おすすめなエヴァ小説おしえて!

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 その場所は闇に覆われていた。
 あまりの暗さに、知らない者にはどれほどの広さがあるのか見当もつかない。
 十数人の男たちがそこにいた。その殆どは、広く、そして長い卓の周囲に腰をおろし、
ただ二人だけが立っていた。彼らは議論をかさねていた。参考資料は映像であり随時それは
流れていた。そのとき画面に写されていたものは爆発する艦艇であり巨大な魚のような何かだった。
「シナリオから少しはなれた事件だな」部屋の暗さとは関わりなしに黒眼鏡を着用している上座の男がたずねた。
「結果は予測範囲以内です。修正はききます」相手は答えた。ネルフ司令官、碇ゲンドウだった。
 人類補完委員会の会議であった。
 画面内には真っ赤な巨人がその姿をあらわし、戦い、使徒を殲滅していた。
 国連海軍は艦艇の半分を失った、着席している男のひとりが言った。失ったのは君の国の船だろう。
他のひとりが答えた。本来はとるに足らん出来事だ。
 特別招集会議はその後もしばらく続いた。異議が出たのはネルフ本部へ進入したと言われている
十一番目の使徒についてだった。そこに集まった人々がネルフの不手際を責め立てると、普通の人間なら
耐えられないであろう重圧を、ネルフの司令官は知らぬ存ぜぬの一点張りで押し通した。結果は不問とされた。
だが委員会の議長、キールは忠告を忘れなかった。君が新たな脚本を作る必要はない。そう彼は言った。
わかっております。碇ゲンドウは答えた。「すべては、ゼーレのシナリオ通りに」


        第二話「つぎには、野望を」

93:03/07/17 10:47 ID:???

 山。重い山。時間をかけてかわるもの。 
 空。青い空。目にみえるもの。目にみえないもの。
 太陽。ひとつしかないもの。水。きもちのいいこと。碇くん。
 赤い色。赤い土から作られた人間。人の作りしもの。エヴァンゲリオン。
 私にあるのはいのち。こころの入れ物。エントリープラグ。それは魂の座。
 これは誰? これは私 私は何? わたしは何? わたしはなに? あなたはだれ?
94:03/07/17 10:47 ID:???

 いつも友達と避難訓練ばかりやってたから、いまさらって感じで、実感なかったです。
男の子は遠足気分で騒いでたし、あたしたちも怖いって感じはしませんでした。
95:03/07/17 10:48 ID:???

 わしの妹は小学二年生です。この間の騒ぎではもう少しで大怪我するところでした。
街で暴れたロボットに乗っていたのは転校生でした、碇です。最初はなんや、えろうスカしたやつやな、思うてました。
妹のことでどついたら、やってきた綾波にえろうにらまれました。二人が消えた後、ケンスケに誘われて見に行きました。
次の騒ぎです。わしは後悔しました。けど碇は随分無理している、そう思います。なにを焦っとるのや、碇。
96:03/07/17 10:49 ID:???

 碇は何も言わないけれど、あの時、目標の攻撃から零号機が身を挺して初号機を守ったんだと思う。
いや、そう確信する。その理由はひとつ、綾波だ。綾波は自分の存在を希薄に感じているように見えるからだ。
ペシミズムとも違う何かを彼女はすでに持っていると思う。同じ14歳とは思えないほどに。
もうひとつある。碇だ。命知らずに関しては綾波に負けてはいない。戦いの先に何かがあると信じていなければ
ああはなれないだろう。
97:03/07/17 10:49 ID:???

 まったく泥縄式ね。ネルフ作戦部長、葛城ミサトはそう思った。
 あの時も泥縄式だった。ミサトは思い出した。ヤシマ作戦であった。

 零号機が攻撃、初号機が防御で作戦は展開された。シンクロ率を見てのことだった。
サードチルドレンは戦闘時に一時的にシンクロ率が二倍以上に上がることは過去二回の戦いにおいて確認されていたが、
それでもアベレージにおいてまさる零号機が優先された。三度目があるかどうかは判らなかったからである。
念のため、いつでも攻守を交代できるように準備した。しておいてよかった。ミサトはそう思った。
 奇襲は失敗したからである。第五使徒が察知し、反撃を加えてきたのだ。初弾がはずれたので、すぐに移動した。
 途中で砲手を交代させた。移動完了。準備良し。使徒の攻撃で零号機が盾ごと弾き飛ばされた。ミサトは目をむいた。
その時、初号機が堂々と正面をむいて立ちあがった。ミサトは卒倒しそうになった。使途の過粒子砲が迫る。
それを初号機は単純にATフィールドではねかえした。初号機は腰だめで陽電子砲を発射した。

 レイを使徒の攻撃からそらすために立ちあがったのね。そう思った。悔しいけど可愛いから訊いてやった。
 面白くないことにシンジ君はひとつも慌てずに否定した。あー、でも普段レイには冷たいのにー。
 アスカが来てからも態度はかわらないわね。同じように接している。欲張りなのかしら。

 第十使徒が空から落ちてきたときも泥縄だった。よくも成功したものだ。
 ……今は技術部も泥縄みたいね。泥縄。泥縄。泥縄。
 自分にそう出来ることがないのがうらめしいわ。
98:03/07/17 10:50 ID:???

 しかし、とんでもないことになったもんだ。こりゃこないだの蜘蛛みたいなやつどころではないな。
 いまにして思うとあれはまだしも弱い方だったんだな。俺もヤキが回ったかな? いや、そうでもないか。どこでも同じだ。
 いずれにしろ。焦点は君だ、シンジ君。そして初号機だ。そのどちらかではないんだ。俺にはそう思えてならないんだ。
 だから無事でいてくれ。頼むよ。俺は知りたいんだ。君が何を知っているのかを。
99:03/07/17 10:51 ID:???

 今まで何度も薄氷を踏むような勝利を続けてきたけれど。ネルフ技術部長、赤木リツコは考えた。
奇跡はネタ切れかしら(ふっ、ミサトみたいなことを)。
 しかし、何故シンジ君は戦うときだけたまにシンクロ率が上がるのかしら。彼女の思考が止むことはなかった。
 とりとめのない思考ではあるが彼女の中では合理的に繋がることだった。
100:03/07/17 10:51 ID:???

 はじめてあったときから気に食わなかったのよ!
 ひとりで全部の使徒を倒すつもりでいるんだから、あいつは。
 わたしもドイツではそう思っていたけど、シンジを見てどうかと思ったわ。
 それでいて火口の中に飛び込んでくるくらいは平気でやる。あのとき使徒はもう倒していたのに。
 普段は人を人とも思ってないくせに! なんなのよあれは。どっちなのよ。
 そうよ、最初っから無茶をするやつだったのよ。ほんとにもう、いったいなにをかんがえてんのよ。
 バカ! バカバカ! バカシンジ! バカシンジ! バカシンジ!
101:03/07/17 10:52 ID:???

「爆雷投下、60秒前」
 瞬間、まるで北極の氷河のように、めりめりと影が割れはじめた。
「何が始まったの?」赤い弐号機に搭乗するアスカが叫んだ。
 地面には次々と亀裂が走り、生物のように波打っていた。断面は赤い。
「状況は?」移動野戦指揮所のミサトも怒鳴っていた。わかりません。即座に答えが返ってきた。
すべてのメーターが振り切られています。リツコがおののくように言った。まだ何もしてないのに。
 その時、空中に浮かぶ球体の使徒、その表面の模様が消えた。表面が裂ける。内側から。中から手が出てきた。
 初号機だった。赤い液体が流れ出す。いまや初号機はその上半身を元気よく振りまわしていた。
 まるでさなぎから脱皮する蝶を高速度で映し出すのに似ていた。咆哮が聞こえる。人はそれを見て恐怖した。
10210:03/07/17 10:53 ID:???

 碇シンジは目を覚ました。横にはレイとアスカがいた。
 手を見た。かすかに血のにおいが感じられた。が、たいして気になることではなかった。
 いまや碇シンジは血のにおいに懐かしさすら認めていたのであった。



                            第三話につづく