クローン人間は温泉ペンギンの夢を見るか?

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572ひまつぶし
束の間の平和、束の間の休息。
程よく満足のいく夕食も終わり、それぞれが過ごすくつろぎの時間。
食事の時からチャンネルを変えていないテレビから、ドラマのストーリーが惰性で流れている。
今ここでチャンネルを勝手に変えても誰も文句は言わないだろう。
このリビングにいるのは子供二人、彼等の保護者は仕事で今日も帰れない。
さっきまではもう一人の同居人もいたが、彼か彼女か、それは大好きなお風呂に入っている。
子供二人の一人は壁に寄りかかって雑誌を読んでいた。
故意に会話を避けるつもりは無いのだろうが、SDATから流れる静かな音で両耳をふさいでいる。
もう一人は部屋の真ん中でうつぶせに寝転がり、ポテトチップを片手にページをめくる。
クッション二つで起こした上半身を支え、ホットパンツから出た両足をぷらぷらさせていた。
場の雰囲気は良くも悪くも無い。
二人は互いに最小限の干渉をする事で無意識に心の安定を取っていた。
雑誌を読んでいるだけなら、わざわざこの場一緒にいる必要は無いのだから。
硬い壁に寄りかかるよりは背もたれが曲がる椅子に腰掛けた方が楽だろうし、
クッションを使わずにベッドで横になった方が快適だろう。
もし二人に理由を聞いてまともな答えを得られたとしても、それは、なんとなく、の一言だけだ。