ニューハーフ・シーメールでエロパロ 6

このエントリーをはてなブックマークに追加
276150:2013/12/31(火) 01:43:03.82 ID:FNTKHJoP
―――――――――――――――――
これで今年最後です。来年もまたよろしくお願いします。
ラノベ厨なので、長台詞多くて、長い行を作っていた結果、
今、自分で読んでいてももう少し区切った方が良かったと思ってきました……。
277名無しさん@ピンキー:2014/01/04(土) 10:10:33.83 ID:dxkNKx9T
リレーとかやらんの?
278150:2014/01/06(月) 15:31:10.39 ID:BXOvfKJm
>277
リレー小説って奴ですか? そういうのは苦手なんです……。

ということで、投稿の予定がずれちゃったので、続きを投下します。
―――――――――――――――――――――――――――――
279150:2014/01/06(月) 15:31:49.74 ID:BXOvfKJm
 新宿二丁目の境目にあるその店は、客のほとんどどころか全員が女性だった。
 まだ浅い時間ということもあってか、酒よりも料理が多くテーブルには並んでいた。さすがに人手の関係か厨房には男性スタッフの姿も見える。
「こんにちわー」
「あ、由香子、いらっしゃい。ごめんなさい、今忙しいから手が離せなくて!」
「大丈夫、ご飯食べに来たから」
「じゃあ、ちょうど三人分の席が空いてるからそこで待っていてね。あ、すみません、お待たせしました!」
 調理師の服を着た人が注文を取っている。
「あの人が静さん。お姉ちゃんの彼女」
「へー…すごいね……経営してるって言っても、自分から色々動いている」
「そうだね。手に職を持っているからって、料理だけじゃなくてお客さんのこともよく覚えてるし、
 女の子が来やすい空間にしているけど、このお店の場合は男の人も差別しないで、普通にサービスしてくれているんだ」
 由香子さんに先導されてテーブルにつく間、ちらりと店の中を巡らせるだけでも、女の子同士のカップルがいるのが分かる。
 だけど普通に大学生のような人たちの姿も見える。もっと特殊な空間かと思った。たぶん、レディースバーの方はそうなんだろな。
 女性のスタッフが注文を取りに来る。由香子さんはピラフのセット、優はミックスグリルのセット、ぼくはナポリタンのセットを選んだ。
 メニューを見る限り洋食のお店だった。もちろん、夜はバーとしての顔もあるからお酒とおつまみの種類も多彩だった。
「思ったより普通ですね……」
「特に狙った作りをしているわけじゃないからね。
お酒を飲みたい人とかはレディースバーに行くし、ご飯食べるだけとか、カップル同士でいたいときはこっちでゆったりとしている人多いから。
 それに、ビアンの子がノンケの友達とか連れてきてくれたりしているから割と客層も固まっているわけじゃないし。
お世辞じゃなく、結構な繁盛ぶり」
 そうやっている内に注文された料理が届く。なぜか三人揃って疲れたところがあったのか、旺盛に食事に集中した。
会話もなく食べ終わるまで何も話さなかった。
「ふー……ごちそうさま」
 由香子さんの一言に合わせて、ぼくと優も続いた。
280150:2014/01/06(月) 15:33:46.58 ID:BXOvfKJm
「初めまして、今日の料理はどうでした?」
 気がづくと、由香子さんの隣に折りたたみ椅子とカレーを乗せたトレーを持った静さんがやってきた。
「ごめんなさい。厨房が狭いから、従業員もこっちの席とか使うの」
 気づいたら、厨房に近い席で静さんと同じような格好をした男の人が何かを食べているようだった。
「由香子から話を聞いているわ。あなたが、翼ちゃんね」
「はい……三枝翼と言います……」
「あたしは本田静。このお店、FREEのオーナーみたいなものね。
料理は作るけど、ある程度はレシピも固まっているから今はあたし合わせて五人でお店を回せている。
 みんな優秀だから助かってる……ところで、翼ちゃん……あなた喉仏とか無いの?
声は全然低くないし……優ちゃんのことは知っていたけど、素材とすれば優ちゃん以上ね……」
 そんなに驚かれると思うと、少し自信というか嬉しいというか複雑な気持ちにはなる。別に嫌じゃないけど。
「あたしがバイだったらつきあいたいくらい。優ちゃんと会ったときもそうだけど、可愛い男の子は嫌いじゃないから」
「静さん……わたしが側にいるのに口説かないで……」
 さすがに由香子さんも怒っている。口を真一文字に結んで批難めいた視線を送っている。
「ごめんごめん……バイだったらって言ってるでしょう? あたしはずっとビアンだったから……」
 言うまでもなく静さんはレズビアンらしい。由香子さんは優と関係を持っていたこともあるからバイセクシュアルだ。
 優の場合は由香子さんと関係はあったけど、どちらかといえば男の人の方が好きだからゲイよりのバイセクシュアル。
 ぼくは女になればレズビアンなんだけど、優のことが今は好き。
そして、これから優や客と関係を結べば、レズビアンよりのバイセクシュアルになる。
 ぼくたちは、それぞれ特殊な立ち位置にいるけれど、こうして普通にご飯を食べていることを考えれば、何もおかしいと思う事なんてない。
 そう思うと、こういう時間ってとても幸せなのかもしれない。
「知ってます。静さんは基本的に二股はしないのが恋愛の上でのポリシーでしたからね」
「そうよ。物わかりの良い子は大好き」
 そう言うとふたりが笑い合っている。こうして見れば、同性愛の関係とか抜きにすれば良い友達にすら見える。
 繁殖とは関係ない、そういう魂みたいなものでずっと結びついていられれば、肉体とか性別とかそういうもの関係なく生きていけるかもしれないのに。
 だけど、ぼくはこうして存在している。いつか、女性になるために。
 ぼくって言葉、意識してやめられるのかなぁ……。
281150:2014/01/06(月) 15:34:24.41 ID:BXOvfKJm
 それからの一週間。短いようで長く感じた。少人数の授業では男でいたり、大人数の講義の際は女でいた。
 ときどき男子から話しかけられたりしたけど、すぐに逃げた。正直、女にしか見えてないとしても、今は誰とも交流を持てない。
 図書館に来て、テーブルにもたれる。少し日を追うごとに緊張してくる。
 実家には母と兄たちだけには教えた。来週から、薬を飲み始めることを。さすがにお金の方は夜の店で働くということでごまかした。
 もちろん未成年でも引っかからないまでの仕事しかしないということでごまかせた。性的なことはしないということだけは強調して。
 ふたりの兄は文武両道で常識人だから、反応は怖かったけれど、翼だったらありえたかもしれないという反応だった。
 さすがに今生という意味でもそれぞれに直接の電話をして事情を話した。
 それから念のために写真も残しておくようにと言われ、数少ない男の服であるスーツを着て写真をいくつか残した。
 優と由香子さんと一緒に写った分も合わせて。
 水曜日になり、優がぼくの部屋に遊びに来た。さすがにふたりのように家具を揃えたりはしていないから、殺風景な状態だった。
 お茶を飲みながら、ふと優は薬とか自分の服代くらいしかお金は使っていない。食事だってスタイル維持のために無駄に食べない。
 そうなってくるとお金はどれくらい貯めているんだろう?
282150:2014/01/06(月) 15:35:05.61 ID:BXOvfKJm
「優は、確か働いて二年くらいだったけど……お金って貯金してるの?」
「うん。一応、ボクもお姉ちゃんも奨学金貰ってるから。一括で返せるくらい貯金あるけど、
 いきなり返済すると変に思われるからちょっとしか返していないけどね。休学もしてるし」
 一括で返せる金額って数字の桁数で言えば七桁。社会人の年収にも相当する貯金があるって。
「でもね……あんまりボクも出勤はしないようにしてる。もちろん身体とか壊さないようにしたいから。
 だから、翼ちゃんもぼくと近いくらいのシフトで出勤すると良いよ。
 さすがにボクも平日とかはあまり出てないし。それにとりあえず今は時間あるときは資格の勉強もしてるしね。
 だけど人によっては完全に縁切りしちゃって毎日のように働いている人もいる。
 とてもきれいだけど、少し疲れた顔をしてる。凄いけど、そこまでなりたいとは思わない」
 そうだ。お金が欲しいのと訳が違う。女性になるためのお金を割り切って手に入れようとしているだけ。そこを間違っちゃいけない。
「……ねえ、翼ちゃん……こんなこと言うのなんだけれど、もう男としてのセックスって興味はないの?」
「たぶん……もうオナニーとかしてないし……射精すると女の子になれなくなる気がするから……」
 思い出せる射精は優に抱かれて絶頂と一緒に放出した時のだけ。トコロテンという現象で、男性同士のアナルセックスだとたまにある現象らしい。
 だけど、あれは射精のように感じなかった。まるで女の人がイッたときの潮吹きみたいなものだと思っていた。
「トコロテンって、ぼくには潮吹きとかみたいなものなのか……あれは嫌じゃなかったけど……」
「翼ちゃん……男の子も潮は吹くんだよ」
「うそっ!」
 初耳だった。潮吹きって言うまでもなく。
「おしっこじゃないんだけど、亀頭責めを凄いされるとできるんだけど、ボクもそんなにしたことない。
 お姉ちゃんにやってもらったことはあるけど……一度見たのは、トコロテンしたまま責められて潮吹きさせられるなんてのを見たけど、
 さすがにその人は物凄い悲鳴あげたまま失神ちゃった……さすがにそこまでのことはボクもできないよ……」
 自分のズレというのは特殊なものだったけど、人によってはそんなこともできるなんて。人間の身体って不思議。
283150:2014/01/06(月) 15:36:41.03 ID:BXOvfKJm
「ところで……優、何でぼくの横に座ってるの?」
「えー、好きな人と向かい合うのも良いけど、隣にいる方が近いでしょう」
 こういうところが優のずるいところだと思う。ただ、こういう行動を「狙っている」なんて由香子さんが笑って指摘していたこともあったけど。
「……今日は、ぼくが優のことを抱けばいいの?」
「そうしてもらいたいから、ここに来たんだ……」
 甘えるように首に抱きついてくる。身体を密着させると優のおちんちんがぼくの身体に当たる。
 スカートなのにサポーターみたいなのもつけないでいて危ないな。
「じゃあ、シャワー浴びてからにしよう。少しずつ暑くなってきたから……」
 今日はメイクもウィッグもいらない。ありのままのぼくで優を抱く。たぶん、男としてのセックスはこれが最後になるはずだから。
 優は女の子らしい格好をしていた。
 ボーイッシュな印象を持っていても、プリーツのミニスカートとブラウスにカーディガンを合わせただけでおめかししたら女の子らしくなる。
 それでも快活な印象が無くならない感じで。やっぱりワンピースとかはあまり好きじゃないみたいだ。
 ぼくはむしろそっちの方が好き。やっぱり好みの問題かな。
「脱がせて……」
 しなだれかかってくる優がそんなことを言ってくる。
 甘い声は女の子になる身体に抵抗する少女のような声で、ぼくはゆっくりと顔を向けて軽い口づけをした。
「んっ……」
 不満げな反応。お預け。だって、ぼくたちはまだシャワーも浴びていない。せめて口をゆすいだり、歯を磨くくらいはさせて欲しい。
 誘うのは上手なのに、優は少し性急なところがあるかもしれない。
 でも、優とセックスをするのはこれが二回目だから、どっちにしてもぼくだって焦る。
 それに、男として優を抱かなくちゃいけないのに、ぼくはまだ女装したままだった。ボブカットのウィッグに春物のニットワンピース。
 季節ごとに服は揃えているけど、自分でも一番、女の子らしく見える服から男になってみて、と言われるのも少し変な気分になってくる。
「だったら、ぼくが脱いでから。優は、今日、ぼくに抱かれたいんでしょ?」
 言葉にすると少し抵抗を感じる。男っぽい言葉にしたら、自分の心の中がささくれ立ってしまう。嫌なんだろうな。
 だけど、未だにぼくという自分の呼び方を止めることができない。
 いつになったら、自然に私と自分のことを呼べるんだろうか。この言葉使いも何だか違う。
284150:2014/01/06(月) 15:37:24.85 ID:BXOvfKJm
「……いいなー、細くて……」
 ワンピースを脱いで、ブラジャーとショーツだけの格好になる。
 正直、今日は大きめのパットを入れてしまったから、少し自分でもエッチな格好になってしまっている。
 細身でちょっとおっぱいは大きめ。作り物だけど。
「優だって、柔らかくておっぱい大きいよ」
「……さっきから、やっぱりずるい……男の子の翼ちゃんは、きっとモテてた。絶対、女たらしだったに決まってる!」
 わざとだけど、少し優は不満げだった。
「そうかなぁ……自覚ないけど……まあ、彼女いるのに告白メールとか届いたことあるけど……」
「それ! 何もしていないし、何気ない一言でも心揺さぶってくる時点で凄い。ウィッグ取って……」
 最初からそのつもりでウィッグを取って、ウィッグネットを外して、髪の毛を軽く手櫛で梳かしたら、
「やっぱりイケメンだぁ……」
 イケメンって、あんまり男らしい顔はしていなんだけどな。優しい顔とか、落ち着いているとか言われたことはあるけれど。
 それに、ちょっとナチュラルメイクをしているせいか、髪とか弄ったらバンドでもやっている人みたいに見えるかもしれない。
 ブラとショーツを脱いだ頃には優も下着姿になっていた。相変わらず大きなおっぱいに目が行く。
「ボクのよりおっきい人はお店にはたくさんいるよ。それに、お姉ちゃんの方が1カップ大きいし……」
「由香子さん、そんなにあるの……?」
 細身で高い身長。おっぱいがあるのは分かっていたけど、優より大きいってことはEカップ。
「スタイル良いしね……だからかな……静さんと付き合うまで、結構、とっかえひっかえだったな……モテたよ、お姉ちゃん……」
 そういう顔をされると辛い。たぶん、優がぼくのことを好きなのは本当だけど、同時に由香子さんのことはもっと好きなのかもしれない。
 だけど、少しも悔しいとは思わなかったし、嫉妬もしなかった。たぶん、由香子さんと優の話を聞くとすれば、もっと重苦しいことになるかもしれない。
 ゆっくりと優がショーツを脱ぐともう既に自己主張するようにおちんちんは勃起していた。
「焦らされると困る……」
「ちゃんと汗は流してからね……」
 本当は一緒にシャワーを浴びてみたいという欲求もあったけれど、布団を畳んでいたから優が出てくるまでパイプベッドに布団をセットする。
 このベッドでセックスを何度しただろう。自分が上になると背中痛くないかなって何度も思った。そんなことはなかった。
 彼女はあのときに感じるだけ感じて、乱れるだけ乱れた。布団の上なら充分、ぼくたちは身体を交えることができるんだ。
 優がシャワーを浴び終えて、入れ替わりにぼくがシャワーを浴びる。
 ユニットバスから出たばかりの彼女の濡れた髪の毛がいつも以上に色気のようなものを感じさせてくる。
285150:2014/01/06(月) 15:38:23.14 ID:BXOvfKJm
 部屋に戻ると優はまだバスタオルを身体に巻いたままベッドの縁に座っていた。
 そして、ぼくが来たのに気づくと、そっと立ち上がって、バスタオルを解いて全裸になる。
「ボクの身体、どう思う?」
「とてもきれい。小柄な身体も柔らかそうな身体も、大きなおっぱいも少し大きめなお尻も。
 それに顔は男の子みたいなように見せて、少し強気な女の子らしい感じがとても可愛い。それに……優は元気だね……ぼくもだけど……」
「……嬉しいけれど……翼くん……」
 その一言がぼくの心をざわつかせた。
「きみもこうなるんだよ……」
「引き返さない。今のままでも優の事が好きだよ。でも、ぼくは男の子でいるのは辛いんだ。
 好きな人よりも、自分のことが大事だから……
 だって、自分がいなきゃ好きな人の気持ちなんて感じることができないよ……もちろん、時間稼ぎみたいなことをしているけれど……」
「それだけ言ってくれれば、もうボクは余計な事を言わない……ごめんね、せっかく決意しているのに困らせて……」
「……辛かったら、何でも言って……ぼくには話を聞くことしかできないけれど……」
「ありがとう……今は、このまま抱きしめて」
 いくつかの言葉を交わして、ぼくは優を抱きしめた。優も精一杯腕をぼくの背中に回した。いつも感じる優の柔らかい身体。
 多すぎず少なすぎずちょうど良い皮下脂肪の感触。押しつけられてくる乳房。これがぼくにもできたとき、今よりもっと気持ち良いのかもしれない。
 髪の香りはいつもと同じシャンプーの匂い。ぼくが使っているのとは違う、花の香り。
 少し特別で高いものとだけ聞いている。それが優の身体の匂いと混ざっていく。
 お互いの太ももに当たる感触。どちらも互いの身体の中に入りたがっている。このまま優と解け合ったままひとつになれれば良いのな。
 そんな非現実的なことも考える。そして、自分の中に入ったおちんちんを意識したら、今度は自分の物を優の中に入れないといけない。
 彼女が望むことならできるかぎり叶えたい。ぼくができる数少ないことでそれがあるのなら。
286名無しさん@ピンキー:2014/01/06(月) 16:57:39.20 ID:5OtbaaOJ
読み難い
287名無しさん@ピンキー:2014/01/06(月) 18:41:53.61 ID:YFWR6lZa
支援

別段読みづらいとは思わんがな
まぁただの難癖荒らしだろうけど
288名無しさん@ピンキー:2014/01/06(月) 23:30:53.30 ID:c0ZIIBdI
つC

活字の大きなラノベしか読んだ事が無いんだろう。
改行が多くて活字よりも空白が多いような。

別にこの作品は読みづらくは無い。
今のままで何の問題も無い。
289150:2014/01/07(火) 23:36:59.37 ID:ozBgnbLu
続きいきます。投下しすぎでぶつ切りになった場合は、避難所でその日の分が終わったことを報告させてもらいます。
――――――――――――――――――――――――
「優……キスしよう」
「いいよ」
 耳元で囁くと、優は抱きつく腕を緩めてぼくに顔を向ける。目を閉じる隙も与えずに唇と唇を重ねた。
 油断したからあっさりと舌の進入を許してしまう。その状況に優は観念したようで、しばらくぼくは優の舌を丹念に味わった。
「……ぷはっ……」
「今度はボクの番……舌出して……」
 言われるままに舌を突き出すと、優はそのままペロペロと舐めだしてきた。そしてそのままくわえ込む。
 その動きに合わせてぼくも唇を押しつけながら、すぐに離れ、舌を出して優に好きなだけ味合わせた。
「……キスだけじゃ嫌だって言葉あるけど、優とならいつまでもしたい」
「ずるいよ……ボクだって、ずっとしていたけど……やっぱりそれだけじゃヤダ……」
 嬉しい。裸で抱き合ってキスするだけでも、とてもたまらないのに、優は正直な気持ちを言ってくれる。
 あ、また固くなってる。さっきから太ももの感触が分かりやすい。
「……ベッド連れてって……あんまり足に力入らない……」
 そう言われて、手を引きながらベッドに座らせる。そして、そのまま横に座って、軽いキスを再開する。
 啄むような口づけをしながら、優の脇腹を左手で抱き、そのまま右手でおっぱいを揉みだす。
 その動きに合わせながら優も甘い吐息で返す。ときおり「そこ……」となんどか返す。何度目かの問いかけに、
「早いよ……本当に……」
 でも続きは言わせないまま、唇と唇を重ねながら、舌を求める。今度はぼくが優の舌を舐め、味わう。
 最初にキスをしたときから分かっていたけれど、優はとっくに乳首も勃っていて、期待だけでかなり高ぶっていた。
 だから今みたいにベッドに座りたいと言ってきたのが分かる。
「ひゃんっ……」
 可愛いい声。優だって男の子みたいだって、言っても、それは小学校高学年の美少年みたいなタイプ。
 声変わりもしていないような年頃の子みたいで、声は適度に高く見た目も相まって完璧に女の子にしか思えない。
「……とっくに乳首勃ってたのに?」
「……本当に、キミは煽るのが上手……」
290150:2014/01/07(火) 23:37:38.29 ID:ozBgnbLu
 むっ、と思う。名前で呼んで欲しいって。それもそのままで。だから手を離す。
「翼って呼んでくれないと触らない」
「……やっぱりずるいなぁ……翼ちゃんじゃ、もう不満?」
「違う。そうじゃなくて、ぼくには優って呼ばせておいて、自分はちゃんとかくんとかで呼ぶ方がずるい。
 ……好きな人の名前を呼び捨てにしてくれないと、少し不安になるよ……」
 そんなに不安じゃないけど、年上だからかな。優は翼ちゃんとずっと呼んでいた。でも、好き合っていたら年上も年下も関係ない気がする。
 だから、最近はそう呼ばれることが嬉しいのと違って不満なところもある。女の子でいるときの翼ちゃん。
 だけど優の事が好きな男でも女でもなく、ただ自分のことを翼と呼んでくれること、そんな気持ちがずっとずっとあった。
「じゃあ、そうする……ちょっとだけ、ぼくにも翼のおっぱい触らせてよ……」
 今度はされるがままだった優が、ぼくにベッドで寝転ぶように促す。
 そのままの姿勢で、優が四つん這いになってゆっくりとぼくの乳首周辺を舐めだした。
 声は出ないけれどすぐにビクンっと身体が反応し、すぐに吐息が漏れてくる。
「……やっぱり感度違うね……羨ましいな……きっと、翼におっぱいができたら、凄い性感帯になっちゃうよ……」
 ペロ……ペチェペチャ……ペロペロ……ペチャペチャ……。
 なめ回される度に背筋にピリピリと電気が走る感触がする。ぼくが乳首を意識したのは、女の子になりたいという欲求からだった。
 普通に触ったり、摘んだり、唾液で濡らしてみたり。
 だけど、何かが足りなかった。だから、お尻に何かを入れてみたいという欲求だった。
 ゲイだとかじゃなく、お尻に入れると快感が得られるという知識は調べるばすぐに分かった。
 細いプラグとかをお尻に入れながら、乳首を弄っているだけで、自分が女として感じているような錯覚に襲われた。
 だから女装と乳首とお尻だけは、自分の中の女の子を喜ばせるための手段だった。
 そうしないと、心が壊れそうだった。だけど、今、自分がされているのが男として喜ばされているところに、矛盾したものを感じる。
 数少ない要素の男の子が抗っているのかもしれない。
 だけど、そんな気持ちは塗りつぶされていくように薄くなっていく。
291150:2014/01/07(火) 23:38:15.54 ID:ozBgnbLu
「優……今度、ぼくにさせて……」
「良いよ……」
 身体を反転させるようにして、優をぼくと向かい合わせなるように促す。
 寝転がった優の左脇腹をくすぐると、ビクッという反応と同時ゆっっくりと震えだす。
 少し優しく触り出すと「はぁ……いい……」と呟いた。
 ぼくがゆっくりと、おっぱいに触ろうとして、触らないで焦らそうとすると、
 今度は優が顔をぼくに近づけて何かを囁こうとするのかと思ったら、急に鎖骨を舐めてきた。
「うっ……そこ……」
「もう、さっきは積極的だったのに……焦らしちゃヤダ……」
「ごめん」
 高ぶっていた気持ちが焦らされるとたまらない。こういう風に試しながら優の身体のことを知っていく。
 あんまり我慢させると嫌みたいだ。そういうところが優らしくて、身体が素直なのを知っていく。
 さっきのお返しみたいな形で、今度はぼくがおっぱいを舐めだした。
 優みたいにこちらの気持ちを高ぶらせる舐め方はできなくて、ペロペロと繰り返し、乳首の周りを舐めるぐらいしかできなかった。
 だから乳首を吸うことにした。もう勃起したまま、はち切れそうになっている。
 少しずつ舐めながら「はぁっ……」と吐息を優に何度もさせ、慣れてきた頃合いを見て吸い付いた。
「ああっぁっ!」
 予想以上に良い反応が返ってきた。そのままむしゃぶりついて、優の嬌声を聞く。艶っぽさから、激しさを増すごとに少し悲鳴に近づくような気がする。
 だけど、躊躇をせずに吸い付き、舐めながら一瞬だけは迷ったけど、軽く乳首を甘噛みしてみた。
「ああっ−!!!」
 今度は快感に背中を仰け反らし、思わず口から離してしまった。同時に優のおちんちんがぼくの物にも当たった。
 さっきから少しずつ動いていたけど、今にもイキそうなくらい跳ねた。
「ねえ、優……ローション持ってきてる?」
「あるよ……する?」
「シックスナインさせて……」
292150:2014/01/07(火) 23:41:44.38 ID:ozBgnbLu
 もう快感で腰が立たない優の代わりにバッグの中からローションとコンドームを取り出した。
 さすが、用意は良い。そして優を腹ばいにさせて、ぼくが下になる体制になった。
 合図もなく優からフェラを始めてくるから、思わず呻く。
 そういえばぼくは優のおちんちんを舐めたことがないなって思ったから、
 ゆっくりと首をあげて体型としては仮性包茎だけど大きめなおちんちんの亀頭部分を舐めた。
「ああっ……いきなり……」
「んんっ……優だって……」
 先にフェラしてきたのはそっちだったくせに。どうやら優はお尻を解されるだけしか考えてなかったみたいだ。
 だから、躊躇はしたけどゆっくりと皮を剥いて亀頭と裏筋を舐める。その度に優は嬌声を返してくる。思った以上に弱かったみたいで。
「……ねえ、翼……嫌なら良いんだけど……そのまま先端、おしっこの穴のところ……舌先で突いて……」
「良いよ……だって、優、今日は来る前に身体中きれいにしているんでしょう?」
 そう言って、リクエストに応じて軽く突く。
「あっあっ……そう……翼のおちんちん……おまんこに欲しかったから……んっ……女の子になる前に……あんっ……犯して欲しかったからぁ……」
 シャワーをする前から何となく気づいていたけれど、優は心も身体もベッドじゃなくても良いくらいの準備はできていたみたいだ。
 まあ、ベッドがあるから連れて行くけど。最初からそのまま床でもできるくらいに。
「じゃあさ、こっちの方もきれいにしているんでしょう?」
「うん……おまんこ、ローションだけで大丈夫だと思う……」
「どうする、もうちょっとフェラしてあげようか、それともこっちが欲しい……?」
 すると今度は黙ってしまった。どっちも気持ち良いけど、迷っているみたいだ。
 好きなおかずを先に食べるか後に食べるかみたいに。
「たぶん、これ以上、フェラされるとイッちゃうかもしれない……だから、翼のおちんちんちょうだい……」
 そう言われて、少しだけ鼓動が高鳴った。自分なりに優を限界まで追い詰めていることに少し嬉しくなった。
 後はどれだけ気持ち良くさせられるか。
293150:2014/01/07(火) 23:43:36.37 ID:ozBgnbLu
 予想以上に優のお尻は柔らかかった。一番キツイと思った部分もローションを軽く塗るだけで緩くなった。
 誰かの女の子の中と違って余裕はあまりないからローションの量は多めに入口に塗って、少しずつ少しずつ指を入れてかき回す。
 よっぽど感じるのか、優はさっきから小さく「はあ、はあ」と吐息を漏らしている。
 少し余裕ができてと感じて、一度指を引き抜き、もう一度ローションをたっぷり塗る。
 それにしてもよっぽどきれいに洗ったみたいだ。指に何も付かない。そのまま指一本を奥に入れる。
「んっ……」
 やっぱり慣れていても、感じるものは感じる。それから指が動ける範疇の壁にローションを馴染ませる。
 もちろん、指一本なんて余裕だと分かっていたので、指を二本にして、同じことを繰り返す。
 優はお腹に快感を集中させたいのか何も言わないまま吐息かあえぎしか漏らさない。
 そして、三本目が入ると、さすがに優も「んあっ……んんっ……あっ……」と何度か大きく喘いだ。
 そして、指三本を抜いて、肝心なところを優に聞いた。
「もう一度、指一本入れるから、優のGスポット教えて……」
「……お願い……」
 ゆっくりと指を差し込みながら、
「そこでお腹側に指を曲げて、少しずつ押し込んで……」
 前に優が、自分でやるよりも他人に触られた方が感じちゃう、って言われた。
 そうなると、大事なことだから慎重に、優の指示通りに指を動かした。
「そこ……」
 言われたところは、大きな袋状の物だと考えていた直腸の中で、確かに違和感を覚える感触があった。
 自分の中でもそんな感触があったのを思い出す。自分だとあまり長く触れなかったから、意識しなかった。
 これが前立腺で、優が確かに反応を示した。思わず、強く押してみる。
「ああっ! だめ……あんまり強くしないで……イッちゃう……」
 その言葉に戸惑い、ゆっくりと指を抜く。もうお互いに何となく意思統一できていたけど、前戯だけでイキたくなかった。
 どっちがイクにしても、身体が繋がった状態でいたかった。
294150:2014/01/07(火) 23:45:08.83 ID:ozBgnbLu
「ああーっ! 翼、翼!!」
「優……優……」
 抱きついた優の身体を起こし、対面座位のまま強く腰を打ち付ける。優は両脚をぼくの後ろに回している。
 おちんちんはぼくのお腹に当たる。硬い。もちろん離れるなんてことはしない。
 だって、目の前にある優と舌を絡ませたキスをしながら感じる顔があるから。
「……もう……ああっ! ダメッ! イッちゃう!! ああー!!!」
「優、湯!」
 呼びかける間に優は顔を仰け反らして激しく痙攣して、
 一瞬だけ凄い締め付けを感じて射精しそうになったと同時に優が一気にぼくにもたれ掛かってきた。
「……ゆ、優?」
「……あ、ごめ……ん……イッちゃた……はへ……」
 あまりのイキ方に少し驚く。
「……ごめん……ちょっと、待って、気持ち良すぎて……口開きっぱなしだった……」
 少し優が落ち着くまで待つ。目がトロンとしてして、言葉も不明瞭になっている。
 まだ、繋がっているけど優も射精していない?
「……ごめん、大丈夫……気持ち良かった」
「優、トコロテンとかって……」
「翼がもう一回戦してくれるなら出るかも」
「あっ……ボクの中で硬くなってるよ……そういえば、出す前にイッちゃってごめん……今度は、一緒にイこう」
 そう言って軽いキスをしてくれた。
 後で、優に説明されると優の場合はドライオーガズムの方が多いから射精しないままイクことも多いらしい。
 これはぼくの技術が優のことを射精させられるほど高くなかったからということ。
 そして、結果として、もう一回戦を行った際には何とか、ぼくもイけて優もトコロテンで射精をした。
 あまりの締め付けに自分の中の精子が全て搾り取られるような錯覚すら感じた。
 優の中で射精をした瞬間、優は少し気持ち良くなりすぎて涙を出してしまった。ぼくはその締め付けに目眩すら感じた。
 しばらくお互いに腰の力が入らないから、後戯はキスと軽いペッティングだけで過ごす。
 あまりに激しいアナルセックスだと、人によっては腰が抜けてしまうらしい。優は体験したことがないけど、そういう目に遭ってしまった子もいるとか。
 とにかく、今は優と最後の男の子としての体験が終わることに集中した。
295150:2014/01/07(火) 23:46:47.50 ID:ozBgnbLu
―――――――――――――――――――――――
色々と意見を頂きましたが、今はとりあえず自分なりにやらせてもらいます。
今日はここまでです。
296名無しさん@ピンキー:2014/01/08(水) 21:34:32.56 ID:A+07Xu5f

応援してるお
297150:2014/01/08(水) 22:49:40.43 ID:v42vioFv
>>296
サンクスです。本当は全部投下しちゃいたいくらいです。小出し辛いw
―――――――――――――――――――――――――――――
土曜日。遂に例のお店に行くことになった。牧村先生のクリニックでフルスモークの車に乗せられた。
おまけに目にはマスクをつけなくちゃいけない羽目になった。
これで牧村先生が一緒に乗っていなかったら、ぼくたち三人は人身売買で外国に売り飛ばされるんじゃないかという恐怖すら感じた。
「翼ちゃん、安心して。一応、わたしが取材したときは例の小説家の人が一緒だったから」
 安心させるように由香子さんが左手を握ってくれている。右手はアイマスクを着ける前から優と繋げている。
「そうだよ。ぼくだって、いつも、こんな風に何人かと一緒に送ってもらってるから」
 やっぱりよっぽどの事情があるお店のようだった。少しだけぼくは後悔しているところがある。
 怖い物は怖い。特にそれは何が起こるかが分からない怖さが特に。
 着いた先で、さらに歩かされる。周囲に何人いるのかが分からない。
 牧村先生は関係者だからマスクはしていなかったけど、結局は由香子さんも着けさせられている。
 本当によっぽどの関係者じゃないと場所は知ることができないんだということだけは実感する。
 そして、牧村先生からアイマスクを外すように言われ、外して見た周囲。
 最初はアイマスクを長時間着けていたからだと思ったけど、その薄暗い部屋は十畳や二十畳どころじゃない大規模な広さの部屋だった。
 高級ホテルの、例えば演歌歌手のディナーショーでもやるような。
 何しろ、いくつかテーブルが用意されていて、地面のカーペットや照明設備が完備されているみたいで。
 ただ、違和感があるとすれば、その部屋の中心に円形のステージが有り、その上には照明やワイヤーを引っかけられそうな金具とかが見える。
「……ここがボクたちの働く場所……翼はこれから面接だから、今日はちょっと早めに来たんだ。ボクは、先に今日の衣装に着替えてくるね」
 引き留める間もなく優は部屋の奥に消えていく。
「大丈夫ですよ。まずは、支配人……彼女はマネージャーと呼んで欲しいと言ってますけど……すぐに来ます」
 とりあえず由香子さんが側にいて、牧村先生も横にいる。不安になることはない、と思いたい。
 現れたマネージャーは年齢は感じさせるが若々しく能力を感じさせる女性だった。スーツにタイトスカート。
 OLでもキャリアを積んでいるようなタイプ。ただ、あまりに凛々しい印象から女優かと思わせるほど。
「初めまして、あなたが由香子さん紹介の翼ちゃんねー」
 口を開くと少しだけ軽かった。
「マネージャーの三田一美です。他の人は支配人とかって呼ぶけど、マネージャーって呼んでくれると嬉しいな。
 ところで、ここまで来たってことは後悔はしてないのよね? 男の子止めて女の子になろうとしてるのよね?
 まあ、途中で止めちゃうって選択もあるけどね。
 ともかく、ここまで来たんだから由香子ちゃんや優くんが何度も確認してそうだから大丈夫だろうけど、
 単刀直入に聞くけど、翼ちゃんは男の人が好きなの?」
298150:2014/01/08(水) 22:50:49.41 ID:v42vioFv
 単刀直入じゃないと思う。最初に聞いて欲しい。
「……正直に言うと、女の子が好きです……ただ、今は優のことが好きです……これって、問題でしょうか?」
「いいえ。全然。うちは恋愛禁止なんて標榜してないし、
 女の子になるつもりだったのに、一緒に仕事をしている相手を好きになって、
 片方の子が女の子になるのを止めて結婚退職したなんてこともあるくらいだし。
 まあ、結構、縁切りしてまで女の子になりたいって人も多いから大抵の子は女の子になるつもりでもいるし。
 ときどきだけどお客さんが子供残したくないタイプで女の子みたいな男の子が好きって人もいるから、それは人それぞれ。
 ここで守ってもらうことは一つ、この場所で行われていることと秘密を守ること。
 教えて良いのは、このお店に関わっている女の子になりたい人と、秘密を守って女の子になろうとしている男の子を抱こうとしている人。
 またはそれを鑑賞したい人。それであれば、基本的に問題は無いわよ。用具はこちらで用意するから。
 そして入会する人は精密検査は定期的に行ってもらうから。
 基本でお尻に挿入するときはコンドームだし……あなたの場合だと、いきなり今日、出演したりお客を取ったりはさすがにできないから見学。
 だけど、今日は優くんが久しぶりにショーに出るから見てあげてね。
 ショーは一応、みんな出なくちゃいけなくて、写真とかとは別に女の子たちの姿を見て今後の指名の参考にしてもらうためのPR活動みたいなものね。
 ところで、何か質問ある?」
 聞く前に全部言われてしまったので、少し押し黙ってしまった。そうなると、失礼だけれどちょっとだけ聞いてみたいことがある。
「三田さんは……生まれてからずっと女性だったんですか?」
「残念。一応、元、男の子。だから、この仕事をやっているんだけどね。今の集まりができた最初の出演者だったの。
 まあ、今はパートナーもいるし下も切っちゃったから完全に女だけどねー。だから代わりにこういう事務的な仕事を任されてるの。
 お給料も悪くないしね。あなたも決めること決めたら切っちゃった方が良いわよ」
 怒濤の勢いで言われて、ぼくが採用されたのかどうかもわからない。
「えっと……ぼくは、採用していただけるんでしょうか?」
「するわよ。車の中で由香子ちゃんと優くんに甲斐甲斐しく守られている話は聞いていたから、
 それなら問題無いと思ったのよ。それに見た目で女の子に見えない時点でスカウトしたいくらいだったわ。
 だから、まずは仕事に慣れなさい」
 あっという間にマネージャーのペースに飲み込まれ、呆然としてしまった
299150:2014/01/08(水) 22:51:51.40 ID:v42vioFv
 その後、準備まで1時間くらいあるので、別室に通されて契約書のようなものを書くことになった。由香子さんと牧村先生も一緒にいた。
「……原則として、あの部屋は営業時間においては私たちのような普通の女はいません。客としてならいますけど。
 雑務をやるのはあの黒服達だけ。ただ仕事上、誰かが体調不良を起こしたりした場合は私は出動しますけど。
 ステージ上の彼女たちや、この部屋みたいにいくつかの個室に連れて行かれて何かがあったら連絡がいくようになっています。
 もちろん、客の中には付き合いで来ている医者もいて、そういう人たちと連携するくらいの体制もあります」
 対処は万全。後の心配は事務的な作業だけ。ぼくのやることは履歴書やら自分の状況。
 女の子になることを母親と兄弟だけは知っている。父親はなんて思うか。それだけは空白。
 恋人の有無は有り。性的にはバイセクシャルだけど性は女になろうとしている。
「終わりましたか?」
 ひとまず、ペンを置いたところで牧村先生が問いかけてくる。
「はい……以前、ここの紹介まではしていただきましたが、牧村先生に聞きたいことがあります」
 ここまで言って牧村先生は何も言わないので続ける。
「精密検査云々については、今日、行われることを見てからということで分かりました……
 薬について、まだ頂いていないので、殆ど知る術がなかったのですけれど、
 単純なメカニズムみたいなものについて教えてもらえませんか?」
「良いでしょう。後で説明するより、今説明した方が良いかもしれません」
 ジェミニホルモン剤、という名前は便宜的な物らしい。男性機能と女性機能を同時に持つという意味だという。
 ひとつの身体にふたつの性が双子のように存在しているという意味で名付けられている。
 もちろん、人間は男性であろうと女性であろうと、それぞれの性ホルモンはあるので、意味としては少しおかしいらしい。
 男性機能をある段階で抑制し、女性化を促す効果がある。ただしそれによって男性機能が失われない程度まで下がることも抑制される。
 個人差はあれども、戻った人が子供を作れた事例が大半だという。
「そして、これは……一般的な女性ホルモンを投与したホルモン治療と変わって来ますが……
 どうやら現状では普通に女性ホルモンを投与したときよりも効果が高く、例えば声が高くなる事例も確認されています。
 一時的に骨格が細くなっていく例もありました。後者に関しては骨密度も下がってしまう危険性もあるので、
 食事療法などを取り入れて正常値まで改善できる状態ではあります。
 正直、まだ未知の効果があるので危うい物ではありますが、それまでと違ってより女性化の効果は高いと言えます。
 例えば、断念して男性に戻る人もいて、普通に男性に戻る方法をすれば問題なく戻ります。
 ただ、最近発見された症例としては……精巣を除去した場合、具体的には不明ですが、身体のどこかで女性ホルモンが生み出されているような状態になります。
 簡単に言えば、それまで必要に応じて必要であった継続的な女性ホルモンの投与がいらなくなりもします。
 だから、男性機能が残らないというのも、絶対ではない、ということだけはここで言っておかなくてはいけません。
 そして、性的欲求が過剰になることもあります。これで心を壊しかけた人もいます。そういう危険を覚悟してください」
 ああそうだ。旨い話には訳がある。そして、この世には絶対はない。そういう風にできている。
 優にとっては、どっちに転んでも迷わないと思う。
300150:2014/01/08(水) 22:52:40.83 ID:v42vioFv
 だけど、ぼくは本当に女の子になりたいのか、ということを言われればなりたいと思う。
 ただ、思い通りにいくかどうかは分からない。すぐに不可逆にならない、という保険のような位置でまだ迷っているだけなのかもしれない。
 優柔不断だな。
「あ、時間です……」
 由香子さんがいって、部屋に備え付けのテレビをつけた。マネージャーは見学という意味で何が行われているかを中継してくれている。
 また、初めてここに来た客に説明を行うために同じようなことをするらしい。
 ディスプレイにはさっきの大広間があり、そこには仮面で顔を隠した観客が椅子に座り中央のステージに注目している。
 客はいかにも金と権力を持っているような雰囲気を持っていて、中には女性の姿も見られる。
 中央のステージには……ドレスというよりキャミソールワンピースを着た女性が三人、彼女たちも仮面をつけていた。
 正体不明の人々による秘密の集会。それこそ秘密を作らざるを得ない雰囲気。
「優もいるみたいね……」
 ステージの上に三人の女性、真ん中にいる小柄な女の子はぼくたちの知っている優だった。
 それでもカメラを通して見る彼女は知っている彼女は、どこか緊張をしている。
 するといきなり、優が全裸になったかと思うと、天井から鎖に繋がれた手錠が降りてくる。
 そして左右の女性たちが優の両方の手首に繋ぎ、降りてきた手錠が戻り、優の手が無理矢理にバンザイの形にさせられる。
 そして、そのままバンザイの形が左右に広げられる。
 するとふたりの女性は優の身体の愛撫を始める。胸や脇腹を触ったり、耳や鎖骨を舐め回したり。
「……んぁっ……うんっ……」
 無抵抗な状態で愛撫を受ける様はあまり気持ちよさそうに思えなかった。
 それでも、優が反応を示すということは、左右の女性たちもそれなりのテクニックを持っているのだろう。
 そして、今度はひとりが優のおちんちんをフェラして、もうひとりがおまんこを舐め始めている。
「あっ……はっ……んんっ……」
 もどかしそうな優の声。あの大きな部屋にはそれしか響いていない。音楽も何も聞こえない。
 ただ、ひとりの女の子が快感に震える様だけ。
301150:2014/01/08(水) 22:53:41.81 ID:v42vioFv
 下半身の愛撫が終わると、今度はおまんこを舐めていた方の女性が大きなローションボトルを取り出し、
 こぼれるような量を優のおまんこに塗りはじめる。そして、そのまま指が入っていき、そのままローションを中の壁に塗りこめる。
「んんっ!! ああぁぁー!!!」
 どうやら前立腺を見つけたみたいだ。でも、優の反応がぼくが見たこともないレベルだった。
 まるでリミッターのようなものを外されたような状態で、
 愛撫をされるたびに嬌声がぼくの知っている優じゃなくて、この場にいる少女のものになっていた。
「由香子さん……優は、この舞台に優という名前で出ているんですか?」
「……違うわ……あの子は、このお店では由香って名前で出てるの……まあ、由来は言わなくても分かるわね」
 さっき、書類の中で希望の名前、つまりはお店の中での名前を書く欄があった。ぼくはそこを空白にしていた。
 具体的に自分の名前が男でも女でも通用する名前だったのもあって、仮にこんな名前にしたいというのもなかったから。
「翼ちゃんは決めた……?」
「一応、いくつかあります。一通り終わってから書きます……」
 言い切る前に、優の身体は身体にコルセットのようなものを着けられ、両腕と一緒に宙づりにされて、
 そのまま無理矢理M字開脚をさせられたまま両脚を縄で固定されていた。表情は暗くて伺うことができない。
 お尻を責めていた女性、よく見れば身長は由香子さんよりも高く、身体のラインは細くしなやかだ。
 その女性がキャミソールワンピースを脱いで全裸になれば、巨乳と呼ぶほどではないにしても、均整の取れたボディラインが現れた。
 ただ、唯一違うのは、あまりにも大きなおちんちんが勃起したままそこに存在している。
302150:2014/01/08(水) 22:54:28.89 ID:v42vioFv
 そのままいつのまにかコンドームを装着して、今度はローションを自分のおちんちんにまんべんなく塗りたくる。。
 そして、優の背中について、ゆっくりと後ろから胸を愛撫しながら、おちんちんを一気に挿入した。
「ああぁっ!!!」
 よっぽど高ぶっていたのか、優の嬌声はさらに大きくなった。
 自由な体制が取れないから、身体の快感も自分の意志で上手く感じることができない。無理矢理に感じさせられているような状態になっている。
 その内、手が空いていた女性は優が後ろから犯されている影響で大きく勃起したおちんちんにフェラを始める。
「やぁあ! クリは、だめっ! ああっ!!」
 喘ぎながら抗議の声をあげようとしたけど、前と後ろの責めを動じに受けてたら、すぐに単純な喘ぎにしかならない。
 その内にフェラをやめた女性は、優のことを責めていた女性の後ろに行き、
 慣れた手つきでおまんこにローションを塗り、自分もコンドームを装着して一気に挿入した。
「ああっ!」
 今度は真ん中の人も喘いでいる。その光景は奇怪なオブジェのようだった。
 優がつり上げられて、犯されながら、その犯している人が犯される。そして、そのままの姿で三人の嬌声が重なっていく。
「ああっ! もう……ダメ、ダメ……イッちゃう!!」
「由香ちゃんイキなさい! 私のクリトリスでいっちゃいなさい!!」
 優と真ん中の人の会話にもならない応酬の直後、優のおちんちんは激しく射精をし、真ん中の女性は優から離れ、倒れ込む。
 おちんちんからは優の中に射精しきれなかった精液を、お尻からは後ろから犯された女性の精液をそれぞれ垂れ流しながら。
 そして、外野からぼくたちを運んだ黒服のような人々が現れて、ストレッチャーのようなもので倒れた女性を乗せ、
 手際よく優を解放して、ストレッチャーに乗せて奥に引っ込んでいった。最後に残った女性はふたりの衣装を抱え、
 周囲の客席に何度か礼をして退場をしていく。それと同時に大広間にはてつもない拍手で溢れていった。
「……今回も……つり上げられてるなんて……」
「由香子さん……それって……」
「優はね……ここにいる女の子の中で一番、背が低いの。だからああいうつり上げられる役にはピッタリなの。
 それにやっぱり女の子になりたいからって、小柄とは限らないの。さっきのモデル体型の人なんかまさにそう。
 わたしも身長はあっても、あんなにきれいなボディラインなんか持っていないのよ……少し嫉妬するわ……」
 一度、映像に目を向けると、しばらく歓談でも行っているのか割とガヤガヤと何事かを話している。
 ワインやらビールやらを飲み交わしている。
「最初に客にはショーを見てもらって、その後の三十分で、今夜の相手を決めてもらうことにします。
 一応……今回のようにショーに出て倒れたふたりのような場合は、今夜は仕事として終わりです。
 少しハードでしたが彼女たちは前も同じ形のショーを行っています。翼さん、あなたも似た体型ですからやるかもしれません」
 予言めいたような響きが先生の声には含まれていた。
303150:2014/01/08(水) 22:55:40.19 ID:v42vioFv
 ショーが終わり客はそれぞれ今夜の相手を決めて個室に消えていく。
 ショーだけを目的に来たのか、付き合いなのか、そういう人々はすぐに帰って行く。その後、個室にマネージャーがやってきた。
「どうだった、翼ちゃん? 怖くて、嫌になっちゃった?」
「いいえ……ただ、優が少し可愛そうな気がしました……ああいうことをやらなくちゃいけないのと、
 そんな素振りを見せないところが」
「あなた、本当に優ちゃんのこと好きなのねー、そういうところは偉いと思うわ。
 あなただって、いきなりあんなハードなことはさせないわよ。身体壊したら意味ないしね……
 ところで、あなたのこと、ここではなんて呼べば良いかしら?」
 名前。正直言えば決めていなかった。だけど、許されるなら。
「優子って呼んでください」
「翼ちゃん?」
「ごめんなさい……優はもちろん優から、子は由香子さんからもらいました。
 ぼくもあやかってみました。ふたりがいなかったらここに来ることもなかったから……」
 その言葉にマネージャーは気分が良さ気に言う。
「ちょうど良いわね。優子って名前の子は今、この店にいる女の子の中にいないの。
 だから、今日からここでのあなたの名前は優子ね。とりあえず……他の子への紹介は今度になるわね。
 とりあえず、契約金を渡しておくから」
 そう言いながらマネージャーが出した封筒にはぼくが一度に手にしたことのない量の金額が入った封筒が渡された。
「百万は入っていないけど――万は入れておいたわ。薬も高いけど、スキンケアとかもっと高い化粧水とか使いなさい。
 素材は最高なんだから。しばらくは、逃げられないと思いなさい」
 嬉しいんだか、恐ろしいんだか、複雑な思いを与えられると、紙でできているはずのお札が酷く重い物に感じてしまった。
「とりあえず、優ちゃんが来るまでちょっと時間潰しに、こっちを見ましょうか」
 マネージャーは誰もいない大広間が映ったテレビの画面をリモコン操作で別のカメラの映像に切り替えた。
 そこにはホテルの寝室らしき部屋で、ロングヘアで上品そうな女性が、初老の紳士と濃厚なキスを交わしていた。
 その男の人をどこかで見たことがあると思ったら、有名な俳優だった。それも結婚して息子も俳優として活躍をしている。
304150:2014/01/08(水) 22:56:19.59 ID:v42vioFv
「……あんな人も利用しているんですね」
「でも、あの人は常連で、とても良いお客様よー。何より、女の子たちが嫌な思いをしないように優しくしてくれるって評判だから。
 どうも、初めての子を積極的に指名してくるから、きっとすぐに消えないように繋ぎ止めてくれる役割を勝手にしてくれているのかもね」
 そんな会話を余所に、部屋の中では俳優が女の子を寝かせ着け、ワンピースを脱がせている。
 そして、しばらく入念な愛撫を行った後、静かなセックスを始めた。
 最終的に上品な女の子は激しく乱れた後、後戯の際にとても甘えていた。
「今みたいに普通にセックスをして、そのまま帰る人もいるし、朝まで一緒に寝たり、不眠不休でボロボロになるまでやる場合もあるわね。
 そのときによって違うけど、基本的に同じ額だけあなたには払われるけど、あまりに長時間のセックスだとある程度の手当も着けるわ。
 あまり寝ないの身体にも悪いし、肌だって荒れるもの。
 基本的に薄めのメイクかすっぴんで対応するけど、人によってはメイクをばっちりして欲しいって要望はあるのよ。
 まあ、そういう人だと一晩は時間を与えられないわね。一応、商品という意味では大事に取り扱って欲しいからね。
 まあ、これで、色々と仕事のことは分かったと思うわ。治療に関しては専門家にお任せするから」
 相変わらずの長い説明が終わった後、部屋をドアがノックされる。
「どうぞ」というマネージャーの声に合わせて、シャワー上がりの優が入ってくる。
 今日、出演するまでに着ていた普段着で。
「お疲れ様」
「お疲れ様です。久しぶりにつり上げられるって言われたから、ちょっと恥ずかしかったです」
「まあ、つり上げは由香ちゃんの専売特許ね。最近は女の子になりたいのって、結構身体が大きい子が多くて、
 きれいだから良いんだけど、可愛い子がいないって要望があって、困ってたところに由香が来てくれたから良かったわ。
 それに、翼ちゃん……いいえ優子ちゃんも由香ちゃんと同じ体格だから、ふたりでつり上げみたいなのもありね」
 優子、という名前に優は目を丸くして、にっこり笑い「よろしくね、優子ちゃん」とぼくに向かって笑いかけた。
 その瞬間、この店の中でぼくは優子になった。
305150:2014/01/08(水) 22:57:47.12 ID:v42vioFv
――――――――――――――――――――
今日はここまで。やっと次で女性化するところに届きそうです。
306150:2014/01/09(木) 22:26:23.70 ID:0panM/pg
続き投下です。
―――――――――――――――――――――――――
 帰りの車も目隠しの上、優と由香子さんのマンションの前で降ろされた。
 時間はもう深夜になっていた。あまり色んなところに止まってしまうと目立つので一カ所に降ろしたい、
 と牧村先生は言った。仮に彼女のような女医が運転手付きの高級車に乗っていても問題はないけれど、
 ぼくたちみたいにどこにでもいそうな大学生が高級車から降りたら得体の知れない話だ。
「じゃあ、翼ちゃんは今日は家に泊まっていきなさい。さすがにエッチはダメだけど、優と同衾くらいはさせてあげるから」
「お姉ちゃん……あんなプレイしたらエッチなんてできないよ……」
 それには無言で同意した。きっと優の身体には縛られたり部分や手錠の後が残っている。
 そんな痛々しい姿で抱かれるのも抱くのも嫌だった。
「じゃあ、久しぶりに乾杯しようか」
 部屋に入ると、冷蔵庫に直行した由香子さんが缶ビールを取り出してきた。
「お姉ちゃん、翼ちゃんは未成年だよ」
「良いじゃない、優だって同じくらいの時から飲んでるでしょう?」
「えー……」
 ふたりのやりとりに翻弄されていて口が挟めないでいると、
「まあ、お客さんの中にはワインとか飲ませたりする人もいるくらいだから、
 アルコールってこんな味って体験するのも悪くないかもね……」
 さすがの優も姉の言葉に根負けしたのか、ぼくの前に350mlよりも小さな缶ビールを置いた。
「でも、何に乾杯するの?」
「そうね……優子ちゃんの誕生日ってことにする?」
 ちなみにぼくの誕生日は四月十日なのでとっくに誕生日が過ぎている。後で来年はお祝いするよとは約束させられた。
「……翼ちゃん……良いの?」
「優が、あのお店で働き始めた日はいつ?」
「10月1日」
「じゃあ、その日まで取っておいてください。優子は、由香の双子の妹みたいに扱って下さい」
「設定まで作るなんて、意外に乗り気なのね」
「毒を食らわば皿まで、なんて言いますから」
「えー、一応、彼女なのにー」
 どうやら設定でも優にはちょっと不満だったのかもしれない。
「一応、明日、牧村先生のところ行くでしょ? 
 女性ホルモンと違って、肝臓とかには負担が掛からないみたいだけど、念のためね。少しだけなら許容範囲」
 あくまで由香子さんはぼくにお酒を飲ませたいみたいだ。
 意外と飲んべえなのかもしれない。少し気をつけておこう。
「じゃあ、とりあえず理由はないけど乾杯!」
 その言葉に優とぼくも乾杯と答え、お互いの缶同士を軽くぶつけた。
 小さく乾いた音が耳鳴りのように記憶に刻み込まれるような気分になった。
307150:2014/01/09(木) 22:34:38.92 ID:0panM/pg
初めて渡されたその薬はいくつかの錠剤だった。それを定められた用法・用量で摂取することが説明された。
 最初に渡されたお金で、ある程度の期間の分は充分に買える額はあった。
 だけど、ぼくは予想外の収入に関してはある程度、女の子磨きにも使うようにとマネージャーに言われていたのもあって、
 いくらか奮発してスキンケアや服装にこだわってみることにした。
 さすがに美容院に行くほど髪は伸ばしていない。早く、ボブカットくらいに伸ばしたい。
 優が教えてくれた化粧品店は女装の人でも普通の女の人と同じ扱いで化粧品の取り扱ってくれるお店だった。
 どういう意図で理解があるのかは分からないけれど、そういう味方のような人がいれくれるのはありがたい。
 さすがに髭やむだ毛に関しては男にしても薄いぼくだけど、量として考えれば女性になるのは多すぎる。
 ジェミニホルモン剤の効果で髭の抑制は相当な効果があるらしいけれど、今の年齢になるまでに生える部分ができてしまっているので、
 それはレーザー治療などでどうにかするしかない。それについては牧村先生がある程度、身体が慣れてから紹介してくれるとのこと。
 少し高めの基礎化粧品とファストファッションとはいっても、大学生には痛いくらいの出費を行ったことにちょっとした不安を覚える。
 それでも、お金はかなりの量がある。とりあえず、大きな買い物はここで留めておく。
 とりあえず、マネージャーからはAカップくらいになったらお客さんの相手はできるわね、と言われている。
308150:2014/01/09(木) 22:36:24.27 ID:0panM/pg
ここまで来たら、後は根回しをしなくてはいけない。
 まず、学校のクラスの先生にアポイントメントを取った。
女性の先生でジェンダー関係の授業も行っていたので、最初に女装した姿で訪れたときは驚かれた。
そして、自分が性同一性障害と近いものだと告白をした。正確と言い難いけれどホルモン治療をしていることまでは説明した。
親や家族の同意を得ている、という説明まで行い、少し労い言葉を掛けられた。
とりあえずクラスの話が分かる人に説明をしてくれるとのこと。そして、しばらく間を置くことで様子を見るという確認も行った。
先生の感想としては、最初は誰だか分からなかったとのこと。それくらい女性に見えるということだった。
 次に、ふたりの兄に、男として最後の声を届けた。ふたりは多少は懐疑的だったのには変わらないけれど。
 そして、母はまだ父にぼくのことを伝えてはいなかった。たぶん、絶対に反対するだろうということで。
今日から薬を飲み始めることを伝えたところ、迷わないのね、と少し悲しそうに言われた。
それはぼくを女に産めなかった罪悪感なのか、それともどうしてこんな形になってしまったのかの気持ちの両方が混じっているような気がした。
 学校、家族、それぞれの整理は終わった。今はまだ休学するかどうかも決めていない。
優は色々あって、今は休学をしているけど、後期か来年からは大学に復帰する予定だ。
 長くお店に勤めていてもしょうがないのと、もう充分に女性らしくなったという自信がついてきたのもあった。
 先生にカミングアウトを勧めたのは由香子さんだった。
 二重生活みたいに男でいる時間を作るのは気持ち的に辛いでしょう、という後押しで意を決した。
 確かにクラスや授業でどうしても男の姿でいないといけないときは、結構、辛い気持ちがあった。
 準備を全て、整えて、いよいよ薬を飲み干した。嚥下した感触を意識しながら身体中に何かが広がっていくことをジワジワと実感した。
 しばらくは、優とデートをしたり、由香子さんと一緒になってご飯を食べに行ったりした。
 静さんのお店にも連れて行かれて、おいしい料理を食べさせてもらった。いつかレディースバーの方にも来るように言われた。
 ある程度のクオリティがあれば女装の人でも受け入れてくれるとのこと。
 学校では事務関係では性同一性障害という扱いで認めてくれている。
 ただ、どうしても男でいないといけなかったりする場合は我慢して戻ることもあったりする。健康診断とか。
 それでも、クラスの方では事前に説明をしてもらっていたこともあって女装していても何も言われないで普通に扱ってくれている。
 しばらくは普通に暮らしていく。ただ、いつか変化はやってくる。それまでがぼくにとっては男である最後の時間だと意識していた。
 そしていつしか夏休みを迎えた。
309150:2014/01/09(木) 22:38:09.01 ID:0panM/pg
 変化はすぐに分かった。胸が少し苦しい感じになり、乳首の周辺にしこりのようなものができている。
 もちろん乳がんとかそういう疑いではない。少しずつ胸が発達してきたような気がする。
 そして、適切な洗顔と高い化粧水と乳液の効果か肌の艶が良くなったのと、元々生えにくい髭も本当になかなか生えなくなった。
 ある程度、貯金ができればレーザーで髭を生えなくすることもできるみたいだ。
 一応、むだ毛用の女性用シェーバーも買ったので脚の毛や腋の毛はなくなった。
 少しずつきれいになっていく自分に少しだけ自己愛のようなものすら感じていた。
 たぶん、これが女の子気持ちなんだと少しずつ自分に自覚として芽生えた感情にどぎまぎしてきた。
 そして、少しだけおっぱいができてきたことを報告すると、優が誘ってくる。
 久しぶりにぼくは優に抱かれた。
 少しずつ膨らもうとしている胸、
 少しずつより艶を増す肌、
 少しずつ付いた皮下脂肪による曲線、優の愛撫によって、少しずつ少しずつ解放されていくようだった。
 ある日、仕事帰りの優に電話を掛けたところ、
「翼ちゃん、声……」
 自分では分からなかったけど、優によれば声は確かにぼくの声だと分かるけれど、どう考えても女の人の声にしか聞き取れないと言われた。
 それは由香子さんの反応も同じで、ふたりが驚きの反応を示すほど、ぼくの声は女の人のような声になっていた。
 髪の毛も伸びが早くなった。もう優のショートカットよりも長く伸びてしまった。
 もうウィッグもいらなくなっていた。後はボブカットまで伸びたら、しばらくその姿でいたい。
 胸は苦しくなるけど着実におっぱいの形ができてきた。
  夏が始まると同時にブラジャーがつけられるくらいのバストができあがっていた。
 そして身体はおちんちんがある以外は女らしい身体付きになっていた。何度かの優とのセックスでいつも驚かれる。
 優よりもぼくの方が効果が覿面でもう女の子にしか見えないと何度も言われた。
「……翼……優子ちゃんになるときが来たよ」
 その宣告は、優以外のひとにこの身体を見せないといけないという覚悟を嫌でも感じさせた。
310150:2014/01/09(木) 22:39:29.17 ID:0panM/pg
 前と同じように優と一緒に車に乗せられ、あの大広間に連れて行かれた。マネージャーは会うなり驚いた顔をした。
「久しぶりー、本当にあなたは素材として最高だったわね。
 雰囲気も女の子らしくなっているのに、声がそこまで変わるのは初めてかもね。それにしても……これで処女だなんて凄いわね……」
 そうじゃないと思って、優を見たら、ウインクをされた。つまりぼくはまだ処女ということにしているらしい。
「とりあえず、しばらく翼ちゃん……いいえ優子ちゃんは新人のお披露目ということで、あなたにはショーに出てもらうわ。
 そして、最初はあなたの処女喪失を楽しんでもらうのよ。相手はもちろん由香ちゃんとね。
 一応、付き合っているんだし、最初は好きな人に抱かれたいものね」
 その後、しばらくはトイレに行く形になる。全部出す人もいれば支障ない程度で出す人もいる。
 本格的な人は、個室で浣腸プレイとかスカトロとかやるから出さない人もいるみたい。ときどき喘ぎ声が聞こえる。
 まともに排泄で感じるのは、さすがにちょっと引いてしまう。
 ロッカールームで着替えを行った。日によって衣装が用意されるけれど、この日はベビードールだった。
 平日はもっと過激らしいので、エッチな格好と思ってもこれはまだ普通だとか。
 平日はどんなのか、という話を聞いたら、全身タイツという単語を聞いて、別な倒錯趣味が入り交じっているということを知って聞くのを止めた。
 優があまり積極的に関わりたくないのも分かる気がした。
 そして、出勤してきた女性たちを大広間に集め、マネージャーから紹介される。
「今日からここで一緒に働いてもらいます優子ちゃんです。みなさん仲良くしてくださいね」
「はじめまして、よろしくお願いします」
 あくまで普通に挨拶を行う。すぐに凄い。羨ましいと言われる。
 さすがに高い声の人もいるけれど、ぼくのように高い声の人はいないらしい。
 だけど揃いも揃って女の人にしか見えない人ばかり。普段着のようにドレスを着たり、最近のぼくみたいにニットワンピースを着ている人もいる。
 全体的に体格のある人が多い。モデル体型な人も多いけど、どうしても大柄な人もいる。
 そして平均的な身長の人でも、中には男性かもしれないと気づかれそうな顔をしている人は多い。
 ただ、人それぞれ事情はあるから外見のことはとやかく言えない。タイミングというのもある。
「それから、彼女は由香ちゃんの恋人でもあるので、惚れたとしても胸に秘めたまま諦めて下さいねー。
 略奪とかストーカーとかトラブルを生むようなことをした人は命がないと思ってください」
 保証という名の脅しに少し残念そうな顔をした人が何人かいた。
 もしかしたら、新人ってそういう扱いを受ける可能性もあるのかもしれない。
 優がいてくれて、本当に良かったと思う。
311150:2014/01/09(木) 22:40:11.31 ID:0panM/pg
 それから、楽屋裏では衣装に合わせて化粧を施される。ヘアメイク担当のスタッフは女性だけで構成されている。
 どうやら男性が担当すると仕事の妨げになるという方針らしい。仮面をしているし、薄暗いからといって化粧をしないわけにはいかないらしい。
 スポットライトに当たる化粧の具合で表情とかが驚くほど変わる。
 あくまでショーであることは単に性的欲求とは違う、美しい物を見せたいという欲求にも応じるためにも舞台装置なども細かく設定されている。
 いつもより優もぼくも目鼻立ちを強調された化粧を施される。これも多少の変装に近いらしい。
 そして、髪が長くないとはいえ、優が髪型をボーイッシュさを強調し、
 ぼくはさすがに同じような髪型は良くないと判断されセミロングのウィッグを着けることになった。
 その上でウィッグも性能が良いのできれいに整えられていった。
 この店は最初は薬の臨床データを集めるための男娼クラブみたいなものだった。
 でも、会員が増えるに連れ、そういう要望や才能を持つ人間がどちら側にも生まれた結果、このようなショーまで行われるようになった。
 逆にこうしたショーで魅力を発揮する女性もあり、結果として全体的に良い効果をもたらしているらしい。
 そして、ぼくと優による処女喪失が今日の最初の演目だった。基本的に男の人を抱きたい人が多いので、ショーが多く行われるのは金曜日が多い。
 または土曜日が多く、ぼくがここに初めて来た日のショーは優たちによるつり上げのプレイだった。
 意識して見ていたから気づかなかったけど、あれで一時間半も費やしていたらしい。
 ああいう大がかりなのをすると、後で何をやっても興ざめになるので、あの日はショーとしてはあれしか行われなかったとのこと。
 ただ、こういうところなので、逆に疑問に思ったのは、こういうお店だと処女を奪うことに強く望んでいる人もいるんじゃないかと。
 ただ、ぼくみたいに特定の相手がいるなどのことはある程度は考慮されてもいるようで、
 むしろ処女を見知らぬ男性に捧げるのは縁を切り捨て、ひとりで生きていこうと決意している人がほとんどだ。
 ぼくはまだ、頼れる人がいた。
312150:2014/01/09(木) 22:46:02.61 ID:0panM/pg
 暗がりの中、ステージにはぼくと優が立っている。ステージといっても回転したりとか大がかりな仕組みではないようだ。
 ぼくと優は手を繋いで、客のテーブルの間をゆっくりと通り抜けてきた。
 暗がりで気づかれたときには前にいる。
 そうして、まだスポットライトの当たらない舞台の上で、ぼくは優子になって優に、由香に抱かれる。
『今宵もようこそ、背徳の宴へ。本日は当店に初入店した新人、優子を紹介します。
 彼女は女性になり始めて一ヶ月でありながら、奇跡の美貌と美声を持つ大型新人。
 そして、未だ処女です。そんな彼女を親友であり、当店へ導いた小さな堕天使である由香がその処女を奪うというステージになります。
 由香に抱かれることで、優子は真の女性に生まれ変わるのです』
 パッ! という光がぼくと優を照らす。
 少年のようなショートカットでベビードール姿の優と、セミロングの髪型の少女のようなベビードール姿のぼくが仮面の人々に囲まれ、拍手で歓迎された。
 それにしても司会は黒服の人がしているみたいだけど、正直言って、少し表現が過剰であまり良い気分はしなかった。
「……どうしたの?」
 囁くように優が問いかけた。客席に聞こえない程度の声。いけない、集中しないと。
 だけど思ったより簡単に集中できる。もう優はステージ上に立つ由香になっていた。
 だからぼくは優子になって、由香の愛撫を仕掛けようとする腕を受け入れた。そっと抱かれて、下を絡めたキスをする。
 少しぼくの方が舌先を長く出しており、由香がそれをしゃぶりながら、じゅぽんっ! と唾液の音を響かせる。
 それだけで、ぼくはおちんちんが痛いくらい勃起してしまい、短いベビードールの裾を持ち上げてしまった。
 どういう意図で宛がわれたかの意図を知る。
「……キスが大好きだね」
 また囁かれる。由香の声は優の声をした別人の声だった。まるで年下の女の子をゆっくりと導くように――そうか、ぼくは由香の妹の優子だったんだ。
 それなら、由香のお姉ちゃんの、大好きなお姉ちゃんのキスで興奮するのなんておかしくないよね。
 与えられた時間はある程度、自由が利いた。何よりも今夜は金曜日で、ステージはこの後もいくつかの出し物が催される。
 ただ、今日の目玉は、処女である優子が由香によってどのように処女を失うか披露し、優子という女の子を抱ける価値があるかどうかを披露する意味がある。
 最初は唾液の音を響かせるぐらいのキスの応酬。
 由香が嫌らしく舌を吸い、お返しとばかりに由香が突きだした舌をペチャペチャと舐めて、静寂の世界に嫌らしい水音を響かせた。
 事前に教えられたことで、嘔吐やスカトロ以外ならば、ステージの上をある程度汚すのは構わないと教えられていた。
 だから、我慢することなく由香とこぼれるほどの唾液交換を繰り返した。
313150:2014/01/09(木) 22:49:42.73 ID:0panM/pg
 そして、ゆっくりと由香がベビードールを脱がしてくれる。裸になったと同時、周囲から息を飲む声が聞こえた。
 そして、あれで一ヶ月とは、といった反応が返ってくる。怪訝な気分になる。ぼくは、そんなにきれいなのかな?
 そんな疑問を浮かべていたら、いつのまにかおへそ周りから、ゆっくりとおっぱいへ由香が舌を這わせていた。
 まだ発達途中だから、ちょっと触られただけでも呻いてしまうくらい敏感だ。舌なんかで舐められたら。
「ああっ!」
 初めて、周囲に聞こえるくらいの喘ぎ声を出す。そして大広間ゆえに響く自分の声にまるで信じられない感覚に陥らされる。
 これが今の自分の声なんだって、気づかされた。また誰かが素晴らしい、という話しをしている。
「優子ちゃん……もっと喘いで良いのよ……」
 由香は女言葉でぼくに話しかけてきた。
「由香、お願い……もっと気持ち良くさせて……」
 返す言葉はいつのにか甘えるような言葉になる。気持ちはどんどん女の子になっていく。ぼくの心の中にいる優子が自己主張してくる。
 由香は今度は、そっと跪いて、さっきから軽く勃起をしているおちんちんを手に取って、そっと指先で弄ぶ。
「あっ……んっ……」
「もっと大きくさせて……」
 その指使いに身もだえする。立っているのに膝から崩れ落ちそうな気持ちになる。
 そうやって意識が身体に向かった瞬間に、由香は一気におちんちんを口でくわえ込んだ。そして音を立ててしゃぶる。
 気づかなかった。あらかじめ涎を口に溜めていたなんて。ローションも使わずに濡らされる感覚にビクンッ! ビクンッ! と背中を震わせる。
 そして、そのまま膝から崩れ落ち、由香を抱きかかえるような体制で後ろに倒れた。
「つ……」
「大丈夫……」
 後ろに倒れる途中、少しだけ身をひねった形で倒れたから頭をぶつけたりはしなかった。
 ちょっと肩を打ち付けたけど、勢いも無かったからそんなに痛くもない。むしろ、快感ばかり強い。それなのに優に心配をさせてしまった。
 だけど、こちらが大丈夫と見ると、倒れたぼくを仰向けにするのかと思ったら、両脚を開かせた。
 そして、傍らから取り出したローションをおまんこに塗りだした。
「由香……優しくしてね……」
「うん……優子、待っていてね」
――――――――――――――――――――――――――――――
今日はここまで。お店云々は、Blueさんのマグナハウスをちょっと参考に、
秘密のクラブ云々で都市伝説の要素やらなんやら混ぜた結果、こうなった次第です。
314150:2014/01/11(土) 00:41:29.18 ID:AvvGKWVw
続きです。
―――――――――――――――
 前と同じように優と一緒に車に乗せられ、あの大広間に連れて行かれた。マネージャーは会うなり驚いた顔をした。
「久しぶりー、本当にあなたは素材として最高だったわね。
 雰囲気も女の子らしくなっているのに、声がそこまで変わるのは初めてかもね。それにしても……これで処女だなんて凄いわね……」
 そうじゃないと思って、優を見たら、ウインクをされた。つまりぼくはまだ処女ということにしているらしい。
「とりあえず、しばらく翼ちゃん……いいえ優子ちゃんは新人のお披露目ということで、あなたにはショーに出てもらうわ。
 そして、最初はあなたの処女喪失を楽しんでもらうのよ。相手はもちろん由香ちゃんとね。
 一応、付き合っているんだし、最初は好きな人に抱かれたいものね」
 その後、しばらくはトイレに行く形になる。全部出す人もいれば支障ない程度で出す人もいる。
 本格的な人は、個室で浣腸プレイとかスカトロとかやるから出さない人もいるみたい。ときどき喘ぎ声が聞こえる。
 まともに排泄で感じるのは、さすがにちょっと引いてしまう。
 ロッカールームで着替えを行った。日によって衣装が用意されるけれど、この日はベビードールだった。
 平日はもっと過激らしいので、エッチな格好と思ってもこれはまだ普通だとか。
 平日はどんなのか、という話を聞いたら、全身タイツという単語を聞いて、別な倒錯趣味が入り交じっているということを知って聞くのを止めた。
 優があまり積極的に関わりたくないのも分かる気がした。
 そして、出勤してきた女性たちを大広間に集め、マネージャーから紹介される。
「今日からここで一緒に働いてもらいます優子ちゃんです。みなさん仲良くしてくださいね」
「はじめまして、よろしくお願いします」
 あくまで普通に挨拶を行う。すぐに凄い。羨ましいと言われる。
 さすがに高い声の人もいるけれど、ぼくのように高い声の人はいないらしい。
 だけど揃いも揃って女の人にしか見えない人ばかり。普段着のようにドレスを着たり、最近のぼくみたいにニットワンピースを着ている人もいる。
 全体的に体格のある人が多い。モデル体型な人も多いけど、どうしても大柄な人もいる。
 そして平均的な身長の人でも、中には男性かもしれないと気づかれそうな顔をしている人は多い。
 ただ、人それぞれ事情はあるから外見のことはとやかく言えない。タイミングというのもある。
「それから、彼女は由香ちゃんの恋人でもあるので、惚れたとしても胸に秘めたまま諦めて下さいねー。
 略奪とかストーカーとかトラブルを生むようなことをした人は命がないと思ってください」
 保証という名の脅しに少し残念そうな顔をした人が何人かいた。
 もしかしたら、新人ってそういう扱いを受ける可能性もあるのかもしれない。
 優がいてくれて、本当に良かったと思う。
315150:2014/01/11(土) 00:42:38.37 ID:AvvGKWVw
 それから、楽屋裏では衣装に合わせて化粧を施される。ヘアメイク担当のスタッフは女性だけで構成されている。
 どうやら男性が担当すると仕事の妨げになるという方針らしい。仮面をしているし、薄暗いからといって化粧をしないわけにはいかないらしい。
 スポットライトに当たる化粧の具合で表情とかが驚くほど変わる。
 あくまでショーであることは単に性的欲求とは違う、美しい物を見せたいという欲求にも応じるためにも舞台装置なども細かく設定されている。
 いつもより優もぼくも目鼻立ちを強調された化粧を施される。これも多少の変装に近いらしい。
 そして、髪が長くないとはいえ、優が髪型をボーイッシュさを強調し、
 ぼくはさすがに同じような髪型は良くないと判断されセミロングのウィッグを着けることになった。
 その上でウィッグも性能が良いのできれいに整えられていった。
 この店は最初は薬の臨床データを集めるための男娼クラブみたいなものだった。
 でも、会員が増えるに連れ、そういう要望や才能を持つ人間がどちら側にも生まれた結果、このようなショーまで行われるようになった。
 逆にこうしたショーで魅力を発揮する女性もあり、結果として全体的に良い効果をもたらしているらしい。
 そして、ぼくと優による処女喪失が今日の最初の演目だった。基本的に男の人を抱きたい人が多いので、ショーが多く行われるのは金曜日が多い。
 または土曜日が多く、ぼくがここに初めて来た日のショーは優たちによるつり上げのプレイだった。
 意識して見ていたから気づかなかったけど、あれで一時間半も費やしていたらしい。
 ああいう大がかりなのをすると、後で何をやっても興ざめになるので、あの日はショーとしてはあれしか行われなかったとのこと。
 ただ、こういうところなので、逆に疑問に思ったのは、こういうお店だと処女を奪うことに強く望んでいる人もいるんじゃないかと。
 ただ、ぼくみたいに特定の相手がいるなどのことはある程度は考慮されてもいるようで、
 むしろ処女を見知らぬ男性に捧げるのは縁を切り捨て、ひとりで生きていこうと決意している人がほとんどだ。
 ぼくはまだ、頼れる人がいた。
316150:2014/01/11(土) 00:45:03.39 ID:AvvGKWVw
 暗がりの中、ステージにはぼくと優が立っている。ステージといっても回転したりとか大がかりな仕組みではないようだ。
 ぼくと優は手を繋いで、客のテーブルの間をゆっくりと通り抜けてきた。
 暗がりで気づかれたときには前にいる。
 そうして、まだスポットライトの当たらない舞台の上で、ぼくは優子になって優に、由香に抱かれる。
『今宵もようこそ、背徳の宴へ。本日は当店に初入店した新人、優子を紹介します。
 彼女は女性になり始めて一ヶ月でありながら、奇跡の美貌と美声を持つ大型新人。
 そして、未だ処女です。そんな彼女を親友であり、当店へ導いた小さな堕天使である由香がその処女を奪うというステージになります。
 由香に抱かれることで、優子は真の女性に生まれ変わるのです』
 パッ! という光がぼくと優を照らす。
 少年のようなショートカットでベビードール姿の優と、セミロングの髪型の少女のようなベビードール姿のぼくが仮面の人々に囲まれ、拍手で歓迎された。
 それにしても司会は黒服の人がしているみたいだけど、正直言って、少し表現が過剰であまり良い気分はしなかった。
「……どうしたの?」
 囁くように優が問いかけた。客席に聞こえない程度の声。いけない、集中しないと。
 だけど思ったより簡単に集中できる。もう優はステージ上に立つ由香になっていた。
 だからぼくは優子になって、由香の愛撫を仕掛けようとする腕を受け入れた。そっと抱かれて、下を絡めたキスをする。
 少しぼくの方が舌先を長く出しており、由香がそれをしゃぶりながら、じゅぽんっ! と唾液の音を響かせる。
 それだけで、ぼくはおちんちんが痛いくらい勃起してしまい、短いベビードールの裾を持ち上げてしまった。
 どういう意図で宛がわれたかの意図を知る。
「……キスが大好きだね」
 また囁かれる。由香の声は優の声をした別人の声だった。まるで年下の女の子をゆっくりと導くように――そうか、ぼくは由香の妹の優子だったんだ。
 それなら、由香のお姉ちゃんの、大好きなお姉ちゃんのキスで興奮するのなんておかしくないよね。
 与えられた時間はある程度、自由が利いた。何よりも今夜は金曜日で、ステージはこの後もいくつかの出し物が催される。
 ただ、今日の目玉は、処女である優子が由香によってどのように処女を失うか披露し、優子という女の子を抱ける価値があるかどうかを披露する意味がある。
 最初は唾液の音を響かせるぐらいのキスの応酬。
 由香が嫌らしく舌を吸い、お返しとばかりに由香が突きだした舌をペチャペチャと舐めて、静寂の世界に嫌らしい水音を響かせた。
 事前に教えられたことで、嘔吐やスカトロ以外ならば、ステージの上をある程度汚すのは構わないと教えられていた。
 だから、我慢することなく由香とこぼれるほどの唾液交換を繰り返した。
317150:2014/01/11(土) 00:46:02.17 ID:AvvGKWVw
 そして、ゆっくりと由香がベビードールを脱がしてくれる。裸になったと同時、周囲から息を飲む声が聞こえた。
 あれで一ヶ月とは、といった反応が返ってくる。怪訝な気分になる。ぼくは、そんなにきれいなのかな?
 そんな疑問を浮かべていたら、いつのまにかおへそ周りから、ゆっくりとおっぱいへ由香が舌を這わせていた。
 まだ発達途中だから、ちょっと触られただけでも呻いてしまうくらい敏感だ。舌なんかで舐められたら。
「ああっ!」
 初めて、周囲に聞こえるくらいの喘ぎ声を出す。そして大広間ゆえに響く自分の声にまるで信じられない感覚に陥らされる。
 これが今の自分の声なんだって、気づかされた。また誰かが素晴らしい、という話しをしている。
「優子ちゃん……もっと喘いで良いのよ……」
 由香は女言葉でぼくに話しかけてきた。
「由香、お願い……もっと気持ち良くさせて……」
 返す言葉はいつのにか甘えるような言葉になる。気持ちはどんどん女の子になっていく。ぼくの心の中にいる優子が自己主張してくる。
 由香は今度は、そっと跪いて、さっきから軽く勃起をしているおちんちんを手に取って、そっと指先で弄ぶ。
「あっ……んっ……」
「もっと大きくさせて……」
 その指使いに身もだえする。立っているのに膝から崩れ落ちそうな気持ちになる。
 そうやって意識が身体に向かった瞬間に、由香は一気におちんちんを口でくわえ込んだ。そして音を立ててしゃぶる。
 気づかなかった。あらかじめ涎を口に溜めていたなんて。ローションも使わずに濡らされる感覚にビクンッ! ビクンッ! と背中を震わせる。
 そして、そのまま膝から崩れ落ち、由香を抱きかかえるような体制で後ろに倒れた。
「つ……」
「大丈夫……」
 後ろに倒れる途中、少しだけ身をひねった形で倒れたから頭をぶつけたりはしなかった。
 ちょっと肩を打ち付けたけど、勢いも無かったからそんなに痛くもない。むしろ、快感ばかり強い。それなのに優に心配をさせてしまった。
 だけど、こちらが大丈夫と見ると、倒れたぼくを仰向けにするのかと思ったら、両脚を開かせた。
 そして、傍らから取り出したローションをおまんこに塗りだした。
「由香……優しくしてね……」
「うん……優子、待っていてね」
318150:2014/01/11(土) 00:46:47.89 ID:AvvGKWVw
 だけどぼくたちは知っている。お互いにこんな経験はしたことがあるって。
 ふたりで女の子になってみんなの前でセックスをするけど、初めてのフリをする。
 初めては自分たちにとっての秘密なことだから。
「ああっ……んん……」
 由香の指はしなやかに快楽を引き出してくれる。そして、的確にたまらない場所を刺激した瞬間にビクンと身体を反応させ、激しく締め付けてしまう。
「……もう……」
 ため息に近い声。確かに締め付けたのは身体だけど、由香の指だってこうやってどんどんえっちな身体にしてくれるからお互い様だ。
 指が抜かれた後も、おまんこはヒクヒクと動いているのが分かる。
 由香が欲しい、由香の――優のおちんちんが欲しい。思わずM字開脚の姿勢で早くと言わんばかりに視線を送る。
 そっと彼女は笑いかけて、傍らからローションを取り出して、おまんこにたくさんたらした。
 床も濡らすほどに溢しているのに思わず驚いているうちに、目の前に黄色い蛍光色のコンドームに包まれたおちんちんが現れた。
 薄暗い中で淡く光を放っていた。
「お待たせ……」
「あっ……うん……由香、来て……」
 少しだけ驚いたけど、抱いてもらえるんだ、初めての時みたいに。翼ではなくて、優子として。ぼくの中の私のはじめてを。
「優子……行くよ……」
「ううん……あ……やぁ……」
 ゆっくりとおちんちんが身体に入ってくる。慣れている感触のはずなのに、身体の奥に近づく度に身体中が快感で満たされていく。
 本当に身体の中に子宮や卵巣が作られているみたいな気分になってくる。身体中が幸せな気分になってくる。
「ううっ……キツイ……」
「んん……あぁ……ごめん……ダメ……」
 奥に入りきっただけなのに、身体がビクンビクン反応して、由香のおちんちんを締め付けてしまう。
 ああ、えっちな身体。もっと、由香にも気持ち良くなってもらいたいのに、気持ち良くなりたいのに。
「……ずるいよ……動くよ……」
 そう言ってゆっくりと動き出した。引き抜かれる感触も充分な快感で、時折、Gスポットを責めてくれる瞬間は大きな声で悲鳴を上げた。
「あああー!! ィイイ! 気持ち良い!!! もっと!! もっと!! ハアンッ!!」
 ダメだ恥ずかしいよ。こんなはっきりしない言葉で、バカみたいに狂ったみたいに喘いでるの。
 だって由香、じゃない、優のおちんちんが気持ち良い。お芝居みたいな気持ちなんてもう持てない。
 優が好き、優の身体が好き。優の心が好き。
「ああっッツ……」
 今までと違って、グラインドで身体をこすりつけてきたり、かき回すように動いてきたり、優がしてきたことはまだまだ序の口だった。
 何度も上り詰めそうになりながら堪える。だって、優の事だって気持ち良くさせたい。
 合間の単調な動きに合わせて激しく締め付けるだけで苦しそうな声が聞こえる。このまま身体の中に出して欲しい。
「ああぁ!!!! 好き! 好き! 出して、私の中に出してぇぇ!!!」
「出ちゃう、出ちゃうよっ!! 優子ちゃん、妊娠させちゃうぅぅ!!!」
 その瞬間に、優を抱き寄せて、おちんちんからの熱い感触をゴム越しに感じながら、激しく口づけた。
319150:2014/01/11(土) 00:47:54.00 ID:AvvGKWVw
 気づいたら、個室のベッドで優とふたりで寝かされていた。
まだ裸で身体中、汗とかローションとか精液でベタベタだった。シャワー浴びたいけど、腰に力が入らない。
まだ優のおちんちんが入ったままかもしれないくらい感覚がない。
 横を見ると、さっきまで少し妖艶な顔すらしていたのに、天使みたいな寝顔の優がいた。
思わず、そっと頬にキスすると「……おはよ」と反応を返してくる。起きていたみたいだ。
「……翼、優子ちゃんになってのセックスはどうだった?」
「気持ち良かった……優子になったからかな……舞台に立っているとき、恥ずかしかったけど、自分が女の子なんだって少し思えてた」
「私、って言ってたよね……ボクはわざと女の人っぽく言ったのに、翼は最後の最後で言っちゃったよね」
 そう、最後の絶頂の瞬間に漏らした、私、という自覚。
きっと、薬が少しずつ心も女の子にしてくれている。
ううん。違う。
 身体の中にいるもうひとりの自分、名前がなかった女の子、今は優子という名前を持った彼女と少しずつ同化しているのかもしれない。
 彼女はずっとこうなることを待っていてくれたのかもしれない。
 生まれなかった彼女はぼくの中でひとつに解け合ってひとりの女の子になろうとしている。
 お披露目は大盛況だったらしい。処女喪失を披露した際にふたりとも倒れるなんてとても珍しい例だったらしい。
 おかげで優には逆に抱いて欲しいという依頼が来ていたりする。やっぱりお客さんたちは一筋縄では行かない人ばかりだった。
 そして、ある週末の日曜日。ぼくが初めて、男の人に抱かれる日が来た。
 一ヶ月近く、優に抱かれながらトコロテンを放出させたり、
 優を先輩の瑠璃さんと一緒にサンドイッチ(ぼくが優のおまんこを、優が瑠璃さんのおまんこを責める形)にしたりといくつかのショーを繰り広げ、
 羞恥心や肉体的な感覚などの順応を試していったある日にマネージャーから次の出勤が男の人に抱かれる仕事の最初だということを告げられた。
 ただ、不安だったのは優がいないことだった。数日前から夏バテなのか体調不良になってしまい、今週は休みをもらうことにしていたとのこと。
 ロッカールームで初めて着るチャイナドレスの着替えに少し苦労していたら、瑠璃さんが優しく着方を教えてくれた。
 何度もお世話になっているけど、見た目も身体も完璧で少し緊張する。そう。あの日、優をステージの上で抱いて一緒に倒れた人が彼女だ。
320150:2014/01/11(土) 00:48:52.78 ID:AvvGKWVw
「由香ちゃんがいなくて不安?」
「はい……」
「大丈夫よ。あなたみたいに初めての子は優しい人しか指名できないようにしてあるから。
 何しろ、新人指名でもかなりの競争率みたいよ。あなたの身体、とってもきれいだから」
 一月でぼくの身体は女の子のものにしか見えなくなっていた。髪の毛はあとちょっとできれいなボブカットにできる量まで増えてきた。
 もうウィッグは使っていない。グラビアアイドルで身長が近い子と似たような腰回りをしつつ、巨乳には遠いにしても女性らしい大きさのおっぱいの形が出来てきた。
 街を歩くと普通に声を掛けられるくらいだった。もう声も女の子にしか聞こえない。
 お店の先輩の中には声だけはどうしても治らなかったり、特殊な発声法で少しハスキーだけど女の人のような声を出せるようになっていたらしい。
 薬でここまで高い声が出るのも特殊事例らしい。
「ちゃんと服用のときは気をつけてますから」
「偉いわね」という瑠璃さんの声もなかなかきれいで高い声だった。
 見た目が女の子になったからといって、急に薬を止めてはいけないと説明を受けた。
 理由としては、適切な処置を行わないと急激な女性化やはたまた男性化すら起こす症例もある。
 つまり自分の望まない身体になったり、男性機能を残せるどころか無くしてしまうこともある。
 ただ、牧村先生が言ったように、睾丸摘出をした場合、
 普通の女性ではありえない、体内で子宮や卵巣が存在しないにも関わらず女性ホルモンが生成されるようになるまでは薬を止めるわけにはいかない。
「ふふっ……下手すれば妊娠しちゃえるかもね」
「無理ですよー……」
 と言いながら、何となく子供か、ということを考える。
 母に孫の顔は見せられないな、ということを考えた。それはふたりの兄にお願いしよう。
 とりあえず、ぼく自身は彼女がいるから大丈夫なはず。
321150:2014/01/11(土) 00:51:43.65 ID:AvvGKWVw
「優子さん、時間です。202号室にお願いします」
「はい!」
「行ってらっしゃい」
 お店ではショーの間に、客席で観覧しつつ客にアプローチをしたりして部屋にいつ行くかの相談をする人もいれば、
 最初から指名を受けて個室でテレビに映るショーをみながらセックスをしている人もいる。
 また休憩室のようなスペースもあれば、ロッカールームで本を読んだり、音楽を聴きながら集中している人もいる。
 ウェイター的なことは黒服の人たちが行っているけれど、希望すればぼくたちでもできる。
 積極的な人ほど好みの人を探すために行動するらしい。色々と大変なんだと思う。ただ、今日は他人事じゃない。
 黒服の人と一緒に部屋に向かう。チャイナドレスにヒールのある靴。もう慣れた感覚で歩ける。片手にはコンドームやローションを入れた小さなポーチ。
 黒服の人が一緒なのはお客さんと鉢合わせになった場合のトラブルに対処するためだ。
 別にすれ違うことは珍しくない。仮面をしていても、至近距離になるとルックスの差とか好みの違いか、
 すれ違う女の子と指名した子を代えてくれと言う困った人もいるらしい。そう思うと、黒服の人たち――名前すら教えてはくれない――は頼もしい。
「202号室です。お客様は既にお待ちになっておられます。お気をつけて」
 事務的だけど、丁寧な言葉使いで部屋の前から去っていく。もう後は、ひとりで部屋の中のお客さんと対峙しなくちゃいけない。
 優は、優しい人だったらお任せにしてもらえればすぐに終わるよ。注射みたいな感じ。
 怖がってもしょうがないから、少し諦め気味になると、意外とすんなり気持ち良くなれちゃう、なんて。
 ただ、純粋な意味で男の人に興味を持った事なんてない。だけど、少しずつ女の子の心が生まれつつある今ならできるのかもしれない。
 意を決して、ノックをする。二回。そして、ゆっくりとドアノブを回した。
――――――――――――――――
今日はここまでです。
322150:2014/01/13(月) 01:02:31.95 ID:DSZdBWh8
続き行きます。
―――――――――――――――――――――――
部屋の中は明るく、前に使わせてもらった個室と同じ内装だった。
ダブルベッドの横には小さなテーブルと椅子が二脚。その片方に、あの日のテレビに映っていた俳優がバスローブ姿で座っていた。
戸田キリヤ。還暦を超えた初老という印象ながら目の鋭さだけは誰もが知っている。最近も連続ドラマでベテランらしくその圧倒的な存在感を見せつけていた。
「ご指名ありがとうございます。はじめまして、優子です。よろしくお願いします」
 1例をして、頭を上げたらゆっくりと仮面を外す。個室だけで行えるひとつのルール。ここでは客もぼくたちも仮面は外して構わないということ。
「……一応、仕事柄、美人な人とも、可愛い女の子とも競演はするから審美眼のようなものには自信があるが、
 君は本当に女にしか見えないな……ショーで見せてもらった姿も美しかったが、今、ここで直接見ただけでも驚きだ」
 さすがに自分でも否定しがたいくらいの顔や姿は鏡を見れば分かる。高校の卒業式から一年未満でここまで姿が変った。
 きっとクラスメイトでもぼくが三枝翼という男の子だったなんて気づかないはずだ。
「ありがとうございます」
 意識して軽く呼吸を止めている。鼓動が高鳴るどころじゃない。小説とかで早鐘を打つって表現はこういうときにピッタリだった。
 あまり息を止めるのも辛いから、鼻呼吸であまり表情が歪まないように気をつけた。
「俺はね、この店では君みたいに経験が浅い子を中心に抱いている。何故だと思う?」
「分かりません……若い女の人が好きなんですか?」
 こういう問いかけは普通なのだろうか。分からない。優だったら、もう少し相手を楽しませる術を知っているかもしれない。
「……まあ、こんな店に来てる癖に女優と結婚しているし、息子も娘もいる。だから俺は女が基本的に好きだ。
 ただね、中学や高校の頃から、少し女っぽい男には興味があった。なよっとしているしているんじゃない。
 自分のコンプレックスと戦っているようなタイプだ。そういう奴と関わると、女が欲しくなるのと近い感覚がある。
 それで、大学のときに可愛がっていた後輩と少し遊んでやっただけで肉体関係になれた。正直、女を抱くよりも難しいものがあった。
 ただ、それでそのままなら良かったんだが、調子に乗せて女装させてみたりすると、最初は恥ずかしがっていた癖に、
 段々と激しく乱れるようになった。俺としてはオンとオフを切り替えていれば、文句とかはない。
 ただ、あいつは少しおかしくなってきた。オンオフが切り替えられないことで、俺に文句ばかり言った。
 女と付き合っていることを分かって言いながら、女に嫉妬したりな……まあ、半分は俺が壊したとも言えるかもな。
 結局、そいつは自殺未遂やら何やらで精神病院行き。
 俺はスカウトされて映画の端役をいくつかやって、いきなり主役って人生になっちまった。
 普通に女と付き合うのも悪くないが、遊びだったら君らみたいに、女になろうと戦っている奴の方が良いだろうと思っていたら、
 業界のお偉いさんに誘われて、ここに来ちまった。結構長いし、太い客だと思ってるよ。
 だけど、君らは面白い。本気で女になろうとしているし、変に恋愛感情を持ったりしない。
 自分のために男に抱かれる覚悟を持った奴ばかりだ。それだけに、興味がある。性的な興味以上にな。もちろん性的興味がない訳じゃないがな」
 低温で落ち着いた声。若い頃は少し、スキャンダラスな印象があった人とも噂はされていた。
 でも、浮き名は流しても結婚してからは逆に落ち着いた印象を持ったベテラン俳優の立ち位置を確保している。
 彼のスキャンダラスな部分はぼくたちのいる店にしまい込まれたのかもしれない。
323150:2014/01/13(月) 01:03:06.36 ID:DSZdBWh8
「酒はいけるかい?」
 テーブルの上で高級そうなウィスキーの瓶が置かれていて、隣で大きな氷の入った琥珀色の液体で満たされたグラスがあった。
 そして隣にはたくさんの氷が入ったアイスペール。その光景に飲み込まれそうで、はいと答えそうになるのを押さえた。
 未成年だし、そもそもお酒なんて飲み慣れていない。
「実を言うと……最近、初めてビールを飲んだくらいなんです」
 嘘をついてもしょうがないので、本当のことを話す。
 未成年だとまでは話さない。個人情報は気をつけているけど、あんまり馬鹿正直に言う物じゃないとマネージャーからは厳しく言われている。
 金持ちのストーカーというのもいないわけじゃない。下手すれば黒服の人が買収されたり、邪な気持ちになるかもしれない。
「なるほど。じゃあ、飲まなくても構わない……カクテルでも用意してもらえば良かったが、あんまり酒は好きじゃないみたいだな」
「そう、ですね」
 少量のビールだからだったか、あまり陽気にもならないし、どちらかというと意識していない疲れが認識されるような感覚になった。
 緊張が解かれる代わりにかなり辛い。
「俺はこれでも口臭は気にしているんだ。まあ、直接的な不快感は感じさせないつもりだ。さっき歯もみがいておいたしな」
 両方の手のひらで口と鼻を覆ってハア、と一息吐いて口の匂いを確認している。そういうところで好感度が少しだけ増した。
 気を遣う意識が働いている。バスローブ姿なのは当然、身体も汗を流してくれている。瑠璃さんが言う最初の相手としては理想的かもしれない。
 何度もアドバイスくれて本当にありがたかった。
 そのまま立ち上がって、ゆっくりと右手がぼくの左肩に伸びてくる。見上げる体型は初老とは思えないほどたくましく見えた。
「由香とは付き合いが長いのか?」
 顔を向くと、少し勢いよく唇を押しつけられた。そのまま抱き寄せられ、ゆっくりと舌先がぼくの口の中に進入してくる。
 熱くて、激しい舌と唾液に混じったウィスキーの匂い。
「……由香も、あなたは抱いたことがあるんですか?」
「ああ……ただ、君と由香があのステージでセックスをしていたときは驚いたな。お互いの視線がとにかく本気だった。
 普通、あのステージではショーであって、どこか冷めたところも見え隠れするにも関わらずな。
 普段やっている延長線上、それもかなりの気持ちが込められたものだった。だから、気づいた奴は多い。
 あの新人は由香と付き合っているってな。処女喪失なんて嘘じゃないか、なんてな。
 ただ、優子の処女喪失という意味では正しいとも言えたとは俺は思うことにした」
 セックスをしている様子だけで好き合っているか分かるって、やっぱり怖いな。それくらいの人たちが集まっている。
「……どちらかというと、こういうところだと大人しくなるタイプか?」
「たぶん、そうだと思います。何しろ、あんな大勢の前でセックスをしたのは初めてだし、何度か経験すると慣れてきます。
 だけど、こうして一対一だと少し緊張します」
324150:2014/01/13(月) 01:06:57.76 ID:DSZdBWh8
「なるほどね」
 そう言いながらスリットから出ている脚に手を伸ばす。少しゾクゾクっとした感触に驚く。
「小柄だが脚は長めだな」
 チャイナドレスなんかは瑠璃さんみたいに身長が高い人ほどよく似合う。
 小柄で脚はきれいなのは自覚あるけど、少しだけ似合わないなって思うと残念な気持ちになる。
「ぁあっ……」
 腰から背筋に指を這わされる。ごつごつと骨張った指。
 優のしなやかな指と違って、優のように浸食するんじゃなくて、蹂躙しようとする暴力的な印象すら微かに感じる。
 なのに素直に身体は反応する。
「感度は良いな……新人でこんなになるのは初めてだ」
 その言葉に軽くビクッと反応してしまう。同時に身体の奥も熱くなる。
 別れた女の子と、優以外から愛撫を受けたことなんてない。羞恥心も強いのに。
 すっかり作り替えられた身体は素直な反応を示している。
「もっとキスはしていいか?」
「して良いです……」
 たくましい身体に抱かれて押しつけられるようなキスを受ける。優とするベタベタになるくらいのキスとは対局だった。
 そして、優のようなどこか慎重なところがある舌使いよりも荒っぽい動きでぼくの口の中に進入してくる。
 大人しく舌を出してみれば、舌を絡ませながら戻す勢いに合わせて吸い付いてくる。
 形式は同じだけど、確かな違いがある。正直に言えば、優のキスの方が好きだ。
 今のは、少し暴力的で、不快じゃないけれど、違うとしか言えない不確かさがある。
「……キスはやっぱり好きみたいだな。絡ませ方がしつこいくらいだ」
 チャイナドレスの上からぼくのおっぱいを触りながら言ってくる。
 少しだけ背筋が震えた。もちろん快感に。少しも遠慮なく、時間も掛けないで直接。
「脱がすぞ」
 有無を言わせない言葉で背中のファスナーにをゆっくりと降ろされる。そして巧みな指使いで、降ろしながら、背筋に指を這わせていく。
 思わず吐息が漏れてしまった。そして、彼の手がそれを脱がしていき、パサッという音と同時に足下にチャイナドレスが落ちていった。
 ブラジャーとショーツだけの姿になると、今度は下から右の乳首を転がしながら、ホックを外し、
 緩まったと思っている間にブラジャーとショーツを一気に引き下ろすように脱がされ、バランスが悪くなったぼくの身体を支え、
 「ちゃんと脱ぎな」と囁いたので、普通にショーツを脱いだ。
 そして、一度身体を離して、裸のぼくの身体を眺めた。
325150
「……驚くほどきれいだな……そういえばさっき首元を見たときに気になったんだが、喉仏は薬の影響か?」
「元々、なかったんです。結局できなかったですし……薬を遣う前はもう少し低い声でした……」
「そりゃあ凄いな。年齢を知るときは手を見て、男か女かを見極めるかには喉仏の有無とかって話は聞いたけど、
 もう君は女になるべくしてなったと。素材としては本当に申し分ないんだな」
 感慨深げに言いながら、ゆっくりと彼もバスローブを脱いで、椅子に掛けておく。
 それにしても凄い身体をしている。年の頃は60を過ぎているはずなのに金髪にしているから若いのかどうかが見えにくい。
 それで、目を見張るほどの筋肉量、腹筋は六つに割れている。もちろん衰えがあるとしても驚くほどだ。
 そして、これもまた逞しい脚に視線を降ろしたら、両太股の間に勃起していないにしても大きなおちんちんが軽く硬くなった形で少しだけ角度を上げていた。
「……フェラはできるか?」
「はい……」
 こうやってひとつずつ質問をしてくるのは何だろう。
 優に対する対抗意識なのか、それとも優とのことをある程度、考慮しているのかもしれない。
 ベッドの上に座ったので、膝建ちになって左右両脚に挟まれるような形でおちんちんの前に立つ。
 体格があるから大きいとは思っていたけど、目の前で見ると優とは大きさが違いすぎる。
 包茎じゃないからむき出しになっていて亀頭も露出している。口に入れるのも難しそうだ。
「別に技術は求めていないから、出来る限りで構わない。技工を求めているなら、高級娼婦でも呼ぶからな」
 少し安心する。このお店の女の子はあくまで、女の子になるための手段として店にいることを割り切っている人も多い。
 客の大半もそこを分かっているから、無理強いをすることもない。ただ、慣れてくると勝手にスキルアップしている女の子が大半だったりする。
 優だってそうだから。
 そっと両手で触れる。すぐに反応を返して硬くなる。少しずつ硬くなる。
「何だ……手コキだけか?」
 追い立てるように言ってきたので、そっと顔を近づけてゆっくりとくわえ込んだ。
 息が苦しくなる大きさに驚いたから、舌で舐め回しながら口からはき出し、全体的に舐め回しながら濡らしていく。
 そして、とりあえず亀頭の裏筋を舌先で刺激すると、そこが好きなのか微かに身体が震えるのが見える。
 はっきりとは聞こえないけれど、快感に呻く声が微かに聞こえる。
 そして手を添えてくわえ込もうとしたら、やっぱりさっきより明らかに大きくなっているって意識させられる。
 優より大きい。使ったことはないけど、大きめのバイブみたいな大きさだった。そして唾液で濡らした彼のおちんちんに激しく吸い付いた。
 ジュボジュボっていう感じに音が響く。口頭で瑠璃さんに簡単に教えてもらった。さすがに優には恥ずかしくて聴けなかった。
「ううっ……ああ……もう、いいぞ……」
 その言葉に、少し息が詰まったフェラくらいならぼくでも抵抗はなかった。
 でも、今度は今、ぼくが大きくなったおちんちんを身体の中に入れられる。あれ、何か気持ちが重い。