1 :
名無しさん@ピンキー:
なかったので立てました
あげ
3 :
名無しさん@ピンキー:2014/04/15(火) 10:29:47.24 ID:vxaDz+2E
エネコノエネ・シンエネ・黒コノエネ・カノエネ
キドカノキド・コノキド・セトキド・シンキド・クロキド
マリーセトマリ (ショタセトマリ)・カノマリ・黒コノマリ・シンマリ・コノマリ・ヒビマリ
モモヒビモモ・シンモモ・カノモモ・セトモモ・コノモモ・ケンモモ・黒コノモモ
ヒヨリ※ヒビヒヨ・コノヒヨ
アヤノ※シンアヤ・セトアヤ・カノアヤ・クロアヤ
貴音遥貴・コノアク・シン貴・クロ貴・カノ貴・ヒビ貴
アヤカ※研彩
アザミ※ツキアザ
クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦の
ネタばれです
3レス
9 :
過去からの弾丸:2014/04/29(火) 20:32:25.87 ID:7JOZJsQO
テレビ画面から
ダンス☆マンの 「二中のファンタジー 〜体育を休む女の子編〜」が流れる中
モモとエネのふたりはしんのすけのようにボロ泣きだ。
ふたりとも俺の両腕にすがり付いて泣いている。
モモ、俺の肩びしょびしょだぞ。
「せっかく…ハッピーエンドになると思ったのに…ぐす」
「そうですよ…ひっく…誰が撃ったんですか…」
「あれは過去からの弾丸だよ。
しんのすけが未来から来たせいで、又兵衛は本来撃たれるはずの銃弾からよけた。
タイムパラドックスがおきないように歴史はつじつまをあわせたんだよ」
「なにいってるかわかんないよお兄ちゃん…ひっく」
「ご主人って冷たいですね…ぐすん」
自己嫌悪。
女の子が泣いてるのになに冷静に分析してるんだ、18歳童貞。
いや、これオレが悪いのか?
※
歴史はつじつまをあわせたんだよ
自分の言葉が頭の中で反芻される。
オレたちメカクシ団の能力にまつわる不思議な、
いや悲惨といってもいい体験。
死の際に能力を得た報いとして
いつかツケを払わなくてはいけないのではないか。
10 :
過去からの弾丸:2014/04/29(火) 20:33:49.09 ID:7JOZJsQO
※
キドは焼死
セトは溺死
カノは刺殺
マリーは撲殺
モモは溺死
シンタローは自殺
ヒビヤは事故死
※
オレたちにも過去からの弾丸が撃たれるんじゃないのか?
オレは怖くなってモモを抱きしめた。
「ちょっと、バカ兄///」
「つじつまあわせですか…」
こいつがもう一度溺れるなんて絶対許さない。
メカクシ団のあいつらだってそうだ。
あいつらが何か悪いことしたのかよ。
つじつまあわせのためにまた悲惨な目にあうってか。
11 :
過去からの弾丸:2014/04/29(火) 20:35:17.91 ID:7JOZJsQO
※
「そういえばご主人と以前見たホラー映画もそんな内容でしたね。
墜落した飛行機に乗らなかったけど、看板が落ちてきたりロープが首に巻きついたりして結局死んじゃうってやつ」
いやそれと一緒にすんなよ…
……
エネの発言で気が抜けた。
映画と現実を一緒にしてたのは自分じゃないか。
過去に事故に巻き込まれたといっても将来同じ事故に巻き込まれるわけではないのだ。
たとえ蛇のような因果にオレたちが縛られていたとしても。
「モモ、明日は早いんだろ、早く寝ろよ」
モモの頭を撫でてやる。
「うん…お休みお兄ちゃん」
モモが退室したあとでエネに礼を言う。
「エネさっきはありがとな」
「ご主人、私何かしましたっけ?」
たとえ蛇のような因果がオレたちを待ち受けていたとしても。
「独り相撲が過ぎますよ〜、ご主人」
「オレもそう思う」
「いい映画でしたね」
「…うん」
「服着替えますか、ああ、ご主人的には妹さんの涙が染み付いた服は着替えたくないですか(笑)」
「お前も目が赤いぞ、エネ」
二人で笑った。
オレのそばには誰かがいる。
如月家
8レス
「お兄ちゃん!」
ドンドンとモモがノックをしてオレが返事をするまもなく
部屋に飛び込んできて抱きついてきた。
「ランキング1位おめでとう!」
「いやオレも信じられないよ」
「エネちゃんもすごいよ」
「いや〜臥薪嘗胆、ご主人に付き合ってきた甲斐がありましたよ」
オレは作曲が趣味で「しん」という名前で某動画サイトに投稿してる。
エネに歌ってもらっているのだが(エネは電脳少女だからボカロになるのか?)、最初はなかなか視聴数は伸びなかった。
「ご主人、この歌詞意味不明ですよ」
「この曲、前のと似すぎてません?」
エネは文句を言いながらも楽しそうに歌ってくれる。
その甲斐もあって地味にオレたちのファンは増えていき、
今回の曲はじわじわと順位が上がってきて、ついにはじめての1位を取ったのだ。
思い出がよみがえる曲という普遍的なテーマ。
歌詞も曲調も素朴だが心が温まる。
そんなコンセプトにぴったりの曲。
※
「ご主人メールですよ」
「えっこれマジか」
音楽会社からだ。
ボカロ×アイドルという
ボカロソングをアイドルがカバーする企画。
今回ランキング1位を取ったオレにも白羽の矢が立ったのだ。
誰か希望するアイドルはいますか?
オレはあいつに歌ってほしかった。
オレが1位を取ってあんなにうれしそうな顔をして喜んでくれた妹に。
オレはモモに近づきたかったのかもしれない。
人気アイドルという別世界の住人であるモモに。
※
♪〜
私が鼻歌で兄の歌を歌っていると
マネージャーさんが何の歌か聞いてくる。
「動画サイトで1位を取った歌なんですよ。最近の私のお気に入りです」
「実はボカロ×アイドルって企画があってね…」
私はお兄ちゃんの歌が歌いたかった。
お兄ちゃんの歌をもっと多くの人に聴いてほしかった。
※
偶然だった。
オレへのスカウトとモモの事務所が参加する企画。
オレの歌をモモが歌う確率がもっとも高くなるセリフ。
「「実は」」
「如月モモは」「この曲の作者は」
「妹」「兄」「「なんです」」
プライド?
モモがオレの曲を歌うことにくらべたらそんなものはどうでもよかった。
お兄ちゃんにとって迷惑?
これは私のわがままだった。
※
作詞作曲:如月シンタロー 歌:如月モモ
オレは顔出しNGということにしてもらった。
キャッチコピーは21世紀のカーペンターズ。
※
カノ「ちょっとショックだよねー」
カノ「キサラギちゃんがアイドルなのは最初から知ってたけど
シンタロー君がプロの作曲家になるなんてねー」
セト「すごいじゃないッスか」
キド「プロになってもシンタローはシンタローだ」
カノ「キサラギちゃんがアイドルになったときのシンタロー君も、こんな気持ちだったのかなー」
マリー「カノもアイドルになる?」
カノ「いや僕には無理www」
コノハ「……いい曲」
※
ヒヨリ「モモさんの曲大ヒットしてるわね。さすが私のモモさん」
ヒビヤ「21世紀のカーペンターズねえ…カーペンターズって誰?」
カタカタカタ(ネットで調べるヒビヤ)
ヒビヤ「アメリカの兄妹ポップス・デュオ…。…妹カレンは無理なダイエットで死亡。……。」
ヒビヤ(おばさんに太ってるって二度と言わないようにしよう)
※
《あの曲の作者ってモモちゃんの兄貴なの。それでボカロランキング1位とって妹がカバーって露骨過ぎんよー》
《久しぶりに言う。ステマ乙》
《結局商業への踏み台なんだよな、萎えるわ》
《話題作りも大変ですね》
《カーペンタンズ、近親、あっ(察し)》
叩かれた。
いや、この状況なら俺でも叩く。
ランキングでいきなり1位を取った男が
実は人気アイドルの兄。
これで工作を疑わないほうがどうかしてる。
ゴーストライター説も浮上している。
エネの元歌がいいかモモのカバーがいいかで論争も起こっている。くだらない。
「ねえご主人」
ネットの反応を見てへこんでいたオレに
エネがとんでもないことを言った。
「私が工作してた、なんて思ったことありませんか?」
沈黙。
「何マジになってんですか(笑)」
腹を抱えて笑い出すエネ。足をバタバタさせるがもちろんパンツは見えない。
「不正で1位になってもつまらないじゃないですか、ご主人」
「お前が言うと笑えねーよ」
「勝負は正々堂々とやらないと」
エネの後ろに別の少女の顔が見えた気がした。
※
雑誌のインタビュー。
「いい曲ですね。まるでシンタローさんがモモさんのために作ったような…」
「違います!」
私の荒げた声にインタビュアーさんがビクッとする。
「あの曲はお兄ちゃんがエネちゃんのために作った曲で、私はカバーしただけです」
「あーそうですね、それで…」
ひょっとして
私はエネちゃんからお兄ちゃんの曲を奪いたかったのだろうか?
※
音楽番組でモモが歌うので、オレとおふくろは一緒にテレビを見ていた。
「あーこの歌
懐かしいわね」
え?
オレの歌をモモが歌うと聞いて涙を流して喜んでいたおふくろが
肝心の歌を聴いてこういった。
「モモが小さいころによく歌ってたじゃない」
おふくろの話によると
おもちゃのピアノで遊んでいたオレたちだが
オレがオリジナルの曲を作ってモモが歌ってたらしい。
そしてそのときの光景を録画した映像も残ってる、と。
衝撃の事実の前に、
テレビで歌っているモモの声がオレの耳を素通りしていった。
※
おふくろが言っていた通り
押入れの奥に眠ってた「それ」。
自室で「それ」を再生する。
よくあるホームビデオ。
「うわっご主人ちっちゃいかわいい、今は面影ないですけど」
「黙って見てろ」
「妹さん、ご主人と似てますね、さすが兄妹」
……
オレがおもちゃのピアノを弾き
小さいモモが歌いだした。
オレは驚愕した。
さすがにエネも黙り込んだ。
小さいモモが歌っている。
あの歌を。
歌詞も同じだ。
どんだけ天才だったんだ昔のオレ!
オレもモモもこのことをすっかり忘れてたのか。
思い出よみがえってねーじゃん!
ゴーストライター説は半分当たってたわけだ。
子ども時代のオレが本当の作曲者だったんだよ。
これが親父が作った曲ってオチだったらオレは立ち直れなかっただろう。
※
へこんでいるご主人。
(最初から妹さんのために作った曲だったんじゃありませんか)
私に一瞬黒い感情がよぎる。
しかしこの曲にそんな感情はふさわしくないと思う。
「やっぱご主人といると面白いですねー。子ども時代の自分に負けてるんじゃないですかー」
「ほっとけ」
「メロディーは昔のご主人が作ったのかも知れませんが
編曲したのは今のご主人でしょ」
「ん? ああ…」
そうです。ご主人と私とのコンビは1曲や2曲じゃないんです。
「今までご主人の曲を聴いてくれたありがたい人たちがいたから今度の曲があるんじゃないですか」
じわじわとご主人の曲の視聴数が増えていくのが好きなんですよ、私は。
「……」
「その人たちのためにも次もいい曲作りましょう、ご主人!」
再生数やコメント数が少し増えただけで感じたあの心のときめき。
「そうだな」
「話は変わりますけどご主人、さっきの妹さんのテレビ、後半ちゃんと見てなかったでしょ」
「いやおふくろが爆弾発言するから…」
「録画してますから復習ですよ」
パソコンの画面に妹さんが映る。
しかし…、いつ見てもアイドルコスの妹さんを画面越しに見てニヤニヤするご主人の顔はキモい。
今日は言わないであげますが。
※
テレビで歌い終わったあと、私は控え室でにやにやしていた。
夢みたいだ。お兄ちゃんの作った歌をテレビで歌ったなんて。
「アイドルになってよかった」
お兄ちゃんがこんな曲を作れるようになったのもエネちゃんのおかげだ。
でも…
いつか私に曲を作ってほしいなあ。
※
今でも
この曲を聴くと
このときの
思い出たちが
鮮やかによみがえってくる。
エロパロ?
小ネタ。75ネタ。シンモモ
23 :
初物:2014/05/09(金) 23:39:35.84 ID:r1gfWjTV
豆知識を話すモモ。
「お兄ちゃん、初物を食べると75日長生きするんだって」
初物…
シンタローの頭に浮かぶ桃色かつモモ色のイメージ。
(モモ「お兄ちゃん、私を食べて……」)
エネ「出ましたー! シスコン童貞特有の脳内変換ー! キモいですというかご主人も初物じゃないですかーやだー」
シンタロー「うっせえ」
赤くなるシンタローと「お兄ちゃんも初物なの?」と意味のわかってないモモ。
小ネタ。ジーンネタ。如月兄妹
25 :
風呂:2014/05/09(金) 23:43:36.08 ID:r1gfWjTV
ヒヨリを救えない自分の無力さを嘆くヒビヤと、ヒビヤを助けたい如月兄妹
ヒビヤ「このままじゃヒヨリが…ぐすん」
モモ「ヒビヤくん、とりあえず家に来て。いいよね、お兄ちゃん」
シンタロー「そうだな、夜も遅いし、母さんに見つからないようにして」
帰宅
シンタロー「母さんの足音だ」
モモ「じゃあ隠れて」
とっさに近くの風呂場に隠れる3人
如月母「誰かいるの?」
シンタロー「風呂に入ってるんだ」
如月母「シンタロウ? モモはもう帰ったかしら」
モモ「はーい。私も一緒に入ってまーす」
ヒビヤ「?」
如月母「あらそう。あなたたち今日は仲いいわね。おやすみなさい」
如月兄妹「おやすみなさい」
去っていく如月母
シンタロー「ふーばれなかった」
モモ「危なかったねヒビヤくん」
ヒビヤ「いやいや、おばさんちのお母さん、おかしいでしょ」
アイマスネタ クロスオーバー
4レス
27 :
如月コネクション:2014/05/12(月) 23:08:13.95 ID:GRXrBkLA
――ふたりのビッグショー、今夜のゲストは新世紀の歌姫如月千早ちゃんと人気アイドル如月モモちゃんです
――最初の一曲はレ・ロマンス
♪じゃあねなんて言わないで
スパーン
ダブル如月の競演。
メカクシ団の面々もアジトでテレビを囲んでいた。
セト「歌うまいっすね、如月千早」
カノ「でもキサラギちゃん華あるよね、ここにいるときはそんなに感じないんだけど」
キド「オンとオフがしっかりしてるということだな」
マリー「でもどっちもモモちゃんだよ」
確かに自宅でバカ兄とつっかかってくる妹はオフだな、とシンタローは思いながらテレビを見ていた。
エネ「ご主人はいつもオフですよねwww」
シンタロー「それ以上言うと電源オフにするぞ」
コノハ「…すぱーん」
カメラが横に回り千早とモモの胸囲を比較してるようなアングルになる。
カノ「このアングルはどうなんだろw」
キド「くっ」
28 :
如月コネクション:2014/05/12(月) 23:10:47.58 ID:GRXrBkLA
――トークコーナーです
――今日のテーマは家族だけど、千早ちゃんにとって家族って何かな
「私には小さい頃、弟がいました。
弟は私が歌うのが好きでした。
私が歌手を目指したのも弟のためでもあったんです」
楽しかった弟との思い出、あたたかい家庭、弟の事故死、家庭崩壊、両親の離婚、如月千早は淡々と語っていく。
「少し前に週刊誌に、弟の事故死と両親の離婚が取り上げられたことがありました。
そのショックで一時、声が出なくなったんです。
歌うのをやめようと思いました。
しばらく自宅に引きこもってました。
でも春香をはじめ、765プロのみんなが
支えてくれて。
また歌えるようになったんです。
春香が、765プロのみんなが私の家族みたいなものです。
春香は私の嫁です」
なんか最後にとんでもないことを言ったようだが
――すばらしいね、765プロ
司会者はスルーした。
29 :
如月コネクション:2014/05/12(月) 23:12:33.70 ID:GRXrBkLA
――それではモモちゃんにとって家族って何かな
司会者がモモに話を振る少し前から
シンタローとキドの頭の中では妄想が広がっていた。
※
シンタローの妄想
モモ「私は小さい頃、お兄ちゃんの陰に隠れて目立たなかったんです。
お兄ちゃん頭がすごくよくて。
私は馬鹿でなんのとりえもなくて。
でも、そんな私をお兄ちゃんは助けてくれたんです。
小さい頃のお兄ちゃんは私のアイドルでした。
だから私もアイドルになって、みんなの支えになりたいなあって」
この妹系アイドルの線で行け。
それとも父親が事故死して家計を助けるためにアイドルになったってぶっちゃけるのか?
※
キドの妄想
モモ「私もアイドル辞めたいと思ったときがあって、そのときに
ある人が助けてくれました。
その人、キドさんはメカクシ団というグループを作ってて
そこに私を勧誘してくれたんです。
それまで人の目を集めるという重荷に押しつぶされそうだった私に
みんなはありのままに接してくれて、
私またがんばれるようになったんです。
キドさんが、メカクシ団のみんなが私の家族みたいなものです。
キドさんは私の嫁です」
※
シンタローはぶつぶつ呟き、キドはうれしさを噛み殺そうとしてるが隠し切れない。
シンタロー「モモ、お前はどうする?」
キド「キサラギ、テレビでメカクシ団の名を出すなよ、困ったな(全然困ってない)」
想像だけでもりあがっちゃう想像フォレストなふたりであった。
エネ「おふたりとも大丈夫ですか〜?」
30 :
如月コネクション:2014/05/12(月) 23:14:37.07 ID:GRXrBkLA
ADの声。
――すいませーん、時間が押してるんで二人ともスタンバイお願いしまーす!
どんがらがっしゃーん
盛大にずっこけるシンタローとキドであった。
セト「なに二人ともずっこけてんすか」
ツンツンとずっこけたシンタローをつつくマリー。
※
テレビに映ってないところで
千早「ごめんなさい、私の話が長くて」
モモ「いいえ、私もお兄ちゃんや大切な仲間がいるんです。だからよくわかります」
千早「如月さん、ふふっモモさんのお兄さんってどんな方ですか?」
モモ「お兄ちゃんですか? 今も昔も変わらない私の……」
※
――では最後に如月モモちゃんと如月千早ちゃんに歌ってもらいましょう
カノはくすくすと笑いながら小さな声でつぶやいた。
「いやー、しかしメカクシ団ってキサラギちゃんたちにとってなんなんだろうねえ、キド?」
――「如月アテンション」
捏造イベント シンモモ
9レス
32 :
キスの日:2014/05/13(火) 00:15:52.94 ID:0kt4xbvh
「モモちゃんが当たり?」
「キサラギ、悪いがこれは団の決まりなんだ」
「キサラギさんすいませんっす」
「よかったキサラギちゃんで、男同士だったらむさくるしいもんね」
「……おとこどうし」
「げーっ、おばさんと…」
「よかったですね、ご主人、妹さんと合法的にキスができますよ」
「……」
先代の団長が決めた規則だそうだが
メカクシ団には年に1度、「キスの日」なる日があるらしい。
なんでも団の親睦を深めるため、くじであたりを引いた団員1名に全員がキスをするというイベントだとか。
そして今年その生贄になったのは如月モモだった。
※
「安心しろキサラギ、ほっぺだから」
「いやいや乙女にとってはおおごとですよ」
「キサラギちゃんはおれたちとキスするの嫌?」
ほっぺにチューくらいなら別にそんな生理的に嫌悪感をもよおすような人はいませんけど
一人だけ、ちょっと。
「じゃあその人は後回しにして」
「妹さん、最初は私から行きますよ」
エネちゃんが顔を近づけてくる
エネちゃんには実体がないのはわかってるのに
目を閉じたエネちゃんの顔が、アップになるとドキッとする。
まだ一人目なのに大丈夫なんだろうか?
33 :
キスの日:2014/05/13(火) 00:17:15.83 ID:0kt4xbvh
※
「じゃあ次は俺だな」
キドさんのにおいがする。
宝塚みたいだ。
男の人よりもかっこよくて女の人よりも美人。
「キサラギ」
耳元でキドさんの声がする。
「メカクシ団に入ってくれてありがとう」
キドさんの唇が私の頬に触れる。
反則だよ…
キドさんちょっと照れてる。
かわいい。
※
「モモちゃん、次は私だよ」
マリーちゃん。
ふわふわしてるお菓子みたいな女の子。
子供の頃に読んだ絵本に出てくるお姫様がそのまま抜け出したような女の子。
「いつも仲良くしてくれてありがとう」
マリーちゃんの甘いにおいに包まれながら私は頬にマリーちゃんの接吻を受ける。
うん。ドキドキする。
マリーちゃん、これからも友達でいてね。
※
「じゃあ俺っす」
セトさんが小さく手をあげて宣言する。
うん。男の人だ。
さっきとは勝手が違う。
「キサラギさん、いやだったらいやっていっていいっすよ」
セトさんの体が近づくと筋肉質な存在が緑のつなぎからでも感じられる。
男の人のにおいだ。
そっと。触れるだけ。
マリーちゃんと同じ場所にセトさんの唇が触れる。
あの体格とは裏腹の柔らかい、でも無骨な感触。
34 :
キスの日:2014/05/13(火) 00:18:37.75 ID:0kt4xbvh
※
「……僕」
コノハさんだ。
背高いなあ。
透明感がある人だ。
マリーちゃんとは別の意味で人間離れしてるというか。
セトさんと違って存在感やにおいが希薄だ。
だから、頬にキスされても、現実というよりも、夢のようで…。
「…おわり」
そっけなく言われると
ドキドキしたこっちがバカみたいだが、
目が合うと目をそらした。
コノハさんも恥ずかしいのかな?
※
「おばさん、僕、ファーストキスはヒヨリって決めてんだけど」
不愉快そうにヒビヤくんが言う。
「ファーストキスって唇同士でしょ。別にヒビヤくんが嫌ならかまわないけど」
「いや僕もやるよ、罰ゲームだと思って」
罰ゲームと言われてこっちからお断りよ、という言葉が出なかったのは
ヒビヤくんの顔がまっかで照れてることが丸分かりだったからで
そんなに意識されるとこっちも意識してしまう。
相手は小学生なのに。
「おばさん、ちょっとかがんで」
つま先を伸ばして背伸びしたヒビヤくんの唇が私の頬に触れる。
かわいい。
キスが終わった後、ヒビヤくんはごしごしと自分の唇を手の甲でこすっていたけど、
まあ許してあげよう。
35 :
キスの日:2014/05/13(火) 00:20:03.11 ID:0kt4xbvh
※
なんかみんなからのキスが永遠に続いてるような気がする。
「じゃあ僕の番だね」
カノさんだ。
猫みたいな人だ。
えっ?
カノさんの指が目を閉じた私のあごをつかみ、くいっと上に上げる。
これって…
私の唇に柔らかいものが触れる。
目を開けた私の前には、私の唇に人差し指を当てていたずらっぽく笑うカノさんがいた。
カノさんは指を自分の唇に当ててないしょのポーズをとったあと私の耳元でそっとささやいたあと、私のほっぺにキスした。
「シンタロー君に怒られちゃうからね」
あ。
忘れてた。
一番の問題が最後に待ち構えていたことを。
8月31日に残った夏休みの宿題のように兄が残っていた。
36 :
キスの日:2014/05/13(火) 00:26:00.05 ID:0kt4xbvh
※
イライラする。
なんだあいつ。うれしそうじゃないか。
エネとキドとマリーはいい。女の子同士だ。
セトとコノハも最小限だから許す。
ヒビヤはまだ小学生だ。許そう。
なんだ。カノ。人の妹の顔に気安く触りやがって。
そして何よりイライラするのはモモがうれしそうなことだ。
「一人だけ、ちょっと」以外とのキスは悪くないよな、そりゃ。
※
俺はきっとカノをにらむ。
「あれーヤキモチかなー?」
「わざとやっただろ」
「何のこと? ふふん」
シンタローがキサラギの前に行く。
嫌な予感がする。
悪いことに嫌な予感というものはよく当たるものだ。
※
シンタローさんから黒いオーラが出てたっす。
マリーもそれを感じたのか俺の袖をぎゅっと握ってて。
ひょっとしてシンタローさん、キサラギさんがキスされてた間…怒ってたんすか?
※
エネさんが「ご主人、最後ですよ」とおじさんに言う。
おじさんは、おばさんの前に行く。
正直僕にはほっぺだろうと、長々と続くキスを見るのは刺激が強かった。
コノハはよく平然としてられると思う。
37 :
キスの日:2014/05/13(火) 00:27:50.74 ID:0kt4xbvh
※
お兄ちゃんが私の肩に両手を置く。
私は目を閉じてお兄ちゃんの、お兄ちゃんの「あれ」を待つ。
お兄ちゃんの「あれ」、お兄ちゃんの、お兄ちゃんのくち…
お兄ちゃんの唇は、私の唇と重なっていた。
え? え? えーーーっ?
何が起こってるのか理解できない。
つまりお兄ちゃんはその私に唇同士のキスをしているわけであって。
頭がうまくはたらかない。
うん、ちょっとだけ期待してた。
ひょっとしたら誰かが私の唇にキスするんじゃないかって。
お兄ちゃんか…
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん
いつのまにかお兄ちゃんは私を抱きしめていた。
お兄ちゃんの舌が、私の口の中に入ってきた。
からみあう私とお兄ちゃんの舌。
頭の中がとろんとしてくる。
なにか大事なことを忘れてる気がする。
ここはどこだっけ。
私なんでお兄ちゃんとキスしてるんだっけ。
「……」
誰かの声がする。
「…サラギ」
「キサラギ!」
キドさんの声だ。
そうここはメカクシ団のアジト。
え?
38 :
キスの日:2014/05/13(火) 00:29:20.09 ID:0kt4xbvh
※
ドン引きしていた。
周囲の目を気にせずディープキスをする兄妹。
変態だ。
腹を抱えてひき笑いをしてるカノ、うっとりとした目をしてるマリー、いつもどおりぼーっとしてるコノハ。
この3人以外はゴミを見るような目でオレを見ていた。
ああ、これがシンタロー嫌われか。
それでもセトが「さすが兄妹、仲いいっすね〜(汗)」とフォローしようとする。
「バカ!」と叫んでモモが部屋から逃げ出すように出て行った。
オレはモモを追いかけた。
※
モモはオレを待ち構えていた。
どうやらオレと二人で話したかったらしい。
「…うして」
「どうしてこんなことしたのよ」
モモの目から涙が流れている。
※
私はお兄ちゃんがなんで唇にキスしたのか知りたかった。
お兄ちゃんはこういった。
「他のやつらと」
「他のやつらと同じキスはしたくなかったから」
※
「オレはお前の兄だから」
「お前の「特別」でいたかったから」
「ほかの野郎がモモとキスするのをみてすごいイライラして」
「だから」
オレの唇をモモの唇がふさいだ。
39 :
キスの日:2014/05/13(火) 00:30:42.91 ID:0kt4xbvh
※
「しょうがないなあお兄ちゃんは」
はっきり言ってはたからみたら気持ち悪い兄妹だなと思う。
でも私はお兄ちゃんが好きで、お兄ちゃんも私が好きなのだ。
※
マリーが俺の袖を引っ張る。くいくいと。
何かを期待してる目。
いやマリ−のことは好きっすよ。
でも…
躊躇してると、マリーが泣きそうな目になって。
そうっすよね、シンタローさん。
好きな子とは唇にキスしたいっすよね。
※
カノが俺の顔を覗き込んでくる。
「あれ? 抵抗しないの」
「したければしろ」
小さい頃は兄妹みたいにキスをしたことがあったっけ。
※
ヒヨリの人形を取り出す。
ヒヨリ本人とキスできる日はいつになるんだろうか。
道は遠い。
※
「シンタローほんとにシスコンなんだから」
「貴音…戻ってる」
「え?」
私、何か言いましたっけ?
ニセモノさんが私の目を見つめている。
ピンク色のその目はあの日の夕暮れにも似て。
40 :
キスの日:2014/05/13(火) 00:32:10.25 ID:0kt4xbvh
※
部屋に戻ったオレたち兄妹が見たのは
キスをしている
セトとマリー、
カノとキド、
ヒビヤとヒヨリ人形、
エネとコノハ。
※
なにか熱病に浮かされたような1日だった。
たぶん明日になればいつもどおりだろう。
如月兄妹
6レス
42 :
ベッド:2014/05/16(金) 23:36:39.95 ID:CrjH0eFv
モモが枕を持ってオレの部屋にやってきた。
「最近眠れないから、お兄ちゃんのベッド貸してくれないかな?」
「何言ってんだ、オレはどこで寝りゃいいんだ」
「床とか?」
「はあ?」
「まあまあご主人、せっかくの妹さんの頼みなんですから聞いてあげましょうよ」
「今晩もこいつの宿題を見たばっかりなんだが」
「ダメなの…?」
バカ兄のケチとかそういう態度を予想してたから
こう弱気になられると、こっちがムズムズする。
「いや、ダメじゃねーけど」
※
「明るいけど大丈夫か?」
「うん、私アイマスク持ってるから」
とオレのベッドにいるモモは、趣味の悪いアイマスクをつけ布団をかぶる。
「おやすみ、お兄ちゃん、エネちゃん」
「おやすみ」「あやすみなさい妹さん」
すーすー
しばらくしてモモの寝息が聞こえる。
寝言と寝相の悪い妹だが、おとなしいときもあるもんだ。
「さーてご主人、妹さんが寝ている隣でエロ画像を収集しますか」
「しねーよ」
モモが眠ってるので声も抑え気味につっこむ。
「眠ってますね、妹さん」
「ああ…」
「なにかあったんでしょうか?」
「さあな…」
43 :
ベッド:2014/05/16(金) 23:38:22.02 ID:CrjH0eFv
※
「起きろー、お兄ちゃーん」
ソファーで寝ている俺をモモが揺り動かす。
「朝だよー」
モモはカーテンをあけ朝の光が室内に入ってくる。
「エネちゃんおはよー」
「おはようございます、妹さん」
「お兄ちゃんまた夜更かししてたの?」
「ご主人のネットサーフィンは生きがいですから」
朝からやかましい。
まあモモが元気でなによりだ。
※
それから毎晩モモはオレの部屋で寝るようになった。
オレも慣れて、モモが寝ている部屋でネットサーフィンをしたり、音楽を作ったりしてる。
偉大なり、ヘッドフォン。
エネもヘッドフォン越しに話しかけるという器用なことをする。
44 :
ベッド:2014/05/16(金) 23:40:20.91 ID:CrjH0eFv
※
ふわーあー
オレのあくびに
「シンタロー大きなあくび」
とマリーが感心したように言った。
カノが買ってきたカヌレがおやつの、アジトのティータイム。
最近オレはあまり眠れてない。
ソファーで寝るのは寝心地が悪いし、かといってモモが夜眠っているオレのベッドを、モモのいない間に使うのはなぜか気が引けた。
「ちょっと前モモちゃんも眠れてないって言ってたよ。最近は安眠できてるって」
「へー、キサラギちゃんが眠れるようになったら次はシンタロー君が眠れなくなった。
なにか関係はあるのかな?」
カノが探偵のようにこちらにさぐりを入れてくる。
「ねーよ」
お菓子を愛らしくほおばりながらマリーは、
「私も眠れないときがあってね、セトに絵本読んでもらったんだ」
「なるほどー、シンタロー君もキサラギちゃんに絵本を読んであげたんだね。
エネちゃん、どうなの?」
「私はご主人と妹さんのプライバシーを守りますよ」
※
「黙ってくれてありがとな」
アジトから帰宅する際のエネとの会話。
「ひどーい、私って信用ないんですね、いじけちゃいますよ」
「悪い悪い」
「他の人に知られたら妹さん、もうご主人の部屋で寝ませんよ」
「カノとか冷やかしそうだもんなー」
「そういうんじゃなくて…」
「えっ?」
エネはあきれたように
「ほんっとご主人はデリカシーがないですね」
45 :
ベッド:2014/05/16(金) 23:42:22.54 ID:CrjH0eFv
※
母さんにバレた。
そろそろ潮時か。
家族会議だ。
「モモ、あなた毎晩シンタローの部屋で寝てるの? お兄ちゃんに迷惑でしょ」
やばい。この感じ。
オレが超優等生だった頃、塾に行く俺と遊ぶといって駄々をこねるモモに対して
母さんは「お兄ちゃんに迷惑でしょ」といった。
オレは塾に遅れないように泣いている妹をおいて出かけた。
誰が悪いわけでもない。
しかし心に刺さった小さなトゲは、このことを思い出すのには十分であって。
「迷惑じゃないよ」
オレは吐き出すようにいった。
「オレの部屋でモモが眠れるんなら、モモがオレの部屋で寝るのが合理的だろ」
はい。
最近、16歳の長女が毎晩18歳の長男の部屋で寝ています。特にやましいことはしてないようですが、親としてどう対処したらいいですか?
ちなみに長男は高校中退でひきこもっています。
こんな新聞の相談記事に対する回答にはならないことはわかってる。
でも、これがオレの本心だ。
「…お兄ちゃん」
申しわけなさそうにしてたモモが驚いてオレを見る。
「シンタロー、あなたどこで寝ているの?」
「…ソファーとかで」
「それじゃ眠れないでしょ」
はあ
母さんはため息をついてこういった。
「モモ、あなたの部屋にベッドがあったわよね」
「あ、うん」
「それをシンタローの部屋に持っていきなさい」
オレとモモは顔を見合わせた。
「そうすればシンタローもベッドで寝られるでしょ」
46 :
ベッド:2014/05/16(金) 23:44:29.02 ID:CrjH0eFv
※
「母さん、ありがと」
「お礼を言うなら私じゃなくてシンタローでしょ」
「うん」
「閉じこもってたシンタローがモモのために部屋を使わせてあげるなんてね、
母さんうれしいわ」
母さんが喜んでるのを見て私の胸はしめつけられるように痛む。
なぜだかわからないけど。
※
オレとモモは二人がかりでモモのベッドを俺の部屋まで運んだ。
アイドルで鍛えてるモモと違って運動不足のオレにはベッドを運ぶのはヘビーすぎた。
「ご主人、妹さんはぴんぴんしてるのに、なに倒れてんですかwww」
横になってへばっているオレをモモが上から覗き込む。
「これくらいでダメってお兄ちゃん大丈夫?」
いつもとは違う角度からのモモに、ちょっと心が戸惑う。
「ベッドここでいいのか?」
「うん。母さんはベッドの位置まで指定しなかったもんね」
モモのベッドはオレのベッドにくっつけて置いてある。
「……」
「……」
「はぁ…」
沈黙を破るように、エネがため息をついた。
「ご主人も今晩は早くお休みになってはいかがですか。大丈夫です、私も邪魔はしませんから」
なにか言葉にトゲがあるのが気になるが、エネの勧めに従うことにした。
47 :
ベッド:2014/05/16(金) 23:46:36.23 ID:CrjH0eFv
※
エネは先に電源を切って休み、オレとモモも寝ることにした。
「おやすみ、お兄ちゃん」
「おやすみ、モモ」
オレはモモのベッドで、モモはオレのベッドで寝る。
モモの布団からモモの甘いにおいがして少し気恥ずかしい。
手に何か当たった。
モモの手だ。
どちらからともなくオレとモモは手を握りあった。
今晩は手をつないで眠った。
折角エロパロスレがあるのにエロがないので
あと折角近親相姦の流れなので近親相姦っぽいもの書いてみました
キドとカノでメカクシティアクターズ6話を踏まえた感じです
「もぉー、聞いてくださいよ団長さん、お兄ちゃんったら私のフェイスタオル勝手に使った上に
洗面台に放置してたんですよー! お陰で知らずにそのまま顔拭いちゃいましたよー」
キサラギちゃんがアジトのリビング、キドと僕が座る向かい側のソファーに座ってぶーぶー言っている。
隣ではマリーが造花を作っていた。
土曜日、僕とキドとマリーが在宅中のアジトにキサラギちゃんが遊びに来ていた。例の通りセトはアルバイトだ。
「ん、おう、年頃は大変だな」
キドは自分も年頃であることを棚に上げて微妙な反応をする。
「年頃っていうか……あり得ませんよ! ね、マリーちゃん」
キサラギちゃんは同意を求めて矛先を変えた。だけどその先でもマリーは首を傾げる。
「え、えぇっと、兄妹だとそうなの? ごめんねモモちゃん、よくわかんなくて……」
仕方がないので僕が助け船を出す。
「あーキサラギちゃん、うちの連中にそのことで同意を求めるのは無理だよ。
うちは朝全員が顔洗って同じタオル使い終わったあとで洗濯機に突っ込むから」
するとキサラギちゃんは一瞬固まって、そしてすごい顔をした。
「えぇえぇぇ!?」
「ひゃああああああ!?」
その勢いにマリーもものすごい悲鳴を上げてソファーの裏側に滑り込む。
キドは黙ってびくっとしていたし、僕もそうなった。アイドルのレアな表情、真正面頂きました。
「そ、そこまで驚くか?」
しばらくして、キドがややおどおどしたまま訊ねると、マリーに平謝りしていたキサラギちゃんが
こちらを向いて言う。
「だって…………だって、普通、じゃないんですか? 別々のタオル……」
キサラギちゃんの瞳が揺れている。
「うーん、僕は親戚たらい回しにされたからわかるけど、そういうのって各々の家庭で結構違うよ。
バスタオル共用の家もあったし」
軽い調子で僕が経験談を話すと、キサラギちゃんは驚き、同情するような声色で「たらい回し……」と呟いた。
すかさずキドがボケる。
「あー、キサラギ、たらい回しっていうのはだな……ほらこれだ」
キドそれアンサイクロペディア。
「それは知ってます」
キサラギちゃんは折角の面白画面も見ずに、異様にハキハキ言い返した。それから
「大変だったんですね」
なんて気を遣う。キドはボケが通じずに上手く空気をそらせなかったことに軽く落ち込んでいる様子だ。
僕はキドの頭をぽんぽんと触って脇腹を小突かれた。
「まあね。まー、事情はどうあれ各ご家庭を見てきた僕に言わせると、生活の仕方ってのはそれぞれバラバラな上に、
大抵の人は自分ちが普通だと思ってる、って感じかな」
僕は少々ウザく見えるくらいにひけらかして言う。キドが何か言いたげにしたけどスルー。
逆にキサラギちゃんは単純に「へぇー」だか「はぁー」だかと納得してくれる。でもすぐに、
「うー、でも共用のうちがあるってことは、私、言い過ぎちゃったんでしょうか……」
と沈みだした。相当言ったっぽいなぁ、これ。
そこで、ずっと黙っていてたマリーが口を開いた。
「あのね、この間本で読んだんだけどね、女の子がお父さんやお兄ちゃんの臭いを嫌がるようになるのって、
近親相姦を防ぐためって説があるんだって。だからモモちゃんは変じゃないよ」
キサラギちゃんは「近親相姦……」とドギマギしながらもマリーのフォローに感謝している。
キドは血のつながった夫婦のページを開くのが遅れたらしく、出したスマホを仕舞っていた。
……今日はそういうボケ方をしたい気分なのかな?
「そういう風に考えるとうちは特殊かもねー、僕ら誰も血が繋がってないからさー」
そんな会話をしたのが昼で、今が夜。雷鳴轟く夜だ。
「そういうわけだ。今夜は一緒に寝よう」
いきなり僕の部屋のドアを開けたキドは一切の説明を省いてそう言った。どういうわけ?
というかノックもしなかったけど僕がオナニーとかしてたらどうする気だったんだろう。
震える手を持参した枕に食い込ませてキドが言う。
「だ、だめか?」
確かに今日の雷は相当近いし激しい。キドが怖がるのも無理ないだろう。マリーは意外と平気なようだが、
キドはこういうものにはとことん苦手なのだ。
「……いいよ」
僕が、入りかけていたベッドをぽんぽんと叩くと、またも鳴り響いた雷様の怒鳴り声に突き飛ばされるように
キドが突進してくる。
ベッドが揺れて、僕はキドの体重を間接的に感じる。軽いなぁ。
光ってから二秒ほどで鳴ったとあうことは、雷は相当近づいてきている。
僕とキドはごそごそとベッドに定位置を作りながら横向きに寝転んで顔を見合わせた。
また雷が光り、鳴る。今度はさっきより近い。キドなど恐怖のあまり硬直していた。
僕はキドの目尻の涙を唇でそっと拭って髪を撫でる。
「どうするつぼみ、セックスでもする?」
昔のように名前で呼べば、その瞳は幼さを取り戻したようにつやめく。
僕の可愛い妹は、こういうとき、とても素直だ。
「す、する」
ぎゅうっと、僕に抱きついてきた。
日々の営みというものは、各家庭でまったく異なる。さしもの僕もこれが普通だとは思ってないけど、
楯山家を出て子供だけで暮らすようになった僕らにとってこれは異変ではない。
僕らは身を寄せ合う必要性が他より大きくて、僕らのからだは案外便利だった。それだけだ。
頭をぽんぽんと撫でて、しがみつくキドから離れないようにしながらベッドの下を漁る。
「ひっ」
雷が光とほぼ同時に音を投げ込んできて、キドが小さく悲鳴を上げる。僕の寝間着は着実に伸びていく。
「よしよし」
コンドームは用意できたので布団に戻ってキドを抱きしめる。
「大丈夫、大丈夫」
「お、落ちたら、燃えたら、って、考えてしまって、こわいんだ……」
キドは僕の胸に顔を埋めて譫言のように告白する。火事を連想していたことは、初めて聞かされた。
「そのときは一緒に逃げるか、一緒に燃えよう」
優しく頭を撫でて僕が言えば、キドは濡れた顔を上げて幼気に微笑む。
「ああ」
それがとても可愛くて、僕はキドの下弦を描く唇にキスをする。唇同士をくっつけて、ぺろっと舐めて。
それから頬や目尻を寝間着の袖で拭った。
取り残されるのが、目の前で死なれるのがつらいことを、僕らは知りすぎている。本当ならきっともっと
何度も見ることになるんだろう。だけど今のところ僕らにそれを受け入れるキャパシティはなかった。
この場に居ないセトや、マリーには悪いけど。
僕は雷や雨の音をBGMに、キドの肩口に口づけながら、キドの寝間着のボタンを外していく。
時折空の光に白く照らされるのが、なんとも艶めかしい。
「ひぅ」
怯える声を塗り替えるように、僕はキドの首筋を舐め上げた。
「あん、カノぉ……」
「キドったら可愛いんだから」
わざとからかい口調で言って、ボタンがすべて外れた寝間着をはだける。その下はキャミソールしか
身につけていないため、胸に触れると感触が直接わかった。
キャミソールをめくり上げるようにして腰を撫で、背中も直接撫で上げる。背中に回せない方の手は
丸みの薄いお腹に当てた。
キドも負けじと僕のTシャツ一枚の寝間着をめくり上げて腰に触れてきた。
本人曰く「してもらってばっかりは性に合わない」そうで。
してもらっている、なんて。それで必死になってついてくるなんて。なんていじらしい。
僕は背中を撫で上げた流れで今度は胸に手を遣って、ゆっくり少しずつ揉んでいく。
「もうこんなに固くなってるよ」
反応するのが愛しくて、状態を伝えながら更に乳首を指で押す。
「しょ、しょうがないだろ」
キドが目を逸らす。
僕は両手で固くなる乳首を転がして目元の力を抜く。
「言い訳なんかしないでよ。僕は、嬉しいんだから」
囁くとキドの黒い瞳がこちらを向く。小さく口で息を吸ったのが合図のように、僕らはまたキスをする。
重ねて、舐めて、吸って、侵入してされて、舐められて、食まれて甘噛みをして。
キドはまるで僕の唾液に中毒性があるかのようにそれをほしがるときがある。今がそうだ。
一旦唇を離しても、キドは目でもっとと訴える。
いつのまにか雷のことなど忘れてしまったようで、僕の首に回した手には恐怖による力の込め方を感じない。
そこにあるのは渇望だけだった。
僕はそんなキドのために、からだを半回転させてキドの上に乗る。
溜めた唾液をキスで送り込めば、貪欲にそれを受け入れたキドは喉をこくりと鳴らす。
「……美味しい?」
荒く息をするキドに尋ねれば、恥ずかしそうに頷かれた。
僕はまた嬉しくなってキドの胸を揉みしだくと、溜めた唾液を載せたキスをする。そのまま舌を吸い、
歯を舐める。誰でもそうなんだろうけど下の歯が小さくて、触覚的にもとても可愛い。
もう一度唇をちぅと吸ってから僕は首へ鎖骨へとキドのからだを下りて行く。
寄り道して乳首を舐れば、外からの雑音に紛れて掠れた高い声が上がる。
「あぁっ……」
その反応に僕は更に吸い付き、また空いていた胸も手で刺激する。
甲高い声と舌先に感じる尖りに煽られて夢中で味わう。両胸を両手で引き寄せて交互に舐れば、
キドの脚がじたじた暴れた。
「ひや、あ、あぁん、だ、だめっ」
調子に乗りすぎたのか、僕は頭を掴まれてしまう。
「だ、だめだって言ってるだろ。もうっ。……攻守交代な」
キドが甘い声色のまま男前な口調を取り戻して言う。攻守交代って、とも思うけど、僕は大抵、黙って従っている。
「わかった」
返事をすると僕はキドの上から退かされて、上に乗られ、ズボンとパンツを一緒に脱がされる。
折角なので自分でTシャツも脱いだし、キドの衣服も僕の手で脱がせる。
自分たちのことながら、ばっさばっさと脱いで脱がせる現状は、なんか色気がないような気はする。
キドは早速とばかりに僕の股間に顔を埋めて、僕の性器を舐めまわす。ぬるぬるした舌や柔らかい唇が、
まず表面に流出していた体液を舐め取っていく。
「ふふ、しょっぱい」
キドは唇から糸を引かせながら合間に呟く。熱っぽい視線に、上気した頬に僕は大変にゾクゾクしてしまう。
なんでこの子のフェラってイラマにしてやりたくなるんだろう。他の子にしてもらったことないから僕の方の
デフォルトなのかもしれないけど。
僕が衝動を抑えていると、キドは、今度はさっきより大きくなった性器を全部一気に口に含んでしまう。
いつもながら豪快で、なんだか補食でもされてる気分だ。
淫猥な水音と、空気が漏れるときの不細工な破裂音をさせて、キドの口が上下する。
舌が上手に絡むようになって以来、この瞬間はひたすらに気持ちよく、一番つらい。
「んっ」
僕が思わず声を漏らせば、キドは髪をかきあげてのドヤ顔。その顔は丁度、すっかり遠ざかった稲光が弱く照らした。
正直、互いに受け入れていることを無視して犯したくなる。
唇の艶はまるで大人のそれなのに得意気な表情はガキっぽく、それがアンバランスでそそるのだ。
「そんな顔されたら、もうたまんないよね……」
呟くと、僕は足元に居たキドを組み敷く。やっと追いついた雷の音が小さく届いた。
それから突然のことで目を回しているキドをよそにコンドームをつけて、焦らすように入り口に擦り付ける。
続けて自分のこともキドのこともたっぷりと焦らすように、あたたかくやわい小陰唇を亀頭で撫でる。
「あっ……」
クリトリスに擦れる度に不明瞭な発音で喘ぐキドは、すっかり童女や子猫のようになってしまっている。
ヤってることは人間の女そのものなんだけどね。正常位だし。
今日この調子なら、言わせられるかも。
僕は善からぬ企みに胸を膨らませてキドの髪を撫でる。
「ねぇ、ほしい?」
意識して唇の端を吊り上げて訊ねれば、キドのもうすでに真っ赤だと思っていた頬が更に赤くなり、目を逸らされる。
「う……」
涙目のキドは在りし日のように気弱な部分が表面化していて、僕もすっかり兄ちゃん気分だ。
「ちゃんと言える?」
我が愛しの妹様の額に掛かった髪をどけて駄目押しすれば、潤んだ瞳が上目遣いにこちらを向いた。
「恥ずかしい、だろ、そんなの……」
「前にも何度か言ってくれてるのに?」
僕が首を傾げて言うと、キドは本気で恥ずかしそうに顔を覆ってしまう。
あーぁ、しょうがないなぁ。
僕は忍び笑いを漏らすと、予告もせずに自分の性器を突き入れた。
「ひゃっあんっ」
嬌声と共に、顔を覆っていた手が外れる。
あまり最初から激しくすると痛がるので、最初はゆっくりピストン運動をしていく。動きに連動して、
抑えから漏れる喘ぎ声と共になんとも言えない音がくちゃくちゃと鳴る。
「かの、カノ……っ」
「何?」
必死に呼ばれて返事をすると、腕を伸ばされる。
「もっと、こっちにっ、来て」
ぎゅっとしたい。
キドは言外にそう言って僕の背中に腕を回した。
「うん、いいよ」
僕は律動を一旦停止して額に口づける。それからもっと密着できるようキドの背中に手を回した。
腕にかかる心地よい重みの主も僕の背中に手を回すのを待ってから、腰を回して軽く膣内をかき混ぜる。
「んっ」
ほとんど身動きが取れないキドが小さく悶えた。キドの性器はさっきよりも強く僕のを締めつけてくる。
僕はベッドのそれほどでもない弾力をフル活用して攻めを再開する。
もう、噛み合った互いの欲望を満たすことに無我夢中だ。口では言わなくともからだや態度でもっともっと
と求められ、もっと満たしてしまいたいと求める。
目前にある唇の、堪えるために閉ざされようとする隙間、何度も僕は名前を呼ばれる。
「気持ち、いい?」
わかっていて訊ねると、途切れ途切れの声が答えた。
「ん、うん、すごくっ……気持ちいいっ」
「すごく?」
予想外の言葉に聞き返しても、反応はあくまで素直で、照れることもない。
「うんっ」
僕はそれこそたまらなくなってしまい、衝動任せにガンガン突いた。キドもそれが更に気持ちいいらしく、
腕でも性器でも強く締めてくる。
「ん、いきそっ……」
やがてキドが言って
「僕も、出ちゃいそ……っ」
僕も返す。
駄目押しとばかりに強く抱きしめ突き入れた。一回一回奥まで侵食するように抉る。
「あぁんっ! あ、あっ、ん……んぅっ」
キドが一瞬のけぞって、そのあとがくがくと痙攣するように動く。イったようだ。性器も全体が大きく蠢き、
僕を攻め立てる。
「……っ」
その激しさに引っ張られるように僕もイった。
数秒、数十秒くっついたまま荒い息を繰り返す。だけど冷めやらぬ熱の名残を惜しみながらも、僕たちはやがて、
組み合わさっていたからだをほどいた。
いつのまにか、空は静かな黒だけを広げていた。
翌日。仲直りしたキサラギ兄妹とエネちゃんが遊びに来ていて、リビングが賑やかだ。
「お兄ちゃんちょっとそのクッキー私が取っとくって言ったやつ!」
キサラギちゃんがまた何かシンタロー君に怒っている。折角仲直りしたのに。
「あ、悪い隣のと間違えた」
「うさぎさん最後の一個だったのにっ」
キドと台所に立つ僕にもそのやりとりは明瞭に聞こえてくる。
「何やってんだか」
キドは溜め息をつくと手近な皿に残っているクッキーを数枚移して持っていく。ついでとばかりに
僕にも一枚差し出した。
「結局ほとんど食べてないだろ。残り、好きなだけ食っていいぞ」
口で受け取った僕にそう言って、キドはリビングへと行く。
僕は受け取ったクッキーをしっかり味わって飲み込んでから、賑やかなリビングに顔を出す。
そして、そこで交わされる様々なやりとりを無視してシンタロー君に話し掛けた。
「シンタロー君、きょうだいっていいもんだよね」
するとシンタロー君は怪訝そうに言い返してくる。
「はぁ? 今のやりとり見てなんでそう思うんだよ! っていうか助けてくれ」
必死そうなシンタロー君を無視して、僕はただただ笑顔を見せて台所に引っ込んだ。
いや実際、きょうだいっていいもんだよね。僕はそうひとりごちる。
各家庭で違いはあれど、うちの団のきょうだいはみんないいきょうだいだ。
僕はねこのクッキーを選んで口に入れる。甘さと香りが広がって、幸せな気分になる。
なんとも平和な休日だった。
でもその平和は、すぐに戻ってきたキドの照れ隠しが猛威を振るうまでのお話。
おしまい。
申し訳ない、久々の投稿だったもので書きこみの頭の改行が無視されるのを忘れていた
(2/5)の頭にも改行三つほど入っていると思って読んでほしい
GJ
キド可愛い
たらい回しと血のつながった夫婦の小ネタも面白かったです
エロなし。ヒビヒヨコノ。如月兄妹
16レス
57 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:05:30.31 ID:7ZKS/+JM
如月兄妹からみたヒビヒヨのまぶしさは
20代のカゲプロ好きからみた10代のカゲプロ好きのまぶしさに似ている
※
「らんらんらん♪ らんらんらん♪ 今日はコノハさんとデート、お花火デート、うれしいな♪」
「ぼくもいるんですけど」
舞うように回転しながらステップするヒヨリに、冷静に突っ込みを入れるヒビヤ
※
夏。
とある地方都市での花火大会。
夏休みの思い出に、ヒヨリがコノハと行きたがったのだ。
「あんたもついてきていいわよ。でも私とコノハさんの邪魔はしないでね」
浴衣姿のヒヨリ。
可憐過ぎる。
天使だ。
アサヒナー冥利に尽きる。
「ジュース買ってきて」
「あ、はい」
「気をつけてね…」
コノハから心配される。
58 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:07:24.27 ID:7ZKS/+JM
※
ドン
人とぶつかってしまった。
「ちょっとどこ見てんのさ!」
「ごめんなさい、ってヒビヤくん!」
「おばさん!」
「こら、おばさんはなしでしょ」
「あ、モモ」
彼女は如月モモ。
信じられないが人気アイドルだ。
かつてヒビヤはモモをおばさんと呼んでいたが、ヒヨリを助けようとするヒビヤを支えてくれて
ヒヨリを助け出してからは前からの約束どおりモモと呼ぶことにしている。
「おい、モモ、どうした」
「シン兄まで」
赤ジャージの青年は如月シンタロー。
モモの兄のヒキニートだ。
「私たちは花火大会にきたんですよ」
とエネ。
シンタローのパソコンに居ついている青い電脳少女も
携帯から返事をする。
へぇ…
出不精のシン兄をよくひきずりだしたものだ。
でもモモとエネさんには弱いからな、シン兄…。
59 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:09:27.80 ID:7ZKS/+JM
※
「そうだ、ヒビヤくん、ジュースどう?」
ジュースというのは果汁飲料のことだと思っていた。
「いや、それお汁粉コーラだけど」
「自販機で当たりが出てもう一本出たんだ。でもお兄ちゃん飲みたくないって」
後ろからシンタローが口を出す。
「モモ、それが飲めるのはお前だけだろ」
「じゃあなんで自販機に入ってるの? 人気があるからでしょ」
「じゃあ言い直すか、お汁粉コーラが飲める変わった味覚の持ち主は、オレたちの中ではお前だけだ」
「なんでそういちいちトゲのある言い方するかな〜バカ兄は」
やばい。こんなところで兄妹ゲンカをはじめたよ。
しかも理由はくだらない。
話を変えないと。
「モモも浴衣なんだ」
いまさらながらモモの衣装に気づく。
浴衣の上にパーカーを羽織っている。
この変なパーカーを着てるのがアイドルとはなかなかわからないだろう。
浴衣のことを聞かれてモモは得意げに
「そうなんだよ、お兄ちゃん、ちょっと持ってて」
モモはパーカーを脱いでシンタローに渡し
「どうヒビヤくん、私の浴衣似合ってる?」
とお澄ましポーズをとる。
かなり魅力的な姿だったが
素直にほめるのもしゃくだ。
「馬子にも衣装っていうよね」
「かわいくないなあ」
とヒビヤの反応に不満を漏らすモモだったが
「ほら、いつまでオレに持たせてんだ」
とシンタローにパーカーを着せられた。
人気アイドルなので人に気づかれると大変だ。浴衣にパーカーって逆に目立つような気がしないでもないけど。
60 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:11:29.08 ID:7ZKS/+JM
※
「ところでヒビヤくんはどうしたの?」
モモに聞かれて見栄を張る。
「いや、ヒヨリと花火デートみたいな、うん」
「うわ、すごーい、ヒヨリちゃんも来てるの。でもこどもふたりじゃ危ないでしょ」
「コノハも来てるんだろ」
あっさり真相を突き止めるシンタロー。
「ニセ、コノハさんも」
エネはかつてコノハのことをニセモノさんと呼んでいたが
ヒビヤがモモのことをおばさんと呼ばないように、
コノハさんと呼ぶようにしてるのだが癖はなかなか抜けない。
「よくわかったね、シン兄」
「後ろにいるぞ」
シンタローが指差す先を驚いてヒビヤが振り返ると
コノハとご機嫌斜めのヒヨリがいた。
「もう使えないわねー、はぐれたのかと思って心配したじゃない」
「ヒヨリちゃん、ひさしぶり」
「あ、モモさん、すごい、コノハさんとのデート先でモモさんに出会えるなんて、なんて素敵なんだろう。
これって運命ですよね」
ころっと態度を変えモモと歓談するヒヨリ。
だが、ヒビヤにとってはくるくるかわるヒヨリの表情すらいとおしかった。
61 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:13:19.18 ID:7ZKS/+JM
※
「ネギマーネギマー」
コノハが屋台からネギマを買ってきた。
いつもは無表情なコノハもネギマのことになるとテンションがあがる。
「これは僕のぶんでこれはみんなのぶん」
五本のネギマの串が入っている。
ヒヨリ、ヒビヤ、モモ、シンタロー。
「一本余りますね」
「これはお前のだろ、エネ」
「私は食べられませんよ」
「コノハの気持ちだろ」
そんなところで気を使われてもかえって困るんですが。
へんな優しさ。
ほんとうにこの人は私の頭の裏をかゆくさせる。
思い出せそうで思い出せないこの感じ。
“ニセモノ”さん。
「じゃあお前のぶんもオレが食べるからな」
「どうぞ、ご主人」
62 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:15:59.89 ID:7ZKS/+JM
※
遊んだ。
「あと一個で輪投げパーフェクトだったのにどうして失敗するかなー」
「うう…」
「あんたほんとプレッシャーに弱いんだから」
最後の一投に成功したらヒヨリに告白しよう。
そんな邪念がよくなかったのか、ヒビヤの投げる輪っかはあさっての方向へと飛んでいった。
コノハは屋台の食べ物を食べまくっている。
コノハさんの食べっぷりって素敵とヒヨリは言っているが
食べるのに夢中で、そのおかげでヒビヤはヒヨリとふたりきりの時間が増えたのだった。
かといってヒヨリからの好感度が上がるわけでもなく
いつもどおり罵倒されるのだが、あの“カゲロウデイズ”を通り抜けた今、
ヒビヤはヒヨリと一緒にいられる幸福に浸っていた。
小学生組みのテンションにつられるように
如月兄妹も屋台を楽しんだ。
「この射的場もオレの敵じゃなかったな」
「いやあご主人に射的の才能があるなんてまるでの○太くんみたいですねwww」
「ご主人、次はこっちを狙いましょうってオレより熱くなってたのは誰だよ」
「ふふふふふふ」
「何だよ、モモ? 気持ち悪い笑いしやがって」
「いやー、オレは行きたくない、花火なんて動画サイトで見れば十分だろって言ってたお兄ちゃんが楽しそうでよかったなあと」
シンタローはあわてて
「いやオレはそういうタイプなんだよ。腰が重いんだよ。マ○オカートのドンキータイプなんだよ」
エネとモモにからかわれながら、シンタローは昔読んだ
幸福な時間は終わってしまうから幸福な時間が怖いという老人の漫画を思い出していた。
63 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:43:41.28 ID:7ZKS/+JM
※
好事、魔、多し。
夕日が妖しく落ちる時。
花火会場へと向かう集団が横断歩道の前で赤信号が変わるのを待っていた。
その中にヒビヤとヒヨリもいた。
太陽が眩しくて運転を間違えたのだろうか。
現実感のない光景。
何度も何度も飽きるほど繰り返し見た。
横断歩道の前に大型トラックが突っ込んできた。
「ヒヨリ!」
とっさにヒヨリを突き飛ばした。
久しぶりだな、この感覚。
今回は僕の番だね。
次は永遠にないけど。
「ヒビヤーーーーーー!」
何かが太陽を遮った。
その影は、トラックがヒビヤを潰す前にヒビヤの前に着地した。
「コノハ!」
両手でトラックを受け止めるコノハ。
コノハの指が吹き飛ぶ。
だがコノハの掌は巨大なトラックを必死に食い止め
次第に車体から勢いが失われていく。
トラックが停止した。
64 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:45:40.96 ID:7ZKS/+JM
トラックを素手で止めた存在に、群集がざわつく。
これはドラマの撮影なのか?
「如月モモだ!」
声とともに群衆の目がトラックからひとりの少女へと“奪われる”。
モモの目が赤く輝いている。
「モモ、オレはコノハのほうに行く」
「わかった」
阿吽の呼吸でモモと連携を取り、シンタローはコノハのほうへと走る。
コノハの手が再生する。
「ずらかるぞ、コノハ」
車から救出されてる運転手も生命には別条はないみたいだ。
ヒビヤは呆然と腰を抜かした状態だった。
「ヒビヤ…」
コノハがつぶやく。
「ヒビヤ、おまえは怪我なかったか」
シンタローの問いにこくこくとうなづくのみ。
シンタローはコノハの腕をつかみ駆け出した。
「ヒビヤ」
ヒビヤの無事にヒヨリが抱きついてきたが、ヒビヤはただコノハの後ろ姿を見送ることしかできなかった。
65 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:47:20.05 ID:7ZKS/+JM
※
河原まで逃げてきたシンタローとコノハ。
「ごしゅじーん!」
エネのナビでモモも合流した。
「うまく撒けたか、モモ」
「うん、なんとか。それよりコノハさん、大丈夫ですか?」
「あ、コノハまだ腕つかんでてわるい…」
シンタローとモモとエネはコノハの指に気がつき息を呑んだ。
小指が欠けていた。
「再生しなくなってきてるんだ」
「…」
「ケンジロウがいなくなったからね」
アヤノの父。貴音の、遥の、そしてモモの担任だった男。
妻を失いその哀しみから蛇に飲み込まれた男。
コノハの体についてもっとも詳しかっただろう人間。
「ケンジロウの遺した義指を付けてたんだ」
「このまま壊れていくのかな…」
コノハはここからは見えないヒヨリとヒビヤを見るように遠くを眺めた。
「僕はヒヨリとヒビヤを守るために生まれてきたのかもしれない」
「だからこれでいいんだ」
66 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:49:21.68 ID:7ZKS/+JM
なんでお前はいつもそうなんだよ。
自分のことなんてどうでもいい風にいいやがって。
表情に出さないからって自分の気持ちを押し込めて。
勝手にいなくなったりなんかするなよ。
「だから死んでもいいってか、ふざけんなよ」
シンタローはコノハの胸元をつかむ。
オレはお前にいなくなって欲しくないんだ。友達だろ。
「見せてやれよふたりにいろんなところを、連れてってやれよ、お前が」
「シンタロー…」
「お前が壊れていいわけなんかないから」
コノハの頬を涙がつたっていった。
こいつが泣くのをはじめて見た。
「ありがとう、シンタロー」
67 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:51:28.10 ID:7ZKS/+JM
※
またコノハに助けられた。
またコノハに助けられた。
「ちょっといつまで座ってんのよ」
「ヒヨリ…」
事故現場からだいぶ離れたところまでヒヨリに引っ張って連れてこられたヒビヤだったが
コノハのことがショックでまた座り込んでしまった。
「ほら」
ヒヨリが手を差し出す。
「助けてくれて…ありがと」
ヒヨリの小さな手を握りしめる。
「きゃっ」
ヒヨリが足を滑らせて、座っているヒビヤに覆いかぶさってくる。
気がつくと、ヒヨリがヒビヤを押し倒すかたちになっていた。
パン!
ヒヨリにビンタされるヒビヤ。
「ふふふふふ、ははははははは」
「はははははは」
なぜだかふたりとも笑ってしまった。
「あーあ、あんたといると命がいくつあっても足りないわね」
「そりゃこっちのセリフだよ」
「へー、あんたもなかなか言うじゃない」
しまった、アサヒナーにあるまじき口を利いてしまったと思ったが、
ヒヨリはうれしそうだった。
ヒヨリとの距離がちょっと縮まったのかな?
68 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:53:27.21 ID:7ZKS/+JM
「そろそろだよ。花火」
「コノハさん!」
いつの間にそばに来ていたコノハに、ヒヨリが飛び上がり、コノハの腕に抱きつく。
「コノハさん、ありがとうございます。コノハさん大好き」
ぼくもいえなかったことを言わなくちゃ。
「コノハ」
「なに、ヒビヤ?」
「助けてくれてありがとう」
「どういたしまして」
69 :
花火大会:2014/05/25(日) 00:55:35.44 ID:7ZKS/+JM
※
「花火きれい…」
きみのほうがずっときれいだよなんて
陳腐な言葉だと思っていたけど
――朝比奈ヒヨリと一緒に花火大会に来られて
天空の花火に照らされた浴衣姿のヒヨリは
地上で一番美しかった。
――本当によかった
好きだよって言葉を花火の音に隠れて聞こえないようにつぶやく。
――好きだよ
「あんたねー」
ヒヨリがヒビヤをにらみつける。
「えっ」
「せっかくの花火なんだからぼーっとしてないで花火見なさいよ」
「あっうん」
花火を見上げながらそれでもヒヨリの横顔を盗み見してしまうけれども
やっぱり花火はきれいだった。
「あ、コノハさん、電話?」
こくっ
誰かから電話が来たらしいコノハが、遠くへ歩いていった。
「やっぱり絵になるわ」
悔しいけれど花火の下で空を見上げている遠くのコノハは
同じ男の目から見てもかっこよかった。
いつか自分もコノハみたいになれるだろうか。
70 :
花火大会:2014/05/25(日) 01:25:31.30 ID:7ZKS/+JM
※
「いろんなところを見せてやれだって…」
花火の下でシンタローは自嘲する。
「ひきこもりのオレが偉そうによく言えたな」
「そんなことないよ」
モモは兄の目をしっかりと見ながら。
「お兄ちゃんは私にいろんなとこ連れてっていろんなもの見せてくれたよ」
想いをこめて
「近所の公園、はじめて行った海、ふたりだけのお買い物」
春は花が咲いて、夏は星がきれいで、秋は紅葉が色づいて、冬は雪が降って
「私は覚えてるよ」
いつもお兄ちゃんが見せてくれた
「モモ…」
――今日の花火だって
多くの恋人たちが花火を見ている中で
一組の兄妹は寄り添いながら空を眺めていた。
「モモ…」
「なに?」
「浴衣似合ってんぞ」
「お兄ちゃん…遅いよ、そういうのって花火の前に言っとくことでしょ」
モモがあきれたようにいう。
昼間は上にパーカー着てただろ、夜になったからパーカーを脱いでオレに持たせてるくせに
とシンタローが反論しようとする前に
「ありがとう、お兄ちゃん」
とモモは満面の笑みで言った。
「エネちゃんはどうしたのかな?」
「ああ、なんかちょっと野暮用があるとか言ってたけどな」
71 :
花火大会:2014/05/25(日) 01:27:44.10 ID:7ZKS/+JM
※
コノハが携帯をかざすと
ホログラムのように浮かびあがるエネ。
「さっきいってたことですけど」
「私は、あなたのいうことはわかりますよ」
あの兄妹の前では決して言わないであろうことを
ひとりごとのように
この人の前なら言ってもいい気がした。
「私は本気でご主人のそばにいるために生まれてきたと思ってますから」
「本人の前では死んでも言いませんけど。調子に乗るから」
くすっ
笑った。
この人が笑うのをはじめて見た。
自分たちがなんのために生まれてきたのかわからなくても
たとえもう人間でなくなってしまったとしても
72 :
花火大会:
――たーーーまやーーーー
ひゅるるるるる〜
ボン
わーーーっ
――かーーーぎやーーーーーー
ひゅるるるるる〜
ボン
わーーーっ
花火の下で
なにかをつかむように
手を宙にかざした
コノハさんの欠けた小指を
私は忘れないだろう。