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朝日新聞2000年6月8日朝刊:
莫邦富 在日中国人 ジャーナリスト
モ・バンフ 47歳。85年に来日。著書に「蛇頭」
〜貧困な受け入れ態勢が犯罪招く〜
中国人犯罪の原点は、中曽根政権下の「留学生受け入れ十万人計画」にある。受け入れ態勢が貧困で
悪質な日本語学校が乱立。そこに80年代後半、中国が持って余した危ない人が就学生としてやってきた。
日本語学校で問題が起きても監督官庁がはっきりせず、関係省庁は無責任だった。学校経営者は日本の
やみの勢力につながる地上げ屋などもいて、中国の犯罪集団との橋渡し役を果たした。蛇頭の幹部の元
祖は当時の就学生たちだ。彼らは日本に「快く受け入れてもらえなかった」という恨みを持っている。この社
会に「責任も義務もない」と考えている。新宿の中華料理店で白昼、中国語で大声で犯罪の相談をしている
のを聞いて驚いたことがある。店で働く中国人も社会への義務感を感じておらず。だれも警察に通報しない
と知っているのだ。
なぜ、これほど多くの中国人に反日感情を持たせてしまうのか。それは、彼らの働く環境が非人間的であ
り、最低限の権利すら与えられなかったからだ。外国人研修生にも、こうした反日の気分が広がっているの
が心配だ。監督官庁がはっきりしておらず、制度拡大で失そう者が増えれば、十年後の組織犯罪の基盤に
なる恐れがある。まず、徹底して組織犯罪を取り締まること。それと同時に、不足している労働者の数を明
かにし、語学や技術で一定の基準を超える人を労働者として迎え、日本人と同等の待遇と権利を与えてい
くべきだ。