「私のためを思うなら抱かれてよ。私の恋人になってよ。無理でしょ? だから…だから」
「こうするしかないって?」
「…そうよ」
「いいよ。でも僕を抱くだけ自分が惨めになるよ。僕も姉ちゃんを抱くだけ嫌いになる」
「嫌…いやぁ…! いやああああああああああ!!」
ついに頭を抱えながら悲鳴を上げて泣きだした。
「姉ちゃん…」
「うぅ…何よぉ…」
うなだれたまま僕の手錠を外していく姉ちゃん。
目が真っ赤でやつれている。
たぶん昨日も寝てないんだろう。
そんな姉ちゃんを後ろから抱きしめる。
「シ、シンちゃん…?」
「言っとくけど、僕は何があっても姉ちゃんが好きだからな」
「ううぅ…でも家族としてでしょ…酷いよぉ…」
「酷いのは姉ちゃんの行動だろ。また問題行動したらいくらでも付き合うよ」
「恋人として付き合ってよ…」
「ダメ」
「うぅ…ええん…うぁ…ぐす…セックスしたい…お願い…抱いてよぉ…」
僕もおかしくなったんだろうか。
そんな弱々しい下着姿の姉ちゃんを見て、なんかそのまま押し倒したくなってきた。
胸とお尻に目が行く。その体のラインは魅力的で…
まずい。ドキドキしてきた。
今すぐ襲いかかりたい。きっと薬のせいだ。
でもこのまましてしまったら姉ちゃんは変わらない気がする。
しかしそれ以上にしなかったら姉ちゃんが壊れそうな気がした。
お金の価値を姉ちゃんに伝えるためにはどうしたらいいんだろう。
やっぱり、こういう手段しかないのだろうか。
「…18億」
「う…な…何?」
「今から18億で姉ちゃんを買う」
「…え?」
「姉ちゃんは今からコールガール…売春婦だ」
「…抱いてくれるの?」
「僕の全財産で」
「嬉しい…」
「本当に?」
「…私を抱く価値はあるってことだよね? それに好きだって言ってくれた」
「それは…」
そう言おうとしたとき、姉ちゃんが覆いかぶさってきた。
ねっとりとキスをされる。丹念に舌で口の中を舐めまわされる。
姉ちゃんの手が僕の股間に伸びる。
ペニスをズボン越しになでられると一瞬射精しそうになる。
そのあと姉ちゃんの顔が、僕の股間の前に来る。
ベルトを緩めながらズボンとパンツが降ろされる。
ギンギンのペニスがあらわになった。
「私の口…フェラはいくらの価値かな?」
「え?」
「私の体が18億だよね」
「…5億…?」
「やった。これで13億…じゃあ5億分の奉仕をするね…」
上目遣いで僕のペニスを咥える姉ちゃん。
唾液を絡めてペニスを出し入れする。
その行為にとんでもない背徳性を感じてしまう。
「…んちゅ…ちゅ…ちゅる…ん…」
「ちょ…! …出そう!」
「だしてひいよ…精子飲んであげる…ん…ちゅ…んん…」
「出ちゃうよ!」
「出して! …ん…ちゅぽ…ちゅ…ん…ん…んん!」
あまりの気持ちよさに姉ちゃんの頭を掴んで腰を振っていた。
されるがままの姉ちゃんが妙に可愛かった。
なんだ、この感覚? 姉ちゃんを自分のものにした快感。
姉ちゃんは僕の奴隷。好きにできる。
姉ちゃんは僕に逆らえない。例えそれがお金の力だったとしても。
「ちゅ…ん…ん…んん…んちゅ…うん…ぅん…!」
束縛してる快感。支配した快感がペニスから体に駆け巡る。
「出すよ! 飲んで! 姉ちゃん!」
「んん…ん…ぅん…ちゅ…ん…! ちゅる…ちゅ…ん!」
姉ちゃんの綺麗な髪を掴んで思い切り口の中に射精した。
「んーーーーーーーーっ!」
初めてのフェラチオの快感に腰がしびれる。
姉ちゃんの口は5億なんて言葉じゃ表せなかった。
たぶん姉ちゃんは処女だ。
それに世界をリードする支配者側の人間でもある。
そんな人のフェラチオ。僕はひょっとしてとんでもない買い物をしたのではないだろうか。
「ん…コクン…ん…ごく…うん…」
僕の精液を必死で飲み込む姉ちゃん。
「姉ちゃん…」
「ん…?」
トロンとした顔の姉ちゃんは精液を飲み干していた。
「5億のフェラチオはどうだった?」
「良かったよ。最高だった」
「やった」
小さくガッツポーズを取る姉ちゃんに萌えてしまう。
とにかく可愛くて仕方ない。
「ええっと、次は…ここ…」
姉ちゃんは大事な場所を広げながら僕にまたがる。
「セックスの価値は…?」
「13億」
「ええ? 全部?」
「姉ちゃんがそれだけいいってこと」
「…っ!」
顔を赤らめながら涙目になる姉ちゃん。
「いくね?」
「うん」
「童貞だよね?」
「姉ちゃんは?」
「もちろん処女」
そう言うとペニスが姉ちゃんのあそこに包まれる。
じゅぶじゅぶに濡れていたので、おまんこがきつかったけど最後まで入った。
「ん…あん!」
「姉ちゃんの中、凄い気持ちいいよ…」
「うん…ありがと…動くね…あぁん…」
「くっ…締まる…」
僕たちは動物だった。獣のように腰を振って突き上げた。
僕が腰を振るたび姉ちゃんもそれに答える。
「あん…あんっ…ん…あん! 気持ちいい! シンちゃん! 好き! 好き! ずっと好きだった! あん!」
「俺も…姉ちゃん! 姉ちゃん! 僕の姉ちゃん!」
懸命に姉ちゃんの腰に自分の腰を打ち付ける。
僕のペニスが姉ちゃんのヴァギナの中を行き来する。
周りには卑猥な音が響きわたっている。
「あん…あ…! シンちゃん! お姉ちゃんイクかも…! あん…あん! イキそう! イク…!」
「はぁ! 姉ちゃん! 気持ちいい? これでいい!」
「うん! いいよ! 来て! もっと来て! あん! いく! イク!」
姉ちゃんの膣が締まると同時に中に大量に射精した。
あまりの気持ちよさに体が震えた。
姉ちゃんを見ると失神していた。
昨日から寝てなかったんだろう。
…僕はこのとき何を買ったのか本当の意味で理解していなかった。
「姉ちゃん、やらせてよ」
「ダメよ。まだ13億溜まってないでしょ」
「10億あるよ」
「3億足りないわ」
「もう我慢出来ないんだよ!」
「わかったわ。じゃあ今月も借金ね。占めて56億と」
「姉ちゃん…早く…!」
「わかったわ。可愛い子ね。で、この間みたいにセックスだけ?」
「いや、フェラもしてよ」
「じゃあ61億の負債ね」
「そんなのいいよ! 早くしてよ!」
「よしよし、いい子ね、今すぐ抜いてあげる…」
そう言って僕の前にひざまずく姉ちゃん。
この姉ちゃんを支配できる快感の為に姉ちゃんを買ってると言っていい。
この感覚だけは誰も理解できないだろう。
世界を金で動かす女の価値を知るのは僕だけだ。
でも、その代償はどれだけ付いたかはわからない。僕は学校も辞め。
今は姉ちゃんに従って仕事をしている。付き人と秘書が業務だ。
月給10億。そしてそのお金は全部姉ちゃんを買うことで消える。
借金は姉ちゃんにしてるが、そんなことはどうでもいい。
僕はもう、姉ちゃんがいないと生きていけないから。
一体いつからだったんだろう。
姉ちゃんの体を知って、なにか大切なことまで売り渡してしまったみたいだった。
もう遠い昔のことでよく思い出せなかった。
(了)
投稿終了です。
良ければ感想くださると嬉しいです。
妹の方の続きが見たい
大阪生まれ育ちの私からすればあんなに関西弁話す女の子見ないから違和感感じる
これはSSだから気にしても仕方ないけど
うめ
>>957 ありがとうございます。っていうかオイラも大阪人っすよ。
あの口調は事実に基づいてます。ノンフィクションです。
今の子は違うのかな?
違和感感じられたってことはオイラが未熟ってことです。
猛虎魂を感じる
資産家姉ちゃんなら子供作っても何も問題ないよね
埋めネタ乙です!
狂もうと投下します
「篠崎さんは退院されましたよ?」
優くんが入院しているはずの病室を、呆然と眺めている私に後ろを通り掛かった看護師が話しかけてきた
「ぇ…退院ってまだ意識を取り戻して4日ですよ?」
空っぽになった病室を見渡して、看護師に問いかける
返答が無いので後ろを振り返ると既に看護師は通路遠くを歩いていた
看護師に声かける事を諦めて通路に出ると、来た時同様に再度病室の名前表示を見た
やはり優くんの名前を書かれた紙は抜き取られている…
納得できないが本当に退院したみたいだ
自主退院だろうか?それでも医者が止めるはずなのだけど…
目に硫酸を流し込まれて生死の境をさまよった患者を意識取り戻した4日後に帰らせるなんて…そんなことありえるのだろうか?
いや、ありえない
「また、あの人達じゃ…」
頭に零菜さんと由奈ちゃんの顔が浮かぶ
そしてもう一人…
由奈ちゃんに怪我させたあの短髪の子…あの子はいったい誰なのだろうか?
優くんとも親しそうだったけど…
とにかく、今は優くんと連絡を取らないと――
「こら、姉ちゃん!病院内は携帯禁止だぞ?」
「あっ、ごめんなさい!!」
優くんに電話をしようと携帯を取り出した瞬間、後ろから注意の声が投げ掛けられた
慌ててポケットに携帯を戻し振り向くと、頭を深くさげ謝罪した
「あれ?キミたしか…そ、そら…ちゃんでいいのかな?」
間違いない…優くんの病室に居た子だ
自然と身体が強張る
またスタンガンを隠し持ってるんじゃないだろうか?
ロングTシャツに下はシンプルなミニスカートだから隠す場所なんてないと思うのだけど…失礼だが、今初めて女の子だと気づかされた
前はズボンだったから男の子と間違えたのだろうか?
いや、スカートとか男の子とかそんな事じゃない
匂いだ…前は香らなかった女性の匂いがこの子からする
「姉ちゃんどうしたの?兄ちゃんに会いに来たの?」
覗き込むように顔を近づける空ちゃんに苦笑いを浮かべ一歩後退る
「え、うん…退院したって聞いてビックリしてさ」
「そうだよ、零菜のバカが無理矢理退院させたんだ!」
怒ったように声をあげると、空っぽになった病室を睨み付けた
やはり零菜さん…何を考えているのか分からないが、危険だと言うことが分からないのだろうか?
優くんはあの妹達に頭が上がらないらしいけど、これでは優くんの人生がめちゃめちゃになってしまう
友達として…好きな人だから支えてあげたい
零菜さんや由奈ちゃんに脅されたけど、所詮はただの女
あの時は迫力に騙されたけど、どうせ何もできっこ無い
「…優くんは何処に居るの?」
「え?家だよ」
「優くんの家まで連れていってくれない?」
もし何かされたら警察に逃げ込めば大丈夫だろう…零菜さんに限っては職業が職業なだけに表立った事もできないはず
「いいよ、それじゃ付いてきなよ」
「えぇ、お願い」
※※※※※※※
「由奈、まだなのか?」
「もうすぐだよ。もうすぐだからちょっとだけ我慢してね」
車椅子に揺られ、車の排気音を右耳で受け止めただ運ばれる
本来なら自分の足で地面を踏み締め歩きたいのだが、今は無理だ
何故かと言うと、どうやら俺は目を怪我してしまったらしい
しかも両目…
完治まで時間が掛かるらしく、今から大きな病院へと移動しなければいけないそうだ
そしてその病院に行く為の車を今待って居るのだけど…
「由奈、何分経ったんだ?」
「15分ぐらいかな」
まだ15分しか経っていないのか…
目が見えないからか、時間が進むのを遅く感じてしまう…
そして何より頼りに頼りきっていた目が見えないという事実に大きな不安を覚えていた
今俺の命を握っているのは後ろに居る由奈
由奈を疑っている訳では無いが、やはり自分の命を人に預けるのは怖い
「お兄ちゃん寒いの?」
震える肩に由奈の手であろう感触が伝わる
一瞬肩をビクつかせてしまったが、後ろへ振り向き由奈にわかりやすく笑顔を向けると、また前に顔を向けて由奈に気づかれないよう小さくため息を吐いた
「あぁ、ちょっとだけな。でも大丈夫だよ」
膝にタオルケットのような物が掛けられる
普段使っている由奈のタオルケットが頭に浮かんだ
感触から言って多分それだろう
何かに包まれると不思議と安心する…タオルケットを握り締め背もたれに深く背中を預けた
――キャアアアアアアア!!!
「な、なんだッ!!?」
突然の悲鳴に腰が浮くほど飛び上がる
「由奈大丈夫か!?」
慌てて後ろに手を伸ばす
柔らかい肌を自分の指先が強打するのが分かった
多分由奈の腕だろう…構わず握り締めた
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。私じゃないから……なんか交通事故みたいだよ」
「そ、そうか…」
ほっと胸を撫で下ろし由奈から手を放す
確かに悲鳴の前に激しく打ち付けるような音が耳に入って来た気がする
車にぶつけられた音だったのか…
「どうなったんだ?ひかれた人は大丈夫だったのか?」
「ううん……トラックの下に巻き込まれたから多分ダメなんじゃないかな。後続車も轢いちゃったみたいだし」
どうやら大事故らしい…耳に入ってくる周りの声も悲鳴やら怒鳴り声やらで騒がしい
やっぱり目が見えないと不自由だ…状況把握に時間が掛かる
「兄ちゃ〜ん!」
ざわつく耳に聞き慣れた声が飛び込んできた
空ちゃんだ
「兄ちゃんごめん遅くなって!車来たから行こっ」
「うん、ありがとう」
空ちゃんの手を握り締め、由奈に押されながら車椅子が進む
――正直空ちゃんとは距離をおくつもりだった…しかし今朝、空ちゃんからキスをしたことを泣きながら謝られて、間違った事をしたと言う自覚があるのだと判断したので許すことにした
空ちゃんも年頃だからそういった事に興味もあったはずだ
だから身近に居る俺で試したに違いない
だから目くじらを立てて怒る事じゃ無いし、あの時あからさまに拒絶したのは自分でも大人気ないと思った
零菜や由奈の事もあったので少なからず影響を受けたのかも知れないけど…俺はただ、空ちゃんとは真っ白な兄妹関係で居たいのだ
由奈も自慢の妹だが、由奈は既に歪んでしまっている
兄がこんなこと言ってはダメかも知れないが、由奈は多分治らない…
だから空ちゃんにはそうなってほしくないのだ
本当に甘えたいなら、“兄として”甘えさせよう
だから空ちゃんが大人になって彼氏ができた時には胸を張って兄として彼氏の前に立ちたい
エゴかも知れないが、それが本心だ
それが兄としての幸せだと俺は思っている
「さ、兄ちゃん車椅子から降りて」
空ちゃんの手を握りながらゆっくりと立ち上がる
左手に空ちゃん、右手には由奈
二人に支えられながら、車の段差に足を乗せる
一歩一歩足場を探しながら車へ乗り込んだ
「よっと……(狭いな…)」
乗り心地でそう思った
病院の車と聞いていたのでワゴン車だと思っていたのだが…
空ちゃんと由奈の肩が完全に俺の肩に触れている
「それで、いったい何処の病院に行くんだ?」
「……」
「由奈?」
俺の質問に返答は無い
再度由奈に声をかけようとしたのだが、激しい排気音を鳴らして車が走り出してしまった
シートに伝わるエンジンの振動に軽自動車や搬送用の車では無いことがすぐに分かった
「由奈、この車…」
「凄い音でしょ?見た目も可愛いのよ、この子」
隣からではなく、運転席側から聞こえてきた返答に心臓がはね上がった
突然聞こえたからでは無い…忘れたくても忘れられない声だからビックリしたのだ
見えない目を痛くなるまで見開き、包帯越しに睨み付ける
「なんでお前が此処に居る」
「あら…酷い言われようね?あれだけ愛しあった妹に」
間違いない…車を運転しているのは零菜だ――
だとするとこの車は零菜の車か…
「由奈…俺は病院から病院を移動するんじゃなかったのか?どうなってる」
「えぇ…その事なんだけど…」
言いにくそうに言葉を濁す由奈
はっきりと話さない由奈に苛立ちを覚えながらも、返答を待ってみる
「貴方はこれから篠崎の息のかかった病院に向かうのよ」
「お前に聞いてないから黙れ」
「黙らないわ」
「ッ!?…危ないだろ」
突然の急ブレーキに身体を強張らせる
エンジンを止めたのか、けたたましい音が突然消えた
そして前から何かが迫ってくる気配を感じ、顔を少しだけ仰け反らせた
多分零菜だろう…
しかし今の俺では何の対応もできない
由奈が居る前では何もしてこないと分かってはいるのだけど、コイツだけは本当に何をするか分からない…
「優哉…貴方を今から実家に連れて帰るわ」
「……はぁ?」
間近で聞こえる零菜の言葉に首を傾げた
実家に連れて帰る?
実家に連れて帰られても何もする事は無いし、用事も無い
「帰る理由が無いだろ?」
「帰る理由ならあるわよ?篠崎家の……現当主さん?」
篠崎家…現当主?
「当主は父だろ?それで時次期はお前なはずだ」
何を世迷い言を…危ない薬でもしているんじゃないだろうか?
俺が当主?能無しの俺が何故篠崎の家を継がなければいけない
「勝手に決めないでくれる?これは決まった事よ。貴方には実家に帰って家を継いでもらうから」
「ふざけんな、誰が継ぐか!」
「ふふ、それじゃ実家に帰ろっか?」
「降ろせ!俺は絶対に実家には帰らないッ!」
絶対に嫌だ…また実家に帰ってあの生活に戻るのは…絶対に嫌だ
「そう…それじゃ、此所で降ろしてあげましょう」
そう零菜は耳元で呟くと、扉を開けて外に出てしまった
「お、おい零菜!兄ちゃんに乱暴するなよ!」
意味が分からず固まっていると、後部座席側の扉が開かれた
空ちゃんの声と共に勢いよく胸ぐらを掴まれると、外に引きずり降ろされた
「ぐッ!」
突然の出来事に無防備に地面に転がり肩を強打すると、零菜が居るであろう場所から何かを投げ付けられた
「この、糞女ッ!」
それを手で掴むと、投げ返えそうと大きく振りかぶる
「あら、貴方それがなかったらどうやって歩くの?死ぬまでずっとそれに頼って生きていかなきゃいけないのよ?」
「……」
投げ返すのをやめて、両手で何を投げ付けられたのか手探りで確かめる
指先で端から端まで触ると、スグに何か理解できた
杖だ…
確かに今の俺には必要なモノだ…しかし零菜が放った言葉に無視できない部分が混じっていた
「死ぬまで…ってなんだ?」
「そのままよ…貴方目が見えなくなったんでしょ?なら杖がなきゃ歩けないじゃない」
クスクス耳障りな笑い声に目が痛む
「あぁ…だが、目が治るまでだ」
杖を掴み立ち上がる
また目が見えるようになったら今度こそコイツと縁を完全に切ればいい
双子だとか妹だとかもうどうでもいい
もう、うんざりだ
「由奈帰るぞ」
由奈を呼び零菜に背中を向ける
これでお別れだ
「ふふ…失明ってそんな簡単に治るの?」
「……は?」
今なんて言った?
失…明…?
歩き出した足を止めると、聞き間違いか確認する為に再度零菜に顔を向けた
「治る失明もあるらしいけど…貴方のはどうなのかしら?」
唖然とする俺の手から杖を奪い取られると、軽く肩を押された
本当に軽く押されただけなのだが、あっけなく俺は2〜3歩よろけて方膝を地面についてしまった
医者から聞いた話では、二週間ほどで視界を遮る包帯が取れて視力が回復するはず
ずきずき痛む両目を手の平で押さえ込むように覆う
「失明って…お、おい由奈…どうなって…」
「ごめんなさい、お兄ちゃん……零菜さんの言ってる事は本当なの」
「う、うそだろ?なぁ由奈、おまえ俺をからかってんだろ?零菜と組んで俺を驚かそうとしてるんだろ?なぁ!?」
手探りで由奈が居る方角へと手を伸ばす
しかし、空を切るだけで由奈を捕まえる事はできなかった
「優哉、貴方の目が見えない事はもうしかたの無いことなのよ」
「黙れ!ふざけるなよ!?俺が失明なんてするわけないだろ!ドラマじゃあるまいし、知らない間に失…」
――知らない間?
自分が放った言葉に違和感を覚えた
そういえば、俺はなぜこんな大怪我をしたのだろうか?
いつ?どこで?全然思い出せない…俺は零菜の監禁から逃れた後、どうなったんだ?
由奈や空ちゃんと一緒に車に乗ったのは覚えている
そして、家に帰ってベッドで寝て…そこから記憶が無い
気がついたら目に包帯が巻かれており、目に怪我を負ったから入院……だから、何故何処でいつこんな怪我を負ったんだ?
「うぅ…ッ」
頭が痛い…
「兄ちゃん大丈夫か!?」
「は、はなせッ!」
空ちゃんであろう補助の手を振りほどくと、何処に居るか分からない“妹達”を睨み付けた
「なんだよッ…なんで俺が失明なんかしなきゃいけないんだよ!?俺の目返せよお前ら!」
唾を飛ばし、枯れた声で四方八方に怒鳴りちらす
「零菜、何処にいるんだよ!」
手を回りに振り回し、零菜を探す
絶対に零菜だ…零菜以外考えられない
「分かったから落ち着きなさいよ」
振り回す手を鷲掴みされると、強引に引き寄せられた
勢いよく引っ張られたので躓きよろけると、突然頬に柔らかい感触を感じた…多分零菜の胸だろう
「由奈、空。少しだけ外してもらえないかしら?」
「はぁ?私が貴女とお兄ちゃんを二人にすると思ってるの?」
「5分だけよ…すぐにすむわ」
「………三分よ…」
足音が二つゆっくりと遠ざかっていく
「ふふ……それじゃあ…貴方を実家に連れていく前にハッキリさせておきましょうか」
「……何がだ」
背中に回ると、今度は両手を首に絡めてきた
「まず…貴方の目はもう治りません。失明の理由は押し入った強盗がベッドで寝ていた貴方の目に硫酸をかけたから。由奈や空が止めようとしたみたいだけど…あっ、由奈や空は無傷だから安心してね」
「強盗…硫酸?」
なんだ?零菜の言葉に違和感を感じる
強盗が硫酸?
ベッドの部屋は奥…由奈や空ちゃんは無傷?
「そう…貴方の悲鳴を聞いて逃げ出したらしいけどね。でも安心して?もう強盗は居ないから…」
強盗は“もう居ない”?
まただ…また零菜の言葉に違和感を感じた
会話の節々に気持ち悪い引っ掛かりがある
「本当に…目は治らないのか?」
「えぇ…残念だけど」
失明…
俺にはまったく関係の無いものだと思っていたのに
これからどうすればいいのだろうか?
目が見えないのにどうやって生活していけば…
「優哉…貴方はね。こうなる前に、私も由奈も全部遠ざけて一人逃げなきゃいけなかったのよ」
「突然なんだよ」
「由奈にしてみれば貴方は麻薬みたいなものなのよ…溺れさせた貴方の責任…罪よ」
罪?俺が犯したのか?確かに俺は由奈に甘えていたのかも知れない
由奈を強く引き剥がせなかったのも俺の責任だ…だけど、これは俺の罪になるのか?
「弱ったお母様の心に付け入り快楽に溺れさせたのも、貴方の罪」
付け入る?ふざけるな
これは完全なる被害者だ
眠っている俺に…勝手に…
「私の半身でありながら、勝手に歩き回るのも罪。私と一緒に産まれたくせに…離れようとした…貴方はたくさんの罪を犯した…だから目を失ったの」
今までの行いのせいで失明した?
そのような大罪を俺は犯したのだろうか
違う…俺は目を失うような罪は犯していない
「ふふ…やっぱり…貴方と身体の関係を持ってから全然聞こえなかったのに…今は貴方の心の声が聞こえるわ。自分は罪を犯していない…被害者だ…被害者だ被害者だ」
うるさい…なんだコイツ
頭おかしいんじゃないか?
「私は頭おかしくないわよ?貴方は私から離れた事が罪であり、私や由奈を完全に切る事ができなかった事が罪なのよ」
耳元で囁く零菜の声に身体が震える
「思い出しなさいよ。私と寝た日…ずっと私のお尻を掴んで腰を打ち付けてたわ」
違う…あれは無理矢理お前が俺を…
「お母様とセックスをしたビデオを見た時…貴方お母様の事を思い浮かべながら私を抱いてたんじゃないの?」
ふざけるな…ありえない
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
全然気持ち悪い
「頭でお母様の裸体を想像しなさい。あの時のお母様…貴方に抱かれていたお母様は綺麗だったでしょ?」
綺麗だった…かも知れない
だけど気持ち悪かった…女の顔をした母が綺麗だったから気持ち悪かったんだ
「優哉…もう逃げるのはやめなさい。貴方には貴方のやらなきゃいけない事があるのよ」
俺がやらなきゃいけないこと?
いっぱいあるさ
仕事を探さなきゃいけない
彼女を作らなきゃいけない
妻をもらわなきゃいけない
結婚もしなきゃいけない…
そして…
「子供も作らなきゃならないものね……アナタ」
「……あぁ…そうだな」
小さなカゴの中で飛び回っても、どうせ捕まるんだ…産まれた日から後ろも前も逃げ道なんてなかった
いや…あったのかも知れないが、俺は知らない道に反れるのを恐れた
だから一本道をずっと走って逃げてきた…小さなカゴの中だと知らずに――
「ふふ…やっと帰ってきたわね優哉。一つの顔に目は四つも必要無いもの…目なんて無くなってよかったのよ」
甘い匂いと共に口に柔らかい何かが触れた
覚えがある感触だ
「三分過ぎたわよ、離れなさい」
少し遠くから由奈の声が聞こえてきた
先ほどのやり取りを見ていたのだろうか
あまり由奈には見られたくなかったのだが…
「んっ……それじゃ行きましょうか、私達の家に」
柔らかい感触が口から消えると同時に零菜の手が俺の身体から離れて行った
遠ざかる零菜の足音を聞きながら、見えない零菜の背中を見つめる
「あっ、そうだ。優哉前に話した、双子の昔話し覚えてる?」
「あぁ、覚えてるけど」
確か手を繋いで産まれてきた双子の赤ちゃんの手を斬って封印したって言う話だった気がする
「私と優哉も手を繋いで産まれてきたそうよ?放さないようにしっかりと握り締めてね……お母様が難産で苦しかったって話してたわ」
それだけ言い放つと、車へとスタスタ歩いて行ってしまった
「お兄ちゃん、少しの間だけ我慢してね?すぐにまた私とお兄ちゃんの二人で住めるようにするからさ…」
遠ざかる足音と近づいてくる足音
声を聞く限り、近づいてくる足音は由奈だ
俺の前まで足音が近づいてくると、手を掴み、ゆっくりと車に誘導してくれた
車に到着すると、扉を開けて後部座席に座っる
俺が座るのと同時に、また胸に響くエンジン音を鳴らして車は走り出した
今度こそ実家まで止まる事はないだろう…
次エンジンが止まる時は実家の車庫の中だ
「由奈…ごめんな」
「どうしたの突然?」
なんとなく由奈の顔が頭で想像できた
不思議そうな顔をしているに違いない
手を伸ばして由奈の顔を撫でてやる
「ん、くすぐったいよお兄ちゃん」
くすぐったいといいながら由奈は頬をすり寄せてきた
罪か…確かに俺は罪を犯してしまったかも知れない
こうなる前に由奈を絶対に正しい道に導けたはずだ
だけど俺はそれをしなかった
一人上京した俺は由奈の存在が何より有り難かったから…それに頼りすぎたんだ
「お前らさぁ……俺が死んだらどうするんだ?」
今回も硫酸なんて死んでもおかしくない事件なはずだ
零菜は…大丈夫かも知れないが、由奈は心配だ
「さぁ?私は身体半分が死ぬなんて考えられないから、一緒に死んであげるわよ」
鼻で笑って軽く話す零菜
多分冗談だと思うが、今零菜はどんな顔をしているのだろうか?
無表情ではないことを祈ろう…
「お兄ちゃんが一緒に死んでほしいと願うなら、一緒でいいわよ」
由奈も笑いながら答えた
冗談か本気かは区別できないが、冗談だと思うのだが、触っている顔に変化はなかった
「わ、私も兄ちゃんと一緒だからな!」
俺の右腕を掴み大きな声で叫ぶ空ちゃん
零菜にうるさいと言われて、押し黙ってしまった
空ちゃんは…多分空気に流されただけだろう
強く握られる右腕に流れ込んでくる空ちゃんの想いは絶対に受け止めてはいけない…
「なんなら、このまま道反れてみましょうか?隣は崖だから皆仲良く死ねるわよ」
車が左に軽く傾くのが分かった
身体に力が入る
「そうね、此処から落ちたら即死できるかもね」
ゆっくり…ゆっくり…左に車が移動する
「うわっ、本当だ!すんげー高い…死ぬかなこれ」
死ぬ?
今から死ぬ?
イヤだ…まだ死にたくない
「痛っ!お兄ちゃんどうしたの?」
「ぇ…あ、あぁ……ごめん」
由奈の声を聞き我に帰る
知らない間に由奈の太ももを強く握っていたようだ
由奈の太ももから震える手を無理矢理引き離す
「死ぬわけないでしょ?ただの左折よ左折。さっきも言ったけど、貴方はまだしなきゃいけない事がいっぱいあるんだから」
俺の心を読んだのだろう…零菜がため息混じりに呟いた
そうだ…死ぬわけない
零菜だってこんなバカな事はしないはずだ
だけど…
だけど、車が左右に傾く度に心臓がキュッと縮むような感覚に陥る
「私向こうに帰ったら会社建てるからさ、お兄ちゃんそこの社長になってよ」
仕事を手に入れて
「そんなにすぐ働けないだろ。兄ちゃんは目が見えないんだから…私をバイトさせてくれるなら兄ちゃんの目になってやるけどな」
優しい妹に愛されて
「優哉の目は私の目で十分だから心配無く。あんたは学生なんだから勉強してなさい。それに優哉は私としなきゃ行けない事があるのよ」
綺麗な妻を手に入れて
「だから、私が貴女とお兄ちゃんを二人にすると思ってるの?」
想像していた未来とは程遠いけど
「そうだよ!兄ちゃんは私の兄ちゃんなんだから私が手伝うんだ!」
これが幸せなのだろうか?
「あ〜、あ〜、五月蝿い五月蝿い。優哉は当主になるんだから私が優哉の側にいるのよ」
これが幸せなら…
「妄想もここまで行くと救いようがないわね」
なぜこんなに息苦しいのだろうか?
「そうだ、バ〜カバ〜カ!」
家族らしい会話の中に見え隠れする、爛れた感情
目が見えなくても分かる
苦しくて…頭が痛くて…心臓が潰れそうだ
「ははっ…お前ら喧嘩するなよ…姉妹なんだから皆仲良くしろ」
――それでもこの生活を手放せない俺は…この妹達よりも狂っているのかも知れない
いや…確実に狂っているのだろう
だって…
「まぁ、お兄ちゃんが言うなら」
「兄ちゃんが言うなら仕方ないな」
「優哉が言うなら喧嘩はしないわ」
――こんな三人の妹が可愛くてしかたないのだから――
ありがとうございました、投下終了です
後二〜三回の投下で完結になりますので、それまでよろしくお願いします
狂もうとマッテマシタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
リアルタイムに見れて嬉しいです!乙!
>>982 GJです!とうとう薫ちゃんは消されてしまったか…
986 :
名無しさん@ピンキー:2012/05/20(日) 22:05:03.47 ID:7csnO2QU
うめ
それにしてもスレの最後に神書き手が続々現れる神展開
皆さんgjです!
ようやくキタヽ(;▽;)ノ
gj!!
俺…狂もうとが完結したら働くんだ…
妹「あとちょっとだよ」
姉「ええ、ちゃんと埋めちゃいましょう」
―この醜い泥棒猫を
近(親相)姦日食か……
キンカンー
カンキーン
泥棒猫「ところがどっこい! 死んでまいせん!」
妹「ひぃっ!」
姉「落ち着いて! 殺し損ねただけよ!」
泥棒猫「私を埋めるんなら1000まで埋めるべきだったね」
姉「まだ7スレあるわ」
妹「そうだそうだ! 時間が経つごとに埋まっちゃうよ!」
泥棒猫「最後だから言うわ。私が埋まったら彼も連れて行く」
姉「なんで弟君が出てくんのよ!」
妹「お兄ちゃんは私と結ばれるのよ!」
泥棒猫「そろそろね。もう埋まってきたわ」
姉「なんでここまで埋まってきてるのよ」
妹「やだ! 足にまで来てる! 埋まっちゃうよ!」
泥棒猫「あんたたちも道連れよ。一緒に埋まってもらうわ」
姉「断る」
妹「同じく」
妹「あと2レスしかないよ」
姉「心配しないで。泥棒猫だけ置き去りにして私たちは脱出すればいい」
泥棒猫「そう上手く行くかしら?」
姉「いい? せーので脱出するわよ」
妹「うん。こんなとこで埋まりたくない」
泥棒猫「ふふ、それはどうかしらね。主人公くーん! 来てー!」
主人公「1000ゲットォォ!!」
姉「…埋まった」
妹「…埋まっちゃったね」
泥棒猫「…オワタ」
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もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。