「事業用賃貸借と原状回復特約」より
http://homepage1.nifty.com/lawsection/tisikibako/genjoukaihuku_2.htm <原状回復義務の発生根拠となる合意の注意事項>
@ 原則 = 賃借人に原状回復義務はない
A 例外 = 特約による原状回復の合意
<特約の有効要件>
(1) 特約により賃借人に原状回復義務を負わせる必要性・合理性があること
(2) 合意内容による賃借人の負担内容が著しく賃借人に不利でないこと
(信義則に違反する特約条項については制限解釈されて合理的な範囲内に義務を縮小される)
(3) オーナーから、具体的な修繕費用の範囲が契約書などに明記されており、
その「通常損耗」についても賃借人が負担するものであることの適切な説明がなされ、
賃借人が原状回復義務の内容を認識して了解したこと
(不動活字による形式的文言は例文解釈されて効力を有しない危険はある)
(4) 合意内容が公序良俗に反しないこと
(特約条項は無効となり、原状回復義務そのものをすべて否定する扱いがなされることもある)
オーナー・管理会社のための原状回復と敷金返還(アパマン編)
http://homepage1.nifty.com/lawsection/special/genjoukaihuku/genjokaihuku_index.htm −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
上記は、最高裁判決以降にオーナー向けに解説された「事業用賃貸」の特約有効要件。
消費者(一般賃借者)相手の賃貸の場合、有効要件は上記以上にオーナー側に厳しくなると
考えられている。
何よりも、有効要件の判断以前に、消費者契約法10条により「特約無効」となる可能性が高い。
消費者契約法の施行以降、消費者と事業者間の契約は「強行法規に抵触しない限り有効」
は認められませんよ。
(消費者側が有利なのであれば話は別ですが)
消費者契約法(第10条)で定められているのは、消費者と事業者間の契約では
「任意規定(任意法規)の適用に比べ、消費者に一方的に不利であれば無効」ということ。
消費者契約法
第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、
消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、
民法第1条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、
無効とする。」
注:公の秩序に関しない規定=任意規定(任意法規)
:民法第1条第二項=権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
(信義誠実の原則)
通常の契約では「公序良俗違反」が無効の条件ですが、消費者契約法では「信義則」に反し
消費者の利益を一方的に害する契約であれば無効。
無効認定のハードルがはるかに低いのです。
ちなみに、消費者契約法は強行法規であり、当事者間の合意があろうとも排除できません。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
内閣府による公式解説はこちら
消費者の窓 消費者契約法 −> 逐条解説
http://www.consumer.go.jp/kankeihourei/keiyaku/index.html 消費者契約法は平成十三年四月一日から施行され、施行後に締結された消費者契約について適用。
裁判所は施行後に正式な手続き(両者の合意)により更新された契約についても適用と判断している。
以下の引用は、スレタイになっている最高裁判決の解説の一つ。
(尚、この最高裁判決は、あくまで公序良俗違反で特約を判断した判決であり、
消費者契約法の観点は含まれていません。)
−−− 引用開始 −−−
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3 解説
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【契約自由の原則と契約の一方当事者の保護】
一般に,民法には,「契約自由の原則」があります。つまり,私人の間の契約関
係は,誰と契約するか,どんな契約内容にするか,どんな契約の方式を取るかを,
原則として自由に決められます。
したがって,通常損耗の原状回復を賃借人に負担させる特約も,契約自由の原則
をそのまま当てはめれば,有効となることも十分考えられたと思われます。
しかし,最高裁は,通常損耗特約が賃貸借契約の本質に反する特約であることか
ら,「明確な合意」がないかぎり無効となる,と判断しました。しかし,最高裁
が要求する合意の明確性(明白性)について定めたハードルはきわめて高く,現
状の契約書のほとんどは,この最高裁のハードルをクリアすることはできないと
解されます。
つまり,最高裁は,契約自由の原則から通常損耗特約の有効性を認めつつも,合
意の明確性のハードルを高くすることにより,大多数の通常損耗特約を事実上無
効とする判断を示したわけです。
−−− 引用終了 −−−
契約自由の原則と敷引合意 (総務の森/コラムの泉 より)
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-10362/?xeq=%E6%95%B7%E9%87%91