【ドラマ】鍵のかかった部屋でエロパロ Room#3

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401名無しさん@ピンキー
>>396
>>394みたいなのが注意した人を悪者にして一番タチ悪いな
>そのせいで「投下やめろ」とか、結果「投下やめる」とか言われるんだったら
>あえて他のサイトをすすめるのもありかと思いました。
元レスは別に投下止めろとは言ってなくて
全レスやめろマナー勉強してこい(誘導)ってむしろ親切なのに


全レスなんでダメなん?という日和見は本当に愚痴スレ見てくるといいよ
少しは板ルール勉強して来いよ
402名無しさん@ピンキー:2012/07/16(月) 07:58:48.40 ID:VkMQ4GOB
自分だけの意見だけど、書き手は投下するスレでは前置きとSSだけをレスして
後は全くレスしないのが一番好きだな
その理想に近いのが「お土産」を書いた人かな
403名無しさん@ピンキー:2012/07/16(月) 12:32:35.53 ID:4KGKYmH9
理想の書き手とか、そういうのいりません。
勇気いるかも知れないけど、この流れをぶった切ってくれる職人さん待ってます。
404名無しさん@ピンキー:2012/07/16(月) 15:22:49.52 ID:wG9JfeAS
はーい。
芹沢さん良かったなぁ。という想いも込めて。読みたい時に読む。書ける時に書く。

My precious 1

榎本が忽然といなくなってから、1年が経っていた。
純子は、一時期は物思いにふける様子が見られたものの、次第に元の生活を取り戻していった。
いやむしろ、それまで以上に仕事にのめり込んで行ったというのが正しい。
芹沢は、そんな純子を何も云わずに見守っていたのだが、流石にその痛々しさが看過出来なくなってきた。
とある夜、チョット一杯付き合うよう芹沢から誘われた。
「青砥ぉ、お前ここんとこずっと働きづめじゃないの?元々ウチの事務所はさぁ、ホラ企業法務専門なんだから、そこまで頑張ってくれなくても…。このままそんな感じで、いきなり倒れられても困るしさぁ。」
「何言ってるんですか!芹沢さんがテレビに出て以来、クライアントが一気に増えたんですよ。
ルーティーンな業務だけでもさばいてくのが大変なんですから。
芹沢さんだって、3ヶ月先までアポぎっしりじゃないですか。
大丈夫ですよ。体力には自信あるんです私!」
「俺の事はいいんだよっ。ちゃーんと、プライベートを楽しむ術を心得ているんだ。
ついさっきも来月2日ばかり休んで、おねえちゃん達と京都に行く約束をだ…。
いやっ、俺が言いたいのは青砥ももっと人生を楽しめって事だよ。
最近のお前さん見てるとだなぁ、何かこぅ…。このまま仕事に埋れてそのまんまバアさんになっちまいそうでだなぁ。」
「芹沢さん、明らかに問題アリですよ、今の発言。」
「…青砥……答えたくないなら、それでも良いんだけどさ。…お前…榎本の事好きだったのか?」
「……なっ、何言い出すんですか突然!」
「まぁ、聞けよ。前に俺が、お前の為にアシスタント入れようとしたら、
結構ですっ、自分でヤらないと気が済まないんですっ!って言ってたよなぁ。
でも明らかにスタッフに廻せる実務もぜーんぶやってるじゃないか。
何かアイツの事忘れようと必死にもがいてる感じがしちゃってさぁ。
それじゃ、幾つ体があっても足りないぞ。
…それに何かこっちまでガムシャラに仕事やんなきゃ…って雰囲気になっちゃうんだよ。
それじゃ、廻りも疲れちゃうだろ。そう思わないか青砥?」

「…すみませんでした…芹沢さんにそんな風にご心配おかけしてたなんて…。」
「わかってくれれば、良いんだよ。 んで早速だが、お前に紹介したい奴がいるんだ。」
「はいぃ?」
「いやさぁ、こないだxyz物産ですれ違った俺の後輩覚えてるか?」
「あぁ、確か松井さんでしたっけ。」
「おっ、そうそう。そいつがさぁ、青砥に興味持ったみたいでさ。今度皆で一緒に食事でもどうかって。昔から女の趣味はチョット変わってるんだが、イイ奴だ。」
「…どーゆー意味でしょうか?」
「まっ、兎に角そーゆー事で、今週金曜の夜明けておいてくれ。」

そーゆー事がどーゆー事なのか釈然としないが、芹沢が自分の事を心配してくれて、彼なりの方法で自分を励まし、何とかしてくれようとしてくれているのは十分に伝わってきた。
(芹沢さんらしい) それは本当にありがたい。
多忙な芹沢や、事務所のスタッフに余計な心配をかけるのは勿論本意ではない。
(確かに…たまには息抜きも必要かもしれない。)
405名無しさん@ピンキー:2012/07/16(月) 15:24:45.27 ID:wG9JfeAS
My precious 2

松井との食事会 …それは芹沢の介入により飲み会 。とどのつまりは、弁護士同士の愚痴大会になっていった。
「いやぁ、やっぱり先輩と飲むのが一番楽ですよっ!無理に虚勢張る必要も無い、専門用語噛み砕いて説明する必要もない!ねっ、青砥さん!」
「…そう言われれば…そうですね。」
「何だ、俺はお前達の保護者じゃないぞ! 」と言いつつ、芹沢も満更でもない様子だ。
「もし青砥さんさえ良ければ、また飲みましょう。」
「えっ、あぁそうですね。是非また今度。」
「おうっ!そうだぞ青砥。そうやって小さい事からアクションを起こして、前向きに生きるんだ。」
「小さい事って…それはナイですよ先輩っ!」
「なんだ松井、細かい事にこだわるな。まあ飲めっ!」
「違いますよ、小さい事ですっ!…って、あれ何だかポイントがずれてますね。」
「ふふっ。 …何か面白いですね…松井さんて。」
「えっ、そうですか?至極マジメなつもりなんだけどなぁ…。
でも、面白いは好きの始まりって言いますからねっ。」

(そうだったかな?)
久し振りの楽しい夜に、純子もしたたかに酔ってしまった。
帰り道、送って行くと言い張る松井を何とか振り切り、千鳥足で駅から歩く。
ほぼ満月が、こちらを静かに見下ろしている。
(何処かでこの月を見ているのかな…榎本さん。)
榎本 径。幾度となく忘れようとした名前。
3人で同じ目標…いや正確には、榎本は密室の、芹沢と青砥は真実の解明に向けて各々が役割りを理解し、解決を目指した。
無意識に、いつまでもチーム榎本が続くような気でいた。
(そんな訳ないよね。)
(松井さんは良い人そうだ。…でも、榎本さんじゃない…。) 当たり前の事が、心に重くのしかかる。
榎本の、行動・思考・分析その全てが純子にとって未知な領域で、都度驚かされずにはいられなかった。 勉強だけでは得ることの出来ない、卓越した能力。

(…でも、一番惹かれたのは…)
彼の目だった。眼鏡の奥底にあるあの目。
考え込む時の伏せ目がちな時、微動だにせず相手を見つめながら説明する時、ふと寂しそうに一点を見ている時…。
他人を寄せ付けない…それでいて、差し伸べられる手を待っているかのようなその背中。
榎本と、イイ感じ的な瞬間は…無かった。らしい事をほのめかされた記憶もない。
でもだからこそ、この想いを断ち切る事ができないのだ。芹沢にも、どう説明して良いのか。
(あの日…どうして空港から電話くれたのかなぁ)
とくに名残惜しそうな声でもなく、いつも通りの口調だった。
全てが謎のままで、只純子の廻りを漂っている。

マンションのドアの鍵を開けながら、つい泣き言が出る。
「ぁあー!ダメだ。芹沢さんの言うとおり、こんなんじゃ先に進めない!」
「先って、どこですか?」
「えっ?」目の前にいる人物を認識するまで数秒かかった。
「松井さんっ?…どうしてここに…。」
考える隙を与えず、そのまま部屋の中に押し込められてしまった。
「えっ! 松井さんっ!ちょっと…何するんですかっ!」
と、いきなり唇を塞がれて、悲鳴をあげようにも勝手に喉がつまって、
しまいには身体が硬直してしまった。
(嫌っ…やだっ…助けてっ!) ドアは静かに閉まっていく…。
406名無しさん@ピンキー:2012/07/16(月) 15:58:29.69 ID:O1kXKF98
t
407名無しさん@ピンキー:2012/07/16(月) 16:05:45.28 ID:vyBC+726
>>405
とりあえず松井のばかー!って叫んどく。
続き待機中。
408名無しさん@ピンキー:2012/07/16(月) 18:59:56.19 ID:gxDA1Wjs
これでおしまいですかね?あれれ
409名無しさん@ピンキー:2012/07/16(月) 19:29:57.84 ID:BuKq8K7y
連投で引っかかった?
続き期待
410名無しさん@ピンキー:2012/07/16(月) 20:17:05.45 ID:OgIVz69X
わーん。405さんどこ行っちゃったんでしょうね。
いくら「書ける時に書く。」ていっても・・・
411名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 08:21:25.96 ID:pIpfM5af
>れてそのまんまバアさんになっちまいそうでだなぁ
の「でだなぁ」が「だでなぁ」に読めた自分は三世代同居組orz
412名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 09:46:50.98 ID:oWSLu3Uq
だからなに?
413名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 10:00:46.66 ID:pIpfM5af
なんにも
414名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 15:38:34.44 ID:oWSLu3Uq
じゃあチラシの裏にでも書いてろ
415名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 15:55:07.09 ID:pIpfM5af
怖っw
416名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 16:53:49.60 ID:bJsZ4Vl2
ここの住人は書き手にはマナーマナーうるさいくせに
読み手はマナーも何もあったもんじゃない
書き手待ちの間の雑談くらいいいだろ
嫌ならスルーしろよw
417名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 19:07:05.45 ID:HPGfyIId
流れぶった切ってすいません。
残り100k切ってますので書き手様、長編投下時ご注意下さいませ。
次スレはいかが致しましょうか。
418名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 19:07:58.52 ID:9ZPMVsWH
立ててほしい。
419名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 19:10:49.94 ID:R60AeqPu
じゃあ、やってみるね
420名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 19:19:05.94 ID:R60AeqPu
421名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 22:15:43.20 ID:G/wryyXf
>>420
スレ立て乙
422名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 22:40:41.87 ID:YpgEWLGx
>>420
スレ立てありがとうございます。
上手く進めば、日付変更前後に1本投下できると思う。
423名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 22:43:21.48 ID:9ZPMVsWH
>>422
待ってる!

>>420
おっつ!
424名無しさん@ピンキー:2012/07/17(火) 23:07:23.10 ID:B0s9cI7d
もう4なんだ、早いね〜
425名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 02:06:30.12 ID:oXD6ZWwT
ちょっと長いかなーと思って新スレの方に投下したら、
たった12KBしか無かった…

すみません、こっちを埋める際は必ずお手伝いさせていただきますので。
426名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 09:51:29.92 ID:ENIgfWn2
兎に角、埋めてゆこう
427名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 10:40:15.33 ID:TQxUSD+H
来たばかりなのに、もうスレ終了か
次スレに行く前に、頭からざっと読んでみた
以下、印象深かった作品を

>鍵師の怒りと罰ゲーム
何度読んでもニヤニヤが止まらんw GJ

>Five Years After
デジャブが何度もアップサイダウン♪

>鍵師の災難、上司の受難
またもニヤニヤが止まらん! GJ!

>事実と真実
ニヤニヤさせられ、キュンキュンさせられ…
つくづく巧い!巧すぎる!!

>計画
ニコニコ家族計画怖すw
ブラック青砥ww

>ぼくのものわたしのものシリーズ
うーん。☆島を思い出す…

>241 :1/3
男はロマンチスト、女はリアリスト


自分の中のNo.1作品は『事実と真実』だな。
職人としても多作な上粒ぞろいでどんな作品でも高水準

…とか書くと、またぞろ「馴れ合い!」とかマナーがどうとか非難轟々かw
くわばらくわばらw
428名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 11:39:54.20 ID:ticwS7LU
自分のやりたいようにやって、批判は受け付けないタイプは面倒くさいわ。
429名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 16:08:31.11 ID:ft8HEtbx
>>427
感想の部分までは普通に読んでたのに。
最後の一文を書くような流れは、新スレには持ち込まないでね。
430名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 17:39:26.19 ID:DLdLJKP3
新スレ立てるの早すぎだろ、今さらだけど。残り100KB切ってるって、どんな大長編期待してるんだw
どうせならがたがたマナーにうるさい奴が多いから
1に書く注意書とか、過去スレとかのテンプレとか
そういうの相談してから立てればよかったのに。
431名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 17:53:59.53 ID:TQxUSD+H
それはそうと405さんはどこ行った?
終わってんのか続きがあるのか、せめてそれくらいは知りたい。
432名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 18:36:14.01 ID:7hKbnYLX
>>430
417にて次スレについて触れた者です。
前スレも書き手様が投下途中に512k超え確認し
成り行き上当スレ立てた経緯も有り中途半端に気になっていました。
残り推定100レス位で埋まるだろうと思い、
その間にテンプレ等議論頂ければと考え触れましたが
言葉足らずでこのような状況になってしまいました。
無知な上にしゃしゃり出てしまい、申し訳ありません。

長文失礼。
以下名無しに戻ります。
433名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 19:30:24.61 ID:DLdLJKP3
>>432
普通は、書き込みがなければ一週間? くらいで自動削除対象になる480KBオーバー、もしくは900レス〜980レスくらいが次スレ移行タイミングになることが多い。もちろんスレによるけど。
今のタイミングだと、どっちのスレも中途半端に残り続けて「1作品(1作者)につきスレは原則1つ」という板ルールに抵触する。
かくなる上はこのスレをとっとと埋めるしかない。書き手さんは余程の大長編でもない限りまずこっちに落として、と新スレに注意書でもする?
普通は一回書き上げてから投下するだろうから、自分のSSがスレ内におさまるかくらいわかるでしょ
434名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 19:38:04.20 ID:j24trKS4
ストックある作者さん(おーい!)に短めの落としてもらえたらいいですね。
435名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 19:53:51.34 ID:oXD6ZWwT
エロ無しorぬるエロ程度の小ネタで良いなら、いくつかあるにはあるので
書き上げる時間が取れ次第、すぐに投下しますね。



>>427
拙作を気に入っていただいて、恐縮かつ光栄です。
嬉しい感想ありがとうございました。
436名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 19:59:41.49 ID:OGnmsmIL
>>434
あるよ。昔、他の書き手とネタ被ったから途中で放り出した奴が……

……って言おうと思ったら書き手さんいらっしゃったね。
適当にまとめた奴だから出来がアレなんで、>>435さんの投下を心待ちにしておきます。
437名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 20:06:03.63 ID:oXD6ZWwT
>>436
あ、いえいえ。
私も他の書き手さんとかぶって途中放棄したネタですし…

そもそも今日明日中にまとめられるかも分からないので、
既に作品が仕上がっているなら、ぜひ投下お願いします!
438名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 20:12:38.01 ID:j24trKS4
>>435>>436
ありがとうございます。お待ちしております!
439風邪ひき榎本ネタ 1/3:2012/07/18(水) 20:13:22.52 ID:OGnmsmIL
じゃあこんなの。
穴埋め目的なんでエロなしはご容赦を

××××××××

 何となく、朝から調子が悪いとは思っていた。
 妙に身体がだるい。頭が痛い。最初は暑さのせいだろうと思っていたが、空調が完備された地下備品倉庫に入っても状況は変わらず、むしろ悪化の一途を辿っていた。
 幸いなことに、急を要するような仕事はなかったため、業務に支障が出ることはなかったが。時間が経つにつれ、頭痛、悪寒と言った諸症状はひどくなる一方で。昼休みに突入する頃には、自身が風邪をひいている……という事実を、認めざるを得なかった。
(しまった)
 昼食も取らないまま、午後の勤務が始まったあたりで、榎本は己の失策を悟っていた。
 体温計など無いため、正確なところはわからないが。どう考えても、発熱している。微熱というレベルではない。薬を飲んで安静にしていなければならないレベルで。できれば医者にかかった方がいいレベルで。
 普段、滅多に体調を崩すことなどないため、たまに崩すと加減がわからなくなる。気がついたとき、既に、榎本は立ち上がることすらできない状態で、机に突っ伏していた。
(……まずい)
 身体が動くうちに早退しておくべきだった……と後悔しても後の祭り。
 備品倉庫に内線電話などというものはない。オフィスに戻るのも面倒で、まあ定時までは持つだろう、と軽視した結果が、これだ。
 のろのろとポケットの携帯を取り出す。助けを求めようとして、指が強張るのがわかった。
 誰に助けを求めればいいのか?
 会社の代表番号にかけて事情を話せば、さすがに誰かは助けに来てくれるだろう……と思う。だが、顔と名前が一致するかどうかも怪しい同僚に、今の情けない姿をさらすのは、どうにも抵抗があった。
 いっそ、救急車を呼んだ方がいいだろうか、と考え、即座に却下する。
 たかが風邪くらいであの榎本が救急車を呼んだ――人にどう思われようと気にする性質ではないが、さすがに、自分から噂の種をまく気にはなれない。
(……誰か)
 指で画面をまさぐる。着信履歴、発信履歴――最近の履歴は、どちらもたった一人の名前しか出て来ない。
 けれど、彼女はまだ勤務中だ。こんな時間に電話をかけられても困るだろう。第一、榎本は彼女の家族でもなければ恋人でもない。助けてくれ、などと、言える義理ではない。
(…………)
 結局、発信ボタンを押すことはできないまま。
 榎本の意識は、遠ざかっていった。

 目を覚ましたきっかけは、額に乗せられた冷たい感触だった。
「…………?」
「榎本さん! 大丈夫ですか!?」
「……あおと、さん?」
 ぼやける視界の中で。最近、毎日のように顔を合わせていた女性弁護士が、泣きそうな顔をしていた。
 何故、と言いかけて、思い直して視線を巡らせる。
 見慣れた天井が目に入った。ここは地下備品倉庫だ、間違いない……いつものように、彼女が、ここに来てくれたのだ。そして、気を失っている榎本を、見つけてくれた。
 助かった……と安堵して。そして、熱と関係なく、頬が紅潮するのがわかった。
 無様な姿を見せてしまった。いい大人が……それも、30にもなろうという男が、風邪で動けなくなるなど。
 けれど、純子の顔に馬鹿にするような色合いは一切なく、榎本を見つめる目には、不安の色しか浮かんでいなかった。
 心配してくれている。こんな自分を。
「青砥さん……どうして」
「どうしてってこっちの台詞ですよ! どうしてこんなになるまで放っておいたんですか!? びっくりしましたよ!」
「……いえ……」
440風邪ひき榎本ネタ 2/3:2012/07/18(水) 20:14:25.34 ID:OGnmsmIL
 聞きたいのは、どうして僕を心配してくれるのですか、ということなんですが。
 だが、それはきっと愚問なのだろう。純子は優しい人だ。誰であろうと、目の前で人が倒れていたら心配せざるをえない、そういう人なのだ。それが榎本かどうかなど、大した問題ではない……そういうことだろう。
 ぐるりと周囲を見回す。壁にかかった時計は、午後七時を指していた――自分が気を失ってから、たっぷり五時間は経っている。彼女は、何時にここに来たのだろうか。
 手を伸ばして、額に触れた。純子のハンカチ……あるいはタオルだろうか? 冷たく濡らされた布が、額に置かれていた。
「榎本さん、動いちゃ駄目です。すごい熱なんですよ! あ、お薬とかスポーツドリンクとか、色々買ってきました。喉、乾いてないですか? お腹空いてないですか? っていうか、お食事は最後、何時に取られました?」
「…………」
「お腹が空っぽの状態で薬を飲むのはよくないんですよ。きついかもしれないけど、何か胃に入れてください。フルーツの缶詰、ありますよ? どうです?」
「……ええ……」
 食欲など微塵もなかったが、純子が本気で自分を心配してくれるのがわかって、自然と頬が緩むのがわかった。
 無理をしてでも食べねば。これ以上、彼女に心配をかけるわけにはいかない。
 そう考えて、身を起こそうとして――
 己の置かれた状態に気づいて、榎本の身体が、固まった。
「榎本さん! 駄目ですよ、無理しちゃ! あ、でも寝たままじゃ食べられないですもんね。ほら、わたしの腕に、身体を預けてください。大丈夫ですよ! 榎本さん、小柄だし華奢だし、わたしでも支えられます」
「…………」
「榎本さん? 榎本さーん! だ、大丈夫ですか!? 顔が真っ赤ですよ!?」
「……い、え……」
 榎本の身体は、椅子の上に寝かされていた。倉庫にあるありったけの椅子を並べたのだろう。何とか、小柄な榎本が身を丸めることなく横たわるだけのスペースは確保されている。
 身体の上にかけられているのは、純子のものらしいスーツの上着。それはいい。そこまではいい。
 問題は……
「榎本さんっ」
「…………」
 目を開ければ、真正面に純子の顔があった。覗き込まれていることがわかって、反射的に目をそらした。
「榎本さんっ! しっかり、しっかりしてください! 大丈夫ですか!?」
「……だい、じょうぶ、です……」
「本当に大丈夫ですか!? また熱が上がったんじゃないですか? わっ、熱いっ! ど、どうしよう、どうしよう!?」
 榎本の頬に手を触れて、純子がおろおろと周囲を見回したが、立ち上がる様子はない。
 それはそうだろう。彼女の膝の上に、榎本の頭が乗せられているのだから。
 ――これは、あれですか。もしかして、噂に聞く膝枕、という奴ですか。僕の後頭部に触れてるこの柔らかい感触は、彼女の太ももですか、もしかして――
 ぼんっ! と、血液が集中するのがわかった。何だこの状況は。何故、よりにもよってこんなことに。寝かせるなら遠慮なく床にでも転がしておいてくれればよかったものをっ……
「すいません……起きます……」
「だ、駄目ですよっ! ほら、わたしの身体に捕まってください!」
「いえ……結構ですから、本当に……」
 伸ばされる手を払いのけようとして、さらに気付いた。
 榎本の身体には、純子の上着がかけられていた。今の彼女は、薄いブラウス一枚という実に無防備な姿になっている。
 ――そんなあなたに、身体を預けろ、と言うのですか。わかってますか。僕は一応男なんですが。しかも、この倉庫に訪れる人間なんて滅多にいなくて。ここには僕とあなたの二人しかいないんですが――
「青砥さ」
「よいしょっ! 榎本さん、辛くないですか、大丈夫ですか?」
「…………」
 無理やり身体を起こされた。
 全身で榎本の上半身を受け止めるようにして――見方を変えると抱きしめるようにして、純子は、榎本の耳元で囁いた。
441風邪ひき榎本ネタ 3/3:2012/07/18(水) 20:15:23.36 ID:OGnmsmIL
「何が食べたいですか? フルーツと、ヨーグルトと。おかゆも買ってきたんですけど冷めちゃいました……すいません。あ、それとも、飲み物が先の方がいいですか?」
「…………」
「榎本さん!?」
 ぐたり、と机に身を預け、榎本は、必死にある一点に集中しようとする血流を散らしにかかった。
 背中に感じた柔らかい感触、耳に吹きかけられた吐息。
 そう言えば、風邪のときほどかえって性欲が高まる――それは種を残すための生存本能だ――などという説を聞いた覚えがあるが。あれは本当らしい。
 普段は意識したことのない純子の肢体を全身で感じて――榎本は、本日二度目となる逃避行動を行った。つまりは、意識を手放した。

 次に目が覚めたとき、場所は、見覚えはあるが見慣れた覚えはない場所に変わっていた。
「あ、気がつきましたか?」
 ひょい、と顔を覗き込んでくるのは純子。これは先ほどと変わらない。
 違うのは、今度の自分はベッドに寝かされている、ということ。
 視線を巡らせる。まさか、とは思ったが……生憎、人より優れている自負のある記憶力が、間違いない、と太鼓判を押してくれた。
「……ここは」
「わたしの家ですよー! 病院に運ぼうかと思ったんですけど! 時間が時間で。救急病院に行こうかとも思ったんですけど、榎本さんの保険証が見つからなくて! しょうがないから、タクシーを呼んで運ばせてもらいました!」
「…………」
「あ、大丈夫ですよ! わたしはソファーで寝ますから、今日はこのベッドで休んでください! とりあえず、一晩ゆっくり休んで様子を見ましょう。結局何も食べられませんでしたけど……お食事、どうされます?」
「……いえ、結構です……」
「風邪のときって、食欲なくなりますよね、わかります。ここにスポーツドリンク置いておきますから、喉が乾いたら飲んでくださいね」
「青砥さ」
「じゃあ、わたし、お風呂に入ってきますね。上がったら、また様子を見に来ますから」
「…………」
 とんでもない爆弾を投下して、純子の姿は、ドアの向こうに消えた。
 思わず枕に突っ伏しそうになり、それが純子の枕であることに気付いて、慌てて仰向けになる。
 何を考えているのだ、彼女は。いくら風邪で弱っているとは言え、若い独身女性が、一人暮らしのマンションに男を泊めるなど……いや、彼女らしいと言えば、彼女らしいのか。
 おそるおそる下半身に神経を集中してみる。幸いなことに、今は落ち着いているようだが。気を失ったときはどうだっただろう。いや、いくら何でも、そこが見苦しい有様になっていたら、彼女とてここまで無防備には……
 ……彼女なら、素で気づいていなかった可能性も考えられるのが恐ろしいが。
 それより、問題はこれからだ。
 頭を抱えて布団に潜り込む。忘れてしまえ、何も考えるな――と言い聞かせ、眠りに身を委ねるべく神経を集中させる。
 風呂に入る。純子が。壁一枚挟んだ向こう側で。風呂ということはつまり、今の彼女は――

 榎本の風邪と本能と欲望の戦いは、まだまだ、終わりそうになかった。


〜〜END〜〜

××××××××

終わり。
これで9KBです
442名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 20:31:24.83 ID:j24trKS4
面白かった!よかった!萌えた!続きよみたい!
443名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 20:40:46.87 ID:htjugymn
>>441
GJ!いいよー。ほんと続き読みたい。
こんな萌えるのをさっと落とせるなんて素敵!
444名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 20:46:53.44 ID:u2e5UySw
>>439
GJ純子視点も見たくなった!
というか読み始め純子視点かと思ってたw

>>430はマナーのない無法地帯にでも行ってれば?
マナーもルールもなければ書き手も保護できないだろうに
445名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 20:58:08.72 ID:TQxUSD+H
逆だろ?
430の言いたいのは、マナーやルールを
テンプレ化したらどうか
その内容をスレの残りを使って固めたらどうかって
そういう提案をしたんじゃないの?
自分にはそう読めたけどね
446名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 21:01:06.02 ID:ENIgfWn2
>>441苦労が絶えませんなGJ
447名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 21:02:08.93 ID:htjugymn
>>444
>純子視点。自分もそう思った。なんでだろw
でもマジあそこで倒れてたら数日気づかれ無さそうだね。
純子来てよかったよーうぅ・・。
448名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 21:02:30.74 ID:u2e5UySw
>>445
>がたがたマナーにうるさい奴が多いから

マナーについて言ってる人馬鹿にしてるじゃん
こいつらがいるから仕方なくテンプレ化しようって言ってるんだし
449名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 21:14:48.68 ID:DLdLJKP3
>>448
そうだよ。
何故なら、新人書き手に対して、理由も説明せずに一方的にわめく奴がほとんどだから
愚痴スレ見に行け! 勉強しろ! って意見を何回も見たけど
いざ行ってみたら「俺がうざいと思うから」みたいなことしか書いてない。誰かがうざいと思えばそれがマナーかよ馬鹿馬鹿しい
過去スレ見ろってあの膨大な過去スレを全部読むのにどんだけ時間かけろって言うんだ。
注意する方が正しいというのなら、それにふさわしい言い方ってもんがある。
それができないで一方的に書き手を叩き出す奴が多いから、最低限、書き手はこれに注意しとけってルールだかマナーだかを1に書いとけば、って言ってるんだよ
450名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 21:24:18.73 ID:ENIgfWn2
もっとも、マナーやルールがわかってないのは一人だけなんだけどね
451名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 21:28:02.32 ID:j24trKS4
>>450
おなじ意見です。
452名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 21:34:06.15 ID:TQxUSD+H
ま、基本文章力のある奴が住人だから、読み物としては面白いけどな<愚痴スレ
あれ読んで職人さんは非常に繊細な生き物なんだなと再確認出来たわ
GJ無いとくじけるけど、「続きを早く読みたい」ってのもプレッシャーなんだと
あと、投下された全SSにGJするのもタブーらしい
他にも色々あるらしいから、やっぱ1にテンプレは必須だわ
でないとレスするたんびに冷や冷やビクビクしてなきゃならん
453名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 21:34:17.26 ID:htjugymn
>>449に同意。
454名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:10:34.78 ID:u2e5UySw
>>449>>453は正直2に向いてないと思うの…
455名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:16:37.63 ID:j24trKS4
>>454
2chでも普通にあってしかるべき意見だと思う。
456名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:17:41.40 ID:htjugymn
スルーできないお前も向いてないな
457名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:20:05.55 ID:htjugymn
>>456は454へ
458交渉 1/4:2012/07/18(水) 22:31:10.10 ID:qdW/nGVp
流れ豚切りスマソ。
原作榎青投下しますので、苦手な方はスルーください。
二人は何度か体の関係あり、お互いに好意を持っているのだけど、純子の方は今一歩踏み込めないといった感じです。
榎本がセクハラ全開のエロもっちゃんになってしまいました。ごめんなさい。

**********

昼下がりのレスキュー法律事務所。
そこには、いつになく真剣な顔で鍵を交換している榎本の姿があった。
純子はデスクの縁に軽く腰掛けながら、その様子を観察している。

こうして見ると、仕事に打ち込んでいる姿はお世辞抜きで本当に素敵だと思う。
でも、弁護士の恋人が泥棒だなんて問題よね…。

そんなことをぼんやりと考えていると、榎本が不意に振り向いた。
目が合ってしまい、どきりとした純子は慌てて目を逸らす。
「終わりました。これで、空き巣にやられることもなくなるでしょう。」
「ご苦労様でした。やっぱりプロは仕事が早いわね。」

この事務所が空き巣に入られてしまったのは、つい先日のことだ。
幸い金目のものは置いてなかったため、大きな被害は免れたが、今後のためにもセキュリティ強化が必要と判断し、榎本にお願いすることになった次第である。

「これが、今回の請求書です。」
榎本は純子に歩み寄ると、一枚の紙を手渡した。
それを見て、純子は目を丸くする。
「ええっ!こんなにするものなの!?」
「はい。最新の錠と防犯カメラを設置したので。」
「ちょっと、安くならない?ほら、お友達価格として。」
「なりませんね。」
「ケチ。榎本さんのこと、見損なったわ。」
「場合によっては安くならないこともないですが。」
「何かしら?」
「……体で払えばいいんです。」
「えぇと、体で払うって?あなたがもし捕まるようなことになったら、私が弁護を引き受けるとか?そういう交換条件でいいの?」
「いえ。そうではなくて…」
榎本としてはストレートに言ったつもりだが、やや天然なところがある純子にはうまく伝わらなかったようだ。
榎本は少し困ったように微笑むと、純子の耳元に唇を寄せ、何かを囁いた。
今、事務所にはこの二人以外の人間は誰もいないにも関わらず。
とたんに純子の顔が真っ赤になる。
「え、榎本さんっ!?何言ってるの?いやですっ。」
「だったら、交渉決裂ですね。正規の値段を払ってもらうまでです。」
「くっ…。ちょ、ちょっと待って!……わかったわ。今日は仕事も早く終わると思うから、お店が終わったら、私のマンションまで来てくれる?」
「それだとしたら1割引きまでですね。半額にする方法がありますよ。」
「え?なあに?」
「それは…。」
そう言ってまたも耳元で囁く。
純子の顔がさらに赤くなった。
「ええええっ!ここでなんて…そ、それは、ちょっと…。」
「それはもったいない。こんなお得な話、そうはありませんよ。誰だって“即金払い”の方が嬉しいでしょう?」
「いや、だって、あの…誰かが来たら…。」
「…そのために簡単には破れない錠を設置したんじゃないですか。」
榎本は純子の手を握ると、熱っぽい目で見つめてきた。
心がぐらりと揺れる。
459交渉 2/4:2012/07/18(水) 22:34:04.64 ID:qdW/nGVp
「さあ…どうしますか?」
榎本は純子の首筋に唇を当て、ゆっくりとなぞる。
「…は…そ、そんなバカげたこと…」
「バカげたこと?誘ってくるあなたが悪いんじゃないですか。」
器用な指先がブラウスの上から純子の肩口を撫で回す。
「さ、誘う?私、誘ってなんか…!」
「あなたのこの瞳、その唇…全てが僕を誘うんです。僕が欲しいって…。」
「そんなこと…!んんっ!」
純子は唇を思い切りふさがれた。続いて、強引に割り入ってくる舌。
全てを拭い去るかのように絡みついてくる。
流されてはいけないとわかっているのに、濃厚なキスは媚薬のように思考を麻痺させた。
拒もうにも、腕にも足にも力が入らない。
それに、自分の体は榎本とデスクに挟まれ、逃げ場を完全に失っている。
純子は為されるがままだった。
肩口を彷徨っていた手は純子の胸を揉みしだき始める。
「…ぅん…だ、だめよ…こんなところで…」
「大丈夫ですよ。この錠は…僕にしか破れません。」
いつの間にかブラウスのボタンはすべて外され、榎本は露わになった鎖骨に口づけていた。
その唇は徐々に下降を始め、ブラジャーの下に隠れていた白く柔らかな乳房を探し当てる。
中心で赤く主張している蕾の周りをゆっくりと舌が這った。
あくまで蕾は刺激しない。
その上で、スカートをたくし上げた右手で純子の太腿を優しく撫で回した。
じらされている…。
純子にはそう感じられた。
我慢できなくなり、榎本にしがみつく。
「…い…意地悪…」
「意地悪?僕がですか?」
「こんな風に…じらすなんて…。」
「まだ、お返事を頂いてませんから。交渉が不成立ならば止めますが?」
「…もう…いや…。こんなんじゃなくて…。ちゃんと…して…。」
「わかりました。では、お望みの通りに。」
榎本はひょいと純子を抱え上げ、デスクの上にしっかりと座らせた。
足を軽く開かせると、下着の中に指を滑り込ませる。
巧みな手つきで秘部を苛んだ。
「あっ…はぁ…っ…」
体の中を微弱な電流が流れるような錯覚。
職場でこんなふしだらなことをしているなんて、自分でもおかしいと思う。
何よりもモラルを重んじてきたにもかかわらず、榎本のいいように振り回されているのはなぜだろう。
それは――
私がこの男に身も心も入れ込んでしまっているからだ。悔しいほどに。
そして、この、勘のいい男はそのことに気付いてしまっているから一層タチが悪い。

せめてもの仕返しにと純子は自分の舌に絡ませている榎本のそれを噛んでやった。
「…つっ!」
榎本は唇を離し、少し驚いた顔をして純子を見る。

ザマーミロ。

純子は心の中で舌を出した。
思わずしたり顔になる。
密かな仕返しに感付いた榎本は、それに応戦するかのように腰をぐいっと抱き寄せた。
460交渉 3/4:2012/07/18(水) 22:35:51.18 ID:qdW/nGVp
「きゃ…!」
「お返しです。」
耳元で意地悪そうにささやくと、立ったまま純子の中に侵入してくる。
「はっ…ぅ…ん」
いきなり最奥を刺激され、体が、かあっと燃え上がるように熱くなった。
榎本がふっと息を吐き、一瞬腰を引いたかと思うと、今度は強く突き上げられる。
「ぁあんっ!」
突然の強い刺激に頭の中がびりびりと痺れる。
そして容赦なく、またすぐに襲ってくる刺激。
何度も何度も突き上げられ、体がバラバラになりそうだ。
うまく息ができない。
純子は無我夢中で榎本にしがみついた。
「お、お願いっ。やめてっ…壊れてしまいそう…!」
懇願しても榎本からの返答はない。
返ってくるのは荒く乱れた息遣いと自分の中を強く激しく掻き乱す律動だけ。
「やあっ…私、もう…!」
純子は小さく叫ぶと、榎本の腕の中であっけなく果てた。

何事もなかったかのように傍らで服を整えている榎本とは対照的に、すっかり力の抜けてしまった純子はソファで体を休めていた。

ずるい。
私をこんな風にさせておいて、自分だけは涼しい顔だなんて。

恨めしそうに見つめる純子に、榎本は気付いていない振りをして笑顔を返す。
「…今日は仕事も早いんでしたよね。」
「え?ええ…。」
「では、また今晩伺います。」
榎本はそう言うと、純子の頬に手を添え、唇に触れるだけのごく軽いキスをした。
テーブルの上に新たな請求書を残し、榎本は事務所を後にする。
請求書には約束通り、半額に値引きされた価格が書き込まれていた。
またしても榎本の画策にあっさりと乗せられてしまった純子は大きな溜息をつく。
法廷で学んだ戦術的な駆け引きも論理的な思考力も、あの男の前では全く役に立たない。
これが惚れた弱みなのか。敏腕弁護士も形無しだ。
純子は気怠い体に鞭を打ちながらよろよろと起き上がると、夜までに仕事を片付けるため自分のデスクに戻った。
461交渉 4/4:2012/07/18(水) 22:37:30.56 ID:qdW/nGVp
そうこうしているうちに、共同経営者兼同僚の今村がクライアント先から戻ってくる。
「びっくりしたよ。廊下の防犯カメラもドアの電子キーもすごいじゃないか。」
「そうね。」
子供のようにはしゃぐ今村を尻目に、誰のおかげだと思ってるのと内心苛立った。
「これ、請求書。」
純子は書き直された請求書を今村に渡す。
帰ってきた答えは意外なものだった。
「へぇ。見積もり通りだね。あまりにも安いんで、後でぼったくられるんじゃないかと少々不安だったんだ。」
「え?見積もり?」
見積もりなんて初耳だ。
「あれ?榎本さんから聞いてない?昨日、見積書を持ってきてくれた時に、榎本さんは君にも渡したと言ってたけど。」
真実を話すと今村にいろいろと突っ込まれそうなので、適当に話を合わせる。
「あ…ああ、そうね。聞いてたわ。私、見積書を自宅に忘れてきちゃって…。見せてもらってもいい?」
「いいよ。どこに行ったかな。…あった、あった。これだよ。」
今村が見せた見積書には、榎本が最初に請求してきた値段の半額がすでに明記されていた。
「いやぁ。君のおかげで助かったよ。榎本さんが青砥さんの顔を立てて、お友達価格にさせていただきますって言ってたから。」
「そ、そう…。」
「やっぱり、榎本さんに頼んで正解だったなー。」
上機嫌な今村は気づいていない。
見積書を持つ純子の手が震えているのを。

何よ!
ここであんなことしなくても最初から安くする気満々だったんじゃない!
今夜やってきたら思いっきり問い詰めてやるんだから!

しかし、榎本にとっては、鼻息荒く息巻いている純子のことなど想定の範囲内である。
今夜ものらりくらりと詰問をかわされ、またもベッドの中でお相手をさせられることになるであろうことを純子はまだ知らない――。

**********
以上です。
お目汚し大変失礼いたしました。
462風邪ひき榎本ネタ 4/7:2012/07/18(水) 22:41:42.14 ID:OGnmsmIL
あ、被った。
すみません、風邪ひき榎本ネタ、続きが読みたいと言ってもらえたので突貫で書いてみました。
べたネタでお約束END失礼

××××××××

 榎本は悟った。
 人間というのは、考えまいとすればするほど、そのことについて考えてしまう生き物なのだ、と。
「…………これは、危険です」
 布団の中で、無意識のうちに指をすり合わせる。
 純子の家の間取りははっきりと記憶していた。自分がいるのは寝室。純子のいる風呂場からは壁を数枚隔てており、その音や声など聞こえるわけがない。
 ついでに、当たり前だが、榎本に透視能力のようなものは備わっていない。
 にも関わらず、風呂場の純子の様子が脳内に描けてしまうのは何故なのだろうか。
 もちろん、榎本は純子が服を脱いだところなど見たことはない。風呂場を覗いたことも誓ってない。なのに、その肢体の様子から風呂場でのあられもない姿まで、リアルに描けてしまうのは何故なのか。

 ――これが、妄想、という奴なのですね。なるほど。

 などと納得している場合ではない。
 ふらつく身体を必死に制御しながら、ベッドから下りる。そこで気がついたが、榎本は、シャツとズボンのみの姿で寝かされていた。
 純子が脱がせてくれたのだろうか。……ということは、気を失ったとき、自分の下半身は彼女の目に余るような様子ではなかったのだろう、きっと。
 今とは違って。
 手探りをベッド脇のテーブルをまさぐると、眼鏡が手に触れた。
 それを身に着け、とりあえず視界を取り戻す――畳んで置かれていたニットを被り、ネクタイをポケットにつっこむ。傍らに、自分の鞄が立てかけてあるのを見つけ、必死に肩にかける。
 純子には申し訳ないが逃げよう。いくらかかってもいい。タクシーで帰ろう。でなければ、彼女の身が危険だ。
 幸いなことに、いくらかでもベッドで眠ったことが効いたのか、熱は多少引いたらしい。
 よろめきながら立ち上がる。そのまま、玄関に向かおうとして――

 バタンッ!

「……榎本さん?」
「…………」
「榎本さん!? な、何やってるんですか!? 駄目ですよ、大人しくしなきゃ!!」
 この世に神はいないのですね――と、榎本は、天に向かって呪詛を吐いた。まあ、元より信じたことなど一度もないが。
 ちょうど風呂からあがったところらしい純子が、榎本の元に駆け寄ってきた。
 湯上りで濡れた髪をアップにまとめ、ほんのりと桃色に染まった肌が何とも扇情的で。とっさに鼻血を噴かなかった自分の理性は大したものだ……と、とりあえず自分を褒め称えた。
「榎本さんっ!」
「…………」
 ぐたり、と、腰を落とした。というよりも、落とさざるを得なかった。
 抱き起こそうとする純子の手を払いのけ、必死に後ずさる。
 風呂上りだから、だろう――ついでに、季節は夏で、かなり暑いから、だろう。
 彼女は、バスタオル一枚という、何とも目のやりどころに困る格好で、榎本に詰め寄って来た。
「榎本さん、大丈夫ですか!? わっ! また熱が上がってません!? もうっ! どうして大人しくしていられないんですか!」
「…………」
「ほら、わたしの肩につかまってください! ベッドに戻りましょう? ……って、これ、鞄? もしかして帰ろうとしたんですか? 駄目駄目、駄目ですよっ! せめて今夜一晩は安静にしてください! 榎本さん、一人暮らしでしょう? 困ったときはお互い様ですから!」
「……あおと、さん」
「はい?」
463名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:41:48.84 ID:u2e5UySw
エロもっちゃんGJw
自宅一割引きでオフィス半額って…どんだけオフィスシチュ好きなんだw
原作読んだことないけど原作ではえのもっちゃんは犯罪者確定なの?
464風邪ひき榎本ネタ 5/7:2012/07/18(水) 22:44:20.21 ID:OGnmsmIL
 とん、と、力のこもらない手で、彼女の身体を突き放す。
 視線を床に固定し、ぼそぼそとつぶやく。
 何が何でも、彼女から離れなければいけない。このままでは、自分は、決定的に彼女を傷つける。
「お願いです……余計なことは、しないでください」
「榎本さん……」
「迷惑、なんです」
 嘘だ。本当は喜んでいた。親元を離れてからこれまで、誰かに心配してもらったことなど一度も無い。親しい友人もいない、同僚もいない、こんな自分を気にかけてくれる人など、もう誰もいないと、そう思っていた。
 だから、彼女の好意が何よりも嬉しかった――嬉しかったからこそ、彼女を傷つけるわけには、いかなかった。
「すみません」
 壁に手をつき、根性で立ち上がる。だらしなく羽織ったニットで下半身を隠さなければならないのが情けないが、見られるよりマシだと言い聞かせ、玄関に向かおうとすると――
「っ!!」
「…………」
「青砥、さん?」
「……榎本さんにとっては迷惑でも! 放っておけませんからっ!!」
 背中に抱きつかれた。そのことに気付いた瞬間、足が、動かなくなった。
「だって放っておけるわけないじゃないですか! 榎本さん、わたしがどれだけ怖かったか、わかってますか!?
 今日、倉庫に行ったら、榎本さんが倒れてて……いくら声をかけてくれても、全然目を開けてくれなくて! まさか、死んじゃったんじゃないかって――わたしがどれだけ怖かったか、わかりますか!?」
「…………」
「榎本さんの意見なんか知りません! これはわたしのわがままです。これで榎本さんがわたしを嫌いになっても仕方ありません。
 このまま、榎本さんを見殺しにするよりずーっとずーっといいです! だから、離しません、帰しませんっ! 何が何でも、ベッドに戻ってもらいますからっ……」
「…………」
 ああ。
 彼女は、本当に強くて優しい人なんだな――と、熱に浮かされた頭の中で、つぶやいた。
 これだけ言われれば、人間関係には疎い榎本でも理解できた。彼女は自分に、何がしかの好意を抱いてくれている。
 それが友情なのか、あるいは愛情なのか、単なるチームメイトとしてのものなのかはわからないけれど。どんな意味であっても、大切に思ってくれていることには変わりはない。
 ならば、自分はそれに答えなければならない――中途半端な嘘は、彼女に対して失礼だ。
「すみません」
「榎本さん?」
「迷惑なんて言ったのは――嘘です」
「え?」
「違うんです。このままだと、僕は――あなたを傷つけそうだから」
「はい? な、何でわたしが傷つくんですか? そんなわけないですっ! 榎本さんがわたしを傷つけるなんて、そんな」
「青砥さん」
 名前の通り、あなたは純粋な人ですね、本当に。
「僕は、男ですよ」
「はい?」
「あなたがどう思っているかはわかりませんが――男です」
「はあ……それが」
「今のあなたの格好を見て、何とも思わない――そんな男が、いると思いますか?」
「!!」
465風邪ひき榎本ネタ 6/7:2012/07/18(水) 22:45:27.74 ID:OGnmsmIL
 そこまで言われて、ようやく、気づいたらしい。榎本が何を言いたいのか。先ほどから、不自然に腰が引けているのは何故なのか。
「え、え、榎本、さん……」
「……すいません。熱のせいか、考えがまとまりません……でも、これだけは言わせてください……あなたは、魅力的な女性です、本当に……僕のような男でも、惹かれてしまうくらい、に」
「え……」
「風邪にかこつけて、あなたの親切につけこんで……あなたを汚すようなことは、したくないんです……だから」
 逃げようと、したんです。
 そうつぶやいた瞬間、榎本の身体は、白く華奢な腕の中にいた。
 視線を落とす。バスタオルから覗く谷間に目がいく男の性が、今は呪わしい。
「青砥さん、ちょっと……」
「榎本さんは、勘違いしてますよっ……」
「はい?」
「この状況で、何とも思ってもらえない方が、女は傷つきます」
「…………」
 顔を上げる。純子の視線が、榎本の目をまっすぐに射抜いた。
「女として何の魅力もない――そう思われる方が傷つきます。好きな人に、そんな風に思われたら、わたしなら立ち直れません」
「……はい……?」
 好きな人。
 それは、誰のことですか――?
「嬉しいですよ!? そりゃまあ、体調悪いのに大丈夫ですか、とは思いますけどっ! わたしのこと魅力的って言って下さって、男性としてわたしを求めて下さって、わたし、すごく嬉しいですからね!? 全然傷ついてなんかいません! どうか安心してください!」
「あの、青砥さ……」
「いいですよ。榎本さんなら、全然構いません。さあ、ベッドに戻りましょう――今日は、わたしが一晩中看病しますから。傍にいますから」
「…………」
 脇の下に身体を差し入れて、無理やり立ち上がらされた。
 ほぼ、ひきずられるような格好でベッドに連行される――顔を上げようとすると、頬を挟まれ、無理やり唇を塞がれた。
「ぐっ!?」
「…………」
 何を、と言いかけて。流し込まれた冷たい液体を、反射的に飲み下した。
「……まずは、水分を取らないと」
「…………」
「後、お食事。おかゆ、あっため直しますね。それから、お薬を飲んで――今日は、寝ましょう」
「……はい」
 母親からだって向けられた覚えはない、優しい笑顔に――榎本は、素直に頷くしかなかった。
466風邪ひき榎本ネタ 7/7:2012/07/18(水) 22:47:24.59 ID:OGnmsmIL
 翌朝、目が覚めたとき。ベッドにもたれかかるような格好で眠っている純子に仰天した。
 思わず飛び起きる――彼女の看病が効いたのか、薬が効いたのか。熱は、ほぼ下がっているらしい。
「青砥さん!?」
「ん……あ、榎本さん……」
「青砥さん、まさか、ずっとここに……?」
「……そうですよお……」
 寝起きのせいだろうか。
 いつもよりしまりのない、擬音をつけるとしたら「へにゃり」とした笑顔を浮かべて、純子は頷いた。
「だって、榎本さんが心配でしたから」
「…………」
「熱は、下がりましたかあ?」
「ええ。おかげさまで」
「よかったあ……」
 両腕を伸ばされ、首にすがりつかれた。熱い吐息が耳朶に触れ、かっ! と身体が燃え上るのがわかった。
「青砥さん……」
「榎本さん……」
 すきです……という微かな囁き声が、最後のとどめ。
 反射的に彼女の腕をつかんで、そのままベッドにひきずりこんだ。思った以上に細い身体を抱きしめ、パジャマのボタンに手をかける。
 純子は、一切逆らおうとはしなかった。実に幸せそうな笑みを浮かべたまま……
「……青砥さん」
「はい?」
「熱いです」
「えへへへへへ……榎本さんにこうしてもらえて……幸せ、だからでしょう……」
「違います!」
 布団をはねのけるようにしてとびおきる。純子の額に手を置くと、驚くほどの熱が伝わってきた。
「何をやっているんですか、あなたは……今日は大人しく寝ていてください。お詫びに僕が看病します。芹沢さんにも連絡を入れますから」
「榎本さん……さっきの、つづき……」
「しません!」
 頭を抱えてしまう。何だこのオチは。これがお約束と言う奴か。この昂ぶりをどうしてくれる。
 だが、まさかこの状況で純子に相手をしてくれなどと頼めるわけがない――彼女の気持ちは、十分すぎるほど伝わってきた。今は、それで満足するとしよう。
「えのもとさあん……今日は、ねかせませんよお……?」
「そうですか。確かに僕は寝れないかもしれませんが、あなたには寝てもらいます」
 手早く薬と朝食の準備をしながら。
 榎本は、きっぱりと宣言した。

〜〜END〜〜

××××××××

おしまい
書き手意見だけど、1にはスレ内ルールがあった方がありがたいです
結構、スレによってこれはOK、あれはダメって違うので。
勝手な意見、失礼しました。
467名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:48:43.76 ID:TQxUSD+H
どろぼーさんは確定だよ。

いやしかしGJ!
ドラマ榎本ファンには申し訳ないがメンタリスト榎本で
脳内再生させて貰った
こういうのバンバン読みたいね!マジで神!!
468名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:48:51.41 ID:u2e5UySw
>>466
GJ
すまん被ったorz
まさかすぐ投下くるとは思わず
469名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:53:52.04 ID:j24trKS4
>>462
すごい。すばらしい。萌えるしスピーディーだし幸せだし。
これを突貫で書き上げる力量!


スレルールを冷静に話し合ってテンプレ作るのは賛成です。
470名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:56:30.71 ID:TQxUSD+H
>>467>>458宛GJ

だけど
>>462もGJ超(大野厨はこういう言い回しをするらしいw)
こちらはドラマ榎本で脳内再生されたw

いや、楽しいな>投下祭り
471名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:57:26.85 ID:htjugymn
>>466
こんなにすぐに読めて幸せ。
いやーもうかなり好み。GJ!です。ありがとう。
すぐにとは言いませんが、続きを期待しちゃいます。
(すいませーん)
472名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 22:57:55.04 ID:u2e5UySw
>>467d
ドロボーさんは確定なのかー

そういえばテンプレもだけど
保管庫もどうするって前出てたよね
473ゲーム 1/3:2012/07/18(水) 23:22:41.84 ID:oXD6ZWwT
435です。
いつの間にか投下祭りが始まってて楽しいですね!
自分も遅ればせながら投下をば。

最初はドラマの榎青で書いていたんですが、
純子が積極的になりすぎたので、原作の榎青に急遽設定変更しました。
スレ埋め目的で書き殴ったので、エロは大ざっぱです。

ドラマの榎青派の方は、「ゲーム」でタイトル避け願います。
************************************************


その日、青砥純子弁護士は珍しく暇を持て余していた。
仕事をする気にはなれないし、未読の本も無いし、テレビは既に見飽きた。
純子はため息をついて、ソファに座っている榎本径に声をかけた。
「榎本さん、まだかかるの?」
「まだかかりますね」
予想通りの答えが返ってきただけで、面白くない。しかもこちらを見向きもしないのだ。

人の家に昨日から来ているくせに、榎本はパソコンに向かったまま何かの作業を続けている。
何だか面白くなくて、先ほどからずっとちょっかいを出しているのだが、応えてくれない。
恋人の家に遊びに来た時くらい、仕事のことは忘れなさいよ…と心中で毒づくが、いい年した大人が「構え」と口に出すわけにもいかない。
恥ずかしいし、何よりも悔しいから。
世間話でもしようも、「すみません。今は手が離せないので、後で」と言われてそのまま。
「『後』っていつですかー? もうかれこれ2時間近く放置ですがー?」と、つい心の中でつっこんでしまう。

純子は既に空になったコーヒーカップをくるくる回して考える。
榎本さんの気を引けて、かつ自分の持て余している暇を有効活用すべき手段はないだろうかと。
榎本を見ると、柔らかそうな髪から耳がちょっとだけ覗いていた。
榎本さんて、指だけじゃなくて、耳も綺麗な形しているな…と、ついつい純子は見とれてしまった。
あの耳をいきなり舐めたら、いくら榎本さんでも驚くだろうか? 何となくそんなことを考えていたら、ふと面白いことを思いついた。
これなら榎本さんの注意も引けるし、自分の暇も解消できる。
純子はニヤリと笑って椅子から立ち上がり、榎本の後ろに立った。

―――榎本さん、ゲームをしましょう。
474ゲーム 2/3:2012/07/18(水) 23:23:39.75 ID:Xkmr7yfI

純子が後ろに立った気配を感じたので、榎本は振り向こうとした。
しかし、それよりも先に純子が榎本の顎をつかんで、上を向かせ、キスをする。榎本の下唇を甘く噛んでから舌でなぞる。
榎本が舌を入れてこようとする前に唇を離し、下から見上げてくる榎本にクスリと笑うと、純子はぐるりと回って榎本の隣りに座った。
榎本は純子が何をしたいのか分からないらしく、不審そうにずっと観察している。純子は明らかに「何か企んでいます」という顔をしていたのだ。
嫌な予感がして、榎本はいぶかしげに純子に尋ねた。どうせロクなことを考えていないのでしょう、という思いを言葉に込めて。
「……青砥先生、何を考えてるのですか?」
「榎本さん、ゲームをしませんか? 余裕が無くなった方が負けですよ」
純子についていけなくて、ますます不審そうな顔をしている榎本にはお構いなしで、純子はゲームに勝つべく行動を起こした。
右手を榎本の頬に寄せ、左手で横の髪を耳にかけて、形の良い耳を露わにすると、カプリ、と噛みついた。そして、舌でペロッと舐めあげる。
榎本の身体がピクリと動いたのを感じて、喉の奥でクスクス笑うと、軽い舌打ちが聞こえた。
「あの」
「何ですか?」
「何をされているのでしょうか?」
「ですから、ゲームです」
榎本に対して適当に答えながら、今度は首筋に顔を埋める。動脈の辺りを舐めて、噛みついて強く吸う。唇を離して、跡がついたのを確かめるともう一度舐めた。
榎本はため息をついただけで、ちっとも乗ってこない。ならばと、純子は口で耳と首筋を攻めながらも、右手でやんわりと榎本に触れた。
あからさまに榎本の身体が一瞬固まる。その反応に純子は気を良くして、撫でては揉んで、微妙な力加減で榎本を刺激していく。
表面上は全く動じていないように見える榎本だが、身体は正直だ。純子は再び喉の奥でクスクス笑うと、とどめをさすべく榎本の首に手を回し、耳元でわざと甘く囁いた。
「榎本さん……」
榎本の身体がまた固まり、耳がみるみる間に赤くなっていく。どんな愛撫よりも、榎本には自分が名前を呼ぶ方が効果があるのだ。
純子が「私の声が一番気持ち良いだなんて、榎本さんたら私にメロメロなのね」とわが身を棚に上げて悦に入り、余裕綽々で首に手を回したまま榎本の反応を待っていると、
榎本は思い切り純子を睨み、ソファに押し倒した。
「私の、勝ちね」
純子がにっこり笑いながら目の前にある顔を見て言うと、榎本は舌打ちしてムッとした。

「それはどうですかね」
「素直に負けを認めなさいよ」
榎本の言葉がどう見ても負け惜しみにしか聞こえず、純子は思わず声を出して笑いだした。
(何だかんだ言っても、榎本さんも可愛いのね―――)
純子はそんなことを考えながら、自分の首筋に埋まっている頭をそっと抱きしめた。
475ゲーム 3/3:2012/07/18(水) 23:24:44.41 ID:oXD6ZWwT

最初は勝者の余裕に満ちていた純子だったが、榎本の愛撫はだんだん本格化して、余裕も無くなってきた。
胸の突起を口に含まれ、舌で転がされ、甘噛みされ、手では摘まれて、捏ねられ、執拗に攻められながら、空いている方の手で濡れ始めた茂みを弄られる。
「んっ…や…ぁっ…」
首を振り拒絶を口にしても、それは裏を返せば次への催促になる。純子からとめどなく溢れ出る滴りを、榎本は全体に塗りつけるようにしていく。
かさついた榎本の冷たい手の感触が、ぬるぬるとした暖かいものに変化する。そのぬめりを借りて、さらに榎本は純子を煽っていく。
「あっ…あんっ…」
口を閉じることが出来ず、息を吐くのと同時に声が出る。その純子の口に、榎本は先ほどまで胸を散々弄っていた指を入れた。
この後、この指が自分にどんな快楽を与えるのか知っている純子は、口の端からだらしなく唾液がこぼれるのも気にせずに熱心に指に舌を絡める。
そんな純子の様子を見て榎本は笑うと、口から指を引き抜いて、その指を純子の中へと這わせた。
「んっ」
入口付近に指を這わされただけで、純子の身体は次にもたらされるであろう快感を予感してピクリと震えた。
榎本は純子の額や瞼にキスをしながら、まずは一本差し込んだ。
「いやぁ…や、だ……」
「嫌じゃないでしょう? 私の指を必死に中に飲み込もうとしていますよ」
「う、るさい……んっ」
揶揄うような榎本を純子は睨みつけるが、逆に返り討ちにあってしまった。
絶えず入口を弄られ、中には次第に増していく圧迫感。良いところばかりを攻められて、純子の頭は真っ白になった。
イくのと同時に榎本の指を締めつけてしまい、それが恥ずかしくてふいと横を向く。そしてそのまま指が引き抜かれ、榎本自身が挿れられるのを待った。
しかし、いくら待っても榎本は指を抜こうとせず、挿れていない親指で、入口付近の壁を器用に撫でていた。
それだけでもいくらかの快感はあるのだが、足りるはずがない純子は、榎本を睨み、まだ整わない息のまま問いかける。
「なんで…焦らすの…?」
「別に焦らしてなどいませんよ」
いけしゃあしゃあと答える榎本を、もう一度強く睨むが、もちろん効果などありはしない。
短くない付き合いで、榎本が自分に何を言わせたいかは分かっているが、それを言うのは恥ずかしくて、いつも足掻いてみる。
―――足掻いてみるのだが、結局は自分が我慢できなくなり、今日もいつものように潤んだ瞳で榎本に訴える。

「もう、榎本さん……いれ、て…」
「私の勝ちですね」
純子のその言葉を聞くと、榎本はニヤリと笑って指を引き抜き、スラックスから自身を取り出した。そして猛った自身をゆっくりと純子の中に沈めていく。
自分が言いだしたゲームのことなどすっかり忘れて、何が「勝ち」なのかよく分かっていない顔をしている純子に、榎本はついばむようなキスを送りながら
「余裕が無くなった方が負けでしたよね」
と言った。言われた瞬間にハッと表情を変えた純子を見て、榎本はもう一度ニヤリと笑う。
純子が悔しそうに「勝負はついたはずよ!あなたの負けよ!」と文句を言おうとする前に、榎本は腰を使い、抽挿を開始した。
「あ…っ…んん…っ、はぁ……っ」
待ち焦がれていた快感を突然与えられ、喉からせり上がってくるのは意味をなさない嬌声だけだったが、最後の理性を振りしぼって純子は叫んだ。

「ずるい!」と。

<終>
476名無しさん@ピンキー:2012/07/18(水) 23:33:22.96 ID:ENIgfWn2
今日はGJを花火みたいに連発したくなるね
どの職人さんもGJです
477名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 00:18:20.28 ID:i/rZ3LoE
>どんな愛撫よりも、榎本には自分が名前を呼ぶ方が効果があるのだ
この一文に全米が濡れた!GJ!
478名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 02:24:15.56 ID:b1eLUeCd
GJ!!

とりあえず案を簡易に作ってみたんで
これたたき台に案出して削ったり増やしたりしてくださいな


------------------------

こちらは
セキュリティシステムを知り尽くした奇才の防犯オタクが
あらゆる分野の豊富な知識と鋭い洞察力で事件を解明する
密室トリックにこだわった内容の本格謎解きミステリー。
鍵のかかった部屋のSSを投下するスレです。

榎本径×青砥純子が投下多めですが
芹沢豪、水城里奈、鴻野光男…等鍵部屋の登場人物の妄想なら
エロでもエロなしでも投下可能です。

ドラマでも原作よりでもどちらでもOKです。

『スレ内でのお約束』

「基本sage進行です。(メ欄に半角小文字で「sage」と記入する)
「他スレ、他サイトの紹介・誘導は禁止です。
「半生なので中の人の話題はほどほどに、801は厳禁です、板違い。
「投下する方は事前の注意書きをお願いします。注意書きがあるのに読んで泣かない。
「書きながらの投下は禁止。書き上げたものをコピペしてください。
「作品には1/2・2/2のようにナンバリングするか、作品の最後に「終り」「続く」等入れて終了の合図を。
「リクエスト・続き希望は節度を持ち、行き過ぎたなれ合いは控えましょう。
(誤爆スレや愚痴スレ裏話スレをうまく使う事)

「嵐、煽りは華麗にスルー・他人に注意をするときは、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。

過去スレ:
479名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 03:04:05.33 ID:yheQ/gCH
あのう、初心者なんですが愚痴スレってなんですか?
検索したらすごい数のスレがあってどれを指してるかわかりません
どなたか教えて下さい
「計画」「ある日の二人」書いた者です
480名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 03:07:43.88 ID:2Mbd1BR9
2ちゃんでそういう言い方する板があんのは知ってるけど今がたたき台なら言わせてほしい。
スレを荒らす人を表現するのにドラマ版中の人のグループ名使わないでくれませんか。
見かける度にもにょってるんで。
きもくてすいませんけど。
481名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 03:14:25.67 ID:nbVOb+Qh
478は誤変換だと思うんだが。
「嵐」じゃなくて「荒らし」じゃね?

>479
エロパロ板内で「愚痴」で検索。
482名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 03:18:16.73 ID:yheQ/gCH
>>481
ありがとうございます
483名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 07:34:18.08 ID:6gltHSdu
>>478

次スレは>>980か480KBあたりで立ててください
  
 も、入れてはどうでしょう
484名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 07:53:07.38 ID:ck3JyrFl
自分も中の人の所属しているGを荒らしの伏字と使うのは反対ですが、
それ以外はよくまとめられてて素晴らしいと思います。

続きの催促については、一番はじめの感想のときは良いかなと思うのですがどうでしょう?
二回三回とつづきまだー?と過剰に催促するのはやめたほうがいいと思いますが、
読んだ人間が続きを望んでいるということは伝えてもかまわないと思います。
書き手さんたちはどう思われますか?
485名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 08:21:54.53 ID:rLWcvfen
>>483
今はスレに勢いがあるから>>980には到達しない気がする

>>484
続きの催促はしないのがこの板での常識
486名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 08:33:30.64 ID:i/rZ3LoE
全レスは書き手は勿論読み手も厳禁、ってのも入れたらいんじゃね?

ちょっと前に全レスで叩かれた新人がいたが
彼(彼女)がレスしたのは3人だけだったのに
その後に続いた読み手の全レス(5〜6人宛)の分まで
頭ごなしに責められていた印象がある

あくまでサラっと読んだ印象だけど
487名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 09:00:49.32 ID:RHGVkzYK
>>484にちょっと賛成。
各々最初のGJレスに続き読みたいって書くくらいはダメかな?

自分もあまりそういうのは書かないようにしてたんだけど、
何人かの書き手さんは「続きが読みたいとの声がありましたので」って続きを投下してくれてるんだよね。
やっぱりそれも節度あってこそだけど、好評ならまた書きたいって思ってくれてる書き手さんへの応援になるんじゃないかと。
488名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 11:07:51.48 ID:i/rZ3LoE
でも一部の書き手にはプレッシャーになるらしい>続きが読みたい
でもって、そのコメントが欲しいのにつかない書き手は
他の書き手へのコメントを読んで落ち込むらしい
かと言って、誰にでもそのコメントがつくようになると
今度は「糞作品にも言ってる」「誰にでも言うんでしょ」と
シニカルな気分になっちまうらしい

だから、続きの催促はやめておけ、と

あ、これ、ソースは愚痴スレね

要は読み手の側からリクエストするなってこと
「続き読みたい」も「これこれこういうシチュで」も
自分好みの話を書かせようって点で根っこは同じだしな
489名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 12:37:58.35 ID:G1FeRbxD
>>486
あの人、好き嫌いが激しくて、その人が嫌いらしい書き手が投下している最中にそれやったから
自分は全部NGにしているわ
490名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 13:10:20.91 ID:fzmsARjQ
>>489
え?
それって、気に入らない書き手の邪魔するためにわざと全レスしたってこと??
それはマナーがどうとかいう以前の問題だと思うけど
491名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 13:11:38.14 ID:i/rZ3LoE
あの人て?
486で話題にしたのは『お土産』の人の直前に投下した書き手だよ
(英語のタイトル)
愚痴スレに質問に来てたけど気弱な印象だったけどな
全レスした時も直前の投下が終わってから半日経過して
スレの動きが止まってた時みたいだったし
嫌がらせでやったんじゃないかとか、なんで思ったの?
492名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 14:46:16.19 ID:5dArYWxZ
>>489
性格悪そうだねあなた
493名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 15:02:29.13 ID:6M/8ktf5
>>491
>>377があの人だろ
494名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 17:04:15.63 ID:i/rZ3LoE
377が「あの人」なんだとして、じゃ、なんで>>489
>>486にレスつけてんだ?
377も全レスやって揉めたことがあるとかそういうこと?
495名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 17:18:26.76 ID:rLWcvfen
まぁ実際にマナーやルールがわかっていない書き手がここに一人いるから
それを読み手として嫌う人がいるのはあるかもね
496名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 19:24:11.22 ID:exwO2JVg
「ドラマ、原作どっちもOK」ってのはみんな承知なの?
最初はここドラマだけのはずだったけど。 

どっちもOKにするなら、私は表示してほしい。
497名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 19:49:37.63 ID:qn+6lgCn
>>496
自分は、原作を含める場合、貴志先生の他の作品のエロパロって扱いどうなんの?
っていうのが気になる。
上の方で1作品(1作者)につきスレ1つ、って板ルールがあるって書いてあるし。
正直、原作の榎本・青砥はドラマとキャラが違いすぎるから
原作見てない自分は違和感ばりばりなんでスレ分けてほしい気もする
498名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 20:08:07.15 ID:rLWcvfen
>>496-497
原作あってのドラマだからか
投下する時に原作の榎×青ですと前置きすればOKって
読み手の意見が出て承知されていたよ
読みたくない人はそれで判断すると良いよ
499名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 20:08:15.60 ID:exwO2JVg
>>497
私も分けられるんなら分けてほしい。
うっかり読んだ時、詐欺にあった気分半端ない。

板ルール的にはどう解釈したらいいのだ?
500名無しさん@ピンキー:2012/07/19(木) 20:14:20.69 ID:exwO2JVg
>>498
でもちゃんと話し合ったわけじゃないのでは。
なし崩しだったような・・・。

どっちもOKになるなら
どっちなのか表示する事をお約束にいれてほしい。