その日翔平は、叔母の富貴子の住むアパートを訪ねた。
富貴子は、翔平の母とは十歳以上歳が離れていた。
現役の大学生で、まだ中学生の翔平の方が歳が近かった。
そのため翔平は、富貴子と姉のように接していたし、
富貴子も翔平を弟のように可愛がっていた。
否、二人はそれよりも深い関係になっていた。
翔平が呼び鈴を鳴らすと、直ぐに富貴子が出た。
「はいはーい。ああ、翔ちゃんか。何か用?」
富貴子はシャワーを浴びたばかりなのか、濡れ髪に首からタオルを掛け、
Tシャツに短パンという出で立ちだった。
「あ、あの叔母さん」
「おばさんじゃない」
たしなめられた。
富貴子はまだ二十一歳という年齢もあり、「叔母さん」と呼ばれることを、殊更に嫌った。
「富貴子さん。あの、勉強を見て欲しいんだけど」
翔平は、富貴子の胸元に視線が行きそうになるのを堪えながら、尋ねた。
いまだにしっとりと汗ばんだ富貴子の肌にTシャツの薄い生地が貼り付き、
肌が透けて見えているのだった。
そしてそのことから、富貴子は今、ブラジャーを着けていないということが知られた。
自然と伏目がちになる翔平に、富貴子は悪戯っぽく笑いかけた。
「いいよ。どうせ今日は暇してるし。何の教科?」
「数学の宿題が出てるんだけど」
「ふぅん、数学だけ?」
富貴子は、意味ありげな目で翔平を見た。
翔平は、Tシャツ越しに、これ見よがしに浮き立って見える胸の突起に目を奪われた。
「ほ、保健体育の方も、お願いします」
富貴子は苦笑しつつ、翔平を部屋に招き入れた。
小一時間の後、全裸で翔平の股間に顔を埋める、富貴子の姿があった。
富貴子はベッドに腰掛けた翔平のものを、乳房で挟み扱きあげたり、
ねっとりと舌を絡ませねぶったりと、翔平を弄んでいた。
翔平が勉強している間も富貴子は、その豊満な乳房を強調するように座卓の上に乗せてみたり、
耳元に猫撫で声で囁いたりと、その我慢を試すように悪ふざけを続けていた。
その我慢の甲斐あって、第二ラウンド、保健体育の勉強が始まったのだった。
富貴子が、翔平のものを喉奥まで飲み込んだ。
熱い口内に包み込まれ、嘗め回され、翔平は富貴子の未だ湿り気を帯びた髪を掴み、
彼女の口中に灼けるような精を放った。
富貴子は噎せ返り、口から糸を引きながら、翔平の怒張から唇を離した。
「やだ、鼻から出ちゃってる」
「すみません。思わず興奮しちゃって」
「いいの。気にしないで」
粘液で汚れた顔をにこりとさせ、富貴子はベッドの上に寝転んだ。
「じゃあ、今度はあたしが翔ちゃんに気持ちよくしてもらう番かしらね。
いつもみたいに、お願いね」
富貴子はそう言うと、尻を高く突き出した。
そして、自ら尻朶を掴み割り広げると、白い谷間に咲く、菫色の窄まりを曝け出した。
薄く色素の沈着したそれは、まるでイソギンチャクのように収縮と弛緩を繰り返し、
ヒクつきながら、翔平を誘っていた。
翔平は座卓の上に置かれていたワセリンの壜を手に取った。
そして、たっぷりと指で掬い上げると、富貴子の息づくかのようなそこに、
べたりと塗りつけた。
「ひゃうっ!」
その冷たさに、富貴子が小さな悲鳴を漏らした。
翔平は、窄まりにワセリンを馴染ませるように、指先で嬲り続けた。
微細な皺の一つ一つをなぞる様に、短く切った爪の先で刺激する。
時に愛しむように優しく撫で、時に責め苛むように強く擦った。
始めはもったりとした塊だったワセリンは、二人の体温で蕩け、
ゆるゆるとした潤滑油となりつつあった。
翔平は早くその時を迎えたいと、焦りを感じていた。
心臓が早鐘のように激しく鳴り、喉がカラカラに渇いていた。
強く指先で擦ると、窄まりは抵するようにきゅうと硬く収縮する。
しかし、それも長くは続かず、直ぐに柔らかく弛み始めた。
その隙を突くように、翔平は指先を窄まりの中心に潜り込ませた。
「んん」
むずがるように、富貴子が呻いた。
きつく締め付ける肉の環を、翔平は拡げるように解きほぐした。
始めは頑なだった富貴子の蕾は、次第に赤みを帯びた花を開きつつあった。
翔平は濡れそぼった秘処から蜜を掬い取り、さらに肉花に塗した。
「富貴子さん、わかる? もう指三本も入ってる」
翔平は富貴子の官能を掻き立てるように、内壁を軽く指先で掻いた。
富貴子は、背筋を跳ねさせ、激しく震えた。
「わかる、わかるよ。お尻の孔、だらしなく開いちゃってるの。
だから早く、翔ちゃんので埋めて。
ぽっかり空いて淋しいところ、翔ちゃんが埋めて」
富貴子は、蕩けそうな甘い声で強請った。
翔平は、怒張の先端を紅く色付いた肉花の芯にあてがった。
翔平のそれは、既に一度は精を放ったにも関わらず、腹を摩らんばかりに反り返り、
強暴なまでに精気を漲りわたらせていた。
翔平は、富貴子の柔らかな尻の肉を掴んだ。
「いくよ、富貴子さん」
返事を待たず、翔平は怒張を富貴子の内へと沈めていった。
富貴子が、背を反らせて激しくよがった。
十分にほぐしたにも関わらず、富貴子の肛門は異物の進入を阻もうと、
翔平をきつく締め上げた。
翔平はその力に抗うように、さらに深みを目指した。
翔平の怒張は、すっぽりと富貴子の中に収まった。
「叔母さん、わかる?
俺のチンコ、叔母さんの尻の孔にすっぽり呑み込まれたよ」
「やめろ、おばさんって、言うな、ああ!」
富貴子が言い終わる前に、翔平が腰を引いたのだ。
きつく締め付けた肉の環は捲れ返り、富貴子に更なる悦楽を注ぎ込んだ。
爛れている。翔平は思った。
翔平は叔母を、自らを産んだ母親の妹を犯しているという実感を噛み締めた。
その背徳感が、翔平により一層の力を与えた。
翔平は何度も抽挿を繰り返した。
動作自体は緩慢なものだったが、筋肉と筋肉の競り合いであり、
二人は互いに、じっとりとした官能を味わいあった。
怒張を引き抜くたびに富貴子は直腸を雁首で掻き立てられ、
富貴子は激しく悩乱した。
挿し入れを繰り返すたびに、結合部は潤み、熱を帯びていく。
富貴子の声が高くなるたびに、翔平は己の中の欲望と快感が倍加していくのを感じた。
二人の体液と潤滑油がが混じり合い、どろどろになったそこは、
糸を引き、あまりに淫らな音を奏でていた。
「叔母さん、いくよ」
翔平は、富貴子と繋がったまま、背後から抱き竦めた。
両手で、富貴子の豊かな乳房を鷲掴みにする。
そして、声も出ぬほどに感じ入った富貴子の腸内に、
その凝濃された肉欲の迸りを流し込んだのだった。
果てた翔平は、富貴子の肉体から離れると、仰向けに寝転がった。
大きく息を吸い、吐く。
爛れている。翔平はまた思った。
母が知れば、夜叉の如くに怒り狂うだろう。
そして、もう二度と富貴子と会うことも許されないかもしれない。
後ろめたい感情だったが、麻薬のように蠱惑的な、病み付きになるものがあった。
だからこそ、一度一度の体験が貴重で、溺れるように貪っているのだ。
富貴子が、上体を起こした。
乱れ髪を掻き上げ、稚気めいた笑みを見せた。
「翔、よくもおばさんなんて言ってくれたわね」
富貴子はそう言うと、翔平の上に馬乗りになった。
「待った、富貴子さん。ちょっとタイム、タイム!」
「だーめ。罰ゲームにもうワンセット!」
富貴子は萎えかけた翔平の陰茎を数度扱き、無理矢理勃たせると、
その切っ先を、自らの仄紅くほとびれた肛孔にあてがい、深々と挿し穿った。
翔平は、自分の腰の上で喘ぎつつ、乳房を揺らす富貴子の姿を見、
また、己を締め付ける肉の環の熱さを感じつつ、呟いたのだった。
「爛れている」と。
(了)
――――――――――
以上です。
久々に書いたので勘が取り戻せてないのですが、
愉しんでもらえれば幸いです。
乙
アナルって書かないのも面白い。
gj!いい雰囲気だね
カタカナ語を押さえ目にすると文章に微妙な艶と陰影が出るな
語彙が乏しいからついついカタカナ語に頼っちゃうんだけど
そうすると文が薄っぺらくなるんだよなあ…
「爛れた関係」がテーマなら叔母さんは30〜40代くらいでもよかったかも
身綺麗にしてる独り身の女性ならその年代でも十分イケるし
そんな熟れた女が年若い血の繋がった甥を尻の穴でたらし込むなんて
最高に爛れた退廃的な関係なんじゃなかろうか
503 :
名無しさん@ピンキー:2014/03/28(金) 09:05:31.22 ID:v3hg2vRT
ほ
しゅ
肛
続けるべきは
「門」か
「姦」か
「虐」か
悩むな
淫 や 交 や 悦 でもいいな
肛 ときたら
愛 だろう
肛の一文字だけでもう肛門以外ありえないのがいい
肛肉は有りや無しや?
肛穴は?
肛奴
肛辱
勝手な造語なら
肛祭・肛娘・肛嫁・肛妾・肛娼・肛旬・肛売・肛溺・肛伽・肛賛・肛乱・肛耽
なんてどうかな
肛姦留学
>>512 前にこのスレで出た女革命家ネタに繋がりそうだなw
肛流:排泄器官の中でも特に敏感な肛門浅部を集中的に摩擦することで快楽を与えようという宗派
直流:直腸に異物を充填して排泄中枢に負荷を掛け、排泄欲の解放による快楽を与えようという宗派
そんなテスラとエジソンのホモホモしいやつ嫌だ
「姦臀痴−かんでんち」とは携帯型のアナル責め具の総称である
姦臀痴は「肛流臀痴」と「直流臀痴」の二種類に大別され、それぞれ単3から単1までのサイズが用意されている
「肛流臀痴」は作動するとシリコン製の筒の前後が円盤状に変形して、括約筋を挟み込むようにして固定される
括約筋を挟む面には一面にイボやヒダが配置され、シリコンに浮き出るパールによる回転マッサージの機能も備わっている
円盤は互い違いに回転して肛門の内外で左右に捻れ、パールで括約筋を揉みほぐしながら、イボやヒダで肛門粘膜を摩擦する
臀痴の粘膜に対する密着感は相当なもので、その形状からストッパーとしての能力も非常に高い
最大の単1サイズともなれば、大量浣腸や排泄管理といった直流系のプレイにも十二分に対応が可能である
近年ではこのように、肛流と直流の二つの思想が融合することで責めの技法が深化し、排泄器官の性器化が急速に推進されている
肛門粘膜に対する摩擦と排泄欲の開放による相乗効果は、通常の性交によって得られる快楽を遥かに凌ぐものであるという
「直流臀痴」も肛流と同様に円盤状に開き、肛門に密着して封をする
臀痴の内部にはコンパクトに折り畳まれた筒状のゴム皮膜と、ウレタン状に硬化する発泡材が充填されている
発泡剤はゴム皮膜の中で徐々に体積を増し、膨らんだゴム皮膜の筒は排泄器官の内部を蛇のように逆流してゆく
発泡が完了し硬化を終えると臀痴のロックが解除されて、肛門を挟み込む二枚の円盤状から、シンプルな筒型へと戻る
直流臀痴の本体は相当な重量に設計されており、ロックが外れると肛門から抜け落ちて、腸内のウレタンを自重で引きずり出してゆく
このウレタン製の擬似排泄物は単1サイズで全長2m直径5cmほどに及び、装着者はこの体積を一気に排泄することになる
ゴム皮膜には一面に粘膜を刺激するイボやヒダが刻まれており、この突起が排泄時には肛門の粘膜を連続的に刺激する
肛門性愛技術における肛流思想と直流思想の融合は、このような部分にも顕著に現われているのである
2mあっても本体が床についたら重さ関係なくね?
床に着くまでの長さの分のウレタンの重さで残りも引きずり出されるのか
それとも押入れや二段ベッドの上段からつかうのか
単1じゃ抜けきらないかwまあ単2単3での話ってことで
直流臀痴を遠隔操作やタイマー設定でロック解除できると楽しそう
電車の中や、交差点での信号待ちや、授業中に黒板に板書してる時とか、夢が広がリングw
単1サイズなら、本体が足元にゴトンと落ちたあとも、まだ腸内に余裕で1m以上残ってる訳だし
衆人環視の中、スカートの奥からウレタンの尻尾を垂らして、場合によっては排泄の瞬間も目撃されて、
その事態をどう収拾するのか、離れたとこから眺めて楽しみたいw
硬いものが尻に突き刺さってるのもいいけど、
太くて長くて柔らかいものが尻からブラブラ垂れ下がって
まるでうんこみたいなんだけど絶対切れないせいで
永遠に排泄中の姿を晒してるように見えるというのもいいよね
大通りの信号待ちで青に変わる瞬間に、遠隔操作で臀痴のロックを解除される
為す術もなく、その場で極太のウレタン棒を、ブリュブリュと下品な音を響かせながら擬似排泄
その開放感と摩擦感に意識を飛ばされかけながら、女はなんとかその場を取り繕おうと、慌てて気力を振りしぼり、
自身の尻の穴から抜け落ちて足元にゴトリと落ちた、硬く重たい臀痴の本体を拾い上げようとする
しかしその瞬間、信号が変わって動き出した人混みに背中を押されて、そのまま横断歩道へと押し流されてしまう
反射的に引き締めてしまった肛門から、ずるり、ずるり、と一歩ごとに引きずり出されてゆく擬似排泄物
名器の所以でもある括約筋の締まりの良さが逆に災いして、重たい臀痴の本体をゴロゴロと引き摺りながらも、
滑稽なまでに太く長い擬似排泄物は、容易には抜けきれなかった
それどころか異物はその表面に刻まれた淫靡なイボやヒダで、肛門の粘膜に目も眩むほどの摩擦感を送り込んでくる
白昼の大通り、交差点の只中で、女は排泄の開放感に酔い痴れ、肛門粘膜に気も狂わんばかりの悦びを刻み込まれながら、
一歩ごとに尻肉を震わせ、わずかの時間に繰り返しイキ果てた
夢遊病者のような足取りで交差点の中ほどまで流されたところで、人混みに追い抜かれて取り残されると、
女は自身の身長ほどもある長大な尻尾を股間にぶら下げたまま立ち尽くし、その場で盛大に潮を吹き、続いて失禁した
事態に気付き始めた群衆の環視の中、女は自らが垂れ流した体液のぬかるみの中に、内股に崩れてぐちょりとへたり込んだ
容赦なく突き刺さる、異性からの好奇と欲情、同性からの嫌悪と侮蔑の視線、ざわめく観衆、携帯を向ける野次馬たち
それらに囲まれ、小便の水溜りからうっすらと立ち昇る白い湯気に包まれて、女は恍惚の表情で天を仰いだ
>>519 こんなお馬鹿な駄洒落系の一発ネタから
よくここまでガチエロ展開できるもんだw
人間エロい妄想してる時が一番いきいきとしてるよな
>>519 へたりこんだまま破滅オチもいいけど
「いやーん」と尻からウレタン棒を垂らしたまま逃げ出し
その後も元気に臀痴プレイ満喫して欲しい気もw
ケツが盛り上がってる所すまない。一作ぶち込ませてくれ。
スカトロありなのでご注意を。
『淡春楼』の伊代といえば、花街でも名の知れた遊女だ。
没落したとはいえ、武家の娘として生まれ、教養は申し分ない。
謡もすれば踊りもし、書や花に通じ、碁も打てる。
器量も抜きん出ていた。
淡雪のような白磁の肌に、艶やかな黒髪、控えめながら整った目鼻立ち。
まさに令嬢かくあるべしという慎ましい美しさを有している。
しかし儚さはない。幼い頃よりの武芸の修練で、肉体がほどよく引き締まっている為だ。
さらに瞳は底抜けに澄み切り、強い眼力を有していた。
生半な男であれば、彼女にひと睨みされただけで謝罪の言葉を口にしてしまうほどに。
ただし……これだけであれば、花街ではそう目立たない。
玉石混交の遊女の中には、教養に秀でた者も、見目の優れた者も、覚悟を秘めた眼を持つ者も大勢いる。
その中にあって伊代を際立たせる最大の要因は、彼女の気の強さだ。
気に入らぬ相手はぴしゃりと断り、礼を失する男には、たとえ豪商であろうと平手打ちを食らわせる。
優れた美貌から客は絶えないが、実際に臥所を共にした男というものは聞こえてこない。
その太夫のごとき気位の高さは、客の間で良かれ悪しかれ評判を呼び、同じ遊女の間でさえ噂の種となった。
当然、遊郭内での伊代の人気は高く、彼女を買うには何晩か待つのが普通だ。
もっとも、それとて金を持つ人間に限られる。
伊代は浪人や下男といった賎民が買える相手ではない。
それら一般庶民は、身なりのいい“旦那衆”が伊代と茶屋に消えるのを悔しげに眺めながら、
未だ見ぬその肉体と脳内でまぐわうばかりだ。
女衒である平七もまた、そうした野次馬の一人だった。
ある朝までは。
その日、平七は一人の娘を連れ歩いていた。
山あいの村で買った娘を、最底辺の河岸見世へと売り払うために。
女衒の仕事は、稼げるものとそうでないものがはっきり分かれる。
今回は後者といえた。娘は痩せ衰えて色気も何もなく、その上口が利けない。
河岸見世に売り払ったとて大した銭になるとも思えなかった。
となれば自然、平七の虫の居所も悪い。
「おら、とっとと歩け」
擦り切れた足の痛みに、少女は幾度も立ち止まる。
平七はその度に苛立ちを露わにして少女の袖を引いた。
ちょうどその時、遠くから鈴の音が聞こえてくる。
顔を上げれば、そこには巷で噂の伊代がいた。禿や新造を引き連れ、優雅に歩みを進めている。
「ちっ……売り飛ばすのがああいう女なら、旨い汁が吸えるのによ」
平七はいつもの如く、嘗め回すような視線で伊代を眺める。
伊代自身も、その視線には気付いているのだろう。
平七の近くを通る瞬間、凛とした眼力の強い視線で彼を睨む。
しかし伊代は、その次の瞬間に顔色を変えた。
「あん?」
訝しむ平七は、伊代の視線が傍らの少女を見据えている事に気付く。
「おたつ…………?」
伊代はかすかに唇を動かして少女の名を呟いた。
そしてすぐに我に返ると、横に立つ新造にその場で待つよう指示を出す。
「お、おいおい……!」
平七は声に喜色を孕ませていた。
あの伊代が、自ら間近に寄って来る。それだけで彼にとっては夢のようだ。
そして同時に彼は、現状をおぼろげながらに理解していた。
何故かは知らないが、伊代はこのみすぼらしい農民の娘を知っているらしい。
顔色を変えたところからして、ただの顔見知りというだけでもなさそうだ。
これは交渉の材料になる。
平七はほくそ笑んだ。彼の頭は、欲望を潤滑油に、良く回るようになっていた。
平七の考えは正しかった。
伊代は、平七が連れている少女をよく知っている。
出会いは、弟の鷹狩りに同行した時だ。
山あいを馬で駆けていた所を雨に降られ、庇を借りたのがたつの家だった。
六人の子を抱えて細々と暮らす農家。
長い滞在ではなかったが、姉御肌の伊代は、すぐにその子供達との仲を深めた。
特に、末っ子であり口の利けないたつには特別優しくした。
以来、伊代は暇があれば農家へ寄って様々な遊びを教え、文字を教えた。
たつは伊代によく懐き、伊代もまた、たつの事を妹のように可愛がった。
その後、家の没落を経て遊女に身をやつしてからも、その頃の記憶は甘く伊代の心に残っている。
「その子を、どうするの?」
伊代は平七に問うた。愚問とは知りつつも。
「へっ、お前ぇも花街の遊女なら解んだろう。女衒が女連れて何するかなぞ、決まってらぁ。
今からこの貧相な餓鬼を、『轍屋』に引き渡そうってのよ」
その言葉に、伊代の表情が引き攣る。
轍屋……それは、数ある河岸見世の中でも底の底と言われる妓楼だ。
長屋式の窮屈な空間に、亡者のような遊女がひしめいている。
病気持ちで普通には稼げない彼女達は、近くを通る客へ襲い掛かるようにして客引きする。
時には飢えのあまり、遊女同士が互いの血肉を喰らい合っているという噂さえあった。
無論、平七もそれを知った上で話している。
実のところ、彼はたつを河岸見世のどこへ売ろうが構わなかった。
だがあえて悪評絶えない『轍屋』と限定することで、伊代の動揺を誘おうという寸法だ。
そして、その効果は確かだった。
「まだ小さな子じゃない、見逃してあげて。お金なら、私が払うわ」
伊代は凛とした視線で平七に告げる。しかし、声色が焦りを隠しきれていない。
平七は確信した。たつという娘は、やはり伊代にとって特別なのだ。
「金か。しかしな、金で解決できる事でもねぇのよ」
優位な立場を確信した平七は、ここであえて首を振る。
「すでに『轍屋』の主人にゃあ、新しいのを連れてくと話を通しちまってるからよ。
ここで駄目ですって事になれば、女衒としての信頼に関わっちまう。
俺達はぐれ者にとっちゃ、信用って奴は何より重いのよ」
つれない態度の平七に、伊代はなおも食い下がる。
「……勿論、それ相応の礼はするわ」
若干の逡巡を伴って発されたその言葉こそ、平七の狙いだ。
「ほう、礼を」
彼はいよいよ無遠慮に、伊代の美貌を眺め回す。
「そうまで言うんなら、その気持ちを汲んでやろう。
俺を上客として、毎晩タダで迎えてくれるってんなら、その揚代の一部をこの娘の代金から引いてやってもいいぜ。
当然、“上客”である以上は、俺の好きにさせてもらうがな」
明らかに伊代の身体狙いである事が、舐めるような視線から解る。
おそらく、伊代がどれだけの金を積むと申し出ても、受け入れる事はないだろう。
本来、伊代を買えるような立場にはない愚劣な男。
いつ湯浴みをしたのか定かでない体からは、噎せるような体臭が匂っている。
口臭も耐え難い。不衛生にたるんだ肉体の内部から、毒素が漏れ出しているかのようだ。
「っ…………!!」
伊代は拳を握りこみ、唇を噛んだ。
彼女の内にある女の生理が、総力で彼を拒んでいた。
平七は、その伊代の様子を内心愉しみながら顔を顰める。
「なんだ、その面ァ。嫌なら別にいいんだぜ、初めから無ぇ筈の取引だ。
お嬢様がお望みで無いなら、コイツを予定通り『轍屋』にぶち込むまでよ。
……よぉ、おめぇも可哀想だよな。
変に希望見せて覚悟揺らされんのが、こういう時にゃ一番応えるってのによォ」
そう言って平七は、傍らのたつの髪を掴んだ。
「っ!」
これまでに数々の恐怖を覚えてきたであろう少女は、その動きに痩せ細った身を震えさせる。
怯えを幼い瞳に広げたまま。
その光景を見せられては、もはや伊代に拒む術などありはしない。
「待って!」
今一度、強く手を握り締めた後、それを弛緩させてから伊代は告げる。
「………………わ、わかったわ」
平七の顔が醜く歪んだ。
※
「なぁに、あの男は……みすぼらしい」
「お伊代の客だよ。何でも、お伊代が自分で金を払うんだってさ」
「にしたって、見世の品位に関わるよ。よし江さんは何ていってるんだい」
「それが、あの遣り手の婆さんさ。伊代が良いといってる以上は問題ないとさ」
「はぁー……相変わらず、伊代にゃ冷たいもんだねぇ」
「とりあえず、奴さんが通った跡に、塩でも撒いといた方がいいんじゃないかい」
伊代と平七が通り過ぎた階段で、『淡春楼』の遊女達は口々に囁き合う。
登楼する他の男とは明らかに違う粗野な見目、噎せるような体臭。
それは当然、遊女達に歓迎されるものではない。
しかし、それを伊代が……平素であれば、誰より先にそうした男を摘み出すであろう彼女が招いたのだ。
遊女達にしてみれば、それがどうにも奇妙でならない。
その伊代は今、平七の為すがままになっていた。
遊女達が噂しあうちょうど真上……障子に囲まれた角部屋。
布団の上で仰向けになった伊代の上に、平七が覆い被さっている。
鼻息荒く口づけを求め。
乱雑に着物を肌蹴させた上で、乳房を乱雑に揉みしだき。
「へへへ。『淡春楼』のお伊代を、こうやって好きにできるなんてよぉ……夢みたいだぜ。
どうだ。濃い接吻を続けて、お前も気分が出てきただろう」
平七は一旦口づけをやめ、上ずった声で告げる。
そうして数秒ほど伊代の顔を覗き込み、再び唇を求め始めた。
粘ついた舌が口内を嘗め回し、舌に絡みつく。
口臭と体臭が、かつて伊代の経験した事もないほどに鼻孔を痺れさせる。
平七は、明らかに女遊びに慣れていない。
女衒と一口に言っても様々だ。
女に不自由しない者もいれば、稼ぎが悪く、毛深い飯盛り女をたまに買うのが精一杯な者もいる。
平七は明らかに後者と思われた。
しかし、伊代はそんな無作法な平七に何ら抵抗をみせない。
両腕を上方に投げ出し、天井を見つめたまま汚辱の口づけを甘受する。
「へへへ、やぁらけぇ乳してやがら」
指の痕がつくほど乳房を揉みしだかれても、声さえ出さない。
ただ人形のように耐えていた。
全てはたつを守るためだ。
幼い頃から苦労を重ねたうえ、生活苦か口減らしか、こんな苦界に落とされた幼子。
その子が、最悪の妓楼である『轍屋』へ売られるなど、あってはならない。
自分が、何としても自分が守らねば。伊代はそう決意していた。
しかし平七からすれば、その伊代の覚悟すら面白可笑しいらしい。
終始品性の欠片もない笑みを浮かべ、平七は伊代の体中を嘗め回していく。
晒された両腋、二の腕、鎖骨に乳房、腹部に臍……そしてとうとう、薄い茂みの下へ。
伊代の体中へ自らの証を刻むがごとく、丹念に舌が這い回る。
伊代からすれば、総身に鳥肌が立つというものだ。
声こそ出さないが、身体の至る所が拒絶反応で強張るのが解った。
「くふふふっ、甘露、甘露…………」
肉のあわいを舌でほじくり返しながら、平七の声が囁く。
早く時が過ぎろ。伊代はそう願うばかりだ。
秘裂を舐めしゃぶった後は、そこに男の物を挿入されるのだろう。
そして一度欲望を吐き出しさえすれば、男はもう女体に興味を失うものだ。
ならば、そうするといい。
「どうだ、恥ずかしいか。なぁお伊代」
平七はそう言いながら、襞のひとつまで愛でるように伊代の秘裂を舐め続ける。
しかし……その舌先は、あるとき不意に秘裂を外れた。
会陰部を通り抜け、その下方に息づく小さな蕾へと至る。
「っ!!」
瞬間、伊代は無意識に腰をずらした。
平七にとっては予想外の反応だったのか、不思議そうに顔を上げる。
「初めて反応したな」
喜色を含んだその声に、伊代は睨みで返す。
「何を考えてるの。女を知らないといっても限度があるでしょう、そこは不浄の穴よ」
伊代が強い語気でそう告げた瞬間。平七は、何かに気付く素振りを見せた。
そして伊代の尻肉を両側から鷲掴みにし、再び舌先で肛門を嘗め回す。
「や、やめて! やめなさいっ!!」
伊代はなおも拒絶の意を示すが、平七は笑みを深めるばかりだ。
「なるほど、ここが『淡春楼』のお伊代の弱みって訳だ。
よし、決めたぜ。今日から、この穴をひらいてやる。
尻の穴が二つ目の女陰になるまで、徹底的に開発してやる。
一生、俺っつう男を忘れられねぇようにな」
「なっ…………!」
伊代は言葉を失った。平七の言葉を再度脳内で反復し、惑う。
不浄の穴を、本気で性的な行為に用いるというのか。
「しょ、正気なの…………!?」
「ああ、正気も正気さ。衆道を嗜む連中にとっちゃ、尻の穴を使うのは普通よ。
それに、そもそもお前に選択の権利はねぇ。約束通り、好きにさせてもらうぜ」
平七の発言に、伊代はその凜とした瞳を見開く。
しかし、男の言う通り。伊代は逆らえる立場にはない。
たつの為と思い、どのような恥辱を受けようとも耐え忍ぶしかなかった。
しばし後。
伊代は着物を全て脱ぎ去り、真裸のまま敷布団の上に座していた。
強い力を秘めた瞳は、前方の光景を静かに見据えている。
そこには平七の姿があった。
湯浴みに用いる木桶の中にぬるま湯を注ぎ、その中に瓶入りの液体を溶かし込んでいく。
そして湯を節ばった手でかき混ぜた後、持参した頭陀袋から見慣れぬ物体を取り出す。
向こう側が透けて見えるほど透明な、先細りの筒。
平七はその筒を見せ付けるように持ちながら、伊代の視線を受け止めた。
「気になるか。これはな、蘭方の医者先生に頂いたもんよ。
こいつを使って尻に薬湯を入れると、腹ン中がすぐに綺麗になるんだと。
浣腸器、っつったかな。
女衒をやってると、こういった妙な道具もたまに回ってくるのよ。
いつかお前みたいな上等な女にぶち込みたいと思って、手入れしてたんだぜ」
いよいよ下卑た笑みを浮かべつつ、平七は正面に向き直る。
そして浣腸器の先を木桶の湯の中に浸し、一度空気を追い出してから、勢い良く吸い上げる。
伊代は目を見張った。あのような簡素なつくりのからくりが、易々と水を吸うとは。
しかし、そのように悠長な事を考える時間もすぐになくなる。
薬液を満たした浣腸器を手に、平七が一歩また一歩と近づいてくるからだ。
「始めるぞ。こっちに尻を突き出せ」
恥辱の命令。しかし、伊代に逆らう術はない。
「…………っ………………!!!」
伊代は唇を噛みしめながら後ろを向き、這う格好を取る。
そして両膝を伸ばし、男に向けて尻の穴を自ら晒す。
「おぅお、絶景だ。さすが育ちがいいだけあって、可愛い尻穴してるじゃねぇか」
平七は嘲るように告げながら、人差し指を舐めた。
そしてその指を伊代の尻穴に宛がう。
未だ出すことしか経験のない伊代の菊の花は、ぴちりと閉じたまま用意には開かない。
しかしそこを、平七の指の力が無理矢理に押し込んだ。
僅かな唾液の潤滑を頼りに、菊の輪を突き崩す。
「っう!!」
伊代は声を漏らした。指一本とはいえ、異物感が並ではない。
「どうしたどうした、尻の穴で感じてやがるのか?」
平七は相手の反応を愉しむように、穴の入り口で指を上下に蠢かし、さらに数度伊代の身体を硬直させる。
そして、いよいよ浣腸器を両手に構えた。
「いくぜ」
短い声に続き、冷ややかさが伊代の肛門を押し開く。
その感覚に震える間もなく、ぬるま湯がなだれ込んできた。
生れ落ちて以来、初めて経験する直腸への逆流。
伊代はこの瞬間になって改めて、自らが足を踏み入れようとしている領域の異質さを実感した。
「くっ、うぅ……うっ…………」
伊代の唇から無意識に声が漏れる。
ところが薬液の注入は、この一度では終わらない。
平七は幾度にも渡り、薬液を吸い上げては注入し、吸い上げては注入する。
木桶半杯あまり……ほっそりとした伊代の腰周りが、かすかなまろみを帯びるまで。
「……どうした? そんなんじゃ、いつまでも終わらねぇぞ」
平七の声が室内に響く。
そして、その声を掻き消すようにして、ぬめった水音が繰り返されていた。
伊代が平七の逸物を、喉奥深く咥え込む音だ。
「んんっ、んおっ……おぼっ!! んんごぉっ…………おぉんうう゛おっ…………」
怒張脇から漏れる声は苦悶に満ちている。
彼女は地獄を味わっていた。
隆起した平七の逸物は、長さもさることながら、なにより造りが異形だ。
カリ首は森の茸さながらに広く笠を張り、血管を浮き立たせた陰茎部は、下方が異様に膨れ上がっている。
口を目一杯に開いたところで、その凹凸に富んだ怒張を咥え込むことは容易ではない。
遊女として何十という男の物を舐め清めてきた伊代にとってもだ。
さらに、平七の求める口戯は普通ではない。
手を使うことを許さず、気分を盛り上げるためといって後ろ手に縄を打った状態で奉仕させてくる。
本来の情交ではなく、あくまで自らの欲望を一方的に解消させるための行為だ。
当然、配慮などあろうはずもない。
「どうだ、俺の逸物は。ぶっとくて咥え応えがある上に、匂いがきついぶん味わい深いだろう。
これから先、お前が尻穴で咥え込む愛棒よ。反りから形から硬さから、頭に叩き込んどけや」
平七は伊代の美しい髪を鷲掴みにし、強引に喉奥まで飲み込ませる。
「ん゛っ、んオ゛…………こっこおっ……んんうぉおお゛っっ」
伊代は、かつて口戯の際に発したこともない低いえづき声を漏らすしかなかった。
唇を閉じられないまま喉奥をかき回されるのだ。
通常ならば唾液しか出ないところが、それよりも遥かに粘度の高い液体が滴っては、跪いた腿の上で弾けていく。
伊代はもう、自らの脚を見下ろす勇気がなかった。
挙句に匂いがひどい。一体どれだけ湯浴みをしていないのかという匂いは、鼻腔にまで染み付いて伊代に鈍い頭痛を引き起こす。
苦しみはそれだけではない。
伊代の腹部では、もう随分と前から雷のような音が鳴り狂っていた。
厠でしゃがみこめば、即座に腹の中の物を余さず吐き出せる。
その感覚を憶えたのは、もう随分と前の事だ。
『舐めしゃぶれ。首尾よく俺を逝かせられたら、糞をさせてやる』
平七はそう告げた。しかしその平七が驚異的な粘り強さで射精を堪えているため、伊代は追い詰められていた。
かつて経験のないほどの便意。
身体中にじっとりと脂汗が滲み、しなびた前髪が視界の一部を遮る。
その視界にしても、額からの止め処ない汗でぼやけている有様だ。
肛門部分は独自に意思を持ったかのように蠢き続け、今にも排泄しようとする。
排泄欲の波が押し寄せては引き、押し寄せては引く、を繰り返す。
しかし一度引くたびに、その次の波は高くなっているようだ。
もういくらももたない事は、他ならぬ伊代自身がよく理解していた。
「ん、むぶぁっ!!」
大きく息を吐きながら、伊代は逸物を吐き出す。
逸物と口の間に、目を疑うほど濃厚な唾液の膜が引き、自重で切れて落ちていく。
「あっ、あ、はぁっ……はぁ、はぁっ…………はぁっ」
伊代は、開いた口から唾液や涎を滴らせながら、ただ荒い息を繰り返した。
深く咥え込まされ続けた苦しさに加え、極限の排泄欲が襲いくるのだから無理もないだろう。
眉根は下がり、うすく涙を湛えた瞳も普段の力を感じさせない。
「随分と苦しそうだなぁ、ええ伊代」
平七は腑抜けた笑みで伊代を見下ろしながら、催促するように怒張でその頬を叩く。
伊代は激しく喘ぎながらも舌を出し、カリ首付近へと這わせていく。
(早く、早く 達して…………!!)
その心の声が聴こえるかのようだ。
陵辱する平七にすれば、何とも心地良い風景だろう。
「おら、もっと深くこいよ。世話んなる肉棒への挨拶もできねぇアマは嫌いだぜ」
平七は再び伊代の頭を掴み、強引に喉奥まで咥え込ませる。
「うぇぼっ! ……お゛、んも゛おおぉおえ゛え゛っ…………!!!」
一度噎せ帰った後、低いえづき声を上げる伊代。
それまでにも幾度か見られた反応だが、今度はやや様子が違った。
喉奥まで届いた段階では終わらない。突き当りをさらにこじ開け、食道の奥へと進む。
そしてついに逸物そのものを余さず呑み込み、平七の陰毛へと鼻を埋もれさせるほどに咥え込む。
「うおおっ、深ぇっぞ!! へへ、こりゃあいい。喉がよく開くようになったじゃねぇか。
尻の穴も、すぐにそうやって深く咥え込めるようにしてやるぜ!」
平七は上機嫌に告げながら腰を激しく前後させる。
伊代からは、数度、その見目からは到底想像できない声が漏れた。
目はまさしく限界まで見開かれ、こめかみを痙攣させている。
後ろ手の縄は、両手首に引かれてギシギシと鳴る。
桜色の唇からは、かつてなかったほど大量の粘液が分泌され、形のよい乳房を滴り落ちていく。
「おおおっ、いいぞ、いいぞっ!! ……くぅっ、堪らねぇっ!!!」
平七は裏返った声で叫び、とうとう腰を震わせた。
そして伊代に深く咥え込ませたそのままで、喉奥へ向けて精を吐く。
「う、むぁっ!!」
伊代が苦しさに逸物を吐き出す中でも射精は続き、美貌を白く染め上げた。
しかし、伊代はもはやそれに構っている余裕などない。
「はっ……はあっ…………さぁ、や、約束よ。逝かせたんだから、縄を解いて、早く、はやく厠に行かせてっ!」
忙しなく腰を浮かせながら、伊代は必死に訴える。
便意が真実、限界なのだろう。
しかし、平七は射精後の余韻に浸ったままで耳を掻く。
「はぁ、厠だぁ? 何勘違いしてやがる、俺は『糞をさせてやる』と言っただけだぜ。
今日からお前の厠は、これだ」
そう告げて、足元の木桶を蹴る。伊代の顔色が一変した。
「な、何の冗談なの!?」
「冗談だと思うのか? 嫌なら、そのまま畳の上でぶちまけてもいいんだぜ。
その場合、後で困るのは俺じゃあねぇからな」
あくまで淡々と答える平七を前に、伊代は悟った。本気だ。本気で、面前での排泄を強いている。
「そんな、事…………ッ!!」
反論を試みるまさにその瞬間、伊代の腹部が激しく鳴った。
腸そのものが渦を巻くような強烈な違和感。それを感じては、もはや抵抗している時間などない。
「…………下衆よ、あんた…………!!」
伊代は平七を鋭く睨みながら、仕方なく木桶の上に跨る。
しかし、伊代が内股になって用を足そうとする所へ、平七が待ったをかけた。
「おいおい糞女、それじゃあ見えねぇよ。客の俺が楽しめねぇだろうが。もっと景気良く股ァ開けや」
伊代の神経を逆撫でする要求。
そもそも長時間に及ぶ便意の我慢により、伊代の脚にはほとんど力が残っていない。
しかし、それでも伊代に逆らう事はできなかった。
瘧にかかったような痙攣を押さえつけ、必死に膝を開こうとする。しかし、すぐに体勢が崩れる。
両手が自由ならばともかく、後ろ手に縛られていては姿勢を変えるのも一苦労だ。
「おら、どうした。千鳥足になりやがって、武家の娘ってやつも案外腰抜けだな?」
平七はなおも伊代を嘲った。
伊代はその辱めに奥歯を噛みしめ、ぐいと思い切りよく膝を開く。
「おほっ」
平七がその好色な笑みを満面に広げた。
均整の取れた淡白い肉体、形のいい両乳房、手入れの行き届いた茂みに、その下で開く女の華。
そのすべてが、隠すものもなく平七一人のために晒されている。
数日前までは、夢想しこそすれ、実現するとは到底思えなかった至福の光景といえる。
そして、その『美』だけではない。
みすぼらしいこの女衒は、これから伊代の『醜』……上客の誰一人として拝むことの叶わない、伊代の“なまの姿”を目にできる。
一度射精した後ながら、平七は再び下半身に血が巡るのを止められなかった。
「あああ、いや、いやっ…………あああ、いやあっああぁああああっっっ!!!!!」
なるべく取り乱すまいと決めていた伊代だったが、いざその時が訪れた瞬間には、迸る叫びを止められなかった。
いつか図に乗った豪商を一喝した時以上に喉がよく通り、障子を突き抜けるような声が発された。
この分では、階下や別室にいる廓の人間達にも聴こえてしまったのではないか。
そう危惧する。
しかしその考えは、すぐにあふれ出す汚辱に掻き消された。
武家の娘として、たとえ恥辱を晒す瞬間でも怨敵を睨みつけてやろうと決意していたが、それすら叶わない。
とても目を開けていられず、眼球がつぶれるのではというほど硬く目を瞑り、顔を横に背けてしまう。
そこまでしても、平七の視線を意識から消せない。
不浄の穴が、意識とは無関係に幾度も幾度も大きくひらく。
そしてひらく度、自らの体温とはとても思えないほど熱い液が、敏感な菊輪をこすって出ていく。
じょぼるるるるろろろ、という液体の堆積する音と共に、跳ねた水が脹脛にかかる。
滝のような液体の排出は三度繰り返され、その後は渋りに入る。
肛門が小さく盛り上がり、魚が水を吐くように小さな飛沫を飛ばす。
それが約四回。そして……その後、とうとう恐ろしいものが姿を表す。
それまでの液体とは明確に違う、とろけながらも確かな質感を持った半固形物。
それがずるりと肛門から滑り落ち、ぼちゃっと液溜まりの中に落ちていく。飛沫が足にかかる。
「くく、くくくっ」
平七の笑い声。それが、震える伊代の心へ短刀のように突き刺さった。
見られている。何もかもが、平七には見えている。
伊代は口を歪めたまま涙を零した。
先ほどまでの、苦しみから滲む涙ではない。心の深い部分が傷つけられた事による、苦しみの涙だ。
恐ろしく長く感じる時間の末、ようやくに排泄は止まる。
「ふ、くっく……随分と沢山ひり出したもんだ。
遊女ってのは解らねぇな。あんなお上品そうな面の下で、こうも溜め込んでるんだからよ」
平七は下向きの声で告げながら、伊代の顎を掴み上げる。
そして、涙に濡れた瞳を真正面から覗き込んだ。
義理や人情をまるで解さない、濁りきった瞳……伊代はそれを渾身の力で睨み据える。
平素より目力の強い伊代が睨めば、大方の男は目に見えて気を萎えさせた。
それを伊代自身もよく解っていた。
しかし……平七は、その伊代の睨みを全く意に介さない。
薄ら笑みを消さぬまま、面白そうに伊代の顔を覗き込んでいる。
その理由は、本当は伊代にも解っていた。これほどの恥辱を晒した女を、男が恐れる訳がない。
今の力関係は、明らかに平七の方が上なのだ。
「必死に虚勢張っちゃいるが、今にも白目剥いてぶっ倒れる寸前って顔色だな。
仕方ねぇ、今日はこれぐらいで勘弁してやる。
だが、近い内にまた来るぜ。これからは、来るたびに同じ事をしてやる。
浣腸ぶち込んでひり出させながら、俺の“男の味”を脳の髄にまで覚えこませてやるよ。
せいぜい楽しみにしてな」
平七はそう言い残して部屋を後にする。
残された伊代は、力なくへたり込むしかなかった。部屋に充満する異臭に包まれ、脱力感に身を支配されながら。
逃れられない。自分の身と心は、たつの身柄を質に、これから少しずつ侵食されていくのだ。
伊代はそう理解した。
「…………負けない……あんな男に………………!!」
脱ぎ捨てた桜色の襦袢を手繰り寄せながら、伊代は一人呟く。
加虐には屈さない。人としての尊厳は捨てない。
その誇りだけが、今日まで自分を自分たらしめてきたのだから。
※
以来、平七は数日置きに『淡春楼』へと登楼するようになった。
恥辱の行為は、常に浣腸から始まる。
緊縛したまま木桶一杯の浣腸を施し、自らの逸物をしゃぶらせる。そして、排泄を眺める。
幾度この汚辱を味わおうと、伊代の心が慣れることはなかった。
遊女ながらに、人一倍貞操観念の強い彼女は、排泄を晒すたびに苦渋の表情を浮かべた。
しかしその一方で、身体は慣れていく。
浣腸を耐え忍べる時間は長くなり、慎ましかった菊輪は浣腸によってかすかにほぐれ。
無理矢理に咥え込まされる平七の逸物の匂いは、ふとした生活の折にも鼻先で感じるほどに馴染んでいた。
角部屋の中、行灯の明かりが障子を照らす。
そこには二つの影が映り込んでいた。
這う格好のまま、尻だけを高く突き上げる細身の影。
前屈みになり、前方を覗き込むような小太りの影。
二つの影は、ある一点で繋がっていた。細い棒状のものが、突き上げた尻の中へと突き立てられている。
角度を変えれば、それが肛門の中に入り込んでいるのだと見て取れた。
脂で光る肛門には、鋏を思わせる形状の木製器具が嵌まり込んでいる。
それが肛門を、指が数本入る大きさに開いたまま固定していた。
棒状の器具が入り込んでいるのは、まさにその奥まりだ。
「どうした、今日はあの色っぺえ声を出さねぇのか。そろそろ感じてきた頃合いだろう」
「お……お尻の穴なんかで、感じる……わけ…………」
平七の下劣な言葉を、伊代はあくまで否定する。
しかしその矜持も、今となっては空しいものだ。
伊代はすでに幾度にも渡り、平七の前で愛液の滴りを晒してしまっているのだから。
平七は棒状の道具の取っ手を持ちながら、腸内に絵でも描くようにねっとりと動かし続けていた。
人間は排便の際にも快感を得る生き物。
ゆえに、腸内の様々な場所を刺激される体験は、強い異物感と共に強い快感をもたらしうる。
まだ固い入り口を強制的に拡げ、内部だけを緩やかに刺激すれば、肛門性感は飛躍的に高まっていく。
延々と直腸内を刺激されるうち、ああ、ああ、と艶かしい声が漏れるのも無理からぬことだ。
しかし、その嬌声は的確に伊代自身の弱みを示してしまっていた。
声の上がる場所が弱い部分だ。
平七は肛門を穿り返しつつ反応を見る間に、それをすっかり憶えこんでしまったらしい。
事実、伊代が必死に声を堪えている今もなお、的確に彼女の弱い部分を掻き回してくる。
平七の用いる道具は、先端に丸い球のついた棒が多かった。
日によって球の大きさは違い、今日は特別に大きいものが用いられている。
この道具は、太ければ善いという単純な物ではない。
細い物のほうが刺激は少ない。だが穴の中で小回りが効き、細やかな調教ができる。
逆に太い物は単調な動きになりがちだ。ただし刺激は強く、特に引き抜かれる瞬間には堪らない感触が襲ってくる。
未知の快感が、極太の珠によって幾度も幾度ももたらされているのだ。
「今さら声を殺したところで、とうに判ってんだぜ。お前の善がり方はよ」
平七は声に嘲りを含ませながら、道具を用いない方の手を静かに伊代の脚へと触れさせる。
剥き卵のような尻肉がちょうど終わる部分にして、脚の付け根。鼠蹊部だ。
「うっ……」
鼠蹊部に手を宛がわれた瞬間、伊代に悪い予感が走る。
そして再び道具が粘つくような動きを再開した時、その予感の正しい事を知った。
「ひひ、やっぱりな。前から、お前が声を出す時にゃあここも一緒に強張ってやがったのよ。
ここが張ってる時はつまり、お前が尻の穴で感じてる時ってことだ」
平七は的確にそう言い当て、鼠蹊部を擦りながら後孔内に円を描いていく。
「あっ…………あッ、っは…………!!」
さほどの時間も経たず、伊代から声が漏れる。
吐息ではない、嬌声だ。それを伊代自身が、充分にわかってしまう。
にちるっ、にちるっ……と繰り返される艶かしい音ばかりが、行灯の照らす室内に響いていた。
他には伊代の小さな吐息、あるいは外から漏れ聞こえる虫の音しかない。
同じような音が繰り返される。単調に単調に、単調に単調に。
しかし、その単調さこそが最も恐ろしいのだと、伊代は知っていた。
瞬間に燃え尽きる男とは違い、女の性感はじわりじわりと炙るように昂ぶっていく。
反応を的確に捉えながら、丹念に尻穴をほじくり回す……これなどは堪らない。
もう幾度にも渡り、伊代は秘裂の奥がかっと熱くなる感覚を覚えていた。
( ありえないわ。お尻の穴で感じるなんて―― )
頑なにそう否定していたのも、最初の数日のこと。
今ではそれが、肛門からもたらされる快感なのだと認めるしかなくなっている。
肛門性感とは、堪えようとすればするほど深みに嵌まる、蟻地獄のようなものなのだと知ってしまったから。
肛門内から棒が引き抜かれ、直後にわざとらしく舐めしゃぶる音がする。
伊代の肛門をたっぷりと嬲った先端部分を、平七が味わっているのだ。
恥辱を与える目的か、あるいは単なる嗜好か、彼は毎度の如くそれをやった。
「よし。すっかりよく蕩けた、腸液の味だ。お前もこの味になるのが、随分と早くなったな」
言葉で伊代の動揺を誘いながら、平七は再び肛門内に棒を差し入れる。
外気に晒されて冷えた腸内に、再び圧倒的な存在感で割り込んでくる固い異物。
それは勝手知ったるという様子で、当然の如く子宮の裏口を擦っていく。
「ーーーーーっ!!」
幾度もじゅんと蕩け、着実に子種を迎え入れる準備を整えている子宮だ。
そこを柔にでも刺激されれば、今の伊代はそれだけで喉元から細い声を上げそうになる。
平七は、そうした伊代の様を静かに観察し続けていた。
「さて、今日の仕上げといくか」
肩を鳴らしながら平七が言う。
夜も更け、さすがに平七も肛門調教にくたびれてきた頃だ。
連日様々な方法で責め立てた中でも、格別に効果のあった方法で調教を締めにかかる。
とはいえ、大層な道具はいらない。特別な準備も必要ない。
ただ……女の弱みを突くだけだ。
延々と続いた肛門性感開発の末、今や茂みの中で硬く屹立している柔な肉芽。そこを、掴む。
「っう゛!?」
突然の予期せぬ刺激に、つい伊代は声を漏らした。
陰核は、あらゆる人体器官の中でも最も性感帯の集まる場所だ。
そこを摘まれれば、意思とは無関係に身体が強張る。
当然肛門も、異物を中に咥え込んだまま、きゅうと締まる。
「ぐ!!」
伊代は再び声を上げた。肛門を締めたことで、太い珠の感触が、いよいよ強烈に感じられてしまう。
鼠蹊部に深い筋が走るのが解る。
そして当然それらの反応は、余さず平七に見透かされているのだ。
ぐちり、と肛門の深い部分で音が鳴った。伊代の昂ぶりを逃さず、平七が棒を動かしたのだ。
みしりと密集した粘膜の中を、無理矢理に硬く太い異物が踊る。
とてつもない快便の感覚が、ほどよく蕩けた伊代の神経を伝わっていく。
「あ、ああ、あ…………っ!!」
伊代は知らず声を上げていた。脊髄を伝って快感が頭を痺れさせたため、出さずにはおれない声だった。
そこから快楽という地獄が始まる。
陰核を摘まれて肛門を引き締めてしまい、そこを前後左右に抉り回される極感。
快便を幾度も幾度も繰り返すようなその体験は、都度、伊代の脊髄を甘い痺れとなって駆け上る。
脳が甘く痺れれば、濡れる。それが女だ。
伊代は自らの秘裂が、いよいよ涎を垂らし始めている事に気がついた。
女陰部にふよりと締まりがなくなり、這った姿勢で下腹部に視線をやれば、透明な雫がいくつも滴っていく。
それは、伊代の覚悟していた濡れ具合と全く同じ。
どれだけの肛門性感を得れば、どれだけ濡れるのか。それがすっかり把握できてしまっている。
平七は、その蕩けた伊代をさらに責め立てる。
最後とあっていよいよ丹念に、入念に、肛門内をひらいていく。
きゅ、と陰核を摘み、伊代の尻肉が強張った次の瞬間、太さのある棒の先を奥から引き抜く。
「おぉ゛お゛っ!!!」
瞬間、伊代の唇からはしたない声が漏れた。
伊代は目を見開き、慌てて手で口を押さえ込む。しかし、声を出した事実は曲がらない。
快感の凝縮しきった声が漏れたという事実は。
「そそる声だ、もっと聞かせろ」
平七は口元を歪めながら、いよいよ職人めいた手つきで肛門内をかき回す。
「………………っ!! ………っ…………………っっ!!」
伊代は必死に口を押さえながら、幾度も幾度も目を見開いていた。
唯一の呼吸器となった鼻からは、発情しきった犬のような息が漏れていた。
ぬつっ、ぬつっ、といよいよ艶かしい音が漏れる間中、その快感表現は続いていた。
そこからどれだけ経ったのか。
伊代は布団の上に横たわり、放心状態になっていた。
「へ、だらしなく濡らしやがって」
平七は袴を穿きながら、伊代を見下ろして嘲った。
疲弊しきった伊代は、自分の状態が解らない。
しかし秘部を隠そうと膝を曲げた際、足の甲が偶然にも秘裂に触れ、べとりと愛液が付着した事で己の濡れ具合を知る。
「また今度な」
高笑いしながら階段を下りる平七を見やりながら、伊代は一筋涙を流す。
単に悲しいという涙とは違うようだ。
しかし実際がどうなのかを考える余力はすでになく、そのまま眠り込むように意識を失った。
※
一体幾度に渡り、伊代は直腸性感を目覚めさせられたことだろう。
平七には調教の才があった。
否、あるいは女との情交の経験こそ乏しいが、女を嬲る事にかけてはもとより手慣れていたのかも知れない。
ともかくも、伊代はその度重なる慣らしによって、すっかり腸深くの性感を覚えこんだ。
今や四半刻ほど腸内を弄くられただけで、浅ましくうめきながら腰を上下させるまでになっていた。
そこへ至り、肛門調教は次の段階へ移る。
入り口を開き放しにして内部を弄くる責めとは対照的な、入り口付近だけを徹底的に開発する責めへ。
この調教は胡坐縛りで行われた。
平七は様々な緊縛を好んだが、この日のものは最も屈辱的だ。
この悪夢の調教が始まる前、平七の前で纏っていた振袖を着て縛られているのだから。
胡坐縛りのまま、肩を畳につけて裏返しになり、振袖の裾をはしたなく捲り上げながら肛門を晒す。
これ以上の恥辱があろうかというほど、浅ましい格好だった。
特に伊代などは作法その他に煩い娘だ。
当然、そのような仕打ちには憤りを露わにする。
さらに胡坐縛りで裏返しになる格好では、責める平七から常に顔が見えている事もあり、親の仇とばかりに平七を睨みあげていた。
しかし平七は、そうした伊代の態度をむしろ愉しんでいるようだ。
初めの一刻ばかり、平七はただひたすらに伊代の肛門を舐めしゃぶった。
飽きもせず、休みもせず。その執念は、伊代にとって理解しがたいものがある。
「さすがお武家の娘だけあって、可愛い肛門だぜ。とても糞する穴とは思えねぇな」
平七は尖らせた舌を窄まりに近づけ、そして舐め始めた。
ぴちゃぴちゃと、わざとらしく音を立てて。
皺の一本一本にまで舌を這わせていき、やがて舌を窄まりの内部にまで捻り込む。
伊代の桃のような尻肉を鷲掴みにし、頬まで肛門脇に埋めるようにして。
ひとしきり菊輪と腸の浅い部分に唾液を塗りこめれば、次は蕎麦でも啜るようにそれらを吸い上げる。
その、繰り返しだ。
苛烈な責めではなかった。腸奥を嬲られた時と同じ、じわりじわりと身の奥を炙る違和感。
伊代は声は出さなかった。
声は出さなかったが、反応はしてしまう。たまらなくなった時には、無意識に肛門付近に力が入る。
終わりがないのではと思える肛門舐めの中、幾度も。
単調な責めの間、考える暇は多かった。それがまたいけなかった。
どうしてこんな事に。
あられもない格好を取らされ、下劣な女衒などに不浄の穴を弄ばれる。何という屈辱。
そうした考えが頭の中を巡り、その背徳感が、なぜか余計に肛虐を強く意識させる。
(いけない……!!)
陰核を摘まれながら腸深くを抉られた時と同じ。
確実に膣の蕩けに繋がる感覚が、伊代の脳裏に迸る。背徳を感じるたびに。
「へへ……良い具合にほぐれたな」
充分に肛門を舐めしゃぶった後、平七は指で菊輪を開きながら呟いた。
夥しい唾液に濡れ光るそこは、もはや蕾ではない。
菊の花弁はみな僅かに上に反り、中心には舌を迎え入れるための小さな口を開いている。
平七はそれを満足げに愛でた後、頭陀袋から新たな道具を取り出した。
「次は、こいつを食わせてやる」
そう言いながら晒されたものを目にし、伊代は眉を顰める。
円柱の取っ手の先に、数珠のような珠が五つ連なった責め具。
大工が使うのではない。台所で用いられるのでもない。
あの形状のものを、肛門内に挿入しようというのだ。
「美味そうだろ。こいつで断続的に肛門を刺激される感覚は、かなり来るらしいぜ?」
平七はそう告げながら、異形の道具に唾液を垂らしかける。
そして、逃れる術のない伊代の前に膝をつき、尻肉を片手で押し開いた。
「さぁ、たんと善がれ」
その言葉が発せられた数秒後。強い異物感が伊代の脳裏に響いた。
「…………はぁっ……っ…………っは、はぁっ……はあっ………………!!」
かすかな息遣いが、障子部屋に響く。
それ以外の音はほとんどない。あったとて、外からのかすかな雨音に掻き消される。
湿気の多い部屋の中、伊代もまた汗みずくになっていた。
身はかぁと熱く、肩口の開いた振袖からは、自らの汗のにおいが漂ってくる。
道具を用いた責めは、それだけのものがあった。
肛門の浅い部分を前後する五連の珠は、一つずつ大きさが異なる。
先端に近いほど小さく、根元に近いほど大きい。
平七はそれらを巧みに操りながら、菊輪部分ばかりを入念に責め立ててきた。
時には、ゆったりと挿し込んだ後で強引に抜き。
時には、強引に挿し込んだ後でゆったりと抜き。
その繰り返しは、着実に菊輪の神経を活性化させてゆく。
いつかの快便の感覚が再び甦り、伊代に反応を強いる。
「…………っ、………………っっ!!」
伊代は声を上げる事はしなかった。
平七に容易く顔を見られてしまう以上、どうしてもそれは憚られた。
しかし、声を堪えた分は別の場所に反応が表れてしまう。
今回に関していえば、それは足指の先だった。
胡坐縛りに拘束された足首の先……白い足袋に包まれた両の足指。
快感を得ると、そこが伊代自身の意思に反して、親指から折れ曲がってしまう。
足袋の足裏に皺が寄った時、それが伊代の悦楽の時だ。
「気持ちいいだろう、ええ?」
平七は伊代に問いかけながら、目線の先ではしかと彼女の足指を確認していた。
弱みを握られたとき、ならず者は恐ろしい。
平七は伊代の足指の反応をもとに、的確な責め方を編み出した。
特に、螺旋をえがくようにゆっくりと引き抜くやり口は、まさしく伊代の泣き所だった。
唾液に塗れた責め具を置き、それでも責めは終わらなかった。
平七は胡坐縛りのまま伊代の身体を反転させ、膝立ちのまま這う格好を取らせる。
そしてその状態で、指を用いて再び菊輪を嬲り始めた。
左手で尻肉を割りながら、右手の人差し指と中指を一揃えにして挿入する。
肛門のごく浅い部分だけを様々に嬲り回しながら、時おり中の二本指と、外の親指とで菊輪の一部をしごく。
その動きを延々と繰り返した。
「あ、あ……あっ…………」
さすがにもう、伊代に声を堪えることはできなかった。
すっかり息が上がり、喘ぐしかないこともひとつ。
また這うようなこの姿勢は、ここしばらく腸の深い部分を調教されていた時と同じだ。
伊代はもはや、その姿勢で腸内を刺激されるだけで、軽い嘔吐感すら覚えるほどの興奮に見舞われるようになっていた。
否、そう『仕込まれていた』。
部屋には雨音にも掻き消されないものが二つあった。
にちにち、という音と、さりさり、という音。
前者は、汗をたっぷりと吸った畳を膝頭が擦る音。後者は、伊代の振袖がやはり畳を擦る音だ。
いずれも、尻穴嬲りに耐えかねた伊代が身を捩ることで起こる。
「良い具合だぜ。あれだけ嬲っても、まだ食い千切りそうな締め付けたぁ……さすが足腰が強ぇな」
平七は嬉しげに囁きかけた。
まさにその言葉の最中にも、自らの肛門が二本指を締め付けるのを、伊代自身も感じていた。
やがて二本指が一旦引き抜かれ、舐めしゃぶる音が聞こえてくる。
平七がいつもそうするように、嬲った指を舐めているのだろう。
伊代は、畳の目を睨み据えてその恥辱に耐えた。
その直後、再び尻穴に指が触れる。まずは一本、そして二本。
しかし今度はそれで終わらない。平七は、さらに二本の指で肛門を押し拡げる。
「っ……!?」
伊代は目を見開いた。その間にも、四本の指はいよいよ第二関節まで肛門内部に入り込んでくる。
平七は四本指をそれぞれ別方向に引き、目一杯に肛門を拡げた。
「おう、よく開くもんだ。美味そうな腸が丸見えになってるぜ」
恥辱の言葉。伊代にも、腸の粘膜が外気に晒されているのが解る。
伊代は黙っていた。黙って、下唇の左端を血が出るほどに噛みしめていた。
幼い頃から、憤ると出てしまう癖。母親に窘められ、長らく出ていなかった悪癖だ。
肛門への嬲りが再開される。
平七はここへ来て、それまでの総括的な嬲りを仕掛けた。
「おら、自分でも解るだろ? お前の尻穴は、初めこそ蕾みたいだったがよ、すっかり解れちまった。
今は淵が赤くなって、ちまい口開けたままプックリと膨らんでるのよ」
左手の親指、人差し指で菊輪全体を摘み上げたまま、右の人差し指で菊輪の裏側をなぞる平七。
「…………っぉ…………ぉ゛、っ………………!!」
もうその時点で、伊代はいつかの『はしたない』声を上げそうになる。
腹ばいになって肺の圧迫される状態が、かろうじて声を押しとどめたようだ。
伊代はそのまま顎を引き、喉元まで出かかった声を完全に押し殺す。
しかし、それも長くは続かない。
四本の指が三度目に肛門を押し開き、次いで二本指で臍側へと腸の浅くを押し込まれた時。
角度がとても悪かったのだろうか。
「んひぃいいいっっ!!!?」
伊代は天を仰いだまま、とうとうはっきりとした声を上げてしまっていた。
すぐにはっとして口を噤むが、後の祭り。
背後からは、平七の押し殺すような笑いが聴こえてきていた。
「いやぁ参った参った、随分と辛抱強かったなぁ。どこで声を出すかと、心ン中で賭けてたのよ。
賭けは俺の負けだったが…………もういい加減、限界って様子だな?」
平七はそう言いながら、二本指でさらに腸内を弄繰り回した。
間を置かないその責めで、ますます伊代は昂ぶっていく。
肛門のほんの浅い部分しか触れられていないにも関わらず、腸の深くが疼く。
数日前までの丹念な開発がそのままに甦り、腸が蠢いているのが解る。
当然、腸だけではない。腸が蕩けるときは、かならず子宮も子作りの準備を始めていた。
今もそうだ。身の奥が、どうしようもなく熱い。
「いやらしい腰つきしやがって。尻穴の入り口を穿られるうちに、また深くまで欲しくなってきたんだろう」
平七の声が耳元でそう囁きかけた時、伊代は思わず息を呑んだ。
見抜かれている。
初めて目にしたときは愚鈍な男という印象だったが、とんでもない。
腐っても女衒。こと女体の開発にかけては、潔癖な伊代などより一枚も二枚も上手なのだ。
「さてと。んじゃあそろそろ、褒美をくれてやるか」
平七は一通り笑うと、いよいよ隆起しきった逸物を伊代の後孔に宛がった。
その瞬間、伊代の総身に鳥肌が立つ。
「…………い、いやっ! やめて、お願いそれだけはやめてえっ!!!」
やはりどうしても、排泄の孔で男を迎え入れる事は辛抱ならない。
いざその時になって強くそう感じた伊代は、後ろを振り返りながら懸命に叫ぶ。
しかし……下卑た陵辱者が、そのような制止を聞き届ける道理はない。
むしろいよいよ耳元にまで笑みを深めながら、片手を添えて挿入を敢行した。
「いや、いやいや、いやっ…………」
焦らすように入り口付近で浅い抜き差しを繰り返し、伊代の恐怖を煽る。
そしてその末に、とうとう尻肉を両手で鷲掴みにした。
「おうっ!」
気合の声と共に、渾身の力を込めて肛門の内へと埋没させていく。
「……ふぃうあ…………ぁぁ、ぁ……!!!」
この肝心な時に、伊代は叫ぶ事が出来なかった。
振り返りを弱めたまま頭を垂れ、怯えきったように声帯を震わせるばかり。
それは、彼女が今まで思い描いてきた、窮地における在りようとは余りにかけ離れたものだった。
「ん゛……ぐ、ぅ゛……。……う゛っ……んう゛う゛っ…………!!」
剛直が僅かに奥へと入り込むたび、伊代は苦悶に満ちた声を漏らす。
剣術で鍛えた肉体は、力みによってその背の窪みをいよいよ魅惑的なものとする。
犯している側からすれば、さぞや絶景だろう。
「うおおっ……すげぇ、なんつぅ締め付けだ。絡み付いてきて、最高だぜ」
平七は賞賛しながら、いよいよ強く尻を掴んで腰を打ちつけた。
尻肉に指が食い込む様から、全体として引き締まった印象の伊代も、尻の肉付きはよい事が解る。
パン、パンという肉の叩きつけられる音が響きはじめた。
結合部からも、ぬちゃぬちゃと何とも淫らな音が漏れている。
伊代は腹ばいの姿勢で為されるがままになっていた。
どれだけ激しく突かれようと、右肩を畳につけたまま動かない。あるいは、動けないのか。
「すっかり大人しくなりやがって、浸ってやがんのか? まぁ、それもいい。
おら、尻穴締めてひり出してみな。クソするみてぇによ」
平七は半ばほどまで挿入したまま、伊代に命じる。
伊代はそれに従うしかない。腸内の異物を排出したい一心で、括約筋を締めて剛直をひり出す。
しかしその瞬間、伊代の背に快感の筋が走った。
「くっ!!」
凄まじいまでの快感。
幾日にも渡って嫌というほど舐めしゃぶらされた、平七の怒張が脳裏に浮かぶ。
凶悪なほどにエラの張ったカリ首、血管を浮き立たせたまま下方に膨れた肉幹。
それらが強烈に腸粘膜や菊輪を捲り返したのだ。
「くく、善いだろう。クソする時みてぇで最高なんだろう。おら、もっと“させて”やるぜ」
平七はそう言いながら、さらに抽迭の勢いを増す。
噎せるような体臭と共に、汗が伊代の背に滴り、そして悦楽が彼女の脳を支配する。
丹念に丹念に、腸内をかき回す責め。
口戯の時から解っていたが、平七の持ち物は太さも長さも申し分なく、腸内を隙間なく満たす。
根元まで押し込まれると、腸の形を無理矢理に変えられるかのようだった。
もっともまずいのは、よく張ったカリ首が子宮の裏側を執拗に擦り回すことだ。
それをされては、女は耐えられない。
激しい突き込みで身体が前後する中、身体が後ろへ流れる時に足首に雫が滴るのが解った。
胡坐縛りになった状態で、真上にあるのは秘裂だ。
女陰がどろどろに蕩けきり、発情しきっている事は疑う余地もない。
ならばせめて、それを平七に知られたくはなかった。
「あ、ああっ…………!! んああ゛っ、あ゛っあ…………あ、あう゛う゛……ん……ぐぅ……ああ!!」
伊代は尻穴を貫かれながら声を上げ続けた。
平七の意識を上方に向け、秘裂の状態を悟らせまいと意識すればこその行動だ。
しかし。平七は、まるで心が読めるかのように伊代の隠し事を暴く。
「こんなに濡らしやがって……ここには一度も触れてねぇはずだがな?
まったく驚きだぜ。お武家の娘ともあろうお方が、尻穴を犯されてこうまで浅ましく成り果てるとはよォ」
伊代の腰から手を回し、秘裂を弄りながら平七が囁いた。
伊代はそれを聞き、三度ほど忙しなく瞬いた後、観念したように目を閉じる。
注意を逸らそうと喘いだのも、全くの無駄だった。
いや、それどころか、喘いだことで余計に快感を受け入れやすくなったようだ。
あ、あ、と喘いでいた間は、悦楽が腸から口にまですっと通り抜けるかのようだった。
変に声を堪えようとすると、不自由に思えて仕方ない。
「…………っ、………………う、ぅう゛う……っぅ゛っ………………!!!!」
それでも、伊代は声を堪える。堪えられるうちは。
快感に身をゆだねて声を上げ続ければ、やがて脳まで蕩けてしまいかねない。
そうなってはならない。
これからも平七は、暇が出来れば伊代を買い、肛門を犯し抜くだろう。
伊代を背徳の泥沼に沈めようとしてくるだろう。
その加虐に、どこまで耐え忍べるか。どこまで人でいられるのか。
最早それだけが、伊代のすべてだった。
終
ふぅ・・・
珠玉の長編、堪能させて頂きました
いいなあ、時代物・・・
乙
容量がいっぱいいっぱいだな
屈服させた後の話も読んでみたいかも
たつの前で、とか
たつに責めさせる、とか
長編キテター
うーん、やっぱりたつに責められる伊代が見てみたいぞw
平七に命じられ、おっかなびっくり伊代の菊門に指を挿し込んでゆくたつ
伊代はより深く咥え込もうとでもするかのように、はしたなく尻の穴を喘がせる
まるで指を舐めしゃぶられるような腸壁の感触に、嫌悪以外の感情で鳥肌を立てるたつ
平七はたつの指を咥え込んだ伊代の尻穴に自身の指を割り込ませ、
手とり足取りならぬ「指取り」で、たつに尻穴責めの手管を仕込んでゆくのだった