1 :
名無しさん@ピンキー:2014/01/03(金) 22:44:02.82 ID:c4BSEPlN
2 :
名無しさん@ピンキー:2014/01/03(金) 22:57:46.59 ID:c4BSEPlN
>ただし、投下前に必ず「二次創作・一時創作」「ジャンル・傾向」「何レス程度」などを記載してください。
テンプレの誤字を修正し忘れた。申し訳ない。
ひとつお願いします。
・二次創作(実況パワフルプロ野球9 はるか、あおい)
・15レス、2万文字程度
・ジャンル:盗撮、和姦
(※「赤田浩司」はスタッフの名前をもじった9主人公の名前です)
・特に見て欲しい箇所
あおい(ボクっ娘、地の文はこの子の視点)が、はるかと9主人公のカラミを映像で見る。
それと同時に、はるかのテキストメッセージを読み進める。
という込み入ったシチュが混乱を招いていないか。
●1
ボクは今、自宅マンションの一室で、自分のノートパソコンを開いている。モニタには、フォルダがひとつ。
外付けのマウスでそれをダブルクリックすると、フォルダの中が開かれて、
ナンバリングされた四本の動画ファイルと、テキストファイルがひとつ見える。
テキストのファイル名は『あおいへ』と銘打たれている。
ボクはそのアイコンに、ポインタを合わせては外し、合わせては外し、というのを、十分以上繰り返していた。
――何さ、この有り様。思春期の女子高生みたいじゃあるまいし。
このファイルたちは、ボクの親友・七瀬はるかが、ボクに手渡ししてきたディスクに保存されていたものだ。
ボクは、まだ中身を見ていないが、その内容は、はるかから聞かされている。
このファイルたちには、ボクの親友と、ボクの戦友だった男の人の情事が、記録されているらしい。
――そりゃ、ボクも、いらないとは言わなかったけど。まさかこうなるとは。
事の発端は、ボクがはるかにした相談だった。
シーズンオフのある日、ボクは、はるかと会っていた。職業の都合上、ボクは全国を飛び回っている。
なので、はるかと直接話をする機会も少なくなってしまって、
久しぶりに親友と水入らずになれたボクは、いろいろなことを話し、いろいろなことを聞いた。
その中で、ボクの恋人が話題に出てきた。
マスコミに漏れたら大事になるので、彼との関係について、ボクはほとんど誰にも話していなかった。
が、はるかには、以前に電話で少しだけ彼について話したことがあった。
『その方と、最近うまく行ってる?』なんてはるかは言ってきて、ボクは咄嗟に口籠った。
そうなるとさぁ大変。はるかはすごく心配そうな顔で、ボクのことをじっと見つめてくる。
無理に聞いてこないのが、はるからしいけれど、これは根掘り葉掘り聞かれるよりつらい。
あんなはるかの視線を浴びる方が、よっぽど内心にチクチクと刺さる。
ボクは、はるかの目に押し負けて、彼についての悩みを打ち明けた。
単刀直入に言うと、ボクは彼とどうやってセックスしたらいいのか分からない、というのが問題だった。
ボクは、初めて交際した異性が彼だったから、性的な経験は無い。知識も保健体育止まりだった。
彼はボクに輪をかけた野球狂なので、彼にリードしてもらうのも、あんまり期待できない。
かと言って、本やビデオで知識を得ようにも、ボクはプロ野球選手だから、マスコミの目を気にしないといけない。
そうそう自分で買いに行くわけにも行かないし、職場に相談できる人もいなかった。
口走ってから、ああ言っちゃったなぁ、と後悔を覚えながら、ボクははるかを見つめ返した。
はるかは難しげな表情で考え込んでいた。
はるかには、ご両親公認の交際相手がいる。
その人とは高校時代からの付き合いで、赤田くんと言って、ボクもよく知っている男の人だ。
●2
『あおいは、そういうことのやり方、知りたいの』と、はるかは小声で聞いてきた。
ボクたちは、ボクの自宅マンションに二人きりだったから、誰が盗み聞きしているわけでもないのに、
無性に周囲が憚られた。はるかは顔をうっすらと赤くしていた。
知りたくない、と言ったら、嘘になる。ボクだって、彼との関係は真剣に考えている。
しかも、ボクたちの仕事が身体が資本。できるだけ、セックスについて確かな知識を得ておきたい。
――はるかは、そういう経験があるの。
とボクが聞いてみると、はるかはコクリと頷いた。
可愛い。女のボクから見ても、まず感嘆が、後から少しの羨望が沸き上がってくる。
楚々とした風采と立ち居振る舞いは、中学時代から男子の人気の的だった。
さらにここ数年は、大人の女性の色気が入り混じってきた。ボクとは大違いだ。
『あの――赤田さん、しか、知らないけど』と、はるかは小声で答えた。
そりゃあ、そうだとは思っていたけれどさ。
ただでさえ、知人の情事について知るのは、独特のきまり悪さがあるのに、
それが知人同士となれば、ボクのきまり悪さは二倍になった。
『あおいは、そういうことのやり方、知りたいの』と、はるかは再び小声で聞いてきた。
はるかに性生活について尋ねる、ということは、赤田くんのそれをも知ることになる。
しかも、赤田くんには当然内緒で。さすがに、羞恥心に混じって罪悪感が芽生えた。
赤田くんの話になると、ボクたちはどうも、思春期の頃の心持ちに戻ってしまうみたいだ。
『私は、知っておいた方が、うまくいくと思うよ』と、はるかは続けた。
どうやらはるかは、七瀬家の教育方針によって、初体験の時点である程度の知識を持っていたらしい。
ボクの七瀬家に対するイメージが、半分くらい塗り替えられた。
ボクは、赤田くんには内緒にして欲しい、とはるかに頼んだ。
さすがに赤田くんには、ボクがセックスの知識を必要としている、とは知られたくなかった。
はるかは逡巡していた。隠し事を作る、ということに気が咎めているようだ。
ボクは、じゃあ赤田くん以外には内緒で、赤田くんについては、はるかに任せる、と言い直した。
ボクは焦燥感にかられていた。はるかは『少し考えさせて』と返した。その日、その話題はそれきりだった。
後日、はるかと少しだけ会える時間が取れた。一緒にお茶を飲んでいると、
はるかは徐に一枚のディスクをボクに渡してきた。『誰も居ないところで、イヤホンつけて見て』と囁きながら。
これは、とボクが聞くと、はるかは『私と、あの人の……』とだけ返した。ボクは内容を察した。
そのディスクを、今日ボクは自分のノートパソコンのドライブに入れた。
ボクは固唾を呑んでモニタを見守っていたが、フォルダがひとつ開いただけだった。
どうやら、データをそのままディスクにコピーしているらしい。
てっきり自動再生が始まると思っていたボクは、出鼻をくじかれた。一度固めたと思った覚悟が揺らいできた。
そうしてモニタを見回すと、フォルダの最後に、『あおいへ』と題されたテキストファイルがあることに気づいた。
アイコンをクリックすると、色が変わる。選択された状態になる。
煮え切らないボクは、ダブルクリックができない。マウスのクリック音が、やけにか細かった。
スクリーンセーバーが立ち上がる。マウスに触れて、またモニタにフォルダが映る。
そこからボクは逡巡する。またスクリーンセーバーが立ち上がる。ボクは何をやってるんだろう。
そんな膠着状態は、ボクの携帯の着信音で破られた。
彼専用に設定しておいた着信音だった。ボクはピッチャー返しよりも早く反応した。
●3
彼との電話が終わると、時間は予想以上に過ぎていた。
一日の予定が片付いてから、はるかのディスクを確認しようとしていたため、
ノートパソコン前でうだうだしていた時点で、けっこう遅い時分だった。
もうそろそろ、寝ておかないといけない時間帯だ。
彼からの電話がなかったら、ボクはこのままノートパソコンを閉じて、ベッドに入っていたと思う。
それで、ディスクの内容が気になり、寝付けない夜を過ごしたはずだ。
けれど、ボクは時計を無視して、ファイルたちを見る腹を決めた。
いくら親友のモノとはいえ、セックスの映像を見るだけでこんな調子では、本番が思いやられるから。
意を決したボクは、まずテキストファイルを読むことにした。
『あおいへ。
考えた結果、赤田さんには内緒で、この映像を渡します。
できる限り編集で短くしましたが、かなり長丁場になってしまいました。
時間に余裕のある時に見て下さい』
冒頭には、こう書かれていたが、ボクは今更止めるつもりはなかった。
編集、ということは、はるかは自分のそういう場面を見ながら、動画を切り貼りしていたんだろうか。
ボクもピッチングフォームのチェックで、似た作業をした経験がある。
けれど、はるかは一体どんな気持ちでその作業をしていたのだろう。ボクには想像が及ばなかった。
『最初のファイルは、全部する前の雰囲気作りだから、
あおいが分かっているなら飛ばしてもいいよ。ただ、肌を合わせる前から、時間をかけて、
お互いの気持ちを盛り上げていくことは、すごく大事だから、忘れないで』
はるかのメッセージで少し拍子抜けしたボクは、一番若いナンバーのファイルをウインドウで開いた。
映像は、リビングルームで始まった。二人が同居してるマンションの一室だと見当をつけた。
赤田くんが、着崩したシャツにスラックスで、ソファに座っている。
手には小さなメモ帳とペンを持っていた。何かメモをとっているらしい。
視点が人間の背丈にしては高いし、カメラもずっと動かない。
おそらく、部屋の高い位置に隠しカメラを据え付けて撮影したんだろう。
程なく画面外から、白いエプロンをつけたはるかが現れる。
はるかの栗色の長髪は、高校時代と違って、リボンでうなじあたりにまとめられている。
そうして耳が出ただけで、はるかがぐっと大人っぽく見えた。
――浩司さん、か。ボクの前では『赤田さん』呼びだったのに。すっかり若奥様だね。
はるかが赤田くんに呼びかけた。浩司さん、というのは、赤田くんの下の名前だ。
ボクの知る限りでは、はるかが赤田くんを下の名前で呼んでた覚えはない。
二人きりの時は、ずっと前からそう呼んでいたのかも。
はるかが来て、赤田くんはノートと筆記用具を机にしまった。
使い古し具合や、バッグに入れた様子を見ると、野球の研究ノートかも。
はるかが白いエプロンを外す。クリーム色に、ベージュのアクセント模様がついたセーターが、暖かそうだ。
二人は並んでソファに座って、何事か話している。声が小さくなったので、内容は聞き取れない。
●4
『初めての時は、無理しなくていいけれど、予め“してもいい”と“これからする”の符牒を決めておきましょう。
口に出すと、せっかく作った雰囲気が壊れてしまうことがあるし、言葉に出さずに察するのは、難しいから』
――いわゆるイエス・ノー枕みたいなもの、ね。
『普通はイエス・ノーしか分けないけど。私が“してもいい”と“これからする”を分けてるのは、
そのタイムラグで準備をして、気分を高めていくため。ちなみに“してもいい”は白いエプロン、よ』
――え、あれが、既に“してもいい”の合図、だって。
ボクは動揺のあまり、メッセージを読み進める目が止まった。
動画再生ソフトの中の二人は、素知らぬ顔。いつの間にか、黒い酒瓶とグラスをテーブルに出している。
親しげではあるけれど、肩をくっつけたりしていないから、まだイヤらしい感じはしない。
――もう、この時点で、二人共、する、つもりなんだ。
そう思うと、ワイングラスでちびちびとやっている二人の姿が、焦れったく見えてくる。
画質がそこまで高くないから、二人の細かい表情までは判別できない。
でも、首をかしげて穏やかに笑っているであろう、はるかの目。グラスの脚に絡む指。
時折ジェスチャーの交える赤田くんの手。何もかもが、二人だけのサインに見えてくる。
『次の“これからする”は、私の髪を、あの人が解く時よ』
気づけば、ボクは動画ソフトのショートカットキーで、十秒ずつ動画のコマを送っていた。
ショートカットキーをぱちぱちと、人差し指で規則的に叩いていた。
退屈なパラパラ漫画のように、ソファの二人は、カクカクとぎこちなく動いた。
――あは、はは。何だろう、一番焦れてるのは、ボクじゃないか。
いつ、赤田くんが、はるかの髪に手を伸ばすのだろう。ボクは動画を見ながら、コマ送りを続けた。
程なくして、赤田くんが徐に、はるかの栗色の髪に手を触れた。
ボクはキーボードからマウスに手を伸ばして、ソフトの再生ボタンをクリックした。
滑らかな動きに戻った二人。はるかの髪をまとめるリボンに、赤田くんが指を触れようとする。
はるかはくすぐったそうな顔をして、首をくねらせ、細い肩を上下させる。
その拍子に、セーターの首元から、はるかの鎖骨が出ては隠れ、浮いては沈みするのが見える。
赤田くんは、それを面白がって、すぐにリボンを解かずに、はるかの首筋に触れたり、肩に手を回したりした。
かすかな笑い声が、ボクの耳に填まったイヤホンから聞こえてくる。
やがて赤田くんは、はるかの肩をがっちりと抱き寄せて、はるかの髪を手櫛で梳き始めた。
体勢が変わって、はるかの表情は少し見えづらくなった。それでもボクは、はるかに釘付けだった。
『あおいって、髪の毛が敏感でしょう。それに、いつもおさげだから、髪を解いたら、かなり印象が変わると思うわ。
だから、ある意味私よりも、髪の毛を合図に使うのは、向いているかもしれない』
――冗談じゃないよ。ボクがあんなことされ続けたら、本当に悶絶しちゃう。
はるかは、赤田くんの胸に顔を寄せた。ボクからは、はるかの顔が殆ど見えなくなった。
赤田くんが、はるかのリボンの一端を引っ張ると、結び目はするりと解けて、
はるかの髪が、扇のように広がった。動作は、それが孕む意味とは裏腹に、とてもさり気ないものだった。
●5
最初の動画ファイルが終わると、ボクは溜息をついた。
頬が、熱い。手で触って確かめなくても分かる。
心臓の跳ねる音が、イヤホンのせいでいやに大きく聞こえる。
真っ暗になった再生ソフトの画面には、ボクの顔の目から上が、黒と灰色で映っている。
寝る前に解いておいたボクの髪と、さっきぱらりと広がったはるかの髪の毛が、一瞬だけ重なる。
そう思った瞬間、背筋の辺りから、ぞくぞくとした身震いが広がっていった。
イヤホンを外そうとする。手が逸れて、指先が耳殻に当たる。
自分の指なのに、思わず上半身が引き攣ってしまう。
真夜中目前のボクは、ただ赤田くんとはるかがイチャついてる映像を、
飛ばし飛ばしで見ていただけなのに、おかしな気分になっている。
――彼だったら、ボクの髪を、どう触ってくるかな。
正直、高校時代のボクは、赤田くんのことが好きだった。
でも、あれから数年。今の赤田くんについては、ボクはよく知らない。
――彼は、この赤田くんとは違って、こんな慣れた手つきじゃないだろうね。
今のボクの恋人を、ふとした瞬間に、あの頃の赤田くんと重ねてしまうことがある。
今の赤田くんを知ることによって、高校時代の赤田くんに囚われた自分の心を吹っ切りたい、
という気持ちが、ボクにはあった。さすがに、その魂胆は誰にも明かせないけれど。
今のはるかと赤田くんとの映像をせがんだ動機に、そういう打算が、無かったとはいえない。
はるかの変わり様だって、相当なものだ。
中学時代まで、はるかに寄り付く悪い虫は、ボクが片っ端から追い払っていた。
だから、男の人とあんなに近づいて、あまつさえ身を預けるなんて経験は無かったはず。
高校時代、はるかと赤田くんが付き合い始めた、と知らされた頃。
二人はそういう触れ合いをしてるのかな、という想像をしたことはある。
もっとも、ボク自身にそういう経験が無かったから、その想像はひどく朧気だったけれど。
――はるか、この時点で撮られてるって、知ってたんだよね。自分で、仕掛けたんだから、ね。
はるかが赤田くんに向けていた視線は、カメラへの意識をまったく感じさせないものだった。
恋する乙女なんて、可愛らしい瞳じゃなかった。もっと深く、目線がかち合ったら、吸い込まれそうな瞳だった。
首をかしげる角度。くちづけたグラスをテーブルに戻す手の動き。呼吸で上下する肩口。
はるかの一挙手一投足が、なまめかしく見えてくる。女のボクが、どきりとしてしまうほど。
――いいの、この姿、ボクに見せちゃって。ボクに、こんな姿、見せたこと、無かったよね。
赤田くんと違って、はるかは、この姿をボクに見られることを知っている。
ボクは、はるかと一緒にお風呂に入ったり、布団を並べて眠ったことがあるから、
家族と赤田くんの次くらいには、はるかのことを知っていると思っていたけれど。
いや、赤田くんに対しても、ボクの方が付き合い長いんだから、女同士なんだから、
ボクの方がはるかについて分かってる、なんて心密かに思っていたけれど。
――そんな、恋人だけに見せる顔、ボクに見せちゃって、いいの。ねぇ、はるか。
ボクは、おそるおそる二番目の動画ファイルにポインタを合わせた。
ここから先には、はるかの、もっとすごい姿が、収められている。
また大きくなっていく心拍音を感じながら、ボクはファイルをダブルクリックした。
●6
今度の映像は、リビングとは別の部屋から始まっていた。
視点がまったく動かないから、また固定カメラなんだろうと思う。
――これが、はるかと小波君の寝てるベッド、か。
動画再生ソフトには、部屋の壁と、無地で薄橙色のシーツがかかったダブルベッドだけが映っている。
光の加減は、毛布の柄がかろうじて見えるかな、程度の明るさ。
カメラの高さは、ベッドよりもやや上。アングルは、水平から二〜三十度ぐらい下。
枕が南向きとすると、カメラはベッドの人間を真西から捉えている。
たぶん、壁側に置いてある家具か何かに、はるかはこのカメラを仕込んだのだろう。
そんなことを考えている内に、人影がひとり、カメラの視界に入ってきた。
――ちょ、ちょっとはるかったらっ、白襦袢なんか着てるよ。
予想外の格好での登場に、ボクは面食らった。
襦袢なんて、今どき和服を着る時ぐらいしか見ないよ。
『パジャマで勝負できる服があるなら、構わないけれど、もし自信がないなら、襦袢はけっこうおすすめ。
まず、ネグリジェとか、凝った下着よりは気楽に着られて、洗い易いのがいいの。
それに着崩れても、ジャージやスウェットほど、だらしない印象にはならないのもいいわ』
――ま、まぁ浴衣みたいな感じ、と思えば、使えるかなとは思うけど。
――もしかして、赤田くんの好みなのかな。確かに、清楚なはるかには、白襦袢がよく似合ってる。
真っ白な襦袢の襟をしっかりと合わせて、はるかはベッドに腰掛けた。
薄暗い部屋、暖色のベッドに、はるかのシルエットが白く浮かび上がっている。
さっきはあんなに蠱惑的だった顔つきも、なんだか神妙な気がしてくる。
栗色の髪のしっとり具合も合わさって、まるで斎戒沐浴でもしてきたみたいな風情だった。
はるかが腰掛けているベッドの部分は、カメラ越しにもそれと分かるぐらい沈んでいる。
はるかの体型を考えると、ベッドはかなりふかふかした品物みたいだ。
果たして赤田くんはどんな格好をしてくるのか、と思っていると、はるかが不意に目線を上げた。
赤田くんが部屋に入ってきたようだ。画面に現れた赤田くんは、
はるかに合わせたのか、藍色の襦袢――色のせいで浴衣に見える――を羽織っていた。
二人はベッドに並んで横たわった。ベッド真横からのカメラ視点だと、はるかが手前で、赤田くんが奥。
ちょうど頭から足の先までが収まっている。はるかが、予め計算してカメラを仕掛けたのだろう。
少しはるかが足側の方に身体をずらした。赤田くんの右手を、はるかは両手で握っていた。
はるかは、赤田くんの右手を、恭しく捧げ持つように構え、その中指にくちづけていた。
『普通はキスから始めると思う。指を舐めるのは、一般的な愛撫ではないわ。私が好きだから、しているの。
赤田さんが、普段、野球ボールを握っているこの右手は、すごく特別な感じがするから』
――その理屈だと、ボクの右手も……彼は、触れたいとか、思ったりするのかな。
はるかの手は白く細い。赤田くんの手は、太く節くれだっている。
バットやボールを力強く握っている画が、簡単に想像できる。
ボクの手は、当然というべきか、赤田くんの方に近い。
手入れはできる限り欠かしてないけど、肉刺の痕は消え切ってないし、皮膚も厚くなっている。
●7
――女らしくない手、かな。
マウスから右手を離して、モニタのはるかを真似るように、ボクは自分の右手を口元に寄せた。
舌を添えると、塩辛い。短く切った爪を、舌で舐る。はるかの動きに合わせて、指を咥える。
『口唇は、性器よりも敏感な粘膜、という説もあるくらい、特別なところ。
セックスの手順が、決まってキスから始まるのは、そういう合理性があるの』
ボクは、潤んだ瞳で赤田くんを見上げるはるかを、その口中から出入りする赤田くんの指を見ながら、
自分の指を咥えていた。ボクは、はるかを自分に重ねているのか、赤田くんを自分に重ねているのか、
それとも、彼を自分に重ねているのか、曖昧なまま、感覚がふらふらとしていた。
慣れぬくちびる使いで、はしたない音を口元から漏らしながら、右手の指を唾液で濡らしていた。
――変、なの。こんなの、子供、みたいで。なのに。
はるかの四肢と背中が、白襦袢の薄衣で、その丸みを晒されつつ、隠されつつ。足先から脹脛までがちらりとのぞく。
ようやく赤田くんの指を解放したはるかは、赤田くんに身体を近づける。さらさらと衣擦れの音がする。
動きだけで通じ合ったのか、赤田くんが、襦袢に包まれたはるかの肩を抱いて、今度は唇同士のキス。
はるかが赤田くんの方に顔を向けているから、表情はよく見えない。
その代わり、ぱらりとカーテンのように広がっているはるかの髪――同じ女でも見惚れる――は、
はるかの背中側が見える、ボクの視点じゃなければ、堪能できないだろう。
ボクのくちびるは、はるかたちとは違って、指の感触しかなくて、無性に寂しくなった。
少し恍惚が褪せたボクは、動画からテキストエディタにポインタを動かした。
マウスに自分の唾液がべったりとついてしまったが、後で拭えばいいと開き直った。
『キスをする時は、鼻の頭がぶつかり合わないように、首を少し傾げるといいわ。
歯と歯がぶつかってしまったりしてないかしら。これは、両方が同時にくちびるを近づけるから起こるの。
キスを待つ役と、くちびるを近づける役を分担すること。そうすれば起きないわ』
――何だよ、はるか。ボクだって、キスぐらい、したことあるよ。
――彼と初めてした時は、前歯と前歯がぶつかってしまったけどさ。
はるかと赤田くんは、試行錯誤するように、そろそろと手足をずらしては戻し、立てては倒し、
と動かしながら、くちびる同士のキスを続ける。大人しいのに色気を感じるのは、
動きが柔らかくて、二人の間に慣れが見て取れるからだろう。
『この場合は、私が受け。キスは、受けが顔を下にするの。
カメラの位置関係上、見えにくいと思うけど、これはお互いのくちびるを少し離して、舌を絡ませてるの。
こうすると、口の周りが唾液でべたべたしにくくなるわ。
もし口蓋内で舌を絡ませたいなら、くちびるをしっかりくっつけて、
お互い姿勢は安定させて、唾液が外に漏れないようにしながら、するの』
メッセージの解説が、はるかとボクの経験差を見せつけてきて、
ボクは言い知れない疎外感を覚えた。はるかが、大人の階段の数十段上を先行している気がした。
そうしてボクが呆然としていると、二人が顔と顔を離した。はるかは背中を向けているので見えない。
一方、赤田くんは、すっかりでれでれの間抜け面だった。昔から分かりやすいんだから。
『赤田さんのこと、だらしない顔なんて思ったでしょ。だめだよ。他人事だから、そう見えるの』
――ああ、失礼しましたねぇ。はるかったら、ボクの思考を、どこまで見透かしてるんだろ。
●8
赤田くんのでれでれ顔で、ちょっと小休止な気分だったボクは、次の瞬間仰天した。
何を思ったのか、はるかがこっち――ボクの見ているカメラ側――を振り返って、ベッドから居りて、
カメラに近づいてくる。え、これ何、いきなりどうしたの。
はるかがこちらに近づいてきて、カメラの視界が、少し乱れた白襦袢の布地に覆われた。
かたん、かたんとカメラそのものが僅かに揺れる。ずりずりと、硬い何かを擦る音がする。
『この辺り、手際が悪くてごめんね。ローションを出しておくの、忘れてたの。
男性のペニスはえぐいよ。味付きで、誤飲しても問題ないローションを用意しておくといいわ。
ローションは人肌に温めておくこと。湯煎よ。電子レンジは傷むことがあるから、避けたほうが無難。
初心者でも、多少は楽になるはず。滑りも良くなって、愛撫もしやすくなるから、一石二鳥』
――いきなり近づいてきたから何かと思ったら、このガタガタは、ローションを探してる動作なのね。
――って、男性の、ペニス、ペニスだって、え。
ボクがメッセージ中のペニス、という単語に反応しかねていると、
ローションを探し当てたのか、はるかがカメラから離れた。再びカメラに室内の光景が広がる。
ベッドの上に座っている赤田くんが見える。藍色の浴衣をくつろげていて、その合間からあの器官が見えた。
――う、うわ、大きい、これ、本当にはるかの中に入れるのかな……。
赤田くんのソレは、ボクやはるかの手では覆い切れないぐらいの長さ、大きさだった。
臍まで届かんばかりな男性のソレを、ボクは初めて目にした。
男の人のソレは、みんなあんなのなんだろうか。まずい、ちょっと怖くなってきたよ。
はるかは、シャンプーみたいな容器から、すうっと掌にローションを垂らして、伸ばしていった。。
指の間で糸が引くほど塗れさせたら、くちびるに一塗り。リップの膨らみが、てらてらと光る。
扇情的なはるかの口を、赤田くんのソレが迎え撃つ。棒というにはいびつな形で、ゴツゴツとした流木を思わせる。
赤田くんのソレの先端に、はるかがくちづける。舌をべろりと晒して、先端の張り出しを舐める。
赤田くんはと言えば、座ったまま、ソレにむしゃぶりつくはるかの頭を撫でている。
はるかは口だけでなく、手でもソレに触れる。蔓のように指をソレに巻きつけたり、ソレの根本の、下の、その、
『野球を見てるとわかると思うけど、睾丸はとてもデリケートだから、無理に愛撫することはないわ』
あの、楚々とした良家のお嬢様のはるかが、こんな、そんな、ねぇ。どう反応しろと。
はるかが、ソレを口に含む。長い長いソレを、ゆっくりと口内に収めていく。
苦しげな表情で、整った顔を歪ませながら、喉まで届きそうな深さまで、飲み込んでいく。
ボクは、思わず自分の喉が突かれたような吐き気を催した。唾液が勝手に口の中に溜まっている。
『ペニスの感覚は、先端と尿道に集中しているらしいので、フェラチオはそこをメインに攻めるべき。
ここまで深く咥える行為は、演出みたいなものだから、真似しなくてもいいよ』
はるかが苦しそうな様子なのを見かねたのか、赤田くんがはるかの頬に手を添えた。制止しようとしてるらしい。
でもはるかは、息苦しさそのままの涙目で、赤田くんを見上げて、頬に添えられた赤田くんの手首を掴んだ。
はるかは顔を上下させる。舌っ足らずな呻きを上げながら、上下の幅が大きく、動きが速くなっていく。
<はるか、止めて。口で出す気分じゃないんだ>
この瞬間、この映像の中で、ボクは初めて赤田くんの発言を判別できた。
はるかは名残惜しげな目で赤田くんを見上げ、動きを緩めた。
『当然、喉の奥まで突かれるから、苦しくて、頭がぼうっとして、反射的な吐き気も出てくる。
だけど、それに逆らって押し込んで、押し返されてするのが、最近の私の好みなんだ』
――そんなことメッセージに書かれても。はるかったら、変態みたいだよ。
●9
『恥ずかしいけれど、どこが気持ちいいとか、どういう触り方が気持ちいい、という感覚は、
可能な限り男性の方に伝えるべき。男性は手探りだから、こちらも協力しないと、スムーズにはいかないの』
はるかの白襦袢が、汗を吸って、ところどころ肌にくっついている。
絹地だからか、ぴったり張り付くこともなく、それでいて、はるかの女らしい身体の丸みを出すには、充分な具合。
高校時代の美術で見た、フランスかどこかの裸婦絵を連想させる。
ただ、記憶の中の絵と違って、目の前のはるかは、ボクの親友だ。
はるかの眼差しは、観客のボクではなく、映像の中の赤田くんに向けられている。
愛撫に合わせて震える、はるかの手足の動きが見える。はるかの抑え気味の嬌声が、衣擦れ混じりに聞こえる。
赤田くんの手をせがむ台詞を、映像の中のはるかは、カメラの向こうのボクに聞かせている。
画面内に籠められた、イヤらしい熱さが、ボクに迫ってくる。
<はるかってば、何だか、いつもより積極的だね>
赤田くんは、例のでれでれ顔で呟いた。そんな緩みきった顔に反して、手管はすらすらと滑らか。
はるかの白襦袢に包まれた肌を、体温を掬って塗るように、丹念に撫でる。
くすぐったくて、じれったくて、でも、もっと続けて欲しい。分かる。はるかの顔が、そう言ってる。
赤田くんが、はるかの白襦袢の衿に顔を埋める。薄衣と肌の間に蠢く熱気を、吸われてる。
さすがのはるかも、これには参ったようで、眉を下げた困り顔で、くちびるを尖らせていた。
『襦袢を使うなら、普通の下着より篭りやすいので、お風呂では念入りに身体を洗っておいてね』
――満更でもないくせに、しれっとこんなメッセージ書くんだから。
赤田くんは、ようやくはるかの白襦袢の合わせ目を開く。
絹地の白襦袢から出てきたはるかの肌は、肌下にじっとり血の気の広がっている様がよく分かる。
明るさは肌より白襦袢の方が強いけど、肌の方が彩度が高い。格段の温度差があるように見える。
――やっぱり高校時代よりも大きくなってる、はるかのおっぱい。
赤田くんの手で包まれると、もう明らかに違いが分かる。大きい。
しかも、包んでくる手に逆らわず、けれど膨らみは主張してくる、絶妙の弾力。
ボクは自分の胸に手を当てる。頼りない。どこぞのメガネには、丸底フラスコ体型なんて言われちゃった。
ただ、仮に、はるかぐらいのものがついてしまうと、本業に差し支えが出るんだよね。
――や、やだな、ボクったら、もしかして、興奮、してる。
胸に手を当てた拍子に、自分の拍動の強さを思い知る。
はるかの胸がぷるぷると形を変える。襦袢越しに乳首が浮いてて、イヤらしいなんてものじゃない。
ボクの手が勝手に動く。見よう見まねで、赤田くんの手つきに追従する。
ボクの肌にも、いつの間にか汗が浮いていて、顔から落ちた雫が、ノートパソコンのタッチパッドで潰れる。
――違う、よ。気持ちよくなんか、ない、ないんだ。
そりゃそう。色気の足りない身体に、拙い手つき。
気持ちいいはずがない。ただ、肌の下がフラストレーションに埋められていく。
短く切っているはずの爪が、パジャマ越しの肌に食い込んで痛む。そんな、乱暴にしても、全然ダメなのに。
●10
動画再生ソフトに映る二人の姿は、ことこと煮物でもするように、お互いの身体を擦り合う。
ボクは、もう訳がわからなくなってる。さしづめ、鍋を吹きこぼして慌ててる感じだ。
――やめて、置いてかないでよ、そんな、ずるいよ。
モニタの向こう側の二人は、ボクを置き去りにして先に進む。ボクは停止ボタンすら押せない。
赤田くんの手が、はるかの大事なところに伸びる。白襦袢の色が、濡れて変わってしまっている。
<はるか、やっぱり興奮してるよね>
そう言う赤田くんだって、ボクから見たら、充分昂ってるよ。
例のソレは、はるかの身体に隠れてる状態だけど。目がでれでれじゃなくなってるから、分かる。
ギラつく顔が、バッターボックスでの姿を連想させる。
はるかが白襦袢に包まれた脚を捩る。吐息は、音だけで視界が曇らせそうな錯覚がするほど熱い。
聞こえるか聞こえないかの水音が、ついにイヤホンから流れこんできて、
生々しさが増してきて、ボクの意識が釘付けになる。
さっきはるかが咥えた時とは逆に、今度は赤田くんが、はるかの大事なところに顔を近づける。
上のくちびるにしたような、ゆっくりと近づいて触れるキス。
なのにずっと背徳的な匂いがする。
――ああ、今更。ボクは、何を、覗き見してるんだろ。
赤田くんのソレの衝撃とか、はるかの白襦袢とか、いろいろあって意識から飛びかけてたけど、
ボクが覗き見してるのは、そういうことなんだ、と思い知らされる。
――はるかったら、赤田くんからはちょうど見えない位置だからって、なんて顔してるんだよ。
それはおそらく、はるかの顔のせいだ。そこにキスされてる、はるかの表情は、
目も当てられないくらい……この映像、はるか自分でチェックしたんだよね。
ちょっと信じられない。ボクだったら即座に映像を切って消去してしまうだろう。
水音が、もう聞き流せない大きさになってくる。
はるかの脚が伸ばされたり、曲がったり、筋張ったり、弛緩したり。
ふらふらした動きの一回ごとに、ボクの親友だった人が変わっていく。
はるかはどこへ行ってしまうんだろう。
はるかは何事か呟いている。ボクには、くちびるが少し開いたのしか分からない。
どこが気持ちいいとか、どういう触り方をして欲しいとか、赤田くんに伝えているのだろうか。
夢現みたいな顔しながら、そんなことができる意識を保ってるのが、空恐ろしい。
――これ、参考にしろっていうのは、キツイよ。
ボクはまたマウスを動かしてコマ送りをした。
はるかの肢体が、ベッドの上で、あっちへ振られ、こっちへ振られ、その断片が入れ替わり立ち代わり。
乾きかけた右手のべたつきが、ボクをさらに沈ませた。もうシークバーが動かなくなっていた。
●11
四本の内、二本目まで見終わった。正直、ボクはもう挫けかけていた。
容量や内容に差はあるだろうけれど、ようやく折り返し。
――展開を考えると、これからが本番、だよね。
既に日付は変わっていた。いつもならとうに寝ている時間だ。
なのにこんなに目が冴えてしまっている。これは、初めてのブルペン入りする前日以来かも。
もう今夜中に眠りにつくことは諦めた。ボクは三番目の動画を開いた。
はるかと赤田くんが向かい合って座っている。はるかはベッドの枕側、赤田くんは毛布側。
ボクから見ると、はるかが左側、赤田くんは右側に並んでいる。
はるかは赤田くんの両肩に手をかけていた。まだ挿入はしていないようだ。
『ここで、本当はコンドームを着けてもらうはずだったんだけど、赤田さんに、はるかとの子供が欲しい、
って言われて、押し切られて、つい私は折れちゃったから、映像では着けずに続行してるわ。
あおいは選手生命にもかかわるから、ここは真似しないで、避妊はちゃんとした方がいいと思う』
テキストファイルを読み進めたら、こんな殊勝なことを書いてたけど、
映像中のはるかは、赤田くんに身体摺り寄せて甘えたい放題してる。
横からのアングルだから、はるかの白襦袢の崩れ具合が目立ってなくて、
また栗色のストレートヘアの長さが際立ってるから、画的に綺麗な感じになってる……けど、
口角の脱力っぷりで、だいぶだらしなくなってる。目の辺りだって、もうぐずぐずだ。
赤田くんは座ったまま上体を後ろ気味に反らす。
重心が後ろに寄ったので、手を背中側に突いて上体を支えている。
はるかは赤田くんの身体を膝立ちで跨いで、赤田くんの肩に手を乗せながら、挿入しようとする構え。
入れる瞬間が、はるかの白襦袢に遮られて――脱がないのかな。赤田くんは脱いでるけど――見えない。
だからボクは、二人の息遣いの変化で、赤田くんのソレが収まったことを察した。
『おそらく、挿入してからは、最初だと上手くいかないと思う。気にし過ぎないようにね。
ほら、イザナギとイザナミだって最初は失敗してるし、私も、それらしくなるまで、時間かかったから』
――そういうボケは要らないんだけど。
『女性上位の体位は、慣れてからの方がいいわ。抱き地蔵みたいに、男性側の肩に手を乗せるといいわ。
体勢が安定するよ。あるいは、百閉みたいに男性が背中を倒して、手を握り合うのもいいと思う』
ボクの知らない感触をじっくり堪能するように、はるかは繋がった身体を前後に揺すっていた。
下ろした髪に、耳が隠れている。身体に絡みつく白襦袢で、はるかの動きはしめやかに覆われる。
赤田くんの肩に両手を添えているのも、一種の健気さを醸している。
でも、はらはらと揺れる髪が、カーテンのように隠している顔は、
赤田くんの子供が欲しい欲しいと、あそこを奥まで踏み入られて、笑ったり泣いたりしてるんだ。
ボクが映像から分かるのは、はるかの声と、身体の曲線の変わり様だけだったけど。
はるかの声が高くなっていく。ぬっちゃ、ぬっちゃと水音が目立ってくる。
大人しくしていた赤田くんも、テンションが上がってきて、腰を使っていた。
パン、パン、と肌を張る軽快なリズムが響く。やがて、はるかの背中が、がくん、とへたった。
赤田くんは、腰使いのペースを落とした。そのまま首を曲げて、はるかに顔を近づける。
乱れ気味のはるかのロングヘアに、赤田くんの顔が半分ほど隠された。
はるかは、ボクからでも分かるほど、赤田くんの肩に爪を食い込ませていた。
あんなに食い込ませたら、絶対に痕が残ってしまうだろう。
はるかの嬌声は、喉の奥から滲み出るような感じになっていた。
母音の曖昧な、喩えるなら、子供がしゃくりあげる響きに似ている。
『達する、ということを、どう表したら良いのかは、私もよく分からない。
どうしたらいいか、というのも、アドバイスはできない。身体的には、楽ではないと思う。
体の中を、容赦無く掻き回されてるから、当然といえばそうなんだけど。
でもね、幸せよ。何も、考えられなくなるくらい』
はるかが膝を突いている辺りの、シーツの皺の寄り方をよく見ると、
ただ腰を揺すっているだけではなく、重心があっちこっちに揺れているのが分かる。
栗色の髪と白襦袢のコントラストが、折り重なったり、離れたりしている。
間違いなく破廉恥な光景なのに、幻想的だった。
白の儚さと、覚束ない腰つきが、そう見せたのかもしれない。
ついに、力の抜けたはるかが、上体を倒して、赤田くんの肩口に顔を埋めた。
赤田くんはそれに応じて、片手をはるかの肩に回し、腹筋に力を入れて、ゆっくりと背中を倒す。
絡み合ったまま、ベッドの上に寝転がった格好になる。
はるかの背中に、汗を吸った薄衣がべったり貼り付いて、お尻から脚からの線が丸分かりだ。
もう、これ裸と変わらないんじゃないかな。
姿勢が変わった拍子に、白襦袢の裾から、はるかの足先がはみ出していた。
その足の甲と指は、頻りにシーツを擦って乱している。
はるかの身体には、まだ赤田くんのソレの余韻が残っているらしい。
結局、いつ射精があったのか、ボクには分からなかった。
はるかに比べると、赤田くんの反応は隠れがちで地味だったし。
だいたい、男の人の射精の瞬間とか見たことないし。
――こりゃ、近いうちにお祝い用意しなきゃいけないな。
はるかは、両腕を赤田くんの首に回していた。
赤田くんは、はるかの頭を撫でて、また乱れた髪を手櫛で梳いていた。
ボクはそれを見ながら、映像の鮮烈さを受け止めきれず、取り留めのない思考に逃避していた。
今夜も、はるかと赤田くんは、このベッドで肌を重ねているんだろうか。
――何も考えられなくなるくらい、幸せ、か。
もやもやとした澱みが胸を圧すので、ボクは大袈裟に溜息をついた。
動画の三本目が終わると、ボクはイヤホンを耳から外した。
深夜の部屋に響くノートパソコンのファンが、妙に耳障りだった。
●13
『次は側位。いわゆる菊一文字ね。密着感はそれほど高くないけれど、足腰にかかる負担が少ないのがいいわ。
あとは、挿入角度が深く、しかも斜めだから、普段とちょっと違う気分になるのもいいの』
ボクは最後の、四本目の動画ファイルを再生している。
襦袢を脱ぎ捨ててハダカになったはるかが、ベッドに横向きに寝そべっている。
赤田くんは、ボクから見るとはるかのすぐ奥側に、少し斜めの体勢ではるかに寄り添っている。
ふと、赤田くんが半身を起こして、はるかの髪に手を伸ばしている。
『映像で初めて気づいたんだけど、この時赤田さんが私の髪を結ぼうとしてるのは、
このままだと、私の髪を背中に敷いてしまうからだと思う。
あおいも、髪下ろしたら背中まで届く長さだろうから、気をつけてね』
襦袢ごしに見ていたはるかの身体は、いやらしさが隠微さの内に見え隠れしていて、
ボクでも何とか直視することができた。が、今のはるかは、こう言っちゃなんだけど、全部丸見えだ。
赤田くんの手が、はるかの後頭部あたりで、はるかの髪の毛をいじっている。
ボクの知っていた彼は、野球漬けの朴念仁だったくせに、解く時と言い、結ぶ時と言い、もう手慣れた感じだ。
赤田くんの動きが何か響いたのか、はるかはくいっとおとがいを反らし、ボクには聞き取れない呻きを漏らしていた。
――ああ、はるかの顔、完全にやられちゃってる。
ほぼ仰向けの、はるかの身体。重力に張り合っているはるかのおっぱいが、
はるかの些細な動きひとつひとつに合わせて揺らぐのが見える。
腰のくびれからお尻のラインとか、女のボクから見ても惚れぼれする。
と、赤田くんがはるかの右膝裏を手で持ち上げて、脚を大きく開かせた。
とうとうあそこまで画面に晒されてしまった。手入れされていたであろう陰毛が、型くずれして肌にへばりついている。
はるかの開かれた脚に、赤田くんが半身を割り込ませて、その、あの――ぺ、ペニスを、
はるかのあそこに差し入れる。赤田くんの目線は、股間ではなくはるかの顔の方に行ってたから、
このやり方も、ふたりは手慣れたものなんだろうか。
『こう、入り口を優しく摩すられるのは、見た目よりも来ちゃうの。期待感を煽られてしまって』
ずる、ずると赤田くんが浅いところを緩慢に動く。はるかの抱え上げられた右脚。
特に膝から先がかくん、かくんと上下する。あまり明瞭でない映像でも、ぬちゃぬちゃと糸を引く湿り気が見て取れる。
宙ぶらりんのはるかの右肢を気遣ったのか、赤田くんは身体をずらした。
ベッドにくっついたまま、びく、びくと思い出したようにシーツを擦って乱す、はるかの左足――を、
赤田くんは膝立ちで跨いで、天井へ高々と伸ばされたはるかの右足を抱え――
はるかのコメントによると、巣篭もり、というらしいが、何がなんやら。
『勢いでこんなことになってるけど、実際は、こんなに目まぐるしく体位を変えない方がいいわ』
――はぁ、そうなんだ。
体位が移って、下半身同士の密着具合が高まって、より奥まで刺激を受けるようになった。
はるかは、膨らまされた期待感のせいか、とろんとしていた瞳が、目をぎゅっと歪ませたようになる。
空いている両手で口元を抑えている。声を出すのが恥ずかしいのかな。もう、余裕が無いんだ。
●14
赤田くんは、ゆったりとしながらも、深い抜き差しを続けている。
抱え込んだはるかの右肢が、抜き差しに呼応してびくつくのが、たいそう気に入っているのか、
はるかの脹脛あたりに時折頬ずりしたりもしている。天井に向けられたはるかの足先が、
ぐっと縮こまったり、わずかに広がったりする様が、ボクの見たアングルからでも、ぎりぎり収まっている。
『たぶんその辺りで、赤田さんが、私のアンダーバストのあたりを手で擦ってる場面があるはず。
これ、映像だと地味に見えるかもしれないけれど、私にとってはすごくたまらなかった。
心臓まで赤田さんに捧げたような錯覚がして、ただ触られてるだけなのに、きゅうっと締め付けられる感じがするの』
はるかの奥まで突き刺したまま、赤田くんは空いている右手を伸ばして、はるかの臍のあたりを撫でていた。
下腹部に意識がいっていたせいか、はるかは悲鳴じみた声を上げた。
この反応に気を良くしたらしく、赤田くんは右手をはるかの肌に這わせる。
小さな子をあやすような、優しげな手つきだった。けれど、それがはるかにはたまらないようだ。
薄く開いた目に、涙が滲んでいる。嬌声が啜り泣くような、切羽詰まった響きを交えてくる。
もうぐちょぐちょに濡れてしまっている、はるかのあそこを、赤田くんは右手で軽く撫でて、
陰毛を弄んで、指と指の間に糸が引く様を、はるかに見せつけている。
白く粘つくそれは、最初は精液かと思ったのだけど、どうやら違うようだ。
いやらしく嬲られているというのに、はるかは赤田くんに身を任せたままだ。
荒くなった呼吸、首筋、鎖骨の浮き沈み、合わせて大きなおっぱいもわずかに動く。
さっきまで上に跨って、主導権を握っていた時と違って、もう貪られるばかり。
喘ぎ声が、もう手でも押し殺しきれなくなっている。当然、ボクはこんなはるかの声を聞いたことなんか無い。
ボクが映像を眺めていると、徐に、はるかが背中から腰にかけてのラインを反らせた。
腰がベッドから浮きかけるが、赤田くんに下肢ごとがっちりホールドされているので、
あそこを深く突かれながら、身体をがくつかせることしかできていない。
内腿の震えが、大きく開脚させられてるせいで、あそこ辺りの引き攣りが晒されて痛々しい。
それでいて、なんだか間が抜けた体勢でもあって――もう、現実感が薄い。
赤田くんが、抱えていたはるかの右足をベッドに下ろした。
そのまま、はるかの両膝を寄せてくっつけ――はるかは、もうされるがままだ――両足を胸の方に折り曲げさせる。
そうして上向きになったはるかのあそこを、赤田くんが挿入したまま膝立ちになり、上から責める構えらしい。
直前の体勢と比べると、はるかが脚を閉じて折り畳んだ分、アクロバティックさが薄れた。
代わりに、実用性、というか、射精を子宮まで届かせて、子供を作る、そういう感じが露骨に出てる。
あそこを、あんなに深く、突かれて、はるかはもう、声を留めることさえ忘れて、
きっと、撮られてることなんか忘却の彼方だ。
――あれだけ、奥まで、やられちゃったら、絶対に、おかしくなる。
頭がくらくらする。机に両肘をついて、頭を突っ伏してしまう。もう画面なんか見えない。
耳に貼り付いたイヤホンから、赤田くんとはるかの息遣いが流し込まれる。
息が熱い。机の板が曇る。腕に触れる頬の感触で、ボクの顔が紅潮してるのが分かってしまう。
あれ、おかしいね。ボクは、何にも、されてないのに。ずくん、と下っ腹が締め付けられる気がする。
ぎしぎしベッドが軋んだり、肌がぶつかり合う音がするのに合わせて、引きつけを起こしたように、
あそこが落ち着かなくなる。もう机に突っ伏したまま、顔も上げられない。
――やめて、もう、そんなの、見せないで。ボクまで、おかしく、なる。
イヤホンを引っこ抜こうとしても、指に力が入らない。
頬は熱に浮かされたようなのに、手先はかじかんでるのか、うまく動かない。
拭ったはずのマウスに、べったりと嫌な脂汗。
●15
もう画面は見えない。はるかの汗が浮いた肌も、引き攣ったり緩んだりを繰り返す肢体も。
でも見えてしまう。影送りの影のように、視界に焼き付いて、目を閉じても映ったまま。
意識が朦朧としてくる。脚を捩ると、自分の下腹部に意識が行ってしまう。
音で抜き差しを感じる。その度に、はるかとボク自身がリンクしたかような、そんな錯覚が立ち上ってくる。
おかしな話。でも、抜き差しの折々に、はるかが息を飲むのを察すると、ボクの息も詰まりそうになる。
もう頭の中なんて、とっくのとうにぐちゃぐちゃになってるんだろう。
頭を大事な右腕に乗せたまま、商売道具の右腕が痺れてくるぐらいなのに。
脳髄が渦を巻いて、ぐるぐる回って――あの気まぐれな浜風みたいに――目を開けるのも億劫になる。
――やめてよ、はるか、もう、息も絶え絶えじゃないか。
嬌声で叫び過ぎたのか、はるかの声が、ハスキーになってる。
変な唾が出てくる。喉がぎこちない。ムリヤリ唾を飲み込む。
きっと身体も、奥まで、何度も、何度も、突かれて、ばらばらになりそうなぐらい。
――やだ、いやだ、こんなの、ボクじゃ、ない、こんなの。
ずくん、ずくんが、だんだん重たくなる。
身体を前に倒したっきり、戻せないまま。臍あたりに鈍い熱さが溜まっていく。
くるしい。あつい。身体が、感覚だけ残して、どこかに溶けていきそう、
『達する、ということを、どう表したら良いのかは、私もよく分からない。
どうしたらいいか、というのも、アドバイスはできない。身体的には、楽ではないと思う』
やめて、本当に、こんなの、やだ。おねがい、はるか、もう、やめて。ボクの、中に、入って、こないで。
『体の中を、容赦無く掻き回されてるから、当然といえばそうなんだけど。
でもね、幸せよ。何も、考えられなくなるくらい』
そんなの、うそ。
――何で、はるかは、
だって、ボクは、ひとりで、こんなに、苦しくて、切ないのに。
――そんな、幸せそうな顔、してるの。
ボクの意識は、そこで途切れた。
「あおいちゃーん。どうしちゃったの。風邪なんか引いちゃって。シーズンオフだから、まだそんなうるさく言われないけど」
「ごめんね……その、友達に借りた……え、映画がね、面白くて、つい夜更かししちゃって」
ねぇ、はるか。せっかく身体を張って、お手本を見せてもらったんだけど。
「ふーん。あおいちゃんが、映画にそんな熱中するなんてね。俺もちょっと興味湧いてきたな」
「ぜ、ぜったいダメ! み、見せるのぜったいダメだからっ!」
「あ、ほら、風邪治ってないのに大声出しちゃいけないよ」
それを活かすのは、少し先になりそうだよ。
(おしまい)
>>1乙です。
19 :
名無しさん@ピンキー:2014/01/09(木) 00:13:49.96 ID:eWlh0TrF
とりあえず乙あげ。
20 :
名無しさん@ピンキー:2014/01/09(木) 01:44:28.14 ID:jeLe1j0L
邪神認定って?
ネット上の駄目なエロSSって検索すればわかる
あとは自分の目で確かめるよろし
ここじゃスレチだし、あれを無闇に張り付けるのは憚られる
昔、というか自分が最初の、誤字テンプレ作った当時に晒し系スレッドがあったんだわ。
で、そこでは酷い作品のことを「邪神」と呼んでた。その名残。
まさかのかぶり。
私の説明のほうが若干間違ってるんだが、まあ、うん。
あのスレはまだあるよ
殿堂入り邪神の文をぜんぶ読むには、WebArchive使う必要がでてくるが
>>18おつ
>>24 まじですか。
気が付かなかったんで記憶で書いてた
>>18 パワプロわからんので感想が言えず流してたが、長文だね。お疲れ様
ほしゅ
27 :
名無しさん@ピンキー:2014/03/18(火) 19:00:13.56 ID:VrZMYmnz
保守あげ
自分は結構エロパロを書くのがうまいと思って、かなりの数を投下してきたのだが
もしかしたらただの自惚れだったのかもしれないと、今日ssを書いて思った
最近投下がなくて寂しいので、保守がてらひとつお願いします。
・オリジナル
・10レス、一万字程度
・ジャンル……陰毛フェチ、洋物、わずかに露出
見て欲しい所
・男一人称で不自然な点が無いか。
(例えば、男が正常位で普通に挿入してるのに、女の肛門の描写がある、など、
「それお前から見えるのはおかしくない?」というような不自然さ)
・仮タイトルが「女上司の陰毛を処理した話」なんですが、もっとエロいタイトルがないか。
◆1
使い捨てのT字カミソリって、あるだろう。よくホテルとかに置いてある、あれだ。
あれを見ると、どうしても思い出してしまう女がいるんだ。
俺は以前に、アメリカ人の上司の下で働いていたことがある。
俺は外資の日本法人に勤めていて、本社から出向してきたんだ。
あの頃は、今よりも外国人が同僚ってのが、珍しかった。俺はかなり緊張して、その上司を迎えた。
その上司の第一印象は、一言で片付けるなら『うわ、コイツきっつそうだな』ってところ。
白木みたいな、わずかに黄色味がかったショートの金髪を、やや左目寄りに分けて、うなじで結んでいる。
白い肌から血色が透けていて、体内のエネルギーを見せつけているようだ。
鳶色の瞳は、俺と同じくらいか、わずかに高い視線。ヒールがあるとはいえ、背が高い。
一番印象に残ってるのは目だった。眉毛の角度がきりっと上がっていて、しかもギョロ目。
あれは部下の首を何人も飛ばさないとできない目だ。と、当時は本気でそう思ってた。
アメリカ人のくせに、鉄の女じみてて、小さなサッチャーかよ、なんて。
なら、顔を見なければどうだ、っていうと、こっちも顔ほどじゃないが、なかなか当たりが強そうだ。
かっちりしたスーツをまとったシルエット。日本の女に比べて、肩幅が広くて厚い。
痴漢など肉体言語で返り討ちにしそうだ。
肩より下は、ぎゅっと締まった感じ。何かスポーツをやってたんだろう。
アメリカは、もう既にフィットネスが定着していた。運動して健康的であるべし、なんて風潮が強かった。
彼女が休日に、ジムで汗を流している風景は、容易に想像できた。
どうぞよろしく、と出された手。右手で応じれば、力強く握られた。どう反応したものか。
軽く握ったままでは失礼だし、かといって男の俺が張り合うほど力を入れるのも憚られた。
その、どうしても思い出してしまう女との初対面は、こんな様子だった。
こんな奴とうまくやっていけるだろうか、という危惧はあったが、その女上司とは、割とうまくいっていた。
彼女のファーストネームが“エリザベス”で、向こうでは愛称で“ベス”と呼ばせてたらしい。
どうも日本人の感覚として、子音Bが強いと綺麗じゃない、と俺が説得。日本では“リザ”に変えさせた。
あの時は、仕事が一番面白い時期で、今ではちょっと出せないような熱意で、俺は色々の案件に取り組んでた。
リザは初対面の予想通り、きつい扱いもされたが、当時の俺には、きついぐらいでちょうど良かった。
リザの方も、24時間働けますか、という昔の日本人に負けないほどバリバリ仕事するタイプで、
異国でのキャリアに順応している風だった。大股でカツカツと靴を鳴らして歩く姿の、頼もしかったことといったら。
そんな彼女が、俺の冗談じみた一言で崩れ始めるとは、夢にも思わなかった。
◆2
思わせぶりな言い方をしたが、俺自身は、その一言について、まるで記憶にない。
ここからしばらくは、リザから聞いた話だ。
リザによると、俺は彼女に向かって、
『重要な会合で成功できるか不安だから、お守りとしてリザの陰毛が欲しい』とか抜かしたそうな。
よく始末書にならなかったものだ。どんな場面で、そんな言葉が口に出せるんだろうか。
そんなダメな部下に対して、リザが『はい、どうぞ』と言うわけもなく、彼女は本気で怒ったらしい。
しかし同時に、言葉の聞き違いじゃないかと思って、調べたようだ。アメリカ人と日本人だから、そういうことはよくある。
そして、どうやって行き着いたかは分からないが、
リザはそういう風習が日本の一部にあると知ってしまった。戦時中の冗談じみた話なのに。
日本と違って、欧米では概ね陰毛は処理するのがマナーだろう。
リザは、あげたくてもあげられなかった状態だったはずだ。
明くる日の朝、リザは俺に一包の懐紙を握らせてきた。
顔から首筋まで真っ赤にして、小声で懐紙の中身を告げられた。
懐紙には、細い金色の癖っ毛が一本。
俺は怪訝な顔をしてしまった。
俺のそんな反応が、ある意味とどめだった。
リザは、常人にはちょっと見られないぐらい真面目な――偏執的な――性格だったと思う。
まず、普通の人間が、部下のこんなおかしな言葉を、真剣に聞き届けるか。
次に、わざわざそれに応えてやろうと思うものなのか。
仮に思ったとして、本当に陰毛なんか用意しなくてもいい。
ブロンドは黒髪に比べて、熱に弱い。少し熱してやれば、すぐに縮れてしまう。
頭髪に少し細工すれば、俺が見分けられるはずないというのに。
けれど、それはリザの陰毛だった。
どうして断言できるか。俺は直に、その真贋を確かめたからだ。
◆3
昼でも薄暗い立体駐車場。その一角に、俺とリザは社用車を停めていた。
俺が運転席で、リザが助手席。車の正面を壁に向けて停車しているため、人目から隠れている。
足音が響くから、誰かが近づいてきても、すぐ分かる。
リザは、あの押しの強かった目を、目尻に皺が寄るほど強くつぶり、奥歯を噛み締めている。
くちびるを閉じていて、リザの荒い呼吸が、高い鼻筋からすぅすぅと音を立てて出入りしている。
リザの手がのろのろと動いて、スカートの布地が緩んだ。
俺が狼狽えると、目を閉じていたはずのリザにもそれが伝わったのか、
彼女は助手席の頭の部分に、後ろでまとめられたブロンドの結び目をずりずりと擦りつけた。
リザはシートに腰掛けたまま、ストッキングに包まれた両膝を離していく。両脚が俺の視界へ、徐々に現れる。
密かに『太いだろうな』と思っていた腿は、緊張と羞恥で強張って、少しでも動く度に、肌が浮き沈みする。
リザの右膝頭が、サイドブレーキかクラッチレバーか、とにかく何かにぶつかる。
左膝もドアにぶつかったのか、リザの開脚が止まる。運転席の俺からだと、
身を乗り出せば、スカートの中まで見えるかどうか、という具合。
俺は助手席と運転席の間の車内照明を点けた。
パチン、と俺の指が立てた音に、リザは激しく動揺し、ドアに膝をぶつけてドンと大きな音を立ててしまった。
やっぱり止めようか、と俺が怖気づいて、リザの顔を見ると、彼女は俺を例の目で睨み返した。
『私があなたのためにここまでしたのに、それに疑いを差し挟むのは許さない』ということか。
リザの威圧的な勢いが、どこか俺を安心させた。別に安心するようなことじゃなかったが。
彼女はただ、もう後に引けないと意固地になっていただけだった。
俺が運転席から背中を離して、顔をリザに近づける。いつもより強い気がする香水。匂いがぐんと鼻を押す。
ここまで来たら、俺もなるようになれと開き直る。身を乗り出して、既に汗の浮き始めたリザに、横から覆いかぶさる。
スカートがずり上げられ、ベージュのストッキングに包まれた下着までが、俺の目にもあらわになる。
下着は暗めの赤。形自体はシンプルなものだった。生地は、凝ったレースが所狭しとついている。
肉付きの良い腿に張り合って、恥丘が赤の下着を押し上げている。
俺はリザのそこをじっと見つめて、ようやくVライン間際に彼女の陰毛を見つけた。
体質なのか、処理をやめて日が浅いせいなのか、リザの陰毛は薄い。
色はくすんだ黄色で、細さは頭髪の半分くらいしかなさそうな印象。
そんな草むらが、下着の赤からわずかに覗いている。
◆4
俺はその感触を確かめたくなって、俺は体勢に無理があったのも構わず、リザの下着へ手を伸ばした。
リザは脚を閉じようとしたが、反応が遅く、俺の手が割り込む。
ストッキングの滑らかな肌触りに、下着のレースのざらつき。しかし、肝心の陰毛の感触は遠い。
リザの太腿は、俺の手首を絞め殺そうかという勢いで圧迫してくる。何か口走っているが、俺には聞き取れない。
手を固定された俺は、リザの股間で、かろうじて指を動かす。生暖かい圧力。
指の腹を、尻の割れ目の間らしき溝に突っ込む。指に力を入れる。
リザの陰毛と彼女の肌が擦れているのか、ずるずるとかすかな音が聞こえる。
もっと指を動かす。それでも俺の肌に感触は来ない。
今までお留守だったリザの手が、いきなり俺のネクタイを掴む。タイピンが外れる音がする。
俺は手を止めて、リザの顔を見た。リザは怒っているような、泣いているような、
どちらともとれる表情で、何やら口をぱくぱくとさせていた。
小さな声で何か言っているようだが、俺の注意はそこに向いていなかった。
俺が再び指を動かし始めると、リザはまたぐいぐいとネクタイを引っ張る。
衣擦れの音ばかりが大きくなる。俺は何となく、少し前に見たハリウッド映画を思い出した。
あれで男のネクタイを引っ張っている女優は、コールガール役だったが。
俺はネクタイを引っ張られるまま、リザの方へさらに体を傾ける。
首元が苦しくなってきたが、俺は気にせず手に力を入れる。
指だけでなく、腕全体でリザの股間をまさぐる。
びくん、と手を挟む太腿がうごめく。動きが一番露骨だったのが、太腿の裏手の筋。
尻の谷間もぎゅっと締まる。時折散発的に弛緩する。また締まる。
何だか、陰毛の擦れる音が小さくなった気がする。俺はムキになって、リザの股間を行き来する。
リザの太腿が、また堅く強張る。びくびく、程度だったのが、びびび、なんて勢いに変わり、締め付けが断続的になっていく。
太腿が堅いのに対して、恥丘方面は柔らかいまま。攻め手をそちらに集中させる。
篭った息苦しげな音が聞こえるのに気づく。
何事かと思ったら、いつの間にかリザは、ネクタイから手を離して、自分の口元を掌で覆っていた。
リザもこんな弱々しい仕草ができたのか、なんて他人事みたいな感想が浮かんだ。
リザの下半身は、脚どころか腰までがずるずるとシートを擦っていた。
拒むのをやめて、俺の手を完全に受け入れたと思った。俺は調子に乗った。
ストッキングを摘んだまま手を引いて、布地を引き裂く。圧迫をかいくぐり、指を中へ。
その瞬間、リザの声が聞こえた。混濁した呻きとは違い、俺にもなんとか聞き取れた英語。
ああ、やっぱりイク、じゃなくて、comeなんだな、なんて。
社用車には大きなシミをつくってしまった。
後で、俺が上からわざと飲み物を零して、始末書を書いておいた。
これが、俺とリザの奇妙なセックスの始まりだった。
◆5
リザが言っていたことなんだが、彼女にとって陰毛を伸ばすことは、いろいろと複雑な意味を孕んでいたらしい。
リザは、男と張り合ってバリバリ仕事するキャリアウーマンだった。
だから、女として見られることを久しく否定していた。今みたいに、恋も仕事も、って風潮じゃなかった。
また、俺との付き合いが始まってからは、慣れない異国暮らし。そういう欲求を表に出せなかった。
それに俺たちは、リザが本社の出世株と聞いていたから、下手に言い寄ったら……という躊躇があった。
一方、容姿から想像はついていたが、リザの学生時代は華やかなりしものだったらしい。
自分が男からどう見られているか、覚えがあるわけだ。自分の女としての部分を捨てることもできない。
そうやって燻っていた気持ちが、例の陰毛話で背中を押したらしい。
それでいて、陰毛を伸ばすということは、男との関係を否定することでもあった。
俺たちからすると、陰毛はあって当然だが、あちらからすれば、陰毛は処理するのが当然。
もっさりと茂った股間など、男に晒せるべくもない。セックスなんかできない。
一種の貞操帯みたいなもの、とまでリザは言った。
リザは思春期の頃から、ずっと欠かさずデリケートゾーンの手入れをしていた。
だから、今になって陰毛を生やしていると、歩くだけで違和感を覚えるらしい。
大股でカツカツと歩く度に、陰毛がしつこく絡みついて、意識し始めると、もう止まらない、とか。
そんな話をされたら、もうリザの――女にしては逞しい――後ろ姿が、まともな目で見れなくなる。
そんなんだから、俺もリザとセックスする時は、陰毛をよく攻めた。
リザの毛は、細くて、薄くて、短かった。
成熟した女のスタイルをしてるくせに、そこだけティーンみたいな見た目だった。
初めてのお手合わせから、存分に弄らせてもらった。
リザを仰向けに寝かせ、脚を大きく開かせて――180度近く開いて驚いた。どうやら昔はチアやってたらしい――
心細げな陰毛に口をつける。普通、クンニで毛が口に入ると、嫌な感じがするものだが、リザのそれは細くて短い。
黒髪のような、粘膜を意地悪く邪魔する感触がしない。
リザのか弱い草むらを、唾液でベタベタにしていく。目を上げれば、なだらかな乳房が揺れ、
ヘソのあたりが忙(せわ)しげにひゅくひゅくとうごめく。その絶景の向こうから、リザの喘ぎが聞こえる。
そうこうする内に、唾液の匂いに混じって、生臭くも心惹かれる雌のソレが早くも漂ってくる。
リザの反応に俺は気を良くして、さらに彼女の股間へむしゃぶりつく。
陰毛からクリトリス、陰唇の上半分ぐらいまでを、口を開けて吸い付く。
歯を立てないよう、くちびるの弾力だけで揉みしだく。
先に指で堪能していた、恥丘の柔らかさを口で味わう。
効果は絶大で、リザは薄い壁を貫きそうな叫びを上げる。
こんな序の口からフルスロットルで飛ばされると、半分興奮で半分感心といったところ。
どこまで行けるんだろうか、とか、調子に乗ってぐちゃぐちゃやってたら、
リザの太腿でスリーパーホールドもどきを食らってしまった。
アメリカのファックはパワフルだ。
◆6
初めての挿入は、松葉くずしでやった。
仰向けに寝かせたリザ。俺がリザの右足を抱えて持ち上げ、左足をまたぐポジション。
リザの身体にひねりがかかって、不安そうな目で見上げられた。
リザの身体が柔らかいから、久しぶりにやってみたくなったんだが、アメリカには無いのか?
リザは、肌に張り付いた陰毛の端から、ぐっと窄んだ肛門まで、べっとりと粘る汁に塗れている。
俺は右手で位置を調整して、自分のペニスを挿入する。
リザの顔を見下ろしながら、熱くぬめぬめした粘膜の洞穴を押し開く。
リザは目をかっと見開き、首や鎖骨あたりに大きな筋を何本も浮かせていた。
初対面だったら、一気に醒めてしまいそうな形相だったが、
普段お高くとまっている女上司を言いなりにして追い込んだ結果、と思うと、かえって興奮した。
挿入してからも、陰毛をいじった。
松葉くずしだと、前後にピストンかけながら、右手で陰毛やクリトリスも攻められる。
また、リザは感じると太腿を急に閉じてしまう、というクセがあるらしいんだが、
彼女の両足に俺の身体が完全に割り込んでるから、攻めの邪魔にならない。
むしろ筋肉も脂肪もしっかりのった、熟れ気味の女体が悶える様に、こっちも体張ってお付き合いできた。
右手の指で、リザの陰毛を摘んで、抜けない程度に引っ張ってやる。
恥丘の肌が突っ張る度に、リザは身体をひしひしと痙攣させる。
ぬるぬるしてつかみにくいので、指の間に何本も挟んで、一気に引っ張る。
入れ始めのリザは、まだ色っぽいというか、女っぽいというか、男に媚びる余裕が残っていた。
俺を挑戦的に見上げて、胸はいいのか、とでも言いたげに、自分で乳を揉んでみせていた。
胸は、さっきクンニの時に見た姿と比べて、一回り大きく柔らかそうに見えた。
だが、胸は俺の手からちょっと遠い。なので、俺はリザを見下ろしながら抜き差しを続ける。
中と外を合わせて、俺がしつこくぐりぐり、ずるずるとやってやる。
また、俺が腰をガンガン使うより、リザの陰毛をいじめてやったほうが、
彼女の膣内がきゅうきゅう締まったり緩んだりして、楽に気持ちよくなれた。腰使わなくていいの、楽だからな。
そうしていると、だんだんリザの様子がおかしくなる。
リザの、血が滲み出そうなほど赤い肌に、しとしとと雫が散って、それがざわざわと広がっていく。
びくびくとした痙攣が、背中から、胸に、肩に、上半身全体へ波及していく。
しまいには『うぉおお』とか『んぉおお』とか、男でも出さないような喘ぎがリザから出てくる。
ここまでの過程を見ていなかったら、エクソシストか何かと勘違いしてしまうだろう。
俺は、もう入れたままリザを抑えつけて、ひたすら手をしゃかしゃか動かしていた。
リザの、威勢の良かった善がりが、掠れて、枯れて、目つきが怪しくなっていく。
背中を丸めたり、反り返らせたりして、リザが必死に俺の攻めをいなそうとしている。
でも、俺が上体を立てたまま、松葉くずしでリザの脚をがっちり固めている。
リザは、シーツを手で掴むことさえままならない。シーツの皺を増やすか、汗や涎を振りまくだけ。
さて、陰毛いじりを一通りやり尽くした俺は、リザの右足をベッドに下ろす。
俺は挿入したまま、上体を前に倒す。腕立て伏せの姿勢で、リザを下敷きにしたような具合。
腰と腰の結合部に、体重を少しずつかけていく。リザのぐしょぐしょに乱れた顔も近づく。
例の陰毛も、クリトリスも、膣内ごとのしかかり、ゆるゆると圧迫してやる。
その動きを続けていると、俺の腰に、リザが脚を絡めてくる。どこにそんな気力を残していたのか。
俺の仙骨のあたりで足組んで、リザも腰を揺すっている。脚が閉じて膣内の具合が変わった。
もう長く持たない、と俺はスパートをかけた。
俺が耐え切れず射精した頃には、リザも完全にグロッキーだった。
ベッドに轟沈した、リザのだらしない姿。キャリアウーマンの印象が抜けてない俺には、まだまだ新鮮に映った。
ロクに反応しないリザの身体を、後戯であちこちイタズラした。陰毛もこっそり何本か抜いて拝借した。
◆7
翌日のリザは、何事もなかった素振りだった。俺も表面上はそれに合わせた。
が、リザが俺にくれた『お守り』を、俺は大事に持ち歩いている。
さっさと大股で歩く、リザのスカートとストッキングの中では、
下着と、肌と、あの陰毛がじりじりとこすれあって、彼女を苛んでいるわけだ。
陰毛というか、恥毛というか、あるいは痴毛と言い表すのがお似合いだ。
リザは、あくまで自分の変容を認めていなかった。
俺が少しでもあの日のことを仄めかすと、リザは声を荒らげたり、うんざりした顔つきで睨んできた。
でも、そんなのはただのフリだ。
リザは、理由さえつけられれば、陰毛を伸ばして男に渡すような女だ。
車の中で、脚おっぴろげて、男に股間を晒すような女だ。
どんなに唐突でも、バカバカしくても、理由がついてしまえば、再び受け入れてしまう。
理由なんか、何でも良かったんだろう。
そうじゃなかったとしたら、ちょっと惜しいから、そう思い込むことにしている。
ともあれ、リザの上っ面をなだめすかして、またセックスに持ち込んだ。
リザの陰毛は前よりも繁っていた。わずかだったが、明らかに下着からはみ出しているのが分かる。
陰毛の濃い女は性欲が強いんだ、と聞かせてやると、リザは今更になって股間を手で隠す。
でかいケツ振りながら歩いてるくせに、乙女臭い反応しやがって。
リザはしぶしぶと言いたげな顔つきで、身体を許す。
俺が手や舌で陰毛に触れようとすると、イヤイヤと首を振って腰を捩る。
でも、正常位とか対面座位で入れて、盛り上がってくると、
リザは俺の肩に手を回し、俺の腰には脚を絡ませ、くいっくいっと腰を振って、俺に股間を擦り付けてる。
その動作は、オナニー覚えたての中学生のように、みだらというより微笑ましかった。
◆8
色々妙ないたずらもした。
ある日、出張先から二人で直帰している時だった。
各駅停車で、座りきれない乗客がちらほらいる程度の混み具合の電車に、俺たちは乗っていた。
車両の端っこ、連結部分の近くで、片手で吊り革を握って立っていた。
けっこうヘビーな案件だったので、背筋こそ伸ばしているが、リザはお疲れの様子。
俺も疲れていて、それで妙な考えを起こした。
あれからまた陰毛の本数を増やしたお守りを、俺は肩掛けかばんから取り出す。
リザの反応は非常に早く、俺がお守りを出して数呼吸としない内に、俺の手を掴んでかばんに押し戻した。
さすがのリザでも、自分の陰毛を公衆の門前に晒されるのは、ためらわれるらしい。
お守りだから直視はされないが、俺たちにとっては大差ない。
リザは俺を目で咎めながら、俺の手に握られたお守りを、手で引き離そうとした。
勢い、俺の肩掛けかばんの中で、お守りを挟んで絡む形勢になる。
これはこれで面白い、と思った俺は、リザの手にお守りを押し付け、擦ってやる。
リザの反応は露骨で、眉ががくんと上下した。キッと険しくなった目つきが、出会った頃を思い起こさせる。
が、釣り上がった眉も、何度もピクピクする内に、だんだん緩んで下がっていく。
周りの、特に目の前に座っている他の乗客を気にして、あちこち視線を泳がせる。
俺はリザの手を握ったまま、股間に対してそうするような指使いで、リザの手を愛撫する。
リザはもう片方の手で吊り革を握ったまま、両足から腰をわずかにもじつかせている。
俺にぶつけてくる視線が、怪しくなっていく。
荒い呼吸のまま歯を食いしばっているせいで、鼻息が荒くなる。
俺の手とお守りを握った、リザの手指が強張る。ヒールが落ち着かなげな音を立てる。
スカートに覆われたリザの下肢が、危ういぐらい蕩けているのは明らかだった。
その瞬間は、俺が思ったよりずっと早く訪れた。
もうがたついていたリザの二本の足が、不意にぴんと張られ、背伸びしたような格好になる。
リザの手は汗でぬらついていて、荒い呼吸は噛み殺しきれていない。
どうやら、これでイッてしまったらしい。
見かけだけは体調の悪そうなリザを見かねて、声をかけてきた乗客がいた。
リザは呂律の危ない日本語で応対したので、俺も話を合わせておいた。
リザの外見が明らかな白人だったので、日本語がおかしくても何とかごまかせたようだ。
電車を降りて、リザのスカートの中を確認すると、
だらだら垂れ流した汁が、下着から漏れるどころか、
ストッキングに張り付いて伸ばされ、尻穴から膝上まで濡れていた。
俺はリザを自宅に持って帰り、膝立ちもできなくなるまで犯した。
別れ際、ストッキング代がかさんで困る、とリザが呟いて、俺はつい笑ってしまった。
それがバレて、俺はリザにしたたか足を踏まれた。
◆9
一番悪乗りしたのは、リザをムリヤリ海水浴に連れて行ったことだと思う。
夏の終わり頃――最盛期に比べると、半分も人のいない――砂浜で、俺はリザに水着を着せた。
真っ白なハイレグビキニ。背が高く、脚の長いリザは、ハイレグがよく似合う。どんと突き出された胸も攻撃的。
ぎゅっとくびれて、うっすら腹筋が割れているのと、どっしりと肉のついた尻が、すさまじいコントラストだ。
そして例の陰毛は、ビキニパンツの布地を縁取るように、もしゃもしゃと姿を見せている。
横ならともかく、正面から見られたらバレてしまうだろう。
リザの白い肌は、もううっすらと汗を浮かせていた。
リザは羞恥を少しでも減らそうと、サングラスをかけていた。
興奮がすぐ目に出る点、彼女にも自覚があったようだ。
俺が先に砂浜を歩き出すと、リザは慌てて足を出し、俺より幾分前に出た。
リザの歩きっぷりは、なかなか見上げたもので、
背筋をまっすぐ立てて、サンダルのくせにスムーズな足運びで、
頑張って普段のスーツ姿のように歩こうとしていた。だが、リザのスタイルはさすがに目を引く。
俺もリザのすぐそばを歩いていたので、リザに注がれる視線はよく分かった。
颯爽と砂浜を闊歩しているようでも、よく見ればリザが盛っているのが分かる。
一番わかりやすいのが胸で、完全に乳首がビキニを浮き出させてしまっている。
下のビキニも、白い生地から陰毛が透けてしまっている。
リザは一時間ももたずに、砂浜から退却した。海にも入っていないのに、サンダルがびしょびしょになっていた。
まぁ、白人の肌は格段に焼けやすいから、一時間ぐらいで丁度良い焼き具合だったかもしれない。
そんな俺たちの別れは、唐突に訪れた。
◆10
アメリカに戻ることになった、とリザは告げてきた。
戻る理由は、あまり良いものではなさそうだった。
変態行為にのめり込み過ぎて、仕事がだんだんおろそかになっていたので、
それが関係している、と俺は勝手に推測した。
リザは、陰毛を剃って欲しい、と俺に打ち明けた。
もう俺と会えないのなら、こんなものには耐えられない、と。
たまの休日。朝早くに俺は、リザのマンションのドアを開けた。
そういえば、リザの自宅に招かれるのは、これが初めてだった。
リザはバスルームの椅子に座り、いつかのように足を開いて、俺に股間を見せてきた。
それにしても広い浴室だ。俺の自宅では、こんなに広げてしまったら、足をぶつけてしまっていただろう。
リザの陰毛は、濃度はそこそこながら、もう鼠径部から肛門近くまで広がっていた。
他の人が見たとすれば、ちょっと手入れサボってるな、ぐらいの外見だったが、
俺には一種の病巣に見えた。とすれば、俺はさしずめ外科医か。
陰毛は綺麗にしているようだったが、これだけ伸びたら、排泄の時に不便だろう。
入念にそこを洗っているリザの様子が、勝手に思い浮かんできた。
そこでリザは、俺がいじるときのように、興奮したりするだろうか。
俺はシェービングクリームを、まず手に塗った。
今朝、髭剃りに使ったばかりなのに、何だか手に馴染まない。
俺がシェービングクリームの泡を陰毛に塗ると、リザの下肢はびくんと震えた。
ほんの一週間前なら、それが性感の現れに見えたが、今は怯えているようだった。
俺がじっと眺めていると、リザは英語で急かしてきた。声もわずかに震えていた。
俺は昨夜買ってきた新品のカミソリを、リザの白い肌に添えた。
泡に隠れた陰毛が、そろそろと落とされていく感触がする。
リザの下っ腹に、何かの雫が落ちて弾けた。涙か、それともただの水滴か。
カミソリの冷たさが、陰唇に迫る。腿の付け根から、肛門まで撫でる。
リザは気丈にも、声一つ出さなかった。
バスルームには、俺がカミソリを洗って、泡を付け直す音しかしなかった。
剃毛はつつがなく進んだ。
カミソリで一通り肌を撫で尽くすと、俺はシャワーを手に当てた。
ぬるくなった頃合いで、手の平で受けて落ちていく水流を、リザの股間に向けた。
泡が消えて、陰毛が流され、タイルの上を滑っていく。
ややカミソリ負けした、パイパンの肌が顕になる。
俺は、それほど入念に剃ったわけではないから、
もし触ったていたら、まだ陰毛の感触が残っていたかも知れない。
でも俺は触らなかった。リザも触らせなかった。
俺たちの関係は、シャワーの水に打たれて消えた。
それからリザがどうなったか、俺はもう知らない。空港で見送ったはずなんだが、よく覚えていない。
連絡先も交換しなかった。手製のお守りも、持っているのが悪い気がして、捨ててしまった。
髭剃りにも、電気シェーバーだけを使うようになった。
それでも、ホテルなどでたまにT字カミソリを見ると、
もういなくなったリザのことを思い出してしまう。
(了)
40 :
名無しさん@ピンキー:2014/05/12(月) 13:12:58.02 ID:YsaKlmVt
age
他の人ほとんどおらんのなあ…ええけど。
見て欲しいところ、に絞ると
>俺は外資の日本法人に勤めていて、本社から出向してきたんだ。
>ショートの金髪を (略) うなじで結んでいる。
読み返せばわかるけど、「出向してきた」のが誰かでちと躓く。
ショートを想像してすぐ「結んでいる」はどれぐらいの長さを言っているのかよくわからん。
肩にかかるくらいの長さでもう「セミロング」やで。
行為に関して。
自分の体が固いからピンとこんのかもしれんけど、
松葉崩し、右足を抱えてる姿勢と書いてるのに右手で女性をいじるのは難しくないか?
ちょいちょい不思議な感じでひっかかる文章がある気がするけど、
他に「ここ変やで」ってはっきり言えるところは、自分にはよう見つからん。
空改行が若干多い気もするけど、これは好みの問題やろね。
洋モノ分と露出分はスパイスならええ配分ちゃうかな。陰毛はちょいとわからんけど。
タイトルは、洋モノ分がないからちょっと足らん感じするんちゃう?
黒髪純和風上司の陰毛処理と金髪白人上司の陰毛処理じゃ雰囲気違うで。
読み手としての感想だけど山場がどこかわからないというか
緩急なくだらだら続いてちょっと飽き始めたところで終わり、という感じだった
一人称の語り手のキャラも込で悪い意味で淡々としてる
(思い出語りだから性体験投稿とか手記風の作風を狙ったのかもしれないし
好みの問題かもしれないけど)
上でも指摘されてるけど、具体的にどこってわけじゃないけどなんか読みづらい
出来る金髪美女が実は! というギャップ萌えなのかもしれないけど
それにしては語り手のパッションが薄いしそのギャップを表現する描写も薄いし
やっぱり淡々としてて、設定の濃さとバランスがとれず読みづらさを感じるのかも、と思った
加えて、エロ創作への指摘として妥当かわからないけど、
その立場にいる白人女性がそういう思考回路というのは考えづらいのでは、とも思った
お早い感想どうも。
言われてみると、いろいろ雑だったかなぁという気がしてきた。
また会うことがあったらどうかよろしく。
e
あくまで個人的な印象だけど、、、
・男一人称で不自然な点が無いか。
(例えば、男が正常位で普通に挿入してるのに、女の肛門の描写がある、など、
「それお前から見えるのはおかしくない?」というような不自然さ)
これね、文章の固さの原因になってると思うんだけど、人間の視覚(記憶)ってもっといい加減な物なんだよ
見えないものが見えてたっていいの
事実でもあるけど妄想や思い込みや幻覚や願望やいろいろなものが入り混じるわけ
だから、翻訳小説風の一人語りでも、もっとやわらかい表現ができればもっと読み手がグッとくるはず
あと、比喩をうまく使ったほうがいいよ
彼女は−−で−−で−−だから、わたしはこう思った
じゃなくて、
彼女は−−−のようで、わたしはこう思った
もちろん、ぜんぶこうすればいいとかじゃなくって、すべて説明口調な気がするからそれが単調な原因かなと
最後に構成なんだけど
真面目にすべて書きすぎかなあと
A-B-C-Dで順に追っていくのを守りすぎな気が
ちいさい場面場面でもすべてそんな感じ
ご意見どうもです。
比喩は使ってませんでしたねぇ。
比喩の効果を読み手として個人的に実感できないんで、
書き手として効果的な運用ができていないですね。