【俺の妹】伏見つかさエロパロ23【十三番目のねこシス】
「な、なあ、今ならまだ引き返せると思うぞ?」
「……うっさい。やるって決めたの。ほら、さっさとやる」
さっさとやるって言ってもな……。
今、何をやる事を強要されてるのかって?
妹の服を脱がす事を強要されてんの。
はは、笑えちまうよな。
……はあ。なんでこんな事に。
言っておくが全然嬉しくないぞ。ただひたすらに気まずいだけだ。
やれやれだぜ。
「……んじゃ、手を上げろよ」
「う、上から脱がすんだ」
「し、下からの方が抵抗あんだろうが……!」
上だけ着たまま下だけ脱がすなんて……いやそういう趣味はあるけどな?
恐らく世の中の男性の多くが共感してくれる筈だ。
だが、だからこそここでそんな選択肢を選ぶ訳にはいかないんだよ!
「ん」
そういって手を上げる桐乃。
……合宿に来てただけあって、脱がしやすい服を着ている。
上着の裾に手を掛けて、上に持ちあげていく。
当たり前の事だが持ち上げればそれだけ、服の下から桐乃の肌が覗く。
…………。
はっ! だ、駄目だ。肌なんて見ている場合じゃねえ。
俺はただ黙々と任務を遂行してればいいんだよ。
心を無にして、ゆっくりと上着を脱がしていく。
途中でブラジャーとかが見えて激しく動揺したが、表向きは非常にクールだった筈だ。
包帯に当たらないように上着を抜いていく時が中々スリリングだったが無事クリア。
一仕事終えた気分だが、その結果、上半身がブラと包帯だけになった妹が目の前にあった。
「…………」
「…………」
背中ごしとはいえ、こう、なんていうか、……なんていうかだよな。
何だかもどかしい気分になってくる。
「つ、次は下を脱がすからな」
「う、うん」
桐乃が履いているのは、ホットパンツ。
この時点でもう下着みたいなもんだ。今度はそう抵抗が無いだろう。
ホットパンツのボタンを、背中から抱きつくような形で外してやる。
……嘘、全然抵抗あるわ。
なんだかさっきより脱がしてる感覚が艶かしい。
それに背中から手を回しているせいで、こう背中が目の前にあって。
あ、コイツ、肌綺麗だな、とか思ったりしちゃったりして。
何度か格闘しながら、ホットパンツのボタンを外し、チャックを下げて。
ようやく下ろす段階になる。
ゴクリ。知らずに喉が鳴る。
緊張で喉がカラカラだ。
よし、や、やるぞ……!
決意を固めて、ホットパンツを下げていく。
そしてすぐに現れるのはピンク色の下着。
…………。
色々と思考がパニックになりそうなのを我慢しつつも、ホットパンツを下げていく。
無事、足元まで下げた時は目を瞑ってたぐらいだ。
「ほ、ほら、足上げろ。取るから」
「う、うん」
最後は足首から抜き取って……よし、終了。
「よ、よし、じゃあ入るか」
「え……ま、まだ下着があるんですけど?」
下着まで脱がせって言うのかよっ!?
勘弁してくれ。
「し、下着のままじゃ、風呂入れないか?」
水着みたいな感じでさ。
「は、入れるケドさ」
じゃあ、それでいいじゃねえか……!
つかこの台詞は俺から言うもんじゃねえだろ!
内心、そんな事を叫びつつ、俺は自分の服を脱ぐ事にする。
……あれ、俺はどうしよう。
桐乃が入院するかもと服は持ってきているから濡らしてもいいとして。
俺、自分の服は持ってきてねえぞ。
さっき、患者用の服を貸して貰えたからパジャマとしては大丈夫だが……。
下着までは貸してもらってない。
…………。
「き、桐乃、こっち見んなよ?」
「え、う、うん」
「ってさっそく見てんじゃねえか!」
油断も隙もない奴だな。なんでうんと言いながらこっちに振り返るかな。
桐乃の姿を監視しながら、俺は服を脱いでいく。
無論、下着もだ。
下着まで脱ぎ捨てて、貸して貰っていた手拭いを腰に巻く。
これで完璧だ。
いや、超恥ずいけどね。これでも。
「も、もう見てもいい?」
「駄目に決まってんだろ、つか、風呂入ってる間はずっと見んな!」
どんだけ見たがってんだよ、こいつは!
双方の準備が揃ったので、早速風呂場に入る。
予想していた通り、湯船もそこまで広くはなく、ただ二人が入れる程度には広めにとられている。
患者によっては、横になった状態でしか入れない人も居るだろうからな。
……言っておくが、別に、桐乃と一緒に湯船に浸かろうなんては考えてないからな。
「よ、よし、ちゃっちゃと済ませるぞ」
「……ちゃんと優しくしてよね」
……こいつはなんていちいち紛らわしい台詞を吐くんだ。
周りに聞いている人が居たら誤解すんだろうが。
まあ、誰も聞いてないとは思うけどさ。
「へいへい。んじゃ、早速だが、……ええと髪から洗えばいいか?」
桐乃が普段、どういう順番で身体を洗ってるかなんて知らない。
というか知っていたら問題だ。
なので、桐乃に順番を聞く。
「うん。いつも髪から洗ってるかな。そっから上半身、下半身って感じ」
なるほど。……なんだか徐々に難易度が上がっていく感じがするな。
因みに今、桐乃の包帯はビニール袋で覆ってある。
当然、濡らさないようにする配慮だぜ。
「冷たっ! ……うわ、次は熱ッ!」
俺はシャワーの温度を手で確かめつつ調整していく。
しばらく格闘しようやく納得の行く温度になった。
よし、こんなもんだろう。
若干温い気もするが、熱いよりはマシだろう。
軽く桐乃の背中にシャワーを浴びせながら確認する。
「どうだ、湯加減?」
「ん、悪くないかも」
妹様から湯かげんのお許しを貰ったので、次は頭から浴びせる事にする。
こうやってると何だか昔を思い出す。
本当に小さい頃、こうやって妹を風呂に入れた気がする。
……懐かしいな。あれから、随分と身体が成長したんだな、こいつも。
そんな感じでしみじみと思い出を噛み締めていたら、気付いた。
というか、気付いてしまった、というのが正しいか。
……下着、透けてんじゃん!
考えてみれば当然だった。水着と下着は違うのだ。
水に濡れれば下着は肌に張り付いて、透けてしまう。
つまり、全身を今こうやって濡らしている以上、桐乃の下着が透けてしまっている訳で。
何だかこう扇情的な感じをもたらしていた。
「……どしたの?」
俺の動きが止まっている事に気付いたのだろう。
桐乃からそんな声を投げかけられる。
……桐乃は今、頭から濡らされていて、まだ気付いてないんだろう。
「い、いや、なんでもナイヨ」
「…………?」
めっちゃ訝しんでる。
「い、いいから、ホラ、このまま髪洗うからな。病院のシャンプーで良いよな?」
「……しかたないっしょ。そんかわり、丁寧に洗ってよね。デリケードなんだから」
「へいへい、任せろって」
備え付けのシャンプーから適量を手に垂らすと、手で泡を立ててから、桐乃の髪を洗いに掛かる。
……こいつの髪、すげえ柔らかいな。
泡立ちも凄くいい。これはシャンプーが良いからというより、髪がいいんだろうな。
「…………」
「…………」
お互い無言で、俺は髪を洗い続ける。
今のところ、不満は出てないからこの洗い方でいいんだろう。
「……あんたさあ」
「あん?」
「意外と、髪洗うのうまいじゃん」
「マジで? 美容師になろっかな」
「調子にのんなっての。あんたのセンスで髪切ったら大変な事になるっしょ」
そんな他愛もない会話を続けながら、ひと通り髪を洗い終える。
そろそろ洗い流すか、とシャワーに手を掛けたところで、桐乃が話しかけてきた。
「……ねえ?」
「ん、なんだ? まだ洗い足りないところあるか?」
「違くて。……あんたにとってさ、あたしって……」
こちらに背を向けているから、桐乃の表情は見えない。
「あたしって……なんなのかな」
…………。
質問が漠然としすぎて、何を意図しているのかは分からなかった。
俺にとって、桐乃が何なのか。
すぐに回答は出た。だが、その答えを果たして求めているのだろうか。
「俺にとって、おまえは……」
ザァアアアアア、シャワーを桐乃の頭から掛ける。
「――だぜ」
丁寧に、髪から泡を流してやりながら、俺は答えた。
「ちょ、聞こえ、し、シャワー、止め」
何か不満が聞こえるが、俺はシャワーを止めない。
俺が止めないという事が分かったのだろう。
大人しくシャワーを浴び続ける桐乃。
綺麗に洗い流し終わりシャワーを止めると、それを待ってたのか桐乃が口を開く。
「……あとで、もっかい聞くから。聞こえなかったし」
「聞こえない方が悪い。何度も言わねえよ」
「あんたがシャワー浴びせるからでしょ……!」
おまえが変な質問をしてくるからだよ。
桐乃の文句を聞きながら、次の段階として身体を洗う。
と言っても、洗ってやるのは背中ぐらいで、前なら片手で充分洗えるだろう。
備え付けのスポンジに石鹸を擦りつけ、泡を立たせて、桐乃の背中にあてがう。
「ひゃん! ちょ、なに?!」
「変な声を出すんじゃねえ! ただ背中洗うだけだっての!」
こっちが「なに?」って聞きたいわっ!
髪と同じように優しくやろうとしたのが裏目に出たか。
無造作に力を込めて、ごしごしと洗う事にする。
何やら桐乃から、もう少し優しくだの要望が来たが無視。
ひと通り洗ってやり、シャワーで洗い流してやり、そしてスポンジを桐乃に渡す。
「……なに?」
「スポンジだよ、見りゃ分かんだろ」
「じゃなくて、なんであたしに渡すワケ?」
「まだ前洗ってないだろ。前なら自分で洗えるだろうから、渡しただけだ」
ったく察しが悪いやつだな。なんでこっちが気遣ってやらねえとならねえんだ。
背中ならまだしも前は色々と不味いだろうに。
と脳内で悪態をついていると、予想外の桐乃からの返しがあった。
「……洗って」
「…………はあ?」
「洗って、って言ってんの」
あ、あのなあ……。
「桐乃、よーく考えろ。前を洗うってのはな、こうなんだ」
「なによ」
あーもう、ホント察しが悪い奴だな……ッ!
「……おまえのおっぱいとかそんなのも洗う事になっちまうだろうが!」
「……ッ!」
桐乃は俺の言葉に息を飲む。
ったく、直接的に言わないと分からねえのか、想像力ねえんじゃねえのこいつ。
「だから、前は自分で洗えって言ってんだよ」
「……知ってるし」
「あん?」
「それでもいいから洗えって言ってんのよ、馬鹿兄貴ッ!」
………………へ?
気付けば桐乃は、こっちに振り返っていた。
「あーもう何意識しちゃってるワケ!? いいから妹の胸ぐらい洗いなさいよ、男でしょ?」
…………。
「な、何黙っちゃってるワケ? つーか、何処見てんの?」
…………。
「…………」
お、俺は悪くないからな?
振り向いたのは桐乃だし? 急に振り向くもんだから、こっちだって対応出来ねえし?
だから桐乃の透けてるブラに目が釘付けになっちまったとしても、俺は悪くないハズだ。
「…………見たいワケ?」
俺が脳内で必死に言い訳をしていると、桐乃からそんな提案がなされた。
「み、見たくて見てるワケじゃねえよ?」
なんて言うか男の性っていうか。つい、目が行っちゃうんだって、ホ、ホントだよ?
「……確かに透けちゃってるケドさ。肝心なところとかは全然透けてないワケだし? それでも釘付けになっちゃうワケ?」
確かに、肝心の胸のところは厚い生地なのか、まるで透けてない。
だが、そこ以外は容赦なく透けていて、なんて言うか実にエロい。
それが妹であっても同じ事だ。
「というか、これじゃおっぱい洗えないよね……?」
そう言いながら、桐乃が手を後ろに掛ける。
お、女の子がおっぱいなんて口にするんじゃねえよ、と突っ込もうとして桐乃の行動における意味を察する。
「ま、待て、桐乃、おま、何をするつもりだ……ッ!」
俺の質問に、桐乃は顔を赤くしながらも、不敵に微笑む。
「なにって? ……こうするに決まってるでしょ!」
そう言って、桐乃は自分の背にある何かを外した。
はらりと、背中に回っていたブラの紐が前に降りてくる。
ブラ自体は、桐乃の胸に吸い付いているのか、落ちる事は無かった。
実際、先ほどと見えている場所はそう変わらない。
だが、状況はまるで違った。
「……お、俺、そろそろ上がるな?」
ヘタレと言われても構わない。
つーか妹とこんな雰囲気なんてオカシイだろ。
「……逃げるんだ?」
桐乃は目の前のブラを手で抑えるようにして、そう言ってくる。
逃げるに決まってんだろ。
「お、おまえな、そういう冗談は俺だけにしておけよ?」
そう言いながら、去ろうとする俺の足を桐乃が掴む。
「おわっ、あ、危ねえだろっ!」
「逃げんなっ!」
ブラを抑えていた手で俺の足を掴んでる訳だから、当然ブラがゆっくりと肌を滑るように落ちていく。
「お、おい、ブラ落ちんぞ?」
「そんなのどうだっていい! いいから、あんたは逃げんな! あたしを置いていくな!」
「……桐乃?」
俺の足を掴む手が、強い。そして桐乃の言動も何故か必死だった。
「あんたにとって、あたしが妹だってなら、変に意識しなければいいでしょっ!?
妹の裸なんて見たって、あんたは何とも思わないんでしょ?
だったら逃げないでちゃんとあたしを見て」
……それは、そうだけど。
妹の身体なんて見ても、別に何とも思わない。それは、確かに俺の中の回答だ。
実際、今にも落ちそうなブラを見たところで、俺の海綿体は起き上がろうともしていない。
俺は去ろうとする足を止めて、真っ直ぐと桐乃と向き直った。
その態度を見て、桐乃も俺の足から手を離す。
俺の足から離れた手は、それでもブラを抑えようとはしない。
「……分かった」
「え?」
「見てやる。おまえの事をちゃんと。……それが俺の答えだ」
俺の言葉に、桐乃は目を少し見開いた。
それが傷付いたような表情に見えたのは俺の気のせいだろうか。
桐乃はそのまま僅かに俯いて、手で拳とキュッと作る。
「……じゃあ、見なさいよ」
落ちきらず、ただ桐乃の胸に乗っているような状態だったブラに手を掛けて、一瞬だけ躊躇した後、あっさりと桐乃はブラを取った。
「……っ」
ブラの下には、まだまだ成長途中の、それでも確かに存在を主張している胸があった。
穏やかでなだらかな膨らみ。そして、その頂上でつんとしたピンク色の乳首。
俺はその姿をじっ、と見やる。
桐乃はただ俺の視線を受け止める。
「……なんか、感想とか……無いワケ?」
俯いたまま、桐乃は俺にそう声を掛ける。
「成長したな、桐乃。俺が前に見た裸はもっともっと餓鬼っぽかったよ」
「……それだけ?」
がっかりしたような声音で、桐乃はそう呟く。
全く、どんな回答をおまえは俺に求めてるのか。
「……綺麗だ、と思った」
「…………」
「まだまだ成長は足りねえけど、女神のようだと思ったよ」
それは俺の偽りのない感想だ。
ただまだ女神と形容するには成長が足りないけど。
言うなれば、まだ子どもの女神を見ているようだった。
「……そう」
喜んでるのか落ち込んでるのか、複雑そうな声音。
まだ桐乃にとって満足の行く回答では無いらしい。
俺を目を閉じて、そして、一番初めに感じた感想を言う事にする。
「あぶねえ、と思った」
「え?」
「後、数年経った時のおまえの裸じゃなくて良かったと思った」
「……なんで?」
そこでなんでって聞くかね。
「餓鬼の頃より、ずっとずっと色気があって。正直さ、少し興奮しちまった。
あと数年後のおまえの身体だったら、きっと欲情してた。
おまえを襲っちまってたかも知れねえぐらいに」
これは兄として失格なのだろうか。
どうなんだろうな。成長した妹の身体に欲情しちまうのはやっぱアウトか。
仮に親父がそんな事言い出した日には通報しちまいそうだもんな。
俺は桐乃を女として意識している部分が、確かにあるという事だ。
兄にも、関わらず。
そういう気持ちに気付きたくないから、俺は早くここから逃げたかったってのに。
うちの妹は酷な事をしてくれる。
「……そっか」
妹は、端的に俺の感想に対してそう返す。
まだ俯いた侭。
「じゃあさ、……改めて、あたしの身体を洗ってよ。こうして兄貴に身体を洗って貰えるのは……今だから出来る事なんでしょ」
兄妹として、こうやって風呂場で居られるのは今だから。
将来的にはこうやって風呂場で居られる事は出来ない。
それでも二人、風呂に居るのであればそれはもう、兄妹としてではなく。
「……分かった」
これが、最後だ。俺と桐乃が一緒に風呂に入るのは。
兄貴として妹の身体を洗ってやれるのは。
断る理由なんてなかった。
だから、俺は頷く。
桐乃は俺の返事に、こくりと頷く。
「そんじゃ、手で洗ってよ」
「おう……ってなんでだよっ!?」
超ハードルあがってんですけど!?
少ししんみりした空気を変えたかったのも知れねえけど、それちょっと方向性間違えてるから!
「妹の成長した身体、触りたくないの?」
「そういう問題じゃねえ! つかそこではいって言ったらそいつ兄貴超失格だから!」
「少し欲情した時点で、兄貴として失格だと思うんですケド」
グサッ。
今の桐乃の言葉、すげえ胸に刺さった。
だよな、俺、兄貴失格だよな……。
せっかくいい兄妹になろうと決意した矢先に……。
「ちょ、マジで凹まないでよ。じょ、冗談だってば。ほら、顔あげなっての」
がっくり項垂れている俺の髪を掴んで、くいっと持ち上げる。
「ちょ、てめえ! 男のデリケートな髪になんてことをしてくれてんだっ!」
「あんたが項垂れてんのが悪いんでしょ。ほらほら、ちゃっちゃか洗いなさいっての」
「あー、もうヤケだ! わーったよ、洗ってやんよ!」
石鹸で手をぐしぐしと泡立てて、準備OK。
よし、と桐乃を向き直ったところで目が合う。
「……おい、背中向けよ?」
「はぁ? なんで。背中はもう洗ったでしょ」
「そ、それはそうだけどよ」
こう背中から洗った方がなんて言うか健全かなあ、って思ったんだが。
いや、寧ろその方が嫌らしいか?
「それにあんたの反応見てたいし」
「…………」
ぜってえ動じねえと俺は心に誓った。
「ようし、やったろうじゃねえか!」
スイッチが入ってる俺は、そんぐらいじゃ怯まねえぜ。
早速俺は、桐乃の……腕から洗い始めた。
ヘタレっていうな、畜生。
腕、腹、脇腹、脇、肩……と黙々と洗っていく。
その間、桐乃はニヤニヤと性格の悪そうな笑みで俺を観察していた。
けっ、頬を真っ赤にしながらそんな表情したって無駄だっての。
「そろそろじゃん?」
「…………」
なんでこいつはこんなに乗り気なんだ?
おかしいだろ、いつも俺が裸みたらマジギレすんじゃん?
理不尽に家を追いだそうとすんじゃん?
くそ、ここで躊躇したら現時点でもガンガン意識しちゃってるって思われちゃう訳で。
そうだ、目の前に居るのはただの妹。それ以上でもそれ以下でもない。
おっぱいぐらい、洗っても何の問題もない。
全然意識なんてしてねえよ、という感じで無造作に桐乃の胸に手を伸ばす。
「な、なんか嫌らしい手つきしてるんですケド」
「気のせいだ」
そして、桐乃のおっぱいに手が触れた。
ピクッ、と震える桐乃の身体。
ビクッ、と震える俺の身体。
「わ、悪い、なんか変だったか!?」
「……あんた、びびりすぎ。少しぴくってしただけっしょ」
「…………」
確かにどんだけビビってんだ俺は。
恐る恐る犬に触っている赤ん坊みたいなリアクションしてしまった。
コホン、胸の内で咳払いを一つし、冷静さを取り戻しながら再チャレンジ。
…………ぷに。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
や、やわらけえ! なにこのやわらかさ! マシュマロ? 神のマシュマロ?
でもこの肌触り、しっとりとして温かい、なんなのこれ。
こんなのが地球上に存在してるなんて信じられん。
「ね、ねえ?」
やべええ、超やべえええ、なにこれ! 信じらんねえ!
押したら返ってくるぞ、これ! ぷるんってしてんの、マジぷるん。
よく効果音でぷるんって使われてるけどマジぷるん。半端ねえ!
「ちょ、ちょっと……ん、……あ、あんた」
女ってすげえ、こんな神秘を胸に備えてるなんてマジやべえ!
想像以上のぷにぷにだわ、一日中触っててえぐれえだ……!
「す、すとーーーっぷ!」
「――ハッ!」
桐乃に声を張り上げられ、ようやく俺は我に返った。
「あ、あんたねえ、なに妹の胸を夢中でもみくだいちゃってるワケ?」
ぷにぷに。
「って揉むな! いったんあたしのおっぱいから手を離しなさいっての!」
桐乃に手を叩かれて、名残惜しくも俺は妹のおっぱいから手を離した。
「すまん、余りの柔らかさにちょっと我を失ってた」
「そ、そんなに柔らかいっけ?」
「いや、ただ柔らかいワケじゃないんだ。こう適度に弾力があるっていうか、なんつうか凄かった。正直感動した」
「……あんたの言動に正直引くんですけど」
おっぱいの素晴らしさを語ったら妹に引かれてしまった。
当然ですよね。
俺も桐乃にちんこの素晴らしさを語られたら引くもん。
「…………」
「……ん?」
気付いたら桐乃が俯いている。
もしかして俺の余りのキモさに身体を洗って貰ってる事に後悔してるのか?
……いや、これは俯いてるんじゃない。
下を……俺の下を見てる!
「……げっ!」
俺の下、別にそそり立ってはない、すこし、ほんのすこーしだけ大きくなってる気がするが少しだけだ。
問題はそこじゃない。
こう手拭いが微妙にはだけて、その隙間からこんにちわしているという事が大きな問題だ。
知らない内に、俺の海綿体と桐乃は顔合わせをすませてしまったらしい。
「ね、ねえ。あんたも触ったんだからさ、あた」
「却下!」
おまえにちんこの素晴らしさなんて語られても困る!
いや、語らないと思うけどさ。
「なんでよ、ズルくない? 散々触っておいて」
言っておくが触らせたのはおまえだからな。
「俺が触ったのはおまえの胸だ。だから俺の胸なら幾らでも触っていいぞ」
「んじゃ触る」
男の胸なんて触りたくないと突っ張られるかと思ったが、予想に反して桐乃は乗り気だった。
「へえ、やっぱ男の胸にも乳首あるんだ」
そりゃあるよ。何を言って――ああ、確かにエロゲの野郎には基本乳首描かれてねえな。
つか現実で男の水着とかで上半身ぐらい見てんだろ、なんでエロゲのが優先されてんだよ。
ていうか、俺の乳首をそう興味津々で弄り回さないで頂きたい。
別に乳首で感じるような事はないか、なんか擽ったいっていうかもどかしい気分になってくる。
……あれ、もしかしてこれが感じてるって事なのか?
「すとーーーっぷ!」
「ちょ、なによ!」
「うっせえ! 終了、ここまで!」
危うく妹に乳首を開発されちまうところだったぜ……。
そ、そろそろ次の箇所に行くとしよう。
上半身は終わったし、次は下半身だな。
あー、下半身な。
下半身か……。
チラ、とこれから洗おうとしている箇所を見やる。
…………ッ!
ばっちし透けてるよ! うわ、マジ勘弁してくれ!
確かに肝心の部分は二重構造なのか丸見えって訳じゃねえけどさ!
さっきのブラより比較にならねえぐらい透けてんだよ!
分かるかな、分かるよな!?
「つか、今思ったんだけどさ、あたしの胸を触ったからあんたの胸を触らせるって事はさ。
あんたのその、ち、ちん」
「言わんとしている事は分かったから今直ぐ口を閉じろ女子中学生」
ちんこなんて女の子が口に出すんじゃねえよ。
つか、俺のちんこがどうしたって?
ちんこを触るならおまえのなんかを触らせればいいとかそんな話か?
だが断る。
正直に言おう。
さっきのおっぱい触りからおっぱい触られで、俺の海綿体が目を醒ましかけている。
後少しでもスイッチが入ったら一気に覚醒してしまうだろう。
いいかね、あくまで今回は兄妹最後の入浴なのだよ。
そういうしんみりとして切ないシチュエーションな訳だ。
ここで、俺の海綿体がパオーンしてみろ、台無しだ。
「っておまえはなんで脱ごうとしているワケ!?」
そういう俺の深遠なる配慮を無視して、あろう事か桐乃は自分の下着を脱ごうとしていた。
「え、だってあんたの見ちゃったし。あたしも見せた方が良いのかなーって」
あっけらかんとそんな事を言い出す桐乃。
こ、こいつ、羞恥心とか麻痺してんじゃねえだろうな。
「み、見せなくていい、大丈夫だ」
「でもパンツ越しじゃ洗えなくない?」
「洗える、マジ洗える、こう布越しに洗うから! つかやっぱそこも洗うの?」
俺の主張そっちのけで、桐乃は脱ごうとしていたが、流石に片手で濡れた下着を脱がすのは難しかったらしい。
じーっと俺を見る。
「ねえ」
「いやだ」
どうせ、脱がして、とか言うんだろ? 分かってんだよ。
「いやだって言われても……、あんたのそれ、お、おっきくなってない?」
…………。
ソウデスネ。
終わった……、俺の人生、終わった。
そうか、あれか、そうだよな。女が下着を脱ごうとしているシーンってこう、なあ。
そうだよなあ……。
さようなら、兄としての俺。
はじめまして、変態としての俺。
「……ふーん、欲情しちゃったんだ」
「…………」
「妹に対して、欲情しちゃうなんて、マジありえなくない?」
侮蔑の言葉を俺に向けながら、しかし妙に嬉しそうに俺を見やる桐乃。
「う、うっせえな! 仕方ねえだろ、妹は妹でもな……、……ッ!」
しまった、何か言ってはいけない事を言いかけた気がする。
「……妹は、妹でも?」
ふざけていた声音から、一気に真剣な声音まで下がる。
「妹は、妹でも……なに?」
ジリジリ、と桐乃は俺に近づいてくる。
眼は真っ直ぐと俺の目を射竦めている。
俺はそんな桐乃から逃げようとジリジリと後ずさる。
「なんで逃げるワケ?」
そんな俺の行動を非難しながらも、桐乃は容赦なく俺に近づいてくる。
対して俺は背後がもう壁になってしまいこれ以上逃げる事が出来ない。
「そ、それはな……」
桐乃の動きを止めたくて何かを言おうとするが頭がまわらない。
確実に俺との距離を縮めていく桐乃。
俺を追い詰めておいて、尚も近づいてくる桐乃。
こ、これ以上近づいたら――。
桐乃の眼は、少し潤んでいる。
その瞳に吸い込まれそうになりながらも、俺は必死で何か縋る物を探す。
何か、この展開を脱出する方法は無いか――。
―――あった。
「桐乃」
「…………」
桐乃は答えない。ただ俺に近づいて。鼻と鼻が触れ合うような距離。
俺は言った。
「ここは、病院だ」
ピタ、と桐乃は動きを止める。
「ここは患者とかが入る場所だろ……、そういうのは良くない」
ホテルとかとは違うのだ。
それに監視カメラはないにしても音声ぐらい聞かれている可能性もある。
桐乃は超至近距離で俺を睨む。
俺はただ真っ直ぐと桐乃を見やる。
やがて、桐乃は俺から離れた。
チッ、という舌打ちと共に。
「……まだ終わりじゃないから」
桐乃はそう宣告する。
「今日はもう聞かない。でも、家に帰ったら、続き、するから」
決して忘れたワケじゃないと。
俺が漏らしてしまった失言。
それを家に戻ったら改めて聞き出すと。
やれやれ、と俺は思う。
実のところ、俺も何を言おうとしていたのかは分からない。
単純に考えれば、……なのだろうけど。
そう言おうとしたのだろうか。
けど、今はこうして結論までの時間を稼げたのでよしとする。
そして、俺もまた聞かなくてはならないだろう。
その聞かれたタイミングで、同じように。
俺が止めなければ、おまえは俺に何をしようとしていたのかと。
続く。
という訳で、こんだけ長々と書いた上で
結末まで持っていけなかったという力量不足を痛感しつつ
ぶっちゃけ半分も予定した結末まで進んでないです
場合よっては幾つかシーンをカットしようかなと思ったり
ようやく前に言ってた病院云々の話が投下出来て個人的には満足です
とはいえ最近、自分ばっか投下しているので、そろそろ自重すべきかと思ったりなんで
何かあれば遠慮なく書き込んで頂ければと
それでは長文乱文、最後までお読み頂いた方には感謝を
( ´ー`)y━・~~~
>>597 乙です。
京介爆発しやがれ。
(性的なryではなくて)
ち◯こに石鹸つけて、ま◯この中を洗ってくれ。
>>597 自重なんかしないでもっとやりたまえ
ところで病院で合体してもええんやで
>>597 乙乙!
朝から良いもの読ませて貰った
おかげで身も心も勃起もといオッキした
>>597 乙!
きりりんずいぶん迫るな。家に帰る前にもう一波乱あるか?
自重なんかせずに早く続きを投下してくれ!
>>597 乙!!
やっぱり◆ebJORrWVuoの描く桐乃と京介は最高だわw
息を飲むようなギリギリの攻防戦がめちゃくちゃエロいっすw
シーンカットも自重も不要だよ。
このクオリティのSSなら心ゆくまで読みたい。
607 :
名無しさん@ピンキー:2012/07/15(日) 17:03:39.93 ID:omSzfv5e
>>597 んーとだね、
・事故の必要性
・オリキャラの必要性
の2点かな気になったのは。
仲を急接近させるのに事故を利用するのはいい手なんだけど、散々乱発されすぎてぶっちゃけて言えば安易すぎる。
話の構成がVIPで書いた京介リンチと変わらないよね?
テンプレのごとき展開に加え、キャラを不必要に傷つけるのはみてて気分いい物じゃない。
次いでオリキャラ。現時点で登場させる必然性が全く見いだせない。
不幸キャラと軽傷な桐乃を比較させるならそれは不快としか思えんし、
京介との仲が発展するならそれは俺妹スレでやるべきではない。
まして今までレベルの高い作品を書かれてきただけにこの選択には正直ガッカリ。
なにか狙いがあるなら聞きたいところ。
もちろん予想を裏切る展開もあるかも知れないから読み続けるけど。
>>607 評論家大先生キター!
まだ完結していないんだから御託並べるんだったら完成後にすりゃいいじゃねぇか
書き手のヤル気失くす様なコメント書くなカス
それにオリキャラったって隣の病室の女の子だけだろ? 目くじら立てる必要無いんじゃねぇの?
>>607>>608 二人とも、
>>1の後半をよく読んで
・・とは言え、あまりに凄い上からなので、
自分も一言くらい言いたくなったのも事実だけど。
>>608に全部言われたけれど・・。
610 :
名無しさん@ピンキー:2012/07/15(日) 19:11:46.85 ID:omSzfv5e
>>608 ただ部屋を間違えただけなら文句はないが、会話したってことは絡ませる気満々じゃねーか。
SLの災厄を忘れたわけじゃあるまい
おお、中々手痛い指摘を頂いているぜ
必要性に関しては今から投下する部分で語るつもりだが
絶対に必要だったかというと正直、頷けない
ただ個人的に第三者を出す事である人物のある部分を語ってほしかったというのが意図
何はともあれ、書き上がったのでちょっと精査したら出すぜ
また長いのでご勘弁頂ければと
あれから、各々で背中合わせで自分の身体を洗った。
その間、どちらも無言で、ただただ作業をお互いにこなすという形だった。
ひと通り、お互いが洗い終えたらどちらかが言うでもなく共に湯船に浸かった。
背中合わせでの形でだ。
「……もう少し、足を曲げられねえか?」
「無理。我慢して」
流石に背中合わせで一緒に入るのは狭い。何とか浸かれたが体育座りの形で小さくなる必要がある。
なら一緒に入らなければいい訳だが、何故か一緒に入っている。
正直俺は入る気がなくて、さっさとあがろうと思っていたんだけどな。
俺が身体を洗ってる間に、先に身体を洗い終えた桐乃が湯船につかり。
そして身体を洗い終わり、立ち上がったところで、桐乃が俺に湯船に入ると思ったのだろう。
身体を前にずらし、一人分が入れそうなスペースを空けた。
特に出る訳でもなく、ただ無言でスペースを空ける桐乃の行動に、一緒に入るという選択肢を突きつけられて、こうして一緒に入る事にした。
背中合わせなのは……何となく最後の抵抗だった。
何に対しての抵抗だったのかは分からない。ただ、殆ど全裸で、桐乃の方を向いて入る気にはなれなかった。
俺の海綿体はこれでもかってぐらい膨張をした侭、収まらないというのもある。
……いいや、何に対して抵抗なのかは分かってるな。
桐乃の方を向いて入ったら、とても我慢が出来る気がしなかったからだ。
しかし、俺は決して襲いたい訳じゃない。
兄妹の関係を大事にしたかった。ここで襲ってしまっては、大事に育ててきた兄妹の関係をまた壊してしまう事が分かっていた。
だから、兄として男の俺に対する抵抗。
それがこの背中合わせだった。
…………。
こうやって桐乃と風呂に入るのは最後だろうな。
そう思うと、こんな形でお互い無言に過ごしてしまう事が、とても勿体無く思えてしまう。
しかしこの結果にしてしまったのは自分だ。
桐乃を異性として見てしまっているこの駄目な兄貴が悪かったのだ。
いつから、異性として桐乃を見るようになったのだろう。
ラブホに一緒に行った時だろうか。
それとも海外に行ってしまった時からだろうか。
お互いが無視しあってたあの頃からだろうか。
……それとも初めからか。
「……ねえ?」
「……なんだ?」
そんな思考に没頭している俺に、桐乃が話しかけてくる。
「……ごめん」
そう、桐乃が謝罪をした。
何に対しての謝罪なのか、まるで分からなかった。
「謝るのは俺の方だ。……悪かった」
だからそうやって返す。すると桐乃は静かにうん、と答えた。
そうして、幾らかの会話をこなし、最後の兄妹風呂は終わりを迎えた。
それから、風呂を出て、桐乃に服を着せる段階になって、ある事に気付いた。
……桐乃がパンツ履いたままだと、新しいパンツ履かせられなくね?
流石に濡れたパンツの上から新しいパンツを履かせるのは苦行過ぎるだろう。
桐乃もその事に気付いたのか、無言で替えのパンツを見ている。
「……ねえ、悪いけど脱がせて貰えない?」
桐乃がそう言ってきたのを断れる筈も無かった。
しかし、正直にいってこれはヤバい葛藤を心の中に生んでいた。
桐乃に背中を向いて貰って、俺は桐乃のパンツに手を掛ける。
水で濡れていて、桐乃のおしりがくっきりと見える形になっている。
更に、少しだけ大事な部分にも張り付いていて、輪郭が見える状態になっていた。
……これを意識するなって方が無理だろ。
出来る限り目を逸らしながらも、しかしパンツを脱がす力を込めていく。
肌に張り付いた下着というのは中々どうして、簡単には脱がせなかった。
大体なんで女のパンツってのはこんなに小さいのかと。
それでも何とかしてピンクの下着を脱がしていく。
そうすると生のおしりが目の前に見えてくる訳で。
目を逸らしたり、目を瞑ったりと、色々と抵抗をしながらも脱がしていく。
見ないようにするのが大変だった。
物理的じゃなく、精神的に。
見たくない筈がなかったからだ。
正直、この葛藤で死ねると思いながら、俺は驚異的な精神力で見る事なく、パンツを脱がした。
やりきった達成感があった。
男として後悔する部分も多々あったが、しかし兄としては満足だった。
「……脱がしたぞ」
背中を向けてそう言ってやる。
「……うん」
桐乃がそう応えて、タオルで身体を拭く。
これでようやく一息入れられると思いながら、自分の身体を拭き、さっき脱いだ下着を履いていく。
一度脱いだ下着をもう一度履くって、なんだかすげえ抵抗があるよな。
正直、近くにコンビニがあったら下着を買いに走りたいぐらいだ。
だが生憎として近くにコンビニがありそうな場所ではなかった。
あれ? 履く?
俺がそれに気づいたのと同時に、桐乃から声を掛けられた。
「……あの、履かせて」
…………。
今まで妹から出された要望の中で、これは最大級の難易度じゃないだろうか。
さっきのおっぱいを洗うのも中々の難易度だったが、なんだろう。
おっぱいを触る、というのと、こうしてパンツを履かせるというのは質が違う。
何故なら、パンツを履かせるというのは脱がせる以上に、見なくちゃいけないからだ。
手を引っ掛けて引き下ろすのとは違う。
「……分かった」
それでも断る訳にはいかない。今は俺しかここに居ないのだ。
改めて桐乃へと向き直る。
湯上りで、全身を本来の色合いより赤く染めている桐乃の裸体。
全裸だった。
せめて上半身だけ着させるべきだったが、今更遅い。
なんせ着せるのは俺だ。下半身裸の桐乃に上を着せるなんて、難易度高いってもんじゃない。
そういう意味では、難易度的にまずは下から責めるのがいい。
おっぱいはなんとか今見ても耐えられるレベルだ。
まだそんなに大きくないしな。
替えの下着は、既に桐乃の足元に落ちていた。
一応履こうとしたのだろう。
パンツの穴に、片足は通っている状態だ。
……ここまで出来れば、自分で履けるんじゃないか?
そもそも片腕を使えなくなった事がないので分からないが、どれも面倒臭いながら、どうにか片手ででも出来る気がしなくもない。
その面倒くさい、というのが桐乃にとって誰かに手伝ってもらう最たる理由なのだろうが。
まあ、いい。
それこそいまさらだ。身体を洗うのだって、結局俺にやらせた。
何か甘えたい時期なのかも知れない。こうやって服を着せるのだって、これが最後だろうし。
感傷的な想いを胸に宿しながら、桐乃にパンツを履かせる為に、桐乃の後ろでしゃがみこんだ。
うわ、やべえ!
感傷的な想いで精神防御を試みたが、この体勢になって即効で防御は突破された。
だって、生尻ですよ、いや、それはさっきも少しだけ見たけど。
その下に、若干影で見えなくなっているものの、その、あれがある訳で。
見ないようにする、とかそんなんじゃなく、自然と目に入っちゃうんですよ?
アレが。
ピッタリと閉じてて、今はただ線しか見えないけども。
つか、線が見えてるってだけで、もうアウト。
最近はさ、ネットで無修正の画像なんて幾らでも手に入る訳ですよ。
だから、こういう構造になってんだ、へえ、とかは思うことはない訳だが。
こうして目の前にあるってのは、それだけでどうしようもないものだ。
見たい、そして、触りたい。
そういう欲求がどこまでも身体の内から湧いてくる訳だよ。
下着がある、という防衛ラインがなくなってしまっている以上、もう直ぐだった。
これは、さっきの葛藤の比じゃなくて、既にもう見て、しまった訳で。
――視線がそこに釘付けで、身体は硬直したように動けない。
明らかに不味い衝動が身体を駆け抜けている。
見たい、触りたい、指を入れたい、中を堪能したい、挿したい、入れたい。
強烈な衝動。頭がそればかりになって、もうどうしようもなくなってしまいそうで。
もう変になりそうだった。
そんな俺の様子に気付いたのか、中々行動しない俺の様子を訝しんだのか、桐乃がチラリと俺を見る。
慌てて視線を逸らしたが、桐乃には見られてしまっただろう。
俺が何処を凝視していたのか。
桐乃も固まった様に、俺を見ている。
そして、片手でソコを隠すようにして言う。
「な、何見てんの、ば、バカ」
その言葉は怒気を孕んでなかった。
なんて言うか、照れ隠しのような、甘い感じの罵倒。
「わ、悪い、桐乃」
そして、俺もそれに対する謝罪じゃなく、今から行う行動に対しての謝罪で返す。
「俺、もう我慢が出来そうない」
「え? えええ!? そ、それって……」
桐乃が慌てて俺から一歩離れる。
「だから、そ、その……」
「だ、駄目だって、ここ病院だから、その、ね?」
何を想像しているのか知らないが、断るポイントはそこかよ。
家だったらいいってのか。
いや、駄目だろ、兄妹なんだぜ?
あれ、それじゃ今から行う行為は兄妹の関係を守ったままなワケって?
そう、俺が今から行うのは、ヘタレ オブ ヘタレと形容されてもおかしくない内容だ。
つまり――
「が、頑張って自分で履いてくれないか?
おれ、その、ちょっと……抜いてくる」
そう、全力逃亡だ。
兄としての決断、だと思うかも知れないが、その実、違った。
これは男としての俺の要望だった。
一刻も早く抜きたい、出来るなら目の前の子を襲いたい。
でもここは病院だ、ヘタレな俺としてはこんな場所でそんな行為を敢行できる勇気は無い。
だから苦肉の策として今から即効で着替えてトイレに直行し、今の行為を思い浮かべて一発抜く。
これが俺の考えた最良の策だった。
……うるせえな、ここが病院だってのに抵抗があんだよ。
どこかの誰かに言い訳をしながらも、俺は桐乃の返事を待った。
「……ぬ、抜いてくるって」
そこに突っ込んでくるのかよ。
あ、てか考えてみれば抜くことまで説明しなくて良かったんじゃね?
適当に腹痛とか言ってれば良かったんじゃね?
……俺って実は馬鹿なのか?
「き、きにすんな。と、とりあえず自分で履いてくれって事だ」
「あ、あああ、あたしもなんか手伝う?」
ぶっ! な、な、なななな何を言い出しやがるんだ、こいつは!
て、て、手伝うってなんですか、なんですかその魅力的な提案。
つかこっちを向くな、この全裸女!
「だ、だだだ、大丈夫だ、ひとりで出来る、こ、こんなん直ぐだ」
「で、でも、ほら、出したら汚しちゃうし、ほ、ほら、飲んであげるとか出来るし、ちょ、ちょっと興味があるし」
――――。
こ、こいつの手伝うってそういうレベルかよ?!
俺はちょっとこう、なんだ、見せてもらうとか、せいぜい手こきレベルだったのに!
さ、流石はエロゲマスター、俺の予想を遥かに上回る提案をしやがる。
つか、こいつの脳内ではここで出す気だと思ってんだな。
「え、いや、その……いやいやいやいやいや、いいっす!」
すっげえええ魅力的な提案でしたよ、はい。
なんて断ったかのかというと、パニクってたのもあるし、今の言葉だけで逝きそうになってたからだ。
口に含まれる以前に、目の前で見られるだけで出しちゃうんじゃないだろうか。
そんな訳で、もう出そうになってた俺は、取り敢えずパジャマを手にして、トイレに逃げ込もうとした。
「ちょ、待ちなさいって――!」
が、その俺を桐乃が止める。
……俺のあそこを掴む形で。
「あ」
よ、よりによってソコを掴むな……ッ!
桐乃の手によって起こされる刺激に、爆発寸前だった俺の海綿体は、一気に臨界を迎えた。
「ちょ、な、なんかビクビクしてんですケド、だ、大丈夫なワケ?」
……全然大丈夫じゃないっすね。
圧倒的な快感と圧倒的な後悔を同時に感じたのなんて始めてだぜ。
圧倒的な快感ってのは、こう、我慢に我慢を重ねた結果、他人の手によって逝かされる快感。
これは、病みつきになっちゃいそうな快楽だ。
こうやって半賢者モードの状態になっても、まだドピュドピュと放出を続けている。
で、圧倒的な後悔とは何か。
妹の手で逝かされた事? いやそれも確かに後悔に値するかもしれない。
だが、それよりも……。
改めて状況を説明しよう。
俺は、下着を持ってきていない。
近くにコンビニも無い。
今、俺は下着を履いている。
後は……分かるだろ?
//
「だから、ごめんって。そろそろウザいから凹むなっての」
あれから、病室に戻り、桐乃はベッドの上。
そして俺は部屋の隅で体育座りをしていた。
全力で凹み中。
え、下着はどうしたって?
はっはっは。
……今、ノーパンですが何か。
え、下着はどうしたって?
取り敢えず応急処置として、ビニール袋に突っ込んで固く縛っておいた。
ただ季節が季節なので、明日にはそのままゴミ箱行きかも知れない。
いや洗おうとも考えたんだよ。ただ、ここ公共の場じゃん?
誰もが使う洗面所で、汚しちまった下着を洗いたくないじゃん?
少なくとも俺は誰かが精液塗れの下着を洗った場所で歯磨きはしたくねえよ?
因みに俺が応急処置をしている間に、桐乃はしっかりと下着を履いて、それどころか、あらかた着替えを済ませていた。
ボタンは流石に留められなかったようで、俺が留めてやった。
……やっぱ普通に着れんじゃん。なんで俺が脱がしたりしたんだか、とやはり思ったが、甘えたい年頃だったんだろうと適当に結論付けておいた。
そして今、病室に戻ってきた絶賛賢者モードの俺は、色んな後悔に塗れてこうやって部屋の隅で凹んでいる訳だ。
妹に手コキで逝かされてしまった。
下着に中出ししてしまった。
病室なんていう公共の場でノーパンの高校生♂=俺の現状。
凹む要素は幾らでもあった。
桐乃がさっきから謝ってくれているが、正直、桐乃が悪い訳じゃない。
いや、こうなんていうか、人をボッキさせてくれやがった事は責任があると思うが。
しかしどれも自制出来なかった自分のせいとも言える。
「はぁ……。そういや、飯ってどうなんだ?」
だがここでいつまでも凹んでいても確かにウザい。
桐乃が悪い訳でない以上、桐乃に迷惑を掛けるのもなんだ。
家に帰って自分の部屋で存分に凹む事として、今は一時的に忘れよう。
「さあ? 昼間は普通に看護婦さんが持ってきてくれたケド」
ふーん。じゃあ、時間的にそろそろ夕飯が来るって感じか。
「どっかに売店とかねえの? どうせ俺の分の夕飯はねえだろうし、何か買ってこようかと思うんだが」
「受付の所にあるっちゃ、あるケド。もう閉まってると思う」
なるほど。つまり俺の飯は抜きか。
まあ、仕方ない。そもそもこうやってパジャマと毛布を貸して貰えただけでも僥倖だ。
俺の計画性の無さがアダになっただけだしな。
「あたしの分、分けたげよっか?」
「いいよ。気持ちは受け取っておく。だが、おまえは怪我人なんだからちゃんと食っとけ」
「でも、あんた、あんなにいっぱい出したんだからお腹空いてんじゃないの?」
「ちょ、おま……!」
イキナリなんて事を言い出しやがる……!
誰かに聞かれたらどうすんだ、誤解ですとも言えねえんだぞ、事実ですなんて言うわけにもいかねえだろ……ッ!
それに人がせっかく忘れようとしている事を……ッ!!
俺の心の叫びが少しは通じたのだろうか。
桐乃は、あ、という感じに口を閉じると、頬を赤くしながら、俺から目を逸らした。
「ご、ごめん」
「い、いや、いい。とりあえず忘れてくれ」
「え、あ、う、うん……」
なんでそんな歯切れ悪いんだよ。
眼は泳いでるし、態度だけ見ると寧ろ記憶に焼き付けておきました的な感じなんですけど。
まさかそこまで非道じゃないよね? 桐乃にも良心ってのはあるよね?
カリビ○ンコムが可愛く思える程、俺の中の黒歴史なんだぜ?
まあ、流石に桐乃もお袋とかに「京介があたしの手コキで逝ったんだけど」とか言いふらしはしないだろう。
そうなったら、問題になるのは俺だけじゃなくおまえもだからな。
……い、言いふらさないよな。
ね、念の為、あとで釘を差しておくか。
俺が心の中でそんな疑心暗鬼を迎えていると、扉がノックされた。
桐乃が、他所行きボイスで返事をすると、看護士さんが扉を開けて入ってきた。
「はい、夕ごはんですよー」
そう言ってトレイを運んできた……が、デカい。
明らかに一人分じゃない。
「え、これ、多くないですか?」
ついそう突っ込んでしまう。
その突っ込みを待ってたとばかりに看護士さんが答える。
「ふふっ、ここって若い入院患者が居なくて、皆、そんな食べないんですよね。
で、今日は若い患者が居ると料理長に伝えたら張り切っちゃって」
そんなんで張り切ってこんなに大盤振る舞いして良いのか?
つか、大丈夫かこの病院。
「ここ、独自の畑を持ってるんですよ。だから、食材は余っててたまに近所に配ってるぐらいなんですよ。
そして、ここの料理長は昔、いっぱしのレストレンのシェフだったんです」
「へえ、確かに今日のお昼に食べた料理はとても美味しかったです」
いや、桐乃、そこは同意するところじゃなくて何このご都合主義と突っ込む所じゃね?!
しかも割とどうでもいいご都合主義だな……。
何はともあれ、夕飯に困りそうには無さそうだ。
「因みにまだまだありますから」
「いやいやもう要らねえからっ!? あんたらにとっての若者はどんだけ食うことを想定してんだよっ!」
別の意味で、夕食には困りそうだった。
//
すっかり膨れたお腹を擦りながら、椅子に浅く腰を掛ける。
「ふふ、すっかり平らげて貰えたようですね」
食べ終わった食器を片付けながら、看護士さんが笑う。
……人間、頑張れば出来る事って意外に多いものだ。
明らかに食い切れそうにないご飯を平らげる事も、出来たりする。
正直、ちょっと気持ち悪いが。
「そういえば、看護士さん」
さっきから少し気になっていた事を聞いてみる事にする。
「なんですか?」
「他に若い入院患者が居ないって言ってましたけど、隣に居ますよね?」
若い少女。改めて考えてみるが、あれは大体妹と同じ年頃じゃないだろうか。
まあ、確かに沢山食いそうにはなかったけど、若い患者ではあるだろう。
「…………え?」
しかし俺がそう言った瞬間、看護士さんの顔が引きつった。
何だか嫌な予感がする。
「……そうですか。あなたには、見えるんですね」
え、え、え、ありがちだけど、まさかこれって。
「ゆ、幽霊とかそういう話ですか?」
「ちょ、あんた、何を話し始めてるワケ!?」
俺が話したくて話してる訳じゃねえよ!
「……そうですね。あなたには、見えた」
俺の質問に対しての回答なのか、或いは確認なのか看護士さんは何度か頷いてみせた。
「俺、霊感とか、そういうのないんですが」
多分。だって今まで見えた事無いし。
「あの子は、霊感とかそういうので見えるって訳じゃないんです。
……そうですね。あの子が見せたいと思った人にだけ、見えるといいますか。
条件があるんですよ」
……条件?
ふと桐乃を見る。……耳を防いで目を閉じてやがる。
こいつ、こういうホラー、本当嫌いなのな。
「そう、あの子はですね、妹だったんです」
「マジで!?」
おまえ、耳を塞いでたんじゃねえのかよっ!
読唇術か!?
妹という単語にイキナリ反応をしてみせた桐乃に、若干看護士さんは引いている様子だったが、それでも話を続けた。
「ええ。本当に仲の良いお兄さんが居まして。元々病弱だったその子は、それでもお兄さんが見舞いに来ると目一杯にはしゃいでみせて。
それはそれは、可愛らしい笑顔で。とても見てて微笑ましい光景でした」
桐乃は黙って看護士さんの話に耳を傾けている。
俺は俺で、他所の話をこうして勝手に聞いていいものかなんて考えてたりしたが、話の内容が気にならなくもないので黙って聞くことにする。
そもそも看護士さんの守秘義務ってのは大丈夫なのだろうか。
「そして、ある日。お兄さんが……事故で亡くなってしまいました」
「な、なんで」
「……妹さんを見舞いに来る途中で、妹さんが欲しがっていた本を抱えて、車に轢かれてしまったそうです。
当時の話で聞く限り、本が坂道を転がってきて、それを追うような形で人が車の前に飛び出したという事でした」
「…………」
桐乃が、俯く。
俺は、続きを促した。
「それで、妹さんは」
「それから徐々に容態を悪くして……。ある日、病院を抜けだして……」
当時の事を思い出しているのか、苦渋の表情を浮かべている看護士さん。
そこにあるのは後悔なのだろう。
「……お兄さんが事故にあった現場の直ぐ近くで、力尽きて倒れている妹さんが発見されました」
…………。
俺も桐乃も、ただ黙っている。
「それから、数日後。病院で幾つかの目撃情報が語られました。黒髪の女の子を見た、と。
あの妹を見たという申告が出てきたのです。
そして、それを申告してきたのは、どの人物も……」
何となく、答えが分かった。
「兄、だったという事ですね」
「……はい。といっても、全てのお兄さんが見えてた訳じゃなく、なんて言いますか。
とても仲のいい兄妹の兄だけが、見えてたみたいですね」
仲の良い兄妹。
果たして、俺達はそんなに仲の良い兄妹だろうか。
少なくともその女の子には俺たちが仲の良い兄妹に見えたのだろうか。
いや、そもそも初めに見た時、俺はまだ妹に会ってなかった。
仲が良いかなんて……ああ、そうか。
妹の為に、こんな荷物を持って必死にやってきたその姿が……被ったのかも知れない。
「……黒髪の、女の子」
桐乃が繰り返す様に呟く。
何故か少し青ざめているようだ。
「どうした、桐乃。……怖いのか?」
そんな怖い話にも思えなかったが、怖がりな桐乃にとっては怖い話だったのかも知れない。
「な、何でもない」
しかし、桐乃は首を振って、それを否定する。
まあ、桐乃だからどちらにしろ肯定をする事はないだろうが。
看護士さんはそんな俺達を見て、優しく微笑むと最後にこういった。
「決して悪い霊って訳じゃないです。だから安心してください。もし、また見かけたら……頭でも撫でてあげてください」
//
幽霊、か。
俺は今回、始めてそれを見た訳だが、高揚感も無ければ恐怖も無い。
確かにあの女の子にそんな悪意は感じられなかった。
始めてあった時、残念がっていたのは本当の兄じゃなく違う兄だったからだろう。
あの子は本当の兄が迎えに来てくれる事を未だに待っているのかもしれない。
「ねえ、あんた、……何考えてんの?」
そんな事を考えていると、桐乃からそう質問を投げかけられた。
「別に。……ただ、な」
「……さっきの話?」
「……まあな」
桐乃の方に視線を向けると、桐乃が何だか複雑そうな表情で俺を見ていた。
「その子……。お兄さんが本当に好きだったんだろうね」
「かもな」
「だから、……今も待ってるんだ」
どうやら、桐乃も同じような結論に達したらしい。
そう、今も待っている。
お兄さんが、迎えに来てくれる事を。
「ねえ、あんた」
そして、桐乃が言う。
「まさかと思うけど……」
「……そのまさかだ」
呆れたように、言う。
「ホント……お人好しの馬鹿よね、あんた」
「ほっとけ」
そう、俺はお節介を焼こうとしている。
その幽霊の女の子に。
だって、悲しいじゃねえか。
妹が兄を待ち続けてるだけなんて。
兄だって、そんな事を望んじゃいねえ筈なんだ。
俺は干していた自分の服を掴むと、桐乃へと振り向いてこう言った。
「んじゃ、ちょっと行ってくるわ」
「…………」
対して、桐乃の返事は無かった。呆れてるんだろうか。
「あ、あんたは……」
「あん?」
「絶対に戻ってきてよね」
何を今更。
軽く笑ってみせて、俺はそのまま病室を後にする。
隣の病室に目をやってみるが、そこに姿は見えない。
今は、まだ。
//
夜。
街灯が幾つかあるとは言え、道は暗かった。
そう、俺は今、外を歩いている。
特にこれといってアテがある訳じゃなかった。
暫く歩いて、何も見つからなかったら帰ろうと思っていた。
ただ、なんというか兄の直感がこの先に何かがあると告げていた。
今日、登ってきた道。
妹の事で頭が一杯だった上り道。
そこを今下っている。
看護士さんの話じゃあ、兄は妹を見舞いに行く途中に事故ったって話だ。
住んでた場所によるが、恐らくは街の方から登ってきた筈だ。
妹が欲しがっていた本を買ってきたのだから。
道は決して複雑じゃない。
となれば、ここを下っている途中に、その問題の現場は見つかるだろう。
そして、俺は見つけた。
街灯の下、置かれた花束。
タイヤのブレーキ痕。
そして――
//
京介が病室を出ていった。
全く、本当にお節介なんだから。
相手が幽霊であっても何とかしてやろうなんて馬鹿じゃんと思う。
さて。それじゃ、あたしも動かないとね。
恐らく京介は事故現場を見に行こうとしているんだろう。
そこに兄が何かを残してないかと考えたりしてるんだろう。
本当……お人好し。
ただ、その為に妹を一人にしていくってのはどうかと思うけどね。
あたしは、ベッドから足を下ろしてスリッパを履くと、そのまま病室を後にする。
向かうは隣の部屋だ。
あたしは、確認しなくちゃいけない事がある。
//
一人の男が立っていた。
自分の事を棚にあげていうが、こんな真っ暗の中、街灯の下にただぽつんと立っていると不審人物もいいところだ。
ただ、顔は非常に穏やかで、優しい表情を浮かべていた。
好青年という印象だ。
歳は俺より少し年上という感じか。
「……よう」
俺はそいつに声を掛ける。
そいつは、黙って俺の方を見た。
人違いだったらどうしようとも思ったが、俺はそのまま、言葉を続ける。
「妹の為だってなら、手を貸すぜ」
だが俺は殆ど確信していた。こいつが、あの黒髪の女の子の兄だって。
だって、よく顔が似ている。
若いのに、大人びた雰囲気。
『……違うよ』
その男はそう声を出した。
つか声、出せるんだ。
考えてみれば、黒髪の女の子とも俺、話してたもんな。
「違う? 何がだ?」
『僕は、忠告に来たんだ。君にね』
……忠告?
『今の僕には妹を助ける事が出来ない』
「な、なんだよそりゃ」
妹思いのいいお兄ちゃんだったんじゃないのかよ。
『僕はここから動く事が出来ないんだ』
「……どうしてもか?」
『どうしても、さ』
その声色には苦渋が込められていた。
『けどね、まだ諦めてない。だから僕はこれからも足掻き続ける』
しかし強い決意が感じられた。
「……そうか。それで、俺が何か手伝える事は?」
『無いよ』
ねえのかよ。
『少なくとも、僕が妹の事は何とかする。君だってそうだろう?』
「…………」
まあ、そうだ。妹の事は、兄が何とかする。
それが俺の信義でもある。
だから、助けはいらないというのか。
『そして今も妹の為に何とかしようとして君と話している』
「……なんだ、結局助けが欲しいんじゃねえのか」
『違う。いいかい、君はもう妹に会うな』
……嫉妬?
『違う。妹は……君に目をつけている。いいか、妹は長い孤独から錯乱している』
「幽霊でも錯乱すんのか?」
『するんじゃないかな。現にしている訳だし』
そうだったのか。
「それで?」
『……妹は、君を兄として捕えようとしている』
……なんだそりゃ。
何か黒猫と話してるみたいな気分になってきたな。
『君の妹が、今、俺の妹と接触してる』
「……どういう事だ」
『くく。いきなり目の色を変えたね』
「茶化してんじゃねえ、念仏唱えんぞ」
『ははっ。いいかい、君の妹はね――』
//
「……やっぱ、あんただったワケ」
306号室。
あたしの部屋の隣。
あの馬鹿が間違えて入った部屋。
今、そこの部屋の主とあたしは対峙していた。
『それについては謝罪するわ。でも大怪我にはならなかったでしょ』
黒髪の女の子。
あたしと同じぐらいの歳に見える。
綺麗な黒髪、色白の肌。まるで何処かの邪気眼女を思い出す。
顔を見ると、それが違う事が分かるんだケド。
あたしは、この女を見ている。
そう、それはあたしが合宿中に道を歩いていた時の事。
あたしの視界の前に突然現れて、そして、そのまま車が走ってきている道に飛び出した。
咄嗟の事によく分からないながらも、助けなきゃと思って、あたしはその女を突き飛ばそうとして。
……今、こうして病院に居るってワケ。
「……目的は、あいつなんでしょ」
『見かけによらず、頭は良いようね』
言っておくけど、あたし県内トップクラスだからね。
「なんで、あいつなワケ?」
『だって良いお兄さんじゃない』
……どいつもこいつも。あいつの事をいいお兄さんだって言う。
あいつのどこがそんなにいい兄貴なワケ?
あんな、死んだ目で冴えない顔したような地味顔の奴なんて、幾らでも居るっしょ。
……まあ、確かに?
たまーにやる気を出した時とか、真剣な表情をしてる時とかはさ、ちょっと、カッコイイかも、とは思うケド。
それにそういう時に出す声が、とても真剣で優しくて……。
時々、凄い優しい表情であたしの頭を撫でてくれて……。
馬鹿で泣き虫で、ヘタレで、変態の癖に兄でいようとして、でもでも、それでも……凄い優しい表情を浮かべてくれる人。
でも、それはあたしだけが知っていればいい事。
「あたしはね、あたし以外の口からあいつの褒め言葉を聞くとムカムカすんだよね」
『……歪んだ愛情ね』
何処と無く呆れた様な表情を浮かべられた。
「うっさい。大体、あんた、あいつの何を知っているワケ? どう考えても殆ど知らないっしょ」
『……あの人が、優しいことを知っているわ』
う……。確かにそれは重要な部分だ。
「で、でもヘタレだし」
『最終的に貴女を傷つける結果になる事を恐れてるだけでしょ』
「え、そ、そうなの?」
『……貴女の方が、あの人の事、何も分かってないんじゃなくて?』
むぐぐ。く、悔しい。
つか口調があの電波女と似てない? 何か凄いムカツクんですけど。
まさかあの糞猫の生霊じゃないよね? そうだったら殴るんですけど。
『私の方が、あの人のことを分かってあげられる。貴女と違って』
「う、うるさい! だ、大体、あんたにはお兄さんが居るんでしょ!?」
『居るわ。けど、それが何?』
「だったら、べ、別にあいつは要らなくない?」
黒髪の女は、真っ直ぐな笑顔で答えた。
『居るわ。だって、兄と違ってずっと一緒に居られるでしょう?』
…………。
「な、なにそれ。兄とだって、ずっと一緒に居られるじゃん」
『居られないわ』
「なんで!?」
『理由が必要?』
ギリ、歯を噛み締める。
言われなくても、……分かってる。
ケド、こうやって指摘されるのは凄いムカツク。
だって、だって、それはあたしらの問題で、あんたらには関係ない。
いいじゃん、夢を見たって!
これだけ色んな成果を出したじゃん、だから一つぐらい許してよ。
想像でも、それが嘘の関係であっても。
まるで恋人みたくなりたいと願ったって良いじゃん……っ!
恋人になりたいなんて……思わないから、せめて。
まるで恋人の様な兄妹になりたいと願ったって……良いじゃん。
『……私もね、兄と結ばれたいと願ったわ』
「え……」
『けどね、それが双方の関係にとって果たしていいことなのかしら?』
「…………」
…………っさい。
『自分の事だけじゃなく、相手の事も考えた時に』
「うっさい!!!!」
あたしの怒鳴り声に、黒髪の女の子が怯んだように目を見開く。
「そんなん知ってるって言ってんでしょ!
でも、そんなんで割り切れないから困ってんでしょっ!?
大体ねえ、そんなの知ったこっちゃないのよ、相手の気持ち、そんなのわかんないっ!
あいつが何を考えてるかなんて、全く分かんないっての!
だって、あいつ、シスコンだとか、妹が大好きだとか言ってる癖に、たったの一度も……!
たったの一度も、あたしを好きだなんて言ってくれてない!
じゃあ、何、あたしが妹じゃなくなったら、なんなの!?
あたしは、あいつにとって何になるの!?
妹だから傍においてくれるワケ!?
妹だからあんなに優しく髪を撫でてくれるワケ!?」
ここ数日、抱えていたもやもや。
京介が、あたしを海外まで迎えに来てからずっと続いているもやもや。
あいつにとって、あたしは何なのか。
それがずっとずっと分からない。
「もしそうなら、そうだっていうなら…………ッ!
ふざけんなって思うっ!
嬉しいけど、悲しいのっ!
だって、だってそれじゃ、それじゃあ、あたしのこの気持ちは……ッ!
気持ちはッ……!!」
ボロボロと涙が出て止まらない。
悲しい、凄く悲しい。
自分で言ってて気付いてる。
あいつが、なんであたしに優しくしてくれるのか。
そのわけを。
それを認めたくなくて。
それが認められなくて。
あたしは今回の入院をチャンスだって思った。
これが、唯一無二のチャンス。
現状を、あたしが望む方法に変えられる絶好のチャンス。
だから、だから。
「……あんたなんかに絶対渡さない」
ガチャ、扉が開かれる。
「桐乃……ッ! 無事か!」
「…………!」
そこに息を切らした人物が、入ってきた。
言うまでもない、あたしの兄貴。
全身を汗だくにして。
風呂に入ったばかりだというのに……。
「馬鹿じゃん、無事だっての」
//
「馬鹿じゃん、無事だっての」
桐乃は、そういってケラと笑って見せる。
しかし、その表情に反して、桐乃の頬には幾つもの涙が流れていた。
「…………」
そして、その桐乃と対峙している黒髪の女の子を見やる。
その女の子は既に桐乃を見ていなかった。俺を真っ直ぐと見ている。
『待っていたわ、お兄さん』
「……ああ、俺も会いたかったぜ」
その視線に対して、真っ直ぐと睨み返してやる。
こいつの兄貴と話して知った、こいつの目的。
俺を兄として捕えようとしている……いや、俺を兄の器に仕立てあげようとしている。
未だにどういう意味なのかは良く分からないが、分かる事は一つ。
こいつは兄と会いたいのだ。
そして俺に対してなんちゃらして、あの場所に捉えられている兄を移して?
なんだっけか、依代? 媒介?
正直、良く分からない。
黒猫ならあっさりと「ふっ、そういう事ね」とか言いそうな感じだが生憎としてあいつは今ここに居ない。
ただ重要な一点。
こいつが兄に会いたいという事だけは分かった。
だからよく分からないなりに、協力するって言ったんだが。
――君にも妹が居るんだろう。なら、それは出来ない。君の妹が悲しむだろうから。
と彼は言っていた。
……あいつが悲しむのであれば、残念ながらそれは出来ない。
俺の人助けは、あくまで妹が悲しまない範囲内で、と制約が決まっているからな。
だから、俺は俺なりに、妹が悲しまない方法で最良を果たすだけだ。
『こうやって、私に会いに来てくれたって事は』
「うおおおおおおおおおおおッ!!」
『きゃ、なに!?』
相手が幽霊というのは始めてだが、何事もやってみないと分からない。
人間、意外と出来る事は多いものだ。
俺は、その女の子の身体をがしりと、掴んだ。
「え?」
桐乃がぽかんとした声を上げる。
……ああ、あとで桐乃に怒られるんだろうな、俺。
まあ、悲しまれるぐらいなら、怒られる方がいい。
『え、え、え?』
そして、俺はその小さな身体を、強引に抱きしめた。
「え、えええええっ!? ちょ、あんた、な、ななな、何してるワケ!?」
『〜ッ!? ! ? ?? !!』
じたばたともがく身体を強引に抑えこみ、そして片腕で女の子の両腕を塞ぐ形を取ると、そのまま、残った手で。
『な、なにをするつもり……ぁ』
くしゃ。
頭を、撫でてやった。
「……悪い、俺はおまえの兄貴にはなれねえ」
『………………』
優しく、兄が妹にするように、髪を撫でてやる。
「けどな、兄貴だったら、妹にこうしてやりたい筈なんだ」
『…………ひっく』
そうだろ、あの兄貴もまた、ずっとこうしてやる為だけに、足掻き続けているんだ。
その幽霊の制約なんかで、よく分からない地面に縛り付けれれて尚、成仏せずに。
「だからな、約束する。あんたの兄貴は、必ずここに辿り着く」
『ぐず……ほ、ホント?』
先ほどまでの大人びた雰囲気がなくなり、女の子は歳相応の言葉で俺に聞く。
「ああ。だからな、待っててやってくれ。あんたの兄貴を、信じてやってくれ」
『…………』
「兄ってのは……泣いている妹の為ならどこからだって駆けつけてみせるんだからよ」
現に俺だって、海外まで迎えにいったんだぜ?
もしあれが、魔界だったとしても、きっと俺は迎えにいった筈だ。
だって、妹が泣いているんだぜ?
それ以外に理由が居るか?
『……わかった』
こくんと頷く姿。
途端に、俺の腕が宙を撫でる。
ふぅ、と目の前の姿が消えていく。
「…………あれ?」
もしかして成仏すんの?
あれ、いや、成仏した方がいいだろうけど、あれ、迎えにくんの、待たねえの?
『待つよ、ずっとずっと』
声だけが、そう響いて。
そして、そのまま、完全に気配を消失した。
…………。
「……ふぅ、どうにかなったな」
「…………」
「で、なんでおまえは泣いてんだ?」
「…………ッ!!」
ブォン、という恐ろしい音を放ちながらスリッパが飛んできた。
「うおっ!? あ、あぶねえ! な、何しやがんだ!?」
「うっさい! 馬鹿! 大体、何抱きついてるワケ!? 信じらんないっ!」
「いや、俺もまさか幽霊を抱きしめる事が出来るなんて思わなかった」
一応気合入れてみたんだが、あの気合が大事だったんかな。
「そういう問題じゃないっての! この、こんのっ!」
もう片方のスリッパを武器に、俺に攻撃を開始する桐乃。
よ、予想以上にキレてやがる。
何があったって言うんだ。
「大体、あの女! 結局兄貴が好きなんじゃん! くそ、何、これ、あたし嵌められたって事!?」
「な、なにされたんだ?」
「うるさい! うるさいうるさいうるさい!! あー、もう、なに、これ、ムカツク、ムカツクムカツクッ!!」
「お、落ち着けって。ほら、ここ病院だから、これ以上騒いだら不味いって!」
流石にそろそろ苦情の一つでも飛んできそうだ。
「うううう、もういいっ! あたしは寝るから、あんたはここで一晩過ごしてッ!」
「げ、マジかよ……!?」
「マジだから。ほら、ついて来ないで。あたしはあたしの部屋に戻るの。あんたはここに居るの。もう決まった事だから」
「いやいや、山の中ってさ、何か予想に反して結構寒いんだよね。ここ、暖房点けていいか分かんないしさ」
「そんなのあたし知んないし。じゃ、そういう事だから。付いてきたらノーパン変態野郎って叫ぶから」
そう言って肩を怒らせながら、桐乃は病室を出ていく。
「…………」
あれ、俺は一体どこで選択肢を間違えたんだろうな。
妹と仲良くしようとしてた筈なんだが。
つか、妹の部屋に毛布置いてきちまったし。
ここのベッド使っていいのかも分かんないし。
汗で身体冷えてきたし。
……グズ。あれ、俺もう風邪引いたのかなあ。
――結局。俺はそこで床に体育座りで座り込みながら朝を迎えたのであった。
//
翌朝。
待合室にて、引率の先生に必死に頭を下げられてどうしたものかと思っていると看護士さんたちの話し声が聞こえた。
昨日の夜、どこかでポルターガイストみたいな現象が発生したらしい。
誰も居る筈がない病室で男女が騒ぐ様な音が聞こえたんだとか。
…………。
遠からず間違えてないし、正直に言わなくて大丈夫だよね。
結局、桐乃の検査入院の結果、脳波などに異常は無いとの事。
無事で何より。
引率の先生は、朝一で俺に謝りに来た。
昨日は、既に面会時間が過ぎていた事から会いにこれなかったとか。
……全然気付かなかったな。
何度か電話したらしいが、あいにく電波が無くて掛からなかったし。
ただ先生はそうは判断しなかったらしくて、怒っていると思ってこうして朝早くから来てくれた訳で。
やっぱ、人の文句を言うもんじゃねえな。
悪い先生には思えないし、入院費を全て払うとか言ってたが、俺は断っておいた。
一応、貯金全額下ろしてきたし。入院費はどうにか払いきれそうだったしな。
冷静じゃなかったとはいえ、先生の事を悪く言っちまった負い目もあったので、これでこっそりチャラにしておく。
さて。
今、俺達は病院を後にしている。
たった一日、時間にして24時間にも満たない時間しか俺は居なかったが、色々あった。
結局、何かは変わったんだろうか。
それはまだ分からない。
桐乃は、根に持つ方なので多分、家に帰ったらもう一騒動が起きそうに思う。
でも、まあ、それでいい。
死んだ後も、一緒に居たいと願う兄妹を見て、俺は考えたのだ。
兄妹関係も、親子関係や、そして恋人関係に匹敵する程の重みを持った関係なんだと。
俺より先にがんがんと進んでしまう妹。
身軽なもんだ。
それに対して俺は、桐乃の為に持ってきた荷物。そして、合宿の時の荷物を纏めて持たされて。
ひぃひぃ言いながら、妹の後を付いて行く。
でも今は文句を言うまい。
こうして、足が前に動くだけ、妹の後を追えるだけマシなのだろう。
だから今は、こうして妹の後を追いかけていく。
こういう関係も、俺は決して嫌いじゃないのだから。
つづく。
という訳で、病院編は終了
正直、オリキャラ云々よりも幽霊を出してSF要素を出しちゃった事の方が
こう駄目かなあ、と思っていたりするのが本音
というかオリキャラの定義がよくわからないんだが
例えば看護士とかはオリキャラになっちゃうんかな?
黒髪の女の子はモデルが黒猫で
お兄さんはモデルが御鏡だったりするがこれもオリキャラになるっていうなら
今後は出さないように気をつけようと思う
しかし、結構シビアなんだな……正直すまなかった
SLが何なのか未だによく分かってないが、何かあったんだな
という訳で、次回作でこの作品は終わりを迎える予定ですぜ
ここまで読んでくれてありがとう