リトが薬を打たれてから、そろそろ一時間。正確には四十八分。
実に五十分近くもの間、彼は一瞬も休まず射精していた。
たった今まで顔騎されていたせいで、彼の顔は雨後のようにズブ濡れだ。
御門ときたら、表情は澄ましているのに、愛液は大量に垂れ流していた。
途中で何度かリトが溺死しそうになった程だ。
「がはっ、おふっ! んうぉっ! も、ヤメっ……んぎぃあっ!?」
俺が一体何したってんだ。
そんな恨みがましい事を言ってやりたくなる程、リトは苦しんでいた。
なまじそこに快楽が混じっているのだから、余計にタチが悪い。
先だっては晴子相手にSの気性を見せ付けた彼だったが、
根っこはやはりMなのだと、彼自身再認識せざるを得なかった。
「抵抗しちゃダァメ。ま、抵抗する余力なんて無いでしょうケド?」
御門はそう言うと、未だ射精衰えぬリトの上に、騎乗位で跨り始めた。
触れる前から、迸る精液が陰唇に直撃し続ける。
入れる最中も、精液はずっと暴発し続けた。
射精しながらの挿入は、リトに更なる苦楽を与えた。
「んおぉぉぉぉぉぉっ!?!?」
「う、んっふ、気持ち良い……。
入れながらの子宮口直撃射精って、何度やっても素晴らしいわぁ」
薬の効果は、注射からほぼ一時間で切れる計算だ。
残り十分間、御門はひたすらピストンを続けた。
勿論その間も、リトはずっと射精し続けていた。
「アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ」
胸の巨峰を存分に揺らしながら上下動する御門の顔は恍惚として、
平生見せる彼女の知的でクールな顔とは一変していた。
そうでありながらもしかし、彼女の内面は冷静さを忘れておらず、
よりリトを虐める為に、そのか細い指がリトの乳首をクリクリ弄り回す。
目の前で見事なバストが揺れているのに、リトときたら、
そこに手を伸ばして揉む余裕さえ無かった。
御門の膣はそれ自体が生き物のように精液を飲み続けていたが、
溢れた精液は早くもリトの睾丸を伝ってベッドの上に垂れていった。
そして、こうまでリトがイキっぱなしであるにも関わらず、
御門の方は最後まで本格的に絶頂に達する事は無かった。
それは彼女が不感症なのではなく、ただ経験値による余裕だった。
今まで御門を、怖いと思った事が一度も無いと言えば、嘘になる。
優しい、心の温かい人だとは思っているが、その内面に
底の知れなさのようなものも垣間見えると、リトは思ってきた。
その底知れなさの一端の、冷徹なまでのサディズムを、
今宵リトは初めて身を以て思い知らされた形となった。
……だが。
薬の効果が切れて、呼吸も落ち着き、射精も止まった今。
彼の体中に撒き散らされた精液を、その舌でねっとりと舐め回し、
体表面を掃除してくれている御門の眼差しに、やはり温もりも感じるのが事実だ。
「こんなに汚れちゃって。一方的に負けるのは初めてだったんじゃない?」
「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」
「ふふ。答える余力も無いくらい、消耗しきったのね。
無理も無いわ。あの薬、地球人相手なら本来は二十倍に希釈しなきゃだし」
「な……何で、こんな事……」
今まで体を重ねた女とは、秋穂を除いてほぼ例外無く心を通わせてきたリトだ。
その秋穂とだって、本格的な恋愛関係になっていないだけで、
男女としてそれなりに心を通わせてはいる。
しかし彼は初めて、体が交わっても、心が交わらない相手が居る事を知った。
御門の考えている事がてんで読めず、当惑は今尚収まらない。
「教えてあげたかったのよ、あなたに。犯される側の感じてる怖さを」
「怖、さ……?」
問いかけるリトに、御門は一時間前に使ったばかりの注射器を持ち上げ、
その先端を照明の下にちらつかせながら語り続けた。
「注射が怖くない人間なんて少ないわ。
怖くないと思ってるのは、それを扱う医者を信用してるから。
医者なら間違いは無いだろうって、皆思い込んでるからよ」
「あっ……」
そう言えば、お静に注射されかかった時、確かにリトは恐怖していた。
医師免許を持たないお静に注射などさせて良いのかと、危惧していた。
「でも、医者でも何でもない、知らない人にいきなり注射器向けられて、
それでも安心して身を任せられる人間なんて、普通は居ない。
この人は本当に安心なのか、この薬は本当に安全なのか、不安になるものよ。
そしてそれは、セックスでも同じなの。特に、女の子はね」
御門は、今までリトが持ち得なかった視点を、彼に語った。
「私は別に、男女平等を笠に着て、女権を主張しようなんて思わないわ。
でも、事がセックスにおいては、明らかに女の方が不利なのよ。
乱暴にされたらどうしようとか、ゴムつけてくれなかったらどうしようとか。
万一妊娠しても、この人はちゃんと責任を取ってくれるのか。
仮にこの相手と出来ちゃった結婚するかも知れないとして、
そもそも自分は本当にそこまでこの人を信頼し、安心しきれるのか。
勿論、男の方にも不安がある事は分かってる。
準備されてるコンドームに穴が開けられたりしてないか。
実はエイズや性病を持ってるんじゃないか、ってトコかしらね。
でもそんな不安要素は、男の側が自分で制御出来るのよ。
コンドームは自分で用意すれば済むし、性病は簡単に予防出来る。
今日は安全日だからって嘘つかれても、信じずに避妊する自由が、男にはある。
ところが、そんな自由、女には無いも同然なの。
終始我儘なペースで腰を振られるかも知れないし、
何度頼んでも決してゴムをつけてくれないかも知れないし、
あんまりパワフル過ぎるとナカが傷ついて出血する事もあり得るのに、
女はそれを自力で防ぐ手段が、何一つ無いのよ」
滔々と語り続ける御門の言葉は、リトにとっては目から鱗だった。
今まで彼は、避妊をした事が一度も無い。
妻と全ての愛人達に対し、常にゴム無しでヤってきた。
ひょっとすると誰か妊娠しているかも知れないが、責任は取るつもりだし、
何より女達の方が、避妊を拒んでいた。
だから彼は、見落としていた。
世の中の大多数の女達は、御門が言ったような不安を抱えているのだと。
逆に言えば愛人達は、そんな不安を覚えない程、自分を信用してくれているのだと。
「私は殊更、男はこうあるべき、女はこうあるべきなんて、言うつもりは無い。
それでもやっぱり、セックスの時だけは、男は女に優しくすべきだと思う。
勿論女の方も、男の優しさを信じてあげる必要があるし、男に優しくする必要もある。
関係が馴染んできてからなら兎も角、お互いが初めて愛し合う最初の一回目くらいは、
二人とも相手に優しくして、相手の優しさを受け止めあうべきだわ」
「それが……俺に足りなかった事、か……」
今やリトは、全てを理解していた。
どうして今日に限って、御門がわざとサディスティックに振る舞ったのか。
その直後リトの体の精液を掃除する時、どうしてあんなに優しかったのか。
あの酷薄なセックスの後に見せられた御門の温もりに、リトは心底安堵したものだ。
翻って、今まで自分は、女達にどうしてきただろうか?
誰もがリトとの交わりに満足してくれてはいたが、それは結果論だ。
たまたま全員、力強いセックスを好んでくれていただけだ。
そうでない女も、この先いつか出会うかも知れない。
その時自分は、その女を果たして安心させ、満足させられるだろうか。
「さ、性教育はお終いよ。結城君にはまだ今夜の本番が控えてるじゃないの」
御門は全裸のまま立ち上がると、背後に立ち尽くしていたお静に視線を振った。
お静との初めての交わりは、徹頭徹尾、スローセックスだった。
お静もそれを望んでいたし、リトも満更ではなかった。
最近のリトは、キスと言えばディープキスがデフォルトだったが、
今回は敢えてソフトタッチなキスのみに徹底していた。
「うふふ……これが接吻なんですね。心が安らぎます」
心が安らぐ、か。新鮮な感想だ。
美柑などはリトとキスすると「気分が変になっちゃうよぉ……」と言うのが常だ。
ヤミはストレートに「えっちぃ気持ちになってきました」とはにかむ。
だがそれも、結局はリトがディープキスばかりしているからであり、
たまにはもっと優しいキスをしてやっていたなら、違う感想が聞けたかも知れない。
多少なりとテクニックを身につけて来た自負もあったものの、
根本の部分で自分にはテクが足りていなかったのだと、リトは自覚した。
体を使ったテクではなく、心を使ったテクが。
「この後は、えぇっと……どうすればよろしんでしょう?」
可愛く小首を傾げるお静に、リトは紳士的に言った。
「お静ちゃんは何もしなくて良いんだよ。全部俺に任せて」
まだお静は制服を着たままだ。ブレザーすら脱いでいない。
その着衣の上から、リトは優しく彼女の肩を撫でた。
いきなり乳房や股間に手を伸ばしたりはしない。
いつもはそうするのだが、今回は別だ。
リトはお静を抱き寄せ、額をコツンと当てた。
そうするとお静も自然と、ほんわかと笑った。
「何だかこういうの、恋、ってカンジがしますねぇ」
「そうだな。こういう落ち着いたのも、何か良いや」
リトは多数の愛人を囲っていながら、いつの間にか恋心を忘れかけていた。
愛情はあったが、それは純朴な意味での「恋心」とは違っていた。
青少年が抱く、拙いが真剣な、淡い恋の音色。
心臓と呼吸とが織り成すその音色を、彼は久しく忘れていた。
何度キスを重ねても、恋の実感と言う一点においては、
今行っている額と額の触れ合い、至近距離での微笑の交差に及ばなかった。
リトはお静の背に両腕を回し、優しい力で抱き締めた。
「もっと強く抱き締めて良い? お静ちゃん」
「ん……良いですよ、リトさん」
リトはゆっくりと力を込めながら、彼女の体を自分に一層引き寄せた。
ララ相手なら、最初から全力でキツく抱き寄せるものを。
だがこのゆっくりさが、今の彼には至福の時だった。
長く忘れていたトキメキ、ドキドキが、そこには確かにあった。
お静が服を脱ぐのは、二人の共同作業だった。
リトは彼女に「何もしなくて良い」と言ったが、
服を脱ぐくらいの事は手伝わなければと、お静は殊勝な事を言った。
ボタンはお静が外すが、ボタンが外れた後の服を肩からそっと脱がせるのはリトだ。
こんな布きれは邪魔とばかりに、その辺に放り投げたくなるが、
その衝動を今はぐっと堪え、丁寧にベッドの隅にどけてやる。
そうしてとうとう下着姿になったお静に、リトは今一度キスをした。
保健室のベッドは高級品ではないから、鉄パイプが軋んだ音を小さく立てる。
そのキスの姿勢を維持したまま、リトはゆっくり、お静をベッドに押し倒した。
それは「押し倒した」と言うより、ただ「寝かせた」と言った方が近かった。
そのくらい、彼のリードは優しく緩やかだった。
本当ならもう下着も全て取り払ってやりたいのだが、今はまだその時ではない。
それによくよく考えると、下着姿と言うのもソソるものがある。
最近身につける事に慣れてきたらしいブラジャーとパンティは、
お静の清純さを表すかのように、無垢な真っ白だった。
他の女達ならもうこの時点で股を少しく濡らしているところだが、
お静はまだキスだけで濡れる程の女には育っていない。
ここを湿らせてやるのは、ここからのリトの頑張り次第だった。
リトはキスを継続しながらも、ブラの上から彼女の乳房を優しく撫でる。
いきなり生乳を揉もうとしないのも、彼の優しさの表れだ。
こうして徐々に、お静の緊張を解し、体の準備を整えていってやるのだ。
ふと思い立ち、リトはそれまで四つん這いに近い姿勢だったところから、
そっと姿勢を崩して、自分自身もまたお静の横に並ぶように寝転んだ。
「頭、ちょっと持ち上げて」
「はい」
素直に従うお静の首の下に、自分の腕を通す。腕枕の格好だ。
セックスが終わった後のピロートークの最中でなら兎も角、
前戯の段階からこんな事をしたのは、リトにとっては初めてだった。
無論、ただ腕枕をするだけではない。
一方の腕でお静の枕になってやりながら、もう一方の腕はやはり胸を触る。
「リトさん……好き……」
その言葉は、お静の合図だった。
もうブラジャーなんか取っても良いですよ、という意味なのは言を待たない。
リトはかつて秋穂や春菜に習った時の要領で、お静のホックを外した。
陶器のように真っ白な肌。そこに鎮座する桃色の乳首。
だがお静の体はまだリトに開発される前だからか、
乳首はそれ程固くはなっておらず、自己主張は控えめだった。
いきなりむしゃぶりついたりせず、リトは静かに乳房全体を撫で回す。
それは愛撫と言うよりは、眠る幼子の頭を撫でるかのような優しさだった。
段々と乳首が硬度を増してくるが、まだ本格的には固くなっていない。
うっすらと立ちかけている乳首を、リトは指先で柔らかに擦り始める。
その手の甲の上に、お静が自分の掌をそっと重ねた。
「好きです、リトさん」
さっきも聞いたよ、などと意地悪な応答を、リトはしない。
代わりに、いつどんなタイミングで好きになったのか、聞いてみる事にした。
「今日の夕方、私を守ってくれた時ですよ。
皆さんがリトさんを愛する理由が、よく分かった気がしました」
「あんな事で? ……でも、これからも俺は、君を守り続けるから。
犬だけじゃない。宇宙人が攻めてきたって、何が何でも、俺は君を守るよ」
「ふふっ。有難う御座います。でも、勿論……」
お静はより深くリトの腕枕に埋没しつつ言った。
「他の女の人達の事、蔑ろにしちゃ駄目ですよ?
皆がリトさんの恋人なんですから」
恋人。
妻でもなく、愛人でもなく。
お静が言ったその言葉は、リトの琴線に触れた。
そうなのだ。
ララも、春菜も、美柑も、秋穂も、ヤミも、メアも、ティアも、
晴子も、ルンも、キョーコも、全員。
何なら林檎や、御門だって今はそうだ。
全員がリトの恋人であり、彼女なのだ。
「愛人」という言葉は、、どこか性欲だけの関係のようにも聞こえる。
そんな後ろめたい言葉は、今後は捨て去るべきだ。
全員を恋人とし、それどころか、全員を妻に昇華すべきだ。
明日早速、女達にそう宣言し、認めさせようと、リトは決意した。
お静のおっぱいは美味しかった。
無論、本質的な意味での、味覚に由来するものではない。
彼女の体から仄かに香る肌の匂いと、緊張している彼女自身のウブさ。
それが舌を通じ、リトの中に流れ込んできたのだ。
先程までとは違い、今度はお静がリトに腕枕をしていた。
「リトさんが私に甘えてくれてるなんて、嬉しい……」
リトの頭を撫でながら、お静は彼に乳首を味わわせた。
両方の乳首を唾液で濡らし尽くすと、お次はいよいよ股間だ。
リトはゆっくりと彼女のパンティを脱がせ、うっすら茂った陰毛をまず眺めた。
「私のココ、変じゃないですか……?」
「綺麗だよ、お静ちゃん」
エロ漫画では語り尽くされた程に王道な言葉のやり取りだが、
さすが王道になるだけあって、このやり取りはお静を安心させた。
実際、乳首に劣らぬ程ピンク色の彼女の陰唇は、宝石のように綺麗だった。
そこをリトは、舌でやんわりと撫で回した。
深く舌を差し込んだりせず、クリトリスを虐めたりもせず。
ただ表面だけを、なぞるように舌で濡らす。
「どう? 気持ち良い?」
これは決して言葉責めではなかった。
唯なら「そんな事言わせないで」と顔を真っ赤にするだろうが、お静は違う。
そしてリトも、そんな反応は期待していなかった。
単純にお静を少しでも気持ち良くさせてやりたいだけだったし、
その意図はお静にも十分に伝わっていた。
だから、彼女は率直に答えた。
「よく分かんないです。くすぐったいんですけど、なんか、こう……」
少し躊躇いながら、お静は言った。
「もうちょっとだけ、ナカに入れてくれたら、多分……もっと良いと、思います」
その通りだった。
生暖かい舌の先端を膣内に滑り込ませてやると、お静はピクンと反応した。
「あ、これ……今までで、一番良いかも……」
請われるまま、リトは首を少し回転させ、緩慢な動作で
彼女の入り口を舌先でほじってやった。
「ん……はぁ……ふ……ふっ……んぁ……んっ」
ピストンは、極めて鈍いスピードで行われた。
作り物の体とは言え、破瓜の血は生々しかった。
御門がリアリティを追及していたからだろうが、痛みも結構あったようだ。
けれどもお静は、その痛みを十分程で乗り越えた。
挿入した直後は激痛に悶え、しばらく休憩したいとリトに言っていたものだが。
繋がったままでしばし休息していると、お静はやがて
「もう、動いて良いですよ……」と言った。
そして、今に至る。
二人は正常位でぎゅっと抱きしめ合いながら、シーツの上でゆるやかに交わった。
カリ首は牛歩のように静かにお静の内壁を滑り、
そっと子宮口にキスをしては、またゆったりと入り口付近まで戻った。
お静の為にと御門が用意していたコンドームは、
お静自身の申し出で、使われないまま放置されていた。
妊娠はまだ怖いが、リトならちゃんと外に出してくれる、とお静は信じていた。
膣外射精でも先走り汁だけで妊娠の危険性はあるのよ、と御門は言ったが、
それならそれで構わない、とお静は覚悟を決めていた。
彼女は妊娠を怖がっていると言うより、どちらかと言えば、
親友である春菜より先にリトの子を身籠るのを避けたがっていただけだ。
今日ここでリトと愛し合う事は春菜にも伝えていたし、
春菜もそれを喜んでいたが、それでも抜け駆けはしたくなかった。
ただ、女の本能として、惚れた男の子供なら欲しい、とも思うのだ。
ちょっぴり春菜を裏切っている気もしないではないが、
最初はしっかり避妊するつもりでいた彼女が、
行為の最中にいつしかリトの子を欲するようになっていたのは、
お静にとっても御門にとっても当初の計算から外れていた。
「はぁ……ふぅ……俺……もう、イキそうだよ……お静ちゃん……」
「良い、ですよ……あっ……イって、アッ……下さ……」
「で、も……お静ちゃんは……まだ……だろ……?」
「だいじょぶ……ンっ……です……イかせて貰うのはぁ……今度の、機会で……」
さっきまで処女だったお静は、まだ到底絶頂には程遠かった。
そうそう都合良くイける程、彼女の性感は拡張されていない。
この時までリトは知らなかったが、大抵の女は普通そうなんだと、
後から彼は御門に聞かされる事になる。
「あっ……はぁっ……で、出るぅ……」
最後の瞬間だけ少しスパートをかけ、それからおもむろにペニスを引き抜き、
リトはお静の腹の上に、まるで今日一発目かのように濃い精液を発射した。
続く
乙です
642 :
名無しさん@ピンキー:2013/12/13(金) 22:39:31.99 ID:ZD5lb7pj
お疲れ様です!
続き楽しみにしてます
643 :
名無しさん@ピンキー:2013/12/17(火) 21:43:12.41 ID:1lglgJos
続きはよ
うふ〜ん
645 :
名無しさん@ピンキー:2013/12/27(金) 19:37:33.65 ID:Zb8UIzJU
ものすごく昔な感じがしますが、
新参者ってもう終わってしまったんですか?
646 :
名無しさん@ピンキー:2014/01/21(火) 18:25:27.99 ID:BRtvnJCB
過疎半端ないですね…
647 :
名無しさん@ピンキー:2014/02/08(土) 22:22:29.40 ID:Z/Yi27Gx
もう職人さんとかいないんすかね…
愛人契約とかすっごく先気になるんすけどねー
648 :
名無しさん@ピンキー:2014/03/16(日) 12:18:07.63 ID:iw7vId7T
誰か過去ログも保管庫に上げてもらえないですかねー。part15の途中あたりからのを読みたいと思ったら一々移動するの手間ですし。
649 :
愛人契約:2014/04/04(金) 02:06:52.50 ID:M14HWmbO
本当は同じ人物が連続で投下なんてしたくないんだけど
三ヶ月待っても他に投下する人が誰も出て来ないから
マイルールを破って
>>640の続きを投下します
愛人契約 第十一話
今回の標的は沙姫と凛と綾
全ての愛人達を、恋人にする。
リトがそう宣言した時、喜ばない女は居なかった。
元より正妻だったララと春菜は勿論、唯や美柑も満面の笑みで頷く。
「そうね。私達、もうどこか彼の恋人の一人であるつもりで居たけど」
「よく考えたら、今はまだ、ただの浮気相手だったんだよね」
本質的には浮気ではないが、名目上はそうなっている。
地球の、しかも日本の法律においては、リトが結婚出来るのは一人だけ。
今のところ婚約者の地位は春菜のものになっているが、逆を言えば、
将来的にリトの子を孕んで良いのもまた、春菜だけなのだ。
デビルーク星の戸籍の方から見ても、リトと子を為せるのはせいぜいララのみ。
それ以外の女達は、リトの子は産めてもあくまで妾にしかなれず、
生まれる子供は非嫡出子にしかなり得ない。
晴子などは「一人でも立派に育ててみせます!」と意気込んでいたし、
リトの方も出来得る限りで全員を扶養するつもりで居たが、
それはそれとして、法律上や体裁上の都合は解決していなかった。
「でも、全員を恋人にするって言っても、具体的にどうするんですか?」
回答は分かり切った上で、敢えてティアは聞いた。
リトの答えは明瞭だった。
「今のままで良いんだよ。このままデビルーク王位を継承してしまえば。
その後で俺は、地球側に交渉して、地球を正式に銀河統一連合に迎え入れる。
法律もその時にすり合せて、銀河全体で、一夫多妻制を施行するんだ」
元よりそれはモモが以前から言っていた提案ではあったが、
それを改めてリトが口にした事実は大きい。
以前はハーレム計画にすら乗り気でなかったリトが、
今、自分の意思で、ハーレムを作ろうとしているのだから。
「でもさぁ、地球ってまだ、宇宙と全然交流無いに等しいワケじゃん?」
「だよね。まずは地球に宇宙人の存在とか周知させるトコから始めないと」
リサとミオが、現実的な課題を口にする。
この問題は地球人である彼女らより、モモやヤミの方がより強い懸念を持っていた。
「地球は現在、他の星々と違って、星単位ですら統一を果たしていません。
例えば、デビルーク星を統治している王は一人だけですが、
地球の場合はこの日本や、アメリカや、中国や、ロシア……
三桁にも及ぶ政権がそれぞれ独立して機能しています」
「地球が今まで銀河統一連合に参入出来ていなかった理由も、そこにありますね。
参入出来ていなかったと言うより、一言で言えば、見向きされていないんです。
交渉するにあたっての窓口がどこの誰になるのか、明確になっていませんから」
聞けば、地球より遥かに多種多様な種族が混在していて、
それにも関わらず全体で統一国家を形成している星など、いくらでもあるらしい。
翻って、霊長類という単一の種族が実質的に全域を支配していながら、
その霊長類の中ですら政治や思想の統一が成されていない地球と言う星は、
思考能力の足りない野蛮な未開種族としか、宇宙からは見られないとの事だ。
かつてザスティンやギドが、地球人を格下に見ていた理由もここにある。
彼等にとって地球人は、当時は共食いをするザリガニと同等にしか見えなかった。
地球の法律を変える為には、地球を銀河統一連合に加盟させる必要がある。
地球を銀河統一連合に加盟させる為には、地球の国家間を統一させる必要がある。
地球の国家間を統一させる為には、地球人に宇宙の真実を伝え、
狭い地球の枠組みの中での「国境」などという概念を、まず失くさせねばならない。
そんな簡単な三段論法の末に、リトは結論を導き出した。
その結論も結局、最初から目の前に提示されていたものだった。
「まずは俺が、デビルーク王になる。それから、地球に宣言するんだ。
宇宙には地球人の知らない星や文明、異星人が多く存在してるって。
だから地球も、宗教や政治で対立なんかせず、まずは一つの国家になろう、って。
高校生の俺がそんな事を声高に主張しても、誰も聞く耳持たないだろうけど、
宇宙と地球の架け橋となった存在になってからなら、説得力は段違いだろ?」
その時には説得力の駄目押しとして、巨大宇宙船で地球に凱旋もしよう。
最初こそ、その威容は威圧的とすら捉えられ、地球人達を恐怖させるかも知れない。
だが、そのくらいのインパクトが無ければ、各国政府を動かす事は困難だ。
今でさえララやヤミといった宇宙人達が、地球人に紛れて生活しているが、
彼女らがある日突然「私は宇宙人です」と宣言したところで、
各国首脳がそう簡単に信じ、統一に向けて動き出してくれるとは考えにくい。
ララ達の存在は、ただの頭のおかしい人としか見られまい。
「ついにリトさんが本気になりましたか。
リト・デビルークを襲名なさる日も、そう遠くありませんわね」
未来の王の勇ましい姿にうっとり見惚れるモモの隣で、
御門は冷静に、もう一つの課題を提示した。
「でもリト君、王になるのは良いとして、執政とか外交出来るの?」
「うっ、それは……」
大人の意見は、まだ幼稚なビジョンしか見えていなかったリトには重かった。
当面はギドの下で見習いをし、数年は勉学に耐え忍ばねばなるまい。
その期間内に出来る限り、政治家としての実力をつける必要がある。
「外交なら、得意そうな人が何人か居ますけどね」
モモは品定めするように、リトの愛人――否、恋人達――を見回した。
営業慣れしているルンやキョーコは元より、
今ここに居ない林檎など、渉外がこなせそうな人物は少なくない。
何となくのイメージであり、実際に彼女らがそういう業務をしている場面は
一度も見た事が無いが、少なくともリトよりは大いに有望だろう。
モモがそう言うと、次いで美柑が、唯が、ララが声を上げる。
「じゃあ私、デビルークの宮廷料理人にでもなろうかな」
「王ともなると、生まれてくる子供に教育係も必要よね」
「それは新田先生とか、リトママ辺りが適任じゃないかなぁ」
そこから、女達は各々の役割を分担し合い、リトを手助けする方策を考え始めた。
「ねぇねぇ、王宮お抱えの医者としてなら、御門とティアが最適じゃない?」
「アタシ、一応雑誌記者だし、公文書とか演説の作成出来るかも」
「確かに秋穂さんなら適任ね。近衛兵の統率はヤミさんに、メアさんも有りだわ」
「美柑ちゃんだけだと給仕は大変だろうから、私も手伝うわ」
「西連寺さんがやるなら、私も。それなりに料理は出来るし」
リトの恋人達の中で、王の財力に甘えようなどと考える者は、一人も居なかった。
それぞれリトの妻になれる事に幸福を感じてはいたし、
専業主婦になる事が嫌というわけではなかったが、
彼女らは自立心や克己心において、いずれ劣らぬ者達でもあった。
リトとしては、彼女らを部下や配下のようには扱いたくなかったのだが、
本人達が働く意欲を出しているのなら、適材適所の采配はしてやるべきだ。
今日ここには来ていない沙姫や凛、綾を除いて、何故かリサやミオのような、
リトと体を重ねた事の無い者達までもが、やる気を見せている。
「来賓のもてなしなら、ミオの右に出る人は居ないんじゃない?」
「一応接客業のバイトしてるしね、私。しかもメイドだし」
「じゃあ私は幽体離脱を利用して、諜報活動とかしちゃいましょうか」
「お静ちゃん、あんまり物騒な事言わないでよ……」
「ところで御門先生って、そんなにリト君の事好きだったんですか?」
「うーん、何て言えば良いのかしらね。私、理想が低くないから。
私のお眼鏡に適う、結婚しても良いかなって思える男は、
今んところ結城君しか居ないのよねぇ」
「じゃあ御門先生は医療方面担当って事で、確定ですね」
現在海外に居る林檎を除き、珍しくほぼ全ての恋人達の都合がついたその日、
ララのラボの中は、将来の展望と計画に向けて、誰もが心躍らせていた。
唯一ナナは「じゃあアタシは王宮の動物の世話くらいしてやるか」と、
あくまでリトの恋人の一人になるのではなく、部下としての立場で言っていたが。
……しかし。
ギドからの緊急連絡が入ったのは、まさにその時だった。
『大変な事んなったぜ、テメーら。結城リトは居るか?』
「何でしょう、お父様。リトさんならこちらに居ますが」
応答したモモは、何故今日に限ってギドが音声通信をしてきたのか怪しんだ。
以前、次期デビルーク王位継承権の事について連絡してきた時は、
言葉の行き違いがあってはならないからと、わざわざ文書で送信された。
それ以降、モモは密かに、そして定期的に、
リトの愛人契約の進捗状況をギドに連絡していたが、
その時も文書によるやり取りしか無かった。
ギドの声を聞くのは、今日が実に久し振りとなっていた。
ホログラフィーを併用したリアルタイム音声通信の向こう側、ギドは嘆息した。
『……オイ結城リト。
今更慌ててズボン履いてる暇あったら、とりあえず落ち着いて俺の話聞け』
「わっ、ごっ、ごめんなさい! いやあの、えっと」
ララのラボは今やララの私室ではなく、リトとその恋人達の寝室を兼ねている。
元々仮想空間内に構築した部屋でしかなかったから、
プログラムを弄れば、間取りの拡張は容易い事だった。
リサ、ミオ、モモ、ナナを除く全員が、さっきまでここで絡み合っていたから、
リトに限らず、殆ど全員裸のままだった。
春菜や唯は慌ててシーツを手繰り寄せて体を隠していたが、
御門やメアは、ギドに見られている事も意に介していない。
『お盛んなのは結構だがな、結城リト。
出来れば今すぐお遊びは止めて、改めて愛人獲得に乗り出した方が良いぜ』
「愛人獲得、って……。いや、でももう、人数は揃ってんじゃ」
『それが、そうもいかなくなったんだよ』
ギドは立体映像越しに一同を見渡し、ややあって美柑に視線を合わせた。
『テメーが結城美柑か。結城林檎は居ないのか? まぁ良いや』
「あの、私やお母さんに何か用ですか?」
『別に用は無ぇよ。むしろテメーとその母親こそが、一番用無しなんだよ』
カチンとくる言い回しだったが、ギドが苛ついているのは分かる。
彼がイライラしながら話していた理由も、直後にリト達は思い知る事になった。
突然こんな話になれば、誰だって多少は苛ついただろう。
翌日は日曜日だったが、リトはすぐさま天条院沙姫に連絡を取った。
今までも何度か彼女の別荘やプライベートビーチに遊びに行った事はあったが、
リトの方から連絡を取る事は、極めて珍しかった。
そして彼は、駅前で沙姫と落ち合った。
ララや美柑が心配して同行したがったが、リトはそれを断った。
当初愛人契約を結んでくれる者達を探していた頃は、
ララもモモもナナも美柑も協力してくれていたが、
あれは本来、あまり良い事ではない。
リトの都合の為に相手と交渉するのだから、リト本人が動くべきだったのだ。
その頃のリトは愛人を囲う事に気乗りしていなかったが、
自らの意思で、愛人ではなく恋人達を囲うと決めた今ならば、
誰かに後押しして貰うのではなく、自分一人で交渉相手と向かわねばならなかった。
「それで、お話って何ですの?」
沙姫は相変わらず高そうな私服に身を包んでいた。
リトの方は一人で来たが、沙姫はやはり、凛と綾を伴っている。
リトを警戒して一人で会いたがらないのではなく、
沙姫がお供の二人を連れ立って歩くのは、いつもの事に過ぎない。
ただ、凛が私服でありながら竹刀を携行しているのは、
やはりリトを警戒しているせいかも知れなかった。
「その前に、まずは九条先輩と藤崎先輩に、お礼を言わせて下さい。
挨拶が遅れちゃって申し訳ないんスけど、今回は有難う御座います。
俺なんかの為に、名目上とは言え、協力関係を結んでくれて」
凛は近衛兵、綾は愛人として、それぞれリトと関係している。
だがその返礼は、もう何十日も前に、リト本人から受けている。
春菜と美柑が「菓子折り持ってった方が良いよ」とアドバイスしてくれたので、
リトはなるべく高そうなクッキーのセットを小遣いで買って、
既に凛と綾、そして沙姫にも、お礼の言葉を伝えに行っているのだ。
結局その時は三人とも「礼には及ばない」と言ってくれていたが。
「本題に入るのを躊躇ったな、リト君。そんなに言い辛い事なのか」
既に済まされている返礼を、今また繰り返したリトに、凛は追及した。
彼女の言う通り、リトは本題に入るのをなるべく先延ばしにしたがっていた。
けれどもいつまでも先延ばしには出来ない。
婚約発表まで、後十日を切っているのだから。
「実は……天条院先輩の協力が必要になったんです」
リトは全てを打ち明けた。
彼の奢りで立ち寄った喫茶店で、全ての話を聞き終えた時、
誰よりも憤慨したのは沙姫その人だった。
だがその憤慨は、リトからの申し出に対するものではない。
彼女は、宇宙人達の器の狭さに憤っていた。
「そんなの許せませんわ!
今更になって、妹さんやお母様では、愛人に認められないなど!」
「ちょっ、先輩、声大きいって」
周囲の客達が、沙姫の怒声に振り返る。
だが常識的に考えれば、血の繋がった妹や母親が、愛人になれるわけがない。
そもそも、たかが高校生ごときが、どうして愛人云々の話をしているのか、
周囲の客達にとってはそちらの方が不思議な程だった。
「ギド……ララのお父さんも、先輩と同じ事言ってましたよ。
今まであの人、俺の愛人獲得の進捗を、数日おきに連合に提出してたそうで。
美柑や母さんは初日から愛人リストに入ってて、
その頃は何も文句をつけられなかったのに、何で今頃……って」
進捗と言っても、実は当初からリトの愛人リストは、そう変わっていない。
実際に肉体関係を持ったのがいつであるかは別として、
建前だけの愛人なら、今回の話が始まった初日には、
もうかなりの人数が揃っていたのだ。
後はそこに、メアやティアが追加されただけに過ぎない。
つまり、当初からリストに加わっていた美柑や林檎が、
今更になって否定されるというのは、お門違いも良いところだった。
何より沙姫が憤っているのは、血縁者とすら結婚してもおかしくない宇宙の民が、
どういうわけかリトに対してだけはそれを許さない、と言ってきた事だ。
妹や母親とは、真の愛は育めないとでも言いたいのか、宇宙人は。
それでは地球人の固定観念と何ら変わらないではないか。
「そんなワケでとりあえず、俺、後二人も地球人の愛人作らなきゃなんです。
もう俺の知り合いで、残ってるのが天条院先輩くらいなもんで。
婚約発表終わったらいくらでも殴ってくれて良いんで、
今だけでも協力してくれませんか?」
沙姫が協力してくれたところで、まだ愛人枠は後一人空席のままだ。
それについてはどう埋めれば良いものか、未だにリトには分からない。
しかし少なくとも、埋められる席が一席だけでもあるのなら、
そこはさっさと埋めてしまって、懸念事項を少しでも減らしたかった。
タイムリミットは後十日も無いのだ。
いくら何でもこれは断られるだろうな、と半ば諦めていたリトに、
しかし沙姫は、しばし逡巡した後でこう答えた。
「よろしいですわ」
「えっ?」
「なって差し上げます。あなたの愛人に。名前貸しだけで良いんでしょう?」
「そ、そうですけど……いや、良いんスかマジで!?」
リトは驚愕しているが、凛と綾は澄ました顔だ。
沙姫ならこう答えるだろうと、彼女らは最初から分かっていた。
彼女らの冷静な反応を見て、リトも改めて思い出す。
思えば沙姫は、こういう女だった。
日頃の高飛車な物言いに隠れているが、本来沙姫は、面倒見の良い女だ。
素性や正体を知らぬままリコの世話をした事もあったし、
かつては虐められていた綾を助けた事がある。
最近はめっきり減ったが、以前はリトやララ達を誘って、
別荘やビーチに連れて行ってくれた事もあったものだ。
「良かったな、リト君」
「沙姫様を愛人に出来るのですから、光栄に思って下さいね」
「九条先輩、藤崎先輩……は、はいっ! 有難う御座います、皆!
俺、何て言ったら良いか……」
ただし、と沙姫は言葉を割り込ませた。
「ただし、条件があります」
「条件?」
「今日でも、明日でも構いませんわ。ザスティン様と一度お話させて下さい」
交換条件がそんな事で良いのかと、リトは首を傾げた。
しかし、彼女がザスティンを好いているのは、リトも知っている。
名目だけとは言っても、他人の愛人になる事を受け入れた沙姫にとって、
本命であるザスティンに伝えておきたい言葉は、いくらもあるに違いなかった。
すぐさま、リトはザスティンの携帯電話に連絡を入れてみた。
ザスティンは貧乏だが、暇人ではない。
漫画家志望として、また結城才培のアシスタントとして、
日々睡眠時間を削りながら生活している。
今も新しい投稿作の原稿作成に勤しんでおり、とても外出する時間は無い。
しかし客人を招くくらいなら出来ると、彼はリトの申し出を快諾してくれた。
もてなしは何も出来ないが、それで良いなら、との事だ。
ザスティンの住まいがボロいアパートだと聞いた沙姫は、
もし同居人が居るならそれらは出払っていて欲しいと、急に言い出した。
一軒家なら兎も角アパートでは、三畳一間もあり得ると思っての事だろう。
そうなると同居人は、嫌でもその場に居合わせる事になる。別室が無いのだから。
年頃の女の子が、惚れた男相手に、出来れば余人に聞かせたくない話をする。
その事情が分からぬ程鈍感でないリトは、ザスティンに無理を頼んで、
ブワッツとマウルには一時的にアパートから出ていて貰うように言った。
お陰で沙姫はザスティンと二人で話せる……とは、ならなかった。
ザスティンのアパートは郊外にあり、土地勘が無ければ辿り着けない。
リトの案内無しでは、沙姫はザスティンに会えなかったのだ。
後は「君を沙姫様と二人きりにするとロクな事になりそうにない」と、
凛や綾が同行する事になるのは、極めて自然な流れだった。
「ここですよ、先輩達」
「まぁ、ここがザスティン様のお住まい……何と風光明媚な事でしょう」
恋は盲目とはこの事だ。
どこをどう見たら、このボロアパートが風光明媚に見えるのか。
沙姫にはこの木造の安普請が、趣のある景観に見えるらしかった。
「おーいザスティン。天条院先輩連れて来たぞ」
玄関前でそう声をかけると、呼び鈴を鳴らすまでもなく、ザスティンが出てきた。
玄関のすぐ横に台所があるような狭いアパートだから、
呼び鈴どころかノックすら必要無いような環境なのだ。
「お待ちしてましたよ、リト君。沙姫さん達も、どうぞ上がって下さい。
たった今片付けが終わったところです。狭い場所で申し訳ありません」
普段原稿を書くのに使っているらしい卓袱台は脇にどけられ、
インクやペン先、トーン等の雑多な道具がその上に固められている。
来客があるからと一応シャワーは浴びていたらしく、
ここ最近のザスティンにしては清潔な外見をしていたが、
普段の彼は数日おきにしか入浴しない、不衛生な男になり下がっている。
それが証拠に、Tシャツの肩にはスクリーントーンの切れ端がついたままだ。
洗濯もろくにしていない事が分かる。
万年床らしい布団が男三人分、折り重なって窓際に詰められていた。
畳は普段布団が敷かれている部分だけを除き、日焼けして古びている。
座布団は三人分しか無く、そこに女達三人を座らせれば、
必然リトとザスティンは畳の上に正座という格好になった。
「それで、沙姫さん。私にお話とは、一体何でしょう?」
沙姫の想いに気付いてもいないザスティンは、邪気の無い顔で問うた。
まさかこれから、自分が愛の告白をされるなど、夢にも思うまい。
自分は邪魔者になるから退室しようとしたリトだったが、それを凛が制止した。
「待ちたまえ、リト君」
「え、でも、九条先輩。俺達は出てた方が」
「そうですわ、凛。結城リトどころか、出来ればあなた達にも、その……
いえ、決してあなた達が邪魔と言うのではなくて、ただ、やっぱり……」
告白するのに、周りにギャラリーが欲しいと思う者は、そうは居ない。
沙姫は普段は快活で活動的だが、恋の局面になると、途端にしおらしくなる女だ。
その事をリトは十分知っているし、凛や綾は尚更熟知しているだろう。
どうしてこの局面で凛がリトを呼び止めたのか、誰にも分からなかった。
彼等は明らかに、この場では邪魔者だった筈だ。
「私の勘だよ。多分君は、ここに居た方が良い。
その方が沙姫様の為になると思うんだ」
凛が何を考えているのか、リトには分からなかった。
沙姫の良き理解者である綾ですら、まだ凛の言葉の根拠が読めない。
それは当然の話で、今の凛の言葉の意味を理解するには、
沙姫という女を知っているだけでは駄目なのだ。
リトという男の事も知っていなければならない。
凛はそこまでリトと親しいわけではないが、かつての美柑との接触、
また凛自身が魔剣に寄生された時のリト自身の男気から見て、
リトがどういうタイプの人間であるか、多少は心得ている。
それにリトは、以前沙姫が家出をした時、必死になって沙姫を庇っていた。
彼の熱意と誠意は、今の沙姫とザスティンの為には、必要なファクターの筈だった。
そして、凛の思惑が分からないまでも、沙姫は凛を信用している。
凛がこう言うのなら、多分リトは居た方が良いのだろうと思い、
彼女はそのままザスティンと話を進める事にした。
「あ、あの……わた、私は、ですね……ザスティン様……の事が……」
予想通り、沙姫は途端にしどろもどろになった。
恋をしている時の沙姫の淑やかさは、春菜にも負けない程だ。
普段からその調子なら凄い可愛いのに、とリトは失礼な感想を抱いた。
「頑張って下さい、沙姫様」
「ファイトです、沙姫様!」
凛と綾が、控えめなボリュームで声援を送る。
「頑張って、天条院先輩」
別に沙姫がザスティンとどうなろうと関係無い立場なのに、
リトも一緒になってエールを送った。
この誠意。やはりリトが居合わせたのは正解だろう、と凛は思った。
だが彼女がリトに求めていた本来の役割は、まだ先だった。
沙姫は意を決し、一度深呼吸して、それから思いの丈を口にした。
「ザスティン様! ワタクシ、以前より貴方をお慕い申しておりました!
ワタクシとお付き合いなさって下さいませんか!」
よく言った。
リトは内心拍手をしてやりたい気分だった
……ザスティンが予想外なボケをする瞬間までは。
「お、お死体? 突き合う? 何やら物騒な話ですが、どういう意味ですか?
失礼ながら私、難しい日本語はよく分からないものでして」
歴戦の剣士ザスティンは、思わず殴り飛ばしたくなる程の鈍感さを発揮した。
慌てて綾が辞書を引っ張り出し、ザスティンの前でページを繰る。
「お死体ではなく、お慕い! あなたを愛してるって事ですよ、ザスティン様!」
「それにサーベルで突き合うとかじゃなくて、交際したいって事だよ、馬鹿」
綾とリトに責められ、ザスティンはキョトンとしたまま、少したじろいだ。
「沙姫さんが私を愛してらっしゃる? 私と交際したがっている?
ハハハ、まさかそんなワケないでしょう」
この期に及んで腹立たしい天然さだ。
そう言えば初めてリトと出会った頃のザスティンも、
ララの嘘を真に受けるくらいの頭の悪さを見せ付けたものだった。
彼は基本的に、智将にはなれないタイプらしい。いやそれ以前の問題だが。
「本人が目の前でそう言ってんのに、どうしてワカんねぇかなぁ」
「いやしかし、あまりに唐突過ぎませんか?
私がいつ、どうして、沙姫様に慕われるようになったと言うのです。
そのような徳を積んだ覚えはありませんよ」
ここでザスティンが「徳」という言葉を用いた理由は、後々分かる事になる。
彼は実の所、沙姫という女の素晴らしさを認めていた。
その上で、そんな女に自分が好かれる筈が無いと、思い込んでいた。
「天条院先輩の家の車がトラブった時、ザスティンが助けたんだろ?
それ以来ザスティンに惚れ込んじゃったらしいぞ」
「まさか、そんな事で?
あの程度の事では、とても沙姫さんに愛されるに値しませんよ」
「何か天条院先輩の事認めてるっぽいけど、
ザスティンってそんなにこの人と接点あったっけ?」
「ララ様から、沙姫さんの人となりは聞いてますから。
面倒見が良く、友人にも慕われていると。
校外清掃のような、本来多くの生徒達が面倒臭がる行事においても、
率先して体を動かすような誠実さも持ってらっしゃるともね」
あのララがそんな風に沙姫を評価していたとは意外だ。
ララの場合、尊敬しているわけでも何でもなく、素直な感想を言っただけだろうが。
「兎も角、このように人徳のある方に愛されるなど、
私にとっては身に余る光栄ですよ。
信じろと言うのは無理な話です。私ではとても釣り合いません」
なるほど、だからさっき「徳」がどうとか言ったのか、とリトは納得した。
だがそれで納得出来ないのは、沙姫本人だ。
「そんな、ザスティン様! 私は貴方の考えているような女ではありません!」
言わなくても良いのに、沙姫は自らの落ち度をペラペラ話し始めた。
「貴方の仕えるララにだって、何度となく対立しようとした事がありますわ。
このような賤しい私が、貴方様に愛を告白するなど、思い上がった真似を……。
むしろ私の方こそ、ザスティン様にはとても釣り合わないのですわ」
「そんな事言ってて、マジでザスティンにフラれたらどうするんスか」
加熱暴走気味に陥りかけている沙姫を、リトは他人事ながら案じた。
「お願いします、ザスティン様! 私を抱いて下さい!」
またいきなり凄い事言い出したなこの人、とリトは脱力した。
先程までのしおらしさはどこへやら、一度火のついた沙姫は、
いつも通りの積極性と行動性を言動に露わにしていた。
「私の身も心も、ザスティン様のモノにして欲しいのです!
本来なら、例え名目だけとは言え、結城リトの愛人になる事も憚られます。
結城リトが嫌なのではなく、誰の愛人であろうと、私には受け入れられません。
名目だけとは言え、そして一時的とは言え、他の誰かから、
この私が結城リトの女であるなどと思われる事が、耐えられないのです。
けれども宇宙の都合も分かるつもりですし、個人の都合で我儘は言えません。
だから、愛人として彼に名前は貸しますから、せめて……
体と心だけは、あなた一人のモノにして欲しいのです」
「むむっ……そうまで本気で想って頂けるとは、光栄の極み。
あなたの想い、確かに受け取りましたよ、沙姫さん」
「では……!」
「しかし、沙姫さん。私はララ様にお仕えする身です。
そのララ様の婚約者となるリト君も、私にとっては主のようなもの。
名目上とは言え、主の側室の一人に、手を出すワケにはいきません」
「嗚呼、何と美しい忠義の心! 私、ますます貴方に夢中になってしまいますわ!」
「なりません、沙姫様。私は生涯を主に尽くすと誓った身。
リト君の側室に唾をつけるような事だけは、とてもとても……
例い神が赦そうとも、私自身が自分を赦す事が出来ません!」
……耽美過ぎる。
いつからこのSSはシェイクスピアの戯曲みたいな事になったんだ。
リトは四畳半のボロアパートの中で繰り広げられるこのやり取りに、
いい加減辟易してきた。
そしてここからが、凛がリトに求めていた役割の、本領発揮だった。
「だぁーもううるせぇなっ!」
ビクッ、とザスティンと沙姫が反応する。
「ザスティン! お前、天条院先輩の事は嫌いなのか?」
「そんなワケありませんよ。彼女は素晴らしい女性だと思います。
このような方ともし本当に婚姻出来るなら、私の人生は至福のものとなるでしょう」
「だったらそれで良いじゃん! とっとと付き合えよ!
何を俺をダシにして告白断ろうとしてんだ!」
「いえ、決してリト君をダシにしようとしたわけでは……」
いつもは気弱なリトだが、ここぞという場面では男気がある。
そう見抜いていたからこそ、凛はリトに期待していた。
その期待は、どうやらうまくハマりそうだった。
ザスティンは珍しく怒っているリトの剣幕にたじたじだ。
「しかしやはり、リト君の側室に手を出すワケには……」
「だったらこうしましょう、ザスティン様!
彼の婚約発表が終わってからなら、私は彼との愛人契約を破棄出来ます。
そうなれば、あなたと私の間の障害は何一つ……」
「天条院先輩!」
「は、はひっ!」
リトの剣幕に、沙姫も思わず居住まいを正す。
「俺が迷惑をかけてるのは重々承知してますけど、先輩もガッツが足りないっスよ。
婚約発表が終わるまでとか、そんなまどろっこしいのはナシです。
本当にザスティンが好きなら、今すぐにだって、愛し合う権利が二人にはあるんだ。
俺は文句なんて当然言わないし、誰にも文句は言わせない。
先輩は今からでも、ザスティンとキスなりハグなりした方が良いって!」
「そ、そんないきなり……まだその……やっぱり、早い、ですわ」
「抱いてとか言ってた人が今度は何言ってんスか。急に尻込みしちゃって」
「私は何も、今すぐザスティン様と交際したいと言ったワケでは」
「付き合うのに、今すぐも後からもあるもんか。
今の先輩とザスティン見てると、ちょっと前までの俺を見てるみたいだよ。
お互い相手を大切に思ってるのに、決まり事とか世間体に縛られてさ。
でも俺は、ララと春菜ちゃんを、同時に抱いた。美柑とだって寝た。
世間的にはこういうの、浮気とか、近親相姦とかって言って、許されない事だ。
でも、そんな俺だから、今だからこそ分かるんだ。
お互いが相手を大切に思ってるなら、好き合う事は、誰にも止める権利は無い。
主の側室だからどうとか、釣り合わないからどうだとか、そんなの言い訳だ!」
それは、実妹とすらヤリまくっている、リトだからこそ言える真実だった。
そして何より、かつて春菜を高嶺の花とし、声さえかけられずに居た彼だからこそ、
想いを遂げる権利があるのにそうしない男女の愚かさが、実感として分かっていた。
相思相愛だと分かるまでのリトと春菜は、今の沙姫とザスティンに劣らぬくらい、
馬鹿馬鹿しくも青臭い、まどろっこしい関係だったものだ。
おつおつ
>>661の続き
「リト君の言う通りですよ、沙姫様」
そう言った凛の顔には、微笑が浮かんでいた。
「愛し合う事は罪悪ではありません。特に今回の場合、リト君自身が認めている。
沙姫様がリト君の愛人であれ、ザスティン様がリト君の部下であれ、
そんな事は何の障害にもならないのです」
「そうですわ、沙姫様! さぁ、今すぐザスティン様の胸に飛び込んで!」
勢いに乗って、綾まで背中を後押ししようとする。
焚き付けられた沙姫は、躊躇いを残したまま、潤んだ瞳でザスティンを見つめた。
「ザスティン様……私の想い、受け取って下さいまし……」
「沙姫さん……」
またしても耽美な雰囲気が二人の間に流れ始めた。
これ以上はさすがに同席するわけにはいかないとして、
凛は綾を伴い、座布団から立ち上がろうとした。
リトも同じ考えだった。
だがここで、ザスティンが余計な事を口走った。
「分かりました、沙姫さん。全力であなたを、生涯愛し続けます。
ですが一つだけ、不遜ながら訂正を求めたい部分もあります」
「訂正、ですか?」
「はい。リト君は人徳のある人です。
あのララ様が見初め、モモ様が魅了され、ナナ様も惹かれる相手です。
そんなリト君との愛人関係を、忍耐の対象のようには言って欲しくないのです」
「それでは……この私に、結城リトをも愛せと仰るのですか?」
「そういうわけではありません。
しかし、彼の事を悪しざまに言うのだけは、お止め頂きたいのです」
そういうの、もう良いから……と言いかけたリトの前で、
沙姫は立ち上がり、ザスティンの胸にもたれかかって答えた。
「勿論ですわ、ザスティン様。先程は私の物言いに落ち度がありました。
私こう見えて、彼の事は悪い人だとは思っていませんのよ。
それに、つい今しがたの彼の熱い説得……私、心を打たれましたわ」
公然と浮気相手が何人も居るとか、妹とすらヤっているとか、
リトの言った事はただのヤリチン宣言にも等しかったのだが、
これでも意外と感受性と共感性の強い沙姫は、すっかりリトを認めていた。
「それでは、我々はこれで。お暇しよう、二人とも」
もういい加減退席すべきだとしてドアノブに手をかけた凛を、
またしても止める声が上がった。
「待って、凛!」
「……何でしょう、沙姫様」
「あ、えぇと……聞きにくい事なんだけど……」
あなた、セックスってした事ある?
沙姫は突拍子もなく、そんな質問を親友にぶつけた。
最初は沙姫がザスティンに告白するだけだった筈なのに、
また随分と大事になってきたものだと、リトは思った。
「それじゃ、たっぷり楽しんできて下さいね、皆さん」
語尾に意味深なハートマークをつけたようなイントネーションで言うと、
モモはたった今手配してきたばかりの新品の布団一式を残して去って行った。
彼女がそんなものをザスティンのアパートに運び入れたのは、
せめて清潔な布団の上で事を致したいと言った、凛と綾の意見による。
リトは彼女らの意見を汲み、モモに頼んで布団を調達して貰った。
つまり……今からこの部屋で、リトは、凛と綾と、事を致すというわけだった。
「天条院先輩は本当にそのままの布団で良かったんスか?」
「ザスティン様が日頃使っておられるお布団ですから。
むしろザスティン様の温もりが伝わってくるようですわ」
部屋の隅に纏められていた男三人分の布団の内、
ザスティンの布団だけが敷かれ、沙姫はそこに嬉しそうに寝転がった。
その隣に、たった今モモが運んできた新品の布団が寄り添っている。
「ところで綾。何も君まで付き合う事は無いんだぞ?」
「そ、そんなワケにはいかないわ……凛一人にだけ、我慢させるなんて」
つい先程の事だ。
沙姫に男性経験の有無を問い詰められ、凛は赤面しながら首を横に振った。
続けて同じ質問を受けた綾もまた、首をブンブン振ったものだ。
それは当たり前の事で、そもそも彼女ら三人は親友なのだから、
誰か一人が男と付き合うような事になりでもすれば、
それは三人の間ではすぐさま情報共有され、秘密にされる筈が無かった。
凛や綾が男と付き合った事があると、沙姫が一度も聞いた事が無かった時点で、
それはつまり、凛も綾も恋愛をした事が無い、というのも同義だった。
そう確信している上で、それでも念の為、沙姫は聞いたのだ。
全ては、初めて男と交わる瞬間の不安を、少しでも和らげたいが為に。
沙姫は言った。
経験者の意見を聞ければ、少しは不安も薄れたかも知れないのに、と。
だったら俺の恋人を誰か呼びましょうか、とリトが提案した折り、
ザスティンが「え、まだ凛さんも綾さんもリト君に抱かれてなかったんですか」
などと余計な事を言ってしまったのが、今の状況のキッカケだ。
「てっきりもう、リト君はこのお二人を愛してらっしゃるとばかり思ってました」
ザスティンは改めてリトに謝った。
「俺がそう見境なく誰にでも手を出してると思うなよ……
いや、そうとも言えないのがお恥ずかしい限りなんだけど」
「しかし凛さんも綾さんもリト君の愛人なのですから、
もっと早くに抱いて差し上げていても良かったのでは?」
「九条先輩は愛人じゃなくて近衛兵。つーか、藤崎先輩だって別に……。
俺は、俺の事を好きだって言ってくれる子とヤってきただけで、
そうでない人にまで手を出した事は……や、無いとも言えないな、やっぱり」
自分と火遊びで関係を持っている秋穂や、
当初は交わる事に躊躇していたティアを思うと、
どうにもはっきり言い返せないな、と項垂れるリトだった。
「とりあえず、沙姫様の為だ。よろしく頼むぞ、リト君」
「で、出来るだけ優しく、して下さいね……?」
凛と綾は、覚悟を決めた表情でリトの前に立った。
初めてのセックスは痛いだろう。怖いだろう。
その不安は沙姫にも、凛にも、綾にも共通していた。
ならばせめて、挿入というのがどんなものか、沙姫に見せてやりたい。
そうする事で沙姫が少しでも安心出来るとは言い難いが、
せめて覚悟を決める一助になるならと、凛はリトに体を委ねる事を決めた。
凛一人に負担はかけられないからと、綾も参加すると言い張った。
つまりここからは、リトと、凛と、綾による、公開セックスだ。
沙姫とザスティンに見守られる中で、三人は交わる事になる。
それを見届けた沙姫が最後の覚悟を決め、ザスティンに身を預ける段取りだった。
「本当に無理しなくて良いんだぞ、綾。私だけで十分役目は果たせるんだし」
「だっ、大丈夫! 凛一人にだけ辛い思いなんてさせないんだから!」
「ふぅ……さっきザスティン様が沙姫様に言った事をもう忘れたのか?
リト君の事を忍耐の対象のように言うのは良くないよ。
それに私は、別段我慢しようとしているワケじゃないんだし」
「……え?」
凛は、誰も予想し得なかった言葉を吐いた。
「私、リト君の事好きだし」
一旦終了、近日中に続き投下します
本当はこのまま十二話までいきたかったんだけど
連投規制がしつこ過ぎて、昨夜は一時間待っても解除されなかった程で
投下がぶつ切りになるという情けないところをお見せしてしまいました
ザスティンに見られながらとかそういうのは不愉快だから投下しなくていいよ
668 :
名無しさん@ピンキー:2014/04/05(土) 17:49:42.97 ID:vorBgW9H
愛人契約乙です!
待ってたかいがありました。
他の作品が全く投稿されないので、
どんどん投稿して下さい、よろしくですm(_ _)m
669 :
愛人契約:2014/04/06(日) 00:06:11.11 ID:5I9+WLVL
>>667 スマンな、おもっくそザスティンに直視されるわ
愛人契約第十二話投下しまっす
尚、今回からなるべく一度のレスで投下量を増やす為に改行を減らします
読みにくかったら次回から改めるので言ってくれさい
凛がリトを愛している事を、沙姫と綾は以前から知っていた。
知ってはいたが、実際にその想いを認め、口にするとは、この時まで二人とも予想していなかった。
凛の事だからむしろ、リトへの思慕を隠したまま「仕方ないから」という体裁で彼と交わるものと思っていた。
沙姫も沙姫で、ザスティンに随分度胸のある告白をしたものだが、
凛もまた度胸を発揮し、しかしさらっとリトへの告白を済ませてしまった。
「本当に良いんスか、九条先輩」
「こういう時は下の名前呼べ。あと、いちいち聞いてくるな、馬鹿」
赤らんだ顔をつっけんどんに背けながら、凛は布団の上で正座していた。
隣では綾が、驚天動地の展開に目を回している。
まさか凛がリトに今日告白するなど、予想もしていなかった彼女だ。
「凛ったら、澄ましたお顔でとんでもない事を……」
「いや、私だって結構ドギマギしてるんだが」
「とてもそうは見えないですわよ?」
「平静を装ってないと、顔に火がついて逃げ出しそうになるんだよ」
凛が男に告白するシーンはちょっと想像がつかないが、もしそんな局面があるとしたら、
きっと恥じらいまくりで、うまく呂律も回らないんじゃないか、と思える。
しかし、直前に沙姫が告白する場面を見せてくれていた事で、勢いに任せる事の出来た凛は、
自分で想像していたよりいくらか楽な気分でリトへの愛を白状する事が出来ていた。
「幸せに……してくれないか、リト君」
「もっ、勿論だよ、その……り、凛」
こうしてまた、リトの恋人が一人増える事となった。
リトは凛の肩を抱き寄せると、紳士的なタッチで口付けを交わした。このしなやかな口付けは、御門やお静から学んだものだ。
強引で熱烈なキスではなく、柔和で温厚なキス。それは凛のリトに対する人物評を、更に跳ね上げるに一役買った。
「ふぅ……思った通り、優しいキスをするんだな、君は。君が初恋の相手で良かったと思うよ」
そう言うと凛は、今度は自分からリトを抱き寄せ、口付けを交わした。
それを見ていた沙姫もまた、触発されるものがあった。
「ザスティン様……私達も」
まだセックスは怖いが、キスくらいなら平気だろう。
沙姫は潤んだ瞳でザスティンを見上げ、ぷるんとした唇で懇願した。これに答えない程、ザスティンも馬鹿ではない。
「それでは、いざ!」
今から決闘でもするつもりか、と言いたくなるような気合いの声。
ザスティンは沙姫を抱き締め、彼女のファーストキスを軽やかに奪った。
触れ合う唇と唇からは、少女漫画のように煌めく粒子が飛散した、ように見えた。
「そ、そんな……まるで私だけ、仲間外れみたいな……」
沙姫も凛も、決して綾を仲間外れにしようとしたわけではないが、
親友二人が目の前で男とキスをしていれば、綾も触発されるのは道理だった。
「綾。おいで」
リトが優しく囁く。
「あ、そんな、あ、綾だ、なんて……」
いきなりファーストネームで呼ばれ、綾は眼鏡の奥の瞳を潤ませた。
彼女の、女の本能のような部分が、思わずリトの唇を凝視させる。
そこから釘付けになって離れない視線を、綾は自分の意思では引き剥がせなかった。
リトの事は何とも思っていなかった筈なのに、何故か目と心が奪われる。
リトの手が、そっと綾の肩を抱き寄せる。それは綾にとって、良い言い訳の材料になった。
あくまで相手の方から強引に抱いてきたのであって、自分の方から求めたのではない、と自分に言い聞かせる為の。
触れ合った唇からは、想像を遥かに絶する幸福感が唾液を伝わって流れてきた。
「ふぁ……キスって、こんなにアツいんれすかぁ……?」
「綾には特別に熱いキスをしただけだよ」
「と、特別……」
その言葉の響きに、綾は酔いそうな感覚になった。
「ズルいぞ、綾。私だって……」
「拗ねちゃ駄目だよ、凛」
リトはすかさず、凛にも同じように熱烈なキスを見舞った。
己の唇で、相手の唇を丸ごと包み込んでしまうかのようなキスだ。
愛されているという実感をこれ程味わえるキスは他に無かった。
多くの女達から手解きを受けて来た今のリトは、年に不相応なスキルを持っている。
好青年そのものといった優しく温かなリードも出来れば、脂ぎった中年男性のような粘着質のペッティングも出来る。
しつこく貪るも、余裕ぶって焦らすも、思いのままだ。
それは秋穂、林檎、御門らによって施されたテクニックだった。
その技法を以てキスすれば、凛と綾という異なるタイプの女性二人をいっぺんに堕落させるのも、そう難しい事ではなかった。
僅か五分もする頃には、もう二人は股間をしとどに濡らし、競い合うようにリトの唇を奪い合っていた。
「ん、んく……ふ、ッア……こういうのも……良い……」
最初こそ紳士なキスをされた凛も、途中で一度強引なキスを挟まれた事で意外な肉食性に翻弄され、魅入られていた。
リトは、ソフトなキスとハードなキスをランダムに織り交ぜるものだから、
次の瞬間にはどんなキスがくるかと、凛は一秒一秒毎に期待させられた。
「……ふぁ。リト君の唇、やぁらかい……」
始めは熱烈なキスに落とされた綾も、途中で何度か繊細なキスを交えられ、その草食性に驚くや否や、すぐさま魅了された。
これでもう、凛と綾は、肉食な攻めと草食な攻めの、どちらでも受け入れられる女になった。
遊ですら凛と綾のような女をここまで到達させるには、三十分はかかるだろう。
細かな技法において、まだリトは遊には遠く及ばないくせに、
女をその気にさせてしまう神業だけは、誰にも負けないレベルに達していた。
「それじゃ、そろそろ次のステップに移る?」
相手のペースを探り探り、リトは尋ねた。以前までなら、ペースを合わせてやる余裕も無かった。
そして、勢い一つで相手を抱き、そのまま最後までいってしまう事が多かった。
例外もあるにはあったが、基本的にリトは、その勢いというものを自分でコントロールするゆとりは無い方だった。
そんな彼も、今では御門とお静の性教育の賜物か、女のペースを最大限に尊重した緩やかな交わりが出来る男になっていた。
「ま、待ってくれ」
この期に及んで、凛は怖気づいた。
「いきなり、あの……おちんちん……に触れるのは、怖いから……似たようなモノで、予習しておきたいんだが……」
余程テンパっているのか、とんでもない事を言い出すものだ。
彼女は愛刀たる竹刀に視線を落とした。
リトが沙姫を呼び出したと聞かされた時、凛は警戒した。
どうせ彼の事だから、またエロいトラブルに見舞われるのだろうと。その時には、沙姫が犠牲になるかも知れぬと。
そうなった際には、自分が制裁をせねばなるまいと、彼女は踏んでいた。
だからこそ休日で、しかも私服なのに、竹刀だけは持って来ていたのだ。
その竹刀が今、凛の股間をパンティ越しに擦っている。竹刀はリトではなく、凛をこそ責める道具に成り下がった。
「うぁっ、くぅん、ひふっ、ふんんっ」
布団の上で自発的にM字開脚した凛は、一心不乱に竹刀オナニーに没頭した。
肉の棒に触れる前に、まずは竹の棒というわけだ。長過ぎる事は別として、太さは実物のペニスと比べても悪くない。
これなら肉棒に触れる前の予行演習には適任と言える道具だった。
流石に挿入こそしないが、覚悟を決める前の予備動作といったところだ。
その横で綾は膝立ちの姿勢のまま、スカートの縁は咥えたままで、両手の指で自らの股間をパンティ越しに虐め抜いていた。
リトと交わる前に、女性器をまさぐられる事の予習をしたいと思ったのは、凛だけではなかったというわけだ。
鼻からズレ落ちかけている眼鏡が、いつかの晴子を思い出させる。
薄布の上からクリをつねったり転がしたりと、どうもオナニー慣れしているようでもある。
こういうタイプが意外とムッツリなんだよなぁ、とリトは既存の恋人達の顔をつい思い浮かべてしまった。
「んっ、んっ、ふーっ、ん、むっ、ふむぅっ」
スカートを咥えていても、声はついつい漏れてしまう。
擦る度に表面が湿り気を帯びていく凛の無骨な竹刀と、水滴が貫通して布団を濡らしてしまいそうな程に湿る綾のパンティ。
胡坐をかいたままでそれらを眺めるリトにとって、どちらも甲乙つけがたい絶景だった。
女達はどちらもまだ服を着たままで、下腹部だけ露出させている格好だが、
今や服の上からでも乳首の固さが透視出来るかのようでもあった。
二人の様子を隣の布団の上で見つめながら、沙姫もまた股間を湿らせていた。
我知らずモジモジとフトモモを擦り合わせ、必死にもどかしさを誤魔化す。
「沙姫さんは、あのお二人のようにはしないので?」
意地悪な問いかけをするザスティンに、沙姫は目を伏せて答えた。
「わ、私……オナニーって、した事ないから……やり方、分かりませんわ」
それは明らかに強がりだった。ザスティンを想って自らを慰めた事が、彼女なら一度や二度はあろう。
もしザスティンが意地悪な性分なら「自分のやりたいようにやってご覧」とでも言い、
沙姫のオナニーショーをとっくり見物した事だろう。
だがザスティンはそうしなかった。彼女が嘘をついている事を分かった上で、騎士は騎士らしく姫を導く。
「では、私が教えて差し上げましょう」
後ろから沙姫を抱き締め、片手はスカートを捲り上げると、もう片方の手でパンティの中をまさぐる。
まだ胸も揉んでいない、どころか服も脱いでいない相手に対して、
容赦の無さではザスティンは歴戦の騎士そのものと言えた。
「はぅ、あ、そっ、そんなトコロぉ……ダメです、ザスティン様ぁ……」
憧れのザスティンに愛撫されながら、沙姫は心にも無い事を言った。
ダメなわけが無いのだ、彼女にとって。ザスティンの手でアソコをビチョビチョにされる事は。
そこから更に三十分もする頃には、既に綾は一糸纏わぬ姿になっていた。
いつの間に服を脱いでいたのか、自分で脱いだのかそれとも脱がされたのか、それさえ覚えていられない程、彼女の意識はふわふわとしていた。
そのようにたゆたっていた彼女の意識が、突如として振り戻されたのは、公開オナニーに一区切りをつけてリトとの本番に臨んだ瞬間だった。
「はぁあがっ!? いだっ、痛ひぃぃぃっ……!」
破瓜の痛みは人それぞれ。綾の破瓜は、小学生の美柑のそれにも劣らぬ激痛を伴った。
リトもなるべくゆっくり挿入してやったのだが、こればかりは仕方ない。
リトの男根の直径と、綾の膣の内径という、物理的な問題がどうしても立ちはだかる。
代わりに綾のナカは、百戦錬磨のリトでも長くは耐えられない程、ぎゅうぎゅうに締め付けてくれる狭さがあった。
バックで挿入しながらアヌスにも指先の第一関節までを軽く捻じ込んでやると、膣の締め付けは尚一層に強まって、リトが射精するのを今か今かと急き立てた。
「そっ、そこはぁぁっ!? お尻の……ふんんうぅっ! あ、頭がぁっ……ジンジンしてきまふぅうっ!」
下半身から脳天まで、綾の体内を痛みと共に悦楽が染み渡る。
いつか読んだ小説に、女はセックスをすると相手への情が深まる、と書いてあった。
勿論、そうでない女も世の中には沢山居るのだろうし、そんな事でコロッと落とされる女は正直チョロい方なのだろうが、今ならそんな女の気持ちが、綾にはこれ以上無いくらいに理解出来た。
ナカを擦られる度に、先程までは無かった筈の愛情が、湯水のように溢れて来る。
奥を一突きされる度に、背後の男への好感度が目盛り五つ分くらい上がる。
強姦でもない限り、セックスは相手への好意を深める効果があるのだ。女のカラダはそういう風に出来ていた。
ひとたび交わるだけでインスタントな愛が育まれ、回数を重ねる程にそれはやがて本物の愛に育っていく。
「あふぅぅぅぅんっ! しゅっ、ひゅきれすぅぅぅっ! だいひゅきぃぃぃんっ!」
「うっ、は……! あ、あぁ……」
綾の貧相な肢体をかき抱きながら、リトは果てた。
その様をじっと見つめていた凛も、もはや我慢の限界といったところだ。
「私の方が、ずっと前からリト君を好きだったのに……綾に先を越されるなどと」
「悪かったよ、凛。でも、綾の方はこれで一時休戦だろうから。ここからしばらくの間は凛専用だよ、俺の体は」
一口にオナニーと言っても、棒で表面を擦るのと、指で様々な刺激を与えるのでは、どうしても後者の方が先に達してしまえる確率が高い。
たまたま準備が先に整ったのが綾の方だっただけで、リトは決して凛を蔑ろにするつもりは無かった。
本来の目的に照らし合わせれば、沙姫が行為に没入していくのに、下準備はこれで完了と言えた。
彼女はただ、処女の挿入の場面をその目で見届け、覚悟を決めたかっただけだ。
凛はまだオナニーしかしていないが、綾が既に一戦終えて燃え尽きた後なのだから、この期に及んでまだ覚悟が決まらないなどと、臆病な事はもう言えなかった。
「ザスティン様……はしたないなんて、思わないで下さいね……」
沙姫はするりとブラウスを脱ぐと、均整の取れた見事なボディラインを披露した。
その姿はあたかも中世ヨーロッパの裸婦画、或いは彫刻のよう。彼女が脱いだだけで、安普請のアパートは美術館の如き様相となった。
ルーブルも、ナショナル・ギャラリーも、メトロポリタンも、これ程の美しさを誇る所蔵品は持ち合わせていまい。
沙姫の姿にはまるで白薔薇が纏わりついているようだったし、彼女の脱いだ服からは百合でも咲き乱れてきそうな程だった。
沙姫の周りでキューピッドの群れが祝福のラッパを吹いているような様を、リトもザスティンも、そればかりか息も絶え絶えな凛と綾さえ幻視していた。
「……やる事なす事いちいちエレガントなんだな、この人」
「まぁ、沙姫様だからな……このぐらい当然だよ……」
「さ、流石、ですわ……沙姫、様……」
この誉れある誇り高き絶世の美女が、今から男の前でだらしなく股を開く。
それは晴子のような「普通の女」が乱れる時とは、また違った素敵さがあるだろうと、リトは思い描いた。
だが残念ながら、沙姫を犯すのは彼ではない。
沙姫を汚し、その美しい顔を性欲に歪ませ変貌させるのは、ザスティンの役目だ。
ちょっと惜しい気分だな、とリトが考えていると、彼の意識を引き戻すように、凛がおねだりをした。
「さぁ、リト君。次は私の番だろう……? これ以上、他の女に目移りしないでくれ」
主君たる沙姫でさえ、今の凛には「他の女」扱いだ。
反逆にも等しい暴言だったが、それ程までに、凛はリトを欲するようになっていた。
「ふぁあはっ! ひゃふっ! んんソコぉっ! 奥ゥッ!」
綾と違い、凛は服を着たままでの正常位で、リトを受け入れた。服を脱いでいる時間が勿体なかった。
だが実際交わってみると、破瓜の痛みも勿論大きいが、それ以上に、もっと彼と素肌で密着したい、との思いが強かった。
着衣のままで交わるなど勿体ない事をした、とつい後悔する。だが全裸で交わるのは次の機会で良い。
リトの恋人になれた以上、次の機会などいくらでもあるのだ。
凛の体には今、脱げかけのワイシャツと、首元までたくし上げられたブラ、ふくらはぎに引っ掛かったままのジーンズが残されていた。
もう一つ、パンティも穿いたままだったが、これは横にズラされており、リトの挿入を邪魔するにはあたらなかった。
「んんぐっ! ひゅふっ、はっ! ザスティンしゃまのぉっ……太いぃっ!」
沙姫の方はと言うと、声が隣室に漏れるのを堪える為に、下唇を噛み締めようとしているが、堪えきれずにヨガってしまっていた。
まだザスティン以外の男のモノを知らないくせに、とはリトも思ったが、しかし処女からしてみれば、大抵どんなチンポでも太く思うだろう。
いつもの高貴な雰囲気はどこへやら、沙姫はひっくり返った蛙じみた格好で、縦ロールを千々に乱しながら安物の布団の上で体を揺らしていた。
「沙姫さん! 沙姫さん! 沙姫さん! 沙姫さん!」
ザスティンはリトに比べれば随分大人びているが、経験回数がそれ程でもないのか、リトより余裕が無かった。
王女の護衛として身を粉にし働く日々だったのだから、女と逢瀬を重ねている暇など無かったのかも知れない。
さすがに童貞ではないのだろうが、この端正な顔立ちが、今まであまり女に触れられてこなかっただろう事は勿体なかった。
凛と沙姫は、互いを横目に見ながら、変わり果てた友人の淫らな表情に愕然とした。
(あの沙姫様が、こんなにみっともな顔を……)(あの凛が、こんなにだらしない顔を……)
言葉を出す余裕は両者には無かったが、文にしたとしたら、概ねこうだろう。
彼女らは気付いていない。それぞれ、自分も同じくらい、情けない顔を晒しているのだと。
「アッ、もっ、だめっ! イってしまいますわぁぁぁぁん!!」「こ、これっ、擦られ過ぎ、てっ、あぁっ、あぁぁぁぁっ!!」
凛と沙姫は、仲良く同時に初イキを味わった。
ぐったりしている凛と綾を前に、リトは余韻に浸っていた。「ふふっ。二人とも、可愛い寝顔してら」
凛と綾の眠りこける姿を前にしては、寝込みに余計な悪戯をする気にもなれない。純真にして穏やかな寝顔だ。
だが、沙姫の方はまだまだいけるようだ。「ザスティン様……今度は、こちらに……」
高貴な家柄の女とは思えない、下品な懇願。沙姫は自分の股間に中指を滑らせると、マンコではなく、菊門の方を撫でてみせた。
「沙姫さん、よろしいので?」
「そ、そのっ……綾がここを責められてるのを見たら、何と言うか……興味が、湧いてきてしまいまして……」
肉棒をねだる彼女の声は、言葉の内容と裏腹に、オペラのように麗しい。
いやだからいい加減そのエレガント路線やめろって、とリトは言いたくなった。しかしこれが沙姫の生来備える気品なのだから仕方ない。
「ならば、私も再び気合いを入れましょう!」
ザスティンはやっぱり決闘でもするかのような気迫で答えた。
そうして、たった今処女を失ったばかりの令嬢が、すぐさまアナルファックなどというディープなプレイに勤しむ事となった。
「沙姫さん! どっちが! 良いですか!」バックで沙姫の直腸を犯しながら、ザスティンが問いかける。
「前と! 後ろと! どちらが! 好みですか!」ピストンに合わせながら喋るものだから、言葉が途切れ途切れだ。
普通だったら後ろの穴なんてそんなに気持ち良くないのだろうが、沙姫はこれで結構、元々痴女の天性が身についている。
その事は普段の彼女の振る舞い(元祖ToLOVEる見てれば一目瞭然)からも、容易に窺い知れる事だった。
「そっ、そん、なのっ……比べっ、られ……」どっちも良い、とはまた強欲な事だ。どちらか一つに絞れないのだろうか。
「どっちも! どっちも欲しいですわっ! 前も! 後ろも! 同時に犯して欲しいのほぉっ!」
乱れ狂う沙姫のその回答に、ザスティンはひっそり微笑んだ。沙姫の痴態に呆れていると言うよりは、より愛しく思っている風だ。
早速、彼は沙姫の腰の横から自分の腕を滑り込ませ、アナルを突きながら同時に、マンコの方も指で擦ろうとした。
それを止めたのは、誰あろう沙姫自身だった。「ちがっ……違うのぉっ……両方とも、おちんぽ入れて欲しいのぉっ!」
無茶言うなよ、チンポは一本しか無いんだぞ。リトが心の中でそうツッコむと、丁度ザスティンと目が合った。
……何か変な予感がするな、とリトが思った矢先、ザスティンはにっこりと悪気無く笑ってこう言った。
「それならば沙姫さん。ここに居るではないですか。あなたの、愛人が」
考えてみると、こういう形での3Pは初めてだ。
今までリトは何度も3Pをしてきたが、それは全て、リト一人に対して女が二人、という形式ばかりだった。
何度かはリトが分身した事もあったし、晴子相手にはそれで3Pもしたが、あれは結局「リト対女」という構図であり、厳密な3Pとは言い難い。
遊に素股された直後の唯とヤった事もあれど、あれはただ順番に唯を弄んだだけで、二人で同時に協力攻撃したわけではない。
自分以外の男と、同時に一人の女を犯す経験は、リトはまだ無かった。
「良い事!? 絶っ対に! 余計な事はしないで下さいまし!」
沙姫はリトに対し、鉄の掟を課した。
「あなたに貸すのは、お尻の穴だけなんですから! 私の体の他の部分は全てザスティン様専用です!
あなたには私のオマンコはおろか、胸さえ触らせません! キスしたら殺しますから! ハグしても殺しますから!」
「それ3Pって言うのかなぁ……」
沙姫はこの期に及んでも、やはりザスティン以外の男は要らないらしい。
たまたま居合わせたリトのペニスを欲しているのも、所詮はチンポがもう一本欲しいだけで、リトが欲しいわけではない。
本当はザスティンに男根が二本生えてれば、それが一番良かったのだろう。
「それでは、沙姫さん。どうぞ、こちらへ」
ザスティンは布団の上に仰向けになると、股間の聖剣をそそり立たせた。
一度は直腸に突っ込んだモノだが、既に風呂場で丁寧に汚れと菌を洗い流している。その上に、沙姫が騎乗位で跨る。
そんな沙姫の後ろから、リトはバックで彼女の肛門を抉る手筈だ。つまり、束の間沙姫は、リトとザスティンにサンドイッチされる格好になる。
せっかくたった今までザスティンが後ろの穴を掘っていたのだから、そのままリトは沙姫のマンコに挿入すれば早かったのだが、
彼女は「前の穴だけは絶対ザスティン様専用!」と言って譲らなかった。そういう貞淑さは、秋穂にも見習わせたい。
「んんっ……ん〜〜〜っ!」
きつく唇を閉じながら、沙姫はザスティンの上に腰を落とした。
ズン、という擬音が聞こえてきそうな程の、深い挿入だ。
「さ……さぁ……リト……早く、入れて下さいまし……」
他の女達もそうだったが、いつしか沙姫も、リトを「リト」と呼んでいた。
今更になってフルネームで呼ぶのも趣きが無い。
美の理解者、天条院沙姫は、この場でリトを他人行儀に扱う事の醜さと愚かしさをも理解していた。
形だけの愛人だった筈が、本当の愛人になる。
それは今まで肌を重ねてきた全ての女達に共通していたが、沙姫も結局はその例から漏れる事が無かったというわけだ。
「はぁんっ! はぁっ! ザスっ……ティン、様ぁっ! リ、リトぉっ!」
前の穴を亭主に、後ろの穴を不倫相手に貫かれながら、沙姫は汗の粒を撒き散らしていた。
リトの側からすれば、沙姫の姿は、後頭部とうなじと、背中しか見えない。
ザスティンに膣を抉られた沙姫がどんな緩みきった顔をしているのか、リトの方からは想像する事しか許されなかった。
どこかそれは、「寝取られている」と感じる悔しさがあった。
自分の知らない沙姫の顔を、ザスティンは今まさに見ている。間近でその蕩けた瞳を凝視し、唇を重ね、舌を吸い合っている。
リトの方には、彼女の唾液の一滴さえ、分け前が与えられない。
……こういうのも、それはそれで良いな、とリトは肯定的に捉えた。
それまで全ての恋人達を自分一人で独占していただけのリトが、初めて、たまには他の男も交えて3Pも良いかも、と思った瞬間だった。
今度レンを呼んで、ララと3Pしてみようか。或いは遊さんと一緒に秋穂さんを犯してみようか。
そんな、女達が聞いたら何と言うやら分からない展望を、彼は思い描いていた。
「沙姫っ……沙姫っ」
リトもいつの間にやら、沙姫を「天条院先輩」とは呼ばなくなった。
愛人なのだから、それもおかしくはない。
おまけに、一度体を繋いでしまえば情が移ったようで、沙姫も別段それには反感を覚えなかった。
さり気なくリトが前傾姿勢になり、沙姫の背にもたれかかり、彼女とザスティンの胸板の間に手を滑り込ませ、
彼女の乳房を揉み始めようとも、拒絶すらしない。
胸にすら触るなと言っていたあの気高さも、どこへやらだ。
「アァッ、らめぇっ! おっぱい感じちゃいますわぁんっ!」
乳頭をクリクリされ、沙姫は美しい金髪を振り乱した。
リトは沙姫のアヘ顔を空想しながら、彼女のうなじに舌を這わせた。花の蜜のような香りが、沙姫の後ろ髪の生え際から立ち上っている。
余程良いシャンプーを使っているのか、それとも彼女の生まれつきの体臭か。きっと両方だろう、とリトは結論付けた。
一度3Pを経験すると、沙姫はもう、完全に堕落した。
ザスティンの精液を掻き出した膣にリトのペニスを、リトの精液を吐き出した直腸にザスティンのペニスを受け止め、
前後を入れ替えての、ついに三回戦目に突入だ。
それまでに既にリトは、凛、綾とのセックスを含めてもう三回も射精していたが、何のそのといったところだ。
普段は他の恋人達相手に、一日五回くらいはヤっている。この程度では、彼の精液は枯渇しなかった。
「良い事? あなたはただの浮気相手! ただのセフレなんですから! これで私があなたに籠絡されたなどと、調子に乗らないで下さい!」
ザスティン以外のモノは膣に入れたくないと言っていたくせに、籠絡されていないなどと、どの口が言うのだろうか。
しかも本命であるザスティンの前で、堂々と浮気だのセフレだのと。
「ははっ、許して下さいリト君。沙姫さんは私の妻ですので」
「大丈夫だよ、ザスティン。これはこれで、新鮮だから」
れっきとした他人の女を抱く事自体は、リトにとっては初めてではない。
林檎は彼の母親だが、才培の妻だ。秋穂は遊の彼女とは言い難いが、リトの恋人とも言い難い。
しかし、息子を愛して当然の林檎や、本気で恋をしない秋穂とは、沙姫は全く違った不倫の風情をリトに与えてくれた。
これからも、心底ザスティンを愛すれば良い。ザスティンを愛したままで、時折浮気してくれれば、それで十分だ。
罪悪感と快楽の狭間で悶えるご令嬢の複雑な表情、是非堪能させて貰う。
「それじゃ、動くぞ、っと」
今度はリトが騎乗位、ザスティンが後背位という、さっきとは真逆のポジションでの3Pとなっていた。
これなら、喘ぐ沙姫の顔が間近に見られ、声が間近に聞こえる。
「アッ! アァッ! 深いィッ!」
予想違わず、沙姫は良い顔で嬉し涙を流し始めた。
二穴を同時に攻められた時、沙姫はこんな顔をするのだと、リトは初めて知った。
沙姫のナカは温かく、それはそのまま、彼女の心の温かさのようだった。
支援
「それじゃあ沙姫も、とうとうリトの彼女になったんだねぇ」
事後報告をする為に、沙姫とザスティンと凛と綾は、結城家に立ち寄った。
嬉々としてはしゃぐララに、沙姫は躍起になって言い返す。
「彼女じゃありませんから! 愛人! あ、い、じ、んっ!」
愛人の方が普通は嫌なんじゃないかなぁ、という美柑の指摘はスルーされる。
「それにしてもザスティン様、よく沙姫様の浮気を受け入れられましたね」
感心するように言う凛に、ザスティンは何食わぬ顔で答える。
「私の居ない所で、私に内緒でなら兎も角、今回は話が別ですから。
あれは浮気と言うより、ただのそういう愛し合い方、ですよ」
この人ひょっとしてお兄ちゃんより心広くない? と美柑がモモに耳打ちする。
「リトさんも王になるのなら、このくらいの寛容さは必要かも知れませんね」
「それって私達も、お兄ちゃん以外の男の人に抱かれるって事なんじゃ……」
私はそんなの絶対嫌、と美柑は口を尖らせた。同席していた多くの女達も、大体同じ意見だった。
違ったのはララくらいのもので、彼女だけは「それもアリかなぁ」などと、あまり深く考えずに言っている。
とは言え彼女の場合、リト以外の男の顔は、パッとは思い浮かばなかった。
目の前にザスティンが居るのに眼中に無い辺り、いかにもララらしい。
結局のところ、彼女もリト以外の男とは根本的にヤル気が無いのだ……今の所は、だが。
「とりあえずこれで、愛人枠は後一人なんですよね? どこから調達すれば良いんでしょうか」
綾は眼鏡の奥の瞳を細めながら、真剣に言った。
晴子や秋穂まで協力してくれたのだから、ツテを当たれば他にも協力者は現れるかも知れないが、
今の所誰にとっても、新しいツテなど思いつかなかった。
沙姫を愛人に出来ただけでも、本当なら殊勲賞モノなのだから。
「うー、後一人かぁ……その後一人が、難しいんだよなぁ……」
リトは腕組みしたまま、苦笑さえ浮かべる余裕が無かった。
第十二話終了。
ネメシスの登場する後日談をずっと前から用意してたのに、
「メアの髪の毛一本とお静の念力で協力してネメシスを抑え込む」というとっておきのネタを原作で先に披露されたので
俺の貧相な脳味噌ではもうネメシスをうまく負けさせるネタが無くなってしまった……。
679 :
名無しさん@ピンキー:2014/04/08(火) 23:51:10.80 ID:5mdY1Fms
乙です!
次も期待してます。他の作品の投稿も本当に無いので、書きあがり次第どんどん投稿して下さい!m(_ _)m
ララ万歳
ララ
メアちゃんとセックス