包む。
死んだ母。
去っていく父の背中。
妻殺しの息子と罵られる日々。
エヴァに乗る事だけが求められる存在。
「君を理解する人はいるのか?」
「………………友達を見殺しにしたんだ。好きだといってくれた人を殺したんだ」
「もう誰も君を分かってくれない」
「……………誰も僕を分かってくれない」
「君は孤独だ」
「………僕は孤独」
「この悲しみも、苦しみも、孤独さえも全て心が欠けているからだ」
「心が……欠けているから?」
「そう、だから一つにしよう。孤独を埋めるため今、全ての生命を一つに」
「全ての生命を一つに……」
悲しみと孤独に満ち溢れたシンジの瞳から涙が零れ落ちる。
老人の手が、そっとシンジの持つビー玉へと伸びる。
シンジは、もう抵抗しなかった。
631 :
受験者:2005/08/25(木) 03:48:29 ID:???
「それは違います」
「ぬっ、君は………」
「…母さん?」
ユイが居た。
これは本物だ。
先程の偽元は絶対に違う。
あの柔らかい笑み。そして懐かしい匂い。
これがシンジの知る母だと、体の全てが叫びをあげていた。
気だるく崩れたシンジの体に再び生気が宿りはじめる。
「何故、君がここに居る!?」
ビー玉を手に入れた老人がユイに問いただした。
老人達は驚きを隠そうとしていたが、その表情には驚愕の色が浮かんでいる。
「ここは欠けた心の部分、誰も触れられぬ場所のはず」
「違う。それが違うのです。キール議長」
「何が違うという」
キールと呼ばれた老人は静かに聞き返す。
しかし内に篭った怒りは隠されていなかった。
「確かに人の心は誰しも欠けています。そう、それは群体になるために心を分けたからです」
「だから補完をしようと言っているのだ」
「その必要はありません。人は補完なんてなくても心の隙間を埋められるからです。今、私がここに居るようにね」
ユイは、きっぱりと言い切った。
キールは悔しそうにユイを睨みつけている。
「全ての人の心が欠けているように、誰もがその隙間を埋めようと他人を求め合う。それは他人が心の隙間を埋めてくれる事を知っているから。そうでしょ、ゲンドウさん?」
「ああ、私の心の中にもお前がいるようにな」
そう言ってゲンドウはシンジの肩に手を置いた。
いつの間にか居たゲンドウに多少の驚きを感じたが、シンジはそれよりも父の手の暖かさに安心した。
632 :
受験者:2005/08/25(木) 03:49:33 ID:???
「心の隙間は、また別の心でしか埋める事はできない。一つになって補ったとしても、結局はまた別の心を求める事になるだけさ」
「カヲル!! 貴様までここに…」
今度はカヲルが現れた。
カヲルはシンジに向かってウインクをしてみせる。
シンジは何だか嬉しくなって笑顔を見せた。
「しかしもう遅い。補完は始まっているのだ。このコアに全ての心の集約が成され始めている」
「それはどうでしょう、キール議長。ここはシンジの心の中です。どうするかは全てシンジの心が決めるんですよ」
驚いてゲンドウを見上げたシンジの視線に、ゲンドウの暖かい視線が合わさった。
「僕が? 僕が決めるの?」
「そうだ、シンジ。お前が決めるんだ」
キールは最後の抵抗とばかりに、焦ってシンジに語りかける。
「孤独の無い世界を作りだせるのは補完だけだ。誰も傷つけない、傷つける事のない世界ができるのだぞ」
その言葉にシンジは顔を俯せ、目を閉じて考える。
今までに味わった孤独、恐怖、悲しみ、そして友を傷つけたシンジだからこその考えを。
トウジなら何て言うだろう。
トウジならどう思うのだろう。
「…………トウジ」
頭の中にトウジが立っていた。
「始めてあった時は誤解して傷つけあった。でもワシはお前を理解する事ができたつもりやで。お前の辛さも苦しみも見てしまったからな。シンジの事を何か言う奴がおぅたらワシがパチキカましてやる。だから安心しぃ」
そう言って拳を突き出すと、トウジはニッコリと笑った。
ああ、そうなんだ。
例えどんな事があったとしても、トウジはもうシンジの心の隙間を埋める立派な他人の一人なのだ。
その事が分かったシンジは勢い良く顔を上げる。
瞳から数滴の涙か弾け落ちた。
「僕は会いたい。もう一度皆に会いたい」
その言葉と共にシンジの周りの世界が光に包まれて何も見えなくなっていく。
シンジはその光の中で、皆の「おめでとう」という声と拍手の音を聞いた気がした。
633 :
受験者:2005/08/25(木) 03:50:47 ID:???
宇宙まで浮かび上がったセフィロトの樹が二つに裂け始めた。
その裂け目から蜜のように紅い液体が吹き出て、地球へと降り注ぐ。
セフィロトの樹を描いていた量産機は、養分を失った樹のように枯れ細っている。
初号機はというと、かつての紫の鬼人の姿を取り戻し、シンジの面影は消えていた。
雄大に手を広げ、まるで神の様にその場に君臨している初号機。
初号機はATフィールドで地球を包み、魂が零れ落ちないように包んでいるのだ。
今、再び人類は生まれようとしている。
634 :
受験者:2005/08/25(木) 03:52:03 ID:???
シンジが目を開けた時、そこは紅い海の中であった。
漂うように、流れに身を任せている。
正面には母がいる。
「えっと、これは……」
「ここは人の魂が集いし場所、エヴァンゲリオン初号機のコアの中。そして私は初号機の中にいるユイの魂よ」
「そっか。やっぱりあれは本当に母さんだったのか」
前にビー玉をくれた女性を思い出すシンジ。
いつも守っていてくれたのかと思うと何だか凄く嬉しかった。
「これからどうなるんだろう?」
「補完は中止されたわ。世界はまた戻るだけ」
「でも、ここにある魂達は?」
「人は生きようとする意志を持っているのだもの。きっと大丈夫よ」
ユイは、ふと心配そうな表情を見せた。
「でも、本当にいいのね。シンジ」
「きっと傷つく事になる。いつかはまた裏切られる。寂しさに涙すると思う。だけどもう一度会いたいと思ったんだ。この気持ちは本当だと思うから」
そう言ってお互いに微笑み合う。
「でも、母さんはどうするの?」
「私はここに残るわ。そして人の生きる証を、人は誰かと分かり合えるという証を永遠に残すの」
「たった一人で?」
「一人じゃないわ。母さんの心の中にはシンジ、それとゲンドウさんがいるもの」
635 :
受験者:2005/08/25(木) 03:54:00 ID:???
「それに僕も行く事にしたんだ」
そう言ってカヲルがユイの後ろから出てきた。
「そうそう、これはもう君には必要ないだろうから。僕が一緒に持って良いかな?」
カヲルは赤いビー玉をシンジに見せた。
もちろんシンジは首を縦に振る。
「これで本当にお別れだね、シンジ君。君にあえて僕は嬉しかったよ」
「僕もだよ、カヲル君」
カヲルがユイと手を繋いだ。
そしてシンジの手にも何かが触れた。
ゲンドウの手だった。
後ろで黙ってシンジを待っていてくれたらしい。
シンジはそのゲンドウの手をギュッと握る。
「それじゃあ」
「ええ」
シンジとユイ、お互いの距離が段々と離れていく。
紅色が段々と青く澄んでいく度に、シンジの意識が薄れていった。
ゲンドウが何か言っている。
「ユイが死んだ時。私は私の心の中にいるユイまで失ったと思っていた。確かにユイがいなくなって再び欠けた部分は多い。
だが、お前と一緒に暮らして気付いたんだ。私の心を埋めてくれる存在が他にもいる事に。そうなってやっと気が付いたんだ。
ユイは俺とお前の心の中で生きているのだと。……今まですまなかったな、シンジ」
そんな事、もうどうでもいいよ。
僕はもう大丈夫だから。
薄れる意識の中、シンジはそう言ったつもりだが、果たして本当に声に出せていたのかは定かでない。
ただ、力強く握られた父の手の暖かさは本物だった。
ゲンドウも同じものを感じていると思う。
だから、それで良いんだ。
636 :
受験者:2005/08/25(木) 03:55:27 ID:???
「―――ンジ、シンジ」
「うぅん、ここは……」
ゲンドウに揺り起こされて目を開けると、そこは瓦礫の上であった。
まだしっかりとお互いの手は握られている。
「ネルフ本部のあった場所だ。どうやら帰ってこれたようだ」
「そっか」
シンジは空を見上げる。
雲ひとつない青空と、さんさんと輝く太陽が眩しかった。
「母さん、行っちゃったね」
「ああ、だがユイは私達の心の中にいる」
「そうだね。だけど……」
シンジは辺りを見回す。
瓦礫ばかりで人の姿は見えない。
まさか。
嫌な予感がシンジの胸を突く。
一つになるという偽りの安堵から誰も帰って来れなかったのだろうか?
もしかして世界には二人しか存在しないのだろうか?
様々な不安がシンジを駆り立てる。
その時。
637 :
受験者:2005/08/25(木) 03:56:29 ID:???
「ああ!!! 居た、バカシンジ。みんな〜、いたわよシンジと司令」
「碇君……おかえり」
「全く、何がどうなってるのか説明してもらいたいわね。事後処理をするこっちの身にもなってほしいわ」
「大丈夫ですセンパイ、その仕事、私も手伝いますから」
「葛城さんも、ちゃんと事後処理やって……くれないんだろうなぁ」
「あ〜ら、日向くんが全部やってくれるの? 嬉しいわ〜」
「副指令、自分は何をすれば良いんすかね?」
「うむ、特にないな」
振り返った先で、皆が生き生きとした表情で笑っていた。
そこで初めてシンジは実感した。
「帰って…来れたんだ」
「ああ、帰って来たんだ」
638 :
受験者:2005/08/25(木) 03:57:16 ID:???
母にさよなら
父にありがとう
そして世界中の人達に
おめでとう
完
639 :
受験者:2005/08/25(木) 04:05:30 ID:???
はい、ついに終わりました。
本当は加持と鈴原フラグが立っていないからBADENDに行く予定だったのですが、やっぱハッピーに改変しちゃいました。
あと、最後に手を繋ぐ役になるのはアスカだとばっかり思っていましたので、ゲンドウになった事にかなり驚きですw
それにしても一体、どの位この作品はやってたんだろうと過去を振り返ってみたら、空白期間も含めて約一年もやってたんですね。
飽きっぽい僕がこれだけ続けられたって事は、驚きです。
多分、この作品が終わった事を僕が一番悲しんでるんだろうな〜と思いますw
そして弱音を吐いたときには激励を、空白が続いても待ってくれた読者さん、本当にありがとうございました。
また、機会があったら会いましょう。
本当にお疲れ様です。
途中どうなることかと思いましたが、最後まで読めてよかったです。
BADエンドも見てみたかったけど。
またどこかで読めることを
+ +
∧_∧ +
(0゜・∀・) ワクワクテカテカ
(0゜∪ ∪ +
と__)__) +
青葉カワイソスってそれかいw
長期間の連載で、しかも方向性が風任せと大変だったと思いますが、
完結おめでとうございます。今度は完全独自の縛りのない作品を
どこかで読ませて下さい。
いやあ面白かった。
個人的にはTSシンジの服選びが幸せそうだったのでTS路線も見てみたかったんだがw
お疲れさん。
受験、進学と忙しいなか乙ですぜ
そして自分は来年就職か。。。
ではいずれまた
644 :
名無しが氏んでも代わりはいるもの:2005/08/31(水) 02:29:45 ID:lnUja1FQ
〜サルベージ失敗〜
「人一人助けられなくて、なにが科学よ!
シンジくんを帰して!帰してよ!」
ズリュッ!
そんな奇妙な音が聞こえてきた初号機のコアの方に振り向いた瞬間、
葛城ミサトが見たものは、
1.TS化
シンジくんそっくりの、裸の女の子だった「……ミサト……さん……」
2.ユイ化
どことなくレイやシンジに似た、裸の茶色い髪の女性だった「……ミサト……さん……」
3.使徒化
サキエルそっくりの、裸の人間大使徒だった『……ミサト……さん……』
4.ペンギン化
ペンペンそっくりの、裸の温泉ペンギンだった「……ク……クウェェ……」
4で