変身ヒロインとラブラブなSS その2

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111第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/09(金) NY:AN:NY.AN ID:HZLd2uNM
06

傷つき、力尽きて仰向けに倒れ、若さに溢れる肢体を余す所無く晒すタックル。
適度に引き締まった脚から柔らかな美尻へと続く艶かしいライン。女性らしい丸み
を残した腹部から、坦らかに隆起して慎ましく張った胸の頂点を覆うタックルポイ
ント。ケイトの魔力で、ブーツから膝まで巻きつく不気味な蔦が下肢を地に貼り付
け、横たわるタックルの躰を音も無く拘束する。増幅する焦燥。息遣いが速くなる。
物凄まじい怠さに、最早身動ぎすら儘ならない。不覚にも、密やかな疼きに耐え兼
ねて、肌合いがやや紅潮している。股間に擦れる滑らかな感触にさえ、心地良い官
能を感じてしまう。仮面に隠された白い美貌が上気する。コステュームとのコント
ラストで眩しくさえ見える腿を、気取られぬよう擦り合わせようとしている。脈を
打つ度、か……躰が…… 躰が…… 熱い……

「うっ……」

蔓蔓と光沢の滑るスカートのスリットを鋭い爪で縦長く切り割かれ、無造作にたく
し上げられて、柔らかな下腹部を、尻を、股間をホールドしているインナーウェア
が露出する。変身している間、インナーは邪悪な力からタックルを護り、敵が破る
ことも剥がすことも容易にはできない。使い込まれて僅かに色褪せた感はあるもの
の、綺麗な赤色で、改造された躰に皮膚のように、肌のように密着し、この上無く
馴染んでいる。きめ細かなサラサラした素材。若く引き締まったお尻に程好く食い
込む稍小さめなサイズ。霰もなく開かれた太腿に弾かれて、恥丘の柔らかく繊細な
膨らみが魅惑的に浮かび上がっている。伸縮性に秀れ、極薄でタイトなインナーに
切れ目の皺が寄り、影となり輝きとなり、眩しい中にも微かな翳りを添えて、あら
ぬ妄想を掻き立てる。股間の辺り、少し湿り気味なのか、ヌメッとした独特の質感
がリアルに伝わってくるようだ。

「イヤラシイ躰」

魔女の瘴気が、辺りに充満する。不浄な燐粉が毀れ、降り注いでいる。嫌な気配が
する。躰のラインを眺めている。顔が近づいてくる。股間の匂いを嗅いでいるよう
だ。鋭敏な嗅覚が、蒸れて饐えた匂いのなかから、淡く、かぐわしい香気を嗅ぎ分
ける。
酷い…… 何てことを……
隠微な眼差しで、魔女が視姦する。股間に貼り付き線も露なインナー越し、あたか
も陰唇が覗いているかのように錯覚してしまう程に。
構うものか…… 見たければ好きなだけ見るがいい……
若くして、悍ましくも切り刻まれ、改造された此の我が身。世間から決して祝福さ
れることのない電波人間。既にこの身は、悪との戦いに捧げ……

to be continued
112第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN ID:1jX13qxQ
電波人間タックル(第30話「さようならタックル! 最後の活躍!!」)

07

仰向けのタックルの傍らに、突如寄り添うケイト。両肩を掴んで顔を寄せ、柔らか
く結ばれた薄紅色の唇に、素早く唇を合わせる。咄嗟に顔を齟齬そうとするが逃れ
られない。
濃厚なキス!

唇が……

突如奪われた大事な唇。忌まわしい悪寒が駆け巡る。嘔吐を堪え、創痍の身が総毛
立つ。魔女の滑りとした軟らかな舌が唇を割り裂いて、容赦なく滑り込む。喉奥め
がけ注ぎ込まれた多量の唾液。いけない筈なのに、思わず嚥下してしまう。 

ぅえ゛…… ぅ、げほ、げほっ……

俄には信じ難い事態に素心を掻き乱され、動揺するタックル。やがて舌の裏側まで
も、ゆっくりと嬲られる。目蓋の周りが薄赤く染まり、開くことができない。その
間にも、魔女の腕が肩にそっと回される。脇腹から腰へと手を這わせながら、長身
が覆い被さる。だらしなく開かれた両腿の間にこじ入れた魔女の細い右脚の揺さ振
りに、タックルの柔らかな下腹部が当たって腰が沈んでいく。

何故……

――タックルを初めて目にした時から、うら若い容姿に強く惹かれ唆られていた。
――その夜、魔女はタックルを想い、激しく自慰した。
――羨望による未曾有の興奮を投影し、限りなく猥褻に陵辱することだけを願って。
113第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN ID:1jX13qxQ
08

茫然とするタックルの細い項に、首筋に、ドロリとした粘度の高い透明な液体が塗り
たくられる。咽かえるような甘酸っぱい香りが辺りに充満する。瓶から直接流し落と
され、襟元から染み込んで、気怠く微睡むような異様な感覚が躰を妖しく穢していく。

……っ んぅ…… ……ん、あっ……はあ……んっ…… な、なに……これ……

やがて満足に動けないタックルの内股を、壊れ物でも扱うかのように、魔手がそっと
撫でる。爪を立て、膝の膨らみを刺激し、それから膝下までツーッと滑らせる。今と
なっては、唯それだけで、背を抜けて秘部に至る甘い疼きが走る。細く枯れかけた指
先が瑞々しい肌に猟奇を含んで触れる度、声を抑えて躰を捩らせる。身も心も朦朧と
していくなか、有ろう事か、研ぎ澄まされて鋭敏になっていく性感に、唖然とする。

っく…… うぁ……ぁっ!

薄汚れてしまったスーツに包まれた胸の膨らみに、ケイトがそっと掌を添える。タッ
クルポイントで覆われた胸元を探り、膨らみを触わっている。敏感な部分に触れるの
を感じる。黒地に黄色でTの描かれたタックルポイントへの丹念な刺激。直接触れら
れるのとは、また違った感覚。スーツの下、形の良い乳房が揺れ、薄紅色の乳首が勃
つ。まるで、痛い程に。

あっ……ああっ…… ぁ…… 
ふ、触れるな…… そんなとこばかり……
あぁっ、またっ……
その嫌らしい手を、除けて……

ケイトが躰の至る所に触れている。嫋やかに張った腰から臀部、柔らかな下腹部へと
手が降り、感度を増してゆく。弾性に沿って、インナーが沈み込む。丸やかな尻やイ
ンナーのカットの線を嬲られ、思わず息を呑む。未成熟ながらも存外に確りとした腰
や尻の拵えときめ細やかで滑らかな手触りが、魔女を悦ばせ、愉しませる。いつしか
頬が朱に染まる。傍目にも何処となく如何わしい淫らな行為を感じさせるものがある。
魔女の執拗な指技から暫し解放されて尚、濃厚な触感は消えない。

くっ…… わたしが動けないのを、いい事に……
卑劣な……
114第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN ID:1jX13qxQ
09

ケイトの指が、最も秘められた場所にフィットした薄いインナーの聖域にそっと触れ
る。微かに染みはじめている赤い生地越し、柔らかな恥丘の盛り上がり、控えめな裂
け目が淡く薄らと覗え、艶かしい。
「んっ!」
不意に触られ、その隠微な刺激に耐えられず、思わず声を上げてしまうタックル。

「キヒヒヒ…… コヌコヌ……」

ああ…… わたしの……大切な…… ぁ……
っ……はあはあ…… ……はっ……ああっ!
身の毛弥立つ不気味な魔女に触られ辱められる屈辱。口許で何度も小さく噛む仕草。
無念さに躰が震え、熱いものが込み上げてくる。しかし、高濃度の媚薬が怖ろしいま
でに効いている。小刻みに震える卑猥な指の動きが伝わってくる。敏感な部分を這い
回るのを感じても、どうすることもできない。今まで経験したことのない快感と屈辱
に目が眩み、頭が真っ白になる。唯々懸命に声を押し殺そうとするだけのタックルを、
責め続けるケイト。振り払うこともできずに、悶え苦しむ様を、まるで楽しんでいる
ようだ。薄絹を一枚ずつ掬い取るかのような、至極繊細な愛撫に、ひとつひとつ箍が
外れていく。
……はっ……あん……ぁ ……やめ……っ ……てっ……
誰にも…… 触られたこと……ないのに……

吐息が洩れる。甘い桃色の感覚が浸食するように絡みつく。奥の底から、温かくぬめ
った蜜が、とろりと漏れ出す。灼かれるような熱が湧き出してくる。淫毒に犯された
躰が、抑えようがないくらい貪婪になっている。
……はぅん…… 腰が……腰が浮いちゃう……
クチュッ!
んッ…… 私……濡れてる……

「電波人間ノ癖ニ 何テ、フシダラナ 濡レテキタ、濡レテキタ」
「嘘よ、違う……っ……」

タックルのそこは、これまでの責めで既に熱く濡れていた。だが、多少濡れた程度な
らば、染みなど容易にできはしない特殊繊維のインナー。たとえ濡れていたところで、
決して悟られることなど、あり得ない筈……
 
でも…… これ以上……され……たら…… あんっ……

快感と羞恥で淫らに悶えるタックルを、尚も指が妖しく苛め続ける。繊細に秘裂の形
をなぞって薄地の布に浮き出させ、冷たい指の腹で淫靡に嬲られる。コロコロとした
クリトリスの感触や、柔らかく纏わりついてくるような小陰唇の感触が、泉の潤いと
共に、クレバスに浅く沈む魔女の中指に伝わる。声が洩れるのを堪えても、熱い蜜が
漏れ零れている。

か、感じる…… 凄い…… こんなに感じるなんて……
ああっ……蕩けそう…… ぃ……いい…… 何て気持ちいいの…… 
ぁ……あん、あんっ!
少しでも気を抜いたら、どうかなってしまう……

生まれて初めて愛撫される感触。いやらしい辱めを、淫らな責めを受け、激しい昂ぶ
りを覚えていることに、否が応でも気づかされる。如何にも重たそうに、快楽に満ち
溢れた重たさで、左腕が弧を描いて落ちてゆく。最早、誰の目にも、緊張と萎縮、躊
躇いと恥じらいを隠しきれない。
 
うっ、うぅ……こ、声が……声、出ちゃう……
こんな筈ない…… はぁ……はぁっ……はっ……
うくっ! おかしくなっちゃう…… 
ああっ……こんなときに…… どうして…… ぁ……だめ……だめっ……
115第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN ID:1jX13qxQ
10

「ホウ…… 先ズハ、下カラ濡ラシテモラオウカ」
「変身姿ノママノ放尿ヲ眺メルノモ、一興ダワ」

いきなり牽き上げられ、股間に食い込むインナーの蔓りとした靭やかな感触に、束の
間、意識が遠のく程、峻烈な快感がタックルを蹂躙する。
はうっ!
反り返った喉が慄える。美脚が痺れ、太腿が細動する。理性を掻き集め、辛うじて決
壊を食い止める。不意を衝かれ、思わず僅かに漏らした尿が微かに滴り滲んでいる。
ぅ……さっきの利尿剤が…… んんっ……
インナーが更に上へと揺ら揺ら牽き上げられる。擦れた音を立てながら、深い切れ目
の奥へと滑り込み、不慣れな躰を責めあげる。滑らかな生地越し、弄られた感触に
耐え兼ねて、赤く濡れた唇の先から、和えかな吐息が洩れる。
ぁぅ……ぁ…… ぁぁ…… やめて……
……っっ 掠る……ぅ……
身を守るはずのインナーに犯されて、漣波のような愉悦に溢れ、甘美な騒めきが下肢
いっぱいに広がる。股間には恥ずかしい染みが夥しく広がっていく。身動ぐと、食い
込む布地の感触に、恥ずかしい濡れがはっきりと感じられる。しかも、きゅうっ、と
高まり、腰が抜けそうになる程の徒ならぬ尿意が巡る。荒い息。小刻みに震える内腿。
今にも迸りそう。

ぃ……いけない…… 堪えなければ……

無遠慮な掌や指が緩急に這い、じっくりと弄ぶ粘着した刺激を感じる。撫で擦って、
膀胱の位置を正確に探り当てたところで手が止まる。指先が押し込まれ、外から鈍重
な圧迫が襲い掛かる。

く……ぅ…… んはっ…… ん、あっ…… んくっ……う゛…… 

閉じ込められ、行き場をなくした液体が引き締った下腹部で渦を巻く。激しい蠕動が
張り詰めた膀胱を駆け抜け、震える股間を直撃する。ケイトが見つめている。凝視し
ている。酷薄な冷笑を浮かべて、するのを待っている。内腿を引き締めようとしても、
これ以上堪えられないところまで来ている。膨れ上がる灼熱の気配に、気力が殆ど尽
きかけている。誘惑を断ち切ることができそうにない。崩壊のときが近づくのを感じ
る。諦めの表情が浮かび、絶望に慄然と震えてしまう。

そんなに、わたしの失禁を……

ああ…… ほの甘い感触が腰全体に伝わり、予兆が滲み出す。
くっ、くぅうっ…… も、もっ……漏れるぅぅ…… ぅ……ぁ……
116第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN ID:1jX13qxQ
11

「ソロソロ、仕上ゲヲシテ、アゲヨウネ キッヒヒヒ」

まさか…… 何を……するの……

跪く魔女。生暖かく嫌な呼気がかかる。仰向けのタックルの腰を抱え、だらしなく開
いた両腿に顔を埋ずめる。濡れて艶艶光る股間に貼りついた薄布が浮き上がり、秘裂
が露になったところに邪な唇をつけ、縦溝に沿って、丁寧に舌を這わせる。

そんな…… ぁ……
だめ……それだけは…… お願い…… ああ……やめて…… しっ、しないで……
ぁ…… そこは、そこは…… だめ! ゆ、許して…… 
……ん んっ! あ、あっ、あっ! あうっ!
あっ、そ、そこは、そこっ! あああああっ……

巧妙な舌戯によるさらさらした感触の遣りきれない程の切なさに、タックルが儚げに
身悶える。堪り兼ねて、蒼白い内腿を一筋の雫が伝う。潤んだ瞳からは涙が溢れ、煌
めいて頬に零れている。
だ……だめ…… もう……我慢できない……

凄まじい快感、一瞬、張りつめていた理性の糸が途切れる。腰の力が緩み……
込み上げてくるものを、止めることが……でき……ない……
「あ、だめっ……」
か細い悲鳴…… その瞬間、堪らない……凄艶な……
ぁ……うぅぅぅ…… あ、あああ……ぃ…… もうっ……

一旦遮られた噴水が、インナーを色濃く変色させ、そして、太腿の内側に温もりが溢
れ出る。限界まで我慢した後の弛緩は、妖しいまでに甘美極まりなく、意識は桃色の
霞に包まれる。被虐の快美に陰湿な歓びが吹き零れ、恍惚に泡立ちながら悲嘆のヒロ
インを優しく包む。二度、三度、波に襲われる度、痺れるほどの解放感が、領元から
込み上げる喜悦に充ち満ちて、胸が張り裂けてしまいそう。

……ああっ…… わたし、とうとう……

魔女に見つめられたまま、音を立てての排泄。どうすることもできない。
ぁ……ん…… 止められな……ぃ……
漸く解放された雫が股間から溢れ続けて、剥き出しの内腿を、包まれた尻を傳い、夥
しく濡らす。濡れた感触が、どこまでも拡がる。華奢な背筋が、虚しく揺れている。
淡い臭気が周りに立ち籠める。滴り落ちた雫が、地に溜りを作る。掌が腿の間に押し
当てられ、濡れたインナーをゆっくり撫でられる。膝が軽く痙攣するように動き、腿
が悶えるように左右に揺れている。

漏らしてしまった……

to be continued
117第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/19(月) NY:AN:NY.AN ID:mO4cCYbn
電波人間タックル(第30話「さようならタックル! 最後の活躍!!」)

12

ケイトの哂い声が聞こえる、嘲う声が。見せてしまった。気丈なヒロインが耐えかね
て屈し、情けなく失禁するところを。我慢できずに、正義を象徴する可憐な姿を台無
しに、ぐしゃぐしゃに汚してしまうところを。この惨めな姿を見られている。憎むべ
き敵デルザー軍団の前で、貶められ、辱められ、惨めに晒してしまった酷い姿を想起
するだけで、嘗て無い物凄まじい羞恥に此の身が切り刻まれ、屈辱に涙が滲む。

……あんなことされたら…… 誰だって……

「アタシノ体ハ、淫毒ノ塊
 アタシガ触レタ者ハ、誰デモ堕チルノサ、キヒヒヒ」

打ち拉がれ、ぐったり頽れたタックルを、改めて抱き締めて身を重ねるケイト。躰に
喰らいつくようにして首を絡め、胸や尻を弄るように撫で回す。屈辱的な仕打ちに、
掌に爪を立て、喉元も露に身を仰け反らせて懸命に堪える。
いやっ……離して…… 汚らわしい…… 触らないで……
はぁ、はぁ…… く、悔しい……

「ナニ、ソノ眼」

いやらしく股間を密着させると、素股の要領で、腰を微妙に揺すり始める。ときに執
拗に、ときに焦らすように、幾度と無く丹念に絡んで、ねっとりと汚辱する。超壮絶
な快美感に、魔女の長身を抱き締め返して辛うじて失神に耐える。
ああ……そんな…… このままじゃ、わたし……
ああっ、こ、こんな、ああ……ぁ…… はっ……はぁ はぁっ……うっ…… 
あっ……

遂には、ぐっしょり濡れている尻の切れ目に沿って指が這い、未通の入り口を割り裂
いて深く衝き立てられる! 
「はぁぁぁぁっ!」
インナー越しに深々と貫かれ、恥ずかしい器官に魔女の中指が押し込まれていく。
タックルの可憐な悲鳴!
あはっ! 痛い、痛いっ!
指がアナルを内側から円く擦るように抉り、捏ね回し続けている。強烈なショックが、
タックルに劇痛をもたらすのみならず、媚毒で敏感になった性感を一層刺激する。フ
ルフルッと尻の双丘が痙攣し、汗の珠が流れる。意識とは裏腹に、内奥から湧き出て
くる禁断の疼きに脱力感。
……堪らない…… 腰が、脚が動かないわ…… どうしたら……
極限に達し、もう変身を維持しているだけで、心身ともに辛く切ないのに、その上、
どこまで……どこまで貶めようというの……
118第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/19(月) NY:AN:NY.AN ID:mO4cCYbn
13

「今度コソ、逝カセテヤル、覚悟ヲシ」

到頭、清らかな処女地までもが魔舌に罹り、辱められる。
「あうっ」
淫らな感触に、思わず快楽の混じった声が漏れる。
……ぅ あぁんっ、やめて…… やだ、やだっ…… あっ! いやあっ!
あはぁっ! はぁっ! あぁぁぁっ! だめっ! だめになっちゃう!

グチュ!
硬められた舌が、ぬめった秘裂の内壁を押し広げながら、タックルの膣孔を穿つ。深く
差し込まれ、膣内に拡がって、柔らかい粘膜をなぞるように舐めあげられる。一番敏感
な箇所にまで突き刺さる。淫芽が唇で嬲られる。腰の奥から快感が這い上がってくる。
忌まわしい痛覚と共に、もどかしく甘美な騒めきが下肢一杯に広がる。激しく立ち上る
快感に、高潮した内腿が、なだらかな恥丘が、為す術もなく震えている。固く結んだ口
許から、美しく透明な唾液が幾筋、首筋を伝って襟元へと吸い込まれていく。
  
ん……ぁ…… あ、あっ! ああっ! はぁあっ! んぁっ!……っ、んうぅっ……

何とか魔舌の動きを押さえ込もうとしたタックルは、無謀にも膣の筋肉を強く締めてい
た。そのため、腰が舌の動きと共に揺れていた。魔女が奥深くまで刺さった舌をゆっく
りと引き摺り出す。ほとんど全て引き摺り出すと、今度は力を込めて押し戻していく。
奥まで押し込み、また引き摺り出す。そしてまた押し戻し……。
ヌチュッ!
無垢で繊細なヴァギナを、魔舌は何度も何度も出入りした。タックルを高みへと押し上
げ、破滅へと導く悪魔の所業であった。

「ソンナニ締メ付ケテ」

快感に悶え、身を捩る度、股間から全身に激痛が走り、火箸で貫かれたかのような感覚
に、身動ぐことさえ、ままならない。だが、犯され続けて、身を裂かれるような苦痛に
苛まれながらも、有ろう事か、インナー越しに突っ込まれた魔舌を、熱く滾った恥部は、
収縮と弛緩を繰り返し、愛液を溢れさせて締めつけているのだ。言葉にならない嗚咽が、
心ならずも洩れる。双眸から溜まった涙液が流れる。もはや恥辱を感じる遑もない。

あう! あうっ! あん! あぁんっっ! あぅんっ…… 
何か……でちゃぅ…… ぁぁぁぁぁ……
119第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/19(月) NY:AN:NY.AN ID:mO4cCYbn
14

「助けに来たぞ! タックル!」
その声に、懼れ慄いたのはタックル自身だった。陵辱され、乱れた姿を少しでも見せま
いと、絶頂寸前の身を押し戻した。

そんな…… ぁぁぁ……
どうして…… どうして、もっと早く……来てくれなかったの……

「変身、ストロンガー!」
「チッ」
「……わたしに構わず、攻撃して!」

頬を真っ赤に染め、何かを否定するかのように、萎らしく頸を振るタックル。際限ない
辱めに抵抗できずに、ただただ犯され悶える事しかできなかったなんて。今にも泣き出
しそうな、可憐な表情。縋るような切なげな輝きが、淫欲に酔いしれた瞳に蘇り宿って
いた。

「ぁっ……ぁぁ…… っ……ドクターケイトは、燃える火に弱いのよ」
「何っ?」
「はぁ はぁ はぁ……蝋燭の火を翳したとき、ケイトは怯えたわ」

ガスに侵され爛れた咽喉から絞り出る、上擦って取り繕うことのできない掠れた叫び。
ストロンガーの目に映ったであろう、無残にも辱められ、最早見る影もない程、変わり
果てた淫らな姿。自らの聖水で、たっぷりと汚した下肢。無残にも扇情的に切り裂かれ
たスカートの隠微な光沢。露出した赤いインナーを股にぎりぎりまで食い込ませ、そこ
から更に広がる恥ずかしい濃い染み。時折、尻を浮かせて、あたかもその感触を味わう
かのように腰をくねらせた痴態。そして、絶頂の間際まで追い込まれては止まった責め。
満たされない喘ぎ。肛門にさえ残る違和感。こんなところで…… こんな薄汚い魔女の
アジトで、醜悪なドクターケイトのいやらしい辱めを、余す所無く受け、淫猥な責めに
屈し、藻掻き、のたうち、為す術も無く乱れて痴態を晒してきたタックル……
これまで懸命に戦い続けてきた正義のヒロインの余りに哀しい姿……

見られてしまった…… 端なく霰もない……こんな姿を…… 
お願い、見ないで……お願い……
120第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/19(月) NY:AN:NY.AN ID:mO4cCYbn
15

「コレモ見ルガイイ、ストロンガー!」
止めとばかりに、ケイトの肱がタックルの無防備な下腹部に突きたてられる。
「ぅぐっ!」
肱が酷く減り込み、苦悶に下肢の力が失われて、だらりと股が開く。外から襲い掛か
る容赦のない圧迫が腰を砕く。脂汗が滴り落ち、下肢が痙攣している。肱が引き抜か
れると同時に、勢い良く迸り出た液が股間から噴き出し、音を立てて地に飛び散る。

タックルの陵辱された凄艶な痴態、何時しか倒錯の昂ぶりを覚えていることに気づき、
激しく動揺するストロンガー。滾る欲望に股間が硬く膨らみ、スーツの感触が一層強
く感じられる。
(ユリ子が酷い目に遭わされている、こんなときに……)
(犯され、辱められた姿に、俺は……俺は、欲情しているのか……)

しかし、羞恥や屈辱に苛まれながらも、媚毒に犯され切ったタックルの躰は滴り、
依然求めていた。それは、敵の慰みものと成り果てた此の姿を見られたことで、更に
増幅した。
そんな…… 勃起……している……ストロンガー…… ……今の、わたしに……
狂おしいまでの渇きと、止み難い欲求。痴態を晒し続けているにもかかわらず、余韻
が遣る瀬無く、堪らなかった。熱く滾った膣には、まだ感触が残っていた。技巧の限
りを尽くして更なる昂みへ導いて欲しいと悲鳴をあげていた。
切ない……
胸が締め付けられる。思わず、ぐしょ濡れの股間を押さえる。インナーの下にある自
分の性器を撫でる。それだけで全身に、きゅんっ、と感覚が走る。目蓋を閉じる。中
指をインナー越し、裂け目にゆっくり沈めていく。睫毛が震える。太腿を擦り合わせ、
腰を突き上げて、快楽の渦の広がりに、緩んだ唇から抗し切れず善がり声が洩れる。

痴態を覆い隠すかのように、絡む蔦を千切って、うつ伏せに横たわるタックル。
っ…… ぅぅ……
左手で胸を掴みながら、裂かれたスカートの奥に右手を差し入れ、快感に喘ぎ続けて
いる。ストロンガーが戦っていることも、嬌態を悟られていることも、分かっていて
も、どうしても手を離すことができない。
ぁぁ……
121第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/19(月) NY:AN:NY.AN ID:mO4cCYbn
16

「いかん、このまま攻撃したら、タックルが危ない」
抗えないストロンガーを甚振るケイト! 胸部に魔針が突き立てられようとしている!
「ストロンガー、死ネ!」

ぅ…… ぁ……
いけない…… わたしのために、ストロンガーが…… 
このままでは、ストロンガーがやられてしまう……

幾重にも込み上げてくる嘗て経験したことのない感度の高まりを、信じ難い強固な意
志で辛うじて抑え込もうとする。欲望の匂いに支配され、気怠くて堪らない。少しで
も躰を動かそうとするだけで、スーツの肌触りが感覚に襲いかかる。視界がぼんやり
とする。蜿き苦しみながら、右肱をつき左手で支えて、唆る腰を重く振りながら気丈
にも身を起こす。尻が前後に弾んでいる。股のインナーが後ろへと擦れる。膝がふら
つき、腰に、脚に力が入らない。右手を股間に宛がったまま、蹌踉めく。蕩けそうな
その快美に、双丘まで震えが走る。
か、躰が……躰が言うことをきかない……
固く結んだ口許から涎が幾筋流れ、首筋を伝って襟元へと吸い込まれていく。股間に
広がる濃い染みからは、なおも淫らな愛蜜が糸を引いて垂れ落ちている。

いいの…… どうせ、わたしは、助からないんだから……

魔女の不意を衝き、背後から組み付くタックル!
「オヤメ、何ヲスルノ」
戦慄に打ち克ち、掠れた声を震わせる。
「よぉし…… ウルトラサイクロン!」
爪を立て、藻掻くドクターケイトに、限りを尽くして決死のウェーブを叩き込む。情
念の怒を籠めて。
「えいっ!!」
「ェアーッ!」
長い断末魔と共に、弾き飛ばされ、燃え尽きるケイト。耳を劈く爆音。
同時に、過大な電波エナジーの反動が、創痍の全身に還ってくる。とても受け止めき
れない……

 〔……ウルトラサイクロンとは、残された最後の攻撃手段であった。〕
 〔……相手と共に、自分の命も捨てる。〕
 〔……文字どおり捨て身の攻撃、ウルトラサイクロンを使ったのだ。〕

to be continued
122第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/20(火) NY:AN:NY.AN ID:R8ZN1XIY
電波人間タックル(第30話「さようならタックル! 最後の活躍!!」)

【エピローグ】

ヘルメットの後頭部、力なく垂れる黄色いマフラー。華奢な背、辛うじて尻を包む
スカートに寄る皺、左脚のブーツの解れ。

……霞かかったタックルの目に辛うじて映ったものは、冥界の暗殺者ドクロ少佐と
相打ちに果て、電気エネルギーを失い、地に突っ伏したままのストロンガー。其処
へ、凄惨なまでに消耗し、泥土に塗れながらも躙り寄るタックル。
呼びかけても反応がなく、意識がないストロンガー。至る所に焦痕、噛痕。心肺が
停止している。一刻も早く脳に新鮮な酸素を送らなければ。しかし、タックルに残
された時と力は、余りにも少ない。硬い地面に仰向けに寝かせ、顎を持ち上げて気
道を確保する。胸の中間に手の付け根を置いて圧迫し、救命のため残された力の限
りをエナジーに変え、意識のないストロンガーに注ぎ込む。
ぁぁぁぁっ……
およそ耐え難い程の過酷な消尽がタックルの肉体と精神を蝕む。益々全身が萎えて
くる。使命感が、今の儚げなタックルを支えている。肩で息をつき、蹲りそうにな
る。地が揺れているようにさえ感ずる。心臓が急激に早鐘のように打ち始め、削ら
れるように気力が枯渇していく。下肢が痙攣の波動に弱弱しく打ち震え、背筋が寂
しく波打っている。尽きる寸前、ストロンガーに呻き声があがり、幸いに息が戻る。
双眸が虚ろに漂い、崩れ落ちるように両手を地につくタックル。押し潰されるよう
な疲弊に意識が途絶えそうになる。それでも、今にも頽れそうな脆い躰で、健気に
ストロンガーを気遣う。

早く……エナジーを…… わたしのエナジーを……

壮絶に精も魂も尽き、がっくりと崩れ落ちるタックル。そのままストロンガーの下
半身を庇うようにうつ伏せに覆い被さる。そして、凭れ掛かかるように顔を股間に
寄せ、両手で支えて唇に優しく含み、受け入れた突起に舌を這わせ、控え目に舐め
始める。殊更に巧みなわけではなく、不慣れでどこか戸惑いがちな頬張り方ではあ
ったが、心からの敬愛を籠めた舌戯に、次第に形が浮き上がり、強張りが口の中い
っぱいに膨れ拡がってゆく。
123第30話 ◆4esfMXj44o :2013/08/20(火) NY:AN:NY.AN ID:R8ZN1XIY
【エピローグ】(承前)

……わたしのを……わたしを…… ぁ、あげる…… ぅ……

更に身を重ねて縋り付き、愛おしむように、股間に挟み込んで腰を使い始める。も
たらされる名状し難い胸の高揚。擦れる太腿からの振動が、期待に潤んだ秘部を刺
激している。肌さながらのインナー越し、熟れた性器に、屹立したクリトリスに当
たっている。面輪が仄めき、控え目な淫声で善がる。
つあっ……ぅ…… ぃ、いい……  
そこは、そこは…… ぁぁ、そこっ…… 
んふうっ…… いい…… ぁう、あううぅぅぅっっ……
躰に密着したインナーが腰骨まで摺り上げられ、股間に鋭く食い込んでいる。
無論、それだけではない。手を添え、腰を深く沈めている。

ああ…… 入ってる……

伸縮素材の赤いインナーのぬめった隘路に、ストロンガーの先端がスーツ諸共、力
強く減り込んでいる。もともと薄手の素材でできているインナー。その股間のとこ
ろは、とりわけ柔らかく精緻な造りにされ、幸いなことに、感触を妨げることがな
かった。
ぐにゅっ。
あん……だめっ! 欲しいっ! ああっ…… 嬉……
小刻みな腰使いで更に奥へと挿しつけて、躰の芯を楔で貫く。硬く揺らぎのないも
のを感じて、嫋やかに張った腰が浮き跳ね、丸やかな美尻がぎゅっと窄まる。剥き
出しの脚が痺れ、太腿が細動する。舐られた柔襞が蠢き、膣が収縮している。余り
の良さに、迸るような劇悦の畝りが、子宮までも押し寄せてくる。意識が縺れて混
濁し、一気の興奮が止まらない。激しい動悸、荒い呼吸。言い知れぬ陶酔に、眼差
しが彷徨う。反り返った喉が慄える。華奢な背筋を小刻みに震わせながら、堪え切
れず喘ぎ声があがる。

んあっ! ……あっ、ああっ! あああああっ……
……ぁ あん、あんっ! あんっ!! はっ! はあぁんっ!!

これまで無理を重ね、耐えに耐え、堪えに堪えてきた解れが紡がれようとしている。
心地良い痛覚と共に、凄まじく甘美な騒めきが下肢に広がる。更に浮かせようとす
ると、漣波のような愉悦に溢れ、腰が淫らに砕けてしまう。言葉にならない嗚咽が、
心ならず洩れる。

いきそう……

気づいていた。意識の無い者は決して勃起しないことに、タックルは気づいていた。

いつか悪い怪人達がいなくなって、世の中が平和になったら……
ふたりでどこか遠い、美しいところへ行きたいわ……

束の間の青春を人類の敵との戦いに捧げた電波人間タックル、岬ユリ子。
果たせそうにない約束、叶えられそうにない願い。
終いに過ぎり、去来するのは、哀れな妄想なのだろうか。
もっと、緊く…… 抱いて……
閉じる事すらできない綺麗な瞳から頬に、ひと筋の涙が零れている。

end
124名無しさん@ピンキー:2013/09/06(金) 01:03:38.41 ID:XGHTpf02
保守
125名無しさん@ピンキー:2013/11/09(土) 06:51:20.48 ID:Q5PZvE7O
支持
126名無しさん@ピンキー:2013/11/23(土) 12:23:34.33 ID:hvLcx72T
怪人に改造されてしまった恋人をなんとかするために奔走する変身ヒロイン
仲間をも欺く手段の選ばなさっぷりは二重スパイチック
127名無しさん@ピンキー:2013/11/25(月) 03:40:31.27 ID:TN5GXml4
選ばなさ?
128名無しさん@ピンキー:2013/11/27(水) 20:51:27.07 ID:xKLvL8GF
手段を選ばない→手段の選ばなさは

別におかしくない気がするが?
129名無しさん@ピンキー:2013/11/30(土) 21:54:00.79 ID:fLZ4qgvi
可笑しいだろ
130名無しさん@ピンキー:2013/12/31(火) 17:02:22.65 ID:Asi7qDno
来年もヒロインとラブラブできますように
131呪装鎧師マジーナ(0/6):2014/01/04(土) 19:25:50.32 ID:s5EAK7z3
6レスほど失礼します。
某魔法使いのJK魔法刑事ライダーっていう肩書きにときめいて
試行錯誤しながら書いたもの。イベントの時期がアレなのはご愛嬌…
132呪装鎧師マジーナ(1/6):2014/01/04(土) 19:28:15.33 ID:s5EAK7z3
「呪い」――のろい、まじない、それは表裏一体の力。
望みを叶えるために、不幸を祈れば《のろい》となり、幸福を祈れば《まじない》となる。
この世に害をなす《のろい》の恐怖を《まじない》で振り払う、現代の呪術師。
人は、彼女を――『マジーナ』と呼ぶ。

「マジーナってなに?」

ナレーションの締めに疑義を呈したのは、井村リョウスケ。
怪事件を捜査する、国家安全局特務課・呪術事案担当係の若手刑事である。
「え……なに、マジーナって」
「私のことです。ネットでそう呼ばれてるって聞きました」
疑惑の追及に、妙に得意げに答えるのは、現代の呪術師・茅家モユ。
少女である。現役女子高生である。黒髪ロングのストレートである。
「“おまじない”をもじってマジーナです……どうかしました?」
「あ、いや」
ご機嫌だな、と思っていた。かわいらしい感じの通称がついたのが嬉しいのだろう。
(自分の使う術がかわいくないのを気にしていたからな……健気な)
ちなみにモユたちの存在は隠蔽されている。
彼女の言う「ネット」とは、裏の世界の住人たち専用のコミュニティのことだろう。
そしてその情報を彼女に流す者といえば、同僚の……
「……おかしいですか?」
「え?」
「おかしいですか、マジーナって」
「あ、いやあ。おかしくないおかしくない。ふーん、マジーナ。マジーナねえ」
「変なら変って言ってくださいっ!」
怒り顔で体を寄せてくる。ふわっと柑橘系のにおいがした。
その勢いに押されて、思わず井村は笑ってしまう。
それを見咎めたモユは更にジト目で迫り――
「ま、ま、落ち着いて……」
あわや密着という手前で、制止した。危ないところであった。
「仕事の話に、戻りましょう。そうしましょう」
彼女は対応に不満げであったが、「はぁい」と引き下がった。
性根は真面目な二人である。仕事の話になれば、すぐに切り替えることができる。
たとえ、直前まで言い合いをしていても、どんなにいい雰囲気であっても。
モユがその現状をもどかしく思っていることを、井村は知らない。


後日、井村はひとり頭を抱えることになる。
モユに《マジーナ》の呼び名をリークした井村の同僚は、とてもいたずら好きだ。
当然、彼女にとってモユはもっともいじり甲斐のある相手というわけで。

「《呪装鎧師マジーナ》……!」

一部しか教えていなかったのだ。枕をつけると全然かわいくねえ。
呪詛返しで韻を踏んでるんだろうが……全然かわいくねえ。
気づかれませんように、と願を掛けつつ、井村は今日も仕事に向かう――。
133呪装鎧師マジーナ(2/6):2014/01/04(土) 19:31:24.63 ID:s5EAK7z3
車のフロントガラスに、ちろちろと雪の結晶が張りついては溶けていく。
ホワイトクリスマスになりそうですねと、今朝のお天気お姉さんは情感たっぷりだった。
「ぜんっぜん、そんな雰囲気しないけどな」
雪が降ろうがクリスマスだろうが、平日である。
ただでさえ仕事が立て込む年の瀬に、デートを優先するなんてありえない。
井村刑事は、そういう常識的な考えを持つ公務員であった。
そして、帰ったらビールとから揚げを楽しんで寝たいと考えるクリぼっちでもあった。
「早く終わらせて帰ろ――」
振り返ると、モユは制服からサンタの衣装に早着替えしていた。
「……」
しかもぶすっとした顔で、不機嫌そうである。
「……えーと」
「そうですね、雰囲気ありませんね」
着替えた際に乱れたスカートの裾を直そうと、身を捩る度にふとももが覗く。
「雰囲気ないですね、ごめんなさい」
(やべえ……何か超準備してたこの子……)

本日――12月24日の仕事は、呪術事案担当係の伝統行事のようなものだ。
毎年、クリスマスを恨む独り者は少なからず存在する。
同時多発的に生じた怨念は、ふとしたはずみで強力な《のろい》になる危険がある。
そこで、夜になりカップルが溢れ返る前に、怨念を散らす術式を施して回るのだ。

「クリスマスが平日だったのは幸いだ。土日なら徹夜でって前任者から聞いてたよ」
怨念が最も強くなるのは、基本的にカップルが××××を始める夜だ。
しかし休日なら昼間からイチャつくカップルも増えるため、より危険が増す。
「私も聞いてます。毎年、大変みたいですね……」
「大変っていったら、モユちゃんも災難だな。クリスマスを好きに過ごせなくて」
「い、いえ私は……結果オーライというか」
はにかむように笑う。対する井村は、神妙な面持ちで頷いて、
「そうか、ぼっちか……」
モユは思わずバランスを崩しそうになった。まさか車の中でずっこけてしまうとは。
「井村さん!?」
「恥ずかしがるなよ、俺もぼっちさ。明石家サンタだけが楽しみ」
「……本当ですか?」
「なんで疑われなきゃならんのだ……」
134呪装鎧師マジーナ(3/6):2014/01/04(土) 19:34:22.46 ID:s5EAK7z3
なんやかんやとぼやきながらも、着々と作業をこなしていく二人。
せっかくのクリスマスだというのに、いつもの調子とまるで変わりなく。
口にこそ出さないものの、モユが密かに落胆していた。
(井村さん、やっぱり彼女いないんだ……なら、もう少しそわそわしてもいいじゃない)
コンビを組んでから1年も経っていないが、気が合うのは最初から何となくわかっていた。
しかしそれは生真面目同士ということ。仕事でしか接点がないことも障害だった。
井村に敬語をやめさせ、下の名前で呼んでもらえるようになるまでだいぶかかった。
(せめて、井村さんがもう少し積極的に手を出してくる人だったら……)
だが、そんないい加減な相手を好きになっていたかといえば、また別の問題で――
「……あれ?」
余計なことを考えながらも、仮にもプロ。異変にはすぐに気がついた。
「どうした、モユちゃん」
「ここだけ、ちょっと……あやしいんです」
「あやしい……」
井村が見る限りは、商店街にはよくある光景だった。
サンタが立ち並び、ビラを配ったり何だり。
「まあ、確かにクオリティがあやしいサンタもいるけど」
「そういう意味じゃありません!なんというか、こう……」
言いかけて、モユの表情が強張った。
「……井村さん!近くに、呪術師がいます!」
「なにっ!」
呪術師が相手というだけで、事情はかなり変わってくる。
自然発生した《のろい》と違い、術師のいる《のろい》は複雑さ・指向性の点で強力だ。
呪術師といえど所詮は人間。私利私欲や、悪意をもって力を用いる者も少ないないのだ。
「近くって、どの程度?」
「……かなり。もう、視認できる範囲にいるはずです。私は呪界化処理に入ります」
「わかった」
両目を瞑って集中しているモユに代わり、井村が周囲を警戒する。
目に入るもののうち、こちらに近づいてくるものと言えば。
『Ho!Ho!Ho!』
サンタクロースだけだ。陽気な掛け声を上げながら、サンタは叫んだ。
『メニー・コロシマース!』
「なんだこいつ!?」
その瞬間、井村はツッコミと回避運動を同時にこなした。
反応が遅れていれば、斧で頭を二つに割られていただろう。
「パンドンになるのは御免だぜ」
「ぱんどん?」
「若い子には通じないか……それはそうと、モユちゃん」
「はい!」
井村の陰から飛び出し、コンクリートの路面から斧を引き抜くサンタに相対するモユ。
「“怨《オン》”!」
その声とともに、文字を書き連ねたようなタトゥ――『呪紋』が体中に浮かび上がる。
この呪紋には《のろい》を跳ね返す《まじない》の力が込められている。
「《まじない師》マジーナ……いきます!」
呪術師・茅家モユの戦闘スタイルである。ただし省エネ、と井村は内心付け足した。
そしてその名前でいくのか……気に入ったんだな。
言わぬが仏。井村は、お口チャックマン(死語)と化した。
135呪装鎧師マジーナ(4/6):2014/01/04(土) 19:37:23.27 ID:s5EAK7z3
「こっちの斧サンタが《のろい》で、後ろのが呪術師か?」
いつの間にか斧サンタの後ろに現れていた、もう1人のサンタを示す。
「そうです。既に呪界化はしてあるのに、動けているのが何よりの証拠です」
呪界とは、簡単に言えば結界。《のろい》の力を一時的に隔離するフィールドである。
そこでは、《のろい》そのもの、呪術師、呪術師が認めた者しか、動くものはない。
「《のろい》の正体は?」
「超自然的存在に力を借りる系統の呪術ですね。そうして召喚されたのが――」
モユは斧サンタを指差した。
「“レッドキャップ”です」
「クライムハンターの?」
「いえ、返り血で帽子を赤く染めるのを悦びとする残虐な妖精で……誰のことです、それ?」
「知らないならいいんだ」
国家安全局が扱う重要機密である。詳しくはまとめサイトで。
それはともかく、モユは鋭い視線を呪術師に送る。
「クリスマスに、なんてものの力を借りようとしてるんですか……!」
「フン、クリスマスだからこそだよ。サンタに紛れさせられるからな」
「不意打ちでカップルを襲おうって魂胆か」
「その通り。この《のろい》で、“聖なる夜”を“性なる夜”に貶める奴らに……死を!」
「絶対、そんな崇高な理由じゃねーよ……」
「うるさい!サンタコスのJK呪術師とバディなぞ組みやがって……怨やましい!」
より一層の強い怨念と、新しい言葉が生まれた。
「お前も死ね!」の号令で再度斧サンタが斬りかかる。
「やらせません!」と割り込んだモユの呪紋の壁が阻み、両者が弾き飛ぶ。
斧サンタは呪術師に直撃し、モユはコンクリートの上を転がりながらも井村がキャッチした。
「……思ったより、軽いな」
「いえ、けっこう重い一撃でした」
「いや、モユちゃんが」
「!?!?!?」
真っ赤になりながら井村にトドメをさし、モユは再び斧サンタに向かう。
「一気にカタをつけます……!」
「呑気ラブコメしやがって、こっちの台詞だ!」
襲い来る斧をかわしながら印を組むと、体に浮き出ていた呪紋に変化が現れた。
呪紋は彼女の身体を離れ、うぞうぞと動き一回り大きなシルエットを形成する。

「……“怨《オン》”!」

そして顕現する、鈍く光る、禍々しい黒い鎧。厳しい男性の顔が象られた仮面つきの兜。
これが、モユの本気の戦闘スタイル。呪紋の力が実体化した、禍々しい「呪ノ鎧」だ。
その姿を目にした相手の呪術師は――
136呪装鎧師マジーナ(5/6):2014/01/04(土) 19:40:43.40 ID:s5EAK7z3
「かわいくねえ!」

「!!」

その言葉は、確実に彼女の心を抉った。
そう、かわいくないのだ。
「JK呪術師ってーから期待したのに、何だこのゲテモノは!」
「……」
「ってーか呪紋形態の時点からがっかりだよ!脱げよ!見せなきゃダメだろ呪紋はぁ!」
「……」
「意識が低いったらありゃしねえ!よくそんなんで人様の前に――」
「よくも……」
左腕に巻かれていた鎖が千切れ、抑え込まれていた「巨大なツメ」が解放される。
「気にしていることをーッ!」
呪縛を解かれた爪が、斧サンタの胸を貫く。
宙ぶらりんとなったサンタはしばらく痙攣した後、分解されるように消えていった。
見事な、必殺の貫手であった。
「必殺技もかわいくねえ!」
「……」
ゆらり、と妖しく光る眼光が、呪術師を射抜く。
口は禍のもと。命まではとらずとも、次に餌食となるのは野次を飛ばす呪術師であった。
「だから……」
鎧の周囲にまとわりついていた粒が結集し、彼女の隣にもう一つ人影をつくる。
それは、さきほど消えたと思われていた斧サンタ。陽気な声で、斧を振りかぶる。
「気にしてるって……」
これこそ、モユの真骨頂。《のろい》の鉾先を自身に向けさせ《まじない》で相殺。
そうして無に帰した《のろい》を取り込み、もとの呪術師に突き返す。
「言ってるでしょうがーッッッ!!」
悲痛な叫びと共に炸裂した“呪詛返し”により、呪術師は斧で真っ二つに。
だが、ここは呪界。現実に戻れば、魂をごっそり削られ気絶して転がっていることだろう。
戦闘不能を確認し、モユは一息つき、
「呪詛返し――人を呪わば、倍返しだ!」
「……か、」
ちゃっかり目覚めていた井村が、決め台詞を持っていった。

「勝手にかわいくない台詞を吹き替えないでくださいっ!」
137呪装鎧師マジーナ(6/6):2014/01/04(土) 19:44:30.94 ID:s5EAK7z3
呪術事案は首謀者の呪術師の捕縛により、無事解決した。
あとは井村は書類作成のため職場へ、モユは自宅へ帰るだけなのだが。
「……」
井村が盗み見る助手席には、呪ノ鎧を装着したままのモユが座っている。
その見た目もさることながら、空気が、非常に重苦しい。
(やっぱ、気にしてるんだな……“かわいくない”って)
こうやって拗ねるところとか、そういう仕草は井村は「かわいい」と思うのだが。
「……」
井村は久々に、彼女と出会ったばかりの頃を思い出していた。
呪術師らしk鬱々としていて、この先うまくやっていけるのか不安だった。
相手は高校生、過度に馴れ馴れしく接するわけにもいかない。
だから、今回の「コレ」もどうしようか迷っていたのだが――
「ほい」
モユの沈んだ姿に迷いは消え、ぽんと鎧の膝に紙袋を置いた。
「……?」
「ねぎらい、ねぎらい」
鎧の手のままがさごそと袋の中身を取り出す。
紙袋の中には「いかにも無難」という雰囲気をまとったテディベアが入っていた。
「これって……」
しゅるる、と呪紋の鎧化が解けていく。
「クリスマスプレゼント……!?」
「まあね」
やっと素顔になったが、あうあうあうと何も言えなくなってしまうモユ。
「……すべった?」
「ぜ、全然!ストライクです!」
それは若干嘘。ぬいぐるみを貰って無邪気に喜ぶほど子どもではない。
それでも、他ならぬ井村がくれたものだ。ハズレでないはずがない。
「良かった。もう、最近の子には何買っていいのかわからなかったけどね」
「む」
結局は子ども扱いかい!と思わなくはなかったが。
「ありがとうございます、井村さん」
ここは私が大人になってあげよう――と、モユは頬を緩めた。
「……でも、言ってくれてたら私も用意したのに」
「いやあ、俺もう子どもじゃないし」
「そういうことじゃなくて……」
わざととぼけてるのかな――そうは思っても、口に出す度胸はないモユだった。

 了

ありがとうございました。
138名無しさん@ピンキー:2014/01/05(日) 03:36:10.47 ID:ahUUx/gA
良カプ!
この先イチャラブ展開を期待してます
139名無しさん@ピンキー:2014/01/15(水) 07:03:32.33 ID:rG6Hd/Yn
乙であります!
140呪装鎧師マジーナ(0/6):2014/01/19(日) 22:07:58.11 ID:JJ7etapA
また6レスほどお借りします。
なかなか試行錯誤を抜け出せません。
141呪装鎧師マジーナ(1/6):2014/01/19(日) 22:11:10.91 ID:JJ7etapA
「呪い」――のろい、まじない、それは表裏一体の力。
望みを叶えるために、不幸を祈れば《のろい》となり、幸福を祈れば《まじない》となる。
この世に害をなす《のろい》の恐怖を《まじない》で振り払う、現代の呪術師。
人は、彼女を――『呪s

「おっと」

ナレーションの流れるカーステレオを間一髪で止めたのは、井村リョウスケ。
怪事件を捜査する、国家安全局特務課・呪術事案担当係の若手刑事である。
「あれ、止めちゃったんですか」
「うんまあ、ちょっと聞かれないようにっていうか配慮をね」
「ふぅん……?」
得心がいかず首を傾げるのは、現代の呪術師・茅家モユ。
今日は井村に後部座席を勧められる前に助手席に滑り込めたので上機嫌である。
「何かCD持ってるなら好きなのかけていいよ」
「ないです。いつもダウンロードで買ってますから」
「はー……今はダウンロードかぁ」
俺が最初に買ったCDなんだっけなあ、としみじみする井村。
そしてモユは意を決し、こほん、と咳払いをひとつ。
「き、聴きます?」
と、i-Phoneのイヤホンの片方を差し出した。もう片方はしっかり自分の耳に。
イヤホンを片方ずつつけて、顔を寄せ合って――というのをしたかったのだが。
「悪いけど、運転中だから……」
「あっ……」

その後、落ち込んだモユは音楽の世界に閉じこもり口を聞かなかった。
(嫌われた、嫌われた、常識のないコだと思われた……!)
それを、内心「かわいいな……」と思う井村だが、
口にしたところでモユには聞こえないだろうなと発言をあきらめた。
もうちょっとがんばってほしい。
142呪装鎧師マジーナ(2/6):2014/01/19(日) 22:14:42.80 ID:JJ7etapA
今回は時間がかかる捜査だからと、暇潰しを用意するようモユに勧めた。
すると、コンビニに立ち寄ったモユが買ってきたのは少女雑誌だった。
「……なんですか?」
「あ、いや」
「私がこういうの読んでるって、やっぱり変ですか?」
「んなこたぁない。女の子らしくて一向に構わないから。ただ――」
井村の視線に気づくまで、熟読していたページが気になったのだった。
《まじない》に関して、モユはプロだ。そんな彼女でもおまじないの記事を読むのか。
「キミが熱心に読んでるってことは、そのおまじないって本当に効くのか」
「いえ、でたらめばっかりですよ?」
吹き出して、思わず半笑いになってしまう井村。
「どういうことなの」
どうしてインチキに、そこまで夢中になれるんだ。
「絶対に効くっていうもんだったらともかくさ」
「絶対に効くってわかってたら、それはもう単純作業で、ドキドキしないじゃないですか」
「絶対に効くって思うから実行するもんじゃないの?」
「絶対に効くって信じて、がんばる気持ちが大事なんです!」
「絶対に効くって、どういう意味だっけ……」
《まじない》のプロ、まさかの力説である。これには井村も苦笑い。
「そ、そういうもんなんスか……」
「そういうものなんです」
「じゃあモユちゃん、好きなヤツいんの」
「はぅッ!?」
そんな素っ頓狂な声を出したかと思うと、
「……どうしてそう思いますか?」
けろりと澄まし顔になり、髪をかき上げながら答えるモユである。
(なんだこの百面相は……)
意図を読みきれず、笑いがひっこむ井村。
これがさっきの雑誌で紹介されていた小悪魔テクであることを、彼はもちろん知らない。
ちなみにその全容は、

――『好きな人いるの?』と聞くのはあなたに気がある証拠!(意訳)
――はぐらかして、カレの注意を引いちゃおう!(意訳)

というびっくりするほどの浅知恵である。
「……」
一方、真顔になられた上に、放置されたモユは真っ赤になって震えていた。
井村が慌ててフォローを入れたのは、彼女が涙目になってようやくだった。
「ええとそれで……仕事だ。仕事の話をしよう。今回はね――」
143呪装鎧師マジーナ(3/6):2014/01/19(日) 22:17:53.49 ID:JJ7etapA
『願いを叶えてくれる○○』『幸せになれる○○』というものは、どこにでもある。
そのほとんどは迷信かインチキだが、稀に、本物の呪術的アイテムが紛れていることがある。
そうなると問題となるのは、それが《のろい》か《まじない》か、ということだ。

「……これがその、噂のアイテムですか?」
「そう」
シルバーアクセサリーを摘むモユに、井村は頷いてみせた。
「どういう噂なんです?」
「幸運になるアクセサリー。ただ、幸運になるには手順がある」
聞き込みの成果が詰まっている手帳をぱらぱらとめくる井村。
「えーと、買ったアクセサリーを他人に渡す。すると渡した方は幸運が訪れるが――」
「渡された方は不運に見舞われる、ですね」
その通りだった。
「あれ、知ってた?」
「そういう呪術式があるんです。他者から運を吸い上げるっていう……」
言いながら、モユはアームカバーに覆われた左腕に手を置いた。
「度が過ぎると、危険なものです」
「……」
モユが黙ってしまったので、井村は手帳の続きを読みあげる。
「これを売りさばいている露店があるらしい」
アクセサリーを売る露店は無数にある。
当初は他の店にはない箔をつけるための商売文句だと思われていたのだが、
「本当にそうなった、っていう証言が一定数得られた」
国安特務課で設けられた、調査対象と認証されるだけの定数にまで。
「調査対象になったんですね?」
「ああ、そうだけど……気合入ってるね、今日」
「いつも通りです!」
「いや、いつも真面目なのは知ってるけど」
それにも増して、だ。のっぴきならない事情でもあるのだろうか。
(……気をつけといた方がいいかな)
出会ったころの、危なっかしい使命感の戦士に戻っていなければいいのだが。
井村も密かに、気合を入れることにした。彼が自分に課した仕事を遂行するために。
144呪装鎧師マジーナ(4/6):2014/01/19(日) 22:20:47.26 ID:JJ7etapA
 
『幸せになれる』という謳い文句は、今の時代、ありふれている。
木を隠すには森の中、ポピュラーであるからこそ、ホンモノを堂々と売れるのだ。
噂は噂を呼び、商売はすっかり軌道に乗った。だから今では――

「何にいたしましょうかねェ、ニイさん?」
「あー、そうですね。女子高生が気に入りそうなモノってどれですかね?」

商売相手は、オシャレ好きのガキだけには限られなくなった。
目の前にいる客は、どう見ても20も半ばのアクセサリーに縁遠そうな男。
少し離れた場所にぼーっと立っている女子高生を親指で示している。
「おっ……ニイさん、やりますね。エンコーっスか」
「まあねぇ……でも、ま、手切れ金代わりってことでひとつ、ね」
「へェー。でも、コレを渡すっていうことは……?」
「いやだな。万事うまくいくように、っていう保険だよ」
「ニイさんもお人が悪い……手堅いお仕事についてるってお見受けしますぜ」
「あっ、わかっちゃう? いや、そうなんだよこのとーり」

客が取り出したものは、警察手帳だった。

「……あなたですね」
井村の後ろで、呪界を張り終えたモユが、静かにその目蓋を開く。
「《のろい》のアクセサリーを売りさばいているのは」
「あん、たら……」
言葉を失う店主をよそに、モユは井村を小突く。
「井村さん、妙に話が弾んでましたけどどういうことですか?」
「えっ……話合わせてただけだよ、気合入れて」
「先に手切れ金って言ったの、井村さんでしたよね?」
「エンコーはスルーなのか、君的に」
「痴話喧嘩すんなや!」
放っておけばいつまでもやりとりを続ける二人を、放っておかれている当人が止めた。
 
145呪装鎧師マジーナ(5/6):2014/01/19(日) 22:23:25.22 ID:JJ7etapA
ひとしきり二人にお説教をしたあと、店主は改めて弁明する。
「俺は親切心で商売やってるんだ。一部の人間が独占してる力を、格安で提供してるんだよ」
井村はあえて問答を選んだ。モユの準備が整うまでの時間稼ぎをするためだ。
「なんで公にされてないのか、考えたか?」
「考えたよ、勿論商売人的に……そりゃ、価値があるからだ」
「価値、ね」
「ああ。こうやってモノに術をかけるだけで誰にでも使えるんだ、商業価値は高いぜ」
「アクセサリー自体に価値はないと? 結構、イカしてると思うけど」
店主の顔に、嘲りが広がる。誰に対しての嘲笑かはわからない。
「俺の作ってたアクセサリーは売れなかったよ。同じ商売文句だったけどさ」
聞き逃せない一言だった。それじゃあ、彼は自分でこれを作っているわけじゃないのか。
「呪術の価値は、そんじょそこらのインチキまじないとじゃ比べもんに――」
「……本物の呪術より、でたらめのおまじないの方が価値があります」
は、と店主が固まる。口を挟んだのは、モユだった。

「呪術は、結局は自分にできないことを他人任せにする力です。でも、」

「おまじないは後押しするだけ。願いが叶ったのなら、それは自分の力で叶えたもの」

「自分のために使うなら……おまじないの方が価値があるんです!」

こんな時に、とは思うが、井村は胸が熱くなるのを感じずにはいられなかった。
仕事上の相棒でしかなかったモユの、その想いに初めて触れた。そう思えた。
だがそんな感傷も、売人の怒号で醒まされる。
「ぬかせ、クソガキ!」
売人は《のろい》のかけられたアクセサリーを鎖分銅のように振るい、モユを襲う。
モユは怯むことなく素早く印を組み、呪紋で象られたシルエットでそれを受け止めた。
「“鎧呪・怨”!」
「えっ、いきなり!?」
普段は「かわいくない」と毛嫌いする鎧を初っ端から――よほど頭にきているようだ。
モユが「呪ノ鎧」をまとうと、シルバーアクセサリーが次々と売人の手を離れる。
より強い呪術の――《のろい》の力に取り込まれているのだ。そして待っているのは、
「――呪詛返し!」
異形の巨大な爪で束ねた何本ものチェーンが、店主の体を幾重にも巻き取る。
簀巻きにされた店主はしばらくもがいていたが、やがて根が尽きたのか、動かなくなった。
「人を呪わば、倍返しです!」
「気に入ってんじゃん」
発案したときは怒られたのに、納得のいかない井村だった。
 
146呪装鎧師マジーナ(6/6):2014/01/19(日) 22:26:32.71 ID:JJ7etapA
 
《のろい》のアイテムを流通させていた露店の取り締まりは完了した。
だが店主は卸売りしていただけと供述しており、製造者はもっと深い所にいるようだ。
なお、彼の連行は、途中でありとあらゆる不幸が襲ってくる困難なものとなった。因果応報。

そして――

「……」
帰りの車内も、助手席に乗り込んできたモユを相手に、井村は戸惑っていた。
彼女の呪術に対する考えに触れて、ある推測を組み立てていたからだ。
「モユちゃんさ……本当は、呪術がきらい?」
「……それには、ちゃんと答えられません」
でも、とモユは続ける。
「呪術のことを否定してるわけじゃないんです。自分のために使うのは間違いだと思うけど」
「誰かのために使うなら……ってこと?」
「ええ……でも、誰かに使う場合も、おまじないには勝てないと思うんですよね」
「やっぱりか」
「はい。たとえば、ほら」
と、モユはケータイの待ち受け画像を見せてくる。
自撮りだろうか、熊のぬいぐるみを笑顔で抱きしめるモユの写真だった。
そのぬいぐるみには井村も見覚えがあった。クリスマスに買ったものだ。
「私のいちばんのお守りです」
「はあ……それはそれは」
気に入ってもらえて嬉しい――とは言えず、ついつい皮肉を口にしてしまう。
「俺、呪術師じゃないから効き目なんてないと思うけど」
「だから、おまじないです。信じることが大事なんです!」
これは分が悪いと思った。今日のモユは、何かと直球だ。
さいですか、と笑って流そうとする井村。だが、モユは追撃を用意していた。
「心配しなくても私、もう前みたいにはなりませんよ。井村さんがいてくれるから」
見透かされていた。
「井村さんが、私を守ってくれますから……ねっ?」
「よ、よく覚えてるねそんなこと……」
それは、初めて彼女と仕事をした日に井村が言ったこと。言わずにはいられなかったことだ。

懐かしいよりも恥ずかしいその話題から逃れるため、あの手この手を尽くそうとする井村。
だが、もし次があるなら、その話が語られてしまうことは避けられないのであった。

 了

ありがとうございました。イチャラブは次ガンバリマス
147名無しさん@ピンキー:2014/01/25(土) 20:20:11.24 ID:l5ddjYL5
乙です
丁寧に話を積み上げるの好きですよ
148名無しさん@ピンキー:2014/03/22(土) 03:50:37.30 ID:09qR87bI
ラブラブ
149名無しさん@ピンキー:2014/05/13(火) 23:12:16.46 ID:OpTqlmQx
保守
150名無しさん@ピンキー:2014/05/17(土) 23:48:16.45 ID:QaYauVwa
保守代わりに。


春眠暁を覚えずという免罪符の横行は目に余るものがある。
そうでなくとも寝坊の常習犯のくせに、俺の幼馴染は「しょうがないよね」と二度寝を決め込むのだ。
無論、徹底抗戦の構えで今日も今日とていつものように、彼女の部屋へと乗り込んだわけだが――。

「おーい起きろ……っておぉぉぉぉい!?」

朝っぱらから絶句してしまった。そりゃそうだろ。
幼馴染を起こしにいったら、代わりにホーリーハートがベッドに転がっているのだから。

――ホーリーハートは、正義のヒロインである。
ひとたび悪が現れれば、どこからともなく駆けつけて、成敗して去っていく。
武力行使よりも対話に重きを置いたスタイルが評判で、人気も上々。

そんなホーリーハートが、なぜこんなところでこんなことになっているのか。
俺は、その理由を知っている。
「やっぱり、昨日……」
夜中に、隣家から窓を開け閉めする音が聞こえたから、「出動」なんだとは思っていた。
しばらくしたら戻ってきた気配もあったので、俺も安心して寝付くことができた。
彼女もぐっすり眠ることができたようだ。だが、せめて、
「変身解いてから寝ろよ……」
疲れて帰ってきて、着替えもしないで寝る……まるでサラリーマンだ。
そう、正義のヒロインホーリーハート、その正体は俺の幼馴染だ。
正体を隠しているくせに、こういうときの脇が甘い。コスでいえば本当に腋が見える。無防備すぎる。
こんなフリっフリの衣装を着て、ニーハイブーツも履いたままベッドに横になっているというのは……
ちょっと、クるものがある。こう、股間に。

「……ふぅ」

――さて、どうするか。
このまま起こさなければ、遅刻してしまう。
かといってこのまま起こせば、パニックになることは想像に難くない。主にこいつが。
「俺はどうすればいいんだ……」
こいつが、正体を隠して(いるつもりになって)さえいなければ……。
ん? なるほど。

「そうだ、変身解除させよう」
151名無しさん@ピンキー:2014/05/17(土) 23:51:40.59 ID:QaYauVwa
寝ている間に変身を解いて、それから起こせばいいのだ。そうすればややこしいことにはならない。
では、どうやって変身解除させるのか。
正体は秘密と一応なっているだけに、俺は変身シーンを拝んだことはない。変身プロセスは不明だ。
まったくの想像で対処しなくてはならない。

「……ボタンとかないかな、どっかに」

改めて、彼女の姿を観察した。
フリル多めのそのコスは、キャミソールとミニスカートで上下セパレートな「へそ出し」デザイン。
ならばと俺はとりあえず、へそを押した。
ふに。
ほどよく引き締まっている腰回りだが、それでも肌の感触はやはり柔らかかった。
「……なんともならないか」
そもそもでべそってわけでもないしな。
あ。そうか、俺はまだ「へそ」そのものには触っていない。
安全対策のために、窪みの中にボタンが設置してあるのはよくある話だしな。
「えい」
更に指を沈めた。底と思われるところまで、ゆっくりと。
「んぅ……っ」
「! 起きたか……!?」
大丈夫、身を捩っただけだった。危ない、へそのゴマをとろうとしていた変態だと誤解されるところだった。
結局、何も起きなかった。まあ、ボタンがついてるのなんて、サイボーグヒロインぐらいだろうしな……となると。

「そうか、変身アイテムか」

この手のモノにはお約束の変身アイテム。それをなんやかんやでどうこうすれば変身が解けるに違いない。
問題は、それが何かわからないことだ。
「……ふむ」
戦闘の際、ホーリーハートは得物のようなものを持たない。
仮に変身アイテムが外部ユニットであるならば、持たずに放っておくなんて扱いは考え難い。
ならば身に着けているものが変身アイテムであると考えるのが自然だろう。

「髪飾りだ」

ホーリーハートは金髪でポニーテールというヘアスタイルをしている。
一本にまとめるバレッタは、変身前はつけていない。ということは、これが変身アイテムなんじゃないか?
さっそく外してみると――留めていた髪がさらりと俺の手を撫でる。ドキッとした。
ホーリーハートの髪は、長い。
変身前よりずっと長くなっていて、成長した姿を思わせて、なんだか大人っぽい。
本人もそう思っているのか、変身した後は「それらしく」振る舞っている。
「正体を隠すためってよりかは、楽しんでやってるんだろうけどな……」
髪飾りを外したものの、変身は解けない。これはただのアクセサリーだったのか……。
152名無しさん@ピンキー:2014/05/17(土) 23:54:16.48 ID:QaYauVwa
「じゃあブーツ脱がすか」

この段階で自棄になっていたと言えなくもないが、意外にも、ニーハイブーツはすぽーんと簡単に脱げた。
ブーツっていうのはこう、蒸れ蒸れになるものだと思うし、実際そうに違いない。
だが「変身」は単なるお着替えではなく、聖なる力に因るコスだからか、どことなく爽やかな香りがする。
「よしもう片方も」
……ところで、この体勢だと、スカートの中が見えそう――で、見えない。ちっ。
変身ってどこまで変わるんだろうなーと常々思っていた。パンツがどうなっているのかとても気になる。
「……」
だがここで覗きに走ってしまうと、言い訳ができなくなる。
言い訳をするときに大事なのは、自分なりに節度を守ったというプライドを持つことなのである。
その一線を越えてしまっては……。
「うーん、黒か」
判定が難しい。おそらく、陰に隠れさせるのが目的の色チョイスだと思うのだが。
変身すると自動的にこうなるのか、自分で選んでいるのか……。

「……」

どうも視線を感じると思ってスカートの中身から目を外すと……彼女、起きてた。
「な、な、なななななな……」
あッ、まずい!
このままじゃ俺は、正義のヒロインにいかがわしい行為をしようとした変態だ!
言い訳を! 言い訳をするんだ、誇りをもって!
「待ってくれ、誤解だ! 俺は君のパンツをガン見しただけだ、それ以上のことはしていない!」

立派にアウトだったようで、俺はホーリーハートに昏倒させられた。

が、その後すぐに叩き起こされて、
「こういうことはあのお似合いのカノジョさんにしてあげなさい……待っていると思うから」
という、よくわからない言葉を言い残して部屋から去って行った。まだバレてないつもりだ。
なんで俺の幼馴染の部屋にいたのか、の言い訳は一切していかなかった。それでいいのか。


おわり。
過去スレに上がってたシチュやセリフに触発された
153名無しさん@ピンキー:2014/05/18(日) 22:26:49.89 ID:vy9SX6Tw
GJすぎてもうね
154名無しさん@ピンキー:2014/05/20(火) 09:58:11.18 ID:zBNNKt84
正義とは常に鈍感でなければならない
視線注がれようがへそ触られようが髪イジられようが
ブーツ嗅がれようがパンツ覗かれようが仕方ないんですそれは
155名無しさん@ピンキー:2014/05/21(水) 20:26:27.26 ID:Rbc/MPRK
一瞬、蛍光灯が寿命を知らせているのかと思った。
すぐにそれは勘違いとわかる。明滅したのは曇り空。即ち、雷光だ。
「そういや、天候が荒れるってニュースで言ってたな……」
窓から見える空は、すっかり灰色の雲に覆われている。雲の流れも速く、風があるようだ。
両親は傘を持って出かけていただろうか……と思っていたところに、チャイムが鳴った。
今、家には誰もいないので俺が出るしかない。はいはい、とドアを開けると――

「あなたに伝えたい――聖なる心と、正義の意志!」

お祈りポーズから一転、キレキレの動作で名乗りを上げる。

「聖・心・正・意!ホーリーハートっ!」

ビシッ、と前屈みがちに敬礼を決めて、最後はウインク。

「ただいま参上♪」

「……」
「ひとりで心細かったでしょう? 私が来たからにはもう大丈夫よ」
「……はあ」
こんな時に、いやこんな時だからこそする話だが、このホーリーハート、正体は俺の隣家に住む幼馴染である。
彼女は雷が苦手で……つまりこいつ、雷に驚いたはずみで変身しやがったな。防衛本能とかそんなんで。
それはさておき、本人は正体を隠しているつもりなので、俺もそれにつきあって少々トボける芝居をする。
「あの、それなら、ついていてやって欲しい奴が……」
「あなたのカノジョさんね?」
「幼馴染です」
「カノジョさんなら大丈夫。ちっとも怖がっていなかったわ」
「そりゃ良かった。あ、幼馴染です」
「それどころかこ、こ、恋人のあなたを心配していたわ。だから私がここにきたの」
「それはとんだご迷惑を……あいつには、よく言って聞かせますんで」
「もう、そんなによそよそしくしなくていいじゃない!」
「はあ……(副音声:お前の正体隠し設定につきあって他人のふりしてるんだってばよ!)」
でも、まあこいつもいっぱいいっぱいなんだろうな、と心の中で思った。
あちらのご両親も出かけているようだし……雷が鳴っている中、一人でお留守番に耐えられなくなったのだろう。
それにしたって変身して来るなよ。怖がってなかったとかいらん見栄はるなよ。
「ところで……あなたは、私がカノジョと言ったらすぐにあの子を連想したわ。つまりそういうことなのよ」
どういうことなんだってばよ。これは巧妙な心理操作か。
「何度も言われてりゃ、パブロフ犬的に連想もしましょーが……」
「周りにも何度も言われるというのは、つまりそういうことなのよ!」
キミしか言っていないけどな。やはり巧妙な心理掌握《メンタルアウト》か。
156名無しさん@ピンキー:2014/05/21(水) 20:28:51.59 ID:Rbc/MPRK
なにはともあれ。
「まあ……立ち話も難ですから。どうぞ、中に」
「お邪魔します」
コスの一部とはいえ、さすがに家の中ではニーハイブーツを脱いでくれるらしいホーリーハート。
素足履きだったのか……それでも蒸れないとは、やはり聖なる力が働いているのか。
それにしたって気軽に脱ぎすぎだろう。このブーツの存在価値について考えたくなってしまった俺である。
「あ、麦茶でいいかしら」
などと言いつつ、俺より先に飲み物の用意を始めるホーリーハート。
なんでホーリーハートが、迷いなく俺ンちの冷蔵庫から麦茶を取り出せるんだよ。
落ち着けよ! 今のお前はホーリーハートなんだよ! 俺に正体のヒントを与えるなよ!
……なんて俺の内心など露知らず、ホーリーハートはソファの、俺の隣に腰かけた。
「はい、どうぞ」
グラスを持たされて、そこに麦茶を注がれる。キャバクラかよ。どこで覚えてくるんだ、こんなん!
もうお前のそのコスチューム、そういう目でしか見れないよ。確かにいそうだよ、こんな感じの人。
「あ、ごめんね。狭かった?」
口ではそう言いつつ、せっかく距離を開けたのにまた詰めてくる。ソファの端に追い込まれそうだ。
近いよ。このパーソナルスペースは、正義のヒロインと一般ピーポーのそれじゃねえよ。
それに……足。太ももから爪先まで露わな生足がぴったり俺の足に当たってる。
足だけじゃなく、上半身ももたれかかれるほど近い。心なしか若干体を預けられている重みも感じる。
「……」
それだけ密着しているのだから、小刻みに震えているのだって伝わってしまう。
普段ならピーピー喚いているところだが、今はホーリーハートでいるからか、だいぶ我慢しているのだろう。
「……なんだかなぁ」
正義のヒロインとして戦っている奴が、どうして雷が怖いかねえ……。
「どうしたの?」
「いや、まあちちょっと――」

そのとき、一際大きい轟音が響いた。
近くに落ちたな――そう思ったときには、俺はホーリーハートに抱きつかれていた。
157名無しさん@ピンキー:2014/05/21(水) 20:31:15.51 ID:Rbc/MPRK
「いやいやいやいや!」
「わわわわ私がきたからにはもう大丈夫よ!」
「君が大丈夫じゃないだろ!?」
背中に手まで回されて、がっちりホールドされている。逆に俺の手は行き場を失い空を掴む。
「あなたと私の――い、いや、知らない仲でもないじゃない!」
「知り合いだったら誰にでもハグしてるように聞こえるぞ!?」
「わわわ、私はアメリカンスタイルな女なのよ! ほら、金髪!」
なんと頭の悪い発言だろう。
「じゃあアメリカを守れよ!?」
「あなたがいないとこなんか守ってもしょうがないじゃない!」
「 」
今のは聞かなかったことにした。雷が、うるさくてね……。
そう、また雷が鳴ったのだ。
ホーリーハートは「うひゃあ!?」と悲鳴を上げ、今度は脚でも俺を挟んできた。
「いやいやいやいやこれはやばいって!」
この状態、俺、いかがわしい本で見たことあるよ。対面座位ってやつだよ。
「かかか完全防御の構えよ! 安心して、あなたのこと、絶対離さないから!」
「いや離してください! 逆に安心できません!」
「いやぁぁぁぁまだ鳴ってるぅぅぅぅぅ」
「アッー!身を捩るなアッー!」
ホーリーハートが体を揺するたびに、全身が触れ合い、擦れ合う。
いわんやちち・しり・ふとももをや。
どう見てもいかがわしいお店のサービスタイムです本当にありがとうございました!
「おち……落ち着けって。暴れるなホーリーハート(と俺自身)!」
これ以上はさすがにヤバイ。彼女を引き離すため、初めて手で体に触れる。
肌の露出の多いコスだからこそ、汗ばんでいるのがわかって生々しい。
いや、生々しいどころじゃない。これは生なんだ。この感触は間違いなく生乳――
「ってコスがめくれあがってるぞホーリーハート!?」
上下セパレートコスの弊害がこんなところで……っ。へそを雷様にとられるぞ!
そしていよいよホーリーハートが完全に俺に身を預けてきた。ああ、もう我慢できな……あ?

「気絶してる……」

――という経緯があったわけなんだ。
だから俺は君の上着を脱がせてパンツの端に手をかけているだけでそれ以上のことはしていなあべし。


おわり
158名無しさん@ピンキー:2014/05/22(木) 18:08:09.83 ID:48ieEAwN
GJ!ホーリーハートかわいいよホーリーハート
159名無しさん@ピンキー:2014/07/08(火) 06:50:03.43 ID:POn8rRhR
ダメかも……
160名無しさん@ピンキー
MF文庫の「焦焔の街の英雄少女」
このスレ的においしい一冊かもしれない
幼馴染の豆腐メンタルな正義のヒロインとイチャイチャする話だぞ!