不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part17
ついに、この時が、来てしまった。
ここは、高校生、須見彰の部屋。何のことはない、ごくごく普通の高校生男子の部屋。
ベッドを背もたれにして床に座る彰のすぐ隣に、おさげの女子高生、佐久遥がいた。
遥は、彰に寄りかかるように体を預け、そして目を閉じ、唇を向け、彼を待っていた。
ここだけ見れは、ごくごく平凡な男女の、ごくごく平凡な青春の一コマかもしれない。
でも、この2人にとってはそうではなかった。
一番の問題は…彰が淫魔だったことである。
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(もう、やるしかない。彼女と…遥ちゃんと、ヤッてみせる。
絶対彼女を堕とさずに、遥ちゃんと、セックスする!)
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彰は淫魔だ。
ほとんど外見は人間と変わらないが、一般の男性についてるようなアレはない。
代わりに、そのあたりから尾てい骨に至るまで、グロテスクな触手がビッシリ何本も生えていた。
気持ちが高ぶると、催淫効果の高い粘液と妖気を放つ。
彼が欲望のままに体を求めたら、普通の女性はものの数分でよがり狂って精神を壊してしまうシロモノだ。
だから、遥ちゃんだけは、壊すわけにはいかなかった。
だから、彰は自分の気持ちを絶対に抑えないといけなかった。
(大丈夫、大丈夫・・・)
この日のために、今まで何度も何度もシミュレーションしてきた内容を、彰は頭の中で反芻した。
「彰、くん…」
じれったくなった遥が、おずおずと彼の名前を呼びかける。
「あ、うん」
ダメだ、考えてるばかりじゃ。
遥の声で決心を固めた彰は、行動を開始した。
すっと腕で肩を抱き寄せ、ゆっくりと唇を合わせる。
「ちゅ、ん、ふっ」
ガチキスはダメだ。妖気をはらんだ自分の吐息は、遥の精神のリミッターを簡単にふっ飛ばす。
幸い、彼女は初めてだ。唇だけで、十分。
ゆっくりと時間をかけて、唇で唇を愛撫した後、やおら唇を離す。
「ふぁ…」
「…服、脱いで」
耳元で囁く彰の言葉に、顔を真っ赤にして体を少し震わせながら、遥は小さくコクンと頷く。
(くぅぅぅううう、カワイイなぁぁぁぁあああああ!! ってヤバイヤバイ、冷静に、冷静に・・・)
遥は立ち上がり、数歩離れた位置に移動すると、震える手で少しずつ、ブラウスとスカートを脱いだ。
少し逡巡のあと、ニーソとブラとショーツも脱ぎ捨て、何もまとわない姿になる。
胸と大事なところを手で隠し、立ったまま俯いている。
「どう、かな、私…」
最高です。マジ鼻血でそうです。
…と思ったが、彰は答えなかった。
答える余裕などなかった。真面目に答えようものなら鼻血と一緒に触手も飛び出してしまいそうだった。
声が出そうになるのをぐっとこらえ、彰は立ち上がると、遥の後ろに素早く回りこんだ。
後ろから手を回して、抱き寄せる。
「あっ…」
「遥、ちゃん」
「…なに?」
「目隠しして、いい?」
「…えっ?」
戸惑う遥が答えるのを待つことなく、お尻の方から伸ばした1本の触手で彼女の両目を塞ぐ。
そのまま、頭の周りを一周させて固定する。
体を抱く両腕を残したままどうやって目隠ししたのか、冷静になればおかしいと気づくはずである。
でもそれよりも、下手に手を動かされ、触手に触れられてしまうのを彰は恐れた。
そして更に、当惑したままの彼女の両耳に、そっと、別々の触手を忍ばせる。
途中をパラボラアンテナのように開き、オーバーヘッドホンのように耳全体を覆いながら、
細くなった触手の先を耳の穴の奥まで、静かに差し込んだ。
これが彰の作戦だった。
多くの淫魔は、夢魔とも呼ばれる。心地良い夢を見させ、微睡みのなかで相手を犯す。
彰はその力を応用することにした。
彰は普通のセックスができない。でも、遥には普通のセックスを「体験」してほしかった。
だから、目を塞いで触手を隠しつつ、遥を催眠で誘導し、普通のセックスをする「夢」を見てもらうことにしたのだ。
目を隠したのはもう1つの理由もあるが…いや、それは説明しなくていいことだろう。
耳奥に差し込んだ触手の先を震わせ、可聴領域ギリギリの音を鳴らして遥をトランス状態に誘導する。
「はぁ…ん、あきら、くぅん…」
声が気だるく甘ったるくなってきたのを確認すると、彰は服の下に残していた触手をしゅるしゅると伸ばし、
遥の手足を拘束し始めた。
遥は夢を見ていた。
今、彼女はベッドの上に仰向けになって、一糸まとわぬ姿になった彰と向かい合っていた。
最初「目隠しする」と言われたときはびっくりしたが、冗談だと彼ははにかんだ後、
優しく包み込むように抱擁してくれた。
ひとしきり抱き合った後、彼にエスコートされるまま、ゆっくりとベッドの上に横たわった。
まるで赤子を寝かせるように、体を倒す間ずっと背中に手を添えてくれたのが、とっても嬉しかった。
遥がすべての体重をベッドに預けたのを確認すると、彰はそのまま、彼女にまたがるように上になった。
向い合って互いの両手を合わせ、しばし見つめ合う。
「あきら、くん…」
「きれい、だよ。すごく」
「…うれしい」
そういうと、2人は2度目のキスをした。さっきとは違い、本物のディープキスだ。
経験のない遥はドギマギしたが、一生懸命彰に合わせて舌を動かした。
「胸、さわっていい?」
「…いい、よ。彰…くん」
遥が言い終わるのを確認すると、彰はその、少し小ぶりの双丘の片方に、静かに手を当てた。
ベッドの上で正常位で横たわっている、という夢の中とは程遠い姿で、遥は彰の前で空中に浮かんでいた。
手は頭上に伸ばされ、足はだらしなく開いてMの字を描いたまま、触手がぐるぐる巻きに固定している。
遥の頭の中では今ちょうど左胸を触り始めたことになっているが、実際は両胸どころか、アソコもお尻も、
体中に大小無数の触手が巻き付いていた。
胸は先端がカップ状に開いた2つの触手があてがわれ、全体を包み込んでいる。
その中で、極細の触手がゆるやかに乳首に絡まるように巻き付いている。
股間にはヒダヒダのついた平べったい一本の触手が、
へその下から会陰を通ってお尻の谷間に割り込み、尾てい骨の辺りまであてがわれている。
「キス」のときに太めの触手を咥えこんでいた口には、今は細く長い触手が、微かに開いた口元から侵入し、
舌にまとわりついていた。
目と耳をふさぐ触手は相変わらずだ。
それぞれの触手は、肌に触れるか触れないかのところで微弱に振動し、遥の全身にかすかな刺激を与え続けていた。
そのせいか、遥の体は常にピクピクと引きつっていた。
傍から見るとすっかり遥が陵辱されているように見えるが、むしろ苦しんでいるのは彰の方だった。
感じれば体から自然ににじみ出る妖気、超強力な媚薬を、必死に抑え込んでいたのである。
それは一般の人間男性に例えれば、このシチュエーションで絶対勃起するなと言っているようなものだ。
脂汗を垂らしながら必死に我慢しているのも、すべて、大好きな彼女のためだった。
「は、あんっ、ふぁっ」
だんだんと声が止められなくなってくる。
手の先から足の先まで、体中を優しく撫でさするように愛撫され、体中が火照るような怠さを感じ始めていた。
意識しないのに体が勝手にピクピクと痙攣する。
全身を覆うじわじわっとした感覚が、体中で勝手に弾ける。
だんだんアソコがムズムズしてきて、腰が自分の意志を持ってるかのようにくねり始めた。
(やっぱり、彰くんって、んっ、す、ごい…)
自分と付き合う前、「イケメンの女タラシ」の浮き名は学校の内外でさんざん耳にした。
エッチがスゴイ、という噂も聞いてはいた。
私も遊ばれてるのかも、一度関係を持ったら捨てられるのかも、と内心どこかで恐れていたのだけど、
この気持ちよさの前には、そんなことどうでもいいかも、と思ってしまいそうだった。
「気持ちいい?」
「…きか、ないで」
「耳真っ赤だよ。乳首も、こんなに固くなってる」
「いやぁ…」
「もう、ここも、ビショビショ」
「はぁっ、そんなとこ、さすら、ないで…」
彰が手で(実際には触手で)やさしく周辺を撫で回しただけで、シーツに大きな染みができそうなくらい濡れていた。
優しく、ヴァギナの上を指で(何度も言うが、実際には触手で)下から上になぞる。
最後に小さく尖ったクリトリスの腹を先で軽く弾くと、遥の体が弓なりに反った。
「はぁあああああああぁぁんっ!」
大きく叫んで、息が荒くなる。頭がボーっとして、何も考えられなくなってきた。
彰が同じ動作を何度か繰り返し、その度に遥が何かに打ちつけられるような反応をしたところで、彰の手がピタっと止まった。
「そろそろ、いい、かな…はぁ、はぁ…」
遥の夢の中ではクールに振舞っている彰であったが、実際は息も絶え絶えの状況だった。
体中から、触手中から湧き上がる欲望が体を駆け巡り、頭がフットーしそうだった。
目の前の女体に妖気を吸わせて粘液たっぷり出して、ぐちょぐちょねちょねちょに犯してしまいたい。
穴という穴に触手をぶち込んで、外から中からしゃぶり尽くしたい。
魔族の血が彰の理性をふっとばそうと暴れていた。
このままでは、遥の前に自分が壊れてしまう。もう限界だった。
しかし、次こそが最後にして最大の難関だった。
淫魔の彰から見れば、いや、淫魔から見なくたって明らかに、遥は処女だ。
処女姦通は霊的に特別な意味を持つ。
淫魔が処女を奪うというだけで、女性には魂を狂わせる超強力な媚薬となるのだ。
だから、挿入は慎重に行わなければならない。人間の男性と同じ程度の刺激に抑えないといけない。
それは彰に細心のコントロールを要求するものだった。
「落ち着け、クールになれ彰。クールクールクール…」
彰の様子が少しおかしいことは、遥にもわかった。
今から挿れようとしてるのもわかる。自分が初めてだから、気を遣ってくれているのもわかる。
でも、それにしても手間取りすぎている。女性に慣れているはずの彰なら、なおさらだ。
「…どうしたの?」
「いや、その、やっぱり、その」
「彰くんでも、こういうの、緊張するの?」
「え、いや、まぁ、その、ほら」
「?」
上気した顔で、小首をかしげる遥。
「その…遥ちゃんの、大事なもの、だから…」
遥は、はっとして、少し俯くと、目に涙を浮かべはじめた。
「えっ、ど、どうしたの?ゴメン、その、えっと、何か悪いこと、した? あわわ…」
何か手痛い失敗をしたのか、もしかして間を空けすぎて催眠が解けてきたのか、と頭の中をグルグルさせる彰。
その前で、遥が首をゆっくり横に振った。
「ううん。なんだか、嬉しいの」
「うれ…しい?」
「うん。彰くんに抱かれて、良かったな、って。
さっきまでみたいに、カッコよくリードしてくれる彰くんも好きだけど。
そういう、実は心の中でいつも慌ててて、優しい彰くんはもっと好き。
最初、彰くんに付き合ってって言われたときは、からかわれてるんじゃないかと思ったけど。
でも、皆の前ではクールなイケメンなのに、私の前では結構おっちょこちょいで純朴で、
実は彰くんってそういう人なんじゃないかって。だから私も好きになったの」
「はるか、ちゃん…」
「さっきまで、彰くん完璧ですごく気持ちよすぎて、だからちょっとだけ不安だったけど、
でもやっぱり、私の好きな彰くんだなって。
だから…いいよ。私のこと、彰くんの好きにしていい」
いつの間にか、夢の中の彰も、実際の彰も、遥と一緒に涙を流していた。
それだけ、遥の言葉は破壊力ありまくりで。
だから、彰の細心のコントロールを、狂わせるには十分だった。
「じゃ、行くよ。遥ちゃん」
「うん。来て」
「ん…」
「ん、ふぁ…」
彰のモノが、優しく、ゆっくり、遥のなかに入ってきた。
(すごく痛いって聞いてたけれど、何だか、最初だけ、かな…擦れる感じはあるけど、でも、気持ちいい…)
予想外にすんなりと収まっていくので、彰の方も少しびっくりしていた。
(処女を相手にするのは初めてだけど、案外こんなものなのかな?
でも、遥ちゃん、すごく締め付けて、しかも何か絡まってくるし、うう…スゴイ…たまらない…)
「…どう?痛くない?」
「ううん、全然。ちょっと刺激があって気持ちいいくらい」
「そ、そっか。じゃ…ちょっと、動かしていいかな」
「うん、いいよ…ふぁあっ?!」
動かしていい、と言ってみたものの、言ったそばから遥の感じた快感は全く未知のものだった。
今までの100倍…いや、10000倍は気持ちいい。
「ぅわあんっ、あっ、らめぇ、これ、すんごい…」
「ほ、ほんとに大丈夫?痛かったら言ってね?」
「ううん、いいの、逆にもっと、動かして、突いて…あぁあああっ」
(どうしよう、何これ、エッチってこんな気持ちいいものなの?
なんか、彰くんのアレが動くたびに、アソコがどんどん熱くなって、全身がかぁってなって…
それもどんどん、どんどん、どんどんっ・・・・・・)
おかしい。心臓がものすごい速さでドクドク言っている。
体中が熱くて熱くてたまらない。体の芯のところがうずいてうずいてたまらない。
まるで…まるで、自分の全てがドロドロに溶けて、なにか違うものに、生まれ変わっていくかのようだ。
「あっ、あああっ、あう、うぁあ゛、う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
「は、遥ちゃん? 遥ちゃん?!」
突如、遥が豹変した。
眼をかっと見開いて獣のような咆哮を上げたかと思うと、激しく自分から腰を振り、彰のモノを求め始めた。
それに飽きたらず、頭をぐしゃぐしゃっと掻きむしったかと思うと、自分で両方の胸を鷲掴みにした。
そのまま、引きちぎらんばかりに激しく揉みしだく。
「遥ちゃん!?」
彰は急いで動きを止めたが、遥が収まる気配は全くない。
むしろ、薄くなった刺激を渇望して更に狂おしく吠え、暴れる。
理性を喪失したのは、明らかだった。
――失敗、した。
彰は呆然となった。
遥ちゃんを…自分をあんなに好きと言ってくれて、自分に全てを預けてくれた女の子を、壊してしまった。
ちょっと地味だけど純情で、可愛くて、愛くるしく微笑んでいたあの娘を、壊してしまった。
絶望の淵に叩き落されそうになりながら、でもギリギリのところで、踏みとどまる。
失敗した時の対処。それもシミュレーションのうちに入っていた。
でも、処置は遅くなればなるほど手遅れになる。
「もう、最後の手段しか、ない…やるしか、ない」
猛り狂う遥に応えるように、今まで優しく遥の体を包んでいた触手も、遠慮無く暴れ始めた。
手足や胴体にまとわりついていた触手は緊縛の度合いを上げ、体中をぎゅうぎゅうに締め付ける。
ヴァギナに挿入されていた触手は遥の腕より太く大きく、表面が凸凹になり、より速く強く抽送を始める。
両胸を包んでいた2本のカップ状の触手が、その縁で2つのおっぱいの付け根をきつく縛り上げ、乳房を括り出す。
そしてカップの中で、乳首に絡まっていただけの極細触手が、そのまま乳首の中に侵入していく。
アナルの表面を撫でていただけだった触手も突如として中に掻き分けるように侵入した後、数センチ径まで太さを増す。
舌を弄んでいた触手も、喉の奥まで入っていったかと思うと、こちらは10センチ径にまで膨んでドロドロの液を吐き出す。
両耳の中の極細触手は先端を針のように尖らせると、鼓膜を突き破り、脳に直接接続される。
「ごぶぅ、ぶごぉ、むぐぉぐぐぐぐぁぐお゛お゛お゛お゛っ」
口を喉まで封じられても、なお雄叫びをあげ続ける遥。
女の子とは、いや人間とは思えない力で暴れようとする彼女をなんとか拘束しながら、
彰は力を込め、まったく新しい触手を、胸の真ん中から伸ばし始めた。
それは他の触手とは見るからに異質で、赤黒く、太く、そして、先端が槍のように、鋭利な刃を備えていた。
「ごめんね、遥ちゃん。これを刺したら、もう、遥ちゃんは人間じゃ、なくなっちゃう。
でも、遥ちゃんを助けるには、これしか、ないんだ。…ごめん、遥ちゃん」
彰がそう言うと、赤い触手は遥をめがけ、まっすぐと伸びていった。
そして、正中線の真ん中、ちょうど彰と同じ、両胸のちょうど中間のところに、ブスっと突き刺さった。
途端に、遥の動きがピタっと止まる。
それを見透かしたかのように、赤い触手の先から、何本もの枝のような触手が遥の体内で生まれ、伸びていく。
そのまま遥の体を蹂躙するように、まるで遥の体に根を張るように、枝分かれし、さらに伸びていく。
「はぁ、はぁ、もう、ちょっとだ、から」
「ぐぎぎぎギギギい゛い゛ギギギ」
遥は、遥の体はガクガクと震え始め、悲鳴とも嗚咽ともつかない声を上げ始めた。
「これで、おわ、りっ!ぐぅっ!」
「ふぐぅうううううぅううぅっ!!」
彰の声と同時に、遥の中に侵入していたすべての触手の先から、白くヌルヌルした液体が一斉に噴き出した。
そのすべてを全身で受け止めるかのように、遥は背中をそらし、手足の指までも硬直させて、全身をガクガクと震わせた。
全てが収まると、遥の胸に刺さっていた赤い触手が、力を失うようにだらんと垂れ下がった。
そして、先端部分を遥の体に残したまま、幹の部分がぷつんと切れて、力なく床に落ちた。
「ええっと、その…結局、どういう、こと?」
おさげの髪型をした裸の女の子は、ぽかーんとした顔立ちで、ベッドの縁に腰掛けていた。
その視線の先には、その前に一人の男の子が、床に膝をつき手をつき、土下座をせんばかりに下を向いている。
「だから、その…」
彰もまた、「素」の裸であった。
つまり、股間のあられもない触手たちを、遥に晒していた。
遥の意識が正常にもどったところで、全ての経緯を、彰は打ち明けていた。
しかし、あまりに突拍子のない話なので、同じ事を何度も何度も聞かせる必要があった。
「つまり、彰くんは実はインマ、なのね?」
「…うん、そう」
「そっか。うん。わかった。まぁ、それはいいや」
「いいのかよ…」
力なくツッコミを入れる彰。おそらく遥は「インマ」が何かわかっていない。
しかし、わかれという方がどだい無理な話だ。
「で、私は、えーと…」
「うん、だから、その…」
淡々としたつぶやきに応えて、ひどく申し訳なさそうに、彰は言った。
「遥ちゃんは、俺の、使い魔になった」
「…ホントに、ゴメン」
謝らないと気がすまなかった。
使い魔の、象徴。
その前でベッドに腰掛ける遥の胸の間には、直径3cmほどの真っ赤な宝石が輝いていた。
よく目を凝らせば、一段と赤く濃い楕円形の模様が中央最奥部に見える。どことなく、ネコ科の瞳孔を想わせた。
ぱっと見、ペンダントかブローチだと言われれば、そう見えなくもない。
しかし…この宝石は、遥の胸に直接埋まっていた。
遥の双丘の合間が少しだけ浮き上がり、その真中にドーム状に鎮座している。
周囲には、うねうねとしたケロイド状の線が放射状に何本も延びていて、ファッションだと強弁するにはちょっと禍々しい。
「うーん。胸元の開いた水着とか、ちょっと着れなさそうだね」
右手で宝石をさする自分の仕草を眺めつつ、遥はぽつりと呟いた。
彰は言葉を返せない。
「…ねぇ、今までの人は、どうしてたの?…その、彰くん、初めてじゃ、なかったんでしょ?」
何となくの沈黙を破って、素朴な疑問をぶつける遥。
「今までの人は、その、体…っていうか、精気が欲しかったからしてただけで、
別に好きだったわけじゃないんだ。だから俺もそんな本気で求めたわけじゃないし、
自分の気持ちを抑えることなんてどうってことなかった。彼女たちには申し訳ないけど」
「じゃあ、」
一呼吸置いて、遥は続ける。
「コレは、胸のコレは、彰くんが…本気で好きになってくれた、証、ってこと?」
「…うん」
「そっか」
もう一度、今度は少し愛おしそうに、右手で宝石を撫でる。
「じゃあ、いいよ。私、彰くんの使い魔で」
次の瞬間、彰は、遥に跳びかかるように覆いかぶさり、そのままベッドに倒れ込んだ。
ベッドの上で彼女を強く抱きしめる。
「…彰くん」
「俺、ダメなご主人様かもしれないけど、ゼッタイ、遥ちゃんのこと、幸せにする。
遥ちゃんが俺の使い魔だからって、ゼッタイ苦労かけたりしない」
えへへ、と照れ笑いをしながら、遥は抱かれるまま、心地よさそうに彰の胸に顔をうずめていた。
と、少し落ち着いたところで、遥が彰の腕の中で、彰の顔を見上げて、言った。
「ところで…使い魔って何?」
「…俺の代わりに精を集めたり、俺に精を捧げたり、してくれる人」
「精って?」
「エッチなエネルギー。男だと、アレから出す液体、とか」
「……」
「……」
「…ええええええええええー?」
「そう、なるよね…」
「なっ、なっ、なななななななななななな」
痛々しいほどに遥の顔は真っ赤っ赤だ。
「わ、わたし、そ、そんな、ふふふしだらな職業は、その、ちょっと」
「いや職業っていうか…」
話がだんだんずれてきた。
全部を今ここで話しても無駄だ、と思い、要点だけかいつまむことにした。
「話がややこしいから結論だけ言うと、全然そんなこと、してくれなくて、いいんだ」
「え、そうなの?」
「うん。『遥ちゃん』は、何もしなくていい」
「『遥ちゃん』は?他に誰かいるの?」
「…うん。ここに」
と言って、遥の胸にある宝石を指さす。
「ここに、俺の分身で、遥ちゃんの分身でもある人格を作って、そのまま封じ込めたんだ。
いつもは普段通りの『遥ちゃん』でいられるけど、
ここにいる『ハルカ』が目をさますことがある。
その時は、『ハルカ』がエッチなエネルギーを俺にくれる」
「…わかったような、わかんないような」
「ものすごーく大ざっぱに言うと、たまに『遥ちゃん』はエッチな『ハルカ』に変身する」
要領を得たらしい。胸の宝石を見ながら
「なるほど…これが変身アイテムなのか…」と独りでブツブツ言っている。
「で、どうやったら変身できるの?」
さっきはあんなにたじろいでいたのに、立ち直りが早いのか、好奇心が勝ったのか、ケロッとした顔で遥が質問する。
変身したいのかよ…というツッコミを抑えつつ、彰は答えた。
「いくつかあるけど…とりあえず、『遥ちゃん』が、俺とエッチしたいって思ったら、変身する」
「エッチって…さっきの、優しいほう?それとも…スゴイほう?」
微かながら、狂っている間の記憶も遥には残っていた。
「…スゴイほう、かな」
彰の答えに「そう」とだけ言うと、遥は突然胸に手を当てて、何やら念じ始めた。
「いや、いきなりそん…うゎわわわ!?」
遥の胸の宝石が一瞬妖しく光ったかと思うと、全身から大小の赤い触手が洪水のように噴き出した。
とぐろを巻くように体を包んだかと思うと、その一部が遥の大事なところに突き刺さる。
その上から別の触手が股間全体を覆い、一瞬にして締め上げる。
そして、他の触手と一緒に全身を縛り上げ、締め上げ、ボディスーツを形作る。
手足の周囲を巻いていた触手も、肘先と膝先を覆い尽くすロンググローブ、ロングブーツに。
最後に、一本の触手が頭の周囲をグルッと巻いて、両目をすっぽりと覆う形になった。
入れ替わるように、胸にある宝石に光が宿り、生きた「眼」のようにギョロギョロと動き始めた。
「変身」というと聞こえはいいが、変身後の姿は「眼」と真っ赤な目隠しボンデージで、非常に禍々しい。
しかも、余った触手がウネウネと体を這いまわってたり、よく見るとスーツの裏地もウネウネと繊毛が張っている。
おまけに、小ぶりだったはずの胸も、可愛かったお尻も一回り以上大きくなって、スーツの下ははち切れんばかりだ。
「はぁん… ご主人様ぁ… 」
「…『ハルカ』か?」
「はぁい、なんなりとご命令を…ご主人様ぁん」
「じゃ、今すぐ『遥ちゃん』に戻れ」
「えぇぇ、それは意地悪ですわご主人様」
「いいから。『遥ちゃん』が可哀想だろ」
「あーら、あの娘もすっごく欲しがっていますわ。責めが少なくて物足りながってるくらいですわよ」
「そ、そんなことは、ないっ!」
「そんなムキになられなくとも…んーもぅ、仕方ありませんわねぇ」
声を荒げて不機嫌な顔をする彰を横目に『ハルカ』はそう言うと、
体中の触手がしゅるしゅると縮んで、あっという間に元の『遥ちゃん』の姿に戻った。
「は、はわ、はわわわわわわ」
元に戻った遥は一瞬呆気にとられたかと思うと、また顔を真っ赤っ赤にし始めた。
「な、なんか全身がやたらムズムズして、なんかアソコに刺さって…ていうかお尻にも…あわわわわわ。
それに、『ご主人様』だなんて、は、恥ずかし…」
「…やっぱ、ごめん」
「べ、別に変身したいって思わなきゃいいんだよね?」
「実は…たまに『ハルカ』を目覚めさせないと、エッチな気持ちがどんどん溜まって暴発しちゃうから、
たまには、変身、してほしいん…だよ…」
「ええぇ…」とうなだれる遥に、彰はやっぱり「ごめん」と謝るしかなかった。