【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。14

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1名無しさん@ピンキー
喧嘩・荒らしは華麗にスルーでいきまっしょい。

前スレ

剣と魔法と学園モノ。でエロパロ
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剣と魔法と学園モノ。でエロパロ2
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剣と魔法と学園モノ。でエロパロ3
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。4【エロパロ】
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。5【エロパロ】
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。6【エロパロ】
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。7【エロパロ】
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。8【エロパロ】
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。9【エロパロ】
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。10【エロパロ】
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。11【エロパロ】
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。12【エロパロ】
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【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。13
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【保管庫】
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「ゲームの部屋」→「アクワイア作品の部屋」
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2名無しさん@ピンキー:2012/08/27(月) 15:50:56.45 ID:lwTxRVCd
>>1
3名無しさん@ピンキー:2012/08/27(月) 18:07:13.01 ID:eC+kxC4U
>>1乙 !
4名無しさん@ピンキー:2012/09/03(月) 01:20:55.15 ID:XW1F5nNn
即死回避保守
5 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2012/09/03(月) 01:48:23.63 ID:damymG1j
>>1乙
6名無しさん@ピンキー:2012/09/07(金) 23:09:45.58 ID:tb3CE/7H
刻学は買う気なかったけどパンチラ見放題と聞いて心が揺らいでる
7 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:29:01.28 ID:+E91jMKg
こんばんは。例の如く投下したいと思います
が、今回色々と片を付けようとしたら思いの外長くなってしまいました
そのため分けての投下になってしまいますがご容赦を
しかもキリのいいところが後半にさしかかる部分だったため今回だけでも長いです
そしてエロ分は3レス目にちょこっとのみ。お相手はドワ子です
大丈夫だという方はどうぞ
81/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:29:54.21 ID:+E91jMKg
誰も来てくれない。誰も助けてくれない。誰も何もしてくれない。
この小さな家の中で、母と二人、死を待つばかりの毎日。
毎日来てたのに、困ったら助けてくれるって言ってたのに、今は薬も売ってくれない、あとは何を話したっけ。
「恨んではダメ。これも、神がお与えになられた試練なのよ」
優しい笑顔。額の濡れタオルを替えながら、それでも納得できずに食い下がる。
「でも、病気だからって……こんなところ閉じ込めて、みんなお母さんに助けてもらってたのに」
ただでさえ血色の悪い顔が、よりひどく見える。角に触れるとぐねっと凹み、信じられない感触に背筋が寒くなる。
「お母さんが……ディアボロスだからって…」
それでも、優しい笑顔を向けてくれる。その笑顔が、何よりも好きだった。
「仕方ないことよ。いい?あなたはいつまでも覚えていて。人を恨んではいけない、憎んではいけない、全ては神の御心のままに…」
全部覚えてる。何も言わなくても全部わかってる。だから、もう喋らないで。口から血が…。
「神が許されたことは、全て許される。だから、いい?これは、神が――」
もう聞きたくない。何も言わなくていいから。全部全部言うことは聞きます。だから神様、お母さんを連れて行かないで。
お母さんお願い、死なないで。

「……お母……さん…!」
苦しげに呟いて、セレスティアはハッと目を開けた。頬に伝った涙はまだ温かく、枕元ではペットが寝息を立てている。
隣に視線を移せば、いつものようにドワーフが寝ている。ただし相変わらず、寝息は聞こえない。
セレスティアは大きな溜め息をつくと、腕で涙を拭った。
「やれやれ……どうにもこれだけは、いつになっても慣れませんねえ…」
そう呟き、再び目を閉じる。そして十分ほど経ち、セレスティアの寝息が聞こえるようになると、そこでようやくドワーフの寝息が
聞こえるのだった。


少しずつ大事へと発展していく天空の宝珠争奪戦。いつしか彼等は異世界の魔女達、そしてそれを復活させた伝説の生徒、ラプシヌとの
戦いに身を投じていた。
一年前にアゴラモートと戦った先輩も含め、多くの生徒がこの戦いに参加していたが、その中でも彼等の活躍は群を抜いていた。それは
モンスターとの戦いのみならず、人である魔女との戦いにおいても躊躇いや憐憫の情などがなかったというところが大きい。
時に教師陣や先輩と協力し、ストレガ、ディモレアとの戦いを勝利で終え、そして彼等は今、偽りの神パーネと死闘を演じていた。
「この虫けら風情がっ……虫けららしく、這いつくばっていろ!」
戦況は拮抗していたが、どちらも相当に追い込まれている。偽りとはいえ、神に匹敵する力を持ったパーネの魔法は、信じがたいほどの
威力を持って彼等に襲いかかる。
「ぐああっ!ド、ドリアードでこの威力かよ…!」
「うぅ……い、痛いぃ…!」
強靭な蔦に絡め取られ、あるいは棘の付いた蔦に巻かれ、動きが止まる。辛うじて全員耐え抜いてはいたものの、あと一撃でも受ければ
一人残らず倒れるだろう。
「ははは!これで終わりか!?」
高笑いするパーネを、セレスティアが睨みつけた。
92/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:30:41.30 ID:+E91jMKg
「はぁ……はぁ……か、神を騙るあなたを……神が、お許しになるかどうか…!」
未だ闘志を失わない目でパーネを見据え、魔法を詠唱する。
「神に、問うてみるとしましょうか!」
詠唱が完成し、魔法が発動する。その力を感じ取り、エルフが苦しげな表情の中で、ニヤリと口角を持ち上げる。
「神に、聞くまでもないよ…!天使は、お前を許さない!」
セレスティアの唱えた魔法は、奇跡を呼び起こすラグナロク。呼び起こされた奇跡は、魔法効果倍増。
「行け、セラフィム!」
光が天使の形を作り、見たこともないような輝きを放ちながら、偽りの神に飛びかかっていく。その光に包まれた瞬間、パーネの口から
凄まじい悲鳴が上がった。
悲鳴と共に形が崩れ、堕天使の姿へと変わっていく。それでもなお地面を這いつくばって逃げようとする彼女の前に、同じセレスティアの
教師達が立ち塞がった。そこまでは見届けたものの、もはやその先を見る体力は残っておらず、一行はそれぞれ地面に倒れ込んだ。
「き……きつかった……この勝利は、まさに奇跡だね…」
エルフの言葉に、セレスティアは疲れ切った笑みで答える。
「全ては、神の思し召し……わたくし達の勝利は、神が望まれたことです。であれば、不思議なことなどありませんよ」
「セレぇ〜……話より、回復ぅ〜…」
「ああ、それもそうですね。ですが、フェアリーさんも手伝ってくださいね」
言いながら、セレスティアはフェアリーにルナヒールを唱え、次にドワーフの元へと向かった。
「大丈夫ですか、ドワーフさん。すぐに回復を…」
すると、いつもなら当然のようにそれを受けるドワーフが、そっけなく目を逸らした。
「いい。フェアリー、回復」
「あ、はーい」
回復技能を持つ者が二人しかおらず、セレスティアはルナヒールまでしか使えないため、ヒーリングを使えるフェアリーが担当するのは
理に適ってはいる。しかしこれまでドワーフは、回復はほとんどセレスティアからしか受けていなかった。
「……そうですか?では、そちらはお任せしますね」
代わりに、セレスティアはエルフの回復に取りかかる。全員の回復を終えると、一行は早々に帰還札を使い、中継地点へと戻った。
「さすがに、疲れましたねえ。ドワーフさん、体は…」
「セレスティアさんに関係ない。もう部屋行く」
「え、あ、そうですか?あ、ではわたくしもご一緒しますよ。夕飯のこともありますし……では皆さん、すみませんがこれで」
去っていく二人を見ながら、エルフが首を傾げる。
「うーん……なんか最近、ドワーフの態度おかしくないかい?」
「うん、セレスティアに随分冷たい」
ここ数日、ドワーフはセレスティアに対してそっけない態度を取ることが多かった。他の仲間に対してはともかく、これまで
セレスティアとは普通に接していたのだが、何の脈絡もなく突然今回の事態になっているため、全員が疑問に思っていた。
「……ま、たぶん俺等が心配するようなことでもねえさ。それに、あいつならうまくやるだろ」
「そうだといいけどねえ…」
不安げなエルフの言葉は、四人全員の意見を代弁していた。
103/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:31:37.12 ID:+E91jMKg
しかし実際のところ、ドワーフとセレスティアとの関係は、単純に悪化しているというわけではなかった。
それから数時間経ち、拠点で動くものはクマレンジャイやドリルウサギなどの人形くらいになった頃、セレスティアとドワーフの部屋では
荒い息遣いが響いていた。
「はあっ、はあっ……気持ちいいっ……んんっ…!ぐりぐり来るぅ…!」
「くっ……ドワーフさん、少し加減…!」
「ダメ、もっとするの…!んんんっ…!」
セレスティアに跨り、激しく腰を振るドワーフ。動く度に尻尾がばさばさと揺れ、その顔には強い快感からか笑みが浮かんでいる。
結合部には愛液が溢れ、ぐちぐちと音を立てる。欲望のままに腰を振っていたドワーフだったが、その動きが突然止まった。
「んっ!?んあっ……あ、あっ…!」
普段からは想像できないような高い嬌声を上げ、しばらくセレスティアの胸に手をつき、ぶるぶると体を震わせる。やがて、呼吸が
少しずつ落ち着いてくると、ドワーフは大きく息をついた。
「はー、はー……危なかった、目の前白かった…」
「……いつも思うのですが、そのまま続けては…?」
「やだ。なんか、体とか制御できない感じで怖い」
何度も関係を持ちながら、未だにナイフを携帯する彼女のことである。一瞬でも無防備になるのが我慢できないらしく、これまで彼女が
達したことは一度もない。それでも、ドワーフ自身は十分に満足できているようだった。
「それより、また動くからセレスティアさんも少し動いて」
返事を待たず、ドワーフは再び激しく腰を動かし始めた。不意打ちで襲ってきた刺激に、セレスティアは思わず呻き声をあげつつも、
何とか彼女の言葉に応え、出来る範囲で腰を動かす。
「んあっ!いい、いいよ!気持ちいい!」
「ぐ、うっ……ド、ドワーフさん、もうっ…!」
「あ、出る?うん……出して、中……中いっぱい…!」
嬉しそうに言うと、ドワーフはセレスティアのモノをぎゅっと締めつけた。
「うあっ!そんな強くっ……も、もう出ます!」
思わずドワーフの太股を掴むと、ドワーフはすぐにその手を外し、ベッドに押さえつける。それと同時に、セレスティアが腰を突き上げ、
ドワーフの中に精液を流し込む。
「あっ……来てる、中……あったかいの、セレスティアさんの、いっぱい…」
うっとりと呟き、押さえた腕をぎゅっと握るドワーフ。そうしてしばらく、自身の中で動いているモノの感触を楽しみ、やがて動きが
なくなると、押さえていた腕を放し、腰を上げた。
くち、と小さく水音が鳴り、精液がどろりと溢れ出す。それを拭き取ると、ドワーフは自分のベッドに戻った。
「気持ちよかった。またしてね」
「あ……はい…」
気だるい感覚を覚えながら、セレスティアは何とか体を動かし、べとべとになった下半身を丁寧に拭く。もはやペットも飼い主もこういう
事態には慣れたらしく、黒い翼を持った羊はベッドの下の枕でぐっすりと寝ている。
それをペットごとベッドに引き上げ、セレスティアは布団をかけた。ドワーフは寝ているように見えるが、やはり寝息はない。
「……おやすみなさい、ドワーフさん」
いつものように挨拶し、目を瞑る。そしてペットと主人の寝息が仲良く聞こえ出すと、比較的すぐにドワーフの寝息が混ざるのだった。
114/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:32:20.19 ID:+E91jMKg
翌日は、新たな迷宮に向かう予定となっていた。ところが、それを中断せざるを得ないような事態が起き、一行は大騒ぎだった。
「おいっ、そっちにもいねえのかよ!?セレスティア、ほんとに覚えねえのか!?」
「いえ、まったく……朝起きた時にはもう…」
「とりあえずさ、前ぼく達がお世話になった、あのヒューマンに話して了解してもらったけど……通信魔法も反応ない?」
「フェアもやってみてるけど、全然ないよー。ドワ、どこ行っちゃったんだろうねー?」
ドワーフが、朝から姿を消していたのだ。突然の行方不明というだけでも一大事だが、彼女が欠けると戦力が大幅に下がる。回復手段に
乏しい一行にとって、爆発力のある彼女の力は貴重なのだ。
「お前の通信、相当範囲広かったよなあ?それで反応ねえって…」
「わたくしも試みてはいますが、何とも…」
そこまで言って、セレスティアの表情が不意に変わった。
「……もしかして……可能性としては…」
ぼそりと呟き、セレスティアは道具袋を漁りだした。
「ん、どうした?何か手掛かりでもあった?」
フェルパーが尋ねると、セレスティアは顔を上げた。そして、信じられないような言葉を口にした。
「すみません、皆さん。ちょっと探しに行ってきますね」
「ぅおい!?探索どうすんだ!?」
「彼女が欠けては支障がありますし、ヒューマンさん達が行ってくれるのでしょう?一つ心当たりがありますので、そこを当たってきます」
何を言ったところで、ドワーフがいなければ探索は苦戦する上、セレスティアまでいなくなれば不可能に近い。こうなっては、誰も彼を
止めることなどできなかった。
「しょうがねえなあ……ちゃんと、連れ戻してきてくれよ?あっちのお嬢さん達も実力は申し分ねえが、宝珠を譲るわけにもいかねえしな」
「ええ、そのつもりです。それでは、また」
テレポルを唱え、その場から消えるセレスティア。残された四人は、仕方なく拠点での後方支援に徹するのだった。

ボルンハーフェン近く、天機ある山道。その一角で、激しい獣の息遣いとエンジン音が響いていた。
「くっ!」
レイザーオックスの蹴りが飛び、咄嗟にそれを斧で受ける。それでも、巨大な獣の蹴りは小柄な彼女を吹っ飛ばすほどの威力があり、
ドワーフは何とか転ばないよう体勢を立て直し、地面を滑って着地した。
一旦、お互いに様子を窺う。お互いに無傷ではないが、まだどちらも余裕がある。一気に勝負を決めようと、ドワーフが超鬼神斬りの
構えを取ろうとした瞬間、不意に柔らかい光が彼女を包み、痛みが消えた。
「さすがに、あなた一人では苦戦するのではないですか?」
大鎌を携え、にっこりと笑いかけるセレスティア。そんな彼に、ドワーフは不機嫌そうな顔を見せた。
「セレスティアさん、邪魔しないで」
「邪魔をする気はありませんよ。それに、横取りする気もありません。わたくしはただ、狩りのお手伝いに来ただけですよ」
「………」
ドワーフの表情はしばらく変わらなかったが、やがていつもの無表情に戻った。
「脊椎切らないでよ」
「ええ、そうします。それでは、狩りましょうか」
チェーンソーのエンジンを全開にし、獲物に突進するドワーフ。その上をセレスティアが飛び抜け、二人は獲物へと斬りかかって行った。
125/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:33:11.85 ID:+E91jMKg
一時間ほど後、ボルンハーフェンの食堂からのっそりと出てきたドワーフに、外で待っていたセレスティアが笑いかけた。
「どうです?堪能できました?」
「……六杯」
のそのそ歩くドワーフの隣に並び、セレスティアもゆっくりと歩き出す。
「よく、あれをそんなに食べられますねえ。わたくしは一杯が限界でしたよ」
「あっそう。誰もセレスティアさんのことなんか聞いてない」
冷たく言い放つと、ドワーフはゆっくり深呼吸した。ラーメンの味を思い出しているのか、吸いきったところで息を止め、軽く目を瞑る。
「……ふ〜」
無邪気な笑顔を浮かべ、息を吐く。その笑顔は実に幸せそうで、彼女の性格を知っている者が見ても可愛いと思えるようなものだった。
以前、この濃厚魔獣背脂ラーメンの副産物からペットの餌を作るクエストを受けた時、ドワーフは食べきれなかったエルフやフェアリーの
分だけでなく、タンポポの残した分まで汁も残さずきれいに食べていた。しかしネコマやタンポポが代金を払っていることと、数をそんなに
作れないことからお代わりができず、それからしばらく不機嫌そうだったことがあった。そんなわけで、最終決戦に挑む前にこのラーメンを
存分に食べてみたかったのだろう。
「それでは、少し急ぎで帰ろうと思いますが、いいですか?」
「………」
ドワーフは答えず、口の周りの毛に付いたラーメンの汁を舐め取っている。
「恐らく、ヒューマンさん達が作戦を進めていると思いますが……たまには、後方支援もいいものですよね」
「………」
相変わらず返事のないドワーフに、セレスティアは少しだけ困ったような表情を浮かべた。しかし拒否はされていなかったため、山道の
入口に着くとすぐにテレポルを唱える。そうしていくつもの迷宮を通り、再び地下世界へと到達すると、意外にも仲間達が使った後の
武具の手入れをしていた。
「おや、皆さん。戦闘が?」
「おお、セレスティアにドワーフ。帰ってきたか」
叱ろうが諭そうが絶対に言うことを聞かないのがわかりきっているため、もはやドワーフの勝手な行動については誰も何も言わない。
「いやな、普通はこんなとこまで来ねえんだろうけどよ……幸い、入り口で食い止めたけどな」
「でも、びっくりした。僕達が残ってて良かった」
「いなくてもよかった気はするけどね……リコリス先生の人形、あんな強いと思わなかったよ…」
「もうフェア、ドリルうさぎ前みたいに見れない…」
真っ赤に染まった兎の人形を見つめ、セレスティアもフェアリーとまったく同じことを考えていた。
「ああ、そうだ。こっちはさっき動きがあってな、かなり厄介な敵と会ったそうだ」
「この上、これ以上厄介な敵がいるんですか?」
「ああ。アガシオンっつってな、何でも物理、魔法共に攻撃が効かねえんだと。んで、その対策だとか言ってフォルティ先生がさっき
迷宮に入ってった」
「フォルティ先生が!?何をしようと死んでしまいますよ!?」
「いや、先生達が相談して出した結論だからな?つうかお前、ちょくちょくフォルティ先生に対して失礼だよな」
次の報告があるまでは動きも取りにくく、一行は休憩所へと戻ることにした。急ごしらえの設備とはいえ、冒険者基準で見れば十分に
寛げる水準である。
「ああ、そうでした。これ、お土産です」
「うおう、ムーンウォークか!結構なもん持ってきたじゃねえか!こいつは靴の中でも…!」
「暇ー。さっきみたいなのないと暇ー。バハの話も暇だし、セレ何か面白い話ないー?」
バハムーンの言葉を即座に潰し、フェアリーが尋ねる。バハムーンはがっくりとうなだれていたが、誰も彼には注意を払っていない。
136/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:33:56.52 ID:+E91jMKg
「面白い話ですか……そうですねえ。では小さい頃に、母からよく聞いた話でもしましょうか?」
「あ、そういう話っていいよね。ぼくも小さい頃にお母さんから聞いたお話って好きだよ」
「いわゆるおとぎ話というよりは、訓話のようなものですけどね。これは、優しい悪魔のお話です」
話が始まったと見て、セレスティア以外の仲間はじっと耳を傾ける。ペット達は興味がないらしく、部屋の隅に集まって遊んでいる。
「ある小さな村に、一人の女の子がいました。女の子はお母さんと二人暮らしでした。お母さんは薬草の知識や魔法の知識を使って、
村の人の病気やけがを治してあげていました」
何度も聞いた話であるらしく、語りは淀みなく、それこそ母が子供に聞かせるような口調でセレスティアは続ける。
「ある日、女の子はお母さんに言われ、山の奥まで薬草を取りに出かけていました。しかし、言われた薬草はどこにもなく、女の子は
途方に暮れてしまいました。もう日が傾き、これ以上探すのは無理だと諦めて帰ろうとしたとき、女の子は異変に気がつきました」
ごくりと、エルフが唾を飲む音が聞こえた。
「街の広場に、大きな火が燃えていました。そしてその中心には十字架があり、誰かが縛りつけられています。それが誰であるか、
女の子には遠くからでもはっきりとわかりました」
「……なんか、気分悪くなりそうな話だ…」
フェルパーの呟きに柔らかな笑みだけで応えると、セレスティアは再び続ける。
「走って、走って……途中、何度も躓いて、木に引っかけて切り傷を作って、女の子は必死に走りました。そして日が暮れ、ようやく
広場に辿りついた女の子が見たものは、黒焦げになった母の亡骸でした。その時村では、病気が流行っていたのです。女の子の母にも
治すことができず、不安に駆られた村人達は、彼女を魔女としてしまったのです。今まで何でも治してきたのに、これが治せない
はずはない。治せないのは、彼女がこれを振りまいた張本人だからだ……と」
「ありそうで嫌な話だな、まったく…」
既にエルフ、フェルパー、バハムーンの顔は非常に険しいものになっている。フェアリーは子供のように興味津々といった顔で
聞き入っており、ドワーフはいつもの無表情である。
「母親はそれを知って、女の子を山へ逃がしたのです。それを知って、女の子は泣きました。そして亡骸を家に運び、庭に埋めると、
彼女は天に叫びました。『神様でもいい、悪魔でもいい。私に力をください。母を殺した人達を、同じ目に遭わせてやれるような力を、
どうかお与えください』と。彼女のドロドロに濁った心に引かれ、近くに来た一匹の悪魔がその叫びを聞いていました」
そこで一旦話を切ると、セレスティアは仲間の顔を見回した。
「さて、皆さん。この悪魔は、この後どうしたと思いますか?」
「復讐ぐらいしてくれないとすっきりしない」
即座に答えたのは、すっかり不機嫌そうな顔になったフェルパーだった。
「でも、優しい悪魔っつったよな?てことは、願いを叶えるだけ叶えて魂は解放してやったとかか?」
「あるいは、そもそも契約してないことにして魂を取らなかったとかじゃないかな?」
「それより続きは?続きー」
「……そんな喚くだけのガキ、無視すればいい」
一行の顔を見回し、ドワーフの顔をしばし眺めてから、セレスティアは再び口を開いた。
「では、その悪魔がどうしたかというと……悪魔は彼女を見守り続け、やがて力を乞い続けた女の子は痩せ細り、死んでしまいました」
「……はぁ!?」
明らかに納得いかないという表情で、常識人三人が同時に言った。
「ちょっ……そこは普通、何らかの形で村人を改心させるとかさあ!」
「聞かなきゃよかったってぐらい、気分悪りい話なんだが…」
「そうですか?実に正しい行動だと思いますよ」
反応自体は想定にあったようで、セレスティアはいつもの笑みで答えた。
147/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:35:00.15 ID:+E91jMKg
「仮に悪魔が力を与えてしまえば、契約として魂を奪われます。まして、人を殺すなどという行為、神がお許しになるはずはありません。
ですが何もしなければ、彼女は清いまま天へ召されることができます。ですから優しい悪魔は、何もしなかったのですよ」
「こんな話を子供にするって……お前の母ちゃん何もんだよ…?」
「シスターでしたよ。まあ確かに、教義は世間一般のものと些か違うようでしたが」
ピクッと、バハムーンの眉が動いた。
「あ〜……だからお前、牧師をメインじゃなくてサブで取ってるのか?」
「それもありますね。どちらかというと、堕天使学科の方がわたくしの教義と合ってる面もありますし。あとはタカチホの自然信仰も、
少し近い面がありましたねえ」
「ん〜……難しくてよくわかんなかったけど、神様の考えることってよくわかんないねー」
「おや、神の方に考えが行きましたか」
どことなく嬉しそうに、セレスティアは尋ねた。
「だってさー、その話ってそれで終わりでしょー?だったらさー、村人もそのまんまなんだよね?ってことはさー、天罰とか何も
なかったってことでしょー?」
「そう、そういうことです。理由はわかりませんが、神は彼等の行いを許されました。わたくし達には理不尽に思えることがあっても、
神は必ず何がしかの意志を持って、試練をお与えになったり、お許しになることがあるのですよ」
「ちょ、ちょっと待った」
そこで、不機嫌そうに黙っていたフェルパーが口を開いた。
「それ、おかしくない?人を殺すって行為を神は許さないのに、村人が女の子のお母さんを殺すのは許されるのか?」
「神がお許しになっていなければ、そもそも殺すことすらできません。現に、女の子は誰にも殺されなかったでしょう?」
「そりゃ……まあ…」
「そして、神は自ら助く者を助く。努力せずただ喚くだけの者を、一体誰が助けましょう?必死に足掻き、努力し、自身の力で叶えようと
する者にこそ、神も人も、初めて力をお貸しくださるのですよ」
「……ほんっと、変わった教義だったんだな…」
もはや呆れ顔に近いエルフとフェルパーだったが、バハムーンは少し難しい顔をして黙りこんでいた。そして会話が途切れたと見ると、
静かに口を開いた。
「その、お前の母ちゃんは、今どうしてるんだ?」
すると、セレスティアの表情が僅かに曇った。
「……流行り病にかかり、数年前に亡くなりました」
「そうか……もし、天空の宝珠を手に入れたら、願うのはそれか?」
「お、おいおいバハムーン!先輩達が自分の願いを諦めて、この世界のために道を開いてくれたのに、ぼく達はその道を通って平然と
自分の願いを叶えるのかい!?」
少し怒っているらしいエルフに、バハムーンはむしろなぜそんなことを聞くんだとでも言いたげに答えた。
「気兼ねするこたぁねえよ。元はそのための戦いだ。それに、勝者が手にした宝珠に何を願おうが、勝者の勝手だろ?」
「いや、でも……う〜ん…」
「わたくしは、それを叶えたいと思います。ですから、この戦いは何としても…!」
「立派な願いで結構じゃねえか。それこそ、宝珠に願うにふさわしいと思うぜ。俺なんか、どっちかってぇと宝珠を手に入れること
そのものが願いだからなあ。あんなレアなもん、この先二度と手に入らねえだろ?」
「僕は、色んなペットと一緒に過ごしたい。けど、六人全員叶えてもらえるのかどうか」
「えー。みんなでパーティ組んでるんだから、みんなの願い叶えてくれなきゃ不公平でしょー?フェアもお願いしたいことあるしー」
158/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:36:13.72 ID:+E91jMKg
いつの間にか自身の願いを発表する場になりつつあったところへ、不意に通信魔法が入った。聞けば、ヒューマン達のパーティが見事に
アガシオンを打ち倒したとのことだった。とはいえ、やはり相当な激戦だったらしく、ドワーフを除く一行が出迎えに行くと、迷宮の
入口からよろよろと這い出して来る六人の姿があった。
「ヒューマンさん、ディアボロスさん、お疲れ様でした」
「ああ、セレスティア……ごめん、荷物持っ…」
「セ、セレスティアさん!わざわざお出迎えに来てくれたんでしゅか!?」
相変わらず少し噛みながら、ディアボロスが嬉しそうに声を掛けてきた。
「ええ、かなりの激戦だったと聞きましたよ。よく、無事に帰ってきましたね」
「こ、これぐりゃい大丈夫ですよ!?全然元気でしゅから!」
「……に、荷物…」
「お嬢さん、大丈夫かい?そこの鉄塊もな」
ひょいっと荷物を持ち上げ、バハムーンが声を掛ける。それだけでもかなり楽になり、ヒューマンはようやく一息つけたようだった。
「僕は平気だよ。だから、他の仲間を頼むよ」
「うっへぇ……疲れたぁ……オレ、もう死にそ…」
「あいあいお兄ちゃん、妹さんが元気なんだからシャキッとしてくださいねー。だらしないですよー」
もはや足元が定まっていないドワーフに、クラッズをおぶったバハムーン。それを見るだけでも、相当な激戦だったことが窺い知れた。
「荷物はぼく達が運ぶよ。君達は戻って休むといい」
「あ〜……ありがと……ほんと、助かるよ…」
「私は一応、先生に報告に行かなきゃ……ノーム、ついて来てくれる?」
「いいよ、一緒に行こう」
セレスティア一行に手伝ってもらいつつ、ヒューマン一行はそれぞれの行動に移っていく。その時、セレスティアが辺りをきょろきょろと
見回し始めた。
「ところで……フォルティ先生は…」
「あ、フォルティ先生ですか?ちょっとダメージ大きかったですけど、ちゃんと無事でしたよ」
「無事だったんですかっ!?」
「ひっ!?そ、そんな驚くことですか!?」
「いえ、だって……フォルティ先生ですよ!?」
「セ、セレスティアさん、それはさすがに失礼ですよ…」
バハムーンと似たような突っ込みを受けつつ、セレスティアはまだ納得いかないようで『あのフォルティ先生が…』とぶつぶつ呟いている。
「え〜っと……セレスティア、さん?」
「……あ、はい。何ですか?」
「あの……ちょっと、いいですか?」
セレスティアの耳に、何事かを囁くディアボロス。だがその姿は、疲れ切った他の仲間には気付かれていなかった。
「……ええ、構いませんよ。時間はいつぐらいに?」
「えっと……夕飯後、くらいで」
「わかりました。ではとにかく、あなたも休んでください。でないと、体がもちませんよ」
言いながら、セレスティアはディアボロスの荷物を持ってやろうとした。が、そこにドワーフが割り込み、それを奪い取る。
「あ、兄貴として妹の面倒は見なきゃいけねえからな!お前は、その……バハムーンとかクラッズの手伝ってやってくれよ」
「あ、はあ。ですが、あなたもかなりふらふら…」
「い、いいんだよ!兄貴ならこれぐらい、と、当然…!」
二人分の荷物を抱えて歩き出そうとした瞬間、その体がぐらりとよろめく。それを慌ててディアボロスが押さえた。
169/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:37:21.94 ID:+E91jMKg
「もう、お兄ちゃんったら!無理しないで、セレスティアさんに手伝ってもらおうよ!」
「いや、その、それは……あ、兄貴としての沽券にだな…!」
何だかんだと言いつつ、二人は休憩所へと歩いていく。それを見送ると、セレスティアはバハムーンらに顔を向けた。
「そちらは……エルフさんとフェルパーさんで足りてそうですね」
「あいあい、人出は十分ですよー。それじゃ、またあとで会いましょうねー」
種族柄なのか、それとも本人の体力がずば抜けているのか、彼女だけはやたらと元気そうであり、クラッズを背負ったまま軽い足取りで
去って行った。
その後、彼女達の荷物を休憩所に運び込むと、ちょうど教師陣からの連絡があった。
曰く、次の課題が最終決戦となり、そこで全てに片を付けるということだった。つまり、天空の宝珠争奪戦も、クシナ奪還も、
ラプシヌ打倒も全てをこなすのだ。
そんな大仕事を前に、体調を崩しているわけにはいかない。そんなわけで、一行はそれぞれに休息を取っていたのだが、バハムーンが
部屋で寛いでいると、不意にドアがノックされた。
「ん、誰だ?」
「わたくしですが、入ってもよろしいですか?」
「セレスティア?こりゃまた珍しい客だな、開いてるから入れよ」
いつも通りの柔らかい笑みを浮かべ、一言断りを入れてから、セレスティアは部屋に入った。その頭の上には、ペットがちょこんと
乗っかっている。しかしもはや見慣れた光景のため、今更バハムーンも気にはしない。
「んで、お前がわざわざ俺のところなんぞに来るってことは、何か用事だよな」
「ええ、その通りです。実は、相談したいことがありまして」
「大体想像つくけど、言ってみな」
「ええ……ドワーフさんのことです」
「やっぱな」
軽く息をついて、バハムーンはセレスティアに椅子を勧めた。
「バハムーンさんも気付いていると思いますが、最近どうにもそっけない感じで……ですが、これまでは今までどおりでしたし、
夜……えー、時々はいつも通りになることもあるんです。ですが、わたくしはその理由が見当もつきませんので…」
「なるほどな、それで相談役は俺が適任だと思って来たわけだ。実にいい判断だな」
バハムーン自身、その変化には興味を持っており、実はこれまでじっくりと二人を観察していた。その結果、ある程度の答えは既に
彼の中で出されている。
「理由とかの前に、まずお前に質問する。大切なことだから、真面目に答えろよ?」
「はい、何でしょう?」
一瞬の間を置いて、バハムーンは口を開いた。
「お前、ドワーフのことは好きか?」
「……直球ですね」
ほんのり顔を赤らめつつ、セレスティアは頭を掻いた。
「好きか嫌いか……で言うならば、好きです」
「男女の仲で言うと?」
「え、う……そう、ですね……ちょっと難しいのですが、やはり好き……です」
「だろうな」
そっけなく言って、バハムーンは心を落ち着けるように大きく息を吐いた。
1710/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:38:30.28 ID:+E91jMKg
「まず、アドバイスの一つ。お前、もっと自分に正直になれ」
「え、わたくし……ですか?」
「わたくしです。お前にとっちゃ、あいつに関して色々思うこともあるだろうよ。けどな、男女の仲なんて、そう複雑なもんはいらねえよ。
お前の中の純粋な気持ちを、あいつに伝えることだな」
バハムーンの言葉を、セレスティアは信託でも聞くかのような神妙な面持ちで聞いている。
「伝えるにも、言葉だけじゃねえ。行動で、見えるように示してやりな。あいつは言葉なんか信じねえような奴だからな。これが
アドバイスの二つ目だ。そして三つめ、あいつは不安なんだ」
「不安?」
思わず聞き返すと、バハムーンは頷いた。
「お前もわかってると思うが、あいつに常識は通用しねえ。なぜかってぇと、感情がないに等しいからだ」
「感情が、ですか?ですけど、よく怒ったり…」
「まあ、それはあるんだけどな。正確に言うと、感情に偏りがあって、怒り以外が異常に薄いんだ。その上、あいつが何でも平気で
殺そうとする理由は、見た感じ、善悪の概念が理解できねえらしい。だから、悪いことだからしないっていう常識が通じない」
「……はあ」
「あいつにとっちゃ、他人は訳のわからないことを言って自分を言いくるめようとする詐欺師ばっかりなんだよ。そんな中で、善悪とかいう
訳のわからん概念を損得に置き換えて説明してくれて、自分に好意を持ってくれて、何でも許してくれる奴が出たらどう思う?最初こそ、
便利な奴だって思うかもしれねえけど、だんだん不安になるだろ?こいつはもしや、信頼を得てから裏切るつもりなんじゃねえかってな」
「そんなつもりはないんですが…」
「そんなの、あいつはわかんねえよ。見たまましか信じられねえんだから。それに、あれであいつも女の子なんだぞ?今まで不快な奴しか
いなかったのに、そんな感じがしねえ奴が出てきたら、自分に対してだって不安になるだろうが。だから男らしく、きちっとあいつに
伝えるべきことを伝えてやんな。以上、アドバイスは終わりだが、何か質問はあるか?」
セレスティアは言われたことを反芻するようにしばらく俯いていたが、やがて顔を上げた。
「……いえ、大丈夫です。本当に、バハムーンさんは色んな人をよく見てるんですね」
「癖みてえなもんさ。女の子に優しくっつっても、きちんと見とかなきゃエルフみてえな例もあるからな」
「なるほど、わかりやすいですね」
楽しげに笑って、セレスティアはバハムーンを正面から見つめる。
「相談に乗ってくださって、ありがとうございました」
「気にすんな。俺だってお前には何度も助けられてる。お互い様さ」
それからしばらく、他愛のない話をしてから部屋を出る。夕飯は既に各自で終えており、時計を見れば消灯時間が迫っている。
ふと、セレスティアは目を瞑り、意識を集中した。それが済むと、部屋に向けていた足を休憩所の出入り口へと向ける。
そのまま歩いていると、不意にドワーフが姿を見せた。意外な人物に驚きつつ、セレスティアはいつも通りの挨拶をする。
「おや、ドワーフさん。こんなところでお会いするとは、奇遇ですね」
「………」
ドワーフは何も答えず、黙ってセレスティアの姿を見つめる。
「え〜……すみませんが、わたくしはこれから用事があって、しばらく部屋に戻れませんので……もしお休みになるのでしたら、
窓の鍵でも開けておいていただけると助かるのですが…」
「………」
やや不機嫌そうな顔のまま何も答えず、ドワーフは懐を探ると、いきなりセレスティアに何かを投げてよこした。
「おっと!これは…?」
「……あげる。あの女と何かあるんでしょ」
「あ、それは…」
セレスティアはそれについて説明しようとしたが、ドワーフは聞こうともせずに部屋へと戻って行ってしまった。変な勘違いを
生んでいなければいいなと思いつつ、セレスティアは休憩所を出ると、飛ばされぬ夢の回廊へと向かった。
1811/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:39:19.70 ID:+E91jMKg
テレポルを使い、中層辺りまで移動する。その先に、見覚えのある人物が待っていた。
「お待たせしてしまいましたか?」
「ひゃいっ!?い、いえっ、私もさっき来たばっかりでしゅ……ですよ!」
顔を真っ赤に染めつつ、ディアボロスはぶんぶんと首を振る。それを落ち着かせようとするかのように、セレスティアは優しげな笑顔を
向け、静かに声を掛ける。
「それならよかったです。それで、話というのは何でしょう?」
セレスティアの言葉に、ディアボロスの表情が硬くなった。一度気持ちを落ち着けるように深呼吸し、静かな、しかしある種の決意が
篭ったような声で話しだす。
「はい、それなんですけど……明日のクエスト、私……あ、えっと、ヒューマンさんと私達のパーティに、任せてもらえませんか?」
「……理由を、聞いてもいいですか?」
その問いに、一瞬言葉に詰まる。しかし、ディアボロスはやはりしっかりとした口調で答える。
「質問で返しちゃう形になりますけど、セレスティアさん達は……天空の宝珠に、自分達の願いを掛けるつもりですよね?」
「ええ、そのつもりです。こればかりは、あなたでも譲れません」
「そうですよね……私も、叶えたい願いがあります。でも、私は別に、天空の宝珠なんかなくてもいいんです」
「ではなぜ…?」
ディアボロスはセレスティアを見つめ、強い口調で言う。
「セレスティアさんの、仲間の方……あんな人に、宝珠を任せたくないんです。自分以外がどうなろうと構わない、自分が良ければ
それでいいなんて人には…!」
それが誰を指しているのかは明白だった。それに対し、セレスティアは優しげな笑みで答える。
「ですが、それ故の強さを彼女は持っています。あのパーネやディモレア、アガシオンなどを配下に従えるラプシヌは、恐ろしいほどの
強敵でしょう。ですが、わたくし達はそれにも打ち勝てる自信があります」
「自信なら私達だって!」
普段からは想像もできないほどの大きな声で、ディアボロスが言い返した。しかしそれに自分で驚いたのか、ディアボロスはあっと口を
押さえると、再び元の声で喋る。
「確かに、一人一人の力は、セレスティアさん達には勝てないと思います。ですが、結束の強さは……あと、パーティのバランスは、
私達の方がずっといいです」
「ふふ……否定は、できませんね」
本心から思っているらしく、そこに皮肉のような響きはなかった。
「しかし、私達は指を咥えて見ている気はないです。叶えたい願いのため、クシナさんの救出のため……戦うつもりです」
それ以上は話すこともないだろうと判断し、セレスティアは踵を返した。そこに、ディアボロスの声が響く。
「待ってください!」
「何です?これ以上、あなたとわたくしで話すことはないのではないですか?」
「……ごめんなさい……今のが、本題じゃないんです…」
意外な言葉に、セレスティアは文字通りに目を丸くした。
「え、違うんですか?で、では一体、こんなところで何の話を…?」
「そ、それは…」
大きく二度、深呼吸をする。そして、ディアボロスは震える声で言った。
「わ、私……セ、セレスティアさんがっ……す、好きです!」
「………」
突然の思わぬ告白に、セレスティアは呆気に取られていた。
1912/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:40:20.96 ID:+E91jMKg
「初めて会った時も、その後も、優しくしてくれて……それで、私…!」
「……すみません、あなたには申し訳ありませんが、その想いを受けることはできません」
柔らかく、しかしはっきりとした拒絶に、ディアボロスは大きなショックを受けたようだった。
「えっ……そ、そんな…」
「わたくしは、この胸に決めた方がいるのです。ですから、あなたの想いは受けられません」
「……あの人、ですか…?」
暗い、どこか怒りを感じさせるような声で、ディアボロスが尋ねる。
「そう、あのドワーフさんです」
「あんな……あんな人の、どこがいいんですか!?」
涙を浮かべながら、ディアボロスが叫んだ。
「いきなり人を殺そうとしたり!平気で嘘ついたり!なのになんであの人なんですか!?ただ一緒にいたってだけでっ……私っ……私、
ずっと……セレスティアさんのこと、す、好きっ……だった……のにぃ…!」
ぽろぽろと涙をこぼすディアボロスに、セレスティアは取り成すような笑みを浮かべた。
「その言葉を、否定はしません。ですが、神はお許しになられています。それに彼女は……え〜……説明はし辛いのですが、美しい心を
持っているんですよ。それこそ、神の御心に等しいような心を、です」
「ひっく……うそだぁ……そんなの……ひっく……ぐす……そんなの、ない…」
その場にくずおれ、泣き伏してしまったディアボロスに、セレスティアはどう声を掛けたものかと考えていた。本来はそっとしておくのが
一番なのだろうが、放っておくには場所が危険すぎるため、帰るわけにもいかない。
深呼吸するように、ディアボロスが大きく息をつく。その時、セレスティアはなぜか寒気を感じた。
「……わかり、ました」
気の抜けたような声。しかしそこに、言いようのない不安を感じる声だった。
「わかりました、セレスティアさん。わかりました」
「……ディアボロスさん?」
「どうしても……私のものにならないのなら……私の想いが届かないなら…」
ディアボロスが顔を上げた。見開かれた真っ赤な目が、セレスティアをまっすぐに見つめていた。
「誰にも、渡さない」
「っ!?」
魔力が急速に収斂していくのを感じ、セレスティアは身構えようとした。しかし不意打ちの分、ディアボロスの方が早かった。
「イペリオン!」
まばゆい光が迷宮に満ち、セレスティアの元で大爆発を起こした。吹き飛ぶセレスティアに、ディアボロスはさらに詠唱を重ねた。
「イペリオン、イペリオン、イペリオン!!!」
詠唱の度に光の爆発が起こり、その衝撃で迷宮が大きく揺れる。
「生き返らせればいいんですもんね!それに、セレスティアさんがいなければ天空の宝珠は私達が手に入れられます!誰にも渡さない!
誰にも渡しませんから!!イペリオォン!!」
滅茶苦茶に叫び、涙を流し、何度も何度も最大攻撃魔法を唱える。まともな生物であれば原形を留めぬほどの攻撃を加え、ようやく
疲労しきったディアボロスが詠唱を止めた時、セレスティアはぼろぼろになって床に倒れていた。
2013/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:41:21.53 ID:+E91jMKg
その頃、セレスティアの仲間達はドワーフとフェアリーを除き、フェルパーの部屋に集まっていた。そこを選んだ理由は、単にペットが
寝る準備を終えていたため、あまり移動したくないからという理由だった。
「それにしても、今日のセレスティアの話、ありゃあ衝撃的だったなあ」
「あ〜、あの優しいんだか優しくないんだかわからない悪魔の話。あれ、僕はなるべく忘れたい」
「けどな、あれのおかげで、あいつがどうしてドワーフに固執するかわかったぜ」
「あれで!?」
驚いてエルフが聞き返すと、バハムーンは頷いた。
「ああ。あいつな、何でもかんでも『神の思し召し』って言うだろ?神が許さなきゃ死んだりしねえとかよ」
「あ〜、言うねえ」
「一般的に考えて、だ。ドワーフの振る舞いって、明らかに許されるもんじゃねえだろ?」
今までの彼女の行動を思い返し、フェルパーとエルフは同時に頷いた。
「なのに、あいつは生きてる。てことは、セレスティア理論で考えると、あの行動は全て神が許してるってこった。じゃ、なぜ許される?」
「なぜって……なんでだろ?」
「あの胸糞悪りい話の、女の子に対して悪魔がどうすると思うかって言った時の、ドワーフの言葉、覚えてるか?」
「あー、そんなの無視しろって言ってたねえ」
「結果はどうだった?」
「無視……というか、見守ったというか…」
我が意を得たり、というようにバハムーンは頷いた。
「つまり、それが優しさなんだよな。てことは、ドワーフは神のようなっつうか、神にも認められる優しさを持ってるってことになる。
そんな馬鹿なって思うかもしれねえが、結果としてドワーフはピンピンしてる。まして、行動しなきゃ結果は伴わねえってあの教義。
行動しねえ奴は無視しろってのが教義にも則ってる。つまり、誇張とか抜きにして、セレスティアにとっちゃドワーフは女神にも等しい
存在なんだよ」
「武神なら納得だけど…」
フェルパーの呟きを無視して、バハムーンは続ける。
「ただ、同時にこれが危険でもある」
「どの辺が?」
「何でもかんでも神の思し召しとか言う奴が、神を貶されたらどう思うよ?そして、あいつが平気で敵を殺せるのはなんでだ?」
「………」
セレスティア自身には何も言わずとも、あのドワーフの行動を考える限り、彼女にうっかり暴言を吐いてしまわないとも限らない。
気付かずにいた思わぬ落とし穴に、エルフとフェルパーは身震いした。
「あいつは狂信者だ。それに、あいつが母ちゃんについて語った時の顔……あれは、まともじゃねえ。お前等も感じてたかもしれねえが、
あいつは紛れもねえ狂人なんだよ。もし、万が一にもあいつの気を損ねることがあったら…」
そこで一呼吸置き、バハムーンは言い切った。
「あいつは、相手が誰だろうと殺すだろうな」
2114/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:42:06.34 ID:+E91jMKg
飛ばされぬ夢の回廊に、荒い息遣いが木霊する。それまでの騒々しさは鳴りを潜め、聞こえるのはディアボロスの呼吸音だけだった。
未だに呼吸の整わない主人に、ペットが不安げにスカートを引っ張る。それを優しく窘めつつ、ディアボロスは呟く。
「はぁ……はぁ…!ごめんなさい、セレスティアさん……はぁ……でも、これで宝珠は……はぁ……セレスティアさんは…」
「……まさに、ド級の攻撃でしたねえ…」
「えっ!?」
確実に死んだと思ったはずのセレスティアが、ゆらりと立ち上がった。全身から血を流し、それでもいつものような笑みを浮かべ、
ディアボロスを見つめている。
「そ、そんなっ……生きてるはずが…!?」
「全ては、神の思し召し。そして、ドワーフさんに感謝です」
ガシャンと音を立て、いくつもの空き瓶が転がる。それは明らかに、神秘の水が入れてある瓶だった。
パタパタと羽音を立て、小さな羊がセレスティアの頭に乗る。そして主人と同じく、敵を見るような目つきで目の前の相手を睨んだ。
「他者を悪しざまに罵り、我欲のためにわたくしを殺そうとする。どうやらわたくしは、あなたのことを勘違いしていたようですね」
「っ…!」
「一撃分はもらいましたが、わたくしは生きています。ならば、あなたはどうでしょう?あなたを、神はお許しになるかどうか…」
大鎌と武器のような盾を構えるセレスティアに、ディアボロスも杖と盾を構える。
二人はそのまま睨み合い、そして同時に動いた。
「メア!」
「バフォ!」
メェ、と似たような鳴き声が響き、それぞれのペットが動く。黒い翼の羊からはどす黒いオーラが放たれ、セレスティアの体に吸収される。
一方の悪魔のような山羊は小さな槍を振りかざし、鳴き声を魔力に変えて主人へと分け与える。
それとほぼ同時に、セレスティアが大きく羽ばたき、ディアボロスに迫る。あまりの速度に反応が追いつかず、ディアボロスが
気付いた時には鎌の刃が首に迫っていた。それを咄嗟に盾で受けるが、思った以上の衝撃に、ディアボロスは呻いた。
「ぐっ……な、なんて力…!?」
直後、槍の穂先が自分を狙っていることに気付き、ディアボロスは咄嗟に身を投げた。直後、今まで顔があった部分を槍が飛び抜けた。
「シャイ…!」
「させませんよ!」
大鎌がくるりと向きを変え、再びディアボロスに迫る。下から突き刺すように襲ってきた刃に、ディアボロスは辛うじて顔を反らして
かわした。その鎌が巻き起こした刃風は、それ自身が切れ味を持つかのようにディアボロスの顎を冷たく撫でていった。
「くっ、シャイン!」
「ダクネス!」
光と闇が交錯し、二人は互いの魔法を盾で受ける。一見すればディアボロスが有利だったが、戦局はどちらに転んでもおかしくない。
考えなしに最大魔法を連発したディアボロスは、もうほとんど魔力が尽きていた。一方のセレスティアは、イペリオンの一撃分を
受けているが、白兵戦となればその力は術師などの比ではない。まして、ペットから受けた狂撃により、理性のたがが外れたその攻撃力は
さらに上がっている。
セレスティアが羽ばたき、距離を詰める。その瞬間、ディアボロスの手が動いた。
「くたばれぇ!」
「おっと!」
咄嗟に逆に羽ばたき、動きを止めたセレスティアの鼻先を、カドケウスの杖が通過した。術師とはいえ、彼女も実戦で鍛えられた
冒険者である。その杖術は、駆け出しの戦士などを遥かに上回る。
2215/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:43:05.41 ID:+E91jMKg
「やりますねえ。ですが、わたくしはそんなものでは死にませんよ」
「なら、これは!?」
素早く杖を握る位置をずらし、棒尻で突きかかる。それを、セレスティアは盾で受けた。必然的に、盾に取りつけられた刃がディアボロスに
突きつけられる。
直後、セレスティアが羽ばたいた。体勢を崩され、そこに鋭い刃が迫る。
「きゃあっ!」
すんでのところで直撃は避けたが、右腕を刃が滑った。たちまち血が溢れだし、そこから痛みが広がっていく。
「うう、腕がっ…!」
主人の危機に、ペットが再び槍を振りかざした。そこに一声鳴いて羊が飛びかかり、鼻面に噛みついてそれを阻止する。
「ああっ、バフォ!」
「メア、そのまま頼みますよ!」
詠唱の隙を与えぬほどの連撃。鎌による横からの突きを避ければ、アダーガが一直線に襲い掛かる。それを盾で受ければ、
盾をかわす軌道で鎌が振られ、懐に飛び込めばアダーガに付けられた剣がそれをさせない。
思い切り鎌が引かれる。背後から迫る刃の気配を感じ、ディアボロスは思い切り体を反らした。そのまま地を蹴ると、靴の爪先部分を
切り裂いて鎌が飛び抜ける。地面に手をつき、何とか回転して着地すると、ディアボロスは素早く魔法を詠唱した。
「シャイン!」
「ぐっ!」
光がセレスティアを包み込む。まだ戦えるとはいえ、セレスティアの傷は深い。このまま一気に押し込もうと考えたディアボロスだが、
直後に絶望の表情が広がる。
「そ、そんな…!?」
「イペリオンというド級の魔法ならまだしも、そんなものではわたくしは倒せませんよ」
セレスティアは傷ついていないどころか、むしろ若干怪我が治っていた。恐らくシャインを受けつつも、ルナヒールで回復したのだろう。
「わたくしは、負けるわけにはいかないんですよ。わたくしには、母を取り戻すという願いがあります」
「お母さんを…?」
「これまで、わたくしはずっと母の言い付けを守ってきました。誰も殺さず、誰も憎まず……そして、わたくしの今の姿を、母を見捨てた
者達がどうなったかを、全てを見てほしいのですよ」
このままでは負けると、ディアボロスの直感が告げていた。そこにこの言葉は、またとない好機と言えた。
「……そ、そんなことをしても、お母さんは決して喜びませんよ」
「……はい?」
「す、少なくとも私がお母さんならっ……こ、子供が誰かを殺したなんて、嬉しくないです!それに、見捨てた人を殺したなんて、
そんなの誰も望まなかったはずです!言いつけを守らなかった子なんて、見たいはずがないじゃないですか!」
見捨てた者を殺したというのは、完全な当てずっぽうだった。しかし、セレスティアはそれを聞いた瞬間、動きを止めた。
「母は……嬉しくない?わたくしが、言いつけを……誰も望まなかった…?」
隙だらけになったセレスティアを見つつ、ディアボロスは腕にヒールを唱え、そして杖を振りかぶった。
2316/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:44:01.58 ID:+E91jMKg
無防備な頭に振り下ろす。それで、戦闘が終わるはずだった。
ガツッと硬質な音が響き、ディアボロスの腕が弾かれる。驚いてセレスティアを見ると、彼は今まで見たこともないような笑みを
浮かべていた。
「……そんなはず、あるわけないでしょう?それに、あなたがたかだか数秒で考えたようなことを、わたくしが考えなかったとでも?」
ゆらりと鎌が振り上げられる。慌てて盾をかざすと、セレスティアはお構いなしに鎌を振り下ろした。
「うあっ!?ぐっ…!」
「愚かですよ……まったくもって、愚かな考えです。わたくしは、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も考えましたよ!」
「ひっ!?」
明らかに気配が変わった。もはや普段の面影など微塵もなく、狂気じみた笑顔を浮かべ、襲い来る武器は異常な重さを持っている。
「神がお許しになれば、何があろうと死にはしません!ほら、わたくしも無事じゃないですか!?神がお許しにならなければ、
何人たりとも死は免れませんよ!しかし行動をしないならば、神に問うこともできはしない!」
狂ったように叫びながら、セレスティアは武器を振り回す。重く、速く、確実に急所を狙ってくる攻撃に、ディアボロスは必死に
避けることしかできない。
「ですから、わたくしは神に問うたのですよ!母を一番迫害した者が許されたのは意外でしたがね!しかし井戸に毒を流してなお
生きたのですから、それは神の思し召し、認めねばなりませんよね!?ですから、わたくしは許したのですよ!誰一人恨まずに!!」
ああ、と、ディアボロスは思った。自分は最も触れてはいけないものに触れてしまったのだと、今更ながらに理解した。
そして、彼の本当の姿を見極められなかったことを、そして自身の軽率な行動を、心の底から後悔した。
避けきれず、腕を切られ、腹を切られ、そしてとうとう足を切られ、ディアボロスはその場にうずくまった。
「う……う、あ……あぁ…」
怯えきった表情で見つめるディアボロスを、セレスティアは狂気じみた笑顔で見つめる。
「もう終わりですか?最初の威勢はどこへ行ったのです?……ああ、魂もすっかり弱り果てたようですねえ」
彼の持つデスサイズヘルが、小さな音を発しているように見えた。もはや戦う力も気力もなく、ディアボロスは狩人に追い詰められた
獲物のように震えていた。それを察知し、ペットが慌てて駆け寄ろうとするが、セレスティアのペットに顎を蹴り飛ばされ、昏倒する。
「そこまで弱っては、もう生きているのも辛いでしょう?ですから、神の御慈悲に身を任せてください」
セレスティアが鎌を振り上げる。それに体を切り裂かれるのだと思うと、ディアボロスの中に凄まじい恐怖が湧きあがった。
「や、やだぁ!!」
思わず頭を両手で庇い、それと同時にセレスティアが鎌を振り下ろした。直後、ガシンという音が響いた。
「……ん?」
振り下ろした鎌は、たまたまディアボロスの盾に当たったらしく、軌道を逸れて地面に突き刺さっていた。しかしディアボロスが
助かったと思う間もなく、セレスティアはアダーガを引いた。
「ひぃ!!」
それに怯え、後ろに尻餅をついた瞬間、セレスティアがアダーガを突き出した。その穂先はディアボロスの頭を捉えず、僅かに前髪を
切り落としたに過ぎなかった。
「……戦意も、力も失った相手に、二度も外すとは…」
呆然としたように呟くセレスティア。ディアボロスはまだ震えていたが、不意に気配がいつものセレスティアに戻った。
「どうやら、神はあなたを生かしたいと思し召しのようですね。ならば、わたくしはそれに従いましょう」
武器を納め、セレスティアは踵を返す。そして肩越しにディアボロスを振り返ると、静かな声で言った。
「明日の戦いは、わたくし達にお任せください。そして、万が一、わたくし達が破れることがあれば……その時は、お願いしますよ」
2417/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:45:01.52 ID:+E91jMKg
そこで一度言葉を切り、セレスティアははっきりと告げる。
「さようなら、ディアボロスさん」
テレポルを唱え、消えるセレスティア。それを見届けると、ディアボロスは全員がしぼむような溜め息をついた。そこでちょうどペットが
目を覚まし、慌てて主人の元に駆けつけた。
「バフォ…」
優しく、ペットの頭を撫でる。
「ダメ、だったね…」
全てにおいて、失敗してしまった。そんな考えが頭を満たし、ディアボロスはただ一人、迷宮でうなだれていた。

それとほぼ同時刻、アガシオンとの激戦を終えたヒューマン達は、それぞれ休憩所で休んでいた。その中のドワーフが、一人難しい顔をして
廊下を歩いている。
「あいつ、どこ行ったんだ…?部屋いねえし、クラッズも見てねえって言うし…」
「おやおやお兄ちゃん、なにか悩みごとですかー?」
突然声を掛けられ、驚いて顔を上げると、バハムーンがいつもの制服のように張り付いた笑みで見下ろしていた。
「うおう、びっくりしたあ!いや……そうだ。お前、ディアボロス見てねえか?あいつ、なんかどこにもいなくてよお…」
「ん〜、大切な妹がどこ行ったかわからないなんて、ダメダメなお兄ちゃんですねえー」
「ぐっ……オ、オレだってずっとあいつのこと見てるわけじゃねえだろ!?大体そんなことできねえし…!」
「しかし、どうしましょうかねー。ディアちゃんには、誰にも行き先告げるなって言われてますしー」
その言葉に、ドワーフの表情が変わった。
「何だと…?おい、どういうことだ!?あいつはどこ行ったんだ!?」
「それはいくらお兄ちゃんでも言えませんよー、約束ですからねー。でも、そうですね〜、ディアちゃんがいなくなったのと同じくらいに、
あっちのパーティのセレスティアさんが飛ばされぬ夢の回廊に行ってましたね〜」
「セレスティアの奴が!?あ、あいつまさかっ…!」
思わず自分にとっての最悪の展開を思い浮かべたドワーフに、バハムーンは突然真面目な顔を向けた。
「行くなら早めにお願いします、お兄ちゃん」
「え?な、何だよ急に…?てか、お前のそんな顔初めて見…」
「ディアちゃんは、暴走しがちなとこがあります。そしてあっちのセレスティアさんは、ディアちゃんの想いは受け入れません。その結果が
どうなるか、詳しくはわかりませんけど、ろくでもないことになるのは目に見えてます」
サブでジャーナリスト学科を取っている彼女は、こういったことには異常に鋭かった。リーダーはヒューマンでも、バハムーンの助言には
全員が迷わず従うほどに信頼がある。
「マジかよ…!?どうしてそれで止めなかったんだよ!?つか、お前は行かねえんだよ!?」
「想いを燻らせたままいるより、結果はどうあれ行動を起こした方がすっきりしますし、成長に繋がります。それと後の質問の答えですが、
辛いときに支えてあげるのは、メイドより適任がいるじゃないですかー」
最後の方はいつもの調子になり、バハムーンは再び笑顔に戻った。
「……行き先は、間違いねえんだな!?」
「ないですよー。ですから、早めに行ってあげてくださいねー。あ、ちなみにこの情報料は貸しにしておきますからねー」
「貸しでも何でも……いや、お前から聞いたってあいつに言わねえから、それで帳消しだ!」
ちっ、と後ろから舌打ちが聞こえた気がしたが、この女に借りを作っては後がどうなるかわからない。ともかくも一刻を争う事態に、
ドワーフは休憩所を飛び出し、迷宮へと走った。
2518/18 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:45:48.81 ID:+E91jMKg
入り口で気配を探るが、何の気配もない。さすがに群がる敵を相手にするのは辛く、ドワーフは最低限の敵だけを殴り倒し、奥へ奥へと
進んだ。やがてちょうど中間点というところまで来た時、周囲のモンスターの気配が変わった。異常な興奮状態を感じ取り、直感で
ここにいると確信する。そこを走り、中心部分に到達したとき、ドワーフの目にへたり込むディアボロスと、それに襲いかかる
モンスターの姿が映った。
「てめえら、そいつに触るんじゃねぇー!!!」
迷宮を震わせるような怒号を上げ、ドワーフはモンスターに殴りかかる。突然の襲撃に驚いたモンスターを蹴りつけ、拳の一撃で
吹き飛ばす。標的を変え、次々に襲い掛かるモンスター相手に一歩も引かず、ドワーフはその全てにカウンターを叩き込み、一匹残らず
叩きのめしてしまった。
「お……お兄ちゃん…?」
どこか呆けたように呟き、自分を見上げるディアボロスに、様々な感情が湧き上がる。
「お前……お前なあっ…!」
怒鳴りつけて叱るか、優しく諭すか、そんなことを一瞬考える。しかし気付けば取っていた行動は、そのどちらでもなかった。
「……心配かけやがって…!」
その場に屈みこみ、強く抱きしめる。ディアボロスはしばらく唖然としていたが、やがてその目に涙が溢れてきた。
「う……うぅ〜…!お兄ちゃ……ごめっ……ごめん、ねぇ…!私っ……私、全部ダメで……全然ダメでっ…!」
言葉になったのはそこまでで、あとはもう、ディアボロスは子供のように泣きじゃくった。
「うああぁぁーん!!好きだったのぉ!好きだったのにぃっ……私のこと、嫌いになっちゃったぁー!!うわぁーん!!」
「……よく、頑張ったよ、お前は」
複雑な気分だったが、そうとしか言えなかった。今の彼女には、兄以外の立場で声を掛けることなど、とてもできなかった。
ただただ子供のように泣き続けるディアボロスを、ドワーフは優しく撫で続けていた。
26 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/14(金) 22:47:08.46 ID:+E91jMKg
以上、投下終了。
妹学科のディア子の「くたばれ!」は初めて聞いたときどうしようかと思いました
続きは近いうちに投下します

それではこの辺で
27名無しさん@ピンキー:2012/09/15(土) 11:57:54.57 ID:EPE1621E
(・ω・`)乙これはポニーテールなんたらかんたら

まさかの病んでる人対決
ディア子のあざと可愛さに磨きがかかるな・・・
28名無しさん@ピンキー:2012/09/19(水) 21:35:46.87 ID:6vDSvuAA
乙!
妹ヤンディア子とか、お兄ちゃんどいてそいつ殺せないが頭によぎったんだぜ……
29 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:46:05.72 ID:3N3jjeYK
こんばんは、もっと早くに投下する予定が狂いまくり
というわけで前回の続き投下します

今回もお相手はドワ子。注意点は特になし
楽しんでもらえれば幸いです
301/10 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:47:10.31 ID:3N3jjeYK
中継点に戻ったセレスティアは、初めに自身の傷を治してから休憩所へと向かった。時間は普段の消灯時間を過ぎた頃であり、
もうドワーフも寝ている時間だろう。
一応、帰ってきたことを知らせるため、形式的にノックする。しかし、やはり中からの返事はなく、セレスティアは溜め息をついて
外の窓に回り込もうとした。
その瞬間、ガチャリと鍵の外れる音がし、セレスティアは驚いて振り返った。
「あれ、ドワーフさん?起きていたのですか?」
言いながら、ドアを開ける。しかし、いるはずのドワーフの姿が見えない。
「……ドワーフさん?一体どこに…?」
「そろそろ帰ってくると思ったから」
突然後ろから声が聞こえ、セレスティアはまたもや驚いて振り返った。どうやらドアの後ろに立っていたらしく、その手には用心のためか
いつものナイフが握られていた。
「わざわざ、起きていてくれたんですか。ありがとうございます」
「別に」
セレスティアが鍵を掛けて中に入ると、その後につく形でドワーフもベッドに戻る。
「あ、それとドワーフさん、いただいた神秘の水は使い切ってしまいました。もし必要であれば、後ほど…」
「ちゃんと利子付けて返して」
「……わ、わかりました」
セレスティアもベッドに座ると、ペットに枕を譲ってやる。その上で丸くなったのを確認すると、ドワーフの方に視線を移し、
その顔をじっと見つめた。
「……何」
「いえ、その……少し、言いたいことと言いますか……お伝えしたいことがありまして」
「何?」
急かされるように重ねて尋ねられ、セレスティアは少し焦った。しかし、ドワーフにしては珍しく黙って話を聞いてくれそうだったため、
一度深呼吸をしてからゆっくりと口を開いた。
「わたくしは……あなたが、あなたのことが、好きです」
「………」
ドワーフの表情は変わらず、ただじっとセレスティアの顔を見つめている。
「もっと言うなら、愛しています」
「ふぅん」
とてつもなくそっけない返事だったが、少なくともドワーフが不快感を持っている様子はなかった。
「……で、終わり?」
「え?あ……え、ええ、まあ、はい」
「ふぅん」
再びそっけなく言って、ドワーフは視線を落とした。普段はしない仕草に、一体どうしたのかと思っていると、ドワーフは再び顔を上げて
セレスティアを見つめた。
312/10 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:47:49.76 ID:3N3jjeYK
「じゃあセックスするの嫌じゃないよね?」
「え!?え、ええ、それはまあ…」
「じゃあしよ。最近耳とか背中も気持ちよくなってきたし、これ好き」
「あの、明日は大切な…」
「いいから。セレスティアさんだって気持ちいいんでしょ?」
そう言い、両手を前に出して抱くのをせがむように手招きする。もうこうなっては拒否などできるわけもなく、セレスティアはベッドから
立ち上がるとドワーフの前に立ち、その腕を優しく撫でた。
撫でる手が手元に来た瞬間、ドワーフはセレスティアの手を掴み、グッと引っ張って隣に座らせる。
「え?あの、わたくしのベッドに来るのでは…?」
「いいでしょ、別に」
言いながら、ドワーフは制服をはだけると、セレスティアの手を取って自分の胸へと押し付けた。
「ここ、して」
ドワーフが腕から手を放すと、セレスティアはゆっくりと胸を揉みしだく。
初めてした頃に比べると、胸はさらに硬くなった。しかし最近は少し大きくなった感じもあり、力を入れればしっかりと沈み込むような
感触がある。円を描くようにゆっくりと手を動かすと、ドワーフは熱い吐息を漏らした。
「はうんっ……く……あふっ…!」
後ろに右手をついて体を支えながら、ドワーフは与えられる快感に身を任せている。普段と違い、セレスティアの手の動きに素直な反応を
する彼女の姿は、見ていて可愛らしく映る。
やんわりと全体を揉みつつ、指の間で乳首を挟む。
「んんっ!?そ、それっ……好きぃ…!」
ドワーフの体がビクッと震え、同時に大きく息を吐く。挟んだまま手を大きく動かし、刺激に慣れたところで手を離し、乳首を摘む。
「あんっ!やはぁ……気持ち、いい…」
初めてしたときはほとんど無反応だったドワーフだが、体を重ねるごとに未知の刺激を快感として感じるようになっていた。
尻尾が無意識に揺れ始め、表情は快感にうっとりと蕩けている。そんな彼女を眺めながら、セレスティアは完全にベッドの上に乗り、
その体を軽く抱き寄せる。
一瞬、ドワーフの手がナイフに伸びかかる。しかしすぐに思い直したらしく、その手を下げた。
毛を掻き分け、小さな乳首を口に含む。ドワーフの呼吸が震え、同時に小さな嬌声が上がる。
「んくっ……セレスティアさん……それ、いい……も、もうちょっと強くぅ…!」
強く吸ったまま、ゆっくりと顔を離す。チュッと音を立てて乳首が解放されると、ドワーフの体がビクンと震える。
「あうっ!そ、それも好き……でも、もっと舐めたりして…」
「ええ、わかりました」
優しく答え、今度は反対側の乳首を口に含む。それは予想していなかったようで、ドワーフは驚いたように体を震わせた。
「んあっ!?い、いきなり……や、やめないで…!やめちゃダメ…!」
甘えるようなドワーフの声に、セレスティアは子供のように吸いついて応える。強く吸ったまま舌先で転がすように乳首をつつくと、
ドワーフは再び甘い嬌声をあげる。
「いいよっ……気持ちいいっ……もっと、もっとしてぇ…!」
周囲をなぞるように舌を動かし、時折先端をつつく。素直な反応をするドワーフを観察しつつ、セレスティアは動きを変えていく。
323/10 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:48:56.86 ID:3N3jjeYK
焦らすように同じ動きを続け、ドワーフが不満げに鼻を鳴らすと、舌全体を使って舐め上げる。思わずドワーフが体を引こうとすると、
セレスティアはすぐに抱き寄せ、それをさせない。
「ちょ、ちょっ……あんっ!お、押さえないでよ……くっ……気持ちいいけど、手は放してっ…!」
「ん……ああ、すみません。つい夢中に…」
怒らせるとどうなるかわからないため、セレスティアは大人しく手を放す。しかし自由を奪われるのが嫌だっただけらしく、ドワーフは
解放されるとむしろ自分から胸を押し付けるように突き出した。
それに応えるように、思いっきり吸い上げる。途端に、ドワーフは大きな嬌声をあげた。
「んあう!そ、それ強いっ…!」
吸ったせいもあり、すっかり尖りきった乳首を、軽く噛んでみる。小さな悲鳴と共に、ドワーフは僅かに顔をしかめた。
「あくっ……い、痛いのはっ……あ、でもそれっ……それ、気持ちいい…!」
乳首を噛んだまま、舌の腹で舐め上げる。どうやらそれは気に入ったらしく、頭を押しやろうとしていた手から力が抜けていき、
止まっていた尻尾も再びパタパタと動き始めた。
空いている手を、もう片方の膨らみに伸ばす。そちらの手が触れると、ドワーフはビクッとして体を引いた。それでも口と手は離さず、
舌での刺激を続けながら大きくゆっくりと手を動かす。尻尾の動きがが止まり、代わりにピクン、ピクンと震えるように動き、そこで
ドワーフがセレスティアの頭を押しのけた。
「も、もういいっ!それ以上はっ……ふあっ……それ以上は、危ないから…!」
「そうですか?では、胸はこのぐらいにしておきましょうか」
言いながら、胸に触れていた手を耳へと動かす。そこに触れると、ドワーフは耳をパタッと動かす。
「んっ…!」
軽く背中を反らせるようにして、ドワーフは小さく喘ぐ。根元から先端へと指を滑らせ、全体を優しく撫でつけ、不意に耳孔へと動かす。
少しくすぐったかったらしく、耳がパタパタと動き、ドワーフは首を傾げるようにして肩と頬でその手を押さえる。
「くぅんっ……そっちはダメ」
「くすぐったいですか?」
「うん、中の方はちょっと……ふぅ、んっ…!」
胸より反応が薄いとはいえ、刺激としてはちょうどいい強さらしく、ドワーフの尻尾はパタパタと動き続けている。
耳の裏を撫で、そのまま根元の表側へと指を動かす。うっとりと目を細めるドワーフに、セレスティアはついつい抱きしめたい衝動に
駆られる。が、ナイフがものを言う可能性があるため、辛うじてそれを思いとどまる。
代わりに、耳朶を軽く持ち上げ、それを唇で咥えるように挟む。
「んんっ!?ん、口……それ、結構好き……んくっ!」
そのまま唇で挟みつつ、耳朶に舌を這わせる。ドワーフは熱い息を吐き、耳がピクリと動く。軽く歯を立ててみると、ドワーフは僅かに
唇を尖らせてセレスティアを見つめる。
「ちょっ、セレスティアさっ……んっ!痛いのは……噛むのはダメだって…!」
「や、すみません。少し強い刺激でも気持ちいいかと思ったので」
口に入った抜け毛をさりげなく出しつつ、セレスティアは弁解する。ドワーフは特に怒っていたわけではないらしく、そんなに表情は
変わっていない。
噛んだことを詫びるように、セレスティアはその部分を丁寧に舐める。再びドワーフは目を細め、うっとりとその快感に浸る。
334/10 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:49:54.69 ID:3N3jjeYK
体を寄せ、肩に手を置く。ドワーフが何もしないのを確認すると、セレスティアはそのまま背中へと滑らせ、そして尻尾に触れた。
「あうっ!ちょっ……尻尾?」
「ダメですか?」
「ん〜……そこはあんまり、よくわからない」
「ではせっかくです、試してみましょう」
そっと、毛並みに沿って尻尾を撫でる。プルプルと微かな震えが手を伝わり、尻尾の裏側を撫でた瞬間、尻尾が逃げるようにばさりと
動いた。
「んああ!う、裏側ダメっ!根元の裏は、つ、強すぎる…!」
「上側は平気ですか?」
「ん……そっちは好き。あ、耳もやめないで……んっ!」
片手で尻尾を撫で、口では耳を愛撫する。その刺激一つ一つに、ドワーフは小さな鳴き声のような喘ぎで応え、時折体がピクンと震える。
ダメとは言われたものの、反応が良かったこともあり、セレスティアはたまに尻尾の付け根を撫でる。ドワーフが嫌がるように体を
よじると、すぐに耳を優しく舐めてごまかす。
「ふぅ、んっ……はうっ…!ちょ、ちょっとセレスティアさん…!尻尾っ……尻尾、根元、わざとやってない…?」
「気持ちよさそうだったのでつい……どうしてもダメですか?」
「ん……それぐらいなら、んっ…!いい、かも…」
快感には貪欲であり、自分に正直でもあるため、何だかんだでドワーフは色々とされるのが好きである。セレスティアとしても、自身の
手で快感を与えられるというのは楽しいものであり、また嬉しくもある。
「ドワーフさん、もう少しこっちに…」
「ん、わかった」
いつまでも端っこに座られていると、何かとやりにくい。ドワーフがベッドの中央に座ると、セレスティアは彼女を抱き寄せるようにして
尻尾を撫でた。
「あっ、くっ!や、やっぱり裏側っ……ふあうぅ!!」
不意打ちで、逆の手をぴったりと閉じた秘裂に伸ばす。触れればそこは既にべっとりと濡れており、褐色の体毛の間で白く糸を引いている。
愛液を指に絡め、表面を撫でる。ドワーフの体がビクビクと震え、表情は一見苦しげなものに変わる。
「あうっ!う、くうっ!そこっ……そこ、気持ちいいよぉ…!」
さらなる快感を求め、ドワーフは前後に腰を振り始める。セレスティアは割れ目に指を挟みこませるようにし、軽く曲げてやると、
ドワーフの体が驚いたようにビクンと跳ねる。
「ふあっ!そ、それいいっ……それ、好きぃ…!」
中に入れたいのか、ドワーフは指の曲がった部分に腰を動かしてくる。するとセレスティアは指を伸ばし、代わりに秘裂全体を
押し上げるように力を入れた。細い部分に強い力がかかり、下腹部の奥に響くような刺激に、ドワーフは甘い声をあげる。
「あぅ、んんっ!いい、いいよぉ!んう……ふぁ、あっ……気持ちいいよぉ…!」
「どうです?もう少し続けますか?」
セレスティアが尋ねると、ドワーフは首を振った。
「ううん……あふっ……も、もうセレスティアさんの入れて…!」
「ですが、これでも随分気持ちよさそうですよ?」
そう言い、セレスティアは焦らすように指での愛撫を続け、さらに尻尾の裏を優しく撫でた。途端にドワーフは悲鳴じみた声をあげ、
直後にセレスティアを少し不機嫌そうに睨んだ。
「も、もういいって……ひゃうんっ!ちょ、セレスティアさっ……あぅん!」
何とか睨みつつも快感に翻弄されるドワーフを、セレスティアは微笑ましいような気持ちで見つめていた。しかしだんだんとその顔が
不機嫌そうになってきたため、慌てて両手を放す。
345/10 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:50:45.61 ID:3N3jjeYK
「もういいって言ってるのに、さっきから」
「すみません、つい夢中に……あまりお気に召しませんか?」
「だから、もう入れたいって言ってるの」
言いながら、ドワーフはセレスティアを押し倒し、制服を剥ぎ取りにかかる。しかし彼女に任せていては翼をもぎ取られかねないため、
セレスティアは自分から上着を脱ぎ、ズボンを下ろした。
そこに、ドワーフがのしかかる。その顔は期待に笑みすら浮かび、呼吸はひどく荒くなっている。
ドワーフは自分の秘裂に手をやり、両手で広げる。くちゅっと小さな音が鳴り、広げられた隙間に愛液が糸を引いた。すっかり硬くなった
セレスティアのモノに狙いを定めると、ドワーフはゆっくりと腰を下ろす。
広げた秘裂が亀頭に被さり、小さな水音が鳴る。さらに腰を落とすと、湿った音を立てながら割れ目が押し広げられ、同時にセレスティアの
モノが飲み込まれていく。そこから伝わる快感に、二人は同時に呻き声を漏らした。
「くっ…!」
「んあっ!は、入ってくるぅ…!入ってるよぉ…!」
膣内が押し広げられ、セレスティアのモノが粘液に包まれていく。体格がかなり違うため、三分の二ほど入ったところで奥に当たるような
感覚が伝わるが、ドワーフはさらに体重を掛け、無理矢理彼のモノを根元まで飲みこんだ。自重で内臓を押し上げられるような圧迫感に、
ドワーフは若干の苦しさと、大きな快感を覚える。
「あは、あっ……中、いっぱい…!」
「ド、ドワーフ、さん…!」
「んっ……セレスティアさん、動くからね…!」
ゆっくりと腰を持ち上げる。雁首が肉壁を擦り、愛液を擦り取っていく。抜ける直前まで腰を上げると、それはセレスティアのモノを伝って
流れ落ちる。
直後、一気に腰を落とす。ぐちゅっと大きな水音が響き、同時に二人の声が聞こえる。
「あううっ!」
「うあっ!」
不快ではない不思議な鈍痛と、背筋がぞくぞくするような快感。それを求め、ドワーフは根元まで受け入れたまま、前後に腰を
動かし始めた。
「んっ!あっ!これぇ……これも好きぃ…!」
結合部に溢れた愛液が水音を響かせ、二人の太股に糸を引く。ドワーフの体はすっかり汗ばみ、体毛が数本ずつまとまってしまっている。
彼女の中もひどく熱く、それは大きな快感となってセレスティアに伝わっていた。その快感に突き動かされ、セレスティアが時折腰を
突き上げると、ドワーフは小さく可愛らしい悲鳴を上げる。
「きゃうっ!あっ!セレスっ……ティア、さんっ…!あっ!そ、そんなに動かしちゃ……あんっ!」
不意の、自身で制御できない刺激を多少は不快に思いつつも、予測できないが故の快感が強いらしく、口調こそ不満げではあったものの
ドワーフはますます激しく腰を動かす。
前後左右に腰を動かし、気紛れに締めつけ、入っているモノの形を確かめる。そのまま腰を持ち上げ、雁首が膣内を引っ掻きながら
抜けていくのを感じ、完全に抜けてしまう前に再び腰を落とす。ギシ、とベッドが軋み、腹の中が押し上げられる。その感覚を楽しみつつ、
ドワーフはだんだんと動きを強めていく。
「くっ、う……ドワーフ、さん…!」
「いいよっ……セレスティアさん、いいよぉ!」
限界が近くなってきたのか、ドワーフの吐息は荒く熱くなり、結合部から愛液がじわりと滲む。それこそ盛りの付いた犬のように激しく
腰を振り、ハアハアと息を吐くドワーフの腰に、突然セレスティアが腕を回した。
356/10 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:51:31.56 ID:3N3jjeYK
「んんっ……ん…?セ、セレスティアさん、何…?」
「……ドワーフさん」
セレスティアは体を起こし、反対に体重をかける。ドワーフは慌てて抵抗しようとしたものの、まったく予想もしていなかったため、
あっさりと押し倒されてしまった。
「ちょっ……な、何のつもり?押さえな…」
「ドワーフさん、好きです」
ドワーフの小さな体を抱き締め、その目を正面から見つめつつ、セレスティアがはっきりと言う。
「すみません、ドワーフさんにとっては気に入らないかもしれませんが……ドワーフさん、わたくしは、あなたを思い切り愛したいんです」
「な、何が?どうやっ…」
言い切る前に、セレスティアが腰を動かした。途端に、ドワーフはビクッと体を震わせた。
「うあっ!?ちょ、ちょっと!勝手に動かなっ…!」
「すみません、ドワーフさん……今回だけ、許して下さい」
「やっ、ちょっ……あああっ!」
しっかりと腰を抱え込み、セレスティアが腰を打ち付ける。自身の意思と関係なく打ち込まれるモノの感覚は、ドワーフに若干の不快感と
大きな快感をもたらす。
「あっ、あっ、あっ!や、やめっ……んあっ!ま、待って!待ってぇ!」
ナイフを取ろうとしているのか、ドワーフの手がベッドを引っ掻く。しかし目的の物は手の届かないところにあり、すぐに探し出すことを
諦め、代わりに快感を堪えるようにシーツを強く握った。
「はあ、はあ…!ドワーフさん、好きですっ…!」
セレスティアが打ち付ける度、腰と腰がぶつかりあう音と、濡れそぼった秘裂に突き入れる水音が響く。腰を引けば結合部から愛液が
伝い落ち、突き入れれば溢れかかっていた愛液が飛び散る。その合間に、セレスティアの荒い息遣いとドワーフの悲鳴じみた嬌声が
辺りに響く。
「うっ!あっ!やあっ!セレっ、ス、ティアっ……さんっ!や、やめっ…!もうダメぇ!」
「ドワーフさん……ドワーフさんっ…!」
自身の意思に反して受ける刺激。粘膜を強く擦られ、子宮を叩かれるように突き上げられる感覚。それは意のままにならない不快感と、
今までに感じたこともないような充足感があった。
「や、やだぁ!セレスティアさん、もうやめてぇ!ふわって、ふわってなるよぉ!」
必死に腕を突っ張るも、体格が違いすぎるせいで完全に押し返すことができず、セレスティアは構わず腰を振る。
また彼としても、すっかり熱くぬめったドワーフの膣内は気持ちよく、また初めて自分の意のままに動き、快感を貪る感覚は
中断することなど考えられなかった。
「ドワーフさん…!」
「やぁ!セレっ……んんんっ!」
セレスティアは突っ張ってくる腕の間に体を滑り込ませ、右手で背中を、左手で首を掻き抱き、強引に唇を重ねた。
初めての行為に、ドワーフはどうしていいかわからず、目を見開いて固まっている。そんな彼女に構わず、口内に舌をねじ込む。
「んんっ!?んふっ……んん、んううーっ!!」
驚いたドワーフは必死に舌で押し返そうとするが、セレスティアはそれに舌を絡めるようにし、彼女の抵抗を封じてしまう。
367/10 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:52:19.14 ID:3N3jjeYK
唇を吸い、舌を絡め、子宮を強く突き上げる。その度にドワーフは彼のモノをぎゅっと締めつけ、重ねた口から熱い吐息が漏れる。
抱き寄せた体から体温が伝わり、絡めた舌には互いの唾液が混じる。荒い息遣いとベッドの軋む音が部屋に響き、汗の匂いが強く感じられる。
「んんっ!んっ!んうぅ!!んっ!んんんーっ!!」
全身で繋がり、全身で相手を感じる感覚は、二人にとって大きな快感となっていた。既に限界の近かったドワーフはくぐもった声をあげ、
必死にセレスティアの動きを止めようとするが、もはや無駄な抵抗だった。
「んっ!!んぐっ!!んっ、んんんんんんっ!!!」
そして、ドワーフの中がいっそう熱くなり、同時にじわりと愛液が滲み出すのを感じた。直後、抱きしめたドワーフの体が弓なりに反り、
腕と膣内とがセレスティアを強く締め付けた。
震えるように膣内が蠢動し、先端と根元が特に強く締め付けられる。それが大きな快感となり、セレスティアはよりそれを感じようと
腰を叩きつける。途端に、ドワーフはたまらず唇を離した。
「ぶはっ!!も、もうやめてぇぇぇ!!ふわって、まっしろになってるのぉ!!わかんないっ!!やだっ、わかんないっ、やめてっ、
もうとめてぇぇ!!」
「ぐうぅ…!ドワーフさん、もう少しっ……もう少し、我慢してくださいっ…!」
とめどなく愛液が溢れるほどになって、なお強く締め付ける膣内の感覚に、セレスティアもかなり追い込まれていた。
「はっ、はやくぅ!!はやくだしてっ!!おねがいだから、はやくだしてぇぇ!!」
悲鳴と共に、膣内が震えながら締めつけてくる。射精をねだる彼女の言葉とその動きに、とうとうセレスティアも限界が来た。
「くうっ……ドワーフさん、もう出ます!」
一際強く打ちつけ、先端を子宮口に擦り付けるようにして精を放つ。その刺激に、責められ続けていたドワーフの体がガクガクと震えた。
「あっ……あ、がっ……あっ……あぐっ…」
全身を強張らせ、微かに痙攣するドワーフ。セレスティアはその体を抱き締め、何度か子宮口を擦りつつ、彼女の中に一滴残らず
精液を注ぎ込んだ。
そこで一息つき、ようやく冷静さを取り戻すと、セレスティアは焦点の合わないドワーフに気付き、慌てて自身のモノを引き抜いた。
「あぐっ!?」
「す、すみませんドワーフさん!大丈夫ですか!?」
勢いよく抜かれたため、それがまた強い刺激となってドワーフを襲う。それが消えると、奥からどろりと精液が溢れだし、ドワーフの太股を
伝って流れ落ちていく。
しばらくの間、ドワーフはただただ荒い息をつき、時折足を震わせるだけだった。やがて、少しずつ呼吸が落ち着いてくると、いつもからは
想像もできないような弱々しい声を出した。
「はぁ……はぁ……はぁ…………い……いまの、なにぃ…?」
達したのが初めてだったドワーフは、それが理解できないらしく、間延びした声でセレスティアに尋ねた。
「達してしまったようでしたね……その、気持ちよかったですか?」
「ん……も、あたままっしろで……あっ、も、もういいからね!?もういい!今日はもう十分だからね!?」
ハッとしたように、ドワーフはやや怯えた調子でまくしたてた。そんな彼女に、セレスティアは少し疲れた笑みを返す。
「わたくしも、もう一度する元気はありませんよ。それに、明日のこともありますし、今日はもう寝ましょうか」
言いながらハンカチを渡してやると、ドワーフは溢れた精液と愛液の入り混じったものをのろのろと拭う。どうやらまだ敏感に
なっているらしく、時々ビクッと体を震わせているのが可愛らしかった。
378/10 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:53:43.23 ID:3N3jjeYK
それを終えると、ドワーフは少し楽しげな表情で声を掛けてきた。
「ね、セレスティアさん。羽根布団」
それに対し、セレスティアは心底困った表情を向けた。
「そ、それは……すみませんが、ご容赦願います」
「いいからしてよ」
「その、それをやると羽根が滅茶苦茶になってしまうので……明日の探索に差し支えが出てしまうので、どうかご容赦を」
すると、ドワーフの顔が見る間に不機嫌そうになっていった。これはまずいと思った瞬間、ドワーフはプイッと背中を向けた。
「じゃあいい!」
ここに来て機嫌を損ねてしまったと、セレスティアが重い気分でベッドに戻ろうとすると、ドワーフが肩越しに振り向いた。
「……枕」
「え?枕……ですか?」
枕が欲しいのかと、セレスティアは彼女の枕を渡してやった。しかしドワーフは、渡された枕を即座に放り投げた。
「違う!」
「ち、違うのですか?では、何を…?」
「……後ろ寝て!で、腕!」
「腕…?」
言われたとおり後ろに寝転び右腕を出すと、ドワーフはそれを強引に引っ張り、自分の頭を乗せた。
「……左手!」
「こ……こうですか?」
「違う!」
肩に触れた手を払い落し、ドワーフは代わりに自分の脇腹を抱かせるように乗せ直した。
「あと足、お尻の方に……うん、そう、そこ」
太股をドワーフの尻にぴったりとくっつけると、ドワーフは尻尾をセレスティアの腰にぱさっと乗せた。
背中から全身で包みこまれるような体勢になると、ようやくドワーフは満足したらしく、大きく息をついた。
「じゃあセレスティアさん、おやすみ」
「え?あ、ええ、おやすみなさい…」
そう言って目を瞑り、一分と経たぬうちに、ドワーフの寝息が部屋に響く。それを見ながら、セレスティアは内心ひどく驚いていた。
まず、一緒のベッドで眠るのは今回が初であり、しかもドワーフのベッドに来たのも初めてだった。その上、ドワーフは背中を完全に
セレスティアに預け、その腕の中で寝ているのだ。
「……おやすみなさい、ドワーフさん」
優しく声を掛け、セレスティアも目を瞑る。ようやく手に入れた絶対の信頼と、腕の中の小さな温もり。それを永遠に守っていこうと
心に決めながら、静かな気持ちで眠りにつくのだった。
389/10 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:54:33.38 ID:3N3jjeYK
翌日、一行は最後の迷宮の前に集まっていた。その傍らには、ヒューマン達のパーティが立っている。
「それじゃ、最後は君達に任せるからね。言っとくけど、負けたら承知しないよ?」
「大丈夫さ、お嬢さん。お嬢さんにも、そこの鉄塊にも、手間は掛けさせねえよ」
本来は、ヒューマン達もラプシヌ討伐に向かおうとしていた。しかしディアボロスの、自分達は後詰として動くべきだという意見に、
方針を変えることとなったのだ。
そのディアボロスは、セレスティアをぼんやりと眺めていた。やがて、彼等がいよいよ迷宮に入ろうとしたとき、彼女は意を決したように
口を開いた。
「あ、あのっ……セレスティアさん!」
「はい、何でしょう?」
昨夜のことが嘘のように、まったくいつも通りのセレスティア。そこに様々な感情を覚えつつ、ディアボロスは彼に駆け寄ると頭を下げた。
「昨日は……本当に、ごめんなさい」
セレスティアはしばらくそれを眺めていたが、やがて優しげな笑みを浮かべた。
「……神があなたをお許しになったのは、まさしくそのドがつく素直さ故でしょうね。わたくしは、怒ってなどいませんよ」
そんな彼を見て、ディアボロスはようやくかねてからの疑問の答えを見出した。
なぜ、堕天使でありながらも彼の翼が純白を保っているのか。
セレスティアの心が悪に染まる時、その翼が黒く染まる。カーチャ先生という例外もいるにはいるが、性的なものを軽々しく扱うのが
『悪』だと思うのであれば、彼女とて例外ではない。
それに対し、この堕天使は牧師というサブ学科を見てもわかる通り、自身を正義だと信じ込んでいる。たとえどんな悪行を為そうと、
彼がそれを悪だと思うことはない。そして、翼は純白を保ち続ける。
去って行く彼の背中が、ディアボロスにはひどく遠く見えた。思わず涙が溢れかけたが、ディアボロスはすぐにそれを腕で拭った。
「……おい、どうした?大丈夫か?」
「え?あ、うん……別に、何でもないよ、お兄ちゃん」
「あいあい、お兄ちゃんはデリカシーがないですねー。恩人とのお別れぐらい、水差さずにいられないんですかねー」
「う、うるせーなー!オ、オレはただ、こいつが心配でだな…!」
そんな背後の喧騒を聞きつつ、ドワーフがぼそりと尋ねた。
「セレスティアさん、あの女殺さなくていいの?」
「ええ、いいのですよ。神がお許しになった者を、わたくしが殺せる道理はありません」
「ふーん。でもセレスティアさんが殺せなくても、私なら殺せると思うけど」
「いえ、いいんです。それに、今は戦力が欲しいところです。貴重な戦力を、欠かすわけにはいきませんよ」
仲良く、穏やかに、物騒な会話を繰り広げるドワーフとセレスティア。それを見ながら、エルフがバハムーンに耳打ちした。
「そういえばさ……ドワーフって、だんだんセレスティアに対して他人行儀になってないかい?」
「ん、そうか?どの辺がだ?」
「だってさ、初めの頃は呼び捨てだったのに、今はなんでかずっと『さん』付けで呼んでるし…」
3910/10 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:55:25.00 ID:3N3jjeYK
それを聞くと、バハムーンはニヤリと笑った。
「あ〜、それは違う。あいつはな、セレスティアを『さん』って付けたいほど大切だと思ってんだよ」
「そ、そうなんだ。ぼくからすると、逆に距離感じるけどねえ…」
「思うに、あいつはこれまで大切だって思える奴なんていなかったんだろ。それが急に出てきたから、扱いに困って、とりあえず敬称を
付けて『お前は大切だ』って意思表示してるんだろうよ。人間関係に関しちゃ、不器用の極みだからなあ」
「君は逆に、よく見てるよねえ」
緊張感というもののまったくない一行。しかし言い換えれば、それは世界の命運のかかった戦いを前にして平常心を失っていないと
いうことであり、それも彼等の強さの一つであると言えた。
「また濃厚魔獣背脂ラーメン食べてくればよかった」
「でしたら、この戦いを終えたら、存分に食べに行きましょう」
「お、うまそうな話してんじゃねえか。俺も食いたくなってきたぜ」
「え〜、フェアあれ嫌〜い。こってりしすぎなんだもーん」
「ぼくも、ちょっと苦手だなあ。君達、よく食べられるよねえ」
「おいしいにはおいしいけど、僕も一杯で十分だ」
共に学ぶ友のため、世界のため、未来のため、自分のため。
そして何より、モンスターの屍の山を築こうと、他人の願いを犠牲にしようと、自身の命を賭けようと、それでも叶えたい夢がある。
それぞれの思いを胸に、彼等は最後の戦いへと身を投じていった。

いつしか、モーディアルの新入生六人を、そう呼ぶ者達が出てきていた。そしてここから少し後、彼等は世界からそう呼ばれるようになる。
性格に問題があろうと、素行が悪かろうと、それでも事実が消えることはない。
類い稀な力を持ち、世界を救った者達。その功績を記憶に留め、また称えるため、人々は彼等をこう呼ぶ。
邪悪なるものの野望を打ち砕き、世界を救った者達、すなわち『英雄』と。
40 ◆BEO9EFkUEQ :2012/09/25(火) 23:56:51.11 ID:3N3jjeYK
以上、投下終了
次回でとりあえずの区切りをつけたいと思います
エロ分は入らないですが、そこはご容赦願います…

それではこの辺で
41名無しさん@ピンキー:2012/09/26(水) 03:21:07.95 ID:lbQWvesd
乙です

何故かドワーフの変化が死亡フラグに見えて焦った
が、落ちで安心したようなトラウマなような

ラストも楽しみにしてます
42名無しさん@ピンキー:2012/09/27(木) 00:32:23.38 ID:LJX/fas/
ドワ子がかわいかった(小並感

個人的に一番注目してた二人だから、一つの結末が見れてちょっとホッとした。
43名無しさん@ピンキー:2012/09/28(金) 20:08:26.12 ID:552MmJbl
GJです!
イきたがらないドワーフにセレスティアがヤンデレ発動させるかと思いきや
ものすごいラブくてよい意味で裏切られました。

って次で終わりのエロなしって今回まだドワーフがおしりいじめられてないですよ!?
44 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/02(火) 23:55:41.42 ID:tptac6GI
1のようにおしりをいじめられないドワ子もいるのです
というかこの子にそんなことしたら殺される

そんなわけで最終章投下します
今回は残念ながらエロなしになってしまいますがご容赦を
楽しんでいただければ幸いです
451/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/02(火) 23:56:34.40 ID:tptac6GI
世界の命運をかけた激戦が終わって二週間が経過した。
今ではどの学園も平穏を取り戻し、だんだんといつもの日常へと戻ってきている。
そんなモーディアルの昼過ぎ。授業のある生徒が学食から出ていき、空席が目立つ時間になってきた頃、カツンと杖をつく音が聞こえた。
その音に、中にいた三人の生徒が振り返った。
「やあ、セレスティア。だいぶ良くなったみたいだね」
「ええ。いつまでも、寝ているわけにもいきませんからね」
まだ右の翼に包帯が巻かれ、右手には杖を持っているものの、セレスティアは比較的しっかりした足取りで歩いている。
「エルフさんこそ、大丈夫なのですか?まだ松葉杖を使っているようですが…」
「もう無くてもだいぶ歩けるんだけどね、一応ってところ」
「君達は戦闘でも痛手受けてたから、しょうがない」
「………」
それに比べ、フェルパーはすっかり元の調子に戻っているようであり、肩のペットに餌をやっている。久しぶりに三匹集まったためか、
ペット達はそれぞれの定位置を離れると、テーブルの下に潜り込んで顔を突き合わせ、何事かを話しているらしかった。
「それで、ドワーフの調子は?まだよくない?」
「そうですね……本調子には、まだまだ遠そうです」
そんな会話を、フェアリーは硬い表情で聞いていた。彼女も比較的元気ではあるが、顔色はすこぶる悪い。
「ま、しょうがないか……変身解くの、体力使ったもんねえ…」
彼等の惨状は、戦闘が直接の原因ではない。確かに激戦ではあったのだが、問題はその後だった。
ラプシヌは野望が叶わぬと見ると、全ての夢を道連れに滅びようとした。それを止めるためには、天空の宝珠の力を全て使うしか
手はなかった。それはすなわち、自分達の夢を諦めることを意味していた。
ここでもまた、ドワーフは状況に構わず願いを叶えようとしていたが、そこはセレスティアが必死の説得に当たった。
「世界がどうなろうと、私には関係ない」
「ですが、世界そのものが滅びてしまうのなら、わたくし達個人の願いを叶えたところで、まったくの無意味です。それに、個人の願いを
受け入れた上で、世界を救うような力はありません。ドワーフさん……気持ちはわかります。ですが、どうか、わかってください」
そう言うセレスティア自身、世界と引き換えにしてでも叶えたい夢は持っていた。しかし実際にそれを天秤に掛けられると、
世界を取らざるを得なかった。
「……まあ、私も死にたくはないし。しょうがないか」
「話はまとまったか?じゃあ、エルフ。お前が一番まともに言えそうだ。俺達は、お前の言葉に従う。宝珠に、願いを掛けてくれ」
バハムーンは宝珠に手をかざし、目を瞑った。それに倣い、他の仲間も同じように意識を集中した。
次の言葉に、全ての想いを込める。そして、エルフが口を開こうとした時だった。
「不死身の怪物になって世界を支配したーい!!」
まったく突然に、フェアリーがそう叫んだ。極めて間の悪いことに、仲間達はエルフの言葉を心に刻み込むため、何も考えずにただ
耳にだけ全神経を集中させていた。そこに聞こえた言葉を、彼等は心の中で復唱し、その具体的な姿を思い描いてしまった。
「ちょっ!?てめっ……ぐぅ、あああああ!!」
「な、なんてことをっ……ぐうううう!!」
「えっ!?嘘っ!?フェア、ただっ……う、うああああっ!!」
周囲で騒ぐ生徒の声など耳にも入らなかった。心は黒く染まっていき、元仲間達ですら獲物としか認識できなくなっていく。
しかし、一行は膨れ上がる悪の心を押さえつけ、強引に元の姿へと戻ることに成功した。
それぞれ戻った理由はまったく違い、おまけに個人的な都合で戻った者が多かったのだが、そこは全員が何となく感じ取っており、お互いに
その時のことを語るのは何となくタブー扱いとなっていた。
462/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/02(火) 23:57:15.60 ID:tptac6GI
ただでさえ激戦で消耗したところに、この怪物変異未遂事件である。強引な変身解除は肉体にも精神にも多大なダメージを与え、その結果
セレスティアとエルフがしばらく寝たきりになり、フェアリーは四日ほど目を覚まさず、ドワーフもそれ以降調子を崩している。
元々体力のあったバハムーンと、激戦でもほぼ無傷だったフェルパーは他の仲間ほど深刻な被害は被っておらず、その後の報告などは
主に二人が担当していた。それからフェアリーが目を覚まし、エルフが出歩けるようになり、そしてようやくセレスティアが外出できる
ようになった。
「ところで、フェアリーさん」
「ひっ!?な、何!?」
セレスティアが声をかけると、フェアリーはビクンと全身を震わせた。
「その後バハムーンさんとは、お会いしましたか?」
「………」
フェアリーはぶんぶんと首を振る。どうやら、さすがにとんでもないことをしでかしてしまった自覚はあるらしく、バハムーンからは
逃げ回っているようだった。エルフとフェルパーも、今回ばかりはバハムーンに殺されてしまうかもしれないと思っており、彼に
引き渡すのをやめているらしかった。
「そうですか……謝りに行く気も、起こらないのですか?」
「だ、だ、だって……あ、謝っても、許してくれないかもしれないし……こ、怖いんだもん〜…」
「そうですか。そういうことでしたら…」
一瞬、セレスティアは言葉を切った。そして小さく息をついたと思った瞬間、突然学食のドアが勢い良く開けられ、バハムーンが
飛び込んできた。
「ひいぃっ!?バ、バハ!?」
「……逃げ回ってくれたなあ、お嬢ちゃん?」
「い、いや、いやぁ…!セ、セレ、助けてぇ…!」
真っ青になって震え、セレスティアにしがみつくフェアリー。そんな彼女を優しげな笑顔で掴むと、セレスティアはそのままバハムーンの
前へと突き出した。
「え、えええぇぇ!?ななななんでぇ!?やだっ、助けてよぉ!!」
「さすがに今回ばかりは、神のお許しがあるかどうか、問うべきだと思うのですよ。では、バハムーンさん、よろしくお願いしますね」
「ああ、手間掛けさせて悪かったな」
フェアリーの引き渡しを終えると、バハムーンは彼女を脇に抱え、学食から大股で出ていった。
「た、助けてぇぇぇ!!もうしません!!もうしませんからぁ!!許して!!お願い助けて!!誰かぁぁぁ!!!」
フェアリーの泣き声が遠ざかっていき、やがて聞こえなくなると、セレスティアはホッと息をついた。
「セ、セレスティア……もしかして、バハムーンとグル…?」
「ええ。こちらに来る前に、いたら教えてくれと言われまして」
「君にしては、結構容赦ないね」
「反省こそしていたようですが、犯した過ちを償う気がないのですから、それは神に問わねばなりませんよ。もっとも、きっと彼女は
許されるのでしょうけどね」
楽しげに笑うと、セレスティアは昼食を取りに行った。その背中を追いかけてペットが飛んでいき、いつもの頭の上へと納まる。
それを見送ると、二人はフェアリーが残した料理に視線を送る。
「……プリンもらっていいかい?」
「じゃあ僕はハンバーグもらう。あと、ミールに付け合わせのブロッコリー」
「あ、じゃあフェネは……パセリ?変なの好きだねえ」
多少不安に思ったとはいえ、結果がどうなろうと自業自得である。既に二人の中で、フェアリーの心配など跡形もなく消えているのだった。
473/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/02(火) 23:58:10.53 ID:tptac6GI
冒険者学校の中で賑わう施設には、学食の他に保健室がある。あまりお世話になりたくない施設ではあるが、体が資本である冒険者にとって
保健室は重要な場所である。怪我や毒の治療、また健康診断や相談事、そして一部が授業をサボるため、といったように大抵は誰かしらが
利用している。
この時は珍しく利用している生徒がおらず、校医であるモミジは生徒からもらった天使のピザを頬張っていた。至福の表情で
プリシアナ名物を味わっていた彼女だが、不意にその耳がピクンと動き、続いて視線が扉の方へと注がれる。
直後、ガラリと扉が開かれ、それに寄りかかるようにして一人の生徒が入ってきた。
「んぐっ……大丈夫ですか!?」
「き、気持ち悪い……吐きそう…」
普段からは想像もつかないほど弱り切った声で、ドワーフは呟くように言う。慌てて袋を渡すと、ドワーフはそれを奪い取るように掴み、
即座に吐き始めた。
「うえっ…!う、おええっ……かはっ、はあ……はあ…」
「わふん、少しは落ち着きましたか?」
返された袋を受け取りつつ、モミジは彼女の背中をさすってやる。普段であればそれを打ち払うドワーフだが、まだ気持ち悪いようで
大人しくさすられている。
とりあえず椅子に座らせ、落ち着くまで待ってから、モミジは刺激しないよう静かな声で尋ねる。
「まだ体調すぐれないんですね、わふ〜ん。今どんな感じか、聞かせてくれますか?」
「……朝とか、食事後とか……変に気持ち悪い…。あと……う、うぷっ…!」
「大丈夫ですか?」
「……ピザ、匂い……う、ぐっ……それ、嫌……どっかやって…!」
「匂い、ですか?」
ピクッと、モミジの眉が動く。とりあえずピザを元通り箱にしまい、その他のお土産が山と積まっている棚に押し込むと、注意深く
ドワーフの様子を見てみた。
「……頭痛いとか、ありますか?」
「それはない…」
「そうですか、わふ〜ん。じゃあ、眠いとかはどうですか?」
「ん……最近起きられないし、起きても眠い」
少し気分がよくなってきたのか、ドワーフの声はだんだん元の調子に戻ってきている。
「他はどうですか?」
「あと、おしっこよく行くようになった。あとだるさ、ずっと続いてる」
この短い間に、五回唾液を呑み込んでいる。いよいよもって、疑いは確信へと変わりつつあった。
「……何か、最近特に食べたいものってありますか?」
「濃厚魔獣背脂ラーメン」
再び、確信が疑いへと格下げになった。
「おいしそうな響きですよね、わふ〜ん……はっ、いけないいけない!えーと、それじゃあどこか痛いとかありますか?」
「ん〜……今は別にないけど、昨日まで足の付け根辺りがちょっと痛かった」
多少予想外の答えもあったものの、恐らく間違いはないだろう。
「それじゃあ、確認のために最後の質問なんですけど…」
その質問の答えは、やはり予想通りのものであった。そこから導き出される答えを、モミジは彼女にはっきりと伝える。
保険医の宣告を、ドワーフは表情一つ変えずに聞いていた。そして聞き終えると、いかにも形式的な礼を一言言い、再び自室へと
帰って行った。その姿を、モミジはどことなく寂しげに見守っているのだった。
484/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/02(火) 23:58:47.45 ID:tptac6GI
セレスティアが食事から戻ると、ドワーフはぼんやりとベッドに腰掛けていた。いつも通りに挨拶をすると、彼女はそっけなく返事をする。
まだ体調もよくないのだろうと思い、魔法科学の勉強でもするかと教科書を取り出すと、不意にドワーフが声をかけた。
「セレスティアさん、話がある」
「おや、どうしました?」
随分珍しいなと思いつつ、セレスティアは教科書をしまって自分のベッドへと向かう。しかしドワーフが隣に座れと言うようにベッドを
ぽんぽんと叩いたので、それに従い彼女の隣に座る。
「………」
「……どうか、したのですか?」
優しく話を促すと、ドワーフは一つ息をついた。
「体調、あれからずっと悪いし、気持ち悪いから、保健室行った」
「そうなのですか。それで、何かわかったのですか?」
「妊娠してるって」
一瞬、その言葉の意味がわからず、セレスティアは返事ができなかった。
あまりにもさらっと告げられた重大な事実に、言葉の意味がわかったあともセレスティアの頭は状況が掴み切れていなかった。
「えっ……あ、え、そ、それはつまり、わたくしと、ドワーフさんの子が…?」
「それ以外、誰がいるの」
「あ、いえいえ、それはわかるのですが……そう、ですか。いえ、喜ばしいことですよ」
本心から思っているらしく、セレスティアはそう言って笑いかけたが、ドワーフの表情は変わらなかった。
「……うん。私もね、嫌じゃない。学校辞めるのも構わない。でも…」
無表情ではあったが、彼女の心情は大体読み取れるようになっている。いつになく深刻そうな口調に、セレスティアは黙って話を聞く。
「私ね、好きって感情がわからない」
「………」
「親父も、お袋も、一緒にいた子供も、今のパーティの仲間も、セレスティアさんにも、特別な感情持ったことなんてない。見ても、
一緒にいても、別に何も感じない。全員一緒。セレスティアさんは大事だと思うけど、でも好きって感情はないの」
好きではないと言われたことより、むしろ『親父』と『お袋』という言い方の意外さに、セレスティアは驚いていた。
495/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/02(火) 23:59:33.72 ID:tptac6GI
「今まで誰も、好きになんてなったことない。だからね……だ、だから……だからぁ…!」
不意に、ドワーフの目に涙が溢れた。
「も、もしっ……この子のこと、好きになれなかったらどうしよぉ〜…!」
涙はあとからあとから溢れ、頬を伝って毛に黒い筋を残し、固く握りしめた拳へと落ちていく。
「ひっく……わ、私のっ……ひっく……私と、セレスティアさんの子なのにぃ…!好きになれなかったらっ……どうしよぉ……ぐすっ……
そんなの、やだよぉ……ふええぇぇ…!」
まるで子供のように泣きじゃくるドワーフを、セレスティアは呆然と見つめていた。やがて、その顔に慈愛に満ちた笑みが浮かび、そっと
ドワーフの体を抱き寄せる。
「……そんなことには、なりませんよ」
子供をあやすように優しく背中を撫でながら、セレスティアは続ける。
「生まれる前の子を、これほど気遣えるあなたが、どうして好きになれないことがありましょう?あなたは既に、立派な母親ですよ。
それに……もしも、万が一にそんなことがあったとしても、心配はいりません。わたくしは、あなたの分まで、その子を愛しますよ」
ドワーフはしばらくの間、セレスティアの胸の中で泣いていた。やがて少しずつ落ち着きを取り戻し、たまにしゃくりあげる程度になると、
自分からそっと体を離す。
「くすん……セレスティアさん、キスして…」
セレスティアはそれに応え、ドワーフの首を掻き抱くと、そっと唇を重ねた。
軽く吸ってから唇を離す。尻尾が二回、パタパタと振れて止まる。同時に少しだけ、ドワーフの表情は明るくなった。
「……ありがと」
慣れない感じで笑いかけるドワーフ。それに笑顔を返しながら、セレスティアはこの学園を去る覚悟を固めていた。
506/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/03(水) 00:00:26.90 ID:tptac6GI
その日の夕食は、学食ではなくセレスティア達の部屋で取ることとなった。理由としては、ドワーフとセレスティアの二人が他の仲間に
話さなければならないことがあったことと、二人部屋なので他の仲間の部屋より広いという理由からだった。
「ひっく……くすん……えっく、えっく…」
泣き腫らした目のフェアリーが、セレスティアのベッドの上でもそもそとパンを食べている。久しぶりに制服を身につけているが、
その理由はあえて誰も尋ねない。
「フェアリーさん、大丈夫ですか?」
「う、うん……くすん……死んじゃうかと思った……まだすごく痛いよぉ……しばらく座れない…」
そう言いつつも、ヒーリングを使わずにいる辺り、彼女の性格というより性癖がよく表れていた。
「で、話ってのは何だ?全員集めるからには、重大な話なんだろ?」
「そうですね、とても重大です」
ドワーフは自身も話の中心であるにもかかわらず、我関せずといった感じでビーフシチューをゴクゴクと飲んでいる。保健室で薬を
もらったため、少なくとも気持ち悪さはだいぶ治まっているらしい。
「では、要点だけお話します。今日、ドワーフさんの妊娠が発覚しました」
「っ!?」
全員が、ドワーフから聞いた時のセレスティアのような反応をした。しかしすぐに、フェアリーが我に返った。
「うそぉ!?ドワ、妊娠!?子供!?赤ちゃん!?えっ、じゃあなになに!?つわりとかきてんの!?他にもなんか妊し…!」
パッと飛んできたフェアリーを実にうざったそうに睨むと、ドワーフはまとわりついてきたフェアリーの尻をバシッと引っぱたいた。
途端に羽がビンッ、と突っ張って止まり、フェアリーはあえなく床へと墜落した。尻を押さえてうずくまるフェアリーを一瞥すると、
ドワーフは再びビーフシチューを飲み始める。
「あ……そ、そうなんだ。おめでとう……って、言っていいのかな、この場合」
それが何を意味するのかを察し、エルフは少し躊躇いながらも祝福の言葉を口にする。
「あ〜、つまり……身重で学園にいるわけにもいかねえし、お前も孕ませちまった以上は、それについて行く。てことは、二人とも
パーティから抜けるってことだよな?」
バハムーンがまとめて話すと、セレスティアは頷いた。
「ええっ!?ドワとセレ抜けちゃうのーっ!?やだなー、やだなぁー!フェア、二人と一緒がい……わわっ、ごめんなさーい!」
またドワーフの前に飛んで行った瞬間、再び彼女が手を振り上げたため、フェアリーは慌ててセレスティアのベッドへと戻る。
「てことはお前、身重でラプシヌ達と戦ってたのか……すげえな」
「でも、ドワーフ、君生理来なくて変だとか思わなかったのかい?」
「来なくて楽だと思ってた」
「そ、そうか…」
それぞれに言いたいこと、聞きたいことが交錯していたが、バハムーンとセレスティアは極力、必要のある話だけを話すことにした。
「パーティきってのアタッカーと、貴重な全体回復係が消えるとなると……こりゃ、かなり厳しいな。けど、だからってお前等に残れ
なんて言えるような事情でもねえよなあ」
「ええ、申し訳ありません」
「今更責めたって始まらねえ。今後、エルフとフェルパーには気を付けてもらうとするか」
「おい、こら」
フェルパーは顔を赤くしてバハムーンの腕を肘でつつく。しかし、バハムーンは無視した。
「けどお前……お前の願いを叶える手段は、探せなくなるがいいのか?」
その質問に、セレスティアは一瞬苦しげな表情を見せたが、すぐにいつもの笑みを浮かべた。
517/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/03(水) 00:01:25.09 ID:tptac6GI
「いずれにしろ、あと千年以上は宝珠の復活もないでしょう。となると、その頃には学園に留まっていてもとっくに卒業してますし、
その気になればゲシュタルト校長のような手段もあります。母には孫を抱かせてあげたいですし、学園を去るとしても、夢を諦めは
しませんよ」
彼等の中でフェルパーのみ、ほとんど何も喋らずに話を聞いていた。しかし、そこで彼が口を開いた。
「……野放しになる、とも言える」
「え?」
意味の掴みきれない一言に、全員の視線がフェルパーに集まる。それを受けながら、フェルパーは低い声で話しだした。
「僕は、時々考えてた。このパーティが解散されるとき、ドワーフとセレスティアはどうなるのかって。片や、明らかな危険人物。
片や、潜在的な危険人物。しかも、二人とも尋常じゃない力を持ってる。この二人を……野放しにするのは、どうなんだ」
ドワーフはまだ少し残っていたビーフシチューを飲むのをやめ、その皿を掴み直した。セレスティアも、表情こそ困ったような笑顔だが、
その目はまったく笑っていない。
「おい、フェルパー…!」
「君も、考えたことはないのか。この二人を放っておいたら、いつかどこかで事件を起こすんじゃないかって。そして、それを止められる
奴なんて、ほとんどいないって。それなら……対抗できる力がある奴が、そうなる前にって」
「それは…」
どうやらバハムーンも覚えはあるらしく、言葉に詰まった。しかしそこで、意外な声が上がった。
「はぁー!?何言ってんの!?馬鹿じゃない!?馬っ鹿じゃないの!?フェルだってバハだって、セレとドワにいっぱい助けられて
きたじゃない!それが何!?今更何言ってんの!?」
「……僕は元々、ドワーフには騙されたりとかで印象よくない」
「そんなこと言ってんじゃないのフェアはー!何よ何よー!都合のいい時だけ力借りまくって、いざ離れるってなったら正義面して
殺すつもり!?ふざけんな、馬鹿ぁーっ!!フェア、絶対そんなことさせないもんね!」
言うが早いか、フェアリーは制服を一瞬で全て脱ぎ捨て、そしてまた一瞬でいつものレオタードを身につけた。状況ゆえに、その小さな尻が
真っ赤に腫れあがり、いくつものミミズ腫れが付いているのに気付いたのはドワーフだけだった。
「おい、お嬢ちゃん…!」
「バハの大馬鹿ぁー!!さいってー!!大体二人とも、仲間に子供ができたのに『おめでとう』の一言もないじゃんー!!」
「……お前もそれは言ってねえん…」
「大体さ、二人殺すってことは子供も殺すってことだよね!?フェア、そんなの絶対やだ!絶対させないから!バハが何言ったって、
フェアはこっちつくからね!!」
初めて会った頃のように、一行は三人ずつに分かれた。
フェルパーの懸念は、口にこそ出さなかったがエルフもバハムーンも考えていたことではある。しかしそれはまだ先のことと、考えるのを
先延ばしにしていただけにすぎない。
しかしながら、フェアリーの言葉も胸に来るものがあった。確かに、ドワーフもセレスティアも仲間であることに変わりはなく、しかも
ドワーフは身重である。それを手にかけるということは、生まれてくる無垢な命をも手にかけるということだった。
睨み合う六人の状況は、一種の膠着状態だった。
エルフの魔法が発動すれば、フェアリーとセレスティアには大きな痛手を与えられ、ドワーフ一人ならばフェルパーとバハムーンで何とか
できる。しかし、素早さではセレスティアとフェアリーの方が勝っており、そのどちらもエルフを一撃で倒す可能性を持っている。
おまけに、フェアリーとドワーフは一度溜めを入れることで恐ろしい攻撃力を発揮するスキルを持っている。初動で仕留められなければ、
バハムーンらは返り討ちに遭うのは明白だった。かといって、セレスティア達が有利かというと、フェルパーが庇えばエルフを仕留めるのは
難しい。だが首をはねてしまえば、いかにフェルパーといえども死は免れない。
528/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/03(水) 00:02:31.42 ID:tptac6GI
動くことができないまま、一行はしばらく睨み合った。が、やがてエルフが呆れたような笑いを漏らし、不意に両者の間に割って入った。
「もうやめよう、みんな。こんな馬鹿馬鹿しいことで、争う理由なんかないだろ?」
即座に後ろからドワーフが襲いかかろうとしたが、同じぐらいに素早く動いたセレスティアによって押し留められた。
「エルフ、けど…!」
「けど、じゃない。フェアリーの言うとおり、君に赤ん坊を殺す度胸があるのかい?これまで世話になった仲間を、手にかける覚悟は?」
「………」
「困ったことに、あっちはそれぐらい訳もないだろうね。だからこの時点で分が悪いし、そもそも君の言うことは全部が仮定だ。
予想はできるとしても、事実として起こってはいない。それに、ドワーフ一人だと危なくても、セレスティアがついてる。セレスティアが
いたら、ぼく達だってそれほど危ない目に遭わなかっただろ?だったら、そこを仲間として信じてやることはできないのかな」
エルフの言葉に、二人は言葉を失っていた。やがて、部屋に満ちていた殺気が少しずつ薄れていく。
「それもそうだ……悪かったな、セレスティア、ドワーフ」
「いえ、いいのですよ。結果としては、誰の血も流さずに済んだのですから」
セレスティアが答えると、ようやく室内は元の平穏な空気を取り戻した。ただしドワーフだけは、警戒態勢を解く気がないようだったが。
「フェアはー?フェアにはー?」
「あ〜、お前には悪かったっつうか、ありがとうな。色々と軽はずみな行動起こさなくて済んだ」
「……十分、行動したと思うけどねー」
さりげなくセレスティアの毛布を拝借し、フェアリーは再び制服へと着替え始めた。とんでもない速度の着替えができるとはいえ、やはり
一瞬でも裸を見られるのは恥ずかしいらしい。
「ねえ、みんなさー、話終わったら部屋帰らない?なんか、ドワとセレの食事邪魔しちゃってるみたいだしさー」
言われて見ると、セレスティアはまだほとんど食事が手つかずであり、ドワーフはスープとして飲んでいるビーフシチュー以外に、
まだまだたくさんの食糧を抱えている。それでも、一度戦闘状態になったためか、ドワーフはそれ以上食事を進める気配がなく、
彼女を止めているセレスティアも食事を進められない。
「……ごめん、変なこと言って」
「思ってもいない癖に、よく言う」
棘のある口調でドワーフが返すが、フェルパーは取り繕うような笑顔を浮かべただけだった。
「それじゃあともかく、君達とはもうすぐお別れなんだよね。名残惜しいけど、だからって食事の邪魔するわけにもいかないし、
お腹の子にもよくないからね。また明日、学食ででも会おう」
最初にそう言ってエルフが部屋を出て行き、それにフェルパーが続く。
539/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/03(水) 00:03:29.77 ID:tptac6GI
「まあ、その……なんだ。二人とも、頑張れよ」
「何を」
「ドワーフさん…」
いちいち食ってかかるドワーフを苦笑いしつつ窘め、セレスティアはバハムーンに軽く頭を下げた。
「お気遣い、感謝しますよ」
「ドワとセレの子、フェアも見たいなー!生まれたら教えてねっ!」
着替えを終えたフェアリーが毛布からパッと飛び出し、ドアの前で止まる。バハムーンが開けると、彼より早くそこに滑り込み、
あっという間に見えなくなった。最後に、そのフェアリーに何事か言っているバハムーンの姿がドアの向こうに消えると、セレスティアは
ホッと息をついた。
「また明日……ですか」
しみじみと呟き、ドワーフの方へ視線を送る。ドワーフはようやく落ち着いたらしく、残っていたビーフシチューを一気に飲み干した。
「多少の悶着はありましたけど、無条件で信頼してくれる仲間はいいものですね」
「別に、私はそうは思わない」
「そうですね……あなたは、それで構わないのだと思いますよ。誰一人として信じない……すなわち、誰にも隙を見せない。それは
責められるべきことではありません。あなたはそうして今まで生きてきて、それはつまり、神がお許しになっているからです」
自然な動作で、セレスティアはドワーフの隣に座った。そして、そっとドワーフの手に両手を重ねる。
「……わたくしはずっと、あなたと一緒にいますよ」
「……死が二人を分かつまで?」
相変わらず表情の読めない声ではあったが、セレスティアが笑って頷くと、ドワーフの尻尾がパタパタと数回揺れた。
「私も……セレスティアさんには、ずっといてほしい」
そんな仲睦まじい様子に嫉妬したのか、それともからかいたくなったのか、不意にセレスティアのペットが勢いを付けて、飼い主の頭に
飛び乗った。
「うあっと!?やれやれメア……もちろん、あなたも一緒ですよ」
それを聞くと、ペットは満足そうにメェ、と短く鳴いた。
「ね、セレスティアさん。今日は羽根布団」
「ええ、いいですよ。ただ、左の方でお願いしますね」
幸せそうに笑うセレスティアと、無表情ながらも心安らいだ様子を見せるドワーフ。彼等はこの時、一つの決断を下していた。
それは誰一人として信じないドワーフの意向でもなく、先程の騒動によって不意に呼び起こされたものでもない。
二人はもはやただの学生ではなく、紛れもない父と母だったのだ。
5410/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/03(水) 00:04:21.75 ID:tptac6GI
「……二人とも、遅いな」
翌朝、人の増えだした学食でエルフがぽつりと呟いた。
「最近ドワ寝坊多いよねー。あ、それも妊娠中だからなのかなー?」
「お、大きな声で妊娠とか言わない…」
比較的早くから来ていたエルフは、もうとっくに食事を終えており、一番遅くに来たフェアリーですらデザートを頬張る時間になっている。
それでも、まだセレスティアとドワーフが来ていないのだ。
「昨日のあれのせいで、ドワーフを無駄に警戒させちまったか?」
「だとしたらフェルのせいだからねー。変なこと言うからー」
「……悪かったとは思う。でも、僕は今も間違ってたと思わない」
とはいえ、やはり気にしてはいるらしく、その尻尾は落ち着きなくふらふらと動いていた。
「こうも遅えと、飯の時間も終わっちまうぜ。ちっとあいつら叩き起こしてくるかぁ」
そう言い、バハムーンが席を立つ。かなりの早食いである彼は、最も早くに食べ終わっていたせいで暇だったのだ。
多少の決まり悪さはあったものの、バハムーンは極めて平静を努め、部屋のドアをノックする。しかし、中からは何の返事もなく、
気配もない。
「おーい、セレスティア、ドワーフ?もういい加減起きろー」
声をかけても、やはり返事がない。何となく嫌な予感がし、バハムーンはドアノブに手をかけた。
力を込めると、何の抵抗もなくドアが開いた。
「っ!?」
慌てて首を突っ込み、中を見る。
昨日まで二人がいたはずの部屋は、そんな痕跡など残っていないほどに片付いていた。そして当然、二人の姿はない。
すぐさま、バハムーンは通信魔法を使い、他の仲間を最大音量で呼びだした。
『だぁぁぁ!!うるっさいなーっ!!何事ーっ!?』
『バハムーン、少しは加減してくれ!頭の中が焼き切れるかと…!』
『お前等!すぐに生徒名簿調べろ!ドワーフとセレスティア残ってるか!?』
『は…?おいおい、嘘だろぉ!?』
予想もしなかった事態が起こったと悟り、フェルパーが職員室に走った。フェアリーは二人に通信を試みるが、返事はなかった。
『いない!昨日付けだ!』
『昨日!?じゃ、あの後すぐに届け出したってことか!?』
その後、エルフが校長室に走ると、ソフィアール校長は全て分かっているかのように話しだした。
曰く、事情が事情ゆえに、二人は誰の目にも付かないうちに学園を去りたいと言っていたらしい。校長自身、退学者がどのような目で
見られるか、またどれほど目立つかは知っている。まして、二人は数いる生徒の中でも間違いなく最高に目立つ部類である。そんな二人が
人目につく時間に学園を出ては、どんなトラブルが起きるかわからない。それを避けるためにも、二人の申し出を受けるのが最善だと
判断したらしかった。
その経緯をエルフが仲間に伝えると、一行は自然と校門前に集まっていた。もはや誰が見えるわけでもないのだが、それでも二人の背中を
探すように、学園の外に広がる景色をじっと見つめる。
5511/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/03(水) 00:05:31.88 ID:tptac6GI
「……まさか、こんな別れになるなんてね…」
「こればっかりは、俺も読めなかったぜ……思い切ったことしやがって」
「これ、確実にフェルのせいじゃないのー?」
「………」
すっかり意気消沈し、耳も尻尾も力なく垂らすフェルパーの肩を、バハムーンがポンと叩く。
「いやあ、どうだかなあ。あいつらは、子供を守る義務があるからな」
学生である彼等には理解できない部分も多かったが、少なくともそれが仲間との絆より優先されるものだったのだということは理解できた。
「待ってほしいなんてのは、俺達のわがままだしな。あいつらとしちゃ、早えとこ落ち着くとこ見つけてゆっくり…」
その時、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえ、一行は振り返った。
「はっ、はっ、はっ……セ、セレスティアさん、退学って……ほ、本当なんですか!?」
「ちょっ……君、どこでそんなの…?」
「すみません、通信魔法盗聴しました!それで、本当なんですか!?」
さらりと何言ってやがるんだと全員が思ったが、そこにはあえて誰も突っ込まなかった。
「ああ、名簿見たけど消えてる。ドワーフも一緒だった」
「……そう、ですか…」
ディアボロスはがっくりと肩を落とし、大きな大きな溜め息をついた。
「せめて、一言……お別れ、言いたかったなあ……ぐすん…」
セレスティアから話を聞いており、またエルフとフェアリーが共に行動したこともあるため、彼女がセレスティアに恋心を抱いているのは
全員が知っていた。
「それは、ぼく達も同じだよ。でも、たぶんだけど、あっちも同じだったんじゃないかなあ」
その言葉に、ディアボロスは顔を上げた。
「や、もちろんドワーフは除くけど。でも、そんなことして未練が残ったりしたら、別れが辛くなるだろ?だからセレスティアも、
何も言わないまま行ったんじゃないかな」
「そう……なんでしょうか?」
「確信はないけどね。でも、セレスティアならあり得そうだなって思ってさ」
一行は再び、学園の外へと目を向けた。空はどこまでも青く、空には太陽が輝いている。セレスティアとドワーフは、きっと今頃二人で
どこか静かな場所にいるのだろう。ここにいたときとは全く違う、ひどく穏やかな空気の中で。
5612/12 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/03(水) 00:06:22.43 ID:tptac6GI
「ま、もう去っちまったもんはしょうがねえやな。これで俺達も、晴れて四人パーティになったわけだ」
重い空気を取り払うかのように、バハムーンが明るく言った。
「つーわけでだ、お嬢ちゃん。俺達のパーティに来ねえか?歓迎するぜ?」
「え?い、いえ、私はヒューマンさんのところにいますし、その……お兄ちゃんとかもいるし…」
「バハムーン、他のパーティの人に迷惑かけない。大体君、女の子なら誰でもいいんじゃないの?」
「フェアも歓迎するけどねー?きひひ!いっぱい弄り甲斐ありそうだしー!」
「フェアリーもそういうこと言わないの。困ってるだろ?」
「だから面白いんじゃーん!ねー、うち入ればいいのにー」
「……え、遠慮します…」
「てめえフェアリー!お前のせいで逃げられたじゃねえか!」
「フェアのせいじゃないもーんだ!きっひひひ!」
「やれやれ……仲裁係が一人消えたってところは、結構痛手かもねえ」

仲間との別れ。それはどんな形であれ、いつかは訪れる。時にはパーティの解散であったり、時には異動や追放。また時には、
死別ということもあり得る。そういった意味では、彼等の別れも学園の中では変わったことではない。
むしろ、彼等の別れは常識で考えると異常に遅い方だとも言えた。
共に同じ夢を追ったわけでもない。性格が合っていたわけでもない。むしろそれらは反発しあうほどであり、ただ、お互いの持つ力に
惹かれて組んだだけの縁が、これほど持ったのは奇跡に近い。
それが今、とうとうその時が来た。
しかし、まともに挨拶すらせず消えた二人を、仲間が責めることはない。
たとえ仲間との別れを惜しめなくとも、そのために騙すような形になろうとも、それでも守りたいもの、それでも叶えたい夢が
あっただけのことである。
冒険者は、夢を追い続ける者達である。その夢のために行動した者を、誰も責めなどしない。
そして、彼等は日常に戻る。願わくば、いつか仲間との再会がかなえばという、新たな夢を抱きながら。
57 ◆BEO9EFkUEQ :2012/10/03(水) 00:08:30.61 ID:e4eBtJzv
以上、投下終了
書きだした時はまさか一年以上もかかるとは思いませんでした
長々とお付き合い感謝
58名無しさん@ピンキー:2012/10/05(金) 03:32:32.72 ID:DTPRAzFT
乙です

妊娠落ち・・・だと・・・
フェルパーの言うこともあるし二人が平穏無事に過ごす未来を祈ります

改めて、長い間お疲れ様でした
今回もとても楽しかったです!
59名無しさん@ピンキー:2012/10/07(日) 10:27:47.75 ID:YUwmu217
乙です!
毎回楽しみに読ませていただいてます。
今回もすごく面白かったです!
60名無しさん@ピンキー:2012/10/09(火) 21:14:54.49 ID:GXe62etM
そういえば相性あるんだから
もっと百合モノ増えていいよな
みんなわかってくれないのか…?
61名無しさん@ピンキー:2012/11/11(日) 22:27:13.88 ID:ZczaCWHG
百合って延々責め続けられる分、どこで切るかとどう責めるかで悩むのよね
だから男女より地味に書きにくいという都合もあったり
62名無しさん@ピンキー:2012/11/14(水) 19:50:10.51 ID:rmcVmZKE
ヒュマ×セレの百合妄想なら常々してるぞ…
63セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2012/12/09(日) 00:48:00.98 ID:cmePGhkH
ちょっとテスト
64セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2012/12/09(日) 00:51:43.58 ID:cmePGhkH
百合ではないが、セレ子姉妹。
見方によっては親子に見えるかも

ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201212090040530000.jpg
65名無しさん@ピンキー:2012/12/10(月) 17:39:42.79 ID:BlHYkULE
妹さんいたのか!姉妹揃って可愛いのう
66名無しさん@ピンキー:2012/12/31(月) 12:34:18.90 ID:8KHR/ezy
>>64
なにこれかわいい
67セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2013/01/12(土) 03:03:08.16 ID:6RqvDOnC
規制あけたか?
68セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2013/01/12(土) 03:05:12.25 ID:6RqvDOnC
生徒に手を出したカーチャせんせ

http://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201301120256220000.jpg
69名無しさん@ピンキー:2013/02/06(水) 23:38:51.44 ID:P+RuYitT
ホシュ
70セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2013/03/31(日) 23:41:43.62 ID:MXpQUF4R
誰もいない?
71名無しさん@ピンキー:2013/04/01(月) 03:04:04.19 ID:1UVnr2Yv
いないわけじゃないけどあんまり来てないな…
72セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2013/04/01(月) 19:25:34.69 ID:YhEl8Ht8
73名無しさん@ピンキー:2013/04/02(火) 01:38:21.93 ID:GZFzL9ZK
>>72
ついに妹まで…
ボテ好きの称号を差し上げよう
74セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2013/06/12(水) 04:40:50.15 ID:SSiJvSBP
保守
75セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2013/07/08(月) NY:AN:NY.AN ID:TSfE0bfw
誰もいないか
76名無しさん@ピンキー:2013/07/08(月) NY:AN:NY.AN ID:X2HTw1bG
新作の話題もない
77名無しさん@ピンキー:2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:VveRW9p7
>>76
新作が発表されてるのかと思っちゃったよ
また3Dダンジョンのやりたいなあ
78セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2013/08/07(水) NY:AN:NY.AN ID:Nks2P68m
test
79セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2013/08/07(水) NY:AN:NY.AN ID:Nks2P68m
エル子
ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201308071219470000.jpg

にしても、ととモノの二次創作って同人誌でもあまり無いなあ
80名無しさん@ピンキー:2013/08/13(火) NY:AN:NY.AN ID:483wr1cO
子宮までがっつり入ってる感じが実にいいね
ついでに呪いがかかって外せなくなってるとなおいい

ととモノはキャラ可愛いけど知名度がどうにもねえ…
1〜2作目はむしろ悪名が目立っちゃってるし
81セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2013/08/18(日) NY:AN:NY.AN ID:pRc1shkQ
水着仕様のセレ子の母娘
ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201308180144020000.jpg

一時は、結構な有名どころからも同人誌が出てたんだが、
今はコミケで探してもほとんど無い(´・ω・`)
82名無しさん@ピンキー:2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:DlkYYgG5
>>81
右の娘はもらっていきますね
83名無しさん@ピンキー:2013/09/08(日) 18:12:00.86 ID:9IQKE/Oi
>>81
これは素晴らしいな
84名無しさん@ピンキー:2013/10/03(木) 00:27:40.57 ID:kYOjUtQM
保守
85セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2013/11/07(木) 06:02:04.32 ID:BzhnLsEA
久しぶりにきた。

カーチャ先生
ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201311070601260000.jpg
86名無しさん@ピンキー:2013/11/10(日) 13:19:41.55 ID:9eNUInZ3
>>85
堕天も納得のエロさ
87名無しさん@ピンキー:2013/11/21(木) 00:29:13.49 ID:dTwpc5Oi
時間があればまた書くのになぁ
88名無しさん@ピンキー:2013/11/27(水) 21:47:42.24 ID:Q4pEoaUJ
書いてみようかな…
89フェル×ドワ 1/3:2013/11/28(木) 22:41:38.06 ID:xUKC0ub/
保守がわりに適当に書いてたら季節がかわりそうなんで前半だけ投下

生徒会室から見える中庭が水没しそうな勢いで雨が降っている。
私はそれをパイプ椅子を揺さぶりながらボーっと見ている。
「雨、止みそうですか?」
尋ねたのは後ろの長机の向こう側で自分の尻尾に丹念にブラシをかけているフェルパーの少年、
親兄弟を除けば私の浅い人間関係で最も親しい相手だと思う。
「見てのとおり、今外出たら命が危ないレベルだよ。」
「普段から危険地帯に率先して突っ込んでく輩が、
雨風ごときで表にも出られなくなるなんて難儀な話ですね。」
「冒険者ってのは危険地帯を安全に歩く為の準備に全力を尽くすもんだからな。
自分から死にに行く連中は勇者って言うんだよ。」
「なら全力で装備を整えて安全に突破すればいいんじゃないですか?」
「悪天候の時点で安全のために断念すべきだよ。」
普段どおりの何気ない会話の心地好さに尻尾がゆったりと揺れる。
変わらぬ日常というのは、変化を求めて期待と不安を抱え歩き進める冒険の楽しさとはまた違った幸福感がある。
ふと何かが鼻をくすぐる。
しまった!と思い慌てて尻尾を押さえる。が、辺りは抜け始めた夏毛がゆらゆらと宙を舞っている。
この季節は毎年カーペットや風呂場の排水口に毛が絡んで掃除が大変で、自分がドワーフであることを煩わしく思う。
にしてもこの有り様を見ると、私は相当元気よく尻尾を振り回していたらしい。背後の親友には私が上機嫌で毛を撒き散らしてたのがよく見えていただろう。
苦い顔して後ろの彼を見ると、彼は毛繕いに飽きたのかこちらをニヤニヤしながら眺めていた。
「尻尾、梳かしましょうか?」
「頼めるかい?」


パイプ椅子を縦に列べて前に私が座り、後ろで彼が私の尻尾にブラシをかける。
彼は何故かいつも私の身の回りの世話をやいてくれる。
朝登校すれば寝癖や服装の乱れを直し、椅子に座れば温かいお茶が出てきて、くしゃみをすればちり紙を鼻に当てる所までやってくれる。
しかし、同時に過度のボディタッチやセクハラ行為がオマケに付くのでかなり鬱陶しい。
「なぁ、キミは私によく尽くしてくれるが、キミには何かメリットでもあるのか?」
「もちろんありますよ。自己満足的なものですがね。」
「自己満足ねぇ…」
「簡単に言えば貴女の側でいる理由付けです。」
「私のそばにいるのに理由がいるのかい?」
「自己満足っていったでしょ?あまり深く考えないでください。」
「他人の世話して満足出来るなんて幸せな奴だな、何か見返りを求める気はないのかい?」
「そうですね、ではとりあえず全部脱いでそこに寝そべってもらいましょうか?」
彼はいきなり私に全裸になれと言い出した。もちろん彼なりのジョークなのはわかっているのだが、面白そうなので乗ってみることにした。とりあえず胸のリボンをほどいて上着のボタンに手を伸ばした所で彼の静止がかかった。
「じょ、冗談ですよ。本気にしないでください。」
彼は顔を真っ赤にして私の腕を押さえる。普段やたらめったら過激なスキンシップを仕掛けてくるわりに、変に初なところがある。
「わかってるよ、キミにそんな度胸ないの知ってるし。」
「あまり信用されても困るんですがね。僕も一応は男なんですから。」
彼は真っ赤になった顔を膨らませて忠告し、再び私の毛繕いに取りかかる。それが面白かったので私はさらにたたみかけてみる。
「でもキミなら別にいいよ、ちゃんと責任とってくれるだろうし。」
私は真っ赤な顔を隠すように顔を反らし頭から湯気が出てる彼を想像しながら後ろを振り返る、しかし実際の彼は寂しそうな顔をしていた。
「そうゆうのはもっと大事な時にとっておくべきですよ。でなきゃきっと後悔します。」
私の頭はこの雨のせいで相当ふやけてしまったようだ。この話題は触れるべきではないのを完全に失念していた。早くこの空気から脱け出したくて私はおどけた口で言ったつもりだった
「冗談のお返しだよ、むきになるなって。」
しかし口からでたのは今にも泣き出しそうな震えた声だった。
「…尻尾、終りましたよ。」
彼は早く会話を切り上げたいのかそそくさと箒とちり取りを取りに行った。
綺麗に整った尻尾を少し持ち上げてみる。夏毛がとれたぶん軽くなったように感じる。
しかし、力を抜くと私の気分を表すように重力に負けてだらりと垂れ下がった。
90フェル×ドワ 2/3:2013/11/28(木) 22:44:34.31 ID:xUKC0ub/
雨はさらにひどくなり私達はそのまま学校に泊まることにした。
普段から授業の一環で生徒を深夜徘徊させるような学校なので、今さら親も心配しないだろう。
私は生徒会室の床に体育館から拝借してきたマットを敷いて毛布にくるまり、彼は隣の会議室で寝袋を使っている。
見馴れた生徒会室の天井を眺めながら、今日彼と話したことを思い出した。
私と彼との関係は幼い子供のごっこ遊び似ている。自分の役割を演じ、返ってくる返事を想像しながら話し掛け、
相手のよろびそうなセリフを選んで打ち返し、そのやり取りを繰り返して甘ったるい空気に酔いしれる。
子供のうちしかできないような恥ずかしい遊び。
今は二人でこんなことしてられるが、学校出てからはどうなるだろう?一年ぐらいはちょくちょく会ってできるかもしれないが、
その内疎遠になって、いずれは赤面するような恥ずかしい思ひ出になってるんだろうか。
恐らく今後更に親密になって、家族として一緒に暮らすのはあり得ない。今のママゴトみたいな関係が精一杯だろう。
フェルパーとドワーフの間には遺伝子的に子供が出来ないってのが世間一般の常識だ、
本人同士はそれでも構わないだろうが、両親や親戚連中、周囲の他人は子供の望めない夫婦など認めてくれるだろうか?
『そうゆうのはもっと大事な時にとっておくべきですよ。でなきゃきっと後悔します。』
彼のセリフを頭の中で反芻する。彼も今のママゴトが永遠に続くと思ってないようだ。
彼はママゴトが終わったあとどんな人生を送るんだろうか?
彼はわりと社交的で紳士的だからとてもモテるだろう。
きっとすぐに美人で献身的な嫁をもらって、元気な子供を授かって、
休みの日には家族で近所の公園にお弁当持って遊びにいくようないいお父さんになるんじゃないだろうか
私は彼の幸せな家庭を想像して苦笑いしながら、こんなくだらないことを考えるのは頭が睡眠を求めてるからだと思い込み、毛布を頭まで被って目を閉じた。


ズルズルという粘液の音と息苦しさで目が覚めた。
酸素を求めて肺を広げると鼻からさっきの音が聞こえてきた。風邪でもひいたのかと顔に手を当ててみると
「…濡れてる。」
「目が覚めましたか?」
頭の上から優しい声が聞こえた。声の主は私の頭に手を置いてゆっくりと髪を撫でている。
「どうして君がここにいるんだ?」
「貴女の咽び泣くのが聞こえたので。」
「私が?」
彼の手を払いのけて上体を起こすと眼から涙が溢れて頬を伝うのがわかった。
胸の奥深くで肌寒さも感じる。そうか、私は泣いていたんだ。
「何か不安があれば相談してくださいよ。」
「いや、たいしたことない下らないことだよ。」
「僕はそんなに頼りないですか?」
「本当にたいしたことない、口に出すのも恥ずかしいことなんだ。」
「もう少し僕を信用してくれてもいいんじゃないですか?」
昼間のセリフとの差に、私はムッとする。
「信用するなとか信用しろとかキミは忙しいな。」
「昼間のことでしたら話が違うでしょ?」
「一緒だよ、キミが臆病なだけじゃないか。」
「なら僕が貴女をあのまま押し倒してそうゆうことして、そのあと僕に付き合いきれますか?」
「そのあとって?」
「今は子供だから親や学校に頼るだけで生きていけますが、大人になればもっといろんな人に頼らなければなりません。
昨今は緩くなってますが異種族交際には未だに否定的な考えの方も多いです。
貴女もその辺はわかってるんじゃないですか?」
「キミは真面目だな、学生の恋なんて衝動に任せて燃え上がって、大人になったらいい思い出で済まされるもんだろ?」
「僕はそんな一瞬で燃えてきるような感情で貴女から大切なものを奪いたくありませんよ。」
「そんなこと行ってると一生童貞だよ。」
「なら僕は死ぬまで童貞でかまいませんよ。」
彼はそう言って立ち上がる。
「どこ行くんだよ。」
「戻って寝るんですよ、明日も早いですから。」
私は彼の寝巻きがわりのジャージの裾を掴んで引き留める。
「寂しいじゃないか。私が寝るまででいいから側に居てくれよ。」
91フェル×ドワ 3/3:2013/11/28(木) 22:46:12.37 ID:xUKC0ub/
狭いマットの上二人背中合わせで毛布にくるまり、雨の音を聞きながら朝を待っている。
背中から伝わる人の暖かさが心地よいが、異性と密接しているせいか妙に落ち着かない。
そわそわと尻尾を動かしてたせいでお互いの尻尾が触れ、びっくりして体が軽く跳ね上がる。
「あの、あまり落ち着かないんじゃありませんか?やっぱり僕は向こうに戻りますよ。」
彼が上擦った声で安眠の為の提案を出すが、私は無言で自分の尻尾を彼の尻尾に絡めて却下する。
今彼を逃がすとこの先彼と添い寝する機会などないだろう。
さっき彼と話をしてて考えた事がある。きっと私は彼が将来私意外の人と幸せになるのが嫌なんだろう。
だから泣きながら咽び泣くなんて痛々しいことをやらかしたんだと思う。しかし私に彼と添い遂げられるだけの覚悟はない。
私が彼に気持ちを伝えたとして彼は最期まで付き合ってくれるのか、私は信じられない。
そこで私は思い付く。全部彼に私の分の覚悟まで押し付けるのだ。
今この状況を利用して彼を追い詰めれば、真面目な彼はきっと責任を取ると言ってくれるだろう。
そうすれば私の覚悟の部分も埋まる。
もし拒絶されたらどうする?その時はその時だ。どうせ望みの薄い賭けなんだ。
「そうだ、隣から寝袋取ってきます。それを隣に敷きますから。」
「なぁ、ちょっとこっち向いてくれないか?」
「何ですか?」
「私の頭を抱えて撫でて欲しい、そうすれば安心して眠れると思う。私が寝たら戻っていいからさ。」
彼はそれを聞いて緊張が解けたのかクスっと笑ってこちらに身体を向ける。
「解りましたよ、今日はなんだか甘えん坊さんで

言い終わる前に私は彼の頭を掴み、唇にむしゃぶりつく。
言葉を発する為に開かれた口に舌を捩じ込み彼の上顎を舐め、彼の舌を掬い取り、ざらざらとした彼の舌表面を私の舌先がなぞる。
逃げようとする彼の頭を押さえつけて、彼の歯に自分の歯を擦り付け、彼の舌を自分の口の中に引きずり混む。
そのあたりで彼に肩を掴まれて無理矢理引き剥がされた。
「いきなり何をするんですか!?」
「信用するなってことは私をそうゆうふうに見られるって事なんだろ?」
「えっ、あぁ…それはまぁ…」
「なら襲ってよ、襲って滅茶苦茶に犯してくれよ、私を君の物にして欲しいんだ。」
92名無しさん@ピンキー:2013/11/29(金) 00:49:46.80 ID:wD+sM2f3
>>89
いつもフェルドワ書いてた人か!これは期待
93フェル×ドワ後半 1/4:2013/12/01(日) 15:15:20.88 ID:IyEGjWC0
今私と彼は身体を密接させて抱き合ってる。
私は彼のジャージをはだけさせ、彼の尻尾の上の辺りを指でなぞりながら、鎖骨に口付し、
内出血するほど吸い付いて彼の身体にマーキングを施そうとしている。
一方彼は私の背中をジャージの上のからゆっくりと撫で回しているだけだ。
「別に遠慮は要らないよ、君が好きな所を好きに触っていいんだ。」
「好きな所をですか?」
「私は蛇の生殺しを見て喜ぶほど性格は歪んじゃいないよ。」
すると彼の手はソロリソロリと背中を下り尻の辺りて停まって指を押しつけてきた。
私が軽く声をあげると、彼はぱっと手を離す。
「すみません。驚かせてしまいましたか?」
「いや、私が好きなように触れっていったんだ。
しかしいきなり尻か、普通こうゆうときは胸からじゃないのか?」
「胸?」
彼はキョトンとした顔で聞き返した。流石に腹が立ったので今舐めていた鎖骨に軽く歯を立ててみる。
「痛っ!」
「私だって自分の胸が平べったいことぐらい知ってるが、
そんな嫌みったらしく聞き返さなくたっていいじゃないか。」
「そうじゃないんです。ただ僕はこんなこと初めてなんで触る順番とかよくわからないんです。」
「私だって経験ないよ。ただ漫画とか雑誌の知識試してるだし。」
「でもさっきのディープキス上手でしたよ?初めてで舌入れるなんてできるんですか?」
「あれが上手いのかどうか知らんが、ちっちゃ頃親に無理矢理されたりしなかったか?私はそれを真似しただけなんだが。」
「僕には覚えはありませんが、親子のスキンシップって普通はそんなものなんですか?」
「私だってまだ2歳だか3歳だかのホントに立ち上がって歩き回り出したばかりの赤ん坊みたいな頃のはなしだし、
世間一般の親御さんが子供にどこまで接してるのかは知らないよ。
ただし子供にはあまりよろしくないみたいだな、虫歯が感染るらしい。実際私も昔から虫歯に悩まされてるし。」
「そういえば僕はあまり虫歯にかかったことはありませんね、甘いものは好きでよく食べてるんですが。
でもこれからかかるようになるかもしれません。」
「何でだ?」
「今僕の口の中には貴女の虫歯菌が要るんでしょ?それが繁殖して根付けば虫歯になるじゃないですか。
でも歯痛を押さえて『妻に感染されちゃったかなぁ』なんて言って惚気るのもいいかもしれませんね。」
「あー虫歯ってのは3歳過ぎると感染りにくくなるらしい、身体に耐性がついてくるからかな。」
「それは残念です。麻疹とかおたふく風邪とかは大人になってからかかると悪化するのに。」
「君はなんか話を反らしてこの場を乗りきろうとしてないか?」
「解りましたか?」
「もういい、話すな。」
私は彼の股座に手を伸ばした。
94フェル×ドワ後半 2/4:2013/12/01(日) 15:21:03.72 ID:IyEGjWC0
ジャージのズボンの上から触った感触は弾力がある固めのゴムのような印象を受けた。
しかしそれは人体の一部とは思えないほど熱を持っていたのを布越しに感じることができた。
「あの、あまり触らないでください。」
私は無視して彼の物を揉みしだく。それは脈打ちながら膨らんで重くなる。彼の顔ををみると頬は紅く染まり目を細め眉を歪め息を荒げていた。
私にはそれがとても扇情的に見え、私の心を掻き立てる。私は右手で彼の物を弄りながら彼の顔をおかずに左手で自分の物を慰める。
人差し指と中指で股を性器に沿ってなぞり、ズボンの生地を下着のクロッチと一緒に割れ目に押し込む。
そして割れ目の前端部分を親指で刺激し中指を割れ目の内側の孔にあてがい、周りの布ごとグリグリとねじ込む。
彼の顔を覗きに込んでると彼と目が合う。きっと彼の目に写る私の顔は彼と同じように惚けているのだろう。
さっきから私の背中を泳いいでいた彼の両手が再び私の尻を目指して降りてくる。
今度は両方の尻たぶを掴んで割り開き、指を谷間に這わせてきた。
指は尻の谷間を進み、やがて布の下に抵抗のない場所を見つけると、先行していた右手はさらに先に進み、左手はそこに残って指をねじ込む。
右手は太ももの間をこじ開け割れ目をほじくってる私の左手に触れる。
私はすかさず彼の右手を引きずり込み、湿って色が濃くなってるであろう窪みに彼の中指を押し当てて動かした。
彼の指が自ら動き出したのを確認して、自分の物を彼の右手に任せ、左手を彼の物へ向かわせる。
右手が擦っている膨らみの下の器官を左手で弄ぶと、中に二つ何かが入っていることが解る。私は壊さないように指で転がしてみる。
いつの間にか私の菊門を弄っていた彼の右手が身体の前に回ってきて割れ目の周りの肉を揉み始める。
左手はさらに奥を目指すため人差し指と中指で窪みの底を引っ掻き回す。
彼の顔が鼻同士がくっつくほど近づいいることに気がついた。私は最初にしたように自分の口で彼の口を覆う、すると今度は彼のほうが舌を伸ばしてきた。私も負けじと彼の舌を交わして彼の口の中を舐め回す。
両手でお互いの性器を弄り回し、口の中を舐め合う行為に私は夢中になっていたが、先に私が脱落することになる。
腹の奥の方から込み上げてきた快感が頭の中で弾けた。全身の筋肉が緊張し、身体中の力が抜ける。
私はそのあとに来るであろう心地い倦怠感を待った。

しかし先に次の快感のほうが頭の中で弾ける。達して敏感になった性器を彼の両手はさらに刺激する。
止めどなく襲う快感に、私は声を上げて抗議するがそれも彼の口に塞がれて許されない。
私は彼に投了の意を伝えるために自分の左手にあるもの力をいれて握ると、彼の身体がビクンと跳上がった。
それを見計らって私は彼を一度振りほどき、額を彼の胸に押し付けて深呼吸をする。
95フェル×ドワ後半 3/4:2013/12/01(日) 15:26:49.76 ID:IyEGjWC0
呼吸が調い気持ちに余裕ができると、彼の下腹部が内側から押し上げられて山のようになっているのが見えた。
私は彼が自分で処理をするために山のに手を伸ばすのを制止して彼の背に手を回し足を巻き付けて身体を引き寄せる。
少しずつ自分の身体を下にずらすと私の股に山が触れた。
そして腰を動かして私のズボンの色が変わった部分に彼の山の頂点を合わせてくっ付けた。
「んっ。」
布越しに彼の熱い物を感じ、思わず声が漏れる。
突然彼は両腕を私の背中に回し強く締め付け、布地を破りそうな勢いで私を突き上げる。
「あっ、ちょっと待って、イやっ。」
彼のズボンに収まったままのそれは、グリグリと私との接触を遮る物を私の中に押し込む。乱暴に私を押し広げ、先端部を叩きつけ、巻き込まれた布が股間全体を擦る。
服に遮られて深い所まで届かないもどかしさと、服越しとはいえ性器同士をすり付けあってる事実に私は興奮し、彼の胸に顔を押し付けて甲高いあえぎ声を上げる。
快感が胸の辺りまで込み上げ、再び来る絶頂を迎える為に私も腰を彼に押し付ける。
両側から力のかかった彼の物は逃げ場を失い、浅い窪みから弾き出されて、私の割れ目の前端にある突起を勢いよく叩いた。
「きゃっ!」
私は変な声を出して達する。彼の物は私のヘソの辺りでビクビクと脈打ちながら体液を吐き出し、私のジャージを濡らした。
「…暖かい。」
私が口にするや否や私は彼に突き飛ばされて生徒会室の床に仰向けに転がされる。
「痛っ、何するんだ
私は彼に抗議の言葉をぶつける前に彼が私に飛び掛かり素早く私の量腕を掴んで頭の上で左手だけで床に固定し、空いた右手を襟首に挿し込み一気に引き下げる。
無理な力のかかったファスナーがバリバリと悲鳴をあげて壊れ、私のなだらかな丘程度の膨らみしかない胸を覆い隠すスポーツブラもそれに巻き込まれ引きちぎられた。
私は驚いて彼の顔を見ると、二つの穴ががこちらを除き込む。
その穴は彼の瞳であることがわかった。彼の目はカッと見開かれ、虹彩は開ききり、瞳の奥がわずかな光を反射させてギラリと光る。
鼻息は荒く、唇がめくり上がり歯茎が剥き出しになり、鋭い犬歯をつたい涎が私の顔にかかる。
私は怖くなって身を縮めようとするが、彼の両膝が脚を押さえ込んで身動きがとれない。
彼は私の下半身を隠す布を全部毟り取り、自分のズボンを引き下げ完全に勃起した物を解放した。
先端部は粘液でテラテラと光り、粘りのある汁をぽたぽたと落としている。
そして、濡れて身体に貼り付いた毛皮を掻き分け私の割れ目を探しだし、
割り開いて内側をなぞり挿入する孔を確認している。
その孔に直接熱い肉が当たるのがわかった。初めて感じる感覚に心臓が高鳴る。いよいよなんだな。
私はこれから訪れるであろう痛みに耐えるため固く目を瞑り、その瞬間を待った。
96フェル×ドワ後半 3.5/4:2013/12/01(日) 15:49:17.14 ID:IyEGjWC0
手首の拘束が解ける。
「この辺りで止めませんか?」
恐る恐る目を開けると、彼は目を閉じて大きく息を吸って呼吸を整えていた。
「ここで止めるのは優しさじゃないよ。」
「このまま怯える貴女を強引に犯すと多分僕はトラウマになって機能不全になりそうなので。」
「初めてなんだから仕方ないだろ。」
「僕だって初めてなんです。」
「ヘタレ。」
「他人に覚悟全部押し付けて流れに乗って誤魔化そうとする人に言われたくないですよ。」
心の内を見透かされたようで私の顔から血の気が引く。
「…なんのことだよ?」
「一線越えたあとの生活に耐えられるかの答えのつもりだったんでしょ?僕を誘惑して襲わせれば、そのままなし崩し的に覚悟が決まると思ったんじゃないですか?」
どうやら本当に彼は私の考えていたことをわかっているようだ。
「ダメかい?君に付いて行くだけじゃ。」
「僕も『黙って俺に付いてこい』なんてカッコイイ事が言えればいいんですがね、生憎学生の身には貴女を安心させられるだけの財力も人脈も持っていません。」
「なら私はどうすれば君に信じて貰えるんだ?今は将来がどうなるかわからないから簡単に覚悟できるなんて言えないが、…
私は君が好きだ。きっと君となら大概のことなら耐えられるよ。」
「…そうやって好きって言ってくれたの初めてですよね?」
「そうだったか?」
「僕はずっと遊ばれてるんだと思ってました。
思わせ振りな態度で僕の反応みて楽しんでるんだと、勘違いしないように自分を押さえつけるの大変だったんですよ?」
「私はアピールのつもりだったんだがな、こっちだって気を引くの頑張ってたんだ。
でも君はのらりくらりと煙に巻いて交わそうとするし、それなら直接的手段に出るしかないじゃないか。」
「僕も思いは伝えていたつもりだったんですがね。昼間何で僕が貴女に構うか聞いて来たじゃないですか、あれ結構ショックだったんですよ?貴女に会わせていたつもりでしたので。」
「私に?」
「ああゆうキャラクター好きでしょ?」
「君、私の漫画勝手に読んだろ?」
「あの手の漫画は持ち歩かないほうがいいと思います。持ち物検査があったら学校に出て来られなくなりますよ?」
「友達に貸してたんだよ。てか人の荷物勝手に漁るな!」
私は彼の頭を思い切りひっぱたいた。
97フェル×ドワ後半 4/4:2013/12/01(日) 15:51:14.87 ID:IyEGjWC0
「あたたたた…しかし、結局お互いの気持ちを一切理解できてなかったんですね。」
「なんか寂しいな。君と会ってから今までが全部無駄だった気がして。」
「仕方ないですよ。神経や血管が繋がってる訳じゃない、皮の袋で外界から完全に隔離された赤の他人なんですから。
知ってますか?お腹の中の胎児と母親って血管が繋がってるわけじゃないんですよ。
ヘソの緒とそれに繋がる胎盤は子供の方の組織だそうです。そこで母親の血管から栄養や酸素を取り出して自分の血液に溶かしてるんですって。
結局血の繋がった親子でも実際に血管が繋がってたわけじゃないんです。
腹の中で種と卵がくっついた時から人は独立した生き物なんですから、何一つ繋がりのない相手のことが分からないのも当然じゃないですか?」
私はなんとなく自由になった腕を彼の背中に回し抱き締めて体温を感じようとする。
「でも僕達は群で生きる生き物ですから、他人に無関心でいられない、ですから相手の事を自分の頭の中で想像して、相手が何をしたいか、相手が何をしてほしいかを考えるんです。
それを相手の気持ちを理解出来てる、心が通じてると勘違いするんでしょうね。」
「私はどう足掻いても君の心に触れることも触れさせることも出来ないんだな。」
「それで別にいいんだと思いますよ。僕は貴女の事を考えて、貴女に好かれるキャラを演じるのも、貴女の演じてるキャラから会まみえる貴女の地の部分を探すのも楽しいです。それに目を背けたいことや知られたくない事だって人間生きてれば沢山あるはずですから。」
「上辺面だけの付き合いか。」
「誰だって同じですよ。みんな自分を演じて見えるものだけを信じて、それで満足してるんです。子供のママゴトと変わりません。」
「そっか、ママゴトか。じゃあ君がお父さん役やってくれよ、私がお母さん役やるからさ。」
私はどさくさに紛れ彼にプロポーズをした。恥ずかしさに言葉が詰まるかと思ったが、案外あっさり口に出すことができた。
「構いませんよ。ただし途中で飽きて投げ出すのは勘弁してくださいね。」
「じゃあ飽きさせないでくれるかい?」
「努力はします。」
よく漫画なんかでプロポーズのあと感極まって泣きながら抱き合うシーンがあったりするが実際は案外あっさりしたもんなんだろう。
普段と変わらない会話と同じようにお互いの気持ちを伝えあって、そのまま普段と変わらない未来がその延長線上にあるんだろうな。
私は安心感に顔が綻ぶ。目の前の彼の顔も、さっきまでの獣のような顔とは別人のような優しい笑顔に変わっていた。しかし、
「ところで、君はいつまで目を閉じてるんだ?」
「いや、きっとまだギラギラしてるので、あまり見られたくないんです。」
「男ならしかたないんじゃないか?むしろこの状況で君が落ち着いてたら私は相当ヘコむよ。」
口のなかがジャリジャリいいそうなぐらい甘ったるい会話をしていたが、
今私は床の上で着てるものをズタズタに引き裂かれて、下半身をむき出しにした彼に組伏せられている。
性器同士が密着した状態でになっていて、恐らく私が少し身を捩れば彼の男性自身が私の中に入ってくるだろう。
多分端から見れば私が彼に強姦されてるようにしか見えない。
「それで、これからどうする?私はこのまま続きをしてくれても構わないよ。ちょっと怖いけど、」
「いえ、今回はここまでにしときましょうよ。」
「まだなんか不安なことがあるのか?こっちだって焦らされて辛いんだ。」
「そういう訳じゃないんですが、初めてが冷たい床の上で無理矢理なんていやじゃないですか?
また近いうちに、今度はベッドの上でお互いのんびり楽しみましょうよ。それに」
彼は私の前髪をかき上げ額に唇をくっつけた。しばらくして唇が離れてゆっくりと瞼を開いた。彼の目は優しく私の目を見つめる。
「今の僕達にはこの程度がお似合いでしょうから。」身体中の血液が集まるののがわかるほど顔が熱くなる。何か反論しようとしたが、酸欠の鯉みたいに口をパクパクさせるだけて喉から音が出てこない。彼が目を細めて笑いかける。
私は恥ずかしくて顔をそらすしか出来なかった。
98名無しさん@ピンキー:2013/12/01(日) 19:25:44.46 ID:XFSSicnQ
なんかきてるううううううう
んふぉおおおおおおおおおおおお
99フェル×ドワ エピローグ:2013/12/01(日) 23:51:47.41 ID:IyEGjWC0
Dw「しっかし休校になるほど降るなんてな。外がえらいことになってるよ。」
Fe「川が氾濫したり土砂崩れが起きたりして、連絡の取れない生徒や教師も結構いるみたいですよ。」
Dw「でも助かったよ、起きたら昼の11時なんだもんな。」
Fe「あのあと遅くまで起きてましたからね。」
Dw「仕方ないだろ、こっ恥ずかしくて寝られなかったんだよ。」
Fe「まさかオデコにチューがあんなに効くなんて思いませんでしたよ。」
Dw「あーゆう漫画みたいにベッタベタなの苦手なんだ。もう昨日の記憶全部上書きされて思い出せないよ。」
Fe「もっと恥ずかしいこと沢山したはずなんですがね。服来たままなんて相当マニアックでア痛ッ!」
Dw「蒸し返すなバカ!あー思い出しただけて顔が熱くなる。」
Fe「そのようすだと昨日の続きは当分おあずけですかね。」
Dw「なんか私が欲求不満みたいな言い方だな。」
Fe「僕は誘惑されて理性が吹っ飛んだだけですからね。」
Dw「なんか納得いかないな。」
Fe「それに貴女の両親に許可を取ってからのほうがいいでしょう。事後報告だと印象悪くなるし。」
Dw「えっ、親にバラすのか?学費親に出してもらってるから今勘当されると困るだけどなぁ。」
Fe「僕がちゃんと説得しますよ。できれば就職してきちんと収入がある状態でご挨拶したかったんですがね。」
Dw「よく考えてるんだな。私はてっきり置き手紙残して誰にも見つからないところに逃げるもんだと思ってたよ」
Fe「それは最終手段ですかね。式に両親呼べないってのは結構辛いですよ。」
Dw「君の両親は大丈夫なのか?」
Fe「僕の方は大丈夫なはずですよ。姉の旦那がバハムーンですし。」
Dw「…異種族同士の恋がどうのこうのってのは一体なんだったんだよ。」
Fe「いや、結構モメたんですよ。義兄さん親戚全員から縁切られてウチに婿養子として来たんですが、まぁその結婚式が酷く悲惨でしてね、
父が娘の結婚だって張り切ってかなり盛大にやったんですが、新郎側の席ががらっがらなんです。
一応招待状は出したはずなんですが、義兄さんの仕事仲間と友達以外誰も来てないんですよ?まるで公開処刑みたいな状況でしたよ。」
Dw「そりゃ辛いな。」
Fe「式を挙げないって選択肢もありますが、僕は貴女花嫁姿がみたいですから。それに貴女の両親だって貴女の書いた手紙で涙を流したいでしょうから。」
Dw「私は君と居られればそれでいいよ。どうせ誰からも認められないと思ってたからね。」
Fe「そんなに悲観的にならなくてもいいと思いますよ。世の中の流れとしては寛容的になってますし、セレスティアとディアボロスのご夫婦なんてよく見かけますしね。」
Dw「なんか昨日の話を全部ひっくり返してるな。」
Fe「もう覚悟は決まったんです。前向きに考えないとこの先もちませんよ?」
Dw「そうか、まぁ前例があるなら案外険しい道でも無いのかもな。さて、出掛けるか。」
Fe「どこにですか?」
Dw「連絡取れない生徒が居るんだろ?生徒会としちゃほっとけないじゃないか。」
Fe「でも今外出ると命が危ないレベルですよ?」
Dw「雨合羽着て準備整えて強引に突破すればいい。危険を怖がってちゃ冒険者なんて勤まらないよ。それに、ちょっと耳貸せ。」
Fe「?、何ですか?」

チュッ
Fe「!!!!」
Dw「wwww」
Fe「…不意討ちでほっぺにチューはズルくないですか?」
Dw「私達にはこの程度がお似合いだろ?」



ここまで長い文章を投稿するのが初めてで、読み辛い文章になってしまいました。
秋口ごろに日本各地で大雨による災害があったのでそれをネタに生徒会の仕事を書くつもりだったんですが、いつの間にか全く違う内容になりました。
また、猫のブツが相当エグい形してるのを知り、話しに組み込もうとしましたが、今回挿入は見送らせていただきました。誰か種族毎のブツの形で何か書きませんか?
またネタが見つかれば書かせていただきたいと思います。
以上、お目汚し失礼しました。
100名無しさん@ピンキー:2013/12/09(月) 10:01:44.52 ID:YVtV/Qp8
ぐっじょぶ!
また気長ーに投下されんの待ってるよー
101セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2014/01/14(火) 02:53:10.71 ID:knI6EPct
久しぶりに新しい人来たんだ。
もう保守がてらの絵はお役御免かな

とりあえず、今日も寒いので嫁のセレ子と一緒にお風呂入りますね。
ttp://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201401140252150000.jpg
102名無しさん@ピンキー:2014/01/21(火) 20:08:34.26 ID:VxcuiRWu
久しぶりにきたらあった!
103名無しさん@ピンキー:2014/02/27(木) 20:02:21.56 ID:wi+B1jS7
1週間以内に書き込みがあればなんか書く
104名無しさん@ピンキー:2014/02/27(木) 20:10:40.20 ID:9MzbCR5n
ほう
105名無しさん@ピンキー:2014/02/27(木) 23:53:29.45 ID:wi+B1jS7
http://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201402272350310000.jpg
じゃあ脳内作文書き起こすから1週間ぐらい待ってくれ
106名無しさん@ピンキー:2014/02/27(木) 23:58:07.47 ID:9MzbCR5n
ほ……ほう?
107名無しさん@ピンキー:2014/02/28(金) 00:10:07.49 ID:mB9OrJnu
お、新作来るのか
気長に待つか
108セレ子好きの人:2014/04/16(水) 01:23:07.26 ID:E89GETK6
保守
109名無しさん@ピンキー:2014/04/16(水) 05:48:15.79 ID:TrM3WfbW
保守
110名無しさん@ピンキー:2014/04/28(月) 23:00:16.82 ID:znbUOmEq
完全に俺の趣味になっちまうがバハムーンとディアボロスのペア好きなんだよな…
書きあげたら晒してもいいだろうか?
111名無しさん@ピンキー:2014/04/29(火) 08:56:54.26 ID:upRZkMlb
>>110
期待してる
112名無しさん@ピンキー:2014/04/30(水) 23:11:08.12 ID:j7IHzk9H
>>111
ありがとう
いつとは約束できないが、近いうちに晒せるようにするよ
113名無しさん@ピンキー:2014/05/03(土) 01:08:29.31 ID:ic3jimb7
110 
何作品目の話?
114名無しさん@ピンキー:2014/05/03(土) 01:42:27.96 ID:H1hw+98Q
2と3しかやってない俺でも投下していいものか
異種姦モノのネタが思い付いたけど専スレ可塑ってるしここで…
115名無しさん@ピンキー:2014/05/03(土) 11:04:47.46 ID:3ClXnbBE
それだけやってりゃ十二分だろうけど
ここも過疎極まってる気もする
116セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2014/05/04(日) 02:53:51.27 ID:leBM5ifY
117名無しさん@ピンキー:2014/05/04(日) 03:42:05.76 ID:m6S7GCqM
ぬふぅ
118名無しさん@ピンキー:2014/05/04(日) 19:34:22.18 ID:++pKE/5z
>>113
ファイナルの予定
でも最近やってる刻の学園の方にも心惹かれてる
119名無しさん@ピンキー:2014/05/05(月) 17:14:38.68 ID:CZOgy+OR
118
おけ 期待してる
120とあるエルフの日記:2014/05/17(土) 15:32:06.73 ID:HZB0ByHQ
一日目
今日から入学だ。
頑張ろう!
二日目
早速の挫折。
仲間を作れずにダンジョンの低層でレベル上げに励む。
三日目
ペースが解らずに弱いモンスターを虐殺していく。
十日目
モンスターに殺された。
死体も犯され酷い状態だったらしい。
実感が湧かない。
しばらく救助したドワーフについていく事になった。
十一日目
また死んだ。
十二日目
死んだ。
十三日目
……また死んだ。
何かおかしい?
死んだ瞬間を覚えていない。
十四日目
いつの間にかドワーフ以外の男子と共にパーティーを組んでいた。
これで死ななくなるかな?
三十日目
きょ うも お かされ  し ぬ
五十日目
し  ぬ
百日目
御主人様方の肉便器で幸せですねエルフ(byドワーフ)
日記の最後のページには日記帳を抱いた女エルフがアヘ顔を晒した写真が貼られていた
121110:2014/05/19(月) 22:51:20.47 ID:AxGh+AS8
>>120
思わずぞっとした。GJ!


だいぶ遅くなったが前言っていたバハムーンとディアボロスの投下
無駄に長い、微妙な百合(?)あり、エロが遠い上にエロくないので注意してほしい
122バハムーン♂×ディアボロス♀ 1/17:2014/05/19(月) 22:53:08.51 ID:AxGh+AS8
一年前新設された冒険者養成学校モーディアル学園。
多くの施設が冒険者候補生達で賑わっているが、その中でもここ学生食堂は、候補生がいない時など無いのではと言われるほど
常に明るい喧騒に満ちている。仲間と冒険の相談をする者、恋人同士で桃色空間を作りあげる者、
仁義なきおかずの奪い合いを始める者など、その過ごし方は様々だ。
そんな中、明るい雰囲気から距離を置くように、壁際の席で一人ぽつねんと食事をする候補生がいた。
病的なほど白い肌に側頭部から生えた二本の角。冥界の血を継ぐディアボロスだ。

モーディアル学園は、新設校ということもあり、入学式の時期以外でも編入生という形で多くの候補生を受け入れている。
死の危険が常に付きまとうとはいえ冒険者に憧れる若者は決して少なくない。平均して月に一度、多い時は複数回、
編入生の入学式が行われていた。彼女もそんな編入生の一人だった。一足先に冒険者候補生となった姉の影響もあって、
新進気鋭と名高いモーディアル学園にやってきたのだ。しかし、彼女はついていなかった。共に編入する候補生の面々が、
何と言うか、他種族から受け入れられやすい者らに偏っていたのだ。
ノーム、クラッズ、ヒューマンとセレスティアが複数人。
これらの生徒達を外してまで、他種族から嫌われがちなディアボロスをパーティーに誘う変わり者はいなかった。加えて、彼女は
自分が嫌われやすいことを重々承知していたし、元来内向的な性格でもあったので自分から誰かに声をかける気にもなれなかった。
入学から二週間が経ち、同期の候補生が落ち着き場所を見つけた現在になっても、彼女は一人のままだった。

この現状をどうにかしたい、と思わないでもない。冒険者を志した理由の中には、信頼できる仲間を得たいという願いも確かに
含まれているのだから。しかしそれでも、思いきって声をかけた時に返された、あの怪訝そうな迷惑そうな目を見てしまうと、
どうしても尻込みしてしまうのだ。
(…このままではよくないな…一人用の課題を出してもらうにも限りがあるし…)
もそもそと食事を続けながら心の中で溜め息をつく。
自分の種族が嫌われやすいとはいえ、他のパーティーにディアボロスがいないわけではない。
血筋を言い訳に心を閉ざすのも良くないことだと分かっている。
(分かってはいるのだが…)
何度も何度も繰り返し、何十回目かの堂々巡りに陥っていたディアボロスは、
「よう。ここ、座らせてもらうぞ」
「…………えっ? あ、え、は」
不意にかけられた声に反応が遅れ、
「…………は?」
慌てて顔を上げたら山盛りの料理が視界に飛び込んでくるという不思議経験をした。お皿いっぱいのご飯とパン、ステーキ五枚、
山盛りカレー、ハンバーグ六個、川魚の香草焼き四匹、根菜とゆで卵のサラダ、湯で野菜バーニャカウダ添え、その他諸々エトセトラ。
学食のメニューが一通り、文字通り山盛りになっている光景に、ディアボロスは我が目を疑った。
成長期且つハードな毎日を送っている冒険者候補生は基本的によく食べるとはいえ、これはちょっと度を超えている。
「おっと、これじゃ顔が見られんな」
そう言って、山が崩れないよう料理を除け、その間から顔を出したのはバハムーンの男子生徒だった。
確かに、身体が大きく代謝も高く前衛職に就くことが多い彼ら彼女らはよく食べる。が、これは大分度を超えている。
「これでよし」
「……お腹壊さないのか……?」
「こんくらい普通だろ?」
「普通であってたまるか!」
思わず声を荒げてしまい、ディアボロスはしまったと口を押さえる。が、バハムーンは特に気にした様子もなくばしりと両手を合わせ、
「いただきます」
丁寧に一礼すると山を崩す仕事に取り掛かった。
123バハムーン♂×ディアボロス♀ 2/17:2014/05/19(月) 22:56:30.83 ID:AxGh+AS8
「………………」
しばし、食事を食べる音だけが響く。
ガツガツと、しかし以外にもよく噛み、みるみるうちに山を小さくしていくバハムーンを、ディアボロスは呆気にとられて眺めていた。
数十分後、見事にきれいになったお皿を積み重ねたバハムーンは手を合わせ、
「…いかんいかん。デザートを忘れていた」
「まだ食べる気かおまえっ!?」
再びディアボロスのツッコミを誘う。
デザートは大事だろう! と大真面目な顔で言いきった彼を見送ったディアボロスは、そこでようやく自分たちが
――というかあのバハムーンの食事がとても目立っていたことに気付いた。途端に居心地が悪くなるが、幸か不幸か、
バハムーンが持ってきたデザートのせいで意識は再びそちらに持っていかれる。
「……お腹、壊さないのか……?」
「甘いもんは別腹って言うだろ」
「別腹にも限度はあるだろう…?」
半ば予想はしていたが、数種の果物とアイスを筆頭に、ホットケーキプリンクッキーチョコレートフルーツポンチ杏仁豆腐その他諸々。
基本的に、冒険者候補生の食費や寮費といった、いわゆる冒険に関係ない生活費は全て学園側が出しているのだが。
「いやー、こんなうまいもんが好きなだけタダで食えるなんて、冒険者候補生って得だよな」
「…私は今、食堂の皆さんと会計の方に頭を下げたい気分だよ…」
いつもお疲れ様です。
「そういやあんた」
「え、あ、なんだ?」
「食わんのか、それ?」
そう言われて、そういえば自分の食事がほとんど手付かずだったことに気付く。
「…なんだが食欲がなくなった」
「ちゃんと食わんと体に良くないぞ?」
「お前が原因なんだがな」
「俺?」
きょとんと首を傾げる彼は本気で気付いていないらしい。
「そらはともかくとして。ええと…何の用だ?」
「む?」
「わざわざここに座ったということは、私に用事があったのではないのか?」
「用事…あー、ああ! そうだったそうだった。忘れてた」
コイツ本当にバハムーンか?
ディアボロスの頭上に飛び出ている疑問符には気付かないようで、バハムーンはにかっと笑う。
「用事というか、提案というか。頼みがあってな」
「頼み?」
「お前さん、この前入学した編入生だろ?」
「そうだが」
「んで、まだチーム組んでないだろ?」
「…まぁ」
渋々頷いたディアボロスに、バハムーンは人懐っこい笑顔を見せた。
124バハムーン♂×ディアボロス♀ 3/17:2014/05/19(月) 23:00:09.85 ID:AxGh+AS8
「なら、俺と組んでくれないか?」
「おまえと?」
「ああ。俺も、あんたよりちょいと早く入学したんだがまだ一人身なんだ。だから、丁度良いかと思ってよ」
「…それだけの積極性があれば、どこかしらのチームに入れたのではないか?」
「どこも6人揃っててなあ」
お手上げだと両手を上げるバハムーンは嘘をついているようには見えない。ディアボロスは少し考える素振りを見せ、眉根を寄せて言葉を返した。
「こちらとしては悪い話ではない。だが、私と組んでいると来る者も来なくなるかもしれないぞ」
「構わんよ。ディアボロスとバハムーンの仲間はお断り、なーんてヤツ、こっちから願い下げだ」
あっさりと言われてディアボロスは複雑な気持ちになった。
自分のような者を仲間として受け入れてもらえるのは嬉しいし、少し話しただけの印象ではあるが、バハムーンはとっつきやすい
快活な性格のようだ。パーティーを組む相手として文句はないどころか、こちらからお願いしたいくらいである。
しかし、だからこそ、自分が原因で彼の足を引っ張るような状況になるのは躊躇われた。
黙り込んでしまったディアボロスを見て、バハムーンは困ったように頭をかく。
「…なんか考えてるようだが、駄目な理由でもあるのか?」
「え…あ、いや…」
「別にお前さんを困らせたいわけじゃないんだ。迷惑ならはっきり言ってくれ」
「ちがっ、迷惑なんかじゃない!」
「ならパーティー成立だな」
「っ……」
反射的に出た言葉を拾われてディアボロスは言葉に詰まった。
何かを言おうと暫く口をぱくぱくと動かしていたが、肝心の言葉が出てこずがっくりと項垂れる。
「……分かった、分かったよ。これからよろしく頼む」
「おう!」
もう一度大きな溜め息をついた彼女だが、にっこりと笑うバハムーンを見ているとどうも文句を言う気が起きず、呆れ交じりの笑みを見せた。
「おっ。あんた、笑うとずいぶん可愛らしいんだな。もっと笑ったほうがいいぞ」
「…はあっ!? なっ、ば、ぅ…よ、余計なお世話だ!」


一人が二人に増えたとはいえ、彼女らはまだまだ新米冒険者である。どちらかが倒れたら確実に大変なことになる二人は、
石橋を叩いて壊すくらい慎重に探索を進めていたので、他と比べると明らかに出遅れていた。
しかし、彼女たちは、頭数の少なさやスタートの遅さを覆せる程には優秀だった。
竜騎士と侍という戦闘特化型のバハムーンが敵を倒し、踊り子のディアボロスが彼を支援する。ディアボロスは必要に応じて
攻撃に回ることもできるため、二人という少数ながらも安定した戦闘を進めることができていた。また、明るく気さくな性格だが
少々落ち着きがないバハムーンと、内向的で人見知りしがちだが思慮深いディアボロスは、性格面でもうまい具合に役割分担ができていた。
ディアボロスとバハムーンがチームを組んで一ヶ月。
華々しい活躍はないが一歩一歩着実に課題を完了する二人は、学園内での評価をじわりじわりと高めていった。
125バハムーン♂×ディアボロス♀ 4/17:2014/05/19(月) 23:04:24.31 ID:AxGh+AS8
ある日の夕方。冒険を終えた二人はいつものように食堂にやって来ていた。一か月前までは気分を沈ませる要因だった活気ある
雰囲気も、隣に気の置けない仲間がいるだけで和やかな気分にしてくれるものに変わっている。そんな自分の変化はどこか
気恥かしくもあったが、それ以上に喜びが勝っていた。
「よし、食うか!」
「そうだな」
きちんと手を合わせた二人は待ちに待った食事に手をつける。
食べながらいつも通りなんてことの無い雑談を交わしていた二人だったが、不意にディアボロスが首を傾げる。
「……ん?」
「どうひひゃ?」
「口に物を入れたまま喋るな。…おまえ、以前よりも食べる量が減っていないか?」
「む…そうか?」
今日のバハムーンの夕食は、どんぶり山盛りのご飯、オムレツ四枚、ボウルいっぱいの野菜サラダ、鮭のムニエル五枚に
二種のパスタを各々大皿一枚ずつ。主食主菜副菜各一つのディアボロスと比べたらはるかに多いが、それでも、
初めて会った時よりは減っている。以前よりも運動量が減ったのだろうか、と首をひねるも、チームを組んでからの方が
探索に回す時間は長くなっているのだ。運動量が減るとは考えにくい。
「もしや、体調が悪いんじゃないか?」
「俺はこの通りぴんぴんしているぞ」
「自覚が無いのかもしれないな。おでこ見せてみろ」
「おお」
「……平熱だな。となると胃腸に問題があるのか…? バハムーン、念のため食事が終わったらモミジ先生のところへ」
「いや待て。少し落ち着け、ディアボロス。俺は大丈夫だ」
「しかしだな」
淡々と、しかし顔に「心配」の文字を張り付けながら言うディアボロスに、バハムーンはくすぐったそうな苦笑を見せた。
「お前さん、意外と過保護だよな」
「…仲間を心配するのは当然のことだろう」
「だから大丈夫だ。いくら俺でも自己管理くらいはできる。単純に、腹いっぱいになるから食わないってだけだ」
宥めるように言われ、ディアボロスの頭上には疑問符が飛んだ。あれだけ大量に食べていたのに満腹ではなかったということだろうか。
彼女の反応を見てか、バハムーンはぽりぽりと頬をかく。
「今までは、何故か満足できなかったんだよ。沢山食べたはずなのに妙に飢えてたんだ」
「あれだけの量を食べていたのに、か?」
「そうなんだ。だが、今はそんなことはもうない。腹いっぱいなのに余計な飯食う必要はないだろ」
何となく釈然としないが、本人が言うのだから間違いはないのだろう。
ディアボロスは頷くと、美味しそうにオムレツを頬張るバハムーンと同じように自分の食事に手をつけた。と、そんな時。
「食事中に失礼。ここ、座っていいかい?」
二人に落ち着いた声がかけられた。
126バハムーン♂×ディアボロス♀ 5/17:2014/05/19(月) 23:10:47.90 ID:AxGh+AS8
声をかけてきたのは男子用の制服を着たクラッズの女子生徒だった。後ろには、遠慮がちに目を伏せているフェルパーの女子生徒も控えている。
「おっ、クラッズじゃないか。久しぶりだな」
「ご無沙汰しているよ、バハムーン。それから、君とは初めましてだよね? ディアボロス」
「えっ、あ、ああ。そうだな」
穏やかな笑顔を向けられ、ディアボロスは内心驚いた。そんな彼女には気付かぬまま、バハムーンは嬉しそうに席を勧めている。
「クラッズとは侍学科が一緒でな。何度か手合わせしたことがあるんだ」
「そうだったのか」
クラッズといえば盗賊学科系というイメージが強かったが、と頷くディアボロスにクラッズはにこりと笑ってみせる。
「一般的ではない自覚はあるよ。けれど、私は戦闘職が性に合っていてね」
「ああ、すまない。悪い意味で言ったつもりはないんだ。その…」
「大丈夫、気にしていないさ。例え偏見の目を向けられても実力で黙らせれば良いだけだし。
 …そうそう。それで、君たちにお願いがあるんだ」
「お願い?」
どうしたんだと首を傾げるバハムーンの一方で、ディアボロスはこの流れに既視感を覚えていた。
彼女の予想を裏付けるかのようにクラッズは口元を引き締める。
「私と彼女を君たちのパーティーに入れてくれないかな」
「おお、構わんぞ。仲間が増えるのは大歓迎だ。な、ディアボロス?」
「そうだな」
「軽いね?!」
それまで冷静な姿勢を崩さなかったクラッズが初めて動揺を見せた。
彼女の影に隠れている――体格差的に隠れられていないのだが――フェルパーも、驚いたように尾をぴんと立てている。
「それでいいのかい君たち!?」
「仲間が増えるのは大歓迎だと言っただろう。…あ、待てよ。そういやお前さん、もうパーティー組んでたよな? そっちはいいのか?」
「…うん。そこを何よりも先に聞かれると思っていたんだけどね」
クラッズは苦笑した。そして、フェルパーに一瞬だけ気遣うような視線を向けると、もう一度こちらに向き直る。
「実は、私とフェルパーは、今まで所属していたパーティーを抜けたんだ」
「なら問題ないな。よし、明日からよろしく頼むぞ!」
「いやちょっと待っておくれよ! ここで終わりじゃないんだって!」
「む?」
きょとんとするバハムーンに頭が痛くなりつつ、ディアボロスは二人の間に入る。
127バハムーン♂×ディアボロス♀ 6/17:2014/05/19(月) 23:14:56.55 ID:AxGh+AS8
「ちょっと待て、バハムーン。パーティーを抜けたというのなら、一応その理由も聞いてみたい」
「何故だ?」
「…わざわざチームを抜けるのにはそれなりの理由があるだろう? そこを曖昧にしては、いつか問題が起きるかもしれないからだ」
「クラッズはいいやつだ。こいつが連れてきたんならフェルパーもいいやつだと思うぞ?」
「おまえの友人を疑うつもりはないし、私だって仲間が増えるのは嬉しい。だが、念には念をと言うだろう」
「あんたは少しばかり慎重すぎるな」
「勇敢と蛮勇は天と地ほどに違うからな。…言いたくないのなら言わなくても構わない。教えてもらえないか?」
二人のやり取りをどこか嬉しそうに聞いていたクラッズは、ディアボロスの言葉に大きく頷いた。
ずっと下を向いていたフェルパーも、耳と尻尾をぴんと立て伺うような眼差しを向けてくる。
「一言で言うと、他のメンバーとそりが合わなくなってしまったんだ。
 私は侍で、この子はナースなんだけれども、それでは駄目だ、転科してくれと言われてね」
「…どういうことだ?」
パーティー内に回復役がいないとか、魔法職がいないとかの理由で転科をする候補生は大勢いる。
言葉だけ聞くとそれが原因でパーティーを抜ける事態にまでなるとは考えづらい。
「言葉通りなんだけれど…私は風水師に、フェルパーは狩人とビーストになるよう言われた。前衛が足りなかったわけでも、
 魔法職が足りなかったわけでもないよ? 風水師の幸運の鐘と、真・二刀龍で両手に弓装備が欲しかっただけだ。
 私は前衛の戦闘職がやりたいとか、フェルパーは戦うのが苦手だとか、そういった事情はどうでもよかったみたいでね」
クラッズの口調はあくまで淡々としていたが、鋭く吐き出した呼吸に内心が表れていた。
「何度も話し合おうとしたけれど、意味はなかった。それどころか、パーティーの決定に従えないのなら抜けろと言われてさ。
 それで、つい、カチーンときてしまってね」
あとはご覧のとおりさ、と笑うクラッズと、しょんぼりと耳を落とし尻尾をへたらすフェルパーを見て、
しかめっ面で聞いていたバハムーンは炎交じりの息を吐く。
「よく分かった。ディアボロス、これで文句はないだろう!?」
「分かったからブレスを吐くな。…嫌な記憶を話させてすまない。是非、私たちのパーティーに入ってほしい」
「助かるよ! こらからよろしくね」
「…よろしく、おねがいします」
「うぉ!? あんた喋れたのか!」
「おい、バハムーン!」
「………………」
しゅんと耳を伏せるフェルパーに、ヤバイと口を押さえるバハムーン、そしてバハムーンを諌めつつフェルパーに
気遣わしげな目を向けるディアボロス。新しい仲間たちを見つめるクラッズは、普段とは違う、年相応に無邪気な笑顔を見せた。
128バハムーン♂×ディアボロス♀ 7/17:2014/05/19(月) 23:19:17.90 ID:AxGh+AS8
二人が四人に増え、戦闘や冒険の幅は一気に広がった。
ディアボロスの支援を受けたクラッズとバハムーンが突っ込んで行き、フェルパーが回復し、前衛が取りこぼした敵は強烈な
鞭の餌食になる。後衛を気にせず戦えるためか、前衛二人はそれはもうのびのびと剣や槍を振り回し、時に後衛二人が
頬を引きつらせるほどの戦いっぷりを見せた。また、戦闘に余裕が出たおかげで、今までは手応えの無さを感じながらも
始原の森の入口近くしか探索できなかったのが奥の方まで行けるようになる。
資金や資源は倍ほどに溜まり、おかげで装備を強化することもでき、戦闘は更に楽になった。他のパーティーが苦戦していた
バドネーク討伐の試験も、あまりにも簡単にあっさりと倒せてしまったので面喰ったほどだ。
メンバー同士の中も、初めのうちこそぎこちなさや緊張感はあったが、四六時中ずっと一緒の状態を何日かも続ければ、
自然と慣れや愛着が湧いてくる。まさに、順風満帆だった。

(……順風満帆、なんだが)
中庭の端に腰かけたディアボロスは心の中で呟いた。
彼女の視線の先では、バハムーンとクラッズが物干し竿と木刀を得物に鍛錬に励んでおり、フェルパーはディアボロスの隣で医学書を
読みふけっている。始原の森は一通り探索したし毎日毎日冒険に出るのもなんだから、という理由で、一行は久々の休日を楽しんでいた。
「おら、まだまだ行くぞ!」
「ふふっ。全力でかかってきたまえ!」
「…………」
楽しそうに組手をする二人を見ていると、ディアボロスの中にモヤモヤとした感情が生まれる。それを自覚した彼女は苦い顔でそっと視線を逸らした。
(馬鹿だ私は)
端的に言うと、ディアボロスはクラッズに嫉妬していた。
バハムーンの隣で剣をふるい、彼から背中を任せられているクラッズが、羨ましくて仕方がなかった。
(クラッズは、大切な仲間なのに)
口下手な自分と話している時とは違う、冗談混じりの明るいやりとりをしている二人を見るのが辛かった。
楽しそうな笑顔を、他の人に見せないでほしいと思った。
(……馬鹿だ、私は)
いつからかなのかは分からない。初めて会った時から…とは考えにくいが、ほんの最近とも思えない。
それこそいつの間にか、ディアボロスは、バハムーンのことが好きで好きでしょうがなくなってしまったのだ。

「……大丈夫?」
不意に隣から声をかけられる。ぼんやりと顔を向けると、心配そうなフェルパーがこちらを見つめていた。
「ん、ああ…大丈夫だ。少し、ボーっとしてしまった。大したことはない」
「…………」
どうにか笑ってみせたディアボロスをフェルパーはじっと見つめる。
「……二人のことが気になる?」
「え?」
「苦しそうな顔してたから」
「い、いや…そんなことは…」
否定の言葉に力はない。今の自分では何を言っても墓穴にしかならないような気がして、ディアボロスは口を噤んだ。
「…私で良かったら、聞くよ?」
「え。しかし…そんな…」
「あなたがバハムーンのことを好きなのは、分かる。バハムーンとクラッズの仲が良くて、ヤキモチ焼いちゃうのも分かる。
 …辛そうだから」
「…………」
「聞くよ?」
たどたどしくも優しい言葉を聞いてディアボロスは言葉に詰まった。
この胸の内にある、よく分からない丸いような尖がったような気持ちを吐きだして楽になってしまいたいとは思うけれど、
クラッズと仲が良いフェルパーにこの感情をぶつけるのはとても酷いことのような気がした。
困りきった顔で黙り込んでしまったディアボロスを見て、フェルパーは何故か目元を緩ませる。
「ディアボロスは、優しいね」
「…優しいなんて言葉、私には一番似合わないな」
「そう?」
「ああ。おまえの方がよっぽど優しいよ」
「…そうかなぁ」
ふるふると尻尾を振った彼女は、少しの間じぃっと空を見上げ、
129バハムーン♂×ディアボロス♀ 8/17:2014/05/19(月) 23:23:32.94 ID:AxGh+AS8
「……言ってみたらどうかな?」
「誰が、なにを、誰に言うんだ?」
「ディアボロスが、好きってことを、バハムーンに」
つまり告白しろということか。
「無理だ」
「無理じゃない」
「即答…?! いや、まて、無理だ。第一私のような者に告白されて喜ぶ阿呆がどこにいる」
「はぁい。ここにいます」
「……はあ!?」
予想だにしなかった答えにうろたえるディアボロスを見て、フェルパーは、珍しく悪戯に成功したクラッズのような顔で笑う。
「付き合ってって言われたら、考えちゃうけど。ディアボロスみたいな、優しくて、頼りになる人に好きって言われたら、嬉しいよ?」
「な……な……!?」
つまり、恋人になるかは別として好意を向けられることそのものは嬉しい、ということだろう。普段は青白い頬を仄かに赤らめ
――ということは、フェルパーなら真っ赤になっているところだろう――ぱくぱくと口を動かすディアボロスは大変可愛らしい。
にぃーっと目を細めたフェルパーは、一旦打ち合いを止めて何やら話しこんでいるクラッズ達に目を向け、
「…クラッズ」
「どうかしたかい?」
「うわっ!?」
「あいかわらず早いなー」
呼び寄せる。直後、一瞬でフェルパーの前に片膝を着いたクラッズに、ディアボロスは本気で驚き、バハムーンは感心の声を上げた。
「ディアボロスが、バハムーンにお話があるんだって」
「なるほど。それなら、お邪魔虫は退散したほうがいいね」
「あと、ほっぺに傷。駄目だよ、女の子なんだから」
「あはは、ごめんよ」
「……えーと」
目の前のやり取りについていけないディアボロスに、
「応援しているよ!」
クラッズは良い笑顔で親指を立て、
「待ってるよ? 行ってらっしゃい」
「…ええっ!? いや、待て、ちょっ、ここで言えと?! 無理だぞそんなの!」
「じゃあ、あとでお部屋に行かせてって言ったら? たぶん、喜ぶよ?」
「そ、そうか…?」
フェルパーは、ある意味告白よりももっと際どいことを勧める。
ディアボロスは困った様子で眉根を寄せていたが、手持無沙汰気味に三人を見ているバハムーンを放っておけなくなったのか、
ぎくしゃくしつつも近付いて行く。そんな彼女とその想い人を、フェルパーとクラッズは、微笑ましいものを見る優しい眼差しで見送った。
「…うまくいくといいな」
「大丈夫さ。バハムーンと私がいつもどんな話していると思う? 君とディアボロスの話ばかりだよ」
「そっか…じゃあ、大丈夫かなぁ…」
「…反応なし…負けるな私。ときにフェルパー。君、あんなことをディアボロスに勧めるなんて、中々情熱的だね?」
「だって、人がいるのに好きって言うなんて、恥ずかしいでしょ? だったら、人がいない方がいいじゃない」
「……うん?」
どうやら、無自覚のようであった。
130バハムーン♂×ディアボロス♀ 9/17:2014/05/19(月) 23:26:30.30 ID:AxGh+AS8
その日の夜、食事を終え風呂にも入り、後は寝るだけの状態になったディアボロスは、
寝間着の代わりに制服を身に付けバハムーンの部屋を訪れた。
「よう、いらっしゃい」
「わざわざすまない」
「気にすんな。お前さんならいつでも歓迎だ」
明るい笑みと共にこんなセリフを言われ、ディアボロスの心臓は大きく脈打った。
(落ち着け…こいつに他意はない…多分わりと誰にでも言う…よし、私は大丈夫だ)
自分の言葉に自分で傷付くも、心の落ち着きは取り戻せて安心する。
とはいえ、招き入れられるままに部屋に入り、勧められるままに椅子に腰かけた彼女は客観的にみると緊張でガチガチだったが。
「それで、話ってなんだ?」
普段と変わらぬ明るい口調で尋ねられ、ディアボロスは再度緊張の波に飲み込まれた。
来るまでに考えてきた言葉は見事に吹っ飛び頭の中は真っ白になる。
「あ…のだな。そのっ…つまり…だから…」
「ディアボロス、ゆっくりでいいぞ」
「す、すまないっ! えと…その…あの…!」
(うわぁああ駄目だ落ち着け私っ! 駄目だ絶対なんだコイツって思われてる! 早く、早く言わないと…!)
ディアボロスは、完全に混乱していた。
そも、バハムーンの部屋に入ったのだって初めてなのだ。余計な物の無い武士然とした部屋に意味もなくときめいたり
無駄にキュンとしたりしながら告白なんてするのは、あまりにも、難易度が高すぎた。
混乱し、焦り、とにかく本題を言わねばと自分を急かしたディアボロスは、
「わ、私っ、おまえのことが好きなんだっ!」
「……は?」
自爆した。
131バハムーン♂×ディアボロス♀ 10/17:2014/05/19(月) 23:30:12.72 ID:AxGh+AS8
「あぁぁああああ違うっ! いや違わない! 違わないんだけど違う!」
「…お、おい、ディアボロス。少し落ち着」
「ちがっ、あの、ちがうんだ! こんなことが言いたかったんじゃなくて! いや、言いたかったんだけどちがくて!
 だって、その、おまえには感謝してるんだ! 私なんかに話しかけてくれて、笑いかけてくれて、仲間にしてくれて!」
「ディア」
「戦いになったら守ってくれるし! そんな奴、初めてで、すごく嬉しかったんだ!
 それに、おまえはその、いつも明るくて、皆を元気づけてくれるだろう? おまえがいてくれたら大丈夫だって思えるし、
 でも私だって何か力になりたいし、あまりにもまっすぐだから心配になるしな!?」
「わか」
「だから、えっとその、ずっと傍にいさせてほしいんだ! でも多分、そんなのは迷惑だから、ええと、
 とにかく私はおまえのことが好きで、でも迷惑にはなりたくなくて、だから…」
ディアボロスはもはや半泣きになっていた。自分でも何を言っているのかよく分からない。
「…だから…ええと…」
先ほどまでの勢いが嘘のようにしょんぼりと肩を落とすディアボロスを見て、バハムーンは大きな溜め息をついた。
「…なぁ、ディアボロス」
「は、はい…」
「……そんなに怯えんでも、取って食ったりしないぞ」
「…すまない…」
自分でもどうにもできないのだろう。泣き出しそうな顔で目を潤ませる彼女に、もう一度大きな溜め息を零す。
「…あんたなぁ…こんな状況でそんなこと言うとどうなるか、ちゃんと分かってるか?」
「……どういうことだ?」
てっきり怒られるか断られるかと思っていたディアボロスは、思ってもみなかった言葉に目を瞬かせる。再三、溜め息が返ってきた。
「分からんか…」
「すまない…」
バハムーンは立ち上がってドアの鍵をしっかりかけ、頭上に疑問符を飛ばすディアボロスの前にしゃがみこんだ。
「これでも、分からんか?」
「ええと…なにがだ?」
「……ほんっとーに分からんのか?」
「…物分かりが悪くてすまない。全く分からない」
「……あんた、頭いいのに妙なとこ抜けてるよな」
「ど、どういう…きゃあ!?」
突然勢いよく抱き上げられ、ディアボロスは反射的に首元にかじりついた。
そんな彼女にちらりと笑みを見せたバハムーンは、大股でベッドまで歩き、抱えていたディアボロスを優しく横たえ、
その上に覆いかぶさる。散々バハムーンに溜め息をつかせたディアボロスも、ここでようやく事態が呑み込めた。
「ば、バハムーン!?」
「お、やっと分かったか?」
からかうような笑みを向けられディアボロスの頬は熱を持った。そんな彼女を慈しむかのように、バハムーンは艶やかな髪を優しく撫でる。
「悪いな。好きな奴にあんなこと言われて我慢できるほど、俺はできた性格じゃない」
「え。えっと、そ、れは…」
「好きだぞ、ディアボロス」
初めて聞くほど優しい声と共に、荒々しい口付けが落とされた。
132バハムーン♂×ディアボロス♀ 11/17:2014/05/19(月) 23:32:41.86 ID:AxGh+AS8
唇を食み、歯列をなぞり、長めの舌を巻きつける。乱暴まではいかないがかなり激しい口付けに、ディアボロスは応じるのが精いっぱいだった。
「んぅっ…ぁむ…ん…バハム、ぅん…!」
少し苦しいと伝えようとしても、僅かな時間離れるのすら許さないというようにすぐ口をふさがれる。
酸欠と、バハムーンが自分を求めていることの喜びとがないまぜになって、ディアボロスの思考はゆっくり溶かされていった。
思考と比例するように、ベッドに縫い付けられている身体からも力が抜ける。バハムーンが満足げに身を起こす頃には、
ディアボロスはくたくたにされていた。荒い息をつき自身をぼんやりと見上げる彼女を見、バハムーンは笑みを深める。
「色っぽいな」
「っ…だ、誰のせいだ…!」
「勿論俺だ。俺以外の奴なんて許さんよ」
彼にしては珍しい言い方にディアボロスは目を瞬く。そんな彼女にもう一度唇を寄せ、次いで、制服のボタンにも手をかけた。
ついばむような口付けを受け止めていると、いつの間にか、ディアボロスは下着同然の格好にされてしまった。
反射的に手で隠そうとするも、
「駄目だ。全部見せろ」
「は、恥ずかしいんだが」
「我慢だな」
両手をしっかりと押さえつけられる。男女差がある上に踊り子のディアボロスと竜騎士のバハムーンだ。力で勝てるはずもない。
欲望を隠そうともしないギラギラ光る目を向けられて、ディアボロスはなんだか泣きたくなった。
一方のバハムーンは、今すぐ己を突き入れ滅茶苦茶にしてやりたい衝動を抑えるので必死だった。
反応を見る限り相手は初めてなのだから、めいっぱい優しくしてやらねばと分かっていたが、
心底恥ずかしそうなのに抵抗らしい抵抗をせず健気に耐えているディアボロスを見ると我慢できなかった。
駄目だ俺は、と楽しげに呟いて、仰向けなのにほとんど質量を変えない豊満な胸に口を寄せる。
「ん、ぁっ!?」
途端、ディアボロスの口から甘い悲鳴が漏れた。自分のものとは思えない響きに、
どうにかして口を押さえようと手を動かすが、しっかりと押さえられているのでそれも叶わない。
「やっ…ふ…ば、バハムーン!」
「良い声だな。もっと聞かせてくれ」
「いやだっ! くぅ…!」
「強情な奴め」
両手が使えないのはバハムーンも同じなので、口で下着をずり上げ、滑らかな乳房にしゃぶりつく。
「ふぁあっ!? やっ、待てっ…それ、やめっ…」
「止めてほしいとは思えんなぁ」
「ひぅっ! ぁ、ゃ…」
ほんのりと赤くなっている肌に吸いつき痕を散らす。控え目にツンと立っている乳首を舐めるとディアボロスは身をよじった。
133バハムーン♂×ディアボロス♀ 12/17:2014/05/19(月) 23:36:14.37 ID:AxGh+AS8
そろそろバハムーンも限界が近かったので、押さえている手を離して秘部に手を寄せる。ディアボロスは一瞬だけ怯えの表情を見せたが、
すぐに目をつぶりバハムーンに抱きついた。彼の胸板に形の良い胸が押し付けられくにゃりと潰れる。
「……ここは天国か」
「……? バハムーン…?」
「なんでもない。ちゃんと解してからにするから、心配するな」
「す、すまない…」
「謝るな。俺は今、とても楽しい」
彼女のショーツはうっすらと染みを作り、秘裂はそれなりの潤いを帯びている。
だが、ディアボロスは大分華奢な体格だし、そうでなくともバハムーンのモノは大きめだ。もう少し慣らした方が良いだろう。
緩やかに開き始めている秘裂に指を寄せ、愛液をすくいながら全体に馴染ませていく。
ディアボロスは浅い呼吸を繰り返していたが、次第に刺激を快感と受け取れるようになったのか、控え目な喘ぎ声を零しだした。
本人は必死で押さえているつもりなのだろうが、密着しているバハムーンの耳は少しの取りこぼしもなく全て拾い上げる。
まずい、とバハムーンは瞑目した。全身で触れている柔らかい身体の感触や、濃さを増していく匂いや、
時折耳に届く甘い声が、彼の理性を削ぎ落していく。思っていた以上に限界が早い。
「…ディアボロス、すまん、頼みがある」
「……ぇ? ん、どう、した…?」
うっとりした彼女に理性が振り切れかけるも全力で引き戻す。心の中で自分の欲求と格闘しつつ、バハムーンも衣服を取り払い、
腹に届きそうなほど膨れ上がった分身を取り出した。ディアボロスが緊張と不安で顔を強張らせる。
「手を貸してくれんか」
「ええ、と…ど、どうすればいいんだ?」
「…触れそうか?」
自分にとっては身体の一部でも、ディアボロスにとっては未知の物体だ。
張り詰めんばかりに血管が浮き出ており先走り液を零している分身は、どう好意的に見てもグロテスクとしか言いようがない。
無理はいかん無理はいかんと彼女の様子を伺ってみると、
「…大丈夫だ。それに、その…私も、おまえに気持ち良くなってほしい」
興奮でどうにかなりかねないことを言ってのけた。
「なら、この辺握って…っ、軽く、撫でてみてくれ」
「…こ、こうか?」
「ぐっ…!」
「バハムーン? 大丈夫か?」
「……問題、ない」
問題は大いにあった。たどたどしい手つきで竿の部分を撫でられているだけなのに、気持ち良すぎた。
ともすればすぐに達してしまいそうだったが、ディアボロスに触られてすぐに達するのはあまりにも情けない気がしたので、
歯を食いしばり腹に力を込めて全力で我慢する。そんな彼の姿に、ディアボロスの心にはなんとも言えない愛おしさが込みあがった。
自分の手でバハムーンが気持ちよくなっているのがとても嬉しかった。その感情が、彼女を少しばかり大胆にさせた。
撫でるだけだった手で一物を優しく包み、先端から溢れる液を擦りつけるように扱いていく。
先ほど自分がされたことのお返しだったが、その効果は覿面だった。
「お、おいっ! ぐ…もういいっ、十分だ…!」
「ん…もう少し…」
「いらんって……駄目だ、出るっ…!」
そう言うのとほとんど同時にバハムーンは彼女の手の中に精液をぶちまけた。
どころか、手の中だけでは収まらず、屈みこんでいたディアボロスの腹や胸を汚していく。
「……すごい量だな」
「っはぁ…ふ…すまん。ちょっと待っててくれ、タオルを…」
敢えて彼女の方を見なかったバハムーンが言い終わるより早く、ディアボロスは、なにを思ったか手に付いた精液を口に含んだ。
「……は」
「…不思議な味がする」
仄かに口元を緩ませる彼女を見、そのしなやかな肢体を汚した精液を見、どこか嬉しそうな言葉を聞いたバハムーンの理性は吹っ飛んだ。
134バハムーン♂×ディアボロス♀ 13/14:2014/05/19(月) 23:39:22.57 ID:AxGh+AS8
「……ディアボロス」
「う…ん? バハムーン、どうし…お、おい、バハムーン…?」
様子が変わったことに気が付いたのか不安げな顔でこちらを見るディアボロスに笑顔を返す。本能的に閉じられようとしていた
膝をこじ開け、露にされた秘部に舌を寄せる。ディアボロスは焦って彼を止めようとしたが、もう止まれなかった。
「ぁ、やぁぁあああっ!?」
いきなり最も敏感な陰核を舐められて、ディアボロスは呆気ないほど簡単に高みへ上りつめた。甘い悲鳴に口元を緩ませ、
刺激から逃れようと跳ねる腰をしっかり抱え込む。びくびくと震える彼女は初めての喜悦を受けきれていないようだったが、
「ぅあっ、やぁっ!? ば、バハムーン、っあぅ、ちょっと待て、待ってくれっ!」
バハムーンは待たなかった。
制止の言葉は聞かず、愛液を湧きだす秘裂に吸いつく。固く閉じた肉壁に舌を差し込むと悲鳴じみた嬌声が上がった。
それに気を良くして奥へ奥へと舌を伸ばす。
「やだっ、そんなとこ…ぅあっ、あっ…バハム、ダメだって…ひぅぁっ…や…ああ…!」
「…嫌じゃないだろ。ほら、ここも」
「んぁあっ?! やっ、待って…や、ぁ…また、きちゃ…っ――!」
再びディアボロスの背が弓なりにしなる。バハムーンは獰猛な笑みを零し、肩で息をする彼女の秘裂に自身をあてがった。
「ぁ…バハムーン…ちょっと、待って…」
「すまんな、もう待てない」
懇願を一言で切り捨て、それでもゆっくりと分身を中に沈めていく。ディアボロスは苦悶とも喜悦ともつかない声を漏らしたが、
抵抗をすることはなかった。熱くうねる中に誘い込まれ、バハムーンは意外なほど早く奥まで辿り着く。
「……ディアボロス、大丈夫か?」
「…ぁ…も…分かんな…」
「…どうしてお前はそう、興奮を煽るようなことばかりするんだ」
煽りたくてやってるわけじゃない、と返す前に、バハムーンがゆっくりと動き出す。あまり大きく動くことはせずに、細かく緩やかな
速度でディアボロスを突き上げる。苦痛と紙一重の刺激は、しかし、じっくりと攻められる内に体に響く快感に変わっていった。
「ふ、ぅぁ…バハムーン…ぁ、あぁ…」
「…少しは、辛いの、マシになったか?」
こくこくと頷いたディアボロスはバハムーンの首に縋りついた。そうされると少々動き辛いが、
甘えられているようで悪い気はしないし、熱くて柔らかくて少しきつい彼女の中は入れているだけで達しそうなほど気持ち良い。
二人はゆっくりと高みに押し上げられていった。自身の限界が近いのを感じ、バハムーンはディアボロスをしっかりと抱きしめる。
「…ディアボロス」
「っあ…ん…ばはむ、ぅあっ…?」
「…好きだ」
万感の思いを込めて最奥で精を放つ。子宮をこじ開けられ、中を埋めつくされるその感覚に、ディアボロスも限界を迎えた。

少しの間、部屋には互いの荒い呼吸が満ちていた。
肩で息をするディアボロスは、ふと、彼女を見下ろすバハムーンがこれ以上なく優しい目をしていることに気付く。
その優しい眼差しが、彼女の中の張り詰めていたものを解きほぐした。
「…お、おい、ディアボロス? どうした。何故泣くんだ。辛かったか?」
「…すまない…感極まった…」
「どういうことだ? おい、俺にも分かるように説明してくれ。だ、大丈夫なのか?」
途端に慌てるバハムーンを見ていると、先ほどまで自分を好き勝手していた相手と同一人物とは思えなくて、ディアボロスは思わず吹き出してしまう。
泣きながら笑うなんて器用なことをする彼女の上で、バハムーンはおろおろと困ったままだった。
135バハムーン♂×ディアボロス♀ 14/14:2014/05/19(月) 23:41:46.26 ID:AxGh+AS8
「うまくいったようで何よりだよ」
「ああ。すまんな、色々気を使わせた」
「なーに、このくらいなんてことないさ」
槍と剣で打ち合いながら、バハムーンとクラッズは笑みを交わす。
今日も今日とて――バハムーンのせいでディアボロスが不調だったので――冒険に出なかった一行は、朗らかな日差しが注ぐ中庭でのんびりしていた。
「それはそうと、さ」
上から下へ、右から左へと流れるような動作で木刀を撃ちつけながら、クラッズが言う。
「おう、どうした?」
それをやり過ごし受け流すバハムーンは、首を傾げる余裕も見せた。
「お願いがあるんだ」
「俺に出来ることなら」
「フェルパーを落とすの、手伝って」
カァンと高い音が響く。バハムーンの持っていた物干し竿は、下から上へと斬り上げた勢いではねとばされてしまった。
「…お前さんが落とせないのか?」
「彼女の鈍感さと純粋さは、君のディアボロスと並ぶほどかもしれないよ」
「それは相当だな」
言って、バハムーンとクラッズは互いから視線を移す。その先には、
「……くぅ……すぅ……」
「……にゃ……くー……」
お互いの肩にもたれかかり、穏やかな寝息を立てるディアボロスとフェルパーがいた。
いいなぁディアボロスの肩枕…とぼんやりするバハムーンの隣で、クラッズは非常に珍しいことに悔しげに表情を歪ませる。
「…私なんて、フェルパーの寝顔見るのに二カ月かかったのに…たかだか三週間で…!」
「……そうなのか」
「ディアボロスだから許すけどさ。…とにかく! あの鈍感娘を落とすのは一筋縄じゃあいかないんだ。協力しておくれよ」
「分かった分かった。で、俺は何をすればいいんだ?」
「そうだね、まずは――」
安心しきった様子で眠るディアボロスとフェルパーの前で、クラッズとバハムーンは悪巧みを開始する。

明るくとっつきやすい性格に見えて実は癖のある前衛二人と、一見関わり辛いように見えて実は人の良い後衛二人。
そんな、呑気で陽気な彼らの冒険は、

「…おっ、そこのカワイコちゃん! よかったら僕とデートでも」
「こらっ! あなた、いい加減にしなさいな!」

まだまだ始まったばかりである。
136110:2014/05/19(月) 23:43:13.62 ID:AxGh+AS8
以上です
配分間違えて妙なことになって申し訳ない
それ以外にも色々と申し訳ない
ちょっとスライディング土下座してくる
137名無しさん@ピンキー:2014/05/20(火) 00:14:29.22 ID:D5B9z/d6
>>136
待ってたGJ。ディアボロスの初々しい感じがいいな
そしてクラッズとフェルパーにも激しく期待
138...:2014/05/20(火) 20:39:44.00 ID:pE2t7A7X
>>114です。
あの時、相関関係作るのたのしかったなぁ、とか考えながらととモノ3の舞台で百合ったったので投下します、結局楽器集めで投げたんだっけ…
主人公は当時のパーティから引っ張ってきました(もともと別の企画用のキャラだったのですが)
記憶がうろ覚えだから原作のキャラは出ませんが気にしないでください
先駆者の皆さんと見比べると見苦しいところなど多々ありますがさらに気にしないでください
139ある娘の私利私欲(1/6):2014/05/20(火) 20:42:27.22 ID:pE2t7A7X
冒険者の道を志し勉学の道へと進んだ者が入る場所。それが冒険者養成学校の存在意義であり、
生徒たちも学校に夢を叶えるための踏み台としての機能を求め、やってくる。
だが、必ずしも全員の目的がそこにあるとは限らないのが世の中の面白いところだろう。


「ふぃー、今日も帰ってこれた」
「あぁもうホントだべ、アイツの魔力が尽きたときはどうしようかと思ったけど、何とかなったべ」
南東の砂漠と火山に囲まれた過酷な立地にある学園、タカチホ義塾の学生寮ではいつもくたくたに疲れ果てた生徒たちが各々の部屋で身を休めている。
二人部屋になっているこの一室に暮らしているのは今しがた生傷だらけで迷宮探索から帰還したこの娘たちだ。

「でも、収穫は上々。もうあの薄暗い遺跡に通う生活とはしばらく縁がなくなりそうだ」
腰に携えた刀を棚に片付けているはドワーフのアスカ。
彼女は武家の出身で、家を継ぐ器となるための修練として自ら冒険者の世界へと飛び込んだ経歴を持つ。

「あぁ、そうだといいべ。もう扉に尻尾を挟んでケガをするのはキツいべ…」
自身の背丈より大きな斧を壁に立てかけたのはバハムーンのリサ。
アスカの家の家来の娘として生まれた彼女はアスカにとって幼馴染でありながら主従関係にあり、アスカの世話役として抜擢され共にこの学園にやってきた。

「え?もしかして、また挟んじゃったのか?…うわぁ、鱗がはがれてるじゃないか」
「いつになっても鉄の扉は慣れねぇべ。オレの家みたいに扉が全部ふすまなら怪我しないのにな」
二人の間に先ほどまで血を血で洗うような戦いぶりを見せていたとは思えない朗らかな笑いが生まれる。


彼女たち二人の目的はアスカの社会経験と侍としての修行にあり、学校を卒業して冒険者になるという他の生徒たちが夢見るような目標は彼女たちの眼中にはない。
ならば他にも修練を行うだけならやり方はいくらでもあるし、家をわざわざ飛び出して危険に身を晒す必要はないのだが、
アスカにはそうまでしてこの学園に入る意味があった。


「あはははは…はぁ、可笑しかった。…でもとにかく、今日もリサは頑張った。そして私も頑張った。お互いを労おうじゃないか」
「…え、帰ってきたばっかりだべ?少し休んでからでも…」
「いいんだ、本調子のまま臨んだらそれこそ腰が立たなくなって明日の探索に支障が出かねないからね」
「アスカ…で、でも、オレ今汗臭ぇべ…?」
「素敵じゃないか。私はリサの匂い、すごく魅力的だと思うよ。それとも、リサは何か問題があるのかい?」
「え、そう…か?アスカが問題ないなら…べつにいつでもオレはいいんだけど…」
「やらない理由がないならやっておこう。ほら、脱いで脱いで」
彼女たちはやおら着ていた服を脱ぎ、畳んで箪笥にしまってから裸で向き合った。

「おっと、鍵かけておくべ」
踵を返そうとするリサの口元に明日香の右手が添えられる。
「いいよ、やろう。それに多少スリルがあった方が燃えるだろう?」
左手はいつの間にかリサの陰部に滑り込み、彼女の準備ができていることを確認しつつわずかに入口の内壁を指の腹で擦り事を促す。
「…わかったべ。ごめんな、気が利かなくて。」
「ううん、むしろそういう気遣い、嬉しかったよ。」
アスカはリサの手を取り彼女の布団の上まで連れて行く。まだ左手の指はリサの中にわずかに入ったままもどかしい刺激を続けている。


リサが彼女の嗜好を知ったのは思春期に入りしばらくたったころだ。
幼いころからの付き合いである二人の仲は当初から異質なものだった。アスカはリサに恋心を抱き、両親にさえ嫉妬するほどにリサを大切に思っていたのだ。
そのころは彼女の言動をまだ過剰な友情というくらいにしか思っていなかったリサだが、その認識はとある時に改められることになってしまう。


「…ねぇ、どうしたい?リサ」
「え?うーん…なんでもいいべ。アスカと一緒なら」
その言葉に思わず目を細めるアスカ。
半分はリサの甘い発言に気分を良くなったことによるものだが、もう半分は決定権を委ねたのにもかかわらずそれを蹴られたことへの驚きだ。
「じゃあ、勝負しよう、ね」
140ある娘の私利私欲(2/6):2014/05/20(火) 20:43:54.15 ID:pE2t7A7X
きっかけは、アスカの家でのお泊り会であった。
アスカと共に風呂に入ったリサは、風呂上りの彼女の様子がおかしいことに気付き、そっと後を追って部屋へ様子を見に行った。
ほんの少しだけふすまを開き隙間から部屋を覗き込んだリサが見たものは、アスカの自慰。
当時まだ初潮すら訪れていなかったリサであったが、彼女のリサの名を連呼しつつ股間をさすり嬌声を必死に堪える行為に、その意味を理解したのだった。
親友の想いを感じ取ったリサは部屋へと踏み込み、秘め事が露見し動揺する彼女をよそに自ら彼女の生涯の伴侶となることを宣言する。
それはいたく彼女を感動させ、リサのプロポーズを願ったり叶ったりだと二つ返事で受けて二人の仲は親友から恋人へとステップアップした。
また、この出来事を彼女の親に報告すると『並みの男より甲斐性ある、それだけの気概があるのならば』と、両親公認の仲となれたのだ。

彼女は自分たちの仲を快く容認した両親に目を丸くし、世継ぎなどの問題はどうしたと疑問を呈したが、
別にそこは養子などもらえばよいとむしろ彼女たちを応援する態度を崩さなかった。
もはや学校で男子生徒が女子の制服を着てもよい時代。ならばこれくらい認めてもいいだろう、とアスカの両親は笑って言っていた。


「…ん…あは、今日のリサの唇、いつもより柔らかい」
「そ、そう?自分じゃわかんねぇべ。…ん……」
一つの枕に互いの頭を預け、向かい合う二人。
ときおりどちらからともなく行われる軽いキスは二人を学園の世界からその外へ切り離していく。
互いの背中にまわる互いの腕がいっそう力を増し、互いの境目を崩し一体化せんと引き絞る。
枕が、布団の端が、液に滲みていく。


しかし、当時彼女たちは結婚ができる年齢には達しておらず、
さらにアスカもまだ家督を継ぐのに十分な実力を持っていないことを理由に両親から夫婦の真似事はしないようにとのお達しが出されていた。
また、リサも同様に両親に『まだ儀礼も覚えられていないお前に正式に主様に仕えることは適わない』と、リサがアスカのものとなることを反対されていた。

恋人となり、将来を誓ったのにもかかわらず、リサを自分のものとできないアスカは、欲求不満を抱え何とか両親の目を欺けないかと画策する。
そんな彼女が目を付けたのがこのタカチホ義塾であった。
アスカの修行の場となり、リサの花嫁修業の場ともなることを兼ね備えられるこの場所は、お互いの両親から疑われることはない。
さらに寮に入れば同棲もできるため、彼女が求めていたリサを誰にも邪魔されず堪能することができる。
彼女にとってここは幸せな結婚生活を送る前にその甘いところだけを味わおうとするための隠れ蓑であった。


「くぅ…あす、かぁ…」
「…イイ声。でも、一人で愉しんでたら勝てないよ?簡単にイったら私もやりごたえないし」
アスカのドワーフならではのごつごつとした指は見た目に合わず滑らかにリサの背中を滑り、彼女の翼と尻尾の付け根にある皮膚と甲殻の境目を労わる。
不規則にリサの弾力ある胸を先端の突起を残して愛撫するアスカの舌は、
まるで犬がマーキングで所有権を主張するかのようにしつこくリサの二つの丘に自身の唾液の匂いを擦りつける。
アスカから送りつけられる需要に見合わぬ小さな快楽の波に、唇をきゅっと結んだままの表情のリサがキッと眉を寄せアスカをにらみつける。
リサの精悍なその目は敵と対峙した戦士としての豪放磊落で勇敢であるそれではなく、哀れな犠牲者が持つ細枝のようなか弱い反抗心に支えられたそれであった。

「…あ。…ふふ、やるじゃない」
リサの尻尾の先がアスカの秘裂へと向かい、その肉芽の頭を優しく撫でつけた。
ピリッと感じるその刺激はそれだけではまだ達するほどではないのだが、彼女の気分を盛り立てる発破とはなりうる。
「でも、だーめ。たくさん焦らした方が気持ちいいんだから…もうすこし私はこうしてるよ?」


始めは、寮生活が始まってすぐから性交渉を仕掛けてきた親友の豹変ぶりに驚きを隠せなかったリサであったのだが、
なしくずしに肌を重ねていくうちに今では彼女の手技にいくつもの器官を欲望の対象へと開拓され、まんまと彼女の指一本にその心を絡め取られてしまっていた。
かつては親の身分など関係なく常に同等の身分で接していた二人だが、そのパワーバランスの拮抗は完全に崩れていた。
141ある娘の私利私欲(3/6):2014/05/20(火) 20:47:53.43 ID:pE2t7A7X
「…んっ、はぁっ…ぁ!…ダメ…許して…頼むから…」
「いいよ、リサ、すごくトロトロで、いい表情。でも、もっとリサならグチャグチャでだらしない可愛い顔できるよね?」
「えっ…ぅう、もう、ムリ、ダメだべ…」
「ダメじゃない。この前もできたんだから今日もできる。私は何もおかしなことは言ってない、そうでしょう?」
話しながらゆるゆるとではあるがリサを快楽へと導いていた指が止まる。
それは今のリサにとって、普通の状態を通り越して苦痛とすら感じさせた。
沸点をわずかに下回る熱量を持つに至ったリサの聖域は自身へと我慢の限界を訴え続ける。
しかし、リサの腕はひっしと目の前のアスカの背中を抱いたまま、その訴えを見て見ぬ振りする。

主の前で自慰をするなど不敬の極み。なおかつそれが彼女本人の手技により高められた欲望ならなおさらであった。
「アスカ…頼むからぁ…虐めてくれよ…責めてくれねぇと、おかしく、なる…」
「ふーん、でもいいのかい?負けになっちゃうよ?それに、自分で慰めた方が早いよ?私、下手だしね」
下手?いや、それはとんだ詭弁である。彼女の手技が下手ならば、なぜリサは己を慰めることができなくなっているのだろうか。
アスカの言葉にリサは一心に首を振る。
それは目の前の親友の言葉を否定すると同時に、この昂ぶりを我慢するという選択肢を捨て去ることでもあった。


アスカのリサを求めるその欲望は執念とも呼べるものがあった。
彼女は突如として部屋に上がり込んできたリサからのあのプロポーズを受けたとき、喜ぶ半面心の底に怖れを抱いた。
自分が特異な魂を持つ人間だという自覚が彼女にはあった。親友に生産性も道理もない不純で歪んだ感情を抱いた人だ、と。
あの純粋なリサが自分と同じ同性を愛せる精神異常者だとは到底思えなかった。
彼女は考えた。リサにはいずれ汚らわしくて汗臭い男どものどれかに恋をし、交わり、その子を産むことになる未来がある。
そして悩んだ。そんなリサは今後も自分を見つめ続けてくれるだろうかと。このまま、こんなヤツと一緒でいてくれるだろうかと。
最後に彼女はこう結論付けた。異性にリサの意識が向いてしまうその前に、自分の虜になってしまえばいいのだ、と。


「そんなことはねぇよ…だから、お願いだから、オレを…」
彼女がその気になるようにと、リサの尻尾が再度アスカの秘部へとすり寄る。
すると、アスカの手が尻尾をさえぎり、掴み上げた。
「…ダメって、言ったよね?
…まぁ、いいか。今回はもう許しちゃうけど、次もやったらお仕置きしなくちゃいけなくなるからね?」
アスカの指が尻尾の先を握り、その先端を前後に擦り上げる。
尻尾の付け根とは別にこの部分をこうして刺激するとリサにはまた別の快感が生まれることを彼女は知っている。
「…ふぃっ!?…あ、やぁっ!」
どの種族にも言えることだが、尻尾は敏感で刺激されると非常にこそばゆい感覚に陥る個所である。
アスカがそこをあえて責めて性感を刺激できるように開発したのは敏感であるからこその快感の大きさを狙ったものであるが、
それとは別に、まるで男性の絶頂を誘うような動きをすることになるこの倒錯的な絵面も彼女が気に入ったポイントだった。
「はぁっ、んんっ…うぁ、あすかぁ…」
「あは、リサの尻尾って敏感…まるで男のアレみたいだね」


アスカは、人一倍素直なリサの心を捕らえるには、彼女の欲望を掌握することがうってつけだと考えた。
そのために彼女は独学で性についての知識を、快感を覚えさせるための手技を覚えた。
自分が、自分だけがリサを善がらせることができると彼女の身体に刻み付けるために。
誰にもリサの奥の聖域を穢させないように。
リサは私のモノだという確固たる自信をつけるために。

でもそれはつまり、自分という檻にリサを囲い込むこと。
アスカの目標はそんな、浅ましくも独りよがりな独占欲が凝り固まったものだった。
今でも彼女は自分自身をお気に入りのおもちゃを箱の中に大切にしまいこむ子どものような幼稚な発想をもってして、
こんな淫靡なことをしているのかと自嘲する。
142ある娘の私利私欲(4/6):2014/05/20(火) 20:49:41.06 ID:pE2t7A7X
「あっ…!?」
尻尾への責め手を緩めることもないまま、ふいにアスカの指がリサの背中を背筋に沿ってすっと撫で上げ、さらに耳を甘噛みした。
それだけでリサの身体は打ち震え、驚きと切なさに満ちた顔をする。わずかにだが、絶頂の閾値を超えたらしい。
また一つリサに刻み付けた傷跡が増えた。アスカの欲望が一瞬の微笑に表出する。
「ふぁ…ひぃっ…」
その惚けている顔を目で犯し、怯えているような微かな嬌声を耳で確かめ、
ハリのある肌を指で堪能し、だだ漏れとなっているメスのフェロモンを鼻腔いっぱいに味わう。
とろけるような甘美に浸っているアスカは心とは真逆にまっさらな無の表情でその反応を見ていた。
「ん、どうしたの…?もしかして、こんな拙い愛撫で気持ち良くなっちゃったんだ?」
「だ、だって…」
「じゃあ、やっぱり私はいらないかぁ」
「…え……?」
「だって、耳と尻尾と背中を触ったくらいで気持ち良くなれる敏感なリサなら、私がどうこうしなくても気持ち良くなれるもんね。
こんなんじゃあ勝負にならないし…私、もう疲れたし寝ちゃおうかな」


『勝負』というものも彼女がリサの心を自分に繋ぎ止めておくためだけの虚構にすぎない。
アスカがリサを絶頂させたら勝ち。耐えきられたら負け。
そんなルールにおいて行われるこの趣向は、初めの頃はくすぐるだけとか、胸を揉むだけとか、そんな程度。
じゃれ合いの延長線上をしているだけだった当時のリサはまだ無垢であった。
いまだにリサの純潔は守られ続けているが、ここまで猥らな感性を習得させられてしまった今では既に純粋さより淫靡さの方が上回っている。

常にこの『勝負』ではリサの性感を熟知したアスカが勝つ。だが勝ち負けなんて彼女にはどうでもよかった。
ただ、彼女はリサを嬲り、弄び、リサが自分だけの彼女だと再確認できる機会が欲しいだけ。意味など始めから存在していない手段のための目的だったのだ。


「だ、ダメっ!」
目を逸らせたまま上体を起こそうとするアスカを、腰をグイと掴み必死に抱き寄せて止めるリサ。
気高いバハムーンであるはずのリサのその瞳は、まるで捨てられた子犬のように潤んでいた。
「いいの?私なんかで?」
「…いじわるはやめてくれよ。オレは、アスカがいないとダメだべ。
アスカにされないと、ダメ…なんだ。だから、頼むよ。……イカせてくれ。」
蚊の鳴くような声でそれだけ伝えると、ただでさえ紅潮していたリサの顔はさらに朱くなり、目線を外してうつむいた。
「……えへへ、ごめんね。よく言えました。……これはご褒美だよ?」
その姿を愛おしそうに眺めていたアスカは、両手でリサの頭を持ち、その額に軽くキスした。


『勝負』が自分を玩具としたアスカの児戯にすぎないとはリサも気付いている。
しかし、そんなことはリサには問題にはならなかった。

アスカがもたらしてくれた今まで知ることもなかった快楽はすぐさまリサを中毒に追いやった。
これまでの人生を彼女の部下として、主を守る戦士として暮らす半生を送っていたリサに『女』としての快楽は未知で強大であった。
それは好奇心を大いにくすぐり、その思いの赴くままアスカに付き合ううち、
気が付いたときにはもう後戻りができないほどに猥らな感性が磨かれてしまっていたのだ。

だが、リサは今の自分の状況やアスカの行動に不平を漏らしたことは一度もなかった。
理由はもちろんリサにとって彼女は主であり、そうそう文句の言える相手ではないという部分が一番であったが、
リサは性に堕落していく自分が、ただひたすらに滑稽であったということも理由の一つにある。
楽しめていたのだ。アスカの手の上で転がされ、その手技に狂わされ、破滅していく己の無様さを。
143ある娘の私利私欲(5/6):2014/05/20(火) 20:51:22.00 ID:pE2t7A7X
どさりとアスカはそのまま倒れ掛かり、仰向けになったリサの上にのしかかるように寝そべった。
「…今日もありがとうね、ここまで付き合ってくれて。…じゃあ、イかせるよ?」
アスカはリサの胸の谷間から覗きこむように上目遣いする。
その顔は慈しみに満ちているようにも、冷めているようにも見えた。
「お、お願いします…ひゃぁっ!?」
リサの言葉を半分聞き流すようにして、アスカはリサの肉が詰まってハリのある胸の先端を含み、吸い上げながら舌先でチロチロと擦る。
空いた両手はそれぞれもう一方の胸とリサの肉芽へ向かい、いきなりに三つを摘まみ圧迫する。

胸にむしゃぶりつく彼女の顔が一瞬上がる。
それに相槌を打つようにリサがゆっくりと頷くと、アスカは両手と歯を使い三点の突起をちぎりそうなほどに捻じり上げた。
「あ、あっ…ふぁああああああああああっ!」
身体をくの字に曲げビクンと大きく震えるリサに、彼女は強い愛おしさを覚え、同時に自身の奥底の快楽も最大限に高まる。
目をシワが寄るほど強く閉じて快感に打たれるリサの頭を労わりつつ、アスカは小さく、だがとても充実できる絶頂を迎え入れていた。


彼女には、リサが絶頂に打ち震える姿を見るたびに思い出す光景がある。
それは、彼女が初めてリサに絶頂を体験させたときのことだ。
たしか背中に抱きついて、『ねぇ、大人の遊びをやってみないかい?』とかなんとか言っていたように彼女は記憶している。

それが快楽とも気付けず歯を食いしばって意識が押し流されないようにしていたあの苦悶の表情。
予想外の反応だったが、それはそれで彼女の感性をくすぐるものがあった。
散々あちこちをまさぐり、そして最後に軽くキスしながらまだそんな器官があるとも知らないであろう肉芽の包皮をめくり、露出した本体を撫で上げた。
あっ、と言うと同時にリサの身体は痙攣し、糸が切れたかのようにぐったりと脱力しそのまま失神していたリサのあの一連の反応は今でも思い出して口元が綻ぶ。

波が引き気を取り戻したあと、安心して一息ついたその吐息は特別唾液の匂いがきつかった。
『…怖い。なんだったんだべ、今のは?』と、ぼそぼそとした声で訴えかけていたあのころのリサは心底から初心だった。
名前すら知らなかった快楽という感覚を大きくリサの心に刻み付けたあの日の深夜、
彼女は床の中でなぜか涙が止まらなかった。
今でも彼女はあれが嬉し泣きだったのかそれとも本当に悲しかったのか判別がついていない。


「そうだ、なんだかんだですっかり忘れてた。」
湿気るどころかすっかり濡れてしまった布団のカバーを外しを雑巾で拭っているアスカが、ふと思い出したようにつぶやく。
その声は小さいものであったが、すぐ脇にいるリサの耳に届くには十分だったようだ。
「ん、どうしたんだべ?」
「あぁ、あのさ…リサにプレゼントしたいものがあるんだ。似合うと思って」
作業を切り上げた彼女はタンスをガサゴソと探り、一本の革のベルトを取り出して見せる。
腰に巻くものとしては明らかに短すぎるそれは、アスカが常に身につけている物と同じもの。

「…それって、首輪?」
「うん。」
「これをつけるってのか?…あははー、そんな冗談ばっかり。そんなの犬っころにつけるかアスカたちドワーフがつけるものだべ?
ペットにつけるようなものオレがつけてもおかしいべ?」
「それがいいんじゃないか」
「…へぇ?」
何を言っているのかわからないとばかりにキョトンとした表情をしているリサだが、アスカは気にせずさらに言葉を付け足す。
口元に手を当てながら話している彼女の顔は目を細めていて楽しげだ。
144ある娘の私利私欲(6/6):2014/05/20(火) 20:54:06.89 ID:pE2t7A7X
「私はリサに首輪をつけて、番犬代わりに飼いたいって思ってたりするんだよね。もちろん、そういう『遊び』っていう話だけど」
「おいおい、そんな変態みたいなことに付き合うのはちょっと…」
「いや、リサにはそんな変態になる才能があると信じてる。
女の子同士で楽しめちゃう恐れを知らないリサにはこんなのたまらない背徳感でしょう?
それに、まだ私たちペアルックの服とか持ってないんだし…いいじゃない?これくらい」
これくらい、とは揃いの首輪をつけることを言っているのだろうか。
だが、リサにも彼女のその言葉の裏に何か思惑があるとは容易に見えた。

「…そんなことを言っちゃって、結局どうしたいんだべ?」
「うーん、そうだな、外では誰よりも勇敢で強いリサが、この部屋の中では私一人の所作に一喜一憂する光景。…ふふ、楽しそうじゃない」
彼女のその目は瞬きも少なめで、一切の間断もなくリサの瞳へとそそがれ続けている。
生まれが高貴であるからこそなせるおぞましいほどに威厳の籠った思わず顔を背けたくなるような視線。
「なんだ、それって現状維持ってことだべ?
わかったよ。アスカがそれで嬉しいってんだろ?なら、やってみる価値がオレにはあるってことだべ」
「…そう、ありがとう、リサ」
それは有無をリサに言わせる気はない、ということであった。

彼女は礼を言うのが早いか、首輪の留め金を外してリサの首へと押し当てる。
自身が普段身につけているそれと同じ、幅広で赤い大きな首輪が、高潔なバハムーンであるリサの首に手際よく巻かれる。
一度ゆるいところでバックルを締めて頸部への当たり具合を確かめた後、グイと一気に引き絞った。
「ッ!?アスカ!?」
「大丈夫だから、首を絞めるとかそんなことはしないよ」
慌てたリサに微笑みで答えるその顔は明らかに反応を愉しんでいた。
ゆるく首に引っかかったような形で首輪がついていると動いた拍子にぶらぶらと動いたりして何かと邪魔になる。
アクセサリーをつけるなら動くときに邪魔にならないようにぴっちりと張り付くように、というドワーフの生活の知恵。

だが、異種族のリサにとって首輪はただのアクセサリーではなく、常に首をわずかに絞められているという激しい違和感を産み出す装置として機能する。
その侵襲性の高さは、自分はアスカに全てを、命さえも握られていると錯覚させるには十分であるだろう。
事実、そのような恐怖から先ほどのリサの動揺があったのだ。

「かわいいよ、似合ってる!」
「そ、そう…か?」
アスカはそんなリサの瞳の奥の困惑を見つめ、また一つリサのこころを崩したと手ごたえを感じ、
自身のなかの何かが壊れていく様を幻視した。


あぁ、私は、親友をまた一つ墜落させてしまった。
私は、どうしようもない不義者だ。
私は、真正面から恋心に向かい合う勇気がなかった。思い描く理想図に近づくために友との絆を投げ捨てた卑怯者なのだ、私は。


「リサ、」
「なんだべ?」
「それでも私は愛してるから、心から」
「いきなり喋りだしといて『それでも』ってなんだべ?…オレもアスカのこといっぱい愛してる」

「…じゃあさ、これからも私に奉仕してくれる?」
「…うん、喜んで」

あえてこの言葉を、わざと上下関係が出るような言い方を選んだのに、
リサの否定を聞きたかったのに。
彼女は、頷いた。
「そう。…ありがとう、リサ」
「…なんで泣いてんべ?」
「え?あ、あぁ、嬉し泣きだよ、リサがそんなに私のことを大切にしてくれたらと思うとね」

私とリサの仲はもはや対等でも恋人でもなかった。
リサは、私との関係を、『主従』という枠組みで受けとめられてしまったのだから。
もう、私の想いが愛の形をとることは適わなくなってしまっていたのかもしれない。
私は主でリサはその従者。父母や祖父母の代と同じ関係を、私たちはただ漫然と続けているだけであった。
145名無しさん@ピンキー:2014/05/20(火) 21:02:52.89 ID:efqzWv01
2連続だと……何が……何事が……!!
146110:2014/05/21(水) 20:51:12.95 ID:2cFT2quG
有り難い言葉をいただいた上に>>114の素敵な話を見て俺の中の何かが目覚めたらしい
連投っぽくなってしまって申し訳ないんだが、投下させてもらいます

クラッズとフェルパーの百合、エロまで遠い上にエロくない上に本番どころか前戯もほぼ無し
百合と思って書いたし今も百合だと思っているけど、世間一般の百合とはだいぶ違うんで注意してください
147クラッズ♀×フェルパー♀ 1/12:2014/05/21(水) 20:53:29.24 ID:2cFT2quG
小さい頃から、お前は女らしくないと言われ続けてきた。
家の中でお人形遊びをするよりも外でチャンバラや虫取りをする方が好きだったし、甘い恋愛物よりも危険な冒険譚に目を輝かせる子どもだった。
成長してからもその傾向は変わらず、それどころか、見方によっては更に悪化した。パーティの先頭に立ちどんな強敵にも怯まず、
相手が強ければ強いほど興奮し、唇は知らずのうちに獰猛な弧を描く。可愛らしい顔を凶悪な笑顔に歪め、愛嬌のある丸い目を爛々と
輝かせる彼女は、時が経つにつれ一部の生徒から”戦闘狂い”の呼称を押し付けられた。
もっとも、彼女を女らしくないと言わせる理由は戦闘時に依るものではない。むしろ、普段の生活の場面でそう言われる方がよっぽど多かった。
中性的な話し方や、動きやすいからと身に付けている男子用の制服などはまだ序の口だ。紳士的で丁寧な態度、朗らかな笑顔、
聞いているこちらが思わず赤面してしまうような言葉。しかも、性別種族関係無く大半の相手にそう接するのだ。
彼女からしてみれば、それは単純に、えてして浮きがちな自分を周囲の面々と馴染ませるためのある種の処世術であった。
しかし、そんな思惑とは関係無しに、彼女を知る相手はクラッズをこう呼んだ。曰く「イケメン少女」と――

そんなイケメン少女であるクラッズだが、例えば男になりたいとか、はては女の子にしか興味がないといったことは全くなかった。
変わっている自覚はありつつも自分の性別は紛れもなく女性だと認識し、女の子の複雑で面倒くさいところは可愛いと、男の子の単純で
直情的なところは楽しいと考えていたため、その気になればどちらでもいけた。もっとも、本気でないのにそういった付き合いをする気は
一切無かったので、こうしたアプローチをするのはフェルパーが初めてであるが。

フェルパーは入学してから初めてできた友人である。
入学式が終わり、新しいクラスで新しい生活への期待と不安で緊張していた同期の候補生の中でも、彼女は飛び抜けて緊張していた。
表情を強張らせ、瞳孔は膨らみ、耳をペタリと伏せ、落ち着きなく揺らされている尻尾の毛はぶわりと逆立っている。
彼女の種族は人見知りをすることは知っていたし、種族柄フェルパーに自分から話しかけるのは気が引けたのだが、なんとなく
緊張で今にも倒れそうになっている彼女を放っておくことはできなかったのでクラッズの方から声をかけたのだ。
「や、こんにちは。隣座ってもいいかな?」
「っ……?! ………………」
「…えっ? えっ、ちょ、君、大丈夫かいっ!? うわ、わ、まずい…も、モミジ先生ーっ!」
その結果、既に限界間近だった彼女に止めを刺してしまったのだが。

そんな、今考えるとわりと最悪な出会いを果たした二人は、意外にも一緒にいるようになるまでに時間はかからなかった。
初めの一件でフェルパーが極度の人見知りだということはよーく分かったので、クラッズは、まず彼女が怯えない位置を探すことから始めた。
個人が他者との間に必要とする空間、パーソナルスペースを掴み、徐々にでも縮めることで、自分に対する緊張を和らげようと考えたのだ。
最初は15mだったその距離も、毎日笑顔で話しかけるうちに13m、10m、7mと縮まっていき、二人がとあるパーティに所属する頃には
3mになっていた。快挙である。大事なことなのでもう一度。快挙である。
148クラッズ♀×フェルパー♀ 2/12:2014/05/21(水) 20:56:23.22 ID:2cFT2quG
パーティ内では、クラッズはフェルパーの通訳者状態になっていた。彼女は決して悪い性格ではないし、ナースとしての技術も、それを更に
洗練しようとする意思も努力する力も持っていたが、その人見知り癖はそれらの美点を覆って尚余りあるものだった。
そこで仲間たちはクラッズを頼ったのである。彼女はどんな種族ともそれなりに良好な関係を作れたし、フェルパーも、その頃には
クラッズとなら、たどたどしくとも意思疎通をできるまでにはなっていたので、フェルパーのことはクラッズに一任されていた。
とはいえ、クラッズは、いつまでもその役割を果たすつもりはなかった。フェルパーは自分がいないとやっていけないような
依存心が強い性格ではないからだ。そして、その判断を裏付けるように、彼女は自分から他の仲間たちとも関わろうと努めていた。

しかし、そんな時に転科事件が起きた。
今でこそ、バハムーンとディアボロスという、世間一般で言われている種族の悪評をさらっとスルーしている仲間と出会えたが、
脱退した当時はそんな都合の良いことがあるとは思わなかったし、これからどうしたものかと二人揃って途方に暮れていたのだ。
特にフェルパーは、ようやく少し馴染めてきたパーティを抜けたことで大分参っていた。緊張しいな彼女にとって、これからまた
新しいパーティを探し、そこの仲間に慣れる努力をすることは相当な負担なのだろう。
「……ごめんよ、フェルパー」
自然と零れた声は、自分らしくない弱々しく震えた声だった。フェルパーは耳と尾を垂らしたまま、クラッズを見つめる。
「……どうして、クラッズが謝るの」
「こんなことになってしまって…」
「……後悔してる?」
「いや、まったく。…けど…もっとうまく立ち回るか、もう少し辛抱すれば良かった。新しい編入生が来るのはもう少し先だろうし…
 こんな中途半端な時期に新しいパーティを探さないといけないのは、大変だ」
自己嫌悪で顔が上げていられない。唇を噛み俯いたクラッズを、フェルパーは少しの間じっと眺めていたが、
なにを思ったか不意に彼女の前に膝をつく。まん丸の目に射止められたクラッズは目を瞬いた。
「別々に、探す?」
「いや…私は、そうしたくないな。その方が効率は良いかもしれないけれど、君と離れるのは寂しい」
火花が爆ぜるように飛び出してきた言葉はクラッズ自身を驚かせた。自分がフェルパーにここまで執着しているとは思っていなかった。
けれど、嘘偽りない正直な気持ちだ。そんな気持ちを込めて彼女を見つめ返すと、フェルパーは仄かに口元を緩める。
「…私も。大丈夫だよ。一緒に探そう? 私、ちゃんと、頑張る」
柔らかく微笑む彼女は、いつになくまっすぐで力強い、吸いこまれそうな目をしていた。少しだけその目をじっと見つめ、クラッズも笑う。

多分、きっと、この時に、クラッズは恋に落ちた。
普段とは違う芯の強さにやられたとか、初めて見た笑顔にやられたとか、健気な言葉にやられたとか、考えられる理由は幾つかあるけれども。
(わざわざ理由付けなんて、しなくていい)
クラッズは、思う。
(一般的ではない恋だって、構わない)
フェルパーに対して感じている、どうしようもないほど強い恋慕の情を抱えながら。
(何故好きになったかなんて些細な問題だ。障害なら頭と力と技を使って捩じ伏せる。…こんなことを本気で思う程度には、私は、あの子のことが――)
149クラッズ♀×フェルパー♀ 3/12:2014/05/21(水) 20:58:37.93 ID:2cFT2quG
「つまりね、私はフェルパーが大好きなんだよ、バハムーン」
「ああ。それはもう、よく分かっている」
どこかげんなりした表情を返されて、クラッズは頬を膨らませた。
「君の惚気をいつもいつもいつもいつも聞いているのに、その反応はあんまりじゃないかい?」
「あんたに対してじゃない。フェルパーの鈍感さに対しての溜め息だ」
「……ああ」
やれやれと首を振るバハムーンに苦笑を返す。本来ならば、精霊結晶を納め終えこれから楽しい夕食ということで胸が弾む場面だが、
それを補って余りある精神的な疲れが二人の肩を重くした。ちなみに、フェルパーとディアボロスには座席を確保するよう頼んだので
今この場に二人はいない。想い人の前でこんな話ができるような心臓は持ち合わせていない。
クラッズの「ありとあらゆる手段を駆使してフェルパーを落とそう大作戦」はどれもが不発に終わっていた。フェルパーは、高すぎる壁だった。
参考までにここ数日の作戦の経過を見ていただきたい。もっとも、作戦とはいえ、最近のクラッズはかなりしびれを切らしているので
巧妙というよりは直球ど真ん中一本勝負、もはや普通の告白になっていたりするのだが。

その一、「東方に学ぶ」
はるか東方にあるタカチホ大陸には、「俺のために毎朝味噌汁を作ってくれ!」というプロポーズの言葉があるらしい。
初めて聞いた時はなんだそりゃと思ったものだが、よくよく考えてみると「俺のために」「毎朝」と重要な部分は押さえている。
キザったらしくもないしこれは良いかもしれないと、早速自己流にアレンジした結果が、
「ねえ、フェルパー。お願いがあるんだ」
「どうしたの?」
「私のために毎朝ホットケーキを作ってほしいんだ!」
「ホットケーキは美味しいけど…毎朝じゃ体悪くしちゃうよ? 食事は三食バランス良く。特に、私たちのパーティは成長期なんだから、
 好きなものだけじゃなくって嫌いなものも、きちんと栄養を考えて食べなきゃ」
「あ、はい…仰るとおりです」
真剣な顔で、幼子に言い聞かせるように丁寧な、食事指導であった。

その二、「もう直球勝負でいいじゃん」
「フェルパーの鈍感さはよく分かった。だがな、その言葉はあまりにも遠回しすぎたのかも分からんぞ。
 こうなったらいっそ、直接、好きだー! って言ったらどうだ? …しかし…あいつそんなに長く喋ることあるんだな…」
クラッズの報告を聞いたバハムーンに言われた言葉である。直情的でまっすぐな彼らしい提案だが、たしかに、東方の言葉はいささか
慎み深すぎたのかもしれない。それに、思い返してみればいきなりプロポーズというのも先走りすぎた感がある。
前回の反省を踏まえたクラッズは、ようし今度こそと意気込む。
「フェルパー。私、君のことがとても好きだよ」
「ありがとう…私も、クラッズ、好きだよ」
優しく目を細められ、
「…うん、ありがとう! これからもよろしくね」
そう言うしかできなかった。

その三、の前に。
「――なんでだよ!? そこはもっと押すところだろう! もっとグイグイいかんといけないところだろう!?」
「っ、君は、あの時の彼女を見ていないからそんなことが言えるんだよ! 私のことを仲の良い友達だと信頼しきっている、あの目を!
 私の好意を友情だと信じきっている、あの笑顔を! あんな嬉しそうなあの子にグイグイなんていけるわけないだろう!?」
「…す、すまん」

その三、「もういっそ」
「強硬手段に出るってのはどうよ?」
「無理矢理、ダメ、絶対」
「そうだよなぁ…。だが、あいつの鈍感さをどうにかするには行動で示すしかない気がするぞ」
「だからって、今までこつこつと築き上げてきた信頼をぶち壊すような真似、したくないね。あの子を傷つけるなんて論外だし……待てよ」
「おい一秒前に自分がなに言ったか思い出せ」
「違う違う。スキンシップを図ってみるのはどうかと思って。よく考えたら私、自分から彼女に触ったこと無いし」
「そうなのか?」
「ああ。だって、あれだけ人見知りが強い子に触るなんて、余計な緊張を与え…あ、ダメだこの案」
「…そうだな」
150クラッズ♀×フェルパー♀ 4/12:2014/05/21(水) 21:02:35.28 ID:2cFT2quG
他にも色々と試してはみたが、大体こんな具合で全て見事に気付かれないのである。狙った獲物に刃が届くなら、硬かろうと素早かろうと
その対策を取れば良いが、今回はそも刃が届かない空気を斬ろうとしているようなものなのだ。流石のバハムーンも溜め息をつきたかった。
「……女を口説くのって、難しいな」
「…そうだね…」「まったくだよなー。デートに誘っても断られるし」
「ああ、君も苦労しているんだ…ね?」
突然聞こえてきた声に後ろを振り返ると、懐っこい笑みを浮かべるヒューマンの男子生徒がいた。クラッズの表情は柔らかくなり、
バハムーンの口元は若干引きつる。
「ああ、悪い悪い。話が聞こえてつい」
「構わないさ。デートに誘っても断られるなんて、君の相手も手強そうだね」
「んー、時々相手してくれるヤツもいるんだけどなー。昨日の子は、」
「ヒューマンさん!!!」
彼の言葉を大音量が遮った。思わず肩をすくめてそちらを見た三人は、温和な顔立ちを怒りに染めたセレスティアの女子生徒を見つける。
「セレスティアか。どうしたー?」
「どうしたー? じゃないですよ! あれだけ言ったのに、貴方また、女子生徒の部屋に遊びに行きましたね!?」
「……なんだ?」
「痴話喧嘩かな?」
顔を見合わせるバハムーンとクラッズは目にも入らないようで、セレスティアはつかつかと歩み寄りヒューマンの胸倉を掴んだ。
「朝からわたくしの所に訴えに来られたんですよ! 今月に入ってから何度目ですか!? いい加減にしなさいな!」
「ま、待てセレスティア、落ち着け。僕はただ、誘われたから」
「だから! 誘われたからって何も考えずにほいほいついていくのを止めなさいと言っているんです!!」
「お、おいおいちょっと待てお嬢さん。落ち着け。そいつ離してやれ」
胸倉を掴んだままがくがく揺らすセレスティアを、見かねたバハムーンが止めにかかる。
「…どちら様ですか」
「いや、今までコイツと世間話をしてた者だが、」
「まさかっ…ヒューマンさん、貴方、殿方にまで相手をしていただきたいのですか!?」
「へっ?」「は?」
「だぁーもう君はちょっと落ち着きたまえ! セレスティア、私たちは君たちの事情を知らないし、余計なことをするつもりはないけれど、
 ここは食堂のど真ん中だ。お願いだから少し落ち着いて…せめて端っこで話をしないかい?」
なんだかとても面倒くさいことになりそうな雰囲気を察してクラッズも間に入る。セレスティアは一瞬眉根をひそめたが、すぐに
自分たちがかなりの注目を浴びていることに気が付いたようで顔を赤らめた。
「…も、申し訳ありません…つい、我を忘れてしまいました…」
「うん、まあ、そういう時もあるよね。えーと…私たちの仲間が席を取っていてくれるから、ご飯取ったら行こうか」
151クラッズ♀×フェルパー♀ 5/12:2014/05/21(水) 21:06:11.41 ID:2cFT2quG
聞いた話をまとめると――ディアボロスは顔をひきつらせフェルパーは彼女の影に隠れたが、話はできた――大体ヒューマンが悪かった。
ガンナーとマニアを学んでいる彼は、可愛らしい存在が好きであり、ひいてはそれが女好きに繋がった。今まで男所帯で過ごしてきた彼は
必死にそれを我慢してきたが――モーディアル学園に入り、我慢の必要がなくなったことでその欲求は解放されたとのこと。
元々相性が良い種族は勿論、相性がそれほど良くない種族、果ては相性最悪のバハムーンであろうとも、自分が「可愛い!」と思った相手は
「とりあえず、デートに誘う」
「なんでそうなるんだい!?」
「だってほら、可愛いヤツと一緒にいると和むだろ? それをゆっくり味わいたいだろ? 二人で話せりゃ最高じゃないか!」
「…一瞬納得しかけたけどそれはおかしいよ!」
そんな軟派な彼だが、意外にも申し出に応じる女子生徒はそれなりにいるらしい。
元々他種族から好かれやすいことに加えて、ヒューマンは、子犬を思わせる妙な魅力がある。まあ少し話すだけなら…と了承し、
何となく気分が乗ってしまって彼を部屋に招き入れた女子生徒も、信じられないことに存在した。
ここまで聞くとふざけんなリア充爆発しろ、と呪詛を吐きたいところだが、事態は更に複雑だった。
「…何と申しますか…その……お話をして、寝るだけなんだそうです」
セレスティアが訴えてきた女子生徒から聞くところによると、遅くなったから泊まっていけばとの言葉にヒューマンは笑顔を返し、
そのまま寝てしまうのだそうだ。それはもう、見事なまでに、ぐっすりと。
「……お前さん、本当に男か?」
「当たり前だ。僕が女の子に見える?」
「いや…その…。…………婚前交渉はしない派か?」
「…へぁっ?! なっ、ばかっ、あ、当たり前だろそんなことは! そういうのは将来を約束した相手とするものだ!
 ていうか食事中だってのにんな話するんじゃねえ!」
「あんた初心なのか女タラシなのかはっきりしろよ!!」
ともかく。ヒューマンのこうした言動に振り回された女性陣は、弄ばれたと感じるそうだ。恥ずかしさとも怒りともつかない感情を抱えた
彼女らは、何故か直接の相手であるヒューマンにではなく、彼ののチームメイトであるセレスティアに訴えに行くらしい。そしてその度、
セレスティアは、朝っぱらからパジャマのままで、愚痴とも惚気とも文句ともつかない話を相手の気が済むまで延々聞かされるのだとか。
「……聞いてもいいか」
「……なんでしょう」
「その…どうしてそんなことに…? 別の方法を取ろうとは、思わなかったのか?」
「…わたくし…彼の可愛いレーダーにはかからなかったものの…何故か懐かれてしまって…」
「それで、なし崩しに?」
「……貴女は、無邪気にじゃれてくる子犬を無碍に出来ますか……?」
「…よく、分かった」
ヒューマン以外の四人から同情と労りが混ざった眼差しを向けられ、セレスティアは荒んだ心が少しだけ癒されるのを感じた。
そんな彼女を、ヒューマンは不思議そうな表情で眺めている。自分の言動がこの混乱を引き起こしている自覚はないようだ。
152クラッズ♀×フェルパー♀ 6/12:2014/05/21(水) 21:09:38.20 ID:2cFT2quG
微妙に噛み合っていない二人を見て、残る四人は顔を見合わせた。ちょっと試しに乗ってみようか、と軽い気持ちで乗り込んだ船が
いつの間にかだだっ広い海の真ん中まで流されていた気分だった。
「…ええと…話はよく分かったよ。それで、そのー…君たちって、他の誰かとパーティ組んでるのかい?」
「うんにゃ。なんでかすぐに抜けてっちまうんだよなー」
十中八九お前のせいだ、とその場にいる全員が思ったが、言わなかった。
「ヒューマン、念のため確認させておくれ。君は単純に、可愛い子と一緒に話ができたら嬉しいなーって思っているだけなんだよね?」
「ああ!」
ここで、どこか虚ろだったセレスティアの瞳に光が戻ってくる。その光には期待と戸惑いが半々になって混ざっていた。
「…よし、分かった。お前さんたち、俺たちのパーティに入れ」
「……ふぇ?」「おっ、いいのか!」
バハムーンの言葉に、セレスティアは信じられないと目を瞬かせ、ヒューマンは嬉しそうな笑顔を見せる。
「君たちさえ良かったら。ただ、条件がある。パーティの一員になったからには、他のパーティの子をむやみやたらとデートに誘わないこと。
 これまでみたいに君たち二人の問題じゃあなくなるんだから、下手したらパーティ同士の抗争の火種になり兼ねないからね」
「えっ…あー…んー…でも、そうだよな…。分かった。気をつける」
「あと、ディアボロスに手ぇ出したら男の楽しみを一生味わえない体にするからな」
「おまっ、バハムーン!?」
「胆に命じとく」
あれよあれよという間に話が進み、セレスティアは置いていかれたような心地になった。が、このままではなんか色々納得がいかないと
どうにか思考を立てなおし、口を開こうとして――ディアボロスの肩から顔を覗かせているフェルパーと目が合う。
「……よろしく、おねがいします……!」
緊張と羞恥で瞳を潤ませ、耳をべたりと伏せ、怯えや不安を必死に押さえながらそんなことを言われ、
「…あ…はい、こちらこそ、よろしくお願い致します」
セレスティアには、深々と頭を下げる以外の選択肢は無くなっていた。
153クラッズ♀×フェルパー♀ 7/12:2014/05/21(水) 21:12:39.97 ID:2cFT2quG
早速明日の探索から始めようと取り決め、一行は寮の入口で別れた。
当然のように同じ部屋に戻っていくバハムーンとディアボロスを見送り、ぶんぶんと手を振るヒューマンと丁寧に頭を下げるセレスティアを
見送ったクラッズは、全員の姿が見えなくなったところで大きく息をつく。新しい仲間が増え、これで六人全員が揃ったことは喜ばしいが、
それにしても今日は疲れた。もう今日はとにかく早く部屋に戻って今すぐ寝よう、と踵を返したクラッズは、
「……フェルパー?」
「………………」
袖口を遠慮がちな手に掴まれる。首を傾げる彼女を見て、フェルパーは困ったように尻尾を揺らした。
「どうしたんだい? 何か、やってほしいことがあるのかな?」
「………………」
「教えてほしいな。私にできることなら何でもやる。できないことでも、できる限りやるよ」
あくまで優しく言い聞かせると、フェルパーはともすれば聞き逃してしまうほど小さな声で呟く。
「……今日……」
「今日?」
「……一緒に寝ても、いい?」
「もちろんさ! 私が部屋に行こうか? それとも、来る?」
「…行く…」
「分かったよ。なら、ホットミルク準備して待ってるね」
笑顔でそう言ったクラッズに、フェルパーは安心したように目を細めた。フェルパーとも一旦別れ、自室に戻ったクラッズはしっかり戸を閉める。
(うわぁぁぁああああどういうこと!? どういうことこれっ!? フェルパーが自分から一緒に寝るお誘いってこれ襲っていいの?!
襲っていいのかなこれ!? いや駄目だよねどう考えてもっ!? どうしようどうすればいいのか全然わからない!
そうだこういう時はバハム…駄目だ馬に蹴られて死んでしまう!!)
大混乱であった。
その後も、暫くうわぁうわぁと悶えていたクラッズだが、ようやくこんなことをしている間にフェルパーがやってきてしまうと気付く。
慌てて刀をしまい、大急ぎで風呂を済ませ、彼女と親しくなってから常備するようになった牛乳を簡易キッチンで温めている時に扉が叩かれた。
「…クラッズ?」
「フェルパー、いらっしゃぃむぁ!?」

――扉を開けたら、そこは桃源郷でした。

限りなく頭の悪いフレーズを思いついたクラッズだったが、彼女にそんな自分を笑う余裕は残っていなかった。
「……っ……っ……?!」
「……クラッズの匂い……」
「ふぇっ、ふぇむぅあ!?」
「…くすぐったい。そこで喋っちゃダメ」
(そんなこと仰られましても!?)
クラッズをしっかり抱きしめたフェルパーは、満足げに頬を擦り寄せてきた。彼女の仕草は普段のクラッズであれば心の中で
のたうちまわるくらい可愛らしいものだったが、今のクラッズにはそんな理由はない。
重ねて言おう。クラッズは、フェルパーに、正面から抱きしめられていた。フェルパーに一切の他意はないだろうが、彼女よりも頭一つ程
小さいクラッズは、そうされると埋まるのである。口が、谷間に。
154クラッズ♀×フェルパー♀ 8/12:2014/05/21(水) 21:16:17.51 ID:2cFT2quG
(フェルパーって着やせするタイプだったのかーっ!)
馬鹿馬鹿しくも切実な悲鳴を上げる。柔らかく張りがある二つの山は、クラッズから冷静さを奪っていった。
(…柔らか…やわらか…そういえばディアボロスも胸あるっけ…今日のセレスティアも…あれもしかして私以外皆豊かだったりする…?
まぁいいや…そんなことより不届き者から狙われないよう…気をつけ……やわらか……)
段々とぼんやりしてきたクラッズには気付かずに、フェルパーはさかんに彼女の匂いを嗅ぎ、自分の匂いを擦りつけていた。
為されるがまま流されること十数分。やっと落ち着いたのか、フェルパーは満足げにクラッズを解放する。
「…ずいぶんと甘えたさんだね…?」
「……嫌だった?」
「私は侍。例え体格差があろうとも、本気で嫌ならこんなに可愛らしいナースさんに後れをとったりはしないよ」
少々気取って笑ってみせるとフェルパーは嬉しそうに微笑んだ。
「まぁ、驚いたけどさ。一体どうしたんだい。君がこんなことするなんて、珍しいね?」
言いながら、ある程度温まったホットミルクをカップに移し、フェルパーのものには蜂蜜をたっぷり入れる。ちょうど人肌程のそれを
手渡すと、フェルパーは尻尾を揺らした。
「…ヒューマンと、セレスティアと…香水のにおいが…」
「あー…いきなりだったもんね。びっくりしちゃったかな」
恐らく、事前に何も言わず心の準備をさせずに引き合わせてしまったので、普段以上に緊張してしまったのだろう。さっきやたらと
クラッズのにおいを嗅いだのも緊張を落ち着かせる手段だったのかもしれない。悪いことをしてしまった、と目尻を下げるクラッズを見て
フェルパーはベッドに座る彼女にそっとしがみつく。首に息がかかって少しくすぐったい。
「…フェルパー?」
すんすんと鼻を鳴らす彼女を撫でながら、クラッズは自分の理性が音を立てて崩れていくのを感じていた。先ほどの抱擁で既に大分
参っていたのに加え、このしがみつきである。優しい石鹸の香りに混じったフェルパー自身の甘い匂い。親しげに擦り寄せられる暖かい体。
どんどん明確になっていく思考の中心は、どのようにして理性を練り直すかではなく、どうやってこの愛らしい猫を怖がらせないよう
可愛がるか、その方法を考えることに終始していた。
「……クラッズの匂い……」
「うん?」
「……落ち着く……好き……」
甘えるような柔らかい声で囁かれ、もうダメだ、とクラッズは思った。
155クラッズ♀×フェルパー♀ 9/12:2014/05/21(水) 21:20:18.23 ID:2cFT2quG
「…なら、私のにおいでいっぱいにしてあげようか」
「…え…? んむっ!?」
不思議そうなフェルパーに素早く口付ける。まん丸の目が更に大きく開かれるのを見て、クラッズは自然と笑顔を浮かべていた。
深いものを交わしたい気持ちを堪え、すぐに解放して頭を撫でてやると、フェルパーは今何が起こったのか分からない様子で瞳を瞬く。
そんな彼女ににっこりと笑ってみせ、
「ちょっとごめんね」
「にゃっ!?」
ひょいと抱き上げベッドに座らせる。フェルパーの混乱がより酷くなった。
「仮にも侍学科だもの。そこらのクラッズよりは力も体力もあるさ」
「…す、すごい…ね…?」
「お褒めにあずかり光栄です」
言って、もう一度口付ける。口だけでなく、頬に、鼻の頭に、瞼にと唇を寄せるとフェルパーはくすぐったそうな声を漏らした。
その反応に気を良くして舌を唇の間から侵入させると、流石に驚いたのか肩が跳ねた。それを押さえることはしないで、できる限り
優しく撫でながら柔らかい唇を舌先でくすぐる。彼女の口内は甘い蜂蜜の味がした。
「ふぅ…ん…にぅ…」
フェルパーは、自身の声が段々と甘えを帯びていっていることに気付いているだろうか。心の中で笑い、頭を撫でていた手をずらして
艶々した毛並みの耳をそっと撫でる。
「んにゃっ!」
「おっと。…ここ、撫でるの嫌?」
尋ねながらも耳の縁をなぞっていると、フェルパーは恥ずかしそうに目を伏せた。拒絶の言葉はない。
「…君をいじめたいわけじゃあないんだ。嫌だったら、すぐに言って」
耳元で囁いてそのまま耳の先端を食む。途端、フェルパーの体がびくりと跳ねた。敢えてそれを無視して毛繕いをするように舌を這わせ、
反対の耳も手で愛撫する。耳の付け根の辺りをこりこりとさすってやると落ち着きなく振られていた尻尾がぴんと伸びた。
「んにゃっ!? ぁ…クラッズ、それ…やぁ…」
「嫌なの? …気持ちよさそうだけど?」
「にゃぁ…ぅ…やぁ、なのぉ…」
蕩けきった声や表情を見ると嫌だとは思えないが、ここで強引に進めてもフェルパーを怖がらせることにしかならないだろう。
そう判断したクラッズは、最後に一度ぴくぴくと動いている耳に口付けて、次いでぼんやりと開かれている唇にキスを落とす。
今度はすんなり受け入れられたことに喜びを感じつつ、怯えたように縮こまる彼女の口内に触れていく。形の良い歯や鋭い犬歯をなぞり、
ぬるぬるした舌先と、猫らしく細かい棘が敷き詰められている舌の腹に触れる。時折棘が擦れて僅かな痛みが生じるものの、それを
はるかに上回る興奮でさほど気にはならなかった。フェルパーは、最初のうちこそかちこちに固まっていたが、やがて遠慮がちに舌を
絡めてくる。自身の棘でクラッズを傷つけないようとの配慮なのか動きは小さく控え目だったが、なによりも彼女が応じてくれたことが
たまらなく嬉しかった。
ちゅうちゅうと口を吸いながら手を服に寄せる。寝る前だというのにきちんと閉じられていたボタンを開き、服の隙間から手を差し込むと、
「んにゃっ!? にゃっ、あぅ…」
「……ブラジャー、付けてないんだ?」
「…だ、だって…すぐ寝るから…」
頬を染めたフェルパーは困ったように視線を落とす。が、そうすると、丁度自分の胸がクラッズに触られているところをばっちり見てしまい
余計に顔を赤らめる羽目になった。目をつぶる彼女をそっと押し倒し制服とシャツの前をはだけさせる。灯りの下に陶磁器のように白く
滑らかな身体が晒されて、クラッズは思わず唾を飲み込んだ。美しい半円を描く乳房に触れ、優しく指を押し込むとフェルパーは声を殺す。
切り傷や胼胝がある小さい手に触れられると、何故か、フェルパーの胸の奥は熱くなった。
156クラッズ♀×フェルパー♀ 10/12:2014/05/21(水) 21:28:18.90 ID:2cFT2quG
ゆっくりと肌を撫で、時々少し強めにこすったり、押し込んだりする。それだけでも声を我慢するので精一杯なのに、クラッズは徐々に
硬くなっている胸の頂にも触れるのだ。もどかしいくらい優しい刺激を与えられ、フェルパーの胸は熱くなり、腹の奥には
今まで感じたことの無い疼きが溜まっていく。もっと強く、自分のことを滅茶苦茶にしてほしい衝動が湧きあがってくるが、
それ以上に未知の感覚への恐れや、これ以上続けられると自分が無くなりそうな恐怖がフェルパーを支配した。
嬉しいのと、驚きと、怖いのと、不安なのが混じりあって、フェルパーの思考は限界だった。
「…ぁ…クラッズ…」
「…ん?」
「も…だめ…んぅ…終わりに、して…」
なんとか絞り出した言葉を聞いたクラッズは、戸惑った様子で手を止めた。そっと目を開けると、寂しそうな、悲しそうな、申し訳なさそうな
様々な感情が入り混じった複雑な笑顔を浮かべている。それを見たフェルパーは後悔した。胸の奥が、もっともっと熱くなってしまう。
「ん……そう、だね。やっぱり、嫌だよね」
「嫌じゃないっ!」
思っていた以上の大声が出て、クラッズはもちろん、フェルパーも驚いたように動きを止めた。戸惑ったように口に触れる彼女を見て、
クラッズはいつもと変わらない優しい苦笑を浮かべる。その表情に、また、心が疼いた。
「嫌じゃないって、言ってくれるのかい?」
「…ぅ…だって…ぁぅ…」
「でも、終わりにしてほしいんだよね?」
「それはっ! その…だって…ヘンなんだもん…」
「ヘン? なにが?」
言いながら、クラッズはフェルパーに毛布を掛ける。体が冷えて、風邪でもひいてしまったら大変だ。
「……頭の中、ぼうっとなって…からだ、あつくなっちゃうんだもん……」
恥ずかしそうな呟きを拾ったクラッズは、その表情とも相まって、今すぐ押し倒したくなる衝動を抑えるのに苦労した。肩にかけた毛布を
ぐるぐる巻きにして、その上からフェルパーを抱きしめる。そっと頭を撫でていると、フェルパーは少し落ち着いてきたのか
クラッズに頬を寄せ、ぐりぐりと頭を押し付けた。
157クラッズ♀×フェルパー♀ 11/12:2014/05/21(水) 21:30:31.76 ID:2cFT2quG
「…私としては、君がヘンになっちゃうとこ、とっても見たいんだけど」
「にゃっ…?!」
「でも、怖いんだよね。それならいいや。完全に理性飛んじゃってたし…いきなりごめんね。変なことして」
そう言ってフェルパーを撫でる彼女は普段通りのクラッズだ。フェルパーが知らない顔で、知らない声で、彼女を求める人ではない。
そのことにとても安心するのと同時に、何故か、少しだけ残念になった。あのまま先に進むのはとても怖かったけれど、だからといって、
今までと全く変わらないのも嫌だった。いつも落ち着いているクラッズが不意に見せた熱量は、驚いたし、怖かったし、びっくりしたけれど
同時にとても心地の良いものだったから。
けれど、フェルパーがそう思っていることを、この人はきっと気付いていない。申し訳なさそうに自身を撫でるクラッズは、
少しでも刺激したらすぐに泣いてしまいそうなほど心細そうな顔をしていた。だから――
「……ね、クラッズ。こっち向いて?」
「ん? どうしたんだい、フェル」
言い終わるよりも早く口付ける。ぱっちりした可愛らしい瞳がフェルパーだけを映しているのは思ったよりも嬉しいことだった。

一瞬とも永遠ともつかない時間が終わる。自分でしたこととはいえとても恥ずかしくて、フェルパーは真っ赤になって俯いた。
そんな彼女を、クラッズは少々呆気にとられて見ている。
「……フェルパー?」
「こっ、これくらいならっ!」
「…うん?」
「さ、さっきみたいなのは、怖いけど…今くらいなら、その…へいき、だから…」
「……うん」
「…もうちょっとだけ、待ってて、ください」
毛布にくるまったフェルパーは、耳をべたりと伏せ、視線を落とし、真っ赤な顔で今にも泣きそうなほど目を潤ませている。
だけど、それでも、待っててほしいと言ってくれた。
「…ねえ、フェルパー」
「…………」
「私は、君のことが、大好きだよ」
「……うんっ」
蕾が綻んだような笑顔を見て、ようやく自分の気持ちがきちんと伝わったことを感じたクラッズは、満面の笑みでフェルパーを抱きしめた。
158クラッズ♀×フェルパー♀ 12/12:2014/05/21(水) 21:33:42.02 ID:2cFT2quG
翌日の朝。
クラッズの匂いいっぱいで恥ずかしい…! と大急ぎでシャワーを浴びるフェルパーを置いて、クラッズは一足先に待ち合わせ場所に向かった。
恥ずかしいとくるかそうか…とか、可愛いなあもう本当にもう可愛いなあとか、まぁ、まだ待ち合わせ時間までには余裕があるから
大丈夫だねとか。内心頬をでれでれに緩ませたクラッズは、
「あ、早いね。おはよ……う……」
非常に気まずい雰囲気を醸し出すディアボロスとセレスティアを見て、やっぱりフェルパーと一緒に来ればよかったと後悔した。
敵意とまではいかないが親しげでもない、非常に複雑かつ気まずい空気は当の二人にとっても苦痛だったらしい。クラッズの声を聞いた
二人は、救い主が現れたとばかりにホッとした顔で後ろを振り向き、
「おまっ…クラッズ!? いったいどうした!?」「な、なにがあったんですか!?」
ほとんど同時に似たようなことを叫んだ。もしかしたら意外と気が合うんじゃないかこの二人、とクラッズは思う。

しかし、ディアボロスとセレスティアが驚愕するのも当然で、今のクラッズは、目の下に濃い隈があり、顔つきはどことなくやつれ、
いつもはきちんと整えられている髪も寝癖が立っており、そのくせ気持ち悪いくらい良い笑顔をしているのだ。イケメン少女の名折れである。
「大したことはないさ。それよりディアボロス、バハムーンは?」
「寝坊したから置いてきた。しかし、大したことないっておまえ…」
「セレスティア、ヒューマンは? まさか昨日の今日ってことはないだろうけれど」
「だ、大丈夫です。弾の補充を忘れていたそうで、今購買部に行っています。そんなことより、本当にどうなさったんですか…?」
「んー、ちょっとねー」
ちょっと昨夜、いちゃいちゃちゅっちゅしてる内にフェルパーが寝ちゃって、この絶妙な寸止め具合にMの道に目覚めそうになったとか、
むしろ目覚めないとやってられないというか、ゴロゴロ喉を鳴らしながら幸せそうに寝ているフェルパー見てると嬉しい半面
この心の内に燻っている欲望をどうすればいいんだと結局ほとんど徹夜状態になったとか。
そんなことをまさか言えるはずもなく、クラッズは魂の抜けたような顔で笑う。
「クラッズ…あの…おまえ、そんな状態で探索とか行って大丈夫か…?」
「無理はなさらない方が良いのでは…あ、ヒールかけましょうか…?」
「いや、大丈夫さ。むしろ、八つ当たり相手…もとい、この力を存分に発揮できる相手と戦いたいからね。
…ふふっ、今の私ならこれまで超えられなかった限界を軽々と越えられそうだよ…はははっ…」
虚ろな笑みを浮かべにこやかに物騒な台詞を並べ立てるクラッズに、ディアボロスとセレスティアは心の底から思う。
(頼むから…)(お願いですから…)

((早く誰か来て……!!))

少し前と同じことを、少し前よりももっと切実な気持ちで願う二人は、どことなく似通った表情をしていた。
159110:2014/05/21(水) 21:35:25.04 ID:2cFT2quG
以上です
前回以上に申し訳なさ過ぎて頭が上げられません
お目汚し失礼しました
160名無しさん@ピンキー:2014/05/21(水) 23:32:48.91 ID:6NfFtHpf
うおおおお仲間が増えた!いいぞもっと百合(や)れ!
161名無しさん@ピンキー:2014/05/21(水) 23:35:15.50 ID:JFBGCu+X
何が……起こって……
ま、まさか新作が出る流れ……

まとめてGJ
162セレ子好きの人 ◆Oh8cZBRTK6AM :2014/05/22(木) 03:06:53.70 ID:qa8di026
ここにきてまさかの作品ラッシュ・・・
これはGJせねば
163名無しさん@ピンキー:2014/05/26(月) 21:05:41.53 ID:sdIixG7h
待ってましたー!!!
GJ!!!
164名無しさん@ピンキー:2014/05/29(木) 04:02:26.24 ID:jI9n7gEx
ここって基本オリキャラ絡み?
165名無しさん@ピンキー:2014/05/29(木) 17:02:00.63 ID:9TPZ78qU
>>164
オリキャラは多いけどNPCを書いてる作品も沢山あるから、事前に注意書けばいいんじゃないか?
俺はオリキャラもNPCも楽しく読ませてもらってる
166名無しさん@ピンキー:2014/06/09(月) 05:08:33.86 ID:G7edpvMf
キャラクターの口調を確認したい

PSNから再DLしよう

容量不足でやりくりしてもメモリー捻出できず←いまここ
167名無しさん@ピンキー:2014/06/15(日) 07:47:07.64 ID:4e/fCirb
ととモノFINALが500円って買いかなぁ…
168名無しさん@ピンキー:2014/06/15(日) 19:45:03.85 ID:A5RAPkqB
買い
169名無しさん@ピンキー:2014/06/17(火) 20:52:24.99 ID:JqPxYQWM
買おう
170名無しさん@ピンキー:2014/06/22(日) 14:12:56.30 ID:aPZxp3YB
買って損はしないぞ。

買い
171名無しさん@ピンキー