女装SS総合スレ 第10話

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142 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/10(土) 19:43:51.77 ID:cZL/36v5
『瀬野家の人々』 俊也の場合-B2 2009年4月 7/8

「でも、見本とか見せて貰えません?」
「それも面白そーね。よし乗った。じゃんけーん、ぽん」
 却下されると思ったアイデアだけど、サーシャはニヤリと笑い即座にじゃんけんを始める。
 結果、サーシャが1番勝ちでリサがドベ。

「じゃ、まずリサからGO。一番時間かかった人、罰ゲームね」
「あいよー」
 手をひらひらと振りながら、広場に向かうリサ。1番負けた人だけじゃないんかい。
 通行人から不審な目で見られつつ待つこと3分12秒。男を連れたリサが戻ってくる。

「あらサーシャじゃん。何してんの?」
「なんだヨッシーか。リサみたいなのが趣味?」
 ガタイが良くて背の高い、ヨッシーとかいう男性。サーシャと知り合いだったらしい。

 2番手、ということで交替で広場に出て、駅ビルの壁に背を向け立ってみる。
 さっきの路地はちょうど死角みたいになっていて、広場を通る人はまず意識しないのに、
横を見れば様子が丸見え、という少し面白い配置。

 位置についてから20秒もしないうちに、背広の男性が声をかけてくる。
「君、すっごい可愛いね。スタイルもすごくいいし。……芸能界に興味あったりしない?」
 内心していたぬか喜びが、あっさり覆ってずっこけそうになる。
 何とか追いやるのに結構かかってしまった。今のは時間の計算に入るんだろうか。

 気を取り直して、顔を回して目のあった男性に愛想をふりまいたりもしてみる。
 生まれて初めて訪問した街。酷く短いスカートを穿いて、生足を殆ど全部晒して、ギャル
メイクで、今まで嫌でたまらなかった男性からのナンパを心待ちにしている。
 僕はいったい、何をしてるんだろう。

 ──って、素に戻っちゃダメ、ダメ。アタシはトシコ。世界でいちばんカワイイ女の子。
 けど、いつもならウザいくらい来るナンパ男、今回に限ってやって来ないのは何故ナノダ。
 内心じりじりして時間を過ごすことしばし。「おねーちゃん、今おヒマ?」とやたらに能
天気な声がかかってきたときは、小躍りしそうになってしまった。

「見てのとーりよ。ナンパ?」「いや、愛の告白ス。一目惚れしました。付き合って下さい」
 深刻さ皆無、どこまで本気か分からない言葉に思わず吹き出す。

 かなり痩せ型、容姿は中のやや上、外見はチャラ男そのままの人物の手を引いて路地へ。
「最初、スカウトが来て追い払うのに時間かかっだけど、あれノーカンにならない?」
「ならない、ならない。きっかり4分41秒がアンタの成績」

「ね、これどういう状況? 6P乱交? それとも“ビジンキョク”とかゆーやつ?」
 美人局(つつもたせ)、とか突っ込みをいれつつ、サーシャを見送る。

「あ、オレ、アカギ・リュウセイね。赤いお城に流れ星って書くの。おねーちゃんの名前は?」
「アタシはトシコ。……それ、ひょっとしてソウルネームとかいうの?」
「いやモノホンの本名。かっこいいっしょ。でもいー名前だね。アカギ・トシコかぁ」
「結婚前提のお付き合いッ?!」
143 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/10(土) 19:45:31.12 ID:cZL/36v5
『瀬野家の人々』 俊也の場合-B2 2009年4月 8/8

 そんな会話の最中、そこそこイケメンな眼鏡の男性を連れて戻ってくるサーシャ。
「1分18秒だね。とゆーことで、トシコ罰ゲーム決定ー。どんどんぱふぱふー」

「……あー。そういうこと」
 アタシの顔をマジマジと見て何か納得したあと、キョロキョロ周りを見回し始める眼鏡君。
 そういえば彼、アタシが広場に立ってたとき、チラチラと視線を向けていた男性の一人だ。

「カメラはどこですか?」
「カメラって?」
「芸能人にギャルの格好させて、ナンパに何分かかるかって番組じゃないんですか?」
「ぶぶー。アタシらパンピーだよ。ナンパされるゲームしてたのは、当たりだけど」

「メイクで分からないけど……少なくとも彼女は芸能人ですよね?」
 そう言って、アタシのほうを見る眼鏡のちょいイケメン。
「仮に当たりでも、今日はオフだから普通の女の子として扱ってくれないかな? ダメ?」
「分かりました。……何だかドキドキしますね」

「そういえば君さ、何でアタシには声かけてくれなかったのさ。おかげでドベじゃん」
「こんだけ完璧な美人に声かけるんですよ? 余程自信があるか、バカじゃなきゃ無理です」

 『バカじゃなきゃ無理』というところで、流星の顔を思わず見て納得してしまう。
「うん? そう、オレいつでも自信まーっくすだから」
 何やらポーズを取ってるし。

「じゃーラスト、ユウコちゃん、いってらー」
 もはや完璧に目的を見失ってたけど、そういえばこれは、
『西原雄一郎という少年が、他人が見ても男とバレないくらいの美人になれるか』
 という賭けの結果を決めるナンパなんだった。

 負けたらアタシが指名されるんだろうか? 男だとばらせば諦めてくれるか……
 そんな心配をするヒマもなく、むっつりした顔で男連れで戻ってくるユウコ。
 最後に来たのは、ヨッシーと並ぶ長身に引き締まった細身の体、細いストライプの入った
仕立ての良いスーツにノーネクタイのカラーシャツ。チョイ悪系のかなりのイケメンだった。

「53秒。やったねユウコちゃん、秒殺だよ。それに……」
 4人そろった男性陣を見回すサーシャ。つられてアタシも見回す。
 デカいヨッシー、おバカな流星、眼鏡君、チョイ悪系と並んだ4人の男性陣。

「釣り果でも1位だね」
 身も蓋もないサーシャの言葉に、リサと2人でうんうんと頷いてしまう。
「ってことは、女の魅力、ユウコ>サーシャ>>アタシ>>>トシコ最下位で確定かぁ」
「真っ先に芸能スカウトされたんだから、アタシが一番でいーじゃんっ?!」

「じゃー、男女4人ずつ、8人そろったところで」
 ぱん、と手を叩き、皆を見回しつつサーシャが宣言する。
 男6人、女2人でしょ、という突っ込みを口に出来ないところが辛い。
「今日はこの8人で遊びましょー」
144 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/10(土) 19:51:34.99 ID:cZL/36v5
何故まだ終わらぬ……

>>135
ああ、まだ扱ってない題材がそんなところに。
145名無しさん@ピンキー:2014/05/11(日) 04:26:50.82 ID:KbAKM0tK
なんだかライフワークみたいに成ってきましたね。
私には無理です。長編は。かけません。
146名無しさん@ピンキー:2014/05/11(日) 06:13:34.90 ID:PT+KNVWW
続き来てたーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
147名無しさん@ピンキー:2014/05/15(木) 19:56:24.61 ID:z4qxvK7o
ユウコさんはトシコちゃんが乙子の娘だと知ったらどんな崩壊するのかしら?
148 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/30(金) 22:17:07.83 ID:FUsa5Rw/
『瀬野家の人々』 俊也の場合-B3 2009年4月 1/7

「ついてばっかで悪いんだけどさ。ちょいおトイレに行かせて?」
 自己紹介と馬鹿話をしながら8人で歩くこと少し。
 到着したゲームセンターで、皆──無口な超美男美女カップルのユウコ&京介、40cm近い
身長差のにぎやかコンビのリサ&ヨッシー、ヲタ会話で盛り上がるサーシャ&直樹、それに
流星──を見回しながらアタシは言った。

「オレ、一緒に行っていい?」
「いいわけないっしょ。すぐだから待ってて。……で、ごめ。ユウコは一緒に来て」
「んだね。ウチもついでに行っとくわー」

 『女子はなんでみんな一緒にトイレに行くんだろう?』という昔からの疑問。
 女の子の振りをしている今、図らずも自分自身で実演するハメになるとは。
 男女4人(!)で一緒に女子トイレに入り、中を見回す。幸い他の人はいない様子。
「……で、あのさ、ユウコ」

        <<男性陣>>

「あー。本当に誰なんでしょうねえ。トシコさんって」
「あんま考えないがいいと思うよ。サーシャの知り合いだし、適当言ってるだけかも」
「──あの、すいません。眼鏡かけてもよろしいでしょうか?」
「別に断るようなことじゃなし好きにかければ? てかキョースケ、敬語似合わねーなあ」

「でもこの中じゃおれが一番年下ですし……では失礼して」
「京介、女子組トイレに行ったら急に喋るようになったな。無口なタチだと思ってたけど」
「知らない女性と一緒にいるの慣れてないから、無茶苦茶緊張してたんですってば」
「へぇ、意外すぎ。……って、あははははははははははははっ」

「さっきまで二枚目俳優みたいだったのが、なんで急に食い倒れ人形になるんですか」
「いや、眼鏡なくても、おれはこんな感じでしょう?」
「いやいやいやいや。そりゃあない。お前さん、鏡見たことないの?」
「裸眼0.1以下なんで、眼鏡のない顔は……。皆さんの顔も初めて見えました」

「そっかあ。俺らのツラはどうでもいいけどさ、女子連を見れないのはもったいないよな」
「このあとプリクラとか写メとか撮るでしょうし、あとで見てびっくりするといいですよ」
「どんな顔なんですか? ……まあ、戻って来たら見ればいいだけですか」
「あー。女子の前で、その眼鏡をかけるのだけはやめとけ。忠告しとくわ」

「確かになー。同感。今のうちに、軽く女子連の感じだけででも教えとく?」
「ですね。ユウコさんは、化粧はケバいけど凄い美人です。あと胸が大きい」
「けど、ああいうメイクするの初めてじゃないかな? 普通の女の子をつれてきて、あんな
格好をさせるのって、サーシャがやりそうな気がする」

「京介さんとユウコさんが並んでると、ハリウッドの美形男優・女優のカップルって感じで
したねえ。ぼくなんかが一緒に居ていいの? って気分に」
「いや直樹さん、めちゃハンサムじゃないですか」
「サーシャが最初にこの4人じゃ京介が一番男前って言ってただろ? もっと自信持ちなよ」
149 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/30(金) 22:18:30.76 ID:FUsa5Rw/
『瀬野家の人々』 俊也の場合-B3 2009年4月 2/7

「お次は我が愛しのトシコちゃん。世界一カワイイ女の子」
「その言葉が大げさじゃないくらい、ルックスもスタイルも凄いですよねえ。おまけにノリ
と性格までいい。あー。なんでぼく、あの時声かけるの躊躇ったんでしょう」
「知るか。トシコちゃんはオレんだ。誰にもやらんぞ」

「スタイル良いっていっても、胸は真っ平だけどな。あれJCか、下手すりゃJSじゃね?」
「そういえばさっき直樹さん、トシコさんがどうのって言ってませんでした?」
「ああ、こいつずっとトシコが芸能人の変装じゃないか? って疑ってるんだ」
「芸能人って言っても、A○Bクラスじゃないですよね。もっと上のほう」

「A○Bっていうと、リサがそんな感じかな。混じっててもばれないと思った」
「サーシャさんとリサさんも十分美人ですよね。あの4人本当にレベル高い」
「へえ……そんな中に居て、おれ浮いてたんでしょうねえ」
「いや、京介が一番合ってるって。なんなら今から写真撮って見てみるか?」

        <<トシコ視点>>

「ごめ、すっかり遅くなっちゃった……あれ、京介とヨッシーは? トイレ?」
 女子トイレから出て戻ってみると、流星と直樹の2人が軽く手を振ってるとこだった。
「ああ、化粧直してきたんだ」
「おおっ、流星良く気付いたねえ。好感度3ポイントアップ!(サムズアップ)」

「やったね!(サムズアップ) 今、好感度何ポイントくらい?」「んー。92かな」
「やっほう。高得点!」「1000突破でアタシのハート、ゲットだからガンバ!」
「わお! あとチョットだね!」

「あー。すまん。逆に待たせちゃったな」
 流星とおバカな会話をしてる最中、見えなかった2人がプリクラの台から出てきた。
「なんで男2人? ちょいと見してみ? ……うっはぁこれは」
「フジョに見せたら鼻血吹きそうだなー。高く売れそう。貰っていい?」

 結局、長身組がプリクラを撮ってた理由は不明なまま、ペアごとに機体を選んで撮影開始。
 アタシと流星は最初はピースサインしながら普通に。2枚目はコメカミにキスされながら。

 で、3枚目。頭に手を回して、流星はキスをしかけてくる。『チュープリ』だっけ?
 指を二本、唇と唇の間に挟み込んで阻止して、あっかんべしたあと笑いながら言う。
「ゴメンね。アタシはそんなに安い女じゃないんだ」

 他の面々も、三々五々プリクラを終えて出てくる。
「ねぇね、どんなの撮れた?」「顔のデカさの差すげーなこれ」「落書きしすぎだ顔見えね」
「チュープリ失敗かよ、だっせえ」「るせぇ。でもそんなガード堅いとこもステキ!」
「これだけ浮いてますねえ。映画の宣伝みたい」「あれ? ユウコ、撮ったの1枚だけ?」

 みんなでワイワイ鑑賞してる最中、ふと気付いた疑問を口に乗せる。
 ほかの組は2、3枚撮ってるのに、京介&ユウコカップルだけ1枚きりだ。
「……ユウコ、せっかく直した口紅が取れてるから、リサに直してもらって」
 サーシャの言葉の一瞬あと、京介が見せた狼狽は面白くなるほどだった。
150 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/30(金) 22:19:54.97 ID:FUsa5Rw/
『瀬野家の人々』 俊也の場合-B3 2009年4月 3/7

 結局また、女子トイレに向かうユウコとリサ。その後ろ姿にふと違和感を覚える。
 少し思考を巡らせて、その正体に気づく。
 違和感を覚えなかったのが、違和感の原因なんだ。
 そのくらい、ごく自然に女性に成ってしまっている後ろ姿。

 さっきの女子トイレでの『説得』が効いたのか、眠っていた素質が花開いたのか。
 あるいは下着までの完全女装で美女そのものの外見になって、『女』として超イケメンな
男性とキスしたおかげで、男として重要な何かを吹っ切ってしまったのか。
 心の持ちようだけでこうも印象が変わるのかと、感動に近い思いすら受ける。

 『メイク直しのために、女子トイレに向かう』様子も凄く自然。
 今までチラホラ見えていた『男らしさ』も、皆無とは言えないまでもかなり減っている。
 イマイチ、『アタシは女だ』と信じ切るレベルまでいけてない自分も、見習わないといけ
ないんだろうか。

「なあ、サーシャ。ユウコってやっぱ、ああいうメイク慣れてないのか?」
 2人の姿が女子トイレに消えたところで、ヨッシーが尋ねる。
 一見・知性派の眼鏡君は思い込みが激しすぎて微妙にズレてて、パッと見ウドの大木系の
ヨッシーのほうが鋭いのが、妙に可笑しい。

「クライアントの秘密につきましては、守秘義務の対象とさせて頂いております」
 ニヤリと笑って大仰にお辞儀をするサーシャに、ニヤリと笑って返すヨッシー。

「あ、そだ。京介、今のうちに眼鏡かけてプリクラ確認しといたら?」
「あれトシコさん、なんで眼鏡のことご存知なんです?」
「そりゃあ、ねえ。あれだけ目があんまり見えてませんアピールされちゃ、さすがに」

 少しためらったあと、スーツの内ポケットから眼鏡を取り出し、装着する京介。
 吹き出しそうになるのをなんとか堪える。ギャップ激しすぎ。
 太い黒ぶちの丸眼鏡。超イケメンな容貌だったのに、今はとてもヒョウキンに見える。

「ああトシコさんて、そんな顔だったんですね。みなが超美少女とか言ってたのも納得です」
「その低い声で褒められるとゾクゾクするね。でもユウコも同じくらい美人だし、あの子の
前でアタシを褒めるの、厳禁よ?」

「そのスーツとか、誰の趣味? 京介のチョイスじゃないよね」
「これ、大学の入学式のためにって作らされたんですけど、似合ってませんよね?」
「アンタのセンスが致命的に悪いのは、その一言でよーく分かった。自分らの写真見てみ?」

「──ええっ?! 誰ですかこれは」
「だから、それが京介とユウコ。正真正銘アンタらだよぉ。もう1枚のほうも見てみて」
 正直にいえば『奇跡の1枚』に近い、実物以上に綺麗に撮れてるプリクラ。
 でも自信と自覚を持たせるためなら悪くない。

 隠し持っていたプリクラを2枚取り出し、マジマジと見つめてるのを横から覗き込む。
 少し意外だったけど、ユウコのほうから積極的にキスを仕掛けてる。
 まるで映画の1シーンのような、美男美女のキスにうっかり見とれてしまう。
151 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/30(金) 22:21:10.64 ID:FUsa5Rw/
『瀬野家の人々』 俊也の場合-B3 2009年4月 4/7

『成り切ってしまったほうが恥ずかしくないよ』『雄一郎なんて人、忘れちゃいなさい』
『アンタはユウコ。飛び切り美人の女の子』『だから女の格好もカレシがいるのも当然』
 さっきのトイレで『彼女』に対して伝えた言葉。
 言った当人はさほど守れてないのに、言われた側はやり過ぎなくらいに守ってる皮肉。

「京介さ。なんでユウコのことをナンパしようとしたの?」
「ええと、姉に『度胸を付けてこい』って言われてこんな格好無理やりさせて、顔も見えて
ない女の人を指さされて『あの子をナンパして来い』って」
「いい姉貴じゃん。大切にしたげなよ? あ、戻ってきたから眼鏡とプリクラしまって」

 このタイミングで戻ってきた2人に、アタシはウィンクしながら声をかける。
「いーね! ユウコちゃんいい感じ! ステキ! ぐれーと! わんだほー!!」
 にっこりと女の子らしい笑みを浮かべつつ、ぎこちないウィンクを返すユウコ。
 ほんの1時間前まで『女装なんてイヤだ』と騒いでいた人物は思えない女ぶりだった。

 その後また、今度はカップルの枠を外して、適当なペアでプリクラを撮ることに。
 何故かアタシだけ全員と撮るハメになって。
 で、最後のリサとの撮影中に、「俊也クンってさ。悪女だよね」なんて言われてしまう。
 『なんのことかナー?』とトボケて返したけれど、でも雄一郎のことなら自覚してる。

 ファミレスで会った時点で“彼”が自分に対して好意以上の感情を持ったのは分かってた。
 あえて意識には載せないよう、努力してたけれど。
 雄一郎の心の中は、『好きになった女性に好意をもってもらうために』『嫌な女装をして』
『女に成り切って』『他の男相手に恋人のふりをする』という、意味不明すぎる状態のはず。

 その“好きになった女性”が、(彼は知らないとはいえ)実は男だという事実も、混乱に
拍車をかけている。
 流星も入れて、見た目は男2人女2人、実際には男4人の、そんな奇妙な四角関係。


「ひゃっほう! まーた大勝利! トシコちゃんマジ、オレの勝利の女神!!」
 プリクラのあと、階を上がってダービーゲームに皆で挑戦。
 2人ずつペアの4組に分かれての戦いだ。

 アタシは初めてで良く分かんないので、流星にお任せモード。
 それでも分かる無茶な賭け方、なのに何故かほぼすべてのゲームに勝利して独走状態。
「すげぇ! 今日のオレすげぇ! トシコちゃんが傍にいる限り負ける気がしねぇ!」
「おっしゃ! 流星、どんどん行こうぜぇ!」

 アタシも正直、わけが分からないくらいハイになって騒いでる。
 折り返し、アタシ達に張り合おうとヒートアップしている2位のリサペアともダブル差。
セオリー通りに戦うサーシャペアが続き、地味で手堅い戦いを続けるユウコペアが最下位。

 その後も熱い戦いが続き、長かったような短かったようなゲームの末の最終戦前。
 リサペアが半分脱落して、サーシャペアが一発逆転を狙った最後のベット。
 そして……
「オレたちはもちろん、全ベットだ!!」「いぇーっ!!」
152 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/30(金) 22:22:52.69 ID:FUsa5Rw/
『瀬野家の人々』 俊也の場合-B3 2009年4月 5/7

「……あーっ、もうこんだけ笑ったの生まれて初めてかも」
 最後の最後に無一文の最下位転落。トップはユウコペアでゲーム終了。
 結果が出た瞬間から何故か笑いがこみあげてきて、流星と2人でフロア中に響く声で大笑
いしてしまった。目じりに涙がにじんでいる。

「もうサイコウだったな。……どっちがいい?」
 しばらくそうやって笑い転げたあと、自販機から買ってきたらしい缶ジュース2本を流星
が差し出してきたので、「サンクス」と言って、片方をありがたく頂く。
「いや、もー、楽しかった」

「どうする? みんなは他の階行くって言ってたけど……オレらばっくれちゃう?」
 少し離れてだべってる皆に聞こえないよう、小声で囁く流星の言葉。
 それもいいな、と思うのと同時に、現実に引き戻される。

「魅力的な提案だけど、でも今日はダメかな。夕方待ち合わせしてる人がいて、その人の連
絡がリサの携帯に来るから、リサと別行動できないんだ」
「シンデレラの魔法が解けちゃうとか、そういうこと?」
「うん、そんな感じ」

 ふと、何故か『トシコ』を意識してしまう。あと数時間の命しかない、仮の自分を。
 ずり落ちかけた豹柄で女もののトップスを軽く整え、ブラとキャミの位置を直し、短すぎ
るデニムスカートの裾を伸ばして、ウィッグを手串で梳いてみる。
「んー? 流星、何? じっと見てさ。どっか変なとこあるかなー?」

「いやあ、トシコってマジかわいいなあって。改めて惚れ直してた」
「んふ。ありがと」
「そこのバカップルども。俺ら階登るけど、おまいらどうする?」
「あ、行く行くー。ごめんね気を遣わせちゃって」

 3階に上って、メダルゲームを皆で適当にプレイする。
 幾つか遊んで次に遊ぶ機体を選んでるとき、声がゲーム機の後ろから聞こえてきた。
「おねーさん、かっこいいね」「マジ美人」「一人? ヒマなの? 俺らと付き合わない?」
 なぜか気になり回り込んで覗き込むと、ユウコが3人のナンパ男たちに囲まれていた。

 駅前でナンパされた時とはまるで違う『余裕のある大人の女』の態度で、賞賛の言葉を受
け入れているユウコ。
 黒いタイトスカートの中、(僕と同じく)女物下着に包まれた男性のシンボルが隠されて
いるとはなかなか信じがたいくらいの美女ぶりだった。

 それにしても──男の時には、言われたくても多分聞くことのできなかった賞賛の言葉、
『かっこいい』。
 それを女の時には、至極あっさりと手に入れているという皮肉な状況。
 そのせいかは分からないけど、満更でもなさが表情に表れてしまっている。

 順応力高すぎ、と呆れるけれど、でも経験値のなさも同時に見え隠れしてる。
 放置しても大丈夫なのか、助けに行ったほうがいいのか、いやそれだと二次遭難に合いそ
うだ、と悩んでる最中、トイレのほうから戻ってくる京介の姿が見えた。
153 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/30(金) 22:24:32.74 ID:FUsa5Rw/
『瀬野家の人々』 俊也の場合-B3 2009年4月 6/7

「お姫様をほっぽり出して何してるの。王子様の出番よ?」
 戸惑う京介の袖を引き、救助に向かわせる。
 男たちの間を縫って京介に近寄り、これ見よがしに腕を絡ませるユウコ。
 相変わらず、映画の1シーンのような美男美女カップルぶりだ。

「……おれのツレに、何か用でもありましたか?」
 190cm近い長身、ほりの深い目鼻立ち、眼鏡がなくて目を細めてるせいで睨んでいるよう
な目つき、低くてよく響く声。
 本人にその気はないんだろうけど、怖いお兄さんが凄んでいるようにも見える。

「あ、いえ。彼女さんとっても美人ですね。羨ましいです」「お邪魔してすいませんでした」
 慌てた様子で退散する3人組。
 様子を覗いていたアタシと目があってしまう。
 性懲りもなく近寄ってナンパしに来そうなので、慌てて引っ込んで流星と合流。

「良さそうなのあった?」「これどう?」「ちょっとやってみるね」「やったことあるの?」
「んにゃ、初挑戦。わ、わ、これってどうやるの?」
 コインを投入したあとで、慌ててやり方を教わってみたりもする。

 そんな感じで遊び倒して、ふと時計を見る。6時を少し過ぎたくらいの時刻だった。
 詩穂さんは『夕方』としか言ってなかったけど、もういつ呼ばれてもおかしくない状態。

「んー、どったの?」
「なんて言えばいいのかなぁ。『トシコさん』に嫉妬してた。こんだけ自由で、楽しくて」
「それに、こんな素敵な彼氏まで居て」
「ナマ言うんじゃないの。──でも、まあ、それも入れていいかな」

「おおっ、ひゃっほい。……でもそろそろお別れの時間かぁ。また会えるよね?」
「どうかなぁ……分かんない」
 今日はどうやらバレずに済んだみたいだけど、次はバレずに済むかは分からない。

 流星は、“僕”が男だと知ったらどんな反応を示すだろう?
 それを恐れるほどに、彼のことを好ましく思ってる自分に気づいて驚く。
 特定の男性から異性として思われ、仮初の恋人として過ごした、生まれて初めての数時間。
 自分が本当に『トシコ』だったら良かったのに。そんなことまで考えてしまう。

「ね……流星はさ、女装した男ってどう思う?」
「んー、よく分かんないけど、ユウコが実は男とか、そういうこと?」
「──リサでもサーシャでもいいけどさ。まあ、例えばアタシがもし男だったとしたら」

「それ、オレの愛が試されてるのかな? 男でも女でも、トシコなら関係ないぜ、って言い
たいけど──正直難しいなあ。トシコちゃん似の女の子、3人は産んで欲しいし」
「相変わらず気、早すぎ」
「でも、仮定としても考えらんないな。こんだけカワイイ女の子が男とか、あり得ないから」

 本当の性別を一蹴されて少し困惑しているところに、リサがひょいと顔を覗かせながら、
「トシコ、ここに居たんだ。姉貴から電話あったよ」と言ってきた。
154 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/30(金) 22:25:55.04 ID:FUsa5Rw/
『瀬野家の人々』 俊也の場合-B3 2009年4月 7/7

「トシコちゃん、やほーー」
 待ち合わせの場所、待ち合わせの時刻。
 ギャル系のファッションでばっちり決めた小柄な女性が、陽気に手を振っていた。

「おーっ、シホじゃん。すんげー久々。寂しかったよー」
「なんだ、あんたらサーシャと遊んでもらってたの? サーシャ、おひさー」
 ……理沙さんの姉の、詩穂さんだったらしい。
 昼に会ったときからの余りの差が、意外というか納得というか。

「この中に一式入れといたから。着替えた服はこのロッカーに突っ込んどいて」
 そう言って見覚えのある鞄と、駅のコインロッカーのものらしいキーを渡してくれる。

「ところでトシコちゃーん。なんか忘れてないかい? ナンパ最下位の罰ゲームとか」
 と、サーシャがひょいと顔を寄せて、小声で割り込んできた。
「あーあー。あったねえ。……またの機会になんない?」

「もう帰るから、すぐ終わる簡単なので。──トシコちゃんの本名おせーて?」
 しばしの逡巡ののち、覚悟を決めて「瀬野、俊也です」と耳打ちする。
 びっくりした様子も見せずに、ニヤリと笑うサーシャ。「やっぱねえ」と顔に書いてある。

「いつから気づいてた?」
「ファミレス入る前から、ちょい怪しいなあとは思ってた。確信したのはリサの態度かな」
「ん、何の話?」
「ヒ・ミ・ツ。……名残惜しいけど。ごめんね、アタシはここで。じゃーまたー!」

 興味津々といった感じで近寄ってきた流星に投げキッスをして、皆に手を振る。
 口々に別れを惜しんでくれる声を受けながら、駅に向かって歩く。
 振り返ると、詩穂さんが僕の代わりに加わって、次の遊びに向かう様子。

 障碍者用のトイレに入り、鞄を空ける。朝着てきた通りの衣装がそこにあった。
 なかなか落ちないギャル系の化粧を、クレンジングジェルを何度も使って念入りに落とし
てさっぱりしたあと、服を脱いでそれに着替える。
 この服に袖を通すのは数ヶ月ぶりな気もするけど、実は今日の昼過ぎまで着ていたのか。

 スカートの裏地のポリエステルの肌触りを、心地よくも頼もしく感じてしまう。
 今日はもう、スカートの中を覗き見られる心配はしなくても良いみたい。
 男なら決して感じないはずの不安と、それと裏腹な不思議な安心感を面白く思う。
 簡単にリップだけの化粧をしてウィッグをかぶり、鏡の中の自分を見つめる。

 少女にしか見えないように思える、女装した僕の姿。
 それでもサーシャさんにはあっさりと見破られていた。
『女に成り切れてない、中途半端な女装』の域を抜け出すには、まだまだほど遠いらしい。

 誰からも男だと見抜かれないよう、素敵な女性としか思われぬよう。
 帰ったら、もっともっと魅力的な女の子に成り切れるよう練習しないと……そう考えたと
ころで思い出す。
 春休みの宿題、まだ終わってないや。
155 ◆fYihcWFZ.c :2014/05/30(金) 22:33:13.05 ID:FUsa5Rw/
自分の筆力や構成力の乏しさが恨めしい今回投下分。

脳内ではもっと萌えられる内容だったのに……難しいものだと思いました。今回は特に。
156名無しさん@ピンキー:2014/05/30(金) 22:44:34.02 ID:hxZROInq
いやいや、今回もいいもん読ませてもらいました。
ただ、自分で満足してないということは、今後まだまだ発展の余地があるということなので、その点には期待!ですね。
157名無しさん@ピンキー:2014/06/09(月) 20:50:16.61 ID:6nZZUbSf
総合スレってことはエロシーンもあり?
158 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/09(月) 22:13:42.40 ID:YEsILymy
『瀬野家の人々』 白の話-1 2014年3月 1/6

        <<柊久美視点>>

「ね、ね。久美、あれって式場か何かの宣伝かな?」
 春休みの夕方、待ち合わせの場所のすぐ近く。
 あまりにも目立つし、わざわざ指でさされなくても目に入ってる。

 最初はウェディングドレス姿のマネキンが、人通りも多い駅の通路上にぽつんと置かれて
るのかと思う。……けど、よくよく見ると違うぽい。
 純白の衣装はゴスロリで、それを身に付けてるのはビスクドールのようなお人形さん。

 フリルとレース満載の膝下丈のバッスルスカートとブラウスの上に、リボンがいっぱいつ
いたコルセットジャンパースカートを重ねている。
 その下から覗くタイツと靴も含めて、一式すべてが雪のような純白の衣装。
 小さな女の子が見たら目を輝かせそうな、とっても可愛らしい少女趣味な世界。

 等身大、というには少し大きい感じ。
 背が低い私たちからだと見上げる位置に、綺麗に化粧された愛くるしい顔が載っている。
 生身の人間ではあり得ない、ウェストの細さと陶器めいた白い肌が殊に目を引く。
 でもなんだかこのお人形さん、どっかで見覚えがある気がする。

 そんなことを考えたとき、そのお人形さんは私たちのほうを見て首を傾げて“きょとん”
としたあと、にっこりと笑って軽く手を振ってくる。
「朋美さん、久美さん、お久しぶりですっ☆」
 視界一面が花咲き乱れるように錯覚するほど、可憐で華やかな笑顔。

「……アキちゃん?」
 先に我に返ったお姉ちゃんが、おずおず、といった調子で尋ねてみる。
「はーい☆ アキですっ。あーん。人違いじゃなくて良かったぁ」
「うわあっ。まさかこんなところで会えるだなんて。お久しぶりですー」

『まるで生きた人間のような、精巧なお人形さん』、改め
『まるでお人形さんのような、愛くるしい美少女』に2人で近寄り、挨拶を交わしてみる。

「1年前、中華街で会っただけですよね。まさか覚えててもらえてるとか、感激ですー」
「まだあれ1年前なんですねっ。もー、何年も経った気分です」
「あのあと、愛里さんとアキちゃんがデビューしたんで、ほんとにびっくりしました」
 この綺麗すぎる3姉妹にはほんと、驚かされっぱなしなことばかり。

 一番驚いたのは、『AKI』っていう芸名で活躍中のこのアキちゃんが、お姉ちゃんと同
い年だった、という事実を知ったときかもだけど。
 最初会ったあと、『小学生なのかなぁ? 最近の小学生発育いいっていうし』なんて会話
した記憶あるのになぁ。

「あの、ひょっとしてこれって何かの撮影中だったりします?」
「そーんなことないですよっ☆ だったら声かけてないですし」
 つまりこの可愛すぎる純白のロリィタ衣装は私服なのか。
159 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/09(月) 22:14:37.14 ID:YEsILymy
『瀬野家の人々』 白の話-1 2014年3月 2/6

「これ、すっごくいい服ですね。デザインとか素敵です」
「いーですよねっ☆ 前にお仕事で行ったお店の人がプレゼントしてくれたんです」
 スカートを指先でつまみあげて、くるりと一回転してみせてくれる。
 テレビ越しでも常々思ってたけど、この人顔も表情も仕草もほんっとーに可愛すぎる。

 目のすぐ前で繰り広げられる光景に、姉妹で思いっきり見惚れてしまう。
 私は本当に、この子と同じく子宮がついてるんだろうか?
 ガサツで可愛くなくて、ちっとも女の子らしくない自分が恥ずかしくなってみたりする。

「生地もいいですねえ。……触ってみていいですか?」
「どうぞどうぞっ☆」
 おずおずと指を伸ばし、前が開いたデザインのジャンパースカートのベルベットと、その
間から覗くティアードスカートのコットンサテンの手触りを確認する。

 生地見本で憧れていたけど、実際の衣装として使われてるのは初めて見た素材。
 もっと堪能したいけど、繊細な生地を傷めそうでそっと指先を離す。
「ひょっとして久美さん、こーゆーの興味あります? 今度あるイベントなんですけど……」
 そんな私を見てたアキちゃんが、ふと気づいたようにチケットを取り出して差し出す。

「あっ、興味ありますっ! 大有りですっ! 欲しいです。……おいくらでしょう?」
 突然はしゃぐお姉ちゃんを引き寄せ、小声で会話してみる。
(お姉ちゃん、そのチケットはもう買って、うちにあるでしょ)
(何言ってるの。アキちゃんから直接買えるんだよ? 額に入れて飾るに決まってるでしょ)

 姉のミーハー心に呆れながら、「プレゼントで構いませんよ?」「そんな悪いですからき
ちんと払わせてください」なんて会話を聞き流してみたり。
「朋美さんと久美さんは、今日はどうしてこちらに?」
 しばらくそのイベントの話で盛り上がって、少し落ち着いたころアキちゃんが訊いてくる。

「えぇと、親戚の子がこちらに来るんで、その待ち合わせです」
「奇遇ですねっ☆ あたしも今お姉さまとの待ち合わせなんです」
「……わぁ。ってことはつまり、このまま待ってたらナマ悠里さんと会えるんですか?」

「こら、久美。アキちゃんのプライベートに突っ込むのは失礼でしょ」
「あっ、ぜんぜん大丈夫ですよぉ。朋美さん、お姉さまのファンでしたっけ?」
「あー、いやその」
 姉妹2人で顔を見合わせたりしてみる。

「あれから色々ありまして、今は私のほうが悠里さんのファンなんです。
 で、そのお姉ちゃんは今アキちゃんのファンだったりします」
「いや瀬野3姉妹のファンなんですよ? ……でも一番好きなのはアキちゃんかなぁ、って」
「ありがとうございますっ☆ わぁ。光栄です」

 頭を下げてぺこりとお辞儀する。そんな仕草さえとても可愛い。
 脱色ものでない、自然な淡い色の髪がさらりと零れる。天使の輪がとてもきれい。
 この人は髪も肌も、こんなにも綺麗だっただろうか?
 1年前も可愛い子だなと思ったけど、記憶にあるよりずっと素敵で華やかな少女。
160 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/09(月) 22:15:24.46 ID:YEsILymy
『瀬野家の人々』 白の話-1 2014年3月 3/6

「あ、一昨日のドラマも見ました。アキちゃんとってもとっても可愛かったです」
「わぁっ。ほんとにもう、ありがとうございすっ☆ ○○さんかっこよかったですよねえ」
「いやお姉ちゃん、主演なんかほったらかしで、『アキちゃんまた出た、アキちゃん可愛い、
アキちゃんもっと映して』ばっかりで」

 そのドラマで、私立小学校の女子制服を着て赤いランドセルを背負って、ごくごく自然に
サブヒロインの『発育の良い女子小学生』そのものに成り切っていたアキちゃん。
 実際には高校卒業したてなのに、エキストラの子役たちに普通に混じって小学校の授業風
景の撮影とか、どんな気分だったのだろう。

「あはは。ありがとー。他の生徒役の子たちから可愛がってもらった、楽しい撮影でした☆」
「けど不思議ですね。テレビの中で憧れてた人が、目のすぐ前にいるなんて」

 そんな話をしてるとき、突然「お姉さまっ☆」とアキちゃんが手を振り始める。
 あたりの空気が光放つように錯覚するほど、とっても眩しい純粋な笑顔。
「アキちゃん、待たせちゃってごめんね。こちらの人は?」
 現れたのは、黒いジーンズ姿のとっても“きれい”な男の人。

「瀬野……君?」
「お姉さま、お仕事お疲れさまです。以前、お姉さまも一緒に会いましたよね?
 俊也さんのクラスメイトの柊朋美さんと、その妹の久美さんです」
「ああ、なるほど。こんな格好でごめんなさい。俊也じゃなくて悠里です。残念だったかな?」

 なんで一目で分からなかったんだろう?
 テレビで何度も見た通りの、いやそれよりはるかに美少年すぎる、瀬野悠里さんの男装姿。
「わ、わ、わ。ゆーりさんだ。ゆーりさんだ」
 我ながら意味不明すぎる感動の言葉を、でも穏やかな笑顔で受け止めてくれたりもする。

「──ドラマずっと見てました。最終回とか、意外過ぎてびっくりでした」
 やっと頭に浮かんで口にしたのは、この間最終回を迎えたばかりの連続ドラマ。悠里さん
が演じた主人公のライバルはあまりに魅力的で、クラスでも大人気だったのを思い出す。
「ありがとう。感想もらえるのは嬉しいな」

「実はですね、お姉さまはあれ、うちでは不本意だ、ってずっとこぼしてたんですよ」
「もう、アキちゃん。それ他の人に言わないでもいいでしょうに」
「『誰が見ても嫌な女』って役だったのに、人気出ちゃって。
 脚本も途中から予定と随分変わってしまって申し訳ない、っとかなんとか」

「「へぇ〜」」
「そうなの。私は指定された役すら演じられないんだなあ、って実は少し凹んでるの。
 ……って、ごめんね。こんな愚痴めいたこと言って」
「いや、そういう裏話、とっても面白いです」

 「これから事務所に行くからごめんなさいね」と謝りつつ、立ち去っていく2人。
 ドレスを纏ったビスクドールのような、童話のお姫様のようなアキちゃんと、すらりと細
身の王子様のような悠里さん。素敵な新郎新婦のようにも見える。
 ここがキャットウォークの上であるかのように、優美に歩く後ろ姿に見惚れる。
161 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/09(月) 22:16:19.41 ID:YEsILymy
『瀬野家の人々』 白の話-1 2014年3月 4/6

「ごっめーん。待たせちゃったね」
「理沙ちゃん、遅ーい。時間通り来たら悠里さんとアキちゃん見れたのに、もったいない」
「え? ユーリ……ってどのユーリ?」
「モデルの瀬野悠里さんと、その妹さんの瀬野アキちゃん。知らない?」

 待ち合わせ時刻から遅れて登場した、従姉の杉本理沙ちゃん。
 何年か前までギャルをしていて、『もう卒業したからー』と今は普通の女の子の格好して
るけど、言動からは正直ギャルがあんまり抜けてないと思う。
「あー。“その”悠里かぁ。……まぁいっか。今更顔会わせてもしゃーないし」

「え? ひょっとして知り合いとか?」
「昔、アタシこっちに住んでたのは覚えてるよね? その頃のクラスメイトなんだ」
「へぇー。そんな偶然てあるんだ。悠里さんの弟さんに俊也君て人がいて、わたし中学高校
と同じ学校だったの。クラスメイトになったのも何回かあったり」

「俊也、かぁ。まさかこんなとこであいつの名前がでるとはねぇ。そういえば悠里には聞い
てみたかったんだよな。愛里って実は女装した俊也じゃないんかって」
「いーや、瀬野君と愛里さんは別の人よ? ねー、久美」
「そっかあ。考えすぎかぁ。……ま、立ち話もなんだし、飯食いに行かない? 腹減った」


「もうかなり前だけどさ、俊也君にギャルの格好させて一緒に遊んだことあったんだ」
 食事のオーダーを済ませたあと、理沙ちゃんが話を再開した。
「それ、女装ってこと?」
「そゆこと。下着までばっちり女の服着せてさ、メイクしてウィッグかぶせて」

「瀬野君、あんなに女装いやがってたのに、そんなことしてたんだ」
「そんときゃ、大喜びで女装してたけどな? すんげーノリノリだったし。でもまあ、あれ
5年くらい前だっけ? さすがに今は男らしくなって女装も似合わなくなってるよな」

「そんなことぜんぜん。文化祭でわたしたち男女逆転メイド・執事喫茶やって」
「ほんで俊也がメイド服着て似合ってたって話?」
「いやそれは嫌がって、結局他の女の子たちに混じって執事の格好してたんだけど」
「す……っごい美人だったよねえ、口紅引いただけなのに。その時の写メ、残してたはず」

 スマホを取り出して、文化祭に遊びに行って撮った写メを見せてみる。
「ぶっ、すごいな。今でも悠里と同じ顔なんだ。この隣の子、可哀そうなくらい引き立て役」
「一応、その子がその年のミスコン優勝者なんだけどね」
「なんだろうね。こーゆーの見てると、性別ってナニ? って気になるよね」

 その後もひとしきり文化祭の時の話で盛り上がって、俊也さんがギャルになった日の話に
戻ってくる。
「その日会ったメンツ、そういえばそのあとちょいちょい遊ぶ仲になったんだよなあ。
 流星あたりからは散々せっつかれたけど、俊也はそのあと結局1回も来なかったっけ」

 そう言って語り始めた理沙ちゃんが話し始めた内容は、とても信じられないようなことば
かりで、あまりに日常的で非日常的な冒険譚に、すっかり引き込まれる私たちがいた。
162 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/09(月) 22:17:15.76 ID:YEsILymy
『瀬野家の人々』 白の話-1 2014年5月 5/6

「詩穂さん、結婚おめでとうございます」
「ありがとう、久美ちゃん」
 それからあっと言う間に時間が過ぎて、アキちゃんからチケットを買ったイベントの当日。
 待ち合わせの喫茶店、従姉の詩穂さんと、その婚約者の西原雄一郎さんと挨拶を交わす。

 詩穂さんの恋人としては知ってたけど、結婚が本決まりになってからは初めての顔合わせ。
「朋美ちゃん、こんな素敵なイベント紹介してもらってありがとう。
 詩穂が着るウェディングドレス、どんなのがいいか迷ってたから、ちょうど良かった」
 小柄で細身、社会人なのに『美少年』って感じの雄一郎さんが穏やかに笑いながら言う。

 でも前の理沙ちゃんの言葉が本当なら、この人が“ユウコ”なわけで。
 思わずじっと見つめてしまったりもする。
 確かに色白で肌も髪も綺麗で睫毛も長い。今まではそういう目で見たことはないけど、確
かに女装すればそうとうな美人になりそうな気もしてくる。

「遅れてごっめーん」
 予想してたよりはやや早めに、時間にルーズなあの人が到着。
 後ろにもう一人、やたらに細身の知らないお姉さんが付いてきている。
「おー、詩穂に雄一郎か。むちゃ久しぶりー。この子らが話してた従妹たち?」

 緊張感をほぐすような柔らかな笑顔で、そのお姉さんが話しかけてくる。
「うん、こっちが朋美でこっちが久美、アタシらの従妹。で、こちらが前話したサーシャね」
「どもっ、初めましてサーシャっす。お邪魔してごめんね。ほんでこれが、ご依頼の品」
「……わっ、サーシャさんやめてください。勘弁してください」

 彼女が差し出したタブレットの画面を、雄一郎さんが軽く悲鳴を上げて手で覆い隠す。
「あら、これから私たちみんな身内になるんだから、隠し事はなしにしましょうね?」
「そーそー♪ ほい、こっちもあるから」
 理沙ちゃんが紙袋からプリクラを取り出して、私たちに手渡す。

 今となっては少し懐かしい、ギャル系の格好をした理沙ちゃん。
 その隣に、少し拗ねたような表情で、色っぽい系のすんごい美人が写っている。
 恥ずかしそうに目を背ける雄一郎さんと、写真の中の女性の間で視線を往復させてしまう。
 確かに面影がある。でもとてもこれが男とは信じられないくらいの、見事な美女ぶり。

「いやこれはね、理沙ちゃんとかに無理やり女装させられて……軽蔑した?」
「軽蔑、ってなんでです? こんな美人になれるだなんて、尊敬しちゃいます」
「……そ、そうなの?」

 お姉ちゃんの言葉に目をぱちくりさせる雄一郎さんの手をのけ、タブレットを鑑賞する。
 どこかやや暗い室内で撮った集合写真。8人の男女がポーズを取って写ってる。
「アタシとサーシャは分かるよね? で、これがユウコで、こっちがトシコちゃん」
 理沙ちゃんの指先にいる、豹柄の服を着てギャル系の濃い目の化粧をした金髪の超美少女。

 駅前に一人で立ってたら、3秒でスカウトが飛んで来たという武勇伝も今なら良く分かる。
 悠里さんを若くして、ギャルの格好を着せたらちょうどこんな感じになるんだろうか。
 これが本当は男の人なんて──そう思うと、なぜか胸がドキドキしてくるのを覚える。
163 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/09(月) 22:18:54.11 ID:YEsILymy
『瀬野家の人々』 白の話-1 2014年5月 6/6

 女性(?)陣の話や、ギャル女装俊也さんのプリクラで盛り上がったあと、男性陣の話へ。
「これが京介。ユウコが男って知って人間不信になりかかったけど、今は通ってた剣道場の
娘さんを恋人にしてリア充やってる。大学院卒業したら結婚って言ってたっけ」

「このでかいのがヨッシー。家業の酒屋継いでたよね。でこの眼鏡……誰だっけ?」
「覚えてねーんかい。直樹だよ。『仕事辞めたい』ってメールは時々来るけど、『辞めた』っ
て話は聞いてないからまだSEのまんまじゃないかな。んでラストのこいつが……」
「うわ、すっげー奇遇。なんでお前らこんなとこいるん?」

 そこまで話が進んだとき、伝票を持った軽そうな男性が声をかけてきた。
「『噂をすれば影』すぎっだろ……こいつが流星。最後の1人」
「こっちがアタシらの従妹の朋美に久美。似てるのは身長くらい、ってよく言われるけど」
「初めまして久美です。お噂はかねがね」「朋美です」

「やぁ、初めまして。アカギ・リューセイっす。ユーイチは今日はユウコしてないんだね」
「もう結婚ですから、流石にそういうのは止めますよ」
「……あら、『誰と』結婚すると思ってるのかなー? 休日はユウコになってもらうからね」
 「勘弁してよ」と雄一郎さんは言うけれど、言葉とは裏腹の表情で色々分かってしまう。
 ゴチソウサマです。

「まー、色々話したいことあるけどさ、オレそろそろ用事あっからメンゴな」
「あらこんな時間。私らも行かないと……ひょっとして同じ目的?」
 詩穂さんが見せたチケットに、「あー、それそれ」と頷く流星さん。
 結局会場まで移動しながら会話を続けることに。

「けど珍しいよね? 男1人で来るようなイベントじゃないっしょ」
「トシコちゃんが出るんだもん。可能な限り押さえるよ」
「アンタまだフリーターよね? よく金続くよね」

「トシコちゃん……ですか?」
「うん。さっきあの写真見てたってことは、教えてもらってるよね?
 セノ・アイリって芸名で、今回のイベントにも参加してるの。知らないかな?」

 トシコちゃん=俊也さんは男の人で、愛里さんはよく似てるけど女の人だから別人。
 流星さんはそのことをまだ知らないんだろうか? 教えたほうがいいのか悩んでみる。
 ……そういえば雄一郎さんのほうは、トシコさんの正体は知ってるんだろうか?
 さっきの話ぶりだと、サーシャさんは知ってたようだけど。

 少し興味が湧いてきて、少し後ろのほうで歩いていたグループに合流して、雄一郎さんに
こそこそ質問してみる。
「うん? それは一応知ってる……その日の夜に教えてもらってね。とても信じられなかっ
たし、世界の終わりみたいな気分がしたよ。正直、今でも半信半疑」

「雄一郎さんもあれだけ綺麗に女装してたのに?」
「写真だとそれなりに見えるかもしれないけど、断然レベルが違うから。
 流星さん、初日からボクを男と見抜いてたけど、今でもトシコさんは女の人だと信じてる
わけだしね」
164 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/09(月) 22:27:28.63 ID:YEsILymy
アキちゃん成分が恋しくなってきたので、少し寄り道して現在の話を投下です。
ついでに割とお気に入りになってしまった、八○○編メンバーの『その後』も交え気味で。

>>157
「『俊也の場合』シリーズにそのうちエロシーンが出てくるか?」という疑問なら、シーンE
くらいに出てくるんじゃないかなあ、と考えているところです。

「自分がエロシーンのある作品を投下してもいいか?」って疑問なら……エロシーンのな
い話を長々と引っ張ってすいません。エロシーンがある作品のほうが普通なハズなんです。
ここはエロパロ板ですから、もちろんウェルカムです。
165名無しさん@ピンキー:2014/06/09(月) 23:15:50.45 ID:HtnRLvU6
うは、なんかまた面白そうな展開になりそうですよ〜♪
166名無しさん@ピンキー:2014/06/22(日) 20:31:47.34 ID:XnmAwlVd
167 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/26(木) 21:33:17.37 ID:qqZj174t
『瀬野家の人々』 白の話-2 2014年5月 1/6

 ほぼ満席のイベント会場。
 チケットの関係上、みんなとはバラバラになって、お姉ちゃんと2人で席に着く。
 テンポのよい諸注意とオープニングイベントを挟んで、いよいよ舞台の始まり、始まり。

 一番手として、プリンセスラインのウェディングドレスを纏った“その人”が現れると、
会場が歓声にどっと沸く。
 一拍遅れて名前がアナウンスされるけど、そんなものなくても知っている。
 日本で今、たぶん一番有名なモデルさん。

 つけてるイヤリングを除けば白一色の、でもあまりに豪奢すぎるドレス。
 リズミカルに、でも優美に歩みを進める姿に、全会場が惹きつけられるのが分かる。
「あのイヤリング、ピジョンブラッドかなあ。本物だよね。綺麗だなあ」
 ──若干一名すぐ隣に、周囲と違う注目してる人物がいるけれど。

 大きなスカートをふんわりと膨らませ、くるりと回ってポージング。
 続いて彼女よりは知名度が少し下がるけど、やっぱり有名なモデルさんが登場する。
 テレビや雑誌やカタログで見慣れた方々。でも間近でみる実物はやっぱり輝きが違う。
 勇気を出して良かったと思う。

 彼女も纏うのもまた、華やかなプリンセスラインのドレス。
 大きく大きく広がったティアードスカートが印象的。
 トップの人と同じく、彼女自身がプロデュースする専門のドレスのブランドを既に持って
るだけあって、やっぱり手慣れた感じがする。

 そのあとも続々と登場するモデルさんたち。
 知名度の高い低いはあるけれど、どの人も素敵すぎて目が離せる瞬間がない。

 これは、モデルさんたち本人がデザインしたドレスを纏って登場する、ウェディングドレ
スのファッションショー。
 皆それぞれに眩くて、瞬きするのも忘れてしまいそう。

 全体に『女の子の夢』を具現化したような、プリンセスラインのドレスが多め。
 ありがちなだったり、逆に奇をてらいすぎてたりするのもあるけど、それもまた愛嬌。

 すっ、と、舞台の両袖から2人同時に登場し、真ん中に歩み寄って軽く手を合わせる。
 (個人的に)待ちに待った悠里&愛里さんの出番。本日の私的メインイベント。
 一旦手を離し、くるりと回って前のモデルさんの道を開けたあと、再び並んで舞台の上2
人で歩き始める。

 スレンダーに近いAラインの、アシンメトリーのウェディングドレス。
 飾りのほとんどない、シンプルなデザイン。それだけにドレスそのもののラインの良さと、
着てる人のスタイルの良さが際立って見える。
 他の多くのモデルさんたちと比べてさえ、際立って見事なスタイルの良さが。

 歩みを進めるたびに、背中にかかる艶やかなエクステが優しく揺れ、かぶったお揃いの控
えめなティアラが煌めきを放つ。
168 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/26(木) 21:35:10.44 ID:qqZj174t
『瀬野家の人々』 白の話-2 2014年5月 2/6

 「俊也君は男だよ」とお姉ちゃんは言い、「トシコの正体は、俊也君」と理沙ちゃんは言
い、「瀬野愛里って、トシコちゃんの芸名だから」と流星さんは言う。
 3つとも正しいなら愛里さんは男なわけだけど、これがもし男なら世の中の女の8割以上
は女性失格だろう。それほどまでに女性美そのものの姿、女性美そのものの動作。

 片方は右肩を出した、もう片方は左肩を出したワンショルダー。
 唯一の飾りのスカートのドレープも、右下がりと左下がりの対称形。
 スカートの長さが大きく違って、片方はミニ丈でもう片方がマキシ丈だけど、上半身だけ
見れば、髪飾り含めて完全に鏡写しの状態。

 顔もスタイルもまったく同じ双子の美少女。
 鏡の世界に紛れ込んでしまったような幻想的で見事な光景を、息を呑んで感動することし
かできない。
 どっちが悠里さんで、どっちが愛里さんだか区別できない自分が少し恥ずかしいけれど。

 柔らかなアイボリーホワイトのウェディングドレスをまとって、見事に鏡写しのタイミン
グでウォーキングしながらキャットウォークを進んでいく。
 スカートを膨らませて、これまた完璧に息の合ったタイミングでくるりとターン。
 優雅に、優美に、華やかに。周囲に笑顔と光芒を放ちながら歩みを進める。

 そのたびに、一つの動作ごとに、異なる姿を見せていく清らかなドレス。
 背中のラインもとても綺麗で、飾りもないのにすごく素敵に見える。
 次のモデルさんに道を譲ったあと、てのひら同士を合わせてカーテシー。
 舞台袖に消えたところで、自分が本当に息を忘れていたことに気が付いて大きく息をする。

「やっぱ、すっごかったねー」
「綺麗だったねー。ね、わたしもあのドレス着たら素敵になれるのかな?」
「……お姉ちゃんには無理っしょ」

 そう答えたけれど、そう言いたくなる気持ちは良く分かる。
 なぜって、私自身それとまったく同じことを考えてしまっていたんだもの。
 でも、宝石フェチでドレスにあまり興味のないお姉ちゃん(私とちょうど反対だ)にそん
なことを思わせてしまうだなんて、悠里さんたちは流石だと思う。

 それから何人かのモデルさんたちが登場していく。
 ここらへんは、テレビでは見かけることのない、女性誌によく出る人たちが多い。
 今まで雑誌やネットで憧れていることしか出来なかった華やかなドレス。
 それがすぐ近くで見られる至福の時間に感謝する。

「あ、あ、あ、……アキちゃーんっ!」
 と、周囲の迷惑も顧みず、手をぶんぶん振り回し始めるお姉ちゃん。
 「ちょ、勘弁して」と囁いて無理やり腕を降ろさせる。

 舞台の上に目を戻す。
 熱気渦巻く会場。その中をふっと涼やかな風が吹き抜ける。そんな錯覚がする。
 キャットウォークの上でアキちゃんが、歩くというより躍るような足取りで進んでる。
 まるで空中の見えない足場でステップを踏んでるような、軽やかな動き。
169 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/26(木) 21:36:38.16 ID:qqZj174t
『瀬野家の人々』 白の話-2 2014年5月 3/6

 ドレスというよりバレェのチュチュを思わせる、プリンセスラインでミニのシルエット。
 スカートに大きく付けられた、それ以外にもそこかしらにある、雪の結晶を模したビーズ
の飾りが特に目を惹く。背中の大きな大きなリボンが妖精の翅のよう。

 アキちゃんが舞台の上で、くるり、くるりと舞う。
 そのたびにキラキラと光る、ふわりと広がる新雪のような真白のドレス。
 ベアトップでむき出しになった肩から腕の白さも相まって、その姿は完全に『雪の妖精』。

「アキちゃーんっ!」
 もっとずっと見惚れていたかったのに、すぐ斜め前、やたらに身体の大きい男性2人組の
うちの1人が大きな声で叫んで、意識が中断される。

 その声に反応したのか、アキちゃんが彼らのほうを振り向く。
 少し動きが止まり、恋する人に偶然出会った乙女のような表情になる可憐すぎる花嫁さん。
 でもすぐに以前の笑顔に戻って、躍るような歩みを再開する。
 他の観客はひょっとしたら気付かなかったかもしれない、ほんの一瞬の出来事。

 でもアキちゃんがあんな表情をするとは。
 そんな顔をさせた男2人に、興味が湧いてみたりもする。
 と。アキちゃんがそこからちょっと視線を動かして、ちょうど私たちが座ってる方向へにっ
こりウィンクを決めて小さく手を振る。

「かぁ──────いいっよぉっ! アキちゃーんっ!!!」
 それに気づいたのか、また手をぶんぶん振り始めるお姉ちゃん。
 今度は止める気にもなれない。だって、私も同じことをしてるから。

 彼らと違って私たち目立たないし、きっと私に近い場所に他の知り合いを見ただけだろう。
 他の客に邪魔だから止めなさい。そう思うけど止まらない。
 そんな私たちに多分気づくこともなくステップを進め、キャットウォークの端で2回転半。

 ステップするたびに、腕を動かすたびに、回るたびに、ドレスのスカートが、背中のリボ
ンが、雪を模した飾りが、さまざまな表情を見せる。
 いつの間にか、アキちゃん本人よりそのドレスにすっかり魅了されてしまってる私。

 最後に大きく一礼をして、軽やかな動きのまま舞台袖に消えていくアキちゃん。
「かっっわいかった──────」「すっごかった────────」
 大きく息をしたあと、2人同時に声をあげる。
 今のがほんの1分くらいの出来事だと気付いてびっくりする。

 お姉ちゃんはまだ興奮した様子で話しかけてくるけど、私はもう次の人のドレスに夢中。
 へそ出しのウェディングドレスってすごいなあ。スタイルいいっていいなあ。私が着たら
悲惨な状態になるんだろうなあ。そんな感じでもう頭いっぱい。

 それからまた何人かのモデルさんが登場して、オオトリに『現役モデルのウェディングド
レスプロデューサー』の世界での大御所と言っていいあの人が登場。
 これは新作だろうか? 華やかで、可憐で、飾り一杯なのに洗練された感じのするプリン
セスラインのドレス。今まで写真だけで憧れていた存在。それがこんなにも近くにいる。
170 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/26(木) 21:38:04.94 ID:qqZj174t
『瀬野家の人々』 白の話-2 2014年5月 4/6

 トップに戻って、最初の超有名モデルさんが、今度はカラードレス姿で登場する。
 続いて登場する、煌びやかなカラードレス姿の美人モデルさんたち。
 プロのデザイナーさんからは出てこなさそうなドレスもあって、なかなか目が離せない。
 十二単モチーフのドレスとか特に圧巻だと思ってしまう。

 そして出てくるこのお二方。悠里さんと愛里さんの登場。
 アメリカンスリーブでスレンダーライン、レイヴン色とカーマインレッドのカラードレス。
 チャイナドレスをモチーフにしたドレスで、それぞれ右と左に深いスリットが入っている。
 ほとんど腰まで覗く、長すぎるほどに長い美脚がなまめかしい。

「うわっ、懐かしいなぁ。もう」
 隣でお姉ちゃんがはしゃぐけど、私たちにとってこの取り合わせは特別な意味を持ってる。
 去年悠里さんたちと初めて出会ったときの、チャイナドレス姿を眩しく思い出す。

 あの時よりも、より身体のラインをはっきりと映し出すシルエット。
 そのあまりの見事さに、ただただため息をつくことしかできない。
 丸見え状態の、肩から指先までのほっそりとしたラインの美しいこと。
 笑顔と手振りを交えながら、颯爽とキャットウォークを歩いていく。

 滑らかで自然体なのに、とっても華やかでどこか色っぽい、『女体美』という言葉を形に
したようなその姿、その動作。
 高校1年で読者モデルとしてデビューして以来、中性的な美貌の持ち主として人気のあっ
た悠里さん(と、彼女と時々入れ替わっていたという愛里さん)。

 それから5年、20歳を過ぎた今、女としての魅力を発現しつつある。
 セクシーな衣装も相まって、2人の間から流れ出る女の色香に頭がくらくらしてきそう。
 でもこれで悠里さんが男装すると、美少年そのものに見えるのだから不思議だと思う。

 ──と、ターンして戻る復路、黒いドレスを着たほうとばっちり目が合う。
 ばっちりウィンクを決めて、軽く手を振ってそのまま進む悠里さんか愛里さんかどっちか。
「きゃ──────っ! ゆーりさーん! ……ね、今のウィンク、わたしたちにだよね」
 お姉ちゃんはどっちが悠里さんか分かるんだろうか。あとで聞かなきゃ。

 でもあのドレス、私が着たらどんな感じになるんだろう? 頭の中でイメージしてみる。
 案外良さそう、と思ってしまったけど、これは悠里さん&愛里さんの魅力のなせる技か。

 『瀬野悠里』名義で、悠里さんと愛里さんが2人一役で読者モデルをしてる雑誌のバック
ナンバー。
 集めて何度も眺めたものだけど、「私もこんな服着たいなあ」と何度思わされたことか。
 まあ、真面目にやったら金が幾らあっても足りないけど。

 その悠里さんたちが舞台袖に消え、また数人のモデルさんたちが通り過ぎたあと、アキちゃ
んの2回目の登場になる。

 幾度となく眺めた、ドレスの歴史の本を思い出す。
 他の『童話のお姫さまのような』ドレスとは少し違う、本格的なクリノリン・スタイル。
 淡いシャンパン・ゴールドの豪奢なドレスは、月の光がそのまま衣装に化ったよう。
171 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/26(木) 21:39:10.76 ID:qqZj174t
『瀬野家の人々』 白の話-2 2014年5月 5/6

 ついさっきのの可憐な様子とは違う、気品と威厳に満ち溢れた『月の女王』のような姿。
 この前女子小学生の役を演じたのがこの人かと、信じられない思いがする。

 凛として、媚びるところのない気高い微笑みを浮かべたままで、しずしずと舞台を進ん
でいくアキちゃん。キャットウォークの端でくるりと回る様子も圧巻だ。

 大きく膨らんだプリンセスラインのドレスが多めの、このブライダルファッションショー。
 その中でもこのドレスのスカート部は特に大きくて、ほかの人の1.5倍はありそう。
 布の量も飾りも多くて重そうな衣装なのに、優雅に優美に歩みを進める。

 ドレスの色合いに、大きく開いた肩の白さも相まって、内側から光を放つよう。
 洋風の衣装なのに、『かぐや姫』なんて言葉を思い浮かべてしまう。
 舞台そでに消えた瞬間、なぜか素敵な物語を読み終えたときのような感傷を覚えてしまう。

 その後もショーが進行し、再びトップに戻ってまた純白のウェディングドレスを披露する。
 今度は舞台そでに消えるのではなく、前の舞台の端から順に並んで、笑顔で待機。
 キャットウォークも素敵、前の舞台も素敵。ああ、どっちを眺めていようかと無駄に葛藤
をしている私をよそに、再び悠里さんたちの登場になる。

 前回は中洋折衷スタイルだったのが、今度は和洋折衷スタイルのドレス。
 少し引きずるスレンダーラインのスカートに、胸高に結んだ和服のような太い帯。
 襟元も斜めに流れる和装そのもので、透けるオーガンジー素材の長い袖が、風に揺れる。

 全体的に白無垢そのもののスタイルなのに、足取りは軽やかで、第一印象よりもずっとは
るかに動きやすくて着てて楽そうだ。
 左前にならないようって配慮だろうか、今回ばかりは左右対称のスタイルじゃない。
 一瞬目を離した瞬間に入れ替わっていても気づかなさそうな、完全一致の瓜二つの姿。

 薄い、長いショールを天の羽衣のように肩に羽織り、風に遊ばせるようになびかせながら、
キャットウォークの上歩みを進めていく。
 背中にはご丁寧に、帯の揚羽蝶結びみたいな形の大きなリボン飾りまでついている。
 くるりと回る様子も軽やかで危なげがない。本当の白無垢なら出来なそうな仕草。

 なんというか、美しさが完成されすぎていて言葉もない。
 私はこの人に2回も直接会って会話を交わしたことがあるんだと、そんなことすら一生の
語り草にしてしてしまいそう。
 キャットウォークを渡り終え前の舞台につき、左右に別れてポーズを決めてすらりと立つ。

 もうとっくに次の人が出てるのに、その時になってやっと声が出るようになって「悠里さー
んっ! 愛里さーんっ!」と叫んでしまう。
 周りの皆さん、次のモデルさん、本当にごめんなさい。でも止まらない。
 やっと落ち着いて、しばらく他のモデルさんたちやそのドレスに見惚れる。

「順番から言えば、次がアキちゃんだよね。……雪、月、ってことは最後は花?」
 と、お姉ちゃんの言葉に我に返る。うん、順番に変更がなければそうなはず。
 今歩いてるモデルさんも十分素敵なんだけど、でもアキちゃんが出てくるはずの舞台袖の
ほうを注視してしまう。
172 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/26(木) 21:40:14.81 ID:qqZj174t
『瀬野家の人々』 白の話-2 2014年5月 6/6

 充分心構えをしてもしてたはずなのに、でも。
「うわあっ」
 いざ登場してみると、また言葉を失ってしまう。

 さっきの月のドレスよりも更にボリュームのある、思いっきり広がったスカート。
 布でできた大輪の薔薇の造花が至る所に散りばめられたそれは、何枚にも重なるオーガン
ジーで出来ていて、歩みを進めるたびに大きく、大きく、優雅に揺れる。
 こちらにも花の香りが届いてきそうな、そんな錯覚までしてしまう。

 前の2回よりも、アキちゃんの細いウェストを強調するデザイン。
 スカート部との対比もあって、中に内臓が入ってるのか本気で疑いたくなるレベル。
 背中はコルセットのような編み上げになってて、女らしく優美な背中のラインを演出する。
 もし私が男で、彼女のようなお嫁さんをもらえたなら。それはどんなに素敵なことだろう。

 上半身はビスチェタイプで、ウェディングドレスの白と比べてさえなお白く見えるアキちゃ
んの白い肌を惜しげもなく披露している。
 右胸には大きな薔薇の造花をつけ、アップに纏めた淡い色の髪にも造花を飾り、肘上まで
のグローブが覆う細い腕には、これは本物の白薔薇のブーケを掲げている。

 気品があり、優雅で、でもさっきよりも若々しく、華やかで、可憐で、女らしく。
 柔らかな笑顔を浮かべ、優しく手を振りながらゆっくりと進むその姿はまさしくお姫様。
 『白薔薇の姫』『花の王女』──そんな言葉が、自然と浮かんでくる。

 『職人さんって、ほんっとーに凄いんですよ。
 あたしがボンノー全開にして描いたデザイン、形にしちゃうんですもの』
 はにかんだ笑顔で、きらきらした瞳で、興奮した声で語ってくれた、前にあったときのア
キちゃんを思い出す。

 前の2つのドレスも素敵だったけど、その言葉が“この”ドレスを指してたのは分かる。
 圧倒的な存在感。白の煌めき。まるで光そのものを纏っているよう。
 ステージを歩き終わり、前の舞台でポーズを決める。
 今まで呼吸することを完璧に忘れたことに気づいて、少しむせてしまったりもする。

 その後もまだまだ素敵な舞台は続き、最後にモデルさん全員が前の舞台、ずらりと並ぶ。
 純白だったり、アイボリーホワイトだったり、スノーホワイトだったり、パールホワイト
だったり、白にも色々種類があるけれど、見渡す限り白、白、白の世界。
 なんてきれいなんだろう。なんて素敵なんだろう。

 いつの間にか涙が出てきていた。
 それほどまでにすばらしすぎる舞台。
 日本でも指折りの美女たちが並ぶステージ。
 女性美の極致である白のウェディングドレスを煌びやかに纏って。

 この場に、知り合い(というほどでもないけど)が3人もいるとか、なんて奇跡だろう。
 全員そろってのお辞儀に、会場全体に割れんばかりの拍手が鳴り響く。
 私もお姉ちゃんも、大声で3人の名前を叫びつつ、あたりが静まるまでずっと拍手を続け
ていた。
173 ◆fYihcWFZ.c :2014/06/26(木) 21:41:26.38 ID:qqZj174t
「だが、男だ」って突っ込んでくれる人がいないと辛いところです。
読者の皆様、脳内で補完お願いいたします、ということで。
174名無しさん@ピンキー:2014/06/26(木) 22:09:24.83 ID:bBJIAZ8I
ええぞええぞ〜もっとやれ!(違
175 ◆fYihcWFZ.c :2014/07/05(土) 13:15:51.89 ID:U7LNK44f
『瀬野家の人々』 白の話-3 2014年6月 1/7

        <<西原雄一郎視点>>

 朝風呂を済ませて鏡台の前に座り、深呼吸をする。
 結婚より一足先に越してきた新居。
 築20年だけどウォークインクローゼットが充実してる、詩穂一押しだった物件。

 鏡の中の自分を見つめる。
 女ものの淡いピンクのガウンを着た、男とも女ともつかぬボクがいる。
 きちんと揃えて、斜めに流れる脱毛済みの白い細い脚。
 最近通わされ始めたブライダルエステの効用も相まって、とても綺麗に見える。

 化粧水を染み込ませたコットンパックをはがしてから1分少し。
 美容液を手に取り、顔全体になじませる。
 乳液を掌の上に少し置いたあと、指の腹でマッサージするように伸ばしていく。
 顔の脱毛も済ませた、滑らかな肌の感触が心地いい。馴染むのを待つ間に、髪を乾かす。

 とはいえここまでは、大学に行くときもやっていた、会社に行くときもやっている日課。
 「西原君って肌、綺麗だよね。手入れとかしてる?」「いや、そんなの全然してないです」
 「嘘でしょ。化粧のCMに出てそうな美人肌なのに。反則すぎ。羨ましい」
 今まで何度も交わした会話。でももちろん、そんなことがあるはずはない。

 日焼け止め成分入りの化粧下地を指先にとって、薄く均一に伸ばしていく。
 ここから先が、女装の始まり。
 世の男性には閉ざされた『女の世界』への扉を、裏口からそっと開くための儀式。
 衰えることない陶酔感に包まれながら、ティッシュを肌に乗せてそっと上から押さえる。

 いつからボクは、こんなに女装が好きになったのだろう?
 それが『あの日』だということは分かってる。
 でも、それがどの瞬間かは、自分自身にとっても謎のままだ。
 2種類のリキッドファンデを手の甲で混ぜ、顔全体に付けたあと掌で包んでなじませる。

 “トシコちゃん”が実は男と教えられ、『男でもあれだけの美少女になれるのか』と、背
中を電撃が走り抜けるようなショックを受けた瞬間なのか。
 『ユウコ』として、京介とキスをした瞬間なのか。
 『一人の女性』として、京介にナンパされた瞬間なのか。

 トシコちゃんのコーデで、完全に女性に見えるようになった自分を見た瞬間なのか。
 智恵理さんの完璧なメイクが完了し、鏡を覗き込んだ瞬間なのか。
 サーシャさんにファミレスで、「君は絶対、美人になれる」と断言された瞬間なのか。
 あるいはひょっとして、もっとずっとずっと前からなのか……

 何故だろう。今日は不思議と、色んな思いが次々と思い浮かんでくる。
 いつもなら、ほとんど無心で通り過ぎているステップなはずなのに。

 ふと気づくと、詩穂がニコニコした顔で鏡の中のボクを覗き込んでいた。
「おはよう。詩穂は準備しなくていいの?」
「おはよ。それよりもっとユウコのメイクを見てたいな。ダメ?」
176 ◆fYihcWFZ.c :2014/07/05(土) 13:16:57.82 ID:U7LNK44f
『瀬野家の人々』 白の話-3 2014年6月 2/7

 少しくすぐったい感覚を覚えながら、目の下のコンシーラーを伸ばしていく。
 正直に言えば、結婚を控えたこの彼女を、ボクが本当に愛したことはない気がする。

 男としての“雄一郎”が愛したのは、トシコちゃん一人。
 生涯で4時間しか一緒にいなかった相手。それでも魂に刻印された、ボクの初恋の人。
 女としての『ユウコ』が愛してるのは京介ひとり。
 とっくにボクが男とばれて破局になってるのに、この気持ちは捨てられそうにない。

 『それでも全然構わない』
 ──そう、あっけらかんと言ってくれるこの伴侶に、心の中で改めて感謝する。
 ファンデが完全に馴染むのを待つ間に、ウィッグ下のネットをきちんとセットする。
 スポンジでファンデの“よれ”をオフして、ルースパウダーを顔全体に乗せていく。

 いつもより少し明るめのチーク、ハイライト、シェーディングを撫でるように塗っていく。
 ……自分が『ユウコ』でいるとき、不思議なくらい性的指向は女性そのものになっている。
 京介のたくましい胸板、響く低い声、力強い大きな掌を好ましく思う。
 そのあとボクが男とばれて大変なことになったけど、未遂でもあの一夜は大切な思い出だ。

 元から男としては薄めの眉を、アイブローで丁寧に形を整える。
 ……自分がホモになったのかと、真剣に悩んだことは幾度となくあった。
 でも、自分が“雄一郎”でいるときに、男らしい男に惹かれたことは一度もない。

 今日はあえて色を抑えめに、ベージュとブラウンのアイシャドウを入れる。
 化粧前のボクは“雄一郎”という男性で、化粧のあとのわたしは『ユウコ』という女性。
 じゃあ化粧の最中の自分はナニモノなのだろう?
 男と女の間で揺らぎ続ける、自分のアイデンティティ。不思議なものだと思ってしまう。

 リキッドライナー&ペンシルライナーで、目をくっきりと。
 『男と女、どっちもイイトコ取りできるなんて、とても素敵なことだと思わない?』
 その時々で言い回しは違うけれど、何度も言われた詩穂の台詞。
 年上の彼女の言葉には、勇気づけられていることも正直多い。

 でも彼女の言葉に従うまま、『趣味としての女装』の枠を乗り越えてしまったら──
 それはあまりに甘美で、それだけに恐ろしい誘惑だった。
 ビューラーで睫毛をカールさせ、上下の睫毛にマスカラを塗る。
 いつもよりは少し控えめな長さの付けまつげを、ピンセットで付けていく。

 口紅は使わず、リップコンシーラーとリップグロスで唇の仕上げを。
 崩れ防止用のミストをスプレーしたあと、手で肌になじませる。
 鏡の中には、少し甘えた感じの可愛らしさと、色っぽさを兼ね備えた美人が座っている。

 ここからの時間、わたしはユウコ。
 意識がはっきりと切り替わっていくのを自覚する。
 地味な男性という蛹を脱ぎ捨て、誰もが振り向く美女として羽ばたく自分。
 軽い飛翔感と、陶酔感とに包まれる。

「やっぱりユウコは美人よねえ。メイクもうまいし……ね、今日は私にメイクしてくれない?」
177 ◆fYihcWFZ.c :2014/07/05(土) 13:18:30.92 ID:U7LNK44f
『瀬野家の人々』 白の話-3 2014年6月 3/7

        <<柊久美視点>>

「久美ちゃん、お待たせ。ごめんね遅れちゃって」
「いえ、大丈夫です。すいません、無理言ってお邪魔しちゃって」
 そろそろ予約の時間に間に合うかどうか心配になってきた頃合い、詩穂さんの声がしてス
マホを見ていた頭をあげて返事する。

 いつもより美人度5割マシの詩穂さん。一瞬別人かと思ったほどの変わりよう。
 そしてその隣に並んで、とっても綺麗な女性が立っている。
 花柄レースの可憐で上品な白いワンピースに、ベージュ色のリネンのジャケットを合わせ
た涼やかな姿。膝下丈のスカートからすらりと伸びる脚もとても素敵。

 初めて見るような、でもどこかで見たような、と少し考えて思い当たる。
「ゆ……雄一郎……さんですか?」
「兄の知り合いですね。初めまして、西原ユウコです」

 ウェーブのかかったショートボブの髪を揺らし、女らしい仕草で会釈をする彼女(?)。
 頭の上に『ハテナ』を並べる私に、少し悪戯っぽい表情で詩穂さんが耳打ちする。
(凄いでしょ。雄一郎、もう完全に女性に成り切っちゃってるから。
 久美ちゃんも、この人のことはユウコだと思ってあげて)

「……あっ、失礼しました。初めまして。詩穂さんの従妹で、柊久美と申します」
「あ、雄一郎や詩穂から話はよく聞いてます。どうかよろしくお願いします」
 とても女らしい笑顔で笑いかけてくる、詩穂さんの(近い将来の)旦那様。
 事前知識がなければ絶対女の人だと信じてただろうし、今でもほっぺをつねりたい気分。

 時間も押してるので、挨拶もそこそこに切り上げて移動を開始。
 UVカットのサングラスをかけ、バッグから日傘を出して歩き始める雄一郎さん。
 安産型というほどじゃないけど、豊かで上を向いた綺麗なヒップを揺らして歩く様子にみ
とれて、少し出遅れてしまったりする。

 スカートさばきも、とても自然で綺麗。
 隣で談笑しながら歩いてる詩穂さんと比べても、ずっと女らしい。
 ──『性別ってナニ? って気になるよね』っていう、理沙ちゃんの言葉を思い出す。
 これが実は男性とか、あまりに反則すぎる。

 交差点の信号待ち、ついついその美貌を見つめてしまう。
 高めのヒールを履いてるから、身長150cmない私からは見上げる形になる。でも女性として
背が高いというほどでもない。
 髭の剃り跡なんか微塵も見当たらない、滑らかな肌が羨ましい。

「ん? 久美ちゃんどうかしたの?」
 私の視線に気づいたのか、小首を傾げて聞いてくる。

 そんな声だって女性そのもの。
 雄一郎さん、普段から男性としては高めの声をしてるけど、それより高い、本当に自然な
女性そのもののトーン、女性そのもののアクセント。
178 ◆fYihcWFZ.c :2014/07/05(土) 13:19:59.03 ID:U7LNK44f
『瀬野家の人々』 白の話-3 2014年6月 4/7

「いえ、肌がきれいだなぁ、ってみとれてました」
「あら、ありがと」
 にっこり笑って答える様子も素敵。私が男なら、これ一発で落ちてしまうレベル。

「久美ちゃんも肌が若くて素敵……って言いたいところだけど、もうちょっとお肌に気を使っ
たほうがいいかな」
 雄一郎さんが私を見てそう言ったとき信号が青に変わって、そのまま並んで歩き始める。


 丁寧なアドバイスを受けつつ、そのままさほど遠くない目的地に到着。
「予約していた杉本詩穂と、西原ユウコです」
(……男の人に、肌の手入れのしかたを教わってしまった)
 受付でふと我に返って、シチュエーションの理不尽さにちょっと困惑してみる。

 案内された部屋で、スーツ姿の女性のアドバイザーさんと一緒に打合せをしたあと移動。
 白、白、白。
 たぶん何百着ものウェディングドレスが吊るされた空間。外から憧憬をもって覗き込んで
いたときとは格段に違う迫力に圧倒される。

「普通でしたらこちらでドレスを選んで頂くのですが、まず最初にご要望のあったドレスの
試着をしましょうね。
 もちろん、ピンと来なければこちらから選んでも大丈夫です」
 笑顔で案内するアドバイザーさんに従って、ドレスルームを通過する。

「式のときはこの下着の予定なんですが、着たままでいいですよね?」
「はい、もちろん」
 到着した広々としたフィッティングルーム。ピンク色の内装、シャンデリアが輝き、カー
テンで仕切られたスペースの壁は全面鏡になっている。

 今日は女性ばかり(!)ということで、カーテンは使わずにそのまま着替えを開始。
 ジャケットとワンピースを脱いで白いブライダルインナー姿になった彼?彼女?が、アド
バイザーさんと言葉を交わしている。
 店員さんは目の前にいる美女が女性であることに、少しも疑問を持ってない様子。

 まあ私だって、最初に聞いてなければ疑うことを思いつきもしなかっただろうけど。
 白いビスチェからはどうやってるのか谷間が覗いてるし、ウェストニッパーの括れは見事
ななものだし、ロングガードルの股間には膨らみも見えない。

 『ユウコさんは雄一郎さんの妹』という本人の言葉が本当で、詩穂さんや理沙ちゃんの言
葉のほうが嘘だとか。
 あるいは雄一郎さんが最初から実は男装の麗人だったというほうが、まだ理解できそう。
 とはいえ。

「うわあっ」
 スタッフさんが運んできたドレスに、すぐにそんな考えは吹っ飛んでしまう。
「久美ちゃんが一押しだったって聞いて、選んでみたの」
 その中のひとつを着せかけてもらいながら、にこやかに性別不詳の美女が声をかけてくる。
179 ◆fYihcWFZ.c :2014/07/05(土) 13:21:17.12 ID:U7LNK44f
『瀬野家の人々』 白の話-3 2014年6月 5/7

 先月あったウェディングドレス・ファッションショー。
 そこで悠里さんと愛里さんが着ていたドレスが、目の前にある。
 ここは、あのショーとタイアップしているブライダルショップ(のうち一つ)。

 モデルさんがデザインしてショーで披露したドレスをレンタルして、実際に結婚式で着用
できるという企画。
 もっとも実際にモデルさん着用したものじゃなくて、レンタル向けに調整したものだろう
けど、『憧れのドレスが目の前にある』という事実は変わらない。

 最初に愛里さんが着ていた、右肩を完全に出したアシンメトリーでマキシ丈のドレス。
 ちなみに、ショーのあと販売されてたカタログで、どっちがどっちかは確認済み。
 ショーの後お姉ちゃんに聞いたら、『だって、黒いドレスが悠里さんでしょ?』と平然と
返されたので少しずっこけたけど、黒ドレスが悠里さんだというのも正解だったみたい。

 すらりとした『ユウコさん』にそのドレスは良く似合って、まるでブライダル誌からその
まま抜け出してきたよう。
 サテンの輝きも眩い純白の、それは完璧な花嫁さん。
 微かに上気した顔で、少し驚いた表情で、鏡に映る自分の姿を確認してる。

「まあ、本当にお似合いです。とってもおきれいですよ」
 アドバイザーさんの賞賛も、お世辞ではなさそうだ。
 あらかじめ許可をもらっておいたので、スマホで何枚も写真を撮ってみる。

「私は、朋美ちゃんのお奨めもあったしAKIさんのドレスで。……ユウコのあとに披露す
るのは、ちょっと恥ずかしいけど」
 ユウコさんに遅れて、詩穂さんの着替えが終わる。

 こちらはアキちゃんの雪のドレス。
 ミニ丈のプリンセスライン。もともと小柄な人に似合うタイプのドレスなだけに、ものす
ごく似合って可愛らしい。私の知ってる詩穂さんじゃないみたい。
 2人並んだ様子を激写、激写。

「……悠里さんのドレスに、着替えさせて頂いてもいいですか?」
 鏡に映る自分たちの様子を眺めていたユウコさんが、ふと気づいたようにアドバイザーさ
んに言う。

 了承をもらって脇にあるジッパーを下ろして、上から脱いで、新しいドレスを上から被っ
てジッパーを上げる。少し慎重にしたけど1分くらいでお召し替え終了。
「こっちのドレスは、本当に着替え楽なんですね」
 さっきまでドレスの装着に手間取っていた詩穂さんが、目を丸くして驚いている。

 また2人並んで立ってみる。
 単品だと愛里さんドレスのほうが良かった気がするけど、スカート丈の関係上、こっちの
ほうがバランスが取れていて見てて感じがいい。

「お2人とも本当にお綺麗ですよ。旦那様が羨ましい。きっと旦那様も素敵なんでしょうね」
 えーっと、実は『旦那様』は今、あなたの目の前にいたりするんです……
180 ◆fYihcWFZ.c :2014/07/05(土) 13:23:06.40 ID:U7LNK44f
『瀬野家の人々』 白の話-3 2014年6月 6/7

 それから次のドレスにお召し替え。
 さっくりとドレスを脱ぎ終わり、次のドレスを受け取るユウコさん。
 予想と違って、ワンピースタイプじゃなくてツーピースタイプ。

 舞台の上、遠目では分からなかったけど、細かく鶴の刺繍が入ってるスカートを穿いて、
ベルトで丈の長さを調整する。
 ガウンのようにトップスを羽織り、襟元を少し調整したあとマジックテープになった帯で
ピタリとつける。

 白無垢の様式美と、ウェディングドレスの軽やかさ、華やかさを併せ持つ美麗なドレス。
 さっきのドレスも素敵だったけど、それも簡単に霞んでしまう。
 本当に、これが男性なんだろうか? 感動的なまでに美しい一人の花嫁さん。
 このフィッティングルームにいる、他のどの女子よりずっとずっときれいで女らしい。

 アドバイザーさんの賞賛や、私のスマホのカメラのフラッシュを浴びて、陶然とした様子
でしばらく鏡に映る自分を見つめていた雄一郎さん。
 少したって、そのままポーズを取り始める。
 どの仕草をとっても、男らしさの片鱗も見つけることができない。違和感仕事しろ。

「……これ、本当に動きやすいですし、それに着るのも簡単なんですね」
「一人でも楽に着られますしね。海外での挙式ということでしたので、特にお奨めです」
 海外での挙式では普通白無垢は無理なんですけど、これなら近いイメージで式を挙げられ
ますしね、と熱心にプッシュしてくるアドバイザーさん。

 そんな会話がだいぶ弾んだあと、詩穂さんの着替えが終わる。
 今度はアキちゃんの花のドレス。
 ただ舞台で見たものよりは随分簡略化してあって、ボリュームも普通のウェディングドレ
スレベル。まあ、あれそのままだと隣に花婿さんが立てないし、しょうがないんだろうか。

「もう、ユウコ素敵すぎ。これで並ぶ自信ないなあ」
「詩穂、そんなこと言わないで。見違えたわよ。とってもきれい」
 今度義理の姉妹になる友人同士という設定。仲良しの女友達というか、どこか百合カップ
ルっぽい様子で、でも見た目はともかく実はノーマルな新郎新婦同士でそんな会話。

 花嫁よりも、結婚相手の花婿のほうがずっと美人で女らしいって、どんな気分なんだろう。
 そう思って、花のような可憐な花嫁になった従姉の顔をじっと見てみる。
 近い将来、主人となる男性の花嫁女装姿を見詰める視線はとても熱っぽく、ご満悦そう。
 ひょっとして、こだわってる自分のほうが変なんだろうか。そんな気すらしてくる。

 ドレスの具合を確認したあと、カラードレスに着替える。
 悠里さんの、黒のチャイナ風のスレンダードレスを着たユウコさんは、やっぱり美人。
 もちろん悠里さんには及ばないけど、このままあのショーに混じっても違和感なさそう。

 身体のラインが良く出るドレス。
 くびれたウェストと上を向いたヒップのラインが、とっても魅力的。
 セクシーなのに気品がある印象。ついつい引き込まれてしまう。
 さっきとはまた少し別の意味で、反則的なまでに女らしすぎる。美人すぎる。
181 ◆fYihcWFZ.c :2014/07/05(土) 13:24:12.25 ID:U7LNK44f
『瀬野家の人々』 白の話-3 2014年6月 7/7

「ところで久美ちゃん、やっぱりドレス着てみたい?」
 その美女に、にっこりと話しかけられてドキッとしてしまう。
「いや……そんな、悪いですし」
 私、お姉ちゃんみたいに図々しくないし、この場に居られるだけでもう大満足。

 ……そう、思ったのに。
 ついさっきまで雄一郎さんが着ていた、白無垢ドレス姿で鏡の前に立っている私。
「本当はダメなので、他言しないようにしてくださいね?」
 少しいたずらっぽい笑顔で、アドバイザーさんが念を押してくる。

 雄一郎さんがつけていた香水の香りが微妙に残っている。
 私は今、さっきまで男の人が着てた服を着てるんだ。
 私は今、さっきまでこの美女が着てた服を着てるんだ。
 心の中、思いが錯綜する。

 もともと調整が効きやすいドレス、不満と言えば帯の位置が下にありすぎるくらい。
 和服ベースのシルエットは、寸胴気味の私でもきちんと似合ってる。

 胸に手を当てる。凄い勢いで心臓がバクバクいって止まる気配がない。
 鏡の中、悠里さんの素敵なドレスを纏った少女が、私の動きと同じ仕草で動く。
 本当、夢の中にいる気分。

「久美ちゃん可愛い。本当に良く似合ってる」
 と、アキちゃんの月のドレスに着替えた詩穂さんが声をかけてくる。
「……詩穂さん、すっごく素敵です」
 やっぱりスカートのボリュームは減らしてある。それでも存在感あるドレスに目を見張る。

 3人並ぶ形で立って、アドバイザーさんにスマホで記念撮影してもらったり。
 隣の雄一郎さんが美人すぎて自分の容姿に恥ずかしくなるけど、これは一生ものの宝物。

 「せっかくだから」と他のドレスも選んで試着してみたけど、結局瀬野3姉妹分のドレス
を使うことにする。
 きちんと採寸し直したり、小物を決めたり、予定を確認したりとか、細々とした事を終え
てブライダルショップを出る。今から結婚式も披露宴も楽しみで待ち遠しい。

「詩穂さん、ユウコさん、ほんっとーにありがとうございました。
 今日はご無理を言って連れてきて頂いた上に、ドレスまで着せて頂いて」
「いえ、久美ちゃんがいてくれて本当に心強かったし、ありがたかったわよ。
 素敵なドレスも紹介してもらえたし」

 サングラスの奥で、女らしくにっこりと笑って頭を下げるユウコさん。
 同性なのにみとれしまう笑顔。私もこんな素敵な女性になりたいな。
 ──自分がそう考えたことに気付いて、混乱する。

 もういいや。自分の見たままを信じよう。この人はユウコさんっていう、素敵な女性。
 そう心に決めて、出てきたブライダルショップを少し振り返ったあと、私は2人の背中を
追って街を歩き始めた。
182 ◆fYihcWFZ.c :2014/07/05(土) 13:24:56.45 ID:U7LNK44f
しまった瀬野家の人が出てきてない。
183名無しさん@ピンキー:2014/07/05(土) 23:04:58.61 ID:8FQiKndt
まあ今回は名前(とそれぞれデザインのドレス)だけということで(笑
しかしこのふたり、実際の式も疑似レズ婚でやるんですか?(何
184名無しさん@ピンキー:2014/07/06(日) 00:42:47.12 ID:72QjjA1P
途中からキャラが誰がいるのかわからなくなった。
185名無しさん@ピンキー:2014/07/06(日) 16:47:13.07 ID:s6VtzY6M
>>184
4人+αしかいないんだが。読解力ある?
186 ◆fYihcWFZ.c :2014/07/06(日) 19:33:18.86 ID:xktSRxcV
いや、たぶん私の文章力や構成力や推敲能力が低いせいと思いますです。

たとえば>>175の“智恵理さん”って、>>138のギャル系コスメショップ店員さんとその後仲良く
なったって描写のつもりだったけど、分かりにすぎだろうとかセルフ突っ込み中。

今後の参考のため、「???」ってなった箇所にアンカだけでも頂けると嬉しいです。
187名無しさん@ピンキー:2014/07/07(月) 03:41:52.58 ID:Y3dBMXsM
誤解させてすいません
1話の間のキャラクターはちゃんと把握できます。
前回読んだのがかなり前だから、この子誰だっけ状態になっちゃったって話です。
188 ◆fYihcWFZ.c :2014/07/10(木) 00:01:07.48 ID:mR0uO1d7
それもそうですね、ということでキャラクター紹介ページを作成してみました。ご参照いただければ。
http://www55.atwiki.jp/jososs/pages/198.html

他の書き手の方々は規制が厳しいんでしょうかね? 新しい作品を拝見したいところですが。
アイデアだしとか、「こんなの読みたい」とか、1レス分のショートショートとかも希望です。
189名無しさん@ピンキー:2014/07/10(木) 02:12:04.71 ID:VPh9gCXC
ラバースーツ女装とか、男女水着交換とか、細マッチョの似合わない系とか
正統派とかはじめての女装モノとか
アイデアはいくつかあるのだけど忙しくて・・・・・・

時間があれば書くのだが・・・・・・
190名無しさん@ピンキー:2014/07/10(木) 20:36:44.87 ID:XM8oh6U8
書きかけなのが一つあるが長くなりそうアンド途中で投げそうなので躊躇している。
書き始めるだけなら簡単だけど、続けるってのが難しいんだよなぁ・・・
191名無しさん@ピンキー
ここまでしていただいてありがとうございます。ずっと応援しています。