255 :
名無しさん@ピンキー:2014/05/14(水) 16:44:00.29 ID:VUY3MYYW
最初はただちょっとからかってやろうと思い、押し倒して首に口付けた。
だが、黛が思いの外いい顔を見せたので、古美門はあともう少しだけという欲が湧き上がる。
あともう少し、この白い鎖骨に口付けたらどうなる?
あともう少し、その思っていたよりは大きめな乳房に触れたらどうなる?
あと、もう少し…
古美門の止め処なく湧き上がる衝動を押し留めるには、黛の初な反応は却って逆効果だった。
「せんせっ…やぁ…」
黛はあられもない嬌声を我慢することが出来なかった。
古美門が声を出すまいと自らの口を押さえていた手を引き剥がしたから。
「黛…」
「スーツ、皺くちゃになりますからぁ…」
「だったら脱がせば文句ないな?…僕もまどろっこしい思いをしなくてすむ」
「そう、じゃなくて…!」
古美門は言うなり自らのシャツを脱ぎ捨て、黛の乱れた上着のボタンを外していく。
「おたまじゃくしには容量不足でフリーズかな?だが、生憎どうやらこちらも思っていたより余裕が無さそうだ」
「…っ!」
古美門の瞳に強いものを感じて、黛は気後れする。
黛もまた初めて見る古美門の雄としての顔に、何時もとは違う強者と弱者の立場の違いを感じていた。
書き逃げ、あと次の人よろしく
神々GJ!やり逃げいやんw
257 :
255:2014/05/22(木) 00:19:32.27 ID:YwfVBYts
255です。
本編最終回見直してて、うっかりコミーがシャツじゃなくてバスローブだったのに気づいて
255の後半変えてみました〜
…すみませんorz
258 :
255:2014/05/22(木) 00:40:55.79 ID:YwfVBYts
「そう、じゃなくて…!」
「では、容量オーバーのポンコツおたまじゃくしに頭を冷やす時間を与えよう。僕は全く構わないが処女の君はこのまま抱かれるのは抵抗あるだろうからシャワーを浴びてくるのを許可する。
その間にゆっくり考えたまえ。本当に僕に抱かれてもいいのか否かを。ただし時間は最長30分、それ以上は1秒たりとも待たないし待てないからそのつもりで」
古美門に一気にまくし立てられ、まだ古美門の愛撫の余韻に混乱したまま黛はシャワールームに消える。
(そういえば、貴和さんから何か預かってたんだった…シャワーを浴びてから見てみよう)
ちょっとよれてシワになったスーツを脱ぎ、熱いシャワーを浴びているとだんだん落ち着きを取り戻す。
以前羽生を誘ってみた時は清水の舞台から飛び降りるような気持ちだったが、今回は流されるまま、というか遊園地の開園直後にいきなりジェットコースターに乗らされたような気持ちだった。
(いきなりだけど…嫌な気持ちはしなかった)
あの日の最悪な出会いのあと目標にして、ずっと追い掛けてきた男、古美門研介。罵詈雑言と数々の非道な仕打ちの裏でいつしか惹かれていた。
その彼が、私にいつも色気がないと罵ってる彼が私に欲情し、抱きたいと言っている。
――今、逃してしまったら――
心を決めて、シャワーのコックを閉める。
脱衣所に戻り、安藤貴和から預かっていた紙袋の中身を覗きこむ。
「…?」
何やらシルクサテンのような生地が見える。そのまま中から広げてみたところ、黛の想像もしなかった物が出てきた。
「うぅぇっ!?」
「何やらカエルが潰れたような声が聞こえたが、それは僕にこっちへ来いという事か?」
「や!ちょ、違っ…今出ますから!」
とは言ったものの、貴和からのプレゼントにバスタオルを巻いただけの黛は困惑する。
他に何かないかと紙袋を再び覗けば、メッセージカードが見えた。
『これなら幼稚園児も
小学校位にクラスチェンジ出来るわよ』
「これでどうやって隠すの…」
黛の両手のひらから少し余る位の下着を前に、ただ時間だけが過ぎて行った。
ありがとうごぜえますだ
ありがとうごぜえますだ
260 :
255:2014/05/23(金) 21:39:14.48 ID:72G10H8v
一方その頃、黛をシャワールームに送り出した古美門は一人ベッドの端に腰掛けていた。
安藤貴和め、ナメた真似を…
しかしそうとわかっててここへ黛を呼び出した訳でもないだろうが、思わぬ収穫はあった。
思っていたよりそそる体つき、ちょっと触れただけでも初な反応。
――それに。
過去様々色々な女性を抱いて来たからわかる。
黛とは相性がいいのだ。
今だけでもうっかり夢中になりそうだったが、この先色々教えて行ったならもっと。
「うぅぇっ!?」
古美門は胸と下半身が熱くなるのを感じていたが、黛の突然の奇声によって中断させられた。
まったく、ちょっと色気が出たかと思えばやっぱり朝ドラポンコツおたまじゃくし。
「何やらカエルが潰れたような声が聞こえたが、それは僕にこっちへ来いという事か?」
浴室近くでわざといつもの調子で言ってみる。
すると、慌てふためいた調子の黛の返事が来た。
「や!ちょ、違っ…今出ますから!」
状況が状況だけに黛の顔が容易に想像出来、古美門はついつい頬が緩む。
何があったかは知らないが、まさか自分が来るとは思いもよらなかったのか軽くパニクっているんだろう。
ふと時計を見やる。約束の30分は過ぎていた。
しかし件の黛は一向に浴室から出てくる気配はない。
先ほどの様子からは特にどこかぶつけたという訳ではなさそうだったが…
「まーゆーずーみ!さっき自分で『すぐ出ます』と言っておきながら約束の時間はとうに過ぎているんだぞこのオッペケペー!」
ドスドスと足を慣らして勢い良く浴室のドアを開ける。
そこには、バスローブ姿で自らの体を抱き締めるようにしてしゃがみ込んだ黛の姿があった。
「怖じ気づいたか」
「違います」
「では何故出て来ない!まさか処女の朝ドラポンコツおたまじゃくしのクセに焦らしプレイとは恐れ入ったよ」
「…さんが」
「ん?」
「安藤貴和さんが、これならって」
のろのろと立ち上がった黛の姿に、古美門は絶句した。が、俯いて赤面している黛はそれに気付かず、必死で裾を引っ張っている。
「もうこれ着てる意味ありませんよ!お尻隠れてないし…お、お尻だって、こんなの…」
前を留めていないバスローブの間から見えたのは、いつも黛が着ているコートと同じレモンイエローの…ベビードールだった。
「それを安藤貴和が?」
「…はい」
「どこまでも味な真似を」
貴和姐さnGJGJ!神よおいしゅうございます
262 :
255:2014/05/29(木) 11:51:24.86 ID:r3sFUf3C
すみませんちょっとageて聞いてみたかったので
リレー小説みたいになってるけども、時間かかっても私が最後まで書いていいでしょうか?
(まだ途中なのでupできませんが)
是非お願いしますm(_ _)m
パラレルあってもいいし
265 :
255:2014/06/04(水) 11:07:02.19 ID:eDK+kqDD
255です。
了承を得たので、ひとまず出来上がったところまで。
☆
古美門の呟きは黛に聞き取れなかった。
「何か言いました?」
「いや、君は結局最初から安藤貴和のスケープゴートだったのかとね」
「………」
「で、黛くん。その格好は覚悟が出来たと見做して構わないということかね」
黛はピクリと肩を震わせ、半分古美門を睨み付けるような上目使いで見つめる。
「でなければ、こんな格好してません」
「結構な心がけだな…だが」
古美門の両手が黛の頬を包むようにそっと触れる。
黛はキスされるのかと思いドキドキしながら瞼を閉じるが、古美門はそのまま力を込め、黛の頬をつねった。
「こういう時にはもう少し色気のある視線で見上げるものだよこのがに股ポンコツおたまじゃくしのあーさードーラー!」
「ひたたた!…つねらなくてもいいじゃないですかぁ」
フン、と鼻を鳴らして先に歩いて行く古美門の耳がうっすら赤い。黛はつねられた頬を撫でさすりながら、どうやら安藤貴和の策略によるこの格好は、効果があったようだとこっそりほくそ笑んだ。
古美門は黛の先を歩きながら、脱衣所でバスローブの合わせ目から見えたベビードール姿を知らず知らず反芻していた。
ベビードールは嫌いじゃない。しかしいつも着ていたコートと同じ色とは。
黛の健康的な色気がより眩し…いやいや、無駄に裾を引っ張ってはチラチラ見えるTバックを必死に隠そうとしている様がまた可わ……いやいやいやいやいや!
「先生?」
黛の声で古美門は我に返る。
気付けば二人、ベッドルームのベッドの前で立ち尽くしていた。
(百戦錬磨の千人斬りもかくやという法曹界きってのセックスシンボルの僕が、この据え膳の状況下でそこらの素人童貞のように手をこまねいている訳にいくまい)
「黛くん」古美門は半ば自分の動揺を悟られまいと、背を向けたまま黛に問う。
「処女なのはわかっているが、キスは経験済みだろうか――おっともちろんあのバカ父や犬猫の動物の類に小さい頃、それこそ幼稚園児なんてのはノーカンだからな」
十中八九未経験に違いないと先手を打って畳みかけたが、意外にも黛の答えは違っていた。
「……一度なら」
「そうだろうそうだろうさすが提灯パンツの――なんだって?」
お決まりの人差し指を立ててベッドサイトを歩き始めた古美門は思わず振り返った。
266 :
255:2014/06/04(水) 11:09:10.58 ID:eDK+kqDD
「小学生の頃ですけど。隣に住んでた仲のいい男の子が引っ越す時…」
きゃあ恥ずかしい、と黛は自分の格好も顧みずにいつしかベッドサイドに腰掛けて一人もじもじしている。
「…いかにも朝ドラらしいエピソードだな。じゃあこちらとしても遠慮はしない」
胸中をざわつかせる見ず知らずの少年への静かな嫉妬心を隠しながら、古美門は黛の頭を引き寄せ、噛みつくような荒々しいキスをする。
そんな甘酸っぱい記憶なんてクソ食らえだ。
今からそれ以上のすべての事を上書きして行ってやるから覚悟しやがれ――
「…せ…っう…」
苦しさのあまり顔をずらして呼吸しかけた黛の頭をがっしと掴み、開きかけの唇から無理矢理舌をねじ込ませる。
古美門の舌は黛の口腔を縦横無尽に蠢き、全てを味わい尽くす。
それ自体が別の生き物のように蠢く古美門の舌から逃れるが、
『絡めろ』と言わんばかりの古美門の舌につつかれ恐る恐る舌を伸ばすと、絡め捕られ、吸われ、時には甘噛みされて
口の端からこぼれ出る唾液にすら構う隙がなかった。
やっと唇が離れると、苦しさと余韻とで呆然としている黛に古美門の指が優しくこぼれ落ちた唾液を拭った。
「大人のキスの感想は?」
「びっくりして何がなんだか…」
「では質問を変えよう。気持ちは良かったか」
黛の頬がぽっと赤くなる。
「…はい」
「いい顔だ。ではもう一度」
そう言って古美門は再び黛にキスをする。今度は小鳥が啄むように優しく。
「…?」
数回触れるだけのキスをした後、古美門の動きが止まった事で黛はゆっくり瞼を開けて見ると、そこには口の端を意地悪く上げている古美門の顔があった。
「何なんですか」
「何とも物足りなさそうな顔してるからねぇ。処女で変態の女神様はさっきみたいに超〜〜〜濃厚なキスをご所望かと」
「『もう一度』と言ったのは先生じゃないですか」
「確かに言ったが『同じキス』とは一言も言ってなかったが?」
黛も古美門に負けずに口を尖らせて反論する。
「普通同じキスだと思うじゃないですか!」
「フン、そこが甘いというか男女の機微というか駆け引きがわかってないなポンコツおたまじゃくし。さすが処女だけはある」
その言葉を聞いて黛は黙って俯いてしまった。
(さすがに意地悪が過ぎたか?)
古美門が一瞬ほんのちょっとだけ思った時、黛が顔を上げて視線がぶつかる。
「じゃあ」
267 :
255:2014/06/04(水) 11:11:32.32 ID:eDK+kqDD
そのままパタリと腰掛けていたベッドに倒れ込む。
「全部、先生が教えて下さい」
(こいつ…!)
古美門は雷に打たれたような衝撃を受けた。
――無自覚なのか?処女らしい、いやある意味体当たりの黛らしいとも言えるが、ベビードールとTバック姿という扇情的なその格好とその言葉で揺れない男は居まい。
欲を言えば、ベッドに引き寄せ耳元で甘く囁いてたら文句無しだが…
ベッドが更に沈む。古美門が膝をつき、黛の脇に手をついた為だった。
「…宜しい。君にしては実に悪くない答えだ」
古美門は吐息混じりに、一層甘く低く囁く。
(今もしかして誉められた?…あっ)
古美門が近付いた時、黛はどきんとした。古美門との距離でも甘い囁きでもなく、自分と同じ香りが漂っていることに。
(ホテルのアメニティだから当たり前なんだけど、なんだかちょっと嬉しいな)
ふふ、と思わず頬が緩み、キスしようと顔を近付けていた古美門に不審に思われる。
「今度はなんだ」
「え、いやその…同じ香りだなぁと思って」
ああ、と古美門は合点がいったような表情で黛に「朝ドラらしい微笑ましい考え方だねぇ」と皮肉気味に言う。
黛は再び反論しようとするも、古美門の唇によって拒まれた。
先ほどの意地悪なバードキスとは違って、今度は唇を食むように深い。
やがて古美門の舌が黛の唇をなぞるように動き、そのまま侵入の予感に薄く開いた黛の唇の間から舌を滑り込ませる。
「うん…っ」
侵入を許した古美門の舌は歯列をなぞり、歯の裏側や上顎、下顎までも丹念になぶる。
(えっ?さっきと違う…何でそんな動きなの!?というか、息が出来ない…!)
最初のと似たようなキスと思っていた黛は、二度も古美門の濃厚なキスの仕打ちで、体の芯で今まで知らなかった何かがくすぶり始めたのを感じていた。
「…はあっ…苦しっ…」
お互いを銀色の糸が繋ぐ位の長いキスが終わり、ようやっと唇が離れると黛はぜいはあと肩で息をつく。
一方の古美門は殆ど息も乱れずに落ち着いているように見えた。
「どうせポンコツおたまじゃくしの事だ、息を止めてたんだろう」
「どうして…落ち着いてるんですか…」
「鼻で息をする事を覚えろ。キスの最中で口だけで呼吸を繋ぐのは海女やジャック・マイヨールでもあるまいに、常人では不可能に近い」
「鼻…」
「まさかと思うが鼻もわからないとか言うんじゃないだろうな」
268 :
255:2014/06/04(水) 11:16:21.19 ID:eDK+kqDD
呼吸困難と濃厚なキスの余韻でまだぼんやりとする黛の鼻の頭を古美門は甘噛みする。
黛は古美門の思わぬ行動とその感覚に驚き、つい口から甘い嬌声が零れた。
「ひんっ」
「とりわけ神経が集まってる箇所と皮膚の薄い場所、体の高くなってる場所が性感帯だ。…こんなところも」
「え…あっ…!」
ベッドから少し浮いていた隙間に古美門の左手が入り込み、指が背骨から肩甲骨の形をなぞる。黛はぞわぞわと這い上がってくる得体の知れない感覚に背中を逸らしていった。
(何…これ…)
「やっぱり変態の女神様だけはある。人とは少し違うところが感じるんだな」
「違っ…」
古美門はわざと耳元で囁く。
「何が違うんだ?」
「せんせの指が…気持ちいいから…」
お互い顔が近い為、黛もまた古美門の耳元に囁く形になっていた。
黛のその囁きに、リードしているはずの古美門の方が余裕を失いかける。
(なんだなんだなんなんだその挑発的な台詞は!黛の癖に!処女の癖に!いくら相性がいいからとはいえ、まだおっぱいもロクに触ってないというのに…!)
古美門の脳内に警鐘が鳴り響く。
(まずいまずいまずいぞ…まだキスとほんの少し触れただけでこれではこの後は一体どうなる…!?これきりではなく全て僕が、僕の手で教えて行きたくなるじゃあないか!)
☆
今回ここまでです。
ついナンバリング付けるのを忘れてたので
次回何レスかとナンバリング付けておきますorz
GJ!ありがとうございます!
真知子のセリフがどれも可愛いくてたまらない!!
ああああありがとうございます!!
神様変態の女神様!素晴らしい!
271 :
255 1/6:2014/06/13(金) 08:02:44.95 ID:xOwhTkqo
255です。
>>268からの続きで6レスお借りします
☆
古美門はバスローブの紐をするりと解き、いつも法廷でコートを投げるように鮮やかに放物線を描いてベッドの外に脱ぎ捨てた。
黛の引っ掛けていただけのバスローブも前を開けて脱がせると、よりセクシーなランジェリー姿が際立つ。
(処女じゃなかったらすぐにでも挿れたいが…だが焦りは禁物。優しく緊張をほぐして、濡れ濡れトロットロのぐっちょんぐっちょんの状態にするまでぐっと我慢だ…!)
古美門が素晴らしく不埒なことを考えている間、黛は素肌が触れ合った時の磁石のようにぴたりと馴染む感覚に驚いていた。
(素肌が触れ合ってると無防備だけど気持ちいい…だから皆、こういうことするのかな)
「何を考えてる」
「え…あっ」
いつの間にか古美門の右手が黛の左胸に置かれていた。
「こんな最中に考え事とは余裕だねぇ?ポンコツおたまじゃくし」
「んんっ…!だ、って…先生の肌がっ…すべすべしてて、気持ちいい…からぁ…」
やわやわと胸を揉まれて、黛は身を捩らせる。
(だああああっ!また何て可愛いことを言うんだこの女は!すべすべして気持ちいいのはお前の肌の方 だろうが!)
出来るだけ平静を装って、古美門はいつものように不遜な態度で切り返す。
「それはいつも平民のおたまじゃくしが使うのとは全然違う高級入浴剤や、高っ級ボディーソープを使ってるからねぇ?加えてこの筋肉美と溢れかえるフェロモン!いくら処女のポンコツおたまじゃくしと言えどもたまらんだろう」
古美門の自己陶酔気味の言葉に黛は香るように微笑む。
「先生はいつも格好いいです」
(なんだか素直に言えるのは、やっぱりお互い直接肌が触れ合っているからかな)
いつものやりとりとは違い、思ってもみなかった黛の言葉に瞠目するも、再び古美門は自分のペースに戻して続ける。
「処女でがに股のカニ味噌頭の君に、ベッドでのリップサービスなどという高等技術があるとは思わなかったよ」
「お世辞じゃありませんよ!口に出さないだけで、本当はいつも思ってました」
…その髪型以外は本当に格好いいです、というのをぐっと飲み込んで、そっと古美門の頬に触れる。
「先生が、好きです…大好きです」
うっすらと瞼に涙を浮かべる黛に、そんなド直球過ぎる告白に自分の方がちょっと泣きそうになったじゃないかと古美門は思った。
272 :
255 2/6:2014/06/13(金) 08:05:06.82 ID:xOwhTkqo
「――もうお喋りの時間は終わりだ…続けるぞ」
と、敢えてその返事はせずに黛の肌に手を滑らせる。
――弁護士としての技術もキャリアも、まだまだこのがに股ポンコツおたまじゃくしのカニ味噌頭の朝ドラヒロインには負けそうにはないが…二人の関係性という点では、仮に、もしも百億万歩譲ったとして、ひょっとしたら僕はもう――
黛の肌に口付けながら、ぼんやりと古美門は考えていた。
処女だから、というだけではなくてただ愛しむように触れていく。言葉に出来ない想いをひとつひとつ伝えていくかのように。
額、頬と愛撫というよりは忠誠を誓う騎士のように恭しく口付ける。
黛はそれが以前自分が暴行を受け傷を付けられた箇所と気付き、それが自分の告白の返事を表しているのだと知ると胸が熱くなった。
「…好き」
「どうした。さっきのだけでは足りなかったのか?」
「ええ足りません。それだけ先生のことが好きなんで、覚悟して下さいね」
いーっと歯を剥き出して古美門に宣戦布告する。
「全くどこまでも色気が無いな」
「それは先生が引き出して下さい」
「よーしわかった!色々エロエロぐっちょんぐっちょんなスゴいことして『ああんもうこんなの初めてダメダメ死んじゃう〜』と言わしめてやるからな覚悟しておけポンコツおたまじゃくし!」
「臨むところですよ」
二人顔を見合わせふふと笑い合う。殆ど裸同然で男女が抱き合っているというのに、睦言というにはあまりに程遠すぎる会話だった。
「黛」
不意に真摯な眼差しで見つめられ、体温が上がった気がした。
「優しくはするが…少しでも痛かったり怖くなったら言ってくれ」
ついさっきとんでもない事を話していた男と同一人物とは思えない。
「はい」
「それともう一つ」
黛のその返事を聞いて安堵したように古美門は耳元に口を寄せて囁いた。
「実際初めてなのだから『こんなの初めてぇ〜ん』は言ってもいいんだからな」
言葉の意味だけでなく、声の優しさとその吐息が擽る感覚にかあっと全身が熱くなる。
「いっ、言いません!」
はははそりゃ楽しみだ、と古美門は軽やかに笑って、常日頃ぺったんこと揶揄の対象にしている胸に改めて触れる。
「…ん、っ」
古美門の手が大きいので、実際それ程小さくはないと自分では思っている乳房はすっぽりとそこに収まる。
273 :
255 3/6:2014/06/13(金) 08:07:02.43 ID:xOwhTkqo
触れられてるのが左胸の為、既に心臓の鼓動が早鐘のようになっているのが古美門に伝わってるのかと思うと余計に早くなってしまう。
「すごい早さだな」
(速攻バレてる!)
「こんな事したらもっと」
言うなり古美門は置いていた右手をすぼめ、そのまま乳首を摘む。
「あっ」
更にこうすると、と古美門が摘んだ乳首を指の腹で優しく擦れば、びりびりと電流に似た刺激が黛の体の内側を駆け巡った。
「ポンコツおたまじゃくしと思っていたが、しっかり感じてくれて嬉しいよ」
「な、んでっ…」
「乳首が立ってるぞー」
それが感じているサインなのだと今まで全く知らなかったので、黛は益々羞恥で体が熱くなる。
「大きさは後から割とどうにか出来るが、感じ方は最初から悪くはない」
喉の奥でクッと軽く笑うと、シルクサテンの薄布に包まれていた乳房を剥き出しにし、赤子のように乳首に吸い付いてきた。
「や、あ」
――こんな感覚知らない。乳首を吸われているのに、何故体の内側から訳のわからない衝動が湧き上がるのか。何故堪えきれなくて身を捩らせてしまうのか。
捩らせた際、膝や太股が古美門の太股に摺り合わせるような感覚になり、それすらも湧き上がる衝動の後押しになる。
「こーらー」
「…何です、か」
口は離したものの、大きな手はまだ黛の乳房の辺りを撫でている。
「お行儀が悪いねぇ?ああ勿論君は無自覚だと思うが、さっき話したように優しくするつもりなのに、煽るだなんて全く驚いたよ」
「あお…る?」
とろけ始めた思考は古美門の言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
「!そんなことっ」
「悪いとは言ってない。むしろ大歓迎だし、初めてだから冷凍マグロとばかり思っていたから嬉しい誤算だ」
冷凍マグロの意味するところはわからなかったが、嫌われてはいないことに安心する。
「だが、まだまだだ」
黛の肩を掴むと体を90°回転させ、既に着けている意味を成さないベビードールを脱がせると、背後からに肩に口付ける。
「あっ」
背中側からするりと伸びてきた古美門の手が乳房を包むと、同じ手なのに正面からとはまた違った感覚に黛は背を反らす。
「君はさっきここが弱かったよな」
そう言うと古美門は肩甲骨の下の窪みにちろちろと舌を這わせる。
「んあぁ!」
乳房や性器とは違い、特別な箇所では無いのにこんなに弱いということがより黛の恥ずかしさを煽る。
274 :
255 4/6:2014/06/13(金) 08:12:21.83 ID:xOwhTkqo
そんな黛を逃すまいといつの間にか古美門の両腕ががっしりと体に回され、密着した体から自然に古美門の下半身の高ぶりも黛の知るところとなる。
――お尻の辺りに当たってるこれ…先生の…?
殆ど性知識に疎い黛と言えども、さすがに「それ」が何なのか位はわかる。
「どうした?…ああ、おたまじゃくしでも気付いたか」
古美門はわざといやらしく腰を擦り寄せる。
「だが何度も言ったように君は初めてだから、ここの準備を入念にしなければいけないから、まだまだお預けだ」
「あ、あぁ!」
辛うじて二人の間を隔てていたTバックを軽く引っ張って、わざと食い込ませる。
「今日は焦らずとも、そのうち君が望むなら望むだけ抱いてあげよう…その時を楽しみにしたまえ」
その言葉はどこまで黛の耳に届いたのか。
ただ黛は、もう古美門の愛撫を甘んじて受けるだけだった。
「ふあっ、んあぁ」
僅かなレースに肉芽が擦られ、もどかしい刺激にたまらず腰が揺れる。その間もちゅ、ちゅっと背中に口付けられる。
「直接触るぞ」
肩を引かれ、柔らかなベッドに仰向けにされる。その僅かな隙にレモンイエローのTバックが剥ぎ取られた。
「あ…っ」
僅かとは言えさっきまで布地に覆われてはいたが、今度は直に下半身が空気に触れる感覚に恥ずかしさがこみ上げるが、すかさず古美門の右手がそこに触れてきた。
「んあぁ…やっ…」
「『やだ』?本当に?」
「………ぃじ、わるっ…」
古美門の声が興奮の色を帯びる。黛の媚態に徐々に余裕がなくなっていく。
古美門は黛を宥めるように唇にキスを落とすと、愛液を掬い取り、その滑りを借りて肉芽を擦る。
「ふああぁ…うんんっ…」
古美門は空いた左手を黛の右胸を揉みしだき、左胸の乳首に吸いつく。
あまりの強烈な刺激に黛は大きく背を反らし、未だ経験したことのなかった大きなうねりに身を任せた。
「んんっ…ひ、っあぁ!」
(…イったか)
古美門は絶頂を迎えた黛の姿に悦に入る。
「…えっ…?」
初めての絶頂にくったりとした黛の両脚を割り、まだぬめりの残る中指を黛の膣口にあてがい、つるりと差し込む。
黛は異物感に驚くが、すぐに古美門がその指をぐるりと内部で円を描くように動かしたので、抗議の声を出す暇もなかった。
「んうっ…」
275 :
255 5/6:2014/06/13(金) 08:14:52.11 ID:xOwhTkqo
「わかるかおたまじゃくしー、これが君の純潔の証拠、処女膜だ。そしてもう少し慣らしたらここに私のモノを挿入し――君の全てを奪っていく」
そう言いながら人差し指も差し込み、今度は内部をかき混ぜるように動かせば、また黛の体が反る。
「んはぁっ…うんんっ…」
古美門はもう少し黛を追い立ててやりたい衝動に駆られ、指は入れたままでまだぷっくりとしたままの肉芽に舌を這わせた。
「――!」
「ぶっ!」
びっくりした黛が股を閉じたので、古美門の頭を挟んでしまう。
「このポンコツおたまじゃくしの朝ドラ!人類の宝である僕の頭を太股でカニばさみとは何事だ!」
「だ、だってそんなところ舐めるなんて思わないじゃないですか!」
「んっ…舐めるのが何が悪い?」
わざと黛の目を見ながら全体をベロリと舐め上げた。
「んんっ…!き、汚いですからっ…!」
黛の抗議の言葉も虚しく、古美門は更に舌を這わせながら続ける。
「シャワー浴びたから…はあ、いいじゃないか。クンニリングスという…んっ…ポピュラーな性技の一つなんだからな」
「それっ…でも…っんうっ」
「気持ちがっ…悪いなら…っ、止めてやるが」
あっさり口を離し、割り開いていた黛の太股の内側に吸い付く。
「…っ!」
相変わらず古美門の指は内部を蠢く。時には角度を変えたりして内壁を擦るようにすると、喉から勝手に声が漏れ出た。
「…っ、く、せんっせ…」
意地悪しないで、と言葉の代わりに黛の目にうっすら涙が溜まる。
その涙を見て、古美門の方がは白旗を上げた。
「あまり長引かせて僕自身も君に入れられなかったら本末転倒だしな」
「あ…っ、あ!」
言うなり肉芽を唇で食み、先端を舌先で転がすと、黛の声が一際大きくなる。
膣口からはとろとろと愛液が零れ落ち、より古美門を煽る光景が広がっていた。
(そろそろか)
古美門は口元を軽く手の甲で拭い、
「ちょっとだけ待ってろ」と告げると慣れた手つきで先に用意しておいた避妊具を装着する。
黛の息が整うより早く覆い被さると、何故か入れはせずにお互いの性器同士を擦り合わせていた。
(いよいよ…先生と一つになるんだ…)
「っ…せんせ…」
「待ってろ。このゼリーだけよりは、ずっと入れ易くなる」
数回擦り合わせたあとで、片足を肩に担いでぴたりと先端を膣口に合わせ、ゆっくりと身を沈める。
「ぅああっ!」
276 :
255 6/6:2014/06/13(金) 08:19:47.29 ID:xOwhTkqo
さっきまでの指とは全く違う異物感と熱さに震える。
「…痛いか」
言葉の代わりにふるふると首を横に振る。
「…った」
古美門の声が掠れて聞き取れない。
黛はもう一度聞き直そうと思ったが、更に侵入して来たので言葉にならなかった。
「く、ぅんんっ…」
「…っ…う」
じわじわと自分の中を侵す質量が増えて、漸く古美門の動きが止まる。
「黛…」
「…せんせ」
「全部、入った…苦しくはないか」
「大丈夫、ですけど」
「『けど』?」
「すごく、熱いです…」
げにおそろしきは天然無自覚、という言葉が古美門の脳裏を過ぎる。
黛本人にすれば至って素直な感想なのだろうが、この状態では下手すれば暴発もしかねない。
「僕も熱い…とても熱くて、気持ちいいよ」
最後に『黛』ではなく『真知子』と囁いて。
緩やかに腰を動かせば、突き上げる瞬間に黛が嬌声を挙げる。
「は、ひぁっ…んあっ…!」
「まゆ、ずみっ…」
古美門の手が黛の手に絡められ、ぎゅっと力強く握られる。
「せんせ…っ、せんせぇ…っ!」
「…はあっ…はあっ…黛ぃっ…」
「すきぃっ…せんせぇ、すき…っ…」
古美門は黛の言葉には答えず、唇を奪う。
夢中で唇を貪ったあと、腰の動きは休めずに汗だくの状態で話し始める。
「…っがに股、ぺったんこの、カニ味噌、頭っ…」
「…?」
「アッパラパーのっ…オッペケペー、朝ドラっヒロイン…っ!」
いつもの罵倒で気を紛らせてないと、すぐにでも出してしまいかねなかった。
「…ポンコツっ…おたまじゃくしの……黛っ…」
古美門は黛に覆い被さったまま肩を掻き抱き、より体を密着させる。
「真知、子っ…!」「――!」
その瞬間古美門は黛の中に熱い迸りを放つ。薄いゴム一枚隔てながら黛もまた、その熱い感触に体が震えた。
277 :
255 7/7:2014/06/13(金) 08:24:06.44 ID:xOwhTkqo
・
・
息が整うと古美門は黛から自分自身をずるりと引き抜くと、にやりと口の端を上げて笑う。
「…ふ」
「?…どうしましたか」
黛が上半身だけゆっくりと身を起こす。
「君に今のを見せられなかったのが実に残念だよ。避妊具を着けて致したというのに抜いた時には君のぐっちょんぐっちょんの愛液に塗れていやらしく糸を引いていたからねえ。処女相手でも痛みを感じさせずに出来たことだしああ全く自分のテクニックが怖いなあ!」
先をつまんでするすると避妊具を外し、ティッシュで名残を拭いながらも落ち着けばやっぱりいつもの古美門だった。
「ぐっ…み、見たくありませんよ!」
「はははー今は見られなくとも」
まだ寝転んだままの黛の額に自分の額をくっつける。
「これから君に色んな事を教えてあげよう」
真っ直ぐ目を見つめたままのその微笑みは、黛にとっては悪魔の誘惑にすら思えた。
「…先生」
黛は口をついて出ようとした言葉をぐっと飲み込み、ずっと言えなかった言葉を口にする。
「首輪、着けたままです」
『リーガハイッ!』
END
☆
改行規制で1レス増えてしまってすみません!
しかも2期9話の法廷のような格好良くてスマートな古美門のはずが
どうしてこうなったorz
お目汚し失礼しました
ありがとーございます!
素晴らしい!
GJ!ありがとうございます!
「真知子」呼びに感極まって、涙出そうになった
280 :
名無しさん@ピンキー:2014/06/20(金) 18:50:23.64 ID:9ATYENAT
黛「アアーンセンセー アアーン」
こみー「キモイ」
リーガハッ!
>>277 エロい、かわいい、オチありで面白かったです
ありがとう!w
エロ無しですが投下。元ネタの歌になぞったらどこかで見たような話の上、こみーがただのヘタレです。
『すごくこまるんだ』
「それでは私はこれにて失礼致します」「ああ、ありがとうございます。お疲れ様でした」
我が事務所の優秀な事務員兼執事と言ってもいい、身の回りの世話をしてもらっている服部さんが今日の仕事を終えて帰宅するのを、ソファーにゆったりと腰掛けたままで見送った。
「信じております」
と、一言僕に釘を刺すのを忘れずに。
――それもこれも。
今回の大きな裁判の勝利のあと、服部さんの美味しい料理と良く合うシャンパンをうっかり飲み過ぎ、結果こうしてすやすやと無邪気に僕の隣で肩に頭を乗せて寝息をたてているこのポンコツおたまじゃくしこと、黛真知子のせいだ。
僕がこいつにあやまちを犯すなんてことは、こいつが僕に勝つことと同じく有り得ないというのに。
「ん…」
とはいえ、僕が品行方正で理性しか持ち合わせて居ない紳士だからいいものの、こいつの酒の弱さと酒乱ぶりはもっと危機感を持った方がいい。
今日はそこまでくだを巻かなかったからいいものの、迂闊に接近して勘違いしてしまう輩も居ないとは限らない。
いくら色気無しのぺったんこだとは言え、変質者という者は性別が女性だというだけで構わないらしいのだから。
その時ぐらりと黛の頭が動き、僕の膝に崩れ落ちた。
やれやれ、これでやっとこいつも起きてくれるかと思いきや、驚いたことにまたむにゃむにゃと寝続けている。
しかも、困った事に肩では頭を乗せていただけだったのが、完全に上半身がもたれかかっていて、黛の白い手が僕の膝に置かれていた。
――ちょっと、まずいな。
いくら相手は色気無しのぺったんこ、僕は理性しか持ち合わせて居ない紳士とは言ってもこれは。
頭は左腿に、ぺったんこながら温かく柔らかい胸は右腿に、凭れた黛の右手は右の膝頭に触れている。力なく投げられた左手だって、左腿を抱えるような格好になっていて…とどのつまりは、動けないのだ。重さ的な意味ではなく。いや決して軽くはないが。
いっそ星一徹が卓袱台をひっくり返すがごとく、僕の膝から退きはがしてしまえば楽なんだが、何故だかそれも出来ない。
アルコールでほんのり色付いた肌と、同じく色付き薄く開いた唇が口紅の色をより濃く赤く、誘うような色をしている。少しだけ乱れた髪の毛が唇にかかっていた。
「うぅ…ん」
その時ぐらりと黛の頭が動き、僕の膝に崩れ落ちた。
やれやれ、これでやっとこいつも起きてくれるかと思いきや、驚いたことにまたむにゃむにゃと寝続けている。
しかも、困った事に肩では頭を乗せていただけだったのが、完全に上半身がもたれかかっていて、黛の白い手が僕の膝に置かれていた。
――ちょっと、まずいな。
いくら相手は色気無しのぺったんこ、僕は理性しか持ち合わせて居ない紳士とは言ってもこれは。
身じろいで見えた、ブラウスの隙間から首筋から鎖骨にかけてのラインがどこか香り立つように艶めかしい。
――ああ全くもって本当に、僕は鉄の理性しか持ち合わせて居ない紳士的な上司で良かったなあ!
どこかで心臓の音が早くなったような気がした。
つい深呼吸してしまうのは、眠気覚ましの為だ。決して他意はない。
「……!」
黛の指が僕の膝頭を擽る。
おたまじゃくしの事だ、何か夢を見ての無意識の行動でしかない。意識するだけ馬鹿馬鹿しい。
――意識だって?何を?僕が?
とにかく、一眠りというにはもう十分寝ただろうから、あのバカ父が煩く言って来る前にこの提灯パンツを叩き起こして帰さなければ。
――これ以上は、下手したら僕の我慢が出来なくなりかねない。
トイレに行きたいからな!と誰に言い訳する訳でなく。
「…ん」
さっきの衝撃でも起きなかった黛が、のそりと冬眠明けのクマよろしく起き上がる。
「おはようおたまじゃくし。タクシーを呼ぶからとっとと帰るんだ――もちろん車代は借金に上乗せしておくからそのつもりで」
漸く解放された僕は言うだけの事は言ったあとトイレに向かう。
そしていよいよ寝る準備をしようかと再びリビングに戻ると、有り得ない光景が広がっていた。
――黛真知子が、服を脱いでいる最中だった。
おいちょっと待てやめろバカここはお前の家の部屋でも風呂場でもない、僕の事務所のリビングだ!
…流石に本当に提灯パンツでなくとも今時10代でももう少し色気のある下着だと思うんだが、おかげで少し冷静になれた気がする。
しかし厄介な状況には変わりがないので、どこかそわそわと出て行くタイミングを計りかねていた。
変にコソコソとするよりはやはりいつもの自分で行けばいいだろうか――などと何故こんなにおたまじゃくしに気を遣わねばならんのだ!
重ねてここは自分の家だ。誰に気兼ねすることもないはずなんだ!と思い直し、ドカドカと足音を立ててリビングに戻った。
すると黛は何故か、上下共服を裏返して着直していた。恐らくは脱いだ服を別のものと認識して着用したものと思われるが、全く酔っ払いの行動パターンは計り知れない。
兎にも角にも、厄介で最悪な状況は逃れられたことに安堵する。さああとは車を呼んで、こいつを押し込んで帰すだけだ。
「黛」
「…」
半分寝始めているのか、口は動いたが声が聞こえずにこちらに振り返った。
「ここで鼾かいて寝られても困るのでね。今すぐタクシーを呼ぶからとっとと帰宅したまえカニ味噌頭のポンコツおたまじゃくし」
「…はぁい」
半分閉じた瞳が僕を見た。潤んだ瞳に吸い寄せられるように右手を伸ばしたところで我に返った。
――今何をしようとしていた?右手を伸ばして引き寄せて、その後は…
すんでのところで押し止めたことで早々に思考を切り替え、一刻も早く車を呼ぼうと思い、スマホに手を伸ばす。
「もしもし、車を一台お願いします。古美門法律事務所で…ええ、そうです。え?いや、料金は上乗せして構いませんからとにかく早めにお願いします」
何ともタイミングの悪いことに、ドライバーが出払ってて時間がかかるかも知れないと言われ、少し焦る。
立ったまま軽く左右にゆらゆらと揺れてるこいつを視界から追い出さない事には。
「タクシーが来る前にその裏返しの服を着替えておきたまえ勿論ここではなくて奥の部屋を使うことを許可するから即刻にだ」
一度にまくし立て、ふらふらと歩く黛の後ろ姿を見送り、やっと肩の荷を降ろせると思うとソファーに腰掛けた途端に汗が吹き出る。
大きな仕事で気を張っていたために疲れていたのだ。少しだがシャンパンも入っていたし、だからあのポンコツおたまじゃくしにすら一時の気の迷いで過ちを犯しそうになっただけのことだ。
一つ、大きな溜め息をつく。
この後は少し仕事を休んで、ゆっくり静養しよう。いつかのスイスのように避暑へ涼しいところに行きたいものだが、以前の天敵とも言える別府裁判官との最悪の出会いの経験から、ここは逆に南国のバカンスもいいだろう。
――南国で開放的になって鮮やかな色彩のビキニ姿ではしゃぐ美女とのアバンチュールを妄想する。遠くから白い砂浜を駆けてくる女性が何となく凹凸が少ないようなのは気のせいか。
さして気に止めずに再度妄想に馳せれば、
『先生、一緒に泳ぎましょ!』
――水を滴らせ、顔に砂を付けてキラキラとした笑顔を湛えてこちらに手を差し伸べたポンコツおたまじゃくしだった。
「ありえない!」
気付いてみれば見慣れたリビング。
まだタクシーは来てないらしく、黛の荷物はそのままだった。
もういい加減着替えていてもいい頃合だが、またその辺で寝転がっていられては困るので、隣室の様子を見に行く事にした。
「早くしなければ車が来てしまうぞーおたまじゃくしー」
「…ぁい…」
やっと返事しているくらいだが、なんとか寝転がってはいなかった。服装もよれてはいるが裏返しは直してある。
「…っ」
「え」
腕組みをしてやれやれといった風でその様子を見ていると、すれ違い様にふらついた黛が凭れかかってきた。
咄嗟の事で、腕組みのまま支える事も出来ず自分とさほど変わらない身長のせいで、手が触れてしまった。
普段ぺったんこだとか何とか言っている、その柔らかな胸に。
服と下着越しとはいえ、さすがに当たっていることに何もわからない訳でもあるまいに、黛は何も言わない。
そして僕としても、正直なところもう少しボリュームが欲しいなとは思いつつ、1ミリでも動かしたら痴漢行為になるので微動だに出来ない。
吐息が、髪が、耳元をくすぐる。
背中を汗が伝い落ちていくのがわかる。事態は一番厄介で面倒で最悪だった。
時間にすれば数秒程度の事でも、ひどく長く感じられた。他の女性相手ならとっくの昔に仕方ないなあと有り難く据え膳を丼三杯くらい頂いているところだが、服部さんとの約束もあるし何より自分自身が不本意だと警告している。
――何を誰に対してかはわからないが。
何とか固唾を飲み下し、思いつくままを口にする。
「いつまでそのぺったんこの固い胸板を押し付けているつもりだ」
「しぇくはらだとかいいませんから、かまいませんよぅ」
すっかり呂律の回ってない黛の頭がゆらりと揺れ、自分を見つめる半開きの瞳と唇に不覚にもドキリとさせられる。
――僕の方が構うんだよ!
あとほんの10センチあまりの距離を縮めて、その赤い艶やかな唇にキス出来たらどれだけいいだろう。
それくらいならまだこいつは覚えてはいないかも知れないし、過ちの分には入らないじゃないかと実に都合のいい思考ばかりが駆け巡る。
舌は入れなきゃいいだけだ、そう、ほんの少しなら――
少し首を傾けて吸い寄せられるように唇が近づいた時、家のチャイムが鳴った。
ゴツン。
「痛っ!」
キスの代わりに頭突きを一つ。お互いの目を覚ますにはちょうど良かった。
「漸くお迎えが来たようだよ蟹頭村のカニ味噌頭のポンコツおたまじゃくし。これ以上酒乱女の無様な醜態ぶりを晒す前にとっとと帰りたまえ!」
「はぁい…わかりましたぁ…」
黛はおでこをさすりながらよろよろと玄関に向かう。
正直ぶつけたこちらの額も痛いが、それよりはずっとさっきまでのことを思い出される事が心苦しい。
だが本当に漸くこれでこの長い長い時間が終わる。
自分自身の理性的な行いに感謝しつつ、せめて最後の情けとして帰りを見送ろうと腕組みをしたまま仁王立ちで居ると、どうやら忘れ物をしたらしく黛が戻ってきた。
「まったくそそっかしいねぇ。その頭にはカニ味噌どころかもしかしたらおがくずが入ってるのかも知れないから、一辺病院の脳ドックに行って精密検査することをお薦めするよ」
実際には言いたい事の半分も言えなかった。
黛に、キスというにはおこがましいくらい拙くて勢いでぶつかってきたに等しいが、唇を塞がれたからだった。
「せんせぇときす、しちゃいましたぁ」
てへっ、と顔をくしゃくしゃにして、アルコールのそれ以外にほんのり頬を赤く染めて。
したたかに酔っているのが嘘のように風のように去って行った。
「…人の気も知らないで」
他に人の居なくなった家で一人頭を抱える。
悩ましい夜はまだ終わりそうになかった。
END
酒乱ということでHにもつれ込んでも良かったけども、正直ギリギリの攻防戦が一番楽しいw
ありがとうございます!
まゆずみ可愛い!
288 :
キスフレ1/5:2014/06/28(土) 22:53:37.61 ID:TWU2PiEl
こっそりと、
>>69、
>>70の続きを投下します
――――
それはどういう意味ですか、と問おうとしたが、声が出なかった。
古美門の顔がゆっくりと近づいて……そっと唇が合わさった。
(うわぁ…キ、キスだ。私、先生とキスしてる…)
一度離すと、じっと顔を見つめてくる。
(な、何?私、一体どうすれば…)
古美門はおもむろに瞳を伏せ、角度を変えてもう一度…
柔らかく啄んで、またもう一度…
顎を掴んでいた手が頬を包み、繰り返し触れる唇から、湿った音が小さく漏れる。
(きもちい…ずっとこうしていたい…)
初めて経験する極上の優しい感触。
それを自分に与えている相手は、誰あろう古美門先生…
(いや、ダメダメ!恋人じゃないのにキスなんて。そういえば、さっき先生、キスだけで我慢するなんて、とか言ってた!
どうしよう!キスより先って、つまり、エッチってこと〜!?)
古美門は涼しい顔でキスを続けたまま、腰を抱き寄せる。
「せんせっ」
「ん?」
「あ、あのっ…キ、キスだけにしてくださいっ!」
「……は?」
「そのっ、私まだ心の準備が…」
「勘違いするな」
「へ?」
「なぜ私が提灯パンツの中身まで面倒をみなければならないのだ」
「え、だって先生、そんなこと言ってたから…」
「オタマジャクシは例外だ。おまえはキスだけで十分だ」
「…そうですか」
ほっとしたような、少しがっかりしたような、複雑な気分だった。
「つまり、キスフレってことですか?」
「…そういうことにしておこう」
289 :
キスフレ2/5:2014/06/28(土) 22:55:57.53 ID:TWU2PiEl
一週間後。
夕食のための収穫を手伝っていた黛が温室から出て来ると、テラスで雑誌を眺めていた古美門は席を立った。
新鮮な野菜が山盛りになったカゴを両手で抱えた黛の真正面に立ち塞がり、当たり前のように唇を合わせる。
服部さんはそんな二人を微笑ましげに一瞥すると、キッチンへ入っていった。
「っん!せんっ……せ、」
何度も甘く啄むうちに、カゴは傾きミニトマトが転がり落ちた。
「あ…。もぉ。先生のせいですよ…」
黛は熟れた果実のように顔を真っ赤にして、キッチンへ逃げた。
古美門がミニトマトを拾おうとした瞬間、塀からひらりと降り立った蘭丸が一足先に摘み上げ、口の中に放り込んだ。
「美味しー!でも、先生が食べてたもののほうがもっと美味しそうだったなー」
ニヤニヤと古美門の顔を覗き込む。
「我が家には玄関があった筈だが?」
「ねえ、いつから真知子ちゃんと付き合ってるの?」
「付き合ってなどいない。この私とポンコツが釣り合うわけがなかろう」
「じゃあ今のは?」
「ほんのイタズラだ」
古美門は会話を切り上げて椅子に座り直し、雑誌を開いた。蘭丸はテラスに直に腰掛け、古美門を見上げて話しの続きを待つ。
「もうエッチしたの?」
「馬鹿を言うな。君の助言に従って、適齢期になっても全く男っ気のない可哀想な部下のために私みずからキスの手ほどきをしてやっている」
「やらし〜。黛くん、これが大人のキスだ、とかやってるんだ」
「……ディープキスなんかしたら、アイツ倒れるんじゃないか?」
「さすがにそれはないでしょ。先生、真知子ちゃんのこと心配しすぎ」
「心配だねぇ。あの乱れ様では」
「え、何?」
290 :
キスフレ3/5:2014/06/28(土) 22:58:39.56 ID:TWU2PiEl
古美門は椅子にふんぞり返り、勿体ぶって語り始めた。
「昨日のことだが…、私が最大限手加減してそれはそれは優し〜い口づけを施していたら、彼女が声をもらした。
声といっても、ほんのかすかだが、アイツは恥ずかしかったのだろう、私から離れようと身をよじった。私は愉快になり、思い切り抱き締めて、逃れようとする彼女の唇に執拗にキスを降らせた」
「おぉ〜、それで?」
「最初は、や、とか、せんせいやめて、とか可愛い抵抗をしてきたのだが、無視して続けていたら、突然、やめてください!と叫んだ。驚いて顔を見ると、涙を溜めている」
「怒っちゃったんだ」
古美門は首を横に振った。
「次の瞬間、やおら私の首にしがみついて、私の唇に強く押し付けるようにキスしてきた」
「うわ、なんかいいね、それ」
「ああ。私も興奮してしまったよ。つまらないセックスなんかよりずっと気持ち良かった」
「…でも、舌も入れなかったんでしょ?」
「その通りだ。入れようかとも思ったが、唇を吸ってやっただけで完全に感じている声が出ていた上に、腰が抜けて私にしがみついてきたので、おあずけにしたよ」
「エロいね〜。ベッドインも時間の問題でしょ」
「君もまだまだお子様だなぁ。キスはただの通過点ではないのだよ。なかなか奥深い。オタマジャクシにはキスだけだと言い含めてあることだし、私はこの際、専念して究めてみることにした」
「でもさ、どうしてキスしかしてくれないの?とか言われちゃったらどうするの?」
「その時は君がセフレにでもなってあげなさい」
291 :
キスフレ4/5:2014/06/28(土) 23:04:40.64 ID:TWU2PiEl
さらに一週間後。
「や、先生…」
ちゅ、…ちゅ…
「せんせぇ、まって」
(うるさい…)
最近、黛が口づけを拒むようになってきた。
初めてしてからしばらくの間は、徐々に積極的になり、反応も良くなり、心なしか普段の態度も丸くなって、いいことづくめだったのに。
相変わらずディープキスは1度もしていない。しかし、唇を触れ合わせる、唇を吸う、舐める、食む、甘噛み―その強弱と組み合わせだけでお堅い女を翻弄して蕩けさせるのはとても愉しく、全く飽きなかった。
このまま白い首筋に唇を這わせたらどんな香りがするのか、サラサラの髪に覆われた耳に唇を寄せて恥ずかしい言葉を吹き込んだらどんな風に悦ぶのか、想像するだけで高ぶった。いつ舌を入れてやろうかと思案するのも楽しかった。
それがどうだ。数日前から、キスしようとすると「やだ」だの「だめ」だの生意気を言って、ちっとものってこない。
だからすぐにやめていたのだが、今日は珍しく服部さんが早く帰り、2人きりだったので、拒まれてもしつこく責めてみた。
「だ、だめですっ!」
ソファから立ち上がって逃げようとする黛の腕を掴んだ。
「なっ、何するんですか!?」
「キス」
「…」
「なぜ嫌がる」
「…嫌がってませんよ、キスだけなら…」
「はあ!?キスしかしてないし!それなのに思いっきり嫌がってるし!なんなんだ一体!」
「こないだ耳にしたじゃないですか!!」
「おまえが暴れるから、たまたま耳にしちゃっただけだろう!事故みたいなもんだ。大体、別にいいだろ耳くらい」
「よくありません!それに、首も触ってくるし!」
「首ぃ?」
「先生は、キスする時ほっぺとか髪とか首とか耳とか撫でる癖がおありのようです!」
「そんなの普通だろ!?何が問題なんだ!?私はキスフレの制限を越える行為は一切していないし、するつもりもない!」
292 :
キスフレ5/5:2014/06/28(土) 23:08:52.51 ID:TWU2PiEl
黛がうつむいて口元を押さえ、鼻をすする。
(なんで泣くんだ!あぁ面倒臭い!もうキスフレなんてやめだ!)
「黛、キスフ」
「先生は…っ、先生は、キスしかしてくれないっ」
「…?」(こいつ、今、なんて…)
ポタポタと床に雫が落ちていく。
「キスしかしてくれないのに、どうして、もっとしてほしくなるようなこと、するの?」
「…。」(したいから。)
心の声を飲み込んで、湧き上がる欲を必死で抑えながら、黛の腕を極力優しく引いた。
あくまで紳士的にそっとソファに寝かせる。
指で涙を拭ってやると、縋るような瞳で見上げてきた。
「先生?」
「黛、キスフレは解消しよう」
「え?」
瞬く間に唇を塞ぐ。すぐに舌を割り込ませ、思うままに口の中を味わう。柔らかい舌を掬って吸いあげると、「はぁっ」と熱っぽく息をはいた。
これまでとは違う奪い尽くすようなキスに、怯みながらも応じてくる。
黛にとって初めてのディープキス。本当はもっとゆっくり遊んでやる予定だった。何食わぬ顔でチロッと舌を舐め、未経験の感覚に驚く黛を存分にからかってやるつもりだった。
しかし、もはやそんな計画などどうでもいい。頬も首も耳も髪も、好きなように撫で回して貪る。全部僕のものだ。
「ぁん……あっ」
聞いたこともない黛の甘いよがり声。どんどん余裕がなくなっていく自分に頭の隅で呆れながらも、カラダも心も止まらない。
組み敷いた黛が膝を摺り合わせ、身をくねらせている。
誘われるように右手を滑り下ろす。肩、背中、脇腹、腰、尻、内もも…すべてを愛でるようになぞり、最後に心臓の上に置いた。
やわらかく揉んでみても抵抗しない。
黛の想いが首にしがみつく手から伝わってくる。(ずっと、こうしてほしかった)と。
僕の本音は、太ももに押しつけた熱の塊が物語っているはずだ。
(ずっと、こうしたかった)
神よ!GJGJ\(//∇//)\
295 :
255 1/3:2014/07/09(水) 15:57:01.75 ID:qFq41ewp
こっそり前回の続き。(タイトルありません)
最近黛の様子がおかしい。先日ひょんなきっかけで男女の関係を持ってからだ。
業務上は差し支えない態度なのだが、一度それを離れ誘おうとすると避けられる。
「まゆ」
「じゃあ私帰ります」
名前を呼ぶことすら適わない。先日はついに「ま」の時点でかわされてしまった。
キスどころか、手すら少しも触れられないので欲求不満は募るばかり。
この僕が、他の女性に見向きもしないというのに。あの夜の記憶が忘れられないのは僕だけなのだろうか?
「先生、真知子ちゃんに嫌われてない?」
ある晩、ふらりと食事を目当てに現れた草の者にまでも言われる始末。
「前はいつもいたのにさぁ、帰るのも早いよね」
「フン。色気づいた訳ではないから男でもないだろうが、せっかく服部さんが食事を用意してくれてるんだからそれくらいは食べていくのが道理だろうに」
乱暴に付け合わせのアスパラガスのソテーをフォークで刺しながら毒を吐く。
「まあ私としましては、黛先生が決めたことなので何とも言えませんが」
「服部さんももっとあのポンコツに厳しく言ってやっていいんですよ」
「しかし僭越ながら」
珍しく服部さんが言葉を続けたので、つい食べる手が止まる。
「黛先生は古美門先生をお嫌いになった訳ではないものと思われますが」
「……!」
その言葉に今まで支えていたものがすとんと落ちる。避けられている事ばかりに気を取られて、一番肝心な事に気付いては居なかったのだ。
「えー?じゃあなんで真知子ちゃんは先生避けてるのさ」
「それは私の口から申し上げるのは憚られます」
さすがに亀の甲より年の功、恐らく浮名を流した数は僕と同じ年の時点でもかなりの数だったんじゃあるまいか。
とにかく話をしない事には何も始まらないと、食事の手を止めたまま思いを巡らせた。
☆
翌日。
そんなやきもきしている古美門をよそに、黛は喫茶店にてある意外な人物と接触していた。
「で?なんで私な訳?」
煙草の煙をくゆらせながら、心底嫌そうに言うのは安藤貴和。
「だっ…だって、こんな事相談出来る人他に居ませんし、そもそものきっかけはあの日ホテルに先生を迎えに行かせた貴和さんじゃないですか」
「まあ確かに最初はそうだけど?まさかの展開に私も驚いてるんだけど」
296 :
255 2/3:2014/07/09(水) 15:59:33.21 ID:qFq41ewp
半ば呆れ顔で灰皿に煙草の灰をとん、と落とす。黛はその仕草を傍で見ながら、同性ながらその色気は一体どこから来るのかと魅入っていた。
「聞いてる?幼稚園児」
「はっはい!」
「で?なんであの横分け小僧を避けてる訳」
「…それが」
と、声を顰めて安藤貴和の耳元に近づき話し始めた。
「…というわけなんです」
からん、と安藤貴和のアイスコーヒーのグラスの氷が鳴る。
「それだけ?」
「『それだけ』って大変な事じゃないですか。もう私、まさか自分がこんな事になるなんて思わなくてどうしたらいいか」
「………はあ」
俯いてテーブルにのの字を書き連ねる黛に対して、安藤貴和は再び煙草を口にする。
どうやらちょっと男に抱かれた位では生来の考えは変わらないらしく、この先何をどうしたらいいかすら踏み出せない黛にはアドバイス以前の問題だと思った。
「幼稚園児はどこまでも幼稚園児ね…」
独り言のように呟いて、ふと視線の先に見知った姿を捕らえる。
「幼稚園児らしくないわ。コドモはいつだって全力を出して無鉄砲にぶつかっていくものじゃないかしら?」
ふーっと煙を吹きかけ、煙たがって咽せる黛をよそに煙草を灰皿に押し付けてじゃあね、と立ち去る。
「ケホッ…ちょっ…貴和さん!」
レシートと荷物をひっ掴んで後を追おうとした黛を、大きな手が制した。
「!!」
「こーんなところで安藤貴和とぬぁ〜〜にをコソコソと話していたこのポンコツおたまじゃくしのあーさードーラー!」
「せんせっ…どどどどうして」
「草の者を使わずともGPS機能で簡単な事だよ。あとは自宅でゆーっくりじぃ〜〜っくりと聞かせてもらうとしようか」
☆
タクシーの中でも手は握っていた。せっかく捕まえたのにまた逃げられては元も子もない。
黛は沈黙に耐えかねてか、小さい声で「手を離して下さい」と言ってきたが却下してやった。
何もしないのもつまらなくなり、悪戯心から握っている黛の手を指で軽く撫でる。
すると直ぐさま赤面してこちらを見たが、わざと運転手にどうでもいい世間話を持ちかけ、無視してやった。
何を怒る、今までお前が僕にしてきた事と同じじゃないか。
その間僕がどんな気持ちだったかわかってるのかこのポンコツおたまじゃくしめ。
やがてタクシーが事務所兼自宅に着くと、ぐんぐんと繋いだままの手を引いて中へと導いた。
その短い間も黛は「逃げませんから」と文句を忘れない。
297 :
255 3/3:2014/07/09(水) 16:03:40.25 ID:qFq41ewp
室内に入ってもまだ手は繋いだまま。段々赤面していく黛が、その重い口を漸く開いた。
「だって…どんな接し方していいかわからないじゃないですか」
「何を今更。仕事で顔を突き合わせてるじゃないか」
「仕事は仕事と割り切ってるからです!でも…ふとした時に………あの記憶が蘇ってしまって」
「当然だ。あれから二、三日位君のがに股は酷くなっていた。あの夜に初めて僕に抱かれた事でしばらく何か挟まってるような感覚がしてたんだろう?」
また赤くなった。全くこの手の事に関しては反応が実に分かりやすい。
そして続けて付け加えてやる。
「だが君は肝心な事を忘れている。あの夜を忘れられなかったのが自分だけだと思ってたのか?でなければ、君を誘い続けて…ましてや、追い掛けたりなんかしない」
言いながら僕も顔に熱が集まる。しまった、これではまるきり告白してるのと変わらないじゃないか。
ポンコツおたまじゃくしの愚直さが伝染してしまったのか?
だが当の本人はそれには気付いてないらしく、色恋事に鈍いことに少しだけ安心しつつも苛立つ。
「安藤貴和とどこまで話した?」
「今ので全部です」
「へっ?」
我ながら酷く間抜けな声だ。
『稀代の悪女』などなど世論から散々ボロクソに叩かれ扱き下ろされた彼女にしてみれば、こども電話相談室レベルの相談だったろう。
小指の爪の先位彼女に同情しつつ、同時に約束が果たされてない高速回転三所攻めとまではいかなくても、少しは何か指南されてや居ないかという淡い期待は打ち砕かれる。
「全力で無鉄砲にぶつかって行くのが私らしいと言われました」
「確かにそれが朝ドラヒロインの君らしいと僕も思うよ。あの夜だって、全部教えて、と語尾にハート付きで言ってきたのは誰だったかねぇ?」
「記憶を捏造しないで下さい!…確かに、何も経験ないから先生に『教えて下さい』とは言いましたが」
「第一君はあの一発のみで何を知った気になっている」
「え?」
そこでやっとずっと今まで握りっ放しの手を離し、右手を黛の顎に添える。
「あんなものはセックスの序の口どころか序の口の『序』の一歩手前の口を窄めただけにしか過ぎない」
親指の腹でそっと唇を撫でると、黛は小さく震えた。
「忘れられないなら、余計にあの夜より更に高みを目指してはみないか?」
唇から手を離し、それ以上の事はせずに耳元で囁く。
「女性の身体とは貪欲なもので、同じ男性と交わってると次第に女性器がその形を覚えるんだそうだ…その男の精子を効率的に享受する為にね。そして僕もまた、そうなる位君を抱きたいと思っている」
勿論避妊はするがね、と柔らかく微笑んで、黛の反応を窺う。
すると少し体を離して俯き、手を前に組みがらぽつぽつ話しだす。
「…何で」
「ん?」
「何でそんなにいやらしい事言うんですか」
愚問も甚だしい。いやらしい事がしたいからに決まってるじゃないか。
「何だね君はいやらしい事をするのに別にいやらしい事を言わなくて構わないというのかああこれだから変態の女神様は計り知れないねぇ」
「違いますっ。は…服部さんが居るのに」
「服部さんは居ない。君を抱きたいから明日まで休みにしてもらった」
黛はこれ以上ないくらい赤面している。もう言い訳する要素もない。さああとは君自身の答えを聞くだけだ。
「いやらしい事をしたい僕は嫌いか?」
顔を覗くき込むと黛は泣きそうな顔だ。逡巡しているのが良くわかるが、正直そんな顔にすら欲情してしまうのは秘密にしよう。
再び黛の手を取り、階段に足をかけて二階のベッドルームへと導いた。
「おいで、黛」
***
何となくエロ抜きでいいかなと…
書き逃げスマソ
いやーーー(つД`)ノ続けてぇ!
おあずけなんていやーー!
「嫌いか?」とか「おいで」とか、今度は先生のセリフが素敵すぎて、やられました!ありがとう!
>>300 禿同
実際あの声でそんなセリフ言って欲しい
DVDが擦り切れる程リピートする
1の、「君は本当に馬鹿だ」のハグシーンには興奮したもんだ
>>302 あれは本当に良かった
でもおでこゴッツンがやっぱり萌える
304 :
名無しさん@ピンキー:
>>298 めっちゃいい!
続きすごく気になる!!!