「ここを通って…………」
汗に塗れた女の身体に自分と相手の唾液を擦り付けながら、男の舌は臍まで辿り着く。
嘔吐するまで殴られたそこは変色しており、臍に舌が入ってくると、
その刺激だけでビクンと反応する。
臍の下は更に敏感だった。
「テメェの腐れマ○コにこうやって届くまで…………」
ピクっと太股が動くのを見て、男は黙って両手で太股を押さえ付ける。
この足をまた振り回されては面倒だ。
そのまま拳の痕がまだ残っている下腹を、急所を守る淡い茂み近くまで嘗め回してから、
男はやっと顔を上げ、女の鼻先まで近づいた。
「テメェの胃袋を殴り続けてやる。テメェの全身がゲロまみれになるまで、ずっとな」
獣のような目つきをした男の顔を間近に押し付けられて、女の瞳に初めて恐怖の色が浮かんだ。
「ひぃっ」
か弱い悲鳴を上げそうになり、女はそれを無理矢理飲み込む。
過敏になった女の腹に男が手を触れたのだ。
臍に触れながらその上、縦にうっすらと線の入った場所へと指が這う。
その内部には男の言うように、胃袋が収められている。
女の胸が大きく上下し、彼女の息が荒くなった。
男は数歩下がって、丸太のような豪腕を見せつけるように、大げさな動作で力を溜める。
「最初の一発だっ。たっぷり吐きやがれ!」
助走をつけ、腰を回し、肩の入った、完璧な打撃が、
天井から吊るされて、肝心な場所の破れたボロ布だけを張り付けた、
裸同然の女エルフに向かって、襲い掛かる。
女は咄嗟に太股を上げて身を守ろうとした。
しかし、膝を僅かに曲げた程度で、鎖に繋がれた足はそれ以上動かない。
鉄球を振り回し、男たちを薙ぎ倒した力は既にない。
それは、何の意味もない行為となった。
それでも男の拳が自分の腹に命中するまで、見守る以外に何も出来ない女が、
反射的に身を捩って、少しでも苦痛を避けようとするのは、仕方の無い行為だ。
破れた肌着から零れた乳房の下に、男の拳が消えていく。
そこから先は見えなくとも、ズブズブと肉を掻き分けて、
彼のパンチが自分の中に埋まっていくのは判る。
その重量を受け止めきれずに、足が浮いて彼女は爪先立ちになった。
「ぐあああああああああっ!!」
のけぞった喉から悲鳴が迸る。
苦痛は、後からやってきた。
胃袋が完璧に潰されている。
「ごっ、ごぶぅっ」
尿意が先に来て、尻が震える。
吐き気は後から喉元を駆け上がる。
彼女は天井を見つめながら、弱り果てた身体が起こす生理反応を黙って受け入れようとしていた。
それすらも男に支配されるのだと、この瞬間にはまだ、理解していなかった。
ボスッッ!
二度目の衝撃と音の意味を理解したのは、自分の乳房を見下ろした後だ。
いつの間にかさっきとは別の腕が胸の下に突き刺さっている。
自分の胸元で、柔らかな乳肉が勝手にブルブルと震え始めた。
悪寒が這い上がって来る。
そして窪んだ腹に埋まった男の拳が引き抜かれる感触と、三発目が向かってくる風圧。
「ひっ…………」
続けざまに襲いかかる苦痛に、今度こそ悲鳴を上げようとした矢先、
重い衝撃が胃袋を直撃した。
「おげっ!……ごぶぅぅっ」
唇から胃液が溢れ、震える乳房の上にボタボタと垂れ落ちる。
「おらよっ」
「ぐぷぅっ!」
まだ吐き終わっていないうちから、男が足を挙げ、靴の底で女の腹を打った。
肺の中の空気と共に胃液が飛ぶ。
息を吸う暇すらない。
男は足で女を押すように蹴った。
天井に手首から吊るされた女の身体が、振り子のように揺れる。
戻ってきた女の腹を、またも男の靴が待ち受ける。
ズブッッ!
「くはぁっ」
男の足に貫かれて、女はしばしゲロ交じりの唾液を垂らす。
しかし幾ら垂れ落ちようが、それは大きな胸にまとわり付くばかりだ。
「まだまだ全然足りねぇな。テメェの全身がグショグショになるまでゲロ吹けや。
おっぱいに吐いてるだけじゃ腹にも届かねぇぞ」
その大きなおっぱいを、片手で両方持ち上げると、伸びた鳩尾に一発、
「ぐふぅっ!」
胃袋にもう一発
「おごぉ…………」
男は思う存分、女の柔肌に拳骨を叩き込んだ。
「あがぁ…………うげぇ…………」
腹をビクビクと震わせて、女は半開きにした口から胃液を溢れさせた。
もはやその瞳に抵抗の意思は感じられない。
「だらしねぇおっぱいも少しは濡れて来たか?」
女は頭を垂れ、男が持ち上げた自分の胸の谷間へと顔を埋めながら、
ひたすらそこを胃液塗れにしていた。
繋がれた手首にぶら下がるようにして揺れる姿からは、
彼女が既に両足で自分を支えきれない事が伺える。
すると男は女の乳肉から手を離し、彼女の手枷に繋がった鎖を緩め始めた。
鎖と共に女の上半身が前のめりに落ち、途中で停止する。
女の腰が曲がり、尻を突き出す屈辱的な格好となった。
「まだまだ吐き足りねぇよなぁ」
男は女の横に立ち、白い臀部を突き出した女の背に両手を当てると、
彼女の腹を、今度は膝で思い切り突き上げる。
「おがぁっ!」
目を剥き、いっぱいに開いた口からヨダレの糸を引く女エルフの胸が揺れた。
「どうだ。またゲロぶちまけたくなったろうが。
テメェはこれからまた、無様に吐かされるんだよっ」
「げえっ! ぐふっ!」
2度、3度と男が膝を突き上げて来る。
それは彼女の口から、胃の内容液が放出されるまで止まなかった。
跳ね上がる背中を両手で抑えられ、硬い膝頭が女の胃袋を圧し潰す。
その度に垂れた乳房と突き出した尻肉が震えた。
腹が何度も陥没し、女は頭を反らせて呻く。
「ゲェッ! うぶぅっ……うへぇっ……げはッ……うげへえええええええええええええッ!!」
男の期待した通り、女はたまらず吐瀉物を吹き出し始めた。
勢い良く逆流した胃液が、女の口から床石目掛けて滝のように落下する。
ビチャビチャとした音が立ち、たちまち彼女の下に胃液の水溜りが出来上がった。
「がはははっ。やりやがった。立ったまんまでそれだけ吐いてりゃ、
テメェの股まで濡らしただろうによ。全身ゲロまみれになったなら、
俺も約束どおり終わりにしてやれたってもんだ」
胃液を吐き終わった女が、唇を噛み締め、憎々しげな表情を浮かべる。
男はその顔を見て、初めて満足そうに笑った。
女の髪を取り、上半身を起こしてから、さんざんに痛めつけた腹をまた撫で回す。
「まだ吐くモンが残ってるといいな。テメェのココにっ」
ビクビクと痙攣する女の腹部は、泣いているようで男にとって心地が良い。
そしてまだ意識のある女を、もっとブチのめす事が出来る快感。
ズムッ。
胸と臍の間に穴が開くほど拳を捻じ込むと、起こした女の半身が、くの字に折れ曲がる。
「ぐぶぇっ!」
胃液交じりの唾液が飛んで、男の厚い胸板に張り付いた。
「足りねぇな。ゲロ塗れになりたけりゃ、テメェで立ってな」
男が髪から手を離すと、支えを失った女はたたらを踏んだ。
鎖が緩んで胸の辺りまで降りて来た手をぐっと握り締め、なんとかその場に踏みとどまる。
両足が震えていた。
しかしどれだけボロボロにしてやろうとも、裸同然の姿であろうとも、
彼女はどこか凛々しさを失っていない。
乱れた髪の隙間から覗く目は、時に弱気になりながら、必ず鋭い力強さを取り戻す。
男には、それが気に入らなかった。
「しっかり立っときやがれっ」
間髪入れずに女に向かって踏み込んで、腰から拳を突き上げると、
胸の真下から鳩尾を抉ってやる。
「ぐぶうっ!!」
ブルンと音を立てそうな程に乳房が振動し、女の足元がおぼつかなくなる。
肺を圧迫したから呼吸が止まった筈だ。
アバラを折るつもりで強烈に打ち込んでやったので、意識まで吹き飛ばしたかもしれない。
女の太股が傍目にも判る程震えて、やがて膝をガクンと折り曲げた。
鎖に繋がれた身だ。
放っておいても停止する。
そうと知っていながら、男はわざわざ片膝を立ててそれを受け止めた。
そうすると女は自分から、彼の膝に尻を落とす事になる。
「あっ……ああぅ…………はうう……」
せっかく屈辱的な責め苦をしてやったと思ったが、反応は静かなものだった。
呆けた表情でヨダレを垂れ流す女の顔は、既に焦点を失っていた。
股間を押し付けるように男の太股を跨いだ格好で、ゆるやかに失禁している。
男の足に暖かい染みを広げながら、白目を剥き始めた。
半開きの口から糸を引く唾液は胸元に溜まってようやく谷間を抜ける程になっていたが、
臍へと届くのにさえ、まだまだ量が足りない。
男の決めた拷問の終わりには程遠かった。
それだけ、いたぶり倒せるという事だ。
「おい。気をやって終わるなんて思うんじゃねぇぞ」
男は、力の抜けた女の腰に手を回して引き寄せる。
脱力して無防備な下半身を持ち上げてから、手を放した。
女の股間が、膝に落ちる。
ドスッ!
「げはっ」
白目を剥いたまま、女は口から唾液を吐いた。
膝から落ちそうになる相手を捕まえてもう一度、持ち上げる。
ゴツッ!
目の前で女の乳房が揺れた。
尾てい骨に膝が直撃した音が聞こえる。
「ひぐぅ」
尻の急所をしたたかに打ったとあって、意識を失っていても、女の口から悲鳴が漏れる。
今度は丸い尻肉をギュっと掴んで、もっと高く持ち上げた。
そしてまた、自分の膝に目掛けて突き落とす。
股を開いた女のケツが落ち、硬く大きな膝頭に激突した。
「ひぎぃっ」
背を反らして短く呻いた後、女は脱力した。
白目を剥いたまま、揺らした胸を押し付けるようにしながら、しなだれて来る。
泡を吹き始めていた。
男はしばらくそうやって、人形のように力の無い女の身体を弄んで楽しんだ。
くびれた腰に手をかけて持ち上げると、彼女の全身が打撲で変色しているのがよく解る。
特にへそ周りが最も酷いようだ。
呼吸とは別の動きでヒクヒクと痙攣するそこを見ていると、男の嗜虐性が刺激され、
もっと嬲ってやりたくなる。
男が女エルフを膝から下ろすと、彼女は天井から伸びた鎖にぶら下がって、
床に膝がつくギリギリの高さで揺れた。
臍を蹴るのに丁度よい高さだ。
たっぷりと痛めつけた女の臍は、少し触れただけで勝手にビクビクと痙攣する。
男は女の前に立ち、片足を上げると、膝を曲げ、ぶら下がって伸びきった彼女の臍を、
全力で蹴りつけた。
ドボオッ!
「うぐぅっ!」
大きく腹を凹ませて、女が吹き飛んだ。
鎖に繋がれて戻ってきた彼女の身体を男が受け止める。
グチュッ!
「へえうっ!」
受け止めながら拳を突き立ててやると、女の腹と胃袋から水っぽい音がたち、
唇から瞬く間に胃液が溢れ出た。
仰け反って横に広がっても、まだ盛り上がっている胸がビクビクと暴れ出す。
喉の奥から溢れた液体に気泡が生まれていた。
「ごぶっ、げぶっ、げぼっ」
苦しさに咳き込みながら、女が目覚める。
自分で吐き出した胃の内容物で、溺れかけているのだ。
男は女の髪を掴むと、その身を強引に立ち上がらせた。
途端に唇から顎を伝ってボタボタと零れ出した胃液が、咳き込んで揺れる谷間に一旦留まり、
下乳から痙攣する鳩尾を伝って流れ落ちる。
「げっ、げほっげほっ、げほっ、げふっ」
窒息しかけた女が咳き込みながら必死に空気を取り込んでいる。
谷間にたまった胃液が全て零れて、黄色い液体が痙攣する臍の窪みに入ったところで、
男の拳が臍ごと女の腹をペシャンコにした。
「うぐぅっ、ぐっへええええええええっ!」
女の腹から胃液が飛び散る。
意識が戻った途端、女は目を見開いて、血反吐を吐く羽目となった。
腹の中をぐちゃぐちゃにかき回された気分だ。
意識を失う前より酷い苦痛が彼女を襲い、制御の利かなくなった下半身がすぐに漏水し始めた。
「また漏らしやがったか。ゆるい股しやがって。ここがそんなに弱いか」
男の無骨で太い指が臍に触れると、それだけで女は絶叫する。
「うわあっ、うわあああああああああっ」
何度となく小便を漏らした股が、再び勢い良く潮を吹いた。
今の女にとって、臍は舐められただけで気絶しかねない程に、敏感な器官へと変貌したらしい。
女は泣き叫びながら男の首に腕を回して抱き付いた。
腰が砕けて一人では立っていられないのだろう。
「何だ? そっちの方に目覚めたのかよ」
男は下卑た笑いを浮かべると、何度と無く圧し潰した女の臍に指を入れた。
「ひぃっ、ひぃぎいいいいいいいっ」
男にとっては軽く押し付けただけだったが、もはやそれだけの刺激で、女は泣き叫ぶ。
男の肩に爪を突きたて、強く掴んだ。
押しただけで泡を吹きそうな勢いだ。
男は試しに臍穴の奥にある皮膚を指で押しながら、なぞりあげてみる。
「ひぎぃっ、ふひいいいいいいいいいいいいいいっ!」
すると女は、男から離れようと仰け反りながら自分の腹を見た。
臍に指の入った女の腹はビクビクと波打っている。
「まるでヘソマ○コだなっ」
そう言って女の顔を覗き込むと、今にも泣き出しそうな表情で、女が首を振る。
男の指を包むように、臍がヒクヒクと蠢いた。
追い討ちをかけるように、男は臍の内側を指でぐるっとかき混ぜる。
「げはぁっ! ふげっぐおおおおおおおおおおおおおおっ!」
もはや獣のような悲鳴を上げて、彼女は再び男にしがみつき、その背に向けてゲロを吐く。
「何してやがるクソがっ。人に汚ねぇモン、ブチ撒けやがって」
途端に男は臍から指を抜き、今度は大きな手で臍ごと女の腹を鷲掴みにした。
彼女は悲鳴を上げながら男の前で再び首を振る。
涙目で許しを請うているようだ。
男はニタリとした笑みを漏らすと、女の腹をじっくりと捩じり始める。
「や……やめろ……」
掠れた声で女が囁く。
「やめて下さいだろうが」
男は殊更下卑た笑みを浮かべてみせた。
彼ら拷問者の役割の1つに、奴隷の調教がある。
男、女、少年、少女。
男は手下と共に、多くの奴隷を売り物に変えて来た。
その経験で判る。
この女は商品になる。
それも、とびきりの上玉だ。
何人死んだか知らないが、手下3人の命と引き換えなら、安い買い物だったのかもしれない。
そう考えながら、男は女の腹を掴み、捩じり上げる。
女は再び首を振り、潤んだ瞳で許しを請う。
「うっ……くぅっ……や、やめ……て……」
男は女の腹から手を離した。
安堵したのか、女が下を向き、深い吐息を漏らす。
その目の前で、男の指がまっすぐに揃って手刀を作った。
先端に、自分の臍がある事に気付いた女が顔を上げる。
驚愕の表情を浮かべた女に向けて、男がニタリを下卑た笑みを浮かべて見せる。
「テメェのヘソマ○コの具合を確かめてやる」
「や、やめ……て……下さ……」
「時間切れだ」
男の手刀が女の臍と腹を突く。
触れただけで泣き叫び、いじっただけでゲロを吐いてしまう程、今の彼女の臍と腹は過敏だった。
もはや性器以上の反応だと言える。
そこに男の指が埋まったら、どんな反応を起こすか。
「かはっ!」
女は短く呻いて仰け反った。
男はあらかじめ女の腰に腕を回して逃げ場を奪っている。
剥き出しのおっぱいを突き上げるように、目いっぱい仰け反って震える女の頬に、
黄色いヨダレの筋が幾つも出来上がっていった。
彼女は何度も何度も叫んでいた。
悲鳴さえ、声にならないのだ。
ただ目を見開き、胃液交じりの唾液を吐き続け、盛り上がったおっぱいをブルブル震わせて、
幾度となく身体を跳ね上げ、遂に彼女は脱糞した。
「んぎいいいいいいいいいいいいいいっ!」
絶叫と共に透明な液体が、女の尻肉の間から音を立てて吹き出している。
「あがっ、ひぃっ、んあああああああああああああッ!」
長い間、水と塩しか与えられなかった女の腸には水分だけしかなかったようだ。
しかしそれは確かに、尻の穴で行う排泄行為だった。
それはこれまで以上の恥辱を、彼女に与えた事だろう。
「ひゃひぃっ! うっ、う、うわあああああああああああああっ!」
犯して大人しくなる奴隷もいる。
殴って大人しくなる奴隷もいる。
この女に必要なのは、屈辱だと、男は考えていた。
重要なのは、自我を奪う事。
自我を奪うには、絶望を与える事だ。
その相手が最も嫌悪する事を、繰り返し繰り返し、実行してやればいい。
女は排泄している間中、長い髪を振り乱して首を振り、叫び続ける。
そうやって、精神を保っているのだろう。
しかし、男の目には、彼女のプライドが、水と一緒にケツの穴から吹き出しているように映る。
叫ぶ女の尻肉を、男は両手で掴み上げた。
指の隙間から余った肉が溢れる程強く握り締める。
「うわああああっ、あ、あへぇっ! あっ……うっ……ひっ、ヒィィィィィィィィッ!」
排泄中に尻を捕まれるなど、初めての経験だろう。
そしてそれは、この恥ずべき行為が男に監視されているだのという事実を、
嫌でも女に自覚させる筈だ。
羞恥のあまり、女が再び白目を剥く。
一際唾液が溢れ返り、舌がだらしなく伸びる。
そして屈辱にまみれた排出がようやく終わると、女はただ呆然としながら男の胸に凭れて、
荒い呼吸だけを繰り返していた。
「男の前でクソまで漏らした気分はどうだ?」
たっぷりと後悔の時間を与えてから、男は女の顎を掴んで、その顔を自分へと向ける。
その目は虚ろで、開きっぱなしの口からは変わらずダラダラとヨダレが落ち、
胸の谷間に驚く程溜まっていた。
痛々しい程に卑しい女に見える。
「聞こえてんのか? 自分の名前を言ってみやがれ」
「……………………イル、マ……」
長い耳の女エルフは、掠れた声で呟いた。
「いいか、テメェは奴隷だ。これから俺の命令には全て服従しろ。いいな」
女は呆けたままコクンと頷く。
「返事をしろっ」
男がイルマの臍に触れると、彼女は必死に何度も頷いた。
「は、はいっ……。ゆ、許して……下さい……」
涙目で許しを請う。
無事に自我が崩壊したようだ。
「まずはテメェが汚した俺の身体を綺麗に拭え。テメェの口と舌でな」
「は、はい……」
イルマは長い髪を揺らして頷くと、男の首に回した腕を引っ張って、まずはその首筋に、
そして胸元に、吸い付くようなキスをする。
同時に自分の舌で、男についた自分の汚物を舐め取った。
それは、自尊心を投げ捨てた行為だった。
首に手を回したまま、自分がゲロを撒き散らした男の背中まで回る。
うなじから肩にかけて、同じように唇を押し付け、舌を伸ばしてチロチロと愛撫するように、
汚物を丁寧に舐め取っていく。
「赤鼻、背むし、坊主。誰か生きてるか?」
男は女の愛撫に身を任せながら、周囲に転がる男達に声をかけた。
誰からも返事は無い。
坊主は腕が折れたと泣き喚いていた筈だが、今はピクリとも動いていない。
「お前ら死んだのか? まだ生きてやがったら、俺が天国を見せてやる」
女のはだけた乳房の先端が、背中に当たっているのが分かる。
十分に従順な奴隷となった今、女エルフの豊満な身体付きは、
男の性欲を沸き起こすのに満ち足りて有り余る。
汚れた服など脱ぎ捨てて、このまま全身をしゃぶらせようかと思い始めた。
手下の誰かが生きていれば、同時に慰めさせてやろう。
「赤鼻、背むし、坊主。お前ら………ぐぅっ」
突然、男が呻き声を上げた。
自分の首に手をやると、何かが喉元に食い込み、気道を塞いでいる事に気付く。
「貴様が見るのは天国ではない。地獄だ」
そう言ったのはイルマだ。
イルマが男の背に足を立て、手元に繋がれた鎖を使って男の首を締め上げている。
その声は、弱々しく許しを請うていた先程とは、まるで別人だった。
男は鎖を緩めようともがいたが、既に首に深く食い込んで、
そうそう外せるものではなくなっている。
窒息させる前に、その首をヘシ折るつもりなのか、全体重をかけた女が鎖を引いているのだ。
もともと鎖を緩めたのは男だ。
その余った鎖の長さを用いて、イルマは男の首を絞める機会を、ずっと探していた。
鎖を首に巻くために、イルマは男の首に腕を回して抱き付いた。
しかし、そのまま正面から首を絞めたところで、損傷の大きな今の彼女の身体では、
腹を一発殴られたらお終いだ。
硬直し、ヨダレを溢している自分の姿が浮かぶ。
相手の反撃を受けない場所から締め上げる必要があった。
男は両腕を振って暴れたが、背中に足を立てたイルマの身体を掴む事は出来ない。
背後に回るため、イルマは男にキスをした。
完全に回り込むまで、男の気を逸らせる必要があった。
どうやっても背中の女に手が届かない事を知ると、男は身体を振って暴れ回り、
ついには背中から倒れこんだ。
自分の体重で押し潰そうとしたのだが、その前にイルマは飛び退く。
彼女にとっては、想定の範囲だった。
逆に男は自分の体重で、首の鎖が更に締め上がる結果になる。
「あ………がががががっ……」
男が口から泡を吹いた。
最後の時が近いようだ。
「覚えているか? 私は、貴様は死ぬと言った。私が殺すと言った。その約束を、今果たす」
裸のエルフが雄叫びを上げ、髭面の男は断末魔の叫びを上げる。
イルマが力の限り鎖を引くと、天井の留め金が外れ、男の首の骨が音を立ててへし折れた。
熊のような男が倒れる。
引きずられてイルマもその場に崩れ落ちた。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
男に重なるように仰向けに倒れた女は、乳房を激しく上下させながら荒い吐息を繰り返した。
もう彼女以外に、この部屋で息をする者はいない筈だった。
「う、うげぇっ!」
吐き気がこみ上げ、痛めつけられた腹を押さえて、イルマは何度かその場で吐いた。
起き上がろうとしただけで、紫色に変色した腹が悲鳴を上げている。
「ぐっ……ハァ、ハァ、ハァ」
死んだ男に向けて胃液をブチ撒けながら、彼女はなんとか立ち上がる。
それから男達の身ぐるみを剥ぎ、鍵を探してまずは手足の枷を外した。
そしてボロ服で身を包む。
傷が癒えるまで、何処かに身を隠さねばならない。
ニンゲンの目が届かない場所へ逃げおおせるまで、彼女の苦難は続く。
まさか続くと思わなかった
続き超期待
ふぅ……
GJだ、ひひっ。
これはまたGJ
勝ったのにダメージ残ってる描写はいいよな
ダメージが累積したまま苦難の旅路が続くんだろうなあ
スゲぇ・・・こうもハイレベルでGJなSSが定期的に降りてくるスレってそう無いわな
やっぱ腹責めの潜在需要て結構あるんかね?
ピンチに堕ちた女が、ギリギリのとこで自力で反撃して脱出って素晴らしいシチュ
が、往年の西村寿行ぽくて良い。
560 :
名無しさん@ピンキー:2014/04/14(月) 23:14:37.12 ID:ve3V5pJe
むっちり美女新入社員のパッツンぱっつん気味のブラウス越しに腹パンAge
投下します。
長いので前後にぶった切りますが、途中規制かかった場合、
そこから先は後半に含めます。
腹パンチで感じる子達の
イチャラブエロレズ系となります。
エロレズ描写が強めで、スレ的にはかなり斜め上な感じになっていると思いますので、
取扱い注意願います。
『パラフィリアって知ってる?』
『C組の加奈子って、彼氏とエッチの時使ったっら全然痛くなかったって言ってたよ』
『あれ違法なのよ。一斉取締りがあって…………』
『今はまだ合法だから使うなら今のうちらしいってさ』
『すっごい気持ちいいんだってさ!』
『全然気持ちよくなかったって』
『めっちゃ流行ってるみたい』
『男子には効果ないらしいよ。藤木が使ったって』
『なんでも地下クラブがあって……』
『アイツこの前ガッコやめたじゃん? 普通のお水よりずっと稼いでるって噂だよ』
『ボコボコに殴られて入院しるけど、意識不明だって……』
『違う違う。薬自体に依存性はないんだけど、あの気持ちよさ知ったら
普通のセックスじゃ満足出来ないんだって』
『会員制の配信ってのがあってさ……』
「いらっしゃい。おや、今日は友達連れかい」
大きなマンションの一室で、扉を開けて私達を出迎えたのは、サイドの長いショートカットの女性だった。
ブラトップにホットパンツ姿のラフな格好。
「色々ストレス溜まってる子だからさ。無理やり引っ張って来ちゃった。いいかな? 聡子さん」
ここに来るまでずっと考えていた台詞を言おうと私も口を開きかけたのだけど、隣の美香に先を越された。
ショートカットの女性のどこか眠そうな瞳が、私の頭から爪先までをざっと見回す。
ふむ、と呟いて彼女は私達に背を向けた。
「取り合えず入りな」
「あのっ……!」
意を決した私の声に、部屋の中に戻ろうとしていた彼女が振り返る。
何?
瞳だけでそう語っていた。
「私、やっぱり帰ります。お金、持ってないですし」
どうしても不安が拭えない。
美香を信頼してないわけじゃないけれど、よく考えもせずに知らない事に首を突っ込むべきじゃないと思う。
「お金? いらないよ。玄関開けっ放しヤだから、取り合えず入っておいで」
私の苦悩の決断をあっさりと否定して、女性は部屋の奥に向かっていく。
鞄を両手に抱えたまま、立ちぼうけの私の背を、美香が押してきた。
「ほら、入るよさくら。おじゃましまーす」
そうして強引に、私は聡子という女性の部屋に上がる事になった。
通されたのは20畳位ありそうな広いリビングダイニング。
いかにもドラッグパーティーを開けそうな雰囲気だ。
「今日はどっち? 見る? やる?」
「聡子さん、先週はやったの?」
美香は鞄を置くと、TVの前のソファにどかっと腰を降ろした。
キッチンから「やったよー」と返事がくる。
「勝った? 負けた?」
「アタシが負けるわけないっしょ。イかせまくってやった」
私は所在なく美香の隣にとりあえず立っている。
何の話かも判らない会話に強引に割って入れる性格じゃないし。
「それも見たいなァ。でもさくらにはどっちが先がいいだろう。
あ、この子の名前、さくら、ね」
ソファーの上で胡坐をかいた美香は、仕事上がりにネクタイを外すサラリーマンみたいに
制服のリボンを外していた。
美香は私より小さいけど、物怖じしないタイプで、堂々としている仕草はおじさんくさいとよく言われる。
スポーツが得意で活発な子だ。
一方の私はどちらかと言えば大人しいタイプ。
「は、はじめまして。さくら、です」
突然話を振られて、慌ててキッチンに向かっておじぎする。
思わず深々と下げた頭を上げると、背中の長い髪が肩からバサッと前に落ちる。
私は物怖じする方だ。
顔を上げると目の前に聡子さんが立っていた。
「よろしく。聡子ダヨ。とりあえずコレ、お近づきの印」
聡子さんは片手に挟んだ2本の小瓶を胸の前で振っている。
ブラトップから僅かに胸の谷間が覗いていた。
しっかりとした身体つきで、ラフな格好だけれど、健康的な色香の漂う人だ。
小瓶のうち1本を私に、1本を美香に手渡す。
それはプラスチック製のアンプルみたいだった。
脱いだリボンを片手にぶら下げたまま、美香はさっそくアンプルの中身を飲み干していた。
促されるまま、私もそれを飲む。
アンプルの先端をポキっと折って、小さな容器の内側で揺れる透明な液体を口に運ぶ。
臭いはなく、微かに甘かった。
「それがパラフィリア。理解するにはまず飲んでみるのがてっとりばやい」
これが、噂の薬。
私、飲んじゃった。
合法かどうかも怪しい薬を、まさかホントに飲む事になってしまったなんて、まだ実感がない。
別に騙されたわけではないし、事前に美香からパラフィリアを飲むとは聞いていた。
いいストレス解消になるし、悩みなんか全部吹っ飛ぶからって。
でも、結局最後まで自分は手を出さないで終わるんじゃないかって、そんなつもりでいたのに。
なんとなく、どこか他人事にように物思いにふけっていた私を、聡子さんの次の一言が現実に戻した。
「じわじわ効いて来るから、今のうちにさくらちゃんも制服脱いじゃいな」
「え? ぬ、脱ぐ!? 私『も』!?」
言葉通りだった。
美香は既に制服を脱ぎ、ソファの上で下着姿になっている。
「え? 嘘っ、美香。何やってるの?」
てっきり美香が錯乱しているのかと慌てる私の前で、美香は下着姿のまま平然とソファの上で胡坐をかいる。
「聡子さんは飲まないの? 3人でやろーよ」
「アタシは今日はやらない。初心者がいるんだから、危なくないように見張っとくヤツが必要だろ。
それより、美香は下着の替えあるだろうからその格好でいいんだけど、さくらちゃんは持ってんの?」
私は黙って首を振る。
聞いてない。
「ごっめーん。言い忘れてた」
美香はカラカラと笑っている。
酔っ払ってるんじゃないだろうかと思う事もあるが、だいたいこの子はいつもこんな調子だ。
美香の調子に呆れたのか、額に指をあててため息をつく聡子さん。
それより気になるのは……。
「あの、やっぱり、危ないんですか?」
「ハメ外しすぎなければ危ない事はないよ。それより、替えがないなら裸の方がいいと思うんだけど?」
「こ、ここでですか? む、むむむ無理です」
ブンブン首を振る私。
髪が凄い勢いで揺れたに違いない。
聡子さんが慌てて仰け反っていた。
「ならせめて水着に着替えな。アタシの貸したげるし、シャワールーム使っていいから」
「さくらってば、すっごい巨乳だよ。聡子さんので入るかなぁ」
な、何て事言うのこの子。
慌てて否定しようとしたら、脇から伸びてきた腕が私の胸をムギュっとする。
「きゃあっ!」
思わず悲鳴を上げてしまう。
「さくらとなら、私も一緒に裸になってもいいよ」
下から胸を持ち上げるように揉んでくる背後の美香を振り払うと、私は胸を庇った。
顔がちょっと熱くなってくる。
「酔っ払ってるんじゃないの美香!?」
美香は下着姿で両手をニギニギしながら、げっへっへと変な笑い声を作っている。
むしろ私の方が酔っ払ったみたいに真っ赤になっているかも。
「失敬な。アタシだって胸はそこそこある」
人の水着を借りるのは変な気分だ。
ほのかに洗剤の香がして、綺麗にされているし、嫌な気分ではないのだけれど。
「だいぶ際どいよね、コレ……」
鏡に映った自分の姿を見ると、恥ずかしくて再び真っ赤になっていた。
もともとハイレグタイプの水着だと思うんだけど、縦にざっくりとV字の切れ目が入っていて、
谷間どころか下乳まで見えているし、お臍も丸出し。
一応左右の布地は横紐で繋ぎとめられていたが、横幅が足りないせいで左右にも乳肉がはみ出している。
包まれている感じが全然しない。
この、隠しようのない無駄に大きな乳を呪いたい。
「終わった? 入るよ」
「え? ちょっと、ちょっと待って」
美香の声が聞こえると、私は慌てて自分の髪を胸に向かって垂らした。
せめてもの抵抗だ。
すぐに扉が開いて、私のいるシャワールームに美香が入って来る。
「うわっ。なんか下着よりエロいよ、それ」
「口に出して言わないでよ」
下着姿の美香に言われると余計にへこむ。
私は両手で顔を覆って俯いた。
「おや。ほんとにおっぱい大きいな。似合うじゃん。アタシのリンコス」
聡子さんの声も聞こえる。
リンコスって何?
気にはなったが、顔を上げたくない。
「さくら。ほら、もう顔上げなよ」
私は俯いて顔を隠したまま、首を振った。
こんな格好して何やってるんだろう、私。
涙が出る程恥ずかしくて、頭がぼーっとしてくる感じだ。
「顔上げないなら、このまま始めちゃうよ?」
始めるって何を?
わけが判らなくなってくる。
そもそも私はなんで、ここにいるんだろう。
「もうパラフィリアの効果出てるよね。私が使い方、教えてあげる」
美香の手が、私の肩を掴んでそのまま壁際に押し付けた。
露出した素肌に当たる壁が冷たい。
パンッ! という音がシャワールームに響いた。
何を始めるの?
そう尋ねる前に、私の口から別の声が出る。
「うぅっ!」
不意にお腹にやってきた衝撃に、私は呻き声を上げていた。
顔を覆っていた両手を開くと、お臍のあたりに美香の腕が見える。
美香が、私のお腹を、殴ったの?
「なに……を……」
驚きと、悲しみと、怖ろしさと、色々ごちゃまぜになった感情に押し潰されそうになっていたのに、
すぐにそれらが全部、消し飛ばされた。
「はぅうっ!!」
自分でもびっくりするような、これまであげた事のない種類の声で、私は叫んでいた。
美香は、相変わらず悪びれない様子で腕を引き、再び私のお腹にパンチする。
「やっ…………きゃうっ!」
私が抵抗しようするより早く、美香のゲンコツは私のお臍の上あたりを押し上げた。
「くふぅうっ!!」
またおかしな声が上がってしまう。
パンチされたお臍から下腹のあたりまで、生まれて初めての感覚に満たされていくのを感じる。
「大丈夫? 苦しくない? さくら」
優しく問いかけてくれるのに、美香は私のお腹をまた殴って来た。
「はぐぅっ」
声があがる。
私はビクンと震えた。
痛いし、苦しいよ。でも……。
「気持ちいい?」
下から見上げて来る美香の問い掛けに、私は、微かに頷いた。
息が荒くなって、水着からはみ出した胸が大きく上下するのが自分の目に映る。
何がどうなってるの?
視線を走らせると、ドアに凭れかかった聡子さんと目があった。
「もっと強くするよ? もっと、気持ちよくなるから」
ドブッ!
「ぐふぅっ!」
私のお腹が音を立てる。私は声を上げ、口から唾が飛んだ。
最初は、凄く苦しい。
聡子さんは腕を組んで黙ったまま、こちらを見ている。
彼女が動かないのは、まだ、危険ではないのだ。
そう、信じる事にした。
私のお腹から下腹部へと、脈打つような感触がじわじわ下りていく。
その間中、痺れるようなパルスが全身を駆け巡っていた。
それは、脳の奥まで蕩けるような、とてつもなく気持ちのいい感覚だった。
ドボッ!
「ぐふうっ!」
また衝撃がやって来た。
ポニーテールの友人は、私を壁際に押し付たまま、逃げ場のないお腹にパンチを食らわせる。
むき出しのお臍周りのお肉がへこんでしまう程、本気のパンチ。
でもそれは鈍い痛みで、すぐに腰が溶けてしまいそうな感覚で上書きされる。
「痛いのもすぐに消えて、もっと気持ちよくなるよ」
美香の言葉に私は首を振って、何かを口走った。
それを聞いた美香は嬉しそうに私の肩から手を離す。
「パラフィリアは痛みが強いほど、その何倍も気持ち良くなるの」
どんどんと、頭がぼぅっとしきた私は、美香の言葉を理解出来ているだろうか。
もう、頭の中が真っ白になりそう。
私は立っていられなかったみたいで、ずるずると壁添いに落ちていく。
背の小さな美香の顔が正面に来て、それから私の上に来る。
眼下を何かが横切った。
一番の衝撃が私を貫く。
「げぶぅっ!!」
我ながら酷い声で叫んで、私は口内に溜まった唾液を一斉に吹き出していた。
気付けばその場に崩れ落ちている。
そして美香の背後に鏡があるのに気がついた。
そこには知らない少女の顔が映っている。
その少女は水着姿で、鏡餅みたいに兎に角大きな乳が目立つ。
少女は美香にお腹を踏まれながら、シャワールームに殆ど寝そべるように転がっていた。
両足を投げ出して座り込む様子はだらしがなく、無駄に大きな乳なんか水着から片方がはみ出てる。
乱れた長い黒髪に埋まった顔なんて、どこか嬉しそうに頬を染めながら涎を溢していた。
完全にイっちゃってる人の顔だ。
彼女は何か呟いていた。
「いい……気持ちいいよ、美香ぁ……私、どうなってるの? 今、凄く、気持ちよくなってる………」
鏡の中の痴女は、自分と同じ声をしている。
「あはははっ。さくら可愛いっ。しっかりパラフィリアが効いてるね。
私にお腹踏まれて感じるてるの?」
美香が、私の顔を上から覗き込んでくる。
ポニーテールの可愛い顔が近づいて来るにつれて、
私のお臍の乗った彼女の足もぐっと私の中に踏み込んでくる。
「うっ、んっ! ……気持ち、いいよ。美香の足、気持ちいい……お腹……気持ちいいよぉ……あっ!
な、何!? 何か……くっ……来ちゃっ……!!」
唐突に下半身を貫いた快感に、私の腰が勝手に大きく跳ねあがって、美香の足を持ち上げる。
「イクの? イキそうなんだね? 私がさくらをイカせてあげる。いいよねっ、聡子さん」
美香が振り返る。
「胃の辺りを軽く踏んでやりな。多分イクから」
聡子さんの声に美香は頷いて、仰け反った私の腹を踏んづける。
「ダメッ、何か来ちゃっ…………げお゛お゛ぉっ!」
足の裏で踏まれた胃から中身が逆流し、口から零れる。
僅かではあったけど、私は嘔吐がこんなに気持ちのいい行為である事に、初めて気がついた。
どうして今まで、こんなに気持ちのいい事を、私はしていなかったんだろう。
真剣にそう思うほど、それは素敵な体験だった。
そしてその悦びは、私の陰部にトドメを刺した。
「あっ! イクっ、イクッ。美香っ、私、多分イクッ! いっちゃっ……はぅぅぅっ!!」
美香の足に踏まれて感じるお腹の快感が、私の腰、もっと細かく言うと足の付け根、
ううん、もっと直接的に言えば私の股間に響き渡る。
これって、アクメ?
エッチの経験もないそこに、いきなり性的な快感が津波のように打ち寄せて来る。
一発で下半身が崩壊し、何処かがきゅぅっとなる感覚だけがかろうじて判った。
「気持ちいい? さくら」
「いいっ、ひぃぃぃっ! きっ、きもっ、きもひいいよぉ………ひぃっ!
わっ、わらっ、わらひっ、はっ、初めて………いっ………ひぃっ!」
絶頂の津波は止まる事なく、繰り返し私の下腹部を打ちのめしにやって来る。
目を開いている筈なのに、辺りは真っ白で何も見えない。
きっと美香の足が私の胃袋の上に乗ったままなせいだ。
「あっ……ひぃ……とっ、とまららひよぉ…………」
呂律が回らない。
誰かがシャワーから水を出したのか、どこかでビチャビチャ音がする。
イクのって、こんなに気持ちいいの?
止まらない。
気持ちよすぎるのが止まらないよ。
なんだか辛くなって来る。
「さくら?」
「あひぃっ、あひっ! あひぃっ! 」
答えたいけど、言葉にならない。
叫び続けていないと自分がどこかに吹き飛んでしまいそうになる。
アクメって、こんなに長いの?
さっきからずっと目の前で強烈なフラッシュが炸裂していて、何も見えない。
「さくら…………さくらっ、さくらっ」
何度も美香の声がする。
待ってよ。まだ声が出ない。
私の名前を呼び続ける美香の声を聞き続けながら、私はなんとか答えようと頑張った。
「あ……美香……」
ようやく喋れた時には、目の前のフラッシュも収まって、美香の顔が見えた。
とても困った顔をしている。
「どう、したの?」
「どうしたのじゃないよ。いきなりさくらが気絶しちゃうから、心配したんじゃんか」
「え? 嘘っ。いつ?」
「今っ! 今までさくら気を失ってたのっ。白目になって返事しなくなってたのっ。ちょっとの間だけど」
「やだっ。なんかそれ、恥ずかしい……」
頬に手を当てて俯くと、もっとずっと、恥ずかしい物が目に映った。
水着がずれて、左の乳首が丸出し。
「ひゃっ!」
慌てて水着を戻して、両手で胸を隠した。
その後、座り込んだ私の周りだけが、水浸しなのに気付く。
いつの間にか水着もぐっしょりと濡れている。
気絶している間に誰かが私の腰にシャワーを当てたのでなければ、どうみても…………。
「ヤ、ヤダッ。コレッ。私っ、借りた水着に…………ごっごめんなさいっ、ごめんなさいごめんなさい」
私はまた両手で顔を隠して俯いた。
そういえば、気を失う直前に、水が落ちる音が聞こえていた。
あれはシャワーの音じゃなくて、私?
最悪だ。この年でお漏らししてしまうなんて、羞恥のあまり顔から火が出る。
「それが判ってて水着にさせたんだから気にするな。最初は皆そうなる。
美香なんか未だにおしっこ漏らすし、うちにパンツ干して帰るぞ」
「いいじゃん。気持ちいいんだし、シャワールームだし…………」
涙目の私が顔を上げると、若干バツが悪そうに美香は視線を逸らした。
微かに頬が赤い。
彼女も恥ずかしいのだと判ると、少し安心した。
「あと、気付いてなさそうだから言うけど、さくらちゃんのはおしっこじゃなくて潮吹き」
「なっ…………!?」
続く言葉も出てこない。
「ふっふっふ。さくらってばぁ〜。私に踏まれてそぉんなに気持ちよかった?」
腰に手を当てながら、美香がしたり顔でにじり寄って来る。
おしっこと潮とどっちが恥ずかしいのよ。
そう思ったけど、とても口には出せない。
私はほっぺをつつかれながら、美香に踏まれたお腹に手を当てた。
そして、黙ったまま、小さくコクリと頷いた。
本当に、恥ずかしい。
でも、気持ちよかったよ?
美香の言った通り、イヤな事が全部吹き飛ぶくらい。
その思いだけは、少しだけ、美香に伝えたかった。
「うひゃぁ。さくら大胆。素直〜」
すかさず美香が茶化しながら抱きついてくる。
「飲んでから20分位か。もっと2人でやったら?」
聡子さんは脱衣所の壁にかかった時計を見ていた。
570 :
561:2014/05/01(木) 19:45:13.42 ID:FQNPfK6c
放置失礼しました。
連投規制にすぐ引っかかるので、これ以降の投下は諦めます。
えっ
待ってたのに
えっ
573 :
名無しさん@ピンキー:2014/05/07(水) 13:50:08.38 ID:MBmu190n
574 :
561:2014/05/14(水) 21:37:58.40 ID:Qzr6rXQA
>>571 待って頂いてありがとう。ごめんなさい。
まとめwikiさんの方に投稿させて貰ったので、
良ければそちらを。
(_ _ ) < ごめんなさい
ヽノ)
ll
575 :
名無しさん@ピンキー:2014/06/08(日) 00:58:46.98 ID:8HseMYAZ
jo
jo
職人が消えたねこのスレ
傍線部b、「職人が消えた」理由とは何か。
30字以内で簡潔に述べよ。
腹責めでヌイた後の賢者タイムが長いから
『不沈の無神経女』。
それが、女子ボクサー・細貝理緒奈のニックネームだ。
相手選手や観客に対し、配慮のない発言を繰り返す様……だけが由来ではない。
理緒奈が、『痛みを感じない人間』でもあるからだ。
彼女はボクサーとしてデビューして以来、ボディで倒れた経験がない。
そればかりか、苦悶の表情を浮かべた事さえない。
どれほどボディを打たれ続けようと、締まりのない笑みを浮かべたまま相手を蹂躙する。
いかにフライ級のパンチといえど、その様は異常極まるもので、過去には幾度も薬物使用の疑いがかけられた。
しかし、検査で異常は出ていない。
ゆえに理緒奈は“無痛覚症”なのか、と噂されている。
種明かししてしまえば、理緒奈は無痛覚症ではない。
世間が暗黙の内に疑っている通り、試合のたびにドーピングを施している。
仕掛け人は、理緒奈のセコンドである谷内。
スポーツ医学の権威でもある彼の開発した薬が、理緒奈に異常な耐久力を与えていた。
谷内の薬は、摂取した者の交感神経を刺激する。
結果としてアドレナリンの過剰分泌が起き、選手の痛覚を劇的に鈍らせる。
試合中のボクサーが一般的に分泌するアドレナリンの6倍もの量だ。
そうなれば、たとえ車に撥ねられようとも痛みを感じない。
品性と引き換えに、一切のダメージを無視できる体となる。
何人ものボクサーが、このペテンの餌食となってきた。
数知れぬ努力の結晶を踏みにじり、理緒奈は今宵、とうとうフライ級のベルトを獲りにかかる。
日本中の大多数が、王者による返り討ちを期待している事だろう。
『ストイック・ヴィーナス』弓木麗佳……。
アイドル級のルックスを有しながらも、比類なきストイックさで自らを鍛え続けてきた古強者。
その試合内容に博打性はない。どのような相手にも、ボディ打ちを基本とした堅実なボクシングをする。
それはまさしくボクサーとしてのあるべき姿であり、ボクシング界の最後の良心ともいえた。
「調子に乗んなよ、このマグロ女!」
「お前なんかが麗佳さんに敵うもんかよ! 選手としての厚みが違わぁ、厚みが!!」
「麗佳ー、そのガキにボクシングの怖さ教えてやれー!!」
途切れることのない怒号が、四方からリングに浴びせられる。
理緒奈はコーナーに背を預けたまま、トップロープ越しにグローブを突き出す。
親指を下にした、『地獄へ堕ちろ』の形で。
ブーイングがいよいよ苛烈さを増し、ドームに響き渡った。
実にふてぶてしい態度だ。半目の柄の悪い目つき、締まりの無い口元。
鎖骨までのダークブラウンの髪は、その性格を示すように緩くカーブを描き、先端のみ淡い朱に染まっている。
体型は至って普通。ただし、“ボクサーとしての普通”ではない。“一般人としての普通”だ。
腹筋はたるみこそ無いが、割れている様子も無い。
その辺りを歩いている女子校生のセーラー服を捲り上げたような、平々凡々な腹部だ。
とても、タイトルマッチに挑めるような肉体には見えない。
その点で言えば、麗佳などはまるで違う。
腹筋はしっかりと六つに割れ、側筋が実に美しい。
手足もアスリート特有のエッジの利いたもので、けれども女性らしさが損なわれていない。
顔立ちは完全にハーフのそれで、化粧栄えのするものだ。
癖のない黒髪は邪魔にならないよう後ろで括られており、実にスポーティーな印象を与える。
どこを取っても優等生という風で、全く嫌味が無い。
常に喧嘩を売り続けるような理緒奈とは、なるほど好対照といえた。
「タイトルマッチだからと言って、気負う必要はないよ。いつも通りにやりなさい」
谷内は理緒奈の額の汗をタオルで拭いながら、淡々と告げる。
理緒奈は、その忠告を聞いているのかいないのか、小馬鹿にするような表情で対面の麗佳を眺めている。
セコンドアウトが命じられ、リング中央に歩み出る間にも、その表情は変わらない。
「ここで負けて、身の程を知りな。小細工で取れるほど、ベルトってのは軽くないんだよ」
麗佳は静かに告げた。
記者からのインタビューには模範的な回答しかしてこなかった彼女だが、内心では思うところがあったらしい。
しかしその決意をぶつけられても、理緒奈の笑みは消えない。
「残念だけど、無理矢理もぎ取っちゃうから。勝てるわけないじゃん、今のあたしに」
妙にギラついた瞳は、完全に薬物中毒者のそれだった。
かくして、ボクシングの威信を賭けた一戦は始まった。
理緒奈は開始直後にビーカブースタイルを取る。
グローブを噛むような鉄壁の頭部ガード。頭は打てないぞ、さぁ腹を打て。そう誘っているかのようだ。
麗佳はボディ打ちの名手と名高く、本人にその自負もあろう。当然、狙いに行く。
「シッ!」
電光石火。相手の正面に踏み入った次の瞬間、右膝を深く沈めて斜め40度の角度でフックを抉り込む。
ドッ、という鈍い音が、観客席後方にも届いた。
リング上で幾度となく叩き込まれてきた、肝臓直撃の殺人ブロー。
それをもろに喰らった相手の反応は皆同じだ。顔を歪め、体をくの字に折って膝をつく。
しかし……理緒奈は違う。
「ふふっ」
両グローブの端から笑みを覗かせ、挑発するように麗佳の瞳を覗きこんでいる。
「くっ……!」
麗佳が表情を強張らせた。噂には聞いていても、実際にパンチが効かないとなると別物らしい。
特に彼女は、直に殴った事で気付いたはずだ。
理緒奈の腹筋が、事実として柔な事に。
脂肪に隠されたしなやかな筋肉……ではなく、素人の腹筋も同然ながら、ボディブローが効かない。
その異常性にはオカルトめいた怖さがあるだろう。
とはいえ、麗佳も歴戦の猛者だ。特殊な相手と戦うのは初めてではない。
一発で倒れないのなら、二発。二発で倒れないのなら、三発。三発で無理なら……百発でも。
相手が限界を迎えるまで殴り続ける覚悟が出来ている。
「フッ、シィッ!……シッ、フゥッッ!!」
麗佳はボディを打ち続けた。
鋭い息を吐きながら、あらゆる角度から、緩急を織り交ぜて。
後のビデオ映像によれば、丸2ラウンドの間、ほぼ2秒に一発という頻度で攻撃がなされていたそうだ。
当然、理緒奈の腹部には変化が表れた。
刻一刻と赤い痣が広がり、繋がりあい、特に良く打たれた部位は赤黒く染まっていった。
そのダメージは放送打ち切りが検討されるほどの凄惨さで、過度の損傷を理由にTKOが宣告されてもおかしくなかった。
そうならなかったのは、憎き理緒奈がさらに苦しむように、という目論見もあったのだろう。
しかしそれ以上に、理緒奈自身が僅かにも闘気を萎えさせていない事が大きい。
「フーッ……フーーッ…………」
理緒奈は、いよいよ病的にギラついた瞳で麗佳を観察していた。
獲物が弱ったところへ襲い掛からんとする獣のように。
「はっ……はぁっ、はぁっ、はぁっ………………!!」
いつしか息の荒さは、攻める麗佳の方が酷くなっていた。
2ラウンドの間打ち続けだった疲労もあるのだろうが、それ以上に精神的な消耗が激しいのだろう。
深呼吸の合間に見られる、左目尻の痙攣……それが麗佳の動揺を如実に表していた。
転機は、3ラウンド中盤に訪れた。
それまで何十と打ち込まれてきた麗佳のフックが、理緒奈の左グローブに弾き落とされたのだ。
疲労の蓄積で甘く入ってしまったのだろう。麗佳は容易に体勢を崩し、体を開いてしまう。
「っ!」
麗佳が顔色を変えた。
男をそそる絶望の表情。
勘の鋭い女性だ、その表情は、自らの置かれている危機的状況を正確に把握した結果だろう。
ドッ、と鈍い音が響き渡った。
疲労を全く感じさせない、憎らしいほどに綺麗なフォームのフック。
それが深々と麗佳の腹部に沈み込んでいた。
「っがァ…………!!」
麗佳の反応は生のものだ。
目を見開き、口を半開きにして苦悶を表す。
体はくの字に折れ、腕で腹部を庇いながら力なく後退する。
『お、おいおい……効かされたのか!?』
『いや、ありえねぇだろ。麗佳の鋼のストマックだぜ……』
観客席からざわめきが漏れた。
麗佳の耐久力は、同階級の中でもけっして低い方ではない。
しかし疲労が溜まった状態でのボディ打ち、それもほぼカウンターで喰らっては、平静ではいられないらしかった。
理緒奈は渾身の一打を打ち終えた後、静かに構え直す。
ビーカブーではなく、ほぼノーガードに近い構え。もはや守りを固める必要なしという意思表示だろう。
そもそも、力なく後退する相手に追撃しない時点で、舐めた態度と言わざるを得ない。
「へーぇ……フツーはボディ喰らったとき、そういう反応するんだ、チャンピオンでも。
明日からはアタシがチャンピオンだから、参考までに覚えとくよ。
って言っても、アタシにはそんなみっともないマネ、とても無理だけど」
理緒奈は挑発の言葉を投げかける。
誇り高き王者として期待を受ける麗佳は、その挑発を受け流せない。
「煩い!」
短く叫ぶと、足を使って一気に理緒奈との距離を詰めた。
無論、ただ近づくだけではない。ようやく覗いた相手の顎に向けて、踏み込みつつの右ストレートを放つ。
しかし、その動きは万全ではなかった。疲労と腹部のダメージが、1割ばかり彼女のスピードを奪っていた。
ほんの1割、されど致命的な1割。
理緒奈は上体を傾けて悠々とストレートをかわしつつ、斜め下から突き上げるように右拳を振り上げる。
ドッ、と先ほどより重い音がマイクに拾われた。被弾箇所は臍の真上だ。
「うう゛−−−っ!!」
絶望的な呻き声が上がる。アイドル顔負けとされる桜色の唇から、漏れだした声。
『うわぁあーーっ、麗佳ぁっ!!』
どこからか悲痛なファンの声が響き渡る。
その直後、二度目の悲劇が襲った。動きを止めた麗佳に対し、理緒奈が返す刀の左拳を抉り込んだのだ。
防御を捨てた代わりに、相手を痛めつける技術だけは面白半分に鍛え上げたのだろう。
二発目の理緒奈の左拳は、一発目と寸分違わぬ場所……麗佳の優美な臍の真上を抉り上げた。
不意を突かれて力を込め損ねたのか、それとも疲労で力が入らないのか。
6つに割れた健康的な腹部には、理緒奈のグローブが半ばほども沈み込んでしまっている。
『そんな…………!!』
観客の声が先に響き渡った事を考えると、実被害までには一瞬の猶予があったのだろう。
「おご、っが…………ァ………………!!!!」
麗佳はとうとう、顔一面に苦悶の余波を広げた。
目はこれ以上なく大きく開き。
口は女の拳がそのまま入ろうかというほどに開かれ、舌と下部の歯並びを綺麗に覗かせ。
たとえば四肢の一本を失うときでも、人間はもう少しまともな表情をしているのでは。
そう思わせるほどの壮絶な顔つきだった。
ダ、ダン、と耳障りな音がドームに響く。
それは麗佳の右膝、そして左膝が、わずかな時間差でマットに叩きつけられた音だ。
「ダ………………ダウン!!」
レフェリーが、苦虫を噛み潰したような表情で宣言する。
彼も、本心では麗佳の側だろう。ボクシングに真摯な麗佳が、不真面目な理緒奈に制裁を加える事を望んでいるのだろう。
しかし現実には……自らの言葉で、英雄の不利を告げているのだ。なんという皮肉だろう。
『ひぃいいっ、立ってくれぇ麗佳!!』
『う、ウソだろ! あんなに鍛えまくってるの、テレビでやってたじゃねぇか。効かねぇよなあ、なぁ麗佳っ!!』
狂乱が場に渦巻いていた。
その状況を、ニュートラルコーナーの理緒奈は満面の笑みで眺め回す。
「ひひひ、啼いてる啼いてる…………」
デビュー戦で期待のホープを血塗れにして以来、理緒奈には常にブーイングが付き纏ってきた。
そして、それを完勝で黙らせる事を、全ての試合でやり遂げてきた。
今回もそれは同じ。そして今日それが為された時、自分は全国一の強者という称号を得るのだ。
笑いが止まらないというものではないか。
「うう、ぅふぅううぅぐっ…………うふぅっ………………」
麗佳はカウント5が過ぎても、左手で腹部を押さえ、右手でマットを掴みながら這い蹲ったままでいた。
青コーナー最前列からなら、腕の間の表情が覗ける。
右目は閉じ、左目はやや上を向いており、口からは3本の濃密な涎の線がマットと繋がっていた。
目頭から鼻の横を通って流れ落ちる涙の線が、妙に女性らしさを感じさせた。
もう無理なのでは……表情を見た人間の何人かは、早くもそう感じたらしい。
しかし、麗佳はカウント8でマットを押しのけて跳ね起きる。
ボクサーとしての性か。たとえ内股気味であろうとも、確かなファイティングポーズを取る。
『おおおっ、あっさり立ったぞ!?』
『わざとカウント8まで休んでたって訳か。流石だぜ!!』
客席から歓喜の声が上がる。レフェリーもまた安堵の表情を浮かべた。
「ボックス!!」
その掛け声で、闘いが再開される。
肉体的損傷は、比べるまでもなく理緒奈の方が大きい。
しかし現実に表情を歪めているのは麗佳の方だ。
その不釣合いさが、理緒奈というボクサーの異常性を改めて観客に認識させる。
恐怖からか、その余裕すらなくなったのか、いつしか理緒奈へのブーイングは聴こえなくなっていた。
代わりに、希うような悲痛な麗佳への声援ばかりが搾り出されている。
「はぁっ!!」
麗佳はそれに応えようとする。応えることを義務付けられている。
しかし、その動きはいよいよ精彩を欠くものとなっていた。
理緒奈は余裕ある動きで麗佳の攻撃をかわしつつ、積極的に攻勢に出る。
最初の2発で麗佳の動きを止めた後は、小気味良いリズムで左右のフックを繰り出していく。
「ウっ、くぶっ、ン、う゛っ…………!!」
麗佳は左右の脇腹に叩き込まれるフックを受けてよろめき続けた。
そしてコーナーに追い込まれる寸前、尻餅をつきそうになるのをロープに手を掛けて防ぐ。
しかし、素直にダウンしていた方がまだ良かったのかもしれない。
眼前に迫る理緒奈に対し、麗佳はその痛んだ腹部を晒す格好になったのだから。
ギヂッ、とロープが痛々しく軋んだ。
中心から大きくしなったロープ。しならせているのは、腹部に痛烈なストレートを叩き込まれた麗佳だ。
打ち込みは今度も絶望的に深い。
「むぐぅっ………………!!」
右頬の奥を噛みしめ、凛とした表情で前方を睨み据える麗佳。
しかし一見力強いその視線は、どこか焦点がおかしい事に気付くだろう。
強靭なロープが元に戻り、麗佳の肉体を理緒奈の拳に押し付ける方向へと作用する。
そこに生まれるエネルギーを前に、麗佳の体内は耐え切れなかった。
「ぶふゅっ」
その小さな破裂音が麗佳の唇から漏れた。
続いて、しかと引き結ばれていた右唇から、一筋の液体が零れ落ちる。
白いそれは、初めは唾液かと思われた。しかしその一瞬後、誤魔化しようもないほど濃い黄線が上書きされる。
『きゃーっ、吐いてるっ!!』
『うっわマジかよ!?』
『オォイ、マスコミは映すのやめてやれよ、あんなトコよ!!』
場が一気にざわついた。
『ストイック・ヴィーナス』弓木麗佳の嘔吐。そんなものは、今まで有り得なかった。
スクープ性こそあるだろうが、けして公の場に晒されてはならないものだった。
なにしろ、アイドル顔負けのルックスを持つ日本チャンプだ。その広告塔の放送事故など、あってはならない。
数台のカメラが慌てて中継を切る中、麗佳はさらに幾筋かの吐瀉物を吐き出していく。
理緒奈は、それを冷静に観察していた。
そしてちらりとセコンドの合図に目をやった後、追撃として拳を放つ。
しかし、力はない。拳は、軽く麗佳の顎を叩く。失神さえしない程度の軽さで。
『え…………?』
麗佳と観客が、一様にその行動に疑問符をつける。
ヒントは理緒奈の表情にあった。麗佳を見下すような、嘲るような表情に。
そう、彼女は舐めているのだ。本来ならここで仕留められた、けれども慈悲で活かしておいてやる……そう言っている。
その真意に気付いた瞬間、誇り高い王者は激昂した。
「っあ゛あぁ゛ぁ゛っっ!!!」
荒々しい咆哮と共に理緒奈に殴りかからんとする。
しかしその動きは、あろう事かレフェリーによって遮られた。
「くッ!?」
なおも暴れる麗佳に、レフェリーは同じ言葉を繰り返す。
「…………まれ、止まれ! 弓木、ゴングだ、止まれ!!!」
その言葉を認識した瞬間、麗佳は唖然とした表情で動きを止めた。
試合中にゴングを聞き逃すなど、初めてのことだ。
理緒奈の嘲笑が響き渡った。
「あっはっはっ! 基本ルールぐらい守ってよね、チャンピオン。
あとゲロ臭いから、ちゃんと口ゆすいで次始めてよ?」
タブーに躊躇なく踏み込みながら、『不沈の無神経女』理緒奈はコーナーに戻っていく。
場は完全に彼女に掌握されていた。
観客席から失意の溜め息が漏れたのは、けして気のせいではないだろう。
この試合における麗佳の戦いぶりを、蔑むファンはいないだろう。
チアノーゼの症状をありありと顔に浮かべながら、麗佳は果敢に前へと出続けた。
ポイント勝ちに逃げず、あくまで理緒奈の強みである腹筋を攻略して勝とうとする。
それはボクサーとしての、いや人間としての尊厳に満ちた姿だった。
しかしその勇敢さが、麗佳を刻一刻と崩壊へ導く。
6ラウンド中盤、状勢は決定付けられた。
それまで懸命に打ち合いに応じていた麗佳の拳が、むなしく空を切る。
入れ替わりに理緒奈の強烈な一撃が入った。
縦拳の形で接触し、内へと捻り込むように打つ、コークスクリューブロー。それが麗佳の下腹部に突き刺さる。
麗佳の身体がよろめいた。
ロープへ肩を預けるように倒れ、目を半開きにしたまま、グローブで腹部を押さえている。
明らかに様子がおかしい。
「弓木、大丈夫か? ……弓木?」
レフェリーが麗佳の顔を覗き込み、はっとした表情を見せる。
「ふう゛っ…………!」
麗佳は涙を零していた。
優美な顔をこれ以上ないほど歪め、止め処なく涙を零していた。
黒い瞳に宿るのは絶望。自らの身体ゆえに、現在の損傷の度合いもよく解るのだろう。
それでも、諦めない。
ほとんど立っているのがやっとの状態。両の脚を痙攣させながらもなお、麗佳はファイティングポーズを取る。
「やれるのか、弓木!?」
レフェリーは縋るような声で告げた。
本来であればストップも已む無しという状況にありながら、麗佳の勝利を諦めきれない様子だ。
「う……うぅ…………ぁぁ…………あ!!」
麗佳はその期待に応え、猛然と前へ突き進む。
しかしその道の先には、獰猛な肉食獣が大口を開けて待ち構えていた。
麗佳のファン達は、幾度同じ光景を目にしただろう。
麗佳の研ぎ澄まされた打撃が防がれ、逆に理緒奈の拳が優美な腹筋に叩き込まれる光景を。
スタンスを広く取り、十分に力を乗せてのボディ。
それは、麗佳の片足を僅かにマットから浮かせるほどの威力があった。
「う゛っ、ぐぅう゛うっっ!!!」
もはや麗佳に声を抑える余裕などない。
凄絶に顔を顰めながら倒れる麗佳は、その勢いで仰向けに寝転がる。
「はっ、はひっ……ひっ…………!!」
形のいい胸を病的なほど上下させる、痛々しい寝姿だ。
「ダウン!」
レフェリーが苦々しく宣言し、理緒奈へコーナーに戻るよう指示を出した。
しかし。
「ったく、しつっこいなぁ」
理緒奈は苛立ちも露わに告げ、麗佳の傍らに歩み寄る。
「何をしてる。早くコーナーに…………」
レフェリーがなおも告げた、直後。
「さっさと…………落ちろ!!」
理緒奈のグローブが振り上げられた。狙いは、無数の赤い陥没が残る王者の腹筋。
「ッ!? よせっ!!」
レフェリーの空しい叫びと同時に、拳は風を切る。
鈍い音が響き渡る。
そのとき、場の皆が目撃した。六つに割れた麗佳の腹筋へ、グローブが根元まで埋没する様を。
「…………ごっ……ッォぉおおお゛っ…………ッあ………………!!」
えづき声と共に、麗佳のすらりとした右脚が宙へ投げ出される。
焦点を定めず見開かれた瞳、舌を突き出した大口……深刻なダメージが表情から見て取れた。
「ッハァ!」
嬉々として2打目を狙う理緒奈。
それを、レフェリーが突き飛ばすようにして止める。
「もうやめろ! ダウン後の攻撃は反則だ!!」
ロープ際で指を突きつけて注意を与えるが、理緒奈の顔に反省の色は見られない。
レフェリーは思わず減点を宣告しようとする。
そのやり取りの最中、レフェリーの背後では、王者の最後の意地が燃えていた。
腹部を抱えて苦悶しながらも、麗佳は徐々に身体を起こす。
「負け………………る……か………………ッ!!!」
完全に2本足での直立を成した瞬間、麗佳は猛然と駆けた。
レフェリーを押しのけるようにして、全力で拳を突き上げる。
執念の拳は、見事に理緒奈のボディに突き刺さった。
「んっ」
理緒奈が小さく呻く。
さらに一撃、さらに一撃。理緒奈の身体は左右に揺れ、観客席から歓声が沸き起こる。
効いていない筈がない。死力を振り絞った麗佳の連打は、そう思わせるほどインパクトのあるものだ。
けれども理緒奈は、その連打の中で反撃を試みた。
鋭いフック。麗佳は素早く後ろへ下がってそれをかわし、しかしそこで呼吸の限界を迎えてしまう。
「ハッ……はっ、はっ…………ハァッ、はぁあっ…………!!」
顔中に汗を浮かべ、苦しげな呼吸を繰り返す麗佳。
理緒奈は口元に笑みを浮かべ、悠然と歩を進めて彼女に止めを刺そうとする。
しかし、ここで初めて理緒奈に異変が起きた。
歩みだした足がもつれ、そのまま膝から崩れ落ちたのだ。
「ダ……ダウン!」
レフェリーが信じがたいという様子で叫ぶ。客席からの歓声はいよいよ会場を揺るがす程のものとなる。
それもそのはず。これが理緒奈のキャリアにおいて、初のダウンなのだから。
やはり麗佳はこれまでの相手とは違う。ならばこのまま、逆転もありえるのでは。
理緒奈がキャンバスに膝をつく光景は、観客にそうした希望を持たせるに十分なものだった。
けれども……現実は残酷だ。
大多数の人間がどれほど切実に願おうと、結果を決めるのは事実の積み重なりでしかない。
勝利を期待される麗佳に、もはや追撃の余力はなく。
敗北を期待される理緒奈は、生涯初のダウンを奪われた屈辱で、その相貌を獣のように歪める。
「…………よくも………………この……このォアマアァァアッッッ!!!」
理緒奈が吼え、ヒステリックな音を立てながら麗佳に迫った。
「くうっ…………!!」
麗佳はとうに力の全てを出し切っており、構えを保つだけで精一杯だ。
力ないガードは怒り狂う理緒奈の拳によって突き崩され、悪意の塊が臓腑を抉る。
割れんばかりだった歓声がぷつりと途絶えた。
「ごあ゛っ!!!」
痛々しい悲鳴が響き渡る。
麗佳の腹筋は、すでに内臓を守る鎧としての用を為さない。
ただ薄いだけの柔肉となって、暴虐の拳がもたらす衝撃をそのまま内へ伝えてしまう。
「お゛っ、おう、う゛んっ!!」
腹部への連打を受けて後退を続ける麗佳の体は、ついにコーナーへと追い込まれた。
いけない―――!
誰もがそう思っただろう。そしてその直感の通り、そこから王者への残虐な処刑が始まる。
「ぐごぉおお゛あえ゛っ!!!」
拳が深々と腹部へ埋没し、麗佳は喉を潰したような叫びを上げる。
あまりの苦痛に身を捩って逃れようとするが、コーナーに追い込まれては碌に身動きが取れない。
理緒奈の片手で首をコーナーに押し付けられ、もう片手で連打を浴びる。そればかりだ。
「がぁおおお゛ぼっ!!!」
王者の肉体が痙攣し、マウスピースが口から零れ出た。
唾液を纏いつかせたマウスピースは、キャンバスを空しく転がりまわる。まるで、応援する者の感情のように。
本来であれば、即座に試合を止めるべき一方的な展開だ。
しかし、それは麗佳の負けを決定付ける事を意味する。
誰もが麗佳の負けなど望んでいなかった。それがあってはならないと思い続けてきた。
ゆえに、レフェリーも判断に迷う様子で状況を見守っている。
誇り高い王者の公開処刑を。
理緒奈の拳は雨あられと降り注ぎ、元より傷ついている麗佳の腹筋を徹底的に叩き潰した。
ボゴリボゴリと腹が蠢く様からして、表皮だけという事はありえない。
恐らくは内臓までが、跳ね回る水袋のように蹂躙されている事だろう。
「ごお゛っ、おぼぇ゛ええ゛っ!!! があ゛っ、ごッ、おぶぇっ……!! お゛っ、ぉおおお゛お゛お゛っ!!!」
泣き崩れるような麗佳の表情からは、感情を読み取ることができない。
王者としての屈辱か、それとも単純に、死に瀕する者としての恐怖か。
間近で見守るものには、麗佳の美しい腿を、黄金色のせせらぎが伝い落ちていく様が見て取れた。
それはやがてキャンバスに滴り、より多くの肉眼とカメラに捉えられる。
左右の拳は、それでも麗佳の腹部を叩き続けた。
麗佳はただ、その美しい脚を強張らせ、シューズで空しくキャンバスを擦るばかりだ。
その無力な有様は、スラムの路地裏で強姦される娘と何も変わらない。
『同階級の男性ランカーより強いのでは』……そう噂されたフライ級絶対王者は、そこにはいない。
「らあぁっ!!!!」
理緒奈が殊更力を込めて打った一撃が、強かに麗佳の腹部を抉る。
「お゛、げぼ、がっ…………あ゛げ…ごぼぉ゛…………………っっ!!!」
その一撃で、とうとう麗佳は人の姿を失った。
見開かれた瞳の中で、天井のライトを凝視するようにぐるりと黒目が上向く。
身体中の痙攣がとうとう頚部にまで行き渡り、顎と、頬が膨らみ、一秒後。大量の吐瀉物が吐き出される。
その様を見て客席から悲鳴が上がり、レフェリーが頭上ですばやく両手を交差させた。
ゴングがけたたましく打ち鳴らされ、強制的な試合の幕引きを世に示す。
その瞬間、理緒奈は拳を止めて高く振り上げた。
暴虐からようやく開放された麗佳の肉体が、理緒奈に縋りつくようにズルズルと崩れ落ちる。
理緒奈はそれを汚らしそうに押しのけ、麗佳を文字通り“キャンバスに沈めた”。
自らの吐瀉物に塗れながら、尻だけを高く突き上げ、乱れた黒髪を放射状に拡げる醜態。
それは、レフェリーや観客達の理想が敗北した姿だ。
「はっはっはっはっは! さて、あたしがこいつに敵わないとか、ボクシングの怖さ教えてやるとか言ったお馬鹿は誰?
必死に必死に、極限まで教科書通りの鍛え方した結果、あたしに全く歯が立たなかったねぇ!
これで分かったでしょ、このあたしが、ボクシングの常識なんかより遥かに上だって事がさぁ。
このミジメなザマをよーく目に焼き付けときなよ。あんたらの硬い頭が祀り上げた、スケープゴートの成れの果てをさ!!」
理緒奈は拳を振り上げながら、目に映る全てを侮辱し続けた。
絶望の溜め息、すすり泣く声…………それが場内を覆いつくしていた。
「ふふ、くくくっ…………くっくっくっくっく………………!!」
ただ1人、理緒奈のセコンドである谷内の忍び笑いを除いては。
※
その日の深夜。
一夜にしてヒーローとなった少女は、ショーツ一枚という姿で拘束されていた。
手足には鎖で繋がれた枷を嵌められ、凧のように身を開いている。
窓のない部屋は極めて無機質だ。
少女と男が一人、カメラが一台…………その殺風景さが、異様な雰囲気に拍車を掛ける。
「さて。心の準備はいいかな、女子フライ級新チャンピオン」
男……谷内は、何とも愉快そうな口調で切り出す。
一方の理緒奈は、そんな彼を敵意むき出しの視線で睨み据えていた。
「やるならさっさとしなよ、ゲス野郎」
理緒奈から悪意ある発言をされても、谷内は微塵も動じない。
「そうだな。私もいい加減、お預けの限界だ」
涎も垂らしそうな言い方でそう告げると、懐からひとつの錠剤を取り出す。
理緒奈から痛みを奪った薬の、解毒剤だ。
「さ、口を開けなさい」
谷内は理緒奈に命じ、開かれた口の中に解毒剤を放り込む。
ごくり、と理緒奈の喉が鳴った。
そこから、ほんの数秒後。理緒奈の雰囲気が変わる。
「…………あれ………………あ、あたし………………?」
そこにいるのは、理緒奈と同じ肉体を持ちながら、リングでの理緒奈ではないもの。
膨大なアドレナリンに支配されていない、臆病で繊細な少女だ。
「落ち着いてきたようだね。今の気分は、どうだい?」
谷内は、ひどく優しい口調で語りかける。
しかし理緒奈の瞳に映る表情には、一かけらも情らしきものが見当たらない。
それは、薬を投与したマウスを見守る研究者の目だ。
理緒奈は優しげな垂れ目を惑わせ、素人そのものの肉体を震わせはじめた。
薬が解毒されれば、まずは攻撃的な気分が消え、その後1分ほどで麻痺していた痛みが感じられるようになる。
リングの上で感じているはずだった痛みが、全て襲い掛かってくる。
「あ、あたし……こっ、怖い。ドクター。あたし、怖くて、たまらない!
あのチャンピオンの人、ものすごく鍛えてた。凄く強かった」
「ああ。強かったね」
「あたし、そんな人のパンチを、避けずに何発も何発も受けちゃって…………
最後の方には、意識とは無関係に膝までついちゃった。
あたしの身体、どれだけボロボロになってるんだろ。どんな痛みが、この後来るんだろ。
ね、ドクター…………あたし、死なないよね? この後も、生きてられるよね!?」
「……ああ、大丈夫だ理緒奈。おまえの脳は、痛みの許容力が極めて大きい。
だからこそ、実験のパートナーに選んだ。
だからこそ、あの捨て置けば死んでいた状態から、二度目の生を与えたんだよ」
理緒奈と谷内の会話はそこで途絶えた。
谷内は嬉しげに笑みを深める。逆に理緒奈は、恐怖で顔を歪ませた。
「ああぁぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!!!」
咆哮とも呼ぶべき、凄まじい悲鳴が密室に響き渡る。
手足を繋ぐ鎖が煩く鳴り散らす。
痣だらけの理緒奈の腹部が、ひどく蠢いていた。
痛みを感じたゆえの反射的な反応なのだろうが、傍目には不可視の何かに殴打され続けているように見える。
「あがあぁあああ゛っ、げぉっ、ふげぇええお゛ごごごおごごぇえ゛ぐっ!!!」
目を剥き、大口を開き、唾液を垂らし。
まるで鍛えていない素人同然の腹部は、プロのパンチに耐えられる代物ではない。
本来リングの上で見せているはずだった醜態が、今この場で遅い再現を見せているのだ。
「ふふふ、いいぞ。いい表情だ、理緒奈。
これが表の世界では、フライ級王者というのだから傑作だな。
愚民どもは、痛みを感じないターミネーターのようにお前を見始めるだろう。
真実を知るのは私だけだ。回ってきた“ツケ”に苦しむお前を見られるのは、この私だけなのだ」
谷内は恍惚とした表情でビデオカメラを回す。
そのフレームの中で、理緒奈は地獄の苦しみを味わい続けていた。
幾度も幾度も、ボクサーとして試合をする度に繰り返されてきた事ではある。
しかし、麗佳は強かった。パンチ力もさる事ながら、打たれても打たれても諦めず戦い続けた。
最後には、身に残った全ての力を振り絞って理緒奈からダウンをももぎ取ったのだ。
そのダメージの総量は、今までの相手の比ではない。
何人もの犠牲の果てに築き上げられた『ベルトの重さ』が、それを愚弄した理緒奈を押し潰す。
「げぼっ、おおぉええ゛っぼっ!! あああっ、もうイヤ゛ぁーーっ!!
ギブアッぶ、ギブアップしますうっ、ご、ごめんなざいっ、もうイヤッ、もうぐるじいの……ごぶぅ゛ぇっ。
んん゛もぉ゛ぉえ゛っ、げぼごろっ、ウ゛……っ……!! う゛っ、んん゛ごお゛お゛ぉォお゛っっ…………!!!」
祝勝会で口にしたものを余さず吐き戻しながら、理緒奈は赦しを請い続ける。
すでに全てが過去の事。
どれだけ泣き叫ぼうが、今さら赦される事などないと知りながら……。
終
ふぅ……最高だ
GJ
乙
よかった
そういえば腹パも今日かー
593 :
名無しさん@ピンキー:2014/07/07(月) 02:16:55.19 ID:B8Y/Q8D7
こんなssを長いこと待っていた
超乙
素晴らしい
GJ
ふぅ……