1 :
名無しさん@ピンキー:
息抜きのつもりがうっかり睡眠時間削って書いてしまった何かを晒します
俺の二時間……暇つぶしにでも読んで頂ければ幸いです
※注意
残念なドラクエパロが名称だけあり
エロがテーマだけど話はエロくないです
2 :
名無しさん@ピンキー:2013/06/15(土) 00:42:35.11 ID:fQnHqaxA
「魔王様、魔王様!」
腹心の部下の声を耳にして、大魔王は修練場への歩みを止めた。
「……お前か」
「どこへ行かれるおつもりなのです! 今日の仕事は、まだ終わっておりませんぞ!」
「……」
大魔王はじっと部下の顔を見つめ、それから悲しげにかぶりを振った。
「駄目だ。わしには、もうそれらを片付ける余裕がない」
「余裕……!? 馬鹿な。あなたは体力、そしてテクニックともに万能のお方だ。
今日の仕事など、赤子を抱くより楽な作業のはず……」
「そうではないのだ」大魔王がぎろりと部下を睨む。「鍛錬する時間が惜しいのだ……遂にこの時が来た。我々の世界を守るために、わしは戦わなければならない」
「戦う?」
部下は困惑して眉をひそめた。
「ありえません。この世界に、あなた様が手こずるような相手など存在しないでしょう」
「確かにな」
大魔王は詠嘆するように言った。
「わしは今でさえ、調子づいた餓鬼どもを黙らせるのに何十ページも必要とはしない。
長くても数ページで、早ければコマを跨ぐ間に蹂躙することもできる―が、それとは次元の違う力が必要になった。相手取るのはこの世界のものではない」
「そんな、魔王様……」
懇願するような部下の言葉に、小さく首を振って、大魔王は踵を返した。
「……ところで、エロピサロよ」
「は?」
「その、今日の仕事とは、どんなやつだった?」
「魔王様……」
自分に背を向けたままそう尋ねてきた大魔王に、部下は失笑を漏らして答えを放った。
「『信じて送り出した勇者一行が大魔王の変態調教にドハマリして魔族顔ピース脳内映像を送ってくるなんて……』の収録と、『女勇者快楽絶頂地獄』への出演、です」
「……両方とも悪堕ちっぽいな、もったいない」
大魔王はしょんぼりしながら鍛錬場へと向かった。
3 :
名無しさん@ピンキー:2013/06/15(土) 00:46:05.41 ID:fQnHqaxA
始まりの町アナトームに、一人の男が訪れた。
男は趣味の悪いマントを着けていて、宝石で装飾された剣を腰に差していた。彼は村唯一の宿に向かい、そこで一泊することにした。
「あたしが、この拳で魔王を倒してやるよ!」
チェックインの最中、ロビーのテーブルでは小柄な少女が大声で何か叫んでいた。彼女は露出が多い軽装で、拳に包帯を巻いているところから武闘家であると察しがついた。
周りでは野次馬らしき不細工な男たちが、下心丸出しの目で彼女を見ていた。
「おいおい、冗談言うなよ嬢ちゃん」
「そうだそうだ。ガキはお家に帰って、ママのおっぱいでも舐めてろっての」
「冗談なんかじゃない! 言っとくけど……あんたたちみたいな豚野郎、私にかかればあっという間に挽肉なんだから」
「あぁ?」
「豚野郎には豚小屋がお似合いよ、薄汚いお家に帰ってな」
少女は嘲るような台詞を残して、二階の部屋へ戻っていった。ロビーにはマントの男と、怒りに顔を歪ませる不細工たちだけが残された。
夜中、男は宿のベッドから起き上がって、剣を片手に自室を出た。
『二階最奥の部屋に反応あり』
剣に付いた宝石が声を発する。男はこくりと頷くと、指示通りの部屋の前で、剣を抜いた。
―扉がすぱんと斬れて室内が露わになった。昼間の不細工たちが協力して、武闘家の少女をベッドに縛り付けていた。
半裸の少女は目に涙を浮かべて汚らしいイチモツを睨んでいる。
不細工の一人がぎょっとした様子で叫んだ。
「な、何だぁ貴様……!」
「死ね」
不細工たちの驚いた顔が、そのまま凍り付いて地面に落ちた。男は返り血を寝間着で拭うと、無表情のまま少女の傍に寄った。
ベッドに縛られたまま、彼女は茫然として男を見た。その表情には安堵や、まして男への感謝は含まれていない。
筋書きを知っている物語が目の前で改変されるのを見たかのような、酷い動揺だけが彼女を支配しているようだった。
「……」
『ここの反応は消えた。村の外へ向かえ、勇者』
勇者と呼ばれた男は少し俯きつつも、宝石からの声に従って、自室に荷物を取りに戻った。
この夜の間に勇者は、外の森で獣に襲われそうになっていた娘を一人助け、触手に犯されかけていた幼女を二人助けた。
幼女たちの方は媚薬でも吸ったのか酩酊しており、扱いに悩んだ勇者は湖に放り込んでその場を後にした。
背後からは「なんでぇ〜なんでちんぽ殺しちゃったのぉ〜」と悲痛な声が聞こえてきた。
4 :
1:2013/06/15(土) 00:48:33.10 ID:fQnHqaxA
「なんてことをしてくれたんだい!」
次の村で勇者は、拒絶を叫びながら男に犯されていた女を助けた。
しかし、もう動かなくなった男を見て、彼女は号泣しながら勇者をなじった。
「こいつは私の夫だよ! 私たちはただ、鬼畜プレイを楽しんでただけなのに!」
「……」
「合意の上だったのに…!」
泣き崩れる女を置いて、勇者は宿へと歩いて行った。
『お前に責任は無い』
宿のベッドで、勇者の剣が声を発する。
『大量の事案を処理する時、誤解が発生するのは仕方のないことだ。今回の件は、紛らわしい真似をしていたあの夫婦が不幸だった』
「……」
勇者は不機嫌な顔をして自分の剣を見た。
「……それなら、あの夫の死は誰の責任なんだ」
『誰の責任でもない。今一度言うが、不幸な事故だ。誰も悪くなく、後には同情しか残らない』
その声から感情は窺えなかった。
『勇者よ、我々はこの世界の救済のためにいる。今回の誤解など些細なもので、それよりも遥かに凄惨な結末を迎える人間が数え切れぬほどいる。
征け。そして悪を滅ぼせ。それこそが正義であり、あらゆることに優越するものだ』
「……」
勇者は、いや、マントを着けた男は押し黙った。
なんと答えを返せばいいのか分からなかった。この返答が自分を定義し、その決定は不可逆的なものになると感じた。
まだ自分は、悩んでいたいと思った。
『二階奥から三番目の部屋に反応あり』
唐突に剣が事務的な口調で言った。男は遂に答えを口に出さぬまま、剣を取り上げて部屋を出た。
同性愛者の女が、薬で眠らせた旅の仲間を犯していた。
男が女の首を刎ねたとき、ちょうど目を覚ましたその仲間は、彼女の死に絶望して窓から身を投げた。
5 :
名無しさん@ピンキー:2013/06/15(土) 00:50:05.49 ID:fQnHqaxA
勇者としての旅はなおも続いた。
あらゆる森に踏み入り、発情期にあった原生の魔物や触手を使う植物、あるいは年中興奮しているような盗賊たちを残らず駆逐していった。
山にも登った。大魔王直属の部下だという魔物が村から女を攫っていたが、結局誰を抱くこともなくアジトごと粉砕された。
海にも行った。その遠征で尻軽な人魚はことごとく殺され、浅瀬一帯の大イソギンチャクが死滅した。
ある日の朝が来て、昼を過ぎ、夕暮れに差し掛かる頃。
遂に『勇者』は大魔王の城に辿り着いた。
6 :
名無しさん@ピンキー:2013/06/15(土) 00:52:25.44 ID:fQnHqaxA
「来たか」
威厳ある声で、大魔王は来訪者を迎えた。
生物の体内のような部屋だった。赤紫の壁はどくどくと脈動し、時折まばらに空いた穴から、高熱の蒸気が吹き出している。
マントの男が入り口に立っていた。
「……まるで勇者の様相だな」
大魔王は面白そうに呟いた。その視線は男から、不意に背後に向く。
グロテスクな壁に、触手に肢体を拘束された女性が埋まっていた。目隠しをされていて、息が荒い。
「こやつが本来の勇者だ。催眠をかけ、全身を性感帯にしてある。
まさにこれから、穴という穴を開発して、快楽のことしか頭にない肉便器にするところだった」
「……」
男が剣を抜いた。大魔王は目を細めて、嘲笑した。
「……貴様は勇者ではない。何ものだ? いや、わしは既にその答えを知っている。その上で、貴様に問うのだ」
「……」
「答えるのは恐ろしいか?」
「……!」
男が攻撃を繰り出した。大魔王の喉笛めがけて、剣を振る。
大魔王の背から触手が迸った。
「……これは本来、人間の体液を啜って快楽を与えるものよ」
無数の触手は鋭利に尖って剣を防ぎ、弾き、片や高速回転しながら男を狙う。
「っ!」
男はすんでのところでそれを避けた。崩れた態勢を見て、すかさず大魔王は闘気を纏う。
「これは本来、おぞましいほどの快楽を人間に与える電撃よ!」
「!!」
放たれた閃光が肉を焼く。呻き声をあげる余裕もなく、男は剣を構えて距離を取った。
瞬間、ぐらりとふらつき、膝をつく。
「―今部屋に充満している麻痺ガスは」大魔王は嘆息した。「本来、人間を催淫にかけ、快楽中毒にするものよ」
「……!」
男は、倒れ伏しそうになるのを、剣を立てて堪えた。頭に靄がかかっていた。今までの無双から一転した現実に、男は動揺していた。
そしてそれだけではなく、男は自分の闘う意義に迷っていた。迷いはそのまま、動きの遅延に繋がった。
「貴様は木偶だ」
大魔王の声が響く。
「或いは、人形か。目的のために作られた哀れな存在よ」
「……」
「死ね」
触手を突き立てられる瞬間、男はいつか自分の剣と交わしたやり取りを思い出した。
-悪を滅ぼせ
それが、自分の存在理由なのか?
7 :
名無しさん@ピンキー:2013/06/15(土) 00:59:15.31 ID:fQnHqaxA
大魔王の攻撃を、男は鎧を展開して防いでいた。
「!?」
大魔王は仰天した―それはおよそ予想もつかないような防御手段だった。
どこからともなく現れた鎧は、瞬時に男の全身を覆って触手を弾いた。鉄を遥かに凌駕する硬度であった触手は、瞬間バラバラになって空に消えた。
それは有機的な表現からは無縁の、滑らかで真っ白な鎧だった。
フルフェイスのマスクが男の顔を覆っている。命乞いを聞く耳は隠され、どうやって相手を見るつもりなのか、目を出す隙間さえ無いマスクだった。
男は剣を構え直した。
「……」
「おのれ……!」
大魔王が再び触手を召喚する。しかし、男はそれを手甲で払って退けた。走る閃光ももはや、男に届くことはない。
「貴様の後ろにいるものは!」大魔王が攻撃の最中に叫んだ。「この世界の幸福など、望んではおらぬぞ!」
「……」
男は前進した。大魔王は尚も触手を放ったが、その歩みを止めるには至らず-
ついに肉薄。
『ここに【オナゴンクエスト】R-18創作物の駆逐を宣言する』
大魔王を両断した剣からの音声だった。
真っ二つにされた顔は、そこで歪んで、悲しげな笑みを見せた。
「……解決など……せんわ……」
フルフェイスのマスクが剥がれる。素顔を晒した男に、大魔王は台詞を続ける。
「この世界がなくなれば……また、別の世界で新たな闇が生まれるだろう……そしてその世界が……この世界と同じ次元とは、限らん」
「……」
「クク……くだらんなぁ……好き嫌いは仕方ないとはいえ……悪堕ちNTRは……素晴らしく滾るというのに……」
大魔王はそれだけ言って、床に沈んだ。
城を出ると夜であった。
『御苦労、勇者よ』
剣からの声に、男は力無く首を振る。
「……俺は勇者じゃない」
『いや勇者だ。そうでなくては困る』
声が淡々と言った。男は疲れた顔をして、しかし、剣を強く握った。
『さぁ、次の世界に向かえ』
「……了解」
俺は自分の有り様を受け容れたのだ。
どうしても行かねばならない。
彼の後ろには、一辺の穢れも無くなった世界が遺された。
勇者でなくなった男は―或いは、依然勇者なのかもしれない男は、酷く憔悴した様子で歩き始めた。
完
8 :
名無しさん@ピンキー:2013/06/15(土) 01:01:11.47 ID:fQnHqaxA
お目汚しすいませんでした
ちょっと寝ます
んでおやすみなさい
こ
あは〜ん
乙。
面白かったけど、出来れば単発でのスレ立てはせず
投下先を探してやって欲しかったな
11 :
1:
>>10 今更で本当に申し訳ありませんが、その一言だけで報われた思いがします。
反応して頂いてありがとうございました。また頑張って、どこかで何か書いたりします。